晴海悠
お世話になっております! 晴海悠です。
荒廃した世界・アポカリプスヘルにて、野盗が独自の集団を築こうとしています。
なんだか憎めない相手の気もしますが、一体どんな冒険になるのでしょうか。
あなたのやりたい事を、全力でぶつけて下さい。
全身全霊のリプレイでお返しします!
『プレイングの受付』
各章の冒頭に短い文章を挟み、受付開始の合図とします。
また、受付期間のご案内をマスターページに記載する事があります。よろしければご参照下さい。
(複数名の合わせプレイングは2~3名までならはりきって承ります!)
『1章 冒険』
周辺の荒野に転がる戦車を操り、要塞を囲む嵐を突破する章です。
発掘・修理するもよし、自前の車体で突っ込むもよし。
方法を自由に考えてみて下さい。
オブリビオンの魔術嵐だけあって、突破には相応の危険が伴います。
自前でキャバリア持ってるよ!という方も楽勝と思わず、具体的な安全対策などを考えてみて下さいね。
『2章 集団戦』
ダーティーギャング。
鉄パイプや催涙スプレーを用いて数と卑劣な手段に訴える、ちょっとデキるチンピラたちです。
残念なことに今回、シナリオの都合でIQがナーフされていますが、倒してもキリのない点は厄介です。
屋内廃墟での戦いとなるので、相手の裏をかいてみるのもよいでしょう。
『3章 ボス戦』
黒き風の聖女『ニグレド』。
強大な嵐の魔術のほか、教団員や狂信者たちを扇動して戦わせる人心把握術にも長けています。
今回は把握する相手を間違えたようですが、実力は本物。
どうぞ油断せず、骸の海に還してあげて下さい。
それではリプレイでお会いしましょう! ひゃっはー。
第1章 冒険
『戦車を手に入れろ!』
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POW | 遺跡や悪党から奪還したり、金属探知機で地面に埋まってるのを掘り出したり。 |
SPD | スクラップを修理したり、スクラップでオリジナル戦車を作る。 |
WIZ | マーケットや商人から情報収集したり、交渉したり。 |
👑11 |
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴 |
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
荒野。
何の変哲もない、見渡す限りのだだっ広い荒野である。
生身の人間が拠を構えたところですぐに食糧が尽き、
いかな悪党でも暮らしてはいけないだろう。
だが、敵はオブリビオン。食べる必要がないのだ。
必要のないはずの略奪を繰り返すのは、
彼らの意志が骸の海側に染まっている証左に他ならない。
かつてここは戦地だったのだろう。
点在する岩陰や砂地には、時折古びた金属の鈍い煌めきが見える。
探そうと思わねば見つからぬ物だが、
グリモア猟兵の予知ではこの中にまだ動く戦車が眠っていたという。
敵の拠点は遠く彼方で、黒い嵐の防壁に包まれている。
生身で突破するには相当なリスクが伴うだろう。
だが、もし、身を覆う鋼鉄の装甲を手に入れたなら――。
アジトへ乗り込む算段は、各自の手に委ねられている。
キミはどのような思いを胸に、この冒険に挑むのだろうか。
「来れるモンなら来てみやがれってんだひゃっはーーああーーー!?」
……ところで猟兵さん、今何人か嵐に巻き込まれましたですよっ。
開戦前ボーナス、ですねっ!
カゲヤ・クサカベ
人助けしたいと思って来たけど、
敵のテンションが俺と違いすぎて不安になってきた
まぁ、行動しないと始まらないよね…
ええと、自前のマシンは持ってないから廃棄戦車を探そう
外装の損傷や劣化が少なそうなのがあれば良いんだけど…
戦車を発掘して修理する時は、“俺の影(武器)”を操って、
岩をどけたり、部品が欠けてるなら影で擬似的な部品を作成
エンジンが掛かったらいざ嵐に突入
…なんか尋常じゃない嵐で超怖いんだけど!!
嵐をモロに受けないように、小高くなってる地形や遮蔽物があるルートを極力選択
遮蔽物が無かったり、横転しそうな時は俺の影を戦車外に展開して防御したり支えたり。
…なんか俺の影有能じゃね?
イケそうな気がしてきた
エグゼ・シナバーローズ
たとえ世界が物理的に再建できたとして、妙な教えが人々の心に広がってたら拙いからな
その集団はぶっ潰すべきだぜ
まずは戦車の確保だな
俺はガジェッティア、メカニック技術は自信ある、使えそうなのだって見極められるさ
複数ありそうな雰囲気なんで、その中から一番直して使えそうなのを選ぶ
修理の部品は他の戦車だったり埋まってるスクラップからパーツを組み込むぞ
嵐に突入する際は、魔力の流れを見て比較的乱れがないところを探す
無いならそんときはそんときだ!
そーだ、「土精霊のとっておき」で迷路作って出口を拠点に設定できねーかな
できるなら無茶苦茶な力の中に突入するより早そう
無理なら腹をくくって、直した戦車を信じて嵐に突っ込む
操る影の色とは違い、その心はあたたかく。
人助けがしたい。助けを求める声あらば、荒野の果てまでも。
……そう思って訪れた、はずだったのだが。
「ひーーはーー!?」
妙にハイなスイッチが入ったままぶっ飛ばされてく敵の姿に、カゲヤ・クサカベ(ネガティブシャドウ・f31518)は視線のやり場を失い戸惑っていた。
「どうしよう……敵のテンションが俺と違いすぎて不安になってきた」
影は心の迷いを映してうねうねと動き、先ほどから忙しない。
そんなカゲヤとは対照的に、エグゼ・シナバーローズ(4色使いの転校生・f10628)はオラトリオの翼を堂々と広げて彼方を見据える。
「たとえ世界が物理的に再建できたとして、妙な教えが広がってたら拙いからな」
勝気な性格を表すように、ニッと口端を上げ笑みを作る。
弛まぬ努力に裏打ちされた自信は、相手のペースになど飲まれない。
「今後のためだ、ぶっ潰しておこうぜ」
「まぁ、行動しないと始まらないよね……」
やりづらさを感じる相手ではあったが、ここは気持ちの切り換えが肝心。
勢いよく駆け出すエグゼの姿に、カゲヤも倣って走り出す。
◇ ◇ ◇
二人がまず向かったのは、荒野のただ中にあるスクラップ墓場だ。
風が吹けば地表に顔を覗かせる鉄くずの中に、何か使えるものはないかと探す。
「俺はガジェッティア、メカニック技術は自信あるぜ。使えそうなのだって見極められるさ」
吹き荒ぶ強風が邪魔してくるのを、風精霊・イルスの力も借りて探索を続ける。
打ち捨てられた戦車の中には、一見状態が良く見えるものもあったが。
「ダメだこいつぁ、転輪がイカれてら」
点検の折、エグゼは足回りを支える大事な部品が傷んでいる事に気付く。
装甲が剥がれただけならまだしも、車体の下ごと換装するのは技師一人の手には負えない。
「ま、幸い他の部分は使えそうだな。引っぺがして使うか!」
そう言ってスパナやレンチを取り出し、溶接部を火精霊の力で剥がしていく。
一方、こちらはカゲヤ。
彼は伸ばした影で大岩を持ち上げ、岩陰に隠れていた車体を発見した。
「ええと、動くには動きそうだけど……」
唯一大破していたのはキューポラ――戦車ののぞき窓とも呼べる部分。
恐らくは、状況を確認しようとした際にやられたのだろう。
他の部位はは破損を免れていたが、このまま嵐に耐えうるものではない。
「……そうだ」
網目状にした影でドームを作り、天井部を厚く覆って守りをなす。
外界の様子は見えづらくなったが、影の蝙蝠を放てば嵐の中でもエコーで探り、教えてくれるだろう。
やがて、長らく眠っていたエンジンに火が灯る。
ギアを入れてレバーを倒せば、体の動かし方を思い出すように、戦車はゆっくりと走り出した。
前方に見えるのは黒の嵐、オブリビオンの操る魔術の防壁。
「……なんか尋常じゃない嵐で超怖いんだけど!!」
嵐の直撃を受けぬようにと、カゲヤは小高い丘陵や岩陰、僅かでも遮蔽物のあるルートを選ぶ。
途中吹き付ける横風が車体を煽り、せり出した崖へと追いやったが。
「っ……!」
車体の下に影の手を回せば、崖の手前で踏みこらえた戦車はアジトの方へと軌道を戻して走り出す。
日頃己の力に自信を抱かぬカゲヤだったが、此度は影ひとつが八面六臂の大活躍。
「……なんか俺の影有能じゃね?」
思っていた以上の手ごたえに、思わず歓喜が声に滲む。
――その時だった。
まばゆい黄緑の光が彼の眼前に散り、またたく間に橄欖石のドームを築き上げる。
成し遂げたのは、エグゼの連れていた土精霊・ヴィーオの力。
魔力探知で安全なルートを探していたエグゼは、いっそ精霊の作る迷路を嵐の向こう側まで繋げてはどうかと思いついたのだ。
――ヴィーオ、迷路作って突破ってできねーかな?
呼びかけると土精霊の少女はこくりと頷き、リアカーで鉱石を集めだした。
やがて満ちた魔力が、硬い岩盤の迷路を築く。
岩のドームは砂粒に襲われピシピシと音を立てていたが、少なくとも嵐を抜けるまではもちそうだ。
「やっりぃ! 念のため戦車には乗ってくか……お前も行こうぜ!」
景気よく迷路へと突入するエグゼに、一拍遅れてカゲヤが従う。
「……うん。すごいな」
双方意図せぬ形で、出番を食われた気もしたが。
「俺も、がんばろう」
この後に余力を残せた事に感謝しつつ、カゲヤは静かに拳を握るのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アイゼン・グラード
自分は自前の機体も有りマスからを機械歩兵に【集団戦術】で集めさせて重量を増やすシカ…
その時アイゼンに電流が走る。
機械歩兵達には大体時間が無く発揮出来ない【時間さえ有れば城や街を築く】とすら言われる築城能力がある。
この能力であればキャバリア輸送能力のある「動く城」もとい「巨大陸上戦艦」をスクラップから建造する事が出来るのでは無いと閃いたのだ
幸い今回のオブリビオンは拠点に引き篭もって居る為時間は幾らでもあり、材料となるスクラップや部品もこの荒野には幾らでも転がっている
自前のキャバリア、装甲貨物車,、歩兵全てで【運搬】し材料を集め建造させれば或いは…
というわけで戦艦を建造して突破してを目指しマス
庵野・紫
えー、なになに?戦車!?
アンねー、乗った事無いんだよねー。
乗ってどかーんとやっちゃってもいいやつ?
後悔してもしんないからね!
戦車はなんかてきとーにその辺にあるやつでいいかな
動かし方とか分かんないけど車と同じ?
・・・全然違うじゃん!
これは強そうなボタン!
ぽちっと押したらミサイルが出ちゃった。
あ!このミサイルで嵐を切るとか出来る?!
出来ちゃったりする?!
先にミサイルをぶっ放って、ミサイルを追いかけるように嵐の中を突撃!
来れるもんなら来いって言ったのはそっちじゃん
今すぐ目の前に出てやっから
覚悟すんのはそっちだよ!
先の猟兵が嵐に突入するより、時刻はいくらか遡る。
スクラップの眠る荒野に、静かに佇むタンクキャバリアの姿があった。
脚部には戦車のような無限軌道を履き、荒れ地の不安定さをものともしない。
アイゼン・グラード(ウォーマシンのキャバリア詰め・f31591)。
キャバリアとほぼ一体化している彼は、搭乗席の中で嵐を乗り越える算段を思索していた。
彼ならば、そのまま魔術嵐を耐え抜く事も可能かもしれない。
だが問題は、戦いに向かうまでに機体損傷のおそれがある事だ。
間違っても嵐の中での横転は避けたいところだが。
「自前の機体も有りマスから、機械歩兵にパーツを集めさせて重量を増やすシカ……」
そう考えを口にした瞬間、電撃のような閃きがアイゼンの頭脳に走る。
「歩兵……」
戦車に跨乗し、彼と苦楽を共にする機械歩兵たち。
彼らは時間さえあれば、城や街を築くほどのポテンシャルを秘めている。
「普段その力ヲ発揮する事はありませんでシタが……時間をかけレバ巨大陸上戦艦をも建造できるのデハ?」
正直、これはだいぶ無茶とも思える試みだ。
複数の装備を持つ彼をもってしても、複雑な構造物を戦闘前に建造する事は容易ではない。
よしんばできたとしても、艦を動かす動力は……動力……あっ。
「……意外なところデ役に立つものデスネ」
彼の足元にはなんと、装甲貨物車があるではないか。
さすがに巨大戦艦を築くまでは至らないだろうが、歩兵に操縦してもらい、アイゼンの搭乗機の履帯と合わせれば確かな推進力にはなる。
「材料も歩兵ニ集めてもらいまショウ」
閃きを実行に移すべく、アイゼンは早速歩兵たちへと指示を出し始めた。
そしてしばらくの後。
建造現場で溶接に勤しむ歩兵たちに混ざり、庵野・紫(鋼の脚・f27974)が高らかな声を響かせていた。
「えー、なになに? 戦車!?」
おもむろに好奇心を見せる紫は、アイゼンの集めた戦車に興味津々だ。
「アンねー、乗った事無いんだよねー」
ちゃっかりそのうちの一台に手を触れ、「もらっていい?」なんて言いつつ中を覗きこむ。
「それハ装甲が薄く再利用に適さないと判断した車輛デス。乗っていくナラ止めはしませんガ」
アイゼンは利用価値が薄いと考えたのか、さほど紫の触る車輛に興味を示さない。
それをいい事にすっかり乗る気になった紫は、勢いよくハッチを開けた。
「乗ってどかーんとやっちゃってもいいやつ?」
「大丈夫でショウ、そのためのモノですかラ」
キャバリア乗りのお墨付きを得たなら、躊躇はいらない。
「後で返してはなしだからね!」
いうが早いか、紫の姿は戦車内部へと滑りこむように消えた。
「動かし方とか分かんないけど、車と同じ?」
UDCアースに出かけた折、実はちょっと嗜む程度に車を運転した事もある紫。
試しに操縦席に乗り込んでみると、ギアにレバー、無数の機器類がずら~りと。
「……全然違うじゃん!」
一応アクセルっぽいものはついているが、どれがどれだか分からない。
試しに「なんか強そう!」なボタンを押してみると。
装填音、続いて砲台が回転し……。
――ドン。シュルルルル……!
「ミサイル出ちゃった!」
おそらく人生初のミサイル発射を決めて軽く盛り上がる紫だったが、嵐に突っ込むミサイルを見て何かを思いつく。
「あ! もしかして……そんな事も出来ちゃったりする?!」
楽しい思い付きは即決即断。試すほかないっしょ、と翠の瞳が輝いた。
◇ ◇ ◇
履帯が荒野の地面を踏みしだいて均し、嵐へと続く轍を残す。
アイゼンと歩兵たちの作り上げた車体は、超重戦車顔負けの巨大装甲車。
「時間と素材の都合、戦艦とまでは行きませんでシタが」
キャバリアから降りられないなら機体ごと覆ってしまえと、嵐への防壁を兼ねた格納庫が車輌後方に覗く。
嵐接近のアラートが鳴り、普段外に出ている歩兵たちも車輛内部へ。
理想形には至らずとも、アイゼン、そして機械乗りたちの夢を乗せた車は重々しい音を立てて疾走する。
その僅か前方には進路を定めるように、紫の駆る戦車の姿。
「こーいうのは直感だいじ! ミサイルぶっぱ、レディゴー!」
嵐の風上方向へ誘導ミサイルを放てば、起爆して噴き上げる噴煙が嵐に混ざる。
「……狙いどーりっ!」
風は乱れ、魔術の嵐に切れ目ができた。
いかに強大な嵐といえど、吹き付けるその威を削げば乗り切れる程度のものだ。
限りあるミサイルを盛大に使いながら、まず紫が、そしてアイゼンの戦車が嵐の中をゆく。
超重戦車の装甲が風圧に剥がれ悲鳴を上げたが、中の本体を守ってくれると思えば安いものだ。
防壁を次々と突破するように、ミサイルで出来た風の切れ目を二人の車輌は駆け抜けていく。
「来れるもんなら来いって言ったのはそっちじゃん」
紫は不敵に、どこか悪戯っぽい笑みすら浮かべてレバーを更に前へと倒す。
「今すぐ目の前に出てやっから、覚悟すんのはそっちだよ!」
吹き付ける嵐をものともせず、二台の戦車たちは速度を速めていった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ナイ・デス
嵐の防壁……ですか
地下にまで及んでいなければ、そのうちに地下通路をつくりでてくる……
ことも、ないのか、にゃあ(嵐に巻き込まれてる敵をみて)
いえ、普通に一時解除してでてくる可能性なども、ありますか
倒さないと、ですね
さて。このまま「ダイウルゴス」で突入してみてもいい、ですが
……せっかく、です
大地と、大地に眠る戦車さん達……一緒に、世界を守りましょう
『フロンティア・ライン』発動
黒竜ダイウルゴスの形を与えた彼らを、追加装甲のように纏って一回りも二回りも大きくなった「ダイウルゴス」
【念動力】で動かして
【重量攻撃】級の四つ足で確り大地【踏みつけ】て嵐へ
嵐で傷ついても【継戦能力】聖なる光が竜を癒し、突き進む
要塞をとりまく嵐は今なおその威を誇り、離れた地まで砂まじりの風を吹かせる。
「嵐の防壁……ですか」
ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)はその威容を遠くから見、危惧するように声をあげた。
間の抜けた事に、嵐は敵の出入りすらも拒むと聞く。
だが、さしもの嵐も地下にまでは及ぶまい。
「そのうちに地下通路をつくりでてくることだって……」
真顔で考えていたナイの視線が、あーれーと風に舞うギャングたちにあわせて揺れ動く。
心なしか、楽しそうに見えなくもない。
「ない、のか、にゃあ……」
思わずへにゃりと気の抜けた声が出たが、よく考えればあれはボスの吹かせる嵐。
出撃の命が下れば一時解除して出てくる可能性は十分にある。
「……やっぱり倒さないと、ですね」
そういって少年は手のひらに小さな彫像を乗せる。
黒い竜を模した彫像は、見目に反して強大な魔力を秘めていた。
これこそは群龍大陸の一領主の証、無数に集い意のままに動く黒竜ダイウルゴスの像であった。
「さて。このままダイウルゴスで突入してみてもいい、ですが」
領主の力を以て集めた像は、いまやナイを乗せて動く事も可能になった。
キャバリアに匹敵する力で、嵐に突入する手も、あるのだが。
「……せっかく、です」
像の秘める魔力を、像でなく大地に眠るものへと向ける。
「大地と、大地に眠る戦車さん達……一緒に、世界を守りましょう」
フロンティア・ライン――魔力に呼応し、岩や戦車たちが黒い輝きを纏った。
嵐に向かい、巨大な黒竜が往く。
黒竜を形作る小さな竜――正体は、姿を変えた戦車たちだ。
かつて侵略のため振るわれたのと同質の力を、ナイは文明守護のために行使する。
蝕むのでなく組み入れ、力を借りる。
その発想が生まれたのも、彼が器物の化身たるヤドリガミだからかもしれない。
追加の装甲を纏って巨大な集合体と化した黒竜は、念力に従い荒野に道を作る。
黒竜の爪先が、ついに嵐に触れた。
触れた先から削り取られそうな威力を、大地踏みしめる四つ足で削ぐ。
そして、たとえ竜の身が傷つこうとも。
「私が、護ります」
ナイの指先から零れる聖なる光が、即座に癒して傷を繕う。
やがて嵐に裂け目が生じ、黒竜の眼前に向こうの景色が開けた。
絶えず晒された嵐の猛威に魔力の結合も綻び、解けかけてはいたが――ナイは戦車たちが、まだ戦いを望んでいるような気がした。
「このまま、アジトの近くまで。……お願いします」
眠る戦車たちに意味を与えるなら、戦いの中でこそ。
重々しい地響きを轟かせ、黒竜は敵の拠点へと進んでいった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『ダーティーギャング』
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POW |
●お寝んねしな!
【鉄パイプや鎖】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
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SPD |
●催涙スプレーの時間だぜぇ!
【催涙スプレー】から【目の痛くなる液体】を放ち、【目の痛み】により対象の動きを一時的に封じる。
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WIZ |
●おらおら、おとなしくしな!
【手錠】【スタンガン】【鎖】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
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👑11 |
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴 |
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
嵐を抜けた先。
廃墟のアジトは、違法建築を延々と継ぎ足したように複雑な構造をしていた。
ところどころ床や外壁が崩れて吹き抜けのようになっており、
内部には潜む箇所が多数あるように見受けられる。
「へっへっへ……待ってやしたぜぇ」
潜入した猟兵を出迎えるように、ギャングたちが行く手を阻む。
手には鉄パイプや催涙スプレー、スタンガンと、
武器になるものなら何でも使う気のようだ。
オブリビオンと化した今、その威力は通常のものではない。
たとえ機体に搭乗していようと、
彼らはセンサーなどの急所を狙い攻撃してくるだろう。
外から建物ごと攻め潰す手もなくはないが、恐らく取りこぼしは多くなる。
ただし、廃墟の建物はボロボロだ。
キャバリアが侵入したり、十分に狙いを定めれば戦車で砲撃する余地もある。
無数に現れるギャングの猛攻を潜り抜け、首魁のもとへ向かう為。
どのような作戦を取るかは、各自の手に委ねられた。
「ヒヒッ、ハハハッ! 姉御に近寄るンなら容赦しねぇぜ?」
「ナメてかかった礼だ、たっぷり恐ろしさを味わってもらうぜ!」
そして啖呵を切る、ギャングたちは。
「オレたちのォ! シュナイデン・チャクラム・メレンゲ・レンゲ・イヒ・ルーペのよォ!」
――もはや、長すぎる名前を覚えきれていなかった。
カゲヤ・クサカベ
このアジト…奇跡的なバランスで建ってて感動を覚えるなあ
あのギャングの中に突入するのが憂鬱すぎる…
俺には多数を一度に相手する度胸も自信も無いから…そうだな…
戦車で建物の入口手前付近を砲撃
戦車から降りて、発生した砂埃に紛れるか、敵がそっちに気を取られている隙に速やかにアジト内へ突入
身を隠しつつUC発動、敵弱体化
後は敵に見つからないよう四方を注意しながら移動
俺の影を地面を這うように伸ばして敵の足元から不意打ち攻撃
敵がいる天井とか足元とかに脆そうな箇所があれば、影で破壊して一気に無力化したいな
敵に発見された時も、影で地形を破壊してその場を離脱、再度身を隠そう
あの自信とテンション、俺にも分けて欲しいな…
エグゼ・シナバーローズ
名前なげーわ!
名前覚えられん集団なんて入ってもらえねーぞ!
さてどうすっかな
数多いし、アイツらアホっぽいから数多く居るところほど親玉に近いともいい切れねー気がするんだよなー
他の猟兵が突っ込む前に、UCエレメンタル・ファンタジアを多数全力でぶち込むか
全力なんて出せばほぼ暴走するわけだが、親玉に近いところに飛んだ魔法を見ればギャング共も何かしら反応するだろーぜ
戦車の中でギャングの妨害を防ぎながらそれを見極める
属性:地(岩)、自然現象:滝なら暴走してもそこまで収拾がつかないことは無いはず
親玉の位置の目星がついて、ついでに建物もボコボコになったら戦車で突っ込む
おらおら、潰されたくなかったらどけどけー!
アイゼン・グラード
分かりやすく待ち伏せアピールしてマスネ、これは最初からキャバリアが入れそうな場所から入ったら奇襲の嵐になりそうデス…
なので今から入り口を作りマス
まず嵐を超えるのに使った巨大輸送車をUCで召喚した歩兵に【運転】させてドーン!と廃墟の壁面に突っ込ませマス
その後破砕砲を撃ち込み完全に【地形破壊】して入り口を作り歩兵の一部を先行させ【偵察】させつつ残りに自機の周囲を随伴させる【集団戦術】を行わせレイダーが近寄らないように【援護射撃】させながら突入シマス
拠点内部ではキャバリア武装による【弾幕】で敵の潜んで居そうな物陰ごと【蹂躙】し奥を目指しマス
この拠点に最深部直通の通路をリフォームして差し上げるのデス
奇妙なテンションでギャングたちがダメダメ啖呵を切った直後。
「名前なげーわ!」
コンマ数秒間髪入れず、すぱんとエグゼ・シナバーローズのツッコミが飛んだ。
「つか、なあ! 名前覚えられん集団なんて入ってもらえねーぞ!」
さもありなん。勝手に組織名を弄られたシュメルケ・シュタインバッハ・クーゲル・シュライバー・イッヒ・ゼプツェン(推定名称)はもはや、組織の誰一人として正しい名を言えない暴徒集団と化していた。
名は旗印に等しきもの。ころころ名前が変わるようでは、新たな信徒など――。
「アァン、そりゃテメェの意見だろうがぁ? オレァいかつい名前が好きで入ったんだぜ、このシュナイデン・ペスカトーレ・モン・サン・ミッチェルのよぉ」
「ちげーじゃねーか!!」
ツッコミ第二波。これ以上構っていてはきっと身が持たないだろう。
一方のカゲヤ・クサカベは、どちらかというと廃墟の建物の方に目を惹かれていた。
「このアジト……奇跡的なバランスで建ってて感動を覚えるなあ」
元あった建物の上へ倒壊を恐れず積み上げられた廃屋は、見上げれば確かにある種の奇妙な造形美を湛えていた。
かつて住人が暮らしたであろう住居跡は、無秩序ながらも活気溢れていた頃の面影を残す。
「影も多いし、誰も居なければ落ち着くのに。あのギャングの中に突入するのが憂鬱すぎる……」
目立たず平穏にが信条のカゲヤにとって、騒々しい彼らはどうも苦手な相手。
多数を相手取る度胸も自信もないからと、どうにか直接やり合わずすむ方法を画策する。
と、その時硬質な声が返った。
「同意デス」
アイゼン・グラードの声ははるか頭上から降る。
比較的長身のカゲヤからしても、キャバリアに乗った――むしろ降りられないアイゼンは見上げると首が痛くなりそうだ。
「キャバリアが入れそうな場所から入ったら奇襲の嵐になりそうデス」
「ああ、うん……だよね。どうしよう……」
「なので今から入り口を作りマス」
「えっ」
言うが早いか。歩兵たちの操る巨大輸送車が、ドリフトを決めながら廃墟の壁へ突っ込んだ。
それはもう思い切りよく、どーん、と。
アクセル全開で壁にぶつかった先には、前衛的なデザインのエントランスが仕上がっていた。
「もう少し大きくしたいデスね」
「あっ、うん」
すちゃっ。左肩砲台の照準を合わせて榴弾をぶちこめば、キャバリアの機体も悠々と通れる一・二・三階共通出入り口の出来上がり。
「若干想定と違うけど方針は一緒だ、乗っからせてもらうぜ!」
エグゼもまた破壊には異議なしと、持てる魔力の全力を注ぎ込む。
精霊ヴィーオの助けを借りて大地の力を呼び起こし、持ち上げた大量の岩を頭上へと運ぶ。
――早めに親玉の位置を割り出さんとする、エグゼの考えでは。
通常守りの堅いところを拠点と見がちだが、今回それは当てはまらないと感じていた。
(「だってアイツら、どうにもアホっぽいし」)
新たにあいた出口からわらわら顔を出すギャングは、考えあってよりはむしろ、衝動的に動いているように見える。
「さて。全力なんて出せばほぼ暴走するわけだが……それでいいぜ」
親玉に近いところに飛べば、何かしら反応するだろう――そう踏んで岩の雪崩を見舞えば、がらがらと滝のように転がる岩はギャングたちを生き埋めにしていく。
「皆、すごいな……」
カゲヤもまた、戦車から別の箇所へ砲撃を放って敵をかく乱していたが。
陽動は十分と見て戦車から降り、見つかりにくい生身での潜入を決意する。
元より指揮系統もまばらなギャングたち。混乱に乗じ、三人は建物内部へと突入していった。
◇ ◇ ◇
「おらおら、潰されたくなかったらどけどけー!」
エグゼの駆る戦車が、建物内を強引に駆ける。
すぐ後ろには、戦車型脚部を持つキャバリア・アイゼンパンツァーが追従する。
先行の歩兵隊が偵察結果をシグナルで送り、アイゼンが読み取って味方へ伝える。
「アチラに複数敵が潜んデいるようデス」
大口径の破砕砲で吹き抜けフロアを増やしながら、足元には接近を阻む歩兵隊。
戦車二台を持ち込んだ以上、こちらの戦力は攻守共に申し分なく思えた。
やがて歩兵がシグナルを寄越した地点までたどり着いたが、敵の姿がそれほど見えない事にアイゼンは疑問を抱く。
「これハ……奇襲デス!!」
エグゼが声に反応するも、戦車が苦手とする頭上からの奇襲に対応が遅れた。
「ヒーハハハッ! ビリッビリに痺れさせてやるぜェ!」
建物上階より飛び降りたギャングたちが、機体の弱点――露出したコードや精密機器をスタンガンで狙う。
「……! ショートか、やりやがった!」
一時途絶えた外部モニターの様子に、エグゼが悔しげに声をあげる。
調子づいたギャングたちは次々と飛び降り、随所に鎖を巻きつけ縛ろうとする。
「このままおとなしく寝んねしてなァ!」
彼らは機体の上に飛び乗って鎖を手に掲げ――そのまま、動きを止めた。
ごうん、と音を立てて突如突き立つ四つの髑髏柱。
髑髏の目には闇の焔、ゆらめく陽炎の向こうから呪詛に満ちた凝視を放つ。
「全てはわが策略の内、って言えばいいのかな……? 俺、目立ってなくてよかった……」
優位を過信する心こそ、カゲヤの攻め入る最大の好機。
形勢を覆し敵を心身ともに追い詰める、これぞ四天王の成せる業。
ギャングたちが呪詛に縛られ動けぬうちに、やがて機器類が調子を取り戻した。
「……お待たせしまシタ、反撃開始デス」
アイゼンのショットガンが息を吹き返し、指揮の戻った歩兵と共に敵を蹂躙、鎮圧していく。
「お前、すげーじゃん!!」
「いや、そんな……俺はできる事をしたまでだよ」
残る敵を足場ごと影で地に落としながら、カゲヤが謙遜した答えを返す。
エグゼの掛け値なしの称賛に、カゲヤははじめ身に余るように遠慮がちな笑みを浮かべたが。
明らかな不利も意に介さず、挑んでは吹っ飛ばされる敵を、灰の瞳がすこしだけ羨ましそうに見た。
「……あの自信とテンション、俺にも分けて欲しいな」
やがて建物奥へと開けた道に、ギャングたちが慌てて逃げ戻るのが見えた。
恐らく彼らを追跡すれば、親玉の位置も割れるだろう。
「あいつら、守る気あんのかな……」
エグゼの言葉に「どうでショウ」と返しながら、エリアを大方鎮圧し終えたアイゼンが、弾倉を補充しながら呼びかける。
「このまま行きまショウ。最深部直通の通路をリフォームして差し上げるのデス」
真横にトンネルを掘り進むように、三人の姿は建物奥深くへと消えていった。
成功
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庵野・紫
えー?なになに?何て言ったのかわかんなーい。
そんなに長い名前って遅れすぎじゃね?
もっと簡単にしてくんなきゃ覚えられないんですけど?
もうさー、シュでいいじゃんシュ!
かわいいよ?
ま。どっちに向いてもアンが倒すんですけど。
この戦車ねー、やばいくらい楽しいんだよ!
お前らも知ってた?
狙いを定めなきゃいけないんだよね。
ちょっと集中するから黙ってて。
じっと標的を見つめながら狙いを定めるよー。
戦車の操縦ってやっぱ難しいかも。
重いんだよね。
あー、もう!うざったい!
ココ!
アンがココって言ってんだからココでいいの!
このままでいいの!
いっけー!このままぶち抜いてやる!
ルイーゼ・ゾンマーフェルト
嵐の突破に愛車マイコンを駆り遅ればせながら参戦。
言葉の癖からしてあのアホっぽい連中は同郷だったりするのだろうか、とか思い至り、若干遠い目。
さておき、敵は近接戦闘メインっぽいので銃器を使ったリーチの優位はキープしたい。
バギーを操り距離を保ち、屋外のギャングらを主砲(榴弾仕様)で吹っ飛ばし、さらに討ち漏らしを副砲の機銃で掃討する。
「アレ・ゲレンデ・ゲフェヒトファールツォイク・マイコン(全地形対応戦闘車両カニクイイヌ)の戦力を甘く見るな」
弾幕を突破して車に肉迫してきた者はショットガンを【クイックドロウ】して【零距離射撃】。
数を減らしたところでバギーに乗ったまま建物内に突入。【蹂躙】しつつ奥を目指す。
ギャングたちの名乗る妙な名は、一体どこから沸いてきたのか。
「えー? なになに? 何て言ったのかわかんなーい」
さっぱり意味不明じゃんとばかり、庵野・紫は肩をすくめてギャングたちを煽る。
「だいいち、そんな長い名前って遅れすぎじゃね? もっと簡単にしてくんなきゃ覚えられないんですけどー?」
ネーミングに覚えやすさは重要、奇をてらっただけの組織名は流行らないだろう。
だからと紫はこんな提案をひとつ。
「もうさー、シュでいいじゃん、シュ! かわいいよ?」
ぐぐっと長いものを縮めて手のひらでパーン! するようなジェスチャー。
なかなかの妙案につき、今後しばらくは彼らの名をシュ(略)と記す事にしよう。
ぜひ各自、好きな名前を後ろにつけて補完してほしい。
そんなやりとりを後ろから眺める、ルイーゼ・ゾンマーフェルト(ゲヴェーア・ケンプファー・f25076)。
愛車バギーを駆り後から来た彼女は、言葉の端々に聞こえる響きに若干遠い目をしていた。
「……言葉の癖からして、あのアホっぽい連中は同郷だったりするのだろうか」
だとしたら、故郷の名折れだ。
妙なイメージが定着する前に、早いとこご退場願わねばなるまい。
「ま、どんな名前にしたってアンが倒すんですけど」
戦車の奥に引っ込んだ紫が、通信機越しに弾んだ声を響かせる。
「あんねー、この戦車ねー、やばいくらい楽しいんだよ! お前らも知ってた?」
しゃべくりながらギアを再び前進へ。
アクセルを踏めば戦車の履帯がガコンと動き、足元の小石を砕いて発進する。
「武器から見るに、敵は接近戦がメインか。……車輌でリーチを保つのは合理的だな」
見た所、敵は対戦車用の装備は持っていない。
迷わず車輌戦を選んだ紫に感心しつつ、ルイーゼもまた戦闘用バギーのハンドルを握った。
◇ ◇ ◇
跳ねる車体の衝撃を吸い上げ、駆動部のサスペンションが荒く上下する。
共に数々の悪路を走破した武装バギーは、嵐に引き裂かれた大地にもめげず走り続けた。
「……」
建物の入り口を守るように群がるシュ(略)へ、静かに砲塔を向ける。
間隔をあけて放たれた榴弾が粉塵の雲を生み、敵が悲鳴をあげながら左右へ飛ぶように転がるのが見えた。
それでも尚、鉄パイプなどの粗野な武器を手に迫りくるギャングたち。
「……根性だけは認める」
次に彼らを出迎えるは機銃の掃射。二対の副砲が交互に火を噴き、立ち上がろうとしたそばからなぎ倒していく。
寡黙に見え、宿るは苛烈。商隊がオブリビオンに滅ぼされた日から、ルイーゼの心は復讐一色に染まった。
「アレ・ゲレンデ・ゲフェヒトファールツォイク・マイコンの戦力を甘く見るな」
全地形対応戦闘車両『カニクイイヌ』。いかなる環境にも適応する獣を名に抱くバギーで、休む間もなく敵を屠る。
ルイーゼが前線で砂塵をまいて戦う間、紫は操縦席で一人目を凝らし唸っていた。
「むー、ちょっと集中するから静かにしてて」
先ほどから狙いを定めようとしているのだが、思うように行かない。
どう頑張っても、画面に映る標的と十字の照準がうまく合わないのだ。
(「戦車の操縦ってやっぱ難しいかも……大体、重いんだよね」)
そうこうしているうちにもシュ(略)は逃げ回り、一か所に留まってくれない。
「あー、もう! うざったい!」
とうとう業を煮やして両手を突き上げ、紫はそのままにレバーに手をかけた。
機銃掃射をかいくぐった敵が、ルイーゼのバギーへ肉薄する。
「ヒィハハハ! 回り込めばこっちのモンだァ――ハガッ」
振りかぶったスパナで一発食らわせようとして、タンッ――短い音と共にくの字に折れる。
敵の腹を無造作に撃ち抜いた姿勢のまま、ルイーゼは後方へと目をやった。
「……っと、そろそろ頃合か」
紫の戦車の砲塔がこちらを向いた。流れ弾の心配なく派手に撃たせてやろうと、ルイーゼはバギーを駆り後方に引き上げていく。
「はっ、そんな狙いで当たるかってなァ! やーい、ノーコン戦車!」
小馬鹿にするようにギャングたちが吼えるも、さらに大きな声で紫が言い返す。
「うるさいなあ、もう! ココ! アンがココって言ってんだからココでいいの!」
雑に狙いを定め、このままでいいとレバーを押し倒す。
「いっけー! このままぶち抜いてやる!」
どんっ。
発射された砲弾は勢いよくギャングたちの頭上を飛び越え、そして――。
「やーい、外れ……だ……!?」
着弾したのははるか上方、廃墟の上層部。ボロボロに朽ちたコンクリートの塊が、音を立てて落下する。
「ぎゃーー!!」
悲鳴は轟音に飲まれ、瓦礫の真下に動くものはない。
「やはり当たったか……これだけやれば、突入するには十分だな」
歓声をあげる紫へ、よくやった、とハンドサインを送る。
やがて二台の駆動音は建物の開口部へと消え、後には轍だけが残された。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
リオ・ウィンディア
WIZ
わぁすごい嵐の中はこんな風になってるのね!怖い大人たちがいっぱいいるわ!
あら、私?ご覧の通りのオルガン弾きよ
まぁまぁ、一曲聞いてきなさい
【楽器演奏・演技】で敵を自分の間合いに取り込んで
「Hombre precavido vale por dos.」
UCを発動し敵の武器をとことん嵐化させる
自分は闇に紛れてダガーで素早く2回攻撃
「呑気なお馬鹿さん」
「他にやることないの?」
ちょいちょい毒舌の呪詛を吐きつつ、
地道にコツコツ、一人、また一人
「ねぇ、さっきまで隣にいた人が倒れてるって、どんな気分?」
ふふ、ふふふふ
ナイ・デス
嵐を、抜けた……みんな、ありがとうございます
あれがアジト……ボロボロ、ですね
そして……
シュナイデン・チャクラム・メレンゲ・レンゲ・イヒ・ルーペ、ですか
世界を滅ぼす、オブリビオンとなった、あなたたち
元は、世界の敵という程では、なかったのでしょうけれど……
今は、世界の敵。一人も、逃しません
みんな一緒に……戦いましょう
『フロンティア・ライン』発動
【集団戦術】「ダイウルゴス」を、分離変形
【念動力】で操って【一斉発射】の【範囲攻撃】
そうして
アジトも、大地も「ダイウルゴス」に変えていき
私は取り込まれるよう、隙間なく守られて
【継戦能力】私の光が癒し、竜は止まらない
過去から、今を守る
ここは、文明守護領域、です
猟兵達の活躍により、敵集団は半数以上が壊滅となった。
なおも懲りずぞろぞろ湧いた彼らの前に、更なる増援が駆けつける。
「……みんな、ありがとうございます」
ナイ・デスの視線ははるか後方、沈黙した戦車たちへと注がれる。
共に嵐を抜けた黒竜の群れ。役目を終えた彼らは無機物へと戻り、戦いの趨勢を見守っている。
「あれがアジト……ボロボロ、ですね」
目に映る廃墟は戦いの余波を受け、ところどころに崩落の兆しが見える。
放置すれば遠からず崩れ去るだろうが、悪用されるよりはいいのかもしれない。
集った徒党へと、ナイは改めて目を向けた。彼らが名乗った組織名を、記憶を辿って復唱する。
「シュナイデン・チャクラム・メレンゲ・レンゲ・イヒ・ルーペ、ですか」
まさかの一字一句丸暗記。
類稀なる記憶力だが、こんな所で発揮していいものだろうか。
「ハッハァ! アンタ見かけによらずイカすじゃねぇか。いっそオレ達の仲間に加わったらどうだ、アァ?」
さも愉快そうに、軽く手を打ち鳴らしてギャングの一人が前に出たが、ナイは誘いを拒むように首を振る。
「世界を滅ぼす、オブリビオンとなった、あなたたち。事情があっても、今は世界の敵……一人も、逃がしません」
「ハッ、そいつァ結構なこった!」
交渉決裂と見るや、即座に手のひらを返すは悪たる所以か。
分銅付きの鎖で風を切り、ナイへとにじり寄る悪党の足は、しかし突如響いた声に止められた。
「わぁ、すごい! 嵐の中はこんな風になってるのね!」
鈴の転がるような声は、誰のものか。
リオ・ウィンディア(Cementerio Cantante・f24250)。喪に服すような漆黒纏うエルフの少女は、戦場に似つかわしくないはしゃぎっぷりでギャングたちを見る。
「どうしましょ、怖い大人たちがいっぱいいるわ!」
男たちのなりを見てわざとらしく、頬に手を当て驚く素振り。芝居がかった調子で紡がれる言葉に、ギャングたちは不愉快そうな表情を浮かべた。
「なんだテメェは」
「私? ご覧の通りのオルガン弾きよ」
首より提げる小箱の中には、折りたたまれた穴あきの紙。巻き取るように台へと備え、手回しオルガンのハンドルを握る。
「まぁまぁ、一曲聞いてきなさい。それとね、お兄さん――Hombre precavido vale por dos.」
「アン? ガキの寝言なんざ聞こえねぇなァ!」
悠長な声音に惑わされたか、そこで焦れたが運の尽き。
構わず斬りかかろうとした悪党のナイフが、彼の手元で爆弾のように弾ける。
「いてぇっ……! な、なんだァ!?」
気づけば、後ろの仲間たちも武器を失いパニックに陥っていた。
無機物を変化させ操る、ユーベルコード。多くの派生形を持つ力だが、彼女が物を変え操るのは『音』だ。
「あらあら。だから気を付けて、って言ったのに」
くすくす笑う声すらも今は遠く、音の波の向こう。
「Bienvenidos! ようこそ、私の舞台へ!」
目を見開く悪党どもの前で、無数の目に見えぬ音の塊が爆ぜた。
◇ ◇ ◇
大気に満ちる、音の嵐。
不可視の攻撃にギャングたちは逃げ惑うばかり。
敵が恐慌状態に陥ったのを好機と、ナイもまたその手を掲げる。
「みんな一緒に……戦いましょう」
天より降らすは、手に持つのと同じダイウルゴスの彫像。
無尽蔵に募る黒竜は波のようにうねり、辺りの景色を黒竜の体内へと変化させる。
念動力で操られ、ナイの意のままに波打つ黒竜の内部。
嘗ての邪悪な帝竜の影はなく、新生ダイウルゴスは過去に属する者だけを蝕む。
「ンだよ、これ……歩きづらいったらありゃしねェ……!」
時折放たれる黒竜の礫を必死に躱し、悪党どもがナイの方へと押し寄せる。
「竜をバラすぞ、お前は向こうから回り込め! ……何突っ立ってんだ、オイ」
ギャングの一人が、棒立ちの仲間を揺り動かそうと肩に手をかけた。しかし仲間の体は力なく傾ぎ、うねる黒竜の腹の底へと沈む。
刃物を一体どのように振るえば、こんな芸当ができたのか。
彼の喉は深々と抉られ、言葉通りに息の根を止められていた。
「呑気なお馬鹿さん」
仲間の代わりに笑うのは、先ほどの純黒を纏う少女。
音の匣にしまってあったダガーを手に、何事もない表情でからりと笑う。
「ねぇ。さっきまで隣にいた人が倒れてるって、どんな気分?」
艶のある声で呼びかけていても、その心は常人には読めず。
情に訴えても無駄だろう――彼女は骨しか愛さぬのだから。
「……元は、世界の敵という程では、なかったのでしょうけれど」
ぎゅっと目を瞑り、ナイは目蓋の裏によぎる思いを打ち払う。
この世界のオブリビオンの成り立ちを辿れば、嵐の情景が自然と浮かんだ。
オブリビオン・ストーム。生きとし生けるものを呑む漆黒の嵐は、その全てをオブリビオンと化し現世に帰す。
元はただの暴徒であったとしても――今は世界の敵ならば。
「過去から、今を守る。ここは文明守護領域、です」
世界を食む悪意を、道を誤ってしまったものを逃さぬよう。
群れるダイウルゴスが悪党たちを取り込み、ゆっくり内へと閉じていった。
大成功
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