7
黒き風のセレナード

#アポカリプスヘル

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アポカリプスヘル


0




●拝啓黒の聖女様、シリアスできない配下押し付けてごめんなさい
 天は吹き荒れ、地は叫ぶ。
 積み上げた安寧も、嵐吹かば瞬く間に塵と化す。
 ここはアポカリプスヘル。
 非情な嵐に支配された、泣く子も黙る荒廃世界である。

「かーっ! 姉御っべーっすわ! マジリスペクト」
 そんな世界の片隅にある、やたらと騒がしい野盗たちのアジトで。

「要塞嵐で囲うとかパネェーッ! ところでオレらどうやって出るんスか」
 眉間に皺寄せる黒き風の聖女・ニグレドの顔には、こう書いてあった。

 ――配下にするヤツ間違えたな、と。

 そもそもは。
 彼女は揺るがぬ教義を打ち立てたかっただけなのだ。
 世界を飲み込むオブリビオン・ストームを「神の意志」と仰ぐニグレドは、
 嵐の威光を知らしめるべく信徒を募った。
 破壊といびつな再生をもたらす黒き嵐。
 それを象徴とする教義はわかりやすく、オブリビオンの関心を集めた。

 ――惜しむらくは。
 彼らのお脳が、神の何たるかを理解するのに不足していた事、である。

「姉御の団にするならやっぱカッケー名前じゃねーとよ!」
 黒き風の教団改め『シュヴァルツェン・シュトルム』は瞬く間に信徒を集め。
「どーせなら派手にアジトとか作ってやんよ!」
 途中『シュヴァルツェン・シュトルム・ゲボイデ・ボイデ』と名を変えつつ、
 嵐のとりまく要塞を築き上げ、荒野に牙城を打ち立てる。
「やっぱ愛だよ、愛!」
 こうして『シュヴァルツェン・シュトルム・ゲボイデ・ボイデ・イッヒ・リーベ』は、
 配下のオブリビオンと言えども簡単に出られないかわり、
 不落の要塞を築いた――長いなしかし!!

 嵐吹かせる理由は防衛というよりはむしろ、
『外に出さない』事も目的に含めてるんではないかと勘繰るレベルであった。
 いやだってコイツら、間違った教義広めそうだし。

「姉御ォ! そろそろ腹も減ったしヨォ、略奪とかいかねっスか」
「オレわさピーとビールとペロペロキャンディーほしいっス」
「ついでに人とかバンバン攫ってくるぜェ! 嵐潜れんのかなオレら、あーつれ」
 日夜どんちゃん騒ぎの砦の、中枢部で。

「――もう、帰っていいか」
 聖女ニグレドはこっそり、涙目でつぶやいた。

●作戦名『戦車でボンババボン』
 その日、グリモアベースを訪れた猟兵たちを出迎えたのは一羽のツバメだった。
「ハイ! ハイ! 皆さん、どーんとお仕事ですよっ!」
 やたらとテンションの高いツバメの仔はグリモアを掲げ、シュワルベ・ポストボーテ(f30877)と名乗った。
「短くシュワちゃんでもいいのですよっ!」という言は聞き流していいだろう。

「今回はですねっ、アポカリプスヘルで野盗のアジトをぶっ潰してほしいのですねっ」
 件の野盗――レイダーたちは、荒野のど真ん中に拠点を構えている。
 大胆なことにアジト全体を魔術の嵐で覆い、身を裂く嵐は外部からの侵入を阻む。
 そしてひとたび内部へ入れば、敵は手厚くこちらを歓迎するだろう。
「配下の悪いヒトたちは数の暴力でドーンってしてくるのですっ!」
 廃墟を改造したアジトの為、屋内での戦いとなる。
 数の多さが厄介なものの、遮蔽物を利用して数の利を潰す事もできるだろう。

「この盗賊団のボスは女のヒトなのですねっ。ものすごく強い風魔術を操るヒトで、黒き風の聖女ニグレド、って名乗ってたですよっ」
 アジト全体を覆う嵐の防壁を築くほどだ。
 オブリビオンとしての脅威度は侮れない。
 このまま放置すれば信奉者はますます増え、決して無視できない勢力となる。
 悪の芽は早期に摘むべし――現時点で見つかったのは幸いと言える。

 敵のおおまかな情報は分かったが、問題はいかにアジトへ突入するかだ。
 その問いに、シュワルベはふぁさり、と翼を広げてアッピール☆してみせる。
「ワタシ、この目で見ましたのですよっ! 荒野に戦車が乗り捨ててあったのですっ」
 ――戦・車、とは。
「ふるーい時代の戦車ですねっ、スクラップですけどなんやかんや使えるモノも出てくるはずなのですっ」
 そのなんやかんやを考えるの、俺らかよ……と猟兵の一人が遠い目をした。
 正直、作戦としては思いつきレベルだが、
 生身で越えられない嵐を突破する手段としてはアリだろう。

 動く車体をいかにして確保するかは、各自に委ねられた。
 自前の機体もよし、修理技術を振るうもよし。
 手あたり次第動くものを発掘するのも良いだろう。
 生身で越える事は正直、オススメはしないが、
 よほど運と体力に自信があれば賭けるのは止めない、とツバメは語った。

 依頼のあらましを語り終えたツバメは、翼の下からグリモアをちらつかせた。
 転送の光が溢れ、集った猟兵たちを包み込む。
「世界の再建って大変ですけどねっ、事件をコツコツ解決していくのが一番の近道なのですよっ。地道にコツコツ、ドーン☆なのですよっ!」
 最後のそれは、地道の部類に入るのか――。
 そんな疑問を残しながら、グリモアの道は開かれた。


晴海悠
 お世話になっております! 晴海悠です。
 荒廃した世界・アポカリプスヘルにて、野盗が独自の集団を築こうとしています。
 なんだか憎めない相手の気もしますが、一体どんな冒険になるのでしょうか。

 あなたのやりたい事を、全力でぶつけて下さい。
 全身全霊のリプレイでお返しします!

『プレイングの受付』
 各章の冒頭に短い文章を挟み、受付開始の合図とします。
 また、受付期間のご案内をマスターページに記載する事があります。よろしければご参照下さい。
(複数名の合わせプレイングは2~3名までならはりきって承ります!)

『1章 冒険』
 周辺の荒野に転がる戦車を操り、要塞を囲む嵐を突破する章です。
 発掘・修理するもよし、自前の車体で突っ込むもよし。
 方法を自由に考えてみて下さい。
 オブリビオンの魔術嵐だけあって、突破には相応の危険が伴います。
 自前でキャバリア持ってるよ!という方も楽勝と思わず、具体的な安全対策などを考えてみて下さいね。

『2章 集団戦』
 ダーティーギャング。
 鉄パイプや催涙スプレーを用いて数と卑劣な手段に訴える、ちょっとデキるチンピラたちです。
 残念なことに今回、シナリオの都合でIQがナーフされていますが、倒してもキリのない点は厄介です。
 屋内廃墟での戦いとなるので、相手の裏をかいてみるのもよいでしょう。

『3章 ボス戦』
 黒き風の聖女『ニグレド』。
 強大な嵐の魔術のほか、教団員や狂信者たちを扇動して戦わせる人心把握術にも長けています。
 今回は把握する相手を間違えたようですが、実力は本物。
 どうぞ油断せず、骸の海に還してあげて下さい。

 それではリプレイでお会いしましょう! ひゃっはー。
132




第1章 冒険 『戦車を手に入れろ!』

POW   :    遺跡や悪党から奪還したり、金属探知機で地面に埋まってるのを掘り出したり。

SPD   :    スクラップを修理したり、スクラップでオリジナル戦車を作る。

WIZ   :    マーケットや商人から情報収集したり、交渉したり。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 荒野。
 何の変哲もない、見渡す限りのだだっ広い荒野である。
 生身の人間が拠を構えたところですぐに食糧が尽き、
 いかな悪党でも暮らしてはいけないだろう。
 だが、敵はオブリビオン。食べる必要がないのだ。
 必要のないはずの略奪を繰り返すのは、
 彼らの意志が骸の海側に染まっている証左に他ならない。

 かつてここは戦地だったのだろう。
 点在する岩陰や砂地には、時折古びた金属の鈍い煌めきが見える。
 探そうと思わねば見つからぬ物だが、
 グリモア猟兵の予知ではこの中にまだ動く戦車が眠っていたという。

 敵の拠点は遠く彼方で、黒い嵐の防壁に包まれている。
 生身で突破するには相当なリスクが伴うだろう。
 だが、もし、身を覆う鋼鉄の装甲を手に入れたなら――。

 アジトへ乗り込む算段は、各自の手に委ねられている。
 キミはどのような思いを胸に、この冒険に挑むのだろうか。

「来れるモンなら来てみやがれってんだひゃっはーーああーーー!?」
 ……ところで猟兵さん、今何人か嵐に巻き込まれましたですよっ。
 開戦前ボーナス、ですねっ!
カゲヤ・クサカベ
人助けしたいと思って来たけど、
敵のテンションが俺と違いすぎて不安になってきた
まぁ、行動しないと始まらないよね…

ええと、自前のマシンは持ってないから廃棄戦車を探そう
外装の損傷や劣化が少なそうなのがあれば良いんだけど…
戦車を発掘して修理する時は、“俺の影(武器)”を操って、
岩をどけたり、部品が欠けてるなら影で擬似的な部品を作成

エンジンが掛かったらいざ嵐に突入
…なんか尋常じゃない嵐で超怖いんだけど!!
嵐をモロに受けないように、小高くなってる地形や遮蔽物があるルートを極力選択
遮蔽物が無かったり、横転しそうな時は俺の影を戦車外に展開して防御したり支えたり。

…なんか俺の影有能じゃね?
イケそうな気がしてきた


エグゼ・シナバーローズ
たとえ世界が物理的に再建できたとして、妙な教えが人々の心に広がってたら拙いからな
その集団はぶっ潰すべきだぜ

まずは戦車の確保だな
俺はガジェッティア、メカニック技術は自信ある、使えそうなのだって見極められるさ
複数ありそうな雰囲気なんで、その中から一番直して使えそうなのを選ぶ
修理の部品は他の戦車だったり埋まってるスクラップからパーツを組み込むぞ

嵐に突入する際は、魔力の流れを見て比較的乱れがないところを探す
無いならそんときはそんときだ!
そーだ、「土精霊のとっておき」で迷路作って出口を拠点に設定できねーかな
できるなら無茶苦茶な力の中に突入するより早そう
無理なら腹をくくって、直した戦車を信じて嵐に突っ込む



 操る影の色とは違い、その心はあたたかく。
 人助けがしたい。助けを求める声あらば、荒野の果てまでも。
 ……そう思って訪れた、はずだったのだが。
「ひーーはーー!?」
 妙にハイなスイッチが入ったままぶっ飛ばされてく敵の姿に、カゲヤ・クサカベ(ネガティブシャドウ・f31518)は視線のやり場を失い戸惑っていた。
「どうしよう……敵のテンションが俺と違いすぎて不安になってきた」
 影は心の迷いを映してうねうねと動き、先ほどから忙しない。
 そんなカゲヤとは対照的に、エグゼ・シナバーローズ(4色使いの転校生・f10628)はオラトリオの翼を堂々と広げて彼方を見据える。
「たとえ世界が物理的に再建できたとして、妙な教えが広がってたら拙いからな」
 勝気な性格を表すように、ニッと口端を上げ笑みを作る。
 弛まぬ努力に裏打ちされた自信は、相手のペースになど飲まれない。
「今後のためだ、ぶっ潰しておこうぜ」
「まぁ、行動しないと始まらないよね……」
 やりづらさを感じる相手ではあったが、ここは気持ちの切り換えが肝心。
 勢いよく駆け出すエグゼの姿に、カゲヤも倣って走り出す。

   ◇    ◇    ◇

 二人がまず向かったのは、荒野のただ中にあるスクラップ墓場だ。
 風が吹けば地表に顔を覗かせる鉄くずの中に、何か使えるものはないかと探す。
「俺はガジェッティア、メカニック技術は自信あるぜ。使えそうなのだって見極められるさ」
 吹き荒ぶ強風が邪魔してくるのを、風精霊・イルスの力も借りて探索を続ける。
 打ち捨てられた戦車の中には、一見状態が良く見えるものもあったが。
「ダメだこいつぁ、転輪がイカれてら」
 点検の折、エグゼは足回りを支える大事な部品が傷んでいる事に気付く。
 装甲が剥がれただけならまだしも、車体の下ごと換装するのは技師一人の手には負えない。
「ま、幸い他の部分は使えそうだな。引っぺがして使うか!」
 そう言ってスパナやレンチを取り出し、溶接部を火精霊の力で剥がしていく。
 一方、こちらはカゲヤ。
 彼は伸ばした影で大岩を持ち上げ、岩陰に隠れていた車体を発見した。
「ええと、動くには動きそうだけど……」
 唯一大破していたのはキューポラ――戦車ののぞき窓とも呼べる部分。
 恐らくは、状況を確認しようとした際にやられたのだろう。
 他の部位はは破損を免れていたが、このまま嵐に耐えうるものではない。
「……そうだ」
 網目状にした影でドームを作り、天井部を厚く覆って守りをなす。
 外界の様子は見えづらくなったが、影の蝙蝠を放てば嵐の中でもエコーで探り、教えてくれるだろう。

 やがて、長らく眠っていたエンジンに火が灯る。
 ギアを入れてレバーを倒せば、体の動かし方を思い出すように、戦車はゆっくりと走り出した。
 前方に見えるのは黒の嵐、オブリビオンの操る魔術の防壁。
「……なんか尋常じゃない嵐で超怖いんだけど!!」
 嵐の直撃を受けぬようにと、カゲヤは小高い丘陵や岩陰、僅かでも遮蔽物のあるルートを選ぶ。
 途中吹き付ける横風が車体を煽り、せり出した崖へと追いやったが。
「っ……!」
 車体の下に影の手を回せば、崖の手前で踏みこらえた戦車はアジトの方へと軌道を戻して走り出す。
 日頃己の力に自信を抱かぬカゲヤだったが、此度は影ひとつが八面六臂の大活躍。
「……なんか俺の影有能じゃね?」
 思っていた以上の手ごたえに、思わず歓喜が声に滲む。
 ――その時だった。
 まばゆい黄緑の光が彼の眼前に散り、またたく間に橄欖石のドームを築き上げる。
 成し遂げたのは、エグゼの連れていた土精霊・ヴィーオの力。
 魔力探知で安全なルートを探していたエグゼは、いっそ精霊の作る迷路を嵐の向こう側まで繋げてはどうかと思いついたのだ。
 ――ヴィーオ、迷路作って突破ってできねーかな?
 呼びかけると土精霊の少女はこくりと頷き、リアカーで鉱石を集めだした。
 やがて満ちた魔力が、硬い岩盤の迷路を築く。
 岩のドームは砂粒に襲われピシピシと音を立てていたが、少なくとも嵐を抜けるまではもちそうだ。
「やっりぃ! 念のため戦車には乗ってくか……お前も行こうぜ!」
 景気よく迷路へと突入するエグゼに、一拍遅れてカゲヤが従う。
「……うん。すごいな」
 双方意図せぬ形で、出番を食われた気もしたが。
「俺も、がんばろう」
 この後に余力を残せた事に感謝しつつ、カゲヤは静かに拳を握るのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アイゼン・グラード
自分は自前の機体も有りマスからを機械歩兵に【集団戦術】で集めさせて重量を増やすシカ…

その時アイゼンに電流が走る。
機械歩兵達には大体時間が無く発揮出来ない【時間さえ有れば城や街を築く】とすら言われる築城能力がある。
この能力であればキャバリア輸送能力のある「動く城」もとい「巨大陸上戦艦」をスクラップから建造する事が出来るのでは無いと閃いたのだ

幸い今回のオブリビオンは拠点に引き篭もって居る為時間は幾らでもあり、材料となるスクラップや部品もこの荒野には幾らでも転がっている
自前のキャバリア、装甲貨物車,、歩兵全てで【運搬】し材料を集め建造させれば或いは…

というわけで戦艦を建造して突破してを目指しマス


庵野・紫
えー、なになに?戦車!?
アンねー、乗った事無いんだよねー。
乗ってどかーんとやっちゃってもいいやつ?
後悔してもしんないからね!

戦車はなんかてきとーにその辺にあるやつでいいかな
動かし方とか分かんないけど車と同じ?
・・・全然違うじゃん!

これは強そうなボタン!
ぽちっと押したらミサイルが出ちゃった。

あ!このミサイルで嵐を切るとか出来る?!
出来ちゃったりする?!
先にミサイルをぶっ放って、ミサイルを追いかけるように嵐の中を突撃!

来れるもんなら来いって言ったのはそっちじゃん
今すぐ目の前に出てやっから
覚悟すんのはそっちだよ!



 先の猟兵が嵐に突入するより、時刻はいくらか遡る。
 スクラップの眠る荒野に、静かに佇むタンクキャバリアの姿があった。
 脚部には戦車のような無限軌道を履き、荒れ地の不安定さをものともしない。
 アイゼン・グラード(ウォーマシンのキャバリア詰め・f31591)。
 キャバリアとほぼ一体化している彼は、搭乗席の中で嵐を乗り越える算段を思索していた。
 彼ならば、そのまま魔術嵐を耐え抜く事も可能かもしれない。
 だが問題は、戦いに向かうまでに機体損傷のおそれがある事だ。
 間違っても嵐の中での横転は避けたいところだが。
「自前の機体も有りマスから、機械歩兵にパーツを集めさせて重量を増やすシカ……」
 そう考えを口にした瞬間、電撃のような閃きがアイゼンの頭脳に走る。
「歩兵……」
 戦車に跨乗し、彼と苦楽を共にする機械歩兵たち。
 彼らは時間さえあれば、城や街を築くほどのポテンシャルを秘めている。
「普段その力ヲ発揮する事はありませんでシタが……時間をかけレバ巨大陸上戦艦をも建造できるのデハ?」
 正直、これはだいぶ無茶とも思える試みだ。
 複数の装備を持つ彼をもってしても、複雑な構造物を戦闘前に建造する事は容易ではない。
 よしんばできたとしても、艦を動かす動力は……動力……あっ。
「……意外なところデ役に立つものデスネ」
 彼の足元にはなんと、装甲貨物車があるではないか。
 さすがに巨大戦艦を築くまでは至らないだろうが、歩兵に操縦してもらい、アイゼンの搭乗機の履帯と合わせれば確かな推進力にはなる。
「材料も歩兵ニ集めてもらいまショウ」
 閃きを実行に移すべく、アイゼンは早速歩兵たちへと指示を出し始めた。

 そしてしばらくの後。
 建造現場で溶接に勤しむ歩兵たちに混ざり、庵野・紫(鋼の脚・f27974)が高らかな声を響かせていた。
「えー、なになに? 戦車!?」
 おもむろに好奇心を見せる紫は、アイゼンの集めた戦車に興味津々だ。
「アンねー、乗った事無いんだよねー」
 ちゃっかりそのうちの一台に手を触れ、「もらっていい?」なんて言いつつ中を覗きこむ。
「それハ装甲が薄く再利用に適さないと判断した車輛デス。乗っていくナラ止めはしませんガ」
 アイゼンは利用価値が薄いと考えたのか、さほど紫の触る車輛に興味を示さない。
 それをいい事にすっかり乗る気になった紫は、勢いよくハッチを開けた。
「乗ってどかーんとやっちゃってもいいやつ?」
「大丈夫でショウ、そのためのモノですかラ」
 キャバリア乗りのお墨付きを得たなら、躊躇はいらない。
「後で返してはなしだからね!」
 いうが早いか、紫の姿は戦車内部へと滑りこむように消えた。
「動かし方とか分かんないけど、車と同じ?」
 UDCアースに出かけた折、実はちょっと嗜む程度に車を運転した事もある紫。
 試しに操縦席に乗り込んでみると、ギアにレバー、無数の機器類がずら~りと。
「……全然違うじゃん!」
 一応アクセルっぽいものはついているが、どれがどれだか分からない。
 試しに「なんか強そう!」なボタンを押してみると。
 装填音、続いて砲台が回転し……。
 ――ドン。シュルルルル……!
「ミサイル出ちゃった!」
 おそらく人生初のミサイル発射を決めて軽く盛り上がる紫だったが、嵐に突っ込むミサイルを見て何かを思いつく。
「あ! もしかして……そんな事も出来ちゃったりする?!」
 楽しい思い付きは即決即断。試すほかないっしょ、と翠の瞳が輝いた。

   ◇    ◇    ◇

 履帯が荒野の地面を踏みしだいて均し、嵐へと続く轍を残す。
 アイゼンと歩兵たちの作り上げた車体は、超重戦車顔負けの巨大装甲車。
「時間と素材の都合、戦艦とまでは行きませんでシタが」
 キャバリアから降りられないなら機体ごと覆ってしまえと、嵐への防壁を兼ねた格納庫が車輌後方に覗く。
 嵐接近のアラートが鳴り、普段外に出ている歩兵たちも車輛内部へ。
 理想形には至らずとも、アイゼン、そして機械乗りたちの夢を乗せた車は重々しい音を立てて疾走する。
 その僅か前方には進路を定めるように、紫の駆る戦車の姿。
「こーいうのは直感だいじ! ミサイルぶっぱ、レディゴー!」
 嵐の風上方向へ誘導ミサイルを放てば、起爆して噴き上げる噴煙が嵐に混ざる。
「……狙いどーりっ!」
 風は乱れ、魔術の嵐に切れ目ができた。
 いかに強大な嵐といえど、吹き付けるその威を削げば乗り切れる程度のものだ。
 限りあるミサイルを盛大に使いながら、まず紫が、そしてアイゼンの戦車が嵐の中をゆく。
 超重戦車の装甲が風圧に剥がれ悲鳴を上げたが、中の本体を守ってくれると思えば安いものだ。
 防壁を次々と突破するように、ミサイルで出来た風の切れ目を二人の車輌は駆け抜けていく。
「来れるもんなら来いって言ったのはそっちじゃん」
 紫は不敵に、どこか悪戯っぽい笑みすら浮かべてレバーを更に前へと倒す。
「今すぐ目の前に出てやっから、覚悟すんのはそっちだよ!」
 吹き付ける嵐をものともせず、二台の戦車たちは速度を速めていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ナイ・デス
嵐の防壁……ですか
地下にまで及んでいなければ、そのうちに地下通路をつくりでてくる……
ことも、ないのか、にゃあ(嵐に巻き込まれてる敵をみて)
いえ、普通に一時解除してでてくる可能性なども、ありますか
倒さないと、ですね

さて。このまま「ダイウルゴス」で突入してみてもいい、ですが
……せっかく、です
大地と、大地に眠る戦車さん達……一緒に、世界を守りましょう
『フロンティア・ライン』発動

黒竜ダイウルゴスの形を与えた彼らを、追加装甲のように纏って一回りも二回りも大きくなった「ダイウルゴス」
【念動力】で動かして
【重量攻撃】級の四つ足で確り大地【踏みつけ】て嵐へ
嵐で傷ついても【継戦能力】聖なる光が竜を癒し、突き進む



 要塞をとりまく嵐は今なおその威を誇り、離れた地まで砂まじりの風を吹かせる。
「嵐の防壁……ですか」
 ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)はその威容を遠くから見、危惧するように声をあげた。
 間の抜けた事に、嵐は敵の出入りすらも拒むと聞く。
 だが、さしもの嵐も地下にまでは及ぶまい。
「そのうちに地下通路をつくりでてくることだって……」
 真顔で考えていたナイの視線が、あーれーと風に舞うギャングたちにあわせて揺れ動く。
 心なしか、楽しそうに見えなくもない。
「ない、のか、にゃあ……」
 思わずへにゃりと気の抜けた声が出たが、よく考えればあれはボスの吹かせる嵐。
 出撃の命が下れば一時解除して出てくる可能性は十分にある。
「……やっぱり倒さないと、ですね」
 そういって少年は手のひらに小さな彫像を乗せる。
 黒い竜を模した彫像は、見目に反して強大な魔力を秘めていた。
 これこそは群龍大陸の一領主の証、無数に集い意のままに動く黒竜ダイウルゴスの像であった。
「さて。このままダイウルゴスで突入してみてもいい、ですが」
 領主の力を以て集めた像は、いまやナイを乗せて動く事も可能になった。
 キャバリアに匹敵する力で、嵐に突入する手も、あるのだが。
「……せっかく、です」
 像の秘める魔力を、像でなく大地に眠るものへと向ける。
「大地と、大地に眠る戦車さん達……一緒に、世界を守りましょう」
 フロンティア・ライン――魔力に呼応し、岩や戦車たちが黒い輝きを纏った。

 嵐に向かい、巨大な黒竜が往く。
 黒竜を形作る小さな竜――正体は、姿を変えた戦車たちだ。
 かつて侵略のため振るわれたのと同質の力を、ナイは文明守護のために行使する。
 蝕むのでなく組み入れ、力を借りる。
 その発想が生まれたのも、彼が器物の化身たるヤドリガミだからかもしれない。
 追加の装甲を纏って巨大な集合体と化した黒竜は、念力に従い荒野に道を作る。
 黒竜の爪先が、ついに嵐に触れた。
 触れた先から削り取られそうな威力を、大地踏みしめる四つ足で削ぐ。
 そして、たとえ竜の身が傷つこうとも。
「私が、護ります」
 ナイの指先から零れる聖なる光が、即座に癒して傷を繕う。
 やがて嵐に裂け目が生じ、黒竜の眼前に向こうの景色が開けた。
 絶えず晒された嵐の猛威に魔力の結合も綻び、解けかけてはいたが――ナイは戦車たちが、まだ戦いを望んでいるような気がした。
「このまま、アジトの近くまで。……お願いします」
 眠る戦車たちに意味を与えるなら、戦いの中でこそ。
 重々しい地響きを轟かせ、黒竜は敵の拠点へと進んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ダーティーギャング』

POW   :    お寝んねしな!
【鉄パイプや鎖】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    催涙スプレーの時間だぜぇ!
【催涙スプレー】から【目の痛くなる液体】を放ち、【目の痛み】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    おらおら、おとなしくしな!
【手錠】【スタンガン】【鎖】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 嵐を抜けた先。
 廃墟のアジトは、違法建築を延々と継ぎ足したように複雑な構造をしていた。
 ところどころ床や外壁が崩れて吹き抜けのようになっており、
 内部には潜む箇所が多数あるように見受けられる。

「へっへっへ……待ってやしたぜぇ」
 潜入した猟兵を出迎えるように、ギャングたちが行く手を阻む。
 手には鉄パイプや催涙スプレー、スタンガンと、
 武器になるものなら何でも使う気のようだ。
 オブリビオンと化した今、その威力は通常のものではない。
 たとえ機体に搭乗していようと、
 彼らはセンサーなどの急所を狙い攻撃してくるだろう。

 外から建物ごと攻め潰す手もなくはないが、恐らく取りこぼしは多くなる。
 ただし、廃墟の建物はボロボロだ。
 キャバリアが侵入したり、十分に狙いを定めれば戦車で砲撃する余地もある。
 無数に現れるギャングの猛攻を潜り抜け、首魁のもとへ向かう為。
 どのような作戦を取るかは、各自の手に委ねられた。

「ヒヒッ、ハハハッ! 姉御に近寄るンなら容赦しねぇぜ?」
「ナメてかかった礼だ、たっぷり恐ろしさを味わってもらうぜ!」
 そして啖呵を切る、ギャングたちは。

「オレたちのォ! シュナイデン・チャクラム・メレンゲ・レンゲ・イヒ・ルーペのよォ!」
 ――もはや、長すぎる名前を覚えきれていなかった。
カゲヤ・クサカベ
このアジト…奇跡的なバランスで建ってて感動を覚えるなあ
あのギャングの中に突入するのが憂鬱すぎる…

俺には多数を一度に相手する度胸も自信も無いから…そうだな…
戦車で建物の入口手前付近を砲撃
戦車から降りて、発生した砂埃に紛れるか、敵がそっちに気を取られている隙に速やかにアジト内へ突入
身を隠しつつUC発動、敵弱体化
後は敵に見つからないよう四方を注意しながら移動

俺の影を地面を這うように伸ばして敵の足元から不意打ち攻撃
敵がいる天井とか足元とかに脆そうな箇所があれば、影で破壊して一気に無力化したいな
敵に発見された時も、影で地形を破壊してその場を離脱、再度身を隠そう

あの自信とテンション、俺にも分けて欲しいな…


エグゼ・シナバーローズ
名前なげーわ!
名前覚えられん集団なんて入ってもらえねーぞ!

さてどうすっかな
数多いし、アイツらアホっぽいから数多く居るところほど親玉に近いともいい切れねー気がするんだよなー
他の猟兵が突っ込む前に、UCエレメンタル・ファンタジアを多数全力でぶち込むか
全力なんて出せばほぼ暴走するわけだが、親玉に近いところに飛んだ魔法を見ればギャング共も何かしら反応するだろーぜ
戦車の中でギャングの妨害を防ぎながらそれを見極める
属性:地(岩)、自然現象:滝なら暴走してもそこまで収拾がつかないことは無いはず

親玉の位置の目星がついて、ついでに建物もボコボコになったら戦車で突っ込む
おらおら、潰されたくなかったらどけどけー!


アイゼン・グラード
分かりやすく待ち伏せアピールしてマスネ、これは最初からキャバリアが入れそうな場所から入ったら奇襲の嵐になりそうデス…

なので今から入り口を作りマス
まず嵐を超えるのに使った巨大輸送車をUCで召喚した歩兵に【運転】させてドーン!と廃墟の壁面に突っ込ませマス
その後破砕砲を撃ち込み完全に【地形破壊】して入り口を作り歩兵の一部を先行させ【偵察】させつつ残りに自機の周囲を随伴させる【集団戦術】を行わせレイダーが近寄らないように【援護射撃】させながら突入シマス
拠点内部ではキャバリア武装による【弾幕】で敵の潜んで居そうな物陰ごと【蹂躙】し奥を目指しマス

この拠点に最深部直通の通路をリフォームして差し上げるのデス



 奇妙なテンションでギャングたちがダメダメ啖呵を切った直後。
「名前なげーわ!」
 コンマ数秒間髪入れず、すぱんとエグゼ・シナバーローズのツッコミが飛んだ。
「つか、なあ! 名前覚えられん集団なんて入ってもらえねーぞ!」
 さもありなん。勝手に組織名を弄られたシュメルケ・シュタインバッハ・クーゲル・シュライバー・イッヒ・ゼプツェン(推定名称)はもはや、組織の誰一人として正しい名を言えない暴徒集団と化していた。
 名は旗印に等しきもの。ころころ名前が変わるようでは、新たな信徒など――。
「アァン、そりゃテメェの意見だろうがぁ? オレァいかつい名前が好きで入ったんだぜ、このシュナイデン・ペスカトーレ・モン・サン・ミッチェルのよぉ」
「ちげーじゃねーか!!」
 ツッコミ第二波。これ以上構っていてはきっと身が持たないだろう。
 一方のカゲヤ・クサカベは、どちらかというと廃墟の建物の方に目を惹かれていた。
「このアジト……奇跡的なバランスで建ってて感動を覚えるなあ」
 元あった建物の上へ倒壊を恐れず積み上げられた廃屋は、見上げれば確かにある種の奇妙な造形美を湛えていた。
 かつて住人が暮らしたであろう住居跡は、無秩序ながらも活気溢れていた頃の面影を残す。
「影も多いし、誰も居なければ落ち着くのに。あのギャングの中に突入するのが憂鬱すぎる……」
 目立たず平穏にが信条のカゲヤにとって、騒々しい彼らはどうも苦手な相手。
 多数を相手取る度胸も自信もないからと、どうにか直接やり合わずすむ方法を画策する。
 と、その時硬質な声が返った。
「同意デス」
 アイゼン・グラードの声ははるか頭上から降る。
 比較的長身のカゲヤからしても、キャバリアに乗った――むしろ降りられないアイゼンは見上げると首が痛くなりそうだ。
「キャバリアが入れそうな場所から入ったら奇襲の嵐になりそうデス」
「ああ、うん……だよね。どうしよう……」
「なので今から入り口を作りマス」
「えっ」
 言うが早いか。歩兵たちの操る巨大輸送車が、ドリフトを決めながら廃墟の壁へ突っ込んだ。
 それはもう思い切りよく、どーん、と。
 アクセル全開で壁にぶつかった先には、前衛的なデザインのエントランスが仕上がっていた。
「もう少し大きくしたいデスね」
「あっ、うん」
 すちゃっ。左肩砲台の照準を合わせて榴弾をぶちこめば、キャバリアの機体も悠々と通れる一・二・三階共通出入り口の出来上がり。
「若干想定と違うけど方針は一緒だ、乗っからせてもらうぜ!」
 エグゼもまた破壊には異議なしと、持てる魔力の全力を注ぎ込む。
 精霊ヴィーオの助けを借りて大地の力を呼び起こし、持ち上げた大量の岩を頭上へと運ぶ。
 ――早めに親玉の位置を割り出さんとする、エグゼの考えでは。
 通常守りの堅いところを拠点と見がちだが、今回それは当てはまらないと感じていた。
(「だってアイツら、どうにもアホっぽいし」)
 新たにあいた出口からわらわら顔を出すギャングは、考えあってよりはむしろ、衝動的に動いているように見える。
「さて。全力なんて出せばほぼ暴走するわけだが……それでいいぜ」
 親玉に近いところに飛べば、何かしら反応するだろう――そう踏んで岩の雪崩を見舞えば、がらがらと滝のように転がる岩はギャングたちを生き埋めにしていく。
「皆、すごいな……」
 カゲヤもまた、戦車から別の箇所へ砲撃を放って敵をかく乱していたが。
 陽動は十分と見て戦車から降り、見つかりにくい生身での潜入を決意する。
 元より指揮系統もまばらなギャングたち。混乱に乗じ、三人は建物内部へと突入していった。

   ◇    ◇    ◇

「おらおら、潰されたくなかったらどけどけー!」
 エグゼの駆る戦車が、建物内を強引に駆ける。
 すぐ後ろには、戦車型脚部を持つキャバリア・アイゼンパンツァーが追従する。
 先行の歩兵隊が偵察結果をシグナルで送り、アイゼンが読み取って味方へ伝える。
「アチラに複数敵が潜んデいるようデス」
 大口径の破砕砲で吹き抜けフロアを増やしながら、足元には接近を阻む歩兵隊。
 戦車二台を持ち込んだ以上、こちらの戦力は攻守共に申し分なく思えた。
 やがて歩兵がシグナルを寄越した地点までたどり着いたが、敵の姿がそれほど見えない事にアイゼンは疑問を抱く。
「これハ……奇襲デス!!」
 エグゼが声に反応するも、戦車が苦手とする頭上からの奇襲に対応が遅れた。
「ヒーハハハッ! ビリッビリに痺れさせてやるぜェ!」
 建物上階より飛び降りたギャングたちが、機体の弱点――露出したコードや精密機器をスタンガンで狙う。
「……! ショートか、やりやがった!」
 一時途絶えた外部モニターの様子に、エグゼが悔しげに声をあげる。
 調子づいたギャングたちは次々と飛び降り、随所に鎖を巻きつけ縛ろうとする。
「このままおとなしく寝んねしてなァ!」
 彼らは機体の上に飛び乗って鎖を手に掲げ――そのまま、動きを止めた。
 ごうん、と音を立てて突如突き立つ四つの髑髏柱。
 髑髏の目には闇の焔、ゆらめく陽炎の向こうから呪詛に満ちた凝視を放つ。
「全てはわが策略の内、って言えばいいのかな……? 俺、目立ってなくてよかった……」
 優位を過信する心こそ、カゲヤの攻め入る最大の好機。
 形勢を覆し敵を心身ともに追い詰める、これぞ四天王の成せる業。
 ギャングたちが呪詛に縛られ動けぬうちに、やがて機器類が調子を取り戻した。
「……お待たせしまシタ、反撃開始デス」
 アイゼンのショットガンが息を吹き返し、指揮の戻った歩兵と共に敵を蹂躙、鎮圧していく。
「お前、すげーじゃん!!」
「いや、そんな……俺はできる事をしたまでだよ」
 残る敵を足場ごと影で地に落としながら、カゲヤが謙遜した答えを返す。
 エグゼの掛け値なしの称賛に、カゲヤははじめ身に余るように遠慮がちな笑みを浮かべたが。
 明らかな不利も意に介さず、挑んでは吹っ飛ばされる敵を、灰の瞳がすこしだけ羨ましそうに見た。
「……あの自信とテンション、俺にも分けて欲しいな」
 やがて建物奥へと開けた道に、ギャングたちが慌てて逃げ戻るのが見えた。
 恐らく彼らを追跡すれば、親玉の位置も割れるだろう。
「あいつら、守る気あんのかな……」
 エグゼの言葉に「どうでショウ」と返しながら、エリアを大方鎮圧し終えたアイゼンが、弾倉を補充しながら呼びかける。
「このまま行きまショウ。最深部直通の通路をリフォームして差し上げるのデス」
 真横にトンネルを掘り進むように、三人の姿は建物奥深くへと消えていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

庵野・紫
えー?なになに?何て言ったのかわかんなーい。

そんなに長い名前って遅れすぎじゃね?
もっと簡単にしてくんなきゃ覚えられないんですけど?
もうさー、シュでいいじゃんシュ!
かわいいよ?

ま。どっちに向いてもアンが倒すんですけど。
この戦車ねー、やばいくらい楽しいんだよ!
お前らも知ってた?

狙いを定めなきゃいけないんだよね。
ちょっと集中するから黙ってて。
じっと標的を見つめながら狙いを定めるよー。
戦車の操縦ってやっぱ難しいかも。
重いんだよね。

あー、もう!うざったい!

ココ!
アンがココって言ってんだからココでいいの!
このままでいいの!
いっけー!このままぶち抜いてやる!


ルイーゼ・ゾンマーフェルト
嵐の突破に愛車マイコンを駆り遅ればせながら参戦。

言葉の癖からしてあのアホっぽい連中は同郷だったりするのだろうか、とか思い至り、若干遠い目。
さておき、敵は近接戦闘メインっぽいので銃器を使ったリーチの優位はキープしたい。
バギーを操り距離を保ち、屋外のギャングらを主砲(榴弾仕様)で吹っ飛ばし、さらに討ち漏らしを副砲の機銃で掃討する。
「アレ・ゲレンデ・ゲフェヒトファールツォイク・マイコン(全地形対応戦闘車両カニクイイヌ)の戦力を甘く見るな」
弾幕を突破して車に肉迫してきた者はショットガンを【クイックドロウ】して【零距離射撃】。
数を減らしたところでバギーに乗ったまま建物内に突入。【蹂躙】しつつ奥を目指す。



 ギャングたちの名乗る妙な名は、一体どこから沸いてきたのか。
「えー? なになに? 何て言ったのかわかんなーい」
 さっぱり意味不明じゃんとばかり、庵野・紫は肩をすくめてギャングたちを煽る。
「だいいち、そんな長い名前って遅れすぎじゃね? もっと簡単にしてくんなきゃ覚えられないんですけどー?」
 ネーミングに覚えやすさは重要、奇をてらっただけの組織名は流行らないだろう。
 だからと紫はこんな提案をひとつ。
「もうさー、シュでいいじゃん、シュ! かわいいよ?」
 ぐぐっと長いものを縮めて手のひらでパーン! するようなジェスチャー。
 なかなかの妙案につき、今後しばらくは彼らの名をシュ(略)と記す事にしよう。
 ぜひ各自、好きな名前を後ろにつけて補完してほしい。
 そんなやりとりを後ろから眺める、ルイーゼ・ゾンマーフェルト(ゲヴェーア・ケンプファー・f25076)。
 愛車バギーを駆り後から来た彼女は、言葉の端々に聞こえる響きに若干遠い目をしていた。
「……言葉の癖からして、あのアホっぽい連中は同郷だったりするのだろうか」
 だとしたら、故郷の名折れだ。
 妙なイメージが定着する前に、早いとこご退場願わねばなるまい。
「ま、どんな名前にしたってアンが倒すんですけど」
 戦車の奥に引っ込んだ紫が、通信機越しに弾んだ声を響かせる。
「あんねー、この戦車ねー、やばいくらい楽しいんだよ! お前らも知ってた?」
 しゃべくりながらギアを再び前進へ。
 アクセルを踏めば戦車の履帯がガコンと動き、足元の小石を砕いて発進する。
「武器から見るに、敵は接近戦がメインか。……車輌でリーチを保つのは合理的だな」
 見た所、敵は対戦車用の装備は持っていない。
 迷わず車輌戦を選んだ紫に感心しつつ、ルイーゼもまた戦闘用バギーのハンドルを握った。

   ◇    ◇    ◇

 跳ねる車体の衝撃を吸い上げ、駆動部のサスペンションが荒く上下する。
 共に数々の悪路を走破した武装バギーは、嵐に引き裂かれた大地にもめげず走り続けた。
「……」
 建物の入り口を守るように群がるシュ(略)へ、静かに砲塔を向ける。
 間隔をあけて放たれた榴弾が粉塵の雲を生み、敵が悲鳴をあげながら左右へ飛ぶように転がるのが見えた。
 それでも尚、鉄パイプなどの粗野な武器を手に迫りくるギャングたち。
「……根性だけは認める」
 次に彼らを出迎えるは機銃の掃射。二対の副砲が交互に火を噴き、立ち上がろうとしたそばからなぎ倒していく。
 寡黙に見え、宿るは苛烈。商隊がオブリビオンに滅ぼされた日から、ルイーゼの心は復讐一色に染まった。
「アレ・ゲレンデ・ゲフェヒトファールツォイク・マイコンの戦力を甘く見るな」
 全地形対応戦闘車両『カニクイイヌ』。いかなる環境にも適応する獣を名に抱くバギーで、休む間もなく敵を屠る。
 ルイーゼが前線で砂塵をまいて戦う間、紫は操縦席で一人目を凝らし唸っていた。
「むー、ちょっと集中するから静かにしてて」
 先ほどから狙いを定めようとしているのだが、思うように行かない。
 どう頑張っても、画面に映る標的と十字の照準がうまく合わないのだ。
(「戦車の操縦ってやっぱ難しいかも……大体、重いんだよね」)
 そうこうしているうちにもシュ(略)は逃げ回り、一か所に留まってくれない。
「あー、もう! うざったい!」
 とうとう業を煮やして両手を突き上げ、紫はそのままにレバーに手をかけた。

 機銃掃射をかいくぐった敵が、ルイーゼのバギーへ肉薄する。
「ヒィハハハ! 回り込めばこっちのモンだァ――ハガッ」
 振りかぶったスパナで一発食らわせようとして、タンッ――短い音と共にくの字に折れる。
 敵の腹を無造作に撃ち抜いた姿勢のまま、ルイーゼは後方へと目をやった。
「……っと、そろそろ頃合か」
 紫の戦車の砲塔がこちらを向いた。流れ弾の心配なく派手に撃たせてやろうと、ルイーゼはバギーを駆り後方に引き上げていく。
「はっ、そんな狙いで当たるかってなァ! やーい、ノーコン戦車!」
 小馬鹿にするようにギャングたちが吼えるも、さらに大きな声で紫が言い返す。
「うるさいなあ、もう! ココ! アンがココって言ってんだからココでいいの!」
 雑に狙いを定め、このままでいいとレバーを押し倒す。
「いっけー! このままぶち抜いてやる!」
 どんっ。
 発射された砲弾は勢いよくギャングたちの頭上を飛び越え、そして――。
「やーい、外れ……だ……!?」
 着弾したのははるか上方、廃墟の上層部。ボロボロに朽ちたコンクリートの塊が、音を立てて落下する。
「ぎゃーー!!」
 悲鳴は轟音に飲まれ、瓦礫の真下に動くものはない。
「やはり当たったか……これだけやれば、突入するには十分だな」
 歓声をあげる紫へ、よくやった、とハンドサインを送る。
 やがて二台の駆動音は建物の開口部へと消え、後には轍だけが残された。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リオ・ウィンディア
WIZ
わぁすごい嵐の中はこんな風になってるのね!怖い大人たちがいっぱいいるわ!
あら、私?ご覧の通りのオルガン弾きよ
まぁまぁ、一曲聞いてきなさい

【楽器演奏・演技】で敵を自分の間合いに取り込んで
「Hombre precavido vale por dos.」
UCを発動し敵の武器をとことん嵐化させる
自分は闇に紛れてダガーで素早く2回攻撃
「呑気なお馬鹿さん」
「他にやることないの?」
ちょいちょい毒舌の呪詛を吐きつつ、
地道にコツコツ、一人、また一人

「ねぇ、さっきまで隣にいた人が倒れてるって、どんな気分?」

ふふ、ふふふふ


ナイ・デス
嵐を、抜けた……みんな、ありがとうございます
あれがアジト……ボロボロ、ですね
そして……

シュナイデン・チャクラム・メレンゲ・レンゲ・イヒ・ルーペ、ですか

世界を滅ぼす、オブリビオンとなった、あなたたち
元は、世界の敵という程では、なかったのでしょうけれど……
今は、世界の敵。一人も、逃しません

みんな一緒に……戦いましょう
『フロンティア・ライン』発動

【集団戦術】「ダイウルゴス」を、分離変形
【念動力】で操って【一斉発射】の【範囲攻撃】
そうして
アジトも、大地も「ダイウルゴス」に変えていき
私は取り込まれるよう、隙間なく守られて
【継戦能力】私の光が癒し、竜は止まらない

過去から、今を守る
ここは、文明守護領域、です



 猟兵達の活躍により、敵集団は半数以上が壊滅となった。
 なおも懲りずぞろぞろ湧いた彼らの前に、更なる増援が駆けつける。
「……みんな、ありがとうございます」
 ナイ・デスの視線ははるか後方、沈黙した戦車たちへと注がれる。
 共に嵐を抜けた黒竜の群れ。役目を終えた彼らは無機物へと戻り、戦いの趨勢を見守っている。
「あれがアジト……ボロボロ、ですね」
 目に映る廃墟は戦いの余波を受け、ところどころに崩落の兆しが見える。
 放置すれば遠からず崩れ去るだろうが、悪用されるよりはいいのかもしれない。
 集った徒党へと、ナイは改めて目を向けた。彼らが名乗った組織名を、記憶を辿って復唱する。
「シュナイデン・チャクラム・メレンゲ・レンゲ・イヒ・ルーペ、ですか」
 まさかの一字一句丸暗記。
 類稀なる記憶力だが、こんな所で発揮していいものだろうか。
「ハッハァ! アンタ見かけによらずイカすじゃねぇか。いっそオレ達の仲間に加わったらどうだ、アァ?」
 さも愉快そうに、軽く手を打ち鳴らしてギャングの一人が前に出たが、ナイは誘いを拒むように首を振る。
「世界を滅ぼす、オブリビオンとなった、あなたたち。事情があっても、今は世界の敵……一人も、逃がしません」
「ハッ、そいつァ結構なこった!」
 交渉決裂と見るや、即座に手のひらを返すは悪たる所以か。
 分銅付きの鎖で風を切り、ナイへとにじり寄る悪党の足は、しかし突如響いた声に止められた。
「わぁ、すごい! 嵐の中はこんな風になってるのね!」
 鈴の転がるような声は、誰のものか。
 リオ・ウィンディア(Cementerio Cantante・f24250)。喪に服すような漆黒纏うエルフの少女は、戦場に似つかわしくないはしゃぎっぷりでギャングたちを見る。
「どうしましょ、怖い大人たちがいっぱいいるわ!」
 男たちのなりを見てわざとらしく、頬に手を当て驚く素振り。芝居がかった調子で紡がれる言葉に、ギャングたちは不愉快そうな表情を浮かべた。
「なんだテメェは」
「私? ご覧の通りのオルガン弾きよ」
 首より提げる小箱の中には、折りたたまれた穴あきの紙。巻き取るように台へと備え、手回しオルガンのハンドルを握る。
「まぁまぁ、一曲聞いてきなさい。それとね、お兄さん――Hombre precavido vale por dos.」
「アン? ガキの寝言なんざ聞こえねぇなァ!」
 悠長な声音に惑わされたか、そこで焦れたが運の尽き。
 構わず斬りかかろうとした悪党のナイフが、彼の手元で爆弾のように弾ける。
「いてぇっ……! な、なんだァ!?」
 気づけば、後ろの仲間たちも武器を失いパニックに陥っていた。
 無機物を変化させ操る、ユーベルコード。多くの派生形を持つ力だが、彼女が物を変え操るのは『音』だ。
「あらあら。だから気を付けて、って言ったのに」
 くすくす笑う声すらも今は遠く、音の波の向こう。
「Bienvenidos! ようこそ、私の舞台へ!」
 目を見開く悪党どもの前で、無数の目に見えぬ音の塊が爆ぜた。

   ◇    ◇    ◇

 大気に満ちる、音の嵐。
 不可視の攻撃にギャングたちは逃げ惑うばかり。
 敵が恐慌状態に陥ったのを好機と、ナイもまたその手を掲げる。
「みんな一緒に……戦いましょう」
 天より降らすは、手に持つのと同じダイウルゴスの彫像。
 無尽蔵に募る黒竜は波のようにうねり、辺りの景色を黒竜の体内へと変化させる。
 念動力で操られ、ナイの意のままに波打つ黒竜の内部。
 嘗ての邪悪な帝竜の影はなく、新生ダイウルゴスは過去に属する者だけを蝕む。
「ンだよ、これ……歩きづらいったらありゃしねェ……!」
 時折放たれる黒竜の礫を必死に躱し、悪党どもがナイの方へと押し寄せる。
「竜をバラすぞ、お前は向こうから回り込め! ……何突っ立ってんだ、オイ」
 ギャングの一人が、棒立ちの仲間を揺り動かそうと肩に手をかけた。しかし仲間の体は力なく傾ぎ、うねる黒竜の腹の底へと沈む。
 刃物を一体どのように振るえば、こんな芸当ができたのか。
 彼の喉は深々と抉られ、言葉通りに息の根を止められていた。
「呑気なお馬鹿さん」
 仲間の代わりに笑うのは、先ほどの純黒を纏う少女。
 音の匣にしまってあったダガーを手に、何事もない表情でからりと笑う。
「ねぇ。さっきまで隣にいた人が倒れてるって、どんな気分?」
 艶のある声で呼びかけていても、その心は常人には読めず。
 情に訴えても無駄だろう――彼女は骨しか愛さぬのだから。
「……元は、世界の敵という程では、なかったのでしょうけれど」
 ぎゅっと目を瞑り、ナイは目蓋の裏によぎる思いを打ち払う。
 この世界のオブリビオンの成り立ちを辿れば、嵐の情景が自然と浮かんだ。
 オブリビオン・ストーム。生きとし生けるものを呑む漆黒の嵐は、その全てをオブリビオンと化し現世に帰す。
 元はただの暴徒であったとしても――今は世界の敵ならば。
「過去から、今を守る。ここは文明守護領域、です」
 世界を食む悪意を、道を誤ってしまったものを逃さぬよう。
 群れるダイウルゴスが悪党たちを取り込み、ゆっくり内へと閉じていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『黒き風の聖女『ニグレド』』

POW   :    洗脳演説「黒き風こそが神の意志である!」
【『黒き風の教団』の教義の演説】を披露した指定の全対象に【オブリビオン・ストームを信仰する】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
SPD   :    『黒き風の教団』「信徒達よ、ここに集え!」
戦闘力のない、レベル×1体の【『黒き風の教団』の狂信者達】を召喚する。応援や助言、技能「【言いくるめ】」を使った支援をしてくれる。
WIZ   :    黒風魔術「神の意志に従うのだ!」
【オブリビオン・ストームを模した風の魔術】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠天御鏡・百々です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 アジトの深奥。
 純黒の衣装は、廃墟の暗がりに溶け込むのに相応しい。
 黒き聖女は静かに佇み、訪問者を待ち受けていた。

 やがてキミたちの訪れに気づき、彼女は厳かに歩み出た。
「よくぞ来た。我ら教団の本拠と知って立ち入る蛮勇、褒めて遣わそう……だが」
 手にした錫杖からは風の魔力が迸り、びゅうびゅうと廃墟内を駆け巡る。
「黒き風こそが神の意志! 世界の正しき在り方を前に、汝らはすぐに平伏す事となろうぞ!」
 仰々しく宣告すれば、どこからともなく現れた教団員がシュプレヒコールで続く。
「我ら黒き風の信徒、此処に集いし輩を束ね――」
「シュヴァルツェン! シュヴァルツェン!」
「神の御印のもと戦士となりて――」
「ケンプ! ヒャー! ケル! ヒャー?」
「汝らなど……一撃のもとに……」
「ケー! オー! ケー! オー!」
「そいっ!!」
 荒ぶる風の魔術が騒ぎ立てる信徒十数名をアジトの外へとぽーい。
 ぜーはー、ぜーはー。
 息を切らして顔を赤らめる事数秒、
 一連のやりとりをなかった事にして黒き聖女は続ける。
「とにかくだ!! 汝ら、覚悟せよ!!」

 もう、色々と台無しな気しかしないものの。
 配下をまとめて吹き飛ばした嵐の魔術は、こちらへ放たれれば脅威だ。
 狂信者と化したギャングたちは、
 大規模魔術の行使までの時間稼ぎを喜んで務めるだろう。
 この期に及んでの教義の演説は猟兵には通用せぬとしても、
 配下を焚きつけて強化し、突き動かす力を持つ。

 あり余る暴風の魔力を一所に束ね、
 黒き風の聖女『ニグレド』は不敵な笑みと共に言い放つ。
「さあ信徒たちよ、我が前に出よ!」
「姐御ー! 後ろでばっちり支えるぜヒャッハー!」

 ボスの話聞いてないなコイツら。
リオ・ウィンディア
なんだかちょっとニグレドに同情しちゃう

IMSG:白鳥の歌のセレナード
カウンターテナー参照

【歌唱・楽器演奏】で私の舞台をお披露目

無能信者にセレナードを歌うという狂気じみた行為を【狂気耐性】で耐える

(ニグレドを誘い出すセレナード
彼女のために少しでも華やかでシリアスな舞台になればと
ちょっと応援してやろうと、思ったのだけれども
・・・やめて、そこで掛け声を入れるんじゃない)

これじゃ舞台が台無し
流石に役者魂が傷つくわ
そんな訳でUB発動
影ならあなたに届くはず
質問『このアジトの名前は?』
質問の”音”が聞き取れたらの話だけれども

音の妨害として大ボリュームで楽器演奏
さらに「きーこーえーなーいー」と信者の声を煽る


テラ・ウィンディア
共闘希望
リオ(f24250

リオが頑張ってると聞いて駆け付けたぞ!(キャバリアに乗って

風かー…でもおれはもっと素晴らしい風の使い手を知ってる
そう自慢の姉を

【戦闘知識】
敵の状況と周辺を確認

リオの演奏聞いていたいけど後でお願いしようっ

暴風といったな
このヘカテイアもまた嵐の王の一角だって事を教えてやる!

【属性攻撃】
炎を全身に付与
木生火!
その風も我が力にしてやる!

【見切り・第六感・残像・空中戦】
飛び回りながら回避
【レーザー射撃・遊撃】
ガンドライドでビーム砲撃でギャング達を射撃

UC発動!
【二回攻撃・砲撃・重量攻撃・早業】
超高速で射撃による猛攻から接近して剣と槍による猛攻
そして止めはブラックホールキャノン!



 思い通りにならない配下を抱え、軽く頭を抱える聖女。
 そんな彼女の姿に、リオ・ウィンディアは思わず本音をよせた。
「なんだかちょっとニグレドに同情しちゃう」
 それぞれ向き不向きがあっても、役者は時に望む舞台を選べない。
 自身に照らし合わせてその事を思えば、聖女の立場は恵まれているとは言い難い。
 束の間訪れる、やりづらい気持ち。どう戦おうかと思案するリオの元へ、キャバリアの降り立つ音が届いた。
 重力を操り柔らかに着地する、月輪を背負うしろがねの機体。
 その色にリオは見覚えがあった。
「リオが頑張ってると聞いて駆け付けたぞ!」
「テラ……!」
 中から響くのはリオの姉、テラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)の声。
 愛機・ヘカテイアを操り参戦したテラは、先ほど見えた敵の力を見て「風かー」と通信機越しに呟いた。
「強そうだな……でもおれはもっと素晴らしい風の使い手を知ってる」
 テラが思い浮かべるのはここにはいない、双子の姉の姿。
 ニグレドの禍々しい風と異なり、姉が操るのは見る者の心に活力をもたらす若々しい翠の風だ。
 姉の姿を誇りに思い、テラは堂々と宣言する。
「だからお前には負けないぜ!」
 周囲の状況に対応できるよう、次々と展開されるキャバリアの武装。
 何かあってもテラが守ってくれるだろう――そう信じ、リオもまた手回しオルガンのレバーに手をかけた。
 ゆっくりと奏でる旋律と共に、届けるのは清らかな歌声。
 物悲しげな、波間をたゆたうような低めの声で、リオは小夜曲を紡ぐ。
(「これは、ニグレドを誘い出すセレナード」)
 リオの狂おしいほどに澄んだ歌声は、時に呪いをはらむ。
 その歌声で聖女を呼び出すついでに、少しでも華やかで真剣味を帯びた舞台を添えてやれれば――そう少しばかりのエールを籠めて、歌い始めたのだが。
 ――♪
「イーヤーサッサー! アーイーヤー!」
 なぜか各小節の合間に入るおかしな合いの手に、リオはきゅっと眉根をよせる。
「ソイッ! ソイッ! ソイサッサー!」
(「やめて、そこで掛け声を入れるんじゃない」)
 内心で抗議するも、信徒たちに伝わるはずもなく。
 次第に険しい表情になるリオの心から、応援する気持ちが失せていく。
「リオの演奏聞いていたいけど後でお願いしようっ」
 音楽の解らぬ信者たちへセレナードを歌う虚しさに耐えるリオ。
 様子を横目で見守っていたテラは、その眼を敵へと向ける。
「暴風といったな! このヘカテイアもまた嵐の王の一角だって事を教えてやる!」
 三界神機ヘカテイア。まばゆき色の機体へと、テラは炎の嵐を身に纏う。
「木生火! その風も我が力にしてやる!」
 勢いよく発進した機体は、彼女の言葉すら置き去りにした。
 敵の動きを読み、あるいは直感で。機動力を増した機体は嵐の間を縫うように駆け、攻撃をかわしながら敵へと迫る。
 砲台群より網の目状に張り巡らされるレーザーが、信徒たちを焼く。
 そんな状況下にあっても、信徒たちは謎の合いの手をやめてはいなかった。
「アイサッサー!」
 リオは負けじと歌を紡いでいたが、不毛な戦いに嫌気がさして気が変わる。
(「これじゃ舞台が台無し。流石に役者魂が傷つくわ」)
 歌の代わり、戦場に喚んだのはエルフの森に住まう賢者の影。
 実体のない影なら妨害を越えて届くはずと、聖女へ影の手を差し伸べる。
 放つのはごく簡単な問いだが、リオは意地の悪い笑みを浮かべていた。
「ねえ、このアジトの名前は?」
 くすくすと笑いまじりに、ニグレドへ問う――大音量で、楽器を演奏しながら。
「答えてごらんなさい? 質問の“音”が聞き取れたらの話だけれども」
 質問の言葉自体は届いた。何を簡単なことを、とニグレドの口元が笑う。
 だが彼女が答えを寄越すより先に、リオが煽るように呼びかける。
「なんですって? 声が小さすぎてきーこーえーなーいー」
 あえての不躾な態度。果たして狙い通り、聖女よりも先に信者たちが動く。
「テメェ姐御に向かってなんて態度だゴルァー!」
「オレらの姐御はオレらよりずっと小さくてちんちくりんだけどなぁ、ナメてかかってんじゃねぇぞー!」
「姐御ー! オレらの名付けたイカしたアジトの名前言って下せぇ! ほら、シュクメルリから始まるあの名前っすわー!」
「うるっさーーい!!」
 なんと、問答を繰り広げるうちに時間切れ。
 賢者の影は今の一声を答えとみなし、ニグレドを影の手で縛って苛み始める。
 ここぞというチャンスにテラが操縦桿のボタンを勢いよく押し込んだ。
「あとはおれが……一気に蹴散らしてやるぜ!」
 ごう、と冥界の炎が機体の周りで立ち昇る。新たに宿る炎の力は機体の推進力を強め、槍も剣も音速を超えて振るう事を可能とした。
 嵐のように見舞われる剣戟の風圧に、配下たちがはじけ飛ぶ。
「何だ……何なのだ、汝らのその力は!」
 聖女の目が驚きに見開かれるのも構わず、テラは最後のリミッターを解除する。
「とっておきだ! たっぷり味わえー!」
 もはや、顔をあげて機体の威容を見る事も叶わず。
 極小規模のブラックホールから放たれる重力場が、聖女たちを地に伏せていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アイゼン・グラード
この拠点のレイダー見てて思うのデスがどう見ても嵐への信奉ではなく聖女個人への信奉を行なっている様に思いマス
聖女自身も初手から洗脳を失敗してるポンコツなのではないデショウカ?

まぁそれはそれとして演説で強化されるとレイダーが鬱陶しいデスのでUCを使用し散弾砲の【弾幕】で聖女ごとレイダーの集団に【制圧射撃】を行いマス
また同時に破砕砲やロケット弾の【一斉発射】をその辺に撃ち込み廃墟の【地形破壊】も同時に行いマス
これによりキャバリアの駆動音、発砲音、弾丸の飛翔音、爆発音、廃墟の崩落音などの爆音で演説を掻き消す事が出来るデショウ

…戦闘終わるまでこの廃墟持ちマスかね?


エグゼ・シナバーローズ
あー…苦労してんだな(遠い目)
だが聖女サマ、アンタが脅威なのもオブリビオンなのも間違いない事実
骸の海に還ってもらうぜ!

あんな強力な風に竜巻をぶつけてもどうにかなる気がしねーから、貫くんならどーだ
UCスプライト・ロード発動、風に突入させるなら…電気がいいか
魔力を溜めて威力を底上げした電撃を全力でブチ込む!
共闘できそうな猟兵と一緒なら援護射撃を担当するぞ

ヒャッハー共は聖女サマの話を聞いてないが妨害はちゃんとしてくるだろうな
アイツらにも電気弾か火炎弾撃ってやる、得物を爆発させてやるぜ
戦車をショートさせられたお返しだ

※アドリブ、苦戦描写OK



 ようやっと立ち上がり、膝の埃を掃う黒の聖女。
 彼女を気遣い部下たちが助け起こそうとするが、統率のとれない彼らは次々と群がり、ニグレドを担ぎ上げる始末。
「違う、そうではない……ってかおろせー!!」
「あー……苦労してんだな」
 同情を禁じ得ず、エグゼ・シナバーローズはどこか遠くへと視線をそらす。
 彼とて若年ながらに酸いも甘いも経験した身、聖女の気苦労は十分に察せられた。
「だが聖女サマ、アンタが脅威なのもオブリビオンなのも間違いない事実! 骸の海に還ってもらうぜ!」
 びしっと指をつきつければ、ニグレドは(見えないようスカートの裾を押さえつつ)返事をよこす。
「ほう……咆えるではないか猟兵とやら。だが世界の何たるかを理解せぬ汝らに、すぐにでも神罰は下るであろう」
 ――ここまでのやりとりは、言葉だけならいい感じに締まっていたのだが。
「この拠点のレイダー見てて思うのデスが」
 聖女を担いだままの信徒を見て、アイゼン・グラードはおもむろに口を開く。
「彼らはどう見ても嵐ではなく聖女個人への信奉を行なっている様に思いマス」
 彼の分析通り、拠点に集う彼らはいずれも嵐がどうこうでなく、聖女個人を旗印としているように見えた。
 よってアイゼンの頭脳は、ひとつの答えを導き出す。
「聖女自身も初手から洗脳を失敗してるポンコツなのではないデショウカ?」
 ぴきり、と空気の凍り付く音がした。
 スカートを押さえていた手がわなわなと震え、グーの形に握られる。
「あー……たぶんそれ、言わない方がいいやつ……」
 そうエグゼがフォローするも、すでに遅く。
「汝ら、生かしては返さんぞ……!」
 特大の魔力が迸り、強大な嵐がアジトを飲み込んでいった。

   ◇    ◇    ◇

 吹き荒れる嵐は勢いを増し、攻防一体の壁を形作る。
「図星だったのデスね……まぁそれはそれとして」
 切り裂く嵐の猛威に耐えながら、アイゼンは向こう側の景色をレーダーで捉える。
 嵐の防壁を隔てた先に、ニグレドが信徒の精鋭へと演説を振るい、さらにその力を強めていくのが見えた。
「レイダーの力が強まると鬱陶しいデスので、早めに中断させたいところデスが」
「要はあの壁を突き抜ければいいんだな?」
 アイゼンの声に応えるように、エグゼが銃口を嵐へと向ける。
「あんな強力な風に俺の竜巻ぶつけてもどうにかなる気はしねーが」
 ただの銃ではない。
 彼の握るのは精霊たちの力を束ね、一つ所へ向け撃ち出す銃――いうなれば精霊のみちしるべ。
「……貫くんならどーだ」
 面の真っ向勝負では勝算がなくとも、点でなら。
 限界まで高めた雷の魔力を弾に乗せ、撃鉄を撃ちおろすインパクトで解き放つ。
 目測で読んだ弾道に沿い、雷電がばちりと宙を駆けた。
 瞬時に雷は嵐へと吸い込まれ、見えなくなる――駄目だったか、と思わせた瞬間。
「なっ……何をした!」
 聖女の声に焦りが滲む。
 敵が操っていた筈の嵐に雷鳴がまじり、風向が千々に乱れていく。
 嵐の魔力は次第にニグレドの制御を離れ、やがて何事もなかったように霧散した。
「助かりマス。でハ改めて制圧と行きまショウ」
 機を伺っていたアイゼンが、腕部のショットキャノンより徹甲榴弾を次々と放つ。
 ただの速射ではない。リロードの時間すら惜しむアイゼンは、弾薬室に直接弾を召喚する荒業を身につけていた。
 途切れぬ硝煙と共に放たれる弾は、立ち上がる暇もなく信徒をねじ伏せていく。
「おのれ、負けてはならぬ!」
 そう聖女が声を張り上げるも、意味を成さない。
 何せ散弾だけでなく破砕砲にロケット弾、アイゼンは持てるあらゆる武装を投入しているのだ。
 転げまわる信徒たちには、鼓舞の声など聞く余裕もない。
「随分と派手にやるな!」
 逃げ惑うヒャッハー共へとエグゼが魔力弾を見舞い、援護する。
 ショートさせられた戦車のお返しと火炎弾を放てば、ギャングの手に持つスプレー缶に命中。
 信徒たちは催涙の煙にまかれ、むせ込みながら骸の海へと消えていく。
 ここまで制圧は順調だ。だが、何かがおかしい。
 アイゼンの放つロケット弾は、建物の柱や壁、構造部にも命中し始めていた。
 その意図を、機械じみた音声は静かに語る。
「廃墟の崩落音デモ響かせれば演説ヲ掻き消す事ガ出来るでショウ」
「え……それって」
 ごうん。
 上の階の床がまるごと抜け落ち、エグゼの言わんとした続きは轟音に飲まれた。
 粉塵の収まった後、今更ながらにアイゼンは呟く。
「戦闘終わるまでこの廃墟持ちマスかね?」
「……えー……」
 どこか、遠くで。
 余分な旗のようなものが立つ謎のビジョンが、エグゼの脳裏に浮かんだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ルイーゼ・ゾンマーフェルト
オブリビオンに己の家族、商隊を滅ぼされた自分にとってオブリビオンストームは憎悪の対象。演説を聞いたところで、と思いつつ。
「……圧倒的……逆らえない……神……」
転びそうなところで、信徒らの方を見る。
「……ふん。その教義が真に素晴らしい代物なら、信者が残念なままなのはおかしいだろう!」
指摘して洗脳を打ち破ってみせよう。

駆け回るには狭いだろうが、せっかくバギーごと乗り込んだからには最大火力の主砲を活かしたい。固定砲台になってニグレド目がけ撃ちまくる。といっても爆風有効範囲に味方を巻き込むわけにいかないので、タイミングは調節する。
あとはアサルトライフルで【制圧射撃】して回避行動の阻害も図りたい。


ナイ・デス
この人が
シュナイデン・チャクラム・メレンゲ・レンゲ・イヒ・ルーペ
教団の、ボスですか……!(OP冒頭は知らない、正式名と思っている!)

【念動力】で彫像の塊「ダイウルゴス」動かし戦う
【推力移動】して【重量攻撃】
装甲の隙間から【生命力吸収】する光の【一斉発射】
光剣のように【なぎ払い、切断】

黒き風が、神の意志だというのなら……
私達イェーガー(猟兵)は、世界に選ばれた
世界を、守るもの、です!

世界を、歪に再生はさせない
聖者の光で、対抗
そして……願う

一緒に、戦いましょう

襲われる、守られる世界に力を
大気、大地、世界を一時、竜に
集い、巨大な竜となって
【リミッター解除、範囲攻撃】
特大【レーザー射撃】で、消滅させる



 瓦礫から抜け出した聖女の体を、信徒たちが助け起こす。
「我らが本拠を、随分とかき乱してくれたな」
 静かな怒りのにじむ声。
 地に手をつけば竜巻が吹き荒れ、建物の破片を押しのける。
「……この人が」
 ついに叶った対面。風を操る聖女を前にし、ナイ・デスはごくりと唾をのんだ。
 そのまますう、と息を吸い込み、一息に告げる。
「シュナイデン・チャクラム・メレンゲ・レンゲ・イヒ・ルーペ教団の、ボスですか……!」
 固まる聖女。訪れる沈黙。
 なあ、オレらそんな名前だったか? と信徒たちが顔を見合わせる。
 言ったっけ? 言ったかな。言った気もしますレッドペッパー。
 正式名と信じて疑わぬ少年の声に、ニグレドは後方に控える部下たちを睨んだ。
「汝ら……好き勝手教団名を弄った末がこの始末か……!」
 ころころ変えるんじゃない、と抗議の視線。
「だが、名が変遷しようと我らが教義は変わらぬ。世界の真実であるが故に、な」
 崩れた建物から覗ける空を仰ぎ、聖女は彼方へと視線を飛ばす。
「汝らとて味わった者がいるであろう。黒き風は世界を在るべき姿に作り変え給う、神の意志。それに抗う事自体が、罪なのだ」
 そして聖女の眼差しは、ルイーゼ・ゾンマーフェルト――バギーの傍に立つ彼女へと注がれた。
 ニグレドが如何にして信仰に至ったか、今となっては知る由もない。
 ただ、オブリビオン・ストームに魅入られた聖女の心が、猟兵たちと決して交わらぬのは確かだ。
「万物は流転し、移ろいゆく世界。全ての行きつく先があの嵐なのだ。混沌の世界にあって唯一つ変わらぬもの……それを神と崇めずして、何とする」
 淡々と事実を告げるような演説は、聞く者の精神を苛む。
 ルイーゼの口から、敵側に与してしまったような言葉が漏れ出る。
「圧倒的……逆らえない、神」
 熱に浮かされた目で思い返す、在りし日の惨劇。
 オブリビオンの大群に飲まれ、仲間も――命すらも一度は失った。
 だが、屈しかけた心に違和感が生じ、やがてそれは焔となり燃え上がる。
 崇敬の対象ではない――あれは憎悪すべきものだ。
「……ふん。その教義が真に素晴らしい代物なら、信者が残念なままなのはおかしいだろう!」
 びしぃっ。指先を突きつけ、論破する。
 がーん、と衝撃を受けたように一瞬、聖女が固まった。
「嵐に飲まれても残念おつむが治ってない事、それ自体が神でない証拠だ!」
「なっ……お、おのれ……!」
 聖女が舌戦に負け怯んだ隙に、ルイーゼはバギーの車中へと滑り込んだ。

   ◇    ◇    ◇

 戦場に三度、ダイウルゴスの像が群体を形作る。
「世界を、歪に再生はさせません……一緒に、戦いましょう」
 ナイを中枢として組み合わさる巨竜は、念力によってうねるように躍動する。
 洗脳強化された配下たちが決死で前進を阻むも、黒竜は易々とは止まらない。
 エンジンのように魔力を噴き上げ推力を生み、信徒たちを押しのけていく。
 巨大な質量を活かしての、強引な戦線突破。
 さらに群がる信徒へと光の剣を振るえば、彼らの体は木の葉のように舞った。
 ルイーゼは愛車マイコンを操り、聖女を狙いやすい位置へと移動させる。
「せっかくバギーごと乗り込めたんだ、存分に主砲を見舞ってやろうじゃないか」
 さしもの機動力も屋内では活かせないが、勇ましきバギーにはとっておきがある。
 ジャッキで車両を地面に固定し、手早くメンテナンスを施す。
 狙い撃てるよう方位を固定し、貫通砲弾を充填。
 弾道を読み、味方を巻き込まぬよう着弾点を調整し――そして。
「最大火力、くれてやる……フォイア!」
 砲塔が火を噴き、勢いよく爆ぜた砲弾が爆炎と溶鉄の破片をまき散らしていく。
 ニグレドが鉄の雨に応戦する間にも、ナイの猛攻は止まらない。
 黒竜は新たに彫像を取り込み、巨大な姿へと変貌を遂げていた。
「襲われる、守られる世界に、力を」
 像を取り込むほどに念力は強まり、手の付けられない魔力の塊と化していく。
「これ以上、好きになどさせぬ……!」
 ニグレドが風の魔術で切り裂こうとするも、群体の強化は止まらない。
 集い膨れ上がる竜たちはもはや、ナイの姿を完全に覆い尽くしていた。
「……黒き風が、神の意志だというのなら」
 竜の喉元に、黒の光が宿る。
 それが強大なブレスの前触れである事は明白だった。
 直撃だけでも避けようと、聖女が竜巻で逸らそうとする――が。
「させるか!」
 ルイーゼが撃ち込むライフルの弾が、聖女の脇腹を貫いた。
 黒竜の元に集う光は周囲の色を飲み込み、黒々とした輝きを強めていく。
「私達イェーガーは、世界に選ばれた、世界を守るもの、です!」
 戦場を一気に、駆け抜けるように。特大のブレスが、聖女の胴を貫いた。

   ◇    ◇    ◇

 光に貫かれた姿勢のまま。
 聖女はよたよたと数歩歩き、そこで止まった。
「まだ……届かぬ、か……」
 言の葉の終えるのも待たず、胸に空いた風穴から突如魔力の嵐が噴き出した。
 嵐は次第に勢いを増し、聖女と信者たちを包む。
 逃げようとすればギリギリ叶っただろう。
 だが信者たちは嵐の内へ留まり、下卑た、それでいて陽気な声を響かせる。
「へっへへ、おお怖ェ……さすがはオレらが担いだボスだぜェ!」
「姐御ーッ! 地獄の果てまでお供しやすぜ、ヒィハーッ!!」
 信徒たちの体をバキバキと巻き込み、嵐は内へと閉じていく。
「この……大バカ者共が……!」
 始末に負えぬ部下の断末魔に僅か、聖女が手を伸ばすのが見えた。
 それが、黒き風の教団――シュヴァルツェン某の最期だった。

 かくしてこの地に訪れた危機は去った。
 だが、キミたちの手が休まる事はない。

 荒野の果てに、砂竜巻が上がるのが見えた。
 自然現象か、新たな戦乱の幕開けか――自分たちで確かめるほかないだろう。
 グリモアベースでは今も、キミたちの帰還を待つ者がいる。
 キミたちを必要とする者が、待っている――だから。

 行け、六番目の猟兵達よ。
 嵐を越え、まだ見ぬ地平へ――!


 ……ところで、キミらが立ってるその地面。
 今から10秒後に抜けるからソッコー退避な!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年01月25日
宿敵 『黒き風の聖女『ニグレド』』 を撃破!


挿絵イラスト