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黒き風のセレナード(作者 晴海悠
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#アポカリプスヘル 


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#アポカリプスヘル


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●拝啓黒の聖女様、シリアスできない配下押し付けてごめんなさい
 天は吹き荒れ、地は叫ぶ。
 積み上げた安寧も、嵐吹かば瞬く間に塵と化す。
 ここはアポカリプスヘル。
 非情な嵐に支配された、泣く子も黙る荒廃世界である。

「かーっ! 姉御っべーっすわ! マジリスペクト」
 そんな世界の片隅にある、やたらと騒がしい野盗たちのアジトで。

「要塞嵐で囲うとかパネェーッ! ところでオレらどうやって出るんスか」
 眉間に皺寄せる黒き風の聖女・ニグレドの顔には、こう書いてあった。

 ――配下にするヤツ間違えたな、と。

 そもそもは。
 彼女は揺るがぬ教義を打ち立てたかっただけなのだ。
 世界を飲み込むオブリビオン・ストームを「神の意志」と仰ぐニグレドは、
 嵐の威光を知らしめるべく信徒を募った。
 破壊といびつな再生をもたらす黒き嵐。
 それを象徴とする教義はわかりやすく、オブリビオンの関心を集めた。

 ――惜しむらくは。
 彼らのお脳が、神の何たるかを理解するのに不足していた事、である。

「姉御の団にするならやっぱカッケー名前じゃねーとよ!」
 黒き風の教団改め『シュヴァルツェン・シュトルム』は瞬く間に信徒を集め。
「どーせなら派手にアジトとか作ってやんよ!」
 途中『シュヴァルツェン・シュトルム・ゲボイデ・ボイデ』と名を変えつつ、
 嵐のとりまく要塞を築き上げ、荒野に牙城を打ち立てる。
「やっぱ愛だよ、愛!」
 こうして『シュヴァルツェン・シュトルム・ゲボイデ・ボイデ・イッヒ・リーベ』は、
 配下のオブリビオンと言えども簡単に出られないかわり、
 不落の要塞を築いた――長いなしかし!!

 嵐吹かせる理由は防衛というよりはむしろ、
『外に出さない』事も目的に含めてるんではないかと勘繰るレベルであった。
 いやだってコイツら、間違った教義広めそうだし。

「姉御ォ! そろそろ腹も減ったしヨォ、略奪とかいかねっスか」
「オレわさピーとビールとペロペロキャンディーほしいっス」
「ついでに人とかバンバン攫ってくるぜェ! 嵐潜れんのかなオレら、あーつれ」
 日夜どんちゃん騒ぎの砦の、中枢部で。

「――もう、帰っていいか」
 聖女ニグレドはこっそり、涙目でつぶやいた。

●作戦名『戦車でボンババボン』
 その日、グリモアベースを訪れた猟兵たちを出迎えたのは一羽のツバメだった。
「ハイ! ハイ! 皆さん、どーんとお仕事ですよっ!」
 やたらとテンションの高いツバメの仔はグリモアを掲げ、シュワルベ・ポストボーテ(f30877)と名乗った。
「短くシュワちゃんでもいいのですよっ!」という言は聞き流していいだろう。

「今回はですねっ、アポカリプスヘルで野盗のアジトをぶっ潰してほしいのですねっ」
 件の野盗――レイダーたちは、荒野のど真ん中に拠点を構えている。
 大胆なことにアジト全体を魔術の嵐で覆い、身を裂く嵐は外部からの侵入を阻む。
 そしてひとたび内部へ入れば、敵は手厚くこちらを歓迎するだろう。
「配下の悪いヒトたちは数の暴力でドーンってしてくるのですっ!」
 廃墟を改造したアジトの為、屋内での戦いとなる。
 数の多さが厄介なものの、遮蔽物を利用して数の利を潰す事もできるだろう。

「この盗賊団のボスは女のヒトなのですねっ。ものすごく強い風魔術を操るヒトで、黒き風の聖女ニグレド、って名乗ってたですよっ」
 アジト全体を覆う嵐の防壁を築くほどだ。
 オブリビオンとしての脅威度は侮れない。
 このまま放置すれば信奉者はますます増え、決して無視できない勢力となる。
 悪の芽は早期に摘むべし――現時点で見つかったのは幸いと言える。

 敵のおおまかな情報は分かったが、問題はいかにアジトへ突入するかだ。
 その問いに、シュワルベはふぁさり、と翼を広げてアッピール☆してみせる。
「ワタシ、この目で見ましたのですよっ! 荒野に戦車が乗り捨ててあったのですっ」
 ――戦・車、とは。
「ふるーい時代の戦車ですねっ、スクラップですけどなんやかんや使えるモノも出てくるはずなのですっ」
 そのなんやかんやを考えるの、俺らかよ……と猟兵の一人が遠い目をした。
 正直、作戦としては思いつきレベルだが、
 生身で越えられない嵐を突破する手段としてはアリだろう。

 動く車体をいかにして確保するかは、各自に委ねられた。
 自前の機体もよし、修理技術を振るうもよし。
 手あたり次第動くものを発掘するのも良いだろう。
 生身で越える事は正直、オススメはしないが、
 よほど運と体力に自信があれば賭けるのは止めない、とツバメは語った。

 依頼のあらましを語り終えたツバメは、翼の下からグリモアをちらつかせた。
 転送の光が溢れ、集った猟兵たちを包み込む。
「世界の再建って大変ですけどねっ、事件をコツコツ解決していくのが一番の近道なのですよっ。地道にコツコツ、ドーン☆なのですよっ!」
 最後のそれは、地道の部類に入るのか――。
 そんな疑問を残しながら、グリモアの道は開かれた。





第3章 ボス戦 『黒き風の聖女『ニグレド』』

POW ●洗脳演説「黒き風こそが神の意志である!」
【『黒き風の教団』の教義の演説】を披露した指定の全対象に【オブリビオン・ストームを信仰する】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
SPD ●『黒き風の教団』「信徒達よ、ここに集え!」
戦闘力のない、レベル×1体の【『黒き風の教団』の狂信者達】を召喚する。応援や助言、技能「【言いくるめ】」を使った支援をしてくれる。
WIZ ●黒風魔術「神の意志に従うのだ!」
【オブリビオン・ストームを模した風の魔術】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠天御鏡・百々です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 アジトの深奥。
 純黒の衣装は、廃墟の暗がりに溶け込むのに相応しい。
 黒き聖女は静かに佇み、訪問者を待ち受けていた。

 やがてキミたちの訪れに気づき、彼女は厳かに歩み出た。
「よくぞ来た。我ら教団の本拠と知って立ち入る蛮勇、褒めて遣わそう……だが」
 手にした錫杖からは風の魔力が迸り、びゅうびゅうと廃墟内を駆け巡る。
「黒き風こそが神の意志! 世界の正しき在り方を前に、汝らはすぐに平伏す事となろうぞ!」
 仰々しく宣告すれば、どこからともなく現れた教団員がシュプレヒコールで続く。
「我ら黒き風の信徒、此処に集いし輩を束ね――」
「シュヴァルツェン! シュヴァルツェン!」
「神の御印のもと戦士となりて――」
「ケンプ! ヒャー! ケル! ヒャー?」
「汝らなど……一撃のもとに……」
「ケー! オー! ケー! オー!」
「そいっ!!」
 荒ぶる風の魔術が騒ぎ立てる信徒十数名をアジトの外へとぽーい。
 ぜーはー、ぜーはー。
 息を切らして顔を赤らめる事数秒、
 一連のやりとりをなかった事にして黒き聖女は続ける。
「とにかくだ!! 汝ら、覚悟せよ!!」

 もう、色々と台無しな気しかしないものの。
 配下をまとめて吹き飛ばした嵐の魔術は、こちらへ放たれれば脅威だ。
 狂信者と化したギャングたちは、
 大規模魔術の行使までの時間稼ぎを喜んで務めるだろう。
 この期に及んでの教義の演説は猟兵には通用せぬとしても、
 配下を焚きつけて強化し、突き動かす力を持つ。

 あり余る暴風の魔力を一所に束ね、
 黒き風の聖女『ニグレド』は不敵な笑みと共に言い放つ。
「さあ信徒たちよ、我が前に出よ!」
「姐御ー! 後ろでばっちり支えるぜヒャッハー!」

 ボスの話聞いてないなコイツら。
リオ・ウィンディア
なんだかちょっとニグレドに同情しちゃう

IMSG:白鳥の歌のセレナード
カウンターテナー参照

【歌唱・楽器演奏】で私の舞台をお披露目

無能信者にセレナードを歌うという狂気じみた行為を【狂気耐性】で耐える

(ニグレドを誘い出すセレナード
彼女のために少しでも華やかでシリアスな舞台になればと
ちょっと応援してやろうと、思ったのだけれども
・・・やめて、そこで掛け声を入れるんじゃない)

これじゃ舞台が台無し
流石に役者魂が傷つくわ
そんな訳でUB発動
影ならあなたに届くはず
質問『このアジトの名前は?』
質問の”音”が聞き取れたらの話だけれども

音の妨害として大ボリュームで楽器演奏
さらに「きーこーえーなーいー」と信者の声を煽る


テラ・ウィンディア
共闘希望
リオ(f24250

リオが頑張ってると聞いて駆け付けたぞ!(キャバリアに乗って

風かー…でもおれはもっと素晴らしい風の使い手を知ってる
そう自慢の姉を

【戦闘知識】
敵の状況と周辺を確認

リオの演奏聞いていたいけど後でお願いしようっ

暴風といったな
このヘカテイアもまた嵐の王の一角だって事を教えてやる!

【属性攻撃】
炎を全身に付与
木生火!
その風も我が力にしてやる!

【見切り・第六感・残像・空中戦】
飛び回りながら回避
【レーザー射撃・遊撃】
ガンドライドでビーム砲撃でギャング達を射撃

UC発動!
【二回攻撃・砲撃・重量攻撃・早業】
超高速で射撃による猛攻から接近して剣と槍による猛攻
そして止めはブラックホールキャノン!


 思い通りにならない配下を抱え、軽く頭を抱える聖女。
 そんな彼女の姿に、リオ・ウィンディアは思わず本音をよせた。
「なんだかちょっとニグレドに同情しちゃう」
 それぞれ向き不向きがあっても、役者は時に望む舞台を選べない。
 自身に照らし合わせてその事を思えば、聖女の立場は恵まれているとは言い難い。
 束の間訪れる、やりづらい気持ち。どう戦おうかと思案するリオの元へ、キャバリアの降り立つ音が届いた。
 重力を操り柔らかに着地する、月輪を背負うしろがねの機体。
 その色にリオは見覚えがあった。
「リオが頑張ってると聞いて駆け付けたぞ!」
「テラ……!」
 中から響くのはリオの姉、テラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)の声。
 愛機・ヘカテイアを操り参戦したテラは、先ほど見えた敵の力を見て「風かー」と通信機越しに呟いた。
「強そうだな……でもおれはもっと素晴らしい風の使い手を知ってる」
 テラが思い浮かべるのはここにはいない、双子の姉の姿。
 ニグレドの禍々しい風と異なり、姉が操るのは見る者の心に活力をもたらす若々しい翠の風だ。
 姉の姿を誇りに思い、テラは堂々と宣言する。
「だからお前には負けないぜ!」
 周囲の状況に対応できるよう、次々と展開されるキャバリアの武装。
 何かあってもテラが守ってくれるだろう――そう信じ、リオもまた手回しオルガンのレバーに手をかけた。
 ゆっくりと奏でる旋律と共に、届けるのは清らかな歌声。
 物悲しげな、波間をたゆたうような低めの声で、リオは小夜曲を紡ぐ。
(「これは、ニグレドを誘い出すセレナード」)
 リオの狂おしいほどに澄んだ歌声は、時に呪いをはらむ。
 その歌声で聖女を呼び出すついでに、少しでも華やかで真剣味を帯びた舞台を添えてやれれば――そう少しばかりのエールを籠めて、歌い始めたのだが。
 ――♪
「イーヤーサッサー! アーイーヤー!」
 なぜか各小節の合間に入るおかしな合いの手に、リオはきゅっと眉根をよせる。
「ソイッ! ソイッ! ソイサッサー!」
(「やめて、そこで掛け声を入れるんじゃない」)
 内心で抗議するも、信徒たちに伝わるはずもなく。
 次第に険しい表情になるリオの心から、応援する気持ちが失せていく。
「リオの演奏聞いていたいけど後でお願いしようっ」
 音楽の解らぬ信者たちへセレナードを歌う虚しさに耐えるリオ。
 様子を横目で見守っていたテラは、その眼を敵へと向ける。
「暴風といったな! このヘカテイアもまた嵐の王の一角だって事を教えてやる!」
 三界神機ヘカテイア。まばゆき色の機体へと、テラは炎の嵐を身に纏う。
「木生火! その風も我が力にしてやる!」
 勢いよく発進した機体は、彼女の言葉すら置き去りにした。
 敵の動きを読み、あるいは直感で。機動力を増した機体は嵐の間を縫うように駆け、攻撃をかわしながら敵へと迫る。
 砲台群より網の目状に張り巡らされるレーザーが、信徒たちを焼く。
 そんな状況下にあっても、信徒たちは謎の合いの手をやめてはいなかった。
「アイサッサー!」
 リオは負けじと歌を紡いでいたが、不毛な戦いに嫌気がさして気が変わる。
(「これじゃ舞台が台無し。流石に役者魂が傷つくわ」)
 歌の代わり、戦場に喚んだのはエルフの森に住まう賢者の影。
 実体のない影なら妨害を越えて届くはずと、聖女へ影の手を差し伸べる。
 放つのはごく簡単な問いだが、リオは意地の悪い笑みを浮かべていた。
「ねえ、このアジトの名前は?」
 くすくすと笑いまじりに、ニグレドへ問う――大音量で、楽器を演奏しながら。
「答えてごらんなさい? 質問の“音”が聞き取れたらの話だけれども」
 質問の言葉自体は届いた。何を簡単なことを、とニグレドの口元が笑う。
 だが彼女が答えを寄越すより先に、リオが煽るように呼びかける。
「なんですって? 声が小さすぎてきーこーえーなーいー」
 あえての不躾な態度。果たして狙い通り、聖女よりも先に信者たちが動く。
「テメェ姐御に向かってなんて態度だゴルァー!」
「オレらの姐御はオレらよりずっと小さくてちんちくりんだけどなぁ、ナメてかかってんじゃねぇぞー!」
「姐御ー! オレらの名付けたイカしたアジトの名前言って下せぇ! ほら、シュクメルリから始まるあの名前っすわー!」
「うるっさーーい!!」
 なんと、問答を繰り広げるうちに時間切れ。
 賢者の影は今の一声を答えとみなし、ニグレドを影の手で縛って苛み始める。
 ここぞというチャンスにテラが操縦桿のボタンを勢いよく押し込んだ。
「あとはおれが……一気に蹴散らしてやるぜ!」
 ごう、と冥界の炎が機体の周りで立ち昇る。新たに宿る炎の力は機体の推進力を強め、槍も剣も音速を超えて振るう事を可能とした。
 嵐のように見舞われる剣戟の風圧に、配下たちがはじけ飛ぶ。
「何だ……何なのだ、汝らのその力は!」
 聖女の目が驚きに見開かれるのも構わず、テラは最後のリミッターを解除する。
「とっておきだ! たっぷり味わえー!」
 もはや、顔をあげて機体の威容を見る事も叶わず。
 極小規模のブラックホールから放たれる重力場が、聖女たちを地に伏せていった。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

アイゼン・グラード
この拠点のレイダー見てて思うのデスがどう見ても嵐への信奉ではなく聖女個人への信奉を行なっている様に思いマス
聖女自身も初手から洗脳を失敗してるポンコツなのではないデショウカ?

まぁそれはそれとして演説で強化されるとレイダーが鬱陶しいデスのでUCを使用し散弾砲の【弾幕】で聖女ごとレイダーの集団に【制圧射撃】を行いマス
また同時に破砕砲やロケット弾の【一斉発射】をその辺に撃ち込み廃墟の【地形破壊】も同時に行いマス
これによりキャバリアの駆動音、発砲音、弾丸の飛翔音、爆発音、廃墟の崩落音などの爆音で演説を掻き消す事が出来るデショウ

…戦闘終わるまでこの廃墟持ちマスかね?


エグゼ・シナバーローズ
あー…苦労してんだな(遠い目)
だが聖女サマ、アンタが脅威なのもオブリビオンなのも間違いない事実
骸の海に還ってもらうぜ!

あんな強力な風に竜巻をぶつけてもどうにかなる気がしねーから、貫くんならどーだ
UCスプライト・ロード発動、風に突入させるなら…電気がいいか
魔力を溜めて威力を底上げした電撃を全力でブチ込む!
共闘できそうな猟兵と一緒なら援護射撃を担当するぞ

ヒャッハー共は聖女サマの話を聞いてないが妨害はちゃんとしてくるだろうな
アイツらにも電気弾か火炎弾撃ってやる、得物を爆発させてやるぜ
戦車をショートさせられたお返しだ

※アドリブ、苦戦描写OK


 ようやっと立ち上がり、膝の埃を掃う黒の聖女。
 彼女を気遣い部下たちが助け起こそうとするが、統率のとれない彼らは次々と群がり、ニグレドを担ぎ上げる始末。
「違う、そうではない……ってかおろせー!!」
「あー……苦労してんだな」
 同情を禁じ得ず、エグゼ・シナバーローズはどこか遠くへと視線をそらす。
 彼とて若年ながらに酸いも甘いも経験した身、聖女の気苦労は十分に察せられた。
「だが聖女サマ、アンタが脅威なのもオブリビオンなのも間違いない事実! 骸の海に還ってもらうぜ!」
 びしっと指をつきつければ、ニグレドは(見えないようスカートの裾を押さえつつ)返事をよこす。
「ほう……咆えるではないか猟兵とやら。だが世界の何たるかを理解せぬ汝らに、すぐにでも神罰は下るであろう」
 ――ここまでのやりとりは、言葉だけならいい感じに締まっていたのだが。
「この拠点のレイダー見てて思うのデスが」
 聖女を担いだままの信徒を見て、アイゼン・グラードはおもむろに口を開く。
「彼らはどう見ても嵐ではなく聖女個人への信奉を行なっている様に思いマス」
 彼の分析通り、拠点に集う彼らはいずれも嵐がどうこうでなく、聖女個人を旗印としているように見えた。
 よってアイゼンの頭脳は、ひとつの答えを導き出す。
「聖女自身も初手から洗脳を失敗してるポンコツなのではないデショウカ?」
 ぴきり、と空気の凍り付く音がした。
 スカートを押さえていた手がわなわなと震え、グーの形に握られる。
「あー……たぶんそれ、言わない方がいいやつ……」
 そうエグゼがフォローするも、すでに遅く。
「汝ら、生かしては返さんぞ……!」
 特大の魔力が迸り、強大な嵐がアジトを飲み込んでいった。

   ◇    ◇    ◇

 吹き荒れる嵐は勢いを増し、攻防一体の壁を形作る。
「図星だったのデスね……まぁそれはそれとして」
 切り裂く嵐の猛威に耐えながら、アイゼンは向こう側の景色をレーダーで捉える。
 嵐の防壁を隔てた先に、ニグレドが信徒の精鋭へと演説を振るい、さらにその力を強めていくのが見えた。
「レイダーの力が強まると鬱陶しいデスので、早めに中断させたいところデスが」
「要はあの壁を突き抜ければいいんだな?」
 アイゼンの声に応えるように、エグゼが銃口を嵐へと向ける。
「あんな強力な風に俺の竜巻ぶつけてもどうにかなる気はしねーが」
 ただの銃ではない。
 彼の握るのは精霊たちの力を束ね、一つ所へ向け撃ち出す銃――いうなれば精霊のみちしるべ。
「……貫くんならどーだ」
 面の真っ向勝負では勝算がなくとも、点でなら。
 限界まで高めた雷の魔力を弾に乗せ、撃鉄を撃ちおろすインパクトで解き放つ。
 目測で読んだ弾道に沿い、雷電がばちりと宙を駆けた。
 瞬時に雷は嵐へと吸い込まれ、見えなくなる――駄目だったか、と思わせた瞬間。
「なっ……何をした!」
 聖女の声に焦りが滲む。
 敵が操っていた筈の嵐に雷鳴がまじり、風向が千々に乱れていく。
 嵐の魔力は次第にニグレドの制御を離れ、やがて何事もなかったように霧散した。
「助かりマス。でハ改めて制圧と行きまショウ」
 機を伺っていたアイゼンが、腕部のショットキャノンより徹甲榴弾を次々と放つ。
 ただの速射ではない。リロードの時間すら惜しむアイゼンは、弾薬室に直接弾を召喚する荒業を身につけていた。
 途切れぬ硝煙と共に放たれる弾は、立ち上がる暇もなく信徒をねじ伏せていく。
「おのれ、負けてはならぬ!」
 そう聖女が声を張り上げるも、意味を成さない。
 何せ散弾だけでなく破砕砲にロケット弾、アイゼンは持てるあらゆる武装を投入しているのだ。
 転げまわる信徒たちには、鼓舞の声など聞く余裕もない。
「随分と派手にやるな!」
 逃げ惑うヒャッハー共へとエグゼが魔力弾を見舞い、援護する。
 ショートさせられた戦車のお返しと火炎弾を放てば、ギャングの手に持つスプレー缶に命中。
 信徒たちは催涙の煙にまかれ、むせ込みながら骸の海へと消えていく。
 ここまで制圧は順調だ。だが、何かがおかしい。
 アイゼンの放つロケット弾は、建物の柱や壁、構造部にも命中し始めていた。
 その意図を、機械じみた音声は静かに語る。
「廃墟の崩落音デモ響かせれば演説ヲ掻き消す事ガ出来るでショウ」
「え……それって」
 ごうん。
 上の階の床がまるごと抜け落ち、エグゼの言わんとした続きは轟音に飲まれた。
 粉塵の収まった後、今更ながらにアイゼンは呟く。
「戦闘終わるまでこの廃墟持ちマスかね?」
「……えー……」
 どこか、遠くで。
 余分な旗のようなものが立つ謎のビジョンが、エグゼの脳裏に浮かんだ。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴