銀河帝国攻略戦⑥~厭戦アイドル『荒ヶ重菜依』
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『ヘロドトスの戦い』の結果、銀河皇帝によって封印されていた遺失技術『ワープドライブ』が復活した。
コアマシンへ『ワープドライブ』を——フォースナイト・ミディアのユーベルコードによって——装着した宇宙船は、スペースシップワールド内でのワープが可能となる。
かくて、スペースシップワールドの全戦力を糾合し銀河帝国に対抗する事もできるようになった。
これすなわち、銀河帝国に対抗する伝説の『解放軍』の再来となる。
既に、猟兵達とミディアの呼び掛けを受け、人々は解放軍へ合流するべく、スペースシップワールドの各地で戦いの準備を始めた。
しかし、銀河帝国とて、この状況を黙って見過ごすわけはない。
スペースシップ『ユーノー』。
銀河帝国は、世界中のスペースシップへ浸透していた銀河帝国派の政治家に命じて、解放軍に加わって銀河帝国と戦おうとする世論を弾圧。
反戦集会を開くなどの、人々が解放軍に加わらぬように工作を始めさせていたが、この艦船も例外ではない。
「皆様、どうか戦争などおやめください!」
ユーノーの政治家達は、歳若く清楚な見た目の美少女アイドルを担ぎ出し、連日に渡って戦争反対演説をさせていた。
「あなたが傷ついたら悲しむ人がいます。私たちは日々を懸命に生きる、それだけで良いのです。それこそが私たちの、あなたの戦争です」
荒ヶ重菜依(あらがえ・ない)という芸名のそのアイドルは、一見耳触りの良い言葉ばかりを並べたて、人々の支持を集めていたが。
「遠くで起きている戦争なぞ、解放軍と銀河帝国で勝手に戦わせておけば良いのです」
その対岸の火事とでも言わんばかりの稚拙な論調は、銀河皇帝自身が『ワープドライブ』と同じ効果のユーベルコードを持っている事実を明らかに無視していた。
「いいえ、戦うことそのものが無意味です。いかがでしょう皆様、銀河帝国に恭順しましょう。彼らも恭順した者を無闇に殺したりはしませんでしょう」
それどころか、銀河帝国の恐ろしさすら無視して、同じ船の仲間の命すら危険に晒しそうなこの扇動行為……。
スペースシップワールドの裏切り者という意味でも放ってはおけないだろう。
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「皆様、とうとう戦争ですわ。急いでスペースシップワールドへお出向きくださいませ」
椀種・クルトン(浮き実の憂き身・f00365)が、小さな身体で懸命に呼びかけている。
「皆様へお願いしたいのは、裏切り者による妨害行為の鎮圧ですの」
猟兵達は、『ワープドライブ』を使えるフォースナイトのミディア・スターゲイザーを護衛して現場の宇宙船『ユーノー』へと赴き、開戦ムードを妨害してくる裏切り者を排除して欲しい。
「裏切り者の政治家達は美少女アイドルを擁立して演説を行っていますの。その演説を悉く論破して差し上げれば、聴衆へどちらが正しいか示せるかと存じますわ」
その後は、ミディアを護衛して共にユーノーのコアマシンへワープドライブを装着させ、この宇宙船も解放軍の戦力として合流させる予定だ。
「皆様、どうか悪しき政治家達の野望を打ち砕いて、宇宙船『ユーノー』の人々が解放軍へと加われるように、お力をお貸しくださいませ。よろしくお願いいたします……」
クルトンはぺこりと頭を下げた。
雨都瑣枝
ご覧くださりありがとうございます、雨都です。
※このシナリオは、『戦争シナリオ』です。
1フラグメント(1章)で完結し、『銀河帝国攻略戦』の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●演説対決について
厭戦アイドルの稚拙な演説の粗をついて、けちょんけちょんに言い負かしてあげてください。
ディベート好きな方にお薦めです。
平和を願う感情へ訴えかけるか、損得勘定を計算する理性に働きかけるかはお好みで。
ちなみにアイドルの事務所はもぬけの殻です。銀河帝国軍との繋がりが見つかるかも?
それでは素敵なプレイング楽しみにお待ちいたしております。
第1章 冒険
『⑥裏切者を暴け!』
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POW : 多くの市民の集まるイベントに乗り込み、情熱的な演説等で『解放軍』参加への機運を盛り上げます。
SPD : 銀河帝国派の政治家の事務所などを捜索し、汚職や銀河帝国との内通に関する証拠を見つけ出し、公開します。
WIZ : 反戦集会や公開討論等に乗り込み、銀河帝国の息を受けた反戦派政治家の意見を論破します。
👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
紅葉・智華
※アドリブ、連携歓迎
【方針:SPD】
反吐が出る。帝国軍と敵対したくないがために真実を住民に伝えない……それで死ぬのは恐らく住民も政治家も同じだろうに。
「さて、やるでありますよ」
荒ヶ重菜依とやらの事務所を確認する(【情報収集1,世界知識1,追跡3】)。場合によっては【ハッキング12】を用いて、荒ヶ重菜依ないし荒ヶ重菜依の背後にいる政治家と帝国軍との繋がりを暴きます。
明確なデータを示せば、荒ヶ重菜依の言葉はただの嘘になる。場合によってはワープの証拠映像とかも用意できれば、よさそうでありますが……どうでしょう?
リカルド・マスケラス
SPDで判定
「アイドルと言えば、スキャンダルがつきものっすよね」
「ネタを手に入れるチャンス」とか「荒事のボディーガード代わりになる」とか言って【コミュ力】で芸能記者とか抱き込んで肉体を借り、事務所に忍び込んで証拠を探しまくるっすよ。
これで帝国と内通している事実が掴めれば御の字っすよ。裏でつながってる政治家とか記者さんの知識で確認できれば、更に言うことないっす。
スキャンダルはいいタイミングで公開しておきたいっす
「You know? 荒ヶ重菜依の真実をお見せするっすよ?」
宇宙船の名前とかけたダジャレです。
まー、彼女の意思でやらされていなければ、アイドル本人を擁護するネタも拾いたいとこっすけどね
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宇宙船『ユーノー』。
「反吐が出る。帝国軍と敵対したくないがために真実を住民に伝えない……それで死ぬのは恐らく住民も政治家も同じだろうに」
紅葉・智華(紅眼の射手/妹捜索中・f07893)は、何度言っても言い足りないぐらいの政治家の愚行を嘆き、彼らの見通しの甘さを唾棄していた。
「さて、やるでありますよ」
船内で智華が真っ先に向かったのは、荒ヶ重菜依が所属する芸能事務所。
現役のPCオタクたる智華の情報収集力をもってすれば、事務所の特定及び所在地の割り出しなど造作もない。
一方。
「アイドルと言えば、スキャンダルがつきものっすよね」
リカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)も、智華とは別のアプローチからアイドル事務所への潜入手段を模索していた。
「どうっすか? 特ネタを手に入れるチャンスっすよ」
ヒーローマスクたる種族の利点を活かして、芸能記者に取り憑こうと考えたのである。
「それに多少の危険に巻き込まれてもそこは腐っても猟兵、荒事のボディーガード代わりになるっす」
口八丁な芸能記者をも上回るコミュ力で肉体を借りるリカルド。
智華と共に悠然とアイドル事務所へ忍び込んで、証拠を探した。
「しめしめ……」
閑散とした事務所には、ハッキングしてくれと言わんばかりのパソコンの群れが。
これで、荒ヶ重菜依本人、もしくは荒ヶ重菜依の背後にいる政治家と帝国軍との繋がりを示す証拠が手に入れば万々歳だ。
(「銀河帝国軍が目に見えて危険だという明確なデータを示せば、荒ヶ重菜依の言葉はただの嘘になる」)
まずは、智華が事務所所長のノートパソコンを立ち上げて、いとも簡単にロックを潜り抜ける。
(「場合によってはワープの証拠映像とかも用意できれば、よさそうでありますが……さて、どうでしょう?」)
流石に、銀河皇帝の力によって帝国軍がワープした瞬間などを捉えたカメラは無かったようだが、パソコンの中にはそれに匹敵するぐらいの衝撃的な証拠が残されていた。
銀河帝国軍からの金の流れである。
帝国軍は政治家を通して、菜依の事務所へ破格の報酬を振り込み、プロバガンダとして利用していたのだ。
「これで帝国と内通している事実が掴めたっすね。御の字っすよ」
何せ、政治家としては菜依に仕事を依頼した事実を隠したいだろうが、隠したら隠したでこの多額の報酬は献金疑惑に繋がる。
菜依側とて厭戦演説はあくまで自らの意志で行なっている事にしたいのもあって、この裏金の流れはダイレクトにアイドル生命へ関わってくるだろう。
「スキャンダルはいいタイミングで公開しておきたいっす」
早速リカルドと智華は芸能記者のスマホを借りて、SNSへ接続。
『You know? 荒ヶ重菜依の真実をお見せするっすよ?』
宇宙船の名前とかけたダジャレを織り交ぜつつ、ゴシップ誌の公式アカウントからこの事実を発信するのだった。
大成功
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沢木・助平
■SPD
あーやだやだ。
脳みそ動かすことをやめて自己保身ばっかのオジサンてーのはどうしてこうも嫌気がさすんだろうにゃ~。
こんな連中の助力なんていらねーや…ってぇのもいかないのが猟兵の辛いとこよね。ま、ちょっと我に秘策あり、ってとこっすよ。
という訳で、やってきました政治家さんの会議室~。
国民はやっぱり上の正直な声っつーのが聞きてぇと思うんすよね。
なのでショータイムでは『高機能集音マイク』を呼び出しましょ。
入る前にチョチョっと艦内システムを『先制攻撃』で『ハッキング』、集音がそのまま放送に繋がるようにしとくっすよ。
さ~て、オジサンたち。
銀河帝国の脅威を軽んじてるとこベラベラ喋ってちょうだいな☆
他方。
「あーやだやだ。脳みそ動かすことをやめて自己保身ばっかのオジサンてーのはどうしてこうも嫌気がさすんだろうにゃ~」
沢木・助平(ガジェットラヴァー・f07190)は、ビジネス街の縁(へり)を走る通気ダクトの中を四つん這いで進んでいた。
「こんな連中の助力なんていらねーや……ってぇのもいかないのが猟兵の辛いとこよね」
出っ張っている箇所がしっかり出っ張っているナイスバディの持ち主な為、狭い通気口を通るだけでも一苦労で、愚痴が零れるのも頷ける。
「ま、ちょっと我に秘策あり、ってとこっすよ」
ともあれ、助平は政治家の集まる料亭の軒下へ忍び込み、彼らの会議の様子を盗聴するつもりのようだ。
今回のミッションに最大限効果を発揮するだろうガジェット——高機能集音マイクは、既に召喚してある。
(「国民はやっぱり上の正直な声っつーのが聞きてぇと思うんすよね」)
ここへ辿り着くまでにユーノーの艦内システムをハッキングし、高機能集音マイクで拾った音がそのまま全艦放送に繋がるよう、細工は流々。
(「さ~て、オジサンたち。銀河帝国の脅威を軽んじてるとこベラベラ喋ってちょうだいな☆」)
助平はウキウキと浮き立つ気分で、マイクのスイッチを押した。
大成功
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イヴ・シュプリーム
WIZ
【心境】
反戦演説……面白そうね……
あのお嬢さんの口からどんな言葉が出るか……少し聞かせて貰うわ……
素敵な演説だったら……拍手しないとね……?
【戦術】
聴衆に紛れながら、UC【囚ワレル心身】を使用。【範囲攻撃】で荒ヶ重菜依とスタッフの精神を強制的に制御します。そして彼女に、銀河帝国がワープドライブや大型破壊兵器を持っていることを聴衆に暴露させます。
また、銀河帝国が世界を破壊することも厭わないと示させ、滅びを避けるためには戦うしかない、と集会を真逆の方向に誘導させ、スタッフにも演説の邪魔をしないよう精神操作を行います。
……【催眠術】……? 違うわ……もう少し高度な『魔法』よ……
※アドリブ等歓迎
シル・ウィンディア
【Wiz】
そだね
日々を当たり前に生きる、それってほんと大切なことだよね。
でもね?
銀河帝国は、その当たり前の、「生きること」を脅かしてくるの。
銀河帝国に恭順すると、命を脅かされながら生きていくことになるよ?
それを防ぐために、今、わたしたち、解放軍は戦うの。
アイドルさんには
対岸の火事っていうと、本当にそうかもね?
でも、火はすぐに燃え移るよ?
帝国は、対岸なんて飛び越えてすぐに来るからね。
そう、ワープして、もしかしたら、あなたの横に来るかもしれない。
それでも、あなたはそういえるの?
あなたの大切な人を傷つけるかもしれない。
それでもいいの?
それなら、わたしは止めないよ。
ちょっとだけ突き放してみるよ
キサラギ・カプチーノ
うーん、わたしは議論はそんなに得意じゃないんだよね〜。論破はほかの猟兵さんにおまかせするとして、何かできること…そうだ!!アイドル、実は結構やってみたかったし…歌や踊りで、船のみなさんの戦意を上げていきたいな!
そのためには、向こうのアイドルより魅力的にならなきゃ…うーん、UCを発動して、身体能力をがっつり高めるよ!(もぐもぐ)狐パワーキレッキレのダンスで、向こうのアイドルより視線を集めちゃうんだから!
そしてみんなの注目が集まったら、誰にも支配されないで、自由に生きることのすばらしさを伝えたいな!
マスター・カオス
フハハハハ…我が名は、グランドフォースに導かれし、秘密結社オリュンポスが大幹部、マスター・カオス!!
◆POW
フハハハハ…愚かなり!
数とはそれだけで「力」足り得るものだ!
無抵抗の豚ほど征しやすいものはない!!
銀河帝国の無抵抗の民への数々の所業を見れば、吐けぬ妄言だな…集まったところを効率よく一網打尽だ。
それとも…帝国との取引でもあるのかね?
カオスは、アイドルや政治家に猜疑心を与えながら言いくるめ「法螺吹キハ全知全能」を用いて彼について行けば無敵だ感を演出しながら、民衆を扇動、鼓舞します。
さぁ、グランドフォースの導きと共に、我らについて来るがいい!!
河原崎・修羅雪姫
POW
多くの市民の集まるイベントに乗り込み、情熱的な演説等で『解放軍』参加への機運を盛り上げます。
「銀河帝国の圧制をひっくり返す音……。それはMUSIC(ミュージック)!」
ヘビーメタルの重低音ギグで、市民のハートをHOTにする。
【楽器演奏14】【誘惑14】【鼓舞15】で、
全世界サイボーグ連盟の戦旗をバックに、
熱く、情熱的にシャウトし、演奏し、観衆を魅惑して、菜依の妄言を喝破する。
UCはヘビーメタル・シャウト。
【エレキギターの旋律】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強させ、
平凡な一般市民たちを、勇敢なる反逆者へと変貌させる。
「許すな帝国の圧制! つかみ取れ銀河の自由! 銀河皇帝を倒せ!!」
マディソン・マクナマス
【POW使用】
俺ぁ会場に『お前ロードキル』『飲酒運転』『よろしくおねがいします』の幟旗が威圧的な暴走宇宙ハーレーで乗り込んで、壇上に上がって言いてぇ事だけ言わせて貰う。
俺は傭兵だし、この船の人間でもねぇ。この船が沈んだって何も困りはしねぇんだ。
けどな、俺達は戦ってる。愛とか平和なんかの為じゃない、どっかのお偉い政治家の為でもねぇ。
今戦わねぇといけねぇからだ。
今銀河帝国を叩かなきゃ、もう奴らを止めるタイミングはねぇ。今日連中があんたらに平和を約束しようと、明日反故にされた時、それを止める奴はいなくなる。
「お前らがそれでいいなら構わねぇ」と言えねぇお人よし共が、今お前らの代わりに戦ってんだ……!
河南・聖
【WIZ】
※アドリブ可
(スマホを見つつ)ふんふん、まぁいつの世も政治家を動かすのはお金って事ですか。ま、そうですよねー。
……さて、乗り込みますか。
「異議あり!」
「皆さん、ついこの間まで起きていた出来事を知らないとは言わせませんよ!」
「帝国は毎回、いきなり目の前に現れては戦闘能力の有無を問わず襲撃を繰り返してきたじゃないですか!犠牲者だってたくさん出ていたはずです!」
「それを今更帝国に恭順すれば無闇に殺したりはしない?今まで散々無闇に殺されてきたのに?」
「更にはこの記事です!(スマホ見せつつ)政治家経由で芸能事務所に大金が流れている証拠が既に見つかっています!」
後は……うん、何かノリと勢いで!
涼風・穹
【内心】
……ま、銀河帝国がオブリビオンでさえなければユーベルコードは無いだろうし目的が銀河の征服辺りだとすればアイドルさんの言葉にも一理あったかもしれないけどな…
【行動】
アイドルに反論を試みる
但し、アイドル本人を含めた聴衆に疑問を持たせて自分の頭で考えるようになってくれればそれで良いので無理に論破まではしない
……本当に状況を理解して総意として銀河帝国に従うというのなら俺が何か言うような事でもないしな…
今までにも銀河帝国に傷付けられてきた方は多いのに悲しむ方はいなかったのか?
遠くの戦争というけど、銀河帝国が勝ったなら次に狙われる危険性は?
恭順するにしても、殺されないとしても搾取はされる可能性は?
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さて、荒ヶ重菜依と直接対決すべく、彼女が演説を続けている区域へやってきたのは河原崎・修羅雪姫(スノーブラッド・f00298)。
「私は半人半機のメタルモンスター! 心臓はビス止めで、クロームの3重構造で出来ている!」
全世界サイボーグ連盟の戦旗をバックに靡かせ、ギュィィィンとエレキギターを掻き鳴らすその様は、紛うことなきヘビメタの女王である。
胸も尻も大きく、全体的に筋肉質な修羅雪姫の圧倒的な存在感に、付け焼き刃のゆるふわ系清楚美少女な菜依が叶う筈もない。
「銀河帝国の圧制をひっくり返す音……。それはMUSIC(ミュージック)!」
修羅雪姫は自らが得意とするヘビーメタルの重低音ギグを引っさげて、市民のハートを文字通りHOTにして、彼らを鼓舞して解放軍入りを促す計算らしい。
「許すな帝国の圧制! つかみ取れ銀河の自由! 銀河皇帝を倒せ!!」
熱く情熱的にシャウトして、圧倒的な技量が観衆を魅了する演奏を響かせ、菜依の妄言を間接的にも喝破する修羅雪姫。
「うおぉおおぉッ!!」
「そうだ! 皇帝は許されざる圧制者だ!」
「俺たちも戦おう!」
エレキギターの旋律、そして修羅雪姫の生の言葉に共感した観衆が、熱狂する。
宇宙船『ユーノー』解放の暁には、彼らもきっと勇敢なる反逆者として猟兵と共に立ち上がってくれる事だろう。
同じ頃。
「うーん、わたしは議論はそんなに得意じゃないんだよね〜」
キサラギ・カプチーノ(狐のおまわりさん・f04129)も、何か皆の役に立てればと意気込んで、菜依の演壇広場を訪れていた。
「論破はほかの猟兵さんにおまかせするとして、何かできること……そうだ!!」
ぽんと両の手を叩いて、我ながら良い思いつきに顔を綻ばせるキサラギ。
「アイドル、実は結構やってみたかったし……歌や踊りで、船のみなさんの戦意を上げていきたいな!」
キサラギの年齢より若く見られそうな愛らしいルックスをもってすれば、確かに菜依へも充分対抗できるだろう。
(「そのためには、向こうのアイドルより魅力的にならなきゃ……」)
だが、念には念を入れて、キサラギは張り込み用のあんぱんをもぐもぐと頬張る。
(「狐パワーキレッキレのダンスで、向こうのアイドルより視線を集めちゃうんだから!」)
そして妖狐の野生の感覚を研ぎ澄まし、誰もが見惚れるようなダンスを披露した。
「みんな、恭順なんてやめようよ! 誰にも支配されないで、自由に生きることは何よりすばらしくて尊いことだよ!」
キサラギのキレッキレダンス自体が自由な発想から生まれたステップであるだけに、彼女の説得力ある訴えもきっと観衆の心へ届くに違いない。
ヘビメタと妖狐ダンスが観衆の興味を菜依から華麗に奪い去る最中。
「そだね。日々を当たり前に生きる、それってほんと大切なことだよね」
シル・ウィンディア(光刃の精霊術士・f03964)は、菜依の演説へ一定の理解を示しながらも、理詰めでの対抗を試みる。
「でもね? 銀河帝国は、その当たり前の『生きること』を脅かしてくるの」
年端もいかない女の子に命の危機がもうそこまで迫っているのだとはっきり断言されて、不安を煽られる観衆。
「銀河帝国に恭順すると、命を脅かされながら生きていくことになるよ?」
お先真っ暗な未来をさも当然のように言い切られれば、今まで菜依の甘言しか聞かされていなかった観衆がどよめく。
「それを防ぐために、今、わたしたち、解放軍は戦うの」
シルは簡潔な抵抗宣言で観衆の心を掴むと、次は壇上の菜依へ向き直った。
「対岸の火事っていうと、本当にそうかもね? でも、火はすぐに燃え移るよ?」
シルの丸く澄んだ瞳が、普段は見せない怜悧な光を放つ。
「……帝国は、対岸なんて飛び越えてすぐに来るからね」
「えぇっ!?」
「そう、ワープして、もしかしたら、あなたの横に来るかもしれない。それでも、あなたはそういえるの?」
真実を突きつけられて、戸惑う菜依。
反論された時の対応を事務所から教えられていなかった可能性が高い。
「あなたの大切な人を傷つけるかもしれない。
それでもいいの? それなら、わたしは止めないよ」
シル曰く、過酷な現実を教えるべくちょっとだけ突き放してみるとの事だが、
「何もせずに殺されるなんて嫌だ!」
「ビクビクしながら暮らして何が恭順だ!」
「俺は解放軍に入って戦うぞ!」
菜依を論破してみせたその弁舌は、聴いていた観衆の心をがっちりと掴んだ。
一方。
ブボボボボボボ……!!
爆音を立てつつ演壇広場へ大型バイクで乗りつけたのは、マディソン・マクナマス(アイリッシュソルジャー・f05244)。
何せ、『お前ロードキル』『飲酒運転』『よろしくおねがいします』の威圧的な幟旗を風に靡かせて、暴走宇宙大型バイクを駆ってきたのだ。
そのグラサンがよく似合う人相の悪さといい、堂々と壇上に上がったマディソンを恐れて誰も止めようとしない辺り、彼の作戦勝ちといえよう。
「俺は傭兵だし、この船の人間でもねぇ。この船が沈んだって何も困りはしねぇんだ」
酒焼けでしゃがれた声が区画全体へ響く。
「けどな、俺達は戦ってる。愛とか平和なんかの為じゃない、どっかのお偉い政治家の為でもねぇ。今戦わねぇといけねぇからだ」
マディソンの言い分は、戦いに生き残る以上の意味を求めない彼なればこそ、含蓄が宿る。
「今銀河帝国を叩かなきゃ、もう奴らを止めるタイミングはねぇ。今日連中があんたらに平和を約束しようと、明日反故にされた時、それを止める奴はいなくなる」
数多の戦場を渡り歩いたという戦場傭兵の飾らない言葉が、観衆全員の胸へと迫る。
「『お前らがそれでいいなら構わねぇ』と言えねぇお人よし共が、今お前らの代わりに戦ってんだ……!」
マディソンがそう猟兵の働きを代弁した時、菜依の演壇を含んだ居住区画は、割れんばかりの歓声に包まれた。
「銀河帝国は放っちゃおけない!」
「俺たちも解放軍に合流すべきだ!」
マディソンの熱い主張が観衆の気持ちを解放軍参加へと駆り立てたのだ。
他方。
「ふんふん、まぁいつの世も政治家を動かすのはお金って事ですか。ま、そうですよねー」
河南・聖(ペガサスナイト・f00831)は、スマホを操作しつつ菜依の演壇へと向かっていた。
「さて、乗り込みますか」
元よりコミュ力が高いのに加えて楽観的な性格も幸いしてか、菜依の演壇へ近づく聖の足取りは軽い。
「異議あり!」
律儀に挙手しての第一声は、澱んだ空気へよく響いた。
「皆さん、ついこの間まで起きていた出来事を知らないとは言わせませんよ!」
観衆の注目が集まっているのをその身に感じながら、必死に言葉を紡ぐ聖。
「帝国は毎回、いきなり目の前に現れては戦闘能力の有無を問わず襲撃を繰り返してきたじゃないですか! 犠牲者だってたくさん出ていたはずです!」
何より痛いところを突かれて、観衆がハッと我に返る。
「確かにウチの実家もこの前、襲撃に遭った……」
「……この前、手伝いにいった専務の奥様のお葬式で聞いたんだけど、やっぱり帝国の被害だって……」
大衆心理に呑まれて菜依の演説へ迎合していただけの人々が、それぞれの抱える心の痛みや恐怖心を吐露し始めたのだ。
「それを今更帝国に恭順すれば無闇に殺したりはしない? 今まで散々無闇に殺されてきたのに?」
明らかな動揺を看て取り、聖はここぞとばかりに畳み掛ける。
「更にはこの記事です! 政治家経由で芸能事務所に大金が流れている証拠が既に見つかっています!」
バッと聖が掲げたスマホの画面には、
『You know? 荒ヶ重菜依の真実をお見せするっすよ?』
リカルドと智華の集めた裏金の証拠が、既に大手ニュースサイトのまとめ記事となって表示されていた。
「嘘……! 大金貰って帝国派の政治家に都合の良い内容言わされていたの?」
「そんな人信用できる訳ないわ!」
かくて、聖やリカルド、智華の目論見通りに、観衆は菜依への不信感を爆発させた。
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「ハハハハ……我が名は、グランドフォースに導かれし、秘密結社オリュンポスが大幹部、マスター・カオス!!」
マスター・カオス(秘密結社オリュンポスの大幹部・f00535)は、相変わらず威風堂々たる佇まいで演壇へと上がってみせた。
「フハハハハ……愚かなり! 数とはそれだけで『力』足り得るものだ! 無抵抗の豚ほど征しやすいものはない!!」
カオスは、いかにも悪者といった風情で菜依の所業を嘲ってみせたが、そもそも彼自身悪の幹部なだけに何の問題も無い。
「戦うことが無意味だと……? 銀河帝国の無抵抗の民への数々の所業を見れば、吐けぬ妄言だな……こうして集まったところを効率よく一網打尽にされるのは自明の理といえよう」
また、悪に徹しながらも菜依の論理の穴を突いて観衆へ猜疑心を与える辺りに、カオスの秘めたる良心が伺えた。
「それとも……帝国との取引でもあるのかね?」
「…………」
詰め寄られた菜依が、否定も肯定もせずに目を逸らした瞬間。
『……いやぁ、銀河帝国軍というのは金持ちなんですなぁ』
『ここの勘定は高くつきますぞ? 大丈夫ですかな?』
『平気平気。あの新人アイドルの事務所に手間賃を出しても余りある、潤沢な資金をいただいておりますからな。毎日でも皆様をお招きできますよ』
突如、謎の放送が居住区のみならずユーノー全域に響き渡った。
『それは良い。次の選挙では我々のグループが米崎先生を全面的にバックアップいたしましょうぞ』
『おっと、支援なら我が社も助力を惜しみませんとも』
それは、助平が高級料亭の下で盗み聞いた政治家たちの会合の模様。
「フッ……沢木か……」
部下の働きと気づいてほくそ笑むカオス。
「さっきのニュース記事の通りだ!!」
「菜依ちゃん、政治家からお金貰ってたのね! 酷い!」
「アイドルをお金で従わせる政治家も最低!!」
観衆が事態を正しく把握したのを機に、カオスは謎のフォースの力で全知全能の存在に変身。
「さぁ、グランドフォースの導きと共に、我らについて来るがいい!!」
彼について行けば無敵だという強いカリスマ性を演出して、戸惑う観衆を鼓舞、扇動したのだ。
「……そうだな! 政治家に騙されるぐらいなら俺は大幹部? についてくぜ!」
「ほんと、カオス様って頼りになりそう!」
もはや洗脳に近い従順さでカオスに心酔する観衆。
『法螺吹キハ全知全能』の威力、恐るべし。
続いて。
「……ま、銀河帝国がオブリビオンでさえなければユーベルコードは無いだろうし、目的が銀河の征服辺りだとすれば、アイドルさんの言葉にも一理あったかもしれないけどな……」
涼風・穹(人間の探索者・f02404)は、そんな事を考えつつ、菜依の演壇のすぐ前に来ていた。
厭戦アイドルに反論を試みる為だ。
「今までにも銀河帝国に傷付けられてきた方は多いのに、悲しむ方はいなかったのか?」
ただし、穹の目的は、菜依を含めた聴衆へ疑問を抱かせる事。
あくまで自分の頭で考えるきっかけにしてくれれば——と問題提起に留めて、完全論破する気は無いらしい。
(「……本当に状況を理解して、総意として銀河帝国に従うというのなら、俺が何か言うような事でもないしな……」)
もしかすると穹の中では、個人主義にも似たクールさと他人への温かな思いやりがせめぎ合っているのかもしれない。
「遠くの戦争というけど、銀河帝国が勝ったなら次に狙われる危険性は?」
「う……」
それでも穹の鋭い詰問に声を詰まらせる観衆。
「恭順するにしても、殺されないとしても搾取はされる可能性は?」
シルや聖、マディソンらが積み重ねた下地もあって、観衆の殆どは菜依を見限り、
「……俺は、やっぱり誰がどう言おうと、妹夫婦の命を奪った帝国軍は許せない!」
「いつ戦火に遭うかビビりながら、搾取され続ける生活は嫌に決まってるよな」
修羅雪姫やキサラギ、カオスにノセられるまま、解放軍参加を考え始めていた。
その傍ら。
「反戦演説……面白そうね……」
イヴ・シュプリーム(かつて滅んだ星の希望・f13592)は、解放軍参加に沸き立つ観衆へ紛れたまま、彼女のいる演壇へ近づく。
「あのお嬢さんの口からどんな言葉が出るか……少し聞かせて貰うわ……」
——素敵な演説だったら……拍手しないとね……?
そう不敵な笑みを洩らすイヴには、秘策があった。
瞳から不可視の精神感応波を放って、菜依の感情の制御を試みたのだ。
しかも、攻撃の範囲を広めて、菜依当人のみならず演説の舞台をセッティングしたスタッフの精神まで手中に収めた。
「……皆様、聞いてください……菜依が、菜依が間違っていました……」
すっかり虚脱状態に陥った菜依は、イブの意のままに操られて演説を始める。
「銀河帝国軍と解放軍の戦いは遠くで起こっていますが、いつ私たちに累が及ぶかはわかりません。何故なら銀河皇帝は既にワープドライブや大型破壊兵器を持っているからです」
観衆が互いに顔を見合わせる。
「銀河帝国は世界そのものを破壊することも厭いません。我々が滅びの運命を回避するには戦うしかないのです……!!」
菜依はすっかりイヴの操り人形と化し、元々の演説とは正反対の主張をぶち上げて、観衆の解放軍参加を後押しした。
「ふむ……アイドル当人を操るとは、悪の手先にも相応しい素晴らしい催眠術よ」
ユーノーの民意を全て掌握した安堵もあってか、ふとカオスがイヴを褒めれば、
「……催眠術……? 違うわ……もう少し高度な『魔法』よ……」
イヴもくすりと笑って答えた。
大成功
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