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崩壊ビルレスト

#デビルキングワールド

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#デビルキングワールド


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 良く言えば年季の入った、悪く言えばボロっちい巨大マンションの一角で、ガトリングの砲声が響き渡った。
 とりわけ古い区画である。荒れ狂う銃弾の雨は射線に存在する全てを砕き、穿ち、吹き飛ばし……着弾地点で発生した崩落が、あっという間に通路を塞いてしまった。
「お、覚えてやがれ~!!」
 煙の向こうではそんな如何にも三下っぽい取立人たちの台詞が遠ざかっていく。
「す、すごい、あのお姉さん。こんな大規模な住宅破壊を涼しい顔で行うなんて……!」
「あのギャングさん達も生活があるのに、力づくで追い返すなんて……!」
「ワルだ……家賃滞納なんて目じゃない。相当のワルだよ……!」
 部屋のドアから顔……を描いた「知恵の布」を突き出し、事の顛末を窺っていたブギーモンスターの住人達は、屋上に無数に突き立つアンテナのひとつに降り立った、翼ある女性へ視線を釘付けにする。
 その瞳は、すっごくキラキラしていた。
「かっこいい……!」
「弟子にしてください師匠! いや姐御!」
「僕達も破壊活動手伝いますから!」
「そのガトリングも魔改造しちゃいましょう! そしてゆくゆくは僕等のデビルキングに!」
 カサカサとおぞましい音を立てて盛り上がるブギーモンスター達に、女性は優しい笑みを送るのだった。


「デビルキングワールドの噂は、もう聞き及んでおりまするか?」
 グリモアベースを訪れた猟兵達にそう話しかけたのは、四宮・かごめ(たけのこ忍者・f12455)だ。
 新しく発見された世界『デビルキングワールド』。
 住民である悪魔……正確には悪魔を自称する「良い子すぎる種族」……達は、あまりに良い子過ぎて今や絶滅の危機に瀕している存在らしい。
 よって、彼等は悪や欲望を徹底的に肯定する「デビルキング法」を制定することで、己の良識が許す範囲の悪を、それはもう真面目に実践しているのだとか。

 彼等の住む魔界の都市には、度重なる増築で迷宮化した高層建築が多数存在する。通称「ダンジョンマンション」だ。
 内部には数十年も家賃を滞納する悪魔達が無数に生息しており、大家もまた悪魔のギャング達を雇い、日夜家賃を取り立てている。双方、まだ可愛げのある悪事と言えよう。

 ところがある日を境に、あるマンションダンジョンで、ギャング達の取り立て率が急激に悪化したらしい。
 たった一体のオブリビオンが悪事大好きな「家賃滞納悪魔」達に正真正銘のワルを見せつけ、彼等を味方に付けてしまったのだ。
 その結果、マンションのルートのあちこちが、大量の瓦礫で塞がれてしまった。
 オブリビオンは勿論、協力する悪魔達による不眠不休の破壊活動が行われたことは想像に難くない。
 今やマンションは悪魔すらも侵入を許さぬ強固な要塞。さらに時間が経てば大規模な虐殺の根城ともなってしまうだろう。
 そうなる前に乗り込み、オブリビオンを狩るというのが、今回の依頼だ。

 まずはあちこちで塞がれた通路を突破しなくてはならない。
 道を完全に埋める壁は、何の変哲もないコンクリート片や鉄筋で出来た瓦礫の山だ。
 主に物理的な手段で破壊する事になるだろうが、他の方法でも勿論構わない。
 籠城するつもりだったのか封鎖は外殻部に集中しており、そこさえ越えれば住人達との戦いに集中出来る。

「住人の始末については、家賃支払と退去のみで済むよう、家主と話をつけておりまする故」
 善良とはいえ、猟兵に匹敵する強大なユーベルコード使い達が本気で協力しているとなれば、微笑ましいとばかりも言っていられない。
「頑丈だから殴ってでも目を覚まさせてくれ、とは、家主からの言付けにございますれば」
 大事件を未然に防ぐためにも、宜しくお願い致しまする。そう言ってかごめは印を結ぶのだった。


白妙
 白妙と申します。
 今回の舞台はデビルキングワールド。
 魔界の迷宮「マンションダンジョン」に突入。
 最終的にマンションを牛耳るオブリビオンを倒せば成功となります。

●第1章【冒険】
 幅2メートルほどの通路が瓦礫で塞がれています。
 先へ進むには、何らかの手段で瓦礫を破壊しなくてはならないでしょう。

●第2章【集団戦】
 オブリビオンに心酔する「家賃滞納悪魔」達と戦います。
 複雑なマンションの形状を熟知し、猟兵達に匹敵する戦闘力を持ちます。
 が、根は善良であり、倒せば家賃を支払って普通に退去するでしょう。

●第3章【ボス戦】
 最奥で待つオブリビオンと決着をつけます。
 強敵ではありますが、マンションの構造を熟知しているわけではありません。

●第2章捕捉
 この世界の「集団敵」はオブリビオンではなく「魔界の一般住民」となります。
 なので、惨たらしく殺害するような展開はご期待に沿えない場合があります。
 ただし悪魔はとても頑丈なので、容易く死ぬこともありません。思い切りやっちゃってOKです。

●マンションダンジョン『トリルハイム』
 築百年超え。巨大な敷地面積と、暗く入り組んだ通路を持つ魔窟。
 主な住人は小柄な蟹のブギーモンスター達です。

 1章のプレイング受付開始は承認直後。
 2章・3章は断章投下後となります。宜しくお願いします。
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第1章 冒険 『派手にぶっ壊そう!』

POW   :    とにかくパワーに任せて壊しまくる

SPD   :    華麗な身のこなしで素早く壊しまくる

WIZ   :    頭脳プレイで効率的に壊しまくる

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ティファーナ・テイル
SPDで判定を
※アドリブ歓迎

「さぁ!一気に片付けちゃうぞ!」と檄を飛ばして『ガディスプリンセス・レディース』で従属神群を召喚して『ゴッド・クリエイション』でヘカトンケイレスを創造して『スカイステッパー』で手早く壊せそうな場所に移動して手分けしながら(中半競争)楽しんで壊します!
中々壊し切れ無かったら1度休憩を挟んで『エデンズ・アップル』で甘酸っぱくて疲労も取れる“神様の世界の林檎”を皆でパクパク食べて「元気百倍!」と笑顔で元気に華麗(?)に壊しまくります!
飽きない程度に『ガディス・ブースト・マキシマム』で従属神群と❤ビーム攻撃を仕掛けて『セクシィアップ・ガディスプリンセス』も混ぜて壊します!



 魔界のマンションダンジョン。
 その暗く狭い通路を少し進めば、大量のコンクリート塊が、道幅を隙間無く埋める光景にぶつかった。
 取立人を幾度となく阻んで来た、瓦礫の山である。
 だがそのような光景も、ティファーナ・テイル(ケトゥアルコワトゥル神のスカイダンサー・f24123)の意気を阻喪させる事は出来なかった。
「さぁ!一気に片付けちゃうぞ! レディースの能力(チカラ)、今こそ見せる刻!」
 そうティファーナが檄を飛ばせば、どこからともなく彼女に従属する女性型の神群が現れ、瓦礫の山に取り付く。
 作業開始だ。
 神の力を行使するティファーナは、目を閉じ、意識を集中する。
 果たして、ティファーナの目の前で金色の光が迸ったかと思うと、そこには――異形の存在が蹲っていた。
 百腕の怪物、ヘカトンケイレス。
 少し迷った後、知性を与えるティファーナ。彼女と同じくらいの身長の創造物は、のそりとその身を立ち上がらせると、神達に混じって作業を進めていく。
 大量の瓦礫をどかすには、手数は幾らあっても困るものでは無い。
 ティファーナは自身の権能をフル活用し、人海戦術を敷いていた。
 丁度その時、くいくい、と。
 後ろからティファーナの神衣が引かれた。
「?」
 ティファーナが振り返ると、従属神の一人が、しきりに高い所を指差している。
「そっか、あそこからなら手早く壊せそうね!」
 その従属神をティファーナは軽く抱え上げ、自身の金翼金鱗の体を、ふわり、と宙に舞い上がらせる。
 マンションの壁面には、度重なる増築の名残を思わせる段差が多くある。
 そのうちの一つ、瓦礫群の天井近くにあった窪みに従属神を座らせ、ティファーナも協力して大きめのコンクリート片を一つ掴み出せば、それは下で待ち構えていたヘカトンケイルの手に収まり、たった今来た通路の後方へ、ポイと放られる。
「さぁ、みんなで手分けして終わらせちゃおう!」
 ティファーナに習い、あちこちで瓦礫の受け渡しリレーが始まる。
 にわかに呈される活況の中、一つ目の障壁にたちまち大穴が空いた。

 奥へと進めば二つ目の壁にぶつかる。
 作業を続けたい気持ちは山々。だが少し疲れてもいたティファーナ達は、一度休憩を挟む。
 輪になって座り込む従属神群達の中心で、ティファーナは何かを取り出し、皆に渡していく。
 それは“神様の世界の林檎”であった。
 全員でシャクシャクと頬張れば、たちまち細胞が活性化されるような感覚が全身を駆け巡り、甘酸っぱい味に疲れが吹き飛ぶ。
「元気百倍!!」
 立ち上がった従属神群達を引き連れ、ティファーナは元気良く瓦礫の山に向けて駆け出す。
 正直な所、単調な作業に少しだけ飽きていたティファーナである。気分転換も兼ねて、拳を強く握り込む。
「まずはボクが道を開くよ! 食らえ、超神武闘必殺技!」
 助走の足取りも軽く放たれた鉄拳は、舞い散る金色の光と共にコンクリートを粉砕する。
 続けて従属神群達の放ったハートの光線が突き刺されば、第二の壁は音を立てて倒壊するのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

シン・フォーネウス
なんだそれ……なんだそれ……!

俺に掃除して下さいって言ってるようなもんじゃねぇか!

ったく、せっかく綺麗な通路が台無しだな……。

UC発動だ!いいから徹底的に掃除しまくるぞ!

お掃除ロボット行ってこい!俺はデッキブラシでごしごししてるから、瓦礫の破壊は頼んだぞ!

ああ?コツコツと瓦礫をぶっ壊し続けるのはワルな行為だよな?
こんな難攻不落っぽい要塞を更に木っ端微塵にする勢いで掃除すんだ、そのオブリビオンよりも俺の方がワルに決まってんだろ!
隅っこにホコリが溜まってんじゃねえか!これだから掃除もろくにできない悪魔はよ……(姑ムーブ)

(アドリブ等歓迎)



 突き刺さる無数の光条が瓦礫の山を大きく揺らす。
 都会のマンションで破壊的なビーム光線を解き放ったのは、シン・フォーネウス(水竜の従者・f31485)の忠実な下僕である、お掃除ロボットと高圧洗浄機の集団であった。
 お掃除ロボットと、高圧洗浄機である。
「なんだそれ……なんだそれ……」
 がっしゃーん。
 2000を超える砲の圧力を前に、遂に壁が倒壊した。

 数分前。
「こんなの……俺に掃除して下さいって言ってるようなもんじゃねぇか!」
 破砕されたコンクリート片の散らばる廊下。その光景を前にして、シンは思わずツッコミを入れた。少しツッコミの方向性がズレているような気もするが、そこは奉仕の悪魔。血が騒ぐのを止められないのだろう。
「お掃除ロボット行ってこい! 瓦礫の破壊は頼んだぞ!」
 それからというもの、彼等はシンの命令通り、ひたすらに破壊活動を繰り返していたのだった。
 立ち塞がる障壁を前に砲塔を並べ、派手なビームを幾度と無く撃ち込む。
 マンションを揺らし、木っ端微塵にせんが如きその勢いは、中に立て籠るオブリビオンと比べても、どちらが悪者かわかったものではない。
 そして下僕達は、その本来の用途である筈の掃除の方は、全く行おうとしないのだ。
 その間シンは彼等に代わって、無造作に通路に打ち捨てられた残骸を、デッキブラシで地道にどかしていた。
「ったく、せっかくの綺麗な通路が台無しだな……」
 彼はお人好しであった。
「隅っこにホコリが溜まってんじゃねえか! これだから掃除もろくにできない悪魔はよ……」
 至らない主と下僕との板挟み。その鬱憤をシンは、姑じみた呟きと共に床へとぶつける。
 そして彼のゴシゴシした場所は、今やピカピカに磨き上げられていた。その輝き、俊工時もかくや。
「……ま、いいや。難攻不落の要塞を築く奴より、そいつを派手にぶっ壊す俺の方がワルに決まってるからな」
 なおも破壊の音が響く中、シンはコツコツと掃除を続けるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

蛇塚・レモン
※技能は適宜活用

依頼を受ける側では、この世界は初めてっ!
誰がワルだか、ちょっと教えてあげないとかな~っ?

まずは瓦礫の除去からだねっ!
こういうのはパワーで押し切るっ!
蛇神様に頼るまでもなく、あたいの怪力と念動力で事足りるよねっ!
ということで……。

これが本当の蛇睨みだよっ!

見えない鎖を念動力と怪力で振り回して、瓦礫をなぎ払うよっ!
瓦礫を鎖で取り除き、更に突き進んじゃえっ!

って、なんか足元に違和感が……
あれ、君、だあれ?
(あたいの影の中に女の子が!)
『あの……気が付いたら迷子になっちゃって……』
『影の悪魔のヤミです……お手伝い、しましょうか?』
……お願い!

ヤミちゃんと一緒に瓦礫をドンドン壊すよっ!



 マンションダンジョンの高層建築を吹き抜ける風に、蛇塚・レモン(蛇神憑きの金色巫女・f05152)は、その金の髪を揺らした。
「依頼を受ける側では、この世界は初めてっ」
 グリモア猟兵としてデビルキングワールドに猟兵を導いた経験のある彼女も、今は一猟兵としてこの地に立っている。
「だけど……」
 惨状を前に、レモンは声のトーンを言葉尻で下げた。
 道を塞ぐ大量の瓦礫は大破壊のみを経て発生し得る。
 そしてその証拠と言わんばかりに、壁には深い弾痕。そして天井には大穴が空いていた。
 オブリビオンの仕業である事は間違いない。だが問題はむしろ、魔界の住人達もまたそれに加担している事だろう。
 どうすれば住人達を心服させられるのかはレモンも知っている。
 だが周囲を見渡しても彼等の姿は――そこまでレモンが思考を巡らせた、その時。
「――っ」
 思わず琥珀と紅の双眸を見開くレモン。優れたシャーマンである彼女の念能力が、その場に漂う僅かな違和感を拾ったのだ。
(「……視線?」)
 誰かが見ていた。確証はないが、そんな気がした。
 そう。今のレモンを観察する者が一人も居ないとは限らないのだ。
「ともかく、誰が本当にワルだか、ちょっと教えてあげないとかな~っ?」
 少し膨れっ面をしたレモンは、両腕を目の前、肩の高さに差し上げる。
 その両掌には、傍目には何も乗っていない。だが彼女自身は、出現した太い鎖の重みをはっきり感じ取っていた。
「……はっ!」
 じゃら! と鎖が地を走る音。
 レモンの体の振りに一瞬遅れて衝撃。不可視の打撃が壁を揺らす。
「これがっ!」
 返す刀でもう一撃。飛び散る瓦礫片が壁にぶち当たり、パラパラと音を立てる。
 身に宿す蛇神の力に頼るまでもない。この程度の障害、己の膂力と念力だけで乗り越えられる。
「……これが、本当のっ!!」
 崩れかけの瓦礫の山に止めを刺そうと腕に力を込めた時――再びレモンは目を見開く。
 その視線は自身の影――その中に潜む少女――に向けられていた。
「あれ、君、だあれ?」
「影の悪魔のヤミです……お手伝い、しましょうか?」
 やはりレモンの直感は当たった。思わぬ援軍が彼女を見ていたのだ。
「……お願い!」
「はい……いいですよ」
 敢えてレモンが己の力を押し通した事が功を奏したのか、ヤミはあっさりと承諾の意を示す。
 ヤミがその身をするりと影に溶け込ませたかと思えば――遠くの闇から、瓦礫が崩れる音が聞こえて来た。
「……あたしも行かなきゃっ!」
 レモンは不可視の鎖を掴み上げ、一閃。同時に壁は倒壊した。

成功 🔵​🔵​🔴​

仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

悪が正義…
うぅん…悪徳の栄えるなんとも変な世界だ…
とはいえ…悪法もまた法か…
ただそれに従うのみ…行こうか…

鉄塊剣を抜き振るい
【慈悲深き乙女の一撃】による[怪力と地形破壊でなぎ払い]、
邪魔する瓦礫を[吹き飛ばし]破壊してゆこう

建物がどれだけボロボロになろうと気にせずに
瓦礫を破壊して行きながら奥へとどんどん進んでゆこう

建物の修理代は…家賃を滞納する悪魔共に払ってもらおうか…
そうしよう…いや、そうしてもらうぞ…
例え大家が文句を言って来ようが
[殺気と威圧で恐怖を与えて]黙らせてやろう…!

悪魔共め…家賃滞納の罪は重いぞ…!
首を洗って待っているがいい…!
今の私は…取り立て人だッ!!!



 空は晴天。
 だが降り注ぐ筈の優しい日差しはマンションの複雑な構造に阻まれ、通路には深い影と闇が落とされている。
「悪が正義……」
 その只中で独り佇むのは、仇死原・アンナ(炎獄の執行人あるいは焔の魔女・f09978)。
「うぅん……悪徳の栄えるなんとも変な世界だ……」
 デビルキング法。やはりアンナのような他世界の人物には、奇妙に映るものなのだろう。そこにオブリビオンが絡む事で、事態はさらにややこしさを増している。
「とはいえ……悪法もまた法か……」
 法の制定には相応の理由がある。想定外の存在であるオブリビオンさえ排除すれば、その後は上手く機能する法なのだろう。ならば。
「ただそれに従うのみ……行こうか……」
 ひとまず割り切りを済ませたアンナは、巨大な鉄塊剣『錆色の乙女』を引き抜く。
 瓦礫の山の前に歩み寄り、おもむろに振り翳すと。
「――ふッ!!!」
 裂帛の気合と共に、目の前の壁に向けて思い切り振り下ろす。
 極めて単純な、しかし十分過ぎる重さを備えた破壊的な一撃は、聳え立つ瓦礫を真っ二つに立ち割り、跡形も無く粉々に粉砕した。
 吹き飛ぶ瓦礫片が地に落ちるより速く、今度は真横に大きく得物を引き絞ったまま踏み込み――真一文字に振り切る。
 宙を舞っていた瓦礫は残らず奥の闇へと弾き飛ばされ、振り切られたアンナの鉄塊剣はそのまま側面の壁に直撃。大きな音と共に、建物には細く長い罅が幾つも入る。
「……っ!」
 手の痺れを無視し、鉄塊剣を握る手に力を籠め直すアンナ。
 風切り音、破砕音、衝突音。たちまち通路は恐ろしい音の坩堝と化す。その中でアンナは、周囲への被害などお構い無しに鉄塊剣を一閃させていく。
 彼女の通った後には跡形も無く吹き飛ばされた瓦礫の欠片と、壁に巨大なクレーターが形成された建物だけが残された。
「建物の修理代は……家賃を滞納する悪魔共に払ってもらおうか……そうしよう……いや、そうしてもらうぞ……」
 喰い縛ったアンナの歯の隙間から漏れて来る呟きは、大家や悪魔達にとっては寝耳に水だったかも知れない。だが例えそうだとしても、今のアンナの殺気と剣幕を前にしては、口を噤んでしまっただろう。
「悪魔共め……家賃滞納の罪は重いぞ……!」
 もしかすると、スイッチが入ってしまったのかも知れない。
「首を洗って待っているがいい……! 今の私は……取り立て人だッ!!!」
 家賃と修理代を取り立てるべく、アンナは瓦礫を吹き飛ばし続けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ブギーキャンサー』

POW   :    キャンサー・パレード
【蟹脚を蠢かせながらの】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【他のブギーキャンサー】の協力があれば威力が倍増する。
SPD   :    フィアー・キャンサー
【知恵の布】を脱ぎ、【おぞましき巨大魔蟹】に変身する。武器「【長く伸び敵を切り刻む巨大蟹の鋏】」と戦闘力増加を得るが、解除するまで毎秒理性を喪失する。
WIZ   :    キャンサー・カース
攻撃が命中した対象に【蟹型の痣】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【呪詛】による追加攻撃を与え続ける。
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 魔界のダンジョンマンション。
 外郭部を突破した猟兵達は、新たな領域へと差し掛かる。
 視界に映るのは、配線やケーブルでびっしりと覆われた、巨大な建物。
 それらが犇めき合い、より複雑な通路を構築していた。
 上空を見上げればそこには紅い魔界の空。
 だが建物の高さに阻まれてか差し込む光量は少なく、陰鬱な通路の暗さを却って際立たせている。
 干された洗濯物だけが、高所の風に揺られていた。
 何処か生活感を感じさせる、魔界の迷宮だ。

 その時、少し前方で何やら作業の音が聞こえた。
 猟兵達が向かうと、そこには未完成の瓦礫の壁と。
「これで置いた瓦礫は666個目……っと」
 その頂上によじ昇り、甲殻類のような脚で新たなコンクリート片を置いた、奇妙なモンスター達が居た。
 こちらに気付き、振り返ると。

「「「で、で、で、出た―――――っ!!!」」」

 次には全員で引っくり返り、知恵の布に隠れていた蟹足を一斉にばたつかせた。
 蟹のブギーモンスター『ブギーキャンサー』。
 その知恵の布を剥ぎ取る時、おぞましき甲殻類のような正体が露わとなるという、魔界の住人にして、このマンションダンジョンの『家賃滞納悪魔』である。

「幽霊、じゃなくて、ギャング!? 道は徹底的に塞いだのに!」
「ひいい! 大家さん、お慈悲を~!」
「違う、撃退するんだよ! 御主人をデビルキングにするんでしょ!?」

 そうと決まるや素早く起き直り、瓦礫の山をほったらかしにして撤退する悪魔たち。

「散開して仲間を集めるんだ! ポイントで待ち伏せしてみんなで突進!」
「何人かは知恵の布を剥いで追い返せ!」
「戦意の低い奴には『痣』を撒かせてひたすら逃げ回らせろ! 地の利は僕達にある!」

 ……どうやら猟兵達を通路で待ち構えるつもりらしい。
 なかなかに機敏な引き際だが、感心してばかりもいられない。
 彼等を撃退し、このマンションから立ち退いて貰おう。
ティファーナ・テイル
SPDで判定を
*アドリブ歓迎

「悪魔さん!お家賃払うか退去して貰うよ!」と笑顔で拳を向ける!
『ガディスプリンセス・レディース』で従属神群を召喚して『スカイステッパー』でジグザグに縦横無尽に動き回り『ガディス・ブースト・マキシマム』で♥ビーム攻撃を仕掛けます!
『神代世界の天空神』で敵の攻撃を空間飛翔して避けて敵のUCを『天空神ノ威光・黄昏』で封印/弱体化させます。
『ジェットストリーム・ラヴハート』でSPDを強化して『ガディスプリンセス・グラップルストライカー』で翼羽根/蛇尾脚/拳で攻撃して『セクシィアップ・ガディスプリンセス』で♥ビームを追加攻撃します!
「ボクたちだって集まっても強いんだからね!」



 暗い路地をカサカサと逃走する数体の『ブギーキャンサー』。
 後ろの物音に振り返ると、既に追手が迫っていた。
 路を埋める程の数の女性。全員がどこか神錆びた雰囲気を纏っている。
「追手だ! 撒いちゃえ!」
「待って、あれは……?」
 その時、群集の中から、金色の人影が飛び出した。
 ビルの側面を蹴り、宙を蹴り、ジグザグの軌道を描いて悪魔達に頭上から迫る。
 刹那、人影の胸元でピンク色の輝きが煌いたかと思えば、ハート型の光線が撃ち下ろされ、反応の遅れた一体の悪魔を宙に舞い上げた。
「うわぁ~」
 悪魔は空中で綺麗な放物線を描くと、そのまま群集の真っ只中に、すぽりと落下。
「悪魔さん! お家賃払うか退去して貰うよ!」
 後ろで従属神群にタコ殴りにされる悪魔を背に、残りの悪魔へ握った拳をぴしりと向け、ティファーナ・テイルは自信満々に宣言する。
「ふっふっふ~、この姿を見てもそんなこと言えるかな?」
 丁度その時、ビルの隙間に吹き下ろす風を受けて、彼等の纏う知恵の布が、バサリ、と吹き飛んだ。
 風が止んだ時、その体はおぞましき巨大な魔蟹へと変貌を遂げていた。
「――」
 音も前兆も無く、巨大蟹達が動く。
 ティファーナを両断すべく、四方から振り翳された巨大鋏が走り抜け――空を切った。
 周囲を見渡すブギーキャンサー達。そんな彼等に声が掛けられる。
「こっちこっち~☆」
 振り向いた先には、いつの間にか神群達の側へ移動していたティファーナが居た。
 それと同時に、ティファーナの体が輝く。
 彼女の神々しいまでの美貌を、一層際立たせる後光が発せられたのだ。その威に打たれ、ブギーキャンサー達は思わず鋏で目を覆う。
「いっくよ~」
 同時にティファーナは反撃。蛇の尾の如き脚で一気に距離を詰め、敵最前列で旋転。
 その強靭な金翼を、大きく薙ぐ。
「――」
 風圧を伴う強力な殴打によろけるブギーキャンサーを盾に、ティファーナは敵陣に滑り込む。
 他の敵を巻き込み、続けて繰り出される自慢の鉄拳。
 激しい戦いの流れの中にも拘らず、その半分以上がブギーキャンサー達の正中線近くに直撃した。
「これで……止めだよ!!」
 鍛えられた鉾の如く、ティファーナは渾身の力で蛇尾脚を横薙ぎ。
 大きく弾き飛ばされ、後続に衝突するブギーキャンサー達。
 そこへハート型の波動が大量に突き刺さり、暗い路地は一気に絢爛豪華な輝きに包まれる。
「ボクたちだって集まっても強いんだからね!」
 既に家賃を取り立てられた悪魔と、彼を知恵の布ごと押さえ込む従属神群達を背に、ティファーナは再び笑顔と拳を向けるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

セシル・ローズキャット(サポート)
『神様なんていないわ』
『あなたみたいな人、嫌いよ。だからここで終わらせるの』

 ヴァンパイアの父と修道女の母に大切に育てられた、ダンピールの少女です。
 母が同じ人間に迫害されてきたため神を信じず人間嫌いな性格ですが、猟兵としての仕事には真剣に臨みます。
 普段の口調はやや大人びた感じですが、親しみを覚えた仲間に対しては「ね、よ、なの、なの?」といった子供らしい口調で話します。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、依頼の成功を目指して積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはマスターさんにおまかせします!


ノエル・クラヴリー(サポート)
ブラックタールのフォースナイト×シンフォニア、20歳の女です。
口調は(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)

戦闘になると塩対応になり、故郷のうたを歌いながら相手に斬りかかります。時には星天魔術と時間魔術や使役している鷹を駆使して戦います。

罵倒などはしませんが、睨み付けたり冷ややかな言葉をかけるなどします。仲間に対しては温和な女性として友好的に接します。

他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。絡みOKです。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



 立ち込め始めた霧を割って、綺羅星の如き肢体が現れる。
 ノエル・クラヴリー(溢れ流るる星空・f29197)。
 悠々と路地を歩む彼女が足を止めると同時に、物陰から蟹足の悪魔『ブギーキャンサー』が顔を出した。
 2体、3体……その数は次々と増え、6体に届いたところで互いに顔を見合わせるような動作をすると。
「「「「「「突撃ーっ!」」」」」」
 号令と共に、全員で蟹足を蠢かせながら突進した。
 対するノエルが霧の中で何かを掴み出すような動作をしたかと思えば。
「――」
 鈍い衝突音。
 吹き飛ばされる筈のノエルの体は、体勢を保ったまま大きく後退するに止まる。
 両手で真一文字に構えられ、敵の集団突撃を防ぎ止めたのは、漆黒の大斧であった。
「な、なんだってー!」
「くっそー! 絶対お家賃は払わないぞ!」
「このままマンション外まで押していけー!」
「気の抜ける相手ですね……」
 普段は敵に対して断固とした態度を取るノエルも、善良な心を持つ悪魔達を前に、思わずそんな呟きを漏らす。
 だが一方で彼等の実力は本物だ。あらゆる衝撃を跳ね除ける筈の自身の腕。そこに微かに走る痺れを意識したノエルが、大斧を構え直した時。
 歌声が響いた。
 幼くも、どこか憂いを感じさせる歌声だ。
 振り返ったノエルの真後ろ。歩いて来る歌の主に注目が集まる。
 猫のぬいぐるみを抱えた少女、セシル・ローズキャット(ダンピールの人形遣い・f09510)。
 その小さな口から紡がれる『シンフォニック・キュア』は大気を震わせ、魔法の根源を揺り動かし、路地のあちらこちらで戦う猟兵達の傷と精神を癒していた。
 歌い終えたセシルはノエルの後方に立ち、その蒼い円らな瞳で見上げる。
「大丈夫?」
「ええ、助かったわ」
 ノエルのタールの体もまたセシルの歌声を受け、元の力強さを取り戻していた。
「全員、再突げ……」
 ブギーキャンサー達が攻撃を仕掛けようとした寸前、ノエルは跳躍。その口からはセシルの歌を引き継ぐように、故郷の調べが漏れていた。
 一瞬の虚を突かれた悪魔たちの目前で――全身の筋力を発条に、斧を振り落とす。
「――ふッ!!」
 次の瞬間、地面が割れた。
 単純にして強力な大斧の一撃は、コンクリートの地面を大きく断ち割り、ビルを揺らし、ブギーキャンサー達の戦列を粉々に破砕した。
「うわあ!」
 吹き飛ばされるブギーキャンサーに躍りかかり、追撃を仕掛けるノエル。彼女を前に、悪魔達は次々と降参していく。
「!」
 その時、後方にいるセシルは、数体の敵が姿を消している事に気付く。
 次いで物陰から飛来した、悪しき気配にも。
 反射的にセシルは自身のからくり人形を射線に割り込ませる。
 くるくると不規則なダンスを踊るかのような動きで、放たれた何かを叩き落としていく人形。
 その陰で、セシルは白く細い十の指を器用に返し、最小限の動きで糸を操る。
 敵の攻勢が止んだ時――人形の腕と脚には、禍々しい蟹型の痣が幾つも刻まれていた。
 呪詛の集団行使を、セシルは依代である人形を使い、見事に捌き切ったのだ。
「大丈夫?」
「うん、平気」
 ちょうど目前の敵から家賃を取り立て終えたノエルと瞳を交したセシルは、物陰を指差す。
「……あっち」
 そこには、桃色の知恵の布を瓦礫から半分出した、2体のブギーキャンサーの姿があった。
「「ひぃぃ! お助け~!」」
 勝算無しと判断したのか、悪魔達はそれまで滞納していたであろう家賃を、札束でどさりと地面に放り投げ、一目散に逃げていく。
「……蟹さん」
「やれやれね……」
 マンションダンジョンの外へと駆け去っていく彼等の背を、セシルとノエルは何時までも見送るのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

蛇塚・レモン
……勝手に作戦を喋ってくれるんだね

敵は待ち伏せしているっぽい?
つまり、此方から不用意に動かなければ、相手の不意打ちを受けないはず
だったら、第六感で周囲の滞納者等の気配を感じ取りつつ、
あたいの周囲を結界術と黄金霊波動のオーラ防御で包み込む
そして盾受けと合わせてジャストガードを狙っていくよ
これで接近されても受け流しが可能っ!

更に、ここであたいの新ユーベルコードっ!
神楽舞を踊って蛇神様を召喚するねっ!
半径94m以内の滞納者等に、蛇神様の捕縛とマヒ攻撃と精神攻撃の呪詛と一緒に念動力で発生した衝撃波で吹き飛ばすよ!
猟兵側は鈴の音で治癒を

ねぇ、誰をキングにするって?
教えてくれないかな~っ?(恐怖を与える)



 しゃらん。
 捧げ持った神楽鈴を一つ鳴らす度、辺りには清らかな空気が満ちていく。
 厳かな舞いにより、蛇塚・レモンは結界を張っていた。
(「……勝手に作戦を喋ってくれるんだね」)
 先程の悪魔達のやりとりから察するに、彼等は慣れ親しんだマンションの地形を利用して、踏み込んだ猟兵達を撃退する算段のようだ。
 此処は敵地。下手に動けば、待ち構える悪魔達の思う壺であろう。
 よって、防衛。
 準備を整え反撃の機会を窺えば、対処は却って容易な筈。それがレモンの読みだ。
 ――勿論その間、悪魔達の方は広いマンションを好きに動ける事は、承知の上。
 現に多くの見えない気配が周囲を取り囲み、物陰から観察しているのを、レモンは痛い程に感じ取っている。
 だが悪魔達はその数を増やしつつも姿を現そうとはしない。レモンの黄金色の霊能力オーラで補強された結界は、それほどに強固だ。
 逆に言えば、壁を破るに十分な戦力が整ったと同時に、悪魔達は一斉に攻め寄せて来るに違いない。
 なおも結界の中で舞いを続けながら、レモンはその時を待つ。
 そして、遂に。
「――!!」
 方々から飛来する、悪しき力。
 呪詛。
 熟練のシャーマンにして戦巫女であるレモンにとって、その気配を捉えるのは極めて容易い。
 ただし、数が多い。
 レモンは神楽鈴を強く握り直すと、ゆるりと舞いを変えた。
 辺りを清めるかのような大きな動作を、裡に宿る何者かを言祝ぎ奉るかのような、複雑で精妙なものへと。
(「あたいに、力をっ……!」)
 次の瞬間、結界に蟹型の黒い痣が穿たれた。
 軽く10を超える呪詛に、たちまち辺りを漂う清浄な空気が侵されていく。
 結界が、軋む。
「「「やったか……!?」」」
 首尾を確認するために物陰から顔を出したブギーキャンサー達がそこで見たのは――とぐろを巻いた、巨大な白蛇であった。
 差し向けられた視線の切先が、悪魔達をぞくりとさせた、瞬間。
 衝撃が爆ぜた。
「「「わひ~!!」」」
 地面を掴むタイミングを逃し、吹き飛ばされるブギーキャンサー達。
「――この舞で、創世と混沌の力の奔流を巻き起こしちゃうよっ! 蛇神様、あたいと一緒に踊ろっ!」
 建物を貫通して広がる衝撃波はマンションダンジョンの広範囲を吹き荒れ、敵の包囲を一気に突き破る。
 レモンの戦術が、悪魔達の戦略をゼロへと戻した瞬間であった。
 建物に叩き付けられた悪魔達は退避しようとするも、まるで何者かに絡み付かれているかのように体が重い。
「こ、これは……!」
 彼等の甲殻には呪詛が刻まれていた。
 その時、ざ、と、後方に足音。
 レモンが立っていた。
「……ねぇ、誰をキングにするって? 教えてくれないかな~っ?」
「ううっ」
 にっこりとした表情を見せるレモン。だが後方では蛇神様が睨みを利かせている。はっきり言って、とても怖い。
「ねぇねぇ~」
 レモンに詰め寄られ、もじもじするブギーキャンサー。その表情は知恵の布に隠れて窺えないが、秘密を洩らそうとする寸前で理性が勝ったのかも知れない。
「ひえ~、そ、それだけはご勘弁を~!」
 ぽす、と札束を放り投げ、重い身体を引き摺りながら全力で逃走を開始した。
「しょうがないなぁ……」
 遠ざかっていく彼等の背中を、苦笑しながら見つめるレモンだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

…気が抜ける連中だなぁ
…とは言え家賃を滞納する悪魔共だ…容赦はしまいぞ…!
家賃とついでに修理代を払ってもらうぞ!
今の私は…取り立て人…!
[継戦能力で闘争心]を取り戻し相手しよう

【地獄の百鬼隊】を召喚し
[威圧と威厳で恐怖を与え]悪魔兵士と共に突撃しよう
鉄塊剣で敵群を[範囲攻撃でなぎ払い]蹴散らしてゆこう

鎖の鞭を振るい敵を[捕縛し逃亡を阻止]し
拷問具を見せつけ[恫喝しおどろかし]て有り金すべてを全部奪おう
そして滞納悪魔共を[怪力]で外に放り投げて追っ払おう…

家賃と修理代は手に入れたが…
まだだ…この騒動の…首魁の首がまだない…!
首を洗って待っていろ…!

私は取り立て人で…処刑人だッ!!!



 猟兵達の手により、家賃滞納悪魔『ブギーキャンサー』達は立ち退きを迫られつつある。
 だが彼等は予め決めていたと思しきポイントに素早く集まり、退去を阻止しようとしていた。
「もうこれだけ?」
「ヤバいよ~」
「暴力反対! はんたーい!」
 道を塞ぎ、不思議な柄の布の下から好き放題に喋る悪魔達。
「……気が抜ける連中だなぁ」
 その様子を前に、仇死原・アンナは思わずそう溢す。
 だがそのユーモラスな出で立ちに反し、彼等は数十年に渡り家賃を滞納し続けている、とてもワルい悪魔なのだ。
「容赦はしまい……! 出でよ、地獄の兵士共……!」
 アンナの宣言と共に、たちまち屈強な兵士達が現れた。
 鎧に身を固め、得物から獄炎を揺らめかせる彼等は、明確な戦意を発散しつつ隊列を組む。
「!」
 悪魔達も身体を低くし、突撃の体勢を作る。
 そして。
「……進めッ!!!」
「「「「「全員、突撃ーっ!!」」」」」
 衝突する二つの軍勢。たちまち路地は戦いの音に包まれる。
「「えいやー!」」
 高い戦闘力を持つブギーキャンサー達の突撃は凄まじい。仲間と連携し、兵士達を片っ端から突き倒す。だが。
「――ふッ!!!」
「「わぁぁ!」」
 それ以上にアンナの剣幕は凄まじかった。
 鏃の如き陣形の先頭に立ち、鉄塊剣を一閃する度に敵が纏めて薙ぎ払われる。
「修理代だ……修理代を払え……!」
「何の事!?」
 先程アンナは、道を塞ぐ壁と一緒に建物も壊してしまったのだ。是が非でも彼等に修理代を払って貰わなくてはならない。何としてもだ。
「一点突破だ! 精鋭、続け!」
 隙を逃さず、アンナは脇構えの姿勢から地面を蹴り、驀進。
 前衛をショルダータックルで吹き飛ばし、後衛を間合いに捉えると同時に鉄塊剣を大きく横薙ぎ。ボールのように吹き飛ぶ悪魔達を追い、敵戦列の後方へと駆け出る。
 振り返った時、後続の兵士達が敵の戦列を両断していた。戦いの趨勢が大きくアンナへと傾く。
「そ~っと、そ~っと……ひえっ!?」
 吹き飛ばされた悪魔達が忍び足で逃げようとするも、その小さな体を、飛来した鉄製の鞭が纏めて絡め取る。
「出せ……有り金全部だ……!」
 赤錆の浮いた拷問具を手に、悪魔達を威圧するアンナ。
「だ、出します出します!! だから……うわぁ~!!」
 次の瞬間アンナは鎖の端を引き、渾身のジャイアントスイング。彼女の剛力により、悪魔達はマンションの外へと放られてしまった。
「ひぃ~!!」
 他の悪魔も一目散に逃げ去り、後には兵士達だけが残された。
「……」
 落ち着きを取り戻したアンナは、そこかしこに落ちている紙束の一つを、そっと拾い上げる。
 この世界の通貨、D(デビル)。気持ち厚めだ。これなら建物の修理費も賄えるに違いない。
 ぼんやりと札束を見つめるアンナ。だが――次にはその札束を握り潰し、再びその眼光を鋭くする。
「まだだ……この騒動の……首魁の首がまだない……!」
 アンナの言う通り、これで終わりではない。彼等を扇動したオブリビオンが近くに居る筈だ。
「首を洗って待っていろ……! 私は取り立て人で……処刑人だッ!!!」
 大剣を担ぎ直し、アンナは先へと進む。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シン・フォーネウス
ワルワルな借金取り……じゃねぇ、ワルワルに家賃回収に来たぞオラァ!いや、どっちかつーと立ち退き業者か?まあどっちでもいいや。俺のワルワルな立ち退き業者ムーブ見せてやるぜ!

UCを発動して、俺の下僕たちに通路を先行してもらう。曲がり角は曲がったらすぐにその先へ水圧をブシュッと放射、攻撃を受けないように立ち回ってみるか。
後はデッキブラシですぱこーんと改心(物理)していくぜ。

おいお前ら、瓦礫の積み方が雑すぎんだよ!また俺が掃除する羽目になっちまうだろうが……!
後で瓦礫の積み上げ方と効率的な防衛方法を教えてやる。
俺は、そのご主人とやらよりもずっとワルワルな悪魔なんでな!

(アドリブ等歓迎です)



 至る所で戦闘の音が響くマンションダンジョン。
「急ごう! 突破されちゃう!」
 その細い通路を、家賃滞納悪魔『ブギーキャンサー』の一隊がカサカサと移動していた。
 数は然程でもない。だがこの世界の悪魔達の例に漏れず、その一体一体が高い戦闘力を秘めてもいる。
「良い場所がある! そこから狙い撃ちしてやれ!」
「見てろよ~」
 彼らが集団で呪詛を行使すれば、戦局を変えてしまう事も、決して不可能ではない。
 だが、そんな彼等の思惑を阻むかのように。
「ワルワルな借金取り……じゃねぇ、ワルワルに家賃回収に来たぞオラァ!」
「わぁぁぁぁ!」
 曲がり角に差し掛かった瞬間、前方で凄まじい水圧が炸裂し、最前列に居た悪魔が吹き飛ぶ。
 すぐさま壁から飛び出し、大量の水をブギーキャンサー達に放つのは、高圧洗浄機、その名も『エーギル』の集団。
 その後方からはお掃除ロボット『ソロネ』達が飛び出し、ビームを斉射する。
「……いや、どっちかつーと立ち退き業者か? まあどっちでもいいや。俺のワルワルな立ち退き業者ムーブ見せてやるぜ!」
 さらにその後方から、シン・フォーネウスが姿を見せた。
 シンに狙いを定めようとするブギーキャンサー達だが、道を埋める弾幕と水圧の前に近づけない。
 そのままぐいぐいとマンション外へ押していくお掃除軍団。遭遇戦は終始、彼等を先行させていたシンのペースで進んだ。
「おいお前ら、瓦礫の積み方が雑すぎんだよ! また俺が掃除する羽目になっちまうだろうが……!」
「ひえ~、すいませ~ん!」
「後で瓦礫の積み上げ方と効率的な防衛方法を教えてやる!」
 不甲斐ない悪魔達に対し甲斐甲斐しさを見せるシン。流石は奉仕の悪魔と言った所だろう。
 その時、前方から光が差し込む。外の光だ。
「……俺は!」
 シンは思い切り跳躍。配下を乗り越え、完全に浮き足立った悪魔達に向けて突進する。
「そのご主人とやらよりも!」
 丈夫なデッキブラシを真一文字に引き絞り。
「……ずっとワルワルな悪魔なんでな!」
 次には、思い切りスイング。
 すぱこーん、と良い音を立て、ブギーキャンサー達は吹き飛んだ。
「うわぁ~」
 有り金全てを撒き散らしながら、蟹足を丸めた悪魔達がボールのように転がる光景が敷地外に広がる。
 猟兵達の手による、壮大な立ち退きが完了した瞬間であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『セラフィムブラスター』

POW   :    銃撃の使徒
自身の【翼】を代償に、【空飛ぶデビルガトリング】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【魔力弾の銃撃】で戦う。
SPD   :    セラフィムブースト
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【デビルガトリング】から【銃弾の雨】を放つ。
WIZ   :    スマイルガトリング
自身が【微笑んでいる】いる間、レベルm半径内の対象全てに【デビルガトリングの掃射】によるダメージか【セラフィムの加護】による治癒を与え続ける。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 全ての家賃滞納者が退去したダンジョンマンション。
 猟兵の一人が、遂にその深部へと足を踏み入れた。
 曲がり道、二股道、十字路。
 複雑な構造と広い道幅はそのまま。だが奥へ進む程に周囲の建物は高くなり、同時に暗さも増していく。
 配管や電線に覆われた壁と床だけが、視界を埋め尽くしていた。

 その時。
 前方の十字路に佇む、何者かの気配。

『――』

 それは、女性の堕天使だった。
 猟兵の方へと向き直り、六翼を波打たせる姿は、見惚れる程に美しい。
 だが、女性が穏やかな微笑みを向けた瞬間。

 ガトリングが砲声を上げた。

「……!」

 降り注ぐ銃弾の雨。咄嗟に脇道に飛び込みやり過ごす。
 『セラフィムブラスター』。
 虐殺を始めとした悪事を微笑みを崩す事無く行う、危険極まりないオブリビオンである。
 標的を追おうとする彼女の進路を阻むように、他の猟兵達が転送されて来る。
 オブリビオンはそれを見ると、一際無邪気な笑みを浮かべた。

 魔界の平和を守る為の、最後の戦いが始まる――。
虚偽・うつろぎ
アドリブ連携等ご自由に

多数の銃器
そう戦争だね
戦争だな
なら爆破しても問題ないよね
見通し良くしても良いよね

登場即自爆
自爆できれば台詞も活躍もいらぬ!
速攻で自爆することが最優先
1歩も動かず即自爆
そう、自爆だ
僕に自爆をさせるんだ!
僕もろとも鏖殺だ
これぞ鏖殺領域なり

ただ自爆するためだけに現れる存在
何かいきなり自爆する怪奇現象
もはや災害である

技能:捨て身の一撃を用いての
メッサツモードによる高威力な広範囲無差別自爆

射程範囲内に敵が1体でもいれば速攻で自爆
自爆することが最重要
なので敵がいなくても自爆するよ
大事なのは自爆までのスピードさ

捨て身の一撃なので自爆は1回のみ
1回限りの大爆発
自爆後は爆発四散して戦闘不能



 虚偽・うつろぎ(名状しやすきもの・f01139)。
 が動いた。
 元々意味も無く動く男ではない。その唯一の行動理念が自爆であり、捨て身の一撃であるというならば猶更だ。
 ――ならば恐るべきは、彼が現在進行形で実績を積み重ねている事だろう。
 その常人には理解し難い自爆への執念と驚くべき爆破速度が、そろそろ200に届かんとする戦場で披露されて来たというのだから恐ろしい。
 果たしてそんな彼が投下されたのは……何の事はない。オブリビオン『セラフィムブラスター』のすぐ真上であった。
 禍々しい色をした天使の輪を下に、黒々とした『う』の字が並ぶその様は、まるで頭上にクエスチョンマークを浮かべているようでもある。
 頭上の気配にオブリビオンが首を傾げたのも……否、転送の光すら止む間もなく。
 大爆発。
 まさに災害であった。全く躊躇いを感じさせないうつろぎの自爆は、高速で反応を示したオブリビオンの飛翔速度すらも初速で勝り、周囲にある建物ごと巻き込んだ。
 凄まじい轟音と衝撃が全てを薙ぎ倒し、炎で包み込み、複雑だった筈の地形を文字通りの更地と化す。
『――』
 白い羽根を軽く焦がされつつも何とか爆風を振り切ったオブリビオンは、空中で旋回。四散したうつろぎのタールの体に笑顔で弾の嵐を送り込む。だが既に力を使い果たした彼の体はそのまま落下を続け、べちゃべちゃと力なく地上に降り注ぐだけだ。
 それでもうつろぎはこの時、心の中で快哉を叫んでいたに違いない。これぞ鏖殺領域也、と。
 事実、彼の執念は、マンションダンジョンのど真ん中に広がる、見通しの良いクレーターとして刻まれたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ティファーナ・テイル
SPDで判定を
*アドリブ歓迎

「堕天使さん!神様としてボクも敗けられないね!」と拳を向ける!
『ガディスプリンセス・レディース』で従属神群を召喚して『スカイステッパー』で縦横無尽に動き回りながら『セクシィアップ・ガディスプリンセス』で♥ビーム攻撃を仕掛けて、敵の攻撃を『神代世界の天空神』で空間飛翔して避けて敵のUCを『天空神ノ威光・黄昏』で封印/弱体化をさせます!
『ゴッド・クリエイション』で鋼鉄神を創造して防衛を任せつつ『ジェットストリーム・ラヴハート』でSPDを強化して『ガディスプリンセス・グラップルストライカー』で拳/蛇脚尾/翼羽根で白兵攻撃をし『ガディス・ブースト・マキシマム』で追撃します!


シン・フォーネウス
笑顔でガトリングカマしてくるとかすげーワルじゃねーか!
幸いなのは狭くて動きずらいってところか?…いや、逆に言えば回避手段が限られてくるってことだよな?こっちの方が断然不利かよ!

まあいい。主要武器があのガトリングだけだって言うなら。

UC発動、認知情報を改竄、ガトリングをその認識から抹消してみるぜ。
お前の認識上に、ガトリングは存在しない。唯一できるとすれば翔ぶぐらいだが…。
翼に幻の裂傷と激痛を刻んで、動きを鈍らせてみる。

『掃除』開始だ!『早業』で懐に飛び込んで、デッキブラシで一撃食らわせてみるぞ。

あのブギーキャンサーたちに教えることがたくさんあるんだ。時間かけてちゃいられねぇんだよ!


蛇塚・レモン
真の姿
口調は蛇神オロチヒメ
自我はレモン

堕天使風情が『旭日』の金色竜神に歯向かうか
いいだろう!

黄金霊波動、最大出力!
念動力+オーラ防御+結界術で銃弾を空中で弾き飛ばす
届いても鏡盾の盾受け+ジャストガードで防御
自己催眠術で激痛耐性+継戦能力を強化
銃弾の前を平然と空中浮遊+空中戦のまま突き進む

UC発動と同時に、敵の影からヤミちゃんが不意打ち+切断

堕天使よ、その力は使用禁止だ!
蛇神様よ共に参れ、彼奴に神罰を!

召喚された蛇神様の紅眼から出た破壊念動波(衝撃波)が堕天使を封殺!

トドメは輝く蛇腹剣を怪力任せに
光属性+全力魔法+乱れ撃ちの鎧無視攻撃!

骸の海へ沈め、オブリビオン!
あと家賃を払え、愚か者共が!


仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

あれがこの騒動の首魁か…堕天使め…
金はもう充分だ…もはや金で済む話ではない…
今ワタシが欲しいのは…貴様の首だ…!
行くぞ…ワタシは処刑人…命の取り立て人だッ!!!

敵の攻撃を[見切り]つ[ジャンプとダッシュ]で
建物内を駆け抜けながら攻撃を回避

複雑な構造になっているのならば[情報収集]で地形を把握
[地形を利用]し人が隠れそうな場所に[目立たぬように闇に紛れて]
そこへ逃げ込み息を殺しながら敵の隙を狙おう

[視力と暗視]で敵を観察、隙あらば
妖刀を抜き振るい【暗殺剣「墓場鳥」】で攻撃
[不意打ちと暗殺]で敵の急所を狙い[串刺し、その身を切断]して
屠ってやろう…!



 遥か頭上の空は昏い紅色に染まり、僅かに路地へと差し込む光も、四方の建物の高さに阻まれる。
 薄闇に覆われている筈のそこは今――神々しい光に満たされていた。
 マンションダンジョン深部に到達した猟兵達は、十字路に佇む存在を見遣る。
 白く輝く翼を持つそれは、天使――否、堕天使のオブリビオンであった。
「ほう……堕天使風情が『旭日』の金色竜神に歯向かうか」
 真正面に立ち、威厳を備えた口調で呟いたのは、蛇塚・レモン。
 おそらくは神懸かりに近い状態にある彼女の周囲では、普段とは桁外れの強さのオーラが渦を巻き、その黄金色の輝きが辺りを染め上げていた。
「堕天使さん! 神様としてボクも敗けてられないね!」
 レモンの横では、その輝きをキラキラと反射する装飾に身を包んだティファーナ・テイルが、ぴし、とオブリビオンに拳を向ける。彼女の言う通り、堕ちた御使いに対する神に相応しい行動とは、真正面から挑み、これを成敗する事だろう。
 オブリビオンはと言えば、二人に向けて慈悲深い微笑みを浮かべている。だがその脇では、輝きを鈍く照り返す六門のデビルガトリングが、銃口から煙を上げていた。
「……笑顔でガトリングカマしてくるとかすげーワルじゃねーか!」
 二人の後ろからはシン・フォーネウスのやや上擦った声が響いて来る。顔色一つ変えぬ殺人。未遂とはいえ人倫上許されざる悪の極みを、彼は目の当たりにしてしまったのだ。
 そのワルさ加減は確かに、悪魔であるシンを惹き付けるものがある。だが相手はオブリビオン。マンション外で暴れられてはたまらない。すぐさま冷静さを取り戻し、戦力分析を始める。
(「あの馬鹿デカい得物と翼だ。動き辛いに決まって……ん? 待てよ……」)
 その時、何かに気付いた様子を見せるシンの予測をなぞるように。
 オブリビオンが、その六つの翼を広げる。
 そのまま大きく舞い上がると、紅い十字の空を背負い――ガトリングを咆哮させた。
「効かぬ!」
 小手調べとばかりに放たれた弾雨の前にレモンが飛び出し、その手に持つ何かを掲げた。
 それは、盾だ。鏡のように磨き上げられた白金の丸盾は、展開されたオーラと共に銃弾を跳ね返し傷一つない。
「出でよ、鋼鉄神!!」
 レモンの横を抜けた弾丸の射線にティファーナの創造した生物が割り込み、その凄まじい硬度でもってシンとティファーナを身を挺して庇う。
「サンキュー! でも狭いって事は回避手段が限られてくるってことじゃねえか! こっちの方が断然不利かよ!」
「確かにね! ……ボクには好都合だけど!」
 射線の薄い中に向けて、ティファーナがその身を躍らせた。ジグザグに壁や宙を蹴り、オブリビオンへと一気に迫る。
 ばしん、と最後にティファーナが金の蛇尾で蹴った建物。その窓の影で、気配が動いた。
「……。あれがこの騒動の……」
 建物の中で息を潜める、仇死原・アンナであった。
 マンションという複雑な地形を活かし、身を隠しながら動く彼女にオブリビオンは未だ気付かない。
 空中でティファーナの拳をガトリングで受けつつも、微笑みを崩さないオブリビオンを、アンナは至近距離から観察する。
「……金はもう充分だ……もはや金で済む話ではない……」
 もう少し時を稼がれれば、このマンションは金絡みどころか虐殺の根城となる所だった。やはりオブリビオンは人命を脅かす危険な存在なのだ。
「堕天使め……今ワタシが欲しいのは……貴様の首だ……!」
 だが、今はまだ時が至らない。胸の内から込み上げるじれったさに、ぎり、とアンナが歯噛みした時。
「あくまでも歯向かうか――いいだろう!」
 窓の外でレモンの堂々とした宣言が響き渡った。
 その身をふわりと念動力で宙に浮き上がらせると、黄金のオーラを纏い――突進。
『――』
 ティファーナと入れ替わりに、結界で銃弾を弾きながら迫るレモンに対し、オブリビオンは後退。
 踵を返すと同時に大きくぶれる射線。流れ弾が付近の窓を叩き割るよりも早く、アンナは建物の廊下へと身を躍らせていた。
「逃げたぞ、追え!」
 デッキブラシを手にシンも地上を駆け、空中戦を開始したオブリビオンとレモンを追う。
 すたり、と着地したティファーナもまた鋼鉄神を呼び寄せ、シンの後に続くのだった。


 『セラフィムブラスター』が空を切り裂いて飛べば、少し遅れて大量の銃弾が地面を穿つ。
 讃美歌の如く何処までも響き渡る砲声は、進路上に存在する者全てを打ち倒す絶望そのものだ。
「お願い!」
 だがそれらは地上の猟兵を直撃する寸前で、ティファーナの創造した鋼鉄神に跳ね返される。
「……おらっしゃあー!」
 鋼鉄神の陰から躍り出て、弾雨を避けつつシンは近くの建物の陰へと身を隠す。
『――』
 彼に照準を集中すべく、ふわりとした動作でスピードを落とすオブリビオン。だが。
「――逃がさぬ!」
 そこに横合いから突っ込むのは、レモンだ。
 速度こそ大きく勝っているものの、要所要所で空中戦を挑んで来るレモンを前に、オブリビオンは一箇所に留まる事を許されない。
 高い飛翔能力を持つ『セラフィムブラスター』の射程は、実質、マンション全体と見て良いだろう。
 だがそれにも拘らず、戦いの主導権は猟兵側が握っている。敵の飛行能力への対策と、個々の猟兵の用意した手札が噛み合った結果だ。
 そして、時間と共に伏せられた札も揃いつつある。
 空を翔けるオブリビオンを追うように、少し離れた建物の屋上を移動するのは、アンナだ。
 老朽化した建物を砕いて降りかかる弾の雨の中を素早く抜け、ビル同士の隙間を跳躍。そのまま屋上に設置された貯水タンクの陰に転がり込む。
 アンナはマンションの地形を把握する事に努めていた。その甲斐もあり、闇に身を溶け込ませながらの彼女の追跡は、徐々にそのスピードと正確さを増していく。
 同時にアンナは、空中のオブリビオンの様子を注視してもいた。
「……行くよ!」
 そこではティファーナが幾度も宙を跳ね、レモンと入れ替わりにオブリビオンの至近距離へと迫っていた。
 絢爛豪奢な衣装に包まれた体をアクロバティックに躍らせ、地上に向けて、金色の尾を一閃。そのまま叩き落とそうとする。
 オブリビオンは体を旋転させるも、小回りが利かないのか、たちまち巨大な翼を打ち据えられ、空中で体をぐらつかせた。
 観察を続けていたシンとアンナに、閃きが走る。
(「――デビルガトリング」)
 飛行能力を除けば『セラフィムブラスター』の持つ、唯一の武器。
 それはアンナにとっては暗殺の隙を作り出すものに外ならず、シンにとっては実の所、存在しないも同然であった。
 尚も続く戦いの音の中で、シンは静かに自身の権能を行使する。
 同時に、ひっきりなしに火を噴いていたガトリングが、咆哮を止めた。
 ――今のオブリビオンの認識には、その手にある筈のガトリングは六門とも存在しない。シンの手で認知情報を改竄されたのだ。
 かろうじて意識を取り戻す『セラフィムブラスター』だが――続いて翼に痛みが走った。
 それも刃物で直に切り刻まれたかのような、鋭く強烈な激痛だ。
「……ま、現と幻ってのは曖昧なもんだ」
 たまらず身を捩るオブリビオンはみるみる高度を落とすと、風に揺られるように建物の隙間へと姿を消すのだった。


 シンの手により『セラフィムブラスター』が高速飛翔能力を封殺されたのは間違いない。ガトリングに対する認識妨害も、断続的に受け続けている。
 だがそれでも微笑みを絶やさず、彼女は建物を背に掃射を送り込んで来る。
「笑顔なら負けないよ! プリンセスガディスハート!!」
 辺りに立ち込め始めた硝煙を切り裂き、ティファーナの両掌から放たれたハート型の光線が、オブリビオンの体に直撃した。
 ティファーナに向けて反撃の銃撃を放つべく、オブリビオンがその体をゆっくりと回転させる。
 共に動く巨大なガトリングにより、形成された死角。
 そこに存在する窓が――音も無く開かれる。
 黒い光が走った。
「……獲った」
 アンナの呪われし妖刀が、翼の一つを根元から斬り落としていた。
 それだけでなく、剥き出しの腹部を深々と貫いていた。
 致命傷。オブリビオンがその笑みを消し去る。
 アンナが刃を引き抜けば、力の失われた体はたちまち降下を始めた。
 斬られた翼がどさりと地に落ち、続いて落下してきたオブリビオンも同じ運命を辿る――直前で、残る五翼を羽ばたかせ、かろうじて体勢を立て直す。
 だがその時、シンが凄まじい早業で間合いに飛び込んだ。
「やっと地上に降りて来たな? 『掃除』開始だ!」
 その華奢な肩に向けて、振り上げたデッキブラシを――全力で叩き込んだ。
『――』
 頑丈に改造された得物による一撃は見た目以上に強烈だ。オブリビオンの表情に初めて苦悶の色が浮かぶ。
 だがすぐさま微笑みを浮かべ直すと、五翼をぶわりと広げ、満身創痍の体を再び宙へ舞い上げた。
 六門の銃口が再び回転を始め、地上の猟兵達へと向けられる。
 次の瞬間、路地を叩き始める無数の銃弾。
「あくまで抵抗するか……いいだろう! 黄金霊波動、最大出力!」
 その真っ只中で泰然と構えるレモンは、これまでで最大のオーラを纏い、その体を浮き上がらせた。
 そのまま、真正面から猛スピードで突っ込む。
 飛来する銃弾をものともせず、オーラで弾き、盾で弾き、あっという間に距離を食らい尽くした。
 ほぼ同時に現れた巨大な白蛇がオブリビオンの体を絡め取り、その紅眼から迸る光がオブリビオンの意識をたちまち侵す。
「堕天使よ、その力は使用禁止だ! ……ヤミちゃん!」
 レモンの声と共に敵の影からするりと這い出し、オブリビオンの柔肌を真一文字に切り裂いたのは、影の悪魔の少女、ヤミであった。
 迸る鮮血。重ねるようにレモンは、黄金色の輝きを纏った蛇腹剣クサナギを、力任せに振り上げる。
「骸の海へ沈め、オブリビオン!」
 真っ直ぐ縦に抜ける斬線。
『――』
 十字の傷を深々と刻まれ、微笑みを浮かべたまま墜落するオブリビオンは、最後に一度だけ翼をはためかせたかと思うと、着地際で無数の白く輝く羽根と化し、風に吹き散らされ消えていくのだった。
「ボクたちの勝利!」
 オブリビオンの最期を見届け、キラキラした笑顔で勝利のVサインを決めるティファーナ。
 戦いは終わったが、辺りには硝煙の匂いが立ち込め、銃弾による破損は至る所に刻まれている。
 だが一部区画を除き、建物が崩壊に至る程では無い。その点、家賃滞納悪魔達がマンションに齎した被害に比べれば、微々たるものであると言える。
「さって……まずはブギーキャンサーを追いかけるとするか」
「ブギーキャンサーを……?」
 軽く首を捻るアンナに、シンは軽く頬を掻くと。
「教える事が色々あるんだよ! 瓦礫の積み方とか……!」
 そう言ってマンションの外へと駆け出した。
「あたいもあの子達を追うよ。良い子達らしいけど、ホントに全員家賃を払ったのか、怪しいよねぇ~」
 元の元気な少女の口調を取り戻したレモンも、シンの背中を追って駆けていく。
「あっ、待って! ボクも!」
 ティファーナもまた二人の後を追う。賑やかさを好む彼女は、善良な悪魔達と一緒にお祭り騒ぎをしたいのだろう。
「……」
 陰鬱さを取り戻した路地に一人残されたアンナは軽く息を吐くと、壁を走る電線に視線を伝わせるようにして、顔を上空へと持ち上げる。
 そこには相変わらず紅い、しかし二度と銃声の響く事の無いであろう、静かな空が広がっていたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年01月17日


挿絵イラスト