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神は天にいまし すべて世は事もなし

#カクリヨファンタズム #お祭り2020 #クリスマス #にゃんこ #一人称リレー形式

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●カクリヨファンタズムにて
「こ、このままではマズい……」
「うん。皆、怒ってるよぉ。めちゃくちゃ怒ってるよぉ」
「もし、あの怒りが爆発してしまったら……」
 古ぼけた和室の壁際で妖怪たちがわなわなと震えていた。
 彼らや彼女らに恐怖を与えているのは、非情なる獣の群れ。
 部屋の中央にある掘り炬燵を占拠した十数匹の猫だ。
 炬燵の天板で香箱をつくり、あるいは炬燵布団の上に陣取り、あるいは炬燵布団から顔だけを出して、その猫たちは怒りを表明していた。
 冷ややかな目で睨みつける猫。
 尻尾の先端を苛立たしげに震わせる猫。
『ん゛な゛ぁぁぁ~』と威嚇の声を発する猫。
「ああ! 猫様がこんなにも怒ってるなんて!」
 可愛くも恐ろしい獣たちが放つプレッシャーに耐えきれなくなったのか、一人の妖怪が頭を抱えて叫んだ。
「世界はもうお終いだぁー! カタストロフがやってくるぅー!」

●グリモアベースにて
「今年もまたジングルがベルっちゃう日が来たな……もぐもぐ……めりくりー、めりくりー……もぐもぐ……あ? 『めりくり』って死語だったりする? ……もぐもぐ……」
 伊達姿のケットシーが猟兵たちの前でブッシュ・ド・ノエルをまるかじりしていた。
 グリモア猟兵のJJことジャスパー・ジャンブルジョルトである。
 ブッシュ・ド・ノエルの長さが半分ほどになったところで、JJは本題に入った。
「しかーし! ジングルがベルっちゃうからといって、浮かれている暇はないぜ。毎度のことだから驚かないかもしれないが、カクリヨファンタズムにカタストロフの危機が迫ってんだよ」
 確かに毎度のことではあるが、だからといって気を抜くような猟兵たちではない。真剣な顔をして、JJの話を聞き続けた。
「カクリヨファンタズムの一角に『猫屋敷』と呼ばれている空き家がある。通称から察しがつくだろうが、大量の猫が住み着いている家だ。猫が集まれば、自然と猫好きも集まる。ジングルがベルっちゃう日といえども……いや、そんな日だからこそ、猫好きな妖怪たちが猫屋敷に集い、クリスマス・パーティーを開こうとしたと思いねえ。ところが、その妖怪たちは決して犯してはならない過ちを犯しちまったんだ」
 JJは思わせ振りに間を置いて(話を中断したついでに、口の周りについたココアクリームを舐め取って)、その『犯してはならないミス』を皆に告げた。
「なんと、猫用のごはんを持っていかなかったんだ! うっかりさんにも程があるよなー!」
 思わず息を呑み、衝撃のあまり硬直する猟兵たち。
 いや、訂正しよう。
 思わず息を呑み、衝撃のあまり硬直する約半数の猟兵たち。
 残りの約半数は溜息をつき、別の意味で衝撃を受けて脱力していた。
「猫缶もカリカリもペット用ジャーキーもちゅーるちゅるできる魅惑の液状おやつもないもんだから、猫たちはおかんむりだ。あ? 『おかんむり』って死語だったりする? まあ、それはさておき、この事態を放っておくわけにはいかねえよな。『箸が転んでもカタストロフが起きる』なんて言われているカクリヨファンタズムのことだから、腹を空かせた猫の怒りのせいでカタストロフが起きるかもしれねえ」
 そう、起きるかもしれない。可能性は1%にも満たないだろうが、0%ではないだろう。
 この恐るべきカタストロフを回避するための術はただ一つ――猫用のごちそうだのなんだのを用意してカクリヨファンタズムに行き、猫たちの機嫌を取ること。
 まあ、ようは猫たち(と猫好きの妖怪たち)と一緒にクリスマス・パーティーに興じればいいのだ。
「かなりハードな任務になると思うが……頼んだぜ。カクリヨファンタズムの未来はおまえさんたちの肩にかかってるんだ!」
『いや、かかってねーし』と心の中でツッコミを入れる約半数の猟兵たちと『任せておけ!』と燃え上がる残りの猟兵たちの前で、JJは転送の準備を始めた。


土師三良
 土師三良(はじ・さぶろう)です。
 このシナリオは1章のみで完結するクリスマスシナリオです。
 オープニング発表と同時にプレイング募集を開始しますが、リプレイの執筆はゆっくりめなので、スピードを重視されるかたは御注意ください。

 シナリオの内容はといいますと、掘り炬燵のある猫まみれの和室でのパーティーです。猫たちはJJ曰く『おかんむり』なので、ごはんやおやつをあげてください。猫たちがお腹いっぱいになれば、カタストロフの危機は去ります。そもそも、そんな危機が本当にあったのかどうかはさておき。
 猫だけでなく、猫好きの妖怪たちもいます。また、猫の中には本物の猫じゃない猫(半妖半猫?)も混じっています。そういう猫モドキには、本物の猫には食べさせてはいけないもの(チョコとか)をあげても大丈夫かと。
 猫モドキのJJもパーティーに参加していますが、絡む必要はありません。絡むにしても遠慮や気兼ねは無用です。煮るな焼くなとご自由に。

 それでは、皆さんのプレイングをお待ちしております。
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第1章 日常 『カクリヨファンタズムのクリスマス』

POW   :    カタストロフを力ずくで解決して、妖怪達とクリスマスパーティーを楽しむ

SPD   :    カタストロフから妖怪達を救出して、クリスマスパーティーを楽しむ

WIZ   :    カタストロフの解決方歩を考えたり、クリスマスパーティーの企画や準備をする

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●幕間
「世界はもうお終いだぁー! カタストロフがやってくるぅー! ……って、あれ?」
 頭を抱えて叫んでいた妖怪が我に返り、仲間たちに言った。
「よく考えたらさー。ペットショップとかスーパーにでもひとっ走りして、猫様のお食事を買ってくれば済む話じゃね?」
「それもそうだな」
 と、別の妖怪が頷いた。
「でも、誰が買いに行く?」
「公平にじゃんけんで決めましょうよ」
「ふざけるな、サトリ! おまえが勝つに決まってんだろうが!」
「じゃあ、にらめっこはどうかな?」
「のっぺらぼうの俺に死ねと?」
「腕相撲だ!」
「黙れ、ゴーレム」
 妖怪たちが揉めている間も猫たちの怒りのボルテージは上がっていく。
 世界はこのままカタストロフを迎えてしまうのか?
 否。それはない。
 頼れる猟兵たちが動き出したのだから。
 怒り狂う猫たちの胃の腑を満たすために。
 ついでにもふもふを満喫するために。
バロン・ゴウト
ふぉっふぉっふぉ、メリークリスマスなのにゃ!
バロンサンタと【ライオンライド】で呼び出したシトラスが猫さん達にプレゼントをお届けにゃ!

猫さん達には猫缶【ねこねこグルメ】を沢山持ってきたのにゃ。
ボクも大好きなチキン味を始め、マグロ味、カツオ味、ビーフ味にホタテ味もあるのにゃ♪
お皿に移すのは一人では大変だから、周りにいる妖怪さん達にも手伝ってもらうのにゃ。
ボクとシトラスの持ってきたごはん、気に入ってもらえたかにゃ?

絡み、アドリブ大歓迎にゃ。


木霊・ウタ
心情
世界の危機なら
見過ごせないぜ
Xマスってんなら猶更だ
世界を救おうぜ(ぐっ

行動
Xマスだし
カタストロフを止める為だし
ちょいと奮発して
いいモンを持っていくか

肉屋や魚屋で買った
鳥のささ身とか
魚の切り身とか
人間でも食べられるやつ

ほれほれ
沢山食べるといいぜ


JJも羨ましいだろ?
アンタにもXマスプレゼントがあるぜ
いつも世話になってるからな
と鰹節の本節を

あ、削り器はないからな
でもJJなら丸かじりでもいけるかもな(笑


パーティに参加
隣とか膝の上とかにうずくまる猫のもふもふ
温もりを感じながらギターを爪弾くぜ
猫への癒しの音色としてXマス曲を


夢ヶ枝・るこる
■方針
・【POW】使用
・アド/絡◎

■行動
猫さん、可愛いですよねぇ。
折角ですし、ゆっくりさせていただきましょう。

【豊饒現界】で[料理]を強化、沢山の猫さん用のご飯をご用意して参りますぅ。
メインは『蒸しささみ』を大量に、生の部分が残らない様しっかりと火を通し、食べやすい様ほぐしておきますねぇ。
同時に、細かく刻んだ大葉やネギ、ポン酢やお醤油等をご用意しておけば、猫さんと一緒に食べることも出来ますぅ。
後は『煮干し』もご用意しておきましょう。
此方も、少しゆでて食べ易くしておきますねぇ。

猫さん達の機嫌が直りましたら、後は猫さん達を撫でつつ、一緒におこたでぬくぬくまったりしましょうかぁ。
至福の時、ですねぇ。


菱川・彌三八
猫だってェ云うからヨ、ちいと方々回って飯ィ集めて来たゼ
好みや食い慣れてるもんが何か分からねェからな

そら、先ずは板海苔だ
俺ン所の三匹が好きでヨ
削り節と混ぜてやると指まで舐めやがる
次は干し肉
生が無理なら此奴にしねェと云われたンだが…食える奴ァ居るかい?
後ァ…此奴だ
この、此れェ…銅だか銀だかの箱…開け方が分からねェんだけどよ…
猫の為だけの飯らしい
贅沢なもんだな

食う間は見守るが、終わったら膝に呼ぶ
こう、俺ん所なァ懐に入るのが好きなんだよ
一匹くれえ入れても良いだろう
右の手で眉間を撫でて、鼻付けて、首の後ろを掻いて
左は別の猫を指で遊ばせ
あァ、堪んねェな
猫だきゃあ乗られようが踏まれようが構わねェ

“猫”だけな



●菱川・彌三八(彌栄・f12195)
 絵を生業にしてる者にとっちゃあ、カクリヨファンタズム来訪ってのは良い刺激になるんじゃねえか?
 なにせ、石を投げれば妖怪に当たるってな世界だ。人外、物の怪、魑魅魍魎が跋扈する様を見た日にゃあ、物臭な俺でも筆を手に取って百鬼夜行の図絵なんぞを描きたくなるかもしれねぇ。

 ……なんて思ったら、大間違い。

 実際のところは楊枝でつっつかれたほどの刺激もねえや。このボロ屋(と言っても、俺が住んでる長屋とどっこいどっこいだが)の中に集まってる妖怪どもと来た日にゃあ、ちっとも『跋扈』なんかしてねえんだからよ。雁首そろえて、俺たち猟兵をぽかーんと見てやがる。
 で、その『ぽかーん』から覚めると――
「待ってました、猟兵さぁーん!」
「世界を救ってくれぇーっ!」
「頼んだぞぉー!」
 ――やんややんやと拍手喝采。大向こうかよ。俺ァ、何屋だ?
 思わず溜息をついちまったが、呆れかえってるのは俺だけらしい。他の猟兵たちはやる気満々ってな風じゃねえか。その中でもとくに燃えてるのがウタだ。所謂ブレイズキャリバーってヤツだから、名実ともに燃えてんだ、これが。
「任せとけ!」
 拳を握りしめて、妖怪たちの声援に応えてやがる。師走だってえのに暑苦しいこったなぁ、おい。
「世界の危機を見逃すわけにはいかねえ! クリスマスってんなら、尚更だ! 皆で世界を救おうぜ!」
 世界の危機を見逃す以前に別のものを見失っちまってんだろ……と、半畳を入れる間もなく、妙ちくりんな着物(南蛮の女中服みてえに拵えられてんだ)を纏った娘が間延びした声を出した。
「はい。救いましょう~」
 こいつの名はるこる。バーチャルキャラクターとかいうのらしい。
「それにしても――」
 るこるはにへらにへらと笑いながら、部屋のまんなかにある炬燵に目をやった。
「――皆さん、可愛いですよねぇ」
 その炬燵にたむろしているのは、ウタが言うところの『世界の危機』とやらを呼び込もうとしている毛だらけの小さな奴ら。
 そう、大小様々色とりどりの猫の群れだ。
 そのうちの半分ほどは、虫ケラでも見るような目で俺たちを睨みつけてやがる。残りの半分はそっぽを向いてらぁ。猫が目を逸らすのは親愛の証しだとかなんとか聞いたこともあるが、この逸らし方はそんなんじゃねえよな。絶対に。
 だが、そんな風当たりのキツさもなんのそのとばかりに――、
「ふぉっふぉっふぉっふぉ!」
 ――バロンが芝居気たっぷりに笑ってみせた。
 ちなみにこいつはケットシーだ。
 猟兵には世界の加護が働くから、どんな姿をしていようと、他の奴らに違和感を与えるこたぁねえ……という常識は心得ているつもりだが、それでも首を捻らずにはいられねえな。『他の奴ら』ってのが妖怪であるこのカクリヨファンタズムでは、ケットシーはどんな風に見えてんだ? 猫又とか?

●夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)
 妖怪さんたちの目にはバロンさんの姿がどのように映っているのか?
 それは判りませんが、本物の猫たちに負けず劣らず可愛く見えてることは間違いないですよね。
 だって、今日のバロンさんは――
「ふぉっふぉっふぉっふぉ!」
 ――その笑い声に相応しいサンタの衣装を着ているんですから。赤い衣装と黒い被毛のコントラストが素敵です。お鼻のところが白いので、サンタさんの髭っぽく見えるところもいいですねぇ。
 そんな可愛い猫耳サンタさんの横に控えているのは、体長六十センチほどのトナカイさんならぬ金色のライオンさん。きっと、ユーベルコードで召喚したのでしょう。
「バロンサンタが猫さんたちにプレゼントをお届けにゃ!」
 背負っていた白い袋を下ろし、その中に上半身を潜り込ませるバロンサンタさん。ライオンさんも袋に頭を突っ込んでいます。
 ややあって、一人と一頭は袋の中身を取り出し、畳の上に並べ始めました。一人のほうは手(前足?)を使って、一頭のほうは口を使って。
 あ? 我関せずという態度を取っていた猫たちが興味を持ったようですよぉ。まあ、当然ですね。バロンサンタたちが並べているのは――
「――猫缶か」
「そうにゃ!」
 ウタさんの言葉にバロンサンタさんが頷き、その猫缶の商品名を告げました。
「UDCアースの猫に大人気の『ねこねこグルメ』にゃ! かく言うボクも大好きにゃ!」
「おう。俺も同じようなものを持ってきたぜ」
 サムライエンパイアの絵師である彌三八さんも猫缶を取り出しましたよぉ。
 それを見て、ウタさんがくすくすと笑っています。
「ちょんまげ結った鯔背な兄さんと現代的な猫缶ってのは妙な取り合わせだな」
「いや、俺だって、こんなもんが自分に似合うとは思っちゃいねえがよ。方々まわって、とりあえず猫用の飯らしきものはなんでもかんでも買い集めてきたんだ。好みや食い慣れてるもんがなにか判らねぇからな」
 確かに。猫って、好みがうるさいですもんねぇ。
「それにしても……猫のためだけの飯たぁ、贅沢な話だわな。いや、猫のためだけってわけでもなかったか。さっき、バロンも大好きだとか言ってたな」
「うん! 一番のお気に入りはチキン味にゃ!」
「ほう。いろんな味があるのかい。しっかし――」
 眉間に皺を寄せる彌三八さん。
「――この銅だか銀だかで出来た丸い代物はどうやって開けるんでぇ?」
「イージーオープン缶ですから、そのまんま開けられますよぉ」
「いや、るこるよ。そもそも、そのイージーなんたらが判らねえんだって」
 あらー。

●木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)
 サムライエンパイア出身の彌三八は猫缶に悪戦苦闘しているけど、バロンのほうは『ねこねこグルメ』とやらを手早く開けた。とはいえ、一人(と一頭)で開けるには数が多すぎる。
「皆も手伝ってにゃー」
「おう!」
 と、妖怪たちが元気いっぱいに答えてバロンを取り囲み、缶を開けて中身を皿に移し、次々と猫たちに差し出して……と言うと、なんか整然と進行しているみたいだが、実際はカオスな状態だ。『プシュ!』っという小気味のいい開缶音が聞こえた瞬間に猫たちは塩対応をやめてバロンたちに突進し、皿に移されるまで待たずに『ねこねこグルメ』にむらがっている。
「うわー! 『ねこねこグルメ』だけではとても足りないにゃ! 助けてにゃー!」
「おまかせください」
 救いを求めるバロンに応じて、るこるも荒ぶる猫たちに生贄を……もとい、食い物を差し出した。
「蒸しささみですぅ。料理の腕前を上昇するユーベルコードを使いましたから、美味しさは保証つきですよ。まずは食べやすいようにほぐして、と……」
『ねこねこグルメ』の時と同様に猫はほぐされるまで待ったりせず、我先にとかぶりついた。勢い余って、るこるの指に噛みついちまった奴もいる。るこるは『いたたたた!』と小さく悲鳴をあげてるが、どこか嬉しそうでもある。猫に噛まれることはむしろ御褒美ってか?
 さて、俺もこの暴君たちにクリスマスのごちそうを献上するかね。『ごちそう』ってのは大袈裟に言ってるわけじゃないぜ。ちょいと奮発して、いいもんを買ってきたんだ。クリスマスだからな。
「イージーなんたらを開けるのは後回しにして、まずはコイツからいってみるか」
 彌三八が黒いものを取り出した。なんだと思って、よく見てみると、それはちょっと広めの海苔だった。
「にゃおー!」
 と、何匹かの猫がテンションを上げて彌三八の前に滑り込み、あっという間にその海苔をたいらげちまったに。パリパリと良い音を立てながらな。
「俺んところの三匹がコイツが好きでよぉ。削り節と混ぜてやると、指までぞぉーりぞぉーりと舐めてきやがる」
 削り節は混じってないが、猫たちは彌三八の指を必死に舐めてる。海苔を食べ尽くしたことに気付いてないのか、それとも海苔が消えたという現実を認めたくないのか。
「削り節か……」
 と、上等な魚の切り身(くどいようだが、奮発したんだぜ)を猫たちにやりながら、俺はそう呟いた。
「俺、実は鰹節も持ってきたんだ。削ってないし、削り器も用意してきてないけど」

●バロン・ゴウト(夢見る子猫剣士・f03085)
 ウタさんが猫たちへの餌やりをちょっと中断して、鈍器としても通用しそうな鰹節をじゃじゃーんと掲げたにゃ。
「これはアンタへのプレゼントだ。いつも世話になってるからな」
「やったー!」
 飛び上がらんばかりに(っていうか、本当に飛び上がってるにゃ)喜んで鰹節を受け取ったのはボクの同族のJJさん。猫たちに混じって、ちゃっかり『ねこねこグルメ』を食べてたのにゃ。
 でも、いかに食いしん坊のJJさんといえども、鰹節を丸かじりというのは無理じゃないかにゃ?
「にゃははははー!」
 ……無理じゃなかったにゃ。
 嬉しそうに笑いながら、かぶりついているにゃ。
 強いにゃあ。
「さて、次は干し肉だ」
 と、JJさんには見向きもせずに彌三八さんが新たなごちそうを用意したにゃ。
「生が無理ならこれにしねぇと言われたんだが……食える奴ぁ、いるかい?」
「にゃー!」
 さっきまで海苔味の指を舐めてた猫たちが『ここにいるぜ!』とばかりに鳴いて、干し肉に飛びついたにゃ。
「んなぁ~~~ん!」
 おっと! 『ねこねこグルメ』を食べ終えたネコたちが『もっと寄越せ!』と催促してるにゃ。
「よしよし。まだまだいっぱいあるから、好きなだけ食べるといいにゃ」
 量だけじゃなくて種類も豊富にゃ。ボクのお気に入りのチキン味の他にも……マグロ味! カツオ味! ビーフ味! それにホタテ味もあるにゃー!

「私たちもささみを食べられるように、大葉やネギやポン酢や醤油も用意してきたんですよぉ」
 炬燵でぬくぬくしながら、るこるさんが世にも幸せそうな顔をしてささみを食べてるにゃ。
 でも、猫たちはそれ以上に幸せそうな顔をしてるにゃ。みーんな、おなかいっぱいになって(僕たち以外の猟兵さんも買い出しに行って、猫たちに食べ物を沢山あげたのにゃ)思い思いの格好でくつろいでいるにゃ。
 僕もくつろぎ中。シトラス(あのライオンのことにゃ)と一緒に炬燵で丸くなってるのにゃ。
 猫たちがゴロゴロと喉を鳴らす音があっちこっちから聞こえてくる。それに優しい音楽も。ウタさんが炬燵に入って、ギターを爪弾いているからにゃ。
 ゴロゴロとギターのハーモニーは耳に心地良いにゃ。しかも、その心地よい合奏にシトラスの寝息まで加わったにゃ。なんだか、僕も眠くなってきたにゃあ~。
 瞼が落ちそうになった瞬間、彌三八さんの声が聞こえてきたにゃ。
「俺んところの猫ァ、懐に入るのが好きなんだが、そういうのがここにも一匹くれえ……おっと、言ってる間に入ってきやがった」
 見てみると、彌三八さんは懐に片手を突っ込んでいたにゃ。きっと、着物の中に潜り込んだ猫を撫でているんだにゃ。ちなみに反対の手は別の猫を撫でてるにゃ。『二本っぽちじゃあ、とても足りねえ。ここにいる猫の数だけ腕が欲しいぜ』なーんて思ってたりしてにゃ。
「あぁ、たまんねぇなぁ」
 懐を覗き込みながら、彌三八さんは優しく微笑んだにゃ。
「猫だきゃあ、乗られようが踏まれようが構わねぇ」
「マジで? じゃあ、俺も乗せてもらおうっと!」
 鰹節を抱いたJJさん(ちなみに鰹節はもう四分の一くらいの大きさになってるにゃ)が彌三八さんに駆け寄ったにゃ。
 だけど――
「『猫』だきゃあな」
「……す、すいません」
 ――彌三八さんにぎろりと睨まれると、両耳を伏せて後退したにゃ。
 弱いにゃあ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

天道・あや
【雑居ビル】

うーん、話には聞いてたけど本当に些細な事で世界崩壊しそうになるんだ……にゃんとも大変な世界だなー。……ま、でも崩壊させない為にあたし達がいるんだし、いっちょ世界を救いにゃすか! 猫よし!あたし達よし!餌……買いに行かなくては!

足止め組が猫さん達の機嫌をとってる内にあたし、ルエリラさん、アカネさん買い出し!スーパーにレッツゴー! ほら!そこの妖怪さん達もくる!【ダッシュ、グラップル】

スーパーに着いたらUC発動!幽霊さん達にも荷物運ぶ手伝って貰って沢山買う!

え?お金?そりゃー、妖怪さんと……ジャスパーさん持ち?

――はい!ということでお待たせしにゃした!猫さん達!どうぞ、召し上がれ!


ヒトツヒ・シカリ
【雑居ビル】
しょうがないね!猫はかわいいから!
故に御飯を作ってもらうまでこの身を犠牲にしてでも機嫌を取るよ!

ツムギさんのUCでウチも小さく!
ほらほら猫ちゃんーウチも猫なんじゃよー仲間じゃよー(雪豹である
しっぽフリフリ、耳ピコピコ、じゃれてもええんよ!じゃれて遊ぼう!機嫌よくなろう!
ダンス!パフォーマンス!誘惑!これらの揃ったウチの猫ムーブをみよ!
もし猫でないとバレれば…ウチはもうだめかもしれんが、仲間がきっとがんばってくれる…

マタタビ入のお料理なんてもってこられたら、ウチもメロメロになってしまうかもしれん
ああでも、でも、クリスマスじゃし無礼講じゃよもうどうとでもなーあれ


ルエリラ・ルエラ
【雑居ビル】
お怒りキャッツ!
クリスマスにおまえの分のご飯忘れた。なんて言われたらそりゃー温厚だと街で評判な私も怒り狂っちゃうかもしれないから仕方ないね
私達が腕を振るって解決しよう!

猫様に我慢してもらうのは別働隊に任せてアカネとあやと一緒に買い出しいっくよ
猫様にお出しする新鮮な芋煮の材料求めてえんやこらー。チュールよーし。マタタビよーし。サメよーし!
うんうん、品揃えのいいスーパーでよかった。…よすぎない?よく置いてあったね。主にサメとか
ともあれ材料は揃ったし、合流してお料理開始!とっておきのサメマタタビチュール芋煮で猫様達の胃袋ゲット!
特製芋煮でメロメロになったとこでみんなまとめていただきだー!


ツムギ・オーギュスト
【雑居ビル】
ねっ…ネコチャンがおかんむりだー!?
このままじゃ…ひとモフもできずクリスマスが終わっちゃうー!!
そんな悲しいパーティーになんか絶対させないもんね!いっちょ猫と世界を救いに行きますか!

買い出し組が戻るまで猫ちゃんのイライラが爆発しないようにしないとね!
メダルをあたしとヒトツヒちゃんにペタッと!小さくなーれ!
羽をつけたネズミの玩具ってあるよね!
アレみたいに[ラ・ジュネス]をヒラヒラっとして猫ちゃんをウズウズさせて…ダッシュ!
走って飛びこえ鬼ごっこだー!

…ふっふっふ。遊び回って消耗した体力に美味しいご飯…!もはや眠みには抗えますまい!
さあさあ存分にモフりつくさせてもらいましょうか!


暁・アカネ
【雑居ビル】

前に妹が猫と戯れてきたって言ってたから来たかったのよね!
それにしても猫ちゃんカタストロフ!世界が猫になるのかしら?ちょっと見てみたい…!

急いで買い物行ってくる!武器も置いて身軽に!
えーと猫ちゃんの好物…ちーずとか好きって聞くわ!これは買いよ!
後は…むっ!ちゅーる!おかんむりな猫ちゃんも飛びつくと噂の!これがあればイチコロね!

急いで帰ってきたら猫ちゃん達にご飯!
ちゅーる目的の子が沢山いすぎてわからん!猫っぽい子が居たら片っ端からあげちゃおう!
猫ちゃんが満たされたらゴロゴロと転がしてお腹ナデナデ!
いっぱい遊んじゃうんだから!そーれみんなゴロゴロ!
ジャスパーさんもおまけにゴロゴロ!



●暁・アカネ(アホの狐・f06756)
「ん゛ぁぁぁ~っ!」
 飢えた獣が牙を剥き出して唸ってる。飛びかかるタイミングでも計るかのように頭を沈めて、針のように細い瞳孔で睨みつけながら。
 私は体の震えを必死に抑えていた。妖狐として生を受けたのだから(この立派な耳と尻尾を見よ!)、私にだって獣性とでも呼ぶべきものが備わっているはず……でも、勝てる気がしない。
「か、か……」
 私は喉の奥から声を絞り出し、そして、それを叫びに変えた。
「……かわいー!」
 そう、目の前にいる『飢えた獣』はとてもかわいかった。
 めちゃくちゃ、かわいかった。
 だって、猫ちゃんだから!
 もう体の震えを抑えるとか無理だわー。震え続けるしかないわー。もちろん、これは歓喜の震えだよ。
「み゛ゃお゛ぉぉぉ~ん!」
 別の猫ちゃんも同じように唸っている。さっきの子は鉤しっぽの三毛猫だったけど、こっちの子の種類は判らない。炬燵布団に潜り込んで、鼻先だけを覗かせてる状態だから。でも、かわいいことに変わりはなーし。
「うみゅうぁぁぁ~ん!」
 更に別の猫も……って、違った。これはキマイラのヒトツヒさんの声。目尻を下げて、斑模様の尻尾をぶんぶん揺らして、猫たちを眺めてる。
 他の猟兵もだいたいそんな感じ。みーんな、骨抜き。
「いやいやいやいや! デレッデレしてる場合じゃないにゃ!」
 と、我に返ったのはスタァ候補生のあやさん。いえ、語尾に『にゃ』が混じってるあたり、完全に我に返ったわけじゃないのかもしれないけど。
「だって、このままだとカタストロフっちゃうかもしれないんにゃから!」
 そうそう。カタストロフの危機が迫ってるんだったね。でも、猫ちゃんによるカタストロフっていうのには興味があるな。世界が猫一色に染まったりするのかしら? それはそれで見てみたい……と、ちょっぴり不謹慎な思いを抱いたりなんかして。
 でも、その思いはすぐに吹っ飛ばされた。
 あやさんの元気な声で。
「さあ、いっちょ世界を救いにゃすか!」
「うん!」
 と、頷いたのはツムギさん。アリス適合者である赤毛の女の子。
「このままじゃ、ひとモフもできずにクリスマスが終わっちゃもんね! そんな悲しいパーティーになんか絶対にさせない!」
「そのとーり!」
 そう言いながら、青いリボンとケモ耳なデバイスを頭に装着したエルフのルエリラさんがあやさんの横に立った。
 私とヒトツヒさんとツムギさんもささっと並んで一列横隊。
「猫よし!」
 あやさんの声に合わせて腕を前に突き出し、指さし確認。
「あたしたちよし!」
 あやさん以外の面々が二人一組になって向かい合い、お互いを指さし確認(あやさんは自分の顔を指さしてる)。
 そして、また前に向き直って――
「餌よ……し?」
 ――猫ちゃんたちの餌を指さし確認しようと思ったけど、そんなものはなかった。
「買いに行かなくてはー!」

●ツムギ・オーギュスト(dance légèrement・f19463)
「◇ゃ※ん♪☆〒~っ!!」
 はうあっ!? 炬燵布団の奥から鼻先だけ覗かせてた猫ちゃんが顔全体を出して、表記不能な鳴き声をあげてるぅ。人間の言葉に訳するなら、『グダグダやってないで、さっさとメシを寄越すにゃあ!』ってところかな? まあ、そうじゃなかったとしても、おかんむり度が上昇していることは間違いないよね。
「ここはあたしとヒトツヒちゃんに任せて、皆は猫ちゃんの御飯の買い出しに行ってきてぇ!」
 傍にいたヒトツヒちゃんの肩に手を置いて、あたしは仲間たちに『俺にかまわず先に行け』ムーブを披露した。
「よし! 行こう!」
「後は頼んだよ!」
「私たちが帰ってくるまで持ちこたえてね!」
 ルエリラちゃんとアカネちゃんとあやちゃんが『絶対に死ぬんじゃないぞ』ムーブで部屋から飛び出していった……と思いきや、あやちゃんだけがすぐに引き返してきて、妖怪さんたちに声をかけた。
「ほら! そこの妖怪さんたちも来る! 荷物持ちが足りないんだから!」

 ……というわけで、三人の仲間たち&何人かの妖怪さんたちが買い出しミッションを実行している間、あたしとヒトツヒちゃんが猫ちゃんの相手をすることになったわけ。
「よーし! この身を犠牲にしてでも、猫ちゃんたちの機嫌を取るよ! そりゃあもう取って取って取りまくってやるけんね!」
 苛立たしげに唸る猫ちゃんやガン無視を決め込んでいる猫ちゃんを前にして、決意を新たにするヒトツヒちゃん。うん、可愛くも頼もしい。
「とはいえ、どんな風に取ったもんかのう?」
「これを使ってみよっか」
 あたしはポケットからメダルを取り出し、それを媒介とするユーベルコードの名前を叫んだ。
「オニヴァ・アンサンブルゥ~!」(てってれ~♪)
 ちなみに『てってれ~♪』ってのは居残り組の妖怪の一人がアカペラで付けてくれたSEだよ。
「ヒトツヒちゃん。ちょっと、こっちを向いて」
「ん?」
 ヒトツヒちゃんの額にメダルをペタッ! すると、あら不思議! ヒトツヒちゃんはしゅるしゅると縮み、あっという間にネズミくらいのサイズになりましたー。
「おー!? こりゃあ、すげえの!」
 黒い翼をはばたかせながら、楽しそうに自分の体を見回すヒトツヒちゃん。ちっちゃくなったことで可愛さが倍増してるぅ……と、萌え死んでる場合じゃなかったね。あたしも自分の体にメダルをペタッ! しゅるしゅるしゅるしゅる~! はい、ちっちゃくなりましたー。
「さて、それじゃあ――」
 あたしは猫ちゃんたちに語りかけた。もちろん、どの猫ちゃんも相対的に大きくなってるよ。熊ちゃんサイズ……いえ、もっと大きいかな?
「――あそぼっか!」

●天道・あや(目指すぜ!皆の夢未来への道照らす一番星!・f12190)
 はい、スーパーに到着ぅ!
 カクリヨファンタズムだけあって、お客さんも店員さんも妖怪オンリー。狐っぽい妖怪の姿もちらほら見えるけど、アカネさんほど立派な尻尾を持った妖怪は見当たらないね。
 そのアカネさんが店内に視線を巡らせた。
「ぱっと見はUDCアースとかの店とそんなに変わらないけど、品揃えのほうはどうかな?」
「じゃあ、チェックしよー!」
 と、宣言したルエリラさんの両横に荷物係の妖怪さんたちがずらりと並んだ。
「にゅ~るよーし!」
 ルエリアさんの声に合わせて一斉に右を向き、指さし確認。
「マタタビよーし」
 一斉に左を向き、指さし確認。
「サメよーし!」
 くるっと半回転して、後方を指さし確認。
「うんうん。品揃えは問題なし……ってゆーか、逆によすぎない? 普通、サメとか置いてないよね」
「そもそも、なんでサメが必要なの?」
 と、あたしはルエリアさんにツッコまずにはいられなかった。
「必要ってわけじゃないけど、猫様にお出しするからには贅沢な食材を使いたいじゃない」
「『食材』ってことは、そのまんまあげるわけじゃないのね」
「当然! サメ&マタタビ&にゅ~るで豪華な芋煮を作っちゃうよー! さあ、みんな! 食材を買えるだけ買ってきてー!」
 ルエリアさんの号令に従い、店内に散開する妖怪さんたち。
 アカネさんも既に商品を手に取ってる。
 その商品とは――
「これがおかんむりな猫ちゃんも飛びつくという液状おやつね!」
 ――そう、ルエリアさんたちが選んだ食材の一つでもある『NIAOにゅ~る』。
「これがあれば、どんな猫ちゃんもイチコロ! だけど、念のために他のごはんも買っておこうっと。そういえば、猫ちゃんはチーズも好物って聞いたな」
 にゅ~るに続いて塩分控えめのペット用チーズを取り、更に他のアイテムも次々と取って、カゴに放り込んでいくアカネさん。
 では、あたしも買い物を始めるとしますか。だけど、荷物係が妖怪さんたちだけでは心許ないから(サメ肉の運搬に手を取られてるし)、ユーベルコードを使って他の助っ人も呼ぼうっと。
「できれば、お力をお貸しお願いしまーす!」
 丁寧に『お』を三つもつけて召喚したのは、幽霊船の船員さんたち。見た目はちょっとホラーが入ってるけど、歌って踊って楽器も弾けちゃうエンターテイナー集団なんだよ。
 タップを踏むかのごとき軽やかな足取りで船員さんたちは買い物を始めた。さっきも言ったように見た目はホラー寄りなんだけど、カクリヨファンタズムでは一ミリも違和感がないね。他のお客さんや店員さんも普通に接してるし。
「ねえねえ」
 と、アカネさんが買い物を中断して、あたしの腕をつんつんしてきた。
「私もルエリアさんもあやさんの幽霊楽団も色々とたくさん買っちゃってるけど、代金はどうするの?」
「そりゃー、妖怪さんと……あと、ジャスパーさん持ちということで」
 ごめんね、ジャスパーさん。

●ヒトツヒ・シカリ(禊も祓もただ歌い踊るままに・f08521)
 お師匠様(あやさんのことじゃよ)たちが買い出しに行っとる間に、バロンくんが持ってきた猫缶とか、ウタさんが持ってきた魚の切り身とか、るこるさんが持ってきた蒸しささみとか、彌三八さんが持ってきた板海苔とかのおかげで、猫ちゃんたちの機嫌はすっかり良うなったよ。
 これにて一件落着! ……なんてことにはならんかった。いや、確かに機嫌を直した猫ちゃんもおるけんど、そうでない猫ちゃんもまだまだ残っとるんよ。猟兵より猫ちゃんの数のほうが多いけんね。
 ちゅーことで、お師匠様たちが帰ってくるまで時間稼ぎをせにゃあ。
「ほーらほら、猫ちゃん。ウチも猫じゃよー。仲間じゃよー」
 言うまでもないとは思うけど、ウチは本当は猫じゃのうて、いろんな要素が混じったキマイラじゃけんね(耳や尻尾は雪豹じゃよ)。だけど、こんだけ小さくなっとるから、仲間だと思わせることができるかも。猫みたいに尻尾をふりふり~♪ お耳をぴこぴこ~♪ 翼をぱたぱた~♪ あ? いかん、いかん。翼は余計じゃったね。
「ヒトツヒちゃんってば、やっぱり可愛すぎ!」
「いや、ツムギさん。ウチのことはどうでもいいけん、猫ちゃんの気を引かんと……」
「そうだったー。じゃあ、いくねー」
 ツムギさんは一匹の猫ちゃんに目をつけて、リズムを取るかのように腰を振りだした。おしゃれなアリスクロス(なんでも『ル・シャルム』とかいう名前なんじゃと)の裾がひらひらひらひら~。なんか、猫じゃらしとかの猫用玩具を思わせる動きじゃのう。
 そんなものを見せられたら、猫ちゃんもじっとしちゃあおられんよ。目をきらーんと光らせたかと思うと、頭を下げてお尻を上げて、うずうずしてるような動きをしながら、ツムギさんをロックオン。
 でも、ツムギさんはそれを察したらしく――
「どぉーん!」
 ――いきなりダッシュ!
 何十分の一秒か遅れて、猫ちゃんもダッシュ!
「鬼ごっこだー!」
 狭い部屋ん中を楽しそうに走って、飛び越えて、滑り込んで、立ち上がってまた走り出すツムギさんと、それを追い続ける猫ちゃん。いや、『狭い部屋』ってことはないか。体が縮んどるから。
 ウチも負けとられんね。この狭くて広い部屋で、猫ムーブを再開じゃ! 尻尾をふりふり~♪ お耳をぴこぴこ~♪
 お? 寄ってきた、寄ってきた。猫ちゃんたちが寄ってきたー。でっかい顔(いや、ウチが縮んどるから、でっかく見えるだけじゃけど)を近付け、鼻をくんくんさせとる。
「んなー?」
 きょとんとした顔で鳴いとる猫ちゃんもおるね。猫だと思わせることができたかどうかは判らんけど、気を引くことはできたみたいじゃ。
「ほーら、じゃれてもえんよ? 一緒に遊ぼう!」
 尻尾を更に激しく降って猫ちゃんたちを誘っていると――
「ただいまー!」
 ――お師匠様たちが帰ってきた。なぜか、出かけていった時よりも人数が増えとるよ(幽霊みたいなのが何人も混じっとる)。
「おーかーえーりー!」
 ツムギさんがお師匠様たちに声をかけた。
 どたどたと走り続けながら。

●ルエリラ・ルエラ(芋煮ハンター・f01185)
「はい! ということで、お待たせしにゃしたー!」
 猫様たちに語りかけるあやの後ろで、幽霊船員たちが缶を開けたり、パウチの端を切ったりしてる。
 猫様たちはそれを行儀よく……待つわけないんだよねー。十数匹が一斉にダッシュしたよ。
「どうぞ、召し上がれ!」
 と、あやが言葉を続けたけれど、猫様たちの耳には届いてないみたい。皆、『うまうまうまぅ~』という奇声(猫様を飼ってる人にはおなじみの声?)をあげて、ごちそうを貪っている。
 幽霊船員だけじゃなくて、アカネのところにも猫様たちは群がっていた。もちろん、目当ては『NIAOにゅ~る』。
「ま、まさか、これほどの数の猫ちゃんが寄ってくるとは!? こうなったら、片っ端からあげちゃうしかないね!」
 大量の猫様にまみれて(ボリュームたっぷりの尻尾にもぐりこんでいる猫様もいる)悪戦苦闘するアカネの姿はどこか幸せそうでもあり……。
 でも、本当に幸せな思いをするのは猫様たちだよ。
 なぜなら、この私が腕によりをかけて、美味しい美味しい美味しいサメマタタビにゅ~る芋煮をつくるから!
 一口でも食べれば、もうメロメロになること間違いなーし!

 ……間違ってたみたい。
 あれから三十分ほどが過ぎた。猫様たちは一匹残らずお腹いっぱいになったらしく、そこかしこでリラックスしている。ウタのギターに耳を傾けたり、彌三八の懐に入ったり、バロンが召喚したライオンの背中の上で丸くなったり……。
「ふっふっふっ。遊びまわって体力を消耗したところに美味しいご飯の追撃! もはや、眠みには抗えますまい! さあさあ、存分にモフりつくさせてもらいましょうか!」
 うとうとと半分ほど眠っている状態で、ツムギ(元のサイズに戻ってるよ)にモフられまくっている猫様もいる。
「いっぱい遊んじゃうんだから! そーれ、ゴロゴロゴロー!」
『NIAOにゅ~る』で骨抜きにされ、アカネにお腹をなでなでされている猫様もいる。
 なのに……それなのに……私の特製サメマタタビにゅ~る芋煮でメロメロになった猫様は一匹もいない!
「まあ、しょうがないよ」
 と、あやが私の肩を叩いて慰めてくれた。ちなみに肩を叩いてないほうの手でちゃっかり猫を撫でいる。
「猫は熱いものが苦手だから」
 そう。猫様は猫舌だから、熱々の芋煮には興味を示してくれなかったんの。これは盲点だった!
 いや、だけど、挫けるのはまだ早いよね。ほどよく冷めたら、猫様たちも食べてくれるかもしれないし。
 それに誰も手をつけなかったわけじゃないんだよ。猫様の代わりに――
「う~ん……マタタビが利いて、ウチのほうがメロメロになってもうたぁ……」
 ――ヒトツヒ(元のサイズに戻ってる)が何口か食べてくれたの。
「あー……でも、でもぉ、クリスマスじゃし……無礼講っちゅうことで、もうどうにもでなぁ……zzzzz」
 あら? 眠っちゃった。
 ところで、無礼講といえば、アカネもかなり無礼講な感じ。
「みんな、ゴロゴロゴロー! ジャスパーさんもおまけにゴロゴロー!」
「やーめーろーよー」
 猫様だけでは飽きたらず、JJまで撫で始めてるし。
 その様子を横目で見つつ、私はあやに訊いた。
「JJにアレを渡さなくていいの?」
「うーん。もうちょっと後で渡すわ。こういうのはタイミングが重要だから」
「アレって、なーに?」
 ツムギが問いかけると、あやはポケットから『アレ』を取り出して炬燵に置いた。
 スーパーでもらった領収書。
 もちろん、宛名はJJだよ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年01月01日


挿絵イラスト