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宝島クリスマスの夜

#グリードオーシャン #お祭り2020 #クリスマス #シャッツンゼル島

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●クリスマスナイト・ファイア
 その島は『シャッツンゼル島』と呼ばれる島であった。3本の爪痕が隆起したような三叉の鉾のような、そんな形をした島であった。
 島民たちは知る由もないが、この島はスペースシップワールドの宇宙船が落下して突き刺さったまま、背面部のスラスターに土砂が堆積して島へと変わった風変わりな由来を持っている。
 その『シャッツンゼル島』の宝は『平和』である。
 一度、コンキスタドールによって襲われたが、猟兵たちの活躍によって撃退され、再び平穏の訪れた長閑な島である。
 島民たちはその気質を示すように穏やかな者たちばかりであり、かつて島を救ってくれた猟兵達に対して大変好意的なのである。

「はい、そうなのです。雪降るグリードオーシャンの島、『シャッツンゼル島』にてクリスマスの夜をお過ごしになられては如何でしょうか?」
 そういうのは、案内を仰せつかったであろうナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)である。
 彼女の微笑みはいつもよりも明るいものであった。
 クリスマスという単語だけで心が浮足立つような気持ちになるのはわからないでもないが、今の彼女はサンタクロースの格好をして、『シャッツンゼル島~クリスマスナイトへのご案内~』というプラカードを掲げてグリモアベースにて、猟兵達に語りかけているのだ。

 正直に行って浮かれ過ぎである。
 だが、それを咎める無粋な者はいないだろう。
 如何に戦士たる猟兵であっても安息の日はなくてはならない。
 クリスマスともなれば、それは特別なものであろう。

「『シャッツンゼル島』は南国の島ですが、この時期だけは必ず雪が降るのだそうです。なので、キャンプファイヤーの催しが執り行われ沢山の料理を振る舞うのだそうです」
 穏やかな島民たちの気質を顕すかのような催しである。
 さらにキャンプファイヤーを囲んでの歌や踊り、かくし芸などもあるのだとか。
 パーティを盛り上げて皆を楽しませるのもいいだろう。
 それに他にしたいことがあれば、そちらを優先してもいいだろう。

「それと、島民の方々に伺ったのですが……」
 ナイアルテは何故か頬を赤らめて、内緒話をするみたいに声を潜めた。
 少し照れたように言葉を紡ぐ。
「意中の方がいらっしゃるのであれば、『シャッツンゼル島』の中心にある祠……僅かにスペースシップワールドの宇宙船の機能が生きていて、何故かこの日だけは周囲に色とりどりの光が乱舞するそうなのです」
 それは南国の島で見るホワイトクリスマスとイルミネーションのコラボレーション。
 絶対にありえないことが起こる光景故に、意中の人、恋人同士で訪れて過ごすことで、お互いの絆がより強まるのだと言われているそうなのだ。

「本当かどうかはわかりませんが……それでも、それはロマンチックなことですね。ですから」
 だから、もし……。気になる人や、恋人同士の猟兵がいるのであれば、そこを訪れゆっくりとした時間を過ごすのも良いだろうとナイアルテは微笑むのだ。

「島民の皆さんは、皆さんに好意的です。何か欲しい物や必要なものがあれば、喜んでわけてくださるでしょう。せっかくの安息日……クリスマスです。どうか、皆さんのクリスマスが善き日になりますように」
 そう祈るようにナイアルテは転移の準備を整え始めるのだ。

 そう、転移した先は南国に雪降るクリスマスナイト。
 心安らかに過ごすのもいいだろう。
 誰かとともに在るのもいいだろう。
 誰かを楽しませるのもいいだろう。
 それは猟兵たちが紡いだ大切な平穏。『シャッツンゼル島』――宝島と呼ばれる島の一番の宝『平和』を感受し、心の安息を得て欲しい。
 ナイアルテの微笑みに送り出されて、猟兵たちはどんなクリスマスナイトを過ごすだろうか――?


海鶴
 マスターの海鶴です。
 今回はグリードオーシャンでのクリスマスパーティーを楽しむ一章シナリオです。
 平和な島『シャッツンゼル島』を訪れてみんなで楽しく過ごしましょう。

 ※このシナリは既に猟兵達によってオブリビオンから開放された島となります。(シナリオ名『欲望の眼差し』https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=26034)

 また第一章の【日常】だけで構成されるシナリオとなっておりますので、今回はプレイングを受けつける時間を公開日より2日程長く設けさせていただきます。
 リプレイの返却をその分だけおまたせしてしまいます。ご了承くださいますようお願いいたします。

 ※シナリオ受付締め切り:12月26日 午前12時前後。

 締め切り後に順次公開、執筆させて頂きます。

 基本的に『シャッツンゼル島』は夜に到着し、すでに雪が振り始めています。
 キャンプファイヤーを楽しむのもいいですし、島民の皆さんと楽しむのもいいでしょう。
 またオープニングにある通り、島に伝わる言い伝えを信じてどなたかとお過ごしになるのもよいでしょう。

 それでは、グリードオーシャンでのクリスマスパーティーの思いでとなれますように、いっぱいがんばります!
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第1章 日常 『グリードオーシャンのクリスマス』

POW   :    巨大なキャンプファイヤーや、沢山の料理を準備してパーティーを楽しむ

SPD   :    歌や踊りや隠し芸などで、パーティーを盛り上げて、皆を楽しませる

WIZ   :    意中の人と示し合わせてパーティーを抜け出して、恋人たちのクリスマスを楽しむ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ※シナリオ受付締め切り:12月26日 午前12時前後。
亘理・ニイメ
イッセイ【f31301】と祠探検

宇宙船? 光が飛び回る?
綺麗な光景、見てみたい、から。
行くわ。
(言い伝えは全く興味ないのでスルー。)
(照れてるナイちゃんの顔を見て、あら、可愛いわー、と思ったりした)

イッセイ、は。
私と一緒に来ても、いいこと、ないのよ。
勝手についてくるぶんには、止められない、から。
好きにして、いい、けど。

(いつぞやのアリスラビリンスで、助け、助けられ。
だけど、それで友好を結ぼうとか、そういうつもりは無かった。
イッセイの話を聞いても、それについて感情や感傷はもたない)

雪、光、静かな場所……心が、落ち着くわ。
(雪や光に触れようとし)

ニイメが悪霊だということを、忘れては、いけないのよ。


与田・壱成
ニイメ【f31242】と祠探検

……その、ついてきてゴメン。
自分がどうして殺戮刃を持っているのか、
ユーベルコードを使えるのか、
……殺戮衝動を抑えているのか。
わからないんだ。
正義の名の元に殺し続けることで、殺戮衝動を正当化したって
……いいんだと思うよ、結果が正しければ。
世界が望む結果ならば。
……正直、自分が怖いんだ。
この刃を捨てたって構わないんだよね。
なんで猟兵になったの?って、言われてもしょうがない。
厳しい見方だってあるよね。

ニイメと一緒にいれば、自分を見失わないですむような気がして。

ごめん、……。
クリスマスを楽しむために、来たんだった。
お腹へったらと思って、クッキーもらってきたんだ。
食べる?



 人の心の中を見ることは難しいことだ。
 覗き見ることが出来るかと言われれば、難しいとしか言えないであろう。だが、決して不可能であるとも言えない。
 そんな宙ぶらりんな状態。
 それであっても誰かの心を知りたい、分かり合いたいと思う心は否定されるべきものではないだろう。
 だからこそ、亘理・ニイメ(結界崩壊・f31242)は否定しない。

「宇宙船? 光が飛び回る? 綺麗な光景、見てみたい、から。行くわ」
 彼女の表情は変わらない。
 たどたどしい言葉遣いは彼女の思慮の深さ故である。何を伝えるべきか、何を黙するべきかを彼女は考えている。
 言葉は吐き出してしまえば、他者に伝わる前に変化していく。
 字面の通りにさえ伝わらない。己と他者が違う存在だからこそ、その差異を考えなければ、徒に傷つけるだけにしかならないのだから。
 だから、ニイメは案内をしてくれたグリモア猟兵が告げる言い伝えには興味がなくても、照れたように顔を赤らめた彼女の姿を好意的に思うのだ。

 雪降る夜の『シャッツンゼル島』は浜辺で汲み上げられたキャンプファイヤーを囲んでのにぎやかな宴が催されている。
 あの篝火の環に加わろうとは思わなかった。一人で歩く。そのつもりだった。
「イッセイ、は。私と一緒に来ても、いいこと、ないのよ」
 そう背後に振り返らずにニイメは告げた。
 与田・壱成(殺人鬼?・f31301)は、逆にその言葉に如実に反応を見せて、足を止める。
「……その、ついてきてゴメン」
 謝るほかなかった。
 謝罪の言葉。それは申し訳ないと思いつつも、彼が心の中に抱える何かが彼女の後を追わすのだろう。
 何故だろうかと考えることもあるけれど、答えは出ない。

「自分がどうして殺戮刃を持っているのか、ユーベルコードを使えるのか」
 とつ、とつ、と言葉が溢れていく。
 溢れたと言ってもいい。ニイメは振り返らない。それに意味があるのか、ないのか、思案していたのかもしれない。
 かえってそれがありがたいと壱成は思った。
「……殺戮衝動を抑えているのか。わからないんだ」
 言葉は溢れてくる。
 けれど、己の先を往くニイメの背中は言葉を発しない。ただ目的地である島の中央、祠へと足をすすめる。
 だから、どうして自分が彼女の後をついてまわるのかもわからない。その言葉についてでてくるの謝罪の言葉ばかりだった。

「勝手についてくるぶんには、止められない、から。好きにして、いい、けど」
 それは平坦な言葉であった。
 感情らしい起伏のないことば。そこにどんな意味が込められているのかはニイメしかわからないことだ。
 けど、壱成にはそれで十分だった。
 溢れる言葉のままに二人は歩く。隣り合って歩くことはなかった。
 ニイメの後に壱成が続く。
 その背中に言葉を投げかけ続ける。
「正義の名の元に殺し続けることで、殺戮衝動を正当化したって……いいんだと思うよ、結果が正しければ。世界が望む結果ならば」
 それは自分に言い聞かせる言葉であったのかもしれない。
 そうすることでしか、己の殺戮衝動を肯定できないものだっているだろう。そういう者がいたっていい。

 爪弾きにされることなんてないはずだ。
 でも、それでも。
「正直、自分が怖いんだ。この刃を棄てたって構わないんだよね」
「……」
 肯定も、否定もない。
 在るのは、その背中だけだった。祠の周囲には様々な光が溢れかえっている。緑、青、赤、黄……様々な光が乱舞し、二人の周囲に飛ぶ。
 それが異世界の如何なる技術であったのかを知る者はいない。
 けれど、その光景にニイメの心は落ち着いていくのを感じていた。

 アリスラビリンスで助け、助けられた関係であるけれど。
 それでもそれは、友好の架け橋になることではなかった。ニイメにとっては少なくともそうだった。
 そういうつもりもなかった。壱成の話を聞いても、それについての感情や感傷を持つことはなかった。
 それはニイメのものではない。壱成だけのものだからだ。
「なんで猟兵になったの? って、言われてもしょうがない。厳しい見方だってあるよね。でも、ニイメと一緒にいれば、自分を見失わないですむような気がして」
 それは気のせいだとニイメは言わなかった。
 言う必要もないと思った。

 ただ、今は舞い散る雪と光に手をのばす。
 触れたいと願った。
「雪、光、鈴鹿な場所……心が、落ち着くわ」
「ゴメン、……」
 その静謐に響く言葉に壱成は申し訳ない気持ちになる。
 今自分がしていることは、まさしく自分だけのためのことだ。それが心苦しくて、彼女になにかしたくて、考えを改める。
 そうだ。
 はじめの気持ちを忘れてはいけない。
 クリスマスを楽しむために、来たのだ。それは同時にニイメにもクリスマスを楽しんでほしいと思ったからだ。

 だから、壱成はにぎやかな色の袋を取り出してニイメに手渡す。
「お腹へったらと思って、クッキーもらってきたんだ。食べる?」
 それは精一杯の優しさであったのかもしれない。
 確かに自分のことばかりであったのかもしれない。けれど、はじめの心はそうではなかったはずだ。
 せっかくのクリスマスに一人きりは、と思ったのだ。
 だから、手渡す。

 その袋を受け取ってニイメは表情を変えずに言う。
「ニイメが悪霊だということを、忘れては、いけないのよ」
 それは忠告だった。
 決して違えてはならないものだった。けれど。
 人の心は変わっていく。
 不変たる者もいるだろうけれど。それでも、誰かの傍にいたいと思う者の心を否定する理由にはならないだろう。

 手渡したクッキーの袋が、どんな意味を齎すのか。
 それはこれからの二人だけが知っている。知るかもしれない、クリスマスの記憶となるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【不死蝶/2人】
わー、懐かしいねぇシャッツンゼル島
今年の夏に遊びに来たことを思い出す
あの時は釣り勝負して俺が勝ったんだよね~
また何か賭けてやる?

キャンプファイヤーの料理に舌鼓を打つ
このままでももちろん美味しいけど
更に香辛料をたくさんトッピングして
俺の大好きな激辛料理の完成
寒い季節にはぴったりだね

梓に視線を向けられていい笑顔を返す
キャンプファイヤーの出し物に
こっそりと梓の名前で参加登録しておいたよ
応援しているよ、頑張ってねっ
ちゃっかり自分は観客席から観覧

梓とドラゴンたちのアドリブとは思えない芸に拍手
皆盛り上がっていたし大成功だね

終わったあとに梓のお説教タイムが待ってたとかなんとか


乱獅子・梓
【不死蝶】
あ、ああ、そんなこともあったな…
俺が綾に釣り勝負を吹っかけて
焔と零に魚を片っ端から食われて負けたという
苦い思い出が蘇る
いやいやいや、もういい

キャンプファイヤーの催しに参加
料理を食べたり仔竜たちにも与えたりしながら
島民たちの歌や芸の出し物を見て楽しむ
そう、俺は観客側で楽しんでいるはずだったのに…

何故か、俺の名前が呼ばれる

綾に視線を向ければ…やっぱりお前の仕業か!!
だが島民から期待の眼差しを向けられている中
「これは手違いです」と辞退するのも気が引ける…
ええい、後は野となれ山となれ!
勢いで皆の前に出る

焔と零、更にUCで召喚した小型のドラゴンたちで
踊ったりブレスを吐いたりとドラゴン芸を披露!



「わー、懐かしいねぇシャッツンゼル島」
 灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)と乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は再び訪れたグリードオーシャンに浮かぶ一つの島、『シャッツンゼル島』に降り立つ。
 綾は今年の夏に遊びに着たことを思い出す。
 島民たちの好意的な態度もそうだが、平穏な島というのは戦いに明け暮れる猟兵にとっては心癒される場所であったことだろう。
 そして、同時に綾は梓とともに過ごした記憶が鮮明に脳裏に浮かぶのだ。
「あのときは釣り勝負して俺が勝ったんだよね~」
「あ、ああ、そんなこともあったな……」
 楽しげに思い出を反芻する綾と違って、梓は若干苦み走る顔をしている。そう、綾の言う通り釣り勝負を梓がふっかけて負けたのだ。

 いや、序盤はよかったのだ。
 釣果もそこそこだった。ただ、誤算であったのは、梓とともに在る焔と零に釣り上げた魚を片っ端から食べられてしまって負けてしまったという苦い思い出なのだ。
 釣った数が正確にわからなければ勝負にならない。
 美味しそうに食べている二匹を見ていたら、そういうのも野暮であると思ったのだが、それでも綾に勝負で負けるというのは、なんとも子供じみた気持ちが湧き上がってくる。
 そんな彼の心中を見透かしたように綾が提案するのだ。
「また何か賭けてやる?」
 ニヤニヤと笑う綾の顔をみる梓にとって、その顔をしている以上、確実にまた自分が負けてしまう未来が幻視されてしまう。
「いやいやいや、もういい」
 ほんともういい。

 それに今回はそういうのじゃないんだと、梓は己に言い聞かせる。
 キャンプファイヤーの催しに参加するのだ。楽しむ側なのだ。せっかくの催しなのに、また何かやらされてしまうのはクリスマスの休暇とは言えないだろう。
「そう? また何かやりたくなったら、ちゃんといいなよ。クリスマス休暇なんて、年に一回のことなんだからさ」
 綾は笑って梓とともに浜辺に設置されたキャンプファイヤーの篝火まで歩いていく。

 島民たちは綾と梓のことを覚えていたのだろう。
 雪降る中に訪れた二人を歓待してくれる。あれも食べろ、これもうまい。そんな事を言いながら二人はすっかり島民たちに囲まれて、料理を楽しむのだ。
「クリスマス休暇だからゆっくりしたいんだろ……ほら、食べな」
 二匹の仔竜たちに料理を分けて与えながら、キャンプファイヤーを囲んで行われる島民たちの歌や芸、出し物を見て楽しむ。
 ああ、こういう機会も間違いではない。
 心穏やかな光景。
 誰もが笑顔だ。誰もが不安に思うことなんて無い。例え合ったとしても、この時間だけは忘れている。
 そんな光景であると梓は頬を緩めた。

 ――が。

 そうは問屋と綾が降ろさない。
 持参した香辛料でトッピングした激辛料理を堪能し、寒い季節には、こういうのがぴったりだね、と綾が目を覆いたくなるような真っ赤な料理を楽しんでいると、梓の名が呼ばれる。
 続きましては、飛び入り参加の梓さんによる演目です!

「……は?」
 どういうことだと視線を巡らせると綾と視線がかち合う。
 ものすごくいい笑顔の綾を見て、梓は知る。その笑顔の意味を。そして、何故己の名が呼ばれたのかを。
 またしてもしてやられたのだ。
 いや、俺はやらないぞ!という意味を込めて視線を島民の司会へと向けようとして、梓は息が詰まる。
 そう、島民たちの期待の視線だ。
 きらきらしている。期待に満ちている。どんなことをしてくれるのだろうかと、満ち満ちた顔をしている子供らまでいる。
 手違いだと辞退することすら憚られる空間。
 キャンプファイヤーの爆ぜる音が響く。

 沈黙すら許してもらえない。
 綾のニヤニヤとしたいい笑顔だけが、とにかく癪に触る。
 ここまで織り込み済みだったのだろう。こっそりと梓の名で参加登録をしていた綾は知らぬ存ぜぬとは行かぬまでも、わりと無責任な笑顔で応援している。
「頑張ってねっ」
 激辛料理を頬張りながら、いい笑顔である。実にいい笑顔である。
「ええい、後は野となれ山となれ!」
 その笑顔に後押しされるように梓はキャンプファイヤーの篝火の前に飛び出す。

 何をしようかなんて、プランがあったわけじゃない。
 焔と零、そしてユーベルコードに輝く掌が呼び寄せる小型のドラゴンたちがキャンプファイヤーの炎の周りを飛ぶ。
 それは竜飛鳳舞(レイジングドラゴニアン)とも言うべき光景であったことだろう。
 雪が舞い散り、篝火の炎が照らす。
 その空似飛ぶドラゴンたちの姿は、島民たちにとっては非日常であった。非現実的ですらあった。
 見たこともない生き物。
 それらが飛び、時には子供らを背に乗せて空を飛ぶ。
 誰もが歓声を上げていた。 
 笑っていた。
 ブレスを吹き上げるたびに、驚きと喜びの声が響く。
「ま、こういうのも悪くは――」
 ない、と梓は思いかけていた。

 けれど、思い直す。ここまで綾の筋書き通りなのは面白くない。
「皆盛り上がっていたし、大成功だね」
 なんて拍手しながら綾が微笑んでいる。
 その微笑みを憎からず思う。けれど、それとこれとは別問題である。
 後でみっちりお説教してやらねばならない。
 そんな決意を胸に梓は、それでも楽しげに笑った。綾も笑っている。島民たちだってそうだ。

 悲嘆に暮れる者などいてはならない。
 今日はそんな一日でなければならない。綾がどんな気持ちで、そうしたのかはわからない。
 けれど、それでも梓は誰かのための笑顔のために。綾の笑顔と楽しげな顔に、やれやれとため息を付きながら、クリスマスの夜を楽しげに過ごしていくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳳凰院・ひりょ
POW
アドリブ歓迎

素敵な言い伝えのある島なんだな…
俺にはまだこういう時に明確に思い浮かぶ誰かがいるわけではないから…
(ふと、脳裏をよぎる人はいるようないないような、だけど)
まぁ、いつかは「この人と一緒に特別な時間を過ごしたい」と思える存在が出来るといいな、とは思う

でも、今は目の前の状況を目一杯楽しむ事に専念しようかな?
料理なら一応出来るし、力仕事とかだってやれる
島民の皆さんと一緒にワイワイやりながら準備しよう
そういう時間だって素敵な時間の使い方

自分達で準備した料理を楽しみながらキャンプファイアーを楽しむ
食も進みそうだな
普段から結構食べる方だけど(苦笑
今日は目一杯楽しませてもらおう



『シャッツンゼル島』。
 その成り立ちを聞けば、猟兵のように世界を渡り歩く存在はなるほどと思う経緯を持っている島である。
 グリードオーシャンにおいて、この世界を構成するのは異世界から落ちてきた島々だ。その島は落ちてきた異世界の特色を色濃く受け継いでいるが、ことスペースシップワールド由来の島に関しては巨大なる宇宙船の残骸であることが多い。
『シャッツンゼル島』もまたそうしてできあがった島の一つである。

 三つのスラスターが鉤爪のような三叉の矛のような形となって土壌を形成し、中央に備えられた祠は嘗ての連絡用の通路なのだろう。
 その通路が時間とともに機能を残し、光乱舞する光景へと変えた。
 この島に住まう人々は、その優しい気質のせいか、誰と争うことなく穏やかなる日々を過ごしている。
 この時期、この日だけ光が舞う光景は彼等の心にさらなる穏やかさを齎したことだろう。
 そして、絆繋ぐ人々の心はより一層、強まっていく。

「素敵な言い伝えのある島なんだな……」
 鳳凰院・ひりょ(人間の聖者・f27864)は、グリモアベースでその話を聞いた時にそう思った。
 彼自身にはまだこういう時に明確に思い浮かぶ誰かがいるわけではない。
 けれど、ふと脳裏をよぎる人はいるようないないような、そんな曖昧にふんわりとした感触だけがあった。
 それが幸いなことであるかはわからない。
 今はまだ、ということはこれからのことを考える上では可能性として在るだけで心地よいものであったのかも知れない。

 いつかは『この人と一緒に特別あ時間を過ごしたい』と思える存在が出来るといいなとは思うのだ。
 だが、ひりょにとって今こそが目一杯楽しむに値する光景であった。
 浜辺に汲み上げられたキャンプファイヤーの篝火が煌々とあたりを照らしている。
 波間の音、夜の帳より降りしきる雪。
 そのどれもが南国の島々での出来事とは思えない光景であったことだろう。
「猟兵さん、こっちのを味見してくれよ」
 島民たちは皆気質の柔らかい、穏やかな者たちばかりであった。
 キャンプファイヤーを囲んでの料理が振る舞われていたり、ひりょもそれにならって料理をしたり力仕事をしたりと、すでに島民たちに溶け込んでいる。

 普通であったのならば、その日に出逢った者同士がこんなに屈託なく笑い合うことはないだろう。
 けれど、この島の平穏は、そんな垣根すら越えさせてくれる。
「ああ、こっちのもうまいぞ」
「お! すごいな。これなんていう味付けなんだ?」
 島民たちとの語らいは戦いに明け暮れる猟兵であるひりょにとって非常に心安らぐじかんであったことだろう。
 ワイワイと島民たちと準備を進めていく時間。
 そういう時間だって素敵な時間の使い方だろう。

 キャンプファイヤーの篝火は高く立ち上っている。
 夜だと言うのに明るい浜辺はクリスマスということもあって子供らもはしゃいでいる。
 それを微笑ましげに見つめながら、ひりょは島民たちとともに準備した料理を楽しんでいく。
「普段から結構食べる方だけど……」
 次から次にひりょに運ばれてくる料理たち。
 島民たちにとっては、ひりょは初めての知り合った人かもしれないが、もう仲間みたいなものだからと、謳ったり踊ったりと大忙しである。

 次から次に訪れる島民たちとの語らいは、たしかに充実した一日としてひりょの記憶に、思い出に残ったことだろう。
 目一杯楽しむ。
 それが戦いの中にあって、かけがえのないものであると改めて知るように、楽しい時間は過ぎていくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎

隠し芸というか分からないが踊りをみせる
ただ、危ないから俺から離れて近づかないように
こうやって平和に使うのもいいな、俺の島も平和だろうか

SPDで判定
銀腕を【武器改造】で剣にして【早業】【ジャンプ】などを使って【ダンス】を見せる
その時は人が近づかないように【大声】で注意する
元々攻撃する技だから近づかれると危ない
終わったら少し離れた所に座ってパーティーの出し物を見る

俺の故郷は思い出せないけれど、願わくばこの島のように宝が満ち溢れている事を願うばかりだ



 宝島――『シャッツンゼル島』でのクリスマスパーティーは未だ盛り上がり続けている。
 料理は島の特産物ばかりであり、こういうった祝い事、記念日などに振る舞われるものばかりだ。
 篝火としてたかれたキャンプファイヤーの明かりが浜辺を明るく照らし、夜の帳から降りしきる雪は島民と訪れた猟兵たちを祝福するようであった。

 ルイス・グリッド(生者の盾・f26203)は銀武の舞(ギンブノマイ)を島民たちに披露していた。
 これがかくし芸と言っていいのかルイス自身には判別しかねるものであったが、メガリスである銀腕を剣にして見せる剣舞は島民の者たちにとっては特別な光景であったことだろう。
 揺らめく炎にきらめく銀色の剣が、雪と火の粉とともに舞う。
 それは幻想的な光景であった。
「こうやって平和に使うのもいいな……俺の島も平和だろうか」
 そうであってほしいと思う。

 自分自身には記憶がない。
 何故記憶がないのかという疑念を挟むには猟兵としての戦いは、あまりにも性急すぎる。
 戦いに次ぐ戦い。
 それは心癒える間もないほどであったことだろう。
 だが、今ルイスの剣舞を見て喝采をあげる島民たちを見ていると思うのだ。
 彼等のようなものたちを護るために己はメガリスを纏い、戦いに赴く。
 コンキスタドール、オブリビオン、彼等の暴虐を許さぬと戦うのだ。
「すごーい!」
「どうなってるんだろう、あれー!?」
 子供らがはしゃぐ声が聞こえる。

 あまり近づいては危ない、とルイスは声をかけながら、剣舞を終わらせる。
 そうなるとルイスの元に訪れるのは島民の子どもたちばかりだった。
 皆ルイスに興味津々なのだろう。
 矢継ぎ早に銀腕のことや、どうやったらそんなに強くなれるのかだとか、質問攻めである。
「……困ったな」
 ルイスはなんと言っていいかわからないまま苦笑いをする。それでも、子供らの質問に律儀に答えていく姿は好感が持てたことだろう。
 いつのまにか子供だらけになったルイスの周り。

 少し離れたところに座ってパーティーの出し物を見るつもりだったのだが、それは心温まる誤算であった。
 子供らははしゃぎ疲れて眠っていたり、船を漕いでいたりと様々だ。
 温かい篝火のキャンプファイヤー。
 その炎を見て、ルイスは思う。
 己の故郷のこと。
 思い出せないこと。

 けれど、それでもいいと思う。
「願わくば、この島のように宝が満ち溢れていることを願うばかりだ」
 心の底からそう思う。
 この島、『シャッツンゼル島』の宝は『平和』だ。
 此処と同じように見果てぬ己の故郷もまた平和であって欲しい。そんな平穏な時間に満ちた島であって欲しい。

 それが叶えられるかどうかはわからない。
 それでも願わずには居られないのだ。
「……平和の価値、か」
 確かにそうだ。測り知れるものではない。だから、ルイスは戦おう。
 この宝の価値を知るからこそ、彼はこれまでも、これからも猟兵として戦い続けることだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サージェ・ライト
お呼びとあらば…って今日は無しでいいですね!

そう、今日はクノイチを忘れてもいい日
ということでナイアルテさんもお休みするべきです
そして私と遊びましょう!(本音)
一緒に行きません? 遊びません? ダメ?

お誘い出来たら一緒にキャンプファイアーへ
ふふ、褐色美少女サンタとかとってもご褒美ですね!
しかし何を食べたらこんなにおっきくなるのか(胸元じー)

さてクリスマスと言ったら鳥!
美味しい鳥料理はありますか!ではそれで!

はーい、ナイアルテさんもどうぞー
いつも依頼でお世話になっているお礼です!

もしお誘いできなくても料理に突撃してます

※アドリブ連携OK
※ナイアルテさんの都合が悪かった時はサージェの行動お任せします



 クリスマス。
 それは誰もが平穏であるべき日。
 だからこそ、戦いとは無縁の日でもあった。同時にサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)にとっても猟兵としての戦いから開放される日でもある。
「お呼びとあらば……って今日は無しでいいですね!」
 そう、いつもの前口上は必要ない。

 それだけこの島――『シャッツンゼル島』は平穏そのものなのだ。
 浜辺に汲み上げられたキャンプファイヤーの篝火が火の粉とともに雪を齎す。それはとても綺麗な光景であったことだろう。
 思わずサージェもクノイチであることを忘れてしまいそうになるほどの光景だった。
「ということで、お休みをするべきです! そして私と遊びましょう! 一緒に行きません? 遊びません? ダメ?」
 そんな風に彼女もまた誘いたい者がいたのだが、生憎と転移の準備で忙しそうであった。
 褐色サンタクロースは申し訳無さそうな顔をしていたが、それでもありがとうございます、と微笑んでいた。

 その微笑みだけでもサージェは嬉しかっただろうか。
 せっかくなら、目の前のキャンプファイヤーも一緒に見たかったと思ってくれただろうか。そうであればいいな、と思いつつサージェは思い返す。
「しかし、何を食べたらあんなにおっきくなるのか」
 色々台無しなセリフであった。
 だが、サージェも年頃なのである。興味津々なのである。いや、サージェさんも相当ではないでしょうかという天の声も聞こえそうな気がしたが、気のせいだ。

「さて、気を取り直しましょう! クリスマスと言ったら鳥! 七面鳥!」
 ターキーである。
 何を差し置いても鶏肉である。
 島民たちが用意してくれている料理の中にも当然のようにある。香辛料を利かせた鳥料理。
 とても美味しそうな、食欲を誘う香りがあたりに漂っている。サージェは、どうせなら一緒に食べたかったと思うが、それでもお仕事があるなら後で差し入れしてあげようと気を利かせていた。

「それと、それと、あと、これと! あー! それもいいですね!」
 もう目の前の料理に夢中である。
 時折白猫又アバターのシリカが食べすぎじゃない? と心配そうにしているが、それでも止まらないやめられないのが食欲というやつである。
 ハレの日の御馳走ともなれば、いつでも食べられるものであるという保証なんてない。
 だからこそ、サージェは用意された料理の前に目を輝かせる。
 それは島民たちにとっても嬉しいものであったことだろう。
「おう、こっちもうまいぜ! もっていきなよ!」
 そういって様々な料理を詰め合わせてくれるものだから、益々持ってサージェの顔色が明るくなっていく。

 彼女の朗らかな笑顔は穏やかな気質の島民たちをしても、さらに満面の笑みをうかべさせるには十分なものであった。
「おーいしー!」
 彼女の舌鼓をうつ声がクリスマスパーティーに響く。
 あれもこれもと、次々とサージェはお腹を満たしていく。美味しい料理に親切な人々。

 それは得難いものであった。
 サージェにとっての宝島。それは今目の間に広がる様々な料理たちだ。
 きっと彼女は今日という日を忘れないだろう。
 穏やかな時間、楽しい雰囲気。
 そしてきっと、彼女の心配りは、誰をも笑顔にするだろう。
 詰め合わせた料理を差し入れした時、きっとグリモア猟兵も同じような笑顔を浮かべたに違いない。

 それだけでクリスマスというに相応しい時間だった。
 ありがとう、という言葉が反響するように人々の間に広がっていく。
 それこそが、本物の宝であるというように『シャッツンゼル島』の宝は環を繋ぐように、世界すら越えて広がっていくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
ここに来るのも三回目ね。あの珍しい地形にももう慣れたわ。そうでしょ、アヤメ。

常夏の世界に降り注ぐ雪か。冬に咲き誇る幻朧桜の花吹雪にも似て、素敵なものね。

それじゃ、噂の洞窟へ行ってみましょうか?
きっと堕ちてきた宇宙船の来るーが年に一度のパーティ仕様に設定したのがまだ活きてるんだろうけど、そういう野暮は考えないようにしましょう。

煌めく光の中で、アヤメといられる。それだけで十分。
適当なところに腰を下ろし、手を探って重ね、アヤメの肩に頭を預けて。
吐息が熱くなるけど、人のいるところじゃこれが限界ね。

どこかで一夜の宿を借り上げて、そこで二人夜が明けるまで、ね?
今夜は寝かせないから、覚悟しといて。愛してる。



 猟兵にとって『シャッツンゼル島』は幾度か訪れることになったグリードオーシャンの島の一つであったことだろう。
 一度目はコンキスタドールに狙われた時。
 二度目は夏のバカンス。
 そして、三度目となる今回は、クリスマスパーティである。

「ここに来るのも三回目ね。此処の珍しい地形にももうなれたわ。そうでしょ、アヤメ」
 そうアヤメに呼びかけるのは、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)であった。
 彼女たちは三度訪れた『シャッツンゼル島』に降り立ち、クリスマスにはうってつけのホワイトクリスマスとなった島の夜空を見上げる。
 それは冬に咲き誇る幻朧桜の花吹雪にも似ていた。
 様々な異世界の島々が落ちてきて、文化を形成しているグリードオーシャンにおいて、このような光景は珍しくなかったのかもしれないが、それでも幻想的であり、ロマンチックな光景であると言えた。

 二人は連れ立ってクリスマスパーティの会場を後にし、島の中心である祠へと向かう。
 そこには言い伝えがあって、この時期、この日だけ元になったスペースシップワールドの宇宙船の機能が開放されるのだという。
「でも、なんでこの日にだけ、宇宙船の機能が動くんでしょうね?」
 まるで狙ったかのようなタイミングであるとアヤメが小首をかしげる。
 それにゆかりは少し考えてから応えるのだ。
「きっと墜ちてきた宇宙船のクルーが年に一度のパーティ仕様に設定したのがまだ
生きているんでしょう」
 だが、ゆかりはそこで言葉を切った。
 それはなんとも浪漫がない。
 どちらにしたってゆかりの言った言葉は憶測でしか無いのだ。

 ならば、それは野暮というものであろう。
 今は目の前の光景に集中したいし、そうすべきであった。
「そうね、野暮だったわ。そういうの考えるのが馬鹿らしくなるくらい」
「ええ、綺麗ですねぇ……」
 互いに肩を寄せ合って乱舞する光を見つめる。
 そう、きらめく光の中、アヤメといられる。それだけで十分だったのだ。
 それはアヤメもまた同じ気持ちであろう。

 小岩にシートを敷いて腰掛け、光が乱舞する様を見下ろす。
 絆が深まるということであったが、これ以上に深まることなんてあるのだろうか。そう思うほどに目の前の光景は幻想的であり、パートナーの表情を照らす光は美しかった。
 珍しくゆかりがアヤメの肩に頭をあずける。
 鼓動がどちらのものかわからないほどに早鐘を打っているのが解る。
「……ふふ、たまには甘えてくださいね」
 素直に、とアヤメが微笑む。
 ゆかりは自分の吐息が熱くなるのを自覚したけれど、此処では我慢しなければと自制心をフル動員する。

 そうしなければ、わりともう限界なのであった。
「……今夜は寝かせないから、覚悟しといて。愛してる」
 その言葉だけで十分だった。
 十分にやり返したことを確認してゆかりは微笑む。
 愛してるという言葉を口にするだけで暖かなものが心からこみ上げてくる。
 それが幸せというものなのだろう。
「愛してる」
 反芻するような声。
 それは互いの吐息に溶けて混ざっていく。
 その甘さを知る者も、その熱を知る者も、二人以外にはいらない。必要なんて無い。

 夜が更けていっても、なお、燃え上がるような愛は決して途切れることなく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
この島に訪れるのはこれで三回目ですか

(アポカリプスヘルの人々を慰問するクリスマスで働き、サクラミラで知人の猟兵と過ごした後、最終的に島を訪れ)

最後に行うのが『これ』とはあの方に呆れられてしまいましたが騎士として為すべきと判断してしまいましたから…
さあ、始めましょう
完遂せねば中途半端と怒られてしまいます

島の宇宙船内部…舞台裏に侵入
祠のイルミネーション機能作動状態での動作状況等を●情報収集
経年劣化など無いか確認
修理、交換が必要であれば持ち込んだSSW修理キット(UC)を使用
島民の方がここに発見した際の修理手順なども書き記しておきましょう

長く、永く人々を照らし楽しませて欲しいものです

メリークリスマス



 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)のクリスマスはタイトなスケジュールであった。
 ウォーマシンである彼にとってタイムスケジュールがどれだけタイトなものであったとしても問題はなかった。
 いや、問題があるとしたのならば、その時間に誰かの時間が含まれていたということもあるのだろう。

 一人で過ごすわけではない。
 猟兵とは様々な世界を行き来する者でもある。
 荒廃した世界において慰問するクリスマス。桜舞い散る世界で知人の猟兵と過ごすクリスマス。
 それらをこなした後で最後に訪れたのが、グリードオーシャンの『シャッツンゼル島』である。
「この島に訪れるのは、これで三回目ですか」
 感慨深いものである。
 海に垂直に沈んだスペースシップワールド、己の出身世界の巨大宇宙船。
 その上に土壌を蓄えた島というのは、にわかに信じがたいものであるが、トリテレイアにとっては、それは些細なことだった。

 巨大な宇宙船がこうして穏やかな気質の人々の生活の土台になるのであれば、それもまた大切なことである。
「最後に行うのが『これ』とはあの方に呆れられてしまいましたが、騎士として為すべきと判断してしましたから……」
 彼の目の前にあるのは、宇宙船の入り口……嘗ての搬入口であったり、メンテナンスハッチであったであろう名残であり、今は島の中心にして祠となっている場所である。

 光が乱舞し、トリテレイアの装甲を照らしている。
 その光景を見た者たちは絆を深めるという。そんな言い伝えが残る光景であった。わざわざこの日を狙ったように機能が開放されるのは、何かのタイマー式のようなものであったのかもしれない。
 同時にそれは、幾星霜の時間が過ぎていけば滞ってしまうかもしれない可能性を秘めていた。
 それが来年になるか、それとも今年になるのかまではわからない。
 けれど、きっと必ず訪れる未来であることをトリテレイアは予見していた。
「さあ、はじめましょう。完遂せねば中途半端と怒られてしまいます」
 トリテレイアは苦笑いしたような雰囲気を漂わせながら、己の体を宇宙船内部へと侵入させる。

 祠と呼ばれているハッチの中でイルミネーション機能作動状態での動作状況を確認する。
 同じスペースシップワールド製であるが故に解る規格がある。
 経年劣化は当然のようにあちらこちらで起きている。
 修理はまだ必要ないが、交換が必要な部品は多いようだった。このまま作動させていては、近い内に動かなくなることは明白であった。

「ふむ……なるほど。この年式のものが合いそうですね」
 トリテレイアは持ち込んだスペースシップワールドの修理キットである特殊用途支援用追加装備群(マルチミッション・サポートユニットシリーズ)を展開する。
 摩耗していたり、機能が低下してたりする部品を取り替えていく。
 それは手際のよいものであり、おおよそクリスマスにすることではなかったのかもしれない。

 けれど、トリテレイアはそれでいいと思っていた。
 裏方に回ろう。
 誰かのためになろう。
 その気持ちがあるからこそ、彼は他のウォーマシンとは一線を画する存在なのだ。
 後から来るであろう島民たちに修理手順を記したものを残していく。彼等がこれを見つけることがあるかどうかはわからない。
 けれど、やれることはやっておくべきだ。
 そうしなければ、後悔してしまう。
「……これで、終了です」
 トリテレイアは補修や交換を終えた後、光乱舞するイルミネイトを見つめる。

 彼のアイセンサーにはタダの光の反射現象でしかない。
 けれど、同時にトリテレイアもわかっていることだ。この光が人々の心を癒やしているのだと。
 それがかけがえのない記憶となって絆を強めていくのだと。
 だからこそ、トリテレイアは裏方に徹する。誰に感謝されなくてもいい。
 いつかの誰かのために成ればいいと願うのだ。

「長く、永く人々を照らし楽しませて欲しいものです」
 その場を後にし、トリテレイアは僅かに振り返って、これまでとこれらからの人々の絆を照らす光を投射する祠に向かって告げる。

「メリークリスマス」
 その言葉はきっといつかの誰かに届くことだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
今年ももうすぐ終わろうとしている。
多くの世界を渡り歩き、また多くの事を知り
それから……予知があった(少しだけだが)
■行
【POW】
俺は手伝いでもするか。資材を【怪力】全開で大量に持ち上げ、
とびきりデカく、イカしたキャンプファイヤーを組み立てよう。
むむ、大丈夫かって?人間ではない故大丈夫。

(燃え盛る炎を眺めつつ、猟兵になった頃の事を思い出す)
俺は何処で変わってしまったのだろう。
始めは単なる興味本位。されど何処かで歯車が狂い、
今では何故か人を護る戦いをするようになった。

だが、そうすると決めたのは他ならぬ俺自身。
乗りかかった船から降りる事はせん。
此れからも、人々のために在ろう。

※アドリブ歓迎・不採用可



 クリスマスがやってくると、一年の終わりを否応なしに感じさせる。
 それは、愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)にとっても同様であったことだろう。それが例え、異世界たるグリードオーシャンの島においても同じことであった。
「今年ももうすぐ終わろうとしている。多くの世界を渡り歩き、また多くのことを知り。それから……予知があった」
 一年を振り返った清綱の脳裏に浮かぶのは戦いと予知であった。
 様々な世界を見てきた。
 己の出身世界であるキマイラフューチャーだけではない世界。

 このグリードオーシャンもまたそのうちの一つだ。
 様々な異世界の残滓たる島によって構成される世界は在る種奇妙なものであったが、それでもこの世界に生きる人々の暮らしは脅かされていいものではない。
「俺も何か手伝わせてもらおう。キャンプファイヤーにくべる木材は足りているか?」
 清綱はキャンプファイヤーを汲み上げる準備に参加していた。
「おお、猟兵さん! 助かるよ! ちょっと汲み上げるのを手伝って――ってえええ!?」
 穏やかな気質の島民が声を上げるほどの光景。
 それは清綱の怪力によって汲み上げられたキャンプファイヤーの篝火の大きさであった。

「とびきりデカく、イカしているだろう?」
 大きすぎである。
 ちょっとまって、と島民が慌てる。もう少し控え目にしてくれないかと頼まれて、清綱は、そういうものかと汲み上げた一部を取り払う。
 それは生半可な作業量ではなかった。
 けれど、当の本人はけろりとしているものだから、島民たちは心配そうな顔をしている。
「むむ、大丈夫だ。人間ではない故大丈夫」
 うんうん、と何事もなかったように頷く清綱をみて島民たちは驚いていたが、猟兵とはそういうものかと納得もしていた。

 せっかく力仕事をしてくれたのだからと島民たちが料理を次から次に運んでくる。
 清綱のテーブルはもう満漢全席とでも言うべきか。島民たちからの差し入れで溢れかえっている。
 その心配りに感謝しながら、清綱はキャンプファイヤーの篝火を道メル。
 己が猟兵になった頃の事を思い出していた。

 己は何処で変わってしまったのだろう。
 始まりは単なる興味本位。けれど何処かで歯車が狂い、今では人を護る戦いをするようになった。
 それは悪いことではないと誰かが言う。
 島民たちの笑顔を見ていればわかる。

 この思いが、選択が間違いであるはずがないと。
 そうであっていいはずがないと。
 例え他の誰かが、間違っていると言ったところで、清綱は己をまげないだろう。
「そうすると決めたのは他ならぬ俺自身」
 そう、自分が決めたのだ。
 自分が選んだのだ。

 だからこそ、もう清綱は曲がらない。
「乗りかかった船から降りることはせん。此れからも、人々のために在ろう」
 そういう存在で居たいと願う。
 この島に住まう人々の宝が『平和』であるというのならば、それが脅かされぬようにと戦う。
 清綱の戦う理由は、きっとそれでいい。

 そうあるべきだ。
 雪降るクリスマスナイトに清綱は決意を新たにする。来年もまた、この篝火を見る事ができるようにと願いながら、今年一年を振り返り、前を向く。
 戦いの日々はまだ終わらない。
 けれど、それでもこんな一日があるのならば、きっと彼の想いも報われる日がくる。それは予知でもなんでもない。

 約束された明日であろうから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年12月26日


挿絵イラスト