リーズン・オブ・ライフ
●生命の理由
科学の発展には犠牲がつきものであると言われている。
それは間違いであると彼は思った。
何事にも犠牲はつきものだ。
どんなことにも、些細なことにも発展するからには何かを失わなければならない。けれど、自身がなにかの犠牲の成れの果てであるとは自覚していたとして、それを誰かのせいにする気にはなれなかった。
科学によって変異させられた身体。
人は己の姿をモンスターとして見るだろう。
たしかにそうかも知れない。
全身が樹木の幹のようにうごめく自分の体を見て、地上に住まう人々は気味が悪いと思うだろう。
仕方のないことだ。
彼等は圧倒的多数派だ。
自分は少数派。
諦めているわけではない。
「僕は僕が生きる理由を知っているからな」
何故生まれたのかを知っている自分は幸福であると思う。公害汚染の時代に生まれたバイオモンスター『ツリーマン』はそう思っていた。
一人でいることが辛いわけじゃない。
けれど、誰かを害したいとは思わない。
自分の生まれも、境遇も誰かのせいにはしたくはない。
きっと、自分が生まれた理由を今、痛烈に実感している。
目の前にはこれまで視たことのないような怪物が唸り声を上げていた。
「――なんで生まれてしまったんだ。生まれてはいけないはずなのに、生まれてしまったんだ。だから『スナーク』に至らなければ。そうしなければ。生命の理由すらわからなくなってしまう。『スナーク』になろう。『スナーク』になろう」
おまえもそうだろう、と猟書家『ケイオス・スナーク』はバイオモンスター『ツリーマン』に告げる。
一つになろう。
そうすれば、『スナーク』という超生命体に近づける。
負の産物と呼ばれてもいい。
世界でもっとも恐れられる怪物に成れば、否応なしに己たちの存在から目を背けることなどできなくなるはずだと。
「いやだ。恐れられたくない。拒絶されたくない。生命の理由なんて、わかりきっている」
『ツリーマン』は駆け出した。
背を向け、己に迫る濁流の如き顎から逃れる。誰も傷つけたくない。例え、己の身体が醜くても、手足から目を背けない。
これは己の身体だと、彼はニューヨークの地下に広がる下水迷宮『ダストブロンクス』に、その生命の理由を叫ぶのだった――。
●発展の代価
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回はヒーローズアースにおける事件です。皆さんはニューヨークの地下に存在する下水迷宮『ダストブロンクス』をご存知でしょうか?」
それはヒーローズアースに存在する知られざる文明の一つである。
公害汚染の時代において、廃液の多くからバイオモンスターが生まれるきっかけともなった文明だ。
今まさに、その『ダストブロンクス』に猟書家の企み、すなわち超生物スナークの創造を実現すべく一体の猟書家が侵攻しているのだという。
「名を『ケイオス・スナーク』。この猟書家はかつての公害汚染時代を上回る危険な汚染を拡大させようとしています。かつての時代と同じようにバイオモンスターを生み出すとと同時に、強靭な肉体と生命力を持つバイオモンスターたちを喰らい、超生物スナークの材料にしようと目論見、自身すらも『スナーク』へと至らんとしているのです」
それは恐るべき目論見であると言えよう。
己自身をスナークと為す。
言うまでもなく強大なる怪物を産むことになる。そうなってしまえば、下水迷宮である『ダストブロンクス』において、取り返しのつかないことになるのは間違いない。
「はい……ですが、私の予知は此処までなのです。一人のバイオモンスター『ツリーマン』さんが『ケイオス・スナーク』から逃げています。彼を追って放たれた配下オブリビオンから彼を守り、共に戦っていただきたいのです」
『ケイオス・スナーク』がどこからやってくるかはわからない。
それはこの広大なる下水迷宮『ダストブロンクス』において、闇雲に探しても見つかることはない。
用意周到に張り巡らした策略を実行する知能。
そして、強靭な肉体と力を持つバイオモンスターを捕食することのできるだけの能力を『ケイオス・スナーク』は持っているのだ。
油断はならないし、猟兵達は侮ることもできない。
「汚染水が満ちる『ダストブロンクス』での戦い……いわば、猟書家、オブリビオンのホームでの戦いでしょう。困難を極めるかと思います。ですが、それでも」
お願いいたします、とナイアルテは頭を下げて乞う。
生まれたくて生まれたわけではない生命。
それがバイオモンスターであろう。いわば、発展による負の遺産。そうとも言えるかもしれない。望まれた生命ではないのかもしれない。
けれど、それでも、とナイアルテは頭を下げる。
「生まれた以上、その生命には理由があるはずなのです。望まれなくても、望まれても。それは生命なのです。その輝きを全うするために、きっと生まれてきたはず……」
だからどうか。
もう悲しき怪物たちが生まれぬようにと。
そして、生命の理由を知るバイオモンスターを救い、猟書家『ケイオス・スナーク』の目論見を打ち砕いてほしいと彼女は願い、猟兵たちを送り出すのだった――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はヒーローズアースにおける猟書家との戦いになります。猟書家『ケイオス・スナーク』の潜む下水迷宮『ダストブロンクス』に赴き、配下オブリビオンに追い詰められているバイオモンスター『ツリーマン』と共に彼等を打倒するシナリオとなります。
※このシナリオは二章構成のシナリオです。
●第一章
集団戦です。
汚染された下水迷宮『ダストブロンクス』は広大ですが、皆さんは猟書家『ケイオス・スナーク』の放ったオブリビオンと交戦しているバイオモンスター『ツリーマン』の傍に駆けつけることができます。
この配下モンスターたちは、暗黒面『熱砂のラトゥール』と呼ばれる虎型のモンスターですが、全身が溶け崩れていており、その姿は怪物的であると言えます。
●第二章
ボス戦です。
猟書家『ケイオス・スナーク』は通常の能力に加え、汚染を広げる力を持っています。周囲は汚染水をさらに上回る有害な物質で満たされていくことになります。
いわば、『ケイオス・スナーク』が存在する場所こそがもっとも危険な汚染の中心地であると言えるでしょう。
汚染に耐性のあるバイオモンスター『ツリーマン』と協力することができれば、戦いを有利に進めることができるでしょう。
※プレイングボーナス(全章共通)……バイオモンスターと共に戦う、もしくは猟兵組織「秘密結社スナーク」の一員であると名乗る(敵がスナークの名の元に恐怖を集める企みを妨害します)
それでは、生まれた理由を知るバイオモンスター『ツリーマン』と共に公害汚染時代を上回る汚染によって無辜なるバイオモンスターを生み出し、喰らい『超生物スナーク』に至らんとする『ケイオス・スナーク』の目論見を打ち砕く物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『暗黒面『熱砂のラトゥール』』
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POW : 角と翼を手折る者
【古代の戦士】の霊を召喚する。これは【【飛行している者】や【角の生えている者】に対し】で攻撃する能力を持つ。
SPD : 塔を冠する一面
自身の身長の2倍の【砂と土で形成された腕】を召喚する。それは自身の動きをトレースし、自身の装備武器の巨大版で戦う。
WIZ : 暗黒を擁する咆哮
【その咆哮を聞いたものは、内に秘めた欲望】に覚醒して【欲望を求める姿】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
イラスト:音七香
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
悪臭が立ち込める下水迷宮の汚染水が跳ねる音が激しく響き渡る。
それは追われる者と追う者がいる証であった。
バイオモンスター『ツリーマン』は傷を追いながらも、彼に追いすがる四足の獣の如き生命の成れの果てをにらみつける。
「諦めはしない。僕は僕の生まれた理由をまっとうする……!」
どれだけ苦しくても諦めることだけはしない。
自分の生命を諦める者が、他の何を為せるというのだろう。
どれだけ悲哀に満ちた生まれであったとしても、『ツリーマン』は絶望しない。
絶望する意味を見出すことは出来ない。
自分が生きている。生まれたという理由。
死ぬのならば、その理由を果たした後だ。
「これ以上、ここを汚染させはしない。これ以上皆が住みにくくなるようになんてさせない!」
襲いかかる溶け崩れた姿の四足の獣たち。
その瞳は未だ絶望に塗れてすらいない。
汚染された下水の中であっても、生命の輝きは煌々と輝くのだ――。
ステラ・リデル
初めまして、ツリーマンさん。そして、虎型モンスターの皆さん。
私は『秘密結社スナーク』の一員、ステラ・リデルと申します。
よろしくお願いしますね。
もっとも、虎型モンスターさんの皆さんとはすぐにとこしえのお別れとなってしまいますが。
ツリーマンさん。私は貴方を助けに来ました。まずは協力してこの者達を排除いたしましょう。
(その言葉と共に周囲に無数の破滅をもたらす剣を現出。『破剣乱舞』を発動してオブリビオンの群れを襲います)
敵wizucにかんしては「欲望を抱いたまま消えなさい」
アドリブ歓迎
汚水の悪臭がむせ返るように下水迷宮に充満している。
それはこれまで徐々に浄化されてきていた下水迷宮『ダストブロンクス』が公害汚染時代の水準を更に上回る汚染でもって満たされていっていることを示していた。
原因は定かではない。
ヒーローズアースに住まう者たちの誰もが理由を解明できていない。
それもそうだろう。
これはオブリビオン、猟書家『ケイオス・スナーク』の企みであるからだ。下水迷宮の奥深くに存在し、そこから汚染を開始し、次々とバイオモンスターを生み出しては喰らい、その体を強固なものにしていっているのだ。
その企みにいち早く気が付き、異変の元へと向かった者がいた。
バイオモンスター『ツリーマン』。
彼はこれ以上汚染を広げさせないようにと戦っていたが、放たれた配下オブリビオンによって追い詰められていた。
「グルゥァァァ――!」
溶け崩れた虎型のオブリビオン暗黒面『熱砂のラトゥール』が咆哮する。
その姿は以前のものではない。
『ケイオス・スナーク』の生み出す汚染によって溶け崩れた体のままに、己たちの欲望のままに『ツリーマン』を殺害しようとしているのだ。
「くそっ……! 僕はまだ――ッ!」
死ねない。
その牙にかかるわけにはいかないのだ。この汚染を浄化する。そのために『ツリーマン』は戦っている。
だが、それでも多勢に無勢である。
数で勝るオブリビオンに勝てない。
「はじめまして、ツリーマンさん。そして虎型モンスターの皆さん」
その玲瓏なる声は俄に下水迷宮には似つかわしいものであった。
その声が響いた瞬間、魔力の煌きの如き剣閃が走る。それは狭い下水迷宮の中を縦横無尽に駆け巡り、溶け崩れた虎型オブリビオンたちの体を一瞬にして穿つ。
それは圧倒的な力であった。
幾何学模様を描き、複雑に飛翔する魔力の剣。
その一本を手にとって、下水迷宮の闇から現れたのは、清廉なる白色のコートを身にまとったステラ・リデル(ウルブス・ノウムの管理者・f13273)であった。
「あ、あなたは……」
「私は『秘密結社スナーク』の一員、ステラ・リデルと申します。よろしくおねがいしますね。もっとも――」
ステラの青い瞳がツリーマンを捉える。
その瞳の美しさに、これまで『ツリーマン』は見たこともなかったかのような瞳を向ける。
下水のどこにも存在しない美しいもの。
それがこの下水迷宮の上に広がる大地には在るということを彼は知っていた。
けれど、ここから出ていこうと思ったことはなかった。
自分がバイオモンスターである自覚は在る。
美しいものが溢れている地上だからこそ、汚れたものは外に出てはいけない。けれど、ああ、と思う。
「虎型モンスターの皆さんとはすぐに永久のお別れとなってしまいますが。ツリーマンさん」
何故、自分の名を、と『ツリーマン』は動揺する。
そんな名前で呼ばれたこともあったけれど、それでも誰かが自分の名を呼ぶという経験は少なかった。
動揺して声を発せないでいる間にもステラの操る魔力の剣による破剣乱舞(ブレイド・ダンス)は次々と虎型モンスターたちを穿ち、貫いていく。
「私は貴方を助けに来ました。まずは協力してこの者たちを排除いたしましょう」
溢れんばかりの魔力の剣たちが一斉に下水迷宮の狭い空洞を駆け抜ける。
きらめく魔力が闇色だった下水の中を明るく照らす。
貫かれ、霧散していくオブリビオンたちの姿を背にステラは眉根を動かすこと無く、オブリビオンたちの咆哮を前にして告げるのだ。
「欲望を抱いたまま消えなさい」
此処に在るのは、己の欲望のためではない。
誰かのためになりますよういと走る者の願い。
それを護るためにステラは駆けつけたのだ。その願いの煌きを潰えさせはしないと、ステラの放つユーベルコードの輝きが、『ダストブロンクス』に奔るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
カゲヤ・クサカベ
ここの汚いのを撒き散らすのを止めたいのは俺も同感
よろしく、ツリーマン
世間の少数派と自覚しながら悲観的にならない心持ち、俺も見習わなきゃな…
※デビキンで、悪を美徳と思えない性分から周囲に馴染めなかった経歴持ち
ボスが控えてるし、ここで消耗しすぎるのも良くないとなる…と。
UCをツリーマンに使用、戦闘力を増強させて抵抗する為の力を付与
正直、俺が守りきれる自信もないし…これでこの場は切り抜けられるはず
多分。
連携しつつ敵に囲まれないように立ち回りたい
各個撃破を念頭に、俺の影を操っての斬り裂き攻撃
彼が攻撃されそうなら不意打ちして敵の気を俺に向ける
…怖いけどさ、やっぱり誰かを助ける事が性分に合ってるんだよな俺
下水迷宮『ダストブロンクス』。
そこはヒーローズアースの汚濁を一点に集めたかのような場所であり、嘗て在りし時代――公害汚染時代よりもわずかながらも浄化が進んでいた。
けれど、その下水迷宮の最奥にて動き出したのが猟書家である。
浄化されつつ在った下水迷宮は瞬く間に汚染水準を公害汚染時代を上回った。
そこから生み出されるバイオモンスターたちは、被捕食者たちであった。
全ては猟書家『ケイオス・スナーク』の食料でしかなかった。
生み出される度に捕食されていくバイオモンスターたち。意志も、理由も、意味も。何もかもが飲み込まれ、『超生物スナーク』の礎にされていく。
だが、一人のバイオモンスターが立ちふさがる。
彼の名は『ツリーマン』。
木の枝が絡まったかのような体躯であったけれど、それでも彼は己が生まれた理由を知っていた。
「汚染は止める。誰が最初に始めたことかはしらない。けれど、誰かのために何かをしようとした意志だけは潰えさせてはならない」
彼の言葉が虎型モンスター……『ケイオス・スナーク』の配下オブリビオンの咆哮に遮られた瞬間、その溶け崩れた体を打つ者があった。
「ここの汚いのを撒き散らすのを止めたいのは俺も同感」
カゲヤ・クサカベ(ネガティブシャドウ・f31518)は、微かに微笑みながら『ツリーマン』を襲ったオブリビオンを叩き出す。
彼の言葉は偽らざる本心であった。
彼はデビルキングワールドの出身者であった。
根が善良であるが、しかして滅びかけたがゆえに制定されたデビルキング法に疑問を抱く……いや、肌に合わなかったというのが本当のところであったことだろう。
自分が少数派であるという自覚はある。
けれど、悲観する理由なんて無い。
「よろしく、ツリーマン」
笑った。
こんな状況でも笑った。何故なら、此処にはカゲヤと同じく少数派のバイオモンスター、『ツリーマン』がいる。
彼の心根とカゲヤの善良なる心根はきっとつながっていたし、同じであった。
その事実がカゲヤに力を与えてくれる。
視線を交わしたのは一瞬であったけれど、それは心地の良いものであった。
「ありがとう……! 助けてくれて……!」
礼を言われるようなことじゃないと照れ隠しのようにカゲヤは手をふる。
悪を美徳として教わったけれど、そうとは思えなかった性分。けれど、今は違う。その価値観を、その意味を肯定してくれる者がいる。
それが嬉しいと思えることが、嬉しかった。
「ボスが控えているし、ここで消耗しすぎるのも良くない……なら! アンタは俺と契約済みだ」
カゲヤのユーベルコードが輝く。
それは『ツリーマン』の影に干渉できるもう一つの影を生やし、ツリーマンの戦闘力を増加させる。
「正直、俺が守りきれる自信もないし……これでこの場は切り抜けられるはず……いや、切り抜けよう!」
「……! ありがとう……! お礼ばっかり言ってしまうけれど、それでも!」
カゲヤと『ツリーマン』が汚水満ちる下水の中を駆け抜ける。
互いに背中を合わせ、襲いくる配下オブリビオンたちの牙を躱して、互いにフォローし合う。
一瞬の邂逅であったとは思えない連携。
各個撃破するために互いの攻撃を合わせて、一つずつオブリビオンを霧散させていく。
ときにはカゲヤが生やした影を用いて、『ツリーマン』を助ける。ときには『ツリーマン』の腕が伸び、カゲヤを襲わんとしていた溶け崩れた虎型モンスターを打ち払う。
「……怖いけどさ、やっぱり誰かを助ける事が性分に合ってるんだよな俺」
「君は優しい人だって分かるよ。僕にはわかる。だから、一緒に戦ってくれ!」
「……ああ!」
それは友情と呼ぶのかも知れない。
たった数分にもみたないやり取り。
けれど、誰かを助けたい、誰かのために成りたいと願う二人の心は一瞬で通い合う。
一人では無理でも二人なら。
そして、彼らの戦いはきっと、その環を広げていく。それが猟兵の戦いだ。
たった一人で戦い続けなくてもいい。
否定しなくていい。
誰かのために戦うということはこんなにも誇らしいのだと、カゲヤと『ツリーマン』は光刺さぬ下水迷宮において、友情という輝きを放つのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ジョウ・デッドマン
下水に転がってるジャンク使って〈イージーライダー〉を【武器・防具改造】。
ハリボテでも角とかつけて自走させる。あの幽霊、角ついてるヤツを先に狙うだろ。ブッ壊されるまで囮にはなるんじゃない。
ねえ、笑ってみろよツリーマン。
ヒーローの笑顔ってヤツを僕に見せてよ。
"素晴らしきこの人生"ってさ、どー見ても損な役回りにバカみたいに満足してさ。アンタは、一回きりの死なんだから。
敢えてドロドロモンスターどもの前に突っ込んでく。
底上げした身体能力、〈ヴォルテックエンジン〉の電力を下水伝いに放って【マヒ攻撃】
まとめて動きを封じたら――ほら、ヒーローの出番だよ。
うまく笑えるまで、アンタは生きてろよ。
ヒーローズアースにおける汚濁の終着点こそが下水迷宮『ダストブロンクス』である。
廃液、廃材、あらゆる汚濁と呼ばれるものがたどり着く場所。
そこにあって、なお輝きを喪わぬ人間性があるのだとすれば、それこそが守らねばならぬものであったことだろう。
例え、その生まれが悲哀に満ちたおぞましきものの集合体であったのだとしても、その輝きを宿すのであれば。
「グルゥァァァ!!!」
虎型のモンスターたちは溶け崩れた体でもって、憤怒の咆哮を下水迷宮に轟かせる。
反響した咆哮は未だ下水の中から現れ出る異形を呼び込むものであった。
次々と現れるは古代の戦士たち。
いずれも同じように溶け崩れた姿をしているが、その数こそがこの場において立ちふさがったバイオモンスター『ツリーマン』を排除せんと迫っていた。
「……! なんでこんなことをする! ここまで汚染されてしまえば、地上に住む人たちにだって影響が出てしまう!」
そう叫ぶも、猟書家『ケイオス・スナーク』の思惑には関係がない。
どれだけ汚染されようとも関係ない。
汚染すればするほどに己の力の源となるバイオモンスターが生まれるのだから。
迫る古代の戦士たちが『ツリーマン』を襲う。
だが、彼らの動きがぴたりと止まる。
何故? という問いかけに応えるように下水迷宮にエンジン音が響き渡る。
それは、ジョウ・デッドマン(異世界蘇生・f27582)の駆るイージーライダーであった。
下水迷宮に流れ込んできたジャンクを使って組み上げた簡易的なバイク。
けれど、ハリボテでも笑うことなかれ。
その角の付いた外見は古代の戦士たちの注意を引く。
如何なる過去があったかはわからない。けれど、それが有効な手段であるのならば、ジョウが選ばない理由などなかった。
飛び降り、自走するイージーライダーにつられて古代の戦士たちが殺到する。
簡単に壊れてしまうことはわかっていた。
けれど、囮にはなる。
「ねえ、笑ってみろよツリーマン」
ジョウは己の表情を隠したまま告げた。
笑ってくれ。
それは彼の心を突き動かす衝動であった。誰かのために何かをしたい。戦うと決めたバイオモンスター『ツリーマン』。
彼はいわば『ヒーロー』だ。
そのヒーローの笑顔を見たい。見てみたい。そのために戦いたいとジョウは言葉にせずとも、その衝動に従う。
「ヒーローの笑顔ってヤツを僕に見せてよ。素晴らしきこの人生(イッツ・ア・ワンダフル・ライフ)ってさ、どー見ても損な役回りにバカみたいに満足してさ」
だから、笑ってくれ。
そういうかのようにジョウは言う。
「でも……君は……僕は」
己が為すべきことを成さなければならない。
だから笑えない。
けれど、ここまで助けに来てくれた人たちが居た。ジョウだってその一人だ。
一人で成さなければならないと思っていたけれど。それでも、助けに来てくれた。それが嬉しくて、まだ戦いは終わっていないけれど、笑ってしまう。
窮地に在っても笑ってしまうのだ。
「アンタは、一回きりの死なんだから」
だから、その笑顔が見たかった。溢れる衝動が己に力を与えてくれる。
ああ、“素晴らしきこの人生”!
その笑顔のために戦えるのならば、ジョウは何度死んだっていい。
何度でも立ち上がるだろう。
身を焼かれ、裂かれ、砕かれようとも立ち上がるだろう。
己の身はデッドマン。
不死の体現者。溶け崩れたオブリビオンたちに突っ込んでいく。底上げされた身体能力は如何な虎の俊敏性を持っても捉えることはできない。
溢れるヴォルテックエンジンから放たれる電力の奔流が腕から溢れ、下水伝いに放つ一撃は、彼らの動きを止める。
それは一網打尽だった。
「――ほら、ヒーローの出番だよ」
放たれた『ツリーマン』の腕がオブリビオンたちの体を貫く。
その一撃を持ってオブリビオンたちは霧散していく。
ジョウは『ツリーマン』をヒーローだと言った。けれど、いつかわかる時が来るだろう。
振り返ってみて、わかることがあるだろう。
今、この場において『ツリーマン』のヒーローは彼であったことを。
ギクシャクした表情のままジョウは告げる。
「うまく笑えるまで、アンタは生きてろよ」
生まれてよかったと思えるその日まで。
終わってしまったこの身が見果てぬ夢のままに――。
大成功
🔵🔵🔵
ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
アドリブ・連携OK
猟兵になった今はもう無いけれど、色々と覚えのある話だねえ。
元から猟兵の仕事だし、同類の誼だからね、手を貸すよ。
んー、角が生えてる者かあ。
あたし思いっきり当てはまってるよね。
まあ仕方ない、ダメージを受けるのは覚悟して、
植物の相を強めにして【超獣祇我】と合わせて高速再生しながら戦おうか。
ツリーマンさんは、無理しない程度に霊の攻撃を防いでくれると助かるかな。
相手の体は触ったら危ないかもしれないし、攻撃は古竜の戦斧でやろうか。
燃やして毒ガスとか出ないなら、纏った電撃で焼くのも手かな。
さて、生まれた理由もまずは生きてなきゃどうしようもない。
生きるために、頑張るとしようか。
人は一人では生きていけない。
生命体であればなおのことであろう。
他者が在るからこそ、生命を紡いでいくことが出来る。自己完結で終わる生命など最早生命ですら無い。
ならば、下水迷宮『ダストブロンクス』において、バイオモンスター『ツリーマン』が戦うのは何のためか。
溶け崩れたオブリビオンたちが下水の中に水の跳ねる音を響かせながら迫る。
猟書家『ケイオス・スナーク』が放った配下たちだ。
彼らの目的はバイオモンスターである『ツリーマン』である。『超生物スナーク』の創造が、ヒーローズアースに侵攻した猟書家の目的であればこそ、バイオモンスターは必要な存在だった。
汚染された下水から次々と生まれるバイオモンスターたち。
それは捕食されるためだけの存在である。
強い生命は強い生命を食らってこそ、さらなる強固さを得ていく。
「猟兵になった今はもう無いけれど、色々と覚えのある話だねえ」
ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)は仕方ないというように下水迷宮へと足を踏み入れていた。
今だ多くの配下オブリビオンたちが『ツリーマン』を狙って迫っている。
他の猟兵たちも駆けつけているが、この汚染された環境においては、数で押されることこそ恐れるべきことだろう。
「元から猟兵の仕事だし、同類の誼だからね、手を貸すよ」
『ツリーマン』の背中を護るようにペトニアロトゥシカは駆け出す。咆哮によって呼び出された古代の戦士たちは、一斉にペトニアロトゥシカをみやり釣られるように集まってくる。
理由はわからないが、角の生えた者を優先的に狙うようだった。
それはある意味で都合の良いものであったかもしれない。
「あたし思いっきり当てはまってるからね……まあ仕方ない。ちょっとばかり、気合を入れるよ!」
だが、それで退く理由になどなっていない。
その瞳が決意と覚悟を持って輝く。
それこそが彼女のユーベルコード。超獣祇我(ブルート・ストレングス)。その名が示す通り、彼女の体、皮膚が樹皮に変質し、踵はまるで羊ように強靭なる筋肉に覆われる。
手にした古竜の骨で出来た戦斧を振り回し、ペトニアロトゥシカは駆け抜ける。
奮った戦斧の一撃は、自身に群がる古代の戦士たちを振り払い、溶け崩れた姿の虎型モンスターである配下オブリビオンたちを薙ぎ払うのだ。
「無理をしないで。ツリーマンさんは、防御に徹していて。ここはあたしが――!」
ツリーマンの驚く顔が面白かった。
ペトニアロトゥシカの体を覆う樹皮は彼と同じような姿であったからだ。
確かに似ているかもしれない。
けれど、彼と自分とは違う種類だ。けれど、似ているということは地上の世界を知らぬ彼にとっては、孤独ではないということを教えるには十分なものであったことだろう。
「そっちも無理をしないで!」
互いに互いをカバーし合う。
ペトニアロトゥシカの振るう戦斧が下水を割り、配下オブリビオンたちを叩き潰す。
『ツリーマン』は古代の戦士たちからペトニアロトゥシカを護るように樹木のような腕をふるって近づけさせない。
「もう体は溶け落ちているのなら!」
まとった電撃が配下オブリビオンたちを焼く。
「さて、生まれた理由もまずは生きてなきゃどうしようもない。生きるために、頑張るとしようか」
理由は後で付いてくる。
ただ、今を懸命に生きる。そのために己と他者を護ることが必要なのだ。そのために生きている。
戦う。恐れない。
例え、己の身が異形であったとしても。
それでも誰かために戦うということは、いつだって誇らしいものなのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
ご機嫌よう、ツリーマン。あなたの手伝い、勝手にやらせてもらうわ。
既に交戦状態、索敵偵察の必要なし。
こっちに突っ込んでくる敵を「衝撃波」で押し返し、「高速詠唱」「全力魔法」酸の「属性攻撃」「範囲攻撃」「結界術」を込めた紅水陣の中に全て捕らえる。「地形の利用」をして、迷宮の通路幅いっぱいに陣図を広げて突破を許さない。
ほら、どうしたの? ここの汚染が世界で一番だとでも思っていたのかしら。浅はかね。あたしの紅水陣は毒すら溶かす。
自分自身は「環境耐性」「地形耐性」で汚染に対処する。
こんな汚れ仕事、あの子にはさせられないわ。……ああ、独り言よ。
それじゃツリーマン、穢土の中心まで案内お願い出来るかしら?
地下迷宮『ダストブロンクス』での戦いは、混乱を極めていた。
蜘蛛の巣のように張り巡らされた下水道は汚染で満ちているし、あちこちに繋がる配管のせいで見通しが悪い。
何より明かりが少ないことは致命的でもあった。
だからこそ、誰も立ち入らない。
例え、廃液や廃材が流れ込んだとしても誰も気に留めない。
故にバイオモンスターが生まれる温床となったことは公害汚染の時代から変わっていなかった。
けれど、それでも徐々に浄化されつつあったのは『ツリーマン』を始めとするバイオモンスターたちの努力があってこそだろう。
だからこそ、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)は駆けつけた。
「ご機嫌よう、ツリーマン。あなたの手伝い、勝手にやらせてもらうわ」
すでに戦いは配下オブリビオンたちと『ツリーマン』、そして猟兵たちによって戦端が開かれている。
故に索敵や偵察の必要はなく、迫る脅威を振り払えばいい。
「ありがとう! 助けてくれて!」
汚水を跳ねさせながら、バイオモンスターの『ツリーマン』が礼を言う。
だが、まだ礼を告げられるのは早い。
今この現状を切り抜け、下水迷宮の奥底で今なお汚染を続け、生み出すバイオモンスターを食らって『超生物スナーク』へと至ろうとする猟書家『ケイオス・スナーク』が居る。
「そういうのはまだ後! 古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。魂魄までも溶かし尽くす赤き世界よ、我が呼びかけに応え、世界を真紅に塗り替えよ。疾っ!」
ゆかりは薙刀を振るい、迫る配下オブリビオンたちを押し返す。
その瞳が輝くのユーベルコードであった。
即座に判断したのだ。
この環境において、配下オブリビオンである虎型のモンスターたちは適応している。溶け崩れた姿がその証拠だろう。
だからこそ、生半可な攻撃ではダメージにすらならない。
故に、ゆかりのユーベルコード、紅水陣(コウスイジン)は敷かれる。
あらゆるものを腐食させる赤い靄が下水迷宮に満ちていく。公害汚染の時代を思わせるような強烈なる酸が虎型モンスターたちを更に溶かしていく。
「ほら、どうしたの? ここの汚染が世界で一番だとでも思っていたのかしら。浅はかね。あたしの紅水陣は毒すら溶かす」
全てを腐食させる赤い靄が、下水迷宮という閉所にこそ強烈なる効果を発揮する。
霧散していくこともなければ薄まることもない靄。
それはこの汚染された下水の中に適応したとしても、それすらも腐食させるユーベルコードの前には無意味であったことだろう。
「……すごい」
だが、この下水迷宮の中心に座す『ケイオス・スナーク』の生み出す汚染は、さらに上を行く。
故にバイオモンスターが生まれるのだ。
「こんな汚れ仕事、あの子にはさせられないわ」
ぽつりとゆかりは配下オブリビオンたちを駆逐して溜息を吐き出す。悪臭が立ち込める下水迷宮。
そこに彼女の想い人を呼び寄せることはためらわれた。
これは自分にしかできないことだ。
「え……?」
「……ああ、独り言よ。それじゃ、ツリーマン。穢土の中心まで案内お願い出来るかしら?」
ゆかりは気を取り直したように配下オブリビオンたちを蹴散らしながら、下水迷宮の中心へと迫る。
進む度に汚染が酷くなっていくのはひと目見ても明らかだった。
けれど、それでも進まなければならない。
この汚染の中心であり、根源である『ケイオス・スナーク』を打ち倒さなければ、望まれず、また生まれることを望まぬ者たちが生まれてしまう。
それはきっと悲劇であろう。
だからこそ、汚れ仕事であっても成し遂げる。
そのためにゆかりは『ツリーマン』と共に汚水をかき分けて進むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
ツリーマンには敬語
ここまでよく逃げ切りました、後は秘密結社スナークにお任せを
彼を化け物にする訳にはいかない、彼は拒絶される者じゃない
怪物相手は俺で十分だ、生命の輝きをお前らなんかに消させない
SPDで判定
【ダッシュ】【悪路走破】でツリーマンと敵の間に割り込んで
銀腕を【武器改造】で剣にして切りつけ引き離し【救助活動】する
それから【大声】で敵を【挑発】して狙いを引き付け【暗視】【聞き耳】で【情報収集】しながら戦う
土砂で形成された腕には義眼の藍の災い:圧壊【重量攻撃】を【スナイパー】【全力魔法】を使って壊す
その隙に【早業】で接近し剣で【切断】したり【串刺し】にする
バイオモンスターである『ツリーマン』は良くも悪くも献身的な人格を有していた。
公害汚染の時代から生まれたバイオモンスター。
それは望まれぬ生命であったかもしれない。
けれど、それでも生きる理由を彼は知っている。汚染とはすなわち、人が生きる過程でどうしても生まれてしまう廃液であり、廃材であり、遺棄されたものの集積だ。
否定しない。
自分が負の産物であることを認めている。
そんな自分でも為せることがある。
樹木のような腕、体。それらは下水迷宮『ダストブロンクス』において、汚染を浄化することができる。
汚染から生まれたバイオモンスターが汚染を浄化する。
それは皮肉であったかも知れない。けれど、立ち止まる理由にはなっていないのだ。
「……まだ、汚染の中心には遠いのに……!」
呻くように、それでも汚水の中を走る。
己の背を追う配下オブリビオンである溶け崩れた虎型モンスターたちが下水の汚水を跳ねさせて迫る。
けれど、それらを打ち倒すのは猟兵である。
「ここまでよく逃げ切りました、後は秘密結社スナークにおまかせを」
銀の腕を剣のように変形させ、剣閃と共にルイス・グリッド(生者の盾・f26203)は『ツリーマン』に追いついていた。
切り捨てた配下オブリビオンたちが霧散していくが、さらに迫る下水を駆ける音。
どれだけ倒してもキリがないとさえ思わせるほどの膨大な数が彼らを追っていた。
「さあ、早く先へ」
「ありがとう……!」
言葉を交わす時間は少なかった。
けれど、ルイスにはそれで十分だった。
彼を化け物にするわけにはいかない。彼は拒絶される者じゃない。誰かを思って誰かのために戦えるものが拒絶されていい理由なんてあってはならない。
「怪物相手は俺で十分だ……生命の輝きをお前等なんかに消させない!」
その瞳がユーベルコードに輝く。
メガリス・アクティブによって威力を増した銀の腕が変形した剣が薄暗い下水迷宮の中に閃く。
瞬く間に配下オブリビオンたちを切り捨てる。
だが、彼らとてただでやられるわけではない。土砂で形成された己の身長の二倍はあろうかという巨大な腕がルイスを襲う。
「その程度で――! 藍の災いを防げるものか!」
義眼が輝き、藍色の輝きによって発現する力は圧壊。握りつぶすように土砂で生み出された巨腕を圧壊させ、ルイスは崩れ落ちる土砂の破片の中を駆け抜け、次々に配下オブリビオンたちの喉元を切り裂いていく。
霧散するオブリビオンたちを尻目にルイスはさらに駆け出す。
今だこの下水迷宮を支配しているのは『ケイオス・スナーク』だ。汚染の中心たる者の近くに迫れば迫るほどに汚染はひどく、さらに生み出される配下オブリビオンたちの数も質も向上していく。
「彼には助けが必要だ……そのために俺達は着たのだから!」
ルイスは『ツリーマン』を追う。
きっと彼はなんでも一人でこれまでこなしてきたのだろう。
今回もきっとそうだ。
一人で何もかもをやろうとしてしまう。
だからこそ、ルイスは追うのだ。
独りではないと。
彼の誰かのために何かをしたいという願いは、守らなければならないことだ。
義眼の輝きが増す。
それはルイス自身の為すべきことを為すために、下水迷宮に煌々と輝くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
髪塚・鍬丸
刀で敵の攻撃を【武器受け】しツリーマンを【かばう】。
「秘密結社スナーク。奴等を倒す為に来た者だ。
君はこの世界の『ヒーロー』か?力があるのなら、その力を貸して欲しい。」
共闘を頼む。強制はしない。だが、奴等に抗う意思があるなら一時だけヒーローになってくれ。
UC【神風の術】を使う。自身を中心に風が巻き起こる。
【地形の利用】。屋外なら竜巻となる風が、下水迷宮の壁や天井に反射、乱流と化す。邪悪を滅ぼす神風での【範囲攻撃】。
攻撃は全て風で受け流し、邪な者全てを神の威で滅ぼす。どの様な外見だろうとも正義の魂の持ち主には微風に等しい。
この術の使用中は俺自身は動けない。奴等への止めを頼む。君の生命を貸してくれ。
戦うものにはいつだって責務が付き纏う。
誰かを守らなければならない。
何かを為すためにしなければならない。
理由はたくさんある中から選ばなければならない。
けれど、戦う理由を前にして歩みを止めない者こそが、戦う意味を見出すことができるのであれば、例え己の出生が望まれぬものであったとしても、その者の戦いは意義あるものであったことだろう。
「秘密結社スナーク。奴等を倒すために来た者だ」
髪塚・鍬丸(一介の猟兵・f10718)はバイオモンスター『ツリーマン』を助けるために駆けつけた猟兵の一人であった。
溶け崩れた虎型モンスターの配下オブリビオンの牙を刀で受け止め、『ツリーマン』を助けたのだ。
ぎりぎりと刀と牙が拮抗する。
その間隙を縫ってツリーマンの樹木のごとき腕が配下オブリビオンを叩き出す。
「ありがとう、秘密結社スナーク!」
「君はこの世界の『ヒーロー』か? 力があるのなら、その力を貸して欲しい」
「……」
その言葉に『ツリーマン』は口ごもる。
自分がそうであると断言できないのだろう。
鍬丸は強制しない。
わかっている。己もただの一般的な猟兵にすぎないと自負するからこそ、大手を振って名乗ることはできない。
けれど。それでも。
「奴等に抗う意志があるなら、一時だけヒーローになってくれ」
君の力が必要なんだ、と鍬丸は手をのばす。
誰かから手を差し伸べられたことなんてあっただろうか。いや、今まで一人で生きてきたツリーマンにとって、それは初めての経験であったことだろう。
多くの猟兵が彼を助けるために駆けつけていた。
喪わせてはならぬと駆けつけたのだ。だからこそ、その心根に輝きが宿ると信じている。
鍬丸の手を掴む感触。
それでわかったのだ。目の前にいるバイオモンスターは名実ともに確かにヒーローであると。
「……神成る風よ、荒れ」
神風の術(カミカゼノジュツ)。
それは鍬丸が『ツリーマン』に応えるユーベルコードであった。
破邪の竜巻で己を包、悪しき者全てを塵に変える。
下水迷宮の壁や天井に反射し、乱流と化した破邪の竜巻が配下オブリビオンたちを塵へ変えていく。
この竜巻の前には如何なる攻撃も無意味である。
悪意を抱く者、敵意を撒き散らすもの、そういった邪悪を討ち滅ぼすj筒なのだ。
「どのような外見だろうとも正義の魂の持ち主には微風に等しい」
悪しき者だけに作用するユーベルコード。
鍬丸には確信があった。
ツリーマンは正義の心を宿している。確かに姿は醜いモンスターなのかもしれない。
けれど、彼は言ったのだ。
誰かのためにと。
ならば、その魂は高潔そのもの。
「この術の使用中は俺自身は動けない。奴等の止めを頼む。君の――」
君の生命を貸してくれ。
その言葉に応えるように『ツリーマン』が下水迷宮を駆ける。
鍬丸の術によって弱ったオブリビオンたちを樹木の如き腕を叩きつけ、打倒する。その姿を、背中を鍬丸は見送りながら、その胸に抱いた輝きにも似た正義の魂に微笑むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
スキアファール・イリャルギ
先ずはスプーキーシャドウを操作し視覚外から不意打ち
存在感を消し闇に紛れ目立たずにね
敵の咆哮は敢えて防がず受けましょう
欲望を求める姿――私の場合は"怪奇"の姿でしょうか
"これ"を強制的に人目に晒されるのも寿命を削られるのも嫌ですが
さっさと倒せば無問題ですね
UC発動し動きを止めつつ霊障で止めを刺す
ハロゥ、ツリーマンさん
ガスマスク越し&醜悪な姿で失礼します、どうにも臭いのは苦手でして
あぁ、私ですか?
生まれた世界や境遇は少し違いますが――
まぁ"怪物/モンスター"という点では似たような者ですよ
……そして、醜悪な姿であろうと誰かを救いたいと願う気持ちも、同じです
一緒に戦いましょう
世界を、理由を、護る為に
下水迷宮『ダストブロンクス』に響く声があった。
それは戦いの騒乱の如き声ではなく、誘うような静かな声だった。けれど、たしかに猟書家『ケイオス・スナーク』の配下オブリビオンである虎型のモンスターたちの溶け崩れた耳にも届いたのだ。
「おゐで、おヰで」
それは不思議な声であり、不気味な声であったことだろう。
姿は見えない。
気配は感じない。
けれど、たしかに届く声。
それは虎型モンスターたちにとっては不快であり、不安を煽るだけの声だった。
故に彼らは吠えたける。
己が感じた不安を、恐怖を振り払うように下水迷宮に反響する程に強烈なる咆哮で持って、聞こえる声を振り払おうとしたのだ。
それは聞いたものの欲望を煽る咆哮。
如何なる者であったとしても、欲望在りきである。生命である以上、欲なき者などいやしない。
食欲、睡眠欲、あらゆるものに、活動に欲が付き纏うのだ。
その咆哮をあえて聞く者があった。
「欲望を求める姿――私の場合は『怪奇』の姿でしょうか」
スキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)は影人間たる姿を晒す。
嫌だと思う心がある。
この姿を強制的に人目に晒されるのも、寿命を削られるのも嫌だ。
けれど、逆に考えることにしたのだ。この欲望を求める姿を抑えられぬのならば、咆哮の大本を叩けばいい。
迅速に、それこそ瞬きもさせぬままに倒してしまえばいい。
「――壊れて終え」
その瞳が狂気に濡れる前にユーベルコードが輝く。
Whammy(ポリューション)。それは万華鏡の如き光景。耳をかきむしりたく為るほどの過敏なる聴覚。
明滅する視界とあらゆる音を嫌悪する感情が配下オブリビオンたちの精神をに以上をきたす。
それはもう何も見えない。聞こえない。
一歩も動けない。絶え間ない激痛が彼らを襲い、彼らの落とす影が徐々にその体を蝕んでいく。
霧散し、消えていくオブリビオンたちの姿に背を向けてスキアファールはガスマスクで覆った顔のまま、下水道の向こうから駆けてくるバイオモンスター『ツリーマン』の姿を認め、手を上げた。
「ハロゥ、ツリーマンさん。ガスマスク越しに醜悪な姿で失礼します、どうにも臭いのは苦手でして」
「そんなことはないよ。確かに、慣れてない人には、臭うかも知れないね。それに、君は……」
彼はかぶりをふる。
その度に樹木の如き体から樹皮が落ちては、下水を浄化していくのだ。
彼はこれまでにも何度も他の猟兵達に助けられて、下水迷宮の最奥へと歩みを進めている。
「あぁ、私ですか? 生まれた世界や境遇は少し違いますが――まぁ“怪物”……モンスターという点では似たような者ですよ……そして、醜悪な姿であろうと誰かを救いたいと願う気持ちも同じです」
次の瞬間、互いに交錯するように放った腕が互いの背後に迫っていた配下オブリビオンを穿つ。
たったそれだけでよかった。
互いにシンパシーの如き者を感じたのかも知れない
生まれも、境遇も。
何もかも違う。世界すらも違う。
けれど、ああ、と溜息をつくような美しさを互いの姿に見出したかも知れない。誰かのために。何かのために。
他の誰かのためになりますようにと戦う姿は美しい。
スキアファールとツリーマンは微かに微笑みあった。それだけでいい。今は時間もないけれど、それだけで十分だった。
「一緒に戦いましょう。世界を、理由を、護る為に――」
大成功
🔵🔵🔵
星野・祐一
あんたがツリーマンかい?俺は祐一。しがない猟兵の一人さ
故あって助太刀に来たんだが…よければ一緒に戦おうぜ?
[SPD]
『スーツの保護機能は正常に作動中。問題ありません』(環境耐性
…ん?気味が悪くないのかだって?
こうして会話出来て意思疎通できるんなら見た目はあまり気にしないぜ
その一本気な性格も個人的に好きだしなっと!(先制攻撃、カウンター
後ろは任せて思うままに動け、合わせる!(集団戦術
敵の動きを流星の【マヒ攻撃付きの誘導弾】で封じ
四肢の【部位を破壊】して攻撃能力を奪う(スナイパー
敵の攻撃は【視力で見切る】事で回避
砂と土で出来た腕はUCを付与した雷鳴で消し飛ばして対処な(衝撃波、貫通攻撃
アドリブ歓迎
「あんたがツリーマンかい? 俺は祐一。しがない猟兵の一人さ」
星野・祐一(シルバーアイズ・f17856)がバイオモンスターである『ツリーマン』の姿を見た時、その瞳には驚きという感情はなかった。
あったのは既知の友人に声をかけるような気安ささえあったのだ。
「君も、猟兵、というやつなのかい?」
下水迷宮『ダストブロンクス』において、猟書家『ケイオス・スナーク』の汚染は今だ続いている。
その公害汚染時代をも凌ぐ汚濁によって生まれるバイオモンスターの捕食によって『超生物スナーク』へと至らんとする『ケイオス・スナーク』を打倒するためにはバイオモンスターである『ツリーマン』の協力は不可欠であった。
「故あって助太刀に着たんだが……よければ一緒に戦おうぜ」
祐一は手を差し出す。
それが握手を求める友愛の行為であることをツリーマンは知っていたけれど、躊躇いがあった。
己の姿は醜いという自覚がある。
普通の人間から見れば化け物でしかない。けれど、それでも祐一は手をのばす。ともに戦うのであれば、それは必須のことであるように。当たり前のことであるようにと、手をのばす。
スーツの保護機能の正常作動を告げるサポートAI、Esの言葉に祐一は頭を振った。
気味が悪くはないのかと問う言葉だった。
けれど、祐一は気にしていない。
会話が出来て意思疎通ができるのならば見た目は気にはならなかった。数多の世界を見つめてきた猟兵ならではの感覚であったのかも知れないが、祐一自身の資質であったのかもしれない。
「その一本気な性格も個人的に好きだしな」
差し伸べた手を掴む手があった。
ツリーマンの樹皮に包まれた手。確かに他の人間とは違うかもしれない。
けれど、その暖かさは卑下していいものではない。
この暖かさがあるからこそ、誰かのために戦おうと決意するのだ。
熱線銃を跳ね上げ、祐一は冬雷(トウライ)によって底上げされた弾丸を、ツリーマンに迫る虎型モンスターたちに打ち込む。
「後ろは任せて思うままに動け、合わせる!」
「――……ありがとう!」
握手した手が離れる。
それを少し惜しいと思うのは、お互い同じ気持ちであった。
こんな出会いでなければ、もっと話がしたかった。けれど、今は戦うときだ。ツリーマンの樹木の如き腕が伸び、虎型モンスターを打つ。
そこへ止めとばかりに祐一の熱線銃の一撃が加えられ、オブリビオンとして霧散して消えていく。
しかし、配下オブリビオンたちも数で圧する存在である。
巨大な土砂で形成された巨腕が二人に迫る。
けれど、何も恐れる必要なんて無い。
「頼んだ――!」
その声に応えるようにツリーマンの樹木の如き腕が巨腕に変貌し、土砂の巨腕を受け止めて防ぐ。
その背後からきらめくのはユーベルコードの輝き。
放たれた熱線銃の一撃が巨腕すらも穿ち、虎型モンスターの溶け崩れた体すらも吹き飛ばす。
即席では在るけれど、たしかに二人の間には連携があった。
時間は限られている。
こうしている間にも汚染は続く。
汚染が長引けば長引くほどに『ケイオス・スナーク』の力は強大になっていくのだ。一刻の猶予もない。
「行こうぜ!」
祐一は駆け出す。
戦場にありて、芽吹くものがある。
それを友情と呼ぶには気恥ずかしいかもしれないけれど。
互いにそれを感じていたのだ。
誰かのために。
それだけのために戦う誇らしささえ、力に変えて二人は下水迷宮を駆けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
まずは【空より降りたる静謐の魔剣】でラトゥールとツリーマンの間に大型の氷の魔剣を多数突き立てることで壁にして時間を稼ごう…
…秘密結社スナークの方から来たメンカル・プルモーサだよ…
ツリーマンだっけ、助けに来たよ…
…怪我は…ぱっと見は軽傷が殆どかな…痛むところがあるなら治療するから教えてね…
下は汚染されてるとは言え水、溶け崩れそうな体……なるほどね…
…そろそろ魔剣の壁も破れるかな…次、私の攻撃に合わせて…
…壁を破ってきたラトゥール(と腕)に向けて【空より降りたる静謐の魔剣】を掃射…
…下の水やその溶た体、腕ごと全て凍らせてしまおう…
…後はツリーマンに砕いて貰えば退治出来るね…
…うん、いい仕事するね…
ヒーローズアースにおいてニューヨークの地下にある下水迷宮『ダストブロンクス』は広大であった。
蜘蛛の巣のように張り巡らされた下水道は根が深く、これを人の手で建造したのかと疑うほどに複雑怪奇に入り組んでいた。
あらやる廃液、廃材が集積し汚染されていく下水は、かつて公害汚染の時代にバイオモンスターと呼ばれる負の遺産、怪物を生み出した。
それは発展には付き物であった公害であったのかもしれない。
けれど、そこに生まれた生命は望まれたものではなかった。
故に猟書家『ケイオス・スナーク』はバイオモンスターの強靭なる生命と肉体を捕食し、『超生物スナーク』へと至らんとするのだ。
「まだ、こんなに……!」
だが、どれだけ望まれない生命であったとしても、懸命に生きる者がいる。
望まれなくたっていい。
感謝されなくたっていい。
自分が生まれた理由は自分で決める。誰かのために何かを為したいと思う願いは尊いものだ。
バイオモンスター『ツリーマン』は猟兵たちの協力もあって、汚染の中心へと近づいていたが、今だ配下オブリビオンの虎型モンスターたちを前に前に進めないでいた。
咆哮する声も、土砂で生み出された巨大な腕も、呼び出される古代の戦士の霊も、どれもが彼の歩みを止める理由にはなっていない。
けれど、次第に数で押されていくのだ。
「停滞せしの雫よ、集え、降れ。汝は氷雨、汝は凍刃。魔女が望むは数多の牙なる蒼の剣」
その声は静かなものだった。
詠唱と共に放たれるのは氷の魔剣。
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)のユーベルコードによって生み出され、放たれた氷の魔剣が次々と『ツリーマン』に襲いかからんとしていた虎型モンスターたちの目の前に突き刺さり、氷の壁を形成した。
「……秘密結社スナークの方から来たメンカル・プルモーサだよ……ツリーマンだっけ助けに来たよ……」
「秘密結社スナーク……! じゃあ、君も……!」
これまで何度も同じ名を聞いた。
猟兵と言う名の助力。助けられてきたことで『ツリーマン』はメンカルたちのことを正しく認識していた。
「ありがとう……! でも、まだ汚染の中心は遠いんだ」
「わかってる……君の怪我の具合をみよう。ぱっと見は軽傷が殆どかな……痛むところはない……?」
メンカルの電子解析型眼鏡『アルゴスの瞳』が『ツリーマン』の怪我の具合を見つめる。
これまで何度もオブリビオンに襲われてきたのだろう。
一人でここまで戦ってきたのは、称賛に値する。
「壁が……!」
氷の壁を破壊して突っ込んでくるオブリビオンを見据え、メンカルは未だ冷静であった。
焦ることはない。
時間は十分に稼いだのだから。
「下は汚染されてるとは言え水、溶け崩れそうな体……なるほどね……」
合わせて、とメンカルは小さくつぶやく。
これまでツリーマンが猟兵と共に戦ってきた経験があればやれるはずだ。メンカルはそれを信じた。
「空より降りたる静謐の魔剣(ステイシス・レイン)――……この場所で戦うことがなければ、こうはならなかっただろうけれど……運がなかったね」
放たれた氷の魔剣は氷結させる力。
放たれ、躱したところで、周囲には汚水と言えど水が在りめぐらされている。
突き刺さり、さらには体を完全に凍結せしめるユーベルコードの力。
氷結した配下オブリビオンの肉体。
そこへ叩き込まれるのはバイオモンスターの強靭なる肉体によって放たれた樹木の如き腕。
「……うん、いい仕事するね」
メンカルの氷の魔剣とツリーマンの膂力。
それが組み合わさった時、如何に汚染されたオブリビオンであろうとも砕くことは容易となる。
二人は頷き合い、さらなる最深部を目指して汚染の中心部へと駆けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
愛久山・清綱
感服つかまつった!貴方はまさに誉れ高き
『兵』そのものにござる。
拙者、愛久山清綱。一介の卒として、全力で貴方をお救い致す。
■決
ツリーマン殿と共に戦おう。
但しその際は、あえて名前だけ名乗る。
■闘
刀に【破魔】の力を込め戦闘へ。
俺は角も羽もある故、必ず狙われる。
敵を引きつけ、ツリーマン殿を先行させよう。
敵が此方に来る瞬間を【野生の勘】で予測し、
動きに合わせて【武器受け】しつつ前進。
集団で来たら【衝撃波】を放ち吹き飛ばす。
適度に戦い、振りきるチャンスを窺うのだ。
本体の姿が見えたら【ダッシュ】で接近し合流。
敵の集団目がけて【夜見・改】を孤を描くように
放ち、【範囲攻撃】で一斉撃破だ。
※アドリブ歓迎・不採用可
徐々にバイオモンスター『ツリーマン』は下水迷宮『ダストブロンクス』の中心へと迫っていた。
一人ではできなかったことだ。
如何に強靭なるバイオモンスターの肉体であっても、数でまさるオブリビオンたちの猛攻の前には為すすべもなかったことだろう。
けれど、猟兵たちが、『秘密結社スナーク』が来てくれた。
「一人でも……なんて、思っていたけれど」
それでも、助けに来てくれた。
こんな自分のために。
だから戦える。自分の為すべきことを為せる。バイオモンスター『ツリーマン』の心の中は感謝と誇らし気持ちでいっぱいだった。
「くっ……!」
それでもなお、配下オブリビオンたちが放った古代の戦士の霊が迫る。
そこへ駆け込んできたのは、一陣の風を思わせる猛禽の翼を広げた猟兵――愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)であった。
「感服つかまつった! 貴方はまさに誉れ高き『兵』そのものにござる」
一刀のもとに古代の戦士を両断し、清綱は声高々に感激していた。
ツリーマンの行動、意志。
そらに敬意を払うのだ。それは彼の思う『兵』そのものだった。
「拙者、愛久山・清綱。一回の卒として、全力で貴方をお救い致す」
翼と角を持つキマイラである清綱を古代の戦士たちは執拗に狙う。
その所以はわからないが、それでも今の状況では逆に助かるというものであった。
「ツリーマン殿、先にお行きなさい」
「でも、それでは君が……!」
「ふ、心配には及びませぬよ。後で必ず追いますれば」
その言葉だけで清綱には十分だった。
破魔の力を宿した刀を振るい、ツリーマンの道を切り開く。古代の戦士たちは己を狙う。
だからこそ、汚染続く中心に一刻も早くツリーマンを届けなければならない。
「お行きなさい!」
その言葉にツリーマンは駆け出す。それでいいのだと清綱は刀を構え、不退転の決意を見せた。
「さあ、ここから先は行かせぬよ……あの『兵』の道行きは何人も邪魔立てはさせぬ」
夜見・改(ヨミ)。
それは清綱のユーベルコードにして秘伝。
霊力を込めた刃は非物質化し、その霊魂のみを切り裂く一撃は古代の戦士の霊を一刀のもとに切り捨てる。
衝撃波を放つ斬撃は寄せ付けず、この古代の戦士たちを生み出す本体たるオブリビオンの姿を捉えんとする。
「――そこか!」
見据えたさきに在るのは、溶け崩れた虎型のモンスター。
あのオブリビオンこそが、この古代の戦士たちをよびだしけしかけている元凶であれば、それを断つ。
一気に駆け出し、神速の踏み込みで持って振った斬撃の一撃は一瞬でオブリビオンたちを薙ぎ払い、霧散させる。
未だ中心には至っていない。
けれど、清綱はもう心肺していなかった。
直にツリーマンを見て確信したのだ。
あれこそが『兵』。
であればこそ、彼は彼の為すべきところを必ず為すだろう。
そのための血路は己が開く。
清綱は彼の後を追い、汚水を跳ねさせて、元凶たる猟書言えを目指すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、空気を読んで、くらえ!いきなり必殺【VR忍術】氷遁・氷柱大雨の術!
ふふふ、ツリーマンさんが木であるならば寒さには強い感
ならば寒さでダメージを受けるのは熱砂なあなたた、くしゅんっ!
…あれぇ?何で私まで?
まあとりあえず助けに来ました!(にぱっ)
ツリーマンさん
あなたがこの汚染された地に立つ1本の木で
あなたが立つことでこの地がより良い未来に繋がると言うなら
私たちが守りましょう秘密結社スナークがね!
というわけで今日は氷柱のフルコースです!
私の【VR忍術】から逃げられると思わないことですね!
※アドリブ連携OK
空気とは読むものであると誰かが言った。
それはとてもむずかしいものであるが、読めねば社会に生きる者としては致命的なミスを齎すものでもあった。
それ故に、サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は彼女自身の信条である前口上を噛むこと無く、大胆にばっさりと省略カットさせた。
「お呼びとあらば参じましょう。私はクノイチ、空気を読んで、喰らえ! いきなり必殺VR忍術(イメージスルノハカッコイイワタシ)、氷遁・氷柱大雨の術!」
まさかのメモリセットもチェックもなしの開幕ぷっぱ。
流石のオブリビオンもバイオモンスターである『ツリーマン』もあっけにとられている。
いや、誰だってそうなるだろう。
いきなりである。
あまりにも唐突な初手ユーベルコード。
言うなれば、必殺技を番組開始3分位でやってしまう暴挙である。いや、番組ってなんのことだと言われたら、それはそれで口ごもるしか無いのだが。
「ふふふ、ツリーマンさんが木であるならば寒さ位は強い感。ならば寒さでダメージを受けるのは熱砂なあなたた、くしゅんっ!」
可愛らしいくしゃみ。
ではなく、べろんって鼻水が糸を引く感じでサージェは首をかしげた。
「……あれぇ? なんで私まで?」
おかしい。
完璧な作戦だったはずだ。
ツリーマンは凍らず、配下オブリビオンである溶け崩れた虎型モンスターたちだけが凍結する。
なのに、今サージェは……ああ、鼻チーンしなさい。チーンって! となる状況となってしまっていた。
「まあとりあえず助けに来ました!」
鼻水垂れてるけど、そこは細かいことである。
あまりにも下水迷宮に似つかわしい笑顔で言われたものだから、『ツリーマン』も呆気にとられていたが、ようやく正気を取り戻したようだった。
「ツリーマンさん。あなたがこの汚染された地に断つ一本の木で、あなたが立つことでこの地がより良い未来に繋がると言うなら、私達が守りましょう。秘密結社スナークがね!」
「秘密結社スナーク……! じゃあ、君も……!」
これまで何度も聞いてきた名前。
猟兵達はスナークの名を絶望と恐怖の象徴にはさせない。
必ず、その名を希望の象徴として塗り替える。その地道な積み重ねこそが、猟書家たちの目論見を必ず打ち砕くのだ。
「というわけで今日は氷柱のフルコースです! 私のVR忍術から逃げられると思わないことですね――……はっくちゅん!」
氷柱を放ちつつ、ついでにくしゃみまで飛び出す始末であったが、それでもサージェはツリーマンに下水迷宮の最奥への道を切り開く。
ずびずび鼻を鳴らしながらも、サージェは戦い続ける。
どこまでも愚直に。
それでも純粋に。
誰かの心が癒えるようにと。そのための未来に繋がるためにならばこそ、サージェは戦える。
そういった意味では確かにツリーマンとサージェは似ていたのかも知れない。
走り出すツリーマンの後を追い、サージェはよりよい未来を掴み取るために、己の力の限りを尽くすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『ケイオス・スナーク』
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POW : スカル・パニッシュ
【五つの髑髏】で攻撃する。[五つの髑髏]に施された【汚染毒物】の封印を解除する毎に威力が増加するが、解除度に応じた寿命を削る。
SPD : シヴィライゼーション・シャドウ
対象への質問と共に、【周囲の液体】から【小型ケイオス・スナークの群れ】を召喚する。満足な答えを得るまで、小型ケイオス・スナークの群れは対象を【汚染廃液】で攻撃する。
WIZ : ケイオス・ポリューション
【汚染廃液】を降らせる事で、戦場全体が【公害汚染時代】と同じ環境に変化する。[公害汚染時代]に適応した者の行動成功率が上昇する。
イラスト:塒ひぷの
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ナギ・ヌドゥー」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
猟書家『ケイオス・スナーク』はうめいていた。
何のために己が生まれたのか、その理由すら己自身のためではなかった。
『超生物スナーク』。
それに成るために己は汚す。汚染する。捕食する。
その繰り返しだった。
「生命の理由なんて要らない。生まれてしまってはいけなかった生命なのに、うまれてしまったからには、目的を、理由を果たさなければ。『スナーク』に成る。そのためだけに存在しているのだから」
だから捕食する。
汚染し、生み出した生命を喰らう。
そうすることで近づくのだ。それは己自身がよくわかっている。
「ああ、近づいている。生まれてはいけないものが、生まれてしまう。もう少し、もう少しで、生命の理由が、生まれた理由がわかる――」
『ケイオス・スナーク』は咆哮する。
廃液を垂れ流しながら、その唸り声は、あらゆる生命を否定するのだ。
生まれる理由などない。
喪われる生命など意味がない。
そういうかのように周囲に満ちた汚染水を撒き散らす。
その汚染具合は言うまでもない。
公害汚染の時代を飛び越えるかのような、強烈なる悪臭と悪性。それらを煮詰めたかのような廃液が飛び交う。
しかし、そこへ現れたのは、バイオモンスターである『ツリーマン』であった。
「僕は生まれた理由を知っている。今がその時だと知っている――!」
その樹木の如き腕が廃液満ちる下水に張り巡らされる。
腐食していく樹木の腕。
けれど、構わない。
己が生まれた理由。
それはこの汚水の中から生まれ、汚水さえも清らかなるものに変えること。
だからこそ、彼は生命を懸ける。
その尊さを、理由を知っているからこそ、公害汚染の時代よりも強烈であった廃液の汚染を、その時代の頃まで押し戻す。
「僕一人ではできなかったことかもしれない――けれど、今は違う。秘密結社スナークがいる――!」
ステラ・リデル
生命の理由、生まれてきた理由ですか……資質、環境、経験、それらによってもたらされた答え。それを否定する気はありませんよ。
ただ、それが他者を害するものであれば阻む者が現れ、他者に益するものであれば協力する者が現れる。それだけのことです。
秘密結社スナークの一員、ステラ・リデル。ツリーマンさんに協力して貴方を滅ぼさせてもらいます。
強力な汚染源、ケイオス・スナーク。その汚染の力を『無効化術式』により消し去ります。
それでは、ツリーマンさん、倒しましょう。
とオーラセイバーを振るって戦います。
(淡く青く輝くオド(オーラ防御×毒耐性)を纏うことで周囲の環境を無視)
アドリブ歓迎です。
猟書家『ケイオス・スナーク』は果たして、己の誕生を望んでいたのだろうか。
いや、望むと望まざると彼の生命は理由を果たすためだけにあらゆる汚染を引き起こす。
それは今や公害汚染の時代の汚染濃度を遥かに超える汚染でもって、下水迷宮『ダストブロンクス』を汚濁へと沈める。
けれど、それをさせぬ理由がある者がいる。
「生まれてはならぬ生命がある。それが自身であることは明白。忘れるな。忘れるな。この生命をまっとうしなければ、生まれた意味すらなくなってしまう」
その唸る声は、重く響いていた。
生命に全て意味があるのだとすれば、望まれなかった生命にもまた意味がある。
故に、猟兵――ステラ・リデル(ウルブス・ノウムの管理者・f13273)は否定しなかった。
「生命の理由、生まれてきた理由ですか……資質、環境、経験、それらによってもたらされた答え。それを否定する気はありませんよ」
静かな声だった。
否定するつもりがないのは明白だった。けれど、互いはオブリビオンと猟兵である。
ならば、両者の間に横たわる溝は決定的なものであったことだろう。
滅ぼし、滅ぼされる関係。
そうでなければ世界が滅ぶ。土台から崩れていく恐怖は言うまでもない。
「ならば、このまま汚濁に沈め。生まれた意味を、生命の理由を、スナークに至るための道程の、その轍となって消えろ、猟兵――!」
咆哮とともに降り注ぐのは公害汚染の時代と同じ廃液の雨であった。
バイオモンスターたちを生み出すに至った凄まじき汚染水。
その雨がステラと周囲をさらなる汚染に塗れさせようと襲うのだ。だが、ステラは指先を掲げる。
「ただ、それが他者を害するものであれば、阻む者が現れ、他者に利益するものであれば協力する者が現れる。それだけのことです」
「利害でしか繋がれぬのならば、それは理由などではない。ただのエゴだ」
「ええ、ですが……誰かのために己を省みぬ者もいるのです。秘密結社スナークの一員、ステラ・リデル。ツリーマンさんに協力して貴方を滅ぼさせてもらいます」
輝く指先。
それはユーベルコードの輝きであった。
広がるは魔法術式。
その輝きが広がり、降り注ぐ廃液の雨を打ち消していく。いや、相殺しているのだ。
「全ての奇跡は無価値である。けれど、奇跡を待たず、人智を尽くして奇跡を起こす者にこそ力は宿るのです。それでは、ツリーマンさん」
それは、無効化術式(ディスペル・ユーベルコード)。
ステラのユーベルコードがあらゆる災厄、汚染を尽く打ち消していく。手にしたオーラセイバーが輝き、その残光を持って戦場を駆け抜ける。
淡く輝くオドが汚染された周囲の汚水すらも弾き飛ばす。
「倒しましょう――」
「スナークに至る。スナークに成る。生まれた理由はそれしかない。それしかない。それ以外に何もいらない!」
迫る『ケイオス・スナーク』の濁流。
その一撃はステラの体を容易に吹き飛ばすだろう。どれだけ強固なるオーラと毒への耐性を持っていたとしても、その一撃で尽くが霧散し、吹き飛ばされる。
けれど、ステラを待っていたのは汚水の濁流ではなかった。
ツリーマンの放った樹木の如き腕が伸び、迫る濁流を浄化して切り裂いている。
「今だ、ステラさん!」
叫ぶ声に応えるようにステラがオーラセイバーを振るう。
放った斬撃の残光が一文字に『ケイオス・スナーク』の体を両断する。今だ浅い一撃。だが、それでもドクロの如き顔面に刻まれた斬撃の鋭さは回復しないだろう。
「――確かにスナークに至らんとする力。生まれた理由。けれど、その名は……恐怖と絶望の象徴にするわけにはいかないのです。例え混沌という究極の汚濁から生まれたのだとしても」
それを為すわけにはいかないと、ステラはオーラセイバーを振り、その一撃で持って、その名を希望の象徴、秘密結社スナークの名でもって塗りつぶすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
ツリーマンには敬語
満足な答えは出せないかもしれないが、それでも切るだけだ
俺は生まれた理由なんて分からない、だから己で定義した
生きている者を守り、脅かす者を倒す
SPDで判定
秘密結社スナークだと敵に【大声】で名乗り戦う
まずは【暗視】【聞き耳】を使い【情報収集】する
敵の攻撃は下水道の壁に囲まれた【地形を利用】して避けて、銀腕をハンマーに【武器改造】して攻撃
数が多いなら義眼の赤の災い:炎熱【焼却】を【範囲攻撃】【全力魔法】で使用して攻撃
必要なら【覚悟】してツリーマンを【かばう】
オーラの輝き放つ青き残光――斬撃の一撃が、猟書家『ケイオス・スナーク』の顔面に癒えぬ一文字の傷跡を刻み込む。
その一撃は今だ倒すには至らぬものであったが、それでも『ケイオス・スナーク』は痛みによって咆哮する。
轟く咆哮は下水迷宮の入り組んだ下水道の隅々にまで響き渡るほどの怒声であったことだろう。
「許せない……! この体は『スナーク』! 今だ至らぬまでも、終点に在りしは『超生物』のもの!」
そのドクロの如き顔面から廃液が溢れ出し、小型の『ケイオス・スナーク』が次々と生まれ、廃液の中を駆け回る。
単体であっても、あの強大さである。
「生命の理由は! 生まれた理由は! 果たされるまで終わらない! 終わらない! 追われない! あの『スナーク』に至るまでは!」
その咆哮は質問というよりも怨嗟であった。
自身を生み出した世界に対する怨嗟。恨みであった。嫉みであった。こんなにも自分は汚れきっているというのに、相対する猟兵達はきれいなましろであった。
許せるわけがない。
憧れぬわけがない。
どうして自分だけが、こんなにも汚れているのかと全てを恨む声が響き渡る。
「満足な答えは出せないかもしれないが、それでも切るだけだ」
ルイス・グリッド(生者の盾・f26203)は溢れるように増殖した小型『ケイオス・スナーク』の群れを前にして立ちふさがる。
今だ浄化を続けるバイオモンスター『ツリーマン』は動けない。
彼に攻撃をあたえるわけにはいかない。
必ず守り通す。その意志だけがルイスを今もなお、この下水迷宮『ダストブロンクス』に立たせている。
「俺は生まれた理由なんてわからない。だから己で定義した。生きている者を守り、脅かす者を倒す。そうだ! 俺は秘密結社スナークの一員!」
全てを恨む咆哮にルイスは真っ向から対峙する。
退くわけにはいかない。
退けば傷つく者がいる。例え、己の生命を厭わぬとて、それを護ることこそがデッドマンである己の、いや、ルイス・グリッドの覆してはならぬ信条であった。
銀腕が鎚の形へと変わる。
ここは下水道だ。壁に四方を囲まれている。ならばこそ、逃げ場はない。それは同時に小型『ケイオス・スナーク』たちもそうだ。
ならばこそ、立ちふさがる。
義眼のメガリスが輝く。
「俺の体にはメガリスがある。この力があるのならば――メガリス・アクティヴ!」
義腕と義眼。
それらは確かに呪われた秘宝、メガリスであった。
けれど、呪われているからと言って正しく使えぬわけではない。己の意志で、呪われた力さえも正しさのために使う。
その意志が赤の災いの力に義眼を輝かせる。
「ここから先は行かせない! 燃えろ!」
ぎぃ、と悲鳴のような鳴き声を上げて小型『ケイオス・スナーク』たちが焼き焦げ、鎚の一撃で叩き潰されていく。
攻めろ。
退くな。
進め。
前に出ろ。
いつかの誰かの声が聞こえた気がした。
それに背中を押されるようにルイスは下水道を駆け出し、大本である『ケイオス・スナーク』へと迫る。
目の前にある敵を討て。
ただそれだけのために己の全身を使うのだ。
それが己が定義した生まれた理由。
護る。
倒す。
その声がまた聞こえた。己の内側から響く声に押されるままにルイスは、その銀鎚の一撃で持って『ケイオス・スナーク』の頭蓋を割るように全霊の力を持って叩きつける。
「これが、俺の生きる理由だ――!」
生者の盾。
それこそが、ルイスの名。生き方。生まれた理由なのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
アドリブ・連携OK
そんな気はしてたけど、無茶をするねえ。
生まれた意味を果たすってのは、死んでいいって事じゃあないだろうに。
ツリーマンさんの枝を少し折って、【万喰変化】で食べてツリーマンに変身するよ。
一人じゃ大変でも、二人ならもっと楽に出来るからね。
変身が終わったらケイオス・スナークの体に腕を突き立てて、
直に体液を吸収して汚染を浄化するよ。
髑髏の汚染毒物も元から浄化する気なら関係ないし、後は我慢比べだね。
生まれた理由に従うしかないのは道具だよ。
理由に従うのも従わないのも、自分で選ぶのが生きるって事だろうさ。
生命には理由がある。
生まれた意味が、意義が、その存在の理由が。それをレゾンデートルと呼ぶのならば、それに従って生きる道を決めるのもまた生命であろう。
心在るのならば、それに従うべきだ。
生きているというのなら。
けれど、その道が最初から間違っていたのならば、その生命は間違いであるのだろうか。
外れた道を、道と呼べないのならば、元より道などなければよかったのに。
それは猟書家『ケイオス・スナーク』の叫びであったかもしれない。
頭蓋に刻まれた一文字と、砕かんばかりに放たれた打撃の一撃は確かに『ケイオス・スナーク』を追い詰めていた。
あれだけ汚染した廃液もバイオモンスター『ツリーマン』によって浄化されつつある。
「意味など無いのなら、最初から生まれなければいい。この生命を意味在るものにするために。理由のために終わらせるために、『スナーク』に至る。恐怖の権化、象徴、それに成る。成る。成るしかないのだ!」
咆哮がほとばしり、配されたドクロの一つが砕け散る。
それは強すぎる汚染物質を開放した証であった。『ケイオス・スナーク』はあらゆるものを汚染する。
そのためだけに生まれた存在だからだ。
「そんな気はしてたけど、無茶はするねえ。生まれた意味を果たすってのは、死んでいいってことじゃあないだろうに」
ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)は、バイオモンスター『ツリーマン』を護るように立ちふさがり、彼の樹木の如き腕の一部に手をかけた。
「ちょっと貰うよ」
え、と訝しむツリーマンをよそにペトニアロトゥシカは、彼の枝を一部折って、ためらわずに己の口腔へと納めた。
その細い喉が鳴り、止めるまもなく彼女はバイオモンスターたるツリーマンのいち部を体内に取り込む。
バイオモンスターとはすなわち、公害汚染の時代の汚濁から生まれた存在だ。
それは廃液を飲み込むのと同じであった。
生物であれば、それがどんな作用を齎すかすらわからない。
けれど、彼女はためらわなかった。
「何だって食べられるから、何にだって成れるのさ……今の君だって、ツリーマンだって。これから何にだって成れる。だから」
それこそが、万喰変化(イーティング・ビヘイビア)。
ユーベルコードにしてペトニアロトゥシカにしかできぬことである。彼女の体は今やツリーマンと同じであった。
浄化の力を宿す体。
ツリーマンは今、これ以上汚染が『ダストブロンクス』に広がらぬようにと抑えるのに精一杯である。
故に己がやらねばならない。
「一人じゃ大変でも、二人ならもっと楽に出来るからね――!」
駆け出す。
汚水を跳ね、噴出する強大なる汚染の波をかき分けてペトニアロトゥシカは進む。その瞳に映っていたのは、哀れなる生命であった。
だが、憐れまない。
それは意味のないことだ。
「生命の理由を! 生まれたわけを! 全うする! スナーク! スナークになることこそが、望みにして理由!」
噴出する廃液をユーベルコードによって変化した巨木の如き腕で振り払ってペトニアロトゥシカは『ケイオス・スナーク』に取り付く。
「生まれた理由に従うしかないのは道具だよ。生きている意味なんて言うのは、自分で決めるから生命っていうんだよ」
その腕を『ケイオス・スナーク』に突き立てる。
直に打ち込まれた巨木の枝葉が『ケイオス・スナーク』の体を構成している体液を吸い上げ、浄化していく。
どれだけ強大な汚濁であろうとも、浄化するつもりならば関係がない。
だが、その汚濁を吸い込むことはペトニアロトゥシカに尋常ならざる痛みを齎す。顔をしかめる。
それ以上の傷みが全身を襲う。
けれど、止めない。止められるわけがない。ペトニアロトゥシカはそうすると自分で決めたのだ。
本来はこうあるべき生命ではないのかもしれない。
けれど、そう。
それでもペトニアロトゥシカは雄々しく告げるのだ。
「理由に従うのも従わないのも、自分で選ぶのが生きるって事だろうさ! あたしだってそうする! 今、戦う理由なんてそれだけでいい!」
ユーベルコードが強烈に輝き、破砕した髑髏に施された劇薬の如き封印の一つを無効化する。
これが生きるということ。
死んでしまうかも知れない。
けれど、死ぬことを許容しない。生まれたことを後悔しないし、生まれた喜びで塗りつぶしていく。
それこそが生命の讃歌。
歌声のようにペトニアロトゥシカは吠える。
生きる意味を選ぶ。
その最初の選択をペトニアロトゥシカは、その手に掴んでいたのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
生きる理由? そんなの決まってるじゃない。幸福へ向けて一歩ずつ足を進める。昨日より今日。今日より明日が素晴らしいと信じて、人は夢を見ながら生きていく。
摩利支天九字護身法をもって「オーラ防御」を展開。「浄化」「環境耐性」の「結界術」で防御を重ねつつ、折紙を「式神使い」で大型犬にして「集団戦術」をもってケイオス・スナークに立ち向かわせる。
戦いは数だって誰かが言ってた。
式神の排除に気を取られている間に、切り札を打つわ。
「高速詠唱」「全力魔法」炎の「属性攻撃」「衝撃波」「浄化」「破魔」の不動明王火界咒。
あなたの悪食も終わりにしてあげる。生きる意味を他の誰かにしか見いだせなかったあなたに、勝ち目はない。
心がある以上、生命は求める。
意義を。存在意義を。己が生まれた意味を見出そうとする。ただ生きるためだけなのならば、そんなことを考える必要など無いだろう。
けれど、生まれた意味を考える生命はそうではない。
ただ生きるためだけに時を過ごすことに耐えられない。
「無意味に生きるなんて許されない。意味なき生命など、あってはならない」
噴出する害悪なる廃液。
それは次々と溢れ出て、小型の『ケイオス・スナーク』を産む。
下水迷宮『ダストブロンクス』に小型の『ケイオス・スナーク』の群れが疾走する。
猟兵たちが立ち向かった猟書家『ケイオス・スナーク』は確かに『超生物』スナークに近づいていた。
「理由なき生命に繁栄はない。発展はない。進化は訪れない。『スナーク』に成る。その理由だけで生きていていいのか」
それは咆哮であったが、問いかけでもあった。
誰に。
それは猟兵に対する問いかけであった。
理由なき生命に意味はあるのかと。
「生きる理由? そんなの決まってるじゃない。幸福に向けて一歩ずつ足をすすめる。昨日より今日。今日より明日が素晴らしいと信じて、人は夢を見ながら生きていく」
その言葉は、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)から放たれたものだった。
彼女の瞳はユーベルコードに輝いていた。
常により良いものを求めるのが生命であるというのならば、発展を求めて突き進む。
それが人の歴史を積み上げてきたもの。
これでいいと思う心は妥協を生むだろう。
それは停滞を呼び込むと知るからこそ、ゆかりはより良きを求める。
「オンマリシエイソワカ。摩利支天よ、この身に験力降ろし給え」
摩利支天九字護身法(マリシテンクジゴシンホウ)を輝かせ、ゆかりはまばゆいばかりのオーラでもって汚染の続く下水迷宮『ダストブロンクス』の廃液に対抗する。
悪臭が立ち込める下水道において、強烈なる匂い、そして襲いくる汚染に対抗するにはこれしかなかったのだ。
浄化はバイオモンスターである『ツリーマン』も行ってくれている。
けれど、間に合わないかもしれない。
結界術を重ね、ゆかりはさらに折り紙で作った大型犬の式神を走らせる。
「戦いは数だって誰かが言ってた」
大型犬の式神と小型の『ケイオス・スナーク』たちが激突する。
食い合い、噛みちぎる。
それは次々と互いに相打ちになって霧散し消えていく。
「こんな戦いに意味はない。至るためだけの理由の生命。そこに至らなければ生まれた意味も、意義も、何もかも無意味になるから、なさねばならない」
猟書家『ケイオス・スナーク』の大口がゆかりの生み出した式神をも巻き込んで汚濁を飲み込んでいく。
これまで猟兵達に与えられた傷を癒そうというのだ。
だが、それをさせるわけがない。
ゆかりの紡ぐ高速詠唱がまるで歌声のように下水道に響き渡る。
「あなたの悪食も終わりにしてあげる。生きる意味を他の誰かにしかみいだせなかったあなたに――」
白紙のトランプが燃える。燃え盛る。破魔の力と浄化の力を乗せた炎が噴出し、汚濁を飲み込もうとした『ケイオス・スナーク』の大口に叩き込み、?部から焼いていく。
怒号のような咆哮が響く。
それは内部から焼かれる傷みに悶えるようであり、同時に癒えぬ傷を与えた猟兵に対する憎しみであったのかもしれない。
「勝ち目はない! 疾く消えなさい! 何者かに成るではなく、成り代わろうとしたあなたには、何も為し得ない。それを阻む者たちがいるのだから――!」
大成功
🔵🔵🔵
髪塚・鍬丸
力を貸してくれて感謝する。助かった。
今度は俺が君の頼みを引き受ける番だ。望みを言ってくれ。「奴等を倒せ」と。必ず遂行する。
UC【忍者八門】。ツリーマンからの御下命を果たす為に、忍びとして鍛えた技術全てが強化される。
八の内の一門、火術。秘伝書の巻物を口に咥え、「五行書」による【焼却】【浄化】【範囲攻撃】。吹き荒れる炎の嵐で小型スナークの群を焼き払い、汚水を蒸発、濾過。不純物を燃やし真水に戻す。
俺が生まれた意味があるとするならば、任務を果たす為なのだろう。その為に育て鍛えられた力だ。
だが、与えられた生命と力だろうが今は俺のものだ。任務の為の力なら任務を自分で選べばいい。生きるとはそういう事だ。
バイオモンスター『ツリーマン』は汚染が進む下水迷宮『ダストブロンクス』の浄化にその力の殆どを割いていた。
今や猟書家『ケイオス・スナーク』が齎す汚染は公害汚染の時代よりもさらに劣悪なる汚染水を下水道の中に満たし始めていた。
それを食い止めるために彼は、その身に宿した力を総動員して中和を始めていたのだ。
「力を貸してくれて感謝する。助かった」
髪塚・鍬丸(一介の猟兵・f10718)は数多の猟兵たちが猟書家『ケイオス・スナーク』に打撃を与え、その痛みと傷に寄る咆哮を聞きながら『ツリーマン』の傍らにあった。
戦いの状況は予断を許さないが、それでも鍬丸にはどうしても必要なことがあった。
「僕にはこんなことしかできないけれど……! それでも……!」
生まれた意味を。
自分が此処に在るという意義を『ツリーマン』は見出していた。その生命の使いみちを見定めた瞳を鍬丸は見つめていた。
「今度は俺が君を助ける。君の頼みを引き受ける番だ。望みを言ってくれ。『やつを倒せ』と。必ず遂行する」
その意志の輝きはユーベルコードの輝きであった。
桑丸のユーベルコード、忍者八門(ニンジャハチモン)。
それはいかなる困難をも廃して、命じられたことを完遂するための力。だが、それは命令と呼ぶにはあまりにも強制力のないものであった。
ここに主従の関係はない。
けれど、それでも鍬丸は望む。そして、『ツリーマン』もまた託すことを望んだ。己一人ではできないことも、他者がいることによって為すことができる。
「『やつを倒して』そして、必ず『生きて』」
その言葉は命令ではなかった。
けれど、約束だった。
それだけでよかったのだ。
現れた秘伝書を広げ、鍬丸は言う。
「御下命如何にしても果たすべし」
駆け抜ける。
彼が鍛え続けた忍びとしての技術のすべてが強化される。それはある意味で限界を超えていたのかもしれない。
下水の中を駆け抜ける。
そこに迫るは廃液と共に迫る『ケイオス・スナーク』が放った小型『ケイオス・スナーク』の群れであった。
「なるほど。数で圧するつもりか……だが! 八の内の一門、火術」
秘伝書の巻物を口に加え、印を結ぶ。
放たれるは業火の如き炎の焼却。
滅却と呼ぶに相応しい炎は廃液の海をなめるようにして小型『ケイオス・スナーク』たちを焼き尽くす。
汚水すらも蒸発させる高温は、凄まじい。その炎の中から鍬丸は飛び出す。
視界に映るのは痛みに悶える『ケイオス・スナーク』であった。
これまで猟兵たちが与えた傷が開いているのだ。再生する暇すら与えるわけにはいかない。
「蓄えた力が。至ることのできる『スナーク』への道が、消える。消えてしまう。意味が、生まれた理由がなくなってしまう」
それは嘆きと同時に憤怒の声であった。
強靭なる生命力を有するバイオモンスターを喰らい続ける。
そのために汚染で満たしていく。それは確かに『ケイオス・スナーク』の生まれた意味であったのかもしれない。
「俺が生まれた意味があるとするならば、任務を果たすためなのだろう。そのために育て鍛えられた力だ」
鍬丸もまた、その忍びとしての力を誰かに利用されるために生まれたと言えるであろう。
それが忍びという生き方であると言われればそれまでである。
だが、それは生き方、技術でしかない。
鍬丸という生命は違う。
「だが、与えられた生命と力だろうが、今は俺のものだ。任務のための力なら――」
吹き荒れる火術の炎が『ケイオス・スナーク』の体を焼く。
凄まじい温度の熱が、その体の表面を焼き焦がし、『ケイオス・スナーク』の痛みに悶える声が響く。
「任務を自分で選べばいい」
掴み取る手がある。
願うことができる。
それだけの力が鍬丸にはあるのだ。それが窮屈な生き方であると感じる者もいるだろう。
圧倒的な力さえあれば、そんな選択すらもしなくていいのかもしれない。
己の思うがままに。欲望のままに。
そう振る舞うことだってできたかもしれない。
けれど、鍬丸は託されたのだ。あの誰かのために戦うことを、力を尽くすことを厭わぬ『ツリーマン』に託されたのだ。
「俺は命じられた。そして、託されたんだ。それを選んだのは俺だ。俺がそうしたいと願ったからだ」
だからこそ、鍬丸は戦える。
「何を――生きる意味すら、放棄して、考えることを止めただけではないのか」
与えられることばかり。だが、鍬丸はかぶりを振って『ケイオス・スナーク』に告げる。
「生きるとはそういうことだ――」
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
命を使う、と書いて使命と読みます
ツリーマンさんがその使命を、
命をかけて生まれた意味を果たすと言うのなら
私はさっきの言葉を守るのみ
お任せください!
秘密結社スナークの一員にして
クノイチのサージェが万難を廃してみましょう!
(鼻きちんと対処しました)
というわけで【威風堂々】で
いっきまーす!
ふふふ、【かげぶんしんの術】の合わせ技で(増えることで)
圧倒的なクノイチパワーをお見せしましょう!
(ただし忍べてない)
公害汚染時代もなんのその!
適応してなかったとしても
いつの時代も未来を切り開くのは人の力なのです!
私の場合、正しくマンパワーなので若干力技ですが!
※アドリブ連携OK
秘密結社スナーク。
それは猟兵たちが見出した『超生物スナークの創造』に対するカウンターであった。その組織に実体はない。
あるのは、必ず悪意に塗れた名である『超生物スナーク』の存在を上塗りし、尽くを恐怖ではなく希望の象徴として生み出すという目的のみ。
常にオブリビオンとの戦いは予知から始まる。
けれど、猟兵達は皆、オブリビオンが齎す悪意を打ち払ってきた。恐怖と悪意の象徴として『スナーク』の名があるのならば、それらを希望の象徴として人々に認識させる。
そのためにサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は己に課せられた使命のために戦う。
「命を使う、と書いて使命と読みます。ツリーマンさんがその使命を、命をかけて生まれた意味を果たすというのなら、私はさっきの言葉を護るのみ!」
ちん! と鼻を噛む音と共にサージェは汚水に塗れた下水を駆け抜ける。
猟書家『ケイオス・スナーク』が咆哮している。
数多の猟兵たちが傷を与え、その力を削いでいる証拠だろう。その咆哮は汚染の拡大を防ごうと力を振るうツリーマンにも届いていた。
だから、サージェは元気いっぱいの笑顔でツリーマンに言うのだ。
「お任せください! 秘密結社スナークの一員にしてクノイチのサージェが万難を排してみましょう!」
「気をつけて……! 僕は浄化しかできないけれど……!」
「いいえ、それが貴方の生まれた意味。ならば、私はそれをしっかりと為せるようにがんばるのみです!」
ふぁいと! とサージェはウィンクして下水満ちる道を走っていく。
その瞳にあるのはユーベルコードの輝き。
威風堂々(シノベテナイクノイチ)とした立ち振舞はクノイチらしからぬものであったかもしれない。
けれど、それでいいのだ。
今のサージェはクノイチであれど、秘密結社スナークのサージェだ。目立ってなんぼなのである。
ここが下水道であり、ダストブロンクスであるから人目が皆無であることが惜しいが、それでいい。
彼女の活躍を見つめる者が、一人はいる。
それはバイオモンスターのツリーマンだ。彼の瞳が在れば、サージェはどこまでも背中を押されるように戦うことが出来る。
「私はクノイチ、影より悪を討つ者なり!!」
刮目せよ。
その瞳に輝くユーベルコードは彼女の力を極大にまで引き上げる。
一斉に分身し、その数を増やし、圧倒的なクノイチパワーでもって汚染水の雨が降る戦場を駆け抜ける。
「公害汚染時代もなんのその! 適応してなかったとしても、いつの時代も未来を切り開くのは人の力なのです!」
「未来など――! 最初から望まれない生命はなんとする。閉ざされた未来しかない。決定された未来。それ以外には成れぬ生命は」
『ケイオス・スナーク』の咆哮が響き渡る。
それはどうしようもないことであった。
生命の意味を決定づけられた者。『超生物スナーク』に至る者としての存在を決定づけられた『ケイオス・スナーク』にとって、猟兵たちの言葉はまやかしでしかない。
選ぶことの出来なかったもの。
望んでいない力を持たされたもの。その悲哀と憤怒が汚染水の雨をさらに猛烈なる勢いにしていく。
けれど、サージェは構わなかった。
「私の場合、正しくマンパワーなのですが! それでも! 精一杯生きていくしかないじゃないですか! それ以外を選べなかったのは、貴方が選んだからですよ! 人を傷つけない生き方だってできたはずなんです! 本当は!」
選べなかったという生命が言う。
けれど、それは間違いだ。
いつだって生命は仕切り直すことが出来る。
間違えるのが当たり前なのだ。失敗することが当たり前なのだ。
いつまでも成功ばかりできる生命なんて無い。
「だから、私は力技ですが、みんなが笑える未来を掴むために選ぶのです!」
廃液の雨をくぐり抜け、サージェが『ケイオス・スナーク』に飛び込む。手にしたカタールの一閃が刻まれ、サージェは笑う。
きっと明るい未来を自分は掴んでいると。
誰かのために何かをするということ。それを選んだ道がどれだけ困難であっても、間違いであることなんて、きっとないのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
ジョウ・デッドマン
汚染が溢れた街なんか散々見てきた
…クソみたいな世界はあの地獄だけで十分だ
何のために生まれて生きるのか、なんて
アンタやっぱり「ヒーローもの」だな
…なっつかしい、とびきりガキ向けのやつ
OK、「正義の味方」にサポートメカのプレゼントだ
木に光は?水は要る?
擬似太陽光、空気と水の浄化能力
ありったけのジャンクで生み出したアンタの為のヒーローロボで、髑髏から庇わせ汚染毒物に対抗させる
これでアンタはフリーだ
クライマックスを演じてくれよ!
僕はヒーローなんかじゃない
電気吐き出しきったらただの死体、もうロクに動けない
…だから、ショーはそっちで勝手にやっててくれ
観客席から見てるから
…やっぱ、懐かしいし
結構、憧れるな。
怨嗟の咆哮が下水迷宮『ダストブロンクス』に響き渡る。
猟書家『ケイオス・スナーク』の五つあった髑髏の二つは開放と同時に破壊されている。
それは数多の猟兵たちが為し得たことだ。
しかし、それでも今だ開放されるべき封印の髑髏は未だ三つ残っている。開放されれば、されるほどに強力になっていく汚濁。
その汚染は公害汚染の時代のそれを遥かに上回るものであった。
例え、バイオモンスターである『ツリーマン』が浄化を続けても、何度も汚濁が開放されれば、彼自身が保つまい。
けれど、それでも彼は浄化を続ける。
「生まれた理由ならある。僕が僕でいる理由ならもうある。負けるものか。僕がいる限り……!」
ああ、と思う。
声が自ずと漏れ出るのをジョウ・デッドマン(異世界蘇生・f27582)は感じていた。
それは感嘆でもあり、心に宿った衝動が唸りを上げる音でもあった。
汚染が溢れた街なんて散々見てきたのだ。
荒廃した世界。
溢れる暴力と理不尽。奪う者と奪われる者がいる。それをクソみたいな世界だと、地獄だと思ったのは己自身だ。
そして、それが其処だけで十分だとうんざりしたのだ。
望まれぬ生命バイオモンスター『ツリーマン』は言った。
何のために生まれて生きるのか。
その理由をもう彼は得ている。誰かのために。何かのために。善きことをなせるようにと己の生命すらも顧みず駆け出す。
それを懐かしむようにジョウは見ていた。
いつか見た記憶。
「アンタやっぱり『ヒーローもの』だな……なっつかしい、とびきりガキ向けのやつ」
憎まれ口のように言ってしまうのは、しようがない。こういう性分なのだ。
けれど、ツリーマンは笑った。
笑ってくれたのだ。それでもいいのだと。
「ヒーローなんて、呼ばれるとは思いもしなかったよ。けれど、これが僕の生まれた意味なら――」
それを為す。
ただそれだけのために笑うのだ。だからこそ、ジョウの衝動は、その身を突き動かすヴォルテックエンジンは、高鳴る。
それは、終末の情熱(サタデー・ナイト・フィーバー)の如き内蔵電流のほとばしりであった。
「OK、『正義の味方』にサポートメカのプレゼントだ。木に光は? 水は要る? そりゃそうだよな。そうだとも!」
下水迷宮に擬似太陽が輝く。
すべてを照らす。あまねく照らす光が樹木の如き体を持つ『ツリーマン』の体を成長させる。
空と水の浄化能力をジョウのユーベルコード、サポートガジェットによって強化された『ツリーマン』はまるで一本の大樹のように、公害汚染の時代を上回る汚濁すらも浄化していく。
ありったけのジャンクで生み出した『ツリーマン』専用のヒーローロボが生み出されていく。
「行けよ、これでアンタはフリーだ! クライマックスを演じてくれよ!」
ジャンクから生み出されたサポートガジェットが唸りを上げて汚濁を浄化していく。そうすれば浄化の力を費やす『ツリーマン』は動くことができる。
そうすれば、きっと自分だけじゃない。他の猟兵の助けにもなるはずだ。
「僕はヒーローなんかじゃない。電気吐き出しきったらただの死体、もうロクに動けない」
デッドマン。
それは不死なる者。衝動を電力に変えて動く屍に過ぎない。けれど、ジョウのヴォルテックエンジンが衝動を受けて回る。
回り続ける。
誰かの笑顔を見たいと願う心がある限り、彼は死なない。死ねない。
「……だから、ショーはそっちで勝手にやっててくれ。観客席で見てるから」
ジョウの身体が下水道の壁面に倒れ込む。
やれることはもうやった。
『ツリーマン』の駆ける背中が見える。ああ、とまた声が漏れ出た。
いつかみた『ヒーローもの』。
その光景が思い出される。誰に理解されるでもなく。誰に感謝されるでもなく。ときには石を投げられることもあっただろう。
けれど、それすらも意に介さず、誰かのためにと拳を振るう『ツリーマン』の姿があった。
霞む視界の中でその光景を見て、ジョウは目を細めた。
「……やっぱ、懐かしいし、結構、憧れるな」
その言葉は世界に溶けて消える。
もしも、この先足を止めることがあったとしても、きっと誰かが背中を推してくれる。
今日見た光景も、いつか見た光景も。
誰かのための戦いをする日にこそ、幻視することだろう。
だから今はお休み。『いつかのヒーロー』――。
大成功
🔵🔵🔵
カゲヤ・クサカベ
うわっ、きついなコレ…(袖で口鼻覆いつつ)
しかし、汚染して喰らう自分の在り方に納得いってないの?
いや…なんか苦しそうに見えたからさ。
自分のやりたい事をしてるなら、もっと楽しそうにしても良いんじゃないかと思って。
…逆に生き生きしてるねツリーマン。スゴイじゃん。
お陰で俺もやれそうだ。
勇気を貰うシチュエーションに遭遇するの、中々感動するね。
俺の影を用いて攻撃するよ。
敵の攻撃は影を広げて防御、敵の足元から影をくり出して不意打ち攻撃。
敵がツリーマンを執拗に攻撃するなら、敵から間合いを取ってUC発動。
サイズ大きめに召喚した影蝙蝠でツリーマンを庇いつつ、影狼で敵背後から攻撃。
ツリーマンの邪魔はさせないよ。
悪臭がむせ返るように下水迷宮『ダストブロンクス』に蔓延る。
どこに居ても、この悪臭の前には目が霞むし、嗅覚は麻痺してしびれているような気配さえした。
清浄なる空気しか知らぬ者にとっては、この汚染が進む『ダストブロンクス』に存在すること事態が体に悪影響を及ぼすことだろう。
「うわ、きついなコレ……」
袖で口鼻をおおいつつ、カゲヤ・クサカベ(ネガティブシャドウ・f31518)は眉根を顰めた。
怨嗟の如き咆哮は猟書家『ケイオス・スナーク』のものだろう。
バイオモンスターである『ツリーマン』の体は猟兵のサポートを受けて、浄化の力と巨躯を持って『ケイオス・スナーク』に対抗している。
公害汚染の時代を上回る汚染の波が押し寄せても、端から浄化し続けているのだ。
「理由を奪うな。理由を! 『スナーク』に至らなければ、汚染し強靭なる生命をくらわなければ、至れない! 『超生物』に至れない」
『ケイオス・スナーク』は咆哮する。
何もかもが自分を否定すると。
けれど、カゲヤにとって、その咆哮は他者への否定ではなく、己のあり方に対する否定のようにさえ聞こえたのだ。
悪徳が美徳の世界に生まれ落ちた自身だからこそ感じ取れるものであったのかもしれない。
「しかし、汚染して喰らう自分の在り方に納得言ってないの?」
その一言は核心を突いていた。
汚濁よる生まれる生命。
その生命。それを喰らう己。生み出しては喰らうという無限に続くかのような苦しみ。
生命の意味すらわからなくなるほどのサイクル。
「――」
咆哮が止まる。カゲヤは進む。それでも進む。
そうしなければならない。
「いや……なんか苦しそうに見えたからさ。自分のやりたいことしてるなら、もっと楽しそうにしても良いんじゃないかって思って」
カゲヤの瞳がユーベルコードに輝く。
サモンシャドウ(カゲショウカン)によって己の影から現れた狼と蝙蝠たちが下水迷宮を駆ける。
そんなに苦しそうになるまで、己を追い詰めるような『ケイオス・スナーク』とバイオモンスター『ツリーマン』はまるで対極にあるようにさえ思えたのだ。
「逆に活き活きしているねツリーマン。スゴイじゃん」
おかげで、俺もやれそうだとカゲヤは笑った。
誰かのために何かをする。
それは己の世界では美徳ではない。けれど、自分の心の、体の奥底にある根っこが叫ぶのだ。
誰かのために何かをしたいと。
決して美徳であるとは言われなくたっていい。誰に否定されたっていい。悪徳と美徳が矛盾していたっていい。
その矛盾を肯定してくれる世界がある。
ただ、それだけでこんなにも。
「勇気がもらえる。中々感動するね」
影の狼が『ケイオス・スナーク』の喉元に食らいつき、引きちぎる。
ツリーマンと打ち合う『ケイオス・スナーク』は影の攻撃を気にしていなかった。いや、違う。
気にする余裕がないのだ。
目の前のツリーマンの猛攻に汚濁さえも浄化されていく。
「何故だ。何故、お前達だけが」
きれいなままなのだ。
それは『ケイオス・スナーク』の心からの叫びであった。汚濁にまみれて生まれてなお、輝く生命が眩しくて仕方がないのだ。
憧れ、焦がれ。
けれど、決して手が届かない場所にあるもの。
汚してやると、噴出した汚濁を影の蝙蝠が翼を広げ防ぐ。
「ツリーマンの邪魔はさせないよ。何も君が諦める必要なんてなかったんだ。焦がれてもよかった。憧れてもよかった。君が君でいるという理由は、君が決めてよかったんだ――」
けれど、それはもう遅い。
オブリビオンと猟兵。
互いに互いが滅ぼさなければならない存在であることは、胸が痛むほどにわかっている。
だから、その苦しみが終わりますようにと、願いながらカゲヤは己の影から出る刃でもって、『ケイオス・スナーク』を切り裂くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
スキアファール・イリャルギ
……正直に言いますと
あなたが羨ましいんです、ツリーマンさん
己の生命の理由を確りと自覚し、揺るがぬ意志を持つあなたを
『影人間』の生命の理由は……わからない
大切な人に"生きてほしい"と願われたから、
死んだように生きたくはないと藻掻いているけど――
「誰かを救いたい」と自ら定めた理由は実は間違ってるのかもしれなくて、少し怖くはあります
奴が言うように、私は怪物となるのが本当の生命の理由なのかもしれない……
あぁ、でもね
他人に押し付けられ理由を決めるのは間違ってると理解してます
あなたのように己の心が思うが儘に生きればいいと――まだ、理解できる
"怪物/スナーク"になれってうるさいんだよさっきから
とっとと失せろ
「……正直にいいますと」
そう言葉を紡いだスキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)は、隣に立って『ケイオス・スナーク」の放つ汚濁を浄化しながら戦うバイオモンスター『ツリーマン』に告げた。
なんと言っていいのか。
悩むことはあれど、淀むことはなく。
その言葉は紡がれたのだ。
「あなたが羨ましいんです、ツリーマンさん。己の生命の理由を確りと自覚し、揺るがぬ意志を持つあなたを」
それはある意味で猟書家『ケイオス・スナーク』の抱いたものと同じであったのかも知れない。
汚濁から生まれたにも関わらず清廉なる精神を宿す『ツリーマン』。
彼の心は本当に劣悪なる環境から生まれたのかとさえ思うほどにきれいなものだった。光其の物だった。
その光に憧れ、焦がれ、己もそうでありたいと願いながらも、汚濁を生み、汚濁より生まれる生命を喰らう『ケイオス・スナーク』。
「『影人間の生命の理由は……わからない」
スキアファールは、いま残滓である。惰性である。
大切な人に“生きてほしい”と願われたから、死んだようには生きたくないともがいている。
その言葉の延長線上にこそ、己の生命がある自覚がある。
そこにあるのは根源的な恐怖だ。
間違っているのではないかという恐怖。
己の生命が間違っているのではないかという恐れ。それがスキアファールの足首を掴んでいる。
大切な誰かが己に願ってくれたことを、成し遂げたい。
その思いだけが心に宿る歌の燈火。いつかの誰かが遺したひかり。
その光が生み出す影が己である。
「やつが言うように、私は怪物となるのが、本当の生命の理由なのかもしれない……」
「僕は、自分で決めたんだ。誰かのためになれますようにと。自分のために。僕が僕でいられるように。願ってくれた人がいなくても、そうすると決めたんだ。けれど、君は違うよね」
ツリーマンが汚濁を浄化しながら微笑んでいた。
優しい笑顔だった。
戦いの場にあってもなお、その笑顔は眩しい輝き。燦然と輝く光だった。心の中に歌が溢れる。
あの歌声が響く。
いつか聞いた。未だ心の中に残響する歌声が。その歌声が、スキアファールの背中を押す。
「あぁ、でもね」
わかっている。もうスキアファールはわかっている。理解できる。
それが嬉しい。未だ怪物にならぬ自分をつなぎとめる暖かな燈火が何であるかを知っている。
「他人に押し付けられ理由を決めるのは間違ってると理解してます」
その瞳がユーベルコードに輝いた。
『ケイオス・スナーク』の咆哮が下水迷宮に反響し轟いた。
それを見据え、スキアファールは叫ぶ。叫ぶ。叫ぶのだ。
「あなたのように己の心が思う儘に生きればいいと――まだ、理解できる」
己の心のどこかにある闇色が言う。
“怪物/スナーク”になれ。
「うるさいんだよさっきから。とっとと――失せろ」
それは、荒狂のルドラ(ハヴォック)のように。
轟く咆哮が『ケイオス・スナーク』を吹き飛ばす。己の心に宿るであろう怪物も、闇色も、何もかも吹き飛ばす。
迷いはあれど、心に灯る燈火は消えない。
どれだけ風の吹き荒れるような荒野に合っても決して消えぬ燈火と歌声が、己の心の中には宿っている。
ツリーマンの微笑みが証明していた。
例え、その心が闇色に染まったとしても、その燈火を抱える限り怪物になる未来は決して訪れないのだと――。
大成功
🔵🔵🔵
愛久山・清綱
(一人の卒が駆け寄ってくる)
遅れてすまぬ、ツリーマン殿。うむ、この通り無事だ。
さあ、邪なるものよ……貴様の罪穢、我等が斬り祓おう!
■闘
ツリーマン殿と共に、猟書家と戦うぞ。
敵の放つ廃液は全身に【オーラ防御】を纏って遮断し、
汚染の影響から逃れつつ【ダッシュ】で接近。
物質で攻撃されたら刀で弾くように【武器受け】する。
して、此処からは我々の番だ。
中距離から【破魔】の力を込めた剣の奥義【薙鎌・乱】を放ち、
汚染を【浄化】することで敵の弱体化させる。
敵が弱りだしたらツリーマン殿に好機を伝え、一気に決めて貰おう。
誉れ高き兵(つわもの)と共に、此の地を祓い清めん!
※アドリブ歓迎・ツリーマンには『兵の流儀』口調
猟書家『ケイオス・スナーク』とバイオモンスター『ツリーマン』の力は拮抗していた。
数多の猟兵たちが駆けつけ、消耗させた。サポートガジェットによって『ツリーマン』を強化し、助けてもなお拮抗するまでにしか状況は変わらない。
けれど、それでも闇に落ちる下水迷宮『ダストブロンクス』にあっても希望の光は潰えない。
『ツリーマン』が決意し、猟兵たちが紡いだ光。
公害汚染の時代には戻さぬという意志が、彼らの戦いを支えていた。
「汚す、穢す。全てを貶める! 汚濁に飲み込まれろ。そこから生まれる生命を食らって『スナーク』に至る。それが理由。お前達のような存在がいるから、このような生命が生まれる!」
それは怨嗟の咆哮だった。
輝かしい光を見て、憎しみを増す『ケイオス・スナーク』の姿は狂気に彩ろられていた。
羨望の眼差しも、妬みから生まれる汚濁も。
何もかもが『ケイオス・スナーク』の力を底上げするようだった。
溢れんばかりの汚濁が放たれた瞬間、それを切り払う刃の一閃があった。
「遅れてすまぬ、ツリーマン殿」
「君は……!」
ツリーマンが見上げた先にあったのは猛禽の翼を広げる愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)の姿があった。
「うむ、この通り無事だ」
汚濁を振り払って、清綱は刃を振るう。
未だ倒れぬ猟書家『ケイオス・スナーク』の姿を捉え、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
オーラの力でもって廃液と汚濁による汚染を防いで入るが、これも直接に浴びてしまえば、如何な猟兵である清綱でも危ういだろう。
「さあ、邪なるものよ……貴様の罪穢、我らが斬り祓おう!」
汚染廃液の中を駆け抜ける。
飛沫が飛び散り、オーラの防御すらも貫通して清綱の肌を焼く。
けれど構わなかった。清綱には信念がある。
そして、守らねばならぬ希望の輝きがある。それが在る限り、清綱の瞳は痛みにも、絶望にも、恐怖にも染まらない。
「秘伝……薙鎌・乱(ナギカマ)!」
破魔の力を宿した刀身が瞳に輝くユーベルコードの光を受けて、きらめく。
その一撃は無数の斬撃にして、虚空より現れる斬撃波。
己の心には誉がある。
かの『ツリーマン』を兵と認めるからこそ、溢れる感情があった。誇らしいと思う。斯様な御仁と共に戦場に在ることができるという充足が清綱の心を満たす。
誰かのために己の生命を懸けることができる者。
それこそが清綱の思う『兵』であった。
「オオオ――!!!」
汚濁が噴き乱れ、『ケイオス・スナーク』の咆哮が下水迷宮に響き渡る。
虚空より現れる斬撃波の数々は破魔の力を伴って、汚濁を浄化していく。その身体が無数の汚濁によって形成されているのだとしたのならば、浄化の力こそが、その体をえぐる刃となる。
「スナークに至る。その理由だけが、この生命の存在意義。力を、存在を、生命を、食らって、食らって、食らって――」
全てを超越する。
それが『超生物』であるというのなら、『ケイオス・スナーク』の在り方は最初から間違っていたのかも知れない。
存在しない存在。
どこにでもあるけれど、どこにもいない。
そんな生物など、虚像に過ぎないのだ。
「誉れ高き兵と共に、此の地を祓い清めん!」
清綱とツリーマンの浄化の力が合わさって、『ケイオス・スナーク』の巨躯を穿つ。
大穴の開いた胴は、それでも『ケイオス・スナーク』の生命を終わらさない。
けれど、それでもいい。
あとに続く者がいる。一人で戦う者と、正しいことをなそうとする者たち。
その決定的な差を清綱は知っている。
これまでもそうであったように。
「その穢、此の地において禊、削ぎ落としていくがいい――」
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
(スナークへの問いかけに)
…生まれる理由、ね…『そんなものは幾らでもひねり出せる』『故に理由に意味ない』んだよ…
…いま、それをやりたいと言うのは純粋に意志であって生まれた理由の有無では無い…
多少は同情の余地はあるけど…他者を害してスナークに成ろうと言うのは理由でなくお前の意志だ
そして、命を賭けてでも浄化しようというのもその善性から生まれた意志だよ…私は敬意を表するね…
…さて、【起動:応用術式『増幅』】を発動…術式の効果を増幅…
そして…効果が増した重奏強化術式【エコー】を用いて浄化復元術式【ハラエド】を多重増幅…
…ケイオス・スナークの群を、本体をツリーマンの浄化に合わせて一気に浄化してしまおう…
穿たれた胴への大穴を見下ろし、猟書家『ケイオス・スナーク』はつぶやいた。
呆然と、けれど、確かな憤怒を伴ってつぶやいた。
「生まれた意味がわからない。汚れたものであると言われるのならば、此の汚濁こそが生命の残滓。発展し、進化する度に置き去りにされたものではないのか。この汚濁こそが、お前達のような輝きが落とす影ではないのか。生まれた理由はなんだ」
怒りしか最早なかった。
あの輝きを放つ清廉なる者たち。
あの猟兵たちと、傍らにあるバイオモンスター『ツリーマン』の放つ輝きが眩しくて、『ケイオス・スナーク』は目を細めた。そうしなければ、瞳が潰れてしまいそうだった。
「これでは、生まれた理由がない。滅ぼされるだけの存在に意味がない。意味がないのだ――!」
その咆哮がほとばしり、次々と小型『ケイオス・スナーク』が生まれ、下水迷宮にほとばしる。
あらゆる者を汚濁で染めようと無数に生まれた小型『ケイオス・スナーク』たちが疾駆する。
汚す、穢す、貶める。
ただそれだけのために汚濁をかき分けて進むのだ。
「……生まれる理由、ね……」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)はまっすぐに汚濁に染まった『ケイオス・スナーク』の瞳を見据えていた。
その理由を彼女は答えられるだろうか。
知識の泉の如き輝きを放つ彼女の瞳は、その汚濁の先を、その理由を見据えることができただろうか。
「『そんなものは幾らでもひねり出せる』『故に理由に意味はない』んだよ……」
それは静かな声であった。
小型『ケイオス・スナーク』たちが奏でる汚濁をかき分ける飛沫の音さえ、その静かな声を遮ることはできなかった。
あったのは、純然たる言葉だけだった。
「……いま、それをやりたいと言うのは純粋に意志であって生まれた理由の有無ではない」
多少は同情の余地があるけれど、とメンカルはつぶやいた。
その瞳はけれど、その理由ではなく意志を許さない。
「各種術式への魔力導線を強化、魔女が望むは膨れ弾けぬ増魔の理」
彼女の指先がユーベルコードに輝き、彼女の手繰る術式の全てを、起動:応用術式『増幅』(ラン・ブーステッド)によって、何倍にも膨れ上がらせていく。
この戦場において、メンカルこそが支配者である。
組み上げられた術式は『ハラエド』。
あらゆる汚濁を浄化し、復元する術式である。
「……! 浄化の力……! 合わせるよ! 僕の生命に変えても!」
ツリーマンの声が響く。
頷くメンカルの瞳は柔らかかった。その善性を、その意志を。
例え同じ汚濁から生まれたのだとしても、その心に宿る善性を見た。理由は後付でどうにでもなる。
けれど、そこにある意志は己で決めることができる。
何かをなそうとすること。
それ自体は生命であれば、誰しもが抱えるものである。
誰かのために。より善きを自分ではない誰かのためになそうとする心こそが、メンカルの心を押すのだ。
「生命を賭けてでも浄化しようというのも、その善性から生まれた意志だよ……私は敬意を表するね……」
これが意志と生命の輝きの源であるとメンカルは告げる。
術式が膨れ上がり、ツリーマンの浄化能力をも掛け合わせて下水迷宮『ダストブロンクス』にはびこった『ケイオス・スナーク』の汚染を浄化していく。
その『ハラエド』の輝きは、小型『ケイオス・スナーク』そのものを浄化し、消し飛ばしていく。
生まれた理由は、いつだって仕切り直せる。
生まれた以上、間違いは起こり得る。いや、間違いのない生命などありはしない。
だからこそ、意志でもって進むことができる。
「それが生命の理由。生まれた意味。意志を持って進むことが出来るのなら――」
いつだって遅いということはないんだよ、とメンカルは言葉にせず、浄化の光でもって、猟書家『ケイオス・スナーク』の汚濁を振り払うようにユーベルコードの輝きで下水迷宮『ダストブロンクス』を満たすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
星野・祐一
おいおいツリーマン、無茶しやがって!
…ったく。だったら俺も頑張らねーとな!
[SPD]
スーツの【環境耐性とオーラ防御】を
背中に付けたEsに強化して貰い(ハッキング
FZの【念動力】と合わせて防御を固めたら
ツリーマンを【かばえる】様に前に出て熱線銃で攻撃(UC、2回攻撃
小型の群れは流星で蹴散らし(弾幕、誘導弾
本体は雷鳴を只管撃ち込んでいく(焼却
敵の攻撃は危ないのだけEKで【受け流し】
それ以外は踏ん張って耐える(激痛耐性
生まれた理由ってのは自分で決めるもんだ
俺は自由気ままに世界を巡りながら、自分なりのやり方で誰かを助ける
…俺が誰かに助けられたように、俺もそんな誰かになりたいって思ったのさ!
アドリブ歓迎
浄化の輝きが下水迷宮『ダストブロンクス』に満ちた。
未だ汚染は消えきっていない。
けれど、猟書家『ケイオス・スナーク』が齎した公害汚染の時代を上回る汚濁を振り払うことはできたのだ。
猟兵とバイオモンスター『ツリーマン』が為したことだった。
けれど、バイオモンスター『ツリーマン』は最早、ほとんどの力を振り絞っていた。浄化の力は、ツリーマンの生命の輝き。
それを賭してでも浄化をなそうとするのならば、その生命事態を削る行いであることは言うまでもなかった。
汚水の中に倒れ込もうとした『ツリーマン』を支えたのは、星野・祐一(シルバーアイズ・f17856)だった。
「おいおいツリーマン、無茶しやがって!」
「ごめん……けど、まだ……」
息も絶え絶えにツリーマンは言葉を紡ぐ。未だ猟書家『ケイオス・スナーク』は、骸の海へと還っていない。
未だその咆哮でもって、あらゆる清浄を許さぬと汚濁を振りまくのだ。
「……たく。だったら、俺も頑張らねーとな! Es!」
サポートAIに告げる。
スーツの環境耐性とオーラの力を限界まで強化する。機能の全てを引き上げ、さらに限界を超えていく。
バイオモンスターである『ツリーマン』だって頑張ったのだ。
ならば、己がやらなければ誰がやるというのだ。これまで数多の猟兵たちが紡いだ戦いの軌跡を無駄にはいsない。
溢れ出る小型『ケイオス・スナーク』たちを熱線銃で打ち払う。
「生まれた理由を、理由を、遂げなければ――終われない。終われない。この生命が終われない」
その咆哮は生命在るもの全ての怨嗟であった。
己の汚濁こそが、発展の犠牲の権化であると。進化という耳障りの良い言葉に踊らされ、己たちが生み出した汚濁への責任すら放棄し続ける生命に対する報復であると吠えるのだ。
「生まれた理由ってのは、自分で決めるもんだ」
熱線銃から放たれる弾丸は凄まじかった。
ユーベルコードに輝く瞳が『ケイオス・スナーク』の汚濁を正面から見据える。
理由。
ただそれだけのことだ。自分で決める。誰が決めた理由でもない。自分自身が、己の心にしたがって決めた理由。
それがあるからこそ、自分は歩みを止めないでいられる。
どんなに苦しいことがあろうとも、どんなに悲しいことがあろうとも。それでも生命は続いていく。
立ち止まってはいられない。
例え、立ち止まったとしても、再び歩むことができる。それが意志というものだ。
「……俺が誰かに助けられたように、俺もそんな誰かになりたいって思ったのさ!」
だから、助ける。
誰かのためにと戦うものを。
より善き未来を紡ごうとする者たちのために、祐一は己のユーベルコードを振るう。
例え、長きに渡る冬の時代が来ようとも。
その先に在る春の訪れを告げる、冬雷(トウライ)のように。
「この一撃雷で終わりにしようぜ…!」
構えた熱線銃の咆哮が輝く。
放たれた一撃は闇に包まれた下水迷宮『ダストブロンクス』を切り裂いて、猟書家『ケイオス・スナーク』へと突き進む。
どんな汚濁も、廃液も、その雷の如き一撃を防ぐことはできない。
たった一人の意志が、誰かのために何かをなそうと束ねられたいくつもの意志を防ぐことなどできはしない。
祐一はそれを知っている。
「俺は誰かを助けられるやつになる。そのために――」
貫いた生き方がある。
生まれた理由も、意味もわからぬままに消えてく『ケイオス・スナーク』に告げるのだ。
「俺は自由気ままに世界を巡りながら、自分なりのやり方で誰かを助ける。それは誰がなんと言うとも変わらない。変えない。それが俺という生命の理由だ」
だから、今は。
その生命の理由を問わない。
例え汚濁から生まれたのだとしても、不必要だなんて誰にも言わせない。
ツリーマンが見せた善性のように。
きっといつか、『ケイオス・スナーク』の見せた悪性もまた流転して、誰かのためになったのだと言える未来が来る。
そのために祐一は、熱線銃を片手に世界を巡るだろう。
その日が来ることを、祐一は願い、春の訪れを告げるように熱線銃の轟音で持って、骸の海への手向けとするのだった――。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2021年01月09日
宿敵
『ケイオス・スナーク』
を撃破!
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