5
Don't invade!-精神絶対防衛戦線-

#スペースシップワールド #猟書家の侵攻 #猟書家 #トゥーモル・ハンブラ #サイキッカー

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#スペースシップワールド
🔒
#猟書家の侵攻
🔒
#猟書家
🔒
#トゥーモル・ハンブラ
🔒
#サイキッカー


0




●悪い夢と描いて悪夢と言うが、その実態は
 ――夢を見た。

 とても怖い夢だ。
 その時の僕は誰もいなくなってしまった船の中を、必死に逃げ回っている。
 いくら逃げても、"ソレ"はずっと追いかけ続けてきて。そして、僕の中に入り込んで……そして。

『――リウ!』

 誰かが僕の名前を呼んだと同時に視界が真っ暗になった――ところで、僕の目は覚めた。

 時刻を見て、いつもならとっくに起きている時間だったから急いで起き上がってふと、違和感を感じた。
 ……静かだ。あまりにも静かすぎる。不安を感じながらも僕は自室を出た。
 するとどうしたことか、いつもなら廊下であろうと多少は談笑で賑わっているどころか皆がその場に倒れ伏している。
 自室のすぐ近くには、僕を拾ってくれたおばさんが倒れていて。
 すぐに駆け寄って揺さぶったのだけど全く起きる気配がない……けど、呼吸は確かにしている。
 ――眠っているようだった。けれど何故?
 おばさんだけならまだしも、他の人たちまで一様に眠りこけているのだ。一体何が原因なのかと思考を巡らせたその時。

「見つけた」

 柔らかな女性の声。けれどそれに纏わりついた雰囲気はとても凍りつくような、恐ろしくも禍々しい何かが孕んでいる。
 何故だろう、その時どうしてか先程まで見ていた悪夢を思い出した。
 ……ああ、つまり。これは――。

「……あなたも、わたしとひとつになりませんか?」

 迷わず僕は逃げ出した。
 あの時の悪夢が、"警鐘"だったとするならば――逃げなければ、未来はなかったのだ。

●警鐘は予知となって
「スペースシップワールドで猟書家の新たな侵略を検知しました。緊急性が高い為、手短に説明します」

 終夜・日明(終わりの夜明けの先導者・f28722)が手持ちの端末を操作し、簡易的なプロジェクターのように映像を映し出す。
 モニターに映るのは二人の人物……一人は紫髪のどこか無機質さを漂わせる女性、もう一人は彼女にどことなく似た少年だ。
 まず、女性の方に視点を当てる。

「猟書家『トゥモール・ハンブラ』は『精神侵略』と言う非常に強力な精神干渉ユーベルコードを持つサイキッカー。
 このユーベルコードによりあらゆる者を取り込み、精神的に結合させることで長い時を生きているようです。『精神侵略』によって意に逆らう者たちの精神を完全に統合させることで帝国継承軍の成立を円滑にしようとしているのではないかと推測されます」

 トゥモール・ハンブラはスペースシップワールドのとある宇宙船に潜入し、『精神侵略』を使用し、宇宙船中の人物を眠りに至らしめたらしい。
 その船はかつて帝国継承軍に滅ぼされたり、何らかの事故が発生してしまった宇宙船の生き残りを拾い、あるいは助け、支え合って生きているさほど大きくはない――とはいっても、人が大人数住める程度の大きさは保証されている――ものだ。
 だが、継承軍に逆らう暇があるかと言われると、否である。慎ましい生活を送っている為そのような余裕がない船だ。
 では何故?

「が……彼女の血縁に当たるサイキッカーには通用しないという弱点があります」

 モニターが少年の方を大きく映し出す。

「こちらの少年……名をリウと言うのですが、彼はまだ修行中の身ではありますが才能溢れるサイキッカーで、トゥモール・ハンブラの血縁に当たる人物。
 奴は彼を抹消し、『精神侵略』を完全なユーベルコードにする為此度の行動に出たのでしょう。現在既にエンカウント済みであり、彼女から逃げ回るので精一杯な状況のようです」

 故に一刻を争うと日明は告げたのだ。
 少年リウを救出し、トゥモール・ハンブラを討伐し宇宙船に平穏を取り戻す――それが今回猟兵たちに課せられた任務となる。
 彼と共にいることで猟兵たちも『精神侵略』の影響から逃げることができる為、駆けつけることさえできれば問題なく戦うことができるとのことだ。
 また、リウはそのサイキッカーとしての優れた超感覚によりトゥモール・ハンブラの位置を大まかにだが把握できるらしい。
 今逃げ切れているのもそれによるものだろうが、彼一人では時間の問題だ。

「説明は以上になります。
 いつもより簡潔で申し訳有りませんが、人命には替えられませんのでご了承を」

 ――皆さんの武運を祈っています。
 そう告げて、少年兵士は猟兵たちをスペースシップワールドへと送り届けた。


御巫咲絢
 有言実行!早くて今月以内に一本出しますと言ったのが出せました。
 こんにちはこんばんはあるいはおはようございます、初めましての方は初めまして新米MSの御巫咲絢です。
 当シナリオをご閲覧頂きありがとうございます!御巫のシナリオが初めての方はお手数ですがMSページの内容をご一読の上で以下の概要をご覧くださいませ。

 猟書家シナリオ3本目、初のスペースシップワールドでお送り致します。
 サイキッカーの少年リウを救出し、彼と共に猟書家『トゥモール・ハンブラ』を討伐してください。

●シナリオについて
 このシナリオは『幹部シナリオ』です。
 2章で完結し、『骸の月』の侵略速度に影響を及ぼす特殊なシナリオとなります。
 このシナリオにはプレイングボーナスが存在し、それを満たすプレイングがあればボーナスを得られます。

 プレイングボーナス:……サイキッカーから離れない(そこそこ戦えますが、強くはありません)。

●サイキッカーについて
 今回のサイキッカー『リウ』は穏やかな性格をした14歳の少年です。
 赤ん坊の頃脱出ポッドに入れられて放流されていたのを現在の船に拾われて育ちました。
 サイキッカーとしてはまだ修行中の身で、戦えないワケではないですが強くない為、猟兵の皆さんの協力は必須です。
 彼の近くにいる限り皆さんはトゥモール・ハンブラの『精神侵略』の影響を受けません。
 また、リウは超感覚によりトゥモール・ハンブラの位置が大まかにわかります。

●宇宙船について
 OPに書かれてある内容しか設定としては存在しない為、プレイングの時に皆様で自由に設備を追加してそれを利用して頂いても構いません。

●プレイング受付について
 12/18(金)8:31より受付を開始致します。
 開始日以前にきたプレイングは全てご返却させて頂きますのであしからずご了承ください。
 お気持ちが変わらなければ受付開始日以降にご再送をお願い致します。
 断章は開始日までに投下する予定です。

 それでは、皆様の素敵なプレイングをお待ち致しております!
83




第1章 冒険 『艦内追跡戦』

POW   :    子孫サイキッカーを身を挺して守る

SPD   :    乗物なども利用し、子孫サイキッカーと共に素早く幹部を追う

WIZ   :    警備機能などにアクセスし、幹部の逃げ道を塞ぐ

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 少年――リウは走る。
 彼は自らの身の程を弁えた子供でもあった。
 サイキッカーとして優れた才能を有していたが故に、相手と自らの実力差もまた、己が持つ超常的な感覚で悟らざるを得なかったのだ。

 ――この人に、僕では、勝てない。

 だから、逃げるしかない。
 逃げるしかできない。
 でもそれではいつまで経っても鬼ごっこが続くだけ。
 だが、少年には何ができる?
 先程から追いかけてくるサイキッカーがあの手この手で繰り出してくる攻撃を、その感覚で感じ取って先んじて回避するので精一杯だ。
 修行中の身である未熟者が、戦慣れしているプロに敵うなんてよっぽどの天才でなければ有り得ない。
 リウは極限に追い詰められた状況で頭を回せる程、冷静に自らを俯瞰視することのできる子供でもなかった。

 けれどそれでも考えなくては。
 この状況を何とかして、みんなを眠りから覚まさなくてはいけない。
 だから何としてでも、生き延びなくては。
 僕がこうして起きていられるのも、きっと何かの意味があるから。

「(絶対に……絶対に、生き延びなきゃいけないんだ……!)」

 ――猟兵たちが駆けつけたのは、まさにその時だ。

 自分を庇うかのように立つ戦士たちの姿が目に映ったリウは、まるで神の遣いが降り立ったかのような錯覚に陥ったのだった。
黒木・摩那
少年が猟書家に追われているとあっては一大事です。
ですが、猟兵が来たからにはもう安心です。
猟書家なんて、宇宙の藻屑にしてあげます。

さて、今回は精神侵略してくるサイキッカーな猟書家とあってはまともに相手をしていては危険です。リウの協力を得ながら、ハンブラの迎撃をしていきます。

精神侵略を持つだけに、対人には強いのでしょうが、対物はどうなのでしょうか。

宇宙船のシステムをサイキックグローブから【ハッキング】で掌握。
ハンブラのおおまかな位置が分かったら、宇宙船の隔壁を閉じて行く手を遮ります。
なんならエアロック開けて、宇宙に放り出しましょう。



●Dont'mind invade.but――
「猟兵……少々分が悪いか」

 先程まで少年を追い詰めていたトゥモール・ハンブラは目の前に現れた猟兵を見て一時撤退を始める。
 彼女の目的はあくまで子孫の抹殺であり猟兵と交えることではないということだろう。
 黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は臨戦の構えを解き、次にどう出るかを様子見することにした。

「猟兵……?ほ、本当に?」
「ええ、猟兵ですよ。私たちがきたからにはもう安心です」

 にこりと微笑みかければ、リウは緊張が解れたのか思わず力が抜けてしまいその場にへたりこんでしまう。
 無理もない、位置がわかるとはいえ少年の身にはあまりにも荷が勝ちすぎる相手だ。
 ひどく息を切らしている様子に、気も身体も休める暇がなかったのだと察するのは容易だった。

「す、すみません……」
「大丈夫ですよ。息が整うまで休憩しましょうか」

 猟兵が近くにいる以上、無闇に襲撃をしかけることはないハズ。
 リウは護衛対象であると同時に、敵の突破口にもなり得る鍵でもある――そしてそれ以前にまだ子供である。
 大人と違ってまだ発達し切っていないのだから、疲れて当然なのだ。
 とはいえもしものこともあり得る――摩那は影の追跡者を召喚し、見張りを強化しながらリウの回復を待つことにした。
 2,3分程して落ち着いたのか、リウはゆっくりと立ち上がる。

「もう大丈夫ですか?」
「はい、ありがとうございます」

 頭を下げる様子は無理を押しているようには見えない。問題はなさそうだとそのまま話を切り出した。

「さて、あの猟書家を宇宙の藻屑にしてあげましょう。……奴が今どこにいるかわかりますか?」
「ええっ、と……大まかに、ですけど。格納庫方面でしょうか」
「ふむふむ……」
「えっと、船の中がこんな感じで……」

 リウは手元から船内地図を取り出し摩那に見せる。
 現在摩那たちがいる位置から格納庫方面は大分遠いが、偶然にも船のブリッジは近い。
 船内の主要権限の操作権をこちらが握るのは思ったより容易そうだ――思いついた摩那はリウにこう切り出した。

「――ちょっと、船の機能をお借りしてもいいですか?」


「……さて、どうしてくれよう」

 トゥモール・ハンブラは冷静に状況を分析していた。
 彼女のユーベルコード『精神侵略』は、例え猟兵であっても逃れる術はなく眠りに誘われる強力なもの。
 ――ただし、それは"子孫が近くにいなければ"の話。
 永い時を経て幾多もの精神を融合させ生きながらえてきたハンブラのサイキッカーとしての能力はもちろん常人の域などとうの昔に超えている。
 故に血脈にもその力が受け継がれてしまった、それだけが彼女の想定外だった。
 だからこそ抹消しにきたのだが、猟兵とことを交えるつもりはない。血筋の者だけ抹消できればそれで良い。
 ならば、自らが手をくださずとも船を動かせば良いかと近くの端末から船を直接ジャックしようとした――その矢先。

「!」

 危険を察知して飛び退いたと同時に、勢いよく隔壁が下がった。
 緊急事態を告げるアラートと共にハンブラの通ってきた、そしてこれから通るであろう道を塞ごうと隔壁が降り始めていく……
 先手を取られたか――忌々しげにハンブラは舌打ちした。


 ハンブラが隔壁から逃れていくのを、摩那とリウはブリッジのモニター越しから見ていた。
 リウの超感覚による感知をマッピングと警備カメラから照らし合わせた後、サイキックグローブを装着した摩那により宇宙船のシステムをハッキングして掌握。
 そこから警備システムを作動させ、隔壁を下ろして行く手を遮ってやろうと試みたのである。

「やっぱりですね……『精神侵略』を持つだけに対人には強いのでしょうが、対物には手をこまねくようです」
「なる程、そういうやり方があるんですね……僕一人じゃ考えつきませんでした」
「考えつかないのが普通ですよ。でもあなたがいるおかげでこの作戦ができていますから」
「お役に立てているならよかったです……!戦うことはあまりできませんが、それ以外のことなら何でも力になりますので言ってください!」

 どうやらこのリウという少年は自分たちの思っている以上にしっかりしているようだ。
 摩那が事情を説明しても驚きもせず、むしろ受け入れた上で自分にできることを模索しようとしている。
 優れたサイキッカーであるハンブラの血筋故の超感覚に何となく既に察していたのか、あるいは。
 ともあれここから先挽回できるのは間違いなさそうだ……
 モニターに映る、ハンブラがエアロックから放り出されていく光景を見て摩那はそう確信した。

成功 🔵​🔵​🔴​

ミア・ミュラー
んー、宇宙にいるのにここでは普通に走ったりできる、のね。不思議だけど、ここならわたしでもリウさんと船にいる人たちを、助けられそう。

ん、今度はこっちが追いかける、番。けどリウさんが一緒じゃないとわたしたちも眠らされちゃう、みたい。だから一緒に来て力を貸して、くれる?
まずはリウさんに船の地図と敵が大体どこにいるか教えてもらおう、かな。普通に追いかけると遠くから攻撃されたり邪魔されるかもだから、閉じ込めちゃおう、かな。【ガラスのラビリンス】で敵の周りを迷路にして逃げられなくする、よ。ん、これでしばらく大丈夫の、はず。落ち着いて、進もう?


リアナ・トラヴェリア
ここまで逃げ切れたのなら、戦うのは私達に任せて。
そのために来たんだから。

相手が追ってくるって事はある程度近づかないと戦えないって事の裏返しでもあるから、ピンチはチャンスでもあるよね。
逆を言えば罠にかけやすいって事。狩人は自分が罠に掛かる可能性を想定しづらいって聞いたことがある。

多分、相手がにっちもさっちもできなくなったら直接攻めてくるはず。だからこっちは「あえて相手が入って来やすい入り口が一つの部屋」で待ち受けるよ。
なんらかのサイキック…エネルギーなら黒剣に食べさせて、一気に不意をつくよ。これなら一石二鳥だし、うまく行けばそのまま有利な状況で戦えるし。
悪いけど野望は止めさせてもらうよ。



●夏の虫は飛んで火に入らざるを得ず
 リウにとって頼もしい味方となる猟兵は次々と訪れる。

「よく頑張ったね。ここまで逃げ切れたのなら、戦うのは私達に任せて」

 その為に来たんだから――リアナ・トラヴェリア(ドラゴニアンの黒騎士・f04463)はそう微笑みかけた。
 一方ミア・ミュラー(アリスの恩返し・f20357)はリアナに同意を示した後、リウの周囲を軽く駆け足で回って自身の体の動きを確かめる。

「ん……宇宙にいるのにここでは普通に走ったりできる、のね」

 宇宙というものは本来無重力空間であるから、その中で走ることができるという事実は実に不思議な気分である。
 リウ曰く、コロニーと同じ機能が備わっているらしく船内では重力が生きているそうで。

「ここなら、わたしでもリウさんと船にいる人たちを、助けられそう」

 慣れぬ環境に戸惑うことがないのは僥倖と言うより他にない。
 相手は精神を侵略する強力なサイキッカー、本気を出せねばやられるのはこっちなのだ。
 今まではリウしかいなかったからこそ後手に回らざるを得なかっただけ……ならば、今度はこちらから打って出る番である。

「あの、僕に何かできることはありますか?」
「ん、じゃあ船の地図を見せて欲しいのと……敵が大体どこにいるか、わかる?」

 ミアが問いかけるとリウは直様先程取り出した地図を二人に見せる。
 現在彼と猟兵たちがいるのはブリッジ方面、トゥモール・ハンブラは一度エアロックから船外へと追いやられたがすぐに張り付き、再度侵入を果たしたようだ。

「今は……備蓄庫付近にいるみたいです」

 そう言って地図から見て船の中央よりやや奥側にある一帯を指差す。

「ん、今度はこっちが追いかける、番……だけど、普通に追いかけると遠くから攻撃されたり邪魔されるかも」
「そうだね……でも相手が追ってくるってことは、ある程度近づかないと戦えないってことの裏返しでもあるから、ピンチはチャンスでもあるよね」

 それが意味することは、逆に罠にかけやすいという事。
 狩人は自分が罠に掛かる可能性を想定しづらい――リアナはかつてそう聞いたことがある。
 その要領を当てはめるならば、ハンブラもまたこちらが仕掛けた罠に引っかかることを想定できる可能性は低いだろう。

「多分、相手がにっちもさっちもできなくなったら、直接攻めてくるハズ……だから――」
「……ん、いい案だと思う。ついでに閉じ込めちゃおう、かな。リウさん、一緒に来て力を貸して、くれる?」
「もちろんです!……でも、足を引っ張ったりしませんでしょうか?」
「リウさんが一緒じゃないと、わたしたちも眠らされちゃう、みたい」
「うん、あなたがいてくれなきゃできないことだよ」

 ――かくして、作戦は決行される。


 トゥモール・ハンブラは先程のような妨害を警戒し慎重になっていた。
 備蓄庫に身を潜めながら一定間隔時間を開けて船内を進み船の中央付近――居住スペースの入り口へと辿り着く。
 その入口の扉は非常に大きく、他に入り口となるものは少なくとも付近には見受けられない。
 罠を警戒しつつ侵入するハンブラを出迎えたのは――

「!」

 至近距離に迫った巨大な黒剣、そしてそれを振るうリアナであった。
 ハンブラは身を守る為に反射的にサイキックを発動、念動の障壁が黒剣の衝撃を阻む――が、リアナの黒剣は怯むことなくそれにすら亀裂を生じさせる。

「エネルギーを吸収し強化するユーベルコードか?しかし私のサイキックを喰らう目的なればこのような威力は……くっ!」

 ハンブラが後退すると同時に念動の障壁が崩れ落ち、そのエネルギーの破片をリアナの黒剣はまるで貪るかのように喰らい、さらに大型な姿へと変貌。
 【喰らいつく魔獣の顎(グラットンソード)】を発動した彼女の愛剣は、まだまだ足りぬと言うかのようにハンブラが防御で繰り出すサイキックエネルギーを次々吸収、それに比例してリアナ自身の戦闘力も著しく増加する!

「悪いけど、野望は止めさせてもらうよ」
「ちっ……!」

 ハンブラはサイキックエネルギーを地面に向けて炸裂させる。
 激しい爆音と共に立ち上がる煙――リアナがそれを黒剣で薙ぎ払った時には既に敵の姿はなかった。
 しかしリアナはすぐに追いかけることはせず、近くに隠れていたミアとリウに声をかける。

「二人共、どう?」
「ん、ありがとうリアナさん。うまく閉じ込められたみたい。ね?」
「はい、今迷路の中を右往左往しているみたいです。作戦成功ですね!」

 作戦は至ってシンプルだ。
 "敢えて"相手が入ってきやすい入り口が一つの部屋で待ち受け、リアナがユーベルコードで奇襲をかけ、相手を撤退に追い込む……までの間に、ミアがユーベルコード【ガラスのラビリンス】でハンブラの後退先を迷宮の入り口に差し替え、上手く後退できたと思わせて迷い込ませる――という算段。
 そしてリウは上手く追い込めたかを確認する役割……で、あったのだがそれだけではと本人の申し出により予めリアナの黒剣に彼自身のサイキックを少しばかり食べさせた。
 結果、ハンブラの念動障壁に亀裂を生じさせる程度の力を得たことにより相手の焦燥を煽り、正常な判断がつかぬまままんまと迷宮に入り込んだというワケである。

「これでしばらく大丈夫の、はず。落ち着いて、進もう?」
「そうだね、うまく行ったけどまだ油断はしちゃダメだし。リウさんは私達の側を離れないでね」
「はい!」

 奴を罠に誘い込むことにはできたが、まだ大打撃を与えてはおらず消耗にもまだ至るまい。
 だが、着実に猟兵たちは猟書家を追い込みつつあった――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ニコ・ベルクシュタイン
少年、良く耐え抜いた
もう大丈夫と言いたい所ではあるが、其の為には君の助力が必要だ
どうか俺から離れずに居て欲しい、此方も極力激しい動きは控えよう

策を弄するのは既に十分喰らったようだな、トゥーモル・ハンブラ?
ならば俺はリウ少年の導きに従い、愚直にお前を追い詰めてくれる
…ふんわりと彼奴の居場所が分かるのだろう、少年?

一度逃げ延びたのに済まないなと詫びつつ
【懐中時計の神隠し】でリウ少年の姿を透明にして目眩ましと為す
足音は消せなくとも、奇襲で狙い撃ちという事態は避けられよう
ハンブラの居場所を教わりながら
先んじて隔壁を閉じて退路を断てるスイッチがあれば
積極的に作動させて追走を

疲労は「継戦能力」で耐え抜こう


トリテレイア・ゼロナイン
多くの苦難と犠牲を乗り越え手に入れた故郷の平穏
脅かされる訳にはいきません

リウ様、どうかご協力を願えますか
騎士として貴方を御守りいたします

(さて、相手がリウ様の殺害を最終目標としながら逃走続け、リウ様無しの猟兵に対抗手段は無いのであれば…逃走困難な場所に誘い込んでの決戦で禍根を断つほかありません)

UCの妖精ロボを補器として●ハッキングし艦内設備掌握
リウ様の感覚と監視映像等の●情報収集で動向把握
隔壁閉鎖などで閉じ込め空調操作、酸欠の危機に陥らせ現在位置からの脱出を誘発

…あまり褒められたやり方ではありませんが

私達のいる決戦の場へ誘い込み、隔壁システムを電子的に破壊し退路遮断
(地形の利用+破壊工作)



●先んじて外堀は埋めよ
 さて、二つ程策を弄してから幾分経ってのこと。
 ハンブラはユーベルコードによる迷宮をどうやら今やっとくぐり抜けたようだとリウが検知。
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が許可を得て妖精ロボと共に機能を掌握した監視カメラには、確かに迷宮を抜け出し再び彼へと迫ろうとするハンブラの姿がたしかに映っていた。

「(さて……相手がリウ様の殺害を最終目標としながら逃走を続け、リウ様無しの猟兵に対抗手段は無いのであれば……)」

 逃走が困難な場所に誘い込んでの決戦で禍根を断つ他ない――そう結論を出したのは彼だけではないようだ。
 時を同じくして馳せ参じたニコ・ベルクシュタイン(時計卿・f00324)がリウに向けて口を開く。

「……ふんわりと彼奴の居場所が分かるのだろう?少年」
「はい。ふんわりと……ですけど」
「そうか。――本来ならもう大丈夫と言いたいところではあるが、其の為には君の助力が必要だ。一度逃げ延びたのに済まないが……」
「大丈夫です。僕にしかできないことですし……何よりこの船の危機に船の住人でありながら何もせずに見守るだけはできません!」

 きっぱりと言い放つリウの瞳は一切の曇りがなく、嘘偽りないことを証明している。
 思った以上にこの少年の芯は強いようだ。
 例え猟兵が駆けつけたことにより心に余裕ができていることを加味したとしても、その言葉がすらすらと出てくるということは精神性の強さにおける何よりもの指標になる。
 どの道彼に頼らねば猟兵たちに対抗する術はないこの状況、自ら協力を申し出てくれるのならば喜んで言葉に甘える方が良い。
 世界を脅かす敵を退けるのが猟兵の役目なのだから。

「頼もしい言葉をありがとうございます、リウ様。騎士として、貴方を御守り致します――ご協力願えますか」


 トゥモール・ハンブラは苦虫を噛み潰したような顔をしながら船内を再び進む。
 猟兵たちが精神侵略の影響を受けずに動かえているのは間違いなく自身の血脈――あの少年の力によるもの。
 感づかれる前に奴を仕留められなかったのは間違いなく自身の不手際だ。
 猟兵が立ちはだかる可能性は視野に入れられたであろうものを廃してしまったのは自らの奢りに他ならない。
 何としても引き剥がし、奴を始末せねば――次のエリアへの扉を開いたハンブラを出迎えたのは……

「――策を弄するのは既に十分喰らったようだな、トゥモール・ハンブラ?」

 ……その、何よりもの障害となる猟兵たちであった。
 ニコは時刻みの双剣を、トリテレイアは警護用の儀礼用長剣を構え、その二人の後ろからリウが顔を覗かせている。

「もうやめてください!船のみんなを起こして!」
「それをすることで私に何のメリットがある?交渉でもするつもりか?何を以てしても私の力が不十全に終わるというデメリットしかない以上、私が必要とするのはお前の死――我が血脈の終焉のみ」

 サイキックエナジーを纏わせ、いつでも攻勢に出れるよう構えるハンブラ。
 しかしリウを猟兵二人が護衛する形を取っている上に二対一の状態だ、攻撃のタイミングを図りあぐねている様子が見て取れる。

「多くの苦難と犠牲を乗り越え、やっと手に入れた我が故郷の平穏……これ以上脅かされる訳にはいきません。お覚悟を」
「逃げようものなら愚直にお前を追い詰めてくれる。少年と我々でな」
「……くっ」

 ハンブラはサイキックエナジーを船の天井目掛けて放つ。
 全壊とまではいかないが、天井の証明等いくつかの設備が地に落ちると共に土煙が上がり三人の視界が一時的に塞がれた。
 土煙が上がれば、もちろん本人の姿はどこにもない。

「逃げましたね。リウ様、奴はどちらに?」
「僕たちの横を通り過ぎていくのがわかりました、多分ブリッジルームへ向かおうとしている……んでしょうか。でもこの方向だと途中である程度広いところに抜けると思います!」
「了解した。リウ少年、これを」

 ニコは自らの本体である懐中時計をリウに手渡し、ユーベルコードを発動。
 【懐中時計の神隠し(クロノス・トリック)】、その名を示すかのようにニコと、懐中時計を持ったリウの姿がすぅ……と消えていく。

「これで足音は消せなくとも、奇襲で狙い撃ちという事態は避けられよう。難しいとは思うが、俺から離れずにいて欲しい。此方も極力激しい動きは控えよう」
「わかりました」
「私はお二人の後方を警戒しつつ追走を行いましょう。設備操作等はお任せください」

 最後の追走が始まった。
 三人の横で、トリテレイアの操縦する偵察用妖精型ロボの一体が掌握中の艦内設備の監視カメラの映像を艦内マップと共にモニターに移す。
 【自律式妖精型ロボ 遠隔操作攻撃モード(スティールフェアリーズ・アタックモード)】により強化されたこのロボのはブリッジルームに待機させたもう一体と共に、常時監視カメラを更新させて動向を探りながらリウの感覚が示す方向と照らし合わせながら、着実にハンブラを追い詰めていく。
 一エリアを抜ける毎にニコがすぐに隔壁の封鎖スイッチを起動、万一のすれ違いや折返しての逃走ルートを阻止。
 トリテレイアはリウの感覚とカメラ映像から想定されるエリアの隔壁を遠隔操作にて下ろし、空調設備を操作し酸素の供給を阻止しては無理やりにハンブラを現在位置から脱出させる。
 もちろん、開かせられる隔壁はこちらで選択している――そこだけ手をつけずに放置すれば、酸欠の危機に陥ったハンブラは手段を選んでいる暇がないのでまんまと脱出を誘発できる訳だ。
 丁寧に、確実に決戦の場所へとハンブラを誘導。こちらとの距離も確実に狭まり、ついに姿が見えるまでに肉薄することに成功した。

「……おのれ、猟兵!」

 焦りを覚えたのだろう、ハンブラは追走に牽制をかけようとサイキックを無造作に乱射。
 小規模な爆風が三人を襲うが、姿の見えないニコとリウに当てることは当然敵わず、トリテレイアも儀礼用長剣を盾にすることで凌ぎ、追走を止めるとまではいかなかった――が。

「わ、わ……っ!?」

 下手な鉄砲も数を撃てば何とやらか、真横を通り過ぎたのかリウが声を挙げて踏みとどまってしまう。
 もちろん不自然に足音が止まった上、声を上げれば自らの場所を教えてしまったも同然であり。
 懐中時計は決して手放さなかったものの、位置を完全に把握されてしまった。
 ハンブラは今が好機とサイキックエナジーをリウ目掛けて放とうとしたが――

「ぐっ!?」

 トリテレイアの操作する妖精ロボから放たれた一撃によりその攻撃は大きく逸れることとなる。
 そしてその隙に割って入った……否、最初からリウのすぐ傍にいたニコによる一撃が見舞われた。
 焦りとチャンスを掴んだことから完全に失念していたハンブラの腹に思い切り踏みつけんばかりの勢いの蹴りが炸裂!
 その身は軽々と宙を舞うと同時に勢いよく吹き飛び、入り口と反対側の隔壁へとその身を叩きつけた。
 踏みとどまってしまったリウの手をニコが引き、それに続くようにトリテレイアが走る。
 ハンブラが吹き飛ばされたエリア内へと入るとすぐにトリテレイアが隔壁を全て封鎖。
 システムに電子的なメスが入れられ、隔壁はショートを起こす。

「……あまり褒められたやり方ではありませんが、これでもう逃げ場はない。改めて、お覚悟を」

 先程まで先導していたニコとリウに代わるようにトリテレイアは前に。
 ユーベルコードを解き、呼吸を整えるように一息ついてからニコも再び双剣を構える。

「あ、あのニコさん、すみません……ありがとうございます!」
「当然のことをしたまでだ。……リウ少年、そこから動かないように。いいな?」

 通路は塞いだ。精神侵略による影響はリウがいる限り受けることはない。
 相手は一人、そしてこちらは猟兵数人――数で見ればこちらが間違いなく有利である。
 今まで散々逃げ回っていたからとて侮ることは決してできない。
 精神侵略が効果を成していない状態であれど、そのサイキックエナジーが強力であることに変わりはないのだから。

 ――宇宙船での最終決戦が今、幕を開ける。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『トゥーモル・ハンブラ』

POW   :    フュージョン・メンタリズム
【敵の顔に触れてエネルギーを流しこむこと 】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【精神と自らの精神を融合させて精神的弱点】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
SPD   :    ロジカライズド・リング
【敵を自動追尾する背中の回転リング 】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    アブストラクト・ネックピンチ
【敵の首の付根を掴んで 】から【強力な握力による圧迫攻撃】を放ち、【敵の中枢神経に強い衝撃を与えること】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:星野はるく

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はピオネルスカヤ・リャザノフです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


【MSより】
 第一章ご参加ありがとうございました!
 第二章のプレイングは12/28(月)8:31より受付とさせて頂きます。
 断章はそれまでに投下できれば投下予定でございます。
 年末なのでお忙しいことと思いますのでのんびりやっていく予定です、よろしくお願い致します。

 封鎖されたエリア内。逃げ場はどこにもなく、抜け道もまたない。
 全て猟兵たちによって隔壁はシステムダウンさせられた中、隔壁を開けようとすることは敵に背を見せると同じ。
 目的の血縁は目の前にいるというのに、猟兵という最大の障害が立ちはだかる以上先に彼らを廃さねば果たすことは叶うまい。

「……どのみち猟兵からは逃げられぬということか。ますます見立てが甘かったようだ」

 トゥモール・ハンブラの背にあるリングが回転する。
 周囲に満ち始めるサイキックエナジーは、ただそこにあるというだけで他者を圧倒できる程の圧を発していた。
 猟兵の後ろにいるリウがまるで怯えるかのように体を震え上がらせる……その受け継がれた超感覚が、自身との圧倒的な実力の差を思い知ってしまったからだろう。

「だ、大丈夫です……無理に動いたりはしません。みなさんの足を引っ張りたくないですから……!」

 自分の身は自分で護ります――と。
 顔を青ざめさせながらも、猟兵たちの言葉はきちんと聞いて動いてくれるようで。
 それなら大丈夫だろうと胸を撫で下ろした者ももしかしたらいただろうか。

「さあ行くぞ、猟兵共。お前たちを倒し、私というルーツから炙れたモノは全て抹消させてもらう」

 相対することをためらわなくなったハンブラのサイキックエナジーがさらに溢れ出す。
 さあ猟兵たちよ。奴を討伐し、宇宙船に再びの安寧をもたらすのだ!
リアナ・トラヴェリア
攻める側はもっと慎重にならなきゃいけないって知らなかったの?
どんなに力があってもそれだけで戦いに勝てるのなら、この世界はクエーサービーストだらけになってるよ。
そうじゃないって事はそういう事、あなた自身はそんなに戦いが上手じゃないんだ。

みたいに挑発しつつ接近戦を挑んで行くよ。
もちろん相手のユーベルコードは私の頭部を狙ってくるだろうけれど、それがはっきりしていることが命取り。伸ばした手を魔術師の手で掴んで、反対側の黒剣で腕ごと切り捨てるよ。
簡単に接合できないように遠くに投げ捨てちゃおう。
相手の逆の手にももちろん気をつけて。

単純で強い力を持つからこそ、それに頼ったのがあなたの敗因だよ。


黒木・摩那
エアロックから追い出して宇宙の藻屑にしたと思っていたのですが。
まだ生きてるなんて、さすがは猟書家。
しぶといですね。

さて、ハンブラですが、背中のリングは自動追尾してくるようです。
厄介ではありますが、積極的に相手をすれば、武器ひとつ、押さえられるかもです。

UC【蒼鷹烈風】を使います。
守りを固めて二刀流で行きます。
右手にヨーヨー『エクリプス』、左手に魔法剣『緋月絢爛』を構えて。
ヨーヨーで回転リングを弾いたり【武器落とし】、魔法剣で【武器受け】したり、【念動力】で引っ張ったりと、回転リングを逃がさないことで、味方の攻撃の手助けをします。

間々にヨーヨーの【なぎ払い】で反撃もします。



●策士策に溺れるなれば、戦士が力に溺れるもまた必然なりて
「エアロックから追い出して宇宙の藻屑にしたと思っていたのですが……まだ生きてるなんて」

 やはり流石猟書家なだけあると、黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は改めて思わされた。
 スペースシップワールドの常識に当てはめても、普通エアロックから放流して生きていられるスペースノイドはいない。
 それでも再び宇宙船に貼り付き侵入を果たしたということは、そういうこと。
 そういった一部の常識を覆せるだけの力を持っているのだ。猟書家であるが故に。
 視線の先にいるトゥモール・ハンブラ、その背にある回転リングが獲物に狙いを定める獣のように静か動く。
 猟兵と対峙することにようやく躊躇を捨てたのか、先程まで浮かんでいた焦りが一切消え失せたかのように、攻撃の機会を伺っている様子だ。
 その様子を表情には出さずとも笑うかのように、敢えてリアナ・トラヴェリア(ドラゴニアンの黒騎士・f04463)は口を開く。

「……攻める側はもっと慎重にならなきゃいけないって、知らなかったの?」

 もちろん、その意図に込められたものは挑発の二文字だ。

「どんなに力があっても、それだけで戦いに勝てるのなら今頃この世界はクエーサービーストだらけになってるよ。そうじゃないってことはそういうこと」
「何が言いたい?」
「あなた自身は、そんなに戦いが上手じゃないんだ」
「……なら、試してみると良い」

 リアナが先に踏み込む前に、ハンブラの回転リングが勢いよく飛び出した。
 あまりにも一直線に飛んでくるのでサイドステップを取り回避、だがリングは方向を器用に変えて背後から迫る。
 だがリアナは振り返らない。
 それは何故か?……簡単だ、自分一人ではないからだ。

「"励起"!」

 ユーベルコード【蒼鷹烈風(シュペール・サイクロン)】により強化された摩那の『イクリプス』が迫るリングを的確に打ち据え、弾道を大きく逸らす。
 そのまま念動力で此方側に引っ張り、強制的にリングのターゲットを摩那へと変更せざるを得ない状況を作り出したのだ。

「摩那さん、そのままそれをお願いしていいかな!」
「任せてください、これは私が抑えます!」
「ありがとう!」

 短く言葉を交わし、リアナは黒剣構えてハンブラの懐へと潜り込むべく突貫!
 回転リングはその間にも摩那によって翻弄される……ユーベルコードで強化された『イクリプス』のワイヤーは例えその高速回転による力を加えた切れ味であろうと千切れることはなく、引っ張られては弾き飛ばされてを繰り返している状態だ。
 このままターゲットを摩那に定めるしかないだろうが、ハンブラも猟書家。
 それで手が止まる程度の戦力で戦いに臨んでなどおらず、後ろに下がらずに敢えてリアナに接近すべく前に踏み込んだ!
 顔を鷲掴まんと伸ばされるその手にサイキックエナジーが集中しているのをリアナは捉える。
 間違いなくハンブラはユーベルコードを使うつもりだ――あの手に触れられたが最後、直接内部にサイキックエナジーを流し込まれて大打撃は免れない。
 だが。

「そんな攻撃……効かないよッ!」

 リアナの【掴み取る魔術師の手(マギスティックグラップル)】が伸ばされる。
 77t級までの物量、あるいは威力を持つであろうユーベルコードを"直接掴み持ち上げる"ことができる対ユーベルコード特化のユーベルコード。
 例え悠久の時を生きる強大なサイキッカーのものであろうと、例えかつてアックス&ウィザーズに君臨していた帝竜のものであろうと――それが"ユーベルコード"であるならば、彼女のその手からは決して逃げられない。
 ハンブラのサイキッカーとしての超感覚が"この攻撃を通してはならない"と告げ、急停止して距離を取る為後退を図るが……不意に身体に何かが巻き付き動きを拘束される。

「く……っ!?」
「これの相手をしているからって、私を忘れられては困りますね」

 摩那が『イクリプス』でハンブラの動きを拘束したのだ、もう片方の手に持つ愛剣『緋月絢爛』で高速回転するリングを押し留めて踏み留まりながら。
 リアナの手から逃れる術を失ったハンブラの腕は、そのまま無造作に掴まれ――黒剣の一閃がそれを身体から斬り離す!

「ぐ……ぅうッ!!」

 鮮血が飛び、リアナの頬と黒剣をほんの少しばかり紅に染める中、主から斬り離された腕はハンブラから真反対の遠方へと投げ捨てられる。
 いくらサイキッカーと言えど、距離が離れた自身の身体をそう安々と再接合することは不可能――いや、可能だとしても猟兵二人を相手にしながらは至難の業であろう。

「単純で強い力を持つからこそ――それに頼ったのがあなたの敗因だよ」
「今度こそ、宇宙の藻屑にしてあげましょう。――覚悟」
「おの、れ……猟兵……!」

 苦虫を噛み潰したような顔に殺意を滲ませ、ハンブラはリアナと摩那を睨みつける。
 二人もそれに怖気づくことなく、強く鋭い視線を以て返した。
 苦難を越えて平穏を得た世界で暗躍し、平穏に生きる人々を巻き込む猟書家を――猟兵は、決して許しはしない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ミア・ミュラー
こんなことになったのに、ちゃんとしてるリウさんは、偉い。ん、心配しなくても平気、だよ。あなたとこの船のみんなは、守ってみせる。

あのリングは当たるとまずそう、だね。わたしについて来るし、これであの人からの攻撃を防ぐのは大変、ね。リングはわたしがよく見て「ダッシュ」で避けて、サイキックエナジーの攻撃はコンパスに防いでもらおう、かな。
わたしに集中してる今は、チャンスでもある、はず。隙を見て【プリンセス・ローズベアー】で呼んだ熊さんに不意打ちしてもらう、よ。赤白の薔薇も忘れずに呼んで素早く、攻撃。ん、何も知らずに命を狙われる怖さはわたしも、わかるよ。だから、リウさんを怖がらせるあなたは、許さない……!



●それはかつての自身と
 片腕を失ったトゥモール・ハンブラ。
 かつてそれがあった箇所から溢れ滴る血……その臭いが充満していく。
 猟兵側にとって有利になっていることに違いはないが、リウの持つサイキッカーとしての優れた超感覚に視点を当てると、あまり良い方向には働かないようだ。
 よりリアルに命のやり取りを目の当たりにした彼の顔はすっかり青ざめている。いや、今まで命の恐怖に足が竦まなかったことこそ珍しいのだ、彼は猟兵ではないのだから。

「(しっかりしろ……僕がこれで気落ちしてしまったらダメだ……!)」

 そう言い聞かせて自分の身は自分で護れるようにと身構えるリウに、ミア・ミュラー(アリスの恩返し・f20357)がそっと近づいて声をかける。

「大丈夫?」
「は、はい!すみません……いざ本当の戦いを目にすると、こう、色々揺さぶられちゃって……変な杞憂とかも感じてしまって……」
「ん、心配しなくても平気、だよ。あなたとこの船のみんなは、守ってみせる。――それと」
「それと……?」
「足引っ張ってなんか、ないよ。こんなことになったのに、ちゃんとしてるリウさんは、偉い」

 口元を少しばかり緩ませて、優しい声色でそう返す。
 足を引っ張っているのではという懸念から焦りを感じていたのを見透かされたのに驚きながらも、優しい言葉にほっとしてリウは口元を綻ばせた。
 それを見届けてから、ミアは前へと出る。先程の柔らかい表情とは打って変わった――とはいえ、表情の変化は僅かではあるが――怒りの炎を感じさせる顔で。

「……あなたは、許さない」
「……元より許しは、請うていない」

 サイキックで無理やり止血をするハンブラの回転リングが再び飛び上がって変則的な軌道を描き始める。
 高速で飛んではいるが、ミアの目で捉えきれない程度の速度ではない。
 肉眼で捉えてからの大まかな推測でこのタイミングだ、と思った瞬間にミアは思い切り前へと走り出した。
 ハンブラには近づかない程度の距離を保ちながら、リングの攻撃を回避し、そのままフィールド上では少女とリングの鬼ごっこのような光景が広がる。

「(あのリングは当たるとまずそう、だね)」

 相当追尾性は高いようだ――が、自身にターゲットを捉えているならばリウに被害が及ぶことはないだろう。
 ならば、このまま自分に集中させるのが良いだろう。先程の一撃が結構な打撃になったようでこちら側に集中しなければいけない状況を作り出すことに成功しているのも追い風だ。
 横からハンブラが飛ばしてくるサイキックエナジーはミアの懐から懐中時計の形をしたコンパスが自律的にシールドを展開し防いでくれる。
 あとは、適切なタイミングを見切るだけ――

「……我が血縁といい、ちょこまかとよく走る……!」

 ハンブラの苛立ちに呼応するかのようにリングの飛行速度が上昇する。
 中々の手傷を負いながらも威力の増強ができるのは腐っても強大な力を秘めたサイキッカーといったところか。

「……何も知らずに命を狙われる怖さを知ってる?」
「何?」
「わたしは、知ってる」

 ミアはアリスの一人である。――それだけで、彼女が過去に味わってきた恐怖が如何程かは察することができるだろう。
 記憶を失い、何もわからぬままにただ自らを喰らおうとするオウガに恐れて逃げ回っていた時の自分と、今回のリウがミアには重なって見えたのだ。
 あの時の自分と同じ……だからこそ助けなければと、より強く思わされた。
 自分をある猟兵が助けてくれたように、今度は自分が誰かを助ける版なのだ――!

「だから、リウさんを怖がらせるあなたは、許さない……!」

 ミアのその怒りの言葉が放たれると同時に、ハンブラの視界に赤白の薔薇が舞うのが目に入る。
 それに意識を持っていかれた時には既に真横から強い衝撃が走っていた。
 ユーベルコード【プリンセス・ローズベアー】により召喚された熊の前足が勢いよく食い込み、そのまま引き裂くように振り下ろされる。
 吹き飛ばされるハンブラの身体がミアの方へと一直線に飛び、このままでは衝突を免れないというところで薔薇の魔力がミアに羽根のような軽やかさを齎す。
 ミアは閃光のようにハンブラの真横、それも接触スレスレのラインを駆け抜けた。
 そして、ミアを追いかけていた回転リングがそれを追尾するなら、当然その射線上にハンブラがいるということになるワケで――

「ぐ、ぅっ!!」

 サイキックエナジーで無理やり身体を拗じらせ回避を試みるが、鋭く回転する刃はハンブラの胸を斬りつけその身体を紅に染めた。
 地面に叩きつけられ転がるハンブラ。どうやら急所に当たるのは避けたようで息を荒げて立ち上がる。
 ミアはそれに鋭い視線を向けた――。

成功 🔵​🔵​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
『精神侵略』が完成すれば人々は貴女と言う唯一つに呑み込まれる
そのような侵略行為、許すわけにはいきません

背後のリウ様をかばいつつ盾受け武器受けで防御し戦闘

彼には指一本触れさせはしません

頭部接触の精神融合をUCで迎撃

如何ですか、報復の電気信号を脳細胞に流し込まれたご気分は
ウォーマシンの精神は電子演算…つまり貴女は私の電子防御に接触したのですよ

ダメージ受けた頭部をパージ
電子頭脳は胴体、マルチセンサーで状況把握に支障無し
脳の損傷で動けぬハンブラの頭部を掴み宙吊り

精神は本来、不可侵であるべき領域
土足で踏み入るならばそれ相応のお覚悟を
(胴体スピーカー)

剣で串刺し、引き抜いてリウ様から引き離す為、怪力で投擲



●Mind Invation For An Mind Invation
「……おのれ、猟兵……ッ」

 ハンブラはまだ諦める様子はない。胸の傷の血をサイキックで無理やり止血して立ち上がる。
 片腕を失ったが、まだリングは機能しているし腕が一本あるならユーベルコードを使うことはできる。
 それにたかだか少年一人であれば手負いでも殺すには十分だ。
 偶然にも猟兵たちの立ち位置は現在リウから離れる状態になっている――なら、こいつさえ仕留めてしまえば猟兵たちに反撃の術はない。
 それからゆっくりと仕留めれば良いだろう、と……リングと共にサイキックエナジーをリウ目掛けて放つ。

 だが。

「――彼には指一本触れさせはしません」

 素早く割り込んだトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)の大盾がそれらを弾く。
 何の変哲もなく、ただただ凄まじい強度を誇るその大盾に僅かに亀裂が入ったのが腕に伝わる衝撃からトリテレイアは察した。
 腐っても猟書家であり、強大な力を持つサイキッカーであることは変わらないと改めて実感させられる一撃が確かに入った。

「どこまでも邪魔をしてくれるな……!」
「『精神侵略』が完成すれば人々は貴女という唯一つに飲み込まれる――そのような侵略行為、許すワケにはいきません」
「帝国継承軍の誕生こそ我ら、そしてプリンセス・エメラルドの悲願。我が『精神侵略』があれば、彼女の下に思想を統一することが容易になる。
 我が血脈という最大の手間を省いてさえしまえば、な……」
「やっと手にした平穏を脅かし、人々の個すら奪おうとするなど……言語道断。リウ様の、そしてこの世界の人々の個は彼ら皆が一様に手にしているべき権利。それを脅かす者は我々が退けましょう」
「やれるならやってみるがいい……!」

 高速回転するリングを敢えて背に戻し、サイキックエナジーを纏ってハンブラは前へと飛び出した。
 リングにエナジーを絡ませることで意図的な突風を生み出し、ジェット代わりとなって彼女を押し出していく!

「(特攻……いや、これは――)」

 トリテレイアは即座にハンブラの狙いに気づいた、が――後ろにはリウがいる。
 仮に回避すれば間違いなく彼に激突、そして狙いに気づいた時には既に至近にまで迫っており彼を連れて回避することは不可能の状態にあった。
 盾で受けるしか選択肢がないと、そのままトリテレイアは受けの体勢を取り、サイキックエナジーを纏ったハンブラの体当たりに真正面から立ち向かう!
 亀裂からサイキックエナジーが電磁波のようなものとなって流し込まれ、トリテレイアの腕を襲い……若干電気信号を狂わされたのかその手から盾が離れてしまった。

「もらったッ……!」

 盾を失い無防備となったトリテレイアの頭部にハンブラの手が触れ――精神を融合するユーベルコードが発動!

「さあ、わたしとひとつに――なっ!?」

 リウは一瞬何が起きたのかわからない顔をして、唖然とその光景を見た。トリテレイアは大丈夫なのだろうかと。

「如何ですか、報復の電気信号を脳細胞に流し込まれた気分は」

 トリテレイア――の胴体スピーカーから彼の声が響く。
 触れられた頭部はパージされ、首なしの状態となるがそれでも全く支障がないかのように先程止まらされた腕の感触を確かめる。

「ウォーマシンの精神は電子演算……つまり、貴女は渡しの電子防御に接触したのですよ。易々と干渉させる訳にもいきませんので報復措置を取らせて頂きました」

 トリテレイアの思考領域は銀河帝国護衛用ウォーマシンとして備え付けられた上級攻性防壁(ファイアウォール)によって厳重に護られている。
 彼の精神と融合しようとしたハンブラはそれに無防備に触れてしまい、脳に著しいダメージを負ったのだ。
 そして、トリテレイアの人格を司る電子頭脳――コアユニットの位置は頭部ではなく胴体にある。故に頭部をパージしたところで何の支障もないのだ。
 リウを驚かせてしまっただろうとは思うが、相手が相応の手を使うなら、こちらも相応の返しをせねばなるまい。
 マルチセンサーは問題なく起動しており、再び動くようになった片腕がハンブラの頭部を掴んだ。

「と、トリテレイアさん……!」
「リウ様、厳しいようでしたら目をお瞑りください」

 腕が跳ねられる瞬間に加えて今やろうとしていることを見るのは、まだ幼い少年には酷であろうと。
 優しい声で気遣った後、トリテレイアは『義護剣ブリッジェシー』を握りしめ、その切っ先を宙吊りにしたハンブラへ向ける。
 脳の著しいダメージから脱却できてないハンブラは抵抗の手段を持ち合わせておらず無防備も同然で。

「――精神は本来、不可侵であるべき領域。土足で踏み入るならば、それ相応のお覚悟を」

 淡々とした抑揚のなく、かつ静かな怒りが込められた声と共に――ハンブラの胴体が貫かれた。
 『ブリッジェシー』の白銀の刀身が鮮血にその身を染め上げ、引き抜かれればその刀身から血がより一層滴り落ちる。
 ハンブラは声を上げる余裕すらなく、されるがままにその身を勢いよく放り投げられ、鮮血の跡を辺りに散らばせながら地に転がった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘×
グロ×
WIZ

猟書家のトゥーモル・ハンブラ様ですね。
私はドゥルール。オブリビオンの救済を掲げる者です

守護霊の憑依【ドーピング】で戦闘力を高め
悲愴の剣の【呪詛・衝撃波・範囲攻撃】を【乱れ撃ち】
リウへの接近を封じつつ、じわじわ弱らせるわ

この子達のように……
貴女も、私と一つになりましょう?

衝撃波に耐えられて首根っこを掴まれても
『狂愛』で94人に分裂して拘束から脱出しつつ
相手の全身に【怪力】で纏わりつき【捕縛】

首筋から【吸血】しつつ呪詛を注ぐ【マヒ攻撃】
耳を舐めたり愛を囁いての【誘惑・催眠術・全力魔法】
頬や唇へのキスと全身に頬擦りしての【生命力吸収】で
身も心も蕩けさせるわ。これが私の精神侵略です♥



●※未成年には見せられません※
 さて、これはどこまで報告書にして良いものか。時は少しだけ遡り、心体共に致命傷を負う前のこと。
 かつ、かつとハイヒールの音を響かせて一人の猟兵が現れた。

「……猟書家のトゥモール・ハンブラ様ですね?」
「?貴様は……」
「私はドゥルール。オブリビオンの救済を掲げるものです」

 そう言って畏まった礼をして見せるドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)。
 対するハンブラは怪訝そうな表情を浮かべた。
 それもそうだ、この場で自身の前に立ちはだかるということは猟兵なのに、言っていることは猟兵とは真逆のことなのだから。

「面白いことを言うな。であれば、わたしと一つになるつもりできたということか」
「仰る通りですわ、ハンブラ様。この子たちのように……」

 ルル、ルル――とドゥルールを呼ぶ声がする。
 サイキッカーとしての優れた感覚故かハンブラにはその声も、ドゥルールに寄り添うように漂う守護霊の姿が目に映っていた。
 愛しの守護霊たちを憑依させることにより能力を極限まで高めたドゥルールは手を翳す。
 すると禍々しい呪詛の気を纏った『悲槍の剣』が幾本も現れては壁に、床に突き刺さっていき、その度に発生する呪詛を纏った衝撃波がハンブラに炸裂――!

「貴女も、私と一つになりましょう?」

 その波が飛ぶ中ドゥルールは一直線にハンブラへと突っ込んでいく。
 自らの内に"狂愛"を隠すことなく、ただ一つに溶け合うことを求めて……だが。

「温いな。その程度で止められるとでも?」

 ハンブラにとってこの衝撃波や呪詛は大したものではなかったようだ。
 まだ繋がっている片腕が至近距離まで迫ったドゥルールの首根っこを引っ掴む。
 ドゥルールは猟兵でなければ首の骨が軋んでいたであろう衝撃に少しばかり恍惚を覚えた。
 ああ、素敵。なんて素敵な方なのかしら。一つになりたいという欲望がさらに加速し――

「ああ……っ、もう我慢できない……!」

 ぽん!と音と共に煙が上がる。
 一体何の目くらましかと思ったが、煙が消えたら消えたでハンブラは困惑した。
 何故ならそこには94体もの二頭身になったドゥルール――以下ちびどぅるーると暫定的に称するものとする――の群れが広がっていたのである!

「ハンブラ様~♥」
「??……!?」

 ちびどぅるーるの群れがハンブラにたかる。彼女の身体のあらゆる箇所にまとわり付くように……それはもう、どこにもそこにもかしこにも。
 引き剥がそうとするがこのちびどぅるーる一体一体、かなり強い力でひっついているのでそう簡単には離れない!

「な、何を……あぅっ!?」

 かぷ、と首筋を噛まれる感触と同時に甘酸っぱい衝動が身体を駆け巡る。

「ああ、こんなに傷だらけでもお美しい……ハンブラ様、とても素敵ですわ……」
「ひっ!?な、何をわけのわからないことを、あっやめ、耳に息を吹きかけひゃうっ!?こら!舐めるnんーっ!?」

 唇を塞がれて何も言えなくなるハンブラ。だがちびどぅるーるたちの愛情表現はこんなものではまだまだ終わらないのだ。
 ここから先は非常に青少年には刺激が強い光景になるので詳細は割愛させて頂きます。

「僕は何も見てない聞いてない見てない聞いてない見てない聞いてない見てない聞いてない見てない聞いてない……」

 尚そんな刺激的な光景を目の当たりにできる立場にあるリウ少年、もちろん目をぎゅっと瞑って耳を塞いで何も知る必要はないと自らに言い聞かせていた。それはもう必死に。
 14歳の少年にはあまりにも刺激が強すぎますからね!

 「……わ、わらひのきおくにないけいけんらっは……パタン」

 というワケですっかり蕩けさせられたハンブラは暫く恍惚とした、そしてぼんやりとした表情で疑問符を浮かべるだけで動けなかったとか。
 一応、後に何とか平常運転に戻って残りの猟兵たちと対峙したのであるが……

「ふう……如何でしたか?これが私の精神侵略です♥」

 もちろん、たっぷりと愛し合い生命力を得たドゥルールさんはそのお肌がますますつやつやになってましたよ。

成功 🔵​🔵​🔴​

神楽坂・神楽
おぬしは人の心を侵略するのか。
ならば、逆に自分の心を侵略されることくらいは当然想定しておろうな?
ほれ、よく言うであろう。
侵略していいのは侵略される覚悟のある奴だけだ、とな。

さて、あやつは触れることで心に干渉してくるようじゃ。
ならば、十層の《氣》を体の周囲に張り巡らせ、直接触れられるのを防ぐとしよう。
そしてこの《氣》は攻防一体。《氣》を纏わせた拳や肘打ち、蹴りを食らわせてやろうぞ。

敵を動けなくすることができたならば、《喰刻印》で分解・吸収。

逆に心を侵略されることくらいと初めに言ったが、あれは嘘じゃ。
わしの刻印は喰い意地が張っておるのでな。
おぬしの心も身体も一片残さず喰らってやろうぞ。



●精神を融合する超力、対、その身も心も喰らう刻印
 少々時間軸は前後したが、トゥモール・ハンブラはまだ諦める様子はないようだ。
 串刺しにされても尚動けるのは、悠久の時を精神を融合して生きながらえていた故に肉体もまた超常に至ったからなのか、それとも。
 血反吐を吐きながらも、先程ファイアウォールにより焼き切れた思考回路を無理やり繋ぎ直し、ふらふらと血を滴らせながらリウへと手を伸ばす。

「我が……力の……完、成……を……精神、侵略……を……!」

 最早死体が無理やり身体を動かしているような、そんな光景に近い。
 そこまでして完全なる力にしがみつくかのような有様は、おぞましさをとっくに通り過ぎて哀れなようにすら感じてしまう。
 少なくとも、リウはそう思ったようで恐れより悲しさが全面に出た表情だ。それがハンブラからしたらますます気に食わないのだろう。怒りを全面に出してリウの精神を融合させようと飛びかかるが――

「――ほう?」

 千切れていないその腕は、神楽坂・神楽(UDC指導員・f21330)によって止められた。
 瀕死の状態で新たな猟兵の増援を察知できなかったのか、ハンブラは驚いている。現在の彼女からしたら、どこからともなく突然横に割って入って止められたようなものなのだ。

「おぬしは人の心を侵略するのか」
「おの、れ……またしても……ッ!!」
「ならば、逆に自分の心を侵略されることぐらいは――当然、想定しておろうな?」

 あどけない少女の瞳であるが、その視線は永い時を経た歴戦の戦士も同然の重さと鋭さを発している。
 悠久の時を生きてきたトゥモール・ハンブラだからこそ、神楽が見た目通りの少女ではないことを察すると同時に「今度こそ下手を撃てば死ぬ」と本能で自覚せざるを得なかった。
 だが、直接腕を握られているならばそこを経由して精神に干渉すれば良い。そう思い至りサイキックを発するのだが……

「ほれ、よく言うであろう。侵略していいのは侵略される覚悟のある奴だけだ……とな」

 神楽は一切その力の影響を受けた様子はない。
 むしろ彼女の手だけが自身に触れられているにも関わらず、何層にも重ねられた膜のような何かに阻まれている感触すらあった。
 それもそうだろう、神楽は予め《氣》を十層程纏った上で接触している。
 ハンブラが悠久の時を生きた優れたサイキッカーであるなら、神楽もまた永い時を生き、鍛錬に捧げたことでこの暑い層の《氣》を操る術を手にした至極の武術家。
 互いに万全の状態であったなればまだ拮抗の可能性もあっただろうが、手負いの状態と無傷であればどちらが有利かなど言わずともわかる。

「が、は……!」

 どうする――と、思考を逡巡させている内に腕を引っ張られ、《氣》を纏った蹴りがハンブラの腹にめり込まれる。
 肋骨の折れる音がするが腹を抑える間もなく体勢を崩したところで今度は肘打ちで無理やり身体を起こされたかと思いきや、顎に強烈な拳の一撃が炸裂!
 血反吐をぶちまけ、ハンブラの身体は天井に打ち付けられた後地面にも叩きつけられた。

「ぁ……が……ひゅー……ひゅ――……ッッ」

 まともな呼吸すらままならないハンブラは最早起き上がるという発想にすら至らない程虫の息となり、身動きなど当然取れはしない。
 視界も霞みに霞んでぼんやりとシルエットでしかわからない状態の中、神楽の両手――に移植された《刻印》――が赤く煌めいているのだけははっきりと見えた。

「逆に心を侵略されることくらい――と、始めに言ったな」
「……?」
「あれは嘘じゃ」

 神楽の刻印が起動された手が伸びる。

「わしの刻印は、喰い意地が張っておるのでな。……おぬしの心も身体も、一片残さず喰らってやろうぞ」
「ぁ……ぁ……」

 嫌だ、やめろと言うかのような視線を意に介さず。
 神楽の両手の《喰刻印》が、ハンブラの身体を、精神を、まるで飯をかっ食らうように分解し――宣言通り一片すら残さず"捕食"した。
 もちろん、そうなれば遺体など残るハズもない……戦いの痕だけを残して、猟書家トゥモール・ハンブラは跡形もなく消え去った。

大成功 🔵​🔵​🔵​


●エピローグ
 トゥモール・ハンブラが倒れ、精神侵略の影響が消え去ったことにより宇宙船の人々は無事目を覚ますこととなった。
 幸い、奴に精神を完全に融合させられる前に決着をつけることができたようだ。
 少しばかり呑まれかけたせいで暫くぐったりと調子を悪そうにしている人もいたが、数日休めばまた元気になるだろうとのことらしい。

「猟兵の皆さん、本当にありがとうございました……僕たち全員の感謝の言葉でも足りないぐらいです」

 リウが深く頭を下げた。
 彼の後ろには猟兵たちによって命を救われた宇宙船の住人全員もいる。
 事情を聞いた他の住民たちも猟兵に感謝を告げる為にこうして見送りにきたのだそうだ。
 ありがとう、助かったよ……と、それぞれが口々に告げる。

「皆さんがきてくれなければ、きっと僕は殺されていたと思います。そして船のみんなも……このご恩は決して忘れません。
 今回の件で僕がまだまだ未熟であることもより一層痛感しました。
 またお会いする時があれば、少しでもお手伝いできるようにより一層修行に励みたいです!」

 と、リウは言っているが彼がいなければ猟兵たちはそもそも立ち向かうこともできなかったのである。
 その旨を伝えると本人はそれをわかった上でこう言っているようだ。
 それで満足してしまったらそこで止まってしまいそうな気がした、と。向上心の表れならば、そうではないと言うのも野暮だろう。
 頑張ってね、と猟兵の誰かが告げたならリウは表情を輝かせて。

「本当にありがとうございました!これからも皆さんの無事を祈っています!」

 年頃の少年らしいあどけない笑顔を背に、猟兵たちはそれぞれグリモアベースへと帰投したのだった――。

最終結果:成功

完成日:2021年01月07日
宿敵 『トゥーモル・ハンブラ』 を撃破!


挿絵イラスト