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其は風の化身なり

#ヒーローズアース #猟書家の侵攻 #猟書家 #『アズマ』 #神

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●風の少女
「はあああっっ!! 巻ーきー起ーこーれええぇぇっっ!!」
 ぐっと握り締めた拳を空手の型のように突き出すと、少女の腕は旋風となって解き放たれた。ビーム砲のように地面を抉り突き進むと、番人を八つ裂きにして通り過ぎていく。
「まったくもう……素直に開けてくれれば死ななかったのに……ね! ちゅんちゅん!」
「ちゅん!」
 少女は傍らに鎮座する、まるまるとした雀のような生命体をもふもふ叩く。もふもふした雀のような生命体はちゅんと一鳴きして翼を広げた。
「そしてこれが、不死の怪物……力の一部、貰うよ!」
 蠢く世界の中心へ、少女は手を伸ばし――。

 もふっとした雀の体に頑丈な甲羅が、ヘルメットのように融合した。
「よーし、あとは……私の風に乗って、飛んでけええぇぇっっ!!」
 少女は暴風を巻き起こし、スナーク化した雀たちは空へと大きく羽ばたいていった。

●ちゅんちゅん爆撃
「来たぞっ!」
 救援に駆けつけた神たちだったが一足遅く、スナーク化は実行されてしまっていた。強化されたオブリビオン、ちゅんちゅんさまは嵐と共に宙から落ちてくる。
 重いくちばしが突き刺さり、一人倒れた。
 鋭い翼が体を切り裂き、また一人倒れた。
 ちゅんちゅんさまの空襲は、もはや神たちの力では手に負えない状態になっていた。

●ヒーローズアース・5thラウンド
「またも『ヒーローズアース』のセンターオブジアースに危機が迫っています!」
 ロザリア・ムーンドロップ(薔薇十字と月夜の雫・f00270)は人を集め叫んでいた。
「不死の怪物を狙う者が後を絶ちませんね……やはり今回も、スナーク化したオブリビオンの強襲により神々は窮地に追い込まれてしまいます。そうなる前に合流し、スナーク化した配下のオブリビオンと、スナーク化を行ったオブリビオンを倒しましょう!」
 神々と合流する必要があるのは、スナーク化したオブリビオンを倒すために弱点を知る必要があるからだ。弱点を突かなければ、如何に歴戦の猟兵と言えど、1体倒すのも苦しい。
「スナーク化したオブリビオンは『ちゅんちゅんさま』という……なんだか雀みたいなやつです! こんな感じですね!」
 ロザリアは『ぐりもあのーと』に描いたラフスケッチを猟兵達へ提示した。まるっとした体が可愛らしいが、そこには不格好な亀の甲羅が乗っかっていた。
「この亀の甲羅が、スナーク化の際に融合した怪物の一部のようです! なんだかぴったりフィットしてる感じですけど、このせいで強大な力を得ているので十分注意してください! あと、現場は風が吹き荒れているようですので、その点も注意ですね!」
 おそらくは、スナーク化を行った者の力によるものだろう。その者と戦う際にも、風の力には注意したい。
「大変な時期ですが頑張りましょう! 宜しくお願いします!」


沙雪海都
 沙雪海都(さゆきかいと)です。
 ヒーローズアースにも癒しはありました。

●フラグメント詳細
 第1章:集団戦『ちゅんちゅんさま』
 弱点を突かないとどうしようもないやべー集団(ry。
 弱点は「お腹」です。大体の攻撃は甲羅で守ってしまいますが、真下からの攻撃だけは守れないようです。
 しかし普段は接地していて攻撃できない場所なので、どうにか攻撃できそうな状況を作りましょう。

 第2章:ボス戦『コードネーム『Ba-Sa-Ra』』
 風を操る少女です。スナーク化はしていないので対処としては普通のボス戦になります。

●戦場エフェクト『暴風』
 火属性の攻撃の効果がいくらか『減少』するようです。
 風属性の攻撃の効果がいくらか『増加』するようです。

●MSのキャパシティ
 合わせプレイングはお受けできません。申し訳ないです。
 ゆったりペースで進行予定です。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『ちゅんちゅんさま』

POW   :    頑丈なくちばし
単純で重い【くちばし】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    鋭い翼
【翼】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    羽根ガトリング
レベル分の1秒で【翼から羽根】を発射できる。

イラスト:橡こりす

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

備傘・剱
おー、丁度、クリスマス料理に必要な鶏肉が欲しかった所だ
渡りに船ってこういう事を言うんだろうかな?
鴨が葱を背負って来るなか?

ま、オーラ防御で攻撃と風をやり過ごして、っと
とにかく、まずはひっくり返さないと、か
誘導弾、衝撃波、呪殺弾を表面に当てれば、ダメージはなくとも、動きは封じれるだろ?
そして、結界術で動きを封じたら、念動力でひっくり返して、調理開始、発動!
ナイフで調理と早業でくりぬいてくれるわ
知ってるか?鳥って捨てる所ないんだぜ?

さて、残った外殻ができたら、それも回収しておこう
ほら、鍋になりそうな感じ、しない?
さぁ、育もう、もったいない精神、感じよう、命のリサイクル

アドリブ、絡み、好きにしてくれ



●ちゅんちゅんさまも尊き命
 まるで電線に留まっているかのようにずらっと列を成すちゅんちゅんさま。その光景を備傘・剱(絶路・f01759)が見渡していた。
「おー、丁度、クリスマス料理に必要な鶏肉が欲しかった所だ。渡りに船ってこういう事を言うんだろうかな? 鴨が葱を背負って来るかな?」
 とどのつまり、剱にとっては好都合ということだ。
「ちゅん! ちゅん!」
 そしてちゅんちゅんさまは鴨が葱を背負って来る、ならぬ雀が甲羅を背負って来る精神で突っ込んできた。必死に地面を引っ掻く極小の足は心許ないが、今は風がついている。翼を広げれば急加速して、砂煙を巻き上げての翼攻撃だ。
 対し、剱はオーラ防御を張って身構えた。こうして荒れ狂う風を流すのだ。オーラごとわずかに押されてしまうのは致し方ないにしても、ただ立っているよりは随分と姿勢を保つのが楽になった。
 次は重心を低く保ち衝撃に備えた。ちゅんちゅんさまとのインパクトの瞬間に下半身に力を込める。鋭い角度で切り込んできた翼はオーラ防御の曲面にいなされ、剱の真横をすり抜けていった。
「ちゅちゅん!」
 先頭に続けと言わんばかりにちゅんちゅんさまは波状攻撃を仕掛けてきた。右、左、右、左と翼が交互に剱へ襲い掛かる。大玉転がしが如く二列で迫り来る様は迫力があったが、剱は動じることなくオーラ防御の角度を変えて翼を受け流し続けていた。
 一揃いの連携攻撃を全て潜り抜け振り返ると、ちゅんちゅんさまの一群はUターンして次の攻撃の助走を始めている。
「とにかく、まずはひっくり返さないと、か」
 好き勝手に走り回らせるわけにはいかない。弱点は腹――そこへ狙いをつけるためにもひっくり返すことが重要だ。
「ふっ!」
 フォトンガントレットで増幅した精神力を腕に込め、フックの反動で呪殺弾にして放った。気まぐれな風の中で揺れ動くちゅんちゅんさまへ、弾は誘導されて飛んでいく。
「ちゅん!」
 禍々しい弾を前に、ちゅんちゅんさまは身を縮めて甲羅を突き出した。甲羅の盾に衝突してパンと破裂した弾は一見防がれたように見えたが、その衝撃はちゅんちゅんさまを場に固定する。
 剱が連続して撃ち出した弾はそれぞれが別のちゅんちゅんさまへ誘導されていた。そしてやはりどのちゅんちゅんさまも甲羅を盾に身を守る。鉄壁と言うに等しい防御力を得たちゅんちゅんさま。しかし剱の真なる狙いには気づかなかった。
「縛れ……!」
「ちゅん!?」
 弾に込められた呪が甲羅から染み出すように現れた。ちゅんちゅんさまに防御させることで固定したその配置こそが巨大な結界の陣だった。呪によって結び付けられたちゅんちゅんさま達は身動きが取れなくなる。
 剱はさらに下準備を進めていく。結界を崩さないように念動力で浮遊させると、そのままホットケーキを返すかのようにぐるり、空中でちゅんちゅんさまをひっくり返して地面に叩きつけた。
 甲羅は言わばヘルメットだ。叩きつけの衝撃も大したダメージにはなっていないだろうが、これでようやくちゅんちゅんさまの腹が見えた。
 剱は表情を変えずにナイフを取る。
『オブリ飯の神髄見せてやるぜ。調理開始、だ』
 結界が効いているうちに。剱は暴風の中を疾駆した。風を読み、流れに合わせて跳躍することで一気にちゅんちゅんさまの腹の上へと辿り着く。
「はっ!」
「ぢゅん!?」
 ずむっ、と柔らかい腹に一突き。ナイフを入れると素早く一周して丸く切り込みを入れた。ちゅんちゅんさまは翼をばたつかせて必死の抵抗を見せていたが、肉をくり抜くためにさらに一段階深くナイフを抉り込ませると、くちばしを開けたまま動かなくなった。
 食材は鮮度が命だ。剱は早業を駆使してナイフを操っていく。最後は降りて底の部分に腕を突っ込み切り離すと、あっと言う間に一羽、肉と外殻が綺麗に分かれた。
「こいつも後で回収回収」
 風に揺れるちゅんちゅんさまの外殻。これを捨てるなんてとんでもない。丸く抉られた半球は、見ようによっては鍋にも見える。ザ・もったいない精神。
 なかなか大味な鍋だ。それでこそオブリ飯――なのかもしれない。
「鳥は捨てるところのない素晴らしい素材だ。お前達の命に感謝しよう。心置きなく……食材になってくれ」
「ぢゅーん!?」
 変わり果てた仲間の姿に身の危険を感じたちゅんちゅんさま達は一層翼をばたつかせた。しかしできることはそのくらいで、真上から降ってくる刃には無抵抗だ。柔らかい腹は難なくナイフを通してしまい、やがて次代の糧となる過程で事切れる。
 剱は丁寧に丁寧に、ちゅんちゅんさまという命の一つ一つを頂いていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

舞莽・歳三
可愛い… やらなきゃだめかそうか、しゃーねーな

【目立たない】ように【地形の利用】を駆使して一番柔らかそうな部位をナイフの【投擲】で串刺しにするぜ
【ダッシュ】で翻弄しながら常に死角になるように立ち回り相手をイラつかせて楽しませてもらう。

痛かったら右手あげてくれ、攻撃ゆるめてやるよ、嘘だけど



●ようこそちゅんちゅんワールド
「ちゅん! ちゅん!」
「可愛い……」
 敵ではあるが、愛らしい。まるまる、ふわふわしたちゅんちゅんさまの体は撫でたら気持ちよさそうだ。舞莽・歳三(とし・f30567)はしばし苦悩する。
「ちゅんちゅん!」
「こっちに集団で来たぞ! 一旦退けぇ!!」
 しかしスナーク化により強化されたちゅんちゅんさまは猛禽の如く神々へと襲い掛かる。びゅううと風が吹き荒れれば広げた翼は凶器となり、神々に恐怖を植え付けていた。
「……やらなきゃだめかそうか、しゃーねーな」
 歳三はこの場に立つ意味を思い返す。動物園のようにちゅんちゅんさまの愛らしい姿を見物に来たわけではないのだ。
 神々が退くのに逆らって歳三は駆け出した。今はちゅんちゅんさまが暴れ、砂嵐が起こっている。その中に身を投じて目立たぬよう動きながらちゅんちゅんさまの急所を探った。
 見た目通り、融合した甲羅は固そうだ。ならば本体になるが、翼は武器としても使われており、強度がありそうだった。
「ちゅん!」
「おっと」
 観察しているところを別の個体に狙われていた。横からちゅんちゅんさまが翼を広げてタックルを仕掛けてくる。砂嵐を切り裂く翼はあわや直撃というところ、歳三は間一髪気づいて横っ飛びで回避する。
 頭数ではちゅんちゅんさまが圧倒的に勝る。全てのちゅんちゅんさまの目を逃れるのは至難の業だ。
 それでも可能な限り戦場の陰となる部分に入り、ちゅんちゅんさまの視界の裏に回り込む。
「……ま、適当に一発」
 背後を取ったが接近戦は仕掛けない。ナイフを軽く取ってぴゅっと飛ばした。ぴょこんと跳ねた尾の根元にざくと刺さる。
「ぢゅん!?」
 ナイフが突き刺さったちゅんちゅんさまは機敏なターンで振り返った。歳三は若干つり上がった目を避けるように動き回ると、また別のちゅんちゅんさまへナイフを放る。今度は斜め後ろから飛び込んだナイフが翼の下、足の付け根辺りに突き刺さった。
「ぢゅーん!!」
 ナイフが刺さったままちゅんちゅんさまは暴れ、ナイフが飛んできた方向へ翼を広げて向かってきた。しかし足回りの性能は歳三のほうが上だ。ダッシュで横に飛び出して突進を難なく避ける。
「こっちだ、こっち」
 軽快なフットワークを見せながら挑発するように声を投げかける。ちゅんちゅんさまは敵襲に気づき、どんどん歳三の前に集まってきていた。
「ちゅん! ちゅーん!!」
 先頭のちゅんちゅんさまが号令のように鳴くと、集まったちゅんちゅんさま達が一斉に翼を広げて突撃してきた。翼が当たらぬよう互い違いになって濃密なちゅんちゅんさま弾幕を作る。
 間を抜けるのも一興だが――歳三は足を駆使して迂回を選んだ。左に跳んで威勢のいい先頭集団を回避すると、後続のちゅんちゅんさまが進路を変えてまたも歳三を狙ってきた。
 跳んでかわす。走ってかわす。気づけばちゅんちゅんさまを中心に戦場をぐるりと一周していた。攻撃を外したちゅんちゅんさまが流れに再合流しようと翼を広げ、別のちゅんちゅんさまとぶつかる場面もあった。
「ぢゅーん!! ぢゅん!!」
 翼はいつまでも空を切る。ちゅんちゅんさまは業を煮やしたように喉を酷使して怒りの鳴き声を上げていた。
 愉快、愉快。珍しい光景を目にすることができた。
「……そんじゃ、まぁ」
 ひとしきり楽しんだところで思い出したようにナイフを投げた。三連投と奮発だ。狙うのは短い両脚。上よりは下のほうが柔らかい気がした。
 歳三へ尾を向けていたちゅんちゅんさまに一本目、二本目が景気よくさくっと命中する。
「ぢゅぢゅん!?」
 両脚にナイフを受けたちゅんちゅんさまがどてっと前方に転げた。そこへ三本目が到達し、クリーム色の羽毛の中に吸い込まれていく。
「ぢゅーんっ!」
 ナイフを腹に突き立てられたちゅんちゅんさまは一際けたたましい鳴き声を上げると、ぴくぴく震えた後に動かなくなる。
「……やっぱ腹か、うん、腹」
 翼も甲羅も届かない腹部分は如何にも弱そうに見えた。神々もそんなことを言っていたような気がする。
 狙い目は理解した。あとは適当に翻弄しながらちくちくやっていけばいい。
「痛かったら右手あげてくれ。攻撃ゆるめてやるよ、嘘だけど」
「ぢゅんっ! ぢゅん!」
 それは歳三の言葉に反応したのか。それとも仲間を失い奮い立ったか。
 ばっさばっさと翼を広げ、ちゅんちゅんさまはなおも立ち向かってくる。
 どうやら、戦いは長そうだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

水元・芙実
ええ、なにその組み合わせ…。
てか強いし…。
まあ弱点がはっきりしてるのならやることは単純ね。
幻炎合成法で敵の足元の地面を空気に変換。その空気を圧縮して上へ一気に放つわ。
つまりアッパーね。
吹き荒れる風が邪魔なら鉄の壁だって作っちゃう。その壁で風の動きをコントロールしてちゅんちゅん様をひっくり返しちゃおう。重量バランス悪そうだし。
壁は敵の攻撃を防ぐのにも使うわ。あと転倒させてお腹を見せたちゅんちゅん様を押しつぶしたり。

別に火だからってそれで直接攻撃するのが最適って訳じゃないわよ。
火で死ぬより、火で作ったものに殺されたものの方がきっとずっと多いんだからね。



●狐火が生む千変万化
「ちゅんちゅんちゅんちゅんちゅんちゅん! ちゅーん!!」
 翼を大きく広げたちゅんちゅんさまは風を受けてぎゅるぎゅる回りながら辺りを疾走していた。戦場にいる神々を追い回す亀甲羅は誘導追尾システム付きだ。
「うぎゃあ!」
 べしべしべしん、と翼に叩かれて神々は空に飛ばされた。そのまま上空の風を受けて場外に送り出されていく。
「ええ、なにその組み合わせ……てか強いし……」
 水元・芙実(スーパーケミカリスト・ヨーコ・f18176)は口を半開きにしながら、今し方飛ばされた神々を見送っていた。侮れないもふもふ、恐るべし甲羅パワー。
 しかし全く手に負えない相手かと言うとそうでもない。神々とて飛ばされるためだけにいるのではないのだ。敵情報はしっかりと伝えられている。
「まあ弱点がはっきりしてるのならやることは単純ね」
 ぶぁさぁっ、と大仰に翼を広げて威嚇するちゅんちゅんさまの群れを見据えた。また風に乗って何かやらかしてくるに違いない、と芙実は決断早く飛び出す。
 荒れる風は横殴りに当たってくる。ポニーテールとふさふさの尻尾は引っ張られているかのように真横に流されていた。ここぞという時に気を取られたり、バランスを崩したりするのは厄介だ。
「風が何よ……この私にかかれば作れない物なんて何も無いわ!」
 指先に灯した狐火を地面に撒いた。狐火は無機物に作用し別の化学物質へと変換するが――地面など無機物の集合体のようなものだ。風を受けて靡くも吹き飛ばされることなく、レールのように走った狐火の中から鉄の壁がせり上がり、ちゅんちゅんさまの群れまでの安全な通路を作り出す。
「ちゅん! ちゅちゅん!!」
 一羽のちゅんちゅんさまが号令のように鳴くと、群れが一斉に立てた翼を芙実に向けて振り下ろした。翼の中から放たれたのは毛がぴしっと生え揃った羽だ。それが射掛けられた矢の如く芙実を狙っていた。
「それも壁で!」
 進路に狐火を撒き、鉄の壁で堰き止める。壁を背にすると衝突音が耳元で響いてやかましい。芙実は一呼吸置くと、くるりと右へ反転しながら飛び出して、群れへの更なる接近を試みた。
 鉄の壁はちゅんちゅんさまの羽を防ぐと同時に芙実の姿を隠していた。目標を失ったことで羽が止む――芙実が飛び出したのはその瞬間だ。
 ちゅんちゅんさまが羽を再発射する前に。芙実は狐火を思い切り投げ込んだ。
 整列した足元にぼわっと広がった狐火は地面を空気に変える。ちゅんちゅんさまの足元でぎゅうと押し込められた空気は一気に上空へと噴き出し、ちゅんちゅんさまの群れを舞い上げた。
「ちゅんっ!?」
 突然の浮遊感の中でちゅんちゅんさまは翼を広げ、必死に姿勢を保とうとしていた。ちゅんちゅんさまにとって風は味方――のはずだった。
 しかし今は、乱れた風がちゅんちゅんさまのバランスを崩す。気づけば無数に作り出された鉄の壁が、風を見知らぬ姿に変えていた。
「ぢゅーんっ!?」
 一度かくんと傾けば、ちゅんちゅんさまは一気にくるりと真っ逆さま。空では揚力によって保たれていたバランスだ。風が敵ではどうしようもなく、片っ端からタコ焼きのようにくるりくるりとひっくり返されて弱点の腹を露にした。
「よーし、いっけぇーっ!」
 落下するちゅんちゅんさまへ追い討ちをかけるように、芙実は鉄の壁を思い切り押した。さながら巨大ドミノのようだ。ちゅんちゅんさまはゆっくり倒れる鉄の壁の影に呑み込まれていく。
「ぢゅーん!!」
「ぢゅ、ぢゅ――」
 ずん、と飛び上がりそうなほどの衝撃が地面を走る。鉄の壁はちゅんちゅんさまを悲鳴ごと押し潰していた。腹から潰されてはひとたまりもないが、甲羅は潰されてなおいくらか形を保っているのか、倒れた鉄の壁は地面からわずかに浮き上がっていた。
「ぢゅーん、ぢゅん!」
 ひっくり返ったちゅんちゅんさまは翼をばたつかせてもがく。だが風の力無くては亀に等しく、身を起こせない。
 この隙にとばかりに芙実は次から次へと鉄の壁を倒していった。一つ倒す度に何羽ものちゅんちゅんさまが餌食となる。うるさい鳴き声もやがて気にならなくなっていたが、ちゅんちゅんさまが数を減らすことで実際に声は失われていた。
 風の流れを変えていた壁はちゅんちゅんさまをひっくり返したところで役目を終え、最後にこうして押し潰す芙実の武器となった。粗方壁を倒し終えて、芙実は手についた塵埃を払う。
 もう声は聞こえない。
「別に火だからってそれで直接攻撃するのが最適って訳じゃないわよ。火で死ぬより、火で作ったものに殺されたものの方がきっとずっと多いんだからね」
 それはこの風の主に向けての言葉か。指先に灯す炎はまた風に揺られ始め――芙実はそれをふっと吹き消すと、まだ他に倒すべき相手がいないか探すために歩き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

蒼月・暦(サポート)
 デッドマンの闇医者×グールドライバー、女の子です。

 普段の口調は「無邪気(私、アナタ、なの、よ、なのね、なのよね?)」
 嘘をつく時は「分かりやすい(ワタシ、アナタ、です、ます、でしょう、でしょうか?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

無邪気で明るい性格をしていて、一般人や他猟兵に対しても友好的。
可愛い動物とか、珍しい植物が好き。
戦闘では、改造ナノブレード(医療ノコギリ)を使う事が多い。

 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●夢のもふもふ、しかし現実は残酷である
「キャー! とってもカワイイのー♪」
 ちゅんちゅんさまを見つめる蒼月・暦(デッドマンの闇医者・f27221)の瞳はキラキラと輝いていた。
「丸くてふわふわ、甲羅も帽子みたいで、とってもチャーミングなの♪」
「ちゅん!」
 お褒めに預かり光栄――などと言うかのように、ちゅんちゅんさまは暦の声援にウインクで返していた。
 ここがふれあい動物園ならどんなに良かったことだろう。少女と雀の心温まる触れ合いシーンは、センターオブジアースでは厳しいか。
「でも、敵は敵なのよね……神様っていじわるなのー!」
 鬱憤を晴らすかのような暦の叫びが響き渡る。戦場の神々は自分達のことではないとわかっていても複雑な面持ちを見せていた。
「せめて痛い思いが一瞬で済むように……倒してあげるの」
 暦は小さな決意を胸に宿す。正対したちゅんちゅんさまもまた、暦を敵と認識してくちばしを光らせた。
「ちゅんちゅん!!」
 ちゅんちゅんさまは翼を広げて飛び立つと、風に乗りながらくちばしを尖らせて急降下してきた。飛ぶ様も可愛らしく心を打たれたが、暦はぷるぷると首を振って向き直ると、纏っていたマントをばさっと脱ぎ捨てた。
 マントの下には戦場によく馴染む迷彩柄の衣装を身に付けていた。一瞬で地面に同化すると、さらに逃げ足の速さを生かし戦場を駆け回る。
 風に煽られ舞う砂埃は視界を更に悪化させ、ちゅんちゅんさまは暦を見失っていた。
「ちゅん!? っちゅん!」
 かと言ってちゅんちゅんさまは普通の鳥ほど空中で融通が利くわけではない。くちばしは狙った地点へそのまま落下し、地面に大穴を開けていた。
 ぼごん、ぼごんと暦の周りには目標を失ったちゅんちゅんさまが墜落し、地形を破壊していく。戦場はさながらもぐら叩きのようになっていた。
「ちゅん!? ちゅーん!!」
 地上へと戻ってきたちゅんちゅんさまが暦を探して体をくるくる回すも、ばっちり迷彩を施した暦はそう簡単には見つからない。
 しかし、魔の手は確実に忍び寄っていた。
「……ちゅん!?」
 一羽のちゅんちゅんさまの翼に何かがもふっと当たってきた。もふ、もふ。
「これで満足なの!」
「ぢゅん!?」
 キンと高い声に驚き転げたちゅんちゅんさま。そこには確かにちゅんちゅんさまのもふもふ感触を堪能した暦がいた。
 気付かれなければちょっとだけでも。暦の夢は叶った。これで心置きなく倒していける。
「怖い思いはさせないの!」
 ちゅんちゅんさまは最期の時まで愛らしいちゅんちゅんさまで。暦は胸の内で祈りながら、改造ナノブレードで腕に筋をつけた。
 滴る血を刃に吸わせると、改造ナノブレードは巨大化し殺戮捕食態へと変化する。
 先端が上下二つに分かれ、まるで悪魔の口のようだ。牙は鋭く細長い。
「ちゅーんちゅんっ!!」
 暦の位置を把握したちゅんちゅんさまが一斉に襲ってくる。くちばしは厚みがあり力強い。ちゅんちゅんさまの体はぐんと大きく見えた。
 反撃の糸口を掴むために暦はぎりぎりまでちゅんちゅんさまを引きつけた。そして跳んだすぐ目の前にくちばしが突き刺さり地面を割った。
 着地しても別のちゅんちゅんさまが風で微妙に角度を変えて襲ってきた。跳んで止まってまた跳んで。地割れは暦を追いかけるように連なっていく。
 そして先に限界が来たのはちゅんちゅんさまだった。着弾範囲の外に出た暦を追えず、ちゅんちゅんさまのくちばしはずどんと地面に突き刺さる。
「えーいなの!」
 いよいよ捕食の時が来た。暦が振り回す改造ナノブレードはちゅんちゅんさまの甲羅をがっちり咥え込む。暦はちゅんちゅんさまを捕まえたのを確認すると、バンザイをするようにちゅんちゅんさまを真上へ放り投げた。
 ぐるん、ぐるん、重みによって不均一に回転しながら落下するちゅんちゅんさまが丁度腹を下に向けた時、改造ナノブレードは牙を伸ばしてがぶりと一噛み、弱点を一気に食い破った。
「ぢゅ……」
 大した呻きも漏らす暇なく、腹に穴の開いたちゅんちゅんさまは地面に転がり消滅する。
「暴れなければ大丈夫なのよー」
「ぢゅ、ぢゅん!?」
 ちゅんちゅんさまの列を辿っていって。ぽいがぶぽいがぶ、殺戮捕食態の改造ナノブレードはたらふく喰らっていって、後には無数の穴と巨大ミミズのような地溝が残るのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

雛里・かすみ(サポート)
 バーチャルキャラクターの戦巫女×UDCメカニックの女性です。
 普段の口調は「明るく朗らか(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」
寝起きは「元気ない時もある(私、あなた、~さん、ね、わ、~よ、~の?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

明るく朗らかな性格の為、
男女分け隔てなくフレンドリーに会話を楽しみます。
どんな状況でも、真面目に取り組み
逆境にも屈しない前向きな性格です。

 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●空舞う攻防の果て
 可愛いものを傷つけるというのは、誰しも苦手にするところだろう。それだけに、ちゅんちゅんさまという存在は凶悪だった。
「な、なんかやりにくい外見よね……」
 雛里・かすみ(幻想の案内人・f24096)もまた、無条件には拳を振り上げられない者の一人だ。心と体は簡単に切り離せるものではない。
 それでもかすみは身を奮い立たせ、
「でも、これは私に与えられた試練。絶対に乗り越えてみせるよ!」
 目を閉じてパンと頬を叩き、自身に気合いを注入した。
「どんな時でも、臨機応変に!」
 気合いは力へ。かすみは飛翔力が増加する脚力強化形態への変身を遂げる。そして間髪入れず宙へ跳ぶ。
 荒れ狂う風に呑み込まれることのないよう、両手を広げて風を掴む。上昇する中で上手くコツを覚え、敵の力を逆手にちゅんちゅんさまの真上を取った。
「ちゅーん!!」
 ちゅんちゅんさまは曲がりなりにも鳥である。翼を持たぬ人などに負けていられぬと、翼を広げて風に乗りかすみを追いかけてきた。風はちゅんちゅんさまを見る見るうちに舞い上げてかすみへの包囲網を作る。
 空で囲まれたかすみだったが慌てず騒がず、ちゅんちゅんさまが空へ昇ってくるのを確認すると体を前に傾けた。風を手放し一気に重力に引かれる中でちゅんちゅんさまの群れとすれ違う。
「ちゅん!?」
 目標は遥か下方へ。何羽かが咄嗟に放った翼攻撃も当たらなかった。かすみがこれから何をしようとしているのか、鳥頭のちゅんちゅんさまでは思考が及ばない。
 薙刀――旋風刃を構えると、地面を蹴り出しかすみは再び上空へ。下から狙いをつけていたちゅんちゅんさまは、逆に下から追われる立場になっていた。
 かすみは風を切り裂いて上昇する。そして見据えるはクリーム色の羽毛が覆うちゅんちゅんさまの弱点――腹だ。
「やぁっ!」
 飛翔の勢いを生かして振り上げられた刃がざしゅっと腹を掻っ捌いた。一文字、そして十文字に二度捌き、ちゅんちゅんさまを確実に仕留めていく。
「ぢゅん……」
 腹を割られたちゅんちゅんさまは落葉の如く、力無く落下する。そしてかすみはなお速く、風に自身の体を押し出させて着地していた。
 まだ倒すべきは空中にいる。二度目の跳躍。ちゅんちゅんさまが降りてきたところへカウンターのように旋風刃を突き立て、団子のように刺さった体を思い切り地面に投げ落とした。
 落とされる仲間を目にして、ちゅんちゅんさまの円らな瞳にも怒気が宿る。
「ぢゅーんっ!!」
 滑るようにして翼を広げ急降下してくるちゅんちゅんさま。翼はそのまま武器にもなる。かすみは落下しながら旋風刃を振り回して応戦した。
「こんなのっ……私には丁度いい準備運動よ!」
 重量のある旋風刃を姿勢の定まらない空中で巧みに操る。翼を一つ撃ち落とせば、真横から飛んでくる別の翼には柄を盾に受け止めていた。
 空中で退け、また空中に昇る時には確実に一羽ずつ仕留める。的確かつ堅実な戦いぶりだ。
 運動量はかなりのものだったが、それさえも準備運動と言い放つ。気が付けばちゅんちゅんさまは全て地に落とされていた。
「ま、こんなものね。体も温まったことだし……さぁ、覚悟することね!」
 旋風刃を空へ突きつける。風の向こうにはちゅんちゅんさまを変貌させた、元凶がいる――。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『コードネーム『Ba-Sa-Ra』』

POW   :    今日もいい風ね!
肉体の一部もしくは全部を【触れるモノ皆切り裂く旋風 】に変異させ、触れるモノ皆切り裂く旋風 の持つ特性と、狭い隙間に入り込む能力を得る。
SPD   :    ひとっ走り付き合ってよ!
【自身を量子化 】事で【亜光速戦闘形態】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    燃やすよ、魂!
対象の攻撃を軽減する【超次元竜巻 】に変身しつつ、【磁気嵐と鎌鼬】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:かなめ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠喜羽・紗羅です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●来たり、風の化身
 戦場に一陣の風が吹き抜ける。
 気が付けば、薄絹を纏う一人の少女が立っていた。
「あーあ、ちゅんちゅん、気に入ってたんだけどなぁ……」
 随分と変わってしまった戦場に、尖兵として猟兵達に立ち向かい、そして散ったちゅんちゅんさまの面影を見る。足元にあった地面の欠片を蹴り出すと、でこぼこと跳ねて転がって地割れの中に落ちた。
「こうなったら……敵討ち! ちゅんちゅん! 私がその無念、晴らしてあげるから!」
 少女の周りに風が集う。其は風の化身なり――。
備傘・剱
俺が倒した奴らは、ちゃんと供養(食料化)したから、無念は残ってないと思うぞ
他の奴のは知らないが

てなわけで、ちょっと聞いてみたらいいじゃないか
傀儡子、発動
さぁ、無念かどうか、これで聞けるな

て事で、全員で攻撃させてもらう
ちゅんちゅんさまで足止めをして、誘導弾、衝撃波、呪殺弾で敵の行動を阻害、接近戦に持ち込んだら、結界術で動きを止めつつ、二回攻撃と鎧無視攻撃を叩き込んでやる

防御はガントレットで受けるのと、オーラ防御で受け止める
動きが速いのなら、ワイヤーワークスを足に引っ掛けて転ばせてみるのもいいかもな

戦場じゃ、弱い奴は食い物にさせるってのは、常だからな
無駄にしない事だぜ

アドリブ・絡み、好きにしてくれ



●傀儡――ヂュンヂュンさま
「俺が倒した奴らは、ちゃんと供養したから、無念は残ってないと思うぞ。他の奴のは知らないが」
 剱に捌かれたちゅんちゅんさまは、いずれ生ける者の血となり肉となる。そうやって命は繋がっていくのだ。
「じゃあなんだよ! ちゅんちゅんは全てを許し受け入れてるとでも言うのか!?」
 しかし少女――Ba-Sa-Raの怒りが収まらないのも道理と言えば道理。仲間を殺されて黙っているはずが無い。
 尤も、通常であれば無念のあるなしを議論することに意味はないのだが――。
「なら、ちょっと聞いてみたらいいじゃないか」
 剱は器となったちゅんちゅんさまの亡骸を並べると、
『天の繰糸、地の舞台。舞うは現世の道化なり、ってな』
 呪をかけるように言葉を紡ぐ。すると突如、ちゅんちゅんさまの亡骸がカタカタと震え始めたではないか。
「ヂュ……ヂュン……」
 低く濁りのある鳴き声。戦場で死した者を操る傀儡の術はちゅんちゅんさまを現世に呼び戻す。
「な……ちゅんちゅん!?」
「ヂュ……ヂューン」
「これで聞けるな。てことで……攻撃開始だ」
「ヂューン!」
 ちゅんちゅんさまは今や剱が操る傀儡だ。中は空洞、しかし外殻のみでカタカタと動き、Ba-Sa-Raへと突撃する。
「ちゅんちゅん! 本当に、君達は……!」
 Ba-Sa-Raは言葉を続けられなくなった。今、こうして敵対していること自体が全ての答えだったからだ。
「仕方ない……燃やすよ、魂!」
「止めろ!」
 剱はちゅんちゅんさまに短く指示を出す。巨大な竜巻へと変身しようとしていたBa-Sa-Raへちゅんちゅんさまはのろのろしながらも体当たりをかまそうとしていた。それは避けるのも弾き返すのも至極容易そうに見えた単なる自爆特攻。しかし、Ba-Sa-Raは竜巻への変身を中断し、ちゅんちゅんさまから距離を取る。
「……やっぱりダメ! ちゅんちゅんは、ちゅんちゅんだもん!!」
 竜巻にちゅんちゅんさまを巻き込まぬよう、再び竜巻への変身を始めるBa-Sa-Ra。その情による逡巡は剱に攻撃の猶予を与えていた。
 ガントレットから放たれた呪殺弾がBa-Sa-Raをホーミングして捉える。変化途中の腕や足に次々命中し、衝撃で風が吹き飛んでしまった。
「くぅ……」
「差し詰め、ちゅんちゅんさまには『弱い』ってとこか。戦場で大事なのは、弱い奴も無駄にしないことだぜ」
 いつの間にか、吹き荒れる風を抜けて剱に迫られていた。風――すなわち、射程のアドバンテージが消えてしまえば、Ba-Sa-Raも一介の戦闘少女に過ぎない。
 Ba-Sa-Raの足元に術を施し、結界で縛る。四肢を固められてなお変身を諦めないBa-Sa-Raの腕が竜巻へと変わり向かってくるが、剱はガントレットの上にオーラの防御を張って受け止めた。
 質量を感じさせる暴風。ガントレットの角度を調整しながらいなすと、竜巻は彼方の空へと向かっていった。
「さて、一撃」
 剱は深く腰を落とすと、ガントレットに精神力を凝縮させてBa-Sa-Raの腹部へと突きを叩き込んだ。纏う衣は薄く、簡単に衝撃が貫通しBa-Sa-Raの芯に直撃する。
「はぐぁ!」
「もう一撃!」
「ひぎぃ!」
 軽快なテンポのワンツーが悉くBa-Sa-Raの体へと突き刺さる。二発目の正拳が命中すると同時に結界術が切れ、Ba-Sa-Raは矢印のようにきつく折れ曲がりながら地面の上をすれすれで飛んでいく。
 やがて尻から着地し、折れ曲がった体はバウンドしながら元に戻った。
「つぁ……ぐぅ……」
「で、ちゅんちゅんさまの声は聞けたんだったか? ……まあ、聞けても聞けなくても、無念を晴らせないなら同じだけどな」
 シニカルな視線をBa-Sa-Raに向けつつ、剱はガントレットのずれを整えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィロメーラ・アステール
「この風の中で戦うのは大変そう!」
相手も風が得意みたいだし!
……風の中じゃなくなったらどうかな?

『星装《あくあ》』を展開、自分を包む水球の【オーラ防御】を形成し、受けの姿勢を取るぞ!
さらに【薄暮に踊る払暁の恒星】を発動!
魔法能力を高め、早さに対応できる反応速度を得る!
これで敵の旋風攻撃を防ぐ!

この時、水球を散らし微妙に攻撃が効いてる【演技】する!
「強い一撃ならいけそう」と更なる攻撃を誘う!

イイ感じの攻撃がきたら、水球で旋風を受け止める【グラップル】攻撃で【カウンター】だ!
敵は肉体を変異させている、って事はこの旋風も敵の一部!
つまり水中に取り込まれると……痛いとか苦しいとか?
なんか困ると思うな!



●風を掴まえろ
 フィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)の小さな体は風の中なんとか空中で踏ん張り耐えていた。
「この風の中で戦うのは大変そう!」
 向かい風に横風に。そして決して追い風にならないのは、Ba-Sa-Raがその風の操り手だからだ。
「そう……だよっ! この風の中なら、私は負けない……!」
 Ba-Sa-Raの右腕が風に溶けるように分解し、旋風となる。ローラーブレードを走らせ、フィロメーラの小さな体へ狙いをつけた。
 フィロメーラは『星装《あくあ》』を展開し守りに入る。海をイメージした半透明の魔力圏、水球がフィロメーラを包み込んだ。外は海の向こうの世界。淡い青に色づいたBa-Sa-Raがぐんぐん迫ってくる。
『鮮烈なる夜明けの光……』
 意識を体の内側に集中させる。流れる魔力を感じ取り活性化させていた。移動能力や打撃などの格闘能力は落ちてしまうが、対魔法の反応速度や魔法能力を高めるのだ。
「そんなの、私の風で、全部吹き飛ばす!」
 腕を振り上げるようにして旋風の渦がBa-Sa-Raの右肩から持ち上がった。鞭を振るうように旋風を叩きつけてくる。しなる風を前に、反応速度を向上させたフィロメーラは真横に回避を試みるが、魔力圏の外殻に旋風が触れて水が派手に散らされた。
「うぅっ……」
 球が歪に欠けていく。
「もう一回!」
 Ba-Sa-Raはさらに左腕をも旋風に変え、逃げるフィロメーラを追う。反対側からも水球を削ってしまえば、フィロメーラも逃げ場がなくなってしまう。
 しかしフィロメーラはこの時を待っていた。あえて攻撃の正面に出ると、旋風を受け止める体勢に入った。水球のど真ん中を突き抜けていく旋風が、逆に水球へと呑み込まれていく。
「なっ……うぐぐ……!」
「かかったな! 風の中じゃなくなったら……どうだ!?」
 旋風は水の中でなお刃を飛ばそうと回転の力を生み出そうとする。それを押し潰し強引に止めるように水が魔力で凝縮される。Ba-Sa-Raの風とフィロメーラの水、どちらが均衡を崩すか――。
「やぁぁぁっ!!」
 フィロメーラは高めた魔法能力で水球の中に旋風と逆回転の渦を作り、風を強引に捩じり上げる。
「いっ……ああっ!!」
「旋風も元は腕なんだから、こうされると痛いだろう!? うりゃああ!!」
 Ba-Sa-Raが怯んだ瞬間に一気に腕ごと引っこ抜いて、真後ろに思い切り叩きつけた。旋風が散り、しわくちゃになった衣服に塗れてBa-Sa-Raは激しく転がっていく。
「風を封じてしまえば、どうってことないな!」
 倒れるBa-Sa-Raに言い放ち、フィロメーラは大きく胸を張るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アス・ブリューゲルト(サポート)
「手が足りないなら、力を貸すぞ……」
いつもクールに、事件に参加する流れになります。
戦いや判定では、POWメインで、状況に応じてSPDの方がクリアしやすいと判断したら、そちらを使用します。
「隙を見せるとは……そこだ!」
UCも状況によって、使いやすいものを使う形です。
主に銃撃UCやヴァリアブル~を使う雰囲気です。剣術は相手が幽霊っぽい相手に使います。
他人の事は気にしない素振りを見せますが、基本、不器用なので、どう接したらいいのかわからない感じです。
ですが、合せるところは合せたり、守ってあげたりしています。
特に女性は家族の事もあり、守ってあげたい意欲が高いです。
※アドリブ・絡み大歓迎、18禁NG。


御狐・稲見之守(サポート)
 100歳超(実年齢秘密) 妖狐の悪霊✕陰陽師 
 口調「ワシ、~殿、ゾ、~んじゃ、じゃ、じゃナ、かナ?」

 荒ぶる力を揮うカミにして、人喰い魂呑みの外道、そして幻を繰る妖狐、御狐稲見之守である。
 助けを求め願う声を聞き届けるが我が務め。ヒトの道理で叶わぬならば、カミの道理を通してみせよう…なんてナ。

 天変地異を起こす[荒魂顕現]、[眩惑の術]で幻覚を見せて動きを封じたり、[山彦符][木霊返し][呪詛殺し]等で敵のUCに対抗したりするんじゃ。無論、[狐火]は妖狐の嗜みじゃナ。
 他にも[式神符]で対象を追跡したり〈催眠術〉で情報収集したりと色々出来るゆえ何卒よしなに。

 さァて、遊ぼうじゃァないか。


リズ・ルシーズ(サポート)
生体ベースのサイボーグ、何らかの理由で生命維持モード(Re-A=リア)として活動中、普段の活発さはなくミステリアスな雰囲気。生命維持を最優先、リスクを避けるとともに敵対する存在に対して容赦はしない。白い外部装甲

『私はリア、この身体に敵対するものに容赦はしません』
『『解析・検証・再定義』データの取得に使わせていただきます』
『私はリズ程は甘くはありませんよ?』


21歳 女
口調:おしとやか(私、貴方(貴女)、~さん、ですね、です、ですか、でしょうか?)
武器:電磁ランスと疑似刻印による光属性攻撃のレーザー
補助装備:ナノワイヤー(トラップ・移動用)、重力制御装置
探索時:R-Seriesでの人海戦術など


政木・朱鞠(サポート)
ふーん、やっと、ボスのお出ましか…。
もし、貴方が恨みを晴らすためでなく悦に入るために人達を手にかけているのなら、不安撒き散らした貴方の咎はキッチリと清算してから骸の海に帰って貰うよ。

SPDで戦闘
代償のリスクは有るけど『降魔化身法』を使用してちょっと強化状態で攻撃を受けて、自分の一手の足掛かりにしようかな。
ボス側の弐の太刀までの隙が生まれればラッキーだけど…それに頼らずにこちらも全力で削り切るつもりで相対する覚悟で行かないとね。
得物は拷問具『荊野鎖』をチョイスして【鎧砕き】や【鎧無視攻撃】の技能を使いつつ【傷口をえぐる】【生命力吸収】の合わせで間を置かないダメージを与えたいね。

アドリブ連帯歓迎


虎熊・月霞(サポート)
「まー焦らずのんびり行こー。とりあえず昼寝しよぉ」

 面倒臭いけど、僕とーじょーってねぇ。いつもどーり野太刀でバッサリと斬り捨てちゃうよぉ?
 伊吹流から派生した雷鳴を組み込んだ伊吹"雷切"流、僕の場合は『紫電』を利用した剣術を使ってー雷の速度で近付いてー敵さんを真っ二つにするよぉ。まぁ面倒臭くなったら首刎ねちゃえばいっかぁ、そうすれば大体の生き物って死んじゃうよねぇ?
 首の無い敵さん?……うん、まぁそこは高度な柔軟かつ臨機応変に対応していこー。
 あ、あとお願いされたら他の猟兵さん達と共闘もするしぃ、お手伝いもするよぉ。ご飯一回奢ってくれるならね!

アレンジ・共闘可


華倉・朱里(サポート)
 桜の精のサウンドソルジャー×闇医者の女の子です。
 普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」
 時々「無口(わたし、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

あまり感情は大げさには表さないクールで物静かな感じの少女で
慌てる事は少なく、また仕事は淡々とこなしていくタイプです。
花や動物などの自然が好きです。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


セシル・ローズキャット(サポート)
『神様なんていないわ』
『あなたみたいな人、嫌いよ。だからここで終わらせるの』

 ヴァンパイアの父と修道女の母に大切に育てられた、ダンピールの少女です。
 母が同じ人間に迫害されてきたため神を信じず人間嫌いな性格ですが、猟兵としての仕事には真剣に臨みます。
 普段の口調はやや大人びた感じですが、親しみを覚えた仲間に対しては「ね、よ、なの、なの?」といった子供らしい口調で話します。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、依頼の成功を目指して積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはマスターさんにおまかせします!



●風が晴れる時
「こちらも……佳境というわけか」
 風吹く戦場に猟兵が雪崩れ込んでくる。アス・ブリューゲルト(蒼銀の騎士・f13168)は新たな交戦の一報を聞きつけ、ここセンターオブジアースに舞い戻っていた。
「助けを求め願う声を聞き届けるが我が務め。ヒトの道理で叶わぬならば、カミの道理を通してみせよう……って、カミの道理も通っておらぬゾ!? ワシの決め台詞、どうしてくれるんじゃ!」
「解析・検証――完了。ここは、猟兵の道理で通してみては?」
「むむ……何とも締まりがないのじゃ……再考の余地ありじゃナ」
 此度、助けを求めるのはまさに神。最近は種族も増えすぎなのじゃ、と御狐・稲見之守(モノノ怪神・f00307)はぶつくさ言いながらリズ・ルシーズ(Re-Z・f11009)の横を走る。
 リズ・ルシーズ――今の彼女は生命維持モードのリアとして活動している。リアは稲見之守へと投げかけていた視線を正面へと戻した。
「あなたがボスね……配下を倒されて私達に恨みがあるのかもしれないけれど……不安を撒き散らしたあなたの咎はキッチリと清算してもらうよ」
「あー、うーん……面倒くさいから、バッサリ斬っちゃえればいいかもねー」
 政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)は刑場槍『葬栴檀』を、虎熊・月霞(電紫幻霧・f00285)は野太刀『童子切・鬼血』をそれぞれ構えてBa-Sa-Raと対峙する。気合いの入れ方はそれぞれだが、皆、ヒーローズアースを守るためにこの場に駆けつけたのだ。
「この風、嫌いね。だって、自然を壊す、いけない風だから」
「あら、奇遇ね。私も嫌いよ、この風も、あの人も。だからここで終わらせるの」
 華倉・朱里(桜の精のサウンドソルジャー・f25828)とセシル・ローズキャット(ダンピールの人形遣い・f09510)の反応はとても淡々としていて、そして明確にBa-Sa-Raの存在を拒絶する。
「わぁ……随分と集まってきちゃったね。でも、この風がある限り……私は、戦えるから!」
 目の輝きはまだ失われていない。Ba-Sa-Raの体が光に包み込まれると、目で追えないほどの速度で猟兵達へと突っ込んできた。
 亜光速。光に次いだ速さを体現するBa-Sa-Raの動きに追いつくのは猟兵とて簡単なことではない。
「ちょっと速すぎ……止まりなさいよっ!」
 7人の中で即座に反応していたのは朱鞠だった。幽鬼を宿して自身を超強化することで、Ba-Sa-Raの速度に追いついたのだ。朱鞠とBa-Sa-Raが中央で火花を散らすように槍とローラーブレードの蹴りを交えて戦いの幕開けとなった。
「こ……のっ!!」
 蹴りを一度弾かれたBa-Sa-Raだが、重ねて蹴りを叩き込んでいく。至近距離からの高速の蹴りはなお圧が強く、身震いするような速度が感じられた。それを正確に受け止めていく朱鞠の技術が拮抗する。
『アーカイブ接続、ブループリント読込、圧縮展開』
 朱鞠が作った準備時間でリアは処理を進めていく。召喚されたのは無数の鏡面体を伴う、リズと同性能の戦闘用簡易複製体。
『ボクはルシーズ、ボク達はルシーズ。ボク達の本質、見せてあげるよ!』
 一気に戦場の密度が上がっていた。朱鞠がBa-Sa-Raを槍で押しのけ距離を取った瞬間に、隙間を埋めるように複製体が殺到し群がっていく。
「な、何これ……こんなのっ!」
 ぶおん、と腕を振り上げて風を起こし複製体を巻き上げていく。しかし複製体は1体や2体などではない。実に80体もの複製体が襲い掛かっているのだ。10体飛ばされたところで、減ったかどうかもよくわからない数の複製体が残されている。
「私はリズ程甘くはありませんので……このようなことも」
 リアが指示を送った瞬間、無数の複製体が一斉にカッと光を放った。
「な、何を――」
 ズドン! と巨大な爆発が起こり、爆炎、黒煙が風に流される。リアは密集させた複製体を一斉に自爆させたのだ。その中心にいたBa-Sa-Raは燃え上がりながら宙に放り出される。
「あー。結構いいダメージが入ったねぇ。でも飛ばされたから、走らなきゃいけないや」
「なら、私が、力をあげるよ」
 朱里が戦場に歌を紡ぐ。自然の良さ、美しさを伝え、共に手を取り守っていこう――そんな内容の歌だった。
 願いが込められた歌は物静かな印象の朱里とは裏腹に、強く他の猟兵達の心に響いていた。自然を守る――口で言うほど容易くはないが、その気持ちは誰しもが持っているもの。
 共感する心は力に変わる。
「どれ、ワシも一つ……この場を変えてみるとするかナ?」
 稲見之守は霊符を取ると、自身の頭上へと放った。霊符はひらりと舞いながら、何かの力に引き付けられるように稲見之守の周囲にぴたりと固定される。
『その水面の波紋は夢を現つに、現つを夢に、一切は真にして幻なり』
 霊符を一本の光の筋が結び、全てが繋がった瞬間、天に光が放たれた。不意に風が収まり、降ってきた幻術の霧が戦場を覆っていく。
 その中は現と夢が反転したような世界。夢の事象が現へと変じる空間。
 それは時に現実離れした力を猟兵達に与えるのだ。
「あ、体が軽くなった気がする。ありーがーとねぇ」
「いい歌声ね。今度はもっと静かなところで聞かせてくれるかしら」
「感謝する……行くぞ!」
 朱里と稲見之守の二人の支援を受けて、アス、月霞、セシルの三人が飛び出した。
 爆発により宙に投げ出されたBa-Sa-Raの体が地面に叩きつけられ跳ねて止まる。全身を強打しダメージは蓄積していそうだが、その身はまだ滅んでいない。猟兵が立ち向かってくる限り、Ba-Sa-Raも力を振り絞って立ち上がる。
「今日の風はサイアクだけど……明日の風を感じるために、ここで倒れるわけにはいかないっ……!」
「心掛けだけは見上げたものだが……お前にはここで散ってもらう」
 サイボーグであるアスは機械仕掛けの両足を展開する。ミサイルが火を噴いて飛び立ち、機銃掃射のように弾丸が一列に発射された。
 弾丸は月霞とセシルの間を抜けて真っ先にBa-Sa-Raへと到達する。旋風を切り裂くように弾丸が貫通した。
「う……っくう……まだ!!」
 体を旋風に変化させていても、その旋風を貫かれれば痛みは生じる。顔を歪めながらもミサイルは到達させまいとBa-Sa-Raは旋風で薙ぎ払った。
 旋風に切り裂かれミサイルが空中爆発。灰煙が一帯を包み込み、その場にいる者達の視界を奪っていく。
「こんなの、風で――」
『奔れ飛電、断ち斬れ紫電――雷切流の原点を魅せてあげるよぉ』
 灰煙を穿つのは、Ba-Sa-Raの旋風――ではなく、月霞だった。野太刀の刃が鋭く貫く。視界がなくなった一瞬は猟兵とBa-Sa-Ra、どちらにとってもピンチであり、チャンスでもあった。その一瞬を判断し月霞は踏み込んだのだ。
 月霞は野太刀を紫電の速さで振り上げた。肩の根元、丁度旋風とBa-Sa-Raの体の境目に刃を滑り込ませ一気に断ち切った。旋風は空へと放たれ消えていく。
「ああぁあっ!」
 Ba-Sa-Raの叫びが轟く中、灰煙は次第に晴れようとしていた。そして、灰煙の中から飛び出してきたのはもう一人。
 瞳が真紅に輝く。セシルもまた、閉ざされた視界を利用して力を開放していた。その姿は紛うことなきヴァンパイア。生い立ち故、無暗に力を行使することは好まないが、今この一撃は全力でいかなければならないと判断していた。
「あなたの顔を見るのも……もうこれきりね」
 真紅の瞳をBa-Sa-Raへと近づける。指先で操るからくり人形はセシルの手の動きに合わせて腕を伸ばし――。

 爆発的な戦闘力を得た人形がBa-Sa-Raの首を飛ばす。肉体はしゅるしゅるとほぐれて風になって消えていき、飛んだ首はセシルの言った通り、落ちてくることなく空の彼方へ消滅した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年12月28日


挿絵イラスト