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Requiem(作者 蜂蜜檸檬
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#UDCアース  #戦闘  #邪神 


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#UDCアース
#戦闘
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●ひかりあれ
「嘆かわしい」
「この世は最早闇だ」
「だからこそ救い主が必要だ」
「我らが神よ」
「愚かなる異端者に裁きを」
「我らに救いの光を」
「代わりに捧げよう、贄を」

 ──我らが神よ、忠実なる使徒に救いを与え給え!

●いのり
 染み一つない美しき純白に、金を優雅に伸ばして。
 細長い紅の絨毯を敷き、金の燭台には蝋燭を立てよう。
 明るく照らされた祭壇に、恭しく祀られた白皙の女神像は下界を見下ろすように微かに俯き、慈悲深い微笑みを称えている。
 その教会では、信者の奏者が爪弾く弦楽器の音色が軽やかに響き渡っている。
 交わす言葉はささめいて、信者たちは皆幸福な微笑を浮かべている。
 敬虔に祈りを捧げる信者たち。
 まるで其処は静謐な楽園のようだった。

 しかし、祭司が現れると、ある者がごくりと生唾を呑む音が響いた。ついに、数年に一度の「その時」が来たのだ。豪奢な法衣に身を包んだ中年の男──高位の祭司が厳かに片手を挙げると、信者たちはみな、しんと鎮まった。
「皆、集っているな。では、……採択を始めよう」
 それは、女神に捧げる「贄」を選ぶ、悲劇の幕開け。

●いけにえ
 その宗教は、UDCアースのとある地域で幾百年続いてきた一神教である。
 麗しき女神は、信ずる者には加護と救いを与える。どんな災害からも身を守り、末代まで幸福を与えると言う。
 しかし、女神を信仰せず、あまつさえ愚弄する者には、重い裁きを下すと言う。特に、他の宗教を信仰する者。彼らは女神の怒りを買い続ける不遜な存在である。そして、その者たちが存在する限り、UDCアースは救われぬ。

 ──邪教。

 UDCアースの一点で、脈々と代々受け継がれてきたその邪教には、定期的に「贄」と呼ばれる生贄を数年に一度捧げる風習がある。愚かな人間共の存在を詫びて、女神の怒りを鎮め赦しを乞う為だ。
 数年に一度、犠牲になる──否、「名誉ある役割」を信者の代表である祭司が選び取り、女神に捧げる。その後、その人間の消息を知る者は一人として居ない。
 しかし、気に留めるものは居ない。何故なら、「贄」に選ばれるものは皆「身寄りのない老いた者」或いは「外界から連れてきた者」であり、何れも信者ではないからだ。
 女神を信奉せぬ不遜な人間を捧げて、喩えその者の命が喰らわれたとて、何が悪い?

●×××
「困ったわね……」
 溜息と共に呟くのは、ミリィ・マルガリテス。硝子の瞳を不安定に揺らして、ほうと手を頬に当てる。
「ああ、ごめんなさい。わたしったら、折角いらしてくださったのに、ぼうっとして。話を聞いてくださってありがとう」
 ミリィは、目の前の猟兵に、話辛そうな様子でぽつりぽつりと語り出した。
「UDCアースのとある場所で、女神を熱狂的に信仰する宗教があるそうなの。信者たちは善人が多くて、皆さん幸せに暮らしているのですって」
 でも、と声を潜めると、一度俯き、それから真っ直ぐに猟兵へと顔を上げた。
「問題は二つあるわ。一つは、贄と呼ばれる生贄を捧げる習慣。これは、信者ではない方が選ばれるそうなのだけれど、ご自分たちの幸福と女神からの加護を得るために、生きた人を捧げているのですって」
 信者たちは、保身のためか、贄がどんな目に遭おうが全く意に解していないそう。そこがまず異常だ。
「二つ目は、その女神。それさえなければ、危険で犯罪的なカルト宗教、で済んだのかもしれないわ。でも、その女神である邪神は……」
 ミリィは俯く。
「お察しの通り、オブリビオンよ」

●むくろ
 ミリィ曰く、向かってくれる猟兵にお願いしたいことは三つ。
 一つ目は、その邪教の教会へと赴く事。自然と司祭から贄として選ばれる事になるので、それまで自由に過ごしてほしいとの事。
 二つ目は、贄として選ばれた後の戦闘。美しい儀式の中、邪神の眷属である怪物が襲ってくるので、戦闘して勝利を掴んでほしい。
 三つ目は、眷属に勝利すれば邪神である麗しき女神──オブリビオンが現れるので、邪神に勝利してほしい、と。

 縋り付いていた女神を猟兵たちに倒され、失った信者たちは狂乱に陥るであろう。しかし、ただでさえ、利己心に満ちるあまり定期的に人殺しを行う凶悪なカルト教団だ。オブリビオンが消え去った後は、教団は現地の警察や司法の手によって法の裁きを受ける事になるだろう。
 猟兵たちは、オブリビオンに勝利さえすれば役目を終える事になる。

「皆さんなら、油断しなければ勝てる相手だと思うわ。けれど、やはり危険な場所だもの。どうかご無事で。お帰りをお待ちしていますわ」
 ミリィは、祈るように両手を組み、猟兵たちの背を見つめた。





第2章 集団戦 『パープル・フリンジ』

POW ●狩り
【視線】を向けた対象に、【群れ】が群がり【鋭い牙】でダメージを与える。命中率が高い。
SPD ●存在しえない紫
対象の攻撃を軽減する【位相をずらした霞のような姿】に変身しつつ、【不意打ち】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ ●「「「ゲッゲッゲッゲッゲッ」」」
【不気味な鳴き声】を発し、群れの中で【それ】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ​──がくん。
 時刻が日付を跨がんとした頃、突如として、パーティー会場の明かりが落ちた。人々は混乱に陥るかと思いきや、至って平然としている様子だ。
 そう、一言も声をあげずに。

 猟兵たちは、異様な状況に周囲を警戒する。暗闇の中で、華やかな賑わいから一転して鎮まりかえったこの宴。何も無い方が可笑しいだろう。

 ​──ドォォン!!!

 そこに、大きな音と振動が、猟兵たちの鼓膜を、強く重く響かせた。これは、太鼓の音だろうか。腹に響く低い音は、人々の肌をびりびりと震わせている。
 次の瞬間、ぱっと明かりが点いた。
 すると……パーティーの参加者、もとい信者たちは、皆床にひれ伏していた。
 信者たちは、口々に祝詞のようなものを口走っている。かろうじて聞き取れた言葉から推測すると、どうやら皆同じような祈りを繰り返しているようだ。

── 神の使徒よ、どうか我らに救いを!
──我らが用意した贄を、いま捧げましょう!

 使徒とは一体何だろうか。そう考える猟兵たちの前に、不気味な鳴き声が響いてきた。
「「「 ゲッゲッゲッゲッゲッ」」」
 大量の怪物──オブリビオン出現したようだ。オブリビオンたちは、猟兵たちを喰らおうと目掛けて飛んでくる。
 やすやすと贄になる訳にもいかない。どうやら、ここは実力行使で突破するしかないようだ。
 猟兵たちは、それぞれの得物を構える。この先の、邪なる宗教の温床、『女神』とやら辿り着くために。
黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流

え、虫…虫?
だけど指の数や四肢で半端に人っぽい姿だな。
何となく邪視を連想したのはなんでだろう?一つ目だから?

とりあえず派手に燃やすか。
UC炎陽にて焼きはらう。何となく虫っぽいからって理由だが。
あと纏めて焼き払えたらいいなってとこ。
それに何となく炎と熱がいいような気がするんだけど…。気のせいだろうか。
接近されたら二刀で対応。
敵の攻撃は第六感で感知、見切りで回避。
回避しきれないものは本体で武器受けで受け流し、カウンターを叩き込む。
それでも喰らってしまうものはオーラ防御、激痛耐性で耐える。



「「「ゲッゲッゲッ」」」
 突如現れたオブリビオンの群れは、不気味な音を響かせながら出現した。神の使徒と呼ぶにはあまりにも一般的なイメージとかけ離れた姿だが、信者たちは平伏して、一心に祝詞を唱えながら拝んでいる。気迫に満ちた姿は、異形に取り憑かれたようだ。本物の女神の御使いを畏れて敬う、いにしえのヒトのように。
 輝く銀髪に目が惹かれたのだろうか──『パープル・フリンジ』は、先ずは黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)に単眼をぎょろりと向けた。瑞樹に照準を合わせたオブリビオンは、喰らいつかんばかりに瑞樹に飛びかかる。
「え、虫……虫?」
 瑞樹は、美しい青の瞳を見開いてパープル・フリンジを凝視した。その奇怪な姿は不気味さを漂わせているが、同時にいとも興味深い。
(虫っぽい……。だけど、指の数や四肢で半端に人っぽい姿だな。何となく邪視を連想したのはなんでだろう? 一つ目だから?)
 けれど、瑞稀の知的好奇心が燃えたのはほんの一刻。歴戦の猟兵として胡と黒鵺の両刀を構えると、瑞樹はオブリビオンを迎え撃つ。

 ──とりあえず、派手に燃やすか。

 瑞樹は、彼の本体である黒鵺、そして胡を交差させて敵の動きを止めると、金谷子神の錬鉄の炎で敵を焼き払う。
「ギエエエエエ」
 パープル・フリンジは、いとも容易く炎に体を焼かれ、悶絶に身を震わせる。その間にも、延焼が広がり、他の個体へと焔が移っていく。

「何……!?」
 動揺したのは、信者たちだ。今まで、パープル・フリンジ……神の使徒に反撃する「贄」は居なかったのだろうか。一部の信者は禁忌行為である祝詞の最中に顔を上げ、そのざわめきは一斉に広がった。
「神聖なる使徒に何ということを!」
「女神の怒りが……我々に災厄が降りかかる……!?」
 動揺を隠せない信者たちを諌めたのは、長と思わしき老年の人物だ。

「鎮まれ!!!!」

 その声に、びくりと体を震わせた信者たち。
「神聖なる儀式の最中に何たる事だ。お前たち、使徒様を信じずして何を信じる! 救い求めるならば祝詞を続けよ!!」
 長の声で、我に返った信者たちは、震える手を組み合わせて祝詞を唱え出す。
 その間にも、瑞樹は炎陽による攻撃の手を止めることはない。
 別の個体が襲ってきても、二刀流で受け流し、更なる延焼を広げて行く。
 初手として充分の成果だ。瑞樹は、次なる敵へと眼差しを向ける。

 ──このまま、上手くいくと良いんだけど。

 後から続く猟兵たちと共闘せんと、改めて両刀の柄を握る瑞樹。その姿に、瑕は一つも無かった。
大成功 🔵🔵🔵

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
おーおー。
遅刻したかと思ったら、
熱烈な歓迎で。
どうやら主催登場には間に合ったみたいだねぇ。
ダンスの誘いは有難いけど、
お前らじゃアタシにゃもったいない!
さっさと前座には退場頂こうじゃないのさ!

ドレス姿に『変装』して意気揚々と乗り込むけれど、
決して油断はしてないよ。
眷属どもへ電撃の『属性攻撃』を込めた
『衝撃波』を立て続けに放ち、
アタシへ注意を『おびき寄せ』る。
もちろん、周囲の調度品
……被害者への直撃は避けるよう気を付けながらね。
そうして室内に静電を満たせば、
この場はアタシの【超感覚領域】の只中さ。
撃破できりゃあそれでよし、
無理でも『マヒ攻撃』でまともに動けなくなる筈さ!



 動揺と混乱のさざめきが波紋していく中で、その場を打ち破るような明朗な声が響き渡った。
「おーおー。遅刻したかと思ったら、熱烈な歓迎で」
 その場の皆の視線を奪ったのは、華やかなドレス姿の美女。
 薄化粧を施された貌は女性らしい美しさで、流れるような波打つ髪が抜群のスタイルを縁取っている。
 ──どうやら主催登場には間に合ったみたいだねぇ。
 不敵な笑みを浮かべる彼女は、まるで舞踏会に遅れて登場した御伽噺のお姫様のよう。
 彼女の名は、数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)。その姿は花のように美しくとも、歴戦の猟兵のひとりだ。
「今度は何だ!?」
「いや、落ち着け……。そう何人も使徒様に敵うはずがないだろう」
 信者の男性は、驚愕に目を見開くが、多喜の美しさに目を奪われた様子だ。然し、今は神聖なる儀式の最中。邪魔をする者は喩え美しい女性でもひとり残らず「贄」として捧げなくては。
「使徒様、お願いします! どうか、我々にさいわいを! 異界の者には裁きを!!」
「あの者を捕らえ、女神様に捧げてください!!」
 ──噂には聞いていたけれど、嫌なもんだねぇ。
 多喜は、我欲に満ちた信者達に目を細めると、ふぅと息を吐く。然しそこで止まる彼女ではない。多喜は、『パープル・フリンジ』に雷撃を纏った衝撃波を放ってみせる。
「ほら、アタシはここだよ! 捕まえたきゃ捕まえてみな!」
 眷属達の注意を自分の方に向ける……多喜の心算は見事に成功したようだ。
 新たな標的を見つけると、『パープル・フリンジ』達は単眼を一斉に多喜へと向ける。攻撃された事に怒りを感じたのか、只管に反応しただけなのか……その脚で勢いよく多喜へと飛びかかる。後先考えないその姿は、まるで。
「「「ゲッゲッゲッ」」」
「おっと、そんな乱暴なダンスの誘いには乗らないよ。お前らじゃアタシにゃもったいない!」
 そう、『パープル・フリンジ』は姫を攫う賊のようだ。荒々しく、脇目もふらない不遜な輩では、姫の心は掴めない。
「前座にはさっさと退場頂こうじゃないの」
 そう言って、姫──多喜は、電撃を込めた衝撃波を勇ましく放つ。
「ギエエエエ」
「ギャッ!」
 多喜からの強烈な一撃を受けた『パープル・フリンジ』の数体は、脚をばたつかせた後、その場で麻痺したかのように動かなくなる。
「ふん、造作もないね」
 鋭い牙で襲いかかってくる彼奴等を、続けざまに多喜は電撃で迎え撃つ。眷属達は、一体、また一体と動かなくなっていく。ここはもう、彼女の超感覚領域の中。海のように静電に満ちたそこは、蟻一匹たりとも逃さない。

 次々と 『パープル・フリンジ』が屠られていくさまに焦りを浮かべ出すのは信者達。この儀式は、明らかに教団側の劣勢に傾いている。
「使徒様! 使徒様! あの女を捕らえてくだされ」
「このまま贄が捧げられなかったら、私たちは──」
「ああっ、捧げ物にはなりたくはない! 子どもを残して死にたくない!!」
 狂乱に陥る信者達は、最早ひれ伏すことを止めたらしい。狼狽しながらも、必死に祈りを捧げている。
 ──捧げ物?
 多喜は、その言葉に引っ掛かりをおぼえた。まさか、女神とやらに、内部の者達を贄として捧げるつもりなのだろうか。
 詳しくはわからないけれど。とにかく、目の前の眷属の壁を破らないと、本命には近づけない。
 多喜は眷属相手であろうとも、油断せずに一体一体を確実に屠っていった。

 彼女の功績は大きい。『パープル・フリンジ』の大群は、最早大半が駆逐されている。
 けれど、その光景は未だパーティー会場の時と負けず劣らずに美しいまま。
 ……多喜の心は届いたようだ。硝子の調度品──「贄」となった被害者達の像は、無傷のまま光を受けてきらきらと輝きながら佇んでいた。
大成功 🔵🔵🔵

虹川・朝霞
ああ、この様子。本当に幾度となく行われ、慣れたという雰囲気ですね。
使徒。神使とも言える存在ですか。
…この先の邪神にたどり着くためにも、祓わねば。

大量の視線を避けきるのは不可能と言えるでしょう。なれば、最初からそれを除外。
ああ、諦めたわけではないですよ。【幻霞】使用。霞は攻撃できないでしょう?
それに、オブリビオンに俺の幻覚を被せて…同士討ち狙い。地道になるでしょうが、使える手は全て使います。
数が少なくなり、視線を避けやすくなれば、UC解除して紫雲刀での攻撃に切り替えましょう。

…せめて、調度品は傷つけぬように。



 ああ、この様子。
 本当に幾度となく行われ、慣れたという雰囲気ですね。

 拝み、嘆き、狂乱に陥った信者たちを見つめる虹川・朝霞(梅のくゆり・f30992)の眼差しは、見るものの胸を締め付けるように切ない色をしている。
 朝霞が見た限り、信者たちは『女神』や『使徒』を敬愛しながら、同時に強い畏怖を抱いている様子だ。何層にも塗り重ねた刷り込みが、時に剥がれ落ちながらも、世代を重ねる毎に強度を増し、人の子らにべったりと張り付いてしまったよう。
 朝霞は使徒──数が逓減してきた『パープル・フリンジ』を宝石のような翠の双眸で見遣る。

 ──使徒。神使とも言える存在ですか。

 その禍々しい邪気は、『女神』の本質も表しているのだろうか。朝霞はすぅと息を吸うと、瞑目して紫雲刀の柄に手を添えた。
「……この先の邪神にたどり着くためにも、祓わねば」
 朝霞の意思は固い。それは、竜神としての矜持か。それとも、人への慈愛ゆえか。朝霞以外には知り得ない想いが、今、咲き誇る。

 ──大量の視線を避け切るのは不可能と言えるでしょう。なれば、最初からそれを除外。
 朝霞の思考回路は至って冷静に現状を分析している。然し、決して諦めたわけではない。
 彼は肉体の一部を段々と薄紅梅の霞に変化させてゆき、最終的にはふわりと揺蕩う霞と成った。『パープル・フリンジ』たちの視界から、気配を見事に消失させていく。
「何だ……この霞は……?」
「清浄なる気……まさか……」
 正気に戻った一部の信者は、朝霞の薄紅梅の霞を見て、ただならぬ神気を感じだのだろう。
「かみさま……?」
 つい、言葉を漏らした少年の信者。すると、すかさず長から叱責が飛ぶ。
「たわけ! 我らが女神様以外に神など存在する訳がないだろう! この不届き者め。今度その口を開いたら、貴様を贄にするぞ!!」 
「ひっ……」
 怯えた少年は、恐怖に満ちた様子で後退りをする。然し、その少年の直感は当たっていると言えるだろう。美しく、神々しく、清らかな朝霞。彼は紛うことなき人の子を愛する竜神だ。

 ──かなしい事ですね。

 朝霞は霞へと姿を変えながら、『パープル・フリンジ』の背後へと回り込む。
「ギッ」
 朝霞の気配を感じ取った『パープル・フリンジ』は、霞に向かって牙を剥く。然し、相手は霞だ。攻撃が届くはずもない。その上、朝霞は敵に幻覚を被せている。
 『パープル・フリンジ』は次第に幻覚に陥り、同士討ちを始める。
「「ギッギッギッ」」
「ギッ!?」
 オブリビオンたちは幻覚に侵されている事にすら気付かない。朝霞の同士討ちの作戦は見事成功した。

 戦闘も終盤に差し掛かり、『パープル・フリンジ』の数も残り少なくなっている。その一体に、朝霞はユーベルコードの幻霞を解くと、黒い刃を振り翳す。紫がかった刃は、まるで暁空のよう。
 朝ぼらけの空の色を纏った蛇腹刀で、オブリビオンを骸の海へと屠っていく様は、神々しささえ感じる。

 そんな朝霞を見つめていた、信者の親に連れられたまだ何も知らぬ少女は。
「でも、わたし……かみさまだと思うな」
 親指を咥えたあどけない少女が漏らした言葉は、誰にも届かず、ふわりと空に溶けて消えた。 
大成功 🔵🔵🔵