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心と木々の燃える森

#アックス&ウィザーズ #猟書家の侵攻 #猟書家 #チーフメイド・アレキサンドライト #エルフ #ユグドの森

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#ユグドの森


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● 太古の森にて
 大きなエルフの森があった。
 いつからそこにあったのだろう。アックス&ウィザーズと呼ばれる世界がこの世に誕生した時からずっと存在している。そんな言い伝えが本当であると思わせるほど大きく、広く深い静かな森は、変化というものを嫌い迷いの森の奥深くに静かにまどろみの中にあった。
 昨日と変わらぬ今日が来る。それを信じて疑わない森に、突如火が放たれた。
 ただの火ならば消すのはたやすい。だが、その森に放たれた火はエルフ達が掛けた火炎防御の魔法をいともたやすく打ち破り、豊かな森を次々と炎の中へと沈めていく。
 森に生きる動物は逃げ惑い、貴重な植物を糧に燃える炎に巻かれて死んでいく。

 紅と、黄と、蒼と。
 炎と煙は急速にエルフの森へと迫っていた。

 三色の炎が舐めるように広がる光景を、一人のオブリビオンが空中から見守っていた。イービルスピリットの一体に乗り空中から燃える光景を見守っていたチーフメイド・アレキサンドライトは、焼け落ちる森に高らかな笑い声を上げた。
「さあ、『邪霊』イービルスピリット達。この森を燃やし尽くしておしまいなさいな! この森にある聖なる木を、お嬢様はお望みなの」
 アレキサンドライトの指示に、イービルスピリットが放つ火は勢いを増す。
 森の四方から迫る火は、刻一刻と聖なる木へーーエルフの集落へと迫っていた。

● グリモアベースにて
 いつもの陽気な表情を収め、どこか冷めた様子でグリモアが映し出す光景を見守っていたリオン・リエーブル(おとぼけ錬金術師・f21392)は、集まった猟兵達の視線に気付くと明るい声を出した。
「やあみんな。アックス&ウィザーズを狙う新しい猟書家が、エルフの森を焼き討ちしてるんだ。こいつらを追い払うのに、力を貸してやってくれないかな?」
 狙われたのは、アックス&ウィザーズでも屈指の歴史を誇る大きくて古いエルフの森。世界樹イルミンスールから株分けされた聖なる木「ユグド」を中心に発展した森だった。
 この森はユグドの森と呼ばれ、多くのエルフ達が静かな生活を送っている。
 ユグドから放たれる魔力はエルフの森に大きな恩恵を齎していた。その一つが、この森を外界と隔絶させる「迷いの森」の魔法。これがある限り、他種族はユグドの森に立ち入ることはできないのだ。
「このユグドを狙って、猟書家が森に火を放ったんだ。ただの火ならばすぐ消えるけど、放たれたのはオブリビオン。『邪霊』イービルスピリット』っていう火の玉みたいな連中だよ。こいつらがいる限り消火もできないからね。まずはこいつらを倒してほしいんだ」
 『邪霊』イービルスピリットは、スペースシップワールドのアームドフォートを装着したような姿をしている。これが何を意味するのか今は分からないが、このアームドフォートは特別な能力などはない。
 そこで言葉を切ったリオンは、ふと眉を顰めるとユグドの森の中に景色を切り替えた。
「この森はエルフ時間で割と最近、長が変わったみたいでね。この族長は神秘的な事柄への順応力が高くて、少しは外界のことに興味があるみたいなんだ。猟兵のことも知ってて、森に行けばエルフたちが協力してくれるよ」
 エルフたちの協力を仰ぎ、共に戦えば、戦いを有利にすすめることができるだろう。また戦後、聖木ユグドの力が必要になることがあれば、協力してくれるだろう。
「このイービルスピリットは、負の感情を糧にする悪霊なんだ。猟兵も感情が解放されて色々あるかもだけど、これに打ち勝って邪霊を倒すんだ。皆、ーーよろしく頼んだよ」
 リオンは笑みを浮かべると、グリモアを発動させた。


三ノ木咲紀
 オープニングを読んでくださいまして、ありがとうございます。
 今回はエルフの森を焼き討ちして聖木ユグドを手に入れようとする猟書家「チーフメイド・アレキサンドライト」との戦いになります。

 今回は全編「エルフ達と協力し、共に戦う」ことでプレイングボーナスが得られます。
 エルフ達は猟兵のことも知っていますので、協力を要請すれば快く引き受けて貰えます。
 敵だけを迷わせる、森の消火に当たる、弓矢や魔法で援護してもらうなどなど、やってほしいことがありましたらプレイングにお願いします。

 プレイングは承認後すぐから受付開始します。
 〆切はまた後ほどご連絡させていただきます。
 断章の投下予定があります。

 それでは、よろしくお願いします。
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第1章 集団戦 『『邪霊』イービルスピリット』

POW   :    怒りを誘う霊体
【憤怒・憎悪・衝動などの負】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【怒りを増幅させる紅顔の霊体】から、高命中力の【憑依攻撃、及び感情の解放を誘う誘惑】を飛ばす。
SPD   :    欲望を促す霊体
【情欲・執着・嫉妬などの負】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【欲望を刺激する黄顔の霊体】から、高命中力の【憑依攻撃、及び感情の解放を誘う誘惑】を飛ばす。
WIZ   :    悲しみを広げる霊体
【失望・悲哀・恐怖などの負】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【心の傷を広げる蒼顔の霊体】から、高命中力の【憑依攻撃、及び感情の解放を誘う誘惑】を飛ばす。

イラスト:白狼印けい

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


● 炎を超えて
 森が燃えていた。
 地獄絵図だった。
 舐めるように広がる炎は木々を焼き尽くし、そこに生きる生き物全てを追い立てる。
 点在する泉へ避難した動物や森に生きる人々はイービルスピリット達に感情を刺激され、狂乱の中炎へと飛び込み、焼かれ死んでいく。
 かつても同じことが起きていた。イービルスピリット達はこの森を焼き、森の半分は灰燼に帰した。
 大きな被害を出した火災からおよそ500年。森は再び緑と平穏を取り戻し、エルフの森もまた復興したようだった。
 今度は前回の火災と規模が違う。エルフ達だけでは、森の全てが焼き尽くされるだろう。聖木ユグドが奪われれば、今後どれだけの被害が出るか分からない。

 だが、今回は違う。猟兵達がいる。
 被害を最小限に留め、聖木ユグドを守ってくれることだろう。
 炎がその勢力を増す中、猟兵達は行動を開始した。
※第一章は12月2日 23:59までにお願いします。
北条・優希斗
連携・アドリブ可
リオンさんの様子が何時になく神妙なのは少し妙だが
まあ、エルフ達の森を焼き払わせるわけには行かないか
エルフ達には森の消火活動に専念して貰う。
エルフ達を守るのは他の奴等がやるだろうから他の猟兵に任せて俺は残像+見切り+情報収集で攪乱しつつ、先制攻撃+見切り+範囲攻撃+薙ぎ払い+属性攻撃:光を組み合わせてUC発動
蒼月・月下美人を抜刀すると同時に『無心』でイービルスピリットを纏めて切り裂く。
この蒼月の型の本質は、『無』
感情に執着していては、舞を成し遂げることすら出来ないからね
エルフ達を守れそうならオーラ防御を展開して、守る様にしておくよ
ついでにエルフ達に長についての話を聞いてみるかな


森宮・陽太
【WIZ】
アドリブ連携大歓迎

へーぇ…なかなかやってくれるじゃねえか
迷いの森を全部焼けば確かに魔法は解けるだろうが
そんなことさせねえよ

「高速詠唱、言いくるめ」からの【悪魔召喚「フォルカロル」】
「フォルカロル! 気に食わねえ猟書家をてめえの水流で思いっきりぶっ飛ばしてやろうぜ!!」
エルフたちにはフォルカロルと共に消火に従事してもらうよう頼む
外界に興味があるのなら、悪魔そのものが珍しいはずだろ?

俺は感情刺激の根源を直絶叩く
奴らはエルフたちと聖木の「敵」だ
無表情無感情のまま「忍び足」で気配を消し
燃えていない木々の陰に隠れ「闇に紛れる」ように接近
「ランスチャージ、暗殺」で二槍を突き出し一気に仕留める



● 無の境地へと至る舞
 吹き抜ける風に不穏な炎の気配を感じた北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)は、転送されたエルフの集落を見渡した。
 蜂の巣をつついたような騒ぎを起こしていたエルフたちが、突然の来訪に驚いてこちらを見る。敵の奇襲かと身構え、敵意を顕にするエルフたちを制止したエルフの青年が、グリモアを保持するリオンにつかつかと歩み寄った。
 彼がこの森の族長だろう。話をするリオンはいつもと似たような笑みを浮かべているが、どことなくいつもと様子が違うように見えた。
(「リオンさんの様子が何時になく神妙なのは少し妙だな」)
 眉を顰める優希斗の隣に降り立った森宮・陽太(人間のアリスナイト・f23693)は、優希斗の様子に首を傾げた。
「どうしたんだよ? 黒髪のにーちゃん」
「いや……」
 エルフに声を掛けようとした優希斗は、続く族長のよく通る声に顔を上げた。
「ユグドの民よ! この森を守り外敵を退けるため、ここにいる猟兵達の力を借りよ! そこの兄さ……追放者に思うところはあるだろう。だが、彼は猟兵。猟兵はかの帝竜をも退けた。この危機を乗り越え聖木ユグドを守るため、今は過去の遺恨は水に流して動くべき時だ!」
 族長の言葉に、エルフたちに動揺が広がる。どうすべきか広がる迷いに、陽太は一歩前に出た。
「お前達、いいのかよ? このままじゃ森は全部焼けちまうぜ? なにせ迷いの森を全部焼けば、魔法は解けるんだ。奴らはエルフも皆殺しにしてオブリビオンとして蘇らせて、聖木ユグドを奪うつもりだ。……そんなことさせねえよ。お前たちはどうする? 戦うか、震えて焼かれるか、選べ!」
 陽太の飛ばす檄に、優希斗は同意の頷きを返す。今は詮索すべき時ではない。動くべき時だ。
「俺達としても、エルフ達の森を焼き払わせるわけには行かないんでね。協力させてもらおう」
 陽太と優希斗の説得に、エルフたちの意思が固まる。二人に協力を申し出たエルフたちを引き連れて、優希斗は駆け出した。
 集落を抜け、枝の上を駆ける。ほどなく感じる火炎の気配に、優希斗は振り返った。
「あなた達は消火活動に専念してください。くれぐれもイービルスピリットには近づかないように」
 そう言い置いた優希斗は、敵意も顕に迫る気配に蒼月と月下美人に手を掛けた。
 戦う意志を見せる優希斗に、黄のイービルスピリットがけたたましい笑い声を上げながら迫る。心をかき乱し、欲望を刺激する黄色い波動に包まれた優希斗はしかし、その姿がぐにゃりと歪んだ。残像の優希斗が消え去った瞬間、二刀は抜刀されていた。
 そのまま樹上を駆ける。残像に気付いたイービルスピリットが再び優希斗に向けて黄色の波動を放つ。
 真っ直ぐ駆ける優希斗を黄色の波動が包み込む。心を狂乱へと導く波動はしかし、優希斗の心を捕らえはしなかった。
「遅い」
 心を無にした双刀が、イービルスピリットを斬り裂く。超高速で繰り出される剣舞はイービルスピリットを蒼き月の雫へと化していく。
 何も見ず、何も感じず。無の境地で舞いを終えた隙を突いたイービルスピリットが、優希斗に向けて体当たりを仕掛けた。
 無から有へ。切り替わる隙を突かれた優希斗は対応ができない。立ち竦む優希斗に向かったイービルスピリットは、放たれる槍の一撃で消え去った。
「……ったく、危なっかしいな黒髪のにーちゃんは。木から落ちたらどうするんだ?」
 陽太の指摘に、自分の立ち位置を把握する。いつのまにか枝の先端に立っていた優希斗は、一つ肩を竦めると太い枝へと戻った。
「この蒼月の型の本質は、『無』。感情に執着していては、舞を成し遂げることすら出来ないからね」
「枝先に向かう恐怖心も無くなるってか? 恐ろしいね」
 呆れたような陽太の声に、優希斗は肩を竦めた。

● 暗殺者として闇を辿り
 優希斗に続いてエルフの集落に降り立った陽太は、エルフ達の警戒に思わず立ち止まった。消火や避難誘導に殺気立ったエルフ達は、突然現れた猟兵達の姿に驚き警戒し、弓や魔法で迎え撃とうとしている。
「森に行けばエルフたちが協力してくれるんじゃなかったのかよ!」
 思わず悪態をついた陽太は、敵意に対して半ば反射的に武器を構えた。まさか即攻撃されるとは思わないが、敵意に対して無防備でいられるほど平坦な道は歩いていない。
 同様に警戒していると思っていた優希斗の姿に、陽太は眉を顰めた。彼はエルフには警戒せず、視線を今出てきたグリモアの方へと向けていた。
「どうしたんだよ? 黒髪のにーちゃん」
「いや……」
 思わず肩を竦めた陽太に優希斗が応えようとした時、郎とした声が響いた。過去の遺恨は水に流して協力するよう求める族長の声が響くが、困惑したような敵意は迷うだけで解かれない。
 何があったのかは知らないが、ここでエルフの協力を得られなければ被害が大きくなってしまう。陽太は大きく息を吸い込むと、檄を飛ばした。
「お前達、いいのかよ? このままじゃ森は全部焼けちまうぜ? なにせ迷いの森を全部焼けば、魔法は解けるんだ。奴らはエルフも皆殺しにしてオブリビオンとして蘇らせて、聖木ユグドを奪うつもりだ。……そんなことさせねえよ。お前たちはどうする? 戦うか、震えて焼かれるか、選べ!」
「俺達としても、エルフ達の森を焼き払わせるわけには行かないんでね。協力させてもらおう」
 陽太の檄に、優希斗も頷く。二人の説得に今なすべきことを納得したのだろう。敵意を収めたエルフ達を連れた陽太は、燃え盛る森へ向けて駆け出した。
 火の手は刻一刻と、エルフの集落に迫っている。イービルスピリット達を倒さなければ消火はできないが、だからといってこのまま放置しては森は灰燼に帰してしまう。
「鷲獅子の翼持つ悪魔よ、我との盟約に従い、己が権能の水流を持って全てを滅せよ!」
 詠唱に応え、グリフォンが現れた。鷲の翼持つ獅子の姿に警戒するエルフを制した陽太は、じっと見据えてくる悪魔フォルカロルに叫んだ。
「フォルカロル! 気に食わねえ猟書家をてめえの水流で思いっきりぶっ飛ばしてやろうぜ!!」
 陽太の声に、フォルカロルは首を巡らせる。己に迫る炎を見渡したフォルカロルは、翼をはためかせると水流を召喚した。
 全てを押し流す激流が、周囲の木々に放たれる。火を消し止める姿に驚き目を見開くばかりのエルフ達に消火を頼んだ陽太は、迫りくるオブリビオンの気配に白のマスケラを顔に被せた。
「お前たちはエルフたちと聖木の「敵」だ」
 「敵」の一言を放った陽太から、表情が消える。消火作業を行うエルフ達に向かっていったイービルスピリットに忍び寄った陽太は、無言で二槍を繰り出した。
 槍に貫かれたイービルスピリットは、煙のように消える。消えた個体にはこだわらず踵を返した陽太は、迫る青い波動に駆け出した。悲しみに囚える波動はしかし、暗殺者として「敵」に対する陽太の心を響かせはしない。
 辺りに充満していたイービルスピリットを倒した陽太は、エルフの叫びに我に返った。
「そこの剣士、危ない!」
 振り返った陽太は、マスケラを外すと駆け出した。無の境地で舞いを舞う優希斗は、枝先へ向かわせようとするイービルスピリット達の誘導に気付いていない。体当たりで最後のひと押しをしようとするイービルスピリットに二槍を繰り出した陽太は、彼岸と此岸の境にいる優希斗に我ながら呆れたような声を掛けた。
「……ったく、危なっかしいな黒髪のにーちゃんは。木から落ちたらどうするんだ?」
「この蒼月の型の本質は、『無』。感情に執着していては、舞を成し遂げることすら出来ないからね」
「枝先に向かう恐怖心も無くなるってか? 恐ろしいね」
 感情を殺して戦っていたのは陽太も同じだが、「無」の境地まで至ることはしない。それをやってのける優希斗に一種の不安定さを感じながらも、口に出しては何も言わない。
 一帯の消火活動を終えた陽太と優希斗は、エルフ達を連れて次のエリアへと駆け出した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私/私たち のほほん
対応武器:漆黒風

エルフに協力要請:敵のみを迷わせ、こちらを視認しづらくする魔法を。

故郷を滅ぼされた身としては、放って置けないというのが総意でしてー。

こちらを確認できなければ、一方的にUCで、だまし討ち+風属性攻撃しますがー。
たまに位置取りを変えつつ。そう、私が忍である。それを生かした戦いですねー。

見つかり、攻撃を受けたとして、敵に執着しますしー。
憑依されようものなら、残りの三人(全員武士)の餌食になるだけですよー?
悪霊が邪霊に負けるわけないでしょう?

三人に対する嫉妬(武士であること)は、すでに区切りをつけた。



● 救える故郷があるのなら
 魔法に長けたエルフ達を連れた馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は、温和な表情を崩すことなく樹上を駆ける。
 木々に火をつけて回るイービルスピリットを発見した義透は、エルフ達に視線を向けると自身は闇に紛れた。
 木々の間を飛び回り、火をつけて回るイービルスピリットの姿を視認した義透は、こちらに気付き突進してくるイービルスピリットの姿に手を上げた。
 その直後、義透の姿が霧の中へと消える。エルフ達の魔法に惑わされ大きく右へと逸れるイービルスピリットに、義透は淡々と漆黒風を放った。
 黒い棒手裏剣は狙い違わずイービルスピリットの核を貫き、黒い霧へと還していく。その様子を見守った義透は、満足げに頷いた。
「まずは一体、ですねー」
「すごい。これが猟兵……。あのイービルスピリットを一撃で倒すなんて」
 呆然と呟くエルフの青年に、義透は頬をかく。次へ向かおうとする義透に、意を決したように顔を上げたエルフの女性が声を掛けた。
「あの! お願いがあるんです。私の妹が、出掛けたまま帰って来ないんです。他にも逃げ遅れたエルフがまだいるかも。だから……」
「それはいけない。探しながらイービルスピリット達を倒していきましょうね」
 みな迄言わさず頷いた義透は、妹の特徴を聞き出すと情報収集しながら歩みを進めた。忍者として訓練を積んだ義透にとって、素人が残した足跡を探し出して追跡するのはたやすい。途中何人かのエルフを救助した義透は、ついに目的の少女を探しだした。
 身体のあちこちに火傷を作りながらも、少女は走っていた。手筈通り、エルフが迷いの魔法を少女にかける。少女の姿を覆い隠すはずの霧はしかし、見えない力に遮られて弾けて消えた。
 ユーベルコードから身を守るアミュレットを身に着けているのだろう。イービルスピリットの攻撃から守っていたアミュレットに魔法が弾かれたのを確認した義透は、樹上から飛び降りると少女を庇うように立ちはだかった。
 ゆっくり顔を向ける大型イービルスピリットの姿に漆黒風を構える。
 これまで相手にしてきたイービルスピリットとは違う。こちらを視認したイービルスピリットは、大きく身体を震わせると黄色の波動を義透に向けて放った。
 防御姿勢を取る義透を、黄色の波動が包み込む。義透の胸に湧き上がったのは、嫉妬だった。
 義透と共に有る、三人の武士。誇り高き立派な武士である彼らの姿はとても眩しく、太陽の下を歩く彼らの姿は誇らしく。
 だが、振り返って己はどうか。闇に生き、闇に死ぬことを定められた忍は、死して名を残すこともない。
 彼らが羨ましい。自分もあんな風に、太陽の下を歩けたら。
「……なんて、思ったこともありましたねぇ」
 温和な表情を崩さず呟いた義透は、飲み込まんと迫るイービルスピリットの姿を真正面から見据えた。
 義透を嫉妬に飲み込んだイービルスピリットが、ふいに大きく鳴動した。義透の中に共に有る三人の武士が、義透を飲み込み視界から消えたイービルスピリットに向けて攻撃を仕掛ける。
「悪霊が邪霊に負けるわけないでしょう?」
 侍たちの攻撃を受けたイービルスピリットが、断末魔の悲鳴を上げる。己ごと仕掛けられた攻撃に、遅れて激痛が体内を駆け巡る。
 口の端から血を流し膝をついた義透に、エルフの少女が駆け寄った。
「だ、大丈夫ですか? でもどうして、余所者がこんなにしてくれるの?」
「どうしてって……」
 受け取ったハンカチで血を拭いた義透は、姉に迎えられて抱きしめられる少女を微笑みで見送る。
 このまま放置したら、あの姉妹も遠からず死んでいたことだろう。生きていたとしても、心に深く重い傷を負うことになる。その傷は消えない。死んでからも、ずっと。
「故郷を滅ぼされた身としては、放って置けないというのが総意でしてー」
「ありがとうございます! 妹を助けてくださり、本当にありがとうございます!」
「その、ありがとう!」
 エルフの姉妹に手を挙げ応えた義透は、次の要救助者の索敵に移った。

成功 🔵​🔵​🔴​

木常野・都月
森が!何て酷い事を!

俺が住んでいた森ではないけれど…
森が、生き物が燃やされて、一瞬よく分からない感情で目の前が真っ暗になった。

落ち着け俺。
尻尾も落ち着け。

エルフの人達には、森の消火と生き物の救助をお願いしたい。

俺もUC【俺分身】で、分身の俺は消火と救助を手伝いたい。

本物の俺は邪霊を相手したい。
これ以上、森を燃やさせないぞ!

敵の攻撃は[呪詛耐性]あたりで抑えたい。
チィにも助けて貰いたい。
月の精霊様なら、月の光の浄化や狂気を扱うから。
俺が煽られても揺るがないように、俺の脳みそを守って欲しい。

後は冷静に。
月の光と氷の精霊様の[多重詠唱、属性攻撃、範囲攻撃]で邪霊を光の氷で浄化と消火をしたい。


桜雨・カイ
聖木もですが、生き物たちの為にも早くこの火を押さえないと…

【エレメンタル・-】発動
火の精霊にお願いして、これ以上炎が森の中に進行しないよう火の威力を押さえます。
敵の注意をこちらへ向けて下さい!
エルフのみなさん、こちらへ敵の目を引きつけている間に背後から攻撃をお願いします!

他の精霊達は、もし私やエルフの人達がが憑依されそうになったら叱って下さい……あっ怪我しない程度にお願いします
「だめ!」「しっかりー」(軽い精霊攻撃)

敵を倒して、可能ならば精霊達にお願いして焼けた大地が落ち着くように働きかけてもらいます。
どうか少しでも早く森が回復しますように



● 月が守ってくれるから
 燃え盛る炎は衰える気配も見せず、木々を炎の中へと飲み込んでいく。
 青々とした葉を茂らせていた木々は生きたまま焼かれ、灰になって消えていく。動物のように見える影に必死に手を伸ばすが、応えることなくボロリと崩れて消え去っていく。
 その地獄絵図に、木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)は目の前が真っ暗になった。
 容赦ない炎は森の命を糧に勢いを増す。木々の、生き物の上げる声なき悲鳴が、都月の鋭敏な耳を震わせる。
「都月さん!」
 自分でもよく分からない感情に突き動かされそうになった都月の肩を、力強い手が支えた。その感触に、真っ暗だった視界に少しずつ光が戻ってくる。
「都月さん、しっかりしてください! 怒りに呑まれてはいけません!」
「カイさん……」
 都月を覗き込む桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)の心配そうな視線に、都月は大きく息を吐き出した。顔を上げて両頬を両手で叩く。じんじんと痛む両手で拳を作った都月は、自分に言い聞かせるように呟いた。
「落ち着け俺。落ち着け」
 再び大きく息を吐いた都月は、ぶわあっとなった尻尾をわさわさと撫でる。倍くらいに膨らんでピンと立った尻尾を宥め、言い聞かせるように指をさす。
「尻尾も落ち着け」
「落ち着いたみたいですね。良かったです」
 ホッと胸を撫で下ろしたカイに、都月は笑みで応える。一刻も早く火を消してイービルスピリットを退治しなければいけないのに、余計な時間を使わせてしまった。
「もう大丈夫。ありがとうカイさん」
「どういたしまして。聖木もですが、生き物たちの為にも早くこの火を押さえないと……」
「本当にその通りだ。ーー出てこい、俺!」
 落ち着きを取り戻した都月は、詠唱を終えると分身を生み出した。もうひとりの自分とエルフ達を交互に見た都月は、燃える炎を指差し示す。
「エルフの人達には、森の消火と生き物の救助をお願いしたい。分身の俺は消火と救助を手伝って」
「分かった。本体の俺は?」
 頷き尋ねる分身の声に応えるように、イービルスピリットが迫る。振り返り立ち向かった都月は、ファイティングポーズを取ると黄顔のイービルスピリットに向かい合った。
「本物の俺は邪霊を相手したい。これ以上、森を燃やさせないぞ!」
 臨戦体勢の都月に、黄色い波動が放たれた。情欲・執着・嫉妬の感情が否応なく溢れ返り、都月の心を波立たせる。再び目の前が黄色の闇で閉ざされそうになった時、月の光が差し込んだ。
「チィ!」
 都月の肩に飛び乗ったチィが、都月の頬に頭を寄せる。モフっとした感触とそこから流れ込む月の精霊の波動に、狂わされた都月の思考が徐々に平静を取り戻していく。
「ありがとう、チィ」
 チィの頭を撫でた時、衝撃が都月を襲った。召喚された黄色の霊体が都月に憑依し、負の感情で満たそうと衝動が全身を駆け巡る。
 己を抱いて衝動をやり過ごした都月は、心配そうなチィの視線に微笑みかけた。
「大丈夫だよ。チィと月の精霊様が守ってくれるから」
 己を抱いたまま、意識を集中させる。イービルスピリットが都月に憑依したのならば話は早い。自分の中から出ていかないように念じた都月は、同時に月の光と氷の精霊に語りかけた。
「月の精霊様、氷の精霊様。俺の中にいるイービルスピリットを浄化してください!」
 都月の呼びかけに、精霊たちが応える。月光の氷は都月を惑わせるイービルスピリットを浄化し、心の炎を消し去っていく。
「ありがとうチィ」
 己の衝動を克服した都月は、肩に乗ったチィを優しく撫でた。

● 悲しみに寄り添うために
 燃える森が放つ圧力に、カイは思わず圧倒された。
 ここは、少し前までは深く静かな森だったはずだ。だが今、緑の森は炎に呑まれて焼け野原と化そうとしている。これまでにどれだけの命が失われたのか。
「酷い……」
 湧き上がる怒りにカイが駆け出そうとした時、ゆらりとしたオーラに足を止めた。
 一緒に来た都月は、怒りに我を忘れている。今まで見たこともないほどの怒りに全身を震わせ、ふかふかな尻尾はぶわあっと逆立っている。
 いけない。落ち着かせなければ。自分の怒りを鎮めたカイは、都月の正面に回り込むとその肩に手を置いた。
「都月さん! 都月さん、しっかりしてください! 怒りに呑まれてはいけません!」
「カイさん……」
 カイの呼びかけに我を取り戻した都月は、自分の両頬をパン! と叩く。尻尾に呼びかけて落ち着きを取り戻した都月に少しだけ笑みを浮かべたカイに、都月はふんすと息を吐いた。
「もう大丈夫。ありがとうカイさん」
「どういたしまして。聖木もですが、生き物たちの為にも早くこの火を押さえないと……」
「本当にその通りだ。ーー出てこい、俺!」
 もう一人の自分を呼び出した都月に安心したカイは、燃える森へと視線を移した。
 激しく燃える木々の熱が、カイの頬を焦がす。じわじわと近づく炎の勢いに、カイは詠唱を開始した。カイの怒りを都月の怒りが鎮めたように、火を鎮められるのは火の精霊だろう。
「火の精霊! これ以上炎が森の中に進行しないように威力を押さえてください!」
 カイの要請に、火の精霊は大きく頷く。燃え広がる火を押さえるように壁になるが、火の精霊そのものが火の属性を持っている。
 爆発的な燃え広がりは押さえられたものの、じわじわと燃え広がっている。早くイービルスピリット達を倒して消火をしなければ。
 一つ頷いたカイは、現れたイービルスピリット達の姿にエルフ達を振り返った。
「エルフのみなさん! 私がこちらへ敵の目を引きつけている間に、背後から攻撃をお願いします!」
 頷き散会するエルフの姿に、カイはイービルスピリットと向かい合う。青い波動を放つイービルスピリットの攻撃を受け止めたカイは、胸の中に溢れ出す悲しみに心を奪われた。
 姿を消したカイの主・弥彦は今どこにいるのだろうか。最愛の妻と子を失った弥彦は、その時どれだけ悲しかっただろうか。
 とめどなく溢れ出す悲しみがカイの胸を締め付け、動き出す勇気を失わせる。悲しみに沈み込もうとするカイの頬を叩くように、一陣の風が吹き抜けた。
「だめ!」
「たって!」
「しっかりー!」
「……しっかり、します」
 叱りつけるような精霊たちの励ましに目元をこする。ジンジンと痛む頬を冷たい手で包み込むと、それだけで気持ちが少しずつ落ち着いてきた。悲しみに沈めと囁き続ける胸中の声に、カイは答えを返した。
「悲しくても、辛くても、立ち上がらなきゃ、いけないんです」
 立ち上がらなくていい。悲しみと向き合えばいい。悲しかっただろう。苦しかっただろう。そんな自分を認めて、悲しみに暮れればいい。そう囁くイービルスピリットに、カイは大きく頭を振った。
「ここで悲しみに負けてしまったら、主を探すことが、できなくなってしまいます。そうなったら、主の悲しみに寄り添うことも、できなくなってしまいます! だからもう、悲しんでばかり、いません!」
 叫びと同時に、イービルスピリットを心から追い出す。カイから逃げるように出てきた青顔のイービルスピリットに、エルフ達が放った無数の矢が突き立った。
 消えるイービルスピリットを見送ったカイは、手の甲で頬を拭う。消火を手伝い顕になった大地に触れたカイは、焼けた土を握りしめると目を閉じた。
「どうか少しでも早く森が回復しますように」

 祈りと共に、精霊達にお願いする。
 焼けた大地に緑が早く戻るように。
 傷を癒やし、元の姿が蘇るように。

 祈りを捧げたカイは、立ち上がると次の炎へと駆け出した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

神咲・七十
アドリブ・連携お任せ

う~ん、美味しい物がありそうな森を燃やされるのは嫌ですね。
なので協力してください


(エルフさん達には、自分のところに敵を集めてもらい、その後逃げそうになったのを相手してもらう感じで手伝ってもらいます。)

(UC『制約:狂食者』を使用。集まってきた敵に燃やされても、圧倒的再生力で受け切って、大剣と尻尾の連帯攻撃で来た端から倒していきます。)

どんな感情を解放されたとしても、その感情を力にして貴方達を喰いつくしてあげますよ。

(・・・まぁ、焼いた果物とか美味しいのもありますけど)

(次はどうしますかね?もし、今回の猟書家を取り込むことが出来ればこの後の戦いも有利にできそうですが・・・)



● 美味しいものを生み出す森で
 森を糧に燃える炎に目を眇めた神咲・七十(まだ迷子中の狂食者・f21248)は、鼻腔を刺激する臭いに眉を顰めた。
 この森は大きく深い森。こういう森にはたくさんの生き物達が住んでいる。
 ということは、その生き物を生かし支える豊かな実りもそこにあるということだ。
 アックス&ウィザーズの、人間がほぼ立ち入ることのできないユグドの森。そこには未だ誰も食べたことがない美味しいフルーツや珍しい木の実が山のように眠っていたはず。
 それが今、炎に呑まれてこの世界から消え去ろうとしている。これを早く止めなければ、七十はそれらを食す機会を永遠に失ってしまうのだ。
「う~ん、美味しい物がありそうな森を燃やされるのは嫌ですね」
「特にここは、豊穣の森と呼ばれています。実をつける木々が群生している場所ですね」
「それはいけない。なおのこと早く消火しなければ、美味しいものが無くなってしまうじゃないですか!」
 目を見開いた七十は、エルフの腕を掴むと視線を合わせ真剣に訴えた。
「敵を倒して火を消します。協力してください」
「勿論です!」
 頷くエルフに指示を出す。森の中を浮遊するイービルスピリット達の姿を確認し、地形を把握するとエルフ達が一斉に散会した。
 七十自身は、森の中の開けた場所に立って待ち受ける。エルフ達は今、迷いの森の魔法を応用して付近に浮遊するイービルスピリット達をこの広場に集めている。広い森を走り回るよりも、一箇所に集めて包囲し、一網打尽にしてしまうのが得策だ。
 やがて木々の間から姿を現した黄顔のイービルスピリットが、獲物を見つけたと言わんばかりに黄色の波動を七十へ向けて放った。
「Rose, die das Leben isst」
 迫りくるイービルスピリットに、七十は詠唱を開始する。黄顔のイービルスピリットが放つ波動が、七十の欲望を刺激する。

 食べたい。甘いものが食べたい美味しいものが食べたい。果物が食べたいケーキが食べたいクッキーが食べたいタルトが食べたい饅頭が食べたい羊羹が食べたい煎餅が食べたい……。

「……血が吸いたい」

 強烈に湧き上がる甘いものへの欲。それが満たされないことへの強烈な飢餓感は吸血衝動に転化され、七十の感情を支配する。
 目線を上げれば、エルフ達が魔法や弓矢でイービルスピリット達を牽制している。あの細くて白い首筋に牙を立て、思う存分血を啜れたならばどれだけ素晴らしいだろう。
 どれだけ満たされるだろう。
 地上で七十を援護していたエルフに一歩踏み出す。何事かと警戒するエルフに伸ばそうとした手を反対の手で押さえた七十は、漆黒の大剣を振り下ろした。
 己の足に剣を突き立てる。襲い来る激痛に意識を保った七十は、漆黒の大剣を引き抜くと刀身についた血を振り払った。
 致命傷になり得る刀傷は、みるみる間に塞がっていく。驚異の回復力を見せた七十は、くらくらする吸血衝動をイービルスピリットへと向けた。
「あなた達には、血が流れているのかしら? まあ、どちらでもいいわ。あなた達は存在ごと、喰いつくしてあげますよ!」
 漆黒の大剣を振りかぶった七十は、イービルスピリットへと斬りかかる。一文字に斬り払ったイービルスピリットから寿命を食らい付くした七十は、死角から迫るイービルスピリットに尻尾を突き立てる。
 淫魔の尻尾のように逆ハート型になった尻尾は、イービルスピリットの核を貫き命を啜る。食べたいという欲望をイービルスピリットへと向けた七十が、エルフ達が追い込んだイービルスピリットを喰らい尽くすのにさほど時間はかからなかった。

 周囲が静けさを取り戻し、エルフ達が消火活動に当たっている。その光景を切り株に座って見ていた七十は、漂ってくる甘い匂いに顔を上げた。
 辛うじて延焼を免れた果樹に実る果実が、火に炙られていい感じになっている。立ち上がって果実をもぎ取りかじった七十は、口の中に広がる甘酸っぱくてホクホクした果実に目を細めた。
 焼いた果実はやっぱり美味しい。果実を食べきった七十は、一息つくとこれからに考えを巡らせた。
(「次はどうしますかね? もし、今回の猟書家を取り込むことが出来ればこの後の戦いも有利にできそうですが……」)
 思考を巡らせた七十は、一つ頷くと森の中へと歩み去った。

成功 🔵​🔵​🔴​

クラリス・シドルヴァニス
森が燃えている…なんという酷いことを!
普段エルフ族との接点はあまり無いけれど、同じ世界の住人であることに変わらないわ。聖なる木ユグドを守り抜けば、なんとか復興の道筋は立てられるのね…。まずはあの邪悪な精霊を全滅させましょう!
敵は精霊だから、通常の剣による攻撃は効きにくそうね。【斬光の印】を使い、体の痛みと引き換えに武器を光の刃へと強化。《激痛耐性》で痛みに耐えながらも、敵への怒りで我を忘れそうになるのを《落ち着き》で制御します。そう、今はエルフと協力して戦わなければ。エルフには弓や魔法での援護のほか、地形を利用した戦闘法のアドバイスをお願いするわ。負の感情に囚われないで、敵の思うつぼよ!



● 守るべきもののため
 放たれた火は衰えを知らず、舐めるようにユグドの森を焼いていく。
 もうもうと立ち込める煙の向こう側で焼け果てていく木々に目を見開いたクラリス・シドルヴァニス(人間のパラディン・f27359)は、冷たくなった手を握ると奥歯を噛み締めた。
「森が燃えている……なんという酷いことを!」
 アックス&ウィザーズ出身のクラリスにとって、エルフは遠き隣人だった。森の中で閉鎖的な生活を送ることが多いエルフ達は、積極的に他の種族と交流を持とうとはしない。
 クラリスも猟兵の間や街角などで見かけたことはあるものの、猟兵ではないエルフ達とそれほど深く付き合ったりはしてこなかった。
 だが、彼らはアックス&ウィザーズの住人。クラリスの故郷の同胞であることに何ら変わりはない。
 そしてこの炎は、今消し止めることができなければ近い将来クラリスの故郷も焼き払うだろう。
「ああ、火の手があんなところまで……」
 絶望的な声を上げるエルフを振り返ったクラリスは、改めて背後を見上げた。
 この森の奥深くに眠る、聖木ユグド。世界樹から株分けされた木は命の源でもあるという。
「聖なる木ユグドを守り抜けば、なんとか復興の道筋は立てられるのね……」
 呟くクラリスに、エルフ達も一斉に頷く。逆に言えばユグドを守りきれなければ、この地は永遠に失われたままとなる。
 意を決したクラリスは、迫りくるイービルスピリット達に向けてクロスクレイモアを構えた。
「まずはあの邪悪な精霊を全滅させましょう! ーー虐げられた人々の苦しみに比べれば、この程度の痛みなど!」
 詠唱の直後、クラリスの全身に灼け付くような痛みが走った。まるで炎に炙られているかのような痛みは、目の前の光景と相まってクラリスの心に強烈な怒りの感情を呼び起こす。
 目の前を浮遊する紅顔のイービルスピリット達に、怒りの感情がどうしようもなく吹き出してきて止まらない。
 奴らが火を放たなければ、豊かな森は豊かなままでいられたのに!
 我を忘れ、怒りのままに駆け出したクラリスは得物を振り上げ斬りかかる。ひらりと躱すイービルスピリットを追いかけようとしたクラリスは、手にしたクロスクレイモアが放つ光に目を見開いた。
 聖騎士としての誓いを立てたクロスクレイモア。聖騎士として、シドルヴァニス家の人間として恥じない自分でいることを誓った剣は今、光となっている。
 剣が放つ光に、怒りの感情が少しずつ中和されていく。
 ここで怒りのままに剣を振るい続ければ、いつかクラリスはクラリスでなくなってしまう。
 立ち止まり目を閉じる。あの日の誓に精神を集中させ落ち着きを取り戻したクラリスは、再び迫るイービルスピリットに目を開いた。
 剣刃一閃。真一文字に放たれた斬撃はイービルスピリットを真っ二つに斬り裂き、その姿を霧へと還す。
 落ち着きを取り戻したクラリスは、改めて周囲を見渡す。イービルスピリットの集団に襲われたエルフ達は、それぞれがそれぞれの怒りを吐き出しながら戦いを続けている。
 下手をすれば同士討ちに発展しかねないエルフ達を見渡したクラリスは、大きく息を吸い込む。まずは彼らを落ち着けなければ。
「落ち着いて!」
 クラリスの一喝が、空気を震わせる。世界をビリビリと震わせた声に驚いたエルフ達の視線を受けたクラリスは、首を巡らせると声を張り上げた。
「今は怒りに我を忘れる時ではないわ! 目の前の怒りに心を囚われないで! 今は協力して戦わなければならない時よ! 違う?! 負の感情に囚われないで、敵の思うつぼよ!」
「そう……そうね」
「俺はなんで、あんなことを怒ってたんだ……?」
 クラリスの一喝に、エルフ達が我を取り戻す。それぞれが自我を取り戻したエルフ達から追い出されたイービルスピリットに、クラリスはクロスクレイモアを叩き込んでいく。
 やがてイービルスピリットの一団を退けたクラリスは、大きく安堵の息を吐くとエルフ達を見渡した。
「ここはイービルスピリットが多いわ。作戦を立てましょう。まずは、この辺りの地形を教えて頂戴。そしてどんな戦い方が良いのか、アドバイスをくれるかしら?」
 クラリスの問に、エルフ達は簡易の地図を羊皮紙に描く。この地形ならば、イービルスピリット達を追い込み一気に叩けば、感情を刺激されることなく倒せるだろう。
 作戦を立案し、打ち合わせを終え立ち上がる。
 イービルスピリット達を追い込む体勢を整えたクラリスは、エルフ達と共に駆け出した

成功 🔵​🔵​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
あれは私の故郷の武装
キマイラFでクリスタリアンの猟書家が確認されましたが、この世界にも…?

しかし作戦目標達成の為とは言え森を焼き払うとは
天然自然の貴重さは私達、星無き民が一番知っている筈でしょうに…!

いけませんね、増幅されています
(感情が電子頭脳の演算なので自己●ハッキングで修正、暴走防止)

エルフの皆様の苦境、騎士として助太刀いたします
共に敵の企てを打ち砕きましょう

あの武装は固く火力もありますが、銃座や推進機関の可動部は強度が落ちます
私が囮として前に出て近接戦闘を行いますので、矢や魔法で援護を願います

自身は盾や剣で攻撃し防御しつつUC使用
妖精ロボの●ハッキングで敵武装の制御妨害
その隙をつき撃破


ユディト・イェシュア
なんてことを…
木々が成長するには時間がかかります
これほどの森になるのにどれだけ年月がかかったか
それを聖なる木を奪うために一瞬で燃やし尽くそうだなどと…
何よりここに住まうエルフの方や動植物を犠牲にしていいはずがありません
少しでも被害を減らせるように全力を尽くしましょう

エルフの皆さんには敵だけを迷わせてもらいます
侵攻を遅らせることができれば延焼も少しは防げるでしょう
その間に邪霊に裁きの光を
怒りと悲しみが湧き起こりますが努めて冷静に
邪霊の思い通りにはさせません
今はただこの邪な炎を消し去ることに集中するのみ

エルフの皆さんも気持ちを強く持ってくださいね
邪霊から体を張ってかばいます
必ずこの森を守ります…!



● 怒りを超えて
 緑の森が炎に沈んでいく。
 焼け焦げる臭いと充満する煙の成分と濃度に確かな森林の消失を感知したトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、罠を張った広場の中央に立つと湧き上がる怒りに拳を握り締めた。
 スペースシップワールドで生まれ長い時間を過ごしたトリテレイアにとって、ホログラフでも人工林でもない雄大な自然は、何よりも美しく、かつ焦がれるものだった。
 これだけの森は、母なる大地と雄大な自然、そして長い時間が無ければ育たない。スペースシップワールドに生きる民は、この森をどれだけ渇望していることか。それをーー。
「大丈夫ですか? トリテレイアさん」
 樹上から掛けられるユディト・イェシュア(暁天の月・f05453)の声に、トリテレイアは我を取り戻した。沸々と湧き上がる怒りに任せて感情を顕にしてしまった。
 自己ハッキングで怒りの感情を遮断したトリテレイアは、樹上のユディトを振り仰いだ。
「感謝します、ユディト様。いけませんね、増幅されています」
「気持ちは分かります。俺も、同じ気持ちですから。ーー来ます!」
 ユディトの警告と同時に反応したセンサーに導かれるように、イービルスピリットが現れた。
 紅顔の魂の姿をしたイービルスピリットが装備した硬質な装備に、トリテレイアは儀礼用長剣を抜き放ち構えた。
「あれは私の故郷の武装。キマイラフューチャーでクリスタリアンの猟書家が確認されましたが、この世界にも……?」
 驚くトリテレイアには構わず、紅顔のイービルスピリットがトリテレイアに襲いかかる。電子頭脳を走る電流が狂い、感情の素子が「怒り」に振り切れる。一度は自己ハッキングで落ち着いた感情が、また別の方面からの怒りに塗り潰されていった。
「作戦目標達成の為とは言え森を焼き払うとは。天然自然の貴重さは私達、星無き民が一番知っている筈でしょうに……!」
 猟書家への怒りと共に吠えたトリテレイアは、儀礼用長剣を振りかぶると迫るイービルスピリットに向けて大きく振り下ろした。
 闇雲に放たれた斬撃は回避され、刀身が岩に食い込む。強烈な勢いで放たれた一撃は岩を深く抉り、簡単に抜くことができない。硬い手応えに動きを封じられた時、再び紅顔のイービルスピリットがトリテレイアへ迫った。
 現在、自己ハッキングで感情を修正しているところだ。演算の最中にもう一度受けてしまっては、どんなエラーが出るのか分からない。
 身構えるトリテレイアの目前に、雷が落ちた。ユディトが放った【裁きの光】は正確に紅顔のイービルスピリットを貫き、その動きを止める。
 その一瞬が勝負を決めた。自己ハッキング完了と同時に、食い込んだ切っ先を破壊し抜いた儀礼用長剣をイービルスピリットに叩き込む。
 霧へと還るイービルスピリットの向こう側から現れる新手に、トリテレイアは詠唱を開始した。
「数には数を。心強い味方を呼びましょう」
 詠唱と同時に現れた自律式妖精型ロボは、宙を駆けるとイービルスピリットのアームドフォートに干渉を開始した。
 ユーベルコードの威力を増強していたアームドフォートが、機械音と共に動きを止める。動きを止めた隙を突いたトリテレイアは、ユディトやエルフ達の援護を受けながら次々にイービルスピリットを撃破していった。
 やがて静かになった戦場に、トリテレイアは顔を上げた。
「作戦終了。これよりーー危ない!」
 トリテレイアの声に、ユディトが振り返る。死角から忍び寄った蒼顔のイービルスピリットがエルフを狙い大きな口を開ける。
 その瞬間、ユディトが動いた。エルフを庇ったユディトは、無防備なままイービルスピリットに胸を貫かれる。
 即座に頭部内蔵レーザーをイービルスピリットへと向ける。高精密射撃でイービルスピリットを討ち果たしたが、ユディトは悲嘆に暮れた目でトリテレイアに指先を突きつけた。
 直後に放たれる天からの光。トリテレイアを貫くように放たれた光は、背後に忍び寄っていたイービルスピリットを貫き通す。
 振り返りざま、止めを刺す。今度こそ平穏を取り戻した広場に、トリテレイアはユディトを仰いだ。
「大丈夫ですか!? ユディト様!」
「大丈夫です。これ以上、エルフさん達を悲しませたりしません。必ずこの森を守ります……!」
「エルフの皆様の苦境、騎士として助太刀いたします。共に敵の企てを打ち砕きましょう!」
「一緒に頑張りましょうね!」
 手の甲で目元を拭うユディトの強い姿に、トリテレイアは静かに敬礼した。

● 悲しみを超えて
 樹上に上がり地上の広場を見下ろしたユディトは、剣を鞘ごと地面に突き刺してイービルスピリット達を待つトリテレイアの姿に一種の胸騒ぎを覚えた。
 ウォーマシンのトリテレイアは、表情で感情を読むことができない。静かに立つ姿は平時と変わらなく見えるが、そうではないように思えた。
 エルフ達は今、迷いの魔法で惑わせたイービルスピリット達をユディト達がいる広場まで誘導している。集まったところをトリテレイアが引きつけて樹上にいるユディトとエルフ達が援護し倒すという作戦だ。最も危険な役割を引き受けたトリテレイアの姿は頼もしく、これほど心強い味方はいない。だが、ウォーマシンにも感情はある。彼は森の惨状に、心を痛めているに違いない。
 燃える木々の悲鳴が胸に痛い。悲しみを紛らわすように、ユディトはトリテレイアに声を掛けた。
「大丈夫ですか? トリテレイアさん」
 ユディトの問に、トリテレイアの気配が切り替わる。落ち着いた様子でユディトを振り仰いだトリテレイアの静かな声に、ユディトは胸を撫で下ろした。
「感謝します、ユディト様。いけませんね、増幅されています」
「気持ちは分かります。俺も、同じ気持ちですから。ーー来ます!」
 第六感で顔を上げたユディトは、迫るイービルスピリットの姿に指を突きつけた。現れたのは三体。牽制の光で二体はトリテレイアへの接近を遮ることができたが、合間を縫うように現れた一体が彼を貫いた。
「トリテレイアさん!」
「作戦目標達成の為とは言え森を焼き払うとは。天然自然の貴重さは私達、星無き民が一番知っている筈でしょうに……!」
 怒りに我を忘れたトリテレイアが振り下ろす儀礼用長剣が、岩に叩き込まれる。動きを止めたトリテレイアに迫るイービルスピリットの姿に、ユディトは高速で詠唱を完成させた。
「危ない!」
 叫びと共に、裁きの雷を放つ。急所に直撃したイービルスピリットが動きを止めた隙に体勢を整えたトリテレイアが、長剣を破壊してまで引き抜くと敵を霧へと返した。
 それで落ち着いたのだろう。作戦通り敵を殲滅した取り戻したがこちらを見上げた瞬間、ぞわりとした悪寒を感じた。
「作戦終了。これよりーー危ない!」
 トリテレイアの警告と同時に、ユディトは動いた。隣で援護していたエルフを貫かんと迫るイービルスピリットの姿に、ユディトは反射的にエルフを庇った。
 これまでもイービルスピリットの余波を受けて、エルフ達の精神はかなり揺さぶられている。その都度声を掛け勇気づけてきたが、この直撃を受けてしまってはどうなるか分からない。
 己を顧みずエルフを庇ったユディトは、胸を締める悲しみに溢れる涙を止められなかった。
「なんてことを……」
 こうしている間にも、森は燃え続けている。多くの命を育む森が森になるためには、途方も無い時間がかかる。その悠久の時間と、そこに生きる全ての生物の営み。それらが今、全て焼失しようとしているのだ。
「これほどの森になるのに、どれだけ年月がかかったか。それを聖なる木を奪うために一瞬で燃やし尽くそうだなどと……!」
 胸を占める悲しみに、身動きが取れない。犠牲になった命の全てがユディトに絡みつくように締め上げ、その悲嘆に、苦痛に嗚咽が止まらない。
 助けられなかった。命が焼け落ちるのを止められなかった。何もできなかった悲しみはユディトの胸を締め付け、どうしようもない悲しみを与え続ける。
 悲しみに暮れるユディトは、頭のすぐ横で感じる衝撃に目を見開いた。地上から援護射撃してくれたのだろう。トリテレイアの姿に、ユディトは大きく息を吐いた。
 今は犠牲者を追悼する時ではない。今は動くべき時だ。何よりここに住まうエルフの方や動植物を、犠牲にしていいはずがない。少しでも被害を減らせるように全力を尽くさなければ!
 意を決したユディトは、トリテレイアの背後に忍び寄っていたイービルスピリットの姿に指を突きつける。放たれた光がイービルスピリットの動きを止め、止めが刺される。
「大丈夫ですか!? ユディト様!」
 トリテレイアの声に、大きく頷く。
 もう大丈夫。邪霊の思い通りにはさせない。今はただこの邪な炎を消し去ることに集中するのみだ。手の甲で目元を拭ったユディトは、大きく息を吐くとトリテレイアに、己自身に宣言した。
「大丈夫です。これ以上、エルフさん達を悲しませたりしません。必ずこの森を守ります……!」
「エルフの皆様の苦境、騎士として助太刀いたします。共に敵の企てを打ち砕きましょう!」
「一緒に頑張りましょうね!」
 敬礼をするトリテレイアに微笑みを返したユディトは、エルフ達を励ますと次の戦場へと向かった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『チーフメイド・アレキサンドライト』

POW   :    カラーチェンジ
対象の攻撃を軽減する【赤紫色のボディ】に変身しつつ、【100発/秒で弾丸を発射するガトリング砲】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD   :    メイドの嗜み
【カラーチェンジした腕】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、カラーチェンジした腕から何度でも発動できる。
WIZ   :    掃除の時間
【ガトリングからサイキックエナジーの弾丸】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。

イラスト:サカサヅキミチル

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠月夜・玲です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 燃え広がる炎を上空から見ていたチーフメイド・アレキサンドライトは、森の異変に眉を顰めた。
 聖木ユグドへ向けて順調に燃え広がっていた炎は、ある時を境に延焼を止めたのだ。
 そして突如降り注ぐ雨。前も見えないほど大量の雨は今ある炎を消し止めていった。
「どういうこと!? イービルスピリットはどうしたの!?」
 身を乗り出した瞬間、チーフメイド・アレキサンドライトが乗るイービルスピリットが貫かれた。
 地上からの攻撃に霧と消えたイービルスピリットから飛び降りたチーフメイド・アレキサンドライトは、焦げた森に立つ猟兵達の姿に口の端を上げた。
「イービルスピリットを倒すだなんて、やるわね猟兵。いいわ。私自らがあなた達を倒し、エルフ達を皆殺しにして聖木ユグドをお嬢様に献上いたしますわ!」
 高らかに笑ったチーフメイド・アレキサンドライトは、ガトリングガンの銃口を猟兵たちへと向けた。

※ プレイングはすぐに受け付けさせていただきます。
クラリス・シドルヴァニス
私達を倒す、エルフを殺す…よくまあ自分に都合のいい
妄想を並び立てられるわね。

エルフには、引き続き後衛から援護してもらいましょうか。
私は、まず囮としてガトリングの射的距離内に入って
攻撃を引きつけます。
みなぎる《勇気》を力に換えて【気炎万丈】を発動。
己を《鼓舞》し、戦闘能力を向上させて白兵戦に持ち込むわ。
強敵を前にも怯まず、士気の高い状態を保てば、
ガトリング射撃の回避もうまくできそうね。
大剣を盾代わりにすれば、弾丸を《武器受け》することも可能よ。
私はこの聖印に護られているもの…あなたの銃にも怯むことは無いわ。
エルフ達には私が突撃する別方向に潜伏してもらい、
機を見計らって援護射撃を頼むわね。


馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。
先ほどわりと無茶した『疾き者』は引っ込んだ。

第四『不動なる者』まとめ&盾役武士
一人称:わし 古風で質実剛健
対応武器:黒曜山

さて、どうして素直に焼かれると思うたのか。
こういうことをしていれば、猟兵が駆けつけるのは自明であるだろうに。

基本は槍に変化させた黒曜山での重力属性攻撃を乗せたなぎ払い。重さに沈め。
わし自身の防御は四天霊障でのオーラ防御+結界術で。…多少痛いだろうが、それは耐えよう。

もしエルフたちに攻撃がいきそうならば、指定UCにて庇おう。
本来、わしは守る分野担当だからの。



● その身を挺して穿つのは
 チーフメイド・アレキサンドライトと対峙したたクラリス・シドルヴァニス(人間のパラディン・f27359)は、いっそ憐れむように肩を竦めるとアレキサンドライトに視線を送った。
「私達を倒す、エルフを殺す……。よくまあ自分に都合のいい妄想を並び立てられるわね」
「あら。妄想なんかではなくてよ。その証拠にこの弾丸、受けて御覧なさいな!」
 鼻で笑ったチーフメイド・アレキサンドライトは、身の丈ほどもあるガトリングガンの銃口をクラリスへと向けた。
「さあ、お嬢様に全てをお渡しなさいな!」
 高らかに笑いながらガトリングガンを放つチーフメイド・アレキサンドライトの弾丸が、クラリス達へ向けて嵐のように放たれた。容赦なく浴びせかけられるサイキックエナジーによって巻き上げられた砂煙が、未だ立ち上る白煙と混じり視界が遮られる。先制攻撃を決めたチーフメイド・アレキサンドライトは、沈黙する猟兵達に口の端に笑みを浮かべた。
「他愛ないわね。さあ、残りのエルフ共を殺して、手下のメイドにしてやりに行きましょうか」
「さて、それは早計というものだろう」
 クロスクレイモアを盾として構えたクラリスを庇うように飛び出した馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は、四天霊障による結界術を引き裂かんと放たれたサイキックエナジーの向こう側から静かな声を上げた。
 まるで山のような安定した声に防御姿勢を解いたクラリスは、ガトリングガンから鉛玉を続けて放とうとするチーフメイド・アレキサンドライトに向けて矢のように駆け出した。
「一気に叩くわよ!」
 構えていたクロスクレイモアを手に、アレキサンドライトへと肉薄。再び放とうとしていたガトリングガンを剣の腹で跳ね上げ妨害すると、返す刀で一気に斬りかかった。
 鉱物のような音を立てながら袈裟懸けに斬られたチーフメイド・アレキサンドライトが大きく後ろに飛び退き距離を取る。強敵を前にしても一歩も怯まず戦意高く間合いを詰めるクラリスに、おかしそうな声を浴びせた。
「あら! 情熱的なのね!」
「私はこの聖印に護られているもの……。あなたの銃にも怯むことは無いわ」
「なら聖印とやらを斬り裂き、その戦意を叩き割って差し上げましょう!」
 再び距離を取ったチーフメイド・アレキサンドライトが、ガトリングガンの銃口をクラリスに向ける。放たれる銃弾をクロスクレイモアの腹で防御したクラリスは、剣の幅では守りきれない身体に突き刺さる鉛玉に奥歯を噛む。防戦するクラリスに、チーフメイド・アレキサンドライトは再びユーベルコードの詠唱を始めた。
「さあ、とどめを刺しましょうね!」
 チーフメイド・アレキサンドライトのガトリングガンにユーベルコードが集う。再び無数の弾丸が放たれる間際、重力の刃が彼女を襲った。
「重さに沈め」
 義透が手にした黒曜石のような輝きを持つ漆黒の槍から、重力波が放たれた。クラリスが引きつけている間に間合いを取った義透が放つ攻撃がユーベルコードを阻害し、その動きを遅くする。
 そこへ弓矢が降り注いだ。樹上で弓を構えて攻撃の機会を待ち構えていたエルフ達が、一斉に矢を放つ。森を燃やされた恨みが籠もった矢が、重力を振り払おうとするアレキサンドライトの背中に容赦なく突き立った。
 その隙を逃すクラリスではなかった。
「隙を見せたわね!」
 大きく踏み込み、剣刃一閃。肩口から脇腹に掛けて放ったクラリスのクロスクレイモアの一撃が、チーフメイド・アレキサンドライトを大きく引き裂いた。

● その身を挺して守るのは
 大ダメージを受けて大きく後退したチーフメイド・アレキサンドライトは、槍形状の黒曜山を構えて牽制する義透を苦々しそうな視線で睨みつけた。
「猟兵! あなた達さえいなければ、聖木ユグドをお嬢様に献上できたのに!」
「さて、どうして素直に焼かれると思うたのか。こういうことをしていれば、猟兵が駆けつけるのは自明であるだろうに」
「猟兵だって無限にいる訳ではないでしょう? それに対して私達は何度でも蘇るわ。私が失敗しても、別の私が成功すればいいのよ。何度でも森を焼いてあげる!」
「なればわしらは幾度でも森を守るまで!」
 肚の底に響くような声で一喝した義透は、黒曜山を大きく構えると重力波を放った。再び放たれる攻撃に呼応して、矢が木の上から降り注ぐ。その連携に苦虫を噛み潰したように口元を歪めたチーフメイド・アレキサンドライトは、全身を赤紫色にカラーチェンジすると銃口を義透へと向けた。
「ならば何度でも、あなた達を倒すまで!」
 構えたガトリングガンから、鉛玉を吐き出した。義透に向けて放たれる攻撃を、再び結界術で防ぐ。四天霊障による結界で受けきれなかった鉛玉は義透を容赦なく刳り、吹き出す血と激痛に思わず眉を顰める。
「あら、案外耐えるのね」
「わしは『不動なる者』。この程度の攻撃でわしを倒そうなど、片腹痛いわ」
「そう、ならもっと鉛玉をあげるわ!」
「遅い!」
 再びガトリングガンの銃口を向けるチーフメイド・アレキサンドライトに、クラリスが斬りかかった。間合いに入り再び囮として烈火のような連撃を仕掛けるクラリスに、エルフ達が呼応し弓矢を放つ。
「こ、の! 邪魔なのよエルフごときが!」
 肩に刺さった矢を苛立たしげに引き抜いたチーフメイド・アレキサンドライトは、視線を義透に向けたまま矢を放ったエルフの少女に向けて銃口を向けた。咄嗟に対応できない少女の姿に、義透は息を呑んだ。先程義透が助けた、あの少女だ。
「危ない!」
 義透の声に、少女は状況を理解する。直後に放たれた銃弾を避けたエルフの少女が別の木に移った時、胸から提げていたアミュレットが鎖を撃ち抜かれて地面に落ちた。
 慌てて手を伸ばした少女が木から落ちる。そこへ向けて放たれた嵐のような鉛玉の前に、義透は立ち塞がった。
 少女を助けようと動いていた義透に、弾丸が突き刺さる。全身を容赦なく撃ち抜く無数の弾丸に、少女の叫び声が響いた。
「お願い、やめて! 死んじゃうわ!」
「大丈夫」
 ガトリングガンの連射を耐えきった義透は、少女を安心させるように静かな声を掛ける。少女が息を飲む気配を背中に感じながら、義透は安心させるように微笑んだ。
「本来、わしは守る分野担当だからの」
「小賢しい!」
「小賢しいのはあなたよ!」
 怒りと共に、クラリスが斬りかかる。意識が逸れたのを確認した義透は、振り返ると立ち上がれない少女に微笑みかけた。
「大丈夫かの? ならば手伝って欲しい。奴は強敵。わしらだけでは太刀打ちできないからなぁ」
「……分かったわ!」
 大きく頷いた少女が、弓とアミュレットを拾い上げると樹上へ戻る。その姿を見送った義透は、視線を戦場へ戻すと重力波を放った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
主への忠義には敬意を表しますが、故郷の出身の者の人々の狼藉は看過できません
その企て、打ち砕かせて頂きます

エルフ達を●かばいつつUCを起動した盾でガトリングを●盾受けし反射

皆様、援護をお願いします!
狙うは頑丈な体躯ではなく衣服の裾、射貫いて地に縫い付けるのです!

彼らの攻撃を避けるアレキサンドライトの挙動からタイミングを●見切り剣を●投擲
ガトリングの機関部に食い込ませ一時給弾不良に

脚部スラスターの●推力移動で一気に接近
●怪力で頭を掴み宙吊りに

騎士として女性にこのような所業、心苦しいのですが…
その防御、狼藉を持って破らせて頂きます

身体の全格納銃器展開
至近距離で●乱れ撃ち
ひび割れに大盾殴打で殴り飛ばし



● 騎士として守るべきものは
 クリスタルの身体に傷を負ったチーフメイド・アレキサンドライトは、樹上へ戻るエルフ達の姿に憎々しげな目線を投げつけた。
「この、エルフごときが邪魔なのよ! さっさとオブリビオンにおなりなさいな!」
「主への忠義には敬意を表しますが、故郷の出身の者の人々の狼藉は看過できません」
 冷静に言い放ったトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、伸ばした腕からワイヤーアンカー兼用マルチハッキングジャックを木に絡ませると地面を蹴った。
 樹上で弓をつがえるエルフ達に向けられるガトリングガンの銃口から、無数の弾丸が放たれる。その動きに合わせたように自身の身体をワイヤーアンカーで支えたトリテレイアは、弧を描くように移動しながら大盾を構えた。
 エルフ達へ向かう銃弾が、重質量大型シールドによって防がれる。無数の弾丸を受けた大盾は嵐のような攻撃に表面を凹ませるが、その強度は未だ揺るぎない。
 チーフメイド・アレキサンドライトの初撃からエルフ達を守りきったトリテレイアは、着地すると儀礼用長剣を突きつけた。
「その企て、打ち砕かせて頂きます」
「どうかしら? 例え聖木ユグドを手に入れられなくても、最悪一人でもエルフを殺せば私の望みは叶うの!」
 ワイヤーアンカーを狙い撃ちしたチーフメイド・アレキサンドライトは、再びエルフ達に銃口を向ける。彼らがいる木ごと破壊しようとするチーフメイド・アレキサンドライトに、トリテレイアは儀礼用長剣を大きく構える。投擲のために狙いを定めるが、間に合わない。視線を上げたトリテレイアは、矢を放つエルフ達に叫んだ。
「皆様、援護をお願いします! 狙うは頑丈な体躯ではなく衣服の裾、射貫いて地に縫い付けるのです!」
 トリテレイアの声に、エルフ達の矢が一斉に指向性を持つ。翻るメイド服の裾に矢が突き刺さり、その圧にバランスを崩す。一瞬宙に浮いたガトリングガンに、トリテレイアは剣を投げた。
 弩のように大きく反ったトリテレイアの機体が、ばねのように弾かれる。クロスボウのように放たれた長剣は、体勢を立て直したチーフメイド・アレキサンドライトのガトリングガンの駆動部に深々と突き刺さった。
 回転部に突き立った長剣が、嫌な音を立てて巻き込まれる。その刀身と引き換えにガトリングガンの駆動を止めた儀礼用長剣を引き抜いたチーフメイド・アレキサンドライトが、即座に銃口をエルフ達へ向ける。
 無数の矢が降り注ぐのをものともせずに、引き金を引こうとする。稼がれたわずかな時間に、トリテレイアの腕が迫った。
 脚部スラスターを起動し、チーフメイド・アレキサンドライトに肉薄。こちらから逸れた意識の隙を突いたトリテレイアは、チーフメイド・アレキサンドライトの頭を鷲掴みにするとそのまま宙吊りに持ち上げた。
 あまりに不意を突かれたガトリングガンが、誰もいない木の幹を蜂の巣にする。憎々しげな視線を受けたトリテレイアは、ほんのわずか詫びるような声を上げた。
「騎士として女性にこのような所業、心苦しいのですが……。その防御、狼藉を持って破らせて頂きます」
 宣言と同時に、トリテレイアが持つ全身の全格納銃器展開。至近距離で乱れ打たれた銃弾に、チーフメイド・アレキサンドライトの身体から硬質な音が響いた。至近距離からの攻撃に、彼女の体が宙に浮く。手を離したトリテレイアは、大盾を構えるとひび割れを強かに打ち付けた。
「どうか骸の海へお帰りを」
 静かに告げたトリテレイアの全力が、大盾に乗る。全身の力と勢いを乗せた攻撃に、破損した大盾にも大きなヒビが入る。大盾もろとも吹き飛ばす攻撃に、チーフメイド・アレキサンドライトの身体が巨木に叩きつけられた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

北条・優希斗
連携・アドリブ可
…成程。今の族長はリオンさんの弟か
追放された理由は族長達に聞くが…一先ずお前が相手という訳か
先制攻撃+真の姿化でUC発動(詠唱無)
UC+見切り+残像+ダッシュ+地形の利用+戦闘知識+情報収集で敵の攻撃の未来を視て死角に潜りつつ双刀を抜刀
腕のカラーチェンジのタイミングも未来視して回避しつつ、二回攻撃+薙ぎ払い+早業+鎧無視攻撃+串刺し+フェイントで剣戟を叩き込む。
…まあ、そもそも腕で受け止められてもこのUCは模倣出来ないが
俺がアンタの未来をただ『視て』いるだけなんでね
防御は残像で攪乱しつつ見切り、第六感、ダッシュ等で回避
…何で追放された理由が知りたいかって?
ただの『好奇心』だよ


森宮・陽太
【WIZ】
アドリブ連携大歓迎

リオンとユグドの民とやらに何があったかは後で聞き出すとして
今は森を焼いた泥棒を叩きのめさねえとな
てめえのような泥棒は、ユグドの民と俺らの「敵」だ!

真の姿解放
白のマスケラを着用した無感情無表情の暗殺者に
ただ敵を倒すことのみ考える

「高速詠唱」+【悪魔召喚「インプ」】でインプ召喚
インプにはガトリングガンの銃口に飛び込ませたり顔面に殺到させて視界を奪わせたりして
チーフメイド・アレキサンドライトの行動を徹底的に妨害させる(部位破壊、制圧射撃)

俺自身はインプを囮に背後に回り(忍び足、闇に紛れる)
躊躇なく二槍で心臓を串刺しに(ランスチャージ、串刺し、暗殺)
…好き放題できると思うな



● 蒼穹の行方
 巨樹の幹にめり込んだチーフメイド・アレキサンドライトに、樹上のエルフ達が総攻撃を仕掛ける。
 弓で、魔法で恨みを込めて放たれる攻撃に巨樹が大きな音を立てて倒れた。
 攻撃に加わり矢を放つエルフの青年の姿に、北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)は口元に小さな笑みを浮かべた。
「……成程。今の族長はリオンさんの弟か」
「リオンとユグドの民とやらに何があったかは後で聞き出すとして。今は森を焼いた泥棒を叩きのめさねえとな」
 優希斗の隣で槍を構えた森宮・陽太(人間のアリスナイト・f23693)の声に、優希斗は頷く。どの道今は聞き出すこともできないのだから、やるべきことをやるのみだ。
「追放された理由は族長達に聞くが……。一先ずお前が相手という訳か」
 ガトリングガンの掃射でエルフ達の総攻撃を追い払ったチーフメイド・アレキサンドライトの姿に、優希斗は蒼月と月下美人の柄に手を置く。得物を両手にした二人の猟兵達に、チーフメイド・アレキサンドライトは酷薄に口元を歪めた。
「本当に鬱陶しいといったらないわね。エルフも猟兵も! あなた達なんて、お嬢様の創る世界の……」
「遅い」
 一言呟いた優希斗は、焼けた大地を蹴ると一息に間合いを詰めた。真の姿を顕にし、跳躍の後を追うように蒼穹の瞳の光が尾を引き輝く。残された木の根を蹴り加速した身体を、チーフメイド・アレキサンドライトの視界の端で大きく沈める。

 一閃。

 言葉の後ですぐ攻撃が来ることを予測していたかのように。チーフメイド・アレキサンドライトの行動を遮り放たれた居合が、彼女の腹を深く斬り裂く。至近に迫り刹那、視線と視線が交錯する。
 蒼穹の双眸と、赤と緑のオッドアイと。
 優希斗の目に危険なものを感じたチーフメイド・アレキサンドライトは、カラーチェンジした腕を優希斗の目へと突き出した。その腕を避け、駆ける勢いそのままに前方へと抜ける。優希斗を追いかけ更に伸ばす腕に、リッパーナイフが突き立った。
 怯んだ隙に、優希斗は完全に射程から抜ける。憎々しげに腕に刺さったナイフを引き抜いたチーフメイド・アレキサンドライトは、改めて二槍を構える陽太にガトリングガンの銃口を向けた。
「この、どこまでも邪魔を!」
「聖木ユグドだけじゃなくて黒髪のにーちゃんのユーベルコードも盗もうってか? 好き放題できると思うな! てめえのような泥棒は、ユグドの民と俺らの「敵」だ!」
 言い放つと同時に、白のマスケラを身に着けた陽太から感情が消える。召喚した悪魔と共に戦う陽太の姿に再び敵と向き合った優希斗は、チーフメイド・アレキサンドライトが悪魔に気を取られると見るや再度、駆けた。
 再び肉薄する優希斗の姿に、チーフメイド・アレキサンドライトがガトリングガンの銃口を向ける。一斉に掃射される攻撃を残像に受けさせ、できた隙に揃えた双刀を同時に突き出した。腹に突き刺さる二つの刃に、チーフメイド・アレキサンドライトの動きが止まる。
 呼吸を合わせたように放たれた陽太の二槍が、背中からチーフメイド・アレキサンドライトの胸を貫く。槍の切っ先を目のわずか先に見据えた優希斗は、崩れ落ちるチーフメイド・アレキサンドライトの身体に双刀を引き抜いた。

● 白面の行方
 エルフ達の総攻撃を遠目に見た陽太は、恨みの籠もった攻撃に口笛を吹いた。焼け残った貴重な大木もろとも打ち倒す攻撃の指揮を取っているのは、先刻見た族長の青年だ。何やら因縁のありそうな相手に、優希斗の静かな声が聞こえてきた。
「……成程。今の族長はリオンさんの弟か」
「リオンとユグドの民とやらに何があったかは後で聞き出すとして。今は森を焼いた泥棒を叩きのめさねえとな」
 言いながら槍を構える。かなりダメージを受けたとはいえ、相手は幹部猟書家。油断できる相手ではない。同じことを考えたのだろう。静かに戦意を顕にする優希斗が、意識を切り替えるようにチーフメイド・アレキサンドライトに声を上げた。
「追放された理由は族長達に聞くが……。一先ずお前が相手という訳か」
「本当に鬱陶しいといったらないわね。エルフも猟兵も! あなた達なんて、お嬢様の創る世界の……」
「遅い」
 直後、優希斗の姿が隣から消える。無詠唱で先制攻撃を仕掛ける優希斗に、チーフメイド・アレキサンドライトのカラーチェンジした腕が迫る。眉を顰めた陽太は、咄嗟にリッパーナイフを投擲した。
 刺さるナイフに、チーフメイド・アレキサンドライトの動きが止まる。あの腕はユーベルコードをコピーするのだろう。もしあの手が優希斗の目に刺さっていたら、下手をすれば失明する。そこまでして敵の技を盗もうとするチーフメイド・アレキサンドライトの姿に、陽太の中の何かがふつりと切れた。
「この、どこまでも邪魔を!」
「聖木ユグドだけじゃなくて黒髪のにーちゃんのユーベルコードも盗もうってか? 好き放題できると思うな! てめえのような泥棒は、ユグドの民と俺らの「敵」だ!」
 「敵」。その単語を口にした直後、陽太の心から感情が消え去る。白のマスケラを身に着け遮られた視界は、余計な情報を遮断し深い集中を陽太に齎す。
「……我が声に導かれ現れた悪魔の子よ、その邪悪な知恵と魔力を持って、目の前の敵を殲滅せよ!」
 詠唱と同時に、陽太の周囲に子供が現れた。体長10センチほどの大きさの子供たちが、無垢な笑みを浮かべながら陽太をじっと見つめて微笑む。その姿を無感動に見やった陽太は、ガトリングガンの銃口を向けるチーフメイド・アレキサンドライトを指差した。
「行け」
「はーい!」
 その一言で全てを悟ったインプの子供たちが、一斉に銃口に向けて飛翔する。陽太に向けて放たれた無数のサイキックエナジーの弾の前に躍り出た子供たちが、悲鳴を上げながら地に落ちる。仲間を盾に進んだインプがチーフメイド・アレキサンドライトの視界を遮るように健気な体当たりを食らわせるが、容赦ない腕に叩き落される。
 何度叩き落されても悪魔の翼で再び飛び立つインプ達を囮にした陽太は、音もなくチーフメイド・アレキサンドライトの背後に迫った。
 敵の気が逸れた瞬間、一気に二槍を突き出す。心臓を刳り抜いた槍の穂先の先に何か気配を感じたが、別にどうでもいい。
 崩れ落ちたチーフメイド・アレキサンドライトの姿に槍を引き抜いた陽太は、白のマスケラを外すと息を吐いた。召喚したインプ達は既に消え、目を閉じた優希斗が双刀を鞘に収めている。
 当面の危険はないと判断した陽太は、二槍を鞘に収めると優希斗の横顔を見た。何故かひどく緊張した様子の優希斗を和ませるように、戦闘前の会話を振る。
「なあ、黒髪のにーちゃん。なんでリオン追放の理由が知りたいんだ?」
「なぜ、とは?」
「いや、なんでかなって」
「ただの『好奇心』だよ」
「……好奇心か。ならしゃーねえな」
 小さく肩を竦める優希斗に、陽太は髪を掻き上げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神咲・七十
アドリブ・連携お任せ

森って結構美味しい物があるんですよ。
此処にもいろいろあるそうなので、このまま燃やされるわけにはいきません


(ショットガンの牽制とエルフさん達の援護で近づき、大剣と尻尾の連帯攻撃で近距離戦をしながら、隙をみてUC『万花変生』を使用し、隷属させる植物と一緒に相手に寄生する植物も植え付けて相手の動きを阻害し)

まだ終わりじゃないですよ。
それっぽいもう一押しがあります。

(アレキサンドライトのいる地面から蔓や木の根を生やし巻き付かせて、体の動きを完全に封じ)

私のものになって森にある美味しい物の良さを知ってもらいますよ

(寄生植物を操って、隷属させる条件を満たし隷属させて取り込もうと)



● 隷属の捧げ先は
 膝をついたチーフメイド・アレキサンドライトは、顔を上げると森の奥へと駆け出した。猟兵達の隙を突き走る。追いかける猟兵もエルフ達も振り切り、森の奥へと突き進んだ。
「忌々しい! 忌々しい忌々しい! こうなったらエルフの里のガキどもを焼いて……」
「ちょっと待った」
 駆けるチーフメイド・アレキサンドライトに向けて、神咲・七十(まだ迷子中の狂食者・f21248)は浸食武具セプトゥアーギンターの銃口を向けた。
 直後に放たれる、ショットガンの弾がチーフメイド・アレキサンドライトの足に命中。硬質な音を立てて踵を砕いた七十の攻撃に呼応して、追いついたエルフ達が弓でチーフメイド・アレキサンドライトを牽制する。転びかけながらも辛うじてバランスを保ったチーフメイド・アレキサンドライトは、七十を睨みつけると憎々しげな声を上げた。
「まだ邪魔をするというの猟兵!」
「もちろん。森を焼くだなんて、まだそんなこと言ってるんですか? 森って結構美味しい物があるんですよ。此処にもいろいろあるそうなので、このまま燃やされるわけにはいきません」
「私に聖木ユグドを渡せば、いくらでも再生してあげるわ! お嬢様の膝の下でね!」
 ガトリングガンの銃口を向けるチーフメイド・アレキサンドライトに、七十は一気に駆け寄った。漆黒の大剣の腹でガトリングガンの銃身を跳ね上げ攻撃を空振らせたところに、すかさず尻尾が畳み掛ける。防御姿勢を取ったチーフメイド・アレキサンドライトに、エルフ達の魔法が突き刺さった。
 矢継ぎ早に攻撃を仕掛ける七十の攻撃に、チーフメイド・アレキサンドライトがたまらずバックステップで距離を取る。大きく飛び退き着地したその足に、蔦が絡まった。足を振り上げ引き抜こうとするが、ワイヤーのように強靭な蔦はふくらはぎを捕らえて離さない。
「何? これ」
「まだ終わりじゃないですよ。それっぽいもう一押しがあります」
 七十の呼びかけに、見たことのない植物が次々にチーフメイド・アレキサンドライトを締め付けるように伸びる。蔦が、根が、枝が、逃れようともがくチーフメイド・アレキサンドライトを逃すまいと一斉に生育しては締め上げる。腕を振り上げるチーフメイド・アレキサンドライトの胴体が、猛烈に締め上げられた。
「がっ……!」
「痛いですか? 苦しいですか? あなたが森にしてきたことへの報いですよ。あなたは森の一部となって、永遠に罪を償うのです。そして、私に隷属させてあげましょう」
「な、何を……」
「私のものになって、森にある美味しい物の良さを知ってもらいますよ」
 嗜虐的な笑みを浮かべた七十が、隷属化させる植物の種をチーフメイド・アレキサンドライトへと埋め込み自身へ取り込もうとする。禍々しい植物の種がチーフメイド・アレキサンドライトに埋め込まれる寸前、銃声が響いた。
「させ……ないわよ!!」
 チーフメイド・アレキサンドライトのユーベルコードが、自身に向けて放たれる。無数のサイキックエナジーの銃弾は植物たちを引き裂き、同時に自分を傷つけながらも束縛と隷属の樹を破壊していった。
「私の名は、チーフメイド・アレキサンドライト! お嬢様へ聖木ユグドを捧げるために来た猟書家よ! 痛みや束縛だけでお嬢様への忠誠をなくさせようだなんて、そんなやわなメイドじゃないわ!」
「そう。残念。じゃあここで死んでください」
 ため息をついた七十が間合いを詰め、漆黒の大剣を振り下ろす。攻撃をガトリングガンの銃身で受け止めたチーフメイド・アレキサンドライトは、大きく蹴りを入れると身を翻し森の奥へと駆け出す。
 腹に受けた衝撃をやり過ごし立ち上がった時、そこにチーフメイド・アレキサンドライトの姿はなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

木常野・都月
貴女が森をこんな風にした張本人か。
森は、命と命が繋ぎあい培われてきた場所だ。
それを一方的に奪い去るなんて。
森で育った狐として、絶対に許せない。

真の姿で挑みたい。
[野性の勘、第六感]で敵の動きを捕捉[情報収集]したい。

敵の攻撃は[高速詠唱、範囲攻撃、カウンター]で対処したい。

UC【精霊の矢】を闇の精霊様の助力で撃ちたい。
全部じゃなくていい。
硬い鉱石の肌に1つでも多く刺さってくれればそれでいい。

刺さった矢を起点に、闇の精霊様の[属性攻撃、全力魔法]で敵を押し潰したい。
闇に押し潰されて粉々に消えて欲しい。

もう俺に余力はないけれど…。
叶うなら、この森に植物や地の精霊様達が、早く来て下さいと、願いたい。


ユディト・イェシュア
あなたがこの森を…
エルフの皆さんを皆殺しにして森を焼き尽くし聖木を奪う…
そんなこと絶対にさせません

エルフの皆さん
もう少し力を貸してもらえますか
弓矢や魔法で援護をお願いします
敵は強力ですが皆さんの攻撃を無視はできません
少しでも隙を作れば仲間が攻撃しやすくなります
守りながら鼓舞します

攻撃は俺が防ぎます
必ず皆さんもこの森も守りますから

一本の木を得るために森を全て燃やすなど
優秀なメイドにしては雑な仕事ぶりだと思いませんか?
異世界からの異物を掃除するのは俺たちの方です
どうぞ早々にお帰りください

挑発して攻撃はこちらに向かうように

この世界は俺の故郷
エルフの皆さんにとっても大切な森
帰る場所を失わせはしません


桜雨・カイ
……あなたにも大切な主がいるようですね。
それでもこの森は、聖木は奪わせる訳にはいきません。

作戦は先程と同様に、まずは私が彼女を相手にするので
エルフの皆さんは、別の方向から攻撃して下さい。
…とはいえ、今度はあのガトリングからの攻撃を止めないと危険ですね

どうやらUCをコピーできるようですが
その攻撃を受け止めなければ発動できないようですね
それなら…【審判さん】、力を貸して下さい!
【アルカナ・グロウ】発動
回避のスピードを上げ、相手の攻撃を躱しながら突進し【念糸】でその腕を拘束します。これならコピーできないでしょう!
同時にガトリングを蹴りつけて【武器落とし】を狙います

拘束している間に攻撃をお願いします!



● 鉄壁の守護
 全身に罅を入れた身体を引きずるように、チーフメイド・アレキサンドライトは走る。
 気配を消しエルフの森の奥へと向かうチーフメイド・アレキサンドライトは、ついにエルフの里の入り口を見つけた。人一人がようやく入れる結界の隙間だ。
「見つけた……。ここね。上空から確認した通りだわ。この森には戦闘力のないエルフどもがいるはず。一人でも道連れに……」
「させませんよ」
 森の中へと駆け込もうとするチーフメイド・アレキサンドライトの前に立ったユディト・イェシュア(暁天の月・f05453)は、背中で結界を守りながら彼女の姿に眉を寄せた。
「あなたがこの森を……。エルフの皆さんを皆殺しにして森を焼き尽くし聖木を奪う。そんなこと絶対にさせません」
「私はお嬢様のメイド。お嬢様のお望みになるものを手に入れるのに、何を躊躇する必要があるのかしら?」
 高らかに笑ったチーフメイド・アレキサンドライトは、ガトリングガンの銃口をユディトに向けて狙いを定める。微動だにしないユディトに、チーフメイド・アレキサンドライトは叫んだ。
「さあ、そこをどいてもらうわ! エルフを一匹でも殺して、お嬢様への供物へするの!」
 その直後、無数の弾丸が放たれた。赤紫色のボディにカラーチェンジしたチーフメイド・アレキサンドライトは、100発/秒で発射されるガトリング砲でユディトのみを狙い撃ちにする。咄嗟にユーベルコードを発動させたユディトは、放たれる弾丸の雨を一人で受け止め続けた。
「ふうん、頑丈なのね。でもいつまで続くかしら?」
「いつまででも。一本の木を得るために森を全て燃やすなど、優秀なメイドにしては雑な仕事ぶりだと思いませんか?」
「効率がいいと言って頂戴。聖木ユグドがどんな木なのか分からないのだもの。それにどうせエルフは皆殺しにするのだから、火で囲めば逃げ場も無くなって一石二鳥よ」
「この世界は俺の故郷。エルフの皆さんにとっても大切な森。帰る場所を失わせはしません」
「帰る場所ならあるわ! お嬢様が作る世界こそが故郷! お嬢様の望みこそが私の望み! そのためならばこの生命、いくらでも捧げる覚悟があるの!」
 吠えるチーフメイド・アレキサンドライトが、ガトリングガンの攻撃の手を緩めずユディトを攻め立てる。無敵城塞で痛みは無いが、代償に一歩も動けない。同時に一瞬でも気を緩めれば、一瞬で蜂の巣にされてしまう。だがこうしている間にも、チーフメイド・アレキサンドライトの寿命は確実に削られている。全身をボロボロにしたチーフメイド・アレキサンドライトの命もいずれは果てるだろうし、ここに引きつけておけば味方が追いついてくれる。
 瞬きもせず、身動きもせず。
 一瞬たりとも気を緩めずユーベルコードを発動させるユディトだが、額に流れる汗に一瞬気を取られる。
 集中が解ける刹那、細い糸が放たれた。

● 繰糸
 連続するガトリングガンの銃声に足を早めた桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)は、エルフの森の入口で繰り広げられる消耗戦に立ち止まった。
 チーフメイド・アレキサンドライトの姿を見失い、一斉に索敵に入った。別の方向を探索していたカイはすぐに駆けつけたが、静と動の攻防にすぐに割って入ることができなかった。
「帰る場所ならあるわ! お嬢様が作る世界こそが故郷! お嬢様の望みこそが私の望み! そのためならばこの生命、いくらでも捧げる覚悟があるの!」
 チーフメイド・アレキサンドライトの声に、眉を顰める。立場の違いこそあれ、チーフメイド・アレキサンドライトも「お嬢様」のために生きている。命をかけても守りたいであろう主人が。
「……あなたにも大切な主がいるようですね。それでもこの森は、聖木は奪わせる訳にはいきません」
 とはいえ、今度はあのガトリングからの攻撃を止めないと危険でうかつに近づくこともできない。しかもチーフメイド・アレキサンドライトはユーベルコードをコピーする能力も持っている。どちらも危険な能力だった。
 続く攻撃に、ユディトに一瞬の隙ができる。そこを狙い力を込めるガトリングガンに、カイは念糸を放った。ガトリングガンの回転部に糸が入り込む。ものすごい勢いで巻き取ってくる念糸を手放したカイは、不発に終わる攻撃に念糸をほどくチーフメイド・アレキサンドライトに駆け寄った。
「【審判さん】、力を貸して下さい!」
 詠唱と同時に現れた審判のアルカナを、強い意志で正位置に戻す。チーフメイド・アレキサンドライトを倒し、エルフとその森、そして聖木ユグドを守る。そのための成長を望むカイの意思に、審判のアルカナは光で応えた。
 アルカナの持つ力が運命を切り開く力が宿り、世界がふいに遅くなる。やけにゆっくり放たれるガトリングガンの鉛玉を回避したカイは、地を蹴り猛突進を仕掛けると念糸を放った。
 先程の攻撃を覚えているのだろう。ガトリングガンを庇う腕を念糸で幾重にも拘束する。何事かゆっくり叫んだチーフメイド・アレキサンドライトが巻き付かれた腕をカラーチェンジさせてコピーを試みるが、念糸はカイの得物の一つに過ぎない。
「これならコピーできないでしょう!」
「小賢しいわ猟兵!」
 叫ぶチーフメイド・アレキサンドライトの腕から、ガトリングガンを蹴り落とす。跳ね上げられたガトリングガンが地面に突き刺さった時、ゆらりとした闇の気配が辺りに満ちた。

● 妖狐の闇
 下草を踏む音とともに現れた木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)は、深い色の目でチーフメイド・アレキサンドライトを見据えた。そこに宿るのは闇。凝った怒りは既に感情を通り越し、むしろ理性的にさえ見えた。
「貴女が森をこんな風にした張本人か」
 真の姿を現し、青年の姿になった都月の声が静かに響く。有無を言わさぬ力を帯びた声に一瞬怯んだチーフメイド・アレキサンドライトは、腕を封じられたまま強気に言い放った。
「そうよ。安心なさい。森で死んだ命も、オブリビオンとなればお嬢様の下僕に……」
「森は、命と命が繋ぎあい培われてきた場所だ。それを一方的に奪い去るなんて」
 ゆらりと顔を上げた都月が、闇色の目をチーフメイド・アレキサンドライトに向ける。ゆっくり上げた手を握り、人差し指を向けて意識を集中させた。
「森で育った狐として、絶対に許せない」
 都月の周囲に、濃厚な闇の気配が集まる。ともすれば詠唱者をも飲み込んでしまいそうな闇を召喚する都月に、チーフメイド・アレキサンドライトは残された腕でガトリングガンを拾い上げた。
「何をするのか知らないけど、そんな異物なんてこのガトリングガンでお掃除して差し上げるわ!」
 都月に狙いを絞ったサイキックエナジーの弾丸が放たれる。無数の弾丸は都月の放つ闇のオーラを斬り裂き、詠唱を続ける都月に迫った。
 そんなことには構いもしない。例え傷ついても痛くても、自分の身体がどうなっても、この怒りを闇の精霊に託さなければ都月の気がすまない。一歩も引かない都月にサイキックエナジーが迫った時、白い影が動いた。

● 守護者と闇の精霊
「危ない!」
 声と同時に駆け出したユディトが、都月を庇う。都月が受ける弾丸を防御姿勢で受け止めたユディトは、全身を襲う苦痛にも構わず叫んだ。
「異世界からの異物を掃除するのは俺たちの方です。どうぞ早々にお帰りください。ーーエルフの皆さん!」
 里の中で様子を伺っている非戦闘要員のエルフ達に、ユディトは声を張り上げる。例え危険でも、余所者が気に食わなくても、彼らの森は彼らが守らなければ。
「もう少し力を貸してもらえますか。弓矢や魔法で援護をお願いします。敵は強力ですが皆さんの攻撃を無視はできません。少しでも隙を作れば仲間が攻撃しやすくなります。だから!」
 ユディトの声に、見守っていた気配が拡散する。唇を噛んだユディトは、ふいになくなるガトリングガンの圧に顔を上げた。反対の手に念糸を通したカイは、チーフメイド・アレキサンドライトを包み込むように解き放つと、今度こそガトリングガンを叩き落とした。
「拘束している間に攻撃をお願いします! この森を焼いた敵は、あなた達も討つべきです!」
 反対の手で繰り出した念糸が、チーフメイド・アレキサンドライトを完全に拘束する。動きを止めたチーフメイド・アレキサンドライトに、矢が射掛けられた。
「やるぞ! 総攻撃だ!」
 声を張り上げた年配のエルフが、里に残ったエルフ達を指揮して攻撃を仕掛ける。樹上に移動したエルフ達は、チーフメイド・アレキサンドライトに向けて一斉に攻撃を仕掛けた。
 矢が、魔法が、精霊が。
 森を焼いたチーフメイド・アレキサンドライトに無数の攻撃を仕掛けた。
「く……っ! こんな、エルフごときが……! やめなさい! あなた達はオブリビオンとなりお嬢様に尽くすという未来が……!」
 チーフメイド・アレキサンドライトの声が響いた時、攻撃がやんだ。
 狂乱の攻撃が止まった時、闇の魔法が放たれた。チーフメイド・アレキサンドライトに突き立った闇の矢は、その心臓に突き立ち闇の魔力を注ぎ込む。
 刺さった矢を起点に、闇の精霊が溢れ出す。チーフメイド・アレキサンドライトの色鮮やかな身体を包み込んだ闇の精霊は、まるで抱擁するように彼女をその腕に抱いた。
「な、何をするのやめなさい! やめ……」
 チーフメイド・アレキサンドライトの声が、闇に呑まれて消えていく。ひとかたまりの闇となったチーフメイド・アレキサンドライトに、都月は静かに告げた。
「闇の精霊様に押し潰されて、粉々に消えて」
 その声に応えるように、闇の精霊が徐々に小さくなっていく。ついには親指ほどの大きさになり消えた時、そこにチーフメイド・アレキサンドライトの姿はなかった。

● 祈り
 戦いを終え、念糸を外したカイは都月へと駆け寄った。
 最後、カイは見守るしかなかった。圧倒的な怒りと悲しみにより放たれた闇の精霊に呑まれたチーフメイド・アレキサンドライトは、もう既にこの世界にいない。あれほどの力を出した都月の心中はいかほどのものだろう。
「都月さん。大丈夫ですか?」
「……。だいじょうぶ」
「もう、チーフメイド・アレキサンドライトは消えました。森もまた元に戻るでしょう」
 カイの励ましに、真の姿から戻った都月は顔を上げた。その姿に、隣で心配そうに覗き込んでいたユディトがエルフの癒やしを受けながら安心したように微笑んだ。
「そうです。脅威は去りました」
「ユディトさん、その怪我。それにカイさんの念糸も闇の精霊様が持って行っちゃって……」
「頑丈だから大丈夫です」
「念糸はまた作ればいいんです。都月さんが無事で良かった」
 カイとユディトの励ましに、都月は少しだけ微笑む。風に乗って漂ってきた焼けた木の匂いに、都月は鼻をひくりとさせた。
「もう俺に余力はないけれど……。叶うなら、この森に植物や地の精霊様達が、早く来て下さいと、願いたい」
「俺も祈ります」
「大丈夫です。この森は必ず蘇ります。何の力もありませんが、私も祈ります」
 ユグドの森に立った三人が、それぞれの祈りを捧げる。
 傷ついたユグドの森を流れる風が、三人の頬を撫でては里の奥へと消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年12月09日
宿敵 『チーフメイド・アレキサンドライト』 を撃破!


挿絵イラスト