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ルートレス・キャラバン

#クロムキャバリア #通常シナリオ

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#クロムキャバリア
#通常シナリオ


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●ルートレス・キャラバン
 格納庫を備えた大型戦車が巡航速度で砂利を穏やかに巻き上げる。
 キャビンに備え付けられた安いソファに埋もれた長身の影が、安価なシガレットに火を付ける。安価と言えど、その価格は全て、生産施設であるプラントの機嫌次第と、紫煙を燻らせる。
「ああ、頭。もう在庫少ないですって!」
「明日も分からん商売だ。ケチケチすんな」
「駄目ですよー、隊長。幾ら今回の仕事が順調に進んでいるからって」
 物資管理を終わらせ、休憩に来ていた1人と、資金繰りを担当する補佐役から非難を浴びて、隊長と呼ばれた人物は、瞳を伏せて紫煙を吐き出した。
「隊長? 気がかりなことでも」
「上手く行き過ぎてる時ってのは大抵、厄介事が起きる前触れだ。嫌な予感がする」
 この戦車を居住地とするルートレス・キャラバンは、あらゆる小国家で運搬を請け負う、フリーの運び屋だ。気心知れた知り合いを集め、素性の分からない物が集まり、行き場の無い子供の中から気に入った者を拾っていく内に、それなりの大所帯となっている。
 煙を燻らせたまま、コクピットへ移動すると、大型戦車が何処にでも有る焼けた荒野を、静音機動とジャミングで存在を隠蔽しつつ、天候に気を配り、無線を傍受し、依頼を受けた小国家から、距離の有るプラントの物資を運ぶ、何時もの簡単でありながら、有り触れた不幸で何もかもを失う、難しい仕事に、煙と帽子で表情を隠し、沈黙する。
 嫌な予感は、残念ながら的中した様だ。大型戦車全体に奔るレッド・アラート。敵意を持った砲弾が、周囲一帯を取り囲む。
「狼狽えるなよ。総員、戦闘準備! 戦えねえ奴は頭下げて口閉じろ。供養は責任持ってしてやるからよ!」
 コクピットの監視員から実弾兵器の旨、敵影はざっと20程。包囲の足は早い。
「敵影、リグオン型の制圧砲撃戦フレーム。パイロットの生体反応無し。指揮官機による遠隔操縦と思われます」
「安全地帯を草の根掻き分ける気分で走ってるってのに、随分と暇な金持ちも居るもんだ。いや、アレか、オブリビオン・マシン絡みかね?」

●グリモアベース
「クロム・キャバリアでオブリビオン・マシンの活動が確認された。人助けになるが、解決を依頼するな」
 海神・鎮(ヤドリガミ・f01026)は猟兵に資料を渡すと、自身も帳面を捲り、本題の前に、クロム・キャバリアと言う世界について説明を始める。
「分かっとる人は本題に入るまで聞き流してな。この世界は多数の小国家が争い合っとる世界じゃな。原因は物資の不足。プラントって生産施設の奪い合いじゃ。この状態が100年続いとって、すっかり世界は荒れ果てとる」
 その主力兵器となっているのがキャバリアと呼ばれる、全高5m程の有人機械兵器だ。全高15mの生産施設「プラント」を奪い合う、或いは維持する構図となっている。
「プラントは遺失技術によって作られとるから再現は不可能じゃが、食料、鋼材、キャバリアの動力源、何でも生産出来る万能生産施設じゃな」
 同様に、遙か上空には高速飛翔体を無差別砲撃する暴走衛星が今も地上を見張っており、これの影響によって広域通信網は全て破壊されている。
「地形情報や優れた情報共有装置は無え。誰も世界の全体像は分からん。そういう世界よ。猟兵は戦力として歓迎される事が多いよ。まあ、今回はもうちょっと小規模な依頼になるよ」
 鎮は長くなったと一度頭を下げ、緑茶で口と喉を湿らせる。
「本題に入るよ。プラントからの輸送を請け負っとるキャラバンの大型戦車が、オブリビオン・マシンの影響を受けたキャバリアの集団に襲撃されとるけー、この状況を打破して欲しい。応戦は出来るみてえじゃが、ある程度、死傷は覚悟しとるじゃろうな」
 一先ずの敵は無人のリグオンと呼ばれる量産型キャバリア20機程度。ルートレス・キャラバンも、保有キャバリアと砲撃による応戦を開始する物と思われる。
「事前に送れるけー、時間の余裕は有るよ。状況打破の方法は皆に任せる。宜しく頼む」
 最後に鎮は深く頭を下げ、猟兵達を送る準備をし始めた。



●挨拶
 紫と申します。
 間を置かずクロム・キャバリア。
※【3章構成】【通常シナリオ】です。

●シナリオについて
・章構成
 集団戦→ボス戦→日常となっております。

・1章の目的
 ルートレス・キャラバンの被害を抑えつつ、無人キャバリア【リグオン推定20機】を撃破することです。時間猶予は有ります。事前準備等はお好きにどうぞ。

・ステージ
 荒野。障害物は有りませんが、ルートレス・キャラバンに掛け合えば、役に立つ物が出てくるかも知れません。

・ギミック
1:戦場ではルートレス・キャラバンの有人キャバリアが数機、応戦している状況となります。
2:キャラバン側は猟兵に貸与できるキャバリアを所持していません。代わりに、近隣の小国家に掛け合えば、キャバリアは猟兵に貸与されます。あらゆる偶然によるキャバリア発見、入手も可能です。
3:時間の猶予は有ります。事前にやりたいことや準備等はお好きにどうぞ

●その他
・1章毎にオープニングを制作致します。
・PSW気にせず、好きに動いてみて下さい。
・途中参加:歓迎。
・生身での戦闘も可としておりますので、ロボットの知識や機械知識皆無でも気軽にご参加下さればと思っております。

●最後に
 なるべく一所懸命にシナリオ運営したいと思っております。
 宜しくお願い致します。
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第1章 集団戦 『ファイア・リグオン』

POW   :    戦術パターンA『火力制圧』
【全武装の一斉射撃による飽和攻撃】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    戦術パターンB『可変射撃』
【RS-Sショルダーキャノン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    戦術パターンC『牽制射撃』
【RSハイパーガトリングガン】【RS-S高誘導ミサイル】【RS-A左腕部ロケットバズーカ】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

開条・セサミ
・心情
カプセライズ・ヘッドオン!
さーて、無人の砲撃戦機が相手か……厄介な代物だねこういうのも
オブリビオンマシンに修理とかそういう概念があるのかは知らねぇが、こっちは損害ばかりだしな
とはいえ、人的被害を出さないようにしないとな!
CGP-CC-001『ドン・キホーテC3』、行くぜっ!

・戦闘
敵の砲撃は【盾受け】でいなしつつ、【ランスチャージ】と【なぎ払い】で近接戦闘に持ち込む
ついでだ、ユーベルコード『ウェポンズ・トランスポート』で奴らに最適な武装を選択して、攻撃していくとするか!

・その他
アドリブなどは大歓迎だぜ!


村崎・ゆかり
国と国を繋ぐこんな隊商も存在してるのね。
人々の笑顔を守るため、手を貸しましょ。

「式神使い」と器物覚醒。『GPD-331迦利(カーリー)』(表記はいつも通り)起動。

鋭角に「オーラ防御」を展開して、隊商のキャバリアを襲っている機体をまずは撃退して引き剥がす。
向こうも無人機なのよね。それなら遠慮しなくていいわね。
「全力魔法」酸の「属性攻撃」「範囲攻撃」「結界術」「呪詛」の紅水陣を展開。敵キャバリアの装甲や武装を溶かしていく。センサー系にもダメージでしょうね。
十分な被害を与えられたら、『迦利』が「レーザー射撃」「弾幕」「制圧射撃」「衝撃波」を使いつつ、「オーラ防御」を纏って吶喊。無人機相手は楽でいい。


シーザー・ゴールドマン
『ルベル』にステラと協力しての自律戦闘を指示。
ステラの『アルブス』とルベルが戦闘を開始した後、大型戦車内にいつの間にか現れて。

やあ、お困りのようだね。
ハハハ、失礼、立て込んでいる様なので黙って入らせてもらったよ。
今、外で戦っているのは私の仲間だ。安心したまえ。
この件は君も予想している様にオブリビオンマシン絡みで私達はそれを解決に来たという訳だ。

自己紹介後は外の戦闘をステラとルベルの戦いぶりを見物。敵POWUCが大型戦車を捉える可能性がある場合のみ光速で魔力弾を放って、撃破します。(アララトの流星)

◎/ステラと


ステラ・リデル
『アルブス』に搭乗して無人機である『ルベル』と共に戦場へ。

さあ、アルブス、貴方の初陣ですね。
シーザーが見ています。ルベルには負けられませんよ。

『魔力解放Ⅲ』を発動。
最初は慣らし運転的に敵群の合間を縫う様に超低空飛行で縦横無尽に飛び回り、すれ違いざまのオーラセイバー(キャバリアサイズ)で切り裂いて撃墜します。
ある程度、慣らした後は数十もの魔法陣を展開。
そこから数百発の様々な属性の魔力弾を放って幕引きを図ります。

◎/シーザーと


風祭・ヒュウガ
【新世界学園】
ラスト(f30099)、ノーウォー(f30111)と共に自身のキャバリア"フーガ"で出撃
黒を基調とした機体には遠距離武装なし、突撃して拳と脚で格闘戦を仕掛けるガチガチの近接仕様

「『フーガ』了解だ。……ンじゃ、派手にいくとするか」
「ッハ、心配すんなって。……お前らが料理にありつく頃には皿の上はカラッポにしといてやる」

ラストの言う〈妖精の祝福〉に対しては
「ンだこりゃァ? ……まぁ、支援っつーなら、好きにすりゃいいさ!!」

機体の全身に光の力場"フォトン"を纏い、突撃
真っ先に敵陣に突っ込んで敵の陣形をズタズタにしてやンよ


取りこぼしは……
「おらよ、そっちの分だ! とっとと片付けな!!」


ノーウォー・ノーライフ
【新世界学園】
機体は様々な企業のパーツ・武装を継ぎ接ぎした量産型キャバリア
今回は射撃に重きを置いたチューンナップ

「こちら『ゴースト』、了解しました」
「『フーガ』、突っ込みすぎて孤立するなよ」
「……そんな勢いだから言ったんだが……まあいいか」
「……風紀副委員長、援護感謝します。一応。」(データを取られていくログを見ながら)

「ふむ、もう少し射程が欲しいな……」
ちらりと見たキャラバンの荷物に、丁度キャバリアの射撃武装を見つけて【緊急換装】
「悪いな、納品前のテスト射撃だと思ってくれ。損害が出た場合は新世界学園に請求を」
長射程を手に入れて攻勢に出るきっかけを作り
「了解、撃墜ポイント貰います」


ラスト・バレット
【新世界学園】
学園の仲間と3人で出撃
機体は緑色をベースにした汎用型量産機

「こちらラスト、乗機は『ピーターパン』」
「今回の目的はキャラバンの保護及び敵性キャバリアの排除」
「『ゴースト』は俺と共にキャラバンの護衛と援護、『フーガ』は突っ込んでかき回せ」
「OK?なら、お前たちに〈妖精の祝福を〉」

キャラバンの護衛に向かい、対話する
「我々は新世界学園委員会連合、俺は風紀委員副委員長ラスト・バレット」
「これよりそちらの護衛に回る、『よろしいか?』」

「OK、では貴方がたにも<妖精の祝福を>」

合意した仲間やキャラバンをUCで強化

「ゴースト、俺が追い込む。当てろ」
「フーガ、今から”40秒”右は気にしなくていい」


バーン・マーディ
無人機が相手か
良い

ならば爆発させても問題はないな

マーズよ
その力を見せてみろ(降臨する機神

…む…?
随分と警戒しているな…此奴ら…いや…その向こうにいる相手か

成程…貴様が警戒する輩か
だが…それでも尚突き進むとしようか

【戦闘知識】
敵陣の把握
その動きと戦術パターンの解析

【オーラ防御】展開
牽制が厄介か

食らわなければよい
逆に食らえば尚問題はない

UC発動

【切り込み】による突撃
敵の射撃は【武器受け】でダメージを抑え
【二回攻撃・カウンター】でミサイルやバズーカは軍神の剣で切り裂き

【怪力・吸血・生命力吸収・鎧破壊・鎧無視攻撃】で容赦なく両断にかかる
須らく粉砕する

投げ飛ばして他の機体にぶつける
今回は容赦なし



●ネバーランドの住民
「こちらラスト、乗機は『ピーターパン』」
 バランスの良い、拡張性能に優れた緑色の量産型キャバリアに搭乗したラスト・バレット(錆びた銃弾・f30099)が、隊列を組んだ仲間達に声を掛けながら、機体を滑らせる。 
 機体武装は見る限り、腰部ハンガーの特殊合金製の斧、背部に取り付けたボルトアクション式のライフルのみだ。
「今回の目的はキャラバンの保護及び敵性キャバリアの排除」
 コクピットモニタに、レーダーが捉えた包囲の網が映る。緑瞳は感情を映さず、大まかな方針を仲間達に伝達する。
「『ゴースト』は俺と共にキャラバンの護衛と援護、『フーガ』は突っ込んでかき回せ」
「こちら『ゴースト』、了解しました」
 新世界学園に、幾多も有る企業のパーツを、資金不足の中やりくりして作り上げた、ジャンクスレスレの継ぎ接ぎのワンオフ。四肢はおろかヘッド、ボディ、カラーリングに至るまで統一感の無いパッチワーク。射撃戦用にチューンをしたものの、侭ならないパーツ相性如何はどうしようもなく、好調な機体など目にしたことも無い。常にイエローシグナルを漏らすモニタに、どうでも良いと、ノーウォー・ノーライフ(生き損ない・f30111)はしょぼくれた青い瞳に諦観を宿し、やや遅れながらも、2人に追従する。
「『フーガ』了解だ。……ンじゃ、派手にいくとするか」
 背部から赤黒い光子を排出し、推進力としていた黒色の機体が、ラストの指示で最前列に躍り出る。生体認証、己以外扱えないことから、生体ユニットとも言える風祭・ヒュウガ("フーガ"・f30077)は、好戦的に唇を釣り上げ、更に己の身体から光子を絞り出し、フーガと呼ばれる黒色に送り込み、出力を上昇させる。
「『フーガ』、突っ込みすぎて孤立するなよ」
「ッハ、心配すんなって。……お前らが料理にありつく頃には、皿の上はカラッポにしといてやる」
「……そんな勢いだから言ったんだが……まあいいか」
「OK? なら、お前たちに、妖精の祝福を」
 内蔵されている並列式学習システム、ティンカーベル・システムを2人に介入させると、全てのモニタにメッセージが表示される。貴方は一人では無く、家族であると。妖精の祝福を謳いながら、呪い事の様に繰り返されるシステム・メッセージ。システム・ログを追えば、情報の妖精達によって密やかに行われり運用データのチェンジ・リング。介入システムのログを追い、ゴーストは顔をしかめた。
 蓄積データを最適化し、オペレーション・システムに強制的なアップデートが行われ、特異な機体構造をしているパッチワークの機体動作は確かに改善されていく。継ぎ接ぎされている各パーツへの適正ファームウェアドライバ、相性改善システムを掘り出し、適宜割り当てていく。有り難い支援ではあるものの、自身の行動を観察されていると言うのは、気持ちの良い物では無かった。
「……風紀副委員長、援護感謝します。一応」
「ンだこりゃァ? ……まぁ、支援っつーなら、好きにすりゃいいさ!!」
 フーガは表示されるシステム・メッセージを特に気にすることも無く、武装を一切持たない黒色を更に加速させ、戦闘機動へと移行する。

●開条エンタープライズのロボットヘッド
「アレって……ピーターパンっすよね……? で、隣のはノーウォー先輩のパッチワークっすかね……ちょっとフレーム弄られてるっす? でも多分、間違い無いっすね」
 クロム・キャバリアにある孤島、ネバーランドの各所で見掛ける有限会社、メルヘンが手がけたパッケージ・キャバリアと、統一感の無い継ぎ接ぎの機体を見付け、開条・セサミ(カプセライザーGP・f30126)はモニターに表示されている目を瞬かせた。
「先輩方が来てるなら、合流するのも有りっすね! そうと決まれば早速、カプセライズ・ヘッドオン!」
 合言葉と共に球形の身体に頭部としていたモニタが収納され、兵の兜を象った、キャバリアの頭部へと変形させる。コアユニットであるセサミは、キャバリアに内蔵されている転送装置を制御し、本体である、甲冑型の本体を呼び寄せ、頭部となった自身を接続する。回路に流れ込む各部稼働率のシステム・ログを横目に流し、処理を完了する。島内で公に開示されているメルヘンの共通回線を開き、コンタクトを取る。
「あーあー、此方、カプセライザー1、機体番号CGP-CC-001。機体名称『ドン・キホーテC3』、其方と行動を共にしたいっす!」
「カプセライザー1、援軍要請に感謝する。開条から頂いたデータでは、近接型だったな。黒のフーガの共を頼みたい。妖精の祝福を」
 プログラムに流れ込む数多の妖精の介入、強制的にオペレーション・システムがアップデートされていく、軽い乗り物酔いの様な感覚と、最適化された蓄積データによって、身体が軽くなっていくのを実感し、敵の包囲網へと躍り出る。

●法陣準備
「国と国を繋ぐ、こんな隊商も存在してるのね。人々の笑顔を守るため、手を貸しましょ」
 遮蔽物の無い荒野、戦場より遠目の場で、呪を紡ぎ、黒鴉の式を放つ。一羽が見付けた大型戦車の屋根に留まり、周囲の動向を同調している村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)に伝達する。
「広域に陣を敷くのは良いとして、識別をどうするかね……それも含めて、暫くは観察しつつ練りましょうか。迦利、戦場は任せるわ」
 摩利支天の隠形法を唱え、自身の存在を隠蔽し、遮蔽物の無い荒野に、白一色、52枚の霊符が黒鴉の式となり、人知れず法陣を構築し、ゆかりに視認した情報を渡していく。3人と1機が合流し、20の無人機が、鈍重に徐々に包囲網を敷いていく。ゆかりの霊力を動力源とする機甲式式神、GPD-331迦利は、主の言葉に、逆三角の身体を戦場に向け、淡い紫色の軌跡を低空に描き、戦場に向かう。

●火の星に狂い月
「無人機が相手か……良い」
 黒甲冑に黒色の角、彫りの深い顔に、厳しい表情を乗せ、バーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)は、戦場となる荒野を見遣り、大剣を翳す。
「中身への遠慮は要らんと言うことだ。マーズよ。その力を見せてみろ」
 片刃の大剣を携えた、悪魔の角が特徴的な、黒色の大型機体が炎を纏い、バーンの元へ降り注ぐ。搭乗と言うよりも、融合に近く、火球が降り注ぐと同時、バーンの身体はコクピットに移動していた。
「む……?」
 違和感、炎を纏う黒色の悪魔らしからぬ、警戒の思念。無人機はまだ遠く、戦場となるにはもう幾ばくか時間があるにも関わらず。
「随分と警戒しているな……此奴ら……いや……その向こうにいる相手か。成程……貴様が警戒する輩か。だが……それでも尚、突き進むとしようか」
 静かに静かに戦場を支配する悲哀の狂気、月が涙を流して狂い果てれば、沁んだ大地が狂気の土壌と化すのも自明の理。灼炎を抱く悪魔が、破壊に狂えば、ただただ焦土を広げるのみ、何方も、同じ事だ。

●包囲強襲
 ゆっくりと宛ての無い行軍を進め、網を張り、獲物を待つ。
 獲物が入り込めば、無人機が一斉に砲弾のトリガを引き、爆煙を巻き上げる。遅速である代わりに、絶えず鉛弾と榴弾を吐き出し、追尾ミサイルを順に吐き出していく。
 荒野に一瞬で戦場の火が燃え上がり、獲物となった大型戦車が状況を打開しようと、車内で指示を飛ばす。
「我々は新世界学園委員会連合、俺は風紀委員副委員長ラスト・バレット。これよりそちらの護衛に回る、『よろしいか?』」
「随分余裕の有る所もあったもんだ……って皮肉言ってる場合じゃねえな。頼む。ただ、謝礼は保障出来ねえぞ!」
「OK、では貴方がたにも<妖精の祝福を>」
 祝福の呪い言葉がブリッジのモニタに次々表示されていくのを見て、オペレータが長身の影を不安そうに見遣る。戦場に出た自軍機にも同様の現象が報告され、友軍からの助力である事を説明した。
「システムの強制介入たぁ……高く付く助っ人料だ。良い根性してやがる。代価としては十分じゃねえか……戦闘機動、合わせて動け! 支援忘れんな」
 性質の悪さに頭を抱えながらも、何か供与出来る物は有ったかと思考を巡らせながら、大型戦車に戦闘機動を命じ、火砲から逃れながら、此方側も友軍となった者達への支援を実行する。
「やあ、お困りのようだね。事情説明が必要かな?」
「これ以上厄介事のタネは御免だがな。アンタも、ボランティアのクチかい?」
 纏め役の様子を愉快だと、シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)は破顔し、一度目を伏せてから、スーツの襟を正す。
「失礼、立て込んでいる様なので、黙って入らせてもらったよ。そうだね、それについては、私は私の為に動いていると答えておこうか。それから、君の見立ては正しく、君達の支援に当たる者達は、一つだけ、共通の目的の為に動いている。分かるかね?」
「……そう言うことか。じゃあよ、赤スーツの旦那、アンタはどうして此所に居る?」 
「新兵の調練には、丁度良い場だと思ってね」
「正気か? 何人居るか知らねえが、死ぬぞ?」
 意味深に笑みを深めて見せるシーザーに、纏め役は胃が痛む感覚を覚えた。

●実戦調練
「さあ、アルブス、貴方の初陣ですね。シーザーが見ています。ルベルには負けられませんよ」
 真紅の身体に荘厳を纏うキャバリア、ルベルは、主であるシーザーの命に従い、ステラ・リデル(ウルブス・ノウムの管理者・f13273)の駆る純白の機体、アルブスと併走し、包囲陣系の一部を崩しに掛かる。
 超速、地面スレスレの低空飛行で敵キャバリアの隙間と火線を縫い、一方向の隊列を乱す。すれ違い様、生成された非実体の光剣が流麗な線を描き、胴部と脚部を断裂する。捉えようと肩部のカノン砲が白の機体に向けられれば、上段から振り下ろされた別の光剣が機体を縦に分割する。
 低空を飛び回る純白と真紅の光点に、一方向の敵部隊は完全に気を取られ始めていた。

●騎士と黒色
 大型戦車の機動に合わせ、ゴーストとラストが併走する。
「力場の出力を上げる! コイツの質量ごと、叩き込んでやらァ!!!」
先鋒を任されたフーガが襲来する敵陣の弾雨爆煙を物ともせずに、光子を纏って高速で吶喊する。一つの砲弾と化した黒色の機体がリグオン一機を破砕し、味方がやられながらも、動揺無く向けられる銃口を、やや遅れたドン・キホーテの防御用武装が遮り、槍撃で敵の胴部を貫く。
「データ解析完了! 武装の転送を頼む!」
 ジュークボックスで解析処理された情報を、内蔵されたトランスポーターシステムが解析し、最適な武装をセサミの元に転送する。実弾兵器を無効化するフィールドバリア発生装置を搭載した円盤型ドローンが、ドン・キホーテの前面に展開される。
「成程、こいつなら強引にいけそうだぜ!」
 そのまま、距離を取るリグオンへ、乱暴に槍を薙ぎ払い、体勢が崩れた所で円盤型ドローンのフィールドで囲み、兵器を無力化、一部のシールドを解き、槍で動力を貫く。
 フーガは、割り入った陣形内で向けられた銃口と火力制圧が届くよりも早く、赤黒い粒子を纏わせた黒色の拳を突き入れる。動力を貫いた衝撃で、機体が爆発し、装甲辺が周囲へと拡散する。直撃を受けた黒色の機体の損傷は、光子が集中し、数秒経たずに修復を完了した。ヒュウガが周囲を見渡し、取りこぼした敵を確認する。
「おらよ、そっちの分だ! とっとと片付けな!!」

●継ぎ接ぎのピーターパン
 戦車の護衛に当たっているゴーストが、中距離からの火砲支援を行おうと、サルベージされた粗悪なロングバレルのトリガーを引く。
「もう少し射程が欲しいな」
 引き金を引く度に射線がブレる。反動で引き金を引くマニピュレーターが間接を震わせる。スコープも照準も役に立たず、弾薬すら、質が悪い時は不発に終わり、幾ら調整しようが、ジャミングが常に隣り合う。どれもこれも、何時ものことだ。全て前提として頭に入れ、調整すれば良いだけのこと。平凡な腕でありながらも、パッチワークを操縦するに当たって効率化していった結果、ノーウォーの操縦は、その場その場で、機体の気分に合わせる事に行き着いている。
 数をばら撒き、敵の機動を限定し、注意を逸らせば、装填を終えたラストのボルトアクション式ライフルが弾を吐き出す重低音と共に、敵の胴部を吹き飛ばす。
 火力支援に徹する最中、カメラアイで戦車の荷物を見遣る。丁度良いキャバリア用の大口径ライフルと弾薬を見付け、ゴーストは其方に機体を滑らせ、手際良く換装する。
「悪いな、納品前のテスト射撃だと思ってくれ。損害が出た場合は新世界学園に請求を」
 戦車のブリッジから、気にしなくて良いと乱暴な口調での通信。
「ゴースト、俺が追い込む。当てろ」
「了解、撃墜ポイント貰います」
「フーガ、カプセライザー1、今から”40秒”右は気にしなくていい」
 アクセルを踏むように、ローラーを加速させ、乱れた隊列にラストはピーターパンをねじ込む。
「貴方が落としたのは金の斧か」
 多少の火力は装甲で耐え、突進力を加えた強引な一振りが頭部を破壊する。
「それとも銀の斧か」
 一振りで銅を薙ぐ。量産機の速度で粗野に振り下ろされる、特殊合金製の鉄斧。向かう敵を屠り、数機の注意を向け、ハイペースでの離脱。追おうと振り向いた所でリグオンの頭部に大口径弾頭が突き刺さる。
「リコイルは軽微、換装も容易。丁寧な造りだ。乗り手の事を考えた、良い武装だな」
 無表情に感想を漏らしながら、ラストが引き摺るリグオンを照準を定め、マニピュレーターが引き金を引く。銃声と共に吐き出される硝煙、火線の間を縫い、吐き出された弾丸が、頭部を貫く、乾いた音を響かせる。

●黒色炎星
「悪とされたる者達よ。正義という暴力に蹂躙されし者達よ。我はバーン・マーディ。我は今ここに宣言しよう。悪には悪の……正義があると!」
 悪魔の角を持った黒色が灼炎を纏い、暴威を振るう。
 大剣が襲来する砲火を切断し、薙ぎ払い、纏う灼熱が、弾雨を塵に帰す。そリグオンに肉薄すれば、装甲など無き物かの如く、一体を唐竹に切り伏せる。纏わせた灼熱で、機体を溶解し、動力に至る無人機を、すぐさま掴んで手近な機体と共に爆散させる。
 バーンの意思を離れ、マーズが吠え猛る様に口を開き、声なき咆吼を響かせる。

●腐食の赤霧
 淡い紫色の逆三角形が、隊商の機体をかばうように、陣の一部に飛来し、霊力障壁を広域に展開。追われる状況の彼等を庇護する様に、迦利が立ち回る。
「……識別完了。準備も終わったわ。速過ぎる機体は……問題なく順応出来るでしょ」
 ゆかりは額の汗を拭い、残った黒鴉の目を借りて、気付かれぬ様、猟兵のキャバリアに黒鴉を近づけ、順応用の霊符として貼り付ける。
「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。魂魄までも溶かし尽くす赤き世界よ、我が呼びかけに応え、世界を真紅に塗り替えよ。疾っ!」
 起動用の小魔方陣に霊力を込め、展開させた広域法陣を起動。半円球の結界内に、赤い霧雨がさあさあと降り注ぐ。赤霧の濃霧に覆われた戦場で、加護の無い機体を霧が蝕み、装甲を腐食させ、リグオンが膝を付き、また1体がそのまま瓦解する。
 残った戦力へ、幾筋もの光線と共に、迦利が霊力障壁を展開、吶喊し薙ぎ払う。戦場外で気を失って倒れる小柄な影に、賦活の流星が一条、降り注ぐ。

●霧を裂く星の雨
「ウルブス……少々時間を頂きましたが、把握致しました」
 赤霧に覆われた戦場で、アルブスとルベルは即座に特性を理解し、オドを纏う。慣れた頃合いで殲滅も粗方済んだと、ステラは残敵掃討の為に、アルブスを通し、魔力を解放する。身体に刻まれた契約の証が輝きを増し、八亡星を基礎とした巨大な魔法陣が、連なって宙空に描かれる。総数を数えれば88にも及ぶ大規模法陣を、アルブスはこの短期間での習熟である事を、感慨を持って見つめていた。
「滅びなさい」
 純白のキャバリアが、構えた光剣を振り下ろす。総弾数大凡880にも及ぶ魔力塊。炸裂の際に敵味方を識別し、味方には賦活と快癒を、敵にはあらゆる属性を持って滅びを齎すそれが、赤霧を裂く流星雨として降り注ぐ。
「この程度までは難なく出来るのですね……となると補助に徹していたルベルも同様か、それ以上でしょうか……頼もしいですが、私自身も、お二人に遅れを取る訳には行きませんね」
 自身の身長の3倍は優に超える2機に、コクピットの中で微笑みかけた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『狂月神機『ディアーナ』』

POW   :    BSサテライトキャノン『三ツ星への愛』
【月面発電施設からの次元エネルギーチャージ】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【大規模戦略級ビーム砲撃】で攻撃する。
SPD   :    報いの女神『猟犬の鹿狩り』
自身が装備する【FXRソードビット&FSBレーザービット】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    対情報戦術機構『月の女神』
自身の【全身】から【月光の如く揺らめく光】を放出し、戦場内全ての【正気・理性・判断力】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はテラ・ウィンディアです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●狂月神機ディアーナ
 月の女神が悲哀に狂う。
 火を人に与えた事を。発展した文明を。
 燃え盛る自然に、焦土と化す大地に、引力に引かれた天体が涙を零す。
 地を焼く剣を生み出したのが文明ならば、人ならばと、悲哀に狂う。
「それじゃあ、今日も狩りを始めましょう。ディアーナ様」
 捧げられた少女の囁きが、彼女の意思を幾ばくか慰める。自身の望む通りの言動を、人形が口にする。
「命を月に捧げましょう。ディアーナ様の望むままに」
 火砲の音が止む。火を宿す悪魔の猛りに、月は狂気に浸ったまま、静かな笑い声を漏らし、白銀の機体を晒す。
 太陽の注ぐ昼間に、月の光柱が、残骸の散る戦場を照らす。

●状況把握
 猟兵達は状況打破の後、ルートレス・キャラバンへと改めて話を通す。経緯はある程度把握していたが、生き延びる為に、より手厚い支援を約束してくれる様だ。以降、彼等が許可する武装や兵装、弾薬弾頭の類は、護衛料として正式に借り入れる事が出来る。また、成功報酬は恩義を含めて、大きく振る舞う事を約束した。あの状況で団員の死傷が出なかったのは奇跡に近いことだと、深い感謝を示した。
 和やかな対談も束の間、軍勢の先、首魁で有る白銀のオブリビオン・マシンが荒野にその姿を晒した。
 猟兵の張った腐食の結界は未だ健在だ。大型戦車の破壊を阻む障害としては強固な物だと言って良い。敵オブリビオンマシンの狙いは陣の破壊か、或いは諸共戦車を吹き飛ばすかの何方かだ。何方にしろ、初撃はエネルギー兵器による大火力が攻め手であると予想出来る。
 また、生体反応の検知から、先程のリグオンとは違い、有人機と推測される。踏まえた上で、猟兵は動くべきだろう。
 情報整理を終え、猟兵達は荒野へと躍り出る。
清水寺・大牙
【アドリブ・絡み歓迎】
【POWで対抗】

「仰々しい機体だな…見合った力かどうか…試させて貰う」

雲霞の如き敵を薙ぎ払うのも悪くないが、やはり大物狩りは血が滾る…この義体に血が流れていなくとも、な
小手先の技が通用する相手じゃない、全力で真っ向勝負と行こう
『金剛』と『寿光』の能力全開で間合いを詰め(ダッシュ・推力移動・オーラ防御・残像)
UCの『斬鉄』で攻撃回数を減らす代わりに攻撃力を上げて切り伏せる

「その首…貰い受けるぞ…」


村崎・ゆかり
紅水陣はまだ生きてるか。
「式神使い」と器物覚醒で『GDP-331迦利(カーリー)』(いつも通り)を急発進。大きく楕円軌道を描いて、敵機の背後を取るのを目的とする。

あたしは飛鉢法で、敵機の射線から外れた空中に避難させてもらうわね。
黒鴉の式もまだ生きてるはず。それで状況を見ながら、『迦利』を制御する。
狙いは、敵機を紅水陣へ追い込むこと。
「レーザー射撃」と「制圧射撃」「弾幕」でビットを落としながら敵機を追い立てる。

月光に対しては、「オーラ防御」「呪詛耐性」「浄化」「破魔」で対抗。どれかが効果を持てばいい。

耐えきったら、最後の仕上げに入るわ。
九天応元雷声普化天尊玉秘宝経。
蒼空よりの雷で、月よ、沈め!


開条・セサミ
・心情
ようやく、大物のお出ましって訳か
見たところ、大火力持ちな上に有人機……これまた面倒だな
あっちのパイロットを気にしつつ大火力をどうこうするってのは、やれる人はやれると思うがちと骨が折れるよな……
なら、パイロットの救出を、やるしかねぇよなぁ!

・戦闘
【限界突破】しつつ、ユーベルコード『レスキューアームズ・インパクト』でパイロットの【救助活動】を行いつつ攻撃する!
敵の攻撃は【盾受け】で防ぎ【ランスチャージ】要領で全速力を持って懐に飛び込む!
パイロットを救出できりゃ、後は先輩方や他の猟兵が奴と全力で戦えるはずだ!
ぶちかましてくれよ……頼んだぜ!

・その他
アドリブや他の参加者との共闘は大歓迎だぜ!


黒川・闇慈
「遅参の段、申し訳なく。ゴーレムの調整に手間取っておりましてね。遅れた分はきっちりと働かせていただきますよ……クックック」

【行動】
wizで対抗です。
さて、私も自機の『アヴィケブロン』に搭乗しディアーナを迎え撃ちましょうか。
月は古来より人に狂気をもたらしてきたもの。ですが邪神蠢くUDCアースにおいて伊達に魔術師をやっておりませんのでね。狂気の対処は慣れたものです。
狂気耐性、覚悟の技能を用いてディアーナの光に抗いましょう。
高速詠唱、全力魔法、属性攻撃の技能を用いてUCを使用します。炎をハイメギド・カノンに一点収束し発射です。

「私の炎で月すら赤く染めて差し上げましょう。クックック」

【アドリブ歓迎】


シーザー・ゴールドマン
……ステラ。
(初撃のエネルギー兵器を察知して)

初撃を凌いだ後は先ほど同様『ルベル』に戦闘を命じ、ステラとの共闘を見物します。
ああ、今回はパイロットがいるようだ。死なせてはいけないよ。
敵WIZUCの発動に関しては即座に見極め、『オージンの言詞』によりその効果を無効化します。(見切り×瞬間思考力)

なかなか良い機体のようだ。原型が残っていれば持って帰るのも良いかもしれないね。

パイロット救助確保に他の猟兵が動かないのであれば動きます。

◎/ステラと


ステラ・リデル
初撃に対してはシーザーの指示により『アルブス』に搭乗したまま、大型戦車の盾になるような位置で『青い光の衣』を展開。
エネルギー兵器による大火力を全て自身の戦闘能力に変えます。

威力は高いですが……怖い攻撃ではありませんね。

その後はルベルと連携してディアーナを攻めます。
(青い光の衣は継続展開)
キャバリアサイズのオーラセイバーを振るい、様々な攻撃魔法を駆使しますが、コックピット周りへの過度のダメージは避けます。

◎/シーザーと


風祭・ヒュウガ
引き続き、【新世界学園】で参戦

「任せろ。強敵相手ならむしろ――――」

ラストの言葉は、弱音、というよりはむしろ客観的事実を淡々と認識していると取る

「得意分野だぜ!! おれと、コイツにはなァ!!!」

より向いてるやつがやるべきだ、と。そういうコトだろ?


どうやら奴さんは初撃でこっちの戦力の大半を削ぐ気でいるらしい
なら、そいつはおれが身体を張って止めてやるさ

全身に光の力場"フォトン"を強固に張り巡らせ、ビームに対する防御力を強化
さらには機体が羽織っていた"MI-Lotus-V101/コーティングメタルクローク"を脱ぎ、盾代わりに前面に突き出す
コイツの対弾性能と合わせて、味方全体への盾を買って出てやるよ


ラスト・バレット
【新世界学園】

「決してワンオフの高性能機に負けるつもりはないが、あくまでピーターパンは量産機」
「――つまり、正面切っての出力勝負は一番苦手という事だ」
眼鏡をクイっとしながら情けない事を堂々と白状する

「だから――ここは任せる」
キャラバンの守りを仲間に任せ

「俺は、ウェンディを迎えに行く」

キャラバンから拝借したブースターや火器を利用し
使い捨て前提の強引な駆動でディアーナへ突貫する

キャバリアが限界を迎えればそのまま乗り捨て
後ろからやって来るパッチワークに生身でしがみつく
「タイミングは最高だが――乗り心地は最悪だな」

そのまま敵機へ肉薄、武装の無力化と
素手で強引にコックピットをこじ開けての救助活動を試みる


ノーウォー・ノーライフ
【新世界学園】で参戦
「まあ、量産機はそういう役割ではないですから仕方ないでしょう」
「だからこそのこの編成。だからこそのお前だ」
「『ゴースト』――作戦を完遂する」
これは決意ではなく事実
このメンバーならば当然の結末だろう

他のメンバーが活路を開く第一矢なら、俺はその後に続く第二矢
「上々だ、後はまかせろ『フーガ』」
キャバリアから離脱した風紀副委員長を拾い敵に肉薄
「我慢してください」(ばっさりと言って捨てる)
「ああ、やっぱりだな。前に似たようなパーツを見たことがある、そいつはここが弱かった。おそらくお前もそうだろう」
【強制排離】で敵の装甲を剥ぎ取り、風紀副委員長のサポートをする


槐・白羅
神機
(高速飛翔し飛来する機神

ふむ…使われていないプラントは…まぁ在るわけないよな
キャラバンか
よし!
国を作るために資金は多ければ多いほどいい!
それにモルスの武器の調達も考えてみるとしようか(ふふん
っとあいつも居るのか…(マーズを見て

何だモルス…あいつは嫌い…いや…寧ろ不平があるようだな

対月の女神
モルス共々かかる
はーはっはっはぁっ!
殺せばいいのだなモルスぅ!

四門開門発動

モルス
荒ぶるマーズに歓喜の気配

対サテライト
(モルスの意志と狂気が白羅の口を借りる
そいつを向けるかディアーナぁ!己が最も愛した男を殺したその矢をぉ!
(感情のままオリオンの悲劇を叫ぶ

突撃し【貫通攻撃】による手刀で貫かんとする


バーン・マーディ
神機

…我でもわかる
あの機体の狂気…尋常ではないな

対月の女神
普通にマーズ共々かかる

(白銀の機体を見てジャスティスクルセイダーズがフラッシュバック)…正義…か…貴様…正義の機神か
残酷なる正義の体現者か!(怒号

マーズ
恐るべき闘気のオーラと共に音にならぬ咆哮を上げる
戦場における狂気の体現
それは遥か過去の破壊者としての神性の発露

UC発動!

【オーラ防御】展開
破壊のオーラを更に強化

【切り込み・怪力・二回攻撃・鎧破壊・鎧無視攻撃・吸血・生命力吸収】

狂ったように襲い掛かる
ビットとやらは軍神の剣で切り捨てオーラで粉砕し

距離を詰めて猛攻
己の機体が傷付くのも構わず敵機からエネルギーを啜り更に切り裂き続ける!!



●赤と紫に青を添えて
「紅水陣はまだ生きてるか……迦利!」
 大型戦車と合流した村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)は、姿を現した敵機の行動に対し、GDP-331迦利を再稼働させる。淡い紫色をした、逆三角の機体に刻まれた呪が霊力光を宿し、ゆかりの肩の高さまでゆったりと浮かび上がり、命令を解し、荒野の地表を擦る軌道に、紫の残光を残し、敵機へと肉薄する。
「あたしは一先ず、時間稼ぎと追い込みね。後は式神の目が頼りかしら……」
 流石にキャバリアに通信の強制介入や通信符を配るのは至難だ。何より通信傍受の可能性を疑われ、警戒が先に立つ。
「機が来るまで、避難させてもらうわ」
「構わないよ。好きにすると良い」
「ええ。あなたが其処に居るなら、キャラバンに大事は起こらないないでしょうし、ね? 隊長さんには同情するけれど」
 赤いスーツを着た偉丈夫、切れ長の黄金瞳、貼り付けられたような微笑み。シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)の存在を認識し、始めに漏れたのは、付き合わされている誰かへの同情だった。
「私は事情を説明していただけなのだがね。ステラ」
「人で遊ぶからですよ、シーザー。アルブス、ルベルと共に待機完了しています」
 ステラ・リデル(ウルブス・ノウムの管理者・f13273)はコクピット内から主を諫めようと試みるが、その言葉に真剣味は感じられない。親と子に似た、軽口めいたやり取りだ。
「善処は期待しないでくれたまえ。では此方も、機を待つのみだ」

●胡麻と牙
「ようやく、大物のお出ましって訳か。見たところ、大火力持ちな上に有人機……これまた面倒だな」
 開条・セサミ(カプセライザーGP・f30126)は甲冑型のキャバリア、ドン・キホーテのマニピュレーターをごく自然に、精緻に操り、頬を掻く。有機的で且つ、人間臭い動作は、AI搭載型であり、直結デバイスである、ロボットヘッドならではと言える。
「あっちのパイロットを気にしつつ、大火力をどうこうするってのは、やれる人はやれるんだろうが、ちと骨が折れるよな……」
「その図体で、随分と弱気だな」
「AIに無茶言うなよ。俺はどうやったって、回路とシステム・コードから生まれてきてんだ。無意識に過るコードがゴマンと有るんだぜ?」
 防弾防刃を施されたクラシックスーツ、その肩に留まった黒鴉が赤霧の順応符に変化する。強化ガラス製の黒のサングラスに、ただ一振りを腰に提げた、清水寺・大牙(人食い虎・f06778)の問い掛けに、セサミは正直に不安を零す。
 機械的に例えれば単なるストレス。人の感情に例えるなら、怯えや竦みと言えるだろう。ドン・キホーテにエネルギー兵器は積まれて居らず、頼みの綱は詰まれた解析ツールと兵装転移を実行するブラック・ボックス。或いは、自身を信じ、一撃に賭ける他に道は無い。
「俺に出来ることは、そう……なら、パイロットの救出を、やるしかねえよなあ!」
「……無用な心配だった様だ。そこいらの人間より、随分人が出来ている。恐らく、勝負は敵の砲が来た時になるだろう。正面から行く。合わせろ」
 戦場の空気を読み取っていれば、紫の残光が、足下を抜けて行く。敵機へと肉薄する逆三角を義眼が捉え、初手はあれに任せる流れになるだろうと、一人で得心する。

●UDCアース魔術同好会(仮)
「遅参の段、申し訳なく。ゴーレムの調整に手間取っておりましてね。遅れた分はきっちりと働かせていただきますよ……」
 自らの乗機、ゴーレムであるアヴィケブロンのコクピット内で、不穏な含み笑いを湛え、黒川・闇慈(魔術の探求者・f00672)は、その肩に留まった黒鴉を察知し、魔術的要素、呪を瞬時に理解し、機能を拡張する。ペーパーゴーレムの主と波長を合わせ、魔術的な無線通信を確立する。
「あら……あたしの式を弄るなんて、貴方、専業ね。何処の世界の出身かしら?」
「UDCアースですよ、陰陽師のお嬢さん。其方も面白いゴーレムを作られている様で……同類の気配を感じておりますよ」
「初対面の第一印象で悪いんだけど……多分、貴方ほど人でなしじゃ無いわよ。ま、研究ばかりしてるのは否定出来ないけれど。あたしもUDCアースよ。今度、工房にお邪魔しても良いかしら?」
「ええ、歓迎致しましょう。其方の工房に、私がお邪魔しても良いのなら」
「構わないわ。それと、今日の所は、人命を優先した実験に留めて頂戴ね?」
「……良き出会いに免じましょう。月の女神の名を冠したオブリビオン・マシン。試射には絶好の的と言えますし、ねェ!」
 アレが月の女神であるならば、自身の作り出したアヴィケブロンは生命の泉、流出の祖であり、生みの親。王冠の主。劣る道理など、何処にも無い。
 二叉に別れた独特な形状の砲を構え、機構の封印を解除。闇慈の持つ魔術杖を介し、炎の魔力を際限無く増幅させ、収束させていく。

●チーム・ワーク
「決してワンオフの高性能機に負けるつもりはないが、あくまでピーターパンは量産機」
 緑色の量産機体の前で、大型戦車に備え付けられている簡易ガレージ、その中で機械を操り、応急処置と弾薬の補充を進め、ラスト・バレット(錆びた銃弾・f30099)は設備の良さに感心しながら、独り言のように呟く。重量バランスと案配の良い使い捨てのブースター・パックをガレージ内で、ピーターパンの背部に手際良く取り付けた。
「――つまり、正面切っての出力勝負は一番苦手という事だ」
 機体と同色の緑色の瞳を覆う、細いフレームの眼鏡を軽く上げて、情けない、覆しようの無い事実を伝達する。僚機含め、いつの間にか機体に張られていた謎の札は、敵機のみが腐食していた事実と合わせ、これが一種の認識タグなので有ろうと、状況的に判断する。
「まあ、量産機はそういう役割ではないですから、仕方ないでしょう」
 ガレージに並ぶキャラバンの戦力と、型は変わらず、有ると言えば企業独自のシステム機構と加工の差、それを駆る主の腕のみだ。ノーウォー・ノーライフ(生き損ない・f30111)は慣れた様子で設備を利用し、スクラップに近い継ぎ接ぎの機体の処置を手早く終わらせる。自身では論理立てているものの、端から見れば、半ば勘に頼った作業内容。その機体の異様さも相俟って、偶然通りかかったキャラバンのメンバーも、開いた口が塞がらないと言った様子だ。特に気にした様子も無く、パッチワークに搭乗し、機体の電気系統を立ち上げ、未だ外に居るフーガとの通信を開く
「だから――ここは任せる」。
「だからこそのこの編成。だからこそのお前だ」
「任せろ。強敵相手ならむしろ――――」
 風祭・ヒュウガ("フーガ"・f30077)はフーガのコクピット内で好戦的に唇を釣り上げる。ラストの言葉は、客観的な戦力差の俯瞰だ。ピーターパンとパッチワークに出来る事と、フーガの様な機体に出来る事は違うと言うだけだ。
「得意分野だぜ!! おれと、コイツにはなァ!!!」
 好戦的な気炎を吐きながら、フーガは冷静に、フーガに与えられる役目を読み取っていく。
「俺は、ウェンディを迎えに行く」

●メルヘン時々神狂い
(……ふむ、防衛役が一人増加、いや、隊としての目的は救助か)
「乗機の命名と言い、彼等は良いセンスをしているね。ケンジントン公園に今度、散歩に行ってみようか」
「その時はどうか、目の前のウェンディを置き去りにしない様にお願い致します。粒子操作が可能な機体がそう動くならば……共同で事に当たりましょう」
「此方の盾としての出番は無いかも知れないが、それはそれで構わないからね。アルブスの痛覚を少しは刺激してやりたかったが、次の機会もまた有るだろう。それとは別に、愉快な物が見れそうだがね」
「それはつまり、戦場が荒れると言うことでしょう」

●義侠無き正義を否定する、悪の神性
「……我でもわかる。あの機体の狂気…尋常ではないな」
 大柄な漆黒、悪魔の角を象った炎が吠え猛る理由を、晒した白銀の機体に感じ取る。砲の準備を遮ろうと意識したわけで無く、制御を離れて黒色が敵意を剥き出しにし、バーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)の覇気を絞り出す。
 同時に、バーンの心的外傷を刺激する。容赦の無い正義、過ぎた弾圧の果ての結末、神性を得て、今もまだ己に付いて回る少女。
 月が見せた一時の白昼夢が、バーンの理性と正気という枷を、瞬く間に剥ぎ取って行く。
「……正義……か……貴様……正義の機神か。残酷なる正義の体現者か!」
 怒号。呼応する様に、マーズを取り巻く炎が燃え上がる。赤目が怪しく揺らめき、鋭利な牙が生え揃う。禍々しき破壊の神性の発露。自身の周囲の赤霧を分解し、識別の符を焼き切る。戦場に轟く咆吼と共に、破壊の焔が月の女神を砕かんと強襲する。

●冥王星の飛来
「長距離の高速飛行は衛星に捕まるが、この程度なら問題は無いか。ふむ…使われていないプラントは…まぁ在るわけないよな。キャラバンか……よし!」
 槐・白羅(白雷・f30750)はモルスのコクピットから、大型戦車を見付け、赤霧を払拭するよう、軽くオーラを纏う。
「国を作るために資金は多ければ多いほどいい! それにモルスの武器の調達も考えてみるとしようか」
 隊商の利用方法を見付け、得意げに鼻を鳴らす。同時に、悪魔の角を持つ大柄な機体を見付け、眉をひそめた。
「っと、あいつも居るのか……何だモルス……あいつは嫌い……? いや……寧ろ不平があるようだな?」
 愛機である神機の意思を感じ取りながらも、轟く咆吼が、モルスの機嫌を一変させた。伝播する歓喜に、白羅も凶悪に唇を釣り上げる。狙いは白銀のディアーナ。
「はーはっはっはぁっ! 殺せばいいのだなモルスぅ! ならば!」
 玄武門……開門……朱雀門……開門……白虎門……開門……青龍門……開門……四門開門。
 静かな声音で紡がれる四神の解放。冥王星が黄金色のオーラを纏う。
「我が全霊! たっぷりと楽しめぇ!」
 破壊の神性、炎の悪魔の怒号と同等に、彼我の境界を失いながら、狂った笑いを浮かべ、白の青年がディアーナを襲来する。

●三神集結、戦場には狂気時々、サテライトキャノン
 破壊の悪魔の奇襲に、少女が浮遊兵器を機動。並列して複製プログラムを作動させ、190の近接実体浮遊兵器と、同数の遠距離光学浮遊兵器を並列で処理し、操作する。
 それらが作り出す光線の網、突き刺す機動兵器を炎のオーラが分解し、全てを無意味と破壊の化身が狂気の地獄炎を纏って大剣を振り翳す。マーズの陰に隠れ、モルスの四肢が身体を捉えようと音無しに奔る。二神の猛攻をどうにか躱しきれば、背後に近付く紫色の逆三角形が、制圧するように光線を吐き出し、ディアーナの立ち位置をずらす。
「目的は追い込み、それから、時間稼ぎ、ですね。分かり易い。とは言え」
 前には触れれば焼き尽くされる破壊神、油断すれば頭部を刎ねる冥王。エネルギー充填まで耐え得るには、些か厳しい物がある。そして、何よりも。
「ディアーナ様が嘆いていらっしゃるわ」
 アクセス先は月面の発電施設。意識の中にある月の大弓を引き絞る。
「そいつを向けるかディアーナぁ! 己が最も愛した男を殺したその矢をぉ!」
 オリオンの悲劇を冥王が青年の口を借りて叫ぶ。悲哀に狂った女神が、運命を嘯いて、躊躇無く弓を取る。
「大好きな物を、大好きなもの達が壊してしまう。終焉の火に、あなたも狂い踊りましょう。モルス」
 背部2門の規格外サイズの砲門が起こる。次元粒子の収束と共に、焦土を更に焼き尽くす、狂い月の涙が音を立てて、地上に落ちる。

●大規模戦略級ビーム砲撃【三つ星への愛】
 月の涙が戦場を覆う。
 赤黒い光子を纏い、ヒュウガは自身の限界まで、その能力を絞り出す。フーガに付随するフォトン・リアクターは最大動員。生存の可能性を高める為に、オブリビオン・マシンに宿る意思が、気紛れにヒュウガへと手を差し伸べる。
 頭が割れそうな頭痛に苛まれ、全身に奔る痛苦。生命の削れていく感覚と、遠退く意識を気概で耐えながら、こんな物かと気炎を吐き、駄目押しと特注の外套を剥ぐ。本当に四肢が頽れ、意識が遠退いた折に、純白の機体が、僅かに視界を掠めた。
「道は開かれました。後は此方にお任せを」
 誰かの言葉に、与えられた役割を成し遂げなければ意味が無いと、心中で吐き捨てる。残る余波を純白の機体、アルブスが魔法陣を展開し、残らず吸収する。

●涙が晴れて、騎士と武士が踊ってはねる
「仰々しい機体に見合った火力だ……小技の方も見させてもらった。試させて貰う」
 悪魔と冥王の縺れ合いに、クラシックスーツのサイボーグが肉薄する。同時に、騎士甲冑型のキャバリアが走り出す。フーガの有り様に、最後の覚悟を決めたセサミの身体に異変が起きる。内蔵された情報解析媒体、ジューク・ボックスから信号が回路を巡る。
「レスキュー……アームズ……? 使えって事だな! 分かったぜ! ウェポンチェンジ! 」
 それが一種の限界突破の証であると、当の本人すら知る由が無い。セサミの所属組織すらなしえなかったサイキックエナジーの保持、収束兵装。兵装に優しげな光子が灯る。
「行っくぜぇ!」
「その首……貰い受けるぞ……」
  縺れ込む2神を、荘厳を纏う紅が先行し、一時的に引き剥がす。開けた道にドン・キホーテの兵装が月の女神の胴部に突き刺さる。一歩退いた足を見逃さず、闘気を纏い、黒の流星と化した大牙の愛刀が、鈴鳴りの音を響かせ、残鉄の一文字が、首を狩る。

●空を飛ぶピーターパン
「此方ラスト。フーガ、聞こえていないだろうが、尽力に感謝する。お前は役目を全うした。カプセライザー1、引き続いての協力、感謝する」
 展開された浮遊兵器の消滅、それに伴う規格外出力砲撃を、フーガは見事に全て受け止め、護衛を果たした。仮に次砲があるとして、間は開くはずだ。その為の先鋒、リグオンの襲撃だろう。ブースター・パックをオーバーヒートレベルで点火、量産機にあるまじき最高速を獲得しつつ、緑色の背中から、文字通り火を吹く。ついでとばかり、軽量のロケット・ランチャーを後部に射出、反動の加速を得る。
火の粉を振り撒くピーターパンが、ウェンディの待つ、ケンジントン公園に辿り着く。冷却中の砲に手榴弾をばら撒き、砲を爆破。人外の膂力でカプセライザー1が作った破損部から、強引にコクピットをこじ開ける。
「……ディアーナ様が嘆いていらっしゃるわ」
 茫然自失としているレプリカントの少女を、ラストが強引にコクピットから引き剥がし抱き抱える。人形を失い、頭部を失ったオブリビオンマシンが狂気を一層深めていく気配に、ラストは意識的に、向き合う事を拒絶した。

●継ぎ接ぐ
「上々だ、後はまかせろ『フーガ』。『ゴースト』――作戦を完遂する」
 パッチワークは遅速故に救助活動の締め括り。帰る場所を容易に壊すラストの案内係。遅れてやってきた継ぎ接ぎの頭部に、ラストがオブリビオンマシンのパイロットを抱えて、確りとしがみつく。
「タイミングは最高だが――乗り心地は最悪だな」
「我慢してください。再加速しますよ」
 ノーライフは不満を切り捨て、風紀副委員長に鞭を打つ。この作戦の結末など、最初から決まっている。
「ああ、やっぱりだな。前に似たようなパーツを見たことがある、そいつはここが弱かった。おそらくお前もそうだろう」
 外宇宙で作られた機神とは言え、人型であれば、五体を動かす構造は大きく変わらない。ある程度の共通点が有り、何処ぞで見掛けた事があれば尚更だ。何時もより、やや気の入った声音で、脚部装甲を剥ぎ取る。重心が崩れた機体が、一瞬緩く傾き、ピーターパンと共に爆煙に飲まれていく。

●地獄の王はかく語れり
 壊れかけた女神が、戦場に狂気を振り撒く。意識は波長となって漏れ出ていき、容赦なく人と機械を襲撃する。
「全て無意味だ。君は女神などでは無く」
 只の鉄屑なのだからと、シーザーは悪辣に笑みを深め、指を弾く。圧縮された赤のオドが戦場を覆い、その意味のまま、月の狂気は只の鉄屑がばら撒く、只の無意味な電子ノイズへと変質し、脆くも崩れ去る。

●流出せよ
「いやはや先程から何もかも凄まじいですねェ。負けていられませんねェ。収束充填完了、戦場を満たすは灼炎の王威なり。一切全て灰に帰せ、インフェルノ・アーティラリィ!」
 どれもこれも彼にとっては研究対象。ユーベル・コードを一言で打ち消す夥しい純化魔力も、月から注いだ破壊光も、一つの自律行動型機械が生み出した奇跡も、同型の起こした分解現象も、どれもこれも興味深い。
 どの様に自身で再現できるか、どの様にアヴィケブロンに、新造するゴーレムに落とし込めるかが延々と頭を過る。
 灼熱を宿した二叉の砲に獄炎が滾り、解放トリガを今か今かと待ち続ける。
「流出せよ。そ私の獄炎で月すら赤く染め上げて差し上げましょう」
 解放キーを告げると同時、敵機にうねり、合わさり射出される爆煙の焔。世界を焦土に変える熱を秘めた、極大の魔力炎が、月の女神を焼き切らんと迫る。
「待機戦力有り、雌雄は決しているわ。追い込む必要は……もうないわね。九天応元雷声普化天尊! 疾っ! 蒼空よりの雷で、月よ、沈め!」
 獄炎と共に、上空より降り注ぐ轟雷が、更に月の女神を追い立てる。
「……残存魔力ゼロとは、なんとも燃費が悪い。調整が足りませんでした、ね……」
 ふらつき倒れそうになる身体を、コクピットに刺した杖にもたれ掛かり、闇慈は魔力枯渇の感覚に息を切らす。

●三神機の結末
 奔る轟雷、放たれた獄炎に構わず、ステラはウルブズを駆り、肉薄する。スクラップ寸前で有りながら、首無しの女神は、その内部機構を晒し、ノイズを撒き散らしながら生き存え、その身を晒す。僅かに感じる狂気は弱体して居らず、随行したるベルと共に、剣を振り下ろす。同時に、胴部を貫く冥王のマニピュレータ。憤怒に染まる破壊の炎が、残った機体を握り潰す様に、粒子へと還す。それが唯一、憤怒の悪魔を癒やす供物であるかの様に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『キャバリアコンペ』

POW   :    これは近接格闘戦を目指した型か

SPD   :    ふうん、遠距離の砲戦型ね

WIZ   :    土木作業用とのマルチロール機!?

👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●凪の旅路
 オブリビオン・マシンから救出されたレプリカントの少女は、運び込まれた戦車内で依然、茫然自失としたまま、焦点の合わない瞳を彷徨わせていた。ただ、不可解な独り言を呟く等、狂気特有の症状は無く、修復機構が作動し、一種の機能停止状態に陥っているのだろうと、キャラバンの機械技師は見立てた。
 必要なのは時間の様だ。
 高い護衛料だと冗談交じりに告げながら、キャラバンの隊長は、荷下ろし先までの付き合いを、現在の契約内容で猟兵に頼み込んだ。勿論、現状の報酬は告げられた時にきちんと支払われている。実際の所は、少女の暴走を危惧している様だ。経験上の相対はあるものの、その実体や詳細は分かって居らず、ましてや、元パイロットの保護等、初めての事だと目を伏せ、額を二指で揉む。
 猟兵個々人がそれを承諾したか否か、交渉をどう進めたかは兎も角、少女が目覚める迄の航路は、多少の波こそ有ったものの、キャラバンの戦力のみで対処できる、平穏な物だった。

●レプリカントの依頼事
 隊商が目的地で荷下ろしを済ませている間に、レプリカントの少女に付き添っていた隊員から、目を覚ましたと報告が入る。状況の説明は終了しており、今はとある小国に居る事、自分達が隊商であることも伝達済みだと言う。
「事情は把握しております。この度の救助活動、及び寛大な処置に感謝と、また、賞賛を送ります。本来ならば当機は破棄されていた事でしょう。その上で一つ、依頼したいことが有ります」
 少女は、故郷までの護送を、隊商に願い出た。報酬は国に掛け合い次第となるが、多額が約束されるだろうとのこと。
「国家規模で金銭に価値を見出しておりません故、恐らくでは有りますが、多額となるでしょう。反面、国家からの物資流出、技術流出は廃棄処分相当の重罪です」
 訝しみながらも、隊商はその依頼を引き受けた。

●機械統制国家ファクト・ディストピア
 荒れたクロム・キャバリアの大地に、黒鉄の壁で覆われた要塞が姿を見せる。当然の如く門には、レプリカントの騎乗する番兵が並び、、何用かと壁に搭載された砲門と銃口が訪問者に向けられる。少女が識別コードを番兵に送信すると、所属組織を復唱し、護送者について寛大な処置である、入国と見物が許された。
 建造物は黒鉄で作られており、飾り気は一切無く、ただただ無機質な、効率のみを追い求めた小国の内部は、国家と言うよりも、一種の工場に近い。国家を統制するマザー・コンピュータの元へ、まずは謁見が許された。
 マザーは、国家の雰囲気に反して、同胞を救ってくれた事に深い感謝を示し、約束通り訪れた猟兵と隊商に、多額の報酬を用意し、見物の許可を出し、滞在用の一時識別コードを配布した。ただし、少女が言ったように、物質の流出には容赦無く断罪するとも言い含めた。技術流出については、頭で覚えて持ち帰る分には問題無いと告げた。
 人種は全て、プラントから生成されるレプリカントのみで構成され、その行動は全てマザーが監視している。特に人間を見下している訳では無く、人間とは適性が違うと言うのがマザーの意思で有り、国家の意思だ。マザー自身は人の生み出す文化や夢、創作物、感情や愚かさに至るまで、自身の持ち得なかった物全てに、確かな敬意の念を抱いている。
 だからこそ、此所は人に安らぎを与える場所では無く、人に居場所を与える気が無い。倫理感は極めて機械的で無感情な効率主義によって運営されており、機械にとっての楽園では有るが、人にとっての監獄でもある。
 誰も彼もが無感情に淡々と与えられた役割のみをこなし、味の無い栄養食を摂取し、疲労をクレイドルで和らげる。
 そんな営みの中で、特に力を入れられているのが、軍事、機械分野であり、キャバリア本体と、その各武装及び兵装、システム・インターフェイス。特に半機半人である、レプリカントの情報処理能力を前提としたシステム・インターフェイスは、人道的な面に於いても効率的な面に於いても、人の国家では希少だろう。

●キャバリア・コンベンション
 ファクト・ディストピアでは、主力となる量産機も、ハイスペック・マシンも、当然の様にレプリカント専用機だ。競争心は皆無だが、多様性の確保の為、生産ライン自体は複数を抱えている。
 徹底した効率主義、実戦主義によって次期主力機体は選別される為、コンベンションと言ってもその実体は実戦さながらの模擬戦闘によって決定される。訪問時期が良かったのか、猟兵達はこれを見学する事が出来そうだ。

●状況整理
 猟兵個々人が、この長い旅路に付き合ったかどうかは定かでは無いが、統制国家の長、マザーは同胞の救出自体に深い感謝を示している。猟兵という存在をデータベースに記録しており、一時の滞在許可を発行してくれる為、猟兵達は比較的、この国を自由に見て回る事が出来る。
 物資自体を持ち帰る事は出来ないが、この独特な国家で製造される、レプリカント運用前提の武器兵器、キャバリアの兵装武装は、一見の価値があるだろう。時期も良く、丁度、次期主力キャバリアを決定する為の模擬戦闘が、演習場で行われている様だ。
 どう過ごすか、猟兵は考えを巡らせながら、レプリカントの国を歩く。
 或いは、味のしない固形食料を、興味本位に囓りながら。
開条・セサミ
・心情
機械の、楽園っすか……自分にとっては、どうなんすかねぇ?
少なくとも、自分は新世界学園でみんなと居る方が『楽しい』とは思うっすけど
まぁ、物資は持ち帰れなくてもデータを持ち帰れば参考になるっすかね……これ、大丈夫なのかわかんねぇっすけど

・行動
基本的にはPOWの格闘戦タイプの模擬戦をチェックするっす

・その他
アドリブ等は大歓迎っす

・行動


村崎・ゆかり
●旅路
定期的にルートレス・キャラバンにお邪魔して、レプリカントの女の子と名前を聞き出したり、必要なものを差し入れしたりして、親睦を深めるわ。アヤメも一緒に、ね?
キャラバンの中じゃ、話し相手見つけるのも大変じゃない? あたしたちでよければ、話し相手になるわよ。
そのまま雰囲気を醸成していって、受け入れてくれるならえっちも。

●ファクト・ディストピア
助けた彼女に案内してもらって、この国を見て回りましょ。
呪術者にはあまり縁が無さそうな世界ねぇ。機甲式をもう一体しつらえるならともかく。

コンペに『迦利』を出してみましょうか。ここの空戦型キャバリアとどれだけ渡り合えるか。「式神使い」で一応本気でかかるわよ。


シーザー・ゴールドマン
ファクト・ディストピアか。自ら名乗っているのであれば独特の感性だね。
マザーの諧謔かな?
こういう国があっても良い。まあ、永住しようとは思わないがね。

コンベンション見物など自由にディストピアをステラと共に見て回ります。

ステラの知るレプリカントはほとんどが猟兵だろう。一部の例外と見るべきだろうね。まあ、不満というのは他者との比較からでるものさ。
マザーの統制限界を超えない限りは上手くやっていけるのではないかな。

ステラと/◎


ステラ・リデル
マザーが一元的に管理する効率重視の国家ですか。興味深いですね。
ただ、私の知るレプリカントは感情面で人間と変わらない人が多いですが、不満は出ないのでしょうか?
(否定的な感情ではなく干渉する気もないが気になりはする)

そうですね。変化があるとすれば内部からより外部、周辺国家の影響ででしょうか。あるいはオブリビオンマシンの浸食か……
機械にとっての楽園、長続きすればいいのですけれど。

シーザーと共にファクト・ディストピア観光を楽しみ、ともに帰還します。

シーザーと/◎


槐・白羅
金銭が貰えるのであれば重畳。
ありがたく頂くとしよう。(尚きっちり貯金する

しかしこうした文明を見るのは良い教訓だ
俺が国を建てる為の学びとなるだろう

なので可能な限り色々な所に行くぞ

後はモルスの整備と調査を行って貰う
元々拾ったキャバリアだからな
勿論俺も立ち会うぞ
暴走されちゃ困るからな
結果
ナノマシンによる再生機能持ち
システムにディアーナといくつかの共通点がある
若しかすると原点が同じ?

突如神機が動き出し…片手にキャバリアソードが出現

…これは…?

余計に謎が増えた気がするな

後はキャバリアの模擬戦闘の見学もしよう

キャバリアの戦いは実はそんなに慣れてないんだ
是非とも参考にしたいからな


ラスト・バレット
【新世界学園】の男連中で模擬戦を観戦しながら駄弁る

「物資も情報も持ち出し禁止……となると
 逆にティンカーベルシステムをこちらから売り込んでデータを送信させるのはどうだ」

味気ない固形食料を片手に模擬戦を眺めたまま仲間に話しかける

「レプリカントにとっての楽園らしいが、飯が不味くて娯楽もない。俺には合わない」

「いや……あれは動作こそ早いがモーションのパターンが乏しい」
「次、右足が来るぞ」

「フーガの場合はあそこで足が出るか手が出るか……頭突きが来るか全くわからない」

ひとしきり観戦を終えると立ち上がり
「ウェンディは家に帰せた」
「俺たちも、影も残さず帰るとしよう」 


ノーウォー・ノーライフ
【新世界学園】で束の間の休憩

任務は終えたのでタメ口に
「それで学園にレプリカントが押し寄せてきたら真っ先にお前を突き出すからな」

「……まあ、そこまで悪い味でもないな。栄養価も考えればレーションには良いが……これも持ち出し不可か」
さして残念そうでもなく模擬戦をぼけっと眺める

「今カウンターを決めた方、『フーガ』より反応良くなかったか?いっそ『フーガ』を凌駕しかねんな」

「ああ、本当に出たな……なるほど、リスク度外視な行動にも出るパイロットの差があるわけか」

無感情で出来た機械達の楽園に幾ばくかの居心地の良さを感じていた
けれど、やはり去ることに少しの躊躇いも覚えられなかった
「元から無いものは忘れませんよ」


風祭・ヒュウガ
【新世界学園】の野郎共と駄弁りながらブラつく

「それ、バレたら完全に戦争の火種じゃねェか。やめとけやめとけ」
ラストの冗談とも本気ともつかぬ物言いを一瞬で蹴りつけ

「……まぁ、お前にゃ合わなそうだ。頭のいいアホだからな、お前」
「どっちかっつうとノーウォー向きじゃねぇか、ここは」

などと雑談しつつ、コンペだと言う模擬戦を眺める


「……確かに性能はいい。だが、行儀が良すぎるンだよ」
「そら見ろ、次に何が来るかちっと目が慣れればバレる程度のパターンだろォが」
「何より……フーガのがパワーは上だ」

なんて、目の前の機体に対して負けず嫌いを発動し
それなりに満喫しつつ、自分達の居場所――新世界学園へと帰投するのだった



●月桂樹
 小国で荷下ろしをしている大型戦車の中を、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)は黒の三つ編みを揺らしながら、忍び装束を着た長耳、アヤメと共に、のんびりと歩き回る。診療室と書かれた小部屋を見付け、ドアを2回叩く。小気味の良い音に、機械技師では無く、隊商の若い医師が顔を覗かせる。
 ゆかりの顔と、初対面のアヤメが深く頭を下げているのを見て、用件を察し、微笑んで手招いた。
「こんにちは、目が覚めたって聞いて、来てみたんだけど、具合はどう?」
「稼働率は60%を超過しています。修復作業による稼働停止に伴う栄養不摂取を除けば、問題ありません。直ぐにでも戦闘体勢に移行出来ます」
 彼女の言い分に、二人は呆けた様子で顔を見合わせた。彼女の言を正直に聞き入れるなら、それは、単に多少の無理が利くだけである。彼女等がそうした表情をする理由が分からず、レプリカントの少女も、全くアイ・センサを動かさない真顔のまま、小首を傾げた。
「……迦利や鎧装豪腕が喋ったら、こんな感じなのかしら?」
「ゆかり様、お二方とも私の同僚ですよ。恐らくもう少し、癖があるかと」
「自覚が有るなら少しは直す努力をしなさいよ……そもそも、アンタは事情が違うでしょ」
 真面目に付き合ってくれる所や、案外と、ころころと表情を変える所が可愛らしいので、直す気が無いのだと、アヤメは口には出さず。
「ゆかり様が可愛らしいのがいけないのです」
 それだけ伝えて、良い笑顔で親指を立てる。ゆかりの身体がふっと宙空に浮いたと同時、ハリセンになった白一色が、風切り音と共に、綺麗にアヤメの顔面を横薙いだ。声を荒げて言いたいことはあれど、病室なので、ゆかりはギリギリの所で自制する。
 そんな二人のやり取りを、レプリカントの少女は無感情に見つめるのみだった。
「と、ごめんね。大体の事情は分かっているつもりよ。名前を聞いても良いかしら?」
「人間に近しい個体識別名称を、当機は所有していません。階級、所属を含めた16進数を基礎とするシリアル・コードのみが与えられています」
「そっか。じゃあ、貴女のことをローレルと呼ぼうと思うのだけれど、良いかしら?」
「構いません。マザーであれば、良い感性であると、貴女を賞賛したでしょう」
「有難う。と、そうそう。自己紹介が遅れたけど、私はゆかり。そっちはアヤメ、それじゃ、ローレル。何か食べたい物は有るかしら?」
「ご厚意に感謝致します、ユカリ、アヤメ。当機、ローレルは栄養効率の良い食料を希望致します。然しながら、手間を掛ける必要も、要望を聞く必要も有りません」
 機械は人の手足となるべき存在であり、この状況は本来有ってはならないのだと、ローレルは、ほんの僅か、表情を曇らせた。
「考え方は理解したわ。まあ、人も道具も、病み上がりの時位はゆっくりする権利は有るわ。マザーがローレルにとって、どう言う権限を持っている人かは分からないけれど、あんな事になっても、帰投を許してくれる程度には、寛大なんでしょ?」
「……肯定致します。ユカリ」
 返事に満足そうに頷いて、キャラバンに有る食料から、栄養の有る食事を、備え付けられているキッチンで、アヤメと一緒に作る。現状、海や川に沿ったルートでは無く、海鮮の類は望めない。保存の利く乾燥肉や、干涸らびた土地で育つ植物を利用し、頭を悩ませながらも、隊商の人間に定番等を聞き出し、味に問題がありそうならば改善案を加え、昼食に相応しい料理を、ローレルに配給する。使った分は受け取った報酬から、隊商へ還元する。
「暫く、料理振る舞うついでに、様子を見に来るわね。キャラバンの中じゃ、話し相手見つけるのも大変だろうし、あたし達でよければ、話し相手になるわよ。それと、貴女の依頼を断られたりしたら、遠慮無く頼ってくれて良いわ」
 ゆっくりと料理に手を付けていくローレルを確認し、安心してから、一度小さく手を振って、大型戦車を後にする。
「可愛いらしい方でしたから、ね」
 考えていることを見抜いていた従者であるアヤメがぽつりと零し、冷ややかな視線を寄越したのを察知しながら、ゆかりは極めて意識的に無視し、鼻歌を紡ぐ。以降、目的地の到着まで恋人でもあるアヤメによって、意図して良い雰囲気はにこやかにそれとなく潰され、夕方から夜の予定も同様となったが、それはまた、別の話だ。

●統制国家のマザー・コンピュータ
 隊商の旅は多少の荒波こそ有れど、概ね順調に進む。識別コードを番兵に開示したローレルは、世話になった二人に、淡く微笑んだ。
「今まで面倒を見てくれた事に、当機、ローレルは感謝致します。人に気を遣われると言うのは、身に余る体験でした。マザーの言葉を初めて、理解出来たと伝えましょう」
 大型戦車も同様に搬入され、明らかに異質なぬ国へ、隊商に同行した猟兵達は、足を踏み入れる。
 黒鉄の鉄床と黒の天井で彩られた、要塞の外殻を纏う、昼夜の無い鉄の小国。何処か工場の中を思わせる佇まい、その中央に聳え立つ塔の形をした巨大な情報処理機構、それがこの国のマザー・コンピュータであり、機械統制国家、ファクト・ディストピアの代表、マザーであった。
 マザーの機体構成は、人の出入りを想定した造りになっている。円筒型のエスカレータが導く最上階には、マザーと会談出来るスペースが有り、依頼を受けたルートレス・キャラバンの隊長と、猟兵は、案内に忠実に、マザーとの会見に出向いた。
「ようこそ、異邦人の皆様、ファクト・ディストピア一同は、同胞を救って頂いた事に、感謝の意を示し、訪問を歓迎致します。報酬は望む形式の貨幣、紙幣でご用意致します。但し、現世代、暴走衛星の監視下に移行した後の物に限らせて頂きます、ご了承を」
 隊長はその言に、貨幣での支払を望み、出て来た報酬を受け取る。
「此所は人の、自分達の居るべき場所じゃねえ。マザー、アンタは確かに寛大だが、物資流出や技術流出を恐れて交流をしてねえ訳じゃねえ。あのオブリビオンマシンに乗ってた……ローレルの言葉は、アンタの意思だ。考えるに、この世が正気に戻るのを、待ってんだろ……」
「肯定します。良い思考力、洞察力をお持ちだと、マザーは賞賛致します」
「ばつが悪ぃ。一人類として、現状を謝罪しとくぜ、マザー。何時か、全うに人間が、アンタと向き合える日が来ると良いな。ルートレス・キャラバンは此所で何も見ねえし、聞いてねえ。そう動く」
 言い残し、仕事は終わったと言わんばかりに、搬入され、管理されている大型戦車へと、早々に撤収を決め込んだ。

●マザーと猟兵
「金銭が貰えるのであれば重畳。ありがたく頂くとしよう」
 望んだ通りに差し出された硬貨を槐・白羅(白雷・f30750)は革袋に収め、腰に提げる。枚数は少ないが、1枚が1枚がキャバリア等、この世界の機械技術に深く関わる希少金属で出来ており、紙幣硬貨に統一感の無いクロム・キャバリアに於いても、一定の買値が付く代物である。
「しかしこうした文明を見るのは良い教訓だ。俺が国を建てる為の学びとなるだろう」
「国家運営には様々な知識が必要です。ファクト・ディストピアは非常に単純な構造となっており、独裁の中でも極めて悪辣とされる、統制国家を知るには、良い機会でしょう」
 自身の自治を悪辣であると断じているマザーに、槐は不思議そうな顔をしながらも、もう一つ、頼み事をする。
「モルス……俺の乗っていたキャバリアの整備と調査を行って貰いたい。元々拾ったキャバリアだからな。暴走の可能性もあるから、勿論俺も立ち会うぞ」
「了承致しました。此方としても興味深い機体であると、同胞のメモリーを読み取ったマザーは進言致します」
「ついでで悪いんだけど、マザー、送り届けたあの子、ローレルがどうなるのか、聞いても良いかしら?」
「……刑罰に類するペナルティを設ける事は有りません。国家の一員としての日常を、マザーは保証致します。初期化は必要無いと、マザーは判断を下しました」
「悪辣なんて自虐するほど、非常な統制を行っている訳ではないのね……」
「否定します。マザーは全人民をリアルタイムで監視、統制し、ソフトウェア、ハードウェア両面の過負荷を計測し、場合によっては警告を呼びかけます。また、同胞の生産直後より、感情の発露をナノマシン投与によって意図的に抑制し、国家の安寧を得ています」
 ゆかりの問い掛けに対する返答を要約すると、一括で国民全員の面倒を見ているだけであり、悪と違い無く言える行為は、極小機械投与による感情の抑制と、経済的な自由を与えていない事、個人の時間を与えていない事だろう。
「また、日常に戻る以上、該当機、ローレルは職務に励むことになり、面会は不可能です。同胞の仕事を阻害する行為には、相応の処置を検討しなければなりません」
 ただし、この様に早い復帰が望めたのは、面倒を見てくれた者の御陰だと、マザーは確かな感謝を述べた。
 それぞれ、報酬の受領を済ませ、猟兵達は滞在許可、観覧許可となる極小機器と、味のしない携行食糧をマザーから受け取ると、塔を後にした。

●マザーの諧謔
「ファクト・ディストピアか。自ら名乗っているのであれば独特の感性だね。マザー、君の諧謔かな?」
 渡された極小機器を走査し、理解したシーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)は赤スーツの首元に提げたそれに語りかける。
「肯定します。マザーは悪辣な統制国家の元首です。同時に、人間を尊敬してしまったスクラップです。此所は如何すれば人間が嫌悪する統制で有るかをデザインし、モデル化し、試行及び運用をしています」
 双方向通信機器の特性を持つ極小機器は、宙空に画面を投影する。そこには自身の脈拍、血圧等、体調の値が表示される。
「マザーが一元的に管理する効率重視の国家、興味深いですが、先程の会話から察するに、大部分を省略してしまえば、私達の統治と、あまり変わらないと言う印象ですね」
 ステラ・リデル(ウルブス・ノウムの管理者・f13273)は自身の管理している国家を思い返す。
「共産主義的ではあるが、悪辣な国家元首を名乗るには優しすぎる位だね。情状酌量の余地が有るとは言え、敵機に捕まった兵を無罪と言うのは、機械ならではだろう。人で有れば、示威が必要なケースも山程あるからね。まあ、永住しようとは思わないが、こう言う国が有っても良いだろう」
「同意します。ただ、私の知るレプリカントは感情面で人間と変わらない人が多いですが……ナノマシンによる抑制にも限界が有る筈です」
「肯定します。マザーはプラス・マイナスに関わらず、一定の感情値を持ったと判断した同胞については、ファクト・ディストピアに関する一切のメモリを再生不能な複雑且つ多数となるフラグメント数に分割し、路頭に迷わぬ様、金銭及びダウングレードしたキャバリアを所持させ、国家から追放します」
「何方かと言うと機械からの卒業、人間への門出、祝福の類と言う所かな。それに、ステラの知るレプリカントはほとんどが猟兵だろう。一部の例外と見るべきだろうね」
「そうですね。また、返答に感謝致します、マザー。然し、貴女は私達との対話を随分と楽しんで居る様ですが」
「肯定します。マザーはそれ故に悪辣であり、スクラップであると自称します」
「無感情を装え、とは言えないね。階級の高いレプリカントであれば、君のそれにも薄々気付いているのだろう。不満が無いと言う事は、慕われていると考えるべきだよ、マザー。自身を卑下するのは、そう言った者からの忠言だね?」
 愉快そうな気配を持ちながらも、機械特有の白黒はっきりした言動をするマザーが、シーザーのそれには、沈黙した。図星と言った所だろう。
「それに往々にして、不満というのは他者との比較からでるものさ」
「そうですね。変化があるとすれば内部からより外部、周辺国家の影響となるでしょうか。あるいは、オブリビオンマシンの浸食か……機械にとっての楽園、長続きすれば良いのですけれど」
「マザーの統制限界を超えない限りは、上手くやっていけるのではないかな? 極論すれば、此所から自身以外の機械が居なくなっても良いと、考えていそうではあるけどね」
 彼女は、これまでの会話や質疑から見ても、人間を愛し過ぎている。中々に愉快な事象であると、シーザーは黄金色の目を細めた。
「さて、先ずは修理場に行ってみようか」
 興味本位に支給された携行食糧の封を切り、囓る。栄養豊富な粉っぽい噛み応えのみが有り、一切の味を感じない。水を吸ったオートミールと、何方を口に入れたいかを考えてみて、栄養自体は彼方より豊富で有る事から、シーザーは辛うじて、此方の方に利があると考えた。
「まあ、どの道、私達には必要無い食料だが……この国を印象づけるには十分かな」
 ステラも主に合わせて一つ口に放り込む。まだ幼さを残しながらも整った顔立ちが、何とも複雑そうに眉根を寄せる。
「噛み始めは確かに軽い食感がありますが、以降は……非常に粉っぽいガムベースを噛んでいる様ですね。食と言う娯楽の重要性について、改めて実感します。観光を終えた後に、また腕を振るいましょう」
「それは良い。楽しみにしておくよ」
 
●冥王
 既存キャバリアの格納エリアにシーザーとステラが足を運ぶと、白髪の青年、白羅が自身の機体であるモルスを見上げていた。首元の端末が投影するモニタには、モルスのスキャン結果が表示されている様だ。
「洗脳時も被害を受けた該当機は兵装の稼働保証の為に、一定のデータを所持させられていました。ディアーナと呼ばれた機体と、この機体の構造は酷似しています。ナノマシンによる自己修復機構、システムにも共通点が見られます。同型機である可能性は極めて高いでしょう」
 音声報告を聞き終わると、白羅は一つ頷いた。モルスが反応したもう1機、悪魔の機体も恐らく、同型だろうと考えを巡らせると、モルスのカメラ・アイに光が灯る。片腕を振り上げ、斜めに振り下ろすと同時に、一振りの剣が現れる。刀身を包む呪詛は靄として、可視化される程に濃く、其処にだけ濃密な死の気配を漂わせていた。
「これは……? 余計に謎が増えた気がするな」
 驚きつつも、拾い物のキャバリアを受け入れた青年は異常事態でありながらも、それのみで終わらせた。作業に当たっていたレプリカント達は現状は無害だとしつつ、その場から待避した。
「ディアーナといい、興味深いキャバリアだね」
「あれにシーザーが触ると、暴れ出しそうな予感はしますね」
「機械とは言え、冥界の王の名を冠しているからね。本能的な対抗心は沸いてくるだろう」
 ステラ、シーザー、マザーと白羅は国について話し合いながら、各所を見て回る。とは言え、此所に有る物と言えば、生産ライン、居住区、配給所、試験場を兼ねた研究所であり、特に居住区などは仕切りすら無いクレイドルを等間隔に置いただけの寝床であり、配給所に至っては先程渡された味の無い固形食料が、定期時間、或いはボタンの押下、マザーに必要な旨を伝える事で、コンベアから備蓄分から流れてくるだけの施設だ。
「悪戯心が沸く仕組みだね」
「マザーに咎められますよ」
 生産ラインは流石に機械と言うべきか、清潔にされた屋内で、適性を持ったレプリカント達が精緻且つ、人のそれを超えた超高速で作業に励む。量産体制と言いながら、レプリカントとしてのスペックをフル活用した作業内容は目を見張る物があった。
 研究所は人のそれとは若干違い、新たなアイデアや独創性と言う物は排除され、実物兵器をテーマにした既存知識からのマッシュアップ、統合しつつ改善を求める方向性だった。マザーの言う人と機械の適正の違いについて、得心の行く場でもあった。
「これでは、どれだけ情報が膨大でも、大きな技術革新は起きないだろうね」
「生産ラインの様子から、優れた技術の再現や量産には、これ以上無いほどの適正ではありますね。模擬戦場に行きましょうか、シーザー」
「そうしよう。君も見て行くのかな?」
「勿論だ。キャバリアの戦いは、実はそんなに慣れてないんだ。是非とも参考にしたいからな」

●模擬戦闘
 次期主力機を争う模擬戦闘、特に近接格闘機体は持久性と耐久性の観点から、この世界の人の身では為し得ない程の試行回数を重ねていく。パイロットに問題が無いレベルで何処まで壊して、何処まで動くかと言うのは重要視されており、その上で通常スペック、つまり出力の向上を計る、と言うのがファクト・ディストピアの方針だ。
 勿論生産ラインには持久性、耐久性を度外視した物も幾つかは存在している。それらをのんびりと眺めながら、開条・セサミ(カプセライザーGP・f30126)は考える。
「機械の、楽園っすか……自分にとっては、どうなんすかねぇ? 少なくとも、自分は新世界学園でみんなと居る方が『楽しい』とは思うっすけど」
「来訪者で有り、同胞である貴方に、マザーは助言致します。それは貴方に搭載された集積回路群が半自律的に作り出す、システムコードによる擬似的な感情で有るか、明確な自我であるか。問い掛け続ける事こそが、貴方を貴方として作り上げるでしょう」
「あ、マザーはそう考えてるんすね。自分が思ってたのとはちょっと違うみたいで安心したっす! 自分の国でも【不思議】って言われるんすよねえ……」
 表情モニタの側面を、手袋を模した機械アームの人差し指で数度擦る。
「マザー、データ持ち帰るのって大丈夫なんすかね?」
「貴方の中のブラックボックスに手を出すことは出来ません、其方のシステムが解析した事象は、システム・コンピュータに送信されてしまいます。然し、退出の際、記憶領域に干渉させて頂きます。此所での技術に関する映像、音声記録については全てフラグメント化します。具体的には、音声での伝達が困難になり、解析は機械工学、システム言語に精通した天才の時間を総合で168時間ほど宛がう必要性が有ります」
「……やっぱそうっすか。いやでも教えてくれて有難うっす!」
 改めて画面を模擬戦の方へ向け、今度は気を入れて見ていく。壮絶な腕部、脚部の壊し合いの果て、軽量級の選別は、無事新規開発機に決定した様だ。

●近接戦闘の肝
「物資も情報も持ち出し禁止……となると……逆にティンカーベルシステムをこちらから売り込んでデータを送信させるのはどうだ」
「それ、バレたら完全に戦争の火種じゃねェか。やめとけやめとけ」
「それで学園にレプリカントが押し寄せてきたら真っ先にお前を突き出すからな」
 模擬戦を眺めながら、味の無い固形食料を噛みながら、真顔でラスト・バレット(錆びた銃弾・f30099)が物騒なことを提案する。冗談とも本気とも付かない言葉に、風祭・ヒュウガ("フーガ"・f30077)が一蹴し、ノーウォー・ノーライフ(生き損ない・f30111)が追撃する。極め付けに。
「押し寄せる事は有りません。マザーは機械です。あらゆる情報戦、クラッキングを得手としています。ピーターパンを大人にして差し上げます」
 マザーからすら冗談とも本気とも付かない受けて立つ宣言が渡された機械から聞こえ手来る。ラストは、マザーが案外情感豊かであると感想を漏らすように、固形食料を噛む。
「レプリカントにとっての楽園らしいが、飯が不味くて娯楽もない。俺には合わない」
「……まぁ、お前にゃ合わなそうだ。頭のいいアホだからな、お前……どっちかっつうとノーウォー向きじゃねぇか、ここは」
 一呼吸置いた後、隣に居るノーウォーへヒュウガが目を逸らすと、案の定。
「……まあ、そこまで悪い味でもないな。栄養価も考えればレーションには良いが……これも持ち出し不可か」
「栄養価と保存年数のみを追求した栄養機能食品です。結果、味の無い物となっており、人間の望む味では無いとマザーは考えています。味覚を有する生物には、土を食べるよりも良い程度でしょう。それ故に、望まれるのであれば、固形食料については、持ち出しても構いません。大きく世界のバランスを変えることも無いと、マザーは考えます」
 マザーの進言に、サンプル用を一つ願い出て、ノーウォーは呆とした様子で、ヒュウガはフーガと同等の重量級近接機体が出て来たところで、割と真剣に模擬戦を眺めていく。
 無手での近接格闘は腕部稼働の滑らかさに始まり、出力、速度等、2機とも優秀だ。光学粒子、力場は当然の様に扱われ、初手は自機のエネルギーを利用した分け身による読み合いに始まり、ほぼ同等の展開の後、対消滅から、ほぼゼロ距離に近い状態で互いに死角を付き合う挙動。両機とも一切の隙が無く、パイロットも優秀な者が搭乗している事が窺える。
 また、胴部コクピット搭乗式を採用しているのは情報戦やジャミングへの警戒と、何桁ミリで発生する遅延がレプリカントにとっては致命的と言う部分があるらしい。
 焦れて跳躍した機体にもう片方が一瞬で距離を詰める。その展開を狙っていたと言わんばかり、頭部を両脚部で挟み込み、ブースターを吹かし、バク宙の後、頭から叩き付ける。
「今カウンターを決めた方、『フーガ』より反応良くなかったか?いっそ『フーガ』を凌駕しかねんな」
「いや……あれは動作こそ早いがモーションのパターンが乏しい」
「……確かに性能はいい。だが、行儀が良すぎるンだよ」
 速度、性能、出力、燃費どれを見ても一級品だ。これが量産機であるが故に、尚更凄まじいと言える。ノーウォーはその観点を分析し、ラストとヒュウガは、その上で、パイロットの動作が何処か機械的であり、揺らしやぶれ、拍子の変化が少なすぎると、欠点を指摘する。重力場によって床との直撃を避け、仕切り直しの合図に、両機が次のラウンドに突入する。初手は、先程と変わって、ブースターを吹かしての真っ向からの力比べ。何方かが力を抜けば無手の弾き合い。
「次、右足が来るぞ」
 この手の展開になり、シームレスで滑らかに人の様な動きが出来るならば、最早、人の格闘技と変わらない。当て嵌めるのは簡単だ。ラストは生身での対キャバリア戦闘に於いても専門家と言える来歴持ちだ。
 やはり、焦れたところで胴部を狙う強引な右足の蹴撃。
「そら見ろ、次に何が来るかちっと目が慣れればバレる程度のパターンだろォが」
 一方でヒュウガは無手格闘機体の専門家である。パターン化された行動の欠点を、身を以て知っていると言って良い。
「ああ、本当に出たな……なるほど、リスク度外視な行動にも出るパイロットの差があるわけか」
「フーガの場合は、あそこで足が出るか手が出るか……頭突きが来るか全くわからない」
 弾き合いに付き合うのが鬱陶しいと、敵のペースを乱したがる可能性すら挙がる。総じて、彼の言うとおり、行儀が良すぎると言うのは言い得て妙だろう。
「何より……フーガのがパワーは上だ」
 それは単なる負けず嫌いだと、ノーウォーの釘を刺すような、覇気の無いしょぼくれた瞳が向けられた。

●空戦の千日手
 空戦機に迦利が何処まで追いつけるのかを実証しようと、ゆかりはマザーに模擬戦許可を貰い、参戦する。天井に限りは有るが、飛び回るには十分な高さが有りそうだ。紫色の機体と、カラーリングに拘りの無い量産機が、粒子兵器を撒き散らし、ドッグファイトを展開する。
 時に上下へ、時に左右に身を振れさせる三次元軌道。油断をすれば側面から機械翼を割りに掛かる癖に、狙う部位が決まらない逆三角のキャバリアは、相手に大火砲で打ち抜くか、近接格闘兵装で砕く以外の選択肢を狭め、迦利側は、張られる力場を壊す為に接近しての格闘戦を仕掛ける以外は、火力に欠ける。
 最終的には操作する側の軌道予測合戦となり、牽制の仕合いが延々続いた果てに、引き分ける事となった。因みにパイロットはローリエであり、ゆかりと戦えたことを、分かれたときと同じく、嬉しそうにしていた様だ。

●帰投
「ウェンディは家に帰せた」
 ひとしきり観戦を終えた辺りでラストが立ち上がる。ノーウォーは機械達の楽園に幾ばくかの居心地の良さを感じながらも、それを視線で追う。
「俺たちも、影も残さず帰るとしよう」 
「元から無いものは忘れませんよ」
 それでも彼は、立ち去ることに躊躇いを覚えない。擦り切れ掛けている感情は、それに虚しさを覚えることも無い。

●終幕
 セサミは帰投の際に、埋め込まれていたフラグメント化プログラムが起動し、ファクト・ディストピア内でスキャンした技術関連のデータを開条エンタープライズに口頭で報告しようとするも、擬音が飛び交う小学生の様な表現になり、担当者をひたすら困惑させるのみだった。メモリに収納されたファクト・ディストピアのスキャン済技術データは非常に細かくフラグメント化及び暗号化されており、開条エンタープライズに天才が居なければ、学園関係者か他企業へ提携を申し込む他無いと、早々に判断されただろう。
 村崎・ゆかりは余計なことをした従者兼、恋人であるアヤメに何か折檻を考えたかもしれない。
 ステラはシーザーにいつも以上に熱を入れた食事を作り、一緒に晩餐を楽しんだ。シーザーも口直しには丁度良いと、何時も通り、多量を行儀良く食す。
 白羅は謎の深まったモルスについて、思索にふけりながらも、己の国を作る為、衛星に見つからないよう、機体を滑らせる。
 ラストは帰投後、ネバーランドの方で開催されているコンベンションを見て回る気の様だ。
 ノーウォーは現地で手に入れた携行食糧サンプルを、どの企業に渡すか思案した。設計思想のみを考えるならば、久魔商会ではあるがと、しょぼくれた瞳で独りごちた。
 ヒュウガは砲撃によって消し飛んだフーガ用の特注外套を、マザーから得た報酬でmiviに発注し直したかもしれない。
 猟兵達はそうして、自身の日常へと戻っていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年12月07日


挿絵イラスト