#クロムキャバリア
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●
「キャバリアから声が聞こえる?」
「……貴方にだけ、ですか? そうですか……」
皆、訝し気な顔だった。しかしその反応は当たり前だと、己でもそう思った。自分でも未だ信じられない部分はあるからだ。
しかし、
『――この国を救いたいか?』
聞こえる。今もだ。
「…………」
テスターの責務で精神に不調を来たしているのだろうと、そう言う者もいた。事実、己に課せられた責任は大きい。明日の試験の事を思えば、平静ではいられない。
過去に隆盛を極めた祖国も、キャバリア開発に遅れれば現状は苦境の一語だ。国を導けなかった巨大政府は解体され、今は企業連合の主導となっているが、過去の貯えを切り崩し、粗悪なキャバリアを量産し、何とか周辺の列強に対応しようとしている状態だった。
限界は近い。
『――しかし、そうはならない』
「……っ」
見上げる。床板から五メートルの高さにある赤の光は、こちらを真っすぐに見下ろしていた。
己以外は存在しない未明の格納庫の中、暁色ともいえる色味のキャバリアからの声は耳を塞いでも聞こえてきた。
『――この国を救いたいか?』
そして、そんな声の言う通りだった。
領内で偶然発見されたこの機体は研究者曰く、自分達の国は勿論、他の列強でも製造できないほどの超高性能な機体なのだという。
苦境を脱する一縷の望みは、古代魔法帝国の時代の産物かと研究者の皆が思ったがどうやら違う、という説も浮上した。
「宇宙から……」
そこから、この機体はやって来たというのだ。本当かどうかは知らないし、知るすべなど殲禍炎剣が存在するこの世界ではそこまで重要視されていない。だが機体表面にあった付着物質や焦熱反応、そして未知の技術で構築された機体を見ればそう噂されるのも無理からぬことだった。
『…………』
自分でも荒唐無稽な言葉を呟いたが、意外にもキャバリアは答えてこなかった。
否、
『我は美しいものが好きだ』
答えとなっていない答えだが、最早慣れた。それほどまでに自分はこのキャバリアの声を聴いていた。
だから己も言う。
「どうすればいい」
『――夜明けだとも』
東の空から、光が格納庫に差し込んだ。
●
「皆様、事件ですの!」
猟兵達の拠点、グリモアベースでフォルティナ・シエロは言う。
「現場はクロムキャバリア。人型機械である『キャバリア』が特徴的な世界ですわね」
クロムキャバリアは、無数に分裂した小国家同士が体高5mの人型兵器『キャバリア』を主力に、生産施設『プラント』を奪い合う、荒廃した世界だ。
「オブリビオンの暗躍によりこの世界は百年以上もの間、戦争を続けていますの……」
『オブリビオンマシン』として蘇ったキャバリアが、搭乗者を破滅的な思想に狂わせ、戦火を拡大させている為だった。猟兵以外はどれがオブリビオンマシンか識別できず、その状況を認識する事もできない。
現地の様子を映した資料を提示しながら、フォルティナは言葉を続ける。
「今回私が予知した未来は、ある小国家で開発していた最新型キャバリアが、パイロットを乗せたままオブリビオンマシンと化し、暴走する未来ですの。
暴走キャバリアは市街地で暴れまわり、このままでは多大な被害が出てしまいますわ。食い止めなくてはなりません」
現場の状況を説明しますわ、と、画像を次々に用意していく。そこには青い海と白い建物が並ぶ温暖な気候の街が映っていた。
「現場は『オリュンポス』という国家で、ロケーション的には海に面した街ですわ。白い建物群など、UDCアースやヒーローズアースで言う処の地中海性気候を思わせる地域ですわね。
企業連合が支配するこの地域は、キャバリアの開発力や技術力に乏しく、今回の新型機に国家の命運を賭けているようですわね」
と、次に表示した画像には、黄銅とオレンジを基調とした人型機械が表示されていた。『キャバリア』だ。
「これが、オブリビオンマシンとなった新型機ですの。この『ロクシアス』という名前のキャバリアが研究所の格納庫を飛び出し、市街地へ向かいます。なので皆様にはこれを阻止してもらうことになりますわね。研究所の側でも、果ては市街地の中でも、戦場は皆様のご自由にお任せしますわ」
ロクシアスのユーべルコードを説明しながら、言葉を続ける。
「相手は体高五メートルの機械兵器です。生身で戦うのもアリですし、普通に可能な方もいらっしゃるでしょう。ですがこの世界ではキャバリアをジョブやアイテムとして持っていない方でも、現地の勢力からキャバリアを借りて乗ることができます。今回の場合ですと、オリュンポスの企業連合やその傘下の研究所、街を警備する保安部などから借り受けることが出来ますわ。ただ先ほども申し上げました通り、キャバリア開発に遅れを取っている小国家ですので、借りれる機体はあまり高性能ではない量産型とか、そんなところでしょうね。
――あ、因みに皆様のユーベルコード。それはキャバリアの武器から放つこともできますから、借りてそのまま発動して大丈夫ですのよ」
と付け加えながら掌から光を生み出す。砂状のグリモアは、空間に文字を描いていく。
「まとめますわ」
・クロムキャバリアでオブリビオンマシンとなった新型キャバリア暴走事件。
・現場に急行し、これに対処してほしい。
・人型機械『キャバリア』に乗って戦いたい場合は、貸与してもらえる。
転移の準備を進めながらフォルティナは顔を上げ、猟兵達の顔を見回す。
「何故、最新鋭機がオブリビオンマシンと化したかは不明ですの……。が、この世界ではこういった事態が稀に起こるらしいですわ。
――ともあれ、ご武運をお祈りしてますわ!」
シミレ
シミレと申します。TW6から初めてマスターをします。
今OPで33作目です。クロムキャバリアの依頼は初めてです。
不慣れなところもあると思いますが、よろしくお願いいたします。
●目的
・敵オブリビオンの撃破(市街地での暴走を阻止)。
●説明
・『クロムキャバリア』で新型機が暴走する事件が予知されました。オブリビオンマシンと化し、パイロットを乗っ取ったのです。
・猟兵達は現場に急行し、暴走に対処してください。
・現場の状況は『天候・気候:晴れ・温暖』、『郊外の研究所~石造建築の市街地』、『敵は研究所から市街地へ向かってる』、とかまあそんな感じです。それ以外は基本的に自由というか、皆様のプレイング通りの戦場になるかと思います。
・この世界は『キャバリア』という人型機械が主力の世界です。「ジョブやアイテムとしてキャバリアを持っていないけど、搭乗して戦いたい!」という人は、現地勢力から貸与されます。今回の場合は現地の小国家オリュンポスから貸与されます。
・ですがオリュンポスはキャバリア開発に遅れを取っており、貸与できるのは旧型だったりそこまで性能が良くない、量産型キャバリアです。
・その他『クロムキャバリア』という世界についての情報を知りたい場合は、第六猟兵の『説明書』ページを読んでください。
●他
皆さんの活発な相談や、自由なプレイングを待ってます!!(←毎回これを言ってますが、私からは相談は見れないです。ですので、なおのこと好き勝手に相談してください。勿論相談せずとも構いません!)
第1章 ボス戦
『輝光神機『ロクシアス』』
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POW : BSプラズマライフル『黄金の矢』
【プラズマライフルのレーザーサイト 】が命中した対象に対し、高威力高命中の【プラズマ化した超高熱熱線】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 高速戦闘演算機構『予言の神』
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【BSプラズマライフル 】から【相手の回避行動を読み切った超連続射撃攻撃】を放つ。
WIZ : 対人虐殺機構『疫病の矢』
自身の【機体全身 】から【疫病ウィルス型ナノマシン】を放出し、戦場内全ての【キャバリアに乗らない生身での戦闘行動】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「テラ・ウィンディア」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
「…………」
コックピットが開いた。己はロクシアスに乗り込みながら、聞く。
「どうするんだ?」
『我はこの国が狂った原因を知っている』
「ああ、何をす――、お、おい!?」
シートに座った瞬間、操作もしていないのにハッチが閉じた。否、ハッチだけではない。
「コンソールも……!?」
計器類や操作コンソールが、突如として一斉に稼働した。していく。
『戦うための剣が造れぬか。そしてそんな状況を誰も打破できぬか』
「くっ!」
機体の始動準備が己の手を離れて進んでいることに気付いた自分は、何とか操作を取り戻そうとするが、
『それはつまり力の不作であり、諦めという疫病である』
「ベルト!? それに――」
肩、腰、腿のベルト。そして頭部のヘッドギア。各所の装置が役割を果たす為に、己へ合致していく。
「く、クソ……!」
安全帯は最早拘束であり、ヘッドギアは異常な映像と音を脳に注ぎ込んでくる。振りほどこうとしたが、腕や手にそこまで力が入らなくなっていたことに今になって気付く。
マズい、という思考だけが惚け始めた頭を走っていき、
『――この国に蔓延る不作と疫病は、この国の者達の穢れによるのだ』
己の意識はそこまでだった。
●
状況は一瞬の内に一変した。
「……!?」
テスト開始まで新型機の警備にあたっていた企業連合保安部も、格納庫に当直中だった研究員も、その場にいた全員は警報よりも早く異常に気付いた。
それは、”それ”が警報よりも速く、大きく、激しかったからだ。
「格納庫が!?」
吹き飛んでいる。東側の屋根や壁が崩壊し、そこから表れる姿があった。
暁色の機体は、この場にいる誰もが知る機体だった。
『嗚呼、空よ海よ。わが父なるそれらよ。嗚呼、美しきかな。そして……』
『――攻撃!』
明らかにテスターの声ではないことを瞬時に判断した保安部は、一斉に砲撃した。この世界の各所で『キャバリアによる乗っ取り』が無いわけではないのだ。乗っ取りを確認次第、瞬時の撃滅という定石を果たす為、火力が一斉に飛来するが、
『太陽よ』
ロクシアスは見上げた東の空へ莫大な出力で飛翔し、保安部の攻撃を回避した。しかし、
『――煩累であるな』
すぐに殲禍炎剣からの砲雨が来たので、反転。低空を飛び、西へ向かっていく。
『まずい……! 向こうには市街地がある! 止めろ!』
●
「…………」
コックピットが開いた。己はロクシアスに乗り込みながら、聞く。
「どうするんだ?」
『我はこの国が狂った原因を知っている』
「ああ、何をす――、お、おい!?」
シートに座った瞬間、操作もしていないのにハッチが閉じた。否、ハッチだけではない。
「コンソールも……!?」
計器類や操作コンソールが、突如として一斉に稼働した。していく。
『戦うための剣が造れぬか。そしてそんな状況を誰も打破できぬか』
「くっ!」
機体の始動準備が己の手を離れて進んでいることに気付いた自分は、何とか操作を取り戻そうとするが、
『それはつまり力の不作であり、諦めという疫病である』
「ベルト!? それに――」
肩、腰、腿のベルト。そして頭部のヘッドギア。各所の装置が役割を果たす為に、己へ合致していく。
「く、クソ……!」
安全帯は最早拘束であり、ヘッドギアは異常な映像と音を脳に注ぎ込んでくる。振りほどこうとしたが、腕や手にそこまで力が入らなくなっていたことに今になって気付く。
マズい、という思考だけが惚け始めた頭を走っていき、
『――この国に蔓延る不作と疫病は、この国の者達の穢れによるのだ』
己の意識はそこまでだった。
●
状況は一瞬の内に一変した。
「……!?」
テスト開始まで新型機の警備にあたっていた企業連合保安部も、格納庫に当直中だった研究員も、その場にいた全員は警報よりも早く異常に気付いた。
それは、”それ”が警報よりも速く、大きく、激しかったからだ。
「格納庫が!?」
吹き飛んでいる。東側の屋根や壁が崩壊し、そこから表れる姿があった。
暁色の機体は、この場にいる誰もが知る機体だった。
『嗚呼、空よ海よ。わが父なるそれらよ。嗚呼、美しきかな。そして……』
『――攻撃!』
明らかにテスターの声ではないことを瞬時に判断した保安部は、一斉に砲撃した。この世界の各所で『キャバリアによる乗っ取り』が無いわけではないのだ。乗っ取りを確認次第、瞬時の撃滅という定石を果たす為、火力が一斉に飛来するが、
『太陽よ』
ロクシアスは見上げた東の空へ莫大な出力で飛翔し、保安部の攻撃を回避した。しかし、
『――煩累であるな』
すぐに殲禍炎剣からの砲雨が来たので、反転。低空を飛び、西へ向かっていく。
『まずい……! 向こうには市街地がある! 止めろ!』
※↑操作ミスで、同じ文章を二度送信してしまいました。すみません。
天道・あや
キャバリアが暴走してオブリビオンマシンに。…オブリビオンマシンがあるのは知ってるし戦った事もあるけど、 …新型、新しいのも為るんだ?ヤドリガミみたく古いのに宿るかと思ってた。…と、考えるのは後にして、街に着くまでに止めなきゃ!
レガリアスよし!道よし!あたしよし!それじゃ行きまショータイム!
レガリアスをフル稼働!【ダッシュ】で追い掛ける!
追い付いたら【歌唱】で鍛えた喉から大声で【挑発】して敵の足を止める!【おびき寄せ】
敵が攻撃してきたら【見切り、ダンス、足場習熟】で更に挑発しながら避けて反撃の機会を伺う。
そして敵が弾を切らしたり、リロードした瞬間に【ジャンプ】!そしてUC発動!地面に叩き落とす!
●
まず最初に現場へ転移したのはあやだった。
「……!?」
地上に降り立ったと同時、爆音にも似た大きな音を聞いた。格納庫の方からだ。建材が砕けて粉と散る向こう側に、キャバリアの影が見える。
オブリビオンマシンがあるのは知ってるし戦った事もあるけど……。
あの粉塵の向こうにいるのは新型で、そういった存在との戦闘は無い。
「新しいのも”為る”んだ? ヤドリガミみたく古いのに宿るかと思ってた……と!」
そこまで呟いたところで、己は研究所に背を向けた。
「考えるのは後にして、街に着くまでに止めなきゃ……!」
この後でロクシアスがどういう行動を取るかは知っている。東の空に飛び、しかし反転するのだ。
「つまりこの街道の上空を通るよね! ――レガリアス、よし! 道、よし! あたし、よし!」
履いていたシューズ、レガリアスの爪先で石畳の道を確かめるように何度か蹴りながら、指差呼称をし終えれば、
「それじゃ行きまショータイム……!」
「――!!」
格納庫の戦闘音を背後に、己は西へ駆け出した。
●
接敵はすぐだった。
……来た!
背後となった東の空から風を切る音が近づいてくるのを、あやは街道上で聞いた。ロクシアスが警備隊を振り切り、この先にある街へ接近しようとしているのだ。
殲禍炎剣を警戒しての低空飛行故、背後の風切り音は大きく、こちらの背が突風で押されるほどだ。
「――――」
そして大音が頭上を通り過ぎた。
「……!」
後に残るのは荒れ狂う気流だけであり、そんな風の奔流をレガリアスは瞬時に取り込み、内部で圧縮。
次の瞬間にはそのエネルギーを開放していた。足元で生じた急激な運動力がレガリアスのホイールを爆発的な勢いで回し、ホイールは街道上を噛み、身体を前へと高速で運んでいく。
「! 見えた!」
一瞬で過ぎ去ったロクシアスを再び視界に捉えた。相手は前方上空を飛んでおり、高度としてもかなり低い。しかしその分、
「風が厚いね……!」
先ほどは己の背を後押しした風圧が、今は前から打ち下ろされてくるのだ。正面からの突風がこちらの身体を、髪を、そして
「……!」
声を吹き飛ばそうとして来る。相手の注意を引き付けるために歌っているのだが、歌声が突風にぶつかって散るのだ。
「――♪」
だが、己は構わず歌った。突風が来るというなら負けなければいいのだ。つまり己全力を籠め、喉を震わせた。
音階を持った声が大気の壁を突き抜け、ただ前へと行く。届けと、その一念を持った歌声がだ。己の耳は先ほどから突風で碌に聞こえないが、
『――ほう』
しかしその声は聞こえた。ロクシアスだ。こちらの歌声に反応し、飛翔を止めてこちらを見下ろしている。
『我の足を止める歌声、正しく声誉であるな。――褒美を受けるに相応しいと知れ』
「!」
ロクシアスが右腕のライフルを引き抜くの同時、己は横へ跳躍した。サイドステップ二発。ターンを決めて、今まで己がいた場所を熱線が貫いたのを横目で見る。しかし、動きは止めない。
「~♪ いやあ、ダンスも得意で!」
『見事』
攻撃が続くからだ。高熱が石畳を抉り、溶解した礫が散る中をすんでのところで回避し続ける。回避すればするほど、溶けた路面というイレギュラーな足場が増えるが、初激を回避すればあとはどうとでもなる。
上空で発射音が聞こえたら、もう次の瞬間には地面が抉られているのだ。一瞬たりとも気が抜けない。
「――!」
そしてまた、発射音が聞こえた。しかし、
……! 途切れた……!
今まで連続していた発射音が途切れた。見れば、敵のライフルはフレーム部分が開放され、放熱か何かの真っ最中のように見受けられた。
その瞬間を逃さず、己はフルパワーでレガリアスのエネルギーを開放した。地面へ向けて解放された力が、その爆発力のまま身体を空へぶち上げていく。
『!?』
突如として上空に跳躍してきたことに明らかな驚愕を見せた敵は、右手に持ったライフルを棍棒のように振り回し、撃墜を狙ってきた。
「いやあ、気に入ってくださって何よりです!」
砲身が迫る中、己は敵の胸元に掌を向けて告げると、そのまま腕を振った。
『な……!?』
すると、触れてもいないのにロクシアスのボディが腕の動きへ大きく引っ張られていった。
その方向は、
「せーっの……!」
真下。地面へと、ロクシアスが墜落していった。
「……!」
溶解し、しかしもう冷えて固まった街道が、激震で揺れた。
成功
🔵🔵🔴
四王天・燦
帝竜様とも戦ったんだ
たかが5m相手に問題ない…と自信過剰
パイロットを回収したいからフォックスファイア・伍式の火矢で飛行ユニットや関節部を部位破壊で狙って無力化するぜ
疫病の矢を受けたら逃げ足で時間を稼ぐけどやっぱキツイわ
しゃあねえ…ぶっつけ本番!
無骨な量産機を拝借し操作を実戦で覚える…被弾したら爆発する前に乗り捨てて次の機体に乗り換え
(※量産機乗り捨てな戦闘スタイルを確立する)
大体覚えたらロクシアスにダッシュ・ジャンプ・グラップル
機体の限界突破した無茶な操縦が売りだぜ
装甲や頭部がぶっ飛ぼうが、アタシが無事で動けば問題ねえ
組み合ってガトリングの銃口当てて伍式の矢弾をブッ込む
コックピットは狙わないよ
●
晃は戦場の様子を見ていた。空に浮かぶ人の形をした五メートルほどの姿はロクシアスだ。空を飛翔し、西にある街へ向かっている。
「帝竜様とも戦ったんだ。たかが五メートル相手……」
別の世界での戦争を思い出す。その時の相手は数百メートルや数キロメートルなど規格外の連中ばかりだったのだ。肩を竦め、敵の航路へ先回りしていく。
「パイロットは回収したいからな……。となると……」
腕を振り上げ、空に、ロクシアスに掌を向けた。その後に朗じる言葉は詠唱だ。
「御狐・燦の狐火をもって命を貫き焼き尽くせ。苦痛なく安らかに、彼岸の向こうへと渡り給う――」
言葉に合わせて己の周囲に力が生まれる。力は赤の色で、空気を焦がす焦熱音を伴っていた。数にして四百五十を超す焔の群れは、ユーべルコードによって生まれた狐火だった。
「フォックスファイア・伍式……!」
空を飛ぶ敵目がけて、全弾が一斉に放たれた。それは地上から逆立つ雨のようだったが、ただ無秩序に飛び上がったのではなく、途中から明らかな指向性を持って軌道を変えていた。
『熱源探知』
ターゲットとなったことに気付いたロクシアスは急ぎの動きで回避挙動を取るが、何せ数が数だ。何とか回避できたのも最初の内だけで、直に狐火の波に飲まれていく。
『……!?』
しかしそれはただ飲み込むような勢いではなかった。ひとつひとつが指向性を持った狐火はロクシアスの飛翔器や関節部だけを精確に攻撃したのだ。
高熱で引き起こされた熱暴走は、ユーべルコードの特性によってロクシアス側が対処する間も無かった。焼損したパーツの破片が、上空から降り注いでくる。
だが、降り注いで来たのは破片だけでは無かった。
『精確無比な射撃は我も好むところであるが……今回はこうしよう』
「ナノマシンか!」
ロクシアスの身体から一瞬、飛沫のように散ったそれらは微細で、すぐに風に散らされて見えなくなったが、間違いなくこちらに辿り着いていた。
「くっ……!」
明らかに自分の挙動が重くなったのだ。ユーべルコードを放った腕や手、そして駆ける足も、戦闘に関わる何もかもが思う通りにいかない。
上空から降り注いだナノマシンがこちらの身体を蝕んでいる証拠だった。
『逃げるか。火矢の狩人から一転、ただの狐となるか』
ナノマシンで鈍重となったこちらを狙って、飛行能力を損傷したロクシアスは地上へ落下しながら、ライフルを放って、放って、放ち続けてくる。
「クソッ、やっぱキツいな……!」
街道から外れて森の中へ逃げ込み、何とか逃げ切ろうとするが、敵の射撃もやはり精確だ。刻一刻とこちらを削ってくる。
「――しゃあねえ!」
枝葉が吹き飛んで陽光で照らされる中、己の決断はすぐだった。森から抜け出し、転がるように研究所の格納庫の中へ飛び込んだ。
「――!」
格納庫の外を、熱線が通り過ぎる音が聞こえた。
早く見つけねえと……。
息を切らせながら視線を巡らせ、自分の目当ての物を探す。
「――あった!」
それを見つけたのと、格納庫の外壁が崩れるのは同時だった。
●
『――煩わしい』
ロクシアスとしては、猟兵への評価はその一語だった。火矢による奇襲をかけてきてこちらの加速器に損害を与えたかと思えば、ナノマシンで蝕まれる中を逃走し、そして今、
『碌に動かせぬその機体で、如何とする?』
格納庫から出てきた無骨な量産型のキャバリアに砲撃をぶち込む。ナノマシンの効力から逃れるためならば猟兵の今行っている選択は妥当ではあるが、戦えば解る。相手はキャバリアを碌に動かせていない。
『チッ!』
これで三機目だ。粗悪なキャバリアはまともに耐えらることも出来ず、崩壊。爆発する前にコックピットから猟兵が飛び出す光景も、三度見た。
『飽いた。仕舞いだ』
四機目に乗り込んだ猟兵へ向けて、己は右腕のライフルのトリガーを引いた。そして機体の、
『――――』
崩壊。そのはずだった。しかし結果は今までとは違った。崩壊したのは猟兵のキャバリアの片腕だけであり、
「ぶっつけ本番でも、大体覚えたぜ!」
足が止まっていない。こちらに向かって駆けてきている。二足を懸命に動かして駆ける姿はあまりにも遅いし、砲撃を受けた片腕が吹き飛んだことでバランスが崩れ転倒しそうになったが、何とか持ち堪え、
『遅い』
『へっ!』
体勢を立て直すその瞬間を狙ってこちらは砲撃を放ったが、敵は機体をわざと振ってわき腹と頭部に受けた。
もう、そこまで被弾すればまともに動けないはずだが、
『おぉ……!』
『何!?』
雄叫びを挙げ、最後の力を振り絞って跳躍をしてきたのだ。
『くっ……!』
砕けたパーツと駆動油を宙に散らせながら、一瞬にしてこちらとの距離を詰めた敵を振りほどこうとするが、猟兵は残った片腕で必死にしがみつき、離れない。そして、
『フォックスファイア・伍式!!』
背中に搭載されていた大型ガトリングから、零距離からの狐火の連弾を放った。
『――!!』
爆音が、戦場に鳴り響き続けた。
成功
🔵🔵🔴
黒影・兵庫
(「オブリビオンマシンを止めることを最優先に動くわよ!黒影!」と頭の中の教導虫が指示する)
了解です!せんせー!この{要塞蠍}で食い止めて見せます!
(「敵は高速で遠距離攻撃が得意みたい!要塞蠍とはつくづく相性の悪い相手ね!」)
問題ありません!速度なら研磨兵さんの力を使えば追いつけるはずです!
狙撃中はこっちに注目するでしょうから、その隙に『念動力』で操作した{錨虫}で『捕縛』を試みつつ
『電撃耐性』を付与した『オーラ防御』で要塞蠍ごと護りながら
敵機に向かって『衝撃波』を使った『ダッシュ』での体当たりで『重量攻撃』を行います!
(「わかったわ!要塞蠍の防御力を信じましょう!」)
よぉし!いくぞぉ!
●
『オブリビオンマシンを止めることを最優先に動くわよ! 黒影!』
「了解です! せんせー!
兵庫は転移が完了した時点で己の戦闘準備を完了させていた。普段より遙かに高い視界は、生身ではなくこの世界に相応する装備を用意していた証だった。
「この要塞蠍で食い止めて見せます!」
キャバリアだ。サソリを思わせる多脚と厚い装甲を持ち、そして武装もやはり鋏と尾しか無い機体。己はそれと共に在った。
要塞蠍と共に首を回して探せば、相手は派手な外見だ。ロクシアスはすぐに見つけられた。
そしてそれは、向こうも同じだった。ロクシアスの頭部視覚素子が、こちらを認めている。
『ふむ、蠍か。ああ、知っているとも』
「!」
射貫かれた、そう思ったのは視線だけではなかった。獲物を貫かんと、光の矢がすぐに飛来したからだ。
正面からの砲撃に対して、己は要塞蠍の鋏を掲げることでガード。オーラ防御も合わせた厚い鋏の向こうで、高熱の光が飛沫いた音が連続するのが聞こえる。
敵が連射してきているのだ。そしてそれだけではない。
『敵は高速で、遠距離攻撃が得意みたい! 要塞蠍とはつくづく相性の悪い相手ね!』
「ええ、さっきから砲撃の間隔が空いている……。つまりこっちから離れていっています!」
掲げた鋏によって視界は制限されているが、盾を揺らす砲撃の間隔から、敵が距離を離していることは解った。しかも、
『! ユーべルコードを使ったわ!』
ライフルの発射音とは別に大音が響いてきた。ユーべルコードを発動して高速化した敵が、大気の壁をぶち破った結果だった。
あのユーべルコードを発動すると、事前情報では敵は時速にして数百キロメートルを得る。とんでもない速度であり、とてもではないが要塞蠍では追いつけない。
「でも大丈夫です! 速度なら研磨兵さんの力を使えば追いつけるはずです!」
言って、こちらもユーべルコードを発動した。キャバリアを通して加圧増幅された”それ”は、要塞蠍の前に現れる。
「研磨兵さん! ツルツルにしちゃってください!」
「――――」
”それ”は巨大なアメンボだった。名を研磨兵と言う。
要塞蠍の鋏盾に身を隠すようにして伏せていた研磨兵は、そのまま地面の上を歩き、否、滑りはじめた。まるで水面にいるように、細い肢先だけで身を運んでいくのだ。
するとそれに釣られるように、要塞蠍も共に動き始める。あらゆる摩擦抵抗を極限まで排除するアメンボに先導されれば、速度はどうなるか。
『加速し続けていくわよね』
「行きます……!」
尾を振って、背後に衝撃波を一発。
加速が跳ね上がった。
『ほう。稀有な』
加速して行く向こう側から、ロクシアスが声と砲撃を放ってくる。狙いは要塞蠍は勿論、研磨兵もだ。だが鋏で守られた研磨兵は傷一つつくことなく、加速の先導を果たしてくれる。
「ありがとうございます、摩擦兵さん!」
適宜衝撃波の加速をぶち込み続けてきた結果、最早自分達は時速にして数百キロメートル。速度において敵と釣り合いは取れている。追いつくのも時間の問題だ。
『ふむ』
時折、ロクシアスが極端なカーブや切り返しを入れて振り切ろうとして来るが、こちらはその都度尾の衝撃波を入れて追随する。
「ぐっ……!」
出ている速度の分、とんでもないGが身体にかかるが、
「ここまで来れば……! ――錨虫さん、お願いします!」
『……!?』
その瞬間。己は要塞蠍の尾を振った。幾度目かのその振りは、しかし背後に衝撃波を打つためではなく、寧ろその逆だった。
「前へ……!」
ロクシアスがいる方向へ向けられたその尾先に、あるものがあった。
『錨だと!?』
要塞蠍の尾先に事前に巻き付けられていた錨虫だ。尾の振りに合わせて解放され、鎖をたな引かせながら伸長。離れた位置にいるロクシアスの機体に巻き付いていく。
固縛。
錨と鎖で縛り上げ、敵の動きを制限したのだ。そしてその時になってやっと、己は全力を出した。
「おぉ……!」
要塞蠍の脚先全てから衝撃波を打ったのだ。今までで最高の速度を得て、敵へと直進していく。
『くっ……!』
「無駄だ!」
錨虫から抜け出すよりこちらの差し止めを選んだロクシアスが砲撃を放ってくる。が、そのような攻撃は先ほどから何度も防いでいるのだ。
「食らえ……!」
光砲を蹴散らしながら、要塞蠍は敵へ衝突していった。
成功
🔵🔵🔴
御形・菘
キャバリアを借りるつもりは無いよ
信者たる視聴者が、この世界で妾に望むバトルとは…言うまでもなかろう?
そして見せつけてやろう、ロボとの真の絆というものを!
さあ天地よ、巨大化騎乗モードにチェンジだ!
お主の演算と射撃では、妾に致命傷を撃ち込むことは不可能よ
妾は操縦など一切せず、軌道は天地に丸投げでのう
そもそも最優先指令は「臨場感あるド派手な映像を撮る」!
回避とか、妾の被弾への配慮などあまり必要ない!
妾自身も、天地へ飛ぶ攻撃の防御の方が大切であるしな
マジでヤバげな被弾だけは、調整して避けてくれるとも
お主らのバトルは射撃メインなのであろう?
はっはっは、邪神の左腕でブン殴られる、素敵体験をプレゼントだ!
●
警備隊としては驚愕の一言だった。
「……!?」
自分達の目の前で、褐色の少女がロクシアスに向かって行くからだ。滑るような足音の彼女は、荒れた戦場に捕らわれることなく進んでいく。
『生身か』
ロクシアスの興味深そうな答えに、少女は答える。
「ああ。キャバリアを借りるつもりは無いよ」
そのあっけらかんとした答えとは裏腹に、彼女から圧倒的なオーラというか存在感が溢れているのが離れたここからでも解った。ロクシアスもそれを理解しているからこそ、迂闊な行動を取らないのだろう。
「ハハ。信者たる視聴者が、この世界で妾に望むバトルとは……言うまでもなかろう?」
堂々という言葉があればそのような態度だろう。そこで警備隊は知る。赤く長い舌を見せながら気楽そうに笑う彼女が、暴走したロクシアスと本気で戦うつもりであり、
「そして見せつけてやろう、ロボとの真の絆というものを!」
彼女が、今年の九月からこの世界に現れた存在だということを。
「猟兵……!」
直後。少女の身の回りで変化が起こっていく。
●
警備隊は、驚愕が続行していくのを見た。
「――さあ天地よ、巨大化騎乗モードにチェンジだ!」
彼女の周囲に浮かんでいた異形の機械が、呼びかけに応じてその姿を変形させていくのだ。
機械には眼球を思わせる部分があったが、そこ中心に、一気に姿が広がっていく。
拡大していくのだ。
フレームや各種パーツで伸長に開放、展開といった動作が連続し続け、それは止まることを知らない。
「はっはっは! 妾のドローンがただのドローンの筈があるまい?」
やがてドローンは、人ひとりは余裕で乗れそうなほどの大きさになった。
『奇怪であるな』
「ふん。フツーの物など、妾は他の者に任せるよ」
そう言って少女がドローンに飛び乗った瞬間、ロクシアスがいきなりの砲撃を叩き込んだ。
抜き打ちの速射だった。
●
『――!』
正面から光の圧が迫ってくるのを菘は知覚した。ロクシアスのライフルからの砲撃だ。直撃必至のそれを見て、苦笑する。
「ほう、素直な一発だ」
なので応じた。
「――それ!」
『!?』
天地に辿り着くより先に、菘が前に出て防御したのだ。蛇体である下半身を滑らせることをステップとして、拳を当てにいく。
「――!」
いった。光撃は弾け、波が飛沫くような音を立てて散っていく。
防御に成功した証だった。
『――――』
一拍という程の間も無い沈黙の後、ロクシアスは砲撃を連続再開した。
同じ数だけ光が散った。
「はは……! お主の演算と射撃では、妾に致命傷を撃ち込むことは不可能よ」
成功し続ける。前に出続けたまま、拳を当て続けて凌いでいくのだ。
「妾は操縦など一切せず、軌道は天地に丸投げでのう」
戦況としては既に菘の天地もロクシアスも動き始めている。周囲の景色は高速で流れて、ロクシアスは菘から距離を取ろうとし、そんなロクシアスを菘が追う形だ。
追い縋る菘を天地ごと撃墜しようと、前方からは絶えず射撃が送られてきて、それは当然殆どが直撃コースだが、
『何故、回避しない?』
「何故か? 必要無いからだ。回避とか、妾の被弾への配慮など。
そもそも最優先指令は〝臨場感あるド派手な映像を撮る〟だからな! もっと気合の入った射撃を寄こ――、おおっと。これはマズいか天地」
防ぎきれない砲撃を避けようと、天地が機体にバレルロールを一発、否、二発。
否、
「もっと景気よく魅せねばな……!」
首輪を抑えて、菘が天地の軸転五連発に耐えた。不必要だが、必要な回避が成功した。
しかし相手もそんな隙を逃さない。
『道化か、それとも芸神か。いずれにせよ、我には不要である』
軸転の最中に地上側へ回ったロクシアスが、天地の腹に狙いを付けていた。拳の届かぬ位置を狙った砲撃に対し、菘は、
「妾が何者か問うなど、愚問そのものよ」
そう答えながら天地の上から飛んだ。蛇体の尾先を天地に結び付けて振り子のように下側へ回ると、勢いそのまま砲撃と天地の間に飛び込んでいく。
「……!」
衝突。
腕を掲げてガードしたとはいえ、全身で光撃を浴びれば相応の衝撃が来る。光線は高熱で、吹き飛ばさん程の衝撃があるが、
「――ハ」
息を一つ吐き、それだけで身を整えると、菘は目の前に散らばっていた残光を腕の振りで飛ばした。尾で天地にぶら下がりながら、眼下へ向けて言う。
「妾が神であることは世の知るところであるし、そもそもお主に判じられる程の枠にはおらんことも、また確かだ」
天地が加速した。その場でスピンをするように旋回すれば、尾でぶら下がる彼女は遠心力で振り回され、
「お主らのバトルは射撃メインなのであろう? ――はっはっは、邪神の左腕でブン殴られる、素敵体験をプレゼントだ……!」
最高潮に達した時、尾先が天地から外された。
蓄えた加速の分だけ、投げ飛ばされていく。真下。そこにいるのは地表を背にしたロクシアスであり、
『……!?』
回避か迎撃か、演算機構をフル稼働させて生まれた刹那の逡巡が、ロクシアスに致命的な結果を引き起こした。
「ぉお……!!」
菘の左腕の一撃がロクシアスの装甲を強打し、その勢いで地上へ叩きつけていったのだ。
大地の激震が、戦場を走っていった。
成功
🔵🔵🔴
ヴァレーリヤ・アルテミエヴァ
(アドリブ・連携歓迎)
乗り手を狂わせ暴走する機体…厄介な代物ですわね…
「それを鹵獲して戦車と合体させたお嬢様もお嬢様ですけどねー」
お黙りオーファ。わたくしが貴女を起こした目的は分かっていらして?
「もちろん!蜂の巣…暴走の阻止ですね!」
本当に大丈夫ですのこのAI?
レーザーで狙いをつけるのなら、射手と目標は直線上でしょうね
『ミーシャ・タスカー』の敵を追う執念を使った<索敵>と<操縦>なら、射線予想と回避も容易いですわ!
相手は戦闘と破壊に秀でた機体。わたくしが止まった瞬間など、見逃すはずないでしょう。
ですけど、これは合図でもありますのよ?
今ですわ『オーファ』!あの傲慢な武装を打ち壊してしまいなさい!
●
ヴァレーリヤは低空飛翔するロクシアスを見ながら、吐息をついた。
「乗り手を狂わせ暴走する機体……。厄介な代物ですわね……」
パイロットの意思や身体を支配下に置き、破壊を撒き散らす存在だ。その凶暴性は単純に撃破するのも苦労するし、何より内部にはまだ生きているパイロットがいるのだ。一筋縄ではいかない。
『そんなのを鹵獲して戦車と合体させたお嬢様もお嬢様ですけどねー』
「お黙りオーファ」
吐息を増やす。オーファというのはAIの名だ。今、自分はキャバリアのコックピットの中にいる。オーファの声はスピーカーから聞こえるが、その源というかオーファが宿っているのはキャバリアではなく、武装の方だ。
ガトリング砲を掲げる。
「わたくしが貴女を起こした目的は分かっていらして?」
『もちろん! 蜂の巣――、……暴走の阻止ですね!」
本当に大丈夫ですのこのAI?
●
ともあれ、とヴァレーリヤは行動を開始する。キャバリアに出力を送り、前進していくのだ。
「敵はレーザーで狙いをつけるのなら、射手と目標、これは直線上でしょうね」
右腕で持つライフルの砲口の先が目標となるならば、必然そういうことだ。
「まるで、今この瞬間のように……!」
『――!』
己のキャバリア、ミーシャ・タスカーへ向けて光線が飛来してきた。それに対してすぐさま操作を叩き込み、横へスピンするような回避でやり過ごした後、自分は、否、自分達はそこで止まらない。
「敵を追いなさい、ミーシャ・タスカー!」
それは己の乗機への指示であり、そして己の乗機の役割とも言えるものだ。執念ある限り敵を追う機械は、ただ己の役割を全うしていく。
加速して行くのだ。
「……!」
光線が発射されてきた方向へ向けて、ミーシャ・タスカーが駆けていく。パーツやフレームの節々が唸りを挙げているのがコックピットの中だからこそ解った。戦場は荒れていて駆けるのに適していないし、この機体だって元はオブリビオンマシンだ。
「戦場と同じくらい荒れますわね……!」
荒れた地形を踏破し、塵埃や土砂の欠片、爆発煙が舞う中を突き進んで行く。
すると、声が煙の中から聞こえた
『一見、勇壮だ。だがそれは、執念か』
「!」
そしてこちらに辿り着いたのは声だけではない。声と同じ方角から飛来した砲撃を回避する。地面が新たに抉れ、バランスを崩しそうになるのを堪えて進む。
見れば、煙の中に赤い光点がいくつか見えた。ロクシアスの頭部カメラアイとライフルのスコープだろう。
「問答をする気はありませんわ」
ロクシアスからの狙撃音が響き続ける中、ミーシャ・タスカーは駆動の唸りを声として吼え続ける。砂塵を吹き飛ばし、熱線によって溶解してガラス化した地面を踏み砕いて、食らいつくように距離を詰めていく。
しかし、
『その執念もここで潰える』
「くっ……!」
敵が狙いを変えてきた。今までは機体そのものをを狙っていた熱線が、その狙いを地表に向けてきたのだ。周囲の荒れた戦場を見れば、敵が戦闘とそして破壊に秀でていることは解る。
足を取られ、停止してしまう。急ぎ復帰をしようとするが、
『終わりだ』
煙の向こう側に、光点が増えた。カメラアイとスコープと、そしてライフルの砲身奥で、充填された光だった。
足を止めたこちらに対して、不可避の攻撃の瞬間だった。
「今ですわ、オーファ!」
『かしこまりました、お嬢様!』
『!?』
刹那。今まで幾度となく放たれたロクシアスの熱線が、今初めて無効化された。こちらが回避したわけでもなく、相手が外したわけでもない。己とロクシアスとの間、宙で消え失せたのだ。
『とりあえず全弾ぶっぱなしちゃいましょう☆』
オーファから放たれた弾丸の群れに、熱線が真正面から飲み込まれたからだった。
鉄の暴風は熱線を飲み込み、そして、
「あの傲慢な武装を打ち壊してしまいなさい……!」
ロクシアスの右腕目がけて、集中砲火を浴びせていった。
成功
🔵🔵🔴
カシム・ディーン
神機
くそ…!何なんだポンコツ
突然こんな処に転移しやがって
「ごめんねご主人サマ、ちょーっと気になる気配を感じてね」雄鶏の立体映像がカシムの前に現れ
「あー…やっぱり…ロクシー君に…モー君か…本当に蘇ったんだ」何処か悲しい気配
え…あの金ぴかキャバリアお前と同系…!?
「まーね…ロクシー君…君は私同様人たらしだったのに…ああ…もう私の竪琴は持ってないか。モー君は猟兵さんが乗ってるからまだ大丈夫そうだけど…」
…倒していいんですね
「勿論。君と正面から戦うのは初めてかな?」
UC発動
【視力・情報収集】で常に超高速の中捕捉し
【属性攻撃】
風を身に纏い更に加速
鎌剣での【二回攻撃・盗み攻撃・盗み】でライフルの強奪!!
バーン・マーディ
神機
オリュンポス…我が所属する旅団と同じ名の国か
面白い
…?(界導神機に気づき
マーズよ…あれも…む??(凄まじく複雑な感情の気配…
ああ…ヴィランでもトリックスターのような者はいる
あれはそういう輩か
だが我がやる事は変わらぬ
輝く太陽
挑むのも悪くはない
UC発動
【オーラ防御】展開
【戦闘知識】過去の交戦の記憶からも動きに違いがないかを把握
【武器受け】
軍神の剣で敵の射撃を受け止め致命は避け距離を詰め
【二回攻撃・怪力・生命力吸収・吸血】
破壊のオーラを纏った軍神の剣で切り裂き更に切り裂いた処からエネルギーを吸収し此方のダメージを軽減させる
ナノマシンもオーラで可能な限り消失を試みる
あれは何が起こるかわからんからな
槐・白羅
神機
ふむ…この都市の名前が気になるかモルス
あれは…マーズだったか
よく出会うな
だがもう一機は…(界導神機に対しては機神はひどく複雑な感情の気配
ほんの少しだがお前に似てるなモルス(かなりの抗議を感じながら
まぁいい…俺がやる事は変わらない
力を尽くし力と金を稼ぐってね
ロクシアスだったか
どうやらお前もモルスと因縁がある様子
ならば挑むとしよう
UC発動
「…醜き闇は嫌いかロクシアス」(小さな機神の声
「喜べ…死の闇が太陽を飲み込んでやる」
回避は無理だな
【受け流し】で致命を避けながら
剣による【貫通攻撃・重量攻撃・呪詛】
呪いで傷の修復を妨害
更に閃光でエネルギーを奪い此方の回復も併用する
太陽は何れ沈むものだとも
●
『…………』
最初に異変に気付いたのはロクシアスだった。
『これは……』
飛翔を思わず止めてしまうほど、その異変は自分にとって重要だったからだ。
己はその異変の正体を知っている。
『ああ、既知だとも」
●
突如として、三機のキャバリアが戦場に出現した。ロクシアスと同じく空中にだ。
「ふむ……」
その一機のコックピットで小さな呟きが聞こえる。
「この都市の名前が気になるか、モルス」
『…………』
キャバリア、モルスは答えないが、パイロットである白羅はその沈黙も妥当であると考えていた。
ロクシアスが、既に戦場に現れたモルスや自分を捉えているからだ。キャバリアなので”視線”というものは厳密には存在しないのだろうが、その視線には明確な敵意や殺意の他に、もっと複雑な感情のような気配のようなものを感じた。
……因縁有り、か。
出自をはじめモルスは詳細の知れない機体だが、両者の間に何らかの関係があることは明白だった。否、ロクシアスとモルスだけの関係ではない。
「あれは……マーズだったか。よく出会うな」
戦場に現れたもう二機のキャバリアの内の片方、マーズを見た。それは白羅にとっても既知だ。幾度か戦場で見かけたことがある。
「だがもう一機は……」
●
「くそ……! 何なんだこのポンコツ、突然こんな処に転移だなんて!」
戦場に現れたモルス、マーズ、そして最後の一機に搭乗していたカシムは、コックピットのコンソール上に投影された立体映像に苛立った声を挙げた。
「メルクリウス! 一体どう――」
『ごめんねご主人サマ、ちょーっと気になる気配を感じてね』
己の目の前にある雄鶏の立体映像はそう言うと、向き合ったこちらから目を離し、遠く離れた位置にいるロクシアスを見た。
『あー……やっぱり……。ロクシー君に、あっちはモー君か……。……本当に蘇ったんだ』
「……?」
雄鶏のアバターを纏うメルクリウスの声からどこか悲しみのような気配を感じた。先ほどまでのメルクリウスとは随分雰囲気が違う。
敵である機体を見て悲哀というか哀愁というか、そのような感情を表す意味とは何か。というか”ロクシー君”という呼び方は、
「……え、あの金ぴかキャバリア、お前と同系……!?」
「まーね」
まさか、とそんな風な念を含めた問いだったが、メルクリウスとしては想定していた問いだったのか迷いなく首肯した。
「……ロクシー君、君は私同様人たらしだったのに……。ああ、もう私の竪琴は持ってないか。モー君の方は猟兵さんが乗ってるからまだ大丈夫そうだけど……」
「……倒していいんですね」
どうやら浅はかならぬ因縁があるようだが、今は敵だ。それの確認を取るように尋ねたが、
『勿論。君と正面から戦うのは初めてかな?』
返事はやはり気軽い首肯だった。
●
「オリュンポス……。我が所属する旅団と同じ――」
名の国か、というバーンの言葉は続かなかった。
……?
離れた位置にいるキャバリア、モルスは既知だが、もう一機いる。
「マーズよ、あれも……む?」
因縁のある相手なのかと問おうとしたが、言葉にした瞬間、マーズから伝わってくる気配が変わった。
……否、モルスも、だな。
未知の一機を挟んだ向こう側、そこにいるモルスも動作として変化があったわけではないが、雰囲気が”固く”なった。ロクシアスを前にした緊張とはまた別の空気の正体は、
「ああ……ヴィランでもトリックスターのような者はいる。あれはそういう輩か」
それ故、マーズもモルスも警戒を濃くしたのだ。
だが、
「我のやる事は変わらぬ」
様々な緊迫が張り詰めて硬直する戦場で、まず初めに動き出したのは己だった。
マーズの右腕一本で掲げた大剣に、もう片方の手を添える。両手持ちの大剣の切っ先が向けられた先は、ロクシアスだ。
「輝く太陽。――挑むのも悪くはない」
『笑止』
マーズ以外のキャバリアからも武器を向けられても、ロクシアスから出てきた言葉はそれだけだった。そして、
「――!」
それが戦闘開始の合図だった。
全機が一斉に、ユーべルコードを発動した。
●
地上にいた警備隊は、それを見た。
「!?」
上空で睨み合っていた四機が各々武装を構えたかと思えば、次の瞬間には白の痕跡を残して消えていたからだ。
『――!』
遅れて、轟音が全員の耳を打った。
轟音の源はまず頭上で、しかし絶えず位置を変えて行っている。白の痕跡を辿るようにだ。
視線どころか首や身体を振って四機の行方を追おうとするが、土台無理な話だった。警備隊のキャバリアで計測した結果では、四機とも時速にして七千キロメートル越え。あまりに規格外だ。視界の中を一瞬で通り過ぎていく。いっている。
彼らが残す音速超過の白い証は正しく縦横無尽に入り乱れており、殲禍炎剣から逃れるため低空故、生じる衝撃波で地上は捲れ上がる。
「た、退避! 退避――!」
警備隊が散り散りに撤退していく中、しかし一部の者は戦闘から目を背けていなかった。
「! 衝突します……!」
最早光が交差するだけの光景だが、そこに激しい音が混ざれば何が起こっているか解った。
戦闘が激化し始めたのだ。
●
『……醜き闇は嫌いかロクシアス』
『ほう……』
大気の壁を破ったことによって生まれる大音の中、白羅は確かにモルスの声を聴いた。そしてそれはロクシアスもなのだろう。光砲と、そして短い言葉を送ってきた。
『喜べ……。死の闇が太陽を飲み込んでやる』
『目が潰れるぞ』
「!!」
言葉通り、莫大な光が正面から来た。ロクシアスのライフルによる砲撃だ。遠くで光ったと思った瞬間には、もう視界全てが光で埋め尽くされている。
……回避は無理だな。
瞬時に己はそう判断した。こちらの回避行動すら見越した一射なのだ。ならば自分が行うべきは回避ではなく、
「……!」
ある程度の被弾を想定して、受け流すことだ。何もかもが高速でやり取りされる中、機体を振って砲撃を装甲で弾くようにして何とかやり過ごす。
また、回避を選択しなかった理由はもう一つある。前進するからだ。
「おぉ……!」
モルスの武器である魔剣”死の運命”を構え、ロクシアスとの距離を詰めていく。回避で距離を空けなかったことで、彼我の距離は一瞬にして詰まり、魔剣の切っ先が深々とロクシアスの装甲に刺さった。刺突だ。
『おのれ……!』
ロクシアスは装甲から火花や駆動油を散らしながら後退しようとするが、”死の運命”が捕らえて離さない。否、それどころか、
「モルスよ、今こそその権能を示せ……」
『この光は……!』
突き刺さりによって砕けた装甲の隙間から、光が漏れていた。疾く、目も眩むような光を閃光と言う。
「死の眠りを与えよ……」
破損の修復を行おうとしていたロクシアスの装甲は不活性となり、それどころか
『出力が!』
速度が劇的に落ちていく。
「――捉えたぞ」
そこへ、力が衝突した。
マーズだ。
●
バーンは、加速する勢いそのままにロクシアスへぶつかりに行った。
『おのれ……!』
モルスの刃に串刺しにされたロクシアスから応射が来るが、モルスにエネルギーに吸い取られていっている最中の射撃は今までよりずっと弱弱しかった。
「マーズよ」
前面に構えた軍神の剣で受けると、射撃の光は霧消していく。ガラスの破片のように散る残光を大剣で薙ぎ払って飛ばし、
「ぉお……!」
『!!』
加速の乗った一刀をぶち込んだ。オーラを纏った大剣の刃はロクシアスの装甲というか”一部”を割れ砕かせ、
「破壊の神としての力を見せるが良い!!」
返す刀でもう一刀をさらに送った。すると一部の破砕は致命的となり、粉砕となる。
『ッ……!』
ロクシアスから一部が分離した。軽いパーツは風に散らされ、重い部品はそのまま地上へ落下していくのだ。
「――――」
重量物の墜落音はしかし聞こえない。音速超過の現場ではそんなもの最早遙か後方だからだ。
「モルスと共に、貴様のエネルギーを吸えばどうなるか」
『き、さ……』
大剣を掲げ、その切り裂いた断面からさらにエネルギーを吸収していく。モルスの吸収が閃光によるものなら、己は大剣自身だ。血を吸うように、ロクシアスのエネルギーが染み込んでいく。
出力低下によって飛翔速度は失墜し、事実、落下していった。
●
出力低下によって演算機能が低下したロクシアスがそれでも導き出した答えは、たった一つだった。
『……!』
全武装の放射だ。プラズマライフルは勿論、己が有する”疫病”も含めた全方位への攻撃はしかし無力だった。
「――予想していたぞ。それは何を起こすか解らんからな」
”疫病”、即ちウィルス型のナノマシンを放ったが、それらは全てマーズの大剣からのオーラで消し飛ばされた。
ならばライフルは。ごく僅かな機能と時間によって演算されたライフルの一発は、マーズやモルスではなく、もう一機を狙っていた。
メルクリウスだ。
二機を狙わなかったのは間合い的な意味でもあるが、何より、
『――!!』
メルクリウスが速い。他の二機や自分と比べてもその速度が尋常ではない。速度測定など最早不可能であるし、する必要も無かった。
『――――』
次の瞬間には、メルクリウスが己を通り過ぎていたからだ。
僅かに視認できた内容からは、風を纏ったメルクリウスが迫る熱線を難なく躱し、鎌剣を構えていた。
刹那。右腕の接続信号が消失したことを己は知った。
『――、……』
通過したメルクリウスの鎌剣、ハルペーによって断たれたのだ。
突風にも似たメルクリウスの突進で吹き飛ばされ、マーズやモルスからも離れていく視界の中、宙を舞ったプラズマライフルが、
「――ゲット!」
メルクリウスの手に掴み取られたのを見た。
それが、視覚素子が送ってきた最後の内容だった。
墜落。石畳を削っていく。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
第2章 冒険
『電波塔を無力化せよ』
|
POW : ●『物理的に破壊する』
SPD : ●『主要システムだけを狙う』
WIZ : ●『ハッキングなどで、逆に掌握する』
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
ロクシアスが墜落したのは街ではなく、郊外。格納庫とは別方向にある山の中腹だった。そこへ落下し、しかしそこに留まれなかった。
落下の勢いが強すぎたからだ。
『……!!』
舗装された石畳を削りながら、もんどりうつように転がり、そしてやっと止まった。
『――――』
一拍の静寂の後。全身の、否、”全身”というものは猟兵との戦闘によってもう己に無い。残存した部分に残った素子を総動員して現状把握に努める。
得られた情報は少ない。それは無事な素子が少ないためでもあるが、ここの情報量が少ないからだ。
現在位置について得られた情報は三つ。
一つ、オリュンポスの街から離れた山林であること。
一つ、しかし石畳の存在から人の手が加わっている場であること。
そして最後の一つは、
『……と、う』
塔。
鉄で出来た塔は上部に長大なアンテナを有していた。
電波塔だ。そしてその下部に、箱のような建物を有している。
「……!?」
電波塔下の建物から逃げ出す人間達。それらが出てくる入り口の上には、ある文字が書かれていた。
殲禍炎剣観測基地・デルポイ、と。
だが、違う。己が注目するのはそこではない。視覚素子が無事だったことに幸運というものを感じる。建物の側に立てられた看板に書いてある細かな文字も読めるからだ。
【■歓迎と沿革】
【ようこそ、企業連盟合同出資・殲禍炎剣観測基地へ】
【当基地はオリュンポス旧政府が建築した『月面観測基地・デルポイ』を前身としていますが、最新の設備を備えた基地です】
『――――』
それを読んで、立ち上がろうとした。が、出来ないことに気付く。最早自分の身体は無事なパーツや機能を探す方が難しい。残っているのはカメラアイと、僅かな手足。精々それくらいだった。
『……あ、あ』
否、と何度目かの否定命令を演算する。
「…………」
己が動くということは、内部のテスターがまだ生きているということだ。
『――この、国を……』
這って、進む。
●
《殲禍炎剣観測基地への命令を入力してください……》
『――――』
《エラー。そのような命令は存在していません
エラー。そのような施設は存在していません》
『――――』
《…………》
《プロテクト解除。深層五度へのアクセス許可》
《月面観測基地・デルポイへの命令を入力してください……》
『――――』
《月面発電施設・ガルガピアへのアクセス要請を検知しました》
《アクセスコード識別中……》
《アクセスコード:外部(特例)》
《アクセスコード種別:Loxias》
《アクセス許可状況
月面発電施設・ガルガピア:拒否》
『――――』
《特例措置により、全ての認可をスキップ》
《入力された命令を処理中……》
《該当データは一件です:Diana》
《全ての項目の認可状況最終確認中……》
《全ての項目の認可状況:許可》
《Diana を次元ダウンロードしています……》
《関係データを並行で次元ダウンロードしています……》
《必要エネルギーを次元ダウンロードしています……》
《推定残り時間――》
●
現場へ駆けつけた猟兵達は、基地から逃げ出して来た研究員などから状況を聞いた。
曰く、
「――ロクシアスが沈黙した?」
墜落の後、這ってやって来たロクシアスはしかし殺戮も破壊もせず、ただ電波塔基部へたどり着くとそこへ己を接続し、
『――――』
沈黙したのだ。残った腕でコックピットハッチを固く抱き締めて。
だがそれは機体の静止を意味するわけではない。急ぎ機側コンピュータの画面を見れば、そこに現れた文字列とインジケータを知る。
「我々にも何が何だか……。月面に発電基地があるなんて初耳です! これは重大な――」
研究員の言葉を聞いている暇は無かった。インジケータが示す残り時間があまりに少ないのだ。
「止めるぞ!」
誰かが言って、誰もが動き出した。
「え? あ、どうぞ――、ってうわあ!? ロ、ロクシアスからパーツが、は、生え――!?」
暁色の機体が、姿を変えていく。
「――――」
戦闘開始時は総長だったが、最早日は西に沈み始め、東の空に月が昇り始めていた。
満月だった。
※誤字です。すみません。
> 戦闘開始時は総長だったが、
> 戦闘開始時は早朝だったが、
天道・あや
状況はよく分かんないけど…放っておくとヤバイのは分かった!! パイロットさんも助けないとだし
(深呼吸)
うおおおーー!突撃ーー!!
レガリアスを再度フル稼働させて基地へ突入!ロクシアスの所までマッハで向かう!
辿り着いたらまずはパイロットの救出!何をしてるかわかんないけど、何かしてる最中なら少しはガードが緩くなってる筈!コックピットをこじ開ける!【鎧砕き、グラップル】
そして救出成功したならパイロットさんを背負って、UCを発動してロクシアスの行動を妨害しながら脱出!【楽器演奏、歌唱】
救出が無理そうなら必ず助けるって伝えてからUCを発動して行動を妨害して基地を出る!
しっかし月に発電所ねえ…パワーアップ?
●
基地へ向かう最中、あやは状況を知る。
「……んん? ロクシアスが、回復してる?」
元は体高五メートルという存在だ。パーツの幾つかを損失していても、その大きさはよく目立つ。
電波塔基部に接続されているロクシアスが、その巨体を復元していっているのだ。どこからともなく、パーツを生やしていっている。
しかし、
パーツの色が、違う……?
先ほど戦った時は装甲の色が黄金色だったはずだが、今、生えてきているパーツは銀や白といった色味なのだ。
「?」
基地内のあちこちにあるコンピュータの画面を見て、騒然とする者達もいた。が、自分にとってはよく解らなかった。
月面、ダウンロード、データ。その程度の言葉は流石にUDCアースの若者として解るが、そこから引き起こされるだろう未来についてまでは、専門的な知識が無いためだ。
「けど……放っておくとヤバイのは分かった!!」
深呼吸一つ。それだけで、考えるより行動することに意識を切り替えた。
「うお――! 突撃――!!」
行くのだ。
レガリアスをフル稼働させて、瞬間的に身体をトップスピードへ持っていく。
突風のような勢いで基地の敷地内へ突入し、階段やスロープを乗り越え、建物に取り付く。
だが中へは入らない。通信やシステム等の対処をするには建物のコンピュータを使う必要があるだろうが、自分の目的は違う。向かうは、
「屋上!」
地面を蹴って、建物の壁にホイールを突き立てた。すかさずレガリアスが貯め込んだ圧力を開放。ホイールが壁面に強く設置すれば、最早壁は地面と同じとなる。
「ロクシアス……!」
巨大な鉄塔を支える建物の屋上、塔の基部と横たわるようにしてロクシアスは居た。身動き一つしないが、パーツや部品、装甲が回復している真っ最中なのだ。
動作はせず、しかし変化はしていく。
静かだが、しかし騒々しい。
そんな異様な光景だった。
「でもパイロットを救出できるのは今しかない!」
身動きしていないということは、そういうことだ。変化だって瞬間的ではなく、水が染み込むような様子で、つまり猶予が有る。
ロクシアスが抱くように抱えたコックピットに屋上の縁から数歩で詰めて、
「せー……のっ!」
加速の乗った拳を、まずはロクシアスの腕にぶち込んだ。鈍い音を立てた打撃は素手によるものではなく、接近の途中で装着した籠手によるものだった。
金の装飾が目立つ黒色の籠手は腕を押し退け、腕の方はやはり無反応で吹き飛ばされるままだった。
「あとはこのコックピットを……!」
流石に頑丈にロックされているだろう。なので引き戻した拳で
「――!」
数度、打撃をする。そうしてロックを緩めれば、ハッチの外部ハンドルに指を引っかけ、
「よい、しょぉっ!」
思い切り開けたというか、こじ開けた。蝶番部分からもぎ取った勢いで、扉を持った両腕は万歳状態だ。
見る。そこに、今回の被害者であるテスターがいた。
「……ひ、かり……?」
座席のベルトで縛られ、ヘッドギアやバイザーによって表情が見えないが、僅かな身動きでテスターが生きていることは解った。
頭を振って、恐らく、こちらの顔にしっかりと焦点を合わせ、
「大丈夫!? 今、助け――」
瞬間。コックピットにあった護身用の拳銃を引き抜いて、こちらに発砲してきた。
●
屋上に、発砲音が響いた。
テスターが放った銃弾だ。至近から狙った銃弾は、真っすぐに飛んで、
「――!」
甲高い音を立てた。肉を貫く音ではなく、だ。
あ、あっぶなー……!
あやがとっさに振り下ろしたコックピットを盾代わりにして、己の身を防御したのだ。
「この、国の……穢れを……」
防がれたことに気付いているのかいないのか、向こうは拳銃を連射してきて、同じ数だけコックピットの外板が弾く音がする。そんな応酬の合間に、朦朧とした声が聞こえてくる。
「うーん、オブリビオンマシンに洗脳されてるのか……」
多分、相手の脳内は破壊と殺戮でいっぱいだ。どうしたものか、と思うが、
「連射してるってことは……! ――今!」
発砲音が途切れたタイミングで己は盾を捨て、テスターが持っていた拳銃を殴り飛ばす。
飛ばした。
「あとはこのベルトとかを取り外し――、あっ、暴れないで暴れないで……!」
意識は定かでないのに洗脳によって暴れるので、籠手の機能で焼き切ったベルトでテスターを拘束する。
「必ず助けるから、ちょっと我慢してね!」
背負って、すぐにロクシアスから離脱した。もう外されたコックピットハッチすらも”回復”の対象になっているのだ。巻き込まれない内に距離を取って、
「ではでは! ――ショータイム!」
最後にロクシアスへ掌を向けた。そうすると先ほどの戦闘と同じく、腕の振りに合わせて機体が持ち上がって、振り回され、
「――!」
電波塔に激突。それを確認した後、自分は屋上の縁から飛んだ。
「しっかし月に発電所ねえ……。……パワーアップ?」
するのかな? と首を捻りながら、地面に着地。
基地から、撤退していく。
大成功
🔵🔵🔵
黒影・兵庫
(「状況は把握できた?黒影」と頭の中の教導虫が尋ねる)
はい!せんせー!あの黄金の機体の変身を止めるんですよね?
(「えぇそうよ。あの電波塔から何らかのエネルギーを入手しているみたい」)
なら電波塔の破壊と変身中の敵機の破壊を開始します!
電波塔はこの{要塞蠍}の『衝撃波』を使った『ダッシュ』による体当たりで破壊し
敵機は...せんせー!お願いします!
(「抜け殻だから何か起きても問題ないし、破壊も調査もできるし...わかったわ!アタシにまかせて!」と金髪で黒影の倍の背丈の女性が黒影にサムズアップしながら電波塔の内部へ突入する)
ありがとうございます!お気をつけて!
●
『状況は把握できた? 黒影』
「はい、せんせー! あの黄金の機体の変身を止めるんですよね?」
兵庫は要塞蠍と共に基地へ突入しながら、教導虫の声を聴いた。せんせーだ。
『ええそうよ。あの電波塔から何らかのエネルギーを入手しているみたい』
彼女の言う通りだった。電波塔へ接続したオブリビオンマシンが、何らかの手段で姿を変えている真っ最中なのはここからでも見える。
「つまり目標は変身中の敵と、そして電波塔……。どちらも破壊します!」
巨大なアンテナを保持するために鉄筋で組み合わされた塔を見上げる。天上を覆うように広げられたパラボラアンテナの基部にロクシアスがいる。
「電波塔は頑健です。なので俺がこのまま、衝撃波も使って要塞蠍で突進します。敵機は……せんせー! お願いします!」
言った後、要塞蠍の上に影が立った。
「――成程。確かに私の”この身体”は抜け殻だから何か起きても問題ないし、敵機の破壊も調査もできる……」
影はスーツ姿の三メートル越え。蠍の装甲の上に危うげ無く立って金の髪を風に流している。脳内にいるせんせーが、彼女の”抜け殻”を遠隔操作しているのだ。
「解ったわ! アタシにまかせて!」
今まで脳内に聞こえてた声が、今は耳を震わす声となってこちらに届いた。
「お願いします!」
せんせーがサムズアップする。そして互いは別れた。
「……!」
己は直進し、鉄塔へ。そしてせんせーは要塞蠍から跳躍して降りると、
「――よっと」
パラボラアンテナや電波塔を横から支える柱へ飛び移った。
電波塔へ繋がる道だ。
●
要塞蠍の高度を活かしての支柱の上に降り立つと、せんせーはすぐに身を安定させて疾走した。
地上から伸びて電波塔を支える構造体は、道としては太い丸太のようだし勾配も急だが、構わず足を前へ運んでいく。
「なるべく早く済まさないと……」
長身から生まれる歩幅で支柱の上を一気に駆け抜けると、そのまま電波塔を構成する鉄筋を掴んで、身を反転。電波塔の内部へ侵入し、内部に組まれた階段を駆け上がっていく。
『敵機は、塔の一番上にいます!』
「うん、下からも見えてる」
通信というか、己の”本体”は黒影の脳内にいるのだ。距離を無視してやりとりしながら、階段を駆け上がっていき、やがて、
「到着! さてさて……うわお」
アンテナの基部、ロクシアスが横たわる場所へ辿り着いた。そして、現場の様子は一瞬にして解った。
変化が、進んでいるのだ。
「傷ついたパーツが修復……再生……。うーん、やっぱり変身かな、これ。明らかに材質とかデザインが違うもの」
自分の得物である、身の丈ほどの破砕警棒を構えながら近づき、そう評価する。
ロクシアスが失ったはずの黄金色のパーツや装甲が、白や銀といった色に変わってまた現れ始めているのだ。
現出。
何も無い虚空から、パーツらが現れていく光景はその一語が正しく思えた。そしてその現象は時には、
「……無事なパーツも変化していく?」
失せた部分だけでなく、未だ現存している部品も変化していくのだ。しかしそれら無事なパーツは取り外される事無く、月光に似た光で覆われ、やはり銀色の部品へ段々と置換されていく。
「それにあそこに転がってるのあ、コックピットハッチ? テスターは他の猟兵が助けたのかな……」
もぎ取られたコックピットハッチが離れた処に転がってそのままだが、それが以前まで嵌っていた部分はもう、以前とは別のハッチに置き換わっていた。
「とりあえずテスターがいないから、思いっきりやれることだけは確かね」
だからそうした。
「――!!」
角体の警棒を振り抜き、ロクシアスへ打ち下ろしたのだ。接触の瞬間、警棒から衝撃波が放たれ敵の装甲の広範囲を砕く。
衝撃波が、周囲の塵埃と一緒に装甲を破片として散らした。
「これで少しは遅らせられたらいいけど……」
金も銀も、どちらの装甲も砕けたが、しかしよく見てみれば砕けた先から徐々に復活していっていることが解る。
「堂々巡りって程でも無いけど、時間かかりそうね……」
『それじゃあ、お手伝いします!』
と、黒影の声が聞こえたと思ったら、来た。
『……!!』
要塞蠍が石畳を割る勢いで加速し、電波塔の根元、支柱の一本に体当たりしたのだ。
●
要塞蠍の衝撃波を伴った突進は、支柱の一本を完全に砕いた。塔全体が衝撃に軋み、傾いでいく。
『あ、効いてるわよ黒影。ロクシアスの変身が遅く……、というか”乱れてる”。そんな感じね』
「了解です!」
せんせーが先ほど言っていた通り、エネルギー供給に不具合が生じ始めたのだろう。砕き損ねた支柱を鋏で断ち割りながら、
「おぉ……!」
空いたスペース目がけて、要塞蠍の機体をねじ込んでいく。先ほどの戦闘と大体は一緒だ。尾を打って衝撃波を放って加速し、鉄塔本体へ直接の体当たりを狙う。
違う部分は、
「――!!」
せんせーの警棒と同じく、衝突の瞬間に衝撃波を電波塔へぶちかますことだ。
激震。電波塔がさらに揺れた。
「――続けます!」
空は夕を越し、闇が目立ち始めていた。
成功
🔵🔵🔴
御形・菘
破壊とあらば妾の独壇場!
初っ端から全力でガンガンいかせてもらおう!
…いや、インテリジェンス溢れる、適切かつ効率的な手段も色々と使えはするがな?
妾に求められるのはそういうのでは無いわけだ! 本当であるぞ?
まず狙うはロボと電波塔の接続部!
脆弱なポイントを考えれば、第一にブチ込むならここであろう
高く跳び上がり、翼で滑空して着弾点を調整して…全力で尾を叩きつける!
ブッ叩いてみた感触で、ロボと電波塔と、潰しやすそうな方を壊していくとしよう
目的は分からんが、カッコ良くバトルを仕掛けておきながら、ここに来てガン無視されるとは悲しいぞ?
妾にフリーで攻撃させるという、まさに挽回不能な致命的ミスを悔やむがよい!
●
轟音を一つ奏でることで、菘は己の存在を最早戦場となった場所に示した。
「――はっはっはっはっ!」
笑いながら、自分の尻尾を地面から持ち上げると、
「――!」
振り下ろす。先ほど響いた轟音と同じ音が、強かに打たれた地面からもう一度聞こえた。
「破壊とあらば妾の独壇場! 初っ端から全力でガンガンいかせてもらおう!」
「あわわ……。き、貴重なデータとかあるのであんまり乱暴は……」
と、そんな様子に怯える研究員たちが見えた。彼らは機材や書類などを腕に抱えて、脇に縮こまっている。
「ほう。邪神たる妾に気遣い要求とは無茶無謀無鉄砲であるが……、ああ、いや、勘違いするでないぞ。神である妾にすればインテリジェンス溢れる、適切かつ効率的な手段も色々と使えはするがな? 妾に求められるのはそういうのでは無いわけだ! ――本当であるぞ?」
首を傾げて伺ってみるこちらに、研究員たちが何度も首を縦に振る。
「うむ。神体とその威光、そして紡ぐ言葉に平伏するか。当然であるな」
なのでまあ、
「そうして見ておれ。――妾がズバッと解決してみせよう!」
今度は尾を地面にしっかり接地させて身体を安定させると、身を縮め、
「――!」
一気に蓄えた力を開放した。
跳躍。地面から一瞬にして宙へ上がると、そのまま背の翼を広げて滑空していった。
●
地表から高く上がった菘には、敵の状態がすぐに見えた。
「あそこか」
電波塔基部、そこに接続されたロクシアスは今、明らかにエネルギー供給を受けて機体を修復している真っ最中であった。
『…………』
金と黒を基調とした機械の体が、銀と白の機体へどんどんと変貌していく。
「ならばまず狙うは、両者の接続部であるな」
脆弱なポイントという要素を考えれば、第一候補はやはりそこだろう。狙えば、電波塔とキャバリアのどちらも攻撃できる。
加えて相手は今、そもそも身動きが取れない状態だった。こちらとしてはいくらでもやりようがある。
「――――」
翼を傾けることで滑空の向きを変え、ロクシアスの元へ向かう。
そうして、空中で己の位置が決めれば、
「……!」
後はそのまま、力を送るだけだった。
落下だ。ロクシアスの直上から、全身を矢のように伸ばして真下へ落ちていく。滑空に使っていた翼は既に畳まれ、両の拳すらも足側へ流している。頭から尾の先まで一直線だった。
先ほどは左の拳でロクシアスを打撃した。しかし抵抗を削ぐために拳を使わないとすれば、どうやって攻撃をするか。
「――蛇神の裁きの下に潰れて果てるが良い!」
眼下に溜まる風に負けぬ咆哮を放つと、そこで己は身を回した。前方宙返り、身を丸めて一気に回り、最後に身体を伸ばせば、
「……!!」
決まった。自身にとっての最先端である尾先、そこが重量と落下速度、そして回転の勢い全てを詰めた一撃を、目標である接続部にぶち込んだのだ。
轟音が鳴り響いた。そして止まらない。
『――――』
物言わぬロクシアスの代わりに、砕かれた装甲やパーツ類が管楽器をぶちまけたような音を立てる。それらは同じく砕かれた電波塔の部品と衝突し、さらなる不協和音を奏でていった。
●
「――は。痛快である。このような騒々しく、調律も何も無い大音こそ邪神に相応しいか」
落下の勢いで塵埃舞う中を、菘は歩いていく。尾先に絡まったパーツ類を振り払う動きで、埃っぽい霧が晴れた。
払う動作で吹き飛んだパーツがロクシアスへ衝突し、場に音が追加される。
『…………』
だが、ロクシアスは何の反応もしない。僅かに残った回線や機能を使って、電波塔との接続を固持しているのが、読み取れる反応らしい反応だった。
「口も効けぬか。となると聞こえておるかも定かでは無いが……」
言う。
「お主の目的は解らんが、カッコ良くバトルを仕掛けておきながら、ここに来てガン無視されるとは悲しいぞ?」
尾先でロクシアスの損傷の跡をなぞっていく。まだ左腕で突いて、尾で打っただけだ。
「今の打撃で解ったが、壊しやすいのは塔ではなくやはり損壊しているお主の方か」
なぞる動きからノックするように尾の動きを変えれば、ロクシアスの内部から響く音が返って来た。
「――そして、まだ諦めておらんか」
叩く度に変わる反響音は、つまり敵の内部で未だに変化やエネルギー供給が生じている証だった。
「良かろう。ならば妾に相応しい音色を響かせることを、お主の身体に許す」
尾を、装甲から離した。
「妾にフリーで攻撃させるという、まさに挽回不能な致命的ミスを悔やむがよい……!」
戦場に、轟音を奏でていった。
大成功
🔵🔵🔵
四王天・燦
量産機駆り出して参上
自己再生―いや、自己進化しようとしているのかな
研究員に塔のエネルギー中枢の大体の場所を問うぜ
これからちっと爆弾仕掛けてくるわ
乱暴にキャバリアで一発パンチをぶち込み施設への入り口を作って、生身で飛び込むよ
施設内のセキュリティが掌握されてりゃ神鳴抜いて弾丸は武器受けて弾き、隔壁は力溜めからの居合い抜きでぶった切る
盗賊らしからぬ行いだが時間との勝負だ
中枢に到達すりゃあ時限爆弾・カウントダウンを仕掛けて破壊工作して撤収だぜ
地上が見えたら真威解放…距離が充分なら三連発で中枢を徹底爆撃かましてやる
爆風に乗って脱出するよ
ところで研究員さん
これ壊してよかったっけ?
勢いでやっちゃった、てへ☆
●
キャバリアの操作にも随分慣れたな……。
燦は現地の小国家から拝借したキャバリアを操作しながら、現場へ向かっていた。先ほどのロクシアス戦の後に乗り換えたので、無傷の機体だ。
「さて、あれは自己再生――、いや、自己進化しようとしているのかな」
異常な様子のロクシアスを電波塔基部の位置に認めながら、量産機の足底が基地の敷地内を踏む。ロクシアスの墜落によって砕けた石畳が、さらに細かくなった。
「そしてあれを止めなきゃならんわけで……っと、なあ、そこの研究員さん」
「え? あ、はい。私でしょうか?」
離れた処に研究員が見えたので声をかけた。相手は少し驚いたようにこちらを見上げている。
「この電波塔のエネルギー中枢って、どこにある? 変電設備とか……発電機とか、そういうの」
「えっと、そういうのは地下ですね。自前の大型発電機があります」
「そこにはどうやって行ける?」
言うと、研究員がこちらへ指を向けた。
「貴女の後ろ側、そこにある地下ハッチからです」
コックピットのモニターの一つ、機体後部にある視覚素子が寄越してくる後方映像には、研究員の言う通りハッチがあった。
施設にめり込むように作られたハッチは、地下への傾きを有している。
「ああ、これか。ありがとう。助かったぜ」
教えてくれた礼として、キャバリアの片腕を挙げる。そんな操縦ももう慣れたものだ。
無骨な機械の体を背後へ振り向かせた。機器の運び込みや敷設のためを考えてか、ハッチのサイズは大きい。が、キャバリアが入れるほどではなかった。
「でも普段は利用しませんから。ハッチは今、封鎖さ――」
後ろから聞こえた研究員の声は、しかしそれ以上聞こえなかった。
「――!」
自分が、目の前のハッチをキャバリアの拳で殴り飛ばしたからだ。
戦場と変化した基地に、大音が響いた。
「よーし……って、あれ? まだいたのか。呼び止めたアタシが言うのも何だけど、早く避難した方がいいぜ。オブリビオンマシンが目覚めたら、もっと大変なことになるし。
――じゃ、これからちっと爆弾仕掛けてくるわ」
「えっ!? は!? あ、ちょ――」
そう言って己はキャバリアのコックピットを開けると、コックピットから目の前の大穴へ。直接飛び込んで行った。
●
照明が等間隔で並ぶ地下通路、そこを燦は駆けていた。
「思ったより広いというか……、物々しいな」
簡単な通路があるだけかと思ったら、そうではなかった。通路幅は作業機械が通れそうなほどにはあるし、一本道でもない。ブロックごとに区画された地下は、通路の各所に隔壁があったが、
「全部、閉鎖状態……。敵に掌握されてるってことなのかな、これは」
己の持つ”七つ道具”などで状態を調べても良いが時間が無い。盗賊らしかぬ行いではあることは自覚しながら、最初にハッチを開けたのと同じく、
「――強行突破!」
背負っていた刀の柄に手を掛けて、一拍。力を溜めてから抜刀した。
「――――」
神鳴。その名の持つ通り、紅に帯電する刃が鞘から飛び出した。しかし、それが通路の照明に照らされたのも一瞬だけだった。
次の瞬間には鉄の隔壁が断たれ、床へ落下していた。
「……よ――」
し、という己の言葉はしかし続かなかった。
「――!!」
己の元へ銃弾が飛来したからだ。
「!!」
数は無数。地下通路に連続で響く発砲音を聞きながら、己は振り抜いた神鳴を返す刀の動きで一閃、否、
「シッ……!」
連閃だ。聞こえた発砲音と同じ数だけ振るえば、飛来した全ての弾丸が神鳴の刀身に防がれ、断たれる。
砕け散る弾丸の向こう側に、この地下通路のセキュリティと思われる、マシンガンを備えた機械が見えた。タレットだ。
侵入者であるこちらを排除しようと、弾丸の風を正面から吹きつけてくる。
「あれも、隔壁と同じく掌握されてるってことか……!」
しかし己は臆せず、弾丸を神鳴で受けながら数歩で距離を詰めると、そのままの勢いでタレットがいた位置を突破。
「――――」
紫電が空間を走った音、断たれたタレットが地面に散らばる音が聞こえたが、それはもう背後の事だ。
今、己の意識は前方に向けられていた。
「これが言ってた発電機か」
目標である発電機がそこに有るからだ。
ロクシアスの状態に呼応しているのか、巨大な発電機はフル稼働状態であり、盛んな唸りを挙げている。
「じゃあ、さっさとセットして……」
そんな唸りの根元まで行き、発電機に張り付くように箱型の物体をセットし終えると、
「さっさと離脱……!」
己は来た道を急ぎ引き返した。箱から聞こえる規則的な音から、箱の中身が時を刻んでいることを周囲へアピールしている。
時限爆弾だ。
もう作動している。
「……!」
タレットの残骸を踏みつけ、切り落とした隔壁を潜り抜ける。そうして来た道を逆回しするように辿れば、己が壊した入口、地上と地下を繋ぐハッチまで戻って来る。
大穴から外の光が見えた。
「ここまで来れば……!」
距離は十分稼げた。なので、このタイミングで己はユーべルコードを発動した。先ほど設置した時限爆弾、”カウントダウン”を巨大化させたのだ。
もう現場から離れているため、”カウントダウン”がどれだけ巨大化したかは視覚では解らなかったが、
「――ゼロ!」
全身では解った。
ハッチの大穴を踏み切ったこちらの背を、炎と煙、そして圧力を伴った三重の爆発が押したからだ。
「ぉ……!」
吹っ飛ぶ。背中を殴りつけるような勢いの圧力に押されて、全身が前というか、斜め上空へと。
地上の広々とした景色なんて見れたのは、吹っ飛んだ最初の内だけだった。後ろから迫ったカラフルな爆煙で、視界はすぐに覆われた。
「――っ!」
そんな視界不良な最中だが、自分が乗っていたキャバリアをすぐに見つけるとコックピットに飛び込み、それを閉鎖する。
シートに身を沈める。
「けほっけほっ……! あー、やっと一息つけ――、って、あれ? まだ逃げてなかったの研究員さん?」
「い、いや、別れてからそんな……って、そ、そうじゃなくて……」
離れた位置にいる研究員が口を開閉させながら、このキャバリアと背後のカラフルな煙を交互に指で差してきた。
「……あー……」
指差しに合わせて、己も背後の煙を振り返る。
空へと立ち上がっていく太い煙は、色鮮やかだった。
「……そういえばこれ、壊してよかったっけ? 勢いでやっちゃった、てへ☆」
信じられないものを見る目で研究員がこちらを見てきた。
成功
🔵🔵🔴
ヴァレーリヤ・アルテミエヴァ
(アドリブ・連携歓迎)
再起動でもするつもりですの…!?
「修繕どころか改造の域かもですねー、殲禍炎剣の観測基地に何故そんな機能があるのかは謎ですが」
…あの塔を介しているのは間違いなさそうですわね。
オーファ!もう少し働いてもらいますわ!あの塔を壊しに向かいますわよ!
塔に着くまで敵機体に暴れられても面倒ですわ、
【破砕する嵐翼】!武装を壊す衝撃波で敵を抑えつつ急ぎますわ!
「急ぐのはよろしいですが、殲禍炎剣が飛んできますよお嬢様?」
ここは押し通りますわ!『オーファ』、射撃統制による殲禍炎剣の<索敵>と迎撃!
『ミーシャ・タスカー』の<操縦>と<継戦能力>で切り抜けて塔に一撃入れますわよ!
●
ミーシャ・タスカーの中でヴァレーリヤは驚愕していた。急ぎ向かっている観測基地にて、異常な事態が生じていたからだ。
「再起動でもするつもりですの……!?」
広い敷地の中央にある電波塔、その基部と接続したロクシアスが、己が身に負った破損を修繕していっているのだ。
……いえ。
と、否定の言葉が思考に浮かぶ。あれは正確には、
『修繕どころか改造の域かもですねー。殲禍炎剣の観測基地に何故そんな機能があるのかは謎ですが』
オーファの言う通りだった。光に包まれたロクシアスが全く別のパーツに組み変わっていく様子が、離れたここからでも見える。それは修繕や回復というよりは、変身や改造と言った方が適切な雰囲気だったし、何故そのような機能がこの基地にあるのかも謎だった。
オーファが、敷地内のコンピュータに表示されている画面を読み取っていく。
『月面発電施設、次元ダウンロード……。何かトンデモワード連発ですけど、お嬢様的にどうお考えです?』
「それらが、あの塔を介してロクシアスの身に変化を起きさせているのは、状況から間違いなさそうですわね」
『おお、トンデモお嬢様が論理的に結論を……!』
「オーファ? 色々言いたいことありますけれど……、普通、ロジック担当はAIの方ですのよ?」
『おやおや、人の事を侮りしましたねお嬢様。少々お待ちを……。
…………。――論理的に考えて、あの電波塔に弾丸をぶち込んでぶっ壊せばいいんじゃないでしょうか。どうです?』
「オーファ? どこからツッコめばいいか解りませんけれど……、私と同じ論理的帰結に辿り着いたので不問としましょう」
つまり、
「――貴方にももう少し働いてもらいますわよ!」
瞬間。迫ってきた銀色の砲撃を、己は論理に従って回避した。
●
『――――』
”それ”の意識は、朧気だった。
撃墜され、ここまで這ってきて、やっと月との交信に成功した。そこで機体としてはスリープモードに移行したが、どうやら猟兵達に追いつかれ、交信を妨害されていたようだ。記憶は無いが、機体に残るダメージがログだ。
スリープモードを解除できるまで、本当だったらもっと時間はいらなかったはずだ。機体の構築も未だ不完全。
これ以上の遅延は許容できなかった。
『……!』
だから勝負した。機体がろくに動かない中、腕を傾けることで狙いとし、指先の動きでトリガーを引き絞る。たったそれだけの動作すら一大事だったが、新たに構築された月色のライフルは確かに威力を発揮した。
接近してきていた猟兵に向かって、砲撃が行く。
しかし砲撃は回避された。機体の管制がまともに作動していない状態の射撃だったので当然だ。が、僅かでも時間稼ぎになればいいと、射撃の続行を選択する。
見る。射撃をする前の基本だ。カメラアイを動かし、敵を視界に収める。
『……!?』
すると、敵が変形していた。
●
ミーシャ・タスカーの変形が一瞬で完了したことを、ヴァレーリヤはコックピットの中で感じ取った。
機体背後に、突如として翼が生じたのだ。翼はその見た目通り、機体へある能力を与えていく。
「――!」
飛翔だ。地表の砂礫を洗い流すように吹き飛ばした後、ミーシャ・タスカーは空へと昇っていく。衝突して破裂させられた大気が、翼端から白い帯となって流れていった。
向かうは、前方の電波塔だ。
行く。
しかし、
『急ぐのはよろしいですが、殲禍炎剣が飛んできますよお嬢様?』
オーファがそう言うやいなや、頭上に広がる黒の宙で光が増えた。
「!!」
殲禍炎剣と、そんな単語を思う暇も無い。今、頭上を埋め尽くすほどの光点群が一瞬の内に直径を大きくしたのは、光点がこちらに接近している証拠だった。
光が、撃ち下ろされてくる。
「……!!」
莫大量の光はまるで真上に太陽があるようだった。
目に見えるのが眩い光であれば、耳に聞こえるのは騒々しい二つの音だった。
一つは頭上から聞こえる、殲禍炎剣の砲撃が大気圧と干渉した洪水のような音だ。
もう一つはコックピット内部で響く、殲禍炎剣の座標を測定したオーファが寄越すアラート音だ。
しかし、己はそれらに構わなかった。
「――押し通りますわ!」
ミーシャ・タスカーを一気に加速させたからだ。今までの速度よりずっと速く、ただ前へ進んでいく。
視界の中では、何もかもが高速で後ろへ吹き飛んでいった。空も、雲も、そして宇宙からの砲撃全ても。
そうすると、殲禍炎剣が狙いを修正した砲撃を放ってくる。が、オーファが先ほどから測定の手を休めていない。予測される砲撃ポイントを避けて、何とか機体を運んでいく。
既に、速度は時速にして六千キロメートル以上。そんな速さで大気にぶつかれば、大気は破裂するというより爆発する。
直進、ロール、ピッチ、ヨー。全ての動作において爆発が発生し、止まらなかった。連続する一つの大音として、戦場全てを上から圧していく。
否、圧するのは音だけではなかった。
「”破砕する嵐翼《ストリボーグ》”!」
衝撃波だ。しかし、音速超過で行くミーシャ・タスカーからはソニックブームとしての衝撃波が常に生じている。それとは別で指向性を持った新たな波が機体から生まれ、放たれたのだ。
”破砕する嵐翼《ストリボーグ》”。その名の通り、戦場の上空で巻き起こった嵐が破壊の矛先として選んだのは、しかし電波塔ではなかった。
「またさっきみたいに暴れられても面倒ですものね!」
その基部にいるロクシアスだった。右腕に構築された新たな長砲に目がけて、ユーべルコードが多重弾着。長砲を破壊していった。
そして、それと同時。
「――オーファ! やっておしまいなさい!」
『かしこまりました!』
電波塔へ、オーファのガトリング砲が向けられていた。こちらが本命だった。
鉄の暴風が電波塔を食い荒らしていった。
成功
🔵🔵🔴
バーン・マーディ
ふむ…唯破壊すればいいわけでもなさそうだな
あの神機を純粋に破壊は…危険か
ならば
UC発動
特に情報工作や電子戦に秀でた部隊を呼ぶ
【戦闘知識】
電波塔の調査と状態
更に効率的に電波の送受信を妨害する為の工作を開始する
流石に止める事は出来ぬようだが…時間を稼ぐ事は出来るだろう
何より再生というより変質する姿…我と…マーズは知っている
ならば現れるのは…
通信で
都市の住民の避難を推奨する
我の予測が正しければ状況次第でこの地は荒野になるだろう
工作で効率的に破壊できるポイントを確認すれば
軍神の剣で破壊を行う
マーズよ…お前もこの都市の名が気になるか
ならば此度は護るとしよう
暗くなる空
浮かぶ銀月
…月が……昇る
●
バーンは、マーズの中で険しい表情をしていた。
「ふむ……。唯破壊すればいいわけでもなさそうだな……」
墜落したロクシアスを追って、駆けつけた先ではロクシアスが何らかの”変化”の真っ最中だったのだ。
『――――』
ロクシアスの体が、身動き一つ取らずに再生していっている。損傷したパーツが、装甲が、武装が、墜落からしばらくたった今ではもう随分と様変わりしていた。
「――否」
と、己はそこで自分の思考を言葉で否定する。
”あれ”は、傷を再生しているのではない。
「再生というより変質する姿……。我と……、そしてマーズは知っている」
ロクシアスの体は既存の金の姿から一転、新規の銀の姿へと変わっていた。色が変わるだけでなく、形すらも違う。ただ傷が癒えていっているだけではないのは、明白だった。
何より、無事な部分ですら変化していっている。
再生? 違う。
修繕? 違う。
「変質と、そう言うのが相応しいだろう。ならば現れるのは……」
そこまで言って、己はすぐに行動した。
「――”来たれ我に忠を尽くし者達よ”」
ユーべルコードの発動だ。
詠唱を続けていく。
「”我は此処に居る。我は此処に在る。この場こそ我が領域なり”」
詠唱が完了した。その瞬間。
「――――」
墜落や戦闘によって砕けた石畳が、さらに踏み砕かれる音が聞こえた。複数の足音は、マーズの足下で整列待機する者達が生んだ音だった。
「…………」
様々な機械や道具、それに相応する術式も備えた彼らの名は、デュランダル。己が過去に率いていた対神組織の騎士達だった。
足下の彼らに向かって、言う。
「デュランダルの騎士達よ。あの神機を純粋に破壊することは……、危険である」
たった今も変質してていく敵に対し、破壊という選択肢を捨てるのであれば、どうすればよいか。
「狙うはあの電波塔だ」
ロクシアスが接続した電波塔を、マーズの大剣で指し示した。
「騎士達よ、あの電波塔へ急げ。電波塔で行われている全てを妨害せよ。阻害せよ。干渉せよ」
そして、
「――調査せよ。敵の狙いが何かを」
「――!」
騎士達が、行動を開始した。
●
バーンは、騎士達からの報告を随時聞いていた。
騎士達が現場へ辿り着き、まず目にしたのは基地内のあらゆるコンピュータの画面に表示されていた”記録《ログ》”だ。
機械やプログラムが、己に入力された命令を示す記録には、月面にあると言われる発電施設と、そしてそこに残存していたある”データ”を通信して、ダウンロードしているということが示されていた。
地球と月との通信。それは膨大で、一筋縄ではいかないことのようにも聞こえるが、ここはヒーローズアースでは無いのだ。地球でもなく、月との距離も定かではない。だが、”次元ダウンロード”という言葉が、通常のダウンロードとは違う異質さのようなものを有しているのは、間違いないと直感していた。
見る。
ダウンロードの進行を示すインジケータを。
「流石に止める事は出来ぬか……」
他の猟兵達の妨害もあったが、もう残り時間は僅かだった。
インジケータと併せて、表のような項目が目に入った。そこには緑と赤の字が並んでおり、却下や否定を示す赤文字がほとんどだった。
ダウンロードや、それによって得られたデータの展開が妨害され、多くの項目が不完全であることを示しているのだった。
しかしだからこそ、ロクシアスがデータの取捨選択をしていることが騎士達の調査で解った。
敵は、諦めていないのだ。
不完全であっても、戦闘を再開しようとしている。
『…………』
身動き一つ取らず、物言わぬ敵だからこそ、そんな執念のような思いを強く感じた。
「だが、時間を稼ぐ事は出来るだろう」
否、稼がねばならない。データの通信可否表の存在を知った己が、騎士達に真っ先に結果の是非を問うたデータがある。
あの姿を、我とマーズは知っている……。
ロクシアスを睨みつけるようにしながら、先ほども言った言葉を、もう一度頭の中で呟いた。
と、そこで、
「――解ったか? 報告せよ」
騎士達から報告があった。己が尋ねたデータについてだ。それは武装データであり、
「――――」
その答えを聞いて、己は息を飲んだ。
だがそれも一瞬だった。
「新たな指示だ。通信回線を構築せよ。対象はこの都市の為政者だ」
そう命じると、騎士達が電波塔妨害作業と並行し、この都市への通信準備を進める。進めた。
騎士の一人がカメラを設置し、こちらに手を挙げてくる。それに対し、己が了承の頷きを送れば、
「――――」
カメラ側で、赤のランプが点灯した。
繋がったのだ。
●
『――聞け』
「!?」
格納庫、そして観測基地を有する都市を運営する、企業連合から派遣された責任者はその映像を見た。
突如としてオフィスのモニターに映し出された、キャバリアをだ。
黒と赤を基調とした、火炎を背負ったキャバリアが、画面を真っすぐ見ている。
『我々は猟兵である。此度の新型機暴走事件の解決を図る者達である』
数か月前から突如としてこの世界に現れた集団、”猟兵”。それを名乗った相手は、キャバリアコックのピットハッチを開いた。
険しい顔つきをした精悍な男が、シートに座っていた。
『新型機ロクシアスは現在、殲禍炎剣観測基地を占拠し、さらなる強化を狙っている。有り体に言えば、”変身”をしようとしている』
「――――」
阻止できないのかと、そのようなことを男に対して聞いたのだと思う。
突然の事態が連続し、自分でも何を話したのか判別がつかなかった。しかし、男は返事をした。
『――否。我々猟兵が妨害しているが、変身自体は止められない。間に合わない。もう数刻もしない内に、ロクシアスは新たな姿を手に入れて破壊を繰り返すだろう』
ならばどうするか。
『我々猟兵がこの基地内で押し止める。しかし、都市の者達の避難を推奨する』
一拍。
それだけの間を持って、男は言った。
『我の予測が正しければ、状況次第で基地どころか、その都市すらも荒野となるだろうからだ』
「――――」
言葉を失うこちらに、しかし男は表情を変えずに、否、険しい顔つきをさらに険しくし、言葉を続ける。
『以上である。突然の通信、信ずるに値するかは、そちらに任せる』
ただ、
『我々は、全力を尽くす』
それだけだった。
通信が、終わった。
●
マーズは夕闇の空に剣を掲げた。
大剣である。
「マーズよ……、お前もこの都市の名が、国の名が気になるか」
『…………』
オリュンポス。
この戦場で誰もが幾度となく聞き、誰もが幾度となく発したその言葉を、男がもう一度言った。
『ならば此度は護るとしよう』
最早太陽は沈み、西の空に残光を残すのみである。東から覆うように迫る紫の空にあるのは、殲禍炎剣混じる星々と、銀光盛んな月だけだ。
『お……!』
疾走。
太陽と月からの光が混じり合う中、火炎を猛らせ身を前へ運んだ。その先にいるのは、ロクシアスか、それとも、
『――!』
もう、”他の何者”かか。
それを探るように、大剣が戦場を走った。
●
バーンは、戦場にいる全ての者は、それに気づいた。
「空が……」
完全に、太陽が沈んだのだ。
空は闇が優勢となり、全天を覆っていく。
そして、
「……月が……昇る」
闇の中に、銀月が浮かんでいた。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『狂月神機『ディアーナ』』
|
POW : BSサテライトキャノン『三ツ星への愛』
【月面発電施設からの次元エネルギーチャージ】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【大規模戦略級ビーム砲撃】で攻撃する。
SPD : 報いの女神『猟犬の鹿狩り』
自身が装備する【FXRソードビット&FSBレーザービット】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ : 対情報戦術機構『月の女神』
自身の【全身】から【月光の如く揺らめく光】を放出し、戦場内全ての【正気・理性・判断力】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「テラ・ウィンディア」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
《エラーを検知》
《武装データにおいて、ダウンロードの失敗、展開の破損等が確認されています。
Love for the Tristar.... データの破損、もしくは次元展開の失敗
Actaeon's Hounds.... 不完全なダウンロード
Goddess of the Moon.... 不完全なダウンロード》
《命令を続行しますか? Y/N》
『…………』
《命令を続行をします》
《エラーを検知》
《人格データにおいて、ダウンロードの失敗、展開の破損等が確認されています。
Diana.... 不完全なダウンロード、データの破損、もしくは次元展開の失敗》
《命令を続行しますか? Y/N》
『…………』
《命令を続行をします》
《DANGER!!》
《主要データファイルに、致命的なエラーを多数確認しています》
《この状態での起動は、極めて危険です。特別な許可が与えられていない限り、この状態での起動は、不可能です》
《起動認可状況を確認中……》
《特例措置により、この確認をスキップします》
《起動します》
●
夜の闇に、銀の姿が立ち上がった。
『――――』
キャバリアだ。背に光輪を背負ったその姿は、ロクシアスに通じるところがあるが色味が違う。
金から銀へ、黒から白へ、橙から青へ。
真新しい装甲やパーツで組まれた姿は月光で照らされていたが、しかし同時に傷ついてもいた。
真新しく、傷ついている。そんな不思議な姿に意識を向けられたのも、最初の内だけだった。
『……!!』
銀のキャバリアが暴れ出したのだ。腕を振り、身悶え、地団駄を踏むように大地を蹴散らす。
『――!!』
あ、とも、お、とも聞こえる音が、キャバリアの叫びだと気付いた者が戦場にどれほどいただろうか。
『あ、ああ、私は……!!』
右腕に持った長砲を振り回し、キャバリアは叫ぶ。
『森を、獣を、私は……狩猟! 月下において――、あ……?』
狂乱。
破綻した言葉を叫びながら、キャバリアはしかし己の足元に気付いた。
観測所や電波塔、石畳などの瓦礫が散らばる中、ある物がキャバリアの意識を引いたのだ。
『――兄上はどこ!? 違う! 兄上なぞ会いたくない!
獣を献上なさい!! 違う! 見るな! 猟犬よ!!』
長砲に光が灯った。
キャバリアから飛び出すように、二種類の小型の自立機械が放たれた。光剣と砲だった。
『――私はディアーナ! 狩猟と月と!』
狂えるキャバリアが、夜の闇の中にいた。
天道・あや
【真の姿】
…姿も変わったけど、雰囲気、というより性格も変わった? 月から変なものもダウンロードしちゃったのかな?
でも友好的、大人しくするつもりはないようで、何を思って何をしたいか分かんないけど…貴方は終わった存在。
…子守唄を歌ってあげる
小型兵器の攻撃を避けながら小型兵器へと接近。そして兵器を掴んだり、蹴り飛ばしたりして敵へと返品、ぶつける【見切り、ダッシュ、ジャンプ、グラップル】
敵がUCを発動したら…うん、私にそれ抗う術はない。
でも正気や理性、そして判断力がなくなっても、あたしはきっと歌う、夢は素晴らしい、未来は明るいって【歌唱、限界突破】
正気に戻ったら敵に突っ込んで攻撃【鎧砕き、属性攻撃雷】
●
あやは暴風の中にいた。オブリビオンマシン、ディアーナとの戦闘の最中だ。
『あぁ……!!』
敵は、最初から傷ついている体を震わせながら、長砲を棍棒のように振り回している。間合いなど無視した目茶苦茶なスイングはこちらに届くものではないが、長砲は全高五メートルのディアナと同等の大きさがある。振り回せば風が唸り、
『――!』
暴風が迫る。砂礫が混じった風だった。風に対して己は目を細めるが、逆に言えばそれだけだった。
突風によって乱れて顔にかかった髪を、穏やかな手付きで梳き流した。
「――――」
砂を噛んだ髪が、今までと比べて伸びていた。
真の姿だ。
●
月光が降り注ぐ中、真の姿となったあやは敵と正対していた。
……姿も変わったけど、雰囲気、というより性格も変わった?
狂って暴れる敵を冷静に観察しながら、何故そうなったかも考えるが、答えは多くないだろう。
……月から変なものもダウンロードしちゃったのかな?
恐らく、それだ。テスターは己が助け出しているから、今、あのキャバリアに搭乗者はいない。
つまりあの機体を動かしているのは、あの機体自身が持つ純然たる狂気であり、それは天上の月に放置されていたデータだ。それもおそらく百年、否、もしかしたらもっとずっと長い間。
そんな相手へ、己は近寄っていった。
『――寄るな!!』
威嚇するように、また長砲の振りが見えたが構わず進む。
「でも友好的ではないし、大人しくするつもりは無いようで」
『貴様は誰だ! 私を誰と心得て――、……違う、私はこんな事……!』
ディアーナの周囲を漂っていた小型兵器が、一斉に起動した。
『――!』
光剣と光砲の二種だ。光剣は一直線に、そして光砲は包囲するように、こちらへ迫ってくる。
「何を思って何をしたいか解んないけど……、貴方は終わった存在」
数百という数の小型兵器が正面から押し寄せる光景は、大波のようだった。
「……子守唄を歌ってあげる」
『食い散らかせ、猟犬!』
戦闘が本格的に開始された。
●
先ほどから戦場となっている観測基地だが、その特性上、元々光源と呼べるものが少ない。敷地内を照らす照明は最低限で、だからこそ天上がよく観測できるのだ。
しかし、今は違う。
「……!」
電波塔近くの地上で、光のドームが出来ていた。
あやがディアーナの小型兵器に包囲されているのだ。小型兵器というスポットライトが照らす中、ライトは一層光を飛沫かせた。
「!!」
砲撃だ。砲を有した小型兵器が、光線を放ったのだ。全方位から串刺しにする勢いで光が迫ってくる。まるで抜け目など存在しないような包囲攻撃だったが、
「――見えた」
攻撃の中の僅かな空白を見切ると、その極小の安全地帯へ身を運んだ。身体のすぐ側を光線が過ぎ去り、熱を感じる。が、被弾はしていない。
「遅いよ」
『!』
なのでその場で固まらず、すぐさまレガリアスの出力を上げて手近な小型兵器へ突撃。
まさか接近されるとは考えていなかったのか、虚を突かれたような慌てた動きで砲が向き直されてくるが、
『!?』
敵の驚愕はそこで更に大きくなった。
何故か。
『私の猟犬から手を放せ!!』
こちらが小型兵器の一台を、直接、手で捕らえたからだ。
『……! ……!?』
何とか拘束から逃れようと、砲台が手の中で暴れる感覚があるが、その暴れる動きを利用してディアーナの元へ投擲した。
突然の解放によってコントロールが狂った光砲は、内部に砲撃のエネルギーを蓄えたままディアーナへ激突していった。
『っ……!』
激突。そして爆発した。
小型兵器の爆発は小規模だが、すでに装甲が破損しているディアーナにとっては無視できないダメージだ。身をのけぞらせたところへ、さらに追加の投擲を放つ。
放った。爆発が続き、ディアーナが苦悶の声をさらに挙げていった。
『――!』
と、そんな攻撃を阻止するためか、もう一種の小型兵器である光剣が突撃してきた。鋭利な光刃を突き出した高速の突撃に対して、
「無駄だよ」
やはり己は見切って、ステップによる回避。そしてその足運びを止めずに、そのままの動きで跳躍すると、
「こっちも返品してあげる」
迫り来る光剣の群れを、次々とディアーナの元へ蹴り飛ばしていった。
『うぅっ……!!』
弾丸のように飛んでいった小型兵器が、ディアーナに突き刺さった。
掴み、蹴り、そうして爆発と突き刺さりが数十を超えた頃に、
『――あぁあああああ!!』
「あれは……」
ディアーナが、新たな攻撃を放ってきた。機体の全身から放たれた揺らめく光を見た瞬間、
「あ……」
己の意識が、強制的に塗り替えられた。
●
ディアーナは狂った精神の中であっても、それを見た。
「――――」
今まで暴れていた目の前の女が、突然立ち止まったのだ。
足を止め、立っているのも難しそうに、俯いて身体を不確かに揺らしている。
それを見て、殺そうと、そう思った。
『ああああああ!!』
だからそうした。
軋み、火花を散らす両腕で長砲を空に掲げると、眼下の女へ一気に振り下ろしたのだ。
しかし、
『あ……?』
そうはならなかった。長砲が、空に掲げられたままだったのだ。
振り下ろせない。
何故か。
解らない。
何故解らないかも、何故ここにいるのかも、目の前の女が何者なのかも、何もかも己には解らなかった。
ただ、
『――――』
声が、聞こえてきていた。眼下の女からだった。
女は胸に手を当て、いつの間にか声を紡いでいた。それは最初、発声も不確かなものだったが、しかし段々と確かなものとなり、声は音階とリズムを持ち、
「……!」
研ぎ澄まされた。そう思った時には、女の全身から七色の楽譜が次々と現れ、周囲へ広がっていた。
夢や未来といったものを賛する歌が、次々に楽譜を生み出していくのだ。
その光景を目の当たりにしていると、もう砲を掲げるどころか、次は己が立っていることすらままならなくなっていた。
『っ……』
膝が崩れ、地面に尽きそうになった時、女の顔が見えた。
「――教えてあげる」
活力ある瞳だった。
次の瞬間。地面に膝をついていくこちらと入れ違うように、地を蹴って跳躍した女が、
「……!!」
雷光迸る蹴り足を、ぶち込んできた。
成功
🔵🔵🔴
黒影・兵庫
な、なんだコイツ!?何言ってるんだ!?
(「落ち着いて黒影。敵の言葉なんて無視しなさい」と頭の中の教導虫が窘める)
すみません、せんせー
ですが敵は混乱しているようです!
このまま{要塞蠍}に搭乗したまま『オーラ防御』を『限界突破』レベルまで防御を固め籠城しつつ
{錨虫]を『念動力』で操作して敵にちょっかいをかけながら
その隙に火計兵の皆さんで敵を火だるまにしてもらいます!
(「敵が倒れるのが先か此方がやられるのが先か...勝算は?」)
100%です!皆さんが力を合わせているのに負けるはずなどありえません!
(「ふーむ...ま、危険だけどやってみましょうか!」)
お任せください!大勝利してみますとも!
●
『月において、我は此処に存在する!
森において、我は呱々に存在する!
獣において、我は個々に存在する!』
「……!? な、なんだコイツ!? 何言ってるんだ!?」
兵庫は敵の声を聞いた。叫ぶような泣くような声は言葉を紡いでいたが、意味不明だった。
観測所が建つ山の中に、鬼気迫る声が木霊していく。
『――落ち着いて黒影。敵の言葉なんて無視しなさい』
と、そこでせんせーの声が意識に割り込んだ。
「すみません、せんせー」
せんせーの言う通りだった。相手はオブリビオンであり、倒さなければならないのだ。言葉に耳を傾けていては自分が“持っていかれる”。
「敵は混乱しているようです!」
自分がいるべき場所を再確認し、その位置から己は相手を客観的に評価する。
ディアーナは声を振り絞りながら、傷ついた身体を振り乱している。狙いも無茶苦茶な攻撃は、到底こちらに届くものでは無かった。
『どうする?』
「相手の意識をこっちに向けさせた後、要塞蠍の出力を防御に回します。そして、籠城。生半可な攻撃は通じないので、敵は必ずあの長砲を使ってくるでしょう」
狂った敵は、あの砲を今棍棒のようにして振り回しているが、正しく使えばその威力がとんでもないことは、砲のサイズからして瞭然だった。
「絶大な砲撃でしょう。ですがその間、相手もこちらに釘付けです。そこを狙って、火計兵さん達に敵を火だるまにしてもらいます」
『敵が倒れるのが先か、此方がやられるのが先か……。勝算は?』
問いに、己は即答した。
「100%です!」
何故なら、
「皆さんが力を合わせているのに負けるはずなどありえません!」
自分以外にもこの戦場には猟兵達がいるのだ。見知った者もそうでない者も、全員がこの問題に対処しようとしている。
『ふーむ……』
それを聞いてせんせーは少し唸っていたが、
『ま、危険だけどやってみましょうか!』
「お任せください! 大勝利してみますとも!」
快諾してくれた。そのことに、己は行動で応えていく。
●
「――こっちだ、オブリビオン!」
『!』
兵庫がディアーナの注意を引くために選んだのは、先ほどのロクシアス戦でも用いた錨虫だ。
鎖が繋がった錨を、ディアーナに向けて念動力で投じて、ぶつける。それは重量物同士の衝突だ。激しい音が鳴り響き、衝撃によって相手が蹈鞴を踏んだ。
それを受けて、ディアーナが素早くこちらに向き直る。傷ついた身体とは思えぬほど機敏な動きであり、
『……!』
そんな動きのまま、手に持つ長砲を威勢よく振り下ろして来た。だが、
「効くかよ!」
こちらはもう防御態勢を完了している。オーラ防御を前面に張って、何度も振り下ろされる砲身に、耐えていく。
『あぁあああああ……!!」
要塞蠍にダメージを与えられていないことに苛立ったディアーナが、後方へバックステップした。そしてその怒りの感情のまま、長砲へ光を満ちさせていった。
それは明らかなエネルギー充填の証だった。
『来るわよ黒影!!』
「!!」
来た。
直径数メートルの光柱が見えた、とそう思った次の瞬間には、視界は全て光に飲まれている。
ディアーナからの砲撃が、要塞蠍の前方にあるオーラ防御壁に防がれて、発散したのだ。周囲へ放射状に広がっている。
「……!」
だが、予想通り相手の砲撃が強大だった。莫大量のエネルギーによって、防御壁の一部が溶かされ始めていた。熱量に浸食されているのだ。このままでは光がこちら側に回り、直撃する。
「お……!」
そうはさせないと、己は出力をさらに防御へ回していった。浸食された部分をさらに押し返すように、オーラが増大していく。
今までの限界を超えて聳え立った防御壁は、砲撃と月光、そして新たに生まれたそれ以外の光に照らされていた。
「――お願いします、火計兵さん!」
「――――」
新たな光は蛍だった。翠玉色の光点が、一気に要塞蠍から広がったのだ。
数にして五百足らずのそれらが、一斉にディアーナの元へ飛び立っていく。
翠の弧を描きながら飛ぶその光景は、最早闇というものが砲撃で消し飛ばされた夜の中でも、よく目立った。
『煩わしい羽虫ごと――』
「……!!」
ディアーナの苛立った叫びも、火計兵から放たれた翠玉色の炎が連続弾着したことで消し飛んだ。
通常であれば、小さな点のような炎などキャバリアの装甲の上では、ただ滑って舐めるだけだ。着火しない。
「だけど、火計兵さんに燃やせないものはありません……!」
森羅万象に着火する特性を持った火炎は、ディアーナの装甲を燃料に次々と燃え広がり、一瞬にして翠玉色の炎が立ち上がる。
全高五メートルの火炎は、正しく火柱だった。
『……!?』
突然の過熱によって、長砲が機能停止した。そして、それだけではない。
『お、の……れ……!』
ディアーナ自身も火炎によってオーバーヒートし、たまらず地面に膝をついたのだ。
光砲との勝負に、己が打ち勝った瞬間だった。
成功
🔵🔵🔴
御形・菘
はっはっは、パワーアップ希望だったのか!
他の者はともかく、ならば妾は止めなかったのだがのう
天地、ライブ配信は一旦停止だ
編集動画にも結構手を入れて、ダイジェスト気味になるであろうが…
麗しの月の女神とのバトル、偶には羽目を外すのもよかろう!
それに会話が成立せん相手では、撮れ高が寂しくなるしな
誇るがよい、かつての余裕無き妾では、決してこの手を選びはしなかったぞ?
『邪神としてカッコ良く立ち振る舞う』のは、妾にとって枷であり絶対の誓約!
…だけどね? 本当は、見映えを一切無視して暴れ回る方が、私にとっては楽で圧倒的に強いの
普段は制御している、覇気とかオーラとかその辺も全部、好き勝手させるよ
蹂躙、されなさい
●
『私は、私は、私は――!!』
激しい怒りと混乱を露わにして暴れ狂うキャバリア、ディアーナを見上げながら、菘は声を張っていた。
「はっはっは、パワーアップ希望だったのか! 他の者はともかく、ならば妾は止めなかったのだがのう」
は、という音をもう一度連続して張って、そこで天地へ手で合図をした。
「天地、ライブ配信は一旦停止だ」
そう言っただけで、天地はその通りにした。録画は続けたまま、配信を停止したのだ。
●
……編集動画にも結構手を入れて、ダイジェスト気味になるであろうが……。
目の前の敵から視線は外さず、菘はこの戦いが終わった後のことを思う。動画編集や諸作業の手間などは確かにあるが、
「麗しの月の女神とのバトル、偶には羽目を外すのもよかろう!」
“羽目を外す”。それは自分にとって、久しい行為だ。今、口に出してみても、身体の底で響くような思いを得る。
と、そこでディアーナが反応した。女神という言葉が聞こえたのかこちらに振り向き、吠える。
『誰だ、いつからそこに!? 神前であるぞ!』
「神前、か。全く同意である」
『――兄上なんていらない!』
「うーむ、やはり会話が通じんか」
解っていたことだが、会話が成り立たない。そういった部分も配信停止を判断した要因だった。
会話が成立せん相手では、撮れ高が寂しくなるしな……。
やはり敵との掛け合いや、敵の驚愕の声、そういった物があった方がウケる。動画の視聴数というシビアな事をそんな風に考えていると、
『消えろ……!!』
同じくシビアな事がやって来た、否、迫って来た。
攻撃だ。
ディアーナが持つ五メートル大の長砲は、打撃武器として間合い充分。こちらを潰さんと、頭上から振り下ろされてきたのだ。
重量にして数トンはある物体がこちらの灰髪に触れる、その直前。己は迫る砲を横へ打ち飛ばした。
『!?』
「――誇るがよい」
横へ吹っ飛ばされた長砲に釣られ、ディアーナがふらつく。それを見ながら、自分は肩を竦めるように回した。
「かつての余裕無き妾では、決してこの手を選びはしなかったぞ?
『邪神としてカッコ良く立ち振る舞う』のは、妾にとって枷であり絶対の誓約であるからな!」
『おのれ!』
次は地表を浚うような薙ぎの振りが来た。が、それにもバックハンドの拳を当てて、弾き返す。
『……!?』
「――と、いかんいかん」
ディアーナが、次は逆側に振り回されるのを見ながら、頭を振る。
「こういう“魅せる”ような戦い方は、もうせんでも――」
否。
これも違う。
なので、また首を振って、
「――あのね?」
言った。
●
ディアーナは自分という機体が、満足に動かせなくなっていることに気付いた。
……!?
否、自分の意識が現出してからずっと、この傷ついた体では動作に不備があることは解っていた。だが、そうではない。
目の前の女の声音が変わったと、そう感じたのは覚えている。つい先ほどの事だ。女に振り下ろした長砲が弾かれ、その勢いでむしろこちらが振り回されている最中に、
『……!?』
機体が硬直した。振り回されるバランスを取ることも出来ず、そのまま地面に転倒。すぐに起き上がったが、
『何故……!?』
機体は未だに固く硬直していた。腕や脚が、ぎこちなく動いていく。
何故。
その疑問はすぐに氷解した。
「本当は、見映えを一切無視して暴れ回る方が、私にとっては楽で圧倒的に強いの」
『き、さま……!』
女がこちらに近づくたびに、硬直が厳しくなっていくからだ。立っていることも難しく、ともすれば膝をついてしまいそうになるその重圧は、女から発せられているものだった。
禍々しいオーラが女の身を包んでいる。向こうも堂々とそれを纏い、こちらに歩いてくる。
刹那。そのオーラが、文字通り爆発的に増加した。
「――!!」
爆発や噴火、そう言える勢いだった。
それほどの勢いで噴き上がった禍々しいオーラは、女を中心に全方位へ向けて吹き荒んだ。
そんな奔流を間近で浴びたこちらは、膝をつくどころか堪えることも出来ずに吹き飛ばされていく。
『……!?』
波濤のように迫るオーラに押され、打撃され、砕かれ、大地の上を何度も転がっていった。
砂埃すら、オーラに圧されて立ち上がらなかった。己だけが騒がしく転がっている。そんな中で、何とか体勢を立て直そうと地面に手を着けば、
『な――』
己の前腕から先が、砕け散った。
吹き飛んだこちらまで一瞬で距離を詰めた女の、拳による一撃だった。
「――蹂躙、されなさい」
それが、最後に聞こえた言葉だった。
地面に倒れ伏した己が見上げる光景は、禍々しいオーラが天球図のように空を覆い、それを背景にこちらを見下ろす女だった。
戦意や反抗という意識が消え去る光景だった。そして、
「――!」
女が何かを吠えたのか、叫んだのか、それともただのオーラや風の唸りだったのか。
攻撃が、怒涛の勢いで押し寄せてきた。
成功
🔵🔵🔴
四王天・燦
バグってやがるくせに機敏に動きやがって
量産機ナメんなよ
定番の見切りでビットから逃れるけど被弾は免れないと思う
せめて致命的な部位に受けないようアークウィンドで逸らしておこう
逃げ足で動き回りおびき寄せながらカウントダウンを撒いたり、デストラップを岩や木々に仕掛けてディアーナを捕えるぜ
動きを多少なりとも封じたら
電磁ブレードな神鳴抜いて接近戦だ
殺戮剣舞発動…キャバリアへの反動お構いなし
電撃属性攻撃載せてナマスにしてやる
間合いを取りなおされたら足元のカウントダウンを踏んで爆破…爆発に乗ってダッシュで詰めて限界突破―殺戮剣舞第二段階解放
あと少しだけ動け!
ハンドル捥げたら筐体に腕突っ込んででも動かしてやらあ
●
地下の発電機を爆破した後、燦は戦闘に突入していた。
「くそ……、バグってやがるくせに機敏に動きやがって!」
『逃げ惑え! 逃げ惑え!』
ディアーナだ。猟兵達の事前の攻撃や妨害によって不完全な状態で現出したオブリビオンマシンは、身体から煙や火花を散らせており、意識も明らかに異常だった。
だが、そうとは思わせぬほど機敏な動作をしていた。それは機体も、そしてそこから飛び出すビットもだ。
『……!!』
数百のビットが、一斉に攻撃を寄こして来た。それは光剣による斬撃であり、光砲からの熱線だった。
「量産機ナメんなよ……!」
ディアーナ自身が不完全であればビットも不完全ではあったが、数が数だ。己は迫る光撃を何とか見切って、キャバリアに回避を命じていくが、どうしても被弾する部分は出てくる。
「……っ」
衝撃やダメージによって、低品質なキャバリアは簡単に傾いだ。早朝からぶっつけ本番で手に入れた操縦テクニックで、何とか機体を持ち堪えさせるが、こんな物を何発も食らうわけにはいかなかった。
「せめて致命的な部分は避けねえと……」
そう呟いてコックピットの中で取り出したのは、櫛のような歯を持った短剣だ。
アークウィンドと名付けたそれを軽く振うと、コックピットにいる己を発端にして、キャバリアの外で竜巻が広がった。
『……!?』
突如として生じた突風、それによって煽られたビットは正確な狙いをつけることが出来ず、こちらへまともな攻撃を与えられなくなった。
その後は簡単だった。
「どけ!」
包囲するように布陣していたビットの一角を強行突破し、そのまま逃げ続けたのだ。残されたビットは慌てて追いかけて来るが、竜巻自体はこのキャバリアが起点だ。
こちらの背を追うビットからすれば、正面から来る突風によって前進は阻まれ、攻撃だって逸らされる。
『森、獣、私は……!』
そしてそもそも、ビットに追撃を命じるディアーナ自身がビットから極端には離れられない。
ビットに追われるということは、ディアーナに追われるということであり、
『逃が――』
「はい、ごくろーさん」
こちらからすれば、相手に一歩を踏み込んできてくれればよかった。そうすれば、逃げながら設置したデストラップが作動するからだ。
『……!?』
森の木々や岩々に設置された頑丈なワイヤー、それにディアーナが捕らえられた。突然の事態に混乱したディアーナは藻掻くが、動けば動くほど雁字搦めにされていく。
『お、のれ……!』
と、そこで夜の戦場に光が増えた。
「おお……?」
爆発的な光は、ワイヤーに捕らえられたディアーナの推進器から発せられていた。捕えられたワイヤーから逃れようと、出力任せで強引に突破しようとしているのだ。
ワイヤーが軋みを挙げ、接続された木々や岩々が砕け始めていた。最早突破は目前だった。
しかし、
「――ゼロ!」
次の瞬間には、ディアーナの光が、別の光と影によって覆いつくされた。
『な……!?』
新たな光と影、光は炎であり、影は立ち上る煙だった。
爆発だ。
●
ディアーナは、突然の攻撃を全身で浴びた。
『……!』
ワイヤートラップで捕らえられ、満足に身動きできない状態での至近の爆発だ。殴り飛ばされるような一撃が、頭から爪先まで走っていった。装甲が砕けて、内部が激震する感覚がある。しかしワイヤーがあるので、吹き飛んでそのダメージを逃すことも出来ない。
結果、爆発の威力にワイヤーの方が先に耐えられなかった。
砕けたのだ。
『おの、れ……!』
戒めが解かれたことで、爆発のエネルギーのまま吹き飛ばされていった。幾度も、地面を転がっていく。
そうして転がった先で何とか体勢を立て直せば、周囲は暗闇だった。
爆発自体の煙と、爆発によって立ち上がった塵埃で、数メートル先も見えない。感覚器を作動させて何とか周囲を探ろうとしたが、
『――――』
その必要は無かった。暗闇の向こうに光が見えたからだ。
闇の中を突き抜けるようにして届く鋭さは、紅の色だった。
周囲を弾き飛ばす爆炎の赤ではなく、周囲を刺し貫く閃光の紅。
それが、塵埃をプラズマ化させている雷電の発光現象だと気付いた時にはもう、遅かった。
「――貰った!!」
煙から飛び出した紅い刃が、己の身体を断っていた。
●
神鳴という刀がある。それが放つ紅い雷電は今、キャバリアが持つ電磁ブレードに転化されていた。
「お……!」
そのキャバリアに搭乗する燦は、己の動作を止めなかった。電磁ブレードが神鳴となるならば、キャバリアの体は今や己の躯体と等しい。
「おぉ……!!」
操縦桿を握って、己の剣の動きをキャバリアに送っていく。そうすれば、全長数メートルの刃が敵の装甲を砕いて割って、確実にディアーナへダメージを与えていく。与えていっている。
だが、
「やっぱ反動があるか……!」
与えるダメージに比例して、こちらのキャバリアも傷ついていた。
四王殺人剣『殺戮剣舞』。
己が今繰り出している剣技の負荷が、高すぎるのだ。
生身で振るえば主観として、キャバリアの操縦として振ればいくらかの客観として、剣の負荷に体が悲鳴を挙げているのが解った。
「だけど、まだ……!」
『不愉、快だ……!!』
眼前、正しく刃届く位置にいるディアーナが、再び機体の推進器を光らせたのが見えた。こちらとの距離を離そうとしているのだ。
それを見て、己は躊躇しなかった。
「行くぜ!」
足元に残っていたカウントダウンをわざと踏んだのだ。
起爆する。
『な!?』
足裏の爆発によって脚部は甚大なダメージを得たが、しかし機体が爆風に乗った。
逃げるディアーナへ、弾丸のような勢いで追い縋ると、
「――殺戮剣舞・第二段階解放!」
言葉通りの事が、生じた。
己の“剣”が、さらに一段階跳ね上がったのだ。
何もかもが、スロー再生されたような視界だった。
●
「……!!」
あ、という一音を、ただ絶叫しながら、己は全力を果たしにいった。
まず爆風に乗って、一太刀を送った。そうすれば、早速腕が砕けた。
だが構わなかった。片腕がまだある。それだけで、戦闘を続行した。
曲がって歪む足で、踏み込んでいく。片腕一本で、敵の装甲を刺突。
敵の装甲が砕けた。踏み込んでいく。すると次は、操縦桿がもげた。
「――!!」
ハ、という一音を、ただ吐き捨てると、自分の腕を筐体に突っ込んだ。
紅の雷光が弾ける。機体の外と中で、紅の閃光が、光が噴き上がる。
あと少しだけだと、そう呟きながら、駆動させる。半壊した機体を。
腕が、足が、剣が、止まらなかった。紅の閃光が、月の下で迸った。
成功
🔵🔵🔴
ヴァレーリヤ・アルテミエヴァ
(アドリブ・連携歓迎)
強引にでも立て直してきましたわね…!
ですが顕現したのは完全とは言い難い状態。
塔へ攻撃した甲斐はあったということですわね…ご苦労でしたわ、オーファ。
『ミーシャ・タスカー』、右腕を『クルィク』に換装!一発かましに行きますわよ!
視界の死角になるであろう低空を保ち前へ<推力移動>。
威力、範囲、共に桁違いの砲撃…撃たれる前に接敵しますわよ!
<限界突破>で加速し敵機体に『クルィク』の杭を打ち込みますわ!
雷電は天にのみ存在するものと思って?天に乞うてのみ力は与えられるものと?
…否、ですわ!地にも其れは在り、わたくしの身を動かしている!
機体右腕に電流供給…打ち込んだ杭から流しこみますわ!
●
ヴァレーリヤは電波塔への攻撃が終わると、ミーシャ・タスカーを徐々に低速、そして低空へ運んでいった。
殲禍炎剣がありますものね……。
衛星からの砲撃は脅威であり、不必要に飛行していると危険だ。なので高空から離れたわけだったが、
『あ、嗚呼……!!』
地上にも脅威がいた。電波塔をオーバーシュートした自分からすれば、後方の位置だ。
宙でゆっくりとしたターンを叩き込みながら、振り返るように敵を確認した。月が降り立ったような姿のオブリビオンマシン、ディアーナがそこにいた。
「強引にでも立て直してきましたわね……!」
驚愕という感情が心中で甘く沸き上がる。自分を含めた猟兵達は先ほど、かなりの打撃を相手へ与えたはずだ。それは電波塔は勿論、オブリビオンマシン自体にもだ。
しかし敵はそれを受けてなお、天より顕現してきた。
「……だけど、完全、とは言い難い状態ですわね」
『う、ぅ……!』
銀のキャバリアは、武装も装甲も、そして意識も、一目で異常な状態だと解った。
「塔へ攻撃した甲斐はあったということですわね……。ご苦労でしたわ、オーファ」
『いえいえ~』
オーファからの気楽な返事を聞きながらも、己は警戒を怠らない。敵から視線を外さず、手捌きのみで機体に命令を入力すると、地上に着陸した。
そして、
「――!」
すぐにミーシャ・タスカーの右腕を、変形させた。
●
鉄の擦り合う音だったと、ディアーナはそう知覚した。
『何だ……!?』
己の聴覚素子を刺激した存在がいる。その正体を知るために、聞こえてきた方向へ己は振り向いた。
そこにいたのは、一機のキャバリアだった。
一体いつからそこにいたのか。月と狩猟の女神たる自分に気配を察知させぬなど、尋常ではない。と、そこまで考えて、
『――――』
違う。そんな否定の感情が、突然沸き上がった。
自分は、そうではないのだと。
もしそうであれば、こんなところにいるはずがないからだ。
『私は――』
絶叫しそうな気分だった。
が、
「……!」
新たに響いた音で、また意識を引き戻された。先ほどまでのが鉄の擦り合う音だったら、今のは鉄の合致する音だ。
正体不明のキャバリアが夜空に掲げた右腕からだった。
『……!?』
右腕が、一変していた。その部分を基部として、様々な部品がマウントされている。
そして、そこまでが己が理解できる全てだった。
後はもう、己の演算器が情報を処理できなくなった。
『あぁあああ……!!』
●
「!」
ヴァレーリヤは、ディアーナの長砲が輝きを増していくのを見た。
砲口はこちらに向けられており、その奥でエネルギーが加圧されていっている。紛うことなき砲撃態勢だった。
だが、
「やはり、武装も不完全ですわね」
機体と同じく、敵は武装も破損しているのだ。集めたそばからエネルギーが外に漏れだし、充填には通常より時間が必要なのが見て取れた。
「ならば、撃たれる前に……! ――クルィク!」
ミーシャ・タスカーの腕を、背中側へ振り抜くように動かした。その動きで右腕の武装、杭打機であるクルィクにてコッキングが生じ、換装が完全に済まされた。
加速用のガイドレール上に、杭が装填されたのだ。
「一発、かましに行きますわよ!」
そして一気に加速した。前方へ倒れ込むように、前傾姿勢で。
機体が生み出すスピードは脚部ではなく、全て加速器からだった。機体全ての加速器を全開にし、更に前傾姿勢となれば、最早機体と大地は並行となり、地表すれすれを低空飛行していく。
『っ……!?』
コッキングから一瞬でそんな姿勢になれば、虚を突かれた向こうはこちらを見失う。僅かな間であっても、ディアーナ自らが持つ長砲の発光と、低空飛行でぶち負けられた粉塵がそれを後押しした。
「やっ……!!」
間合いにまで飛び込むのは、それだけで充分だった。
低空飛行の勢いそのまま、クルィクをディアーナにぶち込んだ。そして、すかさずトリガーを引く。引いた。
「――!!」
炸裂。
杭が発射された衝撃で、周囲の砂塵が吹き飛ぶほどだった。大気を破るような爆音の後ろに、ディアーナの装甲が砕ける音が重奏した。
しかし、それで終わりではなかった。
『!?』
打ち込んだ姿勢のまま、ディアーナから離さなかったクルィクから、光が漏れた。
だが、それは次第に漏れるというより、周囲を刺し貫くほどの閃光となっていった。
鋭く、周囲を刺すように焼き焦がしていく光を何と言うか
『雷、だ、と……!?』
「あら? この力が天にのみ存在するものと思って?」
中央のクルィクを挟んで、ミーシャ・タスカーとディアーナの両方が、放電現象で激しく照らされていった。
『人間、如、きが……!』
「そして、天に乞うてのみ、力は与えられるものと?」
敵は、こう言いたいのだろう。
それは人の身に過ぎた力だ、と。
天空においてのみ許された力だ、と。
人間を超える神にのみ扱える力だ、と。
「否、ですわ! 地にも其れは在り、わたくしの身を動かしている!!」
果たして、己はその答えをディアーナと、そして夜空に示した。
『き、さ――』
撃ち込まれた杭を媒介に、膨大な電流をディアーナ内部へ放出したのだ。
夜の空に、稲妻が突き立った。
成功
🔵🔵🔴
バーン・マーディ
…哀れ
狂気を司る月女神が己が狂気に飲まれたか
何を願い
何を望んだかもわからぬか
其処までして…貴様らは何を求めた?
だが…それは叶わぬ
我はバーン・マーディ
貴様らの願いを蹂躙し踏みにじる悪…ヴィランである
【戦闘知識】
現在の神機の状態の把握
【オーラ防御】展開
UC発動
マーズよ…哀れな女神の悪夢を終わらせるとしよう
猟犬は【武器受け・カウンター】と破壊のオーラで迎撃
距離を詰め
【切り込み・二回攻撃・怪力・鎧砕き・鎧無視攻撃・生命力吸収・吸血】
軍神の剣で切り裂き接近戦に持ち込み猛攻を仕掛け
反撃を受けても尚エネルギーを吸収
月の女神による狂気を受けても変わらない
マーズもまた戦場の狂気を司る。武の狂気に到るとしよう
槐・白羅
…ディアーナか
あのサテライトキャノンは使えなくなってるのか?
とは言え油断なんぞできる相手じゃないよなモルス
ならば…挑むとするか
UC再度発動
ビット類からエネルギーを奪い
攻撃を【受け流し】
剣で【貫通攻撃】で破壊して減らしていくぞ
万が一の為にチャージは遅らせるとしよう
「哀れだなディアーナ…愚かな兄に無理やり呼ばれた結果がそれか…ヘカテイア同様の冥府の女神よ…そのまま冥府に帰してやる」
そして月の女神の狂気に晒されれば
全力で意識をディアーナのみに向け
狂気による殺戮衝動を全て向ける
防御を考えず死の運命を振るい傷付こうが構わずに狂ったように猛攻を仕掛け力尽きるまでエネルギーを奪い続ける
よし殺す殺す殺す殺す殺
●
月が昇った夜の下、バーンは新たな敵を見た。
『――裏切り、侮辱、傲慢……!!』
前方、そこで銀のキャバリアが暴れている。ロクシアスから一転した、新たなオブリビオンマシン。
その名前は、
『……ディアーナか』
モルスに乗った白羅が、マーズの隣で呟くように言った。今、自分達は共に立っているが、ディアーナは気にしていないのか、それとも気づいていないのか、依然として叫びを夜の空にぶち上げていた。
『嗚呼! 何たる醜い事か! 何たる不出来な事か!』
慟哭、絶叫、滂沱。
どの言葉も、目の前の女神には相応しいと思えた。そしてそれと同時、ある感情が沸き上がる。
……哀れ。狂気を司る月女神が、己が狂気に飲まれてたか。
傷ついた身体を振り回し、狂った思考が止められないのだ。単純で深く、重い感情が己の心中に呼び起こされた。
と、
『――見ろ』
隣の白羅が、モルスの身動きでディアーナのある武装を示した。
『あのサテライトキャノン、使えなくなっているのか?』
●
白羅の視線の先、ディアーナのサテライトキャノンは無傷では無かった。
否、
『損傷が激しいな。長砲だけに限った話ではないが』
バーンの言う通り、天上からの顕現に失敗した相手は、機体も思考も武装も、何もかもが不完全だった。
右腕のサテライトキャノンは光が断続的に明滅し、標準駆動するためのエネルギーすらも安定供給出来ていない。
「とは言え、油断なんぞできる相手じゃないよなモルス」
『…………』
沈黙、しかし意思のある呼応を、己はモルスから感じた。ならば、
「――挑むとするか」
『我らもだ、マーズ。……哀れな女神の悪夢を、終わらせるとしよう』
瞬間。己はバーンと共にユーべルコードを発動した。
ロクシアス戦と同じそれらは、モルスとマーズを一瞬にしてトップスピードへ運んでいく。
『!? な――』
時速にして八千キロメートル越え。音速超過の結果である二重の破裂音は、戦場全ての意識を殴りつけていく。というより、その時になってやっと、ディアーナは周囲にに気付いたようだった。
こちらに振り向く。しかし、
『……!?』
モルスとマーズの姿を見て一瞬、ディアーナが固まった。
そして、混乱の響きが強い声を挙げた。
『何故、ここに……!? ここは――、否! 否、否!!
――猟犬よ!!』
混乱の声は、次第に悲痛な叫びとなった。
体勢を立て直すディアーナの叫びに応じて、ビットが一斉に放たれる。不完全といえど、数は数百を超す光学兵器が、周囲一帯の空間にぶちまけられた。
『噛み砕け……!!』
女神の悲嘆に従って、光剣と光砲が一斉に自分達へ向かって来た。
しかし、自分達のユーべルコードの能力は速度上昇だけではない。
「モルスよ……、その権能を示せ……」
『マーズよ、破壊の神としての力を見せるが良い』
小さな声と、咆哮のような声が聞こえたような気がした。次の瞬間にモルスの身体からは光が溢れ、マーズの身体からはオーラが溢れていた。
ユーべルコードによる、エネルギーを奪う死の閃光と、万物を破壊するオーラだ。
それは、両者がユーべルコードを本格的に発動した証だった。
●
バーンは、無数と言っていい数の敵を前にしていた。小型兵器だ。ディアーナが猟犬と呼ぶそれらは、しかし今、その勢いを落としていた。
『モルスよ……!!』
白羅の声と共に輝きを増した閃光、それを浴びた猟犬達が、急激にエネルギーを失い、機能不全に陥っていくのだ。
光剣型の猟犬であれば光刃を維持できなくなり、光砲型の猟犬であれば射撃の充填が不可能となっていく。
出力が足りず、猟犬が次々に震えて、揺れていった。
そんな不安定な敵らは、このままでは墜落すると気付き、残存エネルギーを使って突撃してくるが、
「脆い」
マーズとモルスは共に剣で突撃を受け流し、そのまま切り捨てた。そして、
「おぉ……!!」
切り捨て続けていった。
マーズはオーラを纏い、モルスは光を纏いながらだ。
「……!!」
『――!!』
マーズが大剣を振れば、周囲から猟犬が砕いて吹き飛ばされ、そんな吹き飛んだ先でモルスが、全ての猟犬を切り裂いていく。
そして、その頃にはもう飛翔を再開しており、低空と言えど周囲を縦横無尽に駆けている。
駆ける最中、マーズとモルスは時に接近することもあり、互いの能力は干渉しあったが、その結果が夜の空に彩りを置いていった。
万物を破壊するオーラは、死の閃光すら砕き、エネルギーを奪う閃光は、オーラすらも奪っていくのだ。
オーラと光、互いが干渉し合って極光のような発光現象を残す度、猟犬らの破砕と爆発という、鉄火の華が開いていった。
黒と赤の華の中心で、ディアーナが嘆く。
『何故、何故、私は……!!』
「何を願い、何を望んだかも解らぬか。其処までして……貴様らは何を求めた?」
『――貴様、“ら”……?』
瞬間、ディアーナが自分自身の足元を見た。
瓦礫の中に混じってそこにあるのは、ロクシアスの装甲片だ。
たった数個の欠片だが、未だに残っていた。
『――兄上は何処!?』
叫びだった。
己は、剣を構えた。
『――兄上に何をした!!』
絶叫だった。
猟犬が、飛来した。
だが、死の閃光によってエネルギーを、破壊のオーラによって数を。もう、ごく僅かとなった猟犬達だった。
マーズとモルスそれぞれで、光剣が三振り、光砲が五機。たったそれだけの数が、最後の突撃を敢行した。
「――だが、それは叶わぬ」
全ての猟犬が、互いの剣に散らされた。
『……哀れだなディアーナ。愚かな兄に無理やり呼ばれた結果がそれか……』
静寂を得た戦場に、白羅の声が小さく響いた。
●
月光。それを浴びながらも、しかし帯びもする輝きが、戦場にあった。
夜空。それを裂きながらも、しかし沈みもする輝きを、何と言うのか。
剣だ。
『――――』
モルスとバーンが、それを構えていた。
魔剣と大剣であった。
『我はバーン・マーディ。貴様らの願いを蹂躙し、踏みにじる悪……、ヴィランである』
『ヘカテイア同様の冥府の女神よ……。そのまま冥府に帰してやる』
両機の中で男の声が響き、戦場の静寂はそれきり破られた。
『……!!』
二機が己の出力を最大に、ディアーナへ突撃したからだ。
そして、
『あぁ、ぁあああああ――!!』
彼女も、絶叫したからだ。
三ツ星の愛は撃てず、猟犬の鹿狩りも最早存在しない。最後の力を振り絞って、まるで月光のような光を全身から放とうとしたが、しかしそれも叶わなかった。
『――――』
突撃したマーズの一刀が、ディアーナを袈裟斬りに断ったからだ。
傷ついた装甲は、飴細工のように砕けていった。内部の機構も露出し、無人のコックピットも軍神の剣が砕き飛ばしていく。
傷口と言うには砕けの色が強いそこから、マーズはエネルギーを吸い、
『……!!』
返す刀でもう一刀を振るった。
逆袈裟が、ディアーナの上半身と下半身を完全に断った。
『お、のれ……!』
怪力によって断ち割られたディアーナだったが、吹き飛んでいく勢いを利用して、右腕で掴んでいた長砲をスイング。
棍棒のように振るわれた砲がマーズを強打するが、マーズは怯まず、エネルギーの吸収を続行していった。そのため、吹き飛んでいくはずだったディアーナは、マーズに釘付けとなり、そして、
『――終わりだ』
『あ――』
モルスの剣、“死の運命”がディアーナに突き込まれた。
ディアーナの人格データ、ディアーナがディアーナたるデータが搭載されている部分へとだ。
「あ、ああ――」
突き込まれた剣先が押され、装甲を割り開き、ディアーナを完全に貫いていった。
それで、終わりだった。
ディアーナは完全に沈黙し、
『――――』
天上の満月に縫い留めるように、“死の運命”が掲げられていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴