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迷魂の幽境

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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●首無し妖狐と怨霊姫
 紅い鳥居は崩れ、その彩は霞んでいた。
 境内に続いていた石畳の道も今はただの石ころが転がった悪路。
 稲荷大神様の御使いとされる狐像も首が捥がれ、立派だった尾も崩れている。
 多くの参拝者が訪れて栄えていた時代も今は昔。
 針葉樹の森の奥、その神社は完全に朽ちる時を待つのみ。

 しかし現在、社はオブリビオンの巣窟となっていた。
 内部だけは美しく整えられた本殿の中央、其処に座るのは黒檀めいた長い髪の少女。纏う着物は華美そのものであり、一国の姫のようにも見えた。
「くく……此処にいた狐も従えさせた。これでこの社はわらわのものよ」
 妖しく笑う少女の傍らには首を捥がれた狐の霊が控えている。頭部がないので感情を窺い知ることはできないが、其処には憎しみが溢れているように感じられた。
 だが、怨霊を操る力を持つ少女には逆らえないらしい。
「憎いか? 口惜しいか? しかし、お主はわらわの僕。しっかり働いてもらうぞ」
 狐霊を見遣った怨霊姫は双眸を細める。
 そして、周囲の針葉樹の森を見遣った姫は口許を緩めた。
「森に放った魑魅魍魎共も騒いでおる。そろそろ近くの村を焼くのも良いか。愚民共の悲鳴を聞くのは何よりの愉悦ゆえ……ふふ……」

●迷える魂に終幕を
 或る藩の近く、針葉樹の森の奥には寂れた稲荷神社があるらしい。
 稲荷神社としてかつては参拝者も多く訪れていたらしいが、かなり昔に継ぐ者がいなくなった今は見る影もない。廃神社となっている其処にわざわざ出向く者も居らず、既に忘れ去られた存在だった。
「しかしのう、其処にオブリビオンが巣食っているのじゃ」
 グリモアを手にした鴛海・エチカ(ユークリッド・f02721)は肩を竦める。
 敵の名は怨霊姫。
 その名の通り怨霊を操る力に長けている姫だ。彼女は骸の海から蘇った過去の存在。件の廃神社を新たな城とした彼女は神社の狐像に宿っていた狐の魂を下僕として従えた。
 それだけではない。周囲の森に元から従えていた鬼火や人魂を放ってテリトリーを広げていっている。
「このまま放置しておくと近隣の村や町に被害が出ると予知が出た。そうなる前に森の奥の稲荷神社に向かってオブリビオンを退治して欲しいのじゃ」
 エチカは猟兵達を見つめ、頼む、と真剣に告げた。

「先ずは森を抜けねば話にならぬ。魑魅魍魎を蹴散らして奥に進むのじゃ!」
 森に居るのは煌々と燃える赤い鬼火や、寂しげに揺れる青い人魂。
 どれもが一撃で倒れるような弱いものだが、侵入者を排除せんとして襲い掛かって来るだろう。まともに相手取るか、何とかして切り抜けるかは向かった者の判断次第。
 また、境内に入ると狐の霊が襲い掛かってくると予想される。
「どうやら狐は何体もおるようじゃ。何やら憎しみに満ちているようじゃが、往く手を阻むならば倒すしかあるまい」
 狐達を倒すことが叶えば、後は首魁である怨霊姫を倒すだけ。
 しかし相手は社の狐を従えるほどの力を持つ死霊使い。戦いでもかつての配下を呼び出してくると考えられる為、油断しないで欲しいとエチカは告げる。
 魑魅魍魎が跋扈する土地へ送ることについて心配をしていないと言えば嘘になるが、戦いに赴く猟兵達に信頼の気持ちを抱いていることも確かだ。少女は真っ直ぐな眼差しを仲間に向け、激励の言葉を紡ぐ。
「では、お主達。無事に帰ってくることを期待しておるぞ!」
 よろしく頼む、と改めて告げたエチカはグリモアを掲げた。
 そして――侍世界への扉がひらかれる。


犬塚ひなこ
 今回の世界は『サムライエンパイア』
 針葉樹の森の奥、廃神社を拠点とするオブリビオンを退治することが目的となります。

●第一章
 赤い鬼火や青い人魂めいた魑魅魍魎が彷徨う森を如何にして抜けるかの冒険章です。魑魅魍魎は弱く、一撃で倒せる程度ですが群がられると厄介です。
 各フラグメントは一例なので自由な発想で挑戦してみてください。

●第二章
 集団戦『憎しみに濡れた妖狐』との戦闘。
 かつては神社に祀られていたものでしたが、オブリビオンによって首を千切られて魂を分けられ、社を護る配下として使役されています。

●第三章
 ボス戦『怨霊姫』との戦闘。
 かつての家臣たちを怨霊として従える死霊遣いの姫のオブリビオン。自分以外の人の命を何とも思っていない無慈悲かつ無邪気な姫。
 姫を倒すと森の人魂は消え、狐の霊も解放されます。

 どの章も成功ラインに達した時点で次の章に進む予定です。
 そのためプレイングをお返ししてしまう可能性が高いのですが、何卒ご了承ください。二章、三章からのご参加も大歓迎です!
 何れの場合も格好良い戦闘描写やその方らしい描写ができるよう注力する次第です。
 どうぞよろしくお願い致します。
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第1章 冒険 『魑魅魍魎の森』

POW   :    危機的状況での食いしばり、体力を問われるモノ等

SPD   :    連続戦闘や森への迅速な侵入、他速度を問われる行動

WIZ   :    多数の敵を避ける、罠を仕掛けて防備を厚くする等

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ミルフィ・リンドブラッド
【朧月】
…怨霊姫を倒すにしてもまずは森を抜けねぇといけねぇです。


「…というかイヴなんでここに居やがるです?ふぅ…。偶然を装ってまで付いてくるとは…です(やれやれのポーズ)」

POW
とりあえずまっすぐ突き進んで行けば目的地にたどり着けるはずだぞ、です。『怪力』を脚力に変えて一気に駆け抜けてやる、です。隣で騒いでいるヤツがいますがフィーは気にしねぇのです。何も聞こえねぇ、です。
人魂が寄ってきたら「天竜砕き」でぶっ飛ばしてやるぞです。

数が多いので囲まれたら【血滴る悪夢の槍】で『串刺し』にしてやるです。

「アー、キノホウニ テキガイルノデスー」といいつつイヴが登っている木をへし折ってやるです


イヴ・イルシオン
【朧月】POW

「あぁん? 何でフィーが同じ依頼受けてやがるのですか?」
「何故同じ方向に走りやがるのですか! さっさと離れやがるです、このっこのっ!」(肩ぶつけ合い

チッ、私からどくのは非常に腹立つのですが私は賢いので『魔導脚』で【迷彩、ダッシュ、ジャンプ】を使い樹上移動するです
『気紛れ精霊のスローイングナイフ』も投げて敵を攻撃です

「おっと手が滑ったのです☆」

フィーの近くにいる際どい所の敵も狙うです
フィーを囮にしつつ敵が大量に群がって来たのなら地上に降りて【無明刻命斬】で周囲の木々ごと敵を薙ぎ払うのです

【動物と話す】も利用して目指すべき場所も探るのです

「動物は素直なのです、そこのフィーと違って」



●ちみっこバトル
 此処は色濃い死の気配が満ちる森。
 針葉樹が立ち並ぶその奥には寂れた神社があるという。其処に巣食う悪しきオブリビオンを思いながら、ミルフィ・リンドブラッド(ちみっこい力持ち・f07740)は一歩を踏み出した。
「……怨霊姫を倒すにしてもまずは森を抜けねぇといけねぇです」
 樹々の向こうには揺らめく何か――魑魅魍魎の気配がする。
 だが、ミルフィはふと立ち止まった。
「というかイヴなんでここに居やがるです?」
 訝しげな視線を向けた先にはイヴ・イルシオン(狂気の殺戮人形・f01033)の姿がある。イヴもまた怪訝な表情を浮かべて言い返した。
「何でフィーが同じ依頼受けてやがるのですか?」
「ふぅ……。偶然を装ってまで付いてくるとは……です」
 やれやれ、と肩を竦めたミルフィはわざとらしく両手を軽く広げてみせる。するとイヴがそんなことはないとばかりに駆け出した。
 だが、ミルフィとイヴが目指す場所は同じ。自然と向かう方角も同じになる。
「何故同じ方向に走りやがるのですか! さっさと離れやがるです、このっこのっ!」
「目的地に真っ直ぐ進んでいるだけだぞ、です」
 肩をぶつけ合う勢いで小競り合う二人。
 或る意味で微笑ましくもある遣り取りが繰り広げられる中、彼女達の前を遮るようにして幾つもの人魂が現れた。
 チッ、と舌打ちをしたイヴは魔導脚に力を込めて跳躍する。
 空気の壁を作り出して樹上に移動したイヴに対し、ミルフィは地上で敵を相手取った。自身が装備する巨大槌、天竜砕きを振り回せば人魂は見る間に弾け飛ぶ。
 同様に樹上のイヴも気紛れ精霊の投げナイフを投擲して迫り来る敵を穿った。
 しかし、人魂は次々と集まってくる。
 イヴはミルフィの近くに居る敵に目を向け、薄く双眸を細めた。
「おっと手が滑ったのです☆」
 そんなことを言いながら、イヴはミルフィに当たるかという間際にナイフを投げる。結果、それは人魂を貫いたのだがミルフィも負けてはいなかった。
「アー、キノホウニ テキガイルノデスー」
 棒読み感満載な言葉を落としつつ、天竜砕きでイヴのいる樹を薙ぎ倒す。
 音を立てて倒れる樹から降りたイヴは舌打ちをもう一度してから、群がり来る人魂を睨み付けた。そして――。
「死の先へとひた走りやがれです――無明刻命斬!!」
「血よ我に迫る敵を貫け」
 言葉と共に戦場に迸る黒稲妻。更には血滴る悪夢の槍が迸り、周囲の敵は一瞬で蹴散らされてゆく。
 周囲の樹ごと敵を穿ったイヴはこれでは森の動物達も逃げてしまっただろうと感じ、傍らの少女をジト目で見遣った。
「人魂の方が扱いやすいのです。そこのフィーと違って」
「はぁ……煩いヤツがいますがフィーは気にしねぇのです。何も聞こえねぇ、です」
「あぁん?」
 満ちる空気はまさに一触即発。
 しかし、そんな少女達の元へ更なる鬼火が迫ってきている。
 それに目的地までもまだ少し遠い。ということはつまり――どうやらこの騒がしさはまだ暫く続いていくようだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シュシュ・シュエット
きつねさん……きっと、寂しい想いをされていたに違いありませんっ!
油揚げは忘れずに持っていきましょうっ。

森を安全に通るため、ここは【縁の下の力持ち】のネズミさんたちにお手伝いしてもらいますっ!
草むらの陰から*目立たないようにネズミさんたちを呼び出したら、こそこそーっとあちこちへ散らばってもらい、
チュウチュウ鳴いたり、音を立てたりして、鬼火さんや人魂さんたちの注意を引いてもらいましょう。

皆さんがふわふわと誘われていったら、わたしも*覚悟をきめて*忍び足……!
*地形の利用で陰から陰へ見つからないよう、*野生の勘でこっそりと通り抜けちゃいましょうっ。
見つかったら進路上の敵さんとだけ戦い、振り切ります。


ヴァーリャ・スネシュコヴァ
俺はどうも火が苦手だからな……一つだけならいいが囲まれるのはとても厄介だな?

というわけで俺は【ジャンプ】と【ダッシュ】を駆使して、木の枝から木の枝へと飛び移って素早く森を抜けようと思うぞ! 木と木の間が空きすぎてジャンプで飛び移れない場合は、『スカイステッパー』で飛距離を伸ばす。
自分の脚力を最大限に生かして、素早く飛び乗ってはまた飛び、また飛び移って……。
敵が向かってきても振り切るつもりだが、目の前に立ちふさがって避けれない事態になれば、氷の【属性攻撃】で対処しよう!

ふわふわと浮いているが、この俺には到底追いつけまい!
おっそいぞ! お先だ!

(アドリブや他PCさんとの絡み大歓迎です)



●共に駆ける先
 揺らめく鬼火。彷徨う人魂。
 青と赤の焔めいたそれらを樹の影から見つめるのはヴァーリャ・スネシュコヴァ(一片氷心・f01757)とシュシュ・シュエット(ガラスの靴・f02357)のふたり。
 正面突破も悪くないが、この先に控えている怨霊姫達との戦いを思えば、ひっそりと森を抜ける方がいいだろう。少女達はそう考え、敵の様子を窺っていた。
「俺はどうも火が苦手だからな……」
 ひとつだけならいいが、あの数に囲まれるのはとても厄介だ。そう零したヴァーリャの傍ら、シュシュは良い考えがあると告げる。
「わたしがネズミさんたちにお願いして注意を引いて貰います」
 お願い、とシュシュが願い込めると縁の下の力持ち――即ち、召喚された沢山のネズミたちが四方八方へと駆けていった。
 チュウチュウと鳴き、人魂達の注意を引いた今がチャンス。
「頼むぞ、ネズミたち!」
 ヴァーリャは彼らに頑張れと告げてからシュシュの手を引く。しっかり掴まっていろ、と告げた彼女はシュシュと共に樹の上へと跳躍した。
 わ、と最初こそ驚いた声を出してしまったシュシュだが、自分とて猟兵。空を駆けるヴァーリャの動きに合わせて樹から樹へと飛び移り、敵を何とか飛び越えてゆく。
「すごいですっ! ええと……」
「俺はヴァーリャだ。そっちは?」
「シュシュです。頑張りましょうね、ヴァーリャさん」
 空を翔けるようにして移動する中、ふたりは名前を告げあった。ひとりでの突破は難しくても互いに協力しあえば困難も文字通りひとっとび。
 ネズミが足止めをしているが、此方を追ってくる鬼火も居た。だが、ヴァーリャ達はそれよりも速く樹の上を翔けていく。
「ふわふわと浮いているが、この俺達には到底追いつけまい!」
「ヴァーリャさん、あっちにも敵がっ!」
「分かったのだ。俺達の邪魔をする心算なら、おっそいぞ! お先だ!」
 勘を働かせたシュシュが行先の障害を示すと、ヴァーリャは頷いて進路を変える。この速さならばきっとどの鬼火や人魂にも捕捉されることはないだろう。
 間もなく社に辿り着くと感じ、シュシュは先を思う。
 怨霊姫もだが、先ずは本殿を守らされている狐の霊とも戦わなくてはならない。
「きつねさん……きっと、寂しい想いをされていたに違いありませんっ! 油揚げは忘れずに持ってきましたっ」
「油揚げか、良いな! 戦いが終わったら供えてやろう」
 シュシュがぐっと掌を握り締めると、ヴァーリャは快く笑んだ。
 その為には戦いを乗り越えて勝利を掴まなければならない。少女達はそっと頷きあい、戦場となる社を目指してゆく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

傀童・沙華
ふむ
とりあえず、行動的にはPOWかの?
ひたすら殴り続けたらいいわけじゃな
わらわ好みの依頼じゃ
とくと愉しませてもらうのじゃ

せっかくじゃ
技能の『誘惑』で、魑魅魍魎を呼び寄せようかの
率先して襲いかかってくれるならば、それに越したことはないが、『殺気』やら『恐怖を与える』で怯えられても面白くないからのぅ

「カカッ!ほれほれ。わらわはまだまだ元気じゃぞ?」

万が一、逃げようとした敵がおれば、そやつを捕まえてやらんとな

「退くなどといった、無粋なことをするでない。どちらかが死ぬまでやりあうのが流儀じゃろう」

この先の事を考えれば、こやつらはつまみのようなものじゃ
酒でも呑みながら、ゆるりと愉しませてもらうとしようぞ



●震える魂
 針葉樹が風に揺れる中、鬼火達は彷徨う。
 その光景を目を細めて眺め、傀童・沙華(鬼哭童子・f12553)は口許を緩めた。
「ふむ、ひたすら殴り続ければいいわけじゃな」
 自分好みの状況だと感じて沙華は敵を見遣る。いつしか周囲を数体の鬼火が囲んでいたが、裡に宿る疼きを沈めるにはまだ足りぬように思えた。
「とくと愉しませてもらうのじゃ」
 笑んだまま沙華が殺気を放てば鬼火達は慄いたかのように震える。
 されど、火は此方を排除せんとして襲い来た。それらを緋色の瞳で捉えた沙華は鬼火の軌道から身を逸らし、拳を突き放つ。
 一瞬にして鬼火が揺らぎ、掻き消えた。
「カカッ! ほれほれ。わらわはまだまだ元気じゃぞ?」
 余裕が滲む視線を向け、沙華は鬼火達を手招く。万が一、敵が逃走を計ったとしても簡単に逃したりなどしない。この手で掴み、握り潰す。そう示すように掌を上向きにした沙華はそのまま拳を握った。
 その間にも殺気は鬼火達を揺らがせ、恐怖を与える。
「おやおや。退くなどといった、無粋なことをするでない。どちらかが死ぬまでやりあうのが流儀じゃろう」
 それゆえに全力を振るう。沙華の一閃は次々と鬼火を散らし、その数が見る間に減っていく。だが、沙華は敢えて敵を誘うように自分の存在を誇示してみせた。
 気配を察した新たな鬼火達が彼女に襲い来る。されどこの先の事を考えれば、彼らなどつまみのようなもの。
「酒でも呑みながら、ゆるりと愉しませてもらうとしようぞ」
 そして――片手に盃を持ったまま、沙華は双眸を鋭く細めた。
 幾体もの魂が完膚なきまでに蹴散らされるのまでそれほど時間はかからないだろう。そう感じさせる勢いと緩やかな気迫が彼女にはあった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヒビキ・イーンヴァル
よし、怨霊退治と洒落込むか
この森を抜けるのは、何となく肝試し的なものも感じるが
ま、正体が分かってれば怖い敵でもねぇな

さて、どうするかな
森を焼くのは流石に物騒だからやめておくとして
そこら辺の鬼火や人魂を、どこか一つに集めたいな
一々相手するのも面倒だ
杖の先に魔法で光を灯して振ってみるかね
誘導灯みたいに
森の中を迷わないように、鬼火たちを誘いつつ移動
方向感覚を見失わないよう、かつ囲まれないように気を付けよう
適度に集まったら、そこに向かってウィザード・ミサイルをぶつけておく

上手くいったら、さっさとこんなしけた森からはおさらばしよう
森の中が薄暗くても大丈夫なように、杖の明かりはそのままにしておく



●灯の示す先へ
 森の奥には怨霊を操る姫。
 そして本殿前には狐の霊。更にその前、今居る森には魑魅魍魎。
 ヒビキ・イーンヴァル(蒼焔の紡ぎ手・f02482)はこの先に待ち受ける者達に想像を巡らせ、森を見渡す。
「よし、怨霊退治と洒落込むか」
 この森を抜けるのは何となく肝試し的なものを感じる。だが、天蒼の魔杖に灯を燈したヒビキは周囲の気配を探った。
「ま、正体が分かってれば怖い敵でもねぇな」
 敵は霊魂ではあるが、その正体はオブリビオンの配下でもある。
 弱いとされるそれらを纏めて一網打尽にすれば手っ取り早い。そう感じていたヒビキは徐々に敵が自分の方に集ってきていることを感じていた。
 元から人の気配を察知すれば寄ってくる者達だ。誘導灯のように杖を振るヒビキに鬼火達が引き寄せられるのも道理。
 本当ならば森ごと焼いてしまえば一番早いのだが、樹々に罪はない。
 流石に物騒だしな、と呟いたヒビキは集って来た鬼火の数を数えた。
「八、九、十……こんなものか」
 よし、と顔をあげたヒビキは杖の先を敵に差し向ける。
 そして、次の瞬間。
 勢いよく解き放たれた炎の魔力矢が次々と鬼火を貫き、炎を消し飛ばしていった。敵もヒビキに迫り来るがその前に炎矢が相手を射抜く。
「さっさとこんなしけた森からはおさらばしよう」
 瞬く間に敵を散らしたヒビキは件の社があるという先を目指す。
 揺れる杖の明かりは煌々と、おどろおどろしい森の道を照らしてゆく。

成功 🔵​🔵​🔴​

木霊・ウタ
心情
未来を過去に侵されてたまるかよ
成仏させて海に還らせてやるのも
俺達猟兵の役目だよな

手段
POW
神社へ向かって一直線に歩んでいく

敢えてWウィンドを静かに爪弾きながら進むぜ
鬼火ともを呼び寄せて序でに成仏させてやるために
;コミュ&パフォ&演奏&歌唱&手をつなぐ&鼓舞&勇気&優しさ&破魔

葬送のメロディで安らかに滅するぜ

お前らも寂しいだろ?
怨霊姫とやらにいつまでも仕えている必要はないぜ
もう大丈夫だ
安心してゆっくり休むといいぜ

もしデカイ敵が出てきたら炎纏う焔摩天でぶっ飛ばすぜ
:鎧砕き&薙ぎ払い&属性攻撃&破魔&UC



●ただ風は吹く
 爪弾く音色が針葉樹の森に響き、魑魅魍魎を引き付ける。
 木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は周囲に揺らぐ鬼火を見遣り、音色を奏でていた手を止めた。
「未来を過去に侵されてたまるかよ」
 思うのはこの魍魎達を従えている怨霊の姫のこと。
 この魂達は今でこそこうして襲い来る存在ではあるが、元は彷徨える霊でしかなかったはず。成仏させて海に還らせてやるのもきっと自分達、猟兵の役目に違いない。
 そう考えたウタは敢えて敵を引き付けていた。
「葬送のメロディで安らかに滅するぜ」
 そして、もう一度奏でた旋律がウタ自身に力を与える。
 纏わりつくように迫る敵を見渡し、ウタは焔摩天を構えた。
「お前らも寂しいだろ?」
 怨霊姫とやらにいつまでも仕えている必要はない。死して尚もこの世に留まることは苦しみでしかないだろう。
 刃を振るい、炎を散らしたウタは一体ずつ確実に動きを止めていく。
「もう大丈夫だ。安心してゆっくり休むといいぜ」
 振り抜く軌跡を辿り、成すのは断罪の炎。
 燃え尽きるようにして地に落ちる鬼火を見下ろし、ウタは静かに双眸を細めた。
 そして、顔をあげた彼が見つめるのは森の奥の社。
 向かう先には数多のオブリビオンが待ち受けている。まだ終わらないと心を律し、ウタは真っ直ぐに社へと向かっていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

逢坂・宵
わぁ、鬼火や人魂ですか?
とってもわくわくしますねぇ
とにかくこの森を抜ければ良いと。
対応力が試されるわけですね

僕は精霊に聞いて、敵のいそうな方角や
なんらかの魔法的な気配を感じる方向を教えてもらい
情報を総合して判断して、できうる限りそれらの方角を避けながら向かいましょう
猟兵の仲間たちと連携して行動できればベストですね

しかし中には予期できない遭遇や
避けられない戦闘になることもあるでしょう
そんなときは、『属性攻撃』『2回攻撃』『高速詠唱』『全力魔法』を用いて
『天航アストロゲーション』で攻撃します
できるだけ戦闘が長引くのは避けたいので
逃げられそうなものなら抜け出したいものですが、さて


冴島・類
ひとに忘れ去られた社は、朽ちていく
さみしい、かなしいことだけど

でも、静かにそこに住まい眠る魂や
周りの人里を襲うなんて、させてたまるか…だよ

【SPD】
森に入り次第
多数との連戦を避けるため
木々の影を利用しながら
なるべく見つからぬよう素早く移動し
複数敵に発見されそうな際は
即座に錬成カミヤドリにて複製した
鏡を念力で操り自身のいる場からは離して飛来させ
気を引いて隙を作った瞬間に
即座に薙刀にて薙ぎ払い、体勢崩し撃破し
また森の影利用し移動

森に満ちる空気と炎に、目を伏せ

震える空気…怨み憎しみに染まって
堕とされたら、いけない

はやく、はやく行かないと

君達が、同じになったら
祈りも繋ぎもことほぎも
この森の記憶ごと



●魂の行方
 ――ひとに忘れ去られた社は、朽ちていく。
「……さみしい、かなしいことだけど」
 冴島・類(公孫樹・f13398)は森の奥に佇む社を思い、往く先を見つめる。十指に繋いだ赤い絡繰糸が静かな風を受けて揺れる様は森の物寂しさを感じさせた。
「でも、静かに住まい眠る魂や周りの人里を襲うなんて、させてたまるか……だよ」
 静かな思いを抱いた類は息を潜め、樹の影に隠れる。
 同じ頃、逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)も森に踏み入っていた。炎の形を成した魂を思う宵の胸に浮かぶのは、不思議とわくわくした気持ち。
「とにかくこの森を抜ければ良いと」
 対応力が試されるわけだと察したは辺りを見回してみる。
 森の入口は静かだが、奥に進めば否応なしに敵が襲ってくるだろう。
 何とかして避けていきたいと考えた宵は精霊に何か分からないか問い掛ける。だが、精霊から明確な答えは返って来なかった。
 未知の場所では自分の目と感覚に頼る方が良いだろう。
 幸いにも森の視界はひらけている。向こうも此方を見つけやすいということでもあるが、上手くやれば敵と戦わずやり過ごすことも可能だ。
 しかし、宵が精霊に問いかけている間に数体の鬼火が此方の気配に気が付いてしまっていたらしい。何処に邪魔者がいるのだと探すようにして揺らめくそれらは徐々に近付いてきている。
(「これでは見つかってしまいます。かくなるうえは……」)
 戦いも致し方ないかと宵が身構えた、刹那。
「武器を下ろして。こっちへ」
 類の囁く声が宵の耳に届き、呼ばれた方向とは別に錬成された器物の鏡が飛来していった。わざと目立つように解き放たれた鏡達は数体の鬼火の気を引く。
 そちらの方に引き寄せられていった鬼火を見送り、類は宵を樹の影へ手招いた。
「向こうにかなりの集団がいるんだ。派手な戦いは避けた方が良いと思うよ」
「なるほど。ありがとうございます」
 類の手引きに礼を告げ、宵は示された方向を見遣る。
 其処には言葉通りの鬼火の大群が集っていた。相手取っても構わないが、まだ戦いが続くと解っている以上は無用な戦いは避けた方が良い。
 このまま隠れながら進むのが良いと察し、宵は類についていくことにした。
 息を潜め、気配を消し、敵集団の傍をそっと通り抜ける。
 宵は類がいなければ囲まれていたと感じて、信頼の眼差しを向けた。
 だが、集団を抜けた先――其処からはぐれたらしき人魂がゆらりとふたりの目の前に現れる。敵は一体のみ。即座に視線を交わしあった彼らはそれを屠ることを決めた。
 星の魔杖を構えた宵は高速詠唱からの全力魔法を紡ぐ。
 杖先が差し向けられた瞬間、空から招来した隕石が敵を穿った。揺らいだ火の傍へと駆けた類は音もなく薙刀を振るい、人魂を真っ二つに切り裂いて地に落とす。
「さて、今の内に駆け抜けてしまいましょう」
 宵が誘う声に類は頷きを返した。
 駆ける彼の後に続きながら、類は森に満ちる空気と炎に目を伏せる。
 震える空気。怨みや憎しみに染まったそれは骸の海から蘇ったもの。
「はやく、はやく行かないと」
 類達は先を急ぐ。
 堕とされたら、いけない。彼らが、更に悪しきものと同じになったら――。
 きっと祈りも繋ぎもことほぎもこの森の記憶ごと、消えてしまうから。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

メルヴァ・ローズリオ
魑魅魍魎、か………まあ、自分もそんなもんだよねー、ダンピールだし。

従属の数の多さを活かして効率良く処理しましょう。蝙蝠達に呪詛の力を乗せて飛散させて殲滅、自分はダーインスレイヴを構えてダッシュで駆け抜ける。蝙蝠で捌けなくなったら、剣身で無理矢理叩き斬って進む。生命力吸収で糧にしてしまっても良いかも?

余裕があったら他の猟兵さん達とも協力。蝙蝠による目眩しで森を抜けるのを手助け。

魂となって現れるってことは、何らかの感情があるって事でしょ?なら、その心も記憶も、私の今日のお夕飯ね。

アドリブ・他の猟兵との協力大歓迎


雛月・朔
ヤドリガミの肉体で参加
主武器:薙刀、くない、念動力、【WIZ判定】
UC:巫覡載霊の舞
アドリブ&他PCとの絡み歓迎
【心情】
事情によりなにかが廃れるのは仕方ないことですが、オブリビオンの拠点となってしまったのは見過ごせませんね。
人々に被害が出る前に討伐せねば。
【行動】
最初に森にいる怨霊がどのようなものか確認。
その後、こちらも怨霊のふりをしながら森を通過。
【念動力】で体を浮かせ、【変装】【武器改造】【防具改造】を駆使し外見や色合いだけでも似せる。
【呪詛】を発しながらにすればそれっぽく見えるかな…?
偽物とバレたら【ダッシュ】と【地形の利用】と【呪詛耐性】と【破魔】で強行突破。迎撃は念動力で。



●迎撃と突破
「魑魅魍魎、か………」
 周囲に現れた幾つもの鬼火を見渡し、メルヴァ・ローズリオ(強き意志を喰らう弱き捕食者・f12398)は肩を竦めた。
 言葉にはしないでも、自分もそんなものなのだろうと胸中で独り言ちたメルヴァは隣に立つ雛月・朔(たんすのおばけ・f01179)に視線を向ける。
「事情によりなにかが廃れるのは仕方ないことですが、オブリビオンの拠点となってしまったのは見過ごせませんね」
 朔とメルヴァは今、数十体もいる鬼火に囲まれていた。
 自然と協力しあう形で布陣したふたりは目の前の敵を蹴散らそうと決めている。朱殷の片手剣で以て鬼火を斬り裂いたメルヴァに続き、朔も念動力で以て敵を穿った。
 堂々と通るには敵は多く、その目を欺くことはできなかった。
 下級といえども相手はオブリビオン。
 たとえ変装をしても、呪詛を宿らせたとしても此方が敵だと一発で見抜かれる。
 せめて身を隠せばどうにかなっただろうかと考える朔だが、今はもう戦いの最中。相手をどうやって倒すかだけを考えればいいとして、朔は立ち向かう。
 メルヴァも蝙蝠で敵を捌きながらも、数の多さに辟易していた。
「あの力、吸収してしまいましょう」
 魂とはいえあれも生命の欠片。メルヴァはダーインスレイヴの切先を差し向け、鬼火から力を吸収していく。
 纏わりつく火を薙刀で振り払う朔もまた、次々と敵を蹴散らしていく。
 そして、徐々に敵の数は減っていく。メルヴァは刃で、そして朔はくないを念動力で浮かせ、破魔の力で以て鬼火を浄化していった。
 そんな中、メルヴァは揺らぐ人魂から悲しみめいた思いを感じ取る。
「魂となって現れるってことは、何らかの感情があるって事でしょ?」
 それならば、と更に身構えたメルヴァは薄く笑んだ。
「その心も記憶も、私の今日のお夕飯ね」
 悲しみごと、すべて喰らえばなかったことになる。おいで、と手招いたメルヴァに吸い込まれるようにして人魂は瞬く前に消え去った。
 やがて、残る敵は一体となる。
 これまでやや苦戦はしたがそれさえ倒せば先に進めるだろう。朔はしっかりと狙いを定め、薙刀を構えて踏み込む。
「人々に被害が出る前に討伐させて頂きます」
 この先に巡るであろう戦いを思い、朔は刃を振り下ろした。
 その一閃によって最後の鬼火が消え去り、辺りに静けさが満ちる。メルヴァと朔は頷きあい、森の奥にあるという神社を目指して歩き出した。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

藏重・力子
怨霊か……見過ごせぬ、元を絶たねば
厳かな心持ちで森へ入ろう

特別に【破魔】を込め『フォックスファイア』を使用
紅色の狐火を全て個別に操って、鬼火や人魂へと撃ち出し、
一つ一つを我の狐火と一体化させるように包み込む
「お主らを送ろう、あるべき所へ」
浄化が終わったら一気に消すぞ

狐火は周囲の者や草木に打ち漏らす事の無いよう注意し、
万が一延焼したら、その分は即座に消火する

また、数が多く狐火での対処が難しくなったら、
【破魔】の護符を当ててゆく
森を進む足は止めないが、我に向かって来る鬼火や人魂は無視せぬ
どれもしっかり祓ってやろう
「良き眠りを。良き眠りを」

我が普段より落ち着いている?
……今、偶々そう見えるだけであろ



●どうか、良き眠りを
 怨霊姫の存在を思い、森の奥を見据える。
 樹々の向こう、廃神社への道を辿る藏重・力子(里の箱入りお狐さん・f05257)はちいさく首を振り、厳かな心持ちで森へと踏み入った。
「怨霊か……見過ごせぬ、元を絶たねば」
 歩む先には人の気配を察して集まって来た人魂が見える。
 力子は破魔の力を籠め、狐火を周囲に浮遊させていく。紅色の火がふわりと揺れれば、人魂もまたゆらゆらと震えた。
 そして敵が此方に向かってきた刹那、力子は狐火を解き放つ。
 力子に纏わりつこうとした炎の一つ一つを狐火と一体化させるように包み込むと、混じり合った炎の色が紫に変化した。
 それはまるで葬送の火の如く、瞬く間に敵を浄化していく。
「お主らを送ろう、あるべき所へ」
 力子の静かな言葉が落とされた次の瞬間、人魂は消滅した。
 だが、まだ周囲の気配は消えていない。力子は辺りを見渡し、此方を狙う鬼火へと新たな狐火を打ち放った。
 一体ずつ、確実に。時には破魔力を込めた護符を交えて敵を屠っていく。
 否、これは彷徨える魂への救済。
 怨霊の手先となった哀れな者達を骸の海へと還す為のもの。
「良き眠りを。良き眠りを」
 そう告げて先へと進み、穢れた魂を祓って浄化する力子。その声も佇まいも何処か、普段よりも落ち着いて見えた。
 己でもそれを自覚したが、力子は頭を振った。きっと今、偶々そう見えるだけだろう。そのように自分を律した彼女は決して歩みを止めなかった。
 屠り、浄化し、眠りの先が安らかであることを願う。魑魅魍魎の森を抜ければ其処は更に激しい戦いが巡る戦場。
 この先に待つ戦いを思い、力子は強く掌を握り締めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

都槻・綾
f01982/咲さん

崩れた参道へ
幽かに眉尻を下げ
けれど
傍らのひとへ向けるのは柔和な笑み

姫御前を骸海へ還せば
魂達を解放できるのなら
今は無闇に力を使うことも無いでしょう
…走るのは得意ですか?
私は縫のお説教から逃げる為
日々鍛えた脚に自信があります
道を拓きましょう

眼差しに子供めいた悪戯っ気を乗せ
目指す奥を見据える

可能な限り戦闘を避け
森を駆け抜けよう

急襲、不意打ちに備えて研ぎ澄ます第六感
咲さんと声を掛け合い死角を補い
残像、フェイントで魍魎達を翻弄
見切り回避
オーラで咲さんの盾となり防御

囲まれ已む無く戦闘する際は
符を数多の白梅に変え
敵が幻影に惑う隙に先制攻撃
二回攻撃、範囲攻撃も駆使した、
春が匂い立つかの花筐


雨糸・咲
都槻さん(f01786)と

嘗ては人々に敬われ、親しまれた場所でしょうに
こんな様子では寂しいですね

人の訪いが途切れ、忘れ去られ、朽ちてしまう…
人の手で成り、人と共に過ごし、人の姿を得た私には
ひとつ道が違えば自分もこんな風になっていたのでは、と
思えてならないのです

優雅に
けれどどこか悪戯に微笑む人へ、こちらも笑んで

お説教ですか?ちょっと意外ですね
えぇ、勿論
遅れは取りません

聞き耳で敵の動きを察知し
フェイントでいなして
不要な戦いは避けながら
真っ直ぐお社を目指しましょう

敵に囲まれた際は氷の雨を降らせ
妖しい火はさっさと散らしてしまいます

盾となって貰ったら
ふわり笑んで
有り難うございます、と

※アドリブ歓迎



●鎮魂の花雨
 此処はいつかの昔、嘗ては人々に敬われ親しまれただろう場所。
「こんな様子では寂しいですね」
 人の訪いが途切れ、忘れ去られ、朽ちてしまう。人の手で成り、人と共に過ごし、人の姿を得た咲にとってこの光景と現状は見て見ぬふりは出来ぬもの。
 ひとつ道が違えば自分もこんな風になっていたのかもしれない。
 そう、思えてならない。
 参道に続く道だったはずの道から逸れ、雨糸・咲(希旻・f01982)は傍らの都槻・綾(夜宵の森・f01786)を軽く見上げる。
 荒れ果てた森と道に幽かに眉尻を下げていた綾だが、咲からの視線を感じて柔和な笑みを浮かべてみせた。
 そして二人は樹の影に入り、森を彷徨う人魂達から身を隠す。
 姫御前を骸海へ還せば魂達を解放できる。それならば今は無闇に力を使うことも無いだろう。そう伝えた綾は咲に問い掛ける。
「……走るのは得意ですか?」
「えぇ、勿論。遅れは取りません」
 自分はお説教から逃げる為に日々鍛えた脚に自信があると話せば、咲は頷いた。ちょっと意外ですね、とちいさく笑んだ咲は行く先を見つめる。
「道を拓きましょう」
 眼差しに子供めいた悪戯っ気を乗せ、綾も目指す奥を見据えた。優雅に、けれどどこか悪戯に微笑んでから踏み出した彼の後ろにつき、咲も駆け出す。
 そして二人は戦いを避け、森を進んでいった。
 されど不意に咲は妙な音を察知して綾の腕を引く。視線で示した先には数体の鬼火。避けては通れぬと感じた綾は身構え、咲も即座に力を紡ぐ。
 しかし敵も此方に気付いたらしく、咲に向かって吶喊してきた。
 即座にその動きに気付いた綾が防御壁を展開して咲の盾となる。鈍い衝撃がオーラ越しに伝わってきたが、綾は決して揺らがなかった。
 自分を守ってくれた彼へとふわり笑んだ咲は、有り難うございます、と告げる。
 そして、咲は周囲に満ちる冷たい空気を集わせて氷の属性へと変えた。
「妖しい火はさっさと散らしてしまいましょう」
 降り注ぐ氷の雨は鬼火達の身を貫き、更に其処へ綾が符を放つ。宙に舞う符は見る間に数多の白梅となって敵を包み込んでいった。
 その間に一撃、更に二撃。
 一体ずつに春が匂い立つかの花筐が舞い、恨みの炎を鎮めてゆく。
 やがて周囲の鬼火達は地に落ち、辺りに静寂が満ちた。
 この魂達も怨霊姫さえ現れなければ安らかに眠っていたものだったのかもしれない。そして、きっと――この向こうに待ち受けているという社の狐だってそうだ。
 咲は掌を握り締め、綾も改めて森の奥を見つめた。
 二人の思いは同じ。待ち受ける悪しき者を斃し、元あったはずの静けさを取り戻すこと。その為には立ち止まってなどいられないとして、二人は先を急いだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朽守・カスカ
随分と益体も無いことを企むものがいたものだ
その企みを阻止するためにも
まずはこの森を抜けねばな

不思議な色を宿す炎には興味は尽きないが
まだ先は長い、すべきことをしよう
全てを倒す必要もないならば
敢えて必要以上に戦うこともないか

何を感知して襲いかかってくるか
今ひとつわからないが
一撃で搔き消えるものならば …
【ガジェットショータイム】
音は僅かに、多くの蒸気を吐き出すガジェットを出し
霧のように辺りを満たして
身を隠しながら進むとしよう

霧の中なら、視界が悪くとも炎は目立つから
囲まれぬように進みながら
孤立した揺らめく炎が近くにいたならば
音もなく、一撃で打ちはらえばいい

手間取っている暇はない
先を急ぐとしよう


イア・エエングラ
おやまあ、きれい、ね
そうしてどこか、ものがなしくは、なるかしら
容をなくしてなお、散らずにいるというのなら

お相手しても良いけれど、散らすばかりもかわいそで
なるべく揺れる光の少ない方へ
木の茂って身の隠せる方へ
道を選んで、行きましょう

出くわしそうならクリスタライズで、しのげるかしら
はて、火の子がおめめで見てるのかは分からないけども
追い掛け難くは、なるかなあ

ずうっと森で彷徨っているの、かわいそうにね
お前の無念を晴らすから、此処は通して、くださるかしら
だから、おやすみ
見つかってしまった時は、仕方がないもの
そうっと青い火でお送り、しましょ



●揺れる魂火
 かの怨霊姫は亡き者や魂を操り、支配するもの。
 骸の海から蘇ったそれは生きとし生ける者を弄ぶことを愉悦としているという。
「随分と益体も無いことを企むものがいたものだ」
 朽守・カスカ(灯台守・f00170)は肩を竦め、手にしたガジェットを強く握る。
 未だ村を焼くという愚かな行為は為されていない。その企みを阻止するためにもまずはこの森を抜けねばならない。
 そして、カスカは蒸気を吐き出すガジェットを掲げた。
 途端に森が白き霧めいた彩に包み込まれ、カスカの姿を隠す。すると視界の向こうに蒼く揺らぐ火が見えた。
 蒸気を燻らせた森の中、浮遊する火はよく目立つ。
 これで敵の姿を確認しながら身を隠していけば無駄な戦いをせずに済むだろう。カスカが息をひそめる最中、不意に近くから穏やかな声が聞こえた。
「おやまあ、きれい、ね。そうしてどこか、ものがなしくは、なるかしら」
 霧に浮かぶ鬼火の色に双眸を緩めていたのはイア・エエングラ(フラクチュア・f01543)だ。容をなくしてなお散らずにいる魂。それらを眺める彼は、カスカに淡く微笑みかける。
「ご一緒しても、いいかしら」
「もちろん。共に行けるなら頼もしい」
 イアの願い出にカスカが頷きを返すと、彼はそっと傍らに歩みを寄せた。
 不思議な色を宿す炎に興味は尽きないがまだ先は長い。すべきことをしよう、と告げてカスカが歩き出すと、イアも気配を消しながら進んだ。
「お相手しても良いけれど、散らすばかりもかわいそだものね」
 出来る限り、揺れる光の少ない方へ。
 茂った樹があり、すぐに身の隠せる道を選んでいく二人は慎重だ。だが、二人の行く先には社への道を遮るように揺らぐ、数多の鬼火の姿があった。
「拙いな、見つかるかもしれない」
「すこうし、失礼させてね」
 カスカが戦いを覚悟しようとしたそのとき、断りを入れたイアが彼女の身を言葉通りに失礼にならぬようそっと抱く。
 込められたのはクリスタライズの魔力。自らと抱き締めた対象を透明にする力だ。
 静かにね、と囁いたイアは鬼火の行方を目で追う。ゆらり、ふわりと浮かぶそれらはカスカ達の存在に気付かずに何処かへと消えてしまった。
 そして、透明化を解いたイアは幽かに笑む。
 驚かせていたらごめんなさいね、と告げた彼にカスカは大丈夫だと静かに笑みを返した。其処から二人は更に慎重に先を急いだ。
 だが、行く先にはどうしても動かぬ人魂がいた。先程は多数だったが今回は一体。隠れるよりも撃破した方がいいと判断したカスカ達は頷きを交わした。
「ずうっと森で彷徨っているの、かわいそうにね」
「一撃で葬ろうか」
 イアの言葉にカスカが答え、二人は一気に力を紡ぐ。
 ガジェットから撃ち出す一閃。そして、碧く揺らぐ火の奔流。
「お前の無念を晴らすから、此処は通して、くださるかしら」
 だから、おやすみ。
 そう告げたイアが瞳を閉じれば、音もなく人魂が地に落ちた。それが消える様を見送ったカスカは前を見据え、ふたたび踏み出す。
「手間取っている暇はない。先を急ぐとしよう」
 速く、さあ、早く。
 この先に待つ悪しき存在はこれよりも更に手強いのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

花咲・まい
【WIZ】
まずはこの森を抜けないことにはいけませんですね。
真正面からぶつかるのも良いですが、これだけ数が多いと消耗も激しそうですです……。

私は【悪鬼万来】を使って、魑魅魍魎の足止めをして先を急ぐことにしますです。
魑魅魍魎にも意思があるのであれば、恐怖を与えることもできるかもしれませんですよ。
それでも止められないのなら、ここは夜叉丸くんでなぎ払うしかありませんですね……。

あとは近くに他の猟兵さんがいるのなら、そのひとと連携するのも良いかと思いますです!
さあ、先へ進みましょうですよ!

*使用技能:範囲攻撃、なぎ払い、恐怖を与える、呪詛、罠使いなど
*連携やアドリブはご自由に


ユーリ・ヴォルフ
アドリブ絡み大歓迎です

不の感情が渦巻く森か
人魂一つ一つが、生きた人間の成れの果てということか
万が一ここで倒れてしまったら
この者たちのように憎しみや悲しみに囚われ続けるのだろうか
…いや。余計なことは考えるな
一刻も早く事件を解決し、魂たちを解放しよう
それが新人猟兵としての私の仕事だ

森を燃やさないよう気を付けつつ
【範囲攻撃】【属性攻撃】で木々や草に触れぬ程度に
自身の周りに炎を灯しながら走り
ドラゴンの槍(ファフニール)を振り回し牽制する
必要に応じて援護もしよう
眼前に敵が群がったら槍を突き付け【ドラゴニック・エンド】
ファフニールの炎と自身の炎を重ね、一直線に炎を放ち道を切り開く
突き抜けろ、ファフニール!



●貫き穿ち、焔は消ゆ
 負の感情が渦巻く森。
 嘆きと哀しみ、時には怒りや憎悪。幽かではあるが様々な思いが感じられた。
「人魂一つ一つが、生きた人間の成れの果てということか」
 ユーリ・ヴォルフ(叛逆の炎・f07045)は目の前に現れた人魂達を見据え、竜騎士の槍ファフニールを構える。
 その傍には薙刀を手にした花咲・まい(紅いちご・f00465)の姿もある。
「まずはこの森を抜けないことにはいけませんですね」
 まいが敵に差し向ける薙刀の名は夜叉丸。
 その切先には青い人魂の炎が映っている。その数、十体以上。
 二人は今、周囲を数多の火に囲まれていた。
 じりじりと距離を詰めて来る敵に対してユーリとまいは背中合わせになり、互いの死角を補いあう。偶然とはいえ同じタイミングで森に入って敵に遭遇した今、協力しあわない手はなかった。
「来ますですよ!」
「ああ、迎え撃とう」
 まいの呼び掛けに答え、ユーリは迫り来る人魂へと刃を振るう。
 夜叉丸で一体の火を斬り伏せたまいは身を翻し、魔力の門をその場に顕現させた。
 ――通りゃんせ、通りゃんせ。
 まいの歌うような声が響いた刹那、門から力の渦動が放たれて呪詛となる。
 それは人魂達に恐怖を与え、怯ませていった。周囲に力が巡っている間にユーリは自身の周りに炎を灯しながら走り、ファフニールを一気に振り回す。
 敵を薙ぎ払いながらユーリは思う。
 万が一、ここで自分が倒れてしまったらこの者たちのように憎しみや悲しみに囚われ続けるのだろうか、と。
「どうかしましたですか?」
 戦いながらも考え込む様子のユーリに気付いたまいは問い掛ける。
「……いや。何でもない」
 首を振ったユーリは、余計なことは考えるな、と自分に言い聞かせた。
 一刻も早く事件を解決し、魂たちを解放する。それが猟兵としての自分の仕事なのだとして己を律し、ユーリは人魂を次々と穿った。
 まいは前線を彼に任せ、新たに門を開いて渦動を解き放ってゆく。
 そしてユーリはファフニールの炎と自身の炎を重ね、一直線に炎を放った。
「突き抜けろ、ファフニール!」
 ひときわ大きな人魂を貫いた一閃は道を切り開く一手となる。
 周りを取り囲んでいた敵もすべて消え去っていた。これで先に進めるとしてまいは夜叉丸を下ろし、ユーリを呼ぶ。
「さあ、先へ進みましょうですよ!」
 まいの元気な声に応え、ユーリも駆け出してゆく。
 まだまだ事は始まったばかり。気を抜いてはいられない。この先に巡る戦いこそが本番なのだと感じ、二人は森の奥を目指した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

花剣・耀子
期待を貰ったのなら応えましょう。
激励分は働くわよ。

奥に控える姫は随分と良い性格のようだし、
消耗は抑えていきたい気持ちはあるのよね。
とはいえ、急に搦め手が生えてくる訳でもなし。
正面から突破するわ。
群れられるよりも先に斬り散らしながら、
足を止めず駆け抜けましょう。
行く手をきれいにしたら、何も無いのと同じだわ。

一応周囲の様子にも気をつけて、
足留めを食っているヒトが居ないかを確認しましょう。
辿り着くのは一人でも多い方が良いわ。
協力できるところは協力するように。

数が多すぎてどうしようもなくなったら、【《花嵐》】で散らしていくわ。
他のヒトは巻き込まないように気をつけるけれど、
出来れば離れていて頂戴ね。



●花の嵐に散る焔
 森を駆け、樹々のざわめきを聞く。
 それは亡者の嘆きにも似ていて不気味だが、花剣・耀子(Tempest・f12822)は足を止めず走り続けた。
「期待を貰ったのなら応えましょう」
 激励分は働くわよ、と口にして、双眸を鋭く細めた耀子が思うのは送り出してくれた者のこと。無論、それ以上であっても力を揮う気は万全。
 敵は分かりやすい悪そのもの。
 たとえそれが少女の姿をしていても、骸の海から蘇った悪意は斬り伏せるのみ。
 しかし、奥に控える姫は随分と良い性格だと聞いている。この森の配下もそうだが、様々な魍魎を従えているとあらば余計な消耗は控えたかった。
「とはいえ……正面から突破するしかないわね」
 急に搦め手が生えてくる訳でもなし、と呟いた耀子は眼前を見遣る。
 其処には進路を塞ぐように浮かぶ鬼火が三つ。更に背後には合流しようとしている人魂も幾つか見えた。
 耀子は口許を僅かに緩めて機械剣を振りあげた。
「行く手をきれいにしたら、何も無いのと同じだわ」
 足は止めず、耀子は駆け抜け様に刃で魂の火を両断する。鬼火が崩れ落ちる様子はまるで花が散ったかのような一瞬の美しさを映した。
 もう一閃。更には横薙ぎの一撃。
 耀子は周囲の様子を確かめながら、目の前の敵を蹴散らしてゆく。
 そして、人魂の群に敢えて飛び込んだ耀子は力を紡いだ。刹那、彼女の周囲に花を咲かせるが如き白刃が広がり、敵をひといきに穿っていった。
 ちらりと後方を見遣った耀子は、自分とは別の猟兵達が向こうにいることを知っていた。敢えて敵の群れに突入したのも仲間の進路をつくる為だったのだ。
「これで路はひらけたわね」
 共に戦う者は多い方が良い。声は届かないが、この一手は仲間の為にもなったはず。
 耀子はちいさく頷き、先を急ぐ。
 怨霊の姫が待つ本殿に辿り着くまであと、少し――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
■櫻宵(f02768)と
(アドリブ等歓迎

「狐が囚われているなら、助けたい」
僕はずっと囚われで苦しかったからといえば、櫻宵はご機嫌な様子
鼻歌交じりに敵を斬り捨て道を作る姿は彼らしいけれどと思いながら彼の後を游ぎ着いていく

「さすが、パワータイプの陰陽師だね。櫻宵」
半分揶揄い、手を繋ぐと言われれば
そんな子供じゃないと反論しつつも……繋いでもらおうかなという気持ちに

「全く、櫻宵は。僕も手伝うよ」
彼の剣技に合わせ歌うのは、魔を祓う『光の歌』
【歌唱】を活かしてどこの敵にも届けられるように歌声を響かせていく
褒められれば照れて、歌にも力が入るね
囲まれないように背中側の敵は僕が何とかするよ

――これが君達の鎮魂歌


誘名・櫻宵
🌸リル(f10762)と一緒
アドリブ等歓迎

魑魅魍魎をまとめ斬り
楽しいわね、リル!
鼻歌交じり、破魔を纏わせた刀をふるい道を切り開き進むわ
あたしは陰陽師、術よりぶった斬る方が得意なね
リルが游ぎやすいように道を作ったげる!
はぐれそうなら手をつなぐ?

広範囲攻撃と衝撃波を駆使して一気になぎ払い
囲まれそうになったなら、破魔と光属性を纏わせた『散華』で人魂も鬼火も魑魅魍魎も!全部まとめて蹴散らすわ!
攻撃は見切りや残像で躱して、リルを守り庇うわね
リルの歌は今日も最高でテンションも上がって昂っちゃうわ!

うふふ、囚われの狐を助けたいなんて
本当に優しい子
大丈夫よ、お姉さんちゃんとあなたの願いを叶えてあげるからね!



●游ぐ歌、斬り裂く刃
 遥か前方で花の嵐が舞った。
 それが別の猟兵が放った力なのだと悟り、リル・ルリ(瑠璃迷宮・f10762)と誘名・櫻宵(誘七屠桜・f02768)は森を駆けてゆく。
 二人の前にも魑魅魍魎達が現れ、往く手を遮る。
 しかし櫻宵は怯むことなく、それらを纏めてひといきに薙ぎ払った。
「楽しいわね、リル!」
 破魔の力を載せた一閃が炸裂する様に、リルは感心を込めた眼差しを向ける。鼻歌交じりに敵を捻じ伏せていく櫻宵は実に見事であり、彼らしい。
「さすが、パワータイプの陰陽師だね。櫻宵」
 半分は揶揄いながらリルも負けじと光の歌を紡いでいく。
 魔を崩壊させる破魔の力は淡い光を放つベールとなり、鬼火を包み込んだ。櫻宵はリルが游ぎやすいようにと更に踏み込み、共に進む道を切り開いていった。
「はぐれそうなら手をつなぐ?」
「そんな子供じゃない」
 櫻宵から不意に差し伸べられた手。その言葉に思わず反論するも、リルもまた手を伸ばし返す。繋いだ手の熱は仄かだが、確かな温もりだと感じた。
「狐が囚われているなら、助けたい」
 その際にリルが思うのは怨霊姫に配下として使われている魂のこと。
 自分はずっと囚われで苦しかった。だから、と前を見据えたリルの横顔を見つめた櫻宵はそっと微笑む。
「うふふ、囚われの狐を助けたいなんて本当に優しい子」
「優しいかどうかは……」
 分からないけど、と付け加えたリルは游ぎながら少しだけ俯いた。櫻宵は繋いだままの手を強く握り、励ますように笑い掛けた。
「大丈夫よ、お姉さんちゃんとあなたの願いを叶えてあげるからね!」
 そして櫻宵は散華の力を解き放つ。
 それは存在を断ち切る不可視の斬撃となって邪魔をする鬼火や人魂を瞬く間に散らせて言った。されど、これだけ派手にやっているのだ。此方の気配を察知した敵は森の奥に進む度に増えていく。
「全く、櫻宵は。僕も手伝うよ」
 櫻宵の明るさに双眸を細めたリルはその剣技に合わせ、ふたたび魔を祓う光の歌を奏でていった。響く詩は淡く、魂の火を浄化するかの如く森に広がっていく。
「リルの歌は今日も最高でテンションも上がって昂っちゃうわ!」
 素直に褒めてくれる櫻宵の声は快い。
 自然と歌に力も入り、リルはこの人の背を守ろうと心に決める。
「――これが君達の鎮魂歌」
 響き渡る光の歌と散華の斬撃は森の怨霊達を鎮め、死の眠りへと誘っていった。
 此処から先に巡る戦いへ思いを馳せ、二人は社を目指してゆく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

コーディリア・アレキサンダ
鬼火、人魂
……どちらも死人の体から離れた魂、だったかな
キミたちの無念や怒り
受け止められるならボクが全て受け止めてあげたいけど
受け止めて、それで晴れるもの、でもないんだろう? その無念は

それならボクは、キミたちも救わなきゃいけない

「だから、通してもらうよ。――ワイルドスピード」

《騒ぎ、翔けるもの》――箒の姿をした悪魔を呼び出して騎乗
森を一気に、稲妻のように突き抜けよう
ボクらの狙いは廃神社。そこに居座る首魁の首だ
だから通してほしい、追いかけないで欲しい。その手を払いたくはないから

……敵を倒して救えるのかはわからないけれど
ボクにできるのはそれぐらいだから



●救済は未だ遠く
 鬼火、人魂。それらはよく似た存在。
 どちらも死人の体から離れた魂、だったはず。コーディリア・アレキサンダ(亡国の魔女・f00037)は行く先を阻む赤と青の火を見遣り、杖を静かに掲げる。
 幽かに感じられるのは恨み、辛み、憎悪。
 そして、憤り。
「キミたちの無念や怒り。受け止められるならボクが全て受け止めてあげたいけど……それで晴れるもの、でもないんだろう?」
 問い掛けても魂達は何も答えることはなく、ただゆらゆらと揺れるだけ。
 それならボクは、キミたちも救わなきゃいけない。
 そう独り言ちたコーディリアは視線を宙へと向け、魔力を紡いだ。
「だから、通してもらうよ。――ワイルドスピード」
 それは騒ぎ、翔けるもの。
 箒の姿をした悪魔を呼び出したコーディリアは素早くそれに騎乗して人魂の群を擦り抜ける形で飛翔した。
 屠ることで救うという手もあった。だが、本当にかの魂達を救済するならばそれらを操っている怨霊の姫を斃すべきだ。
 コーディリアは森を一気に、稲妻のように突き抜けてゆく。
 追い縋る人魂は既に遥か後方。それでもまだ、あれらが発していた負の感情が身体に纏わりついている気がした。
「ボクらの狙いは廃神社。そこに居座る首魁の首だ」
 だから通して欲しい。追いかけないで欲しい。その手を払いたくはないから。
 届かぬ言葉と分かっていても思わずにはいられない。そして、コーディリアは見据える先に色褪せた鳥居を見つけた。
「あそこだね」
 箒のスピードを落とし、コーディリアは気を引き締める。
 あれを潜れば新たな戦いが待っているだろう。その奥に控える敵を倒すことだけで、本当に彼らを救えるのかはわからない。けれど――。
「ボクにできるのはそれぐらいだから」
 その言葉は静かに、それでいて強く、廃神社に向けて紡がれた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『憎しみに濡れた妖狐』

POW   :    神通力
見えない【波動】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD   :    鬼火
【尻尾から放たれる怨嗟の炎】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    心眼
【常に相手の思考を読んでいるかのように】対象の攻撃を予想し、回避する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●境内の狐
 魑魅魍魎が蔓延る森を抜けた先。
 色褪せた鳥居を潜り、猟兵達は崩れた石畳の廃路を進んでいく。
 崩れ落ちた拝殿の隣を抜ければ、ひらけた場所に出た。その向こうには神社の本殿が見える。おそらく、あの内部に怨霊を操る姫がいるのだろう。
 猟兵達が気を引き締めた刹那、何処かから鳴き声が聞こえた。
 ――コン。
 それはたった一度、されど哀しげな聲。
 薄紫の狐火が猟兵達の往く手を遮ったかと思うと狐の霊が現れる。
 数にして十数体。狐達は首が無いというのに此方を睨み付けているかのようだ。感じるのは此処から去れと告げるような威圧感、そして並々ならぬ憎悪。
 嘗てはこの狐も社を守るものだったのだろう。
 しかし今や彼は怨霊姫の手先と成り果てている。どれほど哀れに感じようとも、いま此処で倒さなければならぬ存在だ。
 そして、憎しみに濡れた妖狐は猟兵達を拒絶するが如く、怨嗟の炎を浮遊させた。
木霊・ウタ
心情
祀られていた稲荷が
手下にされちまったとは可哀想に
倒すことで解放してやろうぜ

手段
命と未来を守る想いを込め
Wウィンドを奏で歌い皆を鼓舞しながら
その旋律で怨霊姫の支配の軛を浄化したり
波動にぶつけて減弱させるぜ
;コミュ&パフォ&演奏&歌唱&手をつなぐ&鼓舞&勇気&優しさ&破魔

地獄の炎を纏う焔摩天を力強く振り抜き
例え心眼で躱されてもそのまま薙ぎ払い
別の妖狐へ喰らわせる
:属性攻撃&破魔&薙ぎ払い&鎧砕き&UC

へへ
此奴は読めなかったろ?
自分への攻撃じゃないもんな

武器受けの他UC使い防御
怨嗟の炎に地獄の炎をぶつけて阻害

アンタを救うのに間に合わず悪ィ
せめて怨霊姫を倒しこの神社を清めてやる
安心して休みなよ


シュシュ・シュエット
【ライオンライド】のライオンさんのお力をお借りしますっ。
きつねさんにはお顔がないので、近づいて「がぶーっ!」としたいのですが……。
近づいたところを攻撃力重視の鬼火さんでカウンターされたら、
油揚げにされてしまいそうです……!

ここは鬼火さんの挙動を*見切りながら、
『何を強化されているのか』*学習力をもとに落ち着いて観察しましょう。
その間は囲まれないよう*野生の勘をはたらかせ、他の猟兵の皆さんのサポートや牽制を。

きつねさんがしびれを切らせて他の猟兵さんを狙われたり、スキを窺えたら、
ライオンさんのたてがみをわしゃわしゃっと合図。
*勇気をもって「がおーっ!」と一息に接近し、お爪でばしばししてもらいます。


藏重・力子
なんと惨く、なんと痛ましいことか
「来やれ。お主達の呪縛を断ち切り、今、解き放つ!」

※アドリブ歓迎

【破魔】の護符で【先制攻撃】!
こちらの動きを読むというのなら、
心を無にし、予測不可能な軌道で【2回攻撃】も交えて護符を投げ続ける
一枚でも当たれば「手応えあり!」
『七星七縛符』を発動。敵ユーべルコードを封じるぞ!

そしてすかさず接近し、なぎなたを構えて素早く【破魔】の【なぎ払い】
迷いのない斬撃で、できる限り苦しめる事なく送ってやりたい
「辛かったであろ。後は任せよ、休むがよい」

魔に捻じ曲げられ、狂わされた狐の姿……他人事とは思えぬのだ
怨霊姫、と言ったか。己の身勝手で魂を弄んだ覚悟はできているのであろうな?


傀童・沙華
真の姿は特に変わらん故、能力的に恩恵がある程度じゃな

どのような敵も、わらわはこの拳で殴るだけじゃ
技能の怪力と殺気を使用しつつ、殺り合うかの

お前さんが、どのような憎しみを抱いて、この場にいるかなんぞに興味はないが……。
わらわの前に立つというならば、容赦はせぬぞ。
そのまま、浮世の不条理さでも抱いて眠るがよい。



●分断された魂
 首の無い狐霊の聲はもう聞こえない。
 あの哀しそうな鳴き声は幻想だったのだろうか。しかし猟兵達は確かに聞いた。まるで、助けてくれ、と告げるようなあの聲を――。
 あの姿はなんと惨く、なんと痛ましいことか。
 そう感じた力子は護符を手にし、狐霊の姿をしかと瞳に映し込む。
 魂を切り分けられたらしき狐の霊は今、この戦場に十数体も存在していた。そのうちの三体ほどが力子に狙いを定めて威嚇するように尾を揺らしている。
「憎しみを晴らしたいならば、来やれ」
 力子がそう呼びかければ、近くに居たウタとシュシュも頷いてみせた。
「祀られていた稲荷が手下にされちまったとは可哀想に」
「ライオンさん、お力を貸してくださいっ」
 倒すことで解放してやろうぜ、と仲間に告げるウタがワイルドウインドを構え、シュシュは黄金の獅子を傍に召喚する。
 更に沙華が三人の助太刀に入るようにして其処に布陣した。
「どのような敵も、わらわはこの拳で殴るだけじゃ」
「お主達の呪縛を断ち切り、今、解き放つ!」
 宣言めいた言葉を落とした沙華が地を蹴ったと同時に、力子が破魔を宿した護符を舞い飛ばす。同じ標的に狙いを定めた二人の攻撃は狐を貫くはずだった。だが、それらは心眼の力によって避けられてしまう。
 されど彼女達はその程度で諦めるようなことはない。力子は更なる破魔の力を紡ぎ、沙華も身を翻し、二撃目を叩き込む為の力を溜める。
 その間にシュシュは獅子の背にぴょこんと飛び乗り、別の標的に狙いを向けた。
 だが、尻尾から放たれようとしている怨嗟の炎は妖しく揺らめいている。今にも此方に向かってきそうだと察したシュシュはライオンに願って敵との距離を取った。
「近づいて、がぶーっ! とするのはまだ危ないですね……」
 もし至近距離で全力の鬼火を放たれたとしたらひとたまりもないだろう。もしかしたら逆に油揚げにされてしまうかもしれない。
 むむむ、とちいさく唸ったシュシュは獅子と自分がじゅわっと炎に揚げられる姿を想像してしまう。そんな中、警戒を強めるシュシュの側方でウタが演奏を始めた。
「大丈夫だ、こっちも強化して挑めばいい。そうだろ?」
 その為に自分が皆の背を支えるとウタは告げる。
 そして――彼が歌いあげてゆくのは命と未来を守る想いを込めた詩。その歌声は瞬く間に戦場に広がり、シュシュだけではなく沙華や力子、更にはこの場で戦う者達を強く鼓舞していった。
「これならきっと……っ!」
 いけそうです、と告げたシュシュの合図で獅子が駆け出す。
 敵は鬼火を放とうとしているが、今こそ勇気を持って立ち向かうとき。シュシュの駆るライオンは狐の首元目掛けて牙を剥く。
 鋭い牙が敵を貫き、大きな衝撃を与えた。予想していた通りに反撃として鬼火が放たれたがそれは近くにいる者を全て狙う散弾めたものとなって迸る。
 獅子が即座に後退したことでシュシュは何とかそれを避け、力子も衝撃をいなすことに成功した。だが、ウタや沙華に向かった鬼火は容赦なくその身を穿つ。
 痛みと熱が身体に巡ったが、二人は強く地面を踏み締めて耐えた。
「ふむ、これしきでわらわを倒せると思うたか」
「甘いな。俺だって負けてないぜ」
 沙華は双眸を鋭く細めることで挑発めいた視線を送り、ウタはそれまで謳っていた鼓舞の歌を反撃の旋律へと変えていく。
 一瞬は仲間の身を案じた力子だが、彼らの佇まいに頼もしさを覚えた。
 沙華は殺気を満ちさせた一撃で以て狐霊を殴りに向かう。
「……やはり避けられてしまうか。厄介よの」
 しかし油断ならぬのは心眼の力。沙華の一撃はまたもや躱されてしまう。
 そんな中で力子も次こそと密かに意気込んだ。先程は当たらなかったが、今度は一枚でも命中させてみせる。心に決めた力子は更なる護符を解き放つ。そして――。
「手応えあり!」
 力子は一枚が敵に命中した瞬間に七縛の符力を発現させる。一時的ではあるが心眼は封じられ、力子は仲間達に視線を送る。
 その眼差しに気付いたウタは地獄の炎を纏う焔摩天を力強く振り抜き、駆けた。
「よし、今の内だな」
「いきますよ、がおーっ!」
 地獄の炎を纏ったウタに続き、シュシュも獅子の鬣を撫でて合図を行う。少女の声に応じた獅子も一緒に咆え、力を封じられた狐に向かった。
 ウタによる紅蓮焔の一閃が憎しみに濡れた妖狐を燃やし、シュシュのライオンの爪が真正面からその身を貫く。その瞬間、一体目の敵がその場に伏した。
 だが、ウタの攻撃はそれだけには止まらない。炎を纏ったまま焔摩天を薙ぎ払い、新たな標的へと刃を振り下ろした。
「へへ。此奴は読めなかったろ?」
 そしてウタは敵からの反撃で或る怨嗟の炎に地獄の炎をぶつけて薄く笑む。
 その表情には決して負けないと決めた意志が見えた。
 沙華も今が好機だと気付いて動き、ウタが穿った敵へと追撃を仕掛ける。
「お前さんが、どのような憎しみを抱いて、この場にいるかなんぞに興味はないが……。わらわの前に立つというならば、容赦はせぬぞ」
 振り抜いた沙華の拳は狐の身を打った。
 しかし、それだけで蹴散らせた森の魑魅魍魎とは違って狐はかなりの力を持っているようだ。未だこれだけでは倒しきれぬと察した沙華は素早く身を引き、後方から駆けて来ていた力子に道を譲った。
 力子は一瞬だけ沙華と視線を交わし、ひといきに敵との距離を詰める。
 構えた薙刀の切先は既に敵の胸元へ向けられていた。刹那、迷いのない斬撃が魂ごと相手の身を斬り裂く。
「辛かったであろ。後は任せよ、休むがよい」
 それはできる限り苦しめることなく葬送してやりたいと願う力子の思いそのもの。
 魔に捻じ曲げられ、狂わされた狐の姿。それを他人事とは思えないからこそ、力子はただ真っ直ぐに立ち向かう。
 沙華は僅かな間だけ瞑目し、振り返らずに告げた。
「そのまま、浮世の不条理さでも抱いて眠るがよい」
 そして沙華はすぐに三体目の敵に狙いを付けてゆく。ただ純粋な力を揮って殴り抜く。その姿はまさに羅刹と呼ぶ他ない。
 沙華の一撃に合わせ、シュシュも黄金の獅子と一緒に敵を穿っていった。
「わたしにはこうすることしかできません。けれど……!」
 獅子の爪が狐の身を鋭く切り裂く最中、シュシュは思いを言葉にする。
 憎しみに満ちた魂を鎮めたい。その思いはきっとみんな同じ。だからこそ勇気が湧いてくる。そう感じた少女は果敢に戦う。
 そして力子は今一度、護符による封じの力を発動させた。其処に好機を見出したウタは再び断罪の炎を刃に纏わせ、一気に斬り込む。
「アンタを救うのに間に合わず悪ィ。せめて怨霊姫を倒しこの神社を清めてやる」
 だから、安心して休みなよ。
 そう告げると同時に振り下ろされた焔の斬撃は狐霊の身を地に伏せさせる。
「ひとまず、此方の狐は滅せたかの」
 狐の魂の一部を屠れたのだと察した沙華の傍ら、力子はそっと俯く。
「怨霊姫、と言ったか。己の身勝手で魂を弄ぶなど――」
 顔をあげた力子が見据える先には本殿が見える。彼女から静かながらも憤りめいた感情を感じ取ったシュシュは首を振った。
「こんなに悲しいことを、このままにしてはいけないです……!」
 あの向こうには色濃い悪意が感じられる。
 必ず首魁を屠ってみせると決意したシュシュ達は頷きあった。境内には未だ祓いきれていない狐の霊が見える。それらをすべて斃すべく、猟兵達は更に身構えた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

イア・エエングラ
鳥居へつづく、石畳
立って仰げば面影くらいは、あるだろか
廃れたお社にもきっと、昔は人がきたろうな
今は砕けたお前の像へ手を触れ磨いて祈ったかしら
忘れられてしまうのは、かなしいね

そうして海へと還るのを
呼び起こす業は
――……などと僕も人のことはいえないかしら
ね。数には、数をとお招きするのはリザレクト・オブリビオン
間隙を縫って、数を減らしに、存分に揮ってね
辿る思考もないものな
僕は下がっていましょうな
きっとその身の朽ちるまで
僕や前ゆく方の、盾になってね

その恨み散らして、さしあげましょう
も一度海へと還しましょうな
次はきっと穏やかに、全部忘れて、ねむれるように


太刀花・百華
首をもがれた狐の霊か
元は神の御使いだった存在が、怨霊姫の下僕に成り果てるとは
……さぞかし無念であっただろう
とはいえ行く手を阻む心算なら、斬り伏せてでも先に進ませてもらう

敵の憎悪にも、勇気で対抗しながら真っ向勝負で立ち向かう
残像を繰り出すように距離を詰め、神通力の見えない波動を回避する
闘志を高めて【黒炎羅旋撃】を発動させて、噴き出る炎を剣に纏い
意識を集中させて相手の動きを見切りつつ、敵の攻撃にも気合いで一閃
怨嗟の炎を打ち消すほどの、黒き螺旋の炎を叩き込む

私にできるのは、その憎しみを刃で断ち切ることだけだ
お主たちの無念は、私たちが代わって晴らしてみせる
だから今一度、怒りを鎮めて深い眠りに就くが良い


ソラスティベル・グラスラン
貴方たちは…!
なんという怒り、哀しみ、そして強い憎悪の念…
くっ、そこを通してもらいます!貴方たちを救う為にっ!

怯えや迷いを【勇気】で掃い、突撃します!
味方を守り、敵の注意を惹くように正面から

ここに誓うは不退転の意思、勇者とは誰より前に立つ者!
これがわたしの【勇者理論】!!(防御重視)
【オーラ防御・盾受け・見切り】それらを併用しがっちり防御
そのまま強引に接近し、【怪力】による大斧の一撃を!
以上全ての行動を【勇気】で補いますッ!

彼らの激情を受け止めましょう
しかしその上で、わたしたちは前に進まねばならない!(【鼓舞】)
見ていてください、邪悪に貶められた貴方たちの無念、わたしが晴らします!

アドリブ歓迎



●葬送の焔と進む為の決意
 色褪せた鳥居。其処から続いていた石畳の跡。
 嘗ての面影すら薄れた景色を思い返し、イアは廃れた社を見遣った。此処に来るまでに見えた砕けた狐の像。あれにも過去、誰かが何かを祈ったのだろうか。
「忘れられてしまうのは、かなしいね」
 イアが言の葉を向けたのは霊体として現れた狐達。
 あれは稲荷の遣いと云われる狐霊の魂が切り分けられた存在となった悲しきもの。太刀花・百華(花と廻りて・f13337)も彼らから感じる憎しみを受け止め、焔の彩にも似た色の双眸を鋭く細めた。
「……さぞかし無念であっただろう」
 元は神の御使いだった存在が怨霊姫の下僕に成り果てるなど見ていられない。首をもがれた彼らには意志を伝える瞳も口もないが、憎しみは痛いほどに感じられた。
「なんという怒り、哀しみ、そして強い憎悪の念……!」
 ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)は後退りそうになる。
 しかし地面を強く踏み締め、胸中で自分に活を入れた。そして、凛と佇む百華に倣ったソラスティベルは敵をしっかりと見つめる。
 境内に姿を見せた敵は十数体。
 怨霊姫を屠る為にこの場に集った猟兵の往く手を遮るように狐霊達は布陣する。イアに百華、ソラスティベル。其々を足止めする形で彼らは身構えていた。
 憎しみめいた感情は此方に向けられている。
 彼らがそうするように怨霊姫が操っているのだと感じ、イアは狐達の向こう側に見える本殿に意識を向けた。
「海へと還るのを呼び起こす業は――……などと僕も人のことはいえないかしら」
 思いを紡ぎかけ、イアは傍らに喚んだ死霊達を見る。
 ともあれ戦いは避けて通れない。狐達が今にも襲い掛かって来そうな中、百華とソラスティベルは視線を交わし、イアも二人に頷きを返す。
 偶然にも視認できる位置にいるのだ。協力しあわない選択はない。
「行く手を阻む心算なら、斬り伏せてでも先に進ませてもらう」
 百華は緋く煌めく刃を敵に差し向け、昂る戦意を黒炎へと変えた。同時に、コン、と何処からか狐の声が聞こえ、一瞬にして見えない波動が周囲の空気を揺らす。
 重い衝撃が身を穿ったが、百華は黒き焔で螺旋を描いた。狐を包み込む炎が燃え盛る最中、ソラスティベルは跳躍する。
 翼を広げて羽搏き、狐が放った鬼火を避けたソラスティベルは裡に潜む怯えや迷いを振り払った。
「くっ、そこを通してもらいます! 貴方たちを救う為にっ!」
 ただ邪魔だから排除するのではない。これは魂を解放する為の戦いでもある。真剣な眼差しを敵に向けたソラスティベルは態勢を整える。
 その間に後方へ下がったイアが死霊達に攻撃を願う。
 数には、数を。間隙を縫って数を減らし、存分に力を揮って欲しい。
 辿る思考もないものな、と狐を示したイアの意思に従い、死霊の騎士と蛇竜はその刃と牙を振るっていった。
「きっとその身の朽ちるまで、僕や前ゆく方の、盾になってね」
 続けてイアが目を向けたのはソラスティベルの方。
 彼女もまた味方を守り、敵の注意を惹くように正面から立ち向かっていっている。ソラスティベルは防御陣を己の周囲に張り巡らせ、盾を構えた。
「――ここに誓うは不退転の意思、勇者とは誰より前に立つ者!」
 これがわたしの勇者理論だと宣言して、ソラスティベルは気合いを巡らせていく。
 されど、そうしたのはただ護りに徹する目的ではない。間近からの攻撃を受けることも覚悟したソラスティベルは敵へと強引に接近していく。
 力任せに振り上げた大斧は天を衝くが如く、冬空から薄く降り注ぐ陽光を反射した。
 吶喊と一閃。
 斧が狐霊を穿つ様を瞳に映し、百華も噴き出る黒炎を剣に纏った。ソラスティベルが鬼火を受け止めている間にすべきことはひとつ。
 意識を集中させ、怨嗟の炎を打ち消すほどの黒き螺旋の炎を叩き込むこと。
「私にできるのは、その憎しみを刃で断ち切ることだけだ」
 静かに、それでいて強く。
 百華が落とした言葉と同時に狐霊の身が斬り伏せられ、瞬く間に消失する。
 これで一体。
 少女達が敵を見事に屠ったのだと察し、イアは自分の死霊達と戦う狐霊へ意識を集中させる。まだ敵は多く、確実に一匹ずつ倒していなければ路は開かれない。
「その恨み散らして、さしあげましょう」
 イアの声に呼応した死霊騎士がひといきに刃を振り下ろす。首の無い狐の身体は横薙ぎに裂かれ、まるで炎が掻き消えるようにふっと消えた。
 最後に残ったのは百華を狙う個体。
「も一度海へと還しましょうな」
 ――次はきっと穏やかに、全部忘れて、ねむれるように。
 イアが双眸を細めると、ソラスティベルが深く頷く。
 本当は操られているだけの存在を屠ることは苦しくて胸が痛んだ。しかし己を、そして仲間を鼓舞するようにソラスティベルは凛と宣言する。
「彼らの……いえ、貴方たちの激情を受け止めましょう。しかしその上で、わたしたちは前に進まねばならない!」
 その声を背に、百華は刃を握る手に力を込めた。
 真に斃すべきは怨霊を操る姫。百華が振るった刀は焔の華が舞うが如き煌めきを散らし、狐霊の力を削る。
「お主たちの無念は、私たちが代わって晴らしてみせる。だから今一度――」
 怒りを鎮めて深い眠りに就くが良い。
 囁くように告げた言葉の後、百華は仲間に目配せを送った。イアも同じようにソラスティベルを見つめ、最後の一撃を託す。
 二人の意思を受け取った少女は斧をふたたび振りあげ、其処に全力を込めた。
「見ていてください、邪悪に貶められた貴方たちの無念、わたしが晴らします!」
 そして、一瞬後。
 蒼空色の刃に両断された狐の霊が揺らぎ、その姿は静かに消えていった。
 ソラスティベルは顔をあげてイアと百華の方に振り向く。目の前の敵を全て倒したというちいさな安堵を確かめあう中、交わした視線は互いにこう語っていた。
 未だ戦いは終わっていない、と――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユーリ・ヴォルフ
アドリブ共闘大歓迎です

強制的に霊を呪縛し我が物のように操るとは…
怨霊姫の罪は重いな
今は打ち倒すことこそが、狐達への救済となるのかもしれない
全身全霊でもってお相手致そう!

【範囲攻撃】【属性攻撃】で複数の火の玉を作りあげ狐へと投じる
攻撃を予測するならば手数を増やして逃げ場を封じよう
波動で槍を落とされないよう注意し攻撃を掻る
鬼火は避けられぬなら
【激痛耐性】【勇気】【火炎耐性】でいっそ覚悟して飛び込もう

懐まで迫れば【ドラゴニアン・チェイン】で行動を封じ
至近から渾身の【ドラゴニック・エンド】をぶつける
貴殿はもう十分に戦った…十分すぎる程に
この神社は、私達猟兵が解放する
後の事は任せて、見守っていてくれ


ヒビキ・イーンヴァル
これ、めっちゃ嫌われてる感じがする
何がそんなに憎いんだろうな
まあ、考えても詮無きことではあるが
せめてこれ以上怨霊の言いなりにならなくてもいいように
……倒すだけ、だな

目には目を、火には火を、ってことで
『高速詠唱』からの『2回攻撃』を狙って『蒼き焔よ躍れ、嵐の如く』で攻撃
炎は全部ばらけさせて、様々な角度から撃つ
数撃てば当たるってな
当たらなくても、牽制用にしばらく炎を投げ続けるか
狐たちの注意を引き付けていれば、他の猟兵も攻撃しやすいだろう
背後を取られないように、立ち回りには注意だな


雛月・朔
ヤドリガミの肉体で参加
主武器:薙刀、くない、念動力、【WIZ判定】
UC:棚から牡丹餅
アドリブ&他PCとの絡み歓迎
【心情】
森では思い通りにはいかなかったですね。まぁ失敗は成功の糧です、切り替えましょう。
敵の根城に着きましたね。狐さんに恨みはないので、せめて安らかに眠れるようにせねば。
【行動】
心眼や見えない神通力が厄介ですね、どの狐がどう行動しているか見分けを付けるのも難しいでしょうし、どうしたものか…。
良い作戦が思いつかないのでUCを使い続け前衛で粘ろうかと。
大振りの薙刀での攻撃は避けて、くないと念動力で各個撃破を狙います。
『私だって常日頃念動力を鍛えているんです、御使いさんにも負けませんよ!』



●感情の行先
 憎しみ、そして哀しみ。
 目の前に立ち塞がる狐霊達からは奇妙に入り混じる感情が見え隠れしていた。
「強制的に霊を呪縛し我が物のように操るとは……」
 ユーリは狐霊達を操る怨霊の姫を思い、その罪の重さに胸を痛める。だが、それだからといって敵となった狐達に容赦はできない。
 ヒビキもまた、向けられる憎しみを肌で感じていた。
「何がそんなに憎いんだろうな」
 おそらくは眠りを妨げられたことや社を乗っ取られたことに対する憤りが変容し、此方に向いているのだろう。考えても詮無きことではあるとヒビキが頭を振ると、身構えている朔も静かに頷いてみせた。
「狐さんに恨みはないので、せめて安らかに眠れるようにせねば」
 森では思い通りにはいかなかったが、今は失敗するわけにはいかない。失敗は成功の糧だとして前向きに考え直した朔は仲間に呼びかける。
「来ます、気を付けてください!」
「ああ。全身全霊でもってお相手致そう!」
 ユーリがその声に答え、狐から放たれる鬼火をレーヴァティンで受け止める。炎を吸収した刃で火の子を打ち払ったユーリはそのまま数の火の玉を作りあげ狐へと放った。
 今は打ち倒すことこそが、狐達への救済となる。
 そう信じて戦うユーリの焔は敵を一気に包み込んだ。其処に続いたヒビキが高速の詠唱を紡いでいく。
「せめてこれ以上怨霊の言いなりにならなくてもいいように……倒すだけ、だな」
 目には目を、火には火を。
 恒星の如き蒼の炎が顕現し、狐の鬼火とぶつかりあう形で迸った。
 しかし其処に見えない波動が解き放たれる。ヒビキだけではなく、朔をも巻き込んだ衝撃波は激しく巡った。身体に鈍い痛みが響いたが、朔は何とか耐えてみせる。
「神通力が厄介ですね。どうしたものか……」
 次の攻撃に備えながら朔は首を傾げた。しかし妙案は浮かばず、それならばただ前線で粘るだけだという結論に至る。
 大丈夫かというユーリからの呼び声に朔は平気だと答え、薙刀を振るっていった。
 ユーリは一先ずの安堵を抱き、ファフニールを握る。
 更に迫り来る不可視の波動に対して身構えたユーリは竜槍を落とされないよう攻撃を掻い潜ってゆく。
 だが、別の狐霊がユーリに向けて鬼火を放つ。それらが直撃すると察したヒビキは咄嗟に蒼き焔を紡いだ。
「――其は荒れ狂う蒼き焔、我が意により燃え尽くせ」
 嵐の如く顕現した炎達は宙を舞い、様々な角度から鬼火を迎え撃つ。
 ユーリに襲い掛かる火だけを正確に打ち落とすことは不可能だが、数を撃てば当たる。そんな精神と考えもあって、勢いよく放たれたヒビキの蒼焔は見事に仲間を守ることに成功した。
 しかし、それらを擦り抜けた鬼火がユーリの眼前に迫る。
 避けられぬと感じた彼は覚悟を抱き、敢えて火に飛びんだ。激痛が走っても足は止めず、ユーリは狐霊との距離をひといきに詰める。
「貴殿はもう十分に戦った……十分すぎる程に」
 そして、突き放たれた槍の一閃は狐を深く貫いた。
 音もなく声すらあげることも叶わぬまま、首の無い狐霊が掻き消える。僅かに憎悪めいた感情が消えたと察し、ユーリとヒビキは新たな標的に目を向けた。
 其処には懸命に二体の敵を引き付け、戦う朔の姿がある。
「私だって常日頃念動力を鍛えているんです、御使いさんにも負けませんよ!」
 視えぬ波動にも怯まず、朔は力を揮った。
 その一撃が一体の狐の腕を斬り裂き、相手の体勢が大きく揺らいだ。朔は其処に出来た隙を見逃さず、ヒビキへと視線を送る。
「お願いします。今です!」
 朔からの合図を受けたヒビキは更に蒼き焔を紡ぎ、天球儀を模した杖を掲げた。
 狙うのは二体同時。
 魂を斬り放されたという彼らもきっと元は同じもの。その憎しみを断ち切るのが自分達の役目だとして、ヒビキは金と青の双眸を強く差し向けた。
「もう、恨まなくていい」
 自分達は真に悪しき者を斃しに来たのだと告げ、ヒビキは炎達を巨大なふたつの炎弾へと変える。そして、一気に解放したそれは二体の狐霊を激しく穿った。
 コン、と何処からから声が聞こえた。
 首の無い狐が最期に鳴いたのだと感じ、朔は倒れゆく彼らを見つめる。
「何とか倒せましたね」
 薙刀を下ろした朔の声を聞き、ユーリも槍を握り直した。
「この神社は、私達猟兵が解放する。後の事は任せて、見守っていてくれ」
 そして、ユーリは消えていった狐霊への思いを言葉にする。
 他の猟兵達の力もあって境内の狐霊達の数は徐々に減っている。きっとすぐに本殿にまで辿り着けると感じ、彼らは更に気を引き締めた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

冴島・類
こころ伺えぬ首の跡から
それでも、伝わるもの

目を逸らさず、見つめ返し
嘗て人と共にあった君達も
ぼくも、元は何も違いやしない

今は、走れば、振るえば
君達に伸ばせるこの手がある
必ず、解き放つ

その為に…倒すと
思考を読まれぬ為鏡面のよに心鎮め
戦闘開始次第

鬼火は出来るだけ避けたいのと
複数に狙われぬよう
操る瓜江によるフェイント交えながら
尾の動きに注意し近づき

破魔の力宿す武器で薙ぎ払い、攻撃し
体制崩し、味方猟兵との連携意識
刀届かぬ位置で
味方が背後取られたりを発見したり
尾での攻撃以外の挙動が見えれば
【手向けの嵐】にて攻撃
憎しみごと、包み
味方の立て直しや隙を作る数秒を作れるよう

その口惜しさも、持っていく

アドリブ歓迎


ヴァーリャ・スネシュコヴァ
狐たちに恨みはないし、このまま敵の言いなりでは悲しい…と思う。
だが俺たちは、君たちの為にもここで止まるわけにはいかないのだ!

心を読んでくる相手のようだが、俺が敵より早く動けばいいだけのこと!
【ダッシュ】と【残像】で目にも留まらぬ速さで動きつつ、【先制攻撃】+氷の【属性攻撃】で周囲の敵を真っ先に攻撃するぞ。
敵が攻撃に怯んだ隙をつき、【2回攻撃】+『雪娘の靴』で、スピンを応用した手数の多い攻撃を仕掛け、一網打尽を狙うぞ!
回避は【第六感】で察知、来る攻撃に合わせて臨機応変に対応する。

君たちの恨みは必ず果たす、だから今しばらくはここで眠っていてくれ!

(引き続きアドリブや他PCさんとの絡み等大歓迎です)


朽守・カスカ
首を奪われ、その本質を憎悪によって捻じ曲げられたか

耳が無ければ声は届かないだろう
けれど、私は君の敵でなければ
社に害をなす者でもない
通しては、くれないだろうか
……語りかけたとて無駄だろうし
倒すことには変わりない
でも、伝えておこう

【幽かな標】
仇の僕となってなお
自らの務めを果たそうとする君達に
勝手に安らかにと願うのは
傲慢だろうか

恨み尽きるまで存分に力を振るうといい
全て受けていなすよ

君達の憎悪は必ず届け、報いは受けさせるよ
全てを出し切ったのなら
今度は苦しみ少なく送るから
あとは私達に任せて
どうか安らかに眠るといい



●貫く氷と散りゆく花灯
 往く手を阻み、毛を逆立てる狐霊達。
 ヴァーリャとカスカ、そして類。三人は現在、四体の狐と対峙していた。それらは首を奪われ、魂を捩じり切られ、その本質を憎悪によって捻じ曲げられたもの。
 耳すらない彼らに此方の声が届くとは思えない。だが、カスカは語り掛けずにはいられなかった。
「通しては、くれないだろうか」
 自分達は君の敵でなければ、社に害をなす者でもない。
 問い掛けたカスカとて無駄だと知っている。結局は倒すことには変わりないと分かっていても、ただ伝えておきたかった。
 ヴァーリャはカスカの気持ちを感じ取り、敵意を向け続ける狐達に菫眸を向ける。
「君たちに恨みはないし、このまま敵の言いなりでは悲しいな……」
 巡った悲しみにしゅんと俯けばヴァーリャの髪がへたりと揺れた。
 類もまた、目を逸らさずに敵を見つめ返す。こころ伺えぬ首。視線も声も届かず感じられぬ痕。だが、それでも伝わるものがあった。
「嘗て人と共にあった君達もぼくも、元は何も違いやしない」
 独り言ちるような言の葉を落とした類は短刀を握る手に、僅かに力を込めた。そして、銀杏色の組紐飾りが冬風に揺れた瞬間、戦いは始まりを迎える。
 狐が呼び起こした鬼火が解き放たれたと察し、ヴァーリャは地面を蹴った。抱く悲しさも、向けられた憎しみも今は押し込めて、受け止めるだけ。
「俺たちは、君たちの為にもここで止まるわけにはいかないのだ!」
 敵は心眼を此方に差し向けているがヴァーリャは怯まない。動きを読んでくる相手だとしても自分が早く動けばいいだけのこと。
 鬼火を身を翻して避けたヴァーリャは氷の一閃を叩き込む。
 一撃目は見事に敵を穿つ。しかし、別の狐が不可視の波動を此方に放ってきたことで鋭い衝撃が幾度もヴャーリャや類の身を穿つ。
 されどカスカはランタンが示す幽かな灯を頼りに、何とか衝撃波を躱した。
「仇の僕となってなお、自らの務めを果たそうとする君達に……」
 勝手に安らかにと願うのは傲慢だろうか。
 最後まで思いを言い切ることなく胸中に秘めたカスカは、ガジェットを構える。同時に体勢を立て直した類も気を引き締めた。
 今は、走れば、振るえば君達に伸ばせるこの手がある。
「必ず、解き放つ。その為に……倒すよ」
 カスカ達に呼び掛け、そして自分にも言い聞かせるように類は心を鎮めた。
 鏡面の如く、凛とした眼差しで狐達を見つめた類は濡羽色の髪持つ絡繰人形、瓜江を操る。十指に繋いだ赤糸が動けば、瓜江は飛び交う鬼火をその腕で祓う。
 そして、ヴァーリャとカスカも反撃に入った。
「全部、君たちの為なんだ。ということで遠慮はしないぞ!」
「恨み尽きるまで存分に力を振るうといい。全て受けていなすよ」
 辛い気持ちは余所へ遣り、ヴァーリャは地を滑るように華麗に駆ける。彼女が攻撃を放つ隙を作る為にカスカが敵の前へと身を躍らせ、鬼火を引き付けた。
 頼むぞ、と告げたヴァーリャに頷きを返したカスカはランタンを掲げ、その灯が示す先へと身を翻す。
 ひとつ、ふたつと鬼火がカスカに纏わりつくが、カスカはそれらを躱す。
 その間にヴァーリャが跳躍し、靴裏に作り上げた氷刃で以て蹴撃を叩き込んだ。更には其処へ類による破魔の一閃が重なる。
 囮と鋭い一閃、追撃。三人の息のあった動きは見事に狐霊をその場に伏せさせた。
 しかしそのとき、類は別の狐の尾が揺らいだことに気付く。
 枯れ尾花の名を抱く短刀を握った類は仲間に目配せを送り、不可視の衝撃に対抗する力を紡いだ。
 ――雪溶けて。咲け、常春。
 詠唱の言の葉と共に刃が山桜の花と成り、波動を打ち消す形で迸る。
「その口惜しさも、持っていく」
 それは手向けの嵐。
 妖狐達に向かう花の奔流はまるで憎しみごと包みこんでいくかのよう。
「君達の憎悪は必ず届け、報いは受けさせるよ」
 カスカは花の嵐に続けるようにと銃型のガジェットの引鉄に指をかける。合わせて動いたヴァーリャもカスカ達と同じ願い抱き、氷の魔力を紡いでいった。
 憎しみは深く、その感情は今もこの場に満ちている。だが、だからこそ受け止めたいとカスカは願った。
「あとは私達に任せて。どうか安らかに眠るといい」
 全てを出し切ったならば今度は苦しみは少なく送ってみせよう。カスカの撃ち放った銃弾は透き通った色の炎と成り、戦場に広がった。
 カスカが二体の狐霊を穿ったと察し、ヴァーリャは最後の一体に狙いを定める。
「君たちの恨みは必ず果たす、だから今しばらくはここで眠っていてくれ!」
 放つのは全力全開の一閃。
 接敵から振りあげられる爪先。宙を滑る氷の刃は恨みの感情ごと斬り裂くが如く、狐霊の身を貫いた。
 そして類による山桜の花弁が散り終わった後、全ての狐がその場に伏す。
 これで首魁への道はひらけた。
 薄れて消えていく狐霊を一度だけ見遣ってから類達は顔をあげる。
 憎しみも、口惜しさもすべて、この手で消す。
 この先に待つ怨霊姫との戦いに向け、猟兵達は其々が抱く思いを巡らせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

花咲・まい
【POW】
嘗てを思うからこそ、今の在り方はやるせませんですね。
けれど、狐さんたちを思うなればこそ、この手で引導を渡してあげることが救いとなるかもしれませんです。

私は戦闘では【悪鬼礼賛】を使用しますです。
その怨嗟ごと、断ち切って見せますですよ。
見えない波動の攻撃は少し厄介かもしれませんですが、こういうときは意外と野生の勘が頼りになりますです!
私の生命力が尽きない限り、その憎悪は打ち払わせていただきますです。

近くに仲間がいれば、連携できるように気をつけますです。
武器も戦い方も大振りですが、私はちゃーんと気遣いもできる女ですから!

*使用技能:範囲攻撃、なぎ払い、野生の勘など
*連携とアドリブはご自由に


コーディリア・アレキサンダ
……ここは流石に、素通りさせてはくれなそうだね
いいよ、キミたちの憎悪はボクらがここで受け止めていく


《壊し、破るもの》による飽和攻撃だ
敵の攻撃を撃ち落とし、手数で攻め立てていく
予測しようと絶対に回避できないように追い込んでいく――という寸法だね

弾数が足らないなら、〈高速詠唱〉を用いて間髪入れずに連打
余裕なんて与えない。やるからには徹底的に、だ
悪魔らしく……相手が苦しまないように、ね


――それじゃあ一緒に行こうか
想いだけでも、キミが憎悪を向ける相手のところまで連れて行ってあげるよ
受け止める、と言ったろう? 悪魔は契約を守るんだ


花剣・耀子
未練かしら。
それとも、無念かしらね。
元が何であっても、今阻むというのなら圧し通るまでよ。

見える限り、剣先が届く限りの敵へ【《花剣》】。
先にあるものは全て斬り果たすわ。
躱されても、阻まれても、何度だって。
……神通力は厄介ね。
余力があれば、敵が操るものも斬っていくわね。
予想外の場所から不意打ちを喰らわないように気をつけましょう。
他の猟兵とも協力しながら、なるべく消耗を抑えて効率良く行くわ。

憐れみや慈悲が欲しいなら他を当たって頂戴。
でも、お前達がそれを求めているかは判らないわね。
何を求めているにしても、あたしはきっと、望むものはあげられないけれど。

ここで終わりにしましょう。
お疲れ様。おやすみなさい。



●思いと共に
 嘗てを思うからこそ、今の在り方は遣る瀬無い。
 まいは首の無い狐霊へと刃を向け、深く巡る憎悪の感情を受け止めた。
「狐さんたち、通してくれそうにありませんですね」
「……ここは流石に、素通りさせてはくれなそうだね」
 まいが敵を見据える中、魔法の箒に乗ったコーディリアも狐達を見遣る。
 此方の往く手を遮る狐は三体。空を飛んだまま翔けることは可能だが、無理矢理に抜けようものならば背を狙われるだろう。
 耀子は二人の言葉に頷き、自らも剣を構えた。
「未練かしら。それとも、無念かしらね」
 自分達が感じている負の感情は本来、別のものへと向けられるものだったのだろう。しかし耀子は、今はもうそんなことなど関係ないと感じていた。
 戦闘態勢を整えたまいも思うことは同じ。
「狐さんたちを思うなればこそ、戦います。きっと、この手で引導を渡してあげることが救いとなるかもしれないですから!」
 大刀、加々知丸を振りあげたまいは一気に敵との距離を詰めた。
 紫電が弾け、一閃が狐霊を穿とうと迫る。しかし、心眼によってまいの動きを読んだ狐は後方に跳んだ。
 一閃目で斬れなかったことに目を瞬かせたまいだが、更なる一撃を振るう為に踏み込む。その動きを瞳で追いながらコーディリアも呪詛を紡いだ。
「いいよ、キミたちの憎悪はボクらがここで受け止めていく」
 その身に宿る悪魔、破壊の黒鳥を顕現させたコーディリアは敵にそう宣言した。
 解き放つのは――《壊し、破るもの》。
 追尾し続ける弾丸となった力は狐霊達に襲い掛かってゆく。幾つかは避けられたが、幾重もの黒き衝撃となったそれらは決して敵を逃さない。
 耀子も二人に続き、己の意思を攻撃へと変えてゆく。
「元が何であっても、今阻むというのなら圧し通るまでよ」
 振るった剣から広がるようにして白刃が戦場に舞った。見える限り、剣先が届く限り放ち続けると決めた耀子の花剣は見据える先へと迸る。
 其処にあるものは全て斬り果たす。
 躱されても、阻まれても、何度だってこの力を揮うと決めていた。心眼の力で刃を避けられようとも耀子は少しも躊躇などしなかった。
 視えぬ衝撃波が敵から放たれようとも、唇を引き結んで耐える。
 耀子が果敢に戦う様を見遣ったまいも気合いを入れた。不可視の波動は煩わしいが、持ち前の勘で何とか回避に成功したまいはそのまま敵に突っ込む。
「その怨嗟ごと、断ち切って見せますですよ」
 振るう紫電の一閃で敵の鬼火を斬り裂き、まいは強く語った。そして、もう一度振り下ろした刃で以て狐霊の身を断ち切る。
 コーディリア達の力が相手を弱らせていたこともあり、重く確かな一撃は霊体を見る間に掻き消した。
 次ね、と二人に告げたコーディリアは箒で宙を翔け、放たれる鬼火を避ける。
 彼女の戦法は手数で敵を疲弊させること。一撃ずつは弱くとも、今は自分以外の猟兵達も多くいる。
「苦しむ前に屠ってあげよう……悪魔らしく、ね」
 余裕なんて与えない。やるからには徹底的にだと口にして、コーディリアはその力を更に織り成していった。
 戦場を舞う呪詛の弾丸がじわじわと妖狐の力を削る中、耀子も白刃を放つことで追撃としていく。その間にも狐達は鬼火や神通力を使って此方を攻撃してきた。
 厄介ね、と呟いた耀子は向かってくる炎と白刃を衝突させ、衝撃を削ぐ。
「憐れみや慈悲が欲しいなら他を当たって頂戴」
 首の無い狐達からは憎しみしか感じず、本当にそれを求めているかは判らなかった。けれどきっと、何を求めているにしても、望むものはあげられない。
「……あたしがあげられるのは終わりだけ」
 耀子は踏み込み、尾を激しく揺らす狐へと狙いを定めた。
 ――おやすみなさい。
 そう告げた次の瞬間、狐霊は耀子が振るった刃によって斬り裂かれる。
 二体目の狐が倒れたと気付き、まいは残る一体へと目を向けた。既に他の仲間達は狐を次々と撃破している。だから自分達も、と目の前の敵を見つめたまいは刀を握る手に力を込めた。
「私の生命力が尽きない限り、その憎悪は打ち払わせていただきますです」
 紡いだ言葉に恥じぬようまいは大刀を振り回す。
 一人では苦戦するかもしれない戦いも、共に往く仲間がいるからこそ上手く立ち回れると感じた。仲間の足を引っ張らぬようちゃんと気遣い、戦い続けるまいの中に敗北という言葉はない。
 そして、まいは全力の一閃を振り下ろした。
 それによって狐が揺らいだと察し、コーディリアは弾丸を撃ち放つ。力を削り取られた狐霊は崩れ落ち、その身はゆっくりと薄れていった。だが――。
「――それじゃあ一緒に行こうか」
 コーディリアは消える寸前の魂に手を伸ばし、そっと抱き寄せるように腕を引いた。すると魂の欠片が彼女の手の中に残る。それは死霊術士としての力の賜物。
「想いだけでも、キミが憎悪を向ける相手のところまで連れて行ってあげるよ」
「わあ、そんなことができるのですね!」
 コーディリアが鬼火めいた形になった魂に呼び掛けると、まいが目を輝かせた。耀子も彼女の行動に首を傾げたが、すぐにそういうことかと納得する。
「本当に憎い怨霊姫の元に一緒に行く、ということかしら」
「受け止める、と言ったろう? 悪魔は契約を守るんだ」
 その通り、と告げて片目を瞑って見せたコーディリアは薄く笑む。
 だが、周囲を取り巻く悪意は未だ色濃い。いよいよ首魁に対面する時が近付いているのだと感じ、三人は改めて社の本殿を見つめた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雨糸・咲
都槻さん(f01786)と

――あぁ、やはり…
荒れ果てた社に嘆息する間も無く聞こえた哀しい声
奥歯をきりりと噛み、それでも目は逸らさずに

彼らは元々、人を守るものであったはず
無理矢理に爪牙を向けさせられるのは、
どれほど辛く、憤ろしいことでしょう

胸を刺す想いはあれど、口には上せず
頭に触れる優しい手にほんの少し気持ちが解け
傍らに立つひとへ、いきましょうと頷いて

都槻さんと呼吸を合わせ
フェイントをかけつつ高速詠唱で隙を突くよう動きます

真白い杖で宙に描く螺旋
巻き起こすのは煌めく虹の吹雪

…せめて最期は
美しい景色の中にいて欲しいのです

彼等の悲憤を、苦しい想いを
少しでも濯げますように

※アドリブ歓迎


都槻・綾
f01982/咲さん

まみえる狐霊の怨みは昏く
其れ以上に寂しくて

傍らできりりと前を向く真摯な眼差しに
淡く笑み
そっと頭を撫でる

頷きに応えて放つ、七縛符
せめて彼らが誰かを殺める前に
終わらせられたらと、先制攻撃

二回攻撃で確実に捕縛し
咲さんの援護

第六感を働かせ見切り
残像やフェイントで回避
声を掛け合い死角を補う
オーラで自他防御


狐の憎悪は
黒幕たる姫御前へ向けられたものか
操られた意識の儘、我々へ向いたものか

否、
大切な地を護り切れなかった自身を
嘆くかのようにも思えたから、

――もう泣くな、

囁きは
透き通る天雨の如き水纏う鳥葬に紛れ

怨嗟の苦しみで
己の身の裡さえも焼いているだろう狐らの
焔の鎮火を、願う

後には美しき虹の彩



●魂の還る先
 荒れ果てた社に嘆息する間も無く、聞こえた声は嘆きと哀しみに満ちていた。
「――あぁ、やはり……」
 咲は奥歯を噛み締め、されどきりりと前を向く。目を逸らさず敵を見据える彼女の傍ら、綾もまた狐霊達の昏い怨みの念を感じていた。
 だが、憐みや哀しみを感じる以上にとても寂しい感情が湧く。されど綾は咲の真摯な眼差しに淡く笑み、そっと頭を撫でた。
 彼らは元々、社や人を守るものであったはず。
 怨霊に操られて無理矢理に爪牙を向けさせられるのは、どれほど辛く、憤ろしいことなのだろうか。痛むほどに胸を刺す想いはあれど、咲は口にはしなかった。
 頭に触れる綾の優しい手の温もりに、ほんの少し気持ちが解けた気がする。そして、咲は傍らに立つひとへ、いきましょう、と頷いてみせた。
 綾も頷きに応え、七縛の符を手にする。
「せめて彼らが誰かを殺める前に――」
 終わらせられたらと、口にした綾は此方に向かってくる狐霊へと符を放った。
 迫り来る敵は二体。そして、投げ放つ符も二枚。
 其々の妖狐へと封じの札を巡らせた綾に続き、咲も詠唱を紡いでゆく。
 飾り彫りが美しい、真白な杖で宙に描くのは螺旋。其処から放たれた煌めく虹の吹雪は戦場を彩るかのように舞う。
 そして咲は狐霊の動きを察知し、鬼火が来ることを彩に伝えた。
「都槻さん、来ます」
「ええ、心得ています。咲さんも気を付けて」
 互いに声を掛けた二人は死角を補いあう形で身構え、飛来する火に対抗する。咲は氷の精霊が宿る杖で鬼火を弾いていなした。綾はそれらの軌道を見切り、どうしても避けられぬものは防御陣で受け止めていく。
 そんな中、綾は考える。かの狐の憎悪は黒幕たる姫御前へ向けられたものか。それとも操られた意識の儘、我々へ向いたものなのか。
 否、大切な地を護り切れなかった自身を嘆きなのかもしれない。
 綾は地を蹴り、狐霊との距離を詰めた。そして、陰陽五行の力を展開した彼は狐達にそっと囁く。
「――もう泣くな、」
 その声は透き通る天雨の如き、水を纏う鳥葬に紛れて消えていく。疾てなる羽搏きは標的を貫き、その動きを阻むほどに激しく巡った。
 咲もまた、己の力を揮う為に杖を差し向ける。
「……せめて最期は、美しい景色の中にいて欲しいのです」
 彼等の悲憤を、苦しい想いを少しでも濯げたならば。そう願って放つ虹の吹雪は、薄い陽の光を反射しながら迸る。
 綾は更に其処へ自分の魔力を重ね、哀しき妖狐の力を削り取った。
 怨嗟の苦しみで己の身の裡さえも焼いているだろう狐達。その焔の鎮火を、魂の安寧を、ただ願いたかった。
 そして、美しき虹と彩りの羽搏きが交差した次の瞬間。
 コン、と何処からから鳴き声が聞こえた。
 それは耳に届いたのではなく、胸に直接語り掛けるような不思議な響き。やがて妖狐達はその場に伏し、崩れ落ちた身体は瞬く間に消失していった。
「魂が還ったのでしょうか」
 咲が消えていった狐への思いを言葉にすると、綾は先程まで彼らが居た場所を見下ろす。そうして、綾はそっと答えた。
「きっと、ね。最期の声はあんなにも――」
 穏やかだったのだから、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
■櫻宵(f02768)と
(アドリブ等歓迎

「首もなくて、囚われて、使われて。櫻宵……僕は彼等を解放したい」
桜の龍の手に触れる
感じる怨念も痛ましくて
嗚呼、死こそが救いだなんて

「君ならそういうと、思った。櫻宵、前は任せたよ。僕は後ろから君を守ろう」
僕だって君に、怪我をして欲しくないんだから
楽しげな櫻宵に微笑んでから
狐達を救う歌を紡ぐ
【歌唱】を活かして想いを込めて君達を送ろうか【光の歌】を聴いておくれ
桜の剣舞に合わせて歌おう
いくらでも歌って
【空中戦】と【野生の勘】を使って、攻撃は自分でかわせるように……櫻宵が僕を庇って、怪我するからね

もう、囚われていなくていいんだよ?
ほらお行き
君達が、いきたいところに


誘名・櫻宵
🌸リル(f10762)と一緒
アドリブ等歓迎

首のないお狐さん
囚われ可哀想にってリルが哀しむわね
うふふ
大丈夫、すぐに楽にしてあげるわ?
リルと約束したのよ
あなた達を『解放』するってね

この子に怪我はさせられない
リルを背に庇い前へでて
屠桜に纏う破魔
範囲攻撃を活かしてなぎ払う刃、添える衝撃波で……斬り伏せてあげる!
鍔迫り合いになれば怪力とグラップルで吹き飛ばして
傷口を抉るように何度でも斬りこむわ
あなたの怨念、丸ごと狩ってあげる

攻撃は見切りと第六感で躱し
残像でフェイントをかけられればいいわ

リルの歌に微笑んで
彼の想いも斬撃に乗せて踏み込んで――【鬼哭華】を

お狐さん?怨念とも今日でさようならよ
さぁ逝きなさい!



●桜に唄
 首もなく、魂は囚われて、悪しき存在にいいように使われて――。
 目の前に現れた狐霊を見つめた後、リルは僅かに俯く。
 嗚呼、死こそが救いだなんて、救われたと云えるのだろうか。淡い珊瑚の角が哀しげに揺れる中でリルは傍らのひとの名を呼んだ。
「櫻宵……僕は彼等を解放したい」
 桜の龍の手に触れてリルが願えば、櫻宵は勿論だと頷いてみせる。
 その間にも相手から向けられ続ける怨念は痛ましく、嘆かわしい程に感じられた。しかし、櫻宵は微笑みを絶やさずに標的を見つめる。
「首のないお狐さん達。うふふ。大丈夫、すぐに楽にしてあげるわ?」
 可哀想に、と哀しむリルとの約束は彼らを解放すること。その為に自分の力を揮うことなど容易いことだとして、櫻宵は屠桜に破魔の力を纏わせた。
「でも、この子に怪我はさせないわよ」
 自分を庇うように前に立った櫻宵の背を見つめ、リルは双眸を細めた。
「君ならそういうと、思った。櫻宵、前は任せたよ。僕は後ろから君を守ろう」
 僕だって君に、怪我をして欲しくない。
 そう告げたリルは改めて狐達を見据え、救う為の歌を紡ぎはじめた。
 戦場に現れた狐霊の数は多い。
 その中で此方に向かい来る敵の数は二体のみ。櫻宵は血桜の刀を差し向けてそれらを一気に迎え撃つ。
「来なさい……。斬り伏せてあげる!」
 薙ぎ払う刃に衝撃波を載せ、櫻宵は二体を同時に穿った。しかし片方は鬼火を、もう片方は不可視の波動を飛ばしてくる。
 その衝撃は後方のリルにまで影響を及ぼしそうなほどだったが、櫻宵の刃は鬼火ごと衝撃を斬り裂いていった。櫻宵が作ってくれている機を最大限に利用するべく、リルは破魔の光を纏う歌を織り成してゆく。
 想いを込め、桜の剣舞に合わせて歌う聲はとてもやさしい響きを孕んでいた。そしてリルは櫻宵にだけ負担はかけまいとして、ふわりと宙を游いで火を躱す。
 いくらでも、何処までも歌い続けよう。
 そんな気持ちを抱いたリルの歌を背にして、櫻宵は狐霊達と対峙していく。
 飛び掛かられそうになれば怪力を活かした腕を振るって吹き飛ばし、そのまま刃で斬り込みに駆ける。
「あなたの怨念、丸ごと狩ってあげる」
 残像を纏う一閃は傷口を抉りながら深い痛みを敵に与えていった。
 狐霊達からの攻撃も容赦なく、櫻宵の身を穿つ。だが、リルの歌が背を支えてくれている。櫻宵は彼の想いも斬撃に乗せていく心算で踏み込み、屠桜を振りあげた。
「お狐さん? 怨念とも今日でさようならよ。さぁ逝きなさい!」
 放たれたのは斬風を纏う大威力の剣戟。
 ひといきに二体を巻き込んだその一閃は彼らの終わりを飾るものとなる。リルは其処に更なる歌を紡ぎ、妖狐達を葬送していく。
「もう、囚われていなくていいんだよ? ほら、お行き」
 ――君達が、いきたいところに。
 淡くやさしい言の葉が落とされた後、狐霊は静かに消え去っていった。
 櫻宵とリルは顔をあげ、互いに視線を向ける。其処に言葉はなくとも意思は確かに伝わっていた。
 行こう。そして、行きましょう、と彼らの眸は語っている。
 そう、目指すのはただひとつ。この社を乱したすべての悪の根源の元。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『怨霊姫』

POW   :    怨霊乱舞
【無数の怨霊の群れ】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    怨霊傀儡
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【怨霊を憑依させることで、自らの傀儡】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
WIZ   :    怨霊家臣団
【レベル×1体の、怨霊武者】の霊を召喚する。これは【刀や槍】や【弓矢】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠天御鏡・百々です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●その名は怨霊姫
 社を護る狐霊を調伏した猟兵達は本殿の前に辿り着いた。
 ひらけた境内区域の先、数段ある階段の先には重々しい木造りの扉がある。この奥に首魁が控えているのだろうと感じた仲間達は身構えた。
 すると、扉が音もなくするすると開いてゆく。
「――わらわの可愛い狐共を蹴散らすとは、なかなかよのう」
 聞こえたのは愛らしい声色。それでいて突き刺すような冷たい色を孕んだ言葉は、其処から姿を現した黒髪の少女から発せられていた。
 その周囲には炎のように揺らめく魂が漂っている。
 彼女こそがこの地に棲み付いたという怨霊姫だ。
 まだいたいけな少女のようにも見えるが、相手は紛れもないオブリビオン。纏う雰囲気が彼女はただ者ではないことを示している。
「面白い。わらわに楯突く心算ならば覚悟するが良い」
 ふふ、と妖しく笑んだ怨霊姫は階段をゆっくりと降りて来た。そして、手にしていた華美な扇を天高く掲げる。
「我が家臣共――来やれ」
 その言葉と同時に本殿前のひらけた場所に怨霊の家臣団が姿を現す。
 それだけではなく、無数の人魂めいた怨霊の群れまでもが猟兵達の前に顕現した。扇を口許に当て、くすくすと笑った怨霊姫は数歩下がり、本殿の扉前に立つ。おそらくは高みの見物でもする心算なのだろう。
「さあさ、ものどもよ。無礼な輩を斬り裂き、魂ごと焼き尽くしてしまえ」
 鎧武者めいた家臣達の霊の表情は虚ろだ。
 おそらく彼らもまた、姫に囚われている魂達なのかもしれない。
 だが、姫を護るように布陣した彼らは戦う力を失わぬ限り、決して道を譲ろうとはしない。諸悪の根源である怨霊姫を倒すには間近まで接近する必要がある。
 それは次々と召喚される家臣や怨霊を完全に蹴散らさなければ成せないことだと察し、猟兵達は其々の力を揮うことを心に決めた。
雨糸・咲
都槻さん(f01786)と


立ち塞がる霊たちを見、
笑う少女を見て

貴女はまたそうして、望まぬ者を戦わせるの…
どこまでも卑怯で、穢い人

一人一人命があり、心があったはずの彼等
そこに気持ちが行かないわけではないけれど
ここで躊躇しても仕方がありませんから

都槻さんと協力し
互いに死角を補いつつ霊たちを斃していきます
第六感とフェイントで攻撃を避け
武者の手に得物があれば武器落とし
補助的な動きができればと

大勢に囲まれれば
杖の一振りで喚ぶ、氷の礫を抱く飄風
なるべくなら、ひと息に

狡猾で残忍なお姫様
――お遊びはもう、お終いです

空を斬る様に鋭く振った杖
燃え盛る焔の波で彼女の足元を攫いましょう

悪い夢が、早く終わりますように…


都槻・綾
f01982/咲さん

稚き見目でも無邪気とは程遠く
むしろ
邪気を孕むと明らかな辺りには
躊躇わずに在れますね

浮かべた淡い笑みは
姫の悪意に穢れた場と
使役されし魂達の悲しみを濯ぐ為に

急襲、死角に備え研ぎ澄ます第六感
自他オーラ防御

高速詠唱で星符を放つ
怨霊の歩を止める七縛符
飄風と呼吸を合わせた白梅の『花筐』
春告げの花を迷魂達へと手向けよう


孤独な姫君
力で捻じ伏せた従者も最早居ない

貴女にも嘗ては穏やかなる日々があったのでしょうか
幽境に還りたいと願う程の日常が
然れど
帰るべきは彼方の海

数多の命を軽んじた姫に花は贈らない
ただ
彷徨わずに逝けるよう
光纏う鳥葬で航路を標そう

森に煌くのは解放された魂達か
仄かな灯へ和らげる双眸



●風花
 哂う少女に数多の死霊達。
 立ち塞がる亡者の心は其処にはない。これまで戦ってきた魑魅魍魎や狐霊がそうであったように、あれらはただ遣われるものとして存在しているだけ。
「貴女はまたそうして、望まぬ者を戦わせるの……」
 咲は死霊の向こう側で高みの見物を決めている怨霊姫を見つめる。
 なんて――どこまでも卑怯で、穢い人。
 咲の傍で綾も敵を見据えていた。稚き見目でも無邪気とは程遠く、むしろ邪気しか見えぬその姿はオブリビオンそのもの。あれならば躊躇わずに在れると感じた綾は咲と頷きを交わし、口元を薄く緩める。
 それは姫の悪意に穢れた場と使役されし魂達の悲しみを濯ぐ為のもの。
 綾の眼差しが真剣であることを感じ取りながら、咲は綾と共に地を蹴った。雪霞を掲げて集わせた氷の属性を放ち、行く手を阻む武者霊を穿つ。
 それと同時に綾が星符を放った。
 武者達はそれによって動きを縛られ氷撃によって倒れていく。彼らも嘗ては一人一人に命があり、心があったはず。
 そこに気持ちが行かないわけではないが、躊躇しても仕方がない。
 それゆえに咲はすべてを終わらせるべく一撃ずつに全力を込めた。綾も彼女の思いを感じ取っており、二人は互いに死角を補う形で立ち回ってゆく。
 七縛の符は少しずつ綾の命を削りながらも怨霊の歩を止め、動きすら止める一手へと変わっていった。咲はその力に頼もしさを覚えつつも彼の瞳の奥に物悲しさめいたものを感じていた。
「くく……我が家臣をいくら倒そうが無駄なことよ」
 怨霊姫は綾達の方を見やり、扇をふたたび掲げる。すると開けたはずの道を阻むように新たな怨霊家臣が現れた。
「孤独な姫君ですね」
 綾は敢えてそう呟き、怨霊姫から瞳を逸らす。
 あれほどの家臣や魑魅魍魎を従えていようと彼女はたった独りに思えた。
 孤高の先の孤独とはああいったものなのだろうか。耳に届いた綾の言葉に顔を上げた咲もまだ遠き姫の姿を瞳に映した。
 しかし、刀を振り上げた武者達が二人に襲い来る。
 刃がその身を切り刻まんとして降ろされたが、綾は咄嗟に身を引いて避けた。されど別方向から来た武者の刃は避けられそうにない。
 その瞬間、綾と敵の間に割り込んだ咲が真白の杖を振るって武者の刃を弾き落とした。ありがとう、と礼を告げると咲がふわりと微笑む。
 敵は多いが二人でならば、そしてこの場に集った猟兵達と一緒なら押し負けることなど在り得ない。そう感じた咲達は呼吸を合わせ、目の前の敵を屠っていく。
「なるべくなら、ひと息に――参ります」
 白杖から放たれるのは氷の礫を抱く飄風風。そこに重なるように綾が降らせた白梅の花は社の中に広がっていった。
 春告げの花は迷魂達へと手向けられるかのように周囲を満たす。
 咲は彼が散らす花の行先を見据え、巡る戦いへの思いを抱いた。そして綾もまた、前を見据えて思いを廻らせる。
 かの姫女にも嘗ては穏やかなる日々があったのだろうか。
 幽境に還りたいと願う程の日常が――。
 然れど、過去に溺れしものが帰るべきは彼方の海。決して其れは逃れ得ないのだと語るが如く、彼等の眼差しは敵へと真直ぐに向けられていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

イア・エエングラ
その地獄で、何を為そうと、仰るかしら
這い出てまで、為したいものかな
立ち上る影へ視線を伏せて
細く息を吐いたら迷わずに

訊ねたとて僕がすることは、変わらないもの
さあ前征く方のため、道を拓きましょうな
幾ら数を揃えたとて駆ける彼らには敵わなかろ
ひとつふたつ、みっつ、指先で示して
かわいそうな子らを、おくるために
黒糸威で穿ちましょう
真直ぐ辿り着いて、お前を、討つために

起されてしまって、かわいそに
眠れないのでは、さみしかろう
それともお前も、さみしかったかしら
忘れられてひとりっきりで
嘗ての栄華も、朽ち果てて
かたちもぜんぶ、失くしてしまって

手伸べて貫いたら、次こそお仕舞
きっともう醒めることなく眠れるように


ヴァーリャ・スネシュコヴァ
あれが諸悪の根源というヤツか…。
倒して倒しまくるのは得意だ。張り切って道を開き、アイツに目にもの言わせてやろう!

まず【ダッシュ】で加速し、先陣を切る。家臣の霊たちの集団に突っ込んだ後、【先制攻撃】で家臣の霊を斬り倒す。
その後は周囲に集った霊たちを氷の【属性攻撃】を纏った武器で、手数の多い【2回攻撃】を繰り出し、霊たちをどんどんぶった斬るぞ!
それでも霊が無限湧きして物量に押されそうになった場合は、『霜の翁の怒り』を発動!周囲の敵を、強い冷気を放って一掃。怨霊姫の近くまで来ていたならば、ヤツにもダメージを与えることを狙う!

悪いがその手は通用しない、正々堂々勝負してもらおう!

(アドリブ、絡み大歓迎)



●黒槍氷域
 武者鎧が立てる重い音が響き、殺気が戦場に満ちる。
 弓に槍、刀を持った様々な臣下が猟兵達に敵意を向ける中、ヴァーリャは身構えながら最奥に控える怨霊姫を見つめていた。
「あれが諸悪の根源というヤツか……」
 真剣な眼差しを向けるヴァーリャの近くではイアも首魁を見据えている。
「その地獄で、何を為そうと、仰るかしら」
「決まっておろう。更なる地獄を作るのみよ」
 彼の声を聞き咎めた怨霊姫はくすくすと笑った。その声には悪意しか宿っておらず禍々しい気配が周囲に広がる。
 それに呼応して怨霊の家臣達もざわめいた気がしてヴァーリャは先手を取って駆け出した。家臣の霊たちの集団に突っ込む彼女はひといきに氷の剣を振るう。
「倒して倒しまくるのは得意だ。アイツに目にもの言わせてやろう!」
 威勢のいいヴァーリャの言葉に視線を返し、イアも敵に意識を向けた。そして、ぽつりと怨霊姫への言葉を零す。
「それは、這い出てまで、為したいものかな」
 立ち上る影へ視線を伏せ、イアは細く息を吐いた。そして、顔をあげた彼は迫り来る怨霊臣下達へと迷わずに指先を向ける。
 次の瞬間、死霊より紡いだ黒槍が刀を振りあげようとしていた武者を貫いた。
 敵が地面に倒れていく中、ヴァーリャも氷の一閃で標的を葬る。姫が放った鬼火めいた魂が近付こうとも怯みなどしない。
「どんどんぶった斬るぞ!」
 イアの黒き槍が一体、二体と敵の動きを止めていく様に頼もしさを覚え、ヴァーリャも冷気を纏わせた刃で怨霊達を斬り倒していった。
 先程の言葉は姫には届かなかっただろう。たとえ訊ねられたとて自分がすることは変わらないとイアは己を律する。
「さあ前征く方のため、道を拓きましょうな」
 幾ら数を揃えたとて駆けるヴァーリャや仲間達には敵わなかろう。
 ひとつふたつ、みっつ、と指先で示せば黒槍に貫かれた敵が倒れてゆく。彼らもまた、弄ばれた哀れな魂。かわいそうな子らをおくるために、と穿つ黒糸威は戦場に漆黒の軌跡を描いていった。
「こいつらも一緒なのだろうな……」
「起されてしまって、かわいそに。眠れないのでは、さみしかろう」
 ヴァーリャが口にしたのは魑魅魍魎や狐霊を思ってのことだろう。無念や憤り、そういったものが武者達からは感じられた。
 イアも瞳を伏せ、彼らを送る為の力を紡いでいく。
 ああ、もしかすれば――。
 かの姫君も寂しかったのかもしれない。
 過去の骸として忘れられてひとりっきり。嘗ての栄華も、朽ち果ててかたちもぜんぶ、失くしてしまった姫。その心は憎悪めいた何かで満たされている。
「もう少し、あと少しなのだ。もうちょっとで……!」
 ヴァーリャは武者や鬼火を振り払いながら怨霊姫のいる方を見据えた。
 未だ敵は多いが、先程よりも距離が縮まってきているのは確か。それならば、と敢えて危険な敵陣に飛び込む形でヴァーリャは跳んだ。
 仲間に被害が及ばぬよう、一瞬で降らせた霜は強い冷気となって周囲の敵を一掃した。その氷の欠片が僅かに怨霊姫に届く。
「……わらわに害を及ぼそうなど、無礼千万。兵共、来やれ!」
 冷気を受けた姫はそれ以上に冷たい眼差しをヴァーリャ達に向け更なる臣下達を呼び出した。だが、それもいつまでも続くまい。
 イアは武者達に指先を向け、ヴァーリャも身を引いて仲間達の元へ戻る。
 そして、イアは凛と言い放った。
「諦めるわけには、いかないものね。真直ぐ辿り着いて、お前を、討つために――」
 その為に此処にいるのだと告げれば敵と視線が交差する。
 戦いの行方は未だ、分からない。それでも戦い続けると決めた猟兵達の眼差しは強く、勝利という未来を見つめていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シュシュ・シュエット
朽ちるお社からこころが生まれることもあるはずですっ。
だから、ここを怨霊姫さんのおもちゃにはさせません!

ぶきみな森を駆けたり、たくさんのきつねさんとお手合わせしたり。
他の猟兵の皆さんも、少なからずお疲れだと思います……!
万全を期すため『生命賛歌の*勇気』を【シンフォニック・キュア】に込めて*歌唱。
連戦にそなえて皆さんを*鼓舞できたらうれしいですっ。
家臣団さんとの消耗戦になると思いますし、全力を発揮できるようサポートしましょう!

回復に問題なく、【怨霊傀儡】などで再利用されないようなら、
反撃として【大海の一滴】の発動を試みますっ。
この場面で家臣団さんを味方としてお借りできたら、きっと心強いはずです。


藏重・力子
怨霊姫か。……笑って、いる。何という奴だ
「永遠の沈黙を与えてくれよう」

武器や技には【破魔】の気を込めるぞ
怨霊家臣団の刀や槍相手には【2回攻撃】を交えてなぎなたで、
弓矢は【見切り】、『巫覡載霊の舞』の衝撃波で、それぞれ攻撃!
どちらも一気に【なぎ払い】である!

それと我はどうしても怨霊姫に一発でも当てねば気が済まぬ
「確かに我の攻撃がお主に届いたとしても、
我の武だけでは微々たるものであろ。だが」
姫への道が開けたら即、指で印を描き「『ぐどう』殿!我が盟友よ!」
『司鬼番来・元』!怨霊姫めがけ、召喚した巨腕を撃ち出す
「手加減は無用!力いっぱい張り倒してくれ!」

お主はそれだけの事をした
少しは痛みを知るがよい!


冴島・類
戦場に立つ者に、覚悟を問うなんて
聞いたところで…
貴女は笑むだけでしょうか

身を焼かれようと、構わない
ただ、それは
…周りに縛って連れた魂全てはがし解いて
相手が己自身で、向き合った場合なら、の話です
違うなら、別だ

呼び出された家臣の攻撃には
刀や弓矢の軌道を注視し【見切り】避け
傀儡による【フェイント】でこちらの動きを誤認させ誘導しながら薙ぎ払いにて応戦

全方向の攻撃で避けきれぬ際や
首魁の側に近づき、守りが激しくなったなら
【翅果の舞】使用
踏み込み
刀振り抜き届かせてみせる
解き放つ為なら削ってでも
倒し切る

貴女は…魂縛ったからには
斬られる覚悟はおありか

戦い終われば
姫の散る先は目を向けず

魂達の先へ
おかえり、おやすみ



●怨霊と姫君
 たとえこの社が朽ちゆくだけの運命だとしても、何もないわけではない。
 嘗ての歴史も此処がどうしてこうなったかの経緯もシュシュには何も分からなかった。それでも、この場所を悪意に染めたくない。
「こんなことって……ここから、こころが生まれることもあるはずですっ」
 シュシュは周囲を見渡し、境内を瞳に映した。
 類と力子も彼女と同じように社の前に現れた怨霊の臣下達に目を向ける。その奥には戦おうともせずに薄く笑みを浮かべ続ける姫の姿があった。
「戦場に立つ者に、覚悟を問うなんて……」
 何かを聞いたところで、彼女は妖しく笑み続けるだけだろう。
 類が頭を振ると、力子も怨霊姫に意識を向ける。
「……笑って、いる。何という奴だ」
 きっとあの姫の心の内は自分達には理解できない。それゆえに倒すしかないのだと感じた力子は仲間達に目配せを送った。
 此方に迫り来る怨霊武士達の目には心がないように思える。生前はあったであろう思いを奪い、ただの手駒と化しているのはあの怨霊姫。
 あんなものでこの場を満たしてはいけない。人々の思いが集っていたであろう社から、悲劇を生み出してはならない。
「――だから、ここを怨霊姫さんのおもちゃにはさせません!」
 シュシュは思いの丈を言葉へと変え、己の力を歌声に乗せてゆく。
 ぶきみな森を駆けたり、たくさんのきつねさんとお手合わせしたりと仲間達はかなり疲弊しているはず。それゆえに自分は皆を癒すのだと決め、シュシュは勇気を込めた生命賛歌を紡いでいった。
 類はその癒しを背に受けながら、怨霊武者達の群へと駆けていく。
 其処に続いた力子は手にした薙刀に破魔の力を籠め、敵から振り下ろされた刃を弾き返した。虚ろな瞳は此方を向いているが、何も見てはいない。
 それらはきっと、このままこの世に存在していてはいけないものだ。
「永遠の沈黙を与えてくれよう」
 力子は振るった刃から衝撃波を放ち、虚ろな家臣達を次々と穿つ。
 類も臣下から放たれた矢を身を引くことで避け、ひといきに走った。一瞬で弓を引く相手の懐へ潜り込んだ類は零距離からの一閃で以て敵を屠る。
 しかし、其処へ姫が放った無数の怨霊魂が解き放たれた。炎めいた人魂が類の身を焼かんとして突撃してくる。その様子に気付いたシュシュは紡ぐ歌に更なる力を籠め、仲間を癒していった。
 類は身体を支えてくれる歌の加護に感謝を抱きつつ、与えられた痛みに耐える。
「身を焼かれようと、構わない。ただ、それは……周りに縛って連れた魂全てはがし解いて相手が己自身で、向き合った場合なら、の話です」
 違うなら別だ、と怨霊姫への言葉を向けた類は刃を振るって人魂を振り払った。銀杏色の組紐が尾を引いて揺れる最中、力子も更なる攻勢に出る。
 臣下から放たれる弓矢は見切って見せ、巫覡の舞の力によって波動を解き放った力子は邪魔な怨霊達を一気に薙ぎ払った。
 一体、また一体と周囲の敵が倒れているが怨霊姫は次々に新たな武者を呼ぶ。
 家臣団との戦いはこれまで以上の消耗戦。
 そう感じたシュシュは自分が仲間を支え続けるのだと心に決め、戦場全体を見渡していく。この声が、この歌が、皆の力になるように――。
「皆さんが戦ってくれるから、わたしも歌い続けられますっ」
 鼓舞する意思は強く、そしてやさしく戦場に響き渡っていった。
 そうやって援護してくれるシュシュや仲間がいるからこそ、自分も全力を発揮できるのだと感じた類は翅果の舞で斬り込んでゆく。
 迫り来る怨霊武者は瓜江を放つことでフェイントをかけて躱す。
 こちらの動きに戸惑った敵を誘導した類は、横薙ぎに払う一閃で武者を倒した。少しずつではあるが首魁である姫への距離は縮まっている。
「もう少し――」
「くく……足掻け、醜く足掻け。どうせ、わらわの元には届かぬ」
 新手の臣下に類や力子が囲まれてゆく様を見遣り、怨霊姫は目を細めた。
 だが、たとえ今は遠くともいずれは届かせてみせる。解き放つ為なら削ってでも倒し切ると決めた類の眼差しは鋭かった。
 力子もまた、少しでも怨霊姫に近付かんとして敵を斬り伏せていく。
「確かに我の攻撃がお主に届いたとしても、我の武だけでは微々たるものであろ。だが――お主は独り。我らの力、侮るなかれ」
 孤高の怨霊姫に対し、猟兵達はたったひとりで戦っているわけではない。
 皆と力を合わせれば怨霊姫に一発――望むならば二発でも三発でも当てられると感じ、力子は社を見据えた。
 類も視線を決して怨霊姫から外さぬことでその意志を示している。
 シュシュは仲間達の強い思いを感じ取り、サンザシの杖を握り締めた。
 戦いは未だ続く。それでもきっと勝機は見えるはずだと信じ、猟兵達は己の力を揮い続けることを其々の胸に誓った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユーリ・ヴォルフ
アドリブ共闘大歓迎です

怨霊姫…容姿は美しくとも、その心は外道そのものだな
今すぐ魂たちを解放しろ!
聞かぬなら…力づくで打ち滅ぼして、強制的にその邪術を解除してくれる!

範囲攻撃、属性攻撃で自身の周囲に炎を纏い、炎の剣を用いて殺陣を行い道を剣で切り開く
刀とやらの剣技のキレは鋭いな…だが魂の籠らぬ技などは、痛くもない。哀れなだけだ

敵を蹴散らし道を開いたら、怨霊姫にドラゴニアン・チェインを叩きつけ拘束。もう逃しはしない。この場で引導を渡してくれる!

連携が取れるならサポートし、隙が有れば剣技で攻めよう。敵は強い。だが力を合わせれば勝機を掴めるはずだ。ここで、終わらせるー!


雛月・朔
ヤドリガミの肉体で参加
主武器:薙刀、念動力、【WIZ判定】
UC:絡みつく土蜘蛛の糸
アドリブ&他PCとの絡み歓迎
【心情】
ずいぶんと余裕のある様子ですね、こちらは戦いたくもない御使いさんや霊達と戦って憤っているというのに。

【行動】
家臣の霊には薙刀と念動力で迎撃。地道ですがあの怨霊姫が直接動かないのであれば温存しながら戦います。全力で叩き切りたいのはあの姫だけですから。

家臣の霊を突破できたら姫に向かって、
『無礼なのはどちらですか、追い詰められたネズミのようにみっともない姿を晒しなさい下衆が。』
と挑発しUC「絡みつく土蜘蛛の糸」の発動を試みます。
成功すればあとは余計な言葉を紡ぐ前にとどめを差します。



●巡りゆく戦いの中で
 彼女は人を人とも思わず、魂さえ力で支配する者。
 妖しい笑みを浮かべ続ける怨霊姫は遠く、そう簡単には近付けそうにない。朔とユーリは目の前に現れた怨霊臣下達を相手取りながら、首魁を思う。
「容姿は美しくとも、その心は外道そのものだな」
「本当に、ずいぶんと余裕のある様子ですね」
 ユーリが炎剣で弓矢を弾き返し、朔は薙刀で怨霊の火を斬り伏せた。
 こちらは戦いたくもない御使いさんや霊達と戦って憤っているというのに、と肩を竦めた朔はこれまで戦いを思い返す。
 魂の火に狐の霊。彼らは姫の支配下になければ戦わずに済んだもの達だ。
 そして、現在自分達を襲ってきている臣下武者達だってそうに違いない。ユーリは武者達の遥か奥に控える姫に目を向け、其方へ呼び掛ける。
「今すぐ魂たちを解放しろ!」
「解放? 何を言っておるのやら」
 だが、怨霊姫は悪びれもせずに首を傾げている。どうやら此方の言葉も思いもまったく聞く心算がないらしい。
「聞かぬなら……力尽くで打ち滅ぼして、強制的にその邪術を解除してくれる!」
 ユーリは裡に渦巻く憤りを言葉に変え、周囲の武者を薙ぎ倒した。
 彼らも哀れな霊魂達だ。
 たとえ生前に姫に忠誠を誓っていようとも死して尚もこのように尽くす必要などない。骸の海に還り、二度と戻らぬことこそが彼らの救いになるだろう。
 そのとき、ユーリの側面から怨霊が放った矢が飛来する。
「危ない……!」
 はっとした朔は其処に意識を手中させ、念動力で以て矢を止めてみせた。ユーリは朔に礼を告げ、レーヴァティンで周囲の敵を斬り伏せる。
 その炎は魂を浄化していくかの如く、戦場に揺らめく。
 されど怨霊達も次々と刀や槍を振るい、朔やユーリを傷付けていった。
「刀とやらの剣技のキレは鋭いな……だが、」
 ユーリは刀を剣で受け止め、暫し標的と鍔迫り合う。その間にも飛来する矢が腕を貫いたが、ユーリは決して揺らがなかった。
「魂の籠らぬ技などは、痛くもない」
 哀れなだけだ、と彼が告げた刹那、刀が弾き飛ばされ武者がその場に倒れる。
 朔もひとりだけが囲まれぬようユーリに近付く武者を衝撃波で吹き飛ばし、敵を退けていった。地道ではあるが、これもあの怨霊姫への道をひらく為の一手。
「今はまだ温存すべきですね。全力で叩き切りたいのはあの姫だけですから」
 朔の言葉にユーリが頷き、敵へと踏み込む。
 姫は動いていないとはいえどこの臣下達を操るのも彼女の力だ。きっと無限に湧き出るものではないはず。
 いずれは姫の力も弱まる時が来ると考え、ユーリは機を窺った。
「敵は強い。だが力を合わせれば勝機を掴めるはずだ」
 その為にも仲間と共に戦い続けるのみ。
 飛び交う矢。振るわれる剣。突き放たれる槍。そして、無念を訴えかけるように漂う鬼火の数々。それらに押し負けぬよう、猟兵達は巡る戦いへの意思を固めた。
 未だ勝負は半ば。それでもこの先に好機が巡ると信じて――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

朽守・カスカ
可愛い狐、か
……なるほど物言いといい、気にくわないな
だからこそ躊躇うこと無く戦えるとも言えるか
これ以上、魂が囚われることの無いようお前を倒す

【ガジェットショータイム】
個々に相手にはしていられない
蒸気ガトリングガンにも似たガジェットを取り出そう
撃ち出すものは塩の弾丸
この国では塩に清めの力があると聞いたから
乱暴な形となるが、これ以上囚われないよう
祓わせてもらう、よ

姫には横っ面を平手で叩くとしよう
その捻じ曲がった性根が
これで真っ直ぐになるとは思えないが
報いは受けさせると約束したからね

例え、魂だけとなっても
命を弄ぶさまは不愉快極まりない

全てが終われば
せめて社を綺麗にしておこう
少しでも魂が安らぐように


コーディリア・アレキサンダ
「わらわの」ね
キミがそう思っているのならボクはそれで構わないのだけれど
その狐達は別にそんなこと思っていなかったみたいだよ

……その「自分の力」だけでは戦わない姿勢、
ボク自身を見せられているようで嫌悪感を覚えるよ

こうならないように、気を付けないといけないね――ブラックウィッチ
相手の数が厄介だ。キミの力を借りるよ。


破壊の黒鳥へ魔力を回し、詠唱と共に『壊し、破るもの』を発動
弾幕で足を止めたところを、呪詛の弾丸で一体ずつ潰していこう

弾が足りないなら〈高速詠唱〉で即補填
破壊力が足らないなら複数の弾丸を束ねて一点突破。〈全力魔法〉というやつだね

狐達の呪詛も込めてある弾丸だ、一発ぐらいはその身で味わうといい



●荒振る弾丸の嵐
「……『わらわの』ね」
 怨霊姫の言葉を拾い、コーディリアは頭を振る。傍らに立つカスカも彼女の声に反応して妙な気持ちを覚えた。
「可愛い狐、か……なるほど物言いといい、気にくわないな」
 だが、だからこそ躊躇うこと無く戦えるとも言える。カスカが蒸気ガトリングガンを構えると、コーディリアも呪詛の魔力を形作っていく。
「キミがそう思っているのならボクはそれで構わないのだけれど、その狐達は別にそんなこと思っていなかったみたいだよ」
 コーディリアが姫に向けた言葉が届いたかどうかは分からない。だが、先程までの戦いで自分達は確かに感じていた。あの恨みや憤りは、主に忠誠を誓ったゆえのものではない。怨霊姫と狐霊の間にどのようなやり取りがあったかは想像する他ないが、無理矢理に従わされていたことだけは確かだ。
 目の前には虚ろな瞳の臣下達が迫ってきている。
 来るよ、と呼びかけたカスカの声に呼応する形でコーディリアは力を解き放った。
「――ブラックウィッチ。相手の数が厄介だ。キミの力を借りるよ」
「乱暴な形となるが、これ以上囚われないよう祓わせてもらう、よ」
 放たれたのは呪詛。そして、塩で構成された弾丸。
 この国では塩には清めの力があるとされる。怨霊武者達を葬送するのにこれほど相応しいものはないはずだ。
 双眸を細めたコーディリアも壊し、破るものの力を敵へとぶつけてゆく。
 しかし、気になることがあった。怨霊姫の自分の力だけでは戦わない姿勢。それはまるで自分自身を見せられているようで嫌悪感を覚える。
 こうならぬよう気を付けないと、と言葉にしない思いを秘めたコーディリアは己を律した。
 敵から矢が放たれ、槍を持った武者がカスカに一閃を放つ。
 しかし、すぐに身を翻して避けた彼女は槍を足で蹴り飛ばし、飛来した矢を銃身で受け止めた。そして銃爪を引き、容赦のない弾丸の雨を降らせていく。
 その標的すべてが哀しき操られしもの。それらに隠れるようにして立つ怨霊姫はなんと卑怯で忌々しいものか。
「例え、魂だけとなっても命を弄ぶさまは不愉快極まりないよ」
「最低限の敬意さえなっていないなんてね」
 カスカの言葉に頷き、コーディリアは怨霊姫が臣下に何の感情も持っていないことを指摘する。きっと彼女は彼らをただの道具としてしか見ていない。否、道具であったとしてももう少しは労るだろう。
 されど怨霊姫は臣下が倒れることなど気にも留めていない。
 コーディリアは破壊の黒鳥を羽撃かせ、カスカは清めの弾丸を撃ち放ち続けた。弾幕で足を止めたところを、弾丸で一体ずつ確実に屠っていく。
「これ以上、魂が囚われることの無いようお前を倒す」
 カスカがそう宣言すると、その声を聞き咎めた怨霊姫が冷たい眼差しを向ける。
「群れねば何も出来ぬ者どもが、偉そうに」
「その言葉、そっくりそのまま返させて貰うよ」
 姫の言葉にコーディリアが皮肉を返し、臣下達を穿っていく。
 弾が足りないなら更に紡ぎ、破壊力が足りぬならば複数の弾丸を束ねて一点に収束させる。二人の連携は鋭く、射程内の敵を見る前に屠っていった。
 どれほど戦いが激しくなろうと、首魁を倒すまではこの手を止めてはいけない。
 それが今此処に立っている自分達がやるべきことなのだと、カスカもコーディリアも知っている。そして――戦いは廻り、時は巡ってゆく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヒビキ・イーンヴァル
ほう、こいつはまた豪華なお出迎えなことだ
ここまでしてくれたんなら、こちらもそれなりの態度でお返ししなくちゃな

という訳で、怨霊どもに向かって『蒼き焔よ響け、天雷の如く』をぶっ放す
『範囲攻撃』で諸共巻き込ませる
派手に燃えてくれよ?
敵の攻撃を封じられたら、『高速詠唱』と『2回攻撃』でさらに畳み掛けて行こうか
怨霊姫に届くまで、ひたすら攻撃
とは言え、向こうもやられっぱなしじゃないだろうから、敵からの攻撃にも注意しておこう
攻撃されたら『武器受け』で防御
手近な奴ならそのまま剣で斬り倒すか

この辺りに住む人たちに迷惑かけたら駄目だろうって話で
被害が出る前で良かった


逢坂・宵
おやおや、見目麗しいお姫さまですね
嫌いではないですよ、その美しいかんばせが絶望に歪むところを見たくなる
―――とはいえ、油断は禁物です。さてさて、今回は仲間のサポートと援護に回りましょうか

家臣や怨霊の対応に当たりましょう
僕は少数対多数の戦いはとても得意なんです
お姫さま狙いの方々はどうぞ、そちらに集中なさってください
斜線は塞ぎません。なにせ、流星ですからね
さあ、クールに、クレイジーに……まいりましょう

『属性攻撃』『2回攻撃』『高速詠唱』『全力魔法』を用いて
『天撃アストロフィジックス』で攻撃します
猟兵の仲間とも連携や協力をおこなっていきましょう



●星を紡ぐ者、星を喰らう者
 社の前に立ち塞がる怨霊達。そして、奥に控える怨霊の姫。
「おやおや、見目麗しいお姫さまですね」
「ほう、こいつはまた豪華なお出迎えなことだ」
 宵は姫を、ヒビキは怨霊武者達を見遣り、それぞれの思いを声にする。首魁の姫までの路は閉ざされており、武者をどうにかしなければ辿り着けない。
 しかしヒビキ達は怯んでなどいなかった。
「ここまでしてくれたんなら、こちらもそれなりの態度でお返ししなくちゃな」
 ――蒼き焔よ響け、天雷の如く。
 ヒビキが刃を振り下ろせば、蒼の炎が結界を作り出す。武者達が炎に包まれていく様を見た怨霊姫は、ほう、と感心するような声を上げた。
 その様子に気付いた宵は敵が此方を甘く見ているのだと察する。
「嫌いではないですよ、その美しいかんばせが絶望に歪むところを見たくなる――とはいえ、油断は禁物ですね」
 周囲を取り囲もうと迫る臣下達は無視できない。それらを散らすことが仲間の援護になると感じた宵は魔力を紡いでいく。
 瞬時に詠唱を終えた宵が解き放つ天撃は鋭い流星の矢となって戦場を翔けた。
 天から廻る星の軌跡が次々と敵を貫く最中、ヒビキもさらなる炎を巻き起こして臣下達を蹴散らしていく。
「派手に燃えてくれよ?」
 ヒビキが炎に炎を重ねていくと、武者臣下の動きが阻まれた。
 其処を狙った宵が幾重もの星の矢を放って怨霊兵を倒していく。少数対多数の戦いが得意と自負する通り、宵の手際は見事なものだ。
 ヒビキと宵は互いに協力しあいながら敵を蹴散らし、仲間達が進む路を切り開いていく。されど怨霊姫も簡単に自分に到達させる気はないらしく、新たな臣下を呼ぶことで猟兵達を阻む。
 その度に虚ろな瞳の武者達が行く手を遮ったが、宵は余裕を保っていた。
「お姫さま狙いの方々はどうぞ、そちらに集中なさってください。斜線は塞ぎません。なにせ、流星ですからね」
 微かに笑んで見せた宵は敵へとアストロラーベを模した杖を向ける。
 流れる星の煌めきが戦場を舞う中、ヒビキを狙った弓矢が放たれた。飛来する矢を剣で弾いたヒビキだったが、別方向からの一閃が肩を掠める。
 鋭い痛みが走ったがヒビキは其方へと目を向けた。槍を持った武者が更なる一撃を放とうとしていることを察し、槍を星喰の蒼剣で受け止めた。
 そのまま刃を打ち払い、ヒビキは蒼き輝きを見せる剣で敵を斬り伏せる。
「増えるならばそれでいい。剣で斬り倒すだけだ」
 怨霊姫は未だ遠く、ヒビキと宵は敵を見据えてその力を振るい続けた。
 どれほど敵が多くともこれまでだって数多の敵を乗り越えて此処まで来たのだ。標的が増えようとも今更だろう。
「さあ、まだこれからです。クールに、クレイジーに……まいりましょう」
 宵は共に戦う仲間達に呼びかけ、星の力を更に集わせる。
 戦い続ければ首魁への路も必ずひらく。ヒビキも静かに頷き、戦い続けることを誓う。この先に巡るのは勝利であると信じ、猟兵達は確りと前を見つめた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

誘名・櫻宵
🌸リル(f10762)と一緒
アドリブ等歓迎

あら!綺麗なお姫様!いいわいいわ!姫の首だなんて、ときめいちゃうわ!
リル!任せて
綺麗にして海に返してあげましょうね
首は貰うけど
リルがいるからあたしは強くなれるのよ?

あなたの凱歌を独り占め
気分がいいわ
リルを庇うように前へ
怨霊を前に微笑んで、刀には破魔を宿す
さぁ、踊りましょうか!
衝撃波にも破魔を宿して広範囲になぎ払い2回攻撃
手数は多い方がいいもの
斬り裂いて踏み込んで
攻撃は見切りで躱し
残像でフェイント

斬り放題は嬉しいけど埒があかないわ
リル……あなたの思い、受け取ったわ
ダッシュで一気に距離を縮めて『絶華』を
あの子の時間を減らす訳には行かないの

それじゃ
さよなら


リル・ルリ
■櫻宵(f02768)と
(アドリブ等歓迎

「あの人が、怨念の姫。嗚呼、魂の嘆きの歌が聴こえるみたい――櫻宵」
彼女を骸に返して、怨霊の歌をとめよう
この数の霊、櫻宵だけに負担を強いるわけにはいかないから
僕は僕の精一杯を尽くす

「ふふ、今度は姫の首?君は本当に、貪欲だね」
でも嫌いじゃないよそういう所
じゃあ、君が首を採れるように――歌おうか
君の為の凱歌を

【野生の勘】と【空中戦】で攻撃を察知して躱し【歌唱】を活かして歌うのは「星縛の歌」
君が命をかけるなら僕もかけよう

姫の術を封じて道を作るから――櫻宵
いっておいで
怨念も哀しみも
囚われる苦痛を
全て
斬り裂いてきて

僕が君の刃を届かせよう
それまで決して
歌うのをやめない



●歌聲がひらく路
 あら、綺麗なお姫様。
 それが怨霊姫を見た櫻宵の第一印象だ。しかしそれは陶酔めいたものではなく、倒すべき敵に向ける猟兵としての感情のうち。
 普段と変わらぬ様子の櫻宵の傍を游ぎ、リルも怨霊姫に意識を向ける。
「あの人が、怨念の姫。嗚呼、魂の嘆きの歌が聴こえるみたい――櫻宵」
 渦巻く念が周囲に満ちていく中、リルはその名を呼ぶ。そしてこれまで伝えてきた思いと同じように自らの意思を示した。
「彼女を骸に返して、怨霊の歌をとめよう」
「わかっているわ、リル! 任せて!」
 すると櫻宵は明るく笑んで見せ、刀に破魔を宿す。その姿は頼もしく感じるが霊の数は相当なもの。櫻宵だけに負担を強いるわけにはいかない。
 僕は僕の精一杯を尽くすのだと己を律し、リルは心を研ぎ澄ませた。
 そして、襲い来る怨霊臣下達。
 彼らに先手を取られまいとして櫻宵が駈け、血桜の刀を振り下ろす。敵が振るった槍を弾き、切り返した刃で下から上へと斬り上げる。そうすれば敵は力を失って倒れ、一瞬で消えていった。
 櫻宵は迫り来る敵を一刀で薙ぎ倒して道を開いていく。その先で妖しく笑み続ける姫を見遣り櫻宵は双眸を細めた。
「いいわいいわ! 姫の首だなんて、ときめいちゃうわ!」
「ふふ、今度は姫の首? 君は本当に、貪欲だね」
 その声を聞いたリルは、でもそんな君も嫌いじゃないと付け加える。そうして、リルが歌うのは君の為の凱歌。
「じゃあ、君が首を採れるように――歌おうか」
 月光めいた彩を宿す尾鰭が揺れ、戦場に心地好い歌聲が響き渡る。希望の鐘を打ち鳴らす絢爛の力に背を押されている気がして、櫻宵は笑みを深めた。
 リルがいるからあたしは強くなれる。
 彼の凱歌を独り占め出来ているという今に気分も良くなり、普段以上に力を発揮することができそうだ。リルを庇うように前へ出た櫻宵は刀武者へと斬りかかり、鍔迫り合う。しかしそれも一瞬のこと。
 歌の力が巡り、櫻宵は武者を勢いのままに弾き飛ばす。
 しかしそのとき、敵の後方で弓を引く武者の姿が見えた。その狙いがリルに向けられていると察した櫻宵は地を蹴り、飛来する矢を屠桜で受け止める。
 だが、防ぎきれなかった矢がリルの尾鰭に迫った。いけない、と櫻宵がそちらに視線を向けるがリルとてただ歌っているだけではない。
「大丈夫だよ、櫻宵」
 ひらりと尾を游がせて矢を弾き、リルは宙に舞う。その動きは華麗で優雅に、次々と放たられる矢をも退けて躱す勢いだ。
 心配は要らぬのだと察し、櫻宵は怨霊に意識を向け直して微笑む。
「さぁ、踊りましょうか!」
 放つ衝撃波に宿した破魔は怨霊達を浄化する為の力。斬り裂き、踏み込み、攻撃を受け流して反撃に入る。櫻宵は吶喊し、リルはその背を歌で支えていく。
 二人の連携は見事なものだが、怨霊姫は次々と新たな臣下や鬼火を呼んだ。
「斬り放題は嬉しいけど埒があかないわ」
「そうだね。……それなら、こうしよう」
 徐々に首魁に近付いているとはいえど臣下達の数は増えるばかり。櫻宵が刃を的に差し向ける中、リルは星縛の歌を紡ぎ始めた。
 ――君が命をかけるなら僕もかけよう。
 それは命を削るが故に強力な、敵の動きを阻む為の歌。歌声と共に舞い踊る星の耀は瞬く間に戦場に舞った。
 その星の煌めきを目で追い、櫻宵は戦場を駆け抜ける。
「リル……あなたの思い、受け取ったわ」
 あと少しで首魁に届く。リルが作ってくれる道があるからこそ手が届くのだと感じ、櫻宵は全力を賭して征くことを心に決めた。
 そして、戦いは廻り――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

花咲・まい
【WIZ】
なるほど、彼女こそが諸悪の根源。
いうなれば大将首といったところでありますですか。
うむむ、しかし周りにいる怨霊たちが確かに邪魔ですです……。
まずは皆さんが彼女に辿り着けるように、私は露払いに徹しますですよ。

戦闘に入ったら、私は【悪鬼万来】を使いますです。
門を喚び、怨霊たちに呪詛をかけて動きを封じてしまうですよ。
動けなくなった怨霊たちを夜叉丸くんでなぎ払うことに徹して、
大将首はその間にほかの猟兵さんたちが取ってくれると信じていますです!
皆さんで力を合わせて、怨霊姫の鼻を明かしてやりましょうですよ!

*使用技能:呪詛、なぎ払い、鼓舞など
*連携やアドリブはご自由にどうぞ


花剣・耀子
ほんとう、――良い性格だわ。
待っていなさい。
直ぐに辿り着いてあげる。

見える限り、届く限りの怨霊へ【《花剣》】
無数に呼び出すというのなら、無限に斬り続けましょう。
群れが行く手を阻む分だけあたしはそれを斬り果たす。
姫までの道を開けるわ。

生気がない。
意志がない。
ねえ、それでも道を塞ぐのは、忠義なの?
最後にそう在った姿の残映でしかないのかもしれないけれど。
ただ従わされているだけならば、あたしたちの行く手を阻むには足りないわよ。
此処で楽になって頂戴。

お前がどこの、どんな姫だったかは知らないわ。
でも、忠義を逆手に取る声が気に入らない。
そろそろ高みの見物は止めて貰おうかしら。
地に落ちて、骸の海に沈みなさい。



●散らす花と魂
「なるほど、彼女こそが諸悪の根源でありますですか」
 いうなれば大将首。
 最奥に控える怨霊姫を見遣ったまいは夜叉丸を構え、迫りくる怨霊武者達を薙ぎ払う。そのすぐ側では耀子が機械剣を振り下ろして花刃の嵐を巻き起こしていた。
 戦場に舞う白き刃は葬送の花の如く、怨霊を斬り散らす。
 狙いは武者へ、そして意識は怨霊の姫へ。
「ほんとう、――良い性格だわ。待っていなさい」
 直ぐに辿り着いてあげる、と未だ届かぬ怨霊姫に告げた耀子。うんうん、と彼女の思いに頷いたまいは更に刃を振り回す。
 襲い来る怨霊達を次々と斬り伏せていってはいるが、その数は脅威。放たれた矢を耀子が剣で弾き、まいも刀身で受けてからいなす。
 その間にも刀と槍を持つ武者達が二人に吶喊してきた。邪魔です、と敵を一刀のもとに薙ぎ払ったまいはぐっと意気込む。
 更には力の渦動を呪詛へと変え、門から放つ悪鬼の波動を周囲に満ちさせた。
「皆さんが彼女に辿り着けるように、私は露払いに徹しますですよ」
「ええ、無数に呼び出すというのなら、無限に斬り続けましょう」
 耀子も同意を示し、見える限り、届く限りの怨霊へと花剣の力を解き放っていく。
 敵が行く手を阻む分だけ斬り果たす。
 姫までの道を開けるのが役目だとして、少女達は其々に剣と力を揮っていった。
 臣下達には生気がない。そして、意志がない。虚ろな者達に目を向けた耀子は問いかけてみる。
「ねえ、それでも道を塞ぐのは、忠義なの?」
「……あ、うあ――」
 されど怨霊達は意味のない言葉を零しただけ。
 それは最後にそう在った姿の残映でしかないのかもしれない。けれど、ただ従わされているだけならば此方の行く手を阻むには足りない。
 敵の声を聞いたまいは其処にある苦痛を感じ取った。彼らはこの場にいてもただ苦しみ、戦い続けるだけしか出来ない存在。
「苦しんでいるみたいですね。それなら、今すぐに楽にしてあげますですよ!」
 門を喚び、怨霊に呪詛をかけたまいは標的の動きを封じる。
 身動きが取れぬ敵を一気に屠るべく、まいは夜叉丸を大きく振るった。武者達が吹き飛ばされると同時に消え、怨霊姫に至る路が開かれてゆく。
 姫は拙いと感じたのか新たな臣下を呼び始めた。
 しかし、徐々に猟兵と姫との距離は縮まっている。まいと耀子だけではなく此処に集った者達が怨霊や武者を穿ち、倒し、包囲網を狭めていっていた。
 対抗する弓使いの臣下は耀子に向けて鋭い矢を放つ。
 避けきれぬと判断した彼女は敢えて其方へ飛び込み、左腕に矢を受けながらも吶喊した。そして、解き放つのは零距離からの白刃。
「此処で楽になって頂戴」
 痛みに耐えながら顕現させた華めいた刃の嵐は広がり、周囲の敵を蹴散らす。
 大丈夫ですか、と問いかけたまいは矢が突き刺さったままの耀子の左側へと立ち、庇うように布陣した。
 平気よ、と答えた耀子に少しの安堵を見せ、まいは薙刀を構え直す。
 そうしてひといきに踏み込み、姫の前に立ち塞がる最後の武者へと刃を振り下ろした。一瞬で伏した敵に目を向けることなく、まいは怨霊姫を見つめる。
「とうとう追い詰めましたです!」
 周囲にはまい達と同じく、怨霊臣下を乗り越えて姫のもとまで辿り着いた猟兵達が集っている。たじろいだ姫が火の玉めいた怨霊を呼び寄せたが、それも耀子の花剣によって瞬く間に打ち落とされた。
 交差する視線。交わされる意志と意思。
 そして、終わりの刻がはじまる――。

●怨霊姫の最期
 臣下達が悉く蹴散らされ、怨霊姫は焦りの表情を浮かべていた。
「おのれ、調子に乗りおってからに……」
「さて、調子に乗られていたのはどちらでしょうか」
 宵は冷静な言葉を姫に向け、高速詠唱からの全力の天撃を打ち放つ。く、と痛みに耐える声が姫から零れ落ちた。これでやっと姫への直接攻撃が叶ったが、そう簡単に倒せる相手ではないこともわかっている。
「う、うぅ……お主達も傀儡にしてしまえれば……」
 怨霊姫は忌々しげに猟兵達を見遣った。誰か一人でも戦闘不能になっていれば彼女に操られる傀儡になったのかもしれない。だが、傷ついてはいても誰一人として膝を折ってなどいなかった。
「貴女は……魂縛ったからには斬られる覚悟はおありか」
「ふん、下賤の民の分際で!」
 翅果の舞で切り込んだ類が問いかけると、姫は扇で一閃を受け止めながら叫んだ。彼女は此方の問いに答える気もまともに取り合うつもりすらない。分かったのはたったそれだけ。
 そして怨霊姫は類に怨霊を解き放ち、再び臣下達を呼び寄せようとした。
 だが、シュシュが即座に動く。
「させませんっ!」
 家臣団からの攻撃はこれまでに幾度も防御してきた。それならきっと、できるはず。そう信じたシュシュが発動させたのはユーベルコード――大海の一滴。
 魔法のシャボン玉に映った家臣達はシュシュの味方となり、呼び出された武者達を薙ぎ払いながら姫へと突撃していく。
「な、何を……無礼者! 近寄るな!!」
 慌てる怨霊姫へと畳み掛けるならば今だと察し、朔は絡みつく土蜘蛛の糸を発動させた。
「無礼なのはどちらですか、追い詰められたネズミのようにみっともない姿を晒しなさい下衆が」
 挑発を交えた言葉を向ければ、姫の表情が歪む。
 すると動きを完全に封じる糸がその身を縛った。其処に続いたヴァーリャは追撃を加えに駆ける。朔が敵を絡め取り、シュシュが臣下達を味方につけているならば何も怖いものはない。
「悪いがその手は通用しない、正々堂々勝負してもらおう!」
 その言葉通り、真正面から氷刃を振り下ろしたヴァーリャは姫の身を裂く。美しい着物がはらりと散って姫の身から血が滲む。
 シュシュとヴァーリャが視線を交わし合う最中、力子も指で印を描いた。
「『ぐどう』殿! 我が盟友よ――手加減は無用、力いっぱい張り倒してくれ!」
 ――司鬼番来・元。
 召喚された一対の碧色の巨腕は力子の声に応えるようにして怨霊姫を穿つ。
「ひっ!? やめろ、わらわが何故こんな……」
「お主はそれだけの事をした! 少しは痛みを知るがよい!」
 吹き飛ばされた怨霊姫が悲鳴を上げる中、力子は強く言い放った。
 更にカスカが地を蹴って距離を詰め、右手を大きく振り上げる。ぱん、と乾いた音がして姫の頬が平手で叩かれた。
「くっ……何をする!」
「その捻じ曲がった性根がこれで真っ直ぐになるとは思えないが……」
 頬を押さえた怨霊姫はカスカを睨みつける。ガジェットでもユーベルコードでもないその一手はカスカの思いの丈でもあった。
 そして、其処へヒビキが蒼き炎の結界を解き放つ。
「危ないから下がってくれ」
 頼む、と告げたヒビキの言葉に頷いたカスカは身を引いた。そして蒼炎の結界は見る間に怨霊姫を包み込み、その動きをしかと阻む。
 其処に好機を感じ取ったコーディリアはとびきりの呪詛を形作っていく。
「狐達の呪詛も込めてある弾丸だ、一発ぐらいはその身で味わうといい」
 操られた家臣と魍魎、そして狐霊。
 それらすべての怨念と無念を込めるが如く、コーディリアは黒鳥と狐の力を宿らせた弾丸を解き放った。
 怨霊姫の身が穿たれ、苦痛に耐える声が響く。
 まいは其処に渦動の呪詛を重ね、共に戦う仲間達に呼びかけた。
「皆さんで力を合わせて、怨霊姫の鼻を明かして……それから、元の社に戻してあげましょうですよ!」
「そうね、終わりにしようかしら。きっともう醒めることなく眠れるように」
 イアは手を差し伸べ、黒糸威で標的を貫く。
 次こそお仕舞、と告げたイアに合わせてまいも門からの力を更に強めた。呻き苦しむ姫はもう何も出来ない。ただ憎悪の眼差しを此方に向けるだけ。
 耀子は其処に哀れさを感じたが、凛とした思いを言葉に変えてゆく。
「お前がどこの、どんな姫だったかは知らないわ。でも、忠義を逆手に取る声が気に入らない。――地に落ちて、骸の海に沈みなさい」
 もう高みの見物などさせやしない。
 耀子が放つ花剣の白き刃はすべて一点に収束し、怨霊姫を貫いていく。
 しかし、敵も足掻こうとして腕を伸ばした。その指先から新たな怨霊が生み出されるのだと気付いたユーリは一気に踏み込む。
「もう逃しはしない。この場で引導を渡してくれる! ここで、終わらせる――!」
 叩きつけるのはドラゴニアン・チェイン。竜の力は標的を取り巻き、縛り上げながらユーリと怨霊姫を強く繋いだ。
 拘束された姫が放とうしていた怨霊は薄れながら消える。
「おのれ、おのれおのれ……貴様らすべて怨んで、呪い殺して……っ!!」
 叫ぶ怨霊姫は暴れ、ユーリの竜鎖を解こうと足掻いた。
 しかし、相手が拘束から逃れる前に咲が動く。空を斬る様に鋭く振った杖から魔力が溢れ出し、戦場に炎が巻き起こった。
「狡猾で残忍なお姫様――お遊びはもう、お終いです」
「力で捻じ伏せた従者も最早居ないよ」
 其処に綾も機を合わせ、陰陽五行の力を開放する。
 燃え盛る焔の波、そして彩りに染む鳥の疾てなる羽搏きが姫の足元を攫った。
 数多の命を軽んじた姫に花は贈らない。ただ、彷徨わずに逝けるよう光纏う鳥葬で航路を標し、燃やし尽くすだけ。
 ――悪い夢が、早く終わりますように。
 願う咲は綾の隣に立ち、苦しむ怨霊姫をしっかりと見つめた。間もなく敵の力は尽き、戦いは終わる。
 決して目を逸らさぬと決めた咲達の思いを知り、リルもそっと頷いた。
 そして其処へリルが紡ぐ星縛の歌が響き渡り、燦めく力が姫を更に縛る。首魁の動きを止めたリルは信頼するひとへと言葉をかけた。
「――櫻宵、いっておいで」
 どうか、怨念も哀しみも囚われる苦痛も全て、斬り裂いてきて。
 僕が君の刃を届かせるから。それまで決して、歌うのをやめない。
 リルの思いを感じ取り、櫻宵は音もなく駆けた。あの子の、リルの時間を減らす訳にはいかない。彼は優しい子。それゆえに魂の安寧を願うために命を削ることすら厭わないのだろう。だから、その信頼には全力で応えよう。
「綺麗にして海に返してあげましょうね」
 首は貰うけど、と告げた櫻宵は姫の眼前にまで迫る。
 ――それじゃ、さよなら。
 そして、言葉と共に放たれた空間ごと断ち斬る不可視の剣は姫の首を斬り落とし、黄泉路へと参る一閃となって巡った。
 歌声が止んだ次の瞬間、ごとりと鈍い音が響いて頭と身体が転がる。
 そうして怨霊を纏う姫君は何の言葉も残すことなく、骸の海へと還って逝った。

●還りゆく魂
 社に本当の静けさが訪れ、猟兵達は其々に得物を下ろす。
 ヒビキは禍々しさの消えた周囲を見渡し、悪しき気配が消えたことを確かめる。
「被害が出る前で良かった」
 これで近隣の人々がオブリビオンに襲われる未来は潰えた。宵と朔は頷きを交わし、ヴァーリャとシュシュも軽いハイタッチを重ねる。
「大勝利だな。やったのだ!」
「皆さんと一緒だからがんばれましたっ!」
 少女達が喜ぶ様子を見ていたユーリも安堵を抱いた。力子は社を見上げ、まいも仲間に倣って古びた社をじっと眺めてみる。此処も風情があるかしら、とイアが目を眇めて本殿を見遣るとまいと力子はそっと微笑んでみせた。
 朽ちていく社であってもこれで元通り。
 けれど、と其方に歩み寄ったカスカは崩れかけた柱に手を伸ばした。
「せめて社を綺麗にしておこうと思うんだが、誰か一緒にどうかな」
 少しでも魂が安らぐように、とカスカが告げるとリルと櫻宵が手伝うと言って彼女の傍へと向かう。
 類も其方へと歩を進める。そんな中で社を見て思うのは魂達が往く先のこと。
「おかえり、おやすみ」
 そっと囁いた類の言の葉は骸海に還った者達へと向けるもの。
 耀子も瞳を伏せ、言葉にしない思いを裡に巡らせた。コーディリアも空を見上げて魂達の行方を思う。
 そのとき、何処からか鳴き声が聞こえた。
 ――コン。
 それは狐の聲にも似ていて、耀子とコーディリアは顔を見合わせる。咲もはっとして辺りを見渡したが、あったのは崩れた狐像の残骸だけ。
 その声からは怨嗟や怒りは感じられなかった。綾はきっとあの声が礼の代わりだったのだろうと察し、森へと目を向ける。
 森の向こう、空へと煌くのは解放された魂達が天に昇る軌跡だろうか。
 仄かな灯に双眸を和らげ、綾達は訪れた平穏をその身で感じていく。

 こうして、迷える魂は猟兵達の手によって鎮められた。
 忘れ去られた幽境であれど――此処には今、靜かで確かな平穏が満ちている。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月19日


挿絵イラスト