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雨降り鬼と刀喰い

#サムライエンパイア #猟書家の侵攻 #猟書家 #『刀狩』 #妖剣士

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●雨が降っている
 あめがふっている。
 川の流れる音がごうごうと、大きくなっている。
 お父様もお母様も起きてこない。
 眠ったまま、おきてこない。お外を見に行かなくちゃ。
 道場の雨どいに枯れ葉は詰まってないかしら。掃除しておかなくちゃ。
 そのまえに、きちんと傘をさして、寒くないように着込んで。
 ……それで?

 あれ、ふしぎ、家の中なのに、わたしは普通に廊下を歩いているのに。
 足が、ぴちゃぴちゃ、ぴちゃぴちゃと――。

 傘が少女のうしろで水音を立てて転がる。その音に、はっ、と気がついた。
 血の川じみた惨状に。斬り殺された両親に。気がついてしまった。
 自分が二人を斬り殺した。
 自分が。わたしが。おとうさま、おかあさま、ごめんなさい。ごめんなさい……。
 あやこは、ひとごろしになりました。

 先程まで確かに傘の柄だったはずの仕込み刀が、ぎらりと光る。
 血溜まりへ崩れ落ちた少女が鬼と化すまで、そう時間はかからなかった。

●グリモアベースにて
 その映像を、伊能龍己(鳳雛・f21577)は苦しげに見ていた。
 震える肩をどうにか落ち着けて、深呼吸ひとつ。そうして、猟兵達へ予知を話しだした。
「……先輩方。サムライエンパイアで、猟書家の一体が事件を起こしています」
 ひとり、ではなく。一体。グリモアの水鏡が映し出す映像が、泣き崩れる少女ではなく、傘だったはずの仕込み刀へ焦点を絞る。

「この刀に憑依しているのが、猟書家『刀狩』っす」
 血に曇る刃のなかで、すい、と白い竜の泳ぐ様が見えた。刀剣が突き立ったような羽をもつそれは、居心地良さげに、飛ぶような軽やかさで刃のなかを動き回っている。

「……こいつは、呪われた武器に憑依して、妖剣士さん……あやこさんを洗脳しています」
 洗脳前のタイミングは予知できなかった、と。龍己は悔しそうに俯いた。そのまま、『刀狩』の手口への説明へ移る。
 『刀狩』は洗脳した妖剣士に親しい者を殺させて、一瞬だけ、その悪夢から醒めさせる。
 自分が身内を殺しきった現実を改めて認識させることで再び深い絶望へ堕とし、最終的には配下に作り替える算段だ、と。苦々しい顔のまま、龍己は話す。
「洗脳から戻すには、この刀自体をあやこさんからどうにか離すしかねえっす。このひと、元々剣術をやっていたひとが、『刀狩』に強化させられた姿です。……強いっすけど。がんばって、ください。」
 まずは洗脳された妖剣士と戦い、どうにか消耗させて刀を落とさせる方がいいだろう。

「正気に戻ったあやこさんは、『刀狩』との戦いでも協力してくれると思うっす」
 『刀狩』のせいで両親を手にかけるに至った身は、復讐の意味も込めて助力をするだろう。悲し気に映像を見やって、龍己はぽつぽつと話した。

「猟書家の計画、止めないとですよね。……先輩方、よろしくお願いします。」
 水鏡がぐるりと渦を巻き、波紋の漂うゲートに変わる。

 血臭が漂い、少女の泣き声が聞こえてきた。


佃煮
 どうも、佃煮です。
 今回は猟書家関連のシナリオにご案内します。

●本シナリオについて
 幹部『刀狩』の待つ猟書家シナリオです。
 2章完結の特殊なシナリオとなります。

 第1章:vs『雨に濡れる少女』
 鬼となった妖剣士の少女、あやこが待つ屋敷での戦いです。
 この章をクリアするまで妖剣士は武器を落としません。
 クリアすると落として正気に戻ります。

 第2章:VS『刀狩』
 落とした刀から『刀狩』が現れ、決戦となります。
 正気を取り戻した妖剣士は、己の武器を(今度は正気の状態で)手に取り、およそ人間のそれとは考えられない程の力で幹部に襲いかかります。この戦闘の間のみ、猟兵にも匹敵する程の強さを経た妖剣士は、『刀狩』打倒に協力します。

●プレイングボーナス
 正気に返った妖剣士と共に戰う(第2章)

●妖剣士
 仕込み刀を使った剣術の修練を積んでいた、あやこという少女です。
 両親に大切に育てられ、きっちりと修練を積んだ真面目な子でした。
 だいすきな家を血で汚し、両親を手にかけた今、泣きながら鬼と化しました。

●刀狩
 猟書家です。
 かつて豊臣秀吉に仕えた、刀喰らいの妖怪。主君の血を引くクルセイダーに忠誠を誓っています。
 数多の妖剣士を鬼に変え、クルセイダーへ献上しようと企んでいます。
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第1章 ボス戦 『雨に濡れる少女』

POW   :    永久に乾かぬ雨
自身が戦闘で瀕死になると【悲しみの涙が凝固した妖魔】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    涙雨
【悲しみと恐怖】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
WIZ   :    尽きぬ雨
【雨の洪水】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠春日・陽子です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 屋敷の戸は開け放たれ、濃い血の匂いが漂っていた。誰かがひとつ足を踏み入れれば、ぴしゃり、と古くなった血溜まりが音を立てるだろう。
 両親の骸の前に座っていた少女が、ゆっくりと立ち上がった。映像では涙を流していたであろう目は前髪に隠れ、ふらりとした様子で刀を握る。
 仕込み刀の“仕込み”が無くなったとはいえ、手に持つそれの禍々しさは紛れもなく呪いの武器たりえるものだろう。
「わたしは、わるいこ。あやこは、わるいこ。わたしは、わたしは、……あら、おきゃくさまですか?」
 ぽつぽつと零れる声は、狂気の色を帯びていた。
黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流

猟書家ってどうしてこうなんだろ。
そういや話す武器が一般人に憑りついてって事が、まだただの武器だったころにあったっけな。
…胸糞悪い。

存在感を消し目立たない様に立ち回る。そして隙を見てマヒ攻撃を乗せた暗殺のUC剣刃一閃で攻撃。
武器で防がれても仕込み刀ならば鍔がないだろうから、うまく刃を滑らせて柄を握った手を直接狙う。
できれば怪我は避けたいけどある程度はやむなしと割り切る。助けられるものは助けたいから。
敵の攻撃は第六感で感知、見切りで回避。
回避しきれないものは本体で武器受けで受け流し、カウンターを叩き込む。
それでも喰らってしまうものは激痛耐性で耐える。




「ふふ、ふ。ふふふ。すみません。おきゃくさま。なんの、おかまいもできませんで。今おとうさまたちは……あああ、私が、わたし、わた、」
 両親の骸から視界を逸らし、流れ出て半ば固まったような血を踏んで立つ少女。
 泣きすぎて枯れたような声で、脈絡も何もない言葉。
 ぽつりぽつりと降るような譫言からは、両親を手にかけたことを確と認識してしまっているのが察せられた。
 ……このまま刀を握らせていては、敵の思惑通りに鬼に成り果ててしまうだろう。
 にんまりと満足げに嗤うかのように、あやこの構えた刀の中で『刀狩』が目を細めるのが、見えた。

 ぱしゃ、ぱしゃ。あやこが血溜まりを踏む足音が、乱れつつも速くなる。まるで跳び込むように鋭く入ってきた刃を躱し、返す刀で彼女の持つ刀を狙いながら。
 黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)はふつふつと泡立つ怒りをひとまず思考という形にするかのように、内心で独り言ちた。

(……胸糞悪い。猟書家ってどうしてこうなんだろ)
 狂気に堕ちた少女を――正しくは、その刃の中でこちらを余裕たっぷりに眺めている猟書家『刀狩』を。戦意と嫌悪の宿る眼差しでしかと見返す。
 武器に使われる、使われて凶事を働いてしまうひとの構図。彼がまだ人の身を得る前、只一振りのナイフだった頃のいつだかに。別の要因だったものの、どこか似た事件を見た気がする。その時も意識がはっきりとあれば、今と似た怒りを抱いていたのかもしれない。

 思考を遮るように胴を狙う刃を、黒鵺を使い寸前で受け止める。
 弾くより流す形であやこの刃を退けた瑞樹は、意識が黒鵺に向いたままの隙をつき、右手に握った胡で剣刃一閃を叩き込もうと、して。
 にまあ、と『刀狩』が嗤うのが見えた。刃の中に操られるようにあやこが刀を振るい、胡による一撃を受け止めたのだ。

 だが、瑞樹の刀は止まらない。あやこが持つ妖刀に鍔が無いことを利用して、彼女の刃伝いに滑らせるように軌道を変える。……狙いは、彼女が武器を持つ手。刃は狙い違わず突き刺さる。
「……!ああ、あああっ!」
 あやこが、わななくように声を漏らし、反射で手を放しかける。だが、不満げに口を閉じた『刀狩』により、操られるように刀を握り直してしまう。だが着実に鬼としての体力は削れているのだろう、彼女の足が血だまりに触れると、ずるりと妖魔が這い出てきた。両親の血と彼女の涙が固まったような半透明のそれが、同じ様に刀を造り出す。
 水の固まった刃は、少女自身のそれよりも速かった。それをぎりぎりのところで再び黒鵺で防ぎ、びりりと痺れる左腕を気にせず右の返す刀で切り裂けば、大きな水音と共に妖魔が苦悶の声を上げる。もう一撃当てると派手に飛沫が飛び散った。その向こうで、刀を持つ手をだらりと下げるあやこが見える。
 前髪の間から見えた目は、悲しみに沈んだ色。だが、狂気に染まれども、染まり切っていないと思えるのは。揺れる瞳がどこか猟兵達へ助けを求めているようにも見えたからだ。
(待ってて)
 聞こえていなくとも、瑞樹はそう口にする。
 助けるから。助けられるものは助けたいから。

成功 🔵​🔵​🔴​

外邨・蛍嘉
「」内はクルワ台詞。
蛍嘉の武器は藤色蛇の目傘、クルワは妖影刀『甚雨』。

UCのためにクルワ召喚。
「…ケイカ」
故郷とは似て違う世界だけど、放っておけないのさ。
「ワカリマシタ」
キミを悪い子に仕立て上げた奴に会いたいからね。最初から全力のUC攻撃さ。
「人に戻れるというのなら、戻したいのがワタシの気持ちデス」

相手からの攻撃は第六感で避けたいけど、屋敷に被害行くならあえて受けるのも手かね。
「無理しないでクダサイ、ケイカ」
いや、ここは無理するよ。私が兄に後で怒られるのも折り込み済みだ。
「…ワカリマシタ、付き合いマス」
そうそう、クルワは巻き込まれただけさ。

※クルワは蛍嘉の兄と『蛍嘉を守る』約束をしています。




 外でさあさあと降る雨音が収まって、屋敷の中から響くのは雨垂れの音。……正しくは、血雨の降った直後の音、なのだろう。
藤色蛇の目の傘をひとまず閉じて、外邨・蛍嘉(雪待天泉・f29452)は静かに屋敷の中へ踏み入った。雨音だけが響く屋敷がどことなく薄暗く見えるのは、先程の映像――操られた少女が両親を手にかけた光景――のこともあるのだろう。人の気配が減り、鬼の気配がちらちらと。そんなくぐもったような湿気を含む空気を小さく吸い、一声。蛍嘉は内に住まう鬼を呼びだす。
「さあおいで、クルワ」

「……ケイカ」
 呼ばれて現れた雨剣鬼『クルワ』が、蛍嘉の表情を見て何事か言わんとするも、それを蛍嘉は刀を渡すことで遮った。
「故郷とは似て違う世界だけれど、放っておけないのさ。最初から全力で行こう」
「ワカリマシタ。アノ子がまだ人に戻れるというのなら、戻したいのがワタシの気持ちデス」
静かにクルワが妖刀を受け取って、蛍嘉は先程畳んだ雨水滴る傘を一振りの剣に変える。
同時、屋敷の奥からあやこがふらつきながら歩いてくるのが二人に見えた。長い黒髪が揺れ、血に汚れた姿。
「わるいこ、です、ごめんなさい、ごめんな、さい……雨、大丈夫かな、ああ、」
呟く冷えきった口に、手からぴったりとくっつき離れない妖刀。その姿を見て、蛍嘉は静かに武器を構える。
「外に出ようとしているよう、デスネ。ここで止めマショウ」
「わかったよ。あの子を悪い子に仕立て上げた奴にも会いたいからね」
 先手を取ったのは蛍嘉だった。一足飛びに距離を詰め、驟雨にも似た力強い斬撃。あやこの持つ刀をしたたかに打ち据えて、素早く退けば間髪入れずにクルワが攻撃に移る。がぎん、がぎんと剣戟の音が響き、あやこが刀を持つ力を着実に削る。
そう幾度か剣を交わしていると、刃の内にいる『刀狩』が咆哮するように大きく顎を開けるのが見えた。あやこの虚ろな目から涙が落ち、しゃくりあげる声が間近に聞こえる。
「ケイカ、離れてクダサイ!」
「……!」
 突然ぐいと伸びた刀身をあやこが突き出し、その不意打ちが蛍嘉の顔のすぐ横を通り過ぎた。す、と引かれた刀を間一髪で防ぐと蛍嘉は距離を取り、あやこに隙を悟られる前に屋敷の襖を確認する。
(……よかった)
血の飛び散っていないその襖は、先程の刀で破れることは免れていた。ほっとしたように視線を戻した蛍嘉に、クルワが小さく、諫めるように声をかける。
「無理しないでクダサイ、ケイカ」
 だが、蛍嘉は静かにかぶりを振った。自分の兄にも、クルワにも心配させることになるかもしれない。だが、退くことは端から選択になかった。
「いや、ここは無理するよ。私が兄に後で怒られるのも折り込み済みだ」
「…ワカリマシタ、付き合いマス」
「そうそう、クルワは巻き込まれただけさ」
 じり、じり。あやこの……否、刃を泳ぐ『刀狩』の出方を静かに図りながら、クルワと蛍嘉はそんな言葉を交わすのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

スピーリ・ウルプタス
※(周囲ドン引かせる可能性がある為)
【単独希望】

哀しみ、苦しみ、悔しさ
全て遠慮なくぶつけて下さい。ええ、全力で、容赦なく。
彼女の絶望は真に理解は出来ない
ゆえに、正面から受け止める心持

UC発動
数多の本体たちを幾重に正面に浮かせ、盾代わりに
「ッ刃物は炎の次程度に天敵ですね…受け止め甲斐があります…ッ」
鎖巻かれているとはいえ、切られ刻まれ貫かれたりすれば分身たちとはいえ本体。痛い。とてつもなく痛い。
言葉にするのは自重しつつも、内心歓喜。

後続のお仲間様の為、疲弊させるのが目的
(真の本体は隠しながら)あやこ嬢を分身たちで囲むもひたすら受け身。
もしくは疲弊してきたなら、鎖たち四方八方から伸ばし動き封じる




 ひどく絶望した人というのは、こういう表情なのか。
 あやこの進路を塞ぐように静かに立てば、彼女の立ち姿も顔も見えてくる。だらりと垂れ下がる手からは血の気が失せ、乱れた前髪から見える目はひどく沈んだ色をしている。
哀しみ、苦しみ、悔しさ。絶望。そんな感情が外に出ずぐるぐると渦を巻けば、きっと雨の湿気が流れ込んで、結構な黴が生えてしまうだろう。

 あやこの体験した絶望は、元々人ではなく本であるスピーリ・ウルプタス(柔和なヤドリ変態ガミ・f29171)は真に理解は出来ない。だが。人でも本でも『虫干し』は要るだろうとはなんとなく、そう思えた。
 彼女を理解しきる、ということは難しいけれど。だからこそ、彼女の感情を正面から受け止めてみせる。
(全て遠慮なくぶつけて下さい。……ええ、全力で、容赦なく)
 スピーリは、命舞の書により次々と抱える本を複製し始める。
 それを虚ろな目で追って、流れ出る涙を拭わないまま。あやこが、再び刀を構えた。

 鎖がきつく巻かれた本がふわりと浮き上がり、静かに包囲の形をとる。その一つを思い切り貫いたのは、不規則に大きさを変える刃。刃に身体が引っ張られるようにして、また一つ表紙に袈裟懸けの傷が入る。
 半ば掠れた声でしゃくりあげるのが聞こえれば、スピーリへ向かって刃が伸びる……が。それも寸前で割り込ませた本が受け止めた。ぐさり、と刺されてすぐに引き抜かれ、ばらばらと千切れた鎖の破片が屋敷の廊下へ音を立てて落ちていく。突きの体勢から戻ったあやこが、少しだけふらついた。
 獲物が確かに見えているのに、刀がどうしてもそれに届かない。寸前で防がれ、勢いを殺され、更に死角からの鎖が刀に巻きつく。どういうことだ、どういうことだ。……きっと、そう、言っているのかもしれない。ぐるる、と唸ったような『刀狩』が切っ先から柄近くへ泳いでいくのを見送りながら、スピーリは盾兼目隠しで自分の前に翳した分身に隠れて、静かに息を吐いた。向こうも確実に消耗してきているのが見えて、もう少しで刀が手から離れてくれるかもしれない、と思えてくる。
 スピーリは、ほんとうの本体である本を後ろ手に隠して、静かに息を整える。
「……ッ、ふう、刃物は、炎の次程度に天敵ですね……。受け止め甲斐が、あります……」
 複製した本達も、複製とはいえ本体である。斬られ突かれて幾度も刃を留め続けた痛みが、スピーリ自身にも返ってきていた。
 口角が上がりかけているのに気がついて、こっそりと手で直す。歓喜と恍惚の色は、さすがに今回は表に出すわけにはいかない。しっかりと内心に歓喜の色は留めておきながら、スピーリは複製本を動かして、あやこの歩みをしかと封じ続けるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

クロム・エルフェルト
アドリブ、連携、他色々◎

――剣は、心の善悪を映す鏡

心美しくば、剣もまた美し
……そこのお前
剣の憑き物の分際で仕手の心を汚すなど
身の程知らずも良いとこ、ね

無為の形で娘の攻撃を迎える
柄握る手に最も大きく衝撃与えるよう
狙いは相手の剣先、交錯の瞬間にUCを放つ

……仕込み抜刀。
実は私も、同じ技の使い手。

無拍縮地の[ダッシュ]で距離を詰め
[早業]の抜刀術で斬りかかる
涙の雨の妖魔が出れば
刀身に[浄化][焼却]の焔を纏い
手加減無用、[戦闘知識]から流水の運足
[騙し討ち]、死角から斬撃無数に浴びせよう

――娘、存分に哭いていい
雨は何時かは止むものだけど
今はご両親の為に、降らせてあげて
あなたもまた、犠牲者なのだから




 ぐすぐすと泣き声がする。雨天独特の湿気を含んだ空気も相まってか、泣く当人まで溶けてしまいそうな声だ、と思う。
 望まぬ形で両親と今生の別れをしてしまった娘の泣き声であり、泣き続ける鬼としての声でもあるそれは、クロム・エルフェルト(縮地灼閃の剣狐・f09031)のぴんと立った狐耳にも届いていた。

(――娘、存分に哭いていい)
 ……あなたもまた犠牲者なのだから、と。
 内心でそう呼び掛ける。刀を取らず、ただ静かに歩きながら。先行していった猟兵達があやこが市井へ迷い出てしまうのを防いでおり、このまま進めば彼女と『刀狩』に会えるだろう。

 血臭が濃くなったと思えば、狙い通りにあやこの姿が見えてきた。ふらふらとしつつも尚立ち……否、立たせられている姿。ばらばらに乱れた前髪の間から見える目は、泣き腫らしたように赤くなっている。足取りの覚束なさがすぐに消え、虚ろな目のまま刀を持ったあやこが走り接近してくるが、クロムはそれを静かに見据えていた。
 彼女を操っている『刀狩』が、刃の中でするりと泳ぐのが見える。
剣は、心の善悪を映す鏡。心美しくば、剣もまた美しい。
……この剣は。『刀狩』が泳ぐ剣は。ひどく汚れている。

「そこのお前。剣の憑き物の分際で仕手の心を汚すなど。身の程知らずも良いとこ、ね」
 互いの剣が、そして姿が交錯した、その瞬間。
しゅるり、と刃の中で身をひるがえした『刀狩』に向けての言葉は、冷ややかに。迎撃の為に取り出した刀での一撃は痛烈に、的確に剣先を狙って。――仕込み抜刀。
「実は私も、同じ技の使い手」
刀身を大きく打ち据える、神速の剣閃。
 あやこが、はっ、と目を見開いた、気がした。

 柄を握る手に伝わった衝撃は大きいものだったようで、尚も握り……否、正しくは『刀狩』に刀を握らされながらもあやこの太刀筋は確実に鈍っている。その隙をつくようにクロムは早業で駆け、斬りかかる。
「ぐす、うう、あああ……!」
「……来るか」
 ほつりと涙があやこの頬をつたうのが見え、血だまりに映ったさざ波を見るや否や、跳ぶように後退。血の混ざった涙雨の妖魔がそこから這い出て、水で作った刀でクロムの足元を横に薙いだのだ。
 刀持つ少女も放ってはおけないが、妖魔の方は手加減無用。呼びだしたということこそ消耗の印でもあるし、頭数を速めに減らした方がいいのもある。
 這い出ながらも不規則に刀を振るう妖魔の斬撃を、クロムは寸前で躱す。それと同時に刀身へ浄化の焔を纏わせると、一度迎撃のように斬撃を叩きこんだ。目潰しになったようにもがく妖魔へ、続けて無数の斬撃が降る。
ばしゃり、と落ちる水飛沫は、確かに涙の雨のようで。それ越しに見えるあやこも泣いている。けれど、クロムにはこれがもうずっと止まない雨だとは思えなかった。
(……娘。雨は何時かは止むものだけど。今はご両親の為に、振らせてあげて)

 飛沫を刀で払いながら、クロムはそう呟いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月白・雪音
…この戦いを終えたとて、貴女の親御様が戻ることは御座いませんが。
それでも、今日まで貴女が積み上げたものを、貴女を育てた両親の想いを、
未来を、これ以上の無辜の血で汚すわけには参りません。

剣を学んだ身なれば、死地にて刀を振るうことも覚悟の上で御座いましょう。
されどその刃は無辜の民ではなく、貴女を奪った存在に向けるべきものなれば。


まだ『悪い子』で済むうちに。
――貴女の剣を、我が武を以て討たせて頂きます。


UC発動にて、残像で距離を詰め野生の勘、見切り、怪力、グラップルにより相手の攻撃を抑え、
『刀を振らせない』立ち回りにて戦闘展開
防ぎきれない攻撃は残像にて避けつつ、隙を見てカウンターで反撃を狙う




「ぐす、ひぐ、うう、わたし、わるいこ、ごめんな、さい、うう……」

 流れ落ちる涙を拭おうとして、片方の袖が途中で止まる。刃の中からの声無き怒声に急かされるように、少女の鬼……絶望したあやこが、ふらつきながら再度刀を構えた。
 その刃にこびりついていた両親のものであろう血曇りは徐々に硬く黒くなり、ほろほろと落ち始めている。その中で刃の光となって見えてくるのは、ぎらり、ぎらりと恨めし気な、猟兵達を射るような黄眼の視線。
 なりかけの鬼は猟兵達に圧倒され続け、確実に消耗してきている。もう少し、もう少しで彼女を鬼と変えた刀は地に落ちるだろう。
刃の中で悔し気に牙を鳴らし、時折ぐるると唸り声を漏らすような『刀狩』の目が、それをはっきりと証明していた。

「まだ『悪い子』で済みますね」
 雪深いところの空気を固めたような、涼やかな声。
 静かに武の構えをとり、真っ直ぐに見据える月白・雪音(月輪氷華・f29413)が、ふらりと幽鬼のように立つあやこを迎え撃つ。
「喪ったものが戻らなくても、今日まで貴女が積み上げたものを、貴女を育てた両親の想いを、……未来を。これ以上の無辜の血で汚すわけには参りません。」
 悲劇の前には割り込めず、”わるいこ”を窘める彼女の両親はもういない。だが、この時点で介入できたことで、あやこが鬼に成り果ててしまうのは確かに防がれている。
 これ以上の被害を防ぎ、操られた少女も助ける。そのために、武を振るう。

 ふらつく姿に不釣り合いなまでに、走り出す音は鋭利で速い。だが、その黒い影を真っ白い影がそれ以上に速く追った。
 刀を振らせる前に、距離を詰めたのは雪音だった。

(『わるいこ』以上のものになる前に。
――貴女の剣を、我が武を以て討たせて頂きます。)

 腕と刀自体を狙った雪音の一撃に、あやこが顔を僅かにゆがめる。直後、急激に大きくなった刃は反撃であり不意打ちの意図だろうか。迷いが無いように見えるそれの回避を試みながら。
 一瞬、いや、それよりも短いほんの刹那。
 雪音は静かな目で、あやこ自身と、刃を泳ぐ『刀狩』を一瞥した。
「剣を学んだ身なれば、死地にて刀を振るうことも覚悟の上で御座いましょう」
 ぐさり。軽い音を立てて、白がぶれて雪のように消える。
 だが、諭すような冷涼な声は続く。
「……されど、その刃は無辜の民ではなく、貴女を奪った存在に向けるべきものなれば」」
 刃が貫いたと思った雪音は、残像。本物が高速で後ろに回り込むと、がつんと刀の柄を打った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シン・コーエン
悲劇は防げなかったが、せめて少女だけでも助けよう。

(少女に)「君はわるいこではない、悪いのはその刀に潜むモノ。これより君の両親の仇を討つ!君も仇に抗うんだ。」と語り掛けつつ戦闘。
相手の攻撃はUCで読み、見切りと併せて最小限の動きで回避。

村正を抜き、闇の属性攻撃を刀身に纏わせて、峰打ちによる2回攻撃で少女を撃つ。少女の身体を撃つ時に、精神攻撃も同時に行う。
少女も剣の心得があり、見切ろうとするだろうが、残像を巧みに使って読ませない。

UCにより少女の戦闘能力が増大しているなら、簡単には片は付くまいが、構わん。
とことんまで相手に付き合おう。
飽かず焦らず攻撃を重ね、少女を消耗させて武器を落とさせる。




 重たげに、されど素早く伸びたあやこの刀を、寸前で身を引いて躱す。刀身に薄ら闇を纏わせて返す刀で峰打ちを試みれば、防がれつつも確かに一撃一撃で向こうは消耗していく。
それが、幾度か交わされた後のこと。
「っ……!」
 大きくぐらついたあやこの刃の中に、驚愕に目を見開く『刀狩』の姿が映った。元凶たるかの猟書家の様子に確かな手応えを感じて、シン・コーエン(灼閃・f13886)は、村正と銘を打たれた刀の柄を改めて握り直した。『刀狩』の目論見は、着実に防げている。
 あと少しで、元凶に手が届く。惨劇の後だったとしても、元凶を叩きさえすればこの後の被害は防ぐことができる。今戦っている少女が、これ以上人を手にかける可能性を絶つことができる。
がぎん、と。幾度となく、細い狂刃と自身の刃がぶつかる音。払いのけ、瞬時に浴びせるのは残像でタイミングをずらした追撃だ。見切る為の読みを難しくするそれは、向こうの回避精度も下げていく。
剣戟の合間、あやこの口が僅かに動いた、気がした。はっと気がつけば、掠れた小声がシンの耳に届く。
「ごめん、なさい、ころした、わるいこ」
シンは、その譫言にも似た嘆きに、静かに首を横に振った。彼女自身に声が届くかは分からないものの、真剣な声音で、少女自身の心へと語りかける。
「きみは、本当に”わるいこ”ではない。悪いのはその刀に潜むモノだ」
『刀狩』が目をつけたばっかりに、娘を鬼にしようと企んだばっかりに、あやこの両親は刃に倒れることになってしまった。彼女自身の意思では、親殺しを思いもしなかっただろう。あんなに、溶けそうなほど嘆いているのだから。
「ごめんなさい、おとうさま、おかあさま、ううう」
「これより、俺たちは君の両親の仇を討つ。だから、君も仇に抗うんだ」
ぐいと伸びて重くなった刃を受け止め、ひどく痺れる手も構わずに、真剣にあやこに語りかける。刃が近づく一瞬で、忌々し気な『刀狩』の視線を感じた、直後のこと。
ひと際大きく踏み込む足音がして、悪あがきにも似た一撃がシンを襲う。だが。
「もう、読み切った」
 シンはそれをも見切り、峰打ちを落とす。

 ひざをつくあやこの横で、からん、と刀が音を立てて地に落ちた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『刀狩』

POW   :    刀龍変性
真の姿を更に強化する。真の姿が、🔴の取得数に比例した大きさの【己が喰らい続けた武具が変じた鱗 】で覆われる。
SPD   :    妖刀転生
自身の【体の一部 】を【独りでに動く妖刀の群れ】に変形する。攻撃力・攻撃回数・射程・装甲・移動力のうち、ひとつを5倍、ひとつを半分にする。
WIZ   :    修羅道堕とし
自身の【背の刃の羽 】から【見た者を幻惑する妖刀】を放出し、戦場内全ての【遠距離攻撃】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ヴァーリ・マニャーキンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「――嗚呼。惜しいことをした」
 薄暗く血だまりだらけの廊下に、細長い影が落ちた。
 白い竜のような姿をした、刀喰いの妖怪にして猟書家――『刀狩り』。
 ずらりと並ぶ刀のような羽を揺らし、刃にも似た牙をがちりと鳴らし、鍔を彩る金細工にも似た金目が猟兵達を鋭く見下ろす。

「親殺しを経させ、もう少しでその娘を鬼にできたものを。ああ、惜しい。惜しい。だが……」
 長い溜息の音がして、空気に濃い血臭が混ざる。次に続く言葉は、悔しがっているようであった先程とはがらりと変わっていた。
「出来上がらぬのなら、もういらぬな」

 目を覚ましたあやこが、その様子を呆然と見上げていたが……。
 意を決したように、落ちた刃を再び手繰り寄せ、柄をしっかりと握る。
 涙の痕を一度拭って、猟兵達へ向き直った。
「あ、あの。……私にも、戦わせてください。お父様とお母様の仇を、とらなくちゃ……」

「ふん、猟兵らごと娘を喰ろうて、次の糧にしてくれよう……!」

 ざわりと刃の羽が伸びて、鋭い咆哮が轟く。それが、開戦の合図になった。
黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流
WIZ

自身の手で殺させて鬼となすのは、自分を苛む限り確かにずっと手ごまとしては長持ちするだろうさ。
でも。そんなやり方許せるはずないだろ。

真の姿に。
遠距離攻撃無効というのなら接近すればいいだけの事。
それに近距離攻撃は俺の得意とするところだ。
胡と本体、二刀で攻撃を仕掛ける。
あやこには俺が前で打ち合ってる隙をついて攻撃して貰うようにする。
彼女は妖剣士とはいえ一般人、できれば相手の攻撃は俺が受け持ちたいし…。
敵の攻撃は第六感で感知、見切りで回避。
回避しきれないものは本体で武器受けで受け流し、カウンターを叩き込む。
それでも喰らってしまうものは激痛耐性で耐える。




 咆哮が止んだ後、重く強い雨がばらばらと瓦を叩く音が響いた。その音を背にした『刀狩』が、大きな刃のような羽を広げ、冴えた光を瞬かせる。抜け羽根のような妖刀が、襖や柱に傷を負わせながら漂いはじめた。
「せっかくの、あの方の為に用意できた、長くもつ手駒だと思っておったのに」
「や、やめて……!」
 家の風景に大穴を開けられ、思わず前に出ようと立ち上がったあやこが、すぐにふらついてしゃがみこむ。
「あいつの攻撃は俺が受け持つから、無理しないで」
 彼女を庇うように前に出ながら、黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)は二刀を改めて構え直した。
「自身の手で親しい人を殺すのは、自分を苛む限り確かにずっと手ごまとしては長持ちするだろうさ。……でも」
 澄んだ青色の目を閉じて、再び開いた時にはその眼は金色に染まっていた。
 真の姿たる自分を解放して、瑞樹は真正面から『刀狩』へ戦いを挑む。

「そんなやり方、許せるはずないだろ」
「ふん、許しを乞うつもりもないわ、猟兵」

 『刀狩』の浮かせた妖刀達の空間に跳び込めば、かしゃん、と後ろで刀が落ちた。いくつか見えてきたものがある。
 刀狩の周囲を浮かぶ妖刀は、遠距離からの攻撃を迎撃するように皆主から遠くへ浮かんでいた。光が刺すように視界をちらつくが、その光は近づくにつれ効果が薄らいでいる。遠くから狙いを定めることは、きっと難しいだろう。
 だが。その手段をとらずに接敵すれば。光は障害にならず、あの妖刀も追ってこない。

 遠距離攻撃無効というのなら接近すればいいだけの事。
 近距離での戦闘は、ナイフでもある瑞樹の得意とするところだった。

 む、と眉を顰めたような目つきの『刀狩』を捉えると、瑞樹は胡と本体の二刀で攻撃を仕掛ける。がぎん、と白い鱗をの並ぶ胴を薙げば、ぱらぱらと鱗の破片が散った。尻尾が床を打ち据える一撃を跳んで躱し、もう一撃をどうにか本体のナイフで防いだ直後。
「……っ!」
 『刀狩』が意識を向けていなかった横側から、驟雨のような斬撃が尻尾を襲った。
「あなた、さえ、いなければ……」
 『刀狩』さえいなければ、父は、母は。私は。その仇をとらんとするあやこは未だ震えていたが、刀捌き自体は鋭く、そして速い。憎悪に目が眩みそうで、あやこは荒い息を吐いて刀を構え直す。
 おのれ、と『刀狩』が言いきる前に、瑞樹が尻尾を払いのけていた。刀……胡と名のついたそれによる、ぐらついた尾への追撃。ばきん、と刃の割れるような音がして、尻尾に大きな傷をつけることができた。ふ、と息を吐いて、向こうにいるあやこに声をかける。
「その調子」
 あやこがこくりと頷く様子を見て、瑞樹は再び二刀を構え直した。

成功 🔵​🔵​🔴​

御狐・稲見之守(サポート)
 100歳超(実年齢秘密) 妖狐の悪霊✕陰陽師 
 口調「ワシ、~殿、ゾ、~んじゃ、じゃ、じゃナ、かナ?」

 荒ぶる力を揮うカミにして、人喰い魂呑みの外道、そして幻を繰る妖狐、御狐稲見之守である。
 助けを求め願う声を聞き届けるが我が務め。ヒトの道理で叶わぬならば、カミの道理を通してみせよう…なんてナ。

 天変地異を起こす[荒魂顕現]、[眩惑の術]で幻覚を見せて動きを封じたり、[山彦符][木霊返し][呪詛殺し]等で敵のUCに対抗したりするんじゃ。無論、[狐火]は妖狐の嗜みじゃナ。
 他にも[式神符]で対象を追跡したり〈催眠術〉で情報収集したりと色々出来るゆえ何卒よしなに。

 さァて、遊ぼうじゃァないか。


ステラ・クロセ(サポート)
真紅の瞳。燃える炎。あふれる勇気。直情正義、元気全開、単純明快!
正しい心で悪しきを討ち、そして弱き者を救い、その盾とならん、我こそは義侠のスーパーセル!
スーパー純粋熱血、ハイパーテンプレ系ヒロイン、それがステラです。

一人称は「アタシ」ですが殆どの猟兵は先輩に相当するので話すときは「わたし、あなた」といった礼儀正しい振舞いとなります。
探索系はストレートな解決法を選び、
戦闘では正々堂々と敵の正面に立って攻撃を引き受け味方にチャンスを作る方が好みです。なお、近接戦闘派です。
ユーベルコードは状況に応じて使い分けます。
正義を大事にするので、他の猟兵の意図を阻害したり公序良俗に反する行動はしません。




 新たに転移してきた猟兵達を迎えたのは、大きく振られた尾が巻き起こす風と、無数に浮かぶ妖刀達の切っ先だった。わわ、と驚いたように目を見開く少女と、冷静にそれらを……向こうにいる敵を見返す妖狐の女性。彼女らは各々の武器を構え直し、手傷を負った『刀狩』に相対する。

「……ふむ、刀喰いの妖怪のう」
 突風でばさりと大きく揺れた前髪を整え、暴れ狂う太刀のような尾を避けながら。御狐・稲見之守(モノノ怪神・f00307)は金と銀の目で『刀狩』を静かに見据えた。……人喰いと呼ばれた記憶がふと連想で浮かんでくるが、アレとは違う。妖じゃなく現人神よ、と冗談めかしてからからと笑う。
 直後、がぎん、と大きな音がした。
「くぅ……! 相手にとって不足なしっ」
 音の元は、尾の刃を炎で出来た大刀で受け流したステラ・クロセ(星の光は紅焔となる・f12371)。痺れる手も構わずばらばらと砕ける鱗を刀で振り払った彼女は、傷めがけて追撃をする少女をみつけると、ぱっと明るい調子で声をかける。
「あやこちゃん、だね。話は聞いてるよ!」
「……そこな娘、やりたいことは仇討かの?」
符を取り出した稲見之守も、少女へ問う。
 助けを求め願う声を聞き届けるが、カミの務め。こくりと頷いた彼女を見て、ゆるく笑ってみせた。

 抜け羽根じみた――宙を浮く妖刀達が本体を守るように浮かび、『刀狩』自身は、がちり、がちりと鍔鳴りのように牙を鳴らす。その目が、稲見之守の持つ札を捉えれば、くくくと嗤いを漏らした。
「それでは狙えまい」
「どうかな? 『刀狩』よ、その業を借りるぞ」
 稲見之守が不敵に笑い返す。直後、迎撃のように振り下ろされた妖刀が、同じ刀に受け止められた。直後、『刀狩』の妖刀らの放つ輝きと全く同じものが宙を浮く刃を乱反射すると……、一斉に、がちゃがちゃと音を立てて刀が落ちていく。
「ソレも遠距離攻撃なのじゃろ? 近づけば反応せんのもあるが……宙には浮いている。止めておけば、更に狙いやすくなるゆえな」
 無効にしてやったわい、と笑う稲見之守の手にあったのは、山彦符。写し取った妖刀達により、『刀狩』自身の遠距離攻撃でもあった妖刀達は皆力を喪っていく。再び発動したとしても、動きは遅くなるだろう。無効化されてしまっては、浮かせておくのみの物量戦もできない。
 苛立ちが如実に現れた、尾の横薙ぎの一撃が稲見之守とあやこを襲うが……再びそれを受け止めたのは、ステラだった。背には真紅の火の粉が散る炎翼を生やし、それがばさりと羽搏いた。
「アタシの限界を、この翼で乗り越えてみせる!!」
 だから、あやこちゃんも。言外にそういったものが伝わったのだろう。ステラの勇気に感化され、あやこもまた刀を握り直す。
「あやこちゃん、合わせて!」
「……はい!」
 その様子に笑顔を返して、『刀狩』の尾を振り払ったステラは炎翼を広げて一気に接敵する。手に持つは炎の刀、新焔・関勝大刀。それを構えた直後、あやこも『刀狩』の背後で刀を構える。そのまま、二人は同時に尾の傷を深々と刺し貫いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

外邨・蛍嘉
「」内はクルワ台詞。
蛍嘉の武器は藤色蛇の目傘、クルワは妖影刀『甚雨』。

もちろんだよ。私は蛍嘉。
「ワタシはクルワ、デス。アナタのお名前は?」

たまにあったのさ。忍の仕事で仇討ちの補助。それと同じ。
「…その怒りを、存分に相手にぶつけるノデス」
基本は、あやこさんに合わせてUCで攻撃。
できれば、とどめはあやこさんにさしてもらいたいね。
「こういうのは、一生残りマスカラ」

ああ、あやこさんには結界術で防御の術かけておこう。
…何があっても、生きていてほしいんだよ。強く、とは言わないよ。ただ、本当に生きていてほしい。
…親世代の戯言さ。




 何度目かの剣戟の後。
 自分の周囲が結界に包まれ、『刀狩』の牙が防がれた光景に、少女は目を見開いた。
 白い竜が忌々し気に眉を顰め、ぐぐ、と僅かに遠ざかる。ああ、今更にそっちへ向かえば、アレを斬れる、かたきを、うたないと。……そう思ったと、ほぼ同時。
「あまり先走ってはいけないよ」
「敵が身を引いたノハ、負傷以外の考えもあってかもシレマセン」
 少女は、後ろからふたつの声に呼び止められる。振り向けば、外邨・蛍嘉(雪待天泉・f29452)と雨剣鬼のクルワが、少女を真っ直ぐに見据えていた。

「私は蛍嘉、よろしく」
「ワタシはクルワ、デス。……アナタの、お名前は?」
「あやこ、です。 すみません、先程は」
「いいのいいの」
 穏やかな口調に、だんだん呼吸が落ち着いてくる。自分の名前を改めて口に出したことで、まだ人でいられていたことが改めて理解できたような気がして、少女は……あやこは、ほっと息を吐いた。直後。

「悠長に話している場合か、おのれら」
 『刀狩』からの怨嗟の声。続いて、ばきばきという異音。刀剣のような鰭を擁する尾を妖刀の群れが突き破り、ひとりでに蠢く棘の塊もかくやといった姿になる。それを重たげに引き摺って、白い竜は唸り声をあげた。
 妖刀の群れがぐにゃりと一つの生き物じみた動きで伸びあがり、蛍嘉とあやこのいる方へ襲い来る。避けようと動けば群れが分かれ、降り注ぐそれらは蛍嘉が寸前で結界術を張り巡らすことで防ぐ。
 ばきんばきんと刃がひしゃげ、落ちて行く様が二人の目に映る。その奥で動かない『刀狩』から目をそらさないまま、蛍嘉は隣で様子をうかがうあやこに声をかける。
「偶に、だけどね。あったのさ。忍の仕事で仇討ちの補助。その時に思ったのだけど」
 刀の雨を躱した雨剣鬼が……クルワが、『刀狩』へ返す刀で斬撃を降らせる。思わぬ苦痛に歯噛みする白い竜をよそに、彼もまた、後ろのあやこに声をかけた。
「あやこサン、……大事なのは、その怒りを、存分に相手にぶつける事デス」
「跳ね返されてしまわないよう、そこだけ気をつけながらね」
 言葉の穂を継ぐように蛍嘉が笑いかけ、あやこは静かに、意を決したように顔を上げた。
 自らの妖刀を構え直し、苦痛に悶える『刀狩』へと走る。蛍嘉も蛇の目傘が姿を変えた剣を握り直し、合わせるように接敵して。
「とどめは、あやこさんに。……出来そうかな?」
「はい、やってみせます……!」
 横殴りの雨と、それが止んだ直後に差した日の眩しさのような斬撃二つが『刀狩』を切り裂いた。
 苦痛と怒りの咆哮を轟かせながら、大きく傷のついた腹を庇うように『刀狩』が後退する。その様から目を逸らさないあやこに、蛍嘉はまた声をかける。
「あやこさん。……何があっても、生きていてほしいんだよ。強く、とは言わないよ。ただ、本当に生きていてほしい」
 なんて、親世代の戯言さ、とゆるりと笑ってみせれば、少女の思い詰めた表情が僅かに和らいだ気がした。

成功 🔵​🔵​🔴​

月白・雪音
…貴方にとっては、これも一つの忠の表し方なのでしょう。
されど何を極めんと歩む者の道を汚す所業、
どうして許容できましょうか。

UC発動、敵が移動力を重視すれば残像にて追従、
攻撃速度を重視すれば野生の勘、見切りにて全攻撃にカウンター、
装甲、射程を重視するのであればカウンター、部位破壊、見切り、野生の勘にて白刃取りの後に破壊し、
攻撃力を重視するなら怪力、部位破壊にて生成された刃を引き千切り
敵の急所に突き立てる


…仇を討った後、どう生きるか。
例え絶望に浸りまた修羅に堕ちるとも、私は咎められません。

されど、貴女が貴女のまま、何かの為に刃を取ると言うのなら。
私も一つの道を歩むものとして祝福させて頂きましょう。




「口惜しや、口惜しや。献上する鬼も出来あがらぬ上、我もここまで不覚をとるとは……!」
 咆哮がひとつ、空気を震わせる。直後に降り注いだのは、『刀狩』が尾を変化させた、棘塊にも似た妖刀の群れ。
 それらが到達する前に、月白・雪音(月輪氷華・f29413)はあやこの腕を引いて共に躱す。豪雨にも似て床を抉る刀達を避け、突き刺さるそれらを時折蹴って防ぎながら……雪音は『刀狩』の様子をうかがっていた。

 今先程降ってきた妖刀の群れは、器用に操っているわけではないように見える。一発の威力をぐいと底上げしたかのような、先程の一撃。……それはきっと、『刀狩』自身の焦りの表れなのだろう。それほどまでに功を焦るのは、きっと。
(献上、と聞こえましたね)
 刀の驟雨に遮られる直前の、『刀狩』の言葉が頭を過る。その声色からうかがえたのは、目の前の白竜が苛まれる、主への忠義が形にならぬまま朽ちようとする身の、焼かれるような焦燥感。だからといって、あの怪物は妖剣士の未来を絶とうとした存在であり、拳を加減する必要もない者であることには変わりがないのだが。

 ぐわんと大きな音を立て、再度妖刀の塊が雪音へ迫る。あやこを背後に下がらせて、雪音はそれを迎え撃つ。
「……貴方にとっては、これも一つの忠の表し方なのでしょう。されど。何を極めんと歩む者の道を汚す所業、どうして許容できましょうか」
 雪音は最接近してきた妖刀の一振りを白刃取りでいなし、そのまま掴むと力を入れて圧し折った。残りの妖刀を揺らぐ残像残して避け、伸びたきりの尾が戻る前にと『刀狩』本体のもとへ走る。
 尾がたわんで足を掬おうと振るわれるが、それはあやこが尾を更に切り裂くことで勢いが大きく削がれる。そうして雪音が尾を躱し、腹の傷の前へたどり着いた。そこへ折れた刃を思い切り突き立てて、のけ反った『刀狩』の腹部に更にあやこが刀を振るう。
「……あやこさん。仇を討った後、どう生きますか」
 雪音は、そう静かに問うた。はっ、と目を見開いたあやこに、そのまま言葉を続ける。
「例え絶望に浸りまた修羅に堕ちるとも、私は咎められません。されど。貴女が貴女のまま、何かの為に刃を取ると言うのなら」
 私もまた一つの道を歩むものとして、祝福させて頂きます。
 涼やかな声色で、雪音はそう彼女に告げた。

成功 🔵​🔵​🔴​

クロム・エルフェルト
娘、無理だけはしないで。
貴女が散華してしまったら、ご両親は浮かばれない。

"その時"に至るまで、彼女から注意を逸らす

まるで刄の牢獄、ね
嗚呼、でも
一刀散磊の悪鬼の技より、幾らか易い――!

今一度、刀身に[焼却]の焰纏わせ
[残像]曳き、襲う斬撃掻い潜り
潜れぬ刀は[咄嗟の一撃]で打ち落とす
浅い刃傷は捨て置き、敵の間合いへ

――お前、刀を執るには相応しく無いよ。

仮に装甲厚くとも
鋳溶かす熱で[切断]する
至近距離からUCの四閃放ち、膾切りに
呪詛で幾重にも雁字搦め
口裂くように太刀走らせ
敵が咬んで防げば読み通り

あやこ、と言ったね。ご両親の仇を……!

頚を曝すよう刀跳ね上げ
娘の太刀に交差させるよう追撃放ち
刀狩の頚を断つ




(まるで刄の牢獄、ね)

 尾だけではない。切り裂かれた腹の傷からも妖刀が群れをなして生え、両腕に至っては刃に埋もれている。
 『刀狩』に生えて蠢くそれらが全て、一斉に降り注げばどうなるか。クロム・エルフェルト(縮地灼閃の剣狐・f09031)は静かに刀を構え、それに炎を灯らせながら敵を改めて見据えた。
 すると、あやこがどこか、思い詰めた様子で刀を握り直すのがクロムの視界に映る。仇をとりたい、とらねば、という思いが気を逸らせているのだろう。
「娘、無理だけはしないで」
 震える手で刀を握るあやこに、クロムは静かに、端的に、声をかけた。
「貴女が散華してしまったら、ご両親は浮かばれない」
 返ってきたのは、小さく息を呑む音。 その言葉ひとつを境に、クロムはあやこの元から離れ、『刀狩』へと走り出す。

 降り注ぐ妖刀は、豪雨と言って差支えの無い物量だった。
(刃の牢獄、刃の雨。嗚呼、でも)
 襲い来る斬撃をクロムは掻い潜り続けて、敵の元へと急ぐ。排しきれぬ刀が眼前に迫れば、自分の刀でそれを落とす。それでも小さな刀傷が服を、腕を、刀を持つ手を覆っていき、最後の方で一瞬押し返されそうになる……が。

 一刀散磊の悪鬼の技より、幾らか易い――!

 がき、と金属音を立てて、クロムの刀が最後の妖刀を払い落した。作った道を沿うようにあやこが続いて接敵するのを気配だけで感じ、クロムは至近距離から『刀狩』へ攻撃を放つ。

「刀狩。――お前、刀を執るには相応しく無いよ。」
 静かな宣告を載せて、斬撃が降る。
 炎の刃が妖刀を溶かし、鱗を溶かし。正面からの袈裟切りが更に傷を抉る。
 左右からは胴を薙ぐように斬撃を加え、背の羽根を折るような逆袈裟もそれに加わった。
 ほぼ同時の、高速の四連撃。

 憎らし気に尾を振るおうとした『刀狩』の動きが止まる。
 何重もの呪詛が斬撃と共に撒かれ、動きを封じられたことに気がついて、それは僅かに唸り声をあげた。

 ばきんと鱗を食い破るように出てきた刀を、取っ掛かりにしてクロムが跳ぶ。
 狙いは『刀狩』の顎。口裂くように刀を振るえば、ぐわ、と大きな金眼がそれを見返してきた。

「っ!」
 今度は、クロムの刀が途中で止まる。刃の様な牙で咬まれ、刀が防がれていた。なんとか『刀狩』自身に生える刃を足場にして留まるが、大きく体勢を崩しかけた。
「くく、やすやすと追撃を許すと思うか」
 そう言いたいのだろう、『刀狩』の目がにやりと笑う。だが。
「……いや、読み通り」
 クロムは体勢を戻しながら、『刀狩』の足元に立つあやこに目を向ける。
「娘。あやこ、と言ったね。ご両親の仇を……!」
「っ、はい!」
 頚を曝すように、刀を大きく跳ね上げる。急所を晒すことになった『刀狩』が驚愕に目を見開いた、直後。
 あやこの刀が首を大きく薙ぎ払い、交差するようにクロムの刀が急降下のように斬撃を降らせた。

 刀狩の頭に、大きな裂傷が刻まれる。
 ぐら、と大きく揺らいで、宙に浮く体が床へと降りた。流れ出る血の代わりに、首の大きな傷を食い破るように刀が生え、すぐ朽ちて刃こぼれしてはまた中から生えていた。喰らい続けた刀に苛まれているかのような『刀狩』は頭を擡げ、吠えるようにがぱりと口を開けた。だが、虫の息とはきっとこの事。もう後も無いだろう。何よりも刀に食われる刀狩という存在が、それを如実に示していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シン・コーエン
(あやこに優しい口調で)分かった、これより君は俺の戦友だ。
(刀狩りに修羅の笑みを向け)「楽に死ねると思うなよ、クズが」と宣告。

右手に灼星剣、左手に村正、UC発動して本気の戦闘。
あやこには結界術で防御結界展開。

相手の妖刀等の攻撃はUCと第六感・見切りで躱し、あやこが危ない時は武器受けでかばう。
躱しきれない時はオーラ防御で耐える。

反撃は激烈に。
灼星剣と村正に炎の属性攻撃を纏っての2回攻撃・鎧無視攻撃。
斬る時には衝撃波と精神攻撃を重ね、斬撃・衝撃・炎・精神の4種ダメージを与える。

あやこの攻撃時は、残像を使ったフェイントでフォローする。
可能なら彼女に止めを刺させてやりたいが、無理なら自分が止めを刺す。




 傷を中から食い破るように生えた妖刀達が、ばきりばきりと歪な音を立てて剥がれ落ちる。それはどこか『刀狩』という銘の巨大な刀が刃毀れて朽ちていくようにも見えた。だがまだその竜は生きており、剥がれ落ちた背の鱗が三度妖刀に変わる。朧げな、されど狙いを妨げるような光を放ち始めた。

 防壁のように動き光る妖刀を躱し、結界で防壁を張り、尚も道を遮る刀を跳ねのける。
 その最中、シン・コーエン(灼閃・f13886)は、あやこに声をかけた。自身の死角を潰し、道づくりを手伝うように刀を振るう少女の表情は張り詰めており、だが、思い詰めたわけではないようにも思える。その様子に彼女はきっと大丈夫だろう、と思いながら。被害者に、というよりは戦友に話しかける気安く優し気な声色に、少女が振り返る。
「あやこさん、もう少しだ」
「……はい。あの、止めは私が」
 おずおずと、だが絶対やりたいという意識を滲ませたあやこの声にシンは首肯を返し、妖刀に守られ食われている『刀狩』へと向き直る。

 剣士を操り惨劇を呼んだ彼奴を、許しておけない。
 ――楽に死ねると思うなよ。

 最後の妖刀を跳ね飛ばして、二刀の刃に炎が灯る。
 正眼に構えた一刀が、雨上がりの冴えた光を宿す。

 その光たちを覆わんと、『刀狩』は牙を剥き尾を振るう。だが、それより速く炎を纏った衝撃波が飛んだ。鋭い牙があやこを狙えば割り込んだシンが二刀で庇う。
 びり、と衝撃で腕が痺れを訴えてくるが、シンは構わず刃の炎を使って鱗を焼き焦がす。大きな炎が上がり、それを食い破るように刃の塊が幾本も出ては溶けていく。 シンが更に斬撃で『刀狩』を押し返したのと、あやこが背後にまわり追撃へと走ったのはほぼ同時。
 業火の刃と冴えた刀が異形の白竜越しに交差して、直後。
『刀狩』の首がずれ、傾いで落下した。

 かくして少女は鬼から人へ戻され、鬼の道へと手を引いた妖も倒された。
 両親を手にかけた感触は残り、色々考えることもあるけれど……
「……ごめんなさい、それと、ありがとう、ございました。」
 操られてしまった申しわけなさと、鬼に成り果てずに済んだことへの感謝。
 仇討を終えた彼女は、じわ、と滲んだ涙を静かに拭い、猟兵達へ深々と頭を下げたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年12月08日
宿敵 『刀狩』 を撃破!


挿絵イラスト