うぃいいいいいっす! どうも、キマイラで~す!!
●うぃいいいいいっす! どうも、キマイラで~す!!
「うぃいいいいいっす! どうも、キマイラで~す!!」
一度見れば忘れない。脳裏に残りそうなその台詞をまるで敬礼のような独特の仕草と共に叫んでいるのは、頭の上に機関車を小さくしてそのまま乗っけました! って感じの怪人だ。キマイラとはちょっといいづらい。
「「「うぃいいいいいっす!!」」」
しかし、その『動画』を見たキマイラたちは、その怪人と同じ仕草、同じ台詞で挨拶を返す。
この世界は『キマイラフューチャー』。住人のキマイラたちは、日々ネットに動画をアップしたり、ダンスを踊ったりして面白おかしく暮らしている。無論、動画を投稿しているキマイラたちの中にも、人気の者や不人気な者がいるわけで……そんな世界の一区域。そこで今流行っているのが、最近になって颯爽と現れ大人気になった頭部機関車型怪人動画投稿者『シャーミン』の広めた、この挨拶なのであった。
「うぃいいいいいっす!」
「「うぃいいいいいっす!!」」
彼らは今日も独特な仕草をキメつつその挨拶を口々に言い合い、奇怪なダンスを踊りながら都市を練り歩く――。
●ベースにて
「……怪人を討伐して欲しい」
どこか眠たげな視線をあなたたちに向け、そう切り出したのはダンピールのグールドライバー、アイシャ・ラザフォード(研究者・f01049)。彼女は白衣を翻し、プロジェクターの電源を入れる。すると壁の一面。あなたたちのすぐ側の天井から、小さな駆動音と共に巨大なスクリーンが現れた。
「ただ、ひとつだけ問題がある。これを見て」
彼女の言葉に合わせ、照明がふっと暗く。同時にスクリーンに映し出されたのは、キマイラフューチャーの住人である。へっへーとやんちゃな笑顔を浮かべた鳥頭のキマイラだ。おそらく自撮りなのだろう。カメラへと伸びるヒョウ柄の手が見て取れる。そして右下には、6ケタの数字。その数字が、彼が超人気配信者であることを示していた。
彼は空いた片手をそっと、敬礼をするように自身の鳥頭へ添えると、息を吸い――
「うぃいいいいいっす!!」
「「「…………」」」
しん‥‥と静まり返る猟兵たち。私たちはいったい、何を見せられているのか。猟兵たちはそっと疑問の視線をアイシャへと向けた。
「……これは、討伐対象の怪人が、住人に広めた挨拶。たぶん、旧人類の文化を広めようとしてる」
視線に耐え兼ねたのか、眠たげな瞳をばつが悪そうに逸らして、彼女はそう告げる。
挨拶。そう、挨拶なのだ。キマイラフューチャーに怪人を討伐しにいくのはいいものの、その怪人の広めた旧文化であるこの「挨拶」が、住人であるキマイラたちの間で既に一大ブームとなっているらしい。
「……、このまま怪人を倒すと、少し面倒」
アイシャは小さく、溜息をひとつ。
「怪人の広めたこの挨拶は、見ての通りとても人気。私の予知では、ブームは更に拡大する……」
つまりそれは、現在は一区域でおさまっているこのブームがキマイラフューチャー全体に広がることを意味している。
「このまま倒そうとすれば、住人のキマイラが怪人を守ろうとする可能性がある」
怪人はいわばブームの立役者。このまま怪人を猟兵が襲おうものなら、いくら温厚で善良なキマイラたちといえど抵抗を覚えるだろう。しかし、怪人は討伐せねばならない。
「…………それを避ける方法は、このブームがもっと広がる前に、何らかの方法で止めること」
ふっと照明が明るくなると、スクリーンがまた天井へと消えていく。
――ブームを終わらせる。確かにそれが成れば、怪人を倒しても問題はなくなるだろう。
「……方法は……ごめん、分からない。あなたたちの力で、何とかして欲しい」
何も思いつかなかったのであろう。アイシャはあなたたちへ、そう言葉を紡ぐ。言うは易し、行うは難し。一口にブームを終わらせるといっても、決して簡単ではないはずだ。
「あなたたちなら、きっとブームを終わらせて、怪人を倒すことが出来るはず。私はそう信じてる」
猟兵たちを見つめるアイシャの視線に嘘はない。楽観視はしていが、一遍の曇りなく、猟兵たちにそれができると信じている。
「……よろしく」
彼女はそういうと、そっとその手にグリモアを取り出すのだった。猟兵たちを『キマイラフューチャー』へと送り届けるために。
ねこです
●ご挨拶
皆さま初めまして、ねこです。よろしくおねがいします。これから先も細々と活動していこうと思っていますので、是非よしなに。頑張ります。ねこです。
今回はキマイラフューチャー世界ということで、ちょっとラインギリギリを狙ってみました。若干ライン上で反復横跳びをしているかもしれません。(・ω・三・ω・)うおお
なにはともあれ、よろしくお願い致します。
●依頼への補足
ブームを終わらせ、怪人を倒すことが目標です。方法としては、新しいものを広めたりだとか、何かしらの問題を起こして止めたりだとか。いろいろと考えられます。皆様の好き勝手で自由奔放な手法でこのブームを終わらせ、怪人を討伐して下さい。
覚悟はいいか。できたものからかかってこい。私の準備はできているっ。
皆さまの自由なプレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『ブームを終わらせろ』
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POW : 熱意と勢いで新たなブームを広める
SPD : 怪人が広めたブームを乗っ取る
WIZ : 文化の問題点を指摘する動画をアップする
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
キマイラフューチャーに転移してきた猟兵たち。彼らの使命はブームを止め、怪人を打倒すること。今一度それを確認し合えば、彼らは各々の行動を起こすため。準備を始めるのだった。
都市の大通り沿い、大勢のキマイラたちが行き交うその片隅。今そこには数人のキマイラたちが足を止め、設営作業に耽っていた。三脚を立てたり、カメラの位置を微調整したり、鏡を見てたてがみを整えたり。脇に置かれた荷物には、配信用と思われる様々な機材に道具。そして昼食である果物や弁当が詰まっている。
彼らは十数分の作業の後、カメラのレンズの前に集合すると、まるで普段からそうしているかのように綺麗に整列してみせた。
「よし、やるぞ!」
「いいべな」
「うし!(牛)」
約一名……匹? 360度、いや1800度どこから見ても牛のキマイラ(?)が混じっているが、気にしてはいけない。だってキマイラでフューチャーだもの。
配信開始ボタンをぽちり。それを押した瞬間、この区域の約半数のキマイラたちに向けて放送が開始された。このトリオ、実はかなりの人気者なのである。
3人で綺麗にタイミングを合わせ、手のひらを敬礼のように額へ当てると、一斉に息を吸い込み……。
難駄芭院・ナナコ
ははーん、これは新たなブームを広めるしかねぇな
何を広めるって?決まってるだろ、バナナしかねぇじゃん…!
というわけで!バナナの熱意と勢いでバナナ推しムーヴを広めていくぜ!
バナナはうまい!バナナは甘い!バナナは健康にいい!バナナは黄色い!
なんだっていい!バナナのいいところを猛プッシュしていくぞ!
更にバナナを食ってパワーアップ!
これがアタイのユーベルコード、黄金果実活性法(ドーピングバナナバイキング)だ…!
そして〆のキメセリフは!「バナナだ!」
決まったぜ…!
「「「うぃぃいっ」」」
「ちょっとまてえええぇぇええええ!!!!!」
「「「うぼぁ(うしっ)!?!?!?」」」
そこに突如乱入したのは、難駄芭院・ナナコ(第七斉天・f00572)。彼女はその小さな矮躯で体当たりをかますと、カメラの前の3人をいとも簡単に吹き飛ばすッ!!
いつの間にか3人がかけていたサングラスが放物線を描き、宙を舞った。さらば哀れなキマイラたちよ、君たちの配信はジャックされたのだ。
「聞いてるかーキマイラのみんな!」
ビシッとカメラ目線で指を突き出し、今まさに目を白黒させているであろう視聴者たちへと呼びかける。
「アタイは――!」
いったい彼女は何者なのか? そう誰かがコメントに書き込もうとしたその矢先。それより先に、カメラの中の少女は自信満々な笑みを浮かべ、口を開いた。皆が画面を注視している。その謎の少女の名乗りを聞き逃すまいと、必死に耳を傾ける。
「――お、バナナだ」
すいっと画面から消え手に取ったのは、まだ鞄に放置されていた、吹き飛んだキマライラズの昼食のバナナだ。のちに分かった話ではあるが、この区域のキマイラの3分の1が同時刻にズッコケたと有志の記録に残っている。
ナナコはバナナを手に、再度画面へと目を向けた。
「見ろ! これが何かしってるか? ……バナナだ!」
カメラのずいっと寄せられた黄色いバナナ。アップバナナだ。ドアップである。
「まず、バナナは健康にいい!」
唐突にバナナの長所を語り始めた画面の中の少女に、視聴キマイラたちは視線を向ける。どうやらバナナは健康にいいらしい。
「そして、バナナはうまい!」
バナナは健康によくて、旨いらしい。
「バナナは甘い!!」
言葉を強調するように、バナナと一緒にアップで映るアップ・ナナコ。
バナナは健康によくて、甘くて、旨い。視聴者たちから唸りの声が上がった。
健康によくて旨いのか!?
しかも甘い!?
「まだまだあるぞ! バナナは甘い! バナナは黄色い! バナナは滑る! 皮だけな!」
謎な滑る推し! しかし、視聴キマイラたちのボルテージはだんだんと上昇していく!!
バナナって皮まで使えるのか!!?
食べた後も楽しめるなんて!
今度あいつの足元に……。
「そして――!」
ナナコは手元のバナナを一口むしゃり。その瞬間、不思議な力がナナコの身体を満たしていく。小さなそれは全身へと膨れ上がり、彼女の身体を急成長させ……そう、これが力、これこそがバナナパワー! バナナの量と質に応じてパワーアップするユーベルコード、 黄金果実活性法(ドーピングバナナバイキング)!!
「――これが! バナナだ!」
決まった――!!
この配信かは波及したバナナブームは後に「バナナの風」とも呼ばれ、キマイラフューチャーの一区域へと語り継がれることになるのだった。バナナパワー、おそるべし。
大成功
🔵🔵🔵
さて、場所変わっても時は変わらず。100面ダイスが1クリしたからって1000文字を超えた気がするが、きっと気のせいに違いない。まあなんやかんやあって同時刻、彼女とはまた別のところでの出来事――。
飯島・さと子
ごきげんよう、さと子です
なるほど、とても難しい依頼です。そして興味深い
さと子はこのうぃいいいいっすブームにマスコットを作って乗っ取ります
その名もうぃいいいっすくんです
オーバーオールを着たトラさんがハチャメチャに踊りながら、
うぃいいいいっすをするのです
演出とかはお仲間さんで得意な方が居たらお願いしましょう
居なければこの世界で表現したい人は山ほど居ますから、力を借りましょう
「いいね間違いなしのマスコットを一緒に作りませんか?」とか言いましょう
安直で分かりやすいものの方がウケるでしょう
そしてこのブームをうぃいいっすくんブームに切り替えます
しかしマスコットはいずれ飽きられるもの
それで良いのです
「いいね間違いなしのマスコットを一緒に作りませんか?」
大通りからは少し外れた喧噪の外。そこを歩いていた一人のキマイラに話しかけたのは、飯島・さと子(ふらふらテレビ・f02028)だ。
「マスコット?」
声に振り向いたキマイラは目を丸くする。そこにいたのが、あまりにも小さい存在だったから。身長は40センチくらいだろうか。そう、テレビウムである。
「はい。さと子に協力してもらえば、いいねが伸びに伸びること間違いなしです」
「なあ、もしかして……もしかしてだけどさ」
「なんでしょうか?」
「――あんた、猟兵か?」
見ればキマイラくんの鳥類を思わせる手は、小刻みに震えている。
「はい、さと子は猟兵です」
さと子は画面に肯定の文字を出すと、こくりと頷いた。
「お、お……」
「?」
「お願いしますッ! 協力させて下さい!! 是非!!! むしろ是非に!!」
土下座する勢いで顔の高さを合わせるキマイラくん。やはりこの世界では猟兵はかなりの人気者のようだ。
さと子は満足げに頷くと、キマイラの手を取るのだった。
●生まれたものは
「うぃいいいいっす!!」
数時間後の配信。画面の中でハチャメチャに踊り狂っているのは、オーバーオールを来たトラのぬいぐるみ。その名は――。
「「うぃいいいいっすくーーん!!」」
「うぃいいいいっす!!!」
「きゃぁああああ! 返事してくれたわ!!」
――うぃいいいいっすくんである。現時点で新たに生まれた、うぃいいいいっすの申し子。新たなマスコットキャラクターだ。
くるっと回ってターン! 両手を上げてパーリナイッ!! 逆立ち前転宙返りから3回転捻りで着地、フィニッシュ――ッ!!!!
その日、キマイラフューチャーに新たな風が吹く。バナナと双璧を成すマスコットの存在が浮き彫りになったのだ。
成功
🔵🔵🔴
「シ〇イって何回転だっけ? ほら、どこかの猟兵がいってたやつ」
「4じゃない?」
都市のどこかでキマイラたちが囁いた気がする。シラ〇って何回転だっけ。アイシャも首を傾げるが、どうやら誰も知らないようだ。この世界では、かなりマニアックというか、マイナーな技なのかもしれない。
コトト・スターチス
ぼくはグッドナイスなんとかを使って異議あり動画をライブ配信しますっ!
今日も一日一ヒール!コトトですっ!
この頃見かける「うぃ(略)っす」だけど、ぼくは恐ろしいことに気づきました!
なんとそれは……『すごく文字数が多い』のですっ!
今をときめくにっこにこなコメント表示機能付き動画サイトでこの文字が飛び交う光景を想像してください!
そう、画面が見えなくなってコメントを楽しみたい人たちの迷惑になってしまうのです!
PCスペックが低いと表示もままなりませんし最悪鯖落ちします!
「うぽつ」や「わこつ」の短さは、親しみがありつつ短いコメントで、みんなが幸せになれるコメントなんですねー(結論)
以上コトトでした!
おっつー
●バーチャルの世界で
「今日も一日一ヒール! コトトですっ!」
小麦色の肌に金髪碧眼の可愛らしい幼女が、画面の中でぺこりと頭を下げる。
彼女の名前はコトト・スターチス(バーチャルネット辻ヒーラー・f04869)。約1年ほど前から、キマイラフューチャーのMMORPG世界にて“辻ヒーラー”として活躍しているゲーマーだ。稀に実況動画を投稿する彼女を知る者は、それなりに多い。
「この頃見かけるうぃ(略)っすだけど、ぼくは恐ろしいことに気づきました……」
しかし今日の配信は、いつもとは気色が違うようだ。ゲームをするわけではない。ただいまブレイク中のうぃ(略)っすの恐ろしいこととは?
「それは――すごく文字数が多いのですっ!」
びっ、と指を向け、彼女は懸命に画面へ向けて訴える。その姿は必至でもあり、可愛らしくもあった。そういうところが人気なのだが。
「今をときめくにっこ○こ動画でこの文字が飛び交えば、画面が見え辛くなってコメントを楽しむ人の迷惑になってしまいます!! それに、PCスペックが低いと、最悪鯖落ちもあり得ますっ! 私はそんなのはヤです!」
真剣な眼差しで語りかける彼女の本気の訴えに、視聴者たちは鬨の声を上げた。
ココトちゃんの配信が見れないなんて嫌だぞ!
見たい人が見れないのは困る。
その通りだ!
世界の損失だ
俺は支持するぞ!
俺もだ!
俺も!
そマ?
あたりめえだろjk
「今日はきいてくれてありがとうございいますっ。以上、ココトでした!」
彼女が配信を終えた後、この動画はバーチャル的SNSへとアップされ、様々な物議を醸すことになる。うぃ(略)っすのある種の危険性を認知させることになるのだった。
成功
🔵🔵🔴
マヤ・ウェストウッド
「お祭り騒ぎかい? 放っておかずにはいられないねえ!」
・この時点で敢行せれたブームすり替え作戦を複数便乗し、オーバーオールを着て(マスコットのコスプレ)路上でバナナを陳列。高らかに声をあげ、バナナをたたき売る
・バナナは市中で調達
・バナナを実食してその場でレビューも始める
「うーん……バナナの、甘味が……口の、中に、広がって……おいしいけど……おいしい!!」
・いや、これで流石に「買い手0人」はないでしょ。と自信満々ではいるが、まあうまくいかなくてもどっこいどっこいでしょ。どっこいどっこい……
●もってけ泥棒
「ほらよってらっしゃい見てらっしゃいッ!!」
バンッ! と机を叩く音に、道を歩く者たちは一斉に視線を向ける。そこにいたのは、オーバーオールに黄色と黒のペイント。そう、あのマスコットに扮したマヤ・ウェストウッド(宇宙一のお節介焼き・f03710)だ。
「きゃぁぁあああっ、うぃいいいいいっすくんよ!!!」
「「「きゃあああああぁぁあああ!!!」」」
キマイラの女性陣が殺到するまで、かかった時間はたったの2秒!! 新たなマスコットは可愛いもの好きを中心に広まりつつあるようだ。
しかし、視線を向けられる視線は無数にあるものの。男性陣の食いつきはイマイチ薄い。あぁ、あのマスコットか。めっちゃ踊ってるやつなくらいの認識なのだろうか。
「これを見てみな!」
通りの注目を一身に浴びる中、彼女は机にかかっていた覆いをバサッと取り払って見せた。その下から現れたのだ――。
「「「おおおお!!!! バナナだ!!!!!!!」」」
一斉を風靡する健康食品、その名はBANANA! 空気に触れたバナナからは神々しい黄色の輝きが漏れ、目にするものを魅了する。まさにこれぞ夢の食品、パワーの源。幸せのパンドラボックス――!
彼女はそんなバナナをひとつ手に取ると、皮を剥きぱくりと一口。
「バナナの、甘味が……口の、中に、広がって……おいしい。けど……」
美味しい、けど……? けどなんだ、何なんだ!
耳が痛いほどに静まり返った大通りで、皆が固唾を飲んで彼女の言葉を――。
「――おいしいっ!! 今ならたったの0円! もってけ泥棒ッ!!!!」
「「「「「「おぉぉぉおおおおお!!!!!」」」」」」
「「「きゃぁぁぁああああ!!」」」
後光さえ刺すその黄色い輝きを手に取ろうと押しかける男女たち。めくるめくバナナの奪い合いは大通り全体へと広がり、まるでゾンビ映画のような様相を呈すのだ。
あまりの惨状に若干まずいんじゃね? と思ったマヤがその場を離脱するのにそう時間はかからなかった。
成功
🔵🔵🔴
幻武・極
わあ、面白そうなことをしてるね。
ボクも混ぜてよ。
「うぃいいいいいっす!!極ちゃんでっす!!」
いいね、これ。
これ、バトルゲームキャラでもできないかな?
このモーションをバトルキャラクターズで再現して
コマンド操作付で紹介するよ。
何気に語尾を変えていたりしてるのは
きっと気のせい・・・ではありません。
●取り零しは潰しておいた
「うぃいいいいいっす!! 極ちゃんでっす!!!」
幻武・極(最高の武術?を追い求める羅刹・f00331)は、精一杯の声を響かせ、配信画面内でうぃいいいいいっすを叫ぶ。
――いや、正確には彼女ではない。敬礼のようなそうでないような独特のポーズを取っているのは、彼女がバトルキャラクターズで作り出した戦闘用ゲームキャラクターである。
「うぃいいいいいっすを見た時にね、閃いたんだよ。このモーションをバトルキャラクターでも再現できないかな? って!」
画面の中のキャラクターは、雑談を挟みつつも自由自在に動き回る。元が戦闘用だけあって、何かを再現することは容易いらしい。
暫く雑談配信をしていれば、少ないもののぽつぽつと視聴者数が増え始めた。
「実はこのキャラクターの操作はそんなに難しくないんだ。ボクの言うとおりにやれば、皆もうぃいいいいいっす! が出来るはずだよ!!」
にこりと笑みを浮かべた彼女は、初心者にも分かり易くキャラクターの操作を解説しはじめた。その間も視聴者数がぽつり、ぽつりと増えていく。
実はこの配信。キマイラフューチャーのバトルキャラクターマニアたちの間で初心者指南動画として人気を博すことになる。普段は動画などほとんど見ない彼等だが、そんな層へとブームのすり替えを浸透させたこの動画は、実はかなり重要な位置づけなのかもしれない。
苦戦
🔵🔴🔴
蔵方・ラック
なんっっでありますかその敬礼のようで敬礼でない少し敬礼っぽい挨拶は!!
そんな腑抜けた挨拶をするくらいなら真の敬礼をやるべきであります!
わからないってえんなら自分が教えてやるでありますよ!
まず姿勢を正す!ビシッと気をつけェ!!
そして右腕を真横に90度上げる!指先まで揃えてシャンとするであります!
……そう!そして声に出すならきちんと……
うぃっす……おいっす……押忍……ううん、どれも違うでありますね
やはり「お早うございます、視聴者殿!」と!敬意を持ってハキハキ言うのであります!
よし!配信とかよくわかんねーでありますけど、こっちのほうがぜってー格好いいし人に見られて恥ずかしくないであります!!
●蔵方ぐんそーの再教育
「なんっっでありますかその敬礼のようで敬礼でない少し敬礼っぽい挨拶はぁああ!!」
「「「は、はぃぃいいっ(うしぃぃいっ)!!!!!」」」
所はバナナ配信へと逆戻り。そう、あの早々に吹き飛ばされて退場した3人組が、大人気配信をしていた場所。――現在そこでは、蔵方がその3人へと向けて激を飛ばしている真っ最中である。
「そんな腑抜けた挨拶をするくらいなら真の敬礼をやるべきであります! まず姿勢を正す! ビシッと気をつけェ!!」
「「「ひぃぃっ(うしぃぃっ)!?」」」
「返事はイエス、サーであります!!!」
「「「イエス、サーッ(牛ッ)!!」」」
彼のいう通りにしないと×されるっ! 存在をピチュンされてしまうっ!! くらいの必死の形相で直立不動の姿勢をとるキマイラたち(+牛)。完全なスパルタ教育である。
「敬礼は指先まで揃えてシャンとするでありますよ! そして、声に出すならうぃいいいいいっすなどではなく、きちんと……」
「「「…………」」」
うぃっす? 違うでありますね。などとごにょごにょ口の中で呟く蔵方軍曹。
うぃっす?
押忍?
おいっす?
ボンジュール?
ニイハオ?
アブラカタブラ……?
「あ、あの――」
「敬意を持って言うであります!」
「は、はひぃっ!!?」
黙りこくってしまった上官(?)に声をかけようとしたキマイラは、その声量に見事に飲み込まれた。流石は軍曹である。心得ていらっしゃるであります。
「お早うございます! 視聴者殿! 視聴者の方々に敬意を持ってハキハキと言うのであります!! こっちの方が絶対格好いいッ!」
「か、格好いい!? 本当ですか!!?」
「勿論でありますよ!」
よくわかんねーでありますが! と心の中で付け加え、彼等へは自信満々にそう告げる蔵方軍曹。3人の表情がぱああっと輝く。それは新しいオモチャを見つけた子供のような純粋な笑顔だった。
「「「お早うございます! 視聴者殿ッ!!!!」」」
超有名配信者の3人組がうぃいいいいっすをやめ、なんかきびきびした挨拶をはじめた。この放送がSNSへと投稿された、その瞬間を皮切りに、うぃいいいいいっすはネットの海の過去の遺産へと堕ちていく。
――時代は移ろい、ブームは幕を閉じたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『スロットマシン怪人』
|
POW : プレジャー・プリーズ
自身の【刹那的な楽しみ】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD : スリーセブン・スラッシャー
【頭部のスロットをフル回転しての連続攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : ロスト・ロケット
自身の装備武器に【遺失技術製のロケットエンジン】を搭載し、破壊力を増加する。
イラスト:風馳カイ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『テンジョウネライ! テンジョウネライ!』
『セッテイハイッテル?』
『コゼロクー!!』
ピロピロリンリンピロピロロンッ。
ブームも終わった平和(?)な都市、キマイラフューチャーに突如現れたのは、何やら奇怪な形をした二足歩行の怪人たち。彼等はその両腕をガシャンガシャンと倒しつつ、都市の通りを練り歩く。顔には文字の並んだスロットが3つ。そう、それは旧人類の遺産であり、ユキチトカスキカイとまで呼ばれ恐れられた『スロットマシン』――。
星宮・亜希
「ブームが終わったら、なんか変なのがでてきたんですけどぉ……何ですかあれ?うわさに聞いたスロットってやつですか?」
ダークセイヴァーから来た私にとっては珍しい物、まじまじと眺めてから「遊んでる場合じゃないですね」と敵の攻撃を交わし
「それじゃあ、とっととぶっ壊しちゃいますよ!覚悟はいいですね!」とユーベルコード【疾風怒涛】を攻撃特化で発動。
敵の攻撃を結界魔法で防ぎ、転移術で背後に回り込み……そして、得意の風魔法でそのぐるぐる回るリールをスリーセブンで止めてやります!……え?スリーセブンってどこで知ったかですって?まあ気にしちゃだめです、そこらへんで知ったんですよ私は!
●なんかアレなアレ
そんな怪人たちの進路上に、ひとつの影が立ち塞がった。スロットマシンたちはぴたりと進撃を止め……通りに静寂が訪れる。
「ブームが終わったら、なんか変なのがでてきたんですけどぉ……何ですかあれ?うわさに聞いたスロットってやつですか?」
目の前に現れたスロットマシンを眺め、そうぼやくのは星宮・亜希(たぶん守護天使・f00558)。覗き込むように見つめる彼女に思わず足を止めた怪人たちは、その存在感に圧倒されていた。
彼女の存在感とは――たゆん。そう、たゆんである。こうびっぐでぱわふるでぼんきゅっぼんなアレだ。破壊力の化身……。
『オカネカシテー!!』
暫くの間、その主張の激しいおっp……“たゆん”に動きを止めていた彼等が、はっとなったように彼女へと攻撃を仕掛けた。怪人に欲などないはずなのだが……昔、ずっと目の前に座っていた旧人類である「オッサン」という種族の怨念でも憑りついていたのだろうか。
「おっとと……遊んでる場合じゃないですね」
彼女はその豊満なたゆんに似合わず、ひらりと攻撃を躱す。そこへ殴りかかってきたスロットマシンの腕も見事、結界魔法でガードしてみせた。
「とっととぶち壊しますが、覚悟はいいですね!!」
その台詞が通りに響き渡った、刹那。彼女の姿が掻き消える。
『タンパツー?』
スロットマシン怪人はきょろきょろと辺りを見回すが、彼女の姿はどこにもない。そして――。
「風よ、私を導いて」
ふわり、と。まるで春に吹くような涼やかな風が怪人を撫でた。それと同時に怪人の腕をガシリと掴む白い腕。固まる怪人、数瞬の間……倒される、腕。
「さあ、スリーセブンで止めてやりますよ!」
『アァァー!?』
イッツショータイム!! さあ今週もこの時間がやってまいりました、星宮選手! スリーセブンで見事スロットを止められるのありましょうか!?
3、2、1……倒した―!!! さあ一つ目は7! 二つ目は7! そして、3つ目はー!!?
――7。
『オオアタリー!?』
ドンッ☆
大通りの中央で、サーカスのような愉快な爆発音と共に木っ端微塵に破壊されるスロットマシン。大当たりは爆発へのトリガーだったようだ。
亜希は奇しくも転移によって爆発から逃れていた。物陰から見ていたキマイラは、のちにこう記したという。
何気ないたゆんが、俺の性癖を歪ませた――。
大成功
🔵🔵🔵
マヤ・ウェストウッド
「勢いよく燃え盛るロウソクってのはすぐに尽きるっていうからね……」
・先ほどの騒ぎでくしゃくしゃになった服を直しながら、瞬時に廃れゆくブームと、様々なミームが泡沫の様に生まれては消えゆく特異なキマイラフューチャーに困惑する
・突如現れた怪人に対し脈絡を見出そうとするが、よく分からなくてさらに混乱する
・ひとまず、街中の広告ディスプレイに映る動画配信者たちが食品レビューをしているのが目に入り、マヤなりに模倣してみせる
・もっとも、実食するのは目前の敵であるが……
「次から次へと奇妙な奴らが現れるねェ、まったく。これがアタシの先祖の故郷なのかい? 狂気の沙汰ほど、愉快じゃあないか!!」
●マヤの食品レビュー ~スロットマシン怪人編~
「えらい騒ぎだったねェ」
想像の5割増しで大騒ぎになってしまったバナナのたたき売り会場から抜け出してきたマヤ・ウェストウッドは、そのいざこざで乱れた服装を正しつつそう呟く。
――もちろん、自分が引き起こした惨事であるのは理解しているのだが。
「それにしても」
焦げ茶の髪の間から、彼女はその鋭い眼光を眼下へと向けた。
『アタルカナー!?』
ガッシャガッシャ、ピロピロリンと歪な電子音を響かせ歩くのは、スロットマシン怪人の群れ。幾分数が減っているのは、既に誰かが片付けたのだろうか。
「次から次へと奇妙な奴らが現れるねェ、まったく……」
なんて脈絡のないと彼女は独りごちる。困惑故か、小さな溜息は出るものの、あの奇怪な群れも討伐すべき怪人であることに変わりはない。マヤは緩く口角を上げ、その顔に獰猛な笑みを浮かべた。
「――狂気の沙汰ほど、愉快じゃあないか!」
見下ろしていたビル群から、彼女は身を躍らせる。それと同時。彼女が飛び降りたビルに備え付けられた巨大スクリーンに電子の光が収束し、配信を映し出す。
――ではこのバナナ、実食してみたいと思います!
先ほどマヤが配ったバナナの実食配信である。この区域での一番人気の放送といえば、バナナの実食レポなのであった。
「ではこの怪人、実食してみたいと思います」
大音量で流れる配信の台詞に則り、彼女は棒読みながらも言葉を紡ぐ。今から始まるのは戦いなどではない。マヤの実食レポート、スロットマシン編。
刹那、地面に映ったマヤの影の輪郭がぐにゃりと歪む。地へと近づき肥大化する片腕の黒影は、その形を変え、鋭い牙を怪人へと向ける。それは彼女のユーべルコード『超獣技法・飢餓咬』――。
ではさっそく!
「ではさっそく」
『――いただきます』
彼女が去ったその後には、ただ抜け殻のようなスロットマシンがぽつりと、残されていた。
成功
🔵🔵🔴
ジョルジュ・ドヌール
「享楽……か。嫌いじゃないけどね、そういうの。」
射幸心っていうんだっけ。君も他人の快楽のために作られた道具なんだね。それなら……そうだね。一つ勝負といこうか。
――そこのキマイラくん、ちょっとコッチに来てくれないかな。
僕と、このスロットマシンとどちらが君を愉しませるかの勝負だよ。ふふっ……
そんな趣味はない?それをその気にさせるのも、僕たちのような人形の役目さ。時間は取らせないから、さぁ……
【這いより扱き愛撫せし蛇】を発動し、キマイラや、あわよくばスロットマシン怪人すらも快楽の海に叩き込もうとする。
●溺れる者ハ
『アタリノヒ、アタリノヒ!』
コツ、コツ、コツ。
『ナルミー?』
背後から何の脈絡もなく聞こえてきた小さな足音に、怪人たちは一斉に振り返るとスロット(顔?)を向ける。そこに立っているのは痩躯の少年ただ一人。
「享楽……か。嫌いじゃないけどね、そういうの」
ジョルジュ・ドヌール(咎人が来たりて咎を討つ・f05225)は怪人の群れを見てぽつりと呟く。――スロットマシン。それは旧人類の負の文化。際限なくヒトの欲を煽り、一喜一憂させる快楽のために造られた哀れな道具たち。
射幸心、というのだったか。
「あぁ、そこのキマイラくん」
ビルの影。そこから恐る恐るといった様子で視線を向けていた一人のキマイラに、彼はそう声をかける。
「ちょっとこっちに……ダメか」
彼が視線を合わせたとたん、キマイラはひゅっと顔を引っ込めると逃げ出してしまった。何か、怖がらせることをしただろうか?
ジョルジュが顔を背けたその瞬間。どこにそんなものが搭載されていたのか、スロットの裏側からロケットエンジンの轟音を響かせ、怪人がタックルを仕掛けてきた。チャージ(突撃)……至極単純ではあるが、それ故に防ぎ難い。
「っと!」
腕を盾に被害を抑えた彼は、空いた手に肉の鞭を召喚し、スロットマシン怪人を縛り上げる。艶めかしくも禍々しい雰囲気を纏うそれは、彼のユーベルコード『這いより扱き愛撫せし蛇』が具現化したものだ。
「試してみるとしようか。僕の愛で、君を抱き締められるかどうか」
――その力は少し、壊れるほどに強いかもしれないけどね。
苦戦
🔵🔴🔴
コトト・スターチス
配信のあと気になって来たらなんかいましたっ
あっ、これはじゃぶじゃぶ課金したくなるようなしゃこーしんをあおる危険がアブないやつです!
ほっとくとみんなが大変になるので、ここで壊しちゃいましょう!
グッドナイス・ブレイヴァーで配信しながら、街をまもるためにがんばります!
敵がロケットエンジンをつけてるなら、勢いがある分制御はむずかしいはず
少しこわいですけど、動きのパターンを読んで攻撃を回避したあとに、視聴者のお兄ちゃんたちの再生数やコメントをパワーに替えて、メイスでたたくっ!
こわれた機械はななめ45度からの物理攻撃に弱いとコメントにあったのでまちがいありませんっ
お兄ちゃん、色々教えてくれてありがとうっ!
●コール!for you.
「今日も一日一ヒール! コトトですっ!」
ココトじゃないです! と手をぱたぱたさせながら力説するコトト。視聴者に名前を間違えるものがたまにいるのだ。その者は、きっと心の中で土下座しているに違いない。ごめんなさい。
「見て下さい、なんかいっぱいいますっ!!」
彼女が指差す方向へと、ドローンカメラはそのレンズを向ける。そこにいたのはたくさんの怪人たち。ガッシャンピロピロと電子音を響かせながらコトトへと向かって進軍中だ。
「あれは怪人ですっ、危険がアブないやつです!」
スロットマシンの群れ。あんなキマイラはこの世界には存在しない。XYZ座標四方八方3600度軌道衛星どこから見ても立派な“スロットマシン怪人”である。
「ぼく、頑張ります!!」
身の丈ほどもあるメイスを携え、彼女は構えを取った。ドローンは、街を守るために怪人と相対する彼女の姿を迫力の空中映像で視聴者へと映し出す。
がんばれ、コトトちゃん!
怪人なんてやっちゃえー!
気を付けて!!
皆のコメントを横目に見ながら、彼女は敵を見据えている。聞けば、スロットマシン怪人はロケットエンジンで加速するらしい。その速さには及ばないけれど……速い分、制御は容易ではないはずだ。ならば――。
『トッツゲキー!!』
シュボオオッと点火音を鳴らしたかと思いきや、それを認識した頃にはトップスピードへ。ぐるんぐるんとスロットを回転させながら、壊れたマシンは目では追えない猛スピードでコトトへと迫る。
「――ここです!」
しかし、彼女は視線を逸らしてはいなかった。しっかりとその速度を視線で追いかけ、怪人の突撃を見事に躱して見せたのだ。
刹那、彼女はその金髪をふわりと広げ、背を晒す怪人へと、その手のメイスを振りかぶる。
そこだー!!!
いけっ!!
やれーー!!
コトトちゃーん!!
好きだ―ーーーーッ!!!!!
叩き潰せ―っ!!
おいどさくさに紛れて何してんだ!!
俺のだぞ!
お前のでもねぇよ!!
大量の応援コメントに紛れて告白の言葉が流れてきた気がするが――それさえも、彼女のユーベルコードは力に変える。リアルタイムで伸びる再生数に視聴者数、画面を埋め尽くすほどの大量のコメント。愛の告白、視聴者の応援。希望、意志、想い、願い。もうなんか全部ひっくるめて、その全てを力に変えて、いま――!
「コトトスマーーーーーッシュ!!!!!!」
――辻ヒーラーは、本気にさせたら、ヤバい。
大きく凹み、破片を撒き散らしながらぷすぷすと黒煙をあげるスロットマシン怪人が、その物理力をまざまざと視聴者へ見せつけるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
●後日談
やっぱりココトの名前を間違えてしまう視聴者。戒めとして、間違えた当人は部屋の壁に大きく「ココト」と紙に書いて貼っているらしい。
「ココトちゃん、本当にゴメン……」
反省しているらしいので、他の視聴者も今回だけは許してあげることにしたようだ。
●
『コトトとココトでこんがらがった視聴者が1名いることをここに明記しておきます。あなたのファンより』
事務所に直筆でそんな手紙が届いたのは、5秒後のことだった。
●
名前を間違えた視聴者がめちゃくちゃ凹んでいる、その頃――
●
上城・クロウ
キマイラ...キマイラフューチャーにおける一般種族。
このような機械的生命体にはどこか親近感を覚えます。さて、彼の場合は些か熱が入りすぎているようですが...
WIZ判定:失われた技術...またとない機会です。「学習」するとしましょう。
光剣を二刀に分けてそれぞれに装着。
「壊れた機械の修繕の知識は持っています」
第一段ロケットで超加速、すれ違いざまに斬撃を飛ばしつつワイヤーを射出し急速旋回。
「...入射角上方斜め45度で、鋭く叩けば良い、と」
第二段ロケット発動。加速+重力+腕力の超重斬撃をスロットマシンの上部に45度で叩き込む。
しかし....はて、それはテレビジョン(TV)の話でしたっけ?
『ウー! ウー!』
ガガガンガッシャンッ。あれだけの数がいたスロットマシン怪人の群れも、猟兵たちの頑張りによって残りは僅か。というかラスト1機である。
「遺失文明の技術、ですか」
独り言なのか、小さくぽつりとそう呟いたのは上城・クロウ(ミレナリィドールのフォースナイト・f01157)。彼の視線の先には、ラスト1機となったスロットマシンがガシャガシャと音を立てている。
『アイタアタッタ!!』
ガシャコンッ。スロットがChance!で揃うと、やはりその後ろからロケットエンジンを点火。怪人は彼へと目掛け、遮二無二突撃を慣行する。
「またとない機会です。学習するとしましょう」
彼はその『目』で、怪人が攻撃動作へと移るの注意深く観察していた。エンジンを点火し、迫る、その一部始終を。片時も見逃さないように。
――シュボ、と。どこかから炎の灯る音が聞こえた気がした。
怪人のものではない。それはなぜかミレナリィドールである、上城自身から。彼はその背中から、どういう理屈か炎を吹き出している。目の前で今まさに背中から火を噴き迫る怪人と、まったく同じように。
模倣。いや、模倣を超え、それは既に『まったく同じもの』へと進化している。
これが彼のユーベルコード。相手と同じユーベルコードを放ち、相殺する、彼だけの『ミレナリオ・リフレクション』――。
「……入射角上方斜め45度」
彼は自身も加速すると、サイキックエナジーで形作られた二振りの刀を両手に携え、すれ違いざまに斬撃を放つ。速度故か浅い……が、彼の狙いはこれではない。速度に慣れる為の試行、次の一手への試金石に過ぎないのだ。
鋭い噴射音と共に第二弾のロケットを点火した上城は、上空へと飛ぶ。計算されつくしたその位置はちょうど、怪人の真上――。
「その角度から鋭く叩き込めばいい、と」
怪人の上方斜め45度へと狙いを定める。重力に従い、ロケットで加速する彼のエネルギーは如何ほどか。彼が空を切る音は、ほんの一瞬の出来事に過ぎなかった。
重力に加速、自身の腕力を乗せた刀での一撃は、容易く怪人を斜めに切り裂いた。叩いて直すもへったくれもあったものではない。エネルギーが大きすぎたのだ。
ジジジジ、とパルスを纏い沈黙する最後のスロットマシン。
「――はて、それはテレビジョンの話でしたっけ?」
そういえば、スロットマシンではなかった気がする。彼は今更ながらに、そう思い返すのだった。
ラスト・スロットマシン。沈黙――。
成功
🔵🔵🔴
第3章 ボス戦
『機関車怪人』
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POW : トレイン・フリーク
【時刻表】【鉄道模型】【鉄道写真】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD : 出発進行!
自身の身長の2倍の【蒸気機関車】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ : アクシデントクラッシュ
対象の攻撃を軽減する【高速走行モード】に変身しつつ、【煙を噴き上げながらの体当たり】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:来賀晴一
👑17
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
流行というのは枝葉のようなものである。
一つの時期を境に、だんだんと増え始め。
何時しか人知れず散っていく。
では、つけた枝葉は無駄だったのだろうか?
――否、そうではないだろう。
ついた枝葉があるからこそ、今があり、
散り行くからこそ、次の枝葉が生きるのだ。
命は巡り、流行もまた、巡る。
それは不可逆であり、また自然の摂理でもある。
それを許せぬというのなら。
あくまで逆らうというのなら。
それは今までに散って行った者(ブーム)たちと、これから芽生えんとする枝葉(ブーム)への冒涜である。
老兵は死なずただ消え行くのみ。
忘れ去られるわけではないのだ。
ならば大人しく、静かにしていて欲しいものだ。
つまり何がいいたいかというと、時代遅れの怪人くんにはさっさと老兵になってもらおうというだけの話である。
●
星宮・亜希
この煙を吹き上げてるやつが例の怪人ですか?よくこんな奴がブーム起こせましたね。どっちかというと不人気すぎてブームになるような、そんなタイプ……
小言はこれくらいにして何時もの『基本戦術』に移らさせてもらいます。簡単に言うと時間稼ぎ
敵の強化された攻撃を結界魔法と槍の【武器受け1】で防御、食い止めながら転移魔法を起動し、怪人から離れた場所へワープ。
「こっちですよ怪人さん、見惚れて気付きませんでしたか?」
続く敵の攻撃を【残像2】【空中戦1】で回避し、隙を見て【槍投げ2】でアッカをぶん投げて怯ませます!
……あと、私をコソコソ見てたキマイラさんは後で私のオフィスに来るように、【情報収集1】で調べ済みです。
コトト・スターチス
名前間違ったお兄ちゃん、ぼくは気にしてないですからねっ!(挨拶)
ついに、いよいよボスっぽい怪人が出てきましたっ!
ぼくは配信をつづけながらも辻ヒーラーとして、みんなの回復をがんばります!
今回はあんまり前に出ないで、「迷彩」で目立ちにくい所にかくれて攻撃をやりごして、ピンチな方がいたら「祈り」ながら『生まれながらの光』を使います!
「お兄(お姉)ちゃん、負けないでくださいっ!」
本来の辻ヒールとはちがいますが、傷ついた人をほっとくことなんてできませんっ!
こうして回復で「時間稼ぎ」ができれば、きっと敵も疲れて隙ができるはず!
能力のせいで疲れますが、ここはぐっとがまんしてケガした人を助けつづけます……っ!
ベアトリーチェ・トリフォリウム
ナース服と巫女服を足して2で割ったような服を着た
なのに、大き過ぎる胸が弥が上にも目立ている。
不思議な姿のキマイラ、ベアトリーチェは
瞳をパチクリとしながら配信用カメラの前で喋っている。
「あなたには癒しが足りていません!
ええ!全くもってお疲れすぎて
ヘロヘロになってる様にしか見えてません!」
頭には、前から兎耳、猫耳、狐耳の順で付いている。
「そんなあなたでも私の癒しにかかれば
一発でヘロヘロからはにゃーん状態に回復しちゃいますよ!
・・・って、こっちに向かってき」
向かってきたボスにふっ飛ばされたが、大過ぎた胸がクッションに。
「・・・もうプンスコです。絶許。ユーベルコード、発動。
【華言霊真書大全】」
視聴者数:スゲーいっぱい。
再生数:ヤベー数
現在、トレンド1位をぶっちぎりで独走中――。
●
「今日も一日一ヒール! コトトですっ!」
名前間違ったお兄ちゃん、ぼくは気にしてないですからねっ! と挨拶代わりにフォローを入れるのを彼女は忘れない。本人が気にしないなら仕方ないなと視聴者も怒りを鎮めたが、間違えた本人は未だにベッドに突っ伏していた。しかし、そんなことはお構いなしに放送は進むのだ。
「見て下さい! ついにボスっぽい怪人が出てきましたっ!!」
ドローンカメラは彼女から離れ上空へ。そのレンズに映るのは、そう――あの『うぃいいいいいっす』で一時期ブレイクした『頭部機関車型怪人シャーミン』である。だが、怪人が画面に映っても視聴者の反応は薄い。それは、彼の時代が既に幕を閉じたことを何よりも如実に示していた。
「ぼく、今日は辻ヒーラーとして頑張りますっ! 応援よろしくお願いします!」
パタパタと手を振る画面の中の幼女を微笑ましそうに見つめる視聴者たち。コトトの言葉と共にカメラは彼女の元を離れ、怪人へとシフトしていく。
●
レンズが注目したのは、怪人へと何やら語り掛けている一人のキマイラ。ベアトリーチェ・トリフォリウム(キマイラの聖者・f06249)。ナース服と巫女服を足して割ったような独特な姿をした彼女だが。それ以上に、服を押し上げるその豊かな“ぼいん”が男性視聴者の視線を釘付けにしたのはいうまでもない。
「あなたには癒しが足りていません! 全くもってお疲れすぎて、ヘロヘロになっている様にしか見えません!」
『…………』
おまえには癒しが足りてねえ、疲れてるんだ! と力説する目の前のキマイラの少女に、流石の機関車型怪人も言葉が出ない。え、なに、オレ疲れてんの? とでもいいたげな雰囲気をその全身から醸し出している。
……もっとも、実際に出ているのは蒸気なのだが。
「そんなあなたでも、私の癒しにかかれば一発で――」
『…………』
あ、これダメなやつだ。人の話はきかないやつだ。
それに気づいてしまった怪人は、ゆっくりと身を屈めた。両手と片膝を地面につけ、もう片方の足を延ばす。その姿勢はまるでクラウチングスタートのような――。
「――ヘロヘロからはにゃーん状態に回復しちゃいますよ! ……って、こっちに向かってきt」
ズベシャアッッ!!
なんかもうユーベルコードとか関係なく、ただ体当たりで吹き飛ばされていくベアトリーチェ。彼女が無事かは神のみぞ知る。コトトがふぇぇってなりながらヒールしているのでたぶん問題ないだろう。
●
「なーにしてるんですか……にしても、この煙を吹き上げてるやつが例の怪人ですか?」
吹き飛ぶぼいん(命名)を横目で見つつ、星宮・亜希は怪人の頭を見上げる。頭部機関車型怪人という名前の通り、頭の上にはちっちゃくした機関車が行儀よくのっかっているのだ。なんか煙もいっぱい出ている。シューって感じだ。
『シューッ!!』
ありがとうございます。
「どっちかというと不人気すぎてブームになるような、そんなタイプに見えますけど……」
ぼそっと呟く彼女の言葉が耳に入ったのかそうでないのか。怪人はもう一度煙を吹くと、彼女に向けてその巨大な手を振り上げる。吹き出す蒸気の合間から見えるのは、小さな小さな鉄道模型。歯車の形をしたその車輪が動くたび、怪人の出力がみるみるうちに増大していく。
『オレの広めたブームを終わらせた報い、その体で受けるがいい!』
蒸気を推進力として使った怪人の剛腕が、空気を切る音と共に振り下ろされた。怒りとしては正当なようにも思えるが……実は、亜希はブームの終了には何ら関わっていない。スロットマシンは爆発させたけれども。残念、人違いです。
「こっちですよ怪人さん」
しかし、腕を振りぬいた場所に既に彼女はおらず。真後ろからそんな声が怪人へと届くのだ。
『笑止!!』
再度、腕から吹き出す蒸気の束。それは推進力を横ベクトルへと変更し、彼女の立つ地面へと巨大な腕が振り抜かれる!
しかし――。
『なにっ!?』
突然空を飛んだ彼女に、怪人は驚愕の声をあげた。残像を引き、複雑な軌道を描き腕を躱したのだ。ちなみにめっちゃたゆんって揺れている。何がとはいわないが。教義に則った露出の多い服装とは如何なるものなのか。
「そこです!」
『ぬぅっ!』
攻撃を掻い潜り、投擲した彼女の聖槍は、怪人の展開した時刻表によって阻まれる。淡く光を纏う時刻表――それは決められた時間になると、停車中だけその時間を停止させることができる、怪人最大の防御手段。切り札の一つである。
「困りましたね……まぁ、目的は時間稼ぎですし、よしとしましょうか」
●
ガゴンッ!
そんな音を立てて瓦礫の中から起き上がったのは、ぼいんことベアトリーチェ。その豊満なバストが衝撃へのクッションとなり、またコトトの献身的なヒールのおかげで意識を回復したのだ。
……そして、彼女は怒っていた。
「……もうプンスコです。絶許。ユーベルコード、発動。【華言霊真書大全】」
もうなんか怒りで我を忘れている。言葉遣いも怪しいが、攻撃はしっかりとユーベルコードを使用していた。体当たりした怪人とは大違いである。
『ぬん?』
彼女が発動と唱えたものの。火も風も起きず、その場に静寂が訪れる。怪人は拍子抜けしたような息を吐き――ひらり、と。青い花弁が時刻表へと触れた。その瞬間。
『ぬぅあ!? なにぃっ!!?』
フシューッッ! と、あまりの驚きに思わず蒸気を漏らす頭部機関車型怪人。ただ花びらが時刻表に触れただけで、彼のその防御はいとも容易く破られたのだ。
その花弁の元の花は『ニゲラ』。花言葉は『未来』。ベアトリーチェのユーベルコードは、時刻表の時間だけを未来に進めることによって、その絶対の防御を破ったのだ。
「あら、見かけによらずやるんですね」
「――彼には癒しが足りません」
「……それ、まだ思ってますか?」
「…………」
流石の彼女も黙らざるおえなかった。だって怪人くん、めっちゃ睨んでくるんだもの。ほら、蒸気めっちゃ出してるし。おこってるし。時刻表破れたし。
しかし、彼女たちの見事な連携によって、怪人最強の防御手段は絶たれたのだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
蔵方・ラック
住民に勧められるがままにバナナを食べながら観光していたらちょいと出遅れちまったでありますが
なぁに、ヒーローは遅れてくるものらしいでありますからな!!
腑抜けた挨拶を広めた張本人!!ぶっっ潰すのであります!!
スクラップ召喚で、巨大な機械腕を装着!
その両腕を組んで
【特大スクラップ製ダブルスレッジハンマー】を振り下ろす!
時刻表だろうが模型だろうが写真だろうがまとめて叩いてやるでありますよぉ!!
ついでに地面が割れて、機関車が走りにくくなれば一石二鳥でありますな!
黒羽・茜
「ちすちすー♪ここがバナナの街っすかー♪情報料としてお金の代わりに『バナナが無料で食い放題な街』を紹介してくれるなんて、うちのダンチョーもなかなか太っ腹っすねー♪………へ?バナナブームはもうとっくの昔に過ぎ去った?そもそもタダでは売ってない!?ぁんの野郎!騙しやがりましたね!」とこの怒りをどこかにぶつけようと辺りを見渡し怪人を見つける。そしてアレをスクラップにしてスッキリしようと思う。私は、忍者らしく得意のスピードで分身を使う。それらが集まるとその出で立ちはまるで『機関車』のようになった。その後ユーベルコード【降魔化身法】を発動。テケテケをその身に降ろし、勢いよく怪人に向かって行く……
新納・景久
戦場より200m程離れ、胡坐を掻いて精神統一
(こん戦、俺ん舞台ではなか。じゃっとん、大将首は健在じゃ。手柄は取らん。取らんが、多少の手助けなあば、一番槍も文句は言わねが)
飽く迄援護であると自分に言い聞かせながらも、少しずつ弓に手を伸ばす
(首置いてけ……、首置いてけ……、首……)
「首置いてけェェッ!!」
カッと目を見開くと同時に、千里眼射ちで頭部を狙う
「首じゃ、大将首じゃ……!」
今すぐ妖剣を手に駆け出したい衝動を抑え、遠距離からの千里眼射ちを続ける
しかし3本ほど射た時点で、
「あぁッ! 俺はやっせんぼじゃ!! チェストがーーーい!!」
我慢できず妖剣を引っさげ戦場へ駆けていく
(討伐は他人にお任せ)
幻武・極
どうやら、ボクの真の姿を見せる時がきたようだね。
これがボクの真の姿。
幻武流『模倣武術』
キミの高速走行モードに対抗しうる高速走行モードがボクの真の姿。
・・・、この煙突の被り物はオマケなんだよ、オマケ。
さあ、どちらが速いか勝負だ。
●爆走! 障害物機関車レースランド開閉!
配信を見ていたキマイラの感想。
「なんかスゲーしヤベー感じのレースだった。見るのはマジ楽しいけどやるのはカンベンな」
*****
「どうやら、ボクの真の姿を見せる時がきたようだね……」
幻武・極は奇妙な姿勢で怪人と対峙していた。片手を頭に片手を腰に、俯き加減でポージング。そう、それはまるで、某世界のマイ○ル・ジャ○ソンそのもの――!
え? ジョ○゛ョ? 知らんな。マイケルって誰だよ。っておい待て、画面の隅に小さく写真映すのやめろ! やめろったら!
『お前が真の姿を見せようと――』
実は雰囲気に若干ビビった怪人。自分でそれを吹き飛ばすように鼻で笑うと、騎乗していた機関車へとその体を密着させる。別に空気抵抗を気にしているわけではない。彼の体中の歯車がギリギリと音を立てて回れば、その体が機関車へと組み込まれていくのだ。
『私のスピードにはついてこれまい!!』
ガシャーン! 機関車卍フュージョンッ!(適当)
そうして出来上がったのは、機関車怪人と機関車が融合してできた、怪人の高速走行モード。なんか機関車の煙突の上に、怪人の頭にあったちっちゃい機関車がのっかっている。めっちゃかわいい。マスコット化しょ。
「……ボクはついていけるだろうか」
彼はそのポーズを解かずに飛んできた歯車を叩き落すと、そのまま自身のユーベルコードを発動させる。名前は幻武流『模倣武術』(ゲンブリュウ・コピーアーツ)――
『な……!?』
怪人が思わず驚きの声を上げたのも無理はない。次の瞬間に目の前に現れていたのが、自身と同じ形をした――機関車だったのだ。
一度だけ、相手のユーベルコードを記憶し借用できる、彼女の流派の技。今回は機関車をコピーしてみました。
「君のいない世界のスピードに!」
シューッ! と煙突から煙を吹き上げながら、彼女は怪人へと向けて走り出す。
「さあ、どちらが速いか勝負だ」
……ん?
『い、いいだろうっ! 精々ついてくることだ!!』
おい。
ギッコン、ガシャンッ! シューッ! と同じ音を立て、二つの機関車は大通りを走り出す! 二人は数秒でトップスピードへ!! 割れた道路の破片とか煙とか砂埃とかその他もろもろを空中へと巻き上げ、巨大な質量が只ひた走るッ! 命、燃やすぜッ!!!
その姿はまるでF1でも見ているようだったと後に語り継がれている。
『「おおおおおぉぉぉおお!!!」』
ドドドドドドドド!
キマイラフューチャー第一回『爆走! 機関車レース!』ここに開幕――。
●
「ぁんの野郎! 騙しやがりましたね!」
都市の一角、大通りから少し道に逸れた場所で地団駄を踏んでいるのは黒羽・茜。
「バナナ、もう終わってるじゃないっすか!!」
彼女は知り合いから、情報料のかわりにバナナ食い放題の素敵なBANANACityがあるぜって言われて来てみたのだが……なんと、バナナ食べ放題は既に終わってしまっていたのだ。
「ウソついたこと後悔させて――」
教えた奴の顔を脳裏に浮かべ、シュッシュッとシャドーボクシングをしていたその時。
『「ぉぉぉおおおおおお!!!!!」』
ドドドドドドドドドッ!!
「――は?」
ぶおんっ、と。目の前の大通りを物凄いスピードで横切っていく物体があった。巻き上げられた砂埃を直に浴び小さく咳き込む。
「な、何アレ……怪人、っすよね」
急速に小さくなっていくふたつの機関車。そして残されたのは、埃だらけの自分。あー、なんかイライラしてくるよね。わかるーーとコメントでは賛同の声が上がる。
「……アレをスクラップにしたら、ちょっとは気分も晴れるかな」
とん。彼女は大通りを小さく蹴り上げ、走り出す。足を前に、片足を前に、地に着くほどに姿勢を低く――その姿は、まるで遠く伝説として語り継がれる異国の暗殺者『ニンジャ』を彷彿とさせる。
「待つっすよ!!!」
タン、タン、タン、、タタタタタタタッ。
瞬時にスピードを上げた彼女の周囲に、まるで残像のように現れた分身たち。4人の彼女が同じ姿勢、同じ動きで地面を走っているのだ! それはつまり、彼女はあの――。
ニンジャ!? ニンジャだ!!
クノ・イチか?!
コメントはもうそれは大盛り上がりである。しかし茜はそんなことはつゆ知らず、その分身体を自身の周囲へと纏わせる。いや、そう見えているだけかもしれないが……違った。何故なら、分身を纏った彼女の姿が陽炎のように揺らめき、変化していくのだ。
ガタンッ、ガタタンッ。そんな音が聞こえた気がした。
否、気のせいではない。画面の中の彼女が今まさに、そのゆらりと揺れた陽炎と砂埃の中から姿を現し――。
「シューッ!!!」
そう! 機関車へと変化したのだ!!
アイエエエエ! ニンジャ!? ニンジャナンデ!?
自身のユーベルコード【降魔化身法】によってテケテケをその身に降ろし、彼女――いや、機関車アカネはスピードを上げた。それは遥か前を走る2人に追いつく程で……。
「スクラップにしてやるっすよ!!!!」
彼女は程なく、前方2両へと合流を果たすことになるのだ。機関車レースはNo3まででお送りします。
●
3両目が合流したその頃、200mほど離れたビルの上で。新納・景久(未来の親指武蔵・f02698)は胡坐をかき、目を閉じて座っている。騒がしいこの都市の中、彼女の周囲だけは静謐な空気を纏っていた。
(こん戦、俺ん舞台ではなか。じゃっとん、大将首は健在じゃ。手柄は取らん。取らんが、多少の手助けなあば、一番槍も文句は言わねが)
彼女は目を閉じたまま、そっと弓に手を伸ばし立ち上がる。多少の援護ならいいだろう、多少の援護なら。はやる気持ちを自制し、そう自身に言い聞かせ――。
「首置いてけ……」
今なんかちょっと本音が漏れた気がする。
(首置いてけ……首置いてけ……)
「首置いてけェェッ!!」
カッ!! と目を見開き、彼女はユーベルコードを発動させた。ペルソナッ!
その名は『千里眼射ち』。10秒の精神統一の後、相手へ向けて矢を放つそのユーベルコードは、ほぼ必中を確約するといっても過言ではない。
「首じゃ、大将首じゃ……!」
そのまま弓をつがえると、2本、3本と立て続けに矢を放つのだった。そしてその矢は都市のビル群を超え、雲を従え。綺麗に空中に弧を描き――。
●
「「『ぬぅぁああああああ!!?』」」
ドカンッッ!! と、爆速で走り続ける怪人のすぐ横で、何かが爆発したかのように地面が抉れる。『千里眼射ち』によって放たれた矢が炸裂したのだ!
『この聖なるレースを邪魔するとはッ! 許せぬ――』
聖なる要素はどこにもない。あと、まだ飛んできてますよ、矢。
『ぬぁぁああ!!?』
スバゴンッ!
重い音と共に、機関車トー●スに矢が炸裂! たまらず急停車する怪人機関車。その体は既に、歯車が欠け、ボロボロであった。命、燃やしてますから。
「チェストがーーーい!!」
薩摩弁(?)で雄叫びをあげ、足を止めた怪人へと迫ってくるのは新納だ。その手には妖刀を携えている。やっぱり、我慢できなかったんですね……でも、そこ、線路上(?)――。
「「うぉぉおおお!!」」
「なぁぁあああああっ!?!?」
気づくのが少し遅かったらしい。はやる衝動を抑えきれなかった新納は、ふたつの爆走機関車に跳ね飛ばされ、キラーンと輝きを残して都市の空へと消えていった。嗚呼……大空に彼女のご尊顔が映っておられる。Oh、じーざす。
「あーっ!?」
そんな折、怪人を指さし叫んだのは蔵方・ラック。どうやら食べていたらしいバナナの皮を放り捨て、彼は怪人へと走り出す。
「腑抜けた挨拶を広めた張本人!! ぶっっ潰すのであります!!」
やってやるでありますよ! と気合を入れた蔵方は、その両手を天へと掲げる。すると、どうだろう。周囲のスクラップが彼の腕へと集まっていくではないか!
腕へと収束した瓦礫の群れは、彼の両手を巨大な腕へと変貌させた。ちなみにこの時、コメントでは、男性陣の語彙力の低い称賛の声が飛び交っている。スゲーぞ! ヤベーぞ!!
蔵方はその両手をガシリと組み合わせ、振り被る。それは彼のユーベルコードが一つ『特大スクラップ製ダブルスレッジハンマー』――
『ぬぅぅう!?』
高速走行モードの反動で暫く身動きの取れない怪人は、咄嗟に破れた時刻表を展開するがもう遅い。
「纏めて叩き潰してやるでありますよぉぉお!!!!」
ドグワシャ、と鈍い音を立てて吹き飛んだ怪人機関車はその巨体を宙に浮かせ、近くのビルへとめり込むのだった。物理、強すぎませんか。
ぐんそおおおぉぉ!!!
さすがっす!!
牛!!!
その瞬間、コメントでは例の3人組が大絶賛の声をあげ、蔵方がめっちゃアップでドローンカメラに映り込むことになる。流石であります、軍曹。
爆走! 機関車レース、終幕――。
成功
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マヤ・ウェストウッド
「見たところ、アンタが妙な"ミーム"を播いたのかい?」
・奇妙な敬礼のポーズを真似してみせる
・眼帯を外し、義眼である右眼に仕込んだ重力子加速装置を稼働させる
・流行や娯楽がインフラの一つと化したこの世界でネットワークのミームを播いて住民を煽動するという、合理的な考え方に感心している
・楽しそうな見た目に対しても特段悪い印象は抱いていない。しかしながら、オブリビオンには変わりない。せめてもの慈悲として苦痛なく倒す事を望んでいる。一撃必殺志向。【威力重視】で魔矢眼を放つ。
「アンタのソレは、確かにいいミームだった。でも、この賑やかな街じゃパワーワードに溢れている。ここじゃあ生き残れないだろうよ」
難駄芭院・ナナコ
やっべぇ、すっかりとバナナに夢中になってたら親玉だと…?
だがアタイが戻ってきたからにはもうここまでだ!テメェの頭の上にバナナ乗せてやんよォ!
このデリシャスバナナブレイカーはタダの食器じゃねぇ
二つを連結させて武器にしてやんよォ!
そして!更にバナナを食う!今度は高級バナナだ!全部持ってこぉい!
さぁ、黄金果実活性法!どーだ!この完熟な肉体美を!
100%バナナパワーでぶっ飛ばしてやんよォ!
ジョルジュ・ドヌール
汽車……あまりいい思い出が無いね。故郷から売られた日を思い出すから。
「その蒸気は目障りだよ。汽笛の音も癪に障るね。さっさと黙ってくれないかな」
決められたレールの上を走るのが本分なんだろう?それならそこから脱線させてあげようじゃないか。スペクタクルなショータイムを魅せておくれよ。
さて、今回のガジェットは何が出るかな?信号機や連結機、踏切なんかが出ても面白いだろうね。
直線的な攻撃が多いのかな。それならばどの方向を見ているかを確認することで行動の予想は出来そうなものだね。幾らスピードが速いとは言え、来る方向が分かっていれば予定進路から退避するのは出来ない芸当でもないよ。
ベアトリーチェ・トリフォリウム
ボスが次の行動を起こしている。
だが、頭についている6つのけも耳がボスの動かしている
歯車音を聞き逃すわけも無く
「あなたにはこれがお似合いです。
ユーベルコード『撤退の花弁(トゥ・ウィズドロー・オブ・ペツァール)』」
何も無かった空間に文字が浮かび出した。
【今日12月18日の誕生花は『コチョウラン』。花言葉は【あなたを愛します】【幸福が飛んでくる】。同じ誕生花として、モミ【高尚】、セージ【家庭的】などがあるよ!】
「そして、あなたは気付くでしょう。これがあなたへの手向けの花となる事を」
持っている武器が浮かび上がった文字の『コチョウラン』へと変わり
ボスの周りを取り囲み、ボスに対して一斉攻撃を仕掛ける。
●少し真面目パートです
『まだ終わらんぞ…‥』
瓦礫を押しのけ、元の姿に戻った頭部機関車型怪人は身を起こす。高速走行モードは既に解けていた。そもそも維持できるほど力も残っていない。
「……その蒸気は目障りだよ」
ぽつりと聞こえた静かな声に視線を向ければ、そこに立っていたのは線の細い少年、ジョルジュ・ドヌール。
「汽笛の音も癪に障るね。静かにしてくれないかな」
怪人の召喚した機関車は、いまは怪人の横へと停車していた。小さく汽笛を鳴らし蒸気をあげ、アイドリング状態である。
『黙るのはお前の方だ。今すぐ轢き潰してくれる!』
「へえ、それは楽しみだ」
ガシャンッ、と体を慣らして立ち上がった怪人は、ダメージを感じさせない動きでひらりと機関車に跨った。機関車on機関車……あ、いや、言ってみたかっただけなんです、ホント。
『出発進行ッ!!!』
シューッ! と勢いよく蒸気をあげ、さきほどよりは幾分遅い――それでも速いが――速度でジョルジュへと、一直線に駆けだした。敷かれたレールの上を走る機関車は、たとえ高速走行モードでなかったとしても十二分に速い。
しかし、今まさに自身へと殺戮のレールが敷かれているというのに、彼は無感動にそれを見つめている。
「決められたレールの上を走るのが本分なんだろう?」
少年が虚空へと手を伸ばし、何かを掴み取った。彼が行うのは、そう……召喚。ジョルジュの持つユーベルコード『ガジェットショータイム』。
「それなら、そこから脱線させてあげようじゃないか」
紡がれる言葉と共に、彼が虚空より手を引き抜いた。そこにあったものは――。
『小癪なッ!!』
電車止め。終点駅のホームによく設置されている、バッテン印。
「さあ、君の本気を見せておくれよ」
抑揚なく放たれるその言葉に、怪人も挑まざるおえないことを悟った。こいつを絶対に轢き潰して見せる――!
『その言葉、後悔するなよぉぉぉおおお!!!!』
蒸気を勢いよく噴き上げ、怪人は更にスピードアップ!! 電車留めへと自分から猛スピードで突っ込んでいく!
果たして。
その結果は。
『ぬぅぁああああああああああ!!??』
ゴッ。
こう、あれな音が聞こえた。頭をあげようとして机にぶつけたみたいなあれだ。そうそう、あれ。いたいやつな。
「…………」
無感情に怪人を見つめていた彼は、悶絶する怪人を置き去りに、そっと背を向け歩き出す。
「つまらないな」
既に興味を無くしたジョルジュは、振り返ることさえもしなかった。
そんな彼の横を、黄色いバナナ色がすれ違い、怪人へと駆けていく――いや、待て。なんか今、バナナ少女の後ろにいっぱいぞろぞろいたような……。
●おまえの頭にバナナのっけてやるからちょっとそこに正座な
「バナナに夢中になってたら親玉だと……?」
難駄芭院・ナナコは、目の前の機関車型怪人へと視線を向けた。すっかりとキマイラフューチャーのバナナに夢中になっている間に、既に親玉はかなりのダメージを受けていたらしい。やっべぇ、遅れたわ。
「だが! アタイが戻ってきたからにはもうここまでだッ!! テメェの頭の上にバナナ乗せてやんよォ!」
「「「ウォォオオ!!」」」
ビシィッ! とその指を怪人へと突きつけ声を張るナナコに続いて、その後ろになんかバナナをいっぱい持って立っている老若男女が一斉に鬨の声を上げた!
「合言葉だ! バナナは?」
「「「美味いッ!!」」」
「バナナは!?」
「「「健康にイイッ!!」」」
「バナナはァ!!」
「「「最高ッッ!!!!」」」
「よし、高級バナナだ! 全部持ってこぉい!」
「「「オオオオ!!」」」
この光景はナナコ&バナナに魅せられた信者のキマイラの方々でお送りしております。配信はそのままでお楽しみ下さい。
『あの忌々しいバナナめ……!!』
体中から蒸気をシュウッと吹き出し怒りを露にする。そう、自身のブームを一気に塗り替えた彼女のことを、怪人は忘れたことはなかったのだ。
「はぐっ」
睨まれる視線をものともせず、ナナコは高級バナナを食べる。
バナナを食べる。
もう一本食べる!
更に食べる!!
もっと食べる!!
更に更に食べる!!!!
食べる食べる食べる食べるッ!!!!
「「「ウォォォオオ!!」」」
オオォォォオオオ!!!
バナナ少女本人の登場に、信者もコメントも大盛り上がりだ! 目の前に怪人いるのにな!!
「黄金果実活性法!」
めきめきと成長を遂げるナナコの身体。背も伸び、少女から女性へと変化していく。
「どーだ! この、完熟な肉体美を!!」
ほらよ! とポーズを決める大人ナナコ。コメントも信者も更に熱く燃え滾る!
『大きくなったところでぇぇええ!』
機関車型怪人は、遂に最終手段を切った。彼の周囲に無数の紙が、まるで吹雪のように舞う。それは自身の鉄道写真――彼自身の攻撃力を、ナルシスト的な力へと変えて放つ、一世一代の拳技。
「100%バナナパワーで――」
怪人の勢いをつけた拳と、ナナコのデリシャスバナナブレイカーが交差する。先端同士が触れ合えば、まるで金属が擦り合わさったかのように火花が散った。
『ぬぅぅぅうううう!!』
止まる時間、交差する二人の武器と拳。鉄道とバナナ、暗と明。いいぜ、かっこよく映ってるぜ。ナイスアングル。
「ぶっ飛ばしてやんよォ!!!」
『お、おぉぉおああああああ!!!』
拮抗は長くは続かなかった。高級バナナによって完璧な肉体を得たナナコの攻撃に、怪人の斥力は押し負けたのだ。
『覚えてろおおおおぉぉぉぉ――』
お決まりの台詞を残し、遥か向こうのビルへと数個の建築物をぶっ壊しながら、怪人は吹き飛んでいった。
「――口ほどにもありませんわ」
バナナ少女……いや、バナナレディはそう口にすると、ふっと得意げな笑みをカメラに浮かべて見せた。
沸き立つ観衆に視聴者コメント。キマイラフューチャーの一区域において、バナナの絶対の地位が確約された瞬間であった。
●終幕。時の人へ、forever――
「…………」
『…………』
マヤ・ウェストウッドは、怪人と対峙している。ただし、マヤが倒れた怪人を見下ろす形で、だが。
「……見たところ、アンタが妙な“ミーム”を播いたのかい?」
妙な敬礼の仕草をこうか? と真似しつつ、彼女は怪人に問いかける。
しかし、彼の返事はない。ただ否定もせず、それを見上げるのみ。
『…………』
「そうかい」
彼女はそっと眼帯を外すと、その下の瞳で怪人を見据えた。彼女の右目は義眼であり、重力子加速装置が埋め込まれている。
「やり方は悪くなかった。むしろ、感心したよ……アンタのソレは、確かにいいミームだった」
ぽつぽつと、マヤは弱弱しく蒸気を漏らす瀕死の怪人へと語り掛けた。事実、彼女は感心していたのだ。今の自分の言葉に嘘はない。彼はそれに値すると思う。だが――。
「……でも、この賑やかな街は、パワーワードに溢れている。ここじゃあ生き残れないだろうよ」
たとえ猟兵が来なかったとしてもな、と。一時はキマイラたちを風靡した怪人へ、彼女は敬意を持って義眼を向けた。
ユーベルコード『魔矢眼』。威力重視で発動させるそれは、戦艦をも轟沈させる一撃必殺の威力を持つ。ただその代わり、制御が難しいのだが――止まっている相手だ。外すはずもない。
義眼の中の重力子射出装置が起動、照準を固定。
「また、出直しな」
そうして放たれた重力子は、怪人のコアを一撃で打ち砕き、その機能を完全に停止させた。
「……終わりましたか?」
そこへひょっこりと顔を出したのは、ベアトリーチェ・トリフォリウム。彼女は頭の6つの耳を動かしつつ、彼女へと問う。
「あぁ、終わったよ」
「そうでしたか」
怪人の骸を見つめるベアトリーチェ。彼女がいったい何を考えているのか、マヤにも分からなかった。
「…………」
「…………」
そのまま、暫くの時間が流れ。
「……草花よ、樹木よ」
ぽつん、と彼女が小さくそう呟けば、彼女の装備が無数の花びらへと変わる。それは彼女のユーベルコード『撤退の花弁』。
「私たちを遮る全てのモノに、その意思を示したもう――」
12月20日、誕生花は『カトレア』。花言葉は『魅力』。
「あんたは確かに悪くは無かったさ」
「怒らされたことは忘れませんが……確かなものはあったのでしょう」
彼女が小さく手を振れば、カトレアの美しい花弁が怪人の殻を覆い尽くし、その金属の身を削り取る。二人はその光景をただ見つめ……。
――数分後。そこにあったはずの機関車型怪人の骸は、綺麗に空気へと溶け、消え去っていた。
キマイラフューチャーの一区域。一時的とはいえ、キマイラたちを魅了した彼のミームは、ここで完全に幕を閉じた。
彼らの明日は、今日も明るく照らされている。
ひらりとカトレアの花弁が一枚、骸のあったその場所へと舞い落ちた。労わるように、慈しむように。この世界で滅びた人間たちへの哀悼の念を込めて。
時の人よ。
Goodbye forever(さようなら、永遠に)――。
大成功
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