●「破戒僧」秋燕の報告
ええ、神楽月。今月のはじめに、その男は天神町の町角に立つようになりました。
町の者の些細な相談事に乗るなどしていたようでありましたが、神仏に仕える者が修行の為にそういった事をする者は少なくありません。ゆえに拙僧も特に気に留めてはいなかったのです。
そのうち、男の説法はおかしな方向に向かってゆきました。
なんでも、人は生きているだけで罪を犯しているがゆえ、死後は神に許されずに地獄に墜ちるのだとか何とか。そうならぬよう、“禊”を行えば家族も極楽に行けるのだと説くのです。
その禊とやらの内容ですが。はじめは生臭と酒を断つ。これは理解も出来ましょう。しかし次には五穀を断ち、野と山の菜を断ち、水をも断てと言うようになる。それでは死んでしまいましょう。
ですが男の説法――説法と言うには既に狂ってはおりますが――を頭から聞き入れてしまっている人々は、皆これに従うのです。おかしいと拙僧の元に話をしにきていた町の者もおりましたが、いつの間にやらみな飯を食わぬようになり、当然ですが働くことも出来ぬようになってゆきました。
もはや町では正気であるのは拙僧のみでございましょう。
他は誰も彼もがあの男の言うがまま、抜け殻のようになってしまいました。
ゆえに、拙僧は町を抜け出し、ここに報告に参ったのです――。
●在らぬ筈の異国より来た宣教師
「……と、これが秋燕が報告してくれた内容や。おかげで俺が予知するより先に、町で起きとる異変に気づくことが出来てんな」
グリモアベースの一角、シャオロン・リー(Reckless Ride Riot・f16759)は、自らの呼びかけに応じた猟兵たちの前でそう語った。
「この話に出てくる『男』っちゅうんは、サムライエンパイアにおる猟書家どもの幹部の一人「ブラザー・アポストロス」で間違いあらへん」
猟書家――既にオブリビオン・フォーミュラが滅ぼされた世界に散り、それぞれの野望を掲げて新たなその世界のフォーミュラになろうと企むオウガ・フォーミュラと、彼らの下につく幹部たち。サムライエンパイアにいるオウガ・フォーミュラ「クルセイダー」は、現在『徳川幕府の転覆』を目論んでいるらしい。
「アポストロスは、クルセイダーの秘術「超・魔軍転生」であの魔軍将「コルテス」の力をオブリビオンの軍勢に「憑装」させる力を持っとるらしいねんけどな」
魔軍将コルテス。昨年の夏にサムライエンパイアで起きた「エンパイア・ウォー」において、「侵略渡来人」コルテスと呼ばれ猛威を奮った強力な魔軍将である。
「コルテス……あの悪趣味なオッサン、単体ではめちゃくちゃ強力やってんけど、一個どでかい弱点があったらしくてな。それが「戦下手」なんやと。コルテスを憑装したオブリビオンたちは強力にはなるんやけど、コルテスの「戦下手」も引き継いでまうらしいねん」
故にブラザー・アポストロスはオブリビオンによって町を襲うことなく、自ら遅効性の洗脳ユーベルコードを用い、数十日を掛けて町中の人間を洗脳し、無抵抗にして皆殺しにするという作戦を立てたようだ、とシャオロンは言う。
「せやけど、天神町の外れで暮らしとった秋燕だけにはその方法が効かへんかった……ちゅうかそもそも、秋燕はアポストロスの洗脳ユーベルコード「説法」を聞いとらん。戒律を破った破戒僧言うたかて秋燕は坊さんや、自分の信じてる仏さんがおるんやから、余所の神さんの説法聞く道理はないわな」
おかげで未だ人死にが出る以前、予知よりも早くにこうして異常事態を報せてくれたのだ。
「……頼みたいんは、今から天神町に押し寄せてくるオブリビオンの軍勢を倒すこと、それからその裏におるアポストロスをぶっ倒す事や。さっきも言うたけど、コルテスを憑装して戦闘能力が超強化されとるオブリビオンらはコルテスの戦下手も引き継いどる。せやから町の地形を利用した「戦」をやったればええねん」
天神町には沢山の川が流れており、町中に多数の橋がかかっている。この地形を利用すれば、オブリビオンの軍勢に圧勝することも可能だろう。
「どうやら猟書家としての能力が制限されてまうらしくてな。アポストロス本人はコルテスの能力を「憑装」してへん。俺らにとっては助かることにな」
グリモアによる転移を行った先は天神町の入り口。そこで破戒僧・秋燕が猟兵たちを待っている。彼は猟兵ほどではないにしろ戦う力があり、また、町の地形にも詳しい。
「秋燕は町を守るために協力してくれる。十分役に立つはずや。一緒に天神町を守ったってや――よろしく頼んだで」
シャオロンは八卦のグリモアを展開させる。
準備が出来たら声をかけてくれと、彼は最後にそう言った。
遊津
遊津です。
サムライエンパイアでの猟書家シナリオをお届けします。
一章集団戦、二章ボス戦の二章構成となっております。
このシナリオには以下のプレイングボーナスが発生します。
※破戒僧・秋燕と協力して戦う(第一章・第二章共通)
「天神町」
猟書家「ブラザー・アポストロス」に狙われた町です。
町の各所に流れる綺麗な水の流れる川を利用した染め物で賑わっていましたが、ブラザー・アポストロスが来て以降彼の洗脳ユーベルコードにより人々は生気を失ってしまっています。
町の人々は逃げ出す気力さえ失って家に籠もりきりになっている為、家の外で戦う分には戦闘の邪魔にはなりません。
破戒僧「三途川・秋燕(みとがわ・しゅうえん)」
天神町の町外れに暮らしていた破戒僧です。町の中で唯一洗脳を受けずに済んだため異変に気づき、報告してくれました。
彼は猟兵ほどには強くありませんが、鎖鎌を用いた戦闘を行うことが可能です。
また「灰燼拳」相当のユーベルコードを所持しています。
(【鎖鎌】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない)
町の地形について熟知しており、彼に訊ねる、共に作戦を練ることで集団敵に対し有利な行動をとれるようになります。
集団敵「憎しみに濡れた妖狐」
頭部を失った妖狐の集団です。(サムライエンパイアの種族「妖狐」とは異なる化けギツネです)。
ブラザー・アポストロスによって「魔軍将コルテス」を憑装されており、戦闘能力が格段に跳ね上がっていますが、コルテスの弱点である戦下手をも引き継いでいます。
彼らが戦闘の間に町の人々を襲うことはありません。安心して戦いに専念して下さい。
「ブラザー・アポストロス」
天神町を狙って現れた猟書家幹部です。
詳細は第二章追記にてご説明いたします。
プレイングの受付開始時間は11/12(木)午前8:31~となっております。
注意事項がございますので、プレイングを送信下さる前に一度マスターページを一読下さいますようお願いいたします。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『憎しみに濡れた妖狐』
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POW : 神通力
見えない【波動】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD : 鬼火
【尻尾から放たれる怨嗟の炎】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ : 心眼
【常に相手の思考を読んでいるかのように】対象の攻撃を予想し、回避する。
イラスト:すずめもち
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
シル・ウィンディア
死ぬために生きているんじゃないの
明日を見据えるから生きているの
だから、こんな洗脳は断たないとねっ!
秋燕さんに町の地形と橋の位置、橋に誘導しやすいルートを教えてもらうね
狙うは、橋を切り落としての水没作戦っ!
…終わってからちゃんと直すの手伝うから
秋燕さんには、橋の付近で待ってもらって
わたしがそこに誘導、だね
さ、行くよっ!
教えてもらったルートで逃げつつ
逃げきらない様に注意しつつ、逃げるね
接敵されそうな時は
精霊電磁砲での牽制射撃
橋まで来たら立止まって、対峙するふりをして…
殺到しようとしたら合図して橋を落としてもらうね
わたしは【空中戦】で上空に飛び立って落ちないようにするね
あとは、UCで一網打尽っ♪
●水面は今日もきらきらと光る
天神町の入り口、大きな橋の袂でその若い僧は待っていた。総髪に切れ長の涼やかな目元が印象的な僧であった。その破戒僧・秋燕の元へと、シル・ウィンディア(光刃の精霊術士・f03964)は走り寄る。
「お待ち申し上げておりました」
「遅くなってごめんなさい、町の人達は、絶対わたしたちが助けるから!」
少しそこらの家を覗き込めば、気力を根こそぎ奪われた町人たちが土間に座り込み畳の上で寝ている。どれもその顔はうつろで、まさに抜け殻の如きその姿を目にして、シルは怒りにまなじりをつりあげた。
「わたしたちは、死ぬために生きてるんじゃない……!明日を見据えるから、生きているの……!」
「ええ、拙僧もそう思っております。死はひとつの到達点なれど、ひとの一生の目的では決してありませぬ」
秋燕の柔らかな声がシルの背中を押す。
――こんな洗脳、早く断ってしまわないと。
「ねえ、秋燕さん、この町の地形と、町にある橋の位置をもっと詳しく知りたいの、教えてもらえるかな?」
「おお、それならば紙と筆が要りましょうか」
「それと、知りたいことがあるの。ええとね……」
「……それは名案にて。この秋燕、如何ようにもお使いくだされ」
シルが囁いた作戦に、若き僧は悪戯めいた笑みでもって返した。
「衆生を救うためならば、御仏もお許しくださいましょう」
――群れなして町へと向かってくるは、頭を奪われた妖狐の群れ。
シルはじっと群れが近づいてくるのを待つ。……まだ、まだ。もう少し。
狐たちがシルを獲物と認め、彼女の方へと方向を転換した。
(来た……!)
シルはきびすを返し、町の中へと走り出す。あらかじめ頭に叩き込んだルートで、妖狐たちを誘導してゆく。いつもより少しだけ遅く、逃げ切ってしまわないように。狐たちがしっかりと、シルを追ってこられるように。
シルの目に、橋の袂に立つ秋燕の姿が目に入る。
「――もう、少しっ……」
先頭を走る妖狐を電磁砲で焼きながら、シルは走り、走り……そうして立ち止まる。狐たちが町の中心にかけられた大橋を群れなして駆けてくるのを前に、精霊剣を抜いた。
狐たちがシルへと殺到する。シルは叫んだ。
「秋燕さん、今っ!!」
「承知いたしました」
秋燕の声を聞き届け、シルは上空に翔び上がる。
サムライエンパイアの橋は、その殆どが木製だ。そして、戦国の時代の名残深く、敵の大軍の足を止めるため、攻め込んでくるルートを絞りやすくするために、「落としやすく」してある。川が増水して橋が流される事もままあるエンパイアの治水事情においては、しっかりした石の橋よりも落としやすく掛けやすい木の橋の方が楽ということもあったが――天神町に駆けられた橋もまた同じ様に、落ちやすい構造となっていた。
あらかじめ細工をしてあったのもある。秋燕が橋桁に一撃を加えれば橋は容易く落ち、狐たちごと川の水に飲まれた。成すすべもなく水に溺れる狐たちに、シルは詠唱を開始する。
「“闇夜を照らす炎よ、命育む水よ”……“悠久を舞う風よ、母なる大地よ”!」
高密度の魔力がシルの目の前に集っていく。まばゆい光が、流れる水面に反射してきらきらと光った。
「“我が手に集いて、全てを撃ち抜きし光となれっ!!”……エレメンタル・ファランクス――!!」
四百を軽く越える数の、四属性の魔力砲撃が水に溺れる妖狐たちへと降り、灼き滅ぼしていく。上空から雨のごとく注がれる砲撃は、妖狐たちを川の中から骸の海へと容赦なく押し流していった。
大成功
🔵🔵🔵
篝・倫太郎
【華禱】
秋燕に町の地形や戦闘での立ち回りで
被害が出なさそうな場所を確認
鎖鎌で最小限、自分の身の安全は確保してくれ
絶対に、自分ひとりだけで敵を倒そうとか考えねぇでくれ
命あってのなんとやらだ
業返し使用
敵を視認したらダッシュで接近
衝撃波を乗せた華焔刀でなぎ払いの先制攻撃
刃先返して2回攻撃の範囲攻撃
敵の攻撃は敢えて華焔刀で受けていなす
俺自身はオーラ防御でダメージ軽減し
激痛耐性で耐えつつカウンター
以降の攻撃には生命力吸収も乗せてく
時間切れになったら再度同様に華焔刀で攻撃を受けて
カウンターで返してく
夜彦と秋燕への攻撃も可能な限り受けていなす事で
こちらの攻撃に流用
春暁も東雲も……終わったら労ってやらなきゃな
月舘・夜彦
【華禱】
少しずつ生きる気力を奪っていく……
遅効性の洗脳となれば違和感に気付く者は少ないでしょう
秋燕殿のような方が居なければ私達も気付けなかったはず
こうした事態が各地で起こっているのなら一つずつ潰していくのみ
町の人々の状況から、これ以上時間は掛けられません
倫太郎、急ぎましょう
月夜ノ御使イにて春暁、東雲を呼び出す
春暁は空から襲撃して妨害、東雲は敵を追跡
私と倫太郎が居る所へ追い込むように援護をして貰います
敵には2回攻撃となぎ払い併せ一度に広い範囲で複数の敵に仕掛ける
敵からの攻撃は見切りにて動きを確認、残像にて回避後カウンター
秋燕殿には身を守ることを優先
弱っている敵への追撃といった援護をお願いします
●月に華、焔燃ゆ
天神町の人々はブラザー・アポストロスの手によって気力を失い、誰も彼も屋内に引きこもってうつろに天井を見上げていた。その光景に、月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)は眉を顰める。
「少しずつ生きる気力を奪っていく……遅効性の洗脳となれば、違和感に気付く者は少ないでしょう」
秋燕殿のような方が居なければ、私達も気づけなかった筈――。
「こうした事態が各地で起こっているのならば、一つずつ潰してゆくのみでしょうが……まずはこの町。人々の状況から見ても、これ以上時間は掛けられません。倫太郎、急ぎましょう」
他の家々を覗いていた篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)も、険しい顔をして頷く。
「秋燕、この町の地形……それから、大立ち回りをやらかしても被害が出なさそうな場所を教えてくれねぇか?」
「あいわかりました、こちらを。開けた場所ならば、町長の屋敷の前に広場がございます。廃寺の裏を突っ切れば森に至る場所も拓けておりますが……」
年若き僧に手渡された墨で書かれた地図を手に、倫太郎と夜彦は額を突き合わせる。
「なぁ秋燕、あんた、それなりに腕は立つんだろうが」
「ええ、それなりには戦える身でございますが」
「最小限、自分の身の安全だけ確保してくれ。絶対に、自分ひとりだけで敵を倒そうとか考えねぇでくれ。命あってのなんとやら、だ。……頼むぜ」
「専守防衛、という事ですか。そうまで言われるのであれば、そう致しましょう」
秋燕は微笑んで首を縦に振った。さて、と倫太郎の目が地図へと戻る。
「最短で倒すなら、屋敷前広場の方が良さそうだな」
「そうですね……森まで引きつけるとなると、多くの民家の前を通ります。人々が家から出られない状態とは言え、ここまで無防備では少々不安です」
「じゃあ、決まりだな。……さて、そんじゃあそこで奴らを待ち伏せするとしようぜ」
頭部が何者かに喰われたかのように欠けた化狐たちの大群が、背を合わせて立つ倫太郎と夜彦へと押し寄せてくる。夜彦が指を鳴らすと、バサバサと大きな羽音。羽色美しい茶色のイヌワシが夜彦の頭上を旋回し、同じく喚び出された赤毛の馬が高らかに嘶いた。
「東雲、敵を追跡して私達の所へ追い込んでください。春暁は空から妨害を」
承知とばかりに一羽と一頭が鳴く。同時に夜彦は装束を翻し、首無狐の群れへと突っ込んでいった。一度、二度、くるくると舞うように蒼銀の霊刀が閃き、先頭に居た狐たちが血を飛沫かせながら斬られて消滅していく。先陣を切った同胞が瞬く間に斬り伏せられたことにおののき、後方の化狐たちの尾から発せられる火の玉、狐火の群れ。
「おっと、そいつはこいつで喰わせて貰うぜ!」
倫太郎の刃、華焔刀 [凪]が狐火を斬る……否、その刀身にて受け止める。すぅと吸い込まれるように火の玉は刃へと消え、ざっと刀を振るった華焔刀から同じ焔が吐き出される。撃ち返された焔に焼かれ、狐たちが声なき声を上げながら消滅していく。そのまま倫太郎はオーラの防護式を纏って夜彦同様に狐の群れの前へと躍り出る。一斉に群がる狐たちは鋭利な爪と焔とで倫太郎を攻める。焔を華焔刀で受け止め、爪が己を引き裂く痛みを気合で耐えながら、狐たちを次々に斬り伏せ、数を減らしていく。
「数が多い、個体の戦闘力は確かに高い……だが!」
「戦下手というのは本当のようですね、愚直に突っ込んでくることしかしない。獣の本能でしょうか」
イヌワシの春暁、赤毛馬の東雲が狐たちを追い立ててくる。鋭利な爪を立ててくる狐は夜彦が斬り、分かたれた尾から放たれる狐火は倫太郎の刃に受け止められ、そして全く同じ焔として返され焼き焦がされて灰と化して消えていく。
「春暁も東雲も……終わったら労ってやっからな」
「ええ、もう少しだけ頑張ってくださいね」
そう言った夜彦の姿がぶれた。彼に爪を立てようとして飛びかかった狐たちが空振って地に落ちる。そこを待ち受けていたように、身を低くしてから斬り上げた夜彦の刃に狐たちが纏めて斬り裂かれる。
化狐たちの大群は、二人の奮闘により大きく数を減らしていった。大店屋敷前の広場に、再びけだものの血が飛沫き、焼かれた灰はこぼれ落ちる前に風に攫われていく――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
浅間・墨
ロベルタさん(f22361)と共闘。
今回は『国綱』の一刀で【鍔鳴】を使用します。
まずロベルタさんとの時間差連携攻撃で戦います。
私達の動きが悉く把握され二人では困難ですね。
難しいついでに予知できる時間を掴んでおきます。
完全には難しいですがある程度は掴みたいです。
今度は秋燕さんと三人で時間差の連携を行います。
基本は秋燕さんを軸して彼に合せて一体ずつ戦います。
二人の時よりも更に素早い斬撃で確実に仕留めます。
フェイントを織り交ぜて私自身も囮として仕掛けます。
私の斬撃を避けてもロベルタさんか秋燕さんがいます。
妖狐の攻撃は野生の勘と第六感で回避します。
不可視なので避けきれないかもしれませんが可能な限り。
ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)と連携共闘。
初めは二人?墨ねーのことだから何かある?
とにかく墨ねーに合わせて波状攻撃をするよ。
一度で終わらないで身体を捻って二度蹴るじぇ。
至近距離蹴りなら零距離射撃とクイックドローを。
墨ねーと同時攻撃とか時間差とか色々と試すじょ。
フェイントを使って墨ねーに繋げたりする。
え?今度は秋燕のおじちゃんと三人で?
秋燕のおじちゃんを中心に攻撃するんだね♪
さっきの経験を生かして同じように攻撃するよ。
攻撃は僕の野生の勘でぴしぴしっって避けてみる。
●静寂破れて、舞う花白く
頭部を失くした妖狐の群れが、怨嗟に満ちた声なき声を上げる。爪を立てて襲いかかってきたそれらを国綱の刃で斬り裂き叩き落としながら、浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)は小さく溜息を吐いた。
墨とロベルタ・ヴェルディアナ(ちまっ娘アリス・f22361)の二人は、秋燕を背に守るようにして戦っていた。秋燕もただの僧ではない。不戦の戒律を破り破戒僧に身をやつしたという通り、猟兵には及ばぬものの戦う力を持っている。そこを、はじめはふたりで戦うと言い出したのは墨だった。
(墨ねーのことだからなにかあるとは思うけど……まぁ、とにかく戦いに専念するんだじぇ)
ロベルタにも墨の真意は知らされていない。ただ秋燕を背にしながら、墨とともに波状攻撃を繰り返していく。
(思った通り……です。動きが悉く把握されてしている、よう……!)
戦下手を引き継いだとて、妖狐達が「憑装」している魔軍将コルテスの力は強大だ。一匹一匹の力が底上げされている上に群れているとなれば、その厄介さも一入。
爪を立てて飛びかかってきた狐を斬り払おうとした墨の体が、不可視の衝撃によって吹き飛ばされる。ざりざりと下駄が土を滑った。その背後から襲いかかってくる、異なる狐。
「……っ、ぅ……!」
背中を深く斬り裂かれ、墨の体がかすかに傾ぐ。それを見たロベルタが、唇を噛む。
「覚悟するんだじぇー!!」
ロベルタの脚が白く染まっていく。霊力が両脚に集中して集まり、それによって繰り出された蹴打でもって高く蹴り上げ、体を捻って蹴り上げた狐をもう一度蹴り飛ばした。
「墨ねー、行ったよ!」
蹴りでもって飛ばされた先にあるのは、墨の刃。【鍔鳴】による超高速の居合は、空中で身動きの出来なくなった狐を次々に斬り捨ててゆく。
「……秋燕……さ……入っ、……下さ……!」
掠れてしまうような墨の小さな声を、秋燕は微笑んで聞き届ける。
「ええ、承知いたしました」
「え?今度は秋燕のおじちゃんと三人で?」
「……おじちゃん、ですか……」
秋燕が少しだけ秋風を背負って呟く。誤解のないように言えば、秋燕はまだ若い。切れ長の目の涼やかな美僧と言えぬこともない。されどロベルタはまだ十だ。十歳の子からすれば、二十歳を超えた大人の男は大抵がおじちゃんの枠に区別される。
「秋燕さ……軸、……して……!」
「おじちゃん、攻撃の中心になって!一体ずつ仕留めていくんだじぇ!」
「あいわかりました」
鎖がじゃらりと鳴った。ひゅんひゅんと勢いをつけて振り回され、秋燕の手から離れた鎖鎌の刃は一気に狐たちを斬り裂いてゆく。敵が頭部を奪われた妖狐であったから四肢と体、尾を斬り裂くままであったが、頭があったなら一度に首を刈ることも可能であったろう。
墨は更に前に出て、狐たちの不可視の攻撃を受けながら斬撃を繰り出した。見えぬ攻撃を第六感と勘とで鋭敏に感じ取りながら墨は己自身をも囮として使い、大刀を持って舞う。墨の刃をくぐり抜けても、まだロベルタがおり、そして秋燕がいる。
「Purifica e ritorna!」
白く染まったロベルタの蹴りが墨の刃を避けた狐を蹴り落とし、そして秋燕の鎖鎌が確実にとどめを刺してゆく。
共に戦い慣れた墨とロベルタに、急造ながら秋燕を加えた三人での連携の前に、群がった妖狐たちは、確実に数を減らしていった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ヨナルデ・パズトーリ
ふむ、川の多い地形か
ならば、それを活かさぬ道理はないのう
あの外道めに鰐すら喰らうジャガーの狩りを見せてやろうぞ!
『地形を利用』する為に秋燕さんに川の状態を聞き取り
UCは即発動
川の在る『地形を利用』し『水中戦』の心得を活かし『存在感』を消し『目立たない』様に
『野生の勘』も活かしつつ水中から川の外の敵の動きを『見切り』つつ『高速泳法』の『水中軌道』で敵に悟られぬ様に肉薄しての『先制攻撃』
『無酸素詠唱』による『破魔』の力を込めた『神罰』付きの『全力魔法』をぶちこむ
其のまま水上に
高速飛行の『空中戦』で敵に肉薄
『怪力』で斧による『鎧無視攻撃』をぶちこみ『切断』
敵の攻撃は『野生の勘』で『見切り』対処
●最も獰猛な獣
「ふむ、川の多い地形、か……ならばそれを活かさぬ道理はないのう」
町の入口で待っていた若き破戒僧・秋燕に迎えられたヨナルデ・パズトーリ(テスカトリポカにしてケツァルペトラトル・f16451)は、彼に天神町に流れている川が如何様なものなのかを聞いた。
川で分断された陸地を幾つも幾つもの橋で繋いだ天神町は、グリモア猟兵から聞いた通り町の至るところに川が流れている。それらの地形を瞬く間に理解してみせたヨナルデは、唇をつり上げて笑った。
「よかろう、あの外道めに、鰐すら喰らうジャガーの狩りを見せてやろうぞ!」
――“我、ジャガーにして煙吐く鏡”、“テスカトリポカにしてケツァルペトラトルたる者”――
ユーベルコード【第一之太陽再臨】(ナウイオセロトル)。ジャガーを模した黒曜石の鎧に身を包み、手には黒曜石で作られた斧。そして背中には翼が生える。それはかつて、テスカトリポカにしてケツァルペトラトルであるヨナルデに捧げられた生贄の血と骨とで構成されたもの。
ヨナルデは川の中に潜む。長く短い時間の後、町にオブリビオンが押し寄せてくる音が水の振動から伝わってきた。
あらかじめ幾つかの橋を落として使えぬようにし、オブリビオンたちの進路は絞ってある。
コルテスの戦下手を引き継いだというのは本当らしい、オブリビオンたちは不自然に細工された進路を愚直に攻め入ってくる。にやり、ヨナルデは川の中で歯を見せた。
やがて、オブリビオン――何者かに頭部を喰い千切られた化け狐たち――はヨナルデが潜む川の真上の橋まで大挙してくる。狩りの鉄則、気配を消したヨナルデに気付くことなく橋を渡ろうとした化け狐たちに、ヨナルデは水中から襲いかかる!
ばしゃあああん、水が大きな音を立てて飛び散った。姿を現したヨナルデはすでに水中で詠唱を終えている。手にした斧が纏う水が、水流と化して狐たちに襲いかかる。破魔と神罰の魔力を賦与された水流は狐たちに纏わりつき、締め上げる。自我を持ったようにうねって襲いかかる水を避けた狐たちにも、弾けて降り注ぐ水の刃が雨のごとく降り注いで斬り裂き、刺し貫いた。
「さあ、狩りを始めようぞ!」
ヨナルデは空を翔んだまま、水流に飲まれて動きを封じられた狐たちに斧でもって襲いかかる。頭部があれば首を刈られていたところだろう、首無しの狐たちは黒曜石の分厚い刃で体を次々と切断されていく。その速さはまさに神速。
「ははははは!楽しいぞ、うむ、楽しいなあ!」
燦々と降り注ぐ日光をキラキラと跳ね返す川の水に、斬り裂かれ貫かれその身を断ち斬られた狐たちの血がこぼれ落ち、蒼い水を紅に染める。
斧と水の刃とによる激しく鮮烈な「狩り」は化け狐の群れを瞬く間に殲滅してゆき――陽が僅かに傾いた頃には、大量にいた狐たちはその姿を一匹残らず消していた。
「なんだ、歯応えが無いのう……このオブリビオンどもは死骸が残らぬか。せっかくの狩り、獲った獲物が残らぬとは、何とも味気ない狩りとなってしまったわ!」
これは、大物を捕らえねば、妾の気も上がらぬというもの。
「なあ? ブラザー・アポストロスとやら」
ざり。土を踏む音がした。
ヨナルデの言葉に、書を手にした初老の男は温度のない目をして神たる女を見返した――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『ブラザー・アポストロス』
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POW : 悔悟せよ、汝罪深き者
対象への質問と共に、【自身の侵略蔵書】から【野心の獣】を召喚する。満足な答えを得るまで、野心の獣は対象を【引き裂く爪と牙】で攻撃する。
SPD : 報いを受けよ、愚かなる者
【侵略蔵書の表紙】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、侵略蔵書の表紙から何度でも発動できる。
WIZ : 来たれ我らが同胞よ
【火縄銃】で武装した【聖戦士】の幽霊をレベル×5体乗せた【ガレオン船】を召喚する。
イラスト:いもーす
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠枢囹院・帷」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
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「ああ、何ということでしょうか」
――折角ここまで準備を万端に整えてきたというのに。
書を手にし、修道服を身に纏った初老の男――ブラザー・アポストロスは、笑みを消して猟兵たちを見回す。
「折角この町の人々が迎えるに相応しい、麗しき死の刻を整えたのです。それが、あなたがたの蛮行で台無しになってしまった」
まあ、それでも。と。息を吐き、男は言う。
「あなたがたをここで殺し尽くし――再び憑装軍を拵えれば同じことです。今度こそ彼らに救済を与え、そして蘇生者<オブリビオン>として蘇る時を待たせればよろしい」
無論、そんな事を許せるはずもない。
ブラザー・アポストロス、この男を打倒し、一刻も早く人々を救わねばならない!
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第二章 「ブラザー・アポストロス」が現れました。
■戦場について■
戦場は引き続き天神町の町中となります。
町の最も広い場所での戦闘となる為、町に被害を出すことはありません。
第一章に引き続いて町人たちは家の中に引きこもっているため、避難させる必要はなく、また戦闘の邪魔になることもありません。安心して思い切り戦って下さい。
また、町の至るところに放置された大八車や染め物用の瓶などが転がっています。工夫すれば戦闘に使えるかもしれません。(どのようなものをどんな風に使うか、具体的に指定していただければ描写いたします)
戦場である広場は川とは離れた場所にあるので、川や川の水を利用した作戦は少々難度が高いです。
■ブラザー・アポストロスについて■
猟書家の幹部です。猟書家としての能力が制限されるために憑装を行っては居らず、コルテスの能力を宿してはいませんが、それでも十分に強力な相手です。
町の人々を皆殺しにするための軍勢は猟兵達によって退けられましたが、町人たちに彼が仕掛けた洗脳ユーベルコードはまだ解けていません。そのため、彼は猟兵を撃退した後にもう一度憑装させた軍勢を作り出して人々を襲わせるつもりでいます。ブラザー・アポストロスを戦って倒さなければ、彼の計略は何度でも実行可能です。
彼は憑装していないため、コルテスの戦下手を引き継いでおらず、戦を行う必要もありません。
後で纏めて殺害する予定でいるため、戦闘中に町の人々に危害を加える心配はありません。
第一章に引き続き、以下のプレイングボーナスが存在します。
プレイングボーナス:破戒僧・秋燕とともに戦う。
以下に秋燕の能力を改めて記載いたします。
■破戒僧・三途川秋燕■
天神町の町外れに住んでいた、ブラザー・アポストロスの洗脳ユーベルコードの効いていない人間です。町の異変を報告してくれました。
彼は猟兵に及ぶほどではありませんが、鎖鎌を武器にして戦う力を持っています。
また、ユーベルコード【灰燼拳】相当の以下の攻撃を使うことが可能です。
(【鎖鎌】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない)
第二章のプレイング受付は11/16(月)朝8:31から開始いたします。
――それでは、天神町を救う最後の戦いを開始して下さい。
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シル・ウィンディア
悪いことなんか、続かないんだよ
それに、そんなことしようとしても
いつでも止めてあげるよ
さぁ、覚悟はいいかな?
あえて飛ばずに…
【フェイント】を交えた動きで単調にならないように動くね
接近したら二刀流の光刃剣と精霊剣で攻撃っ!
攻撃後は、すぐに離脱して秋燕さんが追撃しやすいように動くよ
対敵UC
秋燕さんには
風の【属性攻撃】を付与した【オーラ防御】で包んで弾が流れるように
わたしは【空中戦】で空に舞って【残像】を生み出して
【第六感】を信じて動くよ
こっちからは
【多重詠唱】で詠唱を重ねたUCで
【魔力溜め】を【限界突破】で溜めての【全力魔法】
撃つと同時に秋燕さんに合図して接敵してもらってから
UCを撃ち込んでもらうね
●信念の光
ギィィ、ギィィ……何処かから、船を漕ぐ音が聞こえてくる。
この天神町でそれが出来る町人はもはや存在しない。何より此処は町の中でも、川から離れた広場だ。その船は――水を漕いできているのではなかった。
ブラザー・アポストロスによって呼び出されたガレオン船から、次々と火縄銃で武装した戦士の霊が降りてくる。およそ神に捧げられた戦、聖戦にて死した聖戦士たち。
次々に彼らが放ってくる火縄銃の弾丸の雨の中。秋燕に対して風の魔力を用いた障壁を張り、シルは空に飛び上がる。標的が分散したことによって、戦士たちもシルに撃つか、秋燕に撃つかで統率が乱れているようだった。
「悪いことなんか、続かないんだよ……それに、そんなことしても、いつだってわたしたちが止めてあげるよ!!」
「ほう。ならばやってみるがよろしい、お嬢さん」
魔力で作り出した残像を纏い、シルは己の勘を信じて複雑に翔び回る。火縄銃の弱点は、一度撃ってしまえば弾込めから再度の発砲まで時間がかかることだ。それを三段撃ちという軍略を用いて戦で通じる代物にしたのが、かの信長と言われている。されどこの聖戦士たちにはそこまでの統率は取れていない――縦横無尽に空中を翔び回るシル相手には、取ろうとしても取れないのだ。
「秋燕さん、わたしが撃ったら追撃お願い!」
「――承知いたしました」
ひゅん、ひゅんひゅんと秋燕が鎖鎌を手元で振り回す。それを認めて、シルは詠唱を開始する。
「“闇夜を照らす炎よ”“命育む水よ”“悠久を舞う風よ”“母なる大地よ”……」
風の魔力を借りて、詠唱を重ねる。自然豊かなサムライエンパイアの土地から、魔力を取り込んで体内に溜め込み、それを肉体の限界を突破するまでに高めあげる。ぶちぶちと体のどこか、末端の脆い血管が破れる音が聞こえてくる。柔らかな粘膜が傷ついて、喉奥から微かに血の味がする。
「“暁と宵を告げる、光と闇よ”!!」
魔力が収束していく。眼下では秋燕が、己に向けて放たれた弾丸を鎖鎌で弾き返しているのが目に入る。相手の兵力を二つに分散させたとは言え、シルの魔力による加護があるとはいえ、秋燕にも負担がかかっていないはずがない。現に彼の衣服には弾丸が掠って血が滲む箇所がある。それでもさすがは不戦の戒律を破った破戒僧というべきか、若き僧は、涼しげな顔をして己への銃弾を器用に捌いていく。
シルは痛む喉を無視して、己の限界を越える詠唱を続けた。
「“六芒に集いて”――」
まだ、まだ、後少し、もう少し。この攻撃は、詠唱に時間をかければかけるほど威力が上昇する。故に、粘る。そしてその瞬間は、戦いの喧騒の中でとても静かに訪れた。
「――“全てを撃ち抜きし力となれっ!”」
【ヘキサドライブ・エレメンタル・ブラスト】。炎、風、水、大地、そして光と闇の六属性の魔力を練りに練り込んだ純白の巨大な魔力砲撃が、聖戦士たちを飲み込んでいく。
「……破ァッッ!!」
シルの攻撃を合図として、秋燕が駆け、光の波動砲が撃ち漏らした戦士たちに近づくと、鎖鎌を振るう。近づいたことにより鎖鎌の持つ中距離戦武器としてのアドバンテージは失われたが、その鋭利な刃は確実に一体一体、首を刈り取っていった。
「さぁ、次はあなた!覚悟はいいかな?」
シルは精霊剣と光刃剣の二刀を両手に構え、ブラザー・アポストロスの元へと降り立つ。
一歩、二歩、フェイントを交えて三歩。二刀の間合いに入るなり、思い切り振り抜き、斬り裂く。修道服が斬り裂かれ、男の血が飛沫く。シルはそのまま斜め後ろに飛んだ。そこには、鎖鎌を構えた秋燕が待機している。秋燕が放った鎖鎌の鎖が絡みつき、男の体を斬り裂いた。
大成功
🔵🔵🔵
金宮・燦斗
[諸々歓迎]
死は救済。認めます。
生きることから抜け出すための唯一の手段ですからね。
ですがそれを利用するのは、医者としては許しません。
クソジジイが。懺悔する準備出来てるんだろうなァ?
UC【悪意燃やす影の炎】を用いて、私に悪意を向けるものは全て燃やしましょう。
燃えなかったもの達は、リスティヒ・クリンゲと黒鉄刀を交互に用いてさっくりと。
黒鉄刀の闇を用いて、破戒僧さんを包んでおきましょう。ついでに、オウムのアヴァールに破戒僧さんを付き添わせます。
アヴァール。あなたは破戒僧さんを闇の中で導きなさい。
『クソジジイが! クソさは燦斗並だ!』
……後でこの鳥、焼き鳥行きかな?
破戒僧さんは攻撃、お好きにどうぞ?
●活殺自在
ふうわりと、甘い香りが風に吹かれる。子らを魅了する甘い菓子のような香。しかしそれに群がるであろう子らは、ここには一人もいない。みな、男――ブラザー・アポストロスの手によって、抜け殻のようになって家に引きこもり、うつろに天井を見上げるのみだ。
芳しい香りの源――金宮・燦斗(《奈落を好む医者》[Dr.アビス]・f29268)は、眼鏡の奥の目を細めて言う。
「死は救済。……それは認めます。生きることから抜け出すための、唯一の手段ですからね」
――ですが。
「それを利用するのは、医者としては許しません。……クソジジイが。懺悔する準備、出来てるんだろうなァ?」
敵意――否、ひりひりとした殺意が、ブラザー・アポストロスへと浴びせられる。初老の男は温度のない目をしたまま口を開いた。
『準備も覚悟も私には不要なものです。なぜなら、それらはすべてあなたがたに対し行われるものですからね』
ぱたり、開かれたブラザー・アポストロスの「侵略蔵書」から、黒い影の獣が放たれる。それこそは「野心の獣」。
『“答えなさい、告げなさい、汝の罪を告白なさい”』
黒い獣は唸り声を上げ、燦斗へと爪と牙をもって襲いかかった。鋭い爪が燦斗の胸を裂き、牙が腕に喰らいつかんとする。獣と投げかけられた質問を前に、燦斗は――嗤った。
「ふ、ふふふふふっ……あっはははははは!!私の罪と仰いましたか!!」
――激しく感情を噴出させて、次の瞬間にす、とすべての色を消す。
「巫山戯るなよクソジジイ。どうせ何を言っても満足しねぇんでしょうが……ああ、でも言っておきましょうか!それは何を持って罪と呼ぶのでしょうね!例え無辜の民を悦楽をもって死に追いやったとしても、それは完璧な医療行為。それを、罪と呼ぶのですか? ええ、私にとってそれは日常茶飯事!生活の一部!例え世間が殺生は罪だと弾劾しようとも、私にとって一片の罪の意識も起こらない!……ほら、告白のしようがないでしょう? ――おいでなさい、【悪意燃やす影の炎(ソンブラ・シャマ)】」
燦斗の影から、業と黒い炎が燃え上がる。それは立体化して、野心の黒い獣に纏わりつき、飲み込み、燃やしていく。燦斗はすらりとその身の丈よりも長い刀――黒鉄刀を抜いた。刀身から溢れ出る闇を、後方にいた秋燕へと纏わせる。
「ええと、なんと言いましたかね、破戒僧さん」
「三途川秋燕と申します」
「破戒僧さん。攻撃はお好きにどうぞ。今からあなたの体は闇に包まれる。その闇の中をどう動くもあなた次第ですが……いらっしゃい、アヴァール」
喚び出された鸚鵡のアヴァールが、秋燕の頭上をくるくると廻る。
「アヴァール、あなたは破戒僧さんを闇の中で導いて差し上げなさい。私はあのクソジジイを始末する仕事があるので」
「『クソジジイ、クソジジイ!クソさは燦斗並みだな!』」
「うぅん、後でこの鳥は焼き鳥行きかな? ……破戒僧さんも召し上がります?」
「いえ、拙僧は生臭を断っておりますので」
「なるほど、そちらの戒律はまだ守られておりましたか。……まあいいです。頼みましたよ、アヴァール」
「『任しとけクソヤロウ!』」
ばさばさと羽根を羽ばたかせるアヴァールごと、秋燕の姿が闇に紛れていく。
燦斗はくるりと後ろを向いた。侵略蔵書を手にしたブラザー・アポストロスは、第二の獣を呼び出そうとしている。……それをさせる燦斗ではない。リスティヒ・クリンゲがアポストロスの手元を狙い、獣の召喚を妨げる。ざ、ざ、ざ、それだけの時に間合いを詰めて、黒鉄刀が闇を撒き散らしながら男の体を肩から斬り裂いた。
「……ふふふ」
燦斗の唇が恍惚に似た笑みを象る。だが、まだだ。真の意味での恍惚にたどり着くには、まだ、まだ全く、全然足りない!再び燦斗の影から炎が燃え盛り、男を飲み込む。
『ご、あっ……』
炎から顔を出したアポストロスの肩に、背中から鎖鎌が突き刺さっていた。秋燕が闇の中から投げつけたものだ。じゃらりと鎖が揺れ、鎌が肉を抉りながら闇の中に戻っていく。
「さあ、まだまだ参りますよ――!」
燦斗はなおもリスティヒ・クリンゲを投げ、黒鉄刀を振るい、ブラザー・アポストロスへと猛攻を仕掛けていった。。
すべては、彼の求める真の恍惚へと辿り着くために――。
成功
🔵🔵🔴
ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)と共闘。
獣とかは僕が相手をするね。二人は似非神父を任せた。
呼びだした獣ならダッシュで滑り込み腹部に潜ってから…。
限界突破に加えて封印を解いた【錠前】で空へ蹴り上げる。
う。流石に船は大きすぎて獣と同じように上空へ蹴れないねー。
乗船してた人達は銃弾を見切り回避しつつジグザグに走って。
やっぱり【錠前】の蹴りを放って一体ずつ倒していくよ。
…破魔の力を脚に宿しておいた方がいいかな。幽霊みたいだし。
もし宣教師のおっちゃんの相手ができるくらい余裕があったら。
僕の動きや蹴りをフェイントに使って有利に動いて欲しいじぇ♪
3人に注意を払わないといけないって結構集中力を使うからねぃ!
浅間・墨
ロベルタさん(f22361)と連携。
露払いはロベルタさんに任せ秋燕さんと連携します。
【地擦り一閃『伏雷』】を国綱の一刀で放ちます。
多重詠唱と限界突破と破魔の力で威力を上昇させて。
継戦能力と早業で移動と斬撃の速度を維持します。
…それから上手くいくかわかりませんが…。
オーラ防御で私の身体の負担を軽減できるか試します。
前回同様に秋水さんの間合いに合わせ連携しますね。
私の攻撃は秋水さんの攻撃後でも前でも構いません。
思う存分彼に力をふるって貰い私はそれに合わせます。
私は鎖鎌の後を追うようにして斬っていこうと思います。
鎖鎌と挟み撃ちの形で攻撃する連携もよさそうでしょうか。
秋燕さんの回避補佐もします。
●天神町に花の降る
墨が、国綱の刀を鞘に納刀する。抜刀の構え。しかしそれが解き放たれるときは未だ来ない。彼女が仕掛けようとしている大技は、時間がかかればかかるほど威力を増すものだ。
それを知っているロベルタは積極的に前に出る。ぎぃ、ぎぃと水のない広場で船を漕ぐ音がして、ガレオン船から無数の火縄銃を掲げた戦士たちが降りてきた。
「――“Schiaccia e apri!”」
ロベルタの破魔の呪力が宿った蹴りが聖戦士たちを蹴り上げていく。戦士たちの銃口は、三人の中で最も目を引く動きをするロベルタに向けられていた。発射される銃弾を見切り、躱し、そして発射直後装填までの時間のロスを利用して【錠前】の蹴りを食らわせていく。
およそUDCアースの歴史を紐解けば、火縄銃はかつては戦では今一歩使えぬ武器であるとされてきた。弾込めから発射、そして再びの弾込めを経ての二発目を撃つまでに時間がかかりすぎ、騎馬により間を縮められてしまうからである。それを三段撃ちという戦略を編み出し、ノータイムで弾丸を浴びせかけられるようにしたのがかの信長だ。このサムライエンパイアでの織田信長が同じことをしたかどうかは定かではない。しかし陣形を組まぬこの聖戦士たちの持つ火縄銃の弱点は、まさにこの「再装填までのタイムラグ」にあった。
それを知ってか知らずか、ロベルタは射線を斬るようにジグザグに走り、弾丸を見切りって避け、そして弾丸発射直後の身を守る術のない聖戦士から確実にひとりひとり【錠前】の蹴りでもって始末していく。ロベルタが脚に施した破魔の力は、幽霊たる戦士たちには効果覿面、彼らは空高く蹴り上げられて次々と文字通りに昇天していった。
墨は抜刀の構えをとったまま、すぅと静かに息を吐きだし、そして吸う。
まだ。まだ時間は足りていない。限界を超えた力を注ぎ込むことにより、末端の血管が切れる音が聞こえてくる。施した魔力障壁は、墨の体の中までは守ってくれない。ましてやそれが、墨自らの意思でもって越えようとしている限界であれば、尚更だ。安全をとってさらに力を増したいなどと言うのは贅沢でしか無いだろう。
「秋燕……さ……、貴方は……存分に……力を…………て、下さ、い……」
蚊の鳴くような声が墨の唇から漏れる。小さな小さなその声を聞き届けた秋燕は、優しく頷いて前に出た。彼の手の中から鎖鎌が放たれれば、ロベルタに集中していた聖戦士の首がばっさりと鎌によって刈られていく。そのまま秋燕はまっすぐにブラザー・アポストロスへと駆けていった。
「異教の徒よ。貴方の説法はこの町には……いいえ、この世の人々には無用。拙僧、もはや御仏の加護を失った身ではありますが――仏敵には、力をもって手向かいましょうぞ」
「猟兵でもないあなたが、私に一矢でも報いられるとお思いですか?」
「いいえ、いいえ……貴方を誅滅するのはきっと拙僧ではないのでしょう。ですが、そのお手伝いでしたら、如何用にも!」
二人の差、すでに九寸。秋燕の技の間合いに入っている。じゃらりと鎖が擦れ、ひゅうと鎌が風を切る音がする――そしてそこでようやく、墨の準備は整った。
墨が長い前髪の下で目を見開く。秋燕の鎖鎌がブラザー・アポストロスの肉を斬り裂くのと同時、墨は地面を蹴った。たん、たん、たん、た、たたたたたたッ……たんッ、ブラザー・アポストロスへと肉薄し、墨は国綱を抜刀する!
――【地擦り一閃『伏雷』】。秋燕の鎖鎌が抉った場所を、寸分違わずして墨の刃は斬り裂いた。ブラザー・アポストロスの体がゆらりと傾げる。彼を庇うかのように、ロベルタの相手にかかりきりになっていた聖戦士の霊たちが火縄銃を手に集まってくる。
もう一度ブラザー・アポストロスへと一太刀を浴びせるため。三人は、残った聖戦士たちを蹴り倒し、斬り伏せてゆくのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
篝・倫太郎
【華禱】
俺達を殺し尽くす……?
何言ってんだか……骸の海にはてめぇ一人で還ンな
往こうぜ、夜彦
秋燕は引き続き、自分の身は自分で守ってくれ
無理と無茶はしねぇでな
攻撃力強化に篝火使用
詠唱と同時にダッシュで接近
吹き飛ばしと鎧無視攻撃を乗せた華焔刀で先制攻撃
刃先返して2回攻撃からのなぎ払い
以降はフェイントも交ぜつつ攻撃
敵の攻撃は見切りと残像で回避
回避不能時と回避する事で秋燕に被害が及ぶ場合は
その場でオーラ防御を展開して防ぐ
負傷した場合は激痛耐性で耐え凌ぎ
以降の攻撃には生命力吸収も乗せてく
何を問われたって
どうしたって、テメェとは宗教観も生死観も異なるんだ
相容れる、なんてこたぁねぇのさ
とっとと還れよ、神父サマ
月舘・夜彦
【華禱】
麗しき死
食を断ち、水も断ち
少しずつ生きる意味が奪われていくことの何が麗しいと
貴方の仰る死を、私は到底理解出来ません
倫太郎、往きましょう
奴の目論見を、此処で断つ
倫太郎と同じく駆け出して接近
敵が召喚してくるか確認し、状況に応じて抜刀術『風斬』
そのまま攻撃を仕掛けて来るのであれば攻撃力重視の2回攻撃
攻撃を躱されるのであれば命中率重視
獣が召喚された際には攻撃回数を重視
倫太郎が攻撃をするのに併せて叩き斬る
敵の攻撃は視力にて動きを読み、残像にて回避
回避が困難であれば武器受けにて防御
負傷は激痛耐性にて耐え
刃に生命力吸収を付与して攻撃しながら体力を奪う
秋燕殿は獣の対処は此方に、鎖鎌で無理のない援護を
●神とカミ
「俺達を殺し尽くす……? なぁに言ってんだか……骸の海にはテメェ一人で還ンな……!」
ブラザー・アポストロスの言葉を聞いて、倫太郎が吐き捨てる。
ざ、と音を立て、夜彦が腰の刀に手を添えたまま一歩前に出た。
「麗しき死、と言いましたね。食を断ち、水を断ち……少しずつ生きる意味が奪われていくことの何が麗しいと。貴方の仰る死を、私は到底理解出来ません」
『あなた方には理解できなくて当然でしょう。過去を殺す猟兵たち。あなた方がその生き方をしている間は、神はきっとあなたがたをお許しにならない』
「……話になりませんね。倫太郎、往きましょう。奴の目論見を、此処で断つ……!」
「おうよ、往こうぜ夜彦――秋燕、引き続き、自分の身は自分で守ってくれ!無理と無茶だけは、絶対ぇしねぇでくれよ!」
「ええ、承知いたしました」
涼やかな笑みの下、秋燕は真剣な目をして頷いた。
「“祓い、”“喰らい”、“砕く”、喰らえや……いや、喰らうぜ“カミの力”!!」
祓う焔の神力が、喰らう水の神力が、そして砕く風の神力が倫太郎の体内を巡り、満ち満ちる。倫太郎は華焔刀を抜き、アポストロスへと斬りかかった。ざくり、と確かな手応え、胸を斬り裂いた刃を返した二撃目は、しかし横から現れた牙に噛み締められることによって妨げられる。
『……答えなさい、数えなさい、懺悔なさい、あなたが今日までに犯してきた罪を。神は全てを聞き遂げ……そして、相応しい罰をお与えになるでしょう』
それはブラザー・アポストロスの「侵略蔵書」から喚び出された「野心の獣」。呼び起こされた三頭の虎に似た漆黒の毛並みを持つ獣は、それぞれ倫太郎と夜彦、そして秋燕へ向かって襲いかかってくる。夜彦は駆けながら刀を鞘から抜いた。【抜刀術『風斬』】――抜き放たれた刃は黒い獣の鼻面を、そして鋭い爪を持った前足を斬る。
じゃらり、鎖が宙を舞った。秋燕の鎖鎌だ。秋燕へと向かった黒き野心の獣が、彼の鎖鎌によって顔面を斬り裂かれて高い声を上げる。その爪が秋燕へと掛かる前に、夜彦は急ぎ若き僧と獣の間に割って入った。
「秋燕殿、獣の対処は此方に。どうぞ無理のない援護を」
「……っ、かたじけなく……!」
二匹分の獣の猛攻を圧倒的な速度で手数を増し、捌きながら、夜彦は着実に獣たちに斬りつけていく。そのすぐ目の前では、倫太郎の華焔刀の斬撃を受けながらも、黒き獣が彼にその強靭な爪を立てんとしていた。ぎゃりぎゃりと華焔刀の刃と爪とが軋り合えども、獣の爪が折れる気配は一向にない。
がきん、強引に華焔刀を爪から引き剥がし、ぶんと振り回して倫太郎は黒獣の右前脚を斬り落とした。ギャアとけだものの悲鳴を上げながらも、そのまま獣は倫太郎の肩へと噛みいてくる。
「ぐ……痛ってぇぇ、な……!!」
『諦めなさい、その獣は満足な答えを口にせねばあなた方を永久に襲い続けるでしょう』
「は、どうせ何を言ったって満足なんかしねぇんだろうが――それになぁ!何を問われようったって、どうしたって、テメェとじゃ宗教観も死生観も異なってんだ……!相容れる、なんてこたぁねぇのさ!」
獣の腹を強引に蹴り上げ、その腹を薙ぐ。斬り捨てられた獣はしゅうと音を上げながら、道端の染みとなって消え失せた。
夜彦もまた秋燕の援護を受けながら、二体の獣を次々と斬って捨てていた。
ふたりとも獣の爪と牙によって決して浅くない傷を負っている。その痛みを、痛覚を切り離し、あるいは気合で耐え忍びながら、二人は並んでアポストロスへと駆け出した。
倫太郎と夜彦、二人の刃を躱してゆくアポストロス。その目の前で夜彦の姿が消えた。どこかと目を走らせるまもなく、背中にぞぶりと刃を差し込まれる。残像を残した夜彦が、背後に回り込んでアポストロスの背を貫いたのだ。夜彦がそれを引き抜き、背へと斬りつけると同時。
「さぁ、とっとと還れよ、神父サマ!」
倫太郎の華焔刀の刃が、ブラザー・アポストロスの胸を貫いた。
大成功
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ヨナルデ・パズトーリ
まあ、一発殴ってやりたくなる気持ちは妾も判らんでもない、かのう
戦は水物故に絶対、という約束は出来ぬが其の助力、してやろうぞ
魔法は原則『高速詠唱』『範囲攻撃』
UCを即使用
『先制攻撃』で『呪詛』の籠った闇の『属性攻撃』『全力魔法』の『乱れ撃ち』で『目潰し』
其の侭秋燕が『目立たない』様に又流れ弾が行かない様に彼の居ない方向に『存在感』と『殺気』を持たせた『残像』を配し攪乱
銃は『野生の勘』で『見切り』『残像』を囮に回避するか『オーラ防御』で防ぐ
敵UCは遠方の敵は『破魔』の『神罰』の雷『属性攻撃』『全力魔法』で『薙ぎ払い』至近のは『怪力』の斧での『鎧無視攻撃』
敵本体も同様
トドメは可能なら秋燕に
●事変の顛末
(――これはまぁ、一発殴ってやりたくなる気持ちは妾にも判らんでもない、かのう)
焼かれ、斬られ、貫かれ――猟兵の猛攻によって相当の深手を負いながらも、それでも温度のない目をしたままの初老の男を見て、ヨナルデは肩を竦める。
「戦は水物、故に絶対という約束は出来ぬが……秋燕よ、此奴に一発くれてやろうというのなら、その助力はしてやろうぞ!」
我ジャガーにして煙吐く鏡、テスカトリポカにしてケツァルペトラトルたる者――。
ヨナルデの体が黒曜石の鎧に包まれた。巨大な黒曜石の戦斧を担ぐ彼女の耳に、ギイギイと重いものが動く音が聞こえてくる。ガレオン船が、聖なる戦いで死した戦士の亡霊を乗せて水もない広場を進んできたのだ。そして船からは四百に近い数の亡霊たちが、火縄銃を手にして降りてくる。
「ええい、邪魔だ貴様ら!」
だん、だん、だだん……火縄銃が火を噴いた。降り注ぐ弾丸をヨナルデは野生の勘を駆使して見切り、躱す。そして銃を討ったばかりの戦士に近づき、大斧で次々と首を飛ばした。
火縄銃が外国の存在しないサムライエンパイアでどのように生まれたのかは定かではない。
世界を超えてきたのかもしれないし、偶然に生み出されたのかもしれない。けれどUDCアースにおいて、火縄銃が戦に用いられるようになったのは伝来してから時間がかかっている。信長が三段撃ちという方法を取り入れるまでは、銃よりも騎馬のほうが余程強かった。何故なら発射から再装填までの間に、騎馬でもって近づき、撃ち手を殺すことが十分に可能だったからだ。……そう、火縄銃の最大の弱点とは、再装填までに時間がかかることにある。その弱点をカバーするために隊列を組むには、この広場にこの戦士たちの人数はあまりにも狭い。例えコルテスの戦下手の影響下になくとも、十分にその弱点は弱点たりうる――故にヨナルデもまた、弾丸を見切り、再装填の間無防備となった戦士たちから次々とその大斧で屠ってゆく!
「秋燕よ、今は余り動くでないぞ!」
彼に弾丸が当たらぬよう、ヨナルデは生きた人間以上に存在感を放つ囮を立ててある。秋燕自身が息を潜めているならば、火縄の攻撃は彼を無視して囮の方へと吸い込まれていく仕組みだ。戦士たちはそれぞれが独自のタイミングで発砲してくる。躱しきれなかった銃弾を全身に纏った魔力障壁で受け止めて、ヨナルデは破魔と神罰の加護を与えた雷を降ろした斧を大きく振るう。雷の魔力が次々と戦士たちを打ち、焼き焦がして行った。
「これで少しは戦いやすくなったかのう、ブラザー・アポストロスとやら!」
呪詛と闇の魔力がヨナルデの咆哮と同時にアポストロスから光を奪う。そのまま畳み掛けるように振り下ろされた戦部は、アポストロスの腕を叩き斬った。びしゃりと真っ赤な血が、屋敷の二階ほどまで高く噴き上がる。
「――今じゃ。やれ、秋燕!」
闇による目潰しによって光を失ったアポストロスには、その声を聞き届けるまでが精一杯だった。そのまま、喉元に冷たい感触を得て――暗転。
ヨナルデと聖戦士達が戦っている間に屋敷の屋根に登り身を潜めていた秋燕は、彼女の合図とともにアポストロスの背後に降り立ち、鎖鎌にて喉を描き切ったのである。念の為、ヨナルデが死体の首を斧で落とす。初老の神父の体は末端からボロボロと崩れ、骸の海に還っていった。
「何から何まで、有難うございます。これで、町の人々が正気に戻ればよいのですが」
「きっと戻るであろうよ。元凶はこの世から消えたのであるからな」
――秋燕、おぬしはそれまで何をする?
ヨナルデの問いに、若き破戒僧は微笑んで答えた。
「まずは湯に浸かり、血を落としましょう。それから、人々のための粥でもこしらえましょうかな」
「それは良い。美味い飯こそが人に活気を与えるものよ、長く飯抜きであった腹には粥が一番だ!」
ヨナルデもまた豪快に笑う。
ブラザー・アポストロスがいなくなった今、町の人々は時を待たずして正気に戻っていくだろう。其処から先は、秋燕とこの町の人々が解決していく問題だ。
こうして、神楽月に起きた天神町の異変は、ここに幕を下ろしたのである。
大成功
🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2020年11月20日
宿敵
『ブラザー・アポストロス』
を撃破!
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