●ラグランジュポイント
宇宙船の残骸が浮遊する、超技術によって繁栄する文明、ラグランジュポイント。広大なラグランジュポイントの一つの座標で、アームドヒーローたちが宇宙船の残骸を回収していた。
「おい、アラン。良い素材はあるか?」
スマートグラスから送られてくる情報を眼前に可視化させて、金髪の筋骨隆々の男が、宇宙船の残骸を漁っている男へと視線を向ける。
「そうだな……おっと、俺の『レールガン』強化に良さそうな素材だ」
「ちょっと、私にも残しておいてよ。私の『レーザーネット』のエネルギーが無くなっちゃったら一巻の終わりなんだから」
にやり、と笑って超テクノロジーの残滓が残る機械片を背部の回収ボックスに格納したのは、アランと呼ばれた赤髪を短く刈った20代前半の男だった。
「へいへい。ノーマンの『長距離レーダー』がなけりゃ、元の場所にも戻れねぇからな、この場所じゃ」
「私のレーザーネットで体を宇宙船に固定してる状態なんだから、安心しないでよね」
もう、と腰にあるエネルギー容量のメーターを確認して、サリーは宇宙船に括り付けた『ビームネット』の一本をアランへと放り投げた。
「ちゃんと持ってなさい。この場所は、特に危険だわ」
「……宇宙船に残るビーム砲が生きてるなんて、ここは奇跡的な座標だな」
いい素材が取れるかわりに、危険過ぎる、と。ノーマンがスマートグラスに備え付けられた『長距離レーダー』の情報を見ながら、宇宙船の残骸を漁り続ける。
と、そこで。
「……ん。なんだありゃあ」
「どうした?」
「いや……なんか妙なもんがな……」
スマートグラスの機能を解放し、ズームでその妙なものを確認する。
宇宙船の残骸が散らばっているその隙間。身を屈ませている何者かの姿。周囲に存在する機械の残骸が、その存在に吸着するように動き回る。
超テクノロジーの宿る残骸、それが、謎のオブリビオンに吸収されているのだ。
●文明の破壊者
「ヒーローズアース、ラグランジュポイントで機械と融合する猟書家の存在が予知された」
集った猟兵に、アイン・セラフィナイト(全智の蒐集者・f15171)がそう告げた。
「猟書家の名は『デストロイ・プライム』。ラグランジュポイントに存在する超兵器の数々と融合する、機械の竜だ。ただし……」
ふむ、とアインが顎に手を置いた。どうやら、問題があるようだ。
「ラグランジュポイントは広大、そして未知のテクノロジーに満ちている。それ故に、幹部の正確な場所が分からないんだ」
それでは、追跡のしようがないと猟兵の一人が呟いた。その言葉に、アインが安心してくれと口を開く。
「そこで、幹部が潜んでいるだろうラグランジュの一区域を管理する、アームドヒーローで構成されたヒーローチームに協力を依頼することにしたんだ。俺たちよりもオーバーテクノロジーを知り尽くし、かつ周辺の状況を知るヒーローたちだ」
そのチームの名を『アステロイド・チェイサー』。超兵器の眠る危険な区域を管理する、熟練のヒーローチームだ。
「みんなには、アステロイド・チェイサーが待機している場所に転移してもらう。なんでも『残骸になった宇宙船の超兵器の機能が生きている、かなり危険な宙域』らしいから、そのヒーローたちと共闘して、デストロイ・プライムの居所を掴んでくれ」
アインが杖を掲げる。転移先は、アステロイド・チェイサーの面子が待機している宙域の一座標だ。
「敵は超兵器と合体して強力な力を得ようとしている猟書家だ。一筋縄じゃいかないだろう……。みんな、無事に帰ってきてくれ!」
夕陽
超兵器との融合により、強大な力を得ようとする機械の竜にして猟書家『デストロイ・プライム』。今回はアームドヒーローたちと共闘しない限り、この猟書家を打ち倒すのは至難の業です。
OPをご覧頂きありがとうございます。初めましての方は初めまして、すでにお会いしている方はこんにちはこんばんは、夕陽です。
以下、プレイングボーナスが存在します。
プレイングボーナス(全章共通)……アームドヒーローのヒーローチームと共闘する、もしくは猟兵組織「秘密結社スナーク」の一員であると名乗る(敵がスナークの名の元に恐怖を集める企みを妨害します)。
更に、補足です。
●ヒーローチーム『アステロイド・チェイサー』
アラン:ヒーローチームの隊長、赤髪の男性です。超兵器の一つ、『追尾型レールガン』を使用するアームドヒーローです。射程はおよそ1km、チャージまで少し時間がかかりますが、最大5連射できます。
ノーマン:ヒーローチームの索敵担当、金髪の筋骨隆々の男性です。超兵器の一つ、『長距離レーダー』を使用するアームドヒーローです。範囲は10km。主に熱源を探知します。残骸となった宇宙船に存在する、機能しているビーム砲の探知等に使用されます。
サリー:ヒーローチームの支援担当、黒の長髪の女性です。超兵器の一つ、『ビームネット』を使用します。自分の胴に括り付けて命綱に、隕石や残骸から守るために、網状にエネルギーを展開することも出来ます。
第一章では、機械と融合しながらも逃亡する集団敵を追跡、撃破する形となりますが、宙域は『残骸となった宇宙船のビーム砲が生きており、動く熱源を攻撃してきます』。
アームドヒーローたちと共闘し、ビーム砲の回避、および敵の追跡、撃破を優先しましょう。
【断章更新後に、プレイングを募集致します】。
それでは、皆様のプレイングお待ちしております。
第1章 集団戦
『ジャスティストルーパー』
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POW : フォールン・ジャスティス
全身を【機械部分から放出されるエネルギー】で覆い、自身の【戦闘を通じて収集した敵のデータ】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : イミテーション・ラッシュ
【ジャスティス・ワンが得意とした拳の連打】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : マシン・ヴェンジャンス
全身を【機械装甲】で覆い、自身が敵から受けた【物理的な損傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
イラスト:もりさわともひろ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
転移先は、無数の宇宙船の残骸が浮遊する無重力の座標だった。大きな円盤じみた大広場、遺る宇宙船の展望台の上で、現れた猟兵たちに気付いてヒーローチーム『アステロイド・チェイサー』の3人が手を上げた。
「お、来たな。世界を救った猟兵たちと共闘なんて光栄だな。自己紹介は……ああ、グリモア猟兵、ってやつから聞いてるんだったな。よろしく頼むよ」
赤髪のアームドヒーロー、『アステロイド・チェイサー』の隊長であるアランが握手を求めて手を差し出した。その手を握った後、控えていたノーマンが猟兵たちに説明を行う。
「来てくれて早々申し訳ないんだが、アンタたちが探してるヴィランはこの宙域の深層にいるみたいだ。爆発的に熱源反応が増加している。早めに手を打たないと、マズイことになるのは明らかだろうな」
3人が言うには、無重力状態で浮遊している宇宙船の残骸の中に、生きているレーザー砲が無数に存在するらしい。『ステルス機能等全てを看破する超技術を内包したレーザー砲』のため、『姿を消すようなユーベルコード、アイテムはあまり有効的ではない』。
サリーが一人の猟兵の肩にとん、と手を置いた。
「援護は任せてちょうだい。無重力の宇宙空間に慣れてないでしょう?私の『レーザーネット』でフォローするし、ノーマンがそこら辺にあるレーザー砲の場所を『長距離レーダー』で探査していくから」
「俺のレールガンである程度のレーザー砲も破壊することができる。まあ、そこら辺は君達の采配に任せるよ」
円盤の外を見ると、浮遊する宇宙船の残骸を縫うように、猟書家の手下たちが特定の場所を目指して飛行しているようだ。機械と融合した『機械化オブリビオン』の群れだ、体の一部からレーザー砲の銃砲が突出していた。
「あいつら、おかしな見た目だろう?熱源反応が増加している座標に向かって飛んでいってるんだ。嫌な予感がするな……」
猟兵たちの表情が曇る。機械化オブリビオンが結集している地点に、猟書家『デストロイ・プライム』が隠れているのは確実だろう。機械と融合し、戦闘力を増加させる猟書家だ、このまま機械化オブリビオンを逃せば、面倒なことになるに違いない。
第一優先は『機械化オブリビオンの逃亡阻止、そして撃破』。猟兵たちとアームドヒーローたちが行動を開始する。
【MSより】
猟兵たちが機械化オブリビオンを掃討しなければいけない無重力宙域は、『対ステルスレーザー砲』と呼ばれる宇宙船の超技術が生きている危険地帯です。ただ単純に移動するだけでは、レーザー砲にロックオンされて蜂の巣にされるでしょう。
『アステロイド・チェイサー』と協力し、ビーム砲からの砲撃回避、逃亡を続ける機械化オブリビオン『ジャスティストルーパー』の妨害、撃破を行って下さい。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております!
空桐・清導
POWで挑む
協力も大歓迎
アステロイド・チェイサーと一緒に戦えるなんてツイてるな!
俺の名前は空桐清導!
今は秘密結社スナークに所属するヒーロー
ブレイザインだ!
よろしくな!
戦法は俺とアランでレーザー砲やトルーパーをぶっ飛ばす。
ノーマンはレーザー砲とトルーパーの位置を調べてくれ。
場所がわかりゃ、サンライザーの[誘導弾]で狙える!
サリーはチームのカバーを頼む。
俺もある程度は[オーラ防御]で手伝う。
UCを発動して重武装形態に変身。
肩や腰の砲門や溢れる光焔で乱れ撃つ!
近距離の敵はぶん殴る!
トルーパーが俺達を解析して強くなるなら、常に[限界突破]し続ける。
ヒーローの底力!嫌になるほど教えてやるぜ偽もんヤロー!
「アステロイド・チェイサーと一緒に戦えるなんてツイてるな!」
「む、君は……」
赤茶の髪に、熱意に満ちた表情。身に纏う紅く燃え盛るような鎧を見て、アランが顎に手を当てた。
「俺の名前は空桐清導!今は秘密結社スナークに所属するヒーロー、ブレイザインだ!よろしくな!」
「秘密結社スナーク、そして赤い鎧。なるほど、君が……」
「最近よく耳にする猟兵の組織か。ブレイザインという名も他のヒーローチームから聞いたことがある」
「あいつらみたいに妙な連中がまた出現してるみたいだしね。猟兵たちも忙しそうよ」
アステロイド・チェイサーの面々が、爽やかに微笑む空桐・清導(ブレイザイン・f28542)と握手を交わす。
そうして挨拶を終えたところで。
「さあ、猟兵の実力を見せてもらうとするか」
「ああ!それじゃ戦法は、アランでレーザー砲やトルーパーをぶっ飛ばす。ノーマンはレーザー砲とトルーパーの位置を教えてくれ!サリーはチームのカバーを頼む!」
了解、と頷いたアステロイド・チェイサーの面々だったが、ノーマンとサリーがふっ、と笑った。不思議に思った清導が首をかしげる。
「なんだ?どうしたんだ?」
「いいえ、リーダーのアランよりもリーダーしてるから、ついね」
「おいおい、リーダーの座は譲らないからな!?」
「そんな事言ってると、ブレイザインに本当に奪われそうだな」
笑い合うヒーローチームの2人、やれやれと頭に手をやって困った顔をするアランに、清導はにっ、と笑った。
4人が飛び出した。ノーマンのレーダーによってオブリビオンの場所、およびレーザー砲の場所が瞬時に明らかになっていく。
「ブレイザイン、あの宇宙船の残骸の陰だ!俺がレーザー砲を潰す!」
「了解!」
アランのレーザー砲のチャージはすでに終わっていた。銃砲から飛び出した閃光は、ノーマンが解析した座標へと飛んでいくと、次々と宇宙船の砲台を沈黙させていく。
散った残骸に気付いたのは、陰に潜んでいたジャスティストルーパーが飛び出してくる。追跡されていたと瞬時に理解し、距離を置こうと飛行を開始する、が。
残骸の粉塵をかき分けるように現れるのは、真紅の鎧に身を包んだ清導―――ブレイザインだ。
「逃さねぇぜ!」
ジャスティストルーパーが電子音に似た声をあげた。機械から放出されるエネルギーで敵の戦闘データを収集しようとするが、すでに清導は目の前だ。
鎧がたちまち変形していく。【ヘビーアームド・ウェポナイズ】によって、全身を包み込むほどの重武装モードへと化した鎧の拳は、炎に似たオーラを放ってジャスティストルーパーへと打ち放たれる!
「ヒーローの底力!嫌になるほど教えてやるぜ偽もんヤロー!」
一発。たった一発で、恐ろしい程の衝撃波が響き渡った。陽炎に似たオーラの奔流がジャスティストルーパーを打ち据え、機械化していた体が、その攻撃力によって砕かれる。
高い電子音を響かせてその機能が停止、ジャスティストルーパーは霞のように消え去り、骸の海へと還っていった。
あまりの勢いに軌道を外れそうになった清導の腰に、紐状のエネルギーの束と化したビームネットが括り付けられる。
「流石は、猟兵、ブレイザイン。やるわね」
「まだまだこんなもんじゃないぜ!偽モンはまだまだたくさんいる、もっと倒しとかねぇとな!」
「血気盛んだな。だが……嫌いじゃない。いくぞ、ブレイザイン!」
アランの言葉に清導が頷く。差し出された手を握って、他の機械化オブリビオンを倒すために索敵を再び開始したのだった。
大成功
🔵🔵🔵
シャルロット・クリスティア
秘密結社……か。まぁ、そういう事でいいでしょう。なんだかむず痒いですけど。
サリーさんの言うように、無重力戦闘の経験は少ないですからね。
単純な追いかけっこでは難しいでしょう……なので、こちらもそれなりのやり方で行きましょう。
宇宙には空気の揺らぎも重力も風も無い。敵は見たままの位置にいるし、弾は真っ直ぐ飛ぶ。
敵の位置は把握していますね?観測手はお任せします。狙撃はこちらで。
位置さえわかれば、距離があろうと外すことはない。
アランさん、すみませんが、少しの間護衛をお願いできますか。
極力それまでに仕留めますが、仮に接近を許した場合の迎撃を。
ついでに、ビーム砲も可能な限り狙撃で潰しておきたいところですね。
月影・このは
此方、対ヴィラン用量産型戦闘ロボ518号です
これより『アステロイド・チェイサー』と共同で任務にあたらせて頂きます
支援要請内容はノーマンさんのレーザー砲の位置の把握と
アランさんの長距離攻撃による破壊
サリーさんは二人の支援
近接格闘兵装が多いのでレーザー砲の数減らしよろしくお願いします
自身を狙う攻撃はクリスタルウォールにて『盾受け&オーラ防御』
足のブラストブーツによる炸薬にて無重力空間での移動を【ダッシュ】
敵機発見!遠距離では目から放つ『レーザ射撃』にて牽制!
懐に飛び込み零距離ブーストナックル!【鎧砕き】
敵機弱点解析!あとはそのデータを参照しつつ打ち貫くのみです
鏡島・嵐
「所属してるおれが言うのもなんだけど、ウチの結社も懐が広いよなぁ。
なにせこんな怖がりなおれでも戦闘員が務まるってんだからさ」
……名乗りはこんな感じか。あとは、アステロイド・チェイサーの腕前に期待だな。勿論、おれも怖いの堪えて頑張るけどさ。
あらかじめユーベルコードを使っておいて。
ノーマンに索敵してもらいながら、自分も〈第六感〉を働かせてレーザー砲の位置を探す。
自力で潰せそうなら〈スナイパー〉ばりの精度でスリングショットを撃ち込んで潰すし、手が届かなそうならアランやサリーに助けてもらう。
幾らかは撃たれるだろうから〈見切り〉で躱す。
それでも躱しきれねえなら……予め使ったコードで幸運に縋るかな。
メンカル・プルモーサ
んー…熱源反応が増加している方向に…融合してなるこれ…
ノーマンのレーダーから割り出したトルーパーの位置データをこちらのアルゴスの眼に転送して貰って…
…1番遠いトルーパーに向かって【撃ち貫く魔弾の射手】を発射…超遠距離からの狙撃で始末していこう…
…他のトルーパーが排除のために近寄ってくるならビームネットを利用させて貰って作った足止め用トラップに引っかかってるうちに足止めアランのレールガンで迎撃して貰おう…
…こっちにレーザー撃ってきたら術式組紐【アリアドネ】でガードだね…
…レーザー砲と融合してたら同種と見なされて狙われないか…
…つまり識別用の信号でもあるのかな?移動用に利用させて貰おう…
暗黒の軌跡が遠くで瞬く。機械の残骸、その間隙を掻い潜る機械化オブリビオンの群れが、ある地点へと飛行を続けている。
「一匹片付けたのはいいが……」
「まだまだいるみたいだな。慣れないところで戦うのはちょっと気がひけるんだけどなぁ」
うん?とアステロイド・チェイサーの面々がそちらへと顔を向ける。グリモア猟兵による転移の輝きから2つの人影が歩み出てきた。
「秘密結社スナークから追加の人員だよ。所属してるおれが言うのもなんだけど、ウチの結社も懐が広いよなぁ。なにせこんな怖がりなおれでも戦闘員が務まるってんだからさ」
首に巻いた赤いマフラーに手を当てて、柔らかく微笑んだのは鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)だった。
「あら、他の猟兵たちも遅れて登場?」
「ええ、そんなものです。秘密結社……か。まぁ、そういう事でいいでしょう。なんだかむず痒いですけど」
そう呟いたシャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)だったが、なぜかサリーがじろじろ、と見つめてくる。
「あの、なにか?」
「ヒーローにも色々いるんだけど、小さな女の子と戦場で会うのは珍しいのよね。私とかこいつらにゴリラ扱いされてるんだから」
「……私15歳なんですが……」
苦笑気味に。それを聞いたサリーがひく、と表情を硬直させる。
「あのよ、通常なら野郎が失言するパターンなのにお前から真っ先にそういう事言うから俺たちがお前をゴリラ扱いするんだよ」
「……肝に銘じておくわ」
ノーマンからの鋭い言葉に、サリーが目元を抑えて顔を俯かせた。
「んー…熱源反応が増加している方向に…融合してなるこれ…」
「っと、これはまた唐突に現れるな」
宇宙空間だからか、風を切る音も聞こえなかったようだ。飛行箒に跨った魔女に似た少女、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)が、飛行を続ける機械化オブリビオンをじっと見つめている。
「…レーザー砲と融合してたら同種と見なされて狙われないか……つまり識別用の信号でもあるのかな?」
「そうだな、確かに不自然だ。俺たちが狙われるのに、あいつらは照準に引っかからない。超兵器と融合なんてしてる奴らだから、それ相応に理由はあるのかもしれないな」
「…そうだね。移動用に利用させて貰おう…ノーマン、解析お願い」
了解だ、とノーマンが長距離レーダーで解析を開始する。次いでばちり、と閃光が弾けて、転移の輝きから1人、猟兵が現れる。
「此方、対ヴィラン用量産型戦闘ロボ518号です。これより『アステロイド・チェイサー』と共同で任務にあたらせて頂きます」
じっ、とアランとノーマンがサリーへと視線を送る。
「しないわよ!失言なんてしないからね!えーと……あら、あなた、どこかで見たことあるわね」
「肯定。対ヴィラン用量産型戦闘ロボ518号。正義の為に、私の鋼鉄の拳で悪を粉砕します」
月影・このは(自分をウォーマシーンと思いこんでいる一般ヤドリガミ・f19303)であるが、月影重工で作られた超合金製の玩具のヤドリガミである。通常のヒーローズアースから離れた場所であるラグランジュポイントでは、知っている人は少ないかもしれないが……。
「支援要請内容はノーマンさんのレーザー砲の位置の把握とアランさんの長距離攻撃による破壊、サリーさんは二人の支援、近接格闘兵装が多いのでレーザー砲の数減らしよろしくお願いします」
「あ、ああ。……なんだろうな、どこかで見たことがある気がするんだが」
ヒーローチーム故に、他のヒーローチームと連絡を取ることもあるのかもしれない。例えば、通信とかで超合金製玩具とかを見たこともあるかもしれない。多分。……多分。
「…ノーマン、周りの解析と同時にトルーパーの位置データもこっちに送れる?」
「問題ない。超兵器の内蔵CPUは無限大だ」
ジョークなのかどうかは定かでなはない。
「アステロイド・チェイサーの腕前に期待だな。勿論、おれも怖いの堪えて頑張るけどさ、やっぱり無重力空間だと感覚狂うなぁ」
「サリーさんの言うように、無重力戦闘の経験は少ないですからね。単純な追いかけっこでは難しいでしょう……なので、こちらもそれなりのやり方で行きましょう」
くるり、とシャルロットがアステロイド・チェイサーの面々に向き直る。
「ノーマンさん。位置情報は?」
「今そっちの眼鏡のお嬢さんに情報を転送している」
「…『アルゴスの瞳』に情報を受け取った…みんなにも逐一転送するよ」
「了解しました。観測手はお任せします。狙撃はこちらで」
「…私も狙撃する…レーザー砲の数減らしが必要…」
「じゃあおれはサポートに移るよ。アラン、おれもレーザー砲の破壊を優先する」
「ああ、助かる。顔を出したらレーザー砲の索敵範囲に収まるだろう。迅速な判断が必要だ」
「レーザー砲沈黙を確認次第、機械化オブリビオンへ接敵します」
「任せたぞ、嬢ちゃん」
「では、アランさん、そして嵐さん。すみませんが、少しの間護衛をお願いします。極力メンカルさんと一緒に仕留めますが、仮に接近を許した場合の迎撃を」
「ボクもその時はお手伝いします。この拳、伊達ではありませんので」
「…サリーもフォローお願い…レーザーネットで罠を敷いておいてね」
「任されたわ。少なくとも、あなた達の攻撃の隙ぐらいしっかりと作ってあげるから」
「――では」
完結かつ、スピーディな戦略会議だった。本来なら時間をかけて練り上げるはずの会議を、この場この瞬間で一瞬に構築してみせたのは、秘密結社スナークの立場として立つ猟兵たちの力量を表している。
全員が、シャルロットの言葉にこくり、と頷く。
作戦、開始。
●
円盤状に凹んでいる広場から顔を出して、全員が行動を開始する。ノーマンから送られてくるデータを解析、瞬時に全員にその情報を拡散して見せたのは、メンカルの技量による。
こちらへ向けられるビーム砲、それがアランのレールガンによってたちまち破壊された。次いで飛んだのは嵐のスリングショットの一撃だ。銃の精緻すぎる照準に似た、恐るべき精度の一撃によって、周囲に存在するビーム砲が沈黙していく。
しかし、ビーム砲は残っている。飛んできたビームをひらりと回避し、そのカウンターにスリングショットを一撃撃ち込む。さらに飛んできたビームは、空間に浮遊する残骸によって遮断された。その隙を見逃さず、嵐がスリングショットでビーム砲を撃ち抜いた。
「ふぅ……危ねえな。メダルが役に立ったか」
嵐の胸に張り付いているメダルは、禍福の忠犬シロが描かれたメダルだ。
【忠義貫く犬の祝福(ドッグス・ホーカス・ポーカス)】。自身に幸運を、敵に不運を付与する、運気改変ユーベルコード。“偶然”飛んできた残骸が、嵐に迫る一撃を弾いてみせた。それは、このユーベルコードをおかげである。
ひゅう、とアランが口笛を吹く。
「やるな。流石は猟兵だ」
「めちゃくちゃ怖くて今も逃げ出したいくらいなんだが、蜂の巣にされて死ぬのは嫌なんでね」
違いない、とアランがにっ、と笑う。
ビーム砲を破壊していく猟兵とアームドヒーローを視界に収め、シャルロットとメンカルはすでにその照準を機械化オブリビオンへと合わせている。
「位置さえわかれば、距離があろうと外すことはありません」
「…絶対に外さない…私のユーベルコードも一緒…」
シャルロットは魔導銃を、メンカルは術式装填銃【アヌエヌエ】を構えて、その先にいる機械化オブリビオンへと銃口を向ける。
雷電の奔流が空間を奔る。術式装填銃の銃口に閃くのは、ゆっくりと回転する淡青色の魔法陣だ。
「見えるならば、届きます。届くならば、当たります……!」
「駆け抜ける魔弾よ、穿て、貫け。汝は徹甲、汝は貫通。魔女が望むは阻める物無き魔の一閃」
宇宙空間に撃ち放たれた弾は2発。一つは、電磁加速による超高速弾。もう一つは、必中の魔弾。
【術式刻印弾・迅雷(ルーンバレット・ライトニング)】。【撃ち貫く魔弾の射手(フライクーゲル)】。
異なる銃弾、しかし、その本質は極めて近い。ユーベルコードの奇蹟は、物理法則全てを否定する―――!
狙撃されたジャスティストルーパーは、気付くことさえ叶わなかった。当たったことに気付いたときには、すでに塵となって骸の海へと還っている。
必中の魔弾と迅雷の銃弾の連撃に、群れていたオブリビオンが断末魔の声を上げた。仲間が狙撃されていることを知ったオブリビオンの数体がこちらへと突進してくる。
「ボクの出番のようですね」
レーザー砲が、嵐の一撃で更に沈黙する。すでに、ジャスティストルーパーへの道は、レーザー砲の全てが破壊されていた。接近戦なら今が好機だ。
このはが足に力を込めて、刹那ブーツの靴底が爆ぜた。『ブラストブーツ』の炸薬によって、無重力空間を恐るべきスピードで駆け抜ける。
接近してきた猟兵の姿を、ジャスティストルーパーは捉えていた。しかし、その速さ、対処できる程の余裕はない。
「敵機発見!」
どん!とジャスティストルーパーの懐に入り込んだこのはが、その片腕を掲げる。
「穿て正義の鉄拳!ブーストナックルッ!」
片腕の付け根部分から噴射されたロケット。腕がそのまま飛翔し、トルーパーの腹部を突き穿つ。
【ブーストナックル】の一撃によって沈黙した機械化オブリビオンは、たちまち霞となってかき消えた。
「上出来よ!」
飛んでくるトルーパーの1体が、罠として設置していたレーザーネットに引っかかる。その隙をついて、嵐がスリングショットで頭部を撃ち抜いた。
「こんなものでしょうか。状況はどうですか?」
「体にレーザー砲生やした連中は全員撃破完了だ。ミッションコンプリートだな」
アランからの称賛にしかし、猟兵たちはその背後から迫る影を見て武器を構え直した。
「我が計画を邪魔してくれたな、猟兵共よ」
巨大な機械竜が、スクラップを吸収しながらそこに現れたのだから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『デストロイ・プライム』
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POW : グラウンド・ゼロ
単純で重い【足や尻尾】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : ジェノサイド・ブラスト
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【全身のビーム砲】から【破壊光線の雨】を放つ。
WIZ : トリニティ・バースト
詠唱時間に応じて無限に威力が上昇する【悪】属性の【破壊光線】を、レベル×5mの直線上に放つ。
イラスト:aQご飯
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠ミネルバ・アレキサンドリア」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「我が造物主は言った。『悪を為せ』と。『悪を以て、世界を掌中に収めよ』と」
巨大な機械竜、猟書家『デストロイ・プライム』は、周囲に浮遊する宇宙船の残骸を吸収しながら、その機翼を広げた。翼のスリットから赤いエネルギーが明滅し、ブースターのような轟音を響かせている。
「我が力は、声無き機械との融合。存在せぬ生命にして、超生物スナーク……ミストレス・バンダースナッチには、サー・ジャバウォックのような虚構を繰る力はない。為れば、我が力を以てスナークを此処に誕生せしめよう。かつて我が造物主が、我を創ったように」
三つ首、その口腔から、閃熱のエネルギーが溢れ出る。燻ったエネルギーは瞬間解き放たれ、周囲に存在する残骸を融かしていく。
「……正義の匂い、正義の気配。貴様たち猟兵を殲滅するのもまた使命。我が光線にて全てを屠る」
デストロイ・プライムが咆えた。襲いかかる殺気の余波に、アステロイド・チェイサーたちが拳を握りしめた。
「どうやら、首領のおでましみたいだな……!」
「俺たちでは太刀打ちできなさそうだな。……後衛のフォローは任せてくれ。思う存分暴れると良い」
「私もできる限り協力するわ。機械と融合なんてクレイジーね。……けれど、妙な敵を全部潰したおかげで、あの頭の硬そうなヤツは力を十分発揮できてないみたいよ」
機械化オブリビオンの体に生えていたビーム砲、それがデストロイ・プライムには存在しない。どうやら、機械化オブリビオンの群れを殲滅したおかげで、自己強化を行うことが出来なかったようだ。
超兵器と融合し恐るべき攻撃をしてくるのならば勝ち目は薄いが、この状況ならば、いくらでも覆せる。
猟兵たちは武器を取る。熱線を放つ三つ首を超え、猟書家の目的を打ち砕かなければ。
「―――消え失せるがいい、我が一撃にて!!」
メンカル・プルモーサ
(引き続き飛行式箒【リントブルム】に乗って参戦)
…さて…あのビーム砲が無いだけでも随分と楽になるね……潰しといて良かった…
それじゃあ、敵も巨大なことだし【戦術構築:巨神狩り】の出番だね…
…あえて接近してその死角をつくとするよ…
…その巨体に術式組紐【アリアドネ】を引っかけての高速旋回を利用して的を絞らせない…
…そしてノーマンのレーダーと【アルゴスの眼】を引き続き同期してもらって…熱源を探知するなら…動力の位置も判るし熱線のタイミングも判るだろうから…その分析をして貰おう…
…そして熱線を放つ直前に術式装填銃【アヌエヌエ】から爆破術式を込めた銃弾を口に連射…暴発を狙うとしよう…
空桐・清導
POWで挑む
さあ、最後だぜ!みんな!
相手がデカい機龍だったら、こっちも巨大ロボだ!
UCを発動して巨大ロボを創造、
アステロイド・チェイサーと搭乗する。
「銀河巨兵!ギャラクシー・スナーク!!」
ヒーローだったら分かるはずだぜ。今、何をすべきなのか!
オレは姿勢制御
ノーマンはレーダーでレーザー砲を探知して、
ミサイルポッドの[誘導弾]で全て破壊する
サリーはビームネットで足や尻尾の一撃を受け止め、
更にネットで絡めとって拘束
最後はアラン!アンタのレールガンだ!
巨大レールガンがあらゆる法則を無視した
幾何学的変形によって超弩級バズーカとなる
トリガーは任せたぜ、リーダー!
「ギャラクシー・レールキャノン!発射ァ!!」
シャルロット・クリスティア
スナーク対スナーク……ってところですか。何が何やらですね。
勝てば官軍とでも思っておきますか……さて。
強化できなかったという事は、対ステルス性能はそれなり止まりの筈です。
火力はあの状態でも十分に脅威ですから、少し意地悪といたしましょう。
適当な残骸や小惑星に爆薬を仕掛け、奴に向かって押し出します。
宇宙空間ですから、一度速度が乗ればそのまま向かってくれますから、近寄る必要はありません。
所詮機械、判断材料と言えば視覚や熱、音響くらい。迂闊に迎撃して爆破でもしてくれれば、十分に搔き回せる。
あとは、注意が逸れたところを遠間から狙撃するだけです。
狙撃手を前に余所見をするとどうなるか、教えてあげましょう。
鏡島・嵐
ッ、本命のお出ましか――!
十分な力を発揮できねえって言っても、強ぇのにはあんまり変わりねえんだよな。そこだけはまだまだ怖ぇとこだ。
……まあ、ここまで来たらあとはやるだけ……踏ん張りどころだ!
まずはユーベルコードで味方全員に強化をかける。勿論アステロイド・チェイサーの面々も強化して、攻撃とサポート両方が十分連携できるように下地を整える。
ビームの威力を上げさせないために〈マヒ攻撃〉を〈スナイパー〉ばりの精度で続けざまに発射して妨害。当たって動きが止まればよし、防御に意識を割いてタメの隙を奪えてもよし。
それでも撃たれたなら〈第六感〉を活かして回避。
あとは味方にも適宜〈援護射撃〉を撒いて支援する。
機械独特の駆動、その振動によって、周囲に散開する瓦礫が震えている。三つ首の機械竜『デストロイ・プライム』は、威嚇にも似たモーター音を響かせていた。
「ッ、本命のお出ましか――!」
スリングショットを手に持って、鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)が身構えた。デストロイ・プライムから感じる殺気は、通常のオブリビオンの比ではない。しかし、今回機械化オブリビオンと融合できなかったが故に、力は抑え込まれている。
「スナーク対スナーク……ってところですか。何が何やらですね」
同様に愛用の銃を構えるのは、シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)だ。虚構のスナークと実在するスナーク。これは言わば、どちらがスナークとして現実に受け入れられるのかを決定づける戦いでもある。
「どこまでも我らの邪魔をする存在。磨り潰し、虚構語りを再開しよう」
三つ首の口腔が開いた。プログラミング言語に似た奇怪な詠唱を始めたデストロイ・プライムに相対し、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)が『電子型解析眼鏡【アルゴスの眼】』によって数多の情報を確認する。
「…あのビーム砲が無いだけでも随分と楽になるね……潰しといて良かった…」
「強化できなかったという事は、対ステルス性能はそれなり止まりの筈です」
「十分な力を発揮できねえって言っても、強ぇのにはあんまり変わりねえんだよな。そこだけはまだまだ怖ぇとこだ」
「ああ、油断するわけにはいかないな!」
ざっ、と進み出たのは空桐・清導(ブレイザイン・f28542)だ。赤き鎧『ブレイザイン』に身を包んで、闘志に燃える瞳を猟書家へ向けた。
刹那、デストロイ・プライムの口腔から瞬いた。悪の概念を含んだ破壊光線は赤黒く瞬き、周囲の残骸を薙ぎ払って猟兵たちを滅ぼそうと襲い来る。
全員がその場から退避するように跳躍した。無重力空間、その動きを制御のため、サリーの『レーザーネット』がメンカルを除いた三人に括り付けられている。まるでブランコのように移動し、残骸の間隙を潜り抜けた。
対してメンカルは『飛行式箒【リントブルム】』に乗ることで、無重力空間を制していた。破壊光線の周囲を回るように回避し、デストロイ・プライムへと接近する。
「とんでもない破壊力だな……!」
「食らったらひとたまりもないわね…」
「問題ない、レーダーで敵情報は常に観測、解析している。眼鏡のお嬢さんにはすでに送信済みだ」
アステロイド・チェイサーの面々が続いて猟兵たちの退避地点へと降り立った。飛来する残骸がレーザーネットによって弾かれ、蒸発する。
「火力はあの状態でも十分に脅威です。気をつけましょう」
「……まあ、ここまで来たらあとはやるだけ……踏ん張りどころだ!」
「俺もちょっと準備させてもらうぜ!足止め頼む!」
「…了解。最初に行かせてもらうよ…」
飛行箒の恐るべき機動力に、デストロイ・プライムはそれを捉えきれない。それは、飛行箒の性能のみではなく、メンカルのユーベルコードに依る。
戦術強化ユーベルコード【戦術構築:巨神狩り(ゴライアス・ハント)】。発動したユーベルコードは、敵が自分より大きければ必ず発動するジャイアント・キリングのユーベルコードである。
「小さき者。正義の気配。我が連撃は否、正義を滅ぼす光である」
「…大きすぎるのも考えもの」
「……む……ッ!」
デストロイ・プライムが気付く。周囲に張り巡らされた細い糸が、こちらの行動を阻害している。箒に乗って周囲を廻っていたメンカルは、ただ回避に集中していたわけではない。
「こんなもの、我が光にて……!」
「…やっぱり。そのタイミングは好機…」
アルゴスの瞳がきらり、と瞬く。『術式装填銃【アヌエヌエ】』から迸った弾丸が、デストロイ・プライムの一つの首へと撃ち放たれる。
熱線の渦中に飛び込んだ銃弾はその口の中に放り込まれ、刹那衝撃波を伴って巨大な爆発が巻き起こる。頭の一つが沈黙し、機械竜が身悶えた。
「ぐ、ぬ……!」
「まずは一つ…後はよろしく」
「了解しました」
短い承諾。メンカルが飛行箒を制御して猟書家から遠ざかる。その遠くから状況を観察していたシャルロットはすでに準備を整えていた。
「これは……」
「大きな獲物と真っ向から戦うほど愚かではありません」
飛んでくる。無数の残骸が。隕石が。デストロイ・プライムへと集中して飛んでくる無数のスペースデブリに、しかし機械竜は嗤う。
「否、実に愚かなり。我が力は無機物との融合。我に強化の機会を与えたに過ぎぬ」
デストロイ・プライムの胴体に触れた無数の残骸が吸収されていく。超兵器を内蔵する残骸を吸収したことにより、機械竜はその体から無数のレーザー砲を突出させる。
「我が力の補填完了。ビーム砲の、チャージ開始。今度こそ終わりだ、猟兵」
その様子に、シャルロットは。
「―――果たしてそうでしょうか」
にこり、と不敵に微笑んでみせた。
「何?―――ッ!?」
爆音。炸裂音。デブリを裂く衝撃波。デストロイ・プライムの胴体から生えたビーム砲から放たれたのは、熱線ではなく、大規模な爆発だった。
「所詮機械、判断材料と言えば視覚や熱、音響くらい。迂闊に迎撃して爆破でもしてくれれば、十分に搔き回せる、と思ったのですが……予想以上の行動でした。まさか、自ら取り込むとは」
ユーベルコード【不確かなる罠地帯(ダウトフル・トラップフィールド)】。敵に気づかれるそれより前、予め罠を仕掛けることで、敵に“未だに罠が存在する可能性”を提示するユーベルコード。機械の頭脳を持つデストロイ・プライムだ、その“可能性”を与えられてしまった以上、“解析しなければいけない”と頭脳が叫ぶ。
「ぐ……!我が、力が……削がれる、だと……!」
「頭の中で危険信号でも響きましたか?ですが……そんな思考などさせません」
シャルロットの狙撃銃が掲げられる。爆散したスペースデブリ。飛来する残骸。その一つにでも触れれば、銃撃は成功しないだろう。
普通ならば。
「狙撃手を前に余所見をするとどうなるか、教えてあげましょう」
発砲。撃鉄、火薬の力によって押し出された弾丸が、スペースデブリを通過する。浮遊する軌道を読み、その隙間を計算し。
シャルロットの一撃は、デストロイ・プライムの首の一つを捉えた。
「我が首が、またしても……ッ!」
「準備完了!さあ、最後だぜ!みんな!」
清導が叫ぶ。自身の体に煌々と瞬くのは想像のエネルギーだ。まるで炎のように揺らめくオーラは、瞬間肥大化し、そこに想像を超えて現実を上書きする。
「相手がデカい機龍だったら、こっちも巨大ロボだ!アラン、ノーマン、サリー!いくぜ!」
「「「了解!」」」
光は実像を結び、清導とアステロイド・チェイサーの4人が飲み込まれていく。
想像は、現実に現れる。
「炎を纏い、勇気は鋼となる!!銀河巨兵!ギャラクシー・スナーク!!」
真紅の輝き。それは清導の鎧に似た、巨大なロボットだった。デストロイ・プライムと対等に渡り合えるような巨躯を翻して、そこに立つ。
ユーベルコード【『光焔勇機』見参(ブレイザイン・ギガース)】。ブレイザイン・ギガースと呼ばれる、清導の相棒機。だが、その力はアステロイド・チェイサーの力で増幅され、銀河に立つ巨兵『ギャラクシー・スナーク』となってここに顕現した。
「ヒーローだったら分かるはずだぜ。今、何をすべきなのか!」
応、と三人が応える。肥大化した正義の気配に、デストロイ・プライムの最後の首が唸り声を上げた。
「……正義。正義、正義、正義。正義の気配。正義の波動。滅ぼさねばならぬ。我が悪を以て。この悪を以て!!」
文字通りのスナークvsスナーク。正義たるスナークと、悪たるスナークの最終決戦だ。
「こりゃあまたすげぇ光景だな……!こっちも支援させてもらう!」
嵐がその場に膝をついて座り込んだ。地面に手を当てて、詠唱を開始する。
「魔笛の導き、鼠の行軍、それは常闇への巡礼なり。耳は……塞ごうと思っても塞げねぇよな?」
にっ、と笑って。地面に刻まれた光の幾何学模様から現れたのは、奇抜な服装に身を包んだ道化師だった。ぺこり、と胸に手を当ててお辞儀すると、手に持った無数の魔笛を吹かした。
それはまるで、勇者に与えられる祝福の笛。オーケストラに似た、戦いを告げるようなアップテンポの曲が戦場に響き渡る。
悪を討滅する者への応援歌にして、勇者の凱旋を告げる祝福の歌だ。
ギャラクシー・スナークに金色の輝きが纏わり付く。デストロイ・プライムと銀河巨兵が激突、機械と機械がぶつかり合い、ひしゃげるような激しい音が戦場に轟いた。
「我が一撃を退ける。悪は不滅!悪は無敵!」
「俺たちは絶対に勝つ!お前の思い通りにはさせない!」
猟書家の足が、尻尾が振るわれる。しかし、強化された巨兵にその攻撃は通じない。デストロイ・プライムの首を掴むと、その巨腕で放り投げた。
スペースデブリの一つに激突した機械竜が咆えた。口腔から溢れ出るエネルギー。奇っ怪な詠唱を開始した猟書家に、清導がアランへ告げる。
「アラン!アンタのレールガンだ!」
む、と通信で聞こえた声に反応して、アランが巨兵の腕を操作した。一度分解した片腕はすぐさま再生し―――。
「これは……!」
「巨大レールガンがあらゆる法則を無視した、幾何学的変形によって超弩級バズーカになる。トリガーは任せたぜ、リーダー!」
「全く、最後の最後で人使いが荒いな……!いいや、ブレイザイン、一緒にいくぞ!君の力だ!共に……あの悪を討滅する!」
覚悟を秘めた言葉だった。それを聞いた清導が、にっ、と得意気に微笑んだ。バズーカの先に収束するエネルギーが束となる。螺旋状に渦巻くエネルギーが、スペースデブリを切り裂くような光を湛えて収束していく。
「正義は滅ぼす。正義を殺せ。正義を撲滅せよ。我が悪にて全てを融かす。消えろ、消え失せろ、正義の気配よ―――ぬ……ッ!!!」
詠唱を続いていたデストロイ・プライムの行動が阻害された。嵐のスリングショットの一撃が、機械竜の行動を阻害したのだ。
「つべこべうるせぇよ。黙って正義の味ってやつを知るんだな、デストロイ・プライム」
「き、さま!!」
ギャラクシー・スナークのバズーカから光が迸った。それに対するように、デストロイ・プライムの口腔から悪属性の熱線が放たれる。
「ギャラクシー・レールキャノン!発射ァ!!」
「我が悪の奔流、食らうがいい!!」
白と黒が激突する。空間を塗りつぶすような極光が満ち、圧倒的なエネルギーが空間を埋め尽くす。
嵐の妨害によって、デストロイ・プライムの破壊光線にその輝きを押し返す力は存在しない。眼前を覆う白亜の如き奔流に、機械竜の装甲が溶けていく。
「我が、悪が、消える。我が、存在は―――」
不滅なり、と。宇宙空間へと飛び去った光の後、獣の顎によって食われたかようにスペースデブリに孔が空いていた。
猟書家『デストロイ・プライム』は、骸の海へと還っていったのだった。
オブリビオンの気配が消え去り、宇宙空間に静寂が訪れる。アステロイド・チェイサーたちが協力してくれた猟兵たちに握手すると、にこやかに笑った。
また何かあったらよろしく頼む、と。
大成功
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