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シュガーパフュームとシュールストレミング

#アルダワ魔法学園 #猟書家の侵攻 #猟書家 #マロリー・ドラッケン #ケットシー #災魔の卵 #トンチキシナリオ

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●魔女は物語を求め欲する
「わあ……この物語、とても面白い!」

 アルダワ世界、猫の国。
 目の前に立つ石碑を眺め、眼鏡をかけた少女――猟書家『マロリー・ドラッケン』は目を輝かせた。

「ゲッシシ!どうだマロちゃん中々良い『恩人記念碑』だろー?」
「こんな形の物語もあるなんて新鮮です!ああ……わたし、これとっても欲しいです!!」
「ケヒヒっ、すっかり気に入ったようだねえマロちゃん」

 喋る杖と喋る本に暖かく(?)見守られながら、マロリーはケットシーたちが記した『恩人記念碑』へと手を伸ばす。
 伸ばした手には災魔の卵。まるで最初から液体だったかのように、それは石碑へと吸い込まれていく。
 まるで卵が孵るまでの間の巣を見つけたかのように。

「……にゃにゃっ!?お嬢さん何をしてるにゃっ!?その記念碑は――」

 一人のケットシーが慌てて駆けつけた頃には時既に遅く、濃く甘い香りが記念碑から立ち上る。
 それは"かつてあの時"と同じように、猫の国中を包み込んだ。
 永遠と言わずとも永く、深い眠りへと誘う為に。

●1日中寝ていたいと思うことはあってもそれ以上は流石にヤバい
「にゃーん!ケットシーさんたちがたいへんなんだよ!」

 慌てるように耳としっぽをぱたぱたと振るエインセル・ティアシュピス(生命育む白羽の猫・f29333)。何故か今日は子猫の姿をしている。

「アルダワのケットシーさんたちがすむ『ねこのくに』にりょーしょかさんがやってきて、だいじな"きねんひ"をさいまにしちゃったの!」

 エインセルのおこさまことばをわかりやすく噛み砕いて説明するとこうである。
 かつて猫の国は『眠りネズミ』という鼠の持っている"夜糖蜜"に似た甘い香りの催眠ガスが突如各地から発生し、国民全てが昏睡状態になるという事態が発生したことがあるという。
 当時たまたま里帰りに帰ってきたケットシーと共に訪れた一人の人間がその事態に立ち向かい、彼の尽力によってガスを根絶することに成功。
 その恩を忘れぬよう"恩人記念碑"として残したものを猟書家『マロリー・ドラッケン』が欲したことにより災魔の卵が植え付けられ、災魔となって再び猫の国を眠りに陥れようとしているらしい。

「さいまはおんじんさんがたすけてくれたこととぎゃくのことをするんだって。
 だから、いまケットシーさんたちがつぎつぎねんねしちゃってるの。このままじゃねこのくにのひとたちみーんなねんねしちゃってたいへんなことになっちゃうにゃーん……でもね、なんとかできるほーほーがあるんだって!」

 曰く、記念碑から生まれた災魔は記念碑に記された恩人と同じものを好むらしい。
 それを利用すれば有利に動くことは可能だろう。記念碑を建てたケットシーは幸いまだ眠りに陥っていない為、今なら話を聞くことができるハズだと。

「さいまをたおしても、りょーしょかさんをたおさないときねんひはもとにもどらないの。だから、ケットシーさんたちをたすけたらりょーしょかさんをたおして、きねんひをもとにもどしてほしいんだ!
 ぼくおうえんしかできないけど、せーいっぱいおうえんするからがんばってにゃーん!」

 ぱたぱたとエインセルが飛んで円を描いて、転移陣を形成する。
 子猫の応援を受けながら猟兵たちはアルダワ・猫の国へと向かう――!


御巫咲絢
 Q.このシナリオはトンチキですか?
 A.人の受け止め方によります。MS的にはトンチキと全うなお話の中間ぐらいです。
 こんにちはこんばんはあるいはおはようございます、初めましての方は初めまして新米MSの御巫咲絢です。
 当シナリオをご閲覧頂きありがとうございます!御巫のシナリオが初めての方はお手数ですがMSページの内容をご一読の上で以下の概要をご覧くださいませ。

 猟書家シナリオ二本目はアルダワでお送りします。
 猫の国がいばら姫の如く眠りに陥ろうとしているのを助けてあげてください。
 睡眠は大事だけど寝すぎもよくないんですよ(※そういう問題ではない)!

●シナリオについて
 このシナリオは『幹部シナリオ』です。
 2章で完結し、『骸の月』の侵略速度に影響を及ぼす特殊なシナリオとなります。
 このシナリオにはプレイングボーナスが存在し、それを満たすプレイングがあればボーナスを得られます。

 プレイングボーナス:記念碑を立てたケットシーの話す「恩人の思い出話」を、攻略に役立てる。

●プレイング受付について
 時間を開けて11/20(金)8:31より受付開始いたします。開始日以前にきたプレイングは全てご返却させて頂きますのであしからずご了承ください。
 お気持ちが変わらなければ受付開始日以降にご再送をお願い致します。
 断章で恩人の思い出話について言及予定ですので、プレイングの参考にどうぞ。
 今回は割とのんびりまったり進行の予定です。

 それでは、皆様の素敵なプレイングをお待ち致しております!
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第1章 集団戦 『眠りネズミ』

POW   :    おやすみなさい、よいゆめを
全身を【ねむねむふわふわおやすみモード】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    みんないっしょに、ねむりましょ
【ふわふわのしっぽ】から【ふんわりとつつみこむもふもふのいちげき】を放ち、【今すぐこの場で眠りたい気持ち】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    きらきらひかる、こうもりさん
対象のユーベルコードに対し【吐息からキラキラ光る小さなコウモリたち】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●果たしてどっちが地獄なのか
 猫の国に降り立った猟兵たちを出迎えたのは、甘い甘い砂糖のような香りだった。
 その香りを嗅ぐだけで瞼が重く思考がぼんやりとし始める……
 あ、これ眠い。ヤバいな――猟兵たちが各々そう思いながら辺りを見回すと、でかけている途中や店番をしていたケットシーたちがすやすや気持ちよさそうに眠っている姿。
 そして他には夜の星空のような蜜をいっぱいに溜めたポットの上でうとうととしながら『眠りネズミ』たちが徘徊しているのも見受けられた。
 恐らく記念碑の災魔の卵で孵ってしまったのが彼らなのだろう……とはいえこの香り、本当に眠い。瞼を開けるのもしんどくなってきた、何とかしなければ――

「にゃにゃーっ!!」

 ケットシーの声が聞こえたかと思ったら猟兵たちの鼻をめちゃくちゃ臭い何かが刺激してきた。
 待って、待って待って待ってちょっと待って臭い臭い臭い鼻曲がる!!!と悲鳴を上げたものもいたかもしれない。
 とにかく目が覚めたので鼻をつまんで匂いの元凶が何かと見てみれば……

「今この状態でマスクもせずにやってくるなんて危ないにゃ!!」

 ――くさやを持ったガスマスクをつけたケットシーがそこにいた。
 猟兵たちは嫌な予感を察知せずにはいられなかった。
 甘い香りとガスマスク。それはまだいい。
 でもくさやってどういうことだよ!!!?
 とりあえず事情を聞く為、そのケットシーの家にお邪魔することになったのだがこれまたくっっっっっっっっっっさい。玄関にくさやが置いてあるってどういうことだよ。

「にゃにゃ!?猟兵の皆さんだったにゃか。助けられてよかったにゃー。
 確かに記念碑を建てたのは僕だにゃあ……え、彼の好きなもの?今そこにあるにゃ」

 くさやを指差すケットシー。
 嘘やろ、と声を上げた猟兵もいるかもしれないし、いないかもしれない。

「彼はニオイがそれはもうキョ――――――――レツなものが大好きだったんだにゃ……くさや、ドリアン、ピータンなどなど……

 その中でも一番好きだったのがシュールストレミングだったんにゃ」

 シュールストレミングとは塩に漬けたニシンの缶詰である。
 UDCアースだとスウェーデンで主に生産・消費されているもので「世界で一番臭い食べ物」と称される程強烈な臭いを発する食べ物だ。
 何でも腐敗は防げても発酵を防ぐことができなかった結果生まれたらしいですね。
 味自体はおいしいらしいので好む者がいるのもわかるが、何故よりにもよってシュールストレミングなんだ。

「おかげで彼はその、シュールストレミングの臭いがよく染み付いてて……そのおかげかあの事件が起きた時も全然眠くならなかったから、マスクもなしにガスの発生源に向かって埋め立てなり蒸気変換用のパイプを繋ぐなりとかしてくれてにゃあ……
 彼がいなかったら猫の国の人はみんな死ぬまで眠り続けてたんにゃ。だから命の恩人のことを忘れないように記念碑にしたんにゃけど……」

 それを、喋る杖と本を持った女の子が災魔にしてしまったという話らしい。
 間違いなくその女の子は猟書家『マロリー・ドラッケン』だろう。

「多分猟兵さんたちならあの女の子も何とかできると思うにゃ。僕は国の人たちの目を覚ます為にくさやを必死こいて焼くので精一杯にゃ……お願いします、この国を救ってくださいにゃ!」

 救うつもりできたのは間違いないが、恩人と同じものを好む災魔という存在をコレほど疎ましく思ったことはない猟兵たちだった。
 何故なら好きなもので釣るなら否が応でもその非常に臭いのキツいものを使わざるを得ないのだから――!!
 なぁんでそんなものが好きな人だったのかなあ―――――!!!!……と、叫びたくなった猟兵もきっといたかもしれない。
黒木・摩那
なぁんでそんなものが好きな人だったのかなあ―――――!!!!

宇宙服を着ます。これで呼吸を確保。
臭い系はダメです。死ぬ。

だいたい料理というのは五感で楽しむものなんです。
舌で味わい、目や耳で楽しみ、手で食材の質感に触れる。
そして、鼻で臭いを感じる……はずなのに、この世界はもうダメです。
腐臭に呑まれているなんて!

こんな世界にしてしまった、マロリーと眷属達には絶対に代償を払わせます。

魔法剣『緋月絢爛』で戦います。
【なぎ払い】して、ネズミを1か所に集めつつ、
密になったところでUC【風舞雷花】で一網打尽にします。



●鼻をつまめば食べれるとかいうけどそういうんじゃないんだよな
「なぁんでそんなものが好きな人だったのかなあ―――――!!!!」

 前言撤回、叫んだ猟兵いました。
 黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)はまるで何かに強いられているんだと言わんばかりに叫んだ。

「臭い系は!ダメです!!死ぬ!!!」

 どこからともなく宇宙服を取り出し早速着用。これで服に臭いが染み付くのは無事回避できそうだ。
 ここにくるまでに若干染み付きかけただろうがきっと帰って洗濯したらセーフですセーフ。
 くさやは世界で5番目に臭いから世界で一番臭いシュールストレミングよりはとれやすいハズである(?)
 今回の記念碑に記された恩人とは絶対に分かり合えないと摩那は確信した、確信しないワケがなかった。

「だいたい……料理というのは五感で楽しむものなんです」

 そう、料理は五感全てで楽しむものである。
 味覚を以てじっくりと味わい、視覚ではおいしそうな見た目を、聴覚では噛んだ時に響く心地よい音をそれぞれ楽しみ、触覚で食材の質感に触れ、堪能。
 そして嗅覚でその芳醇な香りを感じる――それが料理というもの。

 ……の、ハズなのに。

「この世界はもうダメです。腐臭に呑まれているなんて……ッッ!!」

 一応言っておくとこの猫の国だけだし全部終わったらくさやは猫の国の人々みんなでおいしく頂いて数日ぐらいしたら元に戻ると思われる。
 が、現在の摩那からしてみれば世界の終わりも同然級の絶望的光景が繰り広げられているので仕方ないね。
 全てはマロリー・ドラッケン――物語を求めた猟書家のせいだと摩那は怒りを顕わにする。

「こんな世界にしてしまった代償は絶対に払わせます……!!!」

 怒りのままに愛用の魔法剣『緋月絢爛』を構え、あちこちで眠そうにうとうとしながらぷかぷか浮かんでいる眠りネズミに勢いよく切り込み一薙ぎ。

「ちゅっ!?」

 流石の眠りネズミもいきなり斬りつけられたら目が覚めるので慌てて摩那から逃げていく――が、それも全て作戦の内。
 人間も動物もパニック状態になると自分がどちらの方向へ向かっているかわからない特性を持つものだ。
 不意打ちを仕掛け慌てて逃げ出すのを薙ぎ払いで上手いこと誘導し、一箇所に集めて一網打尽にしてやろうという魂胆なワケである。
 世界を腐臭に呑み込んだ罪はそれ程重いのだ。
 むしろシュールストレミングとかを好んで食べてて臭いが染み付いてても気にならないってその恩人嗅覚不全になってないか??と思うぐらいにはヤバいんですよこの状態!

「ちゅー!?」
「ちゅちゅー!?」

 そうして誘導していれば眠りネズミと眠りネズミでごっつんこしているのが目に入る。
 あっち行ってちゅーちゅーこっち行ってちゅーちゅー。
 可愛らしいしそのもふもふな体毛はアルダワでは睡眠グッズの材料として非常に良い値で売れる良質な素材だ。
 しかしシュールストレミングの臭いを好む眠りネズミの体毛で作りたいか?と言われると……まあNOですよね。

「励起!昇圧、帯電確認、敵味方識別良し!!散開ッ!!」
「ちゅ―――――――――――――――っ!?!?」

 密状態のみっつみつになった眠りネズミたちへ迷うことなく飛んでいく、『緋月絢爛』が姿を変えた【風舞雷花(フルール・デ・フルール)】の七色電圧花弁。
 そのふかふかな毛も一瞬にしてまっ黒焦げ、夜蜜糖の入ったポットも砕けて中の蜜は完全に蒸発する程の圧倒的電圧で徹底的にオーバーキルする摩那。
 それはまさしく、諺ではなく文字通りの「臭いものに蓋をせん」ばかりの勢いでありました。
 眠りに誘う甘い香りは確かにその分弱まった――のだが、ところでこの場合討伐した直後って場所によっちゃくさやの臭いで溢れてませんか?大丈夫か???

成功 🔵​🔵​🔴​

ルルチェリア・グレイブキーパー
ギャー!滅茶苦茶臭いのよー!
せっかく依頼のついでにケットシーさんがいっぱいの猫の国を楽しもうと思ったのに!
全然それどころじゃないのよー!
これも全部猟書家が悪いのよー!

ケットシーさんにくさやとガスマスクを借りて眠りネズミを誘き寄せるわ
戦い易い所、広場みたいな場所が良いわね
ガスマスクを付けて七輪の上でくさやをどんどん焼くわ
うちわでくさやを扇いで香りもとい臭いを漂わせるのよ
おいでおいで~♪ 美味しいくさやなのよ~♪

眠りネズミがくさやに釣られて食べ出したら
UC【お子様幽霊たちは成長期】で子供の幽霊たちを巨大化させて
押し潰しちゃうのよ!やってやりなさい!
だけど私を巻き込むんじゃないわよ!



●成長期だし遊び盛りなんですよ。
「ギャー!!?めちゃくちゃ臭いのよー!?」

 ルルチェリア・グレイブキーパー(墓守のルル・f09202)は悲鳴を上げていた。ある意味少女にあるまじき悲鳴である。
 女の子が断末魔のごとき悲鳴を上げる程に現在くさやの臭いが充満しているのである――そうしないと眠っちゃうので仕方ないとは言うんですけども。
 おかげで彼女がこっそり練っていた依頼のついでにケットシーいっぱい猫の国を思う存分楽しんで満喫しようという計画が水の泡寸前の状態となっていた。

「(全然それどころじゃないのよー!!)」

 自分の鼻ですら曲がりそうなのにケットシーの皆さんは大丈夫なのだろうかと心配すると同時に、こんな状況にしてくれた猟書家に対する憎悪がふつふつと湧き上がってくる。

 「これも全部猟書家が悪いのよ!!絶対に許さないわ……!!」

 ケットシーいっぱいもふもふ猫の国を脅かす邪悪は全て廃するべしと決意を固めたルルチェリア。
 早く終わらせて事態を解決し、無事猫の国を堪能する為に彼女は早速行動に出る――え、くさやの臭いでしばらくは無理なんじゃないかって?そらそこはアルダワの蒸気機関が何かしてくれるんじゃないかな。
 まずは自分たちを助けてくれたケットシーに交渉である。

「ケットシーさん、くさやとガスマスクを借りてもいいかしら?」
「もちろんにゃ、臭いはアレだけどおいしいからにゃ、これが終わったら食べてもいいにゃよ」
「ぜ、是非検討させてもらうのよ……」

 確かにくさやはおいしいんだけどおびき寄せる為に使うつもりで借りたのを食べる気になれるかと言われると微妙なラインである。
 しっかりとガスマスクを装着したルルチェリアはくさやを持って近くの広場へ。
 それなりの大きさの噴水があるぐらいには広さを保っており、中々良い場所である。もし火事が起こっても噴水の水をばしゃっとすれば一発だし――っと書くと何をする気だと思われそうだが大したことではない。
 ルルチェリアは広場にどんっとあるものを用意した。それは何か?そう、七輪である。
 そしてさっと火をつけ、金網を十分に熱したその上にくさやを2,3枚置いて焼き始めた。
 魚が焼ける良い音が辺りに響く……想像しただけで飯テロも容易な香ばしい音が……うちわでぱたぱたと仰げばくさやの香り、もとい臭いは街中へ流れていく。
 この眠りネズミたちは恩人記念碑に描かれた人物たちの影響によりくさやが大好物となっている……つまり、それを焼いている臭いがしたら?

「ちゅ?(特別意訳:あっこれは)」
「ちゅちゅー!(特別意訳:誰かくさや焼いてるー!食べたーい!)」

 動物は食事ができなくなった時が死を意味するとは誰の言葉だったか。溢れる食欲を抑えきれぬ眠りネズミたちが次々と眠気が覚めたかのようにぞろぞろとやってくる。

「おいでおいで~♪おいしいくさやなのよ~♪」
「ちゅー♪」

 作戦が成功し、しっぽを振ってこちらにやってくる眠りネズミたちにルルチェリアも思わずにっこり。
 食べてもいーい?と言うように見てくるので焼き上がったものを次々と差し出していけば眠りネズミの群れは喜んでがっついていく。
 正直言うとこの光景地味に可愛らしい。状況が状況でなければ眺めるのも吝かではないと思う人もいるぐらいにかわいいのだが、それはそれでこれはこれである。
 無我夢中になってくさやを貪るように食べているこの瞬間がチャンスなのだ!

「よし、今よ!やってやりなさい!だけど私を巻き込むんじゃないわよ!!」

 ルルチェリアはユーベルコード【お子様幽霊たちは成長期(ゴーストキッズジャイアンツ)】を発動。
 死霊術師として連れ添っている可愛らしい子供の幽霊たちがまるで膨らむ風船の如くその体を巨大化させ、くさやを頬張る眠りネズミたちを次々と押し潰す――!

「ちゅーっ!?」

 子供の幽霊たちはのっそりのそのそと滑り込むように眠りネズミの群れに雪崩れ込み、群れは各々悲鳴を上げてぽん!と音を立てて消えていく。
 くさやの臭いが充満して最早区別が点かないが、眠りネズミが減る度に確かに睡眠へ誘う甘い香りはネズミたちが減れば減る程収まりを見せつつあった。
 ……だから逆に余計にくさやの臭い充満してませんかって?仕方ないね、甘い香りが充満するとみんな寝てしまうので背に腹は変えられません。

「よしよし、よくやったわ!……ん?」

 しっかり働いてくれた幽霊たちを労うルルチェリアであったが、「あーそーぼー♪」と言わんばかりにのしかかってきたのであった……敵への攻撃には巻き込まなかったのは確かなんだけどね?

「ギャー?!だから私を押し潰すんじゃないわよ――っっ!!!」

 今仕事中だからね、遊ぶなら後にしましょうねゴーストキッズ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

家綿・衣更着
アドリブ連携歓迎

恩返しには狸妖怪として共感を覚えるっす

さあ、シュールストレミングを頑丈な器に…!
待って、待って待って待ってちょっと待って臭い臭い臭い鼻曲がる!!!
おいら狸妖怪だから臭いに敏感なんすよ!

この怒り敵にぶつけるっす!
【罠使い】と【地形の利用】で、敵を好物の臭いで広域攻撃しても被害が出ない場所に集め、【化術】と【演技】で眠りネズミに変化しまぎれる。
一網打尽にできる位置に移動して変化を解き、「空亡・蒼」の力を借りた『妖力放出・空亡の波動』で一気に倒すっす!
倒し損ねがいたら手裏剣【投擲】とストール【だまし討ち】で退治っす!

食べ物は…無駄にしないっ…!(利用した食材は事後ちゃんと食べました)



●食物を粗末にすることなかれ
 猫は恩を忘れないが、狸も同じく恩は忘れない妖怪だ。
 狸もその昔、貧しい炭売の夫婦の家で悪戯をしたおかげで怒った旦那のし掛けた罠に引っかかってしまったが、優しい奥さんが逃してくれた恩を返す為に糸を紡いで持ってきたという。
 そしてその糸を街で売ったら飛ぶように売れ、夫婦はその後豊かに暮らしたそうだ。

「受けた恩を記念碑に記すのは素晴らしい文化っすね……恩返しには狸妖怪としておいらも共感を覚えるっす。だからこそ何とかしなきゃいけないっすよね!」

 家綿・衣更着(綿狸忍者・f28451)もケットシーの恩人記念碑という文化にはたいへん感銘を受けていた。
 故に、その記念碑から災魔を生み出し混乱に陥れた猟書家を放っておくことはできぬとシュールストレミングの缶を手に持つ。
 恩人の影響を受けたならば、くさや以上にシュールストレミングが好きに違いないのだ。これで釣ることができれば一網打尽も夢ではない。
 いざ片手に缶切りを持って頑丈な器に移そうと、聞いた知識を元に缶を斜めに傾けて中の空気を一箇所に集めてから切込みを入れたのだが――

「待っ……待って待って待って待ってちょっと待って臭い臭い臭い臭い臭い鼻っ鼻がッ鼻が曲がるッッッ!!!!!!」

 ぷしゅーと上がるガスとつけ汁。
 思わず缶を地面に落として慌てて鼻をつまんで距離を置く衣更着、そのおかげで汁が服に飛び散るのを回避できたことは暁光だろう。
 狸妖怪故の臭いへの敏感さが見事なまでに仇となってしまった瞬間であった。
 因みに冷蔵庫でしっかりと冷やした上で屋外で開けるか、バケツいっぱいに水を入れ水中で開封するとガスとその内容物の拡散が防がれ臭いが染み付いたりすることはないらしいのでこれから食べようという方は参考にどうぞ。
 しかし臭い、とにかく臭い。世界一臭い食べ物という称号は伊達ではないと改めて思い知らされた衣更着、その心中はこんなモノを開けさせられたという怒りがふつふつと湧き上がっていた。

「……この怒り、敵にぶつけるっす!!」

 衣更着は鼻をつまんだ上で、再びシュールストレミングの缶を乱暴に手に取った。


「ちゅ~……」

 こちらはとある路地でうとうととしている眠りネズミ。
 時々好物のくさやの臭いがするなあ、と幸せな気分で夜糖蜜のポットの上で夢見心地の模様。
 そんな眠りネズミの鼻が、ある臭いを捉えた。

「ちゅっ!(特別意訳:このにおいは!)」

 むわあんと漂う世界一の臭さに眠りネズミの目が覚め、しっぽを振って臭いのする方向へと走り出す。
 てててて、と走るその後ろに他にも同じ臭いに釣られた眠りネズミがてててて、と走ってついていく……事態が事態でなければさぞ可愛らしく周りを和ませたことだろうになあ。

「(よしよし、ちゃんと釣られてるっすね)」

 実はそんな群れの中にしれっと衣更着は紛れ込んでいた。
 狸妖怪にしてどろんバケラーお得意の化術で眠りネズミに化け、密かに群れに紛れ込み彼らを誘導していたのである。
 その為に、予め何とか頑丈な器に移し終えたシュールストレミングを街外れの開けた場所に、臭いだけが流れ込むように街から見て風上になる方向に設置。
 街が風下の位置にあるなら必然的に風にあおられれば臭いが流れ込んでくるという手はずである。
 地形を利用した上臭いで広域攻撃することもない完璧な戦術だ。
 そんなこととはつゆ知らず、好物の臭いに誘われた眠りネズミたちはまんまとシュールストレミングの座する町外れへとやってきた。

「ちゅちゅっ!ちゅ――――!(特別意訳:あった!いただきま――――す!!)」
「(よし、今だ!)」

 好物の姿を確認するな否や、早速食らいつこうと器めがけてネズミの波が押し寄せるそのタイミングで衣更着は自らの变化を解除!

「ちゅっ!?」

 群れの中からいきなり狸が出てくるというハプニング。
 当然眠りネズミはびっくりしてしっぽを伸ばし、慌てて逃げようとするもパニック状態のあまり方向性がわからず大半が逆に衣更着に集まってくる始末である。
 まさに好機と彼は試作魔剣『空亡・蒼』を抜き、その手にしっかりと握りしめた。

「魔剣の力を借りて――妖力全力放出!っす!!」

 ユーベルコード【妖力放出・空亡の波動(トキヲキリサクハドウ)】が炸裂し、眠りネズミの群れをあっという間にぽひゅん!と消し飛ばした。
 とはいえパニック状態の動物がどこへ行くかなど想定はそうできるものではなく撃ち漏らしはどうしても出てくるものだ。
 それらに対し、衣更着は手裏剣を投げつけたり、ストールを槍化させて死角から狙ったりで確実に仕留めていく。
 仕留めきる頃にはその付近で甘い香りはすっかり薄れ、シュールストレミングの臭いがより濃く充満し始めていた。流石に鼻が曲がるので鼻をつまむ衣更着だが、ごくりと唾を飲み込んでシュールストレミングに近づいていく。

「……食べ物は……無駄にしない……ッ!!」

 そう、こんだけ臭くても食べ物は食べ物。捨てるなんてもったいないし無駄にしてはいけない。
 今回使ったシュールストレミングは責任を以て彼の手で無事食されたのであった。
 余談ですが、本場での主な食べ方は薄焼きパンの上にマッシュポテトと一緒に乗せた後好みで薬味やソースをかけるそうですよ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

乱獅子・梓
【不死蝶】
その人間、国を救ったから恩人扱いだけど
平常時なら臭いだけで不審者扱いでは??俺は訝しんだ
クソッ、マロリーもとんでもない石碑に
目をつけやがって…!!(ガスマスク装着

まずはUCで氷属性のドラゴンを召喚
ケットシーから一枚拝借したくさやを
ドラゴンの一体に咥えさせ…
すこぶる嫌な顔をされたが、俺の命令は絶対だ!
そして眠りネズミたちにくさやを見せつけるように
上空を飛び回り、おもむろに投げ捨てる!
眠りネズミたちは喜んでくさやに群がるだろう
…うん、なんか嫌な光景だなコレ

さぁ、くさやに気を取られている隙に攻撃だ!
ドラゴンたちの氷のブレス攻撃を浴びせる
何で氷かというと臭いの被害が一番抑えられそうだからだ


灰神楽・綾
【不死蝶】
いやー臭いものでも
納豆とかニンニクなら好きなんだけどねぇ
よりにもよって刺激臭のオンパレードかぁ
あれかな?長い間、旅をして僻地を回っているうちに
普通の食べ物では満足出来ない身体になっちゃったとか?
あははと適当な推測をしつつガスマスク装着

彼(?)の尊い犠牲は無駄にはしないよ…
くさや運び係にされているドラゴンに
心の中で敬礼しつつなるべく距離をとって見守る

よーし、それじゃあさっさとケリをつけようか
UC発動し、氷属性のナイフを生成
遠距離から次々とナイフを放ち仕留めていく
分かるよ、うっかり燃やすともっと臭いが
酷いことになりそうだもんね
最後にはくさやもしっかり凍りづけにして封印しておこう



●世の中何が救いの鍵になるかわかったもんではない
「……その人間、国を救ったから恩人扱いだけど平常時なら臭いだけで不審者扱いでは??」

 乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は訝しんだ。

「せやにゃ」

 おっとケットシーさん否定しなかったどころか大きく頷いて肯定した!
 まあ否定できるものではありませんよねむしろ不審者扱いされてないのがすごくない?という話になってくる。

「クソッ!マロリーもとんでもない石碑に目をつけやがって……!!」
「いやー、臭いものでも納豆とかニンニクなら好きなんだけどねえ……よりにもよって刺激臭のオンパレードかあ」

 臭いの被害を抑える為梓がしっかりとマスクを着用する横で、同じくガスマスクを着用しながら灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は苦笑する。

「あれかな?長い間旅をして、僻地を回っているうちに普通の食べ物では満足できない身体になっちゃったとか?」
「ところがどっこい元からにゃ」
「あ、そうなんだ。そっかあ……」

 本当にただの変人だったらしい。事実とは小説よりも奇なりとはよく言ったものである。
 蒸気機関の技師としては非常に優秀だったらしいが、そんな緊急事態でなければ近づかないぐらいのレアな技師なのだろう。実力的にも人格的にも。

「とりあえず、このくさや一枚拝借するぜ」
「どうぞどうぞにゃ。猟兵さんに活用してもらえればきっとくさやも幸せというものにゃ」

 せやろか。
 とにかくくさやを一枚拝借した梓と綾はもう既に案を講じていたようで早速行動に移る。

「"集え、そして思うが侭に舞え"!」

 まず、梓がユーベルコード【竜飛鳳舞(レイジングドラゴニアン)】で氷属性のドラゴンを一匹召喚する。
 ドラゴンは梓に従順な姿勢を見せていたが、彼がくさやを見せた瞬間ぷいっと顔を背けた。
 それはもう、臭いに対してめちゃくちゃ嫌そうな顔で……

「(まあそうだよねえ)」

 綾はなるべくそっと距離を取りながらドラゴンの心中に共感していた。
 そら誰だってくさやなんて抱えて飛びたくありませんよ、人間だろうが動物だろうがドラゴンだろうがそれは同じです。

「俺 の 命 令 は 絶 対 だ 。」

 ドラゴンに無慈悲にもくさやを咥えさせる梓、泣く泣く咥えるドラゴン。
 可哀想なのは確かだし梓だって心が痛い、だがやるしかないのである。
 綾はくさや運び係にされたドラゴンに心の中で敬礼した――距離は取ったが――。
 そして梓の命令を受けたドラゴンは空高く舞い上がる。
 ばっさばっさとその大きな翼をはためかせて、口にくさやを咥えて空をびゅんびゅん飛び回る。

「ちゅっ?」

 眠りネズミはそれを寝ぼけ眼で見ていた。
 何故なら好物の香りがドラゴンが飛ぶ度に漂ってくるのである。

「ちゅ~……」

 くさやたべたいなあ、と言っているのだろうか。ドラゴンが飛ぶ方向へと眠りネズミはてちてち歩いていく。
 それに続くかのように一匹、また一匹と眠りネズミが姿を現した。
 さながらハーメルンの笛吹のように、くさやを咥えたドラゴンは眠りネズミをおびき寄せていく。恐らく、というか間違いなくドラゴンには大変不名誉であろうが……
 そしてドラゴンはある程度きたところでくさやをぽと、と地面に落とした。

「ちゅっ!」

 眠りネズミたちはやった、と言わんばかりに次々とくさやに群がり、ドラゴンは実に気持ちよさそうに羽根を伸ばして飛んでいく。相当臭いが嫌だったようだ。

「……うん、なんか嫌な光景だなコレ!」
「可愛くないワケじゃあないんだけどねえ」

 その光景を待ち伏せながら見ていた梓と綾は何とも言えぬ気持ちであった。
 群がっている先がくさやでなければまだ大分微笑ましい光景だったろう。
 そう、くさやでなければ――果物とかだったら単純に可愛らしく思えたものを!

「とにかく、くさやに気を取られているうちに攻撃だ!」
「そうだね、さっさとケリをつけようか」

 梓は再び【竜飛鳳舞(レイジングドラゴニアン)】を発動しドラゴンを大量召喚、そして綾は【マスカレード・ブレード】で氷属性のナイフを生成する。
 二人揃って以心伝心したかのように氷属性を選択し、ブレスと投擲でそれぞれ眠りネズミの駆逐を開始する――が、別に氷属性である必要性があるかと言われたらこの場に置いては否だ。

「氷って……臭いの被害が一番抑えられそうだよな」
「わかるよ、うっかり燃やすともっと臭いが酷いことになりそうだもんね」

 結局臭いことに変わりないのなら可能な限り被害を抑える方法を取った方が猟兵たちも安全である。
 そう、いくら猟兵と言えど臭いものは臭いとはっきり言うし臭いものが苦手な者はたくさんいるしそれは最早防衛本能が機能するものは機能するワケで。
 ダメな人は倒れたり吐いたりするぐらいの臭いを好む方がレアなんですよ!報告書ご覧になった皆さんは勘違いしちゃダメですからね!!
 そんな間にもドラゴンの吐息と氷のナイフは眠りネズミの群れをあっという間に蹂躙し、ぽぽんぽんぽんと消えていき。
 残るはドラゴンがさっきまで咥えていたくさやのみである。

「……」

 梓と綾は顔を見合わせた後、ドラゴンにもう一度吐息を吹きかけさせくさやを封印した。

「よし。これで悪は去った」
「悪どころか救世主なんだけどね、このくさや」

 だが、臭いがキツい故にまるで強力すぎるが故に眠らせるしかなかった古の神器の如く封印されるのは仕方ない。
 あとくっさいのは人によって悪なので梓の言い分も何も間違っていないのでしたとさ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

瑞羽・湊
くさやか……確かににおいは強烈ではある。
だが、その分美味さは歴史が保証している事を私は知っている。
サクラミラージュでも長年続くくさや専門店とかもあるしな。
でもシュールストレミングは無理だ。

ガスマスクを借りてシュールストレミングを沢山置き、甘い匂いを相殺させる。同時にその強烈なにおいからこちらに来るように誘うとしよう。

そして私は君たちに対して残酷なことをすることになる。
UCを発動して暴風雨を発生させ、ふわふわな尻尾をびしょ濡れにして対応する。
これではもうモフモフではない。だが私は謝らない。

アドリブ・連携歓迎



●テンペスト・オブ・シュールストレミング
「くさやか……」

 ふむ、と瑞羽・湊(嵐のロックシンガア・f30978)は顎に手を当てて考える。

「確かに臭いは強烈ではある。――だが、その分美味さは歴史が保証している」

 湊はサクラミラージュ出身のロックシンガア。
 700年程大正が続いている世界だが、当然大正の前には明治時代、明治時代の前には江戸時代が存在しているワケで、くさやの歴史もまたUDCアースの日本とは流れが若干違えどしっかりと記されている。
 そう、臭いがあまりにも強烈なくさやであるが江戸時代では献上品として用いられていた秀逸な品でもあるのだ。実際に臭いはキツいが味はとてもおいしい。
 サクラミラージュでも長年続く有名なくさや専門店が存在している程文化的には親しまれている食材故、かの恩人がこれを好む気持ちは理解できた。

「でもシュールストレミングは無理だ」

 しかしそれはそれでこれはこれ。
 世界一臭い食べ物には理解は示せなかった。おいしいという話と知識はあれど実際に食べる勇気は出ない。
 汁が飛び散れば一週間は臭いが消えないどころか食べたら翌朝も口からシュールストレミングの臭いが漂ってくるとか色々強烈な話が多すぎるんだよなあ……
 とりあえず、シュールストレミングもケットシーは用意してくれていたようなのでガスマスクと共に拝借することにした。
 結構な量あるがその全てが冷蔵庫の中に眠っていた――曰く「流石に無理だったにゃ」だそうで――狸ですら鼻が曲がるものを猫が扱うのは難しいのはまあ、そうなるな……という感想にもなってくる――。
 湊は拝借したシュールストレミングを慎重にバケツいっぱいに溜めた水の中でゴム手袋を着用した上で開封、それを早速各地に配置し始める。
 これまでに加勢した猟兵たちによって眠りを誘う甘い香りは大分薄れつつあったが、それでもまだうっかりマスクをせずに呼吸なんてしてしまえば眠気が襲ってくる程度には残っているので、それを相殺しシュールストレミングの匂いでいっそのこと充満させてしまうのだ。
 ガスマスクしてなきゃこちらが瀕死になるであろうが、おびき寄せるには非常に有効な手段となり得るのは確かである。
 そうして配置していけば、眠りネズミがひょこりと顔を出して餌にありつき始める。

「おいしいか?」

 敢えてそれを攻撃することはせず語りかけて見ると嬉しそうに「ちゅ!」と鳴く。
 ああ、これが非常時かつ食しているものが食しているものでなければ可愛らしく頭の一撫で二撫でも吝かではなかったのだが致し方なし。
 よかった、と返して黙々と湊はシュールストレミングを配置し、次々眠りネズミたちをおびき寄せていく湊。
 気づけばその一体はシュールストレミングを美味しそうに食べる眠りネズミの群れでいっぱいになっていた。
 食べているものがものでなければ、そして状況が状況でなければ非常に愛らしく可愛らしい光景で動物園みたいな気持ちになれたような光景を見ながらシュールストレミングを置き終えた湊はネズミたちに向き直り、宣告する――。

「私は君たちに対して残酷なことをすることになる」
「ちゅ?」

 シュールストレミングを頬張りながら首を傾げる眠りネズミたち。

「これをしたら最後、君たちはモフモフでなくなってしまう。だが、私は謝らない。恨むなら恨んでくれて構わない」
「ちゅ……??」
「では……」

『Are you ready!?』

 どこからともなくマイクを取り出し、ロックな掛け声と共に雨雲が立ち込める――!

『R o c k 'n' R o o o o o o o l l!!』

 並のロックシンガアがスタンディングオベーションする程のハイトーンボイス!
 何故かどこからともなく響き渡るロックギターの音!それらと共に吹き荒れるは暴風雨ッ!
 ユーベルコード【暴風豪雨揺魂歌(ストームロックンロール)】が炸裂し、眠りネズミたちのふわふわふかふかな毛並みが一瞬にしてびしょびしょだ!

「ちゅー!?!?」

 哀れ、もふみを失いし眠りネズミ。その小さく愛くるしい体躯では暴風の勢いに耐えきれず次々に飛ばされていってしまう。
 シュールストレミングの缶も雨雲に吸われ、眠りネズミたちと共に姿を消した。

「……これでもう君たちはモフモフではない。だが――私は謝らない」

 歌い終えた後に空を見上げ、もう一度言い聞かせるように湊は宣言する。そう、これも猟兵としての為すべきことであるが故に……

大成功 🔵​🔵​🔵​

隠神・華蘭
んもーあんのお嬢様はまたこういう事をするぅ!
甘いだ臭いだなどという中で眠りにつく国などうるとら勘弁なのですぅ!
さっさと片付けましょう!

ますく着用、ヨシ!
あとは臭気を我慢しつつくさやをお借りして囮といたしまして。

竹伐様! きれのいい音、頼みます!
UCにて竹伐狸様の力をお借りし鉈を振るって寄ってきた鼠さんを駆除といきましょう。
わらわら一気に来ましたら【範囲攻撃】つき小判ばらまきで対処です。
本当は狸の大群で攻めたいのですが喚んだ瞬間全滅しそうですので。

そういえばあのお嬢様、物語を聞くと隙だらけになったような?
駆除が一段落して余裕がありましたらケットシー様に語れそうなお話があるか聞いてみましょうか。



●ネズミも猟書家も餌で釣ってしまえば――?
「んもー!あんっのお嬢様はまたこういう事をするぅ!」

 隠神・華蘭(八百八の末席・f30198)は辟易するような声を上げた。
 猟書家の襲撃は今回だけでなく何度もあるが、またも物語好きの猟書家がやらかしたかのはこんな(色々な意味で)ひどい自体とくればげんなりするものである。

「甘いだ臭いだなどという中で眠りにつく国などうるとら勘弁なのですぅ!!」

 仰る通りです。
 さっさと片付けるに越したことはないので早速ケットシーからマスクとくさやを拝借する華蘭。
 しっかりと装着し、はずれないことと匂いの遮断を確認したら早速ケットシーから借りた焼き立てホヤホヤのくさやを囮として適当なところにぶら下げた。
 焼き立てとあればそれはもうその臭いがむわあ、と広がっていくものでマスク越しでも割とキツい。
 さらに今までの猟兵たちの活躍によって眠りネズミの数はあと僅かにまで迫ってきているのもあり甘い匂いは大分くさややらシュールストレミングやらの刺激臭にかき消されつつあった。
 正直言うと現時点でダメな人は吐き気を催しているぐらいにはヤバい、がこれも仕事。猟兵としてのお仕事なのである……

「ちゅ!」

 そして学習能力のない眠りネズミ、またもやくさやの匂いに引き寄せられて一匹やってきた。
 そこまで知能の高くないタイプなのだろうきっと。
 とはいえ引き寄せられたら後は着実に仕留めていくだけである。

「竹伐様!キレのいい音、頼みます!」

 竹伐狸の妖力を込められた鉈を手に、華蘭はユーベルコード【怪狸変化の術】を発動。
 竹伐狸の妖力を宿し爆発的な力を得たか細い腕は地面をえぐる程の威力を持って鉈を振るい、眠りネズミは一刀両断――というグロテスクな光景を見せる前にぽふん!と煙を上げて消え去った。
 キレの良い音が上がるどころか地面が抉れる強烈な音も響いたことにより近場にいた眠りネズミたちがびっくりしてわらわら姿を現す。パニック状態になって方向性がわかっていない様子と見ていいだろう。
 ここで狸の大群を呼び寄せれば一網打尽にできること間違いないのだが、現在くさやとシュールストレミングとまだ僅かに残る甘い香りとまぜこぜになった臭いで召喚した瞬間全滅間違いなしなので断念。
 小判に妖力を込めて撒菱を撒くようにばらまいてやる。

「ちゅーっ!?」

 ぺちん!と小判が当たればぽふんぽふんとファンシーな音を立てて消えていく眠りネズミたち。
 かすかに残っていた甘い匂いもついに完全にかき消えてしまって完全に刺激臭で満たされた――果たしてこれは救いといえるだろうか?違う気がする。

「にゃ……?なんかめちゃくちゃ寝てた気がすrくっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっさ!!!!!!!!!!!」

 その場に倒れ眠りこけていたケットシーが目を開けた瞬間、鼻をつまんで急いで家に帰っていく……うん、これは酷い。
 とはいえこの匂いはきっとマロリー・ドラッケンに対しても大きく牽制となるであろうことは確かなので何とも言えぬ状況とも言えるか。

「これで災魔は片付いたみたいですね……――そういえばあのお嬢様、物語を聞くと隙だらけになったような?」

 猟書家マロリー・ドラッケンは物語に対して非常に貪欲な猟書家である。
 つまり、この眠りネズミたちと同様、物語という餌でおびき寄せればこちらの有利に傾けることができるかもしれない。
 華蘭は一度ケットシーの家に戻り、恩人にまつわるエピソードが他にないか伺ってみることにした。

「彼の話にゃあ……そうだにゃあ、彼はそれはもう蒸気機械技師としては優秀にゃ人だったんにゃ。でも好きなものが好きなものだから臭いが染み付いてて普段は絶対に人が近寄ろうとはしなかったにゃ」
「まあそりゃそうでしょうね」

 むしろそんな変人と交友関係があって普通に話をしているであろうこのケットシーが猛者というより他にない。

「アルダワのあちこちで蒸気機械絡みのトラブルや事件が起きたところに居合わせて次々解決していったおかげで、噂が一人歩きして伝説の蒸気機械技師とまで言われていたんだにゃ。
 ほら、こうね?物語でもあるにゃん、こんな奴がまさか実は――!みたいな」
「ふむふむ。そのエピソードできるだけ教えてもらってもいいですか?」

 聞けば聞く程掘り出される、まるで少年漫画の主人公のようなエピソード。
 これはまさしくマロリーホイホイだと華蘭は確信した。これを使えば、必ず有利に事が運ぶだろうと……!!

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『マロリー・ドラッケン』

POW   :    インテリジェンス・イービル・ワンド
【手にした「喋る杖」が勝手に魔法】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    リアライズ・パニック
自身が【恐怖】を感じると、レベル×1体の【モンスター化した書物の登場人物】が召喚される。モンスター化した書物の登場人物は恐怖を与えた対象を追跡し、攻撃する。
WIZ   :    ダブル・マロリー
【眼鏡を外した別人格のマロリー】の霊を召喚する。これは【勝手に放つ魔法】や【杖でのぶん殴り】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠村雨・ベルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


【MSより】
 第一章ご参加ありがとうございました!
 第二章のプレイング受付は少々間を開けて12/5(土)8:31より開始させて頂きます。
 断章は思いつき次第投下しますが、もし投下されなくても受付開始時間がきていたら投げて頂いて大丈夫です。

 また、2章よりプレイングボーナスに「ケットシーから聞いた恩人のエピソードでマロリーを釣る」を追加させて頂きます。
 エピソードの内容はプレイングされる皆様でご自由に考えて頂いて構いません。皆様の思う変人な恩人エピソードを作ってやってくださいませ!

 それではプレイング受付開始までしばらくお待ちください。

 さて、災魔を蹴散らしついに元凶たるマロリー・ドラッケンを追い詰めた猟兵一行。
 無事ケットシーたちが眠りから覚めたはいいが……

 お察しください。くさややシュールストレミングの臭いが街中に充満しててガスマスクを外したら最後、死ゾ――という状態になっております。

「あううううううううう……くさいですぅぅぅ……」

 つまり元凶であるマロリー・ドラッケンも例外なくその被害に見舞われているのである!
 大事な侵略蔵書に臭いがついてはいけないと片っ端から鞄に仕舞い、今一緒にいるのは事実情喋る杖だけ。

「くっそぉ、よくも大事なマロちゃんの鼻をひん曲がらせやがったな猟兵共!!このインテリジェンス・イービル・ワンド様がぶっ飛ばしてやるぜ!」

 杖には鼻がないのか全く平気な模様、当然と言えば当然か。
 その器用に開いて喋る口から炎を吐き、猟兵達を威嚇するインテリジェンス・イービル・ワンド。
 しかし持ち主のマロリーは臭いに耐えきれず鼻をつまんで動けそうにないようにも見える。
 だがしかし油断することなかれ、彼女も猟書家だ。
 猟兵たちと相対するに相応の実力を備えているのだから……!
瑞羽・湊
君たちを放置すると、いずれ帝都にまで魔の手が伸びる可能性がある。
それだけは阻止せねばならない。
淑女を倒すのは気が引けるし魔女というのもハイカラだが、ロックではないので君たちは此処で倒す。

その昔、この場所ではくさやに感謝を捧げる為の奉納の儀があったと聞いた。……すなわちフェスだ!
数が相手というのなら、これを使わない手はない。登場人物が紹介されたらUCを発動。
我がロックンロヲルで、恐怖を興奮に変えると良い!ついでに存在感で時間を稼いで、他の猟兵の攻撃を通しやすくするぞ。
ひとしきり大雨になって視界を遮ったところに、革命剣で貫通攻撃だ。

アドリブ・絡み歓迎



●第数十何回くさやフェス~STORM ROCK'N' ROLL!~
「ぐるるるるるる」

 インテリジェンス・イービル・ワンドが威嚇する。それ杖というかイービル(悪魔)というよりかは犬では?みたいな威嚇だが気にしてはいけない。
 尚マロリーは鞄の中に侵略蔵書をしまってしまったせいでガスマスクどこやったっけあれあれと慌てて鞄をひっくり返している。
 ……緊張感どこいったな状況であるが、冷静さを崩すことなく瑞羽・湊(嵐のロックシンガア・f30978)は冷静に革命剣を鞘から引き抜いた。
「ぴっ」と声を上げて、やっとこさマスクを掘り出したマロリーが抱きしめるようにワンドを握る。

「――淑女を倒すというのは気が引けるのだが、君たちを放置するといずれ帝都にまで魔の手が伸びる可能性があるからね」
「はわわわ……わ、わたしをどうするつもりなんですかっ……こう、耽美ものの物語みたいなことする気なんですか……っっ!?」
「いや、流石にそれはない」

 深呼吸して落ち着いて、と思わず言ってしまった湊。言われるがままに深呼吸するマロリー。
 ――これ猟兵と猟書家の戦いだよね?

「ともかく、魔女というのもハイカラで私としては好ましいのは確かだが、ロックではないので君たちは此処で倒す」
「ふええ、わたし物語が欲しいだけなのにぃ……!!」

 最早涙目のマロリーちゃんである。
 ハイカラでロックなスタアである湊が剣を構える姿も十分に怖いと感じたのか、マロリーの鞄から本が飛び出し、中からモンスター化したその物語の登場人物であろう者たちが姿を現した。
 皆一様にモンスターらしく獲物や敵を捉えたような目で非常に攻撃的な意志を見せている。
 湊はそれに対し、どう応戦するのか。まずは――革命剣をその場に投げ捨てた。

「えっ?」
「ゲヒッ!?」

 マロリーもインテリジェンス・イービル・ワンドも思わず目を丸くする。
 明らかに攻撃的な意志を見せてきたのに途端に武器を投げ捨てるなんて誰が思うだろうか。多分思わない。
 そして次に湊はどこからともなくマイクを取り出す。スピーカーとかどこにもないのにちゃんと響くしエコーする謎のマイクに口を近づけ、話を切り出した。

「――その昔、この場所ではくさやに感謝を捧げる為の奉納の儀があったと聞いた」
「えっ?そうなんですか?」

 その物語は初耳だと言わんばかりにマロリーが興味を示し始める。
 くさやは臭いが魚は魚であり、ケットシーは確かに好んで食べる者も多い。
 というのもまだ蒸気機械が発達していなかった時代、ある一人の人物が食物保管に悩むケットシーたちの為に開発したのがくさやだと猫の国では言われているそうだ。
 おかげで食糧難を乗り切ったケットシーたちはその感謝を忘れない為くさやをその人物と見立て、感謝を捧げる祭りが行われていたという。もちろんそれも猫の国内の恩人記念碑に記されているそうだ。
 そして今回の記念碑に描かれている恩人はこのくさや奉納の儀に興味を示してやってきたらしい。

「感謝を捧げる儀……祭り――即ち、フェスだ!」

 じゃかじゃーん――と派手に響くロックギターの音。

「フェスと言えばロックンロヲル、つまりロックシンガアの華舞台!我がロックンロヲルで恐怖を興奮に変えると良い!『Are You Ready!?』」
「え、え!?ええと、い、いえーい!」

 マロリーはすっかり物語とその流れに引き込まれたようで、慣れないながらも腕を突き上げて答えを返す。

「OK!Everyone will go!

 R o c k ' n ' R o o o o o O O O O L L !!!!」

 派手な伴奏に決して負けぬ、湊のイケ女ボイスな歌声が響き渡る!
 ぱっと聞いただけだとただただ派手で過激な曲に聞こえなくもないが、その歌詞は人から人への感謝の意をテーマにした情緒と物語性ある内容。
 最初は恐る恐るであったマロリーは段々と表情を輝かせてリズム良く手を振っていく。
 何か気づけばサイリウム持ってますね、アルダワにサイリウムあるの?
 恐怖の感情に呼応して召喚された登場人物たちもマロリーの感情を反映したのか全員サイリウムを持って興奮している。いやだからサイリウムあるの???
 湊の歌声はやがて嵐を呼び寄せ、滝のような大雨がくさやとシュールストレミングの匂いを洗い流さんかのように降り注ぐ。だがそれでも湊は歌い続けるし、マロリーたちはノリノリで相の手を入れる。
 雨は段々と彼女らの視界を覆い、最早目の前すらも早々見えない程にまでに至り風も暴風となって吹き荒れ――

「いぇい! いぇい! い、あ、あれ、身体が浮いて、ちょ、ま、ぴゃ――――――――――っっ!!!!?」

 その風にマロリーは地に足をつけることがままならなくなり飛んでいってしまった。何てこったい。
 インテリジェンス・イービル・ワンドも悲鳴を上げて飛んでいく。
 そして残った登場人物達は伴奏の間にいつの間にか剣を拾い上げていた革命剣によって串刺しにされ、ぼふん!と煙を上げて消えた。

「へぶっ」

 嵐が止んだ頃に派手に顔面から地面にダイブしてしまったマロリー。
 痛い、あまりにも痛すぎる。だが猟兵たる湊は容赦しない――というより、ここで留まってしまったら敵の反撃に出られる可能性がある。

「さあ、覚悟してもらおうか?」
「ふ、ふええええええええええええん!!」

 剣を突きつけようとしたが、顔の痛さとか敵の怖さとかそこらが諸々に混ざりすぎてマロリーは泣いて逃げ出してしまった。
 おっと、と少しばかり目を見開く湊。
 少々淑女に対し過激すぎたかと罪悪感が湧かないワケではないが、心をぐっと鬼にして後を他の猟兵たちに託すことにした。
 恐らく仲間たちが手を打つ為の時間稼ぎには十二分なったであろう故に……

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒木・摩那
こんな末法な世界にしてしまったこと、許しませんよ。
マロリー、いざ覚悟!

ヨーヨー『エクリプス』で戦います。
まず、マロリーのガスマスクを【武器落とし】で落とします。
そして、UC【紅月疾走】を使って、そこら中に置いてある、くさややシュールストレミングの缶をひっくり返して、それが沁みた土を取り込み、マロリーにそのヨーヨーを使って攻撃します【衝撃波】。

かつてのケットシーの恩人はくさやを味わうだけでなく、その汁をお風呂に入れて、全身でその臭いを味わったと聞きました。
せっかくですから、その故事を体験してみてはどうでしょうか?

私は全力で遠慮しますけどね。


隠神・華蘭
こっちの鼻がひん曲がりそうなのですよそこな杖!

ところでお嬢様
かの恩人様ですがなんとあの臭いで銭湯の一番風呂が趣味という
営業妨害すれすれなご趣味があったそうで。
他の常連様からなんと言われようと番頭様は入れて差し上げていたそうです。
何故かというと昔風呂炊きの蒸気ぼいらーが故障し爆発寸前になったとき火傷も顧みずぼいらー室に突入し処置してくださったお返しだそうで。よいお話ですねぇ。

といった逸話が収録されたこちらのご本!その名も『特香野郎Sチーム』!
読みたいですかぁ?読みたいですよねぇ?!質問したのでUC発動ですぅ!
炎の円陣を地に組み本を囲みます!飛び込んでください!!




ちなみにそれは白紙の本でございます



●ここまで綺麗に釣られるとはきっと彼女らも思っていなかったかもしれない。
 さて、猟兵たちから逃げ出したマロリーさんですが。

「ひっぐ……ひぐっ……うぇええ……」

 泣いてました。主に顔面ダイブの痛さで。

「ほらほら泣くなよマロちゃん、せっかくの可愛い顔が台無しだぜ」

 そんな彼女をそっと手当してあげるインテリジェンス・イービル・ワンド。どうやって?多分基礎的な治癒魔法を勝手に使って。

「ったく猟兵共、こんな可愛い子に容赦なさすぎるぜ全くよお……!」
「こんな末法な世界にしてしまったんですからそりゃ許しませんよ」
「こっちの華がひん曲がりそうなのですよ!」
「ぴえ!?」

 そんなマロリーの前に姿を現したのは黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)と隠神・華蘭(八百八の末席・f30198)の二人。
 二人共こんな世も末な状況にしてくれたことへ怒り心頭の様子。特に摩那は食の侮辱にも等しいと怒っていたことから華蘭以上に覇気を強く放っていた。
 華蘭も彼女の怒りっぷりには少しばかり冷や汗を流さずにはいられない程だ――いや、気持ちはわかるのだが。

「マロリー、いざ覚悟!」
「ひえええ!ご勘弁を~~~!!」

 マロリーは頭を抱えてしゃがみ込み絶対防御の姿勢を見せているが、同時に分離するように彼女と同じ姿をした霊体が現れる。
 唯一の違いは霊体であることから臭いが通用しないのかマスクをつけていないこと、そして眼鏡を外していること。
 しかし、眼鏡を外しているただそれだけで放たれるオーラは妖艶で、かつ膨大な魔力の波長が例え魔法に疎くとも体中にぴりぴりとした感覚で伝わってくる程だった。

「全く、表のアタシには我ながら困ったものだけど。アタシたちの邪魔をするなら消えてもらわないといけないわねえ?」
「その台詞、そちらにまるっとお返ししますよ。あなたには相応の報いを受けてもらいます!」

 愛用武器の一つであるヨーヨー『イクリプス』を構え、摩那は臨戦体勢。
 マロリー――の、別人格の霊体(以下ややこしいので霊体マロリーと称する)は先手必勝とインテリジェンス・イービル・ワンドを手に魔法を高速詠唱!
 高速で飛来する炎、水、風の3属性の魔力の弾丸。摩那はそれに対しエクリプスに念動力を流し込んで振るい、盾代わりに弾き飛ばす。
 弾き飛ばされた魔力弾はあちこちに仕掛けられているシュールストレミング缶やくさや液の壺に命中、派手にその刺激臭の集合体を地面にぶちまけた。
 先程の暴風雨による湿り気が残っている土と混ざったことで土の臭いとも融合してガスマスクしていないと卒倒間違いなしの臭いが辺りに広がる様はまさに地獄という言葉以外では形容のできないものである……
 摩那の狙いはマロリーがつけているガスマスク。まずは奴からそれを引っ剥がさないことにはこちらの戦略もまるで通用しないというもの。
 だが霊体マロリーが守護していることにより隙を狙うにはかなり難しい状況と言える……が、こちらは摩那一人で戦っているワケではない。
 予兆から、恐らく別人格のマロリーがどこかしらのタイミングで介入するであろうことは猟兵たちも承知の上。
 それも視野に入れた上で、マロリー本人を釣り上げることができれば勝機は見える。――しかも、幸いなことに彼女は"物語に我を失う程に目がない"のだ。
 ならば、霊体マロリーの庇護下から無理やり抜け出してまで求める状況を作れば良い。
 こうして摩那が霊体マロリーを相手にしている内に華蘭が彼女を引きずり出す……それが今回の戦法なのだ。
 魔法とヨーヨーによる擬似的な剣戟が行われる中、華蘭は早速行動に出る!

「ところでお嬢様。かの恩人様ですが……」

 そう切り出せばぴく、とマロリーが耳を傾け始めた。ちょろい、あまりにもちょろい。

「……なんと、あの臭いで銭湯の一番風呂が趣味という営業妨害すれすれなご趣味があったそうで」
「ええっ!?それ入れてもらえるんですか……!?」
「もちろん、他の常連様はあんな奴入れるんじゃないと大変お怒りでした。ですが番頭様は入れて差し上げていたそうです。
 何故かというと、昔風呂焚きの上記ぼいらーが故障し爆発寸前になった時火傷も顧みずぼいらー室に突入し処置してくださった恩返しだそうで……良いお話ですねえ」

 一冊の本を片手に開きながらうむうむと頷く華蘭。マロリーはすっかり釘付けな様子を見せていた。

「そ、その本!その本に書いてあるんですかその物語っっ!?」
「そう!このような逸話が収録されたこちらのご本!その名も『特香野郎Sチーム』!」
「はわわわわ!凄く気になりますその本!わたしも読みたいですっ!!」
「読みたいですかぁ~?読みたいですよねぇ~?!」
「読みたいですぅぅぅぅぅ!!!!」

 完全に物語の虜になっているマロリー、ふらふらと華蘭の方へと歩を進め始める!
 それを完全に好機と見た華蘭はその『特香野郎Sチーム』を地面に置いたかと思うとユーベルコード【怨絵巻・八百八】を発動。
 炎の円陣が本を囲うように組み敷かれ、マロリーは目を見開いた。

「ああっ、本が……!!」
「さあお嬢様!飛び込んでください!!」
「こ、このままじゃ本が燃えて……そ、それだけはダメぇ―――――――っ!!」
「……!?ちょっ、こら表のアタシ!待ちなさ――」

 霊体マロリーの制止も聞かずマロリーは迷いなく炎の中に飛び込み、その本を手に取った!
 もちろん、取ったら取ったで即魔法で炎の干渉を抑えながら脱出。

「はあ……はあ……よかったあ……本は無事ですね……!」

 若干煤の臭いはすれど、本に焦げ目や焼けた痕跡はなくほっと胸を撫で下ろすマロリー。
 『特香野郎Sチーム』、果たしてどんな痛快爽快な物語が展開されているのやら――わくわく気分で本を開こうとしたところで華蘭がこう言った。

「因みにそれは白紙の本でございます」
「えっ????????????」

 嘘でしょ、とマロリーが本を開いたらそこには文字もなにも書かれていない白紙の文字。
 めくっても、めくっても出てくるのは白紙の本。まるでそれは開けても開けても同じ人形が出てくるマトリョーシカのように……
 見事罠にハマったマロリーは絶望の表情を浮かべて本をぱたりと地に落とす。

「そんな……じゃあ……今の話は……」
「ああ、それは実話ですよ?記念碑建てたケットシーさんから直々にお伺いしましたからねぇ」
「で、でも本はっ!?」
「ないです」
「あぅぅぅぅ……!!」

 マロリーはがくりとうなだれた。
 まあそれもそうだ、そんな都合の良い話があるワケがないのである。何てったって猟兵と猟書家、相容れぬ関係が簡単にそんなモノを用意すると考えるのも難しい話だ。
 逆に言うと、マロリーが良くも悪くもとても純真ともいう。

「今です!」

 そしてその機をすかさず摩那の『イクリプス』がマロリーの顔からガスマスクを引き剥がした!
 辺りに充満する土に染み込んだくさや液とシュールストレミング液の臭いがマロリーの鼻孔を直接刺激し、あまりにもの臭さに泣き叫ぶ暇もなくマロリーは鼻をつまんで口を抑えた。

「く、臭いです……うっ、吐きそう……」

 その臭さたるや吐き気すらも促すド畜生。しかし摩那は決して手を緩めない。
 このような末法な世界にしてしまった落とし前は何が何でもつけさせなければならないのだ!

「"励起。昇圧、集束を確認……侵食開始"!」

 ユーベルコード【紅月疾走(リュヌ・ルージュ)】により、高速回転を始める『イクリプス』がそのとてつもない臭いを充満させている地面を刳る!
 土から放たれていた刺激臭の元凶――それらを全てエクリプスが取り込み、土塊の刃へと変化させたのだ。

「――かつてのケットシーの恩人は、くさやを味わうだけでなく……その汁をお風呂に入れて、全身でその臭いを味わったと聞きました」
「えっ……何それ……!?」

 流石のマロリーも困惑顔である。まあそりゃそうだ、とんでもねえ恩人エピソードが出てきたもん。

「せっかくですから……その故事を体験してみてはどうでしょうか?」
「えっ、あ、いや、その……わ、わたし流石にそれはぁぁぁああああああああああああああ!!!!!!?!?」


 有無を言わさず、返事は聞かぬと言わんばかりに振り下ろされるイクリプスの取り込んだ刺激臭あふれる土塊。
 地面に叩きつけることで取り込んでいた土がイクリプスから剥がれるように落ちていくが、その量は人一人は簡単に埋まってしまう程。
 若干湿った上にくさやとシュールストレミングの液体が混ざった土に埋まるという第三者が見たら「絶対に埋まりたくねえ!!!」と叫ぶこと請け合いな光景が今ここに出来上がったのだ。

「……私は全力で遠慮しますけどね?」

 衛生上の都合か少しでも臭いを防ぐ為か、持ってきていたビニール袋に使い終えたイクリプスをそっとしまう摩那であった。
 まあ、誰だってそんなん味わいたくはないでしょう――常識的な感覚を持っている人であれば……つまりそんだけ今回の恩人は感覚がイカレているということになる。
 そらそうだとしか言えませんけどね。確かに功績もでかいがそれ以上に臭いのヤバさがでかいんだよ!!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

家綿・衣更着
匂いだいぶ慣れてきたっす

おいらはガスを何とかした逸話を【化術】で幻影の形で再現することでマロリーを釣るっす

「よくも眠り対策にこんな臭いを嗅ぐはめにしてくれたっすね!うるせえシュールストレミングを喰らえっす!」
缶を投げて手裏剣で撃ち落とすことで大惨事!と見せかけ、残念だったな缶も投げた衣更着の姿をした影も【化術】の【残像】っす
そして恐怖を与えたと誤認させた残像を逃げるように動かす事で召喚物の無力化と油断を誘い…

マロリーに背後から【化術】による【迷彩】と【忍び足】で近寄り、『綿ストール・本気モード』で強化したストール布槍で【串刺し】【暗殺】っす

物語を楽しむ時、他人に迷惑をかけた因果応報っす。成敗!



●怒りの綿はきっと岩をも砕く
 このまま生き埋めになるかと思われたマロリーであったが、インテリジェンス・イービル・ワンドが魔法で必死に掘り起こした為事なきを得る。
 とはいえくさやとシュールストレミングの液が染み込んだ土に埋まっていたおかげで臭いが体中に染み付いてしまっていた……ある意味女子に対しては残酷すぎる所業だが、因果応報とも取れるだろう。

「うう……うぷっ」
「おいおいマロちゃん大丈夫か!?」
「ダメかも……吐きそう……」
「ちょいちょいちょいちょい待て待て待ってくれー!?バケツ、バケツどこだバケツ!!」

 ……と、このままでは放送することができないモザイクシーン待ったなしになってしまうところだったその矢先であった。
 マロリーたちの目の前に一人の人物とケットシーが現れたのだ。
 彼らが何を言っているかは聞こえない。だが、かつての光景が映像となって現れているかのようで、マロリーの視線は自然と釘付けになる。
 ――そう、これは自分が欲した"物語"、此度の事件の元凶でもある恩人記念碑に刻まれた内容そのもの。
 その中でも特に危険とされているガスの噴出源へと向かっていく光景だ。
 吐き気もどこへやらな様子でそわそわとその光景を見守っているマロリーだが……

「ひええっ!?」

 突如背後からかぁん!と音が響いて尻もちをついた。
 ころころと転がってくるシュールストレミング缶が目に入り思わずひ、と声を上げるが幸い蓋は開いていない模様。

「……よくも眠り対策にこんな臭いを嗅ぐはめにしてくれたっすね!!」

 と、幻影の中から姿を現したのは家綿・衣更着(綿狸忍者・f28451)。
 そう、この光景は全てケットシーから詳細を聞いた彼による化術を応用した幻影だったのである!
 本来魔女に対してこういった術による幻影の類は魔術の応用ですぐ見抜かれやすいのだが、どうやらマロリーは物語のことになると途端にそれ以外の内容が頭から抜け落ちてしまい結果あっさりと釣られるようだ。
 そんな魔女で大丈夫なのか。

「はわわわわわわ、わたしだってこんなことになるなんて思ってn」
「うるせえシュールストレミングを喰らえっす!!」
「ひええええええ!!!」

 衣更着によって次々投げ込まれるシュールストレミング缶、マロリーは慌てて頭を抱えてしゃがんで防御姿勢を取る!
 しかし彼女は見てしまった。
 ふと目の前に転がったシュールストレミング缶に――衣更着の投げた手裏剣が突き刺さるその瞬間を。
 マロリーは絶望した、そんな嘘でしょ……と。
 先程散々酷い臭いに埋められていたというのにさらに汁がぶちまけられるなんて……

「そ、そんな……そんなの嫌――――――――――――っっ!!」

 マロリーの恐怖に呼応し、再び異形(モンスター)へとその身を変えた物語の登場人物たちが姿を現した。
 主に恐怖を与えた者を排除しようと、衣更着めがけて一目散に雪崩込んでいく。
 衣更着はそれを既に見越していたのか、忍者らしく素早く軽い身のこなしでさっと道の奥へ奥へと逃げ込んだ。
 【リアライズ・バロック】の特性上、召喚された登場人物たちはそれを永遠に追いかけ続ける。
 このままではただの鬼ごっこにしかならない――と、普通なら思う状況であるが。

「(ここまで見事に引っかかるとは思わなかったっす)」

 と、思いながら衣更着はいつの間にかマロリーの背後に迷彩を施した状態で近寄っていた――否、最初からずっと此処にいた。
 そう、先程の衣更着もシュールストレミングの缶も全て彼の化術により生み出した幻影。影分身の術のようなものだったのだ。
 幻影の自身を利用することでマロリーのユーベルコードの無力化と油断を誘う巧みな作戦が見事成功したということである。
 とはいえまさかこうも簡単に引っかかるのは彼自身も予想外であったようだが、まあ都合の良い方向に傾いたのなら問題はあるまい。
 忍び足で接敵し、愛用のふわふわもこもこの綿ストールを握りしめいざ、猟書家に天誅を!

「――成敗ッ!!」
「ひぎゃっ!!!?」

 まさに不意打ち。本気モードに变化した綿ストールの一撃がマロリーを捉える!
 その威力たるや最早綿どころか金属と言っても指し支えない恐るべき強度、マロリーの意識は一瞬にして吹っ飛んだ。

「物語を楽しむ時、他人に迷惑をかけた因果応報っす」

 どさりとそのまま倒れ込み昏倒したマロリーに、衣更着のその言葉は聞こえたのだろうか。それはきっと彼女にしかわからない。
 しかして一つ確実なことがある。
 それは簡単、物語を楽しむ時はマナーを護って人様に迷惑をかけないようにしましょうね。グリモア猟兵とも約束だぞ!

大成功 🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【不死蝶】
まずこの猫の国のある地域ではねぇ…
同人誌即売会が開催されていた

何だそれって?
熱い志を持った老若男女が
ウスイタカイホンという逸品を作り出し
お披露目する盛大な催しだよ

かの恩人さんも初出展することになる
彼がこれまでに食したいい匂い(本人比)の
食べ物のレビューや自己流アレンジレシピ等を載せた本だ

国を救った恩人が出展すると聞けば
それはもう長蛇の列となった
彼は本を購入してくれた参加者に対し…

ノベルティとしてくさやをつけた

しかもよりにもよって夏の祭典だった
真夏に、密になった空間で、
くさやなど配布すればどうなるか?


こうして即売会のルールに
「臭い物持ち込み厳禁」が追加されることになった
いやースゴイネー


乱獅子・梓
【不死蝶】
綾のやつ、エピソード語るだけで
文字数使い切りやがった(メタ発言)

チッ、俺がやるしか無いか…!
幸いにもあんなトンチキエピソードでも
マロリーはお行儀良く話を聞いてる
今がチャンス!

マロリーに不意打ち攻撃を仕掛けようとしたら
立ち塞がる別人格マロリー
フッ…そう簡単には通してくれないようだな
(ちょっとだけでもシリアスな雰囲気を目指す

焔!強行突破だ!
別人格マロリーの攻撃にも怯まず
成竜焔を突撃させ体当たりを喰らわせる
ほんの少しでも奴の注意を引きつけて
動きを抑え込んでくれればいい
その一瞬の隙を狙い、零のブレスを浴びせUC発動
捕縛したら放置して、本体マロリーのもとへ!
焔の灼熱のブレス攻撃をお見舞いする



●役割分担というものは何においても大事なもので
「うーん、うーん……」

 マロリーはうなされていた。大量のくさやとシュールストレミング缶に追いかけ回される悪夢に……
 流石猟書家といったところか、あれだけの一撃を受けてもまだ生きていて悪夢を見ることができるらしい。

「おやおや、随分と魘されているみたいだねえ……」

 ひょこっと顔を覗かせる灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)。
 もちろんガスマスクは常備な上適度な距離は維持済みである、今マロリーはくさや液とシュールストレミング液と雨上がりの湿り気の土が混ざったとんでもない臭いを放っている故に……
 女子にあるまじき何という非道かと、元凶でなければ多分誰もが思ったのではないだろうか、そう、元凶でなければ。
 元凶なので因果応報という話で終わっちゃうのです、悲しいね。

「ほらほらお嬢さん、こんなところで寝てると風邪引くよ?」

 そこらにあった猫じゃらし(奇跡的にも被害を免れている)を摘みマロリーの顔をこしょこしょとくすぐってやる。

「ふえ……ふえ……ふえっぷち!」

 可愛らしいくしゃみを上げてマロリーがは起き上がった。

「おはよう。よくよく眠れた?」
「あれ、わたしいつの間に寝てて……はわわわわわわわ猟兵さんっっ!?!?」

 綾の姿を確認するなり何なり秒速500mで後ずさる。

「あはは、そんな逃げなくていいのに」
「だだだだだって猟兵さん怖いんだもん……!!!」
「俺たちだって別に好きで攻撃しているワケじゃないし、君が記念碑を返してくれたらこれ以上何もしないんだけどなあ」
「そ、それはダメです!!わたしこの物語が欲しいんです……っっ!!」

 結局のところ根幹はそれらしい。
 そしてそれだけは譲れないと言わんばかりの気概を見せる。
 それが原因で彼女は今やくさややシュールストレミングの臭いが染み付いてかの物語に記された恩人と同じ状態になっているのだが、きっと彼女にはその視点は見えていない。
 やれやれと綾は肩を竦め、話題を変えることにした。

「ところでその恩人さんの逸話があるんだけど、聞きたい?」
「!!!聞きたいです!!!!」
「じゃあもうちょっと聞こえやすいところにおいで」

 とにこやかに言えば、先程マッハで距離を取っていたにも関わらずそそくさと距離を近づけてくる。
 尚近づけば近づくほど悪臭は悪化するのでガスマスクをしていなければ倒れること間違いなし。
 必要以上に近づかれたなと思ったら気づかれない程度にすっと音を立てず後ずさりし、綾は口を開いた。

「まずこの猫の国のある地域ではねぇ……

 ――同人誌即売会が開催されていた」
「どうじんしそくばいかい…………?????」
「熱い志を持った老若男女がウスイタカイホンという一品を作り出しお披露目する盛大な催しだよ」
「はわわ……そんな催しが……!たくさん物語があるんだろうなあ……!」

 またしても釘付けになっているマロリー、まさにちょろい。
 まあその方が都合が良いので綾は引き続き語り続ける――……


「……綾の奴、エピソード語るだけで全部俺に丸投げしやがった……!」

 乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は様子を伺いつつ丸投げした相棒に悪態をついていた。
 仕方ないね、エピソード語るだけでプレイング使っちゃったもんね……300文字って以外と足りないんだよねわかるよ……!

「チッ、俺がやるしか無いか……!」

 綾が語っているのは非常にトンチキなエピソードである――というかぶっちゃけあの恩人にトンチキじゃないエピソードがある方がレアである。
 これは恩人のケットシーがそう言っていたので本当です。
 マロリーがきちんとお行儀良く話を聞いている今こそまさに好機。今までも綺麗なまでに引っかかっていたのだ、今回も不意打ちに成功できるハズ……!!
 梓が狙いを定めようとしたその時、彼の真横を風の刃が通り過ぎた。

「悪いわねえ、流石に全部引っかからせるワケにはいかないのよ」

 別人格のマロリーの霊(こちらでも以後霊体マロリーと称する)が梓の前に立ちはだかったのである。

「フッ……そう簡単には通してくれないようだな」
「当たり前でしょ?表のアタシは確かにどんくさいし物語のことになるとすーぐ目がなくなるし勝手に突っ走る困ったちゃんだけど、それでも大事なワケだからねえ。
 というかさっさと帰って臭い飛んなきゃいけないし」

 それは本当にそう。女の子がいつまでもあの臭いに塗れたくはない。

「焔!強行突破だ!」
「はっ!強引に突破できるならやってご覧なさいな!」

 トンチキな話の向こう側で実にシリアスな戦いの応酬が今、始まる。
 相棒、炎竜『焔』はキュー!と声を上げて霊体マロリーへと突貫するも障壁が行く手を阻む。
 そして反撃に放たれる水属性の魔術弾が焔へ向かう――その前に、もう一人の相棒である氷竜『零』が氷のブレスで凍らせて落とした。

「はっ、やってくれるわね!」
「伊達に長いこと戦ってないんでな!」

 竜たちを巧みに操り、炎と氷の吐息と魔法弾が何度もぶつかっては相殺。両者、譲らぬ戦い――


「彼がこれまでに食したいい匂い(※本人比)の食べ物のレビューや自己流アレンジレシピ等を載せた本だ。これを国を救った恩人が出店すると聞けばそれはもう長蛇の列となったのさ」
「わあ……一気に大手サークルですね……!わたしもその時いたら絶対買ったのになあ……」

 そんなシリアスな戦いの向こう側では相変わらずトンチキなエピソードを綾がマロリー本人に語り聞かせていた。
 報告書を認めたグリモア猟兵――の保護者は後に報告書に目を通して「温度差が酷えな」と語っていた程らしいがそれは余談なので置いておく。

「逃さないよっ!」
「それはこちらの台詞だっ!」

 梓と霊体マロリーの応酬は段々と近づき派手な爆音やら何やらが響き渡っているのだが、綾の語る恩人トンチキエピソードはまだ終わらない。

「それで、彼は本を購入してくれた参加者に対し、ノベルティをつけたんだ」
「えええっ!?書いた本人からノベルティがもらえるなんてそれもう握手サイン会モノじゃないですかっ!あああわたしもその場にいたかったな―――――!!」
「そう、ノベルティとして彼は――くさやをつけたんだ」
「えっ」
「しかもよりにもよって夏の採点だった」
「あっ……」
「真夏に、密になった空間で、くさやなど配布すれば…………どうなる?」
「…………」

 先程まで目を輝かせていたマロリーの表情が途端に真顔化、一切の言葉も話さなくなってしまった。
 明らかにテンションが下がっているのが見てとれて、別に面白いワケではないのだが唐突にツボに入って吹き出しそうになるのをしれっ、と堪えて綾は話を続ける。

「――こうして、即売会のルールに「臭い物持ち込み厳禁」が追加されることになったのさ。いやースゴイネー」
「…………あ、はい。そうですね……」

 恐らくここまでテンションが下がっているのは自身が臭いに塗れる羽目になっているからであろうか。全部因果応報なんだけど。

「キュ――――――!!!」

 と、そこに響き渡る梓の相棒『焔』の咆吼。マロリーがひぃっと声を上げて縮こまる中、二人の真横を焔が霊体マロリーに伸し掛かるような体勢で通り過ぎた。

「ちっ、このドラゴンしつこいわねえっ!」
「零!」
「ガウ!!」

 霊体マロリーが焔を何とか押しのけたその僅かな隙間を見逃さず、梓の命で零が冷気のブレスを霊体マロリーへと放つ!

「"氷の鎖に囚われろ"!」

 詠唱句を鍵としてユーベルコード【絶対零度(アブソリュートゼロ)】が発動し、吐息が文字通り氷の鎖となって戒める。
 能力を封じられ、霊体マロリーは抵抗する術を全て失うことに。

「は、はわわわ……!」
「キューっ!!」
「え?え――」

 その光景を見ておろおろとしていたマロリー本人には焔の灼熱の吐息をお見舞い。上手に焼けましたー。

「ふう……これで悪夢は終わりだな……!」
「お疲れ梓。やったね?」
「ったく、今度からは丸投げするなよな?」

 侵略蔵書もしっかりと燃え尽きたのを確認して、梓はふうと汗を拭う。
 相棒に悪態を吐きながらも、綾が気を引きつけてくれなければなし得なかったことであることは十二分に承知している。
 互いを労うように二人は拳を突き合わせた。


 かくして、猫の国での猟書家による一騒動は幕を閉じることとなったのである。
 でもあの後臭いはどうしたのかって?当時の騒動があって猫の国では非常に優秀な消臭剤が開発されて流通しているらしく、二日すればあらゆるモノからくさやとシュールストレミングの臭いは消え去ったらしい。
 もちろん猟兵のみんなに多少(?)ついてしまった臭いもキレイさっぱり取ってくれました、そりゃそうだ。

「このご恩は決して忘れないにゃ。今度遊びにきてくれたら盛大に歓迎するから、いつでもおいでにゃ!」

 ケットシーは恩を忘れない。
 この非常にトンチキな恩人記念碑が生み出した騒動を猟兵たちが解決したのも、きっとそう遠くない未来に恩人記念碑として物語が残ることになるのだろう。

 ……めでたし、めでたし?

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年12月10日


挿絵イラスト