13
こいねがう×あれかし

#UDCアース #感染型UDC #雨 #雨神『アメフリ』

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#UDCアース
🔒
#感染型UDC
#雨
#雨神『アメフリ』


0





 ――生贄なんていらなかった。
 ――清らかな水に満ちるはずのそこは、庶幾うそれに侵された。

 田舎の祖父母がたくさんの秋の食べ物を送ってきた。
 お礼にいかなきゃね、と母が言ったため、ゆうりは家族とともに、久しぶりに祖父母に会いにこの地へとやってきた。
 けれども大人の話は長くて、ちょっと退屈で、そのうえ兄は持ってきたスマートフォンでアプリゲームを始めてしまったので、いつも訪れた時のようにゆうりは探検へと行くことにした。
 お気に入りの鞄を持った。相棒のぬいぐるみを持った。スコップを持った。
 秋景色の中、畦道を走る。山の近くに秘密基地があるのだ。
『廃神社は危ないから近寄ってはいけないよ』
 そう言われているから、廃神社には近寄らずに近くの枯れ池で遊ぶ。跡地となった窪みに入っては、土の中から出てくるものを探す。池だったそこは昔のお金や、何かの形の何か、見知らぬ物が出てくる時もあってちょっとした宝探しのようだった。
 ゆうりは今回もスコップで掘って何かを探す。
「あれ? まぁるい、何だろう?」
 見つけたのは、丸い、木のボールのような物。長年水に浸かっていたそれは触れるとぼろぼろと崩れてしまったけれども。
『それはね、お人形さんの首だよ』
「!」
 男の子の声に、ゆうりはぱっと振り向いた。ボールのような物から手を離す。
 傘を差した男の子が、枯れ池の縁に立っていた。傘の内側ではぱたぱたと雫が降り落ちている。
『君は生贄の子? 彼らは今でも、首を落とせば雨が降るとでも思っているの?』


「皆さんは雨乞いに供犠があるのを知っていますか?」
 牛馬や人身を生贄にする儀式。それを大昔に行い、雨乞いをしていた地方で『感染型UDC』が発生したとグラース・アムレット(ルーイヒ・ファルベ・f30082)は猟兵たちに説明する。
「感染型UDCは、人の噂で増殖するUDCです。
 これを見た人、それを噂話やSNSで広めた人、その広まった噂を知った人すべての精神エネルギーを餌として、大量の配下を生み出すのが彼らのパターンとなっていますね。
 対処せずに放っておけば、いずれパンデミックが引き起こされることでしょう。ですから今回、皆さんにはUDCアースに向かっていただき、この感染型UDCの撃破をお願いしたいのです」
 発生した場所はとある田舎の地。
「感染型UDCは、噂を広めさせるため、第一目撃者――六歳くらいの女の子、ゆうりさんを敢えて生かし逃がしています。
 祖父母の家へと帰ったゆうりさんは、お化けを見たと家の人に話をし、お兄さんがSNSに上げた話が噂となり拡散されている最中です。大昔の、その土地の風習の裏取りや供犠の実態などがネットワークで調べられているようですね」
 ですが、とグラースは続ける。
「この噂を知った人々の精神エネルギーが、感染型UDCの第一発見者とその周辺に大量発生します。皆さんは急ぎ現地へと向かい、まずは精神エネルギーを糧として発生する敵の配下の対処をお願いします」
 祖父母の家から帰宅すべく、ゆうりたち一家は田舎道を車で走っているところであったが、そこへ感染型UDCの配下たちが現われる。
「一家は車の中ですので、そこに留まるよう声を掛けて敵を撃破していけば問題も起こらないでしょう。無事に撃破したあとは、ゆうりさんから話を聞き、目撃場所へと向かってください。そこに元凶がいます――その行く手は、怪奇現象によって異界のように変貌しているかもしれませんが――皆さんであればきっと大丈夫だと思います」
 猟兵たちに向かって、やや力強く頷くグラース。
「大体のところは現場判断となりますが、よろしくお願いしますね――それでは、ご武運を」
 そう言って猟兵たちをUDCアースへと送るグラースであった。


ねこあじ
 いつもお世話になっております、ねこあじです。
 何気に初のUDCアースシナリオです、よろしくお願いします。

 第1章、集団戦。
 第2章、冒険。
 第3章、ボス戦。

 第1章では、現地につくと既に感染型UDCの配下たちが発生しています。
 ゆうりさん一家は車を停め、中にこもっている状態です。
 車道にガードレールはなく、周囲は田んぼが広がっています。
 猟兵たちが現われれば、敵は猟兵たちへと向かってきます。
 まずは集団で襲ってくる敵を撃破していきましょう。

 第1章はリプレイ導入文はありません。
 プレイングはいつでもどうぞ。


 プレイングの採用はなるべく頑張るの方向です。
 再送が発生するかもしれません。
 なるべくないようにはしますが、シナリオのプレイング受付日・締切日が発生するかもしれません。
 お手数おかけしますが、マスターページやTwitterでご確認のほどよろしくお願いします。
150




第1章 集団戦 『黒翼の仮面』

POW   :    赤邪眼
【赤い眼から放出される光線】が命中した対象を燃やす。放たれた【闇属性を含んだ】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    超音波
レベル分の1秒で【音波による攻撃】を発射できる。
WIZ   :    急降下
【体当たり】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

春乃・結希
『wanderer』の攻撃力を犠牲に、移動力を上げる【ダッシュ】
飛び、走る勢いそのままに『with』を振り回し、まずは車を守れる位置へ
ゆうりさん達には軽く手を振って

村に伝わる風習、掟…いいですねロマンですね!
『アレ』を拾ったんか!どうなんじゃ!っておじいちゃんとかが怒るやつですっ
でもこれ、私達猟兵はみんなから何に見えてるのかな…村の守り神?
それはそれで嬉しいかもっ

とにかくゆうりさん達を守る事を最優先
強化された脚力で車の周りを走ったり飛び越えたりしつつ
近づく仮面を『with』と拳で叩き落とします【怪力】

…そういえば、あめあめ坊主も実は怖い所以があるのかなぁ?逆さ吊りですし…
なんてふと思ったり


ノイン・フィーバー
のどかな田園を、風船つきダルマ自転車で全速力で駆け付けますヨー。
車の近くの蝙蝠モドキを蹴散らした後着地しますが、ちょっと思ったより転送された場所が遠かったのか、全速でかけつけた結果、ゼーハー言ってる。

・戦闘
一見疲れてるように見え、面白可笑しい振舞いをしながら戦う。
言うなればジャッキーアクションみたいな。以下は例
→転んだと思ったら転びながら射撃する事で纏めて薙ぎ払うように射撃
→ひぃっ、とくるくる横回転しながら回避しつつ、側の蝙蝠に裏拳
→汗を拭いたタオルを放って邪眼を防ぐ


敵が塊っていたらUC発動。外付けしたDVDドライブが唸ります。刃とかドリルとかレーザーとか生やしたサメが蝙蝠モドキを襲う!


高吉・政斗
アドリブ大歓迎)
【WIZ】
久しぶりなUDCの依頼だぜぇ!

ココは良い田んぼだ、迂闊にFECTで入るのは勿体無い気がするな。
(主砲や榴弾筒もマズイ)

しっかし数が多いな…UDCの処分に追いつかねぇ…
しゃーない、新兵器で一網打尽にしてやるよっと。
(UC起動)

立ち回りは二足型と戦車型を入り混じりながら。
車道路を移動・着地地点として決めながら(学習力)跳躍・飛行ユニット(空中浮遊)・ダッシュを駆使して両腕ガトリングの一斉掃射維持をしながらコンキスタ(属性:光&水…を交互に試して有効な属性を選ぶ)も併用する。

あ、早々この家族の安否も必要だ、索敵用ビーコンを車に撃ち込んでおくぜ…接近するUDCは完滅!だ。



 UDCアースへと降り立った猟兵たちがまず視認したのは影の群れであった。
 平時であれば稲刈りの終わった田と、黄に紅にと色付く秋景色が楽しめるのであろうが、今は邪の気配が蠢いていた。
「ココは良い田んぼだ、迂闊にFECTで入るのは勿体無い気がするな……」
 局地対応型の鉄鋼製可変形戦闘車(Fe+C+Tank)――通称・FECTの中で高吉・政斗(剛鉄の戦車乗り・f26786)が呟いた。なるべく気を付けようと、そう思って。
 景色の中では一点に集中した影、虚空を旋回する影――絶え間なく響く鳴き声は『ギイギイ』と伴う音波を垂れ流している。解析し、デジタル化された音の拡がりが自動的にFECTの画面へと追加された。
「しっかし数が多いな……UDCの処分に追いつかなさそうだ……しゃーない、新兵器で一網打尽にしてやるよ、っと!」
 政斗の左腕が仄かに紫に輝き、ユーベルコード「Conquistador・rocketpod」が展開される。
「Mrコンキスタ、起動!」
「斬り込んできます!」
 合わせ、駆けだしたのは春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)だった。行先は集中する影の部分。
「アルダワの技術、使わせて貰います」
 結希が展開したリアレンジメントがwandererの蒸気魔導を活性化させた。次なる踏みこみは疾風の如きそれへと切り替わり、加速と跳躍によって『with』の間合いが伸びた。故にその斬線は広く大きく、斬り上げた軌道に一拍遅れて影が乗る。
『ギイイ!』
「!」
 一閃に薙がれ、漆黒から斬り開かれた場によい道が出来たとばかりに、黒翼の仮面数体が結希に向かって真っすぐ突っこんでくる。
 やや前傾ではあるものの斬り上げた姿勢の結希は更に体を捻り、真横へと跳ぶ。着地とともに漆黒の大剣を前へと構え直し、再び駆けた。『with』を構えたままその脚力が鋭さを補う。
「鬼さんこちらへ、ですね!」
 飛び回る影の合間に見えた車中の様子に気付いた結希は安心させるように軽く手を振ってみせた。
 高く跳躍し、『with』で一閃した結希はその動きに伴って拳を振るい敵を殴る。
「足場がいっぱいですねぇ」
 そう言って滞空のさなかに黒翼の仮面を踏みつけ、敵から放たれた赤邪眼を避けた。
 猟兵たちの動きに翻弄された黒翼の仮面たちが、集中していた場所から散開する。
 その時、敵を追尾する政斗の一斉攻撃が放たれた。矢型の誘導式徹甲弾頭ロケットがそれぞれを捉え、または挟撃による攻撃。鏃が喰いこんだ瞬間、破裂し徹甲弾独特の硬い音が数多に空に響いた。光属性の攻撃が空に輝く。

 響かない鐘を次々と打ち鳴らすような音が、一方その頃なノイン・フィーバー(テレビ顔のメカ野郎・f03434)の元へと届く。そして閃光。
 何故だかちょっと遠くへ転送されてしまっていたノインは、あぁ……! と頭でテレビな画面に「><」と映した。
「遅刻ですかネ……!?」
 のどかな田園風景のなか、風船つきダルマ自転車を全速力で漕げば、最高時速となった瞬間車体がちょっと浮いて速度のクールダウン。ゼーハーと乱れた呼吸を整えるための、合間の時間となった。
 降り立った猟兵たちの真逆から駆けつけるノインへ、結希の一閃に吹き飛ばされた仮面たちが態勢を立て直し向かってくる。
「自転車も急には止まれないんですヨー!」
 ……と言いながら指はブレーキにかけることもなく、そのまま突っ走るノイン。
 ガンゴン! と突撃しあうも完全に痛み分けの状態となり、更には巨躯な敵に自転車をひっくり返される突撃。
 転倒する音は機銃掃射の音によってかき消された。アームドフォート・typeGが乱射されたのだ。
『ぴぎぃ!』
 先行きの読めなかった攻撃に黒翼の仮面たちが嫌そうに鳴いた。
「ハー、びっくりシました」
「派手にひっくり返ったな」
 ノインを視認した政斗が呟き、跳躍。その間もFECTの両腕からガトリングを放ち、車に近付こうとした敵への一撃かつ牽制。
 ノインがきゅきゅっと汚れたテレビ画面と汗を拭いたタオルを放れば、何の偶然か、それとも狙ったのか敵にタオルが被せられ、一瞬慌てふためいた個体をダンッと政斗の弾が撃ち落とす。二足で着地したFECTが滑らかに戦車型へと切り替わった。
「おおーい、あんた、大丈――夫そうだな!」
 政斗が振り向けばノインはダルマ自転車のハンドルを右に左にと回し、敵を轢き飛ばしている。さり気に披露される体術も喜劇に組み込むそのスタイルは、まさにエンターテイナー。最中に政斗へとサムズアップしてみせて、
「さぁ、外付けしタDVDデッキからイラッシャイ! 世の中はこんなにも駄作とバカに溢れていますヨ!」
 本体であるヒーローマスク(テレビ)に外付けされたDVDドライブがぎゅぅぅん! と駆動した。
 Z-Class-SF-Exhibition!
 すると溢れ出たのはガトリングガン、刀、チェーンソーを生やしたサメたちだ。鋼鉄の牙で喰らいつくサメもいる。
 空を泳ぎ飛び回り、時に激しく頭を左右に振りながら、サメたちが黒翼の仮面たちを撃破していく。
『『『ぎぎギギギイイィィッ!』』』
 音波で仲間へと作戦を伝播したのか、黒翼の仮面が一斉にノインと政斗へ意識を向けた。
「――やべぇ!」
 政斗がユーベルコードを再び発動させる。SystemCRP――「Pod・Conquista」――生成するは、風。
 轟く風と羽撃ち。黒き大波の如く、急降下し押し寄せてくる敵陣へ三百六十もの誘導式徹甲弾頭ロケットが空へ放たれた。
 一弾が一体の敵を貫いた瞬間、その衝撃と余波に誘爆されるは残る三百五十九。爆発した『風』が秋空に吹き荒れた。
「た~まや~」
 とノインがお得意のマジックで色んな風船を飛ばし始める。
「は、派手ですねー。これ、私達猟兵はみんなから何に見えてるのかな……村の守り神?」
 うーん、と群がる敵を払いながら結希。ちらりと車を視線を向けてみれば、目に涙を溜めつつも、面白い動きをするノインをじっと見つめる女の子の姿。
(「すこしは恐怖が薄れてくれたかな?」)
 村に伝わる風習、掟――偶然それに触れてしまった少女であったが、その冒険心に結希は同調してしまうのだ。
(「『アレ』を拾ったんか! どうなんじゃ! っておじいちゃんとかが怒るやつです」)
「ですが、今回、怒っているのは「神様」ですかね?」
 大昔に雨乞いに供犠が行なわれていた土地。捧げられた生贄を受け取っていたのは雨を司る神、だろうか?
 以前、作ったあめあめ坊主を思い出す結希。
(「……そういえば、あめあめ坊主も実は怖い所以があるのかなぁ? 逆さ吊りですし……」)
 そして首をちょんぎられてしまうてるてる坊主の話。
 瞬間、悪寒が過り、結希は剣を構え背後を斬った。
「……!」
 一刀に両断されたのは黒翼の仮面。
 ふとした疑問が、何かに触れた。
 そんな気がした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

冴木・蜜
少女が媒介者となるとは
やはり感染型は厄介ですね
事が大きくなる前に食い止めてみせます

一家の安全を最優先に行動
車の傍に位置取り
立てこもる彼らを護ります

体内毒を濃縮
身体を液状化し
目立たなさを活かして車の影に潜伏

猟兵たちを掻い潜って車に近づく仮面が居れば
間に割り入り攻撃を代わりに受けます
痛みはありますが液状化し衝撃を殺せば大丈夫

そのまま飛び散った肉体も利用し
攻撃力重視の『毒血』
私の死毒で仮面を包み込み
全て溶かして差し上げましょう

私は万物を融かす毒
故にただ触れるだけで良い

どうか車内に留まって
ゆうりさんを抱き締めてあげてください
これは貴方がたにしか出来ない事

大丈夫
皆さんは必ず護りますから


ガーネット・グレイローズ
噂を媒体に増殖するUDCか、厄介だな。
情報技術が発達したこの時代なら、増えるスピードも速いってわけか。そして…誰もが感染源に成り得るのも怖いところだな。(ゆうり兄を一瞥)。
現場まではヒーローカー、BD13で移動。
「ここから先は危ない。じっとしていなさい」
ゆうり一家に軽い《催眠術》をかけて待機を促し、車から降りて戦闘準備。スラッシュストリングを《念動力》で操って周囲をなぎ払い、牽制。敵が集まって体当たりを仕掛けてきたらブレイドウイングで防ぐか《瞬間思考力》で回避し、【パイロキネシスα】で纏めて焼き払ってやるか。炎のいくつかはゆうり一家の車の周囲を旋回させて防護壁にしよう。

※アドリブなんでも歓迎



「噂を媒体に増殖するUDCか、厄介だな」
 優美なボディスタイル、2ドアクーペ・BD.13を運転しながらガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)が呟いた。既に視認している影の塊。
 稲刈りの終わった田と黄に紅にと色付く秋景色を楽しめる地は今、大量の黒翼の仮面たちが飛び回り、数多の赤き邪眼によって禍々しき風景となっていた。
「そうですね、感染型UDCはそれに尽きるかと」
 助手席に乗っている冴木・蜜(天賦の薬・f15222)が頷いた。
「今回は少女が媒介者となったケース――話によれば、祖父母宅で一泊か二泊はしているかと思いますが……それにしては、噂の広まりが異様に速いですね」
 言いながら考え始めている蜜の様子に、ガーネットもまた「ふむ」と思考する。
 アクセルを踏んだ。
 黒雲の如き影へ突っこむ――先陣である猟兵の一閃に視界が開けた――時にして刹那であったが。
「情報技術が発達したこの時代なら、増えるスピードも速い。そして……誰もが感染源に成り得るのが怖いところだな」
 そう応じたガーネットが車を停め、対向車の後部座席へと目をやった。少女の兄とやらを一瞥する。
「何らかの、『別の要素』も起因となっているのかもしれません」
 蜜が呟く。彼の意識は既に外へと向かっていた。
「……それが足し算となるのか、それとも掛け算となるのか――何はともあれ今はこの蝙蝠達を倒さなければ」
 言ってドアを開け、ガーネットが外へと出る。
 
「ここから先は危ない。じっとしていなさい」
 コン、とゆうり一家のファミリーカーを軽く叩き、ガーネットが声を張った。公的機関へと電話を繋げようとしていたのだろう、ゆうりの両親が怯えながらもどこかホッとしたように頷いた。
「大丈夫。皆さんは必ず護りますから」
 そう告げる蜜の隣で、ガーネットがゆうりの兄を見れば「サッ」と何かを隠すしぐさ。スマートフォンだろうか――けれどもすぐに仲間の猟兵の対処が施されたようで、何やら慌てている。
 戦場には、遠隔から敵をおびき寄せる者と車から一定距離を保ち戦う者。
 敵は素早く、この戦場において彼我の距離は無いに等しい。ガーネットと蜜はすぐに適切な立ち位置へ。
 一度、外套の内へと手を入れたガーネットが、鋭く腕を振り払った。抜刀の如き動きに伸びるはスラッシュストリング。
『ギギィィ!?』
 黒翼の仮面が斬り裂かれ、赤い閃光を放って消滅した。ガーネットが瞬発的に念動力を撃てば剣豪の一刀のような斬線が描かれた。次いで繰る力は柔く、緩く、舞うブレードワイヤーに触れた敵が裂傷を負う。
 急降下し、体当たりしてくる敵はその加速故に、マントを翻したガーネットの餌食となる。金属の翼に両断されたのだ。
 結界を構築するように攻撃を繰り出すガーネット。けれどもそれを掻い潜る黒翼の仮面たちもいた。
 敵の体は小さくはない。びゅんびゅんと速度を落とさずに飛び回る動きに伴う風も鋭く、一家の車を過るだけでも危険なレベルだ。
 彼らを物理的に――そう盾となり庇うのは蜜であった。
 ブラックタールの特性を活かして身体を液状化させた蜜は、一家の車の影へ。
 近付く仮面たちとの間に割り入るように自身の身体を伸ばした。
 衝突した身体は飛沫するも、
「全て、溶かして差し上げましょう」
 濃縮した体内の毒が敵を包みこみ、溶かしていく。
『ギャギャギャ――ギイッ!?』
 空へと舞い上がった黒翼の仮面が物質としての融解点を越えた瞬間、霧散した。
 攻撃力の高い蜜の毒血は自身の身体故有限ではあるものの、今、空で更に細かくなった毒が新たな獲物へと付着する連環へ。
「私は万物を融かす毒。故にただ触れるだけで良い」
 触れれば恐ろしい、毒。
 けれども蜜の声はゆるりと優しく、車内へと浸透する。
「どうか車内に留まって――ゆうりさんを抱き締めてあげてください」
 これは貴方がたにしか出来ないことだ、と。
 敵の赤邪眼が毒蜜を灼く。車を囲う、黒いタールが揺らいだ。
 蜜の護らなければという意志は強い。
 ガーネットが腕を振るえば、その先にサイキックエナジーの炎が円を描き広がっていった。
『キーーーッ! ギーーーッ!』
 黒翼の仮面たちが逃れるように散開する。
「私たちの前に立ち塞がるものは、すべて焼き払ってやろう」
 赤き瞳に焔を映し、ガーネットは宣告するのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

駒鳥・了
食べられる類の邪神ならアキが喜んで出て来るところだが
そうで無いなら僕、スミの仕事だね

今回の邪神は現代への順応と利用が得意なようだね、やれやれ

敵の殲滅自体は難しくはないだろうが
情報拡散元の子供(兄)が傍に居るのはいただけない
一家のスマホにハッキングをかけ
暫しシステムダウンして貰おう
その後に声掛け
怪異が収まりこの地を出たら復旧する、心配は不要だ
「スマホ復旧が怪異から逃げ切った証になる」と
誘惑と催眠を搦めて軽く暗示をかけておく

さて、弱くとも数は面倒だな
UCで少々動きを止めておこう
手近なところは無銘で纏めてなぎ払い、切り込む
攻撃はカウンターを叩き込むか残像で逃げるかで凌いでおこう


鈴久名・紡
既に車内の家族に対応している者が居る場合は
配下の排除を最優先に行動しよう

対応し切れていない場合は車内に居るように声を掛け
ゆうりの兄が動画など撮っていないかを確認し
撮っているようなら止めて削除するように言っておく

人には、知らない方が良いと言うこともある
日常から掛け離れたものを暴いても何も良い事はないのだから

煉獄焔戯を使用
弓矢に変化させた神力で射程内全ての敵に先制攻撃を仕掛ける
車に近付こうとする敵を最優先で射落とす

敵の攻撃は見切りと残像で回避する
回避することで車に命中するなど
被害が出る可能性がある場合は
その場合でオーラ防御で防ぐ事に専念

自身がダメージを負った場合は
以降の攻撃に生命力吸収を乗せて対処


茜谷・ひびき
感染型か、厄介だな
とりあえずはゆうりと家族を助けないと……

現場についたら車の中を確認
中に隠れててくれと声かけ
俺はあんた達を助けに来たんだ
大丈夫、なんとかする

敵は軽く殴ったり挑発して、車からは出来るだけ引き離そう
刻印を起動し腕を捕食態に
相手が生み出す炎は【火炎耐性・激痛耐性】で耐えつつ喰らう
その程度の炎で俺を燃やせると思うなよ

相手の炎をコピーしたらすかさず敵に放って【焼却】
燃やす対象は相手だけだ
田んぼは巻き込みたくねぇな

炎をコピーしてる間に敵に接近
燃えなかったやつは【怪力】て
引きちぎる
炎で多少は脆くなってるといいんだが

今回の封印解除に悪意はない
あの一家は巻き込まれただけ
だから……絶対に助けたい



 秋色に染まった山、田園の風景に数多の黒影が飛び交っている。
 ファミリーカーに集中せんとしていた黒翼の仮面たちは猟兵の存在を認め、一斉に攻撃をし始めた。敵は素早く、彼我の距離は無いに等しい。
 一気に戦場と化した場。
 安心するよう、声を掛ける猟兵たちであったが懸念がある。仲間の猟兵が車内でじっとしているようにと催眠を含めた声を届けたその時、中学生くらいだろうか。ゆうりの兄がサッと何かを隠すしぐさ。
 それを確認した鈴久名・紡(境界・f27962)は後部座席側の窓を、こん、と軽くノックした。
「そこの少年、そう、あんただ。今撮っている動画は、止めて削除するように」
『なっ、なんで……?』
 窓越しのくぐもった、声変わりもまだの問いに紡は溜息混じりとなるが教えることにした。
「人には、知らない方が良いと言うこともある。……日常から掛け離れたものを暴いても、何も、良い事はないのだから」
 そう言う彼へ向かう、少年の目には僅かな好奇心。
「Curiosity killed the cat――手っ取り早い方法がある」
 どこか緩く告げた駒鳥・了(I, said the Rook or Kite・f17343)――スミが自身の指を弾いた。
『あっ、あれ!? 落ちた!』
 端末を持って慌てふためく少年を、不思議そうに少女が見上げている。
 紡がスミへと目を遣れば、淡い微笑を浮かべられた。
「生物でも機械でも、時に理解不能な行動を起こす。それも己の不利になる事をね」
 一度だけ、スミの指先がくるりと円を描いた。
「……つまり?」
「一家のスマートフォンにハッキングしただけだよ。暫し、システムダウンだ」
 Spaghetti Code――念で組まれた不可視のプログラムで干渉したのだ。
 そんな二人の、車内には通さないやり取りにやれやれという風に茜谷・ひびき(火々喰らい・f08050)が一瞬自身の額に手を翳した。翻し、そのまま運転席側をノックする。
「大丈夫だ。あんた達はこのまま中に隠れててくれ。俺達はあんた達を助けに来たんだ」
 ひびきがそう言い、スミが続ける。
 怪異が収まりこの地を出たらスマートフォンは復旧する、心配は不要だ、と。
「スマホ復旧が今の怪異から逃げ切った証になる」

 一家へと集中していた敵を引き剥がすには猟兵たちも動かねばならない。
 敵の体は小さくはない。速度を落とさずに飛び回る動きに伴う風も鋭く、一家の車を過るだけでも危険なレベルだ。
 再びスミがSpaghetti Codeを放ち敵の駆動へと干渉した。
『ギイ!?』
 機動に優れた敵の飛行がぶれ単純な滑空状態となる。そこへ拳を繰り出すのはひびきだ。
 殴り飛ばした一体を追うように大きく踏みこみ、間合いに入ったもう一体を掌打した。
『キーー! ギーー!』
 一個体を相手にした動きをしているひびきへ黒翼の仮面たちが赤い眼から放出される光線を一斉に放つ。
「その程度の炎で俺を燃やせると思うなよ!」
 ひびきの刻印が起動し捕食態となった腕を突きだせば、光線が骨肉を通る。内部から延焼する仄暗き焔がひびきの肉を灼き血を灼く。
「欠片も残さず、灰燼に帰せ」
 紡が弓矢へと変化した神力をつがえ放てば、一射が数多に裂し、周囲の敵を射貫いた。
 ドンッ! ドドドドッと重低音が響き渡る。敵の音波が反響し合って銅鑼のように残るのだ。赤い光が砕け、闇が秋空に溶けていく。
 それでも光線が抜けてくればオーラを纏い穢炎を祓った。
 一家への庇いに専念している猟兵に残滓を任せ、煉獄焔戯の一矢で次なる敵を紡は射る。
『キシャアアァァァ!』
 鋭く鳴き体当たりしてくる黒翼の仮面を避けるスミ。
 ――否、横へと滑らせた片脚に重心を置き替え、地の構えから刀の刃を立て軽く上向ける。加速していた敵が一刀に両断され、そのまま踏みこんだスミが別敵へと無銘蛇目貫を斬り上げた。刃を翻し、逆袈裟からの斬り下げは身を捻り弧を描くような斬線に。
 なぎ払われた敵が消滅する。
 一方、闇属性を含んだ炎を両腕に纏わせたひびきが本格的に攻勢へと転じた。
 腕を振るえば赤の焔が放たれ、突撃してきた敵は迎え撃つように掴む。零距離で赤き射光が黒翼の仮面を染めあげ、炎が噴出した。
『ピ、ギィィ』
 炎噴く翼をばたつかせる敵をひびきはその怪力に任せ引き裂いた。
『ビ!?』
 翼をもがれ地面に落ちた敵は、炎に力尽きる前にひびきに踏まれ砕け散る。
「これが感染型UDCの力か……一体どれだけの精神エネルギーを餌にしたんだ?」
 数が異常じゃねぇか、と呟くひびきにスミが応じる。
「今回の邪神は随分と現代への順応と利用が得意なようだね」
「……下地となる原因がいくつかあるのかもしれない」
 紡も呟き応じた。
 水面下で原因になりえる素が数多に散っていたのなら、『きっかけ』でそれらが釣れたのかもしれない。一つのちょっとした噂が数多の噂に繋がっていたとなれば、調べて暴きたくなるのが人間というものだ。
 雨乞い。雨となれば司る神は龍神、竜神、大蛇、他には……。けれども思考を巡らせる暇など敵がくれるわけでもなく、敵の生命力を奪う戦法へやや切り替えた紡が応戦し続ける。
「だが、今回の第一発見者――ゆうりに悪意はない。あの一家は巻き込まれただけだろ」
 敵へ炎を撒きながらひびきが言う。
「だから……俺は絶対に助けたいんだ」
「それは勿論だ。助け、事件を解決するために僕達は来たのだからね」
 ひびきの強い意志は充分に同調できるもの。緩やかに、だが決して揺るがないスミの声もまた同じ響きなのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

文月・ネコ吉
感染型UDC、また厄介な奴が出て来たな
しかし…雨乞いの供犠か

望まず血濡れた枯れ池の神は
噂を広げ力を得たその先に何を願うというのだろう
(目を閉じ、雨呼ぶ刀を握り直す

■戦闘
素早く周囲見渡し情報収集
瞬間思考力で状況判断
走りつつ黒翼達の動きを見切り
猫らしい身軽な動きで割り込んで
車と一家への攻撃を庇う
手にした刀と闇色のオーラ防御で武器受けし
カウンターで斬撃と共に衝撃波を放つ

蝙蝠の仮面とはまた
ハロウィンの売れ残りでもあるまいにな(苦笑

そのまま攻撃続け注意を引いて
敵の群れを一家から引き離そう

急降下で狙われたら
接触直前に闇纏いで姿を消して狙い狂わせ攻撃回避
流れる様に滑らかな暗殺技能で背後から切り捨て倒す
次々と


四宮・かごめ
※アドリブ連携OK
(しゅたっ)忍者参上。
世間の口に戸は立てられないのが寧ろ常。
形を取ってくれれば分かり易いというもの。これより密命開始でござる。

まずは、広い戦場を利用して駆け回ったり、回避したりして、敵の気を引くでござる。

なんとなく音にも反応を示しそうなので、
餌付けした鳥でも呼ぶように手を叩いて、
多めに集めておくでござる。

追い詰められ、赤邪眼を放たれる寸前、煙玉を足元にちゅどーんするでござる。

煙の中で闇の炎を避けつつ跳躍。
さらに竹把大明神(JCの足元にあるの)も踏み付け、一気に敵の近く、上空へ。

煙の中でも見えるであろう、赤く光る目に向けて剣刃一閃・臨を発動。鉈で両断するでござる。にんにん。



 降り立った先、UDCアースの田舎の風景は四宮・かごめ(たけのこ忍者・f12455)の視界にとても馴染むものであった。
 稲刈りの終わった土剥き出しの田んぼ。黄や紅にと色付く山の葉。
「ノビル、アケビ、山椒などの山菜が豊富な時期でござるな」
 山菜採り向けの土地だろうな、と察するかごめ。
 けれども長閑であるはずの風景に飛び交う黒い影。かごめは目を敵へと向ける。
「感染型UDC、――また厄介な奴が出て来たな」
 落ち着き払った声でそう言ったのは文月・ネコ吉(ある雨の日の黒猫探偵・f04756)。無意識に情報を集めようとしているのか、ケットシーのひげが立っていた。
 こくんと頷くように頭を傾けたかごめは、そのまま目を伏せる。
「……世間の口に戸は立てられないのが寧ろ常。形を取ってくれれば分かり易いというものでござろう」
 にんにん。
 そうだな、というネコ吉の声を背にかごめは駆け出す。忍膝当が彼女の動きをしなやかに、より俊敏にしてくれた。
「しかし……雨乞いの供犠か」
 叢時雨を手にネコ吉は呟く。
 伝承としては数多く存在する雨乞いの儀式。くん、と香るは鉄錆のもの――赤黒い、黒翼の仮面たちが纏う匂いだろうか。
 目を閉じ、脇差の柄に触れる。
「……望まず血濡れた枯れ池の神は、噂を広げ力を得たその先に何を願うというのだろう……」
 薄く目を開けば覗く青。そこに在るのは達眼の士。

 いかに蝙蝠のような姿をとっているとはいえ、敵の体は小さくはない。
 かごめの頭ひとつぶん、一抱えぶん、巨躯の敵が飛び交えばぶつかった時の衝撃はもちろん、起こる風すら鋭い。
『ギィーーーッ!』
 自身に向かって突撃してくる個体をひらりと避けたかごめは、そのまま身を捻り大きく方向転換。傾けた身体はそのまま下方に、前転し跳ねた。
 忍者としての軽業を活かし跳び回れば、敵数体が翻弄されながらもついてくる。
 びゅんと近くを過った個体が風を切り、否、複数のびゅんびゅんとした音がかごめを囲んだ。
 駆けながら、パン! と鋭く手を打ち、紫の襟巻に隠れた口をピュイと鳴らす。
 その合図に乗ったかのように集ってきた黒翼の仮面たち。赤い眼から光線が放たれる――その寸前、かごめがソフトボールサイズの玉を地面に叩きつければ、ボン! と噴出する大量の煙。
 次の瞬間にはかごめの身は虚空に。
 いつも彼女の傍に在るのであろう、竹把台明神を踏み切っての高い跳躍にかごめの視界に映ったのは爆煙と一点に集中する赤い光。滞空の時は設けず、くるんと回転したかごめが任意のタイミングで降下する。
 その手には、鉈。
 敵の赤く光る目は煙の中でもよく見えた。
 降下の勢いに乗って振り下ろす剣刃一閃・臨は、黒翼の仮面の体を両断する。

 忍びとはまた違う、しなやかで俊敏な走りを見せるネコ吉。
 ケットシーという自身の種族特性を活かす彼は、スライディングしてくるように低空飛行で突っ込んできた敵を跳躍して回避する。空中で回転し、若干の軌道変更。
 手にした刀が敵牽制へと振るわれ、ゆうり一家への道を拓く。
 闇色のオーラを纏い、車近くを過る豪速の敵へと刃を立て体当たりしたネコ吉は、一瞬だけ黒翼の仮面の巨躯に乗っての飛行。立てた刃は敵胴へと喰いこんでおり、そのまま斬撃を放った一閃には衝撃波が乗せられていて、煽られた敵陣の飛行がぶれた。
 音なく着地したネコ吉は全身を使って叢時雨を斬り上げる。
 名の如き、降っては止み、止んでは降る――斬撃は敵を捉え振るわれ続けた。
 飛び退き様の一刀が風を起こし敵の陣を乱す。
「蝙蝠の仮面とはまた……ハロウィンの売れ残りでもあるまいにな」
 呟き、苦笑するネコ吉。真珠粒が装飾されたマスカレイドのような敵。
『ギッ! ギギィ!』
 一体の敵が高らかに鳴けば虚空でぎゅるっと回転した複数体が加速し、まるで下に向けて跳躍したかのよう。
 うち、突出した一体へと目を向けたネコ吉が闇を纏う。瞬間、消失した彼は敵の眼にどう映ったであろうか。攻撃目標を見失った黒翼の仮面が地面で一度強くバウンドし、消える。
 目を瞬く間の出来事であった。
 再度、現れた敵は両断されており、推進力のかかった真っ二つの体は一度空へ――そのまま放られたかのように落ちていく。
 それは一体だけではなく二体、三体と続け様に。
 敵の背後を取った斬線は、ネコ吉とかごめの二つ。縦横へ振るわれる剣速を披露する二人は次々と敵を斬り伏せていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

城島・冬青
【橙翠】

一家が車の中に籠ったままなのはひとまず安心ですね
とはいえいつガラスが破られるかわからない状況、サクッと全滅させましょう!
は?感染型とか聞いたことなかったですよ!?
後で詳しく聞かせて下さい!

ダッシュで車に群がるコウモリっぽいの(黒翼の仮面)に接近、反応される前に叩き斬る
ん?これって別にコウモリじゃなくてマスクっぽい?
まぁいいや、群れには群れをぶつけましょう
スカシバちゃんカモン!
召喚したスカシバちゃん達を敵に纏わりつかせ
スカシバちゃんの包囲網から逃れた個体は刀で叩き斬る

光線は残像で回避!
熱いのも燃えるのは勘弁ですからね

車の中ではゆうりさん一家が怯えてるでしょうから早く倒しちゃいましょう


アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】

人の命の身代わりに人形を捧げる
そういう物に触れてしまったのが因果を結んだのかもネ

感染型UDCは厄介な相手だ
昔なら噂の広がった村ひとつ滅んで終わりだったけど
現代はインターネットがあるからネ
早く止めないと被害が広範囲に広がる
僕のUDCも感染型だからヤバいのは知ってる
っと
今のは聞かなかったことに、
してくれなさそうネ
苦笑い
ハイハイと生返事してごまかそう

コウモリならかわいいとか思ったけど騙されたネ
飛ぶ仮面に用はない
さっさと仕留めるとしよう
UC発動
数には数をぶつけて
PhantomPainで掃射

戦闘後ユウリから話を聞く
お兄さんはSNS消した方がいいネと軽くアドバイス
(飛び火は少ない方がいいからネ)



 UDCアースで暮らす二人は、瞬間的に離れていた世界へ再び降り立つ。
 黄色や紅色へ色付く山、開放感のある田園の風景はまるで秋の行楽にでも訪れたようにも見え――否、飛び交う黒い敵陣が長閑な世界を一変させていた。
「一家が車の中に籠ったままなのはひとまず安心ですね」
 花髑髏を手に、いつでも駆け出せる態勢をとった城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)が言う。
「とはいえいつガラスが破られるかわからない状況、アヤネさん、サクッと全滅させましょう!」
 困った人を放っておけない冬青はいつものように荒事へと飛び込む前の、真剣な表情。
 冬青と同じく、真剣な眼差しで周囲を見回し状況を確認していたアヤネ・ラグランジェ(十二の結び目を解き放つ者・f00432)も頷き言った。
「うん、感染型UDCは厄介な相手だ。昔なら噂の広がった村ひとつ滅んで終わりだったけど、現代はインターネットがあるからネ」
 駆け始めた冬青の後に、ぴたりと添うようにアヤネも走る。その手には相棒のアサルトライフル。
 現代社会は簡単に調べることが出来、情報も共有しやすい。ネット上には詳しい人もいて、まとめサイトなるものも作られているのだ。近年凶暴化、頻出化しているアンディファインド・クリーチャーは看過できない。
「早く止めないと被害が広範囲に広がる。僕のUDCも感染型だからヤバいのは知ってる」
 アヤネの言葉を聞いた冬青の思考が一瞬ぴたっと止まった。それでも走り続ける体に引っ張られ、すぐにハッと我に返る。
「っと、今のは聞かなかったことに――」
 と続けて言ったアヤネの声に、自身の声を被せる冬青。
「は? 感染型とか聞いたことなかったですよ!? ウロボロスくんが!?」
「――は、してくれなさそうネ」
「アヤネさんっ! 後で詳しく聞かせて下さい!」
 怒ったように言う冬青であったが、振り向いた表情、その瞳は心配するものだ。
 不安もあるかな? と彼女を一瞥したアヤネは、苦笑してみせた。
「ハイハイ、後でネ。後で」
 明らかに生返事だ。絶対ですよ! と言って冬青が抜刀する。

 駆ける冬青がゆうり一家の車近くで飛び交う黒翼の仮面へと迫る。
 戦場を駆ける――その鍛練に磨かれ続けた冬青の瞬発力は稲妻の如き一閃でもある。
 弾ませた脚力に乗るのは花髑髏の一振り。繰り出した斬撃に敵一体が両断され、遠心を掛け円を描く斬線が更に背後の一体、斜めに斬り上げた先に一体。
 ここまで三拍。冬青が続け四拍目を刻む。
 片脚を軸に仕上げた体幹の直線と、もう片方の脚で軌道を定め、機動に長けながらもブレのない斬撃が放たれていた。
「……ん? これってコウモリじゃなくてマスクっぽい?」
 そこでようやく真っ向から視認したソレに気付くのだ。マスカレイドに装飾される真珠粒のようなもの。小さくはない敵の体は、速度を捉え、読みさえすれば当てやすい。
「まぁいいや、群れには群れをぶつけましょう! スカシバちゃん達、カモン!」
 突撃してきた一体を叩き斬った花髑髏が冬青の声に呼応する。ぶわっと出現した花弁はオオスカシバの形を取り、敵へと向かって行く。

「コウモリならかわいいとか思ったけど騙されたネ」
 マスクっぽいと言った冬青の声に、口端を上げるアヤネ。
「飛ぶ仮面に用はない。さっさと仕留めるとしよう」
 そう告げて召喚するのは小型の戦闘用機械兵器たちだ。
 エレクトロレギオンに対抗するように、急降下し旋回する敵たちが機械兵器たちへ体当たりし消滅させていく。
 衝突の瞬間、加速は止められ弾かれるように――敵の刹那の滞空。そこを狙い定め、PhantomPainで撃ち落としていくアヤネ。450体の機械兵器による足止めにアサルトライフルも連射に火を噴き続け、耳を劈く音が絶え間なく続く掃射となった。
 少し離れた場所で戦いを繰り広げる冬青は、オオスカシバ包囲網を逃れる個体を刀で叩き斬っている。
 赤い光線にも駆使する脚力と残像で回避した冬青はアヤネへと声を張った。
「アヤネさん、車の中ではゆうりさん一家が怯えてるでしょうから早く倒しちゃいましょう!」
「了解!」
 車を中心に、対角に陣取った二人が徐々に背を合わせるように距離を縮めていく。

 猟兵たちの手で倒されていく黒翼の仮面たち。
 黒雲のように塊を形成していた敵陣は撃破により徐々に消えてゆき、本来の長閑な秋景色を取り戻していくのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 冒険 『封神祠巡り』

POW   :    発生した怪物を倒す。歩き回って壊れた祠を探し、新しい祠を設置する。

SPD   :    発生した怪物を倒す。素早く壊れた祠を治す、或いは新しい祠を作り置きする。

WIZ   :    発生した怪物を倒す。周辺住民から祠の在り処を聞き込む。祠に魔除けを施す。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「た、助けて下さり、ありがとうございました……!」
 黒翼の仮面たちを撃破し、いつもの長閑な田舎の秋景色へと戻ったのを確認できたところで猟兵たちが合図をすれば、ゆうりの父親が車から出てくる。
 まだ携帯端末は遮断されたままで、車内のゆうりの兄は焦った顔。
 猟兵たちが怪異の解決に赴いたこと、そして元凶であるモノを目撃したゆうりに話を聞きたいと告げれば、青褪めた顔色のままではあったが父親は了承する。
「完全な解決としなければ、また狙われるかもしれないしな」
 そういった猟兵の言葉に息を呑む。
 車の扉を開け、父に促されるように出てきたゆうりは恐る恐るといった様子で猟兵たちを見上げる。
 仲間の一人が和ませるように手品を披露する。一瞬作った拳を翻せば、その掌には野花を一輪持つ小さなうさぎの人形。
「かわいい……!」
 ぱっと表情を綻ばせたゆうり。
 彼女の視線に合わせるように「目撃したこと、目撃した場所」を猟兵が尋ねる。
「はい、じんじゃ、の近くに土のやわらかなところがあるの」
 かつて池だったことを知らないゆうりはそんな風に言う。そこに怖い男の子がいたことを。
 叱るような、怒ったような、けれども静かな声で話しかけてきた男の子は傘を差していたこと。
 その内側でぱらぱらと雨が降っていたこと。
 ゆうりの父に端末に入っている地図を見せれば、廃神社の正確な位置が割り出せた。
 情報を共有しあった猟兵たちが頷き合う。
 感染型UDCによって致命的なパンデミックが引き起こされる前に、大至急向かわなければ。
「あ、お兄さんの方のSNSは消した方がいいネ」
 飛び火は少ない方がいい、と父親へとアドバイスする猟兵の言葉に「そうします」とゆうりの父。まだSNSには触れるには精神が未熟なのだと思ったようだ。

 ゆうり一家に別れを告げて、猟兵たちは目撃現場へと向かう。



 其れは雨を司る神となったもの。

 天を渦巻く水の大蛇に雷を放ち、地に雨をもたらした神子。
 天の王に逆らい、人のために雨を降らして三つに裂かれた龍。
 餓えた人々に討たれ、水棲であるその身を媒介に雨を降らせることとなったドラゴン。
 緑無き荒野に突然の止まぬ雨、遠く離れた湖沼と繋がった大地を旅する魚はやがてその地に漁撈をもたらした。

 神となり、あらゆるものから乞われた願いの先に生まれた、神の感情。
 神のよろこび、神のかなしみ、神のいかり、神のたのしみ。
 慈しみ、恵む雨。
 嘆き、轟く雨。

 生かし、殺す。神はたくさんの雨を司った。



 感染型UDCの『棲家』へと向かう猟兵の行く手を阻むのは、異界のような迷路だった。
 石造りの迷路だったが、見上げれば空。けれども曇っていて今にも雨が降りそうだ。
 どう進んでいくべきだろうか。足を止め、考える猟兵。
 ふと、気付いた時には目前に一つの灯がゆらゆらと。
 灯は何処かへと還るようにゆらゆら進み、猟兵は後をついていく。

 迷路が拓け、出た場所は――。

 ただの道端かもしれない。
 寺社仏閣、はたまた外国の神殿の片隅かもしれない。
 学校の裏庭かもしれない。
 戦場、墓地、花畑。

 追っていた灯は『怪物』へと変化した。

『私は龍燈。
 よろこび、かなしみ、いかり、たのしみ。
 蓄積された念が今はとても煩わしい。
 貴方はそれを祓ってくれますか?』

『私は祠に還りたい。けれども、解放もされたい。
 壊れてしまった祠は私の家。けれども牢獄』

『私の灯の行く末は、あなたに委ねましょう』

 一方的にそう告げて、『怪物』は猟兵へと襲いかかる――。



=====
=====
(マスターコメント)
 補足です。
 『怪物』が一体いるので、怪物が願う通り、撃破してください。その怪物の姿は指定してもいいですし、MSにお任せしても大丈夫です。
 怪物を倒したら、祠探しとなります。
 今いる場所は、どこかの道端、裏庭、戦場でもいいです。指定してもいいですし、MSにお任せでも大丈夫です。
 祠を探し、見つけた祠を治すか、壊れたままにするかをプレイングで指定してください。
 皆さんの選択が、第三章の感染型UDCは邪神ではあるが、善性であるか・悪性であるか、どちらになるのか数値として振り分けられていきます。
 全体的にふわっとしてますが、ふわっと前提なので大丈夫です。
 それでは、プレイングお待ちしています。
=====
=====
ノイン・フィーバー
場所:神社の廃屋
化物は人柱にされた者達の骸で作られたがしゃどくろ(巨大な骨)
骸はそれぞれが怨嗟の声を吐く
どうして私だけ、首を返せ、等

対応:
開幕UC
『彼女』を召喚

彼女は正面から突き進む
可能なら骸の呪いを吸い上げ、怒り狂う骸達を『彼女』の怨嗟と怒りで逆に我に返し、狼狽えた所を殴って砕き、骸の魂を開放

「龍灯サンノ重荷は、多少でも落ちタでしょうかネ?」

祠:
破壊した化物の足元に埋まっている
「彼女」がそこを指さし、ノインが丁寧に掘り返す
いつもの手品で材料と工具を取り出し、崩れた祠を丁寧に直す

「空から海へと流れるように。アナタの雨は、今ノ人々へ流れテいます。だから、見護ってあげて欲しいノですヨ。ワタシはネ」



 ノイン・フィーバーの追っていた龍燈は、ガチガチガチと音を鳴らす怪物へと変化していた。
『水が、水が欲シイ』『どうしてワタシダケ』『アア……あいつら……寄って集っておれを……』『暗いよ、冷たいよ』
 ノインの立つ荒れた室内にて、巨大な骸骨姿のそれが、集ったひとつひとつの骨が鳴くように声を響かせる。
「がしゃどくろですカ」
 ガシャリ、とがしゃどくろが動けば部屋自体が揺れた。
 怪物から距離を取るように後退しながらノインは素早く周囲を見回した。彼がいるのは廃屋で間違いないのだろう。だが、広い。
 木造りの部屋は荒れていて、崩れた屋根から空が見える。
 奥には舞台と祭壇があり、舞台を囲う欄干は壊れていて神具が散乱している。
 がしゃどくろは片腕しかないそれをノインに向かって伸ばした。
『首ヲ……返ジ……デ』
 瞬間、ザッ! と数多の音がノインを囲んだ。放たれた一閃はノインに向かったものではなく、虚空での振り下ろし。滞空した鞠のような影が現われ、刹那の滞空の後、一斉に床へと落ちた。
 ドン! と何かが落ち、ゴロゴロと重い何かが転がる音は複数故に地鳴りのようだ。
「ショータイムです、ミス。ここハ『あなたがた』の舞台――貴女のその怨みをそのままぶつけても良いノです」
 ヒーローマスクであるテレビ画面がザザザザとモノクロの砂嵐を映し、仄暗い廃屋に光が照らされる。
 ユーベルコード・仄暗い井戸の底からを発動すれば、長い黒髪で顔を覆う少女「彼女」が出現する。ずるりと地面に降り立てば僅かに揺れるワンピース。黒髪は剥き出しの四肢に絡み、そして床へと広がった。
 口から放たれる唸り声は咆哮に近く、骸たちの怨嗟に満ちた声を同じそれで掻き消した。
 正面を突き進んだ「彼女」ががしゃどくろへと掴みかかった。
『そう! 怒っていい!!』『どうして私達が死ななければいけなかった!?』『面男の舞いに、いつ刀が振るわれるか――とてもとても怖かった!』
 ひとつの声に舞いの瞬間が思い出されたのか、骨たちはガタガタとその身を震わせた。
 その声を放った骸骨を「彼女」は殴って砕く。
『助ケテ、タスケテ……!』
 がしゃどくろの声はノインの「彼女」を恐れてのものなのか、否、無力な彼らの声に拳を振り上げる彼女は怒っていた。がしゃどくろを見えぬ悪意の手から逃すように、向けられた声の骨を殴っては砕く。
 生きるために、皆のために、と言われ人柱となった骸たちであったが、どんな耳障りの良い言葉が与えられたとしても殺されたことには変わりはない。
「彼女」もまた、殺されたのだろうと分かる怒りの一撃。巨大な骸と、拳を振るう「彼女」をノインは静かに見守る。

「龍灯サンノ重荷は、多少でも落ちタでしょうかネ?」
 骸骨が砕き終え、残ったのは散乱する骨と儚き灯。ゆらゆらとした光が地面へと落ちていく。
 ノインを振り返った「彼女」は床を指差した。板の割れた先に床下が続いているようだ。
 覗きこめば半ば土に埋まった石。
「ここはワタシにお任せを」
 床下に降り、丁寧に石を掘り返すノイン。元々祠があった場所に今は廃屋となった神社が建ってしまったのだろうか? 野の大きな石にも見えたそれはきちんと手にしてみれば、立派に形成されたもの。
 次いで現れた石床を見てノインが手をひらりとさせればその手にはノミ。削り直し、きちんと自立できるように調整する。
 その間に「彼女」は周囲の床を剥いでいく。ノインが仰げば、空が見えた。
 もう倒れてしまわないように、埋もれてしまわないように、ジャグリングで現れた石を周囲に敷けば立派な石祠が建った。
「空から海へと流れるように。アナタの雨は、今ノ人々へ流れテいます」
 彼が指先をくるくるとすれば袖から細い注連縄が出てくる。石祠にまき、御幣をそなえれば「彼女」はノインと祠から距離を置くようにやや離れた。
「だから、これからも、見護ってあげて欲しいと思うノですヨ。――ワタシはネ」
 ノインがそう言葉を添えれば祠の奥が仄かに光った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

冴木・蜜
目蓋を開けば花園
うつくしい、けれど何処か寂しいような
モノクロームの庭

還りたい
でも解放もされたい、か
委ねられているのですね

私は……、毒は
いのちを奪うもの
だから貴方の望みを叶えるのは容易い

ですが
苦しんで欲しいわけではないのです
どんな命であれ
出来ることなら最期は穏やかであってほしい
だから『耽溺』を
微睡みの中で静かに私の毒に溺れて
眠るように逝けたなら

事が済んだら祠を探しましょう

…、ああ
長い間放置されて風化が進んで
寂しげですね

家でもあったのでしょう
ならば壊れたままというのは物悲しい
治しましょう
私が出来るのは形を整えるくらいでしょうけど
心を込めて、丁寧に



 冴木・蜜がゆるりと瞼を開けば、そこは白と黒、狭間の色が織りなすモノクロームの世界であった。咲くたくさんの花々には朝露の雫。
 空を一瞥すれば大地と変わらぬ色。
(「うつくしい……けれど何処か寂しいような――」)
 追ってきた龍燈は大蛇へと変化し、その巨躯でぐるりと蜜を囲う。
 くねくねと踊るように動く胴、威嚇し開いた蛇の口を、蜜はただただ静かに見遣る。
「還りたい。でも解放もされたい、か……委ねられているのですね」
 透き通る、けれども相手へと染め入るような蜜の声が大蛇のために発せられた。
 手を翳せば大蛇の頭が近付く。触れないように目前の存在に添う蜜の手。
「私は…………」
 そう呟くように言って、
「毒はいのちを奪うものです。ですから、貴方の望みを叶えるのは容易いです」
 そっと大蛇に触れれば水の感覚。
 触れた指から波紋のように広がった何かが蜜に記憶を見せてくる。
 大蛇は池のほとりに棲んでいた。大蛇が乞えば雨が降る。いつだったか人に目撃された大蛇は蛇神として崇められ、気軽に鼠狩りにも行けなくなった。
 願を掛けるのならば、その姿を人に見られてはいけない。偶像崇拝の対象となった大蛇の願掛けは次第に力を失っていった。
「……そして人々は勘違いをして生贄を送ってくるようになったのですね」
『自由が欲しかった』
 大蛇が言う。ほろほろとその瞳から光が落ちていく。光はモノクロームの庭へと落ち、色を失う。
 かえりたい。
 呟いた大蛇に触れる。冷たい、神水の気配だった。己の毒蜜が少しずつ、薄く広がっていくのを感じて蜜の心が震える。
 水は記憶していた。
 落とされた娘の頭が枯れゆく池に転がる。跳ねた泥がその温かさを伝えてくる。彼女はかつて水田で遊んでいた大蛇に獲った田鼠をくれた娘であった。
「泣かないで――私は、貴方に苦しんで欲しいわけではないのです」
 どんな命であれ、出来ることなら最期は穏やかであってほしい。
 蜜はそう願うのだ。蝕むように、滲むように――浸透していく蜜の麻酔。
 耽溺が神水へと流れていく。
 水の記憶は少しずつ朧となり、空を映した。
 一面に、空を映す水田が好きだった。よく池から出て田んぼで遊んだ。
 伸びていく緑が、黄金色へと変化して豊穣の祭りが行われる。
 美味しくできたね。来年も雨が降るといいなぁ。
 元々の大蛇は、人々のちょっとした願いを叶えていただけであった。密やかな雨乞いをすれば、皆が笑ってくれた。
 あの頃にかえろう。

 微睡のなか、眠るようにその身を解き霧状へ。
 一筋の風を感じて蜜は歩む。
 …………ああ、と見つけたそれに思わず声が零れた。
 花畑の隅に、崩れた祠。周囲には蔦が這い、苔だらけとなった祠に小さな蛇の像が置かれている。屈みこむ蜜はそっとその蛇像を撫でた。
 長い間放置されていたのだろうと察してしまった。
「すっかり風化が進んで……寂しげですね」
 そう話しかけながら蔦を払い、苔を取り除いていく。
「ここは貴方の家でもあったのでしょうね」
 蜜の声とともに風。霧は少しずつ薄れていって、水気の満ちる空気を祠は纏い始めた。
 自身に出来るのは形を整えるくらいだろうと思いながらも、蜜は心を込める。
 蛇像を拭ってやれば、彫られたその表情は穏やかなものだ。
「少し、木陰を作りましょうか」
 払った細い蔦を捻り注連縄のようにした蜜は、像の少し手前上へ、祠にまいた。
「こうすると、覗きこまなければ貴方が見えません」
 けれども蛇像からは大地がよく見える。
 密やかに見守っていたかったと言った大蛇に、祠に、蜜はそう告げるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

春乃・結希
果てしなく広がる秋桜畑
私からあなたは…同い年くらいの女の子に見えます

今のあなたは、願いと想いに縛られているのかな
人の願いを叶える神様…
私には、想像も出来ない苦しみや葛藤があるんだと思う
あなたに、自由になりたいって気持ちがあるのなら
私はそれを叶えてあげたい
願われるばかりやと、きっと疲れちゃいます
たまには、あなたが願ってもいいんやないかな

祠は直さない
私は旅人で、帰る家もないけど
だからこそ、私の想いのままに、旅をすることが出来ます
帰る場所が無くても、前には歩いて行けるはずです
でも…ここから先は、あなたの道
だから本当は、あなたの意思で決めて欲しいな
どちらを選んだとしても、最後まで付き合うから



 風が吹き、葉や花が擦れ合う秋桜畑は耳をすませば涼やかな音。
 ピンクや、橙、白と紅の秋桜が果てしなく広がる高原で、春乃・結希は一人の女性と向き合っていた。
「私からあなたは……同い年くらいの女の子に見えます」
 『with』の柄に手を添えながら結希は言う。
 長い黒髪を三つ編みにした彼女の秋空のような青の瞳は冷たい。――彼女は『怪物』なのだろうか。
『私は、この年頃の時に大蛇となったの』
 彼女の声も冷たい。凍る最中の水に指先を浸したかのような感覚を結希は持った。そして驚きに目を瞠った。
「大蛇に……?」
『ええ。元々は、雨を請い願って龍になるつもりだったの。けれども父親に願いを掛ける姿を見られてしまって、儀式は失敗したわ――願掛けは、人に見られてはいけないモノだったから』
「それからどうされたんですか?」
『もののふに裂かれて、この血肉をもって雨乞いの儀式となったわ。皆、勝手ばかり! 祠を建ててそこに私を閉じ込めて、祀るなんて――』
 ――どうか雨を降らせてください、蛇神様。
 ――どうして祈りを聞き入れてもらえないんですか?
『降れば礼を言う。ねえ、もう放っておいてくれない? 雨神に届けたい願いは、何を媒介にしているのか、したのか――知っているくせに!』
 娘の咆哮に、とうとう結希は飛び退って『with』を抜いた。
「あなたは今も、人々の願いと想いに縛られているんやね……」
 呟く。
 血肉と彼女は言った。きっと彼女の力は身と魂を削ってきたものだ。
 ね、と結希は穏やかに呼びかける。
「あなたの『願い』は放っておいて欲しいってことですか? 龍になって、何をしたかったんですか?」
 蛇神に尋ねるということを、祀ってきた人々はしてこなかったのだろう。ほろりと瞳から小さな灯を落とした彼女は険の取れた声で答える。
『最初は日照りの続く村を助けたかったの。でも、失敗しても声は果てなく続いた……とても重くて、祠から出るのも億劫だった』
(「人の願いを叶える神様……きっと、私には想像も出来ない苦しみや葛藤があるんだ……」)
 日本だけじゃない。世界中に神様はいて、同一神みたいに繋がる神様もいて、すべての人の祈りが届けば重いのかもしれない。
 その一端を担っていたのだろう彼女へと結希は刃を向けた。
「あなたに、自由になりたいって気持ちがあるのなら私はそれを叶えてあげたいです」
 願われるばかりやと、きっと疲れちゃいます。そう言って結希が微笑むと、こくりと頷く蛇神、否、彼女。
「たまには、あなたが願ってもいいんやないかな」
 そう告げて、上段の構えから全身全霊を込めて振り下ろした『with』が彼女を斬り裂く。
 真摯に、相手を尊重する優しい一刀であった。
 あなたの言う通り、自由になりたいわ――声なき声が、虚空を震わせて願う。
 肉体は細やかな光粒となり霧散し、雨雲広がる空へと龍のように立ち昇っていった。
「この場所の今日は生憎のお天気やけど、空から見る紅葉も、この秋桜畑もきっとあなたを楽しませてくれると思います」
 翔けたいところを翔けて、見たいところを見て、自由な世界へ。
「よい旅を」

 旅立った彼女を見送った結希は振っていた手をおろし、周囲を見回す。けれどもすぐにふるりと頭を振った。
 祠は直さない、だから『見つける』こともしたくなかったのだ。
 けれども近くには在るのだろう。
 光粒の残滓が、雨粒に紛れてぽつりと落ちてくる。
「私は旅人で、帰る家もないけど。
 だからこそ、私の想いのままに、私は旅をすることが出来ます」
 『with』と一緒に歩む、結希の見た世界。今までの様々な景色が過っていく。
「帰る場所が無くても、前には歩いて行けるはずです。でも……ここから先は、あなたの道」
 掌を上向けて、落ちてきた光を受け止める。それは雪のように溶けてなくなった。
(「だから本当は、『あなた』の意思で決めて欲しいな」)
 彼女と繋がる存在――雨を司る神様にそう思って。
 猟兵の旅路と神の旅路が交差する刹那に結希は立つ。
 歩めば後ろには確かな道が出来ている。
「どちらを選んだとしても、最後まで付き合うから」
 添う言霊を持って駆けて秋桜畑を抜ければ、結希の前には新たな道が開かれるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ガーネット・グレイローズ
家族が無事でよかった。…ゆうりの話を聞くに、
その少年が感染型UDCで間違いないな。ここからは徒歩で向かおう。

迷宮を抜け、気が付けば人気の失せた通学路に現れる
?…私は確かに廃神社を目指していた筈だが、ここは何処だ?
これもUDCの能力だというのか…。

「怪物」の姿はお任せ
龍燈といったか、時代は変わった。貯水池やダムができ、
雨乞いをする必要はなくなった
生憎私は霊媒師ではないが…お前が存在に悩み、消えたがっているのなら
その願いを叶えよう。
クロスグレイブの【フルチャージバスター】で怪物を撃ち抜いて討伐。
消えゆく龍燈の気配は聖か、邪か?
祠の修繕は一人では大変なので、仲間の猟兵にも手伝ってもらおう。


四宮・かごめ
※アドリブ連携OK
竹把台明神はどう思うでござるか。
そうでござるか。
お前が選べでござるか。

出る場所…お任せ
怪物の姿…お任せ
対怪物…腑に落ちるまで防戦
祠…出来る限り治す

一方的な敵の攻撃を鉈で凌ぎつつ、話があれば黙って聴くでござる。
自分の中で得心が行った瞬間、簪から引き抜いた苦無を握り、突進。
抱き付いてトドメを刺すでござる。

その後は祠を探し、見つけたら修理するでござる。
残骸から元の形を大まかに予想したら、
UCの効果も利用して複製を拵えるでござる。

竹の類は周囲にあり、且つ使えそうなら使う。
神棚のような人工物なら元通りでござる。
真っ二つに割った竹を並べて屋根にするだけでも効果ある、筈。

安らかにんにん。



(「一家が無事で良かった」)
 一体どんな怪事件に巻き込まれたのか――尋ねたい顔もしている。けれど、猟兵たちもまた解決の最中にあるというのは判断することができたのだろう。顔色は悪いが、目前の脅威が払われ安堵する一家にガーネット・グレイローズは頷いて見せた。
「後はUDC組織がバックアップしてくれる。私達は行くよ」
 既に組織へと連絡しているので、もう少しすれば来てくれるはずだ。ゆうりたち一家にそう告げてガーネットはUDCの棲家へと向かう。
(「……ゆうりの話を聞くに、件の少年が感染型UDCで間違いないな」)
 となれば進んだ先で、いつの間にか入りこんでしまった迷宮もUDCの力故のものだろう。
 現われた龍燈にもガーネットは警戒し進めば、瞬く間に見知らぬ場所に出た。
 自然溢れる風景とは違う。アスファルトの道路は細く、民家とブロック塀が続き、電信柱には学生向けのポスター。
「……通学路か?」
 時折潮風の吹く、ひと気のない場所を見回しながら呟く。
「……私は確かに廃神社を目指していた筈だが、ここは何処だ?」
 GPSを起動させても自身の居所は不明。
「これもUDCの能力だというのか……」
 UDCの力で変異した迷宮の一部であるのなら、進めばまた何処かへと出るはず。
 けれども一方的な龍燈の言葉に先を行くことは許されなかった。

『私の灯の行く末は、あなたに委ねましょう』

 にんにん。
 ブロック塀の上にしゃがみ、龍燈の言葉をじっと聞いていた四宮・かごめはふと視線を斜め下へとずらした。
「竹把台明神はどう思うでござるか」
 間。
「……――そうでござるか。お前が選べでござるか」
 元々主命で動く忍びの性質上、かごめ自身が主導で動くことはあまりない。故にこのようにガーネットの後をひっそりついてきた彼女は鉈柄を握りこみ、音なく跳躍した。
 僅かな風を感じたガーネットが何気に背後を見遣ればそこには既にかごめの姿。思わず目を瞠ったガーネットであったが、先程共に戦線を築いた猟兵だったのでそのまま視線を前へと戻した。
 そこには怪物――古代メキシコを連想させる仮面を被った黄色と黒の斑模様の獣がいた。
「豹でござろうか?」
「いや、あの斑模様からしてジャガーかもしれない」
 仮面で頭部が隠れているとはいえ、突然の肉食獣の出現にかごめとガーネットは構える。
 ガアッ!!
 獣の咆哮を放ち跳躍する四足獣の動きは流麗ともいえるしなやかさ。
 二歩前へと飛び出したかごめの三歩目が横へと滑る。ガーネットを庇い、同時に掲げた鉈が「ガチッ!」と音を立て開いた仮面の口に捕らわれた。
「この仮面、動くでござる……」
『グルルルルル……』
 大きな前脚がかごめの肩に乗せられ徐々に爪が喰いこんでくる。だがかごめの態勢はどんと構える竹把の如く、ぶれることはなかった。
 ガーネットのクロスグレイブから光線が放たれると四足獣は飛び退く。
 かごめは追うことなくその場に留まり、鉈を構えたまま、じっと獣を見つめ続けている。
(「見た目は大型のネコ科だが、あれは――」)
 本質は変わっていないはずだ、とガーネット。
「龍燈といったか、時代は変わった。貯水池やダムができ、今は雨乞いをする必要はなくなった」
 彼女の声にぴくりと仮面が動き、太い獣尾がゆらゆらと動く。
『東の壺はもう不要だ、と……?』
「希うほどではない。宇宙でも水が生成できる時代がそのうちに来る」
 アステカ神話の者か、とガーネットの思考はいつしか読んだ本の内容に辿り着いた。
 東の壺は、恵みの雨を。
 西の壺は、疫病を。
 南は干ばつ、北は雹。
『宇宙か。この天よりも遥かに突き抜けた先の空――人は、そこまで行くのか。どんどんと神の領域から離れてゆくのだな――もう自分達で壺を作れるようだ』
 喜べばいいのか、悲しめばいいのか、分からないといった声だった。
『哀れな子たちだ。愛おしい子たちだ。
 一思いに殺してヤレばいいのか、慈しみに溺れサセレバイイノか、私にはもう判断が、デキナイ』
 声がおどろおどろしくなっていく四足獣。
「生憎私は霊媒師ではないが……お前が存在に悩み、消えたがっているのなら」
 ガーネットがそう言った瞬間、クロスグレイブの砲口が光を集束し始めた。
 たんっと音を立て跳躍した四足獣がブロック塀をも踏み台にして、更に大きく跳ぶ。
「――その願いを叶えよう」
 告げればフルチャージバスターが放たれ、光の奔流が場に広がった。
 ギャオゥ! と獣の悲鳴が響き渡る。
 地面に微かに細く伸びたかごめの影がその時消えた。
 ガーネットのユーベルコードに撃ち抜かれ、けれどもらんと輝く獣の瞳。それを捉えたかごめが跳んだのだ。自身の髪を結う笹簪の一本を引き抜けば、全容が明らかとなる苦無。
 攻撃の最中に抱きついた獣は温かかった。
 突き立てた苦無の位置から溢れ出たのは湯。刹那、しなやかな獣の体が溶ける。
 ばしゃん! と落ちて地面に広がったのは水溜りであった。
 縁に灯った僅かな光。
 ガーネットが仔細を改めようと覗きこめば、映りこむ自身の顔と赤の髪。その後ろに星空のような光景が映った。
「光が……」
 かごめが空を仰ぎ呟く。雨雲を背景に、霧散した龍燈が僅かに輝き空へと溶けていく。

 その後は手分けして祠探しとなるのだが――、
「にんにん。祠、発見にござる」
「もう見つけたのか。ご苦労様」
 しゅたっと跪いたかごめに気付き、立ち止まったガーネットが言う。
 壊れている祠の傍に、渦巻き状の彫石や船を象った石が転がっていた。
「これは何を象徴しているのだと思う?」
「……。私見でよろしければ。海を渡るものであるかと」
 少し探って分かったことだったが、ここは海の町の通学路であった。
「成程な。推測でしかないが――知っているか、日本の開国明けに初めて平等な条約を結んでくれたのはメキシコだったんだ」
 友好的な結びつきは深く、『彼』を祀っているものなのかもしれない。信仰として雨と豊穣は繋がりやすい。
「なんやかんやと神話が渡り、この祠が?」
「そうかもしれないな」
 ガーネットの頷きに、かごめはじっと祠を見つめた。愛着を持った昔の地元民が作ったものだろうか? けれども確かに信仰というものの入り口だ。
 しばしお待ちを。そう言って駆け去ったかごめが、次に戻ってきた時は竹を抱えていた。
 周囲の残骸や造りから全体像を導き出して。
「にんにーん」
 忍法四宮流・超絶竹細工にて雨よけの屋根を竹を並べて作り、転がっていた石像の固定台――海を模した竹の並べと細工を作り、ガーネットに設置してもらう。
 二歩分離れて全体像を見て、かごめは手を合わせた。
「安らかにんにん」
 ガーネットも黙祷を捧げる。

「さあ、先へと進もう」
 告げて歩むガーネットと、かごめ。
 出口の分からない道を歩いていけば、雨の降る領域へと辿り着く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鈴久名・紡
灯を追って辿り着いたのは、朽ち果てた神社

あぁ、そうだな……信仰とは継続しなきゃ駄目なモノで
俺達竜神へのそれはとうの昔に喪われてる
尤も、俺は半分だけが対象ではあったけれど

人と共にあった時代というのを
懐かしむように話して聞かされ、育った身としては
煩わしくても、俺には少しばかり羨ましい

上手く祓えるかは判らない
それでも、あなたが願うなら――

煉獄焔戯を使用
弓矢に変えた葬焔と禮火で龍燈を攻撃

倒したら祠を探そう
自由になって良いと思う……
喪われた信仰に縛られるのは違うと思うから

けれど、祠が壊れたままなのは酷く胸が痛む
それは俺に半分流れる竜神の血の哀しみ……だろうか

片付けるだけはしようと思う
もう、檻は不要だから



 龍燈を追った鈴久名・紡が辿り着いた場所は、荒れた境内、廃屋、欠けた鳥居のある朽ちゆく神社であった。
 どこかの高台。風吹けばかさかさと舞う枯葉音。あぁ、と紡は息を零した。
 手水舎には竜の像があるがその口は枯れ切っている。
(「そうだな……信仰とは継続しなきゃ駄目なモノで、俺達竜神へのそれはとうの昔に喪われてる」)
 話を伝える者が、宮司がいなければこんなにも簡単に社は荒れる。
 怪物――長き竜の姿となった相手の言葉に、紡の反応といえば一度静かに目を瞑ったのみ。降雨を竜王に禁じられた竜が雨乞いを行えば殺される。その末路ゆえに祀られるのが大体だ。
 それからも、ここに祀られた竜神は血肉と魂を代償に雨を降らせてきたのだろう。
「念か……恵みの雨を受けた人々の感謝もまた降り積もっていることだろう。――だが、あなたはそれを祓えと言うんだな」
『時代は変わった。私には分かるよ。人は、時の流れとともに遷移していく』
 生き物が神から創られたというのなら、営みの続く時と共に進化していった人・時代は神々の手を離れたと言える。
『彼らには、私は必要ない。雨への恨みつらみ、雨への感謝。水は悪意にも善意にも染まり、やがて天に還る。祈りの循環などもう要らない』
 竜の声は淡々としたものだが、どこか懐かしむ響き。人と共に在った時代、同じ時に希われ力を振るった時代。
 人の祈り故に竜神の力がみなぎる時代は確かにあったのだ。
 片親を竜神とする紡にとっては少しばかり羨ましい話でもあった。
 今も祈り自体はあるだろう――けれども。
 この朽ち果てた神社に立った紡は、喪われた信仰というものを突きつけられたばかりだ。
「……上手く祓えるかは判らない。それでも、あなたが願うなら――」
 あなたが禮を喪う前に。
 白銀の禮火と漆黒の葬焔が解けて弓矢へと変化した。
 足踏みし肩膝に掛けた。
 弦に手を掛けて、ゆっくりと両拳を持ちあげる――引分けた矢の先には佇む竜。
 願われ続けてきた竜の願いを断つことができるのは紡の矢だけであった。
 矢として放たれた紡の神力が竜を射貫く。鋭い一射に続く水の糸。
 抜いた一筋分の水は竜を瓦解させた。

 でこぼこの境内に大きな水溜りができる。まるで割れた器に水を無理矢理入れたかのような、不格好な水溜りだった。
 紡が覗きこめば、映るのは自身の姿と空へと上がっていく光粒。
(「自由になって良いと思う……喪われた信仰に縛られるのは違うと思うから――」)
 神社を歩き、奥に祠を見つける。周囲は雑草が高く生え、手入れのされていない祠はぼろぼろに朽ちていた。
 信仰は器のようなものなのかもしれないと、水溜りのできた方を一瞥する。
 だが、あんなにも容易くひび割れるものなのだろうか。
 感化されそうな神社の様子を振り払うように紡は頭を振った。
 草むらに落ちていた竜の石像を見つけ、思わず彼はしゃがむ。
 祠が壊れたままなのは酷く胸が痛んだ。掌に収まるそれを拾い、軽く握った。
「この痛みは、俺に半分流れる竜神の血の哀しみ……だろうか」
 祠に戻すことはせずに、空の見える地面へと置く。
 少しだけ片付けながらも、祠には手を付けなかった。
 空っぽなこの場所は静寂に満ち、ひどく寂しい。いかに神であろうともこんな場所にいたら狂ってしまうだろう。
 祠の前の草を刈る。道が拓けるようにと。
(「もう、檻は不要だから」)
 紡の呟きは尊重するもので。
 雨神の一端は自由な空へと旅立つ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

文月・ネコ吉
辿り着いたのは
古びたビルに挟まれた路地裏

(怪物の姿はお任せ
見た目も何も違うのに
どこか自分と似てると感じるのは何故だろう?

懐かしい雨の気配に目を閉じて
気付けば真の姿の人間形態に
殺す事が救いとなるのなら
その依頼引き受けよう

元殺し屋らしく雨の気配に溶け込んで
するりと相手の死角に忍び入り
背後から急所を狙い
音もなく刀を刺す
確かな手ごたえのその先で
神はどんな表情をしているのだろう

倒した後はネコ形態に戻り
古びたビルの屋上へ
小さな祠もその先に広がる空も
見下ろす街並みも
初めて見るのに懐かしい

ずっと見守ってきたのだろう
人々の想いに縛られて
それでも嫌いになれなくて
忘れられても尚

残された想いを感じながら
壊れた祠を直す



「殺す事が救いとなるのなら、その依頼、引き受けよう」
 『怪物』となった龍燈は、文月・ネコ吉にとってはどこか懐かしい存在だった。
 虹の鱗を持つ大蛇は陽の当たるなかであれば綺麗に輝くことであろう。
 そして、
(「どこか自分と似てると感じるのは何故だろう?」)
 ケットシーの鼻は周囲の匂いを嗅ぎ取る。ネコ吉のヒゲがピンと立った。
 古びたビルに挟まれたこの路地裏は雨の気配がとても籠る。
 細く切り取られたかのような雨雲の空から。
 そして目前の大蛇から――懐かしい雨の気配だ――とネコ吉が目を閉じれば、彼の姿はいつの間にか真の姿となった。
 開けた視界は高く、叢時雨を包みこむ五指。
 うねり、這い、徐々に近づいてくる大蛇。
 叢時雨を抜刀すれば、大蛇は「シャアッ!」と威嚇する。
 ネコ吉が咄嗟に飛び退く――吐かれた呼気の奔流は雨期の気配そのものだった。
 濃く煙る路地裏であったがネコ吉にとっては地の利。
 大蛇に呼ばれたのか、頭上に細く広がる雨雲からポツリと雫が落ちてくる。
 音なく駆けたネコ吉は路地裏に満ちる濃い雨の気配に溶け込んだ。前傾し大蛇の横を抜けた刹那に僅かな砂の匂い。渇き切った砂漠の匂いは蛇の心だろうか。
 元は殺し屋、標的の背後をとることなど造作もない。ネコ吉は相手の死角へと忍び入り、蛇の首へと刀を突き刺した。
 刃先に違和を感じた瞬間、
「――!」
 その身が刃に斬り開かれるのにも構わず、ぐるんと蛇の頭が動いた。
 噴出し、刀身と虹の鱗を染めたのは泥水であった。
『帰らなければ。雨水を引かなければ。でももう少し――』
 そう呟いた蛇の体は解けて叢時雨の刀身を滑り落ち、大きな水溜りを作った。何かが映される。

 本体は砂漠にいた記憶があった。
 その一端として虹蛇は昔々に日のもとの国を訪れた。
 この国は雨を愛しているらしい。農耕の国は雨を慈しむ。慈しみの祈りに返すのは、恵みの雨だ。
 血肉と魂を削る竜神も、身を捧げた娘も、人々の祈りがあったから力を振るうことができた。旅した虹蛇の記憶は本体へと繋がっている。
 ぬかるんだ田んぼ柔らかさ、軒下で共に雨が過ぎるのを待った穏やかさ。
 ある僧に雨の絵を見せてもらったことがある。
『どうぞゆるりと旅の話をお聞かせください』
 迎え入れられた椋の木で虹蛇はしばし眠りについた。
 永く留まれば延々と雨の気配が続く事を忘れて。
 それほどに虹蛇に届けられ始めた「祈り」は心地よく、満ちた気は溢れんばかりの雨水となった。

(「ずっと見守ってきたのだろう」)
 旅して、椋の木に迎え入れられて。
 映された旅路とまどろみの光景だった。ネコ吉は今しがた見たばかりのそれを脳裏に描きながら歩く。
 雨水が溢れ切った先の人々の嘆きもきっと虹蛇には届いたことだろう。
(「人々の想いに縛られて、それでも嫌いになれなくて――忘れられても尚」)
 路地裏の先には忘れ去られた祠があった。
 朽ちた木造りの屋根を取り除き、こびりついた苔を払った。
 石を拭き周囲を整えてやれば綺麗な石祠が路地裏に佇む。屋根がないと路地先の往来もよく見える気がした。
「雨よけは必要ないだろうな」
 旅と人が好きな蛇神だったから。
 ネコ吉は手を合わせるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

城島・冬青
【橙翠】

ここは…どこだろ?
でも綺麗な湖ですね
アヤネさんはここがわかるんですか?
へー、お母さんの家系はここの出身なんですね

わ!もふもふの狼さんがきましたよ
もふりたい気持ちを抑えつつ対話

…うーん
帰りたいけど解放されたいって矛盾してますね
あなたがどうしたいかは自分で決めて下さい
まぁ向かってくるのなら迎え撃つまでです
刀を抜きダッシュで距離を詰め斬りかかる

次は祠探しですか?
忙しいなぁ…頑張って探そう

アヤネさんDYの経験は?
私ですか?全くないです
祠の修繕とか未経験なのでどこまでできるかわかりませんが
とりあえず直せるところまで元に戻してみましょうか
木を切って木材を集めたり再利用出来そうなものは使いましょう


アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】
ここは宇曽利山湖だ
つまり霊場恐山
母方が代々この地でイタコをしていたからネ
画像として覚えていた

綺麗で浮世離れした景色
現実か虚像なのか判別できない
注意深く行動しよう

白い巨大な狼が水面をゆっくり歩いて近づいてくる
見覚えはないはずなのに
過去に会ったように思えるのは気のせいか

祓われるのが望みならそうしてあげる
ソヨゴと息を合わせて
ライフルで戦う

戦闘後
狼の言葉を頼りに祠を探す
見つけたら修繕しよう
DYの経験はないけどマニュアルを見ればできるでしょ?
必要かと思って3Dプリンターを用意してきた
電脳ゴーグルで完成図を予測し材料を作り出す

手を合わせて祈りを捧げる
何者か知らないけど
信心は大抵良い方向に働くものさ



 龍燈を追っていたら拓けた場所へと出た。
「ここは……どこだろ?」
 ほんの少し肌寒く、風に立つ水の音――湖だ。呟く城島・冬青は周囲を見回した。
「綺麗な湖ですね」
 透明な青い水と、時々のっている黄色はこの場に漂う匂いの元・硫黄だろうか。湖を囲む紅葉が風景を秋のものへと染め上げている。
 同じく周囲を一度見まわしたアヤネ・ラグランジェは、はっと息を呑んだ。
「ここは――宇曽利山湖だネ。つまり霊場恐山」
「えっ、アヤネさんはここがどこかわかるんですか?」
 驚く冬青にアヤネは頷きを返す。
「うん、母方が代々この地でイタコをしていたからネ。画像として覚えていた」
「へー、お母さんの家系はここの出身なんですね」
 こうして事件解決への糸口を辿っていくと、時々アヤネのルーツを知ることがある。冬青が彼女へと目を向ければ、ここが……、と呟くアヤネの眸は好奇心の色が見え隠れしていた。
 雨雲が広がる生憎な天気だったけれども、水の色も紅葉も綺麗な場所だ。
「現実か虚像なのか判別できないな……」
 風吹けば誰が挿したのか風車がカラカラと回る。音が立っても直ぐに静寂に呑みこまれる、そんな場所だった。
 湖をじっと見つめていた冬青が、あっと声を上げる。
「アヤネさん、こっちに何か――、わ! もふもふの狼さんがきましたよ!?」
 水面に波紋を描きながら、ゆっくりと白い巨大な狼が歩いて近づいてくる。アヤネは目を瞬かせた。
(「見覚えはないはずなのに」)
 気のせいだろうか。
(「過去に会ったように思える」)
 触れれば何かを思い出せそうな気もしたが、
「……いや多分もふもふに満ちるな」
「そうですね、ここは我慢です」
 ふわふわとした毛が揺れている。とてももふもふしてそうな白い狼だった。
 けれども、狼の放った言葉に徐々に眉を顰めそうな表情となる冬青。一歩手前くらいで表情は止まる。
『私の灯の行く末は、あなたに委ねましょう』
「……うーん、とですね。帰りたいけど解放されたいって矛盾してますね?」
 困るなぁという風に冬青は言う。
「あなたがどうしたいかは自分で決めて下さい」
 どこまでも現実的な冬青はそう告げた。くぅん、と狼は鳴く。
『にべもなし……』
「そこへ至る一刀くらいは振ってあげます」
「ソヨゴ……そうだね、祓われるのが望みならそうしてあげる」
 花髑髏を、Phantom Painを構えた二人に『ガアッ!』と白き狼は牙を剥いた。
 アヤネの銃口が火を噴き、牽制に連射した弾は白き狼の足元へ。水飛沫が跳ねて、巧みに狼を岸へと誘導する。
 ジャッと四つ脚が砂利へと到達した瞬間には、既に冬青が迫っていた。
 振るった刀が狼の太い首を斬り裂き、その一撃で狼の形態は解けて放られた水のように湖に落ちた。
「え、呆気なさすぎません?」
「そういうものなのかもしれないネ」
 ぽかんとしながらも納刀する冬青の言葉に、アヤネが言うのだった。

「狼は祠と言っていたね」
「え。あれは祠も探せってことだったんですか? 忙しいなぁ……頑張って探しましょうか」
 とはいえ、湖は広い。
 まずはぐるっと周囲を歩こうということになり、落口の三途の川を越えて二人は行く。
「祠ってあれですかね? ぼろぼろですけど」
 目は良いのだろう。再び先に見つけた冬青が指差した先には草むらに覆われた、木造りの朽ち果てた祠があった。
「アヤネさん、これどうしましょう?」
「――修繕しよう」
 宇曽利山湖――イタコと白い狼。自身のルーツの一端を握るアヤネは即答した。
「アヤネさん、DIYの経験はあるんですか?」
「Do It Yourself か。無いけれども、マニュアルを見ればできるでしょ? ソヨゴはどうなの?」
「私ですか? 全くないですねぇ。マニュアルも道具もここにはありませんが……」
 と、言いつつ冬青が目を向けたのは自身の刀。いやいやナイナイ。首を振った。
「とりあえず、木を集めてきますね」
 草むらへと入っていく冬青。
 それを見送ってアヤネは自身の鞄から3Dプリンターを取り出した。バッテリーもちゃんとある。
 電脳ゴーグルを起動させて現場を映す。完成予想図をオートで描き上げ、プリンターとリンクした。使うのはそれなりに耐久性のあるエポキシ樹脂のフィラメントだ。
「これでよし、と。時間が掛かるからちょっと草でも払っておこうかな」
 そう呟いてウロボロスの大鎌でザッザッと草むらを刈っていると、冬青も戻ってくる。
「アヤネさんは一体何をして……って何ですかこれ」
「え? 3Dプリンターだけど」
「何でここにっていうか持ち歩いてたんです?」
「必要かと思って。そう、持ち歩いてた」
 にっこり笑顔で言われれば、そうですか、と冬青も頷くしかない。
 そう話している間にもプリンターの中では物が出来ていく。
「アヤネさん、この樹脂? ちょっとだけ頂戴しますね」
 冬青は拾ってきた木の枝をぎゅっと縛り上げて、草の刈られた周囲を塀のように組み上げ囲った。

「――結構、いやかなり立派に出来たと思いませんか?」
 数歩離れて改めてみれば、中々に立派な祠が出来たかもしれない。やっているうちになんでもできる気に満ちてきた冬青が満足気に言った。
 うん、と頷くアヤネもやりきったという表情。
 手を合わせて祈りを捧げるアヤネ。
「――何者か知らないけど、信心は大抵良い方向に働くものさ」
 白い狼は吉兆だ。アヤネはそんな風に言う。
 アヤネに倣って手を合わせた冬青は、次に携帯端末を取り出した。
「アヤネさん、初DIY記念ですよ!」
 なかなかよく出来たかもしれない祠を撮っていく冬青。
 湖と紅葉の風景もカシャッと。
「ここ、今は幻かもしれないけど、また宇曽利山湖に訪れてみたいかもしれません」
 実際に、また足を運んでみたいと冬青が思ったのは、アヤネの母方のルーツだと知ったからだ。
 今いるアヤネが、冬青にとってのアヤネだ。
 けれど、まだ知らないことはたくさんある――そんなことに気付くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

高吉・政斗
・アドリブ&連携歓迎
【SPD】
(戦闘車型変形後、UC起動)
うん、コレが件の怪物か…ん~なんか良く分からん台詞言ってるけど…
ってか何で「砲塔の無い戦車の上に龍が乗っている」形なんだ?
うっはっ!口からブレス!?成る程、それが「主砲」か面白ぇ!


んっ?倒したらよく見ると周りが…「道路」だらけ?
変な場所に着いたな…お?
変に立派な工場が…ん?

妙に立派で用途不明な壊れ掛けっぽい機械…
その機械を中心にが四方を囲むる「壊れかけの工場の入り口」っぽいのが。

…ぬぅなんか壊れて物を見ると直したくなるのでFECT(二足型)一緒にせっせと直してしまおう…(ガッチャンガチャン
ま、どんな神が生まれるかは知らんけどな



 龍燈の言葉は何だかよく分からなくて眉を八の字にした高吉・政斗であったが、戦闘車型となったFECTの中の画面に映された『怪物』の姿を見て驚きの表情となる。
「え。何アレかっけー……!」
 政斗の目に映ったのは砲塔の無い戦車に鎮座している龍であった。
『そ、そうか格好良いか。なに近世においてはダムだのなんだのと建設しおる、人々の感性に則ればこのような姿に』
 ちょっと照れたように言う龍。
「龍ちゃん! ちょっと戦おうぜ!」
『む。祓われるためには致し方なし。よし!!』
 カッを口を開いた龍が攻撃してくる。それは水でできたものであったが、威力は鋭く、普通の戦車ならば穿たれる一撃である。
「うっはっ! 口からブレス!? R2起動!」
 政斗が両腕を仄かに青白く光らせてそう告げれば、『System【WR】:【R2System、起動シマス】』と機械的な声と共にデジタル生成・展開される電子の盾。
 FECTを繰り、射線を削ぐように盾を展開して回避する政斗。
「成る程、それが「主砲」か面白ぇ!」
 ――オオォォォオオオォ!!
 龍が渦巻く咆哮を上げ、今度は放射するように虚空へ向かって水のブレスを撃ち出した。
 鋼をも穿つ水弾が豪雨の如く降ってくる。
 連弾されるその衝撃にFECTは激しく揺れるのだが、相手の攻撃も政斗にとっては機となる。
 既に展開されている、乱逆の狼煙による一撃がFECTから放たれたのだ。
 威力に任せた水のブレスが水弾の豪雨を払い龍の戦車を穿つ――否、撃ち貫いた。
 その風穴から光粒を放ち、戦車が、そして龍の身が崩れていく。
『迷い子よ、ありがとう』
「うん? 迷子じゃねぇけど、礼を言うほどのものじゃねぇって。楽しかったし!」
『そ、そうか楽しかったか』
 やっぱり龍はちょっと照れたような、そして嬉しそうな声だった。
 おう、と快活に応じながらも「迷子」の言葉が気になったのでGPSを起動した。位置情報は取得できず不明の文字。
「あれ? ココどこだ? 龍ちゃ……」
 話しかける政斗であったが、龍の身は解け虚空へと消えたところであった。

「う~ん、一応マッピング機能を起こすか」
 迷子じゃないけどここがどこだか分からない。
 FECTに乗った政斗は注意深く、周囲を見回し進む。龍と戦ったここは道路だらけの場所だ。
「うっわ。地図が掛け網みたいになった。マジ迷路……変な場所に着いたな……」
 やや引きながらもやってきた以上は出ねばならない。
 出口を探す政斗は立派な工場を見つけて、「すんませーん」と声を掛けた。返ってくるのは静寂だ。人の気配は無いようで、FECTは検知しなかった。
「いや、これ工場か?」 
 よくよく観察してみれば、妙に立派で用途不明な壊れかけっぽい機械であった。機械を中心に四方を囲むものがあり、それが工場の入り口にも感じたのだ。
「? ああ、そういえばさっき何か言ってたな。祠か」
 スキャンし精査していくFECT。その瓦解具合が政斗にもよく分かるようになった。
「……ぬぅ……なんか壊れてる物を見ると直したくなるな」
 そう呟いて二足型となったFECTで瓦解した部分を一旦取り除き、改めて形を整え補強する。
「何か雨も降りそうだしな。防水加工もしてやろう」
 デジタル生成した防水スプレーも噴射してあげた。
「これでよし、と。感染型UDCのところに行くか。――……俺たちは迷子じゃないが、突き進むぞ」
 そうFECTに声を掛け、政斗は祠を離れるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

茜谷・ひびき
ここは……どこだ?
迷路にいたはずなのに
気がついたら全然違う道に出ていた
そして目の前には化物か
……祓って欲しいなら、祓うよ

炎を滾らせ怪物達だけを燃やしていく
けれどなるべく苦しまないように
あんた達、疲れてるんだろ
今楽にしてやる

一通り怪物達を対処出来たら次は祠を探そう
周囲を見回しそれらしいものを
あれ、もしかして壊れてる?

怪物の話を踏まえると、どうすべきかは結構迷うな
家で安らいでもらうのがあいつらのためなのか
それとも解放されて外の世界を見るのが幸せなのか

俺は……祠を治すよ
帰る家があるってのは、やっぱり大切なことだと思うから
ここが牢獄になるとしても、未来はどうなるか分からない
だから今は、ゆっくりお休み



 見知らぬ道――UDCアースの何処かの通学路と思われる場所に立った茜谷・ひびきは、そのひと気のない場所で数体のおどろおどろしい黒馬と相対していた。
「……祓って欲しいなら、祓うよ」
 そう言って右腕の包帯を解いていけば炎が舞い起こった。
『火だ』
『鎮火せねば?』
 馬たちが蹄を打ち、ひびきへと突進してくる。ひびきが一体へと向けて腕を振るえば滾った炎が弧を描き、紅蓮の炎が馬を呑みこんだ。
 噴出する炎は絶えることがなく、ひびきの一挙一動に添うその輝きはひとつの炎舞のようにも思わせた。
『美しい』
『雨乞う舞のようだ』
『懐かしい』
 祈雨の黒馬たちが次々に呟くなか、一体一体をひびきは祓っていく。
『我々は社へと献上された黒馬。雨を乞う儀式をたくさん見てきたが、すべてがこのようなものであればと願ったわ』
『裂かれた龍も、首を落とされた娘も、なんと哀れな……』
 ほろほろと光粒を眸から零す黒馬もいる。
 なるべく苦しませないように――そう思ったひびきの攻撃は、馬たちの目には清廉な舞いのように映っているようだ。
「あんた達、もう疲れてしまってるんだな」
 哀れだと言う馬たちの様子もまた哀れなのでは、とひびきは思う。
『……、……斎渕もまた水。気の枯れに捧げた人々の祈りで染まることもある』
『嘆きの声が渡ることもある』
『神馬になったとて、助けることも出来ない』
『無力なものだ』
 悲痛な馬の声はとても重々しい。
「……今、楽にしてやるよ」
 祓うことでそれが軽くなるのなら。
 ひびきはひたすらに炎を放っていく。

 黒馬たちがいなくなれば、再びひと気のない田舎の通学路は静まり返った。
「それにしても……ここはどこなんだ」
 携帯端末でGPSを起動させても不明のまま。
 感染型UDCの力ゆえだろうか――ひびきが周囲を見回したその時、偶然か否か雨が路地へと落ちたのを目にする。
 路地を覗きこめば、その先には何かがあった。
「……これが祠? もしかして壊れてる?」
 入り口に積もるように崩れた物を取り払えば、小さな馬の石像が出てきた。
 彼らの話を踏まえれば、どうすべきか迷うところがある。
(「家で安らいでもらうのがあいつらのためなのか、それとも解放されて外の世界を見るのが幸せなのか」)
 石像を撫で、しばしひびきは考える。
 祈雨の黒馬は人々の願いそのものだ。祈願を神々へと伝えていく馬たち。
 ひびきは一つ頷いた。
「俺は……祠を治すよ」
 祠が建ったのは結果的には事象。
 人の優しさ故かもしれない、何かを封じるためかもしれない、祠を通して祈りを届けるためかもしれない。
 けれども、無ければやどらない。
(「帰る家があるってのは、やっぱり大切なことだと思うから」)
 宿り木のような場所にもなればとも思った。
 もう役目をはたしていない屋根は取り除き、むき出しとなった石像と露わになった石祠を拭って綺麗にする。
 千切れて落ちていた注連縄を結び直して巻いてやる。
「ここが牢獄になるとしても、未来はどうなるかは分からないよな」
 穏やかな、あたたかな祈りの届く場所となれば、きっと居心地の良い家にもなる。
「そんな未来が訪れるように――俺たちがいるんだからさ」
 だから今は、ゆっくりお休み。
 手を合わせ、ひびきは言葉を送るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『雨神『アメフリ』』

POW   :    その雨はただ身体を蝕む
【中空から腐食の雨】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    その雨はただ刺すように痛い
【中空から降る、刺すような雨】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に水溜まりを作り】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ   :    その雨はただ哀しみを降らせる
自身の【傘に吊るされたてるてる坊主】を代償に、【心に降る雨のような哀しみ】を籠めた一撃を放つ。自分にとって傘に吊るされたてるてる坊主を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は入谷・銃爪です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 感染型UDCの力による怪奇現象。異界へと誘われた猟兵たちが、一人、また一人と新たな場所へと辿り着く。
 UDCの「棲家」と思われるその場所には大きな椋の木があった。大きな樹洞が古木であることを示している。
 その樹洞からするりと出てきたのは一人の少年であった。
 すぐ下にある枯れ池へと降り立ち、赤い傘をくるくると回す。複数のてるてる坊主が踊るように動いた。
『こんにちは。君たちは迷子かな? それとも噂を聞きつけて、伝承を確認しに来たのかな? ――ああ、いや、違うようだね』
 目を細めて少年は猟兵たちに言う。
『君たちは龍燈を見てきたのかな? たくさんの『りゅう』が在っただろうね。悲しい雨も、優しい雨も、苦しい雨も、不思議な面白い雨もあったことだろうね』
 懐から何かを取り出す雨神・アメフリ。
 逆さになっている黒のてるてる坊主を手にして、言葉を続ける。
『誰かが言っていたね、貯水池やダムができたから雨乞いをする必要はないと。
 誰かが思っていたね、信仰とは継続しなければダメなもので、竜神への信仰は喪われていると』
 そうだね、とアメフリは肯定する。微笑んだ。
『雨を呼ぶために、人が禁忌を犯すことはもう無いだろう。――喜ばしいことだ、おめでとう』
 そして逆さ坊主の首を捻り千切って落とした。
『ならば、次は穢れの祓いだ。雨神を祀る世界中の祠からの道は繋がっている。年月を重ねた此処の穢れが樹洞の道を通じて人々の気枯れとなる前に――私を倒せばいい』
 落ちた逆さ坊主の頭がコロコロと転がれば、ぱらぱらと雨。

 その雨は人を腐らせる雨。
 その雨は刺すように痛い雨。
 その雨は心が哀しみに満ちていく雨。

『このどうにもならぬ我が身を清冽なものへと還したまえ。この雨の身が、棲家の外を呑みこんでしまう前にな!』
 アメフリがそう叫んだ瞬間、猟兵の身を蝕む雨が強く降り始める。
 雨神を骸の海へと還すべく猟兵たちは動き出すのだった。
ノイン・フィーバー
心情:噂の拡散。その為もあったのでしょうガ。
それでも、あの子に何の恐怖も与えず逃がしたアナタは、優しい神であるノだとワタシは思いマス。
だからこそ。アナタを今ここで倒すべきなのデしょう。

連携等OK
基本的には援護射撃をメインに。てるてる坊主には射撃が当たらないように意識する。
周囲に気を配り、特に接近戦を行うメンツには、中空から降る雨が降るタイミングを通達する。「天気予報というやつですネー」

●刺すように痛い
回避した場合に生まれた水溜まりをUC発動して殴って吹き飛ばす。
「雨のち晴レというやつですネ?」
周囲に飛び散る水が目つぶしになってる隙にその拳を本体に叩き込む。
自分の目? ブラウン管だから……


鈴久名・紡
おめでとう、そう言いながら
窺えるのは真逆の感情

剥き出しになった感情の蓄積が
お前を変質させたのか
はたまた異なる理由だろうか

どちらにせよ
お前がUDCである以上、終わらせないといけない
今を生きている人を、苦しめて良い理由にはならないから

煉獄焔戯使用
禮火を模した神力を放って先制攻撃
それと同時にオーラ防御を展開させて接近
本物の禮火で氷結の能力を乗せた属性攻撃

敵の攻撃は見切りと残像で回避
回避不能で尚かつオーラ防御で対処できなかった場合は
激痛耐性で耐えつつ
以降の攻撃に生命力吸収を乗せて攻撃

お前を倒しても
いずれまた穢れは生まれるかもしれない
その度に、俺達は何度だって祓うから
お前はもう終わっていいさ
そうだろう?


春乃・結希
雨は嫌いやないんです
雨の音も、雨宿りも好き
それに雨上がりには、虹が見られるかもしれないから

龍燈は願いに縛られていたけど
それでも、人を助けたいという想いで降らせる雨は
きっと優しい雨やったと思う

私も雨を降らせられるんですよ
痛みをもたらす雨を防ぐこともせず【激痛耐性】
刻まれる傷から焔を噴き出させる
あなたの雨には、優しさなんてなくて、世界を壊すためのもの
私の雨も一緒です
この焔は、ただ敵を海に還すために【焼却】
この程度の雨で、消えたりしない

…だけどあなたはきっと、最初から悪い神様として生まれたんやない気がするな
猟兵に倒される事で、元に戻ろうとしている様に見えます
龍燈のように、人に恵みをもたらす神様として



『雨を呼ぶために、人が禁忌を犯すことはもう無い。――喜ばしいことだ、おめでとう』
 そう言った雨神『アメフリ』に鈴久名・紡は真逆のものを感じ取った。
 喜びながらも喪われたものへの、悲しみと怒り……だろうか。竜神としての性質ももつ紡はアメフリの真意を思考で探る――だが、詮無い事だと息を一つ吐きそれを散じた。
(「剥き出しになった感情の蓄積が、お前を変質させたのか。それとも」)
 はたまた異なる理由だろうか、と紡。
「どちらにせよ……お前がUDCである以上、終わらせないといけない」
 甦った邪神と眷属たちを骸の海へと還すために猟兵たちは戦っている。
「今を生きている人を、苦しめて良い理由にはならないから」
 そう呟いた紡が銀の光条を放ち、同じ白銀のオーラを纏って一気に彼我の距離をつめんと駆けた。
 雨は等しく全ての存在に降り注ぐ。
「本日は雨。腐食させるソレにご注意を」
 そう言って戦場に落ちる腐食の雨――その滴を蒸発させるのは、ノイン・フィーバーのアームドフォート・typeB+によるビーム砲だ。虚空へ向けられた荷電粒子が紡へと降る雨をなぎ払い、相殺していく。
「時にワタシが傘代わりとなりまショウ」
 そしてアメフリへと到達する紡の銀閃。下駄を鳴らし跳ぶアメフリだったが、神を追うように振るった小柄の斬線から雨粒も氷る力が放たれた。
 アメフリが和傘を振るえばてるてる坊主が揺れ動き、異なる雨を呼ぶ。
「おや、新たな雨が降りますネ」
 気象予報士のように、戦場を見るノインが呟けば春乃・結希が前へと出た。
「ノインさん、私はこのままに――」
 結希に降ってくる雨は刺すような雨。鋭いそれは手を翳した結希の手を易々と傷つけた。
 服を裂き、肌を裂く。痛みをもたらす雨を避けることもなく、ただただ結希は受け入れる。
「雨は嫌いやないんです。雨の音も、雨宿りも好き」
 雨独特の気配と雨音に、断絶されたかのような静かな世界が結希の前に広がった。
 建物に跳ねたり、草木で弾けたり、たくさんの雨の音。そんなささやかな日常の思い出は結希の心に降り積もっている。
「……それに雨上がりには、虹が見られるかもしれないから。好き」
 結希を刺した滴は赤に染まり地に落ちた。痛みは感じなかった。
 アメフリの表情は僅かに歪んだが、地面に落ちた赤はそれだけではなかった。耀く焔。
(「龍燈は願いに縛られていたけど……それでも」)
「人を助けたいという想いで降らせる雨は、きっと優しい雨やったと思う」
 昇った祈雨に、応えた慈雨。
 奏じたアメフリの言葉に、応えるように結希の雨。
「今のあなたの雨には、優しさなんてなくて。世界を壊すためのものやけど、私の雨も一緒です」
 結希の傷口から噴き出すのは、焔で形作る無数の杭の雨だった。
 戦場に作られゆく水溜りに焔が突き立ち、アメフリの力を焼却し骸の海へと還していく。
 等しく降り注ぐ雨はアメフリにも例外ではなく、焔の雨が和傘を燃やす。
 飛び退くアメフリを追うのはノインだ。
「噂の拡散。その為もあったのでしょうガ」
 ノインの顔であるテレビ画面がまばゆい光を放った。
「それでも、あの子に何の恐怖も与えず逃がしたアナタは、根本的に、優しい神であるノだとワタシは思いマス」
 黄金色の光を腕に纏ったノインの声は、どこまでも穏やかなもの。
 今の攻撃的な雨も、在ったかもしれない慈雨も、自然や動物――誰かのための雨であり、恐らくそれはこの先も変わらないもの。
 地面に拳を叩きこめば、星神の残滓により深い水溜りは間欠泉のように噴出した。
『!』
「だからこそ。アナタを今ここで倒すべきなのデしょう」
 思わずといったよに目前へと傘を広げたアメフリへ、続け様に拳を繰り出すノイン。飛沫する水は例外なくノインの顔にも叩きつけられるが、画面ゆえに遮るものは無い。
 拳を受け、払いながらもアメフリは身軽に跳ぶ。
 ノインの言葉に頷いた結希は焔の雨で、邪神の広い棲家を灼き滅していく。 
「ノインさんの言う通り、あなたは、最初から悪い神様として生まれたんやない気がするな――猟兵に倒される事で、元に戻ろうとしている様に見えます」
 龍燈のように、人に恵みをもたらす神様として、と結希。
 甦り、自身が在る限りこの棲家は邪気に満ちていく――アメフリは口端を上げて声無く笑った。どこかやるせないものであった。
「お前を倒してもいずれまた穢れは生まれるかもしれない」
 雨に打たれながら小柄の煉獄焔戯をアメフリへと降らせながら紡が言う。
「その度に、俺達は何度だって祓うから」
 骸の海へと還す焔が、傷つける雨をなぎ払う熱量が、そして断ち切るような紡の禮火がアメフリの「それまで」と「これから」を繋ぐ。
「お前はもう終わっていいさ」
『……そうだな――そなたたちの祈雨と慈雨に、感謝を』
 雨神に届く言葉はあっても、雨神の言葉が外の世界に届くことはない。
 故に、今、雨神の願いを聞き届けんとする猟兵達にアメフリは言葉を伝えた。
 ノインは(^^)の文字を画面に表示させる。
「この戦いの後ハ、アナタもワタシ達も外界の皆サンも、心は晴レ模様が広がるでしょう。雨のち晴レというやつですネ」
 画面の右上には雨マークのあとに晴れマーク。
 予報を確かなものにするべく、雨神へと、猟兵たちは力を浸透させていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

冴木・蜜
元々そのつもりではありましたが
……ねがいを聞きましたから
骸の海にお帰り頂きましょう

私は毒で 人ではない
雨に濡れるまま身体を蕩かし液体へ
液状化すれば雨の痛みなど耐えられましょう
そのまま身体を広げて
毒性を強めて『微睡』

揮発した毒で雨を包み
或いは広げた毒の身で水溜りに融け込み
全てを毒で侵しましょう

私は死に至る毒
ひとたび触れれば死へと近づく
一滴でも混じればそれは全て毒となる
さあ
“私”の上でどれだけ立っていられますか?

やさしい、けれど寂しい雨でした

密やかに人々を見守っていて
ただ願われるままに雨を呼んで
いつしか自由を失って

だからこの穢れは祓わねば



 いつもなら請われる方に在る雨神『アメフリ』の、請い。
 元々UDCを倒す猟兵の身ではあったが、改めてともいえるそれに冴木・蜜はただ頷く。
「……ねがいを聞きましたから……骸の海にお帰り頂きましょう」
 雨音と気配に、断絶されたかのような静寂の世界が蜜の前には広がっていた。
 雨は等しく降り注ぐ。
 煙る視界に絶えぬ滴と雨音は静寂を与える――猟兵たちの身を刺す雨滴は赤に染まり地面へと落ちた。
 けれども仲間たちとは違って蜜を傷つけ流れゆく滴の色は、彼自身の毒。
 刺す雨に削がれた蜜の毒は徐々に地面へと溜まっていく。
「私は毒で――人ではない」
 瓦解したのはいつの瞬間であったか。
 かなしいことをいう、とアメフリが呟いた瞬間であったか。
 打ちつける雨にその身を崩した蜜が「微睡」んだ。
 彼の意識は広く広く漂って戦場を包みこむ――水溜りに融け込み、虚空では濃霧のように。
『私は死に至る毒』
(「ひとたび触れれば死へと近づく」)
 自身を揮発させた死毒は在るだけで吐く邪神の穢れを侵し、彼の者の呼気をも侵す。
(「一滴でも混じればそれは全て毒となる」)
 過去の祈雨の儀式に、昔人の願いに、アメフリは変質し骸の海から甦るモノとなった。
 神を形作る邪の気すらにも蜜は浸透する。
(「さあ――」)
『“私”の上でどれだけ立っていられますか?』
 アメフリの内部にも蜜の声は渡った。
 ああ、とアメフリは声を零す――和傘から伸びた手が虚空を彷徨う。
「我が身の邪気を染めるのか。……声が聞こえる。そなたのこれは慈雨か」
 蜜と存在が反転したかのように、明瞭な声となったアメフリ。
『やさしい、けれど寂しい雨でした』
 ――密やかに人々を見守っていて。
 ――ただ願われるままに雨を呼んで。
 ――いつしか自由を失って。
 そんな蜜の想いがアメフリの中を渡る。
「そなたのように、我が雨が『彼ら』へと届けばよかったのだが」
 彼らの願いは届くが、雨神の願いは彼らには届かなかった。
 蜜はアメフリの願いを聞き、応える。
 祈雨と慈雨のようなやり取りだった。
『だからこの穢れは祓わねば』
 上流の滝つぼから、遥か先の海へと流れる水のように。
 自然の理が此処に出来上がった。
 場に満ちる蜜の毒は、やさしく、雨神とその棲家を形作る邪気を骸の海へと還していく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ガーネット・グレイローズ
※アドリブ歓迎

冷たい雨が降る…あれが、感染型UDCの本体か。
心と頬を濡らす雨に打たれ、蘇るのは過去の忌まわしい記憶…幻覚?
目の前で爆発炎上していく、両親の乗った宇宙船。
銀河の戦場で帰らぬ人となった、亡き夫との思い出。

例えようのない哀しみが心を激しくかき乱す。膝を折りそうになる…
ひどく体が重い。煙草に火を点け、煙と共に大きく息を吐き出す。
この世界が呪いの雨で満たされる前に、奴を祓わなければ。
そう、戦いに感傷は無用だ。
《落ち着き》を取り戻したなら、【パイロキネシス・α】を発動。
火球を《念動力》で操りアメフリを攻撃。
遠き日の幻よ、灰となって崩れ落ちろ。雨よ、今は私の涙を
洗い流してほしい。



 雨神『アメフリ』の傘に吊るされたてるてる坊主が切り落とされる。ひらり舞う胴と頭が分離し地面に転がれば、戦場に降る雨はより冷たくなり、猟兵たちの身と心に浸透していく。
 煙る世界にアメフリの姿を捉えたガーネット・グレイローズの視界がぶれた。
「これは……」
 心と頬を濡らす雨に打たれ、蘇るのは――過去の――忌まわしい――……。
「記憶……いや、幻覚か――」
 そうだと理解はできたが、ガーネットの呼気が止まる。
 幻聴のけたたましいアラーム音が、自身を『あの時』へと返す。
 両親の乗った宇宙船が爆発し、ガーネットが見送りに出たフライトデッキが閃光に包まれた鮮烈な記憶。続く炎上を視認した時、届かないはずの熱波であるのに何故だか肌を灼く感覚――それを思い出し、ガーネットは腕を擦った。
 雨は彼女の長い人生の悲哀をまざまざと蘇らせる。
 水を多分に含んだ服が重い。艶やかな絹のような赤い髪も、深く闇を帯びたような色を時に灯す。
 歯を食いしばったガーネットが受ける哀しみ。例えようのないそれが心を激しくかき乱す。
 あぁ、と声を零した。
 銀河の戦場で帰らぬ人となった、亡き夫との思い出。
 喜びとなる光だったからこそ、哀しみの影は濃く深い。
 頬打つ雨に熱いものが混じった気がした。ゆっくりと落ちていくそれは確かに彼女の生であり、魂の軌跡――そしてガーネットの『現在』だ。
(「重いな……」)
 たくさん、たくさん歩いてきた。酷く心を揺さぶられ歩けない時もあった。途方もない瓦礫を前に歩みを止め、悩む時もあった。
 振り返れば自覚してしまう。この道は、体も心も重かった。膝を折り、地面で休めば楽になるだろうか。
 ……いや。
 瓦礫なんて越えればいいし寧ろ蹴飛ばしてしまえ。老獪相手に幾度となくそうしてきたことを思い出す。
「――」
 煙草に火を点け、煙と共に大きく息を吐き出した。Rayの字が滲み、すぐに湿気てしまった煙草であったが、肺に満ちた煙がガーネットの思考を明瞭にした。
「この世界が呪いの雨で満たされる前に……奴を祓わなければ」
 気の枯れが穢れというのならば、世界は簡単に穢れてしまう。
「今、私の前に立ち塞がるものは、すべて焼き払ってやろう――そう、戦いに感傷は無用だ」
 指を弾けば打石の如き火花が散り、ボボボッと緩やかな音を立て数多の火球が生まれた。
 サイキックエナジーでできた九十を越える火の球が戦場を飛び交う。
 火球に触れる前に心を凍らす冷たき雨は蒸発し、温かな雨滴がしとしとと降り始めた。伝う涙のような雨。
「遠き日の幻よ、灰となって崩れ落ちろ。……雨よ、今は私の涙を洗い流してほしい」
 確りと立ち言ったガーネットの声は、細やかな春の雨のようにやわらかな呟きに。
 次々とアメフリへと到達したパイロキネシス・αが、邪神の力を削ぎ、徐々に海へと還していくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

城島・冬青
【橙翠】

??
アヤネさん
どういうことですか?
あの子のことを知ってるんです?
ふぎゃ?!
うえぇ、急に何するんですかー!
頬をさすって抗議する
うーん
様子のおかしいアヤネさんが
気になるけど敵は待ってくれないし今は戦うしかないみたい
後でちゃんと聞かせて下さいね

刀を抜いて接敵、アメフリへと斬りかかる
肌に触れる雨が突き刺すように痛い
これはただの雨ではなさそう
慌ててパーカーのフードを被る
気休めだけど無いよりはマシだよね

無差別攻撃は此方に届く前に衝撃波を放つ
相殺は無理でも威力とスピードを弱めて
ダッシュで回避する!
被弾したらカウンターでUC発動しぶっ放す
やられたら倍返しです!!
お望み通り清冽なものへと還してあげますね


アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】
アメフリに話しかける
僕を知っているかい?
いや知るわけがないネ
聞かなかったことにして

なぜ知り合いだなんて誤解した?
異常事態だ
もっと早く気づくべきだった
僕の精神が何かに干渉されている可能性に

ソヨゴに問いかけられて
ついと手を伸ばし
彼女の頬をつねる
あーうん
これは現実だネ

知らないよ
気のせいだったみたいネ

ソヨゴに不安を悟られないように
わざと素っ気なく答える

SilverBulletを組み立て始める

UC発動
455機のドローンをソヨゴの上にドーム状に展開して守る
僕は攻撃範囲外から狙撃体勢
ソヨゴそいつの足を止めて

スコープを覗く
もう誰も犠牲にならないし
君も代償を払わなくていい
骸の海にお帰り
アーメン
引鉄を引く



 雨神『アメフリ』の傘に吊るされたてるてる坊主が切り落とされ、雨はより冷たくなった。
 冬の雨のようなそれに城島・冬青は寒さ故か微かに身を震わせる。
 アヤネ・ラグランジェは僅かに首を傾け、一歩、踏み出した。
「ねえ、雨神、僕を知っているかい?」
『……君を?』
 雨煙る視界にアメフリの表情は見え難かったが、返された声は怪訝なものであった。アヤネは即座に否と首を振った。アメフリに対してではなく、この状況に、だ。
「いや知るわけがないネ。聞かなかったことにして」
 だが理由なくこういったことを言うアヤネではない、というのを冬青は知っている。霧のように散っていく「きっかけ」を彼女は捉えた。
「?? アヤネさん、どういうことですか? あの子のことを知ってるんです?」
 琥珀色の瞳はただただ案じている――カメラなどの媒体に映し取ったものよりも綺麗に見える色だ。そこはアヤネにとってのリアルであった。
(「なぜ知り合いだなんて誤解した?」)
(「異常事態だ」)
(「もっと早く気づくべきだった」)
(「僕の精神が何かに干渉されている可能性に」)
 自身の声が次から次へとアヤネの胸の内に湧き出してくる。声はカードのようだった。めくり、示唆された可能性を、明瞭な分析する思考へと変換していく。
 ついと手を伸ばした先。アヤネの指先は柔らかなものに触れて、そしてつねった。
「ふぎゃ?!」
 踏まれた猫のような声を上げたのは冬青だ。ぱっと身を引き、頬をつねったアヤネの手から離れる。
「うえぇ、急に何するんですかー! 思いっきりつねりましたね!?」
 頬をさすって抗議する冬青であったが、返ってくる声はどこかぼんやり気味。
「あー……うん、これは現実だネ」
「アヤネさん? 本当にどうしちゃったんですか?」
「……知らないよ。気のせいだったみたいネ」
 冬青を一瞥したアヤネが目を背けた。恐らく瞳には不安の残滓が消えずにある。
「ほら、ソヨゴ、戦わなきゃ」
 素っ気ない物言いで促す――ここは感染型UDCの棲家――戦場だ。
 猟兵の仲間が危険な雨を遮っていてはくれたが、戦わなければ。
 一瞬膨れそうになった頬を気合い入れがてらに一度叩き、冬青は駆け始めた。
「アヤネさん! 後でちゃんと聞かせて下さいね!」
 そこだけは譲れないと告げて。

 花髑髏を抜刀した冬青を追って集中豪雨が襲う。
(「――これは……!」)
 防水性のあるパーカーのフードを慌てて被り雨の中を冬青は走った。足元はぬかるんでいたが元より足捌きを鍛えているのだろう、難無く彼我の距離を詰めた冬青がアメフリへと斬りかかる。
 横一文字を描く一刀は直ぐに斬り上げられた――降りかかろうとした腐食の雨が、放たれた衝撃波により刹那に消滅する。だが相手は間断なく降る雨だ。
 一滴が落ちればその部分はボロボロと崩れてしまう――その時、エレクトロレギオンを発動させたアヤネが455機のドローンを冬青の頭上へと展開させた。
 ドームのようにぴったりと合わさったドローンたちが一時的に雨を遮る。それでも腐食の雨を一滴でも受ければ消えてしまい、故に入れ代わり立ち代わりと攻防が行なわれる。
「ソヨゴ、そいつの足を止めて!」
 雨を避け、後方へと下がったアヤネが声を張った。
 冬青が刀を振れば傘を畳んだアメフリが応戦する。硬質な音が鳴り、刀と傘がかち合った。相手の力を利用し、刀を跳ねさせた冬青が戻し刃を送る。
 咄嗟に切り結ぶものからいなす動きへと冬青は切り替えた。
(「一撃が重い――まるで水を多く含んでいるかのような」)
 力というよりは、金棒みたいに遠心を利用したかのような振りだ。
 刀を構え一旦飛び退く冬青であったが、身を屈め直ぐに接敵する。
『雨よ!』
 ばんっと傘が開かれ中空から矢の如き雨が冬青へと降ってきた。
 腐食の雨が服の繊維を砕き、肌を灼く。流れる赤は降雨によりすぐに色が薄くなる。
「やられたら倍返しです!! ――お望み通り、清冽なものへと還してあげますね」
 一度薄まった色が真紅へと変化し、蝙蝠の大群が冬青を中心に出現した。ギィギィと雨を払い、アメフリへと体当たりしていく蝙蝠たち。
 スコープからそれを視認したアヤネが対UDCライフル・Silver Bulletの引鉄に指を掛ける。
 飛来した蝙蝠たちによって、雨に煙る戦場が僅かに晴れた。
「もう誰も犠牲にならないし、君も代償を払わなくていい」
 呟きは、確かにアメフリに拾われ、雨神の意識がアヤネへと向く。ここは邪神の棲家、侵入した者の一挙手一投足が把握される空間。
「骸の海にお帰り」
 ――アーメン。
 祈り、引鉄を引いた。
『!』
 着弾とともに炸裂し敵の身へ喰らいつくUDC細胞炸裂弾が、雨神・アメフリを侵食し始める――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

文月・ネコ吉
血濡れてもなお、人々の無事を願うとは
全く、お人好しな神様だな

呆れたように息を吐く
でもそれは敬意の裏返し
神が最期まで神である事にどこかほっとして
その想いに報いたいと願う

哀しみ纏う雨に呼応するように
真の姿の人間形態へと変化
振り下ろされる攻撃を見切り
雨の名を持つ刀で武器受けする

衝撃から伝わるのは
込められた哀しみの雨
読心術でその裏に隠された想いと願いを受け取って
確かめるように刀を握り
カウンターで斬る

雨の水は土へ染み、川を下り海へと至る
そして海の水は天へと昇り、雲を結び再び雨に
桜の世界ではないけれど
その想いはきっと巡るのだろう
ならばその道行に、幸ある事をそっと願う
優しい雨が降るようにと

※アドリブ大歓迎!



「血濡れてもなお、人々の無事を願うとは……全く、お人好しな神様だな」
 文月・ネコ吉はそう言い、呆れたように息を吐いた。
 湿気を多く含んだ空気にケットシーの毛も徐々に濡れていくけれども――雨の、哀しみの気配に呼応したのか、ネコ吉は人の姿となる。
『そうでもないよ』
 対し、雨神『アメフリ』の声は素っ気ないものであったがここは彼の棲家だ。アメフリの気配に満ちた場で、ネコ吉が抜いた叢時雨はとてもよく手に馴染んだ。
 これは春の雨だと彼は感じた。
 人の雨待つ願いはそのほとんどが根底に希望を宿している。
 邪神でありながら善なる神性を持つアメフリもまた、応えたが故に根底は希望を灯しているのだろう。龍燈のように。
 先のネコ吉の言葉は敬意の裏返しでもあった。神が最期まで神であることに、どこかほっとしたのだ。
 その想いに報いたいと願うのも然り。
 ――応え続けてきた雨神の抗いへ、ネコ吉は応じるための刃を振るう。

 迫る猟兵たちに向けて雨を降らせ、肉薄した者へは開閉する傘で応戦する。
 還せと言いながらアメフリの動きは手を抜くものでは無かった。
 閉じられた傘とネコ吉の刀がかち合い、硬質な音が棲家に渡った。
 一刀に受ける傘の振りは重く、受けた叢時雨を咄嗟に返せば勢いづけて傘が開かれた――構えた刀ともども弾かれたネコ吉が飛び退く。
 けれども彼とて元は殺し屋。着地と同時に再び彼我の距離をつめた。
 遠心を掛けた敵の傘振りは金棒を相手にしているかのようだ。軌道を読み、振りの勢いが削がれる瞬間を狙い自身の刀を送り込めば、アメフリの態勢が僅かに崩れる。
「――素直じゃないな」
 やっぱり、という風に呟くネコ吉。
 雨神にとって――少なくとも、昔の雨神にとって、外界の命は子供のようなものだったのだろう。
 彼らに希われて応えて、彼らの「自立」を喜び哀しみ、そして今この場の雨に苦しみ。
 アメフリが希ったのだ、未来を。
(「雨の水は土へ染み、川を下り海へと至る……そして海の水は天へと昇り、雲を結び再び雨に……」)
 すべては理。
 想いと願いを感じ取ったネコ吉が刀を握る――問うように――闇を帯びる叢時雨と一体化した彼の一閃は間断なく降る雨を斬り、アメフリを斬る。
 影朧たちのいる幻朧桜の世界ではないけれど、その想いはきっと巡るのだろう。ネコ吉はそう思うのだ。
 狂気にのまれながらも、滅びを与える手が、かくあれかしと願ったもの。
 ならばその道行に、幸ある事を――そっと、願わずにはいられなかった。
 雨が隔てなく降るものであるのなら、この神にも優しい雨が降るように、と。
 叢時雨の名のもとに、清冽と果てるまで。ネコ吉はアメフリのための理を振るい、「雨」を降らせ続けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

高吉・政斗
アドリブ&連携歓迎
【SPD】
アメフリの詞を聞いて)
あぁ…そういう意味なぁ。早々、あんたそう言えばオブリビオンだったわ。
生半可意志を持ってた言い方だったしねぇ…(UC起動)

二足型FECTを自動操縦化し…「電子の盾(UC)」を四方に展開。
少しずつ接近しながら戦車兵装をふんだんに発射、彼に対して撃ちまくる。
(機関砲・主砲・榴弾などなど)

その間俺は密かに背後を取り小銃で撃つってだけだ。
忍び足にも近いただ歩くだけ…歩くだけだ。FECTや仲間には負担掛けるがな。勿論自分だって彼の攻撃を受ける覚悟…なんていらねぇな。
ただただ撃ちあってやるよ。

ま、気が向いたら又生まれてきなよ…水は俺らにとって大事だからな。


四宮・かごめ
※アドリブ連携OK
変な柄の虎を祀ったら異界に迷い込んでしまったでござる。
それはそうと、世界中の祠を通じて広がる穢れ、無茶苦茶ヤバそうでござる。

痛いでござる。にんにん。
UCで大きな唐傘を作って
ガーデンパラソルみたいに地面に立てて
雨を防ぐと同時に
水溜りが出来ない安全地帯にする。

異界の真ん中に作って
他の猟兵も雨宿りし易いようにするでござる。
「構わずにんにん」

それがしは中央の柱を背に座り込んで
ガン待ち決め込むでござる。
雨音に耳を澄ましたり
目を凝らしたりして
敵の接近を探るでござる。

敵を射程内に捉えた瞬間に
手元で弄んでいた手裏剣を投げつけるでござる。

戦が終われば影は去るのみ
では、これにて!(ちゅどーん)


茜谷・ひびき
雨はこの世界で生きる人とは切っても切り離せない
そこにあった歴史も穢れも、きっと今を生きる俺達が目を背けてはいけないもの
だったら……ちゃんと向き合おう
あんたを、祓うよ

刻印を起動したなら移動力を5倍、装甲を半分に
鉄塊剣で雨を防ぎつつ接近だ
雨が身体を蝕んでも【激痛耐性】で歯を食いしばり、地獄の炎を滾らせて進む
この穢れの雨もあんた達が受け止めてきたものだから
俺も全力で受け止めたい

一気に駆けて接近だ
鉄塊剣は腐食で使い物にならなくなってるだろうから
あんたを攻撃するのは刻印を起動した拳
【怪力】も乗せて、雨すら気にせず【捨て身の一撃】
出来る限り痛みは少ないように貫きたい

今までありがとう
ゆっくり休んでくれ


駒鳥・了
生まれは選べなくとも、人ならば望む方へ手を伸ばす事も出来るだろうが
君のような性質では儘ならぬか
それでも抗わぬ道理もない
ならばせめて純粋に戦うくらいは楽しもうか
君の趣味に合えば良いが、合わなくてもまあ仕方ないね

椋の木の枝を足場に跳んでいれば水たまりを気にする事もない
UCで適切な距離を取りながら攻撃を行うし
適切な足場が無ければ「猫の手」を適切な枝に投げて体制を整え直そう
君からの攻撃は炎の属性攻撃で蒸発させるか残像でかわしていこう

ところでこの木は穢れの道か?
必要と感じるならば斬り倒すも厭わないが、どう判断してくれようか



「あぁ……そういう意味なぁ」
 雨神『アメフリ』の言葉に得心がいった、という風に龍と戦ってきた高吉・政斗が呟いた。
「生半可意志を持ってた言い方だったしねぇ……そういえばあんた方、オブリビオンだったわ」
 そう言った彼の両腕が仄かに青白く光り、鉄鋼製可変形戦闘車(Fe+C+Tank)からデジタル生成された電子の盾が展開される。雨粒の性質を少しずつ、読み取っていく。
「……それはそうと、世界中の祠を通じて広がる穢れ、無茶苦茶ヤバそうでござる」
 しゅたっとどこからか場に降り立った四宮・かごめがにんにんと言いながら、周囲の様子を探った。忍びの目が、エルフの目が、冴えた五感が気の流れを読み、かごめの視線はやがて椋の木へと止まった。
「生まれは選べなくとも、人ならば望む方へ手を伸ばす事も出来るだろうが、君のような性質では儘ならぬか」
 感染型UDCであり、邪神であり、理に添った存在を前に駒鳥・了――スミは自身の刀に手を添えた。鯉口を切る。
「それでも抗わぬ道理もない」
 スミの言葉に、開かれた傘柄の握り方をアメフリは変えた。微笑んでいる。雷気が迸ったようにも感じる殺気を、スミもまた微かに微笑むことでいなした。
「ならばせめて純粋に戦うくらいは楽しもうか」
 アメフリも手を抜く気はないようだ。
「――雨はこの世界で生きる人とは切っても切り離せない」
 世界中に残存する雨神の伝承と信仰は、今なお形を変えて茜谷・ひびきたちの周囲に在る。
「そこにあった歴史も穢れも、きっと今を生きる俺達が目を背けてはいけないものだ」
『人の子よ、忘れてもいいんだよ。すべては理の循環でしかない。勿論、今のこの滅びを与える手もまた理、然り』
 いや、とひびきは首を振った。鉄塊剣を手に相手を見据える。
「俺たちは向き合う。あんたを、祓う」
 それが猟兵と、邪神として復活したオブリビオンの理なのだから。

 様変わりする雨の性質を読み取るのは政斗の電子の盾だ。
「また変わる!」
 警戒を促す声を発すれば、ざんっ! と豪雨が発生し、一瞬にして視界が煙る。刺すような雨が猟兵の体と地を穿った。
「痛いでござる――にんにーん、どーん」
 素早く印字を切ったかごめが侍帝式からくり機構を発動させれば、地面から破竹の如き柱が立ち、バンッ! と音が立った。
「空砲!? いや、傘か!」
 その音に思わずといったように反応した政斗であったが、頭上には大きな唐傘が展開されている。椋の木を越えて雨を遮り。
「雨宿りにござる」
『おやおや――これは時間がかかる』
 アメフリが感心したような呟きとともに、雨雲を霧散させた。傘よりも下へと雨を構築するのに手間がかかる様子。傘の下へと入った政斗の電子の盾が敵ユーベルコードを遮り、更に間断なく阻止しているのだ。
「今のうちだな」
 二足型FECTを自動操縦に任せ、政斗が雨水でぬかるんだ地面へと飛び降りた。その間にもFECTは硬質な発射音を立てながら機関砲を撃ち続けている。
 接近戦と遊撃を行うのはひびきとスミであった。
 水溜りはアメフリのより強固な領分だ。銃を構え進む政斗と、現界化した彼の盾をも使い椋の木の枝から軽々と渡り跳躍するスミが時に加速しながら無銘蛇目貫を振るう。
 放たれた衝撃波はタイムラグが三拍ほど――故に縦横。アメフリが傘でしのごうとするも、一つ目の斬撃に傘盾の適した角度もぶれ衝撃波に煽られた。
『――!』
 弾き飛ばされたアメフリが傘を閉じ、滑るように着地する。
 姿勢は低いまま、振り向きざまに傘を振るえばそこには焔。
 先の腐食の雨に喰われたが如く、身体に傷を負ったひびきの地獄の炎であった。痛ましいその姿にアメフリの顔がやや歪むが、歯を食いしばって耐えるひびきの姿に言及することはなかった。
 金棒のように重く、水を含んだアメフリの傘の一閃を鉄塊剣で受ける。本来なら硬い音がかち合うのであろうが、腐食の進んだ剣はそのまま払い飛ばされた。
 ばんっ! と再び空砲のような音を轟かせ、今度はアメフリの傘が開かれる。
 互いに飛び退き――真横から妖刀の怨念が迫る――スミの衝撃波だ。勘づくも避ける術はなかったのだろう、まともに受けたアメフリは吹き飛ばされた。
 そこへ政斗のM230拠点追尾防衛型突撃機構銃が火を噴いた。FECTと呼吸を合わせての掃射は勿論アメフリを攻撃するものであったが、誘導するものでもあった。
 感染型UDCの棲家であるが故に、猟兵の一挙手一投足を読むアメフリの世界を歪ませるのは、耳を劈く銃撃音だ。
 野点の如く、戦場に立つ大きな傘の柱を背に、手裏剣を弄びながら座っていたかごめが動く。
 猟兵たちやアメフリの動きに跳ねる水の音。
 着弾する主砲が少しずつ手応えの無い、軽い音となっていく。邪気が骸の海へと徐々に還っているのだろう。
 その音の隙間を狙い、波打つ水の気配、その中心部へ手裏剣を投げつけた。
 到達した一撃は『棲家』を揺らがせる――そう、物理的に歪んだ。
 横打ちとなり刺し貫く雨を、刀に焔を纏わせて弧を描くようにスミが斬撃を放てば、雨は蒸発し場が晴れた。残滓に散りゆく炎が雨の気配をも相殺し、斑の晴れ間を作る。
 間断なく降っていた雨が降らない。それはアメフリが力尽きる前兆でもあったのだろう。
 駆け抜けたのはひびきだった。
 傷口か噴出する焔のなか、起動される朱殷の刻印。
 真っ直ぐに、場を構築する波紋の中心点を――雨神を――弾丸の如き拳が撃ち貫くのだった。


 完全に還る寸前、僅かに雨神は笑み零れていたような気がする。
「ま、気が向いたらまた生まれてきなよ……水は俺らにとって大事だからな」
 屈み、水溜りに向かってぽつりと呟く政斗。
 UDCではあるが、そうあるが故に、ままならぬというのならまた相手にしてやろうと思ったのだ。
 雨雲に覆われていた空は今、青空が広がっていて、たくさんの水溜りにその色が映っている。
 かと思えば、黄昏の色、夜の色と次々に映し始める。この棲家もそう長くはないらしい。
「早めに脱出した方が良さそうだな」
 ぱっと立ち上がって政斗が仲間へと言った。
「その前に確認しておきたい」
 告げ、椋の木を見遣るスミ。
「この木は穢れの道だと思うかい?」
 スミの言葉に、「にんにん」と目を瞬かせてかごめは頷く。
「そうでござろうな」
「意を汲むのならば斬り倒した方が良い――か」
 それならば、と風の属性を乗せた一閃をスミが放つ。集束させた数多の風刃が斧刃のように厚くなり、椋の幹を斬り倒した。
 樹洞が風穴となる。ぐんにゃりと棲家は歪み、一人、また一人と外の世界へと送られるなか、
「戦が終われば影は去るのみ。では、これにて!」
 煙玉を地面に投げつけ、大量の煙に包まれ離脱するかごめに政斗は思わず口笛を吹く。
「すげぇ、本物の忍者だ!」
 からりと晴れ渡ったかのような声が世界に響く。

 棲家が少しずつ消滅していくなかで、水溜りはいつまでも空を映し続けていた。
「今までありがとう――ゆっくり休んでくれ」
 滅びへ導く存在が、狂気にのまれながらも、かくあれかしと願った。
 過去と未来が交差する現在で、穏やかに、ひびきは言の葉を雨神へと送り――猟兵たちは世界から去った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年12月02日


挿絵イラスト