●ただ、終焉へ突き進む紅
緋美子が仕立ててくれた赤の着物を羽織る。
あなたにしかきっと似合わないと、そう言って笑ったあいつはもういない。
可哀想に、奴の血か俺の血か――どちらかに染まるんだろうが。
……見世物の野次馬をしていたつもりはなかった。
たまの休暇に二人で出掛けた先で、「ヒーローとヴィラン」が戦っていただけだった。
「ジェットブラスター」――奴は、「ヒーロー」なんかじゃねえ。
あいつはわざと、狙って、ヴィランごと緋美子を水流で斬り裂いた。
奴が紛い物のヒーローだと気づいてる奴は、その腐った腹の底に気づいてる奴は、俺だけだ。誰もがあれを事故だと、避けられなかったと、緋美子は運が悪かったのだと信じていやがる。
……だから、俺がやる。俺が殺す。
俺が、終わりにする。
●復讐の女神の両手を
「猟書家たちが動き出したという話は、もう聞いているな」
フェイト・ブラッドレイ(DOUBLE-DEAL・f10872)は、その薄氷色の左目を厳しく光らせて、自らの呼びかけに応じた猟兵たちに語り始めた。
「先の戦争、迷宮災厄戦にて生き残った猟書家たちが、オブリビオンフォーミュラを斃して平和が訪れた世界それぞれに散った。奴らが世界を移動した方法はわからないが……既に、現地でそれぞれの目的――「新たなオブリビオンフォーミュラ」となる為に、行動を開始している」
予知された世界は、ヒーローズアース。
「幹部である『ラグネ・ザ・ダーカー』はヒーローに成り代わる術を持っている。そうしてヒーローとして活動をしながら、任務中の不慮の事故に見せかけて、殺人を繰り返している」
今回予知された地では、ジェット水流を操るヒーロー「ジェットブラスター」に扮している。本物の「ジェットブラスター」がどこに消えたのかはわからないが、おそらく殺されているのだろう、と男は言う。
「変装なのか擬態なのか、『ラグネ・ザ・ダーカー』がどの様な手段でヒーローに化けているのかはわからない。だが、それは非常に巧妙で、予知を持ってしても見破ることができなかった。……だが、一人。たったひとりの、殺された被害者の家族だけが、今の「ジェットブラスター」は「本物のヒーローではない」と見抜いた。故に、予知が可能となった。その怒りには、敬意を払うべきだろう」
それは、『ラグネ・ザ・ダーカー』扮する「ジェットブラスター」に、事故に見せかけて殺された女性の夫だ。様々な映画に日本人役の俳優として出演していた日系人の男。ユーベルコードを持たない一般人であった彼は、妻の復讐のために舞台を降り、ヴィジランテとなって「紛い物のヒーロー・ジェットブラスター」を倒す為に一人行動をしている。
「真実を見抜いたその怒りに敬意を評して、俳優としてではなくヴィジランテとしての名「ザ・ブラッド」と呼ぼう。彼は髪からその身に纏う着物、そして靴先まで紅い。そしてユーベルコードを持たない代わりに、不意をつくならば十分に通じる剣技を習得している。勿論、それだけでは『ラグネ・ザ・ダーカー』には適わず、殺されてしまうだろうが……」
今は「ジェットブラスター」に化けている『ラグネ・ザ・ダーカー』だが、逃してしまえばまた別の「偽ヒーロー」に化けてしまう。故に、確実に仕留めなければ、また新たなヒーローが犠牲になる可能性がある。故に猟兵たちに向かってほしいのだと、男は言う。
「行ってほしい場所はとある街のバーだ。「ジェットブラスター」になっている『ラグネ・ザ・ダーカー』はここにかならず訪れる、それを掴んで、「ザ・ブラッド」は先んじてそのバーに来ている。まずはそこで、「ザ・ブラッド」に近づき――そして、共に「偽ジェットブラスター」を追い詰める準備をしてほしい」
「ザ・ブラッド」を逃したり追い払う必要はない。逆に親しくなり、共に戦ってほしいのだと、グリモア猟兵は語る。
「『ザ・ブラッド』は周囲の誰にも偽ヒーローのことを理解されなかったがゆえに、一人で復讐を遂げる覚悟でいる。それを覆す為に、コミュニケーション能力が必要だ。猟兵が手助けに来たと言うことをきちんと話せば、ヒーローズアースでは猟兵はヒーローに等しい。彼も仲間が出来たと理解するだろう」
それから、と、男は付け加える。
「敵は「怪物『スナーク』」を創造するため、その名のもとに恐怖を集めようとしている。それを妨害するために、「猟兵組織『スナーク』」を名乗ってほしい。そうすれば、ヒーローズアースにおけるスナークの認識は恐怖の怪物ではなくなるだろう。地道な作業だろうが、頼めるだろうか」
現地への転送は私が行う。準備ができた者から、声をかけてくれ。
グリモア猟兵は、最後にそう言った。
遊津
遊津です。猟書家シナリオをお届けします。
ヒーローズアースに再び訪れた危機を打破して下さい。
当シナリオは一章日常、二章ボス戦の二章構成となっております。
一章は日常のため、必要成功数が少ないので注意して下さい。
偽ヒーロー「ジェットブラスター」
猟書家の幹部「ラグネ・ザ・ダーカー」によって(おそらく)殺害され、なり変わられています。このシナリオに登場する「ジェットブラスター」は猟書家によって化けた偽者です。一章のうちに彼女を逃さないよう追い詰める準備をして下さい。
なお、ジェットブラスターは女性のヒーローです。
ヴィジランテ「ザ・ブラッド」
日系二世の映画俳優でしたが、ヒーロー「ジェットブラスター」による「不慮の事故」で妻を殺されたことから「ジェットブラスター」を「偽りのヒーロー」だと見抜き、今はヴィジランテとして彼女を追っています。ユーベルコードは持ちませんが、カタナを手にしており、剣術を使うことが出来ます。(勿論、それだけではオブリビオンに敵う実力では有りませんが)
赤毛に紅い着物を纏い、赤いブーツと全身を赤で固めています。
「緋美子」
ザ・ブラッドの「殺された」妻です。
デザイナーであったようで、彼が纏う着物は彼女から贈られたものです。
このシナリオには以下二つのプレイングボーナスがあります。
1.ヴィジランテ「ザ・ブラッド」とともに戦う。
2.猟兵組織「秘密結社スナーク」の一員であると名乗る(敵がスナークの名のもとに恐怖を集める企みを妨害します)
プレイング受付開始時間、及びその他の注意事項がございますので、プレイングを送信下さる前にマスターページを一読下さいますようお願いいたします。
それでは皆様のプレイングをお待ちしております。
たったひとりで死と隣り合わせの復讐に向かう男に、どうか手助けを。
第1章 日常
『ダーツバーでのひと時』
|
POW : 酒、つまみ、酒、つまみ。お酒が飲めない人はソフトドリンク、トマトジュース、ノンアルカクテルなどで。
SPD : ダーツに挑戦。そもそも的に当たるかな?腕前を披露しよう♪
WIZ : 聞き耳を立てる。バーの雰囲気を楽しむのもまた一興。
イラスト:玉英
👑5
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
サンディ・ノックス
バーでザ・ブラッドさんに接触
紅の特徴を聞いているからすぐわかるよね
「こんにちは、ザ・ブラッドさん」
まずはそう声をかけて彼の反応を見る
「俺は猟兵組織スナークの一人、サンディ
猟兵だよ
これから組織のメンバーがここに集まる手はずになってる
貴方の復讐を助けるために」
こう言って
彼からの質問は知っていること全て答えて好印象を狙う
ターゲットをバーに留める方法は
一般人が居る時にヴィランが襲ってきて偽ヒーローとヴィランの戦いを起こすのはどうだろう
ヴィラン役がひとり
他の猟兵とザ・ブラッドさんは一般人役で
バーに居る本当の一般人は猟兵の知名度を使って全員に出て行ってもらう
同業者の作戦で他にいいものがあればそちらに乗るよ
イザベラ・ラブレス
【アドリブ&連携歓迎】
殺したヒーローになりすます、ねぇ…
この世界の人であれば躊躇うだろうけど、私達はそうはいかないわよ?
<SPD:賭けダーツ>
やたら馴れ馴れしい客が絡んできたから勝負。
女だと思って嘗めた事、後悔させてやるわ。
【砲撃】、【スナイパー】の技量に【戦闘知識】を付けて全投20のトリプルを狙うわよ。
見物してるギャラリーの中にザ・ブラッドがいるようなら接触して猟兵組織『スナーク』の所属である事を説明するわ。
最愛の人を失った事には同情するし、その復讐心は正しい。
本当は無償でも手伝いたいけど、だからこそ一人のプロの戦場傭兵である証として依頼料は安くない事を伝えるわ。
シル・ウィンディア
仇討ちか…。
オブリビオンのせいで大切な人を失うなんて…
少しでも力になれたらいいな
バーに入る前に
シルフィード・チェイサーをこっそり展開して
外でシルフィードを目立たないところで待機させてっと
ここ、となり空いている?
と、ザ・ブラッドさんへ声かけてから座るね
ね、あなた、偽物さんを倒そうとしているんだよね。
それ、わたしにも手伝わせてもらえない?
幼いからっていうのなら、心配は無用だよ
こう見えても、猟兵の一人だからね
そう、スナークという猟兵組織の、ね
ジェットブラスターが入ってきたら
気づかれないように観察して
仕草等に注意を払うね
外に出たら
シルフィード、出番だよ
追跡させて地形など把握して
逃がさないように下調べ
大豪傑・麗刃
バーなんだし一杯やろうか。戦いの前なので、ノンアルコールのカクテルを。うん、こーいうのはわたしのクニ(サムライエンパイア)にはないので新鮮なのだ。あま、うま。
っと本題忘れちゃいかん。
まずザ・ブラッドくんと接触。こういう時のためにコミュ力ありそうな服を着てきたのだ。ついでに演技力とか言いくるめとかも。
接触方法は占い師のやり方にならう。きみは悩みを抱えていて、重大な決断をしようとしてるね、とか。なんでわかるかって?だってわたしはかつては
49ersと呼ばれた男だからな!
こんなトコでこれ使う事になるとは思わなかったのだ。
偽ヒーロー対策は、出入口張って、敵が入ったらさりげなく出口ふさぐ位置取りするとか。
●その終焉を打ち砕くは、伝説の英雄<ヒーロー>たち
夜。猟書家「ラグネ・ザ・ダーカー」が成り代わった偽ヒーロー「ジェットブラスター」が現れると予知されたバーに、猟兵たちはそれぞれ不自然さを感じさせないタイミングで入店していく。中は小洒落たダーツバーで、幾人かの酔客がダーツに興じていた。
(殺したヒーローになりすます、ねぇ……)
ヒーローはこの世界では基本、そのユーベルコードの力を持って無辜の民を助けてくれる存在だ。成り変わられているとは言え彼らの姿をしたものを害するとなれば、この世界の人々では躊躇が生まれるかもしれないが。
(――私達はそうはいかないわよ)
イザベラ・ラブレス(デカい銃を持つ女・f30419)は琥珀色の髪を靡かせながらカウンターに着く。少し離れた席では、大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)がオレンジジュースとミルク、フランボワーズシロップを用いたノンアルコールカクテルに舌鼓を打つ。
「うん、こーいうのはわたしのクニにはないので新鮮なのだ。あま、うま」
ところでこのカクテルは「コンクラーベ」という。なんだか何か、こう、ギャグに使えそうな名前だったので頼んでみた。偽ヒーローとコンクラーベ(根比べ)……とかどうだろう。特に根比べする状況に陥るかどうかもわからないのだが。
(仇討ち、かぁ……)
シル・ウィンディア(光刃の精霊術士・f03964)は念の為、バーに入る前に【シルフィード・チェイサー】をこっそりと展開させ、目立たないところで待機させておく。すぐに他のヒーローに成り代わってしまうらしい『ラグネ・ザ・ダーカー』相手にシルフィードがどこまで追跡できるかはわからなかったが、偽「ジェットブラスター」を店から逃してしまった時用の保険だった。
(オブリビオンのせいで、大切な人を失うなんて……少しでも、力になれたらいいな)
猟兵はどんな外見でも住民に違和感を与えない特性を持つ。おかげでまだバーに入るには幼い年齢のシルも、疑問を抱かれることなく席につくことが出来た。
――ダーツに興じていた酔客が近くにいたイザベラに絡み、彼女をダーツボードの前に立たせる。
酔った男たちの吐いた下品で粗野な言葉が、イザベラのプライドに火を点けた。
(女だと思って舐めたこと、後悔させてやるわ)
銃を自らの武器とするイザベラ、狙撃の腕はダーツを手にしても衰えることはない。
カッ、カッ、カッ――立て続けに投げた矢は全てが見事にインナーブルへと突き刺さり、沸き立つギャラリー。
その中に、赤い髪、派手ながらの赤い着物を着た、赤いブーツの男、グリモア猟兵に告げられた通りの外見の男、「ザ・ブラッド」は居た。
手にはやはり真っ赤なカクテル「ブラッディ・ブル」。イザベラによる即席のショーをどこか遠くに見ている彼の目はどこまでも暗く、深い淵の様に濁っていた。詮無きことだろう、彼がこれからしようとしていることはどこまでも望みの薄い復讐なのだ。望みが薄いと、そうわかっていても。不意打ちの卑怯なやり方でも、それでも構わないと彼は映画の舞台を降り、復讐の舞台へと上がったのだから――けれど、それを。深く暗いままにしないためにやってきたのが、猟兵たちだ。
紅い男へと、サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)が近づく。剣呑に見上げられたその目に臆すことなく、サンディは言う。
「こんにちは、『ザ・ブラッド』さん」
「……何で、その名を知っていやがる」
見た目よりも少し高い、ハスキーな声だった。復讐に沈んだその目は触れなば切れんような鋭さで、けれどまっすぐにサンディを射抜いてくる。
「俺は猟兵組織『スナーク』の一人、サンディ。……猟兵だよ」
「猟兵……? あの、猟兵だッてのか。あの……ちょうど一年前に起こったでけぇ戦争を一ヶ月で解決したっていう、あの」
「そう。僕たちの組織のメンバーは、もうここに集まっている。……貴方の復讐を、助けるために」
「なんっ……で、それを……いや、『猟兵』にはそんな事も可能だってェのか……だったら!だったらなんでもっと早くに来てくれなかった!……緋美子が!あいつが死ぬ前に、殺される前に……来てくれなかったんだ……何で今更なんだよ、何でッ!」
ザ・ブラッドは、サンディへと掴みかかる。その手は、その目は、イザベラのダーツを見ている時の捨て鉢な気だるさを捨て去ったかのように、熱かった。妻を喪くした――奪われた夫の悲壮感がサンディにもひしひしと伝わってくる。
「――猟兵の予知には限界がある。ううん、貴方の敵は、予知をくぐり抜けるほどに狡猾だった。俺たちにもわからないかもしれなかった。……貴方が、「ジェットブラスター」が「偽者」だと、気づいてくれなければ」
「……偽者、だって? あの女が……」
「そう。貴方は真実に気づいた。本物の「ジェットブラスター」は、もう多分亡くなっている。貴方の奥さんを殺した偽の「ジェットブラスター」に成り変わられて」
「……そう、か……じゃあ、緋美子を殺したのは……やっぱりヒーローなんかじゃあ、なかった……!」
「うん、そうだ。世界できっと貴方だけがそれに気づいてくれた。だから俺たちが、ここにいる」
サンディの襟元を掴むザ・ブラッドの手は小刻みに震えていた。滴る透明な雫が、紅の男が怒りと悲しみに涙を零している事を教える。
かつり、男の後ろにイザベラが立つ。
「最愛の人を喪った事には同情するし、その復讐心は正しいわ」
涙に濡れた顔で男が振り返った。イザベラは男に自らも猟兵であると伝える。
シルが、そして麗刃が、彼らの周りに立つ。同じ猟兵であることを知らせるように。
「本当は無償でも手伝いたいけど……私はこれでもプロの戦場傭兵なの。依頼料は、決して安くないわよ」
「……幾らだッて払ってやらァ、これでも稼いだ金はある……あいつがいない今、その使い途も何にも思いつかねぇんだよ」
「――ここ、となり空いている?」
シルがザ・ブラッドの隣席に座る。
「ね、あなた、偽者さんを倒そうとしているんだよね」
「……ああ、そうだ。俺がやる。アンタらが来てくれたのは嬉しい。だが、どうか俺に緋美子の仇を取らせちゃあくれねえか」
「うん。邪魔はしない。わたしにも手伝わせてほしいの」
「……だが、嬢ちゃん。アンタは」
「幼いっていうのなら、心配は無用だよ、こう見えてもわたしだって、猟兵の一人だもの。……そう、「スナーク」という猟兵組織の、ね」
「……スナーク」
「そう、猟兵たちが作った、秘密結社」
自分の味方になってくれるという猟兵たちが集まっているという事実に少しでも安心したのか。男は椅子に座り直し、はあ、と深く息を吐きだした。
その彼の前に立ったのは、麗刃だ。
「きみきみ、今とてつもなく深い悩みを抱えているだろう……そして、重大な決断をしようとしているね……」
「――あの、多分そのくだりもう終わったよ?」
「なんと。折角占い師に倣ったやり方勉強したり、色々必要なコミュニケーションの方法とか仕入れてきたのに」
まあ、心配することはないのだ。なにせわたしは――
「わたしはかつては、「49ers」と呼ばれた男だからな!」
がくんと、ザ・ブラッドの顎が落ちた。
49ers(ヒーローズ・フォーティナイナーズ)。昨年の戦争、アースクライシス2019が解決して以降、そこに数えられた猟兵はヒーローズアースに於いて英雄の中の英雄だ。フィギュア化、コミック化、アニメ化、映画化、スピンオフドラマ化と彼らの活躍を描くこと華々しい。
「まじかよ……マジかよ、流石に俺も鳥肌が立ってきたぜ……? フォーティナイナーズと言やあ、今やヒーローの中のビッグヒーローじゃねえか……」
そんな大物がコメディリリーフの顔して出てくるなんて誰が思うだろうか。
「いやあ。わたしもこんなトコでこれ使う事になるとは思わなかったのだ」
「すげぇぜ……で、あんたもその猟兵組織「スナーク」の一員、だってのか」
「勿論なのだ」
「ね、こんなすごい人達もいるんだよ!」
「さて、それじゃあ……もうすぐ、偽者の「ジェットブラスター」がこの店に来るんだよね? ……一度でも逃げたら、奴はまた別のヒーローに成り代わってしまうだろう。だから、作戦を立てよう――」
「こんばんわーマスター、やってますかー?」
「おう、やってるよ」
「今日はなんだかお客さん少ないですねー?」
「まあ、そんな日もあるさ。落ち着いてゆっくりしてくといい」
「そうさせてもらいまーす!」
サーモンピンクの髪に、露出の少ない水色のコスチュームに身を包んだ女性ヒーロー「ジェットブラスター」。彼女がルーティンワークのように店に顔を出す。バーのマスターは愛想よく彼女をカウンターに通した。
ちびちびとカクテルを煽りながら、ジェットブラスターはマスター相手に世間話をしはじめる。
「いやー、最近は冷え込んできてこのコスチュームも寒くなってきちゃってですね―」
「そ、そうなのかい」
「どうしましたマスター? なんか動きがぎこちないというか……」
「何でもないよ」
「そーですかー? そのグラス何回拭くんですか? ずっと同じグラス拭いてるような……」
「気のせいだろう」
「もー、今日は特に変なマスターですねー、変と言えば、」
「――カネを出せェ!!」
覆面をした強盗――ヴィランが静かな時間を壊すように、殴り込んできた。両手には拳銃。ガン、ガン、ガン、脅しとばかりに放った銃弾がダーツボードを貫いて床に落とす。ダーツに興じていた一般人が悲鳴を上げる。強盗は手近に居た一般人に銃を突きつける。
「おやおやぁ? この私がいる時に強盗に入るだなんて、不運な方もいたものですね!」
「お、お前はまさか……!」
「ふっふっふ、そう!私こそがジェットヒーロー、「ジェットブラスター」!……さぁ、そこを動かないでくださいね怪我しちゃいますよ、ジェットぉ!」
水の塊が「ジェットブラスター」の両手に現れ、彼女はそれを水の刃に変えて強盗へと放つ。高密度のジェット水流はしかし、強盗の腕の中の一般人を巻き込むように渦を巻いて。
「ああっ!なんてことでしょう!」
「ジェットブラスター」が悲痛な叫びを上げた時だった。
「――白々しいンだよ」
ぞぶり。
「ジェットブラスター」の胸から、刃が生える。後ろに居たのは紅い髪に赤い着物、紅いブーツの男――ザ・ブラッド。彼のカタナは、確かに不意をついて仇の胸を貫いた。
「偽者なんだってな、テメェ……もう逃がしゃしねェぜ」
――緋美子の、仇。取らせてもらう。
「……あれぇ?」
バレちゃってましたかぁ?
本物の「ジェットブラスター」であったならばきっと絶対にしないような邪悪な笑みをみせながら、自身の胸に突き立てられた刃を見下ろす。
――全ては猟兵たちの作戦のうちだった。
店に居た一般人を猟兵の名を使って店の外へ出し、猟兵たちとザ・ブラッドのみで店の中で客のふりをする。強盗に扮していたのはイザベラで、その手に抱えられた一般人は麗刃だ。ジェットブラスターと顔見知りである店のマスターだけは本人に残ってもらうしかなく、故に演技をしてもらうことになったが、作戦は見事に成功した。
ずるりとカタナが偽「ジェットブラスター」の背から引き抜かれる。
背中側から真っ直ぐに心臓を貫かれて、それでも平気な様子で偽「ジェットブラスター」は立ち続けていた。
「その化けの皮、とっとと剥いだらどう?『ラグネ・ザ・ダーカー』!」
「……ふふふ、そうですか……――その名前も知られているとなれば、仕方ないな?」
声色が変わる。ジェットブラスターの姿を『ラグネ・ザ・ダーカー』が脱ぎ捨てる。
シルがマスターを奥へと避難させる。麗刃が入り口を塞ぐ。
店の外へは出さない。逃さない。
――彼女とは、ここで決着をつける。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『ラグネ・ザ・ダーカー』
|
POW : ダーカー・インジャスティス
全身を【鮮血の如きオーラ】で覆い、自身の【悪意】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : 侵略蔵書「キル・ジ・アース」
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【侵略蔵書「キル・ジ・アース」】から【具現化された「死のイメージ」】を放つ。
WIZ : マッド・デッド・ブラザーズ
【死せるヴィラン】の霊を召喚する。これは【強化された身体能力】や【悪辣な罠】で攻撃する能力を持つ。
イラスト:津奈サチ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠鏡繰・くるる」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
========================================
「その化けの皮、とっとと剥いだらどう?『ラグネ・ザ・ダーカー』!」
「……ふふふ、そうですか……――その名前も知られているとなれば、仕方ないな?」
声色が変わる。ジェットブラスターの姿を『ラグネ・ザ・ダーカー』が脱ぎ捨てる。
現れたのは銀髪に眼鏡の、白衣を纏った美女。その手には侵略蔵書「キル・ジ・アース」。
薄桃色の髪のジェット水流ヒーローはもはやいない。その生死とともに、永遠に消えた。
猟兵たちは彼女を逃さぬよう、店の入口を塞ぐ。
「いや、失敬。私としたことが少々役に入りすぎてしまったようだ。なにせこの「ジェットブラスター」というヒーロー、少々お間抜けでね。殺して成り代わる時もこんな調子だから、やりにくいったらなかったよ」
「テメェっ……」
「それにしてもどうやって私が成り代わっている事に気づいたのか、さすがは猟兵というところかな。さて、そこを退いてくれないか。新たな姿を手に入れなくてはいけないからね」
それをさせるわけには行かない。
彼女はここで、必ず命脈を絶たなければならない――!
========================================
第二章 ボス 猟書家「ラグネ・ザ・ダーカー」が現れました。
おめでとうございます。猟兵の活躍により、ヒーロー「ジェットブラスター」に扮していた猟書家「ラグネ・ザ・ダーカー」は真の姿を現しました。
以下に戦場の説明を致します。
■戦場■
・戦いの舞台はダーツバーの内部となります。
・「ラグネ・ザ・ダーカー」は逃亡し、新たな偽のヒーローに成り代わる可能性がありますので、店の外に出すこと、店外に出るような戦いはおすすめできません。
・店の広さは十二畳ほどです。天井はヒーローズアースの一般的な高さとなっております。
(空中戦には向きませんが、それによりプレイングにペナルティがつくことはありません)
・種族体格差による有利不利は発生しません。
・店内にはテーブルや椅子などが残されています。工夫によっては戦闘に利用することが可能かもしれません。
・店内には一般人である店のマスターが残っていますが、彼は戦闘の間隠れているので戦闘の邪魔になること、敵に利用されることもありません。
・「ザ・ブラッド」は自身の判断で行動します。戦闘の邪魔になることなく、指示を出す必要もありません。
・『ラグネ・ザ・ダーカー』を逃さないため店の扉は閉ざされていますが、第一章に登場していない新たな猟兵が戦闘に参加することは可能です。
■「ザ・ブラッド」について■
――彼に『ラグネ・ザ・ダーカー』へのトドメを刺させますか?
ヒーロー「ジェットブラスター」が『ラグネ・ザ・ダーカー』の扮装であると理解した今、彼にとっての仇は『ラグネ・ザ・ダーカー』です。
彼はユーベルコードを使えないため、戦闘の役に立つことは出来ません(戦闘中は身を守ることに専念します)が、猟兵達が『ラグネ・ザ・ダーカー』を打ち破り、動けなくしたならば、彼の持つ武器でも『ラグネ・ザ・ダーカー』にとどめを刺すことは可能です。
第一章にて猟兵達が「復讐を後押しする方向」で協力を取り付けたため、「ザ・ブラッド」は『ラグネ・ザ・ダーカー』を殺せるようになれば、彼女を自らの手で殺害し、復讐を完遂します。
もしも「彼に復讐をさせたくない・トドメを刺させたくない」場合は、プレイングにて「止めを刺させない」などとお書きください。
ザ・ブラッドは既に一撃加えることに成功しています。これ以上彼自身の手を汚させたくない、と考えても自由です。
プレイングに何も記述がない場合、「とどめを刺させる」プレイングが多かった場合は、「ザ・ブラッド」は自らの判断で『ラグネ・ザ・ダーカー』にとどめを刺します。
どうぞ、悔いのない選択を。
========================================
イザベラ・ラブレス
【POW】
「逃げる?
悪党の学校で教わらなかったかい?『ブッ殺されるまでが悪党の仕事』って」
全く、口ではケツを捲くるなんて言ってる奴が出していい殺気じゃないわね…猟書家コワっ。
でもね、両足もがれても立ち上がって、苦しくても笑って誤魔化し、首一つでも獲物を仕留めるのがラブレス家の流儀よ。
さて、挑発してみたけどノッてくれるかしら?
武装:2丁拳銃「ダスク&ドーン」
トレンチガン
アドリブ&連携歓迎
羅振須式銃夫で命中力を重視。
拳蹴銃弾の嵐、ご覧に入れよう。
呪殺弾に続けて早業で誘導弾を装填して一斉発射、そしてド肝抜かれた所にトレンチガンの気絶攻撃よ。
私の仕事はここまで
後は気張りなさい、ザ・ブラッド【ヒーロー】
●GUN-FU
『……さて、そこを退いてくれないか。新たな姿を手に入れなくてはならないからね』
自ら扮していたヒーローの姿を脱ぎ捨てた、「猟書家」ラグネ・ザ・ダーカーは唇をつり上げながらそう言った。
「逃げる気? ……悪党の学校で教わらなかったかい?」
――ブッ殺されるまでが、悪党の仕事、って。
イザベラが二挺拳銃「黄昏と暁(ダスク&ドーン)」をラグネに向ける。猟書家の女は彼女の言葉を聞いて、笑った。
『ふはっ――』
その瞬間、放たれる殺気の鋭さたるや!
ビリビリとそれを皮膚で感じながら、イザベラは背中に冷たいものが走るのを感じる。
(口ではケツ捲くるなんて言ってる奴が出していい殺気じゃないわね……怖っ)
ガン、ガン、ガァン……二挺拳銃から弾丸が放たれる。その銃弾が猟書家の体をぶち抜こうとする寸前、ラグネの姿が真紅のオーラによって隠された。鮮血の如きそれは彼女の身体を覆い、弾丸が着弾するよりも速く飛翔し、イザベラの背後へ廻る。
高速で頭部を狙って放たれる蹴りを、イザベラは咄嗟にその銃で受け止めた。
「く……っ……」
(――重い……!)
まるで鋼で出来た丸太を抱えているような重さに、イザベラの腕が根負けしそうになる。咄嗟に放たれる銃弾。それを易易と躱し、拳が腹を狙って打ち込まれようとするのを体を捻って受け流す。
強い。目の前に立つ女は確かに猟書家の幹部であると、強敵であると改めて理解する。
……それでも。たとえ両足を捥がれても立ち上がって、苦しくても笑い、その首一つになろうとも獲物を仕留めるのが――ラブレス家の流儀だ。
ありったけの銃弾を猟書家の女に向かって叩き込む。その弾丸を追いかけるように、イザベラも床を蹴る。一瞬のうちにリロードを済ませ、呪詛を込めた弾丸をラグネの頭へと叩き込み、その動きを縫って繰り出される拳をもう片方の銃で殴りつける。ぱぁん、弾けるような音がして、ラグネ・ザ・ダーカーのこめかみを紅い雫が伝った。
ふらりと体を傾がせたラグネへ向かって更に銃弾の雨を降らせ、イザベラは二挺拳銃からトレンチガン――ソードオフ(切り落と)されたショットガンへと持ち替える。その切り詰めた銃身故に射程が短くなった代わり、室内での取り回しが容易となったソードオフ・ショットガンは、至近距離――接近戦で最大の破壊力を発揮する。引き金を引いた直後、発射された散弾は即拡散し、撃ち込まれたラグネの横腹を吹き飛ばす!
テーブルや椅子を巻き散らかしてラグネの体が壁に激突する。 ヒーロー
「私の仕事はコイツを追い詰めること――最後はあなたが気張りなさい、ザ・ブラッド!」
イザベラは紅の男に叫ぶ。見返してくる男のその目は、もう濁ってはいなかった。
成功
🔵🔵🔴
シル・ウィンディア
ここから逃がすわけにはいかないよ
それに…
今までの罪、ここで清算してもらうよっ!
空中戦できないのはつらいなぁ…
よし、ここは
対敵UC
強い相手が2人ってことだから
撹乱して一撃、かな?
敵の攻撃は
【第六感】を信じて敵の動きを【見切り】動くね
回避は【フェイント】を交えて【残像】を生み出して撹乱回避するけど
被弾時は【高速詠唱】の【オーラ防御】で防御
腰部の精霊電磁砲は牽制ようだけど
当てるつもりで撃つよ
出ないと牽制にもならないだろうしね
接敵したら二刀流の光刃剣と精霊剣で【フェイント】を入れて【二回攻撃】
このまま斬り結んでいくけど
【高速詠唱】で隙を減らして
タイミングを見て【全力魔法】の指定UC
全てを切り裂けっ!
●清らかなる疾風
店主を店の奥へ避難させ終えたシルは、ラグネ・ザ・ダーカーから距離を取り、店の唯一の出入り口を閉ざすように立つ。
「ここから逃がすわけにはいかないよ、それに……今までの罪、ここで精算してもらうよっ!」
この猟書家の女がヒーローに扮して奪った命を、そして、その為に手にかけたヒーローの命を。
天高く飛び回る空中戦を得意とするシルにとって、天井の低い閉ざされた空間での戦いは決して得手ではない。代わりの戦法を考える必要がある。
そうしている間にも、ラグネは立ち上がる。彼女によって呼び出されるのは、死したヴィラン。呼び起こされた炎のように燃える髪を持った男の霊が、手にした拳銃から銃弾をシルの足元へと叩き込む。床に着弾した瞬間、銃弾はごうと音を立てて燃え上がり、シルの周囲に炎の壁が巻き上がる!
「きゃっ……」
同時にシルへとラグネの蹴りが襲いかかる。その軌道を見切り、シルは炎の中で息を止めた。燃える炎の中で気をつけるべきは、炎そのものによるダメージよりも煙を吸い込むことによる一酸化炭素中毒、そして熱気によって肺を焼かれる事だからだ。
更に燃える弾丸がシルへと撃ち込まれる。残像を生み出しながら出鱈目な移動を繰り返し、
シルは弾丸を器用に避けていった。そうして後衛のヴィランの攻撃を躱しながら、接敵してくるラグネからの攻撃は高速で防護壁を作り出し、それによって受け流す。
腰部の精霊電磁砲から魔力砲弾を撃ち出す。ヴィランへと魔力砲はが降り注いだ。全身を撃ち抜かれてボロボロになろうとも、それでも死せる霊である彼はラグネによって強化を受けていることもあってすぐには倒れない。ギザギザの歯を剥き出しにしてにたりと笑うと、ヴィランは続けて燃える弾丸を撃ち出す。それはシルを直接狙ったものではない。シルの周囲を燃やすための弾丸。長く呼吸を止め続けてはいられないのをわかってのことだ。
(先に、こっちを倒さないと――このお店も焼けちゃう……!!)
シルは二刀を抜いた。精霊剣と光刃剣、両の刃が召喚されたヴィランへと迫る。躱そうとしたヴィランの動きの先へと二刀が迫り、男の体を斬り裂いた。
『ああ――……』
これで、ようやく自由になれますかな。
死して尚ラグネに縛られていたヴィランの霊は、解放されたことを喜ぶかのように晴れやかな笑みで消える。男の消滅とともにシルの周囲を焼き焦がしていた炎も跡形もなく消える。けれどこれで終わりではない。召喚者であるラグネをこのままにしておけば、また再びヴィランが呼び出されてしまうだろう。
「“世界を束ねる精霊たちよ”――“集いて光の剣となり”――」
シルの手の中に濃厚な魔力が集まってゆく。それはどこまでも澄んだ、清らかな力。炎、水、風、土――四属性の精霊の魔力が束ね合わさり、シルの手の中で剣の形を成す。
後衛を失ったラグネの拳撃が打ち込まれる。シルはそれを魔力の剣で受けた。パリンと薄いガラスを割るような音がして、ラグネの拳が裂けて真っ赤に染まる。
「“すべてを、斬り裂け”っ――!!」
【エレメンタル・スラッシュ】。四属性の魔力が練り合わされた剣は、ラグネの腹を斬り裂いた。びしゃり、真っ赤な血飛沫が剣を、そしてシルの頬を汚す。
大成功
🔵🔵🔵
大豪傑・麗刃
実質一般人にとどめとか無理。こういう相手は死ぬ寸前まで人殺す級の攻撃使えるものだし。システム上可能らしいけどわたしはそう判断した(本音か建て前かは知らん)
「敵討ちをするには未熟すぎた、妻に報いる道は、次の戦いに備え、体と、何より心を鍛えることだ、あの49ersみたいに(最重要)」あたりが落としどころであろう。
敵のPOWは「こんだけ強い敵に俺なんかかなうわけなかった」そう思わせるには最適な技。なるべく派手に暴れてもらおう。
わたしは別系統の超絶強化で対抗。「こんな強い人だから倒せた」と思わせる効果も期待しスーパー変態人発動。気合込めまくった大打撃で、とどめを刺せないよう動ける状態からの即死を狙う。
●その結論は厳しく、けれど優しいと思った
(……実質一般人である「ザ・ブラッド」くんにとどめを刺させるとか、やはり無理だと思うのだ)
鮮血の如き真紅のオーラを纏って翔け、「猟書家幹部」ラグネ・ザ・ダーカーが麗刃へと向かって重い蹴りを繰り出す。それを超かっこいいので衝動買いしたヒーローソードで受け、力技で押し返しながら麗刃は考える。
(こういう相手は死ぬ寸前まで人殺す技使えるものだし)
ザ・ブラッドは復讐を望んでいる。妻を殺したヒーロー「ジェットブラスター」がこの猟書家の扮装であったと知った今、彼にとっての仇は彼女、「ラグネ・ザ・ダーカー」となった。彼の目的は最後にこの女にとどめを刺し、本当の仇討ちを遂げることだろう。
けれど、ユーベルコードを持たず、猟兵でもない、ヒーローでもない――ヴィジランテを名乗れど結局は一般人と変わらない存在である彼に、死の間際まで強力な攻撃を繰り出してくるであろう猟書家への復讐が適うだろうかと考えて。「無理だ」と麗刃は結論を出す。
(ならば――『仇討ちをするには未熟すぎた』と思わせるのが、きっといいのだ)
ぎぃん、刃と蹴りとがぶつかりあったとは思えない音が響く。それだけの超強化が、ラグネにはかけられている。
(妻に報いる道は、次の戦いに備えて体と、何より心を鍛えることだと、そう思わせるのが落としどころであろう。――「あの49ers(フォーティナイナーズ)みたいに」。『あの49ersみたいに!!』これ重要。最重要)
そう言う意味では、今ラグネが用いているユーベルコードの効果は麗刃には都合が良かった。武器を持たずに、縦横無尽に暴れ回る事ができるだけの能力。「これだけ強い敵に自分などが適うはずがなかった」と、そう思わせることが出来るだけの。
(なるべく、派手に暴れてもらおう)
今自分が手にしているヒーローソードのかっこよさも、強さをアピールする分には申し分ない。数ある武器の中からこれを手にとったのは偶然だったが、ことここに至っては必然というしかないのだ。
ざりざりと床を滑り、二人の蹴撃と剣撃のぶつかり合いは派手に店内を壊す。今も店の奥で隠れている店主、すまない。
すぅ、麗刃は息を吸う。
「“わたしは怒ったのだーーー!!!!!”」
麗刃の全身が金色に輝き、髪が逆立つ。ユーベルコード【スーパー変態人(れいくん)】。麗刃の能力を超強化するだけでなく、なんかものすごく強くなったように見せる効果を持つ(気がする)。これならば、「こんな強い人だから倒せた」と思わせる印象操作も出来るだろう。
ヒーローソードまでが金色に輝く。輝ける剣は、神速の拳を繰り出してきたラグネを吹き飛ばす。ガラガラとテーブルをひっくり返しながら立ち上がるラグネに、麗刃は静かに剣を向けた。――まだだ。動ける状態から、一瞬で斃さなくては。
その時が訪れるのは、もう少し先になりそうだった。
大成功
🔵🔵🔵
木々水・サライ
【灰色】
成り代わりか。……流石に胸糞悪い
親父、アンタ本当に親父だよな?
いや、あんなふうにすり替わりされても、アンタの心の闇までは再現出来ねぇだろうなぁ
と、戦闘だが……室内だからな。人数増やすのは流石に狭い。
ここはUC【無謀な千本刃の白黒人形】でぶん殴りに行くしかねぇ。
刀を変える間際に残像残しつつ、2回攻撃を叩き込んでいく。
室内用の戦闘知識をフル活用して動きながらな。
……あ、今回は黒鉄刀の闇は使わねーぞ。俺も親父も。
ザ・ブラッド。
アンタの気持ちは、よーくわかる。
俺たちは好きなようにやるから、お前さんも好きなようにしな。
後ろから支えてやるからよ。
金宮・燦斗
【灰色】
成り代わりですか。……ええ、同感です。
何言ってるんですか、サライ。私は私ですよ?
あ、ひどいこと言いますね。私に闇なんてありませんよぉ?
戦闘ではリスティヒ・クリンゲを投げつつ、UC【命削る影の槍】でサライをサポート。
彼の刀は多いですから、準備にも時間がかかりますし。共闘するザ・ブラッドのサポートもしなくては。
サライが危機に陥りそうなら私も黒鉄刀で応戦しますよ。
医術の知識に合わせた部位破壊を試みつつ、ね。
……ザ・ブラッド、あなたは何を成し遂げたい?
私達は猟書家を倒すことを成し遂げます。
ですから、あなたもあなた自身の成し遂げたいことをやっていいんですよ。
後押し、して差し上げますからねェ。
●Sensorium
血と炎、硝煙の匂いに満ちた店内に、ふとバニラの香りが漂った。
戦場に、新たな人物がふたり、姿を現す。
「成り代わりか。……流石に胸糞悪い」
「ええ、同感です」
「……ところで親父。アンタ本当に親父だよな?」
「何言ってるんですか、サライ。私は私ですよ?」
「……いや。あんな風にすり替わりされても、アンタの心の闇までは再現できねぇだろうなぁ」
「あ、ひどいこと言いますねぇ。私に闇なんてありませんよぉ?」
白々しい。木々水・サライ(《白黒人形》[モノクローム・ドール]・f28416)は、共に戦場に立つ――バニラの香りを漂わせながら笑う金宮・燦斗(《奈落を好む医者》[Dr.アビス]・f29268)に胸中で溜息を吐いた。
さて――と、二人は猟書家「ラグネ・ザ・ダーカー」を見据える。ずるり、彼女の影から鎖が伸びる。その鎖は二つの影を雁字搦めに縛っていて。ぱちん、とラグネが指を弾くと同時に鎖がバラバラと解ける。
『さぁ。死せるヴィランたちよ。今こそ思う様に暴れる時だ』
オォォォォーーーーン……鎖から解放された二人のヴィランの片方が、獣の雄叫びを上げた。鍛え抜かれた身体に、揺れる狼の耳と尻尾。人狼のような姿をしたヴィランが衣をはためかせ、その鋭い獣の爪でサライに殴り――否、斬りかかる。それだけの鋭さがその爪にはあった。
「おぉっとぉ!」
ガキィン、その爪を黒鉄刀で弾き返す。燦斗の方にも異なるヴィラン――巨大なスピーカーとメガフォンとをいくつも全身に繋いだ、少年の姿をしたヴィランが、鎖から解放されて立ち上がったところだった。
(いつもなら義体を呼ぶところだが、室内だからな……人数増やすのは流石に狭いか)
「だったら、武器の方を増やさせてもらうぜ」
【無謀な千本刀の白黒人形(レックレス・モノクローム)】。サライが手にした黒鉄刀に、白銀刀。更に血のように紅い色をした刀、蒼い雫を滴らせる刀、翡翠の煌めきを放つ刀を、琥珀の刀を、万色に色を変える刀とを鞘から抜いていく。七色の刀を自在に操り、サライは人狼のヴィランに次々と斬撃を加えていった。その背後から、彼らの召喚者であるラグネが後頭部を蹴り砕かんと蹴打を繰り出した。直撃する直前で、彼らの間を燦斗の刃――リスティヒ・クリンゲが通っていく。ざくり、ラグネの肌を刃が斬り裂いた。
「後ろにも気を配るべきですよ、サライ」
「チッ、わかってんよ!!――親父!」
『Aaaaaaaaaaaa――――――』
燦斗の前に立つ少年の無数のスピーカーから耳を劈くような大音量で放たれるのは、少年自身の声であろうか。びりびりと空気を震わせるそれは、燦斗の動きをまるで感電したかのように痺れさせる。そこを狙って飛び込んでくる人狼のヴィランに、サライが紅玉刀を振るった。
少年のヴィランのスピーカーから放たれる音は、次は音の刃となって燦斗へと襲い来る。その刃を躱しながら、燦斗はリスティヒ・クリンゲを少年へと投げた。その刃が少年へと突き刺さったのを確認して、燦斗は口を開く。
「――“泣き叫べ!”」
燦斗の影がずるりと伸びる。燦斗の影と少年の影とが繋がり、そして少年の影が少年自身を貫いた。
『aaaaaaaaaa!!』
スピーカーによって増幅された絶叫。燦斗に近づこうとする人狼のヴィランの胴を、サライが翡翠刀でもって薙ぐ。
(この二人、通じ合ってるのか……元は知り合いか何かか?いや、今は考えていても仕方ねぇか……!)
「なぁ、おい、聞こえてんな、『ザ・ブラッド』!」
「――――!」
防御に専念していた紅の男がその声に反応して顔を上げる。
「そのままで聞け!……アンタの気持ちは、よーくわかる。俺たちは好きなようにやるから、お前さんも好きなようにしな……!」
サライのその言葉を、燦斗が引き継いだ。
「ザ・ブラッド、あなたは何を成し遂げたい?」
「……俺はッ!」
「私達は猟書家……彼女を倒すことを成し遂げます。ですから」
あなたも、あなた自身の成し遂げたいことをやっていいんですよ。
「後押し、してさしあげますからねェ」
「後ろから、支えてやっからよ!」
彼らの言葉に、紅の男は真摯な目を向ける。
「ああ……俺は、成し遂げる……!」
「さて、ではこちらの方々には早々に退場願わなくては!」
少年の姿をしたヴィランが、己の影に貫かれて崩れ落ちる。ガシャガシャと身体に繋がれたスピーカーが床に落ちてばらばらになる。
彼を救おうとせんかのように床を蹴った人狼のヴィランが吠える。サライの刀に幾度も幾度も斬りつけられながら少年のヴィランの元へ向かおうとする人狼へと、少年が口を開いた。壊れたスピーカーはもはや使い物にならず、聞こえるのは少年の肉声だ。
『もうええわ』
その言葉に、人狼のヴィランの動きが一瞬止まる。その隙を断ち切るように、サライが人狼のヴィランへと七つの刃で次々と斬撃を加えていく。腕を断ち切られ、胸を斬り裂かれ、人狼が膝をつく。
『ああ』
『自由やな』
『『――くたばれ、クソアマ!!』』
めいめいに残った中指を立て、ボロボロに崩れながらヴィランたちは消滅していく。その罵倒を向けられたのは、死せる彼らを霊としてこの世に呼び戻した召喚主――ラグネ・ザ・ダーカー。
『……私としたことが、随分な役立たずを呼んでしまったようだ』
「ぬかしやがれ……そーか、ヴィランと言えどてめえに逆らう自由意志はあったかよ!それを無理やり戦わせてたってか!!反吐が出るぜ……!」
「――サライ!」
燦斗の声に、サライが意図を的確に判断して下る。刹那、影の刃がラグネを貫いた。その影の源は、ラグネ自身から伸びている。
「私の“下準備”は、既に終わっていましたからね……さあ、泣き叫べ、悶えろ、――苦しみの顔を、私に見せろ!!」
『ぐ……ぅっ……不覚……!!』
ざくりざくりと影の槍がラグネを幾度も貫く。悶える彼女の元へ、サライが身の丈よりも長い刃――黒鉄刀を構えて駆け、振り下ろす。
その刃は、ラグネを確かに斬り裂いた。紅の血飛沫がびしゃりと天井へと跳ね上がる。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
サンディ・ノックス
愛する者を失ったヒトの慟哭を聞いた、涙を見た
けれど俺はきっと彼の気持ちの1割も理解できていない
復讐は何も生まないという言葉もあるけど
強い思いを一人抱えて生きてきたヒトにそんな上辺だけの綺麗事を言うなんて
俺にはできない
まず動きを封じようか
魔力を高めUC解放・夜陰を発動
主に脚を狙い水晶を撃つ
水晶が大量に突き刺さればダメージだけでなく機動力にも影響が出るはず
敵が空中から来るならUCで攻撃を継続、地上なら暗夜の剣を抜き応戦
いずれも俺に気を取られるように積極的に攻撃
呼ばれるヴィランは俺にとっての悪か否かは知らないけど
こんな奴に使われるのが気の毒なのは間違いないから
召喚解除するまでUCで敵を滅多刺しするよ
●女神の鉄槌
――なんでもっと早くに来てくれなかった!
――あいつが死ぬ前に、殺される前に来てくれなかったんだ。
――何で今更なんだよ、何でッ!!
ザ・ブラッドが上げた声が、今もサンディの鼓膜の奥でぐるぐると渦を巻いている。
愛する者を失ったヒトの慟哭を聞いた。怒りと悲しみに落とされた涙を、見た。
けれど。きっと自分は彼の気持ちの1割も理解できていないのだろうと、サンディは歯痒く思う。
(……復讐は何も生まない、なんて)
そんな言葉もあるけれど。あれほどまでに強い思いを一人で抱えて生きてきたヒトに、そんな上辺だけの綺麗事を言うなんて自分には出来ないと、そうサンディは思うのだ。
暗夜の剣を抜く。胸の奥底に溜まっている昏い魔力が、サンディの中で高まっていく。
「猟書家幹部」ラグネ・ザ・ダーカーの影から、じゃらりと鎖が伸ばされる。そこに絡め取られているのは、既に死したヴィランの亡霊。ラグネがぱちりと指を弾くと、鎖はばらりと解かれて、縛られていたヴィランの霊が解放される。
『……さぁ、殺すといい。暴れるといい。踊るといい、存分に!』
鎖から解放されたのは角帽を被った詰襟の将校服を着た男。鎖が解かれたと同時に腰から刀を抜き放ち、吠えながらサンディへと斬りかかってきた。同時に床を蹴ったラグネが、高速で拳を固め打ちかかる。
『ぁ、ああ、あああああ……アアアアアア!!』
どこか悲壮さえ滲ませたような、恐慌に捕らわれたような目で、ヴィランは刃を振るう。その太刀筋を暗夜の剣でひとつひとつ捌いてゆきながら、サンディは己の胸の奥底に溜まった魔力を解き放つ。
渦巻いたそれは、サンディの中に潜む、彼が宿した、彼の魂との同化を望む――黒黒とした悪意。漆黒のそれは水晶と化して、散る。四百を優に超える数の水晶は鋭く、ヴィランとラグネとの脚を止めるように突き刺さる。
『いた、い……ああ、痛い、痛い痛い痛い、ああアアアッ!!』
痛い痛いと泣きながら、黒く墨のような涙を流しながら、ヴィランの亡霊は血を流して尚もサンディへと打ちかかってくる。その声に、その眸に滲むのは――嗜虐でもなく、悪意すらも感じられない。
(ああ……もしかして「彼」は、俺を怖がっているのか)
怖いから、排除する。怖いから、切り捨てる。
もしかして、と。サンディは思う。このヴィランは魂までラグネに従っているのではないのではないのかと思い至る。冥府での眠りから呼び起こされ、無理矢理に戦わされているのではないのかと、そう、それならば。
(――気の毒だな。こんな奴に使われているのが、気の毒だ)
漆黒の水晶が、背中からヴィランを狙い撃つ。突き刺さり、体内で弾け、内側からずたずたにヴィランを引き裂いた。
『あ゛ぁがぁっ……!!』
暗夜の剣でヴィランの胸を貫く。ぐらりとヴィランの体が傾ぎ、剣を引き抜いて首を狩る。その瞬間にヴィランが――心底安堵したような表情を浮かべた。
床に倒れ伏したヴィランの姿がボロボロと崩れて消えてゆく。
(ああ、やはり)
――彼は、このヴィランは、怖かったのだ。戦うのが。それを、たとえ悪党であろうとも、無理矢理に黄泉から引きずりあげて叩き起こし、恐慌の儘に刃を震わせた女――ラグネ・ザ・ダーカーへと。漆黒の水晶は降り注ぎ、鋭利な刃の雨となって彼女を千々に引き裂き、紅い紅い血飛沫をあげさせる。
『ぐっ……がぁっ……!!』
それでもなお、脚を潰され、全身を斬り裂かれても尚拳を振り上げるラグネの腕を、サンディは斬り飛ばす。赤い血が噴水のように噴き上がる。そのままラグネを引き倒し、背中から床へと刃を突き通した。ぜぇぜぇと息も絶え絶えに、びくびくと痙攣するラグネはけれどまだ生きている――まだ。
サンディは顔を上げた。彼女に終焉を与えるのは自分ではない。かつり、ブーツの音が床を鳴らす。
「ジェットブラスター……いや。違ェんだッたな、テメェが何て言うのか聞いちゃいねえが――そんな事ぁ、俺にはもうどうでもいい。わかるのは、テメェが緋美子を殺した張本人だって事だけだ」
紅の男……ザ・ブラッドが、刃を抜いて其処に立っていた。
――この瞬間を与えてくれたこと、心から感謝するぜ、猟兵(イェーガー)!
「……妻の仇、討たせて貰う……!!」
斬。
ラグネの頸が落ちた。舞い上がった紅が、男の唯一白かった肌をも染める。それをぐいと拭って、男はサンディに頭を下げた。
「……礼を言うぜ」
透明な雫が、頬に流れて。紅を洗い流す。
首と胴とを切断されたラグネ・ザ・ダーカーの体が、灰へと変わっていく。それを見届けて、サンディはようやく立ち上がる。
――猟書家幹部の女は死んだ。他の彼女はまだ活動しているだろうが、「この」ラグネの命脈は、確かにここで絶たれた。たったひとり、彼女の正体を見抜いた男の手によって。
復讐劇は、ここに幕を下ろしたのだ。
大成功
🔵🔵🔵