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交わる力、守護者の戦い

#ヒーローズアース #猟書家の侵攻 #猟書家 #『アズマ』 #神

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●神を屠る獣
 ヒーローズアースがピンチです!
 ニュイ・ミヴ(新約・f02077)は早くもグリモアをちかちかと転送を急く様子で、猟兵たちが既に知っているであろう、骸の月の説明を断りなく端折り始めた。
 そう、ヒーローズアースにもまた強大な猟書家が現れたのだ。名はアズマ、武道家然とした見目を裏切らぬ格闘術の使い手である。かといって目は見えぬのかといえば、視覚以外の何かで判断しているのかも知れず。隙の無い。
「強敵です……!」
 ごくりとそれっぽい音を鳴らすタール。
 それだけではない。今回、アズマによって神々の時代に封印されたという"不死の怪物"の神話エネルギーの一部が解き放たれ、本来ならば小物であるオブリビオンまでもが蝶強化されているというのだ。スナーク化という現象、奴らが市街へ溢れ出せば大混乱は免れぬだろう。
「不死の怪物の封印を守っていた神獣の番人と呼ばれるすごい神様は、どうやら既にやられてしまったようです……今は他の神様が駆け付けて、食い止めてくれているところですね」
 だが、それも時間の問題であろうとニュイは語る。
 複数の神の力を以てしても倒すどころか止めることすら難しい男、アズマ。アズマが従える夥しい数の神話級の怪物たち。始める前から難しい戦いに思われるが、現時点でも作戦に組み込める切り口がひとつだけある。
「スナーク化の力の源、古くから言い伝えられている怪物にはそれぞれ弱点があるとのことなのです。現地の神々のお言葉を借りるに今回の場合……爪牙の一振りで天地を裂き悉くを喰らい糧とするという邪竜の怪物は、美しき協調のもと、強き焔纏いし強き剣がその心の臓を止めたと」
 なお噂を整理すると別に炎や剣じゃなくても強力な魔法と物理攻撃の合体技ならなんでも良いらしい。
 大事なのは二人以上の協力か。とはいえ、猟兵の中にも魔術を扱えぬ者はいるだろう。そこで現地の神々です! とニュイ。
「すごーい方々なのですよ。きっと、今も皆さんを待って頑張っています」
 間に合いさえすれば彼らとの共闘が望める筈だ。いや、結局のところ、スナーク化していない問題のアズマにはこの手は通用しないのだが……。
 どんなに危険であろうと送り届ける他ないのが申し訳ないのです。べしゃっとしたブラックタールは、だが、猟兵ならば此度もきっと解決してくれるだろうと。そしてヒーローズアースの人々もそう信じているであろうと、眩く光を溢れさせた。

●交わる力、守護者の戦い
「おかしい……俺の炎でびくともしないなんて!」
「わ、私の矢も弾かれます……どうして?」
 その頃、先に流された血すら蒸発して失せる戦場へと駆け付けた神々はめちゃくちゃに混乱していた。男が一人、女が一人、男っぽいのが一人。
 炎や氷、雷といった大自然の力を操る多彩な魔法が飛び交っては消える。
 三人は神であると同時に、腕の確かなスピリットヒーローでもある。普段ならば指先ひとつで灰も残さぬ筈の小物オブリビオンたちがどうしたことか、今日に限ってこれ程までに堅いとは。
 そう、異様に堅いのだ。眼前に群れを成す、人間と竜との合いの子めいた奇天烈な姿かたちをした化物が。全身みっしりと覆う鱗に、背に広がる一対の翼。尾には剣山めいた棘が並び、振るわれるだけで恐ろしき凶器と化そう。――どこからどう見ても、見慣れたザウルスマンからはかけ離れている。
 滝のようにぶつけてやった灼熱のマグマから平然と這い出る恐竜の姿に、ヨハンが舌打ちすればディアンナはしれっとその背に隠れた。
「待って、ヨハン。ディアンナ。……昔、聞いたことがあるわ」
 暫く沈黙していた三人目、ライヴスは、無駄撃ちを続ける二人を制しすっと手を差し出した。
「"不死の怪物"。如何なる魔法も剣も弾く、むしろ受けた分を跳ね返してくる神代の化物がこの地へ封じられたという御伽噺」
「早く言え、よ!!」
 ジュウン!! と超高速で"吐き出された"炎やら氷やらをエナジークロークを犠牲に躱すヨハン。ディアンナに至っては弓を放り出し這うほどの全力回避だ。
 互いに文句や言い訳のひとつ言いたくはなるが、右から左から飛び掛かってくるザウルスマンを受け流すことに精一杯である。何体かを纏めて燃える盾で殴りつけながら、ヨハンはやたらと勿体ぶって話すライヴスへと唾とともに催促を飛ばした。
「――それで、そいつをどうやって封じたんだ? 一度は倒したんだろっ」
「ええ。優れた魔法、そして優れた剣。二つの力が一度に交わったとき、その首は初めて断てたというの」
「なるほど……魔術、だけでは駄目なのですね」
 三人は背を預け合うようにして陣を組み、じりじりと這い寄るザウルスを押し留める。
 ディアンナの放つ氷の矢の雨は鋭利に溶岩を抉るも、伝承の通りだ、怪物の力を宿したオブリビオンの鱗にはどうしたって刺さりが甘い。その、ギラついた爪の薙ぎ払いを寸ででライヴスの岩斧が受け止め、返して。
 ――というか実際のところは振り回されてよろけて転んで。
 更にいえば、ちょっと前でシールドバッシュを決めていたヨハンもいつもより多めに運動したディアンナも息が上がりまくりで。

 かなしいことに。
 彼らは魔術の扱いこそ正しく神の域だとて、肉体の方はとてつもなく、よわよわであった。


zino
 ご覧いただきありがとうございます。
 zinoと申します。よろしくお願いいたします。
 今回は、骸の月の侵食を食い止めるべくヒーローズアースへとご案内いたします。

 当シナリオは二章構成の猟書家関連シナリオです。
 戦場はセンターオブジアース。マグマが弾ける溶岩地帯イメージです。ビル街っぽく高低差がかなりあります。

●第一章
 敵はスナーク化で竜化が進みザウルスアーマー常時発動、爪牙の破壊力が増し、翼も得て数秒間なら飛翔可能。有効ではない攻撃を受けた際に口から吐き返す異能有。
 弱点は『二人以上の協力で放つ、強力な魔法を纏った強力な物理攻撃』。弱点をつかなければ大量の敵を一体も倒せないかもしれません。

 特に第一章は、普段魔術を使え(わ)ないが魔法×物理なロマンを感じたい方や魔法が飛び交うゴチャゴチャバトルがしたい方にオススメです。勿論、魔術側での参加や神の力を借りず猟兵間での連携も可。
 ノリは割とネタや勢い寄りですが戦闘は重視します。

●第二章
 敵はスナーク化せず単純に強敵です。魔法を握り潰したり飛んだりします。

●プレイングボーナス
 神々と共に戦うor猟兵組織『秘密結社スナーク』の一員であると名乗る(敵がスナークの名の元に恐怖を集める企みを妨害する)こと。
 神獣の番人たる最強格の神は死亡済ですが、集った神々も強力です。ただし魔術特化・全員物理面は紙で、武器も魔法で編んだもの。
 共闘したい神がいればプレイングでどうぞ。特になければ邪魔にならない範囲で頑張ります。

 ヨハン:到着時点で瀕死。無鉄砲だが正義感、責任感が強い男。得意属性は炎、土。UC『クロックアップ・スピード』が得意技。
 ライヴス:激情家な姉後肌。性別不詳。得意属性は雷、風。UC『クライシスゾーン』が得意技。
 ディアンナ:ドジ、引っ込み思案でネガティブな女。得意属性は水(氷)、草。UC『ヘビーアームド・ウェポナイズ』が得意技。

●他
 各章とも導入公開時より受付開始。
 試験的に【成功値に到達しプレイングが送信できなくなったタイミングで受付終了】形式。再送信は歓迎です(もし発生しても一章あたり一度まで)。
 詳細な受付状況はお手数ですがマスターページをご確認ください。
 セリフや心情、結果に関わること以外で大事にしたい/避けたいこだわり等、添えていただけましたら可能な範囲で執筆の参考とさせていただきます。
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第1章 集団戦 『ザウルスマン』

POW   :    ザウルスアタック
単純で重い【拳や尻尾】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    ザウルススライディング
【怒りの感情】を向けた対象に、【スライディングキック】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    ザウルスアーマー
全身を【爬虫類の鱗】で覆い、自身が敵から受けた【負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「~~っどうしてまともに殴れるヤツがひとりもいないのよ!!! 三人もいて被ってんのよ役割がッ!」
「俺が聞きてえよ! くそっ……こうなりゃままよ!」
 禿頭を掻き毟るライヴスを残し崩れたフォームで駆け出したヨハンは、剣の切っ先を槍のように構え敵へ走る。「ヨハン!」静止の声も振り切る、そうだ、剣ってなら一応俺にだって――――と、全体重を一点に乗せるビジョンを繰り返し脳内再生しながら風の如くに駆ける。ぶわり、自前の炎がその身を包み始めた。
 握力の問題で、攻撃を弾いたときにマグマまで吹っ飛んだ盾を拾いにいく余裕はない。このまま!
「らああああああ!!」
『…………』
 ――我武者羅な、体当たりのような刺突はしかし。
 ザウルスマンを押しのけぬうと現れた男の鋼の肉体を貫通するどころか、擦り傷を付けること自体叶わない。
 男――、騒動の元凶たる猟書家、アズマの。
 眉ひとつ動かぬ眼球がそれでも退かず力を込める若き神を見下ろした。そして。
『死ね』
 突き出される闘鬼の右手は無慈悲に鈍い音を立てる。
「が、は、……ぁ」
「ヨハァァンッッ!!」
 空しく得物を取り零し、崩れ落ちるは一方、敗者のみ。
 赤々、燃え盛っていた炎の渦とそれが構成する剣がパッと消え失せた。
『お前も……殺す……』
 どっ。
 心臓を貫手に突いたヨハンを塵同然に捨てれば、焼けた地面を素足で踏みしめ、残る神々へとアズマはのそりと歩む。
「くっ」
 一拍、目を見開き唖然としていたライヴスは伸ばしていた手をすぐに斧へと添え直した。
 その傍ら、べそをかく――かと思いきや、弓に次なる氷の矢を番えるディアンナもまた戦いを捨ててはいない。いない、が。
「ああ……もう駄目です……もう終わりです……」
 心の方はちょっと駄目らしい。
「しっかりしなさい!」
 彼女のさらりと流れる金の長髪を引っ叩く風にして、斧を振り回したライヴスは腰を低く両手に構えれば迫る敵をキッと見据えた。今にも飛び掛かろうかといった気迫だがこの斧は実質飾りである。
「神様が諦めてどうするの、アタシたちが負けを認めたら……それこそ……」
 それこそ、この世界はお終いだ。 飾りとて指へ力を込めれば、ばちばちと雷光が散る。
 それだけは避けねばならない。みっともない泥仕合に持ち込んで時間を稼いでも良い、たとえ命尽きようと、誰か、誰かの――この天秤を傾けてくれるヒーローの足音が聴こえるまでは、決してこの場を譲るわけにはいかない!
ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
神達は貴方呼び

秘密結社スナーク、参上。これ以上好きにさせない
ここは任せろと言いたいが、俺は魔法がからっきしでな。手伝いを頼みたい
問題ない、武器ならある

SPDで判定
義眼の橙の災い:爆破【爆撃】を【全力魔法】【スナイパー】で撃って牽制しヨハンに痛みが少なくなるように【優しく】【救助活動】を行う
敵の攻撃を【早業】【見切り】で回避しながら【挑発】して【おびき寄せ】、銀腕を【武器改造】で剣にしてライヴスに助力を願い雷の力を付与してもらう
付与して貰ったら【怪力】【早業】【鎧無視攻撃】で敵を【切断】した後、【串刺し】にする


天音・亮
※ライヴスと共闘

ハロー神様、お手伝いに来たよ!
ヒーローズアース出身のヒーローだもの
立ち向かわないわけにはいかないよね
物理攻撃なら任せて

ね、ライヴス
きみさっき雷とか風の魔法を使ってたよね
その属性なら私のブーツともきっと相性がいいと思うの
良ければ協力してみない?

このブーツにライヴスの全力のクライシスゾーンを纏わせてほしいんだ
私の身体の事は大丈夫!オーラ防御で覆っておくから
さあ、行こう!

だめだよザウルスマン
空を高く疾く駆ける道は誰にも譲らない
きみよりも太陽に近づいたなら
ライヴスの力で一層威力増した脚撃を振り下ろす

綺麗に着地したらライヴスの元へ駆けていこう
上手くいったね!なんてハイタッチをしたいな


シキ・ジルモント
◆SPD
状況は把握したが、生憎と魔法は不得手だ
一人で戦うのは無謀、となれば協力を仰ぐのが得策か

共闘希望:ライヴス
まだ戦う気力があるなら少し手を貸してくれないか
戦闘だけならともかく、魔法や魔術にはどうにも疎くてな

神との共闘が成立したら即座に敵への攻撃に移る
一刻も早く敵を減らさなければ彼女もその仲間も危険だ
敵に感情を向けられるより速く、雷の魔法を纏わせた銃弾をユーベルコードで撃ち込む

囲まれたら真上に跳躍
風の魔法の力を借りて通常より高く跳び、遮る者の無い頭上から敵を撃ち抜いて包囲を崩す
これだけ高く跳べるなら、飛翔状態や高所の敵も狙い易い
着地までしっかり手を貸してくれるだろうと信用して、攻撃に集中する


エンジ・カラカ
ザウルスマン!!!カッコイイ!!!
賢い君、賢い君、ザウルスマン。カッコイイ。
アァ……うんうん、そうだろうそうだろう…。
遊ぼう。

ザウルスマンあーそーぼ。
薬指の傷を噛み切って、君を起こす。
ただの魔法はダメー
アァ……なるほどなるほど…。
賢い君は賢いンだよなァ。

ハロゥ、ハロゥ、ソコのカミサマー。
コレの指目掛けて炎を放ってくれくれ
無理なら武器でもイイヨー

受け取ったら、せーのでパンチ!
尻尾を掴んで賢い君を結ぶ。
燃えろ燃えろー、きゅっと燃えろー。
賢い君は情熱的なンだ

コレの足はオオカミの足
ザウルスマンよりも速い速い
尻尾を掴んだ後は逃げるが勝ち!

コッチコッチ!
ザウルスマン、コッチ!
アァ……たーのしいなァ…。


ネライダ・サマーズ
助太刀に来たぞ!
ネライダ・サマーズ、猟兵で神だ
よろしく頼む!

ライヴスに挨拶、物理なら任せろと叡智の杖をぶんぶん
雷だけじゃなく風も使えるのなら
ライヴスの風(UC)に俺を乗せて奴らにぶつけてほしい
俺は風に乗った状態で敵を叡智の杖で殴ったり刺したり
ホームラン打つみたいに叩きつけたりだな…
あと物理といえば腕力だ、腕力!
(怪力籠めたラリアットやグーパンチ
なに、UCで自分を強化するから竜巻に乗っても壊れはしない
神だからかやたらと頑丈だしな

という事で遠慮なくぶちかましてほしい

優れた魔法に優れた剣
伝説の再来を奴らに見せてやろう

この場所も
この世界も譲れないからな
奴らにはこれ以上欠片もやらない
俺達で守りきるんだ


春乃・結希
『ヨハン』と連携希望

神様と一緒に戦えるなんて、凄い経験です!
私も炎を使うから、神様の炎を見せて欲しいんですけど…
あれっ!?もうぼろぼろやないですかっ!?大丈夫ですかあーめんですかっ!?(おろおろしつつ祈りのポーズ)

で、でも、神様だからまだ大丈夫ですよね…っ
お願いしますこの大剣に…あ、私の恋人なんですけど
炎の力を貸してください!

神様の炎に私の風を合わせればもっと勢いが激しくなるかもっ【焼却】
そのまま敵に突撃!炎の大剣を振り回します【怪力】
神様は体がよわよわみたいなので、神様を狙った攻撃は体を張って防げるよう、あまり離れすぎないように

あははっ。これ凄いよ神様ー!ふぁいやーって感じ!絶対勝てますね!


コノハ・ライゼ
ははぁん、つまりいつも一人でやってる事を手分け出来ちゃうワケね?

【彩儡】発動するケドまあ見た目はきっといつものままね
丁度手応えを確かめたかったンだよねぇ、と櫂を一振り
コレに加護を貰える?とライヴスに声掛けようかしら
鈍器に竜巻の刃を纏う……強そうでイイでしょ

敵の動き見切って躱し、オーラの盾で受けても致命傷に至らぬよう
第六感も併せ襲撃方向に注意
神サマらが危ない時は掠りもさせないよう庇うわ

アラ、こう見えて頑丈だし腕力もあんのよ
殴る事だけに集中できるナンて最高じゃない
竜巻纏った櫂でカウンター狙い力任せの殴打
2回攻撃で傷口を抉ってダメージ継続もしてきましょ
ついでに受けた傷分、しっかり生命を頂戴するねぇ


グラナト・ラガルティハ
神ならばもう少ししっかりしろと言いたいところだが誰にも得て不得手がある。
ならば、得手のものと組むのが得策だろう?

さて、そこの炎の神。
UC【不死鳥の息吹】を使ってやるから回復して一度体制を整えろ。
同じ炎の力だ相性はいいとは思うが…

準備ができたなら攻撃を開始するぞ。
俺は火炎の神であると同時に戦の神。
武器の扱いは心得ている。

では、行くぞ…【戦闘知識】で戦況を把握。
蠍の剣を持って敵に近づきヨハンの魔術と合わせて剣を刺す




 遠のく世界の音。明滅し、霞む視界。
 流れ出す血は溶岩に熱され、きっと体内に収まっていたときよりも熱い。立ち上がらねばという意志だけが倒れ伏したヨハンの指を、微かに動かせた。だがそれだけだ。――無常にもその背へとザウルスマンの鉄槌の如き尾が振り下ろされる。
「――――ク、参上」
 かに、思われた。
 ゴォォッ! 不意に巻き起こった風は、恐竜の上体を弾き転がす爆風!!
 自然由来のものではなく、もっと呪術的な。眩いほどに広がる爆炎を切り裂いて、眼帯を取り払ったルイス・グリッド(生者の盾・f26203)が音を置き去りにヨハンの傍らへ着地する。橙の災い、メガリスたる水晶の義眼を光らせ放った一手目は正しく牽制として機能した。
「待たせた。これ以上好きにはさせない」
「神ならばもう少ししっかりしろと言いたいところだが、な」
 ザウルスマンが起き上がるより早く重ねられる業火の壁が彼我を隔てる。ルイスに助け起こされるヨハンの魔術ではない、大蠍を想起させる長く垂らした三つ編みを揺らして、火炎と戦の神グラナト・ラガルティハ(火炎纏う蠍の神・f16720)は手中に遊ぶように火の粉を躍らせていた。
 秘密結社スナークと、今、そう名乗ったか?
 ぁ、と、何事か口を開きかけて咳き込むヨハンが身体を折る。血が吐き散らされた。先の一撃で砕かれた骨は多くの臓器を傷付け、もはや死なせてやるのが慈悲ともいえよう。互いが守護者でなく此処が守るべき地でないのなら、だが。
「……これは。アズマという男、余程の使い手だな」
「ふん。炎の神よ、まだ戦う気はあるのだろう」
 ルイスの手と呼び掛けに反応し弱弱しくも開いたヨハンの目が、次に、確かに瞬いてグラナトを映した。グラナトは声無きそれを答えと受け取る。ならば受けよ、と、手の内の火の粉がぶわりと舞い上がったかと思えばたちまちに火の鳥を模る――不死鳥だ。厳かに宙を舞い、嘴を開くその息吹が瀕死の男へと吹き付けられる。
 ヨハンのものと同じ炎の力。マグマよりも尚赤く熱いというのに、不思議なことに痛みはない。
 それどころか、ひと呼吸ごとに痛みが失せてゆくような。癒しの異能もまた、神力や奇跡と読み解けるひとつの魔法といえよう。
「お、ぉ……おれは、あんたたちは」
「もう名乗ったろう。ほら、悪は待ってくれないらしいぞ」
 塞がった胸の傷を手でさするヨハンの回復ぶりを見てパッと手を離したルイスは、マグマを泳ぎ忍び寄っていた一体のザウルスマンへ銀腕を変形させたブレードを突き立てる。眼球への串刺しだ。常ならばここから薙げば真っ二つであったろうが、成程、噂通り。
 食い止めたそれへ間近からの橙の災厄を叩き込んでやれば、小爆発とともに燃える海へ逆戻りしてゆく。一方、急に支えを失ったヨハンはといえば大地から突き出た溶岩へ盛大に後頭部をぶつけた。
「いっっってぇ!」
「その程度を痛いと感じられるのなら上等だ。立つが良い、準備ができたなら攻撃を開始するぞ」
「ああ。ここは任せろと言いたいが、俺は魔法がからっきしでな。貴方がたに手伝いを頼みたい」
 グラナトが手を差し伸べれば、ヨハンはその手を取って立ち上がる。「……助かった。それに、助かる」二人の神は暫しの間眼差しを交わし、ルイスへもまた頭を下げようとしたヨハンは既にその姿が消えていることに瞬いた。

 たんっと踏み、跳ぶ。
(「少し引き離しておくか……ついでに、」)
 一歩にして、炎の神が打ち立てた壁を飛び越えその奥に密集するザウルスマンの背を踏みしめたルイスは、更に跳ね、憤る邪竜の反撃が隣のお仲間にいくように仕向けつつ奴らの気を引く。
 ザリリと脛を掠る爪の一撃は確かに浅くはないが、前提がデッドマンであるルイスにとってはさしたる脅威に映らない。
 敵を足場に向かう先からは、助太刀の入った事態を把握したらしき風の刃と氷の矢による援護がある。連発されるそれらはルイスを引き摺り下ろさんとする竜の腕を弾き落とす程度には正確に放たれ、そして彼の着地を手伝うように足元広がるマグマを吹き散らした。
「聞いたわよ、秘密結社スナーク! なんてステキな登場なの!?」
「あの、ヨハンがごめんなさい……ありがとうございます……でも、まだ、敵がたくさん」
 ライヴスとディアンナだ。
 猟兵の到着を本能で感じ取ったらしきザウルスマンがどっと前へと押し寄せたことで、アズマの姿はどこへやら見えなくなっている。ひとまずは目先の敵を減らしてゆくべきだろう。『GRrrrAaaa!』合流した三人を阻むべくバッと翼を広げ高くへ舞い上がった半恐竜らが、一斉に跳び蹴りを繰り出す。
「話は後だ」
 二人を庇おうとルイスが銀腕を広げた。
 その、頭上にもざあっと色濃い影が落ちる。背にも回られたか。しかし此方の影は歪な翼を持ちはせず――――。
「ハロー神様、お手伝いに来たよ!」
「助太刀に来たぞ!」
「左右に同じくーってコトで!」
 ――毛色こそ違えど何れも朗々とした、三つの声が降った。
 ひゅひゅん!! ルイスたちの背を越え数多撃ち出され、ザウルスマンを包み込むのは澄んだ水の泡?
 傷付かずとも蹴りの勢いを殺された数体が憎々し気に呻き宙で攻撃の主体を爪へと切り替えるも、振り翳す爪の合間をするりと抜けて飛び掛かってきた黒き影、狐の姿をしたそれに視界を覆われ翻弄される。
『RRrrrrrraaAAA!!』
「怒ってる怒ってる、っと」
 終いには、強烈な衝撃だ。
 ザウルスのそれよりも角度良し勢い良し切れ味良しなキックが顔面に靴跡をつけて押し込んだのだ。どごぉっと吹き飛ばされつららめいた岩石をへし折る側と反対に、見舞った側はくるんと宙返りして軽やかに着地すれば、顔に掛かる金髪をさらっと払ってみせる。女――天音・亮(手をのばそう・f26138)から「いぇい!」と、向けられた笑顔と二本指とにぱちくりする神々。
「うむ。綺麗に入った!」
「普段なら余裕の一撃必殺ってトコ?」
 体勢を崩した余りをルイスの爆破が遠ざける中、ほぼ間を置かずに高台より舞い降りるのがネライダ・サマーズ(アイギス・f17011)、コノハ・ライゼ(空々・f03130)。此方側の影の正体は御覧の通り、頼もしき猟兵であった。
 ――――互いが何か挨拶でも交わさんとしたところで。
 ギャオウと吠えたザウルスマンの口が、今喰らった分の水やら影やらをばばばば!! と吐き出してきた。
「わわわ! 本当にそのまま返ってくるー!」
「はは、だがコントロールが甘いなっ!」
 マシンガンのようだ! とはいえ"そういうもの"と事前に知れているのならばわざわざ喰らってやるまでもない、口に手を当てびっくりな亮や皆より三歩ばかり前へ、噂話をありがたぁーく活用するネライダの両手が水泡を捏ね、引き延ばすようにして一帯へ広げれば。
「こうして、こうだ」
 にまりと一笑。ぶつかる水同士が相殺し、影狐をも巻き込んでばしゃんと弾け、焼ける大地で蒸発した。
 さすが神様、力技には力技……等とコノハが感心していると、岩斧を抱きしめてなんだかジッと見てくるデカいの(神)がいる。……これは。名乗りを。期待、されている?
「……え、これオレが言った方がイイやつ? ドーモ、申し遅れたケド秘密結社スナークよ」
「キャーーーーッ!! 待ってましたァ!」
「あぁぁライヴスやめてください奴ら奇声に反応して……」
 黄色い声(茶色っぽい)を上げるライヴスの口に水泡をひっつめて黙らせるディアンナであったが、その暇があるなら無駄でも敵を撃っていた方がマシではなかろうか。そんな気持ちを覚えつつも、声に反応し飛び掛かってきた先頭の一体と切り結ぶはルイス。
 神代の怪物の膂力には流石に押されるか。だが。
「――ライヴス。頼めるか」
「ハッ」
 ここらで神話の再現といこう。
 頼られた神は目の色を変え、その身に宿す魔法の力を素早く解き放った。一度、空へと伸び上がった雷がぴしゃんとルイスへ落ちる。正しくは剣と化しているルイスの銀腕に導かれ、だ。
「ありがたい」
 さながら、超高温のプラズマ切断機が鉄を焼き切るかのように! 電流に青白く火花散らす刃は押し留めていたザウルスマンの爪を縦にぱっくりと割り、その奥の腕、胴覆う鱗へも届いた。ザッと切り抜けたルイスは逆側の爪が振り上げられるよりもうんと早く、引き戻した右腕で剥げた鱗の合間を縫い、串刺しに処す。
「反応して、呼び集めるくらいで構わない。こちらから行く手間が省けるからな」
 ――アズマがヨハンへそうしていたように、貫いた死体を脇へ放り捨てる。
 堂々と敵を見渡すルイスの一手が、二度目の、本物の戦いの火蓋を切った。


「炎使いとしての筋は悪くないようだな。それでいい、誰にも得手不得手というものがある」
「くっそ、俺の親父みたいなこと言いやがって……!」
 一方のヨハンはといえば、命を繋ぎとめてくれたグラナトにすっかり頭の上がらぬ状態だ。
 身体の方は本調子とはいえずもそもそもが動くだけ奇跡。皆が戦う戦場に戻ることを誰より望んだ男は内心で非常に感謝しつつ、望まれるままにその魔術を行使していた。
 羽織る神獣の毛皮を翻し、グラナトの振るう蠍の剣には自前の炎とともにヨハンの齎す炎が走る。飛んで跳ねてと派手な立ち回りをするわけではない、だが、迎え撃つ形で滑らせる剣閃は燃えながらも静かに敵を切り刻む。刻み付けた傷口より焔が入り込み、肉を骨を焦がし、内へと躍る、躍る。
 グラナトの歩みに従って業火の海が広がるようだ。
(「悔しいが俺ではああはいかないな」)
 いいや、燻っている場合ではない!
 着実に斬り進む戦神の背を狙う数体へ炎弾による爆発を見舞って吹っ飛ばしてやり、ついでにお返しに吹っ飛ばされつつヨハンも負けじと後に続く。やっべカウンターくるの忘れてた、
「とはいえ戦場に立つには粗が多すぎる。種族柄時間だけはあるのだ、一拍、冷静に戦況を見渡しておいて損はしないぞ」
 と、蒼褪める必要もないのだ。
 燃え滾る火の玉ビームを叩っ斬ってくれるグラナトの頼もしさときたら。
 飴からの鞭という説教付きでもぐぬぬと受け入れる他なかろう。「はい……」と思わず敬語になるヨハンの腕へ、そのとき不意に絡みつくものがあった。 赤い。竜の舌――いいや、糸の束?
「ん?」
 くいっくいっ。
 絡んだ糸を辿れば「ハロゥ」とがおーの手を作るエンジ・カラカ(六月・f06959)が其処にいた。何故だか満面の笑みな襤褸フード男は自分を指して。糸を指して引いて。ヨハンを指して、を順に見せつける。――魔法を貸せ、ということか? 察せたヨハンはこんな謎解きに全力を使っている場合ではない筈だが。
 ならば持っていけ!! だ。
「! 気をつけろ、上にも」
「アァ……心配ナイナイ」
 金の双眸を喜悦に歪めエンジは、炎でおめかしさせてもらった赤い糸こと拷問具こと愛しの賢い君を社交ダンスのお相手のように恭しい手つきで繰り、広げ、躍らせる。
 いまや糸伝いにエンジの薬指までやってきていた炎がジュウと指輪めいた噛み傷の跡を焦げ付かせた。エンジ自ら噛み切った傷だ。既に十分に血を吸って"起きた"拷問具は文句をいわず、くるくるりとターンを舞い。
「ザウルスマン!!! ――カァッコイイねェ」
 迫る異形を金に映し、にまぁと牙覗かせ殴り掛かった。
 ひゅんっ。爪が襤褸を裂く寸前、弾みで一層に風を孕み、膨らみ、広がった赤糸がザウルスマンの腕にぐるんぐるんと絡みつく。引くそれによって体勢を崩された恐竜は、クロスしたエンジの拳が顔面を素通りして尾へ伸ばされるのを見送る他なく。
『UrrrrrAaa!?』
「ハイ暴れなーい。オサンポしようそうしよう。コレはドラゴンの扱いが得意なンだ」
 なんたって非常食を二匹も飼っている。
 とげとげの尾にぎゅみっと真結びされた燃え立つ糸は、拷問具そのものが宿す"情熱的な"呪炎と相俟ってよく燃える。焦がす。鱗なんて魚のそれみたくぼろぼろに剥げてしまう。
 その肉が焼け落ちてしまう前に、次の肉へ。また次の肉へと次第に尾から付け根へ胴へと螺旋を描いてゆく糸の輪切りショーには絶大な力を得たオブリビオンも真っ青だ。
 ぶおん!! 振るわれた腕をひょいと屈んで躱したエンジは、地面についた両手で身体を前へ飛ばしてその勢いのまま駆け始めた。
「ハハハ。そらコッチコッチ!」
 ザウルスマン、コッチ! アァ……たーのしいなァ……。
 糸が結ばれたままの竜は引き摺られるように死の遊戯へ巻き込まれる。ザウルスマンがエンジを捉えるか、その身が鼻の先まで燃え失せるか、ふたつにひとつということだろう。
「…………」
 ヨハンはこの非道な処刑を見なかったことにした。
 そうして、さっき自分にも絡んでいた糸の恐ろしさを改めて――――ん? まだ絡んでるな?
「わっっっっっづ!?」
 ズザアァァァァァ!! と引き摺られるヨハン。あたりの敵は粗方グラナトが倒してくれたからまだ良いが、しかし順調に敵を屠り進む彼は呼び止めるにはやや遠い。あとなんか情けなさ過ぎて申し訳ないし。助けを求め伸ばした手がむなしく空を切った、そのとき。
 同じく赤糸に散歩させられていたうちの何体かがザンッと斬り捨てられる。
 太刀筋に舞い散るものは――うす紫がかった雷の筋。ぶちまけられたザウルスマンの血が立てた水蒸気をくぐり、姿を見せたのはまた新たな猟兵の――それも、振るう鉄塊じみた大剣に比べ随分と小柄な娘の姿であった。
「火、火、火が得意な神様はこのあたりにー……」
 春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)。
 通りがけにライヴスからちゃちゃっと雷の力を借りたものの、ブレイズキャリバー……炎を扱うものとしてはやはり神様の炎とやらも気になるというもの。ゆえに溶岩地帯においても特別火柱の上がり続ける此方へと、敵を斬り倒しつつ抜けてきたわけである、が。
 足元に這い蹲る男と目が合う。糸に雁字搦めにされた、ボロボロの。
「俺だが」
 オレダガ? 「あっ」という顔をした結希はばばばっと両手を顔の前で振った。そしてあーめんの指を組む。
「――お楽しみの邪魔はせんけん! せんけんちょっと火分けてください! お願いしますこの大剣に……あ、私の恋人なんですけど」
「楽しんでねえんだよ!!」
 何故この状況下でてへへーっと恋人を紹介されたのか。
 怒鳴った勢いで間欠泉よろしく多めに溢れ出た火焔を翳す大剣withにゲットし、ぺこぺこしつつも駆ける結希。尚も引き摺られてゆくヨハンが何かしら叫んでいたようだが、それももう過去のことだ。ひとたび、地を蹴り恋人とともに風に乗ったなら!
 ラスティングセルフ、己の強さを信じ真実にする強固な暗示は宙に見えぬ階段でも伸びているかの如く、結希を自由に飛び立たせる。
「せいっ」
 行き違うザウルスマンがいたならば、ギィン! と快音響かせ状況を呑み込むより早く、剣が、割る。爆砕した怪物はバラバラ散って落ちるのみ。"負ける気がしない!"強まる暗示が更なる加速を可能にさせて。
 どんどんどんと共に空翔け周囲に生じるファイアボールをなぞるみたく薙ぎ刃に引き連れると、背の高い岩の上で進路を塞いでいた数体がばっさりと抉れ、燃え、溶けていった。
「あははっ。これ凄いよ神様ー! ふぁいやーって感じ! 絶対勝てますね!」
 真っ赤に纏う炎を風が猛らせ、火の鳥に似て燃ゆる尾を靡かせる。高く、高く、垂直に戦場上空へ突き抜けた結希は取り回すwithの重みに任せるようにして身を反転させ、戦いの激化する地表を見つめた。
 ゴツゴツジュウジュウと視界の悪い地形だけれど、此処からならば見落としなく助けに入られるだろう。
「さて、火の神様は……うんまだ元気そう。他の人は、」
 手を振ったら振り返してくれたヨハンはヨシ。もがいているだけ? 気のせいですね。
 ――と、視線を巡らせた先ではちょうど眩い雷の柱が打ちたてられるところであった。


「……また人一倍にはしゃいでいるな」
 急速旋回し巻き込みを回避する空の娘の姿は、地のシキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)にも見えていた。知った顔だ。心配する必要のない確かな腕前に関しても。
 空を仰ぐ最中にも、シキは右手に構えたハンドガンをザウルスマンの足元へ撃ち込んでゆく。奴らそのものに当てればもれなくお釣りがくるわけだが地面を割って足止めする分にはまだやりようがあるというもの。
「わぁー、バチバチする! ありがと、ライヴス」
「イカした武器の爆誕ね」
 たった今の雷魔法を加護として受け取った亮が、soleil――太陽の名を冠するブーツの爪先をとんとんと地面に打ち付け放出される稲妻に瞳輝かせる横では、風魔法によって櫂に幾重もの回転刃を生やしたコノハが喜々と笑う。
 稼働中のミキサーか何かのようだ、ぶおんぶおんと音立て行き来する無色透明の刃はとっても強そうで。「ふふふ」と得意げな術士ライヴスの前、ザッと背を向け、それでは!! と己を左親指で示すのはネライダ。右手にはねじくれた木の杖。
「俺にもひとつ、とびきりを頼もう! 突風が良い。ザーッといってパーッと殴りこんでやる」
「……アナタさっき魔術使ってなかった? それも割と強いの」
「だとしても、この肉体を使わないのは罪じゃないか?」
 むきーっと力こぶを見せつけるサービス付きだ。確かにネライダの逞しさとオーラときたら、大海をヒトの形に押し込めたかのそれである。アラいい筋肉と思わずぺたぺたしたライヴスはシキの銃弾がすんごい近くを抜けて後方の敵を牽制してくれたのにハッッッとして、触れていた背をばしぃっと叩いた。 ――魔法の発動だ!
「とっておき、――どーなっても知らないわよッ!」
「案ずるな、為せば成、るッ……おぉぉぉお!!」
 バビュンッッ!! と押し出されるネライダの身体がたちまち宙を突き進む。
 ただの風魔法ではない。戦いの最中に崩れた岩石や刃毀れした剣、アーマーの欠片などを変換した竜巻、クライシスゾーン。それが地面を這うように水平に撃ち出され、水流より激しく男を運ぶのだ。
「よ、し!」
 そこにスーパー・ジャスティス――ネライダ自身の内より湧く神力が組み合わさったとなれば。
 嵐の只中に黄金の光が透け、弾ける。
 ドガガガガガ!! すれ違いざまの杖の殴打、筋骨隆々キック、果ては首刈りラリアットに舞い飛ぶザウルスマンたち。まさに暴風、まさに天災! ……これほぼほぼ物理では?
「……神々の戦いっていうのは、こうもド派手続きが普通なのか?」
「まあ、アタシたちは逆に殴られて折れる側だから……」
 シキの率直な疑問にやんわり首を振るライヴスであった。

 風雷に混じって時折降ってくる水滴が、焼ける大気にも心地好い。
 その雨粒を地へ触れさせずに蹴り抜けるのは亮だ。ネライダを吹っ飛ばした竜巻に「さあ、行こうか!」とごくごく軽い足取りで飛び込んだ亮もまた、陽光めくオーラで己が身をあたため守りつつ、空中を主戦場としていた。
『RRrrrroooooA!』
「ほっ、と」
 たたんっ。
 宙を滑るのか風に煽られるのか、ともあれ繰り出されるザウルスマンキックをブーツに纏わせた風の魔力で飛び越え、背を取る。"いつもより多め"のスピン加えた回し蹴りは鮮やかに炸裂して、背骨を砕く手応えが亮には伝わった。
「だめだよ」
 と、滴る汗も拭わずに燦々と微笑む亮。
 空を高く、疾く駆ける道は誰にも譲らない! ザウルスマン、勿論きみたちにもね。
 一体といわず次々に! 息も吐けず豪速で蹴落とされてゆくオブリビオン座流星群を地で待ち構えるはバッター・コノハ。ゆうらゆらと揺らす櫂を全開に引き絞って――……。
「オーライ」
 メギョッ! ――振り抜くのだ。
 単にぶつけただけでも顔面陥没は待ったなしだろうそれに、生えた風刃がズタズタズタとスプラッターな血飛沫劇場を作り上げる。
 トドメにずどっと真っ直ぐ突き立てておき、当のコノハは飛び散った緑の血をぺろと舐め「うーん」な顔。密かに発動していたユーベルコード、彩儡によって消耗が激しい分、腹ごしらえは欠かせぬけれど。
「ま、贅沢言ってらんないか」
 どっかに一匹くらいは美味いヤツがいるかも、だし?
 ぴくぴく痙攣する塊を後にして次の獲物の元へダッシュ。見目こそすらりとして華奢な部類に入るだろう彼であったが、ヒトは見掛けに寄らぬものだ。人間の――人間ではないのだが――可能性をひしひし感じジーンとするライヴスは、逆に見るからに精悍な獣人であろうシキへ視線を戻した。
「アナタも得意なんじゃないの? 殴ったり、千切ったり。そういうの」
 獣耳をぱたんとするシキ。
 手慣れたリロードの終わりに愛銃を振ると、帯びた電流がぱちんと弾けて。
「……。……いいや。銃の方が都合が良い。誰か一人でもあんたの傍らについている方が、攻めるにも守るにも全員全力でいけるだろう」
「男前ねえ!!」
 いちいち騒がしいが頼りにはなる神から授かった雷の力を、銃弾に纏わせ撃ち出す。魔術には疎いシキとしてもこれは中々に面白い感覚だ。常より大分大きく感じられる反動を添えるもう片手で抑え込みつつ、弾は、空で地でとどんちゃん騒ぎな亮らに気を取られ未だ此方を認識していない一体へ。
 一発? 否、二発。
 コンセントレイト・ラピット、高められた集中が可能にする早撃ちはひとつ目の弾丸が尾の棘にひしゃげたところで、胸を撫で下ろすには早過ぎた。
『GrroOoooo!?』
 ザウルスマンの尾からてっぺんまでをジジッと紫電が這い上がる。正確にひとところへ着弾していた二発目が、先の一発が刻み付けた歪みを割り開き貫通したのだ。――勿論、魔法の力もセットで。
 びびびびび!! と途端に感電して上向く額へ落ち着き払ったヘッドショット。「そうクると思ったわ」と何故かバディ感を醸し出してくるライヴスが同時に撃ち下ろした直撃雷が銃弾と敵とを纏めて呑んで、黒焦げの消し炭へと変える。
 ……落雷の有効範囲が些か広すぎるのがタマに傷だ。
 巻き込む気のなかった輩までもが口を開け雷を吐き付けんとするが、焦ることはない。シキがライヴスを突き飛ばしつつ見舞う一射でザウルスの頬を吹き飛ばし顔の向きを変えさせ、更には上空から降ってきた苛烈過ぎる踵落としが命自体めしゃあっと砕くのも全て、流れ続ける一瞬のこと。
「ふうっ。良いクッションがあって助かっちゃったな!」
 クッション改めカーペットな薄さとなった恐竜からひょいと飛び退いて、亮は片足でけんけん、と肉片を落とす。
 クライシスゾーンの竜巻をちょっとしたアトラクションみたく乗りこなしてきた亮である。そんな彼女に懐こく「ハイターッチ!」を求められたなら、尻餅ついたライヴスとしたって揃いのにこにこ笑顔で応える他ないというもの。


 ぱちんっ。
 戦場にあっても明るい、元気の良い音が響いた。
「でも、玉のお肌が傷付いちゃってるじゃない。無茶するわね」
「ふふん、ヒーローには勲章みたいなものだよ」
 そう、亮だってヒーローズアース出身のヒーローのひとり。ねえねえこれ重ね掛けって出来るの? と期待に空色の瞳をキラキラさせたったか走るコノハは合流ついでに何体かを殴り飛ばしつつ、こちらもまた綺麗な顔が汚れたって気にする素振りはゼロ。"イイ具合"な櫂をぐるんぐるんと回して。
 猟兵が登場してからというものいいようにされっぱなしなザウルスマンたちは、がさり、じわりと物量作戦で包囲を狭めることにしたらしい。
 今しがたコノハに殴りつけられ弱った個体が同族から足蹴に潰される様なんてのは、弱肉強食の極致で。
「ああはなりたかないわよねー」
「いくら獣と言ってもな」
 嫌々といったコノハの言葉にゆるやかに同調するシキは、ライヴスへ目配せを送る。
 合点! と言いたげな彼――彼女――ともかく神が、実に見掛け上パワフルな振りかぶりで地面へと岩斧を打ち付けたなら、巻き起こった風魔法により二人もまた空の旅へといってらっしゃい、だ。
 決して亮や結希が羨ましかったわけではない。
 "壁"に穴を作る選択肢のひとつとして、高所からの遮るもの無き射撃が有効だというだけで。
「アラ楽しい! 欲を言やコレが晴天ならなぁ」
 ――いや、コノハ的にはちょっと羨ましかったかもしれない。
 ともかくシキが撃つ、コノハが叩くで高台にてジャンピングキックの狙いを澄ませていた輩含めがボコボコにされるペースを、更に加速させる者が火の粉散らして飛来する大剣の一振り。その使い手、結希。
 ザアンッと大波じみた音立てて、上下に斬り捨てられたザウルスマン越しにはたと四つの目が合った。
「はらっ? シキさん」
「今日はヒーローか」
 らしいな、と、シキは微かに笑ったろうか。
 空の上で交錯する二人の武器が、互い違いに文字通り、火を噴く。
 やがて吹き上げる風がやむに合わせ、三人ともに軽々と地を踏む。此度はクッションこそ無いが、なに、ライヴスが力加減でそのあたりをサポートしてくれるので心配ご無用だ。
「シキさん来てたんですねー! 見てください私のは炎ですよ! これでズバッてしたときのwithがもうカッコ良くてですねー……」
「ああ、さっき見た」
 和やかムード。
 等といった束の間のそれをよしとしないのは、根本が怒りに支配されしバイオモンスターザウルスマン。
 散らばる死骸を踏み越えて、グロロロロと改造車のモーター音にも似た音を轟かせ四方八方から神々と猟兵へ襲い掛かる!
「みみ、みなさぁん!!」
 長いこと岩陰に隠れていたのをやめ、だからこそザウルスたちの後背がつけたともいえるが、ディアンナは慌てて水をぶちまけ水滴を矢に変え放つ。
 無理だ、弾かれるのがオチ――
 と、目を瞑りそうになった彼女の眼前、どっと大きな火と水の玉が二色弾けるのは直後のこと。
「つくづく世話が焼ける」
「退屈しない。大いに結構!」
 銘々に杖を翳すグラナト、ネライダ。
 そして迷いなく突っ込み、神々が撃ち放った魔法ごと敵を斬り付けるルイスが、女神を背を守る形で着地した。
「良い集まりっぷりだ」
 ――、――――一拍遅れて吹き荒ぶ衝撃の波の荒々しさときたら!
 焼けた風を竜巻で相殺し皆を守ろうと励むライヴスへ爪牙が伸びぬよう、亮にコノハは目につくものを蹴倒し殴り倒しと大暴れ。「パス!」「はいよ」の短いやり取りは即席とは思えぬコンビネーションで、とにかく速い、風纏うそれに気絶した諸々を遠近問わず交わす声無くとも結希とシキが的確に仕留めてゆく。
「くっ、俺もこうしちゃ……ぅ、うおおおお!?」
「アァ……なァんだ、また"釣れた"のかァ……」
 皆の奮闘ぶりに己も加勢せんと駆け出したヨハンは、エンジの赤糸が再び活発に動き始めたことでまたもや引っ掛かって転んだ。にしたって学習しない、足元を見ない男である。
 対して美味しくない魚が針に引っ掛かったの見るような冷めた目でしげしげとしていたエンジは、ぐいんっと背後へ腕を引くことでヨハンをとりあえず安全圏まで転がしてやって、入れ替わりに前へ差し伸べた逆の手に炎を灯す。これは借り物ではない、双子の炎。
「賢い君。ごらん、イイ風だねェ」
 それからその火をふうっと吹く。
 吹いた火はライヴスが生じさせた竜巻と絡み、風に吹き上げられていたザウルスマンを燃やし――その内に忍ばせていた糸で物理的にも括ることで、新鮮なぶつ切り肉を次々に降らせるのだった。
 …………。ひゅおうと嵐の止んだ後にも倒れている猟兵はひとりもいない。深く傷付いた神も、だ。
『ooooo……』
『UrrrRRr――GraAAA!!』
 無限にも思える勢いで這い出てくるザウルスマンを前に、僅かな疲れも覗かせず皆が其処に立っている。こんな最果て、TV局の生中継用ドローンがやってきていないからって、ヒーローの役目は変わることなく。
 この場所も、この世界も譲れはしない。
 優れた魔法に優れた剣。伝説の再来を。
「奴らにはこれ以上欠片もやらない――、俺達で守りきるんだ」
 勇ましき一柱の声に呼応するが如く、力強い音を立てながらそれぞれの得物が構え直された。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

太宰・寿
えっと、まずはアピールすればいいんですか?
秘密結社スナークから派遣されて来ました、猟兵です。
魔法は使えませんが、絵が描けます。筆を持ってきました!(虹霓を構えて)

魔法と物理のコラボレーションで対抗できると聞いてます
私たちに魔法の力を貸してください
ディアンナさんにお願いして、呼び出した小人さんたちの武器や虹霓に氷の魔法を付与してもらいます
わぁ、すごい!魔法使いみたい!

私だけでは使うことのできない力に感動

せーの……!
吹き飛ばす勢いで、虹霓をフルスイング
相手の攻撃は基本的に回避を試みますが、間に合わないものは虹霓で受け止めます
必要に応じて小人たちには神様たちを守ってもらいます
絵?後から描きますね


月居・蒼汰
俺は神様じゃないけどヒーローだから
この世界を守るため、全力で戦います!
ディアンナさん、力を貸してください
大丈夫です、俺達が絶対何とかしてみせますから

どちらかと言えば魔術のほうが得意だけど
神様の力を借りて戦うなら物理で殴ったほうがいい…よね
(近くに物理で戦う仲間が居たら協力は惜しまず)
俺もスピリットヒーローの端くれだし
水や氷は得意だから相性は悪くない筈
ということでディアンナさんの力を借りて
叡智の杖を振り回しつつ殴ったり蹴ったり
ディアンナさんへの攻撃は身を挺して庇いつつ
あんまりビジュアル的にかっこよくないから滅多に使わないけど
ラビット・カタルシスも使いながら
少しでも多くの敵を減らせるよう頑張ります




 神々と猟兵とが協力して叩き出す力は確かなものだ。
 いいや、もっと言ってしまうなら――……ヨハンとライヴスと、彼らの。
(「私はやっぱり足手まといの……駄目駄目な……」)
 助けられっぱなしでひとしれずうじうじするディアンナ。その羽状の長耳がぺしょんと垂れようかといったところで、肩に触れるものがあった。
 ちいさな――、小人?
「……ひゃわっ?」
「初めまして! 同じく秘密結社スナークから派遣されて来ました、猟兵です」
 こらこら脅かさないのと微笑んでその小人を抱え上げるのは太宰・寿(パステルペインター・f18704)であり、ともにやって来ながら降りかかる火の粉を払う月居・蒼汰(泡沫メランコリー・f16730)もまた柔和な面持ちで会釈をした。
「ヒーローのひとりとして、この世界のために戦いたいんです。ディアンナさん、力を貸してください」
「わ、わたし……でいいんですか?」
 おず、と目に見えてたじろぐ女神を前にして、寿と蒼汰は同じ方向へと頭を傾けた。「あなたがいいんです」さぁ、と左右それぞれの手を引けばそこに抵抗はなくて。
「大丈夫です、俺達が絶対何とかしてみせますから」

 ――――ぴきィッ。
 足元までも刹那に凍り付かせ、神が射た氷の矢がとっと小人の帽子へ突き立ったかと思えば、みるみるうちにその身は雪の結晶に覆われてゆく。
 かといって痛いわけではないようで。ぶんぶん振るナイフや斧で寿に見ててアピールする彼らがひとたび溶岩を斬り付ければ、ジュウとマグマさえも流れを止める氷の武器の爆誕だ。
「わぁ、すごい!」
「心なしか空気もひんやりして、気持ち良い……」
 ぱちぱちぱちっと純粋に拍手する寿と、自身も水や氷に馴染みのあるスピリットヒーローとしてほのかに目を細める蒼汰。そういえば、寿は小人――人形使いか何かだろうか? 次はどうすれば良いでしょうか、と控えめに照れ照れするディアンナへずずいと寿が構えを取って示したものは、モップサイズな一振りの絵筆・虹霓であった。
「こちらは?」
「ふふふ、絵を描く道具ですよ。神様も描かれたことがあるんじゃないでしょうか、肖像画だったり」
 魔法の代わりに絵が描けます、が寿の自己アピール。思い当たる節があったのか、すごいですとワントーン高まった声を上げるディアンナは先の寿の感動をそのままなぞるみたいだ。
 では――、絵の具がもっと遠くまで、もっと鮮やかに伸びるように。
 女神の手が毛先を撫でたなら、ぽわわわと溢れ出す透明な水の塊が流れ落ちることもせずに虹霓に寄り添う。「これを?」「ええ」「振ると!」「ええ」を交わす眼差しだけで意思疎通した二人、先ほどから小人とやりあいぎゃおぎゃお騒がしい外野へ向け振り返りざまの寿の一閃!
 ばしゅんっ。
 確かにフルスイングであったが、吹っ飛ぶザウルスマンの勢いはそれ以上のものを感じさせる。なにより、殴りつけた拍子に飛び散った青色絵の具の水滴が散弾めいて数多の穴を開けたのが凄かった。――。
「…………私、魔法使いみたい!」
 ぴょこぴょーと小人たちといっしょにうきうきで飛び跳ねる寿へ、お次はディアンナより拍手が贈られるのだった。
 どんどんいきます! ちょうどモップでお掃除するみたく飛び出してゆく背に、なるほどゴッドペインターと合点がいった蒼汰も微笑ましいものを感じつつ、彼女の小人へとそっとお裾分けしていた魔力が活用されまた一体と敵を薙ぎ倒す光景を頼もしく思う。
 刃の切れ味を一層高める、淡い、穏やかな月と星の光めいた力のことは、やはり同じスピリットヒーローといえよう、ディアンナが気付くのは早かった。
「眩しくて、けれど優しい、素敵な魔法です……ね」
 やっぱり私の力なんてなくても十分に――などと続けかねない女神へと「しー」の指を立てれば、蒼汰は、借り受けた氷の力がどれほどに力強いものかを実演してみせるのだ。
 がうるるるるる、と涎を撒き散らしながら向かい来るザウルスマントリオ、そのスライディングキックに合わせる形で振り抜く白銀の短杖は衝突の一瞬に玻璃の六花を大きく咲き誇らせる。
 穢れ無き結晶の中で複雑に屈折し、たゆたう月明かりの美しさ。
「俺だけでは、こんな絶景も拝めませんから」
 ちょっとはにかむみたいに言う頃には、鱗に覆われた脚を蒼汰の杖が破砕していた。
 身の内をさあと駆け抜けた月光がそうさせたのか、ただの一度の接触で芯まで凍り付いてしまったかの邪竜は、振り戻して杭の如く撃ち込まれる二打目にボロボロに崩れ落ちる。
 相手方はトリオではあったが、同方向からの三体の蹴りで一人を狙うとなれば当然順番待ちが発生するわけで。その、化物へ変じ残念ながら退化する一方らしき頭を、駆けまわり戻ってきた絵筆と小人らの武器が同時に吹き飛ばした。
「ディアンナさん、後ろにもー!」
「はっ……」
 猟兵の戦いにただただ見入っていた女神へ岩陰より忍び寄る者がいようものなら、トゲトゲアイスタックルをかます別動隊な小人に、それに蒼汰だって黙ってはいない。
 ディアンナのものよりもかなりもふもふな灰毛の垂れ耳を揺らし、ガッと飛び掛かり食らい付く様はまるで本物のウサギの――いいや実際にウサギの頭部! ただし、それは首ではなく手首の先に生えている。かっこよくないので普段は滅多に使わない、けれど、此度は迷わぬラビット・カタルシスの発動だ。
 敢え無くまるかじり、回転して倒れるザウルスマン。
 目にも止まらぬ速さで繰り出され直後には人間のそれへと戻る手元に、ぱち、ぱちと瞬いて視線を交わすは寿とディアンナで。
「ぅ ウサギさんでした?」
「でしたでした! ああ、正義のヒーローウサギマン、創作意欲が刺激されますねっ」
「素敵――そういえば私、あなたの描いた絵をぜひ見てみたいです」
「ふふ、それは後のお楽しみですよ」
 等とほわほわふわふわな会話が始まってしまえば。
「えっと……うん。ほら、次が来てるよ」
 てのひらについた敵の血を拭う蒼汰はすこしばかり居た堪れずに、ずり落ちた上着を羽織り直すのだった。

 手数も十分、やる気も十分!
 実力も、思いやる心も十分な、そんな二人とともに戦ううちディアンナの「もう終わり」「私なんて」な弱さも晴れてゆく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

よっわよわ❤よわ~い❤よくそれで神様なんて名乗ってるね!
これだから鍛えてない子たちは困るよ!

(シュッシュッとシャドウボククシングをして見栄を切る)

●こういうのは物理で殴れって相場が決まって…あれ~???
効かないじゃん!んもー!

……あー、キミたちキミたち?キミたちも神様として世界を守りたいんだよね?
うん立派だよ立派立派!
その心意気を汲んでね?手伝いたいんなら手伝わせてあげてもいっかなーって思うんだけど?どう?

あー嘘ウソ!手伝って!エンチャント的なやつちょうだい!
ほら、起きて起きて!頬を張って寝てるヨハンくんを叩き起こそうね
なんでって?炎属性付与ってなん一番かっこいい!


大門・有人
不採用含め全て歓迎。
怪人みてーな奴にゃ負けられねえな。

ヨハンは別に任せてディアンナと共闘。彼女の草魔法で敵を拘束して威力重視でUC始動。
パワーアップはさせんぞ、草を巻き込んで心臓をぶち抜いてやるから、神話の世界でおねんねしてな!
刃物の扱いはそれなりだ。ディアンナに頼んで手を氷の刃に変えてもらい、範囲攻撃で串刺し・なぎ払い。極力数を減らす。
敵UCが厄介だな。ディアンナや他の猟兵をかばい、激痛耐性に覚悟をもってガンバレットで受け止める。
返しは痛いぜ? 有人キックでカウンターだ。

神様の力ってのは凄まじいもんだな。だからこそ見ておけよ、人の知恵が造った道具も、心があれば正義の味方になれるってな。


ロキ・バロックヒート
まぁ神が揃いも揃って貧弱なんて笑うよね
俺様の器も人間並で貧弱なんだけどさぁ、あはは
他の神のことは可愛いともなんとも思わないけど
共闘ぐらいはしてあげるよ

やっほー元気?“破壊神”の力は要る?なんて
神なら封印で力が弱いぐらいは解るだろうけど
面倒なこと言って来たら
あっちの味方しちゃおうかな?なんて
おちょくるぐらい許してよ
ほら俺様の影におまえたちの力を貸して
炎を雷風を水を纏って貫く影の槍
壊すってのはどういうものか見せてあげる

影は神の奇跡の残り滓
物理でしか具現化できないなんてと思ってたけど
少しは役に立つんじゃない?

それにしても誰だっけ?アズマ?
神も殺せるなんて凄いよねぇ!あはは!
ああ、是非会ってみたいなぁ




「あっれぇ? ねえねえなんで地面に抱きついてるの~?」
「神が揃いも揃って貧弱なんて笑うよねー」
 よっわよわ❤ よわ~い❤ よくそれで神様なんて名乗ってるね! ――ほら起きて起きて! びたんびたんと頬を張る、こっちが神のロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)で。
 その隣でしゃがみこみ、つんつんしているのが神のロキ・バロックヒート(深淵を覗く・f25190)。ちなみに諸々されているのはヨハンだ。放り出された後に顔面スライディングを決めたヨハンには、何があったの? ってなレベルな焼き目がついている。
 とはいえそこは炎に馴染み深い者、バッと身を起こせば腕を振り払い勢いよく立ち上がった。
「ほっっっとけ! くそ、俺だってなぁ……!」
「それがほっとけないんだよねぇ。俺様としてはその通りにしてあげてもいいんだけど、ま、ここで止めなきゃ街とかにも被害が出ちゃうし」
 人間に対してはでろでろに甘やかし蜜を注ぐロキも、相手が同じ種族となればこの調子。塩!
 うぐぐとなるヨハンの目の前には次に拳が突き出された。しゅっ、しゅ。これはこれでうざったいロニによるシャドウボクシングである。沈んだ赤茶と目が合えばにまぁとしたロニは、くるりと反転。
「これだから鍛えてない子たちは困るよ! 特別にお手本を見せてあげる」
「がんばれー」
 ロキのゆるゆるした声援を受け手ぶらのままザウルスマンへとスキップしてゆく。涎を垂らす邪竜はやわらかそうな肉の塊を視界に収め、うぞりと動き始め――即座に、その爪を振るいバラしにかかる。
「おいっ」
「ほっ、と。まずは搦め手!」
 ヨハンが思わず声を上げた。しかしロニは何も持っていなかった筈の手から黒々とした球体を放ち、爪を僅かながらも逸らしてみせる。よく見ると牙が並んでみえる球体は効果なくとも手に喰らい付いて離れず「おっこれいけるんじゃね?」な空気を醸し出し。
 だからこそ、一層というか。
「そしてぇ――……こうだ!」
 ぺたーん! と打ち込まれた拳の残念さといえば、際立つものがあった。
 いいや。事実彼のそれはユーベルコードであり、平時ならば小物程度一手で粉砕してみせたろう。多分。だが致命的に話を聞いていないッ! あれぇ~なんでかなぁこういうときは物理って相場がぺちぺちぺちと繰り返される殴打、付き合ってられんザウルスマンの咢がその頭をまるかじりにすべく開かれて。
「わ」

「な、に、 してんだ!」
 けれどもロニへは届かない。
 めきめきという音は、間に割り入った大門・有人(ヒーロー・ガンバレイにして怪人・トゲトゲドクロ男・f27748)の、それも体内から聞こえるものであった。
 牙そのものは差し込んだガントレット、ガンバレットでがっちり受け止めている。常人ならば圧し潰されかねない重みをかけられておきながら跳ね上げるようにして脅威を押し転がした有人の、異常な筋力はすべてスッゲーゼ式強化筋肉に高められている。
 のみならず、彼は様々な非人道的仕組みを体中に施された、所謂改造人間だ。
 酷使する肉体は悲鳴を上げ続けている。ちょうど、今のように。
「んもーおにーさんのだとなんでちょっと効いてる感あるの!? ずるーい!」
「魔法の中を突っ切ってきたからかもな。そうだ、ディアンナはいるか?」
 直接殴りかかる分には、一時的とはいえ拘束が可能であろう女神の草の力とは相性がよさそうだ。なんで効かなかったかの全自動答え合わせに「はっ……」と目を白黒するロニは置いておいて、視線を巡らせる有人。
「ああ、今ちょうどこっちで借りてたんだ」
 声を返すのはロキであった。
 やっほー元気? "破壊神"の力は要る? ――そんな口説き文句で集めた残り二柱。すべての魔法が借りられるっていうなら、すべて使えばいいじゃないの王様精神で。だが大抵の武器は膨大な魔力を一度に注ぎ込まれれば壊れてしまうだろう、案ずる神々に対し、ロキが指定してみせたのは自らの足元にある影、であった。
 壊れないよ。壊せたら褒めてあげる。なぁんて。
「ね? 俺様の器だって人間並みで貧弱だけど、このくらいは簡単だよ」
 壊すってのはどういうものか見せてあげる。
 結果、三色の渦を内包することになった影はいつもよりもどことなく賑やかしく破壊を繰り広げ始めていた。
 こわしたい存在を串刺しにして、ッパァン! 内より燃やし、砕き、はたまた引き裂く。
 それぞれが噴き出すマグマ、氷柱、雷伴う竜巻といったところか。当人はすきなのを選んでねなどと嘯くけれど、ときに前兆なく足元から突き出しときに猛然と追いかけくる影を上手に選び取れるザウルスマンなど存在する筈もなし。
 たまーに死に物狂いでタックルしてくる奴がいて。致命傷となりかねぬ攻撃はロキ自身よりも何故だか有人や神々がカバーに必死になる構図、不思議ですねぇ。
「ちょっとは避けろ!」
「うん? あは、ごめーん。影の制御に全力で」
 有人の言葉には愛想よく謝罪し。
「いや、物理面俺と大して変わらないんじゃねえか」
「そっちと違って封印されてるもの、仕方ないじゃない」
 ヨハンの言葉にはひえひえのひえ、ブレぬロキ。
 言い返せず顔を覆う神の服の裾を引っ張るのは、他でもない、暫し身の振り方を考えていたロニその人。うん。ボクだけはキミたちのよわよわでも世界を救いたい熱い心、分かってるよ? だとか言いたげなやたら瞬きまくる上目遣い。
「その心意気を汲んでね? ボクのことも手伝いたいんなら手伝わせてあげてもいっかなーって思うんだけど? どう?」
 間。
 そして、間。
「あぁぁー嘘ウソ! 手伝って! エンチャント的なやつちょうだい!! っていうかこんなにかわいいボクのお願いが聞けないってどゆこと?」
「ねー。ひどーい。あっちの味方しちゃおうかな?」
「……、……なんとかしてやってくれ」
 おかしいぞ普段の数割増しのペースで内臓がやられていく気分だ!
 なんの因果かダブルお騒がせ神に挟まれることとなった有人はなんだかんだと正義のため尽くしてしまう性分もあって緩衝材と化しつつ、ディアンナの光溢す蔦草が育ちザウルスマンらを絡め取り始めたとき、自らも動き出すのだ。
『GrrrrooooAaa!』
 ぶちっ、ぶちんと爪牙に引き千切られる緑。長くは続かぬだろう。だが本物の植物のようでいて灼熱の地形に負けず、見上げたものである。
 ロキにも言えたことだが、神々の力は凄まじい。だからこそと有人は思う。
「見ておけよ。人の知恵が造った道具も、心があれば正義の味方になれるってな」
 飛び掛かる。
 信じ、おそれず防御を捨てた。もがくザウルスマンが縛めを抜け牙剥くよりも速く――、緑を巻き込み握り拳を叩き込む! 沈むガンバレットが、次こそは有人自身ではない、敵の身から破砕音を響かせた瞬間であった。
 植えた種が一気に成長するが如く、抉れた邪竜の腹のみならず目や耳の穴からぶわりと伸び出る蔦草は成功のなによりの証明となり。崩れ落ちる一体、飛び越えるようにして続くロニもその手に炎を揺らめかせている。
「ボクもボクも!」
 なんで一番イジっちゃったヨハンの魔法にしたか?
 なんか一番かっこいいから! ぶおん、と火の粉散らした神撃は爆炎伴いロニ自身よりも大きなザウルスを浮かせる。地面を離れた両脚は、二度と触れることがない。ロキの黒槍が縦に串刺し、その息の根が止まるまでぶらんと宙吊りにしてしまうから。
「はい、おしまい」
 魔術に全神経を注ぐディアンナ狙いの一体が躍り出るも、スライディングを半ばで跳ね上げるは地面を殴り波打たせた超重の有人パンチ。遅れて振り回された尾を全身で受け止めて、
「今度の返しはっ、さっきよか痛いぜ?」
 にやりと歯を覗かせて笑い、放つ有人キック! 何ら変哲もない前蹴りであるが、大砲より痛いと喰らった皆さんから評判の技はゴリゴリに炸裂しザウルスマンを砕くのであった。

 ぽぽんっ。 ――束の間の敵の切れ目。
 粉々の肉片に、いくつも花開く緑の結晶。手に取りながら、それにしてもと口を開いたのはロキだ。
「誰だっけ? アズマ? 凄いよねぇ!」
 神をも殺せるだなんて、そんなどこかの誰かが夢みた絵空事みたいなこと。つい、悲しみ喜びともつかぬ歪みがロキの口元を彩る。「ああ、是非会ってみたいなぁ」落とした呟きはほぼ溜息交じりで、近くにいたのがだよねーとノリと勢いで相槌打つロニでよかったすらある。
「でも長丁場だとお腹すくよね。お菓子たべるー?」
「わぁ、交換するー?」
 ポケットを叩いてどう見ても収まりきらない筈のキャンディーをじゃんじゃか散らばすロニ、同じく手のひらに上にわさふぁーっとチョコレートを雪崩させるロキ。
 傍目には似たようなテンションできゃっきゃする二人に見えよう。
(「わっかんねぇな……」)
 神様という存在の"ヤバさ"には遠い目になりつつ、そして今日もまた内臓が新調されてしまうのは確定的なのでお裾分けを丁重にお断りした有人は、気を取り直してザウルスマンズへと向き直った。あちらもちょうど新たな群れを形成したところか。
「とはいえ、俺にも分かることがある。この戦いがどれほど負けられねえもんか」
 ちゃちゃっと櫛で整えるリーゼントはまだまだ、しょぼくれる気配も欠片もない。
 ――アズマ。ふざけた話だというならば、神をも殺せる存在を人やその道具が殺したって良い筈だ。過負荷に早くも壊死を始める臓腑を労わるどころか殴りつけ、有人は力強く駆け出すのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

数宮・多喜
【兎乃・零時さん(f00283)と共闘】

話は聞かせてもらったよ!
つまりは魔法と物理の合わせ技が必要なんだな!
アタシを選んでくれたのは嬉しいね、兎乃クン。
さあ、一緒に秘密猟兵組織「スナーク」の戦い方を見せてやろうじゃないのさ!

兎乃クンはカブの後部座席に『騎乗』してもらって、
アタシは『操縦』になるべく集中。
溶岩地帯の熱気に耐えるために、ヨハンさんの炎の力を借りたいもんだねぇ!

そうしてアタシのサイキックの雷の『属性攻撃』と、
兎乃クンの光の魔力を更に乗せ。
プラスの超常エネルギーを纏った【サイキック・ブレイカー】で
ザウルスマンどもを轢き飛ばす!
これで敵さんも大混乱だろ、後は兎乃クン、ぶった切っちまえ!


兎乃・零時
数宮(f03004)と!
アドリブ歓迎

おぅ、よろしくな数宮!
合わせ技すりゃいいんだろうし…ともかく!俺様達でスナ―クの戦い方を見せてやろうぜ!

カブの後部座席乗り
光魔力を自分や数宮に付与(ドーピング)し
溶岩は…服の【火炎耐性×環境耐性】で耐えたい…

うぉ
めっちゃ敵吹き飛んでない!?
…まぁいいや、後は俺様がぶちかますだけ!
UCで杖をⅢ型の大剣に変形!
装甲半分!:攻撃力五倍!
剣術は出来ずとも剣を力いっぱいぶつけてぶった切ることぐらいはできらぁ!(怪力)
敵がいくら固かろうが!
ありったけをぶつけりゃいい!

光と炎の【魔力溜め×属性攻撃×限界突破×全力魔法×切り込み】
魔力と斬撃!同時に叩き込む!
うおりゃぁー!!




 弾け、伸び上がってはまた落ちるマグマの作るアーチを潜り抜け、同じく炎のような色をした一台の宇宙バイクが駆け抜ける。
 ハンドルを握るは数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)。そしてその後部座席にはちょこんと跨る兎乃・零時(其は断崖を駆けあがるもの・f00283)が、あっちでこっちでと炸裂するド派手な魔法に瞳を輝かせていた。
 真下を潜るなら花火みたいだ!
 憧れるものは最強の魔術師。自分の魔術もまたひとつの世界を救うキーとなるのなら、こんなに素敵なことはない! ――と、はしゃぐのはなんだかガキっぽいし。
「見えた……!」
 なんだか強キャラが言いそうな台詞を口にすることで胸の高揚を発散しておく。
 見えたの言葉通り、向かう先には未だ此方へ背を向けているザウルスマンの群れがある。ゴツゴツとした急勾配を駆け下りてきたバイク・カブは、他の猟兵とともに一部を相手取っていたヨハンのそばへざりりりりっと回り込むようにして姿を見せた。
「やあヨハンさん、ひとつ力を借りられるかい?」
「一番いい炎をな!」
 挨拶がてらに、瀕死の一体撥ね上げてやって。
 ぽおんと飛んでゆくザウルスマンを目で追ったヨハンは――それがぐちゃっと頭から落ち、真逆に向いた頭に瞬いている間に斬撃で屠られたのを見て――見るからに嬉しげに拳を握った。
「すごいな!? スレイプニルもかくやだ……俺も乗せてくれないかっ?」
「悪いね、こいつは二人乗りなんだ」
 あわれ、ヨハン。
 ともあれ二つ返事で灯された火焔の力を借りることの出来た車体は一層に赤々と、ブレーキ無しで彼らの傍らを通り抜けて群れの只中への突入を始める。
 ――しっかり掴まっときなよ?
 ――おう! どこからでもこい!
 な、短いやり取りはタイヤがぎゃりぎゃりと地面を削る音で二人以外には届かぬだろう。騒音に気付いたザウルスマンが振り返って尾を揺らめかせるが、借りた炎が後方へと噴き出すブースターを担い、ここぞでギアをも上げた宇宙バイクの体当たりにはそうそう間に合わない。
 秘密猟兵組織、スナ―クの戦い方をみせてやろう。
 今!!
 轟と輝くカブ。
 零時の光魔法と、多喜のサイキック。放出される力は閃光の如く、黒の最中へ二人を突き抜けさせる。

 どおっ、

 と、小山の捲れ上がるようだ、サイキック・ブレイカーが齎した爆砕は!
 燃え、断面より光溢しながら次々に轢き飛ばされるザウルスマンは、木っ端ほどにバラけながら宙を舞う。
「うぉっめっちゃ吹き飛んでない!?」
「こういうのは景気よくいかないとねぇ!」
 しかし、戦車に乗っているわけでもないのだ、頑丈な竜を撥ねればダイレクトに伝わる衝撃もまた凄いこと。
 気を抜かずとも取られそうになるハンドルを慣れたものと切り返せるのは、多喜が一流のスターライダーであるからこそ。同時に、ペダルを踏み込む足も浮つかせることなく、前へ傾ける身でがっちり車体へ食いついてバイクと一体になったかの突進を続ける。
 メギィッ! 飛び上がった肉片骨片が指やら足やらにぶつかってきそうなところを、直前で雷や炎といった共に駆ける魔法の光が消し去ってゆく。
「ふ、ふ! 走りやすい道だこと……!」
 ぎりりと歯を食いしばり、血霧の中も向かう先へと目を凝らして、多喜は嵐を切り裂く。
 しがみついてくる腕ならば、マフラーが噴き付ける焼けた風が千切った。鈍色のそこから噴出される風もいまは魔力を帯びているのだろうか、ちらちらと内包する粒子は星の輝きにも似て。
 ぶらん……と垂れ下がる忘れ物に内心ウェッとなる零時も、蹴りつけることでそいつを視界から除外する。なに、焦ることはない。運転手の技術は抜群だ、ならば己も集中して――藍玉の杖に力を、籠める。
(「カッコいいやつ、カッコいいやつ……!!」)
 型式変形。
 意思と、杖と。共鳴により実現されるユーベルコードで、夢の大活躍に適した得物を選び取るのだ。
 そうして零時の手に輝くは、Ⅲ型・星を斬り裂くもの。剣術の心得がない? 知ったことか。力強き大剣へと変形した杖を得意顔してぐおんと翳せば、あとはもうぶちかますだけ!
 ――道を塞ぐ、爪を伸ばしてくる、ザウルスマンへ。
『GrrrUuuuu!!』
「っりゃあああ!!!」
 喰らえ速度ドーピング二種の魔力プラス超常エネルギーその他諸々剣ッッ!
 弾ける、それは爆弾が炸裂したかの――あまりにドでかい衝撃が零時を座席から浮き上がらせるも、車体を傾けた多喜が強引なカーブでその身に真逆の圧を掛け押し留めつつ爆炎の際々を潜り抜ける。
「――、どうだ!?」
「ばっちりさ、見なよ」
 結果からいって、技術などなくとも剣は思惑通りに凶器と化した。ヨハンに教えてやってほしいくらいですね。
 閃光伴う爆発の起こる寸前、すれ違いざまに響いた快音はスコォンッ! だとか、どう考えても斬れたのではなく打ったときのそれであったろう。ぎゅるんぎゅるんに回転しながら飛ぶ邪竜モドキの頭部はお仲間の只中へ飛び込んで、尚も殺されぬ勢いに跳ね回りながらやがて、ひしゃげる。
『Urrro……』
『GRrrrrAaaaa!?』
 バットで首刈る暴走族、あれマジだったんだ……な衝撃にどよめいているかもしれないザウルスマンをあらゆる意味で置き去りに、パワフルにして華麗なU字ターンを決める多喜は"次"を見据えている。
 タイヤが焦げ付くほどの摩擦の連続だ。激突しまくったヘッドライトは割れているし、そもそもが前面がボコボコ。
 しかし相棒の美点はそのしぶとさ。これしきの悪路、これまでだって共に幾度も走破してきた。ゆえに多喜は、その面を曇らせるどころか、笑う。挑戦者の顔をして。
「さて……実はもっと馬力が出せるんだが、どうする?」
 此処で燃え尽きる気はあるかい? とかそんな感じのノリでレトロマシンを叩く多喜の拳に、無論、首を縦に振る零時である。腕は正直まだ痺れているし顔なんか煤だらけだが、一流の魔法使いとしての矜持――とんがり帽子をぎゅむっとかぶり直し、親指を立ててみせるのだ。
「頼んだぜ、数宮、カブ。とりあえず、俺様達より頭の高いヤツは絶滅させてやろう!」
「はっは、合点!」
 言うが早いかどぅるるるるると爆音轟かせ再び走り出すモンスター。あわててしがみついた零時と、そんな少年をからから笑い飛ばす多喜の声もまた熱風の中に溶けて――。
「うおりゃぁー!!」
「そら、逃がしやしないよ!」
 ――――雷光は鳴り止まない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オズ・ケストナー
セロ(f06061)と

セロの疑問にこてり不思議そうに
いつだろうね?
笑顔を返す
笑い合える今がうれしいもの

わたしたちもきたよっ

考えたヒーロー名で決めポーズ
秘密結社スナークの、ソラナさんじょうだよっ

さくせんはばっちりだよ
ディアンナに
ね、ザウルスマンのまわりに水をまける?

セ、じゃなかったシュトラールっ
声かけガジェットショータイム
鞭のような伸びる蔓の先に黄色いぽんぽん
氷の花弁が集まっていく
わあ、みてみてっ
セロが咲かせてくれた花を誇らしげに掲げ

よーしっ
花をぶんと振るい攻撃

足元の水が凍ってつるつるになればうまく止まれないんじゃないかな?
スライディングは左右に避け
起き上がる前に狙いを定め

ヒーローはまけないよっ


セロ・アルコイリス
オズ(f01136)と!

不死の怪物、かあ
おれ達は、いつ死ぬんでしょうね、オズ?(純粋なただの疑問で、くてり)
鏡写しで、ちいさく笑えば「まあいいか!」

それにしても人間臭い神サマ達ですね
ええ、手助けしねーわけにゃいかねーです
『秘密結社スナーク』がシュトラール(ヒーロー名)、参上、ってね!
一緒に一矢報いましょう、神サマ

おれは魔法使いですからオ――じゃねーや、ソラナをめいっぱい支援します!
【吹雪】なら爬虫類の動きは鈍るでしょ
伸びた、かわいいけど硬い芯に花咲かせていく
陽だまりの許に花は咲く、なんて

もしオズが氷に滑ったりしたら、風の魔法で転ばねーよう掬い上げたりできたら楽しいな

さあ、まだまだ行きましょう!




 神代に封じられたという、不死の怪物。
 禍々しいオーラを放ち列をなすザウルスマンを前にして、セロ・アルコイリス(花盗人・f06061)の胸に去来するのはおそれなんて感情とは無縁の、ふしぎ。
「おれ達は、いつ死ぬんでしょうね、オズ?」
 くてり。首を傾げ見つめる先には、こてり。
「いつだろうね?」
 首を傾げ返すオズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)がいる。
 二人は精巧につくられたミレナリィドール。命の在り処と、人形のそれが止まるとは何を指すものか。わからないことがいっぱいだけれど、――少なくとも今ではないみたい!
 言葉とともに俄かに笑みも交わした二人は、まあいいか! とはじめようっ! の明るい声を響かせて戦い続ける皆の前へと飛び出した。
「わたしたちもきたよっ」
「"秘密結社スナーク"がシュトラール、参上、ってね!」
「――あ! 同じくソラナ! さんじょうっ」
 空をゆく青い鳥色と太陽に映えるたんぽぽ色、それぞれのマフラーがばたばたばたーーっとヒーローの登場を盛り上げる。
 ちなみに今名乗ったのはヒーローネーム。セロが輝きのシュトラールで、オズが陽だまりのソラナ、膝を突き合わせ考え合った名にばっちりと歓声を受ければぽぽぽとあたたかな気持ちが湧いてくるというもの。
 まってました! と、特別大きい声はライヴスのものだ。
「ハローステキなヒーロー、魔法は使えて?」
「おまかせあれ。一緒に一矢報いましょう、神サマ」
 腰に吊ったロッド、クレマチスの鍵をバトンやガンマンの早撃ちようにくるくる回して手にするセロ。
 隣に着地したオズは気遣わしげなディアンナの目線を感じて、わたしはすこし貸してもらえるとうれしいな、とにっこり笑いかけた。
 すぐに弓を握りしめ応じる構えの彼女へ、お願いする作戦はひとつ。
 ――ね、ザウルスマンのまわりに水をまける?

 大粒な雨がいっぱいに降るみたいだ。空へ射て、放たれた水の塊たちは。
 その澄んだふるふるが焼ける地面に弾けた瞬間、セロの手のうち鍵より解かれし氷の風花がさあと寄り添うならば。
「わあ! すごい、すごいよっ」
「オ――ソラナ、前です前ー!」
 ぴきんぱきんと清涼な音で凍り付き、瞬きの間に足元はまるでアイススケートリンク!
 ただの溶岩やマグマに対して、仮にも神の一柱であるディアンナが行使した水魔法はすぐには失せることはないだろう。そこにセロという魔法使いの力が重ねられたのならば尚更、だ。
 ――……たのしい!!
 せいっと乗り込みつるるるーっと滑るオズは手を振るうち正面衝突しそうになった大岩をヘンテコガジェットでわあわあ砕き、ついでにその棒状の物体を高く抱え上げては吹き荒ぶ魔法の吹雪を浴びさせる。
「セ、じゃなかったシュトラール!」
「はい!」
 そこへ呼び掛けに応えるセロが半ばまで解けた鍵を振り、更にと風に花びらを乗せれば。
 パワーアップ・ガジェットショータイム! がこっと蒸気を吐き見る間に緑へ変わった棒からにょろりんと伸びる鞭は――、蔦、だろうか? 蔦の先にぽぽぽっと膨らむ黄色はでは花蕊で、そこに集まる氷の結晶たちはまさしく花びら。
 綺麗でいて、しかしその形状は殺傷力に富むモーニングスターのような。
「ふふん。陽だまりの許に花は咲く、……なんて」
「やるじゃない」
 ライヴスからのやたら距離の近い肘つんによろめきつつ、よせやいという代わり破顔したセロは傑作品でぼかぼかーっとザウルスマンを殴り倒すオズの姿にぴかりと鮮やかな光を見る。
 スライディングキックを左右に躱して。互いをぶつからせて。それから?
「みてみて! いくよ!」
「見てますとも」
 さあさ魅せてください、おれのヒーロー! ――"相棒"の声援に応えぬオズではない。
 ぶおんと振り回された蔦は目を回す何体もの足を払い、ただでさえ足場の悪い氷上、まとめて転ばせて。
 右から左へ通過しきったそれが次にどこへ向かうかといえば上だ。太陽が出ていれば重なったであろうてっぺんまで昇りつめた実質鉄球部分が、振り下ろされると地を揺らすほど目一杯に、転んだ奴らを打ち付ける。
 めぎょばべってな具合の破砕音!
 衝撃に伴う強烈な熱でしゅうううと上がる白煙晴れて足元に残るのは、ぺったんこな一塊にされたザウルスマンのみである。
「――――ぶい!」
「へへっ、ぶいー」
 キラキラ、キラキラだ。
 カメラ目線(きぶん)で決めポーズをする二人のコンビネーションはTVの向こうのこどもたちに見せられぬのが惜しいくらい。一方で目の当たりにした神々は、頼もしきヒーローの存在にヒーローズアースの明るい未来を感じる。
 勿論、これで終わりではない。「わ、と、と?」大きな手応えの反動でつるつるつる~っと滑りマグマぽちゃしそうになるオズを、予め見越していたセロの風が難なく吹き上げた。
「もいっちょ、いってらっしゃい」
「ありがとうっ」
 こちらも魔力を孕んだ風。あたりを行き交う熱風とは違う、心地好い涼しさのそれに身を任せ歩くみたいに空をとんっ、とんと蹴りつけたオズは、透明な階段の下で今まさに飛び立たんとするザウルスマンへと急降下からの殴り込みを仕掛ける。
 二度といわず何度でも! ぼかーっと、いや音にしたらもっとエグいのだが、ともかくパワフルな花と氷の球がすれ違う諸々をざくざくに削ぎ落としては天地の別なく暴れまわり。
 翼をもがれ勢いよく落ちてきた個体が起き上がろうとするのを、さっくりと一閃。
「おれもちょっとは準備運動しておきますか」
 刃身に女神からの水を薄く纏わせたダガーが眠らせた。
 ぱちん。何事もなかったかのように腰のホルダーへ仕舞いこみ、しとしとした大気中の水を吸って気持ちくるふわの増した髪をかき上げたセロは、オズと、そうしてあたりで奮戦する面々を見渡す。
 不死の怪物は過去のもの。
 ――今ならば、きっともっと上手に眠らせることが出来る筈。
「さあ、まだまだ行きましょう!」
「うん! ヒーローはまけないよっ」
 高らかに声合わせ、力合わせ。シュトラールとソラナ、二人の戦いは始まったばかり。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

片空・炯
【片空】
すぅちゃん待って…(ひぃこらぜぇぜぇ)
うっ足早い

はッ危ないすぅちゃああぁん!!(かばう)(直撃)
いえわたくしは…すぅちゃんさえ無事なら…
アッハイごめん、下がります
(すーはすーはと息整え)
うん。それじゃあ。彼方の炎をここに。
(熔けないでおくれ報復丸
でないとわたくしが報復されてしまう)
すぅちゃんの邪魔にならないように、けれどもあんまり離れると炎消えてしまうし
ちょこまかついて回っ…ああっわたくし敵じゃないよ!!兄ちゃんだよ!

そう!兄妹なので!(うれしい)
妹はとても元気だから、煉獄の炎も張り切って
わたくしの体力が削られゴフッ
大丈夫だいじょーぶ、消えない隈が三倍増しになるくらい


片空・雛
【片空】
待たせたなぁニンゲン!!
オレと兄さんが来たからにはこれ以上被害は出さないぜ!

っし行くぞ……って兄さあああん!
何してんだよからだ弱いのに!!え、庇った?……それはその、ありがと
よし、オレが前に出るから兄さんはサポート!
兄さんの準備が整うまでは報復丸で攻撃いなしておくから!
へん、オレにかかればてめぇの拳も尻尾も余裕で防げるぜ!
……あ、ごめん兄さん、間合いに入ってきたから間違えた

隙が出来たらぶち抜くぜ、報復丸!!
剣から大鎌に変形、煉獄の炎も糧に猛り狂え!!
今まで苦しんだみんなの分も纏めてぶちこんでやる!!

はん!息ぴったりにきまってんだろ!
オレたち兄妹なんだからな!!
……つか兄さん大丈夫?




 ――やってるやってる。
 にしし、と白い歯を覗かせ眼下の光景に笑うのは片空・雛(彼は誰・f30387)。荒れ狂う炎孕んだ風をもそよ風のように浴びて、躍る茶髪が赤々と生き物めく。
「待たせたなぁニンゲン!! オレと兄さんが来たからにはこれ以上被害は出さないぜ!」
 すうーっと肺いっぱいに吸い込んだ息を吐きつける大声は、猟兵だけでなくともに戦う神々へも確りと届いたらしい、手の代わりに敵と斬り結びついで振り上げられる得物がいくつもいくつも、戦火の中に揺れた。
 ああ、わくわくする!
「っし早速行くぞ兄さん! ……兄さん?」
 小高い岩の上に登っていた雛はぴょいと敵群の只中へ飛び降りようとして、はて、といやに静かな後方を振り返る。兄さん。少女がそう呼ぶのは、兄妹にしては些か歳の離れた――ついでに現在進行形でめちゃめちゃよぼよぼしている――竜神、片空・炯(誰そ彼・f30388)である。
「す すぅちゃん……ふふ……、足速いね……元気でかわいいね……」
 蚊の飛ぶような声量でぜえぜえと息継ぎに必死な炯。
 だが、その視界の中に愛する妹を狙うけしからん輩の尾を見つけたのならば、ひと跳びに矢ほどに進化した反応速度で飛び出すことも出来る。かばうのだ!!
「危ないすぅちゃああぁん!!」
 ズザアッ! と、竜尾のトゲトゲしたやつに大の字のまま殴り飛ばされる炯。すごい綺麗に転げ落ちたが、彼の超速ムササビジャンプに引いたこともあり一歩下がった雛はおかげで無事だ!
「ッッ兄さあああん! 何してんだよからだ弱いのに!!」
「わたくしは……すぅちゃんさえ無事なら……」
 ザウルスマンの方もちょっと困惑した様子で固まったのを、どこかの誰かの気の利いた魔法弾がヘッドショットしてくれた。
 ゆえに兄妹水入らず。喀血しつつも、炯は抱き起こしてくれた雛へ心配ないとあわく笑いかける。口から血出るってそれ内臓割とやばいですけど……元が元だし大丈夫じゃないかな。そんな空気感で、雛は兄を普通に勢いよく引っ張り上げ立たせた。
「おうふっ」
「……その、ありがと。よし、オレが前に出るから兄さんはサポート! 準備が整うまでは報復丸でいなしておくから!」
 半分は微笑ましき照れ隠しだ。
 ともあれ会話の流れでその名を呼ばれた黒剣は、雛の影よりずるりと浮かび出て広げていた手指のなかにすっぽり柄を収める。黒い、黒い、真っ黒刃。頼れる相棒の握り心地をにぎにぎと確かめれば引き抜き、次こそ、――跳ぶ!

 ひゅおんっ。

 風裂いて大上段から振り下ろされる刀身が、高所からの落下込めた着地と同時に地を叩き、その場に集っていたザウルスマンどもを四方八方へと吹き飛ばす。
「そら、オレが相手だぁっ!」
「だから速ぁい!?」
 またもや取り残される炯も酸素恋しさにすーはすーはしている場合ではない。
 跳ね起きる恐竜の獰猛な爪と妹の剣とが鎬を削り合っている様を見守るしかないとはなんとも歯痒いが、この場の神々同様に肉体面がよわよわな炯にも得手とする戦いの術がある。
 隈に縁取られた双眸を伏せて。
 深く、精神を集中する――――と、ぼうと周囲をめぐるように現れ出た人魂の群れのような、彼方の炎こそがひとつのユーベルコードだ。「頼んだよ」指先で弾いて送り出す先は、無論、雛のもと。
「お、」
 小柄な体躯と影の落ちる限り手放し引き出し放題な報復丸の性質をフル活用して、ときに弾き、ときに跳び越え、するりと尾や爪の間をくぐり抜ける少女へ唯一火の玉だけが迷わず辿り着く。
 そうして黒刃へ溶け込むように纏わりつく。煉獄の炎は、選んだものへと力を与える優れもの。――、? もうひとつ、すぐそこに、人影が。
「っと!!」
「ほぐぅっ」
 早速斬れ味を試そうか! とばかり目一杯薙がれる黒が断ったのは、いつの間にやらにじり寄っていた炯のなんていうか、端っこであった。いや、不審者でも敵でもなくって。ある程度の近場にいなくては渡した炎が消えてしまうから。
 えび反りで真っ二つを回避した炯が「兄ちゃんです!!」と声を大にすれば雛は「ごめん、間合いに入ってきたから」とさらり。勢いそのまま、駒にも似て一回転二回転した身体で獄炎の渦を巻き起こしつつ、本物の敵の胴をばっさり斬り抜ける。
 ぐつぐつと煮立つ報復丸。
(「どうか熔けないでおくれ。でないとわたくしが報復されてしまう」)
 膨れ、弾け、呼吸すらしてみえる一振りに心内で祈らずにはいられない炯だ。
 炯は、元気よく斬り進む雛へ叩きつけられんとす尾を全身で抱き留めるようにして受け止めた。二度目の死ですか? ――いいや違う。炯自身もまた妹を強化した際に幽世の力、触れるだけで罅割れる寒獄の凍える霧を放出する身となっている。
「すぅちゃん!」
「あいよ!」
 ザザンッ! 邪竜の鱗に冷気が染み入るその一瞬を、効かぬと吐き出されるか否かのほんの瀬戸際を抜群のコンビネーションで雛が捉えた。
 ぶち抜くぜ、報復丸!!
 少女の叫びに呼応して影が揺らぎ、剣が揺らぎ――――ぐにんと湾曲した黒は大鎌の姿へと移ろい、刈り取る風にして横切ってやったザウルスマンを上下に別つ。竜神の齎す魔力の嵐に急速に冷やされ、そして熱された鱗は、中身ごと太刀筋以上の細切れになって四散するのだ。
 一体だけではない。
 猟兵や神々に流させた血を爪や尾にこびりつかせた何体かが、秒ごと不可思議に伸長し続ける刃によって一様に刻まれる。
『GRrrroooo……』
 それきり全てを、猛火が浚った。
 兄妹の周囲に円を描くみたいに無数散らばる炭を前に、攻めあぐねる様子を見せるザウルスマンたち。
 カッ、カカ、気忙しく大地を掻く爪音にどんなもんよと鼻頭をこすった雛は得意げに笑い飛ばした。
「はん! 息ぴったりにきまってんだろ! オレたち兄妹なんだからな!!」
「そう! 兄妹なので! ふふ、ふふふふ……ふごぅふっ」
 そんな妹の言葉へ、うれしい~~!! と喜色満面で小躍りする炯はやっぱり血を吐くのである。腹の傷が――開く――! 受けたダメージもあるし、ゴリゴリ使いこなしてくれる雛とともに戦える機会に煉獄の炎も大張り切りなものだから、倍速で磨り減る体力メーターがそうさせた。なお隈の方は三倍増しだ。
 特に真新しい攻撃は受けていない筈だががくぅと崩れ落ちる兄に「ほんとにだいじょうぶ……?」と真顔になりつつも。
「まっ、兄さんは安心してヘバっててイイぜ。守ってやらぁ」
 贈られた力を凛々しく背負い、眩しい笑顔のクリティカル追撃を決めてゆく雛なのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

氷月・望
【DK】
アドリブ負傷歓迎

秘密結社、カミサマの力ねぇ
生憎、俺は正義の味方気取るつもりはないケドさ
そっちこそ、ヴィランのお荷物になんじゃねぇよ?

ハロー、ディアンナ様?
肉体労働は俺と
そこのドヤ顔決めているヤツにお任せあれってね
ワイヤーにちょっと、お力添えヨロシク!

スネークだか、スナック菓子だか知らねぇケド
喧嘩売る相手を間違えたよな
――遊んでやるから来いよ、三下

神様からの氷属性を付与した
フックワイヤーを利用して【部位破壊】を狙う
少しでも脆く出来りゃ、ソレでOK
機を見て、UC:紅雨の雷を――クロウの剣に集束

俺の赤雷は高いぜ、ドヤ顔野郎
恩を売っておくのも悪くねぇだろ?
豪快なお手本とやら、見せてみろっての!


杜鬼・クロウ
【DK】
アドリブ負傷◎
新しい剣使い慣れてない

秘密結社って響きそそられるよなァ
神の力も借りられるンだとよ
さて正義の味方らしくきっちりお仕事すっか
足引っ張るなよ、望

ディアンナがドジった時に格好良く登場
黒外套なびかせ大剣を肩に抱え
効果音鳴る

女神サマは下がってな
テメェ如きじゃァ俺達は止められねェわ

敵を煽り意識を此方に向け人差し指で挑発
最初は剣技のみで鱗など2回攻撃で油断させ
敢えて防御無
【聖獣の呼応】使用
羽根攻撃はブラフ
本命は望の雷と玄夜叉の剣技の合成技
望の攻撃後に一気に懐に入り複数敵を一掃

土壇場でひっくり返してこそ浪漫だろ?
俺の顔を立ててくれるたァ気前がイイなァ、コンポタ野郎!
ハ、なら特等席でご覧あれ




 あっちでヒーローがザウルスマンを殴り、そっちでザウルスマンがヒーローに噛り付く。
 そこに魔法の爆発、炎上、氷結、破砕に落雷とその衝撃波が加わって大乱闘の様相を呈している戦場は、そもそもがどんくさいディアンナにしてみればはわわわあわ以外の語彙が吹っ飛んでもおかしくはない。
 素晴らしきスナークの面々のおかげでなんとかここまで力を揮い続けてきた身も、気を抜くと足元がお留守になり始めていた。
 岩を這い上がり、高台から、びたん!! と降るザウルスマンなんてものと数歩の距離で向き合えば。
「ぁ……」
 助けを呼ぶのも忘れて。
 後ずさり、躓く小岩に絶句して――、  だから。

「ハロー、ディアンナ様?」
 そんな自分の顔や肩の脇をぱっと通り抜け竜爪を絡め取る糸と。

「助けが必要みてェだな」
 転ばぬように背を支えてくれる手があること。
 どこかで信じながらも本当に本当にびっくりするのだった。

「あなたがたはっ……!」
 ディアンナの背後より現れた声の主は二人。巧みなフックワイヤー捌きによって敵の奇襲を防いでみせた氷月・望(Villain Carminus・f16824)。黒き外套を翼にも似て翻し、女神を片腕に抱き、逆の肩に大剣――玄夜叉・伍輝を担いだ杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)。
「フッ、女神サマは下がってな。そしてようトカゲ、テメェ如きじゃァ俺達は止められねェわ」
 ドヤアアァ……!
 とか鳴り響くそれが風の音でないのならなんかのSEかもしれない。
『Urrrooooo!!』
「すーぐ調子に乗りやがって。ま、ケドその通り、肉体労働は俺とそこのドヤ顔決めてるヤツにお任せあれってね」
 邪魔者の登場に憤る敵なんてのはクロウにとって格好の餌食。挑発を吐き"支度"を始める彼が後ろへと押し出してやったディアンナが「ですが」と口を開きかけたとき、遮るのは望だ。
「そういうことなんで。ちょーっとこのワイヤーにお力添えだけヨロシク?」
 これこれ、とくいくいしてみせる手のうちのフックワイヤーは、ハンサムなスマイルばりにきらりんと輝いた。

「正義の味方様と、」
 振り下ろされし大剣が、ざあと火の粉を巻き上げ大地を叩けば。
「ちょっとしたヴィラン様のお通りだっと!」
 氷魔法にキンキンに凍り付いたワイヤーはよろめくザウルスマンたちの足首を鋭利に撥ねる。
 ――さて。足引っ張るなよ、望。
 ――そっちこそ、お荷物になんじゃねぇよ?
 交わす眼差しはギラギラ、名乗る立場は光と影、しかし目的はぴたりとひとつ。ワイヤーに閉じ込められて氷結した一体をただの重量で叩き潰し、颯爽と攻め込むクロウは次の一体の爪と剣とで斬り結ぶ。
「おらおらァ!!」
 一合、二号、ギジィッと弾き合う黒と黒。
 魔法を纏わぬ斬撃は決定打になり得ない。当然知った上でのクロウの行動は、すべてユーベルコード、聖獣の呼応の発動に備えてのものだ。集める敵意を力と変えて――……昇華は、もう間もなく。
「スネークだかスナック菓子だか知らねぇケド。喧嘩売る相手を間違えたよな」
 ひゅひゅんと手繰るワイヤーで触れるマグマをも凍り付かせ、氷の張った足場をたったと駆ける望は派手に戦うクロウへと意識の向いている個体をちょちょいと削るが役割だ。ダーティー? なんでも結構、お綺麗な生き方はしてきてないし。
 間抜けな背を爪のように見立てた無数のワイヤーで縦に掻っ捌けば、さながらB級ホラー、ぬらぬらとした鮮血を飛沫かせ牙剥いて振り返るザウルスマンにも笑って言ってやるのだ。
「遊んでやるから来いよ、三下」
 ――なんて。
 バラバラと鱗が剥げ落ちて、散る。
 我武者羅に暴れ始める邪竜の攻撃は、同族をも巻き込みつつ、ときにクロウと望へも傷を刻む。
 特に敢えての防御無視で立ち回り敵を引き付けていたクロウの方は、ざっくりと腕に斜めに走った切り傷が痛ましいものだった。というか、受けた剣技を口から吐くとかいう謎い絵面が視覚的に気色悪いのが一番敵かもしれない。
「デカい口叩いといてソレってマジぃ?」
「……ほぉーう?」
 いくつかの高台の上も掃除して、そんな男の背後へとすたっと着地した望がここぞとばかりおちょくるならば、クロウとしてもお戯れはここまでということだ。
「浪漫が分かっちゃいねェガキはこれだから」
 土壇場でひっくり返してこそ、だろ?
 鍔迫り合いの状態にあった一体を蹴りで押しやって、玄夜叉を下段へ流したクロウの隙は大きく――と見せかけ、溜めた霊力をもとに朱の鳥を解き放つ。色濃く舞うは刃のように鋭い朱色の羽根。
 だが、これもブラフ。
 ゆえにその神々しい身が無残に裂かれたところで主は眉ひとつ動かさず、稼いだ一瞬全神経を手元へと傾けた。
 鳥を羽根を追い腕を尾を振った敵のなんと無防備なことか。
「俺の赤雷は高いぜ、ドヤ顔野郎」
 クロウの意を汲んだ望も次は茶化さずに、合わせる。ユーベルコード、紅雨。
 ぱちぱちと赤茶の毛先を躍らせ爆発的に増幅したサイキックエナジーが形作る、上空高くに姿を見せる雷の槍は真っ直ぐに、クロウを扇状に囲う敵群へと振り下ろされて――――。
「と っ と と 寄越せ」
 ――受け取る側は息吐くように笑った。
 打ち鍛え直されたばかりの大剣は以前のそれと違い完全なる制御下とは言い難いが、そもそもが数多の戦場をクロウとともに渡ってきた得物だ、燦めく伍色の輝きを漆黒のうち僅かに揺らがせて、
「出来ねェこたァねえよなァッ!」
 咆え、――牙を剥く。
 半ば強引に開かせた懐へ。更にと攻め、クロウは踏み込んだのだ。詰まった体勢から常人ならざる瞬発の斬り上げを可能とさせたのは、玄夜叉自体が帯び、放ち、押し上げる風の力もあったか。木々の葉を奪う突風めいた斬撃が、そこへ落とされた赤雷と合わさって紫電一閃、ザウルスマンを縦へ横へ薙ぎ断ってゆく。
『GyaaaAOoooorrrr!?』
 切り口より広がる電気ショックで碌に回避行動にも移れず。
『rrrrrrr……』
「おう、日和見してんじゃねぇぞ」
 前で群がっていた数体が両脚だけ残したちまちばたぱた倒れる中、背の翼を広げ、跳躍して一時離脱を図らんとする一体の首を背から巻き取るフックワイヤーは。
 勿論、望のものだ。三重ほどに絡んだ糸が彼の気分ひとつな指捌きでひゅんっと一息に巻き取られたとき、回転しながら飛び上がるのは、首より上部分のみとなる。
 ――その、生首をぱしっと掴み取った望はしげしげ間近に眺め遣った。
 ったく、ブサイクな面しやがって。
(「てめぇらごときに第二の棲家を荒らされてたまるかよ」)
 そうして振りかぶると憎たらしいほどのドヤ剣舞を続けるクロウへ投げつけるのだ。
 当のクロウはといえば敵と一緒くたすぱんっと贈り物を斬り捨て、バラつく塵を蹴り転がしながら、ヒマならとっとと雷の追加を寄越すかコンポタ探してこいよの意味込めた指クイッを返す。
 ぴきぴき。
「お前こそ豪快なお手本とやら、早く見せてみろっての!」
 口の端を引き攣らせた望は言われずともと招来した紅雨を、今まで以上のスピードで彼諸共でもと叩き込むのだった。
 ――おらよ!
 ――ハ、お利口さん。なら特等席でご覧あれ。
 ――――。――隙さえあらばザウルスマンそっちのけで挑発しあう二人の戦いは、進むにつれ減速どころか加速してゆく。
 宙に走った刃の道筋を稲妻が辿り、いいや稲妻の後を刃が辿りと譲りもしない大接戦。ちょっとした嵐の目よろしく接触する端から跳ね上げられる竜、竜、竜――……。
「……あの、あれ、大丈夫でしょうか」
「いいのいいの、強い戦士には好敵手がつきものって昔から決まってるんだから」
 もはや自分の援護も必要なくなったとみてぽやーと見守るディアンナへ、訳知り顔のライヴスはうんうんと頷いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

レイニィ・レッド
雨が降る
雨音と共に近づく一つ影

一等逃げ腰の神サマの前に鋏を差し込み
攻撃を防いでやりましょ

弱音吐きながら逃げねェ根性
嫌いじゃないですよ
ねェ 神サマ

見ての通り斬ることしか能がないモンでね
少しばかり力を借りても?
アンタの為に雨を降らせてやりますよ

神サマの助力を頂けたら
さァ『赤い雨の問答』といきましょ

問答を重ね
目立たない死角に幻覚を複数召喚
視界外から接敵させ
足の腱をブチ斬ってやりつつ
自分は正面から突っ込みズタズタにしてやりましょ
視界から外さなきゃ
テメェの動きくらい見切れる

未だ解答を貰ってねェな
人様の縄張りに入ったなら知ってるでしょ
この世界の雨のルールを

――アンタは、「正しい」か?

答えてみろよ
余所者ども


花剣・耀子
ヒーロー見参、……なんて柄ではないのだけれど。
義によって助太刀するわ。
肉体労働は適材適所よ。

……とはいっても、生憎魔術の心得なんてないのよ。
疲弊しているかみさまたちと敵の間に割って入って、
回復するまでの間を作るわ。
倒すことが出来ないまでも、防ぐことくらいはしてみせましょう。

そこの、ええと。
ライヴス……くん? ちゃん?
きみ、風をもってくることはできるの。
できるなら手を貸して頂戴。
出鱈目でもなんでもいいわ。敵の直中を風で乱して。
なるべく猟兵は巻き込まないようお願いね。

あたしはそれを追いかけていくわ。
風を吸い込む。雲を呼ぶ。
――おまえならいけるでしょう、クサナギ。
刃を風に乗せて、斬り果たしましょう。


ヴィクティム・ウィンターミュート
オーオー、中々の鉄火場っぷりじゃあねえか
そんじゃまぁちょっかいをかけさせてもらうが…
いやはや申し訳ないことに、"剣"を持ってねえんだこれが!
期待してるとこ悪いな…っと

どうやら向こうはせっかちらしい
真っ直ぐ来てるのは分ってるぜ
心を落ち着けて、目の前の死を抱きしめるように…受け入れろ
───プレゼントに感謝しよう
剣を持ってないなら、『奪えばいい』
簡単な話だろ?

そこの姉ちゃん!風を寄こしな!
この剣をより鋭く、より長くエンチャントしてくれ!
出来ねえとは言わせない!神なんだろう?

──グッド
さぁそれではお返しだ
アア?俺の名前かい?
かつてはそうだなぁ…『ネームレス』だったかな
名無しの剣、何人の首飛ばせるかな?


矢来・夕立
まさかまたこう名乗ることになるとは。お約束といえばそうですね。
――オリガミファイター。通りすがりの美少年にして忍びの者です。貴重なニンジャ枠はこのオレが頂きました。絶対に離さねえからな

あの三択なら風が一番忍者っぽいですね。すいませんこっちに風ください。マフラーがいい感じに靡くようにね、はいそれで結構。
電気も風も、そのまま全部ください。こちらで勝手に避けるんで。
嵐に合わせてあげましょう。
【紙技・冬幸守】。
なりは紙でも式“神”です。ひとたびで焼かれるほど軟ではありません。
雷を纏い、風に吹かれ、よくよく飛び、喰い荒らす。
これもまじないかもですが、魔法と剣なら剣カウントですよ。…多分。物理です。一応。




「油断も隙もねェことで」
 ジャキ、ン。
 ちょくちょく視野の狭まるディアンナを狙っていたザウルスマンを、その爪を、大鋏が弾いたのは直後のことであった。
 ぱたたっ。降り注ぐものは血ではない。魔力も感じさせない。ただの――雨? 誰かがその現象を知覚した途端にざわと強まる雨脚は、レインコートを打ち鳴らすことでひとりの赤頭巾男の存在を知らせた。
「ま、弱音吐きながら逃げねェ根性。嫌いじゃないですよ」
 ねェ 神サマ。
 そう口遊み振り返るのはレイニィ・レッド(Rainy red・f17810)、とある都市伝説に語られるダークヒーローのひとり。
 声を掛けられて初めて自身の窮地を知ったらしきディアンナは「!!」と口元に手を当て、それから褒められたことにすこしそわっとして、彼が遠ざけてくれた敵へとすかさず牽制の水を射かけつつ礼を口にした。なんとも忙しい女神である。
 近くで戦っていたライヴスは「ま!」と声を弾ませて、またもや駆け付けてくれたヒーローに喜色満面。神にとっては頭にダークがつこうと仮にヴィランであろうとも変わらない、この地に集ってくれた面々は、皆がヒーローズアースのため命を懸けてくれる素晴らしき戦士ばかりだ。
 時を同じくして降り立ったのは、レイニィだけではない。
「オーオー、中々の鉄火場っぷりじゃあねえか」
「――オリガミファイター、通りすがりの美少年にして忍びの者です」
 微かなノイズが耳を打ったのなら、カカカッ! と地に突き刺さるは紙手裏剣。
 ヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)、矢来・夕立(影・f14904)。
 それに。
「ヒーロー見参、……なんて柄ではないのだけれど。義によって助太刀するわ」
 出会い頭の鞘の一閃にてザウルスマンを弾き転がす、花剣・耀子(Tempest・f12822)。
 いずれも腕の確かな猟兵たち。偶々同時に声を上げるも中には顔見知りの者もいる、ハ?? オリガミなんて? という顔をしてくるヴィクティムを夕立は鋼の表情筋でスルーして、ザッと辺りを見渡した。
 来る前から瀕死とか抜かしてた炎使いはとりあえずは元気に走り回っているようだ。同じことを案じていた耀子も、我知らずちいさく息をつく。ならば、斬り果たすことに全力を注いでいられそう。
「奇遇ですね坊ちゃん」
「ええ。ニンジャ枠被りはないようでひとまず安心しました」
 ニヤつくレイニィへ返す夕立。ヒーローものにおいてのキャラ被り、それだけはぜっっっっったいに避けねばなるまい。絶対に離さねえがな。
 まあ、じゃあ、切り裂き魔と頭脳派ハッカーとニンジャと切り裂き……剣豪とかそういったアレでいこうか。目配せでなんとなく互いの立ち位置を割り振った面々は、一斉に行動を開始する。
 ――まずは魔力を。
 魔術の類はからきしだと自称する耀子へは、ライヴスが真っ先に手を挙げた。ちなみにちゃんにもくんにも反応した。
「そうね。きみの風を頂戴。それがあれば、出来ないことはないと思うの」
「頼もしい限りね。アナタのカタナに纏わせればいいかしら?」
「いいえ、もっと出鱈目でいい」
 敵の直中を、風で乱すの。 なにより奴らへこの刀を抜く気はなく。
 すうと視線を上げた先には、高台に寄り集まって中々に攻め込みがたいであろうザウルスマンの群れ。
 常ならば白刃のもとに吹き散らすも容易いが、此処では素直に神の力を借りることにする耀子だ。戦意高くも足並み乱さず、自らの得手不得手と置かれた状況とを見誤らない、どこぞの神に見習わせたい英断である。
「なるべく猟兵……スナークの皆は巻き込まないように、お願いね」
「おまかせあれ! 張り切っちゃうわ……!」
 ミーハーな気があるのか、やはり続々現れる守護者にうきうきして仕方なさそう。謎に張り切っているライヴスが特大風魔法を使うと耳にすれば、同じものが欲しかった夕立は地獄耳なすばやさでその射程内へと飛び出した。
 つまりは。
 敵の、ど真ん中だ。

『――Grroooooo!!』

 咆哮するザウルスマンらのうるっさい口を持ち前の身軽さで踏み、閉じさせる。そうこうしていると、何故だか手ぶらでふらりと佇むヴィクティムが視界に飛び込んできた。
 鋭い爪は棒立ちの男を狙い振り下ろされる。瞬時に夕立が投擲する苦無状の式がその狙いを逸らさせる、が。
「何してんですか」
「うん? ああ。戦うにもよ、いやはや申し訳ないことに、"剣"を持ってねえんだこれが!」
 当のヴィクティムは慌てるどころか両手ひらひら肩を竦める始末。
 ハ?? ――と、お次は夕立が神妙な面持ちを――する、ことはなかった。ヴィクティムという男のやり口を知らぬわけではない。「邪魔しましたね」素っ気なく落として、すれ違う。背には「助かったぜ」なんて思ってもいない笑いが届いて。
 Reuse Program<< Dainslaif >>。
 心を落ち着け、ただ、目の前の死を抱きしめるみたく手を広げる。発動済のコードが意味するところは、いわばザウルスマンがスナーク化でようやっと得た異能、無効化と、排出であり。
 直後。ついに苛烈な蹴撃がヴィクティムを捉える。それこそが発動のキーとも知らずに!
「ッ、 さぁて」
 がごぉっとくの字に折れ曲がったかに見えた彼は。
 しかし吹っ飛ぶこともなく、一拍前まで無傷であった筈の両腕に赤黒い血を、いや……血の刃を生やして口角を上げた。
「――――プレゼントに感謝しよう」
 剣を持っていない。ならば"奪えばいい"! 至極簡単な話だろう?
 と。
 貰いたての刃を振りかぶる、ヴィクティム。
 ギザ牙持ちて唸る抜き身をひっさげ走る、耀子。
 顔を隠すか隠さないかのウーン絶妙に気になるニクさな感じで赤マフラーが靡くポジションを取る、夕立。それぞれがひと所へと駆け付けた瞬間に、ふわり、  焼けた熱風が――嵐がいっとき緑の輝きを帯びたのち殴りつけるが如く巻き起こった。
『UrrRRrrooo!?』
 ザウルスマンは確かに神秘とも呼べそうな力を得たが、人間サイズを脱せていない身体は軽々と風に舞い上がる。傷つかずともその隙は大きい。こと、傷つけることの出来る者が間近へと迫っていれば!
「――おまえならいけるでしょう、クサナギ」
 回転刃が後を辿る。
 耀子の揮うチェーンソー剣の形状をしたクランケヴァッフェは薄紅色の花びらを散らしながら、風に乗って空を目指した。刃そのものが飛ぶわけではない。もっとずっと視認困難な――斬撃だ。ザザンッと打ち寄せる荒波めいた音、それは放出された白刃が正しく邪竜を断った音。
 両断された怪物は地で跳ねるまでもなく魔力に解け。
「グッド」
 ライヴスの齎した風を接ぎ合わせることで刃をより長く、より鋭くエンチャントさせたヴィクティムは、敵が退いた分も詰め追い立てるみたく狩りを始める。お返しだ。魔術じみた生成方法ではあったが元が血液という肉体の一部であるからなのか、竜の鱗を裂くに支障はないらしい。
 血が、血を飛沫かせる。
 空の耀子、地のヴィクティム。ふたつの狭間を担うは夕立。
「あれがいけるならこれもいけるな」
 いいやいけろ。とか、念じて。嵐に紛れ飛ぶ黒は竜の肉片のみではなく。
 負けじと羽ばたく、姿かたちは折紙製の蝙蝠であった。紙きれ? だがそこはまじないすれすれオリガミファイターのシノビ道具、ひとたび敵へと辿り着いたならば数の暴力で骨ごと喰い荒らしてしまう優れものときた。
 魔力に覆われた身で傷をつけ、牙を沈ませる。内へ風を送り込み、破裂させる。
「あ。雷ももらっていいですか? もう全部ください、端から端まで」
 その方が格好良いんで、と。――そんなショッピングみたいな。
「っもう、欲張りさんたちねッ!!」
 若干気持ち悪いが仮にも神だ、絶え間なく猟兵を支える魔法は望まれる限りを叶えてみせる。ともにと切り刻む蝙蝠と光る風雷の刃が肉塊を四散させ、ぱらぱらと緑だか赤だかの体液を振り撒かせて。
 ジュッ、ジュウ。風に流れ熱気に蒸発するそれらは、先ほどまで降り続いていた俄雨が色を変えたかのよう。彼らの戦いぶりにそっとフードの端を掴み目深にして笑うレイニィもまた、女神より授けられた氷の力をその鋏に纏わせていた。
 突き立てる。ただのそれだけでアイスピック対氷の再現か罅割れる邪竜たちは、術さえ持てば数の多さが厄介なくらい。
「スナーク……ご友人がたも凄い方ばかりですよね……」
「なぁに。こっちはこっちで、アンタの為に雨を降らせてやりますよ」
 やはり逃げ出すことのないディアンナと、二人。
 いいや? よぉく耳をそばだてるべきだ。そうしたって知れるかどうかも分からない、レイニィの一声に誘われ、しと、しとと再び降り始めた雨といっしょに、いくつもの足音が近付いていることは。
 彼、が敵を見据えた。血のような、真っ赤な瞳を眇めて。

「アンタは、"正しい"か?」
 始めよう。噂通り、赤い雨の問答を。

 高台。
 岩陰。
 死骸の下。あろうことか、およそ人間の潜めぬであろうマグマの中。
 あちこちからほぼ同時に姿を現す人影は、皆が皆赤頭巾を被って、凍てる大鋏を振り抜いた。ジョキリと断ち切らんとする部位は足の腱。意思がひとつに統一されている風に見えるのは、すべてが同じ雨男をもとにした幻覚であるからだ。
 正面の二人にばかり気を取られていたザウルスマンがそれを予測できる筈もなく。
『GRrrrroooo!!?』
 這い蹲る数体。
 不幸なことに、彼らはスナーク化した際に人語も捨て去っており。問答に応じるチャンスをそもそも持ちはしなかった。
 答えがいずれにせよ同じ結末を辿ろうことは、――振りかざされる"本物"の鋏が語っているけれど。
「血の雨……、なるほど、活用出来るかもしれません」
 一方のディアンナはそんなレイニィがざあざあ降らせる赤を、高く飛び散った時点で氷結させることで串刺しの役目をこなせないかと励んでいた。術士として擽られるものがあるのかもしれない。
 熱心ねぇと頬に手をあてるライヴスは大技以降なんだか暇してみえるが、事実、あちらの三人にはなんでもござれの電脳魔術士がいる。嵐と連撃とに散り散りにされたザウルスマンを、一匹たりとて逃がすものかと囲い掻き集めるは光の帯か。
 ホログラムのようで実体を持つちょっとした障壁だ。本来ならばこうした"仕込み"がお得意なヴィクティムが手を振れば、大きな風が止めど耀子と夕立とは自在に動き回りやすい足場を得る。
「あら」
「どうも」
 どこかですれ違ったことくらいあったろうか。
 同じ足場を踏むことでここに来て漸く言葉交わした二人は、互いの背越しに見えるザウルスマンを交錯する一手のうちに葬り去るのだ。
 まだまだ。自らもまた障壁に跳ね上げさせ跳躍、狙いを攪乱し空振り誘発、着地とともに敵へと斬り込むヴィクティムに並ぶは持ち場を片した赤頭巾。遠方より撃ち込まれる風と水との魔力が、二人の周辺を彩って。
「少し見ないうちに増えたな?」
「そうです? もともとこんなもんでしたよ」
 彼らと、彼。幾本もの刃が撫で切る有象無象を血祭りにあげるには、数秒と要しはしなかった。
 "雨男"と――ではヴィクティムは、尋ねられたのなら敢えてこう名乗ろう。"ネームレス"。 名無しの剣、何人の首飛ばせるかな?

 味方でなにより。
 一同の勇姿を素直にそう評したヨハンは、あのスーパー足場を使えば自分もとクロックアップ・スピードして寄ってきたところを夕立に蹴落とされるなどしていた。ザウルスマンは次々に湧く、保護対象がその調子では単純に危険だし。
「そのちょっとニンジャっぽい動きやめてくれませんか? キャラ被るんで」
「えっ……わ、わるい」
 被るかなぁ? 疑問に思いつつも、ココイチで殺気溢れる眼差しを注がれてしまえば何も言えなくなるヨハンであった。
 さて、さて。場も温まったところで?
 明らかに警戒する素振りを見せ始めた敵へと、歩み出るのは鋏に剣、濡れた二振りをそれぞれに携えた耀子にレイニィ。
 寄って、刺して、断って、斬る。存在をそうと定められたが如く、それしか出来ない。だがその力がその力を持てぬものと手を取り合うからこそ、この戦いはまた一歩勝利へと近付く。
「おまえたちには逃げ場も、行き場も何処にもないわ」
「未だ解答を貰ってねェな。人様の縄張りに入ったなら知ってるでしょ、この世界の雨のルールを」
 ――アンタは、"正しい"か? 答えてみろよ、余所者ども。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

穂結・神楽耶
【火種】

まだ終わりではありませんよ。
ええ──あなた達が諦めなかったから間に合いました。
もう少しだけ、力をお借りしてもよろしいですか?

ええ、喜んで手を貸しましょう、納様。
怪物を屠るのは常に知恵と力なれば。
知恵の弾丸に、焔を預けさせて頂きます。

ヨハン様。
ああいえ、起き上がる必要はありません。
あなたの炎を貸してください。
巨悪を穿つ銃弾には、正義に燃え盛る熱こそが相応しいですから。
咲き誇り──いえ。
閉じて、形を為せ。
竜をも殺す鏃はここに。

余剰の炎熱でザウルスマンを牽制・誘導。
射線が通った瞬間に焔の加護を重ねます。

見ていたいなら目を離さないでくださいね。
片が付くのは一瞬――ただ一発ですから。


納・正純
【火種】

そういうこった。この戦場は引き継ぐぜ、ヒーロー。
取引といこうか、穂結。
決して狙いを外さない銃手の力を貸してやるから、奴らを焼き尽くすための火種をくれ。
スナーク化ってのは初めて聞いた現象だが、既に対策って名を冠した知恵の刃は俺らの手にある。チームアップだ、燃えてきたな?

・作戦
俺が得意なことは一つだけ、役割もたった一つだけだ
『良く狙って撃つ』ことに専念しよう
後方に位置し、敵集団を最も効率よく排除できる弾道を見極め、そこを狙って一発の銃弾を撃ち込む
銀の弾丸は穂結に用意してもらおう、効き目の高い材料で頼むぜ?

穂結たちが時間を稼いでくれたお陰で、ようやく狙いも整った。
――――さあ、一発勝負だぜ




「まだ終わりではありませんよ」
「そういうこった。この戦場は引き継ぐぜ、ヒーロー」
 猟兵改め秘密結社スナークが訪れたことで一気に逆へと傾いた天秤。それを更に傾けるため、二人の猟兵が声を上げた。
 この状況はヨハン、ライヴス、ディアンナ、三人が諦めず守ることを選んだからこそ変わり始めた未来であると。
 ありがとうございます。そう続ける穂結・神楽耶(あやつなぎ・f15297)は、では作戦通りに、とばかり狙撃銃を担いだ方と逆の腕を上げ丁度良さげな岩場へ向かう納・正純(Insight・f01867)に手を翳し返した。
 二人は"取引"済である。決して狙い外さぬ銃手の力と、焼き尽くすための火種。
 まずは神楽耶が魔力を込めた弾丸を調達する。一発きりでいい、その先はスナイパー正純の仕事になる。そりゃもう燃えるチームアップだ。
「と、いうことで――……ヨハン様でしたか?」
「ああ、俺がヨハンだが。悪いが銃弾なんて作ったことないぞ……?」
「構いません。ただ、炎を貸してくだされば。巨悪を穿つ銃弾には、正義に燃え盛る熱こそが相応しいですから」
 困惑が思い切り顔に出るタイプなヨハンに対して、神楽耶は穏やかなものだ。
 余裕すら感じられる微笑は、灼熱の炎に囲われる戦場にあっても揺らがない。ただの人間の娘に見えるというのにタフなものだと、いいや、ここに集まってくれた面々はすごい奴尽くしだとひとまず彼女の望み通りにヨハンは剣を突き立てた。
 大地に刺さった剣が瞬く間に篝火へと解ける。暖を取るようにも、その熱に手を寄せた神楽耶の周囲に黒い灰が散って見えた――違う。羽ばたく、黒き蝶だ。それにしたって火に近すぎる! あろうことか女はその内へと手を突っ込んでみせて――?
「おいおい、」
「ありがとうございます。大切に、活用させていただきますね」
 何してるとヨハンが魔法を消さんとするも、驚くことに瞬きの後にはそこにもう炎は無いのだ。代わりに、火傷ひとつせず開いてみせた神楽耶のてのひらに一発分、コロンと銀の弾丸が転がっていた。
 咲いた神の業火を閉じ、竜をも殺す鏃へと形為す。
 深緋華裂。それはあらゆる焔を従える、無名の刀神が起こした奇跡。
 ――……なんて見ていた側にはまるで見当がつかぬらしく、同時に消え去っていた黒焔蝶も相まって無心に己の眉間を揉むヨハンへ神楽耶は「あら、お客様のようですよ」とザウルスマンの訪れを告げるのであった。

 ひら、ひらりと幽世の蝶が舞う。
 ちょっとした突き出た高台、それでいて欠けた岩の陰。"運ばれた"弾丸をつまみ片目の前に近付けて、正純は内に微かに揺らめく炎の赤に満足げに口角を上げた。
「器用な神様だ」
 口径もぴったりときた。ひとつ手の上跳ねさせれば一発分しかスペースのない排莢口に押し込んでやって、L.E.A.K.、長距離用狙撃銃のスコープを覗く。
「さて」
 ここからは此方の仕事。戦場のあちこちで爆炎、落雷、竜巻に地割れとまあなんとも賑やかしい風景ではあるが、派手に戦ってくれているおかげで安全圏も生まれるというものだ。正純自身も吹き付ける熱風や吹雪に髪やコートを煽られながら、しかし銃口はぶれず一点に合わせられている。
 黒焔蝶が溶け込むように、そこに立つ神楽耶の背へと消えた。
「――あんた何かしら殴ったり出来るのか!?」
「そうですねぇ、刀が少し」
 鮫か何かみたく鋭く迫るザウルスマンのスライディング。反応こそ素早くヨハンが次々に魔法を振り撒いてゆく傍ら、問われた神楽耶の答えがそれだ。実態を知っているものなら笑ってしまいそうな、しかし知らぬヨハンにしてみれば俺が守らねば!! と覚悟を決めさせる台詞が炎の勢いを強めさせる。
 まさに正義、誰かの為、守る為。
(「挫けてほしくはないですね」)
 彼には――、なんて。 まず目障りな術士を排除すべく群がり始めたザウルスマンの数体を、無から瞬時に爆ぜた神楽耶のやや黒に寄った炎塊が弾き転がし"ポイント"へ寄せた。
 ? となったヨハン、ここで漸くこの女がやたら火焔に親しいタネに気付いたようで。
「! あんたの炎も神性の……」
「ふふ。いまはただの一振りですよ」
 しーっと唇に指をあてた刀はそれよりもと前に出過ぎているヨハンの腕を引いて、戻して。
「見ていたいなら目を離さないでくださいね。片が付くのは一瞬――ただ一発ですから」

「ふぅん、外せって方が難しいな」
 集められた敵。フィールド作り、立ち入り禁止の扱いまで丁寧、と。
 神楽耶はああだが、正純は剣も魔法も知りやしない。良く、狙って、撃つ。得意なことはただのひとつきり。
 だが、だからこそ。
「――――さあ、一発勝負だぜ」
 可能なのだ。 魔弾論理で立てられた式の終わりに引き金が鳴る。
 導き出した道筋へ。銃弾、いいや魔弾は飛び立った。
 銀の器に収められた炎は唸り、空を翔けながら次第にその囲いを溶かしゆく。長く尾を引く、火球だ。火球のようではあるが道の途中で炸裂する他の魔法に流されることのない、勢いを落とすことも消え失せることも、たったひとつの解へ向かい猛進する様はそれだけでひとつの魔法とも呼べたろう。
 来た。 示し合わせたわけでもなく神楽耶が刀を薙げば、軌道に沿って地表にいくつもの炎の柱が打ち立てられる。
 ほぼ、同時であった。炎の柱全てを順に貫き、取り込み、一層に火勢の増した状態で魔弾が着弾するのは。
 ごおっ、おお、
 轟音は獣の遠吠えめいて。
 そこにあった全てが衝撃で飛び散り、猛火に焦がされる。物理を伴わぬ、ただの魔法に過ぎぬ筈と見誤っていた者も多かった。二重の痛撃を一度に喰らわされたザウルスマンは身を起こすどころではなく、どろどろと溶けて形をなくす鱗が溶け合った絨毯を踏みしめながら神楽耶はあたりを見渡した。
「……すごいな」
「でしょう? あ、また少しお借りしておきましたので」
 自分とはジャンルの違う神技に語彙の死んでいるヨハンへは己のことのように微笑んで、先に立てた炎の柱もヨハンが無駄撃ちしたものの再活用だと告げれば俄かに嬉し気にする様に笑みを深めて。
 そうして歩み出す神楽耶の足元には、罅走る大地の下から滲み出したが如くにマグマが湧き始めていた。
 焦って飛び退くでもなく、むしろ"呼んだ"張本人である戦守神はそれへ告げるのみだ。ではお片付けをお願いしますね、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

才堂・紅葉
●プレイング
高所より蒸気ギターをかき鳴らす

「そこまでよパチ物共! 秘密結社『スナーク』見参!!」

今回は宣伝が大事。エリア全体に声を響かせます【楽器演奏、存在感、パフォーマンス】

「ライヴス様! 支援をお願いします!!」
壁や路面の属性変化で、投げ技に魔法付与を依頼
【早着替え】で身軽な格好になり、飛び降りる

・方針
格闘戦ならお手の物だ
スライディングや打撃が威力を発揮しない、組技に持ち込んで勝負したい
プロレス由来のロープへの振り、地面へのボディスラムや居反り投げ等の多彩な投げで、ライヴス様の電とのツープラトンです
今回は『スナーク』の印象の上書きが目的なので魅せ技重点
頃合を見て、黒虎で仕留めにいきますね


ユーフィ・バウム
さぁ、『秘密結社スナーク』の1人、
ユーフィがお相手しますよ!

相手のスナーク化にも対応するため、
拳や武器に神々の支援をお願いします!
あなた方の魔力があれば、きっと負けない――
魔法を纏った強力な【鎧砕き】の一撃を入れていきます

相手は大勢なので1体1体確実に倒しますね
囲まれそうなら
【なぎ払い】【衝撃波】で間合いを離します

仲間と連携できるなら、積極的に。
協力してダメージを蓄積させましょう

ちょっとくらい避けられずとも
【オーラ防御】【激痛耐性】でしのいで見せます
野生の培ったこの体、砕けませんよっ!

敵がユーベルコードを打ち込む際は、
回避と共に
《トランスバスター》の一撃を【カウンター】で見舞います

アドリブ歓迎




 戦場へ、また一人の猟兵が駆け付ける。
 跳ねるような足取りで長く伸ばした二つ結びの長髪を靡かせる、少女の名はユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)。赤々と広がるマグマの火が、引き締まった褐色の身をより一層に血色良く照らし出していた。
 先に戦う者たちの、神々の背が見える。
 彼らと睨み合う敵はおぞましく凶悪な姿かたちをして――。
「さぁ、秘密結社スナークの一人、ユーフィがお相手しますよ!」
 ――戦う相手に不足なし、だ。
 跳び、駆け付けたユーフィの蹴りがそれと同時に一体の背を蹴り飛ばす。
 ごろろろと転がるザウルスマンと入れ替わりに着地した戦士へ一瞬びくうっとしたディアンナも、直後には表情を綻ばせて小さな身体が齎してくれる大きな助力に頭を下げた。
「ユーフィですね。あなたに私の魔法を使っていただいても良いでしょうか……?」
「ええ、ぜひお願いします! あなた方の魔力があれば、きっと負けない――この拳が、証明してみせます」
 ぎゅむっと握り翳してみせるユーフィの手をではとディアンナの両手が包めば、結晶煌めかせる白き粒子が覆う。
 氷魔法ということだろう。ひんやりしながらも熱いものを感じる、それに感謝しますと破顔したユーフィは憤り飛び出してくる先のザウルスマンへと半身を正面にし構えを取った。
 尾。いいや、爪! 振り抜かれる腕に対してリーチに劣る少女はしかし、付け焼刃の強さではない、積み重ねてきた戦闘経験と鍛錬とで大いに勝っている。
『UrrrrRooAaaa!!』
「……ふっ!」
 左の拳を浅く放つ。これは当てることが目的ではない、役割は大気を揺らして放つ衝撃波。
 物理と、魔法。氷の気を帯びる風はぴききと足を取り踏み込みを鈍らせて。目で見て躱せる速度に落ちた腕をオーラが撥ねれば、あとは右、本命の拳を叩き込むだけ。
「これ、っで!」
 めぎゃあっと破砕音が鳴った。
 砕けるはザウルスマンのみ。脆く崩れ落ちる肉体を高台から見下ろしていた別の一体は、では意識外からの奇襲をお見舞いしてやろうと膝を曲げ――――。

「しゃらくさい!!」
『Grrooooo!?』
 た、ところで突如として現れた女の拳に叩き落とされる。
 誰だと問われれば、彼女こそが才堂・紅葉(お嬢・f08859)。邪魔者を殴ったその手は担いだ蒸気ギターへと触れ、じゃんじゃかと音色を響かせて。
 そうして大きく息を吸って――。
「――そこまでよパチ物共! 秘密結社スナーク見参!!」
 力強い名乗りをもまた、轟かせた。
 バッと振り仰ぐ神々はもうその名を知っている。スナーク化現象だとかいう悪い意味ではない、真逆の意味として!
 彼らの瞳に宿る希望を見て取った紅葉は頷いて。地を蹴って跳躍する。
「ライヴス様! リングをお願いします!!」
「リング!? こ、こうかしらっ」
 なんか……たしか……TVで見たことがあったぞ! 三柱の中でも一等俗な神は、突然のオーダーにも速やかに魔法を行使してみせる。大地へと叩きつける岩斧で雷気を拡散、凝縮、固定……コーナーポストはそのへんをうろついていたヨハンに岩を生やさせ、電流ロープを張り巡らせれば完成だ。
 それを、紅葉が再び地を踏むまでの数秒のうちにやってのける。
「完璧です」
 リングの上へとっと降り立った紅葉。脱ぎ捨てるコートがばさぁっと熱風に吹き飛べば、試合向きのコスチュームに早着替えだ。突如として囲われたことに困惑するザウルスマンは二体、うち一体がひとまず眼前の敵を屠るべく紅葉へと躍りかかる!
 だがしかし、身を捻って足を掴んだ紅葉はその身をぶん投げて電流ロープへ放ってしまう。ジジジッと焦げ付く音は激しくも、スナーク化した身にダメージは――……無いまま、といかせぬのは跳ねた振り返しを待ち構えていた紅葉の技だ。
「はあぁっ!」
 瞬く間に腕を通され天地逆さにされたザウルスマンは、何が起きたかも分からぬうちに空を見上げることとなったろう。
 投げ落とす、パワフルなボディスラム。大地に触れた身はその途端に満ち満ちた魔力を取り込み爆裂し、深手を負う、これぞ即席の電流爆破マッチ、――だ。

「さてライヴス様、敵は二、こちらも二。このままタッグでいきましょう」
「タッグ……、チームね……!?」
 等とリング上が騒がしくなっている一方で。
「はっ! これは……プロレスリング!?」
 偶然といえようか、時と場を同じくして戦うユーフィのもうひとつの顔は蒼き鷹、レスラーである。こんなものを見せられたのでは血潮が騒ぐというもの。
 しかし今はマスクを外したリングの下。ならばすべきことはひとつ。
「このユーフィの目の黒いうちは……! 場外からのカットなどさせません!」
 ――試合権を持たぬくせ戦士の後背へ襲い掛からんとする不届き者を、しばきあげる!!
 リング下より紅葉へとジャンプしていたザウルスマンは、そうして横合いから飛び出してきたユーフィのタックルを宙で受け、崩れたバランスで地面へと叩きつけられる。
「せぇい!」
 いち早く上を取ったユーフィがバウンドし浮き上がった頭へと叩き込む、息継ぎも許さぬ殴打!
 ゴッ、と焼ける地面ごと凍り付き割れる頭蓋は巻き起こされる衝撃の波にバラバラとその中身をぶちまけて、周囲で同じくリング上へ雪崩れ込むチャンスを虎視眈々と狙っていた諸々を、包む吹雪が薙ぎ払った。
『GrrooooooAa!?』
「フッ……、気持ちの良いファイトね!」
 その場外乱闘は勿論、リング上の紅葉からも見えている。
 ならばとより一層集中出来る。眼前の敵が勢いよく突き出す爪を見切り、寸前で膝を曲げて頭を下げ、腕の下へともぐり込むことで回避する。繋げるはがっちりと胴体をホールド、ブリッジして――頭から叩き落とすフロント・スープレックスだ。
 ごぎゃっとへし折れる音が首の骨の立てたものだとは、視界の両脇にだらんと力無く垂れる竜の両腕が知らせてくれる。なにより何人もそうやってあの世送りにしてきた紅葉にとって、もはや技の決まった際の手応えだけで知れるものでもあった。
『Urrrrr……』
「甘いのよ」
 反った状態から即座に転がり避ける紅葉。その元いた場所をざくりと抉った別個体のザウルスキックは先に弱らせたこともあり空振りで、放置された仲間の死骸へ深々と突き立ってしまう。抜けない! それがたとえ一秒の隙だとて、リングの上では致命的だ。なにせ此度はタッグ戦――、迸る雷光がぴしゃあんと竜の身に直撃した。
 高濃度の魔力を帯びた状態となるザウルスマン。そして、光が鳴り止まぬうちに。
「今よ!」
「おおおおお!!!!」
 熱の入ったライヴスの呼び掛けに応え電光石火で駆け込む紅葉はザウルスマンの背を一瞬にして取り、腕をも極めたフィニッシュホールド、才堂式柔術居反り投げ・黒虎を炸裂させてみせるのだ。
 ツープラトンの成功。
 後頭部、背から大地へと叩き落とされた邪竜はガハッと喀血して――いいや口からだけではない、背を起点としてめきめきと全身をひび割れさせまずは内包した雷光を、次に景気よく血肉を飛沫かせた。
「っやりました!」
 決着に、リング下で見守るユーフィが喜びの声を上げる。
 汗に張り付く髪をかき上げた紅葉はそんな少女へ微笑み返して、あまりの負荷にもげてしまったザウルスマンの片腕を眼下で立ち往生するお仲間へ招待状めいて投げ遣った。
「上がってきなさい。順番に片付けてあげる」
「では、あなたたちの相手は私ということですね」
 残る群れの前へ立ち拳を打ち合わせれば、構えを取るユーフィ。その身にも決して小さくはない傷が目立つが、野生の培った肉体はまだまだこれからだと溌剌と血を巡らせている。
 秘密結社スナークの一員として、最高の戦いを!
 そうした二人の闘志と覚悟こそが、観客無き試合をもどこまでも華々しく彩るのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神樹・鐵火
魔法(物理)か
ははは!私の為にある様なものではないか

貴公らは魔法は上等だがその...肉体面はダメなのか
全く、情けないものだ
その魔力を私に分けてくれないか?
手に纏う魔法の威力を底上げする為にな

戦女神の籠手を装着
打撃全てに魔法を纏わせる
魔拳と聖拳を合わせたものと、破壊力を増す轟拳だ
攻撃を見切って避け、カウンターを食らわせる
避け切れないものは攻撃を受け(武器受け・激痛耐性)
受け流して轟拳を纏った打撃を無防備な場所に食らわせる
一体一体も面倒だ
そこのお前、我が武器となれ!
掴んだ敵に魔拳と聖拳を纏わせ、
暴走魔法を纏った鈍器として振り回し蹴散らす


イコル・アダマンティウム
格闘超特化の愛機:TALONE
クロムキャバリアに乗る
現場には走ってエントリー
<ダッシュ>

まずは安全確保
走ってきた勢いそのままで殴って敵を吹き飛ばす
「虐め、カッコ悪い」
<吹き飛ばし>

ザウルスには勿論、格闘戦で挑む
前衛担当

でも物理だけじゃ倒せない
斧の人、神様にキャバリアのスピーカーで声をかける
「ん。力を貸して、くれる?」

クライシスゾーンで
キャバリアの拳の一部を竜巻に変えてほしい、な
「おー、カッコいい……」

「砕く。」
使用UCは【一撃必殺】
竜巻を纏ったキャバリアの拳でがんがん殴る
相手の尻尾の攻撃にはカウンターでアッパー
拳なら拳同士で克ち合わせる
<暴力><限界突破><見切り><カウンター>

「次は、誰?」




 ゴオッッッッッ!!
 ――……と、なんの魔法でもない、ただの質量と超硬度と超加速とを以て吹き飛ばされたザウルスマンたちが、こうしてまた空を舞った。
 脚部の推進装置から轟と噴き上げていた光がちらちら収まりゆく。蹴り足は青く、いいや頭のてっぺんから爪先までが鮮やかな青に彩られたクロムキャバリア・T.A.:L.ONE。
「虐め、カッコ悪い」
 搭乗者はイコル・アダマンティウム(ノーバレッツ・f30109)。スピーカーから漏れる呟きは淡々とした響きながらも、がしょんと下ろした足が揺らす大地で驚愕に目が点になっている現地の神々へのオブリビオンの行いを、少女もまた見過ごせなかった一人だ。
 前へと歩み出る。
「聞いたことがあるぜ……巨人すなわち世界の終わりと始まりの象徴と」
「守り神とも言うわよ。少なくとも、」
「ああ」
「敵じゃない……ですね……!」
 歩むキャバリアの足元へ駆け寄る三柱。装甲にぺた、と触れられたイコルはまるで神経を共有しているかのように――事実、しているのだが――足を止めてスピーカーのボリュームをいじくった。
 あー、あー。
 聞こえてるよ! とでも言いたげにばたばた手を振る彼らへコックピットの中ひとつ、頷いて。
「ん。力を貸して、くれる? そこの……斧の人」
 頼み込めば、誇らしげに掲げられる武器は勿論YESという意味だろう。オーダーはクライシスゾーン、超次元の竜巻へ変換する対象はキャバリアの拳そのもの。拳頭の装甲が赤熱し解けギュルルルルと渦巻く光景はちょっとしたドリルで魔改造したかのようで、ひと知れず心躍るイコルのぼそりとした「かっこいい……」は、声を拾えたライヴスをとてもにこにこさせた。
 ヒーローの変身シーンを邪魔する行いは邪道とはいうが、この段になって漸く這い戻ってきたザウルスマンたちについては単純に先ほどめちゃくちゃに吹き飛んでしまったせいだ。
『GrrrrOooooo!!』
 とても怒っている!
「――、」
 だが。それはイコルだって同じ。
「砕く」
 短く落とした吐息がそのまま拳の打ち下ろしと重なった。パンチかキックでも敢行する気だったのか、伸び上がったザウルスマンの体長が途端に逆へ――数体一気にめごっと凹む。押し当てられた竜巻は、いうなれば回転する刃だ。拳のかける圧、引き込む風の力……となれば拳が地面に触れたとき、合間に挟まれていたものは散り散りに失せている。
 デカいは強いであるので本能的にキャバリアを遠回りし、神々を狙う集団もいた。
「! こちらにも!」
 いくらも冷静に矢を撃ち込むディアンナ。
 広範囲への水から凍結へのコンビネーション。此処に駆け付けたばかりのときは意味のなかった行いも、今なら!

 そう。頼もしきスナークが味方してくれる今なら、必ず誰かが活かしてくれる。
 T.A.:L.ONEの肩をたっと蹴り跳んで襲来した人影が、着地ついでの殴打で凍れる地面を砕いたのはそのときだ。剥がれ、鋭利な硝子よろしく乱舞する氷の破片がザウルスマンたちへ突き刺さり後退させる。
「ふん」
 そうして身を起こしながら、ひひゅんっ! 右手より爪を振り上げ駆け来ていた一体へ神速の拳もが突き入れられる。
「昔話は真実のようだな」
 影の正体は猟兵にして神にしてゴッドハンド、神樹・鐵火(脳筋駄女神・f29049)。魔法(物理)とな? ははは! 私の為にある様なものではないか、と、深刻な条件を一笑に付した破天荒な戦神であった。
 拳には聖や魔、ある種の魔力を宿す。もしも物理と魔法をひとりの力で完結しても良かったのならば、殴り転がされたザウルスマンは今頃爆発四散していた頃であろう。――……もっとも、数秒の後にはイコルの竜巻ミキサーにかけられるので同じことなのだが。
 力強く敵を屠ってみせた青の巨人をふうむと眺め遣り、鐵火は「貴公ら」と神々へと呼び掛けた。
「私にも同じものをくれ。宝の持ち腐れとならんよう、その上等な魔法を此方でも役立ててやる」
「え、と……と、得意な属性とかってありますか……?」
「見たところ炎なんかが」
「んもうお見合いじゃないんだから! アタシの力を貸すわ、ヒーロー! 存分に活用してやってっ」
 恐る恐るといった様子のディアンナや割り込むヨハンを押しのけライヴスが魔力を放出する。雷に、風。吹き荒れる力は翳す鐵火の拳と、それからイコルの繰るキャバリアにも作用してそのキレ味をますますに高めることとなる。
 ぐおぉんっ。
「おお」
 イコルは振った拳の生身以上の軽さにぱちくりして。
 モニター越しに見る、尾を鎌のように振るい飛び掛かってくるザウルスマンズへジャストミートでアッパーを合わせれば、三が数十にまでバラける剛速球へ変えて空高くへと打ち返した。
「なんか。もっとすごくなった、かも」
「どれ、試すとするか」
 ばたたたたっと降る血の雨を軽やかな踏み込みでくぐり、飛び出す鐵火は嵐を泳ぐようにするりするりと出迎えを躱す。とんっとザウルスの鱗に覆われた背に手をついて、片手馬跳びの要領だ、跳ね上げる我が身と入れ替えに土台を爆裂させる。弾ける光は、白。
 次に黒。高き空で回転した女の身は頭から地面を目指す。
 もはやミサイルか何かだ! キイィィ、と、構えも取れていない一塊へそのままの勢いでブチ込まれた拳はどおっと大地まで捲り上げるほどの暴風を起こした。
 ――――、――。
 土煙が薄れれば、そこに立つは戦神と、その戦神の片腕に胸を貫かれ立たされている竜一体のみ。
『Uroo……oOOoo……』
「次は鋼鉄でも着込んでくるか? 私の前には総て柔肌と変わらんがな」
 そして、次などと与える慈悲はそもそもくれてやらぬのだ。痛打に仰け反って背から落ちんとするザウルスマンの首を開かれた鐵火の手はむんずと鷲掴みに持ち上げ、かと思えば直後には振り回し始めた。
 ぐおん、
「最期だ、我が武器として活躍の場をやろう」
 ぐおんと一周ごとに風哭かせ、その風に青白い光と赤黒い光が溶け出しつつあると気付いたときにはもう遅い。
 プラス、暴走魔法。イコール聖魔轟混合の大嵐起こす鈍器の誕生だ! やや離れ間合いをはかっていたザウルスマンが急激に膨れ上がった質量持つ光に殴られ、そこからは吹っ飛んだ個体が更に別の個体も巻き込んで吹っ飛ばすというハチャメチャ撲殺劇場の始まりである。
「もっちろんノらなきゃよねぇ!?」
 ときに火の粉散らす力強い竜巻を拝めて大興奮なライヴスが風魔法をどしどし重ねることで、周囲のザウルスマンたちは逃げ出すどころか嵐の目たる鐵火の元へ吸い寄せられるが一方ときた。なお、
「ん。楽しそう……」
 イコルも抱え上げた奴らをちゃっかり投げ込んでいる。もはやゴミ箱の中身をひっくり返すみたいな扱いだ。
 その調子でガンガンに減らされてゆく二人の前の敵群は、鐵火という嵐の止む後には残すところ地面にしがみつく者くらいになっていた。頭を低くすることでぶん回しへの巻き込みを避けた、といったところか。だがすべては避けきれなかったようで、傷だらけな背中を青き巨人の掌がばちぃっと叩き潰した。
 ゴミか、ムシか。優秀なキャバリア乗りと神々との協調の前には、半端な竜モドキなどこの程度。
 同様に、鐵火もまた使い潰して赤い霧になってしまった鈍器を手放したところ。

「――さて」
「次は、誰?」

 ゆっくりと顔を上げれば視線を巡らせる二者。
 その手がすうっと前へと伸ばされる。たったのその一挙だけで、死を予感して絶叫を上げるザウルスマンにとっての地獄が其処に出来上がっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ハイドラ・モリアーティ
【CHAOS】
おーおー。大変そうだなァ神々
あっちに逃げといて、ここは危ないぜ
今から俺たちの戦場になんだからな

――ヒーローってのも大変だよ
いや、チームとかさ。そういうの
愚痴りたいわけじゃないが、俺もまあそれなりに苦労してる

さて、【EBE】をエコーの剣に塗ってやった
シンプルに俺の血ね。コンボ技ってやつ
今頃つよーいザウルス君たちは脳みそすっからかんじゃないかね
匡には兄貴がいるし、問題な――オイ!そこの二人!!
やめろ!!俺をめぐって争うな!!!エコー!優先順位!間違えんなってば!!
よーしよし、いいぞ、えらい。我慢できてえらい!!
でもヒーローが仲間割れすんじゃねー!
はい撤収!撤収ー!お疲れさんしたーッ!


エコー・クラストフ
【CHAOS】
……神だかなんだか知らないが。そいつらはボクの獲物だ
雁首並べたオブリビオン共。首魁諸共殺す

……ていうかハイドラ、こいつら(ニヴルヘイム、匡)誰?
匡が傭兵で……こっちはハイドラの……兄?
兄……家族……ハイドラの家族って確か、ハイドラを実験体にしてた屑ども……
まずはお前からだ!!!

止めるなハイドラ! そいつ殺せない……あ? オブリビオン優先? ……それもそうか
ハイドラの血を刀身に塗り付けて、呪剣を振るう
クソ、何であんなのと共闘することになるんだ
……わかってるよ、ボクが一番憎いのはオブリビオンだ。そこは揺らがない
だからあいつらがいる限りはあっちを殺すよ
……あいつらが……いる限りはな……


鳴宮・匡
【CHAOS】


よ、神様方
手を貸すよ、疲れてんだろ
あいつらの相手は厳しいだろうし
熱や溶岩から守ってくれると助かる
敵は任せてもらっていいからさ

ああ、例の恋人か
どうも、鳴宮匡だ――って悠長に挨拶してる暇ないな
で、ハイドラ
なんでニルに斬りかかってんだあいつ?
やれやれ、早く前線に連れてってくれよ
俺はニルと後ろから援護するからさ

ま、何にせよいつも通りやろう
“影”は魔法や呪いを殺しちまうから今回は控える
――とすればやることはひとつ
よく狙って、一撃で殺せる頭部を貫く
術式の付与は任せるよ
いつどれを狙って撃つ――なんて合図、今更いらないだろ?

……なんかまだ睨まれてんぞニル
こりゃ帰り道は背後に気を付けたほうがいいな


ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
【CHAOS】
普段なら竜の姿にでもなって踏み潰すんだけど

神々はちと下がっていてくれよ
私の力に巻き込まれると、それで死人が出かねんのでな
やァ……ええと。妹が世話になっているな
正式な挨拶はまた後で――えっ、ちょ、なん 何で武器 味方!!
わー!助けてくれ匡ー!!

うええ、えーと?あいつ倒せば良いんだっけ?
なら最前線に展開する氷の呪詛幕で味方を守り
致命傷は避けるように
匡はいつも通りに射撃してくれ
仕込みは指一本で済むからさ
【灰燼色の呪い】――私の中で最強の術式を銃弾に
匡の狙う先はすぐ分かる
脳と一緒に心もぶっ壊れちまえば良いさ

抉るみたいな視線を感じる
私悪いこと何もしてねえよお……
もうあいつのとこ帰りたい……




 大変だったなァ。手を貸すよ。あいつらはボクの獲物だ。ちと下がっていてくれ。
 口々に神々へと挨拶をして、彼らとともに戦うではなく激戦区は任せておけとも伝える。四人一組でチームを組んだハイドラ・モリアーティ(Hydra・f19307)たちは、魔法も物理も実にバランスの取れた編成であった。
 ――ある、一点を除けば。

(「ふうむ。やはりただの踏み潰しは効かんのだな」)
 一機の巨人が暴れまわる様を横目に、ニルズヘッグ・ニヴルヘイム(竜吼・f01811)はザウルスマンのスナーク化という現象を分析する。常ならば竜の姿をとりひと踏みにしてやるところだが、まったく面倒なことだ。
 とはいえ手間取るとも思っていない。
 自分。妹のハイドラ。そしてすこし後ろを歩き銃のセイフティを外す鳴宮・匡(凪の海・f01612)の腕もよく知ったところであるし、此度は加えてもう一人。ハイドラが紹介してくれた、その恋人が共に訪れている。
 それにしても名乗ったきり目も合わせてくれない少女、エコー・クラストフ(死海より・f27542)はどうしたことだろう?
「しかし、会えて早々共闘だなんて嬉しいな。正式な挨拶はまた後で――……」
「…………」
 疑問に思いながらも友好的に語り掛けるニルズヘッグに対して、依然だんまりなエコー。っていうかそれぞれの方角を警戒していた筈がじわじわ寄ってってない? 近くね? エコーとニルズヘッグ。
 ――――じゃないと"ハイドラを実験体にしてた屑(家族)"を殺せないからな。
 ぶおんっ! 突如! 斬り払われたエコーの黒き刀剣がニルズヘッグの後ろにょろ毛を掠め「わー!?」「わーーーーッ」被害者当人以上に声を上げたハイドラはすかさずその合間に飛び込んだ。ニルズヘッグの背にひたりと背を合わせる形だ。"偶然"そこに踏み込んできたエコーを抱き留める形ともいえる。
「えっ、ちょ、なん 何で武器 味方!!」
「ノー! やめろ!! 俺をめぐって争うな!!!」
「止めるなハイドラ! そいつ殺せない……ッ」
 実際のところハイドラは複雑な家族関係を有しているが、諸問題にニルズヘッグは無関係だ。これは恋人を守りたい、恋人を害した存在を許してなるものかという美しい感情の暴走(行き違い)であって。
「兄貴は違うんだよ……!」
 ガッとエコーの細い両肩を掴みつつ、ついでに無理くり押してくるりんとターンすることで二人してザウルスマンのスライディングキックも避けつつ、まあ一番の目的はチームメンツ同士を遠ざけることなんですがともかくハイドラは頑張った。
 一方の男連中は、
(「助けてくれ匡」)
(「こっち見るな」)
 こんなやり取りをしていた。二人は目で会話出来るけれど無理なもんは無理だ。
 ハイドラとしては空気の読める雑魚竜が湧いてくれたことで助かったまである、そいつを指させば「ほらエコー! 優先順位! 間違えんなってば!!」だとか一等効果抜群な台詞が吐けるから。
 ――、ハイドラをぐぐぐと押し返さんとしていたエコーの手が、そのときぴたりと抵抗を弱めた。何より殺すべきは。死して尚燃え立つ衝動の源、オブリビオン。
「……それも、そうか。まずはあいつらだ」
「よーしよし、いいぞ、えらい。我慢できてえらい!!」
 わっしゃわしゃと犬のような髪の撫で回され方を甘んじて受け入れるエコーは、そもそもハイドラを狙いやがって気に入らぬ敵へと躍りかかってゆく。誰かしらが弱らせて逃走してきたと思しきはぐれだ、秒で片は付くだろう。
「まず……?」
「なんでもいいけど早く前線に連れてってくれよ、その目的ももっと達成しやすくなる。俺達で援護するからさ」
 エコーの言葉の指すところを神妙な面持ちで考えるニルズヘッグ(ちなみに匡の後ろに回った)と、なんかもうこれしきのことでは微塵も動じぬ匡と。
 一行は到着早々ハプニングにぶち当たりながらも、ぱらぱらとした散発的な襲撃をそんな調子で余裕持って制しながら進んでいった。

「いよぉーしエコーみえるか? あそこ! いっぱいいるな?」
「うん」
 ハイドラとエコー、敵群に備える後ろ姿はドッグにコースを教え込むトレーナーの如し。
 しかしお前何したんだ? という無言の問いを醸し出してくる匡に対し、結局、ニルズヘッグはそれらしき答えを思いつけぬままであった。一部に謎の軋轢が生じつつも、いざ標的を前にしたときの四人の連携はスムーズだ。
 何にせよ、いつも通り。
「さ、好きに駆け回ってきな」
 銃を構える音、匡の声を背に駆け出すエコー。
 こちらの接近に勘付いた最後尾の一体が振り返る。振り返ろう、とした尾がジャギィッと鈍い音で宙を舞うのは、エコーが薙いだ呪剣に既に術が施されているからだ。
 その刀身にはハイドラの血液が塗りたくられていた。ちょっとアブナイ趣味とかではなく、EBE――脳まで狂わす猛毒の魔法(おまじない)として。
『GrrraaaAAaaa!?』
 ぶくぶくぶく! 途端にして泡立つ断面、異様に血管を膨らませ脳へ向かうナニか。
 びたんびたんと別々に踊る尾と本体、絶叫に反応した別個体らが塊となってエコーへ飛び掛かる。
「ニル」
「整っているとも」
 その足が地を離れた刹那の、銃声。
 匡の手の中の銃口より放たれた弾丸は、だがいつものそれと一味も二味も違う。"仕込みは指一本で済む"宣言通り、エコーが駆け抜けた僅かな間にニルズヘッグが唱え上げた灰燼色の呪いを帯びている。
「脳と一緒に心もぶっ壊れちまえば良いさ」
 呪術。はたまた、悪魔召喚。それもまた魔法の一つであろう。うすぼんやりとした揺らぎ――……霊魂が、殺したい宛へ向かう弾速を引き上げる。 ゆえに、辿り着く。
 たたんっ、たん、首から上ばかりたちまち撃ち抜かれた数体のザウルスマンは自慢の竜鱗を深々砕かれて。そこに、何をみているのだろう? 或いはみせられて。グロロロロと狂乱し内に入り込んだ霊魂を追い出すため我が身を掻き毟るも、無駄に進化したガワは生き地獄からの脱却を許さない。
 選べる自由があるとすれば――――。
「全部溶かしちまいな」
「ん」
 ――毒に壊されるか。 赤く雷光の軌跡残して黒剣が、閃いた。
 二つに一つ。初っ端にエコーから斬りつけられた個体は今や物言わぬ骸と転がっている。尻尾以外に目立った外傷はなく、まあ綺麗な方だというのに内側では修復不可能なまでに崩壊が進んでしまったのだ。脳味噌は今頃、素敵に色付いたクリームと化していることだろう。
『OoooOOooooAaaa!!!!』
 激烈な"死"を肌身に察知したザウルスマンは悶える同族を踏み倒し、ただ、脅威の排除を目指す。死に物狂いだった。斬り飛ばされる無数の中、一振りの尾が斬撃の網を潜り抜けエコーの顔面狙いで迫る。
「……っ」
 動く死体はそれを恐れずに斬り込む。 が。
「任せろ」
 直撃を阻んだのはニルズヘッグの張り巡らせた氷の呪詛幕だ。
 より正確にはその帯を突き抜け、纏い、捻じ込むことでザウルスマンの尾を弾き落とした一発の銃弾であるが。
 事態を把握したエコーは術士だけをギロリと見遣り、彼自身をヤれぬ分も叩き込むかの力技な突き立てで対峙する敵を抉り抜いた。助けた筈が逆に殺気を向けられる不思議ッ――! ふるふるするニルズヘッグの肩をぽむ、と匡は叩いた。
「ハイドラァ……」
「情けないツラすんなよ兄貴、モリアーティの名が泣くぜ」
 訴えかけられたハイドラはといえば何もエコーへ囁きかけ二人で生み出すハートフルなコンボに舌鼓を打つのみではない、狂毒の元となる、必要な分の血は流れ出す程度に立ち回っているし。
 お誂え向きにこの地には既に、兄のもの含め魔法の気が豊富だ。三人ほど"上手"とはいかないが、ちょちょいとワイヤーを手繰ってそれらごと引っ掛けてやるくらいは出来る。風纏いスッ転ばせて、……。
「でかした! 後は私が」
「どけ。ボクのだ」
「なぁやめろつったろ?? ヒーローが仲間割れすんじゃねー!」
 でも結果としてニルズヘッグとエコー、奇しくも二人同時攻撃の有効打が成立したのでオーケーです。
 戦場がいかにどたばた騒がしかろうと匡の方は平静なもので、というよりも知覚のすべてを標的へ割いていた。見る。聞く。そうして、読む。千篇万禍の対応力で常に敵の一歩先をいくかの弾丸を撃ち出してゆく。
 当然、魔法の狙いやタイミングを合わせるならば相方としても難しかろう。
「おかわりはいらんだろう?」
 術士がニルズヘッグで、
「ああ。十分足りてる」
 射手が匡でなかったならの話だが。
 術式は既に必要なだけ、必要なように。いつどの個体を狙って撃つ? そんな示し合わせは二人の間に必要なし。
 乾いた音ひとつの後、最後の一体までもがそうやって地に伏した。
「皆、大きな怪我はないな?」
 ふう、と息を吐いてニルズヘッグが見渡せば、当然とばかり骨だのリロード音だのを鳴らし頼もしく応えるハイドラ、匡。そしてエコーは。エコーも……。
「…………ギリッ」
(「歯軋りデカ」)
 当人を除く三人の心が揃った瞬間だ。
 ともあれ直近の脅威は去った!
「はい撤収! 撤収ー! お疲れさんしたーッ!」
 待ってくれぬのは少女の殺意のみならず激しい戦いに揺り起こされたマグマも同様。わあっ、と、頭上高くへ噴き上がる溶岩流を見た途端、エコーの背を押すハイドラを皮切りに皆が走り出した。
「必ず殺す……屑……よくもハイドラを……」
 なおエコーは押されながらも敵と定めた男をみている。ぶつぶつ怖いこと言ってますけど。
「……なんかまだ睨まれてんぞニル」
「私悪いこと何もしてねえよお……もうあいつのとこ帰りたい……」
 帰り道は背後に十分お気をつけて。
 両脇から弾けて降りかかるマグマを、地形面に関してだけ匡がちゃっかり取り付けていた神々の支援……防波堤のように大地から盛り上がる大岩が跳ね返す。ニルズヘッグがディアンナのものに合わせ敷く進路へ向けて凍り付く足元はアイススケートに最適で、こうして四人は殴り込んだときと同じだけ速やかに、嵐のように次へと向かうのであった。
 ヒーロー(チームプレイ)ってのも、大変だ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

朱赫七・カムイ
⛩神櫻

魔法…びぃむ?!
私はそんなの出せた記憶もないけれど、可愛い巫女(きみ)が望むなら
できる気がしてきたよ

他の神とも…
これが神の力、と感心する一方で
……
モヤモヤする
サヨが他の神を褒めるのは
なんか
嫌だ
気に食わない
私だってサヨに褒められたい

カラスはさっさとやれと急かしてくる
言われずともやってやる
サヨ、私だってできるよ
厄災魔法が出せる
カグラは結界を張りながら魔法?と首を傾げるけど…私はやる

属性は災厄
サヨの刀に纏わせるのはあらゆる不幸にとかし枯せて崩壊を招く厄災の黒桜嵐
神罰を下してあげる
サヨへの攻撃を防ぎ斬撃を強化するように嵐重ねて
叩きつけ邪魔するものを切断するんだ

そう、これが私たちの友情(あい)の証


誘名・櫻宵
🌸神櫻

神との合体攻撃、ね…
行くわよ、カムイ!
私の斬撃とあなたの魔法びぃむを合わせてあの巫山戯た野郎を斬るのよ!
…なんて
無理しなくても大丈夫

他の神々とも協力していくわ
各自の特技を活かしていくの
やればできるわ!すごいわ神様と褒めながら
ディアンナに氷の足場を頼み跳び駆け上がり
ライヴスの雷を刀に纏わせ雷撃の斬撃を衝撃波と共に放ち装甲を抉る
頼もしいわ!

あらカムイ
何故拗ねてるの?
厄災…魔法?!
やるじゃん!
さすがは私の神様だわ
感じる頼もしさに桜も咲くわ
纏う災いは私への幸い
全てを無駄にしない
神の加護を斬撃にまとい、ありったけの力で薙ぎ払い斬り裂いてやるわ!

これが私達の友情よ
ふふ、カムイ
とーっても頼もしいわ!




 ザッ、と焼けた大地を踏みしめる足は隣並びで今日も立つ。
 此度も花の芽吹かぬ地への訪れなれど。二人自身の歩みの度にひらりひらりと舞う花弁は、死や闇とは違う、生命に――もっと明るいものに燃えるこの地に、どこか喜び躍るようにもみえた。

 守るべき世の戦いへ、いざ。

 ――……神との合体攻撃、ね。
 ぽつり。誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)が零した言葉になんだかいつも以上耳をそばだててしまう朱赫七・カムイ(約彩ノ赫・f30062)。だって、櫻宵の唇が紡いで指す神は。一番多くその名で呼ばれているのは。
「ヨハン、ライヴス、ディアンナだったかしら。きっとあの三人だわ」
 それが今日は他人を指すというのに、どこかそわそわしてしまうのだ。
「……うん、行こう」
「どうかしたカムイ? ほらキリッと行くわよ! 私の斬撃とあなたの魔法びぃむを合わせてあの巫山戯た野郎を斬るのよ!」
「魔法…………びぃむ!?」
 ???
 え。しってるカグラ? 問われた人形はすこし遠くを見ていた。
「私は……出せるのかい? 刀の扱いと同じで、本当は――いや、可愛い巫女(きみ)が望むならできる気がしてきたよ」
「ええあなたに出来ないことなどないわ! ……なんて」
 冗談。無理しなくても大丈夫。そのために現地の神々が力を貸してくれるのだから、と、ふわりと髪を揺らめかせて櫻宵はカムイの一歩より前へ、神へと挨拶しにいってしまった。

 結果として。
 神々はとても親しげに大歓迎してくれたし、合わせてくれる魔術も派手で凄いものばかりであった。
「――こんなことも出来ちゃうのね!」
「へっ。当たり前だろ、まだまだいくぜ!」
 背後から忍び寄るザウルスマンがいたとき。
 ヨハンが虚空から落としてくれた岩が、一時とて圧し潰すことで奇襲を防ぎ櫻宵の背中を守ってくれた。
「すごいじゃない!」
「そ、そうでしょうか……お役に立てたなら、えへへ……」
 マグマの下から此方を狙うザウルスマンがいたとき。
 ディアンナが唱え射出してくれた灼熱にも溶け出さぬ氷が、踏み跳び、斬りつける櫻宵の足場となってくれた。
「かっこいいわ! ね、もうすこし増やせるかしら?」
「うふふ、アナタおねだりが上手ね?」
 ザウルスマンの群れに周囲を囲まれたとき。
 ライヴスが刀へ纏わせてくれた雷が、衝撃波とともに放たれより多くの敵の行動を阻み櫻宵のチャンスを作ってくれた。

 も……
 もやもやしてどうしようもないっっ!!
(「サヨ。みて、私だって」)
 カムイの"なんかいや"はもう限界であった。どうしても気に食わない。サヨが他の神を褒めること。能力そのものには素直に感心している自分がいるというのに、のに、のに……、褒められたい。
「私だってサヨに……褒められたい……っ」
 でも言えない。 鴉の使い魔はそんなうじうじするカムイを嘴でつっついて急かした。敵が来ている。神々が、櫻宵が戦っている。「――わかってる」カムイは言った。「言われずともやってやる」。
 だっと出遅れた分も大股で駆け出せば、次なるザウルスマンを鮮やかに斬り捨てる櫻宵に追いつくカムイ。
 刃を寝かせながらくるりとターンして別な個体をも斬りつけ牽制した櫻宵は、あらと、どうみたって拗ねた目をしているカムイに瞬いた。当のカムイはぐ、と刀を握る手の力を強め、櫻宵が弱らせていた一体を邪魔だとばかり漂う雷光ごと一突きに下せば、まだ血濡れたままの屠桜――櫻宵の刀身をわっしと掴み取った。
「へっ!?」
「サヨ。私だってできるよ」
「な、なにを? というかあなた、手を怪我したらどうす」
「厄災魔法が出せる」
「厄災…………魔法!?!?」
 ??????
 え。しってるカグラ? 問われた人形は二人と神々を覆う結界を張りながら、さっきより遠くを見ていた。あ、首傾げた。
 知ったことか! やるったらやるんだ!!
「――……ここに」
 刀を引き抜くにも抜けずたじろぐ櫻宵を置き去り、そのまますうと目を伏せたカムイは心を集中する。心、ううん、もっと深淵な。魂、だ。そいつの深くへ。神としての己の格を強くイメージする。"出来ぬことなどない"。冗談と言っていたけれど、櫻宵も本当はそう信じてくれているのだとカムイは知っている。
 だから。
「……!」
 初めに息を呑んだのは、櫻宵の方であった。
 屠桜を抱き込むみたいに黒き桜の風が吹き始めたのだ。はじめは弱く。次第に強く。嵐と呼べる強さまで!
「やるじゃん! 目を開けてごらんなさいカムイ、さすがは私の神様だわ」
「ふ、ふふふ」
 ふふふ~~っ! カムイが薄っすらとずつ目を開け手を離せば、そこには刀を表裏と返してはしゃいでくれる櫻宵がいる。枝角に咲いた桜が目の前でぽぽんっと増えた。
 ちなみに現地の神々はそんな二人をあらあらと眺めていた。実力もある二人だ、この場のザウルスマンズは任せてしまおうと早々に他の猟兵に合流し二人の世界を作り上げることに貢献している。
『GrRrrroooo……』
『OOooooAaaa!』
 強いていえば残されたザウルスマンが騒がしいくらいだが。
「ほらサヨ、試し斬りの相手がきたよ」
「本当。みていてね、カムイ!」
 これから黙らせるので無問題。
 櫻宵が屠桜を薙ぎ払う。太刀筋にともに躍る黒桜嵐の属性を、術士は災厄と定義した。災いそのものであり櫻宵にとっての幸い、つまりは斬り結ぶなら"櫻宵だけが勝てる"――だ。
 飛び込んでくる、或いは、嵐に引き寄せられるザウルスマンは、己の攻撃が舞う花弁に削り落とされ、逆にその花弁が刃と寄り集まって物質としての刃そのものとともに斬りつけてくる体験を味わったろう。
「神罰を下してあげる」
 ああ、なんて素敵な花景色。
「ひとつも無駄にしないわ、……そこっ!」
 ザギンッ!!
 刀と爪とがかち合う。堅い鱗。けれどもカムイが吹かせ続ける嵐は幾重にも重なって、ついにその何十にもなる黒桜の刃が腕そのものを斬り落とし、屠桜を先へと通させた。

 そう。 これが私たちの友情(あい)の、証。
 崩れ落ちるザウルスマンの群れを前に、二人は互いに互いを褒め称えた。カムイのもやもやもすっかり消え失せていて。

「ふふ、本当にすごかった! やっぱりカムイに出来ないことはない、とーっても頼もしいわ! ね、次はびぃむをこう、直角や曲線に折り曲げたりして複数本同時に操ったり出来ないかしら? それでね……」
「????」

 それはともかくして、自分磨きの日々は続きそうだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

キディ・ナシュ
【ひでお】

悪事はそこまでです!
わたしたちは、秘密結社すなっくの一員です!

びしっとポーズつけて名乗りましょう
これ一度やってみたかったんですよねぇ
と心の中でガッツポーズもしちゃいます

あれ、間違えましたか?
こほんと咳払いして言い直します
スナーク、です!

腕力勝負ならば、お任せあれなのです!
魔法はおねえちゃんにお任せしましょう
鶏さん、よろしくお願いしますね!
チームワークなら負けませんとも!

えらい子良い子ならば常日頃から
カッコいいヒーローになる為の練習を欠かしておりませんもの!
スパナさんを振りかぶって
渾身の力を込めてステップ踏んでワンツー!
石で固まったところを狙っていきます!

正義の味方は、強いんです!


イディ・ナシュ
【ひでお】

スナックではありませんよ、キディ
秘密結社をこんがり焼き上げてどうするのですか

所謂決めぽーず?を見せ付ける義妹に
額を押さえたくなりますが辛うじて堪えました
スナークの末席に加えていただいております、ええそうですとも
私が戦意を喪失する前に片付けてしまいましょうね

張り切るキディが突撃して行く背中を見守りながら
鶏を喚んで補助をさせましょう
石化すれば敵の固い鱗も砕きやすくなると良いのですが

ヒーローの練習をしていると耳に入れば
「らしい」と感じはするのですが
…あの子に淑やかな女性らしさを叩き込むという
私の役目が果たされる未来は遠そうです

張り切り過ぎて髪の膨らみが普段の五割増しになっていますよ、もう




 ガゴォッ。
 それは血のように赤いマグマを映り込ませぎんぎら度の大いに増した巨大鈍器が、地面に下ろされた。ただそれだけで立てた音だ。信じられるか? 置いただけ。まだ何か殴ったわけじゃない。
 ざわりと一斉に音の方を振り返るザウルスマンたちは、彼らにまだ人格が残っていればそこに想像の何倍も幼き娘が立っていることに二重の驚愕を覚えたろう。しかもなんか超ゴツい――絶対さっきの音の元凶なスパナ振り回してるんですけど。バトンみたいに。頭の上で。
「悪事はそこまでです! わたしたちは、秘密結社すなっくの一員です!」
 なおこれを二秒間くらい回したあともっかい地面に突き立て指ビシィッするのが十通りからうんうん悩んで選ばれた決めポーズだ。ああ……地割れが……。
 すなっ――新勢力か!? みたく敵味方双方に俄かにどよめきが広がる中、傍らにゆらりと佇む比べて随分と大人びた空気を纏う娘が首を振った。今横で起きた人工的な地震だけで転んでましたけど大丈夫でしょうか?
「……ス、ナックではありま、せんよ、キディ。秘密結社をこんがり焼き上げてどうするのですか」
「あれ、間違えましたか? こほんっ、スナーク、です!」
 大丈……、――大丈夫そうだ!
 二人はキディ・ナシュ(未知・f00998)、イディ・ナシュ(廻宵話・f00651)。てへへーでもポーズまで決まってましたよねールンルンな義妹に対し、額を押さえかけた手をなんとか堪えたことで逆に行き場を失い、結果的に早々に魔導書の頁を開くことで紛らわすイディさえ頑張り続けるのなら。
(「片付けねば。私が戦意を喪失する前に……」)
「さてでは!」
 曇る姉の胸の内など露知らず、ツインテールごと跳ねるキディの元気なこと! 名乗りも終わったことですし、と、今一度ぐおんと取り回したスパナいやスパナさんを手に飛び出す!
 成程、こいつは確かにヒーローらしい。ザウルスマンたちがそうと認めてくれたかは不明だが、とにかく敵も敵として気を取り直したらしく、グロロロロと唸りを上げて二人を迎え撃つべく腰を落とす。
「ところでキディ。スナーク化の性質の方は覚えていますね?」
「っは」
 は?
 とは、もう振り下ろしちゃった瞬間の気付きであったから。道中でおねえちゃんに何度もリピートアフターミーさせられたのに!! ちょっとした高台(これもヒーローの秘訣)から飛び降りた勢い乗せて、落下予測地点にいるザウルスマンがどこかニヤリと笑ったように見えて――――。

「まったく」
 ……――けれども。

 そんなこと、当然勘定に入れているのがイディというキディにとっての出来た姉。
 地面にぼわわわっと煙が立ったかと思いきや、落ちるキディの身をもさもさしたものがぽおんと跳ね上げた。この感触は!
「鶏、さぁんっ!」
「さあ、お話を始めましょう」
 説明すると鶏さんというのはイディが魔導書から喚び出したすごくくさい息を吐くヤツだ。もさもさっていうかぬるぬるしている可能性も高いが、ともかく、その口が漏らすあまりに濃い硫黄臭は石化という一種の魔法をかける域にまで高められている。
 なんにせよおかげでキディは反射攻撃を招かず済むことが出来た。
 キディが物理、イディが魔法。なんだかんだと二人は、ぴったりとピースのはまる存在である。
「ありがとうございますっ! むぅぅ、わたしをヒーローポーズに夢中にさせてその隙にと……ますます許せません!」
『GrrrooooAaa!!』
 いわれなき罪に憤っているのかもしれないザウルスマンがスライディングしてキディへ向かう!
 だが、イディとそして鶏さんという歴戦の味方のいるキディには、恐れることなど何もないのだ。ダンッと大地を踏みしめて、両手、大上段に抱え上げるスパナさん。ギャリリッと地面を抉りやってくるザウルスマンはあまりに迷いなき構えにちょっと恐怖をおぼえた。
 そしてその恐怖は、動物が従うべき本能からの警鐘であった。
「今です」
 ――などと、二度と知れることもないのだろう。
 オゲエェェとかギゲエエェとかとりあえずザウルスよりも断然悍ましい叫びを上げた石礫鶏が、硫黄の吐息をついに撒き散らす。鶏の位置はキディの背後、つまり直撃を喰らうことになったザウルスマンは即座にミシィッと固まる。
 スライディングの体勢的にちょうど顔の高さがブレスの高さというのがまたまずかった。一方のキディは真後ろから放出されたブツにまるで動じることなく、むしろ普段自らの手で生み出しているまであるし(料理)、ガゴンッと振り下ろす鈍器でザウルスマンを殴りつけた。
「デラックストリスパパンチッ!!」
(「そんなハンバーガーみたいな……」)
 石化の瞬間を狙うことでの共同作業だ。それはスナーク化した全身を覆う堅い鱗をも容易に砕き、頭蓋から腰までを一息にバラけさせる。大小の石片がバラバラと散った。人間の形をもって残っているのは突き出ていた片脚のみで、そいつはしれっと鶏さんがくわえて呑み込んでいったこと、目撃者はここにすべて屠られることが約束されている。
「見たかーですっ」
 ジャン! という風にいちいちポーズを決めようとするキディであったがそこはイディの手元で閉じられた本が直角に構えられたことでやめた。賢い判断。気を取り直し、石礫鶏とともに駆け毒ガスに倒れるザウルスマン石を次々に砕き、叩き潰してゆくキディは、とても活き活きとしてみえる。
「――ふっ、アタシたちの助けはいらないみたいね」
「あの煙……? ガス? の色見ろよ。寄らば死だぞ絶対」
「遠くから健闘をお祈りするしかありませんね……」
 一方の神々は二人の戦いぶりを見てそんな感じで喋っていた。
 気持ち遠い。だが、確かに二人をヒーローの一員として見てくれている! 熱視線(半分は鶏さんへの)受け一層華やぐキディは、ふふふっと笑いながらぐるんぐるん振り回すスパナさんで自らも回転し、周囲の石像を一気に崩す。
 なお、お察しだが物理面がよわよわなのは正直ひとのことを言えないイディである。そろりそろりとそんな彼女の背後へ回り込もうとする者がいたならば。
「むむっ」
 イディがキディのちょっとあわてんぼうなところなんかを知っているようにキディだって大好きな姉の不得手なところをよ~く知っている。ババッ! と深く曲げる両足に力をためて。
「そう……わたしは……ヒーロー! えらい子良い子ならば常日頃から、カッコいいヒーローになる為の練習を欠かしておりませんもの!」
 おねえちゃんには触らせませんっ!!
 ワンッ、ツーステップ渾身の振りかぶりで、また一体をごがんと打ち上げてやるのだ。
 ――……。キディに淑やかな女性らしさを叩き込むという、イディの役目が果たされる未来は遠そうだけれど。
「キディ」
「正義の味方は、強いんです! ですよねおねえちゃん?」
「ええ。本当に。……ほら、張り切り過ぎて髪の膨らみが普段の五割増しになっていますよ、もう」
 でも、そのことを悪だなんて断ずる気は、今のイディにはない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オニキス・リーゼンガング
共闘希望・ライヴス 口調・やんわり丁寧
心情)協力前提ですか。友を連れてくるのでしたね。
ああ、たらればを考える暇があればこぶしを振るうべきでしょうね。
行動)スライディング対策として《枝(*手の杖)》を地に打ち付けて地面を砕きます。
そのすきにライヴスさんのクライシスゾーンをわたくしにぶつけていただきます。
オーラを操って魔法を絡め取り、《枝》・《態(*この身)》にまとって突撃いたします。
フィジカルには自信ございますので。
集団で向かってくるならば好都合。その攻撃はすでに見切っておりますよ。


冬薔薇・彬泰
合体には浪漫があると思うのですよ、レディ
『いきなり何事です?』
何、単なる僕一個人の感想ですよ

試しに近くの敵を斬ってみる
…成程、確かに弾かれる
感心しつつも常に落ち着いて状況を確認
腕、尾の動きに変化があれば
重い一撃を避けるべく回避に徹する

気の強い御仁には慣れている
力を借りるべくライヴスの元へ
御機嫌よう、親愛なる神よ
此処で賛美の一つや二つ述べたい所だけれど…今は時間がない
単刀直入に申し上げる
僕に力をお貸し願いたい

貴方の竜巻で撹乱された敵を、僕が前線で斬り伏せる
魔法を纏った刃ならばそれが叶う
貴方が倒れぬよう僕が守ろう
住む世界は異なれど、この世を守りたい思いは変わらない

*苗字+君呼び
使い魔をレディと呼ぶ


渦雷・ユキテル
秘密結社スナークでーす
勝手に名前使ってる強がりさんをお仕置きしに来ました!

本当は不死の怪物ってのが気になっただけですけど
不死、不死。ああ羨ましい限りですね、肖りたいくらい

此処、動き回るの辛そうなんで敵をその場に留めたいです
物理が得意な方がいれば電撃を纏わせられますよ
【属性攻撃】【マヒ攻撃】
うまく行動を制限できたらユべコで地形帯電しこちらの強化も厚く

クランケヴァッフェ、今日は鎌にしてきました
剣より首刈りに向いてそうでしょう?
物理要因足りなければこちらでも。素敵な魔法で飾ってくださいね!
攻撃を見切れたら柄で防ぎ、リーチを活かした大振りの一撃を
高低差激しい場所では刃を鉤代わりにして登るのにも使えそう


ジャック・スペード
J♠️の印章を刻んだガジェット――
銀製カードをザウルスマンへ投擲し
スマートに登場

ダメージは与えられないだろうが
所謂「様式美」というヤツだ
精々格好付けるさ

秘密結社スナークがひとり
スペードのジャック、見参

こうして名乗るのは新鮮だな
……感慨に浸っている場合じゃ無いか
日陰者のダークヒーローで良ければ
アンタ達の力と成ろう

神々は此の身を挺しても守る
蹴りは渾身の怪力で受け止めて
損傷は激痛耐性と奉仕のこころで堪え

さて、ライブス
俺が投げるカードに、雷の加護を与えてくれ
奴等を一気に感電させてやろう

動きが止まったら隙を突き肉薄
手近な敵から零距離射撃で仕留めて行く
勿論、弾丸にも雷の加護を乞おう
頼りにしてるぞ、カミサマ




「合体には浪漫があると思うのですよ、レディ」
『いきなり何事です?』
 ――何、単なる僕一個人の感想です。それは、冬薔薇・彬泰(鬼の残滓・f30360)と使い魔、艶めく黒の毛並みをした黒猫とのひそひそ話。
 試し斬りしてみたところ実際に刀が弾かれたことが、尚更に必殺の大技感を醸し出してくるというものだ。
 レーザーのように吐き出される返しの刃も知れているならばくるりと飛び退け、彬泰は視界の先で風を呼んでいるライヴスのもとへとその足で駆け寄った。ふわ、ふわりと出す一歩ずつの浮く感覚はそれだけで心躍る。
「御機嫌よう、親愛なる神よ。単刀直入に申し上げる、僕に力をお貸し願いたい」
「スナークの子――どんどん持っていって!! それにね、力を貸してもらっているのはアタシたちも同じよ」
 賛美の一つや二つ述べたい所だけれど、時間のなさがあまりに惜しい。彬泰の想いは神々にも共通しているらしく、二つ返事で授けられた風は刀の周囲に吹き渡る。
 追い来ていた先ほどの一体へひらと反転し危うげなく斬り結び、一合にて尾を飛ばす、確かな手応えに彬泰は頷きをひとつ。誓うが如く感謝を紡ぐ。力と、力の授けあいだというなれば。
「貴方が倒れぬよう僕が守ろう。住む世界は異なれど、この世を守りたい思いは変わらない」
「その覚悟、同道させて貰おうか」
 シヒュンッ! ――と、風裂く音立て別な一体の額へ突き立ったものは一枚の銀。
 否。銀に輝くその表面には、スペードのJの印章が刻まれている。岩陰からの奇襲を挫かれぐるるると憤るザウルスマンが見上げた先、というか、岩そのものの上にコートを翻し声とカードの主は立っていた。
「秘密結社スナークがひとり。スペードのジャック、見参」
 ジャック・スペード(J♠️・f16475)。ザザァッ! 振り抜かれる爪をバク宙にて軽やかに躱しての三点着地。
 傍らへ立つことで自然、ライヴスの周囲に満ちていた雷の気を帯びた二投目は、今度こそざっくりと邪竜の額を割ってみせた。弾ける光……光までもが登場演出を盛り立てるッ……!
「ヒーロー……ッ!」
 あまりに綺麗な登場に絶句するライヴスへ、いいやとジャックは片手を翳す。所詮は己は日陰者のダークヒーローだ、と、定義し直して。
「それでもよければ、アンタ達の力と成ろう」
「これはまた、頼もしき同道者だ」
 間髪入れず、ジャックが弱らせた個体がたたらを踏むのを彬泰の一手が袈裟に斬り捌く。大きくよろめきながらも反撃のスライディングキックへ向け強く蹴り出そうとしたザウルスマンのその足元が、ごお、と不意に砕けたのは直後であった。
「――、ああ。お探ししましたよ。ライヴスさん」
 オニキス・リーゼンガング(月虹に焦がれ・f28022)。
 右手にした杖が、揮い手のその見目からは思いもよらぬ強靭さにて叩きつけられた瞬間のことだ。

 三雄に囲まれしザウルスマンの生死は、最早語るまでもないだろう。
 ライヴスはオニキスの身を望まれた通りのクライシスゾーンで打ち上げる。この掛け方今日何度かやってるけど、スナークの子たち頑丈過ぎないかしら……? と内心凄く焦ってたりもする。
「問題が生ずればいつでも下ろすわ。それじゃあ、ジャックはヨハンの奴のことお願いね」
「此方は心配なきよう」
「ああ。また。授かった力、存分に活用してこよう」
 銃撃をも得手とするジャックは突出しがちな炎使いの支援をすべく向かい、彬泰はライヴスとともに。飛翔するオニキスは力の試しどころを探し始めていた。盲した男は視覚ではない、オーラを巡らせ探知する。無限に思えたザウルスマンは今や、探す必要があるほど減っていた。
「あそこが良いですか」
 選ばれたのは絶賛戦闘中の群れ。
 煌めく雷の池。それが秒ごと氷結しては割れ崩れる、少女めいた二人のもとであった。


 己の魔法が入用と言ってくれる者の呼び声に応え、ディアンナは奔走していた。
 息切れしてつんのめって、今にも転びそうだというのに、何故だか心は軽い気がする。いつもの自分ではとてもこんな風には思えなかったから不思議だ。
 ううん。不思議ではない。理由はもう、よくわかっていて……――。
『GrrrRRRooooo!!』
「っ」
 ――ザウルスマン! 進路を塞ぐようにして高台から落ちてきたオブリビオンへと確り向き合うディアンナ。まずは誰かをお呼びして、と、息をいっぱいに吸っている間にその助けはやってきた。
「秘密結社スナークでーす。勝手に名前使ってる強がりさんをお仕置きしに来ました!」
 しゅびび! 陽ッ! なオーラを溢れさせし眉間横ピース、金髪さらさら渦雷・ユキテル(さいわい・f16385)の登場だ。
 しかし、突き出す鎌状のクランケヴァッフェは一時ひやりとした突風を感じさせるほど鋭い。女神ににじり寄る一体をそうして突き崩しながら、己の方が彼女の前へと立つ。ちょっと見てましたけど、とユキテルは続けた。
「急いでませんでした? ここはあたしが任されました」
 大丈夫、慌てずに走ればいいですよ。と、ウインクをくれるユキテルだ。
 その両手はバトンか風車かの如く両手に大鎌を回して、弾いてやった際に零れた鱗の一枚をぱきんと踏み砕けば、さあどこからでもどうぞの姿勢でぞろりと間合いをはかるザウルスマンズを睨めつけた。
 ――本当は不死の怪物ってのが気になったからが来訪の理由だ。不死、不死。ああ羨ましい限り、肖りたいくらいのお話――、それに。
(「この力がこういう形で役立つなら、きっと」)
 マシな。いや、素敵なこと。
『GRrrr……』
『UrrRrrrAaaa!!』
 ――ふと。
 そんな心積もりで竜爪の一撃を押し留めたユキテルは、己の鎌に水滴が煌めき始めたのを目の当たりにする。宝石みたいな……魔法だ。思わぬ形で魔法と交わった刃は、そのままざっくりとザウルスマンの上体へ食い込んで叫びを上げさせた。
「あら?」
「……いいえ。見守らせてください、私もスピリットヒーローの端くれ、です。居ないよりまし程度かもしれませんが、少しでもお役に立てればとっ」
 足が震えてみえるけれど、声に震えは感じられない。
 ふふふ、とひとり笑うユキテルは鎌を引きがてら一体をかち割れば血の滴るその石突を割れた大地へ突き立てて、軽く腕まくりをする。
「そういうことなので、ますます譲れなくなっちゃいました」
 ――。零れる、元々身に植え付けられた雷光が足元を電気池に変え、水滴をうんと輝かせる。それは宝石よりももっと価値ある、星空の映り込みのようで。
 ザリリ、  尾を鞭の如くしならせるザウルスマン。踏みだす、ユキテル。
 すかさず放つ鎌の大振りがまず一体を凍り付けの真っ二つに処して、
「、」
 もう一体!
 へは、薙がれる爪を前に刃を返す間もないから。
「いきます、っよ!」
 バットよろしく大鎌の背がザウルスマンを殴りつける! 飛ばす! バチバチッと電気を放出し、ぐっと強く踏みしめた足と上下の捻りでぶっ飛ばすのだ。いきますということは受ける側がいる。その通り。飛ぶ先にはミットより断然凶悪なフォルムをした鬼棍棒を手にオニキスが飛んできていた。
「おや」
 これは? 迫るボール。
 たらふく叩き込まれたサイキック性の電撃にびりびりと光るザウルスマンボールは、ああとっても殴り心地の良さそうな。
「永遠に打ち合うのも一興ですね。なんだかこう、あったでしょう? 下界にはそういった……遊びが」
 盲目の龍神は冗談か本音かわからぬ台詞を――いずれにせよボールにとっては絶望しかない台詞を――さらりと口にしながら、振りかぶる得物の芯を初めてにしてジャストミートさせるのだった。

 ドオォッ、

 衝突の瞬間炸裂するは数度のスパーク内包する暴風! 全ての鳴り止む後には"目"は骨片まで跡形なく、地表にただ真っ黒な焦げ跡を残すのみ。様子を見に来たライヴスはあれどっちかの役が自分だったら腕から腰まで折れてたな……とか考えては、感嘆の吐息を落としていた。
 巻き添えとなったザウルスマンは、一や二とはいかぬだろう。
「わあ……」
 開いた口の塞がらぬディアンナと。歓声上げるライヴス。
「さっきから電撃もパワフルよね……! 惚れ惚れしちゃう」
「そうですか? ふふ、褒めてもらえるのは嬉しいです」
 借り物ゆえ、自分を通して"彼"のことまで褒めてもらえている心地になる。 口にはしないけれど。はにかんだユキテルは、早くも別な敵群へ殴り込みをかましてゆくオニキス――……はひとまず二柱に任せるとして、己の為せること、雷でのジャックの支援を引き受け地を蹴った。居合わせた面子は風や雷の力と相性が良いものが多いようだが、付与を分担できるのはツイている。
 ザァッ。 通り抜けざま、また一体のザウルスマンを断ち割る彬泰の集中した横顔をユキテルは垣間見る。約束通りにライヴスの守りを担っているのだ。彼と動く限り、神々の安全も高まるといえよう。
 駆ける先ではヨハンの炎と土の魔法が交互に大地の色を変えている。ちょっとしたイルミネーションみたく。
 背にし守り立つジャックの、黒々としたボディや転がした死骸たちまで同様に、だ。ライヴスから授けられた魔力はちょうど撃ち終わりといったところ、最後の一発を迷うことなく自分ではなく神により近いザウルスマンへのトドメに使ってやって。
「神様のものとは別物かもしれませんけど、どうぞ!」
 そこへやってきたのがびびびと降る、ピンポイントな雷で。
 それを構えられたままのリボルバーが受け止めた。一発分だけ飛び出す通常弾を空へ逃がし、ひとつシリンダーの回転を挟めば次には光る雷球飛ばす別物へと早変わり! 魔法とは、つくづく不思議で。
「――ああ。感謝する、これも同じだけまた面白い」
 見たところ、炸裂したユキテル式魔法弾はその眩さにて目潰しの役割もこなせるらしい。流れるようなガジェットショータイムによってラッパめいた銃を一列並べたジャックは、そこから一斉に吐き出させる弾丸もとい雷魔法とそれを帯びた光る硝煙に漆黒の身を溶かし駆ける。
『Grrrr……』
『OoooA! AaaRrr!?』
 アイセンサー起動。
 明後日へ空振りする爪や蹴りを一方的に躱し懐へ踏み込めば、零距離でひたりと突きつけ、見舞う実弾が正確無比に邪竜狩りをこなしてゆく。発砲音がした空間を切り裂こうとて一所に長居する射手がいるものか、……"置き土産"たるライヴスの顔を模したヘンテコ即席ガジェットが代わりに爆発する。
『UrRRroooaaa!!』
 さながらスタングレネードだ!
 無駄なくスマートなジャックの身のこなしに屠られるか、吹き飛ばされるか、目をやられるかで置いてけぼりにされたザウルスマンたちを後背からどっと貫く銀雪が、一本。
「おっと、棒立ちは如何なものかな」
 直に注ぎ込まれた雷気が開いた口から悲鳴でなく、ジュッと煙を吐かせて。
 滑り落ちるみたく地へ頽れる死骸にはそれきり目もくれず、使い手、彬泰はひとつ打刀を振るい脂を落とせば依然翳りもせぬ切れ味を披露し続けるのだ。
「まさに紫電、ねぇ……」
「それでいて、氷の冷やかさをも感じました」
 ともに駆け来た二柱の背を守ることも忘れずに。
「俺にも何か手伝わせてくれ!」
「では、私も合わせますっ」
 皆の戦いぶりに奮起して仕方ないヨハンの振るう炎の渦と、ディアンナの放つ水の雨。
 混ざり合う二色の魔法の滝がザウルスマンのうち一体へと叩きつけられ、その圧に一瞬、ほんの一瞬動きを止められている間に――とっと舞い込んだ黒き影は「やはり合体とは浪漫ですとも」と。
 ザザザザザンッ!! それは剣舞だ。捧げるならばでは、この場に居合わせた尊き三柱へと。
 四方八方へ飛沫を上げさせながら奔った彬泰の斬撃は、滝のすべてが落ち切る前に事を終えた。元々ライヴスの風の力を帯びていた刃だ、羽衣をふるうかの軽さで、烈火の如き強さで、そして清水の如き静けさで――あるいはそのすべて、もとより彬泰という剣豪自らの力のうちであったのやもしれない。
「今のだなんて三重ですって。如何でしたか? レディ」
『ええ。とても楽しんでいるようですね』
 ただ当人は袖なんかを絞っては鷹揚に笑んで。椿色の双眸をゆるやかに伏せ、伴の黒猫婦人もが優雅に毛繕い。
 しとどに血濡れた男の肩の上であったが、彼女の黒は一滴たりとも穢せぬまま。
 ――なんていうか。
「すごく、カッコいい方ばかりですよね……、スナークの皆さんって」
「わかっちまうのが悔し……って感心してる場合か! ライヴゥスッ!」
 ディアンナの襟を引っ掴むヨハンは、スライディングしてくるザウルスマンをクロックアップなスピードで一気に引き離す。「分かってるっての!」ライヴスは岩斧で地面を殴りつけ、二人との間に竜巻を生じさせることで敵を吹き上げた。
 三人協力しても、猟兵がいなければただの時間稼ぎで終わっていたであろう行為。
「引き続き頼りにしちゃうわよ?」
「光栄だとも」
「なんなりと、――などとな。此方こそ頼りにしてるぞ、カミサマ」
 彬泰が。ジャックが、皆が意味を持たせる。持たせ続けてここまで戦い抜いてきたのだ!

 刀が斬り込み、銃弾が飛ぶ。
 合間に魔法が天地を染め、この地での激突の中で幾度も幾度も繰り返されてきた美しき協調が、ここにもまた咲き誇る。
 神代の絆を正しく再現した戦いも最終盤となる最中。一体のザウルスマンが、岩陰よりじわっと顔をだす。
『Urr……』
 授かった翼を広げ、せめて己だけでもと他を踏み台にこの地を逃れようとする姑息な手合いだ。だが阿呆なことに、機を読んでいる間に他のお仲間は軒並み倒れてその行動は普通に目立ち。
『Uu RrrOaAaa!』
「そうはいきませんよ」
 更に猟兵側にはもう一人、即座に動けるユキテルがいる。放り投げられた鎌は旋回し、羽ばたいたザウルスマンをガッと岩壁に縫い留めて。氷が蜘蛛糸のように咲いた。
 ああ、それからもう一人のもう一人。
 いるではないか。先ほどから風を味方につけ好き勝手飛び回っている男神が。
「悪くはない、空の旅でしたよ」
 オニキスその人だ。キィィ、イイと戦闘機めいた音がするのだが一体。超常の竜巻を完全に乗りこなした身は最終的には杖も使わずそのスピードと魔力と拳の一振りで、大岩ごと粉砕しながらそこに磔にされたザウルスマンを突き抜けたのであった。
 ――。そうして何事もなかったかのように(大した傷もなく)地上に降り立ったオニキスは、はらはらとした火の粉か土屑かを零しながら共闘した皆の元へ戻ってくる。自分らなら今の粉微塵だよな……という顔をしていた三柱ももう何も言わなかった。
「それにしたってあんたたちのおかげで、随分と静かになったもんだ」
 代わりにあたりを見渡す。オニキスもそれを軽く真似て。
「ふむ。こちちも綺麗さっぱりお掃除済みですか」
「も、ということは……ああ、尋ねるまでもなかったな」
 ジャックが納得した通り、オニキスがやってきた方角にザウルスマンの姿は見当たらない。それどころではない。ぐるっと一周、平地は勿論マグマにも高台にも、動くザウルスマンの姿はひとつとてなくなっていた。
 勝利だ。
 そして――……本当の戦いの、始まりでもある。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『『アズマ』』

POW   :    決別拳
【拳】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    瞬断脚
【神速の蹴り】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    捨身投
【自身に近接攻撃】を向けた対象に、【投げ技によるカウンター】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ナイアルテ・ブーゾヴァです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟書家、アズマ。
 繰り広げられた激戦に何を思っているのか、それとも何も感じていないのか。心の機敏らしきものは一切窺えない。ぐすぐずに溶ける敗者どもの死骸を、そして炎を平然と踏みしめる男は深い亀裂を埋めるマグマの海を挟んだ対岸で、猟兵――秘密結社スナークの面々と向き合った。
 覇気であろうか、唸る風が海を揺らす。ごお、ごおと、燃え立つそれらがなくともアズマの道着は既に血に彩られている。単身、己の身ひとつで神獣の番人を次々に殺めたとの予知はどうやら真実であった。
「心臓が痛くなってくるぜ……」
 今、此処にその力の程を味わった生存者も存在しているわけだが。
「さっきぐっさりやられたものね?」
「今度はそうはいかねぇ! なんたって、頼もしすぎる仲間がいるからな」
 まるで負ける気がしないのだと言う。ともに立つヨハン、ライヴスのやり取りに、ディアンナも信を込め猟兵を見つめて頷いた。

 あとは静かなものだ。
 戦いの始まりを知らせる音は。

『殺す』
 その、ただの一声と踏み込み。
オニキス・リーゼンガング
心情)わたくしは盲目ですが、この方もたいがい盲目ですね。
いえ、物理的な話ではなく。
目的以外、目に入っていないということです。
行動)武力で挑まれたならば、武力で答えるが礼というもの。
同じ技にてお相手いたしましょう。
魔力粒子の濃度が高いのは好都合、オーラの精度が上がります。
彼の行動もつかみやすいですしね。
彼の攻撃に合わせて非実体化。腕が貫通した状態で実体化。
捕まえたまま、こちらのこぶしを全力で叩き込みます。
霊体ですのに殴打のダメージが大きいですね…腕も貫通していますし。
ですが、(邪)神を鏖殺していたのはわたくしとて同じ。
なめてもらっては困ります。
天を打てば雲晴らす殴打、その身に受けなさい!


エンジ・カラカ
賢い君、賢い君、強いヤツだ。
アァ……ワクワクするなァ…。
うんうん、そうだろう。
行こう行こう。

……さっきのアイツは?
何か、魔法を使ってた。
アァ……いたいた…。お前も一緒にあーそーぼー。
たーのしいよ。

単純に強いヤツは楽しい楽しい
蹴りに対して君の糸
君の糸をアイツの足に絡めたいなァ……。

薬指の傷を噛み切り、君に食事を与えよう。
与えたら君だって元気一杯なンだ。
うんうん。イイコトー。

素早い蹴りにどうやって糸を絡める?
ちょーっとコレが囮になるなる。
その間にアイツに攻撃を撃ち込んでくれくれ。

隙を見つけたら、一気に君の糸がアイツの足を捉えるサ。
たーのしいネェ。楽しい。


グラナト・ラガルティハ
神獣を殺しさらに神殺しもなそうとするか…
その力を持ってすれば可能かもしれんが。
お前がこの世界に手を出したのが運の尽きだ
我が愛し子も暮らす世界だ壊させるわけにはいかないからな。

神としての力を駆使してお前を倒そう

【封印を解く】で神の力を限定解放。
自身の装備品、蠍の剣と柘榴石の指輪をベースにUC【我が眷属の領域】を使用し火炎柱を発生させ【属性攻撃】炎で威力を上げ【焼却】だ



 飛び出すアズマの一歩先に撃ち込まれた炎弾が、その出端を挫いた。
 いいや、避けようともしない男は水平に滑らせた手刀で炎を切り裂いている。だが、視界に舞い散る火の粉までは完全に振り払えない。それらが薄れ落ち切るよりも早く、煮える裂け目を飛び越える白き影の装束が東洋龍のようにたなびいた。
「わたくしは盲目ですが、あなたもたいがい盲目ですね」
 物理的な話ではない。目的以外、目に入っていないということだ。そう口遊んで振り抜く拳。
 閃光めいた突撃をかましたオニキスの一手に腕を盾に、飛び退ったアズマが引いた分の距離に続々と猟兵と神々が飛び降りる。戦場に漂う魔素を糧に、先に素早く炎を放った張本人、グラナトが杖の石突で地を叩けば手の中の杖もが炎そのものと化した。
「神殺しか。その力を持ってすれば可能かもしれんが、この世界に手を出したのが運の尽きだ」
 ごうごうと燃え立つ赤橙が威風堂々と立つ輪郭を照らし出す。
 鋭い双眸は炎心にも似て金に輝いている。ゆっくりと顔を上げる武道家が如何なる強者であろうとも、己の愛し子も暮らすこの世界を壊させるわけにはいかない。再び踏み出すアズマ、グラナトの手より撒かれ、阻む炎の壁――傍らのヨハンとしては、何か口を挟むことの出来る空気ではなかった。下手に動けば心臓が破裂するか燃え焦げるかといったビジョンが見えてくる中、背を叩く手に嫌なデジャヴを感じたとするならばそれは正解だ。
「強いヤツと強いヤツ。強いヤツはわくわくするなァ……なァ?」
「おま……」
 肩越し振り返れば、想像通りの襤褸フード男エンジのご登場ときた。
 あそぼう、遊ぼう。皆で遊べばたーのしいに決まっている。
 噛み切られた薬指。左手にはしゅるしゅると赤糸が躍っており、さながら意思持つ生物だ、直ぐに射出されたそれは振り上げられたアズマの足を絡め取らんと四方八方から収束する。対する衝撃波伴う掛け蹴りはしなる鞭のようで、炎と糸とを纏めて断つも再び地を踏むまでの僅かな間を見過ごす猟兵ではない。
 周囲に満ちた魔素をも取り込んで、センサー……"目"の代わりである氣の精度を高めていたオニキスは、最も足の上がった刹那を読み、飛び込んだ間合いですくい上げるようにして腕を振るう。杖は初めに置いてきた。武力で挑まれたのならば、武力で答えるが礼――同じ技にてお相手いたしましょう、と。
「こういった芸は如何でしょうか」
 ぱあんっ。
 掌底はアズマの膝を打ち軸をぶれさせて、着地までを更に秒程度遅れさせる。
 続けざまに撃ち込まれる炎がここで引き遅れた上体を捉え、有効打となった。肉の燃える音と臭気。しかし痛覚が存在せぬとでもいうのか、即座に切り返すアズマの拳は怯む様子を見せもせず、炎ごとオニキスの身へ吸い込まれる。正中を捉えた一手。自分がやられたときの光景がぶり返しゲッと息を詰まらせるヨハンだが、これが即死級となるのはただの人間であれば、の話。
「――ふふ。流石と言葉をお贈りしたいところですが、霊を殺したご経験は?」
 ぐにゃんと歪むオニキスの輪郭。
 そうして、確かに胸から背までを貫き突き出すアズマの腕は、けれども血を纏ってはいなかった。オニキスという存在は、悪霊だ。いやに冷たいその身体はただのそれらしき器に過ぎず、思いのままに実体と非実体を行き来する。ぎゅるると逆戻りして肉を得た身が貫通したままのアズマの腕を閉じ込める。我が身を用いた封とは、考えることがぶっ飛び過ぎて。
「なんだありゃ……」
「今だ。合わせろ」
 絶句してしまうヨハンの耳を打つはグラナトの一声であった。
 グラナトもまた、オニキス同様出し惜しみはしない。神としての力を全て駆使して、倒す。――ガーネット煌めくリングが、蠍の剣が、途端に炎へと解けてゆく。権能の限定解放。投げ打たれた二つは天高くへ伸びる火炎柱へと姿を変え、オニキスとともにアズマを呑まんと迫る。
 進んで味方を巻き込むわけではない。
 寸前にして、拳を振りかぶる白色が視えていた。
『……同じことだ。お前は死ぬ』
「神を鏖殺していたのはわたくしとて同じ、なめてもらっては困ります。天を打てば雲晴らす殴打、その身に受けなさい!」
 クロスカウンターの形だ。
 ごおと叫んだオニキスと、アズマ。突き入れる腕と腕。それぞれに纏うオーラと覇気までもが一瞬に競い合い、周囲の死体であったり石屑を跳ね飛ばす。炎の柱はそれらに掻き消されることなく二者を呑む。否、実際に呑まれたのは一方のみであった。只人であれば頭部が吹き飛んでいよう拳撃を叩き込み合いながらも、オニキスは柱の接触の瞬間まで引き付けたうえで再び霊体へスイッチ、爆風に身を紛れさせ間合いをすり抜けたのだ。

 どおう、

 空へ昇るのか。空から落ちたのか。爆撃じみた炎と光が炸裂し、最中に取り残されたアズマを灼く。
 眩き炎の渦が止まぬうちから踏み出してくる様は変わりない、ようで、確かに乱れた足捌き。剥き出しの足首へとついに赤い糸が絡みつく。ヨハンがグラナトに応じ唱え上げた魔法、その熱の一部を加護として掠め取ったエンジの賢い君の糸は分厚い炎柱の中をも燃え尽きることなく突き進んでいた。
「アァ……つーかまえた」
 ざりざりざり! と、結んだ一点を中心に覆い広がるは毒性の宝石。
 鱗のようなそれ。或いは裸足を彩る、真っ赤な、靴――死ぬまで踊り続けねばならぬ呪い。先刻はひと振りで軽々縛めを断ち切ってみせた蹴りはばらばらと鱗を落とせど精彩を欠き、糸の続く先、エンジのもとまでは微かな熱風しか届かない。その風をライヴスの風が吹き返すことで打ち消し、重ねて飛び立ったディアンナの氷の矢が次の手へ出遅れるアズマを一歩、二歩と押し込む。
「たーのしいネェ。楽しい」
『……』
 十指を躍らせぐねんぐねん複雑な軌道で、赤糸が纏わる炎をもぶつけんとするエンジ。煩わしげに腕を振るって氷を、風を、炎を払うアズマ。アズマは押す、ではなく引く――掴む糸を勢いよく手繰り寄せ己の間合いに持ち込むことでエンジを屠らんとするが、ぐおうと引っ張り寄せられながら当の狼は大笑い。空を飛んでる! だとかなんとか。
 だあん、と、突如として間に迫り出した岩壁が二者の激突を阻んだ。
「スナーク、やべー奴ばっかだな……!」
「ハハハ! イイぞ、魔法使い!」
 ヨハンの魔法だ。糸がぴんと突っ張ることで跳ね上げられ高く、更に高くへ放り出されるエンジは宙でくるくると身を丸め、審査員も満点を出すフォームでアズマの頭上を飛び越えるついでに鋭利な鱗片を追加で放出する。眼前に迫る壁と、上からの強襲。さしもの強者とて両方を同時に処理することは出来ない。
 迷いなど無い。一拍と待たず、アズマの拳が砕いたのは岩壁の方であった。
 スローイングナイフよろしく肩へ突き立つ鱗片。一方で崩れ落ちる岩の合間を真っ赤に染め上げるのは、既に飛び立っていたグラナトの猛火。火炎と戦の神は戦場を、敵の力量を軽くはみない。"予め、壊されるのは想定の上"で重ねられていた連撃は荒々しく獲物を喰らう竜の咢の如し。
「判断を誤ったと思っているか?」
「どちらを選んでも同じこと。あなたの台詞を真似させていただくのなら、」
 ――いずれ辿り着く結末は、死。
 ただのひとつであると。此方はもうひとつの選択に備え、空からの追撃役として飛び込んでいたオニキスの全勢いを乗せた拳が真上から潰す風に叩き下ろされる。燃える礫伴う炎に巻かれつつ、身を捩り頭部への直撃をこそ逸らしたアズマであるが、結果として肩に刺さっていた鱗片を打ち込む形となったオニキスの一手は相乗効果で痛打となったろう。
 強力な毒が巡り始める。
 大きく振り抜かれた剛腕は、龍神を捉えることなく空を切った。風だけが切迫した悲鳴を上げて。
「おや。内側までは鍛え上げられませんでしたか」
「賢い君の毒は特別製だからなァ……」
 オニキスとエンジ、赤糸の張り巡らされた宙を蹴って渡るという曲芸を披露し味方陣営へと着地する二人。間に立つグラナトの手に炎より戻り来た剣の銀は、燃える大地を踏み消しながらゆらり現れ出る男の姿を映している。
 引き抜かれた鱗片が放られれば、ジュッと溶けて液状を通り越し気化した。
「さあ、根性比べといくぞ」
「へっ、得意分野だぜ!」
 遅れずついてこい、と言われたヨハンは戦神の構えを真似ては、ともに迎え撃たんと剣を振り上げる。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

才堂・紅葉
「秘密結社『スナーク』、才堂紅葉よ」
六尺棒を構える

神武不殺
殺意を持って対すれば、より強い殺意に呑み込まれる
杖術の心得で鬼神の如き殺意と神速の戦闘域に対応したい
リーチと変化、体幹の強さで粘り強く致命傷を避け、勝機を待ちます【野生の勘、見切り、怪力】

切断または強打で棒が手から離れた瞬間が勝負時
未練なく手放し、相手の巌の護りの中心を敢えて狙い、真っ直ぐに蹴り込み

「絶ッ!!」

防御の固い場所ほど、逆に守りの死角になる
「孤塁を抜く」と言う師である義父の教えに従う
【グラップル、貫通攻撃、衝撃波、気絶攻撃、体勢を崩す】

「もう一つ!」
軋む体を鞭打ち、早抜きのリボルバーで追撃を狙おう【気合、早業、激痛耐性】


ユーフィ・バウム
猟書家アズマ、いざ勝負です。
【覚悟】はあります――
けれど、貴方に殺されるつもりはない!

戦場に濃く漂う魔力の粒子を拳に集め、戦います!
【衝撃波】を見舞い間合いを測りつつ、
敵の打撃を天性の【野生の勘】、培った【戦闘知識】を
駆使して【見切り】、【カウンター】の【鎧砕き】の
一撃を見舞う

相手は神獣の番人を殺める空手家、完全に避けるのは
難しいでしょうが、【激痛耐性】や他耐性で堪え
攻撃の手を止めません

【気合い】十分、【力溜め】つつ【怪力】の
拳や蹴りを打ち込んでいきますよ!

消耗させ、相手の隙を作ることが出来れば
【ジャンプ】で舞いつつの《トランスクラッシュ》!
ありったけのオーラを込めたヒップアタックで勝負ですっ



 ――秘密結社スナーク、才堂紅葉よ。
 ――同じく、ユーフィ。猟書家アズマ、いざ勝負です。
 神殺しの獣の進路に立ち塞がった二人の乙女は、敵であると同時に闘士としての振る舞いをした。名乗る紅葉は六尺棒を、ユーフィは両手を前へと構える。
 アズマの歩みが止まる。まだ距離のあるうちから感じられる圧はそのまま殺気であろう。肌身に感じながらも、身震いすることもなく踏み出す。それどころか、自分たちの気で押し返すかの力強い踏み込み!
「覚悟なら十分に。 けれど、貴方に殺されるつもりはない!」
「まったくです。勝つのはこっち!」
 神武不殺。呑まれることなく、紅葉の心を満たすは殺意より強き勝利への念だ。
 揃って翳す腕には魔素が渦状に纏わり、薙げば雷と炎とがアズマへ向かい飛び立つ。躱す、ではなく突っ切るアズマはさながら暴走列車といった突進をかますも、弾けた魔力の靄に紛れて左右へ散った二人を捉えることは叶わない。
 ひひゅんっ! と、色を裂いて鋭く過ぎるのは顔面狙いの鋼の棒。紅葉の方だ。耳スレスレで棒を掴み取ったアズマは軽い身体をぶん投げるが、交代に地を蹴り逆側より飛び込んできたユーフィの対処までは追い付かず。
「せぇいっ!」
 迷いなき踏み切りからの拳が胴へと入る。
 直に弾ける炎。しかし二、三発目を許しはしない瞬発の膝蹴りはユーフィを浮かせて。
「くっ……!」
 直撃を防げたのはひとえに、培ってきた戦いの経験あってのことだろう。咄嗟に腕をクロスし防御に移ったため骨までは持っていかれずに済むユーフィも一旦距離を取る。
 その頃には、突き出した岩を垂直なだけの足場と活用し着地をこなした紅葉が六尺棒を回していた。
「流石にやるわね。でも、」
 ――。
 "ついていける"範囲。
「そこはまだ、私の間合いよ!」
 途端、蒸気を噴く六尺棒が三節にバラけて伸び曲線に振るわれる。節と節とは鎖が繋ぐ。ガジェットの仕組みを採用しているのだ。飛び退く、打ち落とす、――反応の間を与えずぐわりと絡みついた鎖がアズマの腕を捉え、引く。
 はあああああ!!
 裂帛の気合いとともに、到底見掛けによらぬ紅葉の怪力は大の男を振り回し辺りへ突き出た岩々へ次々に叩きつける。じゃららららと音を立てる鎖はアルダワ特殊鋼製、人体が粉々になるであろう衝撃にも千切れはしない。
 その勢いを緩めさせるものは、やはりアズマの拳のみ。
 地面へ突き入れる剛腕をブレーキとし、深い溝を刻みながらも強引な減速をこなすアズマ。あちらが止まればこちらが引かれる、ぐんと急速に引き寄せられる紅葉はだが、これこそが狙いであったとでもいうのか焦りひとつ見せずに身を任せた。
 音が消し飛ぶほどの風の中だ!
 術は幾つもあったが、敢えて、スピードは殺さず構え待つアズマへと真っ直ぐに飛び込む。激突まであと数舜という段に至り、自ずから得物を手放した紅葉は身を捩り突き出す片脚一点にすべてを込めて。

「絶ッ!!」

 刹那、湧き起こった火花は闘志に呼応したかの如し。
 防御の固い場所ほど、逆に守りの死角となる――"孤塁を抜く"という師である義父の教えに従った一点集中の攻めは、アズマの蹴り足と交錯して爆裂する。
 ゴオッ、オオォ、
 獣の咆哮じみた爆音が轟いた。黒煙の流れた後に立つ影は、やはり、二つ。互いに倒れず、膝をつくこともせずに闘士は睨み合っている。違いがあるとすれば、その腹に開いた穴にちろちろと炎が燃えているか、いないか程度だ。
「ぐっ……ぅ」
 鉄の味。焼ける空気。
 呼吸の際の微かな上下だけでごぼりと血を零しながらも、くく、と笑った紅葉の双眸は自らに向かいひと跳びに詰める武道家の姿を映している。
 確実にトドメを刺しに――殺しにくる。そうくると、思った。
「もう、ひとぉつ!」
 拳が額に触れたか、触れないか。最早零距離といってもいい、紅葉が至近で引き抜くリボルバーが火を噴いた。
 銃身に彫られた紋章が青白き燐光を溢れさせ、一発いくらの銃弾は見事に剥き出しのアズマの臓腑を吹き飛ばす。代わりに紅葉は頭をシェイクされ宙へ投げ出されることとなるが、痛み分けにしたって上出来、だろう。
 戦い抜いた闘士の身を、魔力の風が包みこんでそっと地へ下ろす。
「……貴方の勇姿、たしかに拝ませてもらいました」
 羽織っていたケープを抉れた腹に落としてやり、前へ立つのはユーフィだ。この手に懸ける、と紅葉が心に決めたそのときより彼女のスタイルを崩さぬよう戦いの行方を見守っていたユーフィは、拳同士を打ち合わせ声を上げた。
 さぁ、まだまだこれからですよ。
「わたしの技もお見せしていませんしね」
 二つ結びを靡かせ、たっと駆け出す。真正面からぶつかり合えば対格差で振り払われるなどとはもう知っている。ならば、上だ。ロープやコーナーポストがない代わり、この場には魔力が満ちている。
 漂う粒子を抱き込むようにしてひとつずつ連れ――。
「ライヴスさん!」
「心得たわ!」
 高く空へ飛ぶのはそう難しくない、そこに神の力も重なれば。
 竜巻で舞い上がった身を反転させて、繰り出す――ユーフィのトランスクラッシュ! 所謂ヒップアタックではあるが、鍛え上げられた体と磨かれた技、そして心とが揃った一撃は砲弾級のパワーを有するのだ。
 敢えて背を晒す一瞬があるというのも、アズマに引くという判断をさせぬ要因となっていた。背を突き破る気で放たれたのであろう、狙いこそ的確な拳はユーフィのありったけの闘気と纏う風とに逸らされ、同時に守りに穴の生じたアズマはもろに受ける衝撃によって弾き飛ばされる。
「これがっ、わたしの、全力です……!」
『…………』
 降り立つユーフィは構えを解かぬまま。
 数度、地で跳ねたアズマはずざざざざ、と地を掻きスリップを止める。逆向きへ曲がった片腕を無理くり捻って、元の向きへと戻して。腹に垂れ下がっていた器官を邪魔だとでもいうのか自ら引き抜き、踏み潰しながら身を起こす。
『お前も、殺す』
 しかし。
「――も? 勝手に、殺すな、っつぅの」
 起こした身は直後には今一度仰け反ることとなる。
 ヒーローみたく整うまでを待ってやるほど甘くはない声、それに銃声はユーフィよりも更に後方から。ディアンナに支えられながらも二本の足で立つ紅葉のリボルバーが、めらめらと立ち昇る魂のようにも硝煙を上げていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ハイドラ・モリアーティ
【CHAOS】
――フィジカル最強は困る
ぶっちゃけ俺はこの中で一番足手まとい
足は速いけどあの蹴りの前じゃあ無駄だろ
【AISEN】――エコー、頼んだ
お前は派手に暴れてくれ

俺にゃ筋肉はねーけども頭脳はあるもんでね
神様たちに指示だ
斧の神様は風を起こせ!あの野郎を閉じ込めるようにな
おい!ディアンナ
あのガチムチカラテ野郎がブチ破れないように
風ごと氷漬けにしろ!
んで、その無鉄砲ボーイは俺のタイミングで炎を出せ
密閉した状況で冷えた空気を一気に熱するとどうなると思う?
――爆発すんだよ
まさかこれでくたばるなんて思ってねえさ
頭使えよ筋肉野郎

いやー頼もしい仲間ばっかりで何より!
チームプレー、上手だったよ。ダーリン?


鳴宮・匡
【CHAOS】


……血の気が多いなあ
いや、前に出てくれる分にはいいんだけどな

【影装の牙】で模る銃器は手に慣れた自動小銃
自身の防御(装甲)に回す“影”もつぎ込んで攻撃力を高めるよ

ハイドラの仕込みが成るまでエコーの援護を主体に
相手の動きは格闘に似る
動きの要になる関節部を要所で狙い撃てば
完全にとはいかなくとも、勢いを削げるだろう
――あいつが「もう死んでる」から死なないのは知ってる
それでも傷が少ないにこしたことはない

……ああ、そうだな、爆発くらいじゃ倒れないよな
――だから次の手をちゃんと用意してる

追い打ちの一手だ
合わせられるかとか聞かないぜ、ニル
狙いは――そう、今撃ったところが一番脆い
頼むぜ、親友


ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
【CHAOS】
あー、所謂脳筋って奴?
こういうのの相手は得意だぜ
何しろ考えてることが単純だからな

天罰招来、【此岸の境界】
さァ前に出ろ、好きに戦え
恨む相手は奴一人
勝手に奴の動きを阻害するように立ち回るから、有効活用してくれよ
質量はあるが死人の情念だ
斬ろうが殴ろうが即復活だし、盾でも奇襲でも好きに使ってくれ

ハイドラの大技が決まるまで私は防衛に徹しよう
神々も出番までは下がっていてくれよ
呪詛の天幕に氷の障壁、必要とあらば貴様らの前にも呪詛を呼び起こす

任せろ、匡
呪詛を指揮して、傷に向けた一斉攻撃だ
意思統一?そんなもん決まってる
奴が今まで殺めて来た連中と一緒だ
そっくりそのまま返してやるよ
――「殺す」ってな


エコー・クラストフ
【CHAOS】
なるほど……いいな
ただ直球で殺意をぶつけてくる相手。攻撃も搦手はない、と
実に、殺すに相応しい

生憎、ボクは多少体を壊された程度では止まらないぞ
【彼岸の端にて引き返せ】。壊された所からすぐに修復し、血の剣で戦力を増やす
さぁ、互いに有りもしない命を削り合おうじゃないか!

……なんてね
前なら一人でこうやって戦おうとしただろうけど……今回は相手も相手だ。それで勝てるなんて思っちゃいない
本当の狙いはハイドラと、その計画に気付かせないこと。派手に暴れてたし気付かなかっただろ
ありがと、ハイドラ。その補助の力、助かったよ
そして、後は任せた。協力とかはまだ得意じゃないからね……



「――で、だ。俺の言うことを耳の穴かっぽじって聞きな」
 フィジカル最強に太刀打ちするなんざ、それこそ魔法でも使えなけりゃやってられない。
 策がある。距離感がバグったかの円陣を強引に組みながら、神々へとそう耳打ちするのはハイドラであった。時折流れ飛んでくる溶岩の塊なんかをひょいっと避ける。飛ばしているのは、今もリアルタイムで殺し合いを繰り広げている素晴らしきチームメンツとアズマ。
 他の三人に比べれば直接の戦闘に関しては一番足手まとい――、少なくともハイドラ本人はそう自負している。だからこそ頭脳を使えって話! ハイドラの、肉体面で弱みがある事実に腐るどころか別な強みを活かす方針に三柱も熱心に耳を傾ける。
「……あら、その実験、TVで見たことあるわ」
「へぇーぇ案外俗だな。神様のオススメチャンネルは?」
 たまぁーにちょっと脱線しちゃったりもするが。
 ともあれ、こう見えてハイドラ自身も戦いに貢献している。エコーを通して、だ。AIZEN、ヒュドラの毒素による能力強化は絆の深い間柄だからこそよく浸透する。ゆえにエコーは常人ならば到底、動体視力の追い付かぬアズマの動きに出遅れることなくついていくことが出来ていた。
 ひゅおんっと耳の真横を過る正拳は外れたのではなく見て、躱した。呪剣を突き入れるが腕で阻まれる。この距離だ。瞳こそ見えぬが直球でぶつけられる殺意はびりびりとエコーの身を焦がす。
(「なるほど……いいな」)
 実に、殺すに相応しい。
 これほど踏み込み、懐に入られれば相手の間合いである。そんな状況を都度崩し、仕切り直しへ持ち込むのが後方に控える匡とニルズヘッグ。
「……血の気が多いなあ。いや、前に出てくれる分にはいいんだけど」
 アズマが次の手を打ち出すのを先読みしつつ匡の放つ銃弾は、動きの要――関節部を狙い、狙えぬときは突き出された手やら足やらを弾いてと臨機応変なサポートをこなしている。いきなり心臓を抜かせてくれる相手ではないと正しく認識しているし、なにより、重きを置くはエコーの命だ。
 命。なんてのは死んだ身に対しておかしな話かもしれないけれど。
(「もう死んでるから、とか。そんな理屈で動くのも嫌なんだ」)
 傷が少ないにこしたことはない。チームで動くのなら、尚更。狙い澄ます黒き影の模る銃は手に慣れた自動小銃の姿をして、ユーベルコード製であるからこそ念ひとつでカスタマイズ出来る防御を捨てた高火力が、口径の大きさからは意外なほど力強くアズマをノックバックさせて。
「向こうは向こうで所謂、脳筋って奴なようだ。ああいうのの相手は得意だぜ」
 何しろ考えてることが単純だからな――、口にしたニルズヘッグの言葉通り、見る限りアズマは何でも殴る蹴るで解決しようとする節がある。これまでは実際にそれで解決出来ていたのであろう。しかし今はエコーの俊敏な身のこなしに空振りを量産しているし、匡が撃ち分ける銃弾の見分けもついていないようであるし。
 そこにもうひとつ。
 とんとん、と黒槍の石突で足元を叩き、此岸の境界にてニルズヘッグが喚ぶ呪詛を足せばどうなるか。
「さァ前に出ろ、好きに戦え」
 腕や足、時たま頭がもげた死者がぐおうっとアズマに向かい飛び掛かる。彼らは質量こそ持つが、大元はただの死者の情念の塊に過ぎない。壊されても再構成され、恨みによって動く――そして恨む先は当然、この場にはアズマひとり。
「……ふん」
 一気に前線に流れ込んできたそれらを鬱陶しげに横目に見るエコーはだが、引き寄せ、踏み倒し、アズマの闘気や格闘、広がる炎からの肉の壁として瞬時に活用してみせる。代わりにボコボコに殴り殺される様に同情なんてものはない。そんな暇があれば剣を振るう。
 ザザァッ! と、呪詛ごと貫く刃先がアズマの肉を捉え、代わりに放たれた拳が数体を粉砕する。
 衝撃波で吹き飛ぶ肉片。それを浴びつつも瞬きひとつせずエコーが引こうとした切っ先を、アズマの手が無理やり掴んで逆に引き込んだ。 ――もう片手が拳を握りしめて。
 咄嗟に呼び出す戒めの鎖が。匡が放った銃弾が。不死殺しを拘束、妨害するも、進みだした拳撃が僅かに速く辿り着く。めきゃっと、エコーは己の胸の下で骨が上げる叫びを聞いた。
「ぁ、」
 聞き慣れた音。
 今のは鎖と銃弾が無ければ心臓コースであったろうとも体感で分かる。クリアな思考に反して震える膝がエコーを蹲らせるが、アズマの追撃を阻むは折り重なった霊魂らの編み上げる幕。これも、ニルズヘッグの力か。
(「悪趣味」)
 本当に――――、本当に。後で、絶対――。
 一秒、幕を回し蹴りで散らしたアズマがエコーへ迫る。
「く、 ……ふふ」
 二秒、けれども当の少女は、俯いて笑いにも似た息を零していた。

 不意に。
 ごぼごぼとマグマのそれよりも耳障りな音が立つ。

 三秒と経たず。エコーの足元。流れ出た血だまりが蠢き、ひとつの剣の形を作り上げた。同時に剣は、ザンッとひとりでに宙を旋回して叩き込まれんとしていた追撃の手を斬りつける。
 蹲る膝を濡らしていた血はもはやない。
 ゆっくりと顔を上げる凍えた、青の、時の止まったようであった瞳は尽きぬ戦意にぎらりと熱を持って感じさせる。立ち上がる。自らのもとへ舞い戻った血色の剣を手に取って。
「殺し合いはこうじゃなきゃ。 さぁ、互いに有りもしない命を削り合おうじゃないか!」
 死者。デッドマンが、多少壊された程度で止まる筈がない――と。声を上げた拍子に口元から垂れ落ちる血もがまた、剣の身幅を広げる糧となる。対するアズマは何を思ったろうか、運足から自らの有効射程へ飛び込まんとステップを踏むが。
「おつかれさま」
 ぽんっ。
 よろめくエコーをハイドラが支え、抱き留める。
「……なんて、ね。今はこの通りだから」
「一片だってガチムチカラテ野郎なんかにくれてやるかっての」
 前ならひとりで戦おうと、ゾンビアタック上等で戦えただろうけれど、今は相手が相手でパートナーがパートナーで。そのパートナーが「ヒーローは協力するもの」と願うのだ、無下にするエコーではない。ならば何故、ひとりで前衛を担ったか――それもまた、ハイドラのために他ならず。
 ハイドラに引かれたエコーが一歩、二歩と後ろへ退いたその空白を埋める風に巻き起こる力の奔流!
 今だやれ、なんて陳腐な呼び掛けは不要。そのためにわざわざ作戦会議を終えたのだから。アズマからは三柱が銘々の得物を構え、魔術を解き放つ様が見えた筈だ。
「さぁ、高くつくぜ」
 だが急激に白く凍り付き始める視界に、牙覗かせ嗤う女の顔までは見えなかったろう。
 ライヴスが暴風を叩きつけ、その風がアズマを包みこんだ瞬間にディアンナが雨を混じらせ凍らせる。作り出した即席の密閉空間をヨハンの炎が一気に熱することで、大爆発の出来上がり、と。
 ハイタッチの音が拍手のようだ。
 薄れゆく炎の中、立つアズマの影が"仕上げ"に揺れる。
 直後には、まるで噴き出す血がそのまま固まって、そこに生えたかのような――血色の剣がずぐりとその背から突き出していた。指先ひとつの指示でそれを投擲したエコーの再生力はヒュドラの毒素も相俟って凄まじいものがあり、呼吸は既に整っている。骨の方もすっかり。
「……これで良かった?」
「バッチシ。チームプレー、上手だよ。ダーリン?」
 いやー頼もしい仲間ばっかりで何より! と、声を弾ませるハイドラが飛びついたってもうよろけもしない。くるくる、いっしょに回ってしまう程度はするものの。
 和気藹々とはしゃいでいられる暇が何故あるかって、二人の眼前にはドでかい氷の壁が聳え立ち。更にその壁を幽霊特権で通り抜ける呪詛の塊たちがひゅんひゅんとアズマへ群がっているからだ。
 尚も立ち続けるアズマの、膨れ上がる殺気が触れる端から魂を霧散させてゆく。ただしこちらは無尽蔵、それに。こうしたケースに備え次の手を用意しておく。そんなもの、"戦場傭兵"としては息するような思考回路だ。
「さて、想像通りにまだ立ってるわけだけど。合わせられるかとか聞かないぜ、ニル」
 怨嗟の叫びを引き裂くみたくに尾を引く銃声が、吠える。
「任せろ、匡」
 頼むぜ、親友。射手である匡からそう託されたニルズヘッグはどこかくすぐったそうに屈託のない笑みを返せば、長槍の穂先を向ける先、銃弾の後を渦巻く呪詛らに一斉に追わせた。
 狙いすましたようなタイミングで崩れ落ちる氷の壁。降り注ぐ欠片の合間を悠々と飛ぶ銃弾は、深海のように昏く、静かに、先にエコーが刻みつけていた傷へと正確に着弾する。アズマとて棒立ちをするわけではない、引き抜くまでもなくどろりと流れ落ちた血の剣に構うことなく、拳で弾丸を打ち返そうとしていた。
 しかし、影装の牙はその拳もを喰い潰すほどの力を秘めている。――すべてを滅ぼす。呪いといえばこれもまたその一種であろう、指の間から突き進み片腕を大きく弾き飛ばしてしまえば、一瞬だとて胸はがら空きだ。
「よぅく心を揃えろよ。私と、貴様ら。そっくりそのまま返してやるとしよう」
 ――「殺す」ってな。

 今に至るまでアズマに殺められてきた者たちの、嵐のような絶叫。
 どおうっと飛びついた呪詛は貫通した傷口を更に大きく、大きく、上と下とを繋ぐ箇所が背骨しかない状態へ抉り抜いた。ざあざあと降り落ちる血雨が即座に凍ってつららと化すのは、ニルズヘッグの怒気にあてられたためであろう。
『殺……』
「おら、出番が終わったならとっととはけな」
 踏み出す足でぐらりと傾くスカスカのアズマは、BANG! とご機嫌な指でっぼうを向けるハイドラの声を最後に崩れ落ちる。そんな女の斜め後方、エコーはひとつ息を吐いた。憎きオブリビオンが倒れたとなれば――次は?
 ハッとして振り返るのはニルズヘッグとハイドラ同時。
「「げ」」
「…………」
 が。
 当のエコーはふい、と顔を背ければハイドラの傍らへ並ぶ。その手に刃物はない。貸し与えてくれた力への感謝を口にして、そのまま男衆へは背を向け隣に肩を寄せ歩いてゆく。
 ぽかん、と見送るニルズヘッグ。
「もしかして、認められたってことか……?」
「いや、あれだけ前でやり合ったんだ。単に貧血症状みたいなものだろ」
「だよなぁ~~」
 しかしあくまで現実的な匡の見解に、はあぁと息を吐くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロキ・バロックヒート
あはっ本当に神を殺してるんだね
でもおかしいなぁ
じゃあなんでかれら三人組は死んでないの?ねぇねぇ
もしかしてさぁ―もう殺せないの?
顔を覗き込むようにひょいと近付く

…あぁ
【影法師】が居るってことはきっとしくじったんだね
俺様じゃなくて“神殺し”がさ
しょうがないなぁ
どうしたら殺してくれるんだろう
こっちも壊してあげればいい?

黒い天使が瓦礫となったビルの一部を持ち上げてる
おーいいねそれぶつけよっか
あれに魔法を篭めればすごいことになるんじゃない?って
三人組にわくわく提案
ほらぶっ潰してやろうよ
影が次々持ち上げる瓦礫があめあられだけど
こんなものじゃ壊れないでしょー?
早く殺しにおいでよ
私は動けないからさ
ねぇ早く早く


ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

いいじゃない!シンプルで!
じゃあボクは頭を使ってスマートに戦うよ!
引き続き炎属性付与よろしく!あとバフとか使えないの?
攻撃力二倍とか防御無視とかダメージ無効とか確率即死とか
え、無い?んもー、つっかえないなあ!

●避ける。殴る。(ボクの考えたスマートな作戦)
空中を走る
第六感で攻撃を避ける
UCで殴る
ドーンッ!!

キミは確かに強い
でもそれよりもっと強いものがある
それが何か分かるかい?
そうそれは友情の力だよ!
この拳に燃え盛る熱い友情の炎の力とボクの力が合わさってキミを倒す!

…ってな感じに言うとなんかいい感じにボーナスが入るってボクの第六感が言ってる!
ほら合わせて合わせて!




「お出ましだね。そこのキミ、引き続き炎属性付与よろしく! あとバフとか使えないの? 攻撃力二倍とか防御無視とかダメージ無効とか確率即死とか」
「んなもんあったら自分に使ってらぁ」
「んもー、つっかえないなあ!」
 もう貸しませーん、うそうそうそだってーな相変わらずのやり取りをするロニとヨハン。片方はつい先刻まで死の淵を彷徨っていたとは、まるで思えぬ元気さだ。
 神を屠る獣。
 だが、"絶対"とはいかぬらしい。対峙して改めて、そうと知れたロキの胸に芽生えた感情は安堵には程遠い、――……落胆、か。
「ご大層な肩書だけれど。かれら三人組は死んでないの、なんでだろうね?」
 ひひょいっ。これといった構えもなくアズマの近くへ歩み寄るその様は、どう見たって自殺行為だ。
 只人であれば触れるだけで気を失いそうな覇気に踏み入り、ロキは動じた素振りなく。
「もしかしてさぁーもう殺せないの? ねぇねぇ」
 黒い仮面の奥でも覗けそうなほど近く、覗き込んだ瞬間。
 耳の直ぐそばで爆音が弾ける。中かもしれない。これはアズマの拳と炎の魔法とがぶつかり弾けて生じた音と熱?
 衝撃でくるくる宙を舞いながら「わおこわい」とロキは大した焦りも見せず、逆に、見かねて相殺を試みた――炎を放ったのであろうヨハンがわたわたして地上から己を仰ぐのが微笑ましいくらいだ。
(「あーあ」)
 誰もが目の前の死を厭う。後ろめたい思いをしたくないから? 夢に見そうだから? ――結局、人助け(有難迷惑)の動機なんてわからない。
 人間の身体は脆いから、たった今ので上手く音が拾えなくなったらしい。だらぁ、と、伝い落ちる血が耳の穴からだけではないのは分かっている。というか、そう仕向けたのだし。
「残念だよ。お前はまたしくじった……いいや、もう"無理"だろうな」
 チャンスは互いに一度きりだった。集った、特に猟兵の力の程、知らぬロキではなく。
 伸び上がる影を尾のように広げ、宙で体勢を整えるロキが溜息がちに呟く。自殺に見えたそれが他の意味も持つ――死に近付くことが即ちユーベルコードの下準備完了だとか、当人以外は知る由もないだろう。お前ことアズマもそうだ。追撃のため真っ直ぐ追いかけてきている。
 真下を通るならぼたぼたぼたと色々なものが零れてくる。うわぁーいたそ、とそんなロキの赤黒い影をぱっと潜り抜けたロニは、飛び出した刹那にアズマと真正面から打ち合った。
 ごおう、と熱風が膨れ上がる。
 通常ならば軽いロニの方が分が悪い、浮き上がりかねない身体を押し留める吹き下ろしの風はでは誰かの魔法だろう。
「便利だよね」
 ここぞとばかり撃ち込まれる炎弾は散々バカにしちゃったヨハンのもの。健気なことで。どさくさ紛れで自分たちのことも狙えるだろうにそうはしない真面目な神様にふふと笑いつつ、赤に紛れて数度、神と神殺しは拳をぶつけあう。頭、胸、脇腹でさえ、……そう簡単に抜かせてくれないなんてのは承知の上。
 数瞬とて足を止めさせることが連携の足掛かりとなる。
「キミは確かに強い。でも、それよりもっと強いものがある」
 それが何か分かるかい?
 何も答えぬアズマにロニは敢えて問うて、ほんの束の間その背へ目線をやれば次の拳が繰り出される風圧にも身を任せ後方へと飛んだ。追い、前へと踏み込んだアズマの足は、本来ならばここで横へ飛び退くのがベストであったろう。
 急激に膨れ近付く影。
 飛来する巨大な瓦礫が降りかかるのはほぼ同時のこと。

 光景は、隕石の雨のようでもあった。
 ひとつで終わらず、次々に。およそ人並外れた力で遠方より投げているのは新手ではなく、影――どこかで見た姿かたちをした、天使めいた翼を生やした黒い影の人型だ。
「しょうがないよね。殺してくれないなら。次は、俺様が壊す番だ」
 ロキの声が彼方と此方で重なって響く。 そう、これこそが発現したユーベルコード。半ばで終わった神殺しが呼んだ影法師。
 ぬるりと宙を泳いだ本体の方は、二人に比べ後方にて構えていた神々の肩に気安げに手を触れた。ギョッとするライヴス、ちいさく悲鳴を上げかけるディアンナは当然というか血だらけの有様に驚いているのであろう。だがロキは何食わぬ顔をして、降り止まぬ瓦礫で一時姿の見えなくなったアズマのいた場所を指した。次に、瓦礫を持ち上げる自らの影を。
「あれに魔法を籠めればすごいことになるんじゃない?」
 わくわく、弾む声色で提案をする。
 ぶっ潰してやろうよ! と、危うさすら感じられる誘いに一番に応じたのはヨハンだった。
「よく分からねーが、無駄には出来ねぇだろ!」
 ひゅおんと空に火花が散る。魔法が翔けて、渦が巻く。それが積み上がった瓦礫を真っ赤に染め上げる。影の天使をもだ。超高温で熱された岩が溶け、草が結合を強め、そうして出来たドームへ雷が落ち、と二柱も加わり総攻撃の様相。
 映画なんかじゃここで「やったか?」と気を抜くところ。
 しかし。
「こんなものじゃ壊れないでしょー? 早く殺しにおいでよ。ねぇ」
 猟兵は場数が違う。ロキが緩やかに呼び掛けたその瞬間、すべての瓦礫が一度に跳ね上げられて礫と化し一同を襲う。しゅうううう、と、煙る中央には変わらずアズマが二本の足で立っていた。
 突き出した拳を下ろし、男は歩み出る。
 とはいえ傷は随分と増えている。濡れた道着を染めているものは、今や決して神々の血だけではない。危険な礫はディアンナ、そしてライヴスの草と風とか絡め取り。影が放る瓦礫を足場にして既に高所を取っていたロニは、自前の空飛ぶ力も発揮して一直線にアズマへ飛び込んでいた。
 なんとも美しき連携じゃないか!
「シンキングタイムは十分かな。そう、答えは友情の力だよ――……ヨハン!!」
「はっ!?」
「もっと炎足して! ボクに! 合わせて合わせて、ほら決め台詞用意してるんだから!」
 この拳に燃え盛る熱い友情の炎の力とボクの力が合わさってキミを倒す! とかなんとか言えば大体上手くいくって第六感が告げているので。
 ユウ、……ジョウ……? と脳内の辞書を引きながらも反射で素早く練られる魔法が、包むロニ自身を火球と化させた。
 振り返りざまにアズマの放つ上段の回し蹴りと、ロニの神撃とがかち合う。きゅぴんと十字に光が生じ、インパクトで地面が波のようにめくれ上がる。たなびく炎はだが失せず、削れるロニと合わさってキラキラ光の粒子が舞う。
 直後には互いに数メートルは吹き飛んだ両者だ。
 跳ねて転がるロニ。一方の、焼け爛れながらも踏み込むアズマの足首を、音もなく這い寄っていたロキの影がぐんと引いた。
 体勢を崩し、僅かに逸れた拳はピンク頭を掠めて地を叩き割り、――入れ替わりに、突き上げられた炎の拳がアズマの顎を打った。衝突の瞬間に火勢がごおと強まったのは、きっとヨハンが分かってきたからだろう。友情の見せどころってやつをね!

「……と、思うんだけどどう?」
「んー。俺様そういうのよくわかんないや」

 骨の奥まで揺らした確かな手応えを得つつ、とはいえ強烈なカウンターで空を舞うことになったロニの身体はマグマぽちゃの前に天使の影がキャッチしている。
 今日はよく飛ぶ日だ。ロキ本体なんて出血多量で既に自力では動けないほど、二人してボッロボロになりながら、まだ生きてるなーって笑ったりなんかして。もう十分働いた気がするし、帰ってもいいけれど。
「でも、盛り上がってはきたんじゃない?」
「うん。お楽しみはこれからだよね」
 他人事っぽくロキが返せば、ロニもにまりとして頷く。心配顔で駆け寄ってくるよわよわな彼らと共に、もう少しだけ遊んでいくとしよう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

片空・炯
【片空】
(よぼよぼ)(死ーん)
……はっ
わたくしがちょっと遠くへ旅立ってる間にすべてが終わっ
…てないな、うん
誰だあれは。拳ひとつでわたくしがぽっきりしてしまいそうだけれども
うん?えっすぅちゃんまた前に?出るの?
わたくしを守るために…!(じぃぃん)
いやまあ本当はわたくしのお役目なんだが。兄ちゃんなんだが。

さっき絞られすぎた炎だけれどまあまだ大丈夫…なはず
というわけでよろしく
すぅちゃんの後ろをちょこまかついていきます
(ごりごり使ってもらう炎)(しおれていくわたくし)
いやぁ本当げんきだね、かわいいね
すぅちゃんの勇姿は確とこの目に焼き付けるからね

★全てが終わった後そこには
干涸びた竜神の干物が──!!


片空・雛
【片空】
戦闘経験薄いオレでもわかる。あいつすげぇ強ぇな
一筋縄じゃあ行かないだろうが、協力しあえば問題ねぇ!

つか兄さん大丈夫?さっき結構無茶してたろ、休んでていいぜ?
……本当に平気?死んでなかった?
ま、またオレが前に出て守ってやるからさ!
そうそう、ちゃんとオレの後ろにいてくれよ!

さあ氾濫し、横溢せよ!!
光の弾を作り出して撃ちまくる!
……はあ!?あいつ素手で魔法の対処したぜ!っははは!面白ぇ!!
なら数の暴力ってやつだな、目一杯!作れるだけ作ってやるよ!
光の群れに紛れて、狙うは大鎌の一撃
刈り取れ、報復丸!!

……って、兄さんはどうなった?
に、にいさあああああん!!!



「あいつが、猟書家……! オレでもわかる。すげぇ強い奴だ」
 強敵の登場に闘志を燃やす雛と。
「うんうん……そうだね……」
 戦う前からよぼよぼの炯。
 前座戦から全力でサポートを行った分、積み重なった疲労に魂ここにあらずで妹の声に自動反応するおもちゃと化していた炯は、彼女の愛らしい手でぺたーんっと頬を打たれてようやくハッッとする。
 ――――。
 ――ここは!?
 意識を取り戻せば猛烈に感じる熱気にあせあせと左右を見渡して気遣うことは、勿論、愛しの雛の無事。……当の雛はといえば、そんな炯の様子に不安げに頬を引っ張った。
「兄さんったら何も言わねーもんな。さっき結構無茶してたろ、休んでていいぜ?」
「あ、ああ……よかった、わたくしは平気さ。すぅちゃんが何事もなくて――誰だあれは」
「……本当に平気? 死んでなかった?」
 皆より数段遅れでアズマの覇気にぎょっとし身構える炯を、素で案じてしまう雛。
 静かに心に誓う。自分がなんとかしなくては、と。そんな二人のやり取りを待ってはくれぬ神速の踏み込みを視界の端にでも捉えれば、即座に引き摺り出した報復丸を振るって初撃と弾き合う。
「すぅちゃんっ」
「ほら、守ってやるって言ったろ。ちゃんとオレの後ろにいてくれよ!!」
 当然、軽い雛の身は大きく吹き飛ばされてしまう。
 あわや巨岩に激突、だが飛びつく勢いで炯がカバーする。兄を守るのが妹なら、妹を守るのもまた兄。ボディでブロックしたため報復丸のかなり鋭利な柄のあたりがぐさぁっと腹にきて脂汗がマシマシになるも、なんのその!
 ぷるぷるする両腕で雛を送り出せば、炯はぐっと親指を立ててみせた。
「うん、じゃあ、みっちりと後ろから見守ってるからね……!」
「そこはしっかりと、とかさぁ……まーいいや」
 兄のおとぼけ感を今更ぼやいたところで。首を振り、前に立つ雛は年相応の小柄さだが、振り回す大鎌形態の報復丸はそのリーチを多分に増してくれている。
 流石は歴戦といえようか、無闇矢鱈に近付く気もなく――力のほどを見極めんとしているかの――間合いをはかるアズマに対して、雛はにやりと口の端を上げた。そっちからこないのなら、好都合。
「いくぜ。――さあ氾濫し、横溢せよ!!」
 ぐるんっと輪を描き報復丸を振るう。
 するとその軌道に生ずるものは、影とは正反対の眩さ――大小様々、光球の群れ。
 Glitter! ランダムに飛び立つ光は弾丸と化してアズマへと突き進む! 真っ直ぐのもの。交差するもの、命持つように螺旋を描くもの。複雑な幾何学模様は美しく。
(「確とこの目に焼き付けよう……」)
 凛と立つ雛(しかも自分のため!)、彼女の心模様の如き眩さ持つ光たち。そんな輝きに彩られる雛、それに雛――……静かに手を合わせ心内で拝む炯は、まってほしい、これでも水面下で貢献している。
 よれよれ体に鞭打っての再度のユーベルコードの行使。雛のためにと煉獄の炎を呼び起こし、そっとその身へ纏わせる。お兄ちゃんとして、このくらいの無茶はさせてほしいのだ。
『ふん』
 光弾の着弾寸前となれど仁王立ちするままであったアズマは、さてどのように切り抜けるものかと思われたが。片足を引き、片腕を引く。そこからの正拳突きの一発で、第一陣を霧散させてみせる。
 ごおう! 震える大気と風は雛の前髪をも掻き上げるほど! ぱちり、瞬いた雛は、――くはっと息を吐いて、笑った。
「っははは! 見たか兄さんあいつ素手で魔法の対処したぜ、面白ぇ!!」
「お、おもしろ、しろいかな……?」
 距離のおかげで減衰した風に煽られただけでも引き倒されそうになっていた炯は、割とマジで肝を冷やしながらも、同じだけ本気で活き活きとした妹の様子を嬉しくも思う。
 なにせ雛ときたらすこしも諦める気なんてない。「なら数の暴力ってやつだな!」勝負事を心底から楽しむ子どものように、報復丸を目一杯に回してより多くの光弾を呼び起こすのだ。
 作れるだけ。燃え尽きるほど!
『……無駄だ』
 時を同じくして駆け出すアズマ。そのアズマの足跡を追って、時に先回りして炸裂する光が戦場いっぱいに満ちてゆく。総数数百ともなれば、光景は光のシャワーの如し。光はただの光ではなく、煉獄の炎がともに弾けることで飛び火めいてあちこちを巻き込む。
 盛大に消費されてゆく炎に比例してしおれる炯。けれども、それでいい。
「いやぁ本当げんきだね、かわいいね――ひぇっ」
 ちょこまか……と、雛の後ろへついていこうとしていた炯はアズマの剃刀のような蹴りが進路上の大地ごと引き裂くのに思わず立ち止まった。しかしその判断が良かったともいえる、アズマの攻撃後の僅かな体勢の乱れを狙い、雛が間へ滑り込むことが出来たから。
「もう、もっと離れてろってば」
 だが、上出来だ。
 虚弱気味な兄の性質を誰より知っている。そして守ると決めている、あとこうやって自分についてくることも。ゆえに迷いなき鎌の大振りは光の奔流の中であれ正確に敵を捉えた。
「刈り取れ、報復丸!!」

 ザザンッ!

 アズマが地面を割った一撃とまるで遜色なき鋭さの、一閃。
 ばっさりと半身を裂かれつつも退かぬカウンターが雛を襲う。しかし、けれども、ここぞとばかりに今日一で燃え上がる煉獄の炎がその手指を焼き焦がした。
 強襲さえ不発に終わらせれば、雛もド素人ではない、更にと斬りつけながらの旋回後退で踏み込ませずに仕切り直しに持ち込む余裕がある。
「助かったぜ、兄さん」
 ぜえ、と荒い息をつく炯はいっとき険しい顔をしていたが。声と、止んだ光の中に目立った傷のない雛の姿を確認すると、ほわっと表情を和らげた。
「すぅちゃんに悪い虫を寄りつかせないのは、譲れないわたくしのお役目だからね……!」
 ただし猛烈によれよれ~っ度は上がっているので格好はつかない。
「……! 無茶ばっかしやがって……!」
 ちなみにここで全力を振り絞った結果、炯は後ほど変わり果て干からびた姿で転がることとなる。
 絶叫する雛の声がむなしく響くなどするが――、とはいえそんなことは炯にとって、些事だ。雛が元気で、その雛の隣にいられる自分。激戦の後にも別たれず二人でいられることが、なにより幸せで、大切なことだから。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

朱赫七・カムイ
⛩神櫻

サヨ!私を想って…
私だってこんな奴に殺されたりなどしない
守られてばかりいられない

神罰…魔法!?それはいける
勿論だ
頼られている
再び君と並んで戦えることがこんなにも嬉しい
何時だって私達は共に
…知らぬ筈の記憶

サヨ
接近に気をつけて
カグラ、結界をサヨへ
防ぎ衝撃を和らげてサヨならあの拳ごと斬れる
『再約ノ縁結』
私の友を穿つ拳を衝撃を消す
―その攻撃はあたらないと約す
全てが龍に味方するように
意図を結びつける

第六感と見切りで攻撃察しサヨの太刀筋に合わせ切り込みなぎ払って切断する
…神罰だ
周囲の魔法を束ね纏わせ斬撃這わせ
龍の神罰に枯死を重ね全ては風の前の塵芥の如く
枯れ落ちよ

首が欲しいの?
なら、とらせてあげたいな


誘名・櫻宵
🌸神櫻

神殺し…でしたっけ
噫、確かにその覇気に力―神すらも屠るのでしょうけれど
あなたなんかに私の神は殺させない
カムイを庇うように前へ
何も奪わせはしないわ

うふふ
強者と戦えるなんて滾るわ
カムイ、神罰魔法で援護を…いいえ
共に戦いましょう
頼もしい神様だわ!
…私も無様な様はみせられない

刀に纏わせる属性はアズマが纏うものと逆のものを
拳受け止め返しの刃でカウンター
斬撃放つ度に生命力を喰らい桜化の神罰を重ねる
結界のお陰で和らいでいるけれど流石の衝撃ね
見切りながら、衝撃波と共になぎ払い
カムイが切り込んだならアズマの周囲を桜に変える等して支援を
危険と感じれば彼を庇う
『絶華』
立派な首ね
私、強者の首を刎ねるのは好きよ



 神殺し。
 そう称される男と対峙したとき、櫻宵はカムイ――己にとっての神を庇うように、すらりと刀を抜きながら前へと歩み出た。
 放たれる闘気にだって湧く感情は、恐れとは程遠く、喜び。むしろ強者との戦いなんて楽しみ、と。口元に浮かべる笑みはあでやかなものだった。
「あなたなんかに私の神は殺させない。何も奪わせはしないわ」
「サヨ……!」
 じーんっと心打たれるカムイは一切のもやもやが吹き飛ぶ心地。
 けれども浸るのはもうすこし、後で。今はと櫻宵の隣へ並び「私だって」と。交錯させるように抜いた朱砂の太刀もまた、神殺しの一振りであるのだ。
「私だって、こんな奴に殺されたりなどしない。君に守られてばかりの神ではないよ」
「分かっているわよ。ふふ、神罰魔法に期待しているわね?」
「神罰……魔法!?」
 あわや先刻の混乱が、
 とはいかない。神罰ならばお得意のカムイは任せておいてと得意げに、そして刀を両手に構える。櫻宵とは鏡写しのように、左右。
 ――共に戦いましょう。
 ――ああ。何時だって私達は共に。
 知らぬ筈の記憶に心の奥底のぬくもるのを感じるカムイと、そんな傍らのひとに無様な姿など見せられぬと気勢をあげる櫻宵とが踏み出すアズマを迎え撃つ。

 ギャリリッと鋼と打ち合うかの手応えがする。
 対するアズマは拳だというのに、よく冴えた刃とぶつかり合っておいて血の一筋零さぬとは成程、化物の親玉だけはある。カムイの喰桜が受け止めた拳を、櫻宵の屠桜が押し返す。獣が顎を閉じ喰らい付くかの上下からの斬撃だ。
『足掻くか』
「あら。殺すと死ね以外もおしゃべり出来たの、ねっ!」
 弾き合った勢いで駒のようにぐりんと身を捻った櫻宵が放った一手が、アズマを大きく飛び退かせる。直ぐに膝のバネを使い踏み込んでくる――、そうと読んでカムイがカグラに展開を指示した結界はジャストタイミングで、跳んだアズマの砲弾めいた右拳から櫻宵を守った。
 火の粉とともに、血のようにさくらの花が舞い飛ぶ。
「ふうん……流石の衝撃だわ」
 嘯いては。それらが散り落ちぬうち、斬り上げる屠桜はすれ違う花弁を凍てつかせながらアズマの肩を削いだ。あと数舜早ければ腕は肩から離れていたであろう、そうと予感させるスピードと、膂力。
 斬撃に遅れて吹き抜けた衝撃波は凍て風となって、樹木の根がそうであるように、触れるものからひそかに生命力を吸い上げるのだ。
 神殺しの拳。
 巧みな連携にていなしつつも、直撃をもらえば拙いということは一合にして察せた。
「サヨ」
「ええ、カムイ。お願い」
 ならば約束通り、特大魔法のお披露目といこう!
 名を呼び合うことで息を合わせた二人は、ふたたび同時に仕掛ける。
 カムイが紡ぐユーベルコードは再約ノ縁結。約束された結末――この場合ならば、アズマの技が櫻宵を害するという結末を断って、全てが桜龍に味方するようにと望むまま書き換える、再約の神罰。
 負傷上等で血を飛沫かせつつも一瞬にして間合いを詰めてくるアズマの、投げ。起点としてその手が櫻宵の装束を掴み取ったようで、掴んだ筈の指の方が飛んだのはそうした理屈だ。
「神の怒りを知り、枯れ落ちよ」
 魔法。――ああ確かに、魔法であるとも。
 太刀筋に赤い霧が引かれ、その雨が芽生えさせたかの桜吹雪。
 深紅から淡紅へと次第に移ろう花々は、攪乱として櫻宵が覆い広げたもの。目くらましそのものに効果は薄かろうと、厚い花々のヴェールはカムイへ届くアズマの拳の勢いを落とす。
 とはいえ指が無くとも掌底は脅威、突き出されるだけで炎の嵐を伴うそれが桜花を燃やす。危険があればいつだってカムイを庇えるようにと意識してきた櫻宵は、だからこそといえようか、一時そうして守りに回りながらもアズマの狙いに即座に反応することが出来た。
「――――、」
 かすかな吐息に集中を漲らせ、奔る斬撃は横一文字。
 不可視と呼べるほど異様に速く繰り出された薙ぎ払いには、氷のみではない、風の魔素もが力を貸していた。落ちるではなく吹きあがる淡紅、朱砂。アズマの腕に深々と喰らい付いた一撃を、最後まで断ち果たすに至らせたのはカムイが重ねた枯死の呪いがあってこそ。
 黒き花弁か。或いは塵芥か。
 血が、一息に酸化して飛ぶ。
「ああ……、立派な首」
 その光景を見つめた櫻宵がアズマへ贈った言葉は、およそ熱持ち何かを愛でる響きではなく、強いていうならば――食卓に並ぶごちそうを前にした感嘆めいて。
 足元でぐちゃりと崩れる手にしたばかりの腕へは見向きもせず、早くも首を欲する姿は貪欲で。そんな櫻宵に、また褒めてる、なんて、そこに含まれた意図を解き間違い頬を膨らますことはしない。カムイはまるで動じず口元に笑みを湛えていた。
 そう――、かわいい巫女があれが欲しいと乞うのならば。
「とらせてあげたい、……な」
「ふふっ。楽しみ。楽しいわね、ねえカムイ」
 カムイが我知らず呟いた一声にも、花咲くみたいにかんばせを綻ばせる櫻宵。依然、強烈な圧を放ってくる強敵を眼前に相手取りながらも、いいや一層に舞台は盛り上がる。
 ふたり並び立って駆けるということは、死地をも極楽へ変えるだけの意味を持つのだから。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

数宮・多喜
【兎乃・零時さん(f00283)と共闘】

……へっ。
言葉は不要ってか?
そういう手合いも嫌いじゃねぇけど、
生憎アタシは武道家じゃないんでね。
ハッキリ言葉にしてみやがれ!
その言葉と殺意ごと、ブチ砕いてやらぁ!

アタシも真っ向勝負は嫌いじゃないんでね、
全速力で行かせてもらうよ。
その為にゃボロボロのカブじゃ拙いんでね、
【戦地改修】で『操縦』しながら緊急修理さ。
周りの溶岩をそのまま装甲に、
タイヤもヨハンさんの力で耐熱性をプラスさ。
拳にぶち当てる部位には岩を尖らせて衝角を付ける!
これがアタシの特攻(ブッコミ)スタイル、
言わば生身のカタパルト!
コイツで真っ向から『ダッシュ』を掛けるよ、
良い所で跳びな、兎乃クン!


兎乃・零時
数宮(f03004)と!
詠唱含めアドリブ歓迎

…く…そっ
お前は強いんだろうな
だが死ぬもんか!
俺様がいづれ全世界最強最高の魔術師になるためにも!
お前を此処でぶっ倒す!
神様も力貸してくれ!

ありったけ全部!

バイクに乗り【魔力溜め】つつ詠唱開始

そんでタイミング見てジャンプ!詠唱完了!

ありがと!数宮!

UC!  グリッター
物体変質 〖輝光〗!

装甲いらん
火力に回せ!

奴の攻撃避けつつ魔力に変え
【地形の利用】して触れてるマグマとか諸々全部!味方以外魔力に変え【魔力溜め】!

奴に全力の光線叩き込む!
光【属性攻撃×全力魔法×限界突破×零距離射撃×捨て身の一撃×貫通攻撃】!!

ぶっ飛びやがれぇ!!

グリッターレイ
輝光閃!




 言葉は不要。つまりは、そういうことなのだろう。
 アズマという男の姿勢は壊れた機械でもないのなら、いかにも武人めいた在り方である。宇宙バイク、カブを駆る多喜はへっと息を吐くようにして笑った。嫌いではない。
 だが。
「生憎アタシは武道家じゃないんでね。ハッキリ言葉にしてみやがれ! その言葉と殺意ごと、ブチ砕いてやらぁ!」
 それはクラッチを握る手指に力を込めさせる程度の意味を持つだけ。
 ぐおん! と前へ、開幕からぶっちぎりのシフトアップ! 運転手である彼女へ文字通りに自分の命をも託す状態となっている相乗りの零時は、やはり急激な加速にはいまだ慣れずにぐえっと首の絞まるような風圧に必死で食らい付く。
 スプラッタショーな肉片が降りかかってきたり、なんだり……なんだかこのひと時で沢山大変な目にあった気もするけれど、多喜の後ろに同乗させてもらったこと、後悔なんてしていない。
「……っ、そうだ。俺様がいずれ全世界最強最高の魔術師になるためにも! ――アズマ! お前を此処でぶっ倒すっ!」
 彼女と同じか、それ以上に声を張り上げて啖呵を切る零時。こんなところで死ぬ気はない。死んでなどやるものか! 気合いの籠った叫びが呼び寄せるとでもいうのか、走るカブの周囲には多色の魔素が輝き始める。
 いいや、それだけではない。
 先の戦いで酷く傷付いていた車体を癒し守るかの如く、周囲の溶岩がひとりでに割れ、砕け、カブへと組み込まれてゆくのだ。穴の開く寸前であったタイヤ、曲がったハンドル、……割れたヘッドライトの位置へは鋭利に尖った岩が収まり、衝角へ魔改造。さながら生身のカタパルト! 全てはスターライダーにしてサイキッカーである多喜だからこそ為せる技。

「さぁて、ブッコミのお時間だ」

 がごっと車体の腹を蹴りつけ、仕上げにマフラーに入り込んでいた肉片を吐き出させ唇を舐めた多喜の一声がそれである。死なない、よな? すぅっ……と覚悟を決める零時は、時を見る。心を研ぎ澄ませて。おそらくは最初で最後の勝負となるであろう一瞬を、見極めるため。
「我が身 我が魔 我が力 我が名を此処に――」
 今か。いいや、まだ遠い。 ちいさく紡ぐ詠唱。
 発現し始める物体変質のユーベルコードが、タイヤの触れるマグマから岩からを徐々に輝光、零時の魔力へと変換・蓄積させてゆく。
「改変し 変質せよ――」
 今は。もう少し。 道なき道に猛烈に磨り減るタイヤが今にも死にそうだ。
 しかし恐れることは何もない!
「ヨハンさんっ!」
「おう!」
 先に一度助力を乞うたために勝手がわかっているのだろう、ひとつ返事で多喜に応じるヨハンの炎魔法がカブの進路へとばら撒かれた。タイヤがその地を踏みしめることで、回転に巻き込みながら熱に対する加護を得る。
 もはや限界を超えたマシンが燃えているのか、それとも魔法によるものなのか誰にも説明の出来ない状況下、――ついに距離にして僅か数メートル、アズマが正拳を突き出さんと腕を引く。
 その動作を見とめておいて、多喜はあろうことか。
「おらぁぁっ!」
 "自分から当てにいった"、のだ。

 ごぎゃあっ!
 破砕音。当然乗り手もバラバラになる深刻なダメージであろう、と思わせておきながら、その実アズマの拳は前面に突き出た衝角と打ち合った段階で止まった。
「ありったけ……みんなも、重ねてくれっ! ――ぶっ飛びやがれぇ!!」
 止められた。
「輝光閃!」
 グリッター・レイ。
 シートを蹴っての絶妙なジャンプでアズマの真上を取った零時が、溜めに溜めた魔力を一挙に開放したためだ。
 応える神々の魔法がただの一点へ注ぎこまれる。ぴしゃあんっと落雷の瞬間にも似た、極めて眩しい光は辺り一帯まで照らし上げて。駒のようにもスピンして弾き飛ばされたカブはといえば、しかし振り落とされずにハンドルにしがみついていた多喜が制御を取り返す。
 鎧う溶岩も半分は吹き飛んだ車体はボロッボロの、ボロ。一打のうち粉と化した衝角部分がさらさらと砂を落とす様なんて、人体に置き換えればああまったく度胸試し以外の何物でもなかったのだけれど。
「……よしよし、耐えてくれると信じてたさ。 っ、と」
 走行しながら器用なもので、落下してくる零時を地面スレスレで掬い上げる多喜。火力にとことん全振りした零時の身体は捨て身の猛攻の反動にすら耐え切れず、きゅううと口から魂でも漏れかねない気絶っぷりだ。
 まだあどけなさの強く残る顔立ち。
 けれど裡に抱える力は、心は、少なくとも神々と多喜にとってとても頼もしく力強いものに映っていた。
 後方でがうんと響き渡る轟音と振動とは、アズマの拳が追って地面を割り砕いたものらしい、落ちればマグマへ真っ逆さまな地割れが二人を呑まんと迫る。本人が追い付いてこれぬというのは、それほどにダメージが深刻であるということ。 最後まで勝ちを取りにゆく姿勢自体は評価してやりたい、が。
「アタシらとチェイスだなんて舐められたもんだねぇ、カブ」
 ならば魅せてやろうじゃないか!
 一気に加速して、時に跳ね上がってと荒れた戦場を縦横無尽に横切りながらも、多喜は後ろへ引っ張り上げた零時の頭へ同じく回収したとんがり帽子を被せてやった。
「ナイスガッツだったよ、兎乃クンも」
 二人は今日も己の信ずる道を突き進んでゆく。
 数秒ののち目を開いた零時にとって、いつもよりも更に帽子が馴染んで感じられるのはきっと、相応しき存在――大きな夢へとまた一歩近付くことが出来たから。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

杜鬼・クロウ
【DK】
アドリブ負傷◎

純粋に力を極限まで高めた者は強ェ
真っ当勝負は自殺行為ともとれる
が、
俺はそんなお前だからこそ手合わせを願いたい

(世界を護る為とは別の
俺のエゴ
己が正義(ちから)が何処まで通用するのか)

今の俺は特に”正義の味方”だからなァ

敵の殺気を肌で感じ片目細め
武者震いは強敵相手故

ハ、誰がンなヘマするかよ

親指噛んで剣に紅を一線
UC使用
紫電が体を纏う

敵の攻撃を首の皮一枚でジャンプ回避し直ぐ反撃
意志を力に
剣の炎属性を出力し足狙い動き鈍らす
攻撃の手数と速さ活かし敵を圧倒
敵に次の攻撃読まれる前に攻撃食らわす

おら、お膳立てはしてヤったぜ
決めろや、望!
コンポタ野郎ならきちんとヤツだけ狙えるだろ。違うか?


氷月・望
【DK】
アドリブ負傷歓迎

……殺す、ねぇ
無差別殺戮マシーンか何かかっつーの
殺意も威力も半端ねぇし
正攻法は、正義の味方サマに任せるか

というワケで、ライヴスさま?
クライシスゾーンを
敵とドヤ顔野郎の周囲にブッ放してくれねぇ?
あ、クロウは巻き添え上等らしいんで全力でオッケー

俺は【闇に紛れる】様に影に潜み、クロウの合図を待つ
ただの奇襲が通用するワケがねぇ
狙うは必殺の一撃、奴を確実に仕留める力
【鎧砕き】【部位破壊】を高めた、UC:雷槌の【暴力】
お膳立てドーモ、派手にやってやるよ
――俺の棲家を土足で踏み荒らしてんじゃねぇよ、クソが

コンポタの恨み、ってな?
ま、簡単に当たる様なヤツじゃねぇわな……認めたかねぇケド



 純粋に力を極限まで高めた者、か。
 まだ距離のあるうちからでも、目を閉じた瞬間に首が飛びかねないと知覚する殺気。真っ向勝負は即ち自殺行為。半面、どこか虚ろにも感じられる猟書家の立ち姿に、クロウは微かな震えを感じていた。
 恐怖? 否、真摯に戦いへ臨む戦士ならではの武者震い。
「強過ぎるからその調子ってなら、今日は退屈しないで済むだろうよ」
 そんなお前だからこそ手合わせを願いたい、と続けるクロウ。
 世界を護るため? 否、否、これはただのエゴだ。己が正義(ちから)が何処まで通用するのか、試したくて仕様がないっ! 握り込んだ大剣、玄夜叉に食い込む指がぎちりと鳴った。
『……望み通りに、殺してやろう』
 向かい合う二者が、同時に踏み込む。
 その衝突が起こした衝撃波は大地を捲れ上がらせるほどのものだ。出会いがしらのご挨拶からこれ、戦狂いと呼んでも過言ではない激突を傍目に、付き合ってらんねといった調子で大岩の陰に身を引っ込めるのは望。
「はーっ、さっきから殺す殺すって無差別殺戮マシーンか何かかっつーの」
「なんていうか、こっちも頑丈な子ね……」
 一方、望により共に其処へと引き込まれたライヴスはしみじみと、未だ砕けていないクロウの当たりの強さを噛みしめる。引いたことは危険から遠ざける意図もあったが、もうひとつ。
 というワケでライヴスさま? なんて、指をくるくる語尾を上げて切り出すオネガイ。望は協力を依頼したかったのだ。ばちばちやり合っている二人の周囲にクライシスゾーンをぶっ放してくれと。
「ええっ、閉じ込めちゃうことになるけれど……どうするの?」
「それが良いんだ。そうそう外になんか出れねぇほどの全力でオッケー、あいつも巻き添え上等らしいんで」
 嘘、後半はいま付け足した。
 そうとは知らぬライヴスは、だったらと応じる構えを見せる。あたりの岩が浮き上がり始めたなら任せたとその肩を叩き、望は今一度連れの側を見遣った。さて。あとは"合図"を待つのみ。
 正攻法は正義の味方サマに任せるか、とは送り出したものの――実際にやってみせるもんだから、まったくもってイケすかない奴!

「やっぱ、重ェ……!!」
 ひゅうっと口笛でも吹きかねない!
 拳だけではない、覇気の塊に重ねて殴りつけられたかの衝撃に大いに押し込まれたクロウは、笑みに覗かせた犬歯で自らの親指に牙を立てた。
 そこから伝った一筋の血が漆黒の大魔剣に紅を引く。既に眼前まで追撃の構えで迫ってきていたアズマが、拳を突き出すのとほぼ同時のことであった。
 がうんっ!
 爆砕音を立てて岩が飛び散り、土煙が立つ。しかしそこに血の色は混じっていない。そこにあるのは、ユーベルコード・沸血の業火の力によって健在なままアズマの腕を打つクロウの姿。
 迸る紫電。
「獄脈解放(ヘレシュエト・オムニス)――凌駕せよ、邪悪を滅する終焉の灼!」
 衝突の寸前で拳を叩き込み返し狙いをぶらすことで、その破壊力すべてを背にした岩のみへ逃がしたのだ。流血を代償に文字通り爆発的に上昇した筋力はそのような荒業を可能とさせ、そして、蹴撃が見舞われる一拍前に跳躍する。
 およそ首の皮、一枚の差の攻防。
「だがお前には殺せねェ。今の俺は"正義の味方"なモンでなァ!」
 宙で身を翻すクロウは踏みしめる大地もないくせ、その姿勢から当然のように大剣を振り翳せば地を踏むと同時アズマの足元を狙い斬りつける。
 これには地面を踏み割って捲れさせ盾とする形で対応してくるアズマ。ただの剣士相手ならば十分に間に合ったであろう守りはしかし、風裂いて進むほど剣に燃え盛る炎の魔力が打ち砕く。 それだけでは、ない。アズマが蹴り上げた溶岩たちが、猛然と吹き込む嵐――ライヴスのクライシスゾーンの一部として巻き取られてしまったのだ。
 そうして斬撃は果たされる。
 深く、一度。 超高速の剣閃も二度、三度ともなれば返す手を合わせてくるアズマは望の言葉を借りるのなら殺戮マシーン、まさしく難攻不落の要塞めいた戦士である、が。
「おら、お膳立てはしてヤったぜ。決めろや、望!」
「ドーモ、派手にやってやる。――俺の棲家を土足で踏み荒らしてんじゃねぇよ、クソが」
 マンネリ解消手段だって手厚く用意されている。
 視界を狭める竜巻の向こう側にて、薄らと光る紅き双眸。指先一本の指示で雷槌を振り下ろす望が声を上げると途端に稲妻が降った。
 竜巻の内に幾筋もの光が走る。大地を揺らす、轟雷だ。
 爆撃のようですらある。有効射程、ひそかに至近にまでやってきていた望はクロウの呼び声に合わせてユーベルコードを発現させ。逃げ場を囲ったライヴスの竜巻、なにより、飛び退く動きを一寸とて遅れさせたのは、クロウが刻み付けてやった先手があってこそであった。
 その、嵐の一端を縦に斬り裂いて姿を見せたのは――。
「おい、落とすのがコンマ秒くれェ早かったろうが」
 ――クロウ。
 焦げた服の端を見せつけるみたく持ち上げるクロウは、つまり文句を口に出来るほどぴんぴんしている。簡単に当たる奴ではないと経験から知りつつ、認めたくない気持ちも大いにありつつ、ともあれその生還にはしゃぐことだけはせずに望はへっとこれ見よがしに見下ろしてやるのだ。
「なぁんだ、また避けやがったか」
「はっ。今も昔も、当てる度胸すらねえくせ」
 出来る奴。 ――互いによく分かっているから、飾った言葉は要らなくて。生きて叩き合う軽口こそが、軽快なハイタッチの代わりみたいなもの。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神樹・鐵火
貴公の様な骨のあるヤツを待っていたのだよ
(衣装が戦闘モードへ移行(封印を解く)
ステゴロでやらせてもらおうか!

攻撃は見切りと激痛耐性で回避・防御
攻撃を受け止め、その反動で弾き返したり(武器受け)
攻撃のタイミングをずらし、スカらせた所にカウンターを入れたり等する(残像・カウンター)
相手が大技を放ったら当たるスレスレで攻撃を弾き返し(ジャストガード)
伸びきった腕の関節に素早く一撃を食らわせる(先制攻撃)
ダウンが取れたらダッシュで追撃を加え続け反撃の余地を与えない
最後は羅気と殺気を込めた鬼神蹴撃を叩き込む


大門・有人
不採用含め全て歓迎だ。
この気迫、どうやら隠れて準備してる暇はないな。
地面を拳で粉砕して砂塵を巻き上げて体を隠し、UC発動。痛みは声を張り上げてごまかす。
…見参…ガンバレェエイ!

注意を引く為に指を向ける。猟書家・アズマ。貴様の信念やら覚悟やらを聞く時間もないが、そちらも話すつもりは無いだろう。
骸の月を押し返す為にも、決着を急がせて貰うぞ。

とは言え、単独で倒せると考えてはいない。拳銃で味方を援護、奴が拳なら肩を、蹴りなら腰を狙って威力を下げる。
敵UCは拳銃やスパイク・カッターで武器受け、破壊されても覚悟をもって逆のスパイク・カッターでカウンターだ。
俺たちの前に立つ悪は例外無く、全て滅びるんだ。



 流された夥しいまでの血がジュウジュウと煮えたぎって白煙を立てる戦場。
 戦いは尚も続いている。 アズマの前には、また二つの人影が立ち塞がっていた。

「貴公の様な骨のあるヤツを待っていたのだよ」
 鐵火。

「……漸くお出ましか」
 そうして、有人。

 ガントレットを打ち合わせる鐵火の纏う羽衣が、装束が、解けながらその色と形とを移ろわせ始める。神聖さを感じさせる装いから、身軽で、それでいて厳かさを感じさせる装いへ。肌には紋様が這い広がり、それが指先まで到達した途端に鉄の黒一色であった髪先にぼうっと朱赤が灯った。躍る炎そのものだ、火の粉を散らしながら靡く様は。
 鐵火は最後に軽く頭を振るえば、籠手の調子を確かめるように拳を握り、開き。
「――ステゴロでやらせてもらおうか!」
 言うが早いか打ち合うべく、意気揚々アズマへと駆けてゆく。
 ……女神のなんとも荘厳で華のある変身シーンを目の当たりにしてしまった後では、正直、有人の中での変身ハードルは尚のこと上がった。旧い内臓を排出して――皮膚を排除して――、改めて己の境遇に恨み言のひとつ言いたくもなる。
 だが、今も流れる熱き血潮が叫ぶのだ。戦えと、そうして勝てと。立ち止まっている暇などない、と。
「知ってるさ。どうせこんな身体なら、使う他ないってな……覚悟、完了だッ」
 固く、固く握る拳で大地を殴りつけた有人。
 巻き上がる砂煙や煤がうまいこと秘密を覆い隠すカーテンと化す。変身――! 全身を端から順に裏返されるかの激痛を声を張り上げ誤魔化して。
「……見参――……ガンバレェエイ!」
 そうして自ずから煙を裂いて飛び出したなら、その姿はひとりのヒーロー。ガンバレイの登場だ。鐵火の突撃の勢い乗せた拳に元居た場所からは飛び退っていたアズマは、有人が向ける指へとほんの僅かに反応を見せる。
 どれから殺すか? 思考回路を想像するとして、そんなところであろうが。
「猟書家・アズマ。貴様の信念やら覚悟やらを聞く時間もないが、そちらも話すつもりは無いだろう。骸の月を押し返す為にも、決着を急がせて貰うぞ」
「ふぅむ。私はあとウン百年は戦り合ったところで構わんが……まあ、そうしておくか」
 ある種お手本のようなヒーローの口上を、真面目なことだと笑う鐵火は上機嫌。初撃を同じく片腕で受け止められたという高揚感ときたら! 鐵火へ意識が割かれている間に炎の弾丸よろしく次へ踏み切っていた鐵火は、しかし互いに届く間合いへ入った刹那に上体を引くことでフェイントを仕掛ける。
 アズマの掌底。俄かに浅く止まる一手は、恐らくこれも誘いであろう。胴を狙えば膝が、それより上を狙えば逆側の手に捻り取られるのは明白だ、そしてその武道に通ずる者同士の読みの拮抗を崩すのが、有人である。
「くれてやる」
 手にした大型拳銃ときたら、ちょっとした大砲のような発砲音をして大口径の弾を吐き出す。
 振り、落とす空薬莢がずしんと大地へとめり込むあたりから推して知るべし特注具合。迫る銃弾か、眼前の女か、秒で二つに一つの選択を強いられるアズマは鐵火を排除すべく腕を振るった。
「肝心なところで選択を誤る――人の子らしいといえば、らしいな」
 その腕が伸び切った一瞬。間接部分へ、即座に手刀を叩き入れて逆側へと軋ませればそこからは鐵火の連撃が決まる。腕、次には握った拳を胸の真ん中へ。逆側の手が挟まり直撃こそを阻むが、同時に握り込まんとしたアズマのカウンターそのものは肩口を吹き飛ばす弾丸が半ば押し出すようにして阻む。
 とはいえ、たたんっと地を蹴りつけ三角跳びの要領で岩々を飛んだアズマもただでは転ばない。上を取って、それから叩き込む次の手は蹴撃――、狙いは二人同時。
「来るぞ!」
「無論、視えている」

 ゴオッ、オオオ。

 地響きを立てる様は落石か、隕石か。
 他にはなんとも表現しようのない、跳躍からの踵落としはほんの一瞬前に二人が飛び退いた大地を爆散させた。噴き上がるマグマはさながら小さな火山だ。回避が間に合ったのは、僅かな姿勢や踏み込みの予兆を読み解ける、徒手空拳での戦闘経験豊富な二人であったからこそだろう。
 ごうごうと降り落ちる火の雨の中を平然と歩み出てくるのがアズマなら、その赤々としたヴェールを突っ切って果敢に攻めゆくのが鐵火と有人。鋼鉄と炎を司る戦神にとってそれらは空気とさして変わらず、より激しい痛みに現在進行形で苛まれ続けている改造人間には羽毛で擽られる程度の話だ――哀しいことに。
 大技からの着地直後というものは隙のひとつ。示し合わせたわけでもなく、左右よりそれぞれ踊りかかる鐵火と、有人。アズマの回し蹴りは二人同時に薙ぎ払わんと暴風めいた衝撃の風を起こすが、鐵火よりもわずかに速く己の腕を差し込んだ有人が彼女に届くことを許さず、それを一身に受け止めた。
「ぐ……っ! だが!」
 衝撃に腕は妙な方向へと曲がり、肘から突き出たスパイク・カッターが半ばから折れる。溢れる赤色は塗装ではなく、血。ただ単に剣が砕けているわけではない、刃は有人自身の肘の骨なのだ。
 けれども、それが何だという。右が潰えたのなら左を! 痛みに止まることだけは決してしない、ガンバレイとしての強靭な覚悟が即座に突き立てる逆のカッターをアズマの足へと沈ませ。
「実に良い働きだ」
 片足を封じられれば如何なる猛者とて体幹を崩す。
 そしてその一瞬を見逃さぬ勝負強さが、此方にもある。五指を順に握りしめた鐵火の籠手に羅気と殺気とが色すら持って渦巻いては、そうして突き入れられた。くの字に折れるアズマの身体が浮きあがらんとした、その寸前。先刻ザウルスマンへもお見舞いしてやった有人の足が、変身しフルパワーを解き放った状態で続くならば。
「俺たちの前に立つ悪は例外無く、全て滅びるんだ」
「おお。もしや決め台詞というやつか――、別れ際にはもってこいだな?」
 寝てろ。 冷ややかに言い重ねる鐵火のパンチ、有人のキック。
 先ほどの敵方の踵落としが隕石とすると、此度はビッグバンか何かだろう。
 重なった二つの必殺の力は聳える大岩数枚どころではない、見える限りの彼方まで一瞬にしてへし折りながらアズマの身を吹き飛ばすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

冬薔薇・彬泰
確かに、殺し合いに過度の言葉は不要
ただ敵は斬れば良い
――とは云え、此度は守るべき存在も居るものでね
誰かと共に戦うのも悪くはない
…ああレディ、勿論貴女は例外だよ?

破壊の拳…これは実に厄介だ
得物を折られる訳にもいかない
腕の動きを最大限観察し、見切りに努める
…どうしても難しければ、腕一本の犠牲で勘弁願おう
カウンターを活用し、神々の加護を受けながら確実に傷を与えていこう
然し、神である彼等から見ると
僕の戦いは見るに堪えぬものやも知れないね
何、どうか気にしないで欲しい
どうせ一度は死んだ身
故に、この程度の痛みなどどうという事はない
…はは、勿論痛いけれど
激痛耐性で幾分は凌げるだろう

――さあ、片を付けるとしよう


ジャック・スペード
残念だが――
お前はもう、誰も殺せない
俺達、秘密結社スナークが邪魔をするからだ

磨き上げた武術で神を屠ったか
流石にあの拳には当たらない方が良さそうだ
シールドを展開して決別拳を防御したい

それすら破壊されたなら
渾身の怪力で受け止めて見せよう
替えが効く身だ、腕一本位くれてやる
多少の損傷は激痛耐性で堪え

拳を防御できたら間髪入れず
リボルバーに電の粒子を纏わせ反撃しよう
マヒの銃弾を零距離で撃ち、体勢を崩せたらと
これだけでは心許ないので
引き続きライヴスから雷の加護を賜りたい

幾ら其の身を鍛えようと
筋肉に伝わる電気信号には逆らえないだろう
バランスを崩した隙に脚に焔の粒子を纏わせて
鋼鐵の蹄で重たい一撃を喰らわせよう


渦雷・ユキテル
強さを追い求める系ですかー
あたしはもっと優しくて賢くてな感じの人が~

あ、トドメとか危なそうなんで他の人に押し付けます
どんな感じか見られればあたしは充分なんで

見たところ視覚には頼ってないんでしょうか?
それなら轟音なり振動なり起こせば
多少は味方の接近を誤魔化せるかもしれませんね
ユーベルコードで作り出す雷、
出力を上げれば制御が難しいのは織り込み済み
僅かなブレはあたしにも読めません
猟兵さんに当たりそうならギリギリで
【瞬間思考力】【属性攻撃】による電流逸らし
そのまま地面に当てて味方の気配をかき消してもいいし
丁度いい位置にいるなら猟書家さんに当てちゃっても

がんばれー!
だって近付くのおっかないですもん




「残念だが――。お前はもう、誰も殺せない」
 俺達、秘密結社スナークが邪魔をするからだ。

 着弾地点。
 そうと表現する方が適切であろう、アズマの駆け抜けざまの一手が叩き込まれた地点は強烈な負荷に周囲の岩場よりも一段、二段と凹みながらも、しかし崩壊してはいなかった。
 みしりと罅走る音は声の主、且つ前へと出て受け止めたジャックの機械の身から立っている。
 仮にもこの足場が崩れていれば全員マグマの海へと真っ逆さまであった筈だ。最善の行動を探ったとき、ひとりでに動く四肢は大抵の場合己のことを度外視する。ヒーローというものは、不可思議で。
「証明してやる」
 そんなヒーローの"こころ"を得てしまったウォーマシンなんて、製造元からはバグだなどときっと揶揄されてしまうのだろう。だがジャックは構わない。ばらばらと砕けて落ちるエネルギーシールドや自身の片腕を見遣ることもせず、もう片腕にリボルバーを引き出す。
 向けられる銃口と互い違いに、初撃を凌がれたアズマはガタのきた機械人間を投げ倒さんと手を伸ばすも、ジャックの言葉通りに猟兵側はひとりではない。その指が触れるよりも三色、いや四色の魔法弾がアズマを押し返すのが先だった。
「猪突猛進、っていうか。ふむふむ、強さを追い求める系ですかー」
 神々と、ユキテル。両手を広げ対岸からぱっと飛び移ってくるユキテルの電撃はどこか青白く、自然現象というよりもサイキックによるものだ。生じた力場に金髪がふうわり、着地の後も生物めいて上下に揺れ広がっている。
 不死の怪物とやらの力を単身解放するなんて、きっとすごいのだろうけれど。
「あたしはもっと優しくて賢くて~な感じの人がいいなぁ」
 "理想のひと"の席は初めから埋まっているわけで。
 そんなひとりごとも塗り潰す、炸裂に次ぐ炸裂。ごおうと真正面に弾けた魔法の衝撃に後退するアズマ。
 消え失せるを待たずもう一色加えるはジャックの銃弾、こちらもまた雷の魔素を纏ってはいるが黒き銃弾こそが本命だ。斬り捨てるべくアズマの手刀が振り払われるも、筋肉間の信号伝達を妨害する麻痺が出を遅らせ、なにより横合いから突き入れられた一本の刀がそれを半ばで阻んだ。
 ギリリ、と、食い込む刃。鋼の剛腕を弾き除けたのは彬泰である。舞い散らばったジャックのパーツが一種の目眩ましとなってくれていた、アズマにしてみれば霧中から不意に現れた剣豪へ驚きの声を上げても可笑しくはない場面だが。当の男は息遣いも乱さず、銃弾を喰らいながらも、逆の拳で彬泰に狙いを定める。
「ふ」
 お前から殺す、と?
 寡黙なことだ。確かに、殺し合いに過度の言葉は不要。ただ敵は斬れば良い、その点で二者の考えは共通している。とはいえ――。
「――此度は守るべき存在も居るものでね」
 だからこそか。彬泰とて早々に退場してやる気はさらさらない。この局面で退かずいたのは、共に戦う存在が見えていたため。
 手首諸共赤光をへし折らんとする腕へと喰らいついたのはまたしても雷光。手を翳すジャックの要請に応え、ライヴスとユキテルとが重ねる力は空より降る槍となって一直線にアズマの腕を地へ縫い付けた。
 たぁん!
 合わせてリボルバーが吐き出す弾は、即座に大地を殴り割って拘束を解くアズマが隆起させた土壁に阻まれる。が、織り込み済みだ。余所へ意識を割かずにはいられない、この間に刀を持ち替え斬り抜ける彬泰の刃が、その身から再び血を飛沫かせることに成功する。

 流れる、コンマ秒刻みの応酬。
 一度の激突を経て倒れる者はひとりもいない。反撃すら許さずに屠った番人と眼前に並ぶ猟兵とが違うことは、アズマとしても感じてはいるのだろう。互いに飛び退ったことで僅かな、睨みあいの間が生まれた。
「アナタたち……」
「すみません、私が癒しの術のひとつでも使えれば……」
 腕一本を肩から失ったジャックと、粉砕こそは防ぎながらも妙な方向へ片手首の折れた彬泰。
 擬音をつけるならば"ギクッ"だろうか――ライヴスとディアンナの声で初めて負傷を知ったという風に肩を揺らす二人であるが、完全に痛覚を遮断出来ているというわけでもない。ただ、ひとよりも耐性がついているというだけ。
「ああ……気付かなかったな」
「何、どうか気にしないで欲しい。この程度は痛みに入らないさ」
 視線は脅威へと注いだまま、それぞれが選ぶ台詞もまたどこか慣れた調子で紡がれる。
(「慣れたもの、かぁ」)
 痛いものは痛い。慣れたって嫌だけどなぁ、なんて。毛先をくるりと指遊びするユキテルは素直にそう思いつま先で地を叩きながらも、彼らと同じく痛み辛みでは決して怯むことの無さそうな敵方を眺めやった。
 時を同じくして。
『――――、』
 アズマがゆうらりとユキテルの方を向いた。
 彼からしてみれば、術者たちは決まる筈であった手を悉く乱した騒がしい存在だ。
「……あ。そりゃうっとおしいですよねー、分かりますあはは」
 頬を掻くとライヴスの後ろに隠れるユキテル。とてもすばやい。
「ちょっとどういうことかしら!?」
「風出してください、風! 来ますよ!」
 来ます、のあたりで既に地を蹴っていた武道家の脚力ときたら、元居た場をめきめきに罅割れさせてしまうくらい。だが寸でで発動の間にあった向かい風と混ぜ込まれた雷がその勢いをいくらかでも殺し、そこへ飛び掛かるのは二つの影。
 弾丸と、刃。
 左右から迫る力への対処にそれぞれアズマの両腕は使われ、空いた胴を狙うはユキテルの手元より投擲された大鎌ときた。ひゅおん、と、風裂いたそれが肉へ到達した瞬間に天上からいかづちを招くのだ。
 特大の雷撃は地響きを立てて、束の間、辺りを真っ白く染め上げる。
 轟音と閃光。振動。シールドを展開し自らと、そして共に切り込んだ彬泰への側撃雷を防いでいたジャックは即座にその脚部に炎の魔素を纏わせながら鋭利な蹴撃を繰り出した。アズマという存在が視覚を何で補っているかは知れぬが、少なくとも機械的な高速演算で世界を見通すウォーマシンよりも"目が良い"ということはないらしい。
 鋼鐵の蹄、焼印サービス付き。一打を背に受けることとなったアズマは大地を削って押し込まれ、大岩に激突する。とっ、と踏み込んだ彬泰の斬撃は閃光の名残めいた鮮やかさで、その大岩ごと敵を断たんと奔った。
『おおお!!』
 しかし突き出される拳が岩を砕く方が早い。
「おっ、と。ああ、押してばかりもスマートではない、心得ているとも」
 目にも止まらぬ乱撃だ。大小の礫となり飛び来る岩石を刀で辿り冷静に弾き落としながら後方へステップを踏む彬泰へ、嘗て教えを齎した張本人……本猫、使い魔のレディはいつしかユキテルの傍らで伸びをしている。
「がんばれー!」
 黄色い声援。泥仕合は性分ではなくってチアリーダーへ転向、いやいやこれでも現在進行形で、エレメンタル・ファンタジアの制御にあくせくしているユキテルだ。一歩間違えば味方が消し跳ぶ暴走待ったなしの高出力、御せているのは――毛色こそ違えど、水面下の努力を表に出さぬのは猟兵三人どこか似ているということだろう。
 猫ちゃんも応援どうですか? と尋ねても黒猫は只の猫のふりか知らんぷり。まるで気のないようで、硝子玉めいた瞳には一息に飛び出してきたアズマと一、二と斬り結ぶ彬泰の姿がしかと映っている。
「これは」
「ああ。負けられないな」
 アズマの身からは幾筋もの煙が上がり、与えたダメージが決して幻ではないことを物語っていた。
 先の咆哮もそうだ。ここにきて初めて感情、闘争の意思らしきものを垣間見せた戦鬼に我知らず口角が上がるというのは、彬泰もまた遠からぬ性にあるからか。片腕では到底抑えきれぬ腕力の差。
 それでも、
「喰らえ」
 もう片腕をジャックの銃が補うのなら勝負の行方は分からない。
 至近で放たれる弾丸を掴み取るアズマの反射神経も中々にふざけているが、アタシたちも忘れないでほしいわね、なんて具合で神々がそこに沿わせていた魔法の爆裂までは計算していなかったらしい。銃弾が弾け、燃え、凍て、ばちばちと雷気の筋を散らす。
 皮膚のみならず肉まで抉れて割れ、噴き上がる鮮血にぬめる手指は迫る刃を掴み損ねた。残された道、脇へのステップは。先読みしていたみたいなタイミングで、走った視線の先へとさりと突き立つ大鎌がひややかなかんばせをして塞ぐ。
「不死の怪物モドキよりも、夢を見させてくれますよね?」
 後方改め応援席から届く猫撫で声と、猫のひと鳴き。
「――さあ、片を付けるとしよう」

 丁寧に丁寧に繋がれた、好機。
 活かす剣刃一閃。内に宿す衝動の高まるが儘、押し通した銀雪の軌跡は神殺しを浅からず斬り、果たす。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

天音・亮
やだ生きる

なんて冗談で返してみたものの
冗談の通じる相手には見えなそうだね?
逞しい男性は素敵だと思うけど
ユーモアが無いのはノーサンキューだよ
そう思わない?ライヴス

速さには自信があるけど、その分パワーが足りないのは自覚してる
でも足りない部分は補ってくれる仲間がいるから
私は正面切って自分らしく戦うよ
勝負しよっか、アズマ

神様達や猟兵の皆とも積極的に協力
もしまたライヴスと力を合わせられるなら
引き続き風と雷の力を借りたいな

ビル街の高低差を利用し
自慢の速さと身軽さで駆けて駆けて駆けまくる
一撃ずつのダメージは微々たるものでも
魅せて誘ってアズマの視線を引き付ければ
きっと次へ繋がるはずでしょ?
私は一人じゃないから


コノハ・ライゼ
なら、殺される前に喰らうわ

敵の攻撃をオーラ防御で削ぎ致命傷にならぬよう見切りながら敢えて受けるわ
流れた血で【紅牙】発動、櫂を鋭利な刃に変え牙としマショ

引き続き雷をお願いしてイイかしら、ライヴス
ついでにオレに風を纏わせてもらえる?
一瞬だけでもイイ、盾にしたいの

硬い肉はまず叩かないとねぇ
纏う雷にマヒ施す毒仕込み料理に如く斬りつけるケド
勢いに体勢崩したかに見せ反撃を誘うわ

反撃は風の加護で得た隙に櫂で受け止めて
ソレで櫂を破壊されても気にしない
仕込んだ毒はやがて巡るモノ、ナンて恐怖を煽っておきながら
2回攻撃で抜いた「柘榴」へも【紅牙】を
カウンター狙うだまし討ちで喰らいつき、傷口をえぐって生命を頂きましょ


ネライダ・サマーズ
どこまでも純粋な殺意に殺すの一言
ハハッ、わかりやすくていい!
こっちも本気かつ全力で断るだけだ!

職に就いているし、書類上だが保護者というか家族もいる
五体満足で帰る為にも全身にオーラ防御を張り巡らせ
必要なら水も
守りの壁を増やしに増やして距離を保ち
直接攻撃を受けないようにする
…普段より水が厚いな?(深く考えない質

ところで
ライヴス、もう一度力を貸してくれ
奴に降らす雨(UC)にお前の雷を乗せたら
なかなか痛烈な合体魔法が出来上がるに違いないぞ!

確実に倒す為、放つUCは全力かつ一点集中
足の肉を削ぐか穴を空けるか
どちらであれ
奴の肉体という武器を奴の命と共に削っていく

攻撃の手を止めはしない

言ったろう
守り切ると!



 殺す。ゆえに、死ね。
 アズマの放つ言葉と濃厚な殺気とは大変にド直球で、それをぶん投げられた側の反応はいくつかのパターンに分けられた。素直に震えてしまう者――……これはほぼほぼディアンナくらい。
「やだ生きる」
 ――冗談めかす者。亮で。
「あーら。なら、殺される前に喰らうわ」
 ――舌なめずりする者。コノハで。
「ハハッ、わかりやすくていい! こっちも本気かつ全力で断るだけだ!」
 ――笑い飛ばす者。ネライダ。 ファンキーにイカレたスナークメンバーのご紹介だ!
 恐怖のきの字も感じさせぬ三人は、だが心が麻痺しているというわけでは決してない。神々よりも前へと自らの心の赴くままに歩を進める。武器は木の櫂と、木の杖と、まさかの手ぶら? 一撃必殺、飛び掛かるべくして地を蹴り割ったアズマに対してあまりの無謀、激突の瞬間に飛び散るは誰の肉片か――、
 と、そんなお粗末な展開訪れさせる筈もない。
「にしたって硬そうな肉ねぇ、まずは叩かないと」
「叩くのなら得意分野だとも、手伝おう」
 コノハとネライダとか合わせる形で一斉に広げた雲に似たオーラのヴェール、水泡たちが突進を阻む。
 ぱぱぱぱぱ! 連鎖して弾ける地雷のような、軽快な破裂音をして人体の代わりに散った泡は水滴の姿になってもずしりと重くアズマの足を引く。なにせただの水ではない、そのすべてにはネライダの神力が籠められていて。
「ホント? 助かっちゃうわ、尚のコト美味しく仕上げなくっちゃ」
 その水を吸い上げて質量を持ったヴェールは、繰り出されるキレの鈍った蹴りを受け止める程度の働きを確りとしてみせた。
 結果的に、アズマの強襲はそうして不発に終わることとなる。
「やっぱり冗談の通じる相手じゃないかぁ。逞しい男性は素敵だと思うけど、ユーモアが無いのはノーサンキュー。そう思わない? ライヴス」
「亮、アナタよく分かってるじゃない。日々の彩りや団欒ってのは、お堅いばかりじゃ感じられないわね」
 ……。いいや、一方の二人は世間話に花を咲かせているわけではなく。
 ライヴスの魔術の発動、数秒を要するそれを待っていたのだ。掛ける先は亮、手ぶらに見えたって仕方のないオシャレなブーツはその実、大きな力を秘めている。
「じゃ、柔らかくする戦いに一緒させてもらおっかな!」
 勝負しよっか、アズマ。
 びゅおんっ! 風と、引く光の筋は雷か。ふた跳びに軽々皆の頭上まで蹴り抜けた亮は、宙で弧を描くムーンサルトキックを披露してカマイタチのような刃を地へ向け飛ばす。
 油断なく身構えていたアズマが上方へ向けカウンターの蹴り払いを放ち、風の刃と刃、ふたつの力と力が弾けて辺りいっぺんへ吹き付けた。
 アズマの意識が束の間でも空へ逸れた間を無駄にする猟兵はこの場にいない。風の止む頃には元居た位置から忽然と姿を消したコノハ、ネライダ、それぞれに前後ろへ別れた二人は次のフェイズへ移っている。
「借りてくヨ、ライヴス」
 只今の衝突で拡散した風雷の魔力、すくい上げるように回す櫂に得たコノハは駆ける足を止めずに横合いからアズマへと飛び掛かった。ぎゅいいい、だとか、全自動迎撃ビームか何かみたいな拳撃の大気裂く音! もしも人耳があったならば削げていたであろうスレスレを穿つそれに「ザンネンでした」と妖狐は赤い舌を見せて。
 頬への切り傷であろうか、ピピッと宙舞った僅かな血は櫂に触れることで条件を満たす。紅牙。ただの木の板であった筈の櫂は、その瞬間から長柄の鋭利な刃――牙状殺戮捕食形態へとめきめき姿を移ろわせた。
「っふ」
 薙ぎ、叩きつける。
 気分は吊るし切りだ、ヒットと同時、授かっていた雷の加護伝いに麻痺毒を広げれば一度で断てずとていずれ好機へ繋がろう。ぐぐ、と地を踏みしめ吹っ飛びを最小限にとどめたアズマの反撃は、誘わずとも最も間近にいるコノハを狙った。
「俺を忘れてもらっては困るな」
 しかし的確なネライダの魔法のカット。お次は泡ではなく、間欠泉のような。一拍前までただのマグマであった足元から勢いよく噴き出した清流が、アズマとコノハ双方を逆方向へと弾き遠ざける。
 わお! 今日の戦場は流れるプール付き!?
 なんだか水が普段よりやけに厚いし多い……、なんてちょっぴり不思議には思いつつも、ネライダは深く考えることをやめた。強い、ならばよし! 五体満足で帰って、いつもの日常――……仕事をして。ピザを食べて。TVを見て。家族におはようおやすみを言う、そんな平和を明日からも続けてゆくため、全力投球あるのみだ。
「ところでライヴス、頼みたいことがあるんだが……」
「なんでも言ってちょうだい、ヒーロー!」

 十秒に満たぬ作戦タイムの一方でも、戦いは加速している。
「あっはは、まずはかけっこ勝負かな!」
 電子武装ブーツが高めたその身軽さときたら、イルカショーのスターみたいだ。間欠泉に飛び込んでうんと高くへ跳び上がった亮は、重力に逆らって……いいや蹴り伏せて、ビルのような大岩の壁面を駆け上り、飛び移る。
 アズマの拳が蹴りが次々に岩をへし折る、そのほんの少し先を行く。十分に引き付けて、且つ敵方の体勢が即座には次の手へ移れぬ状況となった間際を縫うようにして一気に飛び降り、靴裏を見舞う!
 下るならさながら流れ星。決して重くもない亮の体重ではあるが、高さとスピードが乗ったならば大の武闘家の腕の骨を軋ませる程度の力は持つ、更には。
「ソレならオレも自信があってよ?」
 崩れ落ちる岩雪崩を掻い潜ってのコノハの追撃の刃。潰されても不思議ではない危険地帯へ迷わず飛び込むその身へは、薄らと纏う風の加護とオーラが大きな石片だけ頑なに通さない。代わりに擦り傷は増えてゆくが、そっちはむしろ好都合、だ。
 流れる血は無駄なく紅牙を育てる糧となる。
『っ』
「――と、そろそろ巡り始めて来たようネ」
 仕込んだ毒はやがて巡るモノ。反転攻勢に出ようとし握り込まれたアズマの拳が、今までにはありえなかった隙だらけの空振りをして地面を叩いたのはきっと、そうした理由だろう。しかしそこは歴戦の闘士、膨れ上がる闘気はちりちりと火の粉を散らしながら、アッパーカットにも近い揚げ突きが跳ね起きる風にして繰り出される。
 それこそがコノハの狙いとも知らずに。
「ほら、つかまえた」
 しゅいんっと高速で両手に引き抜いた柘榴、鉱石ナイフはクロスして喉元まで迫り来ていたアズマの片腕を捉えた。貫通する二本の刃が引くも進むも押し留め、存分に血を啜る。
 この距離は同時にアズマの間合いだ。そんなことはお食事中のコノハだって知っている、強烈な前蹴りは秒と経たず易々と己の腹を貫くであろうこと――そして、そうはさせぬ仲間たちがいること。
「私たちの一勝ち、だね」
「言ったろう。すべて守り、切るとっ!」

 どおおおおうっ!!

 その一瞬に起きたことすべてに目が追い付いた者は、そうそういないだろう。
 轟音を立て横殴りに吹き込んだものが雨、ただしアズマの下半身を狙うという極めて局地的な、一筋一筋が鋭利な針状に硬化したネライダのユーベルコードで。迸る稲光はライヴスの雷魔法。襲雨に降られ、ここに至るまでにも幾度も水を浴びさせられていた身は電気ショックに硬直する。
 ゆえに振り遅れた足はコノハまで届くことなく。中途半端に片足だけ持ち上がってしまえば、体幹がどうこうという次元の話ではない、滑り込むようにして見舞った亮のひと蹴りがそのままアズマを強かに弾き転がしたのだ。
 コノハはといえばギリギリまで引き付けておきながら、雷の炸裂するほんのコンマ秒前にちゃっかり飛び退いている。くるんと回してナイフ仕舞った手を叩いて「おかげで中々の味に仕上がってたわ」だなんて。

 ――ゆっくりと身を起こすアズマが見える。
 穴だらけの両手両足は疾うに使い物にならぬ筈だが、何があの男を動かし、駆り立てるのか。事情は知れないし、知る気もない。
 ただ。
「ライヴス、流石だったぞ! ようしディアンナ、次はお前の力を借りてもいいか?」
「じゃあヨハン、ライヴス、コノハ、私も思いついたことがあって……」
「イイわねぇ、乗った!」
 誰ひとり、何ひとつ譲る気などないのだから。
 肩を並べて戦う限り、負ける筈がない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

納・正純
【火種】

敵さんは確かに強大だ。だが、穂結と俺の『力』があれば、奴さんをすら撃ち抜いてアツくできる。
俺がパーティの号砲を鳴らすまで護衛は任せたぜ、お前ら。
それさえ巧くやってくれれば、お前らの勝利は俺が保証してやる。
一発勝負の取引開始だ、燃えていこうぜ?

・作戦
時間稼ぎは任せて『良く狙って撃つ』ことに専念しよう。
今回の弾は穂結たちの力を内包した特別製の弾丸だ。
だから、俺は『焦れた敵が攻撃を仕掛けたタイミング』に被せて敵を狙い撃つことだけに集中しよう。
その他のこと? 問題ねえよ。俺には頼れる取引相手がいる。
俺が得意なことは一つだけ、役割もたった一つだけだ。そして、それで充分なのさ。
さあ、一発勝負だぜ。


穂結・神楽耶
【火種】

敵は強大、かつ精強。
どうします?諦めて帰ります?
…ええ、そうですね。
我々の取引はまだ続いていますもの。
ヒーローらしく、まだまだアツく燃えていきましょう?

それでは神様方。
パーティーの下準備と参りましょうか!
前線はわたくしが張りますので側面火力支援をお願いします。
必要とあれば庇いますが…
基本は神器での牽制と引きつけに終始します。
純粋な攻撃力だとさすがに神様方の魔法に敵いませんしね…。

納様が位置に着いたらあとは誘い出すだけ。
白兵戦と構え、僅か前に出るだけでも囮として機能するでしょう。

わたくしが納様の弾丸に込めたのは、万象逃さぬ神掃う破滅。
さぁ、当ててくださいませ。
一発勝負で片を付けましょう。



 敵は強大、かつ精強。
 こちらは連戦。諦めて帰る? それとも――。

 ――バッドエンドを厭うのなら取引をしよう。
 と、不意に持ち掛けられた神々は怪訝な面持ちをしていたが。
 その男、正純こそが先刻の戦いで精密なスナイプをこなしてみせた銃使いだと知れば、特にヨハンなんてのは前のめりで飛びついた。
「へぇー。魔術師か何かかと思ってたが、この銃がなぁ……」
「ああ。といっても、中身自体はそこの穂結やお前らの魔法だったが。凄かったろ? 取引ってのはつまり、もう一度手を貸し合おうぜってだけの話さ」
「なんだか怪しい勧誘にでも聞こえましたかね」
「人聞きが悪ぃなあ」
 くすくす笑う神楽耶はだからといってフォローすることもなく、三柱とともにアズマへ向き直る。作戦は引き続き極めてシンプルだ。正純が狙い撃つ。他で気を引く。命を捨てる覚悟はお好みで、なにせ勝利の保証つき!
 ――では、成立ということで。

「一発勝負の取引開始だ、燃えていこうぜ?」
「ヒーローらしく、まだまだアツく燃えていきましょう?」

 いざやパーティーの下準備へ!
 見るからに剛の者といった佇まいのアズマに対して、神楽耶はどちらかといえば蝶や花といった淑やかな雰囲気。確かに炎の扱いは見上げたものであったが、しかし――と、前線を張ると歩み出ていった乙女に神々はひやひやしたものだが。
「……刀の扱いもお上手なんですね」
「ヨハン……」
「全面的に負けてるって? やめろそんな目で見んな」
 すぐにその心配は杞憂に終わる。
 神楽耶が振るう結ノ太刀は自らの手足の延長のように、自由で、自在だ。刀と腕といういくら鍛えたところで変えられぬリーチの差を活かし、かといって不用意には斬り込まず、アズマを懐へ入れさせないことに終始徹底している。
 舞う度に羽織と刃の白銀がひらり、ちかり、閃いて、炎に染まってどうにも美しく――――ついつい見惚れていたヨハンたちは視界を横切る黒き蝶にハッとして、"取引"を思い返す。
「やるわよ」
「はいっ」
「ああ。俺たちでも立派な頭数のうちに数えてくれたんだからな……!」
 それから、わちゃわちゃと彼らが唱え上げる魔術の支援が神楽耶のもとへと届き始めた。炎が進路を塞げば岩が足を取り、地割れに巻き込まれた足をマグマごと即座に凍りつかせる。個の力では到底敵わなくとも、一糸乱れぬ束となって。
「有難い、まさしく百人力ですね」
 そうして彼らの繋ぐ機を逃さぬ神楽耶が揃っていてこそ、作戦は盤石なものとなるのだ。
 薙ぎ払いに伴って翔け抜ける斬撃は、時に氷へ、ときに雷へ、翼広げる鳥に似て僅かずつアズマを押し返す。殴る蹴るで散らしてしまう化物には未だ大きな傷はつかぬが、それでいい。 この行いは言ってしまえば挑発――、誘いだすためのステップ・ワンに過ぎぬのだから。

 ――勿論、そのまま倒し切ってくれたっていいんだぜ。
 ――またまた、ご冗談を。頼りにしていますので、お願いしますね。

「なぁにがご冗談だってんだ」
 配置について片膝を折り、その立ち回りをスコープ越し眺める正純は、作戦打ち合わせをしていたときのやり取りに思い出し笑いを浮かべていた。慎ましく半歩引くようでいて、まったく毎度勇猛なことで。
 さて、此度用意した銃弾は特注も特注、なんと一発のうちに"四つ"の神のパワー全部乗せだ。連戦においての弾切れを案ずるディアンナに対し、ここにと開いた手のひらに転がした際には拍手なんてものをされたか。
 敵より一足先にカションと喰わせて愛用の銃L.E.A.K.の腹を叩いてやれば、包み覆う風な魔力の揺らぎが感じられる。
「期待してるぜ、かわいこちゃん」
 抱え上げ、頬を寄せるストックが燃えるようだ。煮え滾る溶岩地帯の熱気も、そうやってひとたび銃を構える正純から集中力を奪い取ることは出来ない。――何食わぬ顔をしては、その裏で幾百幾千通りの計算をしている。式を組み立てる、たったひとつの解へ向けて。

 神楽耶と正純。
 二人の間に連絡手段なんてものはないが、さしたる問題はない。絶好の瞬間を射貫くものとして、そこには曇らぬ信用があった。一方で殺意という衝動は、大抵が盲目だ。不毛な追いかけっこは好まぬらしいアズマが決めに踏み込む、まさしく今のような一瞬こそが"時"であると。
「ああ、そういえば。こちらの世には短気は損気という言葉がありまして」
 もう、説明する時間も残されていないけれど。
 己の襟首へと伸び来る手指を避けるでも断つでもなく、ただ見つめる神楽耶が瞳を閉じ、開く、たった一度の瞬き。
 ――さあ、
「一発勝負だぜ」
「一発勝負です」
 遠く揃う、声。パーティの号砲。
 まさに一瞬一秒を縫うようにして、ひゅおんと喰らい付いた一発の銃弾はアズマの後頭部より飛び込んで、伸ばした手のひらを貫き、そして神楽耶の黒髪をばさぁと揺らして背後の地面へと突き刺さった。
 弾道に螺旋を描いていた色とりどりの魔力たちは通り過ぎたアズマの身へと残されたまま、内で暴れまわる。最も強かったのは、やはり炎であったのだろう。赤よりも黒に近き火は空気と混ざれば段飛ばしに勢いを増し、凍てついて罅割れた肌を食い破っては溢れ出す。
 神楽耶が銃弾へ籠めていた力は――、万象逃さぬ神掃う破滅。
「……滅びぬものなど、ありはしませんよ」
 伸びた指先から順にほろほろと風に舞ってゆく塵を、見送る眼差しはとても静かで。けれども「何いまの?」「分からん……二度目なのに……」「すごかったです……!」だとか、相変わらずの賑やかしさで駆け寄ってくる三柱へ振り返るときには、すっかり穏やかなものへと変わっていた。
 なおもう一人のパーティの主役、正純が合流する頃には俺も銃を練習してみようかななどと軽率に夢見るヨハンが爆誕することになる。
「「はあ」」
 二人の猟兵は今一度声を揃えて。
 まずは信用して命を預けられる取引先を見つけることだと、実に的確にして説得力あるアドバイスを送るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
──俺でも分かるぜ
こいつぁとんでもねえ達人だってことがな

まずは無造作にナイフを振りに行く
確実に投げのカウンターをしてくるだろう
何しろ武術の心得なんざない素人の攻撃だ…この上なく掴みやすい
──投げられた!このまま地面に倒されるのはヤベエ
だから……神の力を借り受けよう

着弾地点に風を!投げられる方向に逆らうように、俺の身体を浮かせるんだ
運が良ければ離脱、悪くても叩きつけられる衝撃は大きく殺せる
さぁ…今のは覚えたぜ
打ってこいよアズマ…策謀なんか考えるタイプじゃねえ
攻撃しかできないだろう?
腕を捕り、そっくり…いや、より効率的で威力の高い投げで地面に倒す
そしてそのまま、左腕のショットガンをドタマに撃ち込む


矢来・夕立
気が合いますね。シンプルなのが一番ですからね、こういうのはね。
殺す。
…のは、別にオレでなくても構いません。

まじないがほんのり残っているようですから、お借りします。
【紙技・文捕】。紙垂に電流をもらって強化、それを張り巡らせて罠を作成。
地力でバケモノなんですから不意打ちも騙し討ちもする。トラップだって使いますよ。

掠っただけでも電流は走るでしょうけれど、それだけでは寂しいのでサービスしてあげますね。
かかったらちょっと気合い入れて罠を引っ張ります。
溶岩の中へ案内してあげましょう。
罠を避けるにしろ、千切るにしろ、その間は無防備じゃないですか。
一瞬だけでも隙があれば、そこに入るのはたやすい事ですよ。


花剣・耀子
随分とシンプルね。

必須じゃなくても効率がよいのなら、力を借りない理由はないのよ。
引き続き追い風をお願いね。……、嗚呼。雷も良いわ。くれるものは貰いましょう。

――機械剣《クサナギ》、全機能制限解除。

機械剣を手に、風を背に。
踏み込んだ一歩目からウェポンエンジンのトリガーを引いて、
加速を重ねて踏み込みましょう。

真っ直ぐ、一直線に。
機動を絞って、射線を絞って、その蹴りの来る方向の空へとアンカーを射出。
鋼糸じゃああの蹴りは止められないでしょうけれど。
だったら、天のちからを借りるまでよ。

雷で彼我を隔てて、その間隙に機械剣を一閃。

この剣に嵐を呼ぶ神威なんて無いけれど。
ヒトの業も、捨てたものじゃあないのよ。




「気が合いますね。シンプルなのが一番ですからね、こういうのはね」
 あっけらかんとした同意。夕立がアズマの狂気的な殺意に対して何かを思うことなど、そもそもある筈がなかったのだ。
 仕事を――殺しをする気で戦場に立つ。そのとき、他の感情なんてものが存在したって邪魔なだけだ。 殺す。……のは、別に自分でなくともいいという点が唯一異なるというくらいか。
 最終的に標的が死ねば同じこと。
「ですのでこっちもシンプルにいきましょう。ワビサビブレードさん、ピコピコマジシャンさん」
「クソほどダセェが?」
 語感的になんとなく自分だろうな~っと思えるのが鬱陶しいというか我慢出来なかったヴィクティムはつい返事してしまったが、耀子に至っては自分が呼ばれたことを気付いてもいない。
 ひとを同レベル以下のヒーローネームに堕とす鬼畜の所業か? いやいや本人的には素で気に入っているのかも――とりあえずはそんなことよりも目先の脅威だ。
『…………』
 猟書家・アズマ。
 この距離で向かい合うだけで感じられる殺気、闘気。いつ踏み込んでくるか、どこへ打ち込めば有効打となるか、容易に悟ることは出来ない。最も確実な予感はといえば、不用意に飛び込むのなら、死。
 ――だったらそれを利用するまで、と裏をかくのがヴィクティムという男だ。
「ま、提案自体にゃ賛成だ」
 ひひゅんっとエクス・マキナ・ヴォイド、生体ナイフを回し持って両手に滑らせる。ごくごく無造作に駆け出したヴィクティムは、そうしてアズマへ対して、あろうことか真正面から斬り掛かった。
『死に急ぐか』
 内から外へと円を描くかのアズマの片手。そこまではいい、だが瞬きの後には両方の刃を両脇へ弾かれ、あまつさえ片腕と胸倉を掴まれ崩されているというのだから武術の心得なんてさらさらないヴィクティムには何が何やらさっぱりだ。
 成程。成程? ――足を払われたか。空が真上にあって、と。
「ライヴス!」
「ちょっと、もう!」
 そんな恐れ知らずのヴィクティムに名を呼ばれた神は既に魔法を解き放っていたらしい、或いは日頃から無鉄砲野郎のサポートをしているためであろうか、いずれにせよ早いカバーは地面で後頭部が破砕する寸前に逆向きへと吹き上げるクッションとして辿り着く。
 その風を追い風として、ともに飛び込んだのは耀子であった。
「――機械剣《クサナギ》、全機能制限解除」
 地を踏む前から剣に取り付けたウェポンエンジンのトリガーを引いて、引いて、大きく前方へと加速する。火花零す機械仕掛けが鉄臭さを広げるのか、それとも今までに剣自体が浴びてきた血そのものか。いずれにせよ正拳――、アズマがヴィクティムへ叩き込まんとしていた一本が決まりきるよりも先に、ギザ歯の機械剣が宙を薙ぐ方が早かった。
 ざあんっと立つ剣風の波は魔法と交わって小さな竜巻を起こし、アズマの身をはねのける。とはいえ危うげなく着地をこなされれば、これで仕切り直しといったところか。

「ああ、本当の話。そこ危ないですよ」
 いいや?
 こんな焼けた大地に、ただの紙切れなんかが燃え尽きず落ちていられる筈がない。アズマが踏みしめたまさにその地点、ばらまかれていた白色のにょろっとした紙束は夕立の式神である紙垂。紙技・文捕。三人はまるでフリーダムのようでいて、それぞれがヴィクティムの動きを契機として作戦行動を開始していたのだ。
 大気中に漂う魔素に触れ電流を帯びることとなった紙垂は、アズマの素足にダイレクトな電撃を伝わせる。次の行動を取るまでの間が僅かに一秒でも遅れたならば、罠としてそれは成功だ。 耀子が斬り込んでいる。
「嘘ね。安全な場所なんて、もう何処にもない――のが本当かしら」
 滑らせたチェーンソーの歯が肉を食む喜びに震える。眼球組織がぎょろりと動いて、かたかたかたかたとアズマの胸元を裂く。伝う振動を押さえ込むには随分な細腕で、しかし振り回されることはない。ふたつが耀子とクサナギであるから。
 反撃の蹴り足に合わせ補助機構であるアンカーを射出、視えたと思えば打たれているほどの神速の蹴撃に完全についていくことは難しくも、そんなことは織り込み済。 だったら、天の力を借りるまで。
「おねがい」
 ぴしゃあんっ。
 落雷を導くため――鋼糸はただ、絡みさえすればそれで良かったのだ。風とともに授かっていた雷の加護、それに漂う粒子。彼我を隔てる光の柱ごと一閃する機械剣は先ほどとは逆のナナメに、刻む傷で赤く飛沫を散らした。
「やれやれ、あれって肩を外す意味もあんのか」
 一方のヴィクティムは自らの肩をごきりとはめ込んだところ。夕立と耀子に繋ぐため、ではヴィクティムは他二人のため進んでピエロに徹したかといえば、それはまた違う。
「やっぱ、よく分からねえものは触れて覚えるに限るな」
 コード・Update Patch<< Rise >>。
 やられた分はきっちりお返しする主義だとも。 ――先ほど受けた投げ技を解析し、修正。知識なんぞなくとも身体に叩き込んでしまえば、同じ芸当が出来ぬ道理はなし。
 浅くはないバッテン傷を胸へ刻まれたアズマは、だが退くという言葉を知らぬのだ、ヴィクティムが寄るのならばその身を粉へと変えるべく突きを放つ。
 速い。
 速いがしかし、実行したならば視る必要すら最早なく。
「――あぁ、ありがとうよ!」
 発動したユーベルコードはその腕を掴ませ。胸倉を。足払いを、重心移動からの投げ落としを、そっくりそのまま――……いいや。オリジナルでは成功させることの出来なかった、追撃。本来は拳であったろう脳天への一撃までを、左腕のショットガンにて達成させる。
 ズドンッ。
 一瞬の静寂。
 のち、濃くたちこめる硝煙を裂き飛び出すアズマの掌底は、抜け目なく即座に飛び退いたヴィクティムへは届かずに。代わりにその手へ手枷よろしく絡みついたものはやはり、ばちばちと電流帯びる式神たちであった。
 引き倒された身を起こす頃には全身紙垂塗れ!
「はい、一気に仕上げましょう」
 命じた当人にして罠を自在に押し引き出来る夕立は、行先をマグマの中と定め気合を入れてのご案内、だ。僅かずつ、僅かずつ肉体の制御を奪われるアズマの足取りが覚束なくなる。火弾を撃って支援するヨハンは瞬いて。
「すげえ、これが通りすがりの美少年オリガミファイターの力……ッ!」
「やめろ」
「えぇ……」
 ニンジャは理不尽、仕方ない。
 引き続きぼこぼこに精神面を殴られるヨハンは置いておくとして、夕立の思惑通りに事が運んでいるのは事実。アズマにとっては煮え滾るマグマも拳の一振りで散らせる程度の、さしたる脅威ではないのかもしれないが、肝心の格闘の術が縛められていては。
 ギャリギャリと大地に赤い一本線を走らせながら、その背を耀子が猛追している。
 こうとなってはヴィクティムが選ぶのは、最大限に主役を活かす道。一発……いいや二発か、入れてやったことで実にスカッとした頭で、景気づけの祝砲めいた散弾をアズマへ浴びせ逆側から注意を引いてやる。
「ンン? 虫も殺せずにくたばっちまうスクィッシーが、猟書家サマの定義ってことでいいか?」
 ほぼ時を同じくして、弾ける覇気に千切れ飛ぶ式神たち。
 次こそヴィクティムを屠らんとし地を蹴り上げるアズマと。そのアズマの背に突き立った、ひとつのアンカー。じゃこんっと巻き取る音はそれこそ銃火器の火を噴く音のようだった。引き寄せられ、回旋して辿り着く耀子は次の一歩を踏み出させることなく、クサナギの歯で散々に弾痕のついたアズマという男の首を刎ねてみせた。
「この剣に嵐を呼ぶ神威なんて無いけれど。ヒトの業も、捨てたものじゃあないのよ」
 噴き出す鮮血が地面に触れる端からジュッと失せる。結果としてマグマの側へ膝から崩れ落ちる肉体も、やがて溶け消えてゆくのだろう。

「こういうとき正統派ヒーローって何するんですか」
「そうね。炎をバックに並んで歩いていれば、大抵の場合は正解だわ」
「ハッ。違いねえ」
 ――――ザッ!
 ちょうど良い爆発(実態はプログラム)も相俟って、三柱に迎えられる返り血だらけの三人は、確かにとても絵になっていたという。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

キディ・ナシュ
【ひでお】

出ましたね悪の親玉!
ですが倒れるのはあなたの方です!

敵が強敵なのはその気迫から伝わって参ります
アレをやりますよ、おねえちゃん!

先ずは真っ直ぐ正面から挑みましょう
運が良ければ一撃入――おはやい!
あっという間に掴まれて宙を舞い
ぐしゃあと地面に落ちて
頭は無事ですがくらくらしますぅ…

伸びていたら頭に強い衝撃
おねえちゃん痛いです!起こし方が雑です!

ぴょこんと飛び起き再びダッシュです!
アズマさんがとても強いのは分かりました
ですが、ハイパーつよつよキディヒーローに一度見た攻撃は通用致しません!

掴まれるよりもなお早く、懐に入り込み投げ飛ばします!
くらえ、仲良し姉妹&神様つよつよコラボアタックです!


イディ・ナシュ
【ひでお】

生憎とアズマ様のご意向に沿うようにはできておりません
死んで差し上げられぬ無礼を、お許し下さいませね

アレ、と宣言する義妹を見れば
それはもう眩しいほどに輝く瞳
真似っこ遊びをしたいのだとでも訴えてくる様に
溜息を吐くも異論は無く
…頭は割らないようにお願いします

恐れ入りますが少しの間、撹乱をお願い致します
神と呼ばれる方々へとお願いをして
吹っ飛んだキディの方へと駆け寄り
眠りと癒しを齎す言葉を義妹へと
魔法が利き易いならこれで概ね怪我は回復するでしょうか
目覚めのベルの代わりには、振り上げた本の角
常日頃のお寝坊さを鑑みた結果です

さ、頑張ってらっしゃいな
まともな技名の付け方は
お家に帰って特訓しましょうね




 大小の岩の塊が、駆けるアズマの直ぐ脇へ次々に打ち込まれる。
 纏めて蹴り砕いて男が見遣る先には、巨大スパナを担いだ少女人形が堂々と胸を張って立っていた。
「出ましたね悪の親玉! ですが倒れるのはあなたの方です!」
 少女――キディはびしりと言い切ればそのままにゅっと横へ引っ込む。
「……。……生憎とアズマ様のご意向に沿うようにはできておりません。死んで差し上げられぬ無礼を、お許し下さいませね」
 一拍後に砲弾と化した岩が蹴り返されるのを、予見していたもう一人、イディが引っ張ったのであった。
 わ か っ て い ま す ね? 声無き圧を感じたキディはこくこくこくと頻りに首を縦に振り、スパナを握る指に力を込め直した。此度の相手が強敵であるとは気迫で分かる。
 だからこそ、"アレ"をやるのだ!
「始めますよ、おねえちゃん!」
「……はぁ。頭は割らないようにお願いします」
 ヒーローには誰しも"必殺技"があるものだ。披露するには絶好の機会!
 鮮やかな桃色の瞳は好奇に眩しく光り、鏡写しのようなその色を逆に伏せて溜息を吐いたイディにはこうなっては止める術もない。
 異論なしとみるや、――びゅおんっ! 間髪入れず間合いを縮めてくるアズマに対して、キディもまた真正面へと飛び出す。
「いざっ!」

『ふん』
 傍目には無策に映るその激突。案の定というか、スパナの振りかぶりに拳を合わせ流したアズマの足払いは、じゃれつく子どもを相手するかの余裕がある。
「ほわっ!? わわわ、」
 キディがまず感じるのは浮遊感、そして瞬いたなら天地逆さの世界。
 浮いた身をそのまま掴み、振り、投げ落とされたのだ。
「きゅうぅ……」
 ぐしゃあなんて痛ましい音とともに後頭部から地面に激突して目を回すキディ。同時に背を強く打って空気を吐きバウンドした身体は、転がって距離を稼ぐにも難しい。
 投げは攻め手の起点に過ぎない。槌の如き追撃の踵がその頭を割り砕かんと振り下ろされる、――しかしそう上手くは続けさせない。カットに入ったのは数発の炎弾だ。
「させるかよ!」
「感謝致します」
 ヨハンの魔法。ともに飛び出していたイディは、のびた義妹の腕を引っ張って抱き寄せた。屈んだすぐ頭上をスレスレにアズマの足が通り過ぎてゆくが、そこへ飛来する水泡の群れがクッションとなってぐんにゃり押し返す。
 こちらはディアンナの力。そうして、弾かれるアズマが着地した足元に閃光発し炸裂するのはライヴスが仕掛けていた雷であろう。
「守ります……っ」
「目が足りていないようね!」
 懸命な支援が染み入るほどありがたい。だからこそ、礼は後だ。キディに肩を貸し、光に紛れて離脱するイディ。蹴った地にぴちゃんと跳ねる水は神々のものではない、オフェーリア――癒しと眠りを齎す幻、イディの魔法だ。いつしか耳元に聞こえていたうわごとが止んでいる。気を失おうとスパナだけは手離さないキディは、場違いに良い夢でも見ていそうな顔をしていて。
「もう……重いですよ」
 やっぱり、お菓子の食べ過ぎは注意してあげないと。
 ヒーローになるのなら、夢の中ではなく、現の世で。肌身に広がっていた罅が塞がり、そのダメージが十分に和らいだことを確認したイディはスッと取り出す白蒙の書の角で癒えたばかりの義妹の頭を殴った。
「っっひゃい!!!?」
「起きなさい、お仕事の途中でしょう」
「ぁ、う……うう、起こし方が雑ですぅ!! でもありがとうございます!」
 先と今、どちらがより痛かったかといえば正直、なんともいえない。
 一瞬にして状況を飲み込んだキディの理解の早さは、物理的な教育の賜物といえようか。やさしく揺すった程度では起きやしないお寝坊さんは、ぴょこんと跳ね起き。
 ――さ、頑張ってらっしゃいな。
 ――いってきますっ。
 もう一言だけ交わせば前線へと逆戻りしてゆく。
 走る、走る! どんどん撃ち込まれる魔法の間を掠め、掻い潜り、熱されたスパナさんは赤々と燃える。「おっ」「よかった」とすれ違う度漏らす神々は、キディが突き進む道に風を起こし、隆起させてその身を高々跳躍させた。
『死に急ぐか』
 アズマが振り返る。
「ふふ! ハイパーつよつよキディヒーローに一度見た攻撃は、通用、っ致しませんっ!」
 キディは止まらない! 力一杯に振り下ろす巨大鈍器は、高さも速さも、それに込められた力そのものも先ほど以上。なにせ五人分だ。振るわれる剛腕が伸び切るより早く、ごおっと嵐とともに殴り抜ける。
 そして。
「これが!」
 強打にがくんと落とされたアズマの手はふわふわな髪先すら掴み損ね。地を踏むと同時ずざあーーっとスライディングで回り込むキディはその両足をスパナで払い、飛び掛かる。 技名はミレナリオ・リフレクション、改め。
「くらえ、仲良し姉妹&神様つよつよコラボアタック――――です!」
 アズマに掛けられた投げ技をそっくりそのまま。
 更には、彼では不発に終わった踵落としをもスパナさんの一番とがった部分を振り回して決めてやった。

 どおん、どおんと遅れて生じる爆発が中心点の威力の程を知らしめる。
 吹き付ける風に前髪をかき上げられながら見つめるイディの瞳をもまた、炎がキラキラ輝かせていた。
「……。まともな技名の付け方は、お家に帰って特訓しましょうね」
 気付けば胸元、書を随分と強く抱きしめていたようだ。快進撃に息を吐き、まだ終わりでないと知りつつも肩の力を抜く。近くで魔術を繰っていたディアンナは物理面よわよわ同士、そんな彼女へ降りかかりかねない飛礫を氷の矢で撃ち落として微笑みを浮かべた。
「自慢のヒーロー……ですね?」
「まだまだ、たまごですけれども」
 ぺことお辞儀をすると、イディはごくごくひかえめな声と伏し目とでキディのため魔導書の頁を開く。でも、きっと喜ぶので伝えておきます、――と続ける瞼の裏にだって、おひさまのようなピカピカ笑顔をみているのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

オズ・ケストナー
セロ(f06061)と

シュトラール、くるよっ

自分をシャボン玉で覆えば、あの髪によく似た虹色の『シュトラール』が踊る
いつ見てもきれいでわくわくするから思わず綻んで
びゅんと素早く近づき斧で攻撃
攻撃は回避
セロに攻撃が向かうなら駆け抜けながらセロの手を取り
いっしょのシャボン玉にのって避ける

セロの手を離したら
こっちこっちっ
アズマを呼び全速力で反対方向へ
はさみうち狙い

視線を向けなくても
後ろ手で神の3人を手招いて指さしたら気づいてくれるかな
いこう
セロとわたしと、みんなのどうじこうげきだっ

相手が強ければ強いほど
まけないってきもちもつよくなる
ヒーローだもの

セロの言葉を引き継ぎ
みんなといっしょなら、まけないんだっ


セロ・アルコイリス
オズ(f01136)と!

気を付けてくださいよ、ソラナ!

ぽかぽか柔らかな『ソラナ』な光魔法を自分に、【曙光】
ふた手に分かれて
狙いを定めさせねーように、挟み撃ちを狙えるように
神サマ達にも目配せして(ね、ほら、あんた達にも期待してますよ)って

おれは回避できるほど迅速じゃねーけど
カウンターなら得意分野ですよ
敵の動きをしっかり見て、学習します

あんた相手に徒手空拳仕掛けるほどおれ、強くねーんです
でもね、

危険感じたらオズに手を伸ばして
逆にオズが危険なら風魔法でもなんでも使って助ける

──でも、
ヒーローは戦隊組むモンだっておれは聞きましたよ
ひとりでダメでも、ふたりなら、皆と一緒なら、
そ、負けねーんです!



「シュトラール、くるよっ」
「気を付けてくださいよ、ソラナ!」
 オズとセロ。強烈な殺気を放つ不死殺しと対峙しながらも、二人がその空気に染められることはない。
 大分と口に馴染んできたヒーローネームをたくさん呼び合って、ついついにへりと口元が緩むくらいには、辛い戦いをも楽しむ余裕を忘れず持っている。そこには互いの存在があるから。
 同時に唱えるユーベルコード。
 セロの腰元でクレマチスの鍵がほの明るく光ったかと思えば、輝きがぽわぽわと広がって陽光に包みこまれる。ただのダガーにも閃きをくれるその魔法が日なた――ソラナのようであるのなら、オズが呼びだし纏うシャボン玉に透ける七彩はまさしくセロのシュトラール。
(「きれい」)
 いつ見てもわくわくするきらめきに尚更綻んでしまう。彼の髪によく似たシャボンは、それを素敵だと感じて手を触れるオズ自身の心があってこそ強い力を持つのだ。
 現に、今。
『…………無駄だ』
「ううん。むだなことなんて、ない!」
 飛び掛かってくるアズマに対して自ずから飛び込むオズを、熱風から、拳撃の衝撃から守ってくれる。
 走る――否、飛翔する。オズの代わりに弾ける泡を割るようにして、力強く振り回す斧型ガジェット・Hermesはアズマの拳とかち合い衝撃の波をぐわっと周囲へ広げた。

 強大な敵と真正面から打ち合って、決して力負けしない心の力。
「……ヒーロー、だなぁ」
 眩しく感じられるのはきっと、シャボンの飛沫の所為だけではないのだろう。こっち、とオズが誘うまでもなくアズマはそんな彼を倒さんと拳を握っている。とと、と、と両手を広げてバランス取って、吹き抜けた風一陣の力も借りるみたいに別方向へ駆け出していた一方のセロは、道中で傍を通る神々へと目配せひとつ。
 ――ね、ほら、あんた達にも期待してますよ。
 受け取る側もここまで猟兵との連携をこなしてきた三人だ、そこに込められた意図を直ぐに汲み頷きを返す。「任せとけ。まず俺が岩で足場を」「出だしはアタシの雷でピリッとでしょう?」「あのぉ……」なんてやり取りが背に届いてくるのはご愛嬌として。
 道行きに魔力の粒子が付き添い、ひんやりとした追い風が増す。呼吸まで軽くなった気のするこの力も元を辿れば、彼らの齎したもの。頼もしい仲間ばかりで自然、笑みは深まって。
「その分、こっちも働くとしますんで」
 たんっと踏み切る。
 激突の数度目に大きく弾き合うこととなったオズとアズマ、セロは先読みしそのアズマの背へと回り込んだのだ。狙うは挟撃。戦闘経験によるものか、正面以外にも目でもついていそうな超反応を見せるアズマは半身を逸らし、アサシンの一撃めいて静かに薙がれたダガーを浅い傷で流す。
 身を捻るまま蹴り足を上げる――だが、セロの纏う曙光の魔術はそうやって屠ってきた相手とは一味違う。光が過るような、まさに魔法の速さで二度三度と宙を往復する。結果として、アズマの足には無数の傷が走ることとなる。
 この男が負傷で止まる性質ではないと、セロはもう見抜いていた。
「ほっ、と」
 ゆえに深追いせず飛び退けば、予想通りに直後、蹴りが眼前を裂く。
 そのまま詰めていたならば手痛い、それこそ全身ばらばらになっていたかもしれないダメージをもらうこととなったろう。いくらドールだからといってそんなのは御免被りたい、蹴り足を地に着けば即座に繰り出される足払いをジャンプで避けて。
「あんた相手に徒手空拳仕掛けるほどおれ、強くねーんです。でもね、」
 ダガーを縦へと振り下ろすことで空間を断ち、再度距離を開かせるもアズマの瞬間移動のような踏み込み。間にあるセロの腕ごと胴を蹴り破ろうというのだろうか、風が鋭く音を立てる。
「ってうわっ、マズ……」
 目を丸くして声を漏らすセロは。
「――なんて、言うと思いました?」
 しかし。に、と笑う。自分に意識が向いているということは、少なからず他の者がフリーであるということ。そしてセロにはアズマの背に既にオズが見えていた。
「いく、よっ!」
 オズはそのまま勢い乗せて、着地点と定めたアズマとセロのもとへどおんっ! と、斧を目一杯に叩きつける。けれどもセロが巻き込まれることはない。インパクトの寸前に光魔法を重ねることで、風を掴むみたく急激な加速を得て、斬り抜けざまその場を飛び立ったのだ。
 舞い散る赤き血は――人形ではない、人間の、アズマのもの。
 一瞬で位置をとりかえっこしたように、一文字に交錯する二人の軌跡。
「セロ!」
「はい!」
 一拍遅れで地面が盛大に砕ければマグマが噴き上がり、衝撃で縫い付けられたままのアズマとは違い、オズとセロの身体は投げ出されて宙に浮く。
 手と手を伸ばして取り合うなら、オズのシャボンはセロをも包みこんでふうわりとした、安全な着地の手助けとなる。アズマの闘気が広げる炎嵐にぱちん! と弾けてしまうまでに、好機とみた神々の魔法が当のアズマへは更に幾重にも叩き込まれた。

 一人では出来ない合体・連携攻撃。
 それになにより、互いを想いあうからこそ怪我だって少ない。ジュウウと蒸発する血霧の中から姿を見せるアズマは孤独で、ボロボロで、確かに立ってはいるけれど。
「ヒーローは戦隊組むモンだっておれは聞きましたよ」
 それがセロの「でも」の続きだ。
 キラキラの護りの泡の水滴とともに並んで降り立つ其処は、熱さも薄らぎまるでステージの上のよう。
「ひとりでダメでも、ふたりなら、皆と一緒なら、」
「みんなといっしょなら、まけないんだっ」
「そ、負けねーんです!」
 言葉の更に先を引き継いだのはもちろん、オズ。
 ヒーローネームや決めポーズも考えて。作戦決行に至るまでに色々と打ち合わせもしたが、肝心な決め台詞は現場のアドリブで十二分に息ぴったり。
 カッコ良くびしりと言い放ってやる二人の面持ちは、多少の傷汚れがつこうと晴れやかで。"死"の定義は未だに分からなくたって。「随分と、分が悪いようね?」どこか誇らしげなライヴスが見遣る先、死んだように、心を持たず戦うアズマのそれとはまったく対照的であった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シキ・ジルモント
共闘/結希(f24164)
ライヴスに魔法で強化を頼む

withの動きも確認、接敵して戦う結希を共に支援
ユーベルコードは攻撃を放つ瞬間のアズマの脚や肩へ、体勢を崩したり蹴りの軌道を逸らす事で妨害を図る
そうして作る隙により結希の攻撃や防御への援護を試みる
敵接近時は銃弾に纏う雷の力で一瞬麻痺させ敵を足止め、結希の追撃を促す

アズマが飛んだら狼獣人の姿に変身しつつ、先と同じ要領で風の力を借り跳躍
敵の頭上を取り、withの宿す炎へ風の魔法を借りた爪や蹴りを合わせて威力を増幅し、反撃覚悟で叩き落とす

気持ちの上では絶対に負けまいとする結希に倣って、こちらも形振り構わずに
獣の姿を晒し危険も承知で、強敵に喰らい付く


春乃・結希
共闘/シキ(f09107)

シキさんとの連携をそのままに、アズマに挑みます
神様の炎も、もう少し借りますね

withを想いで操りながら、自身も拳と『wanderer』の蹴撃で対抗します【怪力】
私の隙をwithで埋めるように動かして
手を抜いてる訳では決して無いんです
私より強い人に、強いなって言って欲しいんです
アズマは私よりずっと強いから、ただの攻撃は牽制程度にしかならないかもしれない
だから、シキさんの作ってくれた隙に【カウンター】を入れていく

シキさんがアズマを追ったら、代わりにwithを向かわせる
今の私は翔べないし、身体ももう限界だけど、心はまだ、折れてないから
with、お願い…シキさんと一緒に…!



 ライヴスより授かった風雷の魔力と、ヨハンより授かった炎の魔力。
 シキと結希とはそれを最大限に駆使しながら、アズマという強大な敵相手にも一歩と退かず対峙していた。
 ごおうっ!! ――怪力込めた結希の蹴撃はブーツwandererに施されし蒸気魔導により更に高められ、一閃にてマグマの水面をざわりと波立て柱をうち立てて。その炎の柱を突き破りアズマが飛び出せば、シキの銃撃があと数センチの精密さで足元を削る。
「さすが、伊達ではありませんね……!」
「だが押し負けてもいない。だろう?」
「その通り! ここからですよ、シキさん」
 そうした攻防を一度ならず三度、五度と続ける。
 確かな実力に裏打ちされた二人の連携は、アズマにとて切り崩しの機をそう与えさせない。無論、真正面から打ち合えば骨まで軋む衝撃こそは殺せない、表に見えるダメージからは想像もつかぬほど前を担う結希の身体はガタがきていた。
(「……よく狙え、こんなものじゃない筈だ」)
 そうした状況をひとつも顔に出さぬ結希だが、シキには敵の力の程から察せている。ゆえに自らに強く言い聞かせる風にして、ハンドガン・シロガネを構える両手の指を添え直す。
 もとの持ち主から教わった射撃姿勢。アズマが蹴り抜いた溶岩を砲丸よろしく差し向けてきても、動じずに狙いを定められるのは、結希の恋人――こと大剣withがザンッとそれらを一度に叩き割ってくれるため。
「with! そのまま」
 結希が願えば彼女の手を離れ自由自在に宙を翔け巡る、withの存在は事実、三人目の重要な戦力である。
 アズマの踏み込みを阻み、足場の大地を叩き割り、更には背後から首を狙いと大立ち回り。ただの武器だと囮や盾にして使い潰す術もあろうが、結希はむしろ自らよりもwithを優先する。
「っ」
 アズマには解らぬ感覚であろう。
 大剣を砕くべく振るった蹴り足を、受け止めるのは間に逆の足を割り入れた結希だ。弾ける大火が互いを炎の囲いに包む。蹴り砕き、そのまま抜ける心算でいたアズマの思惑はここに外れ、そうして外れると読んでいた――結希の戦いを理解しているシキの銃弾は風の牙連れその肩口を大いに吹き飛ばす。
 半身が後ろへ引っ張られるアズマ。駆け巡る雷気が更に反応を遅れさせ。
「はああぁっ!!」
 チャンスといえば運のような響きだが、飛び込む結希も、withとシキの力を信頼しているからこそ脇目を振らずに拳を握れる。どうっと叩き込む右は体格の差もなんのその、アズマを打ち上げ。
(「ぃ、った、い……でも!」)
 代償に砕けた手指と膝はいよいよ使い物にならなさそう。
 ここまできて初めて微かに眉を顰めた結希のてのひらへ、すこし預かっていてくれるか、と白銀の銃身をした拳銃が乗せられるのはそのときであった。

「シキさん……」
「それと、ライヴス。さっき空を飛ばせてもらったろう、あれをもう一度頼めるか?」
「アナタ正気……? 今やったらどうやったって炎が混ざるわよ?」
 いかに神の魔術といえど敵味方を撃ち分けることは不可能。ライヴスの風とヨハンの炎とがアズマという一点に交われば、先と同じに飛ぶにしたって軽い熱傷では済まぬだろう。そんなことは共に戦った短い時の中ですらシキも理解している。
 それでも、
「頼む」
 絶対に負ける気などない、と戦う結希に倣いたい。
 散々血を吐き散らしつつも宙で体勢を整えんと身を返すアズマを、今、追うのだ。
「……ぅ、ぐ、わかった! こちらこそ頼んだわ!」
 ただしちゃんと生きてうんたらと後に長く続け始めるあたり、ライヴスはやはりなんともおしゃべり好きな奴。シキはふっと薄く笑うだけで強く地を蹴り、足元から生じる風に身を委ねた。
 光景は炎の竜巻!
 高く吹き上げられるシキは、だが灰と散るつもりはない。焦げ落ちる肌は肉を晒すのではなく、跳躍の瞬間より生え変わるみたく獣の身へと変じ始めていた。眼差しは先ゆく――――そして追い越すアズマを捉え続け。
『墜ちろ』
「聞くと思うか」
 鉄拳と、獣爪とがぶつかり合う。
 広がる衝撃は空気を伝い、震わせ、周囲に突き出た大岩が粉と砕ける。並の覚悟と力では近寄れぬ炎の渦の中、しかし切れ間を裂いて飛来する剣の一振りは、他でもない。withである。
「ったく、あんたには親近感を覚えちまったよ」
「あはは……、私はヨハンさんみたいに強くて勇気いっぱいじゃないです」
 どうかお願い、シキさんと一緒に! そう、結希が強く念じたことで辿り着いたのだ。ヨハンに手を貸されて身を起こしながら、結希は空をみつめる。
 私は――withと離れた今の自分は、翔べない。身体ももう限界で、息するだけでバラバラになってしまいそう。
 けれども心は折れていないから。
「ただ、素敵な出逢いに恵まれているのはお揃いですね。……」
 弾き合った腕と腕をくぐり抜け、託した大剣が確りとアズマの胴を貫く様を。
 そうして一拍とはいえ身を強張らせた対戦相手へ、シキの蹴撃が鉄槌に似て打ち下ろされるその瞬間までを瞳に映して微笑んだ。
 さて、では。
 とんとん爪先で地を叩き足の感覚を確かめる結希。ごおうと隕石よろしく超高速で叩きつけられてしまえば、受け身を取る間も与えられなかったのだ、いくら歴戦の猟書家といえど五体満足とはいかないだろう。
「もうちょっといってきます!」
 ――つまりは攻め時ということ!
 はあ!!? と慌てるヨハンの叫びは此度もやっぱり聞こえないことにして。
 いくつかの岩を渡り歩くことで着地の勢いを殺しつつ降りてきたシキと、戻り来るwithをキャッチして駆ける結希とは敵へ向かい再び並走する。赤黒く染まった狼の獣毛は痛ましいが、考えることは同じらしい。

「すごくカッコよかったですよ」
「そちらの恋人もな。いや、進行形か」

 つんのめりながらだとしても、疎む力だとしても。
 それでも全力で、最後まで。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月居・蒼汰
神様よりも俺達を狙うならその方がいい
でもなるべく意識を引きつけおびき寄せられるように
大げさなくらい翼を羽ばたかせたり尻尾を振ったりしながら戦おう
ディアンナさん、俺達がついてますから
好きなように思いっきりやっちゃって下さい!
彼女には彼女の思うままに
何かあってもすぐ庇ったりフォローできるような立ち回りを意識して

近接攻撃でカウンターを食らわせてくるなら
元より遠距離攻撃のほうが得意な俺にとっては好都合
戦場に満ちる魔力の流れを読みつつ
踏み込んできた瞬間を狙って大きく後ろに飛んで
高速詠唱、スナイパーでしっかり狙いを定め
魔力の粒子的なあれそれも使った
なんかめちゃくちゃ強そうな(イメージ)願い星の憧憬の一撃を


レイニィ・レッド
話が単純でイイ
要はテメェを斬ればいいわけだ

神サマ
我儘一つイイですか?
自分に似合いの雨をひとつ寄越してください
とびっきりの土砂降りを

雨が降っているなら負傷は問題ない
敢えて正面から突っ込んで奴の注意を惹く
他の猟兵もこれで仕掛けやすいでしょ

拳は鋏で斬り払い
血飛沫に紛れ
だまし討ちとフェイントを駆使

投げ技は鋏ごと奴の拳を凍らせて
道連れにしつつ
投げの勢いを利用して距離を取り
雨に紛れて死角から鋏の切っ先を刺し込む
血祭りにあげてやりましょ

ああ、好い雨ですね
教えてやりますよ
自分は『雨の赤ずきん』

雨が 血潮が
自分を濡らす限り
赤ずきんは斃れない

いつまでも正しくねェモノが雨の中に立つな
失せろ


ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
神には貴方呼び

殺させてなる物か、必ず守る
俺が倒れると思うな、こちとら生き返った身だ
一緒に踊ろうか、神殺し

SPDで判定
【視力】【聞き耳】で【情報収集】しながら銀腕を盾にし【盾受け】【受け流し】【シールドバッシュ】で攻撃を凌ぐ
敵が不安定な態勢になる時を【戦闘知識】で【見切り】、大狼に合図して側面から突撃してもらい【体勢を崩す】
大狼にはそのまま退避してもらい、義眼の黄の災い:感電【マヒ攻撃】を【スナイパー】【全力魔法】で動きを止める
銀腕を剣にし【怪力】【早業】【鎧無視攻撃】【貫通攻撃】を使いながらUCで攻撃
いざとなれば味方を【かばう】


太宰・寿
むむ、近づいたら敵わない気がします
でも距離があれば優位なんてことはないですね、慎重に動きましょう

絵は後で、とディアンナさんに約束していましたから
ディアンナさんが貸してくださった綺麗で強い魔法をリスペクト
躍る水流、煌めく氷の矢
そして、ウサギさん
魔法には及ばないけれど、描いて
これが私の武器

私は猟兵の皆さんの動きをサポートできるよう立ち回ります
アズマを少しでも牽制できるよう彼の動きをよく見て放ちます
まずは視認することを重視
蹴りは描いたものを守りに回してでも、自分に届かないよう善処します
虹霓があれば絵が描けますが
いざとなればPolarisも抜きます
強敵相手、使えるものは全て使います



 神々よりも猟兵を狙うというのならば、それが良い。
 強者との戦いを求めているとでもいうのか。――。見た目上の強靭さだとか、燃える闘気だとか、蒼汰はそういったものにはまったく自信はない。本当は戦いそのものだって。
 けれど。
「ディアンナさん、俺達がついてますから。好きなように思いっきりやっちゃってください!」
 今、自分に出来ることすべきことが何かはわかる。
 踏み込んでくるアズマに対して、魔法の矢を無数に放ちつつ翼で風打ち大きく後方へと飛ぶ蒼汰。二者の間に開いた距離、横合いから飛びつくのは半透明の、氷――の、ウサギ?
「その通りですよ。それに約束の私の絵も、ぜひ楽しんでいってくださいね?」
「お二人ともっ……!」
 ディアンナさんの綺麗で強い魔法をリスペクトしてみました、と、愛嬌たっぷりてへぺろり。
 まさにゴッドペインターの業! こちらは寿のホワイト・キャンバスから描き出された力持つイラストだ。ちょうど先ほどの蒼汰の片腕のように、鋭い前歯でがばりとアズマの目元を襲う。超反応からの打ち上げの拳が愛らしいウサギを絵具にまで消し飛ばす、が、だからこそ間に合うものもある。
 たたんっ、と乾いた音がした。
 それはほんの僅かずつ着地タイミングをばらけさせながら、辿り着いた二人分の人間の足音。
「お前の相手には俺のような存在がお似合いだろう。一緒に踊ろうか、神殺し」
 クロスさせ殴り除ける風にしてアズマの腕を逸らす、銀の腕。 ルイスと。
「話が単純でイイ。要はテメェを斬ればいいわけだ」
 蒼汰の矢に紛らせ投擲した大鋏を突き刺す。 レイニィだ。
 アズマは傷にも構わず間近のルイスを殴り殺さんと更に一歩踏み入る、が、矢と鋏とを蹴り飛ばしたばかりの足ではどうにも出が遅い。一瞬のミスが命取りの戦場なんて、ルイスはこれまでにいくつも見て来た、ゆえに機も逃さない。
「白瑛」
 はくえい、と。
 ルイスの小さな呟きをたとえアズマが聞き取れたとて、結果は変わらなかったであろう。
 名を呼ばれ、岩陰から白き稲光の如き逞しさで突進してきた白き大狼に、不意をつかれ弾き転がるという結果だ。ひと跳びに跳躍して他方の大岩へ飛び移る白瑛を追うことを、アズマは、しない。目先のルイスこそが問題であると見誤る筈がなく――ただ、ただ押すにも引くにも我が身が動かなかっただけ。
 ルイスの左目、黄金めくメガリスの光が爛々と散る。齎す災厄は感電、スパークするかの炸裂音は一瞬のこと。
「申し遅れたが、こちとら生き返った身だ」
 殺せるもんなら殺してみろ。
 そんな強い意志をも込めた銀の刃――流体金属のメガリスが、ばっさりとアズマの身を十字に斬り裂いた。更に袈裟へと走らんとするのを暴風じみた蹴りが阻むも、飛び散った血の量は軽傷を優に超えている。

 遠のく狼の遠吠えもまた風のように。白瑛は引き際、ディアンナたちを後方へと押しやってくれたらしい。
 高まるアズマの殺気は今、合間へ飛び込んだ二人へ完全に向いていた。
「前は任せてもらおう」
「と、そういうわけですんで。そっちはそっちで集中してください」
 背で語る前衛にはルイスとレイニィ。後衛が蒼汰と寿、そしてディアンナ。万全な態勢といえよう。ルイスに続き駆け抜け際にレイニィは、ただ、と。ひとつだけ我儘をいいかとディアンナへ問うた。
「自分に似合いの雨をひとつ寄越してください。――とびっきりの土砂降りを」
「わかりました……っ」
 猟兵たちが守ってくれるおかげで魔術に集中出来るディアンナは、先ほど、レイニィが降らせていた俄雨を思い描く。物静かでいて力強い。そしてつめたいばかりではない、というのはきっと自分の主観なのだろうけれど。
 降り始めの雨がしとしとと赤頭巾の色を深めれば、反対にこれまでの傷が癒えてゆく。
 これでもっとずっと戦える。短く礼を口にし、前へと駆けゆくレイニィか勢い殺さずに大鋏を振るう。
 斬り払いの一手は、だが既に見切ったとばかり出始めの段で掴み取られる。腕を取られたとなれば続く手は、投げだ。レイニィもその対策くらい常に頭の片隅に置いている、逆の手で即座に引き抜く別な小振りの鋏は暗器のように前触れなく、どっと投げの起点である手指に突き立つ。
 直後ぐるんと世界は回転して、背には燃える大地の熱と感触。
『――――、』
 間髪入れず額目掛け打ち込まれるアズマの拳は、
「……は」
 レイニィの顔面スレスレ、鋏とともに氷柱に閉じ込められるみたく、凍り付いて地へ縫い付けられていた。濃度の増した雨のおかげもあり、急速に集う氷の魔素が作用したのだ。
 雨の気配が強まったことにはもうひとつ理由がある。
「掛かったな単細胞」
 笑い飛ばす如く吐息を零して、レイニィだけが転がり退ける直後に上空から降り注ぐ水の散弾が、次々にアズマを背から貫いた。後方、寿の虹霓がめいっぱい描き出し、世に送り出した力。
 近寄られるといやだな、という不安を取り除いてもらった身である。ならばと尚一層しっかり、チャンスをつかんで。
「これでっ!」
 もう一押し!
「俺が繋ぐよ」
 アズマが地を蹴って飛び退いたちょうどその先。
 もっといえば着地と同時、それほどに待って狙って――仲間が敵をここまで押してくれると信じるからこその精度の星の輝きが炸裂する。高速で紡がれた特別な魔法は。
 ユーベルコード、願い星の憧憬。 指を翳し星光を喚ぶ蒼汰の瞳にも、地面で弾けて跳ねてとキラキラを振り撒く魔力が瞬いた。赤青緑、神々の魔素をも含んだすべては、銀河そのものが天より落ちてきたような絶景であった。
「ああ、好い雨だ。雨ときどき星だなんて尚更洒落てますね」
 テメェにゃもったいねぇ限り。とは、降り続ける雨とその光に紛れ斬り掛かっているレイニィの言葉。
 教えてやりますよ。自分は"雨の赤ずきん"――雨に、血糊に濡れる限り、決して斃れることはない。
 不死を名乗るのだ。アズマにとっては挑発の意味をも持とうか。声のする方を殴り抜かんとすアズマであるが、朧な視界の端を過る銀閃への対処を優先するならばそうもいかない。盾として使うことになる両腕。ギャリリッとその両腕の肉のみならず骨までを削ぐ、もう一人はルイスで。
 レイニィの大鋏が横腹を抉り抜く重要な足がかりとなる。
『――おぉ、おおおおおお!!』
 殺せぬ存在を前にアズマが咆える。
 星の煌めきに焼かれた全身は大小の穴から血を流れ出させ、立っているのが不思議でしかないほど。周囲を猟兵と神々とに囲まれ、ついに追い込まれた男は己が立つ大地ごと砕き、全てを道連れにせんかの一撃を放った。
 アズマを中心として四方八方へ広がる亀裂、散弾めく溶岩、溢れ出すマグマ。前衛は勿論後衛へまで燃えて迫る衝撃の波の前へ、いの一番に蒼汰が飛び込んだ。
「っ」
 約束通り、決して傷付けさせない。
 詠唱が間に合わずとも出来ること、大きく広げる両翼で庇い立てる。
「ぁ…………」
 どおうっと叩きつける熱風に舞い散る羽根と、ジュウゥと痛ましい焼ける音。思わず足の竦んでしまいそうになるディアンナだが、描いた絵を惜しまずに壁としてより広域の皆を守る寿、そしてなにより変わらず優しい蒼汰の声がその心を奮い立てる。
「ディアンナさん!」
「だい、じょうぶ……です、 ――撃って!」
 期待に応えたい。
 誰かを護りたい。
 挫けながらも立ち向かうことの出来るヒーローの原動力は、いつだってシンプルなもの。「はい!」蒼汰が稼いだ一瞬が、寿が躍らせる水流の波が、ディアンナの射る特大の氷牙とひとつにあわさることでかつてない速さでアズマまで迫る。
 既にボロボロの男にその大技を躱す術はない。
 いいや。躱す気もない。純然たる闘争本能がそうさせるとでもいうのだろうか、避けるではなく、潰す。最後の最後にアズマという武道家がとった行動は、己が拳で脅威を打ち砕くというあくまで破壊に支配されたもの。
「いつまでも正しくねェモノが雨の中に立つな。失せろ」
「終わりだ」
 だが、矢の激突よりも尚早くアズマの両腕を斬り飛ばす二つの力が迸る。
 血錆びた鋏はレイニィで、銀の剣はルイス。もとより前衛で戦っていたからこそ間に合った二人。熱波を受けることでアズマと同じかそれ以上の傷を受けつつも、迷いなく攻めに出て――。
 ――だからこそ、矢はアズマの上体を吹き飛ばすことが出来たのだ。

 仰向けに倒れ込む神殺しの肉体とともに、大地に触れて弾け、広がる寿の力とディアンナの魔力は地割れの奥へまで染み渡ってその崩壊を遅らせる。
 あたり一辺が一気に氷上めく。
「酷い怪我……走れますかっ?」
「お任せあれ。正義のヒーローは去り際まで美しく――今こそヒーローウサギマンの出番のようですね!」
「……ふふ、ありがとう、行こう」
 しゅぱぱんっっと前方の空へ向けて寿が絵筆を走らせれば、流石普段からかわいらしいお話を描きなれているだけはある、即座に完成・実体化するイラストはヒーロースーツを着たウサギの姿をして人数分、離脱するべく猟兵を背に招く。
 傷付いた蒼汰の手を引いて駆け出す寿、ディアンナ。
 ――俺たちも乗るべきなのか?
 ――ま、今更絵面の話なんてしてらんねェでしょう。
 勝利の追い風は焦げ付くほど熱くも心地好い。俄かに困り顔をするルイスへと返したレイニィの、捲れ上がるフードの下の素顔は、今日も誰にも暴けぬまま。


 猟書家・アズマの企みは未然にて防がれて。
 秘密結社スナークとちょっと残念な神々との共闘は、こうして神代の戦いを現代へと再現してみせた。

「あぁ、一日で何度死んだか分からねえ心地だったよ」
「でもね。次にまた同じようなことが起きても、もっと上手くやれる気がするの」
「本当の本当に皆さんの、おかげです……ありがとうございました」
 戦いの理由、得物の選び方、どうやって強くなったか、自信を持つ方法、オススメの絵本に好みのタイプに――……三柱としては、激戦の中じゃ聞けなかった"知りたいこと"がまだまだ山ほどある!
 戦いで傷付いた身体を休めるついで、寄ってかない? なんて軽いノリで案内されるセンターオブジアースは、遠方より祈りを紡ぎながら戦いの行方を見守っていた神々の声援に満ちていた。

 神話が繰り返されるというのならば、守護者たちもまた何度だって集う筈。
 そのときはまた、共に戦ってほしい――と。約束という糧をも得た三柱は、ヒーローズアースの平和のためこれまで以上に活躍出来る存在へと進化してゆくことだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年11月30日
宿敵 『『アズマ』』 を撃破!


挿絵イラスト