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君が輝くのならば

#アリスラビリンス #猟書家の侵攻 #猟書家 #機甲戦乙女ロスヴァイセ #アリスナイト

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●鈍色の
「大勢の中にいると孤独を強く感じることがある」
 それは小さなつぶやきであったけれど平和な『不思議の国』プラットフォームの国の中では不思議と大きく響いた。
 一人の女性が大勢の愉快な仲間たちに囲まれ匿われていた。彼女はアリスナイトである。ただ便宜上そのような力を宿していると言われても、当人の女性ブラウは知らなかった。
 彼女は不安定な状態にあると言っても過言ではなかった。
 アリスナイトであれば、理論上無限の力を持つとされる。けれど、今の彼女はその片鱗すらも見い出せない。
「私は一人で居るほうがいい。傷つかなくてすむ。誰かと関わり合いになれば、どうしたって傷ついてしまうもの」
 それを摩耗とも呼ぶし、摩擦とも呼ぶ。
 人と人とが存在する以上、それは避けようのないものである。その摩擦に己の心が擦り切れていくのを彼女は感じていた。

「……ああ、でもそうね。貴方達は何も言わないものね。期待されることもなければ、何かを矯正されることもない」
 そんな彼女を遠巻きに見ているだけの愉快な仲間たち。
 彼らは彼女、ブラウが何をしてほしいのかをよくわかっていた。そっとして置いて欲しいのだ。
 けれど、それだけではダメなのだ。人は一人では生きていけない。
「ええ、そうなの。期待されたくないの。期待にそぐえないことが、どうしたって私の心を散々に切り裂くから」

 耳元で過去に言われた言葉が反響する。
 期待していたのに。
 できると思ったのに。
 損をしたような気分だ。

 それはら彼女のトラウマとなって耳元で残響する。その度に自分はダメな人間なのだと思い知る。
「そうだわ。私は鈍色。永遠に輝くことはないけれど、それでもひっそりと生きていたいの」
 誰からも必要とされず、誰からも期待されず。そんなふうに誰からも忘れ去られてしまいたい。

「――そうですか。それならば話は簡単です。その生を終わらせましょう」
 その言葉は残酷なまでに無機質な言葉と共に『不思議の国』、プラットフォームの国に響き渡った。
 ブラウが見上げた先に居たのは美しい銀髪に無機質な陽会を放つ赤い瞳。そして一輪の薔薇の華を胸元にブローチのように身に着けた乙女であった。
「排除を開始します」
 その腕から光刃がほとばしり、ブラウを貫かんと振るわれた瞬間、彼女の体を抱えて愉快な仲間たちがプラットフォームから飛び降りて、線路を走り始める。
「え、え――なんで……? なんで、逃げているの?」
 ブラウはわけも分からずに愉快な仲間たちに抱えられるままに線路上を銀髪の少女から離れていく。
 彼女の四肢には無数の愉快な仲間たちがしがみついていたが、ブラウの視界の中で彼らは瞬時に光刃に切り裂かれ、寸断されて崩れ落ちる。

「あ、あの子たちが――! なんで、どうして!? ただあの子たちは傍に居てくれただけなのに! どうしてそんなひどいことができるの!」
 そんな彼女の言葉に銀髪の少女、猟書家『機甲戦乙女ロスヴァイセ』は応えない。
 それはまるで言葉に応える命令を下されていないかのように、黙々と愉快な仲間たちを斬り捨てていく。
 そして、それは皮肉なことに愉快な仲間たちがブラウを逃がそうとすればするほどに抵抗する彼らを『機甲戦乙女ロスヴァイセ』は光刃で切り裂いていく。

 プラットフォームが炎に包まれる。
 その光景をブラウはただ見つめるしかなかった。
「絶対狙撃モード始動。標的、アリスナイト1体。発動カウントダウン、180、179……」
 機甲戦乙女ロスヴァイセの無機質な言葉が、まるでどこまでも追いかけてくるようにブラウの耳にこびりついた――。

●無限の
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回はアリスラビリンスに現れた猟書家『機甲戦乙女ロスヴァイセ』が引き起こす事件を解決していただきたいのです」
 無いアルテは頭を下げ、猟兵たちに告げる。
 今回の事件はアリスラビリンスの『不思議の国』の一つ、プラットフォームの国に匿われている一人のアリスナイト、ブラウを猟書家『機甲戦乙女ロスヴァイセ』から救わなければならない。

「今現在、プラットフォームの国は『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の蹴撃を受けて、炎上しています。標的となったアリスナイトのブラウさんは愉快な仲間たちと線路上を逃げています。なぜ、彼女が狙われるのか……それは彼女がアリスナイトのちからの源である『想像力』を膨大に秘めた存在であるからです」
 理論上、無限の力を持つアリスナイト。
 その力を持ってすれば、オブリビオンの攻撃など防げるはずだと猟兵の一人が言う。
 そのとおりなのであるが、彼女は過去のトラウマからか不安定であり、自分の『想像力』をうまく制御できていないのだ。

「かと言って、皆さんが猟書家『機甲戦乙女ロスヴァイセ』を倒せばいい……と言っても単純ではないのです。『機甲戦乙女ロスヴァイセ』は『特定の対象だけを高速狙撃するユーベルコード』を使い、ブラウさんを狙っています」
 そのユーベルコードは猟兵たちがいてもかばいきれるものではない。猟兵たちが『機甲戦乙女ロスヴァイセ』を倒すよりも速く、ブラウはそのユーベルコードによって殺されてしまう。
 そうなってしまえば、オブリビオン……強大な力を持つオウガとして蘇ってしまう。

「はい……ですので、ブラウさんには自分自身で無敵の鎧を想像し、『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の狙撃ユーベルコードを防いでもらわなければなりません」
 そのために何をしなければならないのか。
 それはブラウや彼女を護るように付いてきている愉快な仲間たちと関わりながら、ブラウが『自信』を持てるように、自分の『想像力』を信じられるように励まさなければならない。

「人の心の機微というものは難しいものでありましょう。私自身も私のことを信じられるかと言われたのならば、自信はありません。ですが、ブラウさんには今こそ、その自分を信じること、想像力を正しく扱い、身を守ってもらわなければなりません」
 猟兵達がやらなければならないことは二つ。
 アリスナイトであるブラウに自信を着けさせる、励ます。
 そして、猟書家『機甲戦乙女ロスヴァイセ』を打倒する。

「ブラウさん、彼女の心を励まし、再び輝ける鎧をまとわせるのは皆さんにしかできないこと……どうか、よろしくお願いいたします」
 そう言ってナイアルテは猟兵達を送り出していく。
 自分を信じること。その難しさは言うまでもない。誰かに言われて即座に身につくものでもない。
 けれど、それができなければブラウは殺されてしまう。猟兵たちは困難な事件であると肌で感じながら、それでも次々と転移していくのだった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回はアリスラビリンスにおける猟書家との戦いになります。不思議の国、プラットフォームの国を舞台、猟書家の蹴撃から愉快な仲間たちと逃げ惑うアリスナイト、ブラウを励まし、助け出すシナリオとなっております。

 ※このシナリオは二章構成のシナリオです。

●第一章
 日常です。
 アリスナイトであるブラウは、過去のトラウマ……責任や重圧、期待によって失敗することを恐れています。それ以上に誰からかがっかりされることを異様に恐れていますし、孤独を愛すると嘯きながらも、どこか誰かを欲しています。
 みなさんのキャラクターである猟兵たちもまた己の気持ちを整理しなければならないこともあるでしょう。
 己の気持ちを吐露しながら、アリスナイトであるブラウの心を理解し、励ますこともまた必要かもしれません。

 彼女たちは今、プラットフォームの国の名の如く、線路上を猟書家『機甲戦乙女ロスヴァイセ』から逃げている途中です。合流し、彼女に自信を持たせてあげましょう。

●第二章
 ボス戦です。
『機甲戦乙女ロスヴァイセ』は通常の3つのユーベルコードとは別に常時『超高速狙撃ユーベルコード』によって、アリスナイトであるブラウを狙撃し続けています。
 アリスナイトであるブラウが強い想像力の鎧を纏い続けなければ射殺されてしまうでしょう。
 彼女を励ましながら、『機甲戦乙女ロスヴァイセ』と戦いましょう。

 ※プレイングボーナス(全章共通)……アリスナイトを励まし、「アリスナイト・イマジネイション」の威力を増加する。

 それでは猟書家との戦いが巻き起こるアリスラビリンスにおいて、アリスナイトの心を励まし、自信をもたせる戦いになります。
 皆さんの暖かな心が照らす物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 日常 『あなただけの明日』

POW   :    強い気持ちを持って、明日への希望を抱く

SPD   :    時の流れが自然と明日へ進めてくれるはず

WIZ   :    ひとつひとつ、気持ちの整理をつけることで明日へ進む

イラスト:nemi

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「178……177……」
 それは不気味なカウントダウンだった。
 アリスナイトのブラウは身体が震えるのを抑えられなかった。自分を、自分なんかを護るために大勢の愉快な仲間たちが斬り捨てられてしまっていた。
 今もまだブラウは愉快な仲間たちに手を引かれて線路の上を逃げている。
 逃げなくてもいいのではないか。

 あの恐ろしい機械の少女が狙っているのは自分なのだから。
 何もこんな自分を護るために、何も言わずに自分のそばにいてくれた愉快な仲間たちが死ぬことなんて無いのだ。
 期待してないで欲しい。
 けれど、見捨てないで欲しい。
 それは身勝手な矛盾だとわかっている。けれど、それでもそう思ってしまう自分が嫌だ。

 涙がこぼれてしまいそうになりながらも、アリスナイトのブラウは線路の上を手を引かれながら歩く。
 未だ前を向けない。
 涙はこぼせない。自分が今どうしようもない袋小路にいるのを感じながら、彼女の心は未だ鈍色だった――。
マグダレナ・クールー
今まで、たくさん頑張ったのですね。何度も、傷つくと分かっていながらも挑戦した。何もせずにここまで傷つきません。戦ったから、傷が痛むのです
ご自身の悲鳴に気づけた貴方は、とても立派です

優しい方は、人一倍に頑張ります。わたくしが会った優しい方は、結局の所は自分の為だと言っていました。ですが、自分のために周りを良くしようと行動するのは、とても素敵なことだと思うのです
その行いを無下にされるのは、イヤですよね。悲しくなってしまいます

貴方はダメじゃない
愉快な仲間たちの大切です。わたくしは貴方に生きて欲しいです
貴方は、貴方のしたいことを。貴方の為に
大丈夫です。だから……一緒に、みんなで。乗り越えてみませんか?



 挑戦するということはいつだって苦しいことだ。
 それをしたからといって成功するとは限らない。失敗することのほうが多いだろう。成功することのほうが稀なのだから、成功したのならば誇ればいいのだ。
 けれど、それをよしとしない者にとって、失敗とはまるで己の中の何かが削られるような想いに囚われてしまうことだってあるのだろう。
 プラットフォームの国、その線路上を愉快な仲間たちと逃げ惑うアリスナイト、ブラウは涙を溜め込んだ瞳のまま、彼らに腕引かれて走っていた。

 背後に迫るのは猟書家『機甲戦乙女ロスヴァイセ』。
 不気味なカウントダウンは、彼女の持つ超高速狙撃ユーベルコードの発動にかかる時間であろう。
 あのカウントが0になった瞬間、己の生命はなくなる。そう思えばブラウはまた一つ失われるであろう愉快な仲間たちのことを思って涙が零れそうに為る。
「今まで、たくさん頑張ったのですね。何度も傷つくとわかっていながらも挑戦した」
 その言葉は優しかった。
 マグダレナ・クールー(マジカルメンタルルサンチマン・f21320)はアリスナイト、ブラウを護るように並走しながら言葉を掛ける。
 彼女がなぜトラウマに囚われているのか理解していた。

「何もせずに此処まで傷つきません。戦ったから、傷が痛むのです。ご自身の悲鳴に気付けた貴方は、とても立派です」
 マグダレナの言葉は刻まれた傷跡に染みるような軟膏のようなものであった。
 傷口に触れながらも、決して直接触れない。
 傷ができるのは前を向いて歩く生命であれば当然のものだ。それを人は練磨、研磨と呼ぶのかも知れないが、特別心の柔らかい者にとってみれば、それは傷つけられることと同じことである。

 そして、その意味を知るからこそ、アリスナイト、ブラウの心根は優しいものであるのだとマグダレナは識る。
「それでも、本当は悲鳴を上げてはならないのだって私だってわかっているもの。人の悲鳴は誰かの耳を徒にひっかくばかりだから」
 自分の悲鳴すらも上げ方がわからなくなっているのだろう。
 自身の声でさ、誰かを傷つけると思っているのだ。その言葉にマグダレナは頷き、微笑む。

「優しい方は、人一倍がんばります。わたくしが会った優しい肩は、結局の所は自分のためだと言っていました。ですが、自分のために周りを良くしようとする行動は、とても素敵なことだと思うのです」
 誰かのために何かをすることができることこそが、尊い行いであるとマグダレナは思っていた。
 けれど、そんな行いをする者たちは己のためにやっていることではないと言葉が常に返ってくるのだ。
 誰かのために為すことが必ず自分に返ってくる。そのためにそうするのだと。
「けれど、その行いを無下にされるのは、イヤですよね。悲しくなってしまいます」

 真心が届かないこともある。
 それは当たり前のことであったかもしれない。人の心の中は覗き込めない。知ろうと願っても、識ることの出来ないものである。
 だからこそ、人と人との間には摩擦が起こってしまう。心の固い者は傷つかないだろう。けれど、心の柔らかい者は?
「悲しい……それ以上に、そんなふうに思ってしまう私自身が嫌になるの。ダメな私のせいで、また誰かが徒に傷ついてしまうということが、がっかりされてしまうことが嫌なの」
 涙がこぼれていく。
 その涙をマグダレナは拭いながら走る。その涙こそが、きっと彼女の本質なのだろう。どれだけ膨大な想像力を持っているのだとして関係ない。
 今、彼女の中にある心根こそが、マグダレナにとっては愛おしい。

「貴方はダメじゃない。愉快な仲間たちの『大切』です。わたくしは貴方に生きて欲しいです。貴方は、貴方のしたいことを。貴方の為に」
 それは肯定の言葉であり真実だった。
 本当に彼女が言う通りの人間であったのならば、ブラウを身を挺してかばう愉快な仲間たちはいなかっただろう。
 彼女を救いたいと願う者たちがいる。その思いに引かれてマグダレナは舞い降りたのだから。
 だから、マグダレナは笑う。自信たっぷりに笑うのだ。

「大丈夫です。だから……一緒に、みんなで。乗り越えてみせませんか?」
 何も恐れることはない。
 失敗したのならば、助けてくれる者たちがこんなにいるのだから、とマグダレナはブラウの手を取ってレールの上を駆けるのだった――。

成功 🔵​🔵​🔴​

太宰・寿
期待に応えるって、すごく大変なことですよね
自分で自分を追い詰めてしまって
じんわり息ができなくなるような

大きな期待なんて、かけられた事はないけど
寿は良い子だから
親のその一言が、ひどく重く感じた事ならあります
良い子でいなきゃって、子どもの頃ずっとそう思ってました
親にすら言いたい事を言えない自分が、嫌いでしたよ

自分が嫌だと感じられるのは、自分の気持ちと向き合えているということではないでしょうか
だったら否定しないであげてください
あなたは、あなた
矛盾があってもいいじゃないですか
誰のためでもなくあなたのために
その気持ちを大切にしてほしいです
優しい人ほど、人のために傷つく気がして
そう願ってしまいます



 プラットフォームの国にカウントダウンが響き渡る。
 それは猟書家『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の『超高速狙撃ユーベルコード』の発動までの時間であった。
 どれだけ遠くに離れていても、そのユーベルコードは狙った標的を必ず貫く。その力は絶大であり、躱すことなどできようはずもない。さらに庇おうとしても、必ず『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の光刃は標的を切り刻んでしまう。
 ならば、どうするか。

 幸いにして標的となったのはアリスナイトである。
 ブラウという少女は理論上無限の力を発揮することできるアリスナイト。ならば、その無限の力を宿す想像力でもって『機甲戦乙女ロスヴァイセ』のユーベルコードを防ぐ鎧を纏えばいい。
 だが、それは大きな重圧となって彼女を襲い、彼女の心を不安定にさせる。
「期待に応えるって、すごく大変なことですよね……自分で自分を追い詰めてしまってじんわり息ができなくなるような」
 狙われたアリスナイト、ブラウの横を共に走る太宰・寿(パステルペインター・f18704)は、己のことのように喉が詰まるような思いであった。

 彼女はごく平凡な産まれである。今は平凡とはかけ離れた生活を送っているけれど、それでも彼女にも思い至る思いはある。
 誰だって皆平等に不平等を抱えている。それが傍から見てどんなに平凡な人生を送ってきたとしても、だ。
「その人の期待を裏切ってしまうのが、心苦しいの。息ができなくなってしまうの。どんなに考えないようにしたって、その人の残念そうな顔が、頭から離れない」
 ブラウの瞳には涙が溜まっていた。
 こぼしてはならないというように溜め込まれた、その瞳を見て寿は頷く。

「大きな期待なんて、かけられたことはないけど。『寿は良い子だから』……――親のその一言が、ひどく重く感じたことはあります」
 それはある意味で褒め言葉であったのだろう。
 けれど、子供に善悪の判別をつけることは難しい。誰だって指針がほしいのだ。子供であれば尚更だ。一番近くにいる両親の価値観が、子供の指針になる。
 だからこそ、その言葉は重くのしかかった。

 良い子でいなければ。
 それは寿が幼い頃にずっと頭のどこかにこびりつく思いであったことだろう。近くにいる、一番自分を大切に思ってくれるであろう親にすら言いたいことを言えない自分が、嫌いだったのだ。
 その思いはきっとブラウと似通った部分があったのだろう。
「けれど、あなたは私と違うように思えるの。好きなものがたくさんあって、楽しいことを、嬉しいことを表現できている」
 ブラウにとって彼女の語る言葉は、表情は眩しいものであった。
 自分にはないものを持っている。同じ様に視えて、同じではない。寿は静かに頷く。
 それができるのが今の自分である。

「私はそれができない。そんな自分が嫌になる。どうしてうまくできないのか、うまくできない理由さえもわからないままに生きていることが、何かへの裏切りのように感じてしまうもの」
 ああ、と寿は息を吐き出す。
 きっとそうなのだろうと思っていたのだ。

「自分が嫌だと感じられるのは、自分の気持ちと向き合えているということではないでしょうか」
 その言葉はブラウにとって意外な言葉であったことだろう。
 向き合う。
 ただそれだけの言葉すらも彼女の頭の中にはなかったのだ。似通った部分があるからこそ、寿は言葉を紡ぐことができる。
「だったら否定しないであげてください。あなたは、あなた」
 自分とは違う人間なのだ。
 どうしたって違う人間なのだ。同じにはなれない。それは悲しいことのように思えるけれど、逆なのだと寿の掌から温かいものがブラウに伝わっていくだろう。

「矛盾があってもいいじゃないですか。誰のためでもなくあなたのために」
 その気持を大切にして欲しい。
 寿は知っている。優しい人ほど、人のために傷つく。
 だからこそ、寿は駆けつけたのだ。
 誰かのために想える優しい人が、これ以上傷つけられないようにと。ただ、殺されてしまうだけの結末になどさせはしないと。

「そう願ってしまいます」
 彼女の言葉は、言葉でしか無い。力ではない。
 けれど、アリスナイトのブラウには違う。言葉であるけれど、力だ。寿の言葉を、想いを、それを受け取って、彼女の中にじんわりと力の光が灯っていく――。

成功 🔵​🔵​🔴​

フォルク・リア
(これは難題かも。
簡単に自信を持てるなら
最初から不安になったりしないから。)

ブラウたちを見つけたら事情を話しつつ
「やあ、君がブラウか。
守りに来た。と言いたいがそうじゃない。
君は自分でその身を守る事になるからね。」
ブラウの心情を察し、否定しない様に語り掛け。
「期待しているんじゃなく信じている。
もっと言えば分っていると言えばいいか。」
「何故なら君は失敗する事の怖さを知っている。
そう、本当は怖くて当たり前なんだ。
俺だって敵と戦う時は怖いさ。
でも、だから。共に戦う事が出来る。
此処にいるみんな(愉快な仲間たち)
も同じ気持ちじゃないかな。
少しだけ勇気を持てばきっと上手くいくさ。」
見捨てはしない。最後まで。



 グリモア猟兵から、今回の事件の概要を聞いた時、フォルク・リア(黄泉への導・f05375)は難題であるとまずはじめに考えた。
 それはそうであろう。
 人の心とは複雑怪奇なるものである。
 自身の心を正しく言葉にして説明できるものがどれだけ存在していようか。
 不安定なアリスナイト、ブラウ。彼女の人となりを語るグリモア猟兵であっても、正しく彼女という人間を説明は出来ないであろう。
 簡単に自身が持てるなら、最初から不安になったりなどしないのだ。

 だからこそ、フォルクは悩む。
 けれど、猟書家『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の『超高速狙撃ユーベルコード』はまってくれない。
 カウントダウンがあり、いつユーベルコードが放たれるのかが分かっているのが不幸中の幸いであろう。
 未だ言葉を尽くす時間が残っているということはフォルクにとっての幸運であり、『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の誤算であったことだろう。
 プラットフォームの国の線路を愉快な仲間たちと逃げるブラウに追いつくと、ブラウはフードに隠された顔のまま告げる。
「やあ、君がブラウか。守りに来た。と言いたいがそうじゃない」
 次々と現れる猟兵にはじめのうちは戸惑っていた彼女であるが、猟兵たちが敵ではないということを知ることができたのか、わずかに警戒がないのがありがたかった。

「なら、どうして?」
「君は時分でその身を守ることに為るからね」
 フォルクは事実を告げる。
 自分たちができることはそう多くはない。あの猟書家『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の『超高速狙撃ユーベルコード』は猟兵達を無視して放たれる。
 かばうことは難しく、必ずブラウを貫くだろう。
 猟兵がかばうことのできない攻撃を不安定なアリスナイトのブラウが躱すことなどできようはずもない。

「そんな、私、そんなことできないもの。どうしようもないのなら、放っておいて」
 もう自分のせいで誰かが傷つくのが耐えられないのだろう。
 不安定な心が見せる陰りだ。けれど、フォルクは否定しない。きっと彼女はわかっている。これは彼女自身の問題であると。
「期待しているんじゃなくて信じている。もっと言えば、分かっていると言えばいいか」
 フォルクは言い方を変える。
 期待や信頼はきっと彼女にとってプラスの言葉ではない。マイナスの言葉であるようにも取れるだろう。
 信頼を寄せた上で失敗してもいい。
 そう言ってくれる誰かがほしいのだ。あるがままの自分を受け入れてほしいけれど、あるがままの自分をさらけ出せない。

「なぜなら君は失敗することの怖さを知っている。そう、本当は怖くて当たり前なんだ。俺だって敵と戦う時は怖い差。でも、だから――」
 フォルクはブラウと共にある愉快な仲間たちを見やる。
 彼らはブラウをそっとしておいた。
 不思議の国で彼らは何をするでもなく、ただ傍にいた。それがどんなに彼女の心を癒やしたかわからない。
 それはなぜだろうか。
 ブラウに期待しているだとか、信じているとかではない。
 恐ろしいと思うことを理解している。共に理解しているのdあ。

「共に戦うことができる。此処にいるみんなも同じ気持ちじゃないかな。少しだけ勇気を持てば、きっとうまくいくさ」
 例え君が失敗したとしても、見捨てたりはしない。
 だから、ともにいるのだとフォルクは頷く。
「――……本当に?」
 ブラウの言葉は僅かに光を帯びる。
 期待に応えるためじゃない。そのままでいいと、けれど、一匙の勇気を自身で汲み上げればいいのだと言ってくれる者がいる。

「ああ、最後まで」
 フォルクが力強く頷く。
 自身の言葉を信じるように、頷くフォルクの姿にブラウは一匙の勇気を見出すのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

霧沢・仁美
ブラウさんに追いついて、後方のロスヴァイセに念動電光球を放って牽制しながら、ブラウさんを励ましに行くよ。

期待を裏切ることが辛いってのは、きっとブラウさんがそれだけ責任感のある人だからだと思う。
でなきゃ、辛いとも感じないと思うしね。

ただまあ…元々期待ってのは相手が勝手にすることだからね。
応えられなかったことを「損した」なんて言うのは自分勝手な発想だよ。
期待は願望、応えられなくて元々なのだからさ。
その経験は覚えておくべきだと思うけど、気楽に構えていけば良いよ。

できなくたって良い。できる限りでやれば良い。
さあ、一緒に戦おう、あの敵と!



「154……153……」
 不気味なカウントダウンが不思議の国、プラットフォームの国に響き渡る。
 それは猟書家『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の持つ『超高速狙撃ユーベルコード』の発動カウントであった。
 そのカウントが0になった瞬間放たれる『超高速狙撃ユーベルコード』の一撃は標的を違えること無く正確に必ず貫く。
 猟兵であっても、その一撃から標的となった不安定なアリスナイト、ブラウをかばうことはできない。
 それほどまでの一撃なのだ。

 霧沢・仁美(普通でありたい女子高生・f02862)はアリスナイトのブラウを追いかける前に『機甲戦乙女ロスヴァイセ』へと念動電光球(キネティック・プラズマボール)の炎を放ったが、その行動の全てを『機甲戦乙女ロスヴァイセ』は無視していた。
 炎が機械の体を包み込むが、足止めにもならずにカウントダウンだけが響いていく。
 それは標的となったアリスナイト、ブラウを抹殺するという目的以外はどうでもいいという『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の行動原理であった。
「こっちをやっぱり気にしていない……! 無視を決め込んで、ブラウさんだけを狙うつもりなんだ!」
 仁美は一刻も早くブラウに追いつかねばと線路の上をひた走る。
 不安定なアリスナイトであるブラウの心を励まさなければ、ブラウは『超高速狙撃ユーベルコード』によって為すすべ無く殺されてしまうだろう。

 そうなってしまえば、オウガとして蘇った時膨大な想像力を持つブラウは強大なオウガと成り果ててしまう。それが猟書家『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の目的なのだ。
 ブラウはきっと期待を裏切ることが辛いのだ。
 それだけ彼女が責任感のある者であるからこそだ。
「でなきゃ、辛いとも感じないはずだから」
 仁美がブラウに追いついた時、彼女の瞳に溜まっった涙は零れ落ちそうになっていた。どうして自分が追われるのかまるでわかっていないようだった。

「どうして……! どうしてこんな私なんかのために! 期待したってしようがないのに!」
 自分のために誰かが傷つくのが嫌なのだろう。猟兵たちの言葉によって不安定さは鳴りを潜めつつあったが、『機甲戦乙女ロスヴァイセ』のカウントダウンが迫るにつれて、あの無機質な声に脅かされるようにブラウは声を上げる。
「……元々期待ってのは相手が勝手にすることだからね。応えられなかったことを『損した』なんて言うのは自分勝手な発想だよ」
 仁美は言葉を紡ぐ。
 言葉は人を傷つける。容易に傷つけてしまうし、その傷跡は言葉では癒やすことは難しい。
 けれど、それでも仁美は言葉を尽くす。

「期待は願望。応えられなくて元々なのだからさ」
 他者の期待。それに答えられない心苦しさを感じるのは当たり前だ。誰かの願いを、のぞみを託されている。
 だからこそ、敏感な心は傷つきやすく。自分の傷には敏感に慣れても、他者の傷には鈍感でいられる。
 仁美は、それでもいいのだという。
「その経験は覚えておくべきだと思うけど、気楽に構えていけば良いよ」
 肩の力を抜くようにと。

 肩の力を入れすぎるから、人は失敗する。
 けれど、失敗したっていいのだ。
「そんなこと、いいの――……?」
「もちろん! できなくたって良い。できる限りでやれば良い」
 それくらいのものでいいのだと仁美は笑う。
 少しも状況は良くなっていないけれど、それでいいのだと。一人でなんて戦わせてあげないのだと言うように仁美は明るい声を上げる。

「さあ、一緒に戦おう、あの敵と!」
 ブラウの手を取って仁美は笑う。満面の笑顔で、なんてことのないことだと。人の心はほんの少しの切っ掛けで変わるのだと、それを証明するように――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サージェ・ライト
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、世に潜み…胸が目立ちすぎて潜めないとかそんなことないもん!!(お約束

あ、お構いなく!
勝手に合流するタイプの猟兵だと思っていただければ!
よろしくお願いしまーす!

せめて愉快な仲間たちへの攻撃だけは
漆黒竜ノ牙で逸せるようにしておきますね(武器受け

期待に応えるのって大変ですよね
でもまあ期待なんて裏切っちゃえばいいんじゃないでしょうか
あなたが困ってる時に手を貸してくれない人の期待に応えて何になるって言うんでしょう?
だから先も後ろも見ずに足元を見て…今を見てください
今、ブラウさんがしたいことは何ですか?
それがきっとブラウさんの出発点ですよ

※アドリブ連携OK



 世界がどれだけ悪意に満ちていようとも、闇夜に星々が輝くように絶望の中にも希望の光は満ち溢れる。
 それはアリスナイトのブラウにとっても同じことであったことだろう。
 どうしようもない自分にもなにか価値があるのか。その意味を知るための光は、徐々に猟兵達の言葉と共に彼女の中に蓄積されていたことだろう。
 プラットフォームの国に敷き詰められた線路はどこまでも果てがないように続いていく。
 その意味を誰もが知るだろう。
 始点がある以上、終点がある。誰の人生においても必ず終点が訪れる。どれだけ長い道のりに視えていたとしても、今を生きる者にとっては現在とは刹那である。

「お呼びとあらば参じましょう。私はクノイチ、世に潜み……胸が目立ちすぎて潜めないとかそんなことないもん!!」
 それはお決まりの約束のようなものであった。
 サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)のその登場の仕方にブラウと愉快な仲間たちは言葉を発することはできなかった。
 あまりに突然のことであったから、わずかに口が半開きになっていた。思わず今、自分たちが猟書家『機甲戦乙女ロスヴァイセ』に狙われ、追われていることさえ忘れさせるものであった。

「あ、お構いなく! 勝手に合流するタイプの猟兵だと思っていただければ! よろしくお願いしまーす!」
「待って、構うけど、よ、よろしく……?」
 ブラウはやっとのことでサージェの言葉に我に返ったように言葉を返す。一体全体目の前の自己主張高いクノイチはなんであろうか?
 そんなふうに考える余裕があることが、彼女が膨大な想像力を持っている証であった。その想像力なくば、『機甲戦乙女ロスヴァイセ』に狙われることもなかったのが皮肉でしか無い。

 世の中は広い。
 こんな人もたまにはいるだろう。それを受け入れるだけの想像力がブラウにはあった。
「で、でも、私……そんなに守ってもらえるような大層な人間じゃ……」
 そう、自分はそこまでの価値なんてない。
 愉快な仲間たちと猟兵たちに連れられて惰性で逃げているだけだというように口ごもるブラウにサージェがそんなこと関係ないというかのように言葉を紡ぐ。
「期待に応えるのって大変ですよね。でもまあ期待なんて裏切っちゃえばいいんじゃないでしょうか」
 え、とブラウがためらうように声を出した。
 期待を裏切る。
 それは彼女にとって考えることもない言葉だった。期待はかけられるものであり、裏切るとか裏切らないとかではなく、裏切ってはならないものであったからだ。
 けれど、サージェはなんてことのないように言うのだ。

「あなたが困ってる時に手を貸してくれない人の期待に応えて何になるって言うんでしょう? だから先も後ろも水に足元を見て……今を見て下さい」
 サージェの言葉は常に前を向いている。
 過去を振り返らない。失敗を恐れない。失敗したとしても、笑って過去に流せる。それだけの度量があるのだ。

「今、ブラウさんがしたいことは何ですか? それがきっとブラウさんの出発点ですよ」
 そう、今プラットフォームの国の線路上を走っている。
 経過点ではないのだ。まだスタートラインにも、始点にも経っていない。いつだってそうだ。
 思い立った時、やろうと思った時が出発点だ。考えが足りないだとか、もっとよく考えろだとか口さがなく言う者がいるだろう。
 そんなものがなんだというのだとサージェは笑う。

「いつだって――……」
「ええ、いつだって出発点は『今』ですよ!」
 誰も決められない。それは自分で決めるべきものなのだから――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
率直に言えば、おれはアンタに頑張ってほしいとは思ってる。「頑張らなくていい」なんて言ったって、それが今のアンタに気休めになるわけねえしさ。
……でも、それはアンタに重圧をかけたいからじゃねえ。そこは誤解しないでくれ。

沢山の人の期待をたった一人の人間が抱え込むなんてのは、正気の沙汰とは呼べねえよな。
もしかすっと、狂っていなければそんなのは耐えられないのかもしれねえ。

どんなに完璧に期待に応えようとしても綻びは出るし、ミスもする。
なるべくミスはしねえよう努力はしないといけねえけど……でも、重荷に思わずに気楽に取り組んだっていいんだ、きっと。
気楽に、だけど真面目に。……それなら、きっとアンタは大丈夫。



「率直に言えば」
 その言葉は震える言葉でもなかった。ブラウは、その声色の美しさに顔をあげる。
 未だ瞳には大粒の涙が溜まっていたけれど、それでも絶望の闇に飲み込まれた瞳ではなかった。
 彼女は今、分岐点に居る。どちらに進むにしても辛く厳しいものがあるだろう。けれど、片方は甘美なる死へのいざない。
 何もかもを捨ててしまえば、己を無価値と言う彼女は、彼女が望むままに消え失せるだろう。代わりに現れるのは人食いのオウガだけだ。
 欲望のままに力を振るうことの甘やかなこと。
 それは誰の心の中にも入り込み、侵食するものであったことだろう。

「おれはアンタに頑張って欲しいと思ってる」
 鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は己の言葉をかみしめるようにしながら紡ぐ。
 頑張れ、と言える。
 ブラウがこれまでどれだけ頑張ってきたのかはわからない。わかる者などいないだろう。例え、いたとしてもそれは次の瞬間には揺らぐ事実でしかない。
「『頑張らなくていい』なんて言ったって、それが今のアンタに気休めになるわけねえしさ。……でも、それはアンタに重圧を掛けたいからじゃねえ。そこは誤解しないでくれ」

 もしかしたのならば、その言葉はブラウの心を散々にえぐるものであるかもしれないと嵐は理解していた。誤解されやすい言葉であることもわかっていた。
 けれど、それは嵐にとって心のうちから溢れた言葉でもあった。
「――……わかるよ。言葉はいつだって正しく伝わるとは限らないものだから」
 涙をたたえたまま、微笑むのはブラウの心に誰かの心の暖かさが移っていたからだろう。それを見て嵐は頷く。
「たくさんの人の期待をたった一人の人間が抱え込むなんてのは、正気の沙汰とは呼べねえよな。もしかすっと、狂っていなければ、そんなのは耐えられないのかもしれねえ」
 一身に背負う期待は、いつだって誰かの心を押しつぶすものだ。
 それを嵐は知っている。
 誰も彼もが重みに耐えられる頑強なる心を持っているわけではないのだから。

「どんなに完璧に期待に答えようとしても綻びは出るし、ミスもする。なるべくミスはしねえよう努力はしないといけねえけど……でも、重荷に思わずに気楽に取り組んだっていいんだ、きっと」
「そんなふうに思ってもいいものなの?」
 それは単純な問いかけだった。
 どれだけ人の心が複雑になっていったとしても、最後に待ち受けるのは単純な答えなのだろう。

 その言葉、誰かの救いになるというのならば、言葉こそが尽くすものであり、心こそが砕いて配るものである。
 誰かのために。
 今を生きるブラウというただ一人のために嵐は心を砕いた。言葉にした。それがどれだけ誤解なく伝わるかはわからない。
 けれど、彼女のために言葉を紡いだという事実だけは消えることなはい。偽りなんてどこにもない。

 どれだけ猟書家『機甲戦乙女ロスヴァイセ』が『超高速狙撃ユーベルコード』によって彼女を狙おうとも、彼女の心に配られた心の暖かさ、光は撃ち抜けることなどできない。

「気楽に、だけど真面目に。……それなら、きっとアンタは大丈夫」
 嵐は頷く。
 力強く頷くことしか今はできない。結局の所、ブラウ次第なのだ。自分ができることは此処までだ。
 自分の心の光が誰かの心に暖かさを灯す。それを信じることが、かの『機甲戦乙女ロスヴァイセ』に対抗する唯一の方法なのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
ブラウ様、黄金像になってみる気はありませんの?
白金や白銀でも良いのですけれど

難しい事は考えずとも
ただあるだけで皆の為になれますの
そして何より私が喜びますの

いや、それはまずいだろ

猟書家の目的を果たさせない事には
変わりありませんの

こいつの言う事はひとまず置いといて
ブラウさんがこれまでに経験した事は知れないけど
今回は何もしないと死ぬ
抗って失敗しても死ぬ

詳しくは後で説明するけど
潔く死を受け入れても
皆を巻き込むのは変わらない

つまり失敗しても何もしないより
悪くなる事はない
その上でブラウさんはどうしたい?

あいつに一矢報いたいなら僕らも一緒に戦うよ

ブラウ様が一時でも永く輝くのであれば
私はどちらでも構いませんの



 その心の清廉さが呼んだのが、不安定な心であったのだとすれば、それは邪神をして永遠にしたいと思うものであったのかもしれない。
 邪神の恩返し(ガッデス・リペイメント)とでも言うように、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)と融合した邪神の分霊がひょっこり現れる。
「ブラウ様、黄金像になってみる気はありませんの? 白金や白銀でも良いのですけれど」
 それはあまりにも突飛な提案であったことだろう。
 ブラウはあまりのことに言葉を紡ぐことができなかったけれど、邪神の分霊は気にした様子もなく言葉を放つ。

「難しいことは考えずとも、ただ在るだけで皆の為になれますの。そして何より私が喜びますの」
 それはある意味でこの事件の根幹から覆す提案であり、解決策であった。
 邪神の分霊の考えることは一般的な人間の考えからは逸脱していたものであったが、確かに一応の解決はできるだろう。
 だが、晶は違う。
「いや、それはまずいだろ」
 そういう問題ではないのだと、邪神の分霊との見解の相違がある。
「猟書家の目的を果たさせないことには変わりありませんの」
 正しい言葉であったことだろう。
 黄金像に変えて傷つけないようにすれば、如何な猟書家の『超高速狙撃ユーベルコード』によってもアリスナイトのブラウを殺すことは出来ない。

 猟書家『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の目的が膨大な想像力を持つ彼女を殺して、オウガとして蘇らせることが目的であるのならば、邪神の分霊の提示した案が最も安価であり、最速の解決策に違いなかった。
 けれど、猟兵としての晶はそれを良しとしない。
「こいつの言うことはひとまず置いといて。ブラウさんがこれまで経験したことは知れないけれど……今回は何もしないと死ぬ。あらがって失敗しても死ぬ」
 それは残酷なる現実であったことだろう。
 アサイラムから召喚されるアリスはいつだって目を背けたく為る現実から、この不思議の国へとやってくる。

 それでもなお、彼女の心を切り裂くような現実ばかりが降りかかる。
「わかってる……でも、私だけが死ねば……」
「詳しくは後で説明するけど、潔く死を受け入れてもみんなを巻き込むのは変わらない」
 彼女の周りにいる物言わぬ愉快な仲間たち。
 何も言わずに寄り添ってくれた彼らもまた死んでしまう。それはブラウにとって心苦しいを通り越した感情を呼び起こしたことだろう。
「つまり失敗しても何も市内より悪くなることはない。そのうえでブラウさんはどうしたい?」
 晶はまっすぐにブラウの涙が湛えられた瞳を見つめ返す。
 誰かの期待に応えようとしてきた彼女ならば、自分で答えが出せるはずだと晶は確信していた。
 そうであってほしいという願望もあった。

「私は――……」
 ブラウの瞳に光が灯る。それは未だ輝きというには程遠いものであったけれど、それでも確かに灯った。
「あいつに一矢報いたいなら僕らも一緒に戦うよ」
 差し伸べられた手。
 例え、それがどんなに困難な道であったとしても。間違えてしまうかもしれなくても。失敗してしまうかも知れなくても。

 それでもいい。
 そうおもえるのであれば、人の心の輝きはいつだって無限。
「ブラウ様が一時でも永く輝くのであれば、私はどちらでも構いませんの」
 邪神の分霊が言う。
 輝く。
 それはとても難しいことであったけれど、できるかどうかわからないことであったけれど。それでもと意志の光が瞳に溜まった涙を押し流す。
 晶は大きく頷く。
 手を取り、人の暖かさを知るのならば、血の通わぬ機甲に負ける道理など何処にもないのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

熾護・敏利
◎心情
ブラウの姿はおれの悔悟を掻き立てる
彼女の心に光明を差せるのなら助けになりたい

◎声掛け
おれもかつて、皆の期待全てに応えようとした結果、
果たせずに自滅した経験があります
期待を裏切ったら見放されるかもしれないという恐怖
あの痛みを味わう位なら最初から1人がいい…
その思い、痛い程に判ります

しかしおれは今、君の元に駆け付けた
危機に置かれた君から何かしらの期待を抱かれるというのに
何故か?
期待外れと謗られるよりも、誰かを失う恐怖の方が上回っただけの事
その恐怖を拭う為、君達を護りに来ました

それに…このような形で愉快な仲間たちを失う事が本心ですか?
君が今、何を思うのか
心のままに行動してみても良いと思いますよ



 その姿に過去の出来事を悔やむことができるのが生命であるのだとすれば、それを取り戻すことのできるものもまた生命である。
 過去を過ちであると認めるのならばこそ輝けるものもあるだろう。そうでなかったとしても、輝ける何者かを守ることをこそ、己の命題と化す者もいる。
 期待に押しつぶされ、己の為し得ぬことをくいる姿は、そこに在るだけで熾護・敏利(人間のUDCエージェント・f30688)の心を悔悟を駆り立てる。
 もがくように彼はプラットフォームの国、線路の続く国を駆ける。

 喪ってしまったものは戻らないのだとしても、今在る光を途絶えさせて良い理由など何処にもないのだから。
 駆けつけた一人の男が、涙を湛えたままのアリスナイト、ブラウへと言葉をかける。そっと、重く伸し掛かるわけでもない。なんだったら聞き流してもいいとすら思っていた。
「おれもかつて、皆の期待全てに応えようとした結果、果たせずに自滅した経験があります」
 それはどうしようもない変えようのない過去であった。
 取り戻すことの出来ない時間であった。
「あなたも――……?」
 ああ、と思う。
 その涙を湛えた瞳は、今にも雫が零れ落ちそうになっていた。その涙を拭う資格など己には無いのだとしても、その涙を止めることはできないか。
 答えは否である。
 誰かの涙を拭うことに、涙を止めようとすることに誰が咎めようか。

「ええ。期待を裏切ったら見放されるかも知れないという恐怖。あの痛みを味わうくらいなら最初から一人がいい……その思い、痛いほどに判ります」
 共感できる。だからこそ、その涙を止めることができる。
 敏利にとって、己がこの事件を聞きつけたことこそが己の衝動。懊悩抱えていても、それでもと押さえつけるままに、そのままの己で駆けつける。
「しかし、おれは今、君の元に駆けつけた。危機に置かれた君から何かしらの期待を抱かれるというのに。何故か? 期待はずれと謗られるよりも、誰かを喪う恐怖の方が上回っただけの事」

 それは耐え難いものだ。
 知っていれば堪えられる恐怖であったかもしれない。けれど、恐怖とは常に突然に身に降りかかるものだ。
 誰しもが恐怖を乗り越えられるわけではない。そして、同時に一人で乗り越えなければならないものでもない。
「その恐怖を拭う為、君達を護りに来ました」
 人は手を差し伸べることができる。その手をとることができる。それが生命というものだ。

「でも……私は護られるだけの価値なんて」
 在る分けがない。期待がないわけでもない。自分自身への期待。淡い期待であったかもしれない。もしかしたら、という思い。けれど、いつだって、もしかしたらという思いは裏切られる。
 そのためらいを断ち切るように敏利は言葉を紡ぐ。

「それに……このような形で愉快な仲間たちを失うことが本心ですか? 君が今、何を思うのか。心のままに行動してみても良いと思いますよ」
 きっとそれは正しいことであると頷く。
 他の誰もが彼女を否定しようとも、彼は否定しない。
 どれだけ価値がないと言われようとも、自分自身が自分を信じられなくても。敏利が信じている。
 何が正しくわからないのであれば、その心のままに生きて欲しい。
 それは己が己を縛る倫理観では対極にある彼女の膨大な想像力を殺さぬ生き方ができるはずだからだ。

「そうしたのならば、きっと君自身を、そして君が守りたいと願うものを守ってくれる。それをおれは信じていいます――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

戒道・蔵乃祐
火炎耐性+早業で炎を越えて割り込み
ブラウと愉快な仲間たちを拡散シールドで武器受け+かばう

…遅くなってしまってごめんなさい
失われた命に哀悼を。あなた方の勇気に敬意を
僕も。彼女を助けたい
此処からが、踏み留まりどころ

そしてブラウさんはどうか、抱え込まないで
彼等は覚悟と貴女への親愛に全身全霊を懸けた

アリスラビリンスの主人公はアリス
貴女が訪れなければ、彼等も役割を持たざる迷い子だったから

期待は、どうでしょうね。僕は期待されて生まれた子ではなかったので
いえ。実際はどうだったのか

だから、今も足掻いています
どうだろうと構いはしない。意地を通して、押し通して、その先へ
世界に誇れる自分を何時か、見付けるその時まで



 燃える不思議の国、プラットフォームの国は今まさに猟書家『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の侵攻を受けていた。
 だが、彼女の標的は唯一。
 膨大な想像力を持つアリスナイト、ブラウ。彼女を殺して蘇らせれば強大な力を持つオウガとして現界することだろう。
 そうなれば、猟書家『鉤爪の男』の望む闘争溢れる世界に必要なピースがまた一つ揃う。そのために猟書家『機甲戦乙女ロスヴァイセ』は淡々と目的を果たすために、障害となる愉快な仲間たちを切り捨て、燃やすのだ。

 その炎の壁を越えて割り込み走り抜けるのは、戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)だった。彼はブラウたちに追いつくと即座に拡散シールドによって彼らを保護しつつ線路続くプラットフォームの国を駆ける。
「……遅くなってしまってごめんなさい」
 その見た目とは反した優しい声色に僅かにブラウの表情がこわばりを解くのを感じ、蔵乃祐は胸をなでおろす。
「失われた生命に哀悼を。あなた方の勇気に敬意を。僕も。彼女を助けたい。此処からが、踏みとどまる所」
 ブラウに付き添うようにして駆ける愉快な仲間たちに蔵乃祐は敬意を持って接する。彼らはアリスナイトであるブラウを守るために自らの生命を投げ出した。

 もう失われてしまった生命は戻らないけれど。
 それでもこれから奪われてしまうかもしれなかった生命だけは守る通すことができる。
「……やっぱり、あの人は私を狙っていたのね。私なんかのために……」
 その涙を湛えた瞳は、悲しみに暮れていただろう。
 けれど、これまでの猟兵達の励ましによって、暗い輝きは失せていた。わずかに灯った光ではあったけれど、それでも希望の光だった。
「ブラウさん。どうか抱え込まないで。彼らは覚悟と貴女への親愛に全身全霊を懸けた。アリスラビリンスの主人公はアリス。貴女が訪れなければ、彼等も役割を持たざる迷い子だったから」
 だから悔やまないでほしいと蔵乃祐は告げる。
 彼にとって役割を果たせぬことこそが、真に恐れることであったことだろう。愉快な仲間たちは死してしまったけれど、それでも彼等はこの国、プラットフォームの国にやってきたアリスナイトのブラウを守ったのだ。

 それは悲しいことだけれど、誇らしいことでもあったのだ。
「期待……しないで。私はみんなが思うような人間ではないし、そんなことできないもの」
 揺れる瞳は、そのままに彼女の心の不安定さを示していたのかも知れない。
 しかし、蔵乃祐はそうではないのだと首を振る。
「期待は、どうでしょうねえ。僕は期待されて生まれた子ではなかったので。いえ。実際はどうだったのか」
 落胤としての生。
 それが正しいことであったのか、誤ったことであったのか。その是非を問うても誰も答える者はいないだろう。
 けれど、たった一つ確かなことがある。

「だから、今も足掻いています。どうだろうと構いはしない」
 それは彼が持つたった一つの指針であったのかもしれない。
 己の出自が望まれないものであったのだとしても。誰もが認めぬものであったのだとしても。それでもと己自身の生を持ってして、世界に足掻き続ける。
 だからこそ猟兵たらしめるのかもしれない。
「意地を通して、押し通して、その先へ。世界に誇れる自分を何時か、見つけるその時まで。僕は生きることを、足掻き続けることをやめない」
 それは世界への挑戦であった。
 どれだけ不要と言われようとも、それでも足掻き続ける。己の生をまっとうする。そのために、己が通すべき意地を持ち続ける。

 それはブラウにとってはまばゆい生き方だったのかもしれない。
「及びもつかないことかもしれないけれど……それでも、私もあがくことをやめてはならないのね。貴方のような、生き方、とても眩しいもの」
 きっとまばゆい生き方は誰かの瞳に輝きを灯すには十分だった。
 今となりにいるブラウの瞳にも、そのまばゆい生き方は、希望の光を強くするように伝播していくのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
間違えるのは怖い!
失敗するのは怖い!
失望されて、無関心になられるのが一番怖い!
分かる分かる、チョーわかる
人ってさ、何だかんだで誰かと繋がってなけりゃ生きていけないんだもん
だからそれを断たれるのは本当に辛い!

私だってさ、誰かから評価されるのは気持ち良いし
悪く言われるのは辛い
評価ありきで研究者やってる訳じゃないけど、モチベに直結するしね
悪い評価の中にも正しい事は混じってる
けれどそれに真っ直ぐ向き合うのは、なかなかに大変
そこから逃げる事を、私は否定しないよ

自分をダメだって言えるのはある意味自分と向き合えてるって事
後は視点を変えるだけ
私、本当に救えない人は助けないから
だからこんな所で死んだらダメだよ?



 心の中に闇と光があるのだとすれば、それは当然のことであったことだろう。
 漫然とした闇。か細い光が見せる影は薄いものだ。希望と言う名の輝きが闇を色濃くするのであれば、今の不安定なアリスナイト、ブラウは仄暗い闇の中をか細い光で在るき続けているようなものだった。
 けれど、その闇は徐々に色濃くなっていく。
 猟兵達の言葉が、励ましが、彼女の心の中の希望の光を強くしていく。
 皮肉なことに、そうすればするほどに光が照らし出す闇もまた色濃くなっていく。それはどうしようもないことだ。
 励ましが彼女の心に押しかかる重圧をより強くしていく。
「……間違えたくない。失敗したくない。失望なんてされたくない。私が、私がやらなくては」
 心の重圧は弱まることはない。
 けれど、喪ってもいけないものだ。猟兵たちが与えた心の光は、重圧を色濃くしただけなのかもしれないと、誰かが言うだろう。

 けれど、それは口さがない者たちがいう戯言に過ぎない。

「間違えるのは怖い! 失敗するのは怖い! 失望されて、無関心になられるのが一番怖い!」
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)は大きな声で叫ぶ。
 怖いのだと。彼女だって怖いものはあるのだと言うように叫ぶ。けれど、彼女は立ち止まらない。
 同じ様にブラウもまた立ち止まっていない。人の足を止めるのは、恐怖ではないからだ。
「分かる分かる、チョーわかる。人ってさ、なんだかんだで誰かと繋がってなけりゃ生きていけないんだもん。だから、それを断たれるのは本当に辛い!」
「それが怖いの。貴方は要らないと言われるのが、怖くて、怖くて、恐ろしくて……悲しいの」
 ブラウの言葉は震えていたけれど、か細くはなかった。
 瞳はまだ涙を湛えていたけれど、輝きを喪っていなかった。

「私だってさ、誰かから評価されるのは気持ちいいし、悪く言われるのは辛い。評価ありきで研究者やってる訳じゃないけど、モチベに直結するしね。悪い評価の中にも正しい事は混じってる」
 誰だってそうなのだというように玲は言葉をつぐむ。
 それはブラウに向けての言葉であったけれど、同時に己の心の中を見つめ直す言葉でもあったのだ。
 何もかもが正しくは在ることはできない。
 同時に何もかもが間違っていることもできない。人の心の中に闇と光が混在するのと同じだ。

「けれど、それに真っ直ぐに向き合うのは、中々に大変。そこから逃げることを、私は否定しないよ」
「ダメではないの……? 私は、こんなにもダメな人間だって、そんなふうに……」
 ブラウはこれまでどれだけの辛い現実と向き合ってきたのだろうか。
 アサイラムより召喚されるアリスたちは全て辛い現実を抱えた者たちだ。だからこそ分かる。
 辛いことから逃げたい。逃げ出してしまいたい。それが例え、立ち向かった後の結果であったのだとしても、玲は否定しない。

「自分をダメだって言えるのは、在る意味自分と向き合えてるって事。後は視点を変えるだけ」
 それが何を意味するのかを玲は答えない。
 それは結局の所、自分で気がつくしかないのだ。何処まで行っても、人は一人でしかない。だからこそ、つながろうとする。知ろうとする。他者を理解しようとする。
 どうあがいても理解できない他者が存在することを知ることができたのならば、それはどんなに楽しいことだろう。

 知ることが出来ないことを知る。
 ならば、視点を変えるとどうなるだろうか。闇色だと思っていた部分にどれだけの色が混ざった後の色であるかを知った時。光がどれだけの色を放っているのかを知った時。
 その膨大な想像力は枷を外される。
 ブラウの瞳から大粒の涙がこぼれ落ちて、プラットフォームの国にこぼれ落ちた。
「私、本当に救えない人は助けないから。だから、こんなところで死んだらダメだよ?」
 今までもどれだけ手を差し伸べられたことだろう。
 ブラウは玲の差し伸べた手を取る。これまでも猟兵たちが手を差し伸べてくれた。手を取れば、彼等の心の暖かさが心の中に染み入ってきたのを知っている。

「そう、知ればこんなにも簡単なことなのさ。束縛だと思っていたものは、枷なんかじゃない。視点を変えたらわかるよね。それは君の翼だよ――!」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『機甲戦乙女ロスヴァイセ』

POW   :    モード・ラグナロク
【リミッターを解除して鏖殺形態】に変形し、自身の【寿命】を代償に、自身の【攻撃力・射程距離・反応速度】を強化する。
SPD   :    ヴァルキュリアバラージ
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【装備武器】から【全方位への絶え間ない射撃】を放つ。
WIZ   :    死天使の騎行
レベル×1体の、【翼部】に1と刻印された戦闘用【少女型支援機】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。

イラスト:十姉妹

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ギージスレーヴ・メーベルナッハです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 そして、人の心の暖かさが凍りついたように溜め込まれたアリスナイト、ブラウの涙を溶かして大粒の雫をプラットフォームの国の線路に落とす。
 それは澱のようなものであった。
 涙を流せない者。
「3……2……」
 超高速狙撃ユーベルコードのカウントダウンが迫る。
 猟書家『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の持つユーベルコード。絶対に標的を違えず、必ず貫き殺すユーベルコード。
 猟兵であっても標的をかばうことはできず、為すすべの無いユーベルコードであった。

「1……カウントダウン、ゼロ。発動」
 放たれたライフルからの一撃がブラウに迫る。
 それは絶命の一撃。
 猟兵たちはその一撃の放つ一条の光を見ただろう。けれど、誰もが信じていた。彼女ならばできると。
 期待という重圧が闇となって心にのしかかるのであれば、彼女の心に宿った希望の光もまた輝きを増す。

 完全に闇を消し去ることはできない。 
 けれど、猟兵たちは知っている。ブラウは膨大な想像力を持つアリスナイト。彼女の生み出す鎧は何者も貫くことなどできない。
「目標、破壊……いえ、健在。……なぜです。確かにユーベルコードは、あたったはず」
 呆然と『機甲戦乙女ロスヴァイセ』が己の放ったユーベルコードを弾く光輝く翼の鎧を纏うブラウを見つめる。
 猟兵たちが齎した暖かな心の光が、彼女を守ったのだ。いや、彼女自身の想像力の為せるものであったのかもしれない。

 けれど、ブラウは言う。
「みんなの光が、心の光が! 私を! みんなを守ることを教えてくれる! どうすればいいのか!」
 光り増す光景の中で、ブラウの瞳から次から次へと涙がこぼれ落ちて、虹彩の如き輝きを放っていた。
 もはやユーベルコードで彼女を傷つけることはできないだろう。
 けれど、それでも尚執拗に『機甲戦乙女ロスヴァイセ』はブラウを抹殺しようと迫る。その輝きを曇らせようと、愉快な仲間たちをも狙い殺そうとするだろう。

 だが、此処には猟兵がいる。
 もはや一片たりとて奪わせはしないと猟兵たちは戦うのだ――!
戒道・蔵乃祐
見たところレプリカント
同じく機人『鉤爪の男』の賛同者

生まれ故郷をも凌駕する、超弩級の闘争
アリスラビリンスには終わりの見えない戦争も。 疑心暗鬼と戦禍を拡大し続ける暴走兵器も居ないというのに
貴女は平和を望む民衆すら疎み
戦闘能力のみが評価される、狭く、閉じた世界に心が囚われている

ブラウさん。存在価値を、他者を踏み躙り虐げることで証明するなんて間違っている
貴女の本当の力で
どうか、この世界の彼等を守ってあげて


高速飛翔を聞き耳+見切りと動体視力で捉え。限界突破+ジャンプで跳躍
クイックドロウ+空中戦の指弾でメダルを撃ち込み、機能不全を誘発
制空能力を封じ。大連珠の重量攻撃+怪力で上空から叩き落とす


墜ちろ。



 そのまばゆき光は心の光。
 アリスナイト・イマジネイションは、その心の光を受けてさらなる強度を得ていく。どれだけの攻撃が、ユーベルコードがブラウを襲おうとも、その鎧には傷一つ着けられはしない。
 猟兵達の砕いた心が、彼女の心を強くする。
「生への執着などなかったはず。だというのに、この光の煌きはなんです?」
 猟書家『機甲戦乙女ロスヴァイセ』は訝しむような言葉を吐き出すが、その表情は少しも歪んでいなかった。 
 それはまるで機械のような少しの変化も見いだせぬような顔のまま、ゆっくりと体を浮上させる。
 その翼がユーベルコードに輝く。
「理解不能です。ですが、私のユーベルコードは確実のはず。一撃で抹殺できぬのであれば、何度でも、何度でも、その心が折れるまで放ち続けましょう」
 圧倒的な速度でプラットフォームの国を飛ぶ『機甲戦乙女ロスヴァイセ』。飛翔しながら放たれる銃火器が全方位へと絶え間なく飛び、周囲を破壊と混乱に導いていく。

「見た所レプリカント。同じく機人『鉤爪の男』の賛同者……生まれ故郷をも凌駕する、超弩級の闘争……」
 戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)は飛翔し、ブラウへと迫る『機甲戦乙女ロスヴァイセ』と対峙する。
 圧倒的な速度。そして絶え間なく放たれ続ける弾丸は周囲を炎へと包み込んでいく。もしも、これが密集した地形であったのならば、その言葉と同じ様に戦乱のような光景を生み出していたことだろう。

「アリスラビリンスには終わりの見えない戦争も。疑心暗鬼と戦禍を拡大し続ける暴走兵器も居ないというのに……」
 蔵乃祐にとって、それはあまりにも無意味なことだった。
 何も産み出さない。あるのは破壊と混乱だけ。そんな世界を望むことは、救世救道の戒律を捨てた己にとっても許されぬことであった。
 在っていい話ではない。
 何を持ってしても、それを阻まねばならない。その心が静かながらも怒りと共にこみ上げてくる。

 己を律する心あれど、その悪逆無道を許す心は在りはしない。
「貴方は平和を望む民衆すら疎み、戦闘能力のみが評価される、狭く、閉じた世界に心が囚われている」
 飛翔する『機甲戦乙女ロスヴァイセ』は、その言葉に応えない。
 その無機質な輝き放つ瞳が見据えるのは標的であるアリスナイト、ブラウの放つ輝きである。
 再び放たれる『超高速狙撃ユーベルコード』の一撃も、ブラウの鎧うアリスナイト・イマジネイションの前に霧散して消えてしまう。

「ブラウさん。存在価値を、他者を踏み躙り虐げることで証明するなんて間違っている!」
「そんなことさせない! 私が守りたいと思うものが、誰かの妨げになるというのなら!」
 ブラウの声は凛として響き渡る。
 蔵乃祐は頼もしいと感じる。あれだけ涙をこらえていた彼女が涙を流すこともいとわずに毅然と脅威に、理不尽に立ち向かっていることに彼は己の行いが正しかった事を知る。
 何も間違ってはいない。
 そこにあるのは、彼女の心の輝きであり、蔵乃祐の心が映し出した光そのもの。
「貴女の本当の力で! どうか、この世界の彼等を守ってあげて」

 だからこそ、『機甲戦乙女ロスヴァイセ』はこの世界に不要な存在だ。
 一瞬の交錯。
 高速飛翔する『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の動きを一瞬で見切り飛翔し、指で弾き飛ばすは、妖怪『のっぺらぼう』の描かれた妖怪メダル。
「無貌憑き。ストップザタイム!」
 放たれるユーベルコードの輝きは、置行堀(オイテケボリ)。
 本来の機能を十全に果たしていたのならば、『機甲戦乙女ロスヴァイセ』は、蔵乃祐の放ったメダルに反応できただろう。
 けれど、目もくらむような心の光を放つブラウを前にして、標的を追い続ける機能しか持たぬ彼女には躱すべくもない。
 放たれたメダルからユーベルコードの力が溢れ、その『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の飛翔のユーベルコードを強制停止させ、失墜させる。
 そこへ高く飛んだ蔵乃祐の持つ大連珠の振りかぶった一撃が叩き込まれる。

「―――墜ちろ」
 凄まじき重量を開放された一撃が『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の背中をしたたかに打ち据え、大地にめり込ませる。
「あの輝きを見て尚、その目的を達成しようというのならば、貴女はここで止める。貴女の行いが争いを生むのならば、その根源から僕たちが断ち切りましょう」
 そう、この国には戦乱など似合わない。
 蔵乃祐はその一撃を持って、証明するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御魂・神治
天将
「ブラウ様、御覧の通り彼は怪しい除霊師」
「除霊方法も手荒、生活は雑、けれど仕事はある」
「実力よりも信念ですかね、彼の人懐っこさと仕事の堅実さは売りですから」

「撃破対象の思考プログラムをハッキング、制御系統を撹乱します」

よう言うわ...
ハッキングが完了するまでオーラ防御と第六感で避ける
リミッター解除は制御系統の安定性を犠牲にしたっつう事や
自ら天将の手助けをしよってに、哀れやのう

奴の挙動がバグり始めたら反撃や
天将のハッキングは止まらんで、武器を使ったら暴発するかもな
爆龍符の弾幕でかき乱しつつ
天地のクイックドロゥ・二回攻撃で両腕を攻撃、武器の損傷を狙う
トドメは深淵を撃つ、スクラップになってまえ!



「モード・ラグナロク発動」
 それは無機質なる猟書家『機甲戦乙女ロスヴァイセ』のユーベルコードの発動を告げる機械音であった。
 猟兵の一撃に寄る失墜で、アリスナイト、ブラウを狙う目的を阻まれ打撃を受けた『機甲戦乙女ロスヴァイセ』はゆらりと立ち上がる。
 あれほどの一撃を受けて未だ動き続けるところは流石は猟書家というべきところであろうか。
 その機会の瞳が付け狙うは猟兵達の励ましによって心の光を、想像力を正しく発揮させたブラウ。
「まだ……! でも私だって、期待に応えたい!」

 その言葉に応えるように戦場に舞い降りたのは、御魂・神治(除霊(物理)・f28925)であった。
 何か彼が言う前にサポートAI存在の人工式神『天将』のアバターから女性の声が告げる。
『ブラウ様、ご覧の通り彼は怪しい除霊師。除霊方法も手荒、生活は雑、けれど仕事はある。実力よりも信念ですかね、彼の人懐っこさと仕事の堅実さは売りですから』
 それはまるで主人である神治をくさしているような持ち上げているような、売り込んでいるような、どちらとも取れるとも取れないとも言えないなんとも絶妙な言葉であったが、ブラウにとってはありがたい援軍であったことだろう。
「よう言うわ……」
 あまりの言葉に神治は額を掌で抑えるが、概ね事実であるため否定もできないのが難儀なところである。

「でも、助けてくださるのでしょう? 私はみんなを、貴方はあの敵を!」
『撃破対象の思考プログラムをハッキング、制御系統を撹乱します』
 同時に動くのは『機甲戦乙女ロスヴァイセ』とブラウであった。
 鏖殺形態へと変貌を遂げえた『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の動きは尋常ならざる動きであった。
 それはハッキングしていたとしても変わらぬ速度、攻撃射程。
 凄まじい弾丸と光刃がオーラの防御を尽く突き破ってくる。第六感とも言うべき感覚がなければ、今頃は鱠斬りにされていたことだろう。

「リミッター解除は制御系統の安定性を犠牲にしたっつう事や。自ら天将の手助けをしよってに、哀れやのう」
 リミッターを解除していなければ、追い詰められていたのは自分の方であったかも知れない。
 けれど、『機甲戦乙女ロスヴァイセ』は猟兵を無視し、アリスナイト、ブラウを狙い続ける。
 それは彼女が受けた指令、命令を遂行するためだけに存在しているからだ。出力を上げたライフルの一撃がブラウに放たれるも、それでも彼女の鎧は強固そのものであり、何もをも受け付けない。

 それがアリスナイトに許された理論上無限の力。
「それだけ出力を上げていたら暴発するかもしれんよって! これでも喰らっときな!」
 手にした爆龍符がばらまかれ、未だブラウを狙い続ける『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の周囲に爆風と衝撃波を撒き散らす。
 その間隙を縫って、神治は駆け抜ける。人工式神『天将』のサポートは未だ効いている。この隙に『機甲戦乙女ロスヴァイセ』にダメージを蓄積させなければならない。

 角材型のハンドガン、神器銃『天地』を構える。
 放たれるは目にも留まらぬ連続射撃。放たれた弾丸が『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の両腕を弾き飛ばし、ガードを吹き飛ばす。
「そら、がら空きや――そのごっついもん全部ぶっ潰したる」
 リロードされたのは、陰陽霊弾『深淵』(オンミョウレイダン・シンエン)。
 放たれるのは圧殺暗黒球の名を表すような深淵の如き闇色。この弾丸からは逃れられることはできない。

「スクラップになってまえ!」
 周囲が闇色に染まるように球体が膨れ上がり、『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の体を包み込む。
 それは暗獄へと叩き落とす一手。
 暗闇に包まれた球の中で装甲がひしゃげていく音だけが、高々と響き渡るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

霧沢・仁美
…ん、良かった。
それだけできれば、きっと、もう大丈夫。

さあ、今度はあたしが頑張る番。
ブラウさんがあれだけ頑張ってるんだから、それに応えてみせなきゃね…!

相手は高速で飛びながら弾幕を張る。
それをどうやって突破するか。

まずは念動光弾を連射、こっちも弾幕を張って敵の回避行動を誘い、移動先の選択肢を絞りにいく。
その上で、ここに来ると見た位置へワイヤーロープを【投擲】。【念動力】での軌道修正も合わせて絡みつかせに行くよ(【ロープワーク】)
振り切りに来るだろうけど何とか耐えつつロープを手繰り接近、至近距離から念動光弾を出来るだけ致命的そうな部位へ撃ち込む…!



 光り輝くアリスナイト・イマジネイション。
 それは暗獄に沈む猟書家『機甲戦乙女ロスヴァイセ』とは対極であった。無限の想像力のままに光り輝き、空に浮かぶブラウと猟兵達によって失墜させられた『機甲戦乙女ロスヴァイセ』。
 対照的であり、それを見上げる猟兵――霧沢・仁美(普通でありたい女子高生・f02862)は心底安心したように頬を緩める。
 戦いの最中ではあったけれど、それでもあの輝きを見て安堵せぬ者はいないだろう。
 あれだけの悲嘆に暮れていたブラウが猟兵達の心を受け取って輝く姿は、仁美にとって喜ばしいことであった
「……ん、良かった。それだけできれば、きっと、もう大丈夫」
 彼女もブラウのために心を砕いた猟兵の一人である。
 その砕いた心の一片がブラウの中で光を放っているのだ。
「ありがとう。貴方からもらった言葉、私はきっと忘れない。だから、お願い。私は自分の身を守ることしかできないけれど……!」

 けれど、それでいい。
 互いの瞳に映る互いの輝きを見遣り、二人はうなずき合う。
「さあ、今度はあたしが頑張る番。ブラウさんがあれだけ頑張ってるんだから、それに応えて見せなきゃね……!」
 仁美が奮起するように体の中からユーベルコードの輝きが放たれ始める。それは体中に存在するサイキックエナジーが活性化した証であった。
 暗獄から飛び出した『機甲戦乙女ロスヴァイセ』が凄まじ速度でひしゃげた翼のまま飛び込んでくる。

 その無機質なる瞳に映るのは、光り輝くアリスナイト・イマジネイションの鎧をまとうブラウのみ。
 あくまで標的にしか関心のない猟書家『機甲戦乙女ロスヴァイセ』にとって、猟兵の攻撃は殆どが関知しないものであったが、進む先に存在しているというのであれば話は別である。
「任務遂行の妨げ……猟兵。その存在を排除します」
 放たれる無数の弾丸。
 それらは絶え間なく放たれ続け、周囲のあらゆるものを破壊せんとする。それは仁美にとってどう攻略すべきものであるか、すでに答えを得ていた。

 構えた指先にサイキックエナジーが集中し、弾丸を生み出す。
「そこっ!」
 放たれた念動光弾(キネティック・ショット)が連射され、超高速で飛翔する『機甲戦乙女ロスヴァイセ』へと弾幕を張り続ける。
 指先が痺れていく。
 それはサイキックエナジーの弾丸が生み出す余波であったことだろう。けれど、その痛みを仁美は無視する。
 あれだけブラウが奮起しているのだ。仁美も負けてはいられない。期待される重圧に押しつぶされそうになりながらも、それでも誰かのために立ち上がった彼女に報いるために仁美は自身ができることをするのだ。

「弾幕を張れば、そうやって動くよね――! その動き、直線的すぎるんだから!」
 念動光弾(キネティック・ショット)の連射は『機甲戦乙女ロスヴァイセ』を誘い込むための囮だった。
 張り巡らせたワイヤーローブを投げ放つ。
「その程度のワイヤーを躱せぬ私ではありませ―――」
 確かにワイヤーローブを投げただけでは機動力で勝る『機甲戦乙女ロスヴァイセ』を捉えることはできなかっただろう。
 だが、仁美はサイキッカーである。
 彼女の念動力によって動かされ、軌道修正されるワイヤーロープの投擲は、凄まじい速度で迫る『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の機体へと絡みつく。

「捉えた……んぐっ、でも……!」
 ぎちぎちとワイヤーロープを握りしめる手が軋む。皮膚が擦り切れる。それは凄まじい推力によって『機甲戦乙女ロスヴァイセ』がワイヤーを断ち切ろうとしているからだ。
 それだけの力を未だ『機甲戦乙女ロスヴァイセ』は残している。けれど負けられない。念動力がサイキックエナジーから変換され、彼女の瞳を輝かせる。
 膂力で敵わなくとても、念動力で手繰り寄せることはでいる。
「ここでやらなきゃ――! あたしが! 此処で!!」
 輝く念動力のままにワイヤーを手繰り寄せ、『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の推力を上回って、その体を仁美の直上へと舞い上げる。

 掲げた指先、その先端に集まるはサイキックエナジーとユーベルコードの輝き。
「至近距離なら躱せないでしょう! 全部、もっていっちゃって!」
 引き寄せた瞬間、落下と下から打ち上げられる念動光弾が凄まじい勢いで打ち込まれ続け、光の明滅が周囲に迸る。
 それは仁美の全力に寄る念動光弾の集中砲火。その威力は凄まじく、『機甲戦乙女ロスヴァイセ』は大地に失墜するしかなかったのだった――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
「そうだ。その心を持っている限り
君は何にも負けたりしない。」
強いな。俺が思っていたよりずっと。
ブラウが応えてくれたなら今度は俺の番だ。

愉快な仲間たちには
「此処から離れていてくれ、少しばかり危険になるんでね。」
グラビティテンペスト発動
ロスヴァイセ周辺に不規則に変化する重力場を作り飛行を妨害。
飛行が乱れたら少女型支援機含め
地に落とす様に重力を掛け、
斥力で自分や愉快な仲間たちを守り
支援機優先し超重力で潰す。
本体から離れた部品や機能停止した物を微粒子に変換し
重力の威力を増し支援機を倒したら
微粒子を集中し重力刃を形成
ロスヴァイセを切り裂く。
「偉そうな事を言った手前
無様は晒せないんでね。」
とブラウを見て。



 アリスナイト・イマジネイションが生み出す鎧の輝きは、何者も侵すことはできない。それは想像力によって産み出されたものであり、理論上無限の力を発揮するからだ。
 どれほど強大な力であっても、誰かの心のために力を振るう者を殺すことは出来ない。例え、傷つけることができたとしても、打ち負かすことなどできはしない。
「そうだ。その心を持っている限り、君は何にも負けたりはしない」
 フォルク・リア(黄泉への導・f05375)はフードの奥からまばゆい輝き放つアリスナイト、ブラウを眩しげに見上げていた。
 あの輝きの中に己の心のかけらもあるのだと知る。
 あれだけ涙をこらえて、湛えていたブラウが涙を流しながら極彩色の輝きを放つのは、人の心の万華鏡のようなものであった。
 助けると思っていたけれど、自身が思っていたよりもずっとブラウは強い。そして、フォルクを始めとする猟兵達にブラウは応えてくれた。
「なら、今度は俺の番だ」

 猟書家『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の放つ『超高速狙撃ユーベルコード』が再び放たれるも、その絶命の一撃たる弾丸の一撃はブラウの纏う鎧に弾かれて光と消える。
「もう貴方は誰も傷つけられない。私も、みんなも、誰一人として」
「不可解。確かに私のユーベルコードはあたっているはずなのに、効果が発揮されていない。ならば―――」
 その心を砕く。
 そう言わんばかりに『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の周囲に飛ぶのは翼を持つ少女型支援機。
 無数に飛ぶ支援機が愉快な仲間たちを襲わんと空を駆ける。それはブラウの心の支えでもある寄り添ってくれた愉快な仲間たちを殺し、彼女の心を再び折ろうとするのが狙いであることは明白だった。

「そうはさせない――押し潰せ、引き千切れ、黒砂の陣風を以て。其の凄絶なる狂嵐の前には何者も逃れる事能わず。ただ屍を晒すのみ。吹き荒れよ、滅びの衝撃」
 フォルクのユーベルコード、グラビティテンペストが発動し、扇状全体に重力、斥力を操る微粒子が満ちる。
 それは『機甲戦乙女ロスヴァイセ』と少女型支援機を巻き込んで、生み出された重力場に彼女たちを捕らえる。

 飛行するのならば重力を操れば、その飛行機能は著しく損なわれてしまうだろう。次々と少女型支援機たちが大地に失墜し、超重力がその機体を押しつぶしていく。
「此処から離れてくれ、少しばかり危険になるんでね」
 フォルクは愉快な仲間たちを背にかばいながら、彼等をこの場から退避させる。『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の目的があくまでアリスナイトのブラウであるのならば、なおさら彼等を傷つけさせるわけにはいかない。

「標的に一直線かと思えば搦手も使う。目的のためならば手段を選ばないということか……だが、相手が悪かったな」
 失墜し破壊された支援機を微粒子に変換し、重力場の力を増していく。
 そんな中にあって、それでも『機甲戦乙女ロスヴァイセ』は立ち上がってくる。それは恐るべき猟書家としての実力だった。
「標的抹殺。それが私に与えられた任務。そのタスクを終わらせるまでは……」
「それはさせないと言った。それに偉そうなことを言った手前、無様は晒せないんでね」
 フォルクは視線を輝く鎧を纏ったブラウへと向ける。
 自分自身もあれだけのことを言ったのだ、あの光を背に受けて何もしないではいられない。力が湧いてくるのは、彼女だけではないのだ。
 彼女が光り輝く姿を見て、己も力が増すのをフォルクは感じた。その手に集まるのは微粒子を集中させた重力刃。
 暗獄の刃が形成され、その一刀を振りかぶり『機甲戦乙女ロスヴァイセ』へと叩きつける。
 装甲を切り裂き、その一撃は周囲に超重力によって生み出される衝撃を放つ。

「お前はそのまま押し潰れろ。あの輝きを失墜させることなどさせやしない――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

太宰・寿
目映い強い光に、僅かに安堵の表情が零れる

ブラウさん、もう少しだけ頑張りましょう

大丈夫、あなたならできます
私たちもフォローしますから
もし不安そうにしているのならば、迷惑とか失敗とか気にしないで欲しいと言う気持ちを込めてそう声をかけます
完璧なんてそうそうないんですから

ブラウさんの心に応えられるように、私も頑張らないといけないね

世界いっぱいに色を描きます
ブラウさんは好きなものありますか?
まずは足元に彩りを
己を強化してから支援機と相対します
虹霓は描くだけではないですよ
振るって絵の具を飛ばしながらも、距離を詰められるならば柄で白兵戦です
数を相手取る必要があっても、一体ずつ確実に倒していきます



 超重力の刃が猟書家『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の体を打つ。
 その一撃は戦えぬアリスナイト、ブラウの代わりに放たれたものであり、輝く鎧は彼女の膨大な想像力を受けて強度を増していく。
 理論上無限の力を持つと言われるアリスナイトにとって、想像力を信じることが力を増すことになる。けれど、不安定な彼女を支え、励まし、その心を砕いて手渡したのが猟兵達である。
 太宰・寿(パステルペインター・f18704)の言葉は、心は、優しさとなってブラウの心の中で暖かさを放ち続けている。
 その目映くも強い光に彼女は僅かに安堵の表情を浮かべる。
 絶命の一撃である『超高速狙撃ユーベルコード』も今の彼女には通じない。ただ殺されるだけでしかなかった彼女は今や、『機甲戦乙女ロスヴァイセ』にとってどうしようもない存在へと変貌を遂げていた。

「ブラウさん、もう少しだけ頑張りましょう」
 その言葉にブラウが涙をこぼしながら頷く。
 人の心の優しさが暖かさを持つというのなら、澱のように固まった涙を解いて流させたのは寿たち猟兵の心の光だ。
 全てが自分のものではない。
 それは寿にとっても同じことであったことだろう。ブラウの放つ輝きは寿の体にも温かいものを伝える。
 与える者は、与えられる者でもある。
「ありがとう。みんなのおかげで、私は飛べる。だから、みんなを私も守る。それができるって教えてくれたから」
「大丈夫、あなたならそれができます。私達もフォローしますから」
 不安な顔はどこにもない。
 寿の言葉が、彼女の中の失敗して迷惑を掛けるだとか、重圧だとか、そんなものを噴き飛ばしていた。

 完璧なんてそうそうない。
 それは寿も分かっている。けれど、人は完璧を求めてしまう。どうしたってより良いものを求めてしまう生き物であるのだから、それは仕方のないことなのだろう。
 けれど、それでも。
 寿は思うのだ。
 彼女の心に応えられるように、自身も頑張らなければいけないと。人の心は伝播する。善きにつけ悪きにつけ、移っていく。
「ブラウさんは好きなものありますか?」
 たおやかに微笑み、寿はひらめいたように虹を描くモップサイズの筆を振るう。
 彩(イロドリ)鮮やかに振るわれる虹の名を持つ筆が描くのは、きっとブラウが好ましいと思っている愉快な仲間たちの絵姿であった。

「――……わ、ぁ!」
 ブラウの光が輝く。
 それは彼女の心を満たしていくものであったことだろう。寿の描くキャラクターのような愉快な仲間たちの姿は、それだけで彼女の力を増していく。
 それがユーベルコードの輝きであると知ることができるのは、心の暖かさを知る者だけであろう。
 故に人の心を踏みにじろうとする者には理解できぬ輝きであった。

「そのようなもので私を止めるなど」
 少女型支援機と共に『機甲戦乙女ロスヴァイセ』が飛翔する。
 ブラウと彼女を支える猟兵を抹殺せんとする。けれど、寿にはもはや彼女たちは敵ではなかった。
「虹霓――……この絵筆は描くだけではないですよ」
 振るったモップのような筆が絵の具を飛ばす。
 それはキラキラとブラウの光を受けて極彩色に輝きながら、次々と支援機を撃ち落とし、失墜させる。
 それでも詰め寄ってきた支援機を虹霓の柄で叩き落とす。

「これは『せかいのいろ』。誰かが輝くのならば、きっと力を貸してくれる。どれだけの理由があっても、この輝きを喪わせはしません」
 優しい誰かのために戦うこと。
 寿がブラウに手渡した心の光は、今ブラウの中で光をまして再び寿に返ってきている。
 その灯った光の煌きが、ユーベルコードの輝きとなって彼女の足元から次々と『せかいのいろ』を生み出していく。
 無限のような力が、彼女を後押しし、『機甲戦乙女ロスヴァイセ』と真っ向から打ち合う。
 光刃を虹霓の柄で受け止め、いなす。その彩りでもって『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の無機質なる視界を全て、暖かな心の光で塗りつぶすのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
なんとか頑張れる気持ちは取り戻してくれたみてえだな。
……うん。無理することはねえ。もしも力が足りないんなら、助けてほしいんなら、肩くらいは貸すさ。そのためにおれらはここまでやって来たわけだしな。
まあ、ホントのことを言うとおれは戦うんがすげえ怖いんだけど……。
でもあれだけ偉そうなコト言ったんだ、おれだって頑張らねえとな……!

ユーベルコードで自分やブラウ含めた味方に強化を。おれなりの励ましとか頑張りの形ってヤツだ。
他の味方の攻撃に合わせて〈援護射撃〉で支援したり、逆に敵の攻撃に対して〈目潰し〉〈マヒ攻撃〉〈武器落とし〉を狙って射かけて妨害したりして、戦いが有利に運ぶようにする。



 光り輝く鎧が目映いほどに世界を照らす。
 プラットフォームの国に燦然と輝くのは、膨大なる想像力を制御したアリスナイト、ブラウであった。
 彼女の心のなかには今、彼女自身の心だけではない、猟兵達の砕いた心が在る。猟兵たちが彼女を励まし、彼女を認めたからこそ生まれた心の光は、猟兵たちにも力を与える。
「なんとか頑張れる気持ちは取り戻してくれたみてえだな」
 鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は、その光を見上げて呟く。
 頑張れ。
 そう小さく呟く。どこまで言っても人は、誰かのために頑張れるのだから。

「ありがとう。もう一度頑張れるって思えたのは、貴方の、みんなのおかげだから。だから、私は私のできることをがんばる」
 ほほえみながらも檻のように涙が溢れるブラウを見上げ、嵐は決意を新たにする。
「……うん。無理することはねえ。もしも力が足りないんなら、助けて欲しいんなら、肩くらいは貸すさ。そのためにおれらはここまでやってきたわけだしな」
 互いの瞳が交錯する。
 それは言葉をかわし、心を通わせたからこそできる意思疎通であったのかもしれない。
 未だ猟書家『機甲戦乙女ロスヴァイセ』は健在であり、空には無数の少女型支援機が飛び交っている。
 猟兵達の攻撃によって消耗させられているとはいえ、未だ動き続けるのは圧倒的な存在と言う他無い。
 その威容を前にして嵐は身体が震えるのを抑えられなかった。
 あれだけのことを言った手前ではあったけれど、それでも恐ろしいと、怖いと思うことは止められない。
 戦うことが恐ろしいと感じる心は、正しいことだ。
「まあ、ホントのことを言うとおれは戦うんがすげえ怖いんだけど……でもあれだけ偉そうなコト言ったんだ、おれだって頑張らねえとな……!」

 踏み出す。
 その一歩の勇気だけでいい。後は野となれ山となれ。駆け出してしまえば、止まらない。止まれない。
 どれだけ身体が、心が震えていようとも、その心に寄り添う暖かな光がブラウから放たれている。
 あれだけ励まされるだけの存在であったのに、今は嵐の背中を押してくれている。
 それが人の心の暖かさだと知るのであれば、嵐がオブリビオン、猟書家に負ける理由などなかった。
「魔笛の導き、鼠の行軍、それは常闇への巡礼なり。……耳を塞ぐなよ?」
 奏でられるは、笛吹き男の凱歌(ラッテンフェンガー・パラード)。
 召喚された道化師の演奏が鳴り響く。
 それの旋律は、ブラウや己を強化していく。彼自身なりの励ましの歌。誇らしげな凱歌は世界に響き渡り、それを聞く者の心を奮い立たせる。

「さあ、歌は響いているぞ!」
 ユーベルコードによって召喚された道化とおそろいの仮面をかぶり、手にするはお手製スリングショット。
 放たれる弾丸が『機甲戦乙女ロスヴァイセ』を含めた支援機たちへと打ち込まれ、次々と支援機を撃ち落とす。
「この程度の抵抗で私が失墜するなど」
 ありえないと『機甲戦乙女ロスヴァイセ』が呻く。
 ユーベルコードによって如何に強化された弾丸と言えど、猟書家である『機甲戦乙女ロスヴァイセ』が撃ち落とされる謂れなどはいはずだ。

 しかも、未だ戦いへの恐れに震える猟兵にだ。
 それが不可解でしかたない。答えのでない疑問だけが『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の中に渦巻く。
「わからないかよ! 怖いけれど、それでも踏ん張るっていうことがどれだけ大変か! それでもと勇気を振り絞る者の力が! それがわからないってんなら――!」
 ぎり、と引き絞るスリングショットから放たれた弾丸の一撃が『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の頭部へと打ち込まれ、彼女を墜落させる。

「骸の海へと還ってしまえ。戦いばかりを呼ぶものは、この国にはいてはならないんだよ――!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

熾護・敏利
…良かった、本当に。
我が事のように嬉しくて胸が詰まる
その高潔な宣言が、おれに力をくれる

愉快な仲間たちには彼女の守護領域に入るよう促す

戦乙女は任せて下さい
君は守りに専念していれば良い
確かな信頼を贈り
おれも守る為の戦いへ

研ぎ澄ますのは第六感の視覚聴覚。
速度と動きから敵挙動を予測しての見切り回避に専念、
カウンターを入れられる好機を探る
攻撃は、負傷箇所を部位破壊しての更なる防御力低下狙い
尚もブラウを狙う場合は殺気を叩き付けて気を引く

UC発動、得物は小太刀
アレを殺すのだと、柵から解放された愉悦を全身に満たし
致命の一撃を放ち攻撃

この光の元でなら、衝動に身を委ねるのも悪くない
…尊い光を、お前に曇らせはしない



「……良かった、本当に」
 熾護・敏利(人間のUDCエージェント・f30688)は心底安堵したように、燦然と輝く鎧纏い、猟書家『機甲戦乙女ロスヴァイセ』が放った『超高速狙撃ユーベルコード』の一撃を防いだアリスナイト、ブラウを見上げていた。
 我が子とのように嬉しくて胸が詰まるような思いだった。あんなにも不安定だった、誰かからの期待に、重圧に押しつぶされそうであった娘が、立った一人でも敵の攻撃を真っ向から受け止め弾き返した姿と宣言が彼の心にもまた暖かな光と共に力をもたらす。

「みんなのおかげ。みんなが教えてくれたから……言葉が、心がこんなにも温かいんだって、他人から与えられる光が、こんなにも私の背中を押してくれる。だから、私がみんなを守る。みんなを傷つけさせない!」
 その輝きは愉快な仲間たちだけではなく、猟兵達をも包み込んでいた。
 敏利は目映い輝きを背に受けながら駆け出す。
「戦乙女は任せてください。君は護りに専念しいれば良い」
 その言葉は彼にとって最大の信頼の証であった。
 贈った言葉は、互いの間を行き来してさらなる力を増幅させる。アリスナイトは理論上無限の力を発揮すると言うが、まさに今がその時であった。

「おれも守る為の戦いへ」
 感覚が研ぎ澄まされていく。
 対峙する猟書家『機甲戦乙女ロスヴァイセ』はすでに鏖殺形態へと移行し、リミッターを解除していた。
 あらゆる速度が増し、攻撃の威力も桁違いであろう。
 それは対峙するだけで分かる。圧倒的な力の威圧感。けれど、それでも敏利は負ける気がしなかった。
 背には燦然と輝く心の光があるからだ。
「……全力で行きます」
 衝動解放(ヤミニシズム)によって、本来であれば抑えている殺人衝動を開放する。
 常に嫌悪し忌避する感情を引き金に、その瞳が捕らえるのは『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の損傷箇所。

 此処に至るまでに数多の猟兵たちが加えた傷跡が未だに残っている。
 そこはすでに損傷箇所以上に、彼女の弱点でも在った。手にした小太刀を構える。
 アレを殺すのだと、抑圧された衝動が跳ねるように膨れ上がっていく。まるで柵から開放された獣の如き愉悦が体の中を駆け巡っていく。
 力が増す。
 心地よい気分だ。己の持つ殺人衝動が、誰かのために振るうことができる。それが誇らしい。身を委ねても良いとさえ思ってしまう。
 それほどまでの輝きの中で敏利はゆらりと状態を前傾にした瞬間、『機甲戦乙女ロスヴァイセ』と交錯する。

 それは一瞬の出来事であった。
「これは致命の一撃」
「―――ッ!?」
 放たれた斬撃は『機甲戦乙女ロスヴァイセ』には見えなかった。
 己に何をしたのか、それ以前に猟兵は攻撃をしたのか。それさえもわからない。『機甲戦乙女ロスヴァイセ』もまた鏖殺形態へと変貌を遂げ、リミッターを外している。 
 一瞬の交錯で打ち込まれた斬撃は互いに数十。
 その全てが剣戟の最中に消えていった。打ち合い、どちらの肉体にも刻まれていなかった。けれど、最後の一撃。
 その一手をおいて敏利が『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の手数を上回り、彼女の首筋を深々と切り裂く。

 その裂傷を自覚した瞬間、『機甲戦乙女ロスヴァイセ』は戦慄した。
 開放された殺人衝動。
 それは無機質なる標的だけを抹殺する任務を帯びた彼女をしても止めることのできない斬撃を放つ。
「……尊い光を、お前に曇らせはしない。お前はここで行き止まりだ。おれもお前も、これ以上は踏み込めない」
 殺人鬼と無機質なる殺戮機械。
 互いに尊い光の元にあれど、そこに近づくことはできない。それを知らしめるように再び剣戟の音が戦場に鳴り響くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
ブラウさん、流石だね
自信をもって大丈夫だよ
さあ、あと少しだけ頑張ろうか

女神降臨を使用して迎撃しよう
…必要な事とはいえ
躊躇いが減ってきてる様で怖いよ

いい傾向ですの
もっと気軽に可愛い格好すれば良いと思いますの

呼び出された支援機をガトリングガンで打ち砕くよ

愉快な仲間さん達は私が守っておきますの
ブラウ様、安心してご自分の身を守って下さいまし
使い魔に支援機を石化させて守りますの
それはそうと可愛らしい造形ですの
1機くらい頂いても…

支援機を減らしたらロスヴァイセを直接射撃しよう

人間は機械に比べれば不安定かもしれないけど
想像以上の力を発揮する事もありえるんだよ

という訳で企みは潰えたから
早々にお引き取り願おうか



 邪神の分霊が欲しがったというのが頷ける。それほどまでにまばゆい輝きは、永遠のものにしたいと願うには十分な美しさを放っていた。
「ブラウさん、流石だね。自信を持って大丈夫だよ。さあ、後少しだけ頑張ろうか」
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は輝き放つ鎧を纏って猟書家『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の放った『超高速狙撃ユーベルコード』の一撃を防ぐ光景を見上げていた。
 彼女の砕いた心は、きっとブラウの中で輝いている。
 それはきっと一瞬の輝きでしかない虹のような輝きであったことだろう。邪神は違う意見かもしれないけれど、晶はだからこそ美しいと思った。

「……必要な事とはいえ、ためらいが減ってきてる様で怖いよ」
 女神降臨(ドレスアップ・ガッデス)のユーベルコードの効果によって、自身が宵闇の衣によるドレスアップした可憐な姿になっていることに慣れ始めていることに晶は僅かに慄く。
 それも僅かにしか感じなくなってきていることに感覚の麻痺を感じてしまい、それが一層ゾッとするのである。
「いい傾向ですの。もっと気軽に可愛い格好すれば良いと思いますの」
 などと邪神の分霊が晶の心を知ってか知らずか無責任なことを言う。此方は本当にそれどころではないのだ。
 構えるガトリングガンを飛び交う少女型支援機へと向ける。
「そういう問題じゃない!」
 放たれた弾丸が少女型支援機へと放たれ、その機体を散々に打ち砕く。それはまるで晶の心に芽生えた若干の可愛らしい姿へ対する慣れを振り払うかのようだった。

「支援機を撃破。ならば、私が」
 本来であれば、猟書家『機甲戦乙女ロスヴァイセ』は猟兵を無視してあくまで標的のアリスナイト、ブラウを狙い続ける。
 けれど、今のブラウには攻撃が通じない。
 その力の源である猟兵や愉快な仲間たちに標的を変えているのだが、それも猟兵達によって阻まれている。
 支援機もその一環だ。けれど、それすらも打ち砕かれてしまう。本来であれば猟兵個人と猟書家との間には歴然とした力の差がある。
 けれど、それは今や完全に埋められているのだ。それは彼女にとっては不可解そのものであったことだろう。

「愉快な仲間さん達は私が守っておきますの。ブラウ様、安心してご自分の身を守って下しいまし」
 邪神の分霊が愉快な仲間たちを護りながら、支援機を石化させていく。可愛らしい造形故か、若干1体くらい持ち帰ってもいいのではという邪神ならではの思考がただ漏れしてしまうが、晶のはなった弾丸がそれを許さない。
 あー! と邪神の分霊の悲鳴が聞こえたような気がしたけれど、晶は知らないふりを決め込んだ。

「これだけの戦力差がありながら覆される。不可解です」
「人間は機械に比べれば不安定かもしれないけど、想像以上の力を発揮することもあり得るんだよ。それが君達が恐れた膨大な想像力というやつさ!」
 ガトリングガンの銃口を晶は向け、強化された弾丸を打ち込み続ける。
 十全の機能を発揮できていれば躱すこともできたであろうが、これまで受けた猟兵達の攻撃が効いているのだ。
 躱そうにも凄まじい勢いで放たれる弾丸を『機甲戦乙女ロスヴァイセ』は躱しきれず、失墜していく。

「という訳で企みは潰えたから、早々にお引取り願おうか。どれだけやっても、ブラウさんの心は曇らない。君の放つユーベルコードも届かない」
 高らかに晶は宣言し、『機甲戦乙女ロスヴァイセ』が失墜しいていく姿を見送るのだった――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

戒道・蔵乃祐
きっと、ブラウさんはもう大丈夫

愉快な仲間達から受け取った勇気
理不尽な困難だとしても立ち向かう覚悟
決して心折れず、諦めないアリスナイトの想像力は
彼女の心に息衝いている

そして『ロスヴァイセ』
僕には貴女が、世界を燃やし尽くす情動故に世界から拒絶された逸脱者か
自分自身を取り巻く世界に馴染めず。溢れ落ちてしまった落伍者なのかは分からないが

アリスラビリンスは「人間」をアサイラムで招き入れるから。貴女も多分、人の心を持っていた
相容れられないけれど。その執着心は偽りならざる本物でした

実直過ぎたんですよ。貴女は


戒式十王无刃

限界突破した視力+読心術で起こりを見切り
クイックドロウ+早業で切り込み
最大限の真っ向勝負



 猟書家『機甲戦乙女ロスヴァイセ』はアリスナイトの放つアリスナイト・イマジネイションによって生み出された輝きの前に失墜するように猟兵の攻撃を受けて大地に伏す。
 けれど、それで決着が付いたわけではないことを猟兵たちは知っている。
 強大なオブリビオンであればあるほどに今際の際にこそ力を発揮する。信じられぬほどのタフネスで何度も立ち上がり、今を貪りくらわんと己の欲望のままに力を振るうのだ。
 今もまた猟書家『機甲戦乙女ロスヴァイセ』は己のリミッターを解除し、鏖殺形態へと変貌している。
「リミッター解除。装備の制限の全てを解放。これよりは殲滅行動に入ります」
 その凄まじき重圧は猟書家としての実力そのものである。

 だが、猟兵とて一歩も引くわけにはいかない。
 このプラットフォームの国には未だ多くの愉快な仲間たちとアリスナイトのブラウがいる。
 彼女たちを傷つけさせるわけにはいかないのだ。
「きっと、ブラウさんはもう大丈夫。愉快な仲間たちから受け取った勇気。理不尽な困難だとしても立ち向かう覚悟。決して折れず、諦めないアリスナイトの想像力は彼女の心に息衝いている」
 戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)は確かに見た。
 あの心の光の輝きを。あの輝きを前にしては誰も生み出された鎧を砕くことはできない。

 対峙する『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の身体が跳ねるようにして標的に至るまでの障害となった猟兵――蔵乃祐へと襲いかかる。
 その力は凄まじいものであった。
 彼の瞳が凄まじい負荷によって真っ赤に染まる。速度の上がった『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の動きについていくために限界を超えて視力に寄る攻撃の知覚を行っているのだ。
「そして、『ロスヴァイセ』。僕には貴女が、世界を燃やし尽くす情動故に背あいから拒絶された逸脱者か、自分自身を取り巻く世界に馴染めず。零れ落ちてしまった落語者なのかわからないが――」
 放たれる光刃を躱す。
 じり、と皮膚をかすめる熱の力は本物だ。触れてしまえば、一切合財を切り捨てる凄まじき力。
 それを肌で感じながら、紙一重で躱し続ける。

「アリスラビリンスは『人間』をアサイラムで招き入れるから。貴女も多分、人の心を持っていた。相容れられないけれど。その執着心は」
「障害を排除」
 放たれる斬撃の一撃が振りかぶられる。 
 それは刹那の瞬間であったことだろう。
 戒式十王无刃(イマシメシキジュウオウムジン)のニ刀が閃く。

 一瞬の交錯。
 ユーベルコードによって強化されたニ刀の斬撃は『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の片腕を交錯するようにして挟み込む。
「その執着心は偽りならざる本物でした。ただ、その執着を生み出していながら、その心は実直過ぎたんですよ。貴女は」
 考えるべきだった。
 疑問に思うべきだった。

 今まで抹殺してきた者たちの問いかけに対して耳を傾けるべきだったのだ。曲がりなりにも心らしきものを宿しているのであれば、わかったはずだ。
 わからないはずがない。
 蔵乃祐の背に眩く輝く心の光を。
 その意味を。
「だから、貴女は今日此処で敗れる」
 交錯したニ刀が『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の片腕を両断する。その一撃を持って、蔵乃祐は彼女のいびつながらも僅かに芽生えているであろう心の手向けとするのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
もう、大丈夫そうだブラウ…ちゃん?さん?
そういえば年上か年下かも知らなかったや
こりゃあ、戦いの後の楽しみが増えた
って事で…後はやる事わかるね?
もう一頑張りいこっか

機甲戦乙女ロスヴァイセ!
言いたい事は山ほどあるけどとりあえずこれだけは大にして言いたい!
語呂ワルっ!
名前の前に何か付けるなら4文字で!
それともあれか、機甲戦乙女(アーマードヴァルキュリア)とでも読むのかおめー!
あ、それカッコいいな…

《RE》IncarnationとKey of Chaosを抜刀
支援機はなるべく合体前に『念動力』で斬撃を飛ばして『吹き飛ばし』て排除
『エネルギー充填』、詠唱開始
【疑似神性・解放】を起動
纏めて全部、光に還す!



「もう、大丈夫そうだブラウ……ちゃん? さん?」
 光り輝く鎧をまとったアリスナイト、ブラウに対する月夜・玲(頂の探究者・f01605)の呼びかけは微妙に距離感を測りかねたような、そんな言葉の使い方になっていた。
 そう、なんとなく名前を呼んでいたが、年上か年下かわからなかったのだ。
 けれど、玲はそれでもいいと思った。
 知ることのできることがまた一つ増えたのだ。それを楽しみだと想えるのであれば幸いなことである。
 彼女に悩みらしい悩みは見当たらない。
 けれど、彼女の心の中を占める知的好奇心は止められない。知りたい。他者のことを、世界のことを、様々な文化を。
 その欲求に従うからこそ、彼女は奮起するのだ。

「って事で……後はやることわかるね? もうひと頑張りいこっか」
 そう言って玲は戦場へと飛び込む。
 その背に負った光を護るために。
「――……うん! 気をつけて! まだなにかするつもりみたいだから!」
 ブラウの声援を受けて玲は振り返らずに手をふる。
 戦う理由はいつだってシンプルだ。虐げられる者がいる。オブリビオンが今という現在を喰らうからこそ、世界が悲鳴を上げる。
 その悲鳴に駆けつけるのが猟兵であるのならば、玲が為すべきことはシンプルだ。

「『機甲戦乙女ロスヴァイセ』! 言いたいことは山ほどあるけど、とりあえずこれだけは大にしていいたい!」
 ばーん! と盛大に仁王立ちして片腕を喪った猟書家『機甲戦乙女ロスヴァイセ』に対峙する玲。
 彼女は非常にいいにくいことだが、若干彼女の名前を噛みそうになっていたのだ。舌がもつれそうになってしまいそうな名前に名指しで呼びつけるのはどういうことかと思ったが、そういうことなのだ。

「せめて、名前の前にあるのが四文字なら……! それともあれか、アーマードヴァルキュリアとでも読むのか! ……――」
 僅かに玲の顔が真顔になる。
 自分で言っておいてなんであるが、かっこ良くない? いや、かっこいいな、かなりマジで。アーマードヴァルキュリア・ロスヴァイセ。あ、いい。かっこいい。
 と一人で問題提起して解決してしまったことに僅かながら『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の動きが止まる。
 その怒涛の剣幕に気圧されたとも言うのかも知れない。

 だが、彼女を襲うのは無数の少女型支援機の群れ。
 それは数多の猟兵たちが打撃を与えても尚、無数の数を誇るほどであった。支援機が一斉に玲を抹殺せんと迫る。
「再誕の剣・混沌の鍵…込められし力を此処に」
 彼女の模造神器の二振りが疑似神性・解放(ギジシンセイ・カイホウ)されし力が放つ輝きは、背に追うブラウの輝きと合わさり、さらなるまばゆさを世界に刻み込む。

「その力……! 模造とは言え、神器……! 人間ごときが何故」
「その人間ごときに負けるんだよ! 『エネルギー充填』、英紹介し。『疑似神性・解放』……起動」
 振りかぶりはニ刀の模造神器。
 如何に模造と言えど、それは神器である。存在するのであれば、それが如何なる超常のものであったとしても解析し、解明し、再現するのが人間である。
 こと、それに関しては人間という生命は異常なる力を発揮する。それこそが、人間の最大の武器。

 詠唱が終わりを告げる。
『機甲戦乙女ロスヴァイセ』は己の判断が遅かったことを認めざるを得なかった。こと、玲という猟兵と対峙するのならば、その模造神器の力を開放させることはさせてはならなかった。
 何をおいても阻止しなければならなかった。
 詠唱によって紡がれた神性の解放。その力の根源は『混沌』である。
 鍵によって開かれた混沌のちからは、再誕の詩によって紡がれる。全てを無に還す光が顕現する。

 その一振りはいつか星をも飲み込む一撃と為ることだろう。
「纏めて全部、光に還す!」
 放たれた極大の光の一撃は支援機全てを飲み込み、『機甲戦乙女ロスヴァイセ』をも飲み込まんとする。
 判断こそ遅れてしまったが、『機甲戦乙女ロスヴァイセ』は寸前で、その半身を犠牲にして致命傷を避けていた。

「現象として見せられたのなら、再現してみせる。いつか、完全にしてみせる。ま、どれだけかかるかわからないけど――」
 それは絶対なる未来だというように、二振りの模造神器を振り切るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サージェ・ライト
さーてここからが本番ですね!
クノイチ、サージェ参ります!

戦闘用少女型支援機を引き連れる姿は
さながらワルキューレの騎行ですね!
でもブラウさんはもちろん
私も簡単に連れて行かれるつもりはありませんよ!

【かげぶんしんの術】で増えます!
これで数なら負けないはず!
そしてこちらの利点はぶんしんでも私と同じ装備や術が使えること!
【くちよせの術】で鉤付きロープを取り出して
ロスヴァイセに投げ付け絡めたったら
最低でも1対1に持っていけるはず
ロープを伝って接近したら
あとはカタールで装備を切断していきます!
支援機はぶんしんに任せて私はロスヴァイセに
「負けませんよ!」
引くわけにはいかないので!

※アドリブ連携OK



 支援機の大半が極大の光に飲み込まれ、巻き込まれた猟書家『機甲戦乙女ロスヴァイセ』もまた半身を薙ぎ払われた。
 だが、それでも未だ標的となったアリスナイト、ブラウを狙うのはやめない。
 どれだけ損傷を受けようとも、最後の一矢でもってブラウを抹殺できればそれでいいのだ。後先を考えない戦いは、オブリビオンであるからだろうか。
 科せられた使命、任務を全うするためだけに存在する意義。
 それが『機甲戦乙女ロスヴァイセ』を突き動かすものであったのかもしれない。

「さーて、ここからが本番ですね! クノイチ、サージェ参ります!」
 サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は未だ戦闘用少女型支援機を引き連れて、アリスナイト、ブラウを狙う『機甲戦乙女ロスヴァイセ』へと駆け込む。
「さながらワルキューレの騎行ですね!」
 それは死せる英雄をヴァルハラへと連れ出す戦乙女の如く。
 けれど、サージェはブラウを、そして己自身も簡単に連れて行かれるつもりなどなかった。

「任務遂行の障害。猟兵の排除を開始」
 無機質な瞳がサージェを捉える。
 半身をもがれるように破壊されても尚、その戦いをやめぬ姿は執着と呼ぶにはあまりにも衝撃的すぎた。
 支援機が乱舞し、サージェを抹殺せんとせまる。
「しゃどーふぉーむっ! しゅばばばっ! これで数なら負けないはずです!」
 かげぶんしんの術(イッパイフエルクノイチ)によって、サージェの分身が無数に展開される。
 その数は多くの数を減らされた支援機の数を上回る。さらに彼女のユーベルコードの利点は数だけではない。

 サージェ自身と同じ装備や武器、そして術を使えるという絶対なる利点があるのだ。
「口寄せの術! さあ、ここからひっくり返して行きますよ!」
 その手元にあるのは鈎付きロープである。
 頭上に掲げ素早く振り回し、投擲された鈎が『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の機体に食い込み、ロープでサージェとをつなぎとめる。
 本来の機能が十全であれば、引き寄せられることはなかっただろう。けれど、度重なる猟兵たちの攻撃によって消耗している『機甲戦乙女ロスヴァイセ』は力負けしてサージェに引き寄せられる。

 彼女の周囲では支援機と分身したサージェが乱舞のように戦い互いを潰し合っている。
 ここまできても尚、『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の脅威は拭えない。
「しぶといっ! っていいたいところですけど、オブリビオンはみんな大体しぶといですよね! サージェいっきまーす!」
 分身にロープを任せ、その上を綱渡りのように一気にサージェが駆け抜ける。
 手にするは、ハリケーンスラッシュカタール。
 拳に装備した短剣を両手に構え、飛びかかる。それはまるで嵐の斬撃。放たれる連撃は、片腕を喪った『機甲戦乙女ロスヴァイセ』にとって防ぐが難しい攻撃であった。

「――ッ! 出力低下……腕部稼働率低下……」
 だが、それでも片腕の光刃で嵐のごとき斬撃を打ち据え、防いでいく。
 それは見事な攻防であると言ってよかった。だが、サージェは押し負けるわけにはいかない。
 彼女の背後では未だブラウが『機甲戦乙女ロスヴァイセ』から放たれる絶命の一撃たる『超高速狙撃ユーベルコード』を防いでいる。
 如何に膨大な想像力を持って絶対無敵為る鎧を纏っていても、力の限界は訪れるのだ。

 そこを突かれてしまっては、猟兵たちの、何よりブラウが報われない。
 そのためにサージェは吠えるのだ。
「負けませんよ! 引くわけにはいかないので!」
 死力を尽くした連撃が、ついに『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の光刃を発生させる腕部を打ち砕く。
 それはサージェ渾身の一撃であり、全ての武装を破壊された『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の実質的な敗北であった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マグダレナ・クールー
きれい。アリスの涙は、きらきらと。背中を刺すほどに、眩しい

……生きようとしている彼女を理解しませんか?否定しますか?
あれはアリスにひどいことをしました。愉快な仲間を手にかけました
いいえ。いいえ。呑まれてはいけないのです
痛みは、狂気で耐えて。怒りをドーピングして。1秒たりともオウガを視界から逃すことなく、逃げ出すこともなく。一撃を。二撃、三撃……ええ、叩き込みましょう

ブラウさん、あなたは眩しいですね
わたくしはあなたを守りたいから戦います。戦ってきます。それはわたくしがしたい事
ずっと優しいのは、ずっとは疲れてしまうから、時には休んで。どうか、あなたのいく道が幸福で有りますように。では、行ってきます



 マグダレナ・クールー(マジカルメンタルルサンチマン・f21320)は思わず、その光景を見てつぶやいてしまっていた。
「きれい」
 溢れる涙は澱のようであった。
 今まで必死に涙をこぼすまいとこらえて、湛えられていた瞳から零れ落ちた涙はきらきらと、極彩色の輝きを放っていた。
 背に追う自身であったとしても、その光の煌きは刺すほどに眩しいものであった。

 だからこそ、マグダレナは背中を押される。
 あの輝きは彼女だけのものではない。彼女の心を励まし、支えた猟兵達の砕いた心もまた輝かせている。
 誰かのために、己の心を、想像力を媒介として光を放つからこそ、アリスナイト、ブラウの持つアリスナイト・イマジネイションの生み出した鎧は絶対無敵なのだ。
「不可解……ここまで私が追い込まれる。何故。何故。何故――」
 猟書家『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の姿は今や満身創痍であった。
 片腕は欠損し、半身は焼き払われている。すでに光刃を放つ腕部は欠落しているが、それでも、その無機質なる瞳は標的であるブラウを射殺さんばかりに見つめ続けている。

 それをマグダレナはどう思ったことだろうか。
「……生きようとしている彼女を理解しませんか? 否定しますか?」
 その問いかけに応えることはなかった。
 なぜなら、『機甲戦乙女ロスヴァイセ』は常に標的であるブラウ意外は見ていなかった。それ以外はただの障害物である。
 障害物を払いのけるのに、一々と意識を持っていかれることなどない。
 だからこそ、マグダレナの心は静かに燃えていた。

「あれはアリスにひどいことをしました。愉快な仲間たちを手に掛けました。いいえ。いいえ。呑まれてはいけないのです」
 怒りは容易に抑えることができる。
 けれど、痛みは狂気でしか耐えることはできない。まるでどーピング剤のように怒りが燃え上がっていく。
 どうしようもなく歪んだ極彩の視界の中で見据えるものは唯一つである。

 どれだけ鏖殺形態へと変貌を遂げようが、どれだけ戦力差が開いていようが、マグダレナには関係などなかった。
 ああ、だからこそ。
 マグダレナは背中を差しほどのまばゆさを持つブラウへと振り返る。
「ブラウさん、あなたは眩しいですね。わたくしはあなたを守りたいから戦います。戦ってきます。それはわたくしがしたいこと」
 告げる言葉は聖人そのもの。けれど、視界はとうに狂っている。共生するオウガに明け渡した視界。
 後悔など無い。あるのは傷つけられた、虐げられた者たちの傷跡を踏みにじる者への怒りばかりである。
 どうしようもないほどの怒りが静かに、けれど、確かに身体の腹の内側から湧き上がっていく。

 どれだけ血液を代償にしようとも、オウガの肉体を代償にしようとも飽き足りぬ力の根源は、彼女の手にする旗杖とハルバードが姿を変える。
 それは錆びたパルチザン、刃毀れしたポールアックスという劣化とも言える変化であった。だが、錆びたものが穿けぬと誰が決めた。刃砕けたものが断ち切れるぬと誰が決めた。
『ダメイットニ!!ザハンパツ!レジスタンス!!』
「ずっと優しいのは、ずっとは疲れてしまうから、時には休んで。どうか、あなたの行く道が幸福で有りますように」
 その瞳が見るのは目映い輝き。

「――では、行ってきます」
 封印を解かれた武装を手にマグダレナは疾駆する。
 目に映るのはもう涙が溢れてしまいそうに為るほどに美しい光ではない。鏖殺形態へと変貌を遂げた『機甲戦乙女ロスヴァイセ』。
 真っ直ぐに駆け抜ける。
 どれだけの攻撃が当たろうが関係ない。止まらない。止まらない。止められるわけがない。

 それは有意識のイド(キボウ・キボウ・キボウ・キボウ)へと真っ直ぐに進む矢の如く。
 一秒たりとも『機甲戦乙女ロスヴァイセ』から目を背けることをしない。マグダレナがやるべきことはたった一つである。
「叩き込みましょう。ええ、叩き込みましょう! リィー! ああ、そうです! あのオウガに、わたくしの全力を! 一撃を!」
 放たれる一撃。
 叩きつけられた鏖殺形態の『機甲戦乙女ロスヴァイセ』の拳がぶつかり、ひしゃげた。けれど構わない。
 打ち込む。打ち込む。打ち込み続ける。
 絶え間ない一撃を、永遠とも想えるほどに長き時間に渡って放ち続ける。

「あなたが輝くのならば――! わたくしは戦います! やらねばならぬことではなく、わたくしがそうしたいと願ったからこそ! わたくしはあなたを護るのです!」
 死力を尽くした最後の一撃。
 ポールアックスの一撃が、『機甲戦乙女ロスヴァイセ』を両断する。
 霧散し、骸の海へと還っていく光を見つめ、マグダレナは祈るように両手を握りしめ、膝をついた。

 それは人の心の光が見せた暖かさに、じんわりと己の瞳が温められていたから。目を伏せていてもわかる輝き。
 猟兵とブラウと、愉快な仲間たちの見せた光の煌きの前にマグダレナは祈るように、己の為すべきことを為せたことを、その祈りで持って捧げるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年11月07日
宿敵 『機甲戦乙女ロスヴァイセ』 を撃破!


挿絵イラスト