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Distress Fist

#ヒーローズアース #猟書家の侵攻 #猟書家 #『アズマ』 #神

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「噴ッ!」
「が…は…っ」
 気合一声、男の突き出した拳が、対面の男の胸板を打ち。分厚い筋肉に鎧われた胸を、まるで木板か何かであるかのように、拳は胸を貫き、鮮血に塗れた姿で背中より突き出る。
「…馬…鹿、な…。この俺…雲神ジャルスを…こうも、容易く…」
 血泡混じりの呻きを漏らす男――雲神ジャルス。心ノ臓を貫かれて尚即死と至らぬはまさしく神に相応しき生命力だが、それでも致命傷には相違ない。だが、せめて一矢報いんとしてか。節くれだった両の手を伸ばし、眼前の男――白の道着に黒帯を締めた空手家然の男へ掴みかからんとする。
「―――」
 だが、その速度。空手家じみた男が其へ反応するには充分過ぎた。ジャルスの胸を貫いた腕を引き抜くと共に、逆の手で胸板を突く。隆々たる巨躯は、しかし枯れ細った老人の如く力無く傾ぎ、どうと鈍色の地面へ倒れ伏す。
「が…っ。…お…のれ…この…怪物、達の…封印…解かせる…訳、に…は……」
 それでも己の使命を、譫言めいて口とする雲神であったが。その身は二度と立ち上がることなく、物言わぬ屍となり果てた。
「――見事だ、『アズマ』とやら」
 対手の完全な絶命を確かめるかのように残心する空手家。その背後からかけられる声。
「この地を守護する神は、センターオブジアースの神々の中でも最強格と言われる『神獣の番人』。それをこうも容易く屠るとは…これが『猟書家』の力か」
 振り返った空手家――猟書家『アズマ』の前に現れたのは、何処かプリミティブな装いをした人々。言動こそ淡々としているものの、その眼光、身のこなしからは、野性の荒々しさが滲み出る。
「…番人は…殺した…。…次は…何をすれば良い…」
 そんな彼らに『アズマ』は問う。黒布には目隠しが巻かれ、その目の色は伺い知れないが、声音には何処か虚ろな響きが伴う。
「『アズマ』よ、この地の下に眠る『不死の怪物』より神話の力を吸い上げ、我らに授けるのだ。さすれば、我らは『スナーク』と化し、この世界の者共へその恐怖を刻み込む尖兵となろう。いずれ、その恐怖を以て『超生物スナーク』を産み落とす為に」
 彼らの語りは、淡々としつつも何処か高揚している。『アズマ』は頷き、屈みこんで地に己が掌を押し当てる――。

 そんな一連の遣り取りを、上空から見届ける者あり。緑の髪を靡かす軽やかな装いの少女――の姿をした神だ。
「…そんな…ジャルス兄さん…! どうにかして仇を…ううん」
 大きな瞳に涙を浮かべ、兄たる雲神の死を嘆く少女神。仇討ちをせんと勇む心を、強かった兄が瞬殺された事実を以て押し留める。ならばどうするか。
「皆に伝えなきゃ…! 出来れば、この世界を救ってくれたあの人達に…!」
 その身に旋風を纏い、飛翔する。この事態を解決し得る者達を求めて。



「其れは即ち、我らを以て他に無し――そうであろう?」
 グリモアベースに集った猟兵達に予知を語ったグリモア猟兵、ギージスレーヴ・メーベルナッハ(AlleineBataillon・f21866)、通称ギジィはそう結ぶと共に不敵な笑みを浮かべた。
「ともあれ。諸君も知っての通り。先のアリスラビリンスでの『迷宮災厄戦』の後、潜伏を続けていた猟書家達が、ついに動きだした」
 オブリビオン・フォーミュラの斃れた世界へと侵略を目論んでいた彼らが、ついに行動を開始したのだ。それぞれの世界を、それぞれの手段で以て再度過去で侵食するために。
「余が予知を見たのはヒーローズアース。そのうちの神々が住む領域、センターオブジアースだ」
 アースクライシス2019の後、分かたれていた各々の文明との交流が始まり、センターオブジアースを離れる神も少なからずいるが、一部の神はそれでもかの地を離れようとしない。果たすべき使命があるからだ。
「ヒーローズアースのはじまり、神々の時代において討伐された『不死の怪物』達。これらの封印を監視する『神獣の番人』と呼ばれる神々がそれだ。そうした使命を帯びているが故に、神々の中でも特に強力な者達であるが…」
 そのうちの一人が、侵入した猟書家の手で殺された。ギジィの言葉に猟兵達の表情も硬くなる。
「彼奴の名は『アズマ』。奴は神獣の番人の一人『雲神ジャルス』を殺害、かの神が守っていた封印の一部を解き、吸い上げた不死の怪物の力を部下達に分け与えた」
 この部下は本来ならば弱いオブリビオンであるが、不死の怪物の力を得たことで凄まじいまでに力を高めている。それこそ、猟兵達ですらまともに戦っては敵わぬ程に。
「この現象を、彼奴らは『スナーク化』と称している。この名と共に暴威を振るい『スナーク』の名を恐怖の代名詞として知らしめる。それが連中の狙いだ」
 当初この世界への侵略を目論んでいた猟書家、サー・ジャバウォックの企みに比べればシンプルではあるが、脅威であることには変わりない。
 しかしそこまで強大な敵にどう対処すれば良いのか。猟兵の一人が問えば。
「怪物の力は、かつて神々が打ち倒した怪物の性質に紐づけられている。即ち、神々がそれら怪物の性質、そして弱点を知っている筈だ」
 神々もまた、此度の事態に対処するべく動き出している。そのままでは『アズマ』や配下達の手で鏖殺の憂き目を見るが、猟兵達が加勢し共闘すれば、彼らから怪物の弱点を聞き出すことで事態の打開は充分可能だ。
「それと、参戦の際は、『秘密結社スナーク』という猟兵組織の一員を名乗ることを勧める。スナークの名は必ずしも恐怖齎す存在を意味しない、と知らしめる事で、奴らの狙いを緩和する意味が生じるだろう」
 因みにこの『秘密結社スナーク』は儀式魔術【Q】を試みた結果として設立された秘密結社であるが、実態としては元々の猟兵の活動と変わりはない。名乗ることで生じる不利益はないはずだ、とギジィは言う。

「ともあれ。これら配下を倒した後は『アズマ』と戦い、これを打倒せよ」
『アズマ』は空手家然とした容貌に違わず、拳打や蹴撃、投げといった格闘技を用い戦う。その攻撃はシンプルではあるが、故に小細工の通じ難い敵だ。幸い、配下と異なり『アズマ』自身は不死の怪物の力を用いない。猟書家としての力と相克するのではなかろうか、とはギジィの推測である。

「余からは以上だ。それでは、転送を開始する」
 一通りの説明を終え、ギジィがその掌にグリモアを展開する。彼女が率いる大隊の紋章を模したグリモアが、回転しながら光を放つ。
「夜に抗う過去のもの共に、今一度黄昏を。征くがよい、猟兵諸君」


五条新一郎
 カラテだ、カラテあるのみ。
 五条です。

 いよいよ猟書家達が動き出しました。
 当方よりお送りする猟書家戦シナリオ第一弾はヒーローズアース、神々の領域を襲撃した『アズマ』一行との戦いでございます。

●このシナリオについて
 このシナリオは『全二章』構成となります。

●目的
 猟書家『アズマ』及びその配下の撃破。

●第一章
「呪法擬人化胡狼兵」との「集団戦」となります。
 彼らは不死の怪物の力により「頭部から大きな牡牛の角が生え」大幅に強化されていますが、神々から弱点を聞き出しそれを突くことで撃破が可能となります。
 (以下PL情報)
 彼らに宿った不死の怪物は「狂猛巨牛グリーグ」、目につくもの全てを破壊せんと暴れ回った巨大な牡牛です。
 かつて神々はつかず離れずの距離を保ってグリーグを走り回らせ、疲弊したところを捕まえ封印したとのことで、グリーグの力宿した胡狼兵達も同様の戦い方をされるとすぐ疲弊するという点が弱点となっています。

●第二章
 猟書家『アズマ』とのボス戦です。
『アズマ』には不死の怪物の力は宿っていないので、特別なギミックはありません。

●プレイングについて
 第一章はOP公開直後から、第二章は章以降後に断章を投稿しますのでその後からプレイングを受け付けます。
 また、「神々と共に戦う」「猟兵組織『秘密結社スナーク』の一員を名乗る」ことでプレイングボーナスがつきます。
 神々は強いので、自衛ぐらいは何とかなります。

 それでは、皆様の決断的なプレイングお待ちしておりますー。
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第1章 集団戦 『呪法擬人化胡狼兵』

POW   :    カース・インベーダー
自身に【黒い霧のような呪いのオーラ】をまとい、高速移動と【生命力を奪う影の鎖】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    シャドウ・アームズ
対象の攻撃を軽減する【影武装形態(シャドウアームドモード)】に変身しつつ、【棒術と攻撃魔法のコンビネーション】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    アンチェイン・ビースト
【自身にかけられた人化の呪いを解除する】事で【巨大な魔獣】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:エル

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 センターオブジアース、不死の怪物封じられし領域では、既に猟書家『アズマ』の配下たる胡狼兵達と神々との戦いが始まっていた。
 神々はいずれも、この地の怪物達の封印を守る使命帯びたる『神獣の番人』。神々の中でも特に強き者達――であったが。
「畏れよ、畏れよ、畏れよ!」
「我らはスナーク! 神さえも屠るもの!」
 その怪物の力を取り込んだ胡狼兵達の力は、そんな神々さえも圧倒していた。手にした力を誇示するように、頭に生えた牡牛の角を振りかざし。呪文を唱えれば。
「うああぁっ!!」
 単節の簡単な呪文にも拘らず、現れたる力は流星群じみた火炎弾の雨。猛烈な勢いで対峙する神々目掛け降り注ぎ、彼らを爆風に巻き込んでゆく。
「おのれ…なんという力か…!」
「不死の怪物の力…奴ら全員が取り込んでいるとでもいうのか…!」
 態勢を立て直した神々だが、その圧倒的なまでの力に、強き神たる彼らも戦慄を隠せぬ。その様はかつて対峙した怪物達が、数十体にまで分裂して襲ってきたかのよう。
(あの角…もしかして、あたしとジャルス兄さんで封印したグリーグの…?)
 そのうちの一人、緑の髪の少女神は、胡狼兵達の頭部に生えた角を見て思案する。遥か太古の昔、かの巨牛を捕らえ封じた戦いの記憶を思い起こす。
「…皆、時間を稼ごう! あれがグリーグの力だってなら、弱点もあの時と同じ…!」
 そして思い至った対処法。声を張り、仲間の神々に呼びかける少女神だが。
「承知、時間を稼ぐのみならば…ぐおぉっ!?」
 応答した神の一人が、いつの間にか眼前に迫っていた胡狼兵の棍の一撃で吹き飛ばされる。
「……!? 速い…!?」
 未だ彼我の距離は充分にあった筈。これ程の速度で距離を詰められる神など、風神たる少女神ですら知らぬ。即ち、速度では勝り得ない。
「無為である! 我らが力、我らが恐怖より逃れるは能わず!」
 そして胡狼兵の棍が、少女神を向く。次はお前だと言わんばかりに。
(ダメだ…あたし達じゃ勝てない…! …兄さん…!)
 迫り来る恐怖、突き付けられた結末に、悔しげに歯噛みする少女神。神々の聖域は、このまま過去の恐怖に蹂躙されるばかりか――

 だが、まさにその時。希望の光が降り注いだのである。
空桐・清導
SPDで挑む

神様と共闘なんて燃えるぜ!よろしくな!
なるほど。あいつらは疲れさせると良いのか。
じゃあさ、俺にいい考えがあんだ。
手伝ってくれねえか?

「そこまでだぜ、狂猛巨牛グリーグ!」
高い位置から[存在感]を放って叫ぶ。
「俺は『秘密結社スナーク』のブレイザイン!
貴様らを倒すヒーローだ!」
高い位置から飛び降り、着地して決めポーズ。
実はこの時、UCを発動させて高速形態になっているぜ。
「そして、お前たちには弱点がある!これだ!!」
赤いマントを外し、ヒラヒラと両手に持つ。
牛なら思わず突っ込んじまうだろ?

そこを神様のバフ、[勇気]と[気合い]で避け続ける!
バテてきたら、神様達に声をかけて一斉に[なぎ払う]!


音取・ゼラ
ふははっ!少女神よ、汝の兄である雲神ジャルスの仇はこの神王ゼウスの転生たる余がとってやろう!
故に少女神よ。余にその知恵を示すことを許す!存分に知りえることを語るがいいのである!
ふむ、彼奴らを走りまわさせて疲弊させればよいのであるか、任せるのである!

ゼラの雷雲に乗って【神王ゼウスの神雷】で前世の天空神たる神王ゼウスの姿になるのである!
ふはは!天空神にして神王たる余を捉えられるならば捉えてみるがよいのである!
この裁きの神雷を受けながら、それが出来るのならな!まぁどうせ無理に決まっているのである
呪いのオーラなど余の神雷の前には無力と知るがいいのである!
と、素で挑発しながら追いかけっこをさせるである


佐伯・晶
雲神ジャルスの妹神に
秘密結社スナークの一員を名乗り接触
仇討ちを行う代わりに不死の怪物の情報を教えて貰おう
他世界の邪神を宿してるから
怪訝な顔くらいはされるかもね
似たような力を使う猟兵はそこそこいるし
アースクライシス関連で名前を聞いた事あるかもしれないから
何とかなるかな

敵と相対したらガトリングガンで付かず離れず攻撃しつつ
呪いのオーラは回避したり
神気で時間を停めたりして相手を焦らそう
後者は僕なりのオーラ防御だよ

焦れて接近してきたら邪神の領域を使用
アズマとの戦いもあるから体の石化は最小限にして
相手の動きを遅延・停滞させつつ
距離をとって疲弊するまで逃げ撃ちするよ

疲弊したら神気で敵の動きを停めて射撃しよう



「そこまでだ、オブリビオン共!」
「ふはははは! これ以上の狼藉は許さぬぞ下郎共!」
 力強い少年の音声と、尊大な少女の高笑いが聖域に響く。声音が知らしめる存在感が、その場に在る全ての者達へ注目を促す。
「あれは…!?」
 戦場において一際大きく高い岩場、その上へと視線を向けた神々と胡狼兵が見たのは、ヒーロー然とした衣装の紅鎧纏う少年と、神々しき雰囲気を帯びた黒いドレスの少女。
「俺は『秘密結社スナーク』のブレイザイン! 貴様らオブリビオンを倒すヒーローだ!」
 ブレイザインこと空桐・清導(ブレイザイン・f28542)は堂々と名乗り上げ、決めポーズを取ってみせる。
「余は異界の天空神にして神王、ゼウスの転生なり! この世界の神々よ、余の助成を受ける誉に浴すがよい!」
 かの神話における最高神の転生と称する少女、音取・ゼラ(自称ゼウスの生まれ変わり・f24198)はいっそ傲慢とすら見える程の不敵な笑みを以て睥睨する。
 そして。
「っ!」
 神々へ迫っていた胡狼兵を襲う銃弾の雨。彼らが飛び退き回避したそこへ、今一人の猟兵が降り立った。
「どうにか間に合ったね。皆、大丈夫?」
 漆黒のドレスを靡かせ、ガトリングガンを携えた少女――本来は男性であったが邪神との融合によりこの姿となったらしい――佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)が、神々を振り返り問う。
「あ、ありがとう…。あなた達、もしかして…」
 礼を述べつつ、晶の間近にいた少女神は言いかける。この局面で自分達を救ってくれるというなら、彼らはきっと――
「ああ、猟兵結社『秘密結社スナーク』の者だよ。あのオブリビオンを、倒しに来た」
 その推測を肯定するかのように頷く晶。
「スナーク…スナークだと…!?」
「馬鹿な、お前達がスナークであるなどと…!」
 彼女と清導が『スナーク』を名乗ったことに動揺する胡狼兵達。スナークたる己らの行いを妨げる者もスナークとなれば、その名は必ずしも恐怖を意味しない。猟兵結社『秘密結社スナーク』とは、その名を以て恐怖を拭う為の組織であるのだ。
「いいや、俺達こそスナーク! その名は恐怖の象徴たるべきじゃあない! その恐怖、ここで拭わせてもらうぞ!」
 否定するように呻く胡狼兵達へと清導が言い放てば、「とう!」と掛け声と共に回転跳躍、神々をその背へ守る位置へと着地。胡狼兵達の前へと立ちはだかる。
「やっぱり…! お願い、どうか兄さんの…雲神ジャルスの仇を…! この敵、あたし達だけじゃ…!」
 そんな猟兵達へと、少女神は縋るように乞う。待ち望んでいた希望へと。
「勿論だとも。その仇討ち、引き受けた」
「ふはは! 無論である! 故に少女神よ、彼奴らに宿る怪物について、汝が知ることを語るが良い!」
 請け負ったのは晶と、清導にやや遅れて合流したゼラ。しかし続けての問いには、少女神もその意図が掴めなかったようで戸惑う様子を見せたが。
「あの敵は原初の不死の怪物の力を宿しているらしいね。ただ戦うだけじゃ僕らでも厳しい相手だから、特徴とか弱点とか、あったら教えてくれないかな」
 そこに晶が補足めいた重ねての問いを告げれば、少女神も合点がいったらしく、頷くと共に語りだした。
「あいつらに宿ってるのは、多分『狂猛巨牛グリーグ』…大昔に暴れ回っていた大きな牡牛だよ。あれの力を引き継いでるとしたら、とにかく凄いパワーとスピードのはず。でも、スタミナはそれほどじゃなかった」
 故にかつては、つかず離れずの距離を保ち逃げ回って疲弊を促し、弱ったところを捉えたのだという。
「ふむ、つまり彼奴らを走り回らせ疲弊させれば良いということであるな!」
「見たところ接近戦だけじゃあないようだけど、やってみるとしようか」
 にやりと笑むゼラと、納得いったように頷く晶。そんな二人の様子を、少女神の後ろの神々は少し怪訝そうに見ていた。
 異界の神の転生体であるというゼラと、更に異なる世界の邪神をその身に宿す晶。神々の聖域という性質上、異界の神という存在にはつい警戒してしまう彼らではあったが。その前に猟兵――一年前、かのアースクライシス2019においてこの世界の滅亡を防いでくれた者達の一人であるのならば。疑念を払うかのように、頭を振るのであった。
「よし! そうと決まれば…皆にも一つ、協力して欲しいことがあるんだが…良いか?」
 そんな彼らに、胡狼兵達と睨み合い牽制していた清導が首を振り向け、一つの提案を持ち掛けてきた。

「さあ、お前達の弱点は見切った! 行くぞ!」
 宣言と共に疾走する清導。その手には、普段は背中に装備している炎の如きマント。ヒーローの存在を証立てる印たるこれを脇ではためかせ、胡狼兵達へと見せつける。
「…何のつもりだ…?」
 怪訝な表情を示す胡狼兵達。だが無論清導は答えない。つかず離れずの距離を保ちながらはためくマント。その動きは何かを誘うようで――
「…ええい! 叩き潰せば済むことだ!」
 考えても埒が開かぬ、とばかりに吠える胡狼兵達の身を、影で形作られたが如き装甲が覆う。そして駆け出せば、その手の棍を以て清導を打ち据えんとする――が。
「おおっと、俺はこっちだ!」
 棍を振り下ろしたその時には、清導の姿は更に先へ。胡狼兵達と対峙した時点で、彼の纏う装甲は超高速戦闘を可能とするアクセルモードへの変形を果たしていた。そして、併せて発動していた彼のユーベルコードが、胡狼兵達を上回る速度での機動を可能としていたのだ。
 更に。
「ふはははは! 神王たる余の雷撃、抗えるものならば抗ってみるが良い!」
「「うおぉぉっ!?」」
 迸る雷光が胡狼兵達へと降り注ぐ。辛うじて躱した彼らが上空を見れば、空には飛び回る一塊の雲。そしてその上に立つは、隆々たる巨躯と見事な髭を具えた神々しき壮年の男の姿。声音も低く太く、轟く雷鳴じみた重みを以て響き渡る。
「おのれ、上空からの攻撃とは! だが!」
 態勢を立て直した胡狼兵達、一斉にその身を黒き霧の如き呪いのオーラで覆うと共に、その手に影で編まれたかの如き鎖を生み出し。上空の雲とそれに乗る男目掛け、次々と投擲する。命中すれば立ちどころに生命力を奪い去る呪詛を籠めた呪いの鎖だが。
「ふははは、この天空神たるゼウスを空より引きずり落とそうとは、不遜にして無謀の極みよ!」
 男の高笑いと共に、雲は巧みな軌道で飛び回り、投げかけられる鎖を次々と躱し、或いは雷撃を以て弾き飛ばし。言葉通り、その身を捉える鎖は一つもない。
 そう、この男こそはゼラの前世たる天空神にして神王ゼウス、その姿をユーベルコードで以て再現した存在。その神威、かつてには及ばずとも、胡狼兵達の呪いを退けるには十二分。
「上ばっかり見てると足元掬われちゃうよ?」
「ぐわっ!」
 そしてそこに走り抜ける無数の火線。晶の放ったガトリングガンの掃射である。何体かの胡狼兵達が避けきれず被弾するが、その負傷は大きなものではない。
(あわよくば一気に、と思ったけど。やっぱりまずは疲れさせることからかな)
 不死の怪物の力で耐久力も増しているらしい、と晶は解釈する。とはいえ無傷といかない以上撃ち続けることに意味はある。そのまま掃射を継続。
「小うるさい攻撃を! ならばまずは貴様だ!」
 無論、黙って受けているのみの胡狼兵達ではない。呪いのオーラ纏う棍を構え、晶目掛け駆け出す。ユーベルコードの作用で高まった速度でもって、一瞬で彼女への肉薄を果たせば。
「死ねぇ!」
 そのまま棍を突き出す――が、その棍は何もない空間を突き抜けるのみ。既に晶の姿はそこには無い。
「…何!?」
 彼らには、棍を突き出す瞬間、晶の姿が消失したように見えた。そして彼女は。
「遅いね」
 胡狼兵達の側面、先程までと変わらぬ距離を取って、晶はそこにいた。己の身より漏れ出る邪神の神気、静謐――或いは停滞を齎すそのオーラを以て、胡狼兵達の時間を一時的に停止。その隙に距離を取り直したのである。
「ぬ…ぐ、貴様ら…!」
 唸る胡狼兵達、三人の猟兵を捉えんと走り回るが、純粋速度で上回る清導、上空というアドバンテージを有するゼラ、時間を奪う晶。三者それぞれの強みを突破できず、徒に追いかけっこばかりが続いてゆく。

 そして。
「ぜぇ、はぁ…く、くそっ…!」
「ま…待て…貴様ら…!」
 10分も経たぬうちに息切れし、疲労困憊といった様子となる胡狼兵達。肩で息をする者さえいる程だ。
「ははははは! 所詮は俗物共! 余に手を届かせるなど土台無理なる話であったな!」
 そんな彼らの頭上、ゼウスの姿を保つゼラが勝ち誇ったかの如く高笑いを響かせる。
「ぐぅぅ…言わせておけば…!」
「…っ!? な…体が、動かぬ…!?」
 苛立ち、せめて一矢報いんと棍や鎖を構える胡狼兵達だったが、そこで気付く。その身が、石になったかのように動かない。
「疲れのせいじゃない。君達はもう動けないんだよ」
 そこにかけられる声は晶。彼女の身体から溢れ出る神気は、ユーベルコードの発動でより密度を増し、停滞の力もまた強さをしていた。
(とはいえ…早めに決めるべきではあるかな)
 己の身体の一部が、徐々に硬く、冷たくなってゆくのを晶は感じる。このユーベルコードの代償は、自身の肉体が徐々に石化してゆくこと。己と一体化した邪神に施されていた封印が未だ生きているが故に、邪神の力の本格行使にはこのような代償が伴うのだ。この後『アズマ』との戦いがあることを考慮し、出力は最小限。だがそれでも、疲弊した胡狼兵を拘束するには充分。
「よし、うまくいったな…! 皆、今だ!!」
 そんな彼女の心境を知ってか知らずか。清導は決着をつけるべく合図の声を発する。先程彼が持ち掛けた作戦通りに。
「う、うん! 皆、いくよ…!」
「応…! 我らの意地、受けてみよ!!」
 応えた神々が、一斉に己の権能を行使。風が、氷が、焼けた鉄が、巨岩が、動けぬ胡狼兵達目掛け次々と降り注ぎ。ゼラは雷撃を、晶はガトリングの銃弾を放ち。猟兵と神々の攻撃が、胡狼兵達を容赦なく打ち据える。
「そして、こいつでトドメだ…! 光速を超えた一撃を見せてやる!」
 清導が両腕を後ろへ伸ばした姿勢で前傾姿勢を取る。両の前腕部装甲に取り付けられたブレードが伸長すると共に赤熱する。そして、一歩踏み出すと共に。
「――ブレイザイン! アクセルヒート! スラァァァァァッシュ!!」
 その姿は一瞬にして胡狼兵達の反対側へ。軌跡に残るは、胡狼兵達の身を横一文字に斬り裂く炎熱の斬痕。直後、盛大な炎を上げて、彼らは一人残らず骸の海へと燃え落ちていったのである。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
成程、大変なことになっておりますねぇ。
頑張ってみましょう。

まずは、神々の皆様にお話を聞きますねぇ。
『猟兵』の力と装備、必要なら【UC】もお見せして『敵ではない』と証明すれば、この状況なら協力は可能でしょう。
『スナーク』の名も使わせていただいた上で、なんとか『弱点』を尋ねたいところですぅ。

無事に聞くことが出来ましたら、次は対処ですねぇ。
相手の『高速移動』も強化されている可能性が有りますから、これに対して『つかず離れず』となりますと、【燦華】を使用し全身を『光』に変換した上で『光速移動&回避』→『待機』の繰返しで走らせるのが確実そう、でしょうかぁ?
上手くいくと良いのですが。


才堂・紅葉
折角に戦争を乗り越えたというのに、性質の悪い話ですね
しかし神話の再現ですか。中々に興味深いですね

「自分は才堂紅葉。『秘密結社スナーク』の者です。介入させていただきますね」
神々に一礼し介入を宣言します【礼儀作法、コミュ力】

確かにまともにぶつかっては危険な相手のようです
事前の情報通り、神々の逸話の再現と参りましょう

方針は柔術の体捌きでいなしての疲弊狙い
相手の攻撃を誘導し、紙一重で避けて死角に移動。軽く体を押すなり、足をかけるなりで相手を崩して疲弊を誘います【見切り、グラップル、体勢を崩す】

「狙い目ですね」
相手の攻め疲れを見極め獣の眼光
力の源の牡牛の角を手刀で狙いますね【早業、殺気、怪力、部位破壊】


七那原・望
秘密結社スナークにゃんにゃん部隊所属、望&ねこさん軍団!オンステージ、なのです!……こんな感じで良かったです?

対処法を聞きながら神々と共に戦闘を。
【果実変性・ウィッシーズホープ】を発動しつつ、【念動力】で浮力を与えたスケルツァンドに【騎乗】、ねこさん達はプレストに乗せて共に【空中戦】を。

【第六感】と【野生の勘】で敵の行動を【見切り】、敵に追いつけない高度で高速飛行を続け、【属性魔法】の【乱れ撃ち】で牽制しつつ敵の疲弊を待ちましょう。

敵の疲弊を確認したら速やかに神々の攻撃に合わせて、ねこさんと共に【多重詠唱】【全力魔法】【一斉発射】、更にオラトリオとセプテットの【乱れ撃ち】で敵を【蹂躙】します。



 不死の怪物の力得て暴れ回る呪法擬人化胡狼兵、その一団は全滅したが、無論それで終わりではない。
「まだ来る…!」
 迎撃に当たっている神の一人、風神たる少女神は、向かって来た胡狼兵の次なる一団を目にして身構える。先程の猟兵達は別の領域で戦っている、ここは自分達で――そう覚悟を決めたところに。
「秘密結社スナークにゃんにゃん部隊所属、望&ねこさん軍団! オンステージ、なのです!」
 突如響いた、愛らしき鈴鳴りの声。神々が振り向いたそこには、小高い岩の上でポーズを決める少女と、その足元で似たようなポーズをしている数匹の猫達の姿。大きな純白の翼に流れるような銀の髪、何よりその両の眼に目隠しを施しているのが特徴の、この少女の名は七那原・望(封印されし果実・f04836)。
「え、えっと…?」
「いきなり失礼致しましたぁ」
 しかし望のノリについて行けなかったのか、戸惑い気味な神々。そこへフォローめいて現れたのは二人の猟兵。望が立っている岩の後ろから現れた、豊満極まりなき肢体の少女と、気品ある顔立ちに自信溢れる笑みを浮かべた女性の二人だ。
「秘密結社スナーク所属の猟兵、夢ヶ枝るこると申しますぅ。此度は故あって、皆様をお助けに参った次第ですぅ」
「同じく秘密結社スナークの才堂紅葉です。この場の戦に介入させていただきますね」
 緩やかな声音で少女――夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)が告げるのに続けて、丁寧ながらはっきりとした口調で女性――才堂・紅葉(お嬢・f08859)が宣言する。
「あなた達も猟兵…なの?」
「なのですー」
 未だ戸惑った感の少女神に、岩からぴょんっと飛び降りつつ望が応える。と、そこに。
「援軍か! だがスナークとなった我々に敵はない!」
「恐怖せよ! 絶望せよ! それこそが我らの力! スナークの力!」
 その頭部に巨きな牡牛の角をかざした胡狼兵が到達、一行を目掛け棍を振り上げ攻撃を仕掛けてきたのだ。
「ちっ!」
 真っ先に反応した紅葉は素早く胡狼兵の懐へと入り込み、その手首を引きつつ敵の後ろへ抜ける。姿勢を崩された胡狼兵はそのまま転倒。
「させませんよぉ!」
 るこるもまた、主武装たるフローティング・システムを起動。浮遊砲台から熱線を放って迎撃、同時に転倒した胡狼兵への追撃を行う。
「ぬぅっ!」
 しかし胡狼兵は素早く飛び退き熱線を回避、転倒した兵も転がって追撃をかわす。
「思ったより早かったのです…!」
 そこへ望が、その身に比して不釣り合いなまでに巨大な七連銃を構え、しかし遅滞なく連射。視界を封じた彼女だが狙いは的確、以てそれ以上の攻撃を牽制する。
「ええ、それに情報通り、このまままともにぶつかっては危険な相手です」
 援護射撃を受け後退しながら唸る紅葉。歴戦の傭兵である彼女には、今の一合で敵の力量が理解できたのである。捌くだけなら兎も角、倒すとなると。
「この地の神の皆さんならば、あの敵への有効な対処もご存知ではと思うのですが…どうでしょうかぁ」
 再び神々へと話を向けるるこる。今の交戦が、己らの猟兵たるを証立てられていれば、と思いつつ。
「…分かった。話させてもらうよ」
 少女神は頷き、かの敵について語りだす。
「あいつらに宿っているのは『狂猛巨牛グリーグ』の力。あらゆるものを壊さないと気が済まない暴れ牛だけど、疲れやすいのが弱点だった。だから、つかず離れずで逃げ周りながら戦って、疲れさせて捕まえたんだ」
「となるとぉ…攻撃を躱したりいなしたりしながら戦って、疲れたところを倒すのが良い…という感じでしょうかぁ」
 語られた内容にるこるが推論を述べる。少女神は頷き、肯定の意を返す。
「なるほど、それまで耐え凌ぐ戦いですね」
 紅葉もまた頷き、片掌に片拳を打ち付け気合を入れる。
「了解なのですー。では、わたしはこれでいきましょう」
 応えた望、傍らに滑り込んできた純白の宇宙バイクに跨る。傍らには先程の猫達が乗る掌じみた形状の飛行機械。
「それでは…神々の逸話の再現と参りましょうか!」
 紅葉の宣言と共に、改めて戦闘開始。

「わたしは望む…ウィッシーズホープ!」
 宇宙バイク『奏空・スケルツァンド』を念動力にて飛翔させながら、望はユーベルコードを発動。現れた勝利の果実をハンドル傍に固定、戦場の空に駆け上ってゆく。
「逃がすモノカ…オオオオオオ!!」
 それを見た胡狼兵の一部が、対抗するかのようにユーベルコードを発動。その肉体が爆発的な勢いで膨れ上がると共に人の形を失い、その大きな角に見合った牡牛めいた魔獣へと変身してゆく。
「っ! 速いです…!」
 魔獣化胡狼兵のその速度、高速で飛翔するスケルツァンドへも追いつきかねぬ程。傍らを飛翔する飛行機械『機掌・プレスト』から猫達の焦りにも似た鳴き声が響く。
「大丈夫なのです、ねこさん達!」
 振るわれる剛腕を直感全開にて回避し、お返しとばかりに背後へ魔法陣を描く。浮かび上がった光が驟雨の如く魔獣の頭上へ降り注ぎ、更に魔獣の足元の土が急速に軟化しその足を取る。砂の神がその権能で援護してくれているようだ。
「…ありがとうです…!」
 姿は見えないが謝意は表しつつ。それらの妨害で魔獣が怯んだ隙に距離を取る。ハンドル傍の果実が黄金の輝きを増してゆく。

 地上では紅葉と、影で形作られた武装を纏う胡狼兵達とが交戦していた。
「ッラァァ!!」
 棍を構え刺突を繰り出す胡狼兵。紅葉、その軌道を見極め敵の背中側へ身を逸らし移動、更に敵の肩を引く。予想外の力がかかり、為す術なく斃れる胡狼兵。
「いい気になるな!」
 そこへ次なる胡狼兵が、下から振り上げるような棍の一撃を繰り出してきた。軽く身をのけ反らせ紙一重で躱すと、その棍を掴み引っ張り込む。重心がそのまま前へと流れて胡狼兵が倒れ込む。
「…次は誰ですか!」
 吼える紅葉。ここまで敵の攻撃をいなし続けてきたが、その攻撃速度は存外に速い。元より紙一重での回避からのいなしを主体に戦う方針ではあったが、狙うまでもなく回避のタイミングは常に紙一重だ。
 更に。
「大した力だ、だがこれはどうだ!」
 紅葉と間合いを保っていた胡狼兵が叫ぶ。と同時、火炎弾が立て続けに撃ち放たれ紅葉を襲う。攻撃魔法だ。
「っ! 遠距離攻撃も可能でしたか…!」
 降り注ぐ炎を縦横に躱す紅葉、だがその弾幕、接近の隙が見えぬ。これでは此方が先に――
「近づけねば何もできまい!このまま嬲り――ぐわぁっ!?」
 勝利を確信したかのように、火炎弾を撃ち放ち続ける胡狼兵達。だがその勝ち誇った言葉は、降り注いだ砲弾の雨によって彼ら自身共々吹き飛ばされる。
「では、其方は近づかずとも戦える私の役割ですねぇ」
 進み出てきたるこるが告げる。降り注いできた砲弾は、彼女が有する盾つき浮遊砲台によるものだ。距離を取って魔法攻撃を試みる胡狼兵達を狙って、次々降り注ぐ砲弾。
「くっ、ならばお前は…!」
 態勢を立て直した胡狼兵がるこるへ迫る。その身へ黒き呪詛の霧を纏い、棍の攻撃と共に撃ちこまんとするが。
「大いなる豊饒の女神、その象徴せし欠片の一つを我が身へ――」
 インタラプトへ入ろうとする紅葉を制し、るこるはユーベルコードを発動。その身は瞬く間に人の形を失い、眩き光となってその場に蟠る。光ゆえに実体は無く、故に棍は空を切る。
「な…に!? こ、これはどういう…!」
 そのまま棍を振り回すも、無論手応えはなく。瞬く間に疲労ばかりが募ってゆく。
 そして上空からはフローティング・システムによる砲撃が続く。足を止めての魔法攻撃を咎められた胡狼兵達は、紅葉への接近戦を試みるより他に無いが、それはやはり紙一重でいなされてゆく。
「連携は疎かですね!」
 のみならず、転ばされた仲間に躓いて攻撃を失敗する者まで居る始末。敵数が増え過ぎた状況は、逆に御しやすい。
 そして。
「――狙い目ですね」
 次第に胡狼兵達の動きが精彩を欠いてゆくのを見極めた紅葉の瞳が細められる。瞬間、その眼が鋭き刃じみた光を放つ。殺気に満ちたる眼光を。
「ッ!?」
 疲労の蓄積してきた胡狼兵達は、その変化に驚き、思わずその身を竦ませてしまう。獣の論理、より強き獣の眼光には抗い得ぬ。
「――はぁっ!!」
 その隙を逃さず、紅葉の片手が閃く。手刀一閃、見事に胡狼兵の角を斬り飛ばしてみせた。
「ええ、一気に一掃していきましょう」
 光から元の姿に戻ったるこるも頷く。上空からの砲撃を集中、足の止まった胡狼兵から吹き飛ばしてゆく。

 そして、望を追っていた魔獣化胡狼兵達も、徐々にその動きが緩慢となってきていた。
「…決め時ですね。神々の皆さん!」
 それを見定めた望が、援護に回っていた神々に呼びかければ、応えるように氷柱弾が、雷撃が、魔獣達を目掛け降り注ぐ。神々の反撃が始まった。
「わたし達もやりましょう、ねこさん達!」
「にゃー!」
 望もそれに合わせるが如く、杖を掲げ、周囲に七つの銃を浮揚させる。先程の大型銃の分離した姿だ。猫達を乗せる飛行機械も、その機体から銃火器を迫り出させる。
 そして望の身から滲み出すは、エクルベージュ色をした実体持つ影。彼女を守り、共に在る、彼女の最初の友。
「…一斉発射、なのです!」
 七つの銃が、飛行機械の銃火器が、一斉に撃ち放たれ、魔獣達の身を穿つ。苦悶に悶える魔獣達。影達も次々と魔力弾を連射し追撃を重ねて。
「これで…おしまい、なのです!」
 そして最後に、眩いばかりに輝く勝利の果実を掲げれば。そこから溢れ、迸った光の奔流が、魔獣達を飲み込み消し飛ばしていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シャーリー・ネィド
【かまぼこ】
宇宙バイクに乗って颯爽登場!
颯爽名乗り!
「正義の秘密結社スナーク参上!ボクたちが来たからにはもう安心っ!」
色々とツッコミどころだらけだけど勢いで乗り切って、【援護射撃】+【制圧射撃】で加勢して神さまが体勢を立て直せるようにする

弱点を聞いたらウィーリィくんに合図して作戦開始!
「『イェーガー車輪』だよ!」
それっぽい技名を叫ぶ事で【フェイント】で敵を惑わせてから駆け出して敵に追いかけさせて、二人で協力して円を描くようにして追いかけっこを演じて疲れたところを【ロープワーク】でまとめて縛り上げて、二人でタイミングを合わせて【クイックドロウ】+【乱れ撃ち】で一気にやっつけるよ!


ウィーリィ・チゥシャン
【かまぼこ】
あんまこういうのって慣れてないけど、やるしかないか。
「秘密結社、スナーク!」
(シャーリーと一緒に決めポーズ)
自分から名乗る秘密結社ってのはどうなんだってのはさておき。
鉄鍋の【盾受け】で敵の攻撃から神々を【かばう】と同時に自分達が味方である事を告げ、敵についての情報を聞く。
攻略法さえわかればこっちのもんだぜ!
シャーリーに協力して一芝居打ち、【フェイント】で逃げ出すフリをして敵と追いかけっこを演じ、【ダッシュ】で追いつかれないようにしながら敵を消耗させる。
そして疲弊したところでシャーリーに合図し、一か所に集めて捕縛してもらってから【シーブズ・ギャンビット】の早業で【衝撃波】を叩き込む!



 猟兵達の活躍により、呪法擬人化胡狼兵は徐々にその数を減らしてゆく。
「敵の攻勢が緩んできた…?」
「援軍が来たというのですか…?」
 男女一組、二人の神は胡狼兵の一団の攻勢を凌ぎながら、その変化に気付き怪訝な表情をする。だが未だ、眼前の敵を凌ぐには不足。
「ならば、早急に貴様らを殺し別働隊へ合流する」
「恐れよ、畏れよ、我らスナーク。我らは悪なり、力なり」
 胡狼兵達もまた、その変化に気付き。眼前の神々を仕留めんと一歩を踏み出す。
 と、そこへ。
「…ぬぅっ!?」
 胡狼兵達の足元へと降り注ぐ熱線の雨。攻撃を仕掛けんとした足を止めざるを得ぬ。
「待て待てーっ!」
「その狼藉、見過ごすわけにはいかないな!」
 次いで降って来た声に続き、上空から一台の宇宙バイクが高速降下。盛大な土煙と共に大地に着地し、テールスピンを描いて二神の前で停止する。
 そしてバイクから飛び上がった二つの影が着地したかと思えば。
「俺達は!」
「秘密結社!」
「「スナーク!!」」
 影の主たる少年と少女とが、ユニゾンした名乗りと共に決めポーズを取ってみせる。
「…あなた達も…スナーク…?」
 二神の女神の方が、驚きとも呆れともつかぬ顔で問う。
「そう! ボクたちは猟兵による正義の秘密結社スナーク! ボクたちが来たからにはもう安心だよっ!」
 スク水風宇宙服に包まれた発育良好のバストを反らし、シャーリー・ネィド(宇宙海賊シャークトルネード・f02673)は改めて名乗りながら応える。
(いや、自分から名乗る秘密結社ってどうなんだ?)
 一方、大包丁や鉄鍋を背負った紅衣の少年、ウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)は戸惑い気味だ。元から似たような名乗りを上げているシャーリーと違い此方はそういうものが無いのと、自ら秘密結社を名乗ることに違和感を感じるからのようだが。
「まあいいや、ともかくあんた達を助けに来たぜ!」
 それは一旦置いておくとして、ウィーリィもまた己の目的を伝える。
「そ、それは有難いが、彼らは…!」
 男神の方が謝意を述べつつも、心配げに応える。かのオブリビオン達は不死の怪物の力を得ており、凄まじく強いのだと。
「ああ、それも聞いている。だから、あんた達にその対策を教えて欲しいんだ」
 そんな彼へ真正面から向き合いながら、ウィーリィは乞う。教えて貰ったらば確実にかの敵を打ち倒す、そんな決意を感じさせる貌で。
「大丈夫! ボクたちこう見えても強いんだからっ」
 横からシャーリーも請け負う。成程、先程の動きならば或いは。男神は彼らに希望を見たかのように頷き。
「…分かった。…あれは『狂猛巨牛グリーグ』、太古の時代に暴れ回った巨大な牡牛の力を宿している」
 凄まじい破壊の力を持つ一方、長く力を振るい続ければ衰弱してしまうという弱点を持ち、かつて神々はそこを突いて封印へ至らしめたのだという。
「ってコトは、疲れさせれば倒しやすいってコトかな」
「恐らくは…」
 シャーリーの確認に女神が頷く。それを受けたシャーリー、意を得たとばかりに笑みを浮かべ。
「それなら、ボクにいい考えがあるよ!」

「スナークを騙る者共! 生かしてはおかぬ!」
「我らこそスナーク! 恐怖齎すものなり!」
 猟兵達がスナークを名乗るのに反応してか、胡狼兵達は口々に叫びながら一行に迫る、その身に影の装甲を纏い、棍を振り上げて。
「逃げろ! ここは俺達が食い止める!」
 振り下ろされた棍を、背負っていた鉄鍋で受け止めウィーリィが叫ぶ。応えた二神は足早に離れていって。
「逃がすものか…ぬおっ!?」
「言ったよ、ボクたちが食い止めるって!」
 魔術を紡ぎ追撃をかけんとする胡狼兵に、シャーリーが放った熱線が突き刺さる。
「でもやっぱり強い…! あんまり効いてないっぽい!」
「ああ、例のアレで行くぞ!」
 怯ませこそはしたがダメージ自体は大したことはない。呻くシャーリーにウィーリィが呼びかければ。
「うん、行くよ『イェーガー車輪』っ!」
「むっ!?」
 唐突にシャーリーが叫んだその名前。何らかの大技か、と胡狼兵達は身構えるが。
「うおおおおお!!」
 ウィーリィの雄叫びと共に二人が駆けだした先は、胡狼兵達とは逆方向。つまり。
「…大仰な名を使っておいて結局は逃げるか!」
「片腹痛し! やはり貴様らにスナークを名乗る資格なし!」
 口々に嘲りながら、追撃せんと駆け出す胡狼兵達。振り返りそれを確かめる二人。
「よっし、うまくいったよ!」
「後はこのまま…!」
 逃げる猟兵と、追う胡狼兵。いつしか両者は、円を描くようなコースを取って追いかけっこへと至り。

「…く、くそっ、なんて速さだ…」
「我らが、追いつけぬ、だと…!」
 走り続けること暫し。胡狼兵達の足が、徐々に緩慢となってゆく。
「…よし、そろそろ仕掛けるか。行くぞシャーリー!」
「うん! 足止めは任せといてっ」
 それを確かめ、二人は更なる行動を開始。まず仕掛けたのはシャーリーだ。
「くっ、待て貴様ら…うおぉっ!?」
 疲労の隠せぬ表情で尚も二人を追う胡狼兵。だがその脚が何かにつんのめったかと思うと、そのまま為す術なく転倒。
「何っ、ぐわぁっ!?」
 前方の仲間の異変に驚き、足を止める後続の胡狼兵達もまた、突然己の身に巻き付いた感触に驚く。そしてそのまま、他の仲間と強制的に密着させられてゆく。まるで、一本のロープで束ねられるかのように。
「ふふん、隙ありだよ!」
 否、それは比喩でなく事実。シャーリーが放ったワイヤーによって、疲労困憊の胡狼兵達は皆、一纏めに捕縛されてしまったのである。万全の状態ならば引き千切ることも出来ただろうが、それも最早叶わぬ程に、彼らは疲れきっていた。
「いいぞシャーリー! よし、このままトドメだ!」
 相棒の仕事ぶりに快哉を上げ、ウィーリィは背中の大包丁をその手に掴む。応えたシャーリーもまた、愛用のブラスターを構えて。
「いっけぇぇぇぇ!!」
 抜き打ちで繰り出された衝撃波と、高速で乱れ撃たれる熱線とが、胡狼兵達を直撃。纏めて彼らを吹き飛ばしたのである。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

フィラデルフィア・シャイントピア
【アドリブ】OK
ヘーイ!カモンカモーン!
元邪神のヒーロー、ミスエクリプスが助けに来ましたヨー!
【神様から話を聞く・この時知り合いがいたらフランクに会話し合う】

ワタシは【秘密結社スナーク】の勝利の女神サマー
ミスエクリプスデース!秘密結社だけど名乗っちゃいマース

それでハ、神サマから教えていただいたウィークポイントを狙って
エクリプスフォームAWAKENING!デース!

ワタシのスピードで、攻撃がぶつかりそうになったらスピードアップを
繰り返して挑発しマス。
きっとベリーアングリーになった怪物サンは
ワタシを狙いマース!
全員疲れたところでイチモウダジーンで仕留めますヨー!


バーン・マーディ
……(眉間にしわを寄せ

我はヴィラン
悪の神であり
…秘密結社「スニーク」と同盟を結ぶ対神組織「デュランダル」が主なり(ぎりぎりの妥協

神々に打ち勝つのは我らであり貴様らではない
故に此度だけは手を貸してやる(UC発動

即座に情報は全員伝達
全員バイク搭乗
当然我もな
【戦闘知識】
引き付けての消耗する為の陣形と距離の把握

一体に対して三人で対処
【運転】でつかず離れずで翻弄

常に冷徹に観察し消耗を確認すれば

叛逆の時来たれり
殲滅せよ

【二回攻撃】で敵に襲い掛かる

我も【怪力・吸血・生命力吸収】による切り裂きからバイクに乗ったまま引きずり潰し
車輪剣と魔剣で切り裂く

不死の怪物どもよ
今こそ真の眠りを得るが良い



「うわぁぁっ!?」
 降り注ぐ炎の雨に、相対する少年神は狼狽の声を上げる。見目が少年とて彼もまた神獣の番人、その力量は充分なれど。
「なんて力だよ…! いくらあの怪物を取り込んだからって…!」
 その彼をして抗しきれぬ、胡狼兵達の攻勢。大きな牡牛の角を翳し、一歩一歩迫り来るその姿は、己らの力を知らしめんとするかのようで。
「恐怖せよ、我らスナーク、我らに敵なし」
「神とて我らの前には無力なり、覚悟せよ」
 口々に語りながら、その手を前へと差し向け、トドメの魔術攻撃を仕掛けんと――
「お待ちナサーイ!!」
 その時。突如上空から降り響く少女の声。次いで、少年神と胡狼兵の間に何かが高速落下。地響きじみた音と共に、辺りへ土煙が舞い上がる。
「な、なんだぁ!?」
 驚き、土煙の向こうへ目を凝らす少年神。やがて土煙が晴れ、そこに居たのは――
「ヘーイ! 神サマ、助けに来ましたヨー!」
「………」
 均整の取れた美しきボディに輝く金髪を靡かせた少女と、黒鎧を身に纏った渋面の偉丈夫の二人。
「…って、お前フィラかよ!? 久しぶりに来たと思ったら相変わらずだな!」
「ワオ、その声はイーサン! そっちこそ相変わらず可愛い顔してマスネ!」
 そのうちの少女の方――フィラデルフィア・シャイントピア(シャイン&シャドウ・f16459)の姿を認めた少年神――イーサンが驚き混じりの声を上げ。応えたフィラデルフィアとの間に挨拶を交わす。
 かつては世界を飲み込まんとした邪神であったフィラデルフィアだが、人間の文化が気に入ったことで彼らを守る側へと転向。その際にイーサン等の神々と友誼を得たらしい。そのまま、フランクに近況や周囲の出来事などを話し始めた二人だったが。
「…任務の最中だ。思い出話に花を咲かすはその辺にしておけ」
「オー、ごめんなサーイ」
 黒鎧の男――バーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)が不機嫌に告げれば、茶化すような笑みを浮かべて話題を打ち切る。
「任務?」
 首を傾げるイーサンに、フィラデルフィアはにっこりと微笑んでみせつつ。
「イェス! 今のワタシは『秘密結社スナーク』の勝利の女神サマにして猟兵! ミスエクリプスデース!」
 太陽の力宿す右腕と、月の力宿す左腕とを掲げ、名乗ってみせる。ミスエクリプスとは彼女のヒーローとしての名だ。
「…そして我は、秘密結社スナークと同盟を結ぶ対神組織『デュランダル』が主。バーン・マーディ。悪の神、ヴィランなり」
 バーンもまた、眉間に皺を寄せながらも名乗りを上げる。尚、スナークの同盟組織を名乗るのは、彼にとってギリギリの妥協。ヴィランを自認する彼にとって、ヒーローと同じ組織の所属を名乗るには抵抗があったのかもしれない。
「…対神組織?」
 その名を聞いて身構えるイーサンだが、バーンは掌を翳し戦闘の意思が無いことを示してみせる。
「神々に打ち勝つのは、あくまで我らだ。奴らではない。そして、このような形で貴様らを討つことは、我が矜持に反する」
 バーンの語るに続けて、虚空から次々と、全身鎧を纏った騎士達が現れ、聖域の地へと降り立つ。バーンがユーベルコードを以て招聘した、死して尚彼に随うデュランダル騎士団の精鋭達だ。
「故に。此度だけは、手を貸してやる」
 告げ、イーサンに背を向けて胡狼兵達へと対峙する。その在り様に何かを感じたか、イーサンは返そうとした言葉を飲み込んだ。
「新手の神か。だが何人集まろうとも我らの力の前には無力!」
「我らこそスナーク! その意を知り、恐怖せよ!」
 奇しくも、フィラデルフィアもバーンも神。三名の神を前に、胡狼兵は尚己らの使命に燃えて。その勢いのまま、再度火炎の雨を降らせて一同を襲う。
「総員、防御陣形!」
 バーンが指示を飛ばし、応えたデュランダル騎士達が一斉に防御の構えを取る。だが炎の雨の勢いは激しく、何名かの騎士が耐えきれず吹き飛んでいく。
「イーサン、ワタシの後ろに!」
 フィラデルフィアはイーサンを守るかのように、両手のオーラを併せ黄昏色の障壁を形作る。以て炎の雨を食い止めるも、その勢い、ともすれば障壁を突き抜けかねんばかりの勢いだ。
「思ったよりハードデスネ…! イーサン、これ何とかできないデスカ!」
「できるならやってるよ! …けど、フィラならできるかもな」
 無茶振り気味なフィラデルフィアの問いに言い返すイーサンだが、そこでふと何かを思い至る。何かとフィラデルフィアが問えば。
「あいつらが取り込んだ怪物の力、多分グリーグだ。狂猛巨牛グリーグ。あの角、この力、間違いない」
 と予測を語るイーサン。続けて、かの存在を過去に封印へ至らしめた際の立ち回り――つかず離れずの距離を保ちながら逃げ回り、疲弊させたという逸話を語ってみせた。
「なるほど、スタミナ不足があの敵の弱点ってコトデスネ! サンクスデス!」
「…やれるのか?」
 頷き、サムズアップと共に礼を述べるフィラデルフィア。そんな彼女へ心配げに問うイーサンだが。
「ノープロブレムデス! 今のワタシはヒーローデスカラネ!」
 自信満々に告げ、そして。
「Fusionize! SUN AND MOON!」
 両腕を掲げ、太陽と月のエネルギーを重ね合わせ、諸共に高めていけば。融合したオーラは白で縁取られた黒という色合いへと変化する。それは太陽と月が交わることで起こる天体現象、即ち日食の如し。
「エクリプスフォーム! ウェェェェェイク・アーップ!!」
 掛け声と共に、両腕を腰まで一気に振り下ろす。以て、オーラは全身へと行き渡って包み込む。彼女の真価たる、エクリプスフォームへの変化である。
「さあ行きマスヨ、オブリビオン! ゴー!」
 そして地を蹴れば、その身は一瞬で胡狼兵達の眼前へ。振り抜いた拳を、胡狼兵の一人は辛うじて受け止めて。
「ぐぅ…っ!」
「愚かな! 自ら飛び込んでこようとは!」
 だが横合いから別の胡狼兵が棍を振り下ろす。これを飛び退いて躱し、そのまま距離を取って。
 一方のバーンも、先のイーサンの言葉には耳を傾けていた。故に、再び動きだす。
「――聞いての通りだ。これより、かの敵共へ消耗戦術を敢行する」
 音もなく滑り込むは漆黒のトライク型バイクが数十台。それぞれへ騎士達が乗り込むに続き、バーンもまた己の乗機へ乗り込んで。
「一定距離を保ち、可能な限り動き回らせ消耗を誘うべし。決して無理はするな」
 そしてスロットルレバーを回せば、一気に飛び出してゆくバーンのバイク。胡狼兵の一団のもとへと。
「――行くぞ!!」

「ヘイヘーイ! 皆さんのスピードはその程度デスカー!」
 降り注ぐ呪詛の雨、飛来する影の鎖。これらを巧みに躱しながら、フィラデルフィアは胡狼兵を挑発してみせる。
「おのれ、言わせておけば…!」
 怒りを隠さず歯噛みしながら、胡狼兵は呪詛と鎖に加えて衝撃波を乱れ撃つ。だがそこに突っ込んでくる漆黒の影。
「我らを捨ておいて勝てると思わぬことだ!」
 バーン率いるデュランダル騎士団が刃を振るいつつ駆け抜けてゆく。
「おのれ! 貴様らこそ…そのまま逃げラレると思ウナァァァァ!!」
 その一撃で負傷した胡狼兵達が、激した叫びを上げると共に、彼らの肉体は瞬く間に隆起、膨張し。巨大な角を振り翳す牡牛じみた姿となって、地響きと共にデュランダル騎士団を追走し始めた。
「各員散開! 一撃離脱にて牽制せよ! 正面からは決して近づくな!」
 バーンの命に応え、デュランダル騎士達は三騎ずつのグループに散開。側面や背面から魔獣化胡狼兵達へ牽制攻撃を加えては離れる、を繰り返してゆく。
「そしてワタシもいますカラネー!」
 其方に気を取られていた胡狼兵を、フィラデルフィアの回し蹴りが襲う。咄嗟に躱した胡狼兵、棍を振り回し反撃せんとするが。
「フフン、そんな速度じゃ当たりマセーン!」
 巧みな身のこなしで躱し続けるフィラデルフィア。そして彼女は感じる。振るわれる棍の速度が、徐々に落ちてゆくのを。見れば、周囲から迫る胡狼兵達も動きが悪い。
「…そろそろ仕掛けどころデスネ!」
 それを認めれば、即座に上昇。上空にて背に大きな翼を広げる。太陽の光宿す翼と、月の闇宿す翼。それらの力を励起し、オーラの力を更に高めて。
「イチモーダジーン! デース!!」
 叫び、両腕を突き出せば、高まったオーラの奔流が、地上の胡狼兵達を飲み込み。纏めて吹き飛ばしていった。
 一方、バーン達もまた反撃に転じていた。疾走の止まった魔獣化胡狼兵達を、デュランダル騎士達が囲み、剣や槍を振るって傷を重ねてゆく。
「不死の怪物共よ! 今こそ、真の眠りを得るが良い!」
 そしてバーンもまた、未だ若干の余力を残した魔獣化胡狼兵へと接近。踏み潰さんとする脚を、巧みなハンドリングで躱せば、その頭を目掛け跳躍。
 片手に禍々しき覇気と神気を放つ魔剣、今一方の手にかつてスピード怪人から入手したという車輪剣を構え。己の膂力と落下の重力を乗せ、一気に振り下ろす。
 刃の鋭さと重みが、分厚さを感じさせる魔獣の額へ深々と食い込んで。バーンの着地に、絶命した魔獣の斃れる轟音が重なった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アルトリウス・セレスタイト
戻るのなら幾度でも討つとしようか

絢爛を起動
起点は目の前の空気
因果と破壊の原理を以て戦域の空間を支配
因果の原理によりオブリビオンのみを対象とし、
破壊の原理で戦域全てのオブリビオンという要素を討つ

万象一切を砕く破壊の原理は、有機無機現象概念全て等しく崩壊させ終わりに導く
強いなら強いで結構。討つに足るまで「破壊」する

高速詠唱を幾重にも重ね『刻真』『再帰』で無限に加速・循環
会敵次第起動、無限に重ねた破壊の原理を一時も置かず行使し続け殲滅を図る

そちらの都合に付き合う気はない故、早々に退場するが良い

自身への攻撃は『絶理』『無現』で否定し影響を回避
必要魔力は『超克』で“世界の外”から汲み上げる

※アドリブ歓迎



「馬鹿な、同胞達が…!」
「スナークたる我らの力以て、尚及ばぬとでも…!?」
 猟兵達の活躍により、次々と撃破されてゆく胡狼兵達。最早残るはただ一群。
「おのれ、ここは一度退いて――」
 スナークの恐怖は、同胞が充分に知らしめたと信じ。手にした不死の怪物の力があれば再起は可能と判じ。撤退を図らんとした胡狼兵達であったが。
「―――」
 その視界に、蒼き燐光が差し込んだ。そう認識する間もあったか、否か。

 彼らの意識は――一瞬にして、消し飛んだ。



 時間は少し巻き戻る。
「戻るのなら。幾度でも討つとしようか」
 蒼き燐光と、黒衣を纏った白と銀の男。アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)は呟き、蒼の瞳で戦場を見渡す。
 新たなオブリビオン・フォーミュラへと至り、払われた過去の影を再び落とさんとする猟書家達。そうなる前に、或いはそうなったとしても。ただ、討ち果たすのみである。
「――粗方、片付きつつあるか」
 別方面の猟兵達が、次々と敵を仕留めてゆくのが見える。彼らが交戦しているオブリビオン達は、遠からず全滅するだろう。しかし。
「あれは――」
 交戦領域からやや離れた位置に、撤退を図ろうとする胡狼兵の一団が見えた。グリモア猟兵からの情報によれば、かの者達もまた、不死の怪物の力の手に入れていると聞く。なれば、確実に仕留めてその力を返すが筋であろう。故に。
「煌めけ」
 アルトリウスは宣言する。傍目には一切の変化が見えぬが、既に彼を中心とした半径90m内の空間は、完全に彼の支配領域と化していた。彼のユーベルコード、原理なる世界の原初より更に以前の法則を操る力。
 用いる原理は因果と破壊。天冥、運命を紡ぐ光はオブリビオンのみへと見定めた未来の標を創り出す。討滅、死を導く光は標を辿り、万象一切の終わり告げるその力をオブリビオンへと向ける。
 その行程を、循環の原理を以て幾度も繰り返し、時の原理を以て加速してゆく。
 主観時間ではどれ程を要したか、其はアルトリウスのみぞ知る。なれど客観的にかけられた時間の程は、刹那にさえ満たぬ程に僅か。
 改めて、先の胡狼兵達に視線を戻す。撤退を決めた彼らの視線が、アルトリウスを捉える。
「其方の都合に付き合う気はない故。早々に退場するが良い」
 その言葉が紡がれだすより早く。無限に重ねた破壊の原理が起動。万象一切を砕く破壊の原理は、有機無機現象概念、全て等しく崩壊させ終わりに導く。如何に胡狼兵達が原初の怪物の力にて強化されていようとも、耐えられるものではない。
 一切の痕跡さえもその場に残すことなく、胡狼兵達は消し飛び。後に残るは、宿っていた不死の怪物の力の残滓ばかり。原理の力を以てすら消滅と至らぬ、始原の力。
「――これは、後で任せるべきか」
 後で神々に封じ直してもらうが筋か。などと考えつつ、アルトリウスは視線を他の戦域へ向ける。丁度、あちらも決着がついたところだ。

 斯くして、狂猛巨牛グリーグの力帯びし胡狼兵達は、全滅へと至らしめられたのである。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『『アズマ』』

POW   :    決別拳
【拳】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    瞬断脚
【神速の蹴り】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    捨身投
【自身に近接攻撃】を向けた対象に、【投げ技によるカウンター】でダメージを与える。命中率が高い。

イラスト:箱ノ山かすむ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ナイアルテ・ブーゾヴァです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「…奴らを全滅させたか…」
 呪法擬人化胡狼兵の軍団を全滅させた猟兵達の耳に、不意に飛び込んできた声。静かながらに力強く、だが何処か虚ろとも聞こえる声音。
 振り向いたそこに立っていたのは、空手家を思わせる装いの男。その眼は黒布によって目隠しが施されているが、挙動は視覚を封じているという事実を全く感じさせぬ。
 この男が『アズマ』、ヒーローズアースを狙う猟書家の一人か。
「…お前達も、殺す…」
 配下であった胡狼兵の全滅に思う処を口にするでもなく、猟兵達に何かを語るでもなく。『アズマ』は淡々と構えを取る。まるで、その全てが些事と断ずるかのように。
 そこには闘志も、殺気も無く。さりとて、戦を作業と割り切る風でも無く。まるで、己の前の命あるもの全てを殺し、形あるもの全てを砕く――破壊と殺戮、己の拳の在り方と判じたその目的の為に磨き上げた末、人の形を残しながらにして、その在り方を示す概念と成り果てたかのような。
 いずれにせよ、この男は討ち果たすべき敵。神の領域に安寧を取り戻す為に。猟兵達は戦闘態勢を取る――
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
何とも恐ろしい力を感じますねぇ。

『FBS』を四肢に嵌め飛行、まずは全速力で急上昇し一気に距離を開きますねぇ。
そのまま『距離を開きつつ『FRS』『FSS』による[砲撃]』の流れに移りますが、彼程の方となりますと[砲撃]相手でも反応し、拳で破壊しつつ接近して来るでしょう。
それでも『移動に専念出来る状態』より遅くなりますから、神々に『低リスクの援護』もお願いし、それらを利用して【処檻】発動までの時間を稼ぎますぅ。
【処檻】が発動すれば、広域を覆う『波動』から『重力の檻』、更に『対象自身の強さ』に比例する『体内の棘』と『拳の有効性が薄い攻撃』が揃う以上、ダメージは通せるでしょう。


才堂・紅葉
【改変連携歓迎】

「あなた程の達人を前に、神武不殺を語るには未熟だけどね」
六尺棒を取り出し、手足のように操る

小細工の通じる相手ではない
杖術のリーチと変化を活かして立ち向かおう
強烈な圧力は【気合】で堪え。神速の蹴りは【見切り、野生の勘】で凌ぐ。見てからではとても対応できない

狙い目は棒が切断された瞬間
喪失ではなく勝機と捉え、相手の巌のような防御のど真ん中。正中線を真っ直ぐに蹴りぬきに行く

「絶ッ!!」

相手の受けを誘い、敢えて堅い部分を全力でぶち抜く事で不意を打つ力業だ
貫通する大衝撃で奴の内臓と脳を揺らし、その体勢を崩したい
【グラップル、怪力、早業、衝撃波、貫通攻撃、気絶攻撃、重量攻撃、体勢を崩す】



 身構え、動じない『アズマ』。型そのものは一般人の空手家と然程変わらぬ佇まいだが、そこから生ずる圧力は、常人の比ではない。
「何とも恐ろしい力を感じますねぇ…」
 歓喜も、憤怒も、狂気も感じられない。そこに在るのは、純粋な『力』。オブリビオン・フォーミュラ達をはじめ、数多の強大なるオブリビオンと交戦してきた夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)も、身震いを禁じ得ない。
「一体、どれだけの鍛錬を積めばこんな領域まで届くのかしらね…」
 自らも武術の心得を有する才堂・紅葉(お嬢・f08859)は、より具体的な驚愕と戦慄を覚える。同時に、武を識る者としての敬意も。この男、武人としては己よりも遥か高みに在る…と。
「けど、猟兵として負けるわけにはいかないわよね」
 これ程の達人を前に『神武不殺』を語るには未熟なれども。着衣の裾より引き出した三節棍を結合、六尺棒と成し。己の身を這わすかのように振るい、旋回させ、構える。流れるかの如きその動き、棍を己の身体の一部と成したかの如し。
「ええ、何とかやってみるとしましょう」
 紅葉の言葉にるこるも頷き、己の武装たるフローティング・システムを展開。四肢には旋回にて揚力を齎す戦輪を嵌めて、戦闘態勢へと移行。
「…殺す!」
 その直後。二人が戦闘態勢を取るのを待っていたかのように『アズマ』が仕掛ける。荒れた大地を素足で踏みしめ、獲物を狙い駆ける肉食獣が如く紅葉を目掛けて疾走する。
「速い…!」
 尋常の速さなどと思っていなかったが、その速度は尚も紅葉の想像を超えていた。その速度が圧力を更に増幅せしめて迫るが、気合を以て心を奮い立たせ。六尺棒を突き出し『アズマ』の胸元を打たんとする。
「噴ッ!」
 身を左回りと捻って突きを回避しながら、その動きの流れにて右拳を突き出す『アズマ』。紅葉は右へと跳躍しつつ、突き出した棒にその勢いを乗せて『アズマ』の背を打擲。命中はしても有効打たりえぬのは百も承知。距離を取り仕切り直すが本意だ。
「紅葉さん、お気をつけをぉ!」
 直後、頭上からるこるの声。今の攻防の合間に飛翔、上空から『アズマ』を狙っていたのだ。応えた紅葉が飛び退くのと、るこるの周囲に構えられた浮遊砲台群が熱線と炸裂弾を撃ち放つのは、ほぼ同時であった。
「…!」
 身を屈め身構える『アズマ』。その身を目掛けて熱線が走り、降り注いだ砲弾が次々と爆裂し、一帯が土煙に覆われる。
「これならどう…!」
 六尺棒を手に油断なく構える紅葉。この程度の攻撃で仕留められる敵とは思えぬ、更なる反撃に備えてのことであったが――
「…えっ!?」
 土煙の中から、真っ直ぐ上空へと跳び上がる影。紛れもなく『アズマ』だ。そう、彼が狙っていたのは――
「るこるっ!?」
「はうっ!?」
 見上げる紅葉、驚愕するるこる。上昇する『アズマ』は打ち上げられるロケットの如く、迷いなき超高速でるこるを目指し跳んできたのだ。阻まんとした浮遊砲台を蹴り壊し、足場とすらして。更なる跳躍の末、一気にるこるの元へと到達し、そして。
「破ァッ!!」
「きゃうぅっ!!」
 上昇の勢い乗った拳打。咄嗟に盾つき浮遊砲台で防御を試みるるこるであったが、剛き拳はその護りを貫き、そしてるこる自身をも捉えた。吹き飛び、上空から一気に地へ叩き落とされるるこる。
 空中の標的へ一撃を加えた『アズマ』、そのまま自由落下を開始する。その着地点を目掛け、紅葉は駆ける。『アズマ』は空を飛べるわけではない。なれば地で身体を支えられぬ空中にいる時こそ攻撃の好機。
「その隙、打ち抜くッ!」
 着地のまさにその瞬間を狙い澄ました棍の突きで胴部を打ちにゆく。命中するも、その瞬間に『アズマ』は腹へ力を籠め腹筋を硬化。紅葉の手へ鉄板を打ったかの如き感覚を伝えて。
「逝ェイッ!!」
 そして着地直後、『アズマ』の口から一際激しい気合の声が放たれる。振るわれるは無骨なる片脚、以て繰り出す蹴激は、居合じみた超速にて紅葉へ迫る。
「くっ…!」
 その時紅葉は既に動いていた。脚が動いてからでは回避など間に合わぬ、ならば先読みを以て回避を試みるより無しと。第六感の限りを尽くしたその予測回避は奏功した――が。
 それでも斬脚は紅葉を捉えんとする。咄嗟に六尺棒を構え受け止めんとするが――鋭き蹴りは、その鋭さを以て六尺棒を真っ二つに斬り断ってしまった。
「…大した鋭さね…!」
 アルダワ特殊鋼製の六尺棒を、まるで木の枝のように両断したその蹴り。呆れるやら感嘆するやら。紅葉の口から思わず漏れる言葉。だが、これ程の蹴りを放った直後だ。これは逆に攻撃の好機でもある。
 棒を捨て、紅葉もまた蹴りを放つ。一旦飛び退いて仕切り直さんとした『アズマ』であるが、その背後に気配を感じ、踏み止まる。直後、そこへ降り注ぐ熱線と砲弾の雨。
「この程度の距離なら、フローティングシステムは動かせますからぁ…!」
 地に開いた穴から飛び出しつつ、るこるが声を上げる。その負傷は軽くはない様子だが、まだ戦える。紅葉の口元が僅かに笑む。蹴り足が加速。『アズマ』、最早回避は間に合わぬ。両腕を揃えて防御を構える。その様、いかなる攻撃にも揺るがぬ巌が如し。
 なれど紅葉の蹴りは決然と繰り出され、迷いなく正中線を狙い放たれる。真っ直ぐ放たれた蹴撃は、無論両腕によって受け止められるが――
「…ぐっ…!?」
 呻く『アズマ』。両腕で紅葉から隔てていたはずの身体と頭とが、風を受けたかの如く激しく震える。蹴撃の齎す大衝撃は両腕で止まらず、そのまま腕を抜けて頭へ、胴へと貫通。内蔵と脳までをも揺さぶるその一撃に、巌が一瞬、揺らぐ。
「今ですぅ…!」
 その様を見たるこるが叫ぶ。戦いを見守っていた神々が、それを合図に一斉に攻撃開始。炎や電撃、風刃や氷礫といった攻撃が次々と『アズマ』へと降り注ぎ。
「大いなる豊饒の女神の名に於いて、仇なす者達に厳格なる裁きを――!」
 そしてるこるもユーベルコードを発動。放たれた乳白色の波動は過たず『アズマ』を捉え、彼の身を超重力の檻の中へ捉える。そして、それだけではない。
「…ぐ…おお…っ…!?」
『アズマ』の声音に、僅かな苦悶が滲む。重力の檻に生じた棘刃が、その身を斬り裂く。全身から血が滴る。
 このユーベルコードの威力は、対象が話した『オブリビオンの数』と『対象自身の強さ』によって決まる。寡黙ながら先の胡狼兵達とは言葉を交わしていた彼、何より極めて強大なオブリビオンである彼。その身に傷を刻むには、充分な威力が成り立っていた。
「そしてもう一撃…喰らいなさい!」
 動けぬ『アズマ』に紅葉の追撃。片手に掌底を構えて、大きく踏み込み。
「…はぁぁぁぁっ!!」
 気合と共に突き出す。一撃は『アズマ』の胸へと過たず突き刺さり、先程より更に強烈な衝撃がその全身を駆け巡ったのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シャーリー・ネィド
【かまぼこ】
シンプルに強いね、あの敵
それだけにスキがない
でも、だったら作ればいいだけの話!
ウィーリィくんとのコンビネーションであの強敵に打ち勝つよ!

【バトル・インテリジェンス】で敵の動きを【見切り】ながらビーム銃の【制圧射撃】+【援護射撃】で少しでも足を止める事でウィーリィくんが策を練れるようにし、敵がウィーリィくんに攻撃している間に【罠使い】+【ロープワーク】でワイヤートラップを周囲に仕掛ける
そして動きが止まった瞬間、拘束を振りほどくまでの僅かな隙にウィーリィくんと同時に【零距離射撃】で【クイックドロウ】の連射をお見舞いする


ウィーリィ・チゥシャン
【かまぼこ】
小細工抜きで強いな、あいつ。
けど、俺の傍にはシャーリーがいる。
彼女との絆を信じ、敵に立ち向かう。

敵のUCを【見切り】ながらその拳でわざと周囲の地形を破壊させ、同時にこっちも【料理の鉄刃】の攻撃を外したフリをして【地形破壊】で周りの地面を破壊し、周囲の足場を悪くする。
そして【フェイント】でそこに足を取られたフリをして敵の攻撃を誘いながら【地形耐性】と【足場習熟】で足場をキープ、鉄鍋の【盾受け】で防御するフリをして【カウンター】の【シールドバッシュ】で敵のバランスを崩し、シャーリーの仕掛けた罠へと突き飛ばして絡め取り、その隙に彼女の攻撃と同時に【料理の鉄刃】を【二回攻撃】で食らわせる。



 体内を荒れ狂った衝撃より立ち直った『アズマ』、接近してきた次なる猟兵の気配を察し駆け出す。受けたダメージは決して軽くはない、でありながらその脚運びには一分の乱れも無く。迷わず違わず、真っ直ぐに猟兵達の在る方向へと疾走する。
「目隠ししてるってのに何だこの速さ!?」
 繰り出される正拳突きを、ウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)はすんでの処で跳び退き躱す。突きに伴う踏み込みが大地に食い込み、地表を抉る。
「隙ありっ!」
 そこへ降り注ぐは無数の熱線。シャーリー・ネィド(宇宙海賊シャークトルネード・f02673)がブラスターより立て続けに撃ち出す光条の嵐を、しかし『アズマ』は事もなげにすり抜けて疾走、シャーリーへ肉薄せんとする。
「わわっ!?」
「させるかよっ!」
 弾幕を張ってもその合間をすり抜け迫る『アズマ』。その姿に焦りを隠せぬシャーリーを助けるべく、ウィーリィは大包丁を振り下ろす。
「!」
 察し、半歩下がる『アズマ』の目前の地面へ大包丁が突き刺さり、斬撃の勢いが地面に大きな裂け目を作る。その隙を狙い『アズマ』は前へと脚を蹴り上げる。
「破ァッ!」
「ぐ…っ!」
 咄嗟に引いた大包丁で受け、逆らうことなく吹き飛ばされることでダメージを抑えるウィーリィ。なれど伝わる衝撃は、大木で殴られるに等しく。全身の骨が軋むのを感じる。
「ウィーリィくん!?」
 己の傍まで飛び来て着地するウィーリィ、なれどその身は一時崩れかけ。不安げな驚き声を上げるシャーリー。
「大丈夫だ…が、小細工抜きで強いな、あいつ」
 その心配を払拭せんと応えながら、態勢を立て直すウィーリィ。構えた時点でも分かったことだが、実際に打ち合って尚更に実感される、その力の程。
「うん、基本的な技量が凄いって感じ…っ!」
 シャーリーが応えたところで、再度『アズマ』が仕掛けてきた。二人を纏めて薙ぎ払わんとする小跳躍からの回し蹴りを、其々に跳び退き躱す。反撃にシャーリーが熱線銃を放ち『アズマ』の足元を穿つ。流石の彼も、一時足を止める。
「隙が無い…けど、だったら作ればいいだけの話!」
 生じた一瞬の間に、ウィーリィと視線を交わす。ウィーリィもまた頷き。
「おう! 俺達なら必ず勝てる!」
 信頼するパートナーと、彼女との間の絆。それさえあれば、この強敵にも対抗し得ると。
「…どちらも、殺す…」
 その意志を確認する間に『アズマ』が再度シャーリーに迫る。振り上げられた脚は、その軌跡に真空の刃を生じ斬撃を伴う程の勢い。
「逝ッ!」
「っ!」
 不意に、シャーリーの身が後ろへ引っ張られるように動く。以て蹴撃の刃を躱すも、スク水風宇宙服の胸元、豊かに盛り上がったそこに深い裂け目が入る。幸いその下の柔肉までは届いていなかったようだが。
「AIでもギリギリか…!」
 戦慄の表情を浮かべるシャーリーの頭上には、一機のドローンが接続されていた。『アズマ』の接近の間にユーベルコードで呼び出した、AI搭載型戦術ドローンだ。これに肉体の動作を委ねることで回避行動を最適化し、以てかの蹴撃を回避した形であるが、それでさえ紙一重。
「…理解した…」
 不意に『アズマ』が呟く。シャーリーの背に冷たいものが走る。理解したとは即ち、AIによる回避動作か。となれば、次は…!
「そうはいかないんだから…っ!!」
 シャーリーがその意思を示すが先か、AIが攻撃を判断するが先か。跳び退きながらブラスターを乱射する。先の弾幕を掻い潜り迫った動きを学習し、それを抑えるかの如き連射。今度は掻い潜れず、追撃を断念せざるを得ない『アズマ』。
「お前の相手は! 俺だ!!」
 そこへ駆け迫るウィーリィ。大包丁を担ぐように構えた彼の機先を制するかの如く『アズマ』は拳を振り下ろす。
「噴ッ!」
「何のっ!」
 地面を抉り窪ます程の強烈な一撃を、ウィーリィは跳躍し回避。そのまま空中で身を捻り、構えた大包丁を振り下ろす。
「ッ!」
 側面へと転がり斬撃機動から外れんとする『アズマ』。振り下ろされた大包丁は地を抉り、深い溝をその場へ掘る。
「破ッ!」
 着地したウィーリィを即座に襲う『アズマ』の中段回し蹴り。今度はウィーリィが地を転がり躱し、起き上がって大包丁を構える。

 そうした攻防が続くこと暫し。『アズマ』の蹴り上げを跳び退き躱したウィーリィの態勢が、不意に崩れる。
「ウィーリィくん!?」
 悲痛なシャーリーの声が響く。彼の片足の踵が、己の斬撃で刻まれた地の溝に嵌り込み、足元を乱したのだ。
 無論、そこを見逃す『アズマ』ではない。蹴り上げた足をそのまま振り下ろし、爆発的な踏み込みの力と変え一気にウィーリィとの距離を詰める。
「噴ッッ!!」
 その勢いのままに繰り出すは渾身の正拳突き。直撃すれば人体を爆散せしめん程の、破壊的なユーベルコードを籠めた一撃。
「ちぃ…っ!」
 咄嗟に鉄鍋を引き出し、防御を試みるウィーリィ。だがまともに受けるだけでは、この拳は鉄鍋ごとウィーリィの肉体を破壊するだろう――無論、それはウィーリィ自身理解していた。故に。
「…!」
 丸みを帯びた鉄鍋の上を、滅殺の拳は滑り、上方へと逸らされる。崩れた筈のウィーリィの足は、寧ろその溝を活かす形で支えられていた。拳の衝撃を最大限逃がせるよう、確りと。
 謀りか。『アズマ』がそう悟るのと、鉄鍋が彼の胸板を打つのは同時であった。ウィーリィの全体重を乗せたシールドバッシュ。突き上げ気味の衝撃を、半ば浮いた足では殺せず、拳士の身は為す術なく吹き飛ばされる。
「来たね…! もう逃がさないんだからっ!」
 空中で姿勢を立て直すも、再び足が地を踏むより前に飛翔は止まる。全身に食い込む細い糸じみたものは、シャーリーが交戦の合間に仕掛けていたワイヤートラップだ。それが『アズマ』の身を受け止めると同時に絡みつき、身動きを封じる。
「…!」
 なれど『アズマ』も黙ってはおらぬ。総身に力を巡らせ、鍛え抜かれた筋肉を隆起させる。その力の前には、ワイヤーさえ数秒と持たず引き千切られる。
 だが、それだけの時間があれば二人には充分だ。
「そのとんでもない力、凄いとは思うけど!」
「世界に、そこに住む人達に害なすなら、打ち倒すまでだ!」
 後方からシャーリー、『アズマ』の背中へ肉薄しブラスターを零距離連射。
 前方からウィーリィ、大包丁を超高速にて振るい鋭き斬撃を繰り出す。
 背を数多の熱に焼かれ、胸を斬り裂かれ。確かな傷を、かの拳士へと刻み込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

空桐・清導
SPDで挑む
協力も大歓迎だ

「奴に踏み込む隙を一緒に作ってくれ。
その隙に必殺技を叩き込む。」
神様達にそう言って、協力して戦いに挑む。
それと緑髪の少女神に背中を旋風で押してほしいと頼む。
奴の神速に勝るにはそれしかねえ!

隙が出来た瞬間、[勇気]を持って奴に[ダッシュ]する。
[力を溜め]、右腕に光焔を収束。
蹴りの予備動作が見えた瞬間、合図を出す。
背に受けた風に乗り、蹴りを出せない零距離に踏み込む。
神風すら拳に取り込み、UCを[限界突破]させる!
「超必殺!ゴッドウィンド・リベンジャー!!」
神速を超えた超神速の拳をアズマに叩き込む!
「殺すだけの拳に、負けるかあああ!!!」
最後にさらに踏み込み、殴り抜ける!


佐伯・晶
わかっていたいけど、この雰囲気只者じゃないね
秘密結社スナークの一員として
皆と協力し打倒を目指すよ

長期戦と言ってられないだろうから
全力で邪神の権能を行使するよ

神気でアズマの動きを阻害しつつ
ガトリングガンで攻撃したり
空気から創った使い魔の窒息攻撃で息を乱したりして
大技を狙う人が居たら支援しよう

拳の攻撃は相手の動きを遅延させたり
神気で防いだりしよう
石になった部分なら血も出ないし
後で修復できるから最悪はそこを犠牲にするよ

格闘戦の距離になったら
石になった拳を叩きこむ事も考えよう
技では勝てないけど神気で動きを停めて
増強した動きなら一撃喰らわせられるかな

石化が進んだら封印の縛めで
石像になって後は皆に任せるよ


音取・ゼラ
貴様がアズマであるか
雲神ジャルスの仇として、この神王ゼウスの転生たる余が汝を討つのである!
妹神よ、そして此処に集いし神々よ。共に戦うのである!

雷雲に乗って空飛びながらアズマを見下ろすのである!
格闘家ならば上空の相手は不得意であろう。貴様程の実力者なら対空戦も可能だろうが陸上で戦うよりはマシであろう
貴様が余を捉えるより余が神罰を下す方がきっと早いのである
上空から、余の【神王の雷霆(ケラウノス)】をお見舞いしてやるのである!
ふはは!これこそが神王ゼウスの力の象徴!世界を溶解させ全宇宙を焼き尽くす、余の最強たる雷霆ケラウノスである!
さぁ!神々よ、追撃の時間である!余の雷霆と共にアズマを討つのである!



「…未だ、居るな…」
 傷を負い、纏う胴着を血に染めながらも『アズマ』の表情に変わりは無い。目が黒布に覆われているが故に見通せぬという事実を加味しても、その負傷がかの存在の力を削いでいる、とは、少なくとも見目には窺えぬ。
 そして、視界を封じて尚。その知覚は鋭敏に、己の周囲に在る存在を認識していた。その数、距離、方向。そしてその存在の性質までを。
「…全て…殺す…」
 虚ろな声音とは裏腹に、駆け出す動作は暴風が如し。駆ける先には、これまで猟兵達と共に戦ってきた神々が身構えていた。
「来た…! みんな、気を付けて…!」
「応…! ジャルスが全く敵わなかった相手、我らで抗し得るか…」
 風の少女神の呼びかけに、緊張の面持ちで応える神々。強き雲神を瞬殺してみせたかの敵の前に、神々の心中にさえ怯懦が首を擡げつつあったが。
「いいえ、我々『だけ』ではありません…」
 男女神の片割れ、女神が確信を以て告げる。そして、それを証立てるが如く。
「!」
 疾走する『アズマ』の前へ幾筋もの雷が降り注ぎ、その脚を止める。次いで彼の元へ飛来するは、燃える真紅の流星!
「ブレェェェイズ・キィィィィィック!!」
「…噴ッ!!」
 流星――真紅の鎧纏った空桐・清導(ブレイザイン・f28542)の跳び蹴りと、『アズマ』の繰り出す迎撃の拳とが激突し、その衝撃が一陣の風となって轟音と共に一帯を駆け抜ける。
 跳び離れた清導は空中で一回転の後、神々の前へと着地する。その傍らへ歩み出る金髪黒衣の女性――佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)。
「分かっていたけど、やっぱり只者じゃないね」
 凄まじい力の激突を経ても尚平然とした様子の『アズマ』、消耗も未だ目立つ程ではない。晶は表情を一層引き締める。
「うむ、だがかの者は打ち倒すべき猟書家、何より雲神ジャルスの仇」
 頭上から声。見上げれば雷雲。その上に立つは先の雷撃の主、音取・ゼラ(自称ゼウスの生まれ変わり・f24198)。少女の姿に戻った彼女の決然とした言葉に、少女神の方が小さく震える。
「…ああ、お兄さんの仇討ちだ。大丈夫、僕達も力を貸すから」
 その気配を察したか、振り返り告げる晶。はっとした表情を浮かべた少女神は、しかしすぐに表情を引き締め、確と頷く。
「うむ、余ら秘密結社スナークと、貴様ら此の地の神々。力合わせ、かの危難齎す拳士を打ち倒そうぞ!」
 続く神々も気勢を上げる。抗するかの如く、『アズマ』が再度駆け出す。今度は足止めは無い。激突が近づく。
「――そうだ。アンタ、名前を聞いてもいいか」
 身構える一同、そんな中、ふと清導が少女神に問う。
「え? …エイナ、風神エイナ、だよ」
「エイナか。ならエイナ、一つ頼みたいことがある…良いか?」

「噴ッ!!」
 振り下ろされた拳が、地を深く陥没せしめる。猟兵達と神々は四方へ跳躍し、衝撃を回避する。
「全開で行くよ…!」
 晶の身から、神々しくも禍々しくも見えるオーラが立ち上る。それは晶と融合した邪神の権能の発露。同時に片腕で構えたガトリングガンを発射、『アズマ』目掛けて弾丸が群れなして飛ぶ。
「…ぬ…」
 回避行動を取らんとする『アズマ』、違和感に気付く。挙動が重い。そして呼吸がうまくゆかぬ。跳躍するが、ガトリングガンの弾丸を躱し切れぬ。腰から腿にかけてへ着弾、弾痕が刻まれる。
「おおおおお!」
 そこへ踏み込むは神の一人。巨鎚を振りかぶり、『アズマ』を打ち据えんとする。
「…破ッ!」
 だが『アズマ』は十全に動けぬとはいえ反応しきってみせる。拳を以て、振り下ろされた巨鎚を正面から打ち、弾き返したのだ。
 態勢を崩した神に追撃せんと踏み込む『アズマ』、だがそこへ降り落ちた雷撃。ゼラだ。
「『アズマ』とやら! この神王ゼウスの転生たる余がおる限り、神の一人とてその手にはかけさせぬぞ!」
 雷雲を以て『アズマ』の頭上を飛びながら、傲岸なまでに堂々と宣言してみせる。その様、見目こそ幼いながら、神々の王の転生を名乗るに相応しき威容であった。
「…殺す…」
 それ故か。『アズマ』は眼前の神の肩へ飛び乗ったかと思えば、それを踏み台として一気に跳躍。雷雲に乗るゼラの眼前まで到達する。
「噴ッ!」
「ぬおぉっ!?」
 だがゼラは咄嗟に後退、突き出された拳は空を切る。それはゼラが慢心しきることなく、かの拳士が己へ直接攻撃を仕掛け得る可能性を想定したが故か。或いは晶の行使する邪神の権能が、彼の挙動を遅延させているが故か。
「墜ちろぉっ!!」
 そこへ更なる影が跳躍する。エイナだ。己の有する風の権能を行使、猛烈な下降気流を生成、以て『アズマ』を地へ叩き付けんとする。
「…ッ!」
 姿勢制御の目算を狂わされ、さしもの『アズマ』もバランスを崩し膝をつく。そしてそここそ、猟兵達と神々とが狙っていた好機。
「今じゃ神々よ! 余の雷霆に続くがよい!!」
 ゼラが高々と呼びかけるに続き、その身から先程に増して強く眩い雷光が迸り『アズマ』目掛けて降り落とされる。それこそはケラウノス――雷神にして神王たるゼウスの力の象徴。十全の力を以て行使すれば世界を溶解させ全宇宙をも焼き尽くすという最強の雷霆。その域には遠く及ばぬとも、此度の敵たる猟書家を揺るがすには充分であった。
 続いて降り注ぐ、多様なる神の力で形作られた攻撃。其々の神の権能を以て放たれる攻撃の数々が『アズマ』を打ち据え傷を重ねる。
「今だ…!」
 そしてそここそは、清導が狙っていた好機。確実に仕留める為に狙い澄ました、絶対の好機。故に外すわけにはゆかぬ。決めてみせる。覚悟を決める。
 勇気を胸に、疾走を開始。右腕が光を放ち、輝く焔をそこに纏う。
 気付いた『アズマ』、尚も続く神々の攻勢を振り切り離れんとするが、そこへ振り下ろされた一撃への防御を余儀なくされる。それは石と化した人の腕。根元にあるのは――晶の顔だ。
「この拳なら、少しくらいは聞くだろう…?」
 その腕は、既に二の腕より先が全て石化。逆の腕も同じく、故にガトリングガンの引鉄を退けぬ。両脚もまた、石化が膝下まで進行している。
 それは邪神の権能の代償。封印の呪詛までをも引き継いで融合してしまったが故、邪神の権能の行使等に応じて肉体が石化する体質となってしまっているのだ。だが今は、それ故に。
「完全に石になるまで…付き合ってもらうよ!」
「噴ッ!」
 晶の挑戦を拒否するが如く『アズマ』の正拳が繰り出される。権能による時間減速を加味しても尚、容易には躱し切れぬ一撃。
「何の…!この程度…!」
 晶は右腕を掲げ受け止める。硬い石と化したそこは、しかし瞬く間に罅が走り、そしてそのまま砕け散る。
「お返しだよ…!」
 石化箇所には既に痛みを感じないのか。晶の意識は攻撃に集束。繰り出した左腕のフックが、かの拳士の回避より尚先んじ。頬へとめり込み、その身を更に崩してみせた。
(…ここまでか。皆、後は任せたよ…!)
 その攻防で更に邪神の権能を用いたせいか。晶の石化は更に速度を増し、一気に全身へと回ってしまい。後には、片腕のない晶の、まるで生きているかのような石像が遺された。

「よし…!これなら、捉えきれる…!」
 晶が自身の石化を顧みず足止めに当たっていた、その間に。清導は更に踏み込み、『アズマ』を目の前としていた。
「…殺す…」
 対する『アズマ』、既に回避行動は諦め、清導を迎撃する構えを取り彼を待ち構える。片脚に力が籠り、重心が置かれるのが分かる。蹴撃にて迎撃せんというのだ。
 清導の肉薄が先か『アズマ』の蹴撃が先か。だが、清導には更なる一手があった。
「――エイナ!!」
 叫ぶ。その声に応えるかのように、強い追い風が吹き始め。清導の背を力強く押す。
(どうか、兄さんの仇を――!)
 風に混じって、そんな声が聞こえてきた気がした。更なる後押しを受け、心中の勇気を以てして、清導は更に加速し――そして。
「…!」
 迎え撃たんとした『アズマ』は、動かなかった。否、動けなかった。蹴撃の間合いの、更に内側。迫る気配より察したより僅かに、だが確実に速く。清導は『そこ』へ飛び込んでいたのだ。
「――征け、清導! 決めてみせい!」
 ゼラが確信を以て叫ぶ。応えるように、清導は踏み込む。
「お前がどんなに強くとも!」
 叫ぶ。その手に燃える輝きが、更に激しさを増す。
「殺すだけの拳に! 俺は! 俺達は!」
 背より吹く神風が渦を巻き、降り注ぐ雷霆が清導の右手へ集い。輝く焔と共に纏われる。
「絶対に! 負けないッ!!」
 踏み込むは『アズマ』の右側面側。振りかぶった拳が、彼の腹を捉え――
「超必殺ッ!! ゴッドウィンド・ライトニング・リベンジャァァァァァァァ!!!」
 今一歩の踏み込み、殴り抜ける。直後。『アズマ』を中心として、猛烈な稲妻を纏う竜巻じみた火柱が、爆音と共に立ち昇った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

アルトリウス・セレスタイト
さっさと帰るが良い
骸の海の方が相手も多かろう

会敵次第即行動
破界で掃討
対象は戦域のオブリビオン
それ以外は地形含め「障害」故に無視され影響皆無

高速詠唱を幾重にも重ね『刻真』『再帰』で無限に加速・循環
瞬刻で天を覆う数の魔弾を生成、上下含む周囲全方向へ無差別に斉射
更に射出の瞬間を『再帰』で無限循環
一切間を置かず斉射し続け、戦域を魔弾の軌跡で埋め尽くす

埒外に速く強いのだろう
故に討滅するに足る攻撃で、一切回避の余地のない状況を作る
仮に地を抉り足元から来ようと逃れ得ぬ

自身へ届く攻撃は『絶理』『刻真』で「終わらせ」影響を回避
必要魔力は『超克』で“世界の外”から汲み上げる

※アドリブ歓迎



 炎の嵐が過ぎ去って後、黒焦げた地面の中心にて『アズマ』は尚も立っていた。胴着は燃え落ち、鍛え抜かれた上半身が露わとなり。その随所に火傷や打撲の痕が生々しく浮かぶ。
「………」
 決して軽い傷ではない。寧ろ並の人間なれば絶命していてもおかしくない。だが彼は再度構えを取る。それだけの傷を負っていること、その事実さえも些末と云うように。
 そして見据えた前方に、蒼き燐光の煌めくのを見た、その直後。

 破界の流星が、驟雨の如く戦場を埋め尽くした。

「行き止まりだ」
 アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)の淡々とした宣告の、その数瞬前。炎の嵐の消えた直後、中心に立つ『アズマ』の姿を蒼瞳に捉えた瞬間、彼の『行動』は始まっていた。
 発動するユーベルコードは創世の権能。其はそれ故に破界をも齎す。鼓動たる詠唱の導きを受け、記憶は蒼き光の魔弾の形を成し、戦場に浮かび上がってゆく。
 詠唱は繰り返される。蒼光の魔弾は次々とその数を増やし、地に、空へ満ちてゆく。記憶は世界の外から流れ込み続ける。尽きることなく、限りなく。蒼き星は銀河成すが如く。
 果てしなく加速する時の中、繰り返される創世輪廻。時の針は一つとて進まない。鼓動は刻まれ続ける。ひとつの宇宙が生まれ出る。常人の目には刹那に満たぬ時を以て。

 そして、星々は飛翔する。

 飛び立つその瞬間は無限に繰り返され、以て神域は蒼き嵐吹き荒ぶ破壊の領域と化す。
 如何に肉体を錬し、技術を研ぎ澄まそうとも。時と空をも超えた果ての原理までは届き得ない。
「さっさと帰るが良い。骸の海の方が相手も多かろう」
 冷徹に告げるその間にも、嵐は止まず。

大成功 🔵​🔵​🔵​

七那原・望
ならその前にお前を殺します。
わたしは望。秘密結社スナーク所属。

ユニゾンに【魔力を溜め】つつ、神やアマービレで呼んだねこさん達に援護をお願いします。

自身は常に近距離戦闘。わたしへの対処という形で敵の行動を制限。

拳を一撃受ければ終わり。
体制を決して崩さないよう集中し、【第六感】と【野生の勘】で敵の攻撃を【見切り】、【早業】でいなしたり、武器で拳の軌道を逸しつつ【カウンター】を決めます。

チャンスを見つけたらオラトリオで敵の足元から奇襲を。
敵の意識がそちらに逸れたら【咄嗟の一撃】で【限界を超えて】攻撃力を高めた【全力魔法】の【Lux desire】を【クイックドロウ】【零距離射撃】で放ちましょう。


架空・春沙
悪しき怪物の封印を守護せし番神を殺すとは
その悪行、断罪しましょう
正義の猟兵秘密結社スナークは断罪部隊所属、緋刃の春沙、遅ればせながら参戦いたします

とはいえ相手は武の達人、気を引き締めて挑まなければ
ひたすらにアズマの動きを見切り、残像を残してフェイント、オーラで防御し、早業のカウンターで拳ではなく腕や足を弾き、耐え抜いて

ですがこのままでは埒が明きません、隙を作らなければ
早業でもって咎人縛りの枷を放ち捕縛を仕掛けます
一瞬で壊されるでしょう、ですがその一瞬で
緋鎌一閃、大鎌を振り下ろします
断罪、執行します



 嵐が過ぎ去った後も尚、『アズマ』は其処に在った。均整良く鍛え抜かれた肉体の所々が抉れ裂かれ、滴る血の量も只事ではないが。
「…殺す…全て…殺す…」
 譫言めいて呟くその言葉。己の拳はその為に。あらゆる命を、たとえ神であっても殺せる程の力と、技と。それこそが『アズマ』――
「いいえ。その前に、お前を殺します」
 響く声は幼くも冷徹に。七那原・望(封印されし果実・f04836)は先程までとは打って変わった冷酷さを以て、その男の前へと立つ。
「悪しき怪物の封印を守護せし番神、その殺害。断罪すべき悪行と判断しました」
 その隣へ並び立つは、緋色の刃具えし大鎌を携える女性。桃銀の髪の頂からは、色同じくする狼の耳が覗く。架空・春沙(緋の断罪・f03663)、この局面より参戦した猟兵である。
「わたしは望。秘密結社スナーク所属の猟兵」
「同じく猟兵秘密結社スナーク、断罪部隊所属。緋刃の春沙」
 其々に名乗りを上げる二人。それを開戦の合図と見たか『アズマ』は駆け出す。負傷の程を全く感じさせぬ超速の踏み込み。一瞬でその身は二人の眼前へ。
「っ! ねこさん!」
「皆さんは援護を! この敵は私達が抑えます…!」
 望はその手に取り出したタクトを振る。清涼なる音色が響くと共に、どこからともなく十数匹もの猫達が現れる。彼らがかわるがわる鳴く、その声は望に活力齎す魔力を帯びた癒しの鳴き声。
 春沙は戦況を見守る神々に援護を求める。風神の与えた風の護りが、春沙の挙動をより軽やかなものとする。
「噴ッ!!」
 空を裂いて『アズマ』の拳が突き出される。その先に春沙を捉え繰り出した拳はしかし、その影を貫いたのみ。
「やはり、速い…!」
 だが、残像を残すことで回避に成功した春沙の顔に、余裕は無い。見切るより早く動かねば避けきれぬ。
「逝ッ!!」
 尚も攻撃を続ける『アズマ』、今度は回し蹴りで望を襲う。咄嗟に身を引き躱す望だが、目隠しされた瞳のすぐ前を、大鉈じみた蹴り足が通過してゆくのが感じられた。
(この速度と力強さ…一撃受けたら終わり…!)
 全ての攻撃が致命的威力を有する、まさに人間凶器。歴戦の猟兵たる望の認識においても、ここまでの技量を有したオブリビオンは多くない。紛いなき強敵。
 なれど怯んでばかりもおれぬ。光集めゆく黄金の果実――『神核・ユニゾン』を傍らに浮かべ、そこへ魔力の充填を開始。自身は双剣――黒き妖刀と白き聖剣を抜き、改めて前方の剣士に立ち向かわんとする。

「噴! 破ッ!」
 突き出される拳、叩き付けられる蹴りを、春沙は鎌の柄で逸らし弾き、どうにか攻撃を喰らうことなく立ち回る。なれど打の衝撃受ける両手は猛烈に痺れ、徐々に感覚が薄れてゆくのが感じられる。
 望は己の直感を駆使して致命の打撃をかわし続ける。そして二刀を振るい、返しの斬撃を『アズマ』へと打ち込んでゆく。その身へは斬傷が増えてゆくが、『アズマ』の攻勢は止まぬ。まるで負傷を意に介しておらぬが如く。
 神々も各々が権能を駆使し『アズマ』へ攻撃を加えているが、どれも有効打となったようには思えぬ。
(このままでは、埒が開かない…)
 春沙は眉根を寄せる。このままの均衡が続けば、この致命的打撃を受けてしまう可能性も増してゆく。その前に仕掛けてゆかねば。
「ならば…これで」
 判断は一瞬、続く回し蹴りを屈んでかわすと共に、春沙の手から何かが放たれる。
「!」
 それは手枷、蹴りを放つための姿勢制御に用いられていた『アズマ』の両手にそれぞれ食いつき、引き絞られた鎖が枷の上から巻き付き戒めにかかる。
「まだです…」
 続いて放つは足枷。地面に戻った蹴り足と元の軸足とを目掛け、同様に食いつき巻き付き戒める。鋼鉄の枷、太く長い鎖。容易く破れるとは到底思えぬ戒め。
「噴ッ――」
 だが『アズマ』にとってそれは絶対の拘束を意味しない。気合の一声と共に、その枷、その鎖へ瞬く間に無数の罅が走り――
「いいえ、まだ留まってもらいます!」
 戒めが砕け散らんとしたその刹那。『アズマ』の身にエクルベージュの影がかかる。逆光を浴びる望の姿から伸びる影、そこから飛び出した実体ある無数の手が、更なる戒めとなって『アズマ』を引き留める。
「今です! 力を此処に――!」
 最大の好機。望は神々や猫達へ呼びかけると共に、手元へ引き寄せた神核を高く掲げる。猫達が合唱めいて高く鳴き、神々の雄叫びが響き渡り。黄金の林檎は限界を超えて眩く輝く。
「…! 怒ゥゥゥゥゥ…!!」
 さしもの『アズマ』も、高まり続けるその力の前に危機感を抱いたか。一際重く強く唸りを上げて戒めから脱出せんと試みる。影が引き千切れ、戒めが砕け。その身が解き放たれた、その直前。
「逃がしはしません。断罪は、確実に遂行します」
 眼前に春沙。既にその双臂は高く掲げられ、緋刃の大鎌が光を浴びて冷徹な輝きを放つ。其は、宣告にして執行の意志を示すかの如く。
「断罪、執行します」
 宣告と共に振り下ろされた緋刃は、拳士の胸を深く斬り裂き抉り。鮮血が迸り。
 傾ぎかけた身を、両脚を踏ん張り持ち堪えんとする『アズマ』、だが未だ終わりではない。跳び退いた春沙と入れ替わるように、眩く輝く黄金を手にした望が肉薄する。
「全ての望みを束ねし光、受けるが良いです…!」
 そして、集束した望みは解き放たれて。
 神界の全てを満たさんばかりの、膨大なる光の奔流が溢れ出し。その全てが、『アズマ』を飲み込んでいった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

フィラデルフィア・シャイントピア
ヘイヘーイ!
カモンカモーン!
スナークデスヨー
【アドリブOK】
ダメみたいですネー
ノリが悪いデース

それでハ、ワタシもシリアスに言っちゃいマスヨー!
イーサンは見るのが初めてですかネー?
ワタシのトゥルーフォーム(真の姿)を見せて差し上げマース!

【真の姿は黒いドレスに黒い羽、輝く黒髪のいかにも邪悪そうな女神の姿】
…さて、この姿の私は手加減はできないわよ。
(口調も威厳ある雰囲気に)
近距離からの攻撃が反撃されるならばこのユーベルコードで叩き潰してあげるわ。
(普段の数倍の大きさの月を模したエネルギーを左手から放つ)
たとえこれを防いだとしても、地面からの力で
さらに強化された攻撃でとどめを刺すことになるかしらね。


バーン・マーディ
……美しい(彼の立ち方を…挙動への感想はその一言だった。どれだけの鍛錬…どれだけの戦いを得て至ったのかを想う

良いだろう
我が叛逆は新しき領域を迎える

神さえ蹂躙するその暴力への叛逆を今こそ果たさん!

【戦闘知識】
彼の動きと立ち回りと
前動作を分析
【オーラ防御】展開

少しだけ悲しい
それは強さへの求道であったろう
神さえ屠る程の絶技…それは何の為に目指したのかも失ったか

【武器受け】で致命だけは避け

車輪剣と魔剣を吹き飛ばされても堪え

常に態勢を整えながらも

此方から攻撃する以上彼は投げ技のカウンターで来るだろう

故に
其処から繋がる決別拳に対し

大いなる叛逆発動
【二回攻撃・怪力・鎧無視攻撃】による叛逆の拳を叩き込む!!



 神の領域、その大地に一人の男が立つ。
『アズマ』と呼ばれたその男の総身は、大小無数の生々しき傷と、そこから溢れる夥しき血に覆われていた。
 常人なれば紛いなく死に至る程の傷を負い、それでも尚、男は構える。己の修めし武を。それこそが『アズマ』であるが故に。
「…美しい」
 満身創痍でありながら、些かも揺るがぬその構えを前として、バーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)の口からは思わず感嘆の声が漏れる。善も悪もない、純粋なる武の体現。果たして、どれだけの鍛錬、どれだけの戦いの果てに、ここまでの境地へと至ったのか。神すら屠るその武の威は、神への叛逆を果たさんとする彼にとって、ひとつの理想の体現とすら見えた。
「ヘイヘーイ! カモンカモーン! スナークデスヨー!」
 そこに聞こえる、能天気なまでに明るい声。フィラデルフィア・シャイントピア(シャイン&シャドウ・f16459)は『アズマ』に対し呼びかける。挑発のつもりであろうか。無論、『アズマ』は動かぬ。
「………」
 そしてバーンはそんな彼女を睨む。
「…ダメみたいデスネー。ノリが悪いデース」
 両者の様子に、いっそわざとらしくも見える様子でフィラデルフィアは肩を竦める。彼女としても、このような挑発に『アズマ』が乗ってくるとは思っていなかったようだ。
「…真面目にやってもらおうか」
 憮然と告げるバーンにフィラデルフィアは笑い返す。その笑みを見たバーン、僅かに目を見開いた。
「ええ、そういうコトでシタラ、ワタシもシリアスにいっちゃいマスヨ!」
 そして首を巡らせ、背後で彼らの戦いを見守る神々へ――その最前列にいる少年神、イーサンの姿を認める。
「そーいえバ、イーサンは見るのは初めてデスカネー?」
「え?」
 唐突に問われ、呆けた返事を返してしまうイーサン。フィラデルフィアの笑みが深まる。
「ワタシのトゥルーフォーム、折角デスカラ見せて差し上げマース!」
 告げた直後、フィラデルフィアの足元から闇の奔流が噴き上がり彼女の身を覆う。
「な!?」
「………」
 驚愕するイーサン。黙し見守るバーン。ややあって闇の奔流の晴れた後。そこに在ったのは。
 闇を織ったが如き漆黒のドレスに黒の翼、夜空を思わす輝ける黒髪。如何にも邪悪なる女神の様相、それこそがフィラデルフィアの真の姿。かつての邪神としての在り様に立ち戻った、はじまりの姿。
「…どうかしら? 真の姿に立ち戻った私の感想は」
 その唇が紡ぐ声音もまた、冷たい威厳を纏い。あまりの変わりように、イーサンはただ口をぱくぱくと開閉し続けるのみで。言葉にならぬ、といった様相であった。
「悪くはない。少なくとも、先程までよりは確実に良い」
 一方のバーンはそう答え、改めて『アズマ』を見据える。神をも屠る拳士の在り様に、改めて思い馳せて。
「…良いだろう。我が叛逆は、新しき領域を迎える」
 本意ではないとて、今のバーンもまた神。かの拳士の拳は、己にも牙を剥くものであろう。なれば。
「――神さえ蹂躙する、その暴力への叛逆を! 今こそ果たさん!!」
 両の腕を大きく広げ、其々の手へ禍々しき魔剣と、猛々しき車輪剣とを手に。堂々と宣言する。
「手加減は無しよ。全力でかかっておいでなさい?」
 フィラデルフィアもまた、睥睨するような目線を向けながら、手招きしてみせる。
「…殺す…全て…殺す…」
 それらの威容を、屠るべき存在と認めたか。『アズマ』は疾走する。かの悪神と邪神とさえも、己の拳で打ち砕くべく。

「噴ッ!!」
 力強い踏み込みと共に、『アズマ』の正拳が突き出される。空気の唸りさえも伴うその拳を、二人は左右に分かれて躱す。
「成程、大した速さね」
 その速度、真の姿へと至っていなければ躱し切れなかった可能性すら有り得る。感嘆の声を漏らしながら、フィラデルフィアは右手を翳す。青白い光条が断続的に連射され、『アズマ』のもとへ雨の如く襲い掛かる。
「!」
 身構え、光条の弾雨を凌ぐ『アズマ』。その横合いから飛び掛かる黒い影。
「おおおお!!」
 バーンである。両手の魔剣と車輪剣とを振り下ろし、眼前の拳士の身を斬り刻まんとする――が。
「逝ッ!!」
 尚も降り注ぐ光線連射、そこからの守りも放棄した上での、迎撃のハイキック。バーンの脇腹へ、深く食い込むかのように、突き刺さった。
「ぐお…ぉっ…!」
 苦悶の声を上げ、二刀を取り落とすバーン。だが、その表情は苦しげながらも、何処か哀しげで。
「…それは、強さへの求道であったろう…」
 眼前の拳士の『かつて』の有様へと思いを馳せる。ここまでの強さと至るより前へ。
「神さえ屠る程の、その絶技…それは何の為に目指したのか」
 それさえ見失い、今ここに在るのは。破壊と殺戮のためだけの、凶拳士。
「噴ッッ!!」
 その言葉に何かを感じるでもなく。『アズマ』は拳を繰り出す。ユーベルコードの力帯びた、必殺の拳。バーンの胸を狙い、迫り――接触のその刹那。
「故に…我は! 貴様のその力に、今こそ叛逆する!!」
 バーンは吼える。その身から力が溢れ出す。受けた拳の威力さえも己の力と変じさせ。渾身の、全力の拳が繰り出される。
「………!!」
 それは『アズマ』の頬を強かに捉え。己の拳の力も上乗せされた一撃に、踏ん張りもきかず吹き飛ばされて。
「そして、これで終わりよ」
 受け身を取り、体勢を立て直しにかかったその時。頭上から、フィラデルフィアの冷たい声。
「目覚めよ、黒き月の魔性。我が敵を撃ち、以て滅びを齎せ」
 詠唱と共に左手を『アズマ』へ。漆黒のエネルギーがその掌へ集束し、渦巻いて。
「必殺…レフティ・ムーンライトグラビティ!!」
 そして、詠唱の結びと同時に放たれる。膨大な魔力を帯びた高密度のエネルギー弾は、先程普段のフィラデルフィアが用いたものとは明らかな別物。直撃すればオブリビオンであれ一たまりもないだろう一撃を。
「ッ!!」
 すんでの処で飛び退いて、回避を果たす『アズマ』だが。着弾したそこに、奇妙な風景が広がる。水面めいた、微かに波打ち波紋の走る光景。湖面に浮かぶは、黄金色の満月――
「残念ね」
 その水面へ、フィラデルフィアが着地する。溢れる力は、その場へ立ったことで更に高まって。
「その一撃をかわしても。より力を増した二撃目があるのよ」
 翳した掌へは、先程と同様のエネルギー弾が、より大きく、より高密度に。瞬く間に集束していく。
「さあ――トドメよ」
 撃ち出されたエネルギー弾は、闇の太陽の如き膨大な力を籠めて。
「―――!!」
 跳び退かんとする『アズマ』、負傷から体勢を崩した彼へ、過たず直撃し。その身を、焼き尽くしていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年11月14日
宿敵 『『アズマ』』 を撃破!


挿絵イラスト