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恩義=コンプレックス!?

#アルダワ魔法学園 #猟書家の侵攻 #猟書家 #マロリー・ドラッケン #ケットシー #災魔の卵

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#災魔の卵


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 アルダワ魔法学園の世界には、当たり前かもしれないが、学園の外の世界も存在する。
 学園の底に広がるダンジョンから湧き出す災魔こそが脅威であった時代は、今は過ぎ去った。
 新たな魔王が現れない限りは、新しく災魔が生まれることもない。
 そのはずだった。
「はわわ……ケットシーの皆さんがいっぱいですよ。ちょっとひと撫で……」
『まてまてまて。目的を忘れるんじゃねぇ』
「はわっ、そうでした。気になる気になる物語を手に入れるために……ごめんなさい。ごめんなさい。でも気になるの」
 ケットシーたちの王、猫王が治める猫の国のとある場所。
 マロリー・ドラッケンは、気弱そうな少女の姿にあるまじき恐ろしい気配の杖や魔導書を従え……或は振り回されつつ、おもむろに取り出した卵を放る。
 災魔の卵と呼ばれるそれは、猫の国に幾つかあるという「恩人記念碑」に触れると、まるで溶け込むかのように埋め込まれていく。
「にゃにゃ!? おいらの建てた、記念碑がー!?」
 どろどろと波紋を浮かべて別の形に変わっていく恩人記念碑の様子に、ケットシーは体毛を毛羽立てて驚く。
 やがて記念碑が変じるのは、マロリー・ドラッケンとそう変わらないであろう年恰好の少女たち。
 魔法使いだろうか。とんがり帽子にローブ姿の少女たちは、一様に虚ろな眼差しを浮かべている。
「憎い……抜群のスタイルが……羨ましい……」
 矮躯の魔法使い、肥満体型の魔法使い、そしてしきりに胸元を気にする魔法使い。
 彼女たちはいずれも身体的なコンプレックスを抱えていた。
「あ、あんた達は……そんな馬鹿な!」
 ケットシーはそんな彼女たちの姿に声を失う。
 似ている、あの恩人たちの姿に。

「……とまぁ、そういう予知を見たのさ」
 グリモアベースはその一角、ファーハットに板金の張ったロングコートがトレードマークのリリィ・リリウムは、居並ぶ猟兵たちに語る。
 アリスラビリンスにおける戦乱「迷宮災厄戦」を経て、猟書家と呼ばれる者たちが他の世界へと侵攻を開始した。
 魔王のいなくなり、平和を取り戻しつつあるアルダワ魔法学園にもその魔の手は伸びることとなった。
「猟書家、オウガ・フォーミュラと呼ばれる連中は、部下を引き連れてオブリビオンフォーミュラを欠いた世界に渡り、フォーミュラになり替わろうって筋のようだな。
 今回もその幹部連中が引っ張ってきたうちの一人、マロリー・ドラッケンという奴が相手だ。
 可愛い見た目に騙されちゃいけない。こいつは、本好きが高じてあっち側に転がるようなやつだ。油断するな」
 リリィが話すには、マロリーが猫の国にて災魔の卵を植え付けたのは「恩人記念碑」と呼ばれる、ケットシーがこれまでに「どんな恩を受けたか」が記されているものであるという。
 たまごを植え付けられた記念碑は災魔と化し、受けた恩義とは逆のことをするという。
「記念碑が変じたのは、マロリーとそう変わらない世代に見える魔法使いたちのようだ。
 こいつらもオブリビオンだから、倒してしまっていい。ただ……、
 どうも、記念碑を建てたケットシーと、なんだか関係がありそうなんだよなぁ」
 確信はないが、現場のケットシーが受けた恩義、あるいは恩人と何かしらの関係はあるかもしれない。
 記念碑より生まれた災魔は、それゆえに恩義を受けた内容にかなり影響を受けるらしい。
 コンプレックスを武器に襲い来るそれに対応するか、ケットシーと協力して対応すれば、効率的に討伐できるかもしれない。
「もちろん、こいつらを倒すだけでは、記念碑は元に戻らない。マロリー本人を倒してようやく記念碑を取り戻せる。
 強力な相手だが、君たちならばやれるはずだ。よろしく頼む」
 そうして帽子を脱いで一礼すると、リリィは猟兵たちを送り出す準備を始めるのであった。


みろりじ
 どうもこんばんは、流浪の文書書き、みろりじと申します。
 このシナリオは猟書家幹部シナリオです。2章編成であり、低身長・肥満・貧乳というそれぞれのコンプレックスを抱えるあまりに災魔と化した女の子達を倒し、マロリー・ドラッケンを倒すことによって、災魔の卵を植え付けられた記念碑はようやく本来の姿を取り戻します。
 集団戦に於いて、記念碑を建てたケットシーが現場にいます。
 彼に記念碑の話、たとえば恩人の話を聞いたりすると効果的かもしれません。
 二章編成のため、けっこうお手軽ですので、どしどしご参加くださいませ。
 といいつつ、前回の戦争の話もしているのは、なんだか初心者に優しくない気もしますね。
 まあまあ、難しいことは考えずにぶっ飛ばす選択も、全然ありですよ。
 というわけで、皆さんと一緒に楽しいリプレイを作っていきましょう。
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第1章 集団戦 『マジカルダイエッターズ』

POW   :    見下される気持ちを味わうといいわ!
攻撃が命中した対象に【重力魔法】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【身長が縮み続ける超重力】による追加攻撃を与え続ける。
SPD   :    そんな出っ張りは引っ込んでしまえばいいのよ!
【魔力壁によって形を変形させる能力】を籠めた【空間魔法】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【自慢のスタイル】のみを攻撃する。
WIZ   :    リンゴ体型なんて言われてうれしいと思う!?
【魔法杖】から【風魔法】を放ち、【相手の体を膨張させること】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:川上らいと

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

黒木・摩那
恩人記念碑が化けて災魔になるとか、なんて恩知らずな。

これは建てたケットシー達も思いは複雑ですね。

生まれた災魔は受けた恩に関係があるということは、その恩というはダイエットに協力してくれたとか?
ケットシーは小さくてもこもこでかわいいけど、体系についての悩みは種族共通ということなんでしょうか。
そこはケットシーに聞いてみたいところです。

ともかく、災魔たちを殴り倒すことには変わりません。

ヨーヨー【エクリプス】で戦います。
UC【蒼鷹烈風】で威力と距離を強化したヨーヨーで、災魔たちを【衝撃波】で【なぎ払い】ます。

災魔のユーベルコード当たっても、体系が変わらないとか言うな!


ミフェット・マザーグース
災魔の卵、わるいタマゴ
おっこちて割れて
だけど猟兵のみんなが、元に戻しちゃうんだから!

暴れる魔法使いのヒトを〈楽器演奏・歌唱〉でUCを奏でて止めるよ
歌に合わせてケットシーに、三人のお話を聞かせてもらうね

協力できそうな猟兵のヒトがいたら、アドリブで合わせるよ

UC【一人ぼっちの影あそびの歌】

♪あなたの名前を知らないの
あなたはちっちゃな女の子 妖精よりも大きいし
あなたはほっそり女の子 すらり手足がオトナっぽくて
あなたはぽっちゃり女の子 リンゴのほっぺがかわいいね

だけど名前は知らないの 見た目だけしか分からない
だれか教えてあなたのこと いつ どこ どうして なにをした?



 広い広い、それは森と野とを分けるような、広い農場だった。
 そんな中で、子供の夢に出てきそうな小さな家が建っている。
 ケットシーの体格に合わせた小ぢんまりとした佇まいであるが、その質素な暮らしを思わせながらも広い農場であった。
 広い農場には枯草色に乾いた農作物が寝かせてある状態である。
 十分に収穫時期ともなれば、人手を呼んで回収する手はずであった。
 小屋の主人が庭先に建てた恩人記念碑が災魔と化したのは、そんな折であった。
「そんな……どうして、あんた達が……!」
 杖をつくケットシーが驚愕の声を上げる。
 記念碑から変じた災魔の姿は、年若い魔法使いの少女たちの姿をしていた。
 その姿に覚えがあるのだろう。ケットシーの農夫は、恐ろしい災魔の気配を前にしても、おろおろとうろたえるばかりであった。
「憎い……抜群のスタイルが……貴方もまた……あれ?」
 うわ言の様に恨みがましい言葉を紡ぎつつ、すぐ目の前の農夫にたいしてそのフラストレーションから生まれた魔法をかけてやろうとする、のだが……。
 なんだか様子がおかしい。
 なんだか前にも、こういうようなことがあったような……。
 逡巡も一瞬のこと。顔を見合わせて小首を傾げた魔法使いの災魔は、狼狽えるケットシーの農夫をその手にかけようとする。
 と、その時、ポロン、とリュートを奏でる音が、その場に水を差す。
「恩人記念碑が化けて災魔になるとか、なんて恩知らずな」
 リュートの音に誘われるようにして、どこからともなく姿を現す猟兵。
 土と草木の香る風に癖のない黒髪が泳ぎ、セルフレーム眼鏡にも見えるスマートグラスがきらりと光る。
 黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は、冷静でよく通る声で言い放ち、そこまでだ! と言わんばかりに介入するのであった。
 そのすらっとした佇まいに、災魔の魔法使いダイエッターズ達は目の色を変える。
「ゆ、許せん……! なんて、無駄のない体型!」
 殺気立つ視線を送るのは、ちょっぴり太めのダイエッターと矮躯のダイエッターである。
 早くも臨戦態勢を取るところだが、そこへ再びポロロンとリュートの音が鳴る。
「さっきから、なんなの!」
 声を荒げるダイエッターに応えるかのように、いつの間にか小屋の壁に体を預けてリュートを爪弾いていた人影が顔を上げる。
「災魔の卵、わるいタマゴ
 おっこちて割れて
 だけど猟兵のみんなが、元に戻しちゃうんだから!」
 小さな体で抱える様にしてリュートを爪弾きながらゆっくりと歩む姿は、人の姿をとったブラックタールの少女、ミフェット・マザーグース(沼の歌声・f09867)であった。
「そう、私達の邪魔をしようっていうのね! ならば、私達の恨みを知るがいいわ!」
 二人の猟兵の登場にすっかり戦う姿勢のダイエッターズの一人が、ミフェットに向かって魔法を放つ。
 それを咄嗟に摩那が前に出て受け止める。
「うぐっ……! うん?」
 なにか見えない壁に当たったような違和感があったが、外傷は無い。それどころか体のどこにも異変を感じない。
「しまった! 元からスレンダー体型には胸を平たい壁にする魔法は通用しないのか!」
「余計なお世話です!」
 悔しげに臍を噛むダイエッターに、摩那は珍しく声を荒げる。冷静な性格はどうしたんだ。
 そもそもの話、子供体型というか少なくとも年齢的にも子供なミフェットを狙う必要はあったのだろうか。
「あんたは下がって、あたしがやる!」
 スレンダーなダイエッターを制して前に出るのは、ちょっぴり太めのダイエッター。
 いかに痩せの大食い、食ったものがカプサイシンの分解か次元の彼方に消えて、間違えても脂肪につながらないとされる摩那といえど、体型を太らせる魔法の前ではどうなることか。
 いや、ちゃんと胸は、その、あると思うよ。
 いいやそうはさせまいと、ミフェットがユーベルコードを発動する。
「あなたの名前を知らないの
 あなたはちっちゃな女の子 妖精よりも大きいし
 あなたはほっそり女の子 すらり手足がオトナっぽくて
 あなたはぽっちゃり女の子 リンゴのほっぺがかわいいね」
 ダイエッターの放つ対象を太らせる風魔法を即座に模倣する【一人ぼっちの影あそびの歌】を歌いあげると、妬みや嫉みで増幅した魔法が、純粋な子供の言葉に解されるかのように相殺される。
 だけど、とミフェットは続けて紡ぐ。
 その名も知ることが無ければ、彼女たちがいったいどうして災魔になったのか、目的は何なのか。
 それを伺い知ることはできない。
 だから、それを知っているであろう者に問いかける。
 そう、ケットシーの農夫に。
「あの人たちは一体、何をしたの?」
 ミフェットに問われ、ケットシーは戸惑ったように逡巡する。
 彼の中でもそこまですぐには整理がつかない事なのだろうか。
「生まれた災魔は受けた恩に関係があるということは、その恩というはダイエットに協力してくれたとか?」
 そこへ助け舟を出すように摩那が自分の予想を口にする。
 ダイエッターの災魔が生まれたということは、記念碑にはそれに類することが書かれていた可能性が高い。
 とはいえ、よくよく見てみると、ケットシーの農夫は杖をついているものの、ちょっとふっくらしている程度で、極端な肥満体型には見えない。
 しかしながらダイエットとは、本人の意識に左右される。外野から痩せて見られても、そうは思わないことだってある。
「ケットシーは小さくてもこもこでかわいいけど、体系についての悩みは種族共通ということなんでしょうか」
 摩那には理解の及ばないことだが、意気投合する理由には難くないだろう。
「いやぁ……どちらかというと、おいらがダイエットの手伝いをしたのさ」
 困ったように笑うケットシーの言葉に、二人は小首を傾げる。
 かつての彼女たちのダイエットを手伝った。どれのどこに恩義を感じる必要があるのだろうか。
 逆ならばまだわかるのだが……。
 疑問を口にするよりも前に、ケットシーはさらに続ける。
「もう40年も前の話さ。今はこうして広い農場を持ってるけど、当時は貧乏でね。大豆をいくら作っても、売れやしなかったんだ。
 いい加減、作るのをやめようかと思ってたんだがね。そこへ彼女たちがやってきたのさ」
 大豆農家だったケットシー。売れ残りの大豆で食いつなぐ日々を脱するきっかけとなったのもまた大豆。それを大量に買い付けに来た在りし日のダイエッターたちだった。
 そう、身長を伸ばし体を作り上げるのは、経口摂取の難しいカルシウムよりもたんぱく質。
 そう、バストアップにはたんぱく質。
 そう、大豆に含まれる水溶性の食物繊維は、お通じにいい。
 そんな栄養学的見地から、ダイエットに取り組むため、ちょうど困窮していたケットシーから彼女たちは格安で大豆を仕入れたのである。
 彼女たちにとっては実験的な買い物。しかしそれがきっかけとなり、ケットシーは農場を広げることとなった。
 ゆえに、彼女たちは恩人なのだという。
「え、じゃあ、あの災魔達は、本人じゃないの?」
「ええ、当時10代だったとしても、50過ぎには見えませんし」
「うんうん、彼女たちは、大豆が効いたかどうかは知らないが、それなりに幸せになっているって噂で聞いたよ」
 思い出に目を細めるケットシーにどこかほっこりとしたものを感じつつ、そろそろミフェットの歌の効果が切れ始めるのを察知する。
「あれが本人の堕した姿でないというのなら、ぶっ飛ばしてしまっても構わないんですね」
 それは確認というわけではなかった。正体が記念碑であれ、人間であれ、災魔……オブリビオンであれば倒すのに違いはない。
 鋼線で繋いだ超可変ヨーヨー『イクリプス』が摩那の手から離れ、釣り下がった先でキリキリと回転数を上げる。
 手首を軽く引けば、鋼線を巻き上げてヨーヨーが手元にぱしっと戻ってくる。
「ええい、やっと晴れたわね! 今度こそ、林檎体型になりなさい!」
「……励起。昇圧、目標を確認……加速開始」
 ユーベルコード【蒼鷹烈風】によって3倍に跳ね上がったヨーヨーの回転数が、うなりを上げ、ふたたび摩那の手から放たれると加速した回転は空気の渦を作り出し、衝撃波がダイエッターたちを巻き込んだ。
「きゃああっ!!」
 振り回すヨーヨーの作り出す旋風に、体の軽い二人のダイエッターが吹き飛ばされそうになるところを、恵まれた体格のダイエッターが支える。
「すごい……」
「一筋縄ではいかないようですね。ですが、急がないと」
 ぐぐっと踏ん張ったダイエッターを前に、ミフェットと摩那はその続きを口にはしない。
 戦いが長引くのはまずい。
 これ以上、胸を削られるのはごめんだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ソフィア・リューカン
……正直気持ちは物凄く分からなくはないんだけどね。

という事で胸を押さえている子をメインに戦わせて貰おうかなって。
基本的には大量に呼び出した人形達は【念動力】で手繰り物量面での囮と機構からの一斉火力で魔法をある程度防げるようにしつつ、その中で精密動作の行える手元のジェファーソンとレイニーで背後からの奇襲を仕掛けさせてもらおうかしら。

それで、あの子も胸について困っている感じかしら……正直引っ込んでしまえって言われても、ほんのちょびっとだけが無くなるだけだし……
でもね、こうしてスレンダーってのも一つの魅力よ!確かに大きいのが―ってのは良く聞くけど、良い所を見て貰える人を見つけることも大事よ!ね!


ティエル・ティエリエル
SPDで判定

むむむー!平和になった世界を荒らさせたりさせないぞ!
猟書家なんてボクがコテンパンにやっつけてやる!

現場についたらケットシーを助けて一旦退避!
ケットシーさんは出てきた子たちのこと知ってるみたいだよね!
うーん、なんだかあの胸をぺったんぺったんしてる子のお話を聞かせて!

話を聞いてみるとおっぱいが大きい子を攻撃する魔法が得意みたいだね♪
ようし、それならボクは全然大丈夫だ!全然気にせずに【妖精の一刺し】でぐさーっといっちゃうぞ☆

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です



 ごうごうと激しい風が渦を巻く中で、一般人であるケットシーの農夫は撒き上がる土埃と強い風にあおられて身動きが取れないでいた。
 猟兵の強すぎる力。それは時として天変地異にも等しい力を発揮する。
 それが刃となれば、一般人の出る幕は無いのだが……。
「の、農場は大丈夫かにゃあ……あ、あれ?」
 その場にうずくまって風が過ぎ去るのを待つ他なかったケットシーを取り巻く風が、唐突に凪いだことに気づいて、ケットシーの農夫はピクリと耳を動かす。
 続けて顔を上げると、光の粒子のような鱗粉が視界を横切り、それを発する存在がケットシーの農夫を守るように立ちはだかるのが見て取れた。
 ティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)のその小さな妖精の体に合わせて拵えたレイピアは、風鳴りのレイピア。
 振るう者によっては荒ぶる風の様にも、春風の様に柔らかくも風を薙ぐ。
「お、お嬢ちゃん……おいらを助けてくれるのかい?」
 正しい作法、正しい構えでレイピアを構え、どうやら荒ぶる風からケットシーを守っているティエルは、風が吹き止むのを待つと、刃を納めて、ささ、下がってー! とケットシーを小屋の方へとぐいぐい押しやるのだった。
「くうう、ま、負けないわよー! 理想のボディになるまで、負けられないのよーっ!」
「むむむー、ケットシーさんにお話を聞こうと思ったんだけどな」
 風避けになる小屋の方へと避難させたところで、災魔であるダイエッターズ達も風の影響から立ち直ったのを見やると、ティエルは難しそうに眉根を寄せる。
 迷わずにダイエッターズ達に飛び込むのがいつもの戦法かもしれないが、それではとてもじゃないがケットシーから話を聞けそうもない。
 ティエルには小さな体一つ。できることは限られる。
「あーまったく、ひどい土埃……お気に入りが汚れちゃうじゃないの」
 と、そこへ、ほんのり能天気な声が割って入る。
 臨戦態勢だったティエルや災魔たちも、若干気が抜けて声のした方を見る。
 平均よりちょっぴり小さめの体躯をオーダーメイドの魔法学園の学生服に身を包み、長い銀髪を風にあおられつつ、小さな人形を引き連れるのは、ソフィア・リューカン(ダメダメ見習い人形遣い・f09410)。
 来て早々の悪態を聞かれて注目を集めたことに気づいたらしいソフィアは、はっと佇まいを正し、
「あら、ごめんあそばせ」
 苦しい愛想笑いで場を和ませようとする。
 つられて彼女の人形たちもぺこりと頭を下げる。
 そうしてちらっとティエルの方を見ると、大体の戦況を把握する。
「くっ、新手が来たっていうのね! お嬢様だからって調子に乗らないでよ!」
 変に注目を集めてしまったのが功を奏したのか、ダイエッターズはソフィアのほうに矛先を向けるようだ。
 お嬢様? と咄嗟に出た言葉のせいで妙な勘違いを生んでしまったようだが、これは都合がいい。
 大家族の長女に生まれたソフィアは、実家への仕送りのために日夜バイトなどの仕事に明け暮れているため、彼女もその実家も決して裕福というわけではないのだが……自分に目を向けてくれるというなら、その間にティエルがケットシーから災魔に関する何かしらの話を聞き出してくれるに違いない。
 ならば、自分がやることは決まってくる。
「みんな、手伝ってね!」
 ユーベルコード【楽園人形劇】によって、自身の引き連れる人形の複製を多数作り出すと、念動の糸でそれらを手繰って制御下に置き、ダイエッターズにけしかける。
 その人形たちに仕込まれた機構や物量を駆使することで、ダイエッターズたちの攻撃を何とか防ぐ。
 70近い人形を一度に操作しながらも、実は魔法は使っていないソフィアだが、流石に人形を専門としているだけあって、その手腕は実に堂に入ったものである。
 が、それはひとまず置いておいて、一方でティエルの方はというと、
「ケットシーさんは出てきた子たちのこと知ってるみたいだよね!
 うーん、なんだかあの胸をぺったんぺったんしてる子のお話を聞かせて!」
「えぇ、ぺったん? ああ、いいとも。彼女たちはね」
 ケットシーの農夫に災魔と化してしまったダイエッターズの話を聞く。
 恩人記念碑に記した内容と重なるそれは、一方から見れば恩義というよりかは利害が一致しただけのような話にも聞こえた。
 彼女たちは、やはり元々はアルダワの学生で、若いうちから数々のコンプレックスを抱え、それを知識で以て克服しようとしたらしい。
 行きついたのは、大豆の持つ無限の可能性。
 食物繊維やたんぱく質を多量に含む大豆は、お通じや体を構成するのに一役買う。
 植物に関する魔術を専攻していた在りし日のダイエッターズは、その知識をもって、当時はまだまだ貧乏だったケットシーから豆を買い付けて、貧困から救ったのだという。
 それがもう40年も昔の話。
 そう、在りし日のダイエッターズは、現実ではもういい歳の娘が居たりもするほど、それなりに幸せに暮らしているという。
 彼女たちに恩義を感じているケットシーの農夫は、眩しげに目を細める。
「ふーん……あんまりケットシーさんを襲って来ないのも、そう言う事だったんだ」
 奇しくもダイエットに奔走する少女たちが、農家を貧困から救っていた話を、なんとなーく理解したティエルは、なにか思いついたらしく、手近に干されていた大豆をひと房拾い上げる。
「これ、貰っていい?」
「え? ああ、出荷にはちょっと早いが、話を聞いてくれたお礼さ。持っていきな」
「ありがとー!」
 きらきらと鱗粉を散らして戦場へと元気に飛ぶティエルの姿を、ケットシーはまた眩しいものを見るかのように目を細めるのだった。
 さて、一方のソフィアはというと、複製した人形を幾つか失いながらも、それでも被害を最小限に抑え込んでいた。
 その中で、ふと奇妙なことに気づく。
 広大な農場のほんの狭い庭先を戦場にしているわけだが、彼女たちダイエッターズは、頑なに戦場を移そうとはせず、大豆が干されている畑には一歩も足を踏み入れようとはしない。
 注意を払っているというわけではないようで、それはどうやら無意識からくるもののようだった。
 いや、今は目の前に集中しなくては。
「ええい、数が多いわ! いい加減倒れなさいよ!」
 大量の人形を前に四苦八苦するダイエッターズを相手取りながら、ソフィアは戦いに集中する。
 奇抜なものも多い彼女たちの魔法だが、普通に戦うための魔法も使うらしい。
 話が違うじゃないかと思わなくもないが、考えてもみれば当たり前でもあるだろう。
 そんな具合に、一瞬の逡巡が油断となったか、ソフィアはうっかり災魔の魔法を浴びてしまう。
「うっ! ……あれ、痛くない」
 空間に身体を締め付けられるような感覚も一瞬、胸を押さえつけられるような違和感はちょっと残るが、それだけだった。
「うう、しまった! ちんちくりんには効果が無い!」
 胸元を抑えるダイエッターズの一人が使ったのは、自慢のスタイルを攻撃する魔法であった。
 しかし、悲しきかな、発育に若干の遅延を見せるソフィアの体躯は、豊満ではなかった。
 その事実に今更ショックを受けたりはしないものの、来年で二十を迎えるにしては幼さを残し過ぎているようなボディラインに切ないものを感じなくもない。
 故に、
「……正直気持ちは物凄く分からなくはないんだけどね。
 でもね、こうしてスレンダーってのも一つの魅力よ! 確かに大きいのが―ってのは良く聞くけど、良い所を見て貰える人を見つけることも大事よ! ね!」
 それは果たして、ダイエッターズに向けて放った言葉であったろうか。
 健気なその言葉に何かを言い返そうにも、ダイエッターズは恐らく同じ悲しみを背負うソフィアに言い返す言葉が見つからず、ぐぬぬと歯噛みする。
「それでも……それでも、欲しいのよ。胸が! あんたは違うの!?」
「うぐぐ、それを言われるとちょっとつらいわ」
 魔法と人形との押し合いへし合いに、ちょっぴり間抜けな問答が差し挟まれるのだが、ダイエッターズの眼差しはあくまでも真剣だ。
 そこへ、大豆の枝を担いだティエルが到着する。
「さあ、お待たせ! こっちをみろぉー!」
「あ、あれは……」
 ぺかーっとティエルが掲げる大豆を目にしたダイエッターズは思わず動きを止める。
 大豆。知っている。枝豆を褐色になるまで干したのが大豆。いや、それ以上に、何か大切なものを忘れているような……。
「そ、それを私たちに見せるなぁー!」
 思い出してしまったら、何かが終わってしまう。そんな気がして、胸元を抑えるダイエッターは思わずティエルに向かって魔法を放つ。
 しかし、彼女の得意とする魔法は自慢のスタイルを攻撃する魔法。
「ふふーん、ボクは全然大丈夫!」
「し、しまった、相手は子供!」
 魔法を受けても堂々と胸を張るティエル。そのまったく未発達な青い地平は、スタイルがどうとかいうはるか以前の問題。
 だってまだ9歳だよ?
「今だッ、いっくぞー!」
 可能性の塊であるティエルに魔法が通らない事に狼狽えるダイエッターへ向かい、ユーベルコードを発動。
 レイピアを構えた素早い体当たり【妖精の一刺し】がダイエッターの体を大きく傷つける。
 そして、胸元を抑えるダイエッターを助けに入ろうとした他の二人も、不意を突かれ、背中に鋭い痛みを覚える。
 ソフィアも暢気に見ているばかりではなかった。
 巧みに人形を操りながらも、最も精密に動かせる愛用の二体、ジェファーソン卿とレイニー嬢を敵の背後に忍ばせ、タイミングを見計らって奇襲を仕掛けたのだった。
「さっさと片付けちゃうわよ。切なくなってくるもの」
「そうだね! さあ、来い! 平和になった世界を荒らさせたりさせないぞ!
 猟書家なんてボクがコテンパンにやっつけてやる!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユリウス・リウィウス
にゃんこの旦那の恩人を何だと思ってやがる。てめえの玩具にして遊んでんじゃねぇぞ。
本人達は幸せに暮らしてるそうじゃねぇか。その過去をほじくり返そうってのが気に食わねぇ。偽物の災魔をぶっ潰して猟書家も片付ける。

それじゃあ、始めようか。起きろ、亡霊騎士団。
その数をもって、気力減退をもたらす「呪詛」と共に進め。敵の戦意が落ちれば、それだけ掃討しやすくなる。刃には「精神攻撃」も忘れずにな。

空間魔法? 俺には効果が無いようだな? 精々サーコートが揺れたぐらいか?

敵集団が壊乱したら、亡霊騎士団に残敵掃討を命じつつ、俺も「生命力吸収」「精神攻撃」を帯びた双剣撃で前線に出よう。

前座は片付いたぞ。次はお前の番だ。


リューイン・ランサード
何かすごくダウナー系のオブリビオンさん達です。

僕の彼女は背は低いし、グラマーではないですけど、とても可愛いです♪
自制しないといけないくらいに・・・。
彼女達も極端に違わないのに、何故ここまで違いが出るのでしょう?

う~ん・・・でも、ここで倒さないとケットシーさんの迷惑ですし。
という事で弩羅轟えもんを呼びます。
召喚のセリフと共に【エネルギー充填・魔力溜め】を行った上で、ハイパー・バスター・キャノンからの【光の属性攻撃・全力魔法・砲撃・貫通攻撃・スナイパー・範囲攻撃】で彼女達を一掃します。

避けられた場合は「迷わず成仏して下さい!」と弩羅轟えもんが持った大型流水剣の【光の属性攻撃・破魔】で強制成仏します



 一見すれば牧歌的な農場の小屋に広がる小さな庭での戦い。
 とてもじゃないが災魔と争っているような場所とは思えないような場所に、しかし災魔は登場し、血で血を洗う女の戦いが繰り広げられたり、広がらなかったりしていた。
 そんな場所に、ほんとに足を踏み入れてもいいのかという具合に、二人の男性がやってくる。
 ぶっちゃけ、女性をターゲットにしている災魔に男が入ったら、簡単に倒せてしまわないかという懸念が大きくて色々思うことが無いではないのはここだけの話だが、まあそれはそれとして、災魔を放っておいたらひいては世界が滅んでしまうので、ここはダイエッターたちに厳しい戦いになろうとも、歴戦の猟兵たちの投入と相成ったわけである。
 そんな満を持して、登場するにはもはや趨勢は決しかけていたところであるが、一言モノ申さずにはいられなかったユリウス・リウィウス(剣の墓標・f00045)は、やいのやいのと肩で風を切って先陣を切るかの如く飛び出した。
「にゃんこの旦那の恩人を何だと思ってやがる。てめえの玩具にして遊んでんじゃねぇぞ」
 その言葉は、現状として記念碑が変じて出現した災魔に対してのものではなかった。
 興味が高じて、よそ様の迷惑になってまで物語を堪能したいという欲求そのままに行動に出た黒幕に対してのものに違いない。
 当の本人は、卵を記念碑に埋め込んでからというもの、現場にその姿を現してはいないものの、近くにその強大な気配を確かに感じる。
「本人達は幸せに暮らしてるそうじゃねぇか。その過去をほじくり返そうってのが気に食わねぇ。偽物の災魔をぶっ潰して猟書家も片付けてやるからな。なあおい」
 どことも知れず、わめき散らすかのように虚空へ向かって決意を投げかける。
 当然と言えば当然。答えが返ってくることはなく、ユリウスもまたそれを期待したわけではないようで、すぐに現場の災魔であるダイエッターズに向き直る。
「いやー、なんだかすごいダウナーなオブリビオンさん達ですね」
 ユリウスの決意を黙って聞きつつ、ほんわかとしつつも周囲を油断なく見回していたリューイン・ランサード(竜の雛・f13950)が口を開く。
 その穏やかな佇まいと口調に、警戒していたダイエッターズもやや強気を見せる。
「チッ、男どもが何の用なのよ! どうせ私達を笑いに来たんでしょう!」
 恥も外聞もなく、聞こえよがしに舌打ちを漏らすダイエッターに閉口しつつ、苦笑を浮かべるリューインはあくまでも穏やかな面持ちで敢えて話に乗る。
「僕の彼女は背は低いし、グラマーではないですけど、とても可愛いです♪
 自制しないといけないくらいに……。
 あなた達も極端に違わないのに、何故ここまで違いが出るのでしょう?」
 それは、単純に自慢である以上に、嫌味でもあり、煽りにも聞こえた。
 無論、そのつもりだったのだろう。単純に惚気話だとしても、それは火に油を注ぐ行為に他ならない。
「あーあー、うっせぇなあ! この期に及んで惚気かよ!」
 一人は口調すらも荒げてキレ散らかし、
「所詮顔なのね……男って不潔だわ」
 一人は静かにキレ散らかし、
「ロリコン……」
 一人は言葉もなくキレ散らかしていた。
 効果は覿面なのはいいとして、名誉の為に言っておくがリューインは一応、15歳である。若い盛りであるとはいえ、相手を油断させるために売り言葉を使っただけであり、その関係はあくまでも清いものであるはずだ。……はずだ。
「おいおい、相手を怒らせてどうする。話を聞くつもりじゃなかったのか?」
「うーん……仕方ないですね。いずれにせよ、ここで倒してしまわないとケットシーさんに迷惑ですし」
「なんだ、悪い奴だなぁ」
 呆れ顔のユリウスに、リューインはほわんとした笑みで応える。
 アルダワに住まう者として、リューインは災魔の質の悪さを知っている。
 見た目が人にそっくりであっても、中身は化け物だ。油断や容赦が致命的な結果をもたらすならば、自分が多少、悪者に見られても迷いを消すべきなのである。
 幸いにしてユリウスもまた猟兵、その辺りは割とドライであるにせよ、割とノリがいいらしい。
「それじゃあ、始めようか。起きろ、【亡霊騎士団】」
 そうしてユリウスはさっそく、ユーベルコードでゾンビやスケルトンを召喚する。
 ボロボロの鎧や武器を手にしたアンデッドの騎士団。農場で呼び出すのはどうかと思うが、そんなことはまあどうでもいい。
 おどろおどろしい空気は呪詛を放ち、死臭はダイエッターズのやる気を削いでいく。
「くっ、数で女の子をどうにかしようなんて! くらえっ!」
 誤解も甚だしいことをわめき散らしながら、ダイエッターズの魔法がユリウスたちを襲う。
 しかしそれは自慢のスタイルに攻撃を加えるものであり、肉体的なダメージには至らない。
「なんだそれは。俺達には効果がないようだが?」
「そんなことは無い筈だわ。男にだって、胸はある。そう、雄っぱいがね」
「なに……!?」
 胸元を撫でまわされるような、怖気の奔る感覚に、二人は思わず身震いする。
 雄っぱい。それは、鍛え上げられた胸筋。
 泥沼の戦場をフルアーマーで駆け抜けたユリウスの鎧の下には無駄肉を削ぎ落した美しい胸筋が……自堕落な生活でちょっと緩んだかもしれないが、それは婚約者の助けもあって改善されていることだろう。
 そしてリューインもまた、学者肌ではありながらも、猟兵としては前線に立って戦うことも多い。一見薄く見える胸板も、自慢の近接攻撃を振るうために常人以上のものが無くてはならない。
 何よりも育ち盛りだからね!
 そんな気色の悪い攻撃にさらされるのもたまらんとばかり、リューインもまたユベルコードを発動させる。
「【助けて~弩羅轟えもん!】」
 ぐぉごごごご……という地響きと共に、地面がせり上がってドラゴニアン型のスーパーロボットが登場する。
 青と白を基調とした、ややもすれば猫とも狸とも言われそうなアレに近いようでまるで違うロボがエコーの利いたボイスで『しょうがないなぁ~』と呆れ声を出してくる。
 小〇館に怒られやしないかと心配になるのをよそに、精悍な顔つきの弩羅轟えもんの額に取り付けられたハイパー・バスター・キャノンが、光を収束し始める。
「待て、そのまま撃ったら、畑が吹き飛ぶぞ」
 ユリウスが冷静な声を上げる。攻撃は中止すべきというものではないが、ちょっと待ってほしい。ケットシーの農夫がだらだらと汗を浮かべている。
 本当に大丈夫なのか。
「おあつらえ向きの的を用意してやる。タイミングを合わせるんだ」
「わかりました。ペダルを踏むタイミングですね」
「うん?」
 ちょっぴり齟齬のあるやり取りはあったものの、ユリウスの意図することは、すぐにわかった。
 ユリウスは亡霊たちに指示を飛ばし、自らも双剣を手に牽制を加え、相手を追い詰めていく。
 さすがに相手は3人に対して、ユリウスたちは亡霊も含めてその十倍以上である。
 幾つかはターンアンデッドの類で土に還ってしまう者もいたが、物量の前に、ついにはそれぞれアンデッドたちに抱え上げられ、わっしょいされる形でぽーんっと上空に放られた。
「今だ、フォーメーションだ」
「迷わず成仏してくださーい!」
 虚空に放られたダイエッターズに向かい、射角を調整したハイパー・バスター・キャノンが閃光を放った。
 空気を焼くような激しいビーム光が空を裂き、ダイエッターズを一掃していく。
 なんともあっけなく、40年前の亡霊は跡形もなくこの世から消し飛んだのであった。
「さあ、前座は片付いたぞ。次はお前の番だ」
 ビームの光跡が余韻となって途切れるのを見送ると、ユリウスが何処ともなく声を向ける。
 黒幕を倒さない事には、記念碑は戻ってこない。
 たぶんだが、災魔と一緒にビームで消し飛ばしたなんてことにはなっていない筈だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『マロリー・ドラッケン』

POW   :    インテリジェンス・イービル・ワンド
【手にした「喋る杖」が勝手に魔法】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    リアライズ・パニック
自身が【恐怖】を感じると、レベル×1体の【モンスター化した書物の登場人物】が召喚される。モンスター化した書物の登場人物は恐怖を与えた対象を追跡し、攻撃する。
WIZ   :    ダブル・マロリー
【眼鏡を外した別人格のマロリー】の霊を召喚する。これは【勝手に放つ魔法】や【杖でのぶん殴り】で攻撃する能力を持つ。

イラスト:ぐれしー

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠村雨・ベルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ぐすりぐすりと、鼻をすする音が何処からともなく聞こえてくる。
 少女のすすり泣く声に猟兵たちが振り向くと、恩人記念碑が建っていた筈の場所には、いつのまにか野暮ったい眼鏡をかけた魔術師のような少女が小さな石碑を手に涙を流していた。
「うう、うう……なんて、なんて、いい話なんでしょう。貧乏な農家を救うために、彼女たちは身を粉にして大豆を買い付けたんですね。
 ダイエットのためだなんて、半分口実だったんですね。
 だって大豆ってたんぱく質だもの。いろいろ言い訳を付けても、たんぱく質はカロリー。ダイエットに向いているとは思えないです。
 それでも彼女たちは、一農家を救うほどには大豆を大量に買い付け、果てにはダイエットに関係ない売り込みまでしてあげたんですね。
 とってもいいお話でした。
 もっともっと知りたい。もっともっと読みたいなぁ……!!!!」
 ぼろぼろと大粒の涙を流すマロリー・ドラッケンの顔は、しかし恍惚に歪む。
 嗚咽を漏らすように自分の欲望を吐き出す様は童女のようでもあり、欲望の権化とも言い得た。
 もはやそれは、正気の領域から外れていた。
 小さくした石碑を手の内に収めると、ギヒヒヒヒと耳障りな声で笑う杖や周囲に浮かぶ魔導書が彼女の眼鏡をはずす。
 泣きはらした顔から熱と表情が消えうせ、すうっとその鼻梁に冷たいものが宿る。
「ウフフ、だからね……。邪魔しないでほしいの」
 圧倒的な魔力が空気を張り詰め、人に非ざる気配が恐怖を想起させる。
 ひと時でも早く、この怪物を倒さねば。
 猟兵たちの脳裏に共通した使命感のような警笛が鳴る。
ユリウス・リウィウス
出てきたな、本の虫。悪は滅び再び平和が戻りましたっていうありふれた結末をくれてやんよ。

「恐怖を与える」死霊の霧展開。見え隠れする人影に、精々怯えろ。
その間に自身も、血統覚醒してからヴァンパイアミスト。霧の中を動くのに、これほど見つけづらいものもあるまい。
本の虫の背後をとったら術を解いて、名もなき暗殺術で「暗殺」攻撃を仕掛ける。
打たれ弱そうに見えるが、実際はどんなものかな? 女子供だろうと、結局はオブリビオン。容赦はしないぞ。

イービルワンドの魔法は、「呪詛耐性」で防御してみる。どうせ呪詛とかその類を仕込んでるんだろ?

終わったか。恩人記念碑も元通りと。どこか欠けてる箇所はないかな、にゃんこの旦那。


リューイン・ランサード
(弩羅轟えもんは畑にダメージ与えるので戻します)
物語への欲望で何でもするのと、悪役っぽい嫌味なおばさん、の組み合わせですか!?
相手が強いのも勿論ですけど、生理的に嫌なので相手にしたくないなあ~<汗>。
とヘタレつつ、かつ失礼な本音ダダ洩れしつつもUC使用して対抗。

魔法や杖のぶん殴りには、UC効果に加えて第六感と見切りで回避したり、結界術・高速詠唱による防御結界と、フローティングビームシールド盾受けで防ぎます。

まずは杖や本に対して、多重詠唱による炎と爆裂の属性攻撃・全力魔法・高速詠唱・範囲攻撃を放って焼き斬り、本体にもダメージ。
その上で「下の句など不要、俳句を詠め。」と光の属性攻撃を籠めた剣で介錯



 ごうごうと、まるで空気に重みが加わったかのような風は、目の前の華奢なオブリビオンが底知れぬ力を持っている証拠であるかのようであった。
 猟兵たちの目の前に対峙するそのオブリビオンは、猟書家マロリー・ドラッケン。
 野暮ったい眼鏡に魔法使いのローブが特徴だが、その酷薄な笑みは大きな眼鏡の着脱によって生み出されたもののようであった。
 本のためならば、人であることすら諦め、オブリビオンにもなってしまうどころか、そのほかは割とどうでもいいというほどに、欲望に忠実なその本性こそが、いつもの無き向きな彼女ではなく、冷徹なその本質を現しているといってもいい。
 物語の世界は、悲喜交々。そんな夢のような世界を一秒でも長く、一文字でも多く味わっていたい。
 喜劇であっても悲劇であっても、それは知識を、未知を潤わすものに他ならない。
 この世のすべてはおいしい物語なのである。
「出てきたな、本の虫。悪は滅び再び平和が戻りましたっていうありふれた結末をくれてやんよ」
 ユリウス・リウィウスは、敢えて陳腐な言い回しを選び、勧善懲悪が如く丸く収まる宣言を下すと、両腰に下げた黒剣を引き抜いて構える。
「は、はうう! わ、わたしの愛する物語以外のすべては、悪ですぅ……!!」
 いつの間にか眼鏡をかけ直したマロリーは、敢えてユリウスの言葉を逆手に取る。
 涙目の魔導士がへっぴり腰でユリウスに向き直っただけのように見えるが、構えた杖にあしらわれたどら猫のような頭がギラリと目を光らせ、彼女の周囲に浮かぶ魔導書が視線無き視線を向ければ、強力な魔力の奔流を思わせる力の片鱗が、ユリウスを総毛立たせる。
 見た目通りの相手ではない。
「物語への欲望で何でもするのと、悪役っぽい嫌味なおばさん、の組み合わせですか!?」
 思わず剣を構えたまま引き下がろうかという圧力を覚えていたところ、ふと聞こえよがしの嫌味が聞こえ、はっと我に返る。
「相手が強いのも勿論ですけど、生理的に嫌なので相手にしたくないなあ~」
 ユリウスの傍らには、いつの間にか先刻のスーパーロボットをしまいなおし、微妙い裏っ返りそうな声色で相手を煽るリューイン・ランサードの姿があった。
 強大なマロリーの気配を前にそんなことをするのは、ヘタレを自負する彼にしてはかなり思い切った行動だが、それは別に気圧され気味だったユリウスを思っての行動ではなかった。
 リューインのユーベルコード【勇気の発露】に至るには、布石が必要であった。
 それは勇気を示すこと。相手よりも勇敢に戦うことは、彼にとっては試練であったが、それを成してこそ力は得られる。
 要するにまぁ、根性見せろということだが……
『ゲヘヘ、ゲヘヘ、いい度胸してるぜ。内心ビビりまくりのクセしてよぉ?』
「そ、そうです! それに、冷静な方は、おばさんなんかじゃないですぅ!」
 どら猫のような杖が下卑た笑いを上げ、もう一つの人格をコケにされてマロリーも憤る。
 いまいち緊張感に欠けるが、それでも多数の視線に見つめられているかのような気配のせいで、撃ち込む隙も見当たらない。
「どうにか、奇襲を仕掛けたいが……目がいくつもあるようだな」
「目を眩ませれば、どうでしょうか」
「矢面に立とうってのか? ハラをくくったらしいな」
 マロリーと対峙しながら、ユリウスとリューインは短いやり取りを交わす。
 静かな決意を見せるリューインがゆるく前に出ると、その意を汲んだユリウスが半歩下がって自らの役割を成すべく準備をする。
 ヘタレの少年リューインは、臆病であるからこそ、勇気の使いどころをいつも考える。
 いかなる窮地をも生き残るためには、力の使いどころを見誤らないこと。
 勇気を振り絞って立ち向かわなくてはならない瞬間を選択しなくてはならない。
 彼にとっては不本意ではあるものの、内心ですくむ心を、勇気という恐怖で炙られながら鍛えられる意志が支える。
「いっけぇ!」
 エーテルソードを構え、そこから生じた魔術を続けざまに放つ。
 炎と爆裂。最初から手加減などしない。
 牽制と本体狙いを一緒くたに、ひっきりなしに放つ。
 一応、田畑を焼かないように気を付けてはいるが、それでも爆炎が庭先を渦巻き、マロリーを中心に燃え上がる。
「きゃあっ!!」
 悲鳴を上げるマロリー。燃え盛る炎に巻かれればそうもなろうというものだが、ちゃっかりと杖から生じる防御魔法がリューインの魔法に対抗している。
 そして、マロリーによく似た白い影が、魔法を放ち続けるリューインの近くにゆらりと杖を伴って姿を現していた。
 眼鏡をしていない冷徹なマロリーの似姿が、質量を伴って分身して魔法をすり抜けるようにしてリューインに肉薄し、その手に持った杖を振り下ろす。
「くぅっ!」
 攻撃に集中していたリューインだが、ぎりぎり注意が間に合って、浮遊するビームシールドによる防御が間に合った。
 限界を超えた反応速度、集中力は、【勇気の発露】によって向上した能力ゆえだろうか。
 だが、一息に使える分はもう打ち止めだ。
「こんなところで、油を売ってていいんですか?」
 にやりと口角を上げて見せるリューインの言葉に分身のマロリーは、はっと周囲を見回す。
 そういえば、後ろに控えていた筈のユリウスの姿が無い。
 それがリューインの言う目くらましであることに思い至ったその時こそが、致命的な隙。
 リューインのエーテルソードに光の魔法が収束する。
「下の句など不要、俳句を詠め」
 輝きのもとに、分身を一刀両断。
 さすがに分身を遠くに飛ばすのは、本人よりも格段に戦闘力が落ちるのか、あっさりとその影は消えうせた。
 一方、炎と爆炎で土煙が立ち上がった一帯には、不自然なほど視界が悪くなっていた。
 まるで誰かが意図的に霧でも呼んだかのように。
 その中では、さしもの魔術的な目を多数持つマロリーとて、気配を辿るには難しい。
「物語以外は目に入らないか? 精々、怯えろ」
 暗雲の如き霧の中で、ユリウスはその目を真っ赤に光らせ、内なるヴァンパイアの血脈を覚醒させると、ユーベルコードを発動させる。
 【ヴァンパイアミスト】は、いくつもある吸血鬼の伝承の中でも有名な変身能力の一つ、すなわち自身を霧と化す術を再現したものである。
 霧の中で霧と化す。これほど厄介な隠れ方はあるだろうか。
 それでも、相手は魔導士。気配の薄れた相手も当然したことがあるだろう。
『グヘヘ、グヘヘ……見えなけりゃ、何もできねぇと思ってやがんなぁ? こいつならどうだ!?』
 イービルワンドの魔術が、四方八方にそれこそマロリーの周囲を覆い尽くさん勢いで放射される。
「ぐ、う……」
 霧と化したその身を、マロリーの杖から放たれる魔術に焦がされる。
 恐らくは、激痛や意識の鈍化などの呪詛が加えられているらしいその魔術に炙られながらも、ユリウスは強靭な精神力でそれに耐え、ついにはその全方位の魔術をやり過ごし、術後の隙が生じたのを見逃さない。
 まったくの無防備に見えるマロリーの背後に降り立ち様、暗殺者の如くその背を黒剣で一閃。
 布を肉を裂き、剣が骨まで達した感触。
 なんと呆気ない。内心でその手応えがまるで人とさほど変わらない事に胸糞の悪さを覚えながらも、油断なく続けざまに、体に覚え込ませた連携を加える。
 足払い、相手がバランスを失ったところに甲冑の靴で急所を、今回の場合はむき出しの喉笛を踏み砕く。
「がひゅっ!?」
 背中から地に打ち付けられ、肺の空気が抜けるよりも早く喉を踏みつけられ頸椎を破壊されると、マロリーの喉笛が不可思議な声を上げる。
 おかしい。あまりにも容易い。
 動かなくなった少女の亡骸を見下ろすユリウスに油断はない。
 完璧な仕事をした筈なのに、妙に釈然としない。
 混乱した表情のまま固まるマロリーの死体が、びくんと痙攣したかと思うと、果たしてユリウスの懸念の通り、その体がまるで風にページをまくられる書物の様にばらばらと紙束となって散っていく。
「あーあー……本が一冊、減ってしまったわ。やってくれたわね」
 冷徹な声色には覚えがあった。
 分身。いや、本体を捉えたのだとしても、スペアがあるというのか。
 真意のほどは確かではないが、いずれにせよ、
「なら、一冊の漏れもなく、焼いてやる」
「本を焼くのは、個人的には本意ではないですが」
 脅威がそうそう簡単に去っていない事を確認し、ユリウスとリューインは改めて剣を構えるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ソフィア・リューカン
……知識や過去の出来事に感動するのは良いけど、それでこの惨事を引き起こすのは違うと思わないのでしょうか?
あぁ、それも分からないのでしたか。失礼しました。

敵の放つ魔法をジェファーソンに防がせつつ、レイニーの機構発動を準備。
様子を見るに何か一手はしてくるはず。

時間経過し敵が何かを召喚した時に合わせ、それらと敵本体に急接近。と同時に人形の内部機構、ベクターズ・ワンを作動。
ジェファーソンには槌を、レイニーには八枚の回転鋸を展開。
現れた存在らを切り刻み、吹き飛ばしなさい。

で、貴女はそれを見物に?残念、あれは殲滅兼フェイント。
背負っていた箒を片足で乗り急接近、人形を手繰る念動力での場の捻じれを体感なさい。



 農場の庭先の気温が、にわかに上昇しているような感覚があった。
 この熱気の正体はなんだろう。
 猟兵の放った火だろうか。
 それもあるだろう。
 物理現象としての火は、肌を焦がすかもしれない。
 それでも、胸にこみ上げるものは、物理現象ではあるまい。
 目の前のこれを、災厄を齎さんと敢えて平和な世界にやってきた奇特な怪物を。
 元居た場所に返してやらねばならない。
 猟兵たちが起こした熱意の高ぶりを、心中にしまい込み、ソフィア・リューカンはあくまでも冷静に胸を張る。
 子供っぽいとも言われる実年齢よりもちょっぴり幼めの見た目のせいか、どうにもアホの子と侮られることもなくはない。
 それでも心まで子供のままではいられない。これでも長女なのだ。
 やっていい事と悪い事の分別は、ある程度はわかっているつもりだ。
「ひ……な、な、なんですか……私の邪魔をしないでください! 私はもっと、物語を読みたいだけなの!」
 とろんと淀んだ視線を向けるマロリー・ドラッケンのその眼差しを正面から見つめる。
 これは強烈だ。やはり、まともな説得が通用するような、これは目ではない。
 なんと甘やかで、黒い。
「……知識や過去の出来事に感動するのは良いけど、それでこの惨事を引き起こすのは違うと思わないのでしょうか?」
 無駄とわかる。そうと知りつつも、説教モードに入らずにはいられなかった。
 一心不乱の子供というのは、始末に負えないものがある。これはその類だ。
 それも、長く長く続けば続くほど、後戻りはできなくなる。
 マロリーはもう、手遅れなのだろう。
 案の定、本に溺れた猟書家は色の淀んだ瞳を開いたまま小首を傾げる。
 嘆息。操り糸を、水面を攫う様にして引くと、従える忠実なる人形がソフィアの前に立つ。
「──あぁ、それも分からないのでしたか。失礼しました」
『ゲヘヘッ!! マロちゃんに説教なんざ無駄だぜ。無駄無駄。面白おかしいおやつのためなら、なんだってやるんだからよぉ』
 ざらざらとした声。マロリーの手にする杖の猫のような悪魔のような意匠がげらげらと笑い声をあげた。
 それに呼応するかのようにその杖から魔法弾が噴き出す。
「ジェファーソン……!」
 男性型の人形、ジェファーソン卿を前に出し、防御に徹しつつ距離を取る。
 確かに魔導士だけあって、魔法攻撃は脅威であるが、それ以上に恐るべき何かが控えている。
 直感がそう告げたのか、ソフィアは迂闊にマロリーの射程には飛び込まず、ひとまずは攻撃を控えて様子を見る。
 しかし、ただ様子を見るだけではこちらも悪戯に損耗する。
 いつでも攻勢に出られるよう、もう一体の人形レイニー嬢の内部に備えた機構を展開可能にしておく。
「い、いい加減に、放っておいてください! 記念碑を読むくらい、いいじゃないですか! 次はどんなお話が見られるんだろう。早く次を探さなきゃ。次はどんな……」
 まったく、頭痛がしてくる。
 甘ったるい声色と、甘っちょろい子供じみた思考。
 本当に本を読み漁ってるのかと疑いたくなるが、これもまた欲求に率直なためなのか。
「だから、だからね。いい加減、諦めてください……う、うう」
 涙を瞳に浮かべ、マロリーの周囲にはいつしかどす黒い霧が立ち込める。
 不安やストレス、恐怖が募ったのか、禍々しい書籍や杖を従える程にはポテンシャルを秘めているマロリーの不安定な感情は、それだけ過敏に反応し、周囲に浮かぶ口の付いた書物からは、ぼとぼとと気味の悪い霧と共に何かが生れ落ちてきた。
 術者のパニック状態から生まれたそれらは、ラッパ銃を携えた猟師や二本足で直立する大柄の狼といった、童話に出てきそうな、しかしそれにしてはあまりに禍々しいモンスターであった。
 まさか、こんな隠し玉があったとは……。
 だが、こうなった以上は、数を増やされる前に生まれたての状態で処理してしまうべきだろう。
「レイニー、ベクターズ・ワン作動」
 すかさずソフィアは、レイニーの内部に仕込んだ武装を展開させる。
 んがっと引っ張り出した槌をジェファーソンに渡し、自身は八枚の回転鋸を展開。
「現れた存在らを切り刻み、吹き飛ばしなさい」
 そうして【人形舞踏劇】は血の幕を上げる。
 頑丈なボディから繰り出される槌の一撃が猟師の頭を叩き潰し、花を咲かせたように回転鋸を展開するレイニーが躍り出れば、狼のはらわたをえぐってちぎり捨てる。
 一度動き出せば止まらない。時計の歯車が巡るかのような人形劇で、産み落とされたモンスターを蹂躙する。
「あわ、あわわ……」
 その様を見ていたマロリーは、その凄惨さに言葉を失う。
「あら、遠くから見物? もっと近くからごらんなさいな。見物料は高くつくけど」
 戦場が開いたのを悟ったソフィアは、両手が塞がっているため背負っていた箒を体を振って落として、それを片足で踏み上げて乗り付ける。
 急加速して一気にマロリーとの間合いを詰めると、両手を交差させる。
 ソフィアの両手には、厳密には操り糸を巻いているわけではない。
 彼ら人形を突き動かしているのは、ソフィアの念動力によるものだ。
 しかしながら、それにもイメージが重要になってくる。
 不可視の念動の糸。それがマリオネットの、文字通りカラクリというわけである。
 つまり、ソフィアの指先と人形とは、強力な念動の糸で繋がっている。
 小さな人形に怪力無双を与え、精妙な動作を可能とするその操り糸には、強力な捻じれがかかっている。
 それを敢えて浴びせるということは、どういうことか。
「あががっ!?」
 めきめきと不可視の糸で締め付けられ、手足が捻じれ曲がったマロリーは白目を剥く。
 いや、白くなったのはそれだけではない。
 全身が白化したかと思えば、少女の肉体は一瞬にして書物の背表紙を解いたかのようにばらばらと紙束に変じていた。
「また一冊……つくづく、厄介なものだわ」
 冷徹が声が響く。
 振り向いてみれば、眼鏡をはずしたマロリー・ドラッケンの姿があった。
 よく見れば、周囲に浮かぶ口の付いた書物の数が減っている。
 一瞬にして身代わりにすり替えたということなのか。
 驚いた。まだ隠し玉を持っていたとは。
「レイニー、ジェファーソン。もう少しだけ、頑張ろう」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティエル・ティエリエル
WIZで判定
むむむー、さっき聞こえた歌は……きっとミフェットだ!
ミフェット(f09867)と合流して悪い魔術師をやっつけるぞー☆

いいお話を独り占めしようだなんてさせないよ!お話はみんなで楽しく聞かなきゃね♪
2体に増えたマロリーの間を飛び回りながらレイピアでチクチク攻撃だ!
なんとなくメガネを掛けてる方はどんくさそうな気配がするからそっちを集中して攻撃するよ!

ミフェットのお歌を聞いてパワーアップしたらどんどん素早く飛び回って相手を翻弄するよ!
最後は【お姫様ペネトレイト】でずばばんって貫いちゃうぞ☆

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です


ミフェット・マザーグース
うん、うん。とってもステキないい話
だけどその物語は、その三人と、猫さんたちの思い出
大事な記念碑を盗んじゃダメだよ

友達のティエル(f01244)を発見!
さっそく合流して、いっしょに悪い子をこらしめよう!

UC【嵐に挑んだ騎士の歌】
リュートを一つかき鳴らし〈楽器演奏〉歌声を高くはり上げて〈歌唱〉
戦うみんなを勇気づける〈鼓舞〉ミフェットの演奏のはじまりだよ
協力できそうな猟兵さんがいたらアドリブ!

♪母さんネコの言うことニャ きょうだい、しまいのゴハンは食べちゃダメ
あなたが食べるゴハンなら ちゃんと母さんあげるから
だけどガマンができない悪い子は おしおき妖精とんでくる
悪い子猫は プスリと針で刺しちゃうぞ!


黒木・摩那
これは、自分の興味のためにはいかなる犠牲もいとわないタイプですね……
放っておけば、どこまでもケットシーの恩人記念碑を荒らしまくること請け合いです。

ヨーヨー『エクリプス』で戦います。
ヨーヨーのワイヤーを召喚されたモンスター達に絡めて、UC【サイキックブラスト】。
身動き取れなくなったところを引っ張ったり、こちらから飛び込むことで、マロリーからの杖や魔法の盾にします【敵を盾にする】。
そして、彼女のメガネを攻撃します【衝撃波】。

同じメガネ掛けとして、メガネを外すと人格変わるとか、そういうことされると迷惑なんですよね。



 ちりちりと、肌が粟立つような焼けつくような威圧感を覚える。
 アリスラビリンスでの戦争もそうだったが、猟書家とはかなりの力を持っているものなのだろう。
 主要な幹部は対峙できたとはいえ、まだかなりの数を残していると聞く。
 彼らのホームでないせいか、その力はかつてほどの脅威を感じないとはいえ、生半なオブリビオンとはやはり違う気配があった。
 そんなものが猟兵たちとぶつかり合えば、その余波は激しい圧力を生むもの。
 空気に質量を覚えるほどの威圧感に嘆息しつつ、黒木摩那はしかししっかりと口を引き結ぶ。
「もう、もうもう! な、なんで、みんなして、わた、私の邪魔ばっかりするんですかぁ!! 私はただ、ケットシーさんのお話を読みたいだけなのに!」
 その渦中、気当たりしそうなほどの魔力の奔流を垂れ流す恐ろしい猟書家、のはずのマロリー・ドラッケンが目に涙を浮かべて地団駄を踏む。
 純粋に歪み続けた彼女の欲求は、その欲望に忠実な分だけ真っ直ぐに歪み続けたのだろう。
 視野狭窄も構うものかという一途さは感服に値するものだが、それだけに頑なという言葉以前に、その認識からしてもう後戻りのできないほどまでに歪んでしまっている。
 象の足裏がいかに繊細であろうと、踏み潰す蟻の存在にまでは気づかないように。
「これは、自分の興味のためにはいかなる犠牲もいとわないタイプですね……」
 本日何度目かの嘆息。
 なんで、という言葉に正論を説いたところで、恐らく彼女に届きはすまい。
 堂々巡りの徒労に陥るが落ちだ。
 考えるだけで疲れる。
 言葉を愛し、書物を愛する筈の相手であろうに、言葉を尽くす事の無意味さを思い知る。
 よそう。考えるだけ無駄だ。もはや、言葉は不要。
 摩那がそう決意した時を同じく、
「ミフェットー!」
「あ、ティエルだー!」
 光をはじいてきらきら煌めく鱗粉を振りまいて、小さな人影がミフェット・マザーグースの頭にぽいんっとぶつかる。
 人が大好きゆえに少女の姿をとるブラックタールのミフェット。その髪は自ら苦手と称するだけあり造形が軟体生物のようであるが、触るとぽいんっとしている。
 親友であるティエル・ティエルエルはそれをよく知っていた。
 そしてフェアリーであるティエルは、20センチちょっとの小さな体であることをいいことに、悪戯っぽくミフェットに体当たりをするのである。
「さっき歌が聞こえたんだ。だからきっと、ミフェットだと思ったんだ!」
「ティエルも来てたんだ。じゃあ、一緒に……」
「うん、悪い魔術師をやっつけるぞー☆」
 二人して拳を突き上げる様子を目にして、摩那はうっかり毒気を抜かれる。
 子供の純真さというものを目の当たりにするのは、何も初めてではない。
 ただ、そんな時代を思い出すには、ちょっぴりハードな過去があったりして、二人が羨ましくも感じるのであった。
 いやいや、そんなことをしている場合ではない。
 ふるふると頭を振り、和みかけた気持ちを引き締め直す。
「放っておけば、どこまでもケットシーの恩人記念碑を荒らしまくること請け合いです。ここで片を付けて差し上げましょう!」
 敢えて険があるかのように声を張ると、握りしめたヨーヨーをリリースし、巻き取った本体を掴み直す。
 ばしっと乾いた衝撃音が手に痺れと質量を感じさせる。
「み、みんなして、邪魔をして……もう、もうやだぁ!!」
 対峙したマロリーはというと、これまでのやり取りをわざわざ傍観してくれるほどの緩さを備えていたが、猟兵たちがやる気を見せると、思い出したかのように涙目になってその力を発揮する。
 災魔から滲み出る膨大な魔力は、激しい稲妻のようなバチバチとした輝きを伴い、やがて人型を取る。
 大きめのとんがり帽子に、野暮ったい三つ編み、身長に不釣り合いな大きめのお胸。
 それはマロリーの似姿であった。
 ただしそれは、いつしか見せたように眼鏡をはずした冷徹なマロリーであった。
「へぇ、2対2……こちらは子供二人と美少女一人という換算ですね」
「美少女?」
 小首を傾げる子供二人に対し、ぐっとサムズアップする摩那。
 あまりにも自信満々だったため、おおーと言うしかなかった。
 さしもの冷静な摩那とはいえ、ちょっと照れてしまう。
「とにかく、数的不利は覆されたも同じ。私達も気合を入れねば」
「わかった! まずは数を減らすんだね☆」
 意外と言っては失礼かもしれないが、あっけらかんとしたティエルの提案は、摩那が思っていた以上にクレバーであった。
 何も真正直に二体同時に相手にすることはない。
 多数を相手にするときの鉄則。それは、弱そうなやつから片付けて、数の面で勝るということ。
「眼鏡の方を先に狙うぞっ♪」
「まあ、そうなりますね」
 二人の意見としては、交わすまでもなく、なんとなく鈍くさそうな眼鏡マロリーを集中的に狙うことで一致する。
 ただし、それを宣言して、相手が止めに入らない訳もなく、
「うふふ、そう簡単にいくと思っているの?」
「聞いて!」
 間に入ろうとした冷徹マロリーを引き留めるかのように、ミフェットの声が響き、ぽろろん、とリュートを爪弾く音に思わず反応してしまう。
 戦場という場所には不釣り合いな牧歌的な音色には、思わず耳が反応せずにはいられないが、それがなんになる。
 聞き流そうとするが、一瞬だけでも気が引ければ、小さなティエルが踏み込むには十分だった。
「くっ、そんな小さな体で!」
 手にしたイービルワンドが振り下ろされるが、それを受け流すようにしてレイピアで逸らし、通り抜け様に持ち手を斬りつけていく。
 風鳴りだけを残して鮮血が尾を引く。
 そしてそのまま眼鏡マロリーの方へ飛んでいくティエルめがけて、冷徹マロリーの魔術弾が追いかけるが、
「きゃあっ!」
 その進路上に眼鏡マロリーが迷い込んだ。
「何をしているの!」
 眼鏡マロリーの手にするイービルワンドが防御の魔術でかろうじてそれを防ぐが、鈍くさいにしても限度がある。
 いや、よくよく見れば、眼鏡マロリーの両足には摩那のヨーヨーが絡みついていた。
 素早くワイヤーを絡めて眼鏡マロリーを射線上に誘導したのであった。
「ちゃんと杖を使いこなして」
「や、やってるよぉ!」
 肉薄するティエル。そしてヨーヨーを伸ばして距離やスピードに緩急をつけて分銅の様に攻撃してくる摩那のトリッキーな連携を前に、本人同士である筈のマロリー二人はうっかり同士討ちしそうになる。
 一見すれば敵に囲まれながら戦っているかのように見えても、一歩間違えば魔法の集中砲火を受けるような位置を駆け回りながら、ティエルと摩那はお互い示し合わせるでもなく、得意な距離を使って牽制を仕掛けていく。
 魔導士であるマロリーは、続けざまの波状攻撃に強力な魔法を紡ぐ暇を持たせてもらえず、こちらも小手先の牽制で二人を追い払うことしかできない。
 そして、
「ねー、聞いて!」
 一層甲高いミフェットの声とリュートの音色。
 一同はそれに傾注せずにはいられなくなる。
 それこそが彼女のユーベルコード【嵐に挑んだ騎士の歌】の合図であった。
「母さんネコの言うことニャ きょうだい、しまいのゴハンは食べちゃダメ
 あなたが食べるゴハンなら ちゃんと母さんあげるから
 だけどガマンができない悪い子は おしおき妖精とんでくる
 悪い子猫は プスリと針で刺しちゃうぞ!」
 子供に言い聞かせるかのような、柔らかな言葉ながら教訓めいた内容の歌詞を載せた歌声に、そうあれかしとティエルのスピードが徐々に増していく。
 大親友の歌声に励まされ、勇気づけられたティエルは勇気の発露のままにレイピアを握る手にみなぎる力を存分に込めて、マロリーを追い詰めていく。
 そしてそれは、摩那もまた自分の策が成った瞬間でもあった。
「やっと、重なった……!」
 変幻自在に操る超固い素材でできたヨーヨーを振り回し、時に絡みつかせる。
 ずっと巻き付けたままにしないのは、繋がり続けるとそれを伝って魔術でカウンターを仕掛けてくる気配があったからだ。
 しかし、それもできないようにする策が摩那にはあった。
 加速したティエルに追い詰められたマロリー。
 そのタイミングを感覚で見切り、二人のマロリーが重なる一瞬を見据えて大きくヨーヨーをループさせれば、
 囲まれていた筈の状態から、いつの間にか二人のマロリーが重なり合ってヨーヨーに巻き取られていた。
「サイキック……ブラストォ!」
 そして反撃を貰う前に、念動の雷【サイキックブラスト】をワイヤーを通じで流し込む。
 それでも反撃しようと杖を持ち上げる気合を見せるマロリーに、摩那はワイヤーを波打たせ、衝撃波を生み出す。
「同じメガネ掛けとして、メガネを外すと人格変わるとか、そういうことされると迷惑なんですよね」
 空気を切り裂く衝撃波が、マロリーの眼鏡を打ち砕いた。
「今ですよ!」
「よーっし、このまま体当たりで貫いちゃうぞー☆!」
 二人まとまったところを逃すはずもなく、ティエルの全身を光り輝くお姫様オーラが包み込む。
 天真爛漫に見えて、実は本当にお姫様なティエルにこそそれは相応しい。
 【お姫様ペネトレイト】によって、ボクのオーラ力を受けて見ろとばかりに突撃するティエルは、光と化してその名に恥じることなく、二人重なったマロリーを貫いた。
 光の粒子が残滓となって空に溶ける頃、分身が消えて倒れ伏し、どこか虚ろな目で砕けた眼鏡を、マロリーは見つめていた。
 手中にあるのは、小さくしたケットシーの恩人記念碑。
 そんな姿を見下ろすのはミフェットだった。
「これね、まだ最後まで読んでいないんですよ……私だけ、私だけのものにするはずだったのに……」
「うん、うん。とってもステキないい話。
 だけどその物語は、その三人と、猫さんたちの思い出。
 大事な記念碑を盗んじゃダメだよ」
 子供に言い聞かせるかのように、ミフェットの言葉はあくまでも攻撃とは程遠い。
「いいお話を独り占めしようだなんてさせないよ! お話はみんなで楽しく聞かなきゃね♪」
 続けて、遠くまで飛び過ぎたティエルもミフェットの言葉に続く。
「でもね、でもね……」
 童女の様に惜しむマロリーに、ミフェットはそれを遮るように、記念碑を握りしめるその手に触れる。
「眠る前に、お話を聞かせて。貴女が、お母さんにしてもらったみたいに」
「あ……お母、さん……そんなこと」
 ずっと忘れていた。
 本を好きになったきっかけ、だったかもしれない。
 そんな、ずいぶん昔の思い出に胸を溶かされ、マロリーの手はついに緩む。
「……ごめんなさい……」
 困ったように笑って、マロリー・ドラッケンは黒い霧となって消えていった。
 その存在が消え失せたことによって、魔法で縮められた恩人記念碑は元通り、元あった場所へと戻っていった。
 なんだかんだと、激しい戦闘があったというのに、農場の庭先は、それまでの喧騒が嘘だったかのように穏やかな風が戻ってきていた。


 ここから先は、ちょっとしたおまけである。

「ふー、終わったか。恩人記念碑も元通りと。どこか欠けてる箇所はないかな、にゃんこの旦那」
 騒ぎが去り、後片付けに追われた猟兵たちは、元通りの姿であるという、農場にはちょっと大げさなくらい大きな記念碑を見上げる。
 武骨な玄武岩のような岩が素材なのかもしれないが、文字盤は丁寧に磨き上げられた上から彫られているようで、文字を読むのはそれほど苦労しない。
「うーん、なかなかドラマティックですね。ちょっと写していっても?」
 ユリウスとリューインら男どもが力仕事の合間に記念碑の前でケットシーの農夫と談笑している。
「いやー、あんまり話題にされても照れるにゃあ……でもまぁ、形になったものも、いつかは雨風に削られるもんさ。そうして、思い出は見た人の心の中に溶けていく」
 そんな農夫と語らう男たちを尻目に、ソフィアは人形の調子を見がてら、周囲の片付けの手伝いを人形を使って行っていた。
「形のあるものはいつか壊れてしまう。でも、思い出や言葉には、形を作りたがる……」
 作業の手を止め、人形たちに直接手を触れる。
 いつか遠く、彼等ともお別れする日がやってくるのだろうか。
 そんな時、もう一度正確に彼らの形を思い出すことができるだろうか。
「あー、眼鏡に泥が……雑に扱った罰が当たりましたかね」
 眼鏡型のデバイスを専用の布でふきふきしつつ、摩耶は視界の限り広がる農場を見回す。
 あれだけ激しく暴れれば、汚れの一つもやむなし。
 あの猟書家に思うことが無いではない。
「ミフェット、そっち持って。落ちちゃう」
「うーん、こうかな?」
 片付けのついでに、子供二人は農場の手伝いを、時間の許す限り行っていた。
 激しい戦いの後だというのに、二人は元気いっぱいだ。
 それを羨む気持ちがゼロではないが、
「これこれ、お子さん方。そんなに見境なしに担いだら、服が泥だらけになりますよ」
 一つ嘆息し、なんだかんだと摩那もそれなりに手伝いに茶々をいれたりもするのであった。
 そうして猟兵たちは、暴れたお詫びにほんの気休め程度のお手伝いをしていたが、来客があるとのことで、早々に引き上げることにした。
 去り際に見た来客というのは、三人の少女だったようだ。
 一人は、小さな背丈ながら元気で活発。
 一人は、反対に落ち着いた長身。
 一人は、そばかすに朗らかな笑みの似合う。
 そんな、どこかで見たような年若い少女たちを、ケットシーの農夫は眩しそうな笑みで迎えるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年11月13日


挿絵イラスト