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その英雄の名を知っているか

#ヒーローズアース #戦後 #知られざる文明 #『神月円明』

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●センターオブジアース
 ヒーローズアースの中心、神々が住まい『燃え盛る不死の怪物』がくべられた、絶え間なき炎と生命力に溢れる其処に歌が響き渡る。
 かつて歌われ、今は喪われていたはずの歌が響く。
 それは神々によって記された譜面。
 天上の音楽として奏でられる神譜『シンフォニック・スコア』は喪われていたが、センターオブジアースに住まう神々は皆、その懐かしき歌を耳にし、顔を上げた。
「英雄の詩が聞こえるか、神々よ」
 それは過去より舞い戻りし、喪われたはずの神譜そのものにして、過去よりの来訪者、化身―――オブリビオンと化した神譜。

 その名を神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』。人の形を得て顕現した嘗ての悪と戦う力を齎した譜面が、今ヒーローズアースの『知られざる文明』へと牙を剥こうとしていた。
「ならば、この歌を手向けとしよう。喪われた英雄の生命を弔うために。我等は謳おう、新たなるヴィランの生誕を―――!」

●飢餓の化身、希望を喰らいて
 最初の記憶は『強くなりたい』、その一点であった。
 今はもう長きにわたる時間と骸の海の波に洗われて、記憶は摩耗して消えてしまっているが、その一点においてのみ未だ心は死なずに残っている。
 英雄の歌が聞こえる。
 神譜『シンフォニック・スコア』。かつての英雄を歌った歌。
 知らないはずの、記憶にないはずの歌が、己の―――『スターヴ』の伽藍堂の脳をかきむしる。
 絶え間ない屈辱。
 癒えることのない傷。
「守る者の血肉や記憶を喰らい続けているのに、何故敗れたのか」

 これは過去の集積。
 英雄に敗れた己の記憶。無手にて、徒手にて、何も武器は保たず。けれど、その拳は岩を砕くは言うに及ばず。蹴撃は海すら割った。
 常勝にして無敗。
 あの英雄の名を、もはや思い出せない。けれど、それでも、『スターヴ』の脳裏をかきむしるのは、あの忘れがたき英雄の無手より放たれる凄まじき力。
「あれが守る者であるというのなら、また喰らおう。そして、必ずや、『アレ』よりも―――『強く』なるのだ」

 過去の化身にして『飢餓』の徒、『スターヴ』がヒーローズアースの『知られざる文明』―――神々が住まう地球の中心、『センターオブジアース』へと神譜が奏でる英雄の歌と共にあらゆる『守ろうとする者』を喰らうべく侵攻を開始しようとしていた―――。

●知られざる文明
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回はヒーローとヴィランの世界、ヒーローズアースにおいて、ジェネシスエイト……オブリビオンの残党に襲撃される『知られざる文明』の一つ、『センターオブジアース』に住まう神々を救っていただきたいのです」
 彼女が頭を下げ、微笑みを湛えるのは猟兵たちであればきっと応えてくれるであろうという確信があったからだ。

「ヒーローズアース2019においてジェネシスエイトと呼ばれるオブリビオンを打倒された皆さんもご存知かと思われますが、かつてジェネシスエイトによって支配されていた『知られざる文明』は復興が必要です。そんな中、私が予知したのがオブリビオンの残党の拠点……『センターオブジアース』です」
 不死の怪物がくべられ、燃え盛る『地球の中心』。
 そこに潜むオブリビオンの残党が『センターオブジアース』に住む神々を捕食しようとしているのだという。

「私の予知によってオブリビオン残党の拠点の近くまで転移することが可能です。かつて神譜『シンフォニック・スコア』と呼ばれた悪と戦う力を持った譜面が人の形を持って現界したオブリビオン神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』が皆さんを阻むでしょう」
 彼女たちは擬人化しているがオブリビオンである。
 常に神譜の歌詞を歌い続けて戦っているが、譜面の名が示すとおり数が多い。彼女たちを打倒し、拠点に存在する残党の主を打倒しなければならない。
「この残党を率いている……と言っていいのでしょうか、中心に座すのが『スターヴ』と呼ばれる神にして過去の化身オブリビオンへと変貌した残党の主です」

 何故今になって目覚めたのか、そして『センターオブジアース』の神々を捕食しようとしているのかはわからない。
 ただ一つだけ『強くなる』という点においてのみ行動を開始し、『守る者』―――つまり、守護者、警備員、保護者など、種を問わず襲いかかるようであった。
「皆さんももちろん、その対象に入ることでしょう。『知られざる文明』―――『センターオブジアース』を守らんとするわけですから、必ず捕食しようと襲いかかってくることでしょう。非常に強力なオブリビオンであることは間違いありません」
 ですが、とナイアルテは前置きするまでもなく、その瞳を集まってくれた猟兵達に向け、微笑む。
 彼らを信頼しているからこそ託せる事件であると確信しているのだ。

「『スターヴ』を倒した後は、『知られざる文明』である『センターオブジアース』の復興を手伝って頂きたいのです。戦いの余波、支配されていたが故に復興の手はまだ必要なのです。直接的な復興支援も大切ですが、動画を作成し、ヒーローズアースの方々にアピールするのも有効かと思われます」
 復興の仕方、その支援については猟兵達のアイデアの方が豊富であろうとナイアルテあ微笑んで彼らを送り出す。
 転移した先で待ち受けるであろうオブリビオンたち。
 言うまでもなく強敵である。だが、それでも猟兵たちは決して負けることはないと信じている。

 なぜなら、『奪う者』と対峙した時、『守る者』はいつだって、誰かの『英雄』なのだから―――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回はヒーローズアースにおけるオブリビオン残党に襲撃されようとしている『知られざる文明』、『センターオブジアース』に住まう神々を救い、ジェネシスエイトに支配されていた『知られざる文明』の復興を手伝うシナリオとなっております。

●第一章
 集団戦です。
 グリモア猟兵の予知によって、『センターオブジアース』を襲撃しようとしているオブリビオン残党の拠点近くへと転移することが可能となっております。
 拠点である朽ちた神殿へと踏み込み、展開してくるオブリビオン神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』を打倒しましょう。

●第二章
 ボス戦です。
 オブリビオン残党の主である『スターヴ』と呼ばれる嘗て神であった過去の化身と戦い、これを撃破しましょう。
『スターヴ』は『守るもの』に対して執着を示し、積極的に襲いかかり捕食しようとしています。これを打倒しなければ、『センターオブジアース』に住まう神々が犠牲になってしまうことでしょう。

●第三章
 日常です。
『知られざる文明』の復興を直接手伝うことも有効ですが、『知られざる文明』である『センターオブジアース』の魅力をヒーローズアースの人々に伝える『観光大使的な動画』を作成し、公開することも有効であることでしょう。
 猟兵の皆さんによって復興の意義もやり方も異なることでしょう、復興に向けて皆さんのアイデアや楽しい動画を作成し、アピールしましょう。

 それでは、ヒーローとヴィランの世界であるヒーローズアースにおける『知られざる文明』、地球の中心にして神々が住まう『センターオブジアース』を守り、復興の手助けをする皆さんの物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
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第1章 集団戦 『神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』』

POW   :    追奏するカノン
【追唱する仲間】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
SPD   :    不協和音のディゾナンス
【相手の出だしを挫く先制攻撃】【立て直しを妨げる追撃】【カウンターを許さない追い討ち】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    熱唱するサビ
予め【イントロから歌い続ける】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。

イラスト:つかさ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ヒーローズアースの『知られざる文明』。
 センターオブジアースと呼ばれる『地球の中心』には不死の怪物がくべられ、その生命力を燃え盛る炎として噴出し続けている。
 その一角、朽ちた神殿に嘗て『神譜』と呼ばれた悪と戦う力を齎す譜面であったものが、オブリビオンとして再誕した神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たちが歌う。

「英雄の歌を歌いましょう。常勝にして不敗。無手にして最強。負けることはなく、その次代に置いて常に最強たる英雄の歌を」
 彼女たちは歌う。
 それが過去に歪められたものであったとしても、歌い続ける。
 それだけが彼女たちに残された最後の希望であり、最後の役目。例えそれが、かつて己達を生み出し、悪を打ち砕く力を齎してくれるようにと祈り、願った神々を、これから虐げることになったのだとしても。

「譜面である我等は歌い続けるのみ。歌って、歌って、歌い続けて、あらゆる生命を、神であっても過去のものとしましょう―――」
アルトリウス・セレスタイト
過去は正しく終わるが良い

天楼で捕獲
対象は召喚物含む戦域のオブリビオン及びその全行動
原理を編み「迷宮に囚われた」概念で縛る論理の牢獄に閉じ込める

高速詠唱を幾重にも重ね『刻真』『再帰』で無限に加速・循環
即時起動し数の利を奪う

捕らえたものは等しく惑うが迷宮
形無き声もまたその範疇だ
真っ直ぐなど進めはしないが、破壊も踏破も急がねば間に合わんぞ

出口は自身に設定
万一辿り着くなら『討滅』の破壊の原理を乗せ打撃で始末
万象を終わらせる破壊の原理に例外は無い

自身への攻撃は『絶理』『無現』で否定し影響を回避
必要魔力は『超克』で“世界の外”から汲み上げる



 序論のごとき旋律がヒーローズアース、地球の中心たる『センターオブジアース』に響き渡る。
 朽ちた神殿はかつての神々の住まいか、それすらもわからなくなるほどに支配の時代は長く、ジェネシスエイトの力は圧倒的であった。
 故に神々は悪を打倒せしめる力を与える譜面、神譜『シンフォニック・スコア』を生み出した。
 それも過去の遺物と成り果てるのであれば、オブリビオン―――過去の化身として現れるのまた必定である。
「歌いましょう、英雄の詩を。再誕するべき英雄の歌を。響かせ、轟かせ、その徒手空拳の鋭さを奏でましょう」
 歌い続けるオブリビオン神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たちは、己の譜面をそれぞれ奏でるように序章を歌う。
 彼女たちの力が増していく。
 それはどうしようもないほどに破壊の力であり、かつて与えられた力とは似て非なるものであった。

「過去は正しく終わるが良い―――惑え」
 静かな声が戦場となった『センターオブジアース』に響き渡る。
 アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)のユーベルコードが輝き、気高き群像の如き迷宮が産み出される。
 それは、天楼(テンロウ)の名の如く、任意の対象を捉える自壊の原理。
 戦場にあってユーベルコードの力は絶大である。如何に歌い続け、その力を増していたのだとしても、根源から否定されるのであれば、それは意味を成すこと無く消えていく砂上の楼閣のごとく。

 故に線上にアルトリウスが立つ以上、何もかもが無意味であり、彼の周囲に漂う淡青の光は加速と循環を為し、ユーベルコードの力を加速度的に増加させていく。
「捕らえたものは等しく惑うが迷宮。形なき声もまたその範疇だ」
 歌声は迷宮には響かない。
 発せられ大気を震わすこと無く、端から自戒していく故。
 ならば、そこに意味はなく原理の意味すらも解することなく消滅していく他無い。
「まっすぐなど進めはしないが、破壊も踏破も急がねば間に合わんぞ」
 その言葉すらももはや届くことはあるまいが、それでもアルトリウスは己のもとにたどり着く万が一を待つ。

 もはや座す以外に何かをすることはできず、けれど、嘗ての英雄の歌を聞くこともなく尽くを消滅させていく。
 それに必要する魔力は世界の外より組み上げるがゆえに無尽蔵。
「もはや歌声は途絶えた。意味ある詩も響かねば存在など在るわけもない。何を思い、何を目的としていたのかさえ興味など在るまいが。過去が俺の前に立つことなどゆるされない。俺の前に立つことの意味すら理解できぬままリアン」
 迷宮に囚われたオブリビオンたちは進むことも戻ることも出来ずに原理の力の前に自壊し、霧散し骸の海へと消えていく。

 たどり着ことのできぬ一歩、その声はアルトリウスにはひとかけらとて届くことはなかった。
「意味ある詩も、聞く者がいなければ―――」
 それが如何に過去の化身であろうと世界に現出すること、その意味を与えることもない。
 無に帰することもなく、ただアルトリウスの周囲に舞う淡青の光が彼の立つ戦場を照らす。
 破壊も、再生も、等しく。
 終わったモノが集積する骸の海であるのならば、それこそがアルトリウスの手の届かない場所である。

「骸の海からにじみ出ることなどないように。惑いすらも消えて終われ―――」
 アルトリウスの戦場において迷宮が閉じた時、そこに在りし嘗ての神譜は一片もない。
 在るのは朽ちた神殿と、その奥に潜むいびつでありながら、強烈なる『飢餓』だけであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

戒道・蔵乃祐
遺失し。誰からも忘れられたが故にこそ受肉を果たし。本来の役割から反転した天上の旋律

嘗ては新たな英雄の誕生を祝福する音色が、今では終末時計の針を進める呪詛になるのだとしても

事の善悪を計る智慧を備えることなく、古郷に再び産み落とされた欠落者
貴女方は、まるで蛭児だ

その命脈を、断つ
全能には届かず。救う術はない。ならば為すべきことを、在るべき形へと還すのみ…


熊野牛王宝印を発動

際限無く力を高め続けるシンフォニック・リリッカーズへ、念動力+早業の健脚で加速して神使の霊鳥と共に切り込み

八咫烏と共闘
破魔の力宿すグラップルで霊気を高め、
除霊+気絶攻撃の一撃を以て穢れを祓い。呪われてしまった彼女達を浄化していく



 朽ちた神殿を前に歌が響く。
 それは嘗て在りし日の歌声であったのだとしても、彼女たち―――神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』はもはやオブリビオン、過去の化身である。
 ならば、それに相対する猟兵とは如何なる存在か。
 過去が未来を食いつぶし世界を破壊するのだとすれば、その悲鳴であろう。
「遺失し。誰からも忘れられたが故にこそ受肉を果たし。本来の役割から反転した天上の旋律」
 その歌声を前にして戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)は珠数珠を鳴らす。
 未だイントロダクション。導入部である歌声が響くが、それこそが彼女たちのユーベルコードである。

「英雄の誕生を告げましょう。徒手であらゆる最悪を打ち破り、弱者を助くる者。願い求めるは弱者の救済。誰も彼もが彼の前では弱者に過ぎないけれど、それでも願いましょう。その拳であらゆるものを砕いて―――」
 歌が響く。
 それが新たな英雄の誕生を祝福する音色であったのだとしても、蔵乃祐には、終末時計の針をすすめる呪詛にしか聞こえない。
 とても悲しことであり、故にどうしようもできないものであると蔵乃祐は理解する。もはやオブリビオンと猟兵として相対する以上、そこにあるのは互いに滅ぼし合う関係でしかない。

 だとすれば―――。
「事の善悪を計る知慧を備えることなく、古郷に再び産み落とされた欠落者。貴女方は、まるで―――」
 蔵乃祐の手には鳥文字の神札。
 誓約掛けられし札であり、加護を与えるもの。その誓約を破った場合に待ち受ける運命は言わずもがな、死であり地獄である。
 故に今の彼の心の中は如何なる感情が吹き荒れようか。
 七難八苦。
 言葉にすれば、それまでの感情であろう。相対するオブリビオン。その在り方を前にして、涙することもできず、されど憐れむこともできず。
 ならば、為すべきことは唯一である。
「まるで、蛭児だ。なればこそ、その命脈を、断つ―――オン サンネイ サンネイ キレイギャレイ ソワカ」
 唱えるユーベルコード。
 その言葉が紡ぐは、神使の八咫烏の現界。共に駆け抜ける踏み込みの速度は神速であり、その拳に宿り師は破魔の力。

「全能には届かず」
 己の拳はそれに達することはない。どれだけ願ったとしても、どれだけ苦しんだとしても到達できぬ頂きがあるのだとすれば、人は心折れ、その面を地面へと下げるほかない。
 けれど、それでも抗い続けるからこその、熊野牛王宝印(クマノゴオウホウイン)。その苦悩、懊悩の果てに在る何かを、蔵乃祐は求めるのかもしれない。それ故に戦うことをやめない。

 神使の八咫烏が放つ鳥羽が乱舞する最中、蔵乃祐の放つ拳が、オブリビオン神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』を穿つ。
 ひしゃげる音が響く。
「徒手、その拳を持って悪を為すを砕く―――」
「救う術はない―――」
「―――蹴撃、海を穿つ」
「ならば為すべきことを、在るべき形へと還すのみ……!」
 その歌が響く。
 拳が穿ち、ひしゃげる音を聞いても尚歌うことをやめぬのが、彼女たちの有り様であるというのならば、その歌を止めることこそが命脈を断つ行為であると知る。

 過去の化身として骸の海から滲み出た彼女たちの存在が呪われたものであるとするのならば、蔵乃祐の拳は、それらの穢れを祓い、浄化する拳に他ならない。
 だが、拳から伝わる感触を拭うことはできず、忘れることもできない。
 否。
 忘れるわけがない。己の拳を叩きつけた者が如何なるものであったのだとしても、過去の化身である以上、かつて『在りし者』たちであるというのならば、過去にしてしまったのだとしたら、それを忘れることなど蔵乃祐には在りえぬこと。
「疾く、骸の海へとお還り戴く……それが唯一の弔いであるのだとすれば、今度こそ英雄の再誕を歌う歌となって―――」
 神使の八咫烏の爪と蔵乃祐の拳が次々と神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』の歌声を尽く穿ち、打倒していく。

 霧散し、骸の海へと還っていく彼女たちの歌声は世界に響き渡ることなく、その意味を過去に還すのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。

第二『静かなる者』霊力使いの武士
一人称:私/我ら 冷静沈着
対応武器:白雪林

この世界に来るのは初めてですね、そういえば。
かつてはそうだったのでしょう。ですが、今はもう違うのです。

早業で【四天境地・『雪』】を使用。
分裂するその霊力矢は、数に対応していきますよ。
そして…貴女方は歌を中断した覚えはないでしょう。ですが、事実中断しているのですよ…UCの効果でね。

攻撃はUCの次に放つ、氷雪属性をつけた普通の矢で。
ですから、相手にとってはいつの間にか終わっていた、になるかもしれませんね。



 数多ある世界の中で明確に世界の成り立ち、その歴史が記されているヒーローズアースにおいて、『知られざる文明』が存在していたことは、それだけ支配していたジェネシスエイトの力が強大であったことを知らせしめることだろう。
『地球の中心』、『センターオブジアース』において、其処に住まうのはすべて神である。
 だが神と言えど猟兵でないものにオブリビオンを打倒するほどの力もなく、響くイントロダクションの如き旋律と歌声は、戦場となった朽ちた神殿に響き渡り続ける。
 それこそが、オブリビオンである神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』のユーベルコードである。
「歌いましょう。英雄の歌を、我等が望む悪を打倒する力宿りし、弱者救済の英雄の歌を」
 際限なく力を増していく歌。
 それは歌い続ければ歌い続けるほどに、彼女たちの力を増していく。

「この世界に来るのは初めてですね、そういえば」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)はわずかに周囲を見回す。
 一口にヒーローズアースと言っても現代地球と似通った部分が多い。さらに知られざる文明が存在しているとも成れば、似通った部分を覆い隠すほどの驚きを彼に与えたかもしれない。
「我等が譜面はそのために。悪を倒すための力を宿すために」
 歌い続ける神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たちは、ハーモニーを奏でるが如く調和する歌声を響かせるのだ。
「かつてはそうだったのでしょう。ですが、今はもう違うのです」
 相対する義透は悲しむでもなく、慈しむでもなく、その細待った瞳の奥で彼女たちを見据える。

 一瞬の明滅。
 それがユーベルコードの放った輝きであると誰が近くできたことであろう。
「凍れ、そのままに」
 白い雪のような長弓から放たれた霊力によって産み出された氷の矢が宙を駆け抜けた。
 その数は義透が相対した彼女たちと同じ数。
 それは過たず彼女たちに放たれるが、それを座して待つだけのオブリビオンではない。即座に対応し、躱そうとして彼女たちは違和感に気がつく。
 歌っていたはずなのに、力がましていない。
 片時も英雄の歌を、神譜に刻まれた音階を奏でるのをやめたつもりはなかった。困惑が彼女たちの体の中を駆け巡っていく。

「貴女方は歌を中断した覚えはないでしょう。ですが、事実中断しているのですよ……」
 それは瞬きの間に起こった出来事であった。
 ユーベルコード、四天境地・『雪』(シテンキョウチ・ユキ)。
 その放たれた弓矢は時間すらも凍結させる一矢。彼女たちの時は凍結され、一時的にでも歌を止めてしまった。
 だからこそ、彼女たちは自分が何をされたのかも理解できぬままに、義透が白い雪のような長弓、白雪林につがえられた氷の矢を呆然と見るほかなかった。

「ですから、貴女方はもう終わっているのです。嘗ての意味を、意義を、その理由さえも知らぬままに骸の海から舞い戻ってしまった不運。神の譜面、その名のままに。世界を呪うこと無く、疾くお還りなさい」
 放たれた氷の矢が神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』を穿ち、その生命を儚くも散らせる。
 氷の矢が彼女たちの身体を包み込み、砕け散って霧散していく姿は、まるで世界に始めから居なかったかのように溶けるようにして骸の海へと還っていくのだ。

 その様子を見遣り、義透は誰にいうでもなく呟く。
「いつの間にか終わっていた、なんて、そうであればどんなによかったことか。彼女たちの歌が、誰かを傷つける前でよかった」
 それは彼ら―――複合型悪霊である馬県・義透の総意であったことだろう。
 だからこそ、目の前の朽ちた神殿……その奥に座す『飢餓』の化身を止めなくてはならない。

 自身が何者であるかもわからず、その過去に歪んだ思いのままに突き進まんとする災厄を己たちが止めなければならない。
 その視線の先で、いびつなる眼光が輝く―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
随分久しぶりな気がするわ、この世界。これまでに比べてかなり神話的な事件だけど。

相手が神譜の化身だというのなら、燃やしてしまえばいいわよね?
「全力魔法」「高速詠唱」火の「属性攻撃」「範囲攻撃」「衝撃波」の不動明王火界咒。
さあ、景気よく燃えなさい。

神々の世界はまだ見ていないのよ。見に行きたいの。あたしの邪魔をせず、疾く燃えろ。
アヤメは炎が治まったらすぐにも追撃を。詠唱を妨げようとするやつを討滅してちょうだい。
アヤメが稼いだ時間を使って第二波を放つ。アヤメ、巻き込まれないで。
神譜全てが燃え尽きるまで、あたしの炎は消えない。
まだ燃え残りがいるなら、アヤメと並んで薙刀で「なぎ払い」「串刺し」にするまで。



 神代に響いたであろう神譜の歌声はオブリビオンとして現界した神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』から響いている。
 過去に在りし神譜は、すでに本来の役目とは真逆の存在としてヒーローズアース、地球の中心『センターオブジアース』へと牙を剥こうとしている。
 ヒーローズアースにおいて『センターオブジアース』は『知れざる文明』であり、そこには神々しか済んでいない。
 だが、如何に超常の存在である神々であったとしてもオブリビオンには敵わない。だからこそ、猟兵の存在が必要なのである。
「随分久しぶりな気がするわ、この世界。これまでに比べてかなり神話的な事件だけど」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)は戦場となった朽ちた神殿を見上げて言う。

 彼女とて猟兵である。
 様々な世界を渡り歩き事件を解決してきたからこそ、そのような言葉も生まれるのだろう。
 神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たちは歌声によって次々と追唱するように新たな神譜の化身たる仲間たちを呼び出していく。
「俗世にありて超常を超えし者を英雄と呼ぶのなら、まさしく。その存在は正しく超越者であったことでしょう。弱者の救いを求める声を聞き、駆けつけ、そして拳でもって悪を断つ―――」
 その歌声は神譜による旋律とともに謳われる。

 けれど、ゆかりはためらうことなく、その紫の瞳をユーベルコードによって輝かせる。
「相手が神譜の化身だというのなら、燃やしてしまえばいいわよね? ノウマク サラバタタギャテイビャク――さあ、景気よく燃えなさい」
 ゆかりの手にある白紙のトランプが投げつけられ、そこから噴出する炎が広範囲に広がり、オブリビオンたる神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』へと絡みつき、浮上たるオブリビオンを灼く。
 それでも歌声は消えない。
 その体を燃やされたとしても、追唱によって呼び出される仲間たちが燃やしても燃やしても増えていく。

「神々の世界はまだ見ていないのよ。見に行きたいの。あたしの邪魔をせず、疾く燃えろ」
 噴出する炎と増えていくオブリビオンの数が拮抗する。
 ユーベルコードによって噴出する炎を乗り越えるように歌声が鳴り響く。耳に突き刺さる。大合唱のような歌声は鼓膜を突き破らんとするような衝撃となってゆかりを襲う。
「―――油断せぬように」
 そこへかばうように式神のアヤメが並び立つ。
「わかったわ。アヤメは炎が収まったらすぐにでも追撃を。詠唱を妨げようとする奴等を討滅してちょうだい」
 ゆかりにとってオブリビオンは過去の化身であり世界を破壊する者である。
 どれだけ悲哀に満ちたものであったとしても、滅ぼさなければ世界が滅びる。であれば、彼女の取れる選択肢は討滅以外にありえない。
 式神のアヤメが時間を稼ぐように衝撃波の如き追唱によって増えていくオブリビオンたちを相手取って時間を稼ぐ。

「アヤメ、巻き込まれないで!」
「奥にこの追唱のユーベルコードを使うオブリビオンがまだいます!」
 式神のアヤメがゆかりに告げ、時間を稼いだ後離脱する。
 その隙にユーベルコードの詠唱を終えたゆかりの不動明王火界咒(フドウミョウオウカカイジュ)が再び白紙のトランプから噴出し、彼女たちを灼く。
 彼女の放つ炎は神譜がづべて燃え尽きるまで消え失せることはない。
 炎の勢いは凄まじく、時間を稼いでくれたアヤメと入れ替わるようにして、ゆかりが炎の中を駆けていく。
 手にした薙刀でもって一直線に突き込み、最後の一体を突き崩す。
「邪魔をしないでと言ったわ。疾く消えてもらいましょうか―――」
 振るう薙刀から放たれる一撃が、ゆかりの周囲にいるオブリビオンの最後の一体を骸の海へと還す。

 残すは朽ちた神殿の奥に座す『飢餓』の化身のみ。
 しかして、その重圧は神殿の奥にいるのだとしても測り知れぬほどの重さ、禍々しさでもってゆかりを威圧するのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

空桐・清導
POWで挑む
協力も大歓迎だ!

綺麗な歌だ
でも、こいつは止めなきゃなんねぇ!
群れをなすリリッカーズを見上げる。
多勢に無勢、上等だ!
「俺はヒーローだからな!超変身!」
変身と同時にUC発動。
黄金のオーラを纏い、
目にも止まらぬ速さで
一体ずつ真正面から[気合]の入ったパンチでぶっ飛ばす。
相手の攻撃は[オーラ防御]で防ぎ、反撃だ!

「歪められても、そこに謳われる人達は最高の英雄なんだろうな。
けど、オレ達だって負けてねぇ!
見せてやるよ神譜奏者!
これが今を生きるヒーローの力だ!」
過去の[勇気]を見出し、ヒーローは[限界突破]する。
「超必殺!ストーム・インパクト!!」
[力溜め]した全力パンチの風圧で[なぎ払う]!



 ヒーローズアース……地球の中心たる『センターオブジアース』に歌声が響き渡る。
 それは過去の化身であるオブリビオン、神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』の奏でるユーベルコードであった。
 元より数が多いことは承知の上であったであろうが、次々と追唱する神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』が現れては、さらに歌声によって増えていく姿は一層、昆虫のような規則性すら感じさせ、その不気味さを際立たせる歌声の美しさが相対する猟兵である空桐・清導(ブレイザイン・f28542)の闘志を燃やさせる。
「綺麗な歌だ。でも、こいつは止めなきゃなんねぇ!」
 朽ちた神殿から現れ続ける神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』を前にしても一歩も退くことなく、彼は立ちふさがる。

 ベルトに装着されたブレイヴ・ドライバーが煌き、彼の勇気を示すようにその身体へと機械鎧が装着されていく。
 赤き鎧の色は、その身に流れる勇気の血潮の如く。なれば、響く歌声の前にも恐れるものはなにもない。
「俺はヒーローだからな! 超変身! “超鋼真紅”ブレイザイン―――!」
 ユーベルコードが輝き、スーパー・ジャスティスの黄金のオーラが身体を包み込む。
 踏み込みの瞬間は誰も清導の姿を見ることは出来なかった事だろう。目にも留まらぬ速度で戦場を駆け抜け、真正面から裂帛の気合と共に放つ拳が神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』を吹き飛ばす。
 だが、一体を吹き飛ばしたところで、彼女たちの歌声は止まらない。

 追唱のように歌声が反響し、次々と新たなオブリビオンの仲間たちが増えていく。
「英雄とは無償なるもの。顧みず、己の心のなかに在る信じるものをのみ、頼みにして突き進むものなれば。その姿にこそ人々は希望を見出す。己の中に確固たるものがあるからこそ、他者の願いを、祈りを受け止められるだけの器が生まれる」
 神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』の歌声が響き続ける。
 その神譜の詩は確かに心を打つものであったことだろう。
 かつて在りし日の歌声にして、誰かの心に灯りを灯すためのものであった。けれど、今はもう過去のものである。
 どれだけその詩が真摯なるものであったのだとしても、猟兵として対峙するからこそ分かることがある。

「歪められても、そこに謳われる人達は最高の英雄なんだろうな。けど、オレ達だって負けてねぇ!」
 吠えるように清導―――ブレイザインの赤き装甲が黄金のオーラを噴出させる。
 過去に見た『勇気』が、今を推し進める原動力となるように彼の力は限界を越えていく。
 例えどれだけ時間がすぎて、あらゆるものが過去になったのだとしても、前に進むことができる。それが生命の輝きの如き黄金であるのだとすれば、ブレイザインの力は限界を知ることはない。
「見せてやるよ神譜奏者! これが今を生きるヒーローのちからだ!」
 黄金のオーラが拳の一点に集中し、ブレイザインが溜め込んだ力を一気に噴出される。構えた拳が放つのは―――。

「超必殺! ストーム・インパクト!!」
 溜め込まれた力と共に吹き荒れる黄金の嵐が、その拳の一撃とともに放たれ、神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』の群れを吹き飛ばす。
 薙ぎ払うように放たれた超絶為る一撃は、彼女たちの歌声ごと、その体を吹き飛ばし尽くを霧散させ、骸の海へと還していく。
 高らかに突き上げられたブレイザインの拳が、勝利を宣言するように拳をほどき、再び固く握りしめられた。
 戦いはこれで終わりではない。
 朽ちた神殿の奥に座す『飢餓』の化身、それこそがこのオブリビオン残党の主であり、『知られざる文明』である『センターオブジアース』に仇をなす者である。

 その重圧のごとく眼光が、ブレイザインを穿つのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天道・あや
神曲!それは是非ともミュージシャンの端くれとして聴きたい!……と、普段なら言うんだけど。残念ながらその機会はナッシングそう。……なら、こっちが聴かせてあげましょう!現代の歌、未来の歌を――!

相手の攻撃を【見切り】ながら、楽器を構え、躍りながらUC発動!【楽器演奏、歌唱、ダンス】

あたしが皆に願うのはあたしの歌を相手に届けたい!だから!皆!届ける為にも応援、よろしくーー!!【コミュ力、手を繋ぐ】

そうして、ひたすら歌う!相手が攻撃してこようが、邪魔してこようが諦めず、ひたすら!何故ならそれがあたしに出来るたった1つの方法!過去の人へと送るありがとうだから!素敵な歌を歌ってくれて、伝えてくれてーーー!



 神々が悪を討つために作り上げた神譜『シンフォニック・スコア』。
 それは言わば天上の音楽であり、正義ある者に力を与えるものであった。けれど、それはもはや過去のものである。
 即ち、骸の海へと押しやられた遺物。故に過去より滲み出るオブリビオンの核を為すものとして現出する。
 それこそがヒーローズアースにおいて地球の中心である『知られざる文明』、『センターオブジアース』に迫る悪意の尖兵である。

「英雄を英雄たらしめるのが力であるのならば、それはただの力でしか無く。力ある正義にこそ、真なる正義を為す。力なき正義は正義ではなく、自称弱者の弁でしかない。なればこそ、力在りき。故に悪を打ち砕く拳」
 オブリビオン、神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たちがイントロダクションを歌い続ける。
 その詩の力はユーベルコードとなって、彼女たちの身体能力を底上げしていく。時間が立てば経つほどに彼女たちの力は増し、手のつけようのないものへと変貌していくことだろう。

「神曲! それはぜひともみゅーじさんの端くれとして聴きたい! ……と普段なら言うんだけれど。残念ながらその機会はナッシングそう……延々とイントロだけ聞かされてもね! やっぱりサビを聞かせて欲しいんだよ!」
 天道・あや(目指すぜ!皆の夢未来への道照らす一番星!・f12190)は、意気揚々とオブリビオンである神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たちと対峙する。
 けれど、神曲! と楽しみにしていた彼女の期待は打ち砕かれる。彼女たちのユーベルコードはイントロだけを歌い続けることによって己の力を強化していくものだったからだ。
 故に彼女は曲の全貌を知ることはできない。それが残念に思えるけれど、それでもあやは退くことはなかった。
「……なら、こっちが聴かせてあげましょう! 現代の歌、未来の歌を―――!」
 あやへと襲いかかる神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たち。
 しかし、彼女たちの動きは直線的なものばかりだった。
 強化された身体能力であっても、動きが単純であれば見切ることは容易い。大気を圧縮して駆動力に変えるインラインスケートが彼女の身体を素早く飛ぶように翻させる。

 踊るようなステップを踏みながら、戦場を駆け抜ける。
 その場において、あやは猟兵である以前にアイドルであった。サウンドウェポンを構え、踊る。歌いながら踊る。踊りながら歌う。
 あらゆる言葉で表現できるもの以上に、あやは楽しげに笑いながら彼女のステージを演出する。
「どもー!あたしの名前はあや!天道あや!突然だけど、皆ー!皆の夢や目標、未来を教えて!あたし!皆の道を照らしたいの!だからお願い!」
 ナンバーは『RAINBOWfutureDream!(ミンナステキミンナカガヤイテルヨ)』。
 彼女の願いは、自身の歌をオブリビオンである神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たちに歌を届けたいということ。
 だからこそ、彼女のユーベルコードは輝く。
 世界に響くのは、神が生み出した譜面ではない。
 人の心が宿す光。ユーベルコードによって輝きを増した、誰かの夢や目標、未来を信じる願いが、あやの歌やダンスと共に世界へ羽撃く音符となって、呼びかけられる。

 彼女のステージは今、此処だ。
 どれだけオブリビオンが己を邪魔しようとも、ひたすらに歌う。
 歌い続け、踊り続ける。それが彼女が目指したアイドルの頂。その姿を笑うものもいるだろう。ナンセンスであると。
 けれど、あやは諦めない。ひたすらに、ひたむきに何かを為す者の瞳に、映るものは唯一つ。
 己に為せる何かをやり遂げることだ。
「過去の人へ送るありがとうだから! 素敵な歌を歌ってくれて、伝えてくれて―――!」
 歌う。歌う。歌う。その真摯なる歌声は、神なる詩を飛び越えて、人の命の煌きによって過去を照らし、オブリビオンたちの身体を骸の海へと光の粒と共に還すのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

亜沙木・しづる
…良い歌、なのに。
曲に込められた祈りや願いが歪められるのは悲しいよね
守る側として、あなた達を止めるよ

UC発動:絡繰鳥を召喚
その翼に切り裂く力を添えて敵に放ち、私と連携するように動かす
標的優先順は、攻撃力の増加量を抑える狙いでサビに近い子>歌い出しの子
まずは絡繰鳥を仕掛けて敵の気を引いてる間に、
私は別方向からダッシュジャンプで上空から不意打ち
鋼糸で絡めて捕縛できたら、蹴りで思いっきり攻撃
敵攻撃はジャンプで避けたり絡繰鳥に受け止めてもらう

私に向けられた歌ではないとは判っていても
なんだか勇気を貰えるような気がするよ!
きっと、昔は色々な人の力になっていたんだね

…この歌、じっくり聴いてみたかったな



 ヒーローズアースに歌声が響く。地球の中心たる『センターオブジアース』、その神々が住まう『知られざる文明』において、朽ちた神殿はいつの時代の産物であろうか。
 すでにオブリビオンと猟兵が戦う戦場となった其処でオブリビオンである神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』の歌声は、その美麗さとは裏腹に世界を破壊し、未来を貪らんとしていた。
「弱者の祈りは、願いに。願いを受ける英雄の拳はあらゆるものを砕いて不敗。膝をつくことはあれど、屈することはなく。ただ苦難を前にしても笑うようにして立ち向かう。誰かのために」
 その詩はきっといつかの誰かのための詩であったのだろう。

「……良い歌、なのに」
 亜沙木・しづる(fragment・f30506)はイントロダクションの歌声を聴き、そう評した。
 その曲に、歌に籠められた祈りや願いが歪められたが故のオブリビオンである。だからこそ、その美麗なる歌声が歪められた上で世に響くことを悲しいと思う心根がしづるの中にはあった。
 だからこそ、彼女は前を向く。瞳を逸らすことはせずに、その瞳をまっすぐにオブリビオンと化した歪んだ神譜を見据えるのだ。
「守る側として、あなた達を止めるよ―――翔べ、羽撃け、困難を切り裂くために!」
 掲げた手のひらより溢れるユーベルコードの輝きが、それを目印のようにして宙征く絡繰鳥(ソラユクカラクリドリ)たちを呼ぶ。
 無数の絡繰鳥たちはしづるの超能力を帯びた緑石英の羽を輝かせ、さらに鋭き力を持ってして空を舞わせる。

「私に向けられた歌ではないと分かっていても―――!」
 そう、神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たちが歌う歌は、自分に向けての歌ではない。
 自分たちの身体能力を底上げするために歌っている。
 かつては誰かのために、立ち上がろうとした者へ力を与える歌であったのだろう。けれど、歪められている。それがとても悲しいことだとしづるは、戦場を駆ける。

 緑の光を宿す絡繰鳥たちがオブリビオンとなった彼女たちを切り裂く力を与えられた翼でもって囲い込む。
 そこへ飛び込むように上空からしづるが白鋼の弦を振るう。両手の五指から超能力を通し、操る極細の鋼糸が神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』の体を捕らえて離さない。
「なんだか勇気をもらえるような気がするよ! きっと昔はいろんな人の力になっていたんだね」
 不思議と歌を聞く己に宿る力もましているような気がした。
 それがたとえ、気の所為であったとしても、しづるは構わないと思った。例え、オブリビオンとして歪められたユーベルコードであったのだとしても、しづるにとってそれは『良い歌』であり、心揺さぶられるものであった。

 だからこそ、残念でならない。
 極細でありながら引きちぎることのできぬ鋼糸から伝わる超能力と共に一瞬にして捕らえた彼女たちを切り裂き、霧散させる。
 骸の海へと還っていく彼女たちの姿を見遣り、しづるはわずかに瞳を伏せて残響のごとく己の耳に残る歌声をリフレインする。

「……この歌、じっくり聴いてみたかったな」
 それはもう叶わないことであるのかもしれないけれど。
 それでもと願ってしまわずにはいられないのであった。だからこそ、しづるは朽ちた神殿の奥に座すオブリビオンの残党の主にして、『飢餓』の化身を打倒しなければならない。
 奥からでも十二分に伝わってくる凄まじい重圧。
 守る者、世界の守護者である猟兵に対する衝動的な殺意に満ち溢れていたのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎

元は英雄を讃える詩が今を苦しめる物になるなんてな
守る者を喰らったら強くなるか、勘違いも甚だしい
守る役目を忘れた音がしゃしゃり出てくるな

SPDで判定
まずは【大声】で【挑発】して此方に【おびき寄せ】る
先制攻撃は譲り【見切り】【早業】で避けながら、【視力】で敵を視認し義眼の黄の災い:感電【マヒ攻撃】を【全力魔法】を使いながら付与して行動を阻害
動きが止まれば銀腕を【武器改造】で剣にして【怪力】【早業】【鎧無視攻撃】【貫通攻撃】【2回攻撃】の技能で敵を【切断】
【継戦能力】で体力を温存しつつ2つのメガリスを用いて戦って行く



『知られざる文明』とはオブリビオンであるジェネシスエイトによって支配されていたヒーローズアースの文明である。
 アースクライシス2019にてオブリビオン支配から開放されてはいるものの、いまだ復興には程遠く、故にオブリビオンの残党を打ち倒すのもまた猟兵に科せられた急務であるといえよう。
 その地球の中心たる『センターオブジアース』に響き渡るオブリビオン、神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たちの歌声はあまりにも歪なものであったようにルイス・グリッド(生者の盾・f26203)は感じていた。
「元は英雄を讃える詩が今を苦しめるものになるなんてな」
 それは皮肉と言う他無い。

 オブリビオンとして人の形を得た嘗ての神譜たち。
 その歌声は今も響き渡り、扇状となった朽ちた神殿において彼女たちの数は益々もって勢いを増していく。
「守る者を喰らったら強くなるか、勘違いも甚だしい。守る役目を忘れた音がしゃしゃりでてくるな―――メガリス・アクティブ!」
 ユーベルコードに義眼のメガリスが輝く。
 それは彼の保つ銀腕のメガリスの力を三倍に跳ね上げさせるユーベルコードである。

 彼の大声に反応したオブリビオンである彼女たちが歌声を発しながら集まってくる。
「歌いましょう。歌いましょう。英雄の詩を歌いましょう。どれだけ傷ついても屈することのない鋼の如き精神と、献身を献身とも思わぬ黄金の精神を」
 すでに譜面としての役目はない。
 けれど、彼女たちが骸の海から染み出した化身であることには違いはない。どれだけ過去、彼女たちの詩によって英雄たちが力を得、悪を挫いてきたかわからない。
 それでも、それを歪めるオブリビオンという存在がルイスには許せなかった。

 先制をくじくように神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たちがルイスに殺到し、その体を掴みユーベルコードの輝きを封じようとする。
 それを躱しながら、義眼のメガリスが黄色の災いに輝き、彼女たちの動きを感電の力によって動きを止める。
「例え過去に歪められたのだとしても―――!」
 動きが止まる。
 どれだけ数を頼みにこちらを圧そうとしたとしても、メガリスの輝きが潰えぬ限りルイスは戦うことをやめないだろう。

 それが彼の猟兵としての矜持。
 銀の腕が煌めくように変形し、刀剣の形へと姿を変え、一瞬の内にオブリビオンである彼女たちを切り払う。
「その音が、歌が、今を生きる者たちを歪めていいわけがない。だからこそ、その因果を此処で断つ―――!」
 銀の刃が己へと殺到するオブリビオンたちを切り捨てる。
 譜面であったとしても、かつての役目があったのだとしても。
 どれだけ尊いものであったとしても、過去になった以上、今を侵食していい理由などどこにもない。

 だからこそ、ルイスの振るう刀剣に迷いはない。
 ためらうことは、それだけで彼女たちに対する侮辱であろう。だからこそ振るう。一切の過去を許さないメガリスの輝きが、瞳の奥で煌々と輝き続けるのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サージェ・ライト
呼ばれて飛び出てじゃじゃ…待って間違えました
違います新しいパターン試したかったんでふ
噛んだ!

締まらない感じですが
真面目に戦いまーす!

歌は良いものですが悪しきが響くのを見過ごすわけにはいきませんね
ここは【VR忍術】で参ります!
カノンにしろ合唱にしろ大事なのは同調すること
それを乱す不協和音を放ちます
ということで必殺、黒板を爪で引っ掻いた音の術!

ふふふ、この音を聞いてまともに歌っていられ…
あれ?これ私もダメージ受けるのでは?
ぐふっ…耳栓忘れてました…

ふらふらになりながらもなんとか距離を詰めて
ハリケーンスラッシュカタールでさくっと2回攻撃
特にマイクをなんとかしないといけませんね!

※アドリブ連携OK



「呼ばれて飛び出てじゃじゃ……待って、間違えました違います新しいパターンを試したかったんでふっ!」
 噛んだ。
 とても良いところで噛んだ。最後に噛んでしまってはもう取り繕うことも難しい、非常に残念な感じの登場となったが、サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は世に忍べないクノイチとしてヒーローズアースに降り立つのであった。

 けれど、それを無視するように歌声は響いている。
 オブリビオンである神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たちの歌声が追唱する度に、数を増していく。
 猟兵たちが戦いに参加し、徐々に数を減らしてはいるが、追唱する者が増える度に数もまたどこからともなく増えていくのだ。
「英雄は潰えず。登る太陽のように再び見えることもあるでしょう。再来、再誕、あらゆる手段を持って、悪在る所に善ありと」
 彼女たちの歌声は嘗て悪を打倒するために神々が作り上げた譜面である。
 骸の海から滲み出たことによって歪められてしまった人型を得ているとはいえ、その力は健在であると言えるだろう。

「むむ……締まらない感じですが真面目に戦いまーす! 歌はいいものですが、悪しきが響くのは見過ごすわけにはいきませんね。メモリセット! チェックOK! 参ります!」
 専用メモリをくるりと手の上で遊ばせ、コンソールにインストール。
 これこそが、新生代のクノイチの為す忍術。
 名をつけるのであればそう―――VR忍術(イメージスルノハカッコイイワタシ)!
「カノンにしろ合唱にしろ大事なのは同調すること。それを乱す不協和音をききなさーい! えーいっ!」
 追唱が次々とオブリビオンである神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』を呼び出すというのであれば、それを阻止する不協和音でもって相対すればいい。
 どこからか取り出したかわからぬ黒板。
 そして、サージェの手には鉤爪。

 まさか、と誰もが思ったことだろう。やめろ、と誰かが言ったかも知れない。
 けれど、サージェは気にしていなかった。
「というわけで必殺、黒板を爪で引っ掻いた音の術!」
 それ忍術じゃない、というツッコミは脳の裏側から何か引っかかれるような不快な音にかき消された。
 ぞわぞわと体の中を走り抜ける不快感。
 その音は神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』の歌声をかき乱し、追唱によって呼び出される仲間たちの動きを止める。
 精錬された歌声であればあるほどに些細な音であっても不協和音の一石となるだろう。
「ふふふ、この音を聴いてまともに歌っていられ……あれ? このぞわぞわ嫌な感じは……ぐふっ……耳栓忘れてました……」
 オブリビオンほどではないにせよ、至近距離で黒板をひっかく不快な音を耳にしたサージェは膝をガクガクさせながら、肌の内側を走る不快感に耐え忍んで駆け抜ける。
「でも、これで歌は止めましたから―――結果オーライです!」
 拳に装着するカタールを振るい、竜巻の如き勢いでサージェはオブリビオンである彼女たちを切り刻んで霧散させていく。

 不快な音に、自身の術によって自爆したとは思えないほどに華麗な斬撃の嵐。
 骸の海へと還っていくオブリビオン達を背にびしっ、とポーズを決めるのだが、これまでの経緯が非常に……その、もう仕分けにくいんですがぁ……。
 微妙に締まらない感じになっているのだが、それをなかったことにするかのように青ざめ、ひきつった顔のままサージェは決め顔のままポーズを取り続けるのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ネメシス・インフィニー
うっさ~。
ヒーローズアースは久しぶりうさ~
ウサギは今日も頑張る~♪
『知られざる文明』かぁ
知られざるなのに僕たちは知ってる不思議不思議…え?そーいう話じゃないのー残念。


≪存在感≫あふれる≪残像≫でリリッカーズを翻弄うさ~
残念。それは残像だ。
残念。それは本物だあべし。

≪早業≫で素早く≪切り込み≫リリッカーズの首筋にUCをトン。
ウサギはねー寂しいと敵の首をねー刈っちゃうん。
≪切断≫した首もってりりかーずの首とったどー。
てへろぺろ…。。

連携やアドリブはご自由にうさ~。



 ヒーローズアース世界は、アースクライシス2019において猟兵とオブリビオンの大規模な戦いが集結した世界である。
 けれど、ジェネシスエイトによる支配を受けていた『知られざる文明』のいくつかは未だ復興には程遠い。
 それに加えてオブリビオン残党が隠れ潜み、今もまた拠点の中に立てこもって、再起の時を待っているのだ。
「うっさ~。ヒーローズアースは久しぶりうさ~ウサギは今日も頑張る~♪」
 ネメシス・インフィニー(ヴォーパルバニー・f21907)はふわふわもこもこな体躯を元気に跳ねさせながら、ヒーローズアースの地球の中心たる『センターオブジアース』に降り立つ。

 いくつかの『知られざる文明』。
 その一つである『センターオブジアース』には神々しか済んでいない。しかし、とネメシスは思うのだ。
「『知られざる文明』かぁ。知られざるなのに僕達は知っている不思議不思議……え? そーいう話じゃないのー残念」
 今まで知られていなかった文明であるがゆえにそう総称する他なかったのだろうが、時計兎には関係なかった。
 今も尚、追唱によってオブリビオンである神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たちは増え続けている。
 彼女たちの歌声は、本来悪を打倒するための力を齎すためのものであるが、過去の化身として現れた彼女たちは本来持ち得るはずのなかった人型を持ってオブリビオンとして現出したのだ。

「うっさ~……こっちこっちうさ~!」
 圧倒的な数にまで増えた神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たちを引き連れ、朽ちた神殿の中を跳ね回るネメシスの残像。
 凄まじい速度で動き回るのは時計兎ならではであろうか。翻弄するように跳ねる動きは、彼を捕らえようとする神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たちをひきつけ続ける。
「残念。それは残像だ。残念。それは本物だあべし」
 時折攻撃に当たりながらもネメシスは多くのオブリビオン達をひきつけ続ける。

「此処まで引き付ければ十分うさ~! おいらの必殺受けてみるさ」
 一瞬の踏み込み。
 それは追唱によって限界まで増えたであろう神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たちの背後を一瞬で取る凄まじき踏み込みだった。
 ネメシスの振るった右腕の手刀が、トン、と軽い音を立てて、オブリビオンの一体の首筋に当てられる。
 それは攻撃というほどのものではなかった。
 けれど、次の瞬間、あっけなくオブリビオンの首が落ちる。

「ウサギはねー寂しいと敵の首をねー刈っちゃうん。とったどー。てへろぺろ……」
 そう、ウサギの腕は世界を狩る(ウサギノウデハセカイヲカル)のだ。
 一見すればなんのことはないソフトタッチの如き手刀であったとしても、その手刀はユーベルコードである。
 放たれた手刀は触れた対象を切断する力を発揮し、次々と神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たちの首を落としていく。
 てへぺろっと舌を出しておどけてみせるネメシスの可愛らしさとは裏腹に、どうもうな首刈りウサギの本領を発揮するように手刀を浴びせ続け、ネメシスがひきつけ続けたオブリビオンたちを次々と霧散し、骸の海へと還していく。

「寂しいと首を刈っちゃうんって言ったうさけど、みんないなくなっちゃったうさね~……後は……」
 振り返る先にあったのは、朽ちた神殿の最奥。
 そこから伝わる重圧は、このオブリビオン残党の主のものであろう。『飢餓』の化身。その力の一端が鋭き眼光と共にネメシスの体を打つ。
 そこにあったのは、オブリビオンと化してもなお、癒えることのない歪みきった『飢餓』だけが存在していた―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

久瀬・了介
自分が戦うのは私怨だ。人々の為でも平和の為でも、まして正義の為でもあり得ない。復讐に意味は無い。死人は何も思わない。自分の為だけの行為だ。
ヒーローズアース。英雄達の世界。自分には最も不似合いな世界だが、そこにオブリビオンがいるなら是非も無い。赴いて殺すだけだ。
復讐の衝動をヴォルテックエンジンで高圧電流に変換。身体能力を【限界突破】させた【早業】で敵の攻撃を見切り回避しつつ【天変地異】発動。敵の群れに「雷」属性の「豪雨」を降り注がせる。【範囲攻撃】【属性攻撃】。
強さを讃えるか。そいつはその強さで何をする。一人殺せば罪人、百人殺せば英雄。最強の英雄と呼ばれるにはどれだけ殺せばいい。
その前に、殺す。



 英雄が誰がために戦う存在であるのだとしたら、それは尊ぶべきものであろう。
 だからこそ、神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たちは歌う。神代より産み出された神譜の奏でる旋律と共に、彼らに力を与え悪を打倒するための力を授けるために。
 そんな誰かのために戦うための力を生み出す彼女たちであったとしても、骸の海へと排出され、堆積していくにつれて滲み出た時、過去の化身―――オブリビオンと化す。
 過去に歪められてしまった神譜たちは、旋律はそのままにその役目を全うすること無く歌い続ける。
 鳴り止まぬイントロダクション。終わらぬ歌声は、彼女たちの人型の力を無限のように増していく。
「英雄の歌は此処に。されど英雄がいないのであれば生み出しましょう。誰かの器を依代にして、誰かのために戦う誰かを生み出しましょう」

 彼女たちの歌声を前にして、久瀬・了介(デッドマンの悪霊・f29396)はその赤き瞳に殺意を宿して立ちふさがる。
「自分が戦うのは私怨だ。人々のためでも平和のためでも、まして正義の為でもありえない」
 その身の内側で『魂の衝動』を電流に変えて、死人たる体を突き動かすヴォルテックエンジンが唸りを上げる。
 どうしようもないほどにオブリビオンに対する殺意が止まらない。止める気もない。復習であるが、この復習に意味はない。死人たる己は何も思わない。
 これは自分のためだけの行為であると了介は理解していた。

 朽ちた神殿を駆け抜ける。
 互いに交錯する視線は、けれど交わる事無く振るった武器によって打倒する。
 未だ唸るように回転し続けるヴォルテックエンジンが魂の衝動とも言うべき復讐心を高圧電流に変換させる。
「ヒーローズアース。英雄たちの世界。自分には最も不似合いな世界だが―――」
 彼の魂の衝動が変改された電流と共に放たれるユーベルコードの輝き。
 それは雷の雨とも言うべき凄まじき数の雷の豪雨。
 降り注ぐ電撃を躱す術はなく、その迸る電流の前に神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たちは為すすべもなく雷に討たれ、焦げ付きながら霧散していく。

「そこにオブリビオンがいるなら是非もない―――滅びろ……何もかも」
 放たれ続ける天変地異(テンペンチイ)の如き落雷の雨。
 どれだけ撃ち放ったのだとしても、このヴォルテックエンジンを回し続ける魂の衝動は潰えることはなく、そして薄れることなく、さらなる猛りと共に電流となってほとばしり続ける。
 けれど、神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』の歌声は途絶えない。
 電流で喉を焼かれ、体を焦がしても尚、歌い続ける。
 それはオブリビオンであるという以前に譜面であるという存在の根底にあるものが生み出した衝動のようなものであったのだろう。
 オブリビオンでなければ、という考えを了介は振り払った。それにはあまりにも意味がなさすぎる。

「強さを讃えるか。そいつはその強さで何をする。一人殺せば罪人、百人殺せば英雄。最強の英雄と呼ばれるにはどれだけ殺せばいい」
 戦争の倫理。
 だからこそ、了介にとって英雄という称号には意味がない。
 どれだけ殺そうが、どれだけ偉業をなそうが、変わることはない。決して拭えぬ罪と罰を背負って生きるしかない。
 だからこそ、了介の赤い瞳が煌々と輝く。その瞳に宿すには怨嗟の如き復讐の炎であり、その身より迸る電流は彼の体を突き動かし続ける。
 誰かが英雄になる―――。

「その前に、殺す」
 例えそれがオブリビオンであったとしても、為すべき事に変わりはないのだというように赤い瞳と緑の『飢餓』の化身の眼光が交わるのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

草守・珂奈芽
まだまだ未熟だけど、ヒーローを目指す者として全力さ出すよ。
ヒーローズアースの今日って未来を守ってくれた過去の遺志を、これ以上穢したくないからさ!

UCで音を吸収する矢を作って雨みたいに降り注がせるよ。
〈誘導弾〉として直接当てるのは勿論戦場に張り巡らせて、歌声での強化なんてさせない。
そんな歌、もう歌わなくていいのさ!
矢の降り終わった後は翠護鱗の沢山の結晶の〈範囲攻撃〉で薙ぎ払ってくよ。
攻撃されても攻防一体、結晶で〈盾受け〉してみせるのさ!

過去の英雄はきっと立派だったろうし、支えてくれた貴方たちも凄かったと思うのさ。
それでも昔のあなたたちみたいに明日さ守る為…行かせてもらうのさ!



 ヒーローズアースは戦いの歴史の積み重ねを知ることのできる世界である。
 神々在り、そして魔法あり、人の戦い在りと連綿と紡がれてきた戦いの歴史。そこにあって、人々の平穏のために、弱気を助くるために立ち上がる者の名を英雄と呼ぶのであれば、そこにあったのは願いであり祈りであったことだろう。
 故に過去に歪む神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』は過去より滲み出た現在を喰らい、未来をも潰す存在に他ならぬ。
「まだまだ未熟だけど、ヒーローを目指す者として全力さ出すよ」
 草守・珂奈芽(小さな要石・f24296)は、その脆い石の体であってもなお、誰かのために戦うことを選んだ猟兵の一人である。
 己の力の弱さを知るものにこそ、力が宿るのだとすれば、ユーベルコードは彼女にこそ輝く。
「ヒーローズアースの今日って未来を守ってくれた過去の遺志を、これ以上穢したくないからさ!」

 輝くユーベルコードが神通力の矢となって放たれる。
 それはサイキック・エナジーアロー。一見すればただのサイキックの弓矢であった。
「―――……? ―――……!」
 だが、神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たちは困惑していた。彼女たちが紡ぐはずの歌声が響かない。
 どれだけ声を発しようとしてもイントロダクションの旋律すら紡げない。
 それは彼女たちの存在意義を根底から否定するものであった。歌を、戦慄を紡げぬ譜面に意味はない。
 ただの紙面でしかなく、かつて神代において神々が生み出した至高のメロディすら失われる。
 それは珂奈芽のユーベルコードの輝きに寄るものであった。

 彼女のはなったサイキックの矢は神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たちの体を貫かなかった。
 扇状となった朽ちた神殿に降り注ぎ、音を吸収する力を発現させ、彼女たちの歌声を奪い去ったのだ。
「そんな歌、もう歌わなくていいのさ!」
 そう、歌わなくていい。
 過去に歪んだ歌声は、本来の歌ではない。彼女たちが産み出され、誰かのために力を為すという存在意義を歪める歌声を珂奈芽は聴いていられなかった。

 いつかの誰かのために歌われた歌が、こんな結末を迎えていいはずがない。
 彼女の魂晶石の飾りから溢れる魔力結晶が無数の剣となって、神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たちを薙ぎ払う。
「過去の英雄はきっと立派だったろうし、支えてくれた貴方達もすごかったと思うのさ」
 振るった剣が次々と彼女たちを霧散させていく。抵抗する彼女たちを受け止めながら、それでも珂奈芽は戦うことをやめない。
 過去の遺物である彼女たちが、ヒーローズアースの今日を作り上げたことは言うまでもない。
 そこに敬意はある。
 けれど、だからこそ、珂奈芽は戦う。かつて在りし日の彼女たちの記憶を、過去をオブリビオンとなった彼女たち自身が穢すことのないようにと、万感の思いを籠めて結晶を振るう。
 緑の光が輝くように振るわれ、オブリビオンを討つ。
「―――それでも昔のあなたたちみたいに明日さ守る為……行かせてもらうのさ!」
 放った一撃が、最後の神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』を打倒し、駆け抜ける。

 その先に在る『飢餓』の化身、このオブリビオン残党の主を打倒するために、凄まじい重圧を感じさせる眼光と珂奈芽は真っ向から対峙するのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
知られざる文明……その復興はかなり興味があるね……うん。
手伝うためにもまずはオブリビオン共を倒さないといけない……

さて、奴らは戦闘力を強化してくる……けれどもその分動きを見破り安くなっているはず…
……だから神殿の地形を利用して攻撃を回避しながら…敵を誘導…術式組紐【アリアドネ】を用いた拘束罠を多数仕掛けた場所に誘導して敵の足を止めるとしよう…
…敵が罠引っかかる、もしくは罠を警戒して動けなくなったら【夜空の光は全て星】による立体魔法陣に閉じ込めて冬寂術式【フィンブル・ヴィンター】を発動…魔法陣内に吹き荒れる氷の嵐で仕留めるとしよう……



 文明とは知の集合体である。
 だからこそ、『知られざる文明』と呼ばれるヒーローズアースにおける4つの文明は知を探求する者にとっては魅力的なものとして瞳に映ったことだろう。
 電子型解析眼鏡『アルゴスの眼』の奥に輝くメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)の瞳もまた同様であった。
「知られざる文明……その復興はかなり興味があるね……うん」
 隠しきれない知識への興味。それがメンカルのモチベーションでもあったのだろう。だからこそ、復興の前になさねばならないことがある。

 それこそがアースクライシス2019と呼ばれる猟兵とオブリビオンとの間に起こった大きな戦いの残滓であるオブリビオン残党の排除である。
 ここ神々が住まう地球の中心たる『センターオブジアース』において、響き渡る歌声をメンカルは聞いた。
 オブリビオンとなった神代の譜面、神譜『シンフォニック・スコア』が人型を得て骸の海より滲み出た存在、神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たちと対峙する。
 すでに情報を得ているメンカルにとって、どれだけイントロダクションを歌い続けていたのだとしても、情報があれば対策を取るとなど容易であった。
「神殿の地形を考慮に入れて……誘導」
 歌い続けながら、底上げされた身体能力でメンカルに迫る神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たち。
 彼女たちの歌は、英雄に力を与え、悪を打倒するための力であったが過去に歪められた彼女たちにとって、それは己の力を増すための手段でしか無い。

「歌いましょう。英雄の歌を。どうしようもないほどに愚かでひたむきな者の歌を」
 彼女たちは歌う。
 かつては誰かのために。今は己達のために。強化されたが故に直線的で読みやすい動きをメンカルはつぶさに解析しながら、彼女が仕掛けた術式組紐『アリアドネ』を用いた拘束罠のひしめく場所まで誘導する。
「単純な動き。強化されたから……簡単に追いつけると思ったんだろうね……けど、罠の可能性は考えなかったかな……」
 瞬間、神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たちの体を捉える魔力籠められし組紐、アリアドネ。
 展開された拘束罠が多重に張り巡らされ、彼女たちの体を絡め取る。

「闇裂く光よ、奔れ、描け。汝は光芒、汝は閃画。魔女が望むは夜空彩る星の華」
 メンカルの瞳がユーベルコードに輝く。
 夜空の光は全て星(スターライト・ドローイング)とも言うべき幾何学模様が刻まれ、星剣の軌跡が描く立体魔法陣が術式を組み上げていく。
 それは拘束された神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たちを持ってしても、躱すことなどはできようはずもないダメ押しの包囲攻撃であった。
 立体魔法陣が彼女たちをその場に押し留め、放たれた氷の嵐が、散々に人型を得た体を穿ち、霧散させていく。
 一網打尽に霧散し、骸の海へと還っていく彼女たちの歌声はもはや聞こえない。

 朽ちた神殿において、かつて響き渡っていたであろう歌声の残滓は潰えた。
 故にメンカルの瞳が捉えるのは、神殿の最奥に座すオブリビオン残党の主であり、『飢餓』の化身たるオブリビオンの鋭き眼光であった。
 凄まじき重圧と、その飢えた瞳は破壊以外を齎すとは到底思えなかった。
「―――復興を手伝うため。オブリビオンは倒す……悪いけれど、その『飢餓』は癒やしてはあげられないかもしれない」
 神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たちの歌声は、もしかしたのならば、この『飢餓』の化身を癒やしていたのかも知れない。
 けれど、その『飢餓』が今を生きる者たちを害すのだとすれば、メンカルは正しく戦うことだろう。
 即ち、猟兵として―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
歪められても尚、定められた己が役割を果たし続ける
我が身は逸脱した身ですが、ウォーマシンとしてその行為に敬意を

そしてこの世界を護る為、英雄(ヒーロー)達に成り代わり討たせて頂きます

盾と剣を背負い両手に握るは二振りのUC
●推力移動で敵陣に飛び込みセンサーでの●情報収集で増援含む四方八方の包囲を●見切り光刃で一刀の元に
光刃伸ばし、時に鞭の様に●ロープワークで操り遠間の敵を●なぎ払い
懐に飛び込まれれば●瞬間思考力で爪先の光刃伸ばし脚撃で迎撃
以降は四刀流で戦闘

御伽の騎士と同じように、人々に歌われる限り物語の中で英雄は真に最強で不滅の存在
…このような形で歌われることが残念です



 存在意義を自覚する生命は多くはないだろう。
 どれだけ己に課された意義があろうとも、生命である以上に生存に優先されるものは多数あるだろう。だからこそ、ウォーマシンたる身であるトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)にとって、神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たちの歌声は、敬意を払うべきものであると感じられたのだ。
「歪められても尚、定められた己が役割を果たし続ける。我が身は逸脱した身ですが。ウォーマシンとしてその行為に敬意を」
 けれど、敬意があれどオブリビオンとして存在する以上滅ぼさなければならないのが猟兵という存在である。
 トリテレイアは、故に敬意を払う。
 滅ぼす間柄であるからこそ、そこに介在する敬意がなければ、ただの打倒に他ならない。

「そして、この世界を護る為、英雄達に成り代わり、討たせて頂きます」
 歌声が響き渡る。
 追唱によって増殖していく神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たちの歌声が外部センサーを打ち鳴らすほどに響く。
「英雄は此処にありて、弱者の祈りと願いを携え立ち上がるものであるのならば、その拳に宿りし力は万物を砕くもの」
 彼女たちの歌声は同一のものであるがゆえに、機械的なものにも感じられたことだろう。
 対するトリテレイアは大盾と剣を背負い、両手に握るは二振りの大出力可変式/足部隠蔽収納式擬似フォースセイバー(フォースセイバー・イミテイト)。
「フォースナイトの素養が皆無だった故の模造品ですが……」

 スラスターが吹き荒れ、増殖を続ける神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たちの群れへと飛び込む。
 歌声が響き渡る中にあって音響センサーは死んだも同然である。だが、それでも光学的なセンサーや熱源センサー、あらゆるもの使い、トリテレイアは二振りの疑似フォースセイバーを振るう。
「騎士として恥ずべきこの戦法、敢えて使わせて頂きます」
 背後より襲いかかるオブリビオンである彼女たちの動きを見切り、手にした光剣を振るい、一閃の元に下し、霧散させる。

 四方八方から取り囲むオブリビオンの群れ。
 加えて増殖するように追唱し、歌声のままに姿を増やすオブリビオンの厄介さはトリテレイアも知ってる。
 けれど、そこで退くわけにはいかない。何故ならば。
「御伽の騎士と同じ様に、人々に謳われる限り物語の中で英雄は真に最強で不滅の存在……このような形で歌われることが残念です」
 それはもはやどうしようもないことであったことだろう。
 歌声は響いてしまった。
 だからこそ、退けない。この様な形で歪められた歌を、響かせてしまった以上、トリテレイアは己の騎士道精神に則った上で彼女たちを打倒しなければならない。

 光剣が鞭のように伸縮し、薙ぎ払うように振るわれる。
「その歌声を止めましょう。かつての誇りを、かつての祈りを、願いを今に続く過去から、未来に託すためには―――!」
 つま先に仕込まれた光剣が展開され、一瞬の蹴撃とともに彼女たちを吹き飛ばし霧散させる。
 両手、両足、そのすべての機能を開放し戦うトリテレイアの姿は嵐のように増殖したオブリビオンである神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たちを骸の海へと還していく。
 時折明滅する光剣の輝きは嵐の中で落ちる雷のようでもあった。

 そして、その戦いの奥。神殿の最奥に座す『飢餓』の化身の瞳が輝き、重圧を伴ってトリテレイアのセンサーに感知される時、彼の周囲に嘗ての神譜たる『シンフォニック・リリッカーズ』たちの姿はなかった。
「―――参りましょう。その有り余る『飢餓』が今という未来に害を為すというのならば」
 互いの眼光とアイセンサーが煌めき、激化する戦いを予感させるのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ソナタ・アーティライエ
自身とどこか相通ずるものがある彼女たち
それがオブリビオンとなって甦り、歪められてしまった姿を見るのはとてもつらいです
全霊の歌で送らせて頂くのが、わたしにできるせめてもの……
どうか……安らかに

彼女たちの歌を全て聴いて、全てを受け止めこの胸に刻みます
やはり今の彼女たちの歌には心がありません
歌は……音楽はただの音のつながりではありません
それに込められた想いや心もまた大切なものです
歪められてしまったが故に、それを無くしてしまったのですね
……どうか思い出してください

アドリブ・連携歓迎です



 イントロダクションの歌声が響く。
 それは英雄としての力を齎すはずの、弱者の救いを求める声であり、祈りであり、願いであった。
 けれど、過去に歪められた歌声は今は弱者を虐げるためのものになってしまっている。嘗ての神譜『シンフォニック・スコア』と呼ばれた譜面も、人型を得てオブリビオンとして蘇れば神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』として、ヒーローズアースに災禍を齎す徒でしかない。
 だからこそ、己自身とどこか相通ずる物がある彼女たちを前にして、ソナタ・アーティライエ(未完成オルゴール・f00340)の青い瞳には哀しみが灯っていた。

「オブリビオンとなって蘇り、歪められてしまった姿を見るのはとてもつらいことです……」
 彼女のそんな哀しみも、想いも、神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たちには届かないことだろう。
 構うこと無く紡がれ続けるイントロダクションは、彼女たちの身体能力を底上げし続ける。歌えば歌うほどに力を増すのは、彼女たちの嘗ての神譜出会った頃の力の名残であったのかも知れない。
 英雄に力を齎し悪を打倒するための力が、今はヒーローズアースに災いをもたらさんとするために使われていることが、ソナタには耐え難い哀しみだった。
「その拳が硬いのは、悪を打倒するため。砕くため。神鬼宿りし拳は、あらゆる災厄を打ち砕くもの。ならば、すでに人の身ではなく鬼となりて、あらゆる邪悪を払う拳の一振り―――」
 紡がれる歌声を前にソナタは顔を上げる。

「ならば、全霊の歌で送らせて戴くのが、わたしにできるせめてもの……」
 せめてもの手向けであろう。
 彼女たちの歌を胸に受け止める。ソナタの心に響くはずの音色はどこか虚ろであった。せめて胸に刻もうとしするも、どこかすり抜けていく。
 やはり、と思う。
 今の彼女たちの歌には心がない。願いがない。祈りがない。どれだけ譜面が素晴らしく、詩が優れたるものであったとしても、ソナタの心には響かない。
「歌は……音楽はただの音のつながりではありません。それに籠められた思いや心もまた大切なものです。故にこの歌を贈りましょう―――葬送の鐘、鳴り響く……」

 彼女の瞳が輝く。
 ユーベルコードの輝きであり、その姿は光をまとう天使にも似た姿となって、ソナタは朽ちた神殿に浮かび上がる。

 ―――幻想葬送曲第153番『汝の魂を翼にゆだねよ』(ソノミチユキニヤスラギヲ)。

 それこそがソナタが神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たちに贈る歌である。葬送のための曲。
「歪められてしまったがゆえに、なくしてしまったのですね……どうか思い出してください」
 いつかの誰かのために歌った、奏でた旋律を。
 そのためにソナタはこの戦場に立つ。
 悲しき過去の遺物と成り果て、オブリビオンとして現界した彼女たちにソナタが贈ることのできるたった一つのこと。
 彼女の歌声が癒やすのは、歪み。

 時間は逆巻くことはない。
 けれど、その思いは巡ることはあるだろう。天使の羽が広がり光が歌声と共に神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たちを浄化し、霧散させていく。
 悲しげながらも微笑み、その門出を見送るソナタの耳に残響のように神の譜面出会った頃の旋律が聞こえたような、そんな気がしたのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
いやちょっとセンターオブジアースの観光に来てみようかと…
擬人化した神譜ね、忘れ去られてしまったとはいえ気の毒な存在
…録音して売るから1人ずつきちんと歌ってくんない?
それか譜面起こしといてよ


《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
敵の連撃を『オーラ防御』でコーティングした両剣で『武器受け』して逸らしながらタイミングを計る
十分に引き付けて、ユーベルコードを封じられる前に【エナジー開放】を起動
この距離なら、今から離脱しても間に合わないよ

忘れ去られるのは辛いもんね…
オブリビオンじゃなくて、別の何かで蘇れば良かったのにね

…さてと、録音はちゃんと出来たかな?
譜面起こしもしたいしね



 朽ちた神殿に歌声が響く。
 それは数多の猟兵たちによって打倒されたオブリビオン、神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たちが奏でる歌声であった。
 もはやわずかばかりの数しか残っていないが、それでもなおヒーローズアースの『知られざる文明』である地球の中心たる『センターオブジアース』に災いを齎さんと蠢く。
 朽ちた神殿を見上げ、一人の猟兵が呟く。
「いやちょっとセンターオブジアースの観光に来てみようかと……」
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)は対峙するオブリビオンである神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たちを見回し、頷く。
 そういう冗談が通じるような雰囲気でもなければ、相手でもなかったようだった。それを悟って彼女たちを見やる。

「擬人化した神譜ね。忘れ去られてしまったとはいえ気の毒な存在……録音して売るから一人ずつきちんと歌ってくんない? それか―――」
 玲の言葉に歌いながらも襲いかかる神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たち。
 彼女たちにとって玲とは滅ぼすべき猟兵である。
 その言葉が届かないことは玲もわかっていたが、それでもなお歌声を求める。
「―――譜面起こしておいてよ。って言っても、オブリビオンだものね。仕方ないね」
 襲いかかる彼女たちの攻撃は直線的なものばかりであった。おおよそ戦闘というものに向いてはいない。
 辛うじて猟兵を打倒する可能性がある力と言えば、追唱する毎に増殖していくユーベルコードぐらいなものであったことだろう。
 襲いかかり、こちらの機先を制してユーベルコードを封じる力があったのだとしても、それは玲には通用しない。

 抜き払った模造神器の二振りが、その力を示すように輝く。
 再誕と還りつく為の力。すがりつくように襲いかかる彼女たちを刀身にオーラまとわせた模造神器が受け流していく。
 二振りの刀身の中ではエネルギーが徐々に充填されていく。
「忘れ去られるのは辛いもんね……」
 すがりつくように襲いかかる彼女たちの表情に悲壮感はない。歌声も変わりないものである。けれど、それでも辛いね、と呼びかけるのは玲が何かを感じ取っていたからかも知れない。
「オブリビオンじゃなくて、別の何かで蘇ればよかったのにね……エネルギー開放」
 彼女の瞳と模造神器の刀身が輝く。

「この距離なら、今から離脱しても間に合わないよ―――広域放射!」
 ユーベルコードの輝きによって、エナジー開放(エナジーバースト)された高威力のエネルギーの奔流が迸るようにして神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』の体を討つ。
 扇状に広がるエネルギーの一撃はオブリビオンの一体たりとて逃れることのできぬものであり、凄まじきユーベルコードが効力を喪って模造神器から輝きが失せた頃、そこに立っていたのは玲だけであった。

「……さてと、録音はちゃんと出来たかな?」
 彼女は自身のデバイスにある録音機能を作動させ、彼女たちが歌っていた歌声を耳に当てて確認する。
 どれだけ歪められていたのだとしても、その譜面は、歌声は残っている。ならば玲ができることはある。
「よしよし。ちゃんと取れてる。後は譜面に起こして……っと」
 その前に、と玲が視線を向ける。
 その先から感じる重圧を、ずっと感じていた。『飢餓』の化身と呼ばれるオブリビオン。

 その歪んだ欲望と執着が今、玲に牙を剥こうとしていた。
 それは文明や文化を保存し残そうとする『護る』という意志に反応するように、その重圧を増すのであった。
「はん―――上等。奪えるものなら、奪ってみろー! ってね!」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『スターヴ』

POW   :    喰わせろ
戦闘中に食べた【「守る者」の血肉】の量と質に応じて【両手の鉤爪が巨大化し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    寄越せ
【標的の足元】から【赤き手の群れ】を放ち、【「守ったものの記憶」を奪う事】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    捧げよ
【視線】を向けた対象に、【緑色の稲妻を落とす事】でダメージを与える。命中率が高い。

イラスト:カス

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ネライダ・サマーズです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 過去の集積が滲み出たものが過去の化身であるオブリビオンであるというのならば、己はあらゆるヴィランの保つ『飢餓』そのものであったことだろう。
 すでに嘗て在りし神の一柱であったころの記憶はない。
 あるのは『強くならねば』という一点のみ。

 そして、あらゆる守護者を喰らうことによって力が増していく。
 誰かを守ろうとする生命は、いつだって尋常ならざる力を輝かせる。その輝きを喰らうことによって、今まで以上に、その輝き以上の力を己は獲得してきた。
 もはや己の名すら思い出せぬ。
 けれど、まことしやかに囁かれる名がある。

 ―――『スターヴ』。『飢餓』と名付けられた己。

 力を取り込み続け、増大していく能力。それに歓喜を覚えたことはないが、もっと、もっと、という欲望だけがふくれあがっていく。
 それを止めた男の拳を思い出す。
 ただの人であった。
 けれど、その拳は、蹴撃は尽く己の体を穿つ。

 それだけであればよかった。耐えられた。己の敗北も認めることができた。けれど、あの男は言ったのだ。
「戦うことが怖い」
 それだけは許せなかった。
 あんな怖がりの男に、己が敗れたのだと。それだけは許せない。だからこそ喰らう。喰らい続ける。
 誰かを護るために立ち上がる者も、猟兵も、何もかも喰らって―――。

「たった一つに成る―――」
『飢餓』の化身、『スターヴ』が朽ちた神殿の中で立ち上がる。
 その緑の眼光から凄まじき重圧を放ち、相対する猟兵達を押しつぶし、くらわんと破壊の権化の如き力を振るう―――。
村崎・ゆかり
かつて神でありしものか。信仰を失った神は妖怪に零落すると言うけれど。

偶神兵装『鎧装豪腕』顕現。
方術『空遁の法』で敵の死角へ空間を渡り、薙刀での「なぎ払い」「串刺し」「衝撃波」を連続攻撃。
奇襲の効果が無くなったら、またスターヴの死角へ跳んで、薙刀を振るう。
『鎧装豪腕』は、常にスターヴの正面から「怪力」任せの打撃を振るって、あたしから注意を逸らすように攻撃させる。
あたしに攻撃が加えられそうな時は割り込んで「盾受け」。

足下から赤い手が湧いてきたら、『空遁の法』で一旦転移して回避するわ。

何も考えず、ただ強さを求めるあり方は楽なんでしょうね。
でもそれは、自分の弱さから逃げているだけじゃない。美しくない。



 身体が重いと感じるほどの重圧を放つオブリビオン『スターヴ』。
 その名が示す通りの『飢餓』という概念において、強さに執着する姿はいっそ洗練されていったものであったかもしれない。
 けれど、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)にとって、相対する『スターヴ』の姿は洗練されているようなものには視えていなかった。
「かつて神でありしものか。信仰を喪った神は妖怪に零落すると言うけれど」
「―――否。神は零落しない。ただ、そこに在り続けるが故に」
 互いに一歩も譲らぬ距離。

 だが、それはお互いにとっての間合いであった。
 瞬間的に呪符を展開し現れたのは、偶神兵装『鎧装豪腕』。篭手型式神が浮遊し、『スターヴ』の放った拳とぶつかり合って、装甲がひび割れる。
「現世の裏に無我の境地あり。虚実一如。空の一心によりて、我が身あらゆる障害を越えるものなり。疾っ!」
 ゆかりを囲む空間を切り取り、一瞬の内に転移いする術式である、方術『空遁の法』(ホウジュツ・クウトンノホウ)によって『スターヴ』の死角に回り込む。

 ゆかりの振るう薙刀が超高速連続攻撃の斬撃となって『スターヴ』を背後から襲う。
「あたしにばっかり注意を払っていてはね―――!」
 即座に偶神兵装『鎧装豪腕』が正面から『スターヴ』を殴りつける。
 薙刀の斬撃と正面からの篭手による打撃。
 その見事な連携が『スターヴ』の身体を穿つ。けれど、それでもなお傾ぐこともしない『スターヴ』の巨躯。
 ゆかり自身に『スターヴ』の注意を惹きつけることはせず、常に死角からの攻撃を立ち回るゆかりにとって、最も警戒すべきはこちらを拘束するユーベルコードであった。

「他愛、なし―――『寄越せ』」
 瞬間、偶神兵装『鎧装豪腕』の篭手が弾き返され、振り返りざまの蹴撃がゆかりを襲う。
 薙刀の柄で受け止められはしたものの、その衝撃は身体を突き抜けてくる。凄まじい蹴撃。さらに足元から赤い腕の群れがゆかりを襲う。
 それは彼女の『守ったものの記憶』を奪わんとするユーベルコードであった。
 そう、『スターヴ』は飢えている。
 己の力を増すための源である『守護者』の血肉や記憶を欲しているのだ。猟兵であれば、なおのこと、『守ったものの記憶』は膨大であろう。

 それを狙ったのだ。
「―――誰が、一片たりとてくれてやるものですか!」
 薙刀の柄を地面に突き立て、身体を宙に翻して『空遁の法』によって転移し、回避する。
「『寄越せ』。『寄越せ』。『寄越せ』―――」
『スターヴ』の放つ赤き手の群れがゆかりを追う。
 けれど、ゆかりの薙刀の放つ衝撃波が尽く赤き手の群れを薙ぎ払う。

「何も考えず、ただ強さを求める在り方は楽なんでしょうね。でもそれは、自分の弱さから逃げているだけじゃない」
 放たれる薙刀の一撃。
 その一撃を切っ掛けとして、凄まじき超高速連続攻撃が放たれる。斬撃と打撃のラッシュが放たれ、『スターヴ』の身体を打ち続ける。
 一撃一撃は『スターヴ』にとって軽いものであったとしても、削り取ってしまえばいい。
「そんなの美しくない―――!」
 ゆかりは、ずっと感じていた。
 オブリビオン『スターヴ』の姿に対する違和感を。余計なものを削ぎ落としたからこそ到達できる領域。けれど、『スターヴ』のそれは違うと感じてしまっていた。
 それは余計なものを削ぎ落とした洗練ではなく。

「他の何物にも手を伸ばさなかった。あがくこともせずに、己の欲するものだけを追い求めただけの話でしょう。甘ったれるな―――!」
 放たれた薙刀の一撃が『スターヴ』の脳天から一直線に振るわれ、その身体を一文字に切り結ぶのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天道・あや
おー、これはまたブラックでCOOLな外見!うーん、これは強敵予感。……だが、しかし!あたしの方が強い!訳?そりゃ簡単、飢えてるのは当たり前!あたしだって常に飢えてる!でも、だからといって他人を食べることはしない!食べるのは普通の食事!だから、あたしは強い!しっかりした物を食べてしっかり育つ!それが一番!

というわけで、右よし!左よし!あたしよし!いざ、勝負!

敵の攻撃を【見切り】、【ダンス】のように避けながら接近!そして、【足場習熟】で一番跳びやすいタイミングで【ジャンプ】!

そしてUC発動!これがあたしの想いの乗った思い一撃ーー!【鎧砕き、限界突破、情熱、属性攻撃炎】

どーですか!あたしの拳は!



 猟兵の一撃によって両断された傷が見る見る間にふさがっていく。
 消耗していくオブリビオンであっても見た目を取り繕うために身体をつなげることはあるのだろう。緑の眼光が妖しく輝き、その両腕の鉤爪が巨大化していく。
 それはまる傷を負わされたことによって喪った何かを補填しようとするかのように猟兵達を睨めつけるようにも思えた。
「『喰わせろ』、猟兵―――!」
 その飽くなき『飢餓』、埋められることのない渇望のままに猟兵へと襲いかかる。

「おー、これまたブラックでCOOLな外見! うーん、これは強敵予感。……だが、しいかし! あたしのほうが強い! 訳? そりゃ簡単、飢えてるのは当たり前! あたしだって常に飢えてる!」
 そう叫ぶのは、天道・あや(目指すぜ!皆の夢未来への道照らす一番星!・f12190)であった。
 振りかぶられる鉤爪の一撃を、その瞳は捉えダンスのようなステップを踏んで躱していく。
「もっと、もっと、もっと『喰わせろ』! たった一つのものになるために、強さを得るために、お前たちの血肉が要る―――!」
 黒き影、赤き手足、それは徒手空拳において数多の生命を屠り貪ってきた証であろう。
 嘗て在りし神の一柱であったとしても、追い求める物が強さであるのならば、こうなってしまうのは必定と言えたかもしれない。

「でも、だからといって他人を食べることはしない! 食べるのは普通の食事! だから、あたしは強い! しっかりした物を食べてしっかり育つ! それが一番!」
 あやは飛び跳ねたり身を捩ったりしながら鉤爪を躱し続ける。
 汗がキラキラと飛び散って、そこがもしも朽ちた神殿でなければ、大きなステージ置いてスポットライトを浴びるのがよく似合うような光景であった。
 徐々に攻撃を躱し続けてわかってきていた。
 それは足場のことだ。
 ステップを踏む度に神殿の僅かなくぼみであったり、クラック、亀裂などが足先から伝わってくる。

 どんな舞台でだって同じだ。
 足場をしっかりと理解しているからこそ立ち回ることができる。戦いにおいても同じだ。どんなふうに足を踏み出せば、足場である大地がどんなふうに自分を跳ねさせてくれるかわかる。
「というわけで、右良し! 左良し! あたしよし! いざ、勝負!」
 駆け出し、あやの身体が宙に舞うようにして大きくジャンプする。鉤爪の一撃が、今まであやが立っていた場所を穿つ。
 既のところであったが、それはすべてあやの計算どおりであった。
「これが今のアタシの想い!受け止められる?」

『飢餓』の化身たる『スターヴ』は見上げたことだろう。
 朽ちた神殿に差し込む光を受けて、絢爛に輝く汗の珠を。それがきらきら輝いて、『スターヴ』の瞳をくらませる。
 見上げた光のまばゆさは言うまでもない。僅かな瞬間まぶたを閉じる。
 それが決定的な瞬間であった。
「どっかーん!」
 跳躍からの急降下パンチの一撃が『スターヴ』の顔面を捉える。
 放たれた拳の一撃は、これがあたしの想いの乗った重い一撃!(コノオモイハオモイ)と言わんばかりの威力となって放たれ、『スターヴ』をしたたかに打ちのめし、神殿の地面にひび割れを起こすほどの威力と共に叩きつける。

 粉塵が舞い上がる中、あやは額に浮かぶ汗を拭い、きらきら光るままに宣言する。
 彼女の拳は情熱の炎がこもった一撃であった。その一撃は如何に強大なオブリビオンであったとしても耐えられるものではない。
「どーですか! あたしの拳は!」
 戦いの最中にあってもあやは笑顔を忘れない。
 なぜかと問われれば、彼女はこう応えただろう。

「だって、あたしアイドルだからね―――!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎

戦うことが怖いか、誰でもそうだろうに
戦うのは守りたい者が危険に晒される事も意味する。進んでしたがる奴が何処にいる
俺は元々記憶が無かった存在だ

SPDで判定
【視力】【聞き耳】で【情報収集】しながら敵の攻撃を【見切り】避ける
記憶が奪われても構わない、俺が守るのは生者だから気にしない【落ち着き】
多少の攻撃は【覚悟】して銀腕を【武器改造】で剣にして【早業】【怪力】【貫通攻撃】【鎧無視攻撃】を併用してUCを使用して攻撃する



 叩きつけられた大地がひび割れ、その一撃の凄まじさを物語っていた。
 オブリビオンである『スターヴ』は、猟兵の放った一撃の前に大地に伏した。だが、それでも尚立ち上がる。その体を突き動かすのは、常に『飢餓』である。
 足りない。
 足りない。圧倒的に足りないのだ。血肉が、記憶が、己の身体を構成するあらゆる物が足りないという飢餓感に襲われながらも『スターヴ』と故障されるかつての神の一柱であるオブリビオンは立ち上がる。
「足りない。足りない。足りない。『寄越せ』!『寄越せ』!」
 その手足を染め上げる真っ赤な色は、これまで繰り返してきた殺戮の歴史故であろうか。

 もはや記憶も摩耗しているというのに、『強さ』という点においてのみ執着を見せ、血肉を喰らい、記憶すらも奪い去ろうと赤き手の群れが大地から生え揃うようにして産み出され、対峙する猟兵―――ルイス・グリッド(生者の盾・f26203)を襲う。
「戦うことが怖いか……誰でもそうだろうに。戦うのは守りたいものが危険にさらされることも意味する」
 ルイスにとって戦いとはそういうものだ。
 護るために戦う。世界を、誰かを、常に護るために戦うのが猟兵という存在だ。だからこそ、恐れも躊躇いも迷いも飲み込んで戦いに臨むことができる。

 自分に恐怖がないといは言わない。
 かと言って、それを覆すものがあるとも言い切れない。けれど、今『スターヴ』の目の前に立ち、もしも、この場を抜かれた際に引き起こされるであろう『センターオブジアース』に巻き興る殺戮の宴を見過ごすことなどできようはずもない。
 ルイスにとって戦う理由はそれだけでよかったし、恐怖を覆すには十分すぎる理由だった。
「進んでしたがる奴が何処に居る。誰も居ないだろう! 戦いを望む者には―――!」

 銀の腕が変形し、刀剣の形へと変貌する。
 メガリスの力が輝き、その呪われし秘宝の真価を問う。赤き手の群れがルイスの体に掴みかかり、その身に宿した『守るものの記憶』を奪わんとする。
 記憶とはその者の証明でも在る。
 だからこそ、それを奪われれば身がすくむし、動きも止まる。

 だが、元々記憶がないものはどうなるのだろうか。
『守るものがない者』であれば、それは如何なる効果を発揮するのか。失われるという感情が、人の足を止めるのであれば、元々ない者には意味を為すことはない。
「―――奪う、ものが、ない。なんだ、お前は。お前はなんだ?」
 混乱する『スターヴ』を前にしてルイスは眼帯の奥の義眼のメガリスを輝かせる。
 それは記憶無きものであるが故の、喪うものなどない、持たざる者の強さであったのかもしれない。

「―――俺と踊って貰おうか。どちらかが倒れるまでな!」
 ユーベルコードが輝き、銀武の舞(ギンブノマイ)が始まる。互いに打ち合う拳と銀の刀剣。
 超高速連続攻撃を互いに繰り出しながら、銀の刀剣が『スターヴ』の体を切り刻んでいく。
 身体がきしむ。
 デッドマンであるルイスにとって痛みは縁遠いものである。
 どれだけの怪力、生命が己の身体を守ろうとするリミッターすらも外しての怪力による銀の刀剣による目にも留まらぬ斬撃はまさに嵐のようであった。

「なぜ、記憶を持っていない―――! 奪うものがない者などいてはならない―――!」
『スターヴ』の声が響く。
 けれど、乱舞は終わらない。拳と刀剣がぶつかりあい、火花散らしながら互いのユーベルコードが切れる間際にルイスは最後の一太刀を浴びせて言うのだ。

「思い出せねぇ―――それがどうした!」
 記憶がなくとも、『守る』ことはできる。
 明日の誰かの守ることも、今日の誰かを守ることも同じことだ。すべてつながっている。今はわからなくても、意味がなくても、それでいいのだ。
 誰かを守るということは、こんなにも誇らしい気持ちにさせてくれるのだから―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルトリウス・セレスタイト
そうか
では心置きなく喰っておけ

破界で掃討
対象はオブリビオン及びその全行動
それ以外は地形含め「障害」故に無視され影響皆無

高速詠唱を幾重にも重ね『刻真』『再帰』で無限に加速・循環
瞬刻で天を覆う数の魔弾を生成、周囲全方向への斉射を実行
戦域を魔弾の軌跡で埋め尽くす

更に斉射の瞬間を『再帰』にて間断なく無限循環
回避の余地も反撃の機も与えず討滅まで攻撃を継続
反撃も巻き込み呑み込んで物量で全て圧殺する

幾らでもくれてやるから遠慮するな
喰って消えなければ俺と同じところへ届くかもしれんぞ

万一自身へ届く攻撃は『絶理』『無現』で否定し影響を回避

必要魔力は『超克』で“世界の外”から汲み上げる

※アドリブ歓迎



『飢餓』の権化たる『スターヴ』が咆哮する。
 在ってはならぬ者を見た。どうしようもないほどに、己の中の何かが喚くような気がした。
 戦いの場において、己の保つ『飢餓』は貪欲なる『強さ』への執着である。
 だからこそ、血肉を喰らう。記憶を喰らう。そうすることで神々の一柱から過去の化身たるオブリビオンへと成り果てたのだ。
 記憶が摩耗していっても構わない。
『強さ』に対する執着のみが、かのオブリビオンを突き動かすのだ。
「喰わなければ。我が血肉と為すために、守護者の血肉を」
 それは妄執と言っていいほどのものであったが、それを喰らわば『強さ』が得られぬと『スターヴ』は猟兵達を求める。
 彼らもまた世界に選ばれた戦士であり守護者であるのならば、その血肉こそが『スターヴ』の求めるものであったことだろうから。

「そうか。では心置きなく喰っておけ」
 アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)の静かな声色が世界に響く。
 その声に『スターヴ』が視線を向けた瞬間、アルトリウスを襲う緑色の落雷。その一撃はしかしアルトリウスに届くことはなかった。
 淡青の光が明滅し、いかなる原理か落雷の一撃を繭のように展開した断絶の原理が防ぐ。
 何が怒っているのかわからなかったことだろう。誰にも理解はできなかったのかもしれない。アルトリウスを除いては、その力の証明もできはしない。

「お前は此処で行き止まりだ」
 高速詠唱を幾重にも重ね無限に加速、循環していく瞬きの間に展開される点を覆う数の蒼光の魔弾。
 アルトリウスを中心に周囲全方位に斉射され、戦場となった朽ちた神殿の中を魔弾の軌跡でもって埋め尽くす。
 それこそがユーベルコード、破界(ハカイ)である。

 斉射の瞬間を原理によって間断なく無限に循環し、回避の余地も反撃の機も与えずに攻撃を継続していく。
 障害を無視し万象を根源から消去する魔弾の力が無限を思わせるような物量で持って圧殺せんと迫りくる。
「幾らでもくれてやるから遠慮するな。喰らって消えなければ俺と同じところへ届くかもしれんぞ」
 アルトリウスの言葉が魔弾の明滅する軌跡の中に響く。
『スターヴ』の身体が千切れるようにして魔弾に打ち貫かれていく。けれど、その言葉の通りであったのかもしれない。
 あらゆるものを捕食していく。
 守護者の力もまた捕食の対象であるのだろう。無限の物量によって放たれる淡青の光の魔弾を喰らって、喰らって、喰らい続ける。

 千切れる腕が即座に形成されていく。
 撃ち抜かれた足が次の瞬間には大地を踏みしめている。次々と襲う魔弾の合間に潰れた喉が咆哮を響き渡らせる。
「―――喰らっているのか。守護者の力として」
 アルトリウスにとっては、万が一もあることではない。
 意味のあることには思えない。けれど、オブリビオンである『スターヴ』にとっては必要なことであったのだろう。
 どれだけ打ちのめされても、無限に循環する斉射を受けても尚、迸る咆哮だけが線上に響き渡る。

「届くわけはないだろうが。それでも尚倒れないか」
 物量で圧殺するユーベルコードを前にしても打ち込まれる端から踏み出す『スターヴ』は『飢餓』の権化である。
 その咆哮は、次なる斉射によってかき消されていく。
 ユーベルコードの効果が尽きるその時まで、きっと『スターヴ』は、その身にかかえた『飢餓』を手放すことはないだろう。

「俺と同じところへ届くかと一瞬、期待したのだがな―――」
 踵を返し、魔弾の軌跡に任せるままにアルトリウスは呟く。
 それが消して果たされぬものであると知りながら―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

久瀬・了介
軍人が民間人を守るのは、任務であり社会のシステムだ。そこに特別な意味があるとは思っていない。
俺が守護者かは知らんが喰おうとしてくるなら都合がいい。エンジンで高圧電流を発生させアンプリファイアで増幅、【限界突破】【リミッター解除】。
喰らおうと向かって来る顎に、極大の電撃を込めた右腕を突き立てる。
喰らわれる前に【デッドマンズスパーク】。【属性攻撃】【貫通攻撃】。腕を吹き飛ばし放たれる電撃で体内を焼き払う。
貴様は俺達個々より強い。だが敗れる。これは勝負じゃない、闘争だからだ。
貴様が戦いを挑むから、世界が貴様に立ち向かう。貴様の全ては今日無意味になる。
戦う事は恐ろしい。その意味を考えるべきだったな。



 魔弾の軌跡が消え失せ、残ったのは『飢餓』の化身である『スターヴ』のみである。
 すでに消耗激しい肉体であってもなお、血肉を求めることをやめようとはしない。
「足りない。足りない。もっとだ。もっと『喰わせろ』!!」
 咆哮が響き渡る。
 朽ちた神殿の中はすでに攻撃の余波によって惨憺たる状況であった。瓦礫が飛び散り、戦いの激しさを物語っている。
「守護者の血肉を! 守る者を! 何もかもが足りない!」
 求める『強さ』に対する執着の凄まじさは、言うまでもない。『スターヴ』にとって、それだけが己を証明する手段であり、存在意義であるのだ。

 だからこそ、その赤き両腕が巨大な鉤爪へと変貌を遂げ、次なる猟兵を睨めつける。
「軍人が民間人を守るのは、任務であり社会のシステムだ。そこに特別な意味が在るとは思っていない」
 久瀬・了介(デッドマンの悪霊・f29396)はこともなげに言い放つ。
 己は軍人であると規定しているが、守護者であるかどうかは別の問題である。だが、同時に己を喰らおうとしていることは好都合であるとも思ったのだ。

「オブリビオンは殺す。すべて殺す。例外はない。必ずすべて殺す。それが俺の為すべきことだ。守ることじゃあない―――」
 魂の衝動が唸りを上げて、その体に埋め込まれたヴォルテックエンジンを突き動かす。
 高圧電流に変換される魂の衝動は、オブリビオンに対する殺意である。さらに了介の首に取り付けられた電力増幅器から、余過剰の高圧電流がほとばしり、風になびくマフラーのように宙に舞う。
「守護者はすべて喰らう! 喰らって、喰らって、『アレ』よりも必ずや―――!」
『スターヴ』の眼光が鋭くなる。
 過去に在りし日の何かを幻視するように、その緑の瞳の輝きが増していく。

 だが、そんなことなど知らぬとばかりに了介の体から迸る高圧電流は増していく。すでに体の安全装置はすべてが役に立たない。
 限界を越え、リミッターを外された力の奔流の如きほとばしりは、彼の体を内側から焼いて行く。
 それは常人であれば耐えることのできない痛みであったことだろう。だが、彼は違う。彼は死人、デッドマンである。
 痛みも、苦しみも、過去に置いてきた者である。
「喰わせろ―――! その血肉を! 記憶を! あらゆるものを、強さの源を!」
 大顎を開けて迫る『スターヴ』の構内に突き立てられる了介の右腕。
 突き立てられる拳は喉の奥を叩き、突き刺さる。

「この右腕、くれてやるとは言わん。お前に喰わせるものは、今も、これからも何一つ無い……! だが、この電流は別だ!」
 放たれる膨大な電流を籠めた一撃。
 デッドマンズ・スパーク。それは己の片腕を犠牲にして放たれる極大なる一撃。その一撃は、あまりの威力に己の右腕をも耐えることができず、弾け飛ぶ。
 だが、その代償によって得られた電流の一撃は、『スターヴ』の体内を焼き払う。迸る電流が、血潮が焦げ付き嫌な匂いを香らせる。

「ゴァ―――!?」
 叫ぶことも出来ぬ『スターヴ』の喉に拳を突き立てたまま了介が言う。
「貴様は俺たち個々より強い。だが破れる。これは勝負じゃない、闘争だからだ」
『強さ』にこだわるが故に、個としての力に突出するのがオブリビオンというものであろう。
 それ故に猟兵単体の能力ではおそらく劣る。だが、それでも猟兵たちは破れることはない。
 それはなぜか。その理由をオブリビオンは理解していない。

「貴様が戦いを挑むから、世界が貴様に立ち向かう。貴様の全ては今日無意味になる」
 それは宣言ではなく、了介にとってただの事実であった。
 そう、オブリビオンが相手取るのは世界そのものである。破壊されんとする世界が叫ぶ悲鳴によって猟兵たちは世界を越えてオブリビオンを滅ぼすために降り立つ。
 だからこそ、オブリビオンは猟兵に勝てない。
 そして、オブリビオンとして積み上げてきたものは、あらゆるものが無意味と化す。
 デッドマンズスパークの雷撃は止まらない。どれだけ体内を焼き払っても尚、弾け飛んだ片腕を代償にしても『スターヴ』はもがき続ける。

「戦うことは恐ろしい。その意味を考えるべきだったな」
 それはあの日に聞いた『アレ』が放った言葉だった。
 己を下した英雄の言葉。その意味を了介は知るというのか。『スターヴ』は彼に手をのばす。
 その答えの意味を、己が知り得ぬ答えを求めようと手を伸ばそうとして、了介の放つ極大なる電流の奔流に押し流されるようにして吹き飛ばされ、解を得ぬままに彼の一撃の元にくだされるのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。
引き続き『静かなる者』。

我らに血肉などありませんよ。あるのは紛い物です。
破魔矢をいかけつつ、UC発動のため、別人格を呼び出しますよ。
…我らがこうして戦うための記憶なぞ、正反対のものなのに。
見切りつつ。易々とは奪わせませんが。


第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私/私たち のほほん
対応武器:漆黒風

私たち、離れたところから攻撃するのが得意ですからねー。
私は早業で漆黒風投擲ですねー。
…ええ、私たちの記憶は正反対の事柄。『故郷を守れなかった』という強烈なのが四人分。
だからこそ、守るために戦ってるんですけどねー。



 雷撃が『飢餓』の化身たる『スターヴ』を襲う。
 極大の電撃は、その体の外と内を焼き焦がしても尚、かのオブリビオンが抱える『強さ』への執着を終わらせる事は叶わなかった。
 けれど、それでも確実に消耗させてきている。
 肩で息をするような仕草を見せる『スターヴ』であったが、それすらも嘗て在りし日の残影に他ならない。
 結局の所、全てが真似事でしか無いのだ。
「『強さ』を……! 守護者の血肉を……! 喰わせろ! もっと、もっと我は、俺は、強くならなければ――!」
 あの耐え難い屈辱の痕がうずくような気がした。

「我等に血肉などありませんよ。あるのは紛い物です」
 放たれる破魔の力籠められし矢が『スターヴ』の方を射抜く。
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の中の位置人格である『静かなる者』が細まった瞳の奥で言う。
 彼らは複合型悪霊である。あるのは仮初の体であり、おそらく『スターヴ』の求める血肉を彼に与えることはできようはずもなかった。

「とは言え、悪霊は悪霊らしく」
 別人格である『疾き者』がユーベルコードによって召喚され、『スターヴ』の周囲を襲うのは呪詛でできた雷を纏う嵐であった。
 それは嵐のように(ムベヤマカゼヲアラシトイフラム)叩きつけられ続ける破魔の矢と棒手裏剣の乱舞。
 それに呪詛を纏う雷が際限なく降り注ぎ、『スターヴ』の体を穿ち続ける。一歩も動けず、かのオブリビオンは攻撃にさらされて、その身を削っていく。
「私たち、離れたところから攻撃するのが得意ですからねー」

 二人の人格が現出することによって放たれる攻撃の包囲に『スターヴ』が咆哮し、赤き手の群れが彼らを襲う。
 それは触れた者の『守る者の記憶』を奪うものであり、それこそが『スターヴ』が欲したものであった。
「……我等がこうして戦うための記憶なぞ、正反対な物なのに……それでも他者の記憶を欲しますか」
「……ええ、私たちの記憶は正反対の事柄。『故郷を守れなかった』という強烈なのが―――」
『静かなる者』と『疾き者』の視線は交錯することはなかったが、それでも抱えた思いは同じものであったことだろう。

 オブリビオンに滅ぼされたもの。
 その記憶、悔恨が彼らを突き動かし悪霊足らしめているものであるのだから。そレに対する執着は『飢餓』の『スターヴ』以上のものであったことだろう。
 どれだけ『強さ』に対する執着が強かろうが、あちらは一人分。
「こちらは四人分ですからねー」
 易易と奪わせることなどできようはずもない。
 どれだけ悔恨にまみれた想いであったとしても、この想いこそが彼らを支え、つなげる楔であるのであれば、一欠片とて奪わせるわけにはいかないのだ。

 赤き手の群れを宙に飛び上がり、『静かなる者』と『疾き者』が躱す。
「だからこそ、守るために戦ってるんですけどねー」
 呪詛の雷が纏う嵐が『スターヴ』を取り囲み、そこへ打ち込まれる矢と棒手裏剣。
 その中心で『スターヴ』が満たされぬ『飢餓』を抱えたまま咆哮する。
 それはある意味で、妄執という名の欲望に取り憑かれた過去の化身そのものであり、いっそ憐れささえ感じさせるものであった。

 だからこそ、これ以上一歩も進ませるわけにはいかない。
「奪わせない。ただそれだけのために振るう力は、いつだって守る力となって、貴方が幾度骸の海からにじみ出ようと、得られるものは何一つ無いのだと知らしめ続けましょう」
 雷の嵐を見遣り、その中心で痛みに咆哮する『スターヴ』はいつまでもその事に気がつくことなどできないのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ネメシス・インフィニー
戦うのが怖い?

おいらも怖いのー。
恐れることは悪いことじゃないの。
恐れてもなお戦場に立つ…守るべきものを知っているそれは人を勇者と言ううさ~。

勇者ネメシスたたかえ毛皮の限り~
ユーベルコードで因幡兎に変身うさ~。
オブリビオンの力だって正義のためにうさ~。

『存在感』が主張しまくる『残像』を残すスピードの『ダッシュ』で接近して小烏丸で『切り込み』『切断』うさ~

あ~グリリンがー。おいらを『かばう』なんてグリリン~。
グリリンの仇うさ~~
ぱたん…Zzzzzzzzz(毛皮が無くなったらしい)
ダイイングメッセージ…犯人はやす―



『戦うことが恐ろしい』といつかの誰かは震える足のままに言った。
 それは戦うものにとっては、あってはならぬ恐れであり、弱さの象徴であった。けれど、その英雄は戦うことを恐れながらも、振るう力は驚天動地たる超絶為るものであった。
 拳は岩を砕き、蹴撃は海を割る。
 その力は『強さ』を追い求め、数多の血肉を喰らってきた『スターヴ』にとってはあまりにも眩く、己の執着となった。
 何かを守るもの。
『アレ』がそうであるというのならば、その力のすべてを取り込むために、あらゆる『守る者』を食らうと決めた。
「何が、戦うことが恐ろしいのだ……! アレだけの力を持ち得ながら、恐ろしいものなどなにもないはずだと言うのに……!」
 雷の嵐が晴れ、『スターヴ』の消耗激しい身体が飛び出す。
 数多の猟兵達の攻撃にさらされても尚、未だに健在である。けれど、確実に消耗の度合いは増している。

「戦うのが怖い?」
 ネメシス・インフィニー(ヴォーパルバニー・f21907)は時計うさぎのふさふさした毛皮を纏いながら、朽ちた神殿に立っていた。
「おいらも怖いのー」
 それは本心からでた言葉であったことだろう。誰もが戦えるわけではない。誰もが恐怖を克服できるものではない。
 勇気あるものばかりではないのは、生命の、人の常であろう。だからこそ、恐怖を感じることを否定しない。
「恐れることは悪いことじゃないの。恐れても尚、扇状に立つ……守るべきものを知っているそれを人は勇者と言ううさ~」

 ぴょんこと跳ねて、『スターヴ』から放たれた赤き手の群れを躱すネメシス。彼の瞳に、彼の毛皮に、ユーベルコードの輝きが満ちる。
 骸魂『因幡兎』と合体し、一時的にであるがオブリビオン化したネメシスの力は、この時をおいて『スターヴ』を凌駕する。
 抜け落ちていく毛皮の毛がはらりと地面に落ちる瞬間、彼の体は凄まじき速度で持って跳ねるようにして『スターヴ』に迫る。
「――ッ! この速度ッ、貴様も!」
 弾き返されるネメシスの体。宙で素早く回転し、空を駆けるように跳ねるように、その毛皮を翻してネメシスの身体が残像を残すほどの速度で駆け回る。
 手にした古き両刃と片刃がいりじ混じった刀を振るう。
 突き出された『スターヴ』の拳を切断し、即座に生えるように再生しても、さらにそれを上回る速度で切り刻んでいく。

「勇者ネメシスたたかえ毛皮の限り~オブリビオンの力だって正義のためにうさ~!」
 その力は絶大である。
 毛皮を消費するというデメリットがあるとはいえ、それを補って余る速度。
「正義! 正義! 何が正しいというのだ。己のために戦う者にこそ、強さは宿るべきであるというのに」
 残像を『スターヴ』の拳が虚しく貫く。拳の放たれる速度もまた凄まじさを増していく。
 赤き手の群れが迫り、ネメシスを捉えんとする。その瞬間、ネメシスの相棒であるグリズリーのグリリンがかばうようにして飛び出し、赤い手がネメシスに至るのを防ぐ。

「あ~グリリンがー。おいらをかばうなんてグリリン~。グリリンの仇うさ~!」
 手にした小烏丸を振るい、赤き腕を叩き切ってグリリンを抱えながら戦い続ける。次第に消耗していく毛皮が尽きかけ、それでも尚戦う姿は種族を超えた絆故であろう。
「う~眠いうさ~……!」
 最後の一太刀を『スターヴ』に浴びせ、ネメシスはグリリンと共に戦場を離脱する。
 そこには残像の如きネメシスに取り囲まれたまま拳を振るい続ける『スターヴ』があったのだが、ネメシスにはもうどうでもよかった。
 襲い来る睡魔と共に……。
「ぱたん……」
 毛皮を消費しきって眠りにつく。ダイイングメッセージ……犯人はやすー……という寝言と共にネメシスは戦場より離れた場所で、喪った毛皮の分だけ眠りにつくのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

西塔・晴汰
【晴要】

自分が死ぬかも知れない
それ以上に、自分が守りたい何かを守れないかも知れない……戦うのは怖いに決まってんじゃないっすか

だからって戦わないわけには行かないんだ、オレたちは
これ以上、誰もお前に食らわせてやるもんか!

散々に喰らって強化されてきたスターヴに、オレ一人が真正面から挑んでも到底敵わないだろうっすね
でも、二人なら別っすよ
凍って鈍った奴にならオレの速度でも追いつけるはず
オレは守るのは下手くそっすけど、その分一撃ぶち当てるだけなら、これなら
金色の気の吹き出す槍を、オレがバラバラになっちまうギリギリまで開放して

こいつが今のオレにできる、全力の一発っす
珂奈芽を傷付けさせないために、ここで討つ!


草守・珂奈芽
【晴要】

守ることは怖いよ。
代わりに自分が傷つくこともあるって、猟兵になって分かったさ。
痛くて怖くて、逃げたくなるかもしれない。
今だってわたし一人じゃ怖い…けど仲間がいるから!
仲間も世界も守るためならやってみせるのさ!

衝動のまま突っ込んでくるところにUCを展開、十分に濡れたところを凍らせるのさ!
〈範囲攻撃〉で濡らしただけ全身たっぷりと凍るがいいのさ。
…それがどうした、って?
たしかにわたしは力押しには負けちゃうのさ。
脆くて非力で、純正クリスタリアンよりパワー不足と思うし。
でも小手先だけの工夫でもやれることはあるのさ。
晴汰くんが傷付かなければそれで大勝利!
あとは信じてるもん、繋いでくれる仲間だから!



 猟兵の齎す超スピードによる残像が『スターヴ』の拳によって次々と撃ち抜かれて消えていく。
 それは虚像に向かって拳を放ち続けることにほかならず、虚しささえ感じさせる光景であったかもしれない。けれど、未だオブリビオンである『スターヴ』は健在であり、これを討たなければ『センターオブジアース』ひいてはヒーローズアースに仇為す存在へと成長してしまうだろう。
 今も尚、猟兵たちの攻撃を貪欲に喰らい続け、進化するかのように力を増していく。これまで喰らってきた血肉故であろう。
 赤き両腕が鉤爪のごとく巨大化していく。
「喰らう! すべて喰らい、あらゆるものを超越する。この力さえあれば、何も恐れることなどありはしないのだ!」
 咆哮する『スターヴ』の姿は、あまりに強大であった。

 だが、それでも戦いを挑むこと、守ることをやめないのが猟兵である。
「自分が死ぬかも知れない。それ以上に自分が守りたい何かを守れないかも知れない……」
『戦うことが怖い』と嘗ての英雄は言った。
 その言葉をなぞらえるわけではないけれど、西塔・晴汰(白銀の系譜・f18760)と草守・珂奈芽(小さな要石・f24296)は二人並び立つ。
「戦うのは怖いに決まってんじゃないっすか」
「守ることは怖いよ。代わりに自分が傷つくこともあるって、猟兵になってわかったさ。痛くて怖くて、逃げたく為るかも知れない」
 それは世界を知ったからであり、幾多もの世界を渡り歩いてきたからでもある。
 どの世界にも戦いは溢れていて、オブリビオンは今を生きる人々を歪めてでも己の欲望を満たそうとする。

 その行いが世界を破壊するのだとすれば、その悲鳴が呼び出したのが己たち猟兵である。
 恐れを抱くことは否定できない。
 けれど、それを前にして退くことなどできない。
「だからって戦わないわけには行かないんだ、オレたちは。これ以上、誰もお前に食らわせてやるもんか!」
「今だってわたし一人じゃ怖い……けど仲間がいるから! 仲間も世界も守るためならやってみせるのさ!」
 ユーベルコードが輝く。
 その眩い輝きは、二人が発した光であり、その光こそが『スターヴ』の追い求めた強さであったのかもしれない。

「それだ! その光だ! その光を、力を――喰わせろ!!」
 衝動のままに突っ込んでくる『スターヴ』を前にして、怖いと言っていた二人の瞳には恐怖は微塵もなかった。
 戦場となった朽ちた神殿に満ちる霧雨。それは『スターヴ』の身体を濡らし、ひた走るように、弾丸のように二人に迫るオブリビオンを瞬間凍結を引き起こす冷気が凍りつかせる。
 珂奈芽の放ったサイキックフリージングが『スターヴ』の身体を凍りつかせる。
「この程度で、俺の、我の、衝動を止められるものか――!」
 歪な音を立てて凍りついた『スターヴ』の身体がひび割れながらも動き始める。凍りついた身体を引きちぎるようにしながら、瞬間的に肉体を再生しながら二人に迫る。

 その衝動、『飢餓』の赴くままに二人の血肉を、輝きをくらわんとする過去の化身の前に晴汰が立ちふさがる。
「オレ一人が真正面から挑んでも到底敵わないだろうっすね」
 でも、二人なら違う。
 どれだけ『飢餓』の権化である『スターヴ』が鋭く速く、強いオブリビオンであったとしても、全身を珂奈芽のユーベルコード、サイキックフリージングによって凍りつかされたが故に鈍った動きは捉えることができる。
「それがどうした――! 喰らう! 関係ない! その血肉を、輝きを喰らって、さらなる力の向こう側に!」
「たしかにわたしは力押しに負けちゃうのさ」
 もろくて、非力で、純粋なるクリスタリアんよりも力は不足していると思う。だから何だというのだろうか。

 誰かを守る時に人はいつだって力を増す。
 生命の危機だとか、生存本能だとか、そんな小難しい理屈は抜きにしていい。珂奈芽のサイキックの奔流が再び『スターヴ』の足を止める。
「オレは守るのは下手くそっすけど、その分一撃ぶち当てるだけなら! これなら―――!」
 晴汰は覇狼の楔の黄金の気を開放した。その輝きはサイキックフリージングの凍気を吹き飛ばすほどの暖かな光であったが、彼の手にする薙刀から噴出する金色の炎はオブリビオンのみを灼く。
 踏み出す。
 身体のあちこちが軋みあげる。自分を構成している身体のありとあらゆる所が痛む。
 バラバラになってしまうのではないかと思うほどの力の解放に、自分自身が耐えられない。

 けれど、それでも。その黄金の炎に自身が焼かれることはない。背後にかばう彼女のユーベルコードの輝きが、背中を押してくれる。
「晴汰くんが傷つかなければ、それで大勝利! あとは信じてるもん、繋いでくれる仲間だから!」
「こいつが今のオレいできる、全力の一発っす。珂奈芽を傷つけさせないために、ここで討つ!」
 それはたった一つでは得ることのできない力であったことだろう。
 個としての強さを追い求めた者は、たった二つの者の前に為すすべもなく敗れ去るが必定。

 その過去に沈んだ瞳で見よ。
 黄金の輝きは―――。
「重甲破砕衝(バスター・グラウンド)!」
 放たれた純粋なる力の一撃は、周囲の地形を変えるほどの威力で持って朽ちた神殿すらも打ち砕いて、『スターヴ』を打ち据える。
 光の柱がそびえ立つほどのユーベルコードの輝き、その中心において『スターヴ』は慟哭の如き咆哮を上げて、その身をすりつぶしていく。
 得た血肉が、怨念のような妄執が、『強さ』を追い求める限り、二人の光を追い越すことなど、あるはずもないのだから―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

亜沙木・しづる
すごい威圧感…
ちょっと怖いし、私の少ない記憶を取られるのも困る。
だけどこの世界の人たちを守れないのは嫌だし!
ここで挑まない理由はないよね!!

UC発動、滞空時間を長く取る事を念頭に動く
敵が記憶を奪いに来たらダッシュ&ジャンプして回避
更に空中を蹴って敵視界外へ位置取って攻撃する
また、空中移動をしつつ鋼糸で敵の体を絡め取り体制崩しを狙い、
隙が見えれば野禽の如くで蹴り攻撃
ヒット&アウェイで行くよ!


…今のあなたなら、その人に勝てるのかな?
私はそう思えない。
だって、考え方が何も変わってないように見えるし。
「許せない」じゃなくて「どうして?」と思えたなら、
あなたもその人の領域を超える事が出来たかもしれないね



 黄金の輝きが柱のように朽ちた神殿をも破壊しながら立ち上る。
 その中心に立つのは『飢餓』の権化である『スターヴ』。あらゆる血肉を、記憶を喰らってきたオブリビオンである彼にとって『強さ』とは唯一無二の絶対なる価値観であった。
 むしろ、それしかない。
 だからこそ、それが揺らがぬようにと常に飢えているのだ。血肉に、強さに、あらゆるものに飢えた。
 だからこそ得た力もあるだろう。けれど、それはたった一つしかない。
 それ以外の力を持つ者の前には、脆いものであると長きにわたる妄執の中で気がつくことが出来なかったのが、『スターヴ』と猟兵の違いであったことだろう。
「何が違う、何を間違えた! 俺には、我には、あの力がない! なぜだ――」
 咆哮が戦場に響き渡る。
 それは哀切を伴ったものであったかもしれないが、相対するものに凄まじき重圧を与えるものでもあった。

「すごい威圧感……」
 恐ろしいと感じることは正常であることだろう。亜沙木・しづる(fragment・f30506)は消耗しているとはいえ、未だ立ち続けるオブリビオンを前にして恐れを感じていた。
 ちょっと怖いし、と心のなかで震える身体を止める。あの赤い手に捉えられてしまえば、血肉だけではなく記憶までも奪われてしまう。
 それはこの世界に落ちてから何年経っただろうかと思うほどに僅かな記憶すらも奪われてしまうのではないかという恐怖であった。

 けれど、その恐怖を凌駕するものがある。
「――だけど、この世界の人達を守れないのは嫌だし!」
 ここで挑まない理由なんて無い。その思いを胸にしづるはすくむ足を、震える身体をそのままに立ち向かう。
「守るもの! 守護者! 貴様もまたその一人であるというのなら、その記憶を、血肉を寄越せ――!」
 鬼気迫る『スターヴ』。
 その赤き手が群れ為すように地面からしづるを襲う。それらは動きを止めるだけではなく、しづるの『守るものの記憶』を奪わんとする。

 けれど、しづるの体はふわりと空へと舞い上がる。
 ただ跳躍しただけではない。空中を、まるで見えない階段を登るように駆け上がっていく。
 スカイステッパーとも言うべき軽やかな足取りで、しづるの身体が空へと舞い上がり、『スターヴ』の頭上を取る。
「……今のあなたなら、その人に勝てるかな?」
 伸ばした鋼糸が次々と『スターヴ』の体に絡みついていく。白鋼の弦が超能力によって切断不可能な強度となって、四肢を縛り上げる。
「勝てるとも! 勝ってみせるとも、だからこそ、お前の血肉が、記憶が必要なのだ!」
 口のない真っ黒な口が開く。
 そこにあったのは口腔とも呼べぬ虚であった。どれだけ『強さ』を渇望したのだろう。しづるにとってそれは理解できないものであった。
 けれど、これだけははっきりとしている。

「――私はそう思えない。だって、考え方が何も変わってないように見えるし。『許せない』じゃなくって『どうして?』と思えたなら……」 
 鋼糸が『スターヴ』の体を引きずり倒し、そのまましづるの蹴撃が猛禽の爪の如く放たれ、その口腔広げた頭を蹴り飛ばす。
「あなたもその人の領域を超えることが出来たかもしれないね……?」
 それは決して訪れることのない未来であったことだろう。
 けれど、しづるはその執着が彼女が守りたいと願った人々を傷つけるのだと知っている。
 だから同情はしない。
 放たれた蹴撃の一撃は、確かな手応えを持って、『スターヴ』を打ち倒す。その一撃を取ってみてもわかる。

 誰かを許せないと思う事以上に、必要だったのは知ることだったのだ。
 捕食することでもなければ奪うことでもない。
「誰かを知ること……それが出来ていたら、あなたも歪むことなんてなかったはずなのに――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

空桐・清導
POWで挑みます
UCの効果は攻撃力を5倍、射程を半分にします
協力なども大歓迎です!

無茶苦茶ツエーな、此奴…。
…?お前は怖がらないな、だって?
怖えーさ。痛いのも、戦うのも。
けどな、それ以上に大切な人や守りたいものを失いたくねえ!
だから戦うんだ!立ち上がんだ!
来いよスターヴ!オレはまだやれるぞ!

奇跡か、或いはこの空間が何かを呼び寄せたのか。
ブレイザインが武装を廃し、
拳で戦うことに特化した形態に変わる。

溢れる[オーラで防御]しながら全力で殴り合う。
拳を振るう毎に[限界突破]し、[力を溜め]ていく。
[勇気]と[気合い]を込めて力を全解放!
「負けられねんだよ!ヒーローは!」
腰の入ったパンチでトドメだ!!



 叩きつけられた蹴撃の一撃は『スターヴ』の肉体を大きく傾がせた。
 どれだけ戦っても、どれだけ傷つけても、どれだけ打倒しても。『スターヴ』の心に『強さ』を求める執着があり、妄執の如き『飢餓』がある限り、オブリビオンとして現界した『スターヴ』は凄まじき力を持った者であることは認めざるを得ない。
 これまで数多の猟兵たちが戦い、消耗しているはずであるのに、未だ重圧が消えない。

「無茶苦茶ツエーな、此奴……」
 空桐・清導(ブレイザイン・f28542)――ブレイザインは、その鬼気迫る姿に唾を飲み込んだ。
 圧倒的な力。
 個々のちからはオブリビオンが猟兵よりも勝るだろう。それは理解している。あれだけの攻撃を幾多も受けて尚、消滅しない力量を正しく認識したブレイザインにとって、その言葉は打倒なるものであったことだろう。
「なぜ、怯えない。なぜ、竦まない。なぜ、恐怖しない。おまえたちはいつだってそうだ。何の力も保たないはずなのに、俺の、我の前に立ちふさがる――」
『スターヴ』にとっては過去に打ち倒された再現のように思えてならなかったのだろう。
 どれだけ攻撃を放って躱され、放たれる拳、蹴撃の一撃一撃が絶大なる力の壁を越えて突き刺さる。

「……? 怖えーさ。痛いのも、戦うのも。けどな――」
 ブレイザインは認める。
 恐ろしさも、痛みも、何もかも。それが己の体の中にあることを認める。否定はしない。
「それ以上に大切な人や守りたいものを失いたくねえ! だから戦うんだ! 立ち上がんだ!」
 その言葉を放った瞬間、放たれる『スターヴ』の拳がブレイザインに炸裂する。
 視界が明滅するほどの衝撃。
 口の中に広がる鉄の味。傷みが体中を駆け巡っていく。凄まじい力だ。身体が引き裂かれそうな傷みを覚えるけれど、それでも清導……ブレイザインは立ち上がる。
 血反吐を吐きながらも、立ち上がる。

 その血潮の赤さに視界がくらむ。
 どれほどの打撃を受けたのだと身体が理解していても、頭が理解しない。傷み、困惑、あらゆるネガティヴな感情が身体を走り抜ける。
 けれど、ブレイザインは負けない。
 殺されてしまうと思うことはある。死んでしまうと思うこともある。けれど、その瞳宿るのは恐怖ではない。
 正義の輝きは傷みでは一片も奪うことなどできやしないのだ。
「来いよスターヴ! オレはまだやれるぞ!」

 ブレイザインの咆哮が響き渡り、ユーベルコードが輝く。
 自身の想いと勇気にブレイザインが反応し、全身を光が包み込み、機械鎧が廃され、拳で戦う形態に変貌を遂げる。
 それはこの場限りの特殊な形態であり、再現性は皆無であったことだろう。
 だが、今はそれで十分だった。
「この拳で――!」
 駆け出す。朽ちた神殿であった戦場は今や崩れ落ちている。『スターヴ』と己の彼我の距離は互いの拳が届く範囲だ。
 退くな。
 退いたら負ける。直感的に理解していた。どれだけ相手の拳が強大であろうが、強固なものであろうが関係がない。

 拳と拳がぶつかりあい、力の余波が大地をめくれ上がらせる。
 打ち合い、傷みが走る度に己の限界を越えていく。それは圧倒的な力の差があっても関係がない。今の力の限界でもって『スターヴ』に及ばないのであれば、届くまで限界を突破し続けるのみ。
「なぜだ、なぜ倒れない! 俺の、我の方が力が上であるはずなのに――!」
 困惑した『スターヴ』の声が響く。
 けれど、勇気と気合を籠めた力を開放し続けるブレイザインにとってその言葉に対する答えは一つしかなかった。

「負けられねんだよ! ヒーローは!」
 腰の入った拳が『スターヴ』の胴へ放たれ、通常では出し得ぬ力が爆発的に膨れ上がって『スターヴ』の身体を吹き飛ばす。
 爆心地の如き大地に一人立つのは、清導――ブレイザインただ一人であった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
ふむ…飢餓、ねぇ……何をしても満たされない飢餓というのも厄介だね…
ま、喰らうために喰らうだけならそうもなるか…その強さで何がしたいのやら…

…緑の雷を障壁で防ぎつつ【投じられしは空裂く巨岩】を発動…ここからは時間との勝負…
…右手に持った黎明剣【アウローラ】が触れた周囲の岩や地面、瓦礫などを飛ばして視界を防ぎながら近寄っていくよ…
…接近しようとしている、と思わせて左手の袖から伸ばした術式組紐【アリアドネ】をスターヴに巻き付けることで『接触』…
…効果時間が切れるまでスターヴを地面や壁に高速で連続射出する事でダメージを与えるよ…
…最後は転倒しているスターヴにアウローラから伸ばした魔力の刃で切り裂こう…



 ただの拳の一撃が、己の身体を吹き飛ばすほどの威力を齎すと『スターヴ』は過去にも知っていたはずだった。
 あの頃とは違う。違うはずだった。力は増している。あらゆる『守る者』たちを捕食し、その記憶すらも取り込んできた。
 だというのに、未だ届かない。
 ただの拳の一撃ですら、己の身体を破壊する。
「理解出来ない……なんなのだ、その力は。おまえたちは、一体なんなのだ――!」
 咆哮とともに『スターヴ』の視線が落雷を呼ぶ。
 緑の雷撃が明滅するように世界を染め上げていく。

 その雷撃を組紐によって産み出された障壁で防ぎながら、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は呟く。
「ふむ……飢餓、ねぇ……何をしても満たされない飢餓というのも厄介だね……」
 彼女の電子型解析眼鏡『アルゴスの眼』が捉えるのはオブリビオン『スターヴ』。『飢餓』の権化とも呼ばれた、あの個体が求めるのは『強さ』にほかならない。
 けれど、同時に決して満たされることのない執着は、いつしか暴虐を振り撒く存在にしか成りえないことをメンカルは知っている。
「ま、喰らうために喰らうだけならそうもなるか……その強さで何がしたいのやら……」

 メンカルには理解できなかったことだろう。
『強さ』にのみ執着し、固執した結果、あらゆる他の一切合財を摩耗していった『スターヴ』には、その問いかけに応える解すら持たぬことを。
「見えざる腕よ、投げろ、放て。汝は剛力、汝は投擲。魔女が望むは大山投じる巨神の手」
 ユーベルコードの詠唱が始まる。
 その手には濃紺の刀身を持つ術式制御用の長剣。その名を黎明剣『アウローラ』。彼女の魔力を感知し、夜明けのごとく東雲色から白色に輝く。
 掲げた剣の刀身が白く輝き、まるで星のようにユーベルコードの力を増幅していく。

 戦いの余波で瓦解した神殿の瓦礫に、その剣の切っ先が触れた瞬間、それらが弾丸のごとく射出される。
「ここからは時間との勝負……」
 次々と投射され続ける瓦礫や岩、削った地面。
 それらは『スターヴ』の視界を塞ぐ。どれだけ緑の雷撃を放ったのだとしても、次々と投じられしは空裂く巨岩(タイタンズ・スロウ)である。
 防いだとしても、視界は潰れ、互いの距離がわからなくなることだろう。
「小賢しい、賢しい真似を――!」
 緑の雷撃が降り注ぐ中、『スターヴ』がメンカルとの距離を詰めるように駆け出す。
 小賢しい。小賢しい。あまりにも姑息。それは『スターヴ』にとってはどうしようもないほどの激情にかられてのことであった。
 瞬時に踏み込む。
 見上げるメンカルの瞳すら今なら潰すことができる。

 だが、それはなされることはない。
 接近し、メンカルにこの距離での『スターヴ』の攻撃を防ぐ手段などないはずだった。けれど、メンカルの手から放たれた組紐『アリアドネ』が『スターヴ』の腕に絡みつき、次の瞬間ユーベルコードの効果によって、『スターヴ』の巨躯が射出される。
「―――!?」
 大地に叩きつけられる『スターヴ』の身体。
 何が起こったのかわからなかったことだろう。傍から見れば、メンカルから弾き飛ばされたように叩きつけられていた。
 しかも、『アリアドネ』によってつながっている以上、再び戻され、高速で叩きつけられるのを繰り返される。

 それは理不尽な戦いであったのかもしれない。
 打ち付けられ、混乱の極みの中にある『スターヴ』を襲うのは黎明の如き色をした刀身の煌きであった。
「何を為したいのかも忘れてしまうほどに摩耗した記憶だからこそ、『飢餓』だけが残ったんだろうね――それを悲しいと言ってしまうのは、あまりにも拙いものだけれど」
 けれど、その『飢餓』が誰かを傷つけるのならば話は別だ。

 閃く黎明剣『アウローラ』の刀身が『スターヴ』の肉体を切り裂き、今まで奪ってきた血肉や記憶を、血潮と共に噴出させるのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

戒道・蔵乃祐
渇望の果てに心を喪いましたか

何を憎み。誰が為に強さを求めていたのか
犠牲にしたものも、大切な思い出も。何もかもが分からなくなってしまって
磨り減らして無くした心の虚すらも、まだ犠牲にし続けている

もう、良いじゃないですか
貴方は自分自身を許すべきです。

彼方に忘れ去られた過去を取り戻すことは出来ないけれど、この手で今を与える事は出来る

相手になりましょう。スターヴ
貴方の終わりを始めるために


迸る稲妻の波涛を拡散シールドで武器受け+激痛耐性
念動力+オーラ防御で雷撃をいなし、金剛身に取り込むことで地獄道を発動

ジャンプ+切り込みで飛び込み、グラップルで握り込んだスターヴの輝きを限界突破した怪力で彼自身に撃ち込む



 切り裂かれた身体から噴出する血潮。
 それは今まで『飢餓』の権化である『スターヴ』が奪ってきた血肉であり、記憶であったことだろう。
 過去の集積が骸の海にてオブリビオンとしての化身を生み出すのだとすれば、それこそが『スターヴ』の力の源であったのかもしれない。
「溢れる……! 漏れ出てしまう……! 俺の、我の力が、溢れる……!!」
 溢れ出した血潮をかき集めるように『スターヴ』が傷口を抑えるが、噴出は収まらない。それどころかこれまで止められていた犠牲者たちの血肉が開放されるように、次々と溢れていくのだ。
「俺の、我のものだ! これは、この力は!」

「渇望の果てに心を失いましたか。何を憎み。誰が為に強さを求めていたのか」
 戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)は、その様子を見遣り、そうつぶやいた。
 その瞳に映るのは強大なるオブリビオンではなかったのかもしれない。救われぬ者があって、救われぬが故にもがき続け、それ故に他者を傷つけ続けた哀れなる者でしかなかったのかもしれない。
「犠牲にしたものも、大切な思い出も。何もかもがわからなくなってしまって、すり減らして失くした心の虚すらも、まだ犠牲にし続けている」
 そんなふうに『飢餓』の化身たる『スターヴ』を蔵乃祐は見つめていた。
 哀れである。
 戒律を捨てて出奔した悪僧だからこそ、告げる事のできる言葉がある。

「もう、良いじゃないですか。貴方は自分自身を許すべきです」
 そう、誰が許すわけでもない。
『スターヴ』が奪った生命は、記憶は戻ることはない。償うことも、取り返すことも出来ない。
 生命は回らない。帰ってこない。だからこそ、大切にしなければならないのだ。自分の生命も、他者の生命もまた同様であるのだから。
「許されるものか! 俺は、我は、どうしたって『強さ』が必要なのだ! 今を生きる猟兵に何がわかる!」
 緑の眼光が輝き、蔵乃祐を襲う雷撃。
 聖別が施された特殊ファイバーの外套が雷撃を防ぐ。迸る雷撃をいなしながら、蔵乃祐が踏み込むのは、地獄道(インフェルノ)である。

 金剛身たる己の身体を持って、踏み込む道の先に在るのは超常たる力。制御が難しく、ともすれば暴走し、己の身体を傷つける。
 だが、それがなんだというのだろう。蔵乃祐は笑いながら、その道を突き進む。
 弛みない練磨の先にあるのが剛力無双たる金剛の力であるのならば、己の身体こそが金剛であり、耐えられぬ道理などない。
「意志は自ら願うに非ざれば滅びず、恰も火が千度も強いて撓めらるとも、尚、その内(なか)なる自然の力を顕すが如く也」
 雷撃の尽くを受け流し、オーラの力張り巡らせて駆け抜ける。

「彼方に忘れ去られた過去を取り戻すことはできないけれど、この手で今を与える事はできる。相手になりましょう。『スターヴ』。貴方の終わりを始めるために」
 飛び込み、間合いを詰める。
 雷撃の凄まじさは、間合いに入った瞬間苛烈なるものになる。
 その身にまとった外套も意味をなさない。己の皮膚を灼く電撃の鋭い傷みも、打ち合う拳の硬さも蔵乃祐は自身の心と体に刻み込む。
 終わることの出来なかった過去があるというのならば、まずは終わらせなければならない。
 握り込んだ拳が金剛のように硬度を高める。

「ここからはじまるのです。過去が過去のままに。今に滲み出ぬように。未来に仇為すことなく、その未来の先に在るものたちのために――!」
 放たれた拳は裂帛の気合と共に。
 打ち込まれた拳は先んじて放たれた猟兵の拳と寸分たがわぬ場所へと打ち込まれる。
 何度も、何度も、そこに打ち込まれた。

 過去の英雄もまた撃ち込んだことだろう。
 どれだけの過去を罪重ね、血肉を喰らっても尚、その一撃に到達することはできない。
『スターヴ』は知る良しもないだろう。
 彼自身が欲した力の源にあるものこそ、彼が摩耗してはならぬものであったことを。
「それを知るにはもはや遅きに失する……ですが、終わらせることはできる!」
 放たれた蔵乃祐の拳の一撃が、天高く伸ばされる。
 それは『スターヴ』にとって、終わりの始まりを告げる一撃であった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
一つになるなんてやめときなって
何そのしょーもない目的
全にして壱とかそんなんでしょ、しょーもな
私は欲張りだからさー、評価されない力に価値なんて見出せないんだって
ドヤる相手も居ないのに、力を誇ってどーすんのさ
という訳で、君はノーサンキュー!


赤き手対策に足元に『オーラ防御』でシールドを展開
敵さんの攻撃が来たらシールドで防いでいる一瞬を利用して射程外になりえる方向を『第六感』に任せて判断して跳躍
そのまま【Code:C.S】を発動
自分の時間を加速させて、高速連撃でスターヴに攻撃
二刀による『2回攻撃』、それから連撃の最後は『串刺し』にしてフィニッシュ

これでお腹一杯になったかな?
お代わりはナシだよ、お終い



 拳の一撃が『終わりを始める』のだとすれば、『飢餓』に終わりはあるのだろうか。
 飢えて、満たされて、それでもなお生命は飢えていく。
 時間が過去に排出されて未来へと進んでいくように、常に満ち足りたものなど、この世界に在るはずもない。
 だからこそ、求めてしまう。
 たった一つのものになるために、『強さ』という手段でもって『スターヴ』は血肉と記憶を追い続ける。
「たった一つのものに、何もかも否定できるように。俺は、我は、『それ』に成りたい」
 それは吐露であったのかもしれない。
 摩耗して喪ってしまった嘗ての記憶の残滓であったのかもしれない。それを判断することのできる者はもういないけれど、猟兵の一人、月夜・玲(頂の探究者・f01605)はなんでもないことを言うように斬って捨てた。

「一つになるなんてやめときなって。何そのしょーもない目的。全にして壱とかそんなんでしょ、しょーもな」
 彼女の言葉は、『スターヴ』にとって不快なものであった。
 どうしようもなく相容れぬ存在と今対峙している。それを自覚させられてしまう。赤き手の群れが玲を襲う。
 その記憶を、根こそぎ奪ってやろうと放たれた赤き手の群れは、しかし彼女に届くことはなかった。
 彼女を中心にオーラが噴出し、赤き手の群れを遮断する。がりがりとオーラの障壁をかきむしるように赤き手が群がる。

「私は欲張りだからさー、評価されない力に価値なんて見いだせないんだって」
 飛び込んでくる『スターヴ』の巨躯が玲の張り巡らせたオーラを打ち破らんと叩きつけられる。
 ぎしりと障壁が軋み上げる。嫌な音を立てて障壁がひび割れ、砕け散った瞬間、玲は中へと舞う。

「奪う、喰わせろ! その記憶を、血肉を! 力の源泉を! 溢れてしまった代わりに! お前たちを喰らって、俺は、我はさらなる力の向こう側へ―――!」
「封印解除、時間加速開始――ドヤる相手も居ないのに、力を誇ってどーすんのさ。向こう側へ行ったってどうせ飽きて後悔するのが関の山だって! という訳で、君はノーサンキュー!」
 抜き払った模造神器に施された封印が解除され、Code:C.S(コード・クロノシール)が発動する。
 玲の視界がゆらりと揺らぐ。
 それはまるで周囲、『スターヴ』の動きが鈍くなったように感じられる光景であった。否、彼女自身が速くなったのだ。
 模造神器に宿る時間加速の力が彼女の時間を加速させているのだ。

 目にも留まらぬとはこのことである。
 玲自身にとっては当たり前のように動いているだけであっても、対峙する『スターヴ』にとってみれば、何をされたのかもわからぬほどの神速の連撃。
 ニ刀による斬撃は『スターヴ』の肉体を切り裂き、その血潮を迸らせる。もはや同しようもないほどに消耗しきった『スターヴ』に溢れる血潮を止める力など残っていようはずもない。
「別に『強さ』を求めるんなら、一人でなくったっていいんだよ。人間一人で生きているわけでもないし、どうせだったら手に入れた力をドヤりたいじゃない。すごいって言われたいじゃない」
 当たり前の感情だ。
 誰だって認められない。称賛されたい。それをモチベーションとするのは、人として、生命として当然ことだ。

 咎められる理由なんて無い。
 だからこそ、玲は『全にして壱』をしょうもないと切り捨てる。
 欲張りだと彼女は言った。何もかも、あれもこれも全部欲しい。求める力も、為し得る未来も、何一つ取りこぼしたくない。
「だから―――これでお腹いっぱいになったかな?」
 振るった模造神器の斬撃から、刺突の軌跡が青い残光を生み出し、背後に『スターヴ』を従え、玲は呟く。

「でもお代わりはナシだよ、お終い」
 時間加速が終わる。
 次の瞬間、一斉に開かれた傷跡は、これまで猟兵たちが刻んできた傷跡そのものであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サージェ・ライト
なるほどツッコミ役のシリカ(猫)がいないと
天の声さんが困る、サージェ理解しました!

飢えは生きる、前に進むためのもの
でもあなたのそれは違います
ここで行き止まり
デッドエンドってやつです

それに乙女の柔肌は高級食材ですよ!
易々と差し上げるわけにはいきませんっ

【VR忍術】で戦います
あの鉤爪を封じるには、こう!
影縫い&影縛りの術!
漆黒竜ノ牙を投擲、影を地面に縫い付けて
さらに影から触手で両腕を拘束します

止まるのは数瞬でしょうがそれで十分!
ダッシュで接近してすれ違いざまに
ハリケーンスラッシュカタールで斬りつけます!
「これが私の全力です!」
ヒット&アウェイでのカタール攻撃で一気にいっきまーす!

※アドリブ連携OK



 ついに再生の追いつかなくなった『飢餓』の権化である『スターヴ』の傷口が開き、血潮が迸る。
 それはこれまで奪ってきた血肉と記憶そのものであり、力の源である。
「お、おぉ―――!」
 溢れる力。こぼれ落ちる力。戻らない力は、どれだけ『スターヴ』が強力なオブリビオンであっても関係がない。数多の猟兵たちが刻んだ傷は、どれだけ取り繕っていたのだとしても、確実に『スターヴ』を追い詰めていたのだ。
「飢えは生きる、前に進むためのもの」
 そう、それは時間を過去に排出して未来へと進ませるのと同じことであった。
 サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は言葉を紡ぐ。
「でも、あなたのそれは違います。ここで行き止まり。デッドエンドってやつです!」

 なるほどツッコミ役のシリカがいないと色々と困ったことになるとサージェは理解した。だが、それでも微妙に溢れ出る言葉の選び方が、ツッコミ役不在のことの重大さを物語っていた。
 どれだけ消耗させられていたとしても『スターヴ』が未だ脅威であることはうがい用がない事実であった。
「溢れたのなら、補えばいい……お前の血肉を、俺に、我に捧げよ! その血肉を持って、再び奪い尽くす!」
 緑の眼光が輝き、その本質であり、残ったたった一つものである『飢餓』の衝動のままに赤き手を鉤爪のように巨大化させ、サージェへと襲いかかる。

「乙女の柔肌は高級食材ですよ。易々と差し上げるわけにはいきませんっ――メモリセット! チェックOK! 参ります!」
 サージェの手の中に専用メモリがくるりと翻り、コンソールにインストールされるは、VR忍術(イメージスルノハカッコイイワタシ)である。
「その鉤爪を封じるには――こう!」
 ユーベルコードによって再現されるバーチャル忍術。
 投げはなった漆黒の竜のような光沢を持つクナイが『スターヴ』の影へと突き刺さり、その動きを止める。
「影縫い&影縛りの術!」
 さらに影から触手が飛び出し、『スターヴ』の巨躯を完全に拘束し、動きを止める。だが、それは数瞬に満たぬ間であろうとサージェは理解していた。

「この程度で、俺の、我の動きを止めたつもりか!」
 ギチギチと肉体が軋み、『スターヴ』が触手を引きちぎる。
 未だ影縫いの術は効果を発揮しているが、それも時間の問題だ。けれど、サージェは臆することなく駆け込んでいく。
「それで十分です! これが私の全力です!」
 手にしたのは両手に構えたハリケーンスラッシュカタール。すれ違いざまに切りつけ、踵を返すようにして体を翻し、また斬りつける。
 嵐の名が付く短剣が次々と『スターヴ』の体へと裂傷を刻んでいく。
 それは今までの猟兵たちが与えてきた傷のように外面を取り繕うことすらできなくなっており、次々と血潮が噴出する。

「まだまだ行きますよ! 止まりませんから!」
 今、この瞬間をのがしては『スターヴ』を逃してしまう。己の一撃は軽いものであったとしても、サージェは役割をしっかりと理解していた。
 ここで押し留め、消耗させる。
 そうすることで自身が止めをさせなくても、他の猟兵がきっと『スターヴ』を骸の海へと還してくれる。

 今までも、これからもきっと猟兵たちはそうやって戦っていくだろう。
 たった一人ですべてをこなす必要なんて無い。猟兵であるサージェと『スターヴ』との間にある決定的な違いはそこであった。
 一つのものに固執するがあまり、他者の存在を忘れたものと、他を重んじて戦う猟兵との戦いに在ってオブリビオンに負ける理由がないのはそこだ。
「何処まで行っても人は一人でしょうけどっ! それでも誰かのために、誰かと戦うからこそ、私達は勝ち取ってきたんです。それは強さなんてものじゃないっ! もっと大切なことなのですっ!」
 鋭き斬撃の一撃が、『スターヴ』に刻まれる。
 彼女の言葉を『スターヴ』はすべて理解できなかったことだろう。

 それでもサージェは言葉と共に刃を尽くす。
 そうすることで繋がる未来もあるはずだと信じて―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
銀河帝国式典・要人警護機体であった私…成程、『守る者』としては生粋と言えますか
肉が無いのは不服やもしれませんが…貴方の相手は騎士たらんとするこの私
人々を喰らわせはしません

●瞬間思考力で攻撃を●見切り、●怪力による●武器受け●盾受けで鉤爪を弾き、喰らい付かんとする口内へ格納銃器での●スナイパー射撃を撃ち込み抑えながら盾で殴打し剣で斬りつけ接近戦

…武装の耐久も限界ですね、ですが…

万物砕く拳持たずとも、生まれが守護者であろうとも関係なく
喪失を哀しみ、他者を護る意志を持ったその時に
全てを己がモノとする飢餓に負ける訳にはいかないのです!

武装を投棄
脚部スラスターでの●推力移動で懐飛び込み四肢の格闘で痛打



「銀河帝国式典・要人警護機体であった私……成程、『守る者』としては生粋と言えますか……」
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は対峙する『飢餓』の権化とも言うべき『スターヴ』の様相を見遣り、頷く。
 すでに数多の猟兵達との戦いによって、消耗の激しい姿は取り繕うこともできなくなっているのだろう。
 今まで奪ってきた血肉、記憶が傷口から血潮となって溢れ出し続けている。それでもなお、その緑の眼光が見やるのはウォーマシンたる機械騎士であるトリテレイアである。
 その機体が宿すデータベース、これまでの戦歴、戦闘データは『守る者』の記憶としては極上のものであったことだろう。
「喰わせろっ! 貴様の記憶! 貴様が有する『守る者』をすべて寄越せ――ッ!」
 両腕が鉤爪に変化し、トリテレイアに襲いかかる。
 けれど、トリテレイアは落ち着いたように宣言する。

「肉がないのは不服かもしれませんが……貴方の相手は騎士たらんとするこの私。人々を喰らわせはしません」
 一瞬の見切り。
 電脳が導き出した『スターヴ』の動きの最適解。
 洗練された武術の動きにも似た足運びは、それが血肉と記憶に寄るものであるとは思えなかった。
 練磨されているが故に読みやすいというのは皮肉でしか無い。鉤爪の一撃を大盾で受け止め、弾く。
 それでもなお喰らい付かんとする口腔を広げた顔を銃火器でもって弾丸を打ち込みながら、大盾で押し込み剣を振るう。

「それだけの技量、力がありながらさらなる力を欲するのですか。なぜ、それを己のためだけにしか振るおうとしないのです」
 それはトリテレイアが要人警護の機体であったからこそでた疑問であった。
 拳が大盾に叩きつけられ、分厚い装甲であっても容易にひしゃげさせる。剣と鉤爪がかち合えば、剣が刃こぼれを起こしていく。
「己のために力を振るうことの何が咎められようか。誰が為にという言葉の何処に真実が在る。在るのは偽善だけではないか! その力を誇らずして、何を誇る! 何もかもが否定できる力! あの力はそれだけの――!」

 大盾を撃ち抜く拳の一撃。
 アイセンサー間際まで迫った『スターヴ』の拳を見た。確かに凄まじき力であると。
「……武装の耐久も限界ですね、ですが……実際の戦場の騎士は道具や手段を選ばないものです」
 此処にあるのは御伽の騎士ではなく、戦場の騎士(ナグレリャナンデモイイ)である。
 大盾と剣を投棄し、構えるは己の機体の拳のみ。
「万物砕く拳持たずとも、生まれが守護者であろうとも関係なく、喪失を哀しみ、他者を護る意志を持ったその時に!」
 鋼鉄の拳と『飢餓』の権化の拳がぶつかり合って火花を散らせる。
 ひしゃげた音が響く。

 それは『スターヴ』の拳がひしゃげた音だった。
 ここに来てトリテレイアの放つ拳の重みは、ただの拳の重みではなかった。
 機体の重量すべてを乗せる体重移動。それは幾多の世界を見てきたトリテレイアだからこそできる芸当であったことだろう。
 共に戦った猟兵、相対したオブリビオン、あらゆる戦闘データの蓄積が見せる徒手による攻撃。
「全てを己がモノとする『飢餓』に負けるわけには行かないのです!」
 スラスターを噴出させ、一瞬で『スターヴ』の懐に飛び込み、あえて徒手に寄る戦闘を行う。
 全てが『スターヴ』の間合いであった。
 けれど、その尽くを凌駕するのが、トリテレイアの拳と蹴撃であった。打ち合う度にひしゃげていくのは、『スターヴ』の四肢。

「なぜ、こうも差が付く……なぜだ! なぜ、俺は、我は『アレ』のようにはなれなかったのだ――!」
 嘆くような咆哮。
 そこに叩き込まれるトリテレイアの鉄拳が『スターヴ』の体を吹き飛ばす。
「あえて言いましょう。己のためだけに戦うものには宿らず、誰かのために戦える者にこそ、貴方の求めた真なる『強さ』が宿るからです――!」

 トリテレイアの拳が火花を散らして沈黙する。
 それは彼の機体もまた限界を越えていたからに他ならない。けれど、それでもトリテレイアは護りきったのだ―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ソナタ・アーティライエ
ならばわたしは『戦いに恐れを抱くもの』として、貴方に相対しましょう
そして貴方の『飢餓』を満たす
それがわたしの戦い方です

望むのであれば応えましょう
どうぞ貴方の欲するがままに
それで貴方の飢えが癒されるのなら
いくらでも持って行ってくださって構いません

でも、本当に貴方が求めるのはそれだけなのですか?
許せないのは本当にそれなのですか?
思い出して欲しい……かつて敗れた時の、自分の本当の気持ちを

貴方にも、いと高き天の恩寵のあらんことを……



 憧憬とは即ち、己に落とす影の形でもあることだろう。
 それが光強く輝けば輝くほどに闇は色濃く。遠ければ影は大きくなる。だからこそ、『スターヴ』の心は満たされない。
 欲するものが手に入らないというのは子供だけが抱えるものではない。どれだけ成長しようが、ふとした拍子に現れるものであり、満たされぬ想いは必ず、その心を苛む棘となって在り続けるだろう。

 だからこそ、別のなにかで満たさなければならないし、棘は引き抜かねばならない。時としてそれは傷みを伴うものであるかもしれない。
 けれど、生命が生きる以上痛みのないものなどあろうはずもない。
 その痛みと懊悩を抱えて生きるからこそ、生命は成長していくのだから。

 それを理解せぬ『スターヴ』にとって、あまりにも理不尽なる現実であった。
「なぜ、届かない。恐れを抱く者が、なぜ俺の、我の先を征く……認められない。認めてはならない。だからこそ、奪い続けなければ」
 どうしようもないほどに行き詰まった生命。
 それを前にしてソナタ・アーティライエ(未完成オルゴール・f00340)は静かに言葉を紡ぐ。

「ならばわたしは『戦いに恐れを抱くもの』として、貴方に相対しましょう」
 彼女の言葉は恐れを抱くと口にしながらも、戦いそのもの、災厄の塊であるオブリビオン『スターヴ』を前にしても静かなものであった。
 淡々としていながら、それでいてどこか暖かいような奇妙な感覚を『スターヴ』に与えたことだろう。
「そして、貴方の『飢餓』を満たす。それがわたしの戦い方です」
 赤い手の群れがソナタの体を掴む。
 それは『護る者』の記憶を奪うユーベルコードにして、『スターヴ』を『飢餓』の権化足らしめる力の源であった。

 すでに『スターヴ』は消耗しきっている。
 そこに力の源である記憶を与えればどうなるかわかりきっていた。けれど、ソナタは理解しながらも、己の戦い方をする。
「望むのであれば応えましょう。どうぞ貴方の欲するがままに。それで貴方の飢えが癒やされるのなら、いくらでも持っていってくださって構いません」
 流れていく記憶がある。
 掛け替えのない記憶がある。そのどれもが暖かなものであった。感じることの出来ないものには、それがなんであるのか理解することもできなかったことだろう。

 どれだけ言葉を紡いだとしても、それを感じる力がなければ、言葉は言葉のままだ。
 だからこそ、ソナタは見せなければならない。
 人の心の暖かさを、その記憶の力を、何が人を人たらしめ、生命を育むのかを。
「でも、本当に貴方が求めるのはそれだけなのですか?」
 困惑するように『スターヴ』の緑色の眼光が揺らぐ。
 どれもこれも涙が溢れそうなほどの記憶ばかりであっただろう。暖かな記憶。凍りついた心と肉体がほどかれていく。
 それがどれだけ困難な道かを誰もが知っていたことだろう。
 荒唐無稽な試みであると言うものだっていたかもしれない。けれど、ソナタは歌う。歌い続ける。

 いと高き天の恩寵(ムクナルヒトミニウツルモノ)を受けし者が彼女であるのならば、彼女の戦いは必ず身を結ぶ。
 どれだけの記憶を代償にしたとしても、成し遂げると決めた。それがソナタの戦いである。
「許せないのは本当にそれなのですか? 思い出して欲しい……かつて敗れた時の、自分の本当の気持ちを」

 その言葉は慈雨の如く染み渡っていくことだろう。
 黒く摩耗した肉体は解けておいていく。
 奪い去ってきた血肉、記憶のための犠牲者たちで染まった赤き四肢すらも洗い流すように『スターヴ』―――『飢餓』と呼ばれたオブリビオンの心が満たされていく。
「俺が、我が……俺が、許せなかったのは―――」
 その言葉は最後まで紡がれることはなかった。
 対峙した猟兵が言っていた言葉を思い出す。自分を許して欲しいと。その言葉は、理解できなかったけれど、それでも奪った暖かな記憶の中にある。

 許すという言葉。
 敗れた自分に対する許しではない。
 力なく、力を渇望しつづけ、あらゆるものを犠牲にし、奪い続けた自分を他の誰でもない自分が許さなければならない。
 為したことは許されないかもしれない。
 けれど、それでもと差し伸べた手があった。数多の猟兵が立ち向かった。すでにソナタが手を出すまでもなく消滅し、骸の海へと還ったかもしれない。

「貴方にも、いと高き天の恩寵のあらんことを……」
 ソナタの目の前で『スターヴ』と呼ばれた嘗ての神の一柱がくずれ落ちて、霧散していく。
 それを見送る歌が響き渡り、光の粒がソナタに降り注いでいく。奪われたはずの記憶が戻っていく。

 ああ、と溜息をつくようにソナタは天に手を伸ばす。
 捧げるように歌声は響く。
 嘗て在りし日の、今はもう居ない神の名を呼ぶただ一人として―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『知られざる文明を復興しよう』

POW   :    体力で復興を手伝ったり、体当たりで文明の魅力を伝える動画を撮影する

SPD   :    手早く復興を手伝ったり、その文明の特別な技術等を「やってみた」動画で紹介する

WIZ   :    復興の為の書類仕事を手伝ったり、その文明の魅力を伝える文明紹介動画を作成する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 地球の中心たる「センターオブジアース』に迫っていた脅威、オブリビオンは全て猟兵達の手によって骸の海へと還っていった。
 けれど、未だジェネシスエイトによって支配されていた『知られざる文明』、その一つである神々住まう『センターオブジアース』の復興はなされていない。

 これからは猟兵達の出番である。
 燃え盛る不死の怪物がくべられし地球の中心。そこに住まう神々は確かに神そのものであるがユーベルコードを使える神々ではない。
 朽ちた神殿や破壊された祭壇など様々なものが未だ山積している。
 体力に任せて神殿などを立て直すのもいいだろう。
 もしくは、『センターオブジアース』における未だ見ぬ技術を紹介する『動画』を作成するのもいいだろう。

 未だ「センターオブジアース』には知られざるものが多い。
 それを見つけ、魅力として発信するのは、この場に居合わせた猟兵を置いて他にいない。

 戦うだけが猟兵の役目ではないことを、その手で示す時だ―――。
天道・あや
さーて、何とかセンターオブジアースも救えましたし、それじゃあ、いっちょ復興の為のお手伝いをしまショータイム!……あたしなりのやりかたで!

復興といえば、やっぱり人と人との助け合い!他の場所に住んでる人達にも力を借りたりしたほうがいいと思うんだよね、あたし。

という訳で神様達!シンフォニック・スコアについて教えてください!あたしテレビに出たりとか動画投稿者じゃないけど……頑張って、世界に伝えますから!

昔(過去)こんな歌があったって、そしてこの歌があったから今(現在)に歌が続いて、そして……先(未来)へと新たな歌が続いていくんだって。伝えたいんです。

だから、知ってる事、覚えてる事を教えてください!



 戦いの後の残滓は残ったままであるが、それでも生命在る者たちは生きてゆかねばならない。
 どれだけそれが困難な道であったとしても己を見失わない限り、そこが己の歩むべき道であるのだから。
「さーて、なんとか『センターオブジアース』も救えましたし、それじゃあ、いっちょ復興のためのお手伝いをしまショータイム!」
 天道・あや(目指すぜ!皆の夢未来への道照らす一番星!・f12190)は猪突猛進を体現するようにテンション高く宣言する。
 その明るさは見る者の表情を明るくするものであったことだろう。
 自分なりのやり方で、と彼女は頷く。

 復興といえば、やはり人と人との助け合いである。
『センターオブジアース』においては神しか済んでいないから、神と神との助け合いだね、とあやは快活に笑って神々の住まう場所へと近づいていく。
「今まで交流がなかったとはいえ、他の場所に住んでる人たちにも力を借りたりしたほうがいいと思うんだよね、あたし」
 それは名案だった。
 同じ世界に存在する文明であっても、近年までは交流が断絶されていたのだ。それはオブリビオンであるジェネシスエイトたちによる策動であったわけだが、猟兵であるあやは、その逆をすればいいと考えたのだ。

「という訳で神様たち! シンフォニック・スコアについて教えてください! あたしテレビに出たりとか動画投稿者じゃないけど……がんばって、世界に伝えますから!」
 ぐいぐいと『センターオブジアース』に住まう神々に詰め寄っていくあや。そのバイタリティの凄まじさたるや、相手が神であろうと物怖じしない態度には、ほとんどの神々が協力的な態度を取らざるをえなかった。
 屈託のない笑顔、真摯なる願いの前に、神々というものは往々にして甘いものだ。それが猟兵であり、なおかつ誰かのためにスタァの道を目指す彼女であればなおのことだった。

「神譜『シンフォニック・スコア』か……かつての音楽神たちであれば、知っていようが……」
 すでに戦いの後である。
 失われてしまった譜面であるからこそオブリビオン化したのだろう。残念ながら、あやは有力な情報を得られることはできなかった。
 けれど、あやは諦めない。
 情報がないというのならば、神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たちと対峙し、その歌声を聞いた自分自身の記憶こそが情報そのものである。
 だから、諦めることなんて何一つないのだ。

「あたし、昔こんな歌があったって、そして、この歌があったから今に歌が続いて……先へと新たな歌が続いていくんだって、伝えたいんです。ううん、伝える! だから、どんな些細のことでもいいの、私が歌うから! 間違っていたり、テンポが違っていたら教えて欲しいんです!」
 その場で歌い出すあや。
 完全に同じ歌にはならなかったかもしれない。彼女の歌声を聞く神々もまた記憶の中にある神譜の旋律を想い起こすも、所々違った部分があったかもしれない。

 けれど、それは些細なことだ。
 歌が連綿と過去から現在へ、そして未来へとつながっていくのであれば、過去そのもの、そのままよりも、今を生きるあやがアレンジして歌うことが何よりも過去の神譜に捧げる鎮魂歌となることだろう。
「いくらでも歌うよ! 何度でも歌うよ! あの星、一番星に届くまで――!」
 あやの歌声は、彼女だけの歌となって『センターオブジアース』に響き渡る。
 大歓声があるわけでもない。
 何万人という人間が集まるコンサート会場でもない。けれど、あやにとってステージは、今生きるこの場所だ。
 だからこ、歌い続ける。

 どれだけ一番星が遠くに輝くのだとしても、今は六等星であったとしても。
 それでも、遠くから光届かせる星の輝きは、本当の大きさを教える。どれだけ遠く放たれた場所からでも光を届ける、輝きをあやは、『センターオブジアース』で一人歌声と共に様々な世界へと届かせるのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ネメシス・インフィニー
復興のお手伝いですね。
不肖ネメシス・インフィニー。
何かできるといいのですが…はい?
何かおかしな点でも…?(毛皮を失った姿)

おいらはここの片づけをおこないます。
これは大変でしょうが、やりがいがありますね。
ああ、その前に写真を撮っておきましょう。
あとで元に戻す場合の参考資料になりそうですしね。

では、手早く後片付けを行いましょう。
Zzz…かめーーーーーッ(UCでカメに変身…トゥー!!)

神殿にある残骸や、祭壇跡など『早業』『ダッシュ』を併用して集めるかめ。
『念動力』も大活躍かめ~。
『聞き耳』が助けを求める声を聞きつけたかめ~。
おいらにお任せください。
このゴミを片付けてくればいいんですねー…かめー。



「復興のお手伝いですね。不肖ネメシス・インフィニー。何かできるといいのですが……」
 ヒーローズアース、地球の中心たる『センターオブジアース」において一人の青年が復興の手伝いを申し出る。
 その姿は今まで戦いに参加していた猟兵達の中にはいなかった顔ぶれのようであり、もしも、他に同じ様に猟兵がいたのならば首を傾げたに違いない。
 ネメシス……ネメシス・インフィニー(ヴォーパルバニー・f21907)!? と誰もが驚きの声を上げたに違いない。
 きっと彼も『何かおかしな点でも……?』と首を傾げただろう。
 そう、先んじた戦いにおいてユーベルコードの代償によって毛皮を喪ったネメシスは、このような姿になっていたのだ。
 元のもこもこなうさぎの姿から人型に為る理屈はわからないが、そこは生命の埒外にある存在である猟兵である。

 誰も彼らの真なる姿を知らず、規則性を見出すことなどできやしない。
 故に毛皮を喪った後の姿が人型の姿をしていたところで、猟兵にとってはなんらおかしいことではないのだ。
「おいらはここの片付けをおこないます」
 そう言って見上げたのは戦場となった朽ちた神殿であった。
 戦いの余波によって瓦礫の山と化した神殿であるが、そのままにしておくのは忍びないものであった。
 それに今はもう居ないとはいえ、かつてはここも神々が住まう場所であったことだろう。綺麗にしておいて損はないというものだ。

「これは大変でしょうがやりがいがありますね。ああ、その前に写真を撮っておきましょう。後で元に戻す場合の参考資料になりそうですしね」
 そういって写真を撮って現状を保存する。
 こうしておけば片付けた後に再び再建するなどという話が出た場合にかつての状況を知る手がかりになるであろ。
 事前にやるべきことは全て終えた。ネメシスは張り切ったように息を吸い込み、ユーベルコードを発動させる。

「では、手早く後片付けを行いましょう。Zzz……うさ~…Zzz…カメ――ッ」
 いきなり昼寝を始めたかと思えば、その姿が亀へと変貌する。
 ウサギは電気亀の夢を見るか?(ウサギハデンキカメノユメヲミルカハテナ)というわけではないが、驚きの光景である。
 一匹の亀へと変身したネメシスは亀とは思えぬほどの俊敏な動きで神殿の残骸や、祭壇痕などを凄まじき速度でかき集めていく。
 念動力によって重たく大きな残骸であっても持ち上げ、移動していく。
「おっと、そちらにも大きめの残骸が~おいらにおまかせください。このゴミを片付けてくればいんですねー……かめー」

 そんなネメシスの活動を聞きつけた『センターオブジアース』の神々が同じ様に片付けの作業を手伝ってくれる。
 とは言え、ユーベルコードを持たぬ神々は猟兵と同じ様な働きができるものではない。時折、ネメシスが手助けしつつ、朽ちた神殿は片付けられていく。
 残骸などは一箇所にまとめ、いつかまた再建することがあるのならば、役立てられるであろう。
 それに再利用をしようとする者だって訪れるかもしれない。
 どんなものでも不変のものはない。
 けれど、変わっていくことで新しい何かに姿を変えることもあるかもしれない。

「亀の鈍足でもいいんです……かめー。一歩は一歩なのですから」
 変わっていくことを恐れる必要はない。
 今だってそうだ。『知られざる文明』もこれから『知られる文明』へと変わっていく。そうして、新しい何かが生まれる切っ掛けになるのだから。
 そんなことを思いながらネメシスは穏やかな疲れの中、微睡むのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
自分一人も救えない神様ね。救いを求めて願う類の神様じゃないわね、この方々。陰陽道と同じく、森羅万象を司る無数の神々。
こういうものならあたしの得手よ。

黒鴉召喚を最大限に使って、この領域の地形と神域を記入した地図を作成。
地図上の神域を線で結んでいって、基礎の結界を作る。
んー、やっぱり龍脈に沿って大体並んでいるかしら?
あとは、龍脈からずれた神域を横滑りさせたり、必要な場所に神域を新設したり。

笑鬼召喚。あなたたちの出番よ。世界全域を守る「破魔」の「結界術」、「地形を利用」しつつ、築き上げなさい。
これで、そう簡単にオブリビオンは入って来れないわ。
「集団戦術」の視点から激戦地になる場所は特に堅固に。



 地球の中心たる『センターオブジアース』。
 そこはヒーローズアースに遥か昔より存在する神々が住まう場所である。不死の怪物がくべられし炎は今も尚、煌々と燃え続けている。
 如何な神と言えどもユーベルコードを持たぬ者であるのならば、オブリビオンを打倒することなどできようはずもない。
 人にとって神とは万能であり、上位存在であるという意識があるのであれば、なおのこと今の状況は不可解なものに映ったことだろう。
「自分ひとりも救えない神様ね。救いを求めて願う類の神様じゃないわね、この方々。陰陽道と同じく、森羅万象司る無数の神々。こういうものならあたしの得手よ」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)が学んできた東洋呪術の多くであれば、この手合の神のほうが突っつきやすいのだろう。

 無数に呼び出した黒鴉の式神を解き放ち、戦いの場となった『センターオブジアース』の地形と神域をつぶさに調べ上げていく。
 知識のないものからすれば、それで何がわかるのかというものであったが、ゆかりにとって神域を線で結んでいけば、基礎の結界を構成することは容易いことだった。
「んー、やっぱり龍脈に沿って大体並んでいるかしら?」
 黒鴉の式神たちから送られてくる情報を精査していく。
 龍脈からずれた神域を横滑りさせたり、必要な場所に神域を新設したりと、頭の中で復興に対するイメージが湧いてくる。

 これからも『センターオブジアース』にはオブリビオンの残党が現れることだろう。
 ならば、そのオブリビオンから身を守るための砦……結界を作成するのがゆかりにとって復興のために必要なことであると判断したのだ。
「ふむ、大体わかったわ。これなら――急急如律令! 汝ら、陣を敷き壕を巡らせ郭を築くものなり!」
 彼女のユーベルコード、笑鬼召喚(ショウキショウカン)によって呼び出された子鬼の姿をした馬鹿笑いする式神の群れがわらわらとゆかりの周りに現れ、びっしりと整列してみせる。
 時折、じゃれ合ったりしている子鬼たちがいるが、ゆかりが一喝すれば、僅かな間ではあるが規律正しく直立する。

「あなたたちの出番よ。世界全域を護る破魔の結界、龍脈の位置を利用しつつ築き上げなさい」
 号令によって子鬼たちが笑いながら次々と作成した地図から結界を組み上げていく。
 長く保たせるためには神々の協力も必要であろう。
 今回は自分たち猟兵たちが間に合ったからよかった。次回も完全に予知できるとは限らない。だからこそ、ゆかりは結界を生み出し、一時的に凌ぐだけにしかすぎないのだとしても、時を稼げるようにと腐心するのだ。

 組み上がっていく結界。
 もしも、またオブリビオン残党が現れても、破魔の結界があれば持ちこたえることはできるだろう。
「これでそう簡単にオブリビオンは入ってこれないわ。後は……そうね、オブリビオン残党が責めてくるのだとしたら、ここと、ここ……後はここなんかも脆いわ」
 地図を広げゆかりは頭をひねる。
 やるべきことは山積している。何せオブリビオンであるジェネシスエイトによって一度支配され、破壊された『知られざる文明』である。
 そう簡単に復興はできないだろうが、まずは一歩目が大切なのだ。いつまでも寄り添っていることはできない。

 それは猟兵であるからこそだ。
 踏み出すことのできる一歩目を安全なものにすれば、その一歩から様々な道が見つけられることだろう。
 そうすれば、いつの日にかヒーローズアースも平和な世界に戻ることだろう。それを願うようにゆかりは結界の作成に勤しむのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。
悪霊である自分達がここにいることが不思議であるけれど。あと何となく不調だけれど。
仕事は最後までやる主義である。
四人での相談結果、『動画』を作ることにした。
『静かなる者』と『疾き者』が手分けして撮影、編集。
パソコン類はUDCアースで慣れている。

疾「UDCアースとほぼ同じで助かりましたよ、これ」
静「作るの早いですね…」
疾「まあ、唯一の忍びとしてはね? あなたもパソコン操作できますし、すぐに慣れるとは思いますけれどー」

悪霊だって、こうして魅力紹介はできるのである。



 神々が住まう世界、『センターオブジアース』。
 そこに悪霊たる己たちの身があることに僅かながらに不思議さを感じつつも、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)たちは託された仕事を最後まで果たそうとしていた。
「なんとなく不調なんですけれど……まあ、仕事は最後までやる主義でありますから?」
 彼らは4つで一つの複合型悪霊である。
 馬県・義透と名乗ってはいるが、それはそれぞれの名前の文字を取って組み上げた名である。
 彼らの中で相談した結果、『知られざる文明』、『センターオブジアース』の復興には何が必要と考えた場合、必要なのは『知られざる文明』を紹介する動画であろうという結論に至ったのだ。

『静かなる者』と『疾き者』の二人がオルタナティブ・ダブルに分かたれ、作業を始める。
 彼らの風貌からは凡そ不似合いなパソコンの類はUDCアースでの仕事の飢えでも成れているのだ。
 様々な機材があれど、だいたいのことはパソコンがあれば事足りる。
 二人で手分けして、撮影し、編集していく。
「UDCアースとほぼ同じで助かりましたよ、これ」
『疾き者』が手慣れた手付きでキーボードを操作し、クリックを繰り返す。
 それはある意味で芸達者であると言ってもよかったものだろう。諜報活動を担う者として、このたぐいの作業は出来て困ることはない。
 UDCアースにて学んだことがここに活きてきているのだ。
「作るの早いですね……」
『静かなる者』は、そのスピードに感嘆しながらも撮影してきた動画の素材をパソコンの中に落とし込んでいく。
 素材は多ければ多いほどいいものである。
 今は素材の激選を行うよりも、素材の数で勝負しなければならない。
「まあ、唯一の忍びとしてはね? あなたもパソコン操作できるし、すぐに成れるとは思いますけれどー」
 カターン! とエンターキーが打ち鳴らされる度に『静かなる者』は、そうであろうかと思うのだ。

 とりあえず、今は撮影に注力しようと『静かなる者』はハンディカメラを片手に『センターオブジアース』を回る。
 彼は彼でこの『知られざる文明』の魅力的な建造物や、おそらく神代のものであろう神殿などを撮影していく。
 考古学者や、それに類する者たちであれば、この動画の価値は計り知れないものであろう。それも狙いの一つであるし、観光として『知られざる文明』との行き来が増えれば、それだけ復興にも近づいていく。

「一見、地道な遠回りかもしれませんが、これはこれで。悪霊だって、こうして魅力紹介はできるのでありますから」
 やはり神々が住まう場所というのは、悪霊というたぐいの自分たちにとってはどうにも居心地の悪いものである。
 それが例え気のせいであったとしても、病は気からというものである。
 ここは手早く済ませて、復興に手を貸して退散しなければならない。

 そんなことを思いながらも作成された動画はヒーローズアースの様々な学者たちに取り上げられ、地球の有史が始まってからの歴史を紐解くための調査や学術的な討論などを活性化させていくのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

久瀬・了介
欠損した右腕を再生する。
さて、復興の力仕事でも手伝うか…と思っていたが、肉体の破損が大き過ぎたか力が出ない。
敵を倒し、復讐の衝動も落ち着いた。電力も足りない。
まぁいい。二次策は用意している。撮影機材や編集用PCを持ち込む。
神々に復興の手伝いを持ち掛ける。少しばかり齧った事がある。任せてくれ。
倒壊した遺跡の修復を計画しよう。資料を調べ、本来の姿形の図面を探し出す。
破損状況の映像を撮影。資料から倒壊前のCGを作成し、歴史ドキュメント風の動画を作る。
遺跡修復に必要なのは支援者だ。この地の文明の美しさを外の世界に知らしめるべきだ、と神々に協力を頼む。
軍にいた頃は戦後復興の任務もあった。経験を活かそう。



 ユーベルコードに寄る右腕の代償。
 それ故に強烈なる力を齎すが、常人であれば致命傷にもなり得る重傷である。だが、デッドマンである久瀬・了介(デッドマンの悪霊・f29396)にとって、それは大したことではなかったのかもしれない。
 欠損した右腕が再生され、何事もなかったかのように彼は復興の力仕事でも手伝うかと、再生した右腕を回し調子を確認する。
「問題なく再生できているな……では……―――ッ!?」
 肉体は問題なく再生されている。
 けれど、オブリビオンとの戦闘によって肉体の破損が大きく、それにともなって復讐の衝動も落ち着いたがゆえに、その体に埋め込まれたヴォルテックエンジンの出力が上がりきっていないのだ。

「電力も足りない、か……まぁいい」
 とは言え、五体満足であることには違いはない。
 こんなときのために二次策を用意してあるのだ。それは持ち込んだ撮影機材や編集用PCでもってできること……つまりは『動画』作成である。
 長らく『知られざる文明』は他の文明やヒーローズアースとの交流がなかった。それ以上にオブリビオンであるジェネシスエイトによる支配が長く続いたことによって未だ復興には程遠い。

 ならば、その復興を手助けするために手っ取り早いのが『動画』である。
 言葉で説明するよりも、映像を見せた方がよほど伝達速度は早いものだ。拡散すればするほどに人の目に止まり、その興味の対象が『知られざる文明』へと向けば、復興するのも容易いだろう。
 了介は神々に掛け合い、倒壊した遺跡の修復の計画を申し出る。
「少しばかりかじったことがある。任せてくれ」
 協力してくれる神々と遺跡の資料を調べ、本来の姿形の図面を探し出していく。それは困難を極めたが、それもまた了介の狙いの一つである。

 そう、彼が作っているのはただの動画ではない。
『歴史ドキュメント』風の動画であるのだ。そう、どれだけ資料や図面が見つかっても、その修復に必要なのは支援者である。
「なるほど……この動画を持って支援者を募るのか……」
 神々にとって誰かを頼るということはあまりなかったのであろう。だからこそ、了介の軍に居た頃に経験した戦後復興の任務が役立つのだ。
「この地の文明の美しさを外の世界に知らしめるべきだ。そうすれば、おのずと支援者たちを募ることができるだろう」
 それが如何なる思惑があったのだとしても数が集まれば、それだけ復興の足は早まる。

「何か特典のような物があってもいいな。いわゆるキックスターターというやつだが……」
 そんなふうに了介の提案や神々からの提案を織り交ぜながら動画が作り上げられていく。
 神殿を映し出す優美な映像と、復元後の展望などを織り交ぜたドキュメントは動画投稿され、次々と世界に広がっていく。
 人々の興味を引くような内容であり、また『知られざる文明』を明るみに出すことによってヒーローズアースの人々を『センターオブジアース』に集めるのだ。
 そうすれば、いつのひにか、嘗て在ったであろう日を取り戻すこともできるだろう。

 了介はそのきっかけを作ればいいと思っていた。
 完全な復興など、短い時間でできるわけがない。けれど、最初の一歩がなければ、誰も踏み出すことなどできない。
 いつだって最初の一歩を踏み出す者には勇気が必要だ。けれど、それを誰もが持っているわけではない。
 だからこそ、了介は背中を押す者になるのだ―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

空桐・清導
POWで挑む
協力も大歓迎だ

傷が癒えたら、復興を手伝うぜ
神様の治療はスゲーな
もうこんなでけー瓦礫も持てる!
うーん、一働きした後の飯も美味い!
本当に、この場所と神様達を守れて良かったぜ。

何?魅力を伝える動画?
そりゃ、美味いもんに観光だろ!
神様達の生活や娯楽、名所を
片っ端から見て感じて楽しむぜ!
お、美味そう果物発見!
これは食べちゃダメ?
了解。

後は神の住む場所だし、
封印された武器とかねーかな?
え、岩に刺さったのがある?
それは抜きに行くしかねーな!

(武器の種類や抜けるかはマスターさんにお任せします。
抜けた時は少し茫然としてから武器を掲げ、抜けない時は「これを抜くのはキミだ!」とキメ顔でカメラに言います)



 激戦を制した猟兵達にはまだやらねばならぬことがある。
 それはヒーローズアースにおける『知られざる文明』の復興である。今回予知によって猟兵たちが降り立ったのは地球の中心たる「センターオブジアース』。
 神々の住まう文明であり、長らくジェネシスエイトによって支配されていた文明の一つでも在る。
 戦いの傷は浅くはない。
 けれど、それでもやらなければならぬと空桐・清導(ブレイザイン・f28542)は傷が癒えると即座に行動を開始していた。
 神々に寄る治療の賜物であったが、即座に動き回ることのできる猟兵である清導の体力もまた凄まじいものであった。
「神様の治療はスゲーな。もうこんなでけー瓦礫も持てる!」

 そう言って瓦解した神殿の瓦礫を持ち上げてみせる彼の姿は凄まじき膂力と力を有していると言っても過言ではないだろう。
 神々もまた驚嘆する姿に清導は笑いながら一仕事を終え、用意された食事を取ってさらなる英気を養うのだ。
「うーん、人働きした後の飯も美味い! 本当に、この場所と神様達を守れて良かったぜ!」
 食事も美味しいと感じるのは、やはり身体が求めているからであろう。
 戦い、傷だらけとなっても、味覚が正常であることは特筆すべきことだった。そんな食事の合間に清導は神々から『知られざる文明』の魅力を伝えるにはどうしたらいいだろうかという相談を受ける。

 他の猟兵たちもそうであるが、動画を投稿するのは面白い試みであることだろう。
 だが、神々と言えど全てを知っているわけではない。特に交流が断絶されていた『知られざる文明』であれば、動画と一括にしても不得意な者の方が多いだろう。
「なら、俺が引き受けるよ。やっぱり魅力といえば美味いもんに観光だろ! 神様たちの生活や娯楽、名所を片っ端から見せてくれよ!」
 そう言って早速清導は神々に案内されて様々な場所へと赴く。

 様々な果物が実った森、神殿がいくつも組み合わされたであろう塔、神々が食事を取る宴、様々な光景が清導の瞳に映っては消えていく。
 時折、目に写った果物を手に取ろうとして咎められたりもしたが、それは愛嬌というものであろう。
「あとはー……そうだな。神の住む場所だし、封印された武器とかねーかな? え、岩に刺さったのがある? それは抜きに行くしかねーな!」
 まさに伝説のような話である。
 岩に刺さった剣。
 引き抜けた者がいないというのだから、さらなるロマンを感じさせてくれる。それに清導はテンションがあがってしまって、どこにあるのかを聞かずに突っ走ってしまったために到着が遅れたのはここだけの話である。

「これかー! ならちょっと動画を回しておこうぜ。せー……のっ!」
 岩に刺さった剣を引き抜こうとするが、一向に抜けない。
 万力のような力を籠めてもぬけないのは、やはり伝説の武器であるからだろうか。自分が抜けなかったことは残念であるけれど、逆に清導は閃く。
「俺は引き抜けなかったけど、コレを抜くのはキミだ!」
 キメ顔でカメラに向かって指差す清導。
 こうすれば、動画の目玉にもなるし、これをみた人々がここを訪れるだろう。いつだって観光には目的が必要だ。
 この抜けない伝説の剣は、中々に人の目を引くものであり、もしかしたら自分が……という期待感はさらなる人の訪れを加速させるだろう。

 そうすれば、『知られざる文明』との交流は活発になり、さらなる復興へ邁進していくはずだ。
 清導は満足げにうなずきながら、動画を投稿するのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

草守・珂奈芽
【晴要】
WIZ

ホントなしてわたしらが書類仕事なのさー!?
真面目そうはいいけど、もーちょっと人選あるよね!

あーまた未検収の書類が来た…たしかにこーいう面倒な書類の相手は大事、うん。よーく分かったのさ。
でも学生なのに未検収なんて言葉覚えなくない?体験にしても厳しすぎ!
絶対外の方が向いてるのさ。間違いなく。(深く頷き)

あーもうやだー…え、外?見て回るの?行く行く!
たしかにこんな所来たことないもの、崩れてたってすごくワクワクするに決まってるのさ!
晴汰くんとならあれこれ喋ったりも楽しめそうだしね♪

そのためならなるほど頑張れる気がするのさ!
よーし、やるぞー!
ここの復興のため、そしてお出かけのためなのさ!


西塔・晴汰
【晴要】

学生さん真面目そうだから書類お願い……ってのはちぃっと無茶振りじゃないっすかね!?
いや、やるっすけどね……。

まぁね分かるっすよ、どんな仕事にも裏でこうやって書類と格闘してる人たちがいるっすよね。
これも一つの職場体験と思えば……いやきついっすね……。
そもそもオレたち身体動かす側のが合ってると思うんっすけどどうっすかね。

……そだ、珂奈芽。
この仕事終わったら、いっちょこのセンターオブジアースっての。
一緒に見回って見ないっすか?
普段じゃ見れないようなもん、色々拝めそうっすし。見どころは結構あると思うんっすよ!

目標があると仕事にもやる気ってのが出てくるっすよね。
気合入れて片付けてやるっすか!



 戦いが終わり、猟兵たちはそれぞれに役割を果たすべきヒーローズアースにて、復興という新たな戦いに繰り出す。
 やり方は猟兵たちによって違うものだろう。
 動画を取って投稿したり、神々の住まう場所における技術を紹介したり、はたまた観光地としての魅力を打ち出したりと比較的目を引く物が多かった。
 けれど、西塔・晴汰(白銀の系譜・f18760)と草守・珂奈芽(小さな要石・f24296)に託された復興の仕事は、非常に地味であり尚且根気のいる仕事であった。

 そう、それは―――。
「ホントなしてわたしらが書類巣ごとなのさー!?」
「学生さん真面目そうだから書類お願い……ってのはちぃっと無茶振りじゃないっすかね!?」
 二人は盛大に積み上げられた書類の山の前で思わず叫んでしまっていた。
 この書類の数々は神々の領域である『センターオブジアース』における無数の事務手続き的な書類ばかりであった。
 面倒なことにこの書類、すべてが手書きである。現代社会のようにパソコンという文明の利器はない。
「真面目そうはいいけど、もーちょっと人選在るよね!」
 珂奈芽の言うことも尤もである。こういうお仕事は別に彼女たちじゃなくってもよかったはずだ。

 けれど、戦いが終わって復興の仕事につきはじめた猟兵達を見ていた神々が、コレ幸いと二人に仕事を頼んできたのだ。
「いや、やるっすけどね……まぁね分かるっすよ。どんな仕事にも裏でこうやって書類と格闘している人たちがいるっすよね」
 わかる。
 とてもわかることであるのだが、晴汰は未だなんとも言い難い表情で書類と格闘している。普段の生活や気性を考えれば、こういう仕事よりも遥かに力仕事のほうが適しているはずなのだ。

「あーまた未検収の書類が来た……たしかにこーいう面倒な書類の相手は大事。うん。よーくわかったさ。でも学生なのに未検収なんて言葉覚えなくない?」
 そんなふうに珂奈芽が書類をぶん投げそうに為るのをなだめながら晴汰は言葉を紡ぐ。
「これも一つの職場体験と思えば……いや、きついっすね……そもそもオレたち身体動かす側のが在ってる……そだ、珂奈芽」
 はた、と思いついた様に晴汰が珂奈芽の耳元にある提案をする。
 それはこの仕事が終わった後のことだ。

「この仕事終わったら、いっちょこのセンターオブジアースっての。一緒に見回って見ないっすか? 普段じゃ見れないようなもん、色々拝めそうっすし。見どころは結構あると思うんっすよ!」
 それは素敵な提案であった。
 珂奈芽は、その言葉に瞳をきらめかせながら何度も頷く。さっきまで『あーもーやだー』と叫んでいたのが嘘のような顔になってその提案に乗ってくる。
「行く行く! 確かにこんな所来たことないもの。崩れてたってすごくワクワクするに決まってるのさ!」
 それに、と珂奈芽が屈託のない笑顔を向ける。
「晴汰くんとならあれこれ喋ったりも楽しめそうだしね♪」

 そんなふうに笑ってくれるのなら、提案した晴汰も嬉しいのだろう。それならば、と二人は腕をまくって書類と格闘始める。
 時折めげてしまいそうに為るけれど、目標があると仕事にもやる気が出てくるのが人情というものであろう。
「気合い入れて片付けてやるっすか!」
「よーし、やるぞー! ここの復興の為、そしてお出かけのためなのさ!」
 二人は書類の仕事の後にまっているお出かけというご褒美のために一生懸命がんばった。それは神々が見ていたのならば、微笑ましい光景であったことだろう。
 そんな彼らに神々の祝福があったのかどうかはわからないけれど、仕事を終えて二人ででかけたセンターオブジアースの光景は、これまで見たことのない光景ばかりであったことだろう。

 逆巻くように逆流していく滝や、雲のように立ち込める霧の上を歩くことのできる平原、空に浮かぶ球体の海。
 そんな絶景とも言うべき思い出と共に二人の記憶の中に、共に語らう時間を与えるのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
さて……センターオブジアースもこれで一安心だね……
……動画配信が出来る、と言う話だよね……ふむ……それならば……
復興のために資料を集めつつ…
…センターオブジアースから地上にどのような影響を与えていったのか、という事を調べて紹介していこうか…
…なにせ、超古代から存在する文明、本格的な関わりはじめたのは侵略者の時代からとは言え、それより以前に細々と影響があったとしてもおかしくないし、意外な物のルーツが超古代文明にあったりするかもだしね…
…単純に学術的な内容になるから動画映えの観点からすれば微妙なところかも知れないけど…1つぐらいはそう言うのがあっても良いだろう…



「さて……『センターオブジアース』もこれで一安心だね……動画配信ができる、という話だよね……」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は戦い終えた、ヒーローズアース、地球の中心たる『センターオブジアース』にて一人、考えていた。
 そう、今回の予知された事件はオブリビオンを撃退して終わりではない。
 ジェネシスエイトによって支配されていた『知られざる文明』を復興するための活動もしなくてはならないのだ。
 そもそも神々が住まうという『センターオブジアース』に興味を持っていたメンカルにとって、この機会こそが己の知的好奇心を満たす良い機会であったのだ。

「ふむ……それならば……復興のために資料を集めつつ……」
 メンカルは己の電子型解析眼鏡『アルゴスの眼』をきらめかせつつ、興味深げに朽ちた神殿や、それ以外の遺跡や史跡を探索していく。
 神々が住まう場所でありながら、超古代から存在する文明である。
 ヒーローズアースにおいてジェネシスエイト、オブリビオンたちによる侵略などがあったのは、侵略者の時代からとはいえ、それ以前にほそぼそと地上に影響があったのは言うまでもないだろう。

 神話として残っているところもあれば、伝承として残っているものもあるはずだ。
 そういったものをつぶさに収集し、精査していくことこそが学術的な意味合いを持っていくのだ。
「ま、わりと地味な作業ではあるんだけれど……確かに史跡や遺跡、地上との交流が在った痕跡を探す動画というのはどうしたって動画映えの観点からすれば微妙な所かもしれないけれど……」
 確かにメンカルの言う通りであった。
 動画を見る者たちの感性に訴えるのであれば、見栄えのする遺跡や観光名所になりそうな場所を探せばいい。
 だが、そういった類の動画はすでに他の猟兵たちもまた作成しているだろう。ならば、学術的な観点からの骨太な動画が一つくらい在っても構わないのではないだろうか。

 そんなふうにメンカルは思うのだ。
 どちらかというと個人的な楽しみの方が大きいのかもしれないけれど、彼女の調べ上げた事実が、何か他の学者やそれに類する者たちの知的好奇心を刺激し、さらなる交流となって、超古代文明や、まつわるルーツの発見に繋がるかも知れない。
「ああ、まだまだ世界には……未知の地平が広がっている……楽しい」
 一人動画を回しながらメンカルは遺跡の中から、地上の文明と似通ったような壁画を発見したり、地上においてはオーパーツと呼ばれるような品物を見つけたりと、それはもう動画配信そっちのけな知的探究心を刺激されることになった。

 その動画は、彼女の思っていた通り、動画映えしたものではなかったけれど、彼女と同じく知的探究心旺盛な者たちにとっては、『知られざる文明』に心惹かれる良い刺激となって、世界中に広まり、さらなる交流を齎す。
 そうした小さな一歩が、必ず世界を善きものにしていく。
 だからこそ、メンカルは知ることをやめられない
 未知を追い求めることを楽しいと思える。知らないことを知る。それは彼女にとって何物にも代え難い、生涯のライフワークであるのだから―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
現地の神々の方ですら活動に支障きたす危険地帯で神殿の復旧作業に努めましょう

宇宙空間での運用も可能な●環境耐性備えたこの身体に加え、高温、高重力な居住不能惑星での資源採掘用の物を転用したUCの船外作業用特殊装備(宇宙服のようなパワードスーツ)を身に纏えば活動可能です

●情報収集の為の記録映像を撮りつつ、マグマ湧き出る大河を横目に怪力で瓦礫を撤去し、建材を運搬し、神殿を再建し…

絶景ですね
『星の鼓動』とはこのような光景を指すのでしょうか
騎士道物語とは趣を異にしますが…これも冒険譚と呼べそうです

(再建後、神々達と)
神殿の再建によって神々の力が増し、只人の侵入も可能となるのですか?
それは喜ばしいですね



「―――絶景ですね」
 それはトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)からこぼれ出た眼の前に広がる光景をして、紡がれた言葉であった。
 彼は今、現地の神々ですら活動に支障をきたす危険地帯であるマグマ湧き出る大河を横目に猛烈なる熱量を物ともせずに神殿の修復作業に十字していた。
 本来のウォーマシンたる彼の機体では、この高熱の中作業することはできなかった。

 けれど、特殊用途支援用追加装備群(マルチミッション・サポートユニットシリーズ)によって宇宙服用なパワードスーツである船外作業用特殊装備を纏えば、如何なる高温の中であっても作業することが可能となっているのだ。
「『星の鼓動』とはこのような光景を指すのでしょうか。騎士道物語とは赴きを異にしますが……これも冒険譚と呼べそうです:」
 湧き上がるマグマが跳ね上がって、さらなる大地を積み上げていく光景は、様々な世界を見てきたトリテレイアにとっても、凄まじきものばかりであったことだろう。
 今の情報収集の為の記録映像を撮りながら、ウォーマシンの膂力によって瓦礫を撤去し、建材を運搬して神殿を再建しているのだ。

『知られざる文明』の一つであったとしても、これだけの未知なる部分があることは、トリテレイアにとっては驚愕に値するものばかりであった。
 こんな光景を動画で見せられれば、ヒーローズアースの地上に住まう人々も、心惹かれることだろう。
「機械の身である私でさえ、時折魅入ってしまうのですから……これを気に地上との交流が果たされれば、この『センターオブジアース』の復興も相成りましょう」
 トリテレイアはマグマの運河を見遣り、神殿の再建を急ぐ。
 このマグマの運河が横切る神殿を観光名所、とはまではいかずとも、世界には未だこの様な場所が在るのだと知らしめるのは、悪いことではないだろう。

 そんな思いを描きながらトリテレイアは再建した神殿を見上げる。
 限られた建材での再建であったが、我ながら良い出来栄えであると言えたことだろう。神々に感謝されつつも、トリテレイアは僅かな時間であったが交流する。
「神殿の再建によって神々の力が増し、只人が訪れる機会も在る、と……それは喜ばしいことですね」
 本来であれば人と神が交わることは神代以外にはありえないことであったことだろう。
 だが、猟兵の中にも神たる者が多く存在する。
 今回のことを切っ掛けにしてヒーローズアースにおける人と神々の交流が果たされれば、世界にとってまたより良い物が一つ生まれるかも知れない。
 それは小さな一歩であったのかもしれないけれど、善き未来への最初の一歩でもある。

 トリテレイアはそれを予感し、最後に再び己の再建した神殿を記録映像として残し、それを編集して動画投を投稿する。
 そのマグマの運河が煌々と光を放ち、その光を受けて神殿が輝くようにそびえ立つ光景は、人々の心を沸かせ、これまでなかった『センターオブジアース』と地上の人々の架け橋となるのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サージェ・ライト
はー、無事終わりましたねー
大きな被害がなくてほっとしました!

【POW】
さて次はお手伝い!
まあ私クノイチですので!
こういうのは得意ですから!
こう、ひっそりこっそりばっちりですよ!

んー、何をするにも人手があった方がいいですよねー
では増えましょう
【かげぶんしんの術】!
これだけ増えれば何をやるにしても困らないですよね!(目立つことには気付いてない

荷物の運搬から機械の操縦、はては動画の出演までお任せあれ
人数いるし危険なことも大丈夫だし体当たり動画とか最適じゃないでしょうか!(お任せネタOK
ま、まあ復興アピール動画の注目を集めるためなら
この胸も見せましょう…え?隠せてない?
そんなばかな…

※アドリブ連携OK



 激戦となったオブリビオンとの戦いを終えた猟兵たちは各々の為すべきこと、『センターオブジアース』の復興に向けて歩みだしていた。
「はー、無事終わりましたねー大きな被害がなくてほっとしました!」
 サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は戦場となった朽ちた神殿の痕で大きく息を吐きだし、戦いの激しさを物語る瓦礫となった神殿を後にした。
 少しばかり寂しい気もしたけれど、それでもこれからヒーローズアースは復興に向けて進んでいかなければならない。

『知られざる文明』の一つである『センターオブジアース』。
 神々が住まう場所であっても、それは変わらない。今回の事件は、復興を手伝うところまでが猟兵たちの仕事であるのだ。
「さて、次はお手伝い! まあ私クノイチですので! こういうのは得意ですから! こう、ひっそりこっそりばっちりですよ!」
 そうやってサージェは意気込むのだが、クノイチとは一体……という定義について考えた時、きっと彼女の相棒である猫のシリカは宇宙の真理に到達したような顔をしただろうが、今は隣に居ないのであるからして、サージェの言葉は虚空に吸い込まれた。

「んー、何をするにも人手があったほうがいいですよねー。では増えましょう―――しゃどーふぉーむっ! しゅばばばっ!」
 かげぶんしんの術(イッパイフエルクノイチ)によって一瞬でサージェ本人と寸分たがわぬ分身を生み出す。
 ひっそりこっそりとは真逆の気がするが、これだけ増えれば何をやるにしても困ることはない。
 確かにそのとおりであるのだが、クノイチとしてどうなのだろうか! というツッコミが不在なため、誰も彼女を止められない。
 言ってしまえば、いまの彼女は暴走竜巻娘なのだ! 一斉に分身たちとサージェは駆け出し、『センターオブジアース』のために働き始める。

 荷物の運搬から機械の操縦、はては動画の演出までお任せあれである。
 あらゆる場所にサージェ在り。
 他の猟兵達の動画の中に見切れる彼女の姿があったとかなかったとかは、ある意味で都市伝説のように伝播していき、彼女の言うところの忍ぶクノイチ像とは逆走している。
 それはもうあらゆる『センターオブジアース』関連の動画にサージェの姿が見えるものだから、ヒーローズアースに住まう人々は『サージェを探せ!』状態で様々な界隈に彼女の名が知れ渡ることになるのだが、それもまた別の話だろう。
「ふぅ……いろんなお手伝いしましたが、大変ですね。体当たり動画って。こんなにもたくさんの動画を取る方がいるとは思いませんでした」
 息を吐きだし、良い仕事をしたと言わんばかりにサージェは額を拭う。

 けれど、自分の動画がないことに気がつく。
 せっかくの復興アピール動画なのだから、注目を集めた方がいい。芸術神たちがいつのまにか集まっていて、ウンウンうなずいている。
「あー、確かにそうですよね。うんうん、芸術のため、復興のためなら私もこの胸見せましょう……え、別に隠れてないし、それ以上はセンシティブなやつになるからダメ……?」
 そう、動画は清く正しく。
 お色気要素があると嬉しいのは世の常であるのだが、過激さを追い求めるあまり、やりすぎになってしまっては本末転倒である。
 アカウント停止されてしまう!

「そんなばかな……」
 目立たないようにしているクノイチのはずなのに、大目立ちのクノイチ、サージェ。その名は動画サイトでは大人気になったのだから、痛し痒しなのであった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
失われた物、残された物か
あくまで復元だけど、どうしよっかなこの譜面
私が持ってても、宝の持ち腐れ…か
偶には、金勘定無しってのも良いか

音楽得意な神様居ないー?
ここにあるのは世にも珍しい、シンフォニックスコアの耳コピ…?譜面
良ければ一緒に一曲キメないかい?
いや、私はブブゼラしか吹けないから撮影メインだけど
何か良い感じに編集して、動画サイトで公開するから手伝ってー

きっと元の神譜とは違うけど、語り継いで形が変わっていくのもそれもまた必然
確かに途中で途切れたけれども、まあ少しでも受け継がれれば…ね
自己満足自己満足、ただまあ…ちょっとした手向けだよ
これを機にDTMとかにも手を出すのも面白いかな…



 その手に残るのは一つの譜面。
「失われた物、残された物か」
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)の手の内に残っていたのは、神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』たちの歌声が残る録音データから起こした譜面であった。
 それを神譜『シンフォニック・スコア』と呼ぶには未だ欠落した部分があれど、補えば一つの曲として歌うことはできよう。

「あくまで復元だけど、どうしよっかなこの譜面」
 考える。風がふわりと待って彼女の黒髪と一房の青い髪を弄ぶ。いくつものプランが彼女の頭の中を駆け巡っていくけれど、どれもしっくりと来ない。
 最初は新たな商機と思っていたのだけれど、それもなんとなくピンと来なくなってしまった。
 だから、彼女が出した結論はある意味でシンプルなものであった。自身が持っていても、宝の持ち腐れである、ということだった。
「偶には、金勘定無しってのも良いか」
 答えはいつだってシンプルな方がいい。何も世界を複雑にしようというわけではないのだから。玲は耳に残るあの歌のリズムを口ずさみながら、『センターオブジアース』……神々の住まう場所へ歩いていく。

「音楽得意な神様居ないー?」
 そんなふうにして神殿にズカズカ入り込んでいっては、玲は音楽神を探して回る。ひらひらと譜面を掲げて見せて言うのだ。
「此処に在るのは世にも珍しい、シンフォニックスコアの耳コピ……?」
 耳コピって言っていいのかな、著作権とかだいじょうぶかな、とか要らんことを考えてしまうのは仕方のないことであったが、言葉が紡がれるのだからしようがない。
 一人の音楽神を捕まえ、神譜たる『シンフォニック・スコア』を玲が耳コピしたものをちらつかせながら、誘い込む。

「譜面よければ一緒に一曲キメないかい?」
 ぶっぶーと奇怪な音を立てて何故か玲はブブゼラを鳴らす。
 まさか、その楽器も一緒に……? と捕まえた音楽神がひきつる顔が見られたのは玲にとっては収穫の一つであったのかも知れない。
「いや、私はブブゼラしか吹けないから撮影メインだけど。何か良い感じに編集して動画サイトで後悔するから手伝ってー」
 他の楽器できないんかい!
 そんな音楽神のツッコミが聞こえたような気がしたが、ブブゼラの奇っ怪な音にかき消され、早速動画撮影がスタートする。

 無事に収録が終わり、玲は動画データの入ったメモリを指でくるりと撫でる。
「きっと元の神譜とは違うけど、語り継いで変わっていくのもそれまた必然……」
 戦いのさなかに途中で途切れたこともあった。
 そうでなくても、喪われてしまったものである。完全なるものなどひとつもない。けれど、それでも嘗ての神々が残したであろう譜面。
 そこに捧げられた祈りや、願いは受け継がれていけばいい。そんなふうに玲は思っていた。

 それを第三者が見れば、自己満足だと言われることだろう。
 そんなこと玲だってわかっている。けれど、その自己満足だと言われようとも玲は神譜を起こした。完全ではないけれど、所々玲の思うアレンジが加えられてはいるけれど。
「だだまあ……ちょっとした手向けだよ」
 気の迷いというやつであったのかもしれない。
 誰にも認められないというのは、それはそれで寂しいものだ。いつかの誰かがこんなこともあったのだと思い出せるように、楔となればいい。
 耳に装着したイヤホンからデータが再生され、オリジナルとは違う神譜が流れ出す。
 彼女が戦場で聞いた旋律ではない。

 けれど、それでもいい。
「これを機にデスクトップミュージックとかに手を出すのも面白いかな……」
 なんつって! と玲はイヤホンをつけたまま、歩き出す。
 行き先は決めてはいないけれど、それでも彼女の歩みは止まらない。いつかは自分も変わっていくだろう。
 神譜と呼ばれた音楽も、こうして変わっていく。変わっていくのが止められないのならば、それもまた良いだろう。
 からりと笑いながら玲は『センターオブジアース』の空を見上げて歩む足でリズムを刻むのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月31日


挿絵イラスト