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愛する者よ

#クロムキャバリア

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#クロムキャバリア


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●商業連合トラペザ周辺にて。
「見えるか。あの傲慢なる国家が」

 国を一望できる丘の上に並ぶのは、隣国、フォロス共和国からやってきたキャバリア部隊だ。
 先頭に立つキャバリアの操縦者が、他のキャバリアのパイロットへ語りかける。

「彼の国と我が国との間にはプラントが存在し、互いに尊重することで関係を良好な築いてきた」

 力強く、剣の鋒をトラペザへ向けるキャバリア。
 この部隊を率いている者であることは、見れば分かるだろう。
 コクピットの中では、胸に勲章を付けた男が拳を握り、熱弁を振るっていた。

「だが今! 彼らはプラントの利益を不当に享受しており、我が国の権利を侵害している! 我々のためにも、彼ら自身のためにも、傲慢な彼らに、天罰を与えねばならんのだ!」

 男の目に曇りはない。
 自分の行動が必ず正しい行いであると、信じている人間の目だ。

「さあゆけ、戦士たちよ! 天命は我らにある!」

 男の号令と共に、キャバリアの部隊が進軍を開始した。

●グリモアベースにて。
「出陣のときですよ、みなさん!」

 軍服のマントを翻し、千束・桜花(浪漫櫻の咲く頃に・f22716)は力強く腕を振るった。
 クロムキャバリアで起こる事件を予知した桜花は、少し興奮した様子で猟兵たちの前に立つ。

「どうやらある国の絡繰部隊が、オブリビヲンマシンに扇動されて隣国に攻め入ってしまうようです。そう、だから出番です!」

 前のめりに語っているのは、桜花が絡繰──キャバリアの戦いに興味があるからだ。

「巨大絡繰同士の戦い……浪漫が溢れてきてしまいます!」

 両手をぐっと握り、鼻息荒く語った。
 襲われるのは商業連合トラペザ。
 隣国のフォロス共和国とは、プラントを共有してはいるものの、政治的な不一致から分かたれたまま存続しているという。
 それ以外では互いに過干渉することもなく、それなりに友好的な関係を築いていたはずが、この事件だ。
 フォロス共和国は生活が困窮しているわけではなく、トラペザがプラントを独占しているというのも、キャバリア部隊の言いがかりにすぎない。

「どうやら将校殿はオブリビヲンに洗脳されてしまっているようですねっ! それで部隊を率いて隣国に攻め入るとは……うーん、ユーベルコヲド使いでなければ洗脳に抗えないようなので仕方がありませんか」

 部下たちの乗るキャバリアも、謎のユーベルコードによりオブリビオンマシン化しており、パイロットを洗脳して容赦なく攻撃してくる。
 だが、パイロットたちはただのキャバリア乗りにすぎず、本来なら善良で、優秀なフォロス共和国の戦力だ。

「あっ、絡繰だけを破壊すれば、洗脳は解くことができるようです! 部下殿のも、将校殿のも!」

 つまりオブリビオンマシンだけを破壊すれば、殺す必要はないのだ。
 ちなみにパイロットたちは訓練を受けた兵士なので、生身でも最低限逃げることくらいはできるだろう。

「部隊がふたつに分けられていますので、おそらく第一波、第二波と分かれて攻めてくるでしょう。そこで敵の絡繰の種類が変わりますので、ご注意ください! 最後に残った将校殿は、特別強力な絡繰を使っています。他の絡繰とは一線を画する強さがあるみたいですよ!」

 それから、と桜花は付け加える。

「国同士の政治的な部分には我々は関与できませんので、敵の絡繰部隊を排除するまでが、我々の仕事になりますねっ! では、ご武運を!」

 桜花は敬礼で猟兵たちを見送るのだった。


るーで
●ご挨拶
 ごきげんよう、るーでです。
 ロボットですね!
 好きなロボットアニメは蒼穹のファフナーです。
 よろしくおねがいします!

●概要
(一章)
 👾雑魚戦です。
 オブリビオンマシンを倒せば敵パイロットは正気に戻ります。
 逃げ道さえ作ってあげれば普通に逃げてくれますが、匿ってあげてもいいでしょう。
 プレイングに☠が入っていた場合(判定は通常通り行います)、もしくは判定が🔴🔴🔴の場合は敵パイロットが死亡します。
(二章)
 👾雑魚戦です。
 なんの因果か、あなたが一章で戦ったキャバリアのパイロットの関係者が、あなたの相手をします。
 もし一章でそのパイロットが死んでいると、オブリビオンマシンの狂気に飲まれてパワーアップします。
 逆に一章でパイロットが生きていた場合は、そのパイロットの言葉や思いを伝えてあげると、相手の洗脳を緩めることができるでしょう。
 二章から参加される場合は、敵パイロット生存なら🎁、敵パイロット死亡なら☠をプレイングに入れておいていただければ、その前提でリプレイを書きます。
(三章)
 👿ボス戦です。
 説得や交渉の類いは一切聞きません。
 とにかく敵キャバリアを破壊してください。
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第1章 集団戦 『オブシディアンMk4』

POW   :    ホークナパーム
【油脂焼夷弾】が命中した対象を燃やす。放たれた【高温の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    ピアシングショット
【スコープ照準】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【RSキャバリアライフル】で攻撃する。
WIZ   :    マイクロミサイルポッド
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【誘導ミサイル】で包囲攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アイオライト・セプテンバー
SPD

オブリビオンマシンの仕業とはいえ、一度仕掛けた戦いの遺恨は残り続ける
パイロットに死者が出れば、それだけ後に響くものも出るでしょう
出来る限り、パイロットは生かしてあげたいものね

機体は軽量高機動キャバリア【ブルーテイル】
機動性を活かした戦闘を得手とするわ
衛星に睨まれないよう、高度は上げ過ぎないよう注意ね

大出力の【推力移動】を利用して高速機動で敵の照準を散らしつつ
【操縦】技能を活かした、プラズマブレードによる格闘戦でオーバーフレームや武装を狙って切断
可能な限りコックピットは避け、オブリビオンマシンのみの破壊に徹するわ

脱出後のパイロットまでは面倒見ないけれど……生き延びられるなら、生き延びなさい



●青い軌跡

「攻撃開始! トラペザを滅ぼせ!」

 指揮官と思しき男の声と同時に、黒いキャバリアの部隊の前衛が前へ出る。
 オブシディアンMk4。
 コクピットの堅牢さと武装の換装による拡張性を特徴とする、量産機だ。
 トラペザから出動した防衛部隊に向けてライフルを構え、狙いをつける。
 オブシディアンのパイロットのスコープには、狼狽えてろくに構えられもしないトラペザのキャバリアが映っていた。

「はっ、この調子なら余裕だな────」

 パイロットがトリガーを引こうとした、その時だった。

     ブルーテイル
「──── D021 、テイク・オフ」

 影が、トラペザのキャバリアの上を飛び越えていく。
 目の錯覚かと思うほど、一瞬だった。

「おい、アレ……」

 同僚の声でスコープから視線を外すと、防衛部隊の壁を飛び越えて、一機のキャバリアがフォロス共和国の部隊へ向けて突き進んでいた。


「ブーストォォ、全ッ開ッ!!!」

 操縦桿を握り、ペダルを思い切り踏み込む。
 ブースターから青い光を吐き出してキャバリア部隊へ迫るのは、アイオライト・セプテンバー(〝ブルーテイル〟・f29954)の駆るERT-D024〝ブルーテイル〟だ。
 加速に加速を重ねて、低空飛行でオブシディアン部隊へ向かうブルーテイル。
 それをただ、見守るだけのオブシディアン部隊ではない。
 突出した機体に対して、一斉にライフルを放った。

「そんなの、いくら撃たれても当たる気がしないわねッ……!」

 操縦桿を倒して、指先のスイッチに、ピアノでも弾くかのように繊細に触れる。
 ブルーテイルのスラスターが各所で火を吹き、機体は進行方向を変えずに側転、反転を繰り返し、弾丸の嵐をその機体に受けることなくすり抜けた。
 オブシディアンのパイロットからは、空を飛んで躱したように見えただろう。
 続く射撃は、上下左右に動くブルーテイルに定まらない。
 オブシディアン部隊の弾丸が虚しく空へ、地面へと埋まっていった。

     ホーリーグレイル
「チッ! お天道様 が怖くねえのかよ!」

 あっという間に自分の頭の上を越えたブルーテイルに、フォロスの兵士が悪態をつく。
 すぐに対象を視界に入れるため、機体を振り向かせたそのときだった。

「遅すぎんの、よッ!!!」

 転進、再突撃してきたブルーテイルが、オブシディアンのすぐ横でくるりと回って通り過ぎる。
 
(速ェ……!?)

 しっかりとブルーテイルを捉えることができない。
 辛うじてモニタの隅に青い軌跡が残っていたのみだ。
 パイロットが再び機体を振り向かせようとしたその時だ。
 突如、ずしっと重い音と共に視界が下がる。
 急に身長が低くなったとでもいうのだろうか、モニタに映るのは他のオブシディアンの下半身だ。

「クソッ、何が、何をされたってんだ!」

 状況を理解できないパイロットは、自分の機体のダメージインジケータに目をやる。
 損耗率60%オーバー。

「……テメェッ!?」

 右肘から先と両膝から下が、なくなっていたのだ。
 すれ違いざま、ブルーテイルはプラズマブレードによってオブシディアンの四肢のうち3本を切り捨てていた。
 回っていたのは、一度の接近でプラズマブレードを何度も振るためか。

「死ぬ前にせめて、一発だけでもォ!」

 足掻くように上げた残る左腕も、肩部のランチャーごとアイオライトの駆るブルーテイルがプラズマブレードで切り落としてた。

「さ、出てきなさい!」

 すべての武装を切り落として、だるまになったオブシディアンに降り立つブルーテイル。
 落下の速度を利用してコクピットハッチを強引に切り裂くと、中からパイロットが這い出てきた。
 外部スピーカーをONにして、アイオライトは投降するように告げた。

「もう洗脳は解けたでしょう? ここからは面倒見ないけれど……生き延びられるなら、生き延びなさい」

「すまん、どうかしていたようだ。"もうすぐ結婚する娘"を残して、戦って死ぬなんてできないよな。恩に着るよ」

 パイロットは軍人らしくアイオライトへ敬礼を送る。
 背中から溢れる青い光を残して、ブルーテイルは次の標的へと向かっていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

夢幻・天魔
【厨二であればご自由に】

ククク……
かつて第8の世界にて
百腕の機神『メカトンケイル』を討った俺の力、見せてやるとしよう

フハハハハハ!! 出でよ! 『Azazel』!
(虚空より染み出る用に現れた悪魔のような機体に乗り込む)

フッ、懐かしいな……
闇の勢力の秘密兵器たるこいつを奪って
数多の敵を滅ぼし尽くしたものだ
そう、最初の戦場は……

(『異世界で取った杵柄』発動。語りまくった厨二妄想で成功率強化)

……雑魚が!
貴様ら如きの腕で、この俺を止められるとでも?
身の程を知れ!
(Azazelを操縦し、巨大化した超越魔剣『ネガ・フォース』で敵を切り裂く)

命は取らないでおいてやる
代わりに、俺の伝説を語り継ぐがいい



●災機伝説の始まり

 至るところで、銃声や爆発音が響く。
 戦闘が始まったのだ。
 オブシディアンMk4が二機、トラペザへと向かっていた。
 彼らも、フォロス共和国のキャバリア部隊の一員だ。
 兄弟でパイロットをしていることもあって、いつも共に行動している彼らのコンビネーションは大したものだ。
 今回も、その連携でトラペザのキャバリアを蹂躙するつもりだった。

「兄ちゃん、誰か立っている。生身の人だ」

 最初に気がついたのは、弟の方だった。

「トラペザの兵士か?」

 続いて、兄がカメラをそちらへ向ける。
 風に靡く紅蓮の髪。
 身体を包む漆黒の服。
 少なくとも兵士には見えないが、只者ではない。

「いや、そんな感じじゃないけど……傭兵かな」

 ふたりは警戒したまま、人影に近付いていった。
 対して人影は、片目を隠すように手を顔に添える。
 それから、息を大きく吸った。

「────フハハハハハ!! 出でよ! 『Azazel』!」

 男が指を鳴らすと同時に、背後の空間が歪む。
 透明な水に墨を零したように、闇が広がっていく。
 まるで闇が形取るようにして現れたのは、悪魔の如きオブリビオンマシン、Azazelだ。

「何だこの機体は……!?」

「やっぱりトラペザの傭兵なのか!?」

 ふたりの狼狽をよそにコクピットに向けて跳び、謎の男──夢幻・天魔(千の設定を持つ男・f00720)──はAzazelに乗り込んだ。
 操縦桿に手をかけて、天魔は目を閉じる。

「フッ、懐かしいな……闇の勢力の秘密兵器たるこいつを奪って数多の敵を滅ぼし尽くしたものだ」

「闇の勢力の秘密兵器!?」

「そう、最初の戦場は闇の勢力の追撃を返り討ちにしたときだったか……。数百の敵に囲まれた俺は、Azazelの力を以て全ての敵を粉塵に帰したのだ」

「数百の敵を、たった一人で、だと……!?」

「だが、Azazelの力は強大すぎた。この俺をもってしてもAzazelの力の5%も出せていなかった!」

「5%以下で闇の勢力を!? やばいよ兄ちゃん!」

「クソッ、トラペザのヤツら、とんでもないのを味方につけやがった……!」

「ククク……今はどれくらいAzazelの力を解放できるだろうな」

「うおお、撃て、撃て撃て!」

 ふたりのオブシディアンが、肩のランチャーをAzazelへと向ける。
 装填されているのは、油脂焼夷弾だ。
 放たれた弾丸は、着弾すると内部の油脂を撒き散らして燃える。
 油脂に点いた炎は水では消えないため、長い時間攻撃をし続けることができるのだ。
 オブシディアンが放つナパームは、次々にAzazelへと命中した。
 悪魔が、炎に包まれる。

「どうだ!?」

「やったか!」

 兄弟のパイロットは、目を凝らして炎の中を見る。
 いかに埒外のキャバリアとはいえ、この高温には耐えられないだろうとたかをくくっていた。
 だが、炎に包まれたまま悪魔は進む。

「……雑魚が!」

 天魔が不敵に笑った。
 だが表面装甲がかなり焦げているのは、オブシディアンのパイロットから見ても分かる。

「まあまあ効いてる!!!」

「アツッ……漆黒の炎に抱かれて生まれた俺に、炎は効かん!」

「効いてないってよ! 追加だ追加!」

 ふたりのパイロットが、さらにナパームを打ち出していく。
 天魔は避けようともせずに、突き進んだ。

「貴様ら如きで、この俺を止められるとでも?」

 Azazelならばこの程度の攻撃は避けるに値しないと、そう感じたからだ。

「うわ、く、来るな、来るなぁ!」

「身の程を知れ!」

 平然と近付いてくるAzazelに恐怖した二機を、超越魔剣『ネガ・フォース』の一閃で斬り裂いた。
 堅牢さで知られるオブシディアンMk4ではあるが、万物を斬り裂く魔剣の前ではその装甲も意味を持たない。
 上半身と下半身で分かれることになったオブシディアン。
 ごろりと落ちた上半身のハッチが開き、中からふたりのパイロットが這い出てきた。
 それを見ると、天魔はAzazelに魔剣を振らせて、辺りの炎を払う。

「フッ、洗脳は解けただろう、命は取らないでおいてやる。代わりに、俺の伝説を語り継ぐがいい」

「か、かっけぇ……!」

 弟の方が目を輝かせて、Azazelを見上げていた。

「俺たち、もうひとり上に"兄さん"がいるんだ! もし兄さんを見つけたら助けてくれ!」

 兄の方は、天魔へと敬礼をして語りかける。

    サダメ
「それが運命であるなら、巡り合うだろう」

 天魔はふたりを一瞥すると、次の戦いへ向けて跳躍をした。

成功 🔵​🔵​🔴​

イドール・シアンス
・キャラ視点
何と言うか、また面倒な状況になってるみたいだな。
死人を出すと事後処理が面倒だ……出来る限りそれは避けるとしよう。

・行動
近接戦闘を得意とするオブリビオンマシンの強襲機『グラバー』に搭乗して参戦。
苦戦しているトラペザ側を援護する様に立ち回る。
UC「時神観測」によって相手の攻撃を予知、回避行動を取りつつ両腕の爪型武装「グリード」を用いて敵武装の無力化を狙う。

反動が大きいため成るべくは避けたいが、どうしても相手側の攻撃を避け切れない場合
UC「時空制圧」により極短時間の時間停止を行い「回避し攻撃を当てた」状態で時間停止を解除する。



●ものぐさな観測者
 進軍する敵キャバリア部隊。
 そしてそのパイロットはオブリビオンマシンに洗脳されているだけの一般人。
 向こうが攻めてきているわけだが、それでももし殺してしまえば、二国間に遺恨を残しかねない。

(面倒な状況だ……)

 コクピットの男は、グリモア猟兵の説明を思い出してため息を吐いた。

(本当に面倒だが────)

 パイロット、イドール・シアンス(“グラバー”・f30050)はかなりのものぐさだ。
 やらなくても良いことは、できるだけやりたくない。
 だが、やらなければならないことは、やってしまうのが彼の”欠点”だ。

     グラバー
「────OM-001、出撃する」

 トラペザの格納庫から、一機のキャバリアが飛び出した。
 長めの手足に、悪魔の如きフェイス。
 鹵獲したオブリビオンマシンを猟兵が乗れるようにチューニングした機体だ。
 着地と同時に、駆ける。
 標的は、正面のオブシディアンMk4が三機の小隊。

 洗脳されているとはいえ相手も軍人だ。
 走り寄る正体不明機にすぐに気付いた。

「一機向かってくる!」

「ライフル掃射いくぞ、構えろ!」

 鏃状に編隊した三機のうち一機がスコープを覗くと、二機が腰だめに打ち始める。
 制圧射撃と、狙撃で役割を分担したフォーメーションだ。
 弾幕から逃げれば狙撃され、逃げなければ弾幕をモロに喰らう。
 単純ではあるが、戦法は単純であればあるほど多くの状況に対応できる。
 一般のキャバリアが単機で攻めれば、これだけで撃墜されてしまっただろう。
 だが、この状況にあるのは普通のキャバリアではない。
 キャバリア部隊の射撃が行われると同時に、グラバーは跳ぶ。
 先程までグラバーのいた場所に、弾丸の嵐が打ち込まれた。

「躱したな!」

 残る一機が、グラバーの着地を待ってトリガーを引く。
 戦いにおいて着地は、大きな隙だ。
 それは質量に比例して、さらに大きくなる。
 5mの金属の塊であるキャバリアの着地など、どれほど狩りやすいだろうか。
 だが、グラバーは空中で姿勢を変え、地面に片手を着いて転がり、すぐに起き上がって再び駆ける。

「んな、あれを避けるのかよ!」

 その重量で大きな着地音が響いたが、機械とは思えないかなり生物的な動きだ。
 グラバーは格闘戦に優れたキャバリアだ。
 動きの柔軟さと、関節の可動域の広さは、他のキャバリアの比ではない。
 それに加えて、もう一つのグラバーの能力が、尋常ならざる回避力を実現していた。

「残念だが、君が着地を狙って撃ってくるのは、さっき”視た”」

 イドールの赤い瞳に映るのは、目の前の敵だけではない。
 オブシディアン部隊の次の行動が、数秒後の未来が、視えているのだ。

「当たんねえ!」

 ライフルを腰だめに構えていたパイロットが、さらに弾をばら撒いてグラバーを牽制した。
 だが、狙って当たらない射撃を、狙わずに撃ってどう当てようか。

「残念だが、無駄弾だな」

 オブシディアン部隊に肉薄したグラバー。
 口元から、まるで呼吸をするかのようにエネルギーが迸る。
 突き出した左手の先から現れたのは、エネルギー状の爪だ。
 それが、先頭の一機の左肩を大きく抉り取った。

「ぐ、うおおおっ!」

 片腕をもがれ、バランスを失ったオブシディアンが片膝を着く。

「……次だ」

 邪魔にならないよう、倒した一機を蹴って転がし、グラバーは隣のオブシディアンへ低く踏み込んだ。

「クソ、よくもリーダーをッ!」

 低く構えたグラバーにオブシディアンがライフルを向けようとするが、グラバーは銃口が向くよりも低く、速く懐に飛び込む。

「それも、すでに視たんだ。悪いな」

 右腕を振り上げて、ライフルを持つオブシディアンの腕を引き裂いたグラバー。
 胴体に蹴りを入れると、そのオブシディアンは地に伏した。
 その勢いで身体を回転させ、最後の一機の頭部に手のひらを被せるようにぶつける。

「君は、どの未来でも何もできていなかった。もっと腕を磨くことだ」

 手から迸るエネルギーがオブシディアンの頭部を砕き、三機はこれで沈黙した。

「破壊というのはこれくらいでいいのだろうか……」

 大破した三機を眺めるイドール。
 最初に倒した一機、隊長機からパイロットが脱出したところだった。

「すまん、どうかしていたようだ。感謝する。この戦場に”もう一人部下がいる”んだ。そいつも解放してやってくれないか」

 先程まで戦っていた相手に対して、図々しい男だと、イドールはため息を吐く。
 だが────。

「……わかった。まぁ、期待はするな」

 イドールは非常にものぐさだが────頼まれたら断れない男だった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

セフィリカ・ランブレイ
長期戦になるね。稼働時間が5分の私専用機向けじゃないね
オブシディアンを一機借りるよ。この機体も何度か乗り潰すうち愛着沸いたし

『セリカ何体も借りては壊してるものね』
シェル姉……相棒の魔剣がからかう様に
今までは事件解決の尊い犠牲扱い、実費請求なら震えあがってた

洗脳されてるだけのパイロットは助けなきゃね
しばらくは回避に専念して、相手の位置を把握する

反撃は【火雷ノ禊】で、と行きたい所だけど
調整してないこの機体の強度で無茶な剣技は直ぐにガタが来ちゃう

別に、剣圧で攻撃しなくてもいい。相手を見極めて、当てるべき場所に当てる観察眼がこの技の肝だ
ライフルで応戦。武器と足を狙って戦闘不能、行動不能を狙うよ!



●経費はグリモアベース持ちで

「よし、大丈夫! この機体も、何度か乗り潰すうちに愛着沸いたね」

 商業連合から借りたオブシディアンMk4を走らせながら、セフィリカ・ランブレイ(蒼剣姫・f00633)は機体のチェックを済ませた。
 セフィリカの専用機であるスプレンディアは、5分しか稼働することができない。 連戦の予想される今回、ここで使うわけにはいかないのだ。

『セリカ何体も借りては壊してるものね』

 愛称で呼んでからかうのは、セフィリカが携えた魔剣シェルファだ。

「うっ、それは量産機じゃ私の剣技に耐えられないから……尊い犠牲だよ」

 操縦を続けながら、口を尖らせて目をそらした。
 セフィリカは、人並み外れた剣の才覚を持っている。
 キャバリアの操縦においてもそれは遺憾なく発揮され、特に近接戦闘では大きな戦果を上げていた。
 一方でオブシディアンMk4は換装により幅広い拡張性を得られる機体ではあるが、一般的な調整は射撃寄りのフラットだ。
 サスペンションを換えず、関節を補強せず、セフィリカが剣を振るえばどうなるか。
 敵を一閃すると同時に、オブシディアンの腕や脚がもげるのである。
 そうして壊したオブシディアンは数しれず。
 もし修理費用を請求されていたら財布に穴が開くでは済まなかっただろうと考えると、セフィリカか寒気がした。

 ともあれ目の前の敵だ。
 セフィリアの乗る機体と同型機、オブシディアンの部隊が正面にやってきた。
 フォロス共和国の識別信号、敵だ。

「いたわよ、セリカ。パイロットは洗脳されてるだけだから気をつけて」

「分かってるよ、シェル姉!」

 遮蔽はあまり多くなく、見晴らしは良い。
 狙撃の心配は無いが、身を隠すものが少ないのが気がかりか。
 セフィリカが操縦桿を強く押し込むと、オブシディアンは腰部のスラスターを吹かせて前に出た。

「一機接近! 識別信号不明、敵だ!」

 フォロス共和国のオブシディアン部隊も、ほぼ同時にセフィリカを発見した。
 多数対一ならば、部隊の取る戦略は決まっている。

「距離を保って射撃する! βは俺と制圧射撃、γはよく狙え!」

 肉薄しようとするセフィリカに対して、ライフルでの射撃。
 一撃必殺たり得ない集団射撃戦は、数が多ければ多いほど有利になるのだ。

「1、2……3機!」

「近くには彼らだけみたいね」

 牽制程度に反撃しながらライフルでの斉射を躱し、セフィリカとシェルファは状況を確認した。
 敵は鏃型に展開した1小隊のみ。
 肩にワシのシンボルを付けた正面の機体と軽装な左の機体が交互に面制圧をして、右の1機がセフィリカの隙きを突こうと狙ってくる。
 まず落とすべきは……。

「そこっ!」

 大きく跳ねて回避をしたあと、着地の隙きをスラスターを吹かせることで殺し、ホバリング移動をしたままスコープを覗き込み、トリガーを弾くセフィリカ。
 左の、ライフルで弾をばら撒くオブシディアンの肩関節を、正確に撃ち抜いた。

「うわっ、やられたか!?」

 腕の回路を切断され、ライフルを取り落したオブシディアンの脚に更に追撃。
 胴体部分を残して沈黙させた。

「β! ちっ、この腕前……傭兵か!」

 部隊長が、やられたオブシディアンを庇うように前に出て、射撃を続ける。

「γ、フォロー入ります!」

 動けなくなった左の代わりに右が加わって波状攻撃を仕掛けて来るが、弾の数が減って格段に戦いやすくなった。
 ほどほどに反撃をしながら、敵の入れ替わりの瞬間に更に射撃。
 右のオブシディアンも、肩を撃ち抜いて攻撃手段を潰す。

「隊長! あとは頼みます!」

 パイロットが脱出するのが見えて、セフィリカは大きく息を吐いた。

(大丈夫、射撃でもやれる!)

 本当なら剣で戦いたかったが、格闘戦用にチューンナップされていない機体でセフィリカが剣を振るえば、長くは保たない。
 だが、剣で培った観察眼は射撃でも使える。
 残すは1機。
 空になったマガジンを捨てて、次の弾倉を装填しようと腰に手を伸ばしたときだった。

「あっ」

「どうしたの、セリカ」

「弾、切れちゃった」 

 反撃の牽制で想定以上に消費していたのか、セフィリカのオブシディアンの腰元、マガジンホルダーには、もう弾倉が残っていない。
 代わりにあるのは、短めで幅広な実体剣だ。

「……仕方ないね!」

 ライフルを捨てて、剣を両手で握る。

「この距離で剣など!」

 相手隊長機は、両肩のランチャーをセフィリカへと向けているところだ。
 バレルを伸ばして腰を落とし、しっかりと狙う。

「動かないなら……狙いやすい!」

 セフィリカは大きく踏み込むと同時に、オブシディアンに剣を振らせる。

「んな……!?」

 隊長機のカメラからは、突然空が逆さになったように見えた。
 機体ステータスは、下半身を認識していない。
 キャバリアのオーバーフレームとアンダーフレームをつなぐ腰部。
 どうしても細く、脆くなるその一点を、セフィリカは近付きもせずに斬ったのだ。
 動かなくなったキャバリア部隊の様子を見に、近付くセフィリカ。
 コクピットを開けて、隊長らしき人が出てきたところだった。

「はっはっは、やられたなぁ!」

 部下と共にすっかり洗脳が解けたようで、豪快に笑っていた。

「生身で巻き込まれないように離脱してね」

 外部スピーカーで敵パイロットに声をかける。
 同時に、セフィリカのオブシディアンの左手が、肘から落ちた。

「またやっちゃったね、セリカ」

「そう言わないでよシェル姉……」

 がっくりと肩を落とすセフィリカ。
 それを見ていたオブシディアン部隊の隊長が、一度自分の機体に戻る。

「左腕を俺の機体と取り替えていきな。腰だけ綺麗に斬ってくれたおかげで無傷だから無いよりはマシだろう。肩のシンボルを目印に"嫁さん"が寄ってくるかもしれんが……。もし会ったら無事を伝えておいてくれ。」

「隊長の奥さん、凄腕のパイロットなんすよ。あ、俺の弾も持っていってよ」

「俺の機体、まだ片腕は動くからクレーン代わりに運ぶぜ」

 戦場でセフィリカのオブシディアンの整備をテキパキとする三人。
 洗脳が解けた今は、敵ではなく、少しお節介なパイロット仲間なのだ。

「ありがとう、行ってくるよ!」 

 オブシディアンの残骸に座って手を振る三人を背に、セフィリカは次の戦闘へと向かった。

成功 🔵​🔵​🔴​

南・七七三
◎ひゅーが(f30077)と

「“鬼灯”、ブラダー・チェリー。出るよ」
距離を保って援護に回るよ
せっかく、前で目立ってくれてるし

『らー、じゃ。援護は任せて、オーバー』
図書委員の仕事は情報収集
頭部センサーの【索敵】機能で位置関係を把握、「フーガ」の後ろを取ろうとする敵機をライフルで牽制!

……っと
腕部カノンから地面に撃ち込んだ毒液で、煙幕を
こんな毒煙キャバリア乗りには効かないけどね。狙いは、フーガを狙ってた狙撃の照準を……って、むっ

『んなヤバい毒使うわけないでしょ!? 直で吸ったって、ちょっと痺れるくらいだっての……!』
ひゅーがには喧嘩腰で叫び返すけど……脱出の邪魔にはなっちゃうか。なるべく銃で……!


風祭・ヒュウガ
◎七七三(f30098)と共に出撃

数ばかり多い雑兵の相手をするのはちっと苦手なんだがな……!
まぁ、やってやるよ。おい、ナナミ、手伝え!!

1機1機にわざわざ必殺の一撃をくれてやる必要もねぇ、手数重視でいくぞ
腕部や脚部を強化し、手早くノしてやるさ
1機につき7、8発、10秒ずつってとこか……行くぞオラァ!

殴ったり蹴り飛ばしたりすりゃ、他の敵機にブチ当てて多少は数も減らせるだろ

……んじゃ、気持ちよく暴れられるように……ナナミ、頼んだぜ!



……おい、ガスはできればやめとけ。
そこまで徹底的に"無力化"すべきだってんなら止めはしねぇが……。
あぁ? 痺れる程度ォ!? ……最初からそう言えってんだよ!!



●撃墜数が少なかった方が学食おごり

「──ってのはどうだ?」

 トラペザのキャバリア格納庫。
 出撃用のカタパルトには、二機のキャバリアが並んでいる。
 そのうちの一機のパイロット、風祭・ヒュウガ("フーガ"・f30077)が機体の生体認証を済ませると、フォトン・リアクターが嘶いた。

        フーガ
「先にいくぜ。KZM-1001は風祭・ヒュウガで出る!」

「負けた方がゆーこと聞くとかでも良いけど?」

 タイトなパイロットスーツをつまみ上げてズレを直しながら、軽く笑う。
 南・七七三(“鬼灯"・f30098)はコンソールに表示される準備完了のメッセージに目を走らせて、操縦桿を握った。

     ブラダー・チェリー
「“鬼灯”、YMY-00。 出るよ」

 格納庫から二機のキャバリアが、続けてカタパルトで射出された。
 出撃したふたりの前には、キャバリアの小隊がふたつ。
 部隊を構成しているオブシディアンMk4は、単機ではそれほどの驚異ではない。
 だが、パイロットを助けねばならなく、しかも数が多いとなると少し面倒だ。
 とくにフーガのように格闘戦主体のキャバリアは、対多数で取れる戦略がかなり絞られる。

「数の相手をするのはちっと苦手なんだが……まぁ、やってやるよ。おい、ナナミ、手伝え!!」

「この条件で前出るのズルくない? まーいっか。らー、じゃ。援護は任せて、オーバー」

 カタパルトで射出された勢いのまま、フーガが飛び込んだのはオブシディアン部隊のど真ん中だ。
 機体をうまくしならせて、ずしり、と地を揺らして着地した。

「所属不明機?!」

「命知らずがよ!」

 目の前に突然飛び込んで来た正体不明機に対して、オブシディアン部隊の反応は悪くなかった。
 スコープを覗くまでもない距離だ。
 各機がライフルを腰だめに構えて、着地したばかりのフーガへと向ける。

「ハ、遅いぜ! オラァ!」

 着地後の低い姿勢から、オブシディアンの構えるライフルの下に潜り込んで肉薄したフーガ。
 手の赤い水晶体が強く光を放つと、オブシディアンの顎を目掛けて拳を振り上げた。
 身体の伸びるような鋭いアッパーに、オブシディアンの頭部が粉々に吹き飛ぶ。
 追撃といわんばかりに手足へ蹴りを放つと、フォトンを纏った打撃の威力か、オブシディアンの手足は容易に砕けた。

「うえっ、こんな一瞬で!?」

「くそ、間に入られたら仲間に当たる! ⊿小隊!」

 狙って打てばその間に近づかれ、狙わずに打てば仲間に当たる。
 どちらも取ることのできないオブシディアンのパイロットは、少し離れた仲間に援護の要請を送った。

「了解、任せろ」

 別の小隊のオブシディアンが、スコープを覗き込んでフーガをそのターゲットサイトに捉える。
 あとはトリガーを引けば、フーガに向けて弾丸が放たれるところだった。
 そのオブシディアンの持つライフルが、横から撃たれて弾かれる。

「イイ判断じゃん? まー、させないんだケド」

 続けて、頭部と脚部への射撃。
 小隊の仲間が射撃の方向へ視線を向けると、ブラダー・チェリーの持つビビッドピンクのライフルの銃口が、そちらを向いていた。

  アンノウン
「所属不明機がもう一機!」

「チィ、あいつの仲間か……先に前のやつをやる!」

「だからー、ダメだってーの!」

 ブラダー・チェリーの右腕部装甲が上がり、内蔵砲が顔を出す。
 放たれた弾丸が地面を穿つと、深紫の煙が立ち上り、小隊の視界を奪ってフーガの姿を隠した。
 その間に、フーガは飛び込んだ小隊のオブシディアンに回し蹴りを叩き込む。
 蹴り飛ばされたオブシディアンが別の機体にぶつかり、大きく仰け反った。

「……おい、ガスはやめとけ。そこまで徹底的に無力化すべきだってんなら止めはしねぇが……」

「んなヤバい毒使うわけないでしょ!? 直で吸ったって、ちょっと痺れるくらいだっての……!」

「あぁ? 痺れる程度ォ!? ……最初からそう言えってんだよ!!」

 フラストレーションをぶつけるかのように、フーガで隙だらけのオブシディアンの脚を踏み抜いて、行動不能にした。

「これで三機!」

「この……!」

 オブシディアンの折れた脚を踏んだままのフーガに向けて、ライフルでの射撃。
 小隊を包んでいた毒の煙が晴れたのだ。

「喰らわねェよ!!」

 フーガの手足に纏ったフォトンの輝きが増すと、その弾丸を拳で弾いて見せた。

「んなァ!?」

「まー、ビビるよね、初めて見たら」

 狼狽して隙きのできたオブシディアンたちの頭部に、ブラダー・チェリーがライフルを撃ち込む。
 カメラを潰され、行動不能になったオブシディアンの二機が、その場に膝をついた。

「あーあー、パイロットさん出てこれる? 毒煙はそろそろ晴れたカナーって思うケド」

 七七三が外部スピーカーで話しかけると、オブシディアンのパイロットはあっさり行くことを聞いて出てきた。
 洗脳が解けたからだ。

「洗脳を解いてくれてありがたさ半分、負けて悔しさ半分ってところだな……」

 両手をあげてひらひらと振る敵パイロットのひとり。
 フーガを射撃をしようとしていた小隊の、リーダーの男だ。

「もうすぐここで合流予定だった"元部下"が来るはずだ。うるさいやつだが、空中戦の腕は確かでな……。戦うことがあったら気をつけてくれ」

 男はそれだけ七七三に伝えると、安全な場所を求めて部下と共に機体から離れていった。

「なんだって?」

 フーガがブラダー・チェリーに近付いてくる。
 奇襲で倒せたおかげか、ブラダー・チェリーの援護があったおかげか、機体にはこれといった傷はない。
 ブラダー・チェリーも残弾数を確認する。
 戦闘の継続に支障はない。

「よくわかんないけど強そーなの来るって」

「なんだそりゃ」

 このあと、大きな飛行翼が風を切る音が聞こえてくるまで、撃墜数で言い争いをしていた。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

朱皇・ラヴィニア
Mk4か。厄介な相手だね
だがその分、やり口はよく知ってるつもりだ

ゼルは接近戦しか出来ないから不利に見えるだろう
147を大剣状に展張し突撃
わざと狙わせてやる。さあ撃ってこい
攻撃を大剣で弾きながら肉薄し、機を見て分離だ
セパレートブラディエル――大剣を構えて暴れ回れ!
リモートでブラディエルを制御しつつ、ゼルを敵機に接近させる
身軽になったゼルの機動性、伊達じゃあないよ

零距離に近付き格闘戦に移行
武装を剥がして無力化すれば、流石に脱出してくれないかな?
そのまま敵機の銃を拾って応戦だ
セーフティはエンコーダで強制解除
これで使える筈、さあ第二ラウンドだよ!

ツーマンセルで突撃・攪乱・強襲・無力化
一人でも多く救出さ



●赤熱のツインドッグ

「Mk4か。厄介な相手だね」

 ピンク色のパイロットスーツの少女が、戦場の情報が表示されるコクピット内でコンソールを操作する。
 敵の先遣隊はオブシディアンMk4の部隊。
 少女の機体の近くにも、V字の陣形で進む小隊が一つ。
 汎用性の高い機体を複数同時に相手するのは、なかなかに骨が折れる。
 だが、すでに何度か戦闘経験のある機体が相手ならば、過剰に恐れるものでもない。

「行こうか、ゼル」

 朱皇・ラヴィニア(骸の虚・f29974)が愛機に声をかけるようにつぶやくと、それに答えるように、血のような赤い外骨格を纏ったキャバリアの瞳が光を放った。

 一歩、また一歩とキャバリアが進むたびに、大きな音と揺れが辺りを伝わる。
 音や揺れそのものはこの世界の戦場ではそれなりによく見るものだが、その間隔が非常に狭ければ、この世界の者であっても違和感を覚える。

「なんだ、この移動音は」

 最初に気付いたのは、その小隊の中で最も年上の男だった。
 キャバリア乗りとしてそれなりの経験を積み、いくつもの戦場から生還した彼は、その小隊長に任じられていた。
 だからすぐに気付いた。
 徐々に大きくなるその音は、オブシディアンのような機体の移動音ではないと。

「各機、警戒しろ。音が近付いてくる」

 酒で焼けた声で、部下たちに指示を出す。
 それから、先頭を進む部下の一人がその姿を見つけたのは、すぐあとだった。

「隊長ォ! 敵が走って来る!」

 他のふたりは、その言葉を聞いてすぐに音の方へと視線を向けた。
 肩を上下に揺らす、赤いキャバリア。
 ラヴィニアのシュラウゼルだ。

「所属不明機、敵だ!」

 彼らの決断と行動は、早かった。
 シュラウゼルを見るやいなや、前のふたりがキャバリアライフルを掃射する。

「ハッ、まっすぐに突っ込んでくるならただの的だぜ!」

 対してシュラウゼルは、手にした武器を大剣型へと変え、盾のように構えた。

(わざと狙わせてやる。さあ撃ってこい)

 ライフルの弾丸は、大剣の表面をわずかに傷付けるのみ。
 斥力発生装置とナノマシンで作られたこの大剣は、多少の攻撃では折れたりしない。
 これこそがRX-147──ロストオウスだ。

「固え! 何で出来てんだよ!」

 掃射に加えて、小隊長機が大剣では覆いづらい足元やグリップを狙うが、うまくラヴィニアは持ち手を変えて捌く。
 ずしり、ずしりと重い足音をたてながらさらに距離を詰めるシュラウゼル。
 会敵前に比べたら速度は落ちたが、それでも一般的なキャバリア乗りからすれば驚嘆に値する速度だ。

「近接戦を所望か……! させんよ!」

 シュラウゼルが手にしている武器は大型の剣のみ。
 隊長が後退と遅滞射撃を指示したのは、そうおかしな判断ではなかった。
 小隊の射撃の手が緩んだころには、オブシディアン小隊とシュラウゼルの距離は、あと20メートルというところまで来ていた。

「いま下がったってもう遅いよ」

 ラヴィニアが息を大きく吸う────。
 その口から放たれたのは、血塗れの天使の破壊告知だ。

「────暴れ回れ、ブラディエル!」

「……ッ!」

 先程まで守りに徹していた赤いキャバリアが、突如として大剣を片手で振り上げて前進してきて、驚かない者がいるだろうか。
 赤き鎧──ブラディエルは、キャバリアであるシュラウゼルをその場に残して分離し、遠隔操作で小隊へと攻撃を仕掛けたのだ。

「うおっ!?」

 視線がブラディエルへ集中するのは、仕方がないことだ。
 だが、彼らはシュラウゼルから目を離すべきでななかった。
 赤い悪魔の上を飛び越えた鈍色のキャバリアが目前に迫っていることに、機体に影を落とされるまで気付かなかったのだ。

「身軽になったゼルの機動性、伊達じゃあないよ」

 不敵に笑うラヴィニアは、まず小隊長機に組み付いた。
 オブシディアンに比べて、シュラウゼルはずいぶんと人間的な骨格構造をしている。
 背後から羽交い締めすることができるのは、その構造ゆえだろう。
 そのままオブシディアンを、出力の限り締め上げる。

「クソ、近すぎて打てねえ!」

 誤射を避けるためライフルをサーベルに持ち替える部下たち。
 その間にも、みしみしと隊長機のフレームは歪み、肩が、脚が、破壊されて折れた。

「よくも隊長をッ!」

 逆上した部下がサーベルを振り上げ、シュラウゼルへと振り下ろそうとする。
 だが、その攻撃は機体の腕から先が無くなることで、叶わなかった。
 ブラディエルが、その大剣で機体の頭上を横薙ぎに払っていたからだ。

「別々に動けるのかよ! ダメだ、あいつを呼んで来ねえと!」

 最後の一人が、ライフルを腰だめに構えて撃ちながら、スラスターを激しく噴射して距離を取ろうとする。
 増援を呼ぶためだろうか。
 それをただ見逃すラヴィニアではない。
 手足をもがれて倒れた隊長機の、その手に握っていたライフルを奪い取るシュラウゼル。
 セーフティロックを瞬間的に解除すると同時に、下がっていくオブシディアンへと向けた。

「その機体、コクピット回りは硬いけど、他は脆いとろこが覆いんだ。そうだね?」

 放たれた弾丸は、脆いジョイントのみで繋がったオブシディアンの股関節を正確に撃ち抜き、バランスを崩したオブシディアンは地を転がった。

「ちゃんと全員生きているかい?」

「おかげさんでな」

 ラヴィニアが外部スピーカーで声をかけると、足元の隊長機から出てきたパイロットが応える。
 乗機を破壊すれば、パイロットの洗脳は解ける。
 彼らもぼんやりとした記憶しかなく、なぜこの作戦に従っていたのかわからないという。

「気をつけてくれ、俺の"元相棒"が、こっちに向かってるハズなんだ」

 小隊長はそう言うと、部下たちを救出して離れていく。

「ゼル、次へ行こう。一人でも多く救出するんだ」

 ラヴィニアが見上げた遠い空で、甲高いエンジン音が聞こえていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ノヴァンタ・マルゲリータ
やれやれ、どこの国も変わらないものですね
傭兵に恨みつらみはつきものではありますが、望んで買う物でもありません
できる範囲で配慮はしましょうか

良い機体に良い武器、訓練もしっかりと積まれているのでしょうね……迷いのない慣れた動きです
ですが、些か……お行儀が良すぎるようです

砲戦ユニットを分離、こちらへ照準をつけようとする敵機に砲撃を行わせ、隙を作らせます
懐に潜り込んだら、ヒートチェーンソーで敵機を溶断します
【メカニック】としてこの機体を扱ったこともありますので、脆い部分は存じております
【操縦】技能で脚や武装を狙って【部位破壊】していきましょう

さてさて、残りは何機でしょうか



●兵なくとも、眩惑に能う

「やれやれ、どこの国も変わらないものですね」

 敵指揮官の熱弁を聞いていた端正な顔立ちの男が、冷かに呟く。
 女性と見紛うほどの華奢な身体と長いまつ毛。
 ノヴァンタ・マルゲリータ(スクラッパー・f29982)は、継ぎ接ぎだらけのキャバリア、"スクラッパー"に乗り込み、機体を起動させた。

 ずしり、ずしりと重い足音を響かせて前進するスクラッパー。
 すぐに敵のオブシディアン三機の小隊は、見つかった。
 当然向こうもすぐ見つけたようで、スクラッパーへ向けてライフルの掃射を、機体の姿勢を低くして躱す。
 荒野で朽ちたキャバリアの残骸を盾に、敵部隊の様子を見た。
 カメラを出せば、すぐにそこを射撃される。
 大した精度の良さだ。

「良い機体に良い武器、訓練もしっかりと積まれているのでしょうね……迷いのない慣れた動きです」

 ノヴァンタの敵兵に対する評価は、高い。
 長く戦っている部隊なのだろう、仲間のカバーも上手く、情報の共有も早い。
 三機が交互にスクラッパーの隠れる残骸へ射撃を行い、リロードの隙きを作らないのだ。

「ですが、些か……お行儀や良すぎるようです」

 突然の、スクラッパーとオブシディアン以外の砲撃音。
 それがオブシディアンの足元を穿ち、一歩引かせる。
 それに対する敵の反応は、やはり早い。

「小隊長、三時から砲撃! 敵増援だ!」

「制圧射撃、行け!」

 勝ち気な女性たちの声が、外部スピーカーから聞こえる。
 先に声を出した女性の機体は、砲戦ユニットのいる方向に向けて射撃をした。
 スクラッパーの方を向いている銃口が一つ減ったのだ。
 敵の陣形が、崩れた。

「ほら、よそ見は禁物ですよ」

 スクラッパーへ銃口を向けていた残り二機の射撃、その間を縫って前へ出る。
 距離を詰めながら、ノヴァンタはスクラッパーの腰に備え付けていた工具を手に持たせた。
 大型のヒートチェーンソーだ。
 刃が回転すると同時に赤熱し、原動機がけたたましい音を立てる。

「近い!」

 敵パイロットの舌打ちが、スピーカーから漏れて聞こえる。
 すでにライフルを構えて撃つより、チェーンソーを突き出す方が早い距離だ。

「その機体、メカニックとして扱ったことがありますので……ここが脆いのでしょう」

 ノヴァンタのチェーンソーがオブシディアンの、脚の細いシャフトに触れる。
 甲高い音と、眩い火花。
 スクラッパーがチェーンソーを振り抜くと、オブシディアンはバランスを崩してその場に倒れた。

「よくも!」

 小隊長であろう女が、スクラッパーへとサーベルを振り上げる。
 スクラッパーがチェーンソーを横へ振ると、その機体の胴体も軽々しく両断した。
 更に砲撃が加えられ、残る一体もライフルやランチャーを失って膝を着く。

「くっ、三対一のままだったら……!」

 敵機のスピーカーから、負け惜しみが聞こえる。

「お生憎ですが、三対一のままですよ」

 ノヴァンタは事前に分離して遠隔操作していた砲撃ユニットを近くへと呼び戻した。
 増援が来たのではなく、ただの砲撃ユニットで増援を欺瞞したのだ。
 それを見た敵パイロットは、うわ、やられたー!と情けなく騒ぐ。
 どうやら、三機ともパイロットは無傷のようで、コクピットから出てきていた。

「アタシらは目が覚めた。何していたんだか……。悪いけど撃墜マークだけで我慢しておくれ」

「傭兵に恨みつらみはつきものではありますが、望んで買う物でもありませんから」

「そう言ってくれるとありがたいね。この戦場にはうちの"姉御"が来てるはずさ。姉御はアタシらより強いから……気を付けておくれ」

 豪快に笑って戦場から去っていくフォロス共和国のパイロットたち。

「さてさて、残りは何機でしょうか」

 その背中を見送りながら、ノヴァンタは泰然と呟いた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ホワイト・キャスター
【◎】
おうおう、流石正規軍さま方。良い機体に乗ってんじゃん
こちとらスクラップ同然の型落ちだってのにさ
その中身も良いパイロットか見極めてやんよ

あ、でも死なせたら不味いんだっけ?
面倒だけど恨まれるのは更に面倒だからさ、半殺し……いや泣きをみる程度にしてやるよ

ジャイアントキリングだ
性能に胡座をかいた軍人さまを煙幕のジャミングで翻弄して、質量剣でなぶるように降参まで持っていく

幾何学模様で飛ぶミサイルはジャミングとガトリングの弾幕で処理だ

保護は…求めるようならコックピットに入れてやるよ。ただしVIP待遇とは言えないけどな



●錆鼠色の霧

「おうおう、流石正規軍さま方。良い機体に乗ってんじゃん」

 コクピットの縁に足を掛けて、ホワイト・キャスター(バイク乗りの掃除屋・f24702)は笑う。
 双眼鏡にオブシディアン部隊を捉えて、咥えた煙草のフィルタを噛んだ。

「こちとらスクラップ同然の型落ちだってのにさ……その中身も良いパイロットが見極めてやんよ」

 座席にお尻を放り投げるようにコクピットに飛び込むと、ハッチを閉める。
 ホワイトが操縦桿を握ると、改修に改修を重ねたキャバリア"ブルーフォッグ"が、土塵を起こしながら立ち上がった。

 フォロス共和国のキャバリア小隊が、トラペザへと向かう。
 皆、心を滾らせる義務感と正義感を持って、己の指名を果たすためだ。
 その小隊員のカメラに、古臭いキャバリアが映る。
 距離は、1キロはない程度だろうか。

「正体不明機を確認。友軍ではない。トラペザの傭兵か」

 先頭の一機が、僚機を手で制してその場で構えさせた。

「随分と古い機体のようだが……先手必勝だ。ミサイルの雨を降らせてやれ!」

 小隊長の号令と共に、オブシディアン小隊の肩部ミサイルポットのハッチが一斉に開く。
 そうして放たれたのは、無数の誘導ミサイルだ。
 幾何学模様の尾を引きながら、ブルーフォッグへと一斉に向かっていった。

「来たか。 さぁて、どうするかね」

 そう言いながら、ホワイトはブルーフォッグに持たせたガトリングキャノンを空へと向ける。
 金属が鈍く擦れる回転音。
 環状に配置された銃身が吠え、嵐のように弾丸が放たれた。
 無数のミサイルを、ブルーフォッグのガトリングキャノンが撃ち落としていく。
 だが三機から放たれたミサイルの数は、相当なものだ。
 ガトリングキャノンでは撃ち落としきれないものも出てくる。

「型落ち相手に随分なこった」

 ホワイトが手元のスイッチを一つ、オンにした。
 空を仰いだままのブルーフォッグ。
 その背中から、錆鼠色の霧が溢れ出してその機体を包み隠した。
 同時にガトリングキャノンでの迎撃をやめて、濃霧の中を走る。
 ガトリングキャノンで落としきれなかったミサイルがいくつもその霧の中へと飛び込み、爆発したのが彼らからもわかった。

「隠れたか……」

 オブシディアン部隊はミサイルを撃つのを止めて、じっと様子を見る。
 これで撃墜できていればそれで良いが、この霧にはジャミング効果があるのは、荒れたレーダーを見ればすぐ分かった。
 ミサイルはおそらく、誘導能力を失っていただろう。
 そしてこの爆発で濃霧が広がってしまったのは、オブシディアン部隊にとって大きな不運だった。

「くそっ、こっちまで見えなくなっちまった。大丈夫か?」

 僚機の片方が、悪態を吐く。
 そう言って隣を歩く機体へ目を向けた。
 だが、そこにいたのはオブシディアンではなく、古く、だがやけに丈夫そうなキャバリアだ。

「ハッ、軍人さま、相方ならそこでねんねしてるよ」

 ブルーフォッグのアイカメラが、鈍く光る。
 次の瞬間には分厚い実体剣がオブシディアンの肩を叩き潰し、足元まで一気にへし折った。

「この煙幕の中を通って来たか。やってくれなァ!」

 そのブルーフォッグへと、小隊長機が斬りかかる。
 質量剣を盾のように構えて、ブルーフォッグはそれを防いだ。

「その機体でよくやる!」

 オブシディアンMk4は、かなり広く使われている現行量産機だ。
 使われるには使われるだけの理由があり、使われなくなる機体にもまた、理由がある。
 キャバリアは技術開発が凄まじく、1世代も離れれば性能の差は大きなものとなるだろう。
 それだけ、ホワイトとフォロス兵の個人戦力差は大きかった。
 にもかかわらずホワイトが、旧式のブルーフォッグが二機を屠ることができたのは、ホワイトの力だった。

「性能に胡座をかいてたんじゃないのか?」

 相手に比べて古い機体、性能で劣る機体であれば、その力を数倍にして引き出すことができるのだ。
 鉄さびの剣が、オブシディアンの実体剣を押し込む。
 オブシディアンMk4が格闘戦用機体ではないとはいえ、前世代のキャバリアに力負けしたことは、小隊長にとって驚嘆に値した。
 ブルーフォッグが上段がからその剣を振り下ろすと、剣で受けたオブシディアンの腕が拉げる。

「ピカピカのお洋服じゃ動きづらかっただろ? 良いツラになったじゃないか」

 自分より格上の獲物を狩る高揚感に、笑みが止まらない。
 すっかりフィルタを噛み潰した煙草を吐き捨てて、さらにひと振り、ふた振りと追撃を加えれば、小隊長機も膝をついた。

「どうだい、型落ちにやられる気分ってのは」

「悔しい……が、それよりも晴れやかな気分が強いな。まるで目が覚めたようだ」

「そいつは良かった。離脱するなら乗っていくか? VIP待遇とは言えないけどな」

 コクピットのハッチを開けたホワイト。
 キャバリアのコクピットは、狭い。
 詰め込んでも、乗れるのはホワイトの他にひとりがいいところだろう。

「部下を連れて行かないといけないんでな。勝手に逃げさせてもらうよ」

 壊れたオブシディアンのコクピットから降りるフォロス兵たち。
 ブルーフォッグの張った霧も晴れるころだった。

「ああそうだ、近くに俺の"娘"もいるはずだ。あいつも腕利きのパイロットなんだが……もし見かけたら、助けてやってくれ」

 次の戦場へとブルーフォッグを歩かせるホワイトを見送って、パイロットたちは敬礼をした。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

荒珠・檬果
洗脳って、たちが悪いですよね。
私のオレンジライト・スピードキャバリア…略して『O.L.S.C.』の出番ですね!(まだ色変えしたサイキックキャバリア状態)

…この色、非常に目立つんですよね。まあ今回はちょうどいいんですが。
【兵貴神速】で押し返し、持ち前のスピードで敵の攻撃を避けてっと。
「七色変換、紅紋薙刀…うわデカい」
何か機体サイズにデカくなった紅紋薙刀で、コクピットを傷つけないようにしつつのなぎ払い!
あとあと巻き込みたくないので、逃げてくださいねー。

※七色変換:七色竜珠から該当色を武器に変える。今回は『赤』を変換したら予想外に大きくなった



●橙色のスピードスター

 フォロス共和国のキャバリア部隊は、オブリビオンマシンの洗脳によってトラペザへ攻め込んできた。
 彼らは本来、それほど過激でも、好戦的でもない、ただのキャバリア乗りだ。
 助けるには、彼らの乗るキャバリアを破壊するしかない。
 もしトラペザのキャバリア部隊が戦ってしまえば戦争に発展しかねないため、これは猟兵がやらねばならないことだ。
 ならば────。

   オレンジライト・スピードキャバリア
「私の    O.L.S.C.   の出番ですね!」

 荒珠・檬果(アーケードに突っ伏す鳥・f02802)が漆黒の瞳を輝かせると、橙色のキャバリアが背後に現れた。
 意気揚々と檬果が乗り込む。
 機体の隅々まで檬果の念動力が行き渡ると、O.L.S.C.は凄まじい勢いで加速するのだった。

 それから少しして、目に入ったのはオブシディアンMk4の小隊だ。
 橙色の機体はかなり目立つようで、すでに敵がO.L.S.C.を補足しているのが檬果からもよくわかった。

「不明機高速接近! 来ます!」

 幼い男のような声がオブシディアンの外部スピーカーから響く。
 小隊の索敵担当だろう。
 その報告を受けて、他の二機がO.L.S.C.へランチャーを向けた。
 装填されているのは油脂焼夷弾だ。
 それがつぎつぎに、O.L.S.C.へ放たれる。
 衝撃力や貫通力こそないものの、直撃すれば高温に焼かれて、機体の電子回路がイカれてしまうだろう。

「素直に当たってあげる義理もありません!」

 檬果のつぶらな瞳には、彼らの狙いがよく見えている。
 オブシディアンが二機掛かりで油脂焼夷弾の砲撃を浴びせるが、O.L.S.C.はくるりと機体を回して躱した。

「くっ、早い、軽い!」

 壮齢の男が叫ぶ。
 速度に優れたO.L.S.C.に対して、連射の効きづらいランチャーを選択したのは、男のミスだっただろう。
 例えば誘導ミサイルの全弾発射であれば、また状況は違ったかもしれない。

「もっとめちゃくちゃにしますよ」

 檬果が、コクピットでくるくると指を回した。
 すると、O.L.S.C.の周りに現れたのは、無数のキャバリアサイズの騎馬兵だ。
 白い光を纏っており、どこか神々しささえある。

「さあ、突撃です!」

 騎馬兵たちは、一斉にオブシディアン小隊へと向かっていった。
 一丸となって走る騎馬兵には、油脂焼夷弾は当たる。
 だが400を超える騎兵に向けて撃っても撃ってもきりがない。

「──上昇ッ!」

 男の掛け声で、オブシディアン小隊の三機がスラスターを吹かせ、その騎兵の頭上へと避難した。
 そこから先は、男には時間が遅くなったように感じただろう。

「七色変換、紅紋薙刀!」

 気付いたときにはもう、橙色のキャバリアが目の前にあった。
 真っ赤な薙刀を構えて、今にも薙ぎ払いそうだ。

「回避を……!」

 ペダルを奥まで踏み込み、スラスターを再び全開で吹かせるが、逃げ出すことは能わなかった。
 O.L.S.C.の振るう薙刀が、三機の腰部をまとめて切り裂く。
 フレーム接合部のそれほど太くはないシャフトは容易に断たれ、上半身と下半身が分かれたオブシディアン三機は、そのまま落下していった。

「……うわデカい」

 O.L.S.C.が手にした薙刀を見て、檬果は小さく呟いた。
 普段は人間サイズ(?)で形を変えるが、キャバリアに合わせたサイズになったようだ。
 それから、撃墜した三機に近寄って、もう動かないことを確認する。
 綺麗に両断されたため、まだ下半身だけ、上半身だけで動き出してもおかしくないが、どうやらその様子はない。

「コクピットは狙ってませんから無事ですよね? あとあと巻き込みたくないので、逃げてくださいねー」

 檬果が外部スピーカーで声をかける。
 すると、オブシディアンのコクピットのハッチが開き、パイロットが出てきた。

「やられたよ。ずいぶんと速い機体だ」

「まあ、スピードには自信がありますからね」

「スピード自慢なら、俺の"兄貴"といい勝負かもしれないな。兄貴も来てると思うんだが……」

 拳を握り、負け惜しみのように語りながらパイロットたちは去っていく。
 戦場から離れるのを見送って、檬果は再びO.L.S.C.で戦場を駆けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

テラ・ウィンディア
こうした機械同士の戦いってすげーけど

乗り手を助けながら戦うのは難しいな
だがやってみせるんだぞ

【戦闘知識】
今迄戦った機体との構造の違いはないか
特にコックピットの位置についてはきっちり把握

それじゃヘカテ…いくぞっ(UC発動

【見切り・第六感・残像・空中戦・盾受け】
敵の弾幕を超高速で残像を残しながら回避
敵陣に突撃して
【遊撃・レーザー攻撃】
ガンドライドで同時に殲滅
【二回攻撃・重量攻撃】
重い剣による猛攻で武器や四肢を切り裂き
コックピットごと搭乗者を引きずり出し救出

【早業・串刺し】
槍に切り替えて別の機体を貫く(コックピットや燃料部分は避け無力化狙い

基本脱出した搭乗者達は逃がす
後…その動画は撮る
後の為にな



●神機の烈火

「ふむ……今迄戦ってきた機体と違いは無さそうだな」

 画面に浮かぶ資料を指で送りながら、戦場に現れたオブシディアン部隊と見比べる少女。
 とりわけ重要なのは、コクピットの位置だ。
 ただ機体を壊すだけではいけない。
 洗脳されたパイロットを、助けなくてはならないのだ。

「それじゃあヘカテ……いくぞっ」

 そのアイカメラに蒼き光を灯し、テラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)の乗る神機ヘカテイアが、紅蓮の刃を持って空を駆けた。

「何か来るぞ!」

 オブシディアン部隊の戦闘を歩く男が、高速接近するヘカテイアに気付いたのはかなり早い段階だった。
 視界に映ると同時に、肩のランチャーを伸ばす。
 僚機はそれに従って武器を構えた。

「撃てェ!」

 焼夷弾、ライフル、ミサイルの嵐が、ヘカテイアへと放たれた。
 躊躇ない全弾発射だ。
 空を埋め尽くさんばかりの弾丸が次々にヘカテイアへ迫る。

「すごい弾幕だな、けどヘカテの速度なら!」

 神機が左右に小さく揺れると、その機体がふたつに分かれた。
 いや、そんな事実はない。
 オブシディアン部隊のパイロットからは、あまりの速さと挙動で、ふたつに分かれたように見えたのだ。
 二機のヘカテイアをそれぞれ弾丸が追いかけるが、ふたつに分かれた弾幕では神機を追いきれない。
 弾を躱すために一度宙返りして再びオブシディアンへ迫りながら、ヘカテイアは自立浮遊砲台群──ガンドライドを放った。
 先行した3機の砲台はオブシディアンへと砲撃を加える。

「自立兵器か!」

 彼らも素人ではない。
 ガンドライドの砲撃を、跳んで躱す。
 キャバリアの重量で、地面が大きく揺れた。

「隙だらけだぞ!」

 オブシディアンが地に足を着ける頃には、ヘカテイアが眼前にまで迫っていた。
 振り上げた星刃剣。
 赤い刃が煌めいて、オブシディアンの肩をすっぱりと切り落とす。
 返す刃で腰を裂いて、残ったコクピットブロックを引き抜いた。

「くそっ、大した出力だ……!」

 残った二機がライフルをヘカテイアに向けてトリガーを引く。
 だが、放たれた鉛玉は神機の残像しか穿たない。
 片足を軸に回る体捌きは、オブシディアンのパイロットにヘカテイアの立ち位置を錯覚させた。
 その間にヘカテイアの武器を剣から槍へと持ち替えさせていたテラ。
 燃えるように赤い槍が、オブシディアンの首筋へと吸い込まれて貫いた。
 回路がスパークして機体が一度だけ不随意に動くと、コントロールを失って膝から崩れ落ちる。

「よくもォ!」

 最後に残った一機がライフルを捨て、腰の実体剣へ手を伸ばす。
 だが、コクピットのモニタに大きく映ったのはヘカテイアのガンドライドだ。
 正面と、左右。
 三機の自立砲台に囲まれていたのだ。

「……ッ!!」

 その腰の剣を抜くよりも前に、近距離からの砲撃がオブシディアンを襲った。
 頭部と背中、腰へと着弾して、弾ける装甲。
 黒い煙をあげて、オブシディアンが倒れる。

「乗り手は生きているな?」

 テラがオブシディアンのハッチを強引に開けると、中からパイロットが這い出て来た。

「よし、洗脳も解けてるな。動けるなら離脱しろ!」

 オブシディアン部隊のパイロットたちが集まって、ヘカテイアの顔を見上げる。

「すまん、助かる。飛べる機体で別行動してる"部下"がいるんだ。見かけたらあいつも助けてやってくれ」

 そう告げて去っていくフォロス共和国の兵士たち。

「わかった。おれに任せろ」

 その姿を記録して、テラは空を見上げる。
 どこかで、風を切るような音が聞こえていた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『ガガンボ』

POW   :    バルディッシュ並列化偽演粒子コーティングソード
【ユーベルコードで強化した装甲斬撃剣】が命中した対象を切断する。
SPD   :    D2エンジン起動
【補助動力炉D2エンジンを起動する】事で【通常時とは比較にならない高機動戦闘モード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    マイナーチェンジ
自身の【各部、兵装】を【対空迎撃用又は対地砲撃用キャノンパック】に変形する。攻撃力・攻撃回数・射程・装甲・移動力のうち、ひとつを5倍、ひとつを半分にする。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●音が聞こえる

 キイン、と風を切る音。
 
 貧弱な装甲に、軽い武装。
 そして僅かばかりの飛行能力を持った量産型キャバリア、ガガンボだ。
 量産型というだけあって、扱いやすさはあるものの、目立った性能のある機体ではない。
 だがそれも、普通のパイロットが操る場合に限る。
 機体性能を十分以上に引き出せるパイロットが乗れば、ガガンボは化けるのだ。
 そういった"エース"のみを集め、ガガンボを与えられたフォロス共和国の特殊遊撃大隊。
 それが、戦場に到達した。

※>ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー<※

(マスターより)
 ガガンボとの一騎打ちが発生します。
 ガガンボのパイロットは、それぞれが一章で戦ったオブシディアンMk4のパイロットの関係者です。
 因縁を付けて猟兵たちに襲い掛かってきます。
 彼らもオブリビオンマシンの洗脳を受けているため、機体を破壊すれば正気に戻ります。
 彼らはうまく脱出するため、故意に狙いでもしなければ死亡しません。
朱皇・ラヴィニア
君が相棒か。ちょっと頼まれたからね
連れ戻させてもらうよ……だけど、機体は破壊する!

ゼルの駆動系をチューンして高機動戦闘
弾幕を張り狙いを絞らせない
そうして障害物の多い地形に逃げ込み、格闘戦を誘発させる
さあ来るんだ……地形ごと叩き斬れるだろう

零距離の奇襲を、147で斬撃を受け止めて
真っ二つに斬れた、だけど終わりじゃない
その攻撃をグリード・イーターで喰らって
ナノマシンで再生した刀身で敵を斬りつける
両腕を落とし、逃げる様なら323で機関部を撃ち落とす
誘爆しない様気をつけてバースト射撃
墜落したらパイロットを引き摺り出そう

大丈夫かい? マシンには悪い事をした
流石のエースだ……だから
こんな所で死んじゃ駄目だ



●Bite Of Giant

 朱皇・ラヴィニア(骸の虚・f29974)の駆る機体、シュラウゼルに影が掛かったのは、もうひとつのキャバリアであり、外骨格であるブラディエルを装着しようとしたときだった。
 甲高いエンジン音と共に空を切り裂く翼が、陽の光を遮ったのだ。
 視線を空へ向けると、白い機体、ガガンボが急降下してきているところだった。
 ラヴィニアはシュラウゼルの持つ速射砲を空に向けて打つと、ガガンボは進入角度を水平に戻してそれを避ける。
 上手いパイロットだと、ラヴィニアは直感した。
 開けた場所で戦うのは、不利だ。
 ラヴィニアは重いブラディエルをその場に残して、墜ちた輸送船の影へと逃げ込む。
 ガガンボは様子を窺うように、空を旋回していた。
 外部スピーカーをオンにして、空へと語りかける。

「キミが彼の元相棒というやつかい。オブシディアンMk4の小隊の、リーダーの彼」

「どうしてあいつのことを……まさか、殺ったのか!?」

「生きているさ。だけど、ちょっと頼まれたことがあるんだ」

 姿が見えなくても、ガガンボからはシュラウゼルの隠れている場所がわかっている。
 ガガンボは高度を落とすと障害物の間を縫うように移動し始めた。
 シュラウゼルの隠れる輸送船の残骸へと、ガガンボは迷わずに向かう。

「何を頼まれたかは知らんがぁ!」

 そうして振ったのは、偽演粒子コーティングソードだ。
 輸送船の甲板ごと、シュラウゼルの首を落とさんとした。

「大した切れ味だ……! だけど──」

 シュラウゼルが手にした質量剣を盾にして、その斬撃を受け止める。
 しかし、刃が止まったのは一瞬だ。
 装甲ごと断ち切るその斬撃は、シュラウゼルの剣をへし折った。
 剣が折れれば次にガガンボの刃が通るのは、シュラウゼルの首。

「獲った!」

 ガガンボのパイロットが口角を上げる。
 だがガガンボの剣がシュラウゼルを切ることはなかった。
 シュラウゼルが、巨人が、口を開けてその歯で刃を咥えて止めていたのだ。

「んなァ……!?」

「迷ったね。覇気がない攻撃だ」

 ユーベルコードとしての力を失い、ただの刃となった剣をシュラウゼルが噛み砕く。
 ガガンボのパイロットは舌打ちと共にペダルを踏み込み、急上昇で距離を取ろうとした。
 だが、それを見逃すラヴィニアではない。
 無防備な背中に電磁速射砲を叩き込んだ。
 墜落するガガンボ。
 着地と同時に、手にしたライフルをシュラウゼルへ向ける。
 だが、そのライフルを持つ手をシュラウゼルは切り落とした。
 シュラウゼルの手に握られていたのは、折れたはずの質量剣だ。
 刃の中程、折れたはずの部分にうっすらと線が走っている。

「クソッ……まるで刃が生え変わったみたいだな」

 悪態を吐くガガンボのパイロット。
 武装の全てを失い、もはや打つ手がない。

「悪いけど、機体は壊させてもらうよ。君を連れ戻さないといけないからね」

 ラヴィニアがそう告げると、電磁速射砲が火を吹く。
 装甲がひしゃげ、煙を上げるガガンボ。

「君はエースだろう? こんなところで死んじゃ駄目だ」

 洗脳が解け、脱出するパイロットを見て、ラヴィニアは安堵した。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

夢幻・天魔
【厨二病でご自由に】
因果の鎖は此処に交差するか……
フッ……これもまた運命(サダメ)ということか

ククク……先ほどの雑魚と比べれば多少はやるようだが……
如何に高い飛行能力を持つといっても、「殲禍炎剣」の元に高速飛翔を封じられたこの世界で、飛行技術の進歩には限界がある
対して我が『Azazel』はといえば、彼の世界にて最速を誇った空の王ともいえる機体だ
操縦技術に関しても、たかだかエース級如きで、世界の命運を決める戦いを勝ち抜いたこの俺に敵うはずも無い
(妄想設定でマウントを取り、『無双設定撃』を発動!)

フハハハハ!! すぐに貴様も弟達の元(あの世……では無く後方の安全地帯)へと送ってやろう!!!



●悪魔の飛翔

 鈍色の空を、白い翼が駆ける。
 エース級のパイロットによって性能を120%引き出されたガガンボは、速い。
 風を切り、空を裂いて飛ぶ姿は、高速飛翔を禁じられたクロムキャバリアとは思えないものだ。

「どこだ? "弟たち"の機体はこの辺りのはずだ」

 その速度は、家族を想うパイロットの気持ちによるところが大きかった。

 ホーリーグレイル
 殲禍炎剣に認識されないギリギリの高度と速度。
 そうまでして戦場を飛んだ先にいたのは、漆黒の悪魔だった。

「因果の鎖は此処に交差する……」

 夢幻・天魔(千の設定を持つ男・f00720)の声が、Azazelの外部スピーカーを通して響く。

          サダメ
「フッ……これもまた運命ということか」

「正体不明機! もしや貴様が……!」

 Azazelを認識したガガンボのパイロットは空中で機体を止めて、対地砲撃用キャノンを構えた。
 弟たちの乗る機体がいるはずの地点に、いない弟たち。
 そしてそこにいる正体不明機。
 Azazelが撃墜したのだと、思わない方がおかしいだろう。

「ククク……先ほどの雑魚と比べれば多少はやるようだが……」

 機体の制動、隙のない構え、飛行技術。
 天魔の目に映る様々な情報が、ガガンボのパイロットがエース級であることを告げていた。

「やはりお前が弟たちを!」

「フハハハハ!! すぐに貴様も弟達の元へと送ってやろう!!!」

 闇を纏うAzazelを見て、ガガンボが闘志を燃やす。
 弟たちはすでに安全な場所へ避難したため、そこへ連れて行くという意味だが、もちろん彼は気付かない。

「許さない、許さない……!」

 男の激昂と共に、ガガンボの装備する対地砲撃用キャノン砲から凄まじい連射音が響く。
 通常よりも五倍の速度で打ち出せるように、弾倉をマイナーチェンジしてあったのだ。
 砲弾の嵐が、Azazelを襲った。
 音が止んだのは、土煙が立ち昇り、辺り一帯を包み隠してからだった。

「みたか……! ガガンボだってこれくらいできるだ……!」

 肩を大きく上下させながら、男は叫ぶ。
 敵を屠り、弟たちの仇を取ったと確信していた。

「温い、温いぞ! クハハハ!! 殲禍炎剣でも傷付かんのだ、Azazelは!」

 だが、その声は煙の中から響いてきた。
 ゆっくりと晴れて行く土煙のその中に、Azazelは立っていたのだ。
 ちなみにそんな事実はない。

「くそ……それなら!」

 キャノン砲を切り離し、ガガンボが加速する。
 射撃でダメなら剣で、ということだ。
 ソードを構えて、Azazelの周りを飛ぶ。

「なるほど、大した速度だ。だが────」

 Azazelが、消えた。
 消えたように見えた、というのが正しい。
 ガガンボの速度は、この殲禍炎剣の支配下に置いてはかなりのものだ。
 にも関わらず、Azazelはそれ以上の速度で動いた、飛んだのだ。

「かの世界にて最速を誇った空の王たる我がAzazelほどではないがな!!」

 もちろんそんな事実はない。
 だが、ガガンボよりも速く、ガガンボよりも高く飛ぶAzazelがそこにある。
 殲禍炎剣を恐れぬその飛翔は、まさに悪魔にこそ相応しい所業。

「貴様の操縦技術は十分に優れたものだ。この世界だけの話ならば!!」

 高笑いしながら、真紅の剣でガガンボのフライトユニットを斬りつける天魔。
 脱出したパイロットを掴むと、宣言通り、彼の弟たちが逃げた方へと連れて行くのだった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ノヴァンタ・マルゲリータ
さて、それでは……もう一芝居打つとしましょうか

先の戦闘で撃破したオブシディアンを盾として使用
射撃を防ぎながら砲戦ユニットで反撃し、砲撃と盾の影でフレームを換装
先の戦闘で消耗したように見せかけて後退

弱った相手とはいえ、ガガンボの射撃では決め手に欠ける
それに自分を慕う相手が乗っていた機体を盾にされるというのは、中々怒りを誘うのでは?

「はぁい、姉御さん! 大丈夫、安心して! 貴女の部下三人ならちゃんと無事だよ!」
接敵と同時に盾を投げ捨て、片腕でブレードを受け止め、演技をしながらスピーカーで呼びかけます
一瞬くらいは隙ができるでしょう

その一瞬で、残った片腕でヒートチェーンソーを振るい、溶断です



●Clap Scrap

 オブシディアン数機の残骸と、その中心に立つ正体不明機、スクラッパー。
 言い訳の余地もないほど、ノヴァンタ・マルゲリータ(スクラッパー・f29982)がオブシディアンを撃墜したのだと、ガガンボのパイロットには見えただろう。

「アンタが、アンタがあの子たちをォ!」

 感情的な叫びが、ガガンボの外部スピーカーから飛び出す。
 きっと彼女たちの言っていた姉御とやらだとノヴァンタにもすぐにわかった。

(さてさて、どうしましょうか……)

 上空から、ガガンボが対地砲撃用キャノンを構えているのが見える。
 砲撃用ユニットで迎え撃つが、高速移動が可能な相手に打ち下ろされるのは、明らかに不利だ。
 散発的な射撃の応酬では、お互いに決定打を持たない。
 空へと弾を放ちながら、ノヴァンタは思考を巡らせた。

(彼女の感情を抑える、いや、掻き乱す……)

 スクラッパーを一歩下げさせるノヴァンタ。
 足元のオブシディアンMk4の残骸をアームで持ち上げて、盾のように構えた。

「ッ! アンタ、何してんのよお!」

 まるで火がついたようだった。
 ガガンボのパイロットが、今まで以上に容赦ない砲撃をスクラッパーに浴びせる。
 激しい爆音と土煙、それから鈍い金属音。
 いくらかの砲弾が直撃しているはずだが、スクラッパーは倒れない。
 先ほどの戦いで消耗しているとは思えない耐久力だ。
 砲撃をしている間に残骸の影に隠れて、フレームを対物理に優れた装甲に換装しておいたからだ。

「ああもう、硬いわ!」

 痺れを切らしたガガンボが、高度を落とした。
 左腕に備え付けられた剣を構えて、スクラッパーへ向けて突撃する。

「来ましたね……!」

 高速で接近するガガンボ。
 剣を交わすまであと数秒というところで、ノヴァンタはオブシディアンの残骸をガガンボへと投げ渡した。
 同時に、外部スピーカーをオンにする。

「はぁい、姉御さん! 大丈夫、安心して! 貴女の部下三人ならちゃんと無事だよ!」

 ノヴァンタの言葉で、一瞬動きが止まるガガンボ。
 ノヴァンタには、それだけあれば十分だった。
 ヒートチェーンソーを駆動させ、前へ。
 狙いはオブシディアンの残骸を受け取ったばかりの、ガガンボの腕だ。
 チェーンソーの刃がぶつかる甲高い音と、金属の焼ける匂い。
 スクラッパーがガガンボの隣を通り抜けると、ガガンボの腕が肘から落ちた。

「これまで、ですね」

 勝負は決した。
 ガガンボのコクピットが開き、パイロットが出てくる。
 男勝りな声が聞こえていたとおり、勝ち気な表情な女性だ。

「安全地帯までエスコートしますよ、レディ」

 スクラッパーが膝を付き、彼女へ手を差し伸べる。

「気分がはっきりしないけど……アタシは負けたのね。お願いするよ」

 ガガンボのパイロットがスクラッパーの手に飛び乗ると、ノヴァンタはスクラッパーを走らせるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

南・七七三
◎ひゅーが(f30077)と

空戦機かぁ……フーガは格闘機だし、まずはアタシの頑張りどこかな?
「まま、見てなって!」

キャバリアライフルの制限点射で牽制しつつー、

「はぁい、お兄さん。こんなとこで時間潰してていーの?」
「――待ち合わせなんでしょ、元上司さんとさぁ!」

動揺を誘って、いい感じのタイミングで腰部“パイソン"からブレード突きのワイヤーを射出!
敵機の腕あたりを固定して、無理やり引きずりおろして捕まえちゃうよ!
逃げられないよう格闘用クローをしっかり突き刺して……

「いよっし、ひゅーが、今――えっ。ちょっ、待っ……」

「……あ、危ないでしょぉ! そんなすぐ離せるかぁ!」


風祭・ヒュウガ
ナナミ(f30098)と

高機動型……しかもありゃ、手練れか
おれ達じゃ、ちっとしんどそうだ

「……任せていいんだな?」

ああいう手合いを攪乱して隙を作るのは、確かにブラダー・チェリーの分野だろ
なら、頼らせてもらう

フォトンを発し、機体を明滅させ――威嚇。
やつはフーガに「何ができるか」を知らねぇ……何らかの動きを見せるだけで、警戒せざるを得ない

ナナミが拘束したタイミングで、ブースターを吹かして、突撃する!!

「ナイスだ!! そら、とっとと離しなナナミ!!」

手短に警告を告げて、"ガガンボ"を引っ掴む
零距離から、機能停止までフォトンを叩きつけまくってやる!!!

「だァから、とっとと離せって言ったろうが!!」



●信頼と賭けの行方

 風を切る音が聞こえる。
 風祭・ヒュウガ("フーガ"・f30077)と南・七七三(“鬼灯"・f30098)が上空へ目を向けると、太陽を背に飛ぶ影が見えた。
 この世界ではよく見る飛行能力を持つ量産型キャバリア、ガガンボだ。
 だが、その速度は非凡なもので、パイロットの操縦技術が卓越したものであることが、はっきりと分かった。
 撃破数で競ってそれぞれが単独で戦うには、少し骨が折れる。
 機体同士が視線を交わすと、ブラダー・チェリーが首を縦に振った。

「……任せていいんだな?」

「まま、見てなって!」

 自信ありげに微笑む七七三。
 その声色を感じ取ると、ヒュウガはフーガに拳を握らせて、フォトンに意識を向けた。

 ガガンボは空中で一度宙返りすると、顔を地上の二機へと向けて、急降下を始めた。
 ブラダー・チェリーはそのガガンボに対してライフルを構える。
 フルオートからセミオートに切り替えて、トリガーを引いた。
 ガガンボはひらりと弾丸を避けて、二機の間へ。
 ブラダー・チェリーは横へ飛んで、まっすぐに振り下ろされたガガンボの斬撃を躱した。
 当たらなかったことを確認する前に、ガガンボは再び空へととんぼ返りする。

(1:1になるまでヒット・アンド・アウェイのつもりカナ~?)

 ガガンボは上空で、再び加速している。
 その速度から繰り出される斬撃は、正面から受け止めるには、速く、鋭い。
 となれば、やはり最高速度ではないときに手を加えて動きを止める必要があるだろう。

(まあ、させないケド)

 七七三はコンソールを叩いて外部スピーカーをオンにした。

「はぁい、お兄さん。こんなとこで時間潰してていーの?」

 敵の言うことだ、当然、ガガンボのパイロットは返さない。
 そのひとことだけであれば、だが。

「――待ち合わせなんでしょ、元上司さんとさぁ!」

「なぜそれを知って──ッ」

 ガガンボの速度が、落ちた。
 ペダルを踏む脚が緩んだのだろうか、明らかにパイロットの動揺が見えた。
 シメた、と言わんばかりに唇を舐める七七三。
 ブラダー・チェリーの腰から、ブレード付きのワイヤーが射出される。
 狙いはガガンボの腕部。
 果たして、それは見事に突き刺さった。

「くっ……!? 何か打ち込まれたか……!」

 ガガンボのパイロットの狼狽を他所に、ブラダー・チェリーのブレードはアンカーになる。

「いくよチェリー、綱引きの時間だぁ!」

 ブラダー・チェリーがワイヤーを両手で握りしっかりと腰を落とすと同時に、ワイヤーはピンと張られた。
 高い推力で空を飛ぶガガンボに、ブラダー・チェリーが引き摺られる。
 だが、ガガンボは速度も高度も落とすことになった。

「いよっし、ひゅーが、今――」

 七七三がヒュウガに合図を送ろうとしたその時だ。

「ナイスだ!! そら、とっとと離しなナナミ!!」

「えっ。ちょっ、待っ……」

 フーガは少し助走をつけると、バネのように跳ねる。
 だが、ガガンボまでは少し届かない。

「もう一回!」

 空中で身体を縮めたフーガが、もう一度跳ねる。
 足から出したフォトンの衝撃波で作り出した力場を、足場にしたのだ。

「おう、待たせたな」

 フーガはガガンボの脚を掴むと、機体を大きく揺らし、上へと跳ねてガガンボの背中に取り付いた。

「地面へのダイブに付き合ってもらうぜ!!」

 フーガが拳を振り上げると、ガガンボの背中、機関部目掛けて叩きつける。

「オラ、オラ、オラオラオラオラッ!」

 何度も、何度も叩きつける。
 そのたびにフォトンの起こす力場がガガンボの装甲をひしゃげさせた。

「出力が上がらない……くそっ! 脱出だ!」

 パイロットの悲痛な叫びが聞こえる。
 ガガンボは黒い煙をあげながら、ブラダー・チェリーを中心に周りながら落ちていった。
 ブラダー・チェリーがガガンボの腕に刺したアンカーを外し切る前にだ。

「……ん?」

 ガガンボから繋がったままのワイヤーが、ブラダー・チェリーとフーガに引っかかる。

「……あ、危ないでしょぉ!」

「だァから、とっとと離せって言ったろうが!!」

「そんなすぐ離せるかぁ!」

 ふたりにとって不運だったのは、装置が自動でワイヤーを巻き取り始めたことだろう。
 ワイヤーが装甲と擦れ、食い込み、ぎりぎりと不快な音をたてて二機が近付いていく。

「……げ! そんなことある!?」

「おおおおっ!? なんだこれ!」

 そうして二機がぶつかったところで、ワイヤーは動きを止めた。
 戦場がしんと静まり、近くに敵がいないことがよくわかる。
 コンビネーションにより、ガガンボの撃墜には成功したのだった。

「……あっ、今ので俺のほうが撃墜数多くなったな」

「嘘でしょ!?」

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

片稲禾・りゅうこ

また違うでっかい鉄の塊が動いてる動いてる 何度見てもすごいなあ!
どれ、こっちさんはどんなのかな

おお?随分と素早いじゃないか
剣は──結構重たいな、速さだけじゃないのね
ん?別に足で止めただけじゃないか そんな驚くもん?

でも要するに中に乗る感じの……ラジコンみたいなものでしょ?
え?何が言いたいかってそりゃあ、
────こういうことさ
一瞬遅れるだろ どう頑張ってもさ

や、なかなかいい太刀筋だったぜ



●竜神さまが見守っているから

「また違うでっかい鉄の塊が動いてる動いてる。何度見てもすごいなあ!」

 帽子のつばに手を当てて、片稲禾・りゅうこ(りゅうこさん・f28178)は戦場を見回した。
 翼を持つ5メートルの巨人。
 それが、甲高い音を響かせながら戦場を飛び回っている。
 この世界ではこれが普通なのだというから、驚きだ。

 飛び回るキャバリア、ガガンボの一機がりゅうこを見つけると、白い機体をそちらへと向けた。
 向かってくる、戦いになる、と、りゅうこの直感が告げている。

「どれ、こっちさんはどんなのかな」

 事実ガガンボは、りゅうこを視線に捉えてすぐにまっすぐ向かってきた。
 背中のスラスターから青い炎を吐き出しながら、激しく加速していく。
 一度高度を上げたあと、補助動力炉を起動して、落下しながらさらに速く。
 量産型のキャバリアが出せる速度ではない。
 機体性能というよりも、パイロットの技量によるものが大きいだろう。

「おお? 随分と素早いじゃないか」

 風を切り空を舞うガガンボは、まるで隼だ。
 空は自分のものだといいたげなその様子に、龍は関心して頬を緩ませる。

「戦場に生身で出てくるなんてぇ!」

 りゅうことガガンボの大きさの差が認識できる距離まで来ると、外部スピーカーからガガンボのパイロットの声が響いた。
 間近で見ると、キャバリアは本当に大きい。
 ガガンボの左腕についたブレードは、キャバリア同士で見ればやや心許ないものだが、生身のりゅうこから見れば相当な分厚さだ。
 軽く振るだけで、相当強い風圧が巻き起こるだろう。
 そのブレードを、りゅうこの高さに合わせて横に振った。
 普通の人間に速度を乗せたキャバリアの剣が当たれば、真っ二つどころでは済まない。
 ガガンボのパイロットも、砕けたりゅうこの身体が風圧で飛ばされることを想像していた。
 だが、彼に待っていたのは重いもので柔らかいものを殴ったような鈍い音と、強い衝撃だった。

「剣は──結構重たいな、速さだけじゃないのね」

 ほんの数メートル向こうにいるりゅうこの声が、パイロットにも聞こえる。
 斬り裂いたはずだ。
 吹き飛んだはずだ。
 パイロットが何度も状況を確認する。
 だが、剣に足をかけた状態でモニタに映るりゅうこは、帽子が飛ばされただけで、無傷だった。
 りゅうこがしたのは、ガガンボの剣に合わせて足を出したのみ。
 ただそれだけで、衝撃を全て受け止めた。
 反作用が与える急制動によって、ガガンボのパイロットはコクピット内で激しい慣性を受けることになったのだ。

「んな、生身で──!?」

 ようやく正気に返ったパイロットが、驚嘆の声を上げる。

「ん?別に足で止めただけじゃないか。そんなに驚くもん?」

 空からひらりと舞い降りてきた帽子を掴んで、被り直すりゅうこ。
 機体を一歩引かせて、ガガンボは再び剣を振るう。
 上半身を捻って鋭く、何度も、何度も。
 だがそのたびに、りゅうこは剣を蹴って防ぐ。
 さらに斬撃の隙きに、りゅうこが蹴りを差し込んだ。
 ガガンボのパイロットもエース級というだけの技量があり、人間サイズの蹴りを剣の腹で防ぐ。
 激しい衝突音。
 刀身が鈍く震え、腕部の関節が軋む。

「クソ、人間の力じゃねえ!」

「我、ヒトではないしな」

 パイロットの焦りが、声を通じてりゅうこに伝わる。
 今度は帽子が飛ばないようにと、手で押さえたままのりゅうこにはかなりの余力があるように見えた。 

「ヒトの子はいつも面白いものを作るよな。でも要するに中に乗る感じの……ラジコンみたいなものでしょ?」

「それがどうした! キャバリアの中では薄いとはいえ、人間にどうにかできる装甲じゃないぞ! 」

 剣を高く振りかぶるガガンボ。

「──こういうことさ」

 その間合いの内側へと、りゅうこは飛び込んだ。
 それからりゅうこはガガンボの頭よりも高く跳ぶと、空中でくるりと回る。
 小さな踵を、頭部へ向けてまっすぐに落とした。
 拉げるガガンボの頭部。
 カメラも、センサー類も、一撃で砕ける。
 さらに頭部の破片がガガンボのエンジン部へと突き刺さり、小さな爆炎をあげた。

「なんだってんだ……クソ! 俺ぁ白兵戦には自信があったんだけどなあ!」

 機体が爆発するだろうと察すると、ガガンボのパイロットはすぐに脱出した。
 彼はオブリビオンマシンに洗脳されていただけのパイロットだ。
 追撃する必要はない。

「や、なかなかいい太刀筋だったぜ。これからも研鑽しておくれよ、ヒトの子」

 叫びながらコクピットから射出されるパイロットを見送って、りゅうこは微笑んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

テラ・ウィンディア
空中戦か!
おれは得意だぞ!
ヘカテもそうだよな!

ガガンボについてと乗り手の技能は武勇伝とかしっかりと確認しておくぞ!
敵を知り己を知ればって奴だな!

UC即起動
【戦闘知識】
機体の構造と動きからどういう戦い方をするか冷徹に観察

【属性攻撃】
炎を全身と武器に付与

【空中戦】で更に機動力を上げ

【見切り・第六感・残像・盾受け】
飛び回りながら激しいドッグファイトを展開
被弾が免れない時は盾で防御

ガンドライド展開し【遊撃・レーザー射撃】で牽制


あんたらすげーな
確かに空の覇者って奴だな
だからこそ
挑んでやるともっ!

【早業・二回攻撃・重量攻撃】で近接戦を挑むぞ
重力を纏った刃で手足を切断
コックピットはきっちり避けるからな!



●流星雨

「なんの音だ……?」

 風を切る音を聞いたテラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)が空を見上げると、一機のキャバリアが空を飛んでいた。
 一度宙返りをすると、真っ直ぐにヘカテイアへ向かってくる。

「ガガンボか! 空中戦が得意なやつだな!」

 この機体の情報は頭に入っている。
 飛行能力を持つ量産型のキャバリアだ。
 ヘカテイアが背負う光輪が輝くと、地上から弾かれるように空へと飛び出した。

「そいつも飛べるのか!」

 ガガンボのパイロットの驚嘆の声が、外部スピーカーを通して聞こえる。
 ガガンボは飛行能力を有するキャバリアだか、その能力は決して十分なものとは言えない。
 ホーリーグレイル
 殲禍炎剣によって高速飛翔を禁止されているこのクロムキャバリアで、空を飛べるキャバリアに大きな価値を見出せる者など、そう多くはない。
 高い技術で不足する飛行能力を補い、地上のキャバリアを一方的に攻撃する。
 ガガンボ部隊の常套手段だった。
 今、それが通用しない敵が目の前にいる。

「空中戦は俺もヘカテも得意だぞっ!」

 ガガンボよりも高い高度まで、ヘカテイアが昇る。
 彼にとって、敵を見上げるなど初めてのことだったのだろう。

「飛べるくらいでェ!!」

 ムキになって、ガガンボはヘカテイアよりも高く飛んだ。
 高所を確保できると、いつものようにライフルで射撃を浴びせる。
 普段なら、これで十分なのだ。

「それくらい俺にだって躱せるぞ!」

 だがテラはその言葉通り、ヘカテイアでその弾丸を難なく躱して見せた。
 お返しだと言わんばかりに、テラは自律砲台、ガンドライドを起動。
 ガンドライドはガガンボを包囲すると、空中での三方位射撃を仕掛ける。

「埒があかんな!」

 その射撃の隙間を縫って、ガガンボが加速していく。
 速く、更に速く。
 左手のブレードに、光が灯った。

「やるつもりか! 挑んでやるともっ!」

 ガガンボが格闘戦を挑もうとしていると分かると、テラはすぐにヘカテイアに剣を握らせた。
 炎を纏い、星の力を宿した剣だ。
 光輪が一層強く輝き、ヘカテイアはガガンボに合わせて飛び始めた。

「いくぞっ」

 ヘカテイアが剣を振ると、ガガンボがそれを剣で受ける。
 ガガンボが剣で突けば、ヘカテイアはそれを剣で弾く。
 高速で飛翔しながら行われる剣戟。
 幾合打ち合った頃だろうか、チリチリと焼けるような、嫌な予感がテラの胸の奥に訪れた。
 目の前のキャバリアからではない、上、それも、遥か遠くから。
 二機が同時に後ろへ飛ぶと、その間へ閃光のような砲撃が行われた。
 ホーリーグレイル
「殲禍炎剣か!」

 戦闘に集中しすぎたのか、二機は高速飛翔体だと認識されたのだ。
 ガガンボはこの砲撃を避けるために、大きくバランスを崩していた。
 その隙を見逃すテラではない。

「グランディアよ!」

 後ろに飛んですぐ、バネで弾かれたようにガガンボはと肉薄し、剣を二度振るった。
 その刃が、ガガンボの両腕と翼を切り落とす。

「くっ……!」

 飛行能力を失った機体が、落ちていく。

「あんた、すごい技術だったな!」

 コクピットからパイロットが脱出したのを確認すると、残ったガガンボへとガンダライドで砲撃を加える。
 パイロットを洗脳するオブリビオンマシンは、爆発して四散した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

荒珠・檬果
オレンジライト・スピードキャバリア(O.L.S.C.)での出撃を続けまして。
そういえば、兄貴も来ているって言ってましたね、あの方。目の前のがそうでしょうか。
私の機体、目立ちますしね…。

そう、ならば助けるためにもスピード勝負!
基本は紅紋薙刀でのヒット&アウェイ。
攻撃に当たらないように念動力も使い回避しつつ、こちらは【兵貴神速】で押し込みましょう!

万が一のことを考えて、残りの七色竜珠もO.L.S.C.の周りに配置。
いつでもビーム撃てるようにしておきましょう。
もちろん、コクピットは狙いから外しますよ。

あなたと縁ある方。弟さんでしょうか。
その方は、仲間と一緒にあちらへ避難しましたよ。



●スピードスター vs スピードスター

 荒珠・檬果(アーケードに突っ伏す鳥・f02802)の駆るO.L.S.C.が、戦場を飛ぶ。
 オブシディアンの部隊との戦いは、どうやら概ね収束したようだ。

「と、なると……」

 檬果は、空を見上げる。
 耳へと飛び込んでくる、鋭く風を切る音。
 先程戦ったオブシディアンとは一線を画するスピードの機体を見つけた。
 飛行能力を持つ量産型キャバリア、ガガンボだ。
 ガガンボは空からもよく見えるであろうオレンジ色の機体目掛けて、真っ直ぐに向かって来ていた。

(なるほど、あれが例の兄貴さんですね)

 そうと分かれば、檬果の動きは早い。
 目立つ橙色の機体は、光のような速度で跳んだ。

「先手必勝です!」

 ガガンボの横を通り過ぎるようにして、紅紋薙刀で斬りつける。
 甲高い金属音。
 ガガンボのパイロットは器用に機体を回して、その一撃を防いだのだ。

「オレンジ色の……弟たちをやったやつか!」

 友軍機に聞いたのか、彼の弟たちの部隊を撃墜したのが檬果であることは、すでに知っているようだった。
 ガガンボのパイロットがペダルを踏み込むと、強烈な加速でガガンボはO.L.S.C.を追う。
 補助動力炉を起動したガガンボは、速い。
 スピード自慢のO.L.S.C.に劣らない速度で空を駆けるのだ。

「この速さ……! 弟さんたちが自慢するわけですね!」

 高速で飛ぶガガンボがライフルを構えて、O.L.S.C.へ向けてトリガーを引く。
 O.L.S.C.はそれを躱して反転、すれ違いざまに再び薙刀を振った。
 ガガンボは翼のスラスターを片側だけ吹かせて、バレルロールのようにしてそれを躱して見せる。

「オイオイオイ! 俺の弟たちをやったんだろ? そんなもんかァ!?」

 興奮したガガンボのパイロットが、檬果へと叫んだ。
 荒っぽい口調とは対照的に、几帳面で小刻みな機体制御によって小さな隙も作らない操縦技術。
 それに加えて、変則挙動によるGで身体にどれほど負担が掛かろうと自分を倒す覚悟があるのだろうと、檬果は感じた。

「やはり、あなたが……」

 ガガンボのパイロットから感じる気迫は、只事ではない。
 檬果が彼らを殺したのだと思っているのが、檬果にも伝わた。

「あなた、オブシディアンに乗っていた弟さんたちがいますよね! その方なら、あちらへ避難しましたよ!」

「見え透いた嘘をォ!」

 聞く耳持たない、といった様子で、ガガンボは苛烈に攻め立てる。
 近付けば剣で、離れればライフルで。
 一度態勢を立て直そうと離れても、どこまでもO.L.S.C.を追いかけてくる。

「くっ、本当です! 機体を降りたあとに弟さんたちは言ってましたよ! 私ならスピードで兄貴さんといい勝負かもしれないと! 兄を誇る弟さんたちの元へ、早く行ってあげてください!」

 檬果の言葉に嘘はない。
 真摯に言葉を投げかける。
 互いの顔が見えなくても、声だけでその真剣さは伝わっただろう。

「マジ……なのか?」

 ブレードを構えていた腕が下がり、ガガンボの動きが緩慢になった。
 戦意を削がれたのだろう。

「ええ! ですから、あなたもその機体を落として洗脳から解いてあげますよ」

 O.L.S.C.がその隙に、スピードを活かして肉薄する。
 相手が抵抗しないならば、余計な技は要らない。

「……さんきゅ」

 O.L.S.C.の薙刀がガガンボの頭部に突き刺さる。
 脱出装置が働いたのか、パイロットはすぐに射出された。
 パラシュートでゆっくりと降りていくガガンボのパイロット。
 戦闘中のキレた言動からは想像できないほど穏やかな顔だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ホワイト・キャスター

さっきの奴らより軽いし脆そうだが…速いしパイロットの腕は良さそうだな。
さてどうしたものかな…

此処は1つ覚悟の勝負といこうか
ガトリングの弾幕を張って牽制、あの速度では当たらないだろうが……あんな速度いつまでもパイロットが耐えられるとは思えねぇ

あの銃口じゃブルーフォッグに決定打を与えられないだろうし
痺れを切らしてくるタイミングで弾幕に隙間を作って誘導
速度を出して突っ込んできたところをアーマーパージで速度を増した剣で叩き潰す
タイミングを間違えれば気付かれて避けられる覚悟を決めてギリギリまで引き付けるさ

さっきの奴の娘って話だし腕輪良くても経験はまだ浅いだろう…

来いよ。アタシを倒せたら父越え達成だ



●技量と経験

 白い尾を引いて、空を駆けるキャバリアが見える。
 関節は細く、装甲は薄いが、背中の翼付きのブースターが特徴的だ。

「さっきの奴らより軽いし脆そうだが……」

 ホワイト・キャスター(バイク乗りの掃除屋・f24702)がそれを見上げて呟く。
 青い瞳に映る機影は、かなりの速度だ。
 ガガンボ本来の飛行性能はそれほどではないはずだが、それでもあの速度が出せることからパイロットの技量の高さが伺えた。

(さてどうしたものかな……)

 空戦仕様のガガンボには、先ほどのオブシディアンMk4ほど煙幕は有効ではないだろう。
 手持ちのガトリングも、敵が速すぎて期待できない。
 なんて考えている間にも、ガガンボはブルーフォッグの射程圏内まで迫ってきていた。
 少し離れたところにあるオブシディアンの残骸が、ガガンボのモニタに映る。

「父さんの機体反応がラストしたところから来た機体……まさか、アンタが!」

 外部スピーカーから聞こえたのは、若い女の声だ。
 十五、六だろうか。

「なるほど、アンタがあいつの娘か。そちらから来てくれるとは都合が良いな」

 頼まれていたことだし、と付け足し、ブルーフォッグはガトリングを構えた。
 シリンダーが回転を始めると、高速で射出されていく弾丸。
 ガガンボはサイドブーストで踊るように躱して、空へ逃れた。
 スラスターが青い炎をあげて空を舞うガガンボ。
 右かと思えば、次の瞬間には左へ。
 ブルーフォッグのガトリングがその後を追うように放たれるが、追いつけない。
 ガガンボの速度が、尋常ではないのだ。

「流石にやる……!」

 反撃と言わんばかりに、ガガンボがライフルをブルーフォッグへ向けてトリガーを引く。
 パパパパ、と乾いた音と共に放たれた弾丸が、ブルーフォッグの鈍色の装甲で弾けて火花を立てる。
 大きなダメージは、認められない。

「思ったより硬いわね……!」

 ガガンボのパイロットは、奥歯を噛みしめる。
 互いに決定打を持たず、このまま銃撃戦を続けていては、戦闘が長引くだろう。
 だが、ガガンボの補助動力炉による爆発的加速と急制動。
 慣性を無視したような挙動は、相対する者に実際以上の速度を見せる。
 ホワイトには、ガガンボの動きをカメラで追うことも一苦労だが──。

(こんな挙動……パイロットはいつまで保つだろうか)

 補助動力炉を起動したガガンボを操る操縦技術は大したものだが、そのパイロットにかかるGは相当なものになるだろうと、簡単に推測できた。
 長くは、続かない。

「此処は1つ覚悟の勝負といこうか」

 弾丸をばらまきながら、ホワイトはガガンボのパイロットへ外部スピーカーで声をかける。

「逃げてばかりか? ずいぶん娘を自慢していたけど、あのパイロットもただの親バカだったってことかな」

「ハッ、一発も当てられずに言うじゃないの」

 ふたりの間に沈黙が流れる。
 戦いの中で時が止まったような、重い沈黙だ。
 それから、先に動いたのはブルーフォッグだった。
 ふたたびガトリングを構えて、ガガンボへと弾幕を張る。

「来いよ。アタシを倒せたら父越え達成だ」

「ぬかせぇぇぇ!」

 高度を下げ、地面ギリギリを飛ぶガガンボ。
 ブルーフォッグの弾幕を、紙一重で交わしながら少しずつ距離を詰めて来る。
 ガガンボはライフルを捨てて、ブレードを胸の前に構えた。

(────来たか)

 ホワイトが待っていたのは、ガガンボが痺れを切らせて近接戦闘を仕掛けてくることだった。
 ガトリングを下げて、振り上げるのは質量剣。
 互いに、一撃で決めるつもりの構えだ。

「これで穿けぇぇぇ!」

 ガガンボのブレードが偽演粒子を纏って輝く。
 直撃すれば、豆鉄砲ではびくともしないブルーフォッグの装甲でもただでは済まないだろう。
 加えて、ガガンボのスピードは速い。
 補助動力炉も臨界稼働し、限界速度でまっすぐに。
 対してブルーフォッグは、上段に構えた質量剣を、ブルーフォッグを叩き潰すように振り下ろしているところだった。

「こっちのほうが速い――――!」

 あと数瞬もすれば、ブルーフォッグに刃を突き立てることができる。
 ガガンボのパイロットは、勝利を確信しただろう。
 だが、そうはならなかった。
 刃がブルーフォッグへ届く直前に、ガガンボを強い衝撃が襲った。
 大質量が上からぶつかり、ガガンボは地面へ激突したのだ。
 背中に打撃とも言うべき分厚い斬撃を受けて、ガガンボの装甲が拉げて、関節が砕ける。

「な、なにが……!」

 激しいスパークが機体を焼くなかで、ガガンボのパイロットがカメラを先程までいた場所へ向けた。
 彼女の予測では、ブルーフォッグが剣を振り下ろすよりも速く穿けるハズだった。
 にも関わらず、それは為された。

(どうして────)

 その理由は、ブルーフォッグを見ればすぐに分かった。
 ブルーフォッグの肩周りの装甲が、無い。
 関節を剥き出しにしてまで得たものは、速度だった。
 それが、ガガンボのパイロットの目測を誤らせたのだ。
 機体が破壊され、脱出したガガンボのパイロットを見て、ホワイトは微笑む。

「悪くない腕前だった。アンタ、ちょいと経験を積めば、きっと良いキャバリア乗りになるよ」

 ブルーフォッグは振り下ろしていた剣を肩に背負い、次の戦場へ向かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セフィリカ・ランブレイ
繋いでくれた腕も良く動く
あの環境での修理って、手慣れてるね
家族もいるって
一人一人に培ってきた経験と関係があるって、改めて認識する
それが集まって、戦争をする。……それは、止めないと
ここもだし、うちの国のも、いつかは

『ま、今はセリカにできることをしなさい』
シェル姉の声も、少しだけ優しい

…凄い速さのが来る!エース!?
この腕は奪ったんじゃない、託されたんだよ!

絶対に元に戻して、夫婦仲良くして貰わなきゃ!
しかし巧い!機動性を生かしきってる!この子の脚周りだと追うのがやっと…!

接近戦に誘い込むしか
多少貰おう。火器で姿勢が崩れたように見えれば、決めに来る筈

【夕凪神無-柳布式】
交差の瞬間、カウンター狙いで!



●国を預かる者として

 搭乗していたオブシディアンMk4の腕は、先程まで戦っていた機体のものに。
 肩にはワシのシンボルが堂々と翼を広げていた。
 動きを確かめるように、指先から肩まで機体の関節を動かしていく。
 応急処置とは思えないほど、滑らかなものだ。

「よし、良く動く」

 同じ規格の機体とはいえ、戦場でこれほどの精度でパーツ換装と修理を行えるとは大した逞しさだと、セフィリカ・ランブレイ(蒼剣姫・f00633)は関心した。
 おそらく日頃からパイロット自身が戦場で修理や調整を行っていたのだろう。
 培われてきた技術と経験は、なにものにも代え難い。

「セリカ、今度は壊さないようにね」

「わ、わかってるよシェル姉……」

 魔剣シェルファがセフィリカを嗜めるのも無理はない。
 先程はセフィリカの剣技に機体の関節が耐えられず、シャフトがぽっきりと折れてしまったのだ。
 代わりの腕をくれた、先程戦ったオブシディアン部隊の隊長を思い出す。
 敵のパイロットではあるが、家族がいるというのだ。
 国とは、人の営みの集合体。
 いずれは互いを喰らい合い、いずれは片方を亡くしてしまう。
 それが戦争だ。

「……止めないと。ここもだし、うちの国のも、いつかは」

 セフィリカのつぶやきが戦場の空気に溶けていく。

「ま、今はセリカにできることをしなさい」

 そんなセフィリカに、シェルファがいつもより少しだけ優しく声をかけた。
 空から甲高い風切り音が聞こえたのは、それからだ。
 気付いたセフィリカがカメラを天へ向ける。
 モニタに映るのは飛行能力を持つ量産型キャバリア、ガガンボだ。
 翼が風を切り、白い帯のようになって尾を引いている。
 フォロス共和国のキャバリアであることは、すぐわかった。
 ガガンボは獲物を探すように上空をくるりと回ると、その頭部を、セフィリカの乗るオブシディアンへと向ける。
 落下とブースト噴射によって、爆発的な加速をしながらだ。

「……凄い速さのが来る! エース!?」

「アンタァァァ! それは、その腕はあの人のモンだろォォォ! 返せよォォォ!」

 外部スピーカーから響くガガンボのパイロットの声は、鬼気迫るものだ。
 声と内容から、先程の部隊の隊長の"嫁さん"とやらなのだろうと、すぐに分かった。
 尋常ではない速度で落ちながら、ガガンボの背負った空対地キャノンが火を吹く。

「まともに話を聞く気は無さそうね、セリカ!」

「わかってるけど!」

 オブシディアンのエンジン出力を上げて、セフィリカはそれを躱す。
 砲弾が地面を割って、大きな土煙が上がった。
 威圧感はあるが、発射時点では距離があったせいか、精度自体は大したものではない。
 問題は、砲撃に合わせてガガンボ自身がオブシディアンの間近まで肉薄していたことだ。

「人の旦那から腕ェ奪うたあ太えやつ!」

 機体の視線が交差する。
 ガガンボは着地と同時に、地面をバネのように使って、今度は水平に飛ぶ。
 手の届く距離にいたのは、ほんの一瞬だ。

「この腕は奪ったんじゃない、託されたんだよ!」

 離れていったガガンボへ向けて、セフィリカが咆える。
 もらった腕と、ライフル、それに弾丸。
 それを最大限使って、ガガンボへ射撃を仕掛けた。
 だが、ガガンボの動きは早い。
 まるで地面を滑るかのように、地表すれすれを飛び回る。
 オブシディアンの放つ弾丸は、まるで当たる気配もなかった。
 ガガンボの方はというと、オブシディアンが射撃で足を止めた隙きを着いて、キャノンで砲撃を加えてくる。
 セフィリカは機体をブースト跳躍させて砲撃を躱しながら、ガガンボの動きに合わせようとした。

(巧い……!)

 合わせようとすれば、技量がわかる。
 確かにオブシディアンはそれほど敏捷性が高いわけではないが、機体性能の差だけではない。
 ブースター、バーニア、キャノンの反動、それから重心移動。
 ガガンボのパイロットは機体の機動性を活かしきっている。

(この子の足周りだと追うのがやっと……!)

 セフィリカのオブシディアンは、ガガンボよりも小さく周りながらライフルで牽制をするが、やはり当てられる気がしない。
 狙うなら……やはり接近戦だ。

「大丈夫よセリカ。さっきより機体の動きが良いみたい。これなら少しくらい剣技を使っても壊れないわ」

「ふふっ、戦場の絆様々だね!」

 セフィリカは口角を上げるが、ガガンボは近づいてくる気配がない。
 誘い出さねば、その剣技を披露する隙きもなさそうだ。

(仕方ない……多少貰おう)

 ガガンボの砲撃の余波を、故意に足に受ける。

「きゃっ……!」

 爆発で機体が大きく揺れ、セフィリアの悲鳴が小さく漏れた。
 覚悟をしていても、被弾すれば驚きはするものだ。
 直撃を避けたため足は無事だが、膝を着いて見せる。

「その腕、返してもらうよォ!」

 それを好機と見たガガンボのパイロットは、左腕部の装甲斬撃剣を取り出した。
 8の字を描くようにぐるりと舞い加速したガガンボは、セフィリカのオブシディアンへと真っ直ぐに飛び込んで来る。

(来た、来た……!)

 ガガンボが、近づいてくる。
 セフィリカの集中力が高まり、ガガンボの速度とは反対に世界は次第に遅くなっていく。
 だが、オブシディアンは剣を構えない。
 まるで機体の関節が弛緩したかのように、腕を下げたままだ。
 対して、ガガンボは斬撃剣を突き出すように構えている。

(なるほど、刺突。速さを活かすなら尤もだね)

 時間にして、何秒だっただろうか。
 ガガンボの刃は、オブシディアンの肩に触れた。
 その刃に押されたかのようにオブシディアンが、その場でくるりと回る。
 通り過ぎていくガガンボ。
 数秒だけまっすぐに飛んだあと、ガガンボの頭部が跳ね跳び、機体は地面へと墜落した。

「な、何が……!」

 ガガンボの刃はオブシディアンには届いていなかった。
 寸のところで刺突を躱して、伝わった運動エネルギーだけをそのまま反撃に使ったのだ。
 相手の速度を利用してすれ違いざまに首を刎ねるなど、早々できるものではない。

「旦那さんたちが逃げたのはあっちだよ! 旦那さんと仲良くね!」

 コクピットのハッチを開けて、パイロットたちが逃げた方向を指すセフィリカ。
 戦場の風が頬を撫でた。
 終わりのときが、近い。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『セラフィム・リッパー』

POW   :    断罪の剣
【無敵斬艦刀】が命中した対象を切断する。
SPD   :    エンジェルビット
自身が装備する【BS-Fクリスタルビット】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    フォールンウイング
【光の翼】を向けた対象に、【プラズマビーム】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●傲慢なる断罪者の出陣

「役立たずの兵共よ……ならば、私が行かねばならんな!」

 丘の上に立つフォロス共和国の将兵が、専用のキャバリアに乗り込む。

 細身の人型に、天使の輪と光の翼。
 あらゆる点で優れた性能を持つキャバリア、セラフィム・リッパーだ。
 クリスタルビットが飛び交い、翼から迸る光の粒子が舞う。

「断罪の刻だ、トラペザの民とその協力者よ! 我が剣にて貴様らに罰を与える!」

 オブシディアンMk4とガガンボの進行を退けた猟兵たちの前に、天使の名を冠するオブリビオンマシンが降り立った。
夢幻・天魔
【厨二ならご自由に】

セラフィム……熾天使か
フッ、やはり我がAzazelとは相容れんようだ
ククク……絶望を見せてやるとしよう

最強の悪魔達よ……平行世界より此処へ降臨せよ!
(時空超越夢幻転生陣で天魔の分身を召喚)
ククク……平行世界の俺(※ただの分身)も、それぞれが悪魔の名を冠する強力なキャバリアを持っている
(厨二設定として『主人公かラスボス的なキャバリアのパイロット』の設定を付与。分身達はそれぞれのキャバリアを呼び出して搭乗する)

悪魔の軍勢の前に、蹂躙されるがいい!!

(と言いつつ、分身はそこまで強くないので
囮とか盾、目眩ましに使い潰して、こっそり近寄った本体が斬撃で攻撃する)



●ゴエティアの蹂躙跋扈
「さあ、断罪の始まりだ!」

 パイロットが高らかに宣言すると共に、宙を舞うセラフィム・リッパーは手を振るい、光の翼を広げた。
 名の表す通り、その姿はまさに熾天使である。
 つまり、悪魔とは相対する存在であり────。

「フッ、やはり我がAzazelとは相容れんようだ。ククク……絶望を見せてやるとしよう」

 そう言って片目を隠すように手を掲げて笑うのは、夢幻・天魔(千の設定を持つ男・f00720)だ。
 天魔の発する力の高まりによって、真紅の髪が大きく揺れる。

「最強の悪魔達よ……平行世界より此処へ降臨せよ!」

 荒野に暗い落雷。
 同時に、闇から現れたのは天魔の分身たちだ。
 その数も十や二十どころではない。
 黒い外套と赤い髪を風に揺らして、70を超える天魔がセラフィム・リッパーの前に現れたのだ。
 分身たちの後ろには、それぞれ別々の機体が立っている。

「恐れ慄け、億を超える軍団を統べる第一の悪魔Bael、あらゆる尊厳を蹂躙する第二の悪魔Agares、時を操り地獄の君主たる第三の悪魔Vassago……」

 一機ずつ、機体を紹介を紹介していく天魔。
 そのたびに、機体のアイカメラに光が宿る。
 70を超える機体が、一機ずつだ。
 全てを紹介すれば相当な時間が掛かる。
 その間、セラフィム・リッパーは腕を組んで待っていた。

「そしてこのAzazel……悪魔の軍勢の前に、蹂躙されるが良い!」

 天魔の声と共に、悪魔たちはセラフィム・リッパーへと襲いかかった。
 地を駆け、空を跳び、天使を堕とさんとして。

「ハッ、どれだけ数を増やそうとも!」

 光の翼から放たれるプラズマビームが、天魔の分身たちへ次々に放たれる。
 容赦なく悪魔たちを貫く光線。
 一瞬で数機が脱落し、代わりに次の機体が前に出る。
 人海戦術だ。
 だが、セラフィム・リッパーのパイロットが気付いた。

(……弱い?)

 セラフィム・リッパーの性能はたしかに高い。
 プラズマビームの威力も大したものだが、それでも一撃でワンオフのキャバリアを戦闘不能たらしめるものではない。
 ここまで戦い抜いてきたキャバリアにしては、やけに弱いのだ。
 それでも迫ってくるのなら、迎撃しなければならないのが戦いである。
 悪魔たちをビームで撃ち落とすうちに、彼は気付いた。

(本体が……居ない?)

 天魔たちの乗る悪魔は、皆違う機体だ。
 異なる方向に特徴的な機体たちを見間違うはずもない。
 セラフィム・リッパーのパイロットが迎撃を続けながら周囲を調べようとサブモニタに目を向けたその時だった。
 背中から、強烈な衝撃が叩きつけられた。

「なにッ……!?」

 翼ごとその背に叩きつけられていたのは、超越魔剣『ネガ・フォース』だ。
 並の装甲であれば、これで両断されていただろう。

「小癪な真似を……!」

 地に落とされ、膝をついたセラフィム・リッパーが、Azazelを見上げる。

「愚か者めが! 目に見えるものに騙されるなど、ククク……やはりこの俺の敵ではないな」

 天魔の高笑いが戦場に響くのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

テラ・ウィンディア
天使だとー!
だったらヘカテイアは女神なんだぞ!!(…何か照れる気配を放つ機神

なぁヘカテ
セラフィムリッパーって凄い優秀な機体らしいぞ
お前はそいつに負けるのか?
(否!否否否!!という気配
よし!それでこそおれの相棒だ!
そしておれも負けたりしないからな!

【戦闘知識】
動きの癖をヘカテと共に分析

【見切り・第六感・残像・空中戦・盾受け】
敵の攻撃は可能な限り回避を試みて避け切れないのは盾で受け止め致命は避ける

UC発動
ヘカテ!三界を制するその力を見せてみろ!
超高速で飛び回りながらガンドライドで【レーザー射撃・遊撃】て敵のビットを迎撃
【二回攻撃】で斬撃猛攻!
止めはブラックホールキャノン
【重量攻撃】で威力強化だ!



●フルドライブ!
 光の粒子を迸らせ、神々しく空を舞うセラフィム・リッパー。
 後に、神威を見たと言うものもいるだろうその姿は、正しく天の使いのようであった。
 戦場に現れた敵の首魁を見上げて、テラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)は語りかける。

「なぁヘカテ」

 女神の名を冠するテラの愛機、ヘカテイア。
 重力を操る謎の神機。

「あれはかなり優秀な機体らしいぞ。お前はあいつに負けるのか?」

 テラの問いに否と答えるように、ヘカテイアのアイカメラに力強い光が宿る。
 機体の背中に背負った光輪も、一層強く輝いた。

「よし! それでこそおれの相棒だ! そしておれも……」

 ヘカテイアに乗るテラも、気迫は十分だ。
 たとえ誰が相手であろうと──。

「──負けたらしないからな!」

 テラの宣言と共に、ヘカテイアの光輪から放たれた斥力が、機体をセラフィム・リッパーへと打ち出した。

「クハハハッ! 死にたがりめ!」

 セラフィム・リッパーが、ヘカテイアへと手を向ける。
 空中に展開されたのは、百を超えるエンジェルビットだ。
 ひとつひとつが意思を持ったように飛び回り、統一されたように射撃する。

「躱すぞヘカテっ!」

 テラの声に応えるように、ヘカテイアは方向を変えて射撃を躱した。
 その軌跡を追って、エンジェルビットが飛ぶ。

「逃げても無駄だ!」

 超高速でエンジェルビットと距離を取ろうとするヘカテイアを、彼らは逃がさない。
 距離を保ったまま追いかけ、射撃し、また追いかける。

「流石にやるなっ! だけど!」

 ヘカテイアから射出されるガンドライド。
 本体であるヘカテイアを追いかけるエンジェルビットを追いかけて、ひとつひとつを撃ち落としていく。
 空をぐるりと回る頃には、ヘカテイアを追尾するエンジェルビットの数が、いくらか減っていた。

「これなら!」

 戦いながら十分に躱せる量になったところで、ヘカテイアは星刃剣を手に、一気に肉薄した。
 それを見たセラフィム・リッパーもまた、斬艦刀を構える。

「近接戦闘なら勝ち目があると思ったか!」

 セラフィム・リッパーのパイロットが不敵に笑い、ヘカテイアの斬撃を剣で受けた。

「こいつっ、速いっ!」

 リアクターを臨界運転させたヘカテイアは人智を超えた速度を待つが、セラフィム・リッパーもそれに劣らない。
 ヘカテイアが繰り出す剣戟を、容易く弾いていく。

「その程度ならぁ!」

 競り勝てる、そう感じたセラフィム・リッパーのパイロットの笑みが、テラにも伝わった。
 剣が大振りになったのだ。
 斬り合う間も敵をしっかりと観察していたテラが、それを見逃すはずもない。

「やるぞヘカテっ!」

 星刃剣を両手で握り、速度が乗る前の斬艦刀を思い切り弾き上げる。
 ヘカテイアの臨界出力で片手ごと武器を弾かれたセラフィム・リッパーの胴体は、ガラ空きだ。

「ブラックホールキャノン起動! とっておきだ! たっぷり味わえー!」

 セラフィム・リッパーに至近距離から打ち込まれたマイクロブラックホール砲。
 残った片手で受け止めようとしたが、それで受け切れる出力ではない。

「く、おおおぉぉぉ!」

 重力の弾丸をその機体に受けて、セラフィム・リッパーの装甲がひしゃげていく。
 リアクターが限界を迎えたヘカテイアが着地する頃には、弾丸は縮退を終えて、セラフィム・リッパーはあちこちから煙をあげているところだった。

「見たか、ヘカテの力!」

 それを見上げて、テラは自慢げに笑った。

成功 🔵​🔵​🔴​

荒珠・檬果
引き続き『オレンジライトスピードキャバリア(O.L.S.C.)』搭乗。

んー、熾天使の名を持ちながらのオブリビオンとは。
しかし、あの将校さんも被害者ですし。助けますよー!

BS-Fクリスタルビットの破壊を優先し、他の猟兵さんたちが戦いやすいようにしましょう。
手数がいるので、カモン【バトルキャラクターズ】!今回はロボです、ロボ。
クロムキャバリアにはロボでしょう。サイズもちょうどいい感じになりました。

…戦いが続くのは辛いものです。ですが、オブリビオンが関わっている以上、見捨ててはおけないんですよ。



●カモン、バトルキャラクターズ!

「んー、熾天使の名を持ちながらのオブリビオンとは」

 荒珠・檬果(アーケードに突っ伏す鳥・f02802)が見上げる空には、無数のクリスタルビットを従え、光の翼を広げたセラフィム・リッパー。
 その姿はたしかに天使のようにも見えるが、世界を滅亡に導き、人類を脅かすオブリビオンマシンであることには違いない。
 倒すべき敵だ。
 一方で、その力が猟兵たちに劣らないほど強大であることも、見て取れた。
 他の猟兵たちも、セラフィム・リッパーが縦横無尽に操る無数のクリスタルビットに、苦戦しているように見える。

(やはり、自立砲台は厄介ですね……)

 逆にいえば、ビットさえなければ猟兵全員が格段に戦いやすくなるはずだ。
 ならば────。

「あのビット、破壊します!」

 強い相手を倒すために大切なのは、武器を封じること。
 セラフィム・リッパー自体への攻撃は他の猟兵に任せてもかまわないのだ。

「さあいきますよ、カモン、バトルキャラクターズ!」

 O.L.S.Cが紅い薙刀を払うように振ると、周囲に光の陣が現れた。
 その魔法陣から上へ上へと、次々にポリゴンが貼り付けられるようにして、形が作られていく。
 そうして現れたのは、無数のコミカルなロボットたちだ。
 ひとつひとつが、キャバリアと戦えるほどの大きさを持っている。

「ただ数が増えたところでぇ!」

 対して、セラフィム・リッパーはクリスタルビットを展開。
 即座に檬果たちへの攻撃を開始した。
 空に幾何学模様を描くように舞うビット。
 その先端にエネルギーを溜めると、檬果たちへと射撃する。

「狙ってくるならこちらとしても都合がいいです!」

 O.L.S.C.は薙刀でビームを弾き、大きく踏み込んで眼前のビットを叩き落とした。
 自立砲台は多くの相手に同時に攻撃ができるのがメリットだが、檬果たちのように多くの相手に向けて攻撃すれば、ひとりあたりにかかる圧力は小さなものになる。
 単発の攻撃など、対処は容易だ。
 O.L.S.C.に続いて、バトルキャラクターズたちもクリスタルビットに攻撃を加えていく。

「くっ、面倒な……!」

 思うように攻撃できずに、葉を噛み締めるセラフィム・リッパーのパイロット。

「断罪者の手を煩わせたこと、後悔するがいい!」

 セラフィム・リッパーが手を掲げると、いままでの数倍のクリスタルビットが現れた。
 天を囲うクリスタルビットが、バトルキャラクターズたちへ向けて一斉に射撃する。
 流石にこれは捌ききれなかったのか、被弾するものが現れた。
 数が減れば、今度は一機に掛かる負担が増える。
 檬果の視界に映るクリスタルビットの数も、次第に増えていった。
 だが、ビームを弾きながら視界の端で戦場を見渡すと、たしかに「道」ができていた。
 クリスタルビットの間を抜けて、セラフィム・リッパーへと続く道だ。

「いまのうちに!」

「ありがとう、助かる!」

 キャバリアを駆る猟兵たちは檬果に礼を言うと、O.L.S.C.の横を通り抜けていった。
 仲間のスラスターから吹き出る炎を見送りながら、またひとつビットを破壊する檬果。

「あの将校さんも被害者ですし、これはオブリビオンが起こした事件です。見捨ててはおけないんですよ!」

 強い意志の光が、檬果の瞳に宿っている。
 たとえ相手が強大であろうとも、檬果の心が挫けることはないだろう。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ノヴァンタ・マルゲリータ
やれやれ、ようやく大将のお出ましですね
今まで以上に厄介そうですが……生憎とまともにやり合うつもりはないですよ

あちらがやってくる前にスクラッパーを自動操縦に変更
キャバリアから降りて、周囲の残骸の影に身を潜めます
スクラッパーの【砲撃】にビットを迎撃させながら、敵の気を惹かせます
あれだけの数を一度を操作しているなら多少は動きも鈍るでしょうし、隙も生まれるでしょう
そのタイミングを待って……出来た瞬間に狙撃を敢行
ビットの制御部分を狙いたいですが……あの輪っかが怪しいですかね

狙撃後は別の残骸の影を目指してすぐに移動
ま、私の狙いは仕留めることではありませんので
援護に徹して、本命は他の方にお任せしますよ



●人を侮ることなかれ

「断罪を開始する!」

 翼を広げ天を頂くオブリビオン、セラフィム・リッパーが戦場で高らかに宣言した。
 天使を名乗り、自らを断罪者と曰う傲慢な敵司令官に、ノヴァンタ・マルゲリータ(スクラッパー・f29982)は静かに息を吐いた。

(ようやく大将のお出ましですね。今まで以上に厄介そうですが……)

 攻撃力、耐久力、機動力。
 セラフィム・リッパーはどれをとっても一級品だ。
 量産キャバリアに修繕改修を繰り返してきたスクラッパーで正面から戦うのは、明らかに分が悪い。

(生憎とまともにやり合うつもりはないですよ)

 ならばやることは決まっている。
 奇襲、搦手、策謀だ。
 継ぎ接ぎだらけのキャバリアが、動き出した。

(まずはもう少し前へ……)

 戦場に散らばるキャバリアの残骸。
 その影を縫うようにスクラッパーはセラフィム・リッパーとの距離を詰めていく。
 機体の頭上では、セラフィム・リッパーの放った自律制御砲台クリスタルビットが飛び交うこの状況。
 発見されれば、クリスタルビットの総攻撃を受けることは間違い無いだろう。
 それ故に、スクラッパーはセラフィム・リッパーからよく見える場所で足を止めた。

「残骸と見間違えるところだったが、まだ動ける虫けらが落ちているようだな!」

 スクラッパーの姿を視認したセラフィム・リッパーのパイロットは、すぐにクリスタルビットをスクラッパーへ向かわせた。
 肩に砲撃ユニットを携えて地を行くスクラッパーと、自由自在にクリスタルビットを飛ばしながら天を駆けるセラフィム・リッパー。
 対照的な二機が向かいあう。
 無数のビームの光が空を切り裂くと同時に、スクラッパーはスラスターを吹かせて飛び上がった。
 スクラッパーの足元を、集中砲火が焼く。
 お土産とばかりに、クリスタルビットに砲撃を加えてスクラッパーはすぐに近くの残骸の影へ。
 それを追いかけるように、クリスタルビットは飛んでいく。
 セラフィム・リッパーはスクラッパーとクリスタルビットの鬼ごっこを空から見下ろしていた。

「貴方はその虫けらに気を取られて、痛手を負うことになるんですよ」

 動きを止めてクリスタルビットの操作に集中するセラフィム・ビットの頭を、遠方からスコープで覗くのは、ノヴァンタだ。
 落ちていたキャバリアの残骸で、自身の身体と対キャバリアライフルを固定していた。
 スクラッパーはいま、自動制御で逃げ回っているわけだ。
 すっかり動きの緩慢になったセラフィム・リッパーの、頭部。
 その上にあるリングを中央に捉えて、トリガーを引いた。
 カン、と金属が金属を貫く音。
 それから一瞬置いて、セラフィム・リッパーの頭上で小規模な爆発が起きて、それからノヴァンタの放った対キャバリアライフルの発射音が、戦場に響いた。

「うおぉぉぉ!?」

 狼狽えるパイロット。
 明らかに格下だと思っていたキャバリアを追いかけていたら、突然別方向から砲撃されたのだ。
 多くのクリスタルビットが動きから秩序を失った。
 あらぬ方向へ射撃し、地面に突き刺さり、時にはセラフィム・リッパー自身へぶつかる。

「ビンゴ! やはりビットの制御装置はあの輪っかでしたか」

 追撃をさせないために、すぐに別の残骸へ向けて走り出したノヴァンタ。
 視界の隅に、クリスタルビットに追い回されたスクラッパーが見える。

「スクラッパーは……かなり破損してしまいましたか。けれどこれくらいなら慣れたものですね」

 次はどんなスクラップで修繕しようか。
 そうと考え始めると、ノヴァンタの口元が弛んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

朱皇・ラヴィニア
罰を与える、か
人の身でそこまで驕れるとは……これもマシンの呪いかな?
それにボクらが言われるがままでいると思うかい?

ゼルを肉体改造――駆動系をチューンし
光の翼を向けられる前に障壁を展開し接近する
それでも敵機の通常兵装は健在だろう
こちらは右手に剣、左手に銃を携えて
迎撃を見切りつつ牽制の弾をばら撒きながら突進し
コクピットを狙うフリして光の翼を叩き折ろう
零距離でナノマシンの刀身を伸ばせばいい
こちらは構えたままでも攻撃出来るんだ
重量を乗せた片手突き――貫通攻撃で破壊してみせる

国の事情がどうなのかは知らないけれど
人々の生命を脅かす事が仕事じゃあないでしょ?
可能であれば安全を確保しコクピットから将校を救出だ



●剥き出しの巨人

「罰を与える、か」

 聖堂に響く讃美歌のように神々しく揺蕩う光の粒子を見上げながら、朱皇・ラヴィニア(骸の虚・f29974)は小さく呟いた。
 彼のセラフィム・リッパーのパイロットも、この世界に住むただの人間のはずだ。
 にも関わらず、ここまで自信を持つ、いや、傲慢になれるものが、どこにあるというのか。
 熾天使の名を持つキャバリアのアイカメラに宿る、邪悪な意思の光。
 これこそが、人を唆し世界を崩壊へ誘う、オブリビオンマシンだ。
 大言を吐くだけの力は、確かにあるように見えた。

「だからといって、ボクらが言われるままでいると思うかい? いくよ、ゼル!」

 シュラウゼルの四肢が唸りを上げて、地を駆ける。
 セラフィム・リッパーまでの距離を、一気に詰めるつもりだ。

「貴様の亡骸でトラペザの者共にこの力を知らしめてやろう!」

 無論、それを黙って許すオブリビオンではない。
 セラフィム・リッパーがシュラウゼルへ向けた光の翼から、プラズマビームを放つ。
 空気中でもほとんど失われない光の速度と、鋼鉄すら溶断する圧倒的な熱量。
 鎧を脱いだ剥き出しの巨人には、さぞ堪えるだろう。
 だが───。

「それは、効かない」

 光線が、激しい閃光と落雷のような音を立てて、シュラウゼルに当たる前に弾けて逸れる。

「ッ! 障壁か!」

 オブリビオンマシンの高出力なエネルギー照射を無効化するほどの障壁を、プラズマビームが放たれる前に展開されていたのだ。
 二機の距離は、もう一息に詰められる程度。
 ならばと、斬艦刀を構えるセラフィム・リッパー。
 シュラウゼルは幅広な両刃剣を片手で持ち、腕を引いた。

「このセラフィム・リッパーにそのような泥臭い剣など!」

 敵パイロットが叫び、斬艦刀が振り下ろされると同時に、シュラウゼルの重量と速度を乗せた突きを胸元へ放つ。
 分厚い金属がぶつかり合う音と衝撃。
 シュラウゼルの突き出した剣を切り払うように、セラフィム・リッパーが斬艦刀をぶつけていたのだ。
 コクピットへ真っ直ぐに突き出されたシュラウゼルの剣は、対象の胸元から脇へと逸れていた。

「ククク、惜しいな」

 セラフィム・リッパーのパイロットが嗤う。
 それに対して、ラヴィニアは冷静だった。

「いいや、これからだ」

 シュラウゼルの剣に帯びたナノマシンに、刀身に刻まれた幾何学模様に光が走る。
 ロストオウスは、ただのキャバリア用実体剣ではない。
 斥力発生装置と、ナノマシンによる可変機能を持った近接格闘兵器だ。
 目に見える長さ、形が、そのまま攻撃範囲とはならない。
 熾天使の背中に、強い衝撃。
 敵パイロットも想定していなかったであろう───剣が伸びることは。
 セラフィム・リッパーの脇を通り過ぎていた刃が、その背中へ向けて伸びていたのだ。
 機体自体にはそれほど大きなダメージはないだろうが、光の翼の発生装置には、大きな損傷を与えただろう。
 背中から伸びていた翼は、いまや途切れ途切れだ。

「貴様……くッ! 離れろォ!」

 翼に大きなダメージを負ったセラフィム・リッパーは、片腕を伸ばした状態のシュラウゼルへ、斬艦刀を振るう。
 シュラウゼルは腕を引きながら後ろへ跳躍し、それを躱した。

「国の事情がどうなのかは知らないけれど、人々の生命を脅かす事が仕事じゃあないでしょ?」

 着地と同時に剣を杖のように着いて、ラヴィニアは早く国へ帰るように告げるのだった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ホワイト・キャスター
役立たずねぇ…最初の奴らは練度は良かったし、娘の方は将来有望だったが…
やっぱりマシンに洗脳されて盲目になってんのかね

さぁて、見るからに格上の機体。おまけに飛び交うビットが厄介そうだ
急ごしらえだがとっておきの大砲を作るとしよう
メカニックの腕を活かしてUCでオブシディアンMk4の装甲で砲台を弾丸にはガガンボのブレードを使うか。
打ち出すエネルギーはスクラップになったキャバリアから拝借

流石にエネルギー供給は察知されそうだからジャミングの煙幕を巻いて時間稼ぎ
ビットにはガトリングの弾幕で牽制
エネルギーが溜まったら手痛い一撃を食らわしてやるよ

天使さま、地に堕ちる時間だぜ



●地に落ちる時間だぜ

「約立たずねぇ……」

 敵指揮官機の物言いに、ホワイト・キャスター(バイク乗りの掃除屋・f24702)は不快そうに眉をひそめた。
 彼らは、十分に強かった。
 オブシディアンMk4部隊のパイロットも、ガガンボのパイロットも。
 指揮官がこれでは、彼らも苦労するだろう。
 尤も、指揮官の傲慢さも恐らくはオブリビオンマシンによる洗脳によるものだ。

「ガツンと一発入れて、目ぇ覚まさせてやるよ」

 ホワイトは天を舞うセラフィム・リッパーに向けて、指を向けて言った。
 それから、ホワイトはすぐに状況の確認に移る。

(さぁて、見るからに格上の機体。おまけに飛び交うビットが厄介そうだ)

 あの機体と純粋な性能で戦うには、ブルーフォッグは些か旧式がすぎる。
 丈夫さがうりのフレームはクリスタルビットの射撃くらいなら少しは耐えられそうだが、集中砲火を受ければひとたまりもないだろう。
 かといって、躱し続けるほどの運動性能も持ち合わせていない。
 接近戦を挑むのは、無謀だ。
 どうしたものかと辺りは目を向けると、良いものが目に入った。

「急ごしらえだがとっておきの大砲を作るとしよう」

 誰に向けるでもない笑みを浮かべて、ホワイトはブルーフォッグを動かした。

 一方で、セラフィム・リッパーのパイロットは猟兵たちの戦闘の合間で、遠くで何かをしている旧式のキャバリアに気付いてはいた。

(なんだ? 何をするつもりだ…….)

 壊れたキャバリアの残骸を集めているように見える。
 だから、火事場泥棒をするジャンク屋か何かだろうかと決めつけていた。

「残骸とはいえ我が国の資源であるキャバリアを盗もうとは……貴様も死ぬがいい!」

 セラフィム・リッパーの背後から射出されるいくつものクリスタルビット。
 それが、オブシディアンMk4とガガンボの残骸を集めるブルーフォッグの方へと向けて飛び始めた。

「来たか!」

 きらきらと太陽光を反射しながら飛ぶクリスタルビットに気付いたホワイト。
 一旦運んでいた残骸を落として、ビットのくる方は手を向ける。
 すぐに煙幕が放たれて、セラフィム・リッパーからはブルーフォッグが見えなくなった。

「小癪な真似を……」

 自律飛行砲台であるクリスタルビットとはいえ、正確な位置が掴めなければ自由に砲撃をすることはできない。
 クリスタルビットは、迷うように空中で回り始めた。

(今のうちに……)

 ホワイトは手元で組み上げていた大砲に視線を戻す。
 丈夫な黒い砲身に、いくつも繋がれたジェネレータ。
 エネルギー充填が進められているところだった。

(並列運転よし、チャンバー内圧よし)

 煙幕が晴れてきた頃になってクリスタルビットが飛んできたが、もう遅い。
 ブルーフォッグは残骸で作った大砲の隣に伏せて、グリップを握る。

「天使さま、地に堕ちる時間だぜ」

 即席簡易サイトの中央にセラフィム・リッパーの姿を捉えると、ブルーフォッグはトリガーを引いた。
 重く、鈍い衝撃。
 一拍置いてから、余剰エネルギーが後ろへ迸る。
 弾丸は薄くなってきた煙幕を巻き込むように吹き飛ばし、セラフィム・リッパーへと真っ直ぐに飛んだ。

「これは……!」

 音速を超える速度で飛来する弾丸に、セラフィム・リッパーは反応した。
 まるでそれを受け止めるかのように手のひらを向けている。
 並の質量弾やエネルギー砲であったなら、これで弾くことができたかもしれない。
 だが、ブルーフォッグの打ち出した弾丸はセラフィム・リッパーの手のひらを貫き、下腕を砕き、上腕まで破損させた。

「なにっ……!?」

 狼狽した敵指揮官が機体状況を確認する。
 腕を貫いたのは、ガガンボのバルディッシュ並列化偽演粒子コーティングソード。
 それが、弾丸として放たれたのだ。
 十分な質量と、斬撃力。
 それが、セラフィム・リッパーの片腕を穿った。

「く、こんなことが……!」

 バランスを崩したセラフィム・リッパーが、高度を落とす。

「ハッ、量産機のスクラップだって良い仕事するだろ」

 オブシディアンMk4で作った砲身の上でその様子を見ながら、ホワイトは咥えたタバコに火をつけた。

成功 🔵​🔵​🔴​

セフィリカ・ランブレイ
奥さんが普段は引っ張るけど、旦那にベタ惚れって感じの素敵な夫婦だよね

腕、返したいな
だから、今までありがと、オブシディアン
機体を物陰に

スプレンディア、出番だよ!
次元を割き、呼び出す

軽量で柔軟性のあるフレームに見合わない大出力
発生する自壊問題は搭乗者が魔力炉をフル回転させて生成する魔力フィールドで抑え込む力技
稼働時間は5分だし稼働後は総点検
戦闘力以外を投げ捨てた私の機体

『全く、面倒なものを作って』
魔力制御を補助するシェル姉がぼやく
【月詠ノ祓】

役立たず呼ばわりだけどさ、強かったよ、あなたの部下は
部下の強さも把握してないの、指揮官としてどうかな

展開されるビットの悉くを切り裂いて、全力の一撃をお見舞い!



●強かったよ

「奥さんが普段は引っ張るけど、旦那さんにベタ惚れって感じの素敵な夫婦だよね」

 ここで戦ったフォロス共和国の兵士たちのことを思い出し、セフィリカ・ランブレイ(蒼剣姫・f00633)は呟いた。

「セリカにも良い人が見つかったらいいんだけど」

 魔剣シェルファが誂うように笑う。

「もー、シェル姉……そういうのはやめてよ」

 甘え半分、不貞腐れ半分にセフィリカは口を尖らせた。
 そういった平和な話の続きは、戦場から帰ってからだ。
 ここまで戦ってきたオブシディアンを、少し離れた物陰に隠す。
 機体から降りて、その姿を改めて眺めた。
 借りた片腕は比較的マシだが、無茶な挙動で関節が弱くなっているのが、外から見てもわかる。

「腕、返したいな」

「ん……そうね。だから、ちゃんと生きて帰らなきゃ」

 ここまで戦った機体に礼を告げて、改めて敵を見据える。
 圧倒的出力と、迸るエネルギー。
 あれと戦うとなれば、力が必要だ。
 状況を変えることのできる、強い力が。

「スプレンディア、出番だよ!」

 セフィリカは魔剣シェルファを掲げて、その名を呼んだ。
 空に次元の裂け目が現れ、中から現れたのは、紫水晶の戦姫。
 これこそが、ここまで温存しておいたセフィリカの切り札。
 機体に乗り込み、シェルファを台座にセットする。

「いくよ、シェル姉!」

 操縦桿を握り、セフィリアは魔力を流す。
 スプレンディアは、動かしているだけで自壊していく非常にピーキーな機体だ。
 魔力フィールドで抑え込むことで、辛うじて5分間だけ戦うことができる。

「全く、面倒なものを作って」

 シェルファはぼやきながらも、魔力制御を補助していた。

「ここからは思う存分、動かせる!」

 スプレンディアが、ツーハンドソードを構える。
 セフィリアの得意とするのは、やはり剣技だ。
 この機体であれば、余すことなくその技術を発揮できる。
 腰を落として、強く踏み込む。

「───、一式!」

 セラフィム・リッパーをそのカメラに捉えて、跳んだ。
 一閃。
 青紫色の光が走ったかと思うと、スプレンディアとセラフィム・リッパーの距離は零に。
 スプレンディアの光速の刃が、セラフィム・リッパーへと降りかかる。

「速いな、だが!」

 断罪の熾天使は、斬艦刀をもってそれを受け止めた。
 出力は互角といったところか。

「もう一度行くわよ、セリカ」

 スプレンディアは一度距離を取って、再び踏み込むと同時に剣を振るう。

「役立たず呼ばわりだけどさ、強かったよ、あなたの部下は!」

 気迫の籠もった斬撃と共に、敵指揮官へと語りかけるセフィリカ。

「ほざけ、敗者に価値などない!」

 だが、斬艦刀で攻撃を受け止めるセラフィム・リッパーのパイロットは、まるで聞く耳を持たない。
 オブリビオンマシンの洗脳の力か、自我ばかりが肥大化して盲目的になっているのだ。

「部下の強さも把握してないの、指揮官としてどうかな!」

 スプレンディアの魔力炉が強い光を放ち、出力が増していく。
 合わせた刃が、徐々にセラフィム・リッパーの方へと押し込まれていく。

「くっ、なんだこの出力は……!」

「この機体の稼働時間は5分! その5分に、魔力も、思いも、全てを賭けているんだよ! あなたみたいな乗り手なんかに……負けない!」

 じりじりと押し込まれていった斬艦刀の峰が、セラフィム・リッパーの装甲に触れた。

「馬鹿な……ッ! セラフィム・リッパーが力負けするなど……!」

「やっちゃいな、セリカ!」

 精一杯の魔力を込めたセフィリカが、操縦桿を倒す。
 響く金属音。
 スプレンディアの剣が、斬艦刀をへし折る。
 そのまま振り下ろして、セラフィム・リッパーの胸に大きな傷をつけたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

南・七七三
◎ひゅーが(f30077)

ワイヤーはパージ済、残弾僅か……やっぱ3連戦はキツい
やりたくないけど、しゃーないか

「遠慮なく前に出て。アタシが合わす」

それだけ、一方的に通信入れて
リミッターを、解除
制御能力を超えた『鎧』の代わりに、暴走を意志で抑え込む
機体に赤い燐光を纏わせてクローを展開、低い姿勢で前に出る

幾ら機体が速くなっても、フーガほどの打撃力はない
だからあくまでサブ
攻撃を逸らして姿勢を崩して、やらしく食い下がる

「……っ、今日はうるさいな、チェリー……!」
頭痛が、酷い
あぁ、フーガにムカついてんのか。ボコられたもんね
でも、

「敵は、あっち。言うこと聞きな……そのうち、リベンジさせてやっからさぁ!」


風祭・ヒュウガ
◎ナナミ(f30098)と

前にノした覚えのあるタイプか、面白ェ

あァ?好きにやって構わねぇのかよ
……知らねェぞ!

羽織っていたクロークを脱ぎ棄てる。全力で動くなら多少のデッドウェイトすら惜しい
一気に加速し、全身に力場を纏った高速での突撃を四方八方から何度も繰り返す!

ナマ言ったからには振り切ってやるつもりだったんだが
一切打ち合わせてねェおれの進路を阻害せず、その上でぶつかりやすい用に敵を追い込んで――おいおい、そこまでやれとは言ってねぇぞ!

だったら――おれも応えるしかねぇだろ
オラ、トドメはくれてやるよ!

最後はチェリーの方へ、全力で敵機を蹴り飛ばしてパスする――!!

……あ゛、やっべ今ので引き分けじゃん



●己の闇を恐れよ

 ぐるぐるに巻かれたワイヤーをパージして、二機のキャバリアが起き上がる。

「残弾僅か……」

 南・七七三(“鬼灯"・f30098)はライフルのマガジンを確認して、ため息を吐いた。
 ピンクのデコられたライフルは、これ以上頼れないだろう。

「直接殴りゃいいだろ」

 機体の関節を確かめながら、風祭・ヒュウガ("フーガ"・f30077)が言う。
 一方で格闘戦主体のフーガは、弾丸の損耗はない。

「フーガはそうだろうケド……こっちにもいろいろあるじゃん?」

「あー、そうだったな。んじゃあとは待ってるか?」

 フーガはもちろんだが、ブラダー・チェリーは更に特異な機体だ。
 これ以上の手札を切るには、相応の代償が伴う可能性がある。

「じょーだん。そーいうのはやれるだけやってからじゃないと収まりつかないの!」

 大きく深呼吸。
 気は進まないが、ライフルがなくなって、強力な毒を使えなくたって、やれることはある。

「遠慮なく前に出て。アタシが合わす」

 短く伝えて、七七三は通信機のスイッチを切った。

「あァ? おい、ナナミ」

 ヒュウガが声をかけるが、もう通信は切れているようで、返事はない。

「……知らねェぞ!」

 しかし、やると言ったからにはやる女だということは知っている。
 ならば、信じて好きにやるだけだ。
 敵の姿を、目で捉える。
 青白い光を放ちながら、クリスタルビットと舞うように戦うセラフィム・リッパー。
 猟兵たちとの戦いでフライトユニットや武装には損傷があるようだが、依然としてその出力は健在のようだ。
 敵の指揮官機というだけあって、油断はできない。
 フーガが、羽織っていたクロークを脱ぎ棄てる。
 少しでも邪魔になるものを取り除き、速さに特化させるためだ。
 フーガが、低く構える。
 より強く大地を踏みしめるためだ。
 フォトンが、機体全体を覆う。
 全身を武器としてぶつかるためだ。

「コイツの全質量、叩き込んでやらァ!!」

 ヒュウガの言葉を合図として、フーガは大地を蹴った。
 フォトンによって形成された力場に後押しされて、フーガは疾風迅雷の如く駆ける。

「クソっ、緊急回避だ……!」

 急襲に驚いたセラフィム・リッパーが、光の翼から大きな推力を発して、急激に動く。
 真っ直ぐに進むフーガの攻撃は、見るからに曲げられるものではない。
 このまま進めば、フーガがたどり着く頃にそこにあるのは、せいぜい残された燐光くらいだ。
 だから、セラフィム・リッパーのパイロットの判断は正しかった。
 ヒュウガが一人で戦っていれば、の話ではあるが───。

 ヒュウガとの通信を切った七七三は、真剣な面持ちでカードキーを見つめていた。
 絶大な力と引き換えに、何かを代償として持っていかれる、そんな禍々しさを放つ闇色のカードキーだ。

「何もできないのは嫌だもんね、チェリー」

 コンソールに手を触れて、機体に語りかける。

「アタシもだよ。アタシも嫌。だから───」

 カードキーを差し込んで、コードを打ち込んだ。

「Activate──“Darkness Card System”! 怖がってなんか、いられない!」

 システムの警告を振り切って、実行ボタンをを叩く。
 同時に、ブラダー・チェリーが声なき唸りをあげた。
 出力が膨れ上がり、機体が大きく揺れる。
 溢れ出したエネルギーが、赤い燐光となって機体を包む。
 ブラダー・チェリーを締め付ける鎧である鬼灯が、軋む。

「ッ! さぁ、行くよチェリー!」

 残弾少ないライフルを捨てて、碗部のクローを展開。
 それから、姿勢を低く構えて、肉食獣のように飛び出した。
 赤い燐光が、残像のようにその場に残るほどのスピードで、ブラダー・チェリーはセラフィム・リッパーへと迫る。
 先に出たフーガの突進は、今にも躱されそうだ。

(チェリーがいくら速くなったっていっても、フーガほど打撃力はない……だったら!)

 ブラダー・チェリーが向かったのは、セラフィム・リッパーの退避先。
 光の翼の推力で強引に逃げた先を、塞ぐようにクローを振る。

「チィ! もう一機が──!」

 強引に機体の上体を反るセラフィム・リッパー。
 隙だらけになった胴体に、ブラダー・チェリーが蹴りを入れた。
 そうして押し出された先は、フーガの進路上───。

「上出来だ!」

 全身にフォトンを纏ったフーガが、セラフィム・リッパーを轢いた。
 運動エネルギーを決める質量と速度。
 その両方を持ったフーガの突進は、セラフィム・リッパーを跳ね飛ばすには十分なものだった。

「がっ、ああぁぁぁ!?」

 宙を舞ったセラフィム・リッパー。
 着地と同時に斬艦刀を握ろうとするが、目の前には既にブラダー・チェリーが迫っていた。

「クソ、近い……!」

 肉薄したブラダー・チェリーが、爪で、脚で、セラフィム・リッパーを攻め立てる。
 セラフィム・リッパーがそれを躱し、受け流す。
 ブラダー・チェリー単独での攻撃は、やはり軽すぎるのだ。
 蹴りを片手で受けたセラフィム・リッパーが、ブラダー・チェリーを投げ飛ばして距離を取る。
 ブラダー・チェリーの視界の端で、もう一度突進するために方向転換しているフーガが見える。
 以前の模擬戦の記憶が脳裏に浮かんだ。

「……っ、今日はうるさいな、チェリー……!」

 着地姿勢を取らせた七七三を、頭痛が苛む。
 ブラダー・チェリーの駆動系か、システムか、それとも七七三自身の闇か。
 何かが七七三の脳を掻き回す。
 七七三にはわかる。
 これは、ブラダー・チェリーの苛立ちだ。

(あぁ、フーガにムカついてんのか。ボコられたもんね)

 怒りが、憤りが、黒い感情が、赤い燐光と共に放たれている。

(でも───)

 カメラの中央に捉えるのは、セラフィム・リッパーだ。
 拾った斬艦刀を構え直して、ブラダー・チェリーに敵意を向けている。

「敵は、あっち。言うこと聞きな……そのうち、リベンジさせてやっからさぁ!」

 ブラダー・チェリーが再び飛び込んだのは、セラフィム・リッパーが斬艦刀を振り上げるのと同時だった。
 斬艦刀を掻い潜って両手のクローを何度も振るい、再びセラフィム・リッパーを釘付けにする。
 そうしてフーガが突撃してくると、一歩引いた。

「そう何度も喰らうものか……!」

 セラフィム・リッパーも同時に引いて、フーガの突進を躱す。

「チィっ! 流石に良く動きやがる! だが───」

 すれ違いざま、フーガは手を伸ばした。
 伸び切った腕では、伸ばした指では、相手は殴れない。
 だが、指先さえかかれば掴んで引っ張るには、十分だ。
 フーガの大きな手が、セラフィム・リッパーの腕を掴んで引っ張る。

「オラ、トドメはくれてやるよ!」

 その背中を、ブラダー・チェリーの方へ蹴り飛ばした。

「なっ……!?」

 パイロットの狼狽したセラフィム・リッパーが倒れ込もうとした先に見えたのは、ブラダー・チェリーの爪だ。

「そんじゃ、頂いちゃおっか」

 その頭部に向けて、伸ばした爪を突き出した。
 セラフィム・リッパーが膝をついて、地に伏す。
 コクピットから出てきたのは、敵指揮官だ。
 ぼんやりとした顔ではあるが、洗脳が解けて目は覚めているだろう。
 戦いが、終わった。

「一切打ち合わせてねェのに上手くやるじゃねェか」

 ブラダー・チェリーの隣にやってきたフーガ。
 ヒュウガが七七三に声をかける。

「……ゴメン、ちょっとだけ、寝る……」

 だが、七七三は意識を手放し、乗り手の操作を失ったブラダー・チェリーは膝を着いた。
 フーガがそれを抱き止める。

「ナナミ? ……仕方ねぇな」

 先程の攻撃でセラフィム・リッパーは完全に沈黙し、戦闘は終わったのだ。
 出撃時の話を、ふと思い出す。

「……あ"、やっべ今ので引き分けじゃん」

 ヒュウガは眉をひそめて頭を掻いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年12月20日


挿絵イラスト