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ハロウィンの国が極寒だから、熱々な料理で飯テロをキメる

#アリスラビリンス #【Q】 #お祭り2020 #ハロウィン #2020年ハロウィンシナリオ #猟兵の食欲全開シナリオ #どうしてこうなった #飯テロ

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 グリモアベース。
 10月も半ばに差し掛かり、今年もハロウィンが近付いてきた今日この頃。
 蛇塚・レモン(蛇神憑きの金色巫女・f05152)は、新たな儀式魔術【Q】の成功によって垣間見た予知の内容を猟兵たちへ伝えていた。
「先日のアリスラビリンスで勃発した『迷宮災厄戦(ラビリンス・オウガ・ウォー)』で、オウガ・オリジンは、その凄まじい『現実改変ユーベルコード』で、幾つもの不思議の国を生み出したり、改変したりしていたのは記憶に新しいと思うけど、その中で、何故か『ハロウィンの国』に改変された国が幾つも発見されたんだよっ!」
 聞けば、しゃべる南瓜ランタンや、コスプレ衣装の飛び出す森、食材が完備されたキッチン、なんかめちゃくちゃ長い行列をするためだけに作られた道など、そこはまさにハロウィンパーティにうってつけの国なのだとか。
 だが、オウガ・オリジンの改変した世界は、もともとは悲劇を生み出す舞台装置。
 つまり、この数々のハロウィンの国もまた、オリジンから直接力を与えられた『凶悪なオウガ』達が潜んでおり、ハロウィンの国の力を利用して襲いかかってくるのだという。

「今回の任務は、このハロウィンの国のオウガ達を殲滅して、来たるべきハロウィンのパーティー会場にしちゃおうっていう話だよっ! オウガを世界から駆逐しつつ、イベントの準備も出来ちゃうなんて、一石二鳥っ! だけど、この不思議の国、他の不思議の国同様、変わった作法があってね……っ?」
 レモンいわく、それはオウガが使うハロウィンの力についての詳細だ。
 オウガの軍勢は、森から飛び出してきた『コスプレ衣装』を着込んでパワーアップしているため、こちらも森から飛び出してきたコスプレ衣装に着替えて戦うことでパワーアップできるそうだ。
「ただし、コスプレ衣装の内容はランダムだから、ひょっとしたら『本人が全く望まないコスプレ衣装』が飛んでくるかもっ? それでも我慢して着替えると、更にパワーアップできるっぽいっ!」
 ……なんだ、そりゃ?
「ちなみに、これから向かうハロウィンの国は、氷の九尾狐が支配する極寒の地だから、若しかしたら水着や夏服みたいな衣装が飛んできても、寒いのを我慢して着てほしいなっ!」
 地獄じゃないか!

 さらに、その氷の九尾狐は、ハロウィンパワーで『無敵化』しているのだという。
「でも、勝つ方法はあるよっ! ハロウィンの国には、何故か設備と食材が完備されたキッチンがあるから、そこで料理した食べ物を食べるとボスは眠くなっちゃうんだってっ! 寝ている間は無敵じゃなくなるから、一撃で倒せるようになるよっ! 勿論、調理中でもボスは攻撃を仕掛けてくるから、上手く攻撃に耐え凌ぎながら頑張ってねっ!」
 ボスはこの国で作られた料理は必ず口にしてしまうらしい。
 つまり、料理さえ作ればボスはどんなものでも口にせざるを得ず、その結果、その辺でグースカピーと寝てしまうのだ。
 可能ならば、複数名とチームを組んで、防御役と調理役とで班分けすると任務がスムーズに進むだろうが、そのあたりの判断は各個人に任せる、とレモンは告げた。
 寒い国なので、熱々な料理やお菓子があると、誰もが幸せになるはずだ。
「それじゃ、楽しいハロウィンを迎えるためにも、みんな、頑張ってねっ!」
 レモンの頭上で輝くグリモアが、アリスラビリンスの極寒のハロウィン国へ誘う!


七転 十五起
 なぎてんはねおきです。
 このシナリオフレームは特殊な形式ですので、ご参加の前に一読を願います。

●このシナリオフレームについて。
 アリスラビリンスでのハロウィンシナリオは2章構成のシナリオフレームです。
 10/31までに成功したシナリオの本数に応じて、ハロウィンパーティ当日、そしてやがて始まるであろう『アリスラビリンスでの猟書家戦』に、何らかの影響があるかもしれません。

●概要
『第一章:集団戦』
 極寒のハロウィンの国(気温マイナス10℃)の森から、様々な【コスプレ衣装】が飛び出してきます。オブリビオンはその衣装を身に纏ってパワーアップしています。(大抵は暖かそうな格好です)
 猟兵達も森から飛び出す【コスプレ衣装】で仮装して、オブリビオン達に対抗して下さい。中には明らかに【本人が全く望まないコスプレ衣装】が飛んでくるかもしれません。ですが、これを『本当はイヤだけど、勝つためにしょうがなく着るんだからねっ!』っていう感じのツンデレなプレイングで仮装した場合は、何故か超絶パワーアップして敵を蹴散らせます!

『第二章:ボス戦』
 ボスは『ハロウィンの国』の法則によって【ほぼ無敵】となっています。倒す方法はただひとつ、【美味しい料理を食べさせること】です。
 ボスの苛烈な攻撃に耐えながら、キッチンで美味しい料理を作ってください(美味しくなくても、気持ちのこもった料理でも大丈夫みたいです)。
 それが完成すると、ボスはこの国の法則により、抵抗できずに食べてしまいます。そしておいしさについて事細かに批評、称賛した上で、段々眠くなってきます。料理を食べさせ続けて完全に眠らせれば無敵状態は解除され、一撃で倒せるようになります。
 つまり、猟兵のプレイングは基本的に【料理を作る】か、【攻撃を耐え忍ぶ】ものとなります。
 個人でも問題ありませんが、チーム参加で連携すると、より効率よくボスと戦えるでしょう!
 なお、極寒の国なので、熱々な料理やお菓子の場合は、更にプレイングボーナスが発生しちゃいます!

 というわけで、皆様の遊び心あるプレイングをお待ちしております!
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第1章 集団戦 『青い瞳の人形』

POW   :    フレンドシップ・ドール
自身が戦闘で瀕死になると【青い瞳の人形】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    フレンドシップ・ドールズ
レベル×1体の、【服に隠れて見えないが背中に】に1と刻印された戦闘用【青い瞳の人形】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    フレンドシップ・ドールズ
召喚したレベル×1体の【青い瞳の人形】に【堕天使の翼】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 オウガのボスの影響で、ハロウィンの国は氷に閉ざされてしまった。
 気温マイナス10℃という極寒の地で、青い瞳の人形はフワモコで温かいコスプレ衣装に身を包み、この国へやってくる者を襲うべく、今か今かと待ち構えている。
 ある人形は猫、ある人形はクマ、またある人形はオオカミ。
 というか、これ、全部、もふもふな着ぐるみだ……!
 中には季節感先取りでサンタの格好もしているが、ハロウィンらしくコート姿の魔女や吸血鬼の格好をした人形もいるようだ。
 そして、猟兵達がハロウィンの国へ転送されると、周囲の森の木々からコスプレ衣装が飛び交ってくるではないか!
 さあ、猟兵たちよ! ランダムに飛び出すコスプレ衣装をキャッチし、なんか都合良くポツンと建っている小屋の中で着替えて、オウガ達と戦うのだ!
ジーク・エヴァン
【パンドラ】 何だか不思議な世界だな。それに滅茶苦茶寒い!
ここは環境耐性と氷結耐性で乗り切るとしよう。
うわっ、服が飛んでくる!?
え!?しかもこれを着なきゃダメなの!?
ううっ……は、恥ずかしいけど、背に腹はかえられない。
思いきって着よう!
ううっ、コミュニさんが笑ってる……。

戦闘は角砕きでのなぎ払いで人形達をまとめて砕いていこう。合体は厄介だし、結界術の応用で残骸や何体かの人形を結界に閉じ込めよう。
コミュニさんの号令が来たら【滅竜剣グラム】で一気に押し込むぞ!
(ゲラゲラと不気味な声で嗤うグラム)


コミュニ・セラフ
【パンドラ】
なんというか怪奇な世界ですに。
そこそこ寒いですがに、私の力のオーラの前では微々たるものですに。

パンドラのメンバーは氷結的な耐性が無いようですからに。多少心配してたんですが衣装が飛んでくるなら杞憂でしたに。

それにしてもジークさん、神奈木さんは珍妙な恰好しとるに(ニヒヒヒヒ
いや、色んな箇所がもこもこしとるのん。(ニヒハハハ

ふんむ、私の衣装は・・・何が飛んでくるのやら。いや、飛んでこないやも?何故なら私は筋肉を着ているようなものですからに。

ハンマーで殴ると思ったら掴み、掴むかと思ったら手で殴る。フェイントを織り交ぜて、戦うに。そして、UCを発動したら味方に声をかけて追撃してもらうに!


神奈木・璃玖
【パンドラ】

ハロウィンの国なのに極寒とは、これは一体どういうことなのでしょう
狐は北に生息する生き物ですから、多少の寒さには強いですが、それにしても寒すぎます
湯たんぽ代わりに抱えている眷属の狐も寒さに震えていますよ
飛んでくる衣装は確かに暖かそうですが、着るのにいささか勇気のいる衣装ばかりじゃないですか
まあ、それを着て寒さがしのげてパワーアップも見込まれるというならば致し方ないのでしょうね

本性が狐であるだけに、他の獣になるというのは正直なところ勘弁願いたいところ
しかしこれも勝つため、半ばヤケクソに選択UCの狐火を相手に放ちましょう
これで氷も溶けて暖もとれますから一石二鳥ですよね、お二人とも



 アリスラビリンスで発見された、数多くのハロウィンの国。
 その中のひとつは、オウガボスの影響で完全に凍結してしまっていた。
 マイナス10℃の極寒の地と化したハロウィンの国へ、早速、猟兵達は足を踏み入れる。

 全身をフルプレートメイルで覆った少年が、真っ白な息を吐きながら周囲を見回していた。
「何だか不思議な世界だな。それに滅茶苦茶寒い!」
 ジーク・エヴァン(竜に故郷を滅ぼされた少年・f27128)はガタガタと肩を震わせながら、この極寒の地を耐え忍んでいた。
「2人とも、大丈夫ですか? 俺は革鎧を下に着込んでいるので、まだなんとかなりますが……」
 目上の同行者2人を気遣うジークに、狼の毛皮を羽織った筋肉質のポニーテールの女がにへらと笑った。
「そこそこ寒いですがに、私の力のオーラの前では微々たるものですに。それにしても、なんというか怪奇な世界ですに。木にコスプレ衣装が果実みたいに生っているのん」
 コミュニ・セラフ(女傑なる狂天使・f12530)は、周囲の森の木々を指差す。
 確かに、木の枝葉の間に、様々なコスプレ衣装が鈴生り状態でぶら下がっているのが見て分かる。
 これに、眼鏡を掛けた妖狐の男は、長い銀髪を掻き上げながらまじまじと木々から生えた無数の衣類を眺めて言葉を漏らした。
「カオスですね……」
 神奈木・璃玖(九尾の商人・f27840)は、眷属である御饌津(みけつ)の使いを胸の中で抱き締めながら視線を遠くへ逸してしまった。
「ハロウィンの国なのに極寒とは、これは一体どういうことなのでしょう。狐は北に生息する生き物ですから、多少の寒さには強いですが、それにしても寒すぎます……。その証拠に、湯たんぽ代わりに抱えている眷属の狐も寒さに震えていますよ」
 ガタガタ震える神奈木に、コミュニは首を傾げていた。
「そんなに寒いですかに? 慣れればこの程度、戦闘に支障はないのでは?」
「コミュニさんは筋肉量が凄まじいから、きっと代謝の熱が俺達よりも多くて体温が上がりやすいんですよ……」
「そうですよ。むしろ私達の反応が一般的なものだと思いますが……」
 ジークと神奈木は、コミュニの引き締まった全身の筋肉やら、やたらハリと重量感を主張してくる胸元を一瞬見詰めてから視線を逸らす。
 コミュニはますます不思議そうに首を傾げるばかりであった。
「そんなに寒いのなら、木にぶら下がってる仮装衣装を着れば解決ですに。って、なんか変ですのん!」
 真っ先に異変に気が付いたのはコミュニであった。
 彼女が指差す方向から、何かが高速でこちらへ飛び込んでくるのだ。
「うわっ、服が飛んでくる!? もしかして、あれを着なきゃダメなの!?」
 木に生っていた仮装衣装が、意思を持ったかの如く猟兵達へとムササビのように宙を舞って向ってくるのだ。それもひとつふたつという次元ではなく、無数の衣類が彼らの上空をスクランブル交差点めいて無秩序に交錯してゆく。
 この摩訶不思議な現象に、コミュニはホッと胸を撫で下ろす。
「パンドラのメンバーは氷結的な耐性が無いようですからに。多少心配してたんですが、衣装が飛んでくるなら杞憂でしたに」
「いやいや、飛んでくる衣装は確かに暖かそうですが、着るのにいささか勇気のいる衣装ばかりじゃないですか」
 神奈木の指摘通り、仮装衣装の種類がどれもエグいものばかりだ。
 花魁やゴシックな黒ロリータ服や、排水溝からショタを覗き見してそうなピエロ服に、呼吸で全集中しながら鬼を斬りそうな和服など、色んな意味でヤバいものばかりだ。
 そんなカオスな光景を前に、コミュニはあっけらかんと2人に告げた。
「でも、グリモア猟兵さんが言うには、あれを着ることでパワーアップできるとか?」
「え、地獄かな?」
 ジークの瞳から徐々にハイライトが失せてゆく。
「まあ、それを着て寒さがしのげてパワーアップも見込まれるというならば致し方ないのでしょうね……」
 神奈木も顔を引きつらせながら、どうしたものかと思案する。
 しかし、その思案も長くは続かない。
 ガサガサ……っと周囲の茂みが音を立てて揺れる。
「……まずいのん。いつの間にか、オウガの群れに囲まれてるに!」
 コミュニの指摘と同時に、茂みからパステルブルーを基調とした少女型肉人形がぞろぞろと姿を見せ始めた。
「新しいお友達……」
「あなた達も、私達になるのよ」
「痛いのは一瞬だから、安心して身を委ねてほしいの」
 青い瞳の人形たちは、いずれもモコモコで暖かそうな仮装でめかしこんでいた。
 ある人形は黒い厚手のコートを着込んだ吸血鬼、ある人形はもふもふウサギの着ぐるみ、またある人形はファーがふんだんに使われた魔女の姿など。
 ハロウィンの仮装と防寒対策が合わさって、オウガ達は凄まじい強化を獲得していた。
 猟兵3人は覚悟を決めざるを得ない。
「ううっ……は、恥ずかしいけど、背に腹はかえられない。思いきって着よう! これだ!」
 ジークが飛んできた衣装へ無作為に手を伸ばした瞬間、ピカッと彼の全身が光りに包まれた。
「これはまさか、変身バンクですに!?」
「なるほど、こうすることで着替え中はオウガに襲われる心配がなくなるのですね。狂ってる」
 コミュニと神奈木は、このハロウィンの国の法則に頭を抱えながらも納得してしまった。
「では私も、天命に身を委ねてみましょうか。……これです!」
 ペカーッと神奈木の全身も光りに包まれる……と思いきや。
「寒い! なんで服が自動的に脱げるのですか! え、待って下さい! その衣装は、ストップストーップ! 私の知的なイメージがあぁーッ! ンアーッ!!」
 神奈木はどうやら合体事故が起きてしまったようだ。
 南無三……!
 一方、コミュニは未だに着替えていなかった。
「ふんむ、私の衣装は……何が飛んでくるのやら。いや、飛んでこないやも? 何故なら私は筋肉を着ているようなものですからに!」
 ……などと、フラグを全力で建てた結果、背後からズドーンと衣装がコミュニと衝突してきた。
「んなぁーっ!?」
 コミュニ、強制衣装チェンジタイムに突入!
 眩い3つの光は、オウガ達の歩みを留まらせて猟兵達へ近付かせない。
 やがて、3つの輝きが収まると、そこには仮装衣装に着替えた猟兵3人の姿があった。
「んん? これは……スモウ・レスラーだに!?」
 ブヨンブヨンの厚手の肉襦袢、赤い化粧まわしを締めたヨコヅナ・キング。
 それがコミュニの仮装衣装であった。
「四股名は『貴ノ湖未湯(タカノコミュ)』? よく分からないですけど、温かいので意外と快適ですに!」
 満足気にドスコイドスコイと連呼してみせるコミュニは、他の2人の仮装を見るなり、思わず噴き出してしまった。
「ニヒヒヒヒヒヒ! それにしてもジークさん、神奈木さんは珍妙な恰好しとるに! 色んな箇所がもこもこしとるのん!」
「ううっ、コミュニさんが笑ってる……」
 ジークの仮装は、虎耳と虎尻尾、そしてクラシカルなロング丈のメイド服という『虎娘メイド』の仮装であった。
 まさかの女装、しかもなぜか鎧は着込んだまま。
 ここに、タイガーメイドナイトという新ジャンルが爆誕してしまった。
 ジークは涙目になって、思わず言葉が突いて出た。
「くっ……殺せ!」
「ジークさん、そういうのは何度も使うと安っぽくなるから、ここぞっていう時に使うとイイ塩梅になるって聞きましたに」
「今使わずにいつ使うんですか! 今ですよね!?」
 コミュニのツッコミに食い気味で反論するジーク。
 その横で、ジークよりももっと涙目になっているのが神奈木であった。
「コミュニさんとジークさんはまだ仮装っていう範疇じゃないですか。私なんて……」
 神奈木の姿は、一言で表せば野球のユニフォームであった。
 獄炎ノ剣が変化したバットを持ち、スパイクを履き、『イェーガーズ』と胸にロゴが入ったユニフォームを着込み、防寒対策にスタジャンを羽織る徹底ぶり。
 しかし、ただひとつだけ違和感があるとすれば、キャップの代わりに何故か、バッタの頭を模した被り物をしていたことである。
「……バッタの、野球選手? いや、これはまさか!」
 ジークは神奈木の仮装の意味を理解して、我慢できずに噴き出した。
「バッタの打者……つまり、“バッタのバッター”……!」
「ニヒヒヒヒ! まさかのダジャレだに!」
「止めて下さい! 意味を理解されると更にダメージが倍になりますから!」
 神奈木は嘆きの咆哮を森に響かせながら、やぶれかぶれでユーベルコード『フォックスファイア』を発動。
 80個の狐火をバットで打ち抜き、人形達へ叩き付けてゆく。
 これに人形達は堕天使の翼を生やして増殖。
 分身を盾にして、空中へ逃れようとする。
 しかし、神奈木のスイングは更に苛烈さを増し、スラッガー級の火の玉打球を連発させた。
「本性が狐であるだけに、他の獣になるというのは正直なところ勘弁願いたいところでしたが! もはや獣ですらなかったじゃないですか! しかしこれも勝つため! 私の火の玉ノックを捕球して炎上しなさい!」
 神奈木のヤケクソ加減が最高潮に達した時、人形の本体達を的確にホームラン打球の狐火をぶつけて焼却することに成功する。
「これで氷も溶けて暖もとれますから一石二鳥ですよね、お二人とも?」
 ゆらぁり……と振り向く神奈木の目には闇が映っていた。
 2人は咄嗟に神奈木から視線を背けると、それぞれが人形達の対処に当たり始めた。
「あの人形の合体は厄介だし、瀕死になると強くなって復活するのは際限ないな。結界術の応用で残骸や何体かの人形を結界に閉じ込めてから、一気に叩きましょう!」
 ジークの提案に、コミュニが頷く。
「んじゃ、私が号令を出すに! ハッケヨイ!」
 コミュニは堂々たる電車道で人形達を愛用のハンマーで蹴散らしてゆく。
 更にもう一撃ぶちかますと見せかけ、ハンマーを捨てて殴りかかってゆく。
「ドスコイ!」
 張り手を食らった人形が森の奥へと消えていった。
「ゴッツァンデスに!」
 合体した個体には張り手と見せかけて右四つから掴み掛かり、そのまま大外投げで木々へ投げ飛ばした。
 ジークも魔剣グラムを振るい、竜眼の盾で敵を一箇所に押し込んで準備を整えてゆく。
 ある程度、人形達が一箇所に纏まったと判断したコミュニは、ジークと神奈木へ一斉攻撃を促す。
「今ですに! 3人の力をひとつに!」
「わかりました! 来たれ! 竜を憎み、竜を喰らう魔剣よ! 我と共に、邪竜を討て! いでよ、竜喰ライノ滅竜剣!」
 ジークがユーベルコードの詠唱を口にした途端、魔剣グラムがゲラゲラと笑い声を上げ始めた。
 その形状はジークの竜への復讐心を代償に、魔剣の封印が解かれた証拠である。
「こっちも狐火を再充填しました。いつでもかっ飛ばしますよ?」
 もはや商人ではなくスラッガーと成り果てた神奈木もバットを振り被る。
 そして遂にコミュニが号令を下した。

「タカだに!」
「トラです!」
「バッター!」

「「チ ャ ー ジ コ ン ボ !」」

 こうして3つの力が重なり、なんやかんやで人形達は爆炎と共に吹き飛ばされていったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オルヒディ・アーデルハイド
飛んできたふわもこな暖かそうな衣装を気にせず適当に掴んで〔早着替え〕で素早く着替える
それはデンジャラスなビーストの衣装
ふわもこな部分はあるけれど最低限に大事な部分を隠す程度のマイクロビキニ
〔早着替え〕で着替えたので気付かなかった
着替えてしまったので仕方なくそのままで闘う
〔恥ずかしさ耐性〕で視線の痛みに耐えつつ
寒さによる痛みは〔激痛耐性〕で耐え
氷りつかないように〔氷結耐性〕で耐え戦う
〔環境耐性〕で極寒の環境に耐え抜く
『ボクが考えた最強の妖獣』でふわもこなモーラットヒーローを召喚
ぬいぐるみのようにぎゅっと抱きしめて僅かでも暖をとる


ケイラ・ローク
トーゴ(f14519)と参加
寒いのでぷりぷり怒り気味
トーゴには気軽にツッコミします

ハロウィンだからコスプレなのよね?
ちょっと~寒いって連呼すると余計に寒いでしょ
キミよりネコ科のあたしの方がダメージきてるのに~…
きゃははキミたぬきさん?あたしがゲットしたのは何かしら
あらっ
もふもふファーの~

マイクロビキニ!?死にそう。
着替えてくる…ええい覗くな!ほぼ裸よ凍死しちゃう
慎ましいスリム体型が晒されて心も凍死だわ……
ム!ちょっとキミ嘘でも目の毒って言いなさいよ!(ツッコミ蹴り)
ガチキマイラで猫又尻尾の先を変化させてドールに噛付き回復図りながら戦うわ
あたしはダガーで攻撃
技能の生命力吸収、切断も活用するね!


鹿村・トーゴ
ケイラ(f18523)と

Σめっちゃ寒っ!寒中修行もしたから薄着でも女装でも…まァ葉っぱ一枚は論外だが
…いや覗かねーし
てか八つ当たり酷くね?

(ふと、けっこう重量感ある衣装をキャッチ
(狸きぐるみっぽい?うどん屋の前にあるあんな狸ならもふもふでラッキー?
Σ文福茶釜の狸だった
う。重…手足が巧い事つかえねーし茶釜の所為で冷える
ここは遠距離UCと【念動力】を活かすか
UC蜂に敵の目や手など肌が出てる部分を狙う様仕向け
自分は念動で手裏剣【投擲】

ケイラに「目の毒…でもないか」呟いて怒られ蹴られついでに茶釜で敵に体当たり(激痛←【激痛耐性】
接触した際敵の首や急所を狙い武器の櫛羅で毒も盛る【毒使い/暗殺】

アドリブ可



 雪のように白い髪を乱しながら、オルヒディ・アーデルハイド(アリス適合者のプリンセスナイト・f19667)は凍えたハロウィンの森を駆け抜けてゆく。
「はっ……はっ……! やっぱり、あの人形、何処かで見たことあるけど……」
 オルヒディは、先程襲ってきた青い目の人形に見覚えがあった。
「けど、どうしても思い出せない……あの人形達を見ていると、どうして涙が出てくるんだろ……?」
 藍色と青紫のオッドアイから溢れ出る涙を拭い、白い息を吐きながら雪と霜に覆われた地面を踏み越える。
 オルヒディは、ある時期以前の記憶が欠落している記憶喪失者だ。
 先日の『迷宮災厄戦(ラビリンス・オウガ・ウォー)』でも、あの青い目の人形と幾度か遭遇し、交戦した。
 1体1体を討ち果たすごとに、オルヒディの心はチーズの穴の如く細かな欠落が空いたかのように空虚感に苛まれていた。
「あの人形……いや、あの姿のオウガを倒すことを、ボクは心の何処かで悲しんでるのかな……?」
 走りながら思考を巡らせても、都合よく記憶が戻ってくるわけではない。
 今は頭上を飛び交うコスプレ衣装に手を伸ばし、襲ってくるオウガ人形達に対抗しなくてはならない。
「えっと、とりあえずこれにするね」
 対して衣装をよく見ずに手を伸ばしたオルヒディ。
 その身体が黄金色に輝き、変身バンクめいた衣装チェンジが発生した。

 一方、極寒のハロウィンの国でガタガタ震える2人の猟兵が森の中を散策していた。
「めっちゃ寒っ! ――へっくちぃッ!」
 鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は盛大にクシャミを森の中に響かせ、肩を竦めてしまう。
 その横で、ネコマタキマイラのケイラ・ローク(トパーズとアメジスト・f18523)が絶賛不機嫌中で声を荒げた。
「ちょっと~寒いって連呼すると余計に寒いでしょ? キミよりネコ科のあたしの方がダメージきてるのに~もう……」
 ケイラはガチガチと奥歯を鳴らしてしまうほど凍えていた。
 ふと、ケイラが頭上を見上げると、暖かそうな衣装が幾つも飛び交っているではないか。
「ハロウィンだからコスプレなのよね? 暖かい衣装を着れば、寒さも防げるしオウガにも勝てるわけなのね」
「オレは寒中修行もしたから、この際、薄着でも女装でも………まァ葉っぱ一枚は論外だが」
「それはただの変態だから!」
 すかさずツッコミを入れるケイラ。
「ていうか、葉っぱ一枚でこの極寒を歩くなんて、生きているだけでラッキーだよ?」
「違ぇーねーな、それ……。てか、ケイラ。さっきから、敵に囲まれてるよな、これ?」
 鹿村は周囲に目を光らせ、オウガ人形達の気配を察知する。
 ケイラも金髪から飛び出した白い猫耳を前後に動かし、敵の発する僅かな呼吸音を拾っていた。
「トーゴと漫談している時間はないみたいだね。さっさとコスプレイ衣装を決めちゃおうよ」
「そうだなー? んじゃ、オレはこれ!」
 ちょうどよく前方から飛んできた衣装を鹿村は両手でキャッチ!
 すると、ペカーッと鹿村の身体が輝き始め、衣装チェンジが発生する。
「ん? なんだ、妙に重量感ある衣装じゃねーか……」
 次第に光が収まり始め、鹿村のコスプレ衣装の全容があらわになってゆく。
「……狸か、これ?」
 鹿村は自身の手足やお尻から生えたしっぽを見て、自分がタヌキの被り物をしている事に気が付いた。
(まあ、これなら寒くないし、うどん屋の店先によく飾ってある信楽焼の狸っぽいヤツならモフモフでラッキーだな)
 ……なんて考えていた時期が、鹿村にもありました。
 光が完全に収まった時、ケイラがトーゴのコスプレ姿に指を差して笑い声を上げてしまう。
「きゃはははははは……っ! キミ、たぬきさん? しかもお釜と一体化してるし変なの!」
「げぇッ! これ、文福茶釜の狸だったのかよ!?」
 胴体部分は鉄の茶釜となった狸の鹿村が爆誕!
「何だよこれ……。うぅ……重……っ! 手足が巧い事つかえねーし茶釜の所為で冷えるな、コレ」
「西洋の鎧甲冑みたいで、防御力だけは強そうだね~? きゃはははっ!」
「ケイラ、笑いすぎだ! てか、ケイラも早く着替えとけ。周囲の敵がいつ襲ってくるかわからねーからな?」
 鹿村は直接武器を手に持つことを諦め、持ち前の念動力で苦無を空中に浮かせて操作することにした。
 着替えを促されたケイラは、なるべく暖かそうな衣装を狙って頭上を見上げ続けている。
「ちょっと待って! 暖かそうなヤツ、暖かそうなヤツ……ハッ!?」
 その時、ケイラの視界に、モコモコなファーがふんだんに用いられてそうな衣装が横切っていった。
「それだ~っ! とりゃあ!!」
 猫科特有の跳躍力で衣装に飛び付くと、彼女もまた全身が発光を始め、衣装チェンジタイムに突入する。
「さーて、あたしがゲットしたのは何かしら? って、もう光が収まってきた?」
 やけに早い着替え時間に首を傾げるが、この時は特に気にせずに着替えを完了した。
「あらっ? これは、もふもふファーの~」
 超極小面積の生地の上に付いたもふもふファーの水着だった。
「マイクロビキニ!? 死にそう! ほぼ裸よ凍死しちゃう!」
「葉っぱ一枚と変わらねーよな、それ?」
「うう、数秒前の自分の発言を取り消したい!」
 デンジャラスな野獣めいたマイクロビキニは、ケイラのスレンダー過ぎる体型を余すことなく露出してしまう。
「慎ましいスリム体型が晒されて心も凍死だわ……」
「でも光のおかげで、着替えは恥ずかしくなかったのは救いだったなー?」
「バカ! トーゴのバカ! というか着替えシーンを凝視してたなんてサイテー!」
「いや凝視してねーし! 全裸なんて見てねーし! てか八つ当たり酷くね?」
「全裸見られた! うわーん! トーゴが私の全裸見たぁー!」
「見てねーし!!!! って蹴んなって!」
 ケイラが鹿村の尻をゲシゲシ蹴り飛ばしていると、茂みの一画が揺れた。
 敵か?
 身構えた2人が振り返る。
「待って! ボクは味方だよ!」
 茂みから、おずおずとオルヒディが姿を見せた。
 その仮装に、ケイラとオルヒディが声を揃えてしまった。
「「コスプレ衣装が被ってるーっ!?」」
 オルヒディもまた、デンジャラスな野獣めいた、超極小面積生地のファー付きマイクロビキニを着込んでいた。
 恐るべし、7歳児!
「まじか。ネタってかぶるんだなー」
 鹿村が呑気に2人を見比べる。
「相手も同じような体型で良かったな、ケイラ!」
「はぁぁぁ?」
 カチーンと来たケイラが、鹿村の尻を強めに蹴った。
「それ、どういう意味なのかな?」
「やめようよ、今は喧嘩している場合じゃないから……」
 オルヒディは、ケイラと鹿村の喧嘩に割って入って仲裁を始めた。
「ボクもまさか、同じ衣装を選ぶ人がいるなんて思わなかったけど……ボクの場合は、よく衣装を確認せずにキャッチしたのが悪いんだよ……」
 恥ずかしさでモジモジと身を捩るオルヒディ。
 その様子は凄まじくあざとく、可愛い。
「ボク、男の子なのに、こんな格好、すごく恥ずかしいけど……オウガを倒すために3人で頑張ろう?」
「男の娘……だと……!」
 ケイラの心に精神的ショック!
 そこへ鹿村が追い打ちをかけた。
「なんだ、ケイラは小さい男の子と同じ体型か。だったら目の毒……でもないか」
「ム! ちょっとキミ嘘でも目の毒って言いなさいよー!」
 ケイラのローリングソバットが、鹿村の茶釜にクリーンヒット!
 鹿村はごろんっと地面に転がってしまう。
「ぎゃッ! ってーな! いや茶釜のおかげでそこまで痛くねーけど! いきなり蹴るなよ!」
「うっさいバーカ! そのまま転がってなさいよ!」
「あ、あの! 人形達がこっちくるよ!」
 オルヒディの忠告で、ようやく3人は包囲網を狭められていることに気が付いた。
「ボク、先にいくね? おいで! 『ボクが考えた最強の妖獣(ウルマオスヘルト)』!」
 オルヒディはユーベルコードで召喚した無敵のもふもふ巨大モーラットヒーローの身体の潜り込み、暖を取りながら人形達を蹴散らし始めた。
「あったかーい! あ、戦闘は任せたよ」
 モーラットヒーローは召喚者の願いを叶えるため、人形達相手に無双を開始!
「あーもー! こっちもガチキマイラで噛み付いてやるんだから!」
 ケイラもフラワーダガーを片手に、ネコマタの2本の尻尾の先にライオンの頭を生やし、人形達を切り裂き、噛み付いて、その動力源を吸い尽くしてゆく。
 一方、鹿村は雪原に横たわったまま、虚無を感じつつユーベルコード『虚蜂』を発動。
「七匹の大型蜂と一緒に毒を仕込んだ苦無を念動力で飛ばしてっと……」
 人形達を次から次へと毒殺・刺殺してゆく鹿村。
「しっかし、なんでケイラはあんなに怒ったんだろうな……?」
 鹿村が、乙女心を理解するのは、まだまだ先の話のようだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『スノウ・ブライニクル』

POW   :    絶対零度の大狐
【氷柱の魔法陣】から、【全てを氷河に包み込む絶対零度】の術を操る悪魔「【絶対零度の大狐】」を召喚する。ただし命令に従わせるには、強さに応じた交渉が必要。
SPD   :    ブライニクル・キャノン
詠唱時間に応じて無限に威力が上昇する【凍結】属性の【巨大な氷柱】を、レベル×5mの直線上に放つ。
WIZ   :    ブライニクル・ストーム
【無数の氷柱による連続攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠凍雪・つららです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 人形達を蹴散らした猟兵達は、森を抜けた先に氷の館を発見した。
 そこから凄まじい冷気が発せられており、この世界の凍結の元凶がこの場所であると瞬時に悟った。
 意を決して館に踏み入れると、そこは思いっきりハロウィンパーティーの準備中であった。
「こら、まだパーティーの準備中だよ。それとも手伝ってくれるのかな?」
 個体名『スノウ・ブライニクル』……絶対零度を司る九尾の狐型オウガだ。
 スノウは猟兵達へ割と気さくに声を掛けてくると、館の奥へ視線を移した。
「手伝ってくれるなら、料理を作ってほしいだけど? 出来れば熱々のやつ。ほら、スノウがいると全てがどんどん凍っちゃうから、熱々の料理が食べたいんだよね」
 スノウは有無を言わさぬ態度で猟兵達に料理をせがんでくる。
 ……その意思は、ユーベルコードとなって猟兵達に襲いかかりそうな勢いだ。
「スノウのお屋敷のハロウィンパーティーなんだから、猟兵だってスノウの言うことを聞いてもらうよ。勿論、簡単には完成させたりしないけどもね? スノウ、熱々なものを見ると、どうしても凍らせたくなっちゃうんだ。でも料理は熱々が一番だよね、そうでしょ?」
 スノウの周囲に氷柱やダイアモンドダストが生み出され始める。
 うかうかしていたら、猟兵達が凍えそうだ。
「てことで、キッチンの器具と材料は好きに使っていいから。あ、食材までは凍結させていないから、安心してね。あとスノウを攻撃しようにも、この国でのスノウは完全無敵、ダメージは喰らわないよ。残念だったね」
 そう言うと、スノウは飾り付けへと戻ってゆく。
 ……だが、猟兵達は知っている。
 熱々な料理をスノウが食べると、徐々に眠くなって、最後には熟睡して無敵効果が切れることを!
 そのためにも、スノウの攻撃を耐えつつ、熱々な料理を作って飯テロをせよ!
鹿村・トーゴ
ケイラ(f18523)と
折角二人組で来たんだし攻守分担で行くか?
え、なに
ケイラも作りたいん?んじゃオレは料理以外を
……解ったよー
オレもなんか作りますよ
ケイラが調理中はオレが防衛に回る
UCで喚んだ妖刀を柵状に立て攻撃を【武器受け】で凌ぐ
敵が寝て攻勢に出るときは妖刀を7連続【念動力で投擲】して刺突させるよ

料理番の時も防衛時同様に妖刀の柵は置いとく
ま、ケイラも一応女の子だしー?
メニューは具沢山の豚汁ね
オレもやし沢山入れンの好きー
木綿豆腐が煮崩れるぐらい具を放り込むよーちくわとか大根とか白菜人参豚こま
あ、食べる前に七味をちょっと
そんで炊き立て白ご飯と個人的に好きなしば漬け
ふーふーして食えよな

アドリブ可


ケイラ・ローク
トーゴ(f14519)と参加

ハロウィンて楽しいものでしょ♥
ねえねえそれぞれ何か作ろうよ♪
キミがお料理中はあたしがUCで巨大猫又になって守ってあげる♪身を盾にするなんて献身的…!

は?
一応って何かな?さっきの寒い森でもキミあたしの事ディスったわよね正真正銘レディなんですけど!?
気を取り直して~パフォーマンス込みであたしが作るのはピザよ♥
チーズにサラミ、バジルソース、トマトにチキンステーキ
で更にチーズマシマシ~被ったらグラタンに変更~
ちょっと焦げ目がつくぐらいが好き!あとパンプキンスープもね♪
生クリームと裏ごし南瓜がとろりとしていいでしょ

攻撃は野性的に巨大猫又の爪でひっかき、牙でかみつき、体当たり!



 氷の館の中の炊事場で猟兵達は早速、氷のオウガであるスノウ・ブライニクル打倒のための料理を作ることにした。
 猟兵達は大きく分けて3班に分かれて行動を開始する。

 そのうちのひとつである鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)とケイラ・ローク(トパーズとアメジスト・f18523)のコンビは、やけに互いに身を寄せ合いながら作業を進めていた。
「ねえトーゴ? ハロウィンて楽しいものでしょ❤」
 ケイラの猫撫で声が鹿村の耳元に囁かれる。
 鹿村はこそばゆそうにぶるるっと身震いをすると、眉尻を下げたまま言葉を返した。
「う、うーん? オレはケイラの格好が寒そうで気が気でないんだけどな?」
「うん、超寒い❤ 死ぬ❤」
 マイクロビキニの生地にファーが付いた、デンジャラスでビーストなケイラのコスプレ衣装。つまり、ほぼ全裸だ。
 ケイラは今、ヤケクソ気味だった。
 だが、今は鹿村のコスプレ衣装……分福茶釜のモフモフな尻尾に抱きついて暖を取ることで、なんとか凍死を免れていた。。
「……って、近けーって、ケイラ?」
「むふふふ、なかなか素晴らしいモフリティの尻尾をお持ちで!」
「いや、そのままだと料理がやりづらい……仕方ねーな。オレの羽織ってる外套を貸してやるから」
 鹿村は茶釜の中でモゾモゾと身を捩ると、いつも肩に羽織ってる古い鹿皮と編布で出来たフード付きの外套をシュポーンと取り出した。
 受け取ったケイラは目を輝かせて喜んだ。
「ありがとう、トーゴ♪ 嗚呼、トーゴの温もり……❤」
「いや、頬擦りしてないで早く着たらどうだ?」
「そういうとこだぞ、トーゴってば……」
 ケイラはジト目のまま外套を羽織る。
 マイクロ水着マントの猫マタ娘というマニアックな概念が生まれてしまったが、これでどうにか互いが離れて作業できそうだ。
「それで、折角二人組で来たんだし攻守分担で行くか?」
「勿論よ、トーゴ! キミがお料理中はあたしがユーベルコードで巨大猫又になって守ってあげる♪ 身を盾にして男と守る女って、なんて献身的……!」
 自己陶酔で目をうっとりと潤ませるケイラ。
 ここでケイラは彼にひとつ提案を持ちかけた。
「ねえねえ、それぞれ何か作ろうよ♪」
「え、なに、ケイラも作りたいん? 先に作るか? んじゃオレは料理以外を……解ったよー、オレもなんか作りますよ。だからそんな目でオレを見るなって……」
「頑張って、トーゴ❤」
 ケイラは調理の準備をすすめる鹿村を背にして、ユーベルコード『三つの獣(トリプルキマイラ)』で変身できる形態のひとつ、白虎みたいなオッドアイの巨大猫又へと変身!
「あたしの中の因子はネコマタだけじゃないのよ! ……たぶん。出来る、ケイラがんばれ!」
 自身を奮い立たせながら、その身体が徐々に膨張してゆく。
 そして、完全に変身が完了すると、ピラミッドを守る聖獣がごとく、鹿村を取り囲むように寝そべってガードし始めた。
「お? ケイラの身体が冷気を遮断してくれてるのか。これは助かるな?」
 モフモフの壁に囲われた鹿村は、かじかんだ指先を解しながら調理開始。
「メニューは具沢山の豚汁ね。オレ、もやし沢山入れンの好きー」
 手際良く具材を包丁でトントンとリズミカルに刻んでは、沸騰寸前の鍋の中へ具材を投入。
 同時進行で炊飯器をセット。
「そんで、木綿豆腐が煮崩れるぐらい具を放り込むよー。ちくわとか大根とか白菜、人参、豚こまもっと。味噌は合わせ味噌が無難だなー? 赤味噌でパンチを効かせてもいいけど、具材の旨味を愉しんでもらいたいし」
 コトコトと豚汁を煮る音が、台所でメロディを奏でる。
 ふわりと出汁の香りが鼻孔をくすぐると、思わずケイラもじゅるりとよだれをすすってしまう。
「これ、絶対に美味しいやつよね!」
「まぁなー? これなら身体温まるだろ」
 2人が他愛のない会話を交わしていると、そこへやってきたオウガことスノウがうずうずしていた。
「温かいもの……こ、こここ凍らせたーい!」
 巨大な氷柱を生成したスノウは、いてもたってもいられずに鹿村へ向けて氷柱を発射した!
「その氷柱は、触れたものを凍り付かせるよ!」
「邪魔!」
 だが、ケイラの白虎パンチでぺちーんと氷柱は叩き落されてしまった。
「あーもう! 肉球がシモヤケになったー!」
「ケイラ、凍傷が酷くなる前に湯気で温めておけよ?」
「ありがとう、トーゴ♪」
「ラブラブか、君ら!」
 2人の無意識のイチャイチャに嫌気が差したスノウは、攻撃を中断してその場に居座り始めた。
「いくら無敵とはいえ、調理中に暴れんなよ……。オレの妖刀・七葉隠の柵の中でおとなしくしてろよ?」
 見かねた鹿村はユーベルコード『七刃寄せ』で、七振りに分割した妖刀・七葉隠をなにもない空間から召喚すると、スノウの周囲に剣先を突き刺して作を作って取り囲んだ。
「ま、ケイラも一応、女の子だしー? オレが護ってやらねーと」
「は? 一応って何かな? さっきの寒い森でもキミあたしの事ディスったわよね正真正銘レ・デ・ィ!なんですけど!?」
 早口でまくしたてるケイラを、鹿村は適当にあしらう。
「はいはい、小言は任務が終わったら聞いてやるから。ほら、ケイラの番だぞ?」
「うぅ~、あとで覚えてろ~?」
 ケイラは変身を解除すると、鹿村と攻守交代。
「気を取り直して~あたしが作るのはピザよ❤」
 ケイラはすぅ……と息を吸い込むと、急に歌い始めた。
 これは……ミュージカルクッキング!

 ♪初めは小麦粉を捏ねて~ダマに気を付けて水は数回に~分けて言えるのがポイント~♪

 パフォーマンスでスノウの攻撃させる気を紛らわす作戦なのだろうか。
 だが、それは効果てきめんのようだ。
「なんか歌い始めた! ハロウィンっぽい!」
 ワクワクするオウガに気を良くしたケイラは、この勢いに乗って歌い続ける。

 ♪生地を伸ばしてぐーんぐんっ! 大きく伸びるよぐーんぐんっ!♪
 ♪伸び~た生地を丸くして~ どんどん乗せよう、トッピング!♪
 ♪チーズにサラミ、バジルソース、トマトにチキンステーキ!♪
 ♪更にチーズマシマシ~ で、余ったチーズでグラタンもどうぞ♪

 唄って踊ってオーブンへピザをINッ!
 焼き上がるまでの間、アドリブで乱舞するケイラ。
 もはやここは、ケイラのワンマンステージ!

 ♪ちょっと焦げ目がつくぐらいが好き! あとパンプキンスープもね~♪
 ♪生クリームと裏ごし南瓜が とろ~りとしていいでしょ♪

 しかし、スノウはやっぱり黙っていられなかった。
「熱々の物体! カチコチに凍らせたい!!」
 再び氷柱を生成し始めるスノウ。
 だが、今度は鹿村が素早くこれに反応した。
「おとなしくしてろって」
 床に刺さった刀を一本引き抜くと、氷柱へ向けて鹿村が弾けた。
 そのまま大上段から刀を振り下ろすと、なんと氷柱が真っ二つ!
「ああ! 此処まで大きくするのにすっごく時間掛かったのに!」
 ふてくされるスノウ。
 再び氷柱を生成しようにも、その前に料理が完成してしまう。
「はーい、ピザにグラタン、パンプキンスープの完成よ! 凍らせちゃダメだからね?」
 あったかパーティフルコースが、スノウの前にどどんとお目見え!
「そのとおりだなー? ほら、豚汁も食えよ? あ、最後に七味唐辛子を掛けてっと……。これで完成だ。白飯も炊けたから、よそっておくな?」
 豚汁に辛さと香りと彩りが加わり、スノウはゴクリと喉を鳴らした。
 いかにも白飯に合う豚汁である。
 そして箸を手に取り、両手を合わせて一礼する
「いただきます」
 まずは豚汁。
 具沢山の豚汁は、飲むというよりもはや食べる感覚だ。
「具材の味と旨味が、お味噌とお出汁と混ざり合って、なんて奥深い味わいなんだろう! 具材もたくさん、かつ大きめで、食感も楽しいね。なにより、最後の七味唐辛子の香りが食欲を更にそそってくるのがにくい演出だと思うよ」
 氷結の九尾狐は、ハフハフと息を漏らしながら豚汁を味わってゆく。
 その様子に鹿村がグラスに水を汲んで持ってきた。
「おい、大丈夫か? ふーふーしてから喰えよな?」
「大丈夫だって。それにこれは熱々のまま食べるのが粋なんだよ」
 スノウは白米と豚汁を交互に口の中へ掻き込み、その味に思わず顔を綻ばせてしまう。
「オブリビオンが粋を語るとはね……?」
 ケイラは目を丸くして驚いている。
 そんなケイラの料理へ、スノウが手を伸ばしてゆく。
「む、こっちは洋食だからナイフとフォークだね。どれどれ? ……あむ、うん、うん! このピザ、焼き加減がスノウの好み! やっぱりチーズはきつね色に焦げてるくらいが一番美味しい!」
 ピザを流し込むべくパンプキンスープに口を付ける。
「ん~濃厚! 丁寧に南瓜を裏ごししたから、ここまでの滑らかさが実現できたのかな? いい仕事してるね?」
「なんかこの子、めちゃくちゃ褒めてくれるわ!」
 ケイラは目の前のスノウが敵であることを忘れるくらい、料理を褒められてご満悦。
 そして熱々のグラタンを口に運ぶスノウ。
 次の瞬間、思わず天を仰いだ。
「こんなの、ズルいって……。ピザ、スープ、グラタンの流れって卑怯だって。絶対誰もが好きなモノばっかだし……!」
 大満足のスノウの口調が、次第にしどろもどろになってくる。
「むにゃむにゃ……美味しい料理を食べたら、まぶたが……重たく……」
 これは、よもや?
「もう満腹なのか? だったら、ケイラ!」
「反撃開始よ!」
 ケイラは再び巨大猫又に変身すると、スノウへ強烈なタックルをぶちかました!
 そのまま後方へ吹っ飛ぶスノウへ、鹿村は念動力で七振りの刀を浮遊させ、そのまま矢の如く撃ち放つ!
「全身を突き刺してやる!」
 鹿村が勝利を確信したまさにその時だった。
 ガキッと7つの刀が、氷柱によって弾かれてしまったのだ。
「危なかった……! すぐに目を覚まさなかったら、スノウは死んでたよ……」
 スノウは攻撃を食らう直前に目を醒まし、無敵モードを継続させていたのだ。
 故に、2人の攻撃は通じていない!
「ちっ、惜しかったなー」
 鹿村は放った刀を念動力で回収しながら悔しがってた。
 これにケイラが慰めの言葉を送る。
「でも、ヤツの胃袋は確実に圧迫させてやったわ! 次の猟兵に期待しましょ?」
「だなー。ってことでさ、せっかくだし、俺達も食べないか?」
「……賛成っ!」
 鹿村の誘いにのったケイラは、寒さを忘れて熱々な料理の数々を思う存分堪能するのだった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

杉崎・まなみ(サポート)
まなみは正当派後衛職のヒロインタイプです
聖職者教育を受講中の学生ですが、特に依頼に縛りは無く、どのような依頼でも受けられます
但し人並みに気持ち悪いモノ、怖いものとかは苦手で遭遇した際は多少なりとも嫌がる仕草が欲しいです
甘いモノ、可愛いモノが好きで少し天然な所があります
初対面の人でもあまり物怖じせず、状況を理解して連携を取る動きが出来ます
シリアス2~3:ギャグ7~8割くらいのノリが好みです
ただシリアスもやれますよー

UCは攻撃魔法と回復魔法どちらも使えます
状況に応じて、好きなのを使ってください

その他、細かい部分はMS様にお任せします


鯉澄・ふじ江(サポート)
怪奇ゾンビメイド、16歳女子
誰かのために働くのが生きがいの働き者な少女
コイバナ好き

自身が怪物寄りの存在なので
例えどんな相手でも対話を重んじ問答無用で退治はしない主義

のんびりした喋り方をするが
これはワンテンポ間をおいて冷静な判断をする為で
そうやって自身の怪物としての凶暴な衝動を抑えている
機嫌が悪くなると短文でボソボソ喋るようになる

ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し
自身の怪我は厭わず他者に積極的に協力します
また、例え依頼の成功のためでも
自身の矜持に反する行動はしません
 
何でもやります、サポート採用よろしくおねがいします!

(流血、損壊系のグロ描写やお色気系描写もOKです)


オルヒディ・アーデルハイド
デンジャラスなビーストの衣装にエプロン
ほぼ裸エプロン状態でゴーグルを着用して料理をしている
作っている料理は鮮やかな深紅色をした煮込みスープ
ぐつぐつとマグマのように沸騰して泡立っている

完成したよ、召し上がれ

完成した料理は
デンジャラス旨辛ボルシチ
食べてビックリ激辛料理

さて、その材料を振り返ってみよう
謎肉
ドラゴン・ブレス・チリ(ドラゴンの息の唐辛子)
キャロライナリーパー(死神と呼ばれる唐辛子)
トリニダード・スコーピオン・ブッチ・テイラー(赤い悪魔と呼ばれる唐辛子)
その他、野菜や調味料

冷めても身体からあったまる様に激辛にしたよ
別に自分で食べるわけじゃないから通常の3倍の辛さで赤く仕上げたよ



 続いての調理班……といっても、オルヒディ・アーデルハイド(アリス適合者のプリンセスナイト・f19667)だけの班の元へ、スノウが妨害をしにやってきた。
「あ、次はボクの妨害だね?」
「そのとおりだよ! 見るからに熱々な料理だね! これは凍らせがいがありそうだ!」
 スノウは目を輝かせながら、ユーベルコードで氷柱の魔法陣を描くと、そこから絶対零度を司る大狐の悪魔を召喚してみせた。
「ねぇ、悪魔? あれを凍らせてみたいと思わないかな?」
「どれどれ? ふーむ?」
 大狐は、オルヒディの鍋の中を覗き込む。
 だが、次の瞬間、大狐は目頭を押さえたまま、台所の床をゴロゴロと左右に転がり始めたではないか。
「ぎゃあああぁーっ! 目が! 目が痛い! 何だこの刺激臭!?」
「特殊な割合で配合した、ボク特製のチリペッパーだよ」
 そう告げたオルヒディの格好を見てみよう。
 まず、ハロウィンのコスプレ衣装で着込んだ『デンジャラスなビーストのマイクロビキニ』。
 その上に『うさチャンのエプロン』を羽織っているというマニアックな格好であった。
 というか、ほぼ裸エプロンである。
 だが、オルヒディの顔は、いかついゴーグルとマスクで完全に覆われていた。
 それもそのはず。
 鍋の中は深紅一色。そこから凄まじい刺激臭が立ち込めているからだ。
 迂闊に顔を鍋に近付ければ、目や鼻や口内といった粘膜にダメージが入って、瞬時に戦意喪失してしまうだろう。
「いやいや! これは無理だから! 帰らせてもらうぞ!」
「え、ちょっと、待ってよ!」
 スノウの制止の声を振り切った大狐の悪魔は、目の前から逃げるように霧消していった。
 そんなスノウへ、サポート猟兵2名がオルヒディの壁となって立ち塞がった。
「あの、私、後衛職なんですけど……なんで壁に?」
 杉崎・まなみ(村娘・f00136)は困惑しながらも、メイスを掲げて臨戦態勢に移る。
 彼女の言葉に、怪奇ゾンビ人間のパーラーメイドな鯉澄・ふじ江(縁の下の力任せ・f22461)が答えた。
「前門の氷の九尾狐と~、後門の得体のしれない~真っ赤な汁~。どっちを相手したほうが~御しやすいかと考えれば~断然、前門でしょぉ~?」
「なんて酷い選択肢なんでしょうか……!」
 杉崎は思わず天井を仰いだ。
 この状況、神は寝ているのだろうか?
 神職者である杉崎は、後ろで煮え立つマグマのような液体からの香りに背筋をゾクゾクさせていた。
 あれを飲んだら、人間は死ぬ。
「とはいえ~、お台所で暴れるのは~良くないですぅ~」
 鯉澄は間延びした口調でスノウの前にでんっと仁王立ち。
「ここは~通さないよ~?」
「スノウの邪魔をしないでくれる?」 
 サポーター2人へ、氷柱のミサイルを生成して発射してみせるスノウ。
 だが、鯉澄は瞬時にユーベルコードで帝國軍服風メイド服に着替えると、冴え渡る戦闘知識を発揮する。
 氷柱ミサイルの中で、最初に撃ち込んできたモノを弾き返してみせたのだ。
 こうすることで、後続の氷柱と衝突し、弾かれ、それが更に後続の氷柱にぶつかり、猟兵達を避けるように氷柱が破砕されていったのだ。
 勿論、切り詰め拳銃で撃った散弾も効果大だ。
 目の前に迫る氷柱は、この散弾で吹き飛ばしてみせたからだ。
 対して、杉崎は氷そのものをユーベルコードで別の物体に変質させてゆく。
「地の神よ……かの物を慈愛で導いてください……」
 飛来する氷柱が、神の悪戯によってブーブークッションへ変換されてしまった。
 氷は無機物故に、数多のミサイルとして放たれた氷柱群が、あっという間んブーブークッションの山へ姿を変えてしまったのだ。
「これで(ブー!)氷柱は(ブー!)無力化(ブー!)されました(ブー!)って、動くたびにクッションを踏んで音が鳴ってしまいます!」
 それはとても愉快な光景となり、僅かなシリアスが今、死滅した。
 そうこうしているうちに、オルヒディの真っ赤なスープが完成した。
「はい、完成したよ、召し上がれ」
 オルヒディ、ゴーグルとマスクをしていても分かる天使の笑顔をスノウに振りまいた。
 器の中には、ドロっと煮込まれた赤い汁がなみなみと注がれている。
「……キミ、ハロウィンの趣旨、分かってる?」
「トリック・オア・トリートだよね? だから、ボクが作ったのはデンジャラス旨辛ボルシチ!」
「は?」
 スノウは目を細めて耳に手を当てた。
 仕方がないので、オルヒディはもう一度、料理名を教えてあげた。
「これ、デンジャラス旨辛ボルシチだから」
「聞き間違いじゃなかったー!」
 頭を抱えるスノウ。
 これにオルヒディが得意げに料理の解説を始めた。
「冷めても身体からあったまるように激辛にしたよ。別に自分で食べるわけじゃないから、通常の3倍の辛さで赤く仕上げたよ」
「今、一番ありがたくない善意!」
 スノウが思わずツッコミを入れてしまう。
「てか、何を入れたら此処まで赤くなるの?」
「よく聞いてくれたね!」
 オルヒディが待ってましたとばかりに、このスープのレシピをまとめたフリップボードを提示。
「それでは、このスープに何が入っているのか、一緒に見てゆこうね」
「え、いきなりなにか始まった?」
 スノウは戸惑うが、オルヒディはそんなスノウをガン無視して進行してゆく。

 ◎謎肉
 ◎ドラゴン・ブレス・チリ(ドラゴンの息の唐辛子)
 ◎キャロライナリーパー(死神と呼ばれる唐辛子)
 ◎トリニダード・スコーピオン・ブッチ・テイラー(赤い悪魔と呼ばれる唐辛子)
 ◎カイエンペッパー(メッチャクチャ辛い粉末)
 ◎その他、野菜や調味料」

「これが食べてビックリ激辛料理『デンジャラス旨辛ボルシチ』の全容だよ。辛さはタバスコ換算で1,000本前後だよ」
「胃の中が燃えちゃうってば! 絶対食べない!」
 スノウは実食を拒否する。
 しかし、ハロウィンの国では、提供された料理は絶対に口にしてしまう不思議の国ならではの『作法(ルール)』が存在する。
 そしてオウガのスノウも、この『作法(ルール)』に縛られているのだ!
「いや! いやだ! でも身体が勝手に! んんんんん~ッ!!!!」
 結局、不思議の国のルール強制力には抗えず、スノウは全部飲み干した後、床をドタバタと跳ね回るように暴れまわっていた。
 辛さが酷くて眠るようなことはなかったが、オルヒディの激辛料理は、スノウへ痛烈な精神攻撃を与えたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

コミュニ・セラフ
【パンドラ】いやー。人の事は言えぬがに!笑わせて貰いましたに。ジークさんが守ってくれるじゃろうから私も何かあったかいものを作るべきかに。ふむ、この肉襦袢はスモウ・レスラーの仮装ですからに。なれば、鳥豚豆腐、そして野菜たっぷりの塩鍋にしてやろうかに。ちゃんことも言うかに。 鍋の汁など見えず、ぷりぷりの鳥ももとさっぱりながらジューシーな胸肉、そして桃色の豚、厚切りの木綿豆腐が鍋の蓋代わりにと埋め尽くし。野菜は鍋の底、そして蓋の掴みのようにてんこ盛りですに。さぁ、食うてみるに! それがこの世最後の労い。さぁ地獄の鬼に感想を伝えるに。 豪金棒で殴…と見せかけてそのままUCを使って昇天させてやるに!


ジーク・エヴァン
【パンドラ】
ううっ、なんでよりによって虎メイドなんて女装なんだ?
寒波のせいでスカートとかがヒラヒラするし、普通に恥ずかしい…。
相手は随分と変わった性質を持ってるな
それに完全無敵を称する相手だ
人々を守る騎士として、負けられないな

璃玖さんとコミュニさんが料理するみたいだ
メイドナイトだけど俺は料理できないからね
でもあいつが邪魔してくるなら、俺が二人を守ります!
【巨竜退ける砦盾】を数枚操って二人を盾のかまくらで囲い、相手の氷柱、特にあの巨大なのは砦盾50枚重ねに加えて結界術を多重詠唱して、俺の最大防御で防ぎきる!
相手の力がどんなに強くても関係ない!限界突破だ、俺!
(たなびくスカートに気付かない)


神奈木・璃玖
【パンドラ】

飛んできた衣装がバッタのバッターって、ただの駄洒落じゃないですか
お二人はまだ仮装っぽいからよかったですよね
これ以上の恥は勘弁願いたいので早く着替えたいです

さて、これだけ寒いと焼き芋が食べたくなりますよね
ついでに油揚げも焼いておきましょう、美味しいですからね
オウガさんが邪魔してくるようなら、選択UCの狐火で撃退します
はっ!これはもしや、敵を近づけさせないと同時に暖が取れ、ついでに焼き芋も出来て一石二鳥…いえ、三鳥なのでは?
出来上がったらオウガさんが食べてくれるようですし、どんどん作りましょう

それにしても、この館の主のオウガさんが九尾の狐とは
私の本性も同じですから妙に親近感がわきますよ



 そして最後の班。
 コミュニ・セラフ(女傑なる狂天使・f12530)、ジーク・エヴァン(竜に故郷を滅ぼされた少年・f27128)、神奈木・璃玖(九尾の商人・f27840)の3人は、それぞれの仮装を見に付けたまま調理し続けていた。
「いやー。人の事は言えぬがに! 笑わせて貰いましたに!」
 ヨコズナキングなスモウ・レスラーの肉襦袢を纏ったコミュニが白菜を包丁でザクザク刻んでいる。
「ジークさんが守ってくれるから、安心して私も調理できますに!」
「コミュニさんの肉襦袢、見た目はともかく、温かそうですよね……」
 ジークは虎耳・虎尻尾が生えたメイド服の上に、普段着込んでいるプレートメイルを装着するという、タイガーメイドナイト状態であった。
「ううっ、なんでよりによって虎メイド……? なんで女装なんだ? 寒波のせいでスカートとかがヒラヒラするし、普通に恥ずかしい……」
 濃紺の裾が広がったスカートは、きちんとペチコートやらパニエやらドロワーズで完全武装されている徹底ぶりだ。
「この格好になって、ひとつ勉強になったことがあるんですよ。スカートって、こんなにスースーするんですね……」
 実はジーク、先程からずっと両膝をガクガクと振るわせていた。
「今、結構この下に着込んでますけど、絶えず冷たい空気が足元から入ってくるんで下半身が冷えてくるし、タイツが恋しくなってきます……。これからスカート穿いてる女性に出会ったら、俺、同じ痛みが分かち合える気がします……」
「いや……それが分かる時点で、女装への理解度が深まっている証拠ですよ? ジークさん、戻ってきて下さいね?」
 眼鏡のブリッジを中指で押し上げた神奈木は、サツマイモと南瓜を丁寧にアルミホイルで包み続けていた。
 そんな神奈木の仮装は、バッタの姿をした野球の打者(バッター)であった。
「というか、私へ飛んできた衣装がバッタのバッターって、ただの駄洒落じゃないですか。お二人はまだ仮装っぽいからよかったですよね。個人的にこれ以上の恥は勘弁願いたいので、できるだけ早く着替えたいです」
「でも今の神奈木さんは、何を言ってもフラグになりそうだに……」
「これ以上、私に何を強いろと……?」
 コミュニの言葉に、神奈木の顔が引きつる。
「今以上のおもしろ要素に遭って堪りますか。私は調理の下準備で忙しいので、ここから無言で集中しますよ」
「ちょっと待つに!」
 唐突にコミュニが制止を入れた。
 たっぷんたっぷんとお腹を揺らしながら、コミュニが神奈木へ歩み寄ってきた。
「……何でしょうか?」
「そういえば、背番号って何かなぁ~って気になってたのん。そのスタジアムジャンパーにはどこも明記されてないので、ちょっと脱いでもらっていいですかに?」
「確かに、野球選手なら背番号がってもおかしくないですね」
 コミュニの発言に、ジークも興味津々だ。
 これに神奈木は一瞬躊躇うが、それでも彼女の要望に応えるべく、スタジャンを脱いでみせた。
「私自身は背中が見えませんので、何番なのかを教えてくれませんか?」
「ありがとうだに! どれどれ……ってぶっふぉッ!」

 ♪でで~んっ!
 \コミュニ、アウト~!/

「こんなのずるいですに……!」
 笑いを堪えるべく、必死にお腹に手を当てて小さく丸まるコミュニ。
 その様子を訝しがりながら、ジークも背番号を覗き見た。
「ぶっ、くすくす……あっははははは! これは駄目だー!!」

 ♪でで~んっ!
 \ジーク、ケツ氷柱!/

「なんで!? ここはケツバットやタイキックの場面じゃないんですか!?」
「スノウはケツバットもタイキックも両方できないから、代わりに氷柱でケツを刺すね」
「努力するベクトルがおかしくね????」
 ジークが疑問の声を上げた直後、スノウが問答無用で巨大な氷柱をジークのケツに向けて発射!
 更に、遅れてコミュニへ小さな氷柱ミサイルを連射!
 このままでは、メイド服のジークの色々とお見せできない光景が実現してしまう!
「くそっ! なんかコミュニさんの分まで氷柱が飛んできてるんですけど! 色々と理不尽過ぎる! 璃玖さん、どうしてくれるんですか!」
「私のせいっ!?」
 ショックで神奈木の眼鏡がずり落ちた。
 やむなくジークはユーベルコードで防御!
「来たれ! 竜の一撃を受け止めし鉄壁の軍勢よ! 我と共に、集いて竜の進撃……じゃなかった、俺のケツに殺到する氷柱を弾き返せ! 『巨竜退ける砦盾(フォートレス・アイアス)』ッ!!!」
 79枚の巨大な盾を召喚すると、コミュニと神奈木、そして自分自身を氷柱と吹雪から守るようにすっぽりと覆い尽くしてゆく。
「あの巨大な氷柱は砦盾50枚重ねに加えて結界術を多重詠唱! 俺の最大防御で防ぎきる! しかも狙ってくるのは俺のケツ……つまり背後だ! お前は馬鹿丸出しだ、オウガ! 狙いが単調すぎるぞ!」
 ガキイィィィンッと氷柱と金属盾が激突する音が台所に鳴り響いた。
「よし! 受け止めたぞ! あいつが邪魔してくるなら、俺が二人を守ります! 相手の力がどんなに強くても関係ない! 限界突破だ、俺!」
 ジークが胆力を籠めて中腰になるたびに、吹雪でスカートがたなびき、捲れ上がる!
 コミュニと神奈木の視界に、絶えずマニア受けしそうな絵面が視界に入ってきた。
 SAN値チェックです。ダイスを振って下さい。
「今のうちに調理再開だに!」
 SAN値チェックを乗り切ったコミュニが土鍋に切った具材を投入してゆく。
 だが、今度は神奈木がその手を遮った。
「あの、私の背番号、そんなに面白かったですか?」
 その表情は若干、鬼気迫る雰囲気で尋ねた。
 どうやらSAN値チェックに失敗して、正気度が削れたようだ。
 コミュニは必死に笑いをこらえつつ、キチンペーパーの切れ端に神奈木の背番号を書き記して渡した。
「これ……ですに」
「なん……ですって……っ?」
 神奈木は思わず絶句した。
「バッタのバッターなのに……背番号は『175』……『イナゴ』ですって?」
「「ぶっふぉッッ!」」

 ♪でで~んっ!
 \2人とも、絶対零度!/

「なんでそんなシリアスっぽく言うんですか、璃玖さん!」
「状況が悪化したに! 責任取ってくださいに!」
「いや、私は何も悪くないですから! って、分かりましたよ!」
 ヤケクソで盾の隙間から顔を出す神奈木は、絶えず飛来してくる氷柱を狐火で焼き払ってゆく。
「なんか私、久々にキレそうです。ええ、スノウさんとかおっしゃいましたか? 私をキレさせるなんて大した傑物であり愚物ですよ。そのまま焼け死んで下さい!」
 80個の狐火を合体させ、超巨大火の玉として氷柱を次々と飲み込ませてゆく神奈木。
 極寒の台所に突如として現れた熱源に、スノウは思わず飛びついた。
「炎! 熱! 熱々は凍り付かせたい!」
「させるものですか! 骨まで炭化させてあげましょう!」
「無駄だよ。今のスノウは無敵だから、炎で炙られても火傷ひとつすら負わないよ」
「ならば死ぬまで焼き付くまでです! ジークさん、守りは継続して下さいね!」
「了解です! って急にシリアスになりましたね?」
「ギャグとシリアスの空気の温度差で風邪を引きそうだに……」
 神奈木の発する狐火の熱で鎧が温められたジークは、先程よりも機敏に守りに対応できるようになった。
「相手は随分と変わった性質を持ってるな。熱源に反応するのか。それに完全無敵を称する相手だ、人々を守る騎士として、俺も負けられないな」
「そういえば、ジークさんは料理しないのですに?」
 丁寧に出汁を取り続けるコミュニの質問に、ジークは首を横に振った。
「メイドナイトだけど俺は料理できませんから。って、それは……もしや、ちゃんこ鍋ですか?」
 土鍋の中で、出汁と具材が渾然一体となるべくコトコトと煮込まれてゆく。
 コミュニは不敵な笑みを浮かべていた。
「ふむ、この肉襦袢はスモウ・レスラーの仮装ですからに。なれば、鳥豚豆腐、そして野菜たっぷりの塩鍋にしてやろうかに。確かに、ちゃんことも言うかに。鍋の汁など見えず、ぷりぷりの鳥ももとさっぱりながらジューシーな胸肉、そして桃色の豚、厚切りの木綿豆腐が鍋の蓋代わりにと埋め尽くし。野菜は鍋の底、そして蓋の掴みのようにてんこ盛りですに」
「聞いているだけでお腹が減ってきますね……。でもハロウィンに関係ないのでは?」
「ジークさん、鍋は美味ければそれでいいですに!」
「なんと、本日の至言ですね……!」

『鍋は美味ければそれでいいですに!』
           ――コミュニ・セラフ

「なんでエコー付きでリピート再生したんですか! しかもいい感じの名言っぽく! UDCアースの国営放送でやってそうなドキュメンタリー番組じゃないんですから!」
 スノウと割とシリアスにバトっていた神奈木はツッコミも冴え渡っていた。
 そして、あることに気が付いてしまう。
「はっ! これはもしや、敵を近づけさせないと同時に暖が取れ、ついでに焼き芋も出来て一石二鳥……いえ、三鳥なのでは?」
 ここで神奈木は、アルミホイルで包んだサツマイモと南瓜を狐火の中へ次々と投入!
 生焼けにならないように火加減調節しつつ、出来上がったものが戦闘中のスノウの目の前に転がり落ちていった。
「わぁ! 焼き芋と南瓜の丸焼き! いただきます! あちちっ!」
 戦闘そっちのけでぺりぺりと熱々の銀の膜を剥がしてゆけば、ホックリと仕上がった熱々の焼き芋と焼き南瓜が顔を出す!
「皮をよく洗ってありますので、そのままかぶりついて下さいね?」
 神奈木の言葉通り、焼き芋を皮ごとかぶりつくスノウ。
 その時、スノウに電流が走る。
「これは――安納芋、だとぉ!?」
「御名答です。糖度の非常に高い蜜芋を使用しています。皮の隙間から、ベッコウ飴のような糖分が溢れているのがおわかりですか?」
「こんなに甘いなんて思わなかった……。こっちの焼き南瓜も変わってるね。すっごく甘くて中身がトロトロだよ!」
「お気に召してくださって何よりです。それから、こんなものをご用意しました」
 神奈木は更に乗っかった短冊状の黄金色の食材を差し出した。
「これは?」
 首を傾げるスノウに、神奈木はフフンとしたり顔で答えた。
「ついでに油揚げも焼いておきました、美味しいですからね」
 焼き目が付く程度に炙った油揚げに七味唐辛子を振りかけただけのお手軽な一皿。
 料理というよりも、酒のアテに近いが、醤油を垂らして食べるとこれが病みつきになるほど美味い。
「油揚げ……! スノウも油揚げ大好き!」
「それは良かったです。この館の主のオウガさんが九尾の狐と知った時、作ってみようと思いまして。実は、私の本性も同じですから、妙に親近感がわきますよ」
「そういえばキミ、妖狐だね。敵同士とはいえ、スノウも思わずシンパシっちゃうなぁ」
 拳を交えた結果、スノウと神奈木の間に、奇妙な絆が生まれつつあった。
「はいはい、そろそろ私の塩鍋も出来たので食べてほしいだに!」
 熱々の土鍋を持ってきたコミュニは、テーブルにどんっと土鍋を置く。
 蓋を開ければ、煮込まれた具材と出汁の香りが、その場にいる者たちの鼻孔を多幸感で満たしてゆく。
「さぁ、食うてみるに!」
「もう我慢できないっ!」
 スノウは箸を器用に使って、ハフハフ言いながら鍋を突き始める。
「色んな味がスープに溶け出ていて、奥深い味わいだね。スノウの凍り付いた全身も溶けてくみたいだ」
 実際、凍て付いていたスノウの服装が溶けてぽたぽたと雫になって滴り落ちている。
「せっかくだし、みんなで鍋、突きませんか?」
 神奈木の申し出に、コミュニとジークは顔を向き合わせる。
「まさか、オウガと一緒に鍋を囲むとは……」
「もうこの不思議の国でのカオスに慣れてきたに……」
 2人は色々と諦めて、スノウとともに鍋を突き合う。
 それは、お互いを敵味方と忘れるほどの和やかな時間であった。
 だが、別れの時は唐突に訪れる。
「ああ、幸せ~。スノウ、もうおねむぅ……すぴー……」
 鍋を完食したスノウは、満腹で完全に熟睡してしまった。
 つまり、無敵状態が解除されたのだ。
「それがこの世最後の労い。さぁ地獄の鬼に感想を伝えるに。このままユーベルコードで昇天させてやるに!」
 武器で殴りかかる、と見せかけ、スノウの胸倉を掴んだコミュニ。
 そして素早く首に腕を巻き付けて締め上げると、そのままスノウの首を勢いよくへし折ってみせた。
 こうしてスノウは、満腹による多幸感で満たされながら、あっけなく即死した。
 スノウが死んだことにより、氷に閉ざされていたハロウィンの国が徐々に解凍されてゆく。
「終わってみれば、イイ奴でしたね……」
 神奈木は眼鏡を外し、まぶたをこする。
「名残雪が、目に入ってしまったようですね……」
 しんみりとした空気に包まれながら、勝利した3人は帰路につくのだった。

「いや、なんでイイハナシダッタナーって感じで終わりにしてるんですか?」
「そうだに。割と今回、3人とも酷い目にあった気がするに」
「もうメイド服着なくていいですよね!」
「私も肉襦袢を捨てるに!」
 2人ともコスプレ衣装をその場で脱ぎ捨て、地面に叩き付けた。
「さあ、次の依頼を相談をするべく戻るに!」
「いや本当、虎メイドの女装って誰得だったんでしょうかね……?」
 散々文句を言いながら戻ってゆく2人の背中を、神奈木は呆然としながら眺めていた。
 そして、万感の想いで彼は呟いた。

「……もう、ゴールしていいですよね?」
「「――おかえり」」

 やっぱり、イイハナシダッタナー!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月28日
宿敵 『スノウ・ブライニクル』 を撃破!


挿絵イラスト