19
夜はお静かに

#カクリヨファンタズム

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#カクリヨファンタズム


0




●わああああああああああ
 空に浮かんだ、まるい月。
 今宵のそれは特別なのか、いつもよりも遥かに近く、大きく見える。
 黄金に輝くそれを見上げて、この世界の妖怪達は、そろって言葉を失った。
 紡がれるのは溜息ばかり。ある者は独りで、またある者は連れ合いと共に、言葉のない、静寂を味わうようなその時間。

 しかし、それが突如失われた。

「うっわあああああああ見てよ見て見て今日のお月様ものすごく綺麗じゃない!? この間のも良かったけど今夜のはまた格別って言うかやっぱり君と一緒に見られるっていう事が私には一番大事だと思えるんだ!!!!!!!!」
「え、ホントぉ!?!? とっても嬉しいいいいい!!!!!!」

●うるせえ
 軽率に滅亡の危機に瀕するのがこの世界、カクリヨファンタズムだが、今回もまたご多聞に漏れず、厄介な事態に陥っていた。
「今回は、どうやら『静』が消えてしまうらしいんだよ」
 グリモアベースに居合わせた猟兵達に、オブシダン・ソード(黒耀石の剣・f00250)はそう予知の内容を告げる。
 オブリビオンの企みによるものだろう、『静』の概念を失った世界は、常軌を逸した喧しさで満ちる、『騒音の世界』と成り果てる。普通ならば黙っていれば良いタイミングでも、口を開かずには居られなくなり、全開の音量で喋り続けることになるだろう。足の運びも腕の振りも、一挙手一投足がやたらと騒がしくなり、落ち着きとは無縁の状況が止むことなく続く。
 これを機に骸魂達も暴れ出すため、住人達は大混乱に陥って、最後には地鳴りと大風、雷が鳴り響く中、月と大地が衝突して終焉の音色を掻き鳴らすことになるだろう。
「行き着くところはそんな滅びの結末だよ。当然放ってはおけないでしょう?」
 グリモア猟兵は、肩を竦めてそう続ける。
 事態の大本になっているのは、オブリビオンと化した一体の妖怪、『黒マントの怪人』だ。それを倒すことが出来れば、奪われた『静』を取り戻すことができるだろう。
「最初はどこに居るかわからないんだけどね、暴れまわっている他の骸魂を撃破していれば、姿を現すはずだよ」
 まずは骸魂に囚われた現地の妖怪たちを救い出し、オブリビオンを撃破し、安らかで、静けさに満ちたお月見の時を奪還してあげて欲しい。
「この世界の無事は君達にかかっているんだ、頼んだよ」
 最後にそう言って、オブシダンは一同を現地へと送り出した。


つじ
 どうも、つじです。
 今回の舞台はカクリヨファンタズム。いきなり壊滅寸前になった世界を救ってあげてください。

●『静』を失った世界
 ここでは皆さんの行動すべてがやたらとうるさくなり、セリフのすべてに『!』が複数付きます。無闇に派手な音を立てて転んでしまったり、沈黙を避けるために思ってもいないことを口にしてしまうこともありますので、覚悟の上でご参加ください。
 それと、こんな状況ですので、『問い掛けを無視することはできない』と思ってください。

●フィールド
 サムライエンパイアとUDCアースが混ざり合ったような街並み。
 中心には高層ビルと五重塔のお化けみたいなのがツインタワーのように伸びており、オブリビオンもその辺りに多く発生しています。

●第一章
 骸魂により、極卒の皆さんがごめずちゃんと化して暴れています。POW、WIZ選択者には「儂のこと好き?」とか突拍子もない質問を投げて嘘を誘発してきます。SPDでは止まらない笑い声を上げたりしながら追いかけてくるでしょう。
 骸魂だけ破壊すれば、元になった妖怪を解放することができます。

●第二章
 事態の元凶である『黒マントの怪人』とのボス戦になります。
 子供達に赤・青・緑のどの色が好きかと問い、答えた者は答えた色に応じて殺される……というUDCアースの怪談から生まれた妖怪です。猟兵達に対しても同じような攻撃方法を取るでしょう。
 どの色が好きですかーーーーー!?!?!?!?!!?

●第三章
 ボスを倒すことで世界に『静』が戻ります。お月見ができますので、取り返した静けさを味わってみては如何でしょうか。
 もちろん賑やかに楽しんでいただいても構いません。

 以上になります。それでは、ご参加お待ちしています。
205




第1章 集団戦 『『地獄の獄卒』ごめずちゃん』

POW   :    ごめずちゃんは嘘がキライだぞ
全身を【地獄の炎】で覆い、自身が敵から受けた【嘘の言葉】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
SPD   :    悪い子にはお仕置きだぞ
【ごめずちゃんとの鬼ごっこ】が命中した対象に対し、高威力高命中の【武器「鬼の金棒」によるお尻ぺんぺん】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    悪い子みーつけた
自身が【対象から罪の意識】を感じると、レベル×1体の【ごめずちゃんのお友達】が召喚される。ごめずちゃんのお友達は対象から罪の意識を与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

矢来・夕立
狭筵さん/f15055
赤ずきんさん/17810
※「ッ」「ー」「!」全部OK

どいつもこいつも静かにできないんですか!
クソッオレの声もデカい!こんなんで忍べるか!忍べますね!全員うるさいんで問題ありませんでした!《闇に紛れる》!
このオレに!鬼事で!勝てると!お思いですか!片腹痛い!
生憎罪悪感とも無縁ですよ!馬鹿めそいつは残像だ!【紙技・出鯉】!
オレと狭筵さんと赤ずきんさんの三人分用意しました!今だやれ…

そこ二人で鬼ごっこしてんじゃありませんよ!
二度と喋れないようになりたいんですか!?頭と胴体のお別れをご所望でいらっしゃる!?
もういいですオレが行って斬りますんで!お前らマジで働けよ


狭筵・桜人
矢来さん/f14904
赤ずきんさん/17810

そんなデカイ声出せるなら普段からもっと声張っていやいいわうるせえ!!!
あ!火の玉!!ねえ矢来さん見ましたかアレ!
闇に紛れてる最中の矢来さんてば!!
アッヤバイ今日は無視が出来ないんだったあの人全然忍べてな……忍べてる!

いやよく考えたら質問を無視できないの便利ですね!
赤ずきんさんてスク水とマイクロビキニならどっち派ですか!!?
へ~そんな大きな声で!そうなんだ!!へぇ~~~~!!!
ってなんでそんなに怒ってるんですか危ないもの持って追いかけてこないでくださいよ!!
も~謝りますって~今度パーカーから覗くビキニの画像送ってあげまちょ待っゴメンナサイ!!!!


レイニィ・レッド
坊ちゃん/f14904
狭筵サン/f15055
*何でもOK

あーうるせぇ!
耳の近くで叫ぶの止めてくれませんかね!
何で坊ちゃんそんな騒ぎながら紛れられるんです?!
まぁいいです、有難く坊ちゃんの利用させて貰いますよ!

こんだけ騒がしけりゃ
霧雨の中の自分は見つからねェ!
雨に紛れちまえばこっちのモン!
ハイ!刻みます!

ッてか狭筵サン!
ふざけてないで真面目にやって下さいよ!

なんです!
ンなモン決まってンでしょ愚問ですね!
パーカーから覗くビキニに決まッ
ちょッ
おい

おい!!
アンタどさくさに紛れてなんて質問しやがっテメーッ!!
諸共刻んでやる其処に並べ一発だけなら事故!!
罪悪感とか知らねェ!

あ゛?!
嘘言ったってどの口が?!



●普段はこんなんじゃないんですよ多分
 月下に聳える摩天楼。この世界同様、歪に伸びたその足元に、矢来・夕立(影・f14904)が姿を現す。いつもなら音も無く着地するところだが、今回は何故か避けようのない位置に銅鑼とうず高く積まれた食器の山が存在し、同行した狭筵・桜人(不実の標・f15055)、レイニィ・レッド(Rainy red・f17810)と共に騒音を撒き散らす事になった。
 がっしゃーん、みたいな耳に痛い音色は、しかしそれが特別なものでもないらしく、よく聞くまでもなくそこら中から聞こえてきている。詰まるところこれが、『静』の失われた世界であり――。
「どいつもこいつも静かにできないんですか! ああクソッオレの声もデカい!!」
「矢来さんそんなデカイ声出せるなら普段からもっと声張ってくれませんかねえ!!」
「は!? あなたそんなに耳遠かったんですか!!?」
「いややっぱりいいわうるせえ!!!」
「あー二人とも耳の近くで叫ぶの止めてくれませんかね!!!!」
 ボリュームのぶっ壊れた声で交わされるやりとりに、早速全員の表情が圧を孕む。良くない兆候ではあるが、それらが悪化する前に、敵の気配が彼等の意識を引き戻した。
「あッ、こっちに誰か居るのかなぁーーーーッ!?」
 楽し気かつうるさい声を上げて、『地獄の獄卒』ごめずちゃんの一体が、どんどん近づいてきているようだ。軽率に振り回される金棒が辺りを破壊する音が聞こえ、彼女の伴う炎の揺らめき垣間見える。明るいその光を発見した桜人は、傍らの夕立へと声をかけた。
「あ! 火の玉!! ねえ矢来さんあいつこっち来てますよ!! 隠れた方がよくないですか!?!?」
「話しかけないでくださいこんな状態で忍べるわけないでしょう!!」
 隠形に関して卓越した技術を持つ夕立と言えど、『静』を失ったこの世界で身を潜めるのは困難を極める。
「あッ忍べますね!!!」
「は!? 忍べてる!?!?」
 忍べてたわ。いつの間にやら姿を消した夕立に、桜人とレイニィが驚きの声を上げる。
「何で坊ちゃんそんな騒ぎながら紛れられるんです?!」
「全員うるさいんで問題ありませんでした!!!」
「なるほど!!!!」
 なるほど? 確かに相対的に考えればいつもと変わらないのだろう。若干力業めいた理屈に納得した様子で、『霧の都の赤ずきん』もまた霧雨をその身に纏わせ始めた。
「こんだけ騒がしけりゃ霧雨の中の自分は見つからねェ!! 雨に紛れちまえばこっちのモンだ!!!」
 こうして夕立は闇へ、そしてレイニィは霧雨の中へとその身を融かした。それぞれめちゃめちゃうるさく喋ってはいるが、ごめずちゃんはいくら追いかけても二人を捉えることは出来ないだろう。
 まあ、そう、この二人だけならの話だが。
「このオレに! 鬼事で! 勝てると! お思いですか! 片腹痛い!!!」
「矢来さん今煽る必要あります!? 私まだ隠れられてないんですけど!?!?」
「得意の呪詛で何とかしたら良いんじゃないですか!!」
「今煽る必要あります!?!!?」
 完全に置いてきぼりを喰らった者が一人。取り残された桜人は、この状況から隠れるのはさすがに不可能だったようで。
「みーーーーつけたッ!!!」
 喜び勇んで走り寄ったごめずちゃんが得物をフルスイング。桜色の影は、あえなく金棒の露と消えた。

 ――かに見えたが。
 容赦のない殴打に吹き飛ぶはずだった桜人の姿が掻き消えて、代わりに形代がひらりと舞う。
「あれーーーーーッ!?」」
「馬鹿めそいつは残像だ! 紙技・出鯉!!!」
 それは、夕立の術による偽物。隠れるだけではなく、当然策は講じてあるのだ。
「さあ今ですよ!!」
「ハイ! 刻みます!!」
 夕立の声に応えたレイニィが、隙だらけとなったごめずちゃんへと迫る。それと同時に、桜人もまた――。
「さっきの聞きましたか赤ずきんさん!? あの人技の名前叫びましたよ!!!」
「今日はそういう日なんです仕方ないでしょう! ッてか狭筵サン!! ふざけてないで真面目にやって下さいよ!!!」
「すいません! でも質問が無視されないの助かりますね!! 赤ずきんさんてスク水とマイクロビキニならどっち派ですか!!?」
「ンなモン決まってンでしょ愚問ですね! パーカーから覗くビキニに決まッ――」
「ワッそんな大きな声で!!??」
「ちょッ、おい」
「いやーでもそうなんだ!! へぇ~~~~!!!」
「おい!! アンタどさくさに紛れてなんて質問しやがっテメーッ!!!」
「うわっなんでそんなに怒ってるんですか危ないもの持って追いかけてこないでくださいよ!!」
 振り上げた断ち鋏が敵ではなく桜人に向く。いやーでもこれはおちょくる方が悪いよ。
「そこ! 二人で鬼ごっこしてんじゃありませんよ!!」
 とはいえこれでは何のための偽物か。せっかく同行者の分まで形代を用意したというのに。
「二度と喋れないようになりたいんですか!? 頭と胴体のお別れをご所望でいらっしゃる!?」
 夕立がそう釘を刺しにかかるが、生憎周りがちょっとうるさい。
「諸共刻んでやる其処に並べ一発だけなら事故!!」
「も~謝りますって~今度パーカーから覗くビキニの画像送ってあげまちょ待っゴメンナサイ!!!!」
「調子に乗んな! いらねえンだよそんなモン!!」
「ごめずちゃんは嘘がキライだぞ!」
「あ゛?!?!」
「はーッ!!! もういいですオレが行って斬りますんで!!!!」
 ダメだこれ埒が明かない。お前らマジで覚えてろよと吠えながら、過去最高にうるさい夕立の闇討ちが決まった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

祓月・清十郎
ぬああああめっちゃうるさいでござるうぅぅ!!!
そもそも音に超敏感な猫に対して何たる仕打ち! こんな空間で冷静に戦えとか絶対無理でござる!
うおお拙者の素人丸出しな一挙手一投足が! 何時にも増して 超! 五月蠅い! 
もう駄目でござる拙者うるさすぎてここで死んでしまうでござるううぅ!

えっ!? 何でござるかごめずちゃん!? 何言ってるか全く聞こえないでござる!!
いや質問無視してるとかそう言うんじゃなくて全く! 何も! 聞こえないんでござるよ!!!
うおおお五月蠅過ぎて罪の意識とかそういうの抱いてる暇もないでござる!
集中できないでござる! 思考がまとまらないでござる!
うがー!(万能ねぎを所構わず振り回す)



●集中できない環境
「ぬああああめっちゃうるさいでござるうぅぅ!!!」
 転移直後からすかさず襲い掛かってきた音の圧に、祓月・清十郎(異邦ねこ・f16538)がごろごろ転がる。耳を畳むだけでは足りず、両手で押さえてはみたものの、幽世を満たす騒音はそれを乗り越えて頭に響いていた。そもそも猫は音に敏感なもの。ケットシーである彼もそれは同様であるらしく。
 転がった先の棚が丁度良い衝撃で倒れ、降ってきた植木鉢の割れる音が、清十郎の意識を激しく揺さぶる。
「もう駄目でござる拙者うるさすぎてここで死んでしまうでござるううぅ!!」
 自分の声も大概うるさいのだが、その大声で自らの意識を繋ぎ止めつつのたうつ彼の姿を、折悪くオブリビオンが発見した。
「見ーーーーつけたっ!!!」
「は!? 何でござるか!!? 敵襲!?!!?」
 金棒をぐるぐるしているごめずちゃんの姿に、清十郎は得物というか万能ネギを構える。が、そうすると耳を塞ぐのがおろそかになるわけで。
「う゛ッ!?」
 即座に激増する頭痛に清十郎の表情が固まる。一方の『地獄の獄卒』ごめずちゃんは、そんな様子を一切気にせず問いかけてきた。
「そこのネギ持った猫さんは悪い子かな!!!?」
「えっ!? 今なんて!!!??」
「え!?!? だから君は悪い子かなって――」
「何言ってるか全く聞こえないでござる!! いや質問無視してるとかそう言うんじゃなくて全く! 何も! 聞こえないんでござるよ!!!」
 叫び返されたそれに、ごめずちゃんは悲し気に眉尻を下げる。そう、『静』を失って世界での問いにも、返事さえすれば、確りした返答である必要はない。聞こえてないというのならなおさらだ。
 そして、それに罪悪感を抱く以前に、騒音で集中できず、思考がまとまらず、いっぱいいっぱいの清十郎には武器を振り回すしか選択肢がない。
「うがーッ!!!!」
「な、何ーーーーッ!?!?」
 心此処に在らず、混乱の極みで振り回されたネギが、ごめずちゃんをしばいていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

菱川・彌三八
喧しい事山の如し

否、もう、何だ
俺も大概ェ静かにしちゃいらんねえ性質だが、此奴ァ

ああああああうるせえ!!!!!!!

音には音だろ、なァ
やるならとことんだ
其れは大きな波の群れ
水流れに滝の音
何云ってンだかわからねえくれえの轟音

…あァ!?何!?聴こえねえ!!
…筈なんだが、此れだけ喧しきゃ夫れでも聴こえっちまいそうだな
あゝー
生憎、俺ァ正直なんだよ
残念だったな
…聴こえたかよ!!

波は音だけじゃねえ
消えるかわからねえが炎を諫め、彼方此方にいる奴等をぜーんぶ押し流しちやるのさ
派手な方が良い様な気もしたし

こんねェな事続けてたら喉がやられっちまう
水笛とか吹いてりゃちいとマシかね
…マ、うるせえのに変わりはねェけどヨ



●大浪
 喧しい事山の如し、とでも言うべきか。
「俺も大概ェ静かにしちゃいらんねえ性質だがなァ――」
 騒音、轟音、歓声に悲鳴、それらをぐちゃっと混ぜた音を前にして、菱川・彌三八(彌栄・f12195)が口元を歪める。
「ああああああうるせえ!!!!!!!」
 我慢ならぬと自らも声を上げ、手にした絵筆でそれを描いた。
「音には音だろ、なァ!? やるならとことんだ!!!」
 大きく強く、そしていくつも、空間に描き出されるそれは、大きな波の群れだった。ぐるりと渦巻く波濤が溢れ、激しく打ち寄せる波が、形作られる巨大な滝が、地鳴りのような轟音を上げて辺りを包む。
 これにはオブリビオンと化した地獄の極卒としても悲鳴を上げざるを得なかったようで。
「えええええそんなことされたらごめずちゃん裁きどころじゃないぞ!?!?!?」
「あァ!? 何!? 聴こえねえ!!!」
 周りがとことんうるさい。耳に手を遣る彌三八へと、敵は届くように声を張り上げた。
「儂みたいなかわいい子虐めて心痛まない!?!?!?」
「あゝー、残念だったな!!!」
「えー!?!?」
 生憎、俺ァ正直なんだよ。きっぱりとそう言い放つと、彌三八は描き切った波の群れを解き放った。
 津波の如く、濁流の如く、描き出された水の流れはオブリビオンの纏う炎を抑え、轟音と共に呑み込んで行く。
「みぎゃーーーーーーーーッ!!!!!!」
 辺りの騒音ごと塗り潰し、押し流していくその爽快な様に、彌三八は呵々と笑ってみせるが――しかし。
 この調子で声を張り上げていては喉がすぐにやられてしまうだろう。静寂の許されぬこの状況では許されない煙草に代わって、彌三八は水笛を取り出した。これならば、喉を震わせるよりはかなりマシになるだろう。
 ……マ、うるせえのに変わりはねェけどよ。そんな風に笑って、それを咥える。

 ぴい、と鳥の鳴くような音が、洪水後のようになった更地に響いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

城野・いばら
まぁ!おおきなお月さん
重そうなのに空から落ちないのはどうしてかしら?
ね、マダム・リリーはわかる?

最近通い始めた不思議な世界
不思議にはしりたいが沢山詰まってて
物知り鏡なマダムの在る事無い事な声も重なって
あら?何時もより燥いでしまってる?

問いには素直に答えるの
?嘘を吐く必要なんてないもの
いばらは、
お話ししてくれる
遊んでくれるアリスが大好きよ

駆けっこは苦手だわ
だから
ね、ね、いばらがオニさん役ね
カラフルな薔薇をぽんぽん咲かせて
伸ばした蔓でお邪魔虫

金棒とっちゃうぞ
くすぐっちゃうぞー
攻撃は武器受けか捕縛で動きを止めて
最後は紡錘でぽこん

悪戯な魂骸さんにおやすみを
おきてアリス達
ね、ね、ね!もっとお喋りしましょ



●遊びの延長
 カクリヨファンタズム。そこはウサギ穴で繋がったかの世界に、負けず劣らず不思議に満ちている。住んでいるのは妖怪で、建物の様子も場所によって様々。そして何よりも、滅びに至る際の変化が、強く世界を色付かせるのだ。そうして今回訪れた場所、城野・いばら(茨姫・f20406)は真っ先に、綺麗な月に目を引かれた。
「まぁ! おおきなお月さん!!! 重そうなのに空から落ちないのはどうしてかしら!?!?」
 そうして飛び出た大きな声に、いばらは思わず口を押える。
『それはもう!! 空に縫い付けてあるからに決まっているわ!!!』
 物知りな鏡、マダム・リリーの返答さえも調子外れにでかい。戸惑いはあるものの、『静』の失われたこの場所は、沈黙なんて許しはしない。状況を確かめるまでもなく、いばらの口は半ば勝手に動き出す。
「ま、マダム・リリー!! もしかして、何時もより燥いでしまってるかしら!?!?!?」
『あらあら、周りを御覧なさい!! 私達のお喋りなんて小鳥の囀りみたいなものよ!!!』
 そうだろうか、そうかもしれない。言われてみれば周囲の物音も、誰かの声音も、とんでもなくうるさい気がする。ほら、こちらに向かってくる足音だって。
 そう、足音。がっしゃーん、みたいな派手な音を立てて邪魔な棚を破壊し、『地獄の獄卒』ごめずちゃんがいばらの前に姿を現した。
「あ、こんなところにも居た!!! ごめずちゃんと遊んでくれるか!?!?!」
「え!? 良いわよ何して遊びたいの!?!?」
 適応が早い。素直に応じるいばらに、ごめずちゃんはぶんぶんと金棒を素振りしながら加える。
「鬼ごっこか野球かな!!! どっちが良い!!??」
「駆けっこは苦手だわ!!! でもその二つなら鬼ごっこの方かしら!!!!」
「そっか!!! それじゃあ――」
「ね、ね!! いばらがオニさん役をするわ!!!」
「よーし! 捕まえられなかったらお尻ぺんぺんだからなー!!!」
「それじゃいくわよー!!!!」
 さっそくいばらの周りでカラフルな薔薇が咲き出して、伸ばした蔓がごめずちゃんを捕らえにかかる。
「あーーーーーーッ!?!?」
 逃げ出したごめずちゃんは、あっという間にそれに捕まって。
「わー!!! そうやってごめずちゃんをいじめようって魂胆だな!?!!!?」
「あら、そんなことないわよ!!!」
 罪の意識を敏感に察知するごめずちゃんは、早速反応を窺うが――あ、この子飽くまで遊んでるだけで罪悪感とかないわ。
「よーし金棒とっちゃうぞー!! くすぐっちゃうぞー!!!」
 蔓によって無力化されたそこへ、いばらが魔法の紡錘で一撃加える。
 そうして眠りに落ちた妖怪から、骸魂だけが抜けていき、後には解放されて眠る妖怪だけがその場に残った。
「わ、いびきまでうるさい!!!」
 起こした方が良いかしら? 彼女はそう首を傾げた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ユーイ・コスモナッツ
納さん(f01867)と

賑やか……と、言うよりも、騒々しい世界だなあ
納さんと作戦会議をしたいけれど、
この騒音のなかでは、
互いの声がかき消されてしまうかもしれない
作戦に齟齬が生まれるといけないので、
近くに寄って、耳元で話しかける

そんなわけで納さん
ちょっとお耳を貸してくださいな
……っていけない、
私の声も大きくなっているんだった!

嘘は大キライですが、
答えづらい問いもあるでしょうから、
矛盾原理はありがたいですね
『どうだったかなあ……忘れちゃいました!』
などと笑ってかわしましょう
うーん、私の口とは思えない器用さです

〆の一撃は【彗星の重力加速度】
一際大きな音がしますから、
しっかり耳を塞いでいてくださいね!


納・正純
ユッコと/f06690
台詞は全てめちゃくちゃうるさくお願いします

「静」が消え去った世界だと?!
フッ……面白ェじゃねェか。ここは一丁お祭気分で騒がせてもらおう
ユッコ、取引だ!
ここを乗り越えたら、月見を楽しむとしようぜ!
行くぞウォォォォ! なに? 作戦会議だと!? 良いだろう耳を貸してやらァ!

・作戦
ユッコをめちゃくちゃ強くしてユッコに全賭けでいこう!
使うのは【矛盾原理】だ
俺が今までの人生で培ってきた【嘘は付かずに良い感じにできる大人の受け答え】の知識を全てユッコに渡し、ユッコを大人の対応ができる無敵のレディにして敵をバッサバサしてもらおう
大丈夫だユッコ! 俺は俺で多分なんとかしてみせる! まかせろ



●実況解説:納・正純でお送りします
「ははァ! これが『静』が消え去った世界ってわけだ!!」
「賑やかって言うよりも、騒々しいですね!!」
 激しい騒音の最中で、納・正純(Insight・f01867)とユーイ・コスモナッツ(宇宙騎士・f06690)は共に滅びに瀕した世界を見渡す。『静』で在れないゆえにあちこちで派手な音が鳴り響き、オブリビオンによるものだろう素っ頓狂な笑い声も聴こえてくる。
 静寂からも静謐からも程遠いこの状況を、面白がるように不敵に笑い、正純はユーイを促した。
「よォーしユッコ、取引だ!! ここを乗り越えたら、月見を楽しむとしようぜ!!!」
「了解しました納さん!!!」
「ウオォォォ行くぞおおおおおおおお!!!!!!」
「その前に作戦会議しましょう納さん!!! ちょっとお耳を貸してくださいな!!!!」
「なにィ!? 作戦会議だと!?!? 良いだろう耳を貸してやらァ!!!」
 振り切ったボリュームで為される会話は、このように周囲にも筒抜けである。敵に聞かれると困る内容は、やはり密やかに交わされるべきだろう。正純の耳を両手で囲ったユーイは、そっと唇を開く。
 ちなみに、先程までの状況から伝わっているかと思うが、現状声の音量調整は『最大』以外ありえない。
「私が!!!! 前衛を務めますので!!!!!!」
「アーーーーーーーーッ!?!?!?」
 全力の大声を耳元に叩き込まれ、正純は倒れた。

 若干の苦戦を強いられながらも打ち合わせを済ませ、彼等は暴れまわっていたオブリビオン、『地獄の獄卒』ごめずちゃんと対峙する。地獄の炎を纏わせて、不吉に赤く染まった金棒を手にした彼女は、嘘吐きに対してこそ本領を発揮するという。向かい合ったユーイの表情にも、それを探しているようで――。
「その顔!!! 何か悪い事を企んでるな!?!?!?」
「うーん、悪い事ではないと思うんですよね!」
「は!?! つまり何かしら企みはあるということか!?!?」
「あ! どうだったかなあ……忘れちゃいました!!」
 爽やかな笑顔で躱すユーイに、ごめずちゃんがむむむと眉根を寄せる。彼女の嘘センサーが反応しそうで反応しない、微妙な位置取り。そんな両者の様子に、後方に控えた正純がほくそ笑むだけでは留まれず声を上げた。
「はーーっはっはっは!! 見たかオブリビオン!!!!」
 最早開き直りに近い心持ちで、完全に勝ち誇った調子で彼は言う。
「正直者で律義なユッコに、本来この手の問いは相性が悪い!!! だが今日のユッコは一味違うぜ!!!!」
 そう、事前の仕込みとでも言うべきか、ユーイには『矛盾原理』――正純の持つ『知識の弾丸』が撃ち込まれている。
「俺の持てる知識と経験からタチの悪――もとい一筋縄じゃいかねェ大人のやり口を授けておいた!!! お前が何を言おうと! 今のユッコは嘘じゃない範囲できれいにはぐらかすぜ!!!!」
「納さん!!! そんな一から十まで解説しちゃって大丈夫ですか!?!?」
「今のお前は無敵のレディだ自信を持て!!! ダメだったらごめんな!!!!!」
 正純としては今回の仕事は終わったに等しいので、あとは全てユーイに任せる構えだ。
 そんな彼等に業を煮やしたように、オブリビオンが突拍子もない問いで引っ掻き回しにかかるが。
「儂のこと好き!?」
「そうかもしれませんね! あなたの方はどうです!?!?」
「えっ、儂!?!?!?」
 頬を赤らめて戸惑いの表情を浮かべる。
「よぉおおおおし良いぞユッコ!! ヤツの動きが止まった!!! 今だッ!!!!」
「は、はい! 一際大きな音がしますから、しっかり耳を塞いでいてくださいね!!」
 舌先で相手を惑わすってこんな感じなんだな、と不思議な気分になりながら、ユーイは好機を逃さず大盾と共に空を舞う。
「行くぜ! ユッコの必殺コメットストライク!! 反重力シールドに乗っての超高速急降下突撃だ!!! 単純だがその分威力は折り紙付き!!!! 地形ごと砕け散れオブリビオンどもォ!!!!!」
 『彗星の重力加速度』、くそやかましい実況通りの一撃が炸裂し、爆発音にも似たそれが、辺り一帯に響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【花簪】
見慣れた景色のような気もしますが
きっとカクリヨの世界の特性なのでしょうね!
そして私達の変化も今回の敵の仕業であるのは明確!
早急に倒さねば壊滅してしまいます!

あれが骸魂によって姿を変えられた者達ですか
嫌いではありませんが、好きでもありません!
刃に破魔の力を付与させた早業の抜刀術『陣風』にて一掃
攻撃は残像にて回避してカウンター
うん?話す声だけではなく、抜刀の音さえも大きいような気がします!

オオカミ殿、骸魂は食べ物ではありません!
あれを倒さねば妖怪達が元に戻れません!
いつものように敵を叩きましょう!

罪の意識は残念ながらありません!
敵は敵であり、肉体を奪った者こそ悪!
彼等に還して頂きましょう!


ジョン・フラワー
【花簪】
やっほーーー!!!!!
みんなご機嫌だね! 僕ここ好きかも!
もちろん可愛い角のアリスのことも大好きだよ!

大好きだから一緒に遊ぼう!
今日はムクロダマっていうのを叩く遊びをするんだ!
僕それ食べたことないな。どんな色? どんな形?
とにかく叩けばOK! なるほどね!

よーしがんばるぞう!
木槌を大きく振りかぶってどーん!
今なら力溜めと衝撃波と吹き飛ばしがいつもよりつよい気がする!
力強くさらにどーーーん!!!
刀の音も大きいなんてやっぱり面白いね!
簪のアリスったらいつも静かなんだもん! 新鮮!

つみのいしき?
何言ってるのさ! 楽しいに罪なんてないんだよ!
僕も楽しい、キミも楽しい!
なんて幸せな場所なんだ!



●遊戯
「やっほーーーー!!!!!」
 途切れる事ない騒音の場へと至り、ジョン・フラワー(まごころ・f19496)がそれに混ざり込むように大声を上げる。『静』の概念の消えたこの世界は、一際大きなその声も、喧騒の一部として呑み込んでしまう。
「みんなご機嫌だね! 僕ここ好きかも!!」
「良い一面を見つけるのが得意ですねオオカミ殿!!」
 そんな彼の様子を傍で眺めながら、月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)が言う。混ざり合った『騒音』を一つずつ紐解いていけば、笑い声の中に悲鳴を上げて逃げ回る妖怪達が居る事も察せられ――実際彼の視線を向けた場所で、骸魂に取り込まれた妖怪が、オブリビオンへと姿を変え、笑い声を上げ始める。
 この場所は今まさに侵略されており、真っ直ぐ滅びへと向かっているのだ。
「まずはあの骸魂を何とかいたしましょう!!」
「ムクロダマ!! それ食べた事ないな!! どんな色してるんだい!?!?」
「食べ物ではありません!!!」
「そっか!!!」
「でもいつも通り叩けば問題ないでしょう!!!」
「なるほどね!!!!」
 聞いてるだけでも疲れそうなやりとりを経て、彼等は暴れまわる『地獄の獄卒』ごめずちゃん達と対峙する。赤黒く汚れた金棒をぶんぶんと振り回す彼女等に向かって。
「元気かい可愛い角のアリス!!! 一緒に遊ぼう!!!!」
「お!! ごめずちゃんと遊びたいのか!!! いいぞいいぞー!!!!」
 ジョンの申し出に快く応じたごめずちゃんは、続けて金棒を両手で構えてみせる。
「じゃあ野球するぞ!!!! ボールは君だ!!!!!」
「いいね!!! でも僕ムクロダマってのを叩く遊びがしたいんだ!!!!」
「は!?!? こんな可愛い儂をボールにしようとか! 申し訳無いと思わんか!?!?!?」
「いいえ! 残念ながら全く思いません!!!」
 答えを告げたのは夜彦の側、鯉口を切る音に鞘走りが高らかに続き、抜き放たれた刃が風を成す。
「敵は敵であり、肉体を奪った者こそ悪!! その身、彼等に還して頂きましょう!!!」
 納刀、鍔鳴り。いつもよりも刀が強く、音を奏でる。しかしそれでも、太刀筋には一切の曇りなく、刃は標的を両断した。
「普段よりも抜刀の音が――この世界の状況によるものですかね!?」
「声だけじゃなくて刀の音も大きいなんてやっぱり面白いね! 簪のアリスったらいつも静かなんだもん!! 新鮮!!」
 首を傾げる夜彦に、ジョンが笑ってそう声をかける。一方、仲間の一人をやられたごめずちゃん達は当然のことながら、怒っていた。
「よ、よくも儂の仲間をー!!!!」
「罪の意識とか無いのかーーー!!!?」
「つみのいしき?」
 今度はジョンが首を傾げて、木槌を振りかぶる。
「何言ってるのさ!! 楽しいに罪なんてないんだよ!!!」
 なにしろこれは遊びだからね。先の宣言通り、骸魂を吹っ飛ばすべく、力を溜めた一撃が振り下ろされる。その場を陥没させるような一撃は、こちらもやはり、いつもより派手に音を立てる。
「ふふ、楽しいね!! キミも楽しいよね!!! ああなんて幸せな場所なんだ!!!!」
 花畑で歌うようにそう言って、ジョンは次なる獲物に木槌を振り下ろした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

朽守・カスカ
【エルレ】
元気いっぱいのヨシュカ君を見てまるで祭りの夜の様な賑やかさに見えなくもないが私自身は大声を張り上げるのは得意ではないからなるべく一息で喋り続けていたいものの流石に喋りながら駆けるのは息が続かない。
気遣い溢れる師匠からチューブが差し出されたけれど花も恥じらう乙女なので此処は角が立たぬように拒否しつつヨシュカ君以上に元気溢れるエンジ君に備えて耳栓は頂くとしようそれに私には【星灯りの残滓】があるからねこれでもう息継ぎを気にせずにいられるよ。
耳栓を超えて届くエンジ君の元気の良さに楽しくなりながらもごめずちゃん賑やかなひとときはそろそろお開きさ心ゆくまで楽しんだのならばもう休むといいよ


ヨシュカ・グナイゼナウ
【エレル】

月が!!きれいですね!!!

声量の調整がうまくいかない不思議!!!
走りながら声量MAXだなんてもうよくわかんないです!!すっごいごめずちゃんさま追いかけてくるんですけど!!
やだー!!
朽守さまが走りながらも一息であんな長文を!!なんか貴重なモノを見ましたね!!!
そう思いませんか!!!鼻チューブ??!ちょっとよくわかりません!!

エンジさまが!!お月さまが出ているからでしょうか!!!??
いや友達じゃないです
はい!!耳栓ですね!!ヨシ!!
(装着)
あははははは!!何も聞こえないけど衝撃でビリビリします!!!
鞘でガンガンするの楽しそうですね!あ!!ぶん投げた!!ふふふ!!!
(【開闢・煌】を構える)


ロカジ・ミナイ
【エレル】

月がでっけぇぇぇ!!!!!
今夜はますますご立派でお綺麗ですねぇぇぇ!!!!!
でっかすぎて手に負えねぇぇぇ!!!!!

カスカ(我が愛弟子)は酸欠にならないかい!?
鼻からチューブ、やるかい!?!?
大丈夫よ美少女と鼻チューブは親和性が高いから
美男子の僕かい!?美男子の僕は耳栓する!!
ヨシュカも耳栓したから美男子だね!!うんうん
カスカもこっちにしとくかい?
…ん?なんて?もう一回最初から言っておくれ

小学生が傘をフェンスに接触させて走り抜けるアレを
艶花の鞘とその辺の障害物でやる
大人の力と棒なのでとてもうるさいことだろう

飽きたらごめずちゃんの方へ鞘を投擲
エンジワンワン、取ってこーい!!ガハハハ!!


エンジ・カラカ
【エレル】

月は無い!!!!!
ココに!!!月は!!!ない!!!!!
ガオーーーー!!!!!!
アオーーーーン!!!!!

カスカのお喋りに被せてアオーーーーーーーン!!!!!!
コレが!!!!一番!!!!元気!!!!!
コレが!!!!しゃべると!!!!
耳が!!!!!聞こえなくなる!!!!
ガオーーーーーー!!!!!!

ごめずちゃん!!!!!
ヨシュカの友達っぽいなァ!!!!
金棒が友達っぽ……アァ……コレは気付いた……。
アノ金棒はもしかして……。
エレルの台所にある埴輪!!!!!!

ごめず埴輪!!!!!
アレは強い……。

ガウガウガウガウ!!!!!!
エンジだガウガウ!!!!!!
オオカミに変身して立ち向かうガウガウ!!!!



●全力疾走
「月が!! きれいですね!!!」
 それに輝く大きなそれ、今にも落ちてきそうな金色に向かって、ヨシュカ・グナイゼナウ(明星・f10678)の声が響く。全力疾走しながらのそんな叫びに、ロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)とエンジ・カラカ(六月・f06959)の声も続いた。
「月がでっけぇぇぇ!!!!! 今夜はますますご立派でお綺麗ですねぇぇぇ!!!!!」
「月は無い!!!!! ココに!!! 月は!!! ない!!!!!」
「でっかすぎて手に負えねぇぇぇ!!!!!」
「ガオーーーー!!!!!! アオーーーーン!!!!!」
 ちなみにロカジは刀の鞘を障害物にぶつけまくりながら走っているため大層うるさい。フェンスや柵を撫でるようにしてカタカタ鳴らすのは子供がよくやるけれど、そういうのが許されるのは多分小学生までだ。
「鞘でガンガンするの楽しそうですね!!」
「まあね!! ヨシュカもやるかい!?!?」
 そんな無軌道な大声と騒音に続いて走ってきているのが、今回の敵である『地獄の獄卒』ごめずちゃんだ。
「待て待てーーーッ!! あはははは!!!!」
 いかにも楽しそうではあるが、その手に持ったのは赤錆の滲んだ不吉な金棒である。
「ごめずちゃん!!!!! ヨシュカの友達っぽいなァ!!!!」
「いや友達じゃないです!」
「でもアノ金棒が友達っぽ……アァ、ソウダ……エレルの台所にある埴輪!!!!!!」
 何かトゲトゲさせたあれが連想されたらしい。まあそれはとにかく。
「ふふふまるで祭りの夜の様な賑やかさに見えなくもないね私も混ざりたいところだけど私自身は大声を張り上げるのは得意ではないからなるべく一息で喋り続けさてもらうよ!!!」
 共に走っていた朽守・カスカ(灯台守・f00170)が一気にそう言い切る。いつものように余裕の笑みを交えているが実際これは苦しいだろう。
「朽守さま!! 走りながら一息でそんな長文を!!!?」
「よく噛まなかったね流石弟子!!!」
「アオーーーーーーーン!!!!!! コレが!!!! 一番!!!! 元気!!!!!」
「いやあエンジ君に張り合うつもりはないよ大丈夫さ私はどうしても声量で皆に劣るからねこうして語尾を先延ばしにすることで喉を労わりたいのだけどこれ意味あるのか段々疑問になって来たねしかしながら私はとりあえずこのまま行けるところまで行こうと思う!!!!」
「朽守さま!!! それ以上は多分命に関わりますよ!!!!」
「酸欠にならないかい!? 鼻からチューブ、やるかい!?!?」
 頑張りは認めるが、弟子が倒れるのは見たくないと、ロカジがそちらにチューブを差し出す。
「大丈夫よ美少女と鼻チューブは親和性が高いから!!!!」
「え!! ちょっとよくわからないです病弱な方が好きとかですか!?!?!?」
「気遣いは本当にありがたいのだけど私はこれでも花も恥じらう乙女なので辞退させてもらってそうそう師匠が自分で使っていただければと思うよ!!!」
「美男子の僕かい!? 大丈夫だよ美男子の僕は耳栓するから!!!!」
 鼻チューブの代用品としてそれは合っているのか? しかしこのやたらとうるさい状況で耳栓は重要アイテムかも知れない。
「ヨシュカも耳栓するかい!?!?」
「はい!! 耳栓ですね!! ヨシ!!」
「私も耳栓を頂くとしようそれにこの【星灯りの残滓】を使えばもう大丈夫さこれで息継ぎを気にせずにいられるよ」
 渡されたそれを耳にぎゅっと詰めて、カスカの方はついでにランタンから癒しの星屑を零れさせる。これにより、非戦闘行為に没頭している限り生命維持も不必要――つまり息苦しさとも無縁になれそうである。
「これで二人とも美男子美少女だねよかったよかった!!!!」
 耳を塞いだ彼等に向かって、早速とばかりにエンジがもう一声。
「アア、これで耳が!!!! 聞こえなくなる!!!!!??」
「いえこれ割と聞こえますね!!! ヨシじゃない!!!!」
「なるほど今ここでは『静』という概念自体が失われているからね耳栓をもってしても完全な静寂を作る事はできないのかもしれなケホッ……!!!?」
「ああっ!! 朽守さまの喉が!!!!」
「そうかい!! 追いかけっこはこの辺にしておこうか!!?」
 もうそろそろ頃合いかと、ロカジはそれを察して足を止める。ガンガン辺りの障害物を叩いていた鞘を、最後に大きく振り回す。それが一際大きな音色を奏でた頃には、刀が抜き放たれている。
「エンジワンワン、取ってこーい!! ガハハハ!!」
「あ!! ぶん投げた!! ふふふ!!!」
「ガウガウガウガウ!!!!!! エンジだガウガウ!!!!!!」
 オオカミへと姿を変えたエンジが方向転換し、放られたロカジの鞘を追ってごめずちゃんの方へ駆け出す。
 今まで背を向けていた方へと向き直り、ロカジとヨシュカがそれぞれ大小の妖刀を構えた。最後に、カスカがランタンで辺りを照らすように、掲げてみせて。
「おお、諦めたかな!? それじゃ捕まえちゃうぞーー!!!」
「諦めたわけじゃあないが賑やかなひとときはそろそろお開きさ心ゆくまで楽しんだのならばもう休むといいよ!!!」
 また長台詞を相手に投げ、ここまで追いかけてきた『鬼』を、退治するべく彼等は行く。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

スキアファール・イリャルギ
(※初っ端からブチ切れモード)

う る せ え ェ ! !
まともに音楽が聴けやしない私がどんな怪奇なのか知ってんのかどれだけ耳聡いのか知ってんのかそれが物凄くストレスになってどれだけ辛い思いをしてきたか知ってんのかえェッ!!??
じゃあなんでこの依頼受けてんだって話ですねあぁそうですね知るかッッ!!

あぁもう騒がしい全力の妨害音波(※UC)聞かせてやろうかグロウルで!
傍から見たら口を動かしてるだけにしか見えない!?
指定対象にしか聞こえないイコオル私と敵には聞こえてるってことだ問題は無い!(多分)

質問は歌いながら返す!
というか歌ってる最中に質問をするな無礼者がァッッ!!
(質問・回答の内容はご自由に!)



●響く影の歌
「う る せ え ェ !!!」
 鳴りやまない騒音に嬌声、そしてあちこちで始まった戦闘による破砕音に、スキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)が吠えた。
「まともに音楽が聴けやしない!! 私がどんな怪奇なのか知ってんのか!? どれだけ耳聡いのか知ってんのか!! それが物凄くストレスになってどれだけ辛い思いをしてきたか知ってんのかえェッ!!??」
「そんなこと言われてもごめずちゃん困っちゃうぞ!!!!」
 だって知らんし、と変わらぬ笑顔のまま『地獄の獄卒』ごめずちゃんがそう返す。こちらは騒音を鳴らす側、別に耳が痛いくらいどうってことないので。
「そんなに嫌なら帰ったらどうかな!?!!?」
「うるせえ!!! 『そうですね』で帰れたら苦労はしねぇんだよ!!!!!」
 実際問題放って帰って世界が滅んだら目も当てられない。この依頼を目にしてしまった時点で彼の負けみたいなもんである。
「え!! そんなにごめずちゃんと遊びたい!?!?」
「違ェ!!!!!!」
 前向きな解釈で絡んでくる相手に倦んで、スキアファールは喉を強く、低く鳴らして歌声を紡ぎだす。両者にのみ聞こえるそれは、彼だけの知る歌。そして、相手の感覚をかき乱すもの。
「合唱か!? ごめずちゃんも歌ってあげるから歌詞を教えて欲しいぞ!!!」
 構わず紡がれるそれは、妨害音波となって敵の本来の力を発揮できないようにしてしまう。今回のごめずちゃんの場合は、ちょっと効果の確認が難しいが。
「か、歌詞を……!!」
 食い下がる彼女の声を、何か盛り上がってきた感じのスキアファールのグロウルが上書きしていく。
「えーい!!! 無視するとか申し訳ないと思わんか!?!?」
「思わない!!!」
 罪悪感を煽ろうという必死の抵抗に、歌いながらきっぱりと返す。何しろ、今回の正義がどちらにあるかは明らかなので。
「というか歌ってる最中に質問をするな無礼者がァッッ!!」
「ワーッ! ごめーーーん!!!」
 むしろ自分の方に罪悪感があったのだろう、あっさりと折れたごめずちゃんに、スキアファールの鈍器扱いした拡声器が命中した。

成功 🔵​🔵​🔴​

水衛・巽
「静」の概念って意外と大事なものだったんですね!!(クソデカ大声)

要するに獄卒から逃げきればいいんでしょう!
ただでさえ大声で消耗が!いつもより激しいので!!
可及的速やかに速攻で片付けます!
クソデカ大声で宣言して速攻もなにもありませんけど!

あえて限界突破とかは封印で!
声まで限界突破されちゃ困りますので!ね!!
この状況で追いかけられるのは!たいそう癪なので!!
ここはこちらから追いかけて斬り伏せます!
鬼を追うな!?知りませんよそんなもの!!
鬼を追いかけてはならないなんてルールありましたか!
むしろ手間が省けて楽に済みそうです!
でも声張りすぎて頭が!痛いんですが!!



●やり返す
「『静』の概念って意外と大事なものだったんですね!!」
 そこら中から聞こえる止まない騒音の中に、水衛・巽(鬼祓・f01428)の声が混ざり込む。静けさが存在しないことにより、こうして声を張り上げさせられているのだから、実感せざるを得ないとも言えるだろうか。
「ただでさえ大声で消耗が! いつもより激しいので!! 可及的速やかに速攻で片付けます!」
 声量を抑えようのないまま、高らかに宣言した巽は、抜き放った刀を手にして迫りくるオブリビオン達の方へと駆け出した。金棒を振り回し、あちこちを破壊しながら移動していた『地獄の獄卒』ごめずちゃん達も、すぐにその様子に気が付いて。
「悪い子見ーーっけ!!!」
「よーしごめずちゃんと鬼ごっこするぞーーーー!!!!」
 捕まえたらお尻ぺんぺんの刑だからな、と一方的に決めて、彼女等は巽目掛けて走り始める。包囲するようなその動きに、しかし巽は一切構わず真っ直ぐに走り――。
「捕まえちゃうぞーーーッ!!!! って、あれー!?!?」
 速やかに、その一体を斬り払った。
「え!! なんで!!!!?」
「この状況で追いかけられるのは! たいそう癪なので!! こちらから追いかけて斬り伏せます!!!!」
「えーーッ!!!」
「鬼ごっこのルールわかってる!?!?」
「は!? 捕まらなければ良いんでしょう!!!? 鬼を追いかけてはならないなんてルールありましたか!?!?!?」
「それは!!」
「ないけど!!!」
「ないですよね!!!!!」
 強引なのか何なのか、ごめずちゃん側の抗議をねじ伏せた巽は引き続き敵をぶった斬るべく迫る。それを見て、互いに顔を見合わせたごめずちゃん達は、一斉に散開して逃げ始めた。
「なッ――に、逃げるつもりですか!?!?」
「鬼が逃げてはいけないなんてルールはないぞ!!!!!」
 まあそうだけれど。とはいえただ逃げるだけのつもりはないだろう、隙を見てこちらを『捕まえようとしている』ことは距離を取る相手の動きから察せられる。
 数を活かし、攪乱しての奇襲狙いか。そんなものに引っかかる巽ではないが、唯一懸念があるとするなら、既に声を張りすぎて頭痛がしていることだろうか。
「良いでしょう!!! 一人残らず斬り伏せてやりますよ!!!!」
 どうせなら、頭の血管がどうにかなる前に終わらせたいところだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

九之矢・透
はあああああ!?!?!?
何アンタ笑いながら追いかけて来るんですけど怖ッ!こわ!!!!

これは逃げるねダッシュで逃げるね全力疾走だね!!!
大体さァ何なのその金棒ゴツイよ何でちょっと赤錆びしてんの!?
それで叩かれたら「ぺんぺん」ってレベルじゃないと思うんだよね!!
そう思うのアタシだけじゃないよ絶対な!?!?

ってコトで全力で見切りしながら避けていくぞ!!
唸れアタシの野生の勘!!!!(鼓舞)

それと来い!!狗解!!!
追っかけるのは鬼だけの専売特許じゃないって見せてやれよ!!
足を狙うか金棒がぶっと宜しく!!!
なんか暫く、
ただ二人と一匹で走り回ってたような気もするけど気のせいだよね!

あーーー喉乾いた!!!



●追って追われて
「ふははははーッ!!! 悪い子にはお仕置きだぞーッ!!!!」
「はあああああ!?!? 何アンタ!!!!?」
 こちらはこちらで追いかけっこの真っ只中。けたたましい笑い声をあげて追いかけてくる『地獄の獄卒』ごめずちゃんから、必死の形相で九之矢・透(赤鼠・f02203)が逃げ回っていた。
「笑いながら追いかけて来るんですけど怖ッ! こわ!!!!」
 小回りの利く彼女としては、こうして街中を逃げ回るのは得意分野なのだが。
「待て待てーッ、お尻ぺんぺんしてやるぞーー!!!!!」
 あちらはあちらで、障害物を派手にぶっ壊しながら進んでいるため振り切れないでいた。
 ついでに言うと、帽子とポケットの中で小鳥とハムスターがぴーぴーきーきー騒いでいるのも一因かもしれないが。
「ああもう!! ちょっと大人しくできない!?!?!」
 小動物達を抑えてそう訴えるが、それができないのがこの『静』の失われた幽世だ。ついでに真後ろで金棒が振り下ろされる音が響いて、悲鳴みたいな鳴き声は一層大きくなった。
「大体さァ! 何なのその金棒ゴツイよ何でちょっと赤錆びしてんの!? それで叩かれたら『ぺんぺん』ってレベルじゃないと思うんだよね!!!」
「大丈夫大丈夫!! ちょっとチクッとするだけだぞ!!!!」
「その金棒の棘はチクっとじゃすまねぇよ!?!? 絶対な!!!!」
 軽々と振り回されるそれを、五感に加えて第六感までフル動員して躱しながら、透の方も現状を打破するべく、仕掛ける。
「いつまでもやられっぱなしだと思うなよ! 来い!! 狗解!!!」
 彼女の呼び声に応え、ごめずちゃんの背後に猟犬が姿を現す。気配もなく、そして音も無く召喚されたそれは。
「アォーーーーーーンッ!!!!」
「ダメだーーーーーーーッ!?!?!」
 この状況とは完全に相性が悪かったか、めちゃめちゃ遠吠えを上げた猟犬は、即刻敵に存在を気付かれた。
「おお! ごめずちゃんはついでにアレから逃げれば良いのか!?!?」
「ええい、バレたけど良いや!!! 追っかけるのは鬼だけの専売特許じゃないって見せてやれよ!!!!」
 奇襲にはならなかったが、攻撃は出来るはず。どっちが捕まるのが先か、競争の火蓋が切って落とされる。
「あははははははは!! 楽しい!!!!!」
「あーーーー喉渇いた!!! 喉痛い!!!!!」
 スタミナ比べの様相を呈してきたが、大丈夫、最後は猟犬ががぶってするのが先だったから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

花剣・耀子
たしかにうるさいって聞いていたけどここまでうるさくなくてよくない!?
そもそも普段から声を張るように生きていないのだけれど! だまっていい!? だめ!?!?!?!?
もう一ヶ月分くらい叫ん゛ ゲホッゴホッ ボェ゛ッ゛…゛…゛!

早々に喉が死にそう
代わりに機械剣に頑張って貰

(すごい騒音)

ねえごめずちゃんしってる!?
ふつうのチェーンソーの騒音レベルはだいたい100dB前後なのだけれどこんな環境下なのでもうほんとめちゃめちゃうるさい斬り!!!!!!!!!!!!!!!

なんであたしは騒音の元を抱えているのかしらと我に返ったら駄ッ゛目ッ゛ベェ゛ッ゛ボ
これが必殺技の勢いで乗り切れなかった哀れな女の末路よ!!!!!



●喉が限界
 ここは『静』が失われた幽世。騒ぎを巻き起こすオブリビオン達は、猟兵達の手により次々とその数を減らしているが、どうにも騒音が収まる様子は中々ない。というかやってきた猟兵達も漏れなくうるさくしているのであまり変化はないのだろう。戦闘音だってものすごいし。
「たしかにうるさいって聞いていたけどここまでうるさくなくてよくない!?!?」
 耳も頭も痛くなりそうなこの状況に、花剣・耀子(Tempest・f12822)がそう訴える。
「ごめずちゃんは賑やかで良いと思うぞ!!!!」
「限度があるわよ!!! これじゃまともに会話もできないじゃない!!!!」
「え!!! でもいま会話できてると思わん!?!?!?」
「それはあたしがこうして喉を酷使しているからで!! そもそも普段から声を張るように生きていないのだけれど!!! そろそろだまっていい!!!? だめ!?!?!?!?」
 相対する敵、『地獄の獄卒』ごめずちゃんはこの程度苦でもないのか、にこにこしながら耀子の問いに答えていた。
「駄目だ!! ごめずちゃんはもっとお喋りがしたいぞ!!! うに好き!!?!?」
「とってつけたような質問やめてくれるかしら!!! いやもしかしてごめずちゃん時間稼ぎしてない!?!? もうこれ一ヶ月分くらい叫ん゛んッ、――ゲホッゴホッ ボェ゛ッ゛…゛…゛!!!」
 どうやら効果は抜群だ。過酷な状況に慣れていない耀子の喉は早々に死にかけ、18歳のクールな少女が出してはいけない感じの音色を奏でている。
「なんか面白そうだったから!!! つい!!!!!」
「お゛ぐっ、ゴッ……後悔させてあげる……!!!」
 若干涙の滲んだ目で敵を睨み、耀子は手にした機械剣を起動した。飾り気に溢れたチェーンソーがその本領を発揮し、正しく騒音を撒き散らし始める。
「ねえごめずちゃんしってる!? ふつうのチェーンソーの騒音レベルはだいたい100dB前後なのだけれど!!!」
「ごめずちゃんも数値までは知らない!!! つまり!?!?!?」
「それに加えてこんな環境下なのでもうほんとめちゃめちゃうるさい斬り!!!!!!!!!!!!!!!」
 目安1、きわめてうるさい。
 目安2、聴覚機能に異常をきたす。
 それが100dBである。さらに増幅されたそれで金属塊であるところの金棒を斬り付けたらどうなるか。
「ぎゃあああああ!!!! ごめずちゃんの耳が死ぬううう!!!!!!!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛!! なんであたしは騒音の元を抱えているのかしらとか我に返ったら駄ッ゛目ッ゛ベェ゛ッ゛ボ!!!」
 これが必殺技の勢いで〆まで持っていけなかった女の末路。血反吐を撒き散らすが如く凄惨な声音と共に、機械剣を唸らせ耀子はとどめの追撃を叩き込んだ。

 ねえ大丈夫? この子ボス戦までもつの?

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『黒マントの怪人』

POW   :    赤が好きな子は…炎に焼かれ爛れて死ぬ
【自身の体を切り裂き噴出する呪縛の炎】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD   :    青が好きな子は…水に溺れ苦しみ死ぬ
戦場全体に、【濁流で溢れる地下水路】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
WIZ   :    緑が好きな子は…身体がどろどろの溶け腐り死ぬ
攻撃が命中した対象に【膿と蛆が湧く程に急激に腐りゆく傷】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【腐敗が進行し全身が緑色になり溶け腐る事】による追加攻撃を与え続ける。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は仇死原・アンナです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●沈黙など許さない
 暴れ回るごめずちゃん達を打ち倒し、猟兵は妖怪達を骸魂から解放していく。幽世の崩壊に抗い続けた彼等の前に、ついに事の元凶が姿を現した。
「ああ愚かな!! 常に誰かの声が響き!!! いつだって言葉を交わせるこの状態こそが至高だと言うのに!!!!」
 月下にたなびくは黒いマント。全身を黒で統一したその妖怪こそが、オブリビオン『黒マントの怪人』である。
 問いに答えた者を、その答えにちなんだ方法で殺す。それが彼の在り方である故に、沈黙を、静寂を、彼はずっと憎んでいたのかもしれない。
 そして、『静』を奪い取ったこの世界を謳歌するように、彼は高らかに問うた。

「赤、青、緑!!! あなたはどの色が好きですかーーーーー!?!?!?!!?」
矢来・夕立
【陰キャさんチーム】※自由にどうぞ
狭筵さん/f15058
赤ずきんさん/f17810

ハァッ…ハァッ…働け!この馬鹿共が!
そこのクソパリピ!司会ごっこしてるお前だよお前!そこのお前!オレ達陰キャさんチーム1個に含まれる殺意は陰キャさんチーム1個分だぜ!オレは黒が一番好きです!

あいつも黒いな

キャラ被りは死罪でしょうがッこのド素人!オレのほうが美少年属性つきでアドがありますがブチ殺します!
火は狭筵さんのUDCと湿り気のある赤ずきんさんがなんとかしますんでやはり問題ありません!
設問1!お前の血の色なーんだ!正解はUCのあと!【竜檀】!実際血飛沫何色なんですか!?えっ当てたらハワイへご招待!?

誰が?誰を?


レイニィ・レッド
【陰キャさんチーム】
坊ちゃん/f14904
狭筵サン/f15055

……ハッ
いけねェ!すっかり我を忘れていました!
狭筵サン!
伸びてる場合じゃないですよ!

あ゛?!
誰が赤好きだって言いました?!
自分、赤ずきんやってますが!
レインコート着てますが!
別に赤が好きなわけじゃねェんですよ!!
「持ってるものが赤いから赤が好きでしょそうに違いない」
っつー決めつけはよくねェですね!
ハイ!アンタは正しくねェ!!斬る!!

設問2!今日の天気はなーんだ!
答えはUCで!『赤い雨の孤影』!
湿り気とかナメクジみたいに言うの何とかして下さい!
炎とか知らねェし!
炎は水に弱ェんですよ!!

ハワイ行くンですか?
陰キャチームなのに?!


狭筵・桜人
【陰キャさんチーム】
矢来さん/f14904
赤ずきんさん/17810

もーヤダ!もー私起きませんからね!味方から!暴力を!受けたので!!
心身ともに傷ついてもう立ち上がれません!!
えっなんですか?敵?早く言ってくださいよ
こんなとこ寝てたら巻き添えくらうでしょ!!!

私はピンク。って私まで勝手に陰キャ扱いしないでもらえます!?!?
学校の同級生に遊びに誘われたこともないし
休日は大体いつも一人で過ごしてますけど全然陰キャじゃないです~~!!

設問3!二人に斬られるとどうなるでしょう!
正解発表です!死にます!
『名もなき異形』!火消しは水気のある赤ずきんさんを頼ってUDCで足止めします!

それでハワイは?



●陰キャさんチーム1個分
 『静』を失った世界でなお、刃は冴えて敵を裂く。本日何度目かのそれを終えた夕立は、身体的なものとは別の疲労に襲われていた。
「ハァッ……ハァッ……働け! この馬鹿共が!!」
 いややっぱりちょっと喉も痛い。とにかく仲間に向けたこの一喝で、如何に攻撃に桜人を巻き込むか腐心していたレイニィが我に返った。
「いけねェ! すっかり我を忘れていました!! 狭筵サン仕事ですよ!!!」
「は!? そんなんで無かった事にしようってんですか!?!?」
 切り替えの早い彼に対して、信じられないものを見る目で桜人は言う。
「イヤです私は起きませんからね!! 味方から!!! 暴力を!!! 受けたので!!!!」
「はーーッ!! オレも一発だけならセーフ理論で刺しますか!!!」
 職務放棄の構えに入った彼の様子に、夕立が刃を逆手に握ったところで、ばさばさとマントのたなびく音がその場に響き渡った。
「いやいや盛り上がっているね!!! ごめずちゃん達を随分減らしてくれたようだが!!!! まあその分あなた達が騒いでくれているから良しとしましょう!!!!!」
 天に浮かぶ月を背景に、黒マントの影が舞い降りる。シルクハットの下で弧を描く口。文字通り、『黒マントの怪人』が、猟兵達の前に現れた。
「狭筵サン!!! 伸びてる場合じゃないですよ!!!」
「何でですか!!! イヤだって言ってるでしょう!!!!?」
「敵です!!」
「それを早く言ってくださいよこんなとこ寝てたら巻き添えくらうでしょ!!!」
 レイニィの隣に桜人が跳び起きたところで、満を持して、怪人が問う。
「赤、青、緑!!! あなた達はどの色が好きですかーーーー!?!?!?!!?」
 都市伝説にちなみ、怪人はその回答に応じて相手を殺すのだ。
「そこのクソパリピ! 司会ごっこしてるお前だよお前!! そこのお前!!! オレ達陰キャさんチーム1個に含まれる殺意は陰キャさんチーム1個分だぜ!!!! オレは黒が一番好きです!!!!!」
「黒!? それはつまり私の事が……!?!?!?」
「は!? そんなつもり微塵もありませんが頭どうかしてるんですか!?!!?」
 照れたような素振りを見せる怪人の様子に、夕立の眼が剣呑な光を帯びる。しかし見れば見るほど相手の服装は真っ黒。配色だけなら闇に紛れるのが得意な誰かさんとそっくりのような気もしてくる。
「キャラ被りは死罪でしょうがッこのド素人!! オレのほうが美少年属性つきでアドがありますがブチ殺します!!!」
「理不尽!! ですがよしとしましょう、これが大人の余裕!!! そこの赤好きの方達と一緒にまとめて相手してあげますよ!!!!」
 咎める夕立の声を涼しく聞き流しながら、怪人は緩く肩を竦める。が、その発言は別の地雷を踏んだようで。
「あ゛?! 誰が赤好きだって言いました?!?!」
 赤い外套の男がキレた。
「自分、赤ずきんやってますが! レインコート着てますが!! 別に赤が好きなわけじゃねェんですよ!!!」
「は!?!? 私は黒が大好きで黒マントの怪人やってますが!?!?!?」
「自分がそうだから他人も同じだとでも!?!? そういう決めつけはよくねェですね!!!」
 糾弾すると同時に、断ち鋏がレイニィの手で顎を開く。色への拘りは相容れなかったようだが、『問いかけて断ずる』その在り方はどこ似ているかも知れない。
「ハイ! アンタは正しくねェ!! 斬る!!!」
「仕方ありませんね!! かかってきなさい『陰キャさんチーム』!!!!!」
「しれっと私まで陰キャ扱いしてませんか!?!? やめてくださいよ!!!!!」
 刃が交わされるまで秒読み段階だが、その前に桜人は敵の口にしたチーム名が引っ掛かっていた。
「学校の同級生に遊びに誘われたこともないし、休日は大体いつも一人で過ごしてますけど全然陰キャじゃないです~~!!!」
「言ってて空しくならねェですか狭筵サン!!!」
「現実見た方が良いですよ!!!!」
 反論が味方から飛んでくる状況だがここは聞かなかったことにしよう。
「ちなみに私はピンクが好きです!!!」
「ハイハイ大体赤ね!!!!」
「適当!?!!??」
 雑な応対で結論を出すと、怪人はその黒マントを大きく翻らせて、立てた指先を夕立へと向けた。まずは君だと示すその指が、はためくマントが、末端から夜の帳へと溶けていく。
「黒が好きな子は……闇に呑まれて死ぬ!!!!!」
 夜闇と半ば一体化し、死角を自在に突いて仕掛けられる攻撃に、狙われた者は成す術もなく呑み込まれることだろう。
「それがキャラ被りだってんだろ話聞いてなかったのかお前ェ!!!!」
「ぐわーーーーッ!?!?」
 まあ決まらなければこんなもんである。姿をくらます前に蹴り転がされた怪人へ、夕立は即座に追撃にかかった。
「設問1! お前の血の色なーんだ!! 正解はUCのあと!!!!」
 『竜檀』、閃く短刀が黒マントの怪人を切り裂く。防御に上げられた腕から、パッと血飛沫が上がり――。
「そう、答えは赤!! そして、赤が好きな子は……炎に焼かれ爛れて死ぬ!!!!」
 傷口から噴き出たそれが、即座に呪縛の炎へと変化する。急速に燃え広がるそれは、夕立のみならずレイニィと桜人をも呑み込まんとするが。
「湿り気のある赤ずきんさん!! 今度こそ出番ですよ!!!」
「ハイ!! でも湿り気とかナメクジみたいに言うの何とかして下さい!!!!」
 夕立の声に応えたレイニィの姿が、赤くぶれる。
「設問2! 今日の天気はなーんだ!! 答えはUCで!!!」
 その身体を空間に滲ませるようにして、そこに在るのは『赤い雨の孤影』。降り注ぐ赤い雨が、怪人の呪炎を抑え込む。
「やっぱり赤好きでは!?!?」
「しつけェんですよ!!」
 赤く煙る雨と蒸気の合間、怪人は拮抗状態を打開するさらなる一手を打ちにかかる。しかしそこを突いたのは、桜人の放った『名もなき異形』。絡み、喰らい付くそれが束の間敵の自由を奪ったところで。
「はいそれでは設問3!!! 二人に斬られるとどうなるでしょう!!!!」
「えっ当てたらハワイへご招待!?」
「誰かそんなこと言いました!?!?」
 夕立の脇差と、レイニィの鋏が迫る。
「えっ、ハワイ!?!? 斬られたら痛いんじゃないですか!?!?!?!」
「はい残念!!! 正解は!! 死にます!!!!!」
 桜人の正解発表に合わせて、二条の剣閃が怪人を裂いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

菱川・彌三八
あァ成程、黙られちゃ何も出来やしめェのか
すんならヨ、全然別の事や別の色の名を云うなァ…野暮だな

夫れにしても、叫ぶ必要ねェだろ
こんっだけ喧しくちゃ交せる物も交せやしめェよ
怨霊か妖かしれねえが、ちいと趣を持ちやがれ
お前ェの声も!聴こえねえんだよ!!

ちいと迷って、筆を取る
胸いっぱいに息吸って、奴の耳をぶっ壊す声量で
  赤
同時、筆も一閃
端から燃えるかの如くの赤を纏って、炎を避けて駆ける
焼けて死ぬ事があるかは知らねえ
然し、鳳凰を封じられども関係ねェさ
拳が使えりゃ其れで善い
此の様な輩はヨ、大概ェ殴り合いにゃ弱ェって決まってんのサ

今から!お前ェを!
声も出せねェ程に!両拳でぶちのめす!
後はしこたま殴打



●燃え上がる炎の色
「――あァ成程、黙られちゃ何も出来やしめェのか!!!」
「ご明察!! 出来なくはありませんがそれは私の在り方ではない!!!!」
 『静』を奪う、などという一見回りくどい手に出た理由を察した彌三八に、黒マントの怪人は高らかにそう告げる。何を聞かれようが無視してやり過ごす、それがある種の解法ではあるだろう。そこを何とか答えさせるのも怪人の腕の見せ所なのだろうが、それは二次的なものに過ぎないのだと彼は言う。
 しかし、それならば三択を無視されたら? 彌三八もすぐにその可能性に思い至るが、その辺りの野暮はしないのがこの男だ。
「赤、青、緑!!! あなたはどの色が好きですかーーーーー!?!?!?!!?」
「っせえ!!!! 夫れにしても、叫ぶ必要ねェだろ!!!!!」
 水笛から口を話して叫び返す。これだけ喧しいと、結局交わせるものも交わせまい。
「怨霊か妖かしれねえが、ちいと趣を持ちやがれ!!!!」
「はい!?!? すいませんもう一度お願いできますか!!!!」
「言わんこっちゃねェ!!! お前ェの声も!!!! 聴こえねえんだよ!!!!!」
 くそうるさい怒鳴り声でやりあったところで、彌三八はおもむろに筆を取った。波濤より今描くべきものは。
 すう、と息を吸い直して、筆を一閃。

「赤!!!!!!!!!」

 喧騒をも突き抜けるような声と共に、その身に鮮やかな『鳳凰』が宿る。その翼は端から燃えるかのような、炎の色。だが回答を得た黒マントの怪人も、即座に行動に移っている。
「赤が好きな子は……炎に焼かれ爛れて死ぬ!!!!」
 自らを傷付けた怪人の傷口から、呪いに満ちた炎が噴き上がった。
 夜を彩る二色の赤。相手を絡め取らんとする呪炎を、擦り抜けるように鳳凰は舞う。しかし炎の発生源、怪人の身に近付けばそれもままならないだろう。駆けた彌三八も、最後には自ら呪炎に突っ込むことになり、その身に纏った鳳凰も色を失う。
「残念でしたねえ!! そのまま燃え尽きてしまいなさい!!!」
「ハ!!!! 関係ねェな! 拳が使えりゃ其れで善いんだよ!!!!」
 そう、これだけ接近できれば十分に役目は果たせている。炎を突き破るようにして、彌三八の拳が怪人の鼻面に突き刺さる。
「んがッ!?!?!?」
「てめぇみてえな輩はヨ、大概ェ殴り合いにゃ弱ェって決まってんのサ!!!  違うかよオラァ!!!!」
「痛!!!! いたいいたいいたいですって!!!!!」
「今から! お前ェを!! 声も出せねェ程に!!! ぶちのめす!!!!」
「えーーーーッ!?!?」
 絶え間なく放たれる拳の連打に押され、あっという間に捌き切れなくなった怪人の顔面を、再度彌三八の拳が打ち抜いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【花簪】
普段はそこまで大きな声を出さないのですが
加減が出来ないというのは、なかなかに辛いものですね!
オオカミ殿が、少しばかり羨ましいです

色は青
普段の装いも青といった寒色系が多いですね
何故と聞かれましても、自分にとっては落ち着く色なのです!

水路を作られてしまい、オオカミ殿とは逸れてしまったようです
この時こそ、彼等の力を使う時
月夜ノ御使イにて春暁を召喚
動物使い、話す技能にて春暁に出口を探すよう指示

駆ける場所があるのならば東雲に騎乗して出口を探しましょう
泳ぐしか術がないのであれば、水泳の技能を使って移動します

出口を出ましたら、そのまま早業の居合にて応戦
オオカミ殿、遅れてしまい申し訳ございません!


ジョン・フラワー
【花簪】
キミもお喋り好きなの? 気が合うね!
僕ピンクが好きなんだ!
ピンクはないの? じゃあ黄色!
白! オレンジ!
うわーっ! 簪のアリスが消えた!

僕も青って言えば迷子にならない? でも赤の方が好きだなあ
ほら、僕のリボンも赤だろう! あったかい色だよ!
でもキミの赤は熱そうだね! 優しくしたらピンクにならない?
破魔怪力パンチで優しくならないかやってみよう
木槌は火がついちゃうからね!

そうだ! 僕ピンクできるよ!
これでピンク色が好きって答えられた時も困らないね!
コツはね、ちっちゃい石をいっぱい握って投げることだよ!
そしたらすごくピンクになってすっごいんだから!
おかえりアリス! アリスの分残ってるよ!



●色とりどり
「赤、青、緑!!! あなたはどの色が好きですかーーーーー!?!?!?!!?」
「僕ピンクが好きなんだ!!! ピンクはないの!!!?」
 現れた怪人の問いに、早速三択を無視してジョンが答える。
「無いわけではありませんが、どの色が――」
「じゃあ黄色!!! 白やオレンジも好きだなぁ!!!!」
 圧倒的な自由回答、そして抑えるつもりもなく『静』のない世界に順応した大声、それをある意味羨ましく思いながら、夜彦は彼に続いて答えた。
「私は青が好きです!!! 普段の装いも青といった寒色系が多いですね!!! 何だか落ち着く色なので!!!!」
「お答え有難うございます!!! それでは素直なあなたから、青色の死にご招待しましょう!!!!」
 青が好きな子は……水に溺れ苦しみ死ぬ。そう怪人が宣言すると同時に、突如生み出された迷路が夜彦を呑み込んだ。
「うわーっ! 簪のアリス!!!」
 ジョンが悲鳴を上げるが、見回したところで、地下水路へと消えた彼の姿を追うことは出来ない。
「僕も青って言えば迷子にならない!!? でも赤の方が好きだなあ!!!! ほら、僕のリボンも赤だろう!! あったかい色だよ!!!」
 飽くまでマイペースに言うジョンに、怪人は笑みを深めた。

「オオカミ殿、オオカミ殿!?!? どうやら逸れてしまったようですね!!!!」
 一方、地下の迷路に囚われた夜彦もまた、連れの姿を探していたが。
「これは……よかった、と言うべきですかね!!!」
 返事がないが、まぁこの迷路に彼が巻き込まれていないことは、幸運とも言えるだろう。それよりも問題は現状である。この迷宮を形作るのは地下水路、つまり道幅一杯の水流に、彼の身体はぐんぐん流されていく。どうにか底に足を付けることはできても、水流に逆らっての移動は困難なうえに時間がかかってしまうだろう。正攻法では突破する前に溺れ死ぬのがオチか。
「ならば今こそ、彼等の力を使う時です!!!!」
 彼が呼び出したのは『月夜ノ御使イ』、イヌワシと赤毛の馬が、そこに召喚される。
 沈黙の不可能なこの世界、早速それぞれ大声で鳴き声を上げ始める彼等に、どうにか夜彦は意図を伝えていく。
「春暁は飛んで出口を探してください!! 東雲!!! ここでも歩けますか!?!?」
 頼もしい事に、東雲はこの状況でもある程度移動できるようだ。早速それに跨った夜彦は、春暁からの答えを待つだけではなく、自らもまた迷路探索を開始した。
「オオカミ殿ならば大丈夫かと思いますが……一刻も早くここを抜けなくては!!!!」

 そしてこちらは、夜彦の危惧する迷路の外。取り残されたジョンはと言えば。
「黄色が好きな子は……雷に打たれ痺れて死ぬ!!!」
「白が好きな子は……全身の血を抜かれ蒼白になって死ぬ!!!!」
「オレンジが好きな子は……全身に大量の蜜柑を叩き付けられて死ぬ!!!!!」
「最後!!!! 僕にも分るよ最後のやつ適当でしょ!!!!!」
 襲い来る電撃、吸血蝙蝠の大群、どこからともなく降ってきた大量のミカン。三択の縛りを解かれた怪人が次々と放つ攻撃に、ジョンは苦戦を強いられていた。
「そんなことはありません!! お答えいただいた以上!!! 誠心誠意工夫を凝らして殺しますよ私は!!!!」
 ええ、ええ。血を流すことも辞さない構えです。そう宣言した通り、怪人は自らを傷付け、その血を炎として噴出させる。
「赤が好きな子は……炎に焼かれ爛れて死ぬ!!!」
「ワッ! キミの赤は熱そうだね!!! 優しくしたらピンクにならない!!?」
 怪力を駆使した拳で殴れば優しくならないかな? そんな考えの元、ジョンは敵へと殴りかかった。怪人の放つ呪いの炎はユーベルコードを阻害する。ただの拳による打撃は、その意味では有効だろう。
「なりませんねえ!! でもご安心ください!!! ピンクはピンクで別に用意してありますから!!!!」
 しかし、それで敵を打倒すには至らない。絡みつく炎はジョンの拳の勢いを縛り、同時にその身を焼き苛む。さらにそこに、怪人はピンクの追い打ちをかける構えで。
「ピンクが好きな子は――!!!」
 しかし大仰にそう告げたそこに、一陣の風が駆け抜ける。
「そこまでです!!!!」
 迷路を突破した夜彦による居合斬りだ。剣閃はジョンを縛る炎を裂いて、怪人にも深い斬撃を見舞った。
「簪のアリス!!!」
「オオカミ殿、遅れてしまい申し訳ございません!!!」
「そんなことないよ!!! 丁度良かった!!!!」
 身体の自由を取り戻したジョンは、逆に体勢を崩した怪人へと一歩踏み込む。
「じゃあピンクは僕がやってあげるね!!! コツはちっちゃい石をいっぱい握って投げることだよ!!!!!」
 言葉通りに、掬い上げた石のかけらを投げつけると、それはすぐさま花をつけた木の枝へと形を変えて、怪人の身へと突き刺さった。
「ほら!!! とってもピンクになったよすっごいでしょ!!!!!」
「ああ、痛いですねえなんてことを!!! けれどこれはこれで参考になりましたよ!!!!」
 苦悶の声を上げ、自分の身体で花を咲かせた枝々を切り払いながら、怪人は彼等二人から逃れて行った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ユーイ・コスモナッツ
【天の川逆流れ】
ぷはぁ!
まったくもう、
正々堂々戦おうという気持ちはないんでしょうか、
今回のオブリビオンは!

私が水で、納さんが迷路ですね?
OKです、その取引のりました!

水面に浮かべた反重力シールドに、
ボディボードのように捕まったら、
【天の川の流体力学】を起動!
水の流れに逆らって強引に突き進みましょう
納さん、私にしっかり捕まっていてくださいね

押し寄せる水はバリアで弾けるはず!
迷路ははっきりいって大の苦手なので、
納さんのナビゲートに頼ります
進路さえ分かればあとは簡単、
どんどん加速しますよー
スピード青天井です!

迷路を突破するころにはきっと最高速度、
そのまま黒マントに体当たりを決めます!


納・正純
【天の川逆流れ】
お次は迷路かい、上等だぜ聞こえてっか怪人!
解き明かしてやるから待ってやがれガボガボ!
クソッまずは水対策だ!
取引しろユッコ! 俺迷路、お前水! OK?!

水はユッコに任せて、俺は迷路に専念だ
濁流の迷路ってンならよォ、水の流れに逆らってけば水の根源――怪人のとこまで行けんだろ!
念のため答え合わせといこう!
【知性有理】で迷宮の壁、床、濁流に知性を与えて答えを聞き出す
答えずとも反応が見れれば道の裏付けにはなるさ
オラァテメェら! 壊されたり蒸発したくなけりゃ出口を教えな!
出口はこっちか!? それともこっちか?!

答えてやるのが世の情け、俺が好きなのは青だ!
特にテメェのツラみてェな青がなァ!



●天の川逆流れ
 確たる連携と役割分担、『取引』の下にごめずちゃん達を退けたユーイと正純の前に、ついに黒衣の怪人が姿を現した。
 滅びに向かうこの世界が、この状況が、楽しくて仕方ないと言った笑みを浮かべた怪人は、早速二人に向かって問いを投げた。
「赤、青、緑!!! あなたはどの色が好きですかーーーーー!?!?!?!!?」
「その中だと青ですかね!!!!!」
「よーーーし無敵のレディは時間切れだな!!! 良いぜかかってこいよ怪人!!!!」
 先程までのはぐらかしが嘘のようにあっさり答えたユーイへ、怪人はその手を振り上げた。
「素直な回答ですね素敵ですよ!!! それではご提供しましょう、青が好きな子は……水に溺れ苦しみ死ぬ!!!!!」
 ユーベルコードの発動と共に地が裂けて、地下に発生した迷路が二人を呑み込んで行く。
「あーーーーッ、ズルいですよ!!!!」
「上等だ!!! こんなもんすぐに解き明かしてやるから待ってやが――!!!!」
 敵に向かって中指を立てる寸前に、正純は地下迷路――そこに流れる濁流へと着水した。
「ガボガボ!!! クソッやっぱりこういう趣向か!!!!」
「ぷはぁ!! まったくもう、正々堂々戦おうという気持ちはないんでしょうか、今回のオブリビオンは!!!!」
 同じく水の上に顔を出したユーイが憤りの声を上げる。地下水路となったここを半ば満たしているこの濁流、確かにこのままではいずれ力尽き、溺死させられてしまいそうだ。
「取引しろユッコ! 俺迷路、お前水! OK?!?!?」
「OKです!! その取引乗りました!!!」
 言葉少なに、けれど濁流に負けない声音でそう交わして、早速二人は脱出に向けて動き出した。
 まずはユーイが、先程も使った反重力シールドを水面へ。ボディボードのように捕まったところでユーベルコードを発動する。
「納さん、私にしっかり捕まっていてくださいね!!!」
「おう!!!!」
「離したら死ぬと思ってください!!!!!」
「おう!?!?」
 この危機を書き換えるのは、『天の川の流体力学』。ユーイの周囲にバリアが展開され、押し寄せていた水が、彼女の周辺から弾け飛んだ。水面から浮かぶ形になったシールドは、やわらかな光を放ちながら、水の流れに遮られる事無く滑り出す。
「納さん!! ナビゲートの方はお願いしますね!!!」
「ああ、そっちは任せとけ!!!!」
 迷路とかはっきり言って苦手なので、と告げるユーイに頷いて、正純は迷路の解法に取り組む。突然放り込まれた上、ある程度流されてしまった現状では、現在位置すらわからない。鍵となるのは、この地下水路を流れる濁流か。
「濁流の迷路ってンならよォ、水の流れに逆らってけば水の根源――怪人のとこまで行けんだろ!!! ユッコ、上流に向かって進んでくれ!!!」
「了解です!!! どんどん加速しますよー!!!!」
 バリアで水を掻き分け、空中を進む彼女は、言葉通りぐんぐん速度を上げていく。確かにこれは、一回落ちたら復帰が難しいなと実感しながら、正純は思考を進める。先程のは飽くまでも初期情報からの暫定回答だ。最終的な『答え』に至るまで、思考を止めることはできない。そしてそのために必要なのは、知識、新たな情報だ。
「それじゃ聞き込みと行くか!!!!」
 『知性有理』、正純は壁や天井、さらには濁流へと弾丸を撃ち込む。対象に知性を授けるその弾丸は、知りたい答えに辿り着く一手となるだろう。

『私は壁!!!! 物言わぬ壁……!!!!!』
『ながれるぞー、ながれるぞー!!!!』
『床さんはずーっと水の中で大変そうだなあ!!!!!』
『あァ!?!? 煽ってんのかこの天井野郎!!!!??』

「しまったこいつらもうるせええええ!!!!!」
「納さん!!!! 何ですかこの悪夢みたいな光景は!!!?!?」
 突然数倍くらい騒がしくなった状況に、ユーイが困惑の声を上げる。繰り返しになるがここは『静』の失われた世界だ。知性を得た濁流さんは水の流れと共にあっという間に後方に消えたが、この密閉された空間で上下左右から大声が響くのは中々にすごい。
「待ってくれ……! こいつらから情報を聞き出せば、きっと――」
『私は壁!!!! 物言わぬ壁……!!!!!』
「言ってるじゃねえかクソァ!!!!!!」
 とはいえ解を導くには適切な問いと情報を読み取る力が不可欠だ。中々難儀しそうな相手ではあるが……。
『ながれるぞー、ながれるぞー!!!!』
「えっ!!?!?」
 くそやかましい中で聞こえたそれに、ユーイが反射的に後ろを振り向く。
「納さん!!! いま、さっきの濁流さんと擦れ違いましたよ!?!??」
「は――!?!?」
 一見何でもないことのように思えるが、それは重大な『新情報』だ。別れ道はいくつもあったが、二人はずっと上流に向かって進んでいる。下流に流れ去ったはずの者と再度すれ違う、その状況が成り立つには水が循環していなければならないはず。そもそもこの凄まじい移動速度を考えれば、既に何かしら頂点、水の根源に辿り着いてもおかしくない。
 頭を過るのはUDCアースで見た流れる水の騙し絵。ユーベルコードの産物であれば、それくらいは――。

「――よーしテメェら!!! 壊されたり蒸発したくなけりゃ質問に答えな!!!」

●光り輝く軌跡
 一方こちらは迷宮の外。相手が居なくなって独り言に疲れた怪人は、「彼等もそろそろ溺れ死んだ頃だろうか」と、自分の造った迷路の出口からその中を覗き込んだ。
 すると。
「よお!! また会ったな怪人!!!!」
「目標補足!!! このまま突っ込みます!!!!!」
 え、と怪人の顔が引きつった頃にはもう遅い。
「俺が好きなのは青だ!!! 特にテメェのツラみてェな青がなァ!!!!」
「ぎゃーーーーーーーーッ!?!?!?!」
 最高速度で突っ込んできたユーイのシールドに轢かれ、黒マントの怪人は流星を逆再生するように吹っ飛んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

城野・いばら
あなたはどのイロ、ですって?(よく聞こえてない)
問われたら答えましょう、そうしましょう

いばらはシロよーーー!
マダムもシロよーーー!!
え。え?周りの音が大きすぎて聞こえなかったかしら?
ならもう一度…
え?え、もしかして、ないの?…い、いばら達仲間外れ?
そんな、そんな…意地悪されると目が潤んでしまうわ、ぴえんだわ
聞いて聞いて、まっクロさんがひどいのよって。周りのコ達も巻き込んで

そうだわ、ないなら作ればいいのよ!こんなの如何?
そーれって、花弁をアナタへ向ける
一部が枯れてもいばらはまた咲ける(継戦能力)けど、
当たりそうなら属性攻撃で起こした魔法の風で吹き飛ばし
腐敗のミドリは重ねて、重ねて…ほらまっシロに



●白の解法
「赤、青、緑!!! あなたはどの色が好きですかーーーーー!?!?!?!!?」
「え!? あなたはどのイロ、ですって!?!?」
 良い感じに姿を現した怪人がそう尋ねるが、生憎周りがうるさいのもあっていばらにはうまく伝わらなかったようだ。
「いばらはシロよーーーーー!!!!!」
『私もシロよ!!!!』
「マダムもシロですってーーーーーー!!!!!!」
「え! 白!?!!?」
 手元の鏡の分も合わせて回答。けれど怪人の方はピンと来ていないらしく、首を傾げているのが見える。
「あら!!? 周りの音が大きすぎて聞こえなかったかしら!?!?」
 もう一回「シロよー」と伝えてはみるが、怪人の反応は相変わらず。
 いばらは手元のマダム・リリーと、困ったように顔を見合わせた。
「できれば赤青緑の中から答えてほしいんですけど!!!!」
「えっ、シロはないの?!? いばら達仲間外れ!!?!?!?」
 若干行き違いはあるものの、ショックな報告を受けていばらの眼に涙が浮かんだ。
「どうしてそんな意地悪をするの、まっクロさん!!! ここまで来ていばら達だけ仲間外れにしようだなんて!!!!」
「ええ!?!? 誤解ですよそんなつもりは!!!!!」
 『静』の奪われたこの場所では、泣き声だってかなり大きくなるもので。敵の言い訳だか弁明だかも、彼女にはちょっと届かない。
「あなただって赤でも青でも緑でもないのに!!!!」
「それはまあ!!! そうですね!!!!!!」
 いばらの訴えに頷いて、それならばと怪人は次の手を打つ。内容はどうあれ、『白』という回答を得られたのは事実。
「良いでしょう!! それならば白にお応えいたしますとも!!!!」
「本当に!?!?!?」
 ぱっと目を輝かせたいばらに向かって、黒マントの怪人はその手を向けた。
「白が好きな子は……激しい吹雪に見舞われて凍え死ぬ!!!!!」
「あーーーーッ!!! 萎れちゃう!!!??」
 突如発生した大雪がいばらに向かって襲い掛かり、周囲ごと白く染めていく。彼女の咲かせた白い薔薇達にも、うっすらと霜が降り始めた。
「結局意地悪じゃないの!!! よくないわよこういうの!!!!」
「いけませんか!?!? 私なりに一生懸命考えたんですけど!!!!」
「そうね!!! いばらならこうするわ!!!!!」
 彼女の立てた指先に従って、魔法の風が巻き起こる。いばらを包んでいた吹雪を吹き払い、その気流は何枚もの白薔薇の花弁を載せて舞う。
「そーれっ!!!!!!」
 『茨のくちづけ』。真っ白な嵐となったその風は、先程とは逆に黒マントの怪人を包み込んで行く。重ねに重ね、上塗りを繰り返したそのマントは、もとの『まっクロ』とは程遠く。
「ほら、まっシロ!!!!!!」
「ぐわーーーーッ!!! 勉強になります!!!!!」
 色のアイデンティティを奪われ、ダメージも受けた怪人は、這う這うの体で彼女の前から逃れて行った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

九之矢・透
あーーうるっさい!!!
寂しがり屋サンかアンタ!!!

しかもその三色は何なんだ!?!?
黒はねーのか黒は!!
そんな真っ黒クロスケな癖して!?
黒に対する拘りはねーのかなああん!??
只のイチャモンだけどね!!

色はあえてなら青かな!!
青空とか好きだしうわメッチャ水出てきた!
小さな彼らにゃ帽子の中にでも避難してもら……ぴーぴー頭に響くよ!!

もっかい出てこい狗解!!
あーもう好きなだけ遠吠えしていいから!?
犬掻きするソイツに乗って出口を目指すぜ!!
犬なんだから鼻利くだろ?
……利くよな!?

脱出出来たら正面から全力投球!
気配消せないなら数撃ちゃ当たる作戦だ!
アンタは犬と、投げナイフと、
どっちがいいですかーー!?!?



●優秀な猟犬
「赤、青、緑!!! あなたはどの色が好きですかーーーーー!?!?!?!!?」
 ついに現れたオブリビオン、黒マントの怪人の叫びがこだまする。それを真正面から受け止める事になった透は、いい加減耳が痛いのか顔を顰めた。
「あーーうるっさい!!! 寂しがり屋サンかアンタ!!!」
「は!? そうですが!?!? 誰も答えてくれないと私は誰も殺せませんからね!!!!」
「殺す前提なのがおかしいだろ!?!?」
 こんなこと言っても仕方がないとわかりつつも、『静』の失われたこの状況は、透に沈黙を許してくれない。
「大体なんだよ赤青緑って!! 黒はねーのか黒は!!!」
「えっ!!! でもそれはちょっと!!!!」
「ちょっとって何だよ!!! そんな真っ黒クロスケな癖して!?! 黒に対する拘りはねーのかなああん!!!??」
「ええまあこれはこれで拘りの一品なんですけど!!!!」
 いちゃもんに近い物言いだったが、怪人の側もこれには黙っていられなかったようで。
「でも『黒いマントが好き』なんて言われたら!!! それは、もう……告白じゃないですか!!!!!」
「うわ!!!! めんどくさ!!!!!!」
 心からの叫びを上げた透は、これ以上追及するのが怖くなってきたので話を進めることにした。
「色はあえてなら青かな!! 青空とか好きだし――ってうわメッチャ水出てきた!!!!」
「ええ、ええ! でしたらこの最期を差し上げましょう!! 青が好きな子は……水に溺れ苦しみ死ぬ!!!!」
 突如溢れ出した濁流に流された透は、口を開けた地面の下、ユーベルコードによる地下迷路に突き落とされる。ポケットの中から這い出してきたリスや小鳥を慌てて帽子の中に仕舞い込んで――うわっぴーぴー騒ぐ声が頭に響く。
「ええい!!! とにかくさっさと脱出しよう!!!! もっかい出て来い狗解!!!!!」
「アォーーーーーンッ!!!!!!」
「あああ至近距離だとなおのことうるさい!!!」
 先程同様召喚と同時に遠吠えを上げる猟犬。主がダメージを受けているのを見て若干しゅんとしてしまうが。
「あーもう好きなだけ遠吠えしていいから!!? 頼んだぜ!!!!」
 彼女の命に従って、ばしゃばしゃと水を掻いて泳ぎ始めた。身体の大きなそれに跨る……というか手綱とかないのでしがみつく形で水上に上がった透は、改めて迷路の様子を見回す。地下水路そのものといった感じのこの空間は、流れる濁流の音がこだまし、息が詰まるような作りをしている。しかしまあ、青空が好きとか言った直後にこの有様だ。
「こんなトコで溺死なんてごめんだからな!!! 狗解!!!! あの黒マントの所まで連れてってくれ!!!!」
 質問の答えが途中であれば、この猟犬は相手を最後まで追尾し続けるはず。高く遠吠えでそれに応えて、狗解は鼻を利かせながら泳ぎ始めた。
「だ、大丈夫だよな……!!?」
 ちょっと心配なところもあるが、今それに応えてくれるのは、頭上の小動物達だけだった。

 もう何か水浴びはしばらく良いや、と思えるぐらいの時間が経過したころ、透はようやく水中迷路を脱出した。
「よーーーし!!!! よくやったぞ狗解!!!!!」
「え!?!? 出て来れたんですか!!!??」
 相手が居なくなって膝を抱えて独り言を繰り返していた黒マントの怪人が、驚いたような嬉しいような声を上げる。まあ、それにかかずらってあげる程、透もお人好しではないのだが。
「ようやく会えたな黒マント!!! アンタは犬と、投げナイフと、どっちがいいですかーー!?!?!?!?」
「はい!!? どっちも嫌ですけど!!!!!」
「じゃあ両方な!!!!!!!!」
「ええっ!?!?!?」
 水から上がって本領発揮とばかりに駆けた猟犬が、その牙を突き立てるのと同時に、透は正面から全力投球で投げナイフを放った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スキアファール・イリャルギ
(※引き続きブチ切れております)
(※もう全台詞グロウルでいいんじゃないでしょうか)

ア゛!? うるせぇって言ってんだろその中だったら赤だッッッ!!!(拡声器とマイク使用)
赤を選んだ理由!? てきとうだ!
赤い上着着てるのもたまたまだ!
赤も青も緑も同じくらい好きだけど影人間にとっては黒が至高なんだよ!!!
何故選択肢に黒が無いんだおまえ黒ずくめなのに!! ナゼニホワイ!! 選択肢増やせよ呪瘡包帯巻きつけんぞ!!!(※言いがかりである)

あ゛ぁ゛あ゛あ゛おまえのせいで疲れる!!
耳も喉も血管もぶっ壊れるわクソがッッ!!
炎を霊障でブッ飛ばしながらその耳元で叫んでやるよ静かな夜を返せぇえええええッッッッ!!!!



●黒の扱いについて
 何も考えてなさそうな高笑いを空に響かせて、黒マントの怪人がスキアファールの前に降り立つ。それに対し、眉間に寄った皴をさらに深くしながら、スキアファールはがらがらと喉を鳴らすようにして声をかけた。
「ようやく出やがったな事の元凶!!!! この頭痛も耳鳴りも元を辿れば全部おまえのせいだもんなァ!!!!!」
「ええまあそうですけど!!! あなた怖い声してますね!!!!!」
「馬鹿にしてんのか!?!?!」
 表情筋が今日一番仕事をしているのを感じながら、スキアファールは拡声器を強く握る。そんな様子を知ってか知らずか、黒マントの怪人は早速例の問いを彼に向かって投げかけた。
「声も顔も怖いですけど私は差別しませんよ!!!! 赤、青、緑!!! あなたはどの色が好きですかーーーーー!?!?!?!!?」
「ア゛!? うるせぇって言ってんだろその中だったら赤だッッッ!!!」
「わ!!! 元気な回答ありがとうございます!!!!」
 拡声器越しの大音量に、怪人もさすがに怯んだ様子で応じる。
「やっぱり赤い格好してますもんね!!!!!」
「あ!?!? 上着はたまたまだよ適当だよてきとう!!!!」
「え!!? そんな適当に選んだ服なんですか!?!?」
「うるせえ!!! 赤も青も緑も同じくらい好きだけど影人間にとっては黒が至高なんだよ!!!!」
 怒り任せのグロウルで吠えて、それでもなお言い足りないとばかりにスキアファールは文句を続けた。黒マントの怪人が要領を得ない声を上げている、その間に。
「何故選択肢に黒が無いんだおまえ黒ずくめなのに!!! ナゼニホワイ!!! 選択肢増やせよ呪瘡包帯巻きつけんぞ!!!!」
「そんな!! でも!!! 選択肢に加えるなんて私にはとてもとても!!!!!」
「はあ!?!?!?」
「『黒マントが好きです』なんて言われたら私はどうすれば良いんですか!?!? 告白でしょうこんなの!?!?!??」
「知るかッ!!!!!!」
 揃いも揃って前向きな今回の敵の様子に、疲れた様子でスキアファールが息を吐く。
 と、そこで嫌な直感が頭を掠めた。
「待てよ……じゃあ私がさっき言ったのは――!!!?」
 赤も青も緑も同じくらい好きだけど黒が至高。そんなことを口走ってしまったような。
「告白ですよね!!!??」
「あ゛ぁ゛あ゛あ゛違うわ!! 照れた感じを出すな気色悪い!!! ああもうこんな調子じゃすぐ耳も喉も血管もぶっ壊れるわクソがッッ!!!!」
 頭を抱えて叫ぶ彼に、上機嫌な様子の怪人が両手を広げる。その末端が、マントの裾が、徐々に夜闇へと溶け込んで行く。
 そう、答えやすいよう三択で問うてはいるが、沈黙以外の答えさえあれば、黒マントの怪人は『その色で殺せる』。
「それでは特別にお送りしましょう!!! 黒が好きな子は……闇の腕に抱かれて死ぬ!!!!!」
「や め ろ !!!!!!」
 が、対象の死角から迫る闇に溶けたその腕を、スキアファールは断固として拒否した。
 シャウトと共に発生した霊障が、迫り来る『闇』を弾き飛ばす。そのまま前へと駆けた彼は、まだ実体を残している怪人の頭部を両の掌で挟んで。
「いい加減にしろよおまえ!!! 静かな夜を返せぇえええええッッッッ!!!!!」
 『叉拏』。怪奇と化した両手から放たれる一瞬の歌が、怪人の脳髄を強く強く揺さぶる。
「んぐ、あァ――!?!?」
 もはや言葉にならない悲鳴を上げながら、怪人はその手から逃れるべく、闇へと溶けていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エンジ・カラカ
【エレル】

赤色が好きデス!!!!!!!!
アァ……元気良く言わないとなァ…。
赤色!!!賢い君の赤色!!!
ケチャップの赤色!!!

知っているカ?
賢い君はケチャップにもなれるンだ。
薬指の傷を噛み切って賢い君に食事を与える。
コレの血はケチャップ味じゃないケド
でもでも賢い君のご馳走ダ

赤色!!!賢い君!!!ケチャップ!!!
ヨシュカの粒マスタードを合わせてフランクフルトだなァ。
アァ……コレは気付いた…。
フランクフルトはジャーキーの仲間!!!

ジャーキーの仲間は美味しい!!!うんうん。
ロカジン、カスカ、フランクフルト!!!
いけー、エレルのフランクフルト攻撃!!!

フランクフルトは美味しい。うんうん。


ロカジ・ミナイ
【エレル】

僕はピンクが好きなんだけど!?
ないの?無理なの?出来ない?そう…赤でいいよ、もう

賢い君の色は好き
ケチャップも好き
そう、賢い君はケチャップにもなれ…なれんのぉ!?
弟子!今のメモっといて!!
マスタードも好き
フランクフルトなんて超好き
しかし結石はまずいよヨシュカ!ままま万倍!?…まじで!?
……誤差なら大丈夫!!

フランクフルトはジャーキーの仲間だってぇ!?
弟子!今のもメモ!!
そいじゃあ串刺しにしてこんがりジューシーにしよう
こう…誘雷血で
チンの要領で中からジュワッと
電子レンジとか詳しくないけどこんな感じでしょ

ピンクのマスタードがあるだってぇ!?
弟子!今メ!!
エレルフランクに最適だよ!天才か!?


ヨシュカ・グナイゼナウ
【エレル】

わたしはオレンジが!!!
好きなんですけどー!!!!何でないのですか!!!!?
ダメッ!!!ダメ怪人!!!
じゃあ赤で良いです

賢い君はケチャップにも!!?(衝撃の事実)
えーと、えーと!じゃあわたしはマスタード(【刺霧】)を!!
食べたら結石の万倍ヤバい奴が体内にできますが
誤差です!!

朽守さま!!フランクフルトはジャーキーなんですって!!知ってましたか!!
わたしは知りませんでした!勉強になったなあ

エレルフランクフルト!!(概念)
赤の炎でこんがり焼けて食べ頃ですよ!!!あっつい!!!
あ!ロカジさまエレルフランクフルト、屋台でも出してみてはいかがでしょうか?!
ピンクのマスタードもあるんですって!!


朽守・カスカ
【エルレ】
私は空の移ろいのようなグラデが好きなのだが、なさそうだね
では、せめて星空のように輝くラメを混ぜてはくれないか?
……それもダメなのか、なんて不親切
エンジ君が大変元気なので、赤を選んで皆の後ろに隠れよう

師匠に従いにメモしつつ
えっ、賢い君はケチャップ?
しかもヨシュカ君はマスタード?結石…と言うことは粒入りか、素晴らしい

フランクフルトがジャーキーだなんて
今日は私の知らないことばかりで賢くなっていく気がするよ(メモメモ)
師匠も何か用意するかと思えば
仕上げとは流石だね、我が師匠は

出来上がったフランクの何と立派なこと
でもエレルの名を冠するならば
エレル印の焼印が欲しくなるね
(メモにスケッチを添えて)



●商品化会議
「赤、青、緑!!! あなたはどの色が好きですかーーーーー!?!?!?!!?」
「赤色が好きデス!!!!!!!!」
 現れた黒マントの怪人の問いに、エンジが負けないほどの大声で答える。真っ当かつ分かりやすいそれに、怪人はうんうんと頷いて見せて。
「素直な回答ありがとうございます!!!! とっても助かりますよー、それでは次の方!!!!!」
 問いの矛先は、続けてロカジへと向けられるが。
「僕はピンクが好きなんだけど!?!?」
「早速三択を無視!!? でもピンクはちょっと酷い目に遭ったので却下します!!!!」
「は!? 却下とかあるの!!? プロ根性足りなくない!!???」
「何とでも言ってください!!! 無理なものは無理です!!!!」
「そう!!! なら赤でいいよもう!!!!!」
 互いに理不尽を押し付け合いながら、とにかく答えは得られたようだ。続いて視線を向けられたのはヨシュカの方。
「わたしはオレンジが!!! 好きなんですけどー!!!!」
「大変結構ですね!!! 出来れば三択でお願いしたいんですが!!!!」
「何でオレンジも選択肢に挙げておいてくれないんですか!!! ダメッ!!!! ダメ怪人!!!!!」
「すいませんね!!! どうしてもと言うことならオレンジで何とかしますが!?!?!」
「もう赤で良いです!!!」
 はい。そうなると残った最後の一人はカスカとなるわけだが。
「私は空の移ろいのようなグラデが好きなのだが、なさそうだね!!! では、せめて星空のように輝くラメを混ぜてはくれないか!?!??」
「えっ!!!! 急に難易度高い!!!!!!」
「……それもダメなのか、なんて不親切!! それじゃあ赤にしておいてあげるよ!!!」
 こちらも希望通りとはいかなかったようで、そう言い置いた彼女は仲間達の後ろに引っ込んだ。
 何か釈然としませんけれど、などと言い足しながらも、怪人は出揃った回答を前に話を進める。
「じゃあ全員赤好きってことで良いですね!!!!」
「アァ!!! 赤色!!! 賢い君の赤色!!! ケチャップの赤色!!!」
 満足気に頷いたエンジは、愛すべきその色を思う。薬指の傷を噛み切って、滴るそれを与えれば、賢い君、赤い糸がゆらりと蠢く。
「知っているカ!!? 賢い君はケチャップにもなれるンだ!!!!!」
「そう、賢い君はケチャップにもなれ……なれんのぉ!?!?」
「どういうことですか!? え!! どういうことですか!!!?」
 突如明かされた衝撃の事実に、ヨシュカが二度聞きして、ロカジは弟子にメモを命じる。
「つまり!! 赤色!!! 賢い君!!! ケチャップ!!!」
「えーと!? じゃあわたしはマスタードを!!!!」
 『刺霧』。黄金色の霧がヨシュカの周りに広がるが、なんでケチャップに合わせていったんですか?
「食べたら結石の万倍ヤバい奴が体内にできますが!! 誤差です!!!」
「ヨシュカ!!! それ誤差で済ませて大丈夫な奴かい!?!?!?」
 結石の時点で大概不味いというのに無数の針とか想像するだに恐ろしい。ロカジも思わず震え上がるが。
「つまり粒入りマスタードということかな!!!」
「なるほど流石弟子!! ケチャップもマスタードも好きよ僕は!!!」
「ウンウン、二つ合わせるとフランクフルトだなァ!!!」
「ちょっともう何言ってるかよくわからないんですが!!!! 酔っぱらってるんですか!?!??」
 完全に話についていけていない怪人が悲鳴のような声を上げるが、残念ながら誰も話を止めてくれない。『静』を奪い沈黙を排したことが、初めてオブリビオン自身に牙を剥いた形だろうか。
「アァ……コレは気付いた……フランクフルトはジャーキーの仲間!!!」
「なんだってぇ!? 弟子!! 今のもメモ!!!」
「朽守さま!! フランクフルトはジャーキーなんですって!! 知ってましたか!! わたしは知りませんでした!!!」
「ああ、今日は私の知らないことばかりで賢くなっていく気がするよ!!!」
 やっぱりこの人達酔っぱらっているんじゃあないだろうか。疑いを深める怪人に、エンジから伸びた赤い糸が絡みつく。
「ジャーキーの仲間は美味しい!!! うんうん!!!!」
 わかるようなわからんような言葉とは裏腹に、賢い君は怪人の身体を拘束することに成功していた。
「いけー、エレルのフランクフルト攻撃!!!」
「エレルフランクフルト!!!! なるほど!!!!!」
 さらにヨシュカの放った霧が、鋭い無数の針となって敵を苛む。次いでロカジはその刀の切っ先を敵へと向けて。
「そいじゃあ串刺しにしてこんがりジューシーにしよう!!!」
 動きの鈍った相手を貫き、刀に纏わせた雷電でその身を焼いてやる。
「仕上げとは流石だね、我が師匠は!!」
「あばばばばば!!! わけわかんない割にちゃんと連携してますね!!!!?」
 身体を走る電撃に悲鳴を上げた怪人だが、傷口から飛び散った血が、その意思に従って赤く燃え上がった。
「けれど、赤が好きな子達は……炎に焼かれ爛れて死ぬ運命!!!!!」
「わ!!! 赤の炎でこんがり焼けて食べ頃ですよ!!! あっつい!!!!??」
 伸び行く呪縛の炎は、エンジとロカジ、そしてヨシュカを捕まえて、そのユーベルコードを阻害する。
 拘束から脱し、突き刺さった刃からも逃れた怪人は、仕切り直すようにして高らかに宣言する。が。
「さあ、今度は私が皆さんに色鮮やかな死を――」
「あ! ロカジさまエレルフランクフルト、屋台でも出してみてはいかがでしょうか?!?! 
「エレルの名を冠するならば、エレル印の焼印が欲しくなるね!!!」
「え!?!? 無視!!?!?!?」
 ヨシュカの興味も、カスカのメモに残したスケッチも、既にそちらの新商品の方に移ってしまっている。
 ……なんかもう疲れましたね。寂し気に肩を落とした怪人は、次の獲物を探して彼等の前から姿を消した。

「フランクフルトは美味しい!!! うんうん!!!!」
「そうそう、ピンクのマスタードもあるんですって!!!!」
「ピンクのマスタードがあるだってぇ!? 弟子! 今メ!! エレルフランクに最適だよ! 天才か!!!?」
 それはそれとして、良い感じの新商品になりそうではある。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

水衛・巽
好きな色が含まれていませんとか言ったら
(大声で)殴り返されそうなのでやめておきます!!(クソデカ大声)

この状態のどこが至高ですか!!!!
ただ単純にクッッッソ迷惑なので早々にご退場いただきます!
クソとか言うな!?知りませんねどうでもいいですね!!

式神使いにて玄武を召喚のうえ赤と答えましょう!
正直心底苛立ってますので!
確実に薙ぎ払える間合いで黒マントを霊符・縛による結界術で拘束!!
さらに限界突破させた呪詛の足止めも追加しましょうか!

水克火の定石に貴方が抗えるかどうか!
「静」を奪ったように上手くいくかどうか見物ですね!!
とりあえず報酬には頭痛薬と喉飴を所望します!!



●水克火
 赤、青、そして緑。現れたオブリビオンはその三色を提示して、巽に向けて回答を迫る。とはいえ『静』の失われたこの状況では、熟考も逡巡もできはしない。ゆえに、ここでは思い付くまま言葉が出てくるのだ。
「好きな色が含まれていませんとか言ったら殴り返されそうなのでやめておきます!!!!!」
「ははーん察しの良い方ですね!!!! 話が早くて助かります!!!!!」
「とはいえ!!! この状態のどこが至高ですか!!!!」
「あっ違う!!! 口うるさいタイプの方でしたか!!!!」
 誰もが沈黙せず、問えば答えるこの状況を、怪人は心底望んでいるようだった。だからと言って、この頭痛と耳鳴りを甘んじて受け入れるつもりなど、巽にはさらさらない。
「真面目に聞く気もなさそうですね!!! ただ単純にクッッッソ迷惑なので早々にご退場いただきます!!!!」
「まあ!! クソだなんて言葉が汚くありませんこと!?!?!」
「知りませんねどうでもいいですね!!! ちなみに色は赤が好きですよ!!!!」
 明らかに雑なやりとりを交わしたところで、巽の回答に黒マントの怪人が動いた。
「ご回答感謝しますよ!! けれど、赤が好きな子は……炎に焼かれ爛れて死ぬのです!!!!」
 すぱっと自らの胸元に刃を滑らせ、怪人は鮮血をその場に散らせる。花咲く赤はユーベルコードの力によって、即座に呪いの炎となって巽の方へと襲い掛かった。対象を捕縛し、ユーベルコードを使用不能にするその炎。燃え盛るそれは、過たず巽の身を包んだように見えたが。
「凶将・玄武!!!!!」
「は!?!?!」
 巽の召し寄せた式神が、代わりにそれを受け止めた。巨体によるものかその水気によるものか、炎の影響はさして受けていないようで。
「ええ!! ちなみにこの亀は何色が好きなんですかね!?!?」
「知りませんよ赤じゃないですか!!!!」
「そんな!!! 今炎が受け流されたじゃないですか!!!!」
「私の知ったことではありませんね!!!!!」
 これまでの鬱憤と苛立ちを増し増しに乗せた瞳を向けて、巽は結界を、霊符を、呪詛を、持てる力を以て敵の拘束のために使用する。
「水克火の定石に貴方が抗えるかどうか!!! 『静』を奪ったように上手くいくかどうか!!!! 見物ですね!!!!!」
 彼の命令に従って、玄武が無数の棘と水の縄と化した尾を振り上げた。
「いやこれ五行とか相克とかじゃなくて単純に物理――」
「問答無用!!! とりあえず報酬には頭痛薬と喉飴を所望します!!!!!」
「アーーーーーーーーーッ!?!??!!」
 『玄武捕縄』。悲痛な声がこだまする中、式神による強力な一撃が、もはや身動きすら取れない状況にあった敵をきつく打ち据えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

花剣・耀子
Q.ボス戦までもつの?
A.いま死んだら死因の申告に困るので死ねないわ

……はっ!?
むせすぎて走馬灯が見えていたわ!!!!!
あっこれぜんぜん夢じゃなかったうるさい!!!!!!!!!!

おまえも大概うるさいわよ何そのよいこに呼びかける風のやつ! こんな元気な都市伝説がいるか!!
問われたからには答えるけれど諸般の事情でいまは赤が好きよ!!!!!

めっちゃめちゃに轟音を響かせていた機械剣が静かになる
この瞬間を待っていたわ

音に負けないように声を張るから喉がしぬのよ あたしはくわしい
ユーベルコードが封じられたら力一杯斬ればいいのよ!!

クサナギーーーーーがんばええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!



●みんなも応援してあげて
 ぐげ、みたいな音を立てて、耀子の喉が限界を訴える。もう吐き出すものがないくらいに咳き込んだ彼女の思考は、丁度あらぬ方向へと飛んでいた。何か余分な問答をさせられながらごめずちゃんを倒し、爆音のチェーンソーと合唱しながら駆けた思い出。スローモーションで脳内を過ぎるそれを、しばし無心で眺めたところで彼女は気付いた。
「はっ!!! これは走馬灯!?!?!?」
 余りにも自分の声がうるさいことから、「夢であれ」という僅かな希望も潰えてしまったが。
「しっかりしなさい!!! ここで死んだらなんて死因で報告されるかわかったものじゃないわよ!!!!」
 自らに言い聞かせるようにして、意識をクリアにする。そうすると手元の機械剣の音色もよく聞こえて死にたくなるが、今は耐えよう。
「憤死って書かれるんじゃないですかね!!!」
「それは死因じゃないわ!!!!!!」
 既に喉は限界だが、その向こうに至る必要があるのは前述の通りだ。目の前に現れたオブリビオン、黒マントの怪人へ、耀子は回転する刃を向ける。
 にやりと笑った怪人は、こちらもその機械剣の唸りに負けないように、大声で問いかけた。
「赤、青、緑!!! あなたはどの色が好きですかーーーーー!?!?!?!!?」
「うるさいわよ何そのよいこに呼びかける風のやつ!!! こんな元気な都市伝説がいるか!!!!」
「居るんですからしょうがないでしょう!?!?! でもそうですね!!! 『静』を奪ったら私まで叫ばないといけなくなるのは想定外でした!!!!」
「クッ……これ以上無駄に喋らせないで!?!? 話進めたいから答えるけれど諸般の事情でいまは赤が好きよ!!!!!」
「はいどうも!!! それでは赤が好きなあなたは……炎に焼かれ爛れて死んでいただきましょう!!!!」
 耀子の『答え』に合わせ、自らを切り裂いた怪人は、その傷口から呪いの炎を発生させる。赤く燃えるそれは、耀子の身体を包み込み――ユーベルコードを阻害するその力で、チェーンソーの唸りを止めた。
「ふふふ!!! 赤いマントがよくお似合いですよ!!!!!」
 勝ち誇る怪人に、しかし耀子はきっぱりと告げる。
「――この瞬間を待っていたわ!!!」
 炎がその身を包もうとも、機械剣がその動きを停止しようとも、彼女のする事は変わらない。最短距離で進み、敵を斬るのだ。
 さらに言うならチェーンソーが止まったことで、駆動音に負けないように声を張る必要だって無くなるはずだ。あたしはくわしい。
「ですが、もはや攻撃手段もなくなったはず!!!!」
「いいえ!!! ユーベルコードが封じられても力一杯斬ればいいのよ!!!!!」
「えっ!?!?」
 最強に頭の良い回答を提示して、耀子は止まったままの、しかしギザギザした凶悪な刃を持つ機械剣を振り下ろした。
「ぐう――ッ!?!?」
 両断、とは勿論いかない。チェーンソーの刃はそんな風にはできていない。そんな時の対処法こそが、そう。

「クサナギーーーーがんばえええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!」

 結局あらん限りの大声を絞り出しながら、耀子は全力で刃を押し込み続けた。
「ああああもうちょっとスマートにいけませんか痛だだだだだだだだッ!!!!!!!!!」
 黒マントの怪人の、骸魂が砕け散るまで。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『カクリヨの世界でお月見を』

POW   :    月より団子、ティーパーティーを満喫する

SPD   :    演奏や歌唱等のパフォーマンスで月夜の晩を盛り上げる

WIZ   :    月が持つ神秘的なムードを静かに楽しむ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●静
 ふと、思い出したように、気が付けば静寂はそこにあった。
 耳をつんざく騒音も、喉を嗄らす叫びも、その瞬間になりを潜めて、ゆるい風の音が聞こえるほどの、静かな時間が訪れる。

 猟兵達の手により、幽世は崩壊の危機を乗り越えて、『静』と平和を取り戻した。
 自由になった妖怪達は、恩人である猟兵達には好意的だ。街中でも街はずれでも、やたらと高い二本の塔でも、今夜は自由な場所で月見を楽しむことが出来るだろう。頼めばきっと、団子や酒、喉に効く薬湯何かも手に入れられるに違いない。

●お月見を
 さて、どうやら今宵は特別の上に格別で、実際に『落ちてきそう』だった月は、今なお近く、大きく輝いて見える――。
矢来・夕立
狭筵さん/f15058
赤ずきんさん/f17810

外でものを食べたくはありませんが、今回ばかりは薬湯や喉飴がないと明日以降に響きます。声だけにってか。やかましいわ。
薬湯を急須でもらってきますよ。
この三人なら毒見は多分オレが一番適切ですね。声を掛けたのはオレで、お二人は巻き込まれたようなものですし。
ちゃんと湯呑みは三つ持ってきたので、どうぞ。
…香りはお察しっぽいですね。でも味はそんなに悪くはありません。
変に癖もなく、苦くもなく、


ウソです。
こんなにまずい飲み物飲んだことないです。


あなたがたが与太やってなきゃオレの喉だけは無事で済んだかもしれないんですよ。
ほら深々と飲め。否応無く飲め。


レイニィ・レッド
坊ちゃん/f14904
狭筵サン/f15055

自分もあんまり飲食はって感じなンすけど
ちょいと喉が痛い感じがあるので
薬湯の世話にな …っとォ思ったより本格的なの来たな

えっ坊ちゃん毒見してくれるンすか
そりゃ助かりますけど
じゃあ注ぎます自分
うわこれ色やべェですよ大丈夫です?

へェ 癖もなく 苦くもなく

あ、嘘ですか
やっぱりまずいんですねこれ

でも自分味分かんないんで
身体に悪くなさそうならイケますね
坊ちゃんに申し訳ねぇので素直にサクっと飲みます


いや
これ不味いっつーかなんつーか

……、

(面白そうなので)狭筵サン飲んで下さい
いいから飲むンです
自分、さっきの質問のこと忘れてませんからね
残り全部あげますよ

ほら 飲めよ


狭筵・桜人
矢来さん/f14904
赤ずきんさん/17810

はぁ〜〜〜〜喉痛い……もう大きな声出したくない。
お、矢来さんなのに気が利きますね。
ンモーすぐそうやって。いいですよ私お腹壊しにくい体質なので。
美味しいですか?喉に効いてる感じします?

ははあ、ひょっとして熱いんですね?
残念でしたねえ、ちゃんと冷まして飲みますよ。
いやもう喉渇いてるので普通のお湯でも全然助(吹き出す)

ニガイしマズイじゃないですか!!!(大声)
嫌ですもう要りませんって!!!(大声)
なんですかソレ矢来さんが自分で勝手に騒いだせいでしょ!!
赤ずきんさんだって本当は画像欲しかったくせに!!
パーカーから覗いたビキニのおぼぼ(飲まされる)(倒れる)



●喉の痛みを緩和するため薬湯を与えているだけですので何も問題はありません
 静寂を取り戻した幽世に、降り注ぐのは月の光。燃え上がるでも爆ぜるでもなく、ただ静かに世界を照らすそれを背景に、桜人は盛大に溜息を吐いた。
「はぁ~~~~喉痛い……もう大きな声出したくない……」
 これまでの戦いを思えば極自然な反応である。大概の人間は大声を出しているとテンションもおかしくなるもので、先程までのあれやこれやもきっとその産物なのだということにしておきたい。
 と、疲労感に苛まれているそこに、また姿を消していた夕立が、手に急須と湯呑みを乗せて戻ってきた。
「薬湯をもらってきました」
「お、矢来さんなのに気が利きますね」
「外でものを食べたくはありませんが……今回ばかりは薬湯や喉飴がないと明日以降に響きますからね、声だけに」
「坊ちゃん?」
「ンモーすぐそうやって。いいですよ私お腹壊しにくい体質なので」
 桜人が鷹揚に頷く。レイニィの方も、外でものを食べるのは、という点には同意しているようだが。
「まあ、確かにちょいと喉が痛い感じがありますからね。何か本格的なやつなんでしょう、それ?」
 薬湯、という響きはそれなりに魅力的だ。レイニィの問い掛けと、言外に浮かぶ疑問に、夕立は神妙な様子で頷いて返した。
「まあ効果の保証はありませんが……この三人なら毒見は多分オレが一番適切ですかね。声を掛けたのはオレで、お二人は巻き込まれたようなものですし」
「矢来さん何か悪いものでも食べました?」
「坊ちゃんが毒見を? そりゃ助かりますけど……じゃあ注ぎます自分」
 せめてもの手伝いに、とレイニィが急須を受け取る。湯呑みに向かって傾ければ、中から曰く言い難い色合いの液体が、湯気を立てて流れ出た。
「お茶……? にしてもやべェ色してますけど大丈夫です?」
「それを確認するのが毒見ですよ」
 湯呑みに溜まっていく半透明のそれに視線を落として、夕立は顔を近づける。
「……香りはお察しっぽいですね」
 特に表情も変えぬまま、それを一口啜って。
「坊ちゃん……?」
「美味しいですか?喉に効いてる感じします?」
 そんな二人の視線に対して頷いて見せ、問題はなさそうだと、夕立はもう一度湯呑みに口を付けた。
「でも味はそんなに悪くはありません。変に癖もなく、苦くもなく、ですね」
「へェ、癖もなく、苦くもなく」
 レイニィがそう繰り返す。が、桜人の方はどうも夕立の態度に引っ掛かりを覚えているようで。
「ははあ、ひょっとして熱いんですね? 残念でしたねえ、ちゃんと冷まして飲みますよ」
「はいはい、ご自由に」
「狭筵サン……」
 何とも言えない視線を二人に送りながら、レイニィが薬湯を口にする。一方の桜人も、念入りにそれを冷ましてから。
「いやもう喉渇いてるので普通のお湯でも全然助ぶはッ!?!?」
 口にしたそれを、盛大に吹き出した。
「ちょっと何ですかこれ!!! めちゃくちゃニガイしマズイじゃないですか!!!!」
「そうですね、こんなにまずい飲み物飲んだことないです」
「はい!? 毒見が虚偽報告とかお話にならないんですけど!! ねえ赤ずきんさん!!?」
「あ、自分味わかんないんで。まずい感じなんですね、これ」
「え!?」
 ズルくない? それに二人とも表情筋死んでない??
「大体、あなたがたが与太やってなきゃオレの喉だけは無事で済んだかもしれないんですよ」
「根に持ってる!? なんですかソレ矢来さんが自分で勝手に騒いだせいでしょ!!!」
「もう大声出さなくて良いんですよ。さっさとそれ飲んでください」
「嫌ですもう要りませんって!!!」
 全力で抵抗する桜人だが、申告された動機に何も言い返せないレイニィは、無言で薬湯を飲み干した。大丈夫、薬効の話は本当のようだし、身体に悪くなさそうならイケる。
「何ですか赤ずきんさん!! そんな目で見て!!!?」
「自分もさっきの質問のこと忘れてませんからね。残り全部あげますよ狭筵サン」
「は!? 赤ずきんさんだって本当は画像欲しかったくせに!!!」
 それ以上喋るな、とばかりにレイニィがその首根っこを掴んで上を向かせる。
「狭筵サン飲んで下さい。いいから飲むンです」
「ほら深々と飲め。否応無く飲め」
「横暴! 暴力反対!! やめてくださいほらあれあげますから!!! パーカーから覗いたビキニのおぼぼ!?!?」
 抵抗空しく、桜人の口に湯呑みの中身が注ぎ込まれていった。
「んぐっ、げほッッ、まっずい!!!!!」
「坊ちゃん、残りは急須から直で行きましょう」
「なるほど、飲ませやすい形をしている」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユリィ・ミディット
※他の人との絡み&アドリブ歓迎


クロムキャバリアとは、また違う月…

…大きい…金色の月だ…

(キャバリアから出て、高い場所から月を見る)

…手が、届きそう

(持ち込んだレーションを食べ、熱いココアを喉に流し込んで温まりながら下を見て)


…色んな人が居る

皆、楽しそう


僕は此処が落ち着くけど…

少し…声を掛けてみようかな


もし、月を空から見たい人が居れば、キャバリアを駆る

いつもより、ゆっくりと


他の人と話せるなら、その人が来た世界の事を聞いてみたい…かな



●月を見上げて
「……大きい……金色の月だ……」
 クロムキャバリアから別の世界へ。初めて踏み出したそこで、ユリィ・ミディット(キャバリア遣い・f30122)は空を見上げる。故郷では一般的でもあったキャバリアが一つも存在しないのと同様に、夜空に浮かぶそれも、彼の世界とは違って見えた。
 操縦席から外に出た彼は、自らの乗機の肩へと上る。文字通り、落ちてきそうになっていたその月は、今なら手だって届きそうに見えた。
 先程までは限りない喧騒に苛まれていた世界も、今は静かなもので。落ち着いた雰囲気を味わいながら、彼は持ち込んだレーションを齧る。視線を空から下へと戻すと、平和が戻ったことで戻ってきた人々が目に入る。ここに住まうのは主に妖怪達だ。千差万別なその姿を眺めながら、熱いココアを喉に流し込んだ。
 端から端まで見慣れぬものばかりだけれど、不思議と不安を覚えないのは、彼等がみな、楽しそうにしているからだろうか。
「やあ、この世界は初めてかな?」
 そんな中に混じっていた一人、黒マントの猟兵がユリィの方を見上げて問う。ユリィがクロムキャバリア出身なのは、その機体から明らかなのだろう。
 頷いて返して見せると、その猟兵は笑ってこちらへ近づいてきた。
「そうかい? 僕も来てから日が浅いんだけどね――」
 仰々しいマントのその猟兵は、アックス&ウィザードの出身だと名乗る。剣と魔法、そして竜の居る世界。聞き慣れぬそれらに思いを馳せて、ユリィは彼を機上へ招いた。
「良かったら、教えて。……その世界の事」
「そうだねえ、じゃあ代わりに、君の世界のことも教えてもらおうかな?」
 幽世に浮かぶ月の下、静かなお喋りはしばし、続く。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【花簪】
無事に平穏が戻りましたね
騒がしく、忙しないのも悪くはないのですが
やはりこうして静かに……オオカミ殿?

ふふ……そういえば彼も元の姿は大きな狼でしたね
えぇ、綺麗な月です
今からあの高い塔へ向かうのですか?
わかりました、では周囲の景色を楽しみながら向かうとしましょう
月に届きそうな高さ……あの塔からならば街も小さく見えそうです

月の所為なのか、塔を登る楽しさからなのか、彼はいつもより元気ですね
仰る通りその音が無くなっただけであって
今まで聞こえていなかった虫や風の音が聞こえるのです

私も一緒に、ですか?
私は狼ではなく、簪なのでそうした風習は無いのですが……ふふ、分かりました
わおーん、ですか?


ジョン・フラワー
【花簪】
月がきれいだよーーーーー!!!
わおーん! わおーーーーん!!!

みんな静かになっちゃった
こんなにきれいな月夜、おおかみの血が騒ぐのにじっとしてられないよ!
あれ登ろうアリス! 一番上はきっと特等席さ! 僕高いとこ大好き!
もしかしたらお月様に手が届くかもしれないよ!

お月様も賑やかで嬉しかったと思うんだ
だって夜はみんな寝てるんだもん。たまには騒いだっていいじゃない
あっ、ねえねえ聞いてアリス! 虫の声もするし風の音もするよ!
なんだ全然静かじゃないじゃん! お月様も寂しくないね!

なんだか楽しくなってきちゃった!
アリスも一緒に吠えないかい! ひとりよりふたりが楽しいよ!
わおーん!
わおーーーーん!!!



●月に吠える
 怪人の撃破に合わせて、ひたすらに耳に痛かった喧騒が止むのを、夜彦は感じる。同時に、自分の喉を無理矢理鳴らさなくてよくなったという状況を、実感を以って悟った。
「――無事に平穏が戻りましたね!」
 それでも、心なしか声量が上がってしまうのだが。段々とそれを調節しながら、彼は傍らのジョンへと視線を移した。
「騒がしく、忙しないのも悪くはないのですが。やはりこうして静かに……オオカミ殿?」
「月がきれいだよーーーーー!!!」
 ダメだまだうるさい。
 とはいえジョン自身も、状況の変化は敏感に察してはいる。周りはみんな静かになってしまった。それこそが奪われた『静』を取り戻せたという何よりの証拠ではあるのだが。とにかくあの大きな月は、彼が言う所のおおかみの血を掻き立てるのだ。
「わおーん!!! わおーーーーん!!!!」
「……えぇ、綺麗な月です」
 少し遅れて、夜彦が頷く。そういえば、彼の元の姿は大きな狼だったな、と小さく笑いながら。
「そうだ! あれ登ろうアリス!!」
「あの高い塔へ向かうのですか?」
「そうそう! 一番上はきっと特等席さ! 僕高いとこ大好き! もしかしたらお月様に手が届くかもしれないよ!」
「わかりました、では周囲の景色を楽しみながら向かうとしましょう」
 ジョンの指差した尖塔、この近辺で特別に高い二つの塔の片方へ、二人は揃って歩き出した。
 多少戦闘痕も残ってはいるが、平和の戻った街中から、天へと伸びる塔の階段を順に進む。先程まで居た街の様子が、階を上るほどに小さくなっていくのを見下ろして。
「……何やらいつもより元気ですね、オオカミ殿」
「え、何だい簪のアリス!?」
 前方から、聞き返す声と軽やかな足取りが聴こえてくる。気が付けば随分先に行かれてしまったらしいと、夜彦は苦笑しながら足を速めた。
「確かにさっきまではうるさかったかも知れないけどね、お月様も賑やかで嬉しかったと思うんだ。だって夜はみんな寝てるんだもん。たまには騒いだっていいじゃない」
 そんなことを言いながら歩みを進めていたジョンは、手頃な所で外へ出る。幾重にも重なった屋根の一つに踏み出して、夜風にその身を預ければ。
「あっ、ねえねえ聞いてアリス! 虫の声もするし風の音もするよ!」
「確かに――そうですね」
 大騒ぎの喧騒が消えて、露になってそれらは、ずっと変わることなくそこに在ったのだろう。
「なんだ全然静かじゃないじゃん! お月様も寂しくないね!!」
 きっと、いつもよりも近付いてきているあの月にも、この音は届いているだろう。
「なんだか楽しくなってきちゃった! アリスも一緒に吠えないかい! ひとりよりふたりが楽しいよ!」
「私も一緒に、ですか?」
 誘いの言葉に振り向けば、いつの間にやらジョンは『元の姿』に戻っている。どう見ても狼な彼と違って、簪のヤドリガミにそんな風習はないのだが。――まあ、たまにはそれも良いだろうかと、夜彦は表情を緩め、微笑んだ。
「わおーん、ですか?」
「そうそう、こんな風にやるんだよ、わおーん!」
 手本代わりに一つ吠えると、さあここからが本番だと、鼻先を高く、月へと向ける。この声も、きっとそこまで届くだろう。一人はいつもの通りに、一人は少したどたどしく、月に向かって遠吠えを上げた。

 わおーーーーーん。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヨシュカ・グナイゼナウ
【エレル】
(またたくさんきな粉をかけているなあという顔)
お団子!わたしはあの三色のお団子が良いです。お月見のお団子は違う?誤差です
や、お団子にお顔を!かわいい!そしてすごく何かを伝えようとしていらっしゃいますね…!
(わからん)

こんなに静かな夜に大きな大きなお月さま。エンジさまの遠吠えが良く響きます
何だか世界が終わった後みたい
でも月が落ちて来て世界が終わるって、中々悪くない終わり方だと思います。文学的で

(こんなに大きなお月さまが見られた事に関してだけは
ほんの少しだけあの怪人に感謝しようと思う)


薬ー……は、わたし必要ないのでお団子ください、お団子
猫も食べられるやつとかだとありがたいです。お土産です


ロカジ・ミナイ
【エレル】
場所は高い所

三色団子、醤油団子、顔団子…個性的だねぇ
僕は餡団子にみたらしかけてきな粉を振ったやつがいいな
なんかもう…団子が見えないくらい盛ったやつ
女子と甘味は盛った方がいいからね
これテストに出るから

いやはやしかしあのでっかい月が落っこちて来なくてよかったなぁ
手が届かない方がいいもんもあるってのはこのことよ
(だってアレとチューするなんてことになったら口から潰れてお陀仏だもの)

ーーここまでダミ声ーー

ああ、そういや喉の薬湯なんかももらったっけ
他所の薬は好きじゃないんだけども
今夜はうっかり喉の薬は持ってきてなくてね
これも後学のために一服いただいておこうか

やれやれ、これで美声もお月さんも元通り


エンジ・カラカ
【エレル】

コレは月も甘いモノもダメダメ、バーツ。
月が落ちてきたらコレはオオカミニンゲンになるトコロだった。
アァ……危なかったなァ…。
ヨカッタヨカッタ、メデタシダヨー。

コレは醤油の団子を食べる食べる。
団子にケチャップは美味しい?
ダメー?賢い君、賢い君、残念ダネー。ねー。

カスカの団子はかわいい
ヨシュカの団子は豪華
ロカジンは変な声

ん???変な声???
アァ……ミンナ、声は大丈夫?大丈夫?
コレは平気平気。いつも叫んでいるンだ。
アオーン。ほらね。

団子も美味しい、賢い君も満足してる。
アァ、うんうん、良かったなァ……。
醤油の団子もオイシイヨー。
アァ……醤油に海苔を巻いたらもっと美味しそうだなァ…。

薬はバーツ


朽守・カスカ
【エルレ】
これは団子?白玉?餅?
…違いがよくわからない
どれも白くて柔くて美味しいことには違いない

しげしげと見ていたら
きなこの山に隠れた団子や、三色の団子、醤油を和えたもの
ふふ、では私は…
団子に餡子やきなこ、みたらし、金平糖に海苔で
お団子に顔を描いて可愛らしくしていこう
…こっそり、皆に似せたのも作ろうか

こぼれ落ちそうな月を見上げる月見の団子達
先程までの賑やかさには敵わずとも
和やかに穏やかな月見の始まりさ
月が落ちてくるのは些か困るけれど
一生に一度ぐらいは
こんなに月を近くに感じる月夜があってもいいのだろう

(と、全てをジェスチャーで伝えようとしつつ、最後に薬湯を頂きたい、と挙手を加えて)



●月とお団子
 戦いも終えて静寂が戻る。フランクフルトの商品化検討を終えた面々は、各々団子を手にして月のよく見える場所を陣取っていた。
「これにて一件落着、でいいのかな」
 そんな風に溜息をついたロカジは、手元の餡団子にみたらしをかけた上にきな粉を山ほど、それこそ団子が埋まるくらいまで振っていた。うんうんまたやっているなぁと温い視線を送るヨシュカの横で、甘いもののダメなエンジが曰く言い難い表情を浮かべる。いや、二人とも何も言わないけれど。
「……何だいその顔は。良いかい二人とも、女子と甘味は盛った方がいいからね」
 これテストに出るよ、と言い放ちながら、ロカジはきな粉でもさもさになった団子を皿から持ち上げた。
「フーン」
「そういうものでしょうか」
 聞き流すべきか考えながら、ヨシュカは自分の手元の三色団子に視線を落とす。お月見向きの団子ではないかも知れないが、そんなことは誤差に過ぎない。控えめながら華やかな色合いのそれから、エンジの方へと視線を移せば、そこにあるのはまたシンプルな色合いの。
「エンジさまは醤油団子ですか」
「ヨシュカの団子は豪華だなァ……」
 でも甘いモノはバツなんだよなァ、と呟いたエンジは、賢い君の赤を見て。
「団子にケチャップは美味しい?」
「いやーきな粉の方が美味しいって」
「ンンー、ソレは別にイイ……」
 そんなやり取りを横目にしながら、ヨシュカは先程から一言も発していないカスカの方を窺った。
「朽守さまはどう思われます?」
「……?」
 対する彼女は、小さく首を傾げてみせる。そも彼女にはこれの細かい違いが分かっていない。団子だという話だが、前に見た白玉や餅とどう違うと言うのか。どれも白くて柔くて美味しいわけで――という内容を、絶賛喉の死んでいる彼女は、どうにか身振り手振りで表した。
「ははあ、なるほど」
 それは難しいところだ、とヨシュカが頷く。
 何か言いたげなのは解りますけど内容はさっぱりわかりませんね。そんな様子が伝わっているのか居ないのか、各人の団子を眺めていたカスカは、おもむろにそれぞれの材料で自分の団子を飾り付け始めた。餡子やきなこ、みたらし、金平糖に海苔、それらを使って顔を描いていく。そうなると、モデルは自然と目の前に居る人々になっていくもので。
「や、お団子にお顔を! これはロカジさまで、こっちはわたしですか?」
「へえ、中々個性が出ているね」
 そんな手元を覗き込んだヨシュカが歓声を上げて、ロカジも感心したように頷いて見せる。エンジも黒い海苔で飾られたそれを目にして。
「コレは、コレ? で、ソッチが……え? ダレ??」
「どなたですかね?」
「僕にも見当がつかないんだけど……?」
 若干謎は残ったが、とにかく。カスカが串刺しにして齧るのが惜しくなってくるくらいには、上等な作品たちが出来上がった。

 ようやく人心地付いたところで、一行は改めて団子と並んで月を見上げる。
「いやはやしかし、あのでっかい月が落っこちて来なくてよかったなぁ」
「月が落ちてきたらコレはオオカミニンゲンになるトコロだった……危なかったなァ……」
「え、そうなの?」
 手が届かない方がいいもんもあるってのはこのことだ、とロカジは肩を竦めてみせる。近づかなければ口付けだってできないが、その時は口から潰れてお陀仏になる未来が待っているのだろう。ろくでもない。
「でも月が落ちて来て世界が終わるって、中々悪くない終わり方だと思います。文学的で」
 幽世の空に浮かんだ大きなそれは、今まで見た事のないくらい近くに感じられる。静寂の夜に、空を占める大きな月。喧騒の最中よりも余程世界の終わりを感じる光景に、ヨシュカはそっと息を吐いた。こんな光景が見られたことについてだけは、あの怪人にも感謝して良いかも知れない、そんな事を思いながら。
 空へと目を輝かせる彼の様子を見て、ヨシュカ君も中々詩的だね、とカスカが頷く。
 先程までの賑やかさには敵わずとも、こうして和やかに、そして穏やかに月見をするのも悪くない。月が落ちてくるのは些か困るけれど、一生に一度ぐらいは、こんなに月を近くに感じる月夜があってもいいのだろう――。
「ウンウン」
「そうですねえ」
「……二人とも弟子が何言いたいかわかるのかい?」
 神妙な顔で頷くエンジとヨシュカにロカジが問う。さっきからカスカのジェスチャーはかなり複雑なものになっているのだが……大体のニュアンスは伝わっているのだろう。多分。きっと。
「それより弟子は喉がやられてるのかな?」
 頷くカスカに、それじゃあこれをと分けてもらった薬湯を注ぐ。
 薬となれば本来は彼の専門分野だが、今回はちょっと持ち合わせがなかったのと、後学のためということで、他所のお薬を味わってみる事にしていた。
「そういえばロカジンもさっきから変な声ダナー」
「そっちは平気そうだね……」
「アァ、コレは平気平気。いつも叫んでいるンだ」
 そう答えたエンジは、アオーン、と先刻のように遠吠えを上げてみせる。なるほど、狼だからねと納得しながら、ロカジはもう一人喉が大丈夫そうなメンバーに水を向けた。
「ヨシュカも遠吠え慣れしてるの?」
「えっ、そう見えますか……?」
 とにかく、こちらも平気そうなので。
「あ、薬は……わたし必要ないので」
 お二人でどうぞと言い置いて、それよりもお土産を選びたいなと街の方へ視線を送る。できればお団子、それも猫も食べられるやつとかだとなお良いのだが。
 それに対しては、「うんうん、先程猫の妖怪の方がお店を出していたから、聞いてみるといいかも知れないよ」とカスカがジェスチャーで答えているので何とか伝わってほしい。
 そんな解読作業を微笑まし気に見ながら。エンジとロカジはそれぞれ団子と薬湯を口にした。
 これもきっと、平和の証明と言えるだろう。世界を襲った大騒ぎも、こうして晴れて元通り。
「ヨカッタヨカッタ、メデタシダヨー」
「そうだねぇ、これで美声もお月さんも元通りかな」
「アァ……醤油に海苔を巻いたらもっと美味しそうだなァ……」
「……ウワッ、これガンコナーより苦い」
 穏やかに、和やかに。月下の時間はゆりゆると流れて行った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユーイ・コスモナッツ
【夜はお静かに】
天の川銀河の一端に太陽系
その第三惑星が地球で、
月はその衛星……

SSWで暮らしていたころは、
気にもとめなかった星です
だけど猟兵になってから、
月にまつわる、
興味深いエピソードをたくさん耳にしましたよ
このオツキミという行事も、
それにまつわるものなのでしょうね

由来は私も知りませんけれど、
こんなに綺麗なんですもの
昔の人達も、
色々な想いを込めて見上げていたのではないでしょうか

そういえば納さん、ご存知でした?
月には兎型の知的生命体が暮らしていて、
日々お餅をついているそうですよ
どんなお味がするんでしょうね……?

ふふ、良いですね、行ってみましょうか
ナビゲートは、
またお任せしちゃっても良いですか?


納・正純
【夜はお静かに】

月に一番近い塔の上に行ってみよう
うるさいほどの静寂の中、二人分の各種お団子に薬湯持ってオツキミだ

信じられねえよな、人が住める惑星って概念がよ
何もかもが宇宙と違って面白いぜ
おや、この俺と知識で張り合おうってのかい? だが残念、俺もオツキミとやらには疎くてな
今夜は静かにユッコ先生のオツキミ講座を受けるとしよう
なあ先生、オツキミは何がきっかけで根付いた文化なんだ?

ほうほう……ん? ユッコマジかよオイ、そいつは大発見じゃねえのか!?
そりゃあれだ、地球外生命体ッて奴だろ?
うさぎ型地球外生命体が月で食べるお団子の味か……興味深いな よっしゃユッコ、静かに飛ばせ! 月まで飛んで確かめるぞ!



●手の届く所まで
 聳え立つ二本の塔の片側を、最上階まで上ってしまえば、周りに遮るものは何もない。見渡せばすぐに分かるだろう、そこはこの辺りで、月に一番近い場所だ。塔の根元で動く人々、妖怪達は小さく見えて、彼等の声も物音も、ここまで届くことはない。僅かな風の音だけが聴こえ、先程までとは打って変わって、静寂がまた耳に痛い。
「天の川銀河の一端に太陽系、その第三惑星が地球で、月はその衛星……スペースシップワールドに居た頃は気にも留めなかった星ですよね」
「ああ、そもそも人の住める惑星って概念からして信じられねえもんな」
 別世界、宇宙船での暮らしを主としていた彼等からしてみれば、それは余りにもミクロで、限られた視点。『惑星から見た衛星の様子』に意義を見出すこと自体が新鮮である。
「だけど私は、猟兵になってから、月にまつわる興味深いエピソードをたくさん耳にしましたよ」
「おや、この俺と知識で張り合おうってのかい?」
 ユーイの言葉に、正純が不敵に笑う。とはいえ、今回の件はまだまだ調査不足と言ったところだろうか。
「だが残念、俺もオツキミとやらには疎くてな。一つ教えてくれるか、ユッコ先生?」
 大げさですねとそれに笑い返して、ユーイは指を立てて『講義』を始めた。
「視点を一つの惑星に定めれば、月の見え方は恒星と周辺の星の配置で決まりますよね? その光と影の見え方の配分を、『満ち欠け』と呼んで吉凶を占うのに使ったりしたそうです」
 ははあ、と頷く生徒に向かって、彼女は続ける。
「見え方ひとつでこの調子ですから、このオツキミという行事も、それと似たものなのでしょうね」
「それで、先生、オツキミは何がきっかけで根付いた文化なんだ?」
「それは私も知りません!」
 そんな突然言われても、下調べしているわけもあるまいし。きっぱりと言ってのけたユーイの様子に、正純は愉快気に笑った。
「けれど、こんなに綺麗なんですもの。昔の人達も、色々な想いを込めて見上げていたのではないでしょうか」
「……なるほど、良い感じにまとめたな?」
 言いつつ、彼もまた空の月を見上げる。宇宙船から見るのとは違う、大気でぼやけた輝きは、きっとそれしか知らぬ者には、さぞ重要なものに見えただろう。
「そういえば納さん、ご存知でした?」
「……ん?」
「月には兎型の知的生命体が暮らしていて、日々お餅をついているそうですよ」
「マジかよオイ、そいつは大発見じゃねえのか!?」
 それもまた、猟兵になってから伝え聞いた大事な情報。
「うさぎ型地球外生命体が月で食べるお団子の味か……興味深いな」
「どんなお味がするんでしょうね……?」
 好奇心を刺激するそれに、瞳を輝かせた正純は、手の届きそうな、それでもなお遠い月へと指を立てた。
「よっしゃユッコ、静かに飛ばせ! 月まで飛んで確かめるぞ!」
「ふふ、良いですね、行ってみましょうか。ナビゲートはまたお願いしちゃって良いですか?」

 月に吠えると書いて『ないものねだり』。けれどこの二人には、吠えるだけでは足りないようで。
 空に浮かんだ影が一つ、滑らかに月へと上っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

菱川・彌三八
あー…喧噪が残って耳が痛ェ
俺ァ今、真面に話せてるかね
ちいと平生より密やかにした方が善いやもしれねえな
どの道喉もやられている訳だが

…然し、折角なんで月見酒といきてえ所
喉の事ァ一旦捨て置く
黙ってりゃ好いだろ

こんねェな月なんてなァ、此処でしか見られまい
何せ月が二つとある事だってあるような処だろう
盃に浮かぶどころか満たすなんてなァ贅沢ってモンよ

気分も好いってんで、何か描くとしようか
さらりと宙に筆を滑らせ、兎に狐、そして猿
其々に踊り乍ら列を成し、周りには月が如くの丸い菊を跳ねさせて
余興にゃあ上々だろう

ようし後ァ総て筆で話そう
酒に煽られ文字も其の侭“踊る”かしれねえが…マ、今日くれェは構やしねェさ



●喧騒を描く
 その身を包む鳳凰を解いて、彌三八は喉を確かめるように指先で触れる。皆の戦いの成果と言うべきか、沈黙が、静寂が許されたこの状況。とはいえ、先程までの影響が完全に消えたわけではない。
「あー……喧噪が残って耳が痛ェ」
 ついでに言うなら喉も痛え。いつものように気前良く声を出すわけにもいかず、少なくともしばしは密やかにしておいた方が良いだろうと、彼はそう結論付けた。
 とはいえ、それが性に合っているかはまた別の話。
「然し、折角なんで月見酒といきてえ所だよなァ」
 空を見上げてぽつりと一つ。その時点で、喉のことは一旦捨て置くことにして、彼は酒の調達にかかった。大丈夫、黙っていればいいだろうし、酒で血の巡りが良くなるのが喉に悪いはずがない。
 今宵の月は一つきりだけれど、常では見られないほどに大きく、近い。夜に在ってなお明るいそれは、盃に注いだ酒に浮かぶどころか、その一面を満たすほど。溢れんばかりの金色の輝きを、こうして啜り飲み干すのは贅沢というほかないだろう。
 ふと満足気に息を吐いて、彌三八はさらりと筆を滑らせる。好い気分に乗せられるまま、宙に描いたのは、兎に狐、そして猿。月を囲むように並んだ彼等は、其々気ままに踊りだす。周りには月のように丸い菊を跳ねさせて、ひとまずは出来上がり。
「ははあ、見事なもんだねえ」
 楽し気に描かれたそれに引き寄せられるように、幽世に住まう妖怪たちがやってくる。感嘆の声を上げる彼等に、彌三八は片眉を上げて――。
 ああ、でも今日は、喉の仕事は店仕舞いだ。残りはこいつで話してやろう。
 すらすらと流れる筆先が、中空に彼等への言葉を描く。するとそれらも酒にあてられたか、動物達に混じって踊りだすようで。
 妖怪たちと共に愉快気に笑い、彌三八はさらに筆を加える。これはこれで、幽世には似合いの光景だ。筆の織り成す静かな宴は、夜更けまでずっと続くだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

九之矢・透
あーー、やっと静かになった
賑やかなのは嫌いじゃないんだけどなァ……
限度ってモンがあったよな

塔の天辺か高くて静かな所で大の字になり
静かにのんびりしよう
拝借してきた団子と薬湯をもらって
ひとり月見だ
あ?……ははは、ゴメンゴメン
ひとりじゃあ無いよな
心なしかぐったりしているコイツらには木の実をあげよう
……ちょっとまだ濡れてるな?まあいいか

んーー、空がキレイだなー
月ってこんなでかくて眩しいんだ
夜だってのに明るく見える
あそこは夜もずっと曇り空だからさ、
チビ達にも見せてやりたいね

団子をもちもち
薬湯をちびちび
ヒザ上のコイツらもいつの間にか夢見心地
帽子をとって風に髪を流して

こんな夜も悪くないな



●微睡み
「あーーー、やっと静かになった」
 塔の高みに上って、屋根の一角で大の字になる。溜息と同時、口を噤めば訪れる静寂に、ようやく事態の終わりを実感できた。形のないものだけど、奪われた『静』が戻ってきたのだと。
「まー、賑やかなのは嫌いじゃないんだけどなァ……」
 それにしたって限度がある。少なくとも居る人全員で喉の限りに叫び続けるのは何か違うだろう。くそやかましい世界の終わりを乗り越えて、この塔の屋根の上には、穏やかな風の音だけが聞こえている。
 それらをのんびりと、味わうように少しだけ目を瞑ってから、透はゆっくり体を起こした。
 ここに上ってくる前に、住民の妖怪から団子と薬湯を分けてもらってきている。せっかくだから、ここで独り月見としゃれこもう。
「……あ、忘れてた」
 と、思ったところで、頭に揺れを感じて帽子を外す。すると、収めていた髪の隙間から、栗鼠と小鳥が転がり落ちてきた。どうやら『ひとり』ではなかったな、と彼等を膝の上に乗せて、ポケットに仕舞っていた木の実を与える。
「……ちょっとまだ濡れてるけど、まあいいよな?」
 問うては見るが、大声で鳴き続けた事で体力を消耗したのか、動物達の動きは鈍い。
「ま、ゆっくり休んでくれよ」
 疲れているのはお互い同じか、そう苦笑して、透もまた団子を口に運んだ。
「んーー……」
 確認するように喉を鳴らしながら、薬湯もちびちびと啜る。苦い。けれど効いているような感じはしていた。
 ぐっと空を見上げると、今でもまだ落ちてきそうに見える、大きくて丸いお月様。時間としては夜だというのに、明るく感じられるほどに眩しい。薄くたなびく雲だって、あの輝きを覆い隠す事はできないだろう。
 それはきっと、いつだって灰色のあの場所とは違うところ。あそこでは見れない景色。だからこそ、いつか、あそこで待つ家族にも見せてやりたいと、そんな風に思うのだ。

 ふと、膝の上に降りた彼等が大人しく寝入っているのに気が付いて、透はそこに脱いだ帽子を被せてやる。普段は仕舞っている長い髪が、柔らかな風に揺れて、首筋をくすぐる。
 そうして、改めて空を見上げた。無言でこちらを見下ろしているのは、大きな大きな丸い月。

 ――ああ、こんな夜も悪くない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スキアファール・イリャルギ
ぐずり゛ぐだざい゛
(喉が死んでいる)
(頭痛と耳鳴りも凄い)
(顔もいつもより死んでる)

叫びすぎて寿命が縮んだ気がする……怪奇人間にとって貴重な寿命が……
薬を頂いたら人気のない所に行って無言で休みます……
今は音楽すらいいです静かに過ごしたい……

あぁ、静寂って素晴らしい……(べちょり)
もう影になってどこかの隙間に潜りたい……

なんかこの前もこの世界でこんな風になってたような
倒れてて、喉が痛くて、月が近くて、大きくて、綺麗で……
いや、(雰囲気の)温度差は全然違いますけどね……

とりあえず一言いいですか……
"黒"が至高とは言ったけど"黒マント"が好きとは言ってないですクソ怪人め……(まだ引き摺ってた!)



●べしょり
 戦いは終わった。だが想像を絶する激戦を経たスキアファールは、外傷こそないもののボロ雑巾みたいな心境に陥っていた。
「ぐずり゛ぐだざい゛」
「うおっ、大丈夫かあんた?」
 手助けを申し出た住人の妖怪も軽く引いている。喉をやられた上で行われた度重なるグロウルは、喉に致命傷に近いダメージを与えていたし、響き渡っていた爆音と自分の叫びで耳鳴りと頭痛が後遺症として残っている。
「大丈夫じゃないです……叫びすぎて寿命が縮んだ気がする……怪奇人間にとって貴重な寿命が……」
「そっか……大変だな……」
 他に声の掛けようもない。とにかくその妖怪から喉に効くという薬湯を受け取って、スキアファールは人気の少ない路地の影へと沈んで行った。
 べったりと倒れた彼は、とにかくようやく手に入れた無音を享受する。普段とは違い音楽さえも今は辛い。あぁ、静寂って素晴らしい、そんな事を思いながら。痛む喉をやたらと苦い薬湯で潤わせ、溜息を吐いたところで、仰向けに転がる。路地の合間から見える月は、屋根の間に収まらないほどに大きい。
 そうしてそこで、何となく既視感を覚える。倒れてて、喉が痛くて、月が近くて、大きくて、綺麗で……いやしかし、今回は自滅を覚悟したつもりはなかったはずだ。それでこの結果ということは、もしかしたら自分はこの幽世との相性がよくないのだろうか。
 とりとめのない後ろ向き思考で、スキアファールは物憂げに目を細めた。これはこれで複雑な所だが、怪奇人間にとってカクリヨファンタズムは割と似合いの場所だと思うのだ。生まれこそ違えど、今回の敵だって在り方としては近しいものが在る。闇に溶けるような黒マントのあの怪人――あ、思い出したら腹が立って来たぞ。
「"黒"が至高とは言ったけど"黒マント"が好きとは言ってないですクソ怪人め……!」
 超絶前向き解釈で挑んできた怪人とは正反対の姿勢で、スキアファールは、月に向かって抗議の声を上げる。
 とはいえ、『静』を取り戻したこの世界では、月が答えてくれるはずもなく。ただただ無言で落ちてくる光が眩しくて、スキアファールはそのまま影に溶けることにした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

水衛・巽
ちょっと洒落にならないくらい喉と頭が痛いんですけど…
まあいいです とりあえず静かにはなったので

どこか適当に放っておいてもらえる所を探して
冷えないよう毛布でも借りて大人しく休みます
蜂蜜に、あと大根か生姜でもあればいいんですけど…
でも風邪ではないので
蜂蜜大根や蜂蜜生姜でなだめるのは難しいでしょうか

…件の黒マント、いつだって言葉を交わせるとか言っていましたが
まあ吐き出してしまえば楽になるとかはあるかもしれない
ただそれを叫び回る必要はどこにもないって話なんですけど!
……ああいけない、休ませないと本当に喉が潰れる



●お疲れさまでした
 一通り大暴れした式神を収めた頃には、周りはすっかり静かになっていた。音量の落差に耳が慣れない、というか周りが静かな分だけ耳鳴りがいやに際立っている。ついでに言うと喉と頭も結構痛む。まさか戦闘以外でこれほどのダメージを負うことがあろうとは。
 しかしながら、少なくともこれ以上追撃を喰らうことはないだろう。溜息を一つ吐き、ちらほらと戻って来始めた妖怪達から逃れるように、巽は静かに歩き出した。ここからは、最低限のこと以外は喋りたくない。

 月見のためにと高い場所へ向かう住人達とは反対にへ向かい、適度に人気のない場所で、巽は借りてきた毛布に包まる。冷えないようにしたところで、こちらも調達してきた蜂蜜と生姜を取り出した。何やら風邪を引いた人みたいになってしまったが、喉の粘膜を保護して温めれば、少しはマシになるだろうと当たりを付けていた。
 外傷に対する処置の方が、まだ詳しいなとさらに溜息をついて、巽は蜂蜜入りの飲み物に口を付ける。
 それからしばし、喉の痛みも落ち着いてきたところで、ようやく思考が回り出すのを自覚する。今回の相手は特別強敵だったということはないのだけど、中々厄介な目には遭わせられた。動機のついでに「いつだって言葉を交わせる」なんてことも言っていたが、傍迷惑な話である。
 ……とはいえ、と巽は思う。沈黙という形で抑えること無く、吐き出してしまえば楽になるとか、そういうものもあるかもしれない。世の中で酒が嗜まれている理由の何割かも、きっとそんなところであろう。言葉を飲み込むことは自分を殺すに等しい場合だってあるわけで、思うまま、即座に言葉を交わすことが出来たなら――。

「――いや!! でもそれを叫び回る必要はどこにもありませんね!!!」

 はい。
「……ああ」
 やってしまった、と胸中で呟いて、巽はまた蜂蜜を舐める。
 先程までの空気に中てられたか、本格的に休ませないと喉が潰れかねないと言うのに。

 痛む喉をさすりながら、彼もまた、空を眺めた。
 大きくて丸い、輝く月は、何も言わずにそこに在る。静寂とはつまり平穏であるのだと、猟兵達はそんな悟りを得たかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年11月03日


挿絵イラスト