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凍える人形(ヒトガタ)に鋸刃を添えて

#アポカリプスヘル #ヴォーテックス・シティ #『吹雪の王』志乃原・遥

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#アポカリプスヘル
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#ヴォーテックス・シティ
#『吹雪の王』志乃原・遥


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 アポカリプスヘル――“地獄の黙示録”というラベリングをされた世界。
 荒廃しきったこの世界に、不釣り合いな栄華を極める場所が存在する。
 その場所の名は『ヴォーテックス・シティ』!
 悪と狂気の権化、ヴォーテックス一族が支配する、都市の残骸や無数の重機、巨獣の骨や巨大洞窟が複雑に組み合わさった、かつてのニューヨークの2倍はあろうかという『超・超・巨大都市』である!
 この都の象徴である『髑髏と渦巻』の紋章が掲げられたヴォーテックス・シティには、日夜、世界各地のキング達から大量の物資や奴隷が上納され、レイダー達は夜も電飾や篝火で昼のように明るいこの街で暴虐と快楽に耽り、そしてまた略奪の日々へと戻ってゆくのだ。

「つまり、世界中の奴隷が集まるここなら『彼』が見つかると思ったのだけど……どうやら、アテが外れたみたいだわ」
 黒髪の女王の絶対零度の眼差しが、破邪顕正宗信者の少女達を射抜く。
「それとも、単純にあなたたちが無能なの? 協力するとか言っておいて?」
「も、申し訳ございません……。我々も、フブキ様のおっしゃった外見と年齢の男の奴隷共をかき集めたのですが……」
「言い訳は聞きたくないわ。氷像になって切断されたいの?」
「ご、ご勘弁を、フブキ様……!」
 破邪顕正宗信者の少女達は震えながら、真っ青な顔して下がっていった。
 残されたのは、吹雪の女王と奴隷の青年達。
 フブキ様と呼ばれた女王は、静かに口元を綻ばせながら奴隷達に語りかける。
「人を、探しているんです。私の恋人の『彼』を。ちょうど、あなた達に外見や年齢が近いんです。……どなたか、私の『彼』を知りませんか?」
 だが、奴隷達が『彼』を知っているはずがない。赤の他人なのだから。
 誰も口を開かず、首を横に振るばかりの奴隷達に、彼女の表情は次第に険しくなってゆく。その手に持った、ノコギリを掲げながら。
「そう。知らないのなら、用はないわ。今すぐ凍りなさい」
 すると女王の周囲が、突然の猛吹雪に覆われ、視界を全て白銀に覆ってしまった。

 グリモアベース。
 予知をしたグリモア猟兵の蛇塚・レモン(蛇神憑きの金色巫女・f05152)は、早速、今回の任務を集まってくれた猟兵達へ伝達し始めた。
「ヴォーテックス・シティに集められた奴隷達の救出が第一目的っ! 奴隷達をヴォーテックス・シティの外へ脱出させるのが第二目的っ! オブリビオンの対処は第三目的だけど、可能な限り討伐を心掛けてねっ!」
 今回の任務で重要なのは、移動手段らしい。
「基本的に今回は、救出した奴隷達と一緒に逃げながらオブリビオンと戦うことになるから、予め乗り物等の移動手段を準備しておくとベターだね~っ! ない場合は、そこら中に鍵が刺さったままの車が放置されてるから、それを使うと良いよっ! オブリビオン達もしつこくヴォーテックス・シティ中を違法改造車で猛追してくるから、それを振り切るような方法も考えておいてねっ!」
 そして、肝心のレイダー・キングこと『吹雪の王』志乃原・遥だが……。
「元はオブリビオンストームに巻き込まれた女子高生っぽいっ! けど、彼女が探している恋人の『彼』は、もう既に事故で亡くなってることが分かったよ……」
 オブリビオン化した彼女は、その記憶は既に混濁し曖昧らしい。
 だからこそ、未だに恋人を探しているのだとか。
「更に、生前は殺人を犯しているみたいだけど、これに関しては詳細が不明……。こういう時、“名探偵”がいてくれたらなぁ~って、それは都合が良すぎるかなっ?」
 そう言ったレモンは、頭上のグリモアを起動し始める。
「とにかく、今は迷路みたいに入り組んだ雑居ビルの中に閉じ込められた人質達の救出が最優先だから、転送されたらすぐに行動してねっ! 負けないでねっ!」
 グリモアの光が、猟兵達をヴォーテックス・シティへ誘う………!


七転 十五起
 なぎてんはねおきです。
 今回のシナリオは『人質救出→撤退戦』です。
 いわゆるカーチェイスバトルです。
 でもオブリビオンもなるべく倒してね。

●概要
『第一章:冒険』
 超高層違法建築雑居ビルに監禁された人質の青年達を救出して下さい。
 さもなくば、奴隷達は吹雪の王に氷漬けにされてしまいます。
 なお、🔵の数だけ人質を救出できます。

 迷路みたいに入り組んだビルの各階層には、様々なフロアが存在します。
 皆様の自由な発想かつ自由なシチュエーションで救出劇を演出して下さい。
 シチュエーションお任せも可能ですが、如何様に救出するのかは明記願います。
 なお、各階層には『破邪顕正宗の信者』らが警備してますが、彼女達は気が緩んでいるため容易にステルスキルが出来ます。必要に応じて、カッコよくキメちゃって下さい。

『第二章:集団戦』
 ここからは救出した奴隷達と一緒に、広大なヴォーテックス・シティからの脱出を図ります。ただし、『破邪顕正宗の信者』らが違法改造車に乗って猛追してきます。彼女達を振り切るために、色々と策を講じてくだされば、プレイングボーナスが発生するかもしれません。

『第三章:ボス戦』
 痺れを切らした『吹雪の王』志乃原・遥自らが、恐るべきモンスターマシンに乗り込んで追い掛けてきます(どんなマシンなのかは、断章加筆時に明記します)。周辺の建物をデタラメに破壊しながら追い掛けてくるため、猟兵達は瓦礫から奴隷達を守ったり、ボスの車輌に対抗するなどの作戦が必要になってきます。特に、今回は【吹雪や氷属性攻撃による路面凍結】が発生するので、猟兵側はスリップ事故への対策が必須です。

 それでは、皆様の挑戦をお待ちしております!
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第1章 冒険 『セーブ・ザ・スレイブ』

POW   :    レイダーを腕力で成敗する

SPD   :    逃走経路を探し、秘密裏に奴隷を逃がす

WIZ   :    自身もあえて奴隷となり、現地に潜入する

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

大町・詩乃
都月さん(f21384)と

まずは【結界術】で、都月さん・チィさん・詩乃を対象範囲とする姿隠しの結界を作ってビルに潜入、移動します。
UC:神使召喚で蝶や蛇や鼠などの眷属神を召喚し、【第六感・失せ物探し】と併せて人質や見張りを捜索開始。

見張りを見つかれば、都月さんの行動とタイミングを合わせて、【風の属性攻撃・高速詠唱・貫通攻撃】で密やかに倒し、可能なら人質を閉じ込めている部屋の鍵等を奪取します。

人質を見つければ「救出に来ました。静かにしていて下さいね。」と、優しくお願いしてチィさんに乗せます。

脱出時はチィさんに付いていけるよう、必要に応じてUC:神力発現を使用して、チィさん達に合わせて飛行します。


木常野・都月
詩乃さん(f17458)と

まずは人質の捜索だ。

風の精霊様を使って、人の匂いを探していきたい。

[野生の勘、第六感]で姿も狐の姿で。
詩乃さんが喚び出した動物達と一緒に、聴覚、嗅覚もフル稼働で探索したい。

何か気付いたら、立ち止まって詩乃さんに目配せしたい。
(詩乃さん、この先に何かいます)

見張りは風の精霊様に頼んで加速してガブーってしたい。

監禁された人達を発見したら、妖狐の姿に戻りたい。
怪我人がいれば簡易的な手当を。

問題なさそうなら、UC【精霊騎乗】で、大きくなったチィに、監禁されてた人を乗せていきたい。
乗せられるだけ乗せたいけど、落っこちない程度だな。

チィ、魔力たっぷりあげるから、よろしく頼む!



 ヴォーテックス・シティ。まもなく夕暮れが近付いているにも関わらず、この悪の巨都は眠りを知らず、禍々しくネオンや街頭を煌めかせている。
 転送された猟兵達は、その影に紛れると、予知で見た超高層違法建築雑居ビルへと侵入を果たした。
「都月さん、チィさん。参りましょう」
 大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)は、同行者の木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)、そして彼に懐いた白キツネ型の月の妖精チィと共に、上の階を目指してゆく。
 彼女が展開した結界は、姿隠しの加護を得ており、周囲の景色と術者達の姿をなじませて目立たなくすることが出来る。
「まずは人質の捜索だ。風の精霊様、ほんの少しだけ空気の流れをこちらへ呼び寄せて下さい」
 木常野が早速、風の精霊へ祈りを捧げると、極々微弱な空気の流れが2人の元へ流れてきた。
「くんくんくん……この階層には人の気配がないみたいだ。匂いで分かるぞ」
「さすが都月さんですね。私も、動物達の力を借りるとしましょう」
 大町は小声で祝詞の唱え始めた。
「アシカビヒメの名によって召喚す、我が元に来りて命を受けよ。神使(シンシ)召喚――!」
 ユーベルコードで召喚されたのは、蝶や蛇や鼠などの眷属神。いずれも狭い隙間や人間に気取られにくい動物ばかりを呼び出した。
「さあ、皆さん。この雑居ビルに散らばって、人質と見張りを見つけ出して下さい」
 大町の命を受けた眷属神達は、一斉に雑居ビルのほうぼうへと散らばっていった。
「彼らと私の五感は直結しています。何か分かれば、すぐに教えますね、都月さん。……って、都月さん?」
「こやーん……?」
 大町が目を話した間に、木常野の姿が少年から黒狐に変身していた。
「こやん! こやっ、こやーんっ!」
 動物と会話ができる大町は、狐化した木常野の言葉に耳を傾ける。
「え? 『俺もあの動物達に負けたくないから、ちょっと本気を出そうと思った』って……。ありがとうございます、都月さん。では、周辺の警戒はお任せしますね?」
「こやんっ!」
 眷属神と張り合うべく、木常野はチィと一緒に大町を護衛するべく、残りの感覚もフル動員して警戒にあたってゆく。
 そうして1階から5階まで異常なしのまま、ゆっくりと1人と2匹は階段を上り詰めていった。

 異変に気が付いたのは、まずは大町であった。
「この上……12階に、人質が4名……ですが、半死半生のようですね……」
 眷属神の視界を通して、上層にある牢獄の中の奴隷達の姿を数える大町。
 きっと、日頃から過酷で劣悪な環境下に置かれていたと推測され、遅かれ早かれ、彼らが力尽きそうなのはひと目で分かった。
「もっと早く此処へ来れていれば……」
「こやーん……(元気を出して、詩乃さん……)」
「……ええ、今は生存者の救出が最善ですね」
 ゆっくりと上の階へ続く階段へ移動しようとしたその時、木常野が大町の巫女服の裾を噛んで制止した。そして、街のネオンに照らされて黒真珠のように輝く彼の瞳が、大町へ訴えかけていた。
 ――この先に、誰かいると。
 慌てて大町は、眷属神の視界を介して、この先のフロアを確認する。
 すると、上の階から見張りの2名が降りてくるではないか。
 木常野の鋭い聴覚が、見張り達の足音を聞き取ったのだ。
 しばらくすると、見張りの彼女達のやり取りも聞こえてきた。
「見張りの交代時間、とっくに過ぎているのに、まだ上から誰も来ないっておかしいね?」
「きっと、フブキ様のお説教を喰らっているんだわ。ほら、午前中、フブキ様が大激怒したって話、知ってる……?」
「99階のフロアがまるごと氷漬けになって駄目になったって、アレ本当だったんだ?」
「奴隷の男たちも一瞬でカッチカチの氷像よ。後片付け、私がやったんだから間違いないわ」
「うわぁ、それは災難だったね……」
「ツルハシで、凍った奴隷の身体を砕く身にもなってほしいわ、全く……」
 カツ、カツ、と靴の音を、薄暗いフロアへと響かせる見張り2名。
 徐々にその足音が、猟兵達に近付いてくる。
「てかさ、フブキ様、今日は一段とイライラしてたわね。侵入者がいないか、今夜は念入りに警戒しなさいって」
「マジで意味不明。大体、このヴォーテックス・シティでフブキ様にちょっかい出そうなんていう命知らずはいるわけないよね?」
「白い粉が大好きなイカレたレイダー・キングならともかく、並のオブリビオンの襲撃なんて、ここじゃ考えられないっていうのに」
「……まさか、猟兵って事は? フブキ様って妙に勘が鋭いし!」
「いやいやいや、考えすぎでしょ? あいつらは確かに神出鬼没だけど、流石にここには忍び込めないわよ!」
「そ、そうだよね! あは、ははは……」
「何言ってるの、あんたは! もう、ふふふふ……」
 そう言いながら、大町が展開している結界の真横を素通りする見張りの少女2人。
 ある程度の距離が空いたと判断した大町は、結界を解除。
 見張り2人の背後から急襲する!
「風よ、穿て……!」
 大町の投げ付けた霊符は、彼女の魂命霊気によって空気の塊を生み出して前方へ発射させた。
 空気の弾丸は僅かな風切り音を立て、見張りのひとりの背中を突き抜け、心臓を貫いてみせた。
「あガッ……!?」
 突如、吐血しながら前のめりに倒れる見張りのひとり。
「へ、嘘……?」
 もうひとりは何が起きたのか理解できず、その場で数秒、身体を硬直させてしまう。
「いや……嘘よ! まさか敵襲……!? ぐげぇっ!!!」
 振り返ったもうひとりの見張りは、突然、鶏が首を絞められたような苦悶の声を漏らし、喉元を必死に掻きむしりながら全身を激しく左右に振って暴れだす。
「か……っあっ、あっ……! いき、が……で、……な、ぁ………」
「こやーん?」
 悶絶する見張りの少女を、黒狐がじっと凝視している。
 見張りの少女は、目の前の狐が元凶だと理解したそのときには、次第に視界が暗転してゆくのだった。
「……オブリビオン同士にも、絆や友情があるのですね。ですが、私達も未来を守るために此処へ来たのです。骸の海で、どうか仲良く、安らかに……」
 大町は若干の心の痛みを覚えつつも、2人の冥福を祈った後、踵を返して階段に向かう。
 片方は背中から心臓を破壊されて血を吐く少女と、もう片方は顔面蒼白のまま白目を剥いて泡を吐く少女。2人は無意識に手を繋いだまま死に絶え、しばらくすると死体は世界から消滅していった。
「それにしても、都月さん。さっきのは一体……?」
「こやっ、こやーんっ! こやーん?」
「あ、いえ、その『風の精霊様にがぶーってしてもらった』っていうニュアンスが、駄目かどうか以前に、ちょっとどういう内容なのかが分からないもので……」
 木常野の解説によれば、風の精霊様は空気を操る事ができる。それはつまり、周囲の空気の成分も操作できるということだ。
 さっきの見張りには、酸素濃度を急激に低下させ、代わりに窒素濃度を一気に上げることによって、見張りを酸欠・窒息させて絶命に追い込んだのだ。
「なるほど……一見地味ですが、生物相手なら無類の強さを誇りますね、それ……」
「こやん……?」
「ええ、都月さんは自覚ないみたいですが、それをやったら“死体でない限り、地球上の生物は確実に殺せます”からね……。さあ、先を急ぎましょうか」
「こやんっ!」
 大町と木常野、そしてチィは階段を昇ってゆく。
 行く先にも見張りがいたが、この階層は既に大町の眷属神の偵察が完了しているため、フロア構造は完全に大町の頭の中に絵図として描かれていた。
 それ故、ひとり、またひとりとステルスキルを遂行してゆき、最後のひとりを沈めた後、大町は懐から牢の鍵を奪取した。
 木常野の人の姿へ戻ると、大町と手分けして牢の鍵を解錠してゆく。
「助けに来たぞ。立てるか? 美味しいお菓子と水がある。チィに乗りながら食べてほしい」
「救出に来ました。静かにしていて下さいね。さあ、他の見張りに気づかれる前に、この白い狐の背中に乗って下さい」
「チィ、魔力たっぷりあげるから、よろしく頼む!」
 木常野はチィへ自身の魔力を供給すると、彼の背丈の2倍の大きさに巨大化したその背に跨ってみせた。一緒に奴隷達4名も乗せると、チィは窓から思いっきりダイブ!
 落下した先には、複雑に張り巡らされた鉄パイプ。着地したチィは、網目のように入り組んだ空中迷路をゆっくりと地上へ向かって降りてゆく。
「私が先行して道案内します。付いてきて下さい!」
 大町はユーベルコードで空を飛び、木常野とチィ、そして奴隷達を地上へ案内してゆくのだった。

【奴隷4名をビルから救出!】

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アハト・アリスズナンバー
名探偵を、お呼びですか?
私の名は有栖川ハチ子。猟兵探偵です。今は。
そういう事で有栖川ハチ子変装セットをあらかじめ着込んでから活動開始。
車は持ってないので、放置された車の位置を確認しておきます。

この階層は単純に牢屋の集まりのようですね。
ならばまずは、【闇に紛れる】ように移動しつつ警備の一人を【気絶攻撃】しておいて、その服を奪います。
そして奴隷があっちに脱走したぞーと別なほうへと誘導させます。
もぬけの殻になったら再度変装セットを着て、【第六感】【暗視】を駆使して鍵を探し当て、人質を解放します。ダメなら力ずく。
そしてUC発動。キングの殺人の証拠がないか探りましょう。

アドリブ・絡み歓迎



 少し時間は遡る。
 無秩序に天へ伸びてゆく超高層違法建築を見上げる、その場の雰囲気に似付かわしい少女の姿があった。
「グリモア猟兵は名探偵を、お呼びですか? ならばこの私が。私の名は有栖川ハチ子。猟兵探偵です。今は」
 煙草の吸殻をブーツで踏んで火を消すと、アハト・アリスズナンバー(8番目のアリス・f28285)は純白の学生服めいたスーツから、ハイカラな女学生風の袴姿へと一瞬で着替えた。髪型もストレートヘアから三編みに変わり、いつの間にか眼鏡も掛けて文学系少女を演出。ハンチング帽をかぶれば、何処からどう見ても探偵少女である。
 ……問題は、ネオンと違法建築が入り交じる悪の巨都では、非常にアハトの服装が浮いて見えるわけだが、そこは猟兵の特性である“何処の世界でどんな姿でも違和感を与えない加護”でカバー。
「さて、車は持ってないので、放置された車の位置を確認して……って、おあつらえ向けにビルの真横に軽トラが横付けされてるじゃないですか。鍵も刺さってますね。頂いておきましょう」
 アハトは誰かに車を使用されないように鍵を抜くと、ビルの裏手の非常階段から静かに上層階を目指してゆくことにした。

「よっと……!」
 ビームグラップル弾を使用して、非常階段から一気に上層部まで自身の体を引き上げたアハト。
「まさか、非常階段の途中が崩落していたとは。ですが、この有栖川ハチ子にとっては、この程度の困難など軽々超えてしまえるのですよ。我ながら名探偵モードの私は冴えまくってます」
 アハトの変装がただのコスプレではない。
 れっきとしたユーベルコード『有栖川ハチ子に解けぬ不可思議など無し(ゼッタイスイリ)』なのだ。
 変装セットを着用している時間に比例して、次の行動の成功率が上昇してゆく。
 おかげで、崩落した先の非常階段へ飛び移ることが出来たのだ。
「だいぶ上まで登れましたね。57階ですか。このあたりで内部に侵入してみましょう」
 非常口の扉の鍵は既に壊れているため、ラクラクと内部へ忍び込めた。
 だが、問題はここからだ。
 アハトが分かるだけで、見張りが4人も周囲をウロウロ徘徊している。
(この階層は単純に牢屋の集まりのようですね)
 ずらりと奥まで並ぶ鉄格子に沿って廊下が伸びてゆく。
 廊下の途中には身を隠す遮蔽物がない為、見付かったら左右からすぐに挟み撃ちにされてしまいそうだ。
(ならば、こういう時は……)
 アリスズナンバーランスを片手に、付近をぼーっと歩く見張りの少女の背後へ忍び寄るアハト。
 意を決し、アハトは見張りに飛びかかると、ランスの柄で相手の首を圧迫して気道を塞いだ。
「騒がないでください。でないと殺してしまいますよ」
「ぅ……げぇ……」
 そのまま見張りは頸部圧迫による酸欠で気絶してしまった。
 アハトは落ちた見張りの衣装をその場で追い剥ぐと、電脳魔術を応用して着替えを完了させる。そして見張りと入れ替わると、下着姿の見張りを適当な空き牢屋の中へ放り込んだ。
「この見張りの子、和装なのにブラジャーとショーツ着用なんですね……。しかもレースの赤とか、青少年のあれこれが危険ですね。いや、今はそれよりも、作戦実行です」
 アハトは腹式呼吸を意識しながら息を吸い込むと、力の限り大きな声で叫んでみせた。
「奴隷があっちに脱走したぞー!! 室内の階段を抑えろー!」
 これに、他の見張りが騒然とする。
「馬鹿な!? なぜ、奴隷が牢の鍵を持ってるんだっ?」
「知らないわよ! とにかく、階段を封鎖よ!」
「ここは外の非常階段は使えないからねー? 逃げられないよー?」
 どんどんと見張り達が室内の階段を封鎖するべく持ち場を離れてゆく。
 たちまち、フロアはもぬけの殻になってしまった。
 再び探偵の衣装に早着替えしたアハトは、見張りがいぬ間に人質のいる牢の鍵を探し始めた。
「ふぅむ……。ここ、は……?」
 アハトが忍び込んだ部屋は、いくつもの監視カメラのモニターがずらりと並んでいる管理室のようだ。
「よし、鍵をゲットです。やはり牢屋全体を監視する部屋があったのですね。そしてそこに行けばマスターキーが必ずあるわけです」
 急いで牢の鍵を持ち出したアハトは、次々と牢の扉を開け放ってゆく。
「さあ、助けに来ました。みんなで逃げましょう」
 そう告げると、2人の奴隷を牢屋から外へ連れ出した。
 他の奴隷は、既に衰弱してしまっているか、雪の女王を恐れて外に出ることを拒んでしまった。アハトは説得を試みたが、心が疲弊した彼らに、脱獄の気力すら湧き上がらなかった。
「……仕方がありません。では、代わりに質問に答えてくれませんか?」
 アハトの言葉に、奴隷達はゆっくりと首を縦に振ってみせた。
「あの雪の女王ですが、オブリビオンになる前……つまり生前に殺人を犯したそうです。何か、手掛かりに心当たりは?」
 奴隷達はアハトの言葉を理解していない。オブリビオンの生前のことなど、尋ねられたところで奴隷達が知る由もないからだ。
 だが、ひとりだけ、アハトへ一冊の本を差し出した。
「これは?」
「……見張りが、お、落としたんだ……。この、階層の、日誌、だ……」
 そう告げると、奴隷は汚いタオルケットを頭から被って牢の片隅で丸くなってしまった。自らの意思でここに残る彼を、ここから連れ出すのは難しいだろう。
 やむなくアハトは日誌のページを捲ってゆく。

『フブキ様は過去に人を殺したらしい。全ては復讐のため、だったとか』
『我々もフブキ様の人探しに協力しているが、皆、薄々と勘付いている』
『フブキ様の恋人は、その復讐しようとしていた奴らに殺されたのだろう』
『表面上は事故と処理されたのだろう。この話が何処まで的中しているか、私には確かめる術はないし、確かめたところで何も変わらないだろう』
『もっとも、本人はその記憶も曖昧のようで、私がここに書き記さなかったら“誰かに話した事実”さえ忘れてしまうのだ』

「……随分と、ここの女王様は理不尽な目に遭ったのですね。同情はしませんが」
 アハトは奴隷2名をドローンで宙吊りにして地上へ降ろし、自身は再び飛び移った非常階段から駆け下りてゆく。
 そして軽トラの荷台に奴隷2名を乗せると、エンジンを掛けてビルから逃走した。
「極度の恐怖は……眼の前の救いの手を拒むほど、その人間の精神を蝕むのですね。良い教訓になりました」
 全ての奴隷を助けられなかったのは痛手だが、仮に彼らを連れ出しても、外の過酷な世界では生きてゆくないだろう。
 アポカリプスヘルは、自らの意思で立たねば生きてゆけない。
 荷台の2名は、その条件を満たしている希少な存在なのだと、アハトはバックミラー越しに彼らを眺めたのだった。

【奴隷2名をビルから救出!】

成功 🔵​🔵​🔴​

アビー・ホワイトウッド
ここがヴォーテックス・シティ。とんでもない大都市。まだこんな場所があったのには驚いた。

荷台に載せた戦車にシートをかけたトラックを路肩に停めたらビルへ。
これだけ継ぎ接ぎだらけの建物、通風口を伝うなりで上階を目指していく。
所々に見張りがいるらしい。隠れながら聞き耳を立てて情報を集める。
奴隷を収容している区画に着いたら忍び足で索敵しながら孤立した見張りをマーク、背後から忍び寄って手で口を塞ぎナイフで背中から肺を一撃。

鍵はある?あればそれで牢を解放する。

脱出の為に見張りは減らしたい。安全第一。
少人数なら物陰から忍びよってUCで一気に制圧しよう。
脱出後は捕虜と一緒にトラック荷台の歩行戦車へ。
時を待つ。



 ――悪と狂気の巨都『ヴォーテックス・シティ』の存在は、アポカリプスヘル世界の中でも異質過ぎる。
 転送直後、相棒の戦術二足歩行戦車 M102『ラングレー』の装甲を撫でる。
 相棒を乗せた戦車運搬用牽引トラックの荷台から飛び降り、ヒビ割れたアスファルトの感触を確かめるアビー・ホワイトウッド(奪還屋・f24498)が、街のネオンの輝きに目を細めながら訝しんだ。
 もう既に、作戦開始から時間は経過し、日はとっぷりと暮れていたが、この街は狂ったようにギラギラと街全体が煌めいていた。
「ここがヴォーテックス・シティ。とんでもない大都市。まだこんな場所があったのには驚いた」
 戦車乗りであるアビーは奪還者(ブリンガー)として、今まで様々な拠点(ベース)で依頼をこなしてきた。
 どこも生活に余裕がなく、それでも明日を夢見て必死に人々は生きていた。
 だが、この巨都はどうだ?
 欲望と略奪と死が、無秩序に混じり合っている狂気の場所。
 たしかにここには電気・水道などのライフラインもあり、食事や娯楽にも困らないだろう。
 だが、それは、レイダー達が踏み躙った弱者の屍の山の上で築き上げられた。
 クソ同然のレイダー達が残した願望の残りカスの積み重ねが、この大都市の真の姿だ。
 つまり、ここは醜悪なクソの山の都なのだ。
 アビーは無言のまま、握る拳に一層の力が籠もった。
 そんな考えを巡らせているうちに、迷彩柄のシートを相棒のラングレーに掛け終わった。
「行ってくる」
 相棒に挨拶を交わし、いざ、超高層違法建築雑居ビルの中へ向った。

 アビーは正面玄関から向かわず、雑居ビルの壁をよじ登っていた。
(これだけ継ぎ接ぎだらけの建物、足場になるような通風口を伝うなりで上階を目指せそうだ)
 彼女の読みは正しく、四方八方に張り巡らされた何かの配線ケーブルや室外機などを足場にし、どんどんと上の階層へクライミングしてゆくことが出来た。
(……だいぶ高いところまで来たわ)
 通気口からアビーは侵入すると、暗く埃臭い内部を匍匐前進でゆっくりと進んでゆく。
 あまり音を立てると、下にいる見張りに気付かれてしまうからだ。
(見張りは……視認で2名。前方に1名、足音が近付いてくる。……いや、もう少し先で、話し声が聞こえる。2人、いや3人か?)
 アビーは点検用出入口の編み目の隙間から、外の様子を目と耳で敵の気配を感じ取る。
 次第に見張りの気配が遠ざかってゆくのを確認すると、アビーは点検用出入口の金網を外し、ゆっくり足音を立てないように廊下へ降り立った。
 降り立った階層はホテルのラウンジのように豪華で、照明も明るく、隠れるような場所に乏しい。
(どうやら、ここには奴隷達はいないようだ。エレベーターは動いているが、見張りと鉢合わせになる確率が高い。向かうべきは階段ね)
 幸いにも、上への階段は目と鼻の先だ。
 通気口の点検用出入口が奥まったところに存在しているため、真昼のように明るい室内でも、今だ見張り達はアビーの存在に気が付いていない。
 見張りが階段の方向を向いていないことを確認したアビーは、すぐに階段を早足で上がってゆく。
(上手く切り抜けられた。……そして、ビンゴだ)
 アビーが上の階に足を踏み入れると、そこは間接照明が点在するフロアであった。どうやら映画館のような施設がこの階層に入っているようだ。
 見張りの数も多い。お目当ての場所はここで間違いないだろう。
 アビーはしばらく暗がりの中から見張りを監視していると、ちょうど交代の時間のようだ。
(見張りがひとりでこちらに向ってきている。チャンスね)
 仕事終わりで気が緩んだ見張りが、物陰に潜んでいるアビーの前を通り過ぎる。
 アビーは見張りの背後へ素早く回り込むと、コンバットナイフで背中から肺を一突き。
「かヒュ……ッ!?」
 呼吸困難で掠れた呼吸音が小さく鳴る。だが、肺の血管から漏れた血液がもう片方の肺胞を満たし始めると、今度は溺れたかの如くもがき始め、そのまま見張りは口から溢れた血液で喉を詰まらせて窒息死してしまった。
 すぐさまアビーは、斃れた死体の衣服の中を弄る。
 すると、指先に鍵束の感触があった。
(これで、非常口から劇場へ忍び込めるか、やってみよう……)
 鍵束を奪い取ったアビーは『関係者以外立入禁止』と書かれた扉のドアノブに鍵をねじ込んだ。

 往く先々で見張りをステルスキルしてゆき、死体を発見されないように物陰やトイレの個室へ押し込んでゆくアビー。
 その甲斐あって、だいぶ敵をクリアリングすることが出来た。
 ゆっくりと映写室の中へ忍び込むと、座席に座らされたまま拘束されている奴隷達を目視で確認できた。どうやら、ここには3名しか奴隷がいないようだ。本当はもっと多くいたのかもしれないが、ひとまずは目の前の奴隷達の救助が先決だ。
 周囲には、大した武装もせずにまとまって警備をしている見張り達。というか、奴隷を監視しつつ、文明崩壊前に上映されていたであろう映画を鑑賞しているではないか。つまり、サボっているのだ。おおよそ、外敵なんて存在しないという慢心の現れからの暴挙であろう。レイダー・キングと彼女達の信頼関係の希薄さが伺い知れる。
(でも、この大音量のおかげで、少しの物音を立ててもこちらに気付かれない。そして、この人数なら……!)
 アビーはこの防音環境の整った映写室でなら、少し暴れても外部に異変を察知されにくいと判断、この場にいる見張り全員の排除を決意した。
 まずは手近な見張りの近くへ忍び寄り、そっとその裾を引っ張った。
「……ん?」
 見張りが振り向いたところで、アビーは彼女の口元を手で覆い、ユーベルコードにまで昇華した『近接格闘術』で床に押し倒すと、ナイフの切っ先でその喉笛を長く横へ掻き斬った。うつ伏せ状態で首を切られたため、アビーに血痕が付きにくく、また敵の知も飛び散りにくい。
(まずひとり……)
 アビーは2人目を同様に排除すると、残りの見張りに対しては9ミリ自動拳銃で速やかに撃ち抜いてみせた。

 拳銃の弾を再装填したアビーは、奴隷達の拘束を解き、自身の身分を明かした。
 自身は猟兵であり、奴隷達を助けに来たことを告げると、奴隷達は涙を流して喜んだ。外に逃走用の車輌を用意しているので、そこまで一緒に来てほしいといえば、食い気味で承諾してみせた。
「それでは、劇場出入口の見張りを処理してくる。私が戻ってきたら、エレベーターで1階へ戻る。あとは外へ走れ」
 拳銃からナイフに持ち替えたアビーは、すぐさま外の見張りの首を掻っ切るために映写室から飛び出していった。
 そして、ものの1分も満たずに戻ってきたアビーに奴隷達は先導され、エレベーターを使用して一気に1階へ降りる。
 途中の階で鉢合わせした見張り達は、アサルトライフルですぐさま射殺。
「どうやら、敵は他の猟兵達の動きも勘付いているようだ。すぐに出発しよう」
 奴隷をトラックの荷台に乗せると、アビーはすぐにエンジンを掛けて雑居ビルから離脱していくのだった。

【奴隷3人をビルから救出!】

大成功 🔵​🔵​🔵​

蒼・霓虹
わたしの……いえ、自分の初陣は色々込み入った事情のある依頼になりそうですけど、先ずは人質の救出を

〈POW〉
UC発動させ【激痛耐性】と【属性攻撃(迷彩)】を込めた【オーラ防御】で備えつつ【迷彩】移動しながら【第六感】で道探りつつ【情報収集】しつつ

見張りを〈虹龍如意鱗珠〉で【蹂躙】撲殺

複数は【範囲攻撃】で〈彩虹(戦車モード)〉の【レーザー射撃】で

人質を発見後速やかに救助に
【高速詠唱】で〈虹三葉「レインボークローバー」〉を【結界術と範囲攻撃】で周囲に展開し〈彩虹〉さんの背に人質の方々を乗せ追っ手を〈茶柱「ハッピーディトラップ」〉を【高速詠唱】で【範囲攻撃】で迎撃し脱出を

〔アドリブ絡み掛け合い大歓迎〕


九重・灯
表に出る人格は荒事担当の「オレ」だ。

UC【幼心の魔法】。コトリ、と匣が手の中に現われる。
「我は幻想を身に纏う」

信者の格好を写し取って自分の姿を変え、仲間のフリして奴隷部屋の場所を訊く。
『化術』

「オレ牢屋の場所覚えてなくてさ。フブキ様に何人か連れてこいって言われたんだけど、アノ人ってアレだから急がねえと」

(「ちょっとは演技してください!」)
もう一人の自分のクレームが頭の中に響く。
用が済んだらソイツは始末だ。影から刃を形成して声出す間もなくサックリとな。
追っ手になるヤツは少ない方がいい。

奴隷の牢屋の鍵は魔術で開ける。
『念動力5、鍵開け3』
一人ずつ負ぶって適当な窓から脱出する。
『空中浮遊、怪力7』



 蒼・霓虹(彩虹駆る日陰者の虹龍・f29441)は、民の信仰を失った竜神であり、猟兵である。
 猟兵達によりカクリヨファンタズムが発見されてから、竜神達も猟兵として覚醒するものが現れ始めた。蒼もその一柱であり、彼女の虹龍としての権能は恐竜のような姿の戦車『猟機人・彩虹』となって顕現した。
 そして、この任務が蒼にとっての初任務なのだが……。
(わたしの……いえ、自分の初陣は色々込み入った事情のある依頼になりそうです)
 悪の巨都の片隅で囚われた奴隷達の解放。
 ただそれだけなら最善を尽くすだけで事足りる。
 しかし、予知で見たレイダー・キングの会話が、蒼の思考に引っ掛かっていた。
 蒼は首を小さく横に振った。
(考えているばかりでは始まりません。先ずは人質の救出を……)
 相棒たる彩虹に跨り、蒼がビルへ侵入しようとしたその時だった。
 不意に、彼女の肩を叩く者がいた。
「きゃっ!?」
「おっと! 静かにしろ……!」
 蒼が振り返ると、シーッと右手の人差指を唇に押し当てる少女がいた。
「驚かせて悪かったな。“オレ”は九重・灯(多重人格者の探索者・f17073)の――敵をぶん殴る方……つまり荒事担当の人格だ。よろしくな?」
「あ……い、いえ。同じ猟兵の方だったのですね。はじめまして。蒼・霓虹です」
 戦車の上からペコリと頭を下げる蒼。
 対して九重は、蒼の名前の発音に眉尻を下げていた。
「つぁん・にぃほん……? んじゃ、蒼(ツァン)だな? ところでよ、唐突だが……オレ達、手を組まねえか? 協力すれば、一度に多くの奴隷達を助け出せるはずだ」
 この誘いに、蒼はすぐさま逡巡する。
「確かに……。実は私、今回が初任務なのです。同行していただけるのなら、とても心強いです」
「んじゃ、決まりだ! 短い間だが、背中は預けたからな、蒼?」
 差し出された九重の手を、しっかりと握る蒼。
「虹龍の加護で、九重さんをお守りしますね」
 こうして、2人は即興のコンビを組むこととなった。

 いよいよ、建物内に侵入する。
 まずは蒼がユーベルコード『タンクキャバリア』を発言させ、跨る戦車の主砲威力と装甲を増強する。この際、装甲の強度だけではなくプリズムのような光学迷彩を纏うことで、自身の姿を周囲の景色に溶け込ませた。
 続いて、九重もユーベルコードを発動させると、その手の中にコトリ、と匣がに現われる。
「匣の仔猫の力を借りて、忘却された幻想は蘇り、この身を纏う」
 ――思い出せ、いつか幼心に夢視たこと。
 彼女のユーベルコード『幼心の魔法』は、子供の頃に願った幻想――『空を飛びたい』『透明人間になりたい』『別の誰かに変身したい』『水の上を歩いてみたい』などという夢物語をその身体に纏うことで、現実世界で実現させる効果を持つ。具体的に言えば、特定の技能が超強化されるだけの話なのだが、九重の場合はその強化される技能の組み合わせによって、潜入任務に対して無類の適性を発揮する。
「蒼も透明化するのか。奇遇だな?」
「まぁ、これが一番手っ取り早いですし」
「だな? それじゃ、堂々と正面突破するか」
「はい、参りましょう」
 2人は周囲の姿に溶け込んだまま、臆することなく正面玄関から建物内へ乗り込んでいった。
 これにより、見張りがいようがお構いなしに素通りしてゆき、どんどんと上の階を目指していけたのは非常に大きい。
 途中、蒼は所持している宝珠『虹龍如意鱗珠』で背後から見張りを殴り掛かり、九重が寄生型の呪具『カゲツムギ』による影の刃でトドメを刺して回る。
「追っ手になるヤツは少ない方がいい。声を出して騒がれる前に、急所を一突きでサックリとな?」
「九重さん、先を急ぎましょう」
「待った。良いことを思い付いた」
 九重は透明化を解除すると、今度は斃した見張りの姿へと化けた。
「これで他の見張りと接触できるし、堂々と歩き回っても問題ないだろ。蒼は引き続き、隠れながらオレの後ろに付いてこい」
「解りました。お気を付けて」
 死体を目立たぬ場所へ押し込んだ九重は、堂々と建物内を闊歩してゆく。
 その堂々過ぎる振る舞いに、九重の心の内側から本来の人格である“わたし”が苦言を呈する。
(もっと大人しく歩いてください! 目立ちすぎます!)
「いいじゃねえか。誰も怪しんでねえって。ヨッ! お疲れさん~!」
 常駐する見張りにヘラヘラと声をかける“オレ”に、内なる“わたし”はヒヤヒヤしっぱなしだ。
 話し掛けられた見張りは、困惑しながらも九重に言葉を返した。
「え、ええ……。そっちも巡回、お疲れ様よ。でも、ここ、あなたの持ち場じゃないわよね? というか、そんな口調だった?」
 核心を突く見張りの言葉に、九重は突然、お腹を抱えだした。
「あ、ははは……オレはコッチが素、てゆうかトイレだ、トイレ! しかも、……の方でさ。急に腹が痛くなっちまって……」
 見張りはこれみよがしに顔をしかめると、嘆息混じりに言った。
「もう、分かったわ。止めてよ、ここで下品な話をしないで」
「へへ、悪かったって。ああ、そうだった」
 九重はわざとらしい素振りで、目の前の見張りに話を切り出した。
「オレ、未だに牢屋の場所覚えてなくてさ。実は軽く迷子になってたんだよな。ここ、入り組みすぎでヤバイだろ……。つか、さっきフブキ様に何人か連れてこいって言われたんだけど、アノ人ってアレだから急がねえと」
(ちょっとは演技してください!)
 内なる“わたし”が悲鳴のようなクレームを陳情する。
 九重はその声を無視しつつ、見張りに向けて苦笑いを浮かべていた。
「そんな目で見るなって。オレ、方向音痴なんだ……周りの奴には言うなよ?」
 苦しい九重の言い分だが、見張りは目の前の同胞がまさか猟兵だとは思いもしない。
 だから、見張りは目の前の同胞を『デキの悪い仲間』だと判断した。
「……89階よ。ここからならエレベーターを使えば直ぐじゃない。いい加減覚えないと、フブキ様に殺されるわよ?」
「おーおー、それは、ありがとよ」
 九重は小瓶に詰められた砂状の魔法薬『サンドマンの眠り砂』を見張りの顔に吹っ掛けた。
 すると、たちまち見張りは意識が混濁し、そのまま座りこんで寝てしまった。
「あまり殺しすぎると、本当の巡回役に勘付かれるからな。数名は眠らせるだけに留めておくか」
 九重は後ろにいるであろう蒼と共に、エレベーターで89階へ向っていった。

 89階に到着した瞬間、蒼の跨る戦車の彩虹が吠えた。
「九重さん、ここは私が囮になります……! 行きます、茶柱『ハッピーティートラップ』です!」
 彩虹にインサートされたマジックカードと連動し、主砲から液状球体の弾幕が周囲に放たれた。
 驚いたのは見張り達だ。いきなり猟兵が単独で乗り込んできたのだから、当然、慌てて蒼へ向ってゆく。
「侵入者だ! 取り押さえろ!」
「こいつ、いつの間に!」
「下の見張りは何をやってるの!?」
 エレベーターを背に、蒼は正面と左右から完全に包囲されてしまう。
 だが、見張りが弾幕に最接近した次の瞬間、宙に浮かぶ液状球体が、突如として剣山のようなイガイガの針玉へと形状を変え、周囲の見張りの全身を刺し貫いてしまった。
 まさに一網打尽!
 あっという間にエレベーター前には死体の山が築かれた!
「うまく引っ掛かってくれましたね。あとは、向ってくる敵を主砲のレーザー射撃で各個撃破しましょう。さあ、制圧開始です……!」
 蒼は初任務とは思えないほど陽動役として暴れまわり、その存在感を発揮した。
 一方、九重は見張りの姿のまま、堂々と念動力で牢の鍵を開けていた。
「奴隷達、さっさと此処を出るぞ」
「ヒッ……! 次は俺達の番なのか! 俺は違うぞ! 何も知らない!」
「勘違いするな、助けに来た。オレはアンタの味方だ」
 だが、九重が牢の扉を開けたところを、他の見張りに見られてしまう。
「ちょっと! なんで奴隷を外に出そうとしてるの!」
「まずい! カゲツムギ!」
 九重の声に応じた呪具が、見張りの首を勢い良く刎ねた。
 その一部始終を見ていた奴隷達が呆然と九重の顔を眺めていた。
「な? オレはアンタ達を助けに来たんだって」
 彼女の笑顔を見て、奴隷達はようやく状況を理解し、喜びでむせび泣くのだった。
「九重さん、脱出しましょう! 増援が来てます……!」
 蒼は砲撃を交えながらジリジリと九重のもとまで戻ってきた。
「奴隷の皆さん、この彩虹の背中に乗ってください。さあ、早く!」
 蒼は奴隷を3人、自分の戦車に乗せた後、幸運の運気を圧縮し可視可能なレベルになった虹色のクローバー型魔法弾幕である虹三葉『レインボークローバー』で彼らを包み込む。
「蒼、ビルの壁を撃ち抜け!」
「え? わ、解りました!」
 言われるがまま、蒼は主砲で壁を撃ち抜き破壊した。外はすっかり暗くなっており、街の明かりが気色悪いほどにギラついていた。
「飛び降りるぞ! 付いてこい!」
「え、えええ?」
 九重は奴隷達を念動力で浮かせながら、壁の穴から外へ飛び出た。
 蒼は迫りくる見張りから奴隷達を守るべく、意を決して戦車ごとビルの外へ飛び降りた。
「ひゃあぁぁっ!?」
 咄嗟に、僅かに発現した自身の念動力で蒼の身体を支えようと試みる。
「蒼!?」
 九重は許容範囲を超えた念動力を発揮し、なんとか全員を無事に地表へ軟着陸させる事に成功した。
 周りを眺めると、ほぼ同時に他の猟兵も車輌を発進させている。
 見張り達も、蒼と九重の大暴れで流石に勘付いたようだ。
「早く乗れ! 死にたくないならな!」
 九重は放置されていた軍用ジープに奴隷6名を詰め込むと、自ら運転してビルから離脱を開始。
 蒼も追ってくる見張り達へ砲撃をしながら、九重の後ろを追走してゆくのだった。

【奴隷6人をビルから救出!】
【見張りが猟兵の存在に気付き、追走を開始……!】

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『破邪顕正宗の信者』

POW   :    世の平穏のために
自身の【配下の命】を代償に、【召喚した鬼の亡霊】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【物理攻撃無効の炎の肉体】で戦う。
SPD   :    破邪顕正のために!
【命を賭して戦え】という願いを【自身の配下】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。
WIZ   :    死にたくない!
【命を賭して私を助けろ】という願いを【自身の配下たち】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 巨大なヴォーテックス・シティは、無秩序に建物が乱立しているためか、非常に道が入り組んでいる。追ってくる見張り達――破邪顕正宗の信者の少女達は、それをよく理解しているのか、地の利を活かして猟兵へ先回りをしてくる。
「逃さないわ! その奴隷達を返しなさい!」
「まだ“尋問”が終わってない奴隷もいるのよ!」
「フブキ様の耳に入る前に、奴隷達を回収しなきゃ、私達……!」
 ジープ、ワンボックス、トラックなど、様々な車両で猟兵達を追い詰める彼女達。
 元々は、世界の安寧を願う宗教団体の信者だったはずが、オブリビオンストームの影響で弱者から資源を奪うことで争う気力さえも失わせるという非道なオブリビオンに成り果てた彼女達。
 だから、フブキと呼ぶ依頼主の事も、最初は世界の安寧の一環だと思って手を貸していた。
 ……しかし、フブキは暴君だった。
 その理不尽かつ狂気に満ちた言動は、信者達を辟易させていた。
 かといって、依頼を放棄すれば、あっという間に自分達は全滅してしまうだろう。

「猟兵! 悪いことは言わないわ! フブキ様がここへ駆け付ける前に、その奴隷達を置いてゆけば危害は加えないと約束する!」
「私達も好きでこんなことをやってるわけじゃない! でも私達だって死にたくない! 世の平穏のために、破邪顕正のために! その奴隷達には犠牲になってもらわないといけないのよ!」

 信者達の言葉からは恐怖の感情が感じられる。
 それほどまでに、フブキと呼ばれるレイダー・キングは残虐なのだろう。
 だが、彼女達の保身など、猟兵達には全く関係のないことだ。
 故に、猟兵達のなすべきことは唯一。
 入り組んだこの市街地をカーチェイスで乗り切り、障害物を破壊して強行突破してでも、奴隷達を街の外へ脱出させなくては……!
十字路・冬月(サポート)
 「どんなダンスが好き?あたしは何でもどんとこいさ!」
 隙あらば踊ろうとします。一人でも勝手に踊っていますが、できれば他の人とも踊りたい。

 心の声は保護者的存在(多分男性)の、いわゆるイマジナリーフレンドです。
 難しいことを考えることは苦手ですが、心の中で会話することで解決策を見出すことがあります。

 物欲はありませんが食欲はあります。料理はできません。
 子供も大好き。

 でも戦闘は苦手。負傷者の救出とか、皆との連絡役とかやりたい。
 それでも心のオカンに励まされつつ、誰かを守るために逃げはしません。
 
 他はお任せします。アドリブ歓迎!


大豪傑・麗刃(サポート)
基本右手サムライブレイド(固定)、左手フライングシャドウか脇差(にしては大きすぎるバスタードソード)の二刀流。スーパー変態人時は右サムライブレイド+フライングシャドウ、左バスタード+ヒーローソードの四刀流。なんらかの原因でそれらを持っていなければ適当に。
大軍を前にいろいろ考えるが結論は「全員やっつければ(斬れば)いいのだ!」

ユーベルコードは基本MS様にお任せしたいが、決まらなければ下記参照

ネタ可なら
最優先はネタキャラとしての矜持
精神攻撃より直接ダメージが望ましければ鬼殺しか変態的衝動
変化球ならギャグ世界の住人か自爆スイッチ

ネタ不可なら剣刃一閃
それが集団戦に適さないと判断ならスーパー変態人


音駆螺・鬱詐偽(サポート)
世界に蔓延る悪を懲らしめるネガティブアイドル鬱詐偽さん
ただいま参上。
・・・って、どうしてこんな恥ずかしいセリフを言わないといけないのよ。
うう、これも番組の為なのね。



自身の命綱である番組の為、多少の苦難や困難は仕方なく行います。
むしろ持ち前の不運によりおいしい場面を呼び込んでくれるかと思います。
ただし、ネガティブとはいえアイドルですのでマイナスイメージとなる仕事はすべて却下でお願いします。
ユーベルコードや技能はご自由に使わせてください。
どうぞ、当番組のネガティブアイドルをお役立てください。
                      プロデューサーより



 猟兵達は人質を各々の車輌や召喚獣に乗せ、ヴォーテックス・シティからの脱出を図る。
 それを阻止するべく、違法改造車で追い掛けてくるオブリビオン集団――破邪顕正宗の信者達が、地の利を活かして迫ってくる。
「止まりなさいよ! お互い、命は大事にするべきよ!」
「こっちだって仕方なく……事情があるの!」
「人質の少ない命で、多くの私達とあなた達が生還できるの!」
 破邪顕正宗の信者達は、保身の言葉を猟兵達に投げかけるが、猟兵達はオブリビオンの言葉に耳を貸すことなんてありえない。
 故に、猟兵達は援軍に駆け付けたサポーターに殿を任せ、先を急ぐことにした。
「運転手! そのまま全速力のまま突っ走るのだ!」
 右手にサムライブレイド、左手にフライングシャドウという銘の刀を握り、軍用ジープの荷台で仁王立ちする男こと大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)が叫ぶ。
 軍用ジープを運転するのは、十字路・冬月(人間のスカイダンサー・f24135)だ。
 彼女は戦闘が苦手だというので、サポーターの乗る車の運転に専念している。
「あーもー! こんな運転なんかよりも踊りたい!」
 踊ることが大好きな十字路であるが、車で後方からの銃撃の回避(バレッド・ダンス)はお気に召さないようだ。
 銃弾を避けるために左右へ蛇行し続ける車輌にしがみつく兎耳バーチャルキャラクターの音駆螺・鬱詐偽(帰ってきたネガティブアイドル・f25431)が、奥歯をガタガタ震わせながら、撮影用ドローンへ向けて言葉を発した。
「は、はじまりました……うぅ、『鬱るな!鬱詐偽さん』を御覧の皆さん……ごきげんよ、きゃあぁっ!」
 アスファルトがタイヤを切りつけながら、悪の巨都のネオン街を走り抜けてゆく。
 鬱詐偽は自身の看板番組の収録の為、なんとか前口上だけは必死にこなそうと口を動かす。
「え、ええっと、世界に蔓延る悪を懲らしめるネガティブアイドル鬱詐偽さん、ただいま参上……って、もっと安全運転!」
「只今善処中!」
 十字路の言葉に、鬱詐偽は眉尻を下げながら、再びカメラと向き合った。
「ええと、今、オブリビオンの拠点に捕まった奴隷達を、他の猟兵が町の外へ逃している最中で……いやぁ! 今、銃弾が目の前を横切ったわ! やっぱり怖いわ! 無理よ無理無理!」
「何が無理なのだ? あ、コレ、カメラなのか? いぇーい! 麗ちゃん、テレビ出演だじょー!!!」
 大豪傑は撮影用ドローンに無断で入り込んで、必死に持ち前のギャグを連発する。
「おならプウ! おならプウ! そして酢昆布のモノマネ! ワカメ(鳴き声)!」
 彼は信者達が発砲した銃弾をギャグで交わしてゆき、鬱詐偽はジープの荷台で身を屈めてガタガタ震えていた。
「ああ、もう番組がメチャクチャだわ……! お蔵入り確実よ……!」
 番組を乗っ取られた嘆く鬱詐偽に、大豪傑の耳がピクリと反応した。
「ナヌ! わたしの超絶面白ギャグが放映されないなんて、そんな事……あってはいけないのだ!」
 大豪傑は自分のギャグが世に広まる機会を潰すわけにはいかないと憤った。
 冷静に考えれば彼のマッチポンプなのだが、それでもそれを理不尽だと怒ることで、大豪傑は一世一代の持ちネタをオブリビオンへ披露する決意を固めた。
「運転手! 少し時間を稼ぐのだ! 要は援護射撃するのだ!」
 ダンッと荷台から飛び降り、まっすぐ信者達が乗るジープの前にダッシュしてゆく大豪傑。
 事後を託された十字路は、車窓から顔を出して振り返る。
「うそ! そんな無茶だよ! もう仕方ないなぁ!」
 戦闘は苦手とはいえ、仲間の窮地に何もしないわけにはいかない。
 十字路は指先を信者達に向けると、天から降り注ぐ光で攻撃を開始した。
 空から光が降り注ぐたびに信者達が地面に投げ出され、ジープが建物の壁に突っ込んで爆発炎上してゆく。
 そんな中、大豪傑は車輌の群れに自ら突っ込んゆき、大声で叫んだ。
「これが麗ちゃんの爆笑ギャグのひとつだじょ! それ、ポチッとな――」
 次の瞬間、大豪傑が紅蓮の炎と共に自爆したではないか!
 十字路の運転する軍用ジープが爆風でふっとばされてゆく!
「わー! 空! 空飛んでる! って、違う! あたしとジープが飛んでる!」
「こ、これ、どういう原理なの……? 今の爆発……ユーベルコードなの?」
 鬱詐偽の推測通り、大豪傑の自爆はユーベルコード『自爆スイッチ(オヤクソク)』という、ネタキャラの必修単位というべき必殺技である。
 このユーベルコードの特徴は、大豪傑が自爆して喰らったダメージに比例して、仲間の戦闘力が鬼神の如く強化され、同時にマッハを超える飛行能力を付与できるのだ!
「そんな……! 言動はふざけていたけど、仲間のために体を張ったあなたに、私は敬意を表するわ!」
 鬱詐偽は散っていった仲間のため、勇気を振り絞って荷台の上に立った。
 そして、その震える声をユーベルコードに変え、高らかと歌い上げ始めた。
「Ah~♪」
 それを聞いた十字路は、ジープの運転席から飛び出して空中でダンスを開始!
「わーい! 踊ろ踊ろ! 踊りながら、どんどんジャッジメント・クルセイドで撃ち抜いちゃうよ!」
 心の中で『その調子! やれば出来る!』と何者かに励まされながら、上空から十字路は攻撃を仕掛けてゆく。
「ねえ! あれ、もしかして、さっきの変な人じゃない?」
 十字路が眼下を指で指し示した先には、何故か生きてる大豪傑が、信者達の命と引換えに召喚された鬼の亡霊と一騎討ちをしている光景があった。
「なんで自爆したのに生きてるの……?」
 鬱詐偽が思わず苦笑い。
「ネタキャラは蘇るさ! 何度でも!」
 大豪傑の声が何故か鬱詐偽の耳元で聞こえた。もはやネタキャラに物理法則は通用しないのだろう。
「自爆に巻き込まれた際に、自分たちの命で鬼を召喚するとかびっくりだじょ! でも、わたしは……!」
 左右のサムライブレイドを交錯させ、大豪傑は鬼の亡霊に斬りかかる!
「早く! このシリアスな空気を! やめたいッッッ!!!」
 翻る剣閃。そして、その身のこなしはまさに……!
「必殺! アメリカザリガニだじょ!」
「「なんでそこでザリガニ!?」」
 もはやカオスでツッコミが追い付かない。
 しかもキッチリと鬼の亡霊は小間切れになって斃れてしまった。
 と、ここで鬱詐偽があることに気が付く。
「ねえ……そこに浮かんでたジープはどうしたの?」
「あれ? って、あー! あの人の真下に落ちてる!」
 運転席から十字路が離れた途端、ユーベルコードの効力の対象外となったジープ車輌が、信者と大豪傑の真上から高速で落下!
「もしかして、私の不運のせいなの……?」
 そう呟く鬱詐偽は、夜空に向けて敬礼してみた。
 十字路もそれに習って敬礼してみる。
 一方、ジープの落下に気が付いた大豪傑は、いい笑顔でサムズアップ。
「あ、だめだこりゃ」
「「ぎゃあああああーっ!?」」
 逃げ惑う信者達。
 だが、フロント部分から墜落したジープは、大轟音と火柱を天高く上げて爆発!
 こうして、大豪傑と信者達はふっとばされ、両者とも悪徳の巨都の夜空の星々となったとさ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

蒼・霓虹
その犠牲が、世の平穏に繋がるとは到底思えませんが。

『蒼さん、僕達は殿として食い止めますか?』

ええ彩虹さん、わたし達の矜持に掛けて

〔POW〕
【早業】でUC発動し創造した装甲をわたしと〈彩虹〉に装着

【激痛耐性】で備え【オーラ防御】と【結界術】で護り固め

【操縦】しながら【悪路走法】と【推力移動】で駆けつつ

殿として踏ん張り妨害も

【高速詠唱】で〈茶柱「ハッピーティートラップ」〉を【属性攻撃(潜水)】で
【範囲攻撃】の【弾幕】で撃ち

敵のタイヤのパンク狙い

【高速詠唱】で〈虹水宝玉「ネオンアクアストライク」〉の【砲撃】を【範囲攻撃】の【弾幕】で敵に

〔アドリブ絡み掛け合い大歓迎〕
〔※『』は彩虹の台詞(彩虹の魂)〕


九重・灯
引き続き「オレ」の出番だ。
(一章の最後から)軍用ジープを運転しるところだな。
免許なんて持ってないが、運転の練習はしてきたから大丈夫だろ。
(「もうアクセルとブレーキを間違えないでくださいよ……?」)
もう一人の自分の声が頭の中に響く。
当たり前だ。人乗っけてるから安全第一に、全力でブッ飛ばせばいいんだろ!

UC【偽神符・天狗】。放った呪符が、槍や弓で武装した有翼の魔人の姿に変わる。
数字16程度で5体召喚。信者や障害物の排除をさせる。

天狗を敵の車両に取り付かせて、運転席のヤツをフロントガラスごと槍で突いて倒したり、タイヤを潰して時間を稼ぐ。

律儀に相手する必要はねえよ。適当にあしらって、さっさと逃げるぞ。



 ヴォーテックス・シティの出口を目指す猟兵達。
 そこへ追い縋ってくる破邪顕正宗の信者達は、軍用ジープに乗り込んで迫ってきていた。
 蒼・霓虹(彩虹駆る日陰者の虹龍・f29441)は、相棒であり半身というべき戦車龍『猟機人・彩虹』に跨り、信者達のジープに接近してゆく。
 そのまま、信者達へ言葉を投げかけた。
「あなた達の言うその犠牲が、世の平穏に繋がるとは到底思えませんが?」
「猟兵はフブキ様の恐ろしさを知らないから、そんな事が言えるんだ……!」
 この会話に九重・灯(多重人格者の探索者・f17073)が加わる。
 九重は唐突に軍用ジープのブレーキを踏み込み、後続の信者達のジープの行く手を阻んだ。
 それを回避しようとハンドルを切った信者達のジープが、曲がりきれずに横転!
「オブリビオンが我が身可愛さに他者を食い物にするなんざ、典型的すぎて笑えるな。いいか、そんなクソみてぇな企みを邪魔するのがオレ達……猟兵の仕事だ!」
 九重はアクセルをベタ踏みして車輌を急発進!
「奴隷共! しっかり掴まって口閉じてろ! 衝撃で舌噛むぞ!」
 お世辞にも丁寧とは言えない運転で、瓦礫だろうが急カーブだろうがお構いなしに都市部を突っ切ってゆく。
(もう! 安全運転を心掛けて下さい! それに、アクセルとブレーキを間違えないでくださいよ……?)
 内なる本来の人格が、九重の頭の中に響く。
 今の九重は、荒事専門の攻撃的な人格が表に出ているのだ。
「当たり前だ。人乗っけてるから安全第一に、全力でブッ飛ばせばいいんだろ!」
(そういうことじゃなくて! というか、わたし達って運転免許を持ってないですけど!?)
 内なるもうひとりの自分の叱責を、九重は笑い飛ばす。
「ハンッ! ここに来るまでに運転の練習はしてきたから大丈夫だろ。つか、この無法の世界で免許とか、眠たいこと言うなよ」
(ああ……これじゃあわたし、不良じゃないですか……!)
「お説教ならいくらでも後で聞いてやる! でも今は、荷台の上の“お客様”が最優先だ!」
 無免許とは思えないハンドルさばきで、入り組んだ巨大都市の路地を縫うように走破する九重。
 これに蒼も負けじと奴隷達を守ろうと動き出す。
「彩虹さん、やりましょう」
『蒼さん、僕達は殿(しんがり)として食い止めますか?』
 彩虹が蒼に語り掛けてくる。
 蒼はこれに力強く頷いた。
「ええ彩虹さん、わたし達の矜持に掛けて」
 蒼は迫りくる軍用ジープ集団を抑え込むべく、すかさずユーベルコードを発動させた。
「今のわたしが使いきれる力と運気は、コレだけだけれども……わたしの幸運を貫らぬけるモノならっ! 『フォーチュン・スケイル』っ!」
 無敵の幸運に護られた虹龍の鱗装甲を想像から創造し、自身と彩虹に纏わせて防御を高める。
 ついでに軍用ジープの荷台にいる奴隷達の周囲に覆い被せて彼らを守る。
「わたしが盾になります!」
「頼んだ、蒼!」
 寄生型の呪具『カゲツムギ』を操り、信者達の車輌のタイヤをパンクさせてゆく九重は、同時に車窓から81の呪符を外へ放り投げた。
 すると、呪符は槍や弓で武装した有翼の魔人の姿に変わり、次第に融合してゆく。
「呪符の数字は16が4体、17が1体だ。計5体の有翼の魔人がアンタ達を相手する。楽しんでくれ」
 ユーベルコード『偽神符・天狗』によって出現した魔神が信者達のジープに取り付き、車上で大暴れし始める。
 だが信者達も無抵抗というわけではない。
「破邪顕正のために! 命を賭して戦え!」
「世の平穏のために! その命を投げ売って鬼を呼べ!」
 その呼びかけに応えるように、同乗する信者の配下が自刃すると、その霊魂がひとつに融合し、鬼の亡霊となって召喚されたではないか。
 他の信者達も、自分たちの信念のために命がけで戦うと誓ったことで火事場の馬鹿力を発揮させたようだ。
 ジープからの機関銃の乱射と、鬼の亡霊の拳が猟兵を襲う!
「させません!」
 銃弾と鬼の亡霊の拳を蒼と彩虹が展開する虹龍の鱗装甲で受け止めると、カウンター気味に液状球体型弾幕を周囲に展開する。
「貫きます! 茶柱『ハッピーティートラップ』ッ!」
 鬼に反応した液状球体が突如、イガグリのようなトゲトゲの形状に早変わり!
 蒼は鬼の胴体を串刺しにし、その足元とアスファルトに縫い付けた。
 鬼は抜けない足の棘に苛立ち、周囲を見境なく殴りだす。
 陥没した道路を上手く乗り越え、蒼と彩虹はその場から離脱してゆく。
「律儀に相手する必要はねえよ。適当にあしらって、さっさと逃げるぞ」
 九重は蒼に忠告すると、魔神らへ合図を送った。
 魔神たちは銃撃を回避しながら、ジープを運転する信者をフロントガラス越しに槍で一突き!
 運転手を失ったジープ同士が激突し、弾かれてビルの一階の柱へ突っ込んでいった。
「今だ、蒼! ずらかるぞ!」
「待って下さい! ダメ押しの一発を放ちます!」
 蒼は彩虹にマジックカードをかざす。
 すると、カードに対応した魔法が、彩虹の口の中の砲口から発射された。
「いきます! 虹水宝玉『ネオンアクアストライク』っ!」
 発射されたのは虹色の絶対零度の氷水流が圧縮されて宝玉のように凝固した魔法弾だ。
 ネオン煌めく巨都を虹色の魔法弾が高速で駆け抜けてゆくと、その奇跡が一瞬で白く凍り付き、着弾点は一瞬で七色の氷壁が出現した。
「これで時間が稼げるはずです、九重さん」
「なんかエゲつねぇもん持ってるなオイ?」
 苦笑いを浮かべながらも、人質を乗せた軍用ジープと虹龍に跨る竜神少女が夜の帳が落ちた悪の都を疾走していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アビー・ホワイトウッド
アドリブ及び連携歓迎

彼女らが追ってきても構わずトレーラーを走らせる。進路を塞いだりしてくるならトラックの重量とパワーに任せて突破しよう。
しかし入り組んだ街の中、トレーラーだと限界がある。建物にぶつかるなりで走行不能になってしまったなら奴隷共々荷台の歩行戦車に乗り込んで起動。ここからはこのラングレーでいく。

私の相棒のパワーを見せる。死にたくなければどいて。

UCを発動したら歩行モードで全速で駆けさせ、追手が阻むなら構わず蹴飛ばし踏み潰して前進。
障害物や反対側に抜けられそうな建物はそのまま突き崩してショートカットしながら他の猟兵を追撃する奴は積極的に破壊、援護しよう。
Power is justice


アハト・アリスズナンバー
……交渉ってどうやって成立するか知ってます?
あくまで仕掛ける側の力が大きくないと、価値が見いだされないんですよ。
つまり、今のあなた達の言葉は意味がない。
ただの命乞いでしかない。そして私はそれを受ける気はない。

とりあえず、UCを発動。
数体に車両の操縦を任せて、私は【足場習熟】を利用して敵の車両に飛び移り【騎乗】します。
残りのナンバー達も同じく飛び移らせて接近戦を仕掛けましょう。
配下が守りに入る前に【マヒ攻撃】銃弾で動きを止めます。
【零距離射撃】で【体勢を崩す】ことで、相手を車両から落とし、車両を頂くとしましょう。

アドリブ・絡み歓迎



 アビー・ホワイトウッド(奪還屋・f24498)は赤信号を無視したまま、ハンドルを全開で左に切った。
「頼む、曲がり切ってくれ……!」
 タイヤとアスファルトの接地面から火花が散る。
 トレーラーの荷台が遠心力で大きく振れることで、ハンドルが持ってかれて横転しそうになる。
 それをアビーは逆方向へ素早くハンドルを切り返すことで車体の角度を持ちこたえ、見事に左へ曲がり切ってみせた
「これ、映画か何かじゃないんですよね……」
 軽トラを運転しているアハト・アリスズナンバー(8番目のアリス・f28285)は、アビーのトレーラーが左折する際に巻き込まれた車輌の山を脇に眺めながら突き進んでゆく。
 依然として、後方から信者達が軍用ジープを違法改造した車輌で追跡している。
 奴隷達を乗せたアビーのトレーラーとアハトの軽トラは、バリバリと音を立てて発砲される軽機関銃の弾幕を避けながらの逃走を繰り返していた。
 そんな2人の前に、先回りした信者達の車輌が道を塞ぐ。
「止まりなさい! フブキ様がこのことを知ったら、ここにいる全員が死ぬわよ!」
「奴隷を手放せば、見逃すって言ってるでしょうが!」
 口々に信者達は保身のための発言を繰り返す。
 そんなオブリビオン達に、アビーのトレーラーは更にアクセルを踏み込んで加速を開始。
「あなた達、振り落とされないようにしっかり掴まって……!」
 荷台に乗り込んでいる奴隷達へ注意を促したアビーは、そのまま前方の信者の車輌へ向ってトレーラーを突っ込ませた!
 響き渡る激突音。
 逃げ遅れた信者達を轢殺し、大破した軍用ジープを弾き飛ばしてなおもトレーラーが爆走する。
 ……かとおもいきや。
「しまった、この先は行き止まりか」
 廃車が山積みになって、バリケードが出来ているのだ。
 おそらく、信者達が事前に工作したのだろう。
 それでもなお、アビーはトレーラーの馬力を信じてフルスロットルで突撃!
 次の瞬間、金属同士が衝突するけたたましい轟音が、夜の悪の都に響き渡った。
 トレーラーは、フロントガラスが大破し、廃車の山を突き破って身動きが取れなくなっていた。
「くっ……車輌同士がハマって動けないか」
「大丈夫ですか? 私の軽トラくらいなら通り抜けられそうな隙間は空いてますが、乗り換えますか?」
 アビーの運転席に横付けするアハト。
 そんなアハトに、アビーは運転席から飛び降り、荷台へ駆け上がってゆく。
「気遣いは無用。入り組んだ街の中、トレーラーだと限界があるのは薄々分かっていたわ。だからここからは、私の相棒の二足歩行戦車に乗り換える」
 トレーラーの荷台に掛かった迷彩シートを剥ぎ取ると、そこには横たわった相棒こと戦術二足歩行戦車 M102『ラングレー』があった。
「さあ、あなた達。早く乗って。メインシステムを起動させる」
 奴隷達を戦車内に乗り移らせると、アビーは操縦席に乗り込み、ラングレーを起動させた。
 起き上がったラングレーはトレーラーの荷台から飛び降りると、悪路も気にせず軽快に廃車の山を乗り越えていった。
「いい音。調子が良いみたい」
 ユーベルコード『整備万全・全力発揮』……アビーの日頃の手入れの行き届き具合がユーベルコードの域まで達したことによって、ラングレーの移動速度と武装の破壊力、命中精度が増強された。
「トレーラーをここに放置するのは痛手だが、任務遂行のためにはやむを得ない。そういえば猟兵は言い値で報酬がもらえるのよね? なら、この分の補填はしっかりいただくわ」
「それが懸命です。って、敵さん達もしつこいですね」
 アハトが後ろから迫る信者達に振り返り、レーザーライフル・アハトカスタムを一発撃ち込んだ。
 携行型の荷電粒子砲から放たれたプラズマ光線がアスファルトを熱してドロドロに溶かし、数台のジープのタイヤを熱で破損させて走行不能にしてみせた。
 しかし、今度は再び前方の待ち伏せが!
 前門の狼、後門の虎。
 待ち伏せする信者達に加え、プラズマ光線が当たっていない道路を選んで追い縋る信者達により、猟兵達は挟撃されてしまった。
 だが、アビーとアハトは慌てずに対処を始める。
「私の相棒のパワーを見せる。死にたくなければどいて」
 唸りを上げる戦車のモーター駆動音。
 操縦席から照準をあわせると、信者達へ向けて戦車榴弾を主砲『ミネルヴァ 135mm滑腔砲』から発射させた!
 主砲は白煙と轟音を撒き散らしながら、前方の封鎖を強引に吹っ飛ばす!
 だが、信者達数名は瀕死の状態から自らの命を捧げることで、鬼の亡霊の召喚に成功させた。
『ぐるるぉぉぉぉ……っ!』
 雄叫びを上げる鬼の亡霊が、アビーの操縦する二足歩行戦車へ突っ込んできた。
「あんなの、真面目に相手するのは馬鹿馬鹿しいわ」
 アビーは焼夷弾を鬼の亡霊へ一発撃ち込んで怯ませた後、素早く次弾装填を済ませ、照準を鬼の亡霊後ろのビルの中腹へ定めた。
「とっておきの徹甲弾よ。威力は見てのお楽しみってことで」
 勢いよく放たれた徹甲弾は、ビルの中腹に見事命中。
 支柱が破壊されたビルは、アビーの思ったとおりにこちらへ折れ曲がって倒壊。そのまま鬼の亡霊を下敷きにしてみせた。
「Power is justice……」
 満足気にアビーが独りごちる。
 亡霊でも物理攻撃が有効だったようだ。
 このアビーの機転により、信者と亡霊をまとめて排除することが出来た。
「この上を通ってゆけばショートカットになる。付いてきて」
「やることが破天荒すぎやしませんか? まあ、嫌いじゃないですけどね」
 アビーとアハトは、倒壊したビルを道にして、街中を突っ切ってゆく。
 だが、なおもその後ろを執拗に追いかけてくる信者達。
「フブキ様は怖いのよ! あなた達も、私達も死にたくないでしょ!?」
 信者の悲鳴のような嘆願に、アハトは車窓から顔を出して振り返ると、忌々しそうに舌打ちをした。
「……交渉ってどうやって成立するか知ってます? あくまで仕掛ける側の力が大きくないと、価値が見いだされないんですよ」
 アハトはすかさずユーベルコード『リアライズ・アリスズナンバー』の使用許諾をアリスズナンバーネットワークに乞う。
「グリムコード送信。ユーベルコード使用許可を確認。90体の同型個体を召喚、完了。速やかに突撃体制に移行し、蹂躙を開始せよ」
 軽トラの荷台に次から次へと転送されてくるアハトと同じ姿の量産型フラスコチャイルドが、追ってくる信者達の軍用ジープの目の前に立ち塞がる。
「ああ、運転、任せましたよ。私はあの車を黙らせに行きますので」
 レーザーライフルを担いだアハト本人が、運転席から飛び出して敵のジープへ銃撃を開始。
 その時、アビーが戦車の操縦室から顔を出すと、アハトへ向けて何かを幾つか投げ付けた。
「使って。後でちゃんと返してくれればいいから」
 それは105mm携行無反動砲やバレット対物狙撃銃、はたまたM500ショットガンなどの、アビーが携行しているが使用していない武装の数々だった。
「助かります。使用した弾の補填も、あとで言い値で請求しましょう」
 アハトは90人の複製体の一部に借り受けた武装をもたせ、他の個体にはアリスズナンバーランスで迎撃を開始。
「今のあなた達の言葉は意味がない。その言葉はただの命乞いでしかない。そして、私はそれを受ける気はない」
 弾幕を展開し、ジープのタイヤを狙ってゆくアハト。
 その口元には、いつの間にか火の付いた煙草が咥えられていた。
 敵の車輌のスピードが緩んだ隙に、アハト達は一斉にジープに飛びかかり、タイヤを槍の穂先で突き刺してパンクさせてゆく。更に、近接戦に持ち込むことで、運転手を殺害して車を完全に停止させようという狙いだ。
 その容赦ない猛烈な攻撃は、腰の抜けた信者達をあっという間に蹂躙してゆく。
「おっと、運転手を庇おうとしても無駄ですよ」
 至近距離からレーザーライフルを乱射し、信者の部下を射殺した後、複製体の槍で運転手を刺殺してゆく。
 それでも抜けてゆく車輌に対しては、複製体達が借り受けた銃火器で迎撃して食い止めていった。
 更に、本人を回収しに来た軽トラにアハト自身が乗り込むと、複製体の槍を敵のジープの給油口へ狙って投げ付けた。槍の穂先が給油口に突き刺さり、そこからダラダラとガソリンが漏れ出す。
「死にたくないって御託を並べる前に、命の尊さを改めて勉強し直して下さいね」
 咥えていた煙草を、敵のジープへ放り投げるアハト。
「……加速して」
 複製体の運転手にそう告げたアハト。
 その直後、真後ろで紅蓮の炎と共に凄まじい爆発音が轟いた。
 ジープから漏れたガソリンに、タバコの火が引火したのだ。
「他の複製体も、無事に敵から車輌をくすねたようですね。カムフラージュには最適です。このまま一気に街の外まで行きましょうか」
 倒壊したビルを渡り終えたアビーとアハトは、そのまま他の猟兵がいると思しき大通りを目指すのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
都月さん(f21384)と

救い出した人々を護りたいという願いの元、UC:神性解放発動。
人々が無事脱出できるよう、詩乃が追撃してくる相手を撃退します!

相手は鬼の亡霊と信者達。
なので煌月に多重詠唱による水と雷の属性攻撃・神罰・破魔・浄化・除霊の力を宿し、UCの高速飛行能力と空中戦能力による自在な動きで軽やかに宙を舞い、煌月をなぎ払って、亡霊と信者を纏めて攻撃します!

距離を置く相手には多重詠唱による氷と風の属性攻撃・全力魔法・衝撃波・貫通攻撃・高速詠唱・範囲攻撃で、纏めて凍らせつつ斬ります!

相手の攻撃は第六感と見切りで読んで躱すか、オーラ防御を纏う天耀鏡の盾受けで対応。

人々には指一本触れさせません!


木常野・都月
詩乃さん(f17458)と

助けてあげられるなら助けたい。
でも追って来ている人達は、既にオブリビオンになってしまっているんだよな?
それは……助けてあげられない。
ごめんなさい。

俺はUC【精霊騎乗】で引き続き奴隷の人達を運びたい。

空を逃げてるから、そんなに困った事態にはならないと思うけれど。

敵の攻撃が来たら[高速影響、属性攻撃、カウンター]や、[オーラ防御]で対処したい。

俺はチィと奴隷の人達の保護を優先に動きたい。

迎撃は、詩乃さんにお任せしたい。
詩乃さん、すみません、お願いします!

風の精霊様にお願いして、空気抵抗を減らしたい。

チィ、攻撃は詩乃さんと俺で防ぐから、乗せてる人達を運ぶ事だけ考えるんだ。



 ギラギラと醜くネオンがあちらこちらで輝く悪の巨都『ヴォーテックス・シティ』の夜空を、巫女姿の神が突き抜けてゆく。
 大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)は救い出した人々を護りたいという願いの元、ユーベルコードで神性解放することで、全身を“危害ある全てを浄化消滅する若草色のオーラ”で覆い、最大マッハ8での及ぶ速度での飛行を実現させていた。
「都月さん、信者達が追い掛けてきてます! 決断を!」
 大町は木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)へ決断を迫まっていた。
 木常野は今、白い狐っぽい月の精霊ティを巨大化させて騎乗している。チィの背中には、助けた奴隷4人も同乗しているため、木常野が掴まったらアウトなのだ。
 だからこそ、木常野は悩む。
「入り組んだ都市の繋ぎ目を伝っていけば捕まることはないと思ってたけど……どうしよう?」
 今、木常野の目の間には道がない。高層ビルの中腹から飛び出した鉄骨の上で立ち往生中の木常野は、これ以上進むならば地上の道路に降り立つほかない。
 これまで彼は、巨都の建物同士の間に張り巡らされた巨大生物の骨や電気ケーブルやガスパイプの上を綱渡りのように進むことで、信者達の追手を上手くかわしていた。
 しかし、それは巨都の中をぐるぐる逃げ回る事を意味し、猟兵達の目指す『脱出』を達成するためには、どうしても地表へ降り立ったねばならなかった。
「都月さん……! 早く、脱出を! 私が時間を稼ぎますから!」
 大町がオリハルコンの刃を嵌めた薙刀『煌月』の切っ先を、向ってくる信者達へ向けながら木常野へ告げた。
 木常野は悩みに悩んだ末に、アスファルト舗装された道路へ降り立つ事にした。
「わかった。詩乃さん、すみません、お願いします!」
 木常野はチィの頭頂部を撫でて先へ向かうように乞う。
 すると、促されたチィは建物の柱を三角跳びの要領で駆け下りて、その大きくなった肉球で無事に地表へ着地してみせた。
「チィ、攻撃は詩乃さんと俺で防ぐから、乗せてる人達を運ぶ事だけ考えるんだ」
 きゅーぅん、とひと鳴きするチィ。
 そのまま、アスファルトの道路に爪を立てて一気に前へ加速し始めた。
「奴隷のみんな、しっかり掴まっててくれ。チィはまだまだ加速できるから、振り落とされないようにしてほしい」
 そう木常野が言った途端、廃車の山を大ジャンプで飛び越えるチィ。
 響く奴隷達の悲鳴。
 悪路かつ迷路のように道が入り組んでいるが、野生の勘だろうか、チィは自然と一定の方向を目指して爆走を続けてゆく。その足取りは確信的で力強い。
「風の精霊様、どうか俺達の空気抵抗を減らして下さい」
 木常野が精霊力を行使すると、彼の前の間から吹き付ける風が途端に弱まっていった。まるで見えない風除けが出現したかのように、移動中の風圧が抑えられたのだ。
 これで逃走がぐんと捗るだろう。
 更に木常野は、自身の手首にはめた腕輪『Scutum animi』に自身の精霊力を通わすと、周囲へ目に見えないシールドを発生させた。
 後方から飛来する銃弾はこのシールドに阻まれ、赤い火花を散らして弾かれていく。
「これで敵の攻撃が来ても凌げるぞ。……詩乃さん、もう少し頑張って下さい!」
 奴隷達の命を預かる木常野は、逃げの一手に徹する。
 その頭上で、大町は神力を最大出力で放出しながら信者達と大立ち回りを披露していた。
「此処から先は、私が通しません!」
 大町の薙刀のオリハルコン刃から、電撃と水流が渦巻き始める。多重詠唱による二属性同時付与をやってのけた大町は、突っ込んでくる軍用ジープの迎撃を開始した。
「む、あれは……!」
 この時、大町は信じられない光景を目の当たりにした。
 ジープを運転する信者のひとり……グループの長と思しき人物が、同乗する信者達を容赦なく射殺しているのだ。
「なんて酷いことを! ですが、なるほど……。彼らを生贄にしたというわけですね?」
 神である大町は、信者の行動が何を意味するのかを理解してしまった。
 途端、大町は瞬時に空へ逃げる。
 見下ろすと、先程までいたあたりが一瞬でえぐり取られていた。
「仲間の命を代償に鬼の亡霊を召喚したわけですか。しかも、それなりに数も多いですね……。ですが、相手が悪かったですね!」
 大町は音速を超える飛行速度で鬼の亡霊共へ肉薄すると、まるで流れる水の如く滑らかに刃を振り回す。斬撃の起動は紫電となって描き出され、神性を帯びた水流が魔を祓って、たちまち鬼の亡霊共を消滅させていった。
 ――例えばそれは、水面を羽撃く白鳥の如く、美しくも雄壮な身のこなし。
 遠心力で大きく広がる巫女服の裾が、それをより強く連想させた。
「私は植物を司る神です! 言うなれば、生命を司る女神! 死霊が束になって襲われたところで、私はその全てを浄化・除霊して、雲散霧消してみせましょう!」
 大見得を切った大町は、増殖する鬼の亡霊に怯まず、空中を鋭角的に緩急のきいた立体機動で縦横無尽の働きを見せ付けてゆく。
「はああぁぁーっ!」
 一気呵成にジープの集団に突っ込んでゆけば、通過した軌道上の鬼の亡霊ごと数多のジープが両断されていった。更にそこからクイックUターンからのインメルマンターン、戦闘機めいた三次元機動から薙刀を大きく振り被る。
「人々には指一本触れさせません! 神の怒りを思い知りなさい!」
 煌月のオリハルコン刃に風と氷の神力が満ち溢れる。すると、氷結した穂先が氷で覆われ、刃が長大化!
「……大斬撃っ!」
 上空から氷塊と化した薙刀の穂先を振り下ろすと、風が逆巻いて辺り一面を猛吹雪で包み込んでしまう。
 そして氷塊は砕かれて氷雨となり、信者と鬼の亡霊共の身体を容赦なく斬り付けていった。
 吹雪が晴れると、そこは全てが凍て付いた世界が広がっていた。
 それはまさに神罰と呼ぶべき光景である。
「だいぶ数が減りましたね! 急いで都月さんと合流しましょう!」
 追ってくる信者のジープの数を上空で確認しながら、飛び交う機関銃の弾幕を天耀鏡を盾にして弾き返す大町。もう一度、彼女は煌月の刃をアスファルト道路へ叩き付け、衝撃波で地面を抉ってジープの行く手を妨害すると、その隙に大町は全速力で木常野の元へ、文字通り飛んで戻っていったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『吹雪の王』志乃原・遥』

POW   :    凍りなさい
【冷気と呪詛】を籠めた【ノコギリ】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【内臓、またはそれにあたる部分】のみを攻撃する。
SPD   :    私の心は氷
自身の【大切な心や記憶】を代償に、【氷のマリオネット】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【不可視の糸】で戦う。
WIZ   :    貴方をもう逃がさない
自身からレベルm半径内の無機物を【視界と移動を阻む猛吹雪】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠柊・はとりです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵達が信者達の追跡を振り払っていると、途端に周囲の気温が下がりだす。
 同時に、ジープの上の信者達が青ざめて狼狽しだした。
「フブキ様が来てしまった……!」
「もうおしまいだ!」
 信者達は猟兵達の追跡を諦め、散り散りになって逃げ出してゆく。
 しかし、それは儚くも阻まれてしまった。

 ――街も、車輌も、人も、一瞬で白く白く、凍りついてしまったからだ。

 猟兵の誰かが信者達へ告げていた。

 助けてあげられるなら助けたい。
 でも追って来ている人達は、既にオブリビオンだ。
 氷像になってしまったみんな、助けてあげられなくて、ごめんなさい……。

 そんな彼女達が怯えるほど強大なオブリビオン……レイダー・キング。
 彼女の名は、『吹雪の王』志乃原・遥。
 全身が継ぎ接ぎだらけの女王は、見るからに死を超越した『異物』であることは、猟兵でなくとも一目見れば誰にでも理解できるはずだ。
 つまり、この瞬間凍結能力は志乃原のユーベルコード……!
 路面が凍結したため、猟兵達の逃走は困難になってしまうだろう。

 更に、猟兵達は絶望を目の当たりにした。
 後方で高層ビルが横薙ぎで破壊されたのだ。
 その瓦礫を掻き分けて身を乗り出したのは、巨大な武装を搭載したバケットホイールエクスカベーター……超弩級大型武装改造建設機械だ!
 その長いアームと車体先端に装着された丸鋸で巨都の建物を蹂躙し、一直線に猟兵達を目指して向ってくる! あれを志乃原が操縦しているというのだ!
 狂気の沙汰も、此処までくるといっそ清々しいといえよう。

「その奴隷達に『彼』の居場所を教えてもらわねばならないの。だから返して?」

 振り抜かれたアームがまた一棟の建造物を粉砕し、その瓦礫が猟兵達の行く手を阻む。気を抜けば奴隷達に直撃してしまいそうだ!
 猟兵達は選択を迫られる。
 かの『吹雪の王』を撃破するか?
 それとも、このまま巨都の外まで振り切るか?
 かつてない規模のモンスターマシンを駆る『吹雪の王』に、果たして、猟兵達はどのような判断を下すのだろうか……?
【補足】
 このモンスターマシンは現実世界のバケットホイールエクスカベーターと違い、最高時速100kmで爆走できます。違法改造車なので、自走も可能です。
音駆螺・鬱詐偽
ちょっと、この仕事間違えて引き受けてない?
私にあんなのと戦えって無理な話よ。
あぁ、カメラが全部吹雪に変換されたら放送もできないじゃない。
つまり、ギャラは無しってことなのね。
でも、アイドルが逃げるわけにはいかないわよね。

私にもできることをしましょう。
この猛吹雪で視界と動きが妨げられるのは、あの機械も同じこと。
でもこの吹雪を操作できるのなら、そこに道ができるはず。
その道に入ったら、そこまで抑え込んでいた恐怖心を開放してリアライズ・バロックを発動させるわ。


九重・灯
(「逃げますよ。車を守りながらでは戦えません」)
もう一人の自分の声。決めるのはコイツの役割だ。
と言うワケで、オレ達は撤退する。

「アンタ名前は? よし●●●、代わりに運転ヨロシク」
隣に座ってる奴隷に声かけて、走行中のジープの屋根にひらりと上がる。
慣性やら何やらは適当に『念動力5』で相殺。

UC【彼方なる空中遺跡】。まどろむ仔猫の匣のフタがコトリと開き「にぃ、にぃ」と鳴き声が響く。
「我が内に結ぶ像を現わせ!」

UC製の道を車の進路に敷き、必要なら空中に伸ばして障害物を乗り越えてやる。
敵マシンの真ん前には、巨大な壁を打ち立てて衝突させる。それなりの打撃と時間稼ぎにはなるだろ。
『多重詠唱3、範囲攻撃5』


中小路・楓椛(サポート)
重大な局面であり逃走不可能だと判断した場合には手札を全て切って生存の為に全力を尽くして状況が片付き次第、やらかした事の責任を問われる前に全速力で逃走します。



 全長20m前後の超巨大マシンが高層ビル群をなぎ倒し、無限軌道のキャタピラが瓦礫を踏み潰して無理矢理に突き進む。
 そんな悪夢のような光景が猟兵達に刻一刻と迫る。
 この『怪物』を運転しているレイダー・キングこと『吹雪の王』志乃原・遥は、強迫観念にとらわれたまま猟兵達へ喚き散らす。
「その中に『彼』がいるのね? きっとそうよ、だってそうじゃなかったら猟兵が私のところへ来たりしないもの。そうなのね? その奴隷の中に、私の『彼』がいて、私から引き裂こうっていう魂胆ね!?」
 志乃原がアームを左に振り回すと、ドミノ倒しのように目の前の建造物が音を立てて崩落していった。
 落下してくる瓦礫を必死に回避する猟兵達は、その場から逃げの一手を繰り出すほかならない。
「ちょっと、この仕事間違えて引き受けてない? 私にあんなのと戦えって無理な話よ」
 バーチャルキャラクターの音駆螺・鬱詐偽(帰ってきたネガティブアイドル・f25431)は、自分達を追い掛けてくる超弩級重機を見上げて愕然としてしまう。
 と、その時、鬱詐偽を撮影していたカメラが吹雪へと変換されて消滅してしまった!
「あぁ、カメラが全部吹雪に変換されたら放送もできないじゃない。つまり、ギャラは無しってことなのね。うぅ……」
 悲嘆くれる鬱詐偽に向って、車を運転する九重・灯(多重人格者の探索者・f17073)がおもむろに告げた。
「大丈夫だ! 猟兵の仕事の報酬は言い値でもらえるらしい。それでカメラの損失補填分は取り返せるだろ」
「う、うん……そうよね? そうじゃなかったらプロデューサーさんに申し訳ないもの」
「問題は、あの怪物をどうするかなんだが……」
 九重はここで脳内会議を開始。
 もう一人の自分と作戦会議を行う。
(なあ、倒せると思うか、アレ?)
(無茶ですって。ここは逃げますよ。車を守りながらでは戦えません)
(……わかった。意思決定権はアンタにある。オレはそれに従うまでだ)
 ということで、九重は戦わずに逃げることを選んだ。
 まず、助手席に座る奴隷の男に九重は声をかける。
「アンタ名前は?」
「え? ア、アキラ……」
「よしアキラ、代わりに運転ヨロシク」
「うぇええっ?」
「ホラはやく運転代われって! 死にたくないなら必死に逃げろ!」
 運転席で箱乗りする九重がアキラと名乗った奴隷を一喝。
 アキラはヤケクソ気味に運転席へ移ると、ハンドルを握ってアクセルをベタ踏みにした。
「さってと……よっ!」
 九重はジープの屋根に上ると、ユーベルコード『彼方なる空中遺跡』を発露させた。
「遺物の封印を解放……。それは夢の向こう側に垣間見た幻想。自分の妄想なのか、何者かの記憶、或いは記録なのかもわからないけれど」
 九重の手中には『まどろむ仔猫の匣』と名付けた一辺20cmの木製の匣。
 そのフタがコトリと開き、中から『にぃ、にぃ』と鳴き声が響く。
「箱の中の猫は生きてるのか? それとも死んでるのか? はたまたオブリビオンになって蘇ったのかもな? 箱を開けるまで真実は確定されず、故に幻想は無敗にして無敵。今こそ、我が内に結ぶ像を現わせ!」
 途端、空中に石造りの古代遺跡が出現し、空中で固定されたままヴォーテックス・シティの広範囲を覆い尽くす。
「なによ、これ……? ああ、カメラがないのが本当にいや……」
 凍えそうになる肩を抱き寄せながら、鬱詐偽は夜空を見上げて呟いた。
 それは怪物重機を操る志乃原も同様だ。
「空に……街が出現したですって!?」
 いくら巨大な重機といえど、空中に浮かぶ都市には手出しができない。
 更に、遺跡は地上へと徐々に壁や通路を伸ばしてヴォーテックス・シティを迷路帖に作り変えていってしまう!
「でも、石造りの街なら、全て吹雪に変換できるし、そもそも、このマシンの先端の鋸刃は、物質を貫通して人体だけを斬るのよ!」
 唸りを上げて回転する巨大鋸刃が壁をすり抜けてゆき、壁が吹雪へ変換されてゆく。
 しかし、あまりにも変換量が多すぎた。
「これじゃ、私の視界が遮られて追跡ができないわね……」
 やむなく志乃原は、吹雪を操作して自分の前方の視界を確保する。
 と、その時、志乃原の目の前から怪物バロックレギオンが殺到してきたではないか!
「視界を……確保したわね? 待ってたわ、この瞬間を……!」
 これは鬱詐偽のユーベルコード『バロックレギオン』!
 術者へ猜疑心や恐怖心を与えた対象に、大量の怪物バロックレギオンを自身の実力に応じて襲わせる事ができる。
「たとえカメラが回っていなくても、アイドルが逃げるわけにはいかないのよ。だから私にもできることをさせてもらうわね」
「ちょっと、前が見えないわ! これをどかしなさいよ」
「断るわ」
 鬱詐偽は凄味を籠めて要求を拒否した。
「あなたの敗因は、視界を確保したことよ」
 ミシミシと重機のフロントガラスに亀裂が入ってゆく。
 バロックレギオンを介して、鬱詐偽の声が志乃原へ伝えられていった。
「この猛吹雪で視界と動きが妨げられるのは、あなたの機械も同じこと。でもこの吹雪を操作できるのなら、視界を確保するため、そこに道ができるはず」
「まさか、そこを狙って?」
「そうよ。本当に今まで怖くて怖くて仕方がなかったわ。やっとあなたにぶつけることが出来るわ……」
 バリ、バリバリッとフロントガラスを突き破ってきたバロックレギオンが、志乃原の全身に噛み付く。
「食い殺されなさいよ、吹雪の王様?」
 志乃原は一時操縦が困難となり、マシンはその場で立ち往生。
「今だ! ずらかるぞ!」
 九重は天へ伸びる石畳の道を地上へ伸ばし、車で天空遺跡を目指し始めた。
「逃さないわ……。この、放しなさいよ!」
 これに気付いた志乃原、バロックレギオンを手持ちのノコギリで切り刻み終わると、再び追跡を開始。
「待ちなさい!」
 振り回す巨大アーム!
 だが、突如、アームを動かすモーターのひとつから火の手が上がった。
 巨大アームは急停止!
「うそ、こんな時にマシントラブル?」
 志乃原は慌てて操縦席から飛び降り、鎮火に当たり始めた。
「なんだかよくわからねぇが……。兎のアイドルさんよ、お手柄だな?」
「え、えぇ……。奴隷の命が最優先ですもの。怖くても頑張ったわ」
 炎なんて操った記憶がないが、これも自分の不幸が敵に伝染したのかもしれないと、彼女は納得することにした。
 九重は念の為、怪物機械の行く手を壁で阻みながら奴隷達を空中遺跡へ収容してゆくのだった。

「あれま、またわたし、何かやっちゃいましたか?」
 ヴォーテックス・シティに迷い込んで彷徨っていた老妖狐の中小路・楓椛(流しの家事手伝い狐・f29038)は、突然の吹雪の中で暖を取ろうとユーベルコードで狐火を複数個発生させた。
 だが、そのうちの数個が志乃原の運転する怪物重機に接触してしまい、途端に火の手が上がったのだ。
「いやいや、私は何も悪くありませんよ? これは事故です、そう事故です。大体、こんな街中でそんなデカブツを乗り回す方が悪いんですよ」
 中小路は自身が猟兵だという自覚も認識もない。
 だから、旅の往く先々でオブリビオンに襲われては、命からがら逃げて生き延びてきたのだ。
「この荒廃した世界で、やっと文明のある街に来たと思えば、いきなり街が破壊されるわ、異常気象で吹雪になるわで……駄目ですね、ここは。もう逃げましょう」
 こうして、中小路は人知れずヴォーテックス・シティから脱出した。
 彼女の行動が、他の猟兵達と奴隷達の命を救ったとは思いもしないだろうけども……。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

蒼・霓虹
無差別に滅茶苦茶極まりない事を
事情があったにしても

彼処まで狂えるモノなんですか?

[WlZ]
【激痛耐性】で備え【オーラ防御&結界術&属性攻撃(炎)】の複合バリアに【高速詠唱】で〈虹色の焔「レインボーバーナー」〉を加え

猛吹雪に備え奴隷の方々の車まで(足元の雪や氷も溶かす)広げ

〈彩虹(戦車モード)〉さんを【推力移動&悪路走破】で【操縦】し

【第六感】で【見切り】つつ

【属性攻撃(重力)】込めた【砲撃&レーザー射撃】の【範囲攻撃】の【弾幕】で牽制

マシンのアームも狙いつつ

【多重詠唱&魔力溜め】でUC当てるタイミングを計り

倒せるなら【貫通攻撃】込みで直撃を
無理なら撤退までの牽制に

[アドリブ絡み掛け合い大歓迎]


大豪傑・麗刃
死んだらどーする!!

まったく。サポートに拾われたと思ったらとんでもない目にあったのだ。まあこれも何かの縁なので、もうちょっとだけ付き合うけどね。
途中参加なので状況とかシリアスとか心情とかまったくわからないということにしておくのだ。めんどくさいし。でもギャグもそれはそれで第二章でさんざんやったし。
ならばやるべきことはひとつ。

斬るのだ。

とりあえず!
第二章でわたしがひどい目にあった原因はおまえか!

わたしは超怒ったのだー!!!!!!

(スーパー変態人2発動!!)

右手に刀2本左手に脇差2本(にしては大きすぎるバスタード・ヒーロー剣)を持ち、冷気も機械も全て破壊する覚悟で突っ込み、思いっきり斬るだけなのだ!


アハト・アリスズナンバー
……あれは確か、人類史上最大の建築機械でしたっけ。データベースに記録されているだけで、実際に使われたところを見たことがありませんでした。
軽トラでは追いつかれて真っ二つがオチですね。

そもそも彼の居場所と言われても。殺されたのでしょう?
もうその事実を認識することさえ出来ないのでしょうね。復讐の連鎖は此処で終わりです。

所で、ご存知でしょうか。
酒は古来より清める効果がある事を。そして体を温めることが出来る事を。
【足場習熟】にて凍った足場を活かし、予測が難しい間合い管理をしつつUCで【カウンター】致します。
冷気は【環境耐性】で、呪詛は【破魔】にて対応できるのです。どぶろくで。

アドリブ・絡み歓迎


大町・詩乃
都月さん(f21384)と

どのような事情があるにせよ犠牲者は出させません。
彼女をここで倒します!

引き続き神性解放。
オーラと周囲に展開した【浄化を籠めた対冷気の結界】によって、猛吹雪及び彼女の呪詛・冷気を無効化しつつ、高速飛翔能力と【空中戦】によって素早く移動。

彼女のノコギリは【第六感】で読み、【空中戦と見切り】で躱します。

まずは彼女が操縦する車両のアームを、煌月による【光の属性攻撃・なぎ払い・衝撃波・鎧無視攻撃】で斬り落とします。
そして操縦席の彼女に、【多重詠唱による雷と炎の属性攻撃・全力魔法・神罰・高速詠唱・スナイパー・貫通攻撃】を放って貫きます!

「せめて骸の海で恋人と再会して下さい。」


木常野・都月
詩乃さん(f17458)と

これは…下手に奴隷の人達と逃げると危ないか。

奴隷の人達を守りつつ、迎え討ちたい。

まずは奴隷の人達に[オーラ防御]を付与したい。

俺は奴隷の人達の近くで迎撃、必要があれば奴隷の人達を[かばう]ようにしたい。
庇った時は[激痛耐性]で我慢したい。

敵の攻撃は[高速詠唱]で唱えた[属性攻撃、範囲攻撃]の[カウンター]で対処したい。

UC【精霊の歌】で詩乃さんのバックアップをしたい。
光の精霊様も、詩乃さんに協力を頼みたい。

あと、氷の精霊様に頼んで奴隷の人達の周囲から冷気を控えて貰いたい。

車両やノコギリ、金属の攻撃は電磁障壁で吸い寄せてしまいたい。
武器を奪えばこっちのものだ。



 猟兵の逃亡を許してしまった『吹雪の王』志乃原。
 怪物重機のエンジンを再度点火させると、どす黒い排気と周囲が揺らぐような排熱を重機の至るところから放出してみせた。
「……おや?」
 志乃原は残った猟兵達の雰囲気が違うことに気が付いた。
 先程のように奴隷達を庇って逃げ去るような懸命さとは違う、明確な敵対心が向けられている。
 志乃原は失笑してしまう。
「あなたたち、本気なの? この私の操る超巨大重機と戦って、勝とうっていうのかしら?」
 これに真っ先に叫んだ猟兵がいた。
「さっきはよくもやってくれたじょ!! 死んだらどーする!!」
 大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)が地団駄を踏みながら激昂していた。
 それはそれは激おこぷんぷん丸ムカチャッカヴォルケーノ太郎状態であった。
「まったく。サポートとして駆け付けたら酷い目にあったのだ。まあ乗り掛かった船だから最後まで付き合うけどね。状況とかシリアスとか、そんなの一切分からんのでこの際完全無視なのだ! めんどうくさいし! でもさっきギャグはさんざんやったし、ならばやることはひとつ」
 サムライブレイドの切っ先を、頭上にそびえる怪物重機の操縦席へ突き付けて言い放った。
「――斬るのだ」
 大豪傑の目は若干血走っていた。
「とりあえず! さっき、わたしがひどい目にあった原因はおまえか!」
「そっちが私の『彼』を返さないから悪いのよ?」
 スピーカーから漏れる志乃原の言葉に、大豪傑は遂に怒髪天を向いた。
「そんなこと知らんのだ、このバカチンが! わたしは超怒ったのだー!!!!!」
 バチバチッと青雷が大豪傑の身体中に迸った次の瞬間、彼の足元のアスファルトが割れ、彼の髪が金色に輝き天へ逆立つ。
 そして、大豪傑の体内から膨大な金色のオーラが火柱のように吹き上がる!
「なんて凄まじい戦闘力の上昇量! 無差別に滅茶苦茶極まりない事を、敵も味方もやってのけてくれますね……!」
 蒼・霓虹(彩虹駆る日陰者の虹龍・f29441)はレイダー・キングと大豪傑を交互に見遣りながら唖然としてしまう。
「それぞれに事情があったにしても、彼処まで狂えるモノなんですか?」
「まあ、戦う矜持は人それぞれですからね」
 スタスタと徒歩で歩み寄るのは、白地に錦糸の服を纏った金髪の少女。
 アハト・アリスズナンバー(8番目のアリス・f28285)だ。
「……あれは確か、人類史上最大の建築機械でしたっけ。データベースに記録されているだけで、実際に使われたところを見たことがありませんでした」
「あれ? さっきまで人質を乗せた軽トラを運転してませんでしたか?」
 蒼の疑問に、アハトは表情を変えずに答えた。
「軽トラでは追いつかれて真っ二つがオチですからね。本体である私がここに残って足止めないし操縦者の撃破に努めることで、軽トラは奴隷の皆さんを乗せたまま、私の分身達が街の外へ脱出させました」
 つまり、あとは目の前の怪物を叩くだけということだ。
 と、そこへ、大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)と木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)のコンビがこの場に合流を果たす。
「話は聞かせてもらいました。どのような事情があるにせよ犠牲者は出させません。貴女はここで倒します!」
 ユーベルコード『神性解放』で空を飛ぶ大神は、空中でオリハルコンの刃を持つ薙刀『煌月』の切っ先を、魔改造バケットホイールエクスカベーターの操縦席に座る『吹雪の王』へ突き付ける。
「倒す? どうやら本気であなたたちは言っているようね? 無駄よ、無駄! ちっぽけな存在が、この全長200以上の怪物重機に太刀打ちできると思うことが間違ってるのよ!」
 操縦者の志乃原が腹の底から笑い声を上げていた。
 このやり取りの中、地上では木常野が月の妖精チィの背から奴隷達を降ろしていた。
「これは……下手に奴隷の人達と逃げると危ないか。申し訳ないが、あいつを倒すまで、ここに隠れてくれないか?」
 そう言って木常野は、マンホールの蓋を持っていたナイフでこじ開けた。
「地下なら瓦礫が降り注いでも安全だ。さあ、早くしてくれ」
 だが奴隷達は露骨に嫌がってみせる。
「生き延びるためとはいえ、下水道は、ちょっと……」
「病気になりそう……」
「というか、その中、有毒ガスとかありそうだよな?」
「あ、自分、閉所恐怖症なんで無理」
「うーん、みんな、わがままだな。仕方がない。土の精霊様、お願いします」
 木常野は精霊力を練り上げると、奴隷達の周囲に頑丈な鋼鉄の檻を生成してみせた。
「俺の精霊力もだいぶ強くなったな。周囲の物質を別の形状へ変換できるくらいは出来るようになったみたいだ」
 奴隷の周りの金属類……ポストや標識、自動車などを地の精霊が別の形状に変換して創造してみせた。
「この檻の中なら、精霊様の加護で瓦礫が落ちてきても潰れることはないぞ」
 奴隷達はブツブツ不平を言いながらもこれに従う。
「わ、わかった……」
「下水道よりはマシか……」
「檻から出たらまた檻に入るとはなぁ?」
「あの、自分、閉所恐怖症……」
「我慢してくれ。むしろ克服するんだ。もっと頑張れ。俺もあいつ倒すために頑張るから」
 木常野の声援に、その奴隷は白目を剥いたまま檻の中へ入らざるを得なかった。

 かくして、役者は勢揃いした。
 今ここに、怪物重機 vs 猟兵連合軍の決戦が幕を上げた。

「あなたたちをもう逃さない……!」
 志乃原は周囲の瓦礫を猛吹雪に変換すると、猟兵の視界と移動を阻害しつつ、超冷温で体力を奪ってゆく。
 そして、そこへ怪物重機の先端に装備された巨大な丸鋸で斬り刻むつもりだ。
「なんて凄まじい吹雪なんでしょうか。彩虹さん、動けますか?」
『大丈夫です。僕よりも、奴隷の皆さんを……!』
 相棒の言葉を聞いた蒼は、彼女や木常野が避難させていた奴隷達を見遣る。
 猛吹雪の合間から見えた彼らは真っ青になって、今にも凍えそうだった。
「大変です! 今すぐ氷雪を溶かします!」
 蒼はすかさず魔法火炎砲である虹色の焔『レインボーバーナー』を発射!
 七色の炎が氷だけを溶かし、奴隷達の身体を温めてゆく。
「その炎の結界から出てきちゃ駄目ですよ。それじゃ、彩虹さん、行きましょう!」
 二足歩行の龍戦車モードの彩虹の背に跨る蒼は、全身を炎と幸運の神気バリアで覆うことで、吹雪の冷気を遮断。
 凍結している路面も、虹色の焔で解凍することで転倒を防止してゆく。
「これでどうですか! 茶柱『ハッピーティートラップ」!」
 液状球体魔法弾幕が発射されると、怪物重機に針を刺して攻撃を仕掛けてゆく。
 その横を、黄金と青雷を纏った大豪傑が駆け抜けていった。
「完全に視界がゼロなのだ! でも武器を振り回せばどっかに当たるはずだし、このまま突撃だじょ!」
 大豪傑の戦闘スタイルはかなり特殊な型を用いる。
 右手に刀2本、左手に脇差2本……にしては大きすぎるバスターソードとヒーローソードを持つ四刀流剣術だ。
「きぇーいっ! どこでもいいから斬ってやるのだー!」
 ユーベルコードの効果で、最大で約マッハ9で飛行することが出来る大豪傑は、怪物重機の車体の至るところを刻んでゆくではないか!
「やっぱり! 図体がデカいから何処を攻撃しても命中するのだ!」
「吹雪で視界が完全に閉ざされているのに、なんで攻撃が当たるのよ!?」
 志乃原はネタキャラ特有の“何でもアリ”な展開に、為す術もなく一方的に連続攻撃を浴びせられてゆく。
 怪物重機の巨大丸鋸で切ろうとしても、流石にマッハ9の速度に巨体がついてゆかない。残像ばかりを追い掛ける志乃原は、大豪傑に掛かりきりで他の猟兵の進撃を許してしまう。
 ここでさらなる追撃を行うべく、大町と木常野が動く。
「都月さん! 援護をお願いします!」
「詩乃さんが何処にいるか分からないけど、頑張って援護をしてみます!」
 猛吹雪でお互いの位置が分からなくなった大町・木常野コンビだが、彼らにとって視界が遮られたことなど些末なことであった。
「まずは神気展開です! 植物を育む陽光よ、このアシカビヒメの名のもとに集まりなさい!」
 大町の身体を、若草色の柔らかな光球が包み込んでゆく。
 それは浄化と生命の光の結界だ。
 木漏れ日のような暖かな熱量が憎悪の吹雪を溶かし、冷気すら遮断してみせた。
「私の魂命霊気は様々な加護を生みます。貴女の凍える憎しみも、神である私には通じません!」
「何が神よ! 神様だったら、私の『彼』を返して!」
 巨大アームが旋回し、大町に回転刃が迫りくる!
 だが大町は素早くこれを急上昇で回避!
 すれ違いざまにアームへ薙刀の一撃を見舞った。
 閃光の如き鋭い斬撃が、アームの鉄骨の一部を切断してみせる。
「残念ですが、それは無理な相談です。なぜから、恋人を想うがあまり、オブリビオンへ身を落とした貴女にとって、残酷な事実を告げなくてはなりませんから」
「詩乃さん……! 横からくるっ!」
 木常野が地上から、エレメンタルロッドを振るって火炎弾で援護をする。
 彼は檻の中にいる奴隷達を守るように、自らの身体を吹雪避けに使っていた。
 奴隷達は蒼の虹色焔の結界に守られているとはいえ、荒れ狂う吹雪にそれだけでは不安だと感じた木常野の本能に従った。
「野生の狐は吹雪の中、木や岩の陰に隠れるんだ。いくら焔があるかって、風で吹き飛ばされたらおしまいだぞ」
 木常野は野生の狐として生活してきた頃を思い出しながら、自らの体で奴隷達をかばい、この吹雪に対抗するべく、火の精霊と協力して術式を編み上げている真っ最中だ。
「氷の精霊様、俺達をお守り下さい。うぅ……でも、こんなに同時に精霊様にお願いしていると、魔力が足りない……。チィ、頼む。お腹から声を出してくれ」
 白狐のような月の精霊チィは、主の願いに歌声で応える。
 その歌声はユーベルコードであり、吹雪の風の音にも負けず大きな声量で、猟兵達と奴隷達に活力を湧き上がらせていった。
「ありがとう、チィ。魔力が漲ってくる!」
 木常野は猛吹雪に対抗するべく、巨大な太陽のような大火球を頭上に生成してみせた。
「この熱で、吹雪を溶かしてやる。ついでにその機械の鉄骨も融かしてみよう」
 夜空に浮かぶ疑似太陽が、渦巻く吹雪を徐々に蒸発させて弱めてゆく。
 更に、放射熱が怪物重機を加熱してゆき、モーター類や電気系統がオーバーヒート!
「嘘でしょ、動作不良!?」
 すぐさま吹雪で動力系統を冷やさなければ、と志乃原は吹雪のコントロールを機体周囲に圧縮したその時だった。
「今です! 街の吹雪が弱まりました! 一斉に撃ち込みましょう!」
 蒼の号令が、猟兵達の反撃の口火を切った。
「斬って斬って切りまくってやるのだ!!!」
 大豪傑は怒りと気合で4刀流を振るうと、その剣圧で吹雪すら真っ二つに切り裂いてみせた!
 そのまま大豪傑は怪物重機のモーターのひとつを切断!
「その巨体なら、自重は相当あるはずです。なら、この弾幕でどうですか?」
 虹龍魔導宝玉砲から発射された光線は、重力操作の効果を持つ。
 光線が命中した左のアームが途端に重くなってゆき、自重に耐えきれなくなってアームの真ん中からべきべきと音を立ててへし折れてしまう。
 木常野の疑似太陽で熱せられていたため、硬度が下がっていたことも追い風となっていた。
 ここで、魔力を溜め込んでいた彩虹にマジックカードを挿入し、蒼は満を持してユーベルコードを発射する!
「では、虹龍の本領発揮と参りましょうか。圧縮された濃度の濃すぎる運気……貴方に受けきる事が出来ますか? 虹雲『環水平アークの道標』っ! 発射です!」
 彩虹の口が大きく開かれると、そこから入り交じる虹、水、光、聖、氷、太陽、幸運属性の極太な帯状環水平アークの虹雲ビームが、怪物重機の機体を貫いてゆく!
 その軌道上にあったモーターや配線を全て消し飛ばすと、怪物重機は悲鳴を上げるかのごとく、小爆発を繰り返して黒煙を立ち昇らせた。
「ええい! もうコイツは使えないわね……!」
 とうとう志乃原は怪物重機から降り、アーム部分の鉄骨まで降りてきた。
 そこで待ち受けていたのは……。
「――チェック」
 斬竜剣ヴォーパルソードで志乃原の首元を振り抜くアハトであった。
 志乃原は携帯していたノコギリで剣閃をかろうじて弾き返そうとするが、交わしきれずに腕を刻まれてしまう。
「おや、チェスは嗜みませんか」
「待ち伏せ? いつの間に?」
 切り刻まれた腕からは血は一滴も滴らない。
 志乃原がデッドマン化しており、その肉体が既に死体に近い事を表していた。
「こんな巨大重機、忍び寄って下さいって言ってるようなものですが」
 対して、アハトは他の猟兵達の戦闘のドサクサに紛れ、志乃原を騙し討ちしようと試みたのだ。
「……ところで、ご存知でしょうか」
 アハトは腰にぶら下げたどぶろくの栓を抜くと、一気にその中身を呷ってゆく。
「んぐ……んぐ……プハァェッ! 雪見酒っていうのも趣深いですね、って、そういう話じゃなくて……」
 酔いが回り、鉄骨の上でグラグラと身体を左右に揺らすアハト。
「酒は古来より清める効果がある事を。そして体を温めることが出来る事を。貴女はご存知ですか? 冷気は身体を内側から発熱させることで、呪詛は破魔の御力にて対応できるのです。どぶろくで」
「……何を言ってるのよ? 私、未成年なんだけど……」
 当惑する志乃原へ、アハトは左手で押し止めるよな素振りをみせた。
「ああ、答えは聞いてません。これは私なりの宣戦布告であり、私なりの勝利宣言ですので」
「勝手なこと言わないで。というか、猟兵は『彼』を連れ去ってどうするつもり?」
「その問いは意味を成しません」
 アハトは酒で充血した目を志乃原に向けた。
「そもそも彼の居場所と言われても。殺されたのでしょう? 事故に見せかけて。そして、生前の貴女は、彼を殺した『事故』の関係者を殺した」
「な、何を根拠に言ってるのよ? 名探偵でもあるまいし」
「なるほど、もうその事実を認識することさえ出来ないのでしょうね。私は真の名探偵ではありませんが、復讐の連鎖を此処で終わらせる事はできます」
 言いたいことは言い終えたとばかりに、アハトは斬竜剣ヴォーパルソードを鞘に収める。
 と、次の瞬間。
「此処らで一杯。飲めば飲む程夢心地。夢幻の拳にて向かい酒」
 拳を掲げ、身構えたアハト。
 ユーベルコード『酒地撃臨』……アハト流の酔拳の構えだ。
 そのままクイクイと手招き、志乃原を誘い込む。
「いい度胸ね? この鋸刃からは逃げられないわよ!」
 鉄骨の上を駆けてゆく志乃原。
 ノコギリがアハトの頸動脈から心臓を通る軌道を描く。
 だがアハトは、真っ先に志乃原の顔面に酒臭いゲップを吹きかけた。
「うげッ……!」
 あまりの異臭にたじろぐ志乃原。足が、止まった。
 その隙をアハトは見逃さない。
「ほぉぉぉぉっ! わちゃあぁーッ!」
 振り下ろされた鋸刃を半身横へ進んでかわすと、狭い鉄骨の上で震脚!
 踏み込んだエネルギーを上半身に溜め込み、カウンターの右ストレートが志乃原の顔面に直撃ッ!
「げぶッ!?」
 志乃原は鉄骨から落下しかかるが、途中で手をかけて墜落を免れた。
「あの距離を、一瞬で詰め寄ったですって? 4~5m以上はあったはずなのにっ?」
「鉄骨の上、雪が溶けて濡れてましたよね? 酔拳は体幹とバランス感覚が重要なんですよ。ですので、“わざと足を滑らせて”一気に懐へ潜り込むことなんて、私にとっては造作も無いんですよね」
「そんな!? くっ、早く這い上がらないと……!」
 志乃原が必死に身体を鉄骨の上へ這い上がろうとする。
 しかし、それを黙って見過ごすほど猟兵はお人好しではない。
「せめて骸の海で恋人と再会して下さい。これで幕引きにしましょう……!」
 人々や世界を護りたい想いを霊符に籠め、大町は雷と炎の神気を宿した霊符を矢の如く解き放った!
「無関係な人々を巻き込んだ悪事に、神罰を!」
 志乃原の体とアームに霊符が命中!
 アームが爆発し、へし折られて志乃原ごと地面に落下してゆく!
 ついでにアハトも落下!
 アハトの落下よりも早く、マッハ9で突っ込んでくるのは大豪傑だ!
「ひっさーつ!!!」
 四振りの刃が志乃原の身体を完全に断ち切る!
「私の怒りを思い知ったかー!!!」
 そのまま大豪傑は怪物重機を跡形もなくバラバラに解体してしまうと、気が済んだのか地面に降りて、奴隷達が待つ軍用ジープの荷台に横たわった。
「……疲れた! 寝るのだ! おやすみ! すぴーっ!」
 そのまま秒速で熟睡してしまった。
「……ネタキャラを怒らせると怖いってことが、今回の教訓でしょうか?」
 大町にキャッチされて地面に降り立ったアハトは、いびきをかく大豪傑の寝顔を見てひとり納得していた。
「皆さん、ご無事で何よりです! 私、皆さんの戦闘の様子に圧倒されてしまってました……」
 蒼も彩虹に乗って駆け寄ってきた。
「レイダー・キングを撃破しましたし、早くここから脱出しましょう」
 大町の言葉に、奴隷達も猟兵達も全員が頷く。
「それじゃ、また頼んだぞ、チィ。奴隷のみんなも背に乗せてやってくれ」
「えっ?」
 木常野の親切心に、奴隷達が後退してゆく。
「チィ君、結構揺れるんだよなぁ……」
「もふもふだけどさ、俺はジープの荷台でいいや……」
「遠慮しないでいいぞ。ほら、早く早く!」
 木常野が奴隷を3名乗せて、再びチィを走らせる。
 奴隷達の絶叫が木霊するが、誰も木常野を止めることはなかったという……。

【奴隷達の完全救出に成功!】

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年11月01日
宿敵 『『吹雪の王』志乃原・遥』 を撃破!


挿絵イラスト