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筋肉は裏切らない。が、世界は滅ぼす

#カクリヨファンタズム

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#カクリヨファンタズム


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●世界の危機(マッスル)
 今や世界は筋肉であった。

 いいや、世界が筋肉だと言うべきだろうか。どうしてこんな事になってしまったのかと、地獄の巷と化したカクリヨファンタズムの中、幸運にはも(或いは不運にも)未だに正気を保っている住人達は誰もが嘆いている。
 見渡す限りの筋肉。筋肉。筋肉。
「ふん! ふん! もっとだ! もっと鍛えろ!!」
「わしの上腕二頭筋が火を噴くぞ!!」
「切れてる! 切れてるよ! 俺を切れさせるとは大したもんだよ!」
 それと何かこう暑苦しい感じの叫び。何か間違ってる気がする喝采。荒い吐息。
 誰も彼もが夢中でその肉体を鍛え。ある者は理想の身体を手に入れ。またある者は力尽き、徐に現れたジムトレーナーに導かれて再挑戦する。これだけ言うと健康的で良い事な気もしてくるが。世界全てがこれと言うのは異常である。と言うか大惨事だ。
 そう。今幽世には、オブリビオンの企みにより筋肉が大量発生しているのだ!
 見渡す限りどこまでも、まるでカクリヨファンタズムの世界全てに筋肉が発生し、まるで世界の終わり(カタストロフ)が来るかの様な光景が広がっている。と言うか世界の終わりの様な筋肉が広がっている。
 何を言っているのか分からないかも知れないが……大丈夫、多分誰にも分からない。

●グリモアベースにて
 猟兵達の集まった部屋で、ハイドランジア・ムーンライズ(翼なんていらない・f05950)は静かに、そして上品に紅茶を賞味した。
 上質な茶葉の香りが薫り、その心に癒しと余裕を与えてくれる。如何なる危機を前にすれど、取り乱し慌てふためく事は淑女の行いでは無い。世界を守る為、退く事の許されぬ猟兵達の使命の前。先ずは落ち着き、そして最適なる活路を導く事こそが肝要であり。そしてグリモア猟兵となった己の仕事だからだ。
 その覚悟を篭め、令嬢はカップをテーブルに置くと。ふわりと優雅に笑う。
「どうしましょう。心の底から関わり合いになりたくありませんわ?」
 割と直球ストレートな本音が出てきた。
「……そうは言ってもやらねばならぬのですわね。放置すれば世界が滅びますもの。筋肉で」
 筋肉で。猟兵の一人が思わず復唱した。
「筋肉賛歌とでも言うべきかしら。兎も角鍛えたい。己が肉体を鍛え抜きたいと言う欲求が幽世中に伝播し、かくして彼の世界は筋肉に覆われた。と言う事らしいですわね」
 字面こそ珍妙だが、精神を操られていると言う意味では恐ろしい現象と言える。そしてその結果生み出された筋肉の祭典は更に恐ろしい。主に絵面が。
「黒幕は実の所、己が企みの成就の為に頑健なオブリビオンを増やそうと思っただけで、こんな結果になるとは思ってなかった様ですわね」
 事故かよ。すげえな誰も幸せになってねえと、猟兵達は戦慄した。
「とは言え目的自体は叶っておりますから、黒幕の策謀は継続しております。これを討ち果たし、カクリヨファンタズムを正常に戻して下さいませ」
 猟兵の中にはちょっと嫌だなと言う顔をした者も居たが、流石に逃げる者はいない。
「黒幕の元に辿り着く為には、先ずは筋肉大迷宮を踏破しなくてはなりませんの」
 猟兵の中にはかなり嫌だなと言う顔になった者が結構いたが、ギリギリ踏みとどまった。と言うか筋肉大迷宮ってなんだ。
「大丈夫。単に世界中に体を鍛えているマッチョがミッシリ犇めいているせいで、結果的に迷宮みたいな有様になっているだけですわ」
 それは何一つ大丈夫では無い奴ではないかと思う猟兵達であった。
「体力に自信のある方は、兎も角気合で走り回って道を探し前に進む事をお勧めしますわ。……蹴散らしても良いのですけれど、マッチョの大半は未だオブリビオン化もしていない被害者の皆様なので、ちょっと可愛そうな気が致します。別に構わんけど」
 何か今最後に雑い事言わなかったかこの女。
「身のこなしに秀でておられるのでしたら、上手くかわすなり飛び越すなり……まあ、出来る事は色々あると思いますわ。それから……筋肉達は要するに知恵ある生き物な訳ですから、並び方に理屈や法則がある事もあるでしょう。知恵者の方であればそこから最短経路を逆算する事も出来るかもしれません」
 筋肉を理解し、マッチョを解き明かせば、或いは。とか微妙にやる気を損なう物言いが続いたが、猟兵達は聞こえなかった事にした。

「そうして進む事が出来れば、武道館が見つかりますわ。その中でオブリビオン化した東方妖怪達の方々が武道を以てその肉体を鍛えております」
 元より武道を嗜んでいたその妖怪達は筋肉賛歌と相性が良かったらしい。手勢として黒幕のお眼鏡に適いもした彼らは、鍛え抜かれた肉体でより研ぎ澄まされた格闘技を以て猟兵達を襲うだろう。
「数も多いですし、中々の難敵ですわ。努々油断なさらないで下さいませ」
 ハイドランジアは真剣な顔で猟兵達を見る。字面がどんなに酷くても、絵面がどんなに暑苦しくても、それでオブリビオンの力が減じる訳ではないのだから。
「彼らを退ければ。黒幕である妖怪が現れるでしょう。彼女もまた武闘派、修羅道の如き戦いを求めて今回の事を企んだ方ですので……まあ、後はガチンコですわね」
 凡そ御嬢様らしくない言葉で纏めると、ハイドランジアは居住まいを正す。
「色々と珍妙な状況である事は否定できませんけれど、これは紛れもなく危機ですの。どうか尽力を、そして救いを」
 そう言って、女は頭を下げた。


ゆるがせ
 オープニングをご覧い頂き有難うございます。後ごめんなさい。ゆるがせと申します。
 今回はカクリヨファンタズムにて、ええと、何か良い感じにバチコンして下さい。

●第一章
 『筋肉大迷宮』
 まあ、ぶっちゃけ満員電車とか祭りの日の雑踏の様なものです。ただし全て筋肉で構成されていますので暑苦しいですし固いですし何か色々大変です。
 ジムトレーナーは只の有志ですので特にオブビリオンとかではありません。
 ハイドランジアの語るPSWはあくまで例示です。各々自由な発想で挑んで下さい。

●第二章
 『蝦蟇河童(鍛錬済み)』
 相撲の動き、蛙特有の跳躍力、長い舌での攻撃が特徴のオブビリオンです。鍛え上げた肉体とのシナジーが高い為、黒幕に取り巻きとして見込まれました。集団戦となります。

●第三章
 『雷鬼』
 好戦的なオブビリオン。上項には蝦蟇河童を取り巻きとして見込んだとは書きましたが、彼らが本当に強くなれば相手をしてやろうと思って居た位には好戦的です。
 より強く激しく永久に続く戦いを求めて今回の事件を起こしました。何か思っても見ない方向に吹っ飛んだ事には若干引いていますが、これはこれで良しとも思って居るようです。細かい事は考えずに真向戦えば良いと思います。
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第1章 冒険 『無秩序な大迷宮を攻略せよ』

POW   :    気合で走り回って通路を総当りで確認する

SPD   :    通路以外の脱出経路でショートカットを試みる

WIZ   :    無秩序の中に秩序を見出し、最短経路を模索する

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

九十九・静香
まあ、私の目指す理想の世界……に近いのですが、こうも無秩序ではいけませんね
残念ではありますが、きっと素養のある方は異変が終わっても影響が残るでしょうしそちらに期待しましょう

筋肉を魅せつけ合っている方々の前に出て
車椅子令嬢姿から筋肉令嬢姿へ変身し
◆パフォーマンスなマッスルポージングを繰り出していき
筋肉紋『筋』により更にポージングの魅力を引き出します

披露し終えた所でUCを発動
お互いの筋肉を称えあった上で、
武道館に向かいたい事を伝え、
皆様の筋肉を見込んでの協力を要請します(UCで要請成功率をアップ)

皆様には円陣を組んで頂き
私がその中心へと飛び皆様が同時に跳ね上げた腕と筋力で武道館向け発射されます



●筋肉の中に在りて尚、筋肉

 もしも筋肉が宗教であったなら、彼女は聖女であろう。

 それ程までに彼女は神々しく、美しく、そして何よりもデカかった。
「フゥウウウウ!! 昂れ肉、弾けよ筋!」
「キレてる。そしてデカい! 筋肉の国宝だ!」
「なんちゅうもんを魅せてくれたんや……なんちゅうもんを……」
「くそう負けてられるか! 俺の筋肉も魅やがれえ!」
 凄まじい熱気と盛り上がりの中心に立つのは筋肉。もとい九十九・静香(怪奇!筋肉令嬢・f22751)である。元は病弱だったにも関わらず、謎の黒粘液生物との融合と鍛錬により若干15歳にして芸術作品が如き肉体美を誇る彼女は、正に筋肉令嬢の二つ名に恥じぬ筋塊であった。
 そして彼女を囲み沸き立つのは筋肉賛歌に染まりし幽世の住人達。車椅子の美少女が来たと思えばまさかの変身(パンプ☆アップ)し、その場の誰よりも見事な筋肉を以てマッスルポージングを始めたのだ。そりゃあ興奮するし、号泣するし、対抗してポージングも始めると言う物だ。
「皆様も、ナイスバルクですわ!」
 ましてその聖女が己達の肉体を称えるとあれば、そのテンションは留まる事を知らず。その場にはお互いを称え合う声と、そして静香への心酔の声が響き続けた。
『私の目指す理想の世界……に近いのですが、こうも無秩序ではいけませんね。残念ではありますが……』
 賞賛の嵐の中、しかし静香は冷静に周囲を観察していた。確かに筋肉を愛し鍛える彼らは好ましいが、その大半は筋肉賛歌に植え付けられた衝動に踊らされているだけで、本物の筋肉求道者である彼女からすれば温い。そもそも筋肉には寧ろ厳密な秩序と計算に基づいた鍛錬こそが肝要と言う考えもあるのだ。
『それでも、今回の事で素養が開花されたと思しき方は散見されますし。それでよしとしましょう』
 
 実の所、歴戦の猟兵である静香のこれ迄の行為は、当然ただのアピールではない。筋肉大迷宮の踏破が為、腹部に施された筋肉紋で魅力を強化したポージングと、それをトリガーとしたユーベルコードにより、彼らへの交渉の補助としていたのだ。
 ……まあ、今の有様を見るとそれ無しでも無条件に成功していた気もするが。
「皆様の筋肉を見込んでお願いがありますの」
 そして勿論その願いを断る者等居る筈も無い。筋肉達が円陣を組み作り上げた筋肉カタパルト(動力は当然筋肉)に乗った静香は、筋肉の明日(※ルビ:武道館)へ向け、筋肉射出されるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒木・摩那
筋肉大迷宮って、ツッコミどころ満載ですね。
どうしてこうなった、と作ってしまったオブリビオンじゃないけど、
問いただしたいところではあります。

ともかくここを突破しないと始まらないわけですね。

こんな密な空間は一刻も早く突破するに限ります。

ドローン『マリオネット』を上空に滞空【情報収集】。
先に迷路の脱出路を確保したうえで迷宮に挑みます。

筋肉な方々との密接は避けて、呪力エンジン『ジュピター』で【ジャンプ】しながら、筋肉を踏みながら進みます。



●筋肉を見下ろす影

「筋肉大迷宮って、ツッコミどころ満載ですね」
 多分に呆れを含んだ声で呟く黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)の表情には余裕があった。其れも其の筈、サイキッカーである彼女は己の力を最大限に使って筋肉との密着を徹底して避けているのだから。
「ふんふん! 鍛えおごっ!?」
 ダンベルを振り上げていたマッチョが突然つんのめって倒れる。その後頭部を摩那に踏み抜かれたからだ。そして痛みに呻いた彼が慌てて振り返る時には、既に彼女は彼方に居る。
 呪力型加速エンジン『ジュピター』。靴に取り付ける宝石型のそれは、摩那に地表との反発力を付与する。その反発力を活かし彼女は長距離を一気に【ジャンプ】して踏破しているのだ。
 尚、その道中で踏まれている筋肉の事は横に置くとする。人に拠っては御褒美かも知れないし……
「こんな空間は一刻も早く突破するに限ります」
 加えて彼女は前もっての情報収集も熟している。『マリオネット』と言う銘の索敵ドローンによる上空からの事前調査。ステルス性の高さこそ細かい事を気にしないマッチョ達相手には然程の意味を持たなかったものの、搭載された各種センサーはその力を存分に発揮。最も効率的で、通る彼女がなるべく密な思いをせずにすむルートを算出していた。
 正解ルートの分かって居る迷宮程他愛無い物は無い。

「……どうしてこうなった。問いただしたい所ではあります」
 ただ、最低限はマッチョに近づく必要はある。と言うか踏んでるし。彼女にとって幸いだったのは、マッチョ達の大半が本当に鍛錬に夢中だった事だ。つまり、道すがら踏みつけられても怒って追って来るとか、先に気づいて迎撃して来るとか言う事が一切なかったのだ。なので跳躍中は周囲を見渡す余裕位はある。
 ……尤も、そうした時に見えるのは肉、肉、肉、肉……何処までも続く筋肉地獄なのである。冷静沈着な彼女とて、溜息めいた声の一つも出と言うものではあった。

 身を翻し跳ぶ超能力者の肢体の下、地平を埋め尽くす筋肉の群。

成功 🔵​🔵​🔴​

朱酉・逢真
心情)ヒトの死に方ァいろいろと見てきたが、うっかりだったりポカしたり…奇天烈な死に方の多いこと。ましてや世界が死のうとしてンだ。狂気に満ちてもさもあらんだ。つまっとこ、いつものカクファンだなァ。
行動)妖怪だろうと生き物だ。貧弱な俺でもなんとかならァ。《鳥・虫》の眷属どもをたっぷり飛ばして、眠りの毒をばらまかせよう。倒れてくれりゃア歩き回れる。ああ、俺は《服》も《宿(*からだ)》も疫毒のカタマリ。触らんように気をつけにゃアな。必要もなく殺すわけにゃいかんでね。どォしても触らにゃならんときたら、結界で何重にも覆ってパッと退かすさ。


アテナ・カナメ
【心情】あ、暑っ苦しぃ…。体を鍛えるのは良い事だとは思うけど…さすがにこれはやりすぎよ…とりあえず止めましょう。ええ。迅速に。まずは迷宮みたいになってる人達からね

【作戦】ここはフォームチェンジで飛翔力のあるグリーンアテナにチェンジして飛び越えちゃいましょ!これならいけるわ!でも行き止まりになってる可能性もあるわね…仕方ない、またフォームチェンジでマッシブアテナ(コケおどしとしてボディビルダーの女性のような姿になる)にチェンジして筋肉の友として「同胞として私は武道館に向かいたいのです」と頼んでみようかしら。本当はあんまこの姿にはなりたくないんだけどね…(絡み・アドリブOK)


リチャード・ライナス
◆最短経路を模索する

「額に手を当て)なんたる光景(途方に暮れつつ」
ゴッド・クリエイションで筋力強化人間を作ってボディガードにし、筋肉の海を泳ぐ。
「武道館を探してるんだけど、どうやって行けばいいかな?(ストレートに質問したほうが筋肉には刺さる…と有り難い」
荒事は好まないため極力周囲の状況に協調したり筋肉を褒めたたえたりするが、自身は細身なうえ、なにより筋肉に対する愛が足りない。
「俺の仕事は筋肉なくても出来たからなぁ(グッタリ」

筋肉に酔ってきたらウィザードブルームで脱出。
上空を移動しつつ武道館への最短経路を探る。
「俺なら全身のバランスや下半身の安定性を重視するね。鍛えるかどうかは別にして(笑」


迅雷・電子
【心情】相撲する敵がいるって聞いて来たけど…すごいねぇこの光景は。私も女横綱目指して鍛えてはいるけどあそこまでは無理だねぇ。まあ力士とボディビルダーは大分違うだろうけど。とりあえずこの迷路をどう抜けるかだね

【作戦】とりあえずどこを通れるか把握しつつ抜けて武道館へと向かうよ!…でもやっぱそこまで頭はよくないし早々に迷うかもね…そしたら着ていた制服を脱いでイェカの姿となり四股を踏みつつ「あたしは相撲を取る為に毎日鍛えてんだ。あの武道館には越えるべき敵(力士)がいる。通してもらうよ」と【恫喝】して【恐怖を与えて】道をつくってもらおうかね…【絡み・アドリブOK】


四天王寺・乙女
「乙女が来たぞ!通してくれたまえ!」

筋肉か……それもまた、乙女……

ではないな。乙女とはちょっとベクトルの違う何かだ。
別に鍛えることは好きだし筋肉も好きなのでかかってこんかいウォーッと突っ込んでくんずほぐれつ力業で押し通っても……絵面的に拙いが私は別段構わぬ。私を止めることは例えどのようなナイスバルクであっても不可能であるからだ。
何故ならばそう。
「ハイカラさんは止まらない」のだから!
もう一度言おう。「ハイカラさんは止まらない」のだ。
迷路突破は非戦闘行為だからな!
後光を光らせて自信満々に進み、マッスルガイズ達に道を譲ってもらおう。
マッチョのオイル肌で乱反射してとても眩しい。筋肉を引き立てる光だ。



●筋肉を踏破せよ

 別に困難と言う訳ではない。事態は寧ろ順調と言える。だが……、
「あ、暑っ苦しぃ……」
 アテナ・カナメ(アテナマスク・f14759)は思わず口に出した。
「……なんたる光景」
 額に手を当て途方に暮れた様な声を漏らしたのはリチャード・ライナス(merchant・f29694)だ。
「確かにすごいねぇこの光景は。私も女横綱目指して鍛えてはいるけど……」
 迅雷・電子(女雷電・f23120)は他二人よりは平静だが、それでも呆れとも感心ともつかない声を漏らしている。
 本音が漏れるのも無理はない。三人は今、ハイテンションな筋肉達にズラリと取り囲まれているのだから。
「中々のバルクだ! 此処に並んで俺の上腕二頭筋と見比べないか!」
「その筋肉、アナタ見せ筋派ね? アタシもそうなのよ~。やっぱり女は筋肉も華やかでなくちゃね!」
「逆にそっちのレディは実用の筋肉だね! 質実剛健、目的の為に引き絞られた筋肉もまた美しい!」
 神たる御業を顕すユーベルコードで筋力強化人間を創りボディガードにしたリチャード。同じくフォームチェンジで筋肉が肥大化したマッシブアテナの姿になったアテナ。二人の作戦は寧ろ的を射ていた。肉体派である己の頭脳を過信せず、迷うリスクを負うよりはと2人と同道する事にした電子の判断もまた、正しい。
 筋力強化人間は筋肉達の間に溶け込み筋肉の海を泳ぐリチャードを的確に守っているし、筋肉にはストレートな方が刺さるだろうと真っ向質問した事も功を奏した。虚仮威しとは言えデカい筋肉を備え、筋肉の友として接したアテナへの彼らからの好感度も高い。結果、武道館への案内を頼んだ二人はそれぞれ既に快諾を得ている。
 後は、どう言った理由からか『筋肉を魅せ合い、讃え合う』事に積極的になっていた彼らとの歓談(マッスルトーク)を一通りこなせば、余計な回り道も無く武道館へ歩を進める事が出来るだろう。だが……、
「俺の仕事は筋肉なくても出来たからなぁ……筋肉に酔う前にウィザードブルームで脱出するか……」
「私もグリーンアテナにチェンジして飛び越えちゃおうかなって……さっきは行き止まりに当たっちゃったし、案内が欲しかったんですけど……」
 アテナとリチャードはコソコソと話し合う。……だってしんどいんだもん。
 リチャードはそもそも筋肉に対する愛が足りないし、当人は寧ろ細身だ。アテナに至っては必要だからチェンジしただけで本当はあまりこの姿にはなりたくないとすら思っている。体を鍛えるのは良い事だが、流石にこれはやり過ぎだとも。
「全身のバランスや下半身の安定性か。確かに上半身ばかりじゃいけないね……そうだ! リバース・ヒップ・レイズと言う鍛錬があってね!?」
「うーん、この筋肉。この艶。丸で今生み出されたばかりの様な初々しさだ……あ、触っても良い?」
 ……やり過ぎと言うか何と言うか、押しと圧が強過ぎる。
 作戦は成功している。成功しているが、遂行の間に挟まるこの時間が二人には普通に結構キツいのである。
「……相撲する敵がいるって聞いて来たんだけどねえ」
 先の態度の通り、電子は二人に比べれば平気ではあるのだが……しかしそもそも彼女は目的があってこの場に来ているのだ。また、力士だった父親の背を見て育ち自らも相撲の道を志す彼女に取って、この場に居るボディビル志向のマッチョ達は聊か方向性が違う。中には実用の筋肉を主に鍛えている者もいるようだが、それはどうやら今回の件以前から身体を鍛えていた類らしく、正直少数派だ。
 つまり、端的に言えば電子は電子でアウェイであり、かつ中々目的地に近づかない現状に少なからず焦れてきても居た。
 そうして三者三様に、こうなったら確実性より強行突破に移るべきかと本気で考え出していたが。
「乙女が来たぞ! 通してくれたまえ!」
 そこに新たな声が響いた。
 猟兵達だけでなく、周囲の筋肉達も周囲をキョロキョロと見回す。声の主が発見できなかったからだ。
「ぐぬぬぬ、流石筋肉固い。筋肉か……それもまた、乙女……ではないな。乙女とはちょっとベクトルの違う何かだ」
 続く声に位置を確認する。見ればそこあったのは、筋肉……いや、その筋肉の合間から眩い輝きが漏れ出ている!
「別に鍛えることは好きだし筋肉も好きなのでかかってこんかいウォーッと押し通っている訳だが……絵面的に不味いだろうか」
 説明的な独り言何だか哲学何だか分からない言葉を垂れ流しながら、密集した筋肉の間を力業で押し通ってこうグニイっと出てきたのは四天王寺・乙女(少女傑物・f27661)だった。
「だが、私を止めることは例えどのようなナイスバルクであっても不可能だ」
 背に負った後光でマッチョ達のワセリンオイル肌をギラギラギンに美しく彩り、マッスルガイズ達に道を譲って貰い(※大本営発表)ながらやって来た彼女は自信満々の顔で仁王立ち、腕組みをし、への字に引き結んでいた口を開いて高らかにこう叫んだ。
「何故ならばそう、『ハイカラさんは止まらない』のだから!」
 ……そーですね。
 何せそう言うユーベルコードだ。犇めき合う筋肉の中を無理やり通るのは確かに戦闘行為ではないし、であれば後光を纏う人間の突然変異体ハイカラさんである彼女を阻める者など居はしない。
 筋肉ではない。当人も言っていた通り筋肉とはベクトルが違う感じだが、それはそれとして濃い人が来たなあ。マッチョ達含んだ皆がそう思った。 
「で、君達はこんな所で何をしているのだ」
 が、乙女の言葉は思いの外割と真っ当かつ端的だった。
「ええと、武道館に案内して貰おうとしていたんです」
「ああ、そうだったそうだった」
「ごめんごめん、忘れてかけてた」
 アテナの言葉に案内を請け負っていた筋肉二人がはたと手を打つ。筋肉賛歌に影響され筋肉が優先順位の一番上になってはいる物の、オブリビオン化しない限り別に悪人になっている訳ではない。話の途切れる切欠さえあればアッサリと此方の意を汲んでくれる様になった彼らは、こっちの方向だよと歩みを進めようとして……筋肉に阻まれた。
「……そんな」
 鍛える事に夢中な筋肉達が密集するあまり、例え道順が分かって居ても真っ直ぐ行くには邪魔が多過ぎるのだ。2人の案内人は困ったなと頭を掻き、猟兵達はゲンナリとする。
「じゃあ、道をつくってもらおうかね……」
 溜息の様な、或いは脅す様な、平素より少し低い声を電子が漏らした。
 振り返った案内人が一瞬目をむく。少女が無造作かつ躊躇なくその制服を脱いだからだ。……だがその下から現れたのは裸身ではなく、胸にサラシを巻き、腰に履いたレギンスの上にマワシを付けた相撲スタイル。女横綱を目指す彼女の戦姿だ。
「あたしは相撲を取る為に毎日鍛えてんだ。武道館には越えるべき敵(力士)がいる」
 そして堂に入った構えを取り、片足を大きく上げて。

 ダァンッ!!!

 轟音が鳴り響いた。確かに地が揺れた。ただ一回の四股でだ。
 夢中で鍛えていた筈の筋肉達の誰もが動きを止め、固唾を飲んで見やった先。少女が……いや、一人の力士が逆側の足を振り上げ。振り下ろし。
 轟音。
「通してもらうよ」
 いっそ静かなその言葉は、しかしこの上ない恫喝であり、そして恐怖を与える。
 ゆっくりと、潮が引くように筋肉達が離れて行く。その迫力は、異変に中てられて身体を鍛えだした程度の俄かマッチョ達に逆らえる様な物ではない。
「ふぅん……」
 だからこそ、幾人か残った妖怪達に電子は薄っすら笑いすらする。
 異変以前から武張った生き様をしていたのだろう。大量に居ればそう言った者が居るのは当然で、そう言った者の中には恫喝すれば反発する者も居る。だが、こうなれば後はもう罷り通るだけだと、女力士は構えを取り。
 その彼らが突然次々と倒れ出した事でギョッとして思わず駆け寄った。
「ちょ、おいどうした……何だこれ。眠ってる?」

 カサカサと足元を何かが通った気がした。
 バサバサと羽音が聞こえた。
 ツンと、甘いような酸い様な……酷く危うさを感じる匂いがした。
「妖怪だろうと生き物だ。そりゃァ眠くなっちまって倒れる事もあるだろうさ」
 何時の間にか、其れが居た。

 明らかに己が何かをしたのだろうに、飄々と笑う朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)は敵ではないと主張する様に両手を広げて見せる。よく見れば、周りにも転々と倒れている筋肉が居る。それから鳥の羽。彼が此処に来るまでに通った道を残すかの様に。
「いやァ有難い。倒れてくれりゃア歩き回れるかと思や、多すぎて脚の踏み場が無くてなァ。進むのに難儀してたのさ」
「踏んづけて行けばよかったのではないか?」
 独特の雰囲気を持つ男に、けれど乙女は物怖じしなかった。割と身も蓋もない事を聞く。
「そりゃア困る。必要もなく殺すわけにゃいかんでね」
 帳尻が、合わなくなる。
 そう言って笑う男に乙女は良く分からんなと首を傾げて手を伸ばし……リチャードに掴み止められた。
「止めておいた方が良い」
「ああ、俺は《服》も《宿(からだ)》も疫毒のカタマリ。触らんように気をつけなァ」
 逢真が笑ってそう説明し、リチャードを見ていっそ艶めいた笑みを薄っすら浮かべた。同じか、近いとされる存在故にその危険に気づいたのか。或いは別の理由か。
「ま、邪魔を退けてくれるならあたしも有難いよ」
 妙に張り詰めた空気を割る様に、電子がそう言って歩き出す。ある意味水を射された彼女だが、そもそも本命は武道館に居る。早く行けるならその方が良いのだ。振るい損ねた力はこの先で存分に振るえるのだから。
「これでようやく迷宮を出られましたね。本当、何でこんな事になったの……」
 拓けた視界にホッとしつつ、アテナが改めてぼやいた。
「なァに。世界が死のうとしてンだ。狂気に満ちてもさもあらんだ。つまっとこ、いつものカクファンだなァ」
 そう軽い調子で笑ったのは逢真だ。本当に平気げに泰然自若としたその態度に、他の猟兵たちはそれぞれに感心した様な呆れた様な目を向けた。
 けれど彼からすれば全き本音である。神として膨大な人の死を、多くの奇天烈な死に様を見てきた彼からすれば、その『人』が寄り合わさって出来る『世界』の滅び(死)がどれだけ狂っていた所で、寧ろさもあらんと感じるだけ。
 眷属どもに眠りの毒を扱わせながら、人の形を取った病毒は筋肉の巷に歩を進める。

 そして猟兵達は、戦いの地へと辿り着いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『蝦蟇河童』

POW   :    跳躍浴びせ倒し
単純で重い【跳躍からのボディプレス】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    蝦蟇突っ張り
【張り手】が命中した対象に対し、高威力高命中の【舌の攻撃を交えた連続の張り手】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    蝦蟇ベロ攻撃
【口】から【鞭のような長い舌による巻き付けや投げ】を放ち、【痛みや拘束】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●あやかしのちからびと

 当世に置ける相撲のプロである力士は、その体形でアンコ型とソップ型に分類されている。アンコ型はアンコウのシルエットに由来する、肉付きの良く丸い体型の事。重量から来る突進力と安定感に秀で、どっしりとした肉の鎧を纏いながらも闘えるその剛力無双ぶりは傍目にも分かり易い。逆にソップ型は元を辿れば鶏ガラの比喩に端を発した痩せ型を指す。ただ勿論それは力士にしては痩せていると言うだけではあるが、それでもアンコ型と並べればいかにも細く、筋肉質さと俊敏さに秀でる代わりに重量から来る突進力と安定感に置いてはどうしても見劣りする。
 だが、それは現代の普通の人間を基準にした場合の話だ。例えば猟兵、例えば妖怪。人ならざる力や肉体を持つ存在に取っては話が変わってくる。
 河童は怪力を誇る妖怪である。蝦蟇はそもそも生物として跳躍力に秀でる、強靭な下半身と脚を備えた存在である。その二つが合わさった存在が鍛えに鍛え、見事なまでのソップ型の肉体を作り上げたとなれば……それは寧ろ。

 ズッガァァァァン!!!!!

 バァァン!!!! グァンッッ!!!!!

 武道館に轟音が鳴り響く。爆弾が爆発した様なその音は、その実ぶつかり稽古と突っ張り稽古(鉄砲と呼ばれる)の音だ。
 河童の怪力、蝦蟇の足腰、そして筋肉賛歌の鍛錬。
 慮外の存在であるからこそ成立する、安定感と俊敏さの両立。正に反則級のフィジカル。
 彼らは妖怪である。そして力士である。更に、筋肉でもある。
 ……紛れもなく、難敵だ。
アテナ・カナメ
【心情】ムキムキ迷路の次はカエルのお相撲さん…バラエティに富んでるわね…。こっちのカエル達も暑苦しいのは同じだけれど…相撲についてはよく分からないけど…とりあえず戦わせてもらうわ!

【作戦】力は完全にあっちが有利ね…だったらこっちも強さが増すブルーアテナにチェンジして挑むわ!敵の攻撃は【見切り】や【残像】で回避よ!そして隙を見つけたら複数の敵に火の玉アタックで体当たりを食らわせたりヒートスタンプのヒップアタックを食らわせるわ!「尻相撲ってのもあるんでしょ!?聞いたことあるわ!」
(絡み・アドリブOK)


黒木・摩那
あのカエル、めちゃ体格いいじゃないですか。

なんだか勝てる気がしないんですけど。
帰っていいですか?


この相手とは組み合ったら負けます。
ここは速度で勝負です。

魔法剣『緋月絢爛』で戦います。
相手の動きをスマートグラスで追いながら解析。
動きを読んで、UC【月光幻影】で相手の死角を採ります。
そこから【鎧無視攻撃】で首や腱を狙って攻撃します。

いざというときは秘蔵の激辛唐辛子を振り撒いて撃退します。



●筋肉を測れ

 武道館に着いてしまえば、後は迷う理由も無かった。ただ鍛錬の音と思しき轟音の方を向かえば、何かの神秘の働きか非常識な程に大きな柔道場。だが、扉を開けば其処で行われているのは勿論柔道では無く……
「ムキムキ迷路の次はカエルのお相撲さん……バラエティに富んでるわね……」
 暑苦しいのは同じだけれど。と、アテナの愚痴めいた呟きがポロリと落ちた。
 無理も無い。犇めき合う肉・筋肉・水気・肉・ガマの油・筋肉・筋肉・筋肉・筋肉……色々違う要素もあるが、結局大半筋肉である。いや、傾向としての違いを語るなら、外の筋肉達は多分に見目重視の筋肉の者が大半で、悪く言えば見かけだけの筋肉だったのに対し。概ね蛙のシルエットを持ち、よくよく見れば河童の特徴を備えるこの妖怪達は。
「あのカエル、めちゃ体格いいじゃないですか」
 背後からヒョコリと顔を出し中を覗いた摩那がゲンナリとコメントした。
 彼女の言葉通り、蝦蟇河童達は体格から大きい。それ自体は元々なのかも知れないが、それに加えて外観からもその四肢にミッシリと筋肉が詰まっている事が伝わって来る重量感があった。……つまり、実用筋一辺倒でそのガタイを形成しているのだ。
「なんだか勝てる気がしないんですけど。帰っていいですか?」
 摩那の判断と言葉は愛も変わらず冷静だった。て言うか冷静過ぎて撤退しそうになってる。

「確かに力は完全にあっちが有利ね……でも、だったらこっちも!」
 摩那を振り返ったアテナは一言同意したが、続いたのは諦めの言葉では無い。
 刹那、青が舞う。纏ったマントに描かれた焔をなぞる様に、けれどマントのそれとは違う色。より高温を示す青い炎がつむじ風の如く女ヒーローを巻き囲み、次の瞬間にはその身体を飾る。アテナマスクがチェンジする3つのフォームの内、尤も戦闘力に秀でるブルーアテナ。その威容である。
「……あの相手とは組み合ったら負けます。ここは速度で勝負です」
 その姿を見て、摩那が踵を返しかけていた身体を戻す。そして確認を取る様に作戦を語る。
 ブレイズキャリバーのそれともまた違うアテナの炎を見ただけで、摩那はその力の種類と、ユーベルコードの傾向を読み取ったのだ。そして己の力に系列が近く、傾向が一致するその奇遇に気付いた。
 勝てる気がしないと愚痴ったのは、あくまで自分一人の場合だ。普段より小悪魔的……言い替えれば他者を手玉に取れるほどに思考が早く計算高い彼女は、この出会いに十分な勝機を見出した。
「セーフティ解除。サイキック使用上限解放。機動可能時間カウント始め」
 不敵な笑顔と共に引き抜かれた魔法剣が眩く輝く。刀身で目まぐるしく移り変わるルーン文字が不可視の力場を紡ぎ、摩那の身をいっそ絢爛に飾る。その様を見たアテナの顔にもまた笑顔が浮かんだ。
 頷きを交わし、そして二人のサイキッカーが奔る。


●筋肉を弄べ

「ゲコォ!」
 柔道場の壁の一部が爆砕した。蝦蟇突っ張り……蝦蟇の足腰による踏み出しからの張り手の威力だ。当たれば痛いでは済まず、しかもそこから舌を交えた連撃が意識を刈り取りに来るだろう。
「当たればですけどね?」
 蝦蟇河童が絶句して振り返ろうとする。己が掌底を叩き付けた筈の相手の声が、己の真後ろから聞こえたのだから当たり前だ。
 だが振り替える前には既に、魔法剣『緋月絢爛』の一閃がその首を薙いでいる。その冴えは鍛え上げた筋肉の鎧を容易くすり抜ける。妖怪達が遅い訳では無い。だが、爆発的に増大した速度に短距離テレポート迄駆使する摩那が速過ぎるのだ。
「ケペー!!」
 比してアテナの速度は其処まで圧倒的では無い。だが、それでも尚張り手は空を切る。総合的に戦闘力の増したブルーアテナの見切りは、河童達の動きを紙一重で避けるに十分な地力を備えているのだ。
「見つけた、そこ!」
 そして体制を崩した河童の隙を突く。己自身を火の玉にするが如く青き炎を纏った体当たりは、妖怪力士の身体を焦がしながら吹き飛ばした。
 二人は二人共、方向性こそ違えどその俊敏さで敵を翻弄する戦い方を選んだ。蝦蟇河童達は力士としては破格の素早さを誇る、だがその速度は、反射は、人を超えると言う意味を持つ『超能力者』たる二人を捉えれる程では無かった。
 数を頼みに四方を囲み、死角からアテナの背後を狙ってすら……
「右後ろ45度3m。見え見えですよドサンピン」
「ゲグァ!?」
 赤い粉が顔に掛かり悲鳴と共に転げまわる。丁寧な罵倒と共に摩那が激辛唐辛子を投げつけたのだ。言葉通り己の背後に居たはずの妖怪に向け正確に。一瞥も目を向けずにだ。
 ……勿論種も仕掛けもある。彼女の付けている眼鏡、スマートグラス『ガリレオ』に投影されたセンサー情報は視界を視界以上に補う。
「ケペッパー!」
 ならばと他の蝦蟇河童が二匹同時に別方向から摩那に踊り掛かる。アテナは唐辛子に目を潰された個体の捨て鉢の攻撃をかわして為か一歩離れた位置に居る。フォローは間に合わない。其の筈だった。
「残念。残像よ」
 女性らしい丸みを帯びた臀部が、しかしこの時だけは無慈悲な鉄槌が如く蝦蟇の横顔をぶち抜き砕いた。妖怪達の動きよりもずっと早く、アテナは先の返礼とばかりに摩那のフォローに回っていたのだ。一方を処理されれば当然、摩那は危なげなくもう一方を迎撃し打倒している。
「尻相撲ってのもあるんでしょ!? 聞いたことあるわ!」
「いや、それは確か違ったと思います」
 故にこそ、即席とは思えない連携を完成させた2人には、ちょっとした冗談を言い合う余裕すらあった。
 ……いや多分アテナは本気で言ってるっぽいけども。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

迅雷・電子
【心情】さー!相撲を取りに来たよ!たのもー!…げっ!まさかのカエルの力士かい…カエルはあんまり得意じゃないなあ…でもこの感じ…なるほど、確かに力士だね!私も燃えてきたよ!さあ、取り組もうじゃないか!(四股を踏みつつ)

【作戦】蝦蟇の攻撃は【見切り】で回避か、【怪力】で受け止めるよ!そこから【カウンター】で連続つっぱりを浴びせたり、相手のまわしを取って相撲投げを食らわせるよ!敵の攻撃をくらっても【激痛耐性】で耐えて見せる!「舌も使ってくるとはさすがカエルだねぇ…楽しくなってきたよ!」と相撲を楽しむよ!(絡み・アドリブOK)


九十九・静香
力士の方々ですわね!
昔はとてもできはしませんでしたが、今は可能なはず
女人ではありますがいざ挑ませて頂きます

クロ様スーツの上からまわしを着けて相撲スタイルでお相手しましょう
四股を踏みながら(◆踏みつけ)UCを発動
複数同時相手ならばそれ相応の筋肉増強で迎え撃つまでですわ
視線の数だけ筋肉を強化致します

◆怪力腕でのツッパリで敵を◆吹き飛ばしましょう
向かってくるものは足さばきで体位を変えてかわし
◆カウンターで敵のまわしを掴み思い切り放り投げましょう

ベロの筋肉までも鍛えているとは、蝦蟇の方ならではですわね、素晴らしい!
ならば四股踏みで◆衝撃波を発生
体勢を崩した所でベロと◆手をつなぎぶん投げますわ!



●筋肉大相撲

「さー! 相撲を取りに来たよ!たのもー! ……げっ!」
 意気揚々と入って来た電子だったが、思いの外に一瞬怯んだ。柔道場に犇めき合い戦う妖怪達が概ね蛙の姿をしていたからだ。同級生からは女雷電と呼ばれる典型的な男勝りの彼女だが、それでも女子だ。カエルはあんまり得意じゃないなあ……と漏らすのも無理はない。実際凄い両生類密度だし。
 だが。
「ベロの筋肉までも鍛えているとは、蝦蟇の方ならではですわね、素晴らしい!」
 視線の先、筋肉が戦っていた。あ、いや令嬢が戦っていた。いやいや……えーと、そう、筋肉令嬢が戦っていた。言わずと知れた静香である。己と融合した黒粘液謎生物を全身に纏い黒いスーツとした上にマワシを付けた彼女は、河童達に応じて相撲スタイルで戦っている。
 身体の線の出るピッチリスーツの上から長い舌を幾重にも巻き付けられた令嬢の姿は、言葉だけ聞けば煽情的と言えるのだが。実際見るとガチンコそのもの、蝦蟇河童は筋塊を投げ飛ばそうと舌筋に全力を籠め、静香は投げられまいと床を踏み締め全身の筋肉で迎え撃つ。正にマワシを取った力士と取られた力士の攻防そのもの。
「……なるほど、確かに力士だね! 私も燃えてきたよ!」
 電子は破顔一笑である。
 これ以上遅れてなる物かと四股を踏めば。その玄人染みた動きに気づいた蝦蟇河童達が一斉に襲い掛かって来る。彼らも彼女と同じく相撲を愛する存在、確かな技術を積んだ力士と見れば戦いたいと思うのだ。
「どすこいどすこいどすこい!!」
 女雷電の返しは先ず真っ向勝負! 余りの強さに幾つもの技を禁じ手とされたと言う雷電に準えられたその二つ名に相応しい渾身の張り手。そして息を吐かせず突っ張り、突っ張り、突っ張り! 体重を乗せた連撃が、最初の張り手で頭を揺らされた蝦蟇河童の身体を打ち据える。
「グァッ!」
 だが彼らも力人、負けじとその身を宙に躍らせ……全身を使った浴びせ倒しを叩き込む!
「そのジャンプ。さすがカエルだねぇ…楽しくなってきたよ!」
 蝦蟇が黒目がちなその目をむいた。電子が、力士としては紛れも無く小兵と言える少女がよりにも寄って妖怪の巨体を受け止めたからだ。鍛え抜いた猟兵としての怪力……勿論ノーダメージではない。だが倒れない! 吐いた言葉は寧ろ気合十分。
 河童達の目の色が変わった。これは、この娘は本物だ。最高の敵手だ。力士だ!
 双方心身万全。意気は軒昂。正に此の場、八卦良し!


 だが全ての蝦蟇河童達が電子に向かったわけでは無い。静香を敵手と定め、向かい続ける妖怪も多く。その目にはある種の尊敬の入り混じった対抗心が籠っている。
 其れはそうだ。実際彼らはいっそ崇敬しているのだ。……信じられない事に、何故か天井をぶち抜いて(本当に何でだと蝦蟇河童達は思った)突入して来て以来、かれこれ数時間休む事無く戦い続けている筋肉聖女の底なしの獅子奮迅ぶりを。
「昔はとてもできはしませんでしたが、今はこの通り」
 少し感慨深く呟きながら、かつて病弱であった令嬢は四股を踏んだ。
 ガォン!!
 電子に比べればその動きは素人のそれである、しかしその筋量が技術の不足を覆す。轟音と共に巻き起こった衝撃波に一匹の河童が大勢を崩す。わなないたその舌を筋肉聖女がいっそ優しく握る。そして、ぶん投げる!
 この化物めと。言葉を扱えるなら彼らも呻いただろう。その動き冴えに一切陰りは無い……いや、寧ろ尚強くなっている様にすら見える。そんな馬鹿な。
「見られれば見られる程、滾り沸き立ち活性化する筋肉!」
 これぞ見せる。いや魅せる筋肉の真髄と静香は叫ぶ。視線の数だけ己を強化するユーベルコードの効果と言えばそれまでかも知れない。筋肉は重量でもある、この場の誰よりもデカい筋量を魅せながら無尽蔵に戦い続ける彼女の武威は確かに妖怪達の視線を釘付けにしている。だから疲労以上に増強されているのだと言うのは理屈ではある。だが……其れでも。
「筋! 肉!」
 怪力椀が唸りを上げ、また一匹の蝦蟇が吹き飛び、その先の壁に埋まる。
 これを、この有様を何と評せば良いのか。正に怪奇の域。そして筋肉。されど令嬢。……それこそが『怪奇!筋肉令嬢』である。

「楽しくなってきたよ!」
 横でそんな激闘をされれば、当然電子もボルテージが上がらずにはいられない。
 張り手の雨の中に槍の如く放たれる舌の一撃、死地としか言い様のないその脅威に対し怯まず踏み込む。見切れるだけ見切り、無理なら受け止め耐えきる、鍛錬の日々を超える彼女は激痛への耐性には自信がる。そしてやられた分をやり返す!
 張り手と突っ張りと舌が真っ向から打ち合わされる。カウンター。カウンターへのカウンター。何度も何度も何度も。幾たびもお互いを打ち据え傷つけながら、けれど両者一歩として引かない。
 電子は笑っていた。目前のカエル面の表情は読めないが、きっと彼も笑っているのだと確信している。だって楽しいのだ。痛い、苦しい、辛い、危ない、けれどそれら全てを覆す程に、今楽しい!
「さあ、もっと取り組もうじゃないか!!」
 そう、相撲は楽しい。その笑顔は凄絶でありながら、けれど眩い程に輝いていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

朱酉・逢真
心情)ひ、ひ。ムリだこりゃ。俺じゃアどォにも。いやマジで、フィジカル重点タイプとは相性が悪ィんでねェ。真っ向勝負じゃ勝ちの目ひとつもありゃしねえや。
行動)なもンで横から邪道といきてェとこだが。どうやら他のおヒトらはそうでもない。真剣勝負をするってンなら、俺がくちばし突っ込むのも野暮だ。邪魔せず観衆していよう。審判つとめたっていい。本格的に殺す時間になったら、権能の残りカスで《水》操って、力士カエルを干してやろう。カエルとかっぱ、どっちも水に依る生きモンだろう。頭の皿から水かきの先まで、ヒビ割れッほどに枯らしてやるさァ。ひ、ひ。



●筋肉を奉る

「ひ、ひ。なんだこりゃ。いやマジで」
 飄々とした調子に珍しくも僅かな呆れを含んだ声で、けれどそれ以上に上機嫌で逢真は笑う。
 機嫌が良いのも道理で、激闘の音の中彼の周りだけは平穏を保っている。猛威を振るう蝦蟇河童達は、あたかもそこに結界があるかの様に彼に近づかない。……神たる彼の権能か? 違う。
「邪魔せず観衆していようっつったのは俺だけどなァ」
 幾重にも重ねられた座布団の上に座り、頭を掻きながら酒杯を呷った。持参ではない、蝦蟇河童達からの提供である。挙句彼の性質を聞いてわざわざ毒酒を用意して来た。古風ゆかしく鳥兜。普通なら兎も角この神に対しては歓待である。
 要するに、彼は今観客……と言うか賓客として持て成されていた。何でだ。

『フィジカル重点タイプとは相性が悪ィんでねェ。真っ向勝負じゃ勝ちの目ひとつもありゃしねえや』
 柔道場に入って来た時、そう笑った彼の言葉は嘘では無い。尤も、病毒に戯ぶ神たる彼の権能は数多い。彼自身に言わせれば残りカスだが……それでも横道、邪道を以て妖怪達を横合いから屠る事も可能だったろう。
 だが、真剣勝負に燃える他の猟兵達を見て止めたのだ。
『くちばしを突っ込むのは野暮天だ。ひ、ひ』
 だから後は『引き抜く』だけで間近の水妖を割れ砕けるほどに干からびさせれる状態にあった≪水≫の操作を解き、それじゃあ御客に徹しようかと口にしたら……河童達の態度が変わった。

「別にかしこき辺りじゃあねえンだが……」
 相撲には神事の側面がある。そもそも始祖と祭られる当麻蹴速と野見宿禰の戦い自体が天覧試合であり、試合そのものを神明加護の祈願が為に奉納した例も数多い。そもそも本場所の前日には立行司が祭主となり土俵祭を行う、『神に御覧頂く』為の物でもあるのだ。
 逢真は神である。触れば即死しかねない危険物で、その本質は凶星で、今やどういった宗教世界の元に在ったのかすら不明の存在だが、それでも紛れもなく神なのだ。それが試合を観覧したいと言うならば……己らに向けられた感情を糧とする、言い替えれば認識や定義がその実存に繋がる存在である妖怪達が、蔑ろに出来る筈も無い。
 猟兵とオブビリオンは敵だ。最後には殺し合いにもなろう。それは彼らも分かって居る。だがそれはそれ、これはこれ。角力に生きる我らが一代晴れ舞台、今はただ神よどうか御照覧あれ。
「おう」
 短く請け負った本意は、常なる博愛か、それとも敵への親愛か。
 其れは文字通り神のみぞ知る事であった。

成功 🔵​🔵​🔴​

鳳凰院・ひりょ
リチャード・ライナスと連携
アドリブ・アレンジ歓迎
キャラ崩壊も大丈夫です!

WIZ

その場の状況を見て、思わず回れ右したくなるのを必死に我慢
あの暑苦しいのに組み付かれるのは正直否だなぁ…うん(白目
囮作戦に激しく同意し自分は援護に回る

武道館内の無機物を媒体に【固有結界・黄昏の間】を発動
水の疑似精霊に指示を出し、敵が囮に注視している間に敵の足元を凍結させる
相手が囮に気を取られ、足も封じる事が出来ればこっちのものだ
万一反撃して来たとしても【落ち着き】ながら【見切り】で回避しつつ【ダッシュ】で一気に間合いを詰め退魔刀で一閃

あぁ、早く帰りたい、この無駄に暑苦しい空間から早く脱したいと強く願う


四天王寺・乙女
古式ゆかしい相撲を極めんとする妖怪力士には、最新のモヲドで立ち向かうが吉と見た。
そう、私が選ぶのはこのコード……「乙女虹霓之事」!

要は組み付かれるよりも速く、背後を取ればよろしいのだ。
八卦良しの声と共に準備し、のこったの声と共に輝く。

1680万色に。目まぐるしく。

これぞゲヱミング乙女の必勝、猫……いや、妖怪騙し!
同時に増大したスピードと反応速度で背後を取り、全力でぶちかまして押し出しを狙う。
八艘飛び?いや、今の私であれば十六艘をも飛び越えてみせよう。
これぞゲヱムの理、聖なる16進数のF……F艘飛びだ!

なんか表記バグのように見えるな。まあいいか。


リチャード・ライナス
鳳凰院・ひりょと連携
「悪いね、来てもらっちゃって。さっさと片付けてウマいモノでも食べに行こう(肩ポン笑

WIZ
囮作戦を提案し、蝦蟇が囮をベロ攻撃している隙に攻撃
まぁ俺も、触れ合うならもう少し相手を選びたいし(本音!?
「戦闘前に敵へ)言いたいことがあるなら、今のうちに聞いてやるけど?【動物と話す】

UCで知性強化人間作成
「行けハカセ!(囮となり、知恵を使い蝦蟇の気を引くよう指示
蝦蟇がベロで囮を捕らえる・ひりょの援護で足が封じられる等で隙ができたら【気絶攻撃】
自分が攻撃対象になったら【空中浮遊】で逃げ回る
もし捕まっても反撃はせず、ひりょの攻撃を生かすため耐える



●筋肉を知る

 武道館での戦いは激化の一途を辿っていた。
 戦いの熱気に中てられたのか、蝦蟇河童同士での戦いすらそこかしこで起きている有様で……つまり。そこら中で筋肉ムキムキの蛙人間的なのが組んず解れつ絡み合っている訳で。
「あの暑苦しいのに組み付かれるのは正直否だなぁ……うん」
 そんな状況を見て、鳳凰院・ひりょ(人間の聖者・f27864)は既にこの場に来た事を後悔し始めていた。
「悪いね、来てもらっちゃって。さっさと片付けてウマいモノでも食べに行こう」
 その肩をポンと叩いて笑いかけたのはリチャードだ。
 ひりょは冒険仲間(ルビ:筋肉地獄に呼びつけた神)を見返す。
 ……回れ右したかった。心底したかったが、必死に我慢して踏み止まる。
「まぁ俺も、触れ合うならもう少し相手を選びたいし」
 対するリチャードの本音火の玉ストレート。……それなのにこの状況に俺を呼んだのかよ神。そうひりょが思ったかどうかは不明だが、兎も角もリチャードにも考えはあった。
「言いたいことがあるなら、今のうちに聞いてやるけど?」
 クルリと戦いの巷を振り返り、丁度打撃を喰って吹き飛んできた蝦蟇河童に声を掛ける。先ずは相手を知る事。其れが作戦に必要だったからだ。妖怪達は人語を扱わない様子ではあったが……如何に外面がどこにでも居そうな普通の青年でも、彼もまた神の一柱である。身に纏うのは言葉持たぬ動物との会話を可能とする、旧き神々の時代の品だ。
『貴き御神よ。我等益荒男也。強きを求め。己を磨き。そしてより強き者と切磋する。其れのみが望みに御座る』
「…………」
 想像を絶してガチな答えが返って来た。
「あの、リチャードさん? リチャードさん!?」
 突然宇宙の真理を見せられた猫みたいな顔で沈黙したリチャードに、河童の言葉が分からなかったひりょが無駄に焦らされたのも無理からぬ……事なのだろうか。この青年、さっきから割を食いまくってる気がするが、そこが聖者らしいと言えるのかも知れない。


●筋肉は割と酷い目に会う

 一方、乙女は輝いていた。
 1680万色に。目まぐるしく。
「古式ゆかしい相撲を極めんとする妖怪力士には、最新のモヲドで立ち向かうが吉と見た。私が選ぶのはこのコード……『乙女虹霓之事(オトメハニジイロニカガヤク)』!」
 説明しよう!
 このユーベルコードはハイカラさんとしての後光を七色に輝かせる事でゲヱミング乙女モヲドに変身し……ごめん、説明中に何だが既にもうどういう事か分からない。ゲヱミング乙女って何だよ。
 勿論、目の前で突然虹色に輝き出された妖怪達はもっと訳が分からない。ゲコッとかゲゲエとか驚きの鳴き声を漏らして思わずその身体を硬直させる。
「これぞゲヱミング乙女の必勝、猫……いや、妖怪騙し!」
 勿論その隙を逃す乙女では無い。一瞬の硬直の間に蝦蟇達の背後を取り、全力のぶちかましを仕掛ける。
「八艘飛び? いや、今の私であれば十六艘をも飛び越えてみせよう。これぞゲヱムの理、聖なる16進数のF……F艘飛びだ!」
 引き続き何か意味不明な事を宣っているが、乙女は至って真剣であるし、コードによって爆発的に増大させられたその速度も実際凄まじい。蝦蟇河童は纏めて数匹が成す術も無く押し込まれて行く。
「さあ、このまま押し出しだ!」
 乙女は気合十分。そして!
 ……柔道場に土俵は無い。そして勿論、押し出しも無い。少なくともルールとしては無い。
 じゃあどうなるかと言うと……最後にはぶつかる訳だ。壁に。
「ううむ、バグだろうか。宮司は何をしているのだ」
 宮司とか居ません。
 壁に折り重なって減り込んだ蝦蟇河童達を見やり、乙女は何処までも真面目な顔で首を傾げた。


●筋肉を屠る

「行けハカセ!」
 結局、リチャードが選び取ったのは囮作戦であった。
 大迷宮で使った命を与える権能によって創り出された知性強化人間は、なるほどハカセっぽい見目をしており、高い知性を備えている。囮を命じられればその思考力を以て最適解を出すだろう。
「あぁ、早く帰りたい、この無駄に暑苦しい空間から早く脱したいと強く願う」
 ひりょは呟いた。囮作戦に激しく同意した彼である。
「相撲の技も四肢無き蛇体には無意味! 大蛇の群を召喚してくれましょう!」
 そこにハカセの叫びが木魂する。勿論ハッタリだ。だが、造物主たるリチャードと繋がっている彼の言葉は妖怪達にも通じ、その存在の半分が蝦蟇である彼らにとって蛇は天敵だ。
 妖怪達の注意が完全に知性強化人間に向き、何匹かは本当は出来もしない召喚を止めるべく舌を伸ばす。
「そこだ! 場よ変われ!」
 そしてそれこそが彼らの作戦。妖怪達の足元が……正確には畳が一斉に液体へと変じた。其れもただの水では無い。操る事が出来る四大元素の中から彼が選んだ、水の元素の疑似精霊。間髪いれぬ青年の指示により、その状態を個体……つまり凍り付かせた。
「ゲコォッ!?」
 蝦蟇河童達に一斉に動揺が走る。足元が崩れ、あまつさえ氷の中に足先を封じられたのだ。ハカセをその舌でとらえた個体も居たものの、正直それどころでは無い。
「良いぞひりょ。バッチリだ!」
 魔法の箒による空中浮遊で凍り付いた床から離れたリチャードが、勿論そのチャンスを逃さずメイスを振るい次々妖怪達の意識を奪う。疑似精霊に命じ己の脚のみは封じない様にさせているひりょも同様に退魔刀を振るい、2人は次々と妖怪達を無力化して行った。


●筋肉は呼ぶ

 激闘の中に居る猟兵達の中、最初に気づいたのは乙女であった。
 さりとて別に手柄と言う訳でも無い。押し出しと言う(実際に成立するかどうかは別として)道場内の端への移動を繰り返す戦法を取っていた彼女は、結果的に誰よりも『外』に近い位置にいる時間が長かった。だから聞こえたのだ。
「これは雷鳴か……それも、何だこの数は」
 激しい戦いの音に紛れ、何時からか武道館の外では激しい雷鳴が、在り得ぬ程の数の轟音を何度も何度も鳴らしていた。それは丸で戦いを彩る太鼓の音が如く。
 一匹一匹、倒れたまま起き上がらなくなった蝦蟇河童達は増えて来ている。戦いはそろそろ決着を見るだろう。激しくそして熱い戦いに、妖怪達は力尽きながらも満足している様にすら見えた。
 刀折れ矢尽きる有様にあっても尚満足に笑う程の全力の名勝負。それに燃え上がるのは戦った当人たちだけでは無い。例えば、戦い其の物を求めて世界を滅ぼす様な異変を巻き起こした黒幕ならば……

 戦いの幕は閉じようとしている。だが、それは終わりでは無い。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『雷鬼』

POW   :    雷拳
【電気を帯びた拳 】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    雷鼓連雷撃
【背の太鼓を叩く事により複数の雷 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    蝕電撃
攻撃が命中した対象に【電気 】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【電撃】による追加攻撃を与え続ける。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアテナ・カナメです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●いかづちのおに

 別に筋肉を愛していた訳では無い。寧ろ彼女自身は、過剰な筋肉は付けないスタンスだ。動きが鈍くなれば彼女自身の持ち味が活かせなくなるからであって、別に厭うていた訳でも無いのだが。
 では何故、世界の終焉に際し筋肉を望んだのか。マッスル天国或いは筋肉地獄が形成された事自体は予定外にしても。それでも彼女が先ず強壮なる筋肉をカクリヨファンタズムの住人に望んだ事自体は事実なのだから。
「カッ」
 答えは簡単だ。彼女が『筋骨隆々な者』と戦うのが好きだったからだ。
 電気帯びた拳を叩き込んでも倒れず耐えきる耐久力。
 放った雷の雨の中、怯まない所か矢でも潜るかの様に雷撃を弾く拳。
 そして此方の電撃に仰け反る事すら無く反撃の一撃を放つ強さ!
 歯応え。そう歯応えだ。弱い者イジメも別に嫌いじゃない。だが、強き者を打ち倒し踏み躙った時の快感はその比では無い。そう、彼女は戦いを求めていた。強者との戦いを。容易ならざる強敵との激闘を。だが勿論。
 勝つのはオレだがな。
「カカカカカカカカカカカカカ!!」
 呵々大笑と共に雷の雨が武道館を襲う。
 轟音。爆音。大雷鳴。
 収まった時に見えたのは雷雲渦巻く空。オブビリオンが直撃させた天の槍の群が、武道館の屋根全てを粉々に砕き切ったのだ。
「良い感じに暖まってるじゃねえか猟兵共! 最ッ高に食い出がありそうだなあ!!」
 好戦的。
 一言で言えばそれだけの事だ。だが、其れはオブビリオンである。カクリヨファンタズムに置けるそれは、とどのつまり世界を滅ぼすほどの我欲を持つ者と言う意味。そして彼女が望んだのは、戦いなのだ。
 バリバリバリと、その全身を雷が舞い踊る。背に負った太鼓に当たり、戦いの音楽を奏でる。
「カ、カ、それじゃあ闘ろうか。オイ、簡単に壊れんじゃねえぞ?」
 そこに立つのは雷の化身。
 戦い、蹂躙し、世界すらも砕こうとする、雷の鬼である。
九十九・静香
いよいよ大物の方ですわね
引き締まった良い筋肉です
我が筋肉の力を持って全力でお相手致します!

雷の中でも輝く筋肉を所望、と筋肉的に察し致しました!
ならばこの新技で!
UCで我が全身の筋肉を◆電気属性を司る性質に変化
近接で応戦するだけでも周囲に迸るであろう敵の電気を吸収し帯電していきます
◆グラップルや◆怪力拳、◆踏みつけを全身の筋肉での◆重量攻撃で仕掛けていきます

敵が大技の超近接拳の一撃を放ってきたのなら
全身の電気を脚部に集中
筋肉は電気で動くそうです
つまり電気を集中すれば反射と脚力を高める事も可能!
筋肉を電気で無理矢理活性化しての◆ジャンプでギリギリ回避
◆カウンターで電気を腕に集中し◆力溜め怪力拳



●筋肉を信じろ

 鬼は頑健で剛力なる敵手を欲し、世界に筋肉を求めた。
 であればこの出会いはある種必然とすら言える。
「良いね。近くで見てみりゃ一層良いねお前」
 雷鬼が凶暴に笑った視線の先、聳え立つは正に筋肉の巨塔。筋肉令嬢九十九静香。
「貴女も、引き締まった良い筋肉ですわ。我が筋肉の力を持って全力でお相手致します!」
 上品な笑顔と賞賛の言葉、そして脈動する巨大な筋肉。そのどちらも彼女であり、一切の矛盾なく両立するその強靭さに鬼はその笑みを一層深くする。
 殴り甲斐のありそうな肉体。決して油断出来ない剛力。正に期待通り、或いは期待以上の強敵!
「行くぜ猟兵!」
 踏み込み、肉薄するその全身は雷を纏っている。ただ至近距離で応戦するだけでも感電は免れない。
 筈だった。
「雷の中でも輝く筋肉を所望、と筋肉的に察し致しました!」
 鬼が目をむいた。その言葉が図星だったからではない(まあ、主旨としては的確と言っても良いのだが)、己の全身から迸る雷が令嬢の身体に……いや、その筋肉に吸収されていったからだ。帯電した筋肉は更に力強く、言葉通りに輝く。
「無限の筋肉の可能性! 筋肉ならば雷すらも内包します!」
 想像。創造。新技・属性可変筋肉!
 微塵の疑念も交えぬ揺ぎ無い筋肉への信頼の元、静香の筋肉は電気属性を司る性質に変化したのだ。
「なんだそりゃ!?」
 呆れつつ、しかし同時に強敵がより強靭なる存在となった事に尚笑い雷鬼が再び拳を振るい。しかしその手を静香が掴み、組み付き(グラップル)から床に叩き付け更に踏みつけ(ストンピング)る! これでもかと蓄えられた筋肉の重量が乗せられた攻撃に怯むも、されどやられ続けるオブビリオンではない。
「面白え。全部喰えるもんなら喰い切って見せろよ!」
 轟音。掲げられたその手に雷が落ちた。小指から順に握られて行くその拳にこれまでとは比較にならない電気が纏わり付いて行く。
「大技ですね。ならば!」
 対する静香もまた、吸収し帯電した電気を己が脚部に集中。
「御存知かしら? 筋肉は電気で動くそうです」
「ハ、知らねえよ!!」
 鬼の拳が雷速で振り降ろされる。

 ガ ゴゥオン!!

 落雷の如き轟音と共に、武道館の床が砕け散った。鬼の拳は床に達しておらず、余波だけで丈夫な畳の床を穿ったのだ。その威力、武威、直撃していれば只では済まず……。
「つまり電気を集中すれば反射と脚力を高める事も可能!」
「んなっ!?」
 見上げた空に、筋肉が宙を舞っていた。
 その言葉通り、電気で無理矢理活性化した筋肉による大跳躍。紙一重で雷拳を回避した令嬢は、その電気を脚から腕に移動させ。
 鬼が我が身を庇う様に両腕を上げる。筋肉令嬢の怪力は既に十分すぎる程知っている。生中な防御で防げる一撃ではない!

 ゴ グォウン!!

 響いた轟音は、先ほどの雷拳のそれに勝るとも劣らず。これより続く激闘を宣言するかの如く響き渡った。

成功 🔵​🔵​🔴​

茜崎・トヲル
かみさま(f16930)に呼ばれました
いやね? たしかにさくっと説明はもらったよ。もらったけどさあ。
影のなかから声かけてきておっけーしたらソッコー神隠しってどうなの??
いいんだけどねー合意だし。それに気楽だしい。
あはは、すごいパンチ! よーし、うけとめるぜー。からだぐしゃーってなるけど、おれ痛くないし、死なないから。
ダメージ返すな。おれも再生するし、自分を強化する。
おれは体をぶっこわしながら戦えるし(限界突破、継戦能力)肉体改造で強化して、化術で一部を武器にもできる。
きっとご期待にそえるぜ。地形ぶっこわすくらいの怪力でたたかうぞー!
見ててねーかみさま!


朱酉・逢真
白いのと/f18631
心情)歓待されて酒まで注がれちゃア、横紙破りも気がとがめらァ。ああ、信者みてぇなもんだからな。とはいえ俺じゃア力不足だかンなァ。空間切ってつなげて戦えるやつを呼んだぜ。つゥわけだ。行け。
行動)俺ァ応援に徹しよう。白いのに毒でも入れようか。ああ、敵に味方するようなこたァせん。ドーピングだよ。あいつの体はなんべんでも再生するが、それを早めて増強する。ああ、毒だよ。あいつ以外に使えばあっつゥ間にガンにならァ。敵にゃア手を出さん。真っ向から戦うにゃ、俺ァ弱すぎる。戰いおわったらお疲れさんの一言でもかけっか。



●筋肉は潰えず

 戦いも序盤から、その激しさは埒外。
 最初の雷の雨によって砕かれた屋根だけではない。ほぼ全ての壁すらも崩落し、そこは最早武道館とは言えぬ、瓦礫の山と化していた。
 崩落に分断されたか、或いは瓦礫の下に埋まったか、他の猟兵達は見当たらず。
 今は只、鬼と神が向かい合っている。
「てめぇにゃア手を出さんぜ。真っ向から戦うにゃ、俺ァ弱すぎる」
「カ! 三味線を弾くんじゃねえ」
 逢真の言葉を、鬼は韜晦だと切って捨てる。その拳に必殺の雷電が走り出した。
「神様なんだろ? オレの腰の骨でも折って見せろよ!」
 出来るものならなと。ただ頓に突撃し拳を振り上げる鬼に対し、しかし神は飄々としたまま何やら口の中で呟いて。そしてツイと、烟管を振る。と羅宇煙管と思しきそれは、雷鬼の拳が迫るより随分と早く空を切り。

 グシャッ!

 鈍く湿っぽい音が鳴った。肉が爆ぜ、血が迸る音だ。
「何だあ? 本当に期待外れだったか……よ?!」
 皮肉に笑った鬼の顔が、しかし直ぐに驚愕へと変わった。
「かみさまさあ、おっけーしたらソッコー神隠しってどうなの?」
 ヘラヘラとした笑い声が響く、逢真の声では無い。
 ……空間が裂けていた。先程烟管が通った線をなぞる様にバックリと。境界を繋げる小路が在り、そこに白い影が立っている。へしゃげた己の身体より内腑と血潮をぶちまけながら、なのに気楽な様子でいっそ稚く笑う。
 禍つ神と縁ありしキマイラ、茜崎・トヲル(塔・f18631)。御業の元に罷り越す。
「あはは、すごいパンチ! からだぐしゃーってなってる」
「……お前」
 鬼が初めて怯んだ。痛みは傷の深さと危険を報せる信号だ。戦いに明け暮れる身からすれば慣れ親しんだ友人であり、信頼できる助言者でもある。それを、この男はまともに認識している様に見えない。丸で、欠けて落ちた様に。
「返すな」
「ガァッ!?」
 ああそうそうと言わんばかりの気楽な調子でそんな風に言う。丸で幼子の様だと思うとほぼ同時に、雷鬼の身体が吹き飛んだ。丸で凄まじい渾身の拳を叩き込まれたかのように体をくの字に折り曲げがれきに突き刺さる鬼とは対照的に、トヲルの身体は冗談の様に綺麗に修復されて行く。
 不浄なる犠牲と銘打たれるユーベルコード。傷を返し、己等を増強する呪の如き奇跡。
「そうは言うがよ。歓待されて酒まで注がれちゃア、横紙破りも気がとがめらァ。とはいえ俺じゃア力不足だかンなァ」
 飄々と悪びれず逢真が答えた。それは先のトヲルの言葉への返事だ。間を挟んだ鬼の有様を、この神は意にも介していない。
「いやね? たしかにさくっと説明はもらったよ。もらったけどさあ」
 口を尖らせるトヲルの方も、憤怒の形相で起き上がる鬼の方を見てや居ない。ついでに逢真に対する態度も、どうにも本気で不満を申し立てていると言うよりそれを口実にじゃれついてるだけと言う風情がある。
「俺じゃ無理なンだっからよ、戦えるやつを呼ばなきゃなァ。つゥわけだ。行け」
 自分は応援に徹しようと笑い、神は無造作に白い獣に毒を盛る。そう、毒。尋常な生物に与えれば立ち所に全身が腫瘍と化し絶命しかねぬ劇物。死を知らぬ身体を持つ彼にのみ、それは強力な再生薬となる……毒と薬は表裏だ。
「いいんだけどねー合意だし。それに気楽だしい。痛くないし、死なないから」
 そんな物を盛られて尚、男は幼子が如き無邪気さで己の身体を壊す≒形を変える。メキメキと肉体改造、ガチガチと化術、限界を突破し戦いを継ぎ目なく続ける為の自己強化。指先を刃にすら変えて尚、マイペースさを崩さぬ傭兵を前に。立ち上がった鬼はいっそ嫌悪感さえ滲ませその全身から雷電を放ち周囲の瓦礫を吹き飛ばす。
「舐めるな猟兵え!!」
 怒りに任せた迫撃は周囲事キマイラを破壊し。それを受け止めながらキマイラもまた、己の身体と一緒に地形をぶち壊して行く。なのに凄惨な戦いの図画とは裏腹に、2人の調子は変わらぬままで。
「戰いおわったらお疲れさんくれェ言ってやンよ」
「やった! きっとご期待にそえるぜ。見ててねーかみさま!」
 それが鬼の心を逆撫で攻撃を更に激しくさせている事を。気付いていないのか。気付いていて態となのか。何れにせよ、盛大な削り合いがそこに始まった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

黒木・摩那
さすがは鬼ですね。
これは蝦蟇河童より明らかに強いです。
ですが、ここで帰ってはいつまでも鬼が残ってしまいます。
戦大好きな、こんな危険人物は放置できません。

しかし、やっぱり力勝負だと厳しそうですね。

まずは相手に当てられないことが大事!
防御をスマートグラスのサポートAIと【第六感】で相手の攻撃を避け続けます。
その上で反撃。
ヨーヨー『エクリプス』で戦います。
ヨーヨーで相手の腕を絡めとったところで、UC【獅子剛力】を使って、ぐるんぐるんと大回転からの、地面にびったんびったんに叩きつけます。

こう見えても意外と力持ちなんです。


リチャード・ライナス
俺を食っても美味しくないと思うけどな(真顔
今回は直接俺が対応するか。敵さん、めっちゃヤル気だし。
(と言いつつ、本気で戦う気はないヤサグレ

皆の攻撃の合間に雷鬼の【体勢を崩す】
もし俺がヤラレても、その隙に仲間が攻撃してくれるのを期待
雷鼓連雷撃は極力回避。空中浮遊すると余計に当たりそう?
ボロボロになっても粘る

(荒事を好まないヘッポコ神の、割とガチな持論)
相手に勝つだけが強さじゃないと思うよ。
しなやかに受け流してメゲないとか、固い意志を持つとかも強さなんじゃないかな。

仲間がひどくヤラレた場合はUC使用
お仕置きも、時には必要さ。

戦闘終了後、皆に声掛け
「何か食いに行く?焼肉は俺達を裏切らないと思うよ(笑



●筋肉を追い詰めろ

「相手に勝つだけが強さじゃないと思うよ」
 破壊の巷と化した戦場に、リチャードの声がポツンと落ちた。
 轟音の最中で張り上げた訳でもない声が、その声は不思議と良く通る。
「しなやかに受け流してメゲないとか、固い意志を持つとかも強さなんじゃないかな」
 ヘッポコと自嘲すれど神は神、荒事を好まぬ彼には彼の明確な信念と考えがあった。
 それが伝わったのか、偶々節目だったのか、鬼は攻撃の手を緩め、あまつさえ二秒ほど考えてからリチャードを見かえす。
「……おう、まあそれはそうだな」
 返答は意外なほど素直だった。けれど。
「だが、オレは戦うのが好きでね。そんで勝つのはもっと好きだ」
 続いた言葉にリチャードは苦笑した。信念と言う程では無いにせよ、オブビリオンの側にも好みと志向がある。お互いのそれが相反するのであれば。後はもうどちらかを排するしかないのが、或いは人のサガなのか。どっちも人ではないが。
「さすがは鬼ですね」
 言葉と共に隣に降り立ったのは摩那だ。
 先の戦いを超能力の連携で制した彼女だが、それでも流石に無傷とは言えない。まして目前で構えを取る鬼は明らかに蝦蟇河童達より強い。
「ですが、ここで帰ってはいつまでも鬼が残ってしまいます。戦大好きな、こんな危険人物は放置できません」 
「……仕方ない。今回は直接俺が対応するか。敵さん、めっちゃヤル気だし」
 リチャードはやさぐれた調子ながらも同意し、メイスを構えた。


「カカ! どうしたどうしたやる気あんのかお前! その箒は飾りかコラ!」
 挑発半分、苛立ち半分と言った風情で鬼が煽る。
 舞い踊る蝕電撃の連撃の中、リチャードが回避にばかり重点を置いて立ち回っているからだ。
「君雷降らせるだろ。空中浮遊すると余計に当たりそうだし」
 ギリギリで受け流しながら答えるリチャードは、なるほど先の持論を有言実行しているとも言えるし、本気で戦う気はない様にも見える。
「やっぱり力勝負だと厳しそうですしね。まずは当てられないことが大事!」
 摩那もまた、ヒラリヒラリと鮮やかに攻撃を躱す。
 サイキッカーならではの第六感が危機を感覚で掴み、サポートAIが演算しスマートグラスに投影した最適解が彼女の回避をより完璧に近くしている。鬼の怪力で振るわれる必殺の電気を纏った拳も、当たらなければどうと言う事は無い。
「喰い難い奴らだなクソッ!」
 摩那が反撃に放ったヨーヨーを躱し、雷鬼は悪態を吐く。
「俺を食っても美味しくないと思うけどな」
 リチャードのその声は背後から聞こえた。同時に走った衝撃が鬼の態勢を大きく崩す。
 彼もただ避けるだけではない。摩那の攻撃を合間を狙い、オブビリオンの意識の間隙を突いたのだ。
「もし俺がヤラレても、その隙に仲間が攻撃してくれれば良い」
 粘りに粘った回避の中で、その身は雷の余波を受け多少ボロボロになっては居た。けれどだからこそ、それは成る。
 神たる男の献身を無駄にはしないと、摩那が再度放ったヨーヨーが鬼の二の腕を幾重にも絡め捕る。
 ヒーロー戦争で手に入れたその武器の銘は『エクリプス』。その意味は期せずして、雷鬼が仲間に振るい傷つけた技と同じ『蝕』。……或いは、時に『権勢の失墜』を意味する。
「接地、反転。アンカー作動……力場解放!」
 鬼の身体は筋塊と迄は言わないまでも大柄で引き締まっている。その決して軽いとは言えない筈の肉体が宙を舞った。
「うおおおお!?」
 一回転、二回転、三回転。ぐるんぐるんと大回転。呪力エンジンが生み出す超パワーは正しく【獅子剛力】の技名に相応しい。
「私、こう見えても意外と力持ちなんです」
 小悪魔な笑顔とは裏腹に、一切の情け容赦なしに鬼を床に何度も何度も叩きつける摩那。
「……終わったら皆を食いに誘うかな。焼肉は俺達を裏切らないと思うし」
 目の当たりにしたリチャードが、場違いなほどノホホンとした事を呟いたのは現実逃避か。それとも単に彼の素か。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​


●さいしょのはなし

 その骸魂に飲み込まれたのは、別に親しい同族だったからだけじゃない。
 (その妖怪を飲み込んだのは、別に親しい同族だったからだけじゃない)

 考え方が似ていたからだ。望む物が同じだったからだ。
 (熱い戦い。手強い難敵。絶対の勝利)
 ずっとそんなものばかりを追い求めて来た。
 (それだけを望んで走り続けて来た)
 同じ事を考えていた。同じ事を望んでいた。
 (同じ事を恐れていた)

 勝つ事だけを考えてきた。気が付けば、負ければどうなるのか分からなくなった。
 (どうなってしまうのか。分からなくなった)
 いっそ全てに勝って、世界も壊してしまえば。もう負ける心配なんて無くなる。
 (そんな事を怖がる必要も無くなる)

 だからって、ビビって縮こまってコッソリ何て性に合わない。
 (どうせならより強い敵を倒したい。勝ちたい)
 それも出来るだけ派手にだ。そうだろ?
 (そうだな)

「「それじゃ、全員ブッ倒してオレが最強。これで行こうじゃねえか」」
四天王寺・乙女
戦いたい、それが貴様の望みだと言うのなら受けて立とう!
私の全力を籠めた七星剣にて、その悪心を討つ!

七星剣を構え、間合いを取る。
【勇気】と【覚悟】を胸に、遠距離攻撃を警戒しつつも多少は受ける覚悟で詰めより、間合いに入ったら一閃。
「そこだ!貰ったぞ、鬼よ!」
全力を籠めた剣で、頭部を引っ叩き、骸魂だけを攻撃する。

全力で強い相手と戦いたい。ならば、何故世界を滅ぼす必要がある!
命あれば、世界があれば、二度目、三度目があるだろう。
再戦にて相手の成長を楽しみ、自己の成長を実感できる機会となる。

何より、楽しい手合わせだったではないか。一度で終わらすのは勿体ないだろう?



●筋肉を喝破せよ

「ハァハァ……畜生が……」
 戦いの余波は瓦礫を更に細かく砕き、最早破壊されていない場所など無い。常にその最中にあった雷鬼の消耗が軽い筈も無く。肩で息をしている。だが。
「勝つのはオレだ。負けねえ……負けねえぞ……」
 その目に暗い焔が燃える。雷撃が舞い踊る。彼女の意地、骸魂の怨讐、或いはその両方が捩り合わさり昏い力を垂れ流す。このまま行けば骸魂も、飲み込まれた彼女自身もどうなる事か。
 そんな事等知った事では無いと気勢を吐く鬼の前に、仁王立ちにて立ち塞がったのは。
「私は乙女だ!」
 そう、乙女である。混乱しがちだが名前である。
 その手に握るは七星剣、北斗七星が意匠された退魔の直剣。『揺光』と言う銘の通り光を放つその刀身は、乙女自身がそれとは別にハイカラさん的後光を背負っているのと相まって、端的に言って凄い眩しい。
「なんだあ……お前……」
 苛立ちを更に募らせた声で呻き、搦め手を使って来るのかと警戒する雷鬼に対し。しかし乙女は直裁的かつ真っ向から叫ぶ。
「戦いたい、それが貴様の望みだと言うのなら受けて立とう!」
 七星剣を構え、間合いを取るや歩を進める。雷撃を警戒はしていても、それはそれとして真っ直ぐ突撃する気としか思えぬその様子に、鬼の警戒の色を変えた。
「だが、ならば何故世界を滅ぼす必要がある!」
 一歩、一歩、正面からオブビリオンに詰め寄りつつ。乙女が吠えた。
「命あれば、世界があれば、二度目、三度目があるだろう。再戦にて相手の成長を楽しみ、自己の成長を実感できる機会となる。違うか!?」
 それが只の問いかけであれば、雷鬼は骸魂の影響と当人の苛立ちの元『うるせえ』の一言で切って捨てたかもしれない。だが乙女は只一向に真っ直ぐ進み、荒れ狂う電撃を物ともせずにズカズカと迫りながら問うのだ。
「……ッ」
 その勇気と覚悟を前に、雷鬼が一瞬怯んだ。
 だが一瞬だ。直ぐに拳を握り、必殺の電気を篭めて拳を振るう。
「そこだ! 貰ったぞ、鬼よ!」
 されど乙女はこの期に及んでも逸れず曲がらず、真っ向全力。
 雷拳がそのかんばせに届くより一瞬早く、妖怪の頭を引っ叩く。
「ガッ!?」
 斬るんではなく引っ叩いた。妖怪が仰け反り、えって顔でたたらを踏む。だがそれだけだ。
 乙女悪伐之事(オトメハフジョウリヲタダス)。乙女の乙女力が攻撃するのは不条理であり、即ち悪心のみ。
「何より、楽しい手合わせだろうが。一度で終わらすのは勿体ないだろう?」
 自信満々。雄気堂堂。釣り上がった眉、決意過積載の瞳。そしてへの字口。私が四天王寺・乙女だが知らなかったのか? とでも言わんばかりのその態度。
「なんだあ……お前……」
 その言葉は先程と同じだが、ニュアンスは随分と違う様子で。
「乙女だ」
 対する乙女は相変わらずだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

迅雷・電子
【心情】ふぅ…敵ながら良い相撲が取れた…ありがとよカエル達…河童だかガマだか知らないけど元に戻ったらまたやろうね…さて、ついに現れたね…黒幕が!女の鬼かい…いい筋肉だね…まるで女版風神雷神の雷神だね!…見せてやるよ雷神!あたしの相撲をね!

【作戦】敵の雷は【第六感】で見極め【見切り】で回避するよ!さすがに電気を貰う訳にはいかないんでね…拳は【見切り】での回避か【怪力】で受け止める!
そして隙を見て雷鬼に【頭突き】を食らわせ怯んだ所を連続つっぱりからの雷電張り手だ!
「これがあたしの相撲だよ!」


鳳凰院・ひりょ
アドリブ・連携歓迎
WIZ

っと、あまりのもの暑さに軽く意識が飛んでいる間に!
すっかり出遅れたっ!
電撃を徹底マーク、【見切り】で回避
遠距離より光陣の呪札で【乱れ撃ち】

弾幕を張って削っても、相手はガチのパワータイプのようだし接近戦を挑まれるかもしれないな
あまり殴り合いは得意じゃないんだが…、敵の近接攻撃を【見切り】筒カンターの一撃を【破魔】を込めた拳で叩き込み【吹き飛ばす】

さぁ、最後の勝負と行こうか!
こちらも消耗して来たら黄昏の翼を解放
味方の消耗具合も力に変えて、【ダッシュ】で一気に間合いを詰め相手の防御を突破する【貫通攻撃】付与のアッパーカット
殴ると共に相手より【生命力吸収】、反撃の力を奪う



●筋肉の熱闘

「カカカカカカカ!」
 笑い声と、そして太鼓の奏でる戦闘音楽と共に雷が荒れ狂う。
「あまりのもの暑さに軽く意識が飛んでたってのに……今度はこれだよ」
 愚痴る様に零すも、ひりょは軽やかにその脅威を躱す。連続する雷撃は無差別であるが故に隙間が多く、徹底手にマークすれば見切る事は不可能では無かった。
 反撃にと光陣の呪札構える。乱れ撃ちに放たれた光の束が弾幕となり雷鬼に返される。
「だが良い気勢じゃないか。女の鬼かい……いい筋肉だね……まるで女版風神雷神の雷神だね!」
 同じく見切って雷を躱す電子が寧ろ良しと頷く。戦いの第六感にて要所を見て取りつつ「さすがに電気を貰う訳にはいかないんでね」と笑う彼女はいっそ上機嫌だった。
 先の戦いは彼女を満足させる『良い相撲』だった。対戦相手である妖怪達に、河童にせよ蝦蟇にせよ元に戻ったらまたやろうねと笑った彼女からすれば、ついに現れた黒幕たる雷鬼がひ弱いのでは片手落ちと言う物なのだ。
「カカ! ちまちましてんじゃねえよ!」
「やっぱりか。あまり殴り合いは得意じゃないんだが……」
 弾幕の発生源に気づき、猛然と走り込んで来たオブビリオンを見やりひりょがこぼす。ガチのパワータイプだとは分かって居た。接近戦を挑まれる事も覚悟はしていたのだが。
 対照的に電子はよくぞ来たとばかり、意気揚々と腰を落とした構えを取る。
「見せてやるよ雷神! あたしの相撲をね!」

 憑き物が落ちた……と言うには骸魂は未だ健在の様ではあるが。何処か何かへの怯えの様な物さえ見え、その裏返しか過剰に嗜虐的で苛立ち易かったオブビリオンの戦いは、此処に来てより直線的で迷いない物となっていた。勿論散々戦い続けた消耗は軽く無い物の、それが苦にならない程度には強い意志と戦意を振り撒いている。
「こいつを避けるかよ!? 苦手だなんざ謙遜する事あねえんじゃねえかお前!」
 蝕電撃を躱したひりょのカウンターの拳に吹き飛ばされつつも、ギリギリで踏み止まった鬼が賞賛すら込めて笑う。拳に篭めた破魔の力は間違いなく妖怪を身体を苛んでいるのだが、戦いの興奮がその苦痛を抑えている様だ。
 だが勿論、猟兵達とて二連戦なのだ。無傷で済む筈も無い。
「……効くう。流石は雷神の拳ってところだね」
 その拳をガッチリ受け止めた電子が呻いた。
 その怪力を以て拳の威力は受け止め切っている。だが纏った電気の蹂躙は防ぎようが無い。その熱と衝撃に全身を焼かれながら、けれど少女はその膝を折らない。
 土俵は無くとも、相撲を取る限り力士たる彼女はその身に土を付けないのだ。
「止せって。神ってガラじゃねえ! よ!」
 言葉とは裏腹に満更でも無さげな声から、シームレスに放たれた容赦の無いもう一撃の拳を寸毫の間で電子は見切る。
「おがっ? そうか蝦蟇共もやってたっけか……!」
 張て手と突っ張り、つまり手にばかり意識が行っていた鬼の隙を突いたのはぶちかまし……頭突きだ。そして仰け反り怯んだがら空きのボディを見逃す女雷電ではない。
「どすこぉぉぉい!!」
 連続で叩き込まれる突っ張りに追い込まれた雷鬼の目が見開かれる。大きく引き絞られたその女力士の掌が、己が扱うそれに見劣りせぬ電撃を纏って居たからだ。
「これがあたしの相撲だよ!」
 自負と誇りの篭った宣言。放たれた超高速の雷電張り手を躱す間など無く。

 ギッ グァァァアアアン!!

 齢十七の少女の掌が生んだとは到底思えぬ爆音。まさしく迅雷の音。
「カカ、カカカ……!」
 それでも。倒れない。負けたくない。勝ちたいと言う想いは、骸魂によって歪められ増幅されていたとしても。それでも彼女が元々持っていた想いでもある。最早息も絶え絶えになった骸魂の影響は薄れど、だからと言って簡単にその膝を折れはしない。
 ましてボロボロなのはオブビリオンだけでは無い。猟兵達も最早満身創痍であり……
「さぁ、最後の勝負と行こうか。翼よ、今こそ顕現せよ!」
 だからこそ。ひりょは此処で切り札を切った。
「マジか」
 呆れた様に呟く鬼の目前。ひりょの全身を黒白のオーラが覆う。己と、そして己の仲間の受けた全ての痛みを写し強大な翼を象ったその無彩色。ユーベルコード『黄昏の翼』。
「……面白え。本当に面白えなお前らは……!」
 その意志と身体全てを貫き屠ろうと言わんばかりのひりょの突撃。それに遅れてなる物かと続く電子の姿を前に。女鬼が漏らした音は激闘の愉悦か、それとも強がりか。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アテナ・カナメ
【心情】あれが黒幕の鬼…よく見ると綺麗な顔してるのにかなりの威圧感だわ…。これは強敵ね…最初からフルパワーで行くわよ!炎と雷…勝つのはこのアテナマスクよ!

【作戦】最初からスーパーアテナに強化し、雷鬼に立ち向かうわ!雷は【見切り】や【残像】で回避!隙を見せた所を【2回攻撃】のバーニングパンチやキックの【ヒートスタンプ】の応酬よ!最後にファイヤー・バーストを食らわせるわ!「あんな筋肉だらけの世界、もうこりごりよ!」



●筋肉を焼き尽くせ

「よく見ると綺麗な顔してるのにかなりの威圧感だわ……」
 黒幕の鬼であるオブビリオンを見たアテナマスクの最初の感想はそれだった。
 激戦故かそこに着目した猟兵は居なかったが、アネタの言う通り雷鬼の容貌は整っている。華やかな衣装を着て流行の化粧をすれば、その美しさに惹かれた男共が放って置かないだろうか。
 だがそれは無いだろう。これもまた彼女の気付いた通り、その威圧感は尋常では無く、衣装や化粧で隠せるかは甚だ疑問だった。激戦の末に全身傷だらけであり、消耗を経ているが。では最早容易い敵かと言えば……。
「強敵ね……」
 油断なくアテナマスクは構えを取り、その全身を包む黄金の炎を更に燃え上がらせた。
 そのモードの名はスーパーアテナ。黄金に輝く焔で全身を鎧い、己が意志が燃える限りその戦闘力を増強する。空を舞う彼女のフルパワーモード。
「カ、オレが雷神ならそっちは炎神ってか。ビリビリ来るじゃねえか」
 血と汗にまみれた顔で、けれど楽しそうに鬼が笑う。
 対するスーパーアテナとて、之までの戦いで消耗していない筈も無い。最初から全開で行っても尚、その身体に消耗と疲労は纏わりついている。
「炎と雷……勝つのはこのアテナマスクよ!」
 だが、その意志の力は衰える事無く。寧ろより強く燃え盛っていた。
「いいやオレだね!」
 放たれた雷撃は最早視界一杯を埋め尽くす程。残った力は全部出し尽くすと言わんばかりの攻撃の前に、スーパーアテナは成す術も無く撃ち抜かれ……。
 いいや。
「残像よ。受けなさい! バーニングパァンチ!!」
 雷撃の束の、あるかないかも分からない紙一重の隙間を縫い背後に回ったアテナの拳が鬼を撃ち抜く。しかもそれで終わりでは無い、仰け反った所に超高速で蹴りの追撃が襲う二連撃。共に黄金の炎を纏った打撃は、互いに劣る事無く大威力。
「ガハッ」
 受けた雷鬼の身体は木の葉の如く宙を舞う。そしてそのまま力なく地面へ落ち……。
 バチィッ!
 だが倒れ伏す直前、その身より放たれた雷撃が地面を撃つ。反動で無理矢理身を起こした雷鬼は壮絶な顔で、しかし尚も力強い構えを取る。
 限界だろう。いいや、寧ろ限界を超えているのだろう。それでも尚敗北を拒否する。
「それなら……全てを燃やし、破壊する!」
 決着は、埒外の威力でしか付き得ない。そう判断したスーパーアテナは詠唱を始める。その出力は、此方もまた限界など知らぬとばかり無限に上昇し続ける。スーパーとは『超』『上の』の意の接頭語。即ち、スーパーアテナとは、アテナマスクの更に上! アテナマスクを超えるアテナマスク!!

 対する雷鬼もまた、その拳を握り込む。これが最後の一撃と、反動など考えぬ最大出力の電気を篭め、骨が砕けても構わぬとばかりに力を入れる。
 実際の所、最早敗北への恐怖等無い。骸魂の声も殆ど聞こえない。ひょっとしたら、これまでの戦いで既に消し飛んでいるのかも知れないとすら思う。この戦いに勝ったとして、そのまま世界を滅ぼすのかどうかすら、最早思考の外だ。
 だが、それでも。今この時に手を抜くなんて出来やしない!
「あんな筋肉だらけの世界、もうこりごりよ!」
「カカ、そりゃ悪かったな! だがオレは楽しかったぜ!」
 交わされた互いの叫びは存外に微笑ましく。だがその威力は共に必殺であり。
 交差した互いの一撃は閃光を伴い、カクリヨの世界を白く染め上げた。


●そして筋肉は続く

 ヒーローとて、マスクを外せば只人である。
 異変解決後の様子を見に来た要・宛那。気弱な少女である彼女の正体がよもやこの世界を救った一人たるアテナマスクだとは誰も気付かない。
 傷痕はもう殆ど無い。ただ、今回の件で『目覚めた』者達を中心とした軽い筋トレブームと、それから何故か更に軽い焼肉ブームを残し、今やすっかり元のカクリヨファンタズムだ。
 なるほど何時ものカクファンだと言われる訳だ。何だか納得してしまいながら少女は、何かを探すように雑踏を見回す。
 別に約束したわけでも無い。けれど最後の最後、微かだけれど、確かに聞こえた気がしたのだ。「次は負けねえ」と……。
 それは逆説、敗北を認める言葉。そして再会を願う言葉でもある。
 空耳かも知れない。そもそも応えてやる義理も無い。けれど。

 風が吹いた。流されそうになった長髪に引っ張られ、その身が、視線が横を向く。
 その先。
「……!」
 負けたらどうなるのか。そんなの、負けて見れば分かる。当たり前の理屈だ。

 世は並べて事も無し。猟兵達に守られ、今日も世界は健在である。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年10月07日
宿敵 『雷鬼』 を撃破!


挿絵イラスト