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科学者執念物語・ 夢の架け橋、アグニドライブ起動実験!

#アポカリプスヘル #【Q】 #ストレイト・ロード #恒星エンジン

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#【Q】
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#ストレイト・ロード
#恒星エンジン


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●大事なのは拠点間交流!
 その日、チャラポラ・ンン博士は疲れた目を解しながらレポートをまとめていた。
 古びたボイスレコーダーを起動し、小さく咳払い。
「続き。以前まとめた『恒星エンジン』の理論を補強する為に行う『アグニドライブ』について。
 アグニドライブは球状の動力炉に中心へ向け、全方位あるいは特定方向からの照射による、エネルギーの圧縮実験である。
 この際に跳ね返るエネルギー屑が動力炉内面を傷つけ破損の原因となるので起動時間は極めて短いが、実験は理論も完成し設計図も作成、後は実際の製造と稼働に移るのみである」
 長かった。この時まで。
 チャラポラ博士はマイクを切ると、感慨深く唸る。すっかり白くなった髪を手ですいて、埃の被った写真立てを手に取った。
 掃除しろジジイ。
「ヨシコ、もうすぐだ。もうすぐ、夢の装置が完成するのだ」
 後は。
 遠くで聞こえる爆発の音に涙して、開いた窓から空を見上げる。
「平和になってくんねーかなー、チクショー!」
 拠点と拠点をつなぐ道で暴れるレイダーのせいで資材の整わぬ環境に、博士は不満をぶちまけたのだった。
 机上の空論だけ極まっても科学者には辛いだけなのよね。

●続・大事なのは拠点間交流!
 予知した内容にうーむと唸るのはタケミ・トードー(鉄拳粉砕レッドハンド・f18484)だ。
 集まってくれた猟兵らに振り返り、概要を説明するとホワイトボードを用意して──、やっぱ要らねえやと脇に捨てる。物は大事にしろメスゴリラ。
「今回、皆に集まって貰ったのは他でもない、アポカリプスヘルの交易を支える為の道作りに関して、だ」
 ひとつは農業の盛んな拠点、もうひとつは最近になって設立された新たな拠点だと言う。
「新しい方は資材も少なく、他拠点との積極的な交流が必要だ。だけどまあ、この拠点間にはレイダーがいるって何時もの話さ」
 その為に、交流も上手くいかず、物品も手に入らないのだと言う。
 彼らは積極的なアプローチを試みており、両者ともに友好的だが障害となるのはやはりレイダー。
「確認されてるのは三機だが、かなりの硬度と火力、機動性を備えた動物型の戦闘兵器だ。
 連携能力も高く、両拠点の武装では太刀打ち出来ていないのが現状だぜ」
 拠点の兵装は限られている。このままでは彼らの交流が途絶されるのも時間の問題だ。
 この絶望の大地に新たな息吹を送る為に、猟兵がやるべき事。
「拠点間ルートを切り開き、障害を排除して交流と交易が行えるよう手助けしてやってくれ。
 特に新拠点には別世界の猟兵から情報を得て、長年の構想を実現しようとする科学者がいる。荒唐無稽な内容でとても完成するとは思えないが、その為の研究はより多くの工夫、そして派生技術を生む。
 それは上手くすれば、アポカリプスヘルの文明復活の種にも成り得るから、是非とも資材確保の為に交易を成功させたい訳だ」
 それが科学技術だ。
 タケミの言葉は人類の明日を信じる者たちへの激励でもある。
 今回の目的である道路の整備は、一般的なマカダム舗装を行う。コンクリート舗装などではなく、砂利道のように砕石を敷均し転圧することで完成する、より簡易的な舗装だ。仮設道路としてもよく見られる上に技術力が低くとも、水捌けを良くし走行性を向上させるに便利である。
 特にレイダーの急襲が多く破壊され易いアポカリプスヘルでは、このような舗装が特に相応しいだろう。
 それはさて置いても、ふとした疑問が残る。
 このレイダーたちは、なぜこの場に留まっているのか。
「まあ、あれだ。待ってりゃ獲物が来る訳だから味をしめたのかもしれないな。
 害悪であることには変わらない。その拳で、立ち塞がる馬鹿どもをことごく粉砕するんだ」
 そう言って、女の姿を真似たゴリラは右拳を掲げた。


頭ちきん
 イィィイィイィィヤッハーッ!! えぇえええすえふだぁあああああっ!!
 頭ちきんです。
 アポカリプスヘルで円滑な交易が出来るよう、道を切り開き障害を排除して下さい。
 それぞれ断章追加予定ですので、投稿後にプレイング受付となります。
 それでは本シナリオの説明に入ります。

 一章では拠点間交流の為の道を作って下さい。コンクリート等はなく、舗装できるのはマカダム舗装という砕石(砂利より大きい石による水捌けのよい道)を敷き均す事で道を作ります。
 野良にゃんこや野良わんこ、モヒカン野郎といった障害を回避し舗装を進めて行きましょう。
 二章ではなぜか両拠点中間地点に巣食うレイダー、オブリビオンとの戦闘になります。敵は連携する為に激しい戦いになるかも知れません。
 三章は強大な力を持つボスとの戦闘になります。かなりの実力とかなりの隙の多さを誇る弱いのか強いのかよくわからないオブリビオンです。性能は高い為、注意して戦ってください。

 注意事項。
 アドリブアレンジを多用、ストーリーを統合しようとするため共闘扱いとなる場合があります。
 その場合、プレイング期間の差により、別の方のプレイングにて活躍する場合があったりと変則的になってしまいます。
 ネタ的なシナリオの場合はキャラクターのアレンジが顕著になる場合があります。
 これらが嫌な場合は明記をお願いします。
 グリモア猟兵や参加猟兵の間で絡みが発生した場合、シナリオに反映させていきたいと思います。
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第1章 冒険 『荒野を切り開け』

POW   :    道路を敷く為、荒れた地面の整地を行う

SPD   :    鋭い調査や直感によって、周囲の危険を避ける

WIZ   :    知恵や知識によって、最適な交通ルートを割り出す

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●野生のストーリーテラーが現れた!
「あんれま、まーた爆発しとるだで」
「はー、毎日毎日ご苦労なこってなぁあ」
「んだんだ」
 手拭いを首に巻き、汗を拭く爺さんたちは遠くに見える爆炎に溜め息を吐く。
 彼らはグリモア猟兵の語る新拠点の住人だ。もうひとつの拠点との道を造る為に精を出しているものの、いかんせん障害が多いのだ。
「ありゃー、きっとここらで溜まってるなんつーんだ? モスカスとかいう奴らがライダーメカと遊んでるんじゃろ?」
 カスはその通りだけどモヒカンだよ。あとレイダーメカだよ、ライダーだと正義の味方になっちゃうからペケだよ。
 爺さんたちは再び溜め息を吐いて振り返る。視線の先には使い込まれたタイヤローラー車と砕石の山。
 材料、道具はあるものの、戦いの中に飛び込んで行けるはずもない。
「あー、だーれが勇敢なお人はいねぇべか?」
「んだぁ。ここらでライダーなんて蹴散らす異世界から来たような強~い若者がどーんと解決してくれねぇべかなぁ」
「そんな都合のいいことは起きねえぺ。幾ら俺たちの新しく作った拠点がみずぼらすくて装備も資材もなぐで、通りががりの奪還者が思わず手を差し伸べるような惨状でもよぉ、そーんな奇跡は起こらないべ」
 ちらちら。どこかに視線を送るジジイども。
 ……なんだこのわざとらしい解説的台詞は……。
「あー、誰が助けてくんねーもんがなぁ」
「んだんだ」
「しゃーない、飯にするべ」
 そして爺さんたちは砂埃で汚れたブルーシートを広げ、昼食を始める。ほお、刻み海苔入りの俵型小結ですか。美味しそうですねぇ。
 駄目だこいつら。他人の力しかアテにしてねーわ。
 猟兵たちよ、不幸なお年寄りに代わって道を切り開くのだ!

・交流の為に、拠点間の道を切り開きましょう。方向などは爺さんたちが教えてくれますが、決してついていこうとはしません。別に誘拐しても構いません。
・新拠点の人々は道作りのノウハウがあり、猟兵から何か教える必要はないので、障害の排除と道造りに集中できます。
・道中、可愛いにゃんこやいたずらっ子な野良犬、アポカリプスヘルの癒し系アイドル・モヒカンなどが現れます。数々の誘惑を乗り越えて下さい。
美聖・らふる
……始め、まして……
新世界学園所属、美化委員の、美聖・らふる……と、言います……ええと
道を……開拓する、ということで……
ミーゼと、“ミゼラブル”が、適任、ということ、で……
派遣されて……きました……

こっちの方角で……いいんですよね……?
……では……30km圏内に、作業者が居たら、引き上げさせて……ください……
邪魔なものは……全部…………。

消します。

――――“清掃活動”を、開始します。



OS「サンクチュアリ」、射線上に友軍が居ないことを確認
ユーベルコード、“ユースアネイジア”起動
“メガデス”――――出力30%。威力を半減、射程を拡張
視界内に存在する『障害物』を、まとめて重粒子砲の放射で抹消します


アリス・ラーヴァ
アドリブ・連携歓迎

チャランポラン博士大変そーねー
パパもけんきゅーの為の資材の確保に苦労しているのー
あ、でもでも、そんな時は悪い人から貰ってきたら大体解決するのよー
という事で、道づくりと資材確保にがんばりましょー
まずは某所の畑から妹達を沢山呼んで、アリスの糸を編んでで荷台をつくるのー
さらに砕石を載せて【運搬】してー
道にぱらぱらまいてー
【怪力】でドコドコ踏み固めたらかんせー!
それから、ルート上の邪魔な瓦礫はポイポイーと投げ捨ててー
邪魔なモヒカンさんもポイポイーと投げ捨ててー…ってだめだめー
食べ物で遊んだらだめーお残し厳禁!モヒカンさん達はお家に持って帰るのよー
持っていた資材は新拠点に進呈しましょー


レイ・オブライト
血を流さずとも戦いは出来る、か
夢で終わらすにゃ惜しい話だ

飯は食いながらでいい。爺さんを一人持っていこう『怪力』
仮にもこの荒野を生きてきた男だ、そうポックリとはいかねえだろう
知ってる限りで最も舗装し辛い地点……
戦火で抉れた大穴やらデカい瓦礫なんかが散乱してるあたりへ案内してもらおうか
【一撃必殺】
まず殴って均す ※『地形破壊』。瓦礫は言うまでもなく、穴の対処なら周辺も同様に崩すことで進行可能な"坂"に変える
後は車に任せりゃあいい
モヒカンの巻き込みは恐らく気付きもしないが、野生動物は『覇気』で脅して逃げ去るよう仕向ける。ああ、あんた(爺)が食い足りないってなら獲ってやってもいいが?

※アドリブ他歓迎



●これが最新式の掘削機械じゃい!
「ほい、ロン。イードラツーペンペン草の表ドラ九、最強役満だべな」
 聞いたことない役なんですけど?
「はー、初めて聞いたわそんなこってもう、やってられんが」
 お前さんらもすかすて、麻雀のルール知らないんでねぇか?
 きったねえブルーシートの上で爺さんたちが和気藹々と牌無し暗記麻雀に勤しむ最中、砂塵に目を細めて髪をかきあげる少女が一人。
「……はじめ、まして……」
 控えめな声を上げたのは美聖・らふる(メガデス・f29983)。声に振り返る爺さんたちは、えらい別嬪さんだとらふるの姿に感嘆の言葉を漏らす。
 らふるは警戒の為に両手に持っていたライフルを、既に背負った白のライフルと共に背中に回した。敵意はないと示す為であるが、ジジイたちには必要なさそうだ。
「お嬢さん、お名前は? どっから来たんだべ?」
「え、と……新世界学園所属、美化委員の、美聖・らふる……と、言います……ええと。
 道を……開拓する、ということで……」
 あんたがやってくれるのか。
 らふるの言葉に困った様子の爺さん。さすがに他力本願とは言え、武装していても彼女は年端もいかぬ少女だ、気が引けるのだろう。
「…………、お、おい、あれっ、……あれ……っ!」
「なんな、今は話し中、…………!」
 ジジイその一に袖を引かれて、ジジイその二は視線を移し驚愕する。
 らふるの後方に佇む巨兵、キャバリア【MG-002 ミゼラブル】の存在に気づいたのだ。
「あんれま、なんてー立派な戦車だぁ」
 口を慎めジジイ。場合によってはセクハラだぞ。
 戦車、の単語にらふるは愛機へちらと目を向けるが、文化の違いである。追求するつもりもなく、少女は再度口を開く。
「ミーゼと、ミゼラブルが、適任、ということ、で……派遣されて……きました……」
 ミーゼはらふるの愛称であり、本人も自分を指す時にこう呼ぶ。爺さんたちは指し示されたキャバリアを見上げて嬉しげに頷いた。
「なーるほどなぁ、この戦車なら任せても大事ないんでねぇべか?」
「奪還者様々だでな、うん」
 ジジイその三は、「あそこに煙が見えるじゃろ?」と前を向く。すでに薄れているが、黒煙の跡が見える。
 そこがレイダーらのいる場所、つまりその向こうに彼らが交流を強化しようと考えている拠点があるのだ。
 と、そこから少し外れに噴き出す砂煙。
「……こっちの方角で……いいんですよね……?」
「いいんだどもぉ、なんぞあれ」
 正体不明の砂煙にらふるが確認していると、その方向から急速に接近する反応を確認。単一ではない、各方向から地中を辿り合流、増加する反応にらふるは肩のライフルを即座に構えた。
 荒野を削り、砂塵を立ち上げ、迫る脅威は土煙に姿を隠しながらもらふるの前方でその行進を止めた。
 吹き荒ぶ一陣の風が埃を散らし、陽の下にそれらは姿を現す。
 無数に輝くぬばたまの瞳がらふるたちを見つめて、陽を照り返す甲殻に身を包んだそれは、強靭な【鋏角】を横へ開き、鋭い【前肢】を振り上げた
「ギイイイイッ! ギチギチギチッ」
(こんにちはーっ!)
 見た目の割りに可愛い挨拶やんけ。
 直接脳内に響く声に特殊電波による通信かと目を丸くする。実際の所、猟兵である彼女は一目でオブリビオンを判別する能力を持つ為、眼前の奇っ怪な生物が骸の海に由来するものではないと理解していた。
 が、危険な現地生物かも知れないと警戒していたのだ。その警戒も肩透かしの明るい挨拶だが、何よりも。
「なんだぁ、こったらとこに大勢よう」
「ギチギチ、ギチチッ」
(道造りに来たのー)
 その風貌に恐れをなさない現地民。それは自らの姿を世界に順応させる猟兵の能力のひとつでもある。
 つまり彼女、彼女? たちは仲間なのだ。
 ライフルを下ろしたらふるは失礼しましたとばかりに、思念を飛ばしていると思われる先頭の個体に頭を下げた。
「ギッギッ、ギイィイィイ!」
(大丈夫よー。それよりも、道造りがんばりましょー)
 畑から妹たちも沢山連れて来たのだ、と背後に視線を向ければお腹が空いたのか涎を見せる群れの姿。
 畑産の割には肉食臭いぞ。
 彼女たちはアリス・ラーヴァ(狂科学者の愛娘『貪食群体』・f24787)、食べようと思えば好き嫌い無しに割かし何でもイケちゃうスーパー雑食系女子である。今回の群れはとある地域の畑を耕しながら成長している現地の妹たちを迎えての参戦だ。
 想像出来るだろうか、畑からよっこらせと出てきて大移動する彼女らの姿を──、いや簡単に想像出来るな。
 そんな彼女らの背に乗っていた者が二人、巨大なアリスの体を横に寄せて姿を見せる。
「こちら側にも人数は揃ったようだな」
 ズボンについた土を払い、被り直した帽子の下から鋭い視線を向けるのはレイ・オブライト(steel・f25854)。
 再生しきれない歴戦の傷や血の気のない肌など、らふるよりもデッドマンとしての特徴が強く現れていた。
 その隣では自分を運んでくれたアリス妹の腹を撫でてお礼を言う木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)の姿。
 やはりこちらも砂塵の被害を受けたのだろう、身に纏う外套を防塵マントとしたのか、すっかり汚れたそれを手で叩いて汚れを払う。
「……こちら側にも、と、言うのは……?」
「ああ、反対側、つまりここから見たら目的地側の拠点にも、他の猟兵が集まってるんだ」
 レイの言葉に小首を傾げたらふるへ、ウタは答えつつも外套の下からギター取り出し様子を確認している。埃は敵なのだ。
 少女はウタの言葉にふむと頷き、どなたかあちら側と交信出来ないかと言葉を投げた。
 今回、特別通信機らしい代物を用意していなかったので、意識を共有するアリスの幼い妹が、農業の発達した拠点に他の猟兵らと滞在している。
 アリスさんナイスぅ!
「ギチギチ、ギチチッ」
(何を伝えるのー?)
「……先に、ミーゼがアクションを起こす、ので……それから進んでもらうように、と……伝えていただければ……」
 らふるの言葉に、分かったと前肢を上げるアリス。彼女が電波ゆんゆんしてる間に、少女はおにぎりをむしゃこらしている老人たちへ振り返る。
「……では、皆さん……あちらの拠点方向……三十キロ圏内に、作業者が居たら、引き上げさせて……ください……」
「むぐむぐっ、……三十……ちう距離はよう分からんが、あの方向にゃだぁれもおらんよ」
「んだんだ、若いのは反対側へ狩り行っとるだでよぅ」
 それは好都合とらふるは溢し、佇むミゼラブルへと乗り込む。
「ええと……アリスさん、たちも、皆さん、ミゼラブルの後ろに隠れて……ください。
 ……邪魔なものは……全部……」
 消します。
 らふるの言葉は嫌な予感を覚えさせるに不足せず、異論を上げずにその背後へとアリス妹も含めて移動する。
 その際、爺さんたちの壁となるように、またレイ、ウタも守るようにアリスが彼らを中心にフォーメーションを組む。
「ギイイ、ギイイイイッ! ガチガチ!」
(準備いいできたのー)
「……了解、しました……。
 ──『清掃活動』を、開始します」
 それがクロムキャバリアのネバーランドに設立した小国家、『私立新世界学園』の美化委員の言葉であった。
 言葉を合図に対象の識別と被害範囲の即時計算を行うミゼラブルのオペレーティングシステム、【OS-San10/EP サンクチュアリ】が起動する。
 射線上に友軍が居ないことを確認する同時に始動するのは、ユーベルコード、【ユースアネイジア】。
 ミゼラブル製作目的でもある携行兵器、【MG-M01/BX メガデス】を制御可能な状態へと変形し使用する。動力源を同じくするらふる、ミゼラブル、そしてメガデスであるが、使用には搭乗者の命を危険に晒す事にもなりうる。
 その為、通常使用時はこのような制限を施すのだ。
「ミゼラブル、マスター・モード変更。メガデスの出力を調整──、出力三十パーセント。威力を半減、射程を拡張。
 射撃時の被害想定。……射角調整……掘削部を最低限に。視界内に存在する『障害物』を、まとめて重粒子砲の放射で抹消します」
 僅かに上向きとなった砲口。機械的な音声にジジイは固唾を飲み、レイは帽子を押さえ、ウタとアリスは瞳を輝かせた。
 清掃開始。
 簡潔な言葉と共に引かれたトリガーは、巨大な砲塔から破滅的なエネルギーの照射を行う。
 渦を巻くように吐き出されたそれは地表を削り、大気圏内を直進した。
 しかし。
「!」
 想定距離を進む前に、光の奔流は障害物に直撃した水流の如く四散する。
 そのまま照射を続ければ正体不明の障害を排除し得たかも知れないが、弾けるエネルギーが地表に与える影響が大きい。何より、計算不可能なエネルギー屑の飛散が人的被害を生み出してしまっては問題だ。
 らふるは冷却機関から水蒸気を噴射するメガデスの使用を中止し、トリガーを戻す。
 急速冷却される砲身を下げて、少女はハッチを開きコックピットブロックから身を乗り出した。
 遠方の存在は砂塵で確認出来ないが、こちらの攻撃を止めれる者などオブリビオンしかいないだろう。
「こりゃ凄いな、道を切り開く必要は無さそうだ」
 メガデスの一撃で赤々と焼けた土塊を爪先でつつき、思わず唸るウタ。
 とは言え、整形は必要だろう。射角を調整した事で深すぎる溝は出来ていないが、両端を整えなければ転圧の際に砕石が逃げてしまう。
 締め固められなければ、簡単に道は崩れてしまうものだ。
「……すみません……もう少し、上手くできていれば……」
「気にするな。大分楽になったさ」
 申し訳なさそうにするらふるへレイは帽子を押さえていた手を離し、口をあんぐりと開けて呆けたジジイの一人を持ち上げて肩に乗せる。
 何してんの?
「ギイィエエエエエ!」
(ここからはアリスたちにお任せよー!)
 閃光に目を隠していた妹たちに声をかけ、アリスが陣頭指揮を執る。道造りは始まったばかりなのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木霊・ウタ
心情
正に、この世界が希望の未来へ進んでくための道ってことだよな
絶対成功させようぜ

行動
人々や道を守るのを第一に

岩塊とかの障害物は炎で熱し膨張させて砕く

砕けた岩屑とか
砕石機で舗装材の材料にできるといいかも

犬猫
この荒野でも生き抜いてるなんて凄いぜ

この世界で食料は貴重だけど
もし人が食えないものとか
残り物があれば餌付けも試すぜ

番犬や番猫になってくれたら
敵の襲撃を察知しやすくなるよな

餌付けが無理っぽいなら
炎で脅かして追い払う
オブリビオンじゃないなら倒す必要はないもんな

モヒカン
炎渦でぶっ飛ばす
道が繋がって両拠点が発展したら
お前らの働き口ができるかもな?

事後
荒野の夜は冷えるけど…星は綺麗だ
ギターを爪弾く


御園・桜花
「穴を掘ることと食事の提供でしたら、人並みに出来ると思います」
ノーム達と食材満載のケータリング用キャンピングカーを持ち込み穴掘りや食事の提供を行う
4分の3のノームは道作りへ
残りのノーム達と一緒におにぎりとスープ作り
暑くて汗もかくと思うので少々塩分きつめで豚汁と白むすび
昼食の片付けが終わったら3時のおやつにビスケットとジュースを準備し配布
それらの合間に瓦礫を運ぶ等道作り手伝う

レイダーの襲撃は制圧射撃や高速・多重詠唱の属性攻撃で蹴散らすがオブリブオンではなくて人肉を主食としない共生出来そうな犬猫なら食事見せ道の外れに誘導し餌やり
なるべく穏便に邪魔を排除する

「皆さん、そろそろ休憩しませんか」


ケイティ・ネクスト
「では悪戯な猫は猫がお相手するにゃ。ヘイ、カモーン!」
 パチンと器用にも猫手で指を鳴らして楽し気に踊り出すにゃ。
「レッツダンス! パーリィナウ!」
 可愛いにゃんこやワンチャンも加えてダンスダンスダンス!
「そこの道行くモヒカンも一緒に踊るにゃー!」
 パリピの強引なノリでインド映画めいて皆で一緒に踊るにゃ。え、作業しないのかって? する訳無いじゃん。
「がんばれがんばれ! ファイトファイト!」
 まあ、その代わり応援して盛り上げるし。後、ダンスの動きに作業を混ぜてモヒカンを気付かせずに手伝わせるにゃ。
 ……ま、本当は触装蹂躙機のテストに来たんだけどにゃ。今はお踊るにゃ。



●協力者確保ぉ! 始めよう道造り!
 そんな新拠点一同とは大きく離れて目標拠点、今日も今日とて農耕に精を出す人々の姿が見受けられた。
「ふ~。今日は陽射しがいつもより辛いですね。
 あ、村長! あそこにあるのが昨日お話しした大根です。いやぁ、いい仕事してますよぉ」
 土で汚れたワイシャツとネクタイを払いながら、ムカつく程ににっこにこの男の報告を受けて、村長と呼ばれた男は満更でもなさそうに頷く。
 丸々と太った大根は、UDCアースなどで見かける一般的な大根より短いがそれでもこの荒野で育ったとは思えない瑞々しさだ。
「た、大変だァ~! 向こうからクソでっけぇ戦車が来るぞーっ!」
「なんじゃと!」
 そこへ息を切らして現れたのはモヒカン。膝に手をつく彼にホワイトカラーが急ぎ水を渡して息を整えさせる。
「はあっ、ふうっ、すまねえオトモダチよぉ~っ!」
「いえ、それより戦車というのは?」
「ああ。最近暴れてるレイダーたちの方向とは違うが、きっと騒ぎを聞きつけた新手のレイダーに違いねェ~。
 村長、ここは逃げるべきだぜ。畑なら幾らでも作れるが、命はそうはいかねぇ。種を持っていけば幾らでもやり直せる、今日より明日なんだろぉがよぉ~っ!?」
 明日より今日の顔して何を抜かすか。
 顔がすでにゲロカスの力説モヒカンに対し、それに同意して村長を見つめるホワイトカラー。村長は苦い顔をしていたが、そこに迷いはない。
「すぐに荷物をまとめて移動するんじゃ。畑を耕している大きなオトモダチも呼べば何とかなろう
 種類はもちろん、移動中の食料の確保も大事じゃ。小分けしてきちんと袋に詰めておくんじゃぞ。それから──」
「そんな時間はないぜ村長よぉお! 敵はすぐそばまで来てるんだぜぇ!?」
「見張りのクセになにしとったんじゃ!?」
 激怒する村長にテヘペロするモヒカン。やっぱりモヒカンはこうでなくちゃ!
 その間にも揺れる地面に響く足音、太陽を背に伸びる影は村長たちに覆い被さり、現れた歩行戦車が鋼の唸りを村に響かせた。
「さあ、早く種もみと食料と女子供を優先して逃げるんだ村長よぉ~っ、俺のお気に入りのピーちゃんも忘れないでくれよな!」
「どこにそんな時間があるんじゃ、抱き枕ぐらい自分で運べゲロカスぅ!」
「言い争っている場合じゃありません! まずは各村人に連絡を回し、置いていく物と持っていく物の確認と、それから緊急避難要項の最終チェックをですね」
「だからどこにそんな時間があるんじゃうんこたれー!」
「うんこたれてないです」
 混乱する彼らを他所に、歩行戦車は足を曲げて身を伏せるとハッチを開き、中から作業服に身を包んだ女が姿を現した。
 固唾を飲む彼らを切れ長の目で見回していると、その頭上にひょっこりと小さな芋虫らしき生物が姿を見せる。
(ワ・レ・ワ・レ・ハ・ウ・チュ・ウ・ジ・ン・ダ!)
「はうあっ!?」
「……はーっ……はーっ……う……宇宙人、じゃとぉ……?」
「ついに宇宙からもオトモダチが!?」
 周囲の人間に広がるテレパシー。
 三者三様の驚きを見せる面々に満足そうな芋虫を女は叱るように指先で突つく。
「アリスさん、そんな嘘は駄目ですよ!」
 まあ、起源は宇宙だけど地球生まれの地球育ちだし嘘っちゃ嘘だよね。
 続いてテヘペロならぬテヘキシャーを見せるアリス妹、幼虫を叱ったのは長いウェーブヘアを荒野の風に流すメイド姿。頭部から生えた桜の枝を揺らし御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)は三人へ向き直ると深く頭を下げた。
「お久し振りです、皆さん」
「お、おお、いつぞやの奪還者様。と、いうことは後ろの方も?」
「──アビー・ホワイトウッド(奪還屋・f24498)、よろしく」
 アリス幼虫を肩に移動させて軍用ヘルメットを取れば、腰までのブロンドが姿を見せる。
(きゃーっ)
 アビーは悲鳴を無視し、相棒以上の想いを寄せる戦術二足歩行戦車【M102『ラングレー』】から飛び降りて桜花の隣に並ぶ。
 この村とは交流があったのかと目で問えば、多少はと頷いた。彼女自身、まさかまたこの村にやって来るとは思わなかったろう。
 過去に村長となる爺さんの家を保護(未遂)したのがこの村の始まりとなるのだが、短期間で成長した村は大きな畑に農作物がちらほらと見えて、立派な成長を果たしている。
 他の村との交流の為に動くなど、この絶望の大地にしっかりと希望は芽吹いていたのだ。その実感に桜花は思わず涙腺を緩めたが、一番奥の畑を『えんーやこーら、どっこいしょー』とのんびり耕す機械を発見して即座に目を逸らした。
「むははー、わしらが来たからには心配はない!」
 現れたのが奪還者だと知るや否や、これで問題解決だと喜ぶ村人らを更に盛り上げるよう、九条・春(風渡り・f29122)は声を上げた。
 ふわりと着物を揺らすはのじゃロリババア。頭の上で結った髪と大人の雰囲気を持つゆったり着物が、底抜けに明るい春の印象を強調し、子供らしさに一役も二役も買っている。
「あれじゃ、きょーとーほ? ……第一歩……? くらいは作ってやるんじゃよー!」
 橋頭堡じゃ侵略じゃないですかぁ! 言い間違いも良し悪しがあるんだよ。
 勿論、そんな事を知る由もない村人たちは心強さに胸を打つ。本当にドラミングしてんじゃねーぞモヒカン。
 騒がしい空気に気付いた村人たちが、何事かと集まる中で猟兵仲間の影に隠れて欠伸を噛み殺すのはケイティ・ネクスト(蠱惑の仔猫・f26817)。
 猫に近しい姿で騒がしさから逃れるように桜花の持参した【ケータリング用キャンピングカー】の下に潜り込む。ドライバーの心臓に悪いから止めなさいね。
 日陰の心地好さに眠ろうと目を閉じるも、騒々しさの中に人ではなく、無機質な音をその大きな耳に聞き留めて片目を開く。
「んにゃ?」
 見えるのは人々の足だけではなく、機械的にぞろりと並ぶ多脚。さすがに気になってキャンピングカーから顔を出すと、ざわつく村人の中にあからさまな機械が一体いた。
「奪還者が来てくれたんだってよ!」
「へえ、これで向こうの拠点とも行き来し易くなるかもね」
『猟兵さんひゃっほーっ!』
「奪還者様々だぜ!」
「奪還者様ばんざーい、ってかぁ!?」
 わいのわいの。
 あからさまにオブリビオンっぽいですねぇ!
 この距離で気付かない無能な猟兵などいるはずもなく、団子虫のような装甲を継ぎ接ぎした機械をアビーは指で示す。
「…………、あれってレイダー?」
「き、機械ですよ。この農村の人工知能搭載戦車に違いありません!」
「おぬし、本当にそう思っておるのか?」
 呑気に村人と万歳してるオブリビオンを前に、春の問いを受けて桜花は目をそらす。
 まあ、一目で猟兵と見抜いちゃってるし言い訳できないよね。当のオブリビオンは小さい子供を背中に乗せつつ、再び農作業に戻っている。
 敵意もなく、ただの一機のみ。別世界にはUDC-Pという存在もある上に同じ猟兵である桜花の反応だ。
 アビーは小さく息を吐いてこれ以上は問うまいと腕を組めば、桜花は感謝を示して頭を下げた。
 よく分からないが話はまとまったと満足そうに頷く春。
(あ、みんな大変~。今すぐ隠れて!)
 脳内に響くアリス幼虫の言葉。
 唐突の現象から呆気に取られる村人たちを守る為、ラングレーを作動させたアビーと、桜花もいち早く反応してキャンピングカーを戦車の隣に移動させ盾としている。
 直後には強烈な光が空を裂き、爆風と砂塵が村人らの顔を叩く。
 春の綺麗にまとめた髪が風の暴力に耐える中、空に花開くが如く広がった光は粒子兵器によるエネルギー光。
 ケイティと言えば、いつの間にか車の屋根に上り、光の大輪を前に「たまや~♪」と声を張り上げ嬉しそうだ。
「あの方角、例の新拠点、か?」
 光が収まるのを待って、アビーは村長へ言葉を投げる。
「あ、ああ、その通りじゃ。しかし……今のは一体……?」
 恐らく、猟兵の攻撃だろうとアビーは確信していた。光源の移動からの推察であるが、攻撃と思われるそれに対抗したのはオブリビオンと見て良いだろう。
 とすれば、前情報通りの防御能力があると判断できる。
「…………。第二射は無いな、道を造る。ついてきて」
「へ? 何故に!?」
 ぼんやりとしていた村長の腕を掴み、水先案内人だと戦車に押し込める。
「ちょちょちょ、ちょい待っとくれい! この先じゃって、迷うことないじゃろこんな道もないような大地で!」
「戦車の中に居れば安全。多少揺れるけど、それだけ。連れて行ってもいいと誰かに言われた気がする」
「おい誰じゃそんなこと吹き込んだの! うんこたれじゃな!?」
 うんこたれてないです。
 農業拠点のジジイに涙のお別れとホワイトカラーがハンカチを振れば、畑を耕していた鍬を振って団子虫オンボロロボも別れを告げている。
 安全つってんだろ、猟兵嘘つかない。
 いやさっき嘘ついた猟兵いたな?
「穴を掘ることと食事の提供でしたら、人並みに出来ると思います」
 にっこりと笑みを浮かべてキャンピングカーの準備を進める桜花。この車があればどこでもパーラーが開ける、パーラーメイドたる彼女の夢が詰まった改造車だ。
 しかし残念ながら、めったに食べられない外界の料理とは言え先に進めばあるのは危険。連れ去られる者はいてもついていく者はいない為、桜花はとりあえずとばかり予め用意していたおにぎりとスープを村人たちへ渡す。
 あ、ラングレー君は揺れるからこぼすと危ないので村長の分はお預けです。
「道は、まあ……すぐにどうこうなるものではないが……!
 ドロ船に乗ったつもりで任せるが良いぞ!」
『うおおおおおおおおおっ! 奪還者様ヒャッハーッ!』
 使い古された言い間違いにも気づかず熱狂する農耕拠点住民たち。こいつら素がレイダーなのでは?
「皆がんばれにゃ~」
 ド派手な光の花も消えて、発進するキャンピングカーの上で揺れつつも日向ぼっこを始めたケイティ。
 こうして二つの拠点から猟兵たちは道を造り、先を目指す。
 この地に巣食うレイダー、オブリビオンを殲滅する為に。そして、この世界の明日の為に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

九条・春
【アドリブ連携歓迎】
【面白ければプレイング無視OK】

「むははー、わしらが来たからには心配はない! 道は、まあ…すぐにどうこうなるものではないが! あれじゃ、きょーとーほ? 第一歩…? くらいは作ってやるんじゃよー!」

目標
・特に指示がない限り、拠点間を結ぶ最短距離の間にある障害物(岩やら枯れ木やら)を打ち壊して回ります
・指示がある場合、一理ある! と理解を示した後上記行動を取ります

行動指針
・相棒の『ボロボロの木箱型ミミック』に乗っかり、ずんどこ前に進みます
・『対物剣』を振り回して障害物を打ち壊します

キャラについて
・若者(20代位まで)にはダダ甘おばあちゃんです
・積極的に殺したりしようとはしません


アビー・ホワイトウッド
アドリブ及び連携歓迎

道を造る。私のラングレーならローラー車の代わりも出来る。造作もない。費用対効果すごいけど。
二足歩行戦車にローラーを据え付けて履帯走行モードで押し固めて行く。

水先案内人として農業拠点の人を連れて行こう。有無は言わせない。
戦車の中に居れば安全。多少揺れるけど、それだけ。連れて行ってもいいと誰かに言われた気がする。
道中で農地や反対側の拠点について聞いてみる。コミュニケーションは大事。

野良にゃんこや野良わんこ、モヒカン野郎が現れても問題ない。向こうから避けてくれるはず。
避けない?それも問題ない。構わず進むだけ。



●やられ役! デス・さそり軍団現る!
 猟兵たちが行動を起こす前のこと。
 荒野をちろちろと歩く鼠──、の、ぬいぐるみ。
 明らかに何かしらの紐で引っ張られた動きで、大きな岩塊の周りをちょろちょろしている。
 それに誘き出された野良にゃんこは姿勢を低く、足音を潜め、髭を細かく動かしながら辺りを警戒している。
 しかし本能には忠実で、そろそろとぬいぐるみに近づくと瞳孔を広げ、お尻の辺りをそわそわと。
 跳躍する次の瞬間、その体は岩の後ろから伸びるごっつい腕に捕まってしまった。
「ヒャッハーッ、捕まえたぜぇーっ!」
 暴れる野良にゃんこの引っ掻きや噛みつきをものともせず、落とさぬようにしっかりとその胸に抱いたのは野良モヒカン。
 弱肉強食の世界、哀れ野良にゃんこは野良モヒカンの餌食となってしまうのか。
「ケッケッケッ、そう嫌がったって逃げられやしねーぜぇ~。お前は我ら、『デス・さそり軍団』に捕まっちまったんだからよぉぉ~!」
 野良じゃなかったか。モヒカンは一匹見たら数十匹いると思えというローカルワードは事実であった。
 縦横入り交じったネーミングのデス・さそりモヒカンは暴れる猫を仰向けに大地に押さえつけると、革ベルトしかない上半身のどこにしまってあったのか小さな道具を取り出した。
 腹を捌かれてしまうのだろうか。愛玩という言葉を知らない非文明的な輩はこれだから好かんのだ。さらば野良にゃんこ!
「ほぅうれほれほれほれぇ~。ゲッヒッヒッ!
 どうだぁ? 次々とダニやノミを剥がされていく気分はぁ? グヒヒッ!」
 …………。
 ま、まあ食べる前にはキレイにしなきゃいけないもんね。モヒカンもきちんと衛生管理についての知識はあるのだ。
「いよう、どぅ~したんだぁ、そのう、かわいいかわいい子ぉ猫ちゃんはぁ?」
「あ、アニキ!」
 やたらと特徴のある喋り方で現れたそこらのモヒカンよりご立派なモヒカンは不適な笑みを浮かべて、足を踏ん張り嫌がる野良わんこを引きずっている。
 モヒカンは今捕まえたのだとし、それから痩せ細った野良わんこに目を向ける。
「ほっほ~ぅ、だいぶ気が立ってますねぇ。お腹が空いてるのかなぁ? ヒッヘヘヘッ」
「見ろよこの腹ぁ、たいぶ、痩せ干そって……いるだろう……?
 しかしどぉ~したもんかなぁあ、何も口にしやしねえ、食わせがいの、ありそうなわんこだってのによぅ!」
「そんならアニキ、い~ぃ肉がありますぜぇ?」
 にやり。
 笑い野良にゃんこを見下ろす。もう先は読めたね。野良にゃんこを飢えた野良わんこに食わせる愛猫家お断りの非道をする気でしょう! この人でなし! モヒカス!
 モヒカンは腰に差していた杭を抜くと、地面にぶすり。そこに自分のリストバンドと猫を結びつける。
 野良にゃんこは必死にその戒めを解こうとするが、効果はない。早く来てくれ猟兵ーっ!
「ふんふんふーん♪」
 モヒカスは鼻歌をしつつ岩影に行き、戻って来るその手には──、干し肉があった。
 あんのかよ肉。
「ほぅうれほれほれほれぇ、んん? どうしたぁ、肉が欲しくないのかぁあん?」
 顔がうぜえ。
 低く唸る野良わんこに、モヒカンはやれやれと肩をすくめた。そう、食べてはならない。文明が崩壊したとは言え途端に頭をモヒカンにして裸に革ベルトを巻くような輩のやること、毒入りに決まっているのだ。
 モヒカスは野良わんこが食べないと見るや。そら見ろ、ナイフを抜いたぞ! やっぱりモヒカンだ!
 その凶刃を干し肉に振り下ろし、…………。んん?
 モヒカンは肉を一切れ食べて見せ、毒はないのだと野良わんこを安心させる。それを見せられては野良わんこも態度を改めて、モヒカンの差し出す干し肉を口にした。
 んん~?
「ふっ、相変わらずぅ、馬鹿な奴、だ。この前の探索で見つけた飯も、小鳥に分けてやったばかりじゃあないか」
「ヒッヘヘヘッ、そう言わないで下さいよ、アニキぃ」
 聖人かよ。
 モヒカス、もといモヒカンさんがだらしのねぇ照れ笑いを見せた後、野良にゃんこのダニノミ退治に精を出す。モヒカン兄貴は暖かい目でそれを見つめたのも束の間、はっとした様子で視線を動かした。
「アニキ、例の連中の始末、上手くいかねえみたいですね。あいつらがいなくなりゃあ、ここらの拠点も繁盛するってのに。
 やっぱり、奪還者に依頼したいが…奴ら俺たちを目の敵にしてるからなぁ……、アニキ?」
 姿から改めて下さい。
 モヒカンがしけた事を呟いていると、血相を変えたモヒカンアニキが野良わんこに野良にゃんこと共にモヒカンを突き飛ばした。
 直後に空を割く一筋の光。
 それは奔流となって大地を駆け抜け、熱波を放つ。
「ア、アァニキィィイッ!」
「……いよう……無事……だったぁ、かい?」
「そんな、アニキ、俺なんかの為に……そんな……!」
 光の消えた先には、変わり果てたモヒカンアニキの姿。モヒカン焼けちゃいましたね。
「いいんだ、お前が無事ならぁそれで……いいんだ……」
「け、けどアニキっ」
 モヒカン焼けただけだぞ?
「で、でもアニキぃ、その頭じゃもう、デス・さそり軍団からは!」
「仕方ねえさァ、つうぎぃ、からはお前がぁ、デス・さそり軍団をぉ、引っ張ってくんだぜぇ?」
「……アニキ……で、でも俺たち……ずっ友っすよね……!?」
「ふっ。当然だろぉィ? 行きな。俺はちょいとぉ、寝る」
「アニキ? ……アニキ……っ、く!
 アアァアニキィイィイィイィイ!!」
 寝てる人の耳元で叫ぶんじゃありません。
 モヒカンが無くなったのがよっぽどショックだったのか、ふて寝した元モヒカンアニキから離れてモヒカンは、否、デス・さそり軍団新生リーダーは決意に満ちた目で無線を入れた。
「おい、集まれ野郎ども……戦争だ……アニキの仇を討つぞ……!
 誰だか知らんがアニキの魂を奪った事、ごめんなさいときちんと謝るまで許さねえ!」
 許してくれるんすね。
「デス・さそり軍団、ファイヤッハー!」
『ファイヤッハー!』
 無線機からの力強い応答を受けて、モヒカン・リーダーは怒りに燃える瞳を向けた。
 これが、彼らモヒカンが猟兵を襲う理由である。でもまあ聞いてもないし知ったこっちゃないので、振りかかる火の粉には鉄拳制裁しましょうね!


●技術と資材を入手する為に!
 先頭を行くレイは、しっぶい顔をしたジジイを右肩に乗せている。腹話術人形かとも見えるが、肩には乗せないわな。
 凄い座り辛そうだけど石の面持ちで耐えるジジイは、レイに顔を向けず進行方向を見つめたまま疑問を投げる。
「なぁーんで、ワシぁ肩に乗せられとるんかのぅ」
「道案内の為だ。そう、……知ってる限りで最も舗装し辛い地点……戦火で抉れた大穴やら、デカい瓦礫なんかが散乱してる辺りへ案内してもらおうか」
 ふむ。
 レイの言葉にひとつ頷き、指で示そうとしてその手の中のお握りに気がついたようだ。ミゼラブルの放った驚愕の閃光によりすっかり忘れていた。
「のう、ワシ、飯食ってる途中だでや。降ろしてもらねーべか」
「飯は食いながらでいい」
「いや、うん……そうかい……」
 哀愁を漂わせてお握りむしゃこら。逃げようたってそうはいかんぞ。
 なんかもう、隙を見せないとか冷血漢とかそういうレベルじゃないヤバさを帽子の男から感じ取ったジジイは、心を入れ換えてとっとと案内を済ませるべく食事を終える。
「ふがふが、ほほひゃへ!」
「あれか」
 ジジイの指した場所には、分かり辛かったがメガデスによる砲撃跡から溶断された岩が姿を見せていた。
 こういった岩塊は材料を転圧する際の邪魔になるだけでなく、振動を伝える媒介にもなるので付近の道も破壊してしまう要因となる。
 近くには通常弾による砲撃跡もあり、岩だけでなく様々な物が埋まっているだろう。作業により連鎖的に崩れれば、あるいは完成後の往来中に崩れては事だ。
「しかしお前さん、道具もなくちゃどうしようもねえべ?」
「そうでもないさ。先ずは殴って均す」
 なーに言ってんだべ、とばかりのジジイであるが、レイのさも当然とばかりの眼差しにはっとする。
 まさか出来るのか。常人からすれば寝言は寝て言えと失笑されようが、この世界にはユーベルコードが存在する。
 超常を扱う力。それはこのアポカリプスヘルでも彼らは見聞きしてきた。
 彼こそはゴッドハンド、そして不可を可とする猟兵なのだ。振り上げられた拳に始動するのは読んで字の如き力を発する【一撃必殺】。
 その左拳は見る者にが感動すら覚える暇もなくあっさりと、岩塊を砕いて見せた。
「…………、ワシもう帰っていいかいの?」
「心配するな、人一人乗せるぐらいはなんて事ない」
「いや、うん……そうかい……」
 逃がさねえっつってんだろジジイ。
 レイはジジイを肩に乗せたまま、岩の破壊によって出来た空隙を更に崩し、坂道へと切り替える。
 これにより段差部分も車両での通行が可能となる。材料も有限なのだ、こうやって節約も必要だろう。
 道を次々と均していく人間重機の上でちょこんと座っていたジジイは、耳に機械的な雑音を、言うなれば排気筒の尾とを聞き咎めて顔を歪めた。
「……こ、この音は……! いかん、奴らだべや! レイダーが来たんだべ!」
「まあ待て、そろそろすぐにここも終わる。それに、あんただって仮にもこの荒野を生きてきた男だ、そうポックリとはいかねえだろう」
「違うのぉ! ワシらは危険から逃げて生き延びてるのぉ! おんしら命知らずとは根本的に生き方が違うのぉ!」
 こんな事ならばあのお嬢ちゃんの戦車に乗れば良かった、などとごねているが、らふるさんはパン派なのでライスボール派のお爺ちゃんじゃどの道無理だよ。
「ヒャッハーッ!」
 などとまごまごしている間に荒野に砂塵を巻き上げて、陽光を照り返し鈍く光る鉄の愛馬と共に、モヒカン軍団が姿を見せた。
 デス・さそり軍団だ。
「こぉこぉで会ったが百年目ぇッ! まずは聞きたい事があるから話を聞いて貰おうかッ!」
 ゴーグルを外し、道を削るレイの前にずかずかとやって来たのは彼よりも頭ひとつ、ふたつは高いかと思われるデス・さそり軍団おニューのリーダーである。
 そんなヒャッハーの丁寧とも恫喝的とも取れない言葉などに興味はなく、レイは次はここを崩すかと拳を固める。
「この俺を無視するとはいい度胸して──ひげっ!」
「ん?」
 叩き付けた拳に砕かれた大地、その礫が直撃して倒れ込むリーダー。作業半径内立入禁止も知らんとは、おめーさては素人だな。
 その様子に漸く気付いたとばかりにレイはその目を向ける。
「何か用か?」
「お忙しい所、手を止めてくれてありがとうございます! てめえリーダーに何してくれてやがんだ、おぉん!?」
 モヒカスがリーダーを助け起こしていると、別のリーダーがレイへ詰め寄る。唾を飛ばす体格だけはやたらと立派なモヒカスに震え上がるジジイを右肩に、レイは帽子を傾けて嘆息した。
 目の前で青筋を浮かべて罵倒する男と、グリモア猟兵に予知された男とをどうしても比べてしまう。
(血を流さずとも戦いは出来る、か)
 否、それは己であったか。自らも拳を固めるしか出来ない不器用な生き方である。
「夢で終わらすにゃ惜しい話だ」
「てめえ、何言ったわらばっ!?」
 自嘲気味に浮かべた笑みにモヒカスが更に顔を赤く染め上げれば、レイはその鼻面に裏拳を叩き込んだ。
 勿論、相手は人間と加減はしているが。
 肩の上で泡を吹いているジジイはそのままに、自由な左肩を回し助け起こされたリーダー・モヒカンを指で示す。
「右肩だけじゃ物足りない所でな。相手をしてやる」
 そのまま指をくいと折り曲げての挑発。
「野郎~っ! 熱中症のジジイを……助けてやってるのかと下手に出れば付け上がりやがって~っ……!」
 下手を辞書で引き直して来いボケなすび。アポカリプスヘルじゃ厳しいか。
「野郎ども、やっちまえーっ!」
『ファイヤッハーッ!』
 ジジイ・オン・ザ・ライトショルダーを後方へ、左半身を前に出したレイは不適な笑みを見せて迫るデス・さそり軍団を迎え撃った。

 一方、後方ではミゼラブルに搭乗したらふるとアリス妹軍団を控え、ウタが前方を行く。
 【地獄の炎】をその手に灯し、音を立てて渦巻くそれをメガデスより砕けず残った岩塊へ放り投げる。
 渦を巻いた灼熱は解けると同時に赤き海となり、先の一撃で脆く崩れたそれらは熱膨張により瓦解する。
 翳した手を振るえば炎は溶け消えて、残るは赤々と焼けた礫が転がるのみ。
「よし。アリス、砕けた石は材料に追加してくれ。火傷に注意してくれよ」
「ギッチ、ギチチチ!」
(はーい!)
 ウタの言葉を受けて、アリスの指令によりその妹たちがせっせと焼けた石を集める。全然平気そうね?
 事実、様々な環境に置いても変わらず活動できる彼女たちの【甲殻】、そしてそれらを繋ぐ【内部皮膜】は様々な耐性を持ち、恐らく地球程度の環境で行動不能となる事はないだろう。火山地帯であろうが氷河であろうが、貪欲に繁殖していくであろう彼女たちの異様は、人がいなくなった大地を治める次世代の支配者なのかも知れない。
(パスパース!)
(えっさ、ほいさ!)
 とまあ、そんな驚異的身体能力はさておいて、自らが分泌物たる【アリスの糸】で編み上げた荷台と呼べるものに、後ろ足で蹴りつけてすでに山盛りとなった砕石へ追加していく。
 山の上では頑張れ頑張れと司令塔たるアリスが妹たちを応援している。
 石を積み上げれば、別の妹たちがそれを引っ張り移動を始め、今度はアリスが山の上から後ろ足で砕石を蹴り蹴り、砲撃跡を埋めていく。
『……お上手です……、アリスさん』
「ギチギチ!」
(えっへん!)
 外部拡声器からのらふるの言葉。
 後方に控えていたミゼラブルはアリスの埋めていく砕石を、その重量でしっかりと踏み固める。
 その前にアリスらもレッツ・ダンシングとばかりにどかどか踏み固めているが、接地面の差が大きく数はあってもミゼラブルほど締め固めるには時間がかかるようだ。
 とは言えこれが一次転圧ならば、ミゼラブルは二次転圧と舗装にはいい塩梅だ。
「! おっと」
 その様子を微笑ましく見ていたウタであったが、小動物の気配を感じて炎を留める。
 目前を横切ったのは見事な毛並みの野良にゃんこ。
「…………、飼い猫?」
 明らかにブラッシングされた艶やかな毛並みにウタが小首を傾げる。
 野良に違いはないが、なぜ毛並みがいいのかはそこらのモヒカンに聞いてみて下さい。
(おっ、肉だ)
(たんぱく質だー!)
「ギイエエエッ! ギィィィィ! ガチガチッ!」
(こらー! その動物はネコって言って、訓練するとオブリビオンとも戦えるようになるから食べちゃダメなのよー!)
(えー)
 突然の餌に喜び唾液を更に垂らす妹たちだったが、アリスの言葉には従うしかなく、渋々と了承する。
 ウタは以前、アリスと共に訓練された猫たちと戦った事を思い出して苦笑した。さすがにアポカリプスヘルでそこまでの領域に訓練するには設備も知識も足りなかろうが、アリスたちが思い止まってくれるなら深くは言及すまい。
 モヒカス以外に食われるかと思ったぜ。
「それにしても、この荒野でも生き抜いてるなんて凄いぜ」
 撫でるが良いぞ、とばかりに腹を見せてごろにゃんする野良にゃんこに、ウタはくすぐるように撫でてやりながら、残る手でマントの下からジジイたちより受け取った小結を取り出す。
「この世界で食料は貴重だけど、お前たちが番人代わりになってくれりゃあ敵の襲撃を察知しやすくなるよな。
 お前、他の仲間はいないのか? 犬とかさ」
 餌を受けて猫なで声を上げて、喉を鳴らす。特に群れている訳では無さそうだが、餌とあればすぐにすり寄って来る辺り、本当に迎合しているかは別にしても高野を生き抜く逞しさは感じられる。
 その証拠、という訳ではないが餌を食べ終わればすぐにどこぞへと駆けて行った。
 やれやれとウタは一息入れるが、よく周囲を見渡せば物陰からこちらの様子を窺う野良にゃんこに野良わんこの姿が見える。
 直ぐに殺到しないのは群れではない彼らが無駄な怪我を避ける為の知恵なのだろうか。
(とは言え、この数に順番に来られちゃ時間が無くなるぜ。可哀想だけど)
 手を閃かせれば、生まれた焔が燃え盛り、驚いた野良にゃんこたちは蜘蛛の子を散らすようにその場から逃げ出して行く。
「オブリビオンじゃないなら、倒す必要はないもんな。
 この道は正に、この世界が希望の未来へ進んでくための道ってことだ。悪いけど、絶対に成功させる為に邪魔はさせないぜ」
 逃げて行った犬猫ならば食べていいのでは、と懲りない妹たちを叱りつつ、アリスは改めて荒野を見渡す。
「ギイ、ギイ。ギチギチ」
(チャランポラン博士大変そーねー。パパもけんきゅーの為の資材の確保に苦労しているのー)
 こらこら、いくらチャランポランだからって名前を間違えちゃあ駄目じゃないか。
「アリスのお父さんも研究者なのか」
 その言葉に彼女の出自を意外な形で知ってしまったかも知れないとウタは頬を掻く。
「ギィ? ギッ、ギッ、ギイイエエエエエッ!」
(あ、でもでも、そんな時は悪い人から貰ってきたら大体解決するのよー)
「……あー、なるほど……?」
 遠くを走る鋼の唸りを聞いて、ウタはうんざりとした様子で頷いた。
「ヒャッハーッ! 見つけたずぇえいっ!」
「そこを動くな歩行者ァ! 下手に車両の前に出るんじゃねぇぞコラーッ!」
「車両の前を通る時は手を天高く上げろオラーッ!」
 道の向こうから現れたバイカー・モヒカンを半眼でねめつけて、ウタは開いた両手に焔の渦を生み出した。
 迫るバイクを前に溢れた焔は流体の如く指の間から垂れて、焼けた大地に再び火を灯す。
「……手を上げろ……? こうか?」
 モヒカスの言葉に応えて上げた両手から投げ放たれた劫火は青空一杯に広がり、圧倒的な熱を雨の代わりに降り注ぐ。
 度肝を抜かれたのはモヒカンたちだ。
「あぢぁあー!」
「うひいいっ!」
「はわわっ、熱ゥい!」
 ハンドル操作を誤ってバイクから転げ落ちたモヒカンらが地面をのたうち回る様を見て、ウタはこめかみを指で押さえる。
「邪魔するのは止めにしようぜ。両拠点が発展したら、お前らの働き口が出来るかも知れないぜ?」
(はい邪魔ー)
(ポイポーイ!)
 地面に転がるモヒカンたちをポイポイ道の側に捨てていくアリス妹たち。見ろよ、まるでモヒカスがゴミカスのようだぜ!
「ギエエエエエエエ! ガチガチッ!」
(──ってだめだめー、食べ物で遊んだらだめーお残し厳禁!
 モヒカンさん達はお家に持って帰るのよー)
(人間だけどいいのー?)
 人間じゃないよ、モヒカンだよ。
 アリスが砕石を撒いて空いたスペースにモヒカンたちを積み重ねていく。マジで人間扱いじゃねーなこれ。
「あー、と、程々に頼むぜ、アリス」
 頭を掻くウタに、確かに乱獲しては地域の生態系に悪影響を及ぼすものだとして程々を残して道を進む一行。
 残念だがお持ち帰りされるモヒカンはお食事決定だ。君たちはいい人間だったが君のモヒカンがいけないのだよ。恨むならモヒカンを恨め。
 涎を垂らしたアリス妹が、他の妹たちと別れてお家こと巣へと運んで行く。出荷された畑で食べるのだけは止めてね、そこの拠点の人たちにトラウマになるから。
「…………、美味しい」
 ごたごたの間に、らふる曰く浪漫志向印の神オプション、【ホームベーカリーアタッチメント】から作り出した焼きたてパンを食べる少女。
 一段落ついたら仲間にも分けようと考えつつ、目指すは道の先。
「追い付いたみたいだな」
 道の先で、倒れたバイクに座っていたレイはウタの言葉に片手を挙げた。
 先ほどまで肩に座っていたジジイは、彼の回りに転がるモヒカン同様に白目を剥いて大の字に寝転がっている。
 先ほどのウタらと同じく、野良にゃんこに野良わんこの襲撃を受けたレイは彼らを脅かす為に覇気で散らした訳だが、それと一緒に驚いたジジイもまた気絶したのだ。
 食用として欲しければ捕らえてやろうかとも考えたが、質問先は大の字であるので仕方なし、と後続のウタたちを待っていたのだ。
 だが進まなかったのは他にも理由がある。
(……あれが……メガデスを受けた、相手……?)
 嬉しそうにバイクを集めるアリス妹たちのその先に、ミゼラブルのメインカメラの捉えた映像には青い光を纏う者の姿が映し出されていた。


●お前らなんてモヒカンじゃねぇ!
「むはははーっ、進め進め~!」
 上機嫌にずんどこ快進撃を行うのはのじゃロリババアを乗せた木箱。
 そう、木箱がずんどこ進んでいるのである。鳥を思わせる三本指の足でてちてちと進むそれは、いそぎんちゃくのように幾重も重なる舌を振り乱している。
 モンスターパニックなのかホラーアクションなのかリアクションに困る魔物ですねぇ!
 【ボロボロの木箱型ミミック】のその上にちょこんと座るのじゃロリババアこと春。その背丈に見合わぬ長大な獲物、【対物剣】を振り回し、枯れた巨木や岩塊を殴り壊している。
 各世界から集めた材料をUDCアースで鍛え上げた業物だ。剣型とはいえ切れ味はなまくら、棒として扱われる始末だがその重さ、頑丈さは尋常ではない。
 故に振り回せば結果的に『断つ』事が可能だ。
「春さん、あまり先行し過ぎないで下さい。敵の情報も良くわかってないんですから」
「ふ~む。一理ある!」
 周囲を警戒しながら車を走らせる桜花。彼女の言葉を受けて頷く春であったが、特に止まるつもりはないようだ。
 一理程度で止まるようではのじゃロリババアは務まらないぜ!
「もう、お気をつけて下さいね」
 荒野の道を揺れながら走る車。桜花は速度を下げてユーベルコード発動の為に精神を集中させる。
「おいでおいで、土小人。私の手助けをしておくれ。
 代わりに石をあげましょう。ざらざら渡す石ビーズ、その分手助けをしておくれ」
 荒野の風に流れる声は、ゆらりと揺れて地面に浸透していく。
 もこもこと揺れて地面から姿を見せた小人たちは彼女、桜花の召喚した【ノーム】である。
 その数、九十程度。痩せて枯れた大地でも生まれ出た彼らは陽気なものだ。石をくり貫いて作った石笛を吹く者もいれば、打楽器を作っている者もいる。
 車を止めてドアを開くと、二十何体かを車内に招き入れ、残るノームたちには穴堀りによる道造りをお願いする。
「皆さん、車で移動しますから、その間に中の食材で料理のお手伝いをお願いしますね」
 桜花の言葉に楽器で返事をした小人たちは料理道具に持ち変えて、すぐさま準備に入った。
 揺れに気を付けるように言葉をかけつつ、前方を驚異的に掘り進めるノームたちを見つめる。
(向こうの道はもう少し広いみたいー)
「なるほど、ならこちらを二列増やせばどうでしょうか?」
(……ん~……うん、オッケーなの~!)
 ハンドルに乗ったアリス妹、その幼虫と反対側に位置するアリスと共に道の大きさを確認して後方のアビーと、彼女の相棒ラングレーを見上げる。
 その脚部にはローラーが据え付けられ、二足歩行から履帯による二足走行へと切り替えられている。敷いた砕石を転圧する為の装備だ。
 それ専用の装備という訳ではないが。
(この私のラングレーなら、ローラー車の代わりも出来る。造作もない。……費用対効果すごいけど……)
 操縦席で遠い目をするアビー。請求書は各世界の猟兵支援団体にお願いします。
 アビーはふと肩の力を抜いて、隣でぐったりしている村長に視線を向けた。
「元気がないな、大丈夫か?」
「どうやって元気を出せばいいんじゃい」
 不貞腐れたような様子の村長にアビーは駄々をこねる子供を見るような目をしたが、ある程度の道が出来るまで彼女の出番はない。
 だから、という訳でもないが彼らが交流を深めようとする新拠点について疑問をぶつける。そもそも彼らはなぜ、このように危険な地域にも関わらず交流を深めようとするのか。
「うむ。ワシらの土地では農業を主としてる訳なんじゃが、それだけなんじゃ。
 少し前に、ほれ、前の車に乗ってる奪還者様たちに助けられての。お陰で食うに困らなくなったが村も大きく成りすぎて、人が増えた分の働き手も増えたんじゃが、それを支えるに増えた手間がこなせないんじゃ」
「なるほど」
 村長の言葉にアビーは頷く。増えた人員を支える為に畑も大きく数を増やしたが、人の手でそれだけの数をこなすには働ける人手が必要になる。
 だが村人の全てが労働に耐えられる訳ではない。身重の者もいれば子供に老人もいるのだ。
 故にあの拠点に何故かいついているオブリビオンは大きな力になるだろうが、あの状態だ。彼らには機械を直す技術も、作る技術も無い。
「そこで技術者のいる拠点と交流して、新しい血を──、技術を手に入れたいという訳ね」
「その通りじゃ。あのレイダーどもが現れる前には我らも行き来しておってな、ある程度は話もつけておったんじゃが。
 いつの間にか現れたあのレイダーどもに邪魔されるようになったんじゃ」
 と、なれば活性化した人々の往来を見てレイダーがそこに居着いたのか。
 アビーはふむた小さく唸ると、クラクションの音が聞こえて視線を下に移す。
 そこでは車の屋根の上に転がったケイティが、おどけた様子で指を示す方向にアリスの妹が集まっていた。
 こちらは幼虫ではなく成虫だ。反対側の道と同じく、自らの糸を編み込んだ荷台に砕石を積んでいる。彼女たちが砕石を敷き均す役と言う訳だ。
 道もノームらによって掘り進められており、桜花のキャンピングカーもゆっくりと前進している。
 アリス妹たちが石を均し始めたのを確認して、アビーはゆっくりとラングレーを進めた。
 履帯で砕石を転圧しつつ、探知機を使用し周囲を確認する。野生生物にせよ、動体反応が感知されている以上は警戒すべきだ。
 どれもこれもこちらを窺っている様子であるが、前方に留まる者がいる。
 恐らくはレイダー、まあモヒカンだろうが。アビーは外部拡声器の電源を入れて、前をずんずんずんどこどっことガンガン行こうぜしている春へ、前方に何か見えないかと問う。
「うぬ? ……あれは……」
『ファイヤッハーッ!』
 デス・さそり軍団のエントリーだ。
 老け老けしい顔に反し若々しい肉体。そのセンスは旧石器時代であるが、この荒野を生き抜く為に戦う雄の体だ。
「ケケケケーッ!」
「ヒャッハー、って何だこいつゥ!?」
 怪鳥音を発しててちてち走り回る木箱に、さしものモヒカンでもびびったようだ。むしろびびらなかったらびびるわ。
 子供が熱に浮かされて見る悪夢の住人のようなミミックは元気そのもので、とりあえずとばかりに駆け回るバイクに跨がったモヒカンを舐め舐めする。ばっちいから止めなさい。
「ええいくそ、お前らぁ! これ以上先に進むんじゃねえーッ!
 あ、おい聞いてるのかコラーァ!」
 モヒカンの忠告なんぞに貸す耳などあるはずもなく、ぺっぺけ走るミミックの上で剣を振るう春。
「すまんのぅ、話を聞いてあげたいのは山々なんじゃが、ほれ、おぬしらしょせんモヒカンであろ?
 モヒカンではなぁ」
「モヒカンの何か悪いんだ!」
 悪いも何もモヒカンじゃん。
 後方でモヒカンが群れている事を確認した桜花。左手にハンドルを、右手に【軽機関銃】を構えて斉射する。
「モヒカンの皆さん、危ないですよ~!」
「うひへぇっ、言うのが遅いッ! おい、おニューのリーダーから預かったアレを持ってこい!」
 猟兵の武力を前に為す術無しに見えるモヒカン。並走する別のモヒカンに命じれば、にやりと不気味な笑みを残して去って行く。きンもー☆
 逃げたか。否、モヒカンに限ってそれはあるまい。
 警戒を強めた猟兵らの前に、早々と現れたモヒカンをたち。彼らはその逞しい腕に見事にブラッシングされた艶やかな毛並みの野良にゃんこと野良わんこを抱いていた。
「ほぉおぉおれぇーい、どうだぁ?」
「かわいいかわいいわんこだぞーう?」
「にゃんこもいるぞぅ? ん~? 撫で撫でしたいんじゃないのかぁあ~!?」
 うぜえ。
 あのモヒカンたちは野良にゃんこに野良わんこを使って猟兵を止める気のようだ。結果として盾の扱いとなっている為、これでは桜花も銃撃出来はしないだろう。
 そもそもそいつら眼中にすらない人がいたりするんですがね。
「げっへっへっへぇ。さあ、このわんにゃんと仲良くしたくば、ておい止まれ止まれ止まれってばよ!」
 きゅららららとノンストップ走行のキャタピラ脚部。
 顔色ひとつ変えずに前進速度を緩めぬラングレーを前にして、さすがのモヒカンたちも戦車をかわすしかなかったようだ。
「やはり、道を造るには最適だな」
「ひえっ」
 事もなげなアビーの言葉に戦慄する村長。
 勘違いしないでほしいが、別に彼女は非道徳的行為をした訳ではない。あそこにいるのはモヒカスだから、問題ないのだ。
「あ、こら!」
「んにゃ?」
 車内から聞こえる叱咤の声。それに気付いたケイティが車の屋根から中を覗くと、桜花に叱られて尻尾を膨らませた野良にゃんこがキャンピングカーから飛び出す所であった。
 ノームの穴堀に合わせて低速で走っていた所をモヒカンの登場だ。ラングレーを先行させている間に匂いに釣られたにゃんこたちが侵入していたらしい。
 ケイティにやりと笑い、荒れ地を皿にお握りを頂く野良にゃんこと、彼らがくすねた物を更に奪い取る野良わんこを見つめた。
「ケイティさん、何とかして下さい~!」
「ふむ、猫の手も借りたいかにゃー?
 にゃらば、プリーズ、ヘルプミー!」
 始動するのはユーベルコード、その名も【猫は仲間を呼ぶ】。
「では悪戯な猫は猫がお相手するにゃ。ヘイ、カモーン!」
 猫の手であるにも関わらず、指をパチンと器用にも鳴らし、車上で楽し気に踊り出す。
「レッツダンス! パーリィナウ!」
 両手を上げ下げ、腰を振り振り。ゆっさゆっさと揺れる車に何をしているか察した桜花がカーラジオからノリの良い音楽を流す。
 車上ではそれに合わせて踊るケイティと、その周りに慣れないながらも後ろ足で立ってなんとか腰を振るうにゃんこの姿。
 陽気な雰囲気に連れられて、車内のノームや車外のノームもキャンピングカーを囲んで踊り始めた。
 全く気にしていなかった野良ーズであったが、段々と増える陽気な風に気付いて彼らの目も次第に車上へ向けられていく。
「可愛いにゃんこにワンチャンも! さあさあ皆でダンスダンスダンス!」
 なんか凄い楽しそう。
 アリスの妹たちも作業を止めて、足をどかどかと打ち鳴らしている。
「……止まったけどさぁ……こっち気にしなさすぎじゃね?」
「こういうの寂しいよな」
「なんじゃ、甘えん坊じゃのう。なら皆で踊れば良いではないか!」
「そこの道行くモヒカンも一緒に踊るにゃー!」
 手拍子を加えて宙返り、颯爽と車の上から飛び降りたケイティ。パーティーピープルの強引なポジティブ・アトモスフィアでUDCアースの南洋映画めいて皆をダンスへ誘う。
 よたよたした格好のにゃんこやわんこも踊っているのだ、踊らない手はないぜ!
 いつしかその場にいた全員がダンスに夢中になる中で、然り気無くダンスの動きに穴堀や砕石の敷き均しの動きを取り入れる事でモヒカンたちにも作業を行わせている。
 それこそUDCアースで東方の地、世界のノノースと呼ばれた映画監督の独特な東洋アトモスフィアをかもしている。
「がんばれがんばれ! ファイトファイト!」
 まあ、ケイティ自身は働いていない訳だが。とは言え彼女のダンスによってモヒカンどもも使えているのだからヨシとすべきだろう。
(…………、ま、本当は触装蹂躙機のテストに来たんだけどにゃ。今はお踊るにゃ)
 なんだその名前からして不穏な代物。

 さて。
 作業も進みに進んでお昼の時間。日照りの中の作業から暑さに汗もかくだうと、熱中症対策に桜花が用意したのは少々塩分きつめの豚汁と白むすび。
「ヒャッハーッ! うんめぇぜーッ!」
 かっ食らうという言葉が良く似合うモヒカンたちに、口許についた米粒をひょいひょいと取ってあげる春さん。もう完全に孫を甘やかすお婆ちゃんである。
 桜花は昼食の片付けをしつつ、彼らの食いっぷりに笑みを溢した。
 すっかり餌付けされた様子の野良ーズにモヒカン。アビーは豚汁をすすり、一体何故こちらの邪魔をするのかと彼らに問う。
「邪魔もなにもねえぜーっ、俺たちはこの先にいるレイダーに近づかないように、皆を守ってやってたんだぜぇーッ!?」
『え?』
 予想外過ぎる言葉に思わず声を合わせた一向。
 騙されちゃいけない、相手はモヒカンだぞ! こいつら自分から拳上げたりはしてないけど。
 集う視線に、「そんなこと言われてもモヒカンじゃし」と肩身の狭い思いをする村長。村長は間違ってないっすよ!
「安心するのじゃ。わしらは元よりそのレイダー討伐の為に赴いておる。任せい」
 えへん、と胸を張る春の小さな姿に不安を募らせたモヒカンズであったが、ラングレーの存在もあり奪還者として申し分ない実力なのだろうと彼らも信じてくれたようだ。
 拠点発展の為に、レイダーの排除を。
 そう言葉を残し、再びバイクに跨がり去って行く。アリスの妹たちは反対側の様子を聞いていたらしく、モヒカンどもをお持ち帰り対象にしていたが思い留まったようだ。
 良かったな、お前らは生きろよデス・さそり軍団の。
「さ、もう一踏ん張りね」
「えー。もう、後はモヒカンに任せればいいんじゃにゃい?」
「まあまあ、おやつも用意していますから」
「こほん。話はまとまったかのう」
 それでは両拠点発展の為に。
 猟兵たちは再び道造り励んだ。その先に待つレイダーを倒すべく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『超無敵気分合金製ドヤニマロイド』

POW   :    一家の大黒柱、黒き大波ドヤライノー!
【サイ型メカの突進・かち上げ】が命中した対象に対し、高威力高命中の【内蔵兵器で追撃と仲間との連携、ドヤポーズ】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    アタークシが赤き旋風ドヤファルコざま~す!
【ハヤブサ型メカの炎を纏った急降下飛び蹴り】が命中した対象に対し、高威力高命中の【拘束と仲間との連携、ドヤポーズ】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    は、初めまして、青き稲妻ドヤレオンです。
【シシ型メカの青いバリアに身を包んだ突撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【内蔵兵器で追撃と仲間との連携、ドヤポーズ】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●登場、どやってどややってどやややった三バカメカ!
『来たか、猟兵』
 自分たちの元へと集まった天敵を前にしても、黒いサイ型メカには余裕が感じられた。その足下には、どこぞでふて寝していたはずの元モヒカンアニキの姿があった。
『先の一撃、ン中々のモンだったざま~す!』
 赤池ハヤブサ実力を評価しつつも、やはり上からの目線である。ちなみにザマス眼鏡と俗に呼ばれるものをかけているが、口調のせいて掛けたのか掛けたからその口調なのか気になる所だ。
『で、でも、僕たち一家には通用しないよ!』
 そこはかとなく弱気のシシ型メカ。
 順番に喋り終えてちょっと満足そうなサイメカは、ここで自分たちの優位性を示す為、自分たちの高性能振りをアピールすると言い放つ。
 んなのいいからとっととやろうぜ。
『見ておけ、まずは想像を絶するパワーの持ち主!
 一家の大黒柱、黒き大波ドヤライノー!』
「うっひょほーいっ!」
 足下の元モヒカンアニキに角を引っかけ、ぐんと首を跳ね上げる動作だけで数十メートルはあろうかという高さへとかち上げる。
 そのまま背を向け振り返った。どやっ。
『お次はどんな物も精密キャッチ!
 アタークシが赤き旋風ドヤファルコざま~す!』
「ひぃいぃいえ──っとぉっ。へ、へへっ!」
 あわや地面に激突か、といった所でその鋭い足の爪に元モヒカンアニキを捕らえて今度はシシメカへ投げる。
 こちらはサイメカことドヤライノーと背面越しにポーズをつけた。どややっ。
『最後はバリアを纏ってどんな物も粉砕する!
 は、初めまして、青き稲妻ドヤレオンで──あっ』
「たわらばっ!」
 哀れ、青いバリアを纏ったドヤレオンの突進を受けて元モヒカンアニキはミンチよりも悲惨な目に!
 こ、この人でなしッ。でも元モヒカンだからセーフッ!
『…………』
 ドヤレオンはしゅんとしていたが、失敗は誰にでもあるとドヤライノーに促され、立ち直った。
 ポーズを取る二人の前に駆け出して、気高く吼える。
『我ら一家揃って超無敵気分合金製ドヤニマロイド、華麗に見参ッ!!』
 どやややっ。
 じゃねえよ、見事に失敗したろうが。とは言え、現れた敵を前に攻撃の手を緩める猟兵ではない。突っ込みどころは攻撃の実行する事で示すのだ。
 幸い敵は堅く、突っ込み放題である。
「ワシらぁ、いつまでいればいいんかいのぅ」
「さあのう」
 やる気に溢れる猟兵とレイダーを前に、老人二人は途方にくれていた。

・やたらとどやってる三機のメカを破壊して下さい。火力、装甲共に高く、空中戦に適した個体や機動戦に適した個体などいますが、基本的に行動後にどやってるので囲んで叩きましょう。
・合いの手を入れると気持ち良くどやってくれるので、皆で叩きましょう。
・連携の得意な敵となります。上手く分断できれば熾烈な攻撃も弱まるかも知れません。
・見物人のお爺さんが二人います。敵は彼らを狙いませんが、巻き込まれないように注意してあげて下さい。
アリス・ラーヴァ
アドリブ・連携歓迎

ひどーい、粉砕するならアリス達にくれてもよかったのにー
さっき拾ったモヒカンさん達はリリースしたから妹達もお腹を空かせているのよー?
食べ物を粗末にする子はお仕置きよー
妹達を沢山呼んでドヤポーズを取っている3人に【ダッシュ】で殺到するのー
突進・かち上げに対しては、ドヤライノーさんの身体に噛みついて振り払われないように耐えるのよー
みんなー、UC行使後のドヤポーズがチャンスよー
こちらも両手?(前肢)を掲げたドヤポーズ(威嚇)で対抗するのー
ふふーん、そっちも格好いいけどアリス達の一糸乱れぬポーズも格好いいでしょー
さて、ドヤポーズも披露したし、あとはみんなでドヤニマロイドを齧りましょー



●……ゴミをお掃除しただけなのに……。
「よくもアニキを!」
 激情にかられて木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は叫ぶ。
 はっきり言って彼にとっては初対面である。それでも思わず叫んでしまったのは元モヒカンアニキのアニキオーラ故だろう。命を弄ぶ奴らは許せないとする彼の怒りも見てとれた。
 元とは言えモヒカン相手にそこまでする必要ないっすよ。
 怒りに燃えるのは彼だけではない。ウタより離れた位置で拳を握るのは九条・春(風渡り・f29122)。
「お、おのれ! ……人の……モヒカンでは、あるが! 命を何だと思っておるんじゃ!」
 そうだそうだ、モヒカンの命を何だと思ってるんだ! ゴミにも生きる価値は、無いけど! ゴミはゴミなりに必死に生きてるんだぞ!
「ギイィエェエェエェエ! ガチガチガチ!」
(粉砕するならアリスたちにくれてもよかったのにー)
 ひどい、と鋏角を打ち鳴らして訴えるアリス・ラーヴァ(狂科学者の愛娘『貪食群体』・f24787)の言葉は、彼女の見た目もあいまって非常に恐ろしい。アリスさんおこだぞ、謝れメカども!
『や、止めろーぅ! これ以上ドヤレオンを責めるんじゃなーい!』
『あーたたち、アタークシのレオンちゃんに恨みでもあるんざます!?』
 非難轟々の猟兵を前に、再び俯いてしまったレオンに寄り添うライノーとファルコ。家族愛か、泣かせてくれるじゃないの。
 でも安心して欲しい、猟兵の皆さんは君たちをまとめてスクラップにしてくれるから、寂しい想いはしないのだ。
「……やはり……、モヒカンさんたちは自警団で、こちらのマシンがオブリビオン、ということですね」
 自警団の衣装が斬新すぎて、レイダーと間違えそうであったと語る御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)は、農耕技術の発展した村長お爺さんの「あれっ、銃撃してなかったっけ?」という言葉にそっぽを向いた。
 そもそも頭モヒカンにしてるモヒカスが悪いから。モヒカンは「撃って下さい」っていう熱いメッセージだから。
 そんな些細な出来事は脇に置き、桜花ぼけっと突っ立つ爺さんたちへ振り返る。
「貴方はヨスミの村の村長さんですが、そちらのお人も村長さん、という理解で良いでしょうか?」
「いんや、ワシぁただのダンデーなズームに満ち満ちだナイスミダラだでよぅ」
 桜花の言葉に首を横に振る新居点のジジイ。
 ダンディズム溢れるナイスミドルね。このジジイもしかしてデス・さそり軍団より横文字に慣れていないのでは?
「……ん……爺さん、まだいたのか?」
 独特なイントネーションのジジイランゲージに、レイ・オブライト(steel・f25854)はきょとんとした目を向ける。
「はぁーぁあ? なんなそんなこつてもう、やってられんが!」
 レイの言葉に大声で不満を訴える爺さん。喧しいぞ、帰れジジイ。
 しかし彼もまた老骨、このまま徒歩で帰しては道中で熱中症になり、野良わんこと野良にゃんこの貴重なタンパク源になるに違いない。
 思えば彼も惨いものだ。衝撃的科学技術を前に茫然自失な所を猟兵に連れられ、特等席からモヒカスとの戦いに巻き込まれ、覇気を受けて気絶し、気がつけばオブリビオンの前に引きずり出される始末。
 文章に起こしてみると同情せざるを得ないな。帰れジジイ。
 連れて来た当の本人は、「道案内は終わっただろう」とばかりでこんな危険地帯にいつまでも駄弁っている爺さん二人組に理解が出来ないご様子である。
 拾った野性動物はきちんと最後まで面倒みなきゃ駄目なんだぞ。
「私の車は装甲がないので安全とは言い難いですが、こちらの車両に一時的に避難なさいます?」
 桜花の言葉に思わずガッチリと装甲で組まれた歩行戦車に目を向けるジジイども。素直なのは評価してやろう、だが却下だ。
「いや待つんじゃ、そんな言われ方したら誰だって!」
「もういいべ。慣れたでやこの扱いもよぅ」
 わがまま爺さんを両肩にひょいと担ぎ上げ、レイは桜花のキャンピングカーに二人を押し込んだ。
「じゃあ、頼んだ」
「お任せ下さい」
 にっこりと微笑む桜花に、こちらも笑みで返してレイはドヤ一家に振り返る。
 ドヤレオンへの精神攻撃を与えていた猟兵たちの行動は第二局面を迎えており、アリスとアリス妹による一糸乱れぬ組体操による威嚇が行われていた。
 どういう事でしょうね。
 敵の性能を、レイは知らない訳ではない。故に彼らへの精神攻撃は連携力へ綻びを生む楔となり得る事をレイは知っていた。
(アリスの行動は良くわからんが、押してはいるようだ)
 人間ピラミッドならぬアリスピラミッドを行う彼女たちの姿に圧倒される三バカメカ。決して引いてる訳ではない。
 そんな彼らと拳を交える為、レイもまた戦地へ向かう。
 装いの割りに熾烈な戦いが幕を開けようとしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御園・桜花
「モヒカンさん達は自警団で、此方のマシンがオブリビオンということでしょうか。自警団さん達の衣装が斬新すぎて、うっかりレイダーと間違えそうです…」
目を逸らす

「貴方達はそれぞれの拠点の村長さん達、という理解で良いでしょうか。私の車は装甲がないので安全とは言い難いですが、此方の車両に一時的に避難なさいます?」
UC「癒しの桜吹雪」使用
ミンチモヒカン氏が生きていたら優先治療
仲間の怪我も高速治療
長老ズ(及びモヒカン氏)に乗車勧め安全確保しつつ仲間の援護

「何となくデッカイザーさん達を思い出しますけれど。彼等の殆どもスクラップにしたのですもの。ドヤーズさん達も」
敵の攻撃は運転しながら第六感や見切りで躱す


九条・春
【アドリブ連携歓迎】
【プレイング無視OK】

「お、おのれ! 人の……モヒカンでは、あるが! 命を何だと思っておるんじゃ!」
正義感に駆られたセリフを吐きつつ、動物型メカの挙動にうきうきしてテンションが更に上っています

目標
・とりあえず全部のメカに触りたい。どんなふうに動いてるのか見てみたい

行動指針
・相手がデカすぎるので、ミミックはお留守番。猟兵の車両にタンクデサントし、折を見て対物剣を片手に飛び出します。関節部分とか弱いんじゃないかな、どうかな
・相手を罵りながら、メカのカッコよさとかに対しての本心が漏れ出します

備考
・動物型キャバリアの構想を得たいので、何型にするかシナリオ内で決めてください!


ケイティ・ネクスト
 片手を空に掲げて叫ぶにゃ!
「淫靡な空より来たりて、果てなき欲望を胸に、猫は邪なる手を結ぶ……契約を果せ、触装蹂躙機! アスモデウスマキナッ!」
 空から降り立つソレは実際邪神。でも、猫と契約して管理下にあるにゃ。邪神と猫を接続(どこにって、そりゃ言えない所に)してその名の如く蹂躙するにゃ。
「にゃっはははは! にゃーんて凄いパワーなんでしょう!」
 なお、凄いパワーを発揮するには中で猫も凄い事になってるにゃ。いつもの事だけど。ギリギリを攻めていくスタイル。
「ほぉらほぉら、猫はここだにゃー?」
 凄い事になってるのを見せ付けると【猫が殺す好奇心】を追加発動だにゃ。慈悲は無い。


木霊・ウタ
心情
よくもアニキを!

いや初対面だけど
命を弄ぶ奴らは許さないぜ

戦闘
爺さんらが巻き込まれそうな攻撃に対しては
炎の壁を生み出し庇う

掌から渦巻く炎を放つ

渦は拡がり
その炎は壁の如く視界を塞ぎ
高熱は地を溶かし歪め
また乱気流を生み出し
地空の機動を削いで
三機の連携阻害

獅子の突撃に対して
地獄の炎纏って突撃
バリアを地獄の炎が侵食し打ち破り
そのまま炎で押し包む

因みに突撃を受け止めても(=敵攻撃が命中しても
連携はできないし
内蔵兵器や機構を加熱&溶解

ドヤs
あんたらも
OストームでAIがイカレちまったクチだよな
可哀そうに
海へ送ってやる

事後
鎮魂曲
安らかにな
再起動すんなよ


アビー・ホワイトウッド
アドリブ及び連携歓迎

…あいつらが邪魔で道が造れない。退かさないと。

どやっているかどうかは重要でなく、いつらが立ち塞がっている場所が問題。
ラングレーから工事用ローラーをパージ。履帯走行から歩行形態へ移行して戦闘用意。
とりあえず一番デカい標的、ライノーを目標にする。

突撃するのが得意技なら相手になる。鉄の獣はお前だけじゃない。

歩行形態のラングレーをライノーに向けて全速で突撃させる。ぶち当たる。
どっちかが倒れるまでパワーで押し合い圧し合い。これで他のドヤメカと連携は取れない。
決め手にUC発動、足を踏ん付けてやる。

私は道が造れればそれでいい。



●激突、ドヤーズ・アタック!
「ギッ、ギッ、ギッ!」
 アリスの鋏角を軋ませる音に合わせてピラミッドが崩れると、ドヤーズに合わせるようなスリーマンセルで彼らを取り囲む。
「ガチッ、ガチッ、ガチッ!」
 更に鋏角を打ち鳴らせば、数本の足で体を起こしたアリス妹を支えるように、両脇のアリス妹もまた数本の足で体を支えながら斜めに立つ。
 組体操における扇の形だ。はっきり言ってしまえば同一の思念を持ち、更にはテレパスを使用する彼女らにとってアリスの鋏角による合図など欠片も必要が無いのだが、形から入るのは立派な文化。
 事実、アリスの行動によりドヤニマロイドたちも組体操によるアピールと理解したようだ。彼らのドヤポーズに対抗し、精神攻撃を行おうという目論見である。
『な、なんだこいつらは!?』
『見た事がない生物の見た事がない集団行動ざますー!』
『も、もしかしてこれが猟兵の……威嚇行動……?』
 何一つ理解してないのに一周回って正解に近いのウケるんですけど。
 しかし挑発行動と言えば黙っていられないのが世紀末。自分たちより数が多いと言うのに一糸乱れぬ組体操を披露されて、すごすごと引き下がる動物どもではない。
『こうなったらアレをやるぞっ!』
『で、でも、アレはまだ……練習中だし……』
『ンマァーっ、レオンちゃん、自分に自信を持つざます~!』
『忘れるなレオン、努力は決して自分を裏切ったりしないのだ!』
 唐突に始まった熱血涙のスポ根三文芝居に、すでに包囲網を完成させたアリスたちは顔を見合わせた。
 本来なら気にせず向かう所だが、わざわざこちらに対抗して何かしらの行動をするというのだから待ってあげるのが礼儀というもの。
 人間社会を学んだアリスちゃんはこうやって浪漫を理解していくのだ。尚、時と場合による。
『ミュージック、スタート!』
 くるりとドヤーズは背を向けて、ドヤライノーの口に備えられたスピーカーからノリの良さげな音楽が放送、それに合わせて三体もお尻を降り始める。
『一にドヤッて♪』
『二にドヤヤッ♪』
『三四が無くて──』
「通りまーす」
 くっだらねえダンスに取り敢えず断りを入れてキャンピングカーを走らせた桜花。猟兵はいつだって礼儀正しいのだ。
 彼女が向かうのはミンチよりひでえ状態になった元モヒカンアニキである。
『貴様ァー! 我らのダンスの途中だろうが!』
「怪我人優先です!」
『あ、そうですね、すみません』
 威嚇するドヤライノーはド正論で返されて、さすがに頭を下げる。ざまぁねえぜ!
 その様子にキャンピングカーの屋根で横たわり、頬杖をついていたケイティ・ネクスト(蠱惑の仔猫・f26817)は残る片手で口許を隠し生欠伸。
「ふぁあ、こんなのダンスとも呼べないにゃー。モヒカンの掘削作業の方がよっぽどダンスらしいにゃ」
『ぬぐぅ!?』
『ムッキィー! モヒカンの下りが全く想像できないけど馬鹿にされてるのだけは理解できるざます~!』
『や、やっぱり……まだ、練習不足だったんだ……!』
 ケイティの挑発に対しても動かないのは救命活動中だからであろうか。所々ペースト状だけど、これで助かったらこいつ人間じゃねえな。
 しかし、不可能を可能とし奇跡を起こすのがユーベルコード。
「桜よ吹雪け、命よ巡り巡りて人々を癒す慈雨となれ」
 桜花の言霊に合わせて桜の精たる彼女から放たれた桜吹雪は、荒野の砂塵を浄化するような澄んだ風と共にミンチ肉へ届く。
 普通ならば間に合わないだろう。だがそんな気持ちなど尾首にも出さず、全力でミンチ肉の再構成に挑む。
 そして、おお、見よ! グロいから割愛するが再生していく元モヒカンアニキの姿!
 残念ながらモヒカンも回復してしまったので、君を再びモヒカスとして扱わざるを得ない。土に還れカス。
「な、なんだ……どぅーしたんだぁ俺ぇい、はぁ……くっ、俺をー、ミンチにした機械どもがぁ~、クゥウルなダンスをぉ、していた所までしか覚えてェ、……ないぜ……!」
 あの状態で意識あったのか。軽く地獄を潜ってたモヒカスに、間に合って良かったと桜花は頷く。
 そよぐ風に気づいたモヒカスが頭に手をやれば、モヒカスの魂たるモヒカンの感触に目を見開く。
「あ、あんたがー、治してくれたのか。正に天使、この絶望の大地に舞いぃ降りたぁ……白衣の天使……!」
 白衣じゃねーだろ節穴。
 桜花の手を取りでっかい顔を寄せるモヒカス。力のある猟兵がモテるのはこの大地の常であるが。
「俺ぁ、元デス・さそり軍団のリーダーだったモンだがぁー、あんたの為ぇならぁ、いつでも命をハレルヤってなぁ、もん、さ。今の笑う所だがそんな事はどぅ~でもいい!
 俺ぇいとぉ、結婚を前提に」
「えいっ」
 モヒカスのくっちゃべっている戯言についていくつもりのない桜花は、元気になったなら大丈夫だと退魔刀と同じ製法の【破魔の銀盆】で殴り付けて気絶させる。
 そのまま足を掴み引きずってキャンピングカーに詰め込む様はサスペンスホラーで、先に詰め込まれていたジジイたちはさながら目撃者のように目を見開いて隅で固まっていた。
 死んでないから安心してね。
『さぁて、邪魔物もいなくなったし、ようやく戦いを始められるな!』
 こちら、さっきまでダンスがどうの言ってた奴の台詞です。
 ウタはドヤライノーに哀れみの視線を向けた。経緯はどうあれ、人命救助を掲げた桜花へ攻撃しなかったのは、彼らがそのように設計されていなかったからだろうと。
「あんたらも、オブリビオンストームでAIがイカレちまったクチだよな。可哀想に。
 海へ送ってやる」
 掌に渦巻く炎が風を生み、前髪を上げて青年の傷を晒す。ドヤライノーは戦闘体勢に入ったウタに体を向き直して鋼鉄の蹄で大地を抉る。
『ブッハハハ、何がイカレるものか! 我らはある日、黒い竜巻に巻き込まれ唐突に悟ったのだ。
 ……モヒカン等という悪文化を産み出す人間は、この星に不要……とな!』
 マジかよ。やっぱりモヒカンは駆除しようぜ。
 全世界の人間がモヒカンのせいでAIが反逆すると知った今、溜め息を吐くウタは「やっぱオブリビオンストームが原因じゃないか」と小さく溢す。
 その後ろで動物らしい動きにわくわくしているご様子ののじゃロリババア。
「う、うむ、この星に不要などと大それた事を。見逃す訳にはイカンな!」
 びしりと指を向けるはドヤファルコ。指名が入りましてザマス眼鏡をきらりと光らせ、翼を羽ばたかせて、二本足、小さく飛ぶと更に大きく羽ばたいて空を舞う。
『あーたたちが見逃すも見逃さないもないざます! アタークシたちの目からこそ、逃れられないと知るんざますよ~!』
 鳥の動きを模した飛行能力に、更に風切り羽根から炎を噴射すると一瞬にして加速、視界から消える。
『わ、悪いけど、容赦しませんよっ!』
 それを見届けてドヤレオンは前足を前にお尻を上げて、伸びをするような格好の後に顔を前へと移し、今にも飛び掛からんと構えを取る。
「……っくぅう~……! 正にアニマルロボットじゃな! わしをこんなにドキドキさせて、おぬしら一体どういうつもりじゃ!?」
『すまんけど妻がいるので。あと有機物は無機物的にNG』
 前足を持ち上げて顔の前で振る夫の鑑。そもそも告白してないっす。
 断られた本人は本来のサイでは出来ない関節の動きに、一体どうなっているのかと目を輝かせている。
 迂闊。
『隙だらけざます~!』
 超高度より急降下、それにぴくりと反応するのはケイティ・ネクスト。
「淫靡な空より来たりて、果てなき欲望を胸に、猫は邪なる手を結ぶ……契約を果せ、触装蹂躙機……!
 【アスモデウスマキナ】ッ!」
『なっ、なんざます!?』
 ケイティの呼び声に応え虚空より姿を見せるは無数の触手。それらは寄り集まる事で人形を象り始めた。これかぁ、もう触手ってだけでヤバいじゃん。
『させないっ、大正義青少年健全育成法タックルーッ!!』
「にゃにゃっ!?」
(きゃーっ)
 しかし、人形となる前にその身へ青い光を纏ったドヤレオンの突進が触手を吹き散らした。
 まあ、うん。本シナリオは健全だからね。卑猥なのはちょっとね。別に期待してないし。
 お腹空いたなぁ、とぼんやりしていたアリス包囲網も突破されてしまう。仕方ないね。
『目標変更、大正義不純異性交遊抹殺法キャッチャーッ!!』
「にゃにゃにゃっ!?」
 迫り来る鋭い爪を、すんでの所でかわすのは急ハンドルを切った桜花。的確なドライビング・テクニックが光る。
『アタークシの爪をかわすなんて、やるざますね!』
『ブッハハハ、獲物はそうこなくちゃ面白くない!』
 追撃はまだ続く。荒野のを踏み荒らして爆走する黒き影は砂塵を撒き散らし、自称する黒波を体現していた。
「追い付かれるべぇ!」
「アクセルッ、アクセル踏むんじゃ!」
「でもこれ以上は法定速度を超えてしまいますし」
「こんな所にそんなものないにゃーっ!」
 阿鼻叫喚のキャンピングカーに接近する黒い砲弾、あわや直撃かと言う所でその間に立つ者あり。 
 凄まじい衝突音が周囲に響き、大地を揺らす。
『ば、馬鹿な、この一家を支える大黒柱の突撃を止めた、だとぅ!?』
『──鉄の獣は、お前だけじゃない。突撃するのが得意技なら相手になる』
 その力に押し込まれたものの、見事に抑えたのは転圧に用いたローラーをパージし、絶望の大地に屹立する鉄獣機。
 アビー・ホワイトウッド(奪還屋・f24498)はエラー音の響く操縦席からモニターに映る黒い鉄獣機を見つめていた。
『あなたたちが邪魔で道が造れない。退かさせて』
 エラー音を切り、操縦桿を握るアビー。踏み込んだフットパネルがラングレーの出力を上げ、軋む体は鋼の咆哮の如く、ドヤライノーを押し返す。
『うぬっ、二本足に力負けなどするものか!』
 踏ん張れオヤジぃ、力負けしてるぞー!
 ラングレーを前に押し出される巨体。家族の危機と見れば現れたドヤレオンの体当たりがラングレーの膝を揺らす。親の喧嘩に子供が出張るんじゃない。
『良くやったレオン、これが我が一家の力だーっ!』
『──……!』
 体勢を崩した所に押し込まれ、転倒寸前のラングレーを背後からミゼラブルが支えた。
 運の良い奴め。
 思わず捨て台詞を吐いて離れるドヤライノーに、美聖・らふる(メガデス・f29983)は小首を傾げる。
(この世界でもキャバリアを見ることになるとは思ってなかっ……キャバリア……?
 では……ない……?)
 疑問符が並ぶが、まあ慣れた敵だ。厄介なのはやはり、その連携力か。
『ありがとう、助かったよ』
『……いえ……』
 敵が離れる間に体勢を整えて、拡声器越しのお礼を受ける。
 単独での突撃では彼らの連携の前に防がれてしまう。こちらも連携が必要だろう。
「上手く誘い出し、惹き付けておかないと猫のアスモデウスマキナも出すのが難しいにゃ」
 まだ諦めてなかったんすね。やったぜ!
 唸るケイティに、まだキャンピングカーにいた、というかご飯をつまみ食いしついたアリスの妹はその情報を姉たちへ送る。
『あのサイの突撃が厄介だ。私のラングレーやあなたのミゼラブルじゃないと止めるのは難しいだろう。だが──』
 大きく後ろに下がるドヤライノー。更なる加速によるぶちかましでこちらの装甲を突破するつもりだろう。
 例えパワーで勝っても衝撃による破壊は内部に及ぶ。正面から先の一撃を上回る攻撃を受けては、いくらラングレーでも保たないだろう。
「つまり、奴が全力で走れない地形に変えてしまえばいい訳だ」
「そういう事なら、俺も協力するぜ」
 背後から現れたレイと、それに続くウタ。
 敵の攻撃は連携は勿論、メインとなるドヤライノーの突撃を無力化すれば一気に弱体化するはずだ。
 蹄で地を掻くドヤライノーと、それをサポートする為に控えるドヤレオン、そして再び空へと舞い上がったドヤファルコ。
 三位一体の敵を前に猟兵たちも結束する。
「ガチガチッ、ギギギギ、ガチッ」
「ガチッ、ガチガチッ、ガチッ」
 猟兵らの結束に合わせて、アリス群体からもひとつの意思に統一された雰囲気が滲み出る。
 これお腹空いてますねぇ!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レイ・オブライト
サーカス団でも紹介してやろうか
家族仲良く引っ込んでりゃあいいものを

生身。覇気+格闘で応戦
同型機と思しき奴とやりあったことはある。言うだけはあった
状況に応じフリーの奴を叩き一対多の一側の猟兵が出ないよう努めるが、とりあえずはサイだ
進路を『地形破壊』地割れを起こし突進の妨害
獅子とは分断できても鳥の方は無理だな。いいや、「空からなら」と寄ってきてくれりゃ好都合なんだが
敵UCのかち上げまたは轢き潰しにより即死と見せかけ『限界突破』、頭上を取るまたは胴体の下に潜り込み
ドヤらせてる間に地と空、縦に串刺す形で【Gust】をぶち込む算段でいる。二機纏められりゃ御の字ってとこだ

……爺さんまだいたのか?

※諸々歓迎



●反撃開始、イェーガー対ドヤーズ!
 圧倒的戦力を見せたつもりでいい気になっているドヤライノー。おめー子供に助けられた事を忘れるなよ。
 レイは帽子を被り直してドヤライノーを睨み付けた。
「サーカス団でも紹介してやろうか、……家族仲良く引っ込んでりゃあいいものを……」
『ほう、我が一家が羨ましいようだな。所詮は独り身、悲しい男よのぅ!』
 誰がそんな話するかい。
 どうやら挑発を理解できる知能はあるらしいと肩を竦める。確かに、レイは独り旅する男だ。だが、だからこそ行きずりの縁を多く持ち、それらを無下に扱う事などはしないのだ。
 え、ジジイ? あれはジジイが帰らなかっただけだし。
「お前たちと同型らしき奴とやりあった事はある。言うだけの事はあったが、お前はどうだ?」
 レイが詰まらなさそうな表情で耳を掻くと、ドヤライノーは蹄で地を打ち、さあ武器を出せと言葉をぶつけた。
 荒い表現だ。己の耐久性に自信があるからこそだろうが、レイはふてぶてしい笑みを見せて拳を構えた。
 ゴッドハンド、故の拳。だがそれは黒き大波を自称するドヤライノーにとっては屈辱だったらしく、更に声を荒げて挑発する。
『ほーう、我らの仲間と戦ったと言うが、その戦いぶりが目に浮かぶようだ。情けなく逃げ惑っていたのだろう、ここに立っている所を見ればな!』
「そうだな、道具は持ってきても良かったか。寝惚けたサイを起こす目覚まし程度はな」
 カッチーン☆
 吐いた唾飲まんどけーよとばかりドヤライノーは雄叫びを上げて猛進、レイへ向け真っ直ぐに走り出した。
 が、彼とてサイメカの敵意を一心に受ける為だけに、長々と口撃していた訳ではない。
 その手に炎の渦を巻き、レイの背越しに精神統一を果たしたウタは大地を揺らすような巨獣を見据えた。
 砂塵を巻き上げた荒々しい姿は竜巻とすら呼称できようが、敢えて言うならば陸を走る波。黒々とした大津波だ。
 ならば対抗するは。
「そっちが大波ならこっちは嵐のお通りだ。ちょいと荒っぽいぜ?
 ……焔摩天……、転生!」
 花が身を開くように、鳥がその腕を羽ばたくように逆巻く炎がウタの右半身から全身を包み込む。
 【焔摩天W(エンマテンワイルドウィンドウィスパー)】、ウタの始動したユーベルコードは武器を強化する力も持つが、彼らブレイズキャリバーにとってはその身から出る地獄の炎もまた武器なのだ。その掌の渦が大きく拡がった。
 炎上するウタに目もくれないドヤライノーだが、異常を察したドヤファルコが急降下する。
「遅い!」
『いったいざまぁす~!』
 予見された援護に対して桜花のドライブバイ・シューティングが炸裂、これ以上ないタイミングでドヤファルコを迎撃する。
 残るはドヤレオン。
『ととっ、とっ、とっ、突撃ぃ!』
 そんな慌てんでも。位置的に今さら突撃したって間に合うわけないぜ。
 それにしたって、それを黙って見逃すつもりもないと謂うもの。
「そらっ!」
 腕の人凪ぎでその手より放射された炎は壁となって吹き上がり、桜花のキャンピングカーとウタらの間に大きな壁となる。
 更に突き進む炎はその身の熱でもって大地を焼き、更に融解させていく。
『ぬおっ!?』
 ぬかるみに足を取られたドヤライノー。その隙を見逃さず、レイの拳が荒野を撃つ。
 ゴッドハンドの拳は大地を裂き、亀裂の先に足を滑らせて止まれないドヤライノーを巻き込んだ。
『うおおぉおぉお! 宙ぶらりんーっ!』
『と、父さーん!』
 大きな顎とお尻のお陰で亀裂から落ちこそしないものの、足をぷらぷらさせて踠くドヤライノー。
 ドヤファルコが上空からの助けを試みるも、先程ウタの発した炎による急激な温度変化で巻き起こった上昇気流、そして下降気流によって近づけずにいる。
 ドヤレオンも救出を試みたものの、強力なダウンバーストと化した下降気流に出足が遅れた。
「ギエエエエエッ! ガチガチッ! ギヂギヂギヂ!」
(食べ物を粗末にする子はお仕置きよー)
 動きの止まったドヤレオンに向けて、アリスの指令を受けた妹たちがスタートダッシュを切る。
『ひえっ』
 涎を垂らす顎を振り回し、迫る大量の異形に言葉を失うシシメカ。
 己の罪は己の体で支払え。
 殺到するアリスらの強靭な鋏角を受けるも流石は超無敵な気分に成れる合金、その装甲はさしものアリス成体であっても簡単に食すには至らないようだ。
(噛み応えあるー)
(青色って爽やかな味なのね~)
 尚、好評のご様子。
『た、助けてっ、父さん母さーん!』
『あーたらウチのコに何してるんざますーっ!』
 風切り羽根から炎を噴射し無理やり気流を突破するドヤファルコ。
「……三体揃わねば役には立つまいにゃ……!」
 下降する炎の塊を見つめて口元を歪めるのはケイティだ。
 先程、こちらの邪魔をした一体は抑えられ、続く機動力を持つ一体も別方向を向いている。
 そう、今こそ絶好の機会なのだ! サービスサービスぅ!
「淫靡な空より来たりて、果てなき欲望を胸に、猫は邪なる手を結ぶ……契約を果せ……!
 触装蹂躙機! アスモデウスマキナッ!」
 二度目でも詠唱をカットしないとは、浪漫を分かってますねぇ。
 天高く手を掲げた仔猫の呼び掛けにより再度の召喚を果たした触手の群れは、今度こそ依り集まりて人型を象るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

美聖・らふる
この世界でもキャバリアを見ることになるとは思ってなかっ…………キャバリア?
では……ない……?
でも、どちらかといえば…………慣れた、敵。
…………目標を、制圧、します。

………………クロムキャバリアと違って。
パイロットごと、吹き飛ばしても良いのだから。

…………ミーゼの“ミゼラブル”と、力比べ、しますか。
防御と、出力に特化した、この機体と。
……ブースター、出力全開。
「かち上げ」を、正面から抑え込んで――――

コード:“ユーズアネイジア”
出力30%、目標、敵機三機。
連携を行う際に、対象が射線上に入った時を狙って。
“メガデス”――――発射。



●連携なんかさせないぜ! 封殺せよ家族愛!
 虚空より来る者、その姿は性質共に実際邪神。しかしそれも、ケイティとの契約によりその管理下に置かれている。
 アスモデウスマキナとはコントロール触手とケイティを接続する事で遠隔操作が可能となる。それが彼女のユーベルコード、【猫と邪神】。
 ならばそれはどこに接続するのか。それは淫猥なる彼女をもってしても思わず語るのを躊躇う場所。
 きゅ、と伸びた触手の一本が繋がり、ケイティは小さく身震いする。背筋をかけるのはおぞけか悦楽か。小さくも熱い溜め息が、ゆっくりと巻き付くそれに応えるが如く湿った音を出す。
「……せ……接続、完了、にゃ……っ!」
「接続ちうか尻尾と触手巻きついただけでねんべか?」
 黙れジジイ。お前にエロが分かるのか。
 説明不用な点を説明してしまったジジイはさておき、ケイティの手足となったアスモデウスマキナはその触手を揺らし、その身の一部を解く。
 同時に空を走る蛇よ如き影は、加速するドヤファルコを縛りあげた。
『──なん、ざます!?』
 胴と翼を絡め取られて困惑するドヤファルコ。人妻の緊縛シーンだぞ。喜べ諸兄。
 あはんうふんな目にあって炎を噴射し振り切ろうと暴れるが、完全にこの世界に顕現した邪神の前では赤子も等しく、その魔手から逃れられず。
「にゃっはははは! にゃーんて凄いパワーなんでしょう!」
 カメラ目線頂きました。
 触手の檻に囚われたドヤファルコに、もはや連携を取れる者などおるまいとばかりにらふるはミゼラブルのメガデスを構えた。
 念には念を入れて、アビーはラングレーをミゼラブルの前に配置しつつ、姿勢を下げる事で自らを砲台と化す。
 出力は先程と同じく三十パーセント。
『ぬおおおおっ、捕捉されたぁっ!』
 危険信号が鳴り響いているのか、亀裂の間でじたばたするドヤライノー。
 冷めた目でそれを見つめ、引き金に指をかけたらふる。
『や、止めろ~っ!』
(きゃーっ)
 しかし、ここで変化を見せたのはドヤレオンだった。
 各装甲を開き、隙間からエネルギーを放ちその身に青い光を纏ったシシメカ。その力でアリス妹らを振り払い、ミゼラブルへ向かって走る。
「おおっ、これがバリアを放つギミックじゃな。桜花よ、もっと接近するんじゃ!」
「あの位置にこれ以上近づいたら、巻き込まれますよ!」
 敵とのサイズ差の前では無力であろうミミックから、ドヤファルコの攻撃をも避けた桜花の操るキャンピングカーへタンクデサントする春。
 春の自分の目的第一の言葉を叱咤すれば、興奮していた様子の彼女も我に返って頭を下げる。貴重な場面であるが、守るべきジジイを危険に連れていく訳にはいかない。モヒカンはどうでもいい。
 二人がやいのやいのするその間にも、戦場は動く。
『敵機接近、迎撃準備』
「俺が行く。アビーはそのままミゼラブルの補助を!」
 アビーは即座に攻撃へ動くが、それを制したウタは地獄の炎を纏ったまま、同じく光を纏うドヤレオンへ突撃する。
 火矢の如く地表を疾駆する赤は、荒野を砕く青と正面からぶつかった。
『! …………! パワーダウンしてる!?』
 先程のアリスの攻撃で上手く出力の上がらないドヤレオンに対し、ウタの地獄の炎はバリアを包み、浸食していく。
 ゆっくりと赤へ食い破られる様に恐怖を見せたドヤレオン。
『レオンちゃんに何するざます~!』
「へ? うおっ!?」
 ここでドヤファルコが、その両翼の突端から計八本もの光を放った。レーザー攻撃だ。
 閃く光は地獄の炎を纏うとはいえウタに直撃し、ドヤレオンから弾き飛ばされ。
「なーにしてんのにゃ!」
『あひいっ、ざますぅ!』
 触手を鞭の如く打たれて悶えるドヤファルコ。
 彼女はドヤレオンを救えて満足しただろう。だが、既にエネルギーの充填は完了している。
『発射』
 再び放たれたエネルギーの渦。今度は道造りの為に射角の調整もしていない、ドヤライノーへの直撃コースだ。
 ミゼラブルへの攻撃を行おうにも、先のウタの炎によって駆動系の一部を焼かれた彼の足では、とても間に合うものではない。だからこそドヤレオンは。
『うおおおおおおお! ドヤバリアー、最大パゥワァーッ!』
 大地を走る光の前に立ちはだかった。
 ドヤレオンにより、先程の光景と同じく砕けた光が大地を削る。
(……被害が広がる……このままだと……)
『大丈夫、ミーゼ。攻撃を緩めないで!』
 らふるの迷いを感じ取ったアビーが叫ぶ。
 敵もすでに限界が近い。駆動系に損傷を受けたドヤレオンは溶けた大地に踏ん張りも効かず、徐々に押し流されている。
 ならばこのまま力押しだ。
『──う…………ッ? ……う……うわああああっ!』
 エネルギーの照射を止めず、ドヤライノーごと吹き飛ばすべく放出されたエネルギーの奔流は遂にドヤレオンを押し流し、そして。
 充填したエネルギーが切れて光もまたその砲口から消えた時、そこには無事に亀裂にはまったままのドヤライノーと。
『レ、レオォオン!』
 半壊したドヤレオンが立っていた。
 威力を弱めたとは言え、メガデスを二度にまで渡り防いだドヤレオン。しかしその体は各所から火花を散らし、押し込まれたエネルギーとの衝突の余波で顔の装甲は破壊、脚部もまたへし折れている部分が散見された。
 それでも、尚。
 ドヤライノーの呼び掛けに応えるべく、その隻眼に光を灯したドヤレオンは口を開き、空へ向けて砲撃する。
『──ドヤァアアアッ!!』
 勝利の雄叫びである。結果を見れば敗北者であるが、それでも自分の役目は果たしたのだと、責任を全うした兵士の姿がそこにはあった。
 その立派な佇まいに、敵でありながら尊敬の念すら抱いたアビー。だが、ここは戦場だ。
 満身創痍のドヤレオンに今ならばと、ラングレーの主砲である百三十五ミリ滑腔砲【ミネルヴァ】を向けて、動きを止める。
 既に、勝敗はついているのだと。
『……父さん……母さん……僕は、二人の、誇れる……、…………?
 あっ』
 渾身のドヤポーズを披露したドヤレオン。二機へ遺言の如き言葉を残していた所、ノイズの走る視界に、こちらを取り巻くアリス妹の姿を発見して自らの未来を察したご様子。
 ドヤレオンのドヤポーズにも負けない、彼女らの一糸乱れぬドヤポーズは一斉に前肢を振り上げ、鋏角を鳴らすものだった。
 威嚇やないかい!
「ギチギチッ、ギチギチッ。ギイイィエエエ!」
(ふふーん、そっちも格好いいけどアリス達の一糸乱れぬポーズも格好いいでしょー。
 さっき拾ったモヒカンさんたちはリリースしたから妹達もお腹を空かせているのよー?)
 逃げる事もままならないドヤレオンへ、背後から近づいたアリスがその上に覆い被さった。
「ギエェェェ! ギチギチギチ!」
(みんな~あつまって~)
(はーい!)
 飢えを満たす為、食する為。
 たったひとつの意思に統一された【貪食する群れ】がドヤレオンを目指す。彼の最期は決まりだ。
 らぜるは打倒できなかったドヤレオンに、アビーと同じく敬意を払いつつもその光景を止めようとはしない。
 弱肉強食こそ、戦場で見るに相応しい光景だからだ。あとお預け食らってたアリスたちが嬉しそうだったから、邪魔するのは気が引けるよね!
『きっ、さっ、まっ、らーっ!!』
 大絶叫。
 顎と尻を上下に高速運動させ、キモイ動きで跳ね上がると亀裂からの脱出に成功したドヤライノー。メカが気合と根性で難局を打破するんじゃない。
 未だに足場の悪いそこに速度を上げられぬ黒き大波、目指すはミゼラブル。しかし、彼らにも立ちはだかり守る者がいたように、猟兵にも守る者は存在する。
 至近距離での砲撃に吹き飛ばされた帽子の泥を払い、二機の間に立つレイ。帽子を被り直して軸足を前に拳を固める。
『退けえええええいっ!』
「嫌だね」
 激昂するドヤライノーを正面に一歩も退くことなく、その身に纏う覇気を右拳へ一点集中。
 稲妻が走るそれを、敵へと叩きつけた。
『──効かんわ!』
 サイメカの鼻っ柱に叩き込まれたそれに、突進の速度を落とされながらも強がりと共に進む。そう、止まらないのは事実だ。
「…………、ちっ」
 迫る足に苦い顔をしたデッドマンは、そのまま踏み潰された。
『レイ様!』
『大丈夫、あれぐらいじゃ死なない』
 状況を直視したらふるの叫びに、デッドマンの特徴を知るアビーは冷静だ。そして今、ウタとレイが近くにいない以上、ミゼラブルを守るのはアビーの役目でもある。
『そこのデカいの、沈めェい!』
 肩の装甲を展開し、一対の砲身を覗かせるドヤライノー。敵の装甲を突破するに必要な加速力を得られなかった事から攻撃手段を変えているようだ。
 これもレイのお陰である。切り換えるにしても、タイミングが遅かった。
 今度は身を伏せた本体を低い位置にドヤライノーに突撃、咄嗟に頭を下げてかち上げようとした敵よりも更に低い位置で当てた体を、お返しとばかりに跳ね上げた。
『うぅうおぉお!?』
 空を向く砲身は在らぬ方向へと弾を吐き、後ろ足で体を支えるハメになったドヤライノーはそのままラングレーに押し込まれてしまう。
『お、おのれ二本足またしてもっ。こ、このままの体勢ではこのドヤライノーでも力負けしてしまうぅ!』
 お前最初の段階で力負けしてたやないかい。
『こ、これ以上、愛する者を失わせないざますぅう!』
「にゃんとっ!?」
 がんじ絡めとなっていたドヤファルコ、自らの傷も厭わぬ閉所での火炎放射で触手を焼き切り、再び空へ飛び立つ。
 赤々と燃える姿で急上昇、そのまま一路、ラングレーへ向けて降下する。それはまるで大気圏内に突入しても燃え尽きる事のない隕石の如く。
(速い!)
 突撃角度の深さは捕捉も容易だが、この速度では少し方向を変えられただけで射線を抜けてしまう。ミゼラブルもまだ、反撃の準備が整ってはいない。
 主砲を向けて歯噛みするアビー。
『ブッハハハ、形勢逆転のようだな!』
『──潰れろ…………!』
『痛ァい!』
 単純過ぎる攻撃である【踏み潰し】は、その超重量でもってドヤるサイメカの爪先の装甲を砕き、そのまま地面を破壊してラングレーを傾けた。
 姿勢を崩したのではない、この姿勢にしたかったのだ。
 傾くと同時に素早く射線にドヤファルコを捉えたアビーは主砲を発射。それでも当然の如く回避する敵へ、時間が稼げたのならばそれで良いと体勢を変更、ドヤライノーを盾にするべく更に低く構える。
 刹那。
 地表から迸る一条の光が、ドヤライノーと回避運動した際にその頭上へ移動したドヤファルコを貫いた。
『……な……に……?』
 驚愕するドヤライノーに対し、溢れる血肉を光の、雷撃の槍へと変えて撃ち放ったレイはその巨体の下で嘆息する。
「こいつは礼だ」
 ユーベルコード、【Gust(ディヴァウアー・ダークネス)】。自身の肉体を、魂の容物と仮定する事で地肉を武器と化し、殺傷力を高めた雷の槍と化す。
 下半身を鉄の獣に踏み荒らされたレイはその怪我も計算の内、油断したドヤライノーごと、見事にドヤファルコを貫いたのだ。
『ま、まだ……まだまだ……ざますっ……! せめて一矢、あの子の為にも……!』
 飛行する力を失い、地上へと墜落しながらもドヤファルコは羽の突端部をラングレーへ、否、ミゼラブルへ向けた。
「貴方たちの家族に対する想い、願い、とても立派だと思います」
 悪路を走り抜け、遂にはドヤファルコへと追い付いたのは桜花の駆るキャンピングカー。
 その屋根では対物剣を大上段で構えた春の姿。
「じゃがのう、その絆が人を害する事へ向けられるのなら、わしらも黙っておれんのじゃ!」
 細やかなハンドル操作で不規則に降下するドヤファルコへ合わせる。
(何となくデッカイザーさん達を思い出しますけれど、彼らの殆どもスクラップにしたのですもの。
 ……ドヤーズさんたちも……!)
「──行きます!」
「応よ、任せい!」
 特に標識はないが法廷速度を守った速度でアクセルを踏み、ドヤファルコの体を潜る桜色のキャンピングカー。
 直後に降り下ろされた刃は、ドヤファルコの首を切断した。


●質実剛健、激震ドヤライノー!
「…………」
 憐憫の眼差しを向けて、地上に叩きつけられた機体に桜花は沈黙する。もしかしたら、彼らにもデッカイザーの生き残りのように人々と仲良く暮らす未来があったのではないか。
 なまじ人語を解する存在であるが故に、そんな甘い考えが脳裏を過るのだ。
 一方でその光景を目の当たりしたドヤライノーは、ふらりと揺れて後退、地に伏せる。最早、打つ手は無いのか。
 新たな餌にやったぜとばかりに群がるアリスらの姿に、家族三機、仲良く胃袋の中ならそれも良いかと。
 そう静かに考えるドヤライノーにもまた死神、もといアリスが迫る。
『……百点満点、では、ない……だからこそ、良い……人生だった……』
 人じゃねえだろ。
 完全に諦めたその巨体へ、アリス妹らがぴょんぴょんしている。可愛い。
「ガチガチガチ! ギギィイイイ!」
(危なーいっ!)
 唐突に響く司令塔からの危険信号。それから幾ばくもなく音が轟き、ドヤライノー付近の大地が大きく抉られた。
 それは砲撃の音。見ればアリスらに殆ど食われていたドヤレオンが、最期の力にと振り絞った一撃。その衝撃で完全にドヤレオンは沈黙したが、代わりにドヤライノーの意識に火が灯る。
『お、おおっ、…………! ぬおぉおおおおおおお!!』
 咆哮。
 再起したドヤライノーへ慌てて飛びかかるアリス妹たち。彼女らが十を超える数で乗っても、傷ついたはずの彼に一切の怯みはない。
『ブッハハハ、所詮は節足動物、我に与える影響など一変足りとて、ぬぁい!』
(丸いとかじりづらーい)
(黒色は甘い味なのね~)
 チョコレートかよ。
 ドヤライノーさんのドヤ宣言も全く気にしていない。だがそれこそドヤライノーにとって気にする事ではなく、燃える瞳を猟兵たちへ向ける。
 あ、妹さんは猟兵じゃないので。
『……この俺とした事が……!
 退かぬ! 折れぬ! 省みぬ!! 一家を支える大黒柱として、我が身に敗北は有り得ぬのだぁーっ!!』
 三度目の突進。もはやその姿は鉄の獣ではない。鉄の鬼だ。
 人工知能に信念を燃やしたドヤライノーの突撃は、破壊された身でありながら最初のそれよりも張るかに速い。
 地面が固まり始めた事もあるが、悪路に対応してきたという事でもあるだろう。
 ぬかるみを逆に利用して滑走し、亀裂を跳び超え、迫る鋼の咆哮。
「このタイミングでその気迫は厄介だな!」
 そこへドヤファルコの攻撃から立ち直ったウタ。両手から溢れる刧火を渦巻く焔へと変えて大地を裂く。
 強化された地獄の炎は、まるで連鎖する噴火のように連続的な火柱を立ててドヤライノーへ迫るが。
 それを鼻で晒い両肩から発射した砲弾で大地を吹き飛ばす。地を焼く火柱は地面から吹き出したようにも見えたがその実、地表を延燃しているに過ぎない。
 それを看破した彼の砲撃によって地表が吹き散らされた事で、導火線を斬られたように炎は拡がりを止めてしまう。
 冷静な判断力を見せたドヤライノーに、ここは任せろとばかりのタイミングで現れたケイティ。蠱惑的な笑みを浮かべて厭らしく絡み合った尻尾とコントロール触手を見せつける。
「ほぉらほぉら、猫はここだにゃー?」
 ああっ、そんなっ。激し過ぎますっ。えっち、えっちです!
 しかしドヤライノーさん、スンとした様子で頸を振る。
「だから無機物的に有機物はNGですって」
「にゃっ!?」
 そういやそんな事言ってたわ。
 色仕掛けの通じない相手であるが、その間に動けずにいたレイをキャンピングカーへと回収する爺さんズ。やるやん。
『私は道が造れればそれでいい。最期の攻撃も私が受け止める』
 ラングレーを立たせたアビー。だが、その動作を見ればすでに内部系統に異常が出ている事は素人目にも一目瞭然だ。
 既に二回も敵の突撃を受け止めているのだ。更に今回はそれを上回る威力。今のラングレーではとても耐え切れまい。
 それでもこの路に固執するのは、やはりこのアポカリプスヘル出身故か。
『……大丈夫、です……皆に守ってもらっから……だから……』
 次は自分が行く。
 走りながら、邪魔そうにアリス妹を振り落とそうと暴れるドヤライノーに対し、落ちないようしっかり噛りつく彼女らも、アリスの司令を受けてドヤライノーから離脱する。
 正面、一。
「…………、目標を、制圧、します」
 クロムキャバリアと違って、パイロットごと吹き飛ばしても良い存在。
 らふるの中でそう規定された今回の敵を前に、ミゼラブルの両腕を開き、迎え撃つ体勢を取る。
『……ミーゼのミゼラブルと……、力比べ、しますか』
『ほう、一騎討ちのつもりか。面白いが貴様ら猟兵と俺は違うッ!
 俺は愛によって立っているからだ。俺は一人ではない!』
 だから人じゃないだろ。
 ドヤライノーの戯言も事実と思えるこのパワー。しかし、対抗するミゼラブルもまた、防御と出力に特化している。
 それが、攻撃は行っていたとは言え消耗がないよう、この土壇場まで温存されていたのだ。
『……ブースター、出力全開……』
 らふるの操縦に合わせて動力炉は加速、背面の推進機が点火し炎を巻き上げて急激なGが彼女の体を押さえる。
 歩行速度や運動能力は壊滅的であるが、その出力は他量産型キャバリアなど比較にならない代物だ。
 真っ向からぶつかり合う二機。
 首を下げてかち上げの体勢に入るドヤライノー、その角はミゼラブルの装甲さえ貫き穴を開け、そして。
 ──止まる。
『──ば、馬鹿なっ!?』
『コード、ユーズアネイジア。出力三十パーセント、目標、正面四足歩行機一。
 圧倒する。──メガデス』
 砲口を突きつけられ、その絶望的な光景を前にドヤライノーは抵抗を止めたように全身の力を抜いた。
 あるいは、無理を通した体が限界を迎えたのか。
『発射』
 慈悲なき言葉が三度目の光を放ち、今度こそドヤライノーをばらばらに引き裂いた。
 爆発すらも光に押し流されて、荒れた大地に文字通り鉄屑となって転がったドヤライノー。
 通して見ればその圧倒的な火力を防げたのはドヤレオンのみ、彼ら家族がシシメカに絶対の信頼を置いていたのも頷けるというものだ。
 ウタは三機全てが沈黙したのを見届けて、纏う地獄の炎を打ち消した。振り返れば下半身をドヤライノーに破壊されたレイが、桜花から治療を受けている所で、アビーもまたラングレーを降り、機体の様子を確認している所だった。
 それぞれに休む気配はない。胸にざわつくものが、次の敵を予見しているのだ。
 それでも、少しの時間があるのなら。
「安らかにな、再起動すんなよ」
 砂塵を払った【ワイルドウィンド】を手に、鎮魂曲をと弦を弾く。その間にも食べ易くなったとアリスの妹たちが嬉しそうに超無敵気分合金を頬張っている。
 なんか段々と美味しそうに見えてきたぞ?
「ふーむ。三機の動物型メカか。シシ型はバリアに機動力もあって良さげじゃのう。サイ型もパワーと装甲で素晴らしい。
 しかし、やはりハヤブサかのぅ。ミミックじゃ空は飛べないしのぅ!」
 春は何やら一人で唸っている。全部揃えた口から火炎弾発射する回転飛行するカメメカとか全部揃ってていいと思います。
 そうして、猟兵が戦いの僅な幕間を思い思いに過ごす中、スクラップとなったはずのドヤニマロイドたちに不穏な帯電現象が生じていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『キングドヤガオー』

POW   :    必殺のキング・ドヤ・クラッシュ!
単純で重い【格闘、可変翼キングドヤソードや内蔵兵器】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    灼熱のクラッシュエン・ドヤァア!!
【キング・ドヤ・クラッシュの各種近接攻撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【炎の塊と化し加速、謎爆発と共にドヤポーズ】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    私は決して悪には屈しないっ!
【誰にも負けない】という願いを【自分のドヤポーズを見た者たち】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠タケミ・トードーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●見参、キィングドヤガォオオオオ!!
 最初の異変は風だった。
 生暖かな湿った風がその場を取り巻くように吹き荒び、竜巻のように円を描いて収束していく。
 壊れたドヤニマロイドたちを中心に。
 風はやがて黒い雲を呼び寄せ、雷を放つ。オブリビオンストーム。局所的に起きたそれは破壊された三機のメカに生を与えるように、その傷を癒していく。彼らの双眸に灯る光は禍々しく天を貫いた。
 この日、幾度目かの鋼の咆哮。しかし今回は雄々しさではなく、悲痛な叫びにすら聞こえた。
 復活を遂げた三機は、黒い竜巻に導かれるように宙を舞う。
 ドヤレオンは屹立し、頭部を胸へ活動、後ろ足が胴体と一体化する。ドヤライノーは後ろ足が前足と合体、お尻の装甲が下に傾き、リアアーマーへと変じた。
 さしてドヤファルコ。ドヤレオンがドヤライノーに接続されると、自らの胴を観音開きに、足は背中へと折れ曲がり関節から推進機の排出孔が顔を覗かせた。
 ザマス眼鏡は空を飛び、ドヤレオンを包み込むように合体する。同時に、ドヤレオンの胴体から新たな顔が出現、顎を開いたドヤファルコに接続し、空より舞い落ちるザマス眼鏡を装着してアイカメラが光る。
 なんでもいいけどそのザマス眼鏡って必要?
 復活を果たしただけでなく、新たな息吹を持って人型となったそれは身を震わせ、装甲から雷を放った。
 激震。大地を揺らし、地上へ降り立つその姿。
『絶望蔓延るこの大地、そそり立つ正義を見よ!』
 開く翼は夕陽にも負けず赤く輝き、開けば記すは正義の姿!
『常時五分前行動準備ヨシ!』
 それは社会人としてのマナー、ともすればサービス残業!
『超無敵気分合体っ!
 キィイィングゥ、……ドヤッ……! ガオォオオオオオ!!
 本日の業務も安全優先只今開始!!』
 ぴっしゃーん!
 落雷を背後に叫ぶキング・ドヤガオー。オブリビオンストームは消え、巨大な人型兵器が残るのみ。
 どやってんじゃねーぞ社畜ロボ。一家団欒愛の家族メカが、合体すると社畜メカに早変わりである。
 こんな程度社畜じゃないって? 正論は嫌いだ!
『さあ今こそ、地球を食い潰す悪しき二本足へ、正義の鉄槌を下してやろう!』
 鋭い爪をびしりと指して、キングドヤガオーは不適な笑みを見せた。

・ボス戦となります。火力、装甲、前回のドヤニマロイドを上回りますが狙うは一機のみとなります。
・引き続きドヤるので前回と同じ戦法が可能です。
・したり顔でキングドヤガオーの主張に同意したり、あるいは反論すると言い返してきますのでその隙を叩きましょう。煽り耐性は紙装甲です。
・時刻は夕方、ボスを倒し夕飯を食べて生還しましょう!
・見物人のお爺さんが相変わらず二人います。今回もオブリビオンが狙う事はありませんが、巻き込まれに注意して下さい。
木霊・ウタ
心情
ドヤズの家族愛
好きだったぜ
変えられちまって可哀そうに

ストームの傀儡という軛からキングを解放してやろう

戦闘
必要なら爺さんズを庇う

迦楼羅を炎の翼として顕現
翼をジェット噴射の如く一気に間合い詰め
獄炎纏う焔摩天で薙ぎ払い
敵武装や装甲を砕く
一度でダメでも何度も繰り返す

攻撃の度に飛び散る火の粉を起点に内部へ延焼
配線を焼き切る
気づいたときには不具合が出てるぜ

爆炎をスラスターの如く用いて回避
炎渦で敵攻撃を減じながら武器受け

キング
絶望ばかりじゃないぜ

道路整備は未来への希望故だろ

未来を
希望を持ち続ける人の心が
きっと
この荒廃した世界を変えて行く

命と未来とを守るため
あんたを海へ送るぜ

事後
鎮魂曲
海で家族仲良くな


ケイティ・ネクスト
 ふーん、合体メカ。まー、猫も合体メカだしぃー?
 あー、エロを解さぬ相手ってのはちと忘れてたにゃー、猫は機械でもヤれる猫だし。
 とは言え、地の理はこっちだにゃ。何せ、既に猫が結構居る。
「猫は最強の暗殺動物」
 アスモデウスで囮は引き受けるにゃ。触手に出来るのはエロい事だけじゃない、パワーも凄いし軟体だから殴られても平気で殴り返せるにゃ。
 その間に暗殺猫を潜り込ませて内部からバラすにゃ。脆くなった所を触手で絡めとり引きちぎるにゃ。
 Carrionも元ネタではあるにゃんよ? ただのエロ機体だと思ってると八つ裂きにするにゃんよ。



●決戦だ決戦だ!
「……合体……じゃと……」
 一体となる事で更に巨体となった敵の姿。
 九条・春(風渡り・f29122)は膝の上に乗せたケイティ・ネクスト(蠱惑の仔猫・f26817)を撫でくり回す手は止めずに茫然自失と敵を見上げていた。
 合体まで時間かかったからリラックスしてる猟兵がいてもしゃーない。
 取り敢えず敵の驚きを感知して、どやっとばかり腕を組んだキングドヤガオー。
『これぞキング、これぞ正義! この威風堂々たる風貌を、その目に焼き付けるがいい!』
 どややっ。
 立っているだけで物理的にもデカい顔しやがって。無駄に夕陽が乱反射する場を立ち位置に選び、細かな足捌きでしゃかしゃか動く。
 ちょー目障りなんですけど?
「……今は貴方も二足歩行な訳ですが……」
『アイデンティティである動物型を捨ててた時点でお前も二本足の仲間入り。カモン、人型ちゃん』
『むっ?』
 キャンピングカーから顔を出す御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)とラングレーに搭乗したままのアビー・ホワイトウッド(奪還屋・f24498)。
 先程、人々を悪しき二本足と断じたキングドヤガオーへの指摘兼挑発である。
 しかし二人の言葉に対してキングドヤガオーはこれ見よがしの溜め息を溢し、やれやれと肩を竦めて──、こいつ人型になってから異様に鬱陶しいな。
『我が完璧超絶無敵気分ボディーを構成するドヤファルコ、ドヤレオン、ドヤライノー、全て合わせて十にものぼる足の数。貴様ら二本足と一緒にするでないっ!』
『二足歩行を辞典で引いてみろバカガオー』
 何やら語り始めている間に機体を固定、砲撃姿勢を取ったラングレーの主砲、ミネルヴァから音が轟くと同時に火花が咲く。
 発射された砲弾は至近距離のキングドヤガオーの右脛に直撃する。ツッコミ派手過ぎやしませんかね。
『痛ァい! あ、いや、い、今何か、したのかな?』
 思いっ切り痛い言ったじゃん。
 砲弾を受けて右足が反動に後ろへ下がったものの、強がって見せたキングドヤガオー。君たちなんで痛覚あんの?
 地上へ落下し鈍い音を経てた薬莢には目もくれず、主砲に装備された弾倉を入れ換える。
(通常弾頭じゃ力不足。AP弾に変更)
 対装甲貫通能力を高めたアーマーピアサー、いわゆる徹甲弾である。
 明らかに効いたのはさておき、事実として敵装甲に被弾痕はあるものの健在、損傷箇所は見受けられない。無敵気分と言うだけあってそれだけの気持ちになれる防御能力はあるようだ。
 一方、桜花はキャンピングカーを後退、キングドヤガオーから距離を取る。
「村長さんとダンデーズームなナイスミダラさん、モヒカンさんはこのまま車中に控えていていただいても良いでしょうか?」
 少なくとも、外ほど危険ではあるまいとする彼女に、爺さんズも異論はないと頷いた。モヒカンは気絶してるのでどうでもいいね。
 それらと同じく車内に居たのはレイ・オブライト(steel・f25854)。
 桜花のユーベルコードで回復した足を曲げ伸ばし、状態を確認して爺さんズに借りを作ってしまったかと小さく息吹く。
「選んだオレの目も、腐っちゃあいねえらしい」
「なんな、よう分からんけんども納得いかん言葉が聞こえた気がするべ」
 いちはやく反応する田舎っぺ爺さん。よう分からんなら黙っとけ。
 そんな彼らの傍らで、調理される前の生野菜をむしゃこらしているのはアリス・ラーヴァ(狂科学者の愛娘『貪食群体』・f24787)の妹、幼虫である。
 とっくに体の体積以上に食べているはずだが、彼女たちの巣に転がっている粒状の発光体、【パワーフード】があるのを見ると。
 まあ、深くは考えまい。製法は明らかにされていないのだから。
 レイもまたパワーフードの詳細は知らないものの、以前、とある拠点での交流から万能的な高栄養物質と周知されている。
「……エネルギーの補給には良さそうか……」
 念の為に追記するが、食べ物ではない。物質である。いや食べれないとは言わないけど発光してる物を食べ物とは呼びたくないじゃんね。
 車上ではさすがの轟音に目を覚ましたケイティが大きな欠伸をして、春の膝から降りた所だった。
「ふーん、合体メカ。まー、猫も合体メカだしぃー?」
 気怠く背伸びをして全身を揺らせば、合体の解けた尻尾を撫でるのは春の手だ。
 目の前で揺れてるんだから撫でくり回してしまうのはしゃーないわ、うん。
 ちょっと迷惑そうな顔で尻尾を強めにくねらせて春の手から逃げると、改めてキングドヤガオーを見上げる。
「あー、エロを解さぬ相手ってのはちと忘れてたにゃー、猫は機械でもヤれる猫だし」
 未成年の性癖が歪む発言はお止め下さい。
 キングドヤガオーは有機物でありながら機械と合体できる猫が想像できなかったらしく小首を傾げていた。可愛い所もあるやんけ。
 地上ではラングレーの近くに立つ木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)がキングドヤガオーを見つめる。
 ドヤーズことドヤニマロイドたちの家族愛、彼らの確かな絆を感じたウタにとって、人類抹殺の為にオブリビオンストームにより悪性変化したキングドヤガオーは同情すべき相手だったのだ。
「王様、オブリビオンストームの傀儡という軛から解放してやろうか」
 抜いた巨剣は【焔摩天】、その身に刻まれた梵字は夕陽より赤い獄炎に焼かれ、戦火に荒れ果てた大地へと衝き立つ。
 キングドヤガオーはその言葉を受けて腕を解く。すでに開戦の狼煙とばかりの砲撃があったが、王様的には何もされてないらしいので攻撃の機会を窺っていたのだろう。
『剣で挑むか。良かろう、我がキングドヤソードの錆にしてくれる!』
 開いた翼は更に傾き、キングドヤガオーの背から飛び立つ。空を舞い、羽が組み合わさり剣の形となったそれを手で受ければ、焔摩天と相成すが如く刃を炎が彩った。
 それじゃ錆じゃなくて焼肉じゃん。
『行くぞ二本足! キングドヤソゥド!』
 背中の推進機を点火、走るキングドヤガオーが加速して炎の剣を振りかぶる。なんか姿勢がおかしくありませんこと?
『──ブゥウメランッ!!』
「投げるのかよ!」
 荒れ狂い迫る炎の大回転刃に、ウタは思わず叫んで炎摩天を構えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アリス・ラーヴァ
アドリブ・連携歓迎

わー、合体したのー、かっこいー!
けんきゅー資料に持って帰ったらパパは喜んでくれるかなー?
とりあえず、運びやすいよーにてきとーに解体しちゃいましょー

でもまずは合体しておーきくなった『キングドヤガオー』に対抗するのよー
【団体行動】でアリス達100人くらい集まって組体操で合体して巨大アリスになるのー
(【ジャンプ】で宙を舞って、アリスを包み込むようにみんなで合体してアリスアイを光らせる。)
がおー、こっちの方がおーきーのよー(ドヤポーズ)
さて、また勝利してしまったところで早速解体作業にはいりましょー
合体状態のままのっしのっし歩いて、そのまま倒れこんでみんなで寄って集って切り刻むのよー


アビー・ホワイトウッド
アドリブ及び連携等

アイデンティティである動物型を捨ててた時点でお前も二本足の仲間入り。カモン、人型ちゃん。

二足歩行をしたのがお前の敗因。主砲でスネを、集中的に、狙う。古来からナントカの泣き所という。
弾種をAP弾に。とにかく奴のスネを破壊する。特に右脚。
悔しいけど私のラングレーだと力不足。ミゼラブルがドヤなんとかを吹き飛ばす援護をする。
だからスネを破壊する。特に右脚。

火力支援は惜しまない。奴の足を止めるくらいはできる。
UCを発動してマルチロック、それぞれの頭と右脚のスネを狙って主砲、誘導弾、機関砲、擲弾筒を一斉射撃。
弾が切れたらラングレーは鉄の塊。来るべき時にはオーディエンスの盾くらいにはなる。


御園・桜花
「3体合体して顔4つ…?」首傾げ

「村長さん達とモヒカンさんはこのまま車中に控えていていただいても良いでしょうか?外よりは多少安全かと」

「…今は貴方も二足歩行な訳ですが」
「村長さん達はお元気で拠点間交流も始まって、世界は希望に満ち溢れ始めたと思います。それと…大声で正義を標榜するのは、大抵は正当性を主張したい悪人の騙りではないかと…」
素で煽る

「敵の注意を引ければ他の方の攻撃が通りやすくなりますから。それに即死でない限り癒せますから…痛いですけれど」目逸らす

仲間や同乗者の怪我にはUC惜しみなく使用
敵の攻撃は第六感や見切りで躱してドリフト走行

戦闘後はそれぞれの拠点へ村長さんを送り炊き出ししてから帰還


九条・春
【アドリブ連携歓迎】
【面白そうな展開であればプレイング無視OK】

「合体……じゃと……」
「そんな勇ましい姿をな! 見せたとてなぁ!! わしには全く効か格好いいのう!!!」
「下半身がサイ? そこがええんじゃろ」

目標
・戦闘面でのサポートが出来ないのは明白なので、口撃と茶化しをメインに参加します

行動指針
・前提として、合体したメカにテンションが上っていて、自分も欲しい位の事を考えて動きます
・よく喋るドヤーズに対して反論します(ただ、上がったテンションとキングドヤガオーを格好いいと思うセンスのせいで、勢いよく言い切られると言葉が無い

事後
・壊れゆくドヤメカに涙を流しつつ、カメキャバリア作ろうと心に決めます!



●キングドヤガオー、二連必殺!
 迫るは特大のネズミ花火のような炎の渦。ただの火ならばともかく、中心で巨大な剣をも回転しているとなれば部が悪い。
 迎撃すべしと剣を大地から引き抜いたウタに対し、その目の前に鉄の塊が振り下ろされた。
 ラングレーの脚。狙い違わず叩きつけた鉄塊は鉄槌となり、キングドヤソード・ブーメランを荒野に叩き落とす。が。
(──……!)
『……にやり……!』
 驚くアビーの気配を感じて口を開くドヤロボ。擬音を口にするな。
 キングドヤソードは、彼が投擲した後は本体だけで回転するように変形していたのだ。
 前後から炎を噴射するそれは更に加速、直前の戦闘もあり、ラングレーの重量でもっても止められない。
『火元確認、安全ヨシ! 喰らえ一家団欒、キャンピングファイヤー・ストォオオムゥウ!』
『……こ、これは……!?』
 加速を続けるキングドヤソードの噴射孔が向きを変え、炎の渦がラングレーを巻き込み空へと駆け上がる。
 その特性から生じた気流はラングレーすらも浮かせてしまう。
(こんな攻撃が……景気類はまだ無事……!)
 きりもみ回転する機体。しかし、乱れた動きでない分、応用は利く。僅かな一瞬に爽快をロックサイトに収めた敵へ、その間隔と回転運動を考量し慣性を利用した砲撃を行う。
 やけくその一撃。そう思われた。
『ふふふ。苦しめ、苦しむんだ。そうやってこそ──ほごっ!?』
 右脛にAP弾直撃ィ!
『………、はっはっは、やけくそでも当たるものだ。しかしなぁ!』
 しかしキングドヤガオー、キングに恥じぬ痩せ我慢力を見せつける。
『無敵気分合金のこのドヤボディー、貫く事は決してぬァい!』
 確かにAP弾と言えどキングドヤガオーの装甲を抜けてはいない。だが、その装甲には先程と違い、弾痕に歪みが生じていた。
 装甲の歪みが。
 まあアビーさんそこは気にせず次弾装填終わらしてますけどね。
『さあ、散々と踠いて足掻け、二本足んぐわぁーっ!!』
 再び右脛にAP弾直撃ィ!
 右脛を押さえて蹲るキングドヤガオーを遠巻きに見つめて、春はどうしたのかと思わず唸る。
「何故、ああも執拗に右の脛を? ……まさか……あそこが弱点?」
「アビーさんが急所を見破った、ということでしょうか?」
 キャンピングカーを運転する桜花も座席の窓から身を乗り出している。
 ならばそこを攻めるべし。食事に夢中だったアリスの幼い妹もキャベツの山から顔を覗かせて電波をゆんゆんし始める。
(右脛が弱点らしいよー)
(ほんとぉ?)
(叩けば分かるんじゃない?)
 再生に使われなかったドヤニマロイドの装甲片を咀嚼していたアリス妹たちは、幼虫の言葉に懐疑的である。
「ギギギ、ギィイイイイ!」
(わー、合体したのー、かっこいー!)
 そこでようやくとキングドヤガオーに気付いた群体の司令塔であるアリスは、小さな装甲片を飴のようにしゃぶりつつぬばたまの瞳を輝かせた。
「ギチチッ、ガチガチガチ!」
(けんきゅー資料に持って帰ったらパパは喜んでくれるかなー?
 とりあえず、運びやすいよーにてきとーに解体しちゃいましょー!)
(おーっ!)
 為せば成るの精神で地中に潜り、一路キングドヤガオーの足下を目指す。
(……多分弱点じゃないと思うけど……)
 そんなアリスたちの思念波を受けてウタも疑わしく見ているようであるが、一点集中が効果的でないとは言えない。
『……もう嫌だ、なんでこの人間はこう何度も同じ所を……、ん?』
 嫌がらせは繰り返しが基本である。
 などという冗談はさておき、俯くドヤガオーの前に顔を出したアリス妹と目が合う。
(見つかっちゃった~!)
『何だこいつ!? いや見たことあるな?』
「ギエェエエ! ガチガチガチッ!」
(みんな突撃ー! アビーさんを助けるのよー!)
(いえっさー!)
 後方で大きな音をたてたアリスにキングドヤガオーが注意をそらした瞬間、荒野の土くれを蹴飛ばして地上に姿を見せたアリス妹軍団。
『ほう、キャンピングファイヤー・ストームに囚われた仲間を救う為に討って出たか! だがイテッ、武器も持たぬ有機的現地生命体がイテテッ!
 このキングドヤガオーの超無敵テテテテッ!』
(えいっ! えいっ!)
(ファイトー!)
 喋っている間にも取り囲んだアリスらの鋭い脚先や鋏角がキングドヤガオーの右脛を襲う。めっちゃ痛そう。
 そいつら現地産だけど現行生物とは一線を画す怪物ですよ。
 さすがのキングドヤガオーも痩せ我慢は殴り捨てて顔の目を光らせると、大きく右足を蹴り上げた。
『貴様らいい加減にしろーっ!』
(きゃーっ)
 文字通り蹴散らされる妹軍団。如何に強固な外殻を身に纏っていようとこの質量差を覆せるものではない。
 口から体液を漏らした個体や動きが悪くなった個体が散見されると、アリスの号令により傷ついた妹たちは他の妹に引きずられ後退する。
「アリスさん、妹さんたちはこちらへ!」
「ギッ、ギイィイエェエッ!」
(助かるーっ! ありがとー)
 仲間の危機とあらば即参上、ドリフトかまして砂塵を巻き起こし、効果は不明ながら煙幕代わりに敵の視界から隠れつつ怪我を負ったアリス妹軍団へ向かう桜花。
 屋根の上の春さんと猫さんは辛そう。
『救護班だと? くっくっ、まず叩くはそこか!』
『……ぐう……そろそろ、こっちも限界……!』
『む?』
 目標を移したキングドヤガオー。しかし、炎の竜巻に囚われていたアビーからも危険サインが出れば、その視線はラングレーへと移動する。
『辛いようだな二本足! 良かろう、介錯してやる!』
 確かに辛いがこれは敵の注意を惹き付ける為のアビーの作戦だ。この炎の竜巻、熱風により直接打ち上げているのではなく、熱風を介して特殊な力場を発生させ標的を固定するようだ。
 その為、熱による計器類や関節部への異常はない。ただ回転しまくってるので中の人が激烈しんどいだけである。
『キングドヤガオー、テイクオフ!』
 背負う双発噴射孔から大量の白煙を吐き、まるで宇宙に飛び立つロケットの如く垂直上昇。
「羽が無くても飛べるのか!」
『ふははははは~! 機械が飛べない道理はない! 戻れぃキングドヤソードッ!』
 援護に入ろうとしたウタは逃した敵に舌を打ち、訳の分からない事を自信満々に言い放ったキングドヤガオーに合わせ、キングドヤソードは更に高くラングレーを打ち上げると再び羽へと変形して空を舞う。
(……これは──!)
 回転力が弱まると同時に周囲を確認すれば、ラングレー直上から落下するキングドヤガオー。
『フリーフォォオウル、ドヤガオーッ!』
『ちぃ!』
 敵の動きを読み、ラングレーの足を動かして機体の回転に変化を加え。
『万物を導く地球の力を借りて、今! 必殺の!
 ──キング!! ……ドヤ……ッ、クラァァァァァアッシュウッ!!』
 つまりただの落下キックである。
 敵進路上に誘導弾をばら撒くが、引力に引かれて落下するキングドヤガオーは止まらない。確かにこれなら痛いとか関係ないもんね。
『ふっはっはっ、非力! 無力ッ! そして脆弱ゥゥー!』
 超質量のキングドヤガオー、その破壊力が一点へと集中した蹴撃をしかし、アビーはラングレーへの直撃を許さない。
 砲撃により加速回転した空中回し蹴りという離れ業で敵機近接攻撃を迎撃。勿論、これで止められるはずはないが威力を削るには十分だ。
『ば、馬鹿な、必殺のキング・ドヤ・クラッシュを!?』
(…………! 脚部関節破損、バランサー機能不全、……腰部異常発生に照準系レッドアラート……!)
 衝撃が内部まで伝播し、一斉に響いた警告音とサブモニターに表示された警告メッセージを読み解くアビー。
 戦闘不能とは言わないが、大きく支障が出る事は確かだろう。歯噛みするアビーに対し、蹴り足同士を繋げたまま共に落下するキングドヤガオーは賛辞を送った。
『褒めてやるぞ、二本足! 人の作ったロボットなどでこの私とここまで渡り合うとはな!』
『そっちも人工製品では?』
『しかぁし!』
 都合の悪い事は聞く耳持たないね。
 背面の翼を広げ、ずしりと下方のラングレーへ圧をかける。風切り羽から炎を噴射し、夕陽よりも紅いその炎を身に纏って更なる加速を見せた。
『貴様の運命は覆らない。これぞ衝撃にして灼熱の!』
 更に加速。
『クゥラアァアァアッシュ・エエエエエエエエエエンッ!!』
 炎の尾を引く流星は、ラングレーと共に地上へ、アリスたちが運んだ砕石の山へと突っ込んだ。
「ギエエエエエッ!」
(みんなー、全力発進ーっ!)
(はーい!)
 砕石の山に埋もれたかに見えた両者。しかし、それが赤々と焼けるのを見て、否、その前に異常に高まる熱源を察知したアリスが妹たちと共に地中へ潜る。
 その際、削り出た土砂を堤のようにして怪我をした妹をユーベルコードで回復させる桜花のキャンピングカー前に設置。
 直後。
 急上昇する炎の塊が焼けた砕石を火山礫の如く四方八方へと弾き飛ばし、顕現するその勇姿を空に見せつけるかの如く、翼を開いて炎を散らす。
『……んんんぅん~……ドヤァアァアァアッ!!』
 爆発。
「……アビー……!」
 夕陽を背に、下方から立ち上る噴煙をにやりと見つめる。謎の爆発により木っ端微塵と吹き飛んだ砕石。
 ウタは焔摩天を盾にしつつ、ただでは済まなかろう一撃を受けた仲間に思わずその名を呼ぶ。
(よいしょー!)
「へっ?」
 その足下を前肢で蹴散らして、顔を覗かせたアリス妹に慌ててその場を渡す。
 数匹の妹たちが、わっせわっせと出口を広げ中の通路を固めると、その中から姿を見せたのはラングレーだ。
 キングドヤガオーのキックを受けた左脚に異常があるようで歩行は難儀なようだが、それでも自力でアリスのトンネルから歩き出していた。
 爆発の直前に、彼女たちが砕石の山からラングレーを脱出させたのだ。じゃああの爆発何なんだよ。
『ありがとう、助かった』
「ギチチッ、ギチッ」
(どういたしまして~)
 一度ならず二度までも。
 直撃したはずのこちらの攻撃を受けても、無傷でないとは言え未だに破壊されていないラングレーに驚愕するキングドヤガオー。
『信じられん、こんな事が──、ぬうっ!?』
 着地すると同時に片膝を着くキングドヤガオー。
 その右足から上がる、細いながらも確かな黒煙の一筋を、猟兵たちは見逃さなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レイ・オブライト
爺さんズに借りを作っちまったか
選んだオレの目も腐っちゃあいねえらしい

誰にも負けない……
馬鹿馬鹿しいとは思わない。ただ
夢への執念の強さならより確かな奴(例の博士)が待ってるんでな、退いてもらうぜ
【Storm】身体能力ブースト
巨大メカ同士の交戦中に足場習熟、および蹴りつけた衝撃波で敵を駆け上がり、限界突破の怪力+格闘で
…顔面が多いな
とりあえず一番無傷な頭部の破壊を狙う。最終的に全部潰すわけだ、シンプルでいい
衝突時に破損部から内へ属性攻撃(電気)を撃ち込めりゃ尚良いが、まあ、時間がきて寝こけてても負けそうにない奴ばかりだ。80秒といわず一手に全力でいく

起きる頃にゃ誰かしらの夢は叶ってるかもな



●アーマー・ブレイカー! 
『……そんな馬鹿な……この無敵気分合金が……我がドヤボディーが……!
 傷を負ったというのか!?』
 自分から不利を教えてくれるスタイル。
 見れば膝関節から火花が散り、モーターかワイヤーか、空回りするような音も響く。割りと原始的な構造してそうだね。
「得意満面で攻撃を受け続けたら、そうなるぜ」
 思わず呟いたウタに納得の頷きを見せる一同。キングドヤガオーさん頷かないで下さい。
 右の脛に受け続けた衝撃が右膝に負担をかけ、先程のクラッシュエン・ドヤに耐えられなかったのだ。
 だが、ここで自らの過ちを正さないのがキングドヤガオーのどや顔たる所以なのだ。
『うぅぬううう! 立て、立つのだ我が足よ! こんな所で挫けてどうする? こんな所で敗北するのか?
 否、断じて否ッ! 始まりなのだ!』
 何か語り始めたんですけど?
 割りと原始的な構造をしてそうなキングドヤガオーは、機体トラブルに対して更に原始的な対応を見せる。
『群れを成す猟兵どもに比べ、当方キングドヤガオーは単一である。にもかかわらず、今の今まで戦い抜いてこられたのは何故か?
 右膝よ、我がキングドヤガオーの闘争目的が正義だからだ。これは我がボディー自らが一番知っている。
 右膝よ、立て! モヒカンなどという悪辣な文明を生み出した二本足を駆逐する為、悲観を怒りに変えて立てよ右膝!
 ぬぅうううおおおおおおおっ!
 スタンダァァァァップ、ナァァァァァウ!!』
 喧しいわ。何ゆってんだこいつとばかりの根性論であったが、火花散る足を支えに立ち上がったとなれば話は別だ。
 震える右膝をそのままに、しかし再び堂々と大地に立つ姿を見せつけるようにキングドヤガオーは翼を広げた。
『これが正義よ、ドヤァァァアッ!』
「そんな勇ましい姿をな! 見せたとてなぁ!!」
 大地に立つ巨人を前に、春は興奮した様子で拳を握る。お婆ちゃん落ち着いて。
「わしには全く効かっこいいのう!!」
 おうババア、ええ加減にせえよ。
 キャンピングカーの上で子供のように瞳を輝かせた春。対して車の主である桜花は窓から身を乗り出して、堤を築いてくれたアリス妹たちにお礼を言いつつキングドヤガオーへ目を向けて。
「……三体合体して顔四つ……? 下半身がサイで、腰にまで顔があるのはどうなんでしょう?」
 素朴な疑問。まあ……美的センスは人に寄るし……。
「下半身がサイ? そこがええんじゃろ」
 腕を組んで何故か得意気な顔で頷く春。そう、美的センスは人に寄るのだ。
 春の反応に気分を良くしたキングドヤガオー、こちらも腕を組み撃滅対象であるのが惜しいと彼女を讃える。
『ファイヤー』
『のわああああっ!』
 そんな隙が見逃されるはずもなく、脚部の損傷をカバーする為に身を伏せたラングレーが固定砲台よろしく発射した砲弾を右脛に受けてキングドヤガオーは為す術なく転倒する。
 無様ァ!
『……おっ、おっ……おのれ……!
 イィイェェェエエエガアアアアアッ!!』
 流石に痩せ我慢など止めて怒りの咆哮を上げた。開いた翼から炎の噴射し、地上のすれすれを低空飛行、疾る巨影に外套を翻すウタ。
 その肩に現れるは金の翼を開く【迦楼羅】。口から吐く地獄よりの炎は自らを、そしてウタを包みキングドヤガオーに勝るとも劣らない炎の翼を顕現する。
 対峙する者と同じく赤を散らして低空を飛行、焔摩天を構えれば風に棚引く獄炎が尾を引く軌跡となる。
『正面突破か、その心意気や良し! 真っ二つにしてやろう!』
「それはどうかな」
 鋭い爪を構えたキングドヤガオー。正面から、完璧なタイミングで捉えたとおもわれた一撃は易々と大地を斬り剥がすが、反転する男へその爪は届かず。
『生身でバレルロールだと!?』
「もらった!」
 仰向けに巨体の下を潜り抜けるウタ、その手から駆け抜ける一閃。
 こちらも負けじと身を反転させたキングドヤガオーと、すれ違い様に視線がぶつかる。
『無駄だったな猟兵、バズーガオーを食らえ! んドヤァッ!』
 腕の振りに合わせて打撃音と共に開いた獅子の口。中から覗く砲身がウタへ向けて砲弾を発射する。ドヤレオンの攻撃と特に威力は変わらないけど気合が八割増しだよ!
 背面で翼が爆発するように膨張、慣性を無視した水平移動に思わず顔を歪めながらも敵砲撃を見事に回避、地上へ着地し滑走する。
 同じく着地し滑走するキングドヤガオー。だがこちらは右足の踏ん張りが効かずに両手の爪でその巨体を支えている。
『ちょー痛いんですけど!?』
 右脛に焼きついた斬撃の痕に思わず訴える正義ロボ。うるへー。
 ウタの駆け抜け様の一撃、確かにキングドヤガオーへ届いていたのだ。だが彼の一撃を持っても未だにその装甲を破るには至らない。
 ならば。
「何度でも! 斬り込んでやるぜ!」
『まだ脛を狙うつもりか!?』
 やっぱ猟兵って悪だわとばかりに吼えたキングドヤガオー、背面の翼を再びパージして剣へと変形、右手に待って盾の如く高速で回転させる。
『何度でも来るが良い。悪道を前に背を向けるなど正道を行く者のすべき事ではない。正義に後退など有り得ん!
 絶望で大地を埋めんとする二本足! 希望の輝き、このキングドヤガオー、逃げも隠れもしない!!』
 あれ、なんか格好いいぞ?
「何を、正義の味方面などしよって! おぬしらのしている事は所詮、力無き者への虐殺に過ぎぬ。暴力に愛無くば、暴力に正義は無い!」
 迫真のキングドヤガオーを前にしても一歩も退かずに啖呵を切る春。良し、もっと言ってやれ!
「即ち悪道を行くはおぬし、正道を行くはわしら、正義こそはわしらに有り!」
『口の減らん奴め! 我が姿を見ても正義が無いと言うのか!?』
 回転する刃を止めて荒れ果てた大地に突き刺し、腰に手を当てて胸を張る。
 威風堂々のこの姿、悪と断じれるものかよと。いや姿形で語る正義ほどぺらっぺらなものないからね?
「なるほど間違いない、おぬしが正義じゃ!」
 良し、やっぱり黙っててくれ!
 高速で掌を返した春に突撃の姿勢を見せていたウタは思わずたたらを踏み、納得の言葉に得意満面で頷くキングドヤガオー。
 しかしその頭上に大きな影が差す。
『──なにっ……?』
 振り返るキングドヤガオーの頭上に、地上から細長く伸び上がった触装蹂躙機、アスモデウスマキナがその牙を剥く。
『ひえっ、キモいっ!』
 素直な感想を残して、迫る触手に後退するキングドヤガオー。どうした正道。
 まるで巨大ロボ対巨大怪獣の様相に鼻息を荒くする春の後ろから、ひょっこりと顔を覗かせるケイティ。
「アスモデウスで囮は引き受けるにゃ。触手に出来るのはエロい事だけじゃない、パワーも凄いし軟体だから殴られても平気で殴り返せるにゃ」
『ほう、ならば斬撃はどうかな?』
 再び双爪を構え、触手へ振りかざす。
『ドヤガオー・ダブルネーェル!』
 そのネーミング止めろ。
 八つ裂きにしてやるとはかりの直線的な意気込みに対し、ぬらりとした動きでかわす。
 反撃の一矢。
 貫く点の如き一撃はキングドヤガオーの右脛を打つも装甲に弾かれた。強度が足りないのだ。
 しかし、パワーは足りている。
『何ぃ!』
 弾かれた右足に体勢を崩したキングドヤガオーが大地に衝き立てた剣を支えとする間に、アスモデウスの触手が装甲の隙間から右膝へと潜り込む。
「ヘイ、ビカム・ザ・モンスター! ただのエロ機体だと思ってると八つ裂きにするにゃんよ」
 ケイティが指を鳴らせばめきめきと。そのまま部位を破壊しようとする触手に戦慄し、即座に振るった爪で触手を切り裂き、同時に放った裏拳がアスモデウスを叩く。
 その性質上、打撃によるダメージはないが、質量差はいかんともし難く弾き飛ばされる。
 空を飛ぶ触手の群れから落ちてくる触手片を嫌そうに払い退け、レイは対大型戦に足下が疎かになったキングドヤガオーを横目に周囲を散策する。
 ドヤガオーさんは何やら勝利の雄叫びを上げているが、彼は全く気にする様子がない。
『正義! イズッ! ヴィクトリンヌァッ!!
 この私こそ、絶望の大地を照らす太陽となるのだ!!』
 言動が怪しい。
 上がり続けるテンションのキングドヤガオーに対し、周囲をキャンピングカーで走っていた桜花は【シンフォニックデバイス】を構えた。
 マイクテステス、マイクテース。
『絶望の大地とおっしゃいますが、ご高齢ながら村長さんたちはお元気で、拠点間交流も始まって』
「ワシぁまだ若いんじゃ!」
「年寄りの冷や水舐めなさんない!」
 黙ってろジジイ。
『あなたがいなくとも世界は希望に満ち溢れ始めたと思います。それと』
 ──大声で正義を標榜する者は、大抵、正当性を主張したい悪人の騙りではないか。
 圧倒的正論を前に言葉に詰まるキングドヤガオー。車内では敢えて敵を挑発する桜花へ戦々恐々とした視線が送られていた。
「…………、敵の注意を引ければ他の方の攻撃が通りやすくなりますから。それに即死でない限り癒せますから」
 微笑む。
 確かに、勝たねばならぬ戦いだ。多少どころではないリスクは抱えてしかるべきである。この二人がか抱える必要は欠片もなかったが。
「まあ、痛いですけれど」
「は?」
「なんて?」
 ぽそりと呟いた彼女へ老人たちは目を瞬かせたが、桜花は彼らへ視線を合わせず決して語ろうとしなかった。
 だがその間、黙りこむほどキングドヤガオーの精神は大人ではない。
『その希望とやらは人間だ! 絶望と悪意のモヒカンを生み出す人間などに、何が希望となろうか!』
「うむうむ、よく分かるのじゃ。わしもメカが欲しいしのぅ!」
『何の話!?』
 キングドヤガオーに同意しているようで全く話を聞いていない春に突っ込まずにいられない。
 そんなツッコミメカに再び炎の翼を開いたのはウタだ。問答の間に地上から接近していた彼は、隙を突いて飛翔する。
 突然の敵性反応に対しても即座にキングドヤソードを引き抜く、が。
『…………!』
 王は三度、膝から崩れ落ちる。
 ダメージを受けた右膝に負担をかけぬ立ち方とポーズを決めてきたにも関わらずこの損傷。
『──だったらどうだと!』
 膝立ちでも構わず横薙ぎ。灯した炎が空を焼くが、ウタの放った炎の渦が巻き取って。
 更に接近するその身に炎を纏い、一羽の鳥となった彼の一撃がキングドヤガオーの膝に深々と打ち込まれた。
「……答えは……ここだぁーっ!」
 爆炎と同時に引き裂かれた装甲、遂に無敵気分合金を突破したのだ。
 同時に炎が吹き上がり、熱さに耐えかねて剥がれた装甲から飛び出す野良にゃんこ集団。
 飛び出すと言うかお空を飛んでますねぇ!
『何と!?』
「チノ=リはこっちにあるにゃ。何せ、既に猫が結構居るにゃんよ!」
 ユーベルコード、【猫の怨返し】。野良にゃんこの狩猟本能を高め、飛行能力や強靭な爪、牙を与えるもの。
 先程のアスモデウスの攻撃は触手内に包んだ野良にゃんこたちをキングドヤガオーの内部へ送る為のものだったのだ。
 更に各配線はウタの撒く火の粉を利用した【ブレイズフレイム】により延焼しぼろぼろだ。その右半身を裂く炎も、迦楼羅と共に纏う炎のに紛れ気づく事も出来なかっただろう。
 野良にゃんこ集団には辛い環境であったが、装甲を緩め内部機関へダメージを与え、彼らは頑張ってくれました。火傷を負った野良にゃんこは救護班のアリス妹たちが涎を垂らしつつ回収しているので心配ありません。
 全ては、アビーのラングレーから続く攻撃の、猟兵の連携力によって。
(悔しいけど私のラングレーだけだと力不足。だからドヤなんとかを吹き飛ばす援護をした)
 だが今、敵の堅牢なる盾は破られた。
 ならばこそ。
『古来からナントカの泣き所という。二足歩行をしたのがお前の敗因』
『ス、スタァァァァップ!!』
 止まるか馬鹿野郎。
 一気に押し切る。アビーはラングレーの【武器使用制限解除】、全砲門を正面へ向ける。
 火器管制装置フル稼働、狙いを定める必要は無い。敵も自分も、今は動けぬ鉄の塊だ。
 主砲、誘導弾、機関砲、擲弾筒。一斉に放たれた鉄鬼の牙は、キングドヤガオーの装甲を剥がされた右脛を粉砕し、縦に並ぶその顔を蹂躙する。
 二機の間に生じた白煙は爆煙か硝煙か。
 キングドヤガオーの制止の言葉も掻き消して、次々と生じる火薬の花は遂に、キングドヤガオーを地面に薙ぎ倒すのだった。


●オーバー・ザ・トップ!
 銃身の回転する音が荒野に響く。
 全ての弾を撃ち尽くして、焼きついた砲身から煙を上げるラングレー。その正面には、大地に倒れたキングドヤガオー。
 背中の翼を剣としていたせいで、回避もままならず全弾の直撃。これ程の火力を前にしてはいかなオブリビオンと言えどただでは済むまい。
 しかし、決着がついたとも言えまい。
『迎撃準備!』
 回避できぬかかしとなっても、ラングレーの総攻撃をもってしても残りの装甲を抜いた訳ではない。
 キングドヤガオーの状態を確認して叫ぶアビー、同時に変形したキングドヤソードが空を飛ぶ。
 空中で反転、展開して舞い降りれば瞬時に半身を起こしたキングドヤガオー。背中に接続した翼を広げ、割れた右目からも光を放ち、オブリビオンはまたしても立ち上がる。
『ひぃっ殺っ! キング・ドヤ・クラッシュ──、超! 熱血ビーム砲ぅうう!!』
 開いた翼から発する炎がより集まって細く伸び、大地を引き裂く光となって駆け巡る。
「こ、こいつッ!?」
 幾条もの光を前に、咄嗟にラングレーの身を無理やり起こしてキャンピングカーを守るアビー。
 同じくウタも獄炎の翼を爆発させて加速、そのまま炎の渦を壁として敵の攻撃から車体を守る。
『見つけたぞ貴様らの弱点ッ、倍返しを貰って逝けィ!!』
 開くシシメカの顎は歪みつつも砲身を出すに問題なく。両太ももの付け根の装甲から伸びる砲身は、先程の攻撃により破壊されているものの左は問題なし。
 乱れ撃つビームを収束させて火力を一点集中、キングドヤガオーの全砲門が桜花たちの乗るキャンピングカーへ向けられた。
『褒めてやるぞ猟兵、この私をここまで追い詰めるとは。だが、いや、だからこそ、勝つのは私だ!』
 これ以上の攻撃は持たないか。
 ビーム攻撃が装甲を削るこの瞬間にも、更なる砲撃を受けてしまえば度重なる戦闘を行ったラングレーでは。そして壁を失えば車両が破壊される。
 万事休すかと思われたその瞬間、アリス妹軍団によるアリスピラミッドが再び現れた。
『ふん、壁となるか。涙ぐましい努力だ、が! 無意味ッ!!』
 出力上昇、光の奔流を前にアリスはアリスピラミッドを駆け登り、そのままの勢いでキングドヤガオー向けて跳躍する。
 一騎駆けか。たったの一人で何が出来るものか。晒う言葉がキングドヤガオーの口から溢れる前に、次々とアリスピラミッド下段から彼女たちは駆け上がり、アリスにしっかりとしがみつく。仲良いっすね。
 その走力、跳躍力、一糸乱れぬ統率力。瞬く間に組合わさったのは巨大なアリス球。
 否。
『……なっ……なんっ、だっ!?』
 空中のアリス球が展開、それは巨大なアリスの姿。
 それぞれの体を構成するアリスたちの眼がぬらりと輝く。
『ギィイィイィイィイエエエエエエエエエエッ!!』
(がおー、こっちの方がおーきーのよー!)
 叫ぶアリス軍団。最大出力のビームでも弾き返せぬ質量を前にキングドヤガオーの内蔵火噐も例外でなく、直撃箇所のアリスが何匹か剥がれた程度で巨大アリスはそのままキングドヤガオーを押し倒した。
『ぬうううううっ、ドヤファルコの出力が上がらん、脱出できん!?』
『ギィエガアアアッ、ギイイイイイイ!!』
(どや~!)
 前肢担当のアリス群を振り上げて威嚇、もといドヤポーズ。
 下敷きになったキングドヤガオーは、先の一撃に力の殆どをつぎ込んだせいで傷ついた体では脱出もままならない。
「ギイィィィ! ギチギチギチ!」
(みんなー、【ガブっとしちゃえ~】)
(はーい!)
 アリスの号令により巨大アリスの体を構成するアリス妹軍団がばらけ、そのままキングドヤガオーに襲いかかった。
 確かに、キングドヤガオーはアビーの駆るラングレーの総攻撃に耐え切った。だが到底、無傷ではない。
 それを受けて疲弊した装甲は、度重なる妹軍団の破城鎚のような前肢の打ち下ろしや重機のような顎を防ぎ切るなど到底無理だ。
『ス、スタァァァァップ!!』
(誰が待つかばかやろーなの~)
(お腹空いてるのー!)
 ばりばりぼりぼり。
 装甲を引き裂く甲高い音に加え、噛み砕く粉砕器の音。先程弾き飛ばされたアスモデウスも加わってアリス妹たちの為に装甲を剥がす手伝いをする微笑ましい光景が展開される。
 春は壊れ行くキングドヤガオーに思わず涙し、ハンカチで目元を脱ぐって合掌した。
「おぬしの熱い想い、確かに引き継いで──」
『──終ぅわってぇ、堪るかあああああっ!』
 しつっこ。
「ギチチッ!」
(きゃーっ)
 弾き飛ばされるアリス含むアリス妹軍団。敵が拳を振るった訳ではないない、所々引き裂かれた装甲と火花散る内部構造を露出させたキングドヤガオーのその身は、青く輝いていた。
 それはドヤレオンのバリアの輝き。
 右足は既に膝から下がなく、ドヤファルコの翼から噴流する炎も出が悪く、どう見ても満身創痍なその状況でキングドヤガオーはバランス悪くも立ち上がった。
『見るがいい、正義を包むこの輝き。命育むこの星のかつての輝き、青の光を!
 人は愚かだ。その二本の足で歩くようになってから道具に頼り、文明を築き、己を、そして世界を作り替え、挙げ句に残ったのがこの灼けた赤き星!
 悪よ滅ぶべし、忌々しき二本足。貴様らは、モヒカンとともに砂漠と化していくこの星を墓標とするのだ。これ程の墓、貴様らには余るがな!』
 まるでその命を燃やすように。
 怒りの感情が増大するに合わせて輝きを増す青きキングドヤガオー。
『砕きたくば砕き、裂きたければ裂け。例え四肢が削ぎ落とされ首だけになろうとも、私は決して悪には屈しないっ! 悪だけではない、誰にもだ!
 そう、私こそがぁあ、正義ッ!!』
 右手を天に突き上げて、雄々しく屹立する。
 確かに、彼の言葉は一理あるかも知れない。だがそれが、世界を、人を滅ぼす理由などにならない事は全ての猟兵が知っている。
「確かに、一理あるかも知れんのう」
「! 村長さん?」
 キャンピングカーの中で俯く村長。彼もまた、レイダーたちに襲われ住居を失った。住居を壊したのはレイダーじゃないけど。
 昔話を語る村長から思わず向けた視線をそらす桜花。
 しかし、今はひとつの村を治める者として、かつてのレイダーらと略奪行為を行っていた人々を村人として村に迎え入れた。
「人は変われる、何度でもやり直せるんじゃ。月並みな台詞じゃがの、人は苦難を乗り越え、成長する力があるんじゃ。
 …………。機械の、アンタももうええじゃろ。これ以上戦っても……何も……!」
『バズーガオー発射!』
「!?」
 村長ジジイの言葉の間に問答無用で狙いを定めたキングドヤガオー。お前それで正義の味方のつもりかよ。
『ふっははは、危ない所だ。聞き入っていればまたあの戦車に撃たれる所だったぞ!』
(……もう弾ないけど……黙ってよう)
 キングドヤガオーの言葉にとりあえず、空の砲身を向けておく。
 一方の狙われた桜花は急速発進、短い距離でドリフトによる回避を見せたキャンピングカーに思わず新拠点のジジイは拍手喝采である。
「なにすんじゃうんこたれー、そんなに戦争したいんか!」
『うんこたれてないわ。貴様らの魂胆などお見通しと言ったのだ!』
 まあ、確かにこのタイミングで右脛攻撃されまくってたもんね。猟兵ならともかくジジイの戯れ言じゃ攻撃されても仕方ないわ。
 最早、和解など有り得ぬ敵を前に、レイが歩み出た。
「……誰にも屈しない……そう言ったか?」
 ぽりぽり。
『…………、二本足。貴様、覚えがあるぞ。ドヤライノーにミンチにされたと思っていたが』
「優秀な外科医がいるんでな」
『挽肉を治す外科医とか最強じゃん! いやそれはどうでもいいのだ!』
 この私を馬鹿にしようと、結果はひとつが残るのみ。それは真理だ。
 語るキングドヤガオーに、レイは馬鹿馬鹿しいとは思わないと言葉を紡ぐ。
 ぽりぽり。
 …………、さっきから何をぽりぽり食べてるの?
「ただ夢への執念の強さなら、より確かな奴が先に待ってるんでな、退いてもらうぜ」
『ドヤライノーと同じ結果だと思うなよ?』
 陽は最早沈み、消え去る太陽の如く明々と赤熱する闘志を秘めた両者の間に降りた空気はただ冷たく。
 不意に、レイの体を廻る、時を止めたはずの血流が鮮やかに燃えて白い肌に映る。
 おめーパワーフード食ったな?
 焼けるような流れは血ではなく。溶けて体の一部となったアリスのパワーフードにより活性化した細胞の、更にその限界を超える。
 【Storm(ハート・ビート)】。内蔵されたヴォルテックエンジンの出力をユーベルコードにより無理矢理上昇させ、身体能力を爆発的に強化する。
 そんな無理をすれば体とてついていけるものではない。オーバーヒートすれば自壊するのみ。それこそ、機械と等しく。
 本来ならば一分半としない内に機能不全へ陥るだろう、だが。
(時間がきて寝こけてても負けそうにない奴ばかりだ。何十秒と言わず、一手に、全力でいく)
 夜気の冷気を白く染め、体から立ち上る煙を止めるつもりもなく、回転数の上がり続ける動力炉が限界を超えるのを静かに待つ。
 ひりつく空気が、場を支配する。──直後。
 青き獣となって飛びかかるキングドヤガオーを前に、火薬の弾けるが如く大地を粉砕した蹴り足が敵の反応速度を凌駕する。
 後の先。
 食い縛る歯の隙間から、眼球から火花を散らし、唸る肉を鋼の如く締め固め、稲妻すら生じた渾身の右拳。
 駆け抜けるは雷撃か。
 目にも止まらぬ速さでキングドヤガオーのバリアを貫き、ドヤレオンの頭部を粉砕したレイは敵の背面を貫いて空を駆け上がった。
「キャッチするにゃ!」
「ギチギチッ、ギイイイ!」
(キャッチー!)
 アリスらの乗り重なった高台で、その体が虚空へと消え去る前にアスモデウスが絡めとり、それをアリスが回収する。
 異常発熱した体は大量に放電していたが、アスモデウスの体が上手いこと分散してくれたようだ。ただの一撃を持って限界を突破し意識を失ったレイをアリスはその背に乗せる。
『……ば、馬鹿、な……何故、何故、私は勝てんのだ、貴様らに!?
 この絶望の大地の、希望になるべきこの私が!』
 青い輝きを失い、荒野に崩れ落ちるキングドヤガオー。
 這いつくばっても尚、戦う意識を捨ててはいないのか、地面に倒れ込むことを拒んでいるようだ。
 だが、それが既に、その体の限界だろう。ウタは背面の炎を消して焔摩天の刃を肩に乗せ、戦い続けたオブリビオンへ歩む。
「絶望ばかりじゃないぜ。道路整備は、未来への希望故だろ」
『……何……?』
 ウタの示す先に、彼らの戦闘により繋がる寸前のままであるマカダム舗装の道を見る。
 道とは今の為のものではなく、これから先、未来に歩む者の為の設備だ。当然と言えば当然の事であるが、故に見落とし易い。
 そう、既にこの世界には希望が紡がれているのだと。
「未来は、希望を持ち続ける人の心がきっと、この荒廃した世界を変えて行く。
 そんな世界の命と未来とを守る為、あんたを海へ送るぜ」
 刃を構えたウタ。その後ろではそわそわしながら近づくアリス妹軍団の姿があったが、アリスに叱られて縮こまる。もう終わるからちょっとだけ待っててね。
『…………、ふっ。二本足に、未来を変える事など出来はしまい。
 だが、信じてやろう。人間を、な』
「ああ。海で、家族仲良くな」
 振り下ろされるは、断罪の。


●終結の夜。
 全てが終わり。
 キングドヤガオーとの死闘を乗り越えた猟兵たちは、疲れた体に鞭を打ち、ラングレーとキャンピングカーの照明器具を使って夜間最後の工事、両拠点の道を繋げる事に成功した。
 アリスたちはキャンピングカーの中でサラダをむしゃこらやっていた幼虫を取っ捕まえて逆さに振り、パワーフードを摂取して更にキングドヤガオーの解体に乗り出している。
 元気ね。
 そのような取得方法を目の当たりにしては他の猟兵らも食べる気が起こるはずもなく、一先ず桜花のキャンピングカーに乗り合いそれぞれの拠点へ爺さんズを送り届けた。
 夜になっていた為に村長は死亡したものとして簡易な葬式が挙げられていたが、生還した彼はデッドマンとして迎え入れられ、桜花の炊き出したご飯をまたもありつく事が出来なかった。ドンマイ。
 猟兵たちはそのままの足で新拠点へ向かい件の博士と接触、訛り爺さんを降ろして代わりにチャラポラ博士をラングレーの元へと運び、アビーと共に最低限動かせる程度に修理の協力を得た。
 博士としても前時代の技術が使用されたラングレーの整備は垂涎ものだったろう。
 両拠点を繋いだ道は、これからも嵐が来れば壊れ、レイダーの襲撃があれば壊れ、オブリビオンストームが発生すればオブリビオンへ変化するかも知れない。
 しかし、未来を想う心があれば、人は再び道を繋げるだろう。人と人が心を繋ぐように、拠点と拠点の道を。
 新拠点では狩猟から若者たちが戻っていたが、もうひとつの拠点と比べるまでもなく人は少ない。
 桜花が慌ただしく作り起きした料理を春と一緒に出しているのを見つめて、ウタは燦然と輝く星空へ目を移した。
 ギターを用いた彼の歌は荒野を流れ、新たな心血となるこの拠点の人々の心をも暖めるだろう。だからこそ、この曲はオブリビオンへの鎮魂歌ともなるのだ。
「猫もサボるにゃー」
 その横で背伸びして寄り添うケイティ。車内に大勢いても邪魔になるから入ってないだけだ、とは言わずに苦笑する。
 道の先にほんのりと輝くその場所で、ラングレーの修理とキングドヤガオーの解体は続くだろう。
 春は暖かいご飯に笑顔をこぼす住民たちに、方向は違えど正義に燃えていたオブリビオンを思い浮かべて涙を流す。
(……ドヤライノー、ドヤファルコ、ドヤレオン……おぬしらの事、忘れんぞ……わしもまた、おぬしらのようなキャバリアを造ろう……カメキャバリアをっ……!)

「さて、行きましょうか。途中までお送りしますよ」
「ギチギチッ、ギチチッ!」
(みんなー、またねー)
「次も依頼が重なった時は、よろしく」
 一夜明けて、キャンピングカーに乗り込む猟兵一同を見送るアリス軍団とアビー。
 ラングレーは本調子ではないが、歩く分には問題ない。歩けてしまえばそこらのレイダー程度は蹴散らせるだろう。彼女はラングレーへ乗り込むと、糸で編み上げた籠に解体したキングドヤガオーを乗せたアリスへ別れを告げた。
 アリスたちも両手を挙げて、あれれ、ドヤポーズじゃないのこれ?
 ともかく別れを告げてキングドヤガオーたちの大部分をどこぞへと集団で運ぶ。残りはチャラポラ博士の研究用だ。
 帰りの車の中で目覚めたレイは腹部に違和感を覚えて車内の猟兵らに隠れて腹を打てば、吐き出した発光する粒状物質に目を見張る。
(……溶けてなかった訳は……いや、他のが溶けたのか?)
 どうやってエネルギーになってたんでしょうね。とにかく、謎の多すぎるパワーフードはこっそりと処分して、揺れる座席に身を沈めて帽子を目深に被り直す。
 結果を他の猟兵に確認する必要はない。何故なら誰もが悲観していないことが答えであり、そして夢が叶うかどうかは本人次第と知っているからだ。
「…………、今日も良い天気になりそうですね」
 窓から身を乗り出して空を見上、桜花は明るい笑みを見せた。


●それから。
 資機材の増えた研究所で、チャラポラ・ンン博士は改修した様子のボイスレコーダーのマイクを入れる。
「続き。以前まとめた『恒星エンジン』の理論を補強する為に行う『アグニドライブ』について。
 突如現れた猟兵たちの協力により拠点間の交流が強化され、実験材料を確保、無事に実験を行う事が出来た。
 結果としては起動時間コンマゼロゼロサン秒、限界起動時間はコンマゼロゼロキュウ秒と予想される。現在の素材、手法では実用性ある物は作れないだろう。
 故に、実用性ある技術を取得しなければならない。めずすべきはやはり、資材に頼らぬ動力炉内面の強化。……しかしそんなこと、可能なのか……」
 マイクを切り、溜め息ひとつ。
 思わず吐いた弱音をデータから削除する。そんな彼の部屋に響くノックの音。返事をすれば同盟を結んだ拠点からやって来た多脚戦車であった。
『博士のオトモダチ! コーヒーもってきたよ~』
「だーからその呼び方だと俺が博士じゃないみたいだろって」
『あれーっ?』
 首を僅かに傾ける。その体はキングドヤガオーの装甲により補強されており、各部修繕されたようだ。チャラポラ博士の手腕だろう。
 ドヤレオンの鬣の装甲も追加されている。
 博士は戦車からコーヒーを受け取って香りを楽しみそれを啜る。
「まーえーわい。しかしよくコーヒーなんぞ手に入ったな。…………、ふむ。
 この幼い頃に家の裏手にある溝のザリガニを海老と言われて親父と食った事を思い出す……生臭さ……、コーヒーってこんな味だっけ?」
『うん。これは僕たちの拠点の田んぼから取ったんだよ』
 はい、と戦車くんがサブアームに乗せて見せたのは小さく可愛い田螺くん。
 お前この野郎。
 チャラポラ博士は何も言わずにコーヒーを戦車くんに返し、窓を開く。外には行き交う人も増え、資材が増えた事で家々が次々と建てられていく。
 平和と安定を手にした拠点の中で、チャラポラ博士は朝陽に煌めく嘔吐を往来に向けて発した為、大顰蹙を買うはめとなった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年11月01日


挿絵イラスト