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背負えるか、エースの宿業

#クロムキャバリア #ACE戦記 #グリプ5

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●白き翼舞い降りる
『グリプ5』。それが僕の生きる国の名前だ。
 何故、国の名前なのに数字が付いているのかだとか、どういった成り立ちで出来上がった国だとかは教わったことはない。
 キャバリア技師である母さんに以前尋ねたことがあるけれど、母さんは興味がないのか答えてはくれなかった。
 いつだってそうだ。
 母さんは僕の話を聞いてはくれない。

 僕たちの住む国は、もうずっとそれこそ100年以上戦争状態が続いている。
 母さんは言う。
「いつかきっと戦いを終わらせるキャバリアを作ってみせる。そうしたら、きっと平和になるし、誰も傷つかなくていい。安心して眠れるようになるんだわ」
 そんなことだけは僕が聞かなくても教えてくれた。
 けれど、僕はもう何度もそれを聞いているから、とてもではないけれど聞き飽きていた。
 第一。

「平和ってなんだろう」
 もうずっと争乱の時代は続いている。
 それは時には戦闘のない日だってある。戦いがない、ということが平和であるというのなら、今がそうなのだろうか。
 母が作ったキャバリア。最新型キャバリア『セラフィム・リッパー』3号機に今僕は乗っている。
「平和。平和。戦闘がなければ平和。なら今も平和っていうことになるんだろうけれど……」
 コクピットの中で起動実験を行っている僕は瞳を開ける。
 モニタの中には数値として吐き出されるキャバリアのデータに目を走らせ、起動実験の成功ばかりを追いかけている。
「母さんは、数字ばっかりだ。僕のことも数字……そんなふうにしか見れないのかよ。そんなに数字が大切かよ。いつだって母さんは勝手だ。平和、平和、平和のため! 家族で居ることより、そんなに『平和』の方が大切なのかよ!」

 それは溢れ出た激情であった。
 少国家『グリプ5』。そこに住まう少年『フュンフ』の精神は『セラフィム・リッパー』……キャバリア、否。
 オブリビオンマシンによって、その感情を、心を捻じ曲げられてしまう。
「『平和』なんてものがあるから、母さんは家にも帰ってこない。いつだってそうだ。僕も、妹も、弟も! 兄さんも姉さんたちも! そんなだから、名前を数字にしてしまうことなんてできてしまうんだ!」
『セラフィム・リッパー』の頭上に天使の光輪が輝き出す。
 それはまるでアンサーヒューマンである少年『フュンフ』の捻じ曲げられた心に呼応するように光の翼を展開させ、起動実験場から破壊を撒き散らしながら飛び出す。

「フュンフ! 戻りなさい! そんなことをしては―――!」
 母の自分を呼ぶ声がする。
 煩わしい。そんなに『平和』が大切なのであれば。母さんがもう働かなくて済むように、下の弟や妹たちが家族らしく、家族の時間を持てるように。

「僕が『平和』を壊す―――」

●新型キャバリア破壊
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)であった。
「お集まりいただきありがとうございます。今回の事件は、新たなる世界クロムキャバリアにおける事件です。皆さんはクロムキャバリアが如何なる世界であるかご存知でしょうか?」
 そう言って、ナイアルテは尋ねる。
 新たに見つかった世界であるクロムキャバリア。そこは体高5mの人型兵器『キャバリア』を主力に生産施設『プラント』を奪い合う、荒廃した世界である。
 数千もの少国家が存在し、すでに戦争状態は100年近く継続中である。その戦争状態にある理由が『プラント』である。

「はい……『プラント』は鋼材や食料まで様々な資源を生産する高さ15mほどの固定施設なのですが……すでに遺失した技術であるため新たに作り出すことが困難なのです。これがなければ国家として成り立たず、住まう人々は明日をも生きる糧も生み出すことができないのです」
 故に奪い合いが始まる。どこでもありえる光景だ。
 資源がないのであれば、あるところから奪う。それが如何に荒廃した世界であれ、やることは変わらない。
「そのために国家はこぞって人型兵器『キャバリア』の開発し、その競争は激化を辿る一途です。今回の事件は、その少国家の一つ。『グリプ5』と呼ばれる国において生み出された最新型キャバリア『セラフィム・リッパー』が暴走事件を起こすこととして予知されました」

 理由はわからないが、最新型キャバリアがオブリビオンマシンにすり替わっているのだ。何故そんなことが起こるのかはわからない。
 けれど、そのキャバリアのパイロットは思想を歪められ、間違った形でそれを為し溶けげようと暴走を始めてしまう。
「これを止めなければプラントが破壊されてしまう可能性もありますし、それに其処に住まう人々だって無事ではすみません」
 最新型のキャバリアというだけでも脅威である。
 そこに来てさらに暴走状態で見境なく暴れまわっているというのであれば、これを放ってはおけないだろう。

「また空高く飛ぶことは、この世界ではできません。なぜなら、暴走衛生『殲禍炎剣』によって高速飛翔体は全て撃ち落とされてしまうからです。皆さんは現地でキャバリアを駆りて、『セラフィム・リッパー』を止めてもいいですし、自前のキャバリアを用意して頂いても構いません。もしくは……今まで通り生身のまま、戦いを挑んでもかまいません」
 どんな手段であれ、暴走する最新型キャバリアを止められるのであれば、その是非は問わないのだ。
 頭を再び下げてナイアルテが猟兵達に向き直る。

「新たな世界での戦い……不安はあるかと思われます。ですが、どうか……お願いいたします。予知で見た、パイロット……まだ、子供でした。平和を知らず、けれど家族愛に飢えた子なのでしょう。年若い弟妹たちのために母親が家庭に戻ることを熱望しているのです」
 戦いが続くクロムキャバリアにおいて、それがどれだけ難しいことかは言うまでもない。
 けれど、ナイアルテは同じく荒廃した世界の出身であるが故に、放ってはおけないのだと猟兵達に頼み込むのだ。
 どうかこの事件を解決に導いてほしいと。
 いつか戦争を終らせるエースに為る得るかもしれない少年を救って欲しいのだと―――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回は新たなる世界、クロムキャバリアにおける最新型キャバリアの暴走を止め、オブリビオンマシン化したキャバリアを破壊するシナリオになります。

 キャバリアをジョブやアイテムで持っていないキャラクターでも、キャバリアを借りて乗ることができます。ユーベルコードはキャバリアの武器から放つこともできます。
 ただし、暴走衛星『殲禍炎剣』が存在しているため、空は自由に行き来できません。

●第一章
 ボス戦です。
 暴走するオブリビオンマシン化した最新型キャバリアとの戦闘になります。
 パイロットは意識を失っています。
 ですが、皆さんの声は届いていますので、オープニングから読み取れる情報から呼びかけてみるのもいいでしょう。

●第二章
 冒険です。
 第一章にて半壊したオブリビオンマシンが軌道実験場から最新型キャバリアの設計図等のデータを奪い、逃走します。
 市街地を滑空し、建物を利用して逃げ回るオブリビオンマシンを追い詰めましょう。

●第三章
 半壊したオブリビオンマシンは奪った設計図から機体を再構成し、姿を変え戦いを挑んできます。これを打倒し、パイロットを救い出しましょう。

 それでは新たなる世界クロムキャバリアにて暴走する最新型キャバリアを止め、オブリビオンマシンを打ち倒す物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
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第1章 ボス戦 『セラフィム・リッパー』

POW   :    断罪の剣
【無敵斬艦刀】が命中した対象を切断する。
SPD   :    エンジェルビット
自身が装備する【BS-Fクリスタルビット】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    フォールンウイング
【光の翼】を向けた対象に、【プラズマビーム】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 セラフィム・リッパー。
 それは『グリプ5』と呼ばれる少国家が生み出した最新鋭キャバリア。
 その姿は天使の名を冠するように光輪を戴き、背には天使の翼の如き光を放つ。それは少国家同士の戦いが耐えぬクロムキャバリアにおいて、戦いの趨勢を覆せるだけのポテンシャルを持った機体であった。

 だが、今まさにそのセラフィム・リッパーは暴走し続けている。
 その機体に搭乗した、まだ青年と呼ぶにはあまりにも若々しい少年『フュンフ』。彼の心にあったのは、彼よりも幼い弟妹たちの顔であった。

「いいんだよ。ママは『平和』のためにお仕事してるんだって、私わかってるもの」
「そりゃ、確かにお母さんが居たほうが嬉しいけどさ。うちは、ほら……お父さんも戦いで死んでしまったんでしょう? だったら、お母さんが働かなきゃって僕はわかっているから」
 物分りの良い弟妹たち。
 いや、違う。そんなわけがない。我慢している。抑圧されている。『平和』という目的のためなら、家族が泣いたっていいのか。いいわけがない。
 上の姉や兄もキャバリアの搭乗実験と戦闘と、新型キャバリア強奪事件で生命を落とした。

「なら―――」
 その意志が、捻じ曲げられていく。
 僕が守らなければと言う、その意志が。
「僕が『平和』を壊さなくちゃ。僕は知らないんだ。戦う意味も、家族がバラバラになってしまう意味も。母さん!」
 軌道実験場を飛び出し、街中へと疾駆する天使。
 まるで咆哮するようにエネルギーインゴットを溶かしつくほどに出力を上げる。

 暴走状態に陥った最新鋭キャバリア。否、オブリビオンマシンが産声を上げた―――。
才堂・紅葉
「ったく。それじゃ本末転倒でしょ。しょうがないガキね」
小さく告げ、気持ちを切り替える
まぁそれでも何とかするのが大人の仕事って奴だ

「蒸気王!」
指を鳴らして召喚し搭乗する
こちらから見たらキャバリアは随分と小型に見えるが油断は出来ない。むしろ機動性の面で、こちらがでかくて鈍重な的かもしれないからだ
良い機会なので対キャバリアの経験値も積ませてもらおう

方針は分厚い装甲を活かし、隙間狙いを少しずらして外したりして、相手の攻撃を凌ぎ【情報収集】。この世界での【戦争知識】を蓄えつつ隙を探ろう

「その先にあんたの家族はいるの?」
攻撃の切れ間に問いを投げかけ、【早業】で駆動系への【部位破壊】でリボルバーを撃とう



 クロムキャバリアの少国家『グリプ5』の街中に咆哮の如きエンジン音が響き渡る。それは天使の姿をしたキャバリアの炉が咆哮を上げる音であった。
 全ての『平和』を破壊する。
 あってはならぬものであるがゆえに、その存在を許すことはできず。
 それがあるからこそ得られぬ物があると知った今、自身が本当の欲しいと願ったものを手に入れるために力を振るう。
 最新型キャバリア『セラフィム・リッパー』はすでにオブリビオンマシンへと変貌を遂げた。
 けれどそれは猟兵にしか知覚できぬ事実である。他の人々やキャバリア技師たちには、暴走事故にしか目に映らなかったことだろう。
「壊す。壊す。『平和』は壊さなくっちゃあならないんだ! そんなものがあるから、戦いがあるんだから! みんなそれが欲しいって手を伸ばせば、誰かの肩が、肘が、他の誰かにぶつかって傷つけるだけだってなんでわからない!」
『セラフィム・リッパー』のコクピットの中で歪められた思想のままにパイロットである少年フュンフが叫ぶ。

「ったく。それじゃ本末転倒でしょ。しょうがないガキね」
 咆哮轟く『グリプ5』の街中にて、才堂・紅葉(お嬢・f08859)は蒸気バイクの上にまたがったまま腕を組み、5mは優に超えるであろう鋼鉄の騎士を見上げる。
 それは小さくつぶやかれた言葉であったけれど、その言葉の意味を知るのは紅葉だけであった。
「まぁそれでもなんとかするのが大人の仕事ってやつだ―――蒸気王!」
 組んでいた腕を解く。
 掲げられた中指と親指が合わさり、その音を高らかに響かせる。
 喚ぶは蒸気王(スチームジャイアント)。

 神にも悪魔にもなれると言われた魔導蒸気文明の申し子。
 紅葉の乗る蒸気バイクをコアとし、次々とユーベルコードの輝きに包まれて組み上がっていく巨大蒸気ゴーレム。
 その威容、その貫禄、すべてが王と名乗るに相応しき力の発露であった。
「さあ、行くわよ―――例え天使であろうと鋼鉄の騎士であろうと、この重装甲を抜けるとは思わないことね」
 蒸気ゴーレムの拳が打ち鳴らされ、街中に天使と王が対峙する。
「硬いだけのキャバリアなんて!」
 構えるのは無敵斬艦刀。上段より放つ一撃は、蒸気王の装甲を切り裂かんとする。けれど、対する紅葉は歴戦の猟兵である。
 新兵である少年フュンフが如何に優れた資質を持っていたとしても、その経験の差は埋まらない。

 重装甲を活かした蒸気王の腕部が斬艦刀の一撃をそらし、受け流す。重装甲故に鈍重である蒸気ゴーレムにとって機動力と手数で攻められてしまえば、どれだけ重厚であろうと削り取られてしまうだろう。
 だが、それは紅葉の戦闘技術でカバーできる。
「壊す! 壊す! 『平和』は壊す! そんなものあってはならないんだから―――!」
 少年の慟哭めいた一撃一撃が紅葉の耳を撃つ。
 戦いが続くクロムキャバリアにあって、『平和』ほど縁遠い言葉はないだろう。

 戦うしかない日々。
 知らぬ『平和』のために戦い続けることを宿命とされた、もはや宿業と呼ぶべき運命。だが、紅葉は思うのだ。
「―――その先にあんたの家族はいるの?」
 壊された『平和』の向こう側。
 そこに少年が求める穏やかな『家族』はあるのだろうか。紅葉は知っている。傭兵という戦いの日々で成長した己だからこそわかる。
 戦いの先に見果てぬ物があることを。
 それを求めることに何の咎があろうか。

「だったら大人が教えてあげないといけなんでしょう―――!」
 無敵斬艦刀の斬撃の嵐をかい潜って蒸気王の魔導蒸気機関が唸りを上げる。
 蒸気が噴き出し、周囲を白くけむらせる。
 その手に在るのはリボルバー。回転式装填銃が狙いをつけたのは、『セラフィム・リッパー』の駆動部。
 轟音が響き渡り、『セラフィム・リッパー』の肩部分の関節を穿つ。
 弾丸の衝撃は凄まじく、『セラフィム・リッパー』の巨躯が吹き飛ばされ、ビルをへし折らんばかりに打ち倒される。

「少年。あんたが望むものは、あんたが壊そうとしたものの先にあるのよ」
 その言葉は歪められた思想に囚われた少年の心の奥底まで響いただろうか。
 それはわからない。
 わからないけれど、それでも言わなければならない。それが大人の役割だから―――。

成功 🔵​🔵​🔴​

アリッセ・トードゥ
他国のキャバリア乗りだが、雇われて参戦する。外交的な取引もあった様だが私には関係ない話だ。

愛機を高速機動させ、接近を試みる。こっちは近接特化機だ、遠距離戦は不利。懐に飛び込んでフォースセイバーで【切り裂く】。
量産型だが、念入りにカスタマイズした愛機だ。【2回攻撃】で追撃の斬撃を放つ。
相手のプラズマ砲をかわすのは困難か。射線を見切り、【早業】でフォースセイバーの刀身で受け止めよう。セイバーに渾身の【念動力】を込め強度を高める。もってくれよ……!

聞こえてるか?
あんた長男なんだろう?どうして求めるばかりで母親を支えてやろうとしない。父親の代わりに力になってあげるのが家族として一緒にいるって事だろう。



 クロムキャバリアは数多くの少国家から成り立つ世界である。
 生産施設『プラント』を巡っての争いは終わらず、遺失技術であるがゆえに奪い合うことでしか自国を保持できない人類にとって、戦うことは歴史そのものであった。
 だが戦いの歴史は常に敵という存在だけで成り立つわけではない。
 味方は己の自国だけではない。
 ときに手を結び、時に破棄し国と国とが織りなしていくからこそ闘いの歴史は続く。それはオブリビオンマシンの暗躍あればこその別離であったのかもしれないけれど。
 それでもそうやってクロムキャバリアに生きる人々は歴史という営みを紡いできたのだ。

 故に暴走事故を引き起こした最新鋭キャバリア『セラフィム・リッパー』を止めるべく、外交的な取引によって他国のキャバリア乗りが事態の収拾に現れることは何ら不思議なことではなかった。
「外交的な取引があったにせよ、私には関係のない話だ。暴走したキャバリアは止める。私は私に課せられたタスクを消化するだけだ」
 アリッセ・トードゥ(BE-MADER・f30023)は、彼女の乗機であるカスタムされた量産型キャバリアを駆り戦場とかした『グリプ5』の街中を疾駆する。

「―――エンゲージ。『セラフィム・リッパー』……」
 アリッセの瞳が捉えたのは、猟兵の駆る魔導蒸気ゴーレムの放った銃弾の一撃に寄って倒壊したビルに叩きつけられたキャバリア『セラフィム・リッパー』の姿であった。
 あの魔導蒸気ゴーレムが如何なる存在であるのか知る必要などないと言わんばかりに、転倒した『セラフィム・リッパー』を取り押さえようとした瞬間、瓦礫を吹き飛ばしながら『セラフィム・リッパー』の光の翼が広げられる。
 自身のキャバリアのモニターに映る数値、そのデータが示すのはかの機体の装備の一つであるプラズマビームの存在。

「じゃま、だ―――!」
 放たれるプラズマビームの火線。それは圧倒的な速度でもって放たれ、ビルを溶解させる。
 その射線を読み切ってアリッセのキャバリアの持つフォースセイバーで受け止める。凄まじい熱量が機体の装甲を灼く。
 念動力に寄って強化されてるが、それでもこの威力は流石は最新鋭と言わざるを得ないだろう。
 振り切ったフォースセイバーがプラズマビームを押し返していく。
「持ってくれよ……!」
 弾けるようにプラズマが放電され、周囲の建物を破壊する。天使の羽の如きプラズマビーム発生装置に光が再び灯る。

「流石に遠距離戦ではあちらに歩があるか! なら―――!」
 踏み込む。
 どれだけあちらが最新鋭であろうと、カスタムされ、アリッセの念動力に寄って超常的な機能を発揮する愛機も負けては居ない。
 懐に一気に飛び込み、肉薄する。無敵斬艦刀を構えるが遅い。
「経験の浅さが命取りだ、パイロット!」
 フォースセイバーがプラズマビーム発生装置である翼の片翼を切り裂く。
 もう片方の翼も切り裂こうとしたが、無敵斬艦刀の刀身に阻まれ、鍔迫り合いのように二機のキャバリアが、互いの出力を上げるように頭部をぶつける。

「聞こえてるか? 男だろう。どうして求めるばかりで母親を支えてやろうとしない。父親の代わりに力になってあげるのが、家族として一緒にいるって事だろう」
 アリッセの言葉が『セラフィム・リッパー』のパイロット、少年『フュンフ』に響く。
 けれどそれは、ある意味で歪められたからこそ溢れ出た本音であったのかもしれない。
「与えられていないのに、どうして求めるのが悪いっていうんだ! 僕はまだ父親になれるような年齢でもなければ―――力だってないんだぞ!」
 無敵斬艦刀を振るう『セラフィム・リッパー』の力が増す。
 オブリビオンマシンであるということを差っ引いても、これだけの出力を引き出すのは言うまでもなく、パイロットとしての資質であろう。
 惜しいな、とアリッセは思ったかも知れない。

「ある意味で当然だろうな。だが、此処はクロムキャバリアだ。戦わなければ生きていけない。戦うことが日常であるのだから。それはあんたも知っていることだろう。ねだるな―――手を伸ばせ」
 そうすることが、この世界で生きる術となる。
 戦いしか無いのであれば、その中で成長するしか無い。
 自分が自由を求めるように。誰かに与えられたものじゃない、自分で選び取ったもので生きていきたい。

 それがオブリビオンマシンに呑まれぬための本当の強さであると伝えるように無敵斬艦刀をフォースセイバーが押し戻し、その機体を弾き飛ばすのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクサンドル・バジル
どーした反抗期か、少年。
かーちゃんは大切にしないと駄目だぜ?
ん? 家族の為に平和を壊す?
なかなかの論理の飛躍だな。これがオブリビオンマシン効果か。
平和を壊すってことは今以上に争いが激化するってことだぜ?
そーなるとお前の家族はどうなるだろうな?
かーちゃんは帰ってくると思うかい?
まあ、命までは取らねーよ。安心しな。

専用機『スルト』を駆って対峙。
漆黒の機体は黄金の魔力を纏いその戦闘能力を向上。(戦闘モードⅠ)
普通に格闘戦で操縦席以外を狙って破壊していきます。
(飛行は衛星に引っかからない超低空地上50㎝で。地形の小さな障害を無視した高速機動を)
敵POWUCはむしろチャンスとカウンターを狙っていきます。



 カスタムされた量産型キャバリアの放つフォースセイバーが最新鋭キャバリア『セラフィム・リッパー』を無敵斬艦刀毎吹き飛ばす。
 その機体はアスファルトに覆われた地面を砕き、破片を飛ばして巨躯を沈める。
 だが、それだけで鋼鉄の騎士であるキャバリアが止まらない。片翼を失ったとは言え、未だ天使の名を冠するキャバリアの力は健在である。
「―――僕は、まだやる。やれるんだ。壊す、壊す、壊して、壊して……! 母さんを―――!」
 どうしたのだろう。
 ぽっかりと穴が空いたような心が叫ぶ。寂しいのか、怒っているのか、わからない。行き場のない感情はどうしようもなく膨れ上がって爆発してしまう。
 何が原因だったのかわからない。
 けれど、どうしようもなく。

「『平和』が僕を邪魔する……!」
 片翼の天使の如きキャバリアが咆哮する。エネルギーインゴットが溶けるように消費されていき、握り締めた無敵斬艦刀が振動する。
 あらゆる装甲、あらゆる敵を両断せしめる力がみなぎり、立ち上がった『セラフィム・リッパー』のツインアイが妖しく煌めくのだ。
「どーした反抗期か、少年。かーちゃんは大切にしないと駄目だぜ?」
 漆黒のオブリビオンマシン―――『スルト』と名付けられたキャバリアが頭を垂れ、平伏するようにして、その頭上に頂くのは、主であり王であるアレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)であった。
 その瞳は細められ、見上げる先にある天使の如き機体『セラフィム・リッパー』のコクピットを見透かすようにして笑いかけるのだ。

「何を……! そうやって他人はいつだって誰かの何かに名前をつけて知ったような口をきく!」
 その怒号に共鳴するようにして『セラフィム・リッパー』は出力を上げていく。
「壊すんだ、家族のために、弟妹たちに普通の家族を―――! そのために『平和』は壊さなければならないんだよ!」
 無敵斬艦刀が振るわれる。
 それは狙い過たず、アレクサンドルへと放たれた。踵でアレクサンドルは『スルト』の頭部を叩けば、瞳に力が宿る。
 コクピットへと滑り込んだアレクサンドルと『スルト』は戦闘モード Ⅰ(ディアボルス・ウーヌム)へと移行し、即座に黄金の魔力でもって無敵斬艦刀の一撃を受け止める。

 黄金の魔力に寄って無敵斬艦刀の一撃を阻みながら、悠然と立ち上がる漆黒のマシン。
「ん? 家族のために平和を壊す? なかなかの論理の飛躍だな。これがオブリビオンマシン効果か……少年。平和を壊すというが……」
 振るわれる斬艦刀。
 だが、その全てを黄金の魔力纏いし『スルト』の腕が防ぐ。
「平和を壊すってことは今以上に争いが激化するってことだぜ? そーなるとお前の家族はどうなるんだろうな?」
 斬艦刀が刃こぼれを起こすほどの強度。その圧倒的な魔力の壁は、最新鋭キャバリアの持つ装備と言えど安々と破れるものではない。

「だったら―――! 何だって言うんだよ!」
 斬艦刀の一撃が黄金の魔力を削る。凄まじい剣戟。その長大なる剣を振るう速度、センス、どれをとってもアレクサンドルにとっては未だ荒削りなものである。だが、そこに光るものを見出す。
「かーちゃんは帰ってくると思うかい?」
 帰ってくるわけがない。
 それどころか、永遠の別れとなる可能性のほうが高い。どれだけ力を持っていても、手が届かない場所というのは存在している。
 どれだけ速く動けたとしても、間に合わないことだってある。

「なかなか悪くない―――もうちょい経験を踏んだ後にやり合いたかったもんだが……まあ、生命までは取らねーよ。安心しな」
 最上段から放たれる無敵斬艦刀の一撃。
 あれを黄金の魔力では受け止められない。太刀筋はいい。だからこそ、真っ向から打ち破る。それが楽しいのだとアレクサンドルは笑った。
「魔力開放―――」
 開放された魔力が『スルト』を介して世界へと放たれる。
 それは凄まじきユーベルコードの輝き。踏み込みの速度、剣戟を見極める経験。それら全てが、最新鋭を上回る。

 放たれた斬艦刀の一撃を紙一重でかわし、放たれるカウンターの拳が『セラフィム・リッパー』の頭部へと打ち込まれ、ひしゃげる。
 破片を飛び散らせながら、『セラフィム・リッパー』が吹き飛ぶ先を見据えてアレクサンドルは言うのだ。
「次はもうちょっとマシになってからやろうぜ、少年」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルイス・グリッド
アドリブ歓迎

頼んだぞ、俺のキャバリア
平和を壊す、か
それが無かったら失うばかりだ。命も普通の暮らしも何もかも
黄色の瞳の災いは感電だ、痺れてしまえ

俺のキャバリアで出撃する
【運転】【操縦】でキャバリアを操作し、【ジャンプ】【足場習熟】【早業】で攻撃を避けながら、【戦闘知識】を使い装備している銃でビットを【スナイパー】の力で打ち落とす
それから銃の射程距離まで近づき、義眼のメガリスを使用
【視力】で相手を視認、【属性攻撃】【鎧無視攻撃】【スナイパー】【マヒ攻撃】【全力魔法】を使いUCで攻撃



「頼んだぞ、俺のキャバリア」
 ルイス・グリッド(生者の盾・f26203)の右腕……メガリスに呼応して虚空より現れし銀の銃兵―――Soldato d`argentoのコクピットの中でつぶやく。
 その名の通り銃を持つサイキックキャバリアが立ち上がる。
 応えるように、その瞳が輝き銀色の装甲を煌めかせる。

 既に戦場と化した『グリプ5』の街中を疾駆する。猟兵たちが駆けつけ、キャバリア同士の戦いが始まっているのだ。
 戦いの残滓である建物の瓦礫や、倒壊したビルを飛び越えルイスは疾駆する。モニターに映るオブリビオンマシンである『セラフィム・リッパー』が立ち上がろうとしている。
「あれだけの攻撃を受けてまだ動くのか……流石は最新鋭といったところか」
 片翼は破壊され、頭部はひしゃげている。肩の駆動部は軋むようにぎこちない動きを見せているところから察するに内部フレームにまでダメージが入っていることは容易に想像できた。
「壊す……! 『平和』は壊す! 壊さないと! そうしないと―――みんなみんな、おかしくなってしまう!」
『セラフィム・リッパー』のコクピットの中で慟哭するようにオブリビオンマシンによって思想を歪められた少年パイロットであるフュンフが叫ぶ。

 それはあまりにも切なる願いであったのだろう。
 家族といたい。当たり前のように家族で過ごしたい。たったそれだけの願いであったのだろう。家族らしいことを、家族のように。
 母親の愛を十分に与えられていない。
 そう思ってしまった少年の心にとって、オブリビオンマシンの存在は劇薬であったのだろう。
「平和を壊す、か……」
 ルイスは、その慟哭を受け止める。
『平和』。それは誰もが心の中で願うものであろう。
 心の平穏であったり、徒に誰かを傷つけないで済む生活であったり、その思うイメージは人それぞれである。
 けれど、共通しているものがある。

 そう、誰だって好んで誰かを傷つけたいとは思わない。ルイスだってそうだ。
「だから、『平和』はなくならなくっちゃぁ、いけないんだ」
 BS-Fクリスタルビット―――通称『エンジェルビット』が無数に展開される。それは圧倒的な数であった。
 全てがパイロットによってコントロールされる言わば追尾し続ける弾丸。
 その全てがルイスへと放たれる。
 空を埋め尽くさんばかりの機動でもってエンジェルビットが飛来する。それをルイスは義眼ではない瞳で見つめていた。

「―――それがなかったら失うばかりだ。生命も、普通の暮らしも、何もかも」
 そう、戦いしかないのであれば、得る物は一握りであり、一時のものでしかない。それを悲しいと思う心があるからこそ、『平和』を求める。
 もう喪わくてすむように。
 悲しい思いをしなくてもいいように。
「だから、戦わなくてはならないんだろう!」
 ルイスと銀の銃兵が戦場を駆ける。エンジェルビットが迫りくる。
 目にも留まらぬ速度で、銀の銃を向ける。引き金を引きエンジェルビットを次々と撃ち落としながらあらゆる障害物を利用しながら、跳ね、飛び、駆け抜けて『セラフィム・リッパー』へと肉薄する。

「戦いばかりしか知らないから、心が荒むんだ! ささくれてしまうんだ! なのに『平和』なんて見たことのないものばかり追いかけるから―――! 平気で家族だって顧みない!」
『セラフィム・リッパー』の手が銀の銃兵を示す。
 あれこそが『平和』の権化であると言わんばかりに次々と生成され放たれるエンジェルビット。
 だが、それらをかいくぐり、最短距離で駆け抜けるルイス。

「……そうかもしれない。なら、『平和』を壊すというお前には、これをくれてやる。黄色の瞳の災いは―――」
 ルイスの義眼、メガリスが発動する。
「メガリス・アクティブ!」
 ユーベルコードの輝きと共に左眼が黄色に輝く。
 それは視認した者に災いを齎すメガリス。輝きが齎すのは感電の災い。『セラフィム・リッパー』の電装を焼き尽くさんばかりに駆け巡る電流が、内側から機体を灼く。

「……しばらくしびれてしまえ。頭を冷やす時間だって必要だ。若いんだったら、尚更―――」
 膝をつく『セラフィム・リッパー』を見下ろし、ルイスはつぶやく。
 そう、まだ少年と言っていいパイロットなのだ。
 やり直すことはいつだってできる。記憶を失ってもなお、歩き続ける者だっているのだ。一度の過ちがあろうとも、立ち上がることができる。
 それがエースの資質であり、それを持つ者であるとルイスは感じ取っていたのだった―――。

成功 🔵​🔵​🔴​

レナーテ・フレンベルク
◎アドリブ等歓迎
平和を壊す……ね
あなた達が家族の時間を持てるのも、束の間とは言え
平和のお陰だと言う事が分からないのかしら
そして母親が何故、平和に固執するのかも

■戦闘
キャバリア……確かに強大な力だけど
正直、乗って操縦するのは難しそうね

ここは得意分野を活かしましょう
借り受けたキャバリアに集めた周囲の霊を【降霊】させ、
更にヒルデも憑依させる事で、私の指示で霊たちが代わりに
機体を動かしてくれるようにするわ
……ある意味、これもオブリビオンマシンなのかしら?

戦闘では【UC】によって作り出した盾で光線を防ぎつつ、
武装した銃で反撃
敵が見かねて接近してきたら盾を大槍に変形
不意打ちで【カウンター】の一撃を与えるわ



 内部からの電流によって電装が傷つけられた最新鋭キャバリア『セラフィム・リッパー』が膝をつく。
 けれど、『セラフィム・リッパー』はすでにただのキャバリアではない。過去の化身たるオブリビオンマシンである。パイロットの思想を歪める力は未だ健在であり、パイロットである少年フュンフの意志は未だ『平和』を破壊することに固執していた。
「だからなんだっていうんだ。『平和』なんて、そんなものがあるから! 僕らは平和なんて知らないんだ! 戦いばかりが日常なんだから!」
 光の翼が展開される。
 だが、片翼は猟兵の攻撃に寄って脱落している。片翼だけでも、そのプラズマビームの威力は折り紙付きである。
 建物であろうと簡単に融解せしめる威力であり、さらに命中精度も高い。あれが再び放たれては、『グリプ5』の街中に被害が出るのは言うまでもない。

「平和を壊す……ね」
 その呟きは『セラフィム・リッパー』の膝をつく上から降り注いだ。
 クロムキャバリアは空を自由に行き来することができない。それは暴走衛星『殲禍炎剣』によって撃ち落とされてしまうからである。
 故にレナーテ・フレンベルク(幽玄のフロイライン・f25873)の駆るキャバリアは建物の残骸、ビルの屋上、それらを利用して『セラフィム・リッパー』の頭上を獲ったのだ。
「上から―――!? キャバリアで、なんでそんな身軽な動きが……!」
 頭上から迫るレナーテの乗るキャバリアへと光の翼が向けられる。今は目の前の敵を打ち払うことにしか、『セラフィム・リッパー』は集中できない。

「キャバリア……確かに強大な力だけど」
 レナーテは確かにキャバリアに搭乗していた。
 けれど、キャバリアの操縦が得意であるというわけではない。彼女にできることは一つであった。
 それはキャバリア操縦の適正があったというわけではない。
 彼女にできること。それは死霊を操る術。彼女は借り受けたキャバリアに集めた周囲の死霊たちを降霊させ、さらに彼女のボディガードである巨骸であるヒルデを憑依させることで、彼らに機体を動かすように命じたのだ。

 それこそが、彼女の持つ力―――融魂の秘術(ブラスフェミー・シュミート)である。
 その力で持って彼女を乗せたキャバリアをまるで自分の身体のように……それこそオブリビオンマシンのように意志もつ機体として、『セラフィム・リッパー』へと肉薄させたのだ。
「正直、乗って操縦するのは無理。彼らが貴方を止めてくれる。ある意味、これもオブリビオンマシンと言えるかも知れないわね」
 彼女の機転。
 それは己の短所を補うのではなく、伸ばすこと。
「やりなさい、ヒルデ」
 放たれるプラズマビームを死霊たちが変じた盾によって防ぐ。プラズマビームの奔流が受け流され、頭上を獲ったレナーテの機体から逸れて空へと霧散していく。

 わざわざ頭上を獲ったのは、街にプラズマビームの被害を出させないためだ。
「ビームを拡散させた!? なんで―――」
「あなた達が家族の時間を持てるのも、束の間とは言え平和のお陰だということがわからないのかしら……そうね。知らないのね。『平和』がどんなものか……」
 レナーテはフュンフの慟哭を聞いて、それに納得する。
 自分だってそうだ。知らぬ世界がある。まだ見たこともない景色がある事も知っている。
 無知の知。
 知らぬということを知っている。それは少年であるフュンフもまた同じであろう。

「なら、知るべきよ、あなたは。母親が何故、平和に固執するのかを。『平和』そのものを知ろうとするのではなく、母親が『平和』を求める理由を―――ヒルデ」
 盾となった死霊たちが槍へと変貌する。
 その一撃は『セラフィム・リッパー』が咄嗟にかばった左腕を貫き、引きちぎるようにして穿たれた。
 破片が飛び散り、ゆっくりと時間が流れるような光景がレナーテの瞳に映る。

「知らないことが罪であるというのなら、知ろうとする理由があるのなら、それは罪たり得ない。だから人は何度だって立ち上がることができる。あなただって、その宿業を背負って生きなければならない人なのだから―――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーリー・ザルティア
やれやれ、だから最新鋭っていうキャバリアは信用できないんだよ。
コンバットプローダウン(戦闘証明)は重要だね。

さて、ボクも参戦するよ。
愛用のクロムキャバリアで出撃だよ。そろそろこの子も名前つけたほうがいいね。あ、量産型キャバリアは僚機設定で無人出撃。ボクの援護よろしく

―ユーリー・ザルティア出るッ!!


さぁ~って、戦闘開始。
オーバーブースト・マキシマイザー発動。
『肉体改造』された、この肉体を『限界突破』するぐらいの超速機動でオブビリオンを翻弄しながらヒット&ウェイ。
ボクに注意を引かれている隙に、僚機のキャバリアの砲撃が本命さ。
ボクの『操縦』痺れたかい?


アドリブと他猟兵の共闘はご自由にってね。よろしく



 最新鋭キャバリアの暴走事故。
 その一報を聞いてため息を吐いた者がいた。
「やれやれ、だから最新鋭っていうキャバリアは信用できないんだよ。コンバットプローダウンは重要だね」
 バトルプルーフ、もしくは戦闘証明済み。
 実践で使用され、その性能が当初の設計意図やカタログ通りの性能が客観的に見て実証されることである。
 ユーリー・ザルティア(レプリカントのクロムキャバリア・f29915)にとって、最新鋭とは暴走事故とほぼ同義であったのかもしれない。

 それがオブリビオンマシンによる事故であることは猟兵にしか理解できないし、判別することができない。
 ユーリーにとって、それは些細なことであり、最新鋭と名がつく機体がいつも事件を起こすことに辟易していたのだ。
「さて、ボクも参戦するよ」
 彼女は愛用のクロムキャバリア。
 すでに戦闘証明済みである。ユーベルコード覚醒者にしか扱うことのできない機体だり、その性能はすでに彼女の手足として馴染むものである。
「そろそろこの子も名前つけたほうがいいね」
 いつまでもクロムキャバリアなんていい方はあんまりなのかもしれない、そうコクピットの中でつぶやきながらシステムを立ち上げていく。

 システムの記号の羅列が浮かび上がり、各種センサーの起動、計器のチェックを目で追いながら済ませ、ユーリーは息を吸い込む。
 灰に新鮮な空気が取り込まれ、これから行うことに対して気負うこと無く繰り返してきた行為を行う。
「―――ユーリー・ザルティア出るッ!!」
 彼女の号令とともに無人機としてコントロールされる量産型キャバリアと共に飛び出す。
 無人機は自身の機体と同時に操作され、一人で連携機動を行うことができるまでに高められた技量である。
 すでに猟兵たちが駆るキャバリアによって『セラフィム・リッパー』は相当な打撃を受けているはずである。

 センサーを立ち上げ、遠望モニターに映し出される姿はすでに傷つけられていた。
 プラズマビームを発射する装置である翼の片翼は脱落し、頭部はひしゃげるように変形している。
 片腕は引きちぎられたように脱落しているのは、他の猟兵から受けた弾丸がきっかけとなってフレームごと脱落したのだろう。
「なるほどね。戦況の把握はおっけ! さぁ~って戦闘開始。オーバーブースト・マキシマイザー発動!」
 その動きは、機動は、あまりにも凄まじい重力加速を肉体に強いる。
 だが、肉体改造を施されたユーリーにとって、それは当たり前の行為であった。普通の人間の肉体が如何に眼鏡になり、人間本来の限界を越えていたとしても耐えきれることのない超速機動。

 その動きは別次元のものであり、あまりの速度に周囲には衝撃波が舞い散る。
「―――クリスタルビットが、風で流されるっ!」
 動けぬ『セラフィム・リッパー』から射出されるBS-Fクリスタルビットが無数にあったとしても、超速機動を行うユーリーのキャバリアを捕らえることはできない。
 さらに衝撃波が宙に浮かぶクリスタルビットの制御を困難なものにするのだ。
 どれだけ念力で制動できるとは言え、凄まじい機動によって生み出される衝撃波が起こる現状で、一つ一つ制御するには集中が必要であった。

「やっぱり注意が散漫になる! 例えどれだけ意識を拡張しようとも、人は目の前で速く動くものを目で追ってしまうものさ。本能って言ってもいいけれどね!」
 ユーリーに翻弄されるクリスタルビットが行き場を失う。
 どこを狙っても躱される。だが、それは本命ではない。ユーリーの本当の狙いは。
「な、援軍!? どうして、今まで気が付かなかったんだ……!」
 それはユーリーが操る僚機、量産型キャバリアから放たれた砲撃。
 人の目に止まらぬほどの超速機動を行いながら、クリスタルビットを翻弄しながら、無人機を操作するのは、まさに人外たる所業であったことだろう。

 次々と放たれる砲撃の雨にさらされながら『セラフィム・リッパー』の装甲が脱落していく。
「ボクの『操縦』痺れたかい?」
 不敵に笑いながらユーリは己の手足となり、第二、第三の肉体となる無人機キャバリアの操縦を続ける。
 戦うことって楽しい。
 そんな風に笑いながら、キャバリア同士による戦いを楽しむ笑い声が戦場に響き渡るのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
〇生身

ですが、負けてしまえば平和は簡単には戻って来ない。戦闘すら起きず、支配され蹂躙される時が続くのみです。

フィンブルヴェトを手に向かってくる敵に氷の弾丸を撃ち込みます。ダメージにはならないでしょうが、回避や防御の動きから重要な機関を『見切り』、さらに私が敵の攻撃範囲に入る一歩手前に【氷槍弾】を仕込んでおきましょう。
敵が仕込んだ個所を踏み氷の槍で足を縫い付けられたらその隙に懐まで入り、重要そうな機関をフィンブルヴェトの銃剣で『串刺し』、氷の弾丸の『零距離射撃』を撃ち込みます。

本当に大事しているのは平和そのものではなく……その平和な時を生きて欲しい「誰か」ですよ。



 知らぬ者にとって『平和』とはどれほどの価値があるだろうか。
 戦いばかりの世界であるんがクロムキャバリアであるというのなら、その価値は無いに等しいものであるのかもしれない。
 戦い、勝ち続けなければ人は生きていけない。負けてしまえばどうなるのかをセルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は知っていた。
 巨大な鋼鉄の騎士が戦場を駆けるクロムキャバリア―――少国家『グリプ5』の街中にあって、セルマは生身のまま砲撃続く戦場に立っていた。

 その瞳の先に在るのは砲火に晒される最新鋭キャバリア『セラフィム・リッパー』。オブリビオンマシンと化しているが故に、そのパイロットの思想は歪められてしまう。
「負けられない、負けたら死ぬってことだから……死ねない。壊すまで死ねない。壊す、破壊する『平和』は全部……!」
 少年パイロットであるフュンフが叫ぶ。
 砲火降り注ぐ戦場を脱落していない片腕で無敵斬艦刀を振るう。その姿は痛々しいというよりも、子供の癇癪のようであった。
「戦い勝たなければならない。それで戦いが終わるわけではありません。ですが、負けてしまえば平和は簡単には戻ってこない。戦闘すら起きず、支配され蹂躙される時が続くのみです」

 セルマは知っている。
 敗北の後に何がやってくるかを。それはあまりにも辛い。辛いという言葉で言い表せるのであれば、まだ優しい方であったとさえ思える。
「教えて差し上げましょう。壊れたものは直せばいい。けれど、直したものが壊す前とまったく同じではないということを」
 生身のままセルマはキャバリアと対峙する。
 それはクロムキャバリアにおいて異常なる光景であった。鋼鉄の巨人とかたや人間の少女。
 その勝負の行方……いや、勝負にすらならないだろう。

 だが、それはセルマがただの人間であればの話だ。
 彼女は猟兵―――生命の埒外にある者である。
「なら―――なんで『平和』なんて求めて戦うことをしなくっちゃあならないんだ!」
 フュンフの叫びに呼応するようにオブリビオンマシン『セラフィム・リッパー』のツインアイが輝き無敵斬艦刀を振るう。
 本来であれば両腕で扱う武装であるが、今は脱落してしまった片腕は使えない。それでも片手で扱うことができるのはパイロットの技量があってのことだろう。
 振るわれた無敵斬艦刀を生身の人間に振るうという倫理観の欠如など、心を歪められたパイロットには関係ない。

 セルマが構える銃剣の取り付けられたマスケット銃から氷の弾丸が放たれる。
 それは無敵斬艦刀へとぶつかるが、威力を消すことなどできようはずもない。圧倒的な質量、鋭さを持って放たれた一撃をセルマは躱し、地面へと叩きつけられた斬艦刀の峰を走り抜け、次々と『セラフィム・リッパー』へと氷の弾丸を打ち込み続ける。
「なるほど……大したダメージにはらないと思っていましたが……エネルギーインゴットを格納している部分は護ろうとする……パイロットの操縦、ではなくオブリビオンマシンの意志と見ました」
 セルマはそのまま機体を蹴って距離を取る。

「ならば、如何に敵が巨大であろうとやるべきことは代わりません―――仕込みはすでに済んでいます」
 放つは氷槍弾(ヒョウソウダン)。
 機体を蹴って距離を取ったセルマを負って、『セラフィム・リッパー』が迫る。だが、すでにそこはセルマの間合いであり、『仕込み』の終わった場所である。
 踏み込み、無敵斬艦刀を振り下ろそうとした瞬間、氷の弾丸が打ち込まれた地面が氷の槍となって『セラフィム・リッパー』の脚部を貫き縫い止め、貫通した槍の穂先が無敵斬艦刀の切っ先を捉えて凍結させる。

 振り上げた態勢で氷漬けにされた『セラフィム・リッパー』は無防備そのものであった。
「貴方の母親が本当に大事にしているのは平和そのものではなく……」
 セルマが駆け抜ける。
 すでに『セラフィム・リッパー』の重要機関、氷の弾丸から護ろうとしたエネルギーインゴットの格納されている背面ユニットへの狙いは付いている。
 銃剣『アルマス』の氷のように研ぎ澄まされた刃が装甲板を切り裂き、エネルギーインゴットを露出させる。
「『平和』!『平和』! そんなことばっかり言うんだから、それが大切に決まっているだろう! 母さんは僕達より『平和』の方が―――」
「その平和な時を生きて欲しい『誰か』ですよ」
 セルマは瞳を細める。
 それは如何なる表情であっただろうか。機体の影に隠れて見えない表情。
 銃剣の切っ先がエネルギーインゴットに突き立てられ、マスケット銃『フィンブルヴェト』から放たれた氷の弾丸が炸裂する。

 エネルギーインゴットが傷つけられ、衝撃に寄って膨れ上がった内部エネルギーが暴発し背面を吹き飛ばす。
 その爆風の中からセルマが飛び退り、ビルの屋上に着地する。
「……いつだって親の心は子に伝わりにくいものです」
 けれど、まだやり直せる。
 まだ何も喪われていない。なら、あのオブリビオンマシンに歪められた心を救うことはできるのだから―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​


 猟兵の一撃に寄って背面ユニットに配されていたエネルギーインゴットを格納していた装甲が弾け飛ぶ。
 爆風が起こり、最新鋭キャバリア『セラフィム・リッパー』は脱落していない片手をついて倒れ込むのをギリギリで堪えていた。
「なにを……なにをいっているんだ! 『平和』は壊さなきゃ! 『平和』さえなければ、母さんは!」
 家庭を顧みなくて良いように為るはずだ。
 いつだって『平和』のためにと身を粉にしている。いつだって会うときは目元にくまを作っている。肌は荒れているし、髪の毛だってぼさぼさだ。
 そんなの母さんがやらなくたっていい仕事のはずだ。

「だから―――!」
 だから壊さなくては。その捻じ曲げられた思いのままに咆哮するようにオブリビオンマシンと化した『セラフィム・リッパー』が立ち上がり、BS-Fクリスタルビットが展開される。
 無数のクリスタルビットが膝をつく『セラフィム・リッパー』を護るように宙に浮かび、己に害をなそうとする存在。つまるところ、猟兵の姿を捉えた。

「ふふふ、キャバリア……」
 それは倒壊したビルの瓦礫の上にたつ一人の女性であった。
 不敵に笑い、黒髪に一房交じる青い髪を風に揺らしながら、膝をつく『セラフィム・リッパー』を見下ろしていた。
 彼女の名を月夜・玲(頂の探究者・f01605)。
 生身でキャバリアに対峙する姿はあまりにも現実離れしていた。戦い続くクロムキャバリアにおちてキャバリアとは戦いの象徴であり、絶対的な力であった。
 そんなキャバリアを前にして生身で立ちふさがるなど常人ができることではない。
 それが生命の埒外に在る者、猟兵なのだ。

「……無いわ。借り忘れた……いやまあ良いけど」
 誰か他に猟兵が聞いていたら、がっくり肩を落としたかも知れないが、幸いにして此処には玲以外いなかった。聞かれている心配はないということだが、それでも彼女が今対峙しているキャバリアは十分に驚異なる存在であることは間違いない。
「フュンフ、5番ね。趣味の良い名前じゃないね……」
 オブリビオンマシン化した『セラフィム・リッパー』のパイロットの名をつぶやく。
 子を数字で呼ぶ母親。それを名前にすることは、玲の価値観からでもあまり褒められた名前ではないと感じる。
「その名前で呼ぶな―――!」
 展開されたクリスタルビットが玲へと殺到するように飛来する。
 次々と打ち込まれていくクリスタルビットが倒壊した建物瓦礫を粉砕していく。だが、それはCode:C.S(コード・クロノシール)―――模造神器に施された封印を解除することに寄って得られる時間加速した玲には意味がない。

 どれだけ圧倒的な面による攻撃であっても玲には関係がない。その尽くを紙一重でかわし、飛び散る破片すらも彼女を捉えることはできない。
「いいんだよ、少年。君の抱いている思いは、きっと元は正しい思い。ただ捻じ曲げられただけ、だから私が受け止めて発散させてあげる」
 舞い散る破片の中で玲は微笑む。
 少年の心根が邪悪でないのであれば、それは言ってしまえばストレスの発露にしかすぎない。
 どれだけ心を捻じ曲げられようとも、その根っこまで変えることはできない。

「イインダヨー思いが暴走したってインダヨーってね」
 茶化すように笑う玲の声は、どこか優しかったかも知れない。
 少年が年上の女性にほだされるような感覚があったかもしれない。だが、それでも破壊の意志は止まらない。
「うん、止まらないよね。わかっているよ。だから、おいで。受け止めて発散させてあげるって言ったからね」
 微笑みは消えない。
 加速した身体能力のままにビルからビルへ飛び乗る。クリスタルビットが彼女を追ってくるが、加速した彼女に追いつけるわけがない。

「頭、取った……!」
 ひしゃげたフェイスが見上げるはビルから飛び移ってくる玲の姿だった。
「鋼の迷宮よ、世界を包め」
 掲げる模造神器が輝き、Code:L.M(コード・ラビリンスメイカー)によって生み出されるは鋼鉄の迷宮。
 高さ、幅が全てキャバリアの全高ギリギリに設定された凄まじい強度を持つ迷宮はすでに鋼鉄の檻のように『セラフィム・リッパー』を閉じ込める。
「な―――! こんな、所に閉じ込めようったって!」
 天使の翼が展開されようとして、その迷宮の壁に支えて広げられない。もはや『セラフィム・リッパー』はその強みを完全の殺されたようなものだった。

「さて、これで機動力は奪ったよ。こんなところじゃ翼も上手く使えないでしょ。後は―――」
 お姉さんに任せて、そう呟いて玲が模造神器の刃を振るう。
 関節部を狙って放たれる斬撃は内部フレームを傷つけ、あらゆる動きを封じていく。迷宮が霧散する頃、そこに在ったのは『セラフィム・リッパー』の関節部を痛めつけられ膝をつく姿であった―――。
月夜・玲
ふふふ、キャバリエ…無いわ
借り忘れた…
いやまあ良いけど


フュンフ、5番ね
趣味の良い名前じゃないね…
いいんだよ、少年
君の抱いている思いは、きっと元は正しい思い
ただ捻じ曲げられただけ、だから私が受け止めて発散させてあげる
イインダヨー思いが暴走したってインダヨーってね

乱戦になれば、体格差に振り回される…かな
ならチャンスを窺ってその機動力を削ぐ
街中、ビルの上で敵を待ち頭上を取る
頭部へ飛び付き、【Code:C.S】を起動
天井付き、高さ横幅はキャバリエがギリギリ収まる程度の大きさの通路の迷宮を形成
さて、これで機動力は奪ったよ
こんな所じゃ翼も上手く使えないでしょ
後は関節部を狙って解体してあげる

アドリブ等歓迎



 猟兵の一撃に寄って背面ユニットに配されていたエネルギーインゴットを格納していた装甲が弾け飛ぶ。
 爆風が起こり、最新鋭キャバリア『セラフィム・リッパー』は脱落していない片手をついて倒れ込むのをギリギリで堪えていた。
「なにを……なにをいっているんだ! 『平和』は壊さなきゃ! 『平和』さえなければ、母さんは!」
 家庭を顧みなくて良いように為るはずだ。
 いつだって『平和』のためにと身を粉にしている。いつだって会うときは目元にくまを作っている。肌は荒れているし、髪の毛だってぼさぼさだ。
 そんなの母さんがやらなくたっていい仕事のはずだ。

「だから―――!」
 だから壊さなくては。その捻じ曲げられた思いのままに咆哮するようにオブリビオンマシンと化した『セラフィム・リッパー』が立ち上がり、BS-Fクリスタルビットが展開される。
 無数のクリスタルビットが膝をつく『セラフィム・リッパー』を護るように宙に浮かび、己に害をなそうとする存在。つまるところ、猟兵の姿を捉えた。

「ふふふ、キャバリア……」
 それは倒壊したビルの瓦礫の上にたつ一人の女性であった。
 不敵に笑い、黒髪に一房交じる青い髪を風に揺らしながら、膝をつく『セラフィム・リッパー』を見下ろしていた。
 彼女の名を月夜・玲(頂の探究者・f01605)。
 生身でキャバリアに対峙する姿はあまりにも現実離れしていた。戦い続くクロムキャバリアにおちてキャバリアとは戦いの象徴であり、絶対的な力であった。
 そんなキャバリアを前にして生身で立ちふさがるなど常人ができることではない。
 それが生命の埒外に在る者、猟兵なのだ。

「……無いわ。借り忘れた……いやまあ良いけど」
 誰か他に猟兵が聞いていたら、がっくり肩を落としたかも知れないが、幸いにして此処には玲以外いなかった。聞かれている心配はないということだが、それでも彼女が今対峙しているキャバリアは十分に驚異なる存在であることは間違いない。
「フュンフ、5番ね。趣味の良い名前じゃないね……」
 オブリビオンマシン化した『セラフィム・リッパー』のパイロットの名をつぶやく。
 子を数字で呼ぶ母親。それを名前にすることは、玲の価値観からでもあまり褒められた名前ではないと感じる。
「その名前で呼ぶな―――!」
 展開されたクリスタルビットが玲へと殺到するように飛来する。
 次々と打ち込まれていくクリスタルビットが倒壊した建物瓦礫を粉砕していく。だが、それはCode:C.S(コード・クロノシール)―――模造神器に施された封印を解除することに寄って得られる時間加速した玲には意味がない。

 どれだけ圧倒的な面による攻撃であっても玲には関係がない。その尽くを紙一重でかわし、飛び散る破片すらも彼女を捉えることはできない。
「いいんだよ、少年。君の抱いている思いは、きっと元は正しい思い。ただ捻じ曲げられただけ、だから私が受け止めて発散させてあげる」
 舞い散る破片の中で玲は微笑む。
 少年の心根が邪悪でないのであれば、それは言ってしまえばストレスの発露にしかすぎない。
 どれだけ心を捻じ曲げられようとも、その根っこまで変えることはできない。

「イインダヨー思いが暴走したってインダヨーってね」
 茶化すように笑う玲の声は、どこか優しかったかも知れない。
 少年が年上の女性にほだされるような感覚があったかもしれない。だが、それでも破壊の意志は止まらない。
「うん、止まらないよね。わかっているよ。だから、おいで。受け止めて発散させてあげるって言ったからね」
 微笑みは消えない。
 加速した身体能力のままにビルからビルへ飛び乗る。クリスタルビットが彼女を追ってくるが、加速した彼女に追いつけるわけがない。

「頭、取った……!」
 ひしゃげたフェイスが見上げるはビルから飛び移ってくる玲の姿だった。
「鋼の迷宮よ、世界を包め」
 掲げる模造神器が輝き、Code:L.M(コード・ラビリンスメイカー)によって生み出されるは鋼鉄の迷宮。
 高さ、幅が全てキャバリアの全高ギリギリに設定された凄まじい強度を持つ迷宮はすでに鋼鉄の檻のように『セラフィム・リッパー』を閉じ込める。
「な―――! こんな、所に閉じ込めようったって!」
 天使の翼が展開されようとして、その迷宮の壁に支えて広げられない。もはや『セラフィム・リッパー』はその強みを完全の殺されたようなものだった。

「さて、これで機動力は奪ったよ。こんなところじゃ翼も上手く使えないでしょ。後は―――」
 お姉さんに任せて、そう呟いて玲が模造神器の刃を振るう。
 関節部を狙って放たれる斬撃は内部フレームを傷つけ、あらゆる動きを封じていく。迷宮が霧散する頃、そこに在ったのは『セラフィム・リッパー』の関節部を痛めつけられ膝をつく姿であった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
(戦闘前にフュンフの母に)
フュンフ様の言動は深層心理が歪んだもの
貴女が何故『平和』の為に戦ってきたのか
その誤解を解かなくてはいけません

通信機のご用意を
騎士として、貴女の声をお届けいたします

キャバリア借りず戦闘

センサーで●情報収集
刀の有効範囲計測し●見切って回避

戦機を見縊ってもらっては困りますね!

アンカー射出
●ロープワークで機体飛び乗り●怪力大盾殴打
装甲破損個所から妖精ロボ達侵入
内部機構をレーザーで破壊
●ハッキングし通信機と繋げ

お母様の平和…それは家族が何者にも脅かされず健やかに過ごすことの筈

平和の為に何かを蔑ろにしてしまう矛盾
それは戦う誰もが抱えている苦しみです

どうかそれを支えてあげてください



「『セラフィム・リッパー』、依然暴走が収まりません!」
 それは軌道実験場に響き渡るアラートとキャバリア技師たちの悲鳴のような喧騒であった。
 最新鋭キャバリアが暴走してしまった事故は、すでに街中で起こっている戦闘の音で『グリプ5』に知れ渡っていた。偶然居合わせた他国のキャバリア乗りに、かの機体の捕縛を打診できたこと、有志のキャバリア乗りたちが『セラフィム・リッパー』を抑え込んでくれていることが、人的被害の少なさへと直結していた。
 だが、それでも『セラフィム・リッパー』は最新鋭と呼ぶに相応しい耐久力で多数のキャバリアから攻撃に耐え続けていた。

「ああ、フュンフ……何故なの……!」
 キャバリア技師の一人が呆然とモニターを見てつぶやく。彼女は『セラフィム・リッパー』のパイロットであるフュンフの母親であった。
 何がどうなってこんな事態になってしまったのか、彼女は未だ現実を受け入れきれないでいたのだ。
「通信を失礼いたします。フュンフ様のご母堂でございますね」
 それは軌道実験場のモニターに割り込んできたサウンドオンリーの音声であった。
 機械音ではあるものの、どこか人格を感じさせる音声が続ける。
「フュンフ様の言動は深層心理が歪んだもの。貴女が何故『平和』の為に戦ってきたのか。その誤解を解かなくてはなりません。どうか通信機のご用意を」
「―――こちらからのアクセスは全て遮断されているの。どうあっても私の声は届かない」
 フュンフの母親は項垂れる。
 この通信の声の主が何もであるかわからない。けれど、それでも縋るように言ったのだ。
「機体は……いいえ、あの子だけは、どうか……」
 助けて欲しい。

「その言葉を待っておりました。騎士として、貴女の声をお届けいたします」
 通信の主、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が告げる。
 その言葉を。
 その想いを届けるために己が征くのだと、戦場と化した街中を疾駆する。それはウォーマシンたる彼にしかできないことであった。
 センサーの感度を上げ、『セラフィム・リッパー』の現状を把握する。

「プラズマビーム発生装置の翼は片方が脱落……片腕が損壊、センサーユニットである頭部装甲がひしゃげて……エネルギーインゴットを格納している背面ユニットは爆散」
 なるほど、とトリテレイアは頷く。
 すでに猟兵たちの攻撃に寄って最新鋭キャバリア『セラフィム・リッパー』は相当な痛手を追っているようだった。
 今もまた一人の猟兵に寄って生み出された鋼鉄の迷宮の中から姿を現した、オブリビオンマシンである『セラフィム・リッパー』は駆動部の関節を散々に切りつけられ、その機動性を大きく残っていた。

「―――まだ! まだ僕はやれる。まだ何も、一つも『平和』を壊していない! 怖なさないといけないんだ―――!!」
 立ち上がる『セラフィム・リッパー』。駆動系を傷つけられているのにも関わらず動くのは、パイロットの技量であろう。
 それがもしかしのならば、未来のエース足り得るパイロットとしての資質の発露であったのかもしれない。
 それを惜しいとトリテレイアは思った。
 こんな形で才能を発現させるのではなく、もっと他の機会に彼の才能を活かせていれたのなら、と。
 だが、それは言っても詮無きことである。オブリビオンマシン化したキャバリアを討たねば、その貴重な才能すらも徒に失ってしまうだけだからだ。

「消えろよ、『平和』なんて!」
 振るう無敵斬艦刀がトリテレイアを捉える。
 だが、トリテレイアのアイセンサーは、その無敵斬艦刀の間合い、その刃の有効範囲を計測し、正しく見切り躱す。
「戦機を見縊ってもらっては困りますね!」
 アンカーが射出され、機体に飛び乗るトリテレイア。そのままオーバーフレームのひしゃげたフェイスマスクへと大盾をふるい、殴打する。

 さらにフェイスマスクが歪み、その隙間から自律式妖精型ロボ 遠隔操作攻撃モード(スティールフェアリーズ・アタックモード)が入り込み、内部からレーザーで破壊していく。
「内部構造把握―――これですね」
 自立式妖精型ロボが内部に侵入したことにより、ハッキングが可能となった通信機をつなげる。外部からのコンタクトが不可能であるのならば、直接繋いでしまえばいいのだ。
「お母様の平和……それは家族が何者にも脅かされず、健やかに過ごすことの筈」
 トリテレイアの言葉がコクピットへと届けられる。
 それは彼が託された思いであり、言葉であった。

「平和のために何かをないがしろにしてしまう矛盾。それは戦う誰もが抱えている苦しみです」
 自身も矛盾をはらんだ存在であることは言うまでもない。
 そのジレンマを抱えるからこそ、己という存在が確立している。だからこそ、それは苦しく険しい道なのだ。
 けれど、トリテレイアは知っている。いつだってそうだ。
「正しい道はいつだって厳しく険しい道です。貴方の母君は、それをなそうとしておられるのです。他ならぬ貴方のために。どうか、それを支えてあげてください」
 その言葉を最後に内部へと入り込んだ妖精型ロボたちのハッキングが遮断される。

 起き上がる鋼鉄の巨人。
 その姿を見上げながら、トリテレイアは退避する。伝えるべきことは伝えた。どれだけオブリビオンマシンに歪められようと、人の心は弱くない。

 どれだけオブリビオンマシンが強大であったとしても、負けることはない。
 それをトリテレイアは知っているのだから―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
平和な世界で生きてきた身からすれば
あの年代の子供が戦いの為に
家族の温もりを諦めなければならないのが悲しいね
そういう意味じゃ奇跡の力もなく平和を守ってる
UDC組織の人達には頭が上がらないよ

ワイヤーガンで廃墟や建物の上に移動
セラフィム・リッパーの進行方向に先回り

近付いてきたらガトリングガンで射撃
あのサイズの機体なら徹甲弾を使えば効果あると思うよ

プラズマビームはワイヤーガンを用いた移動や
神気でビームの時間を停めて防御

逃げながら細い路地に誘い込み
予め仕掛けておいたワイヤーに引っ掛けて動きを乱し
UCで電気系統を殺そうとするよ

家族と一緒に居たいんだろう
戦争が始まったら逆に永遠に失われてしまうかもしれないよ



 鋼鉄の巨人、キャバリア『セラフィム・リッパー』の姿は最早満身創痍であった。
 天使の翼の如きプラズマビーム発射装置は片翼が破壊され、無敵斬艦刀を両腕で振るうはずの片腕は脱落している。
 その頭部はフェイス部分の装甲が破壊され、内部のフレームが露出しているし、駆動系のあちこちはいためつけられていた。
 けれど、それでも『セラフィム・リッパー』は立ち上がる。それがただの機体性能であるとか、オブリビオンマシンであるとか、そういった理由にないことを、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)はわかっていた。
「平和な世界で生きてきた身からすれば、あの年代の子供が戦いのために家族の温もりを諦めなければならないのが悲しいね」

 UDCアースもまた邪神が跋扈する世界ではあれど、表面上は平和であったし、荒廃した世界と比べるべくもないのだろう。
 けれど、それでもと思う。
 どの世界にも争いの火種はくすぶっている。
「そういう意味じゃ軌跡の力もなく平和を守ってるUDC組織の人達には頭が上がらないよ」
 平和を維持するためには何かを犠牲にしなければならないのかもしれない。
 それは生命であったり、誰かとの繋がりであったり。

 だからこそ、壊させるわけにはいかない。
「年端も行かない子供が、あんな風に言わなくても済むように」
 ワイヤーガンで崩落した瓦礫や建物を利用しながら晶は単身キャバリア『セラフィム・リッパー』に挑む。
「ちょこまかと、動き回る! 人が生身でキャバリアに挑むなんて、そんなデタラメ―――!」
 パイロットであるフュンフにとって、キャバリアに生身で挑む者が居る事自体が想定外であったことだろう。
 普通の人間であればキャバリアに敵うわけがない。だと言うのに猟兵達は立ち向かってくる。それどころかキャバリアと遜色のない力を奮ってくる。
 それはあまりにも非現実的すぎた。

「悪いけど、君の乗るキャバリアよりも大きな敵と戦う機会は多かったんだ―――!」
 ガトリングガンから放たれた徹甲弾がキャバリアの装甲を穿つ。
 とは言え、それだけでキャバリアが倒れるものではない。装甲を抜ける、という事実のほうが大切であった。
「なら、これなら!」
 天使の羽の如きプラズマビーム発射装置が展開される。片翼を失ったとはいえ、未だそのプラズマビームの威力は健在だ。
 放たれるプラズマの奔流が晶を襲う。
 だが、晶の身に纏う邪神のオーラが禍々しくも、その領域に入るもの全てを停滞させる。

 それはプラズマビームであっても関係ない。
 固定されたビームの奔流をワイヤーガンによって移動し、躱す。どれだけプラズマビームの熱線が速く、命中率が高いのだと言っても空間に固定されてしまえば晶にとって、それは避けられないものではないのだ。
「家族と一緒に居たいんだろう」
 わかるよ。
 晶は小さくつぶやく。自身も身体がこんな風になっていなければ、今でも家族と、親しい人達と共に在ることができただろう。
 けれど、それは未だ叶わぬ夢である。だからこそ、家族との時間が欲しいと願うフュンフに共感できるのだ。

「だから、『平和』を壊すんだ! 何もかも! 『平和』が家族を犠牲にしてまで手に入れるべきものなのかよ!」
 咆哮するフュンフに呼応するようにプラズマビーム発射装置である翼が展開される。
 それは怒りであり、絶望であり、哀しみでもあった。

「でも、それは……永遠に失われてしまうかもしれないよ」
 フュンフのやろうとしていること、オブリビオンマシンによって捻じ曲げられた心に従うことは、そういうことなのだ。
 壊されたものはもう二度と手に入らないものだ。
 それを後悔してほしくない。哀しみに曇らせる子供が居てはならない。
 晶が放つのは、試製電撃索発射銃(エレクトリック・パラライザー)から放たれるワイヤー。それが『セラフィム・リッパー』の体を拘束し、高圧電流を流し込む。

 それはすでに一度電装にダメージの入っていた『セラフィム・リッパー』の電装に耐え難いダメージを与える。
 機体のあちこちから黒煙を上げる『セラフィム・リッパー』の動きが止まる。
「後悔なんて、しなければいい。けれど、いつだって後悔なんていうのは事が終わってから自覚できるものなんだから」
 だから、晶は止める。
 その心がどれだけ捻じ曲げられたとしても、その根っこにある純粋な思いだけは否定しない。
 家族と共に居たい。
 その願いは晶にとっても守り通さなければならないものであったのだから―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

戒道・蔵乃祐
火急の事態故、御無礼します!

資材運搬用の量産型キャバリアに搭乗
居住区画で暴走マシンと住人の間に飛び込み。一般人をかばう


ゲヘナを発動

金剛身を機体に纏いながらブースターを吹かし
火炎耐性を付与したオーラで高熱に耐えつつ、グラップルでフォールンウイングを押さえ込む


平和とは、この世界では幻想が如き泡沫の夢のようなお伽噺

多種多様な価値観とイデオロギーが各々の正義を叫び、その熱が否応なく人々を戦火に巻き込んでしまう

それでもフュンフくんのお母さんは信じているんです
信じたいんですよ!
息子が何時か伴侶に恵まれて子供を授かった未来に、平和が訪れた時代を!

お母さんの御両親も!きっと同じ気持ちで彼女を育てた筈だから



 最新鋭キャバリア『セラフィム・リッパー』は機体のあちこちから黒煙をあげ、『グリプ5』の街中に立ちすくむ。
 それは数多の猟兵達による暴走を食い止めるための戦いによって為されたものである。街中の建物などへの被害は全体から見れば軽微な者で済んだのは、猟兵たちの行動の迅速さ故であろう。
 人的被害が未だ出ていないのが幸いしていた。

 『セラフィム・リッパー』は今やオブリビオンマシンである。
 猟兵にしか知覚できないものであるがゆえに、この事件は暴走事故として処理されることだろう。そして、誰もが黒煙上げて立ちすくむ『セラフィム・リッパー』を見て、こう思っただろう。
 終わった、と。
 だが、猟兵には分かっている。

 まだ、終わっていないと。
「火急の事態故、御無礼します!」
 資材運搬用の量産型キャバリアに飛び込んだのは、戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)であった。
 猟兵たちの活躍に寄って『セラフィム・リッパー』は沈黙している。だが、蔵乃祐にはわかっていた。
 あれはまだ『生きている』と。
 その証拠だというように、ツインアイが輝き、ぎこちないながらも動き始める。天使の羽の如きプラズマビーム発射装置が煌めく。
 狙うのは―――居住区。
「こわさ、なきゃ……ゼクス、ズィーベン……」
『セラフィム・リッパー』のコクピットの中でパイロットであるフュンフがつぶやくのは、妹弟の名であった。
 6番、7番。
 その数字の如き名前を嫌っていたのは、子供らの中では自分だけであった。

「壊して、母さん、帰ってくるから……」
 だから、壊そう。『平和』も何もかも壊してしまえば、母さんは仕事をしなくていいはずだから。
 その瞳が輝く。プラズマビームの投射。居住区へと放たれたプラズマビームが、その全てを破壊線と火線を伸ばした瞬間、『セラフィム・リッパー』と居住区の間に立ちはだかったのは、量産型キャバリアと蔵乃祐であった。
 その身を呈してプラズマビームの直撃を受けるキャバリアの装甲が融解し、コクピットの防壁をも吹き飛ばす。

「ぬぅ―――!」
 蔵乃祐の体を灼くプラズマ。
 だが、彼は臆することはない。傷みがあるのかもしれない。けれど、それでもプラズマビームの投射から動くことはなかった。
 彼の背後には民間人たちが住まう居住区があった。未だ人的被害がないこの事件において、彼の、フュンフの凶行によって失われてしまう生命があってはならぬと身を挺したのだ。
「邪魔を―――するな! 壊すんだ! 壊して、壊して、母さんが願う『平和』を全て、壊す―――!!」

 プラズマビームの投射が終わり、爆発する量産型キャバリア。半壊し、オーバーフレームの殆どが失われてしまった機体の中で蔵乃祐が叫ぶ。
「平和とは、この世界では幻想が如き泡沫の夢のような御伽噺。多種多様な価値観とイデオロギーが各々の正義を叫び、その熱が否応なく人々を戦火に巻き込んでしまう……!」
 それは避けようのない事実であった。
 誰しもが己が正しいと思いたい。正しさを愛する。だからこそ、己の中にあるものが正義だと信じて戦うのだ。
 誰が悪いわけではない。
 誰もが己の信じる正義の名のもとに力を振るうのだから。

 オーバーフレームの半壊したキャバリアのままに蔵乃祐が駆ける。
 第二射を放とうとしている『セラフィム・リッパー』の片翼の失われた翼に掴みかかる。こちらも片腕が失われてしまっているが、あちらも片腕がないのであれば問題はない。
「君の言う正義が、家族の時間を守りたいということならば、壊すがいいでしょう。ですが、その先は地獄です―――地獄では蛆が尽きることも、火が消えることもない。」
 そう、その先は地獄でしかない。
 後戻りはできず、後悔もできない。それこそが、煉獄の如き世界。
 ユーベルコード、熱力学第一法則(ゲヘナ)が発動し周辺の悉くを焼却させる結界を張り巡らせる。

「それでもフュンフくんのお母さんは信じているんです。信じたいんですよ!」
 己の為す『平和』への思いが礎にしかならないものであったのだとしても、それでもと願うのだ。
 子供が穏やかに過ごす未来に自分がいないのだとしても、それでも成し遂げたい。
 戦いのない『平和』な世界で―――。
「息子が何時か伴侶に恵まれて子供を授かった未来に、平和が訪れた時代を!」
 蔵乃祐のユーベルコードが輝く。
 結界の中にありて、その全ては自壊する運命でしかない。融解していく蔵乃祐の乗るキャバリアのアンダーフレーム。

 だが、構わない。
 その『平和』を壊すという歪められた思いだけを蔵乃祐は破壊する。
「お母さんのご両親も! きっと同じ気持ちで彼女を育てた筈だから!」
 それは連綿と紡がれてきた祈りであり願いであった。
 如何に争乱が100年続くのだとしても、繋いでいく次代に託すものがある。それを信じて人々は戦いしか無いクロムキャバリアを生きてきたのだ。

「それをわかるのです―――!」
 量産型キャバリアから飛び出した蔵乃祐の拳が『セラフィム・リッパー』のオーバーフレーム……その顔面を打ち砕く。
 ひび割れ、自戒するように砕けていく『セラフィム・リッパー』のオーバーフレームと共に、この長く続いた『セラフィム・リッパー』の暴走事故に終止符を打たんとしたのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『貴重な設計図が盗まれた!』

POW   :    ●『出力に優れたキャヴァリアで追う』:小回りは効かないがトップスピードに優れた機体で真っ直ぐ追う

SPD   :    ●『機動に優れたキャヴァリアで追う』:最高速は控えめだが小回りの利く機体で先回りする

WIZ   :    ●『探知能力に優れたキャヴァリアで追う』:ソナーなど探知に優れた機体で情報を収集し、作戦を立てる

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「セ、『セラフィム・リッパー』、沈黙! オーバーフレームの損壊はありますが、コクピットとアンダーフレームは無事です!」
 軌道実験場にてモニターしていたオペレーターが叫ぶ。
 それは街中での戦闘の終結を意味していた。
 パイロットであるフュンフの意識はすでにない。モニターを見れば、バイタルは意識の途絶を示していたが、その他の生命に関わる数値は検出されていなかった。

 オーバーフレームの損壊したアンダーフレームだけになった『セラフィム・リッパー』は沈黙したままであった。
 フュンフの母親が涙ぐみながらも胸をなでおろす。
「フュンフ……」
 よかった、という呟きは涙で溶けて消えた。けれど、その涙すらも嘲笑うかのようにアラートが鳴り響く。
「な、何が……」
「こ、これは……! 軌道実験場のデータベースにアクセスが……な、なにこれ……キャバリアデータが抜き取られています!」
 それは軌道実験場に存在していた最新型キャバリアのデータの全てが吸い出されている事を示していた。

「ダウロード先は……『セラフィム・リッパー』!? 沈黙したはずじゃ……もう動けないはずなのに!」
 だが、それでもモニターの中のアンダーフレームだけになった『セラフィム・リッパー』が動き出す。
 足だけの機体であっても動くことには支障はない。むしろ、オーバーフレームを失ったことに寄って軽くなっった機体は、凄まじい速度で『グリプ5』の街中を駆け抜ける。

「どこへ……まさか、『プラント』!?」
 そう、オブリビオンマシンとなった『セラフィム・リッパー』はコクピットに残され、意識のないフュンフ共々プラントへ逃走を始める。
 それも最新型のキャバリアのデータと共に。
 目指す先はプラント。
 そこまでいけば、ダウンロードした設計図をもとに再びオーバーフレームを再構築し、エネルギーインゴットをも補充することができる。
 そうなれば、再び破壊の化身となったキャバリアが『グリプ5』を破滅させようとするだろう。

 急ぎ、これを追い止めなければならない。
 もはや命運は猟兵にしか託せない状況にまで追い込まれていた―――。
ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎

まだ動くのも驚きだが、足だけの機体でよく動けるな
プラントまでの道は分かってるなら、追うのは出力の強い者に任せるか
最初に謝っておく、申し訳ない。後で復興を手伝う

SPDで判定
相手を【索敵】し【世界知識】を頼りに【早業】【足場習熟】【ジャンプ】【悪路走破】で先回りして、【スナイパー】や【重量攻撃】で【地形破壊】しプラントに行く道を限定させていく
無理に行こうとしたら【威嚇射撃】で邪魔をする
攻撃出来る隙があれば【マヒ攻撃】【全力魔法】【クイックドロウ】【スナイパー】を使いながらUCを使用する



 オブリビオンマシンと化したキャバリア『セラフィム・リッパー』のオーバーフレームは猟兵たちの手によって破壊され、コクピットとアンダーフレームだけが残って漸く沈黙した。
 けれど、戦いはまだ終わってなどいなかった。
 アンダーフレームだけとなってもなお、オブリビオンマシンは大地を疾駆する。すでにコクピット内のパイロット、フュンフは意識を失っている。
 だというのに動き回るアンダーフレームの姿は、あまりにも滑稽である以上に、その異様なる姿を衆目に晒し続ける。
 オブリビオンマシンが向かうは生産施設『プラント』。
 傷ついた機体を癒やすためには、あの施設に向かおうとするのは打倒なる判断であったことだろう。

「まだ動くのも驚きだが、足だけの機体でよく動けるな」
 ルイス・グリッド(生者の盾・f26203)はアンダーフレームとコクピットだけになったオブリビオンマシンの動きに驚くと同時に呆れも感じていた。
 すでにプラントへ向かう道中に在る施設には避難勧告が為されている。
「プラントまでの道……ならば」
 ルイスは己の駆るキャバリア『銀の銃兵』と共に『グリプ5』の大地を疾駆する。すでに機体にはプラントまでの道のりがダウンロードされ、マッピングされている。

 足だけの機体になっても、その速度は一向に衰えない。
 それどころか、オーバーフレームを失ったことによって身軽になっているのか、速度が上がっている。
 あれでは仮にプラントへたどり着かれたのならば、猟兵たちが駆けつけるまでの時間をたっぷりと与えてしまうことになる。
「それは阻止しないとな……管制室、聞こえているか」
 通信でルイスは『グリプ5』の戦闘管制室に連絡を入れる。
 それはプラントへと至ってしまうであろうオブリビオンマシンに対処するため、予め断って置こうと思ったのだ。

 何を、と管制室のオペレーターがたじろぐ。
「最初に誤っておく。申し訳ない。後で復興を手伝う」
 ルイスの言葉にオペレーターが何事か聞き返そうとしたが、通信を切ってルイスは瓦礫となった街中をまるで人間の手足と同じよにキャバリアを操り走破する。
 崩れたビルを踏み台にして飛び越え、アンダーフレームだけとなったオブリビオンマシンへと先回りする。
「……そこか!」
 放たれる弾丸。
 だが、それがオブリビオンマシンに命中することはなかった。元より当てるつもりはなかったのだ。
 それはあくまでオブリビオンマシンのルートを限定させるための威嚇射撃であった。

 プラントへどうあってもたどり着いてしまうのならば、せめて時間を稼ぐことはできる。
 そのための『銀の銃兵』に装備された銀の魔銃である。
 スナイパーとしてのポジションを確保し、態勢を整える。すでに狙いはつけている。
「このペースで走られたら……無駄に時間を与えることになるか……『銀の銃兵』、銃を使わせて貰うぞ」
 ルイスの義眼のメガリスが輝く。
 その色は黄色。
 そう、麻痺の魔力込められし弾丸が『銀の銃兵』の持つ銃に装填される。
 属性付与(エンチャント)。
 それこそがキャバリア『銀の銃兵』の真骨頂である。彼の瞳に映るオブリビオンマシン。
「隙だらけだ―――」

 ためらわずに引き金を引く。
 放たれた弾丸が感電の属性を帯びて放たれ、威嚇射撃ではない狙い済ましたようにアンダーフレームの左足を穿つ。
 その場に転倒するオブリビオンマシン。黄色の輝きを放ったメガリスの魔力の込められた弾丸が引き起こすのは麻痺。
「これで僅かであるが、時間は稼げるか……後は出力の強い者に任せるか」
 ポジショニングを更新すべく、今のポジションを捨て、ルイスは街中を駆ける。
 よりよい場所で、より安全に。周囲に被害を出さぬようにと、その一点においてルイスは慎重に行動を開始するのだった―――。

成功 🔵​🔵​🔴​

戒道・蔵乃祐
とにかく飛べるなら不恰好であろうと構わない
半壊状態の量産型キャバリアに外部推進機を無理矢理にでも接続。機体バランスも速度も最低レベルですが、後は自分自身の力で補います


損壊ダメージは、セラフィム・リッパーも機能不全状態のはずですから

立ち幅跳びの要領でジャンプを開始。そして三角飛びを発動する
空気の壁を蹴り進む、バッタ飛びの立体機動でオブリビオンマシンを追跡

直進と滑空は無理でも、バーニアのON-OFFと平行した推力を利用することでフレーム+ジェネレーターへの負荷を軽減させて、この機体を少しでも長く保たせる


セラフィム・リッパーに追い付いたらクライミング+空中戦で飛び付き。後続への時間稼ぎで縺れ合う



 ぐらりと半壊状態のキャバリアが傾ぐ。
 それは戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)の搭乗した量産型キャバリアのオーバーフレームもまたオブリビオンマシン化した『セラフィム・リッパー』と同様に半壊まで追い込まれてしまっていた。
 借り受けたものである以上申し訳ないと思いつつも蔵乃祐は、この状態でも低空飛行できることに安堵する。
「多少不格好であろうと構いません。迷っている暇に掌からすり抜けてしまうものがあるのなら、行かない理由などないのですから」
 量産型キャバリアに外部から引っ張ってきた推進機を無理矢理に接続しブースターに火を灯す。

「機体バランスも速度も最低レベルですが……後は僕次第ということろでしょう。いきます!」
 推進機に無理やり背中を押されているような不格好な態勢で建物が倒壊したり、瓦礫の山と化した『グリプ5』の街中を疾走する量産型キャバリア。
 互いに最後に戦った相手であるがゆえに距離は未だ近い。
 他の猟兵が移動ルートを限定してくれているのがありがたい。それに途中でシステムをダウンさせられたように麻痺して動きを止めたのが大きかった。
「あのオブリビオンマシン、セラフィム・リッパーも機能不全状態のはずです……―――!?」
 だが、その目論見はあまりにも予想外の事態によって御破算になる。

 彼が目にした光景、それはアンダーフレームとコクピットしかない状態で街中を走り抜けるオブリビオンマシンの姿であった。
「あの状態であれだけ俊敏に動くとは……!」
 だが、こちらとて猟兵の乗るキャバリアである。
 立ち幅跳びの要領で推進力を活かした三角飛び(サンカクトビ)を敢行する。機体のフレームがきしみ、嫌な音を立てながら凄まじい勢いでオブリビオンマシンを追跡する。

 ユーベルコードに寄って、空気の壁を蹴り上げるキャバリア。
 直進と滑空を諦め、推進機のオンとオフと繋げながら推力を利用した機動へと移行する。
「せめてのこの機体を少しでも長く保たせなければ―――!」
 あれだけオブリビオンマシンが動けた事が誤算であった。
 だが、それでも追いつける。未だあのコクピットの中には意識を失ったフュンフ少年がいるのだから。
 彼には生きて母親と再会して欲しい。
 どれだけオブリビオンマシンに心を捻じ曲げられてしまったのだとしても、あれが別れになってしまうのは、あまりにも悲しいことだ。

「捉えた! そこ!」
 推進機を一気に噴かせ、空気の壁をキャバリアの足が蹴る。
 凄まじい勢いで急降下しながら、推進機をパージしながら走り抜けようとするオブリビオンマシンに組み付く。
「急いで何処に往こうというのです。少々僕に付き合ってもらいますよ……!」
 組み付いたオブリビオンマシンに引きずられるようにしながらも、しっかりと組み付く蔵乃祐の乗る量産型キャバリア。
 パワーの差はないはずであるというのに、半壊したとは思えぬほどの力で持って引きずられる。

「くっ……後続の時間稼ぎと思いましたが……!」
 キャバリアのフレーム自体が限界に近づく。
 ならば、と残ったアンダーフレームの脚部でもって、オブリビオンマシンの駆動部に関節技を決めるように絡みつき転倒させる。
 それが最後のあがきであった。
 量産型キャバリアのフレームが瓦解し、崩れ落ちていく。そこから脱出した蔵乃祐が見たのは、藻掻くようにして立ち上がるオブリビオンマシンの姿だった。

 ぎこちない動きになったのは量産型キャバリアの脚部が駆動部を噛んで阻害しているからだ。
「砕かれるのは時間の問題……ですが、後続が間に合ったようですね!」
 追いすがるようにしてオブリビオンマシンに迫る後続の猟兵たちの姿を見やり、借り受けた量産型キャバリアの役目を全うしたことに蔵乃祐は一時であったとしても、己の手足となってくれたキャバリアに祈りを捧げるのであった―――。

成功 🔵​🔵​🔴​

ユーリー・ザルティア
いや、ホントにセキュリティどーなってんのよ!!

このあたりの地形情報…転送して!早くッ!!!

ボクのキャバリアのオーバーフレームを換装!!
機動性特化特別仕様にするよ。(移動力5倍。装甲半分)
転送してもらった地形情報から最短ルートを検出。
よし、トップアクセルで行くよ。ボクの『操縦』を舐めるなよ。
最高速をキープしながら進むよ。途中の障害物は回避もしくは『制圧射撃』で破壊。今は救助第一!!文句は依頼人にッ
『肉体改造』している体にもちょっときついけど…がんばるッ
見つけたッ
『対空攻撃』『威嚇射撃』で攻撃して敵キャバリアの動きを阻害するよ。このまま回り込むッ!!

アドリブと他猟兵の共闘はご自由にってね。よろしく



「いや、ホントにセキュリティどーなんってんのよ!!」
 ユーリー・ザルティア(レプリカントのクロムキャバリア・f29915)の叫び声がキャバリアのコクピットの中にこだまする。
 それは軌道実験場からオブリビオンマシンにダウンロードされたという最新型キャバリアの設計図データを保護するセキュリティの問題であった。
 キャバリア開発は言わば戦争状態が常に続いているクロムキャバリアにとって最も厳重に守られていないといけない情報である。
 当然のように軌道実験場のセキュリティも最高のものであった。だが、『セラフィム・リッパー』がオブリビオンマシン化したことによってデータ収集の際に接続されていた回線からデータを取られてしまったのだ。

 そして、オブリビオンマシンであるか、それともキャバリアであるかの判別は猟兵以外にはできない。
 ユーリーは責めてもしようがないことを言っても仕方ないと諦め、軌道実験場のオペレーターに言う。
「このあたりの地形情報……転送して! 早くッ!!!」
 事態は一刻を争う。
 すでにオブリビオンマシン化した『セラフィム・リッパー』はオーバーフレームを失ってはいるものの、ありえない速度で生産施設であるプランとへと向かっている。
 アンダーフレームだけであんな速度が出せるキャバリアなど聞いたことがない。
 けれど、現にアンダーフレームだけで駆け抜ける滑稽ながらも生理的嫌悪感をかきたてる動きでオブリビオンマシンはプランへと急行している。

「オーバーフレーム換装! 機動性特化特別仕様、クロス!」
 ユーリーのクロムキャバリアのオーバーフレームが瞬時に換装される。
 その姿は今までのシルエットから先鋭的なものにかわり、装甲が極限まで薄くされていることが見て取れる。
 だが、今の状況ではこのオーバーフレームが最適解である。
 軌道実験場から贈られてきた地形データを元にキャバリア内の演算装置が導き出した最短ルートがモニターに提示される。

「よし、トップアクセルで行くよ……」
 ぺろりと乾いた唇を舌で潤し、ユーリーが前を向く。
 クロムキャバリアがクラウチングスタートの態勢を取り、前傾姿勢に為る。瞬間、そのキャバリアの最高時速へと一瞬で到達する。
 駆け抜ける姿はまさに疾風迅雷の如く。
 最短ルートを駆け抜け、彼女のキャバリアの通った後には衝撃波が発生し、瓦礫を吹き飛ばす。
「ボクの『操縦』を舐めるなよ!」
 あらゆる障害など意味をなさない。
 ユーリーの操縦技術は凄まじい。キャバリアは己の手足の延長でしかないことを知らしめるように、拡張された機動性特化仕様のオーバーフレームでさえ、己の身に纏う一部として疾走する。

「ぐっ―――最高時速をキープ……!」
 肉体改造を受けたユーリーでさえきついと感じる重力加速度。みしりと体のどこかが軋む音が聞こえたが気にしない。
 きついと感じるのは、己の限界を押し上げている証拠だ。限界は超えるためにあるし、無茶なクライアントの仕事は全て余裕の顔で踏破するのがユーリー・ザルティアという猟兵なのだ。
「障害物……! ごめん! 今は救助第一! 文句は依頼人にッ!」
 提示された最短ルートの線上にある瓦礫の山。
 それを制圧射撃に寄って粉々に砕いて進む。後から偉い文句を言われるだろが、そういう処理こそ依頼人の仕事だろう。

 一直線に駆け抜けた先にあったのは、他の猟兵のキャバリアによって進路を妨害されたオブリビオンマシンが立ち上がる瞬間であった。
「いた! このまま回り込むッ!!」
 ユーリーのキャバリアが助走をつけて飛び上がる威嚇射撃でオブリビオンマシンの移動を阻害する。
 だが、オブリビオンマシンは止まらない。
 まるで相手が威嚇射撃にとどまることを知っていたかのように駆け抜ける。

「このッ、ボクを見もしないだって!?」
 目的であるプラント以外は見向きもしないのだろう。
 威嚇射撃であっても足を一瞬止める程度にしかならないのだ。駆け抜けていくオブリビオンマシンへとユーリーは追跡を再開する。
 あのオブリビオンマシンはユーリーを無視したのだ。優先されるべき事柄があるからと言って、それでも己を無視したことはユーリーにとっては如何なるものであっただろうか。

 もしも、コクピットにパイロットが残っていなかったのならば、問答無用で撃墜しているところであるのに……。
「まさか、コクピットのパイロットを人質にしているつもりなの、あのオブリビオンマシン―――!?」
 嫌な予感がする。
 それは言うまでもなく、現実のものとなってしまうであろう。
 だが、それでも依頼された以上ユーリーは投げ出すことはしない。必ずや追いつき、舐めた真似をしてくれたオブリビオンマシンに鉄槌を下すことを、ユーリーは決意するのであった―――。

成功 🔵​🔵​🔴​

才堂・紅葉
「っちゃあ。不味い展開ね」

何とも根性のある奴だ。甘く見ていた
だが、やる以上は全力で阻止をはかろう

POWで判定

「迦楼羅王!」
蒸気王を飛び出し、【キャバリア“迦楼羅王”】を着装する
忍者めいた黒の機体で空に飛びだし、出力系の【封印を解いて】イグニッション
召喚した迦楼羅焔と一体化し、トップスピードに乗って真っ直ぐに追いかけたい

「ったく。機動性高すぎて落ち着かないわね」

相手がフル装備なら体当たりで破壊したいが、あの軽装で少年もいるなら派手な事は出来ない
掠めるように真横を行き過ぎ、地面に脚部を串刺しての急制動からの回転蹴りで敵機の脚部へのローキックを狙いたい【操縦、重量攻撃、部位破壊、グラップル、怪力】



 オブリビオンマシンと化した最新鋭キャバリア『セラフィム・リッパー』は猟兵たちとの戦いによってオーバーフレーム……即ち上半身が破壊された状態であったが、それでもアンダーフレームとコクピットだけ残した機体が『グリプ5』の街中を駆ける。
 その姿は下半身だけになった機体が滑稽ながらも駆け抜ける様であり、その光景には生理的嫌悪感がつきまとうものであったことだろう。

 すでにパイロットである少年フュンフは意識を失っている。
 けれど、オブリビオンマシンと化したキャバリアにとってパイロットの意識の有無は関係ない。破壊されたオーバーフレームを修復するために最新型キャバリアのデータを強奪し、プランとへと一直線に走り抜けていく。
「っちゃあ。不味い展開ね」
 才堂・紅葉(お嬢・f08859)は、逃走を開始したオブリビオンマシンの姿につぶやく。
 なんとも根性のある奴だと。甘く見ていたと言ってもよかっただろう。
 オブリビオンマシンといえど、オーバーフレームを破壊されても尚、動き回るとまでは思っても居なかったのだ。
 それにデータ収集のためにつながっていた回線を逆流して逆にデータを奪って逃走するなど、誰が予想できただろうか。

 だが、紅葉の判断は迅速だった。
「迦楼羅王(ガルトマーン)!」
 蒸気バイクをコアとしていた魔導蒸気ゴーレム、蒸気王を飛び出し、黒を基調とした忍者の如き高機動型キャバリア“迦楼羅王”を着込む形で紅葉は空へと飛び出す。
 暴走衛星『殲禍炎剣』の攻撃に晒されぬ低空飛行であったが、その姿はまるで鳥のようでもあり、忍者めいた姿は見る者に何を思わせたことだろうか。
 エネルギーインゴットがジェネレーターに火を灯す。

 華麗に着地するキャバリア、迦楼羅王が街中を駆ける。
 だが、これではあのオブリビオンマシンには追いつけないだろう。
「イグニッション―――!」
 紅葉の手の甲に浮かぶハイペリアの紋章が輝き、リボンが変じた神鳥がキャバリアの体を迦楼羅焔が包み込む。
 それは全力機動を行うための予備動作であり、次の瞬間黒き機体は赤き焔と共に一直線にオブリビオンマシンへと駆け抜ける。

 その赤き残像は街中にあっても目で追えぬほどのスピードで疾駆していることを示し、その赤き残影は先行した猟兵たちの行動も在ってプランとへの侵攻を妨げられたオブリビオンマシンを捉え―――追い抜いた。
「ったく。機動性高すぎて落ち着かないわね」
 相手がオーバーフレームを装備した機体であるのであれば、遠慮なく体当たりで破壊しようと思っていたのだが、オーバーフレームの脱落したあの機体には、未だパイロットの少年フュンフがいる。
 ならば、派手なことはできないとかすめるように真横を通り抜けた迦楼羅王の残影だけがオブリビオンマシンに知覚される。

「まったく手間を掛けさせてくれる! 派手なことはできないけれど!」
 追い抜いたオブリビオンマシンの眼前で片足を地面に突き立てブレーキを掛ける。アスファルトが砕け、破片が舞い飛ぶ。
 次の瞬間、生み出された運動エネルギーは縁を描いてコマのように機体を回転させ、急制動からの回転蹴りを放つ。
 その一撃は足を払うようにしてオブリビオンマシンの脚部を薙ぎ、転倒させる。
 轟音を立ててアンダーフレームだけのオブリビオンマシンが倒れ伏す。再び立ち上がり駆け出すであろうが、今はこで十分なのだ。紅葉は一人で戦っているわけではない。他の猟兵たちがそうであるように、後続の猟兵達が駆けつける時間をかせぐだけでいい。
 焦ってパイロットの少年を盾にされたり、事を急いで仕損じるなどあってはならないことだからだ。

「今はこれで観念してもらおうかしら―――っと、排熱ね」
 赤い焔が煙を吐いて、キャバリアから放出される。
 それは一気にトップスピードへと達した為に機体に充満した熱を排出する行為であったが、蒸気の奥で光る迦楼羅王のカメラアイが、オブリビオンマシンを見据える。

 そのカメラアイの奥でハイペリアの紋章が輝き、オブリビオンマシンの運命を決定づけるのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクサンドル・バジル
おお、なかなかしぶといな。
目的はプラントか。他の猟兵達も追ってることだし――
オブリビオンマシンではなく目的地のプラントへの最短距離を走ります。
(『戦闘モードⅠ』を発動。狂える軌道衛星に引っかからない程度の低空を超速移動)
オブリビオンマシンが既に着いていたら強襲。
まだなら重畳。プラントを背にオブリビオンマシンの方向に行きます。

まあ、プラントを使ってパワーアップするのは諦めな。
少年を返してもらうぞ、オブリビオン。

黄金の魔力を纏った『スルト』が襲い掛かります。

とは言え、プラントなしでも強化できるんじゃねーかな。
そこんとこどうだよ、スルト?

などと軽くスルトと会話しながら。

アドリブ歓迎です。



 オブリビオンマシンは如何なる原理か、アンダーフレームとコクピットだけでも高い機動性を確保していた。
 下半身だけのキャバリアが疾走する姿は、あまりに滑稽であった。
「おお、なかなかしぶといな」
 アレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)は、その光景にあっけにとられるでもなく、快活に笑った。
 おかしいから笑う。
 ただ、それだけのことであるのだが、状況は良くはない。
 かのオブリビオンマシンの目的は起動実験場から強奪した最新型キャバリアのデータを使っての失ったオーバーフレームの再構築だろう。
 それに必要なものは設計図と、そして―――。

「目的はプラントか。他の猟兵達も負っていることだし……スルト、征くぞ」
 アレクサンドルはオブリビオンマシンの目的を理解し、他の猟兵たちの存在を認識していた。
 故に彼の目的はオブリビオンマシンを直接止めるのではなく、先回りし目的地プラントへと向かう。
 目的地がプラントであるのなら、どうあがいてもアレクサンドルと乗機であるスルトを避けては通れまい。
「魔力開放――」
 再びスルトが黄金の魔力を纏い、戦闘モード Ⅰ(ディアボルス・ウーヌム)へと移行する。大地を蹴って、飛翔する。
 それは暴走衛星『殲禍炎剣』の砲撃に感知されない程度の低空飛行であったが、そのスピードはずば抜けていたことだろう。
 ユーベルコードに寄って強化されたスルトの飛行速度をもってすれば、街中の瓦礫や倒壊した建物など障害物にもなりはしないのだ。

「おっ―――と。思ったより進んでるな……! だが、まだプラントまで距離がある。重畳」
 アレクサンドルはスルトと共にプラントを背にオブリビオンマシンと対峙する。
 何度も妨害されたせいであろう、オブリビオンマシンのアンダーフレームはひしゃげ始めている。
 だが、オブリビオンマシンはアレクサンドルの目の前でアンダーフレームの形を変貌させる。
 それは『セラフィム・リッパー』のアンダーフレームではない!

「―――……なるほどな。それが『セラフィム・リッパー』の……いや、お前の本来のアンダーフレームってわけか。まあ、プラントを使ってパワーアップするのは諦めな」
 黄金の魔力をまとったスルトがプラントを背に立ちふさがる。ここで止めなければオブリビオンマシンはプラントへと到達し、プラントを使って機体を再構築するだけならば、まだいい。
 だが、プラントを破壊するようであれば、『グリプ5』そのものの維持が不可能となってしまう。
「少年を返してもらうぞ、オブリビオン」
 スルトがアレクサンドルの動きをトレースするようにアンダーフレームだけとなったオブリビオンマシンへと襲い掛かる。
 だが、その機体の動きは素早い。オーバーフレームがないから間合いが取りづらいというのを差っ引いても尚、その機体の運動性は『セラフィム・リッパー』本来の機体特性……いや、違う。

「なるほどな。パイロットの少年、アンサーヒューマンの瞬間思考力も利用してるってわけか!」
 ならば、この理解し難い機動性や猟兵たちの行動を読んだような動きも理解できる。
 プラントを守りつつ、パイロットをも救出する。
 それが猟兵達に課せられた条件であったが、アレクサンドルは奇妙な感覚をも覚えていた。

 もしかするのならば、プラントなしでも強化されることがあるのかもしれないとアレクサンドルは踏んでいた。
 それが正しいのかどうかはわからない。同じオブリビオンマシンであるスルトに問いかけるも、スルトは答えない。
 応える術がないのか、それとも答えを知らぬのか。
 アレクサンドルは、まあどちらでもいいと主従の態勢を変えぬままに、オブリビオンマシンの侵攻を押し留め続けるのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリッセ・トードゥ
足腰だけであの機動性…さすがはオブリビオンキャバリア、か。…いや、機体の基本性能の高さもあるのかもな。お前の母親は頑張ってるよ。
性能差は圧倒的だが、こちらも任務でね。逃がす訳にはいかない。

【フォースマスター】でリミッターを解除。全力で行く。
オペレーターや仲間から貰った情報を元に【第六感】で進路を予測し追跡。
【念動力】を推進力にするスラスターで【推力移動】。地表を水平に飛ぶミサイルの様に滑走。推力を活かして慣性を無視するかの様な直角機動。
リミッター解除した推力に機体が持つか…いや、やるしかない!
フォースチェーンを伸ばして相手を【捕縛】する。無理に攻めたらパイロットが危ないか。せめて時間は稼ごう。



 最新鋭キャバリア『セラフィム・リッパー』はオーバーフレームを破壊され、アンダーフレームとコクピットだけを残した状態であったが、その機動性はいささかも損なわれてはいなかった。
 むしろ、後を猛追する猟兵たちのプラントへと向かう進路の妨害があってもなお、執着するようにプラントへと至らんと歩を進める。
 その異様なる光景はそれを見る人々にとって奇異と畏怖の念を抱かせたことだろう。

 だが、アリッセ・トードゥ(BE-MADER・f30023)は、また違った感想を抱いていた。
「アンダーフレームだけであの機動性……流石はオブリビオンマシン、か……いや、機体の基本性能の高さもあるのかもな」
 彼女の感想は正しかった。
 確かにオブリビオンマシンであることを差し引いたのだとしても『セラフィム・リッパー』の性能の高さは言うまでもない。
 そこにパイロットである少年フュンフのアンサーヒューマンとしての力も加わるからこその機動性であり、猟兵たちの妨害を回避しようとする俊敏さもあるのだ。
 ならば、アリッセはオブリビオンマシンを厄介と思う以上に、その元となった『セラフィム・リッパー』を開発したフュンフの母親への敬う気持ちが生まれるのだ。

 彼我のキャバリアの機体性能の差は圧倒的である。
 客観的に見ても己の騎乗するキャバリアとの性能を比べてみれば、あの『セラフィム・リッパー』がアンサーヒューマンを乗せることを前提としているのであれば、納得である。
「ワンオフ機に量産機が勝てぬ道理もないさ」
 フォースマスターたるアリッセのちからがユーベルコードの輝きをまとって高まる。
 起動実験場のオペレーターや、他の猟兵たちから齎された情報を元にアリッセの第六感とも言うべき直感が冴え渡る。
 すでにオブリビオンマシンの進路はプラントへと向いている。他の猟兵たちが進路の妨害を行い、遅延を行っていてくれているが故にアリッセは考える時間がある。

「最速最短―――リミッター解除。全力で行く」
 アリッセの念動力とレプリカントたる彼女の頭脳からダウンロードされた謎のOSが起動する。
 それはアリッセにしか起動できず、それ故に彼女の乗る機体―――量産型キャバリアをカスタム機以上の性能へと導くのだ。
 スラスターが噴き、念動力に寄って強化された推力をもって地表すれすれを飛ぶミサイルのように滑走して最速最短でオブリビオンマシンへと肉薄する。

 量産型キャバリアと言えど、その圧倒的な推力を活かせば、慣性など無視するかのような直角機動を行うことができる。
 ただし、彼女がレプリカントでなければ、その重力加速度によって肉体はひしゃげていたことであろう。
 こと、此処に至って問題は機体の強度である。
「……機体が保つ、か……いや、やるかしかない!」
 戦場となった『グリプ5』の市街地を抜け、プラント目前で猟兵の駆るキャバリアによって足止めされているオブリビオンマシンを捉える。

 サイキックエナジーによって増幅されたフォースチェーンがオブリビオンマシンの機体に絡みつき、その動きを止める。
「此方も任務でね。逃すわけにはいかない……それにパイロットを盾にされても敵わない」
 ぎち、とフォースチェーンが軋む音がする。
 引きちぎられる。だが、ここで無理に攻めてはパイロットの身が危ない。相手はオブリビオンマシンである。
 ただの機械であったのなら、加減など必要なかったことだろう。だが、相手は意志を持ち、パイロットの心を歪ませる術をもった怪物である。

 ならば、慎重過ぎることも悪くはない手だ。
「せめて時間は稼ぐさ―――……!」
 アリッセはパイロットであるフュンフに伝えなければならない。
 平和を知らず、平和を壊せば母親が家庭に戻ると考えた少年の心。彼と自分は繋がりがあるわけでも家族でもない。けれど、それでも思うのだ。
「お前の母親は頑張ってるよ」
 その言葉を持って彼の心に報いることができる。だから、アリッセは戦うのだ―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
む、少し出遅れたか……改造装甲車【エンバール】に乗って駆けつけよう…
…そしてそのまま【夜飛び唄うは虎鶫】を展開…
散開させてオブリビオンマシンと周囲の地形、目指して居るであろうプラントの位置を把握…
…(キャバリアよりサイズの小さい事、悪路はVBA装甲の変形で走破することを含め)手段を問わずオブリビオンマシンに先回り出来るルートを構築…ブースターを使って先回りをするよ…
…そして遅発連動術式【クロノス】により捕縛用の罠を想定侵攻ルートに仕掛けて時間稼ぎを行う…
…中にパイロット…まあ実質人質がいるという話だし……あまり手荒なまねは出来ないな…せめてプラントに辿り着かれても有利な状況を作りたいけど…



 クロムキャバリアの少国家の一つである『グリプ5』に改造された装甲車『エンバール』が駆けつける。
 それは異世界であるスペースシップワールドにおける銀河を征く怪物マインドミナVBAの外殻を装甲として増設された装甲車であり、陸上水上水中問わずあらゆる場所を走破することが可能になったメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)の所有する装甲車である。
「む、少し出遅れたか……けど、まだまだやるべきことはある」
 この場に駆けつけた猟兵達からわずかに遅れてしまってはいたが、未だ事態は収束していない。
 最新鋭キャバリア『セラフィム・リッパー』は猟兵達によってオーバーフレーム、即ち上半身を構成しているパーツを破壊されていたが、未だコクピットとアンダーフレームと呼ばれる下半身だけは残っているのだ。

 しかも、起動実験場から最新型キャバリアのデータを強奪し、生産施設プラントへと迫っている。
 生産施設プラントへと至ることがあれば、再び上半身であるオーバーフレームや活動エネルギーの元であるエネルギーインゴットを補充されてしまう。
 そうなれば、再び破壊の嵐が『グリプ5』を襲うことは想像に難くない。
「我が従僕よ、集え、出でよ。汝は軍勢、汝は猟団。魔女が望むは到来告げる七つ笛」
 メンカルのユーベルコードによって、小型の戦闘用であり通信、索敵機能のついたガジェットが展開される。

 遅れて駆けつけた彼女にとっては情報が圧倒的に不足している。
 故に夜飛び唄うは虎鶫(セブン・ホイッスラーズ)と呼ばれるガジェットを使い、逃走するオブリビオンマシンと周辺の地形、そしてプラントの位置を把握するのだ。
「……周辺地形の把握。オブリビオンマシン……アンダーフレームだけ、か。それにしたってスピードと耐久性がおかしい」
 ガジェットから送られてくる情報の数々を電子型解析眼鏡『アルゴス』を介して理解していくメンカル。
 疾走するアンダーフレームだけのオブリビオンマシン。
 そのエネルギー源も不明であるし、明らかに質量が噛み合ってない。アスファルトに舗装された地面を脚部が踏み込む度に、目に見えるアンダーフレームの質量とあっていないのだ。

「軽くなったことでスピードがあがっているように、見せかけている……?」
 何か擬態しているのか、とメンカルは分析を続けながら、マインドミナVBAの装甲を変化させる。
 少しの障害であろうとも破壊して進むことができる形態へと移行しながら、最短ルートを弾き出す。
「ブースター、点火」
 最短でありながら先回りできるルートを滑空するように疾走するメンカルを乗せた装甲車が街中を駆け抜ける。
 いくつか疑問に思うこともあれど、中にパイロットがいることを考えれば、足止めをすることが先決であろう。

「……まあ実質人質がいるという話だし……あまり手荒な真似は出来ないな……」
 装甲車がドリフトするようにして猟兵たちによって足止めされたオブリビオンマシンへと回り込む。
「―――捕縛術式発動、遅発連動術式クロノス展開」
 地面に刻まれる捕縛用術式を組み上げ、罠としてオブリビオンマシンの進路上へと設置する。
 もしも、メンカルの分析したデータが確かであるのなら、あのアンダーフレームだけの存在となったオブリビオンマシンはおかしい。

「どれだけ計算しても、アンダーフレームだけの出力で、あれだけの速度が出せるわけがない。踏み込んだ振動、そして―――」
 他の猟兵たちの拘束を振り切って踏み出したオブリビオンマシンの脚部に絡みつく捕縛用術式。
 遅発と連動によって次々と絡みつく術式の強度はアンダーフレームだけの質量を捕らえるものではなかった。
「計算が合わない。やっぱり……強度を上げておいてよかった」
 メンカルの『アルゴス』ごしの光景が物語っている。
 あのアンダーフレームだけのオブリビオンマシン。あれは擬態であると―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
依頼した私のキャバリア、ロシナンテⅣへのRSロングレンジライフル装備は出来ていますか?
感謝を、追撃に移ります

●ハッキングで●情報収集し地理把握
●地形の利用で効率良く狙撃に適した高所を維持し●推力移動

高い機動力は素体の良さかオブリビオンマシン故でしょうが…
機能中枢が生きている以上、半壊状態での活動など同じ機械として驚くに値しません

そして完全破壊が不可能ならば、駆動部狙いがSSWの常道です

攻撃回数(機会)と引き換えに有効射程距離向上させる装備●限界突破
脚部関節や残存スラスターへ●スナイパー射撃
損傷負わせ脚を遅くします

騎士らしくとはいきませんが…移動しながらの狙撃を為してこその戦機
逃がしはしません



「RSロングレンジライフル、換装急げ!」
 それは起動実験場に納品されいていた実体弾を放つ肩部装備のロングレンジライフルであった。
 メカニックたちが忙しなく動き、その逼迫した事態を知らせている。
 彼らはトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)の量産型改造キャバリア『ロシナンテⅣ』の肩部分に装着された二つの塔の如く砲身を持つ機体の最終チェックに追われていたのだ。
 オブリビオンマシン化した最新鋭キャバリア『セラフィム・リッパー』のアンダーフレームだけとなった機体が未だプラントを目指して逃走を続けている。
 他の猟兵たちが追跡し、進路の妨害をしてくれてはいるが、このままではプラントに至られ、失ったエネルギーインゴットやオーバーフレームを再構築されかねない。

 下半身だけの状態で逃走を続けるオブリビオンマシンに対して同じ機械、ウォーマシンであるトリテレイアは驚くことはなかった。
「同じ機械として驚くに値しません……依頼した私のキャバリア、ロシナンテⅣへの装備換装は出来ていますか?」
 トリテレイアが歩みをすすめる。
 己のキャバリアであるロシナンテの威容は、自身と同じ白と紫のカラーリングの騎士型である。
 唯一トリテレイア自身との相違点を見つけるのであれば、それは長大なる砲身を持つロングレンジライフルであろう。
 すでにメカニックたちによって最終調整と確認が行われていた。
「感謝を。追撃に移ります」
 トリテレイアはキャバリアのコクピットに乗り込み、接続される。周辺状況は把握済みである。

 起動実験場から踏み出し、狙撃に適した高所を確保する。
 ポジショニングはまずまずと言ったところであろう。
「なるほど……高い機動力は素体の良さかオブリビオンマシンゆえでしょうが……半壊状態での活動力はいささか不似合い……」
 キャバリア越しに送られてくる情報の全てをチェックし、気温湿度、風量や風向きを全て変動するデータとして捉え続けるトリテレイアの電脳が告げる。

 ロングレンジライフルの砲身が垂直から地面と平行に降ろされる。
「完全破壊は、コクピットにいるパイロットの安全を脅かします。故に駆動部狙いがスペースシップワールドの常道です」
 ロシナンテⅣがロングレンジライフルの発射形態へと移行する。
 姿勢を制御し、アンカーが地面に打ち込まれる。
 電子と鋼の武芸百般・設定変更運用(システム・マルチウェポンマスタリー・イレギュラー)などトリテレイアにとってはあまりにも造作のないことだ。

「騎士らしい武装ではないどころか、メーカーの保証外使用……致し方ありません」
 本来の己の戦い方、騎士としての戦法としては邪道も邪道である。
 だが、そうも言っていられないのが猟兵としての戦いだ。人命がかかっている以上、己の信条は二の次にしなければならない。
 次々と機体の設定が組み替えられていく。
 砲身が伸び、その命中精度を高める。実体弾を放つが故に、トリテレイアとオブリビオンマシンを一直線で結ぶ空間の情報は必須なのだ。
「装填完了……騎士らしくとはいきませんが……」
 トリガーを引く。
 放たれた実体弾が一直線に放たれ、音速を超えた証のように空気の層を突き破ってオブリビオンマシンの脚部へと飛来する。
 放たれた弾丸が過たずオブリビオンマシンの片足を貫く。駆動部を損壊させ、足を遅くすることが目的であった。

 だが、次の瞬間、トリテレイアはキャバリアを固定していたアンカーをパージし、残ったスラスターを噴かせ直進する。
「……! 手応えがない、ですね……そう、まるで装甲だけが砕けたような、確かに私は駆動系を狙い、貫いたはず」
 モニターに映る映像もそのとおりだ。
 だが、それでもおかしい。機械らしからぬ直感がトリテレイアの電脳に走り抜ける。
 アンダーフレームだけであの機動性。
 最初は確かに素体となった『セラフィム・リッパー』の性能の高さ故であろうと判断していた。
 だが、今まさにトリテレイアが放った弾丸。
 その手応えが彼に直感という機械らしからぬ感覚を齎していた。
 本当に自分が狙ったのは駆動部であったのか。重装甲でもない機動性の高いキャバリアであった『セラフィム・リッパー』。

「あの手応えは、『セラフィム・リッパー』のものではありませんね……オブリビオンマシン、一癖、いえ……二癖もある相手ということですか!」
 トリテレイアはキャバリアでもって街中を疾駆する。
 己の感覚が確かであるのならば、あのオブリビオンマシンはすでに『セラフィム・リッパー』などではないのかもしれない―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
あの状態でも動けるとは。甘く見ましたか……!

キャバリアは不要です。
鳥の形をした「氷晶ゴーレム」を作成、乗って【ブリザード・マニューバ・ブースト】の低空飛行でオブリビオンマシンを追います。

市街では最高速度は出せませんが、それでも速さはこちらが上、いずれは追いつけるでしょうが……この銃だけでは僅かな足止めにしかならないことは分かっている。ならば……!

止められなかった場合、プラント付近でオブリビオンマシンと再度戦闘になるでしょう。
オブリビオンマシンの向かう先のプラントに先回りし、プラントの近くにいる人たちにオブリビオンマシンが来ていることを伝え避難してもらいましょう。



 猟兵の乗るキャバリアから放たれた弾丸が『セラフィム・リッパー』の下半身……つまりはアンダーフレームだけとなったオブリビオンマシンの脚部を穿つ。
 だが、それはまるで装甲だけを破壊したかのようであり、内部フレームにまでダメージを与える事ができていないようであった。
 上半身であるオーバーフレームはすでに破壊されているというのに、あの異様なる俊敏性は猟兵たちにとっても以外であり、予想外の展開であった。

 すでに起動実験場から強奪された最新型キャバリアの設計図を持って生産施設プラントへと駆け込もうとするオブリビオンマシンは、猟兵達によってかろうじて足止めされている。
「あの状態でも動けるとは。甘く見ましたか……!」
 鳥の形をした氷晶ゴーレムの背に乗ってセルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は暴走衛星『殲禍炎剣』に感知されぬ低空飛行でオブリビオンマシンを追う。
『グリプ5』の市街地をでは最高速度は出せないが、それでもセルマの駆る鳥形の氷晶ゴーレムの速度はオブリビオンマシンよりもは速い。
 さらに猟兵たちの妨害も重なれば、追いつけないことはない。
「……この銃だけでは僅かな足止めにしかならないことは分かっている。ならば……!」

 セルマは氷晶ゴーレムと共にユーベルコードの輝きに包まれ、オブリビオンマシンの周囲を凄まじい速度で旋回しながら氷の弾丸を怒涛の勢いで連射し続ける。
 それは、ブリザード・マニューバ・ブーストとでも言うべき凄まじき射撃戦法であった。
 彼女の持つマスケット銃『フィンブルヴェト』の砲身が凍てつくほどの連射速度でもって嵐の如き氷の弾丸の乱舞はオブリビオンマシンの装甲を抜くことはできなかったが、その足場を凍結させることはできる。
「やはり、狙いはプラント……! プラントに避難勧告は出ているのでしょうが」
 だが、その周辺はどうなるだろうか。
 未だ逃げ遅れている者もいるかもしれない。

 オブリビオンマシンの周囲を飛び回り、氷の弾丸を打ち込めるだけ打ち込んでセルマは氷晶ゴーレムと共にプラント周辺へと急ぐ。
 プラントを見下ろせば、その職員たちの姿は見えない。
 すでに猟兵たちが足止めをしている間に避難を終えているのだろう。だが、それでも、もしも。
「もしも、止められなかった場合は、周辺が戦いの場になるかもしれない……」
 それはセルマにとって最も危惧すべきことであった。
 プラント事態に被害が出ることも、もちろん避けなければならないことだ。だが、それ以上に人的被害があってはならない。

 あのオブリビオンマシンが止められなかった場合の戦いのことを考えれば、周辺の住人たちにも遠ざかることを勧めなければならない。
「常に最悪を回避することを考えなければ―――」
 セルマは飛翔する氷晶ゴーレムと共にプラント周辺の人々に避難を呼びかけ続ける。

 そうした地道な行動もあってプラント周辺の人々は避難を完了する。
 これで最悪の事態になっても戦闘の余波で人命が損なわれることはないだろう。こうした行動もまた猟兵に求められることだろう。
 そんなセルマの背後―――プラント付近まで到達したオブリビオンマシンの姿があった。
 その姿を見て、セルマは己の悪い予感が、最悪を想定した正しさを知る。

「正しかったとしても、間違っていて欲しかったと思うのは……求め過ぎでしょうか」
 セルマは氷晶ゴーレムの背に再び乗ってオブリビオンマシンへと立ち向かう。
 彼女は見た。
 氷の弾丸に寄って凍結するオブリビオンマシンの姿を。
 本来ないはずのオーバーフレーム、上半身に凍結による霜が降りているのを見てしまった。
 あれがもしも、本来のオブリビオンマシンとしての姿であるのならば。
「最新鋭キャバリアが次々とオブリビオンマシンであったという事件が乱発する理由がわかったような気がします」
 オブリビオンマシンは猟兵にしか知覚できない。
 ならば、オブリビオンマシンはどうやって最新鋭キャバリアと『成った』のか。

 その答えが、セルマの眼前に現れようとしていた―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
へえ、あの格好で結構動くんだ
ウケる
結構可愛い感じじゃない?
なんか鳥類みたいな感じで
まあ換装しやすいから、整備性も良いんだろうなアレ


ふ、徒歩で来た
まあその辺でバイクでもパクって追いかけるか…
へいタクシー!

敵機の現在地と周囲の地図を『情報収集』して最短経路で移動
目的地がプラントなんだから、まあある程度は経路は予測出来るね
先回りしてちょいっと時間でも稼ごうか

大きな建物のある辺りで待伏せしよう
こっちに突っ込んで来たら、タイミングを合わせて『天候操作』で風を操作
強いビル風を側面に叩き込む形でバランスを崩させる
崩している間に近付いて『メカニック』技術を活かして、機体のバランサーを狂わせよう

アドリブ等歓迎



「へえ、あの格好で結構動くんだ。ウケる」
 そう呟いたのは、月夜・玲(頂の探究者・f01605)だった。
 メカニックにして、メカマニア&サブカルマニアである彼女にとって、オブリビオンマシンのアンダーフレームとコクピットだけの状態でも走り抜ける姿はわりかし愛嬌の在るものに映っていたのかも知れない。
「結構可愛い感じじゃない? なんか鳥類みたいな感じで」
 見方によっては確かにダチョウのたぐいのように見えなくもないが、どうしても事前に人型の姿を見ているからか、そこまで発想できる者は多くはなかった。
 生理的嫌悪感の方が先立つのだろうか、と玲は小首をかしげる。

 それ以前にメカニックとしての彼女の洞察力が光る。
「まあ乾燥しやすいから、整備性も良いんだろうなアレ」
 クロムキャバリアにおいて戦争の主戦力と言えばキャバリアである。
 その実用性、汎用性、どれを考えてもオーバーフレームとアンダーフレーム、そしてコクピットで分けたのは理にかなったものであった。
 オーバーフレームを失った機体、アンダーフレームを失った機体とがあれば、コクピットで繋げてしまえば二機の損失を一機の損失として数えることができる。
 さらに互換性まであるのだとすれば、それは確かに恐るべき平気であると言えよう。
 そんなことを考えながら玲は乗り捨てられていたバイクのエンジンを作動させる。
「ふ、徒歩で来た」
 謎のポージングを取って、あるのかわからないカメラ目線で決め顔を作っている玲であったが、例え鍵が刺さっていなくてもメカニックである彼女にかかればエンジンスタートさせることなど造作もないのだ。
「まあ、そのへんでバイクでもパクって追いかけるか……って思っていたけどちょうどよいのがあってよかったね。よかった。へいタクシー! って手を上げて無視されることがなくて……」

 ほんとよかった。
「敵の所在は、と……ああ、もうプラント間近か。これは気合を入れないと間に合わないな―――最短経路を最速で突っ走れば……うん、十分間に合うでしょ」
 玲の乗るパクッ……借りたバイクが走り出す。
 先回りしてプラント付近のビルが立ち並ぶ道にて待ち受ける。未だキャバリアを使わずにいる玲であったが、オブリビオンマシンの行動を妨害するだけならば、なんとでもできるのだ。

「さて、案外わかりやすい行動するね、君。目的地を見つけたら一直線ってやつかな?」
 魔法の鏡の機能をプログラムで再現したシステムが、彼女の周囲に渦巻く風を生み出す。メカニックである彼女にとって、異世界の技術であろうが、それでも関係ない。理屈と理論があるのであれば、再現できないものなどないのだ。
 突っ込んでくるオブリビオンマシンを眼前にしても玲はひるまない。
 強風が吹き荒れ、ビルの立ち並ぶ道を猛烈な勢いで風が駆け抜ける。それはビル風となってオブリビオンマシンの侵攻を食い止めるだけではなく、後退させる。

「ん……? なんか、風の影響受けすぎでない?」
 玲は気がつく。
 下半身だけのアンダーフレーム状態であるのならば、強風と言えど後退させることはできなかったはずだ。
 だと言うのにオブリビオンマシンは強風で大きく体勢を崩し、まるで上半身が倒れ込むのを防ぐために後退したように見えたのだ。

「ははーん? なるほどなー?」
 態勢を崩したオブリビオンマシンへと玲は駆け込み、メカニックたる技術で機体のバランサーが付いているアンダーフレームをいじくり回す。バランサーが崩れた機体は、容易に転倒する。
 だが、それはすぐに復旧されることだろう。
 転倒し土煙を上げるオブリビオンマシンを見下ろして玲は己の推測が正しかったことを確信する。

「上半身、オーバーフレーム……隠してるね、これ」
 如何なる原理であるかはわからない。
 けれど、確信があった。メカニックたる彼女の知識と経験がそれを告げている。オブリビオンマシンと化す最新鋭キャバリア。
 どうやって、オブリビオンマシンと成るのか。元からオブリビオンマシンであり、『セラフィム・リッパー』がただのガワであったのだとすれば―――。

「答えは簡単だね?」

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
女神降臨を使用し
低空を飛行してオブビリオンマシンを追跡
5m以下を飛行する分には大丈夫じゃないかな
スラスターで駆けるキャバリアも
接地時間はあまりないだろうし

それにしても色々と出鱈目だね
機械の常識が通じないのかな
その割にパイロットは必要なんだよね

ともあれ軌道実験場からデータリンクして貰い
ゴーグルに位置情報と地図を表示して追跡

近付いたらガトリングガンで牽制
膝の裏を狙って攻撃
装甲の薄そうな駆動部を狙うよ

更に近づいたら瓦礫から創った使い魔に足を石化させよう
材質を変えたら流石に動かなくなるだろうし
走行の衝撃に強度が耐えられなくなるだろうしね

パイロットを傷つけるとまずいから
コックピット周辺を狙うのは避けるよ



「小っ恥ずかしいけど、我慢我慢」
 ユーベルコード、女神降臨(ドレスアップ・ガッデス)によって飛行能力を得た佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)が戦場となった『グリプ5』の街中を飛ぶ。
 空高く飛ぶことができず、低空飛行であるのは暴走衛星『殲禍炎剣』に感知され、砲撃されるからである。
 キャバリアの全高である5m以下であれば、狙われる心配はないのだが、それでも常に高速飛翔体を狙っているというクロムキャバリアの世界の情報は不穏なものをはらんでいた。
「それにして色々と出鱈目だね。機械の常識が通じないのかな」
 アンダーフレーム、つまりは機体の下半身だけに成ってもコクピットとパイロットが無事であれば、オーバーフレームを換装して続けて戦うことができる。
 それがキャバリアの真骨頂であろう。
 整備性と互換性、それを両立した機動兵器の存在は戦争ばかりが起こるクロムキャバリアにおいて主戦力となるに相応しい力を持っている。

 だが、晶が追うオブリビオンマシンはアンダーフレームだけの状態で生産施設プラントを狙って駆け抜けている。
 その姿は異様であり、アンダーフレームだけであるというのに、あの出力はおかしいとしか言いようがない。
「その割にパイロットは必要なんだよね……」
 起動実験場からデータをリンクしているゴーグルに映る位置情報とマッピングされたルートを晶は今飛んでいる。

 すでにオブリビオンマシンはプラント付近まで到達しており、猟兵たちの妨害があればこそ、未だプラントの生産能力を使って補給が為されていない状態だ。
「でも、それでもまだあれだけ抵抗できるっておかしくないかな……?」
 猟兵たちの妨害に寄って、転倒していたオブリビオンマシンが立ち上がる。
 まるで上半身があるかのように立ち上がる様子を見て、その違和感の正体が見えぬまま晶はガトリングガンで牽制射を行う。

 駆動部を狙うのならば、背後から追跡している晶にとって膝の裏は狙いやすいものであった。
 それに駆動部であれば装甲に覆われていないし、仮に覆われていても薄いはずだ。
 放った弾丸がばらまかれ、オブリビオンマシンの膝裏へと吸い込まれる。
 だが、その関節部に吸い込まれた弾丸が弾かれる。
 まるで何か見えない壁にぶつかったような手応えを晶に伝える。
「―――!? 何だ、変な感触……! なら!」
 建物の瓦礫から創りあげた使い魔たちがオブリビオンマシンの足元へと急行し、その足を石化する。

 足まわりばかりを狙うのは、未だパイロットがコクピットに生存しているからだ。
 まるで人質みたいにしてオブリビオンマシンはコクピットを除外しない。盾にしているつもりなのだろうか。
「装甲の材質を石に変えたのなら、動かなくなるでしょ……!?」
 だが、それでも止まらない。
 確かに装甲を石化させたはずだ。だというのに石化した装甲がまるでボロボロと崩れるようにして表面が剥離するだけにとどまる。

「石化耐性……? いや、でも……」
 おかしい。
 違和感が止まらない。何故、あのオブリビオンマシンは腕がないのに転倒しても立ち上がることができたのだろうか。
 何故、エネルギーインゴットを格納していた背面ユニットを破壊されても、あれだけ動き続けることができるのか。
 数々の疑問が晶の中に渦巻いて、一つの解を導き出す。
「―――最新鋭キャバリアとオブリビオンマシンがすり替わっている、わけじゃない、のか……? キャバリアが突然オブリビオンマシンになることもない……もしかして、セラフィム・リッパー自体が、ガワ……?」

 オブリビオンマシンが駆ける。
 もしも、あのオブリビオンマシンがプラントへと向かう理由がオーバーフレームの再構築やエネルギーインゴットの補充でないのだとすれば。
「最初から『破壊』が目的なのか―――!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

レナーテ・フレンベルク
◎アドリブ等歓迎
私達の言葉は、少しでもあの少年に届いたかしら

しかし、あの状態でもまだ動けるの?
まるでアンデッドね……いえ、もっと性質が悪そうだけど

■行動
とりあえずはプラントへの到達阻止、
そして少年の救出をしなければならない以上、
あのキャバリアの動きを止めなければいけないわね

追跡の為の操縦はヒルデ達に任せるとして、
私はコクピットで【UC】に専念
周辺一帯の霊を使役して、ひたすらに束縛の【呪詛】で
その動きを妨害させるわ

街中の障害物も霊には関係ないし、この土地に存在する霊たちなら
土地勘もある筈
動きが鈍くなったところに追いついたら、直接取り押さえて
物理と呪詛の両面で捕縛したいけれど……上手くいくかしらね



 人の心はいつだって柔らかく傷つきやすい。
 形を変えやすい。だからオブリビオンマシンは簡単に人の心を歪めさせることができる。
 その思想を歪なものへと変えて破壊を齎す。
 掛け替えのないものなど何一つないのだというかのように、世界を、人の心を弄ぶ。それがオブリビオンマシンだ。
「私達の言葉は、少しでもあの少年に届いたかしら」
 レナーテ・フレンベルク(幽玄のフロイライン・f25873)はオブリビオンマシンによって心を歪められてしまったパイロットの少年フュンフに思いを馳せる。
 どれだけの寂しさが心を淀ませてしまったのだろう。
 他者を思うが故に、自分の心をないがしろにしてしまった報いが、今の少年フュンフの状態であるというのであれば、己達猟兵の言葉は彼の心に幾らかの変化を齎すことができたのかもしれない。

「―――しかし、あの状態でもまだ動けるの?」
 レナーテの乗るキャバリアのモニターに映るオブリビオンマシン化した『セラフィム・リッパー』の姿は新しく発見されたばかりの世界であるクロムキャバリアを訪れた彼女にとって驚愕なるものであった。
 下半身……アンダーフレームとコクピットだけの状態になった『セラフィム・リッパー』はそれでも駆動を止めない。
 上半身であるオーバーフレームを失ってもなお、起動実験場から最新型キャバリアのデータを強奪しプラントへと疾走するのだ。
 その姿はあまりにも滑稽であると同時に見る者によっては生理的嫌悪感を催したかもしれない。
「まるでアンデッドね……いえ、もっと性質が悪そうだけど。ヒルデ」
 短く己のボディガードであり、従者であるヒルデへと告げる。

 未だ戦いは終わらず、けれどあの少年は未だオブリビオンマシンの中に囚われている。ならば、救い出さなければならない。
 言葉少なに、けれど確かに通じ合うものがある主従。
 即座にレナーテを乗せたキャバリアがヒルデによって操縦される。
「さぁ、行きなさい……あの子を助け出すために」
 レナーテは周囲一体の霊すべてを使役する。
 その瞳がユーベルコードの輝きに煌めく。その意思はすでにまっすぐに、生産施設であるプラントを目指すオブリビオンマシンを捉えていた。

「まずはあのオブリビオンマシンの動きを止める。頼めるわね?」
 使役した霊たちが一斉に少国家『グリプ5』の街中を駆け抜ける。それは迫り来る死霊の嵐(ヴィルデ・ヤークト)のようであり、プラントへと駆けるオブリビオンマシンにとっては、猛追してくる死者の群れのようであった。
 レナーテは集中する。
 これだけの霊たちを使役するのは、それ相応の集中力を要する。ただひたすらに束縛の呪詛で霊たちがオブリビオンマシンの動きを阻害する。

 他の猟兵達もまた各々の手段でもってプラントへといたろうとするオブリビオンマシンの侵攻を食い止める。
 明らかにおかしい。
 なぜなら、オーバーフレームを失っているはずのオブリビオンマシンであるというのに、このパワーは一体どういうからくりなのだろうか。
「エネルギーインゴットだって破壊しているはずなのに……これがオブリビオンマシンの特性だとでも言うの?」
 ヒルデの操縦するキャバリアがオブリビオンマシンに組み付く。
 オーバーフレームが無いゆえに、コクピットを掴む形に為るが、レナーテの乗るキャバリアの顔面を何か見えないものが叩きつける。

「……!? 何故……? 上半身は破壊したはずなのに……」
 嫌な予感がした。
 ヒルデがキャバリアを用いて組み付いているからこそわかる事実。
 確かに猟兵達は『セラフィム・リッパー』の上半身、オーバーフレームを破壊した。猟兵の中には確かにエネルギーインゴットの格納された背面ユニットを破壊したものもいた。
 だからこそ、『セラフィム・リッパー』の稼働時間はもう残り少なく、プラントへと至ろうとしていたのだ。

 それこそ失ったオーバーフレームを再構築し、エネルギーインゴットを得て再び破壊を続けようとするのだろうと。
「……出力が落ちていない……まだ、エネルギーインゴットを隠し持っている? ヒルデ!」
 キャバリアが見えぬオーバーフレームを掴む。
 虚空に掴みかかるレナーテの乗るキャバリアの姿は、周囲にあった者たちの瞳にありえぬ光景として映ったことだろう。

 確かに、そこに何か存在している。
 破壊されたはずのオーバーフレーム。アンダーフレームだけとなっても疾走するオブリビオンマシン。
「そういうことね……オブリビオンマシン。セラフィム・リッパーがオブリビオンマシン化したのではなく―――」
 そう、破壊されたのはあくまでガワ。
 その内部に秘めた姿。
 オブリビオンマシン本来の姿が今、現れようとしていた―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ブレイジング・バジリスク』

POW   :    ブレイジング・シュート
【ライフルの集中射撃】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    バジリスク・ランページ
【右腕のライフル】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ   :    エンジンキラー
自身の【オブリビオンマシン】から【漆黒のオーラ】を放出し、戦場内全ての【エンジン】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵たちの妨害に寄ってオブリビオンマシンは終ぞプラントへと到達することはなかった。
 これでオブリビオンマシンはエネルギーインゴットを補充することもなく、オーバーフレームを産み出し機体を再構成することもない。

 ―――はずであった。

 プラントへと至る道すがら妨害にあたった猟兵たちの多くは違和感を覚えていた。
 オーバーフレームを破壊し、エネルギーインゴットを格納していたユニットも破壊したというのに、アンダーフレームだけであの俊敏性を持っているのはおかしいと。
 エネルギーぎれを起こしていつ止まってもおかしくないはずであるのに、超常の如く疾走する姿は、あまりにも出力とあっていないし、機体の質量ともあっていないと。

 その答えが今、現出する。
 ガラガラとアンダーフレームに施されていた『セラフィム・リッパー』の装甲が剥離していく。
 あるのはアンダーフレームの内部ブレームとコクピットだけ。
 だが、次の瞬間、アンダーフレームが変形し、コクピットを中心に包み込むように、その姿を人型へと変えていく。
 まるでオーバーフレームとアンダーフレームが折りたたまれていたかのように展開した姿は、一機のキャバリアの姿となる。

 そして、透明化していたオーバーフレームの外装が人型と合体することによって、その赤き装甲を持つ一体のキャバリア―――いや、赤きオブリビオンマシンへと姿を変貌させる。
 赤き異形なるオブリビオンマシンが咆哮するようにジェネレーターが唸り声を上げ、その機体の装甲の隙間から黒きオーラを解き放つ。

 それは強奪された他国の最新型キャバリアそっくりな姿であった。
 名を『ブレイジング・バジリスク』。
 形こそ他国の最新型キャバリアであったが、その性能は一線を画する。

「―――な、んで……? これ、セラフィム・リッパーじゃ、ない……」
 わずかに意識を取り戻したパイロットのフュンフが呆然とつぶやく。
 コクピットの内装までも変化し、今まで彼が乗っていた『セラフィム・リッパー』のコクピットはもう何処にもなかった。

 そう、全て偽装されていたのだ。
 オブリビオンマシンはフレームの段階からオブリビオンマシンとして存在しており、開発の初期からその姿を隠匿し続けていたのだ。
 本来開発されていたキャバリア『セラフィム・リッパー』は、破棄され、オブリビオンマシンがその場に成り代わっていた。
 故に外装だけが『セラフィム・リッパー』であり、中身はごっそりとオブリビオンマシン。

 それが最新鋭キャバリア暴走の真相であった。

 遂に真の姿を現したオブリビオンマシン。
 その目的は最初から『破壊』である。プラントを破壊し、少国家『グリプ5』を崩壊させる。
 そうやっていくつもの国々を、パイロットの心を歪めて来たのだろう。
 戦いが終わらぬ理由。
 その権化が今、猟兵たちの目の前に現れたのだった―――。
ユーリー・ザルティア
どこの世界の冬虫夏草よ。
あるいは寄生バチ!!
こ・れ・だ・か・ら新型は当てにならないッ!!

はぁはぁはぁ…。
結構酷使したけど、まだボクの機体はまだ動ける。
あとでゆっくり修理するからもう少し頑張って!!

オーバーブースト点火ッ
敵の武器は右腕。なら右回りに『空中戦』を仕掛ければ避けやすい。
最速でぶっ飛んで『威嚇射撃』で動きを封じつつ、イニティウムで装甲を『切断』して離脱。『索敵』で生体反応からコックピットの位置とパイロットのバイタルは確認してるからね。
ボクの『操縦』テクで近接攻撃のヒット&ウェイで削り切る。
同時に『ハッキング』開始パイロットのベイルアウトができればいいんだけど…。
量産型。『援護射撃』ヨロ



 赤き装甲のキャバリア―――否、オブリビオンマシン『ブレイジング・バジリスク』のジェネレーターが吼えるようにして唸りを上げる。
 その装甲の隙間から漏れ出る漆黒のオーラがオブリビオンマシンとしての禍々しさを伝える。
 すでに最新鋭キャバリア『セラフィム・リッパー』の面影は何処にもない。
 その機体に隠されていたオブリビオンマシンとしての機能全てが開放され、その姿を白日のもとに晒したのは、全てはプラント破壊のため。

「どこの世界の冬虫夏草よ。あるいは寄生バチ!!」
 ユーリー・ザルティア(レプリカントのクロムキャバリア・f29915)はあまりの真相に声を荒げた。
 その叫びはコクピット内に反響し、彼女の耳をキンキンと耳鳴りを起こすほどの怒声であった。
 オブリビオンマシンと知らずにキャバリア技師たちは、オブリビオンマシンを素体として最新鋭キャバリアを開発していたのだ。
 これを怒らずしてなんとする。
「こ・れ・だ・か・ら新型は当てにならないッ!!」
 怒りが収まらないのか、思いの丈を吐き出せるだけ吐き出そうとコクピットの中はユーリーの怒りで充満していた。

「はぁはぁはぁ……」
 アンガーコントロールというものがある。
 怒りを溜め込むよりも吐き出して、己の感情やストレスをコントロールする術だ。彼女の怒声もそれの一種であろう。
 次の瞬間、ユーリーの瞳は冷静そのものだった。
 己の乗機であるキャバリアの計器が示す値をチェックし、機体状況を把握する。かなりの酷使であったが、まだまだユーリーのキャバリアは動ける。
「よしッ! あとでゆっくり修理するからもう少し頑張って!! オーバーブースト点火ッ!」
 オーバーブースト・マキシマイザー。
 それはクロムキャバリア特有の輝きを放つ。ユーベルコードの輝きに包まれた機体が凄まじい速度で低空飛行する。

 その勢いは凄まじく、機体のフレームがきしみあげる音を聞いた。
 計器が異常を検知し、アラートがうるさいくらいコクピットの中に鳴り響く。けれど、ユーリーは止まらない。
「敵の武器が右腕―――ならさッ!」
 右回りに空中戦を仕掛ける。
 オブリビオンマシン『ブレイジング・バジリスク』の右腕に装備されたライフルの掃射が始まる。
 だが、右回りに旋回しながら飛ぶユーリーの機体を追うには機体をひねり続けなければならない。
 銃口が遠いということは、それだけ加速し続けるユーリーの機体とのラグが生まれやすい。

「当たらない! そこッ!!」
 射撃で牽制しつつ、渦を巻くように飛来したユーリーのキャバリアが持つのはオーソドックスなキャバリア用のブレード。叩きつけるようにして放たれたブレードが『ブレイジング・バジリスク』の装甲板を引き剥がすようにして切り裂く。
「索敵……! コクピットは中央、装甲板でどれだけ厚く囲おうたって、そうはさせないッ!」
 オーバーブーストの代償は機体のフレームを徐々に歪めていく。
 だが、その凄まじき速度で持って次々とコクピット周りの装甲を引き剥がしていく。

 さらに彼女の操る無人機が砲撃で砲弾の雨を降らせる。
 地面が爆ぜて爆風が吹き荒れる中をルーリーのキャバリアが舞うように飛ぶ。装甲板がこちらも剥離していく。
 オーバーブースト・マキシマイザーとは、常に全搭載武装を同時に放ち続ける。その衝撃とは想像を絶するものがある。
 だが、それを可能にするのはユーリーの卓越した技量あってのことだろう。
「バイタルは、まだ生きてる! 中からベイルアウトできないっていうんであれば……! 電装から、ハッキングして……ほらぁッ! ベイルアウトッ!」
 機体の制御、攻撃、制動、さらに無人機の操作。
 その全てを行いながらユーリーは『ブレイジング・バジリスク』のシステムにハッキングし、コクピットのベイルアウトを試みていたのだ。

 それは常人にできていい芸当ではない。
 その活躍は、彼女の正体が露見する恐れもあったが、そんなのは関係ないとばかりにユーリーは自分のできることを最大限いなすのだ。
 引き剥がした装甲板の奥からコクピットが射出される。緊急用の脱出機構が生きていたよかった。
 射出されるコクピットははるか遠く、起動実験場の方へと飛び去る。
「さあ、これで安心って言っても、ボクの機体も限界だけどねッ!」
 コクピットというパーツを失った『ブレイジング・バジリスク』が咆哮する。
 それはパイロットというパーツを奪われた怒りに震えるようでもあり、あらゆるものを破壊しようとする衝動に突き動かされる獣のように、『グリプ5』を震撼させるのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリッセ・トードゥ
【フォースマスター】継続。後でしっかりメンテナンスしてやるからもう少し頑張ってくれ。
フォースチェーンを伸ばして【武器落とし】【捕縛】で敵機の銃を絡めとる。奪い取れればいいが、無理でも照準を逸らす。
【2回攻撃】で追撃を仕掛ける。【念動力】で強化した推力で【推力移動】し、間合いを詰める。高Gは【肉体改造】した体で耐える。
フォースセイバーの刀身を更に自身の【念動力】で強化する。リミッター解除した【第六感】の超感覚とキャバリア乗りの経験で、パイロットに被害を与えず機体を無力化する箇所を判断し、【早業】の剣撃で【切断】する。
反撃はサイキックエナジーを機体に張り巡らせた【オーラ防御】で受け流す。



 正体を現したオブリビオンマシン『ブレイジング・バジリスク』。
 その姿は赤き獣のようであった。
 すでに先行した猟兵により、囚われていたパイロット、フュンフを乗せたコクピットは緊急用脱出機構によって射出されている。
 猟兵に己のパーツを奪われた怒りか、『ブレイジング・バジリスク』のジェネレーターが咆哮のように唸り声を上げる。
 出力が上がっているのがわかる。構えた右腕に装備されたライフの銃口が光り輝き、放たれる凄まじい勢いで弾丸が射出される。

 飛来する弾丸の全てをリミッターを解除したキャバリアに乗るアリッセ・トードゥ(BE-MADER・f30023)は躱しきった。
 それは嵐のような弾丸の斉射であり、それを完全に回避せしめるのは、通常のパイロットでは不可能であったことだろう。
 例え、己が騎乗するキャバリアの量産型カスタム機であったとしても不可能だった。それを可能とするのがユーベルコードである。
「後でしっかりメンテナンスしてやるから、もう少し……頑張ってくれ」
 アリッセはコクピット内でつぶやく。
 すでに『ブレイジング・バジリスク』のコクピットはなく、無人といってもいい。ならば、リミッター解除したCZ-1=カスタムによる超常的性能を抑える必要はない。

「そのライフルの斉射は鬱陶しいな……」
 アリッセの駆るキャバリアが疾駆する。
 常にライフルの照準が自分を捉えている。怒りに震えるような『ブレイジング・バジリスク』の挙動はまるで生物のようであり、冷静さを欠いているようであった。
 それもそうだろう。
 本来であれば、破壊できたであろうプラントの破壊もできず、己の機体を強化することもできなかったのだ。

 オブリビオンマシンの目的を悉く潰した猟兵を目の前にして怒りを顕にするなというのが無理な話である。
 だが、そこがアリッセにとっては付け入る隙でしかない。
 フォースチェーンが神速の如きスピードで伸ばされ、『ブレイジング・バジリスク』のライフルに絡みつく。
 奪い取れるのであればよかったが、パワーは向こうが上である。
 けれど、アリッセにとってはそれで十分だった。
 トリガーが引かれる。銃口が輝き、再び銃弾の雨が降り注がんとするが、つながったままのフォースチェーンを奮って銃口を地面へと反らす。
 弾丸の雨が地面を砕き、破片と土煙を巻き上げる。

 視界がまったく確保できない状況であった。『ブレイジング・バジリスク』がそのカメラアイを忙しなく動かし、索敵する。
「遅いッ!」
 念動力に寄って強化された推進力で突撃するアリッセのキャバリアが突進するようにフォースセイバーを振るう。
 一瞬の踏み込みは、コクピットに凄まじい重力加速度を齎す。
 機体だけでなく、アリッセ自身にも凄まじい負荷がかかる。レプリカントと言えど、意識を保つのが難しいほどの衝撃。
 だが、それでもフォースセイバーを振るう。振り下ろされた斬撃が肩の装甲を切り裂く。
「……浅い、か。だがッ!」
 振り下ろした斬撃を切り替えして横薙ぎに振るう。
 その目にも留まらぬ二連撃は『ブレイジング・バジリスク』の硬い装甲を膾切りにするように切り裂く。

「―――ッ!!!」
 咆哮するように『ブレイジング・バジリスク』のジェネレーターがうなり、ライフルの銃身をアリッセのキャバリアへと振り下ろす。
 その鉄槌の如き一撃を受ければ、キャバリアと言えど無事では済まない。
 だが、アリッセの機体は今、リミッターを解除している。
 その性能は超常の域にまで高められた機体。そして、キャバリア乗りとしての経験がアリッセの機体をさらなる次元へといざなう。

 その場でくるりとターンするようにアリッセのキャバリアが回転する。振り下ろされた銃身が肩の装甲をかすめる。火花が散る様すらゆっくりとアリッセの瞳には移っていた。
「……まだ、終わらないよな!」
 迫るコクピットへ振り抜かれようとする『ブレイジング・バジリスク』の拳。
 それもわかっていた。
 だからこそ銃身を躱したのだ。
 機体のエネルギーインゴットが燃え尽きるようにして一瞬で消費される。サイキックエナジーが己のコクピットの前面に展開され、『ブレイジング・バジリスク』の拳を受け止め、衝撃波となって吹き飛ばす。

 『ブレイジング・バジリスク』の機体があっけなく吹き飛ばされ、建物に突っ込み瓦礫の中に埋まる。
 それを荒い息を吐き出しながら、アリッセは機体の状況をチェックする。
「ふ―――……ッ、機体は、無事か。だが、エネルギーインゴットの消費が思った以上に速い……これは次の課題だな」
 リミッター解除の反動がやってくる。
 その前に、とアリッセは機体を離脱させる。窮鼠猫を噛む。どこの国のことわざだったか。
 そんなことを考えながら、赤き獣が埋まった瓦礫から飛び出すのを見下ろすのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎

最新型に変形とはな、さっきの機体よりもらしい姿だ
俺だけなら接近戦するんだが、そうもいかないか
未来のエースの為にも全力を尽くそう
黄色は感電、赤色は炎熱の災いだ
とくと味わえ

まずは【挑発】して攻撃を誘導
【戦闘知識】【見切り】【早業】を駆使して最初は回避専念するように【操縦】【運転】
それから体勢を低くして【迷彩】を使い狙撃できるようにする
【視力】で相手を視認、【スナイパー】【全力魔法】【マヒ攻撃】でUCを使用し黄色の災いで感電
後に赤色の災いで【焼却】【継続ダメージ】を与えるためにUCを再度使用する



 猟兵の乗るキャバリアによって吹き飛ばされ、建物の瓦礫に埋まったオブリビオンマシン『ブレイジング・バジリスク』が瓦礫を吹き飛ばしながら飛び出す。
 その姿はコクピットを強制的に排出されたせいでぽっかりと胴に穴があいたような姿であった。
 コクピットというパーツを猟兵に寄って奪われたオブリビオンマシンは怒りに震えるように咆哮する。エネルギーインゴットがコクピットの空いた部分を埋めるように突き出す。それはつまるところオブリビオンマシンとしての出力の強大さを物語っていた。
 右腕に装備されたライフルの銃口が輝く。
 圧倒的な出力を持つのはエネルギーインゴットの数を見ればわかる。あの乱射は猟兵たちにとって驚異であった。

「最新型に変形とはな、さっきの機体よりもらしい姿だ」
 ルイス・グリッド(生者の盾・f26203)は戦場となったプラント付近を己のキャバリア『銀の銃兵』と共に駆け抜ける。
 乱射されてしまえば、あのライフルの威力であれば生産施設であるプラントを破壊されてしまうかねない。
 だからこそ、ルイスは己にライフルの照準を集中させるべく、本来スナイパーのように運用するはずであろうキャバリアを敵の眼前に晒すのだ。

「さあ、お前の敵はこっちだ!」
 手にした銀の魔銃を掲げ、手をふるようにして挑発する。撃ち抜けるものならば、撃ってみろと言わんばかりの行動に『ブレイジング・バジリスク』が吼えるようにしてジェネレーターの出力を上げる。
 かかった、と思った瞬間ルイスとキャバリアを襲う弾丸が飛来する。
 恐るべき無差別攻撃であったが、それも挑発に寄ってルイスを狙う打とうと狙いを絞っている。
 放たれる弾丸を見切り、軽業のように機体を動かしながら弾速を見極める。
 耐性を低くし、一瞬の隙を見逃さない。

 キャバリアの魔銃が構えられ、ルイスの左眼に収められた義眼のメガリスが黄色の輝きを放つ。
 属性付与(エンチャント)によって付与されるは感電の災い。電撃の力を宿した弾丸が放たれ、『ブレイジング・バジリスク』の放った弾丸と正面で衝突し、放電する。
 光の明滅が周囲を明るく照らし、互いの視界を真っ白に染め上げる。
「俺には見えているぞ―――」
 しかし、どれだけ周囲が明るく明滅して誰も彼もの視界を塗りつぶしたのだとしても、ルイスの義眼のメガリスは正しく打ち貫くべき敵を見据えていた。

 再びメガリスが輝く。
 その光の色は赤。炎熱の災い込められし弾丸が、明滅続き照準の合わぬ『ブレイジング・バジリスク』を捕らえる。
 放たれた弾丸が、その装甲を貫き、右肩のフレームへと突き刺さる。
 貫通させないのは、その弾丸の災いがいつまでも残るようにするためだ。そう、炎熱の災い。
 それこそがルイスのメガリスにより齎された、その機体を灼き続ける呪いの如き力。
「その炎が消えるとは思わないほうがいい。俺がお前を見ている限り、その炎は消えない。お前が歪めた心、それが齎した報いは受けてもらう」

 皮肉にもオブリビオンマシン『ブレイジング・バジリスク』の機体色と同じ赤い炎が、装甲の内側からフレームを灼く。
 それはこれまでもそうであったように『平和』を願う人々の心を歪め、捻じ曲げてきた報いであるようにその機体が骸の海へと還るまで燃え盛り続けるのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

才堂・紅葉
アドリブ連携歓迎

一本取られた。やってくれたお代はきっちりと支払わないとね
厄介なのはあの右腕だが、新機能のお披露目には丁度良いわ

■方針
UCで「蒸気王」を横合いから突っ込ませ、巨体と装甲を活かして盾に
「迦楼羅王」で【忍び足】と光学【迷彩】の【メカニック】で奴の懐に忍び入ろう
懐に入って【怪力、早業】で打撃を加え、隙を見て【グラップル】でその右腕を【捕縛】し関節技での【部位破壊】を狙う
本命は「迦楼羅王」で相手の動きを封じ、本体による「対戦車杭打ち銃」で頭部狙いだ
本体と二機の連携と言うリモートモードの強みを押し付けたい

「悪いわね。あの子がいないなら、加減なんて要らないのよ」
戦化粧の笑みで引き金を引こう



『ハイペリアの紋章』が輝く。
 それは才堂・紅葉(お嬢・f08859)の意志の現れであった。彼女の手の甲に浮かび上がる謎の紋章。由来や原理はわからない。
 けれど、その紋章が輝く時、紅葉の心はオブリビオンに対する敵意と世界を救うという意志に満ちていたことだろう。
「一本取られた。やってくれたお代はきっちりと支払わないとね」
 対峙するオブリビオンマシン『ブレイジング・バジリスク』は内部フレームから炎に蒔かれている。
 すでに先行した猟兵の手によってコクピットは強制脱出機構によって排出されている。それは紅葉にとって幸いであった。

「厄介なのはあの右腕だが、新機能のお披露目には丁度いいわ」
 彼女の背後に立つ魔導蒸気ゴーレム『蒸気王』、キャバリア『迦楼羅王』が散開する。
 本来であれば紅葉が直接搭乗しなければならないのだが、蒸気王遠隔機動(リモートモード)さえも行えるのがユーベルコードの強みである。
「グォォ―――!」
 吼えるように『ブレイジング・バジリスク』のジェネレーターが唸り声をあげる。凄まじき出力を齎すのは、かの機体がオブリビオンマシン化しているからであろう。
 右腕に装備したライフルが巨大化する。
 すでに幾度も猟兵達を襲っているライフルの威力、連射速度はすでに紅葉も知るところであり、厄介であると判断するには十分な材料が整っている。

「なら、蒸気王!」
 リモートで起動する『蒸気王』が『ブレイジング・バジリスク』を横合いから殴りつける。
 重装甲と巨体であるがゆえに鈍重であるが、盾として扱うぶんには申し分ない。さらにキャバリア『迦楼羅王』が光学迷彩によって『ブレイジング・バジリスク』の懐に入り込む。
「その距離なら巨大化した砲身で狙えないでしょ―――!?」
 横合いからの奇襲、そして懐に入り込んだキャバリアに気を取られているはずの『ブレイジング・バジリスク』。だが、その憤怒に燃えるようなツインアイが捉えていたのは紅葉であった。

 そう、猟兵がオブリビオンマシンを知覚できるのと同じ様にオブリビオンマシンもまた猟兵を知覚できる。
 故にリモートで動く『蒸気王』や『迦楼羅王』には目もくれず、巨大化したライフルの銃口を紅葉に向けるのだ。
「私を直接狙ってくるか! でも、一手遅い!」
 リモートコントロールされた『蒸気王』が、その拳を振るい『ブレイジング・バジリスク』の頭部を殴りつける。
 鋼鉄の巨人同士がぶつかり、その巨体が揺らぐ。そこへキャバリア『迦楼羅王』が右腕に組み付く。
 ライフルを持った手、その手が抵抗するように関節部が駆動するも、がっちりと決められた関節技が、その関節駆動に火花を散らせる。

「もぐことはできなくっても、本命は―――こっちさ!」
 紅葉の身体が宙に飛ぶ。
 その手にあるのは対戦車杭打銃―――携帯式パイルバンカーにして、その名を“楔”。その装填された杭は超偽神兵器の欠片である。
『迦楼羅王』の拘束を振り払って『ブレイジング・バジリスク』の銃口が紅葉に向く。
 銃口が輝くが紅葉は意に介さない。
「悪いわね。あの子がいないなら、加減なんて要らないのよ」
 その言葉が示すのは、彼女の覚悟であった。
 その戦化粧、顔に引かれた赤の爪痕の如き線が『ブレイジング・バジリスク』のツインアイに映った瞬間、打ち込まれたパイルバンカーの一撃が、そのツインアイの片割れを打ち貫く。

 その一撃こそが『平和』知らぬ者の心を歪ませた代償であると言うかのように打ち込まれ、激痛が走ったかのようにオブリビオンマシン『ブレイジング・バジリスク』が咆哮する。
 その咆哮を聞きながら、紅葉は―――。

「しっかりお代は頂いたわ!」
 振り払われた『迦楼羅王』を着装し、『蒸気王』と共に戦場を駆け抜けるのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

戒道・蔵乃祐
月夜さん(f01605)と共闘

此処はプラント近郊
故に過去の争奪戦で大破、放置された数多の残骸に念動力+聞き耳で心を傾ける


未だ闘争の意志潰えぬ古兵(オールドキング)

その存在理由を、我が呼び声に応えて咆哮せよ!

再起動可能なキャバリアと邂逅次第、全壊した量産型のエネルギーインゴットを世界知識+怪力で取り外して移植
応急処置にもなりませんが

応えたのなら、戦って示して見せろ!!

🔴
空中戦+限界突破でブースターを超過駆動

残像+フェイントでFCSの追尾とブレイジングシュートを振り切る
懐に切り込み+武器受けでライフルを撥ね上げ
バジリスクの動力部にグラップル+重量攻撃でRX-Aブラストナックルの灰燼拳を叩き込む!


月夜・玲
戒道さん(f09466)と共闘

プラント近郊で戒道さんと合流
何か使えそうなの探してる?
『メカニック』知識で手伝ってあげよ
ついでに面白そうな部品はポッケナイナイっと
ジャンク漁りは良いねえ…
お代はキャバリアにちょいと乗せてくれるだけで良いよ


再起動したキャバリアの肩に乗って移動
『オーラ防御』でシールドを展開し、攻撃を逸らしながら突撃の援護
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
キャバリアから飛び降りて【神器複製】を起動
2刀×90
180の複製神器の奔流で、オブリビオンマシンを『吹き飛ばし』、バランスを崩させる
バランスを崩させたら、そのまま付近の建物に複製神器と『念動力』貼り付けちゃおう



 突き立てられたパイルバンカーの杭がオブリビオンマシン『ブレイジング・バジリスク』のツインアイの片割れを穿つ。
 その機体のダメージを反映するかのように『ブレイジング・バジリスク』は獣のような咆哮の如きジェネレーターの音を響かせる。
 それはマシンであるが故に感じることのない傷みであるはずだが、それでも猟兵が与える打撃は、それだけでオブリビオンマシンの本来ありえぬ傷みを引き起こすのかも知れない。

 その咆哮の如きジェネレーターが唸る音を聞き分けるのは、戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)だった。
 彼は今まさに大破した量産型キャバリアからエネルギーインゴットを有り余る膂力でもって引き抜き、抱えていた。
 済ます耳に届くのは、オブリビオンマシンの咆哮ばかりではない。
「此処はプラント……故に過去の争奪戦で大破、放置された数多の残骸……未だ闘争の意志潰えぬ古兵もまた在り……」
 彼は再起動可能なキャバリアを探していたのだ。
 彼はキャバリアの対して知識が豊富である方ではない。どちらかというとキャバリアの操縦は出来ても、その知識はあまりあるとは豪語できない。
 だが、この古の戦場であるプラント近郊において、彼の念動力によって張り巡らされた意志を感じる感応の力は本物である。

「おっと、何か使えそうなの探してる?」
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)が蔵乃祐の元へとやってくる。
 彼が何を探し、何を求めているのかはもうわかっていた。玲にとって戦いの残滓残るプラント近郊は言ってみれば宝の山であった。
 あちらこちらにメカニックとして興味引かれるものば山積している。蔵乃祐の為すべきことを手伝うついでというように彼が求めるものを指し示す。
「キャバリアを失ってしまいましたので……エネルギーインゴットは存分に」
「なら、あれなんかどうだい。武装は殆ど失っているみたいだけど……機体の状況から見て、まだ動くだろう」
 玲と蔵乃祐の視線の先にあったのは、擱座したようにうつ伏せに倒れ込んでいるキャバリアの機体。

「あんまり見たこと無い機体だねー……おっとついでに面白そうな部品はポッケナイイナイっと……ジャンク漁りは良いねぇ……」
 機体のチェックを行いながら玲が擱座した機体のパーツをちょいちょい拝借している。
 蔵乃祐は大破したキャバリアから引き抜いてきたエネルギーインゴットを擱座している機体のソケットの押し込み、移植していく。
「応急処置にもなりませんが……」
 エネルギーが充填されていく。
 すでに蔵乃祐はキャバリアのコクピットに乗り込んでいる。
 モニターは起動する。だが、あちこちがドット欠けのように脱落しているし、元の搭乗者が如何なる者であったのかはわからない。

 どのような経緯でこの機体が擱座していたのだろうか。
 目的を果たせずに倒れ伏すだけであったのだろうか。様々な思いが蔵乃祐の中に『流れ込んで』くるような感覚。
 それが彼の感応の力なのか、それとも別の要因であるのかわからない。機体のあちこちで玲が良さそうなパーツを組み込んでいく。
 最終チェックが終わったことを玲は伝えてくれるが、モニターが起動するだけでキャバリアは立ち上がらない。
 操縦桿を握っても、押し込んでも、動かない。
「……未だその意志が潰えぬ故に、その存在理由が在るのなら―――我が呼び声に応えて咆哮せよ!」
 モニターに浮かぶのは見慣れぬ文字。
 それは世界知識の中にもない文字。失われた言葉であろうかわからない。けれど、叩きつけた拳がモニターを割り、機体の存在意義を奮い立たせる。

 ジェネレーターが燃えるように動き出し、その機体を立ち上がらせる。
「起動したね……おっと、お代はキャバリアにちょいと乗せてくれるだけで良いよ」
 立ち上がる赤褐色の装甲のキャバリアのツインアイが鈍く輝く。
 肩に乗せた玲と共に、ぎこちなく動くキャバリア。だが、その歩みは徐々にスピードを上げていく。
「乗り心地は最悪だけど、言ってる場合じゃないよね。前面にシールド展開。突っ込んじゃって!」
 蔵乃祐が機体を加速させる。死んでいたブースターは玲が別の機体から持ってきて吶喊で取り付けてくれていた。
 火を噴くブースターがまるで最後の仕事を終えるように、それこそ蝋燭が消える瞬間燃え盛るように猛烈な勢いでオブリビオンマシン『ブレイジング・バジリスク』へと迫る。
 
 こちらの接近に気がついた『ブレイジング・バジリスク』が大型ライフルを向ける。
 ツインアイの片割れが破損し、ライフルを構える右腕の関節に障害を負いながらも銃口は蔵乃祐の駆るキャバリアを狙っていた。
 放たれる弾丸が玲の張り巡らせたシールドを破壊する。
 さらに二射目が即座に放たれ、キャバリアの片腕を吹き飛ばす。だが、それでも止まらない。止まるわけがない。
 果たされることのなかった役割を、今果たそうとするかのように赤褐色のキャバリアが大地を疾駆する。

「戒道さん、アンダーフレームが脱落する!」
 そう言って玲は肩から飛び立ち、彼女の持つ一振りの模造神器を抜き払う。
 それは再誕を歌う詩。
 今まさに為し得なかった目的を果たそうとする機体がある。その想いを、願いを、そして存在意義を遂げさせるために玲は神器複製(コード・デュプリケート)する。
 宙に浮かび上がるは、180を超える膨大な数の模造神器。
 念動力によって制御される剣の群れの如き威容が、『ブレイジング・バジリスク』を襲う。

 次々と突き刺さり、吹き飛ばし『ブレイジング・バジリスク』の機体が浮く。
「おっと、そのままそのままー……!」
 倒壊したビルの壁面に貼り付けるようにして模造神器が次々と『ブレイジング・バジリスク』の機体を貼り付ける。
「後は任せたよ……って、やっぱりダメ、かー……」
 玲の瞳に映ったのは、ブースターの噴射の光が潰え、アンダーフレームが崩落していく蔵乃祐の乗るキャバリアの姿だった。

 だめだ、保たない。
 玲のメカニックとしての知性がそう囁く。
 客観的に見てもわかるのだろう。『ブレイジング・バジリスク』の頭部が嗤った気がした。
 それほどまでに赤褐色の機体は最早死に体であった。
 どうしようもない。
 その存在理由を果たすこともできずに朽ちていくだけの存在であったのだ。今更それがどうなっても意味はないだろう。

 だが、それを諦めぬ者が一人居ることを玲は知っていた。
「―――応えたのなら、戦って示して見せろ!!」
 モニターに浮かんだ意味を介せぬ文字。
 あの文字の意味はわからなかった。
 けれど、はっきりとわかる。誰かを救うために生まれてきたのだ。戦って、己の存在意義を示すにはそうするしかなかった機体の情念とも言うべきものが、蔵乃祐を通して溢れ出る。

 それがユーベルコードの輝きであると猟兵たちは知っていただろう。
 アンダーフレームが、エネルギーインゴットが爆発する。その勢いのままに振るう拳の一撃は、確かに嗤うような『ブレイジング・バジリスク』の顔面を捉え、叩きつけるようにメインジェネレーターを担う胴体へと灰燼拳が振るわれる。
 まるでそれは鉄槌のようであった。
 放たれた拳の一撃は、大地を陥没させるほどの衝撃を持って『ブレイジング・バジリスク』を沈める。

 蔵乃祐は、崩壊していく機体のコクピットから強制的に排出される。
「……見事」
 赤褐色の機体が砕け、爆風の中に消える。
 それは古の兵が見せた最後の存在意義であった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
(引き続き改造装甲車【エンバール】に乗ったまま)
なるほど…フレーム段階から成り代わってたと……中々気付かないわけだ…
……しかし、フレームを見せたのは悪かったね……
【戦術構築:巨神狩り】によりフレームのデータを考慮に入れた最適戦術を構築…
地形を利用したり運転技術を利用しながら攻撃を回避…
…車の周囲に魔法陣を展開、そこから放たれる光の槍で攻撃をしよう…
…●エンジンキラーによる漆黒のオーラを確認したら…
…緊急用のサブ動力(魔力式)に切り替え…長くは持たないけど数分程度なら余裕だし…継戦するよ…
…止まると確信していたならその隙は見逃さない……爆破術式を込めた銃弾を集中的に撃ち込んで破壊するよ…



 叩き伏せられたオブリビオンマシン『ブレイジング・バジリスク』の機体が大地に沈み込む。
 それは猟兵が放った一撃であり、その機体強度の凄まじさを持ってしても防ぎ切れるものではなかった。
 すでに頭部のツインアイの片割れは穿たれ、装甲は傷ついた。
 何よりコクピットが強制的に排出されたのが大きいだろう。これによってパイロットの能力を引き出すことができないでいる。
 フレームの内部から灼く炎が未だくすぶり続け、それでもなお立ち上がってくるオブリビオンマシンの力の凄まじさがうかがえよう。

「なるほど……フレーム段階から成り代わっていたと……なかなか気づかないわけだ」
 改造装甲車『エンバール』の中からメンカルは、露出した『ブレイジング・バジリスク』のデータを読み解いていく。
 電子型解析眼鏡『アルゴスの眼』が読み解いていくデータの数々は、装甲の上からではわかり得ぬ情報も多々あるだろう。
 内部情報であるフレームを露出させ、メンカルの瞳に映ったのが運の尽きである。彼女の解析力を持ってすれば、オブリビオンマシンたる『ブレイジング・バジリスク』の内部状況は手に取るように分かるのだ。

 改造装甲車を走らせながら、解析したデータを読み解いていく。
 すでにフレーム内部が高温になっているのは先行した猟兵のユーベルコードによるものである。
 右腕に装備された大型ライフルも、それを支える右腕の関節部に以上が見られる。
「満身創痍出会っても、まだ動くのがキャバリアのすごいところ……だけどっ!」
 右腕部の関節が傷んでいるせいか、大地を疾走するメンカルの改造装甲車を放つライフルの弾丸が捕らえることはない。
 装甲車の周囲に魔法陣が展開され、光の槍が『ブレイジング・バジリスク』を撃つ。

「解析は、終わった―――コクピットがなければ、それを操る力量在る者がいなければ、言ってしまえば木偶と同じ。ただ大きいだけの存在。そして、大きいから有利、とは限らない……」
 装甲車のモニターに浮かび上がるのは、戦術パターンの名。それはすでに構築された戦術である。
 名を戦術構築:巨神狩り(ゴライアス・ハント)。
 この上なくぴったりな戦術パターンである。魔法陣が幾重にも展開され、光の槍が構築されていく。

「相手の足を止める。あの巨体で自由に動き回られることが、そもそもの驚異……なら」
 光の槍が降り注ぎ、『ブレイジング・バジリスク』が動きを止める。
 メンカルの乗る装甲車が駆け抜ける。だが、それを見透かすように『ブレイジング・バジリスク』の装甲から溢れる漆黒のオーラが周囲を満たしていく。

 そのオーラがまるで煙のように装甲車のエンジン部に入り込んだ瞬間、装甲車のエンジンが停止する。
 それはあまりにも唐突な出来事であった。
 あらゆるエンジンを停止させる漆黒のオーラ。装甲車が徐々にスピードを落としていく。これが狙いであったのだ。
『ブレイジング・バジリスク』の頭部が嗤ったような気がした。
 ライフルの銃口が向けられる。

「……止まると確信していたなら、その隙は見逃さない」
 装甲車のモニターに火が灯る。
 それはメインのエンジンが停止した時、始動する緊急用のサブ動力が点火したことを示していた。
 そう、何も動力は内燃機関でなければならないということはない。
 このときのために溜め込んだ魔力が装甲車を再び走らせる。そこにライフルの弾丸が放たれ、大地を穿ち破片を飛ばす。
 その最中をメンカルは装甲車の窓から身を乗り出し、術式装填銃『アヌエヌエ』の銃口を『ブレイジング・バジリスク』に向ける。

「もうお前の弱点は見えている。失ったコクピット。そこを埋めるようにして充填されたエネルギーインゴット。それで無理やり機体を動かしている……装甲で入念に隠していたって無駄」
 そう、『アルゴスの眼』は全て見えている。
 放つ爆破術式の込められた弾丸が連続して放たれる。リボルバーが回転し、全ての弾丸をうちはなった瞬間、連続してコクピットであった場所を覆う装甲板が次々と弾けて吹き飛ばされていく。

 露出するエネルギーインゴット。
 そのコクピットを部分を抱えるようにして、呻くような駆動音を響かせる『ブレイジング・バジリスク』を尻目にメンカルは装甲車で走り抜けるのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
少年は脱出したし遠慮なく壊せるね

鉑帝竜を召喚
オブビリオンマシンというか
メカオブビリオンのノリだね
動力は使い魔の念力だけど

開いた胸部装甲から内部の操縦席に搭乗し
戦闘を開始

あれが悪者なのですね!
やっつけるのですよー

使い魔が移動と格闘戦
僕が兵装操作とUCと神気での防御を担当
操縦しないのに操縦席があるのは
シェイクされてミンチにならないように
頑張るのが疲れるからだよ

歩行やホバリングしつつ
噛みつき、尻尾、両肩のガトリングガンで攻撃

ライフルを被弾したら表面装甲をパージ
装甲は半分になるけど身軽になって高く跳び上がりつつ
UCで表面装甲から絶対超硬剣を生成
落下し勢い付けつつ剣を口で咥えて攻撃力5倍斬撃を叩きこむよ



「少年は脱出したし遠慮なく壊せるね」
 試製竜騎『鉑帝竜』と呼ばれる式神白金竜複製模造体に備え付けられたコクピットの中で佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は、モニターに映るオブリビオンマシン『ブレイジング・バジリスク』へと言い放った。
 すでに先行した猟兵の働きに寄ってコクピットは強制脱出装置を作動させられ、パイロットの少年の安全は確保されている。
 これでコクピット周りへの攻撃など憂慮すべき問題は解決されている。
「オブリビオンマシンというか、メカオブリビオンノノリだね……動力は使い魔の念力だけど」

 晶が同情する鉑帝竜の姿はかつて在りしオブリビオンの似姿であるが、その動力は使い魔の念力によって賄われている。
「あれが悪者なのですね! やっつけるのですよー」
 使い魔事態はとても呑気にいっているが、この鉑帝竜は動かすのも辛いが、動けば動くほどに操縦者に負担がかかる。
 なにせ人型ではなく竜型であるがゆえの構造の違いもあるのだろう。使い魔が移動と格闘戦を担当し、晶が並走の操作、そして神気による防御を担当するのだ。
 そうやって役割をわけないと機体の中でシェイクされてミンチになってしまう。それを防ぐために操縦しないのに操縦席を用意してあるのだ。
「……頑張るのが疲れるだけだけどね」

 対峙する『ブレイジング・バジリスク』が唸るようにして立ち上がる。
 すでに満身創痍である。
 フレーム内部が焼かれ続け、カメラアイの片方は穿たれている。
 右腕の装備されたライフルは健在であるが、それを支える右腕の関節部が異常をきたしている。
 さらに動力部を繋ぐ胴体なども損壊が激しい。
 だというのに、未だ『破壊』をやめぬオブリビオンマシンとして健在であるのは、その力のすさまじさを物語っているだろう。

「だからといって、諦めるわけないんだけどね!」
 ホバリングするように大地を滑走する鉑帝竜。両肩のガトリングガンが火を噴き、その赤き装甲を削る。
 だが、ライフルの一撃は『ブレイジング・バジリスク』の方が上手であろう。
 次々と放たれる弾丸は狙いが甘くなっているといっても、鉑帝竜の装甲を一枚、一枚と吹き飛ばしていく。
 それだけの威力があるのだ。
「敵の一撃が重い―――……!」

 けれど、構ってはいられない。装甲をパージし、その機体重量を軽減し鉑帝竜は高く舞い上がる。
「さぁて、でかいの一発いってみようか」
 鉑帝竜に装備されたガトリングガンやしっぽ、装甲などを分解し、ユーベルコードの輝きに身体が満ちる。
 それは兵装創造(オルタナティブ・ウェポン)とも言うべき力であった。

 ユーベルコードの輝きと共に鉑帝竜の口元に加えられたのは超硬装甲によって生み出された、絶対超硬剣の一振り。
 それは空へと飛び上がり、暴走衛星『殲禍炎剣』に感知されるギリギリからの落下の勢いをつけた斬撃であった。
「その重装甲……此処で削ぎ落とさせてもらおうよ!」
 放たれた斬撃は如何なるものをも切り裂く一撃。
 コクピットを排出され、ぽっかりと空いた穴を充填するエネルギーインゴットを護るように左腕が盾のように超硬剣へと突き出される。

 だが、それはあまりにも失策であったと言う他無い。
 まるでバターに刃を入れるが如くなめらかに超硬剣が『ブレイジング・バジリスク』の左腕を切り裂く。
 大地に着地した鉑帝竜。
 その背後で左腕が爆発し、吹き飛ばされる『ブレイジング・バジリスク』の姿が、その一撃の凄まじさを物語っていた―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
フュンフ様の安全は確保されたようですね
先陣を切った方に感謝しなければ…

フレームからの再構成は驚きましたが…
これ以上の跳梁、許しはしません

先のスナイパーライフルをパージ
得物(銃器性能)の差とプラント等をかばい周辺被害防ぐ為接近戦敢行

●瞬間思考力と自機●ハッキングによる直結●操縦で実現する狙い絞らせぬ細やかな足捌きで接近
●盾受けで防御しつつスラスタの●推力移動で一気に間合い詰め

そのライフルは周辺への被害も含め脅威、ですので…

UC使用

剣で●武器落とし奪取

(この攻防の後フレームから構成する可能性もありますが)
こちらで使わせていただきます

●乱れ撃ちスナイパー射撃で剥き出しの内部やエネルギーインゴット破壊



 オブリビオンマシン『ブレイジング・バジリスク』の左腕が爆発する。
 猟兵の放った一撃は確かにオブリビオンマシンの驚異を濯ぎつつあった。だが、それでも機械であるがゆえにオブリビオンマシンは腕を失ったとしても戦い続ける。
 右腕すらも関節部に異常があるのか、大型ライフルを支えきれていない。照準がそれだけ甘くなっているのだが……。

「フュンフ様の安全は確保されたようですね。先陣を切った方に感謝しなければ……」
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は己が駆る乗機であるキャバリア『ロシナンテⅣ』のコクピットに接続されたまま、ツインアイが捕らえるオブリビオンマシンの状況に目をみはる。
 コクピットの在った場所にはエネルギーインゴットが充填されており、それを隠していた装甲は猟兵達によって引き剥がされている。
「フレームからの再構成は驚きましたが……これ以上の跳梁、赦しはしません」
 ロングレンジライフルを肩部からパージする。

 今、この場において優先されるべきものはプラントである。
 オブリビオンマシン『ブレイジング・バジリスク』の得物である大型ライフルの乱射によって生産施設であるプラントを破壊されては元も子もない。
 むしろ、オブリビオンマシンの目的が『破壊』である以上、トリテレイアの領分である狙撃は、あまりにもリスキーだった。
 リスクと己のアドバンテージを秤にかけた結果、トリテレイアはロングレンジライフルを捨てた。

 駆け出し、接近戦を敢行する。
 それはオブリビオンマシンにとって有利な状況が続く。『ブレイジング・バジリスク』に接近しようとすれば大型ライフルの弾丸が降り注ぐ。
 それだけ装甲が分厚ければ肉薄することは苦にならなかったことだろう。だが、トリテレイアの駆るキャバリアは重装甲ではない。
「ですが、やってみせましょう!」
 スラスターを噴かせ、大盾を構えながら突貫するキャバリア。
 その白の機体に降り注ぐ『ブレイジング・バジリスク』の弾丸の雨は次々と大盾をうがっていく。
 重質量大型シールドであったとしても、『ブレイジング・バジリスク』の放つ弾丸を止めることはできない。
 ひび割れ、砕けていく大盾。

「それでいいのです。その銃弾は全て私が引き受けましょう」
 そう、プラントに弾丸が放たれなければいい。こちらの敗北条件は決まっている。ならば、己の機体に銃撃が集中することこそ、トリテレイアは歓迎していた。
 推進力を持って間合いを詰める。
 破損した大盾を投げ放つが、それすらも一瞬で弾丸の前に砕け散る。

 その破片の雨の中、装甲がひしゃげるほどに肉薄するトリテレイアのキャバリア。
 振りかぶった剣が『ブレイジング・バジリスク』のライフルを叩き落とそうと振り下ろされる。
 それはトリテレイアの狙いであった。
 けれど、その狙いは『ブレイジング・バジリスク』に読まれていた。
「―――っ! こちらの動きを読んだ……! いえ、誘い込まれましたか!」
 そう、こちらの敗北条件はプラントの破壊。
 ならば、その危険性があがるライフルを破壊、もしくは叩き落とそうとするのは猟兵としては当たり前のことであったかもしれない。
 けれど、それは同時に攻撃の動線がわかりやすくなるということであった。
 逆にライフルの銃身によって剣を跳ね上げさせられ、キャバリアの手の内から剣が吹き飛ぶ。

 オブリビオンマシン『ブレイジング・バジリスク』の頭部、ツインアイの片割れが破壊されたマスクが嗤うような気がした。
 そうするであろうと、読み切った顔。
 猟兵とはそういう生き物であると理解している顔。

「なるほど―――手癖の悪さはご容赦を」
 トリテレイアのキャバリアの手首が回転する。それはライフルの銃身を掴み、まるで合気道のようにライフルを奪い去る。
 くるりとライフルが一回転した次の瞬間、そのライフルはトリテレイアの手の内にあった。
 それこそが銀河帝国所属ウォーマシン・臨時武装調達法(システム・マルチウェポンマスタリー・スティール)である。

 戦いとは常に刻一刻と戦況が変化していくものである。
 常に万全のコンディションで挑めるものばかりではない。ならば、使えなくなった武器を廃棄し、使える武器を戦場から掴み上げることは日常茶飯事であり、当たり前のことだ。
「この種の武装の心得もありますよ、ウォーマシンですので」
 キャバリア『ロシナンテⅣ』のマニュピレーターがライフルのグリップに接続され、セーフティを解除する。
 トリガーが譲渡され、トリテレイアは間髪入れずライフルの弾丸を打ち払う。
 それは乱れ打ち、むき出しのフレームを穿ち、着実なダメージとしてオブリビオンマシン『ブレイジング・バジリスク』を追い詰めた。

 そして、ダメ押しのようにライフルの銃身を膝で折って、放り捨てる。
「もはやフレームからの再構成も難しいでしょう―――御覚悟を」
 ライフルの弾丸に寄る爆風で吹き飛ばされる『ブレイジング・バジリスク』の仮面のようであった表情、そこに浮かんだ嗤ったような表情は最早面影もなくなっていたのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクサンドル・バジル
何か悪そうな顔になったな。まあ、俺は好きだぜ?
とは言えお前と遊ぶのも飽きてきた。
流石にもう一段階変身を残してるってことはないだろうし、終わらすか。

先程の戦闘から継続しているスルトに纏わせる黄金の色をより深くして開戦します。(戦闘モードⅠ)

超高速機動で残像を残しながら敵機の周りを囲み敵POWUCの【ライフルの集中攻撃】を許しません。
そして、そのまま360度方向から(に見える)攻撃を。
コックピットだけを残して頭部四肢を破壊していきます。

まあまあだ、スルト。褒めてやるぜ。
さて、反抗期の少年は無事かね?

アドリブ歓迎です。



 歪む。
 歪む。オブリビオンマシン『ブレイジング・バジリスク』の頭部、ツインアイの片割れは猟兵に寄って穿たれている。その隻眼となった頭部が歪むようであった。
 それは怒り狂うようでもあり、傷みに悶え苦しむようでもあった。
 だが、そのどれもが気のせいであったかも知れない。
 なぜなら『ブレイジング・バジリスク』はオブリビオンマシンである。機械であるがゆえに表情が現れることはないのだ。
「何か悪そうな顔になった。まあ、俺は好きだぜ?」
 アレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)は、それを漆黒のオブリビオンマシン『スルト』のコクピットの中から見つめ笑った。

「とは言えお前と遊ぶのも飽きてきた」
 それはあっさりとした物言いであったが、もはや宣言に等しい。漆黒のオブリビオンマシン『スルト』の主が言うのだ。
 ―――飽いた、と。
 ならば、従者である『スルト』が為すべきことは一つである。
「流石にもう位置段階変身を残しているってことはないだろうし、終わらすか」
 黄金の魔力が『スルト』の漆黒の機体を包み込む。
 戦闘モード Ⅰ(ディアボルス・ウーヌム)へと移行する機体。その機体が大地を踏みしめるたびに、地面がひび割れていく。

 それは言ってしまえば、オブリビオンマシン『ブレイジング・バジリスク』の破滅への前奏曲であった。
 注ぎ込まれる魔力の質が上がる。
 どれだけオブリビオンマシンである『スルト』が吸い上げても尽きることのない魔力。
 無尽蔵であるかのような底なしの魔力に寄って強化された『スルト』の機体が黒き閃光のように戦場を駆ける。
 残像を遺すほどの超スピードがライフルを失った『ブレイジング・バジリスク』を取り囲む。
 もしも、ライフルが残っていたのなら結果は違ったであろうか。

 答えは―――否である。

 その超スピードはまともに照準を合わさせてはくれないだろう。
 すでに他の猟兵に寄って右腕の関節部にダメージを与えられている『ブレイジング・バジリスク』はライフルの照準を合わせにくかったであろうし、安定させるための左腕すらも猟兵に斬り捨てられた。
「もう少しまともな状態であったのなら、楽しめたのかも知れないが―――」
 どちらにせよ、もう飽きたのだ。
 一瞬の煌き。
 黄金の魔力が弾けたと思った瞬間、『ブレイジング・バジリスク』を取り囲むのは全方位から迫りくる『スルト』の黒き残影。

 その全てが物理的な衝撃を齎す圧倒的な攻撃速度によって『ブレイジング・バジリスク』に残っていた四肢をしたたかに打ち据える。
 どれだけ防御を固めても、装甲がひしゃげて砕けていくのを止められない。
「まあまあだ、スルト。褒めてやるぜ」
 漆黒の機体を唸らせて『スルト』が吼える。
 放たれ続ける拳の連打は、それだけで驚異であろう。一撃一撃が重く、スルトの最後の一撃が叩き込まれた瞬間、『ブレイジング・バジリスク』の機体は、高く宙に打ち上げられていた。

 重い音と地響きを立てて『ブレイジング・バジリスク』の赤い機体はすでに装甲の殆どを失って大地に伏すしかなかった。
「さて、反抗期の少年は無事かね?」
 それを背にアレクサンドルは強制脱出装置を作動させられ、遥か遠くへと射出されたコクピットにいたパイロットの少年フュンフのことを思う。
 心が捻じ曲げられたとは言え、これだけの猟兵に囲まれても尚、あれだけの健闘を果たしたのだ。

「次会う時が楽しみだな―――」
 強くなっているだろう。
 今回のことを糧にするはずだ。そういうやつだとアレクサンドルは確信していた。戦いだけの世界、クロムキャバリア。終わらぬ戦争、けれど、それを終わらせるだけの可能性をアレクサンドルは、彼に見たのだから―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レナーテ・フレンベルク
◎アドリブ等歓迎
プラントへの到達は防いだけれど、まさか
まだ正体を隠していたなんて……
オブリビオンマシン、一筋縄ではいかない相手みたいね

■戦闘
あの少年はこれで大丈夫ね、遠慮せずに
戦えるようになるのはありがたいわ

……ッ!?
エンジンが……あのオーラのせいかしら、厄介な能力ね

だけど、今この機体に宿っているのは死霊の群れ
リビングアーマー(動く鎧)の様に、憑依した物を動かすのは死霊の得意技よ
こんな大きな物ともなると短時間だけになるだろうけど、それで十分

動けなくなるまでに敵に接近し、腕などを掴んで【捕縛】
そのままヒルデ達を機体から分離させ、拘束された敵に
【UC】で作り出した大鎌による一撃を叩き込んであげるわ



 オブリビオンマシン『ブレイジング・バジリスク』のプラントへの侵攻は防がれた。 だが、かのオブリビオンマシンは、その真なる姿、正体を隠していた。
「オブリビオンマシン、一筋縄ではいかない相手みたいね……」
 レナーテ・フレンベルク(幽玄のフロイライン・f25873)は借り受けたキャバリアのコクピットの中で、驚異的な力を発揮し、数多の猟兵たちからの攻撃に耐え続けている『ブレイジング・バジリスク』の異様なる耐久力に目を見張っていた。

 頭部のツインアイは穿たれ隻眼と化し、左腕は斬り捨てられている。
 さらに内部フレームは常に焼かれ続け、残った右腕の関節部に異常が発生している。ライフルも叩き折られ、全身の装甲板は砕かれた。
 すでに赤い機体色であったころの名残はほとんどない。
 そして、もっともレナーテが胸をなでおろしたのは、コクピット周りであった。
「あの少年はこれで大丈夫ね。遠慮せずに戦えるようになるのはありがたいわ」
 そう、先陣をきった猟兵の働きによってコクピットは強制脱出装置を作動させられ、はるか遠くへと脱出させられている。
 パイロットである少年フュンフはきっと無事に保護されていることだろう。

「後は、オブリビオンマシンを叩くだけ……」
 何も遠慮することはない。
 コクピットにパイロットが残るオブリビオンマシンは、言わばパイロットを人質にし、時に盾として有効活用するような邪悪さがある。
 だからこそ、今が千載一遇の好機なのだ。
 レナーテの操る死霊と巨骸ヒルデが憑依したキャバリアが戦場を駆ける。すでに相手は死に体である。
 その機体を砕けば、オブリビオンマシンとて最早稼働することは敵わないだろう。

「……ッ!?」
 だが、キャバリアが唐突に足を止める。
 それどころか、コクピット内の電源すらも落ちてしまうのだ。一瞬何が起こったのかわからなくなる。
 混乱するレナーテをよそにヒルデがコクピットハッチをこじ開け、その原因をレナーテの瞳に触れさせる。

 それは『ブレイジング・バジリスク』のフレームから噴出する漆黒のオーラであった。
「エンジンが止まる……あのオーラのせいかしら」
 厄介な能力をまだ持っていたものだとレナーテは思う。だが、彼女は取り乱すことはしない。キャバリアを動かすのがエンジンから得られる動力であるというのなら、今この期待に宿っているのは何か。
 そう、死霊である。
 レナーテが呼び寄せ、使役する数多の死霊たちの念力である。
 まさにリビングアーマー……動く鎧のように憑依したものを動かすのは死霊術に長けた彼女にとっては当たり前の技術である。

「不用意にエンジンを止めたのが、運の尽きね。けれど、長くは保たせられない。行くわよ、あなたたち」
 戦いしか知らぬ世界の死霊たちが願うのは何か。
 レナーテはそれを知っている。
 少年フュンフが知らず、死霊たちが願ったもの。

 そう、『平和』である。
 その『平和』にオブリビオンマシンは不要なのだ。戦いを長引かせ、終わりかけた戦争すらも御破算にしてしまうオブリビオンマシンへの怒りが死霊たちにはこもっている。
「ならば、征きましょう。あなたたちの無念を、想いを、祈りを。『平和』知らぬ子供のために」
 キャバリアが再び動き出す。
 それに動揺したのは『ブレイジング・バジリスク』であろう。漆黒のオーラによってエンジンは完全に停止させたはずだ。だというのに目の前のキャバリアは動く。それが理解できないのだ。

「わからないのね。何故動くのか。何故、止まらないのか」
 死霊宿りしキャバリアが『ブレイジング・バジリスク』へと組み付き、その動きを止める。
 死霊たちの力では、そこまでが限度だった。だが、コクピットが強制的に背後に射出される。
 そのコクピットから巨骸ヒルデに抱えられたレナーテが飛び出す。

 宙に舞う幽玄のフロイライン。

 融魂の秘術(ブラスフェミー・シュミート)によりてキャバリアに集められた死霊たちが巨骸ヒルデの腕に巨大なる大鎌を生成させる。
 その死霊たちの数は尋常ならざるものであった。形成された刃が振るわれる。
「やりなさい、ヒルデ」
 巨骸ヒルデが振るう大釜の一撃は『ブレイジング・バジリスク』の頭部と胴を泣き別れにする。
 ふきとばされた頭部が大地へ落ち、『ブレイジング・バジリスク』の機体が立ち往生するように動きを止めた。

「―――『平和』知らぬあの子のために。あの子達の未来にオブリビオンマシンは要らない。さようなら」

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
どうやって成り代わったのかは分かりませんが……分析は終わった後で専門家に任せるとしましょう。本来の姿がそれというのであれば、私はまた撃つのみです。

わざわざ対策を取らずとも蹂躙できるのでしょうし当然と言えば当然ですが、人間相手への戦闘は想定されていないようですね。
ですがこちらは魔獣にゴーレムにドラゴンに……大きな相手は慣れています。

【ワームズ・ターン】で体格差と小回りを活かし、相手の懐に飛び込み後ろに回り込むようにして攪乱しつつ、関節部を狙いフィンブルヴェトの氷の弾丸を撃ち込んでいきます。
大きな隙が出来たら先の戦闘のようにエネルギーインゴットを狙い銃剣の『串刺し』からの『零距離射撃』を。



 大鎌の一撃がオブリビオンマシン『ブレイジング・バジリスク』の頭部を跳ね飛ばす。
 その頭部は宙を舞い、重たい音を立てて大地に失墜した。
 それで決着のはずだった。
 頭部を失った者が生きていないように、オブリビオンもまた同様である。
 だが、『ブレイジング・バジリスク』は―――オブリビオン『マシン』である。頭部を失っただけでは止まらない。

 間髪入れず戦場に飛び込んだのは、セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)であった。
 最新鋭キャバリア『セラフィム・リッパー』と『ブレイジング・バジリスク』が如何にして成り代わったのかはわからない。
 分析などは終わった後で専門家がなせばいい。本来の姿が、いまの『ブレイジング・バジリスク』であるというのならば―――。
「私はまた撃つのみです」
 その小さき身体が鋼鉄の巨人、首を失ったとしても動き続けるオブリビオンマシンへと挑む。

 それは宛ら、ゴリアテに挑むダビデのようであった。
 力、体格全てにおいて鋼鉄の巨人であるキャバリア、オブリビオンマシンはセルマに勝っていただろう。
 だが、セルマは怯むことはない。
 彼女に宿っているのは単純な力だけではないのだ。
「大きいというのはそれだけで強さですが……戦いはそれだけで決まるものでもありません」
 彼女はそう教わってきていた。
 師の教えが、彼女が戦い付けた経験が、それを教えてくれる。
 魔獣にゴーレム、ドラゴン……あらゆる世界で多種多様なオブリビオンと戦ってきた経験に裏付けされた実力がセルマにはある。

「やはり対策などないのですね」
 セルマの小さな身体を『ブレイジング・バジリスク』は捕らえることができない。
 それは先行した猟兵たちの攻撃が、オブリビオンマシンの力を悉く打ち破り、破壊してきたからでもあるのだが、それを差し引いてもセルマの動きは自分よりも大きな存在と戦うに長けていた。
 ワームズターンと名付けたユーベルコードが輝く。

「わざわざ対策を取らずとも蹂躙できるのでしょうし、当然と言えば当然ですが……その怠慢、慢心が己の敗北を呼び込むのだと知りなさい」
 手にしたマスケット銃『フィンブルヴェト』から放たれる氷の弾丸が赤い装甲の剥離した『ブレイジング・バジリスク』の機体を撃つ。
 関節を、背面を、あらゆる場所を穿ち続ける氷の弾丸。
 それは全てが致命傷になりえないはずの銃撃であった。それは先んじて起こった『セラフィム・リッパー』との戦いで実証済みだ。

 だが、今は違う。
 その機体は傷つき、あらゆる箇所に裂傷の如きダメージが残っている。
 セルマの青い瞳は、その全てを認識し、過たず氷の弾丸を打ち込み続ける。雨だれの一滴が岩を穿つのと同じ様にセルマの放つ氷の弾丸も同様である。
「そう、撹乱にしかならない。けれど、一発一発が装甲の隙間に入り込み、傷を広げる。傷が広がれば、機体は大きく傾ぎ、それを取り戻そうとして―――」
 大きく揺らぐ『ブレイジング・バジリスク』の機体。その体制を取り戻そうとしてアンダーフレームの脚部がふんばろうとする。
 その膝裏の関節を回り込んだセルマの放った氷の弾丸が穿ち、さらに致命的な耐性へと引きずり込まれ、大地に倒れ込むオブリビオンマシン。

 首なしの機体は見ることは叶わなかったことだろう。
 空へと跳躍し、直上からエネルギーインゴットがむき出しになっているコクピットであった部分へと降り立つセルマの姿を。
「崩れ落ちてしまう。簡単なことです。私は私のできることをしたのみ」
 銃剣『アルマス』の氷の如き鋭き切っ先がエネルギーインゴットに突き立てられる。マスケット銃『フィンブルヴェト』のトリガーが引かれ、零距離射撃の尋常ならざる一撃がエネルギーインゴットを穿ち、その誘爆を持って全てのインゴットが弾けて、爆ぜる。

 機体を飲み込んでいく膨大なエネルギーの爆発。
 それをエルマは飛び退り躱し、爆心地の如きクレーターを大地にうがった様を見やる。
 オブリビオンマシンは跡形もなく霧散し、骸の海へと還っていく。
「―――あの少年はこれからどうするのでしょうね」
 パイロットであった少年、フュンフ。
 彼の心はオブリビオンマシンによって捻じ曲げられただけだ。立ち上がるのか、それともそのまま倒れ伏したままなのか。

 そのどちらかであるのか、もしくはまた別の道があるのかもしれない。
 セルマはフュンフが何の道を歩むのかわからない。
 だが、彼は『平和』が何であるか知らないと言った。知らないということは、これから知ることができるということだ。
『平和』知らぬのならば、知るために手を伸ばさなければならない。
 そのために背負わなければならないものがある。故に告げる。

「背負えますか、エースの宿業を―――」

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月01日


挿絵イラスト