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レイヤードミッション『ライボステ動乱』

#クロムキャバリア #レイヤードミッション

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#レイヤードミッション


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 その国に空は無かった。
 かつては無限に広がるかに思われた空には、暴走した攻撃衛星の目が光るようになり、それを恐れるあまりに、彼らは空を閉じる選択をしたのだった。
 同時期に、地中深くに未知のプラントを複数発見したのも大きかった。
 空に光る衛星の目が、いつ地上を目の敵にするか知れたものではない。
 そうして地表を隠れ蓑とした人々は、地中深くを開拓することとなった。
 いつしか国となったその地下都市を、彼らはレイヤードと名付けた。
 幾つかのプラントを中心とした複数の地中ドームには大小のいざこざこそあれ、地中全てを滅ぼすような事件は起きてはいなかった。
 ドームの一つ『ライボステ』にて一人の英雄がレイヤード全土に向けて宣戦布告するまでは。
 地中の開拓も落ち着いて、都市間での主に資源のやり取りなどで生じるトラブルは絶えず、キャバリアを用いた戦いはドームの空にも戦火の花を咲かせる。
 結局のところ、共同体はどこへ棲家を移したところで武器を手放せなかったのである。
 無数のパイロットが都市間の争いに身を投じ、花と散った。
 そんな緩やかな厭戦ムードの中、燦然と輝く英雄的なキャバリア乗りがいた。
 メルセデス・ローラン。
 レイヤードの中にその人ありと言われるほどのパイロットであり、その人望も厚く、彼女を慕って多くのパイロットが活動拠点としている『ライボステ』へと集った。
 その卓越した操縦技術もそうであるが、堅実で人道的な価値観や性格もあって、荒廃した人々の心には一本筋の通った人物として称えられることも少なくなかった。
 それだけに、メルセデスが『ライボステ』のプラントを占領し、周囲の都市部へ向けてミサイル攻撃を仕掛けたことは、恐らくレイヤードに住まう誰にとっても寝耳に水だったろう。
『我々ライボステは、これよりレイヤード全土を灰燼に帰する事を目的として行動する。地上を追われモグラのように暮らす腑抜けどもを、もはや生かしてはおけない。
 なに、心配はいらん。ここは地の底。共に潰れて土に還るだけのことだ……』
 レイヤードに広がる都市群に向けて発信されたノイズ交じりの通信が、一つのプラントを中心とした動乱であることを、高らかに宣言していた。

「……とまぁ、にわかには信じがたいお話ですが、そう言う事が起こってしまうのが我らが猟兵のお仕事ですからねー」
 グリモアベースはその一角、給仕として当然の仕事とでもいうかのように、居並ぶ猟兵たちにお茶を提供しつつ、疋田菊月は小脇に抱えた資料を改めて広げ直して説明を続ける。
 クロムキャバリアの世界には、複数の国があり、遺失技術によって成る「プラント」から生産される資材や食料に依存した文化であるという。
 基本的にプラントを移動させるということはできず、近くであれば問題ないが、広い世界に向けての広域通信は攻撃衛星によって遮断されるらしく、その全貌は杳として知れない。
 とりわけ、今回の舞台となる地中の国レイヤードに於ける動乱は、よその国に検知すらされないのではないだろうか。
 故に、滅びの危機に瀕した今回の動乱を予見したからには、猟兵として介入しないわけにはいかない。
「地中の国に幾つかあるプラントの一つを占拠したメルセデスという方は、動乱を企てるような人ではなく、むしろ人々の為に地中で生きていく術を模索し続けていた人格者であるそうです。
 恐らくは、何かあってオブリビオンと化したロボット……キャバリアというらしいですね。それに乗り込んだことで破滅的な思想に陥ってしまったのでしょう。
 どうやらクロムキャバリエでは、滅びの要因を引き起こすのはそういったオブリビオンマシンが関係しているようですね」
 彼女たちが拠点とする『ライボステ』からの供給が止まり、周囲の都市は困窮している。
 既にいくつかキャバリアを駆る者が派遣されるも、オブリビオンと化した彼女とその部下のキャバリア達の前にあえなく撃退されてしまったという。
 かくなる上は、猟兵たちの手で彼女たちを倒し、救い出すほかない。
「とはいえ、ライボステは容易な場所ではないようです。プラントを擁しているだけあって、キャバリア侵攻に備えたミサイル発射施設があるようなんですよねー。近づくにはそれを突破しなきゃいけません」
 高機動キャバリアにもしつこく付きまとうスマートミサイルが雨のように降り注ぐ地獄のような戦場であるが、必要ならば普及タイプとは言え猟兵にもキャバリアが貸与されるとのことである。
「もちろん、使い慣れないという方は、いつも通り生身で突っ切るのもアリです。
 私なら、ひとまず盾代わりに持っていきますかね。だって、ミサイルを抜けたらキャバリアの専門家の人たちが相手になるんですから、手傷は少ない方がいいですから」
 『ライボステ』を占拠するメルセデス以下の者たちは、いずれも腕利きのキャバリア乗りである。
 マシンを破壊すればその呪縛から解かれるとはいえ、それまでは躊躇なく猟兵に襲い掛かってくるだろう。
 全長5メートルものロボットを相手にどのようにして戦うか、猟兵としての腕の見せ所であろう。
「戦場は都市部からプラントを中心とした工場施設となりますが、住民の皆さんはとっくに避難しておりますので、周りは気にしなくて大丈夫ですよー」
 初の世界に挑む猟兵たち、或は自分自身を安心させるべく、菊月はいつも通りの笑みを浮かべ、鋼鉄の世界への扉を用意するのであった。


みろりじ
 どうもこんばんは。流浪の文書書き、みろりじと申します。
 新しい世界は、むせるような鬼畜難易度のような、まあなんというかロボな世界ですね。
 なんかもうどこかで見たような設定の国のお話ですが、あんまり地下であることを考えなくても大丈夫です。
 地上であっても、高く飛びすぎれば撃ち落される設定なので、こちらも高くを飛び過ぎれば天井に当たります。
 猟兵の皆さんは、特別ジョブについていなくてもキャバリアを操縦可能です。さすがにそれ専門のパイロットほどではないかもしれませんが、ユーベルコードもありますし凄腕のパイロット扱いはされる程度になるはずです。
 じゃあ専門のジョブについてる人たちはどれくらい凄いんだろうか。
 まあ細かいことはおいておいて、今回のシナリオフレームは、冒険→集団戦→ボス戦という形式を採用させていただきました。
 ミサイルを掻い潜り、メルセデスの部下たちを打ち破り、ボスのキャバリアを破壊すれば、正気を失った搭乗者達を救うことができます。
 彼らのキャバリアの情報などは、おいおい断章などで書こうと思います。
 そうしないと、情報量が多くて詰め込めないんです。この世界、書くことが多くて早くも大変です。
 とはいえ、ロボットは誰もが憧れるものと思ってます。
 皆さんと一緒に楽しいリプレイを作っていきましょう。
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第1章 冒険 『ミサイルカーニバル』

POW   :    強度に任せて強行突破する

SPD   :    トップスピードでミサイルの隙間を駆け抜ける

WIZ   :    ミサイルの被害を受けずに済む方法を考える

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ジェイミィ・ブラッディバック
クロムキャバリア…何故でしょう、妙に懐かしさを覚える世界です。それにこのキャバリア…何故私と同じ姿なんでしょうか。
ともかく、依頼ですね。この世界で戦っていれば、いずれ答えは得られるでしょうし。

キャバリアを接続。【指定UC】で一気に突破します。フィールドバリア(オーラ防御)を展開。多少の被弾はこれで防ぎます。加えて見切り+ダッシュでミサイルを回避。余裕があればミサイルを撃ち落としましょうか。

キャバリア侵攻を阻止するための設備という話ですが…果たして、「私」に通用するでしょうか?
そしてメルセデスさん、でしたか。レイヤードの英雄の力、試させてもらいましょう。待っていてくださいね。

※アドリブ・共闘歓迎


黒木・摩那
やって来ましたクロムキャバリア。初めての世界でまだ勝手がわかりませんね。
まずは飛んでくるミサイルを何とかしましょう。
ミサイルなら単身で乗り込んだ方が回避できそうです。

ドローン『マリオネット』を上空に滞空させます。
周辺を常時探査することで、ミサイルの飛来を早期に探知【情報収集】
警戒情報をスマートグラスとリンクします。

ミサイルには、【ジャミング】して狙いを逸らします。
それでも狙いを外さずに飛来してくるミサイルに対してはUC【紫電翔剣】を使って、魔法剣『緋月絢爛』で撃墜していきます。



 ごうんごうん、と重たい反響音が響く場所であった。
 キャバリアと呼ばれる、この世界ではありふれた兵器であるそれは、基本的に有人機であり、その大きさは規格がだいたい5メートル程度に統一されており、整備工場でありハンガーでもあるこの場所においては、そのサイズに合わせた設計のもとで作られており、人の背丈からすればちょっと遠近感が狂う程度には広く、あちこちで金属の塊が稼働している関係でごうんごうんうるさいのである。
 占拠されたプラントを中心とするドームの一つ『ライボステ』の付近にあるこの工場には、猟兵に貸与する予定のキャバリアを待機させてあるのだという。
「さて、やってきましたクロムキャバリア。とはいえ、はじめての世界なので勝手がわかりませんね」
 黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は物珍しそうにハンガー内で整備されるキャバリアをちらちらと見ながら思案するように顎に指を這わす。
 猟兵にも貸与されるキャバリア。確かに強力な兵器のようだが、ちょっとの講習を受けるだけでそこそこ動かせるらしい。
 まして猟兵たる素養があるならば、超人的な能力も手伝って戦闘もこなせる程度のパイロットも夢ではないとの話である。
「ふーむ、見事な設備ですね。実に手入れが行き届いて、気持ちのいい職場です」
 摩那と肩を並べてハンガー内を歩くのはジェイミィ・ブラッディバック(脱サラの傭兵・f29697)。
 ウォーマシンである彼からすれば、肩を並べるにはやや体格差があるのだが、それはまあ些細なお話である。
 その言葉遣いはとても丁寧であるが、口ぶりがどうにも社会人というかその類であることに、摩那は若干の肩透かしを食らう。
 このヒト、本当にロボなのかな。
 視察先の工場を褒めるサラリーマンじみた言葉を使うのが、そこいらで整備を受けているキャバリアを小さくしたようなウォーマシンなのだから、ギャップを感じてしまうのも無理はない。
「それにしても、クロムキャバリア……何故でしょう。妙に懐かしさを覚える世界です」
 ジェイミィの頭部に引かれた一文字、アイセンサーのバイザーがにわかに明滅する。
 かつてはスペースシップワールドの銀河帝国の機械兵士をやっていたとされるが、軍需企業のサラリーマン、そして傭兵業に転向した今もなお、古いメモリは呼び起こせないでいた。
 実のところ、自身のルーツを知る術を失っていたジェイミィが、それでも懐かしさを覚えると言う事は、もしかしたら……?
「……時間がかかるようなら、先に現場に行ってますよ。ある程度のデータリンクをしておきましょう」
 いささかボーっとするジェイミィに何か思うところがあったのか、摩那は自身の眼鏡型電脳スマートグラス『ガリレオ』を起動させて一時のデータ共有を提案する。
「これは恐縮です! ミサイル施設からの攻撃は、都市部を挟むようですから、遮蔽物は十分でしょう。しかし、十分にお気をつけて」
 データリンクを快諾し、ぺこりと頭を下げるジェイミィの仕草にほんのり苦笑を漏らしつつ、摩那は一足先にライボステへと向かう。
 さて、残されたジェイミィは、まるで導かれるかのようにハンガー内の一角に足を向けていた。
 メモリにない筈の既視感が、おぼろげな記憶のままルーチンワークの如く思わず歩みを向けた先には、鉄のシャッターが下りていた。
 小首を傾げる様にして、手近なコンソールにアクセスすると、古びた音声案内がされる。
『アクセスコード……認証。試作ユニット、凍結を解除します』
 三重に閂のような鉄の格子が外れるごとにほこりが立つ。よほど長い間、ハンガー内でロックされたままのようだった。
 やがてシャッターが開くと、見覚えのある面構えのキャバリアが固定された状態でその姿を現した。
「このキャバリア……何故私と同じ姿なんでしょうか」
 当然、キャバリアなのでジェイミィとは一回り二回りくらいは大きいサイズだろうか。
 細かな違いこそあれ、そのユニットは、ジェイミィと瓜二つといってよかった。
 なぜ、初めて訪れる筈の世界で、自分と同じ姿をしたロボットが凍結されていたのか。
 その経緯は見えてこない。そして、ウォーマシンとしてはあまりにも合理的思考ではないが、ジェイミィは思うのである。
 この機体があれば、なんだかやれそうな気がする。
「機体接続……機体の状態は良好……最終整備記録……無し。スペック上のデータ以外はほとんど残っていないようです」
 大型の鎧を着込むかのようにジェイミィがそのキャバリアと接続する。
 機体データはほとんどが失われているものの、運用に関する実戦的なものは残っていた。まるで誰かに必要なもの以外、意図的に消されたかのような雰囲気だが、まあ細かなことはより詳細に調べればわかるはずだ。
「今はともかく、依頼ですね。この世界で戦っていれば、いずれ答えは得られるでしょう」
 当初の目的は忘れず、ひとまずは思い通りに動くキャバリアに不可思議な頼もしさを覚えつつ、ハンガー内を歩き、出て、走り、跳ぶ。
 少なくとも埃をかぶるほどの凍結からの目覚めを感じさせぬ反応と機体制御の精度を確かめるように各部を稼働、そして背部スラスターが推進剤を吹き出すと、ジェイミィは陽炎を残して加速する。
『摩那さん、お待たせしました。状況をお知らせ願えますか?』
 リンクした情報からメッセージを飛ばすと、返答の代わりに『ライボステ』の現場の状況、その仔細が送られてくる。
 先行していた摩那は、がらんとした都市部の瓦礫に紛れて単身で情報を得ようと試みていた。
「ミサイルが相手なら、下手に目立つキャバリアよりも、単身で乗り込む方が回避しやすそうです」
 その為には、敵を知らねば。
 そうして身を隠しながら、摩那は索敵ドローン『マリオネット』を飛ばす。
 この世界のミサイル兵器がどの程度のものか知らないが、ステルス性能を備えたマリオネットが容易に感知されるとは思えない。多分大丈夫、多分。
 スマートグラスと同期しているドローンで周囲を偵察させ、都市部の破壊具合を改めて目の当たりにする。
 ミサイルの性能も少しだけ見えてくるというものだ。
 爆発した形跡を見れば、なるほど確かに5メートルクラスのキャバリアを想定した兵器であることがわかる。
 考えてもみれば、閉塞感のほとんどないほど広大とはいえ、ここは地下を掘り抜いた巨大なドームの一つ。
 光源を配置しているとはいえ、靄がかった空の先には武骨な天井があるはずだ。
 こんな場所で爆発物を扱うというのは慎重にならざるを得ないというわけだ。
 都市を一発で吹き飛ばすような大型なものでなく、貫通力のある小型のミサイルであるようだ。
 そしてスマートミサイルの探知方法として有力なのは、恐らく熱感知。
 キャバリアのハンガーを見学して発見したのは、多くのキャバリアはスラスターを用いて空を飛ぶ。
 スラスターを吹かせば膨大な熱量が生じる。ミサイルがそれを感知できれば、この上ない標的となる訳だ。
 コクピット周りはサーモプロテクトくらいはしているだろうが、スラスターばかりはどうしようもないだろう。
 当然、都市部を攻撃したというからには、検知温度は人間の体温も含まれている可能性がある。
 ぞっとしない。
 ある程度の調査データが集まったところで、遠くから甲高い音が聞こえてきた。
 そして、ジェイミィからのメッセージが届いたのだった。
 聞こえてきたのはおそらく、ジェイミィの駆るキャバリアのスラスター音だろう。
 それに呼応するかのように、ドローンの調査範囲から熱源が複数確認された。
 優先度の高いものとして、ジェイミィの機体はやはり目立つらしい。
 応じる代わりにミサイルの警戒情報を提供し、続いてドローンからジャミングを行う。
『ECMを使います。大丈夫だと思いますが、チャンネル固定を』
『了解です』
 ミサイルのスペックとジャミング予告を受け取ったジェイミィは、キャバリアに備わった粒子フィールドを展開しつつ、速度を上げる。
『──Neuclear Fusion Extra Booster start up.』
 【N-Ext. BOOSTER】による核融合スラスターが流星の如く光の尾を引いて加速し、手にしたパルスマシンガンで進路上のミサイルを撃ち落しながら、狭い航路を掻い潜っていく。
 高速機動にもついていくはずのミサイルは、摩那のジャミングも手伝ってその精度を著しく損ない、一瞬のうちに駆け抜けるジェイミィを見過ごしてしまう。
『突破を確認』
『了解。こっちも──』
 大きな機影がスマートグラス上でミサイル群を抜けるのを確認した摩那は、応じようとして、ふと複雑な煙の尾を引くミサイルをデータ上でなく視認する。
 どうやら、ジャミングに逸らされなかった本当に賢いミサイルが残っていたようだ。
 目標捕捉、とばかりに空気抵抗の少ない鋭利な先端をした特殊透過プラスチック越しに内蔵されたサーモセンサーと目が合ったような気がした。
「目標捕捉──したのは、そちらだけではないですよ」
 しゃらん、と抜き放った摩那の魔法剣『緋月絢爛』が抜き放つ挙動のまま手から離れると、スマートグラス越しの視線からレーザー誘導で念動力を帯びて、その切っ先をぴたりと目標であるミサイルに合わせて一直線に加速する。
 【紫電翔剣】。サイキックエネルギーが紫電の如く迸り、高速飛翔する剣がミサイルを両断すると、クルクルと軌道を変えて手元に戻ってくる。
『お怪我は?』
『少しお腹が減りました』
『それは大変だ』
 安否を確認するジェイミィに怪我がない事を知らせておきつつ、第二波が来ないうちに進行する事を打診する。
 さすがに工場エリアに近づけば迂闊にミサイルは使えない筈だ。
「メルセデスさん、でしたか。レイヤードの英雄の力、試させてもらいましょう。待っていてくださいね」
 通信を切ったジェイミィは、キャバリアの内で独り言ちる。
 オブリビオンマシンによって破滅的思想に陥ってしまったとはいえ、名のあるパイロットとして知られるその力と、対抗すべき新たなる力。
 どちらが上なのか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

テリブル・カトラリー
ミサイルは都市部に向けて撃たれていたのだったか…
焼け石に水かもしれんが、できるだけ引きつけておくか。

量産型キャバリアを借りる。始めて使うが、同じ機械だ。
規格(サイズ)は問題ない。『O.B.C』を発動し、武器改造、量産型キャバリアを巻き込んで人型機械兵器に変身。

装甲は十分、シールドもある。
動かし方も一体化した今なら問題ない…行くか。
吹き飛ばし、ブースター起動、目標施設に向けて飛翔する。

おびき寄せ、中空を飛翔、姿を隠したりはせず真っ直ぐライボステへ。
情報収集、知覚したミサイルの軌道を戦闘知識で見切り、早業で体をねじり
回避、シールドを展開しホーミングレーザーで制圧射撃、ミサイルを迎撃。



「ミサイルは都市部に向けて撃たれたのだったか……」
 レイヤードは『ライボステ』近隣のキャバリアハンガー。
 宣戦布告を打ち立てたというライボステの進行を阻止すべく形成された防衛線の、その最先端である。
 数多くのキャバリア乗りが出撃したきり戻ってこず、あるいは報告のみ戻ってくるような場所でも、凄腕の傭兵としてやってくる猟兵で貸与すべく普及タイプのキャバリアはいつでも出撃可能な準備を施されている。
 それらの機体の待機列を横断しながら、テリブル・カトラリー(女人型ウォーマシン・f04808)はマスクの奥で目を細める。
 ウォーマシンである彼女は、戦う事こそが存在理由といってもよかった。
 だが、いつの時代も犠牲になるのは多くの兵以上に、多くの市民である。
 ライボステ近隣の都市部を襲ったというミサイル兵器は、外部から侵攻してくるキャバリアを迎撃するための機構であり、近隣を攻撃するためにあるものではない。
 幸いにして、どのような場合でもミサイル被害を想定していたらしく、市民の避難は迅速であったというが、それでも人のする場所を害されるというのは、やはりいい気分ではないのだ。
 戦いは最低限でいい。そしてもし必要ならば、自分たちのような戦うためのものだけが使われればいい。
 テリブルは戦うことが存在理由ではあるが、積極的に戦いを好むというわけではない。
「少しいいか?」
「はい? なんでしょ?」
 足を止め、付近で整備を行っている者に声をかける。
 オイルまみれで真っ黒になった作業服や手袋と、あちこち傷のついたゴーグルを首にかけた整備工の男は、どことなく人懐っこい。
「こいつを借りたい。使えるだろうか?」
「すぐにでも出せますよ。ただ……こいつは、普通ですよ?」
 指し示した量産型キャバリアについて訊けば、なんともシンプルな答えが返ってくる。
 普通とはつまり、突出したものが無い。ベーシックな性能と言いたいのだろう。
 言うなれば、特徴が無いのが特徴。目立った得意科目はないが、それぞれ平均点以上は叩き出せるような、悪く言えば器用貧乏な機体であるようだ。
「同じ機械だ。問題ない。仕様もやりながら覚える」
「ふーむ、なんだか心配だなぁ。ちょっと時間を貰えりゃ、対爆装備に追加装甲でも入れますぜ。それに、姉さんのサイズだと、コクピットブロックが換装しなきゃあ……」
「それも問題ない。少し下がっていろ」
 よかれと次々に提案を投げかける整備士の手元をぐいっと押しのけて、テリブルは展開する量産型キャバリアのコクピットブロックに手を触れる。
 確かに、通常サイズの人間を想定したコクピットブロックは、やや手狭に感じる。
 フル装備のテリブルからすれば無理矢理体を押し込めば身動きがとれまい。
 だが、そんなことは問題ではない。
 ユーベルコード【O.B.C】を発動させたテリブルは、周囲の機械……この場合はキャバリアを巻き込んで融合する。
 当初の規格を無視したテリブルのボディに着こむようにして装着、人型機械と化した量産型キャバリアが、その意志の下でハンガーに立つ。
「へぇえ……どうなってんだ、こりゃあ」
「すまない。元に戻すのは難しいだろうが、できるだけ大事に使おうと思う」
「いや、なんの。中身を守ってこそのキャバリアでさぁ。お気をつけて!」
 5メートルの巨体と化したテリブルが、問題なく歩くのを見て、余計な茶々を入れるのは諦めたらしい。
 さて、手足が長く、体格も大きくなったためちょっと勝手は違うが、粒子シールド発生装置などの機構も十分に機能するらしいことは確認が取れた。
 内蔵火器、及び手足も問題なく動く。
「よし……行くか」
 重心を確かめるかのような歩みから、ハンガーを出ると、最適化された動きで跳び、スラスターに火を入れる。
 この手の武器や機械の改造、取り込みは前にもやったことがある。
 わずかな歩行でバランサーなどのアップデートは完了だ。
 キープラインを越え、まだ無事な都市部を行くと、綺麗だった街並みが徐々に瓦礫にまみれていくのがわかった。
 地底であるためか、キャバリアの装甲を破壊するためのミサイルを細々と撃ち込まれた街並みは、まるで出来の悪い穴あきチーズだ。
 明かりの落ちた瓦礫の街を、量産型キャバリアと合体したテリブルが飛ぶ。
 スラスターの出力は、さすが5メートルクラスのロボを飛ばすだけあって、凄まじく目立つ。
 その熱量を目標に、さっそくミサイルの熱源が接近するのを感知する。
「来たな。焼け石に水かもしれんが、できる限り引き付けておくか」
 まっすぐとライボステ中枢は、そのプラントのある工場施設へ向かうが、ミサイル発射施設はその進路上である。
 装甲、粒子シールドもある。
 後続の猟兵もすぐにやって来よう。そして、飛来するミサイルもおそらくは無限ではない筈だ。
 毛糸のような白煙を引いて向かってくるミサイル群を、テリブルは正面から迎える。
 なるほど確かに、建造物などよりも5メートル級のロボットを相手にするミサイルは、それほど巨大ではなく、おそらくは一発一発が建物を吹き飛ばせるような威力は無いのだろう。
 或は、頑丈さが売りの機体ならば、複数発もらっても大丈夫かもしれない。
 ではテリブルの融合した量産機ならどうか。
 量産機じゃなぁ。
 脳裏に身も蓋もない言葉が浮かぶが、そこは腕と経験でカバーだ。
 それに、一定の水準をクリアしているから量産機なのである。
 シールドとスラスターを敢えて一瞬カット。
 空中で体をひねるようにしてミサイル同士の隙間に体をねじ込ませると、くびれた機体の脇すれすれをミサイルが通り抜けていく。
 ほぼ熱感知に頼っているらしいスマートミサイルは、唐突に目標が熱源消失させたのと、目標と近すぎることによりシーカーが作動せず、空中で衝突して爆炎を上げる。
 鎧と一体となって紙一重を見切る戦術眼、鎧装騎兵としての長年の経験から繰り出す超人的な回避テクニックであった。
 だが、いつまでもそんな曲芸じみた回避が可能なわけではない。
 先は長い。
 改めてシールドを展開し、迎撃にホーミングレーザーを放射し、飽和的なミサイルの嵐を耐え抜いていく。
 量産機でどこまでやれるのか……。
 血の通わないミサイルごときで落とせるものか。
 孤独な戦いが、爆炎の中で演じられていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
中々厄介な世界だね
ともあれオブビリオンを放置はできないから
皆と協力して戦うよ

あえて生身で潜入
帝竜とだって生身でやり合ったんだから
方法はあると思うよ

複製創造で光学迷彩の外套を創り身に纏うよ
ゴーグルとイヤホンで発射施設の様子と
周辺の地形を伺い潜入経路を考えよう

他にキャバリエが突入しているなら
施設がそちらに対応している内に
目立たないように通過しよう

この世界の人からしたら
生身の敵対者ならミサイル撃つより
キャバリエか普通の銃撃で対処する方が
安上りだと考えないかな
資源に余裕がある訳でもなさそうだし

万が一爆風に巻き込まれそうな時は
ワイヤーガンで遮蔽物まで高速移動したり
神気で爆風の時間を停めて防いだりして対処


エメラ・アーヴェスピア
機械が人を乗っ取る可能性のある世界…
新たな技術と楽しみにしていたのだけれど、私も気を付けた方が良いかもしれないわね
…時間よ、猟兵の仕事を始めましょう

さて、突入は無人兵器に任せるわ…行きなさい『我が元に響くは咆哮』
その機動力と必要時に「武装群」から専用の武器を転送して迎撃する事で最小限の動きで回避、目標に向かって一直線よ
私は遠距離から『咆哮』を起点に【ハッキング】で少しでもミサイル含む敵兵器に電子的妨害を試みるわよ
今回の私はオペレーター…同僚さん達の分もまとめて引き受けるわ
ライボステにもハッキングして【情報収集】…必要な情報は今の内に集めましょう
同僚さん達への援護の為にも、ね

※アドリブ・絡み歓迎



 地底の国レイヤードは、そのいくつかあるプラントの一つにライボステは数えられる。
 遺失技術によって作られ、複製はおろか新たに増設することも、その完全な解析も不可能とされているプラントであるが、無謀にも広大な地下世界を広げるにあたり、人々の生活可能にさせているのは、ひとえにプラントから生成される資材や食料などが存在するからだ。
 何故それが地下に見つかったのかは定かではない。もともと地下に生活していた時代があったのかもしれないし、何らかの理由で地下に封じ込めたのかもしれない。
 それでも、地底へと生活の場を移したレイヤードの住民が増えつづ限り、プラントからの供給は不可欠である。
 ライボステとて例外ではない。
 その供給がストップすれば、周囲の小規模なドームは、一気に生活に困窮する。
 プラント一つ、占拠されてしまえば、レイヤードそのものが傾く。
 それがわかっていて尚、いや、それがわかっているからこそ、プラントの所有権を主張する声や強硬手段に出る者は数多くいた。
 だが、さすがに完全に供給を断ってレイヤード全てを敵に回すものは居なかった。
 それをすれば、生まれたひずみがレイヤードを圧し潰してしまいかねない。
 地底という密閉された世界だからこそ、その力関係は張り詰めていた筈だった。
 オブリビオンマシンによる今回の事件は、それゆえに迅速な解決が求められるというわけである。
「中々厄介な世界だね。
 難しいことはともかく、オブリビオンは放置できない」
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は、瓦礫の影に身を這わせ、周囲を注意深く見回す。
 この世界の深い事情はよく知らないし、深入りするつもりもそれほどない。
 余計なものを背負うのはもうこりごりだ。
 ただでさえ、邪神の体なんてものを背負わされているのである。
 たしかに可愛らしい女の子の体なのは、いくらかマシというか、だいぶ慣れてきた気も……いやいやいやいや。
 ともかく、やがて世界を滅ぼす運命にあるというオブリビオンの法則はどこの世界も変わらない。
 それを放置するなんてできないのである。
「機械が人を乗っ取る可能性のある世界……。
 新たな技術と楽しみにしていたのだけれど、私も気を付けた方が良いかもしれないわね」
 ミサイルの被害で崩れかかった何かの店舗跡に腰かけつつ、エメラ・アーヴェスピア(歩く魔導蒸気兵器庫・f03904)はその小さな胸に手を当てる。
 少女の頃に身体の大半を機械化せざるを得なかった彼女の体は、成長を止めてしまっている。
 その詳細な年齢は、あまり喋りたがらない。それはまあおいておいて。
 機械がオブリビオンと化し、搭乗する者を破滅的な思想に染め上げてしまうというこの世界のオブリビオン被害に当てはめるとするならば、サイボーグであるこの身が、いつ滅びを欲するものか。
「君や僕は大丈夫だと思うけどな……こんな言い方は、ちょっと自意識過剰かもしれないけど、僕たちは猟兵として選ばれている。
 少なくとも、怪物退治をしている間は、猟兵として必要とされている間は、彼等にはならない」
「それが傲慢でなければいいのだけど……そうね。余計な心配をさせたみたい」
 猟兵となるものは、偶然かどうか、その多くが深い業を背負っている。
 それこそ一口には語り切れぬものが、猟兵たちの今を成している。
 一つ二つ言葉を交わした程度では伺い知れようもない。
 晶の言葉が善意であっても、それが他者にとって気休めに過ぎずとも、それだけ気を回すということは、同じだけの何かを背負っているのだと。
 こんなところで立ち止まる訳にはいかない理由が、また一つできてしまったかもしれない。
 差し当たっては、今回の最初の怪物はミサイルなわけだが。
 ミサイル……ただの生身でそれに対応するのはいささか無謀ではなかろうか。
 キャバリアが貸与されるとはいえ、敢えてそれを使わぬ選択もある。
 相手がミサイル、相手がロボット。それが何するものぞ。
 なーにが巨大ロボだっていうのだ。帝竜にだって生身で対抗してきたのである。
 やり様はあるというわけだ。
 離れたどこかで複数の爆発音が空気を震わせ、あちこちの瓦礫を揺らす。
「……時間ね。こちらも猟兵の仕事を始めましょう」
 あらかじめ、簡単にだが打ち合わせしておいた、別の猟兵による正面からのミサイル攻勢が始まったのである。
 正面からとは剛毅だが、そんな強気な芸当ができるのもまた猟兵の強み。
 そして、晶とエメラは裏方に徹する道を選んだ。
「さあ、一仕事してきなさい」
 エメラのユーベルコード【我が元に響くは咆哮】によって呼び出されたのは、魔導蒸気機関によって編み上げられた機械の兵。
 恐らくはクロムキャバリアとは異なる技術体系で組み上げられた機械兵は、奇しくもキャバリアと同じ規格サイズ、約5メートル。
 通常の蒸気操機兵に更に魔導蒸気機関によるパワードスーツを換装させ、重火器を持たせたそれは、この世界のキャバリアにも引けを取るものではない。
 更に蒸気スラスターによる飛行も可能とくれば、敢えてキャバリアを用いず、その技術で対抗したくなる気分もわからなくはない。
 ただ、エメラ本人は当初の場所から動くつもりはなさそうである。
「さあ、こちらも目立つ無人兵器を用意したわ。できる限り、かく乱するから……そちらも、そちらの仕事をお願いね」
 魔導蒸気操機兵、『咆哮』を飛ばし、正面を受け持つ猟兵に向いていたミサイル攻撃の脇から移動させれば、正面に向かうミサイルよりもはるかに少ないミサイルが逸れてくる。
 機体を遠隔操作しながら、咆哮を起点に電波障害を引き起こすジャミング電波を発することで、ミサイルをかく乱する。
「お願いされちゃあな……よし、見つからないように、慎重に行こうか」
 肩をすくめる晶もまた、ユーベルコード【複製創造支援端末】によって、光学迷彩の外套を身に纏う。
 相手のミサイルが熱感知や赤外線センサーで検知しているなら、光学迷彩はあまり効果は無いかもしれないが、それでも背景に溶け込む外套を羽織っていれば少なくとも、表面温度から悟られることはあるまい。
 そして正面を受け持つ猟兵、エメラの蒸気機兵がミサイルをかく乱している今なら、誰にも見つからない筈。
 物陰から物陰へ移動しつつ、外套の奥でゴーグルとイヤホン越しに周囲の様子を伺う晶。
 大量のミサイル兵器でキャバリア侵攻を迎撃するのは機械制御によるシステムが担っているはずだが、人による手動とも考えられる。
 ミサイル設備がどのようなものか、その全貌を知る必要がある。
 そして、数多くのミサイルが発射される、まさにその瞬間を、晶のゴーグルが捉える。
「思ってたのと、ちょっと違うな……近づけるかな」
 意外、それは、地面から穴が開いてそこからミサイルが発射されていた。
 正確には、シールドのような装甲版に格子状の発射管が地中に埋まっているのだろう。
 発射設備は地面よりも下に作られていたのだ。
 地面と同じ面に埋めてしまえば、横合いから攻撃されると言う事もないわけだ。
 だが、そこに安全装置が無い筈がない。
 晶は確信していた。
 兵器にはストッパーが不可欠だ。整備する必要がある以上、必ずその近くに制御盤がある筈なのだ。
 多機能ゴーグルの機能をフルに活用して、ミサイルに発見される危険性を感じながらも観察を続ける。
 周囲から爆発音が響く。
「どこだ……あれかな!」
 地面の装甲版に縋りつくのももどかしく、ワイヤーガンで一気にその近くまで飛び寄って、制御盤と思しきコネクタに合いそうな端末を突き刺す。
「エメラさん、接触に成功。ハッキングは任せた」
『グレートだわ。情報はこっちで引き出すから、晶はそこから下がって』
 ミサイルに捕捉されるより前に、晶はそこから撤退し、端末を接続したエメラは遠隔からミサイル設備にハッキングを仕掛け、ライボステの防衛機構に電子的な攻撃を仕掛ける。
 さすがにミサイル攻撃のすべてをすぐに停止させるには至らないが、時間をかければいずれ設備は沈黙させられるかもしれない。
 無論、こちらの電子攻撃にカウンターされないとも限らないが……。
 ミサイル攻撃を妨害するのは、はるかに容易になる事だろう。
 同時に、エメラはミサイル施設を皮切りに、ライボステの情報をちゃっかり引き出しにかかるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
人々も地底都市も潰させる訳にはいきませんね。
私もお手伝い致します!
(ヒーローズアースの)自動車免許持ってますし、スマホは扱えますからロボットも大丈夫です♪
(と、根拠不明な自信と共に貸与された普及型に乗り込む…。)

最初は「あ、歩いた♪」という超初歩レベルからスタートし、後は【第六感】でコツを掴みつつ戦場に到着。
飛んでくるスマートミサイルの雨には【第六感と見切り】で軌道を読んで、走って回避行動しながら兵装の【なぎ払い】で迎撃。
機体には【オーラ防御】展開して防御力向上。
追尾するミサイルに包囲されそうになれば、UC:花嵐でミサイル迎撃。

最後は推進器を吹かせつつの【空中戦】による機敏な機動で突破します。


ユリウス・リウィウス
こんな絡繰人形は、どうにも扱いかねるな。まずは危険地帯を速やかに抜ければいいんだろう? それなら簡単な話だ。

血統覚醒してからヴァンパイアミスト。敵の攻撃が降り注ぐ前に、ルートを走破する。
爆発の衝撃波は問題ない。至近で着弾した場合に怖いのは、熱だ。蒸発させられると、さすがに人型に戻った時にダメージが来る。それを避ける意味でも、本隊が動く前に敵拠点へ入り込んでおきたいのさ。

ミサイル、だったか? それの発射場まで忍び込めればしめたもの。
発射機構を制圧するなり、電力の供給を断つなりして無力化していこう。
どうせ数があるんだろうが、一旦入り込んでしまえばこっちのもんだ。
後続に楽をさせるためにも手は抜けん。



「あっ、歩いた♪」
 レイヤードは『ライボステ』を目前とするとあるキャバリア用のハンガーのその片隅にて、大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)は簡単な講習を受けた後に貸与されたキャバリアに乗り込むと、思った以上にスムーズに動くキャバリアの足回りにはしゃいだ声を上げる。
 普及型キャバリアは、特に突出した性能ではないが、特殊な素養が無くとも乗り回せるだけの操作性を誇り、とりわけ世界に選ばれた存在である猟兵ならばその操縦は割と簡単に感じられるようであった。
 ハンガーで案内をしていた整備士も、当初は「自動車免許なら持ってます! スマホも使えますよ!」と自信満々に可愛らしい証明写真付きの免許証を見せてきたときはどうしたものかと思ったものだが、その驚異的な飲み込みの早さには驚きを隠せないようであった。
 普通の日本人の女の子に見えても、実は詩乃の正体は神。挑戦してみて、やれないことはあんまりないのである。
 ただし戦闘用にあつらえた巫女装束のまま乗り込んだコクピット内は、バイクのように跨るスタイルであったためか、スリットから思い切り腿が覗いてちょっぴり照れるところである。
 それももう、ロボットを動かす興奮で忘れつつある。
 講習を聞いた限りでは長ったらしい用語などがよくわからないところがあったものの、動かし始めてみれば意外と感覚的な操作性に順応するのも早い。まさに習うより慣れろの精神である。
 すぐさま手足のようにとまではいかぬものの、ハンガーのあちこちにぶつけつつ感覚を掴んでいくのは、長刀の修練を始めたときを思い出す。
「慣れてきましたよー♪」
 ひらひらとマニピュレータの三本指を広げて手を振る様は、既に人間的な自然さをも醸し出していた。
「うーむ……こんな絡繰り人形は、どうにも扱いかねるな」
 そんな微笑ましい様子を眺めつつ、ユリウス・リウィウス(剣の墓標・f00045)はぼりぼりと頭を掻く。
 いつでもどこでも、戦いに赴くならばだいたい甲冑姿に双剣を佩くユリウスの姿は、ハンガー内では目立つ装いではあったが、それでも金属の塊がひしめくハンガー内ではそういう武装もありか。とすぐに流されてしまう。
 それはいいのだが、ダークセイヴァー出身のユリウスからすれば、5メートルクラスの巨大なカラクリに乗り込むのは、どうにもイメージが湧かなかったらしい。
 生き方が不器用と言ってしまえばそれまでの話だが、彼にも戦場に立つ上での矜持はある。譲れないものはあるわけである。
 決して機械音痴とか、そういうわけではない筈だ。たぶん。おそらく。
 重火器の類ならわからなくはないのだが……いやまぁ、やむにやまれなくなったら、使うことも考えなくはないぞ。たぶんな。
 とにかく、今回はキャバリアを無理に使うまでもない。そう判断したユリウスは、練習にいそしむ詩乃を置いて一足お先に現場に向かうことにしたのであった。
 ミサイルの爆発に巻き込まれた都市部の一帯は、えぐられたような痕跡を無数に残す瓦礫の山であった。
 身を隠す場所は幾つもあったが、この様子では、隠れたとしても付近で爆発に巻き込まれればひとたまりもないだろう。
「確かに危険地帯だな。だが、速やかに通り抜ければいいって言うんなら、簡単な話だ」
 その身に生じる血の衝動、ダンピールの中に流れるヴァンパイアの血統を呼び起こし、その能力の一端を発揮する。
 【ヴァンパイアミスト】によって、ユリウスの体は伝承をなぞるかのようにその身を霧へと変じさせる。
 体温も人の姿をも霧と化してしまえば、ミサイルとやらも捕捉はできまい。
 有毒の霧がこの世界の絡繰り人形に通用するかどうかはともかくとして、この姿と化したからには、ミサイルのターゲットとなることは恐らくないだろう。
 ただ、霧と化したその体は、環境の変化に敏感である。
 ふいっとその身を貫いたのは、一陣のミサイル群。
 霧の塊と化したその体を煽るように貫かれても平気ではあるが、この姿では生身のまま思い切り走るようなスピードがうまく出せない。
 自然の風に乗ったりすれば別だが、自発的にスピードに乗るには生身よりも助走がたくさん必要であった。
 地底の環境はほぼ無風ではあったが、それだけにユリウスの進みは素早いとは言い難かった。
「うわわ、さっそく来ましたね」
 ユリウスを通り抜けたミサイルは、遅れて到着してきた詩乃の駆るキャバリアを狙ったものだった。
 三本指で器用に持つのは、詩乃も愛用する長柄。切っ先が高周波を纏うことにより物質を寸断するグレイブである。
 普及型キャバリアのちょっと等身の低い体格ではずいぶん長く見えるものの、肩に担いで軽快に駆ける様は、なかなか堂に入っている。
 使い慣れた武器というのはやはり身を助けるものなのか、雨のように降り注ぐスマートミサイルに捉えられた詩乃は、卓越した体捌きを再現したキャバリア運用にて、走る速度を極力落とさずに回避して見せる。
 通り抜けた先から、ミサイルが着弾と共に火柱を上げる。
「うおっ……!」
 爆風が遅れて衝撃波となってユリウスの霧の体を押し付ける。
 爆風にあおられるのは霧の体を蒸発させるためよくないのだが、それの届かない場所なら、この衝撃はかえって追い風となろう。
「ユリウスさん!?」
「心配するな。発射場所を探す。しばらく切り抜けるんだ」
「わかりました! 頑張ってみます!」
 このままでは埒が明かないため、ユリウスはミサイル発射装置を先行して探すことにした。
 ところで、霧になっているのにどうやって会話しているのかという話だが。
 詩乃は神様だから、魂で相手を見ているのである。きっとそうだ。
 その詩乃も、回避を続けるには、ミサイルの数が増えてきたため、迎撃せずにはいられなくなる。
 機体は凡庸なれど、乗っている者の反射神経は猟兵。
 半身に構えたグレイブを薙ぎ払い、飛び跳ねるように機体をねじる。
 高周波の刃がミサイルを切り裂き、ねじった機体の脇を抜けるミサイルが、詩乃本体を守る防護幕によって迎撃される。
 ところが、着地予定の足場が先立ってミサイルの着弾によって爆破されてしまう。
 おっとこれはいけない。だが、今はキャバリアに乗っているのである。
 スラスターを点火、空中に逃げて爆発をやり過ごす。
 それでもしつこくミサイルは詩乃の機体を狙って追い縋ってくる。
 キャバリアの兵装は一つではないが、残弾のあるものは後の戦いのため、できるだけ温存しておきたい。
 だが囲まれてしまえば仕方ない。詩乃はばちばちと火花を上げ始めるグレイブをあっさりと投げ放つ。
 そしてユーベルコードを発動させる。
「今より此処を桜花舞う佳景といたしましょう」
 放ったグレイブに、どこからともなく呪符が張り付き、ほどけるようにして壊れかけのグレイブが光り輝く桜の花びらとなって舞い散る。
 【花嵐】となったそれは、触れるものを浄化消滅せしめる。
 花びらにえぐり取られるかのようにして爆発すらしないミサイルの残骸が風にあおられて吹き転ぶ頃、
「見つけたぞ。こっちだ」
 風に乗るユリウスの声が詩乃を呼んだ。
 ミサイルの爆風を利用して一足先に先行したユリウスだったが、地面に埋まった装甲版からミサイルが発射されているのを見つけて、どうしたものか思案していた。
「こちらですかー!?」
 どすどすと重苦しい足音とともに、そこへ詩乃のキャバリアがやってくる。
 どうやってユリウスの位置を捕捉したと聞かれれば、詩乃は神様なので魂を見て──。
「ここなんだが、入り口がわからん。どうしたものかな」
「うーん、じゃあ、こうです!」
 霧からうっすら元の姿に戻るユリウスに説明を受けた詩乃は、一歩前に出て、キャバリアの後ろ腰にマウントしてあった使い捨てのグレネードを、ミサイル発射管に撃ち込んだ。
 猛烈な爆炎が上がり、びりびりと空気が悲鳴を上げると、そこには穴が開いていた。
「入り口ができました♪」
「うん、しめたものだな……だが、次からは一言言ってからやってくれ。うっかりしたら蒸発してたぞ」
 もうもうと立ち込める粉塵の中、思わずぼやいたユリウスは、気を取り直してミサイル施設に入り込んで、次々とミサイルを無効化していくのだった。
 これが全てではないだろうが、かなりの数のミサイルを無力化できるはずである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

テイラー・フィードラ
ははは。
こうも鋼鉄の巨人に乗り込むなど、戦場が戦場でなければもっと心地よく楽しめた物を。
しかして状況は危機なり。気は引き締めていざいかん。

支給されたキャバリアに乗り込み、飛翔は程々に等身大の己を想像しやすい様地を駆けるを主としよう。操作手順は心得てはおらぬが、我が愛馬と比べればまだやりやすいである。

さて、まずは飛来する爆発物を掻い潜れと。
ふむ、足りん。嘗ての戦場と比べれば矢玉が足りん。倍は持って来い。

持たされた巨大剣、キャバリアソードであったか。
それを時に盾とし時に振るい、進路の邪魔となるであろうミサイルを切り伏せ進まん。
爆発の衝撃もあるが、それも良き推進剤だ。
多少の負荷も無視し駆けよう。


ミフェット・マザーグース
みんなの希望の、英雄!
未来の見えない世界で、みんなが希望をもつために
ぜったい助けなきゃダメだよね

ミフェットもロボット……じゃなくて、キャバリア!
うん、キャバリアを借りてくよ
出発前にちょっとだけ、重い武器は外しておっきいスピーカーをつけて
「情報収集・コミュ力」して集めたパーツを「メカニック」でとりつけて完成!

「ハッキング」でルートを決めたら出発進行!
遅れたぶんだけ、いっぱいのブースターを「操縦」で操って飛んでくよ!
他にヒトがいたら、アドリブで合流させてもらうね

UC【楽器のオバケの演奏隊】
ミサイルの雨をオーケストラで歓迎するよ!
「歌唱」に合わせた楽器たちの衝撃波で、ドーンって爆発してもらうね!



「うむ……うむうむ……ははは! いいぞ!」
 キャバリア整備を中心とした前線のハンガー内では、運用スペースでキャバリアを駆る猟兵の一人、テイラー・フィードラ(未だ戴冠されぬ者・f23928)が、初めて騎乗するキャバリアのコクピット内で大人げなくはしゃいでいた。
 アックス&ウィザーズ出身の彼は、これまでに騎獣や馬に乗ることはあっても、鉄の巨人に乗り込む機会などなかった。
 初めて乗るものは、いつだってわくわくするものだ。
 敢えて下世話な話はせぬものの、そうでなくとも童心に帰るような気分が味わえるのである。
 自分で操作するのだから当たり前だが、動かしてみるとその挙動の素直さは、今までに乗ったどのような獣、それこそ愛馬よりも直感的かもしれない。
 逆に言えば、これには魂がない事を示しているのだろう。
 命を持たぬものであるがゆえに、いずれは鎧のような気安さで扱える時が来るのかもしれない。
「ふん、ここが戦地でなければ、もっと気楽に楽しめたものだが……まあ、訓練はこれくらいでよかろう」
 はしゃぐのもひと時、郷に入っては郷に従う。王たる者、柔軟さも必要。
 その世界で主流の兵器ならば、ひとまずは使ってみるべきと手を出してみたが、なるほどたしかに汎用性は高いようだ。
 もっと早くにこのような戦力があれば、或は……と昔のことに思いを馳せそうになったが、自重する。
 過去のことは過去のこと。変えられなかったことを今更、悔いはしない。忘れもしないが。
 今というときに変えられるものを変えていかなくてはならない。それが権力を持つ者の勤めであろう。
「武器は……やはり剣であろう。石弓も使いようだが、やはり私にはこれだ」
 キャバリアの装備をある程度決めてから、テイラーはいよいよ出発というあたりで、ハンガーの片隅が騒がしいことに気づく。
 どうやら他にも猟兵の仲間がいるらしかった。
「うーんとね、肩も背中も、武器は全部一度外してもらって……スピーカーをくっつけてほしいの!」
 レドーム型の普及型キャバリアの上に陣取って整備士を集めて改修の音頭を取っていたのは、ミフェット・マザーグース(沼の歌声・f09867)であった。
 どうやら機体の武装を取り換えているらしかったが、ちょっと装備の調達に手間取っているようだ。
「音波で攻撃するってのは用意できますが、スピーカーだけってのは」
「それって、スピーカーになる?」
「なるっちゃなりますが……なにするんすか?」
「いいのいいの!」
「うーん、いいのかなぁ……」
 武器の代わりにスピーカーをありったけくっつけてくれというミフェットの要求に、整備士たちは戸惑いながらも、てきぱきと作業を手伝いつつ人懐こい笑みを向けるミフェットにほだされて、なんだかんだで完璧な仕事をこなしてしまう。
 その間も、ブラックタールであるミフェットの体の一部はキャバリアと繋がっており、電子プログラムを介し、ライボステ突入ルートの選定を行っていた。
 電子戦機を選んだのはその辺りも加味していたのである。
「ふん、女の身支度はいつの時代も念入りなものだ。先に行っている。道を整えておくぞ」
 妻との思い出にふけりそうになるのをひとまずは置いておいて、準備に時間のかかりそうなミフェットに一声かけてから、テイラーは一足先に戦場へ向かうことにした。
 その道中、テイラーの機体にメッセージが届き、思わず眉根を寄せる。
 おぼつかない様子でメッセージを開いてみると、それはミフェットがライボステのデータにアクセスして考案した突入ルートを示した図案であった。
 末尾に添えられた『頑張ろう!』の子供らしいエールに、思わずテイラーの寄った眉の皴も緩んでしまう。
「頼りになる味方もいたものだ」
 何よりの凱歌となろう。
 孤独な戦場を駆けるはずのテイラーの胸中は、不思議なほど穏やかであった。
 機体には空を飛ぶスラスターが付いているが、テイラーは等身大の自分をイメージしやすいよう敢えて走らせる。
 スラスターを使うのは、瓦礫を飛び越える時や機体の制御のため、そして長く飛ぶ必要がある時に使う程度に留めていた。
 そうして瓦礫に埋まる都市部を進んでいると、熱源の接近アラートが鳴る。
 気の利いた事だが、それが鳴るより前にテイラーは既にそちらを向いていた。
「さて、あれを掻い潜れというのか……」
 足りんな。と、心中で独り言ちる。
 もっとひどい戦場を知っている。それに比べれば、なんと貧相な雨だろうか。
 ずるり、と背中のウェポンラックからキャバリアソードを引き抜く。
 その具合を確かめ、三本指ながらなかなかの馬力でしっかりと掴めることを確かめる。
 そして、
「ぬうん……!」
 飛来するミサイルをひとまずは一刀両断。
 そして続けざまに、地面を薙ぎ払って足元の瓦礫を弾き飛ばすと、それらが同じように飛来するミサイルにぶつかって爆炎を上げる。
 頑丈な建材があちこちに散らばっているなら、それを利用しない手はない。
 テイラーは、キャバリアに剣を担ぎ直させる余裕すら見せる。
「ふむ、足りん。嘗ての戦場と比べれば矢玉が足りん。倍は持って来い」
 突入ルートを軽く見比べ、邪魔になりそうな瓦礫などを吹き飛ばしながら同時にミサイルの相手をしつつ、実に老練たる立ち回りを見せるテイラーだった。
 しかし、使い慣れている愛用の武器ならばいざ知らず、瓦礫にミサイルにと無茶な運用を続ける剣の方が先に参ってしまう。
 高周波を纏って分厚い装甲も切り裂くキャバリアソードは、その運用上かなり頑丈に作られているはずだが、同時に消耗品で精密機械でもある。
「チッ、もっともつかと思ったのだがな。次」
 火花を上げて折れ曲がるキャバリアソードを投げ捨てて、次の剣を引っ張り出す。
 剣が消耗品などということは百も承知。代わりの剣は用意してある。
 元々、盾としても用いるつもりだった。矢面に立つものがいかれる想定はしていた。
 消耗戦、撤退戦など、いくらでも経験してきた。物資があるなら、この上ない。
 ぐっと、まだまだやってくるミサイル群を見上げるテイラー。その背後から甘やかな子供の声が聞こえてくる。
「おまたせー!」
「む、来たか」
 その声にだけ反応し、振り向かずにテイラーはキャバリアソードを機体に構えさせる。
 テイラーは見えていなかったが、ミフェットはレーダー機にありったけの音波兵器を積み込み、ちょっぴり重くなり過ぎたので、補助スラスターを追加していたのだった。
 そして彼女の機体が従えるのは、多くの楽器の幽霊だった。
 【楽器のオバケの演奏隊】にて既に呼び出された楽器の幽霊たちの演奏は、ミフェットの機体のスピーカーによって増幅されて発信される。
 その激しい音圧は、音波兵器の本来の用途と等しく、衝撃波がミサイルと反応して爆発させる。
 しめた、とばかりにテイラーも爆発するミサイルの合間を掻い潜っていく。
「ミサイル、ミサイルのカーニバル。
 幽霊のオーケストラで歓迎するよ!」
「はは、確かにこれは……」
 確かにこれは凱歌となろう。
 激しい爆発、それに押し出されるかのように、幽霊の管楽器、ミフェットの歌唱に追い立てられ、担ぎたてられるかのようにして、戦場を駆ける。
 見ようによっては喜劇にも見えるだろうか。
 好きに謳うがよかろう。
 テイラーもミフェットも、その機体は決して無傷のままとはいかないが、それでも突入ルートを駆け抜ける頃には、ミサイルの爆発はもう止んでいた。
 どうやらミサイル発射施設の破壊に成功したか、或は工場施設に近づいたために攻撃がやんだらしい。
「ふむ、どうやら切り抜けたようだ。しかして状況は危機なり。気は引き締めて、いざゆかん」
「うん。未来の見えない世界で、みんなが希望をもつために。
 英雄さんを、ぜったい助けなきゃダメだよね」
 ここから先には、きっとかの英雄を乗っ取ったオブリビオンマシンと、その部下が待ち受けていることだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『オブシディアンMk4』

POW   :    ホークナパーム
【油脂焼夷弾】が命中した対象を燃やす。放たれた【高温の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    ピアシングショット
【スコープ照準】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【RSキャバリアライフル】で攻撃する。
WIZ   :    マイクロミサイルポッド
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【誘導ミサイル】で包囲攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「……どうやら、ミサイルを切り抜けた連中がいるらしい」
「ふん、傭兵を雇ったのだろう。巷で聞くようになったぞ。最近では、腕利きが急増したそうだ」
 ライボステの中枢は、巨大な工場設備となっている。
 プラントを中心としているドームならば、ほとんどがそうである。
 建材や食料、あらゆる物資が作成可能な遺失技術の産物プラントは、この世界の人間の生活にはなくてはならないものだ。
 そうでなければ、地底を開拓し、広大な地底ドームを幾重にも作るだけの資材も用意できようはずもなかった。
 それも今では、オブリビオンマシンに洗脳された者たちに占拠され、その補給のために用いられている。
 英雄的な活躍を見せるキャバリア乗り、メルセデス・ローランには多くの支持者がいた。
 彼女の乗騎がいつの間にかそうなってしまった理由は知れないが、それと連動するかのように、彼女の信頼する部下たちもまた、その乗騎をオブリビオンマシンと化してしまったらしい。
 長く、このプラントを、もしくはその周囲に及ぶ都市群すらも、他の侵攻から守るために用いられてきた汎用キャバリアとして名高く、大戦中から愛用者も多い名機中の名機、オブシディアンMk4。
 その黒い機兵たちは、今はレイヤード全土を消滅させるために、真っ赤なアイセンサーを光らせる。
「隊長は?」
「機体の調整中だ。我々だけでやるしかなかろう」
「了解……巷を騒がせる腕利きの傭兵どもか。腕が鳴るな」
「ああ、メルセデス隊長が出るまでもない」
 多様な武装を積んだオブシディアンは、歪んだ思想に侵食されながらも、統率の取れた動きで、来たる猟兵たちに備え戦闘態勢に移る。
 重々しい機械の足音。そして、剣呑なスラスターの爆音が工場を飛び立つ。
 百年戦争を駆け抜けた名機。その名機たる所以は、生存性の高さであるという。
 とくにコクピットブロックは堅牢であり、大破しても中のパイロットの命は保証されると言われる。
 それ故に兵の損耗が少なく、戦いが泥沼化したともいわれるが……。
 ともすれば、猟兵たちは手加減の必要はないかもしれない。
ジェイミィ・ブラッディバック
…さて、次はキャバリア戦ですか。
この機体、封印されていた様子を見るとかなり昔に製造された機体と思われますが、それにしてもオーバースペックですね…。
さて、どこまでやれるか実戦テストと参りましょうか。

おっと、敵ですか…見たところ量産機でしょうか。
肩部ガトリング砲とパルスマシンガン(弾幕+制圧射撃+鎧無視攻撃)で一気に仕留めます。
敵の射撃には【指定UC】で未来予測し、クイックブーストで回避(見切り+ダッシュ)。
どうしても避けられない場合は粒子フィールド(オーラ防御)で防御。
ある程度距離が詰まったらブーストチャージ(ダッシュ+グラップル)で蹴り飛ばします。

…良い的ですよ、貴方がた。



 ミサイル施設をやり過ごし、目標とするプラントを中心とした工場施設がレーダー内に検知する。
 ジェイミィ・ブラッディバックは、レイヤードで邂逅を果たした自分とそっくりのキャバリアを着込む形で乗り込み、その具合を改めて確認していた。
 通常、機体が大きくなるほど動作にかかる慣性や重量は鼠算式に増えていく。
 手が伸びるほどそこを支えるための筋力は倍々に必要になるわけで、その割に動作は緩慢さを帯びていく。
 加えて、このキャバリアの凍結されていた様子を見るに、少なく見積もっても四半世紀は放置されていたような埃のかぶりようであった。
 25年もあればキャバリアの世代交代は幾つ進むだろう。少なくとも効率化は倍以上は進むのではないだろうか。
 それにしては、驚きの追従性である。
 ミサイルとの追いかけっこを行ってなお、まだ余裕がある。
 この機体がどこまでやれるのか、限界性能が計り知れないところがある。
「おっと、出迎えのようですね。……次は、キャバリア戦ですか」
 見たところ、量産機。
 この世界ではそこそこ長いキャリアを持ち、今なお投入される量産機、オブシディアンMk4。
 ジェイミィのキャバリア内にある機体情報が古いためか、アーカイブなどにはデータが乗っていないものの、揃いの装備を見る限りはそうなのだろう。
 ともすれば、こちらはだいぶ旧式ということになってしまうわけだが、何故だかジェイミィは負ける気が微塵も湧かなかった。
「どこまでやれるか……実戦テストと参りましょうか」
 三機編隊が散開するのを確認し、ジェイミィは機体を加速させる。
 弾かれたようにキャバリアがスラスターの推力で以て機速を上げると、広がって包囲陣形を展開しようとした起点を食い破るべく、パルスマシンガンをバースト連射しつつ、他の二体に牽制目的で肩部のガトリング砲を横に薙ぐ。
『チッ、思ったよりはや──』
 牽制射撃にRSライフルを構えたところに、パルスマシンガンの連打を浴び、オブシディアンの一機が頭部を破損。
 他の二体も、援護しようとしたところをガトリングの掃射によって回避行動をせざるを得ない。
 その合間を高速ですり抜け、その加速のままジェイミィは破壊したオブシディアンの頭部を踏みつけるようにして蹴り飛ばす。
 スラスターで踏ん張っていたオブシディアンは、それがとどめとなって推力を失い墜落して動かなくなる。
 敵を蹴りつけて飛び上がったジェイミィは、ふと攻撃アラートを察知、反射的にユーベルコードを発動させる。
「S.K.U.L.D.System ver.3.0.1 Stand by... Completed.」
 補助AI【S.K.U.L.D.System】の演算システムにより、敵機の行動を予測。
 オブシディアン達の対応力は、さすが延々戦争をしているだけあってかなりのものらしく、一機が潰されたのも厭わず、冷静にジェイミィに向かってライフルを撃ってくる。
 だがその弾道予測も既に終えている。
 ウォーマシンの反射速度とその補助AIの高速演算が組み合わさり、神経並にフレキシブルなブーストが機体を横へスライドさせる。
 まではよかった。
「お、とっと……ちょっと過敏すぎますね」
 細かな微調整なしにクイックブーストを行ったキャバリアが空中でたたらを踏むようにして横滑りしつつ制動ブーストが無理矢理体勢を整える。
 ぶっつけ本番ではさすがに動きが大仰になってしまうが、それも些細な事。
 やや流されつつも冷静にジェイミィは、パルスマシンガンとガトリングで応じ、的確に敵機を一掃する。
「……良い的ですよ、貴方がた」
 ほとんど自分の体のように動かせる機体に、逆に違和感のようなものすらあったが、ひとまずの小隊を片付けたジェイミィは、一応、倒したオブリビオンマシンのコアブロックが無事なことを確認しておく。

成功 🔵​🔵​🔴​

ユリウス・リウィウス
よし、ここからは巨人同士の戦いだな。
俺は、こうする。
亡霊騎士団を喚起し、更に荒ぶる亡者へと組み上げる。
屍人どもよ、前へ進め。絡繰細工の巨人どもを打ち倒せ!

俺も前へ出るか。この程度の寸法、帝竜に比べれば大したことは無い。
血統覚醒でヴァンパイアの力を引き出し、交戦する。
地に足を付けている“騎”の脚を狙って、虚空斬で両断する。
この前の巨人海賊には効いた手だが、今度も通じるか?

ああ、やりづらいな。絡繰細工に通じる手持ちの技が少ない。
荒ぶる亡者どもはしっかり働いているか?
まあ、最悪でも絡繰細工の足止めに出来ればいい。
その間に俺が絡繰細工の脚を斬って回るってわけだ。
屍人どもが殲滅されたら、俺も下がろう。


テイラー・フィードラ
ふむ、相手も鋼鉄の巨人に乗り込んだ敵であったな。
今の私では力不足は否めん。
が、妨害するくらいは出来よう。

剣を戻し、動きやすい姿勢のまま工場内を疾走しつつ呪言詠唱。
その際工場の外壁や資材を壁にし、此方の完全な捕捉を行えぬ様にする。

さて、奴らの武装を見るに遠方より攻勢を仕掛けるのを得手とするとするだろう。
故に愚直に接近するは文字通り的。
だが、そういった輩は背は気を付けども足は疎かだ。

詠唱終了後、グレムリン共を奴らへと向かわせよう。その際、我が巨人の身を晒し敵の視線を誘導、小さき身であるグレムリンから意識を逸らせる。
被弾は覚悟し疾走、その間にグレムリン共が武装を剥ぎ取り無力化してくれる事を期待する。



 ミサイル発射施設を破壊した後、周囲が警報を鳴らす中、ユリウス・リウィウスは霧と化した体を元に戻す。
 ヴァンパイアの血をその身に宿すユリウスは、その特性をも操るが、純血でないということから、その力は大きく制限されてしまう。
 もっと無茶は利くかもしれないが、これからが本番だ。温存も必要だろう。
 警報と共に周囲が灯り落として非常灯のような灯りが地面に光る中、ユリウスは身を低くしつつ甲冑姿で工場施設へと急ぐ。
 そんな中、ふと巨大なものの足音を聞き、身を潜める。
 もうそこいらに敵が来ているのか。
 キャバリアとかいったか。敢えて乗り付けてはこなかったが、あの体格差を真正面から相手にするには、ちょっとした準備が必要だ。
 物陰から覗く姿は、どこか見覚えがあるシルエットだった。
 どこかずんぐりした量産型のキャバリアで、三本指で巨大な剣を持って歩む姿は愛嬌もあるが、どこか悠々とした風格を感じる。
「む……剣を持ってあの歩き。古式の剣術に通ずるものがあるな。あそこまでの使い手がいるのか……?」
 その姿にユリウスは訝しむ。
 キャバリアという巨人は、重火器を積むのが主流と聞いているが、剣以外の武装が見当たらない、なんとも武骨な装いに、堂々とした佇まいは並の風体ではないように見える。
『むう、何者かっ!』
 そのキャバリアが弾かれたように隠れたユリウスの方へと剣を向け腰を落とす。
 まさかこの距離から気配のみで察知したというのか。
 恐ろしく武に傾倒している者なのか、或は、
『なんだ、金属反応というから何かと思えば、騎士甲冑ではないか。そんなものを身に着ける者がこの世界にそうそうおるものではない』
 普通にキャバリアの反応に従っただけだった。
 その反応に、ユリウスも思い当たったらしく、姿を現す。
「その様子じゃ、お仲間のようだな。すっかり乗りこなしてるじゃないか、なぁおい」
『うーむ、しかしな……風を感じられぬというのは、なかなかどうして寂しいものだぞ』
 キャバリアに乗ったままのテイラー・フィードラは、どこか黄昏るように首を振り、肩をすくめて見せる。
 そこまで動かせるなら大したものだが、と思うユリウスだったが、やはりこのサイズに揺られるというのはちょっと嫌な気分になりそうとも思うのである。
 別に乗り物に弱いというわけではないのだが。たぶん。
 それにキャバリアというものも良し悪しだ。
 確かに機敏な巨体というのは大きな戦力になるだろうが、その分だけ目立つし、小回りという面では後れを取るだろう。
 テイラーが言うように、動物的な感覚は生身に近い方が研ぎ澄まされることだろう。
 そこが慣れない部分でもあるのかもしれない。
『さて、ここで油を売るのも仕舞いらしい。出迎えが来るぞ』
「この絡繰り細工は使えるのか?」
『馬に乗りたての小僧と、熟練の機兵複数だ。これも悪くはない馬だが、私では力不足は否めんだろう』
 だろうな。と、テイラーの冷静な口ぶりにユリウスも顎の無精ひげをしょりしょりと撫でつつ、両腰の黒剣を引き抜いて戦闘態勢に入る。
 遠くもない場所からキャバリアのスラスターを吹かす甲高い音が聞こえてくる。
『飛ばれては手が出せん。屋内へ誘い込むのはどうか?』
「そうだな。俺たちの間合いでやらせてもらおう」
 敵は遠距離の兵器を多数備えている。
 加えて空中というアドバンテージまでも持たれていては、ユリウスは有効な戦術が取りづらい。
 というわけで、二手に分かれ、それぞれに役割を演じることにした。
 キャバリアに乗り込んだテイラーは、目立つ機体を活かして敢えて武器をしまって、ブーストを吹かして滑るようにして工場に突入する。
 当然その姿はオブリビオンマシンであるオブシディアンに発見され、格好の的になってしまうが、テイラーは狙いを一点に絞らせず、工場の資材や壁などを盾にしつつ巧みに攻撃を躱していく。
 逃げ回りながらもユーベルコード発動のため、召喚術の詠唱を始める。
 ふとコクピット内に持ち込んでいた凶月之杖を手にして別のものを呼び出そうとしたが、今ではないと思い直す。
 逡巡しているところへ、オブシディアンの肩部にマウントされているミサイルポッドがオレンジの火と共にミサイルを発射したのがバックカメラ越しに見えた。
「チィ……躱せ、巨人よ!」
 火花を上げて疾走するテイラーのキャバリアの周囲に爆炎が上がる。
 それを少し離れた位置から隠れて見ていたユリウスは、歯噛みしながらもユーベルコードを発動させる。
「くっ、あの絡繰りが頑丈であることを祈るか……! 生命奪われし哀れな亡者よ。虐げられた怨み、使い捨てられた憎悪を糧に、この世界に瑕(きず)を刻み込め」
 爆炎を上げる工場内部へとテイラーを追いかけて入り込んでいくオブシディアンを見届けた辺りで【荒ぶる亡者】によって呼び出されたゾンビやスケルトンなどといったアンデッドたちが寄り集まり、骸骨の巨人を作り出す。
 巨大化した骸骨は、キャバリアにも引けを取らぬサイズである。これならば、体格の面での不利はない。
 ただ、このアンデッドがそれほど相手にとって脅威になるかどうかは疑問である。
「さて、俺も体を張るしかないないな。前に出る。屍人どもよ、お前たちも前へ進め。絡繰細工の巨人どもを打ち倒せ!」
 荒ぶる亡者に号令を出し、ユリウスもまた双剣を手に工場内へ突入する。
 テイラーの逃走は、実に巧みであった。
 逃げるのに慣れているというわけではなく、そういった戦術を使うことに慣れている。
 キャバリアの操縦では分が悪くとも、人と人との知恵比べならばまだまだやり様はある。
 機動力の差を逃げながら巧みに見切り、三体のオブシディアンをそれぞれに分断することに成功した。
 そして工場の中に誘い入れた段階で、テイラーの策は半ば成っていた。
「蔑ろにされ貶められしモノよ。己の業を存分に発揮せよ」
 そうして、ミサイル攻撃でいくらか装甲版に煤と凹み傷を付けながらも、テイラーのキャバリアは懸命に突っ走り続け、ユーベルコードを密かに発動させる。
 【悪魔召喚「グレムリン」】によって呼び出されたグレムリンたちは、工場内に積み上がった資材の物陰などに隠れていく。
 そして最もテイラーから距離を離された二体のオブシディアン、そのうちの一機が唐突に背後から白い骸骨の手に絡めとられ、スラスターを破壊される。
『うわぁあ、何だこいつは!?』
 巨大な荒ぶる亡者にまとわりつかれたオブシディアンは、もがきながらも銃や近接武器でそれを攻撃するが、いくら攻撃を重ねてもそれは絡みつくのをやめない。
『化け物め、離れろ!』
「馬鹿め、お前の相手は俺だよ」
 僚機が仲間に絡みついた骸骨を引きはがそうと、RSライフルを向けるが、足元にいつの間にか追い縋っていたユリウスが双剣を振るい、オブシディアンの両膝を斬りつける。
 カーボン合金、あるいはそれ以上の頑丈さを誇る何かで構成されているのだろう、オブシディアンの巨体を支えるそれが火花を上げて寸断される。
『馬鹿な……アンダーフレーム破損だと!? ええい、ただの人間がなんだっていうんだ!』
 下半身を破壊されつつも、スラスターを吹かしてバランスを取りつつ至近距離からライフルを乱射する。
 それがユリウスの近くをかすめるだけでユリウスの甲冑には凄まじい擦過痕が残り衝撃で頬の一部が裂ける。
 人間相手には強力すぎる兵器の威力を目の当たりにしても、ユリウスは止まらない。
 この程度の体格差。帝竜などに比べれば大した差でもない。
 とはいえ、複合装甲を剣で切り裂くのは、かなりの重労働だ。
「ええい、やりづらい。絡繰り細工に通用する技が少ない……!」
 結局、無理矢理に組み付いてオブシディアンの首のあたりに剣を突き立てると、ようやく動きを止めた。
 さて、荒ぶる亡者の方はうまくやっているだろうかと、振り返ると、
 既に半分壊れかけた両腕で横わたるオブシディアンを打ち据え続ける亡者の姿があった。
 既にオブシディアンは機能停止しているようで、原形がなくなりつつある機体を殴り続けるのはいい加減無意味だろう。
「おい、もういい。ちょっと休もう。俺もお前も、ちょっとお疲れみたいだ」
 もはやオブリビオンマシンではなくなった機体の残骸に腰を下ろして、ユリウスは剣を杖代わりに大きく息をつく。
 さて、三機編成の最後の一機は、テイラーの機体を工場の壁際に追い詰めていた。
『さあ、追いかけっこはおしまいだ。ここならミサイルは躱せまい』
『そのようだ。が、愚直に接近するは文字通り的。足元や背中が疎かではないかな?』
『なんだとォ!?』
 まったく窮地を感じさせない、いつも通りの威圧感すらある口調のテイラーの言葉に、逆上したオブシディアンのパイロットは、ミサイルを発射させようとするが、機能しない。
 それどころか、気が付けば武装の大半がいつの間にか取り外されていた。
『な、なんだ!? パージはしてないはずだ!』
 慌てふためいて周囲を見回すオブシディアンのアイカメラに、オブシディアンに装備されていた筈の数々の武装を複数人で担いで逃げ惑う手足の長いグレムリンたちが写り込む。
 素手で外せるものではない。それどころか、外されたらアラートの一つでも鳴るはずだ。
 それが機能しないからこそのユーベルコードなのだが、意図しない状況に陥ったオブシディアンは一瞬だけ思考が止まってしまう。
 そして、一瞬の隙さえあれば、十分である。
『ふんっ!』
 ボロボロに煤汚れたテイラーのキャバリアによる大刀一閃。
 オーバーフレームと呼ばれる上半身を袈裟懸けに切り裂かれ、オブシディアンは機能を止めて倒れ伏した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒木・摩那
次の相手はキャヴァリアですか。いよいよ。
勢いで単身で来てしまいましたが、質量があって巨大なキャバリア相手では単体はともかく集団で来られると、やはりきついです。
ここであわよくば、キャヴァリアを確保しておきたいです。

まずは集団から外れたキャバリアに目星を付けます。
ヨーヨーでキャバリアに取り付いて、UC【サイキックブラスト】で相手キャバリアの動きを止め、サイキックグローブを通して【ハッキング】。パイロットを排出します。

問題はオブリビオンマシン化してるところですが、【ハッキング】と【気合い】【呪詛耐性】でカバーします。
確保できたら、再参戦。
【ダッシュ】と【サイキックブラスト】で他を落としていきます。



『おい、どうした!?』
『C小隊の反応消失。どうやら、相当やるらしいな』
『増員を送れ! 栄光ある我々がメルセデス隊長の顔に泥を塗るんじゃない!』
 あちこちで近距離通信が錯綜している。
 規格外のキャバリア乗り、或はキャバリアと戦える超人でもある猟兵の登場が、オブシディアン隊に混乱を生み始めていた。
 それはそうだろう。
 小隊規模ながら、少数を相手に次々と撃破されているのだから、危機感を抱かないわけにはいかない。
 隊長であるメルセデスには及ばぬまでも、オブシディアン隊のキャバリア操縦の腕前は、いずれもレイヤード内であっても指折りであったはずだ。
 それはオブリビオンマシンに取り込まれた状態であっても遜色はないはずだった。
 彼らは一方的な敗北を経験したことがない。
 だからこそ、脅威となりつつある猟兵たちに対して、得体のしれないものを抱きつつあった。
 そんな通信内容を傍受しつつ、工場施設に忍び込んでいた黒木摩那は物陰で腕組みして、
「うーむ、流石に出入りが激しくなってきて、このまま見つからずって訳にはいきそうもないですね」
 あわよくばリーダー機だけ叩いて、はいおしまい。というなら手っ取り早かったのだが、この出入りの多さでは、どこかで交戦は避けられない。
 ともすればリーダーであるメルセデスと対峙する前に、数を減らすのが定石というもの。
 リーダー機が居るのと居ないのとでは、その統率力が違い過ぎる。
 とはいえ、ここから戦うというにも、相手はキャバリアである。
 身軽だからと勢いで単身乗り込んできたが、質量差のあるキャバリアの集団とかち合うのは、いくら猟兵とはいえ分が悪いかもしれない。
 できる事なら避けて通りたかったが、集団を相手取ると決めたからには、手を考えなくてはならない。
「こんなことなら、キャバリアの一機でも借りてくるべきだったかもしれませんねー。まぁ、無ければ……そう、現地調達しちゃいますかね。
 ここであわよくば、キャヴァリアを確保しておきたいです」
 自分で言っておきながら、無茶を仰る。
 だが、電子戦がある程度通用するならば、こちらのやり方が通る。
 そう直感する摩那の行動は早かった。
 ドローンから送られてくる情報をもとに、動いている敵のキャバリア、オブシディアンの行動をよくよく観察する。
 さすがに統制が取れているようで、3機小隊を基本として行動しているものばかりで、孤立しているものはなかなかいない。
 キャバリアそのものを鹵獲するという戦略が全くないわけではないし、用途を分けた集団戦術を行う場合に、3機というのは都合がいい。
 隙が無い小隊編成をいくつかやり過ごす中で、やがて摩耶は、分担作業をし始めた小隊に目を付ける。
 どうやら小隊の内の一機が、武器の換装を行うべく工場内に戻ってくるらしい。
 情報をある程度把握している分、摩那には分がある。
 キャバリアのハンガーに向かう孤立した機体に物陰から並走し、タイミングを見計らい、サイキックグローブを装着した手には超可変ヨーヨー『イクリプス』を構える。
 許さんぜよ。と言ってしまいたくなるのを堪えつつ、キャバリアの死角になり得る背後から投げつける。
 元は玩具とはいえ、ヒーローズアースの不可思議な技術でできているそれは、ワイヤーが凄く伸びるし、必要以上に頑丈にできている。
 当然のように刃が飛び出す仕組みだし、それを利用して凹凸の多いデザインのオブシディアンの上半身にうまいこと引っかかったようだ。
 それを手繰るようにして音もなくオブシディアンに取り付く。
 そこからが大仕事である。
 どうやって乗っ取られたオブリビオンマシンを、ひったくるか。
 まずはキャバリアを止めなくてはならない。
「効いてくださいよー……ッ!!」
 サイキックグローブをした両手をキャバリアの首根っこに突っ込んで、思いっきり【サイキックブラスト】による電流を流し込む。
 摩那には懸念があった。
 キャバリアの文明には、電気を武器とすることも多かろう。パルスマシンガンやレイルガンも当然あるし、電磁兵器や電子戦は主流でもあるだろう。
 戦場に立ち続ける名機中の名機であるオブシディアンに、高圧電流対策がされていないなんてことがあるのか?
 その懸念は果たして予想通り、オブシディアンの黒い装甲表面を弱い電流が奔っては霧散していくのを感じる。
 だが、最初から外皮に通るなんて思っちゃいない。
 摩那が語りかけるのは、あくまでも中身だ。
 一瞬だけでいい。マシンのコンピューターを落とせればいい。
 そして、摩那の使う雷は生体電気であり、摩那はサイキッカー。
 一番の狙いは、機械ではなく、中の人。
 キャバリアを動かしているのは、乗っ取られた人間なのである。
 サイキッカーである摩那は、精神感応の類はどうだかは知れないが、その思念を感じることくらいはできる。
 超能力による力は、コクピットを保護する絶縁システムなど通り抜ける。筈である。たぶん。通り抜ければいいなぁ。
 サイキックブラストを使ったのはほんのひと時だが、マシンのシステムをダウンさせたのはやはりほんの一瞬。
 だがそれで充分だった。
 要は、パイロットを昏倒させつつ、システムにハッキングできるだけの余剰が稼げればよかったのだ。
「ふぅ……やることが多くて大変ですね……さあ、中身を出してください」
 システムをある程度コントロールし、コクピットのハッチを開けると、ぐったりとしたパイロットを引っ張り出して、代わりに入り込む。
 さて、ここから問題になるのは、この機体がオブリビオンマシンだと言う事。
 破滅的な思想によって、どのような屈強な精神性を持っている者でも、それには抗えぬというが……、
 そこは猟兵である自分自身を信じよう。
「うぐぐぐ、うぎぎぎ……気持ち悪い……!」
 操縦パネルをいじり、操縦桿を握り、起動させると、どす黒い何かが頭の中に入り込んでくるのを感じる。
 どろりと、鼻の奥に粘性のものを感じる。
 拭っている暇はない。
 どうやら、機体の異常に同じ小隊の機体に気づかれてしまった。
「さあさ、お・し・ご・と、ですよー! ほら、動いて!」
 気合を入れつつ、全方位モニターとレーダー、それから操縦マニュアルをそれぞれ流し見しつつ、押し寄せる吐き気と頭痛を振り切り、摩那はオブシディアンに鞭を入れる。
 スラスターによるダッシュ。
 様子を見に来た小隊員の一機にRSライフルをねじ込んでそのまま発砲。
 オーバーフレームが吹き飛ぶのも確認せず、もう一機が戦闘態勢に入るのが見えた。
 もう一度サイキックブラストを放つ。
 同じ要領で通じるかどうかは半信半疑だったが、体当たりしながら放ったサイキックブラストは、どうやらパイロットにまで届いたらしく、敵機は動かなくなったらしい。
「うっぷ……ちょっとの間だけ、死んだふりしてましょうかね……」
 一瞬でいろんなことをやったためか、それともオブリビオンマシンの思想侵略に耐えた反動か。
 気分が悪くなった摩那は、そのまま敵機に折り重なるようにして、ちょっとだけ休憩することにした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

テリブル・カトラリー
武器改造、先のキャバリアと合体した状態を維持。

吹き飛ばし、高速飛翔状態をを維持、敵機へ接近しながら『斬艦斬り』破損箇所を無敵の装甲で補う防具改造。

斬艦刀を担ぎ、相手ナパームを避けず、弾き、至近距離まで接近し…
左腕の義手黒剣を機体へ突き刺し、液体黒剣を流して部位破壊、コックピットを毟り取る。

斬艦刀ならば、コックピットごと斬るのは容易い事だ。だが……
怪力でコックピットを排除した機体を蹴り飛ばし、他の機体への盾に、早業で斬艦刀をなぎ払い、盾代わりごと、敵機の肩と胴を斬り武装排除。

左手に持ったコックピットを見やる。
元はこの国を守る兵士だ。どういった処分を受けるかは分からないが……殺傷は、極力控えたい。


ミフェット・マザーグース
やっぱり!
ずるっこのロボットだから、ずるっこの攻撃
それならミフェットも、ずるっこしちゃうからね!

ミフェットだけじゃ戦えないから、ほかの猟兵さんと一緒に戦うね
「歌唱」でスピーカーを通して歌声を戦場に響かせるよ

UC【一人ぼっちの影あそびの歌】
弾丸には弾丸、ミサイルにはミサイル、同じ兵器でユーベルコードを打ち消すよ

♪もっと強くて、もっと速くて、もっともっとすごい武器!

戦争はいつも 思い通りにいかないから
みんなが ふと そう思う

なんでも燃やしてくれる炎、ずっと遠くのまでとんでいく弾
無限にはっしゃできるミサイルの雨 どんな敵だってやっつけられる武器!

みんながみんな欲しいから 戦争ちっとも終わらない!



 うおんうおん、と重苦しい警報が鳴り響く工場施設周囲では、非常灯が夜陰を染めるかのような灯りを飛ばしていた。
 レイヤードという地下世界において、非常事態に際してはメイン電力の送電を制限する関係上、ライボステ内を照らす光源は一部を除いで非常灯に切り替わったようだ。
 それは、ライボステの主導権が挿げ代わっている現状でも変わらない。
 そんな薄暗がりを、キャバリアと合体した状態のテリブル・カトラリーが疾駆する。
 元がウォーマシン。そのスタイルは重装甲の機械鎧を纏って戦場を駆ける鎧装騎兵ゆえに、ウォーマシンのボディを借りても、その足取りは普段とそれほど大差はない。
 ただ体格が二倍近くに膨れ上がっているため、細かな勝手は違ってくるだろうが、飛んだり跳ねたりというのには抵抗がない。
 猟兵たちの戦いによって、敵機のオブシディアンMk4の小隊も出入りが激しくなってきた。
 3機小隊で空を飛ぶのをわき目に、影から影へと機体を滑らせるようにして駆けては、奇襲の機を伺う。
 正面から叩き潰すという手もなくはないが、この3機編成というのはなかなかに厄介だ。
 突撃機と後衛からの直接援護、そして中間にいて戦況を読みどちらかに加わるか、或は3機による連携。それぞれに役割を持たせているため、付け入るスキがあまりないのだ。
 とはいえ、このまま指をくわえて見ているというわけにもいかない。
 いくら思い通りに動く機体とはいえ、いずれは発見されることだろう。
 誰の目にも留まっていない今という状況を最大限利用すべきだ。
 マシンヘルム越しに戦況を見、その奥の瞳を静かに光らせるテリブルは、ふと収音機器に耳慣れぬ音を拾う。
『ららら……ららら……』
 子供の歌声だった。
 緊迫した戦場に響き渡る牧歌的なハミングが、周囲を飛び回るオブシディアンたちを立ち止まらせる。
 その歌声の渦中にいたのは、ずんぐりしたレドーム型のオーバーフレームを搭載したキャバリアであった。
『なんだ、電子戦機が一機で来るぞ!』
『歌っているのはあいつか。何の魂胆があるかわからん。収音マイク遮断! 暗号通信に切り替えろ』
『やつを撃ち落せ! 爆弾を積んでるかもしれんぞ』
 そのキャバリアを前に、小隊の一つが攻撃を仕掛けるべく肩部に積んだミサイルポッドのハッチを開放する。
 小型の対キャバリア用ミサイルが複数、煙の尾を引いてレドーム機に襲い掛かるが、ミサイルは直前に発生した破壊音波に晒されて空中で爆発四散する。
『音波兵器か。珍しいものを積んでいる。だが、連発はできない筈だ!』
『攻撃し続けろ』
 音による迎撃に即応し、次々とミサイルが放たれる。
 その有様に、
『んもーっ! やっぱり!
 ずるっこのロボットだから、ずるっこの攻撃するんだね!
 それならミフェットも、ずるっこしちゃうからね!』
 レドーム機。そのコクピットで、ミフェット・マザーグースは憤慨したように大きく息を吸う。
 そしてスピーカー越しに紡がれるのは、【一人ぼっちの影あそびの歌】。
 攻撃兵器を防御の為に用い、そうしてなお、あくまでもスピーカーとして使うのは、心優しい彼女だからだろう。
 兵器として作られた背景がありながら、頑なに自らはその驚異を殺害のためでなく懲らしめるために使うに留める。
 それは、そんな歌であった。
『♪もっと強くて、もっと速くて、もっともっとすごい武器!

 戦争はいつも 思い通りにいかないから
 みんなが ふと そう思う

 なんでも燃やしてくれる炎、ずっと遠くのまでとんでいく弾
 無限にはっしゃできるミサイルの雨 どんな敵だってやっつけられる武器!

 みんながみんな欲しいから 戦争ちっとも終わらない!』
 素朴な怒り。この世界の誰もが抱える怒り。
 それこそ、今というこの時にミフェットの機体に降り注ぐミサイルの雨。それに対する科学力という進んだ文明によって成る暴力。
 これがどれだけ人の命を奪っているのか、本当にわかっているのか?
 倒すことばかり考えているから、同じもので返されたときには悪態をつく。
 その歌声自体に兵器を突破する力はない。
 だが、既に一度見たそれは、誰もが同じ武器でしばき合う皮肉の如く、降り注ぐミサイルと同じ数だけのミサイルを生み出し、次々と相殺していく。
『迎撃、だと……!?』
『視界が……!』
 ミサイル同士が続けざまに誘爆し、激しい爆炎が上がる中、3機編成の後衛を担っていた一機が、気が付けば何も言わないまま、機影を消失させていた。
 他の隊員がそれに気づいて振り向いた先には、オブシディアンの機体を壁に叩きつけて引きちぎった首元から腕を突き刺すテリブルのキャバリア姿があった。
『確かに……コアブロックは頑丈のようだ』
 薄闇に輝く双眸。そしてマスクによって変換された声は、オブシディアンの構造を調べているようだった。
『チィ、いつの間に近づかれた……!』
 お互いに目が合う。攻撃態勢に移るオブシディアンに対するテリブルの動きは素早かった。
 ブースターを点火、高速飛翔する要領で飛び込みつつ、ユーベルコードを発動。
 艦船をも一刀のもとに切り伏せる【戦艦斬り】の異名をとる無敵の斬艦刀を担ぎ上げる。
『近寄るなぁ!』
 オブシディアンが僅かに後退しつつ油脂焼夷弾、いわゆるナパーム弾を発射する。
 リキッド状の特殊な燃料は激しく燃焼しながら振りまかれ、機体を蒸し焼きにするものだが、テリブルはそれを回避せず、長大な斬艦刀で打ち払い弾きながら肉薄する。
 そのまま一刀のもとに……はせず、相手の懐に空いた左腕を突き入れた。
 激しい火花が上がると共に突き刺さる左腕。
 当たり前の話だが、マニピュレータを兼ねる腕部はパーツが多く、武器として用いるには脆く、殴る用途に使うにしても専用のガードパーツを用いることが多い。
 にも関わらずテリブルの左腕がそれを成したのは、彼女の義手である左腕を担う液状の黒剣によるものであった。
 装甲の継ぎ目をこじ開けるように深々と突き刺さった黒剣は、キャバリアを成しているオーバーフレームとアンダーフレームの結合部品を次々と破壊し、最終的にはコクピットブロックをつかみ取り、力任せに機体から引きちぎった。
 機体から切り離された時点でオブシディアンは機能停止しており、パイロットは昏倒してしまったが、乗り手が居なくなってがらんどうとなった機体をテリブルは蹴り飛ばす。
 そう、敵はまだ一体残っている。
『機体を盾に!? く、くそ!』
 今度こそテリブルは斬艦刀を構えて突進する。
 蹴り飛ばした残骸が邪魔をして、最後の一機はナパームを撃とうにもテリブルの機体をとらえられない。
 輝きを失ったオブシディアンの赤いカメラアイが二つに割れるのが見えた頃、最後の一機がモニターに見た光景もまた、二つに割れていた。
 斬艦刀ならば、二機同時に切り伏せることも、それこそ頑丈で知られるオブシディアンのコクピットブロックごと叩き斬ることもできたろう。
 だが……、大きく薙ぎ払われた斬艦刀が斬ったのは、その胴から上。コクピットブロックのちょうど上をかすめつつ、武装を取っ払うに具合のいい部分だった。
 オブリビオンマシンの機能が止まるのを確認し、テリブルは左手に持ったままだったコクピットブロックを見やる。
 激しく動いてしまったが、生存性の高いコクピットが無事なら、エアクッションの一つでも働いていることだろう。
 ……この兵士は、国を守るためにあったのだろう。変貌してしまったのはオブリビオンマシンの影響であるにしろ、大小の処分は免れまい。
 どういった罰を受けるかはわからないが……殺傷は、極力避けたい。
 戦いの中に生きるテリブルだからこそ、その中に礼を見る。
 静かにコクピットを置いていき、今だ大音量で鳴り響くミフェットの歌に耳を傾ける。
 あの少女もまた、戦わされるために作られたのだろう。
 懸命な歌声の中から、なんとはなしにそう思ってしまう。
 戦い続けることを選んだテリブルとは異なる選択をしたミフェット。
 彼女にもきっと、自分と同じような戦いがあるのだろう。
 ミサイルを相殺する無数の爆炎の輝きに影を落としながら、テリブルは次の戦場を目指すのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
引き続きお借りしている量産型を【操縦】。

相手の通常攻撃は【第六感と見切り】で予測して躱しますが、大量の誘導ミサイルは厄介ですね。
こちらも同じような技で対抗しましょう、とUC:煌月舞照発動。
煌月の複製がミサイルを撃墜し、そのままオブシディアンMk4の武装や手足を斬り裂いて無力化。

迎撃しきれないミサイルは、【結界術】による防御障壁と【オーラ防御】を纏った天耀鏡(大きさアップ)の【盾受け】で防ぐ。

近接戦ではグレイブを振るって【雷の属性攻撃・貫通攻撃・鎧無視攻撃】で相手を無力化。

何とか切り抜けるとプラント周辺の地中から思念が届き、大地に埋もれていた焔天武后(詩乃のアイテム参照)を見つけて契約します。


エメラ・アーヴェスピア
最初の関門は突破ね
次に出て来るのは…面白そうな機体ね
その力、見せて頂戴…色々と面白そうな情報が取れそうで楽しみよ

情報収集およびハッキング、そして『咆哮』は継続よ
特に今回は『咆哮』に頑張ってもらうわ
その速度を最大限に生かし、無人機ならではの機動で敵を翻弄
相手との距離によって最適な重火器を選択、攻撃させるわ
ミサイルもその速度で回避又は重火器で迎撃
多少の被弾も防御力も高い『咆哮』なら問題ない筈よ
…普段は対人戦が主であろうこの世界のキャバリア乗りは、私の無人機とどう戦うのかしら?
対処されたらそれはそれ、その情報で新たに改良を加えるだけよ
他の世界では似た兵器同士の戦いって中々無いから

※アドリブ・絡み歓迎


佐伯・晶
工場の構造物に隠れながら接近しようか
光学迷彩も併用すれば目視も難しいだろうしね

味方のキャバリアに目が向いている内に
目立たないように接近しよう

近付いたらガトリングガンで
カメラや関節、ミサイルポッド等を狙って
戦力を削いでいくよ

このサイズの機体なら徹甲弾を使えば
ガトリングガンで装甲を抜けるんじゃないかな

適度に相手したら工場の構造物に紛れて隠れよう
相手も自分達の補給線を壊すのは躊躇うんじゃないかな

狭い場所で接敵したら
試製電撃索発射銃を使って
電撃で電装系を壊して無力化しよう

動けないなら単なる棺桶だからね
脱出してくれるならガトリングガンで機体を壊し
正気を取り戻させよう

さて、そろそろ英雄さんのお出ましかな?



 オブシディアンMk4、百年余年続く戦争を経て尚、広く使われ続ける名機中の名機。
 それが安定供給される部隊は優良であるとされるほどに、高い信頼性を寄せられる。
 しかしながら、部隊の主力ともいえるそのオブシディアン部隊も、いよいよ追い詰められていた。
 ライボステを占拠するメルセデスの誇る精鋭たちも、猟兵たちの活躍によって、次々と撃破されていった。
 小隊行動していた部隊は、崩れ始めた戦線を維持すべく再編成を行っていた。
 いや、それはもう残存部隊の寄せ集めというべきだろうか。
『他とは連絡がつかないのか?』
『ダメだな。連中、かなりやるぜ……』
『……だが、我々にはメルセデス隊長がいる。あの方さえいれば』
 敗色の色合いが強まる中であっても、彼等の意志は固いようであった。
 凄腕の傭兵、そんなものがいったいいずこからレイヤードの深くへやってきたのか不明ではあったが、そんなことは些末なことであった。
 たとえ自分たちが倒れても、メルセデスがいる。
 彼らのその強い信奉は、決してオブリビオンマシンの思想侵略のみに依るものではない。
 或はその信頼や絆ですらも、破滅的な思想に向かうべく利用されているに過ぎない。
『たのもーう!』
 悲壮な決意すら漂うオブシディアン隊の陣中へ、ブーストスラスターを吹かして切り込んでくる一体の量産型キャバリア。
 大町詩乃の駆るそれは、数十分前に初めて触ったとは思えないくらい、堂に入った姿であったが、一体で複数体を相手にするにはいくらなんでも分が悪くはないか。
 それでも詩乃はひるむことなく、キャバリア用グレイブを半身に構える。
『敵は一機だけだ。凄腕とはいっても、数はまだこちらが上……む!?』
 味方に指示を出そうとしたオブシディアンの一機が、唐突な接近アラートに周囲に視線を飛ばすが、近づくものは居ない。
 否、それは真上から飛び降りてきたのだった。
 ずうん、と重たい衝撃音とともにオブシディアンを踏みつけ、その勢いのまま至近距離から重火器を連射し、爆炎と共に飛びのいて宙返りをうった後しなやかに着地するのは、真鍮を思わせる光沢を持つ、キャバリアと同じような人型ながらそれとは少しばかり技術体系の異なるようなロボット──正確に言えば、魔導蒸気機兵に装甲と武装を重ねてキャバリアと同サイズにまで強化された姿であった。
「接敵した。……面白そうな機体ね。
 その力、見せて頂戴……色々と面白そうな情報が取れそうで楽しみよ」
 【我が元に響くは咆哮】によって呼び出された魔導蒸気機兵『咆哮』の主にして、それを介して戦場を見渡すエメラ・アーヴェスピアは、ミサイル設備に干渉する際にこのプラントへ配備されている機体情報のカタログスペックは入手している。
 しかしデータはあくまでも書類上のもの。人が搭乗して実際に動けばそれはまた別の色を見せるはずだ。
 遠隔自動操縦の『咆哮』の戦況を逐一に確認しつつ、戦場とは離れた位置からエメラは工場施設にハッキングを仕掛け情報を集め続ける。
『人の気配は感じませぬが、お味方の様子ですね! 助太刀感謝します』
 人並外れた機動力と獣のような反応速度を見せる『咆哮』を即座に無人機と看破した詩乃であったが、その根本に魔術の見出し、それが猟兵の手によるものであることも思い至った。
 二機で並び立つようにして、オブシディアン隊へと対峙し、激しい牽制を浴びせ合う。
『チィ! 量産機はともかく、未確認機が速い! ミサイルで囲い込め!』
 敵の通信を傍受していたエメラは、その気配をいち早く察知するが、同時に詩乃の機体をちらと顧みる。
『! お構いなく、貴方はお好きに動いてください』
 気遣うような『咆哮』の様子を一瞬で察した詩乃はサムズアップで答える。3本指の機体でサムズアップができるくらい、操縦は上達したが、しかしその量産機も度重なる苛烈な戦闘行動を経て、機体の各所にダメージが蓄積していた。
 オブシディアンの各機からミサイルが射出されるのを検知。それと同時に、機械にあんまり強くないであろう詩乃にもわかりやすいダメージコントロール通知が飛ぶ。
『──足折れちゃうかも(-_-;)』
「ええっ!? 派手に飛び回り過ぎちゃいましたかね」
 舞踊の如き、軽妙な足さばきをキャバリアにて再現するには、複雑な体重移動と激しい負荷がかかるようで、どちらかというと格闘にはそれほど向かない量産機の手足でそれを続けざまにやるには無理がある。というような警告をかなり簡潔に表現したアラートに、コクピット内の詩乃はちょっぴり焦る。
 だが時間は待ってくれない。
「もうちょっとだけ、踏ん張りましょう!」
『──頑張る('◇')ゞ』
 ひとまず初弾、ミサイルの第一波を、並外れた動体視力で見切り、接近アラートの手伝いもあって、なんとか乗り越えるが、ミサイルの数が尋常ではない。
 エメラの『咆哮』は、それらを無人機ならではの無茶な機動性と反射神経で掻い潜りつつ重火器で応戦し迎撃している。
 詩乃にもそれができればよかったのだが、人に準拠した今の姿では限界がある。
「煌く月よ、空を舞って世界を照らし、清浄なる光と刃で悪しき存在を無に帰しなさい」
 アンダーフレームの反応が悪い。そう判断するのも一瞬。
 口中でユーベルコード発現の祝詞を紡ぐ。
 【煌月舞照】は、詩乃が携えるオリハルコンの刀身を持つという薙刀を複製し、展開するものである。その数、800以上!
 微細な高周波振動で装甲を切り裂くキャバリア用グレイブよりかは小さいものの、その切っ先は未知の切れ味を誇るオリハルコン。
 信管を切り裂かれたミサイルが武骨な音とともに撃墜される中で、詩乃の機体はブーストで加速し、ほぼ上半身の動きのみでグレイブを振るい、オブシディアン隊を一体ずつ切り伏せていく。
 足回りを活かせなくなっているため、下半身の動きはかなり機械的だが、ミサイルの爆風に紛れて動いているためか、足腰の緩慢さはほとんど問題にならないようだ。
 何より、エメラの『咆哮』がかなりの敵を相手取っている。
『こいつ……この頑丈さで、この機動性なのか!』
『無人機だ! 有人機でこんな動きでできるものか! 撃て撃て!』
 無人機だからこそ、装甲に任せた無茶な攻勢に出られる。
 無人機だからこそ、無茶な機動性に任せた運動速度を維持できる。
 この無人機の強みに対し、オブシディアン隊は、複数機による包囲攻撃を仕掛ける。
 相手が人でないなら、物として面の攻撃に移るのみ。
 なるほど合理的。とエメラはオブシディアン隊の判断の素早さに感心する。
 さすがに同サイズでの戦い方では、その世界で戦う者のほうが判断も早ければ、生存するために最善の手を使ってくる。
 単騎でどれだけ強力であっても、多数を前にすれば攻撃の手数の面で劣るというものだ。
 奇しくも、それはエメラもまたよく使う手でもある。
「でも確かに、新たな戦略として覚えておくのもいいかも。他の世界では似た兵器同士の戦いって中々無いから、こういうケースは新鮮だわ」
 考えてもみれば、強力な単騎に手数で応戦するのは、猟兵には珍しい手ではない。
 立場が逆だと、こういうふうに見えるのか。
 だが、こちらにはこちらならではの機構もある。
 面攻撃に攻めあぐねる『咆哮』は、自身の各所からスチームを吐き、一時的に視界を封じる。
 それも一瞬。そんな急ごしらえの煙幕が通用するような相手でもない。
 弾幕の手が緩むわけでもないだろう。
 だから、一瞬だけ連中の視界から消えられればいい。
 思い出してもみれば、最初はどういうふうに急襲したのだったか。
 鋼鉄が鋼鉄を打つ激しい弾幕の中、『咆哮』が真上から襲い掛かってくるのを、しかしオブシディアン隊も予測していた。
「さすがだわ。でも、こちらにも装甲がある。とめられるかしらね」
 ぎりりと奥歯をかみしめて口の端が上がるエメラは、自身の表情に気づいているだろうか。
 装甲版を展開し、迫撃弾の如く急降下する『咆哮』を、しかし迎撃する銃弾は放たれなかった。
 横合いから援護射撃が入り、肩部の武装、機体関節に攻撃を受けたオブシディアンは迎撃が間に合わなかった。
「よそ見してるからだよ」
 ばさり、と周囲の景色を映し出すことで視覚的に隠れることのできる光学迷彩コートを脱ぎはなち、ごっついガトリングガンを抱えた佐伯晶が、そこにはいた。
 そこは、工場施設の一角。
 さしものオブリビオンマシンといえど、自分たちの補給線たる工場設備をいたずらに攻撃はできまいという判断から、攻撃がキャバリアに向いている内に忍び込み、今というタイミングを見計らって横合いから奇襲を仕掛けたのである。
 さすがに、キャバリアに積み込むような巨大兵器ほどの目覚ましい威力には届かないが、ガトリングガンに装填した徹甲弾は、キャバリアの装甲はまだしも、関節などの可動部や積み込んだ武装にはちゃんと攻撃が通るようだ。
 その事実にひとまずは安心し、狙いを絞らせないよう、移動しながらガトリングガンで支援する。
 この乱戦状態では、晶という生身の的は小さく、工場設備の物陰などに光学迷彩コートと共に隠れてしまえば、あっという間にキャバリアの索敵を外れてしまうらしい。
『チィ、まずは敵のキャバリアを狙──ぐわぁっ!』
 エメラの無人機、そして戦場をかく乱する晶の存在。
 単騎でミサイル攻撃を切り抜けた詩乃もまた、こまめに撃破を重ね、いよいよオブシディアン隊で動くものは居なくなった。
 戦場が静けさを取り戻すと、あちこち火花を散らし始める詩乃の量産型キャバリアがおぼつかない足取りで工場施設を前に、キョロキョロと何かを探すかのように見回す。
『もう動く敵は居ないと思うわ。機能停止に至っていない機体もいるようだけど……』
「いえ、そうではなく……なにか、呼ばれているような……」
 エメラの『咆哮』が近寄ってみれば、詩乃はそれこそ何かに呼ばれているかのように、工場施設の地下エリアに入っていく。
 地下世界のレイヤードに対して地下エリアというのもおかしな話だが、プラントを中心としたドームを更に地下へと掘り下げた区画は、プラントからの供給をより効率的にするためのものだろう。
 激しい戦闘の形跡もあって、地下の一部は壁面が破損して地層が露出している場所もあった。
 いや、それは本当に戦闘の形跡か?
「たぶん、呼んでるのはあれじゃないかな。僕は、どうやら嫌われてるみたいだけど」
 苦笑する晶が指さす先には、露出した地層から生えたような、奇妙な石の神像があった。
 詩乃も戦巫女であり、その実は女神であるが、晶もまたその身は邪神のものである。
 それが精神的な交信を察知したのかもしれない。
 だが、それに近づこうとしたところ、
『うおおお!!』
 オブシディアンの生き残りがいきなり飛び込んできた。
 咄嗟に詩乃はキャバリアの中から天耀鏡を展開して防御結界を張るが、踏ん張るキャバリアもついに限界が訪れたようで、
『──もう動けない。脱出してね( TДT)』
 最後のアラートを読み終えるよりも早く、詩乃はコクピットブロックごと強制排出される。
 電磁ブレードを振りかぶって襲い掛かってきたオブシディアンは既に死に体であり、防御フィールドに遮られた状態のまま、エメラの『咆哮』の手によって破壊され、動かなくなった。
 コクピットから飛び出した詩乃が見たのは、グレイブを支えにしてひざを折ったまま動かなくなったキャバリアと……白い神像。
「ありがとう……今まで、よく頑張ってくれました」
 魂無き鎧に一礼を捧げ、改めて心臓へ向き直る。
「で、これはなんなのさ。この世界のものなのかな?」
 あまりにも異質な存在に思える石でできたような神像は、女性型のようだが、訝しむ晶に対し、詩乃は不思議と馴染みがあるというか妙な同調性を覚えるのであった。
「焔天武后……そう名乗っています。私に、力を貸してくれるんですか?」
 科学の波に押し流されたような寂しげな神像に手を掲げると、白い石のようだったその表面に赤い波紋が流れ、色味を帯びていく。
 命を帯びたように脈動し、赤みを帯びた神像が鉄の質感を取り戻すと、それは自ら一歩を踏み出して、詩乃の前に膝を折る。
 まるで最初から知っていたかのように、その忠誠に詩乃は応じる。
『……これも、この世界のキャバリアということなのかしら……ずいぶん、形式が異なるようだけど』
 自作の機体を持つだけにエメラは不可思議そうに首をかしげる。
 晶もその存在の不可思議さには首を傾げずにはいられない。
 詩乃も、実はそれが何なのかよくわからないので、おまけに首をかしげておく。
 ただ、スーパーロボットとして一緒に戦ってくれるなら、少なくとも今まで共に戦ってくれた名もなき量産型以上に力となってくれることだろう。
「さて、そろそろ英雄さんのお出ましかな?」
 戦いの気配が迫る事を感じ取ったのか、晶が顔を持ち上げ遥か上方のプラント施設へと目を向ける。
 凶悪な何かが、まだ残っている。
 何かなどとは言うまい。
 メルセデス、救国の英雄が駆るオブリビオンマシンに他ならない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ブレイジング・バジリスク』

POW   :    ブレイジング・シュート
【ライフルの集中射撃】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    バジリスク・ランページ
【右腕のライフル】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ   :    エンジンキラー
自身の【オブリビオンマシン】から【漆黒のオーラ】を放出し、戦場内全ての【エンジン】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ──私は何をしているのだろうか。
 通知を知らせるよう明滅を繰り返すコクピットの中は暗く、少しの食事と少しの昏倒を経たメルセデス・ローランは、自身の騎乗するキャバリアが整備と補給の最中だったことを思い出す。
 僅かなまどろみの中で、誰かの悲鳴を聞いた気がする。
 誰の声だったのだろう。もう思い出せないが、きっと救えなかった誰かのものなのだろう。
 いつだって、手遅ればかりだった。
 誰かを救うために手にしたのは、誰かを殺すための力だった。
 そんなものだ。
 人を救うためなどと嘯いてみても、人を殺す術だけがうまくなっていく。
 いつだって手遅れで、いつだって救えるものは少なくて、いつだって救う数より殺す数の方が多いのだ。
 これはこの世界の自浄作用か何かなのだろうか。
 国に求められて止まぬ救国の英雄は、その実、厭世的でアンニュイな夢想に耽る。
 キャバリアを乗り回し続けるほど、私はどんどん孤独になっていく。
 きっと私に救えるものなんてない。だってそうさ。私自身すら、この土くれに埋もれた国の中に沈んで這い上がれなくなっている。
 私自身すら救えないものが、英雄なものか。
 いっそのこと、この国ごとなくなってしまえば、私は救われるのか。
 人を救うために身に着けたことは、人殺しの技術だ。
 それはつまり、人々は滅びたがっているのではないか。
 だから、嬉々として兵器を作り続ける。
 もやりもやりと、キャバリアの肩部からスモークがあふれ出す。
 メインシステムが立ち上がると、頭の中の靄がすっと消えたような感覚があった。
 全方位モニターが格納庫の有様を映し出すと、戦況通知が溜まっている。
 どうやら、部下たちは失敗したらしい。
 彼らは優秀だった。それでも歯が立たなかったというのなら、凄まじい傭兵もいたものだ。
 こうやって、新しい風が吹き込んで、この土くれの中の国にも、並のように変革が訪れるのだろう。
 変革は今。私が行う。この国を、土へ還す。
「……傭兵、ワタリガラスか……。だが、気を付けることだな」
 真紅のキャバリア──オブリビオンマシンが、凶悪な貌を光らせる。
「この国に空は無い。飛び立てば、落ちるぞ……!」
 格納庫を飛び出した真紅のオブリビオンマシン、ブレイジング・バジリスクが工場施設最奥にて猟兵たちの到着を待つ。
 そのコクピットの奥、瞳の奥に静かな絶望を湛えながら。
ユリウス・リウィウス
あの赤い機体が親玉というわけだな。それではこれで仕舞いにしよう。

絡繰同士の激突が始まったら、気付かれないように側面へ回って、不運をもたらす「呪詛」を込めたイービルデッドを照射する。
手持ちで絡繰細工に通用する数少ない切り札だ。たっぷり喰らえ。

生憎と俺には「えんじん」なんてものはなくてな。
一時的に停止した友軍の絡繰を足場に、その首へ向けて飛びかかり「生命力吸収」「精神攻撃」の双剣で「暗殺」まがいの「なぎ払い」を仕掛けよう。

戦場では思いも寄らんことが起きるもんだ。歴戦の英雄ならよく知ってるだろう。なあ。おい。

赤い絡繰に取り付けるなら、そのまま双剣を装甲に突き刺し続ける。というかそれで身体を支えるか。


大町・詩乃
焔天武后、よろしくお願いしますね
雷月と天耀鏡を渡し、乗り込んで【操縦】

諦念に囚われたお姫様を救いに行きましょう!

メルセデスさんに「数十年地中にいたくらいで絶望ですか!別世界(ダークセイヴァー)ではもっと長く地中で望み無い生活を強いられ、それでも生き抜き、今、地上に出て営みを始めてます。
レイヤードもそうなります。私が、いえ私達と貴女達で成し遂げます!
だから、そんな饐えた機体から出て、私達と話しましょう!」と説得。

戦闘でUC使用。
UCと結界術の防御壁とオーラ防御を纏った天耀鏡の盾受けで敵攻撃を弾き、強化した雷月による【光の属性攻撃・神罰・浄化・破魔】を籠めた攻撃でメルセデスさんを傷つけず敵機撃破!



 人の出払ったプラントを中心とした工場設備の最奥には、逆さにした漏斗のような形状の機械が静かな音色を立てて稼働している。
 この世界にはなくてはならないプラントの一つが動き続ける限り、この炉が枯れることはないだろう。
 それを囲うような広い虚空が、この空間の静寂の主であり、この場所を重要と言わしめているかのようであった。
 本当のところを言えば、生産される資材が多岐にわたるため、あらゆるサイズの搬入に耐えうるよう、プラントの周囲には空間が確保されているのだが……。
 この場所は、あたかも決戦の地であるかのように、さも神聖な神でも奉られるかのような静けさがあった。
 そしてその中心に座すかの如く、真紅のオブリビオンマシンが黒煙を吐きながら浮遊している。
 ここは、始まりであり、終わり。
 複数の意味で、ブレイジング・バジリスクを駆るメルセデスは、ここを最後の地と定めていた。
 いずれ全てのプラントを破壊せしめ、ここは最後に自分と共に滅ぶ。
 だが、そのためには、邪魔者を排除せねばならない。
『……来たか、ワタリガラスども』
 片腕と一体化した武装、真紅に染まった機体の中で蠍の尾のようなライフルだけが銀の輝きを湛える。
 その銃口が火を噴けば、加速された荷電粒子が眩いマズルフラッシュを伴って続けざまに光弾を放つ。
「うおっ!? ……まったく、容赦なしだな。ということは、あの赤い機体が親玉というわけだな」
 光が壁面にぶつかって炸裂する中、ユリウス・リウィウスは素早くそれらを掻い潜りながら、抜剣する。
 漏斗のような機械の上を浮遊しているあの機体に、甲冑姿のユリウスが挑むのはいかにも無謀。
 しかし、そんな無茶や無謀など、いくつも超えてきた。
 いまさら体格差や優速であることがなんだというのだ。
 とはいえ、剣が届かぬ空飛ぶ大鎧をどう攻略するか。
 おまけに、あの飛び道具だ。魔術のような石弓。大口径のプラズマライフル。
 生身であんなものを真正面から受けるわけにはいかないが、あれを空中から引き撃ちされては分が悪い。
 ……だが、こちらとて無策ではない。
 切り札があるのはこちらも同じ。
 大鎧、キャバリアというアドバンテージを持たぬ以上、その切り時は考えなくてはならない。
 激しく炸裂する光弾に肌を炙られるような危うさで、ユリウスはその機を見逃さぬよう、必死で掻い潜る。
 やはり、間合いの差は歴然としている。
 心中で毒づくものの、そんなものを顔には出さない。
 そこへ、
「待ってください!」
 突風のような声が響く。
 荒ぶるブレイジング・バジリスクの攻勢を制止するかのように手を上げたその姿は、奇しくも同じ鮮やかな赤のキャバリア。
 大町詩乃の出会ったその機体は、恐らくは石でできた神像であった。
 真っ白に白濁した石英のようなものでできていた筈のそれは、詩乃を主とすることで本来の姿を取り戻したのか、真紅の金属質で染まり、そしてそのフォルムは従来のキャバリアと異なり、なんというかこう、趣味的であった。
 それこそ、詩乃の所有する大きさ自在のヒヒイロカネ製の懐剣『雷月』や、同じく盾にもなる金属鏡『天耀鏡』を持たせても違和感が生まれないほどである。
『新手か……特機とみた……!』
 すかさず浴びせられる光弾の連射。
 詩乃はそれを大鏡の盾『天耀鏡』で防ぎつつ、じわじわと間合いを詰めていく。
「受けきれる……焔天武后、よろしくお願いしますね」
 メルセデスの慧眼ともいうべきか。特機、いわゆる一般的なキャバリアの形式からは外れた詩乃の『焔天武后』はスーパーロボットに分類される。
 物理法則を無視したかのようなデザインや仕組みながら、その圧倒的な耐久性は容易には貫けない。
 だが引き換えにその鈍重さでは、キャバリアの機動性を捉えることが難しくなる。
 詩乃は動かし始めてすぐに、量産型のキャバリアとは違う重みを感じ取っていた。
 思い通りままならぬというわけではない。これは自動車のような操縦が伴わないのではなく、重たい鎧に近い。
 ならば詩乃の身に着けた技も活きて来よう。
 回避することを捨て、詩乃はオブリビオンマシンの射撃を受けながら前進する。
『頑丈だな……だが、いつまでもつ?』
「……数十年」
『なんだ?』
「数十年地中にいたくらいで絶望ですか! 別世界(ダークセイヴァー)ではもっと長く地中で望み無い生活を強いられ、それでも生き抜き、今、地上に出て営みを始めてます」
『……何を言い出すかと思えば、私を説得するつもりか?』
 乾いた笑いが機体越しに向けられるのを詩乃は感じた。
 だが、話が通じなければそのまま攻勢は止まらなかったろうに、メルセデスは感傷に浸るかの如く一瞬攻撃の手を緩める。
 しめた。と思ったのは、ターゲットから外れたユリウスであった。
 この中ではサイズの小さい彼は密やかに脇へまわり始める。
『貴女は思い違いをしているよ、お嬢さん。困窮や逆境というものは、強い結束を生む。ここもかつてはそうだった。
 だが、プラントによる繁栄がもたらしたものは何だと思う?
 一度繁栄の味を知ったら、今度は奪い合いが始まる。
 純粋な潤いとて、栄養という不純物がある限り、やがては腐り果てるのだ!』
 烈火の如き怒声と共に、銃撃の嵐が吹き荒れる。
「うああっ!!」
 その圧に防御に徹する詩乃の機体も踏み込む足を止めざるを得ない。
 しかし、そこに文字通りの横やりが入る。
「我、冥府の黒炎によりて、汝らを焼き尽くさん。劫火吹き荒れよ! イービルデッド!」
 ユリウスの双剣の切っ先から、魔法陣が展開され、黒い炎【イービルデッド】が吹き出すと、詩乃とブレイジング・バジリスクとの間に割って入り、機体表面の黒い霧を焼き始める。
「手持ちで絡繰細工に通用する数少ない切り札だ。たっぷり喰らえ」
『クッ……生体センサーを見落としていたか……!』
 横合いからの炎の応酬に思わず攻撃の手を緩めるメルセデスに、すかさず体勢を立て直した詩乃の『焔天武后』が懐剣を振りかぶる。
 『雷月』に吹き込んだ破魔の力が輝きを帯び、ブレイジング・バジリスクの機体から漏れる黒いオーラを切り裂くが、手ごたえがない。
 厄介な霧である。接近戦に持ち込もうにも距離感を狂わされる。
 それに、霧にまとわりつかれるたび、焔天武后の反応が鈍くなっている気がする。
 何かしらの妨害兵器であると見た方がいいだろう。
 そして霧の中から、銀色の銃身が、詩乃の盾を掻い潜って突き付けられる。
『この距離なら、盾は使えまい』
「そうだな、盾が相手なら、内側に入らざるを得ないよな」
 動きを鈍くした詩乃と、そこへつけ入ったメルセデスとの両方が、同時に驚愕する。
 なんと、焔天武后の動きが鈍ったのを察知したユリウスは、その背によじ登り、隙をついてきたブレイジング・バジリスクの接近を待ち受けていたのだ。
 甲冑が焔天武后の肩を蹴り、双剣を携えて猛然とバジリスクに斬りかかる。
 完全に不意を突き、黒い霧を吐く肩部の兵器に剣を突き立てたユリウスの黒剣がその不吉な霧を吸い上げる。
「戦場では思いも寄らんことが起きるもんだ。歴戦の英雄ならよく知ってるだろう。なあ。おい」
『そうか! ……生身の貴様には、エンジンキラーは通じぬはずだな! 生身でやってくるものなど、おるまいしなぁ!』
 剣を突き立てるユリウスをくっつけたまま、ブレイジング・バジリスクは上昇して無茶苦茶な機動で飛行する。
 激しく揺さぶられ、凄まじいGを体に受けながらもしがみつくユリウスだが、やがてそれも限界が来る。
 だが、振り落とされたユリウスの口の端はつり上がっていた。
 そう、霧を吸い上げたということは、動きを押さえつけられていた焔天武后はフリー。
「人々を世界を護る為、全力で……!」
 植物の女神である詩乃のその本性を示すかのような若草色のオーラが、機体を包む。
 人々を思えばこそ、【神性解放】は力を発揮する。
 今や、機体を蝕む霧はユリウスの機転により削がれた。
 焔天武后の飛翔を止められるものは、もはやない。
 剣を構え、浮遊するバジリスクへと追随する。
「そんな饐えた機体から出て、私達と話しましょう! レイヤードが腐り始めた水だというのなら、それを清めるのが、私や……あなた達の仕事のはずです!」
『そんなものは、理想なんだよ!』
 があん、と機体同士がぶつかり合う。
 重量差は明らかであり、弾き飛ばされたブレイジング・バジリスクの片腕、一体化したライフルが拉げて火花を上げていた。
 それを上肢ごとパージし、その瞬間にプラントの搬出口からまったく同じ規格のライフルが飛んできて、すぐに補充される。
 なるほど、ここを戦場に選んだのは、単に広いからではないらしい。
「絶望に向かうと決めたら、元気になるのか? 皮肉だな」
「それだけ元気なら、戻ってこれるはずです。ユリウスさん、そして焔天武后。諦念に囚われたお姫様を救いに行きましょう!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

テイラー・フィードラ
……聞くにアレに乗った者は意志を狂う事になると。
ならば救わねばならんな!

奴が此処まで至る寸前より半壊のキャバリアを蹴り脱出、地に霊体から実体に至ったフォルティに飛び乗り疾走。
うむ、機嫌が悪い?先程の発言を理解したと?後で宥める。すまぬな。

先程より小躯である分回避は容易い。奴の攻撃の回避をフォルティに任せつつ観察。
見るに腕の銃と立ち昇る瘴気……!あれはいかん!死ぬぞ!

呪言を詠唱。思考を分離、強く意識させる事で口に出さずとも複数の言を多重に並べ圧縮。敵の周囲全てより悪魔共の手を生やし瘴気を封じ込めん!
血反吐を吐き捨て、フォルティに命じ接近。瘴気の発生箇所を狙い長剣を突き立てん!
絶対に生還させる!


黒木・摩那
だいぶ手こずりましたが、キャバリアを確保できました。
これで大きさや質量の不利は無くなりました。
あとはキャバリアの腕次第です。
相手はエースですから、だいぶ分は悪そうですが、取り返しのつかないことにならないうちに止めてみせます。

まずは機体質量を減らすために搭載の焼夷弾やミサイルを全弾発射。
支援機を減らします。
軽くなったところで、UC【トリニティ・エンハンス】で【水の魔力】【風の魔力】をシールドに付与。
シールドを氷で覆って防御力を上げ、キャバリアを呪力エンジンを使って【ダッシュ】。正面から突進して【衝撃波】を籠めて【シールドバッシュ】します。

英雄だからって、無理に革命することないと思うんですけどね。



「よーし……だいぶ素直になりました。大分てこずりましたが」
 工場設備の中央、プラント周辺の空洞に辿り着く間際で黒木摩那は、鹵獲したオブリビオンマシンのオブシディアンMk4を掌握し、操縦していた。
 こちらへ至るまでは、マシンにコンタクトをとってマニュアルとシステム掌握に色々と手を回していたため、そこそこ大変な目にあっていたりもしたが、苦労の甲斐あってほんの短時間で実戦レベルにまで引き上げられたのではないだろうか、と自負している。
 摩那が正気のままでいられるのは、ひとえに猟兵であることが第一条件ではあるのだが、サイキッカーであることに加え、高い呪いへの耐性もあったからだろう。
 きっと誰もがこのような無茶をできるわけではない。
 摩那とて無事ではすんでいない。
 コクピットが密閉型でなければ、強烈な負荷で噴出した鼻血をティッシュで無理矢理栓をしていなかったろう。
 女の子だからね!
 オブシディアンを鹵獲したことで、確実に優位に立てるとは限らない。
 メルセデスは専用機を持っているかもしれないし、同型だったとしても彼女は専門家だと聞く。
 にわか仕込みでは簡単には追い縋れまい。
 猟兵としての戦い方が試されるというわけだ。
 そして敵機を鹵獲したと言う事は、その作戦もほとんど掴んだも同然であり、メルセデスが待ち受ける場所もすぐにわかった。
 その場所へと機体のブーストをかけて滑るように工場内を移動していると、大広間の手前で、ひどく消耗した量産型キャバリアを発見する。
 データ照会したところ、ライボステ登録ではなく、どうやら猟兵に貸与されたもののようだ。
「むう、まずいときに見つかったか!」
 近づく摩那に気づいたらしく、屈み込んだ量産キャバリアのコクピットのハッチが内側から蹴破られる。
 中から飛び出すテイラー・フィードラが杖と剣を構えるのを目にして、摩那は機体の両手を上げて制止する。
『待ってください。味方です。とはいえ、すぐに信じろというのも難しいとは思いますが』
「……いや、信じよう」
 攻撃の意思が無いことをすぐさま悟ったらしく、テイラーは武器を下ろす。
 スピーカー越しの声が鼻声だったせいか、それとも数ある猟兵の中には敵機を捕獲する手腕があってもおかしくないと思ったのか、それは定かではないが、とにかく言葉の上では摩那と敵対することはなさそうだ。
 テイラーの強面のせいか、どうにも睨まれているような気はしたが、無用な不信は買っていないことを摩那も内心でホッとする。
 戦いの最中にキャバリアを手に入れた摩那とは逆に、テイラーはキャバリア複数体との度重なる戦いを経たようで、量産型キャバリアがダメージ限界を迎えてしまったようである。
『相手は歴戦のキャバリア乗りです。一度補給に下がられては?』
「いや、その時間も惜しい。……聞くにアレに乗った者は意志を狂う事になると。
 ならば救わねばならん!」
 歴戦といえば、テイラーも一国の王族であったというほどの人物だ。くぐった戦の数で言えば引けを取る事はあるまい。
 しかしながら、それだけに若いとはいえないその身一つで果たして大丈夫だろうか。
「心配はいらん。彼奴に追いつける足は、常に私と共にある。行くぞ、フォルティ!」
 傷ついた量産型キャバリアをぽんと労う様に叩くと、そこから飛び降り様、テイラーは常に自分に付き従う霊馬の名を呼ぶ。
 飛び降りたその場所にまるで最初から居たかのように駆けつける筋骨隆々の白馬がその背にテイラーを乗せると、嘶きとともに首を奮わせる。
「うん? どうした、機嫌が悪いのか? 浮気したように思えたか? 後で櫛を入れてやろう。すまぬな」
 首を押し付けるかのような愛馬の感情の機微をつぶさに感じ取り、駆けながらその首筋を撫でつけてやる。
 キャバリアの乗り心地に年甲斐もなくはしゃいでいたのを聞かれていたらしい。
 とはいえそれはそれ。風を切り裂くように駆ける時が、テイラーはどの局面であっても好きだった。
 それを後ろから追いかけつつ、摩那は、近未来的な金属の建物に不似合いな馬にまたがる姿に苦笑しつつ、それが果たしてキャバリア相当なのか若干、気がかりでもあった。
 まあ、今は自分の心配を優先した方がいい。
 生粋のロボット乗りでない摩那に、多数の武器を積んだキャバリアのポテンシャルをすべて活かすだけのタスクは足りないだろう。
 能力は十分でも、経験がない。
 そんなことはわかり切っていた。
『テイラーさん。広間に侵入と同時に、こちらの飛び道具を使い切ります』
「! 承知した。うまく滑り込むとしよう」
 直前に宣言した事を、テイラーはうまく読み取ってくれたらしい。
 さすがは年の功。摩那も気合を入れ直し、鼻に詰めたティッシュをすぽっと引き抜く。
 広間のゲートが開く。
 願わくば、味方のはずのオブシディアンの姿に一瞬だけでも油断してくれればいいが、そうそう甘くはないだろう。
 赤い、キャバリアの装甲が目につくと同時に、全ファイアリングロックを集中させる。
 テイラーの方に構っている余裕はない。
 ナパーム、ミサイルポッド、ライフルの銃弾を、余すことなく使い切る勢いでぶっ放す。
「さあ、いくつ当たりますかね!」
 コクピットブロック、装甲越しとはいえ、人のそれとは比較にならないサイズの兵器が一斉に砲火を放つその衝撃は、アンダーフレームを固定化しなくてはならないほどの反動が来る。
『ほう、思い切ったな』
 通信ユニット越しに、聞き覚えの無い女性の声が聞こえてくる。ともすれば、彼女がメルセデスか。
 出会いがしらの全弾発射を前にしても、その冷静な声に揺るぎがない事に、摩那の操縦桿を握る手が汗ばむのを感じる。
 テイラーはこの機に滑り込めたろうか。
 そんなことをちらと思いながら、両肩の武装が空になったと同時にパージ。ライフルも撃ち切って投げ捨てる。
 残すは電磁ナイフとシールドユニットのみ。
 これこそが狙い。すべて使いこなせないなら、最初に全部使って、デッドウエイトをすべて排出する。
 無論、機体制動に左右される格闘戦など、それこそ分が悪いかもしれないが、機動力の差はいかんともしがたいだろう。
「相手の想定よりも、頑丈になればいいのです」
 自らが放った弾幕によって、広間は激しい爆炎が上がっている。
 ナパームやライフルはまだしも、誘導ミサイルを振り切るのはいくらメルセデスといえど、簡単にはいかない。
 ひきつけながら腕と一体化したライフルでミサイルを片っ端から撃ち落していく手腕はさすがといったところだろう。
 それを見もせず、摩那は軽くなった機体にユーベルコードを施す。
 【トリニティ・エンハンス】によって、機体に魔法を施すのだ。
 主にシールドユニットに、矢避けの風と水のヴェールを。
 そしてオブシディアンの両足には、前もって宝石型の呪力加速エンジンを仕込んである。
 急ごしらえでいつまでもつかはわからないが、急加速で意表を付ける程度ができればいい。
 そうして摩那が準備をする中で、先に愛馬と共に部屋に駆け込んでいたテイラーは、ミサイル相手に手慣れた様子で迎撃するブレイジング・バジリスクの、その肩より発する黒い霧を見て目を細める。
「なんとおぞましい瘴気だ……あれはいかん。使い続ければ、死ぬぞ!」
 救うと決めた以上は、中身のメルセデスに死なれるわけにはいかない。
 呪言を口中で紡ぎ、それも煩わしく思考を分割、より多層的に、悪魔の手を借りる術を線から面、面から立体を描くかのように多重に詠唱しまとめ上げていく。
 呻きを上げるテイラーの口の端からはこみ上げた血反吐が漏れるが、詠唱をやめない。
 あの煙はよくない。恐らくは、機械を害する類のものだが、それを使う者を何よりも蝕む。
 なぜあのような機械に乗りたがるのか。いや、だからこそ機械が人を欲したのか。
 許し難き呪いのキャバリアよ。
 このままでは接近戦を挑む摩那も危うかろう。急げ。
 眉間に険しい皴と汗を浮かべながら、テイラーは【封縛魔手】を組み上げる。
「寄せろ、フォルティよ! 回避は任せるぞ」
 主の命に、鼻を鳴らして得意げに応える愛馬を頼もしく思い、それを展開する。
「悪魔よ! 俺の命を喰らってでもそいつの動きを止めろ!」
 不可視の悪魔の手が、ブレイジング・バジリスクの肩部を押さえつける。
 途端に煙の出力が弱まり、それを施したであろうテイラーに、メルセデスは狙いを定める。
 スコープ越しに映るのは、馬の上に立ち、剣を構える姿だった。
 乗り移るつもりか!
 バジリスクのライフルから光弾が連発される。テイラーの進路上の地面をえぐるような軌道だが、それを遮るように摩那の機体がシールドを構えて前に出る。
『チッ、まとめて消えろ!』
 奇しくも、摩那の機体が一瞬前に出たことで、テイラーが視界から外れる。
 その瞬間に飛び上がったテイラーの姿は完全に死角であり、また魔法で保護されたシールドは思った以上に頑丈であり、眼前で急加速した摩那のオブシディアンの動きにはさしものメルセデスも反応が遅れた。
 まさか、武器をすべてパージし、シールドで体当たりを敢行してくるとは。
 いや、その方が複雑な火器管制も必要ない。
 激しい衝突音と共に弾き飛ばされたメルセデスの機体が、よろよろと立ち上がる。
 そして改めて気づく。
 キャバリアのエンジンを無力化するはずの霧が、摩那の機体に影響を及ぼしていない。
 その主な発生源である肩部のパーツには、剣で切りつけられた傷がくっきりと残っており、機能を大幅に落としていたのだった。
『あくまでも、邪魔をするか……私が、やらねばならないのだ。英雄ともてはやされたからには、私が革命を……』
 通信機越しに聞こえるメルセデスの声は、明らかに疲労の色が見えた。
「英雄はいつも、非業の死を遂げるものだ。生きているうちにそう呼ばれるお前が、そうまでするのは……許さん。絶対に生還させる!」
「ええ、それにですね。英雄だからって、無理に革命することないと思うんですけどね」
 愛馬に乗り直すテイラーと、その後ろに摩那の機体が立つ。
 このままむざむざ機体にメルセデスを殺させるわけにはいかない。
 一刻でも早く、機体を破壊しなくては。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

エメラ・アーヴェスピア
さて、堕ちた英雄のご登場ね
何でこんな事をしたのかは…まぁ、そのマシンのせいよね
こちらも仕事、止めさせてもらうわ
…私の兵器は、明日を切り開くその為に

再装填(リロード)・『我が元に響くは咆哮』
装甲と弾薬を転送補給、戦闘継続よ
ただ…相手のUCが拙いわね
私の兵器は基本的に魔導蒸気機関で動いているから、文明の違う物でも止めるというなら厳しい戦いになるわ
但しUCを使えば即座に補給は出来るからキャバリアを使っている同僚さん達よりは長く戦えるわ
だからできるだけ派手に動いて盾役に出るとしましょう
かといって放置しようとすれば無人機故の正確な攻撃があなたに牙を向くわよ?
さぁ…目を覚ましなさい!

※アドリブ・絡み歓迎


ミフェット・マザーグース
悲鳴がきこえる
今にも世界におしつぶされそうな声
きっとみんな、この声に引かれてここに駆けつけたんだ

ミフェットは戦えないから、歌を届けるね
空が覆われたこの国は、まるでコンサート会場みたいに、声がよく響くから
戦場から離れてネットワーク端末に侵入、ライボステの音声出力装置を片っ端からから「ハッキング」してミフェットの「歌唱」でみんなを「鼓舞」するよ

UC【嵐に挑む騎士の歌】
♪おしつぶされそうな灰色の空 
大事なものが手のひらからこぼれて 乾いた地面におちていく
取り残されたように唯一人 立ちつづけるのは辛いけど

きっとあなたのその姿は だれかの心の灯火になって
輝く灯火をその胸に きっとだれかが立ち上がる


オリビア・マイスナー
地面なら踏み潰されるかもしれないし、水でも溺れることもあるのよ。どこに居たって変わらないわ。

敵の位置を確認しブースターを吹かし空中を飛翔しながら接近。
敵のライフルは遮蔽物に隠れながらある程度は回避、だけど技量が追いついているはずもないし被弾は当然ね。

だけどこいつはね、そんなんじゃへこたれないわ。
此処が向上だってのは知っている、ならキャバリアのオーバーフレームくらいはあるでしょう。被弾したフレームを破棄し、転がっているフレームと交換。
装甲は薄いけど武装は沢山乗っかっているのね、なら上等よ。
フレームに搭載された多砲による面での射撃を実施、行動範囲を狭くさせ味方の攻撃を当てやすくする様援護するわ



 相手と面と向かって、その鋼と鋼とをぶつけるだけが戦いではない。
 優勢劣勢には翼があり、常にお互いを行き来しているというが、それが傾く理由はいつだってシンプルであり、なかなかに覆らない。
 力の強いものが数を退け、より聡いものが機を見据える。
 その渦中にある正面からのぶつかり合いなど、ただの一場面に過ぎない。
 だから、
『さて、いよいよ堕ちた英雄のご登場ね』
 真鍮時計を思わせる、キャバリアとは文化体系が異なるような遠隔半自動式のロボット。
 魔導蒸気機兵は、エメラ・アーヴェスピアの手によるものを【我が元に響くは咆哮】によって、とあるヒーローに寄せて強化されたキャバリアサイズの人型兵器である。
 最初からおそらく最後まで、本体であるエメラからは離れたまま、無人機ゆえの無茶苦茶な戦い方も可能にしてきた。
 度重なる戦いを経て、ブレイジング・バジリスクの待ち受けるプラント付近の大広間に入るまでに外装であるパワードスーツを再召喚して補給を行ったため、その装甲や重火器のコンディションは新品同様である。
『……コクピットが無い。無人機のようだな。そんなおもちゃで戦うつもりとは、私の本気を見誤ったか?』
 スピーカー越しのエメラの機体が、半自律の無人機であることを見抜き、ブレイジング・バジリスクの機体越しにメルセデスは嘆息する。
 珍しい話ではない。機体に人が乗り込まない方が、戦死するリスクはへるのだから、そういった技術に着目する者がまるでいないわけではなかった。
 そのためのAI試験機などといったものの開発を手伝う名目で、戦う機会がゼロではなかったメルセデスにとっては、無人機の実戦投入は懐疑的だった。
『無人機の利点は、数を用意しても人的資産を浪費しないことだ。単体で運用する是非をここで論ずるつもりはないが……フッ』
 嘲笑の混じる声色。それとは対照的に、極めて実戦的で卒のない射撃。
 弾かれたように横に飛ぶエメラの『咆哮』と、それを追う二射目と、進路上を読んだかのような三射目の合間を掻い潜り、手にした重火器で応射する。
 メルセデスがその卓越した戦闘技術と歴戦の戦闘観による熟達した強さがあるとするならば、『咆哮』の強みは人間離れした反応速度と精度に強さがある。
 機械的なセオリーと、反応の鈍い判断力ではない。そんじょそこいらのAI機とは異なる桁違いの演算能力を経た抜群の精度こそが、メルセデスの偏差を予測して針の穴のような弾道の隙を掻い潜る。
『なんと……ここまで上等のものは、見たことがないな。前言は撤回しよう。しかし』
『あら、ありがとう……でも』
 お互いに二の句は告げない。
 恐らくは、撃ち合ってもまともに決着が決まるとは思えない。
 このままでは埒が明かない。
 装甲を削り合い、出足を封じ合い、それでもいずれメルセデスは疲弊するだろうが、エメラの無人機は疲れを知らない。
 それでも相手の底が見えないのは、嫌な気分だった。
 拮抗しているように感じる筈なのに、このまま埒の開かない戦いを続ける事にどうしようもない嫌な予感を覚えるのだ。
「ミフェット、そちらに変わりはない?」
 ハッキングツールを駆使しながら、ブレイジング・バジリスクの機体情報を探りつつ、エメラ本人はといえば、戦場である広間の防壁近くで自身の機兵が戦う様を密かにドローン越しに見ていた。
 その傍らには、半壊したキャバリアが身を縮めるようにして座り込んでいた。
 既存の兵器を取っ払い、音波兵器を搭載し、直前のメルセデスの部下たちとの戦いでミサイルの雨を真正面から受け止めたミフェット・マザーグースの機体は、ユーベルコードもあったが、全てを無傷で受けるには至らず、広間に到達する頃には装甲に激しい損傷を受けていた。
 ただし中のミフェットはというと、まだ生きているシステムを総動員して、レドーム型の機体で電子介入を試みていた。
 ライボステ全体に対するクラッキングは、参照するデータが膨大であるが、二人で手分けして用途を絞っていけば、いずれは目的に辿りつく。
 戦況を見るならば、レドームを積んでいるミフェットのキャバリアが手っ取り早く、純粋なハッキング能力でいえばエメラに分がある。
 役割を分けるとすれば、広さをカバーするのと、深度を稼ぐものであろう。
「何か近づいてくる……新しい猟兵かな。エメラ」
「ええ、これでピースが揃うかもしれない」
 言葉少なに、好機であることを悟る。
 膠着状態に陥りかけた戦いに、新たな風が入り込もうとしている。
 反攻の時が近いのかもしれない。
 悲鳴が聞こえる。電子の海とも、物理現象とも違うそれは、おそらく空気から感じ取れる誰かの、恐らくはメルセデス本人の心。
 今にも圧し潰されそうな声。きっとみんな、この声に引かれてここに駆けつけたんだ。
 ミフェットは心中で感じ取るそれに、猟兵たちが引き寄せられていると感じていた。
「ミフェット、もうすぐ、オーダー通りに広間の全スピーカーが開くわ。相手も多分、奥の手を取っている。すんごい危ないのを積んでるわ。
 だから、タイミングを見誤らないで」
「わかった……もう一人の子と、合わせよう!」
 壊れかけのキャバリアの手でぐっとサムズアップして見せるミフェットに、エメラもまた応じるようにぐっとその小さな拳を突き出す。
 さて、どんな新人が来るか予想もつかないが、接近スピードからするとキャバリア乗りだろうか。
 だとすれば、まずいかもしれない。
 エメラのハッキングの成果ともいうべき、掘り起こされたブレイジング・バジリスクのデータ。
 対キャバリア用の兵装を積んだ試験機だったらしい。
 奥の手のすんごいやばいのはきっとこれだ。
 これは本腰を入れなくては。
『なんでこんなことをしたのかは……まあ、そのマシンのせいよね』
 機体越しに、エメラはメルセデスに声をかける。
 こちら側に気を向けさせておかねば、お膳立ての意味がないというものだ。
『どうかな。私が名乗りを上げずとも、遠からず人は自ら腐り落ちていくだろうさ』
『大分アンニュイなのね。まあ、こちらも仕事、止めさせてもらうわ』
 『咆哮』が重火器を構えて、横っ飛びに移動しながら銃弾を浴びせれば、バジリスクもまた、つかず離れずの距離を保ったまま反対方向に跳んでお互いに円を描くように銃弾を躱しざま銀色のライフルから光弾を撃ってくる。
 機械的な精密射撃に合わせて対処してくるあたり、メルセデスの腕前が伺えるところだが、それを予想しての撃ち合いだった。
 広間の上部に近い位置のゲートが開く。
 メルセデスが『咆哮』に付きっ切りの状況になった瞬間を見計らったかのような侵入。
 オリビア・マイスナー(Assault or Kavalier・f30125)が駆るキャバリアは、それこそ普及型であった。
 オーバーフレーム、アンダーフレーム、それこそ携行する武器も、この世界に限って言えばいくらでも替えが利くといっても過言ではないだろう。
 癖のない機体を、まったく卒なく使い、時には無茶もさせる。壊れても替えが利くならいくら壊しても、痛むのは懐具合程度なものだ。
 故にこそ、オリビアの介入は、大変に合理的な判断に基づいた、支援射撃であった。
 幸いにしてバジリスクは撃ち合いの真っ最中。十字砲火にはうってつけのタイミングであった。
『くっ、新手か……!』
 ブーストを吹かしつつ、キャバリア用のアサルトライフルによるばら撒き。
 支援射撃としては十分である。
 銃撃とは、なにも急所に当てるだけが能ではない。
 単発火力でなく、単体で幕を張れるほどの銃弾がばら撒ければ、その場を退かないわけにはいかなくなる。
 オリビアはキャバリアに乗る教育機関に属する学徒でもある。恐らくは、ミフェットやエメラよりも、キャバリア操縦に関する腕前はある筈だろう。
 戦闘という不特定な因子が介入せず、純粋なキャバリア運用だけならば。
 しかしながら、猟兵として本格的な戦場に赴くのは初といってもいい。
 いつもと戦場の雰囲気が違うことも、相手がオブリビオンマシンであるということも、重圧として圧し掛かってくる。
 それでもオリビアは息を取り乱すことなく、工場設備の遮蔽物に機体を滑り込ませてライフルのカートリッジを交換する。
 こと戦闘に関して言えば、冷静であり判断はドライであるといっていいだろう。
 何故ならば、この世は弱肉強食。ひとたびキャバリアに乗って戦えば、あっけなく爆発四散してしまいかねない。
 冷静に、自分にできることを、いつも通りにこなせなくては生きていけない。
「地面なら踏み潰されるかもしれないし、水でも溺れることもあるのよ。どこに居たって変わらないわ」
 死ぬときは死ぬ。そんなデッドエンドに嵌り込まないよう、精一杯の善処ができるよう、オリビアは常に冷静を心掛ける。
『いい腕だな。だが、教則通りの動きでは、いずれ手詰まりに陥るぞ、ルーキー』
「ッ……!」
 被ロックのアラートと共に、オリビアは機体を反転させる。
 バジリスクの射撃が、続けざまにオリビアを襲う。
 加速された荷電粒子の輝きがまぶしい。
 一方向だけの回避だけでは追いつかれると判断し、遮蔽物を利用して反転を繰り返し被弾を最小限に抑えながらアサルトライフルで応じる。
 機体性能もあるかもしれないが、相手はライボステが誇る英雄。
 悔しいことに、キャバリアにおける戦闘の腕前では及ばないところがある。
 技量差など百も承知。被弾も覚悟の上。
 その先を見ない事には、活路はない。
『そこの子、大丈夫なの?』
『私はオリビア。ちゃんと、受けて大丈夫なところよ』
 すぐそばのエメラの『咆哮』が事も無げに通信に割り込んでくるが、そんなものにいちいち驚いてはいられない。
 猟兵とは、だいたいが規格外である。
 それに比べれば、オリビアはなんと普通なのだろうか。いや、決して普通ではないのだが、突出したものがほぼないといえばそうなのだろう。
 いや、彼女のスタンスはそれこそが、強みである。
 オリビアの支援を借りて、エメラの『咆哮』もようやくバジリスクの機体を捉え始めていた。
 このまま押し切れるかとも思い始めた頃、ゆらりとバジリスクから黒い霧が漏れ始める。
『いけないわ! あの霧は』
 エメラの切迫した声が不自然に途切れる。
 オリビアもすぐに異常に気が付いた。
 機体の反応が悪い。悪いというか、エンジンが止まっている。
 コクピットブロックは補助電源で動いているが、フレームの反応がない。
「嘘……なんとか、しないと」
 凄まじい悪寒がする。それがオブリビオンマシンの、もしくはそれに汚染されたかつての英雄の圧力であることに気が付くと、オリビアの精神も気圧されるものがあったが、それでも冷静さを保つべく、ヘッドセットに手を添える。
 お気に入りのそれに手を触れていると、混雑し始めた頭が整頓をし始める。
 まだ、やれることはある筈だ。
『参ったわね……私の方は系統が違うから大丈夫だと思ったのだけど……』
 エメラの『咆哮』もまた、黒い霧の影響で機体の制動がうまくいかなくなっていた。
 魔導による蒸気エンジンにまで介入するとは、どういう原理なのだろうか。
 そんな疑念は置いておいて、心中では機を伺っている。
 タイミングは、今しかない。
 ぶつん、と、広間に大きなノイズ音が響く。
 ゆらりと近寄ってくるメルセデスの機体もまた、その音に首を傾げた。
『らら、ららら……』
 響いてくるのは、子供の歌声だった。
 広間のスピーカーは既にハッキングを完了していた。
 それにより、積極的に傷つける戦いをしないスタンスのミフェットは、歌を存分に響かせる。
 【嵐に挑む騎士の歌】を。
『♪おしつぶされそうな灰色の空
 大事なものが手のひらからこぼれて 乾いた地面におちていく
 取り残されたように唯一人 立ちつづけるのは辛いけど

 きっとあなたのその姿は だれかの心の灯火になって
 輝く灯火をその胸に きっとだれかが立ち上がる』
 それは誰かに向けたエール。
 立ち上がれど心を折られる者が、報われるようにという祈り。
 人もいない寂しいコロニーで生まれ育ったミフェットにとって、同じように閉じた世界であっても、このレイヤードは嫌いにはなれなかった。
 人々が生きるために広げた世界は、さながらコンサートホールのようにも思えた。
「……子供っぽい歌。でもだから、守らなきゃって思う……立たなきゃ。なんとしても」
 コクピットの中で、オリビアは機体を操作する。
 エンジンが死んでいるなら、機体制御を一時的にコクピットの補助電源に切り替え、フレームを外す。
 こんな戦場のど真ん中で非常識かもしれないが、幸いにしてここはプラントの中心。
 替えのフレームには困らないし、オリビアの機体はその互換性こそが最大の武器になる。
 戦場での【オーバーフレーム換装】など、お手のものなのである。
『いいタイミングだわ。では、こちらも再装填……さあ、もう一仕事よ!』
 霧の影響を受けたパワードスーツを脱ぎ捨て、『咆哮』もまた装備を再召喚させて替えのパーツに着替える。
 二機の機体換装は、ほぼ同時に完了する。
「……砲戦フレーム。装甲は薄いけど武装は沢山乗っかっているのね、なら上等よ」
『仕掛けるわ。盾になってあげるから、手伝ってちょうだい。子猫ちゃん』
『オリビアよ。何度も言わせないで』
 けしかけるようなエメラの言葉に律儀に答えつつ、オリビアは交換したばかりのオーバーフレームの武装を一斉に展開する。
 出し惜しみは無しだ。
 何しろ、替えのフレームには困らないのだ。
『私の兵器は……私たちは、明日を切り開くその為に。いい加減に、目を覚ましなさい!』
 無人機ならではの人間離れした反射神経を利用したスピードで翻弄しようとするエメラと、それを支援するオリビアの砲戦フレームの重火器が火を噴く中で、ミフェットの歌声が響き渡る。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

テリブル・カトラリー
武器改造、キャバリアと合体状態を維持。
シールドを展開、ブースターで敵に向かって躯体を吹き飛ばし。

英雄。聞こえは良いが、実体は誰とも変わらない、人間だ。
射線を見切り、盾受け。破壊されれば左腕の義手黒剣で武器受けし、接近。怪力で敵機を殴る。

日が差さない世界で懸命に生きている、人間だ。
反撃の銃剣を受け、合体を解除。
カウンター『換装・邪神兵器』キャバリアを足場に跳び、
機械刀を敵機右腕に突き刺して相手の懐に入る

兵器に使われるのでなく、兵器を使うのが、人間だ。
右手に持った自動拳銃に、邪神の神気を込め2射
オブリビオンの生命力への攻撃と、メインカメラを破壊する為の二撃目、敵機の頭部へ鎧無視攻撃。意志を委ねるな


ジェイミィ・ブラッディバック
「レイヤードの英雄」さん。貴方の伝説は今日で終わりです。
メインシステム、戦闘モードを起動(【指定UC】発動)。赤いオブリビオンマシンを排除します。

敵の攻撃はクイックブースト(ダッシュ+推力移動+見切り)で回避。粒子バリア(オーラ防御)で防ぎ、パルスマシンガンと肩部ガトリング(制圧射撃+弾幕+レーザー射撃)を引き撃ち。攻撃の手が緩んだところで接近、バリアの構成粒子を吹き飛ばします(爆撃+零距離射撃)。アサルトアーマーとでも名付けましょうか。大ダメージを与えたところで四肢を破壊し、パイロットを救出しましょう。

まぁ、私は好きに生き、好きに死ぬだけです。だから、地下でも飛べるんですよ。こんな風にね。



 激しい炸裂音が広間に広がり、プラントによって製造された部品や資材などといったものをあちこち吹き飛ばしながら、それらが爆ぜる反響音に混じって、ブレイジング・バジリスクもまた同じように吹き飛ばされて地面を跳ね、着地を決めたまま機体を滑らせる。
 黒い靄を吹き出す両肩の兵装は大破し、シールドを兼ねる表面装甲が派手に拉げてしまっている。
 それが役を成さなくなったのを悟ると、武装を切り離していかり肩が随分と痩せた状態に見える。
『……また、新手か。さすがに、奮発したものだ』
 さしものメルセデスとはいえ、多勢に無勢を不利としたか、場所を移そうと考えていたところであった。
 主武装を破壊された以上、これ以上の継続戦闘は大きく不利を取ることとなるだろう。
 要するに離脱を図ろうとしていたところ、反対側のゲートが開いてそれを阻むように新手の猟兵が姿を現したのである。
『一応、降伏しろ。と言っておくが』
 量産型のキャバリアと合体した状態のテリブル・カトラリーがマスク越しに声をかけるが、オブリビオンマシンによって思想を侵食されたメルセデスがそれに応じないことは予想できた。
 機体を破壊しなくては、彼女は止まらない。
 ここを抜けて、その身が朽ちるまで破壊の限りを続けるだろう。
『すまないな。厚意には、甘えられない──』
 律儀に答え、ブレイジング・バジリスクの右手と一体化したライフルが巨大に展開変形する。
『──私は、戦う以外の道を知らない』
 その銃口が剣呑な輝きを湛えると、対峙する二体の猟兵、キャバリア……ウォーマシンもまた、戦闘機動を開始する。
「メインシステム、戦闘モードを起動。赤いオブリビオンマシンを、排除します」
 ジェイミィ・ブラッディバックが、身に纏う様に搭乗するクロムキャバリアの全武装をアクティブに、自身の内蔵する補助AIによる高速演算攻撃予測プログラム【S.K.U.L.D.System】を起動させる。
 激しいエネルギーの奔流。大型に変形したライフルからプラズマレーザーが薙ぎ払うようにして放たれ、テリブルとジェイミィはそれぞれ別々に回避する。
 続けざまに三度薙ぎ払われるレーザーの光跡を、攻撃予測とクイックブーストによる細かなスラスター制御で滑り抜けるように回避しつつ、ジェイミィは手にしたパルスマシンガンと肩部のガトリングガンで応射し、バジリスクの攻撃にいつでも後手から応対できるよう距離を取る。
 いわゆる引き撃ちというやつであり、回避行動をとりながら攻撃をくわえるテクニックである。深追いを誘って攻撃の切れ目を見て攻勢に転じるのが定石だが、メルセデスも然る者であるためか、なかなか乗ってこない。
『……』
 一方で、テリブルはシールドユニットを前面に展開し、射線を見切って回避に専念していた。
 これまでの戦いで、被弾らしい被弾をほとんどしなかったテリブルであったが、続けざまに量産機を相手にしてきたためか、合体したキャバリアが継続戦闘に耐えきれなくなってきている。
 これまでの相手も、奇襲でなるべく速やかに相手にしてきたとはいえ、激しい戦闘機動にフレーム交換や補給もままならなかった状態では、ここいらが限界ということだろう。
 元より単騎で十数体を相手にできるようなスペックではなかったのだ。
 マシン一機でできることなど、たかが知れているということなのか。だが、まだもう一仕事残っている。
 関節部などにダメージ限界を迎えつつあるのを感じ取りながら、機体が動くうちに、テリブルは攻勢に出ることを決める。
 幸いにして、バジリスクは元気に応射してくるジェイミィに対応せざるをえなくなっている。
「英雄。聞こえは良いが、実体は誰とも変わらない、人間だ」
 シールドを前面に、ブーストスラスターのリミッターをカット。機体ごとぶつかるつもりで弾丸のようにテリブルは加速する。
 機体の各所が悲鳴を上げるが、そんなことはもう知っている。
 動けなくなる前に、もう一仕事。
 こちらの接近に気づいたバジリスクが、ライフルを変形させ連射モードで正面から突き崩そうと撃ってくる。
 加速された荷電粒子の炸裂する輝きが積層構造のシールドを焼き、装甲表面を泡立たせて融解させていく。
 だがその程度では止まらない。
 ついにシールドが用を成さなくなり、なけなしの装甲が剥がれ落ちれば左腕一本だ。
 しかしテリブルの左腕は黒剣の擬態変形したものである。
 それが露出する頃には、もう高速で肉薄するテリブルの間合いであった。
 繰り出される黒い拳が、バジリスクの銃身に這う刀身とかち合った。
「日が差さない世界で懸命に生きている、人間だ」
『クッ、機体ダメージを厭わないつもりか……! 戦闘機械め!』
 プラズマの光刃を帯びる銃剣と、テリブルの黒剣の拳が激しい火花を上げる。
 だが、いつまでもそうしていられない。ブースターのリミッターを外した状態のテリブルのキャバリアは今にも圧壊せん勢いである。
 もう一仕事だ。
 ぎりぎり、めきめき、と銃剣を押しのける腕と、機体の壊れ始める音が交錯する中で、ついにテリブルはユーベルコード【換装・邪神兵器】を発動する。
 瞬間、ぞぶり、とバジリスクの銀色の銃身から生じた刃が、テリブルのキャバリアへと突き刺さった。
 だが、その時にはもう、テリブルはキャバリアとの合体を解除し、脱ぎ捨てた機体を足場にくるりと身を翻しざまに引き抜いた機械刀をバジリスクの伸びきった腕に突き刺す。
『機体が囮……!?』
「兵器に使われるのでなく、兵器を使うのが、人間だ」
 メルセデスが抜け殻を斬ったと気付いた時には、既にテリブルに密着されていた。
 機体に取り付いたテリブルを振り落とすべく手を引き寄せようにも機械刀が突きさされた右腕は配線まで焼き切られているようで動きが緩慢である。
 機体を脱ぎ捨てたテリブルの長い髪が撒き上がり、右手に握った大型の拳銃には、ユーベルコードによって一時的に解除した邪神の神気が宿る。
 一撃目は、その力によるオブリビオンマシンそのものを生命力と定義した何かへの射撃。
 続けての二射目は、バジリスクのアイカメラを物理的に破壊する。
「意志まで委ねるな」
『が、あああ……!?』
 頭部メインカメラを破損したメルセデスは、その衝撃よりも、自身の内にある何かを撃ち抜かれたような衝撃に思わず胸を押さえた。
 何か大切なような、忌まわしいようなものが、壊れたような気がした。
 いや、今は余計なことを考えている余裕はない。目の前の敵、敵を排除、排除。
 咄嗟に空いた左腕で無理矢理にテリブルを引き剥がしたところで、今度はジェイミィが迫ってきていた。
『く、う……排除、排除……!』
 混濁し始める意識の中で、強迫観念のようなものだけがメルセデスを突き動かす。
 目の前の敵を倒す。もはや、それだけしか考えられず、操縦桿を握る手は、迫るジェイミィに対してぎこちない動きでライフルで迎撃を行う。
『テリブルさん、後ろへ!』
「任せた」
 自力でバジリスクの手から逃れたテリブルが、ジェイミィの猛攻に巻き込まれないよう離脱する。
 どうやら、なにか激しい攻撃を残しているらしい。
 一方のバジリスクは、メインカメラを破壊されて視界を失い、ライフルと一体化した右腕も性能を落としている。
 左腕で支えながら、レーダーのみを頼りにジェイミィを迎撃するという離れ業を見せるが、やはり精度は大きく低下しているようで、ジェイミィのパルスマシンガンを躱しきれず、足元が崩れたところをガトリングガンで掃射され、ついにその機体を大きく被弾に晒される。
 それでもなお、銃身を庇う様にしてライフルで反撃されては、もはや奥の手を使うしかなった。
 実のところ、カメラが壊れてからはジェイミィは、バジリスクの攻撃を回避していない。
 ジェイミィの機体には、その表面装甲を更に防護する粒子フィールドが展開されている。
 真正面からの攻撃ならばいざ知らず、精彩を欠いた状態の攻撃などは、フィールドの側面に流されてしまう。
 そしてその粒子フィールドは、その構成粒子を炸裂させて強力な衝撃波を生み出すことができる。
 無論、バリアをわざわざ自分から破壊するわけなので、再展開には時間を要するものの、ほとんど密着距離からのその攻勢防壁……仮にアサルトアーマーと呼ばれるそれは、バジリスクの反撃もものともせず、ついにその装甲を完膚なきまでに弾き飛ばすほどのダメージを与えた。
『レイヤードの英雄さん。あなたの伝説は今日で終わりです』
 まだ起き上がろうとするその機体の四肢を破壊し、オーバーフレームを引き剥がすと、ようやく機能停止に至ったらしい。
 外部からコクピットブロックのハッチを開けると、どこか呆けたような顔のまま開いたハッチを見上げるメルセデスがいた。
 憑き物が落ちたような、何も荷物を背負わなくなったその顔つきは、聞いていた話よりもずいぶん若々しく見えた。
 そして、最後のオブリビオンマシンが機能停止したことによって、プラントの活動は再開し、緊急停止していた工場機能と共に、ドームの機能も回復する。
「空……戻ってきたのか……」
 換気のため工場広間の上部が開き、暗かったドームの天井に偽りの空が灯る。
 また、この空か。
 動かなくなったコクピット。その操縦桿から手を放し、見上げる空に手を伸ばす。
 そして、己がしでかしたこと、その重みに眉根を寄せる。
「生き残ってしまったのか……こんなことになってしまって、今更、生きろと……」
 独り言を聞いてしまったジェイミィは、キャバリアを纏ったままふむと顎を撫で、スラスターを起動し、敢えてメルセデスの眼前を通過する。
『まぁ、私は好きに生き、好きに死ぬだけです。だから、地下でも飛べるんですよ。こんな風にね』
 気取ったふうに機体を反転させ、ジェイミィはそのまま展開した工場上部から飛び立つ。
 それを見上げるテリブルもまた、表情には出さぬもののマスクの奥で鼻を鳴らして人知れず去っていく。
 他の猟兵たちも、機能を取り戻したプラントの姿に安堵したかのように次々と去っていく。
 去っていった光跡を追う様に、メルセデスもまたコクピットから這い出す。
 逃げるつもりはない。責は負わねばならないだろう。
 だが、今だけは、彼らの息吹の残る風をこの身に受けていたかった。
「……ワタリガラスか。どこへ行き、何を目指すのだろう……」
 自問するような言葉に、答える者は居なかった。
 広大な地下世界に吹き抜ける風だけが、今は己自身の命を感じさせるだけだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月13日


挿絵イラスト