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断罪の熾天使

#クロムキャバリア

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#クロムキャバリア


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●とある公国の少尉と大尉
 その日の格納庫は、新型機の機動実験があるという事で大層慌ただしかった。
 5m級の機体が何体も収まる大きな格納庫ないを、数百人の整備兵たち絶えずが慌ただしく駆けずり回り、怒号と金属と金属がぶつかり合う轟音が常に鳴り響いていた。
 そんな騒がしい格納庫の中で、まだ少女らしいあどけなさが残る女パイロットが、天使のような意匠を施されたサイキックキャバリア見上げていた。

「これが…私が機動実験をする機体…。綺麗…」

 熾天使(セラフ)の名を持つ機体に見惚れた少女からため息が零れる。
 神話から飛び出てきたような神々しさと、荒々しい鋭角的なフォルムから感じられる強力な攻撃性が混在した美しいフォルムのこの機体は、彼女が所属するバンダ公国が開発した最新鋭機であり、若いながらもサイキックの才能を見出された少女が試験する機体である。

「…でも、こんな綺麗な機体をテストするのが私で本当に良いのでしょうか」

 ぼそりと不安を口にする。
 セラフは国が威信をかけて作っている機体だ。そのテストパイロット役となれば、かかる重圧(プレッシャー)は並大抵のものではない。
 最初は身に余る栄誉でうれしさから心が震えたが、今は不安で一杯だ。思わず機体から目を逸らしてしまい、視線は足元へと向いてしまう。
 そんな彼女に、1人のパイロットスーツを着た青年が声を掛けた。

「やあ、少尉。今日の午後に機動実験をする機体をまた見に来たのかい?」
「大尉!こんにちは!お疲れ様です!えっと、はい。不安になってしまって…つい」
「そうか。まあ、最新鋭機の機動実験だ。緊張するのも無理はない。
 だが、午前中のうちから緊張してがちがちになっても仕方ないだろう」

 大尉は、少尉と呼ばれた女パイロットの隣に立つと、少し力を抜くようにと、ぽんと肩に手を置きながら言った。
 彼は彼女の上官であり、旧型機を巧みに操りながらも戦果を挙げるエースだ。
 本来ならば、最新鋭機のテストパイロットは、彼が成るべきだと少尉は思っている。だからだろうか、無駄だと分かっていてもつい、余計な事を言ってしまった。

「やはり、大尉こそがセラフのテストパイロットをやるべきではないでしょうか。キャバリアを扱う技量も階級も、何もかも大尉の方が上です」
「そのことについては、何度も言っているだろう。俺にはサイキックキャバリアを扱う才能、サイキッカーとしての資質が無いんだ。この機体は少尉以外には動かせない」
「ですが…」

 大尉は、少尉がテストパイロットに決まってから何度か繰り返し伝えた言葉を告げる。
 彼女は高いサイキックキャバリアへの適性から、異例な早さで出世してしまったエリートだ。経験も浅く、不安も強いのだろうと思う。代われるものならば代わってあげたい。
 だが、彼には超能力や霊感と言った非科学的分野に関する才能が全くなかった。
 彼にできることとと言えば、不安に思う後輩を励ますことくらいしかない。

「大丈夫さ、君ならばできる。君には才能があるし、努力もしてきたのだろう?」
「はい…」

 ぽんぽんと励ますように背中を叩いて、大尉は格納庫の奥にある自分の機体の方へと歩いていった。
 そして、少尉は大尉の言葉を嚙みしめながら、熾天使を眺め続けていた。

●暴走
 13:00から始まったセラフの機動実験は、最初のうちは順調だった。
 機体は想定していた通りの性能を発揮して、大きな問題もなく駆動して、的確にターゲットを落として行った。計器にも異常はなく、本部でのモニタリングも問題なし。
 何事も問題なく実験は終わり、セラフも完成に近づいていく…と、誰もがそう思っていた。
 だが、そんな期待は簡単に打ち砕かれた。
 きっかけは、パイロットの変調だった。

「ねえ…オペレーターさん。何か変なんです…」
「どうかしましたか…少尉?」
「声が聞こえるような気がするんです…」
「こちらでモニタリングしている限りでは特にそう言った音声は入っていませんが…。因みに何て言う声が聞こえるんですか」
「…『断罪せよ』と」
「断罪…ですか?」

 震える声で告げられた少尉からの言葉にモニタリングをしていた本部に緊張が走る。
 サイキックキャバリアから搭乗者への精神干渉だ。
 少尉のバイタルサインが大きく乱れ、リアクターからは異様な数値が検出され、ビー!ビー!ビー!と、けたたましい警告音が響く。
 基地本部の熾天使の開発室に緊張が走った。

「声が聞こえる。声が!声が!声が!声が!声が!声が!声が!声が聞こえる!嫌、嫌、嫌、嫌ああああ!!!頭が割れそう!誰か、誰か助けて!機体を止めて!!なんで止まらないのよ!!」

 両手を両耳に当てて耳をふさぎ、頭が割れるような頭痛に身をよじり、髪を振り乱しながら、少尉が叫ぶ。
 本部から機体に対して停止信号を送っているが、全く反応がない。暴走状態だ。
 オペレーターからは、絶えず冷静になるようにと声掛けを続けているが、機体内部から鳴り響いてくる声によってかき消されている。

「助けて…大尉…」

 その言葉を最後に、少尉の意識は闇の底へと沈んでいった。
 そして…。

『我は審判者也。断罪の時は来たれり。さあ、神の裁きを下さん』

 暴走し、オブリビオンマシンと化した熾天使の名を冠した機体は、人類へと裁きの刃を振るおうとしていた。

●暴走した新型機を撃て
「Bonjour!猟兵諸君。早速だけど仕事だ。今からクロムキャバリエに行ってもらうよ」

 オルキテ・タンプル(もう一人の蘭花・f15791)は笑顔でそう告げると、ホログラフィックキーボードを打鍵して、ホログラフィックスクリーンに情報を投影した。

「今回、キミ達に行ってもらうのは、バンダ公国という小国の軍事基地だ。そこで機動実験をしていた最新鋭試作機が暴走してオブリビオン化したから、それを倒してもらうと言うのが全体の流れだよ。OK?」

 予知映像を上映しながらオルキテは説明を続ける。
 スクリーンには、予知映像から切り取った機体や「少尉」と呼ばれていたパイロットの写真などが写っている。

「パイロットについては写真みて分かるようにおねんね中だ。だから彼女に上手く呼びかけられれば、内側から協力してくれるかもしれないね」

 彼女の事をよく知っている人の協力があれば効率的かもねとオルキテは続ける。

「ああ、そうそう。機体の想定スペックについてはボクが(ハッキングして)抜いておいたから確認しておいてね。軍事機密とか気にしなーい。あと、基地の指令にも話を通しておいてあるから、基地にあるキャバリアは自由に使っていいよ」

 そう言うと、オルキテはスクリーンにセラフィム・リッパ-と基地の格納庫に格納されているキャバリアの情報を表示した。
 軍事機密なので勿論、他言無用だ。

「ボクはね、ハッピーエンドの方が好きなんだ。だから少尉さんは助けてあげてくれ。それでは、猟兵諸君。行ってらっしゃい。Je vous souhaite bonne chance!」

 フランス語で幸運を祈るといったオルキテは、グリモアを操作して転送ゲートを開くと、堕天した熾天使が舞う戦場へと猟兵達を送り出すのであった。


しろべびさん
 しゃちーーーっすーーしろへびさんだよー🐍。
 というわけでー、通常シナリオです。久しぶりの3章仕立て。
 みんな大好きロボシナリオ。
 多分、シリアスです。
 ではではー、皆様のプレイングをお待ちしております。

 ●1章
 ・ボス戦です。上手に声掛けができるとボーナスがあるとか。
 ●2章
 ・暴走する機体を追いかけます。
 ●3章
 ・クライマックスです。格好良くボスを倒しましょう。

 参考までに。
 ★…ネタを盛ってもOK。好きにして。
 ☆…アドリブましまし。でもシリアスな感じ。
 〇…アドリブは多少ならばOK。
 ×…アドリブ少な目、プレイングに忠実に。
 他の方と一緒に書かないで欲しい場合は、『ソロ』と書いて下さいませ。
 それではみなさんのプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『セラフィム・リッパー』

POW   :    断罪の剣
【無敵斬艦刀】が命中した対象を切断する。
SPD   :    エンジェルビット
自身が装備する【BS-Fクリスタルビット】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    フォールンウイング
【光の翼】を向けた対象に、【プラズマビーム】でダメージを与える。命中率が高い。

イラスト:棘ナツ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●セラフィム・リッパー
 敵襲を告げる警報装置がけたたましく鳴り響いている。
 基地のあちらこちらから、オレンジ色の火の手があがり、有害物質を含んだ黒煙が立ち込めていた。
 オブリビオンマシンと化したセラフによる攻撃による影響だった。
 ――セラフィム・リッパー。
 それこそが、暴走して堕天した熾天使に与えられたコードネームだ。
 切り裂き魔(リッパー)の名が示すように、セラフィム・リッパ-の周囲には彼女によって細切れにされた哀れな量産型キャバリアたちの残骸が転がっている。
 無事なのはただ1機、国名にもなった紫色の非翠蘭(バンダ)の花を右肩にペイントした大尉の改造量産機であるドミニオンカスタムのみだ。

『審判者である我の断罪を拒むか。甚だ不快なり』
「何が審判者だ。お前はただの暴走したサイキックキャバリアだ。
これだから非科学(オカルト)って奴は信用ならん…。
少尉を返してもらうぞ。可愛い後輩なんでな」
『断る』
「そうかよ。じゃあ、力づくで奪い返させてもらう!」
『やってみるがいい。ニンゲン如きにできるのならばな…!』

 そう言い捨てたセラフィム・リッパ-は、無敵斬艦刀を肩掛けに構えると光の翼を広げて疾走、上空から円を描くような軌道で大尉の操るキャバリアに迫る。
 対する大尉は、RSキャバリアライフルを構えると、ジグザグ軌道で後退をしながら、敵機の予想進路に向けて掃射。経験則に裏打ちされた未来予知じみた偏差射撃で迎撃を試みる。

『無駄だ。そんな豆鉄砲では我は傷つかぬ』
「くっ、これだからオカルト搭載機は…!」
『死ぬがいい』
「嫌だね」

 迫りくる特殊合金製の弾丸を斬りはらい、時に装甲と念動力で弾きながら切り裂き魔は、エースへと迫る。
 彼我の距離は10m弱。既に銃の間合いではなく、剣の間合いだ。
 熾天使は高速で飛翔しながら、エース機に近づくと、すれ違い様に無敵斬艦刀を振るった。

『チッ』
「くっ」

 大尉の類まれなる反射神経と操作技術によって、量産機(ドミニオン)カスタム倒れ込むような体勢でセラフィム・リッパ-の斬撃を躱した。
 だが、完全には躱し切ることができず、無敵斬艦刀の切っ先が掠めたRSキャバリアライフルが爆散し、大尉は武器を失ってしまう。

『武器を失ったか。まあニンゲンにしてはよくやった方だ。
 我が刃によって天に召されることを誇りに思うがいい…』
「まだだ!諦めんぞ、俺は…!!」

 姿勢を立て直しながら、仲間の機体の残骸から使える武器がないかと探す。
 まだ戦える。まだ死んでいない。まだ助けていない。最後の最後まで生きあがいて、生き残って来たからこそ、彼はエースになれたのだ。
 そして、そういう者にこそ、奇跡の女神は微笑む。

「漸く来たか。待っていたぞ、猟兵(イェーガー)!!」

 空中に現れた青白い電気で出来た扉を見て、大尉は叫んだ。
ティファーナ・テイル
SPDで判定を
※アドリブ歓迎.★

『スカイステッパー』で縦横無尽にジグザグしながら『セクシィアップ・ガディスプリンセス』で♥ビーム攻撃を仕掛けます!
避けきれない攻撃には『神代世界の天空神』で空間飛翔して、敵のUCを『天空神ノ威光・黄昏』で封印/弱体化を仕掛けます!
『ジェットストリーム・ラヴハート』でSPDを強化して『ヴァイストン・ヴァビロン』で豪華絢爛な金銀財宝を纏った攻撃をしつつ『ガディスプリンセス・レディース』も含めての攻撃を仕掛けます!
「ロボットだって正義と勇気の神様プロレスラーであるボクと猟兵'sが相手になるよ!」とガッツポーズ!
🔴が付いたら『超必殺究極奥義』で苛烈な猛攻を仕掛けます!


病院坂・伽藍

こっちでの初戦がまさかこんなデカブツとはツイてないっすねー。まあやるけど。
中の人のことも考えたら手足をもぎ取るに限るっす、けどその前に邪魔なものを斬り落としておかないといけないっすね。

後の先で待ちに徹っするっすよー。狙いは【剣閃一閃】での相手の武装を切断することっす。
想定目標は無敵斬艦刀っすけど、何が来ても取り合えず【剣閃一閃】で斬るっす。


中の人への呼びかけ?
言葉が響かない人間ランキングで常に入賞してる自分には荷が重いっすねー。
そういうのが得意な人とか知り合いとか上司とか大尉とか大尉がやれば良いんじゃないっすか?知らないっすけど。

まあやらなかったら、やらせるけどな。



●イェーガー・スクランブル!
「漸く来たか。待っていたぞ、猟兵(イェーガー)!!」

 と、空中に現れた青白い電気で出来た扉を見て大尉は叫んだ。
 電霊使いのグリモア猟兵を象徴する蒼い蘭の花が飾られた青白い電気の扉は、グリモアベースから猟兵達をクロムキャバリアへと送り出す転移門である。
 突如現れた謎の門に注意が向いたセラフィム・リッパ-は、大尉の操る改造量産機への追撃を一旦取りやめると、無敵斬艦刀を構え、転移門の方へと向き直る。

「あの怪しいメッセージの通りに本当に来るとは…」
『猟兵…。異世界より来たりし、忌々しい異端者どもか』

 2機の視線が青白い電気で出来た転移門へと注がれる。
 ―バチン!という雷光が弾ける音が響き、2人の猟兵がクロムキャバリアへと召喚された。

「ロボットだって正義と勇気の神様プロレスラーであるボクと猟兵'sが相手になるよ!」

 雷光が収まると、溌溂とした元気な声が響いた。
 その声を辿ると1人の美しい少女の姿が目に入る。金色の長い髪に同じく金に輝く瞳、猛禽類を思わせる金の翼、豊満な肢体を銀の胸布と腰布が覆っていて、腰布からは金色の鱗に覆われた大蛇の脚が見える。
 ティファーナ・テイル(ケトゥアルコワトゥル神のスカイダンサー・f24123)。ゴルゴンやナルガ、ラミアと言った蛇系の神性に連なる女神の1柱だ。
 彼女は、大尉の操る量産機の前に降り立つと、力強いガッツポーズを決めた。目の前のオブリビオンマシンに対して、大尉はやらせないよというアピールだ。
 そして、ティファーナの後を追うようにもう一人の猟兵が現れる。

「こっちでの初戦がまさかこんなデカブツとはツイてないっすねー。まあやるけど」

 現れたのは、サムライブレイドを左手に持った銀髪の青年だ。
 作り物のような笑顔を浮かべながらぼやいた青年は、右手をポケットに突っ込んだまま、少し猫背な体制で、大尉の機体の前へと歩を進める。
 彼の名は病院坂・伽藍(敗残兵・f29759)。ここではない良く似た別の世界から迷い込んできた新人猟兵である。
 量産機の前までやってきた彼は、ポケットから右手を取り出し、額に当てて大剣を構えた天使を眺めると、うわっ、デカっ、面倒だと大きな溜息を吐いた。

「キミ達がスペシャルな助っ人である猟兵か。ありがとう。よく来てくれた」

 猟兵2人の頭の上から感謝の声が響いた。
 このままでは、防御も攻撃力も圧倒的なセラフィム・リッパ-には勝てなかったと素直に大尉は思う。何せ、国の威信をかけて作っていた最高級機が敵になっていたのだ。使いやすく改造しただけの量産機では、倒し切るのに何もかも足りない。
 それならば、得体がしれないとしても、異世界からの助っ人に頼るしかない。そして不思議なことに一目見た瞬間に、彼らならば信頼できると直感出来た。

「ふふん。あのロボットはボクたちに任せておいて!」
「ま、自分はそこまで役に立たないっすけどねー」

 ティファーナは胸を張って堂々と、伽藍は頭をかきながら適当な感じで答えた。
 そこに、上空で成り行きを見守っていた堕天使からの嘲笑が響いた。

『フハハハハ!!何だ、異世界からの刺客が来たと思ったらただの歩兵ではないか!
 異教の神に刀使いか。貴様らでは審判者である我を倒すことは敵わぬ!』

 オブリビオンマシンは慢心をしていた。
 その小さな体では、鋼鉄の巨体を持つ自分は倒せないと。ニンゲンは弱い。だからこそ鋼を纏い巨人となる。それこそが、このクロムキャバリアにおける常識だ。
 故に彼女は気づかない。目の前に居る猟兵と名乗る小さな2人の歩兵が、常識の埒外の理不尽な存在であることを。

「はっ。倒せないかどうかはその身で試してみるといいっすよ」
「うん!ボクたちのパワーを魅せてあげよう!」
「うっす。自分は後の先狙いで行くっす」
「じゃあ、ボクが仕掛けるよ!」
「お願いする。では刀使いの君は、俺が残骸から武器を探す間の護衛を頼めるか」
「了解っす。泥船に乗った気持ちで安心するといいっすよー」

 猟兵たちと大尉は簡単にポジションの打ち合わせをすると、即座に各自のやるべきことに向けて行動を開始した。
 斯くして、バンダ公国における猟兵の最初の戦いの幕が上がった。

●バンダ公国の激闘① 女神と剣士
「神々の絢爛豪華な全てを見せてあげる!」

 カンペを見ながら詠唱台詞を唱えたティファーナは絢爛豪華な扇情的で魅惑的な姿に変身を果たした。
 ユーべルコード『セクシィアップ・ガディスプリンセス』による変身だ。
 ティファーナは、黄金の大蛇脚でぐるりととぐろを巻くと、強く地面を蹴って、反発したバネのように空中へと飛び出した。

『その黄金の翼は伊達ではないということか。良かろう。
 来い、我が従順なる配下である天使たちよ!」

 舞い散る金銀財宝によって飛翔能力を得たティファーナに向けて、セラフィム・リッパ-は、ユーべルコード『エンジェルビット』の効果で複製し数を増やしたBS-Fクリスタルビットの群れを解き放った。
 クリスタル製の綺麗な本体に小経口のビーム発射孔が付いていて、側面には一対の光の翼が生えている。
 このクリスタルビットは念動兵器であり、セラフィム・リッパ-から放たれる念動力によって自由自在に操作することができる。

『さあ、異教の神を撃ち落とせ!!』

 熾天使の掛け声に従い、クリスタルの体を持った天使たちが宙を舞う。直線的、曲線的、或いはもっとアクロバティックな軌道。様々な軌道を描きながら、天使の群れは女神へと襲いかかる。

「大空はボクにとってはリングと同じ!この程度の攻撃は平気だよ!」

 ティファーナは笑顔でそう言い放つと、黄金の鱗で覆われた大蛇脚で空中を叩いて縦横無尽にジグザグと跳ね回った。
 ユーべルコード『スカイステッパー』。スカイダンサーの十八番だ。
 放たれたビームは空しく宙を斬り、空に黄緑色のラインを残すのみだ。

「さあ、反撃だよ!」

 攻撃を躱したティファーナは、両手の指を合わせてハートを形作ると、プリンセスガディスハートからハートビームを放ち、クリスタルビットを次々と撃墜していく。
 戦況は女神が優勢と言った所だ。

『チッ。伊達に神を名乗っているわけではないようだな。
 あの女神を仕留めるには、かなりの集中力が必要だ。
 ならば…まずは邪魔になるだろう、量産機と刀使いから仕留める方が良いか』

 セラフィム・リッパ-は焦っていた。
 想定していた以上にあの女神を名乗る不埒な輩は強い。エンジェルビットたちは、次々と撃墜され、数を減らしている。
 全リソースをつぎ込まなければ殺し切るのは難しいだろうと考える。だが、女神に対して全てのリソースをつぎ込めば、下に居て怪しい動きをしている男たちが何をするのか分からなくて不安だ。
 ならば、先に男どもを抹殺して女神との戦いに集中するのが、一番勝率が高いと熾天使は判断する。

『天使たちよ。女神を足止めせよ』

 エンジェルビットに指示を出したセラフィム・リッパ-は、光の翼を大きく羽搏かせ、地上で残骸からの武器回収に勤しむ、大尉と伽藍を急襲した。

「おっと、どうやら奴さん、こっちから先に片付けようと方針を変えたみたいっす。
 弱い方から先に片付けようとってことっすかね。ま、事実っすけど…ね」

 背後で残骸漁りに勤しむ大尉に向けて、伽藍は、上空から迫るセラフィム・リッパ-を睨み続けながら言った。
 右手をサムライブレイドの柄に当てて、カチャリと鯉口を斬る。

「俺があいつの剣を叩き斬って隙を作るっすから、大尉さんは少尉さんに声掛けよろしくっす」
「…その刀であの全長5m近くある無敵斬艦刀を叩き斬るってのかい?」
「…そのつもりっす。無理だと思うっすか?」
「いや、キミ達ならばできるんだろう。声掛けについては、彼女は俺の部下だ。やらせてもらおう。ちなみに君からは何かないのかい?」
「言葉が響かないランキングで常に入賞している自分には荷が重いっすねー」
「なんだそれは。初めて聞いたぞ。一体、どこの調査なんだよ」
「決まってるじゃないっすか。自分の調査っすよ」

 軽口を交わし合いながらも、伽藍はタイミングを図っていた。
 敵は全長5mのキャバリア用の戦艦すらも叩き斬ると謂われた剛剣、無敵斬艦刀を操るセラフィム・リッパ-。
 間合いも速度も力強さも何もかもが敵の方が上だ。しかも使うユーべルコードは互いに絶対切断の力を宿した武器で切り裂くという同系統のものだ。
 勝率は、緩く計算しても2割あればいいというくらい厳しいものだ。

『矮小なニンゲンの身で我が無敵斬艦刀に勝てると思い上がるか。
 その慢心ごと、断罪をしてくれる!』

 光の翼と位置エネルギーで加速したセラフィム・リッパ-は絶対切断の力を宿した無敵斬艦刀を掬い上げるように振るう。

「はっ!その言葉、そっくりそのまま返してやるぜ」

 メッキが剥がれ、粗野な口調へと戻った伽藍は、赤い瞳を見開くと、振り上げられた無敵斬艦刀に向けて跳躍し、刃を振るう。

「剣刃一閃!」
『断罪の剣!』

 絶対切断の力がぶつかり合い、金属と金属がぶつかり合う音が響き、火花が舞った。

「っしゃぁ!とったぜ!」
『なん…だと…!』

 くるりくるりと無敵斬艦刀の剣先が宙を舞った。
 失った刃先を見て、セラフィム・リッパ-が呆然と立ちすくむ。

「今だ、行けっ!」
「ああ!!少尉!いつまで寝惚けている!!
 戦場でいつまでも寝坊していいなんて指導した記憶はないぞ!!」

 伽藍が落下しながら叫び、大尉はスラスターを噴かせて呆然と立ちすくむセラフィム・リッパ-に向けて、大声で少尉に呼びかけながら吶喊を仕掛ける。

「目を覚まして操縦桿を握れ!機体に乗られるな!
 俺たちパイロットは、機体を乗りこなすものだ!そうだろ!少尉!」

 セラフィム・リッパ-の装甲にBX-ビームブレイドを突き立てながら大尉はパイロットの心得を叫び続ける。

『無駄だ。この小娘の意志は私が掌握してい…』
「…無駄ではありません」
『何っ!?』
「…大尉、ありがとうございます…おかげで何とか…目が覚めました」
『チッ。貴様らアアアア!!!』
(色恋の欠片もない体育会系なノリが効いたっすねー)

 機体ダメージによってセラフィム・リッパ-による精神干渉が弱まった。敬愛する上司である大尉の叱責は、少尉の耳に届き、一時的な意識の覚醒を促す。
 1つの機体にバラバラの2つの意識が宿る。相反する2つの思念は、強力なノイズとなり、機体から発生する念動力を大きく乱した。
 ぼとり、ぼとりとクリスタルビットが地に堕ち、ガシャンとガラス製品が割れる音が戦場に響き渡った。
 
「私の意識があるうちに…早くこの機体を止めてください…」
『おのれ、おのれ、おのれええええ!!!』

 操縦桿をぎゅっと握りながら、お腹から絞り出すような声で少尉が言った。
 意識を保つだけで精一杯と言った様子だ。

「セラフのコックピット周りは特に丈夫に作られている。
 問題ないから全力で頼む!」
「任せて!」
『…しまった!?』

 上空で水晶の天使たちとドッグファイトを演じていた筈のティファーナに向けて大尉が叫ぶ。
 女神を空中で閉じ込めていたエンジェルビットはみな、地に堕ちた。最早、彼女を止められるものは何もない。

「レディースの能力(チカラ)を今こそ見せる刻だよ!」

 ティファーナの呼びかけに応え、レディースたちが現れる。
 召喚された彼女たちは、散開すると空中に金色の幾何学模様の魔法陣を描いた。
 そこに躊躇なく飛び込み、超加速したティファーナは、続けざまにもう1つのユーべルコードを詠唱する。

「神々の無限の宝物庫の真の効力を!」

 それは財宝を消費することで絶対成功を約束する強力なユーべルコードだ。
 キラキラと輝く財宝の一部が消費され、超加速した女神の進行コースが不自然に捻じ曲がる。

「さあ、少尉さんを返してもらうよ!」
『やめろ!!来るなアアアア!!』

 レディースが作り出した空中加速射出魔法陣(カタパルト)によって超加速した女神の金銀財宝を纏った絶対成功の飛び蹴りが、セラフィム・リッパ-に炸裂した。
 
『ああああああああああああ!!!!』

 胸部に強烈な打撃を受けたセラフィム・リッパ-は、地面に背中から斜めに叩きつけられると、バウンドしながら倉庫へと突っ込んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン

(キャバリア・ロシナンテⅣに搭乗、●ハッキング直結●操縦で追従性高め)
ご無事ですか、騎士として助太刀いたします!

搭乗者を必要とし、その意志に反する
自我持つ機械としてはその完結性の無さに同情いたします
貴女の戦う意志はそんな機体に歪められるものでは無い筈です、少尉

(刀のリーチをセンサーの●情報収集で計測
●武器受け盾受けで剣の腹を叩いて逸らし●かばい、サブアームで2丁のRSライフルを大尉に●投擲)

ご協力頂けますか、大尉殿
恐らくこの場で一番に少尉の意識に声を届かせることが出来るのは貴方の筈です

UCで突撃…中に格納銃器●スナイパーだまし討ちで刀握る手近距離狙撃
すれ違い様に●怪力で一太刀浴びせ

大尉殿!



●立ち上がる熾天使
 猟兵達の連携攻撃によって機械熾天使は、無人の倉庫へと叩きこまれた。
 ド派手な破砕音と共に、真っ白い土煙がもくもくと立ち上がり辺り一面を覆った。 この土煙が晴れるまでは、中の様子は伺い知れない。

「あれだけの攻撃を受ければ、さすがにセラフと言えども…」

 機能停止をするだろうと、大尉が言いかけた時だった。
 崩れかけた倉庫から、大量のBS-Fクリスタルビットが射出され、基地の司令部がある方角に向けて飛び去って行った。

「まだ動くのか、化け物め!しかもよりにもよって司令部に向けてビットを飛ばしやがった!このままでは、不味い。誰かが司令部を守りに行かないと!!」

 掃射モードに切り替えたRSキャバリアライフルでビットの一部を撃ち落としながら大尉が叫んだ。
 基地の主力がセラフィム・リッパ-によって切り裂かれてしまったため、司令部は手薄になっている。消火や救助で動いていて、戦闘用のキャバリアに乗っていない隊員も多い。
 誰かが、基地を守りにいかねばならないだろう。

「そうか。キミ達が行ってくれるか。ありがとう。
 俺は、何とか少尉を取り戻せないか頑張ってみるよ。司令部を頼んだ」

 司令部への救援に名乗り出てくれた猟兵達に向けて感謝の意を表して敬礼をすると、すぐに倉庫の奥から現れるだろう機械熾天使に向けて注意を向ける。

『よくもやってくれたな。貴様らの罪は100回刻んでも消えはせぬ。
 さあ、我が、断罪の剣を受けて罪をあがなうがいい』

 白い土煙の奥から緑色に光る2つのアイセンサーの光が輝く。
 そして、真っ白い土煙の中から、胸部に大きな穴を開け、剣先が断たれた無敵斬艦刀を手にしたセラフィム・リッパ-が現れ、大尉に襲い掛かった。

●絶体絶命!!
『相変わらずしつこいな貴様!』
「しぶとさだけが取り柄でね…。彼らに少尉を助けるために頑張ると言った手前、簡単に死ぬわけにはいかないのさ!」

 ボロボロになった戦場の中央で2機のキャバリアが剣戟を踊っている。
 戦況は、斬艦刀を装備したセラフィム・リッパ-が優勢だ。量産機に乗っているパイロットは腕がよく、圧倒的な機体性能差の中でも、何とか食らいつき、致命傷を逃れている。
 だが、攻撃を受ける度に武器が欠け、無敵斬艦刀が掠った場所の装甲が剥がれ落ち、所々、中の配線が見え始めていた。
 あと、1回、2回、斬り合えば、忽ち機能停止へと追い込まれるだろう。

『さあ、今度こそ終わりだ。審判者である我の断罪の剣を受けて、絶命せよ』
「…ここまでなのか…」

 セラフィム・リッパ-の掲げる無敵斬艦刀に絶対切断の力が宿っていく。エネルギーが斬艦刀の刀身に集まり、白く光り輝いていく。
 罪人に死を齎す裁きの刃が、今、大尉の頭の上から迫ろうとしていた。

●バンダ公国の激闘② 機械騎士
「ご無事ですか、騎士として助太刀いたします!」

 断罪の剣を振り下ろそうとしていた熾天使の横合いから大型のタワーシールドを構えた白に紫のラインが描かれた騎士甲冑型のキャバリア『ロシナンテⅣ』が、スラスターを噴かせながらチャージを仕掛けた。

『何っ!?』

 不意に横合いから吹き飛ばされた熾天使は、受け身を取り損ねてゴロゴロと穴だらけのアスファルトを数メートル転がった。
 
「増援か。助かった。俺はバンダ公国の大尉だ。
君も先ほど助けてくれた彼らと同じ猟兵なのだろう?」
「ええ。騎士のトリテレイアと申します」

 騎士甲冑型キャバリア『ロシナンテIV』を操るトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、ボロボロになって尻餅をついていた大尉の操る改造量産機に手を貸しながら、簡単な自己紹介をした。
 この『ロシナンテⅣ』は特殊な操作体系を取っていて、トリテレイアのハッキングによる直結操作によって非常に高い追従性を誇るという。
 武装も普段彼が使っているものを、キャバリアサイズにスケールアップしたものを採用している。5mというキャバリアサイズに巨大化したトリテレイアと言った所だろう。

「搭乗者を必要とし、その意志に反する。
 自我持つ機械としてはその完結性の無さに同情いたします。
 貴女の戦う意志はそんな機体に歪められるものでは無い筈です、少尉」
「ああ、そうだ。君がセラフを操縦していたならば、受け身の取り損ねなんて無様は晒さない筈だ」

 無敵斬艦刀を杖のようにして立ち上がるセラフィム・リッパ-と、機体の中で気絶している少尉に向けて、トリテレイアと大尉が声を掛ける。

『貴様らぁ!!審判者である我を愚弄するか!!』
「…………」

 機械騎士と大尉の言葉にセラフィム・リッパ-は激昂する。
 生まれながらの強者であるオブリビオンマシンは、同格以上との戦闘経験が非常に乏しかった。『セラフィム・リッパ-』の元になった『セラフ』はこれから完成する機体であったし、『セラフ』の核となった元の機体自体も自立式のキャバリアとして設計された機体ではなかった。
 本来ならば、機体の経験不足をパイロットの経験が補う筈だった。だが、自分こそが審判者であると思い上がったオブリビオンマシンは、パイロットの意識を封じてしまった。
 故に、先ほどのような無様を晒したのだ。そして、その事は、オブリビオンマシンであるセラフィム・リッパ-自身が一番わかっている。だからこそ、彼女は激昂した。

『おのれ、おのれ、おのれえええ!!断罪してくれる!!』

 狂乱したような女性の機械音声が、熾天使型キャバリアから響き、機体から迸るサイキックエナジーが、無敵斬艦刀の刀身を白く輝かせた。
 UC『断罪の剣』。セラフィム・リッパ-が最も得意とするユーべルコードだ。
 機械熾天使はアスファルトを蹴り、機械騎士とボロボロになった改造量産機に断罪の剣を振るおうと、戦場を駆けた。

(…無敵斬艦刀。対キャバリア輸送戦艦兵器。
 全長4m…いえ、先が欠けているので全長3.5mといった所でしょうか
 刀身に正体不明のエネルギーが充填。まともに受けない方が良いでしょう)

 トリテレイアは、機体に搭載した各種センサーで相手の武器を冷静に分析する。
 次に行動分析。敵は頭に血が昇っている。戦闘経験は浅く、プライドが高く、独善的で自分の力に絶対の自信を持っていることが言動や行動から透けて見える。

「罵倒された大尉に向けて真っ直ぐ一直線に。最も火力がでる上段からの振り下ろし。
 感情に振り回されすぎです。分かりやす過ぎますよ、貴女」
『何っ!?』

 スラスターを噴かせ、急加速しながら左足を軸に旋回、大尉の機体の前へと躍り出たトリテレイアは、旋回のエネルギーをそのままに、セラフィム・リッパ-が振り下ろそうとしていた無敵斬艦刀の腹にぶつけた。
 無敵斬艦刀の軌道が大きくぶれて、何もない場所を切り裂き、さくりとアスファルトをバターのように切断する。
 さらにサブアームを展開したトリテレイアは、2丁のRSライフルを投げ渡す。

「ご協力頂けますか、大尉殿。
 恐らくこの場で一番に少尉の意識に声を届かせることが出来るのは貴方の筈です」
「当たり前だ。寧ろ、それはこちらからお願いしなければならないことだ。
 頼む、俺に少尉の目を覚ませてくれ!」
「了解しました。では、私が先行します!後は頼みましたよ」
「ああ、任せろ!」

 アスファルトを深く切り裂いた無敵斬艦刀を引き抜こうとしていたセラフィム・リッパ-に向けて、スラスターを突撃モードに変形させたトリテレイアが、吶喊攻撃を仕掛ける。

『くっ、速い』
「貴女にもう武器は使わせません」

 ロシナンテⅣの装甲の一部が展開して黄金の格納銃器が現れる。トリテレイアの本機にも搭載されている十八番のだまし討ちようのギミックだ。当然、ロシナンテⅣにも採用されている。
 彼が狙ったのは、無敵斬艦刀を握る左手だ。武器を握る手を潰すことができれば、後で来るだろう大尉の安全を確保することができる。
 パンという炸薬が爆ぜる音が響き、対キャバリア用の特殊弾頭が発射され、違えることなく、機械熾天使の左手の指を吹き飛ばした。

『…!しまった!ぐうううう!!!
「大尉殿!」
「ああ!任せろ!!」

 武器を取り落としそうになり、硬直してしまったセラフィム・リッパ-に対して、トリテレイアはすれ違いざまに、長剣による流し切りを仕掛ける。
 突撃モードのスラスターによる加速によって強化された長剣による一撃は、機械熾天使の体勢を大きく崩し、よろめかせる。
 そこに、RSキャバリアライフルを掃射しながら大尉が近づいていく。

『やめろ…やめろおおおおお!!!』
「少尉!!目を覚ませええええ!!」
「…………!」

 ありったけの弾丸を撃ち込まれたセラフィム・リッパ-がついに静かになった。
 がくりと膝を落として、機械熾天使は力なく項垂れる。
 そこに大尉が取り付くと、接触通信を使って声を掛け続ける。

「少尉!!」
「聞こえていますよ。大尉。すみません。
 先ほどの猟兵の方の攻撃の衝撃が凄すぎて気絶していました」
「お…おう。そうか」

 機械熾天使は沈黙し、少尉は意識を取り戻し、無事に事件は解決した。…本当に?

大成功 🔵​🔵​🔵​

ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード

そもそも断罪って何の罪でなんだろう。
まあ、何にせよ大人しく受け入れる気もないけどさ。

さて、とりあえず予め【如意伸躯】で相手と同じくらいまで巨大化しとこうか。
声をかけるとかはなんて言えばいいかよく分からないし、大尉さんにでも任せよう。
とりあえず掴んで動きを止めればいいかな。

丁度良くその辺にキャバリアの残骸がいっぱい落ちてるし、
どんどん拾って投げつけて牽制しながら近付こうか。
剣の間合いに入ったら、体を一瞬だけ小さくすることで斬撃を回避。
すぐにまた大きくなって相手の両手を掴んで剣を振れなくするよ。

後は適当に大尉に声をかけてもらいつつ、
コックピットから離れた所に噛みついて齧り取って壊していこうか。



●前回のあらすじ
 機械騎士と量産機乗りの大尉の攻撃によってセラフィム・リッパ-は大破し、沈黙した。キャバリアからの精神干渉もなくなり、少尉も意識を取り戻した。
 バンダ公国の軍事基地で起った最新鋭試作機の乗っ取り事件もこれで解決した…と、誰もがそう思っていた。

●異常
「えっ。嘘、自己修復機能…?そんな機能。私は聞いていないわ」

 モニターに表示された見慣れない特殊機能を見つけた少尉は、困惑をした声を上げた。機動実験をする今日の午後までに、何度も見直した仕様書には、こんなこと書かれていない。
 コクピットフレームに内蔵されているプログラミング用のキーボードを使い、手動での停止を試みるも、全く止まる気配がない。

「駄目っ。止まらない。大尉!猟兵さん!気をつけて!セラフが再起動します!」
「なんだと…どれだけタフなんだ。この化け物は…」

 バチっと電気が弾ける音が響き、緑がかった白い雷が、セラフィム・リッパ-の装甲に走り、機体の損傷を修復する。

『断罪スベシ。断罪スベシ。断罪スベシ。我らは審判者也。正義は私タチにアリ。
 悪を許すナ。私タチは欺瞞と汚職に満ちた国を、裁くモノ。正義を為すモノ
 道ヲ間違エタ愛しキ祖国を正しク導くモノ…』
「…くっ。また、精神干渉が。誰…、貴女は…。さっきとは別の…きゃあああ!!」
「少尉!」

 ノイズが掛かった女性のものと思われる合成音声が響く。
 断罪セヨ、断罪セヨ、断罪セヨと、壊れたラジオのように同じ言葉を繰り返しながら、機械天使は水晶で出来たビットを撒き散らし、再び空を舞った。
 大尉はエンジェルビットの対処を猟兵に任せると、1人、ボロボロになった機体を操作して、セラフィム・リッパ-を追うのであった。

●最後の戦い
『断罪セヨ。断罪セヨ。断罪セヨ。断罪セヨ。悪を、腐敗を許すナ。断罪セヨ』
「追いついたぞ。セラフィム・リッパ-!今度こそ少尉を返してもらう!」

 光の翼を広げ宙に浮かんだボロボロの熾天使に向けて、同じくボロボロになったカスタム量産機に乗った大尉が叫んだ。
 壊れかけのセラフは、ざあざあと砂嵐が掛かったような合成音声で、ただ同じ言葉を叫び続ける。

『断罪スベシ!断罪スベシ!悪を許すナ!腐敗を許すナ!正義は我らにアリ!』

●混沌獣
「そもそも断罪って何の罪でなんだろう。
 まあ、何にせよ大人しく受け入れる気もないけどさ」

 ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)は、頭上の機械熾天使が狂ったように叫ぶ『断罪』という言葉に疑問を抱き、首をかしげた。
 断罪とは、罪を裁くこと、或いは罪に対して判決を下すことと定義されている。一体あの機械熾天使が、何を罪と定め、裁きの凶刃を振るうのか。それは当然の疑問である。
 過ぎ去った過去である骸の海から這い出てきたオブリビオンマシンなのだから、現在を生きていること自体を罪と定義している可能性は非常に高い。だが、それ以上の何か、執着があるのではないかと、ペトニアロトゥシカは感じた。
 とはいえ、それが何なのかさっぱり分からない以上は、さっさとオブリビオンマシンを破壊する他はない。

「ちょっと大きさを変えようか」

 ユーべルコード『如意伸躯』を発動させたペトニアロトゥシカは、身長をキャバリア同じ、約5mまで巨大化させると、オブリビオンマシンと戦う大尉を助けるべく、穴だらけのアスファルトを蹴った。

●バンダ公国の戦い第一部③ 混沌獣&量産機エースvs熾天使
「大尉さん、手伝いに来たよー」
「すまない。よろしく頼む」

 本日3度目の猟兵との会合で慣れてしまったのか、全高5mの巨大なキマイラを見ても大尉は特に動じず、その存在を受け入れると、早速、ペトニアロトゥシカに協力を要請した。

「一度、猟兵たちと協力して大人しくさせたんだが、どういう訳だか不明だが、復活してまた動き出してしまった。何か不可思議な、超常的な力が働いているんだろう。
俺たちだけでは、対処不可能な案件だ。助けてくれ」
「うん、任せてー。あたしが動きを止めるから、大尉さんは声掛けをよろしくねぇ」
「ああ、了解した」

 2、3言葉を交わして情報共有と動きの確認をすると、ペトニアロトゥシカと量産機を駆る大尉は、戦場を駆ける。

『断罪スベシ!断罪スベシ!我ラハ、私タチハ、正しイ!』

 大尉とペトニアロトゥシカが動き出したのとほぼ同時に、セラフィム・リッパ-も再び動き出した。本当ならばもう少し、傷を再生させたかったのだが、敵が動き出したならば、自分も動かなければ危ない。
 最低限、前回の戦闘で破壊させられた左手の指を復元すると、無敵斬艦刀を構え、地を駆ける猟兵を緑色に光るアイセンサーで捕捉する。
 そこには、何か鉄の塊のようなものを拾い、こちらへと投擲してくる猟兵の姿が映し出されていた。

「とりあえず掴んで動きを止めればいいかな」

 そう考えたペトニアロトゥシカは、その辺に落ちていたキャバリアの残骸を掴むと、怪力を活かして、機械天使に向けて全力で投擲した。
 轟と風を切った特殊合金の塊が、セラフィム・リッパ-に迫る。

『断罪スベシ!断罪スベシ!キャバリアの残骸ノ不法投棄ハ悪デアル!』

 機械熾天使は無敵斬艦刀を振るい、飛んできた残骸を斬り落とす。
 その隙を狙い、女キマイラは距離を詰めると、続けざまに拾った残骸を投擲する。

『無駄ダ!』

 セラフィム・リッパ-は巨大な刃物を器用に操り、投擲物を再度斬り落とす。

「じゃあ、これはどうかな?」
『チッ』

 ペトニアロトゥシカが残骸を投擲した地点から120度くらい左の方向から、大尉の援護射撃が飛来、ボロボロになったセラフィム・リッパ-の装甲に、特殊合金の弾丸が叩きこまれ、注意が大尉の方へと引き寄せられる。
 この隙をついて、キマイラの猟兵は一気に距離を詰める。

『コノ程度の奇襲。私が気ヅイテ居ないトデモ?』

 大尉の量産機から放たれる特殊合金の弾丸を無視して、機械熾天使はペトニアロトゥシカの方へと向き直った。
 RSキャバリアライフルの攻撃よりも、未知数の猟兵の方が危険であると正しく判断を下した結果である。

『ココハ剣の間合イダ!私ノ断罪の剣を受けて死ンデ罪を贖エ!猟兵!!』

 絶対切断の力を宿した無敵斬艦刀がペトニアロトゥシカへと迫った。
 剣の軌道は、胴体から真っ二つになるようなコースだ。

「おっと」
『何…ダト…!?』

 全高5mあった筈のキマイラの猟兵の身長が頭側を軸に一瞬で縮まり、分厚い無敵斬艦刀の刃が彼女の足元の空を切った。
 機械熾天使から、動揺の声が漏れ聞こえる。

「捕まえたよぉ」
『シマッタ!?』

 再度巨大化したペトニアロトゥシカは、セラフィム・リッパ-の両腕を押さえると、その勢いのまま相手の背中を割れたアスファルトに叩きつけた。

「今だよぉ。大尉さん!」
「ああ!ありがとう!少尉!少尉!」

 すぐさま、大尉の操る改造量産機が近づき、接触回線で少尉に呼びかけた。
 機械熾天使は、最初のうちは抵抗していたが、エネルギーが尽きたのか、ばたりと大人しくなると、ピクリとも動かなくなった。
 そうして動かなくなってから少しした後に、中から女性の声が響いて来た。

「大尉…。猟兵さん。本当に何度もすみません。何とか目が覚めました」
「いや、今回の件は仕方がない。明らかに我々の手を越えた超常現象だ。
 猟兵さん、セラフの四肢を壊して、完全に動けなくしてくれないかい」
「了解だよぉ」

 そう言うと、ペトニアロトゥシカは鋭い牙を以て、セラフィム・リッパ-の四肢の関節を噛み砕いた。
 これならばもう動けないだろうと、猟兵と公国兵の2人は安堵の息を吐くのであった。
 続く!

大成功 🔵​🔵​🔵​

水鏡・怜悧

詠唱:改変、省略可
人格:ロキ
アノンに押しきられて手にいれたオブリビオンマシンですが……実戦で使うのは初めてですね。少々気は進みませんが、性能確認といたしましょう(内心は少しワクワクしている)

おや、戦闘はもう終わっていましたか?
雷属性の触手で相手を電子スキャンし情報収集。危険があれば大尉を庇います。液体金属で出来た機体でブラズマビームを受け止め、貫通する前に雷属性の触手で干渉し消滅させます

「大尉、貴方の正義は何ですか?」
「では少尉、貴女の正義が何なのか、教えて頂けませんか?」
相手の機体と組み合って、隙間から液体金属を侵入させます。大尉の声に反応した部分を相手機体から切り離し抉り出しましょう



●前回のあらすじ
 猟兵達の手によって1度倒されたと思われた機械熾天使は、再起動を果たすと再度大尉たちに牙を剥いた。
 大尉は新たに現れた4人目の猟兵と共闘すると、何とか再度の撃退を果たし、四肢を完全破壊することに成功するのであった。

●大尉と少尉
 ボロボロになった公国軍基地の一角で、ボロボロになった2機のキャバリアが向かい合っていた。
 1機目は、右肩に翡翠蘭(バンダ)の花が描かれた国旗をペイントした量産機。大尉の『ドミニオンカスタム』である。
 全身ボロボロでどこも無事な所がないと言った様子。関節からはオーバーワークによる黒い煙が上がっていて非常に危険な状態だ。
 もう1機は、暴走新型試作機であるセラフィム・リッパ-こと『セラフ』だ。
 こちらも酷い有様で、全身ボロボロ。武器の先端は切り取られ、紛失。四肢の関節はバッキバキに噛み砕かれている。
 この2機は今、基地本部のスタッフによる回収待ちの状態である。激闘に次ぐ激闘によってボロボロになったこの2機は、自力で格納庫まで戻れない状態だ。
 その為、一緒に戦っていた猟兵に、回収要員を呼んできてもらっているのだ。
 それが彼らの現状である。

「そう言えば、少尉。さっき乗っ取られる前に妙なことを言っていなかったか?」
「はい。そのことなんですけど、実は…」

 大尉が何気なく少尉に尋ねた疑問。これこそが今回の事件の根幹に関わるような重要なものであった。

●ロキとケルベロス
「アノンに押しきられて手にいれたオブリビオンマシンですが……実戦で使うのは初めてですね。少々気は進みませんが、性能確認といたしましょう」

 UDCの液体金属で構成されたオブリビオンマシン『暴食の王ケルベロス』に搭乗した水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)は、気が進まないと言いつつも少し楽しそうに呟いた。
 今の彼の人格は、緑色の瞳をしていることから、ロキだと分かる。知的好奇心が強い人格であるロキは、初めて本格的に動かすオブリビオンマシンの性能に内心ワクワクしているようだ。

「では、大尉と合流しましょうか」

 そう言うと、ロキは、液体金属の機体を動かし、地面から来る振動や操作感覚を楽しみつつ、穴だらけのアスファルトを越えて、大尉の元まで機体を動かしていった。

●最後の抵抗
「おや、戦闘はもう終わっていましたか?」
「ああ、何とかな。君たち猟兵の助っ人によって何とかセラフも大人しくなった」
「ご迷惑をお掛けしました」

 ロキが大尉と合流した時には、既に戦闘が終わっていた。
 少尉も意識を取り戻していて、会話も可能な状態であった。
 ただ、度重なる戦闘によってフレームがぐちゃぐちゃになってしまっているため、脱出不可能状態であり、機体の中に閉じ込められているのは継続中だ。

「今は、回収班待ちだ。回収後、本部の施設で分解して、少尉を助け出す予定だ。
 さっきまで一緒に戦っていた猟兵については、迎えを呼んでもらっている。
 俺の機体も少尉の機体も行動不可能なくらいボロボロだからな」
「成程。確かに両方ともダメージが大きいですね。
 そうだ、私の方で少尉の機体を少し調べてみましょうか」
「…そうだな。よろしく頼む。恐らくは俺たちでは手に負えない事態なのだろう」
「分かりました。基地に収納してから再起動なんかされたら大変ですし。
 軍事機密とか言っていられませんね」

 ロキの提案を2人の公国軍人は了承した。
 先ほどまでの『セラフ』の行動は、常軌を逸していた。もはや公国の科学力の範疇を越えている。このまま本部に持ち帰っても、原因究明はおろか、少尉の救出も難しいかもしれない。それならば、異世界から来た自分たちにはない技術を持った人の知見を得るのもいいのではないかと彼らは考えた。

「それでは調べさせていただきますね」
「あっ、はい。お願いします」

 ロキは、ケルベロスから雷属性の触手を伸ばすと、四肢を砕かれ膝立ちになったセラフィム・リッパ-に電子スキャンをかけた。
 すると、クロムキャバリアに転移する前に貰った『セラフ』の機体データよりも明らかに強力な機体になっていること、特に念動力を感知し、増幅するサイキックリアクターの出力が想定よりもかなり強力なものになっていることが分かった。
 そして、猟兵であるロキは直感する。このサイキックリアクターこそが、オブリビオンマシン化の原因であると。

「サイキックリアクターが怪しいですね。
 機体が暴走したのは、リアクターの悪影響の可能性が高いと思います」
「…サイキックリアクターですか。サイキックリアクターはオーバーテクノロジーで、公国の開発室でも全容を解明できていません」
「だから、サイキックキャバリアに積むリアクターは、プラントから出土したものをそのまま使っていると聞いている。そこに良くない部品が混ざっていたのだな」
「恐らくは、そういう事だと思います」

 それこそが今回の事件の原因であった。オブリビオンマシンのパーツを使ってキャバリアを作ったため、オブリビオンマシン化して暴走した。オブリビオンマシンの判別は、猟兵しかできない。そのため、このような事故が起こってしまったのだろう。

「他に何か、怪しいとか気づいたことはありますか?」
「…実は、この機体の中に誰か別の人の意志を感じるんです。
 最初は、傲慢な子どものような人格だったんですけど、途中から別人が目覚…」

 そう言いかけた少尉がはっと息を呑み、スキャンをかけていたロキも、すぐに異常に気付いた。
 セラフィム・リッパ-の、沈黙して黒くなっていたアイセンサーが赤く禍々しく発光して、光の翼が大きく広げられた。

「…!!精神干渉ですって…!まだ動くの!?」
「サイキックエナジーが急上昇していますね。恐らくは攻撃が来ます。
 大尉は私のケルベロスの後ろに隠れてください」
「ああ。動いてくれよ、ドミニオンカスタム」

 大尉の操る量産機が最後のエネルギーを振り絞り、ロキのケルベロスの背後へと転がったのとほぼ同じタイミングで、セラフィム・リッパ-の光の翼から、プラズマビームが照射された。

『正義ハワタシタチ二アル。『オンジューム』ノ旗に栄光アレ』
「触手ちゃんはこういうことも出来るんですよ?」

 液体金属の機体にプラズマビームが直撃した。機体の表面に膨大なエネルギーが流れ、機体の奥にあるエンジン部分や、コックピットに、非常に大きなダメージが貫通する…はずだった。

「機体の奥に貫通する筈だったエネルギーを、電気属性の触手をアースにして地面へと流し込んだのか。凄いな、君は」
「ええ。上手くいって良かったです。大尉は無事ですか」
「ああ、おかげさまで無事だ」

 敵の不意打ちを見事にいなしたロキは大きく息を吐いた。
 不意打ちをしてきたセラフィム・リッパ-は、エネルギー切れになったのか、再び沈黙を始めた。爛々と赤く輝いていたアイセンサーも電源が落ちて黒くなっている。

「今度こそエネルギー切れで動かなくなったのか…?少尉!無事か!!」
「………」

 動きを止めたセラフィム・リッパ-に向けて大尉が呼びかけるも、少尉からは返事がない。
 それどころか、機体から紫色の禍々しいオーラが流れ出し始めた。

「…何なんだ、この機体は…」
「機体から少尉を切り離しましょう。ケルベロスの液体金属を相手のキャバリアに潜り込ませて、大尉の声に反応した部分を切り離します」

 そう言うと、ロキは禍々しいオーラを放つキャバリアに組み付いて、ボロボロになった機体に液体金属を流し込んだ。
 UDCでもある液体金属に意識を傾けると、機体の中に2つの反応があった。

「大尉、貴方の正義は何ですか?」
「…そんなことは決まっている。俺は軍人だ。公国民の豊かで安心な暮らしを守る。
 それこそが、公国軍人の務めだ」

 液体金属の触手を通して、大尉の声を流し込む。
 続けて、ロキは機体の中にある意識に質問を投げかけた。

「では少尉、貴女の正義が何なのか、教えて頂けませんか?」
「私たち公国軍人の正義は国民の豊かで安心な暮らしを守ること。
 そう大尉から教えられてきました。私もそうあるべきだと考えます」
『私の正義は、真面目に暮らす人たちが報われる世界を創ること。
 腐敗も堕落もない、正義の国を私たちは望む』

 機体の中からそれぞれの反応が返ってくる。1つは公国軍人としての正義を大尉と共有している少尉のもの。もう1つは、少尉が言いかけていた別のナニカのものだ。
 ロキは、液体金属を操作して、少尉の反応があった部分を強制的にセラフィム・リッパ-から、抉り取った。

「大尉、少尉を無事に保護できました」
「ありがとう。助かった…。本当に…」

 ロキの操るケルベロスの掌で眠る少尉の姿を見た大尉が安堵の溜息を吐いた。
 ああ、今度こそ、やっと…最新鋭試作機の暴走から続いた悪夢のような1日が終わると、休めるんだと、大尉は考えた。
 しかし、大尉の願いは、この後、どこからともなく降って沸いた謎の勢力によって、粉々に砕かれてしまうのであった。
 次回へ続く!

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『無限弾幕』

POW   :    守りを固めながら前進する

SPD   :    射撃が途切れた隙を狙い、一気に進む

WIZ   :    ジャミングやハッキングで射撃機構を無力化する

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●前回までのあらすじ
 バンダ公国の輝かしい未来を切り開く最新鋭機の機動実験。
 それはオブリビオンマシン化という悪夢によって台無しになってしまった。
 公国軍は、基地の戦力の半分を出撃させて、セラフィム・リッパ-を沈黙させようとするも、エースである大尉を除いて、悉く返り討ちにあってしまった。
 セラフィム・リッパ-の性能は凄まじく、エースである大尉も追い詰められてしまった。だが、彼を救うように蘭の花が描かれた青白い電気の転移門が現れた。
 女神と剣士がダメージを与え、機械騎士とエースが大破まで追い込んだ。
 しかし、機械熾天使は、再起動を果たし、逃げ去ってしまう。
 再起動した機械熾天使を追う大尉は、混沌獣と合流すると再度、機械熾天使を撃破。二度と暴れないように四肢を破壊した。
 そして回収を待つ大尉の元に多重人格者の猟兵が現れ、原因の究明が行われた。
 なんと、機械熾天使はオブリビオンマシンのパーツを組み込んで作られたが故に暴走したと言うのだ。さらに、少尉の証言から、機械騎士に倒された時点で、最初の人格は停止していて、再起動後は別の人格が機体を動かしていたことが分かった。
 そのことを話そうとしていた矢先に、セラフィム・リッパ-が最後の抵抗。それをいなした多重人格者のオブリビオンマシンが、機械熾天使から強制的に少尉を切り離したことで、機械熾天使暴走事件は終了するか、と思われた。

●亡霊(ゴースト)
 鋼鉄の軍靴がアスファルトを踏みしだき、規則正しい足音が響く。
 一糸乱れぬ隊列で現れたのは、右肩に黄色い小さな蘭の花、オンジュームの国旗を掲げる少し型の古いキャバリアの軍勢だ。

『少佐無事デスカ。迎エ二上がりマシタ』
『サア、オンジュームノ旗ヲ掲ゲマショウ』
『悪徳ト腐敗ニ断罪ヲ!正義ハワタシタチにアリ!』

 セラフィム・リッパ-だった残骸に向けて過去からの亡霊たちが叫んだ。
 どうやら彼らは、機械熾天使の残骸に呼び出されたらしい。

「な、何だあいつら。あんなアンティークな機体どこから引っ張り出してきた。
 というか…オンジュームの旗だと…。
バカな…、オンジューム共和国は5年前に滅んでカトレア国に併合されたはずだ」

 信じられないものを見てしまった、大尉が驚愕の声を上げた。
 オンジューム共和国は、5年前に隣国であるカトレア国に攻められて滅ぼされた国だ。大尉の記憶では、クーデター未遂が切っ掛けで起った内乱によって国力が落ちたところを攻められて滅んだと聞いている。

「独立主義者か?でもなんでここなんだ…。バンダとオンジュームは、国境を接してすらいないんだぞ…」

 思い当たる理由がまるでなく、大尉の混乱はさらに深まる。
 追い打ちをかけるように更なる異常事態が発生する。

『…大丈夫。私は無事だ。さあ、我らが祖国に正義を取り戻しに行こう』

 壊れた筈のセラフィム・リッパ-の機体から女の声が響いたと思うと、禍々しいオーラが噴出し、別の機体を形作っていった。
 そこに古めかしいキャバリア2機が走り、別の機体へと変異していくセラフィム・リッパ-だったものの肩を担ぐと、急いで戦場から離脱していった。
 そして残った機体たちは、少佐と呼ばれた存在の離脱を支援するべく型落ちしたRSキャバリアライフルを構えた。

「おい!どこに行く!!糞!何が何やら…」

 目まぐるしく変わる情勢に流石の大尉も限界と言った所だった。
 だが、悪い事だけではない。
 少尉が意識を取り戻したのだ。

「大尉。私、さっき取り込まれた時に夢をみたんです。
 誰かの人生の走馬灯のようなものが…。オンジュームの国旗、8年前の日付。
 絶望し、怒りに胸を焦がす女性将官の姿…。きっと無関係ではありません」
「8年前か…。確かクーデター未遂の…。確か、司令がそのことに詳しかったような…」

 少尉の言葉を聞いて、大尉は司令にオンジュームの友人が居たことを思い出した。
 彼ならば、何かを知っているかもしれない。

「俺は愛機の修理が終わるまでは動けん。修理が終わるまでの間に、こいつらのことを俺の伝手を使って調べてみる。公国軍も動いて、あの亡霊どもと戦うだろうが…少し心配だ。君達には引き続きで悪いが、『セラフ』だったものを追って欲しい」

 申し訳なさそうな声色で、大尉は猟兵たちに支援を継続するよう依頼した。

※プレイングについて
① 型落ちキャバリアを無双して真正面から突破する。
② 過去の事件を調べて、先回りをする。
③ 大尉たちと情報交換をしつつ、ある程度当たりをつけながら、攻め込んでいく。
④ 新ルート開拓。アイデア勝負で行く。(ご自由にどうぞ)

 この4つのルートを想定しています。
 それではプレイングをお待ちしております。
水鏡・怜悧

詠唱:改変、省略可
人格:ロキ
相手の言動からすると、オンジュームがまだ存在している前提でクーデターを起こそうとしているのでしょうか。拠点、武装、進行ルート、目的地などの情報が欲しいですね。大尉と共に行動します。敵機を解析した情報が提供できるでしょう。情報収集が終わったら、偵察用のドローンでも飛ばしてもらいましょうか。なければ量産機をハッキングして作ります
少尉と大尉の手当てを行います。外傷はなくとも衰弱しているでしょう。精神的なケアは出来ませんが、客観的な身体情報はお教えできます。無理はさせられません
その後に大尉の機体の修理を手伝います。ついでに大尉の力量に合わせて改造を強化しておきましょう。



●黄群雀蘭(オンジューム)の旗に栄光を
 8年前のあの日。悪徳と腐敗で腐りきった共和国に正義を取り戻すために銃をとったあの日から、彼らの時計は止まっていた。
 共和国に正義を!黄群雀蘭の旗に栄光を!腐敗と悪徳に断罪を!正義と大義と憤怒の御旗を掲げて彼らは蜂起した。
 彼らは知らなかった。自分たちが正義を掲げて起こした行動が泥沼の内戦を齎し、国力を下げて、結果的に祖国の滅亡の引金を弾くことになると。
 ただ、彼らは叶えたかったのだ。少佐の掲げる夢を。彼女の流した血と汗と涙が結実することを願っていた。

『真面目ナ人ガ馬鹿ニサレナイ国ヲ。ワタシタチハ望ム』

 その夢は終ぞ叶う事なく、黄群雀蘭の国はクーデター未遂が起こった日から続いてしまった内乱による国力低下が原因で、カトレア国に攻められ滅亡した。
 しかし、時計の針が止まってしまった亡霊達は、そのことを知らない。

●8年前の事件を探れ① ~事件のあらまし~
「相手の言動からすると、オンジュームがまだ存在している前提でクーデターを起こそうとしているのでしょうか。
 拠点、武装、進行ルート、目的地などの情報が欲しいですね」
「ああ。司令に確認しよう。
 何でもあの国に友人が居たとかで、諜報部から情報を集めていたと聞いている」

 水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)の1人格であるロキは、UDCの液体金属で出来たオブリビオンマシン『暴食の王ケルベロス』で、大尉の壊れかけた改造量産機を牽引しながら、格納庫に向けて急いで移動をしていた。
 基地の司令部には、既に大尉からの連絡が入っていて、格納庫にあるモニターで司令と話ができるような手配になっている。
 ロキたちが弾丸の雨を掻い潜りながら、格納庫を目指していると、入れ替わるように機体のどこかに紫翡翠蘭(バンダ)の旗をペイントした公国軍とすれ違った。
 彼らもまた、祖国を守るために、黄群雀蘭の亡霊を討つべく出撃していたのだ。
 公国軍の支援も受けながら、ロキたちは格納庫に到着すると、整備スタッフたちが彼らを迎え入れ、大尉のドミニオンカスタムは、ハンガーに格納されると、緊急修理を受けることになった。

 ロキが手に入れたオブリビオンマシンの情報は、開発室へとすぐに送られた。この情報を基に、原因究明が行われることとなる。
 ロキと大尉は用意されていたストレチャーに少尉を寝かせると、モニター越しに司令との面談を始めるのであった。

「司令、早速ですが8年前の事件のことを聞かせてくださいますか?」
「…分かった。時間がないから簡潔に話そう。
 8年前にオンジューム国でクーデター未遂が起こった。未遂という事から分かるように、クーデターは失敗した。
 首謀者はメイフェア・イエローエンジェル少佐。私の友人だった女だ。
 クーデターを起こした理由はあまり面白いものではない。不正を正そうとして強い権力に抗い、潰された。彼女の処遇に怒りを抱いた部下たちが暴発して武装蜂起し、プラントを制圧したことで始まった。
 彼女はエースでな。彼女の信奉者も多く、大規模な内乱にまで発展してしまった」

 当時のことを思い出しながら、司令は眉間に深い皺を刻んだ渋い顔で答えた。

「成程、プラントの制圧からスタートしたんだな。ってことは共和国の亡霊どもは、プラントの制圧を目指している可能性は高そうだな」
「あいつが化けてでているならば、恐らくな。糞真面目な堅物女だ。
 頑なに当時の計画通りに進めようとするだろう」
「では、プラントに向けて偵察用のドローンを飛ばしていただけますか?」
「ああ。偵察用支援機『アークエンジェルス』を現地に向けて飛ばそう」

 ロキの要請を司令が受諾し、偵察用の支援機が数機、近くにあるプラントを目掛けて飛んで行った。ドローンからの映像は先ほどまで話をしていたモニターに表示されている。
 ドローンからの情報を待つ間、ロキは大尉と少尉の治療に当たることにした。

「凄いな君は、医術の心得もあるのか」
「精神的なケアは出来ませんが、客観的な身体情報はお教えできます。
 無理はさせられません」

 ロキのUC『異常集中』によって強化された医術スキルが大尉と少尉の身体情報をつまびらかにする。
 大尉は機体の修理が終わるまでマッサージを受けるように指示を受け、少尉は全身に軽い打撲が見られるので、打撲の治療をしてもらった。
 しばらくすれば、問題なく目を覚ますだろう。

「折角ですし、大尉の機体の修理を手伝います。ついでに大尉の力量に合わせて改造を強化しておきましょう」

 ロキはそう言うと、大尉の機体が格納されているハンガーへと歩を進めていった。
 果たして、大尉の愛機はどうなってしまうのか。
 次回へ続く!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティファーナ・テイル
SPDで判定を
*アドリブ歓迎

③、「撮影機群で連絡と状況を知らせ合いながら、猟兵と大尉との距離を取りながら連携協力していこう!」と元気良く伝えます。
『スカイステッパー』で縦横無尽にジグザグと素速く動いて撮影しながら連絡もして『セクシィアップ・ガディスプリンセス』で♥ビーム攻撃を仕掛けて、敵の避け切れ無い攻撃を『神代世界の天空神』で空間飛翔して避けて敵のUCに『天空神ノ威光・黄昏』で封印/弱体化を計ります。
『ジェットストリーム・ラヴハート』でSPDを強化して『ガディスプリンセス・レディース』で従属神群の支援攻撃と検索捜索を行ないながら『ゴッド・クリエイション』で鋼鉄巨神を創造して囮と鉄壁にします!



●混沌極まる戦場
「だあああ!!くっそ!くっそ!今日は何なんだよ、もう!!」
「糞!糞!糞!ザッケンナコラー!」
「糞、糞うっせえええ!!そんなにトイレ行きたいなら行ってこいやボケェ!」
「えっ、マジ行っていいの?じゃあ行くわ。あとヨロ」
「「ザッケンナてめえええ!!」」

 公国軍の基地の敷地内で、紫翡翠公国の軍人と黄群雀蘭の国の亡霊との銃撃戦が行われている。マズルフラッシュが瞬き、発砲音が響き、カランカランと乾いた音を立てて、空の薬莢が地面に落下する。
 戦況は互角と言った所だ。
 8年間という時間の差は、キャバリア開発において非常に大きい。機体性能差という点において、公国軍は共和国軍の亡霊を圧倒していた。
 しかし、士気と数の面では、共和国軍の方が圧倒的だった。先ほどまで大暴れしていたセラフィム・リッパ-の影響が大きい。基地の機体の約半数がやられ、エースである大尉が戦場から離れることになってしまっている。士気が下がるのも無理はないだろう。
 このままでは、誰も望まないクーデターが成功してしまうだろう。
 一騎当千の英雄である猟兵たちが居なければ…の話ではあるが。

●無限弾幕を越えて① ~戦場を舞う女神~
「撮影機群で連絡と状況を知らせ合いながら、猟兵と大尉たちとの距離を取りながら連携協力していこう!」

 ティファーナ・テイル(ケトゥアルコワトゥル神のスカイダンサー・f24123)は、元気よく右手を突き上げながら言った。
 少し前にセラフィム・リッパ-と戦った彼女であったが、まだまだ元気だ。
 彼女の元気さに引っ張られて、公国軍も士気が上がる。

「俺の機体はまだ修理中だから前線には出られない。
 共和国軍の亡霊については、公国軍が抑える。キミ達猟兵は、敵軍を突破して、逃げたリーダー機を追ってくれると助かる。何か嫌な予感がする。
 オンジュームの奴らは俺の方で調べてみる。何か分かったことがあれば、このドローンを通して連絡をする」
「うん。分かった」

 丸っこい機体に天使の翼が生えた偵察用支援機『アークエンジェルス』から聞こえた声にティファーナは、頷くと、美しい金色の鱗に覆われた大蛇脚をバネのように縮めて、地面を強く蹴って、制限高度ギリギリを駆けていった。

「さあ、女神様の出陣だ。俺達も気合を入れていくぞ」
「ははっ。女神様が一緒に戦ってくれるんだ。負けるわけねぇよなぁ!」
「そんじゃ、あの世に帰れや、共和国の亡霊ども!!」

 空を自由自在に跳ね回る女神に勇気づけられた公国軍は、奮起して共和国の亡霊を押し返すべく、銃を構え、引金を引き絞る。
 少しずつ、敵数が少なくなっていき、だんだんと公国軍が押し始めていた。

 公国軍と共和国軍のぶつかり合う前線を文字通り飛び越えて、ティファーナは、亡霊たちが守護する領域へと進んでいった。
 足元からは、無限弾幕と言っても過言ではない程の弾幕が迫ってきている。
 だが、狙いが甘い。クロムキャバリアでは、暴走した人工衛星「殲禍炎剣(ホーリー・グレイル)が高速飛翔体を叩き落として来たため、どうしても飛んでいる相手への経験値が少ないのだ。
 その為、空を自由に舞い、空気を足場にして跳ね回る天空の女神を捉えることができない。

「神々の絢爛豪華な全てを見せてあげる!」

 UC『セクシィアップ・ガディスプリンセス』で豪華絢爛な衣装に変身したティファーナは、殲禍炎剣の攻撃対象にならないギリギリの高さで飛翔しながら、ハートビーム攻撃で、進行方向の敵を破壊しながら進んでいく。

「南側の方が敵の数が多いか。ならば、奴らは第四プラントを目指しているのか?
 ドローンの画面に地図を表示するから、そちらの方に向かってくれないか」
「任せて!」

 牽引していたドローンの画面に地図と六角形の建物が表示される。建物の壁には紫翡翠蘭の紋様と第四プラントという文字が書かれている。

「目指す場所も分かったから、どんどん進もう。
 勇気! 正義! 神愛! 神様パワーを爆発だ!
 レディースの能力(チカラ)を今こそ見せる刻だよ!」

 UC『ジェットストリーム・ラヴハート』を重ね掛けして速度を強化したティファーナは、続けてUC『ガディスプリンセス・レディース』で従属神群を呼び出し、地面にうようよと展開している亡霊機兵の群れを薙ぎ払わせた。

「最後は、ゴッドクリエイションで!来て、鋼鉄巨神」

 ティファーナは、ダメ押しに鋼鉄巨神を創造すると、彼を囮にして亡霊たちの頭上すれすれを高速移動していった。

「見えた。あれが第四プラントね。何か見慣れない単眼の禍々しい機体も居るよ」

 亡霊達の群れを抜けて、遂にティファーナは、『少佐』の乗騎であるオブリビオンマシンを発見した。
 爛々と輝く赤い一つ目と立ち昇る紫色のオーラが不気味だ。

 果たして、女神様は、この1つ目の亡霊(ゴースト)を打ち倒し、バンダ公国に平和を取り戻すことができるのか。
 次回へ続く!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード



んー、まあオブリビオンなんだし過去の物が出てきても不思議じゃないか。
8年前の事件もオブリビオンマシン絡みだったりするのかねえ。
クーデターを起こした側と起こされた側、どっちかに関わってたかもしれないけど、
まあ今戦う上では重要な話じゃないか。

さて、避けて進むことも出来るけど、
暴れるキャバリアを放っておくわけにもいかないし、
戦いながら進んでいこうか。
【耐性進化】で敵の射撃に耐性を獲得しながら、
正面突破で撃破しつつ追いかけるよ。

倒すべき悪ももう居ないんだから、
その掲げた正義だってもう必要ないだろうにねえ。



●黄群雀蘭(オンジューム)の亡霊達
 8年前のあの日、黄群雀蘭の国の若き青年将校たちは正義と怒りの御旗の元に銃を手にした。自分たちの祖国を自分たちの手で良くしたい、誰にも誇れるような国にしたいと、そう思い、彼らは武装蜂起を行った。
 彼らは知っていた。この方法はきっと正しくないと。少佐も彼女の後見をしてくれた少将も望まない方法だろうと、彼らは知っていた。耐えるべきだと、少佐は言っていた。
 しかし、彼らは我慢ができなかった。汚職議員たちの汚い謀略で、彼らの敬愛する少佐の名誉が穢されていくことを。共和国軍でも最強のエースと呼ばれた彼女が、弱っていく様を、真面目な人が報われる国にしたいと笑顔で語っていた少佐の夢を、馬鹿馬鹿しいと一笑に付されるのを、我慢できなかった。

『オンジュームノ旗ニ栄光アレ!』
『誰ニモ誇レル祖国ヲ!』
『少佐ノ夢見タ世界ヲ!』

 亡霊達の時計の針は止まっている。強い使命感を抱き、キャバリアに乗り込み、銃を手に取り、現政権に弓を引くことを決意した時から。
 そして彼らの銃口は今、彼らの革命とは全く関係のない紫翡翠蘭(バンダ)の国の軍人たちに向けられていた。

●無限弾幕を越えて②~強行突破!~
「んー、まあオブリビオンなんだし過去の物が出てきても不思議じゃないか。
 8年前の事件もオブリビオンマシン絡みだったりするのかねえ」

 骸の海から蘇った過去の亡霊達の姿をその瞳に映しながら、ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)は過去の事件に思いを馳せていた。
 オブリビオンマシンは、セラフィム・リッパ-がそうだったように、パイロットを取り込み、精神汚染し、暴走させることもある。
 非常に厄介なことに、オブリビオンマシンは、猟兵にしか見分けることができない。故に、オブリビオンマシンが関与していたのか、そうでないのかは分からない。

「クーデターを起こした側と起こされた側、どっちかに関わっていたかもしれないけど、まあ今戦う上では重要な話じゃないか」

 ペトニアロトゥシカはかぶりを振ると、思考を戦闘の方へと切り替えた。いつまでも結論が出ないだろうことを考え続けても無駄だと考えたのだろう。

「さて、避けて進むことも出来るけど、暴れるキャバリアを放っておくわけにもいかないし、戦いながら進んでいこうか」

 そう呟くと、混沌獣は紫翡翠蘭軍と黄群雀蘭亡霊軍のぶつかり合う前線へと、駆け出していくのであった。

 前線では、派手な射撃戦が行われていた。全長5mの巨体から次々とビームや実弾が放たれて、ド派手な爆発を起こしていた。
 弾丸の雨が土砂降りのように降り注ぐ、無限弾幕の中を、ペトニアロトゥシカは進んでいくこととなる。

「ああ、猟兵さん。このドローンを連れていってくれ。
 通信能力を強化してあるから、短距離の通信ならば可能だ。
 大尉が調べた情報をソレに送ると言っていたぜ。この弾丸の雨の中を闇雲に進むよりはマシだろう?」
「うん。ありがとうねぇ」

 弾丸の雨の中に飛び込もうとしていたペトニアロトゥシカを、公国軍の1人が呼び止めて、丸っこい機体に天使の翼が生えた偵察用支援機『アークエンジェルス』を手渡した。
 偵察用支援機を受け取った彼女は、お礼を言うと、前線で撃ち合う公国軍機体の脇をすり抜け、弾丸が飛び交う戦場の中心へと飛び出していく。

『ナ…ナンダ、貴様ハ!?我ラノ革命ノ邪魔ハサセナイゾ!』
『我々ノ邪魔ヲスルナアアア!!!アンノウン!!』
『正義ハ我ラ二アリ!オンジュームノ旗ニ栄光アレ!』

 破竹の勢いで敵を殴り倒し、戦場の奥へ奥へと攻め込んでいく混沌獣に、型落ちした元共和国軍のキャバリア部隊が襲い掛かる。
 手にした型の古いRSキャバリアライフルや、コンデンサーがまだ大きいままのBS-A腕部粒子ビーム砲を、驚異的な戦闘力を持つ歩兵に向けて撃ち放つ。

『ヤッタカ!?』
『対キャバリア用ノ装備ダゾ。無事デハスマナイダロウ』
『アア、木端微塵ダナ』
「それはもう効かないよ」
『ナン…ダトォ!?』
 
 弾丸が着弾し巻きあがった砂埃から、ペトニアロトゥシカが飛び出し、フラグを建てた亡霊兵士をスクラップに変えた。
 肉体を変化させ、射撃攻撃への耐性を手に入れた彼女には、最早彼らの型落ちした射撃兵器は歯が立たない。

「倒すべき悪ももう居ないんだから、その掲げた正義だってもう必要ないだろうにね」

 スクラップとなり、骸の海へと帰って行く亡霊機兵たちを見送りながら、ペトニアロトゥシカが呟いた。
 すると、彼女の傍らで飛んでいたドローンから、大尉の声が響いた。

「敵の目的地が分かった。バンダ公国の第四プラントだ。
 地図データとナビを送るから、そこを目指して進んで欲しい」
「了解だよぉ」

 ペトニアロトゥシカはいつも通りの少し間延びした口調で返事を返すと、地図とナビに従って、敵をスクラップに変えながら第四プラントを目指していく。
 そうしてしばらく進んでいくと、六角形の巨大な建築物が目に入った。

「あれが第四プラント。そして、あの赤い一つ目がオブリビオンマシンだねぇ」

 そこには悠然と佇む、禍々しいオーラを纏った赤い一つ目の機体があった。
 果たして、混沌獣たる彼女は、赤い瞳の亡霊(ゴースト)を打ち倒し、バンダ公国に平和を齎すことができるのか。
 次回へ続く!


 次回へ続く!

大成功 🔵​🔵​🔵​

月代・十六夜
ヒャッハー、追いかけるだけなら任せろー!
あ、通信機器だけください。
迎撃、妨害、隠蔽?ちょーっとこの韋駄天足を舐めすぎじゃないっすかね。
ネームドならまだしも有象無象の行動如き【五感】で察知できないわけがない。
【縦横無尽】で捌きながら加速して一気に追いかけよう。
流石に修理完了してボス自身のフルブーストとかだと速度に追いつけんだろうけど、
この状況なら余裕余裕。
まぁ、最終的な移動場所が分かったら通信して待機しておくか。飛び込んでタコ殴られても面倒くさいし。



●無限弾幕の戦場
 全高5mの機体が、紫色と黄色に分かれてバカスカ銃を撃ち合っていた。
 黄色チームは、数が多くチームワークもばっちりなのだが、如何せん装備が古い。1機、1機の力は弱く、やられては骸の海から沸いて出てきている。
 紫色のチームは、装備が新しく1機、1機はかなり強い。だが、どうしても数が足りず押され気味だ。撃破された後に、黄色チームのように何処からともなくリスポーンできるという事もない。
 そのため、戦況はイーブンか、若干黄色が優勢と言った所だ。1機、1機は弱くても、無限の残機を生かした数の暴力はやはり強力だ。
 紫色チームが勝つには、黄色チームの敵を生み出すボスを先に仕留めなければいけない。しかし、敵チームのボスは、敵陣の一番奥へと逃げ出してしまった。
 四方八方から弾丸が飛び交う戦場を突破し、逃げ去った敵のボスを追うのは至難の業である。少なくとも紫色チームの軍人たちには不可能であった。

「誰か、この戦場を踏破して逃げたボスを追ってくれる猛者は居ないか」
 
 そう、誰かが願った時、青い蘭の花が飾られた電気で出来た転移ゲートが現れた。

●無限弾幕を越えて⓪ ~韋駄天足~
「ヒャッハー、追いかけるだけなら任せろー!あ、通信機器だけください」
「お、おう」

 転移門から飛び出してきた月代・十六夜(韋駄天足・f10620)は、手近な所に居た軍人に話しかけると、猟兵ってだけで信用されるのは便利だなぁと思いつつ、通信機器一式を譲り受けた。
 通信機の形状は、スマートフォンのようなもので、UDCアースやヒーローズアースと言った現代~近未来の世界の物とほぼほぼ同じだ。パスワードと誰に連絡すればいいのか、という事さえわかれば、何となく使えるだろう。

「現場の責任者は大尉だ。何かあったら彼に連絡してくれ。
 一応、使い方のマニュアルとかあるが、いるか?」
「いらねっす。誰に連絡すればいいかさえ、分かれば十分だ。じゃ、俺は行くんで」
「お、おう。いってらっしゃい」

 必要な所だけ聞き取った十六夜は、さっさと話を切り上げると、片手を上げて雑に会釈をして、軍人の前から立ち去っていった。
 この世界特有の込み入った話も、一回限りしか使わない通信機の素敵機能も彼には不要である。そんな話を聞いているならばさっさと追うべきだ。
 何故ならば、立ち止まって話を聞いている間に、追いかけるべき敵はどんどんと距離を稼いでいくのだから。
 待ってくれるのは、どこぞの巫女が大好きなRPGのボスくらいだろう。

「迎撃、妨害、隠蔽?ちょーっとこの韋駄天足を舐めすぎじゃないっすかね」

 無限弾幕が飛び交う前線へと身を躍らせた十六夜は、不敵に笑う。
 敵を1機も通さない鉄壁の布陣と、黄色の花の国旗を掲げた機体たちは言うが、彼にしてみれば、全くの穴だらけだった。
 対キャバリア用の陣形なんて、歩兵から見ればスカスカの穴だらけにしか映らない。猟兵の中でもトップクラスの機動性と突破性を誇る彼にとっては猶更だ。
 そして、彼らが使う武器も良くなかった。彼らは革命軍であったため、毒ガスやクラスター兵器などのマンキラー系の装備を持っていなかったのだ。

「ネームドならまだしも有象無象の行動如き五感で察知できないわけがない」

 結果として起こるのは、十六夜による無双だ。
 ユーべルコード【縦横無尽】の効果で極限まで研ぎ澄まされた五感が、十六夜に最適化された機動を齎す。
 まずは、少し型の古い大型のRSキャバリアライフルから放たれた弾丸をギリギリで躱し、背後で起こる爆発による爆風を背に受けて加速。勢いに任せたまま機兵の右膝、腰、左肩を足場にして、飛び越えつつ、敵の弾丸で敵兵を始末。
 加速した勢いのまま、別の敵兵へと接近しつつ、強化された視力で敵を観察する。

『ナ、ナンダ、コイツハ…。少佐ノ元ヘ行カセルナ!』

 亡霊兵士の首が少し右斜めに動き、心なしか重心もそちらへと動く。守るべきものを無意識的に警戒する動きだ。
 そちらの方へ眼を向けると、移動の痕跡を消した痕跡が見つかった。キャバリアはその巨体がゆえに、地面に与える影響が大きく、痕跡を消し切ることは難しい。
 ボスのいる方向を態々教えてくれた敵を抜きながら、隠蔽工作の後に手で触れて、触覚を駆使して、追うべき敵がいつ通ったかを頭の中で計算する。

「流石に修理完了してボス自身のフルブーストとかだと速度に追いつけんだろうけど、この状況なら余裕余裕」
『絶対二通スナ!コイツダケハ殺セ!』
『少佐ニ近ヅケルナ!』

 不敵に笑う十六夜を、亡霊兵士たちが追う。
 陣形が崩れて、十六夜がいる方向に兵たちが偏る。

「陣形崩してこっちに集中したら、ボスがこっちに居ますって宣伝しているようなものだと思うけどな」
『追エエエエ!!!』

 スラスターを噴かせ、亡霊兵士たちはムキになって十六夜を追う。
 だが、文字通り【縦横無尽】に駆け回る彼を、黄色の花の旗を掲げた機械兵士たちは捕らえられず、無様に同士討ちを繰り返すことしかできなかった。

「さて、最終的な場所も分かったし、通信して待機しておくか。飛び込んでタコ殴られても面倒くさいし」

 ぱぱっと敵をまいて姿を眩ませた十六夜は、携帯端末を操作して大尉へと電話を掛けた。
 数コールした後、電話が取られ、もしもしという男の声がスピーカーから届く。

「おっす。大尉か。敵のボスと最終的な場所を見つけたぞ」
「嘘だろ…。速すぎる…」

 十六夜は、通信機のカメラを、ボスと思われる赤い燃えるような単眼で禍々しい紫色のオーラを纏った機体と、バンダ公国第四プラントと書かれた六角形の建物へと向けた。

「マジか。…マジだった。
 取りあえず、他の猟兵たちを急いで向かわせるから、待機していて欲しい」
「了解」

 簡単な情報共有をすると、通話を切る。
 しばらくすると、十六夜が通って来た道から、爆音が響いて来た。
 敵のボスを倒すべく、猟兵たちが集まって来たのだ。さあ、力を合わせて敵のボスをスクラップへと変えるのだ。
 次回へ続く!

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン

何故、オンジュームの旗掲げる女性人格のマシンが併合したカトレアではなくバンダに現れたのか

大尉殿、今回の騒動の原因のリアクター…
本当にプラントからの出土品なのでしょうか?

司令に8年前の事件について話を伺うのと並行し遠隔●操縦する妖精ロボで基地データベースに●ハッキング情報収集で裏取り
5年前のオンジューム陥落の真相調査

2国とバンダを繋げる線…何らかの工作や密約があったのかもしれません
こうした外交や謀略は国防に必要不可欠ですが…
個人としては出来れば執りたくも無く、あって欲しくもありませんね…

少尉から走馬灯の内容を詳しく聞き込みマシン内部の人格の身元も絞りこみ
それが分かれば自ずと目的地も分かる筈です



●8年前の事件を探れ② ~何者かの影~
(何故、オンジュームの旗掲げる女性人格のマシンが、併合したカトレアではなくバンダに現れたのか)

 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、大尉と少尉が休んでいる医務室へと歩を進めながら、考え事をしていた。
 偶然と一言で済ますこともできるが、何か引っかかるものがあるらしい。何か邪悪な存在が裏で糸を引いているのかもしれない。そんな考えが電子頭脳によぎる。
 それが果たして何なのかと考えているうちに、大尉と少尉のいる医務室の前へと辿り着いた。トリテレイアは、コンコンと扉をノックすると、返事を確認してから医務室の中へと入っていった。

「大尉殿、今回の騒動の原因のリアクター…
 本当にプラントからの出土品なのでしょうか?」
「ほう、面白い事を言うな。キミはアレを故意に誰かが持ち込んだというのかい?」
「可能性の話です」
「成程、可能性か。そうだな…少し調べてみよう」

 トリテレイアの質問を受けた大尉は、携帯端末を取り出すと、開発室へと電話を繋ぎ、『セラフ』の開発状況について確認を入れた。
 それを待つまでの間、トリテレイアは事前に飛ばしていた妖精ロボを使い、基地のデータベースへとハッキングを仕掛けていく。
 基地のセキュリティについては、どこぞの手癖が悪いグリモア猟兵が、事前にハッキングをした際に、電脳魔術で作ったセキュリティホールが、そのままだったので、簡単に侵入することができた。
 これで情報の裏取りも問題ないだろう。
 そうこうしているうちに、大尉も連絡を取り終えたようで、軽く溜息を吐きながら、話しかけてきた。

「開発室から色々と聞いたんだが、結論は【よく分からん】になるらしい。
 理由は幾つかあるが、1つ目はまあ単純な話で、俺たちにはオブリビオンマシンとやらと普通のキャバリアとの違いが見抜けないという事だな。予め、オブリビオンマシンであるという事が分かっていなければ、故意に混ぜられないだろう?
 まあ、オブリビオンマシンとやらに憑依されているパイロットが、同類を感知できるとかそういう事があれば別だけどな」
「…今の所はそう言う話は聞いていませんね。オブリビオンマシンの概念自体が、猟兵たちがこちらの世界に来るようになってから、発見されたものですしね」

 そう、オブリビオンマシンの判別については現状、猟兵しかできないとされている。誰かが故意にオブリビオンマシンのパーツを混入させるというのは、現状では難しいと言わざるを得ない。

「理由2つ目はサイキックキャバリアだからだ。超能力で動くオカルト満載なマシンだからな、アレは。突如虚空から現れて、プラント内に鎮座していた…なんてことも十分に考えられ得る。
 一応、基地のデータベースには、プラントから運び出した時の映像が残っている」

 大尉が手にした端末には、リアクターをプラントから運び出している時の映像が表示されていた。ハッキングで詳細を調べるも、映像を加工した痕跡は見当たらない。

「成程、分かりました。後は、司令殿に8年前の事件と5年前のオンジュームの陥落についてのお話を伺いたいのですが」
「ああ、分かった。司令に繋ごう」

 そう言うと大尉は、端末を操作して司令へと電話を繋いだ。

「8年前の事件については、私の友人だった『メイフェア・イエローエンジェル少佐』が、引き起こしたものだ。
 正確に言えば、彼女の部下たちが暴発して、プラントを制圧し、責任を取る形でトップに居座ってクーデターを指揮したといった形だな。
 彼女は戦いの中で戦死。クーデターから発展した内戦で疲れ切ったところを、カトレア王国軍が急襲。電撃作戦で首都を陥落させ、降伏勧告を行った所、大統領府が白旗を上げて、あっという間に併合されたと聞いている」

 司令の口からざっくりとした事件のあらましが説明された。
 これらは、世界的な通信網がない中で、各国に潜り込ませたスパイを通じて手に入れたものらしい。データベースにも同様の内容の情報が収納されている。

「2国とバンダを繋げる線…何らかの工作や密約があったのかもしれません。
 こうした外交や謀略は国防に必要不可欠ですが…
 個人としては出来れば執りたくも無く、あって欲しくもありませんね…」
「…私の知っている範囲では特に目立つような動きはなかった。
 バンダ公国とオンジューム共和国は離れていたからな。だから、私もメイフェア少佐と友人になれた。ただ…当時の彼女の部下には【統一主義者】も居たらしい」
「あいつら、本当にどこにでもいるんだな」

 どこか遠い目をしながら大尉が溜息を吐いた。
 統一主義者は、自然発生的に誕生したある種の思想を持った人或いは集団だ。

『蘭の花の名を持つ国々は、みんな1つの大国から分かたれた兄弟である。お互いにいがみ合うのではなく、手を取り、やがて1つの大きな国に戻りましょう』

 理想的ではあるし、ある意味正しいことは言っている。実際、どこの国においても一定数の支持者がいる。だが、現実的かと言われれば、NOと言わざるを得ない。
 蘭の国々が分かれて、諍いが生まれるようになってもう何百年も経っている。今更1つになろうとしても、それまでの経緯が分厚い壁として立ちはだかる。
 超がつくほどの現実主義者である大尉は、彼らのことが大の苦手である。

「うちの国にも遺憾ながらそれなりにシンパが居るが…そんな大それたことができるとは、思えないぞ…」
「ですが、一応警戒はしておいた方が良いかもしれません」

 そうしたことを議論していると、少尉が目を覚ました。
 少尉から、走馬灯の内容を詳しく聞き取ると、女性将官の正体は『メイフェア・イエローエンジェル少佐』で間違いがないことが分かった。
 また、先行している猟兵たちから、大尉に送られてきた情報により、オブリビオンマシンがバンダ公国の第四プラントを占領しようとしていることも判明した。

「そう言えば、メイフェア少佐も『熾天使(セラフ)』乗りだったんですね。
 ああ、『セラフ』ってのは私が機動実験をしていた機体のことで、ここら辺の蘭の花の名を持つ国々の、国家の威信をかけて作り上げた看板機体のことを言います」
「ああ、そうだ。アイツはエースでセラフ乗りだった。だからあの事件のことをアイツの2つ名『断罪』からとって、こう呼ぶ奴らもいる。『断罪の熾天使の乱』とな」

 明らかになった8年前の事件の名前、色々ときな臭い【統一主義者】なる集団、バンダ公国の第四プラントに集う亡霊達。
 果たして機械騎士は、どうメイフェア少佐の亡霊達と向き合うのか。
 次回へ続く!

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『モノアイ・ゴースト』

POW   :    バリアチャージ
【バリアを纏った】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【支援機】の協力があれば威力が倍増する。
SPD   :    パルス・オーバーブースト
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【オブリビオンマシン】から【光学兵器による一斉攻撃】を放つ。
WIZ   :    ゴーストスコードロン
自身が【敵意】を感じると、レベル×1体の【支援キャバリア】が召喚される。支援キャバリアは敵意を与えた対象を追跡し、攻撃する。

イラスト:タタラ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●前回までのあらすじ
 セラフィム・リッパ-を倒したと思ったら、黄群雀蘭共和国の亡霊が大量発生し、壊れかけたセラフィム・リッパ-を連れて、何処かへ逃げ去ってしまった。
 猟兵達は、オブリビオンマシンを追う部隊と8年前に起こった事件を追う部隊に分かれてそれぞれ行動。
 8年前の事件のあらましを知り、敵の目的地を暴き、無限弾幕を乗り越えて、オブリビオンマシンが逃げ込んだ第四プラントへと足を運んだ。
 そこにはセラフィム・リッパ-の姿はなく、赤紫色の瞳を爛々と輝かせ、紫色の禍々しいオーラを纏った1機のオブリビオンマシンが居た。

●【機密】調査ファイル ~断罪の熾天使~ 【部外秘】
 メイフェア・イエローエンジェル。
 オンジューム共和国軍のエースであり、看板機体『熾天使(セラフ)』のパイロットだった女性。
 素行については良好。所謂、委員長気質というか生真面目な性格。少々頑固過ぎるきらいがあり、空気が読めないと揶揄されることもあった。
 家は、旧貴族の流れを汲むオンジュームの名門、イエローエンジェル家の出身であり、一人娘として溺愛されてきた。
 軍に入った経緯については、国民を守る仕事につきたいという事で志願した。
 真面目過ぎる性格から、他者と衝突することもしばしば。その時の経験から、『真面目に暮らしてきた人が報われるような国にしたい』ということを思うようになる。
 エースとしての2つ名は【断罪】。彼女の口癖と、悪や不正と言った卑怯なものに対して、徹底的に戦う性格からつけられた。
 国の看板機体である『熾天使(セラフ)』パイロットであることから、『断罪の熾天使』と呼ばれた。
 潔癖すぎるくらいまっすぐで公明正大な性格に、優れた容姿と機体操縦技術に高いカリスマ性を兼ね備えた彼女は、多くのシンパを得ていたらしい。
 だが、それ以上に敵が多かった。
 部下への脅迫や離反工作、買収、ねつ造されたスキャンダル。あの手、この手で彼女の名声は貶められ、心ない人々の声に彼女は傷ついた。
 そして、傷ついた彼女を見ていた仲間たちが耐えきれなくなり、暴走。プラントの違法制圧事件から始まるクーデター未遂『断罪の熾天使の乱』が引き起こされた。
 彼女は、その戦いの中で戦死した。
 なお、この暴走した仲間たちの中には、『蘭の花の名を持つ国々は1つになるべきだ』という思想を持った【統一主義者】も紛れ込んでいたというが、真偽は定かではない。

 文責 バンダ公国軍 諜報部 中尉

●単眼の亡霊(モノアイ・ゴースト)
 西の空に太陽が沈んでいく。
 真っ赤な夕焼けが正六角形の巨大な建築物『プラント』を照らす。
 プラントに当たった西日によって生まれた影、その暗闇の中に燃えるような赤紫色の1つ目が輝く。
 美しい天使型の機体は見る影もなく、変質していた。青灰色の鋭角なデザインは、武骨だが洗練されたデザインへと変わり、無敵斬艦刀は巨大なハンドガンへと姿を変えた。
 機体コード【単眼の亡霊(モノアイ・ゴースト)】。
 射撃戦に特化した指揮官機であり、肩部のシールドユニットから発生するバリア・フィールドによって高い生存能力を誇る機体だ。
 猟兵たちがクロムキャバリアに来てから幾度か発見され、撃破された機体である。
 たが1つ、他の機体と違うところがあった。
 それは、右肩のシールドユニットに黄群雀蘭(オンジューム)の旗が描かれていることだ。

『私の夢は真面目な人が報われる国を作ることだ。その為に今まで努力してきた』

 モノアイ・ゴーストの外部スピーカーから女性のものと思われる声が響いた。
 それは、8年前の事件でメイフェア・イエローエンジェル少佐が口にした言葉と一言一句同じものだ。
 その声が響いた瞬間に影から共和国の亡霊たちが現れ、喝さいの声を上げる。

『少佐!少佐!』
『我ラガエース!』
『オンジュームノ旗ニ正義ト栄光アレ!』

 彼らもまた8年前の事件と全く同じ声を上げた。
 腐敗してしまった国を自分たちの手で変えてみせる。誰にでも誇れる祖国を我らが手にと、高い理想と情熱と熱狂を胸に抱いている。
 映画のワンシーンならば、盛り上がるシーンなのかもしれない。理想的な上官が輝かしい未来を手に入れるための戦いの士気を上げるために演説する。感動的だ。
 だが、これは違う。もう8年前に戦死した亡霊が、既に地図の上から消え去った亡国のありもしない未来を手に入れるために、自分が呼び出した亡霊相手に鼓舞の演説を唱え、全く関係のない国との戦いを始めようとしている。悪夢のような光景だ。

『さあ、私たちの手で悪徳と腐敗を断罪し、祖国に正義の旗を掲げましょう』
『『『オオオオオオ!!!!』』』

 演説が終わり、亡霊達が雄叫びを上げる。
 亡霊達の時計の針は止まっている。8年前の輝かしいあの日のまま。彼らは過去に留まり続けている。過去の夢を見続けている。
 だから、誰かが目を覚まさせなければならない。
 彼らの革命が成功しても、幸せになる者は何処にも居ないのだから。

※補足
・大尉や少尉と共闘したい方がいれば演出します。居なければモノアイ・ゴーストが呼び出した支援機キャバリアと戦っていると思っていてください。少尉はハイカスタム化された量産機(ドミニオン)に、少尉は以前から乗っていたサイキックキャバリア(ソロネ)に乗っています。
・プレイングについては16日(金)8:30~募集します。
ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード



クーデターなんて、それこそ真面目に国を変えようとしてた人の、
真っ当な努力を踏みにじるやり方だと思うんだけどねえ。

さて、呼ばれる支援キャバリアの中身は上官のシンパみたいだし、
適当に上官の悪口でも言って挑発しようか。
「世間知らずなお嬢様の正義の味方ごっこなら、他所でやってくれないかな。」
くらい言っとけば怒って寄ってくるかねえ。

後は【冷厳練達】で寄ってきた支援機を斧でぶっ叩いて倒していこうか。
怒って冷静さを失ってくれてるとやりやすいんだけど。

粗方片付いたら破壊した支援機の残骸でも投げつけて、
ボスと戦ってる他の人の援護でもしようか。

まったく、寝ぼけた頭でクーデター起こそうとするなんて、迷惑な話だよ。


ティファーナ・テイル
SPDで判定を
*アドリブ歓迎

「大尉と少尉に力を貸して来たんだ!最後まで手伝うから頑張ろう!」とガッツポーズ!
『スカイステッパー』で縦横無尽にジグザグしながら敵ボスに『セクシィアップ・ガディスプリンセス』で♥ビームを仕掛けて『ガディスプリンセス・レディース』で従属神群を召喚して支援&攻撃をして貰い、『ジェットストリーム・ラヴハート』でSPDを強化して『ヴァイストン・ヴァビロン』で絢爛豪華なド派手な猛攻を苛烈に仕掛けます!
敵の攻撃で避けれない攻撃は『神代世界の天空神』で空間飛翔して避けて、敵のUCを『天空神ノ威光・黄昏』で封印/弱体化をします。

「お化けだって闘魂を燃やして打倒しちゃうぞ!」と握り拳


水鏡・怜悧

詠唱:改変、省略可
人格:ロキ
なるべくお二人の近くに居ます。機体も含め、調子も気になりますからね
※改造は反応最適化と近距離用隠し砲(+αご自由に)

相手の動きを止めて味方を援護します
「貴女は私たちを、彼らを、知っていますか?」
オンジュームの軍人として映っているのでしょうか
「知りもしないまま、同じ蘭の国の人間を、悪徳腐敗と決めつけ断罪するのですか」
UC発動
「彼らの正義、先ほど聞きましたね?貴女の正義と根幹は変わらないと、私は思うのですが」
銃撃は液体金属の機体を盾のように変形して防ぐ
「貴女の正義は国民のためのものですか?それとも貴女の為のものですか?」
私は悪人ですが……正義を否定したくはないのですよ


トリテレイア・ゼロナイン

大尉、少尉、支援機の排除を願えますか
あの亡霊を…いえ、少佐を真の意味で止めます

全射撃武装●乱れ撃ちスナイパー射撃で狙うはバリア只一点
そこに●怪力剣を振るい、過負荷加え解除

突撃を●盾受けで受け止め自機ごと拘束

自機を放棄
自己●ハッキング限界突破怪力で敵コクピットハッチ破壊
空の操縦席侵入
コネクタにUC突き刺しハッキング
認知の歪み修正試み●瞬間思考力で少佐人格と対話

己が所業を自覚するのは酷な事
ですが、無関係の人民に害を為す等、貴女が一番に許せぬ筈

亡霊ではなく『断罪の熾天使』として
貴女を慕う者達に労いを
バンダの人々に謝罪を

メイフェア様、これが騎士として私が下す『断罪』です

お疲れ様でした
良き眠りを…


月代・十六夜
【連携アドリブ自由】
…パイロットまで用意するならもう他の世界と変わらんのでは?
まぁ、オブリビオンの趣味嗜好までは知らんし、別に構わんが。
周囲の支援機キャバリアを足場に【ジャンプ】して【空中機動】で接近。
迎撃行動を【スカイステッパー】による慣性無視機動で捌いて抜刀【フェイント】を入れる。
その際、刀身が無いことを【見切ら】せて自身を「何もできない」と印象付け、他の猟兵や大尉たちに目を向けさせる。
後は相手の一斉攻撃の前動作を【見切っ】て、狙われた相手の前に飛び出して【霞む幻刀】で纏めて【カウンター】でお返しするぜ!
相手の攻撃に気を使わないで済むなら気を抜くのも余裕ってな
何もできないと思っただろ?



●違和感
 キャバリアのモニター越しに世界を見る。
 画面の隅には、8年前のクーデター未遂の日付が表示されている。
 モニター越しの部下の機体は、8年前と同じまま。顔の部分に黒い靄が掛かった亡霊染みた姿ではない。当時と全く同じ姿が映っている。
 モノアイ・ゴーストが『少佐』に誤った現実を見せているのだ。彼女の目に映ったプラントには、確かに黄群雀蘭の旗が描かれている。

『さあ、行くぞ、諸君!我らがオンジュームの旗に栄光あれ!』
『『『栄光アレ!』』』

 8年前と全く変わらぬ演説を終え、進撃の号令を上げた少佐は、いつも通りに、キャバリアで暴れ出した馬鹿(テロリスト)どもを鎮圧するために出撃するような気持ちのまま操縦桿を握る。

(あれ…)

 何かがおかしいと、彼女は機体の中で首を傾げた。

(私は何をしようとしている…。どうしてこうも冷静にしていられる…。
 私は祖国に反旗を翻えそうと、同じ国民である軍と戦おうとしているのだぞ…。
 言いようのない嫌悪感と忌避感がある筈だ。だからこそ、自分と味方を騙すために、演説をしたのだ。だが…どうして私は冷静でいられる)

 これからやろうとしていることと、自分の感情が乖離していることに彼女は気づいた。それはオブリビオンマシンに備わった搭乗者のパフォーマンスを最高に引き出すための、感情抑制/活性化機能の働きによるものである。
 彼女はエースとして自分の感情を制御しながら戦場を渡り歩いてきた。だからこそ、気づいてしまう。今の自分は何かおかしいと。おかしくないからおかしいのだと気づいてしまう。
 だが、今更止まることはできない。もう賽は投げてしまった。時計の針は戻らない。ならば前に進むしかない。

『…まあいい。行くぞ、まずは首都を抑える』
『『『『イエス・マム!!』』』

 確かに違和感を抱きながらも少佐が指示を飛ばし、亡霊達の進撃が始まった。

●決戦直前!
「クーデターなんて、それこそ真面目に国を変えようとしてた人の、真っ当な努力を踏みにじるやり方だと思うんだけどねえ」

 バンダ公国第四プラントの前に展開した亡霊達の群れの姿をどこか冷めたような目つきで見据えながら、ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)は呟いた。
 全くもって彼女の言う通りである。オンジュームは共和制を敷いた民主主義国家だった。国を変えたいのならば、力でやるのではなく、選挙に出て票を貰ってやるべきであった。
 まあ、その事は、メイフェア少佐自身も良く理解していたのだが。

「クーデターが起こらなかったならば、軍での実績を使って政治家に転身するつもりだったらしいぞ、メイフェア少佐は」
「最後までクーデター側につくか、軍人として鎮圧に回るか悩んでいたみたいです。 私が見た夢の中ではとても悩んでいたようでした」

 ペトニアロトゥシカの隣にキャバリアに乗った大尉と少尉が現れる。
 大尉の機体はセラフィム・リッパ-と戦っていた時の量産機(ドミニオン)であったが、先ほどとは細部が変わっている。
 ドミニオンハイカスタム。水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)の一人格、ロキの齎した異世界知識によってクロムキャバリアに近づくほど強化された改修型量産機である。
 少尉の機体は先ほど戦ったセラフィム・リッパ-とどこか似たような意匠の天使型のサイキックキャバリア『ソロネ』だ。

「へぇ~。そうだったんだ」
「すごく真面目そうな人でしたからね。
 巻き込まれる一般市民の生活とかを凄く気にしていたみたいです」
「だから、中に入ってクーデターの統制を取ることで少しでも被害をコントロールしようとしていたようだ。まあ、仲間を見捨てられなかったというのも大きかったみたいだけどな」

 大尉と少尉が公国軍基地での情報収集の結果を告げた。
 内容については、少佐の人物像と8年前のオンジューム国で起ったクーデター未遂についてだ。客観的な資料を、少尉が夢に見た内容で補強しているので情報の確かさについては、かなり信用ができるものだ。
 とはいえ、もう起こってしまったことなので、参考程度にしかならないのだが。それでもペトニアロトゥシカのやろうとしていることにはそれなり役立つ情報だ。
 そんなことを話していると、UDCの液体金属で出来た機体が、話していた3人の元へと近づいてくる。

「機体の調子はどうですか?大尉」
「君が修理の手伝いと改修をしてくれたのだったな。ありがとう。
 反応が良すぎるくらいでびっくりだ」
「それは良かったです。少尉の体調は?」
「バッチリです。足を引っ張らないよう頑張ります」

 ロキは大尉と少尉に話しかけると、機体の調子と治療の成果を確認する。話を聞いた限りではどちらも良好なようだ。
 改造と治療を請け負った側としては一安心だ。とはいえ、まだまだ経過観察中である。用心のためにもロキは、公国軍人2人と行動を共にするつもりだ。
 そこに2人の猟兵が合流を果たす。

「大尉と少尉に力を貸して来たんだ!最後まで手伝うから頑張ろう!」
「おおー!頑張りましょう!ティファーナ様!」

 少尉のサイキックキャバリアの掌に降り立ったティファーナ・テイル(ケトゥアルコワトゥル神のスカイダンサー・f24123)がガッツポーズをすると、少尉も機体の中でガッツポーズをしながら答えた。
 話をするのは初めてなのだが、ノリが近い女子同士ですぐに打ち解けたようだ。
 そんな部下と女神のやり取りを横目で見ていた大尉の視界の端に、木の上からすっと人影が横切った。

「…パイロットまで用意するならもう他の世界と変わらんのでは?
 まぁ、オブリビオンの趣味嗜好までは知らんし、別に構わんが」
「おや、君は。一番初めにこの場所を特定した猟兵だな。
 すまない、随分と待たせてしまったかい?」
「まあ、そこそこ待ったっすね」

 月代・十六夜(韋駄天足・f10620)は、首だけ大尉の方へと向き直りながら言った。事実は事実なので、特に気にせずに答える。別にデートの待ち合わせでもないのだ。相手に気を使って待っていないなんて言う必要はないだろう。

「まあ、そうだろうな。あれだけ早ければ。取りあえず…だ。君のお陰で敵の位置を早々に把握できた。敵の被害を食い止めるのにも役立った。感謝する」
「はいはい。そりゃどうも」

 大尉の方も十六夜のノリがどういう感じなのか分かったのだろう。待った発言を適当にスルーすると、伝えようとしていたお礼の部分だけ簡潔に伝える。
 別にお礼が欲しくてやっていたわけではないと思うが何も言わないのは無礼だし、何よりも言った方としては気分がいい。言って得になるならば、言った方がいいと大尉は思う。
 さて、そんなやり取りをしていると最後の猟兵が現れる。

「大尉、少尉、支援機の排除を願えますか。
 あの亡霊を…いえ、少佐を真の意味で止めます」
「ああ、勿論だ」
「任せてください!」

 紫色のラインが入った白銀の騎士甲冑型キャバリア『ロシナンテⅣ』に搭乗したトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、公国軍の2人に援護を要請した。
 2人の公国軍人は、快くそれに応えた。
 自分の祖国と、蘇ってしまった少佐を救えるならば、自分たちにできることは何でもするつもりだと2人は告げる。

「ありがとうございます。
 では、敵が動く前に最後のブリーフィングと参りましょう」

 機械騎士の言葉に全員が頷き、お互いの動きを確認する。
 そして、敵が動き出した。

●決戦!単眼の亡霊! ~支援機を潰せ~
(さて、呼ばれる支援キャバリアの中身は上官のシンパみたいだし、適当に上官の悪口でも言って挑発しようか)

 隊列を組んでバンダ公国の首都に向けて進軍する亡霊共和国軍の前に、ペトニアロトゥシカと液体金属UDCで出来たオブリビオンマシン『暴食の王ケルベロス』に搭乗したロキ、公国軍の2機のキャバリアが立ちはだかる。
 彼らの役目は支援機である亡霊たちを引きつけ、排除することだ。
 ペトニアロトゥシカは1歩前に出ると、亡霊たちの群れに大きな声を上げた。

「世間知らずなお嬢様の正義の味方ごっこなら、他所でやってくれないかな」

 ペトニアロトゥシカの痛烈な批判が亡霊たちに直撃する。
 熱烈な『少佐』のシンパである彼らは当然看過できない。機体のスピーカーから合成音声による反論の声が響いた。彼らに顔があったならば、顔色は真っ赤になっていただろう。

『黙レ!黙レ!黙レ!オ前達ニ少佐ノ何ガ分カル!』
『アノ方ハ誰モ触ロウトシナカッタ共和国ノ闇ト戦ッタノダ!』
『我ラハ祖国トアノ御方ヲ救ウノダ。ソノ為ノ力モ手ニ入レタ!』

 まんまと挑発に乗ってしまい、少佐の統制から外れた支援キャバリアの数機が、敬愛する上官への暴言は許さないと、ペトニアロトゥシカの元へと殺到する。
 スラスターを噴かせて、RX-AアームブレイドやRXキャバリアグレイブを手に、接近戦の構えだ。
 
「知らないよぉ。そんなこと」

 対する混沌獣の方は冷静沈着。UC【冷厳練達】を発動させつつ、両手で古竜の戦斧を構えて迎撃体勢を取る。

『ナンダトオオオ!!死ネエエ!!!』

 一機目の機体が右腕のアームブレイドを大きく後ろに向けて伸ばしながら迫る。ペトニアロトゥシカの右側を高速で通り過ぎつつ、地面すれすれから大きく掬い上げるような軌道の斬撃を繰り出す算段だ。

「分かりやすい動きだね」

 混沌獣は、迫りくるアームブレイドを右に転がって躱すと、回転の勢いを生かしたまま、すれ違い様に敵機の右足首を薙ぎ払う。

『ヌワッ!』
『オイッ!邪魔ッ―!!!!』

 右足首を斬り飛ばされた1機目がバランスを崩して転倒。お腹から地面にダイビング。ザリザリザリという金属とアスファルトが衝突して削れる音が響く。
 慌てた二機目は、スラスターを急停止させ制動をかけつつ何とか、重心を後ろに傾けながら足踏みをすることで一機目との衝突を避けようとする…が、一機目との衝突回避に頭が一杯になって、槍をぶち込むはずだった敵の存在が頭の中から吹き飛ぶ

『ア、危ナカッタ…』
『オイ、後ロッ!』
『エッ!?』
「二機目だね」

 足踏みをしている間に背後へと回った混沌獣の古竜の戦斧が、二機目の背部を大きく袈裟に切り裂いた。
 背部に設置されていたスラスター等を斬り飛ばされた二機目は、膝から崩れ落ちると、一機目に覆いかぶさる。そして、背中の傷口からバチバチと瞬いていた火花がオイルに引火して爆発。
 一気に二機の支援機キャバリアが大破した。

『オノレエエエ!!』

 一機目と二機目の共和国軍キャバリアを迂回するような軌道で3機目が迫る。上官を侮辱され、仲間を斬り倒された彼は、怒りで我を失っている。
 RX-Aロケットハンマーを上段に構え、もぐら叩きの要領で叩き潰すつもりだ。

「他の敵も同じくらい怒って冷静さを失ってくれてるとやりやすいんだけど」

 ハンマーを構えて迫る敵機の股下に向けてペトニアロトゥシカは、飛び込んでいく。相手が人間サイズならば股下を潜るのは難しいが、相手が全高5mのキャバリアならば、非常に簡単だ。高さ2m半近くの大きな隙間がそこには空いている。
 トンネルを抜けて振り返れば、武器を振り下ろして、隙だらけの背中がある。

「ムッ。ドコ二消エタ。手応エハナカッタ‥‥」
「後ろだよぉ」

 ユーべルコードを切り裂き弱める古竜の戦斧が煌めき、モノアイ・ゴーストのユーべルコードによって構成された支援機を切り裂く。
 敵より落ち着いている場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる効果を持つ【冷厳練達】の効果で強化された斬撃は、1撃で共和国軍の亡霊を骸の海へと返した。

「まったく、寝ぼけた頭でクーデター起こそうとするなんて、迷惑な話だよ」

 真っ先に突っ込んできた3機を仕留め終えたペトニアロトゥシカは一人呟くと、残りの支援キャバリアを仕留めるべく、別の亡霊の群れに攻撃を仕掛けていった。

「では、いつも通りにデカいの撃ち込みますので、ロキさんと大尉は援護をよろしくお願いします」
「了解です」
「ああ、任せろ。ハイカスタムの試運転には丁度いい」

 少尉&大尉とそれを支援するロキの3人は、連携して支援キャバリアの撃退に臨むことにした。
 強烈な一撃を繰り出すことができる少尉のサイキックキャバリアを、機動力と対応性に優れる大尉のドミニオンハイカスタムと、流体金属UDCの機体であるがゆえに尋常じゃない防御性能を誇る『ケルベロス』で支援する。
 
『チッ。ナンテ早ダ。エースデモ出テキタノカ…!?』
「機体が俺の動きについて来ている。イケるぞ、これならば…!」
『アノドロドロシタ金属ノ機体…ドレダケ丈夫ナンダ…!』
『イイカラ攻撃ヲ続ケロ。サイキックキャバリアヲ攻撃サセルナ!』

 RX無敵斬艦刀レプリカにサイキックパワーを込め始めた少尉の機体に向けて、攻撃を仕掛けようとする機体から優先順位をつけて大尉が攻撃をしていく。
 カスタム時代では、機体が大尉の腕に追いついていなかったが、ハイカスタムとなった今は違う。追従性が大きく強化された機体は、大尉の意のままに動く。
 型の古いキャバリアライフルから繰り出される音速を越えた弾丸を、紙一重で躱しながら、靄のかかった頭部モニターに次々とRSキャバリアライフルの弾丸を叩きこんでいく。
 少尉のサイキックキャバリアを狙う弾丸については、ロキの『ケルベロス』から伸びた液体金属の触手が、絡めとり無効化していく。
 モノアイ・ゴーストが呼び出した支援機の大半は、8年前の機体だ。UDCでありオブリビオンマシンでもあるケルベロスの流体金属を貫くには少々火力不足だ。
 そうして時間を稼いでいると遂に少尉の機体のチャージが終了する。

「いきますよー。とりゃあ!」

 超能力で強化されたRX無敵斬艦刀レプリカの一閃が周囲の支援型キャバリアを貫き、内部から爆散させた。
 オブリビオンマシン、量産機、サイキックキャバリア。3機の連携によってモノアイ・ゴーストが呼び出した支援機の数は次々と減っていった。

●決戦!単眼の亡霊 ~黄昏に消える亡霊~
 さて、混沌獣が支援機を一撃でなぎ倒し、キャバリア乗りたちが連携して支援機の数を削っていた頃、ボスであるモノアイ・ゴーストに挑んでいた、機械騎士と天空神と韋駄天足は、超高速機動戦を行っていた。

『…しつこいわね。これでは部下たちに出す指示が間に合わない』
「お化けだって闘魂を燃やして打倒しちゃうぞ!」
「おっ。鬼ごっこでもやるのかー?付き合ってやるよ」

 黄昏の空を単眼の亡霊が時速数千キロで駆け、それを黄金の鱗で覆われた大蛇脚の女神と、キマイラの青年が追っている。
 女神の方は、UC『セクシィアップ・ガディスプリンセス』で豪華絢爛な姿へと変身しており、ハートビームを繰り出しながら、『スカイステッパー』で空中を足場に変則的に跳ねまわり、ビームを躱しながら、亡霊機兵を追いかけている。
 キマイラの青年の方も『スカイステッパー』を駆使して、空中を足場にしながら追いかけている。彼の方には常時飛行するための翼やユーべルコードはないので、適宜襲い掛かって来る支援機を足場にしたり、スカイステッパーの回数リセット装置として活用しながら、モノアイ・ゴーストを追いかけている。

「むむー。あのバリアが固い」
「あのバリアフィールド発生装置を何とかしないと攻撃が通らねえな」

 肩部のシールドユニットから発生している強力なバリアフィールドによってハートビームがかき消されたのを見たティファーナは、不満げに頬を膨らませる。
 射撃と生存能力に特化した指揮官機というだけあって、防御は堅牢だ。地上からはトリテレイアが、強烈な射撃支援をしてくれているが、あの速さだ。中々当たらない。

『何でパルス・オーバーブーストを発動させたキャバリアに、生身の歩兵が追いついて来られるのよ…』
 
 対するモノアイ・ゴーストの方も困惑の声を上げていた。
 彼女の常識の中では、時速数千キロまで加速したキャバリアに並走する歩兵なんて存在しない。少なくともオンジューム共和国にそんな奴は居なかったはずだ。

『何者なのよ、貴方たちは!』

 BSロングレンジライフルを引き撃ちしつつ乱射しながら、少佐の亡霊が叫ぶ。

「私たちは猟兵だよ…っと。このままじゃ埒が明かないね。来て、レディースの能力(チカラ)を今こそ見せる刻だよ!」
「んじゃ、そろそろ俺も仕掛けようかね」

 ティファーナはビームを躱しつつユーべルコードを詠唱して従属神群を呼び出し、十六夜は、迫りくる支援キャバリアたちを足場にしながら加速して、腰に差した型無の鯉口を斬って、ライフルを引き撃ちするモノアイ・ゴーストに迫る。

『速いっ。でも…歩兵にキャバリアのバリアを破れると思うな!』
「はっはっは。まあ、無理だよな」
『刀身がない…?』

 バリアの出力を強化して攻撃を防ごうとしたオブリビオンマシンをあざ笑うかのように、十六夜は、刀身のない型無を振るった。
 スカッという効果音が聞こえそうになる程の見事な空振りだ。

「おっと、隙だらけだぜ」
「勇気! 正義! 神愛! 神様パワーを爆発だ!」
『くっ…さっきの男はサポート特化だったのね…!』

 十六夜は型無を振った反動で上下逆様になると、空中を蹴って地面方向に加速。入れ替わりになるように、従属神群れのサポートを受け、勇気の闘魂に変身することで速度を増したティファーナが、高速突撃をしかける。
 十六夜に気を取られていたモノアイ・ゴーストに女神のタックルが直撃する。
 ぶつかった機体の角度が180度を超えて200度くらいまで傾き、物凄い速度で地面へと加速して堕ちていく。
 ズガアアアン!と、爆弾が落ちたような音が響きモクモクと土煙が上がる。

「ようやく足が止まりましたね」

 そこにタイミングを見計らっていたトリテレイアが全射撃武装を乱れ撃ち、弾丸を雨霰と降らせていく。
 狙うはバリアフィールド発生装置である肩部のシールドユニットだ。

『くっ…。二番隊、三番隊、あの騎士型キャバリアを止めなさい』
『『イエス・マム!』』
「くっ」

 防御を捨てて全部射撃武装を解放しているトリテレイアの操るロシナンテⅣに向けて、共和国軍の亡霊達が銃口を向ける。

「そうはさせないよぉ」
「私たちに!」
「任せてくれ!」

 ペトニアロトゥシカが二番隊の背後から現れて、古竜の斧を振るって支援キャバリア部隊を強襲し、少尉と大尉のキャバリアが三番隊を横合いから殴りつける。
 支援機キャバリアはみるみるうちに数を減らしていく。

『…彼らを押さえていた部隊は全滅したのか。だが…しかしっ…!』

 バリアフィールドの出力を上げて無理矢理攻撃を耐えながら、再び空に上がる。全身の光学兵器にエネルギーが充填され、光が宿る。

『あの蛇の少女さえ落とせば、制空権はこちらのもの。
そうなれば後は一方的に空から攻められる」

 銃口を空に舞う女神に向けて引金を絞る。
 膨大なエネルギーが込められた紫色の極太ビームがティファーナに襲い掛かる。
 そこに一つの人影が躍り出た。

「相手の攻撃に気を使わないで済むなら気を抜くのも余裕ってな。
何もできないと思っただろ?」
『何ですって…!?』

 完全に脱力した状態で一斉射撃を受けた十六夜は、ユーべルコードを無効化すると腰に差していた型無を抜き放った。
 そこに現れたのは、紫色に輝く光の刃。それは、オブリビオンマシンの創り出していた強力なバリアフィールドを引き裂き、本体に大きな傷を刻んだ。

『バリアフィールドが斬られた…!?』
「神々の無限の宝物庫の真の効力を!」

 絶対の信頼を置いていたバリアフィールドが切り裂かれたことに動揺するモノアイ・ゴーストに、ティファーナの追撃が迫る。
 神々の財宝を消費して放たれるは、落下エネルギーを活かした空中回転キックだ。ユーべルコードによる絶対成功の加護を受けた大蛇脚による蹴りは、寸分たがわず左肩のシールドユニットへと直撃し、粉々に破砕した。

『きゃああああああああ!!!』

 十六夜とティファーナのコンビネーションによって単眼の亡霊は再度地に堕ちる。
 バリアフィールドを半分失ったモノアイ・ゴーストのダメージは非常に大きい。

「少佐殿。貴女はここで止めてみせます」
『まだ…まだよ…!』

 すかさずトリテレイアはロシナンテⅣをモノアイ・ゴーストに向けて走らせる。
 すぐに体勢を立て直した少佐は、残ったバンダ公国の国旗が描かれたシールドユニットを限界まで稼働させて、バリア・チャージを仕掛けた。
 バチンと電撃が弾ける音が響き、周囲に紫電が迸る。キャバリアとキャバリアが激しくぶつかり合う。

『私はまだ…まだ…あれ…?』
「貴女はここで止まるべきなのです。メイフェア少佐」

 バリアフィールドによる強烈な弾き飛ばす力がロシナンテⅣを襲う。
 支援キャバリアの支援がなく、攻撃によって半分失っている。それでもまだ、しがみついているのが精一杯なほど強力だ。
 トリテレイアは、悲鳴を上げるロシナンテⅣを無理矢理動かし、バンダ公国の国旗が描かれたシールドユニットの接合部に剣を突き立てる。
 バチバチバチ!紫電が迸り、剣を拒絶する。

「私も手伝いますよ。彼女には聞きたいことがあるんです」
「ありがとうございます」

 ケルベロスに乗ったロキが現れて、ロシナンテⅣが振るう剣を後押しする。ギギギという金属と金属が引っ掻き合う音が響き、シールドユニットの接合部を剣が貫いた。

『私は…私…?ここは…?うぐっ…』
「液体金属で拘束します。力尽くでは抜けられませんよ?さぁ、どうします?」

 UC『思考拘束』の効果によって、対象の死角に開く、亜空間へ繋がる裂け目から『UDC-黒く玉虫色に光る液体金属』が放たれ、怪力による拘束と理性(判断力)の低下作用によりモノアイ・ゴーストの動きを一時的に封じた。

「さあ、全てを終わらせましょう」

 ロシナンテⅣから飛び出したトリテレイアは自己ハッキングで機体性能を限界突破すると、怪力で無理矢理コックピットハッチを破壊した。
 そして空のコックピットの中に侵入すると、コネクタに特殊な短剣を突き刺してハッキングを仕掛けた。

●メイフェア・イエローエンジェル
 機体の中にある仮想世界へと機械騎士は降り立った。
 そこは、8年前のまだ平和だったオンジューム共和国だ。
 軍事基地の内部にある執務室にメイフェア少佐とロキが居た。どうやらロキは、UDCの液体金属を通してハッキングを仕掛けていたらしい。

「貴女は私たちを、彼らを、知っていますか?」
「…当然だろう。私はキミ達のことを…知って…知って…」

 そう彼女が言いかけた瞬間、ロキの着ていた衣装が変わった。黄群雀蘭の国旗が描かれた近現代風の軍服。そう、メイフェア少佐と同じオンジューム共和国の軍服だ。
 オブリビオンマシンによって彼女の影響は故意に歪められている。

「知りもしないまま、同じ蘭の国の人間を、悪徳腐敗と決めつけ断罪するのですか」
「…それは違う。悪徳や腐敗に満ちていたのは、一部の悪徳な政治家や軍上層部、マスコミと言った権力層だ。大半の人は真面目に暮らしている」

 ロキの言葉に少佐はぐらつく。
 何故、私は断罪という言葉を掲げてクーデターに参加したのだろうか。分からなくなる。戦闘前に感じた違和感が鎌首をもたげる。

「彼らの正義、先ほど聞きましたね?貴女の正義と根幹は変わらないと、私は思うのですが」
「公国軍人の正義は国民の豊かで安心な暮らしを守ること」

 セラフィム・リッパ-の中で聞いた言葉が自然と口から零れる。
 それは彼女が軍人を志した原点でもあった。

「貴女の正義は国民のためのものですか?それとも貴女の為のものですか?」
私は悪人ですが……正義を否定したくはないのですよ」
「私の正義は…国民の…愛すべき共和国の民のものだ」

 その言葉を口にした瞬間、背景が弾け飛んでロキの服装が元に戻った。
 徐々に認知の歪みが解消されてきているのだろう。

「己が所業を自覚するのは酷な事
 ですが、無関係の人民に害を為す等、貴女が一番に許せぬ筈」

 トリテレイアがメイフェア少佐に語り掛ける。
 少佐は苦笑しつつ答えた。

「ああ、そうだな。全く。まさか私が死んでいて、バンダ公国に化けて出ていたとは思いもよらなかった。一体どうしてこうなったのだか。
 もうどうやってもクーデターが止まらないと確信して、何とか平穏無事に収めようとリーダーに収まったあの日から、ずーっとツイていないな、私は」

 クーデターが起こったあの日、少佐は急いでプラントへと向かっていた。
 馬鹿なことは止めろと説得するためだった。でも、彼女の正義を掲げながらも異常なまでに熱狂していた部下たちを見て、止めることは不可能だと確信した。
 コンバットドラッグを大量摂取でもしたのではないかと疑うほどの熱狂。彼らは正義に酔っていた。どうしようもなく。
 何か悪いものでも憑いているのではないかと思った。或いは…今の私のように本当に何かが憑いていたのかもしれない。それは最早、確かめようもない。
 ただ、その時の私は、吐きそうになりながらも、被害が少しでも少なくなるように統制を取ろうとした。そして途中まではうまく行っていた。だが、何かが気に食わなかったのだろう、味方によって彼女は殺されたのだ。
 それは彼女が知る由もないのだが、オブリビオンマシンによる合理的な判断だった。効率的に虐殺ができる内戦を起こすには彼女は邪魔で、尚且つ生贄に丁度良かったからだ。
 結果として、彼女を失ったクーデター軍は鉾の収め所を失い、泥沼の内戦へと赴くこととなり、黄群雀蘭の国は滅亡した。

「亡霊ではなく『断罪の熾天使』として貴女を慕う者達に労いを。
バンダの人々に謝罪を」
「ああ、そうだな。死んだ後もこの私について来てくれてありがとう。
 そして、バンダ公国には迷惑をかけた。申し訳ございませんでした。
私の蛮行を止めてくれてありがとう感謝する」

 そう言うと彼女は頭を下げた。
 そして、顔を上げると平静な口調でこう告げた。

「では、終わらせてくれ」
「メイフェア様、これが騎士として私が下す『断罪』です」

 そう言うとトリテレイアは、慈悲の短剣(ミセリコルデ)を取り出した。

「お疲れ様でした。良き眠りを…」
「ああ。おやすみなさい。もう二度と目覚めさせないでくれ」
「ええ、約束しましょう」

 慈悲の短剣がメイフェア・イエローエンジェルを貫いた。
 断罪の熾天使と呼ばれた女は、その体を黄色いオンジュームの花と天使の羽根に変えると、骸の海へと帰って行った。
 その姿をロキとトリテレイアは、ただただ、見守っていた。

●エピローグ
「いやー、本当に助かりました。ありがとうございます!」
「本当にたすかったよ。まさか少尉を助けてもらっただけでなく、愛機の改修までしてもらえるとは思わなかった」

 すっかり夜になった軍事基地で公国軍の2人は猟兵たちにお礼を言っていた。
 激闘に次ぐ激闘で疲れているだろうが、どうしても…という事で時間を作って見送りに来たそうだ。

「次にクロムキャバリアに来たときは是非ともバンダ公国を案内させて下さい。
 美味しいお店とか、観光地とか色々と知っていますよ!」
「ただ、キミ達が動くのは何か厄介ごとが起こった時なのだろう。
 再会できること自体は喜ばしいが…まあなるべく会わないで済むのがベストなのだろうな…」
「うっ…。そうですね。毎回こんな感じだと体が持ちませんし…」

 OPの時とは打って変わって表情豊かな少尉が、顔色と表情をコロコロと変えながらキミ達に話しかけている。あの時は『セラフ』起動の緊張と、直感的に猛烈に感じる不安でナーバスになっていたようだ。このテンションが本来の彼女である。

「では、会えたら会うとかそんな感じでお茶を濁しましょう」
「ああ。ではまた。機会があれば親睦を深めるとしよう」

 手を振って送り出す2人の公国軍人を後に、キミ達猟兵は、グリモアベースへと帰還をすることになるのであった。

 蘭の花の名を持つ国々に関する物語、第一話「断罪の熾天使」これにて終幕。
 それでは…続いたら第二話でお会いしましょう。お疲れ様でした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月19日


挿絵イラスト