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狂える鋼の猟犬達

#クロムキャバリア

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#クロムキャバリア


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『ハウンド小隊、応答願います。出撃許可は下りていません』

 ――聞き慣れたオペレーターの声がドックに響く。彼女もまた、戦火の下で苦楽を共にしてきた大事な仲間だ。だからこそ、悲しませたくはなかったのだけど。
 抑えた声音に答える事なく、新たな愛機を進ませる。同じ信念を胸にする部下達もまた、それに従ってくれていた。所詮は小隊一つとはいえ、この仲間と一緒ならば、必ず成し遂げられるだろう。

 目指すは峡谷のプラント。地下洞窟を抜けた先に、我が帝国が後生大事に抱えている、恵みの種だ。
 これこそが国を支える宝だと、そう考えていた頃もあった。
 しかし、この機体を手にした時、気付いたのだ。あんなものがあるから、我が帝国は弱いまま。覇道に踏み出す決意すら出来ないで居るのだと。
 全てはこの帝国をあるべき姿に変えるため。この世界で生き残るには、より強く、より飢えていなければならない。
 さあ、同胞達よ、共に行こう。我等の行いこそが、この国の礎となるのだ――!

『ハウンド小隊! これは重大な反逆行為です! 返事をしてください、ユーリ!』

●暴走
「この世界では『オブリビオンマシン』、というらしいね」
 新しく至った世界、クロムキャバリエを臨んで、八津崎・くくり(虫食む心音・f13839)はそう口を開いた。
 この世界の特色とも言える、身長5mほどの乗騎、キャバリエ。100年続く戦火の中で、破壊されたうちのいくつかは、搭乗者を洗脳するオブリビオンマシンとして蘇るのだという。どうやら猟兵以外にはその見分けがつかず、戦いの渦はオブリビオンによって大きくなるばかり――。
「それでだ。この世界に数多存在する小国の一つ、『レガリエ帝国』にも、その手が伸びているのだよ」
 発掘、修理した機体がオブリビオンマシンだったようで、それに搭乗した小隊長がその影響下に置かれてしまったらしい。歪んだ思想に囚われた彼は、部下達にもその影響を伝播させ、ついには自国の管理していたプラントを一つ乗っ取ってしまった。
「いや、大したものだ……と言ってる場合ではないのだろうね」
 大事なプラントを一つ失い、この国の民は困窮し、裏切り者のハウンド部隊の追討を行おうとしている。
「放っておけばまた一つ戦火の種が芽吹き、晴れてオブリビオンの狙い通り、となるわけだが。我々としてはこれを是非阻止したい」
 傭兵としてこの事態に介入し、猟兵のみでプラントを奪還――引いてはオブリビオンマシンを破壊し、思想を歪められた将兵達を解放する。それが、今回の目的となるだろう。
「この世界に踏み込んでいくための、大事な一歩目だ。是非、力を尽くしてほしい」
 朗々とそう呼び掛けて、くくりは一同を新たな世界へと送り出した。


つじ
 どうも、つじです。
 今回の舞台はクロムキャバリア。シンプルなキャバリア戦になります。

●レガリエ帝国
 クロムキャバリアに存在する小国の一つ。君主制、軍国主義。黒く塗った機体を使い、小隊にはそれぞれ動物の名前が付けられているようです。

●キャバリアについて
 キャバリアをジョブやアイテムで持っていない方でも、キャバリアを借りて乗ることができます。ユーベルコードはキャバリアの武器から放つこともできます。

●第一章
 プラントに続く地下洞窟を進んでいただきます。普段はプラントからの物資移送に使われており、道に迷うことはないと思いますが、ところどころに老朽化した箇所や、敵の仕掛けた罠があります。
 キャバリアにのった小隊員が潜んでいる場所もあるでしょう。

●第二章
 プラントを占領している見張りの兵士達との集団戦になります。彼等は『オブシディアンMk4』に搭乗しています。

●第三章
 小隊長である『ユーリ』が参戦します。オブリビオンマシン『モノアイ・ゴースト』に搭乗していますので、これを撃破してください。

 以上になります。それでは、ご参加お待ちしています。
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第1章 冒険 『地下進撃』

POW   :    多少の損害は無視して強行突破

SPD   :    最短ルートを突き進む

WIZ   :    状況を推理、考察しながら慎重に進軍する

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シャルロット・クリスティア
ずいぶん戦乱の規模が大きい世界ですね、ここは。
荒廃具合は別として、スペースシップワールド並です……。

しかし、良くも悪くもあの兵器は大きすぎる。
洞窟と言ってもキャバリアの通行を前提にした広さはあるでしょうが、それでも小回りの利かない場面は出てくるでしょう。

生身で行きます。
機載カメラでは見つけにくいような細かいポイントも見つけやすいでしょうし、設置式の機銃程度なら死角から近づいて配線を駄目にして無力化するなどもやりやすいでしょう。
歩兵の出番と言うのも、それなりにあるものですよ。

もっとも、単純な破壊力ではどうしても負けるので、それが必要な場面は他にお任せする形になるでしょうがね。


シキ・ジルモント
キャバリアを借りて出撃
装備は自動小銃やビーム小剣をメインに、ホーミングレーザーやミサイルポッド、グラビティガンを希望する

道中は罠や危険地帯を警戒、ユーベルコードの効果も併せて危険の回避を試みる
この後の戦闘に備えてキャバリア搭乗時と生身の間隔のズレを確かめつつ進む
破壊できる罠や障害物であれば接近せず小銃の射撃で排除

小隊員発見時は交戦、相手キャバリアの破壊・無力化を狙う
キャバリアを使った戦闘経験だけなら、おそらく相手が上
戦いながら相手の動きを観察、キャバリアでの戦い方を見て盗む
それを参考にしつつ回避を重視し隙を見つけて反撃する
隊員はひとまず無力化できればいい、オブリビオンマシンの破壊で元に戻る筈だ



●歩兵のやり方
「――ずいぶん戦乱の規模が大きい世界ですね、ここは」
 軽く情報収集に勤しんだところで、シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)は溜息交じりにそう呟く。千を超える国が勢力争いを続けている、とそんな前情報は得ていたが。実際にこのレガリエ帝国も、四方に国境問題を抱え、結構な頻度で戦闘を行っているようだ。
 どこの国もこの有様だとすれば、その戦乱規模はスペースシップワールドに並びかねない。……いや、銀河帝国のような覇権を握る国家が生まれていない分、混沌度合いではこちらが上か?
 思案に暮れつつ、今まさに発進準備が進められている機体、この世界の特色でもあるキャバリアを見上げて。
「ああ、アンタが上に雇われた傭兵か? 機体を貸せってんなら――」
「……いえ、大丈夫です」
 少なくとも今は必要ない。そう判断した彼女は、声を掛けてきた技師に対して首を一度横に振ってみせ、その足で地下洞窟へと向かっていった。

 思うに、あの兵器は良くも悪くも大きすぎる。
 目的のプラントへとつながるこの洞窟は、キャバリアの行き来も考えられた大きさなのだろうが、それでも小回りの利かない場面は出てくるだろう。それに、今回の敵はそもそも帝国のキャバリアを相手取るつもりのはずなので。
「……まあ、こうなりますよね」
 予想通り。洞窟の壁面、照明の届きにくい箇所に据えられた機銃を見上げてシャルロットが呟く。敵の仕掛けた罠だろうが、口径の大きさから発見しやすく、照準角度が高い。対キャバリアを想定している分だけ、人間からすれば死角が多いことが察せられる。
 壁際を伝い、設置型機銃の真下まで至った彼女は、影に隠されていた配線を引っ張り出して切断した。やはり、この世界でも歩兵は歩兵でやれることはあるようだ。
 そのまま彼女はいくつか察知できた範囲のトラップを無効化し、老朽化した区画を、人が通れる程度の横道に入るなどして迂回しながら進んでいく。
 やがて、本道と合流した彼女は、それに気付き、岩陰に身を潜めた。
 前方の隘路の先に、帝国内でも見た黒く塗られたキャバリアが、待ち伏せの姿勢を取っている。
「さて、どうしましょうか」
 小さく呟く。猟兵である彼女の弾丸ならば、あの装甲だって貫けるだろう。ゲリラ的なやり方で、仕掛ける手段も無くはない。
 けれどこの先、あれと同じものと戦うことはわかっているので。
「お手並み拝見、ですかね」
 キャバリア同士の戦闘というのも見ておいた方が良いだろう。丁度後続の味方が来ているのを察して、彼女はいつでも援護に入れるようライフルを構えながら、見に回った。

●tutorial
「アンタが乗るのはこの機体、オブシディアンMk4だ」
 傭兵という立場で訪れたシキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)に、この国の技師から量産型機体が提供される。装備の換装による汎用性と、コックピット周りの装甲による生還率の高さが売り、とのことだが。
「セッティングは頼めるんだな?」
「ああ、それくらいはしてやるよ」
 自分の搭乗する事になった機体を見上げて、シキは装備の注文を告げていく。両腕をはじめ、肩部ミサイルポッドにホーミングレーザー。一通りのそれを伝えたところで、同型機がいくつも並ぶ格納庫の様子に目を移した。
「相手も、同じ機体を使っているんだったか」
「ああ、ウチで整備した機体だからな。配色は同じだが、猟犬のエンブレムが描かれてるはずだ」
 ハウンド小隊。彼等はオブリビオンマシンの影響を受けてしまったのだが、猟兵ならぬ彼等にそれは分からない。
「まさか、あいつが裏切るとはなァ……そんな奴には見えなかったんだが」
「……そうか」
 嘆くような声を聴きながら、シキはセッティングを終えた機体に乗り込んだ。

 プラントへと続く洞窟は、キャバリアの大きさからみると少し狭く感じられるだろうか。それはそれで丁度良いと判断し、シキはその操作性を確認するようにしながら、先へと進んでいった。
 二足歩行のそれはバイクとはやはり違う。手足は在れど生身とは違うその感覚を、一歩一歩身体に教え込ませていく。前方に発見した対キャバリア用らしき地雷をポイント、小銃で撃ち抜いて――。
「……なるほど」
 これを、自分の手で撃つ感覚に近付ける。そう意識付けしつつ、彼は警戒を保ったまま、地下洞窟を進んでいった。
 いくつか枝分かれした道の中でも、本道と呼べるそこには、一箇所幅の狭い場所がある。待ち伏せにはお誂え向き――そう彼が察知した通り、岩陰から敵機が飛び出してきた。こちらと同型の機体。咄嗟に撃ったシキの小銃を、意にも介さぬようにして敵は進む。
 搭載した砲を使ってこないのは、あちらもここを崩落させたくないためか。重装甲の胴体をむしろ盾にするようにしながら、敵機は手にした無骨なブレードを突き立てにかかる。機体重量と装甲を活かした突進。それを冷静に観察しながら、シキは片足を軸に、機体を回転させる。ブレードの腹に、側面から身体をぶち当てるようにして突進の勢いを逸らすと、ビーム小剣を敵機の腕に突き立て、そのまま洞窟の壁に叩き付けた。
 縫い留められた敵機の腕がそこでへし折れ、ブレードを失ったそれは、咄嗟にもう片方の腕に握った小銃を向けようとするが。
「――!」
 遠方から飛び来た一発の弾丸が、その送弾機構部に一撃を加えた。
 この状況下、一手の遅れは致命的だろう。難なく銃口を向けたシキは、引き金を数度引き、敵機を機能停止に追い込んだ。
「……これで、元に戻る筈だな?」
 コックピットは無事だ。恐らくはこれで、歪められた思考も戻るだろう。
 それの確認も含め、シキは後方に居た味方、スナイパーへと合図を送った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

緋月・透乃
ここがクロムキャバリアかー。
現地の人たちは色々大変そうだけれど、どんな戦いができるのか楽しみだねー。

自分の力を試したいってこともあるし、キャバリアには乗らずに生身でいくよ!
まずは持参したものを食べて【沢山食べよう!】を発動しておくよ。
そして地面すれすれを飛行して進んでいこう。気づかれにくくするためと、踏むと作動する罠を避けるためだね。
他の罠は飛行で避けられそうなものは避ける、壊したほうがよさそうなら壊していくよ。

敵のキャバリアに出会ったら、高速飛行で撹乱、そして高速接近からの怪力を発揮した戦斧の一撃を叩き込みにいくよ!
生身ならではの小ささを活かしたいね。



●力試し
「ここがクロムキャバリアかー」
 なるほどねー。機械の整備に、訓練に、と行き交う人々の中で、緋月・透乃(もぐもぐ好戦娘・f02760)は新しく訪れたその世界を見て回る。割とシャレにならない規模の戦乱が起きていると前情報ではわかっていたが、ここレガリエ帝国も多分に漏れず、戦火の最中にあるようで。
 まあ、それはある意味、彼女にとっては好都合なのかも知れないけれど。
「現地の人たちは色々大変そうだけれど、どんな戦いができるのか楽しみだねー」
 オブリビオンの起こす騒ぎを鎮圧する傍ら、力試しもできそうだ。そう当たりを付けた透乃は、まずは持参した食糧で腹ごしらえにかかった。腹が減っては、という言葉もあるが、彼女の場合はユーベルコードの都合もあり、満腹感がそのまま戦闘力に直結するのだ。
「ごちそうさまでした」
 それじゃー行こうか。たくさん食べた透乃の身体は美味しそうな香りを纏い、宙を飛ぶ。
 そう、キャバリアには乗らずあえて生身で、彼女は地下洞窟へと飛び込んで行った。

 気付かれにくいよう地面すれすれに高度を保ち、地面に埋まった罠も起動しないよう飛行する。壁にぶつからぬようある程度速度を抑えながら、キャバリアにも負けない速度で、彼女は奥へと進んでいった。透乃の狙い通り、彼女の選んだ移動方法ならば、ほとんどの罠をすり抜けることが可能だ。後続のためにも取り除けるできる罠は処分していき、やがて彼女は黒塗りの機体、敵のキャバリアを発見した。
「いっくよー!」
 力試しの一手目としては申し分ないだろう。ぐんと加速した透乃は、こちらに気付いた相手の照準が定まる前に懐に飛び込む。高速で射線から逃れ、死角を舞い、細く見えるその脚部へと戦斧の一撃を叩き込んだ。
「――!?」
 乗員の戸惑いを映すように、キャバリアが支離滅裂に手足を動かす。そのキャバリアの三分の一程度の大きさの、生身の人間の一撃で、脚部が両断されていた。重装甲の上半身を支えきれず、バランスを崩した機体の上に、もう一度大斧を振りかぶった透乃が飛び上がり――。
 ずん、と重い音が響いて、敵機が一つ戦闘不能に陥った。

 生身であろうと、キャバリアの相手は十分に可能だと確信し、透乃はさらなる敵の待ち受けるプラントへと、加速していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鈴久名・惟継
【幽蜻蛉】
ほー

はー

これがあの……なんだったかな?そうだ、きゃばりあだ!
話には伺っていたが、本物は迫力があるものだな

遵殿、俺にも分かるぞ……これには浪漫が詰まっている
しかも騎乗も出来るとな
試しに乗ってみるのも良いだろう

俺か?俺は機械と相性が悪いようでなぁ
複雑なのはよう分からんが、遵殿の方が詳しそうでな
操縦は任せて、傍で楽しませて貰うとしよう
その大きさならば肩やら、その辺りに乗っても問題ないだろうか

うむ、周囲の警戒は任された
今の内に思う存分きゃばりあを学ぶが良いぞ
地下洞窟は視力にて周囲を警戒しながら移動
罠らしきもの、障害があれば迂回
破壊しても問題ないのならば
雷獣ノ腕にて弓を形成し、退かすとしよう


霞末・遵
【幽蜻蛉】
えっ

うわ

あの

とりあえず設計図とマニュアルと適当なの一機もらえる?
あと作ってるとこ見たいな工場とかラボとか
見たら仕事する! 見たら仕事するから先に見せて!
見るまで仕事しない!!!

ふう、ちょっと熱くなっちゃった
にしても竜神様これかっこいいし乗れるし最高だよ!
解体したいなあ改造したいなあ早く持って帰りたいなあ
傷つけないように慎重に進もう。マニュアル読みながら行くから何かあったら竜神様教えてね
指示通りに進めるよう善処するよ
肩に乗ってると竜神様もなんだか小さく見えるな
うーん、いいねえキャバリア

あっねえねえビーム撃てるみたい
試しに撃ってみていい?
ほらここ地下だし。ミサイルよりビームでしょ



●キャバリア試乗会
「えっ」
 高く聳える機体を前に、霞末・遵(二分と半分・f28427)が言葉に詰まる。
「ほー」
 鈴久名・惟継(天ノ雨竜・f27933)は、見上げるそれに感心したような声を上げた。
 うわ、あの、と要領を得ない発言を続ける遵に構わず、惟継は「はあ」ともう一度息を吐く。
「話には伺っていたが、本物は迫力があるものだな」
 キャバリア、この世界における主力兵器。身長5mに及ぶ機体が、そこにあった。
「とりあえず設計図とマニュアルと適当なの一機もらえる? あと作ってるとこ見たいな工場とかラボとか! 見たら仕事する! 見たら仕事するから先に見せて! 見るまで仕事しない!!!」
「ああ、とりあえず落ち着こうか遵殿」
 一息に言い切った遵の背を叩き、宥める。
「でも竜神様、これかっこいいし乗れるし最高だよ!」
「それは俺にも分かるぞ……これには浪漫が詰まっている」
 だが見学は後回しだ。それに時間をかけている内に、『裏切り者』を討伐するための本隊が出撃してしまっては、何のためにここに来たのかわからない。
「うん、それは……わかってる」
 ちょっと熱くなっちゃったな。深呼吸を一つして、遵は改めてその巨大な機構の塊を見遣る。
「はあ……解体したいなあ改造したいなあ早く持って帰りたいなあ……」
「おい、大丈夫かよアンタ……」
 傭兵なんだよな? と確認を入れながら、現地の技師が遵達の様子を窺う。
「出撃前に買い取りたいってんならこっちも助かるけどよォ……」
 レンタル先で壊して死なれるよりは遥かにマシだからな、などと。そんなやりとりを経て、遵はその機体に乗り込み、地下洞窟へと向かう事になった。

「竜神様は乗らなくて良いの?」
「俺か? 俺は機械と相性が悪いようでなぁ」
「ああ……雷……」
「うむ。ゆえに操縦は任せる。俺は傍で楽しませて貰おう」
 そう笑って、惟継は歩く機体の肩へと乗った。
「これだと竜神様もなんだか小さく見えるな……うーん、いいねえキャバリア」
 目的地に向かってキャバリアを歩かせながら、遵は再度手元のマニュアルに視線を落とした。
「マニュアル読みながら行くから、何かあったら教えてね、竜人様」
「任された。今の内に思う存分きゃばりあを学ぶが良いぞ」
 がちゃんがちゃんと腕を上げたり首を回したり、操作を試しながら遵のキャバリアが進んで行く。できれば、ぶつけて凹ませるなんてことは避けたいものだが。
「遵殿、少し止まれるだろうか」
「何だい、竜人様」
 洞窟の先の暗がりに目を凝らしていた惟継が、その歩みを止めさせた。
「罠らしきものが見える。破壊して良いなら退かしておくが?」
 えっ、どこどこ、と機載カメラを動かしていた遵だが、惟継が雷獣ノ腕で弓を握ったところで、照らし出されたそれを発見する。惟継が一矢射れば、発見された機銃も機能停止するだろう。
「あっ、そうだ」
 ちょっと待ってと言い置いて、遵がマニュアルに視線を戻す。
「ねえねえビーム撃てるみたいなんだけど、試しに撃ってみていい?」
 追尾式のミサイルなんかも積んでいるようだが、地下洞窟が崩落でもしたら問題だ。そんな事を言う彼に、惟継は「練習としては丁度良いか」と頷いて見せた。
 番えた矢を収めた惟継に礼を言って、遵は説明書通りにキャバリアを操り、照準を定める。
 引き金を絞れば、銃口から発された光が、一瞬だけ洞窟内を明るく照らし――。
「お見事、といったところか?」
「実戦もこんな感じでいけると良いねぇ」
 射抜いたそれを満足気に眺めて、二人は洞窟の向こう、プラントへと歩みを進めていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

朱皇・ラヴィニア
POW
やあ、猫の手でもよければ入り用かな
まあ、ボクはマシンが無いから……ん?
あの赤い子、使ってないなら借りてもいい?
危険なマシン――大丈夫だよ
ボクは中の子とお話出来るから

放置されたオブリビオンマシンに乗りエンコーダで生体接続
大丈夫、恐くないよ
ボクも君と一緒さ
プラントに産み落とされた、何者でもないボクら
でも未来はあるだろう?
君の名前は……そう
じゃあ行こうかゼル、ボク達の未来の為に!

接続系は666を介してフィードバック調整
武装は147の白兵型……十分だ
識別コード『シュラウゼル』――出る!

147を大剣にして地均ししつつ罠を排除
老朽個所は見切って回避
小隊員はグラップルで無力化
慣らしついでに正面突破だ!



●未来へ向かう一歩
 キャバリアの格納庫を、慌ただしく人々が駆けていく。傭兵――実際の所は猟兵なのだが、先行する彼等に次いで、帝国の正規部隊の発進準備が行われているせいだろう。一様に黒く染められた量産型の機体が、それぞれに装備を整えられていく。
 そんな中、一息吐いた整備班の所に、ピンク色のパイロットスーツの少女が現れた。
「やあ、マシンが借りられるって聞いたんだけど」
「あァ? ……アンタも傭兵か。腕は立つんだろうな?」
 頭一つ高い位置から見下ろしてくる技師に、朱皇・ラヴィニア(骸の虚・f29974)は物怖じせず、肩を竦めて返して見せる。
「さあ、どうだろうね。でも、今は猫の手だって入り用なんじゃない?」
「言うじゃねェか」
 苦虫を噛み潰したような顔。自国の誇る小隊が一つ、全滅どころかそのまま敵に回ったのだ、当然その影響は大きいだろう。オブリビオンを察知できない彼等にとって、これは『内輪揉め』。そんなところに戦力を割きたくないのも自然な話で。
 彼の返事を肯定と受け取って、朱皇はぐるりと格納庫を見渡し――立ち並ぶ黒曜の機体の中、異彩を放つ赤に目を止めた。
「――あの子が良い」
「本気か? あれは鹵獲したばかりで整備もしてねぇぞ?」
「良いよ、行けるかはボクがお話してみる」
 それに、放っておいて誰か別の人が乗ったら大変だから。
 軽やかな足取りで、そちらへ向かう。整備をしている彼等にはわからないだろう。この機体は、オブリビオンマシンだ。

 コックピットを開き、朱皇はエンコーダを用いてその機体と『繋がる』。
 乗員の思考を侵すその力を乗り越えて――大丈夫、恐くないよ。そう呼びかけ、手を伸ばすようにして、機体の情報を引き出していく。
 そう、君はプラントに産み落とされたんだね。ボクも一緒さ。
 レプリカントである彼女は、ふと口の端に笑みを浮かべる。
 何者でもないボクらにも、きっと未来はあるだろう? 一緒に行こうか……そうだ、君の名前は?
「接続系は666を介してフィードバック調整、武装は147の白兵型……十分だ」
 跪く様にしていた機体が、ゆっくりと立ち上がる。
「識別コード『シュラウゼル』――出る!」
 赤い装甲を纏ったそのキャバリアは、彼女に応え、格納庫を飛び出していった。

「さあ、まずは準備運動だよ」
 RX-147ロストオウスを起動、キャバリアの持つ剣が、送られた命令に応じて大剣へと姿を変える。質量さえも増加したその一振りは、地面に仕掛けられた感圧式の罠を根こそぎ破壊していった。
 正直に言うならばまだ癖はある。神経接続の調整は適時進めていく必要はあるだろう。けれど、それを踏まえても。その手応えに朱皇は満足気に笑みを浮かべた。
「良いね、君――それじゃ、慣らしついでに正面突破だ!」
 そうして突き進んだ洞窟の行く手、前方に築かれた廃材の壁。恐らくは即席のバリケードを、巨大な刀身が突き破る。突進の勢いそのままに滑り出た赤い機体は、外の渓谷に布陣した敵部隊へとその目を向けた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『オブシディアンMk4』

POW   :    ホークナパーム
【油脂焼夷弾】が命中した対象を燃やす。放たれた【高温の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    ピアシングショット
【スコープ照準】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【RSキャバリアライフル】で攻撃する。
WIZ   :    マイクロミサイルポッド
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【誘導ミサイル】で包囲攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●歪められた忠誠
 地下洞窟の出口は複数ある。それぞれに、その内の一つから外へ出た猟兵達は、皆降り注ぐ陽光に目を細めた。
 乾いた風が吹き抜けて、足元の砂を舞い上げていく。そこは、深く深く削り取られた峡谷の底。流れていた川はとうの昔に姿を消したのか、今は風化の進んだ岩と砂ばかりが溜まっている。煤けた色合いの続く断崖を視線で追えば、やがて色鮮やかなオアシスが目に入るだろう。そこが、今回の目的地、プラントだ。
『出て来たぞ、どこの部隊だ?』
『いや、記章が無い。……傭兵か』
 そのオアシスの周りに配されていた黒の機影が複数、猟兵達に気付いて動き出す。
『なに、奴等を蹴散らせばじきに本隊が来るだろう』
『そうだな――恨んでくれるなよ、傭兵ども』
 機体に輝くエンブレムから、彼等がハウンド小隊であるのが見て取れる。
 狂った犬。裏切り者。レガリエ帝国では、彼等は今、そう呼ばれているはずだ。彼等自身も、それを知っているはずだろうに。
『全ては、我等が帝国のために!』
『皇帝陛下のために!』
 この状況にあってもなお、口々に忠誠を吠えたてて、帝国の猟犬達が牙を剥く。
クルト・クリューガー
オブシディアンMk4か
キャバリア乗りの登竜門的な存在だな
まぁ、奴らに勝てないようじゃキャバリア乗りはやっていけない
さて、お仕事といくか

逆間接足で高く飛び上がり緩急の激しい三次元戦法をとりながら
常に相手の上を取りながらマシンガンアームで射撃し蹂躙する
上をとり続ければ嫌でも目立つし相手の注意を惹きつけられる
他の連中への注意も疎かになるだろう
数が減ってきたらUCでアーム部分に格納している戦車砲を胴体にセット
攻撃力を5倍、攻撃回数を半分にする
派手な花火に変えてやるぜ
ボギー、射撃補正を頼む
一発あれば十分だ!


朱皇・ラヴィニア
偽りの忠誠、歪められた信念ね
君もそうなる所だったんでしょ……って、冗談さ
じゃあ行こうか。第2ラウンドの開幕だ!

147を最大展張
敵の配置から安全に飛び込める場所を見切り
肉体改造で駆動系をチューンしたゼルで敵陣に飛び込む

敵の攻撃を147を盾代わりに防ぎつつ
ナパームを放ってきたら刀身を振り見合わせてそれに当てる
持ってくれればいいけど――そのままそれをナノマシンの刀身で喰らう
やり口さえ分かればこっちのモノさ……反撃と行こうか!

コード発動……
重量を増した147で地面を断ち割って
勢いに任せてコピーした火柱を放ち敵の連携を分断
こういう使い方も出来るのさ

そして高熱でパイロットを引きずり出し
そのまま各個撃破だ!


ユリィ・ミディット
※他者との戦線協力、絡み歓迎


僕は敵の「ピアッシングショット」に対応


「オーバーブースト・マキシマイザー」の機動力で高速低空飛行を実行

敵の「スコープ」に捕捉される迄低空飛行から横移動、上空への移動と素早く軌道を変えながら接敵

捕捉され「RSキャバリアライフル」の射程に入った接敵ギリギリのラインで【全搭載武装の全て】を使い敵機体の手元とライフル自体を攻撃

無力化と攻撃軌道を変える


…長距離砲を封じる事で隙が生じれば、同戦場に居る多くの猟兵が動ける様になる。

多くの人が動ければ、敵の殲滅も其れだけ早く済む。

此方の被害も彼方に居る人の被害も少なくなる…。


だから僕は
可能な限り近付き此方の人員が動き易くなる様に動く



●戦火を此処に
 朱皇の駆る赤い機体、シュラウゼルが居並ぶ敵機を認識、神経回路を経由して、それらの情報を乗り手へと伝えていく。猟犬のエンブレムを抱いた量産機、オブシディアンMk4。それを操る者達の士気も、そこからは感じ取れていた。
「祖国のために、ねえ」
 偽りの忠誠、歪められた信念。少なくとも今の彼等はそう信じているのだろうと、朱皇はそう思考する。その『洗脳』のような精神汚染こそが、オブリビオンマシンの特徴なのだが。
「君もそうなる所だったんでしょ」
 幸いにも起き得なかった未来を思い、目を細めて彼女は微笑む。どちらに転ぶかは、きっと五分だったのだろう。けれど、コインの裏表は定まったのだから。
「――冗談はこれくらいにしておこうか。行くよ、第2ラウンドの開幕だ!」
 これまでのデータから駆動系を再調整、次いで147に最大展張のコードを伝える。深く重い一歩と共に、機体の各関節が巻き直されるように軋む。それと同時にブレードの刀身がさらに巨大化。前面に展開されたその表面で、撃ち込まれた敵の銃弾が跳ね、峡谷に重い音色を響かせた。

 見るからに接近戦向きのシュラウゼルを前に、ハウンド小隊の面々は揃って銃器を構える。寄られる前に、火力で潰す構えだが。
「――まぁ、それでやられてるようじゃこの先やっていけないよな?」
 黒塗りの機体に影が差す。メインカメラを上方に向けた彼等が見たのは、峡谷を跳ねる逆関節脚のキャバリアだった。
「さて、お仕事といくか」
 その量産機を駆るクルト・クリューガー(なんでも屋「K.K&Bogey」・f30011)は、敵集団の上からマシンガンの雨を降らせる。オブシディアンmk4の特徴である厚い装甲を破るには至らないが、敵の照準を乱れさせるには十分だろう。
 がしゃんと音を立てて着地したクルトは、相棒であるボギーに命じて、重い機体をもう一度高く跳躍させる。
『ええい、鬱陶しい』
『撃ち落とせ!』
 敵陣の上を取り、緩急つけて跳び回り始めた彼の機体に、小隊の後衛を務めていた者達が銃を向ける。狙撃と牽制、だがこうして銃口を上に向けたこと自体が、あえて目立つ動きをしたクルトの狙い通りであり――。
「一斉射撃」
 もう一人、それを待ち受けていた者が居た。
 こうなる事がわかっていたとでも言うように、直前でブースターを噴かせて飛翔したユリィ・ミディット(キャバリア遣い・f30122)のクロムキャバリアが、搭載した全武装を一斉に放つ。
 連続して放たれる銃弾、そして複雑な軌道を描いて降り注ぐミサイルが、それぞれ上空に向けられた武器を撃ち抜き破壊していく。
『これだけの数を一度に!?』
『武装を切り替えろ! 絶対に逃がすな!』
 最も射程の長い武器を潰され、面食らいながらも、ハウンド小隊は上空の機体を狙う。しかし最大出力で横へ上へ、凄まじい速度と軌道で飛び回るクロムキャバリアを捉えることは困難だ。さらに、マシンガンをバラ撒きながら跳ねるもう一機も居るとなれば……。
『狙いが……!』
 定まらない。狙いがばらけることで、その間をあの二機が抜けていく。しかし、こうして翻弄されるハウンド小隊もまた、厚い装甲で以て上からの攻撃に耐えている。
 程無く膠着に近い状況が訪れるかに見えたが、そうはならなかった。
 こうして宙を舞う二人に攻撃が向かうことで、他の者が動きやすくなるのだ。
 ――例えば、地上を行く接近戦用機。
「せっかく部隊を整えてもらったんだ、思い切り行くよ!」
 もはやまばらになった弾幕を突破し、強化された駆動系を活かして朱皇が切り込む。小銃から放たれるそれを盾代わりの刀身で弾き――。
『近寄らせるな! 焼き尽くせ!』
 飛来するナパーム弾を、咄嗟に振り上げたその刃で両断した。
 轟音と共に燃える油が広がって、炎と黒煙が花開く。だが、赤と黒に塗り潰された視界の中で、ハウンド小隊のパイロットは、それらを斬り裂き迫る刃を見た。
『おォ――!?』
 咄嗟に機体を後退させ、危うい所でそれを躱す。しかし、赤い機体の襲撃を、切り抜けるにはまだ遠い。
「やり口さえ分かればこっちのモノさ」
 先のタイミングで、ブレードを形作るナノマシンはナパーム弾を分解し、平らげている。
 コード『グリード・イーター』。共に歩むさらなる一歩は、赤熱する巨大な刃を連れてきた。RX-147、喰らった炎をその身に宿した一太刀が、敵機の右肩から先を斬り落とす。そのまま刀身が大地を穿つと、そこから高く火柱が上がった。斬撃の延長線上を灼く炎が、敵機二つを呑み込んでいく。
 延焼するそれに機体を炙られ、パイロットがたまらずそこから脱出する。もはや木偶の棒と化したそれらの機体を、朱皇は順に両断していった。
『おのれ、傭兵風情が――!』
 炎を免れ、けれど炎の壁に分断された状態で、生き残りの機体が朱皇を狙う。が、その銃口が定まる暇もなく。
「――甘い」
 上空から飛来したユリィのクロムキャバリアが、急降下と共に敵の頭部を踏み潰す。
 さらに、先程の仕掛けからフリーになっていたクルトは、機体のオーバーフレームを換装、アームに格納していた戦車砲を、その本体にセットしていた。
「ボギー、射撃補正を頼む!」
 重い軋みを上げて、脚部と砲塔角度が微修正される。砲撃用のスコープ越しに、クルトは猟犬のエンブレムに向かい――。
「よお、装甲自慢。派手な花火にされたくなけりゃ、こいつにもちゃんと耐えてみせろよ?」
 これまでの射撃音とは一線を画す、地をも揺るがす轟音と共に、戦車砲が真っ直ぐに撃ち出される。
 連射の利くようなものではないが、それを気にする必要はないだろう。
 一発あれば、十分だ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

シャルロット・クリスティア
浸食の進んだ谷底……起伏の多い、歩きづらい地形ですね。
それこそ、キャバリアであれば多少の起伏は物ともせず進めるのでしょうが……。
……しかし、今はこのほうが都合がいい。
人一人を隠すくらいの遮蔽には事欠かない。遠間から撃つ分には、そうそう発見されることはないでしょう。
誘導と言いますが、より大きく、熱量の高いものを狙うのが道理。機動戦闘やキャバリア相手ならともかく、物陰に隠れた人間を見つけ狙うのは難しい筈です。

……脆い部分なら私の銃でも十分抜けるのは確認済みですからね。
関節や武装、メインカメラあたりを優先して潰し、無力化させて頂きますよ。


シキ・ジルモント
キャバリアの感覚は少し掴めたな
大振りになりがちな動作や視線の高さによる誤差等は、逐一修正しながら交戦

相手の連携を崩す為、範囲攻撃による速攻を仕掛ける
ユーベルコードを発動
射程内のハウンド小隊を狙い攻撃、同時に焼夷弾射出の妨害を試みる

生身では主に拳銃だが、今はキャバリアの遠距離武器を利用してみる
狙う先を確認したら自動小銃、ミサイルポッド、ホーミングレーザー…キャバリアの持つ遠距離射撃武器を順に射出する
波状攻撃によって相手の対応を遅らせたい

コックピットは外し機体のみを破壊する
彼らは意思を歪められただけ、本来はこんな事を企む者ではない筈だ
俺は初対面だが、あの技師…彼らを知る者の言葉を聞いて、そう思った



●砂塵と弾丸
「ああ、派手にやってくれていますね」
 飛び交う火線、大口径の弾丸が地を穿つ余波、そして敵陣で派手に上がる火柱。切り込んだキャバリア乗り達の活躍を見ながら、シャルロットは砂と岩を蹴って走る。水の流れこそないとはいえ、起伏の多いこの谷底を移動するのは中々に難儀ではあるが……今は、この方が都合が良い。
 キャバリア達の踏み締めた起伏も、風に洗われ奇妙な形になった岩も、機体には小さな障害に過ぎないが、ヒトにしてみれば十分な遮蔽物だ。
 歪な岩の一つを選び、足を止めた彼女は、その形に添うようにしながら狙撃姿勢を取る。
 愛銃に頬を寄せるようにして、青い瞳がレティクルの向こうを覗き込む。当然、敵はこちらになど気付いていない。戦闘においては、より大きく、熱量の高いものを狙うのが道理。飛び回る機体は勿論のこと、そう。備えた火力を十二分に使ってくるキャバリアが居るのなら――。

「――少し、掴めてきたな」
 前進する機体の揺れを感じながら、シキが言う。地下洞窟の道のりは、慣らしとしては丁度良かった。生身の感覚との大きな差異、視線の高さや、質量ゆえに大振りになりがちな動きを勘定に入れつつ、彼はその量産機の武装を展開した。
 黒塗りの機体の肩部装甲でミサイルポッドが砲口を上げ、背負っていた砲塔が巻き上げられ、肩に乗るようにして前方を向く。
 さて、それではここまでの調整が、実戦で通じるか試してみよう。狙うべき対象を視線で撫でて、シキは操縦桿のトリガーを引いた。
 自動小銃が火を噴いて、さらにはそれを追うようにミサイルが射出される。先手の一撃、敵集団の鼻先を殴りつけるような連撃に、彼等は戸惑い、隊列を乱す。
『散開しろ!』
『相手は一機だ、一旦凌げば――』
 問題なく囲んで潰せる、はずだった。弾丸からミサイル弾頭、さらにはホーミングレーザーと続く波状攻撃を装甲で受け止めながら、ハウンド小隊は手近な岩に身を隠す。その岩さえも瞬時に削り取られていくが、範囲攻撃の波が途切れるその瞬間に、銃口を――。
『――ッ!?』
 敵機へと向ける直前に、それが爆ぜ飛んだ。衝撃と、視界を呑み込む赤い炎で機体が揺らぐ。発射直前の焼夷榴弾を撃ち抜かれたのだと、そう気付いた時には、隣の一機がメインカメラを撃ち抜かれ、あらぬ方向へと銃撃を加えていた。乾いた地面で爆ぜたナパーム弾が、その一角を火の海に変える。
 先程のキャバリアは遮蔽物の向こうだ。ならば今のは、一体。
『クソッ、どこから撃ってきている!?』
『狙撃型か!?』
 戸惑う彼等の様子を見ながら、シャルロットは次のポイントへ向かっていた。
「的が大きいのは良いんですけど……!」
 ああもう、と軽く息を吐く。キャバリアという巨人が軸になったことで、戦場の規模も大きく、広く感じられる。狙撃位置を移動する労力も、何だかいつもより多くかかっているような。
 何にせよ、あの味方の弾幕で敵機の足は止まっている。攻撃の有効な箇所を射抜くのも、今ならば容易い。姿なき凶手は、難なく次の一機の脚部を機能不全に持ち込んだ。
「……あ」
 対応してきたか、とシャルロットはそう悟る。突出してきた今の一機は、囮と盾をこなす心算だったらしい。敵機のメインカメラ、こちらに向けられるのを感じた。
 とはいえ、そこら中で揺らぐ熱気と舞い上がる砂塵で、兵等は彼女の姿を特定できなかったようだが。
『いない……!?』
 まさか、キャバリアではない生身の狙撃手? その可能性に至った彼等は、怪しい場所をミサイルで包囲爆撃しようと試みる。
 が、この時にはシキ機が十分に接近し、彼等を射程に捉えていた。
 狙撃によってバランスを崩した機体を、シキの小銃が射抜いて倒す。そして完全に浮足立った敵部隊を、彼はもう一度視線でなぞった。
「終わりだ」
 再度の連続射撃。だが先程行った牽制を元に、微調整を加えられたそれは、その全てが必殺に繋がる一射と化している。銃弾が、光線が、敵機の武装と装甲の隙間を射抜いていく。容赦なく、しかしコックピットだけは確実に避けたそれを受け、猟犬のエンブレムを抱いた機体は次々と沈黙していった。
『ああ……?』
 機能を停止したキャバリアの中で、小隊員が呻く。思考を歪めるそれらが消えたことで、戸惑っているのだろう。
「これで頭も冷えただろう。投降しろ」
 そんな彼等が思わぬ行動に走らぬ内に、シキは一時戦場から逃れているようにそう告げた。
 ――本来はこんな事を企む者ではない筈だ。出撃前に聞いた、この国の技師の言葉を思い出しながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

緋月・透乃
お、敵はやる気満々って感じだね!いいね!戦うならそういう奴のほうが面白そうだよね!

今回使うのはシンカーキャロット!そしてこれを緋月覚醒で強化!さっき食べた分がなくなる……

さっきのような飛行能力まかせの戦い方から一転、真っ向勝負を挑むよ!
射程の差から多分敵に先制攻撃されると思うね。気合いで集中し敵の頭部や銃口を観察し、発射された焼夷弾へ鎖鉄球のように飛ばした武器をぶつけての相殺を狙うよ!
そして、恐らく武器に炎が着くので消える前に一気に間合いを詰めて攻撃を叩き込むよ!
武器の特性と敵を攻撃、両方を上手く利用できるといいねー。



●火の玉
『クソッ、何機やられたんだ!?』
『怯むな! 我々はまだ負けられない――!』
 次々と墜とされていく味方機の様子に、ハウンド小隊の中にも動揺が走る。それでもなお戦意を保った彼等の前に、透乃が降り立った。
「お、やる気満々って感じだね!」
 戦うのなら、そういう相手の方が良いだろう。体長だけでも三倍近いキャバリアに向かって、彼女はそう笑ってみせた。
『なんだあれは……人間?』
 生身でキャバリアの前に立つとは。理解できないというような声を上げながら、その小隊員は、彼女を行く手から退けるために銃を向ける。
『そこを退け!』
「それはちょっと、できないかなー?」
 おもむろに巨大な人参を取り出しながら、彼女はそう応じる。『緋月覚醒』、それと同時にバカでかい人参の表面に赤い月が浮かび上がり、丈夫な葉の部分がぐんぐん伸び始めた。
「でも、これお腹空くんだよね……」
 代償となるのは彼女の満腹感だ。出撃前の補給分があっという間に空になるのを感じながら、彼女は巨大人参を鎖鉄球のようにぐるぐると振り回し始めた。
 わけのわからぬまま焼夷弾をぶっ放した敵に向かって、透乃は真っ向からそれを叩き込む。巨大な相手ということもあり、敵の狙う位置は一目で看破出来るものだった。発射され、迫るナパーム弾を、彼女の振り回すシンカーキャロットはその半ばで打ち砕く。空中で炎が爆ぜて、赤い炎と黒煙が上がった。
 俄かに生じた黒雲から赤い月が出ずる。ナパームによる炎が降る後には、真っ赤に燃える人参が残っていた。
「よーし、一気にいくよ!」
 黒いブーツが大地を踏み鳴らし、透乃が前進、敵の懐へと飛び込む。そして、呆気にとられて動けない敵に向かって、シンカーキャロットを振るった。
 長く伸びた葉によって、大きな大きな弧を描き、燃える人参が降り注ぐ。
『なんだと――!?』
 隕石もかくやという勢いで飛んできた焼き人参は、強固な筈のオブシディアンの装甲を思い切り凹ませ、その衝撃で機体を後ろへ吹き飛ばした。
 背後の一体を巻き込んで倒れた機体は、故障したか、乗組員が気絶でもしたか、そこで動かなくなる。
「よーし、この調子でいこう!」
 そろそろ、敵側にも新手が来る頃だろう。次なる戦いの予感に胸を弾ませて、透乃はプラントへと歩を進める。

大成功 🔵​🔵​🔵​

霞末・遵
【幽蜻蛉】
すごい! いっぱいいるよ!
全部同じ型かな。マニュアルや設計図から弱点を探すね
操縦者が死んだら確実に止まるから多分これが一番楽なんだけど
竜神様ならコックピット撃ち抜けると思うんだよね
それ以外なら燃料詰んでる辺りか動力周りかな……

とにかくやられないようにしないと
回避頑張るし結界術もあるけど動くと撃つって両方同時にやるの難しくない?
ミサイルは勝手に狙ってくれるけど弾も無限じゃないし

そうだちょうちょ詰めて纏めて飛ばそう
勢いよく撃ち出せば結構スピード出るでしょ
弾道はコントロール効くし好きなとこで爆発するし眩しいし
いい感じに天気も雷雨だ。竜神様ちょっとヤケじゃない?
いやあ相手の驚く顔が見たいなあ


鈴久名・惟継
【幽蜻蛉】
あれがあちらさんのキャバリアということか
量産されている種類もあるのだろうな
それでも戦いに特化したものであるには違いない

まぁ、操縦士を狙えば確実に止められるがな
こうした機械は動力源のようなものがあるのだろう?
そこを狙えば無力化も出来そうだ

撃ち抜くとは言え、この数相手に確実に撃つのは至難だな
遵殿の機動力を活かしながら大太刀でなぎ払うだけでは届かぬか
一体ずつではあるが槍ならば可能、弓では威力に問題があるか

……
えぇい、面倒だ!雷を落とせばよかろう!
天候操作により鳴神にて無理矢理に雨雲を作り出す
天罰にて遵殿以外のキャバリアに雷を落とすぞ
これならば大砲みたいな技を覚えておけばよかったなぁ



●降雷
「すごい! いっぱいいるよ! 全部同じ型かな?」
「量産されているものか、それでも戦いに特化したものであるには違いない……」
 遵が歓声を上げる横、というか機体の肩の上で、惟継が目を細める。キャバリアを借りた際、格納庫にも多数並んでいた機体だ。驚くことはないが、気を抜ける状況でもない。
「弱点とか載ってないかな?」
「遵殿、さすがに戦闘の際は前を見た方が良い」
「あ、そんな暇ない?」
 またマニュアルに目を落とそうとしていた遵を窘め、回避行動を取るよう促す。焼夷弾による範囲攻撃に、誘導ミサイル。頭数と火力に物を言わせた攻撃に、遵は結界術も駆使しながら防御に回る。
「あ、傷が、凹みが……!」
 避けきれず、防ぎきれず、キャバリアの装甲に傷が嵩んで行く。状況を打開するため、こちらも反撃と行きたいところだが。
「え、動くと撃つって両方同時にやるの難しくない?」
 初心者にはまあまあ難易度が高い。誘導型のミサイルでの応戦が精一杯だが、これも続ければいずれ弾が尽きるだろう。
「竜神様、竜神様ならコックピット撃ち抜けるんじゃない?」
 回避行動に努めながら、肩の上の惟継に問う。弱点というか、一撃必殺を狙える場所なら最初から分かっているのだから。
「まぁ、操縦士を狙えば確実に止められるか」
 ふむ、と惟継は顎に手を遣る。
「こうした機械は動力源のようなものがあるのだろう? そこを狙えば無力化も出来そうだ」
「ああ、そうだね燃料とか動力狙いもありかな……」
 キャバリアは基本的にプラントから生産される『エネルギーインゴット』で動いているが、その辺りの情報までは彼等は得られていないようで。
「撃ち抜くとは言え、この数相手に確実に撃つのは至難だな……」
 大太刀で薙ぎ払うか? いや、サイズ差がある上に遠距離戦重視の相手だ、その間合いに持っていくだけでも一苦労だろう。槍ならばいくらかマシにはなるだろうが、攻撃対象は一体ずつになってしまう。かと言って弓では威力が心許ない。
「うーむ……これならば大砲みたいな技を覚えておけばよかったなぁ」
「え、大丈夫竜神様?」
 誰しも万能ではないのだから、時に最適な手段を持ちえないのも仕方のない事。とはいえ、そういうことは戦い始める前に考えておいて欲しかったなあ、とは思う。当の遵も概ね行き当たりばったりなので何も言えないのだが。こうしてまともな反撃に取り掛かれぬうちに、機体は徐々に削られていく。
「えぇい、面倒だ!」
 ついに意を決した惟継が七支刀を振り上げると、乾いた風が急に行き過ぎ、空に黒雲が溢れ出した。
「響け轟音、我が咆哮の如く!」
 そして、輝きが、轟音が、空から一斉に降り注ぐ。『鳴神』、竜神の司る雷だ。
 惟継の操るそれは、視界の範囲の味方を避けて、敵対するキャバリアに対して降り注ぐ。装甲の表面を流れて地へと落ちる光の道は、その機体に色濃い焦げ跡を残していく。電流の走る道のり次第ではあるが、武器を失う個体、機能不全に陥る個体など、その影響は様々。
「竜神様ちょっとヤケじゃない?」
 敵をまとめて痛めつけるそれに紛れて、遵もまた攻撃手段を確立する。キャバリアに搭載された砲塔を、大雑把に敵に向け、発射。
 砲弾の代わりに飛び出していったのは、幻の蝶を集めたもの。砲撃の初速で飛んだ光り輝くそれは、遵の意思に従って弾道を歪め、狙った敵の傍へと向かう。命中とはいかないまでも、彼は通り過ぎる寸前でそれを爆発させた。
 音も無く、ぱっと散った幻の蝶は、揃って付近のキャバリアへと襲い掛かっていく。眩い光の群れに包まれた機体は、装甲を蝕まれ、脆い腕部関節を削られ、失うなどして、一時の後退を余儀なくされていた。
「いやあできれば相手の驚く顔が見たかったけどね」
 キャバリアに乗った相手がどんな反応をしているかは窺い知れないけれど。
 その中の様子を想像しながら微笑んで、遵は次なる蝶の砲弾を発射した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『モノアイ・ゴースト』

POW   :    バリアチャージ
【バリアを纏った】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【支援機】の協力があれば威力が倍増する。
SPD   :    パルス・オーバーブースト
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【オブリビオンマシン】から【光学兵器による一斉攻撃】を放つ。
WIZ   :    ゴーストスコードロン
自身が【敵意】を感じると、レベル×1体の【支援キャバリア】が召喚される。支援キャバリアは敵意を与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Hounds
 唸り声のように、燻る雷鳴。俄かに発生した黒雲から、大粒の雫が降り始める。激しく地面を叩くそれは、風に舞う砂塵を落とし、ナパーム弾による炎を抑え込む。空に在った陽の光は隠されて、戦場となった峡谷には、闇が広がり始めていた。
『たかが傭兵と侮ったか――いや、驕っていたのは我々だったということかな』
 猟兵達の、残敵に対する追撃を遮るように、一つ目の機体が滑り込む。シールドを備えたその機体は、バリア機構も搭載しているようで、機影が黒く揺らめくのに合わせて、彼の周囲の雨粒が、落ちる半ばで弾かれていた。
 量産機、オブシディアンMk4とは明らかに別物であるその機体が、今回の元凶である『オブリビオン・マシン』だと、猟兵達は理解する。
 つまりはあれが、指揮官機。この部隊を束ねる長。
『全機、隊列を組み直せ』
 随分と数の減った、小隊の生き残り達に声をかけ、『モノアイ・ゴースト』が前に出る。リーダーの号令に応えた『オブシディアンMk4』各機は、指揮官機を手助けするように、装備と立ち位置を整え始めた。
『ここで迎え撃つなどと、守りに入ったのが間違いだったのだ』
 我等は猟犬、主のために駆けてこそ、その役割を全うできるのだ。自嘲気味にそう口にするのに合わせて、紫に輝く頭部のカメラが、猟兵達の方を向く。
『――さあ、突破するぞ。帝国の皆の目を覚まさせてやろう』

 この世界を生き残るには、より強く、より飢えていなければならない。
 命を賭してでも、寝ぼけた祖国に一喝を。

 そんな歪められた思考に基づき、猟犬達は、主の首元に喰らい付くため走り始めた。
朱皇・ラヴィニア
目を覚ますのは君達だよ、隊長さん
とは言え空を飛ぶか。ちょっと厄介だね
ならば働いてもらおうか――ブラディエル!

狙いはボクの真紅のマシン、そうなる様に派手に動く
でも射撃武装が無い……今度手配しておこうかな
まあ、敵の意識がこちらに向いたら147を地面に叩きつけて
重量攻撃で土煙を巻き起こし視界を遮る
その隙に分離……セパレート・ブラディエル・セレクトリモート
シュラウゼルが纏った真紅の装甲そのものがオブリビオンマシンだ
精々暴れて引き付けてくれ!

その隙にゼル本体を肉体改造
全身の筋力をブーストして投擲準備を
147を投げ易い鋭い刺突剣状にして、狙いは敵の推進装置
動きを見切って貫通攻撃……投げ放って刺し貫くよッ!


鈴久名・惟継
【幽蜻蛉】
わかったこと?
はっはっは、先程乗ったばかりなのだぞ?
早々簡単に使いこなせる方が難しいというものだ
元々は体一つでも戦えるのだから当然

作戦会議とな、如何なる方法で奴に挑むか教えて頂こうか
俺の力は色々な武器にも変えられるからな、今回は槍で行くぞ

ワイヤーロープの巻き取る力を使ってキャバリアを奴に向かわせる
それだけでは不十分
そこで俺がキャバリアに乗って攻撃を加えるということだな
いいだろう!ただし、必ずワイヤーを奴に付けるのだぞ

雷帝ノ槍にて槍を形成
槍を構え、ワイヤーの巻き取る音に併せて構える
向かっている間はオーラ防御にて攻撃を極力防ぎ
接近した所でジャンプ、貫通攻撃と鎧砕きにて
奴に風穴を開けてやる


霞末・遵
【幽蜻蛉】
おじさんわかった
キャバリアの練習もっと必要
この子は必要な犠牲だったんだ……

他の猟兵さん達が戦ってる間に作戦会議と準備だ
やっぱ竜神様を直接ぶつけるのが一番手っ取り早い
でも射程の都合上ただ近付くのは難がある
だからあのボスっぽいやつにワイヤーロープを撃ち込んでキャバリアごと勢い付けて当てに行く
前迷路でやった感じかな
ユーベルコードは勢い付けて出せることはわかったし
機体を浮かせて電動ウィンチに高速で巻き取らせたら目的地に到着だ
ウィンチの出力が足りなければ妖力でカバーしよう
問題は当たるかどうかとバリアを貫通するかどうかと
ワイヤーが切れないかどうかと身の安全……
念入りに呪おう。上手くいきますように


緋月・透乃
お、いよいよリーダーのお出ましだね。
オブリビオンマシンの影響で狂っているとはいえ腕前は落ちていないだろうし、リーダーらしい強さを見せてもらいたいね!

今回はまた重戦斧【緋月】を使うよ。
自分よりデカい奴の突進とくれば、狙うは股の下を抜けること!
武器を突き出すように構えてこっちも突撃だね!
流石にキャバリア本体にぶつかるのはまずそうだけれど、バリア部分なら本体の質量は乗ってさなそうだし、勢いと怪力で打ち破れるはず!
突進を切り抜けたら急いで近づき脚を攻撃し崩してから緋迅滅墜衝を叩き込むよ!
支援機はできるだけ無視するよ。一度近づいたらもう離れないようにしていれば、支援機も迂闊に攻撃できないんじゃないかな?


シキ・ジルモント
◆SPD
光学兵器による攻撃は回避、避け切れないものは機体の装甲を盾にして受けダメージを抑える
これまでの量産機も装甲で防御していたのを見たからな、それを真似てみる
こちらも同じ機体、少々の攻撃なら耐えきる装甲は備わっている筈だ

攻撃に耐えつつユーベルコードを発動、狙うのは機体の四肢
こちらを攻撃する瞬間や方向転換時など、速度を緩めざるを得ない瞬間に仕掛ける
キャバリアのレーザーやミサイルなら、空を飛ぶ相手でも射程範囲だろう
腕部や脚部へ衝撃を加えてバランスを崩し失速させ、動きが鈍った隙に追撃する

オブリビオンマシンを破壊し搭乗者を引き戻す
今ならまだ戻れる、完全な裏切り者になる前に
目を覚ますのは、あんたの方だ


クルト・クリューガー
アレが指揮官機か
いかにも自分は他とは違いますといわんばかりだな
アレを倒せば終る
分かりやすいというのはいいことだ

逆間接足で高く飛び上がり緩急の激しい三次元戦法をとり
常に相手の上を取りながらマシンガンアームで射撃
随伴機を撃破、牽制し分断する
敵がUCで突撃してきたら
UCでアーム部分に格納している戦車砲を胴体にセット
攻撃力を五倍に射程を半分にしよく引きつけて撃つ
バリアごと粉砕してやる
ボギー、照準補正を頼む
後ろで踏ん反り返っていればいいものを
迂闊に前に出るからこういうことになる!

撃った後は即座にジャンプして回避行動
仕留めきれなくても突進で突出した敵を味方に殴らせるお膳立てにはなるだろう


シャルロット・クリスティア
雨粒を弾いた?あのバリア……ただの磁場じゃないですね。
粒子等のエネルギーだけでなく、物理的な接触も弾ける斥力場の類ですか。
少々厄介ですね……。

ですが、裏を返せばそれさえ潰せば大きな弱体化となり得る。力場を纏った突進も、力場をなくせば攻撃面積は一気に狭まります。
……ええ、抜きますよ。私なら可能です。
その肩部シールドに供えられたバリア、その発生装置を砕く。

高速で動く目標への超精密狙撃を二発。決して簡単なことではありませんが。
やってこその狙撃手です。火力も機動力もキャバリアに劣る分、これくらいの事はやってみせねば。

……夢見言はそこまでです。目を覚ますのはそちらですよ。


ユリィ・ミディット
※他者との戦線協力、絡みアドリブ歓迎

敵機撃破と洗脳者救出を目標

敵機接近を受け止め「グリード・イーター」で捕食

「バリアチャージ」をコピーし先行

此方の人員を守りながら急速接敵

敵の「パルス・オーバーブースト」を予備動作から先読み

一瞬でも同意が得られれば「バリア」を纏った自身を盾に、味方機を連れ、共に高速飛翔

敵が一斉攻撃に入る前に此方の攻撃射程迄、更に上昇

攻撃威力強化と射程距離に素早く到達させる為、連れて来た機体を敵機へと力強く投げつける

同時に援護射撃


同意が得られなければ、コピーしたバリア効果を高速飛翔と共に利用

味方との反作用と併せ攻撃射程内に敵を捕捉

攻撃はバリアで弾き、2回攻撃で叩き切る

救出者は確保



●Engage
「アレが指揮官機か」
 遠目から、モノアイのキャバリアを捉えてクルトが呟く。同型機の並ぶ集団の中では一際目立つその機影。量産機との性能さを浮き彫りにするようなその姿に、皮肉気に笑って。
「アレを倒せば終る――分かりやすいというのはいいことだ」
 狙うべき敵は明らかになった。後は、あの集団をどう切り崩すかだ。逆関節の脚部を撓ませ、もう一度飛び上がったクルト機の下を、ユリィの機体が高速で通過する。飛行能力と随一の機動力を誇る彼の機体は、狙撃を許さぬ複雑な軌跡を描いて、前進を始めた指揮官機を迎え撃つ様に肉薄した。
「喰らえ、グリード・イーター」
『させんよ』
 牙を剥いたキャバリアの一撃を、モノアイ・ゴーストはそのバリアで以て弾き飛ばす。ユリィの試みたのは、敵の攻撃をコピーできる強力なユーベルコードではあるが、初手の捕食攻撃が決まらなければその真価を発揮できない。バリアによる突進と遠距離攻撃を得意とするこの敵機には相性が悪いか。
 当たり負けたユリィ機へ、支援に入ったハウンド小隊のオブシディアンMk4が各々に射撃を見舞う。実体弾の雨の中、隙間を縫うようにして飛ぶユリィのキャバリアへ、さらに誘導弾が襲い掛かっていくが。入れ替わりに、同型――シキの駆るオブシディアンMk4が、その前に立ちはだかった。
 先程見た敵の動きをなぞり、この機体特性、分厚いオーバーフレームでそれを受け止める。上がる爆煙の中を突破したシキは、逆に敵支援機へと牽制のミサイルを放ち、指揮官機へとグラビティ・ガンを向けた。
「――正面からでは難しいか?」
 まるで交差するように、相手の光学兵器もこちらを向いていることを察し、シキはトリガーを引きながら機体を旋回させる。瞬間、掠め行くビームとは反対に、シキの放った重力場がバリアの上からモノアイ・ゴーストに圧力をかけていく。武器の選択は間違っていなかった、が、浅いか。
『隊長、下がってください!』
 包囲するように距離を詰めてきた敵小隊機が、揃って援護射撃を開始する。舌打ちを残して、シキもまた手近な岩場まで後退していくが。
「ご丁寧にぞろぞろ並びやがって」
 峡谷の合間を跳びまわるようにしながら、クルト機がマシンガンの弾をばら撒き、応戦を開始する。
『またあの機体か!』
『誘導弾用意! 黙らせろ!』
 先の戦闘からの流れで苛立った様子の敵部隊。そんな様子を察して、朱皇もまた巨大なブレードを盾代わりにしながら敵陣へと向かう。
『チッ、こっちの赤いのも突っ込んでくるぞ!』
「わ、これは危ないかな?」
 ブレード表面で跳ねる敵弾の数が一気に増える。その感触を面白がるようにしながら、彼女は応戦するように腕をそちらに向けて……うん、射撃武装、今度手配しておこうかな。
 とにかく、今は出来る事を。敵の狙いを引き付けながら、最大展張した147をもう一度振り上げ、地面に叩き付ける。濡れた砂と、その下の乾いた土が盛大に舞い上がり、簡易的な煙幕を形成した。その隙に。
「それじゃあ君にも働いてもらおうか――ブラディエル!」
 最初の接続の際に、その存在は認識できていた。『赤い装甲を着たジャイアントキャバリア』に見えるこの機体だが、その実、素体部分と真紅の装甲部分は完全に別個体である。
「精々暴れて引き付けてくれ!」
 セパレート・ブラディエル・セレクトリモート。
 朱皇の意思に応え、シュラウゼルの纏っていた装甲部分、オブリビオンマシン『ブラディエル』が分離し、独力行動が可能な形態へと移行、砂埃の影から敵陣に向かって切り込んでいった。
 緩急付けた三次元戦闘を展開するクルトに、飛翔するユリィ機も加わり、地上では赤い鎧が獣の如くその力を振るう。そうして乱れ始めた敵の陣形の中、バリアを駆使してその中心を担っていたモノアイ・ゴーストへ、透乃の戦斧が迫っていた。
『なっ――!?』
 生身だと? 敵は驚愕しながらも咄嗟にビームガンを向け、不意を打ったはずの透乃を迎撃する。
「へえ――オブリビオンマシンの影響で狂っているとはいえ、腕前は落ちていないみたいだね!」
 向けられた銃口を力づくで跳ね上げ、透乃が笑う。相手は強ければ強いほど、腕試しには丁度良いのだから。
 踏み込んだ透乃の追撃を跳び越えるように躱した指揮官機はそのまま素早くトリガーを引く。迸る光線を、こちらも咄嗟に銃口から身を躱すことで凌ぎ、透乃は足を止めないままに敵の動きを読む。小回りではこちらが勝っているものの、一歩の大きさも含めて機動力は相手が上。ゆえに、自然と迎え撃つ形になるのだが。
『潰れてしまえ!』
 一時的に距離を取った黒の機体がバリアを纏い、透乃を轢き潰すべく加速する。
「――そこ!」
 それを予測し、待ち受けていた透乃は、向かい来る敵機へ自ら飛び込んで行った。
 タイミングと動きを見切り、身体を丸めるようにして、突進するキャバリアの股下を抜ける。捨て身に近い一手を見事成功させた彼女は、完全にこちらを見失った指揮官機へと素早く迫り、戦斧の一撃を叩き込んだ。
 凄まじい怪力に裏打ちされたその重打により、バリアを経てもなお機体が軋む。
『まさか、生身で今の一撃を!?』
 この世界で生き残るためには、より強く、より飢えていなくては。彼女はある種その体現者だと言えなくもない。
 驚愕の中、バランスを崩しながらも、弾かれるように前に出たモノアイ・ゴーストは、透乃から距離を取りながら姿勢を整え――。
「ざまぁ無いな、隊長さんよ」
 そこに、敵支援機を翻弄しながら駆けたクルトのキャバリアが着地する。その動態には、既にマシンガンとは違う戦車砲がセットされていた。
「後ろで踏ん反り返っていればいいものを――迂闊に前に出るからこういうことになる!」
『ぬかせ! 私はこんなところで――!』
 地をも揺るがす砲声。発射された戦車砲は、至近距離で敵指揮官機を捉える。凄まじい威力を秘めたその砲弾は、バリヤに一瞬とどめられたように見えたが、次の瞬間にはそれを突き破り、標的に確りと打撃を与えていた。
 バチリと鋭い音が響いて、モノアイ・ゴーストの肩部で火花が散る。

●瞬きの間に
 そこですか。まあ、そこでしょうね。
 ずっと、ずっと戦いを見ていたシャルロットが、無意識の内に息を止める。それは、高速で展開される戦いの中のほんの一瞬。猟兵達の度重なる攻撃で、あの厄介なバリアが限界を迎えたその瞬間だった。恐らくは過負荷による過熱状態にあるバリア発生器を、一時的に休ませるためだろう、モノアイ・ゴーストの周囲で弾かれていた雨粒が、そのまま真っ直ぐに落ちはじめた。
 そしてそれ故に、過熱部から上がった蒸気の白を、彼女の瞳は逃すことなく捕まえる。
 あのバリアがただの磁場ではないことは明らかだった。物理的な接触までも弾く力場による、強力な代物。攻めるに厄介なのはこれまでの戦闘の様子からも明らかだが、裏を返せばそれを失った際の影響は計り知れない。自らを盾とする振る舞いに、あの力場に物を言わせた突進、そう言った立ち回りの基礎を根本から崩すことが可能な筈だ。
 あえてキャバリアではなく生身で来た以上は、火力と機動力で付き合えない以上は、これくらいの事はやってみせねばならないだろう。

 ――ええ、抜きますよ。私なら可能です。

 勝負を賭けるべきその一瞬を、狙撃手の感性が捉える。
 打ち付ける雨粒の下で冷えた体は、射手の矜持の下、正確に、素早く動いた。
 最初に一つ。そしてその反動を全身で押し殺すようにしながら、もう一度引き金を絞る。

 空になった薬莢が二つ、彼女の傍らで跳ねた。

『――な』
 何が起きた? とユーリは驚愕に息を呑む。インジケータから機体の状況は常に把握できるようにしていたが、それでもなお信じられぬものを見るように、もう一度確認する。オーバーヒート状態にあったバリア発生装置が、完全に落ちた。
 何らかのトラブル。このタイミングで? いや、偶然などではないだろう。背筋を冷たいものが伝うのを感じながら、彼は目の前の戦いへと自分の意識を引き戻した。そして、作戦の軸が覆ったのだと、呑み込み難い現実に直面する。

 両肩部に仕込まれていたそれが、キャバリアからすれば小さな弾丸二つに射抜かれた、などと。神ならぬ彼には知り得ない事だろう。
「……夢見言はそこまでです。目を覚ますのはそちらですよ」
 レティクルの向こう、機体越しに相手の動揺を感じ取りながら、シャルロットは小さくそう囁いた。

●拓かれた道
 時は少々遡る。
 雷を降り注がせ、敵集団を一時切り抜けたところで、遵はしみじみと呟いていた。
「おじさんわかった」
「ほう、何がわかった?」
「キャバリアの練習がもっと必要」
 攻撃を受け続け、あちこちに傷が付いた機体を見下ろす。この子は、きっと必要な犠牲だったんだ、と。
「はっはっは、先程乗ったばかりなのだぞ? 早々簡単に使いこなせる方が難しいというものだ」
 気落ちした様子の遵の声に、肩の上で惟継が笑ってみせる。何事も初回はそんなもの、気にせぬようにと言う彼に、遵は嘆息混じりに頷いた。
 だからと言って、ここで練習不足を問題に挙げる意味はない。重要なのは、それを踏まえてどう戦うかだ。
「今の内に、作戦会議と準備をしよう」
「作戦会議とな、では如何なる方法で奴に挑むか、教えて頂こうか」
 どうやら冗談ではないようで、他の猟兵達が迫り来るハウンド小隊と交戦する中、相談が始まった。
「やっぱ竜神様を直接ぶつけるのが一番手っ取り早いと思うんだよね」
「俺の力は色々な武器にも変えられるからな、今回は槍で行こうと思うが……」
「まあ、それだと中々届かないよね」
 ただ接近するのも防がれるだろうし、と遵は戦う敵機へと視線を移す。同じキャバリアとは思えぬ素早い動きに、先程までのオブシディアンMk4達が支援に回っている状況だ。切り抜けるのも一苦労だと思われるが。
「あのボスっぽいやつにワイヤーロープを撃ち込んで、キャバリアごと勢い付けて当てに行くのはどうだろう」
 いつか、迷路でやった時みたいに、と付け加えた彼の提案に、惟継はなるほどと頷いた。
「ワイヤーロープの巻き取る力を使ってキャバリアを奴に向かわせる……が、それだけでは不十分。そこで俺がキャバリアに乗って攻撃を加えるということだな」
「うん、そんな感じで」
「いいだろう! ただし、必ずワイヤーを奴に付けるのだぞ」
 作戦には納得がいったようで、満足気に言う惟継を乗せたまま、遵はワイヤーロープを放つ準備に入る。味方の援護受けながら、バリアを張ったり高速飛翔で戦う敵の指揮官機。他の猟兵達がそれぞれに力を示し、戦う中で、その機体を目で追って。
「問題は、当たるかどうかとバリアを貫通するかどうかとワイヤーが切れないかどうかと身の安全かな」
「はっはっは、遵殿は心配性だな」
 実際問題かなり見込みが薄く思えるが、そこで彼等にとっての好機が訪れた。二人が相談している間に突破口を見出した仲間が、バリアを発生させているパーツを破壊することに成功したのだ。
「行こう、竜神様!」
「心得た!」
 防御の剥がれたその隙に、作戦通りワイヤーロープを撃ち込んだ遵は、スラスターを噴かせて機体を飛ばすと同時に、ウィンチでワイヤーを高速で巻き取る。そして、勢いを付けて突進する機体から、『雷帝ノ槍』を構えた惟継が飛び出した。
 光り輝く槍を手に、自らを紫電と化すようにして、放たれた神速の一撃。落雷のような轟音を上げて、惟継は敵機の装甲に大穴を開けてみせた。

●突き進む
 障壁を失い、装甲に大きな傷を負った機体に、追い付いた透乃がさらなる一撃を加える。足の関節部を裏から一閃、戦斧の刃で砕いて見せ、膝を折らせて。
『隊長!?』
 支援機が助けに入ろうとするが、生身であるというサイズ差を活かし、隊長機に密接した透乃には迂闊に手を出すことができないようだ。その間に、彼女はもう一度、左手一本で戦斧を振りかぶる。
「力の限り、ぶっ壊せー!」
 『緋迅滅墜衝』、彼我の質量差を感じさせないその威力に、敵機がぐらりとよろめいた。確たる一撃、だがシールドを失ったモノアイ・ゴーストが高速移動形態に移行したことで、彼女はとどめの機会を逸することになる。そうなれば、周囲の支援機からの射撃を避けようもないが……。
「バリアチャージ、起動」
 その代わりに、今の隙にモノアイ・ゴーストの盾を喰らったユリィ機が立ち塞がった。取り込んだバリア発生装置を一時的にコピーし、展開。オブシディアンMk4からの一斉射撃をその障壁で弾いていく。
「……援護する」
「なるほど、それならば……」
 先程とは逆に、盾役を買って出た彼の動きを見て、シキが隊長機を狙える位置へとキャバリアを進める。通常ならば集中攻撃の良い的だろうが、今は高速で飛び回るユリィのキャバリアが、そのほとんどを防ぎ、牽制射撃で相手を抑えてくれていた。
「いい加減、大人しくしてもらおうか」
 再び、銃口の狙いが交錯する。モノアイ・ゴーストの放つ光学兵器の一斉攻撃、それを遮ったバリアの裏から、シキの放ったレーザーが、ミサイルが、攻撃のために動きを緩めた敵機を捕まえた。
 正確に手足だけを狙ったそれを受け、四肢の機能を停止させたモノアイ・ゴーストが空中でバランスを崩す。落下していくだけのその状態を、しかしハウンド小隊の長は良しとはしなかった。
『今更止まることなどできるものか!』
 残ったスラスターを、限界以上に酷使し、無理矢理姿勢を制御する。もはや敵わぬとしても、せめて一矢を。
『微力に過ぎぬとも、この死が我が国の目覚めの一助となれば――』
「ブラディエル!」
 名を呼ぶ彼女、朱皇の声に赤い鎧が応え、目の前の敵量産機を薙ぎ倒す。出来上がった道、そして機能停止した敵機という最後の階段を、鎧を脱ぎ去ったシュラウゼルが駆ける。細身のその身体には、短時間での改造によるブーストがかけられ、同時に巨大な刃を形成していた147のナノマシンも、その刀身を細く、鋭く変えて行く。
 走り、貫くのに向いた形となった機体は、飛翔するモノアイ・ゴーストに追い縋るように、跳躍。そのまま空中で、刺突剣のような形となった剣を投げ放った。
「――目を覚ますのは君達だよ、隊長さん」
 雨粒を超え、闇を切り裂いて、刃が敵の推進機関を貫いた。

●一時の平穏
 四肢をもがれ、推進機能すら失ったオブリビオンマシンは、墜落跡を地面に刻みながら停止した。これにより、共に戦っていた小隊員達も歪められた思想から解放され――。
「私は、一体、なぜこんな……?」
 オーバーフレームが崩れ落ち、破壊されたオブリビオンマシンのコックピットが開く。洗脳の解けた部隊長は、傷付いた身体を横たえて、呆然と降る雨に打たれていた。
 取り返しのつかないことをしてしまった。そんな彼の様子と、命に別状はないことを確認して、猟兵達はそれぞれに武器を収めた。
「投降しろ。あんた達次第だろうが、今ならまだ戻れるかも知れない」
 シキの言葉に、彼は頷いて返す。少なくとも、そう、これから起きるはずの『同士討ち』は、猟兵達の手によって未然に防がれた。
 無数の戦乱が渦巻く世界で、その芽を一つ摘み取って、彼等は共に帰還する。雨はやがて上がり、峡谷に虹の橋が架かるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月09日


挿絵イラスト