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蝋燭の少女が人間を卒業する日

#UDCアース #UDC-HUMAN #救済者アルファ・ニール

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#救済者アルファ・ニール


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●燃え尽きる事すら許されず
 余命数年。
 まだ、数年あった、いや、もっと長かったかもしれない…つい数日前までは。
 じりじりと身を焦がされていくような生活に耐えた少女への報酬は、枯れ枝のような体と、明日をも知れない命。包帯だらけの白衣の少女は一人、屋上で空を見上げる。
 周囲の理解を得られずとも、ゴミと蔑まれようとも生きてやると笑って戦ってきた。その結果がこれならば、もう諦めるしかないのだろうか?これが私の運命なのだろうか?少女は鉄柵に手をかける。
「……いやだ、わたしは生きて、生きて…死にたくないよ、辛いよ、まだ生きたいよ…神様…!」
 絶望と衝撃、怒りと悲しみ。ない交ぜになったその全てが、邪悪を呼び寄せる。
「―――大丈夫、君の願いは、私が救おう」
 白衣の少女は消えて、白いコートの青年が屋上に降り立った。


「UDC-HUMANって、聞いたことあるかしら?」
 眉根を寄せ苦虫を噛み潰したような顔でフー・フラム(燃え上がる種火・f17967)が集まった猟兵達に確認を取る。
 UDC-HUMAN、何かしらの辛い出来事によって人間がUDCへと変貌してしまった存在。どうやらフーは新たなUDC-HUMANの誕生を予知した様で…。
「今回、あたしが見つけられたのは怪我で入院している優子って小学生の女の子……どうにも質の悪い苛めに…いや、もうあれじゃ迫害ね。小さい片田舎で、村ぐるみで暴行を受け続けてきた」
 体が弱く長く生きられず、両親もいない村の極潰し。それでも彼女は懸命に村人に立ち向かって生きてきた。そして迎えた小学校の卒業式の前日、仲の良かった村長の娘に呼び出され、殺されかけた。

「殴る、蹴る、折る、斬る、焼く……比喩抜きで彼女は死にかけた。養育費やら、村の醜態やら、いじめの事実やら村を捨てる恩知らずへの制裁やらべらべらと理由を並べてね。彼女、中学では街のお嬢様学校への進学が決まってて、寮生活の為に引っ越しの準備もしていたみたい」
 環境が人を育てる。都会に出てよい人々に恵まれれば彼女はもっと長く生きれただろう…その芽は村の大人と子供と、彼女が友達だと思っていた存在に潰された。結果、弱り切っていた彼女はついに限界を迎え、いつ死んでしまってもおかしくない重病人になってしまった。
「そんな現実にいろんなものがこみ上げてきたんでしょうね。弱音も憎しみも零しちゃってついには神様に縋っちゃって…良くないものを引き寄せちゃった」
 優子だったなにかは、放っておけば完全にUDCに塗り替えられ村に降りるだろう。そうして始まるのは、虐殺だ。

「でも、今なら引き戻せる…説得でもいい。ぶん殴ってもいい、止めてあげて。彼女がそれを望むかどうかは…わからないけど、でも止めて」
 すでに病院は、良くないものが呼び寄せた怪鳥が猛威を振るっている。幸い、まだ死者は出てないがこれも放っておけば時間の問題だろう。
「犠牲が出てしまえばもう引き戻れない。彼女が呼び寄せてしまったものが何であれ、UDCになったらそれはもう優子ちゃんじゃないわ。親の愛も隣人の情も知らない女の子を、できる事なら助けてあげて…頼んだわ、皆」

 フーが炎のグリモアで道を開く。開いた先では、病院に無数の怪鳥が飛び交っていた。
「……ああそうそう、村の連中だけどね、今回の彼女の一件、まるで反省してないっていうかむしろ病院に彼女が入院してその治療費がかかったって被害者面してるのよね…ついでにお説教の一つでも、頼んだわ」


とま太郎
 蝋燭のごとく燃え尽きるのか、尽きることなく燃え続けるのか。
 選ぶことすら許されなかった少女の思いは神にも仏にも届かず、人ならざるものに届いた。

 めっっっっちゃお久しぶりです初めましての人は初めましてとま太郎です!!
 ちょっと?重めのシリアス系。舞台はUDCアース、とある田舎の病院にて事件は起きます。
 初めての挑戦…まぁそもそもシナリオ本数が少ないんですが。

●第一章
 UDC-HUMANが操る、怪鳥の群れを病院から排除し、目指せ屋上!

●第二章
 UDC-HUMANとの決戦。心を飲み込まれた優子ちゃん、でもまだ間に合うかも?

●第三章
 そもそもの元凶に対して、皆様からの仕置きを。

 の三本でお送りする予定です。
 皆様のプレイング、お待ちしております。
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第1章 集団戦 『嘲笑う翼怪』

POW   :    組みつく怪腕
【羽毛に覆われた手足】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    邪神の加護
【邪神の呪い】【喰らった子供の怨念】【夜の闇】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ   :    断末魔模倣
【不気味に笑う口】から【最後に喰らった子供の悲鳴】を放ち、【恐怖と狂気】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

彼岸花・霧晴
※ベアトリス・アールエル(f18089)と共闘・アドリブ歓迎
お互いはあだ名呼び。こちらからはベアトと呼ぶ。

胸糞悪い話です…
だからこそ、これ以上悪化させちてはいけないです。
いくですよベアト、正しい任侠……見せてやるです。

UCは無花果を使用。
ベアトがサポートしてくれるなら、その期待に答えるだけ。
ベアトの暴風に合わせて自身を加速させたり、稲妻避けられないように足を凍らせてやるです。
空がベアトなら、地は私です。
全員殴り倒してやるです!

ベアトの危機には、氷の盾なんかで援護するです。
互いの鼓舞が、勝利へ導く鍵となるはずですから!


ベアトリス・アールエル
霧晴(f27987)と共闘
愛称のキリで呼ぶ
アドリブ歓迎
POW

「どこの世界にも外道な輩はいるもんだねえ。
でも、あたし達みたいな
者もいる。
加勢するよ、キリ」


UC「エンリル」で
全身を風魔法によるコントロール可能な暴風と稲妻で覆い戦闘力増強と
飛翔能力を得て

敵攻撃や飛行能力を
弱体化
制空圏を得る

キリの行動を
落雷や強風でサポートしたり合図しながら
空中からトリッキーな動きで稲妻による落雷
暴風を交えた
怪力による鋭い爪で
急降下引っかき複数攻撃

キリがピンチの時は
咄嗟の一撃で
かばって手助け
互いの息の合った戦いぶりで鼓舞し合う


波狼・拓哉
…日本だよねぇ!?いやUDC関係してなかったら普通の平和な世界じゃなかった???
というか凄い娘だな、ここまできてまだ心が折れ切ってないのか…うん、ここで終わらせてはダメな娘だね

そういうわけで、邪魔だにやけ梟ども
お前ら程度が嘲えるもんじゃないですよっと
化け喰らえ、ミミック…喰っていいぞ、全部な

自分は衝撃波込めた弾で動き止まった奴や、こっち近づいてくるを優先して撃っていきましょう

戦闘知識、第六感で上手く立ち回って早業、二回攻撃で撃ち貫いてやりましょう

狂気・呪詛耐性で悲鳴を聞き流す
…その声は自分が止まる理由になりませんよ、イラッときますけど
まあ、ミミックには無関係ですけど

(アドリブ絡み歓迎)


ユナ・アンダーソン
アドリブや連係歓迎

狭く閉鎖されたコミュニティあるあるだけど
やっぱり気分はよくないわよね
さっさと有象無象は片付けて助けてあげなくちゃ!
自分にさえ見捨てられるのは可哀想だからね
行きましょう、皆

可能なら病院の見取り図を確認し
とりあえず、屋上に全力疾走
進路上にいる敵をなぎ払いながら突き進みます

戦闘開始と共にUCを発動し
エトワル・ボワ・ジュスティスを振り回し
敵を片っ端からなぎ倒し断頭します
邪魔よ!
敵のUCは狂気耐性を使って耐えます



ぎゃあぎゃあ、怪鳥が鳴く病院を前にし彼岸花・霧晴(白氷の拳聖・f27987)とベアトリス・アールエル(ツーヘッド・ドラゴン・f18089)が、屋上にいるであろう敵を見据える。
「胸糞悪い話です…だからこそ、これ以上悪化させちてはいけないです」
「同感だね…まったく、どこの世界にも外道な輩ってのはいるもんだねぇ…でも、あたし達みたいな者もいる」

 白の男が、屋上から空を見上げる。
「来たか、猟兵」

 喧しく鳴き喚く鳥の声が、一斉に静まった。
「あらら、これは歓迎の準備って所かね…どうする?」
 問いかけながらも、悩む素振りなく銃を抜くベアトリス。
 霧晴が、静かに拳を鳴らす。
「無論、真っ向から。いくですよベアト、恥すら知らぬ連中に、正しい任侠……見せてやるです」
「上等。加勢するよ、キリ……行くよっ!!」
 暴風と共に、竜人と竜神は病院へと突っ込んでいく。

 視点は移り、資料室。
「いやいやいやいや……日本だよねぇ!?」
 救出対象である少女のカルテを見て悲鳴を上げるのは波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)だ。
 表家業として探偵を営む彼をして、早々見ない惨憺たる有様。UDC関係してなかったら普通の平和な世界じゃなかったか?と眉根を寄せて首を傾げれば、傍らで見取り図を探していたユナ・アンダーソン(星骸のスティグマテイカ―・f02647)が横からそのカルテを覗き込む。
「う~ん…狭く閉鎖されたコミュニティあるあるだけど、やっぱり気分はよくないわよね」
「いや、あるあるですませちゃ駄目でしょ…というか凄い娘だな、ここまできてまだ心が折れ切ってないのか」
 目線を落とせば、医者が匙をぶん投げてもリハビリに励む彼女の記録が綴られている。
「…うん、ここで終わらせてはダメな娘だね」
さっさと有象無象は片付けて助けてあげなくちゃ!
自分にさえ見捨てられるのは可哀想だからね
行きましょう、皆
「もちろん。だからこそ私たちが来たんだから。彼女が自分を諦めちゃう前に…有象無象は片づけて、助けてあげなくちゃ!」
 自分にさえ見捨てられるのは可哀想だと、聖者は彼女から彼女自身を奪おうとする何かに静かに怒り、それをおくびに出さず見取り図を見つけ出した。
「さ、これで何とか最短ルートを…」
 直後。
 資料室の天井をぶち抜いて、怪鳥の死体が落下してきた。

 病院の廊下で、その剛拳で怪鳥を一匹に叩き込んで絶命させた霧晴。
「まず、一体」
「お見事って言いたいところだけど、数が多いねこいつらはッ!!」
 窓の外ではベアトリスが怪鳥の群れに空中戦を仕掛け、速度で圧倒しながらも数の多さに手を焼いていた。
 ならば、とばかりにベアトリスが窓際すれすれを飛び、窓際に近づいてきた怪鳥の足を霧晴が凍らせる。基本の型・無花果から繰り出される技が窓の外を飛び交う怪鳥を捕らえているのだ。
 狙いを屋内の霧晴に変え室内に飛び込んできた怪鳥には、待っていたぞとばかりに氷と暴風を纏った霧晴が痛烈なカウンターを浴びせ、再び屋外へとたたき出していく。
 多くの怪鳥を引き連れながらもベアトリスは吹き飛ばされてバランスを失った鳥を見過ごさず、軌道を変え急降下---すれ違い様に、怪鳥の羽を片っ端から爪で引き裂き殺していく。
 制空権を奪うベアトリスを落とそうとしても追いつけず。痺れを切らして霧晴を狙おうとすれば暴風の支援を受けて加速する、流れるような技の数々で落とされる。
 数を頼りに、どちらかに四方八方から襲い掛かろうとしても…。
「ベアト、これをっ!」
「助かるけど、そっちも後ろっ!!」
 ベアトの死角を遮るように霧晴が氷の盾を投げ込み、霧晴が物量で押しつぶされそうになれば飛び込んできたベアトリスが落雷と暴風が塊となった群れを噴き散らす。
 抜群と呼ぶにふさわしいコンビネーションに、怪鳥は確実に殺されていった。
「…これで、4匹目!!」
「こっちは五匹!!まだまだ行けるねっ!?」
「当然です…!」
 だが、それ以上に数が多かった。
 この村の醜悪さが呼び水となったのか、まだまだ姿を見せる怪鳥にベアトリスは屋上へと近づけず、霧晴もまた足を止められていた。逐次投入されるかのような数の暴力に息が上がっていき、それでも、二人は微塵も折れることなく互いを鼓舞しあう。

 その鼓舞が、彼女たちを間に合わせた。
「当たると痛いじゃすまないわよっ!!」
 廊下を疾走するユナが振るう、ギロチンのごとき刃が怪鳥を両断。
「遅くなってごめんなさい!ものすごく派手にやってくれたおかげで間に合ったわ!」
「いやー間に合ってよかった、貴方たちが入れば屋上の彼女にも間に合いそうだ。いったん交代させてもらいますよ…そういうわけで、邪魔だにやけ梟ども」
 その後ろから、拳銃を構えた拓哉が、その傍らに控える謎の箱型生命体ミミックを解き放つ。
 自分たちに近しいモノを感じたのか、ミミックに向け味方を巻き込むことなどお構いなしにぎゃあぎゃあぎゃあと喚きだす。やがてそれは子供たちの悲鳴に変わっていき…痛ましい断末魔の合唱、聴覚を通じ心をかき乱す狂喜の笑い声。
「お前ら程度が嘲えるもんじゃないですよっと。化け喰らえ、ミミック…喰っていいぞ、全部な」
 そんな笑い声も、正気を既に失っている拓哉にとっては足を止める理由にもならず、ミミックに至ってはそもそも感じているのかわからず。
 ミミックから伸びた影が、一度態勢を立て直そうとするベアトリスを追う鳥を捕らえ、大顎が月々と捕らえた。
 逃れようとする会長も、経験と直感を組み合わせた拓哉の、未来予知じみた正確な連射で撃ち抜かれて捕食されていく。
 一度の射撃で弱らせ、二度の射撃で確実に仕留め、喰らう。
「…その声は自分が止まる理由になりませんよ、イラッときますけど」
 ミミックに視線を向けられながら、拓哉は正確無比の銃撃を決めていく。
 鳥が慌てて拓哉たちに攻撃を向ければ、躍り出たユナの刃が刈り取る。
 ユナが振るう【エトワル・ボワ・ジュスティス】に纏わされているのは、全てを飲み込むマイクロブラックホール。
 故に、此方に向かってくる者たちに対し、大きく振るえば…。
「今よ、ぶち抜いて!!」
 一塊となって、逃げだすこともできなくなるだろう。
 拓哉とミミック、そしてユナが一斉に飛びのき、射線を開けた。
 そこには、息を整えなおした竜が二人。
「やっとやりやすくなったねぇ…そんじゃあ、飛ばしていくよっ!!」
「まとめて…氷漬け、です!」
 竜神の氷、竜人の雷、二人を包んでいた暴風。
 それらすべてがない交ぜになった雷鳴交じりの吹雪が、引き寄せられ壁や天井にひしめき合っていた鳥の群れを焼き尽くし、凍てつかせ…数の暴力を、捻じ伏せ、救おうとしている少女までの道が開けたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

……ま、田舎の風習っつーか。
空気ってのはなんとなく分かるよ。
だから、その怒りは忘れないけど置いておく。

まずは、テメェらだ。
まだ、テメェらがどうこうしていい状態じゃあ、ねェだろうがよ。
お前らと最初に遭ったのは、それこそアタシが駆け出しの頃だったっけ……
けれども今なら、お前らなんか敵じゃねぇ!

電撃の『属性攻撃』を『範囲攻撃』のように放ちながら、
聖句を唱えつつ『ダッシュ』で病院を駆け抜ける。
その電撃にゃ『マヒ攻撃』も交えてるからね、
廊下に這いつくばっておけ!

それでも追い縋る奴らには、
聖句の最終節まで唱え上げ。

【黄泉送る檻】で骸の海へ叩き返してやる!
間に合ってくれよ……!



「……ま、田舎の風習っつーか。空気ってのはなんとなく分かるよ」
 猟兵の突破を許し、これ以上の突破を阻止せんと本能的に群れを固める怪鳥を睨み付けながら数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)がぼやく。
「だから、その怒りは忘れないけど置いておく…まずは、てめぇらだ」
 屋上を、そこから下を見下ろす白い男を睨みながら、彼女が呟く。
「まだ、テメェらがどうこうしていい状態じゃあ、ねェだろうがよ」
 男が笑った。笑って、彼女を指さした。
「間に合うかな?猟兵」
 怪鳥の群れが飛び立った。

 多喜を囲む様に怪鳥たちは陣形を組む。
 知恵無きはずの怪物が、白い男の指先に従い一人を確実に殺すための連携を取り始めた。
「お前らと最初に遭ったのは、それこそアタシが駆け出しの頃だったっけ」
 呪いと怨念が混じった血をぼたぼたと流しながら、多喜へと一斉に喰らい付き、多喜の姿が鳥の翼で見えなくなる。
「………けれども、今なら」
 次の瞬間、囲みを作っていた怪鳥たちが―――消し炭と化した。
「お前らなんか、敵じゃねぇ!!」
 聖句が紡がれ、雷鳴が轟く。
 雷を迸らせながら、病院へと駆けだす。
 邪魔な扉は雷で破壊し、階段は一足飛びに駆け上がる。
 ノンストップの疾走、迸る雷光は、たとえ死から逃れようと筋肉を麻痺させ僅かに残った鳥の追撃を許さない。
 そうして屋上への扉に手を掛けようとして…ピタっと止まり、後ろを振り向く。
「しつこいな、本当に…」
 階段の踊り場には、はいずりながらこちらに追いすがろうとする怪鳥達。
 ならば、確実に骸の海へと返さなければならない。
「ashes to ashes,dust to dust,past to past...収束せよ、サイキネティック・プリズン!」
 最後の一撃が、轟音と共に残った怪物を消滅させる。
「…頼む、間に合ってくれよ…!」
 そうして彼女は、屋上の扉を開いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『救済者アルファ・ニール』

POW   :    兄弟仲良く…
戦闘力のない【操り人形に改悪したクローン聖者の失敗作達】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【自身の勝利を祈る様洗脳した聖者達の加護】によって武器や防具がパワーアップする。
SPD   :    どう救う?
対象への質問と共に、【自分がこれまで力を植え付けた人々の中】から【暴れるしか能のない怪物になり果てた子供達】を召喚する。満足な答えを得るまで、暴れるしか能のない怪物になり果てた子供達は対象を【怪光線や鋭利な牙、巨大化した爪による暴力】で攻撃する。
WIZ   :    憎たらしい…!
【敵対する猟兵のユーベルコードのエネルギー】【を取り込みその強さへの嫉妬と憎悪により】【奪ったユーベルコードの力をコピーする事で】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠キリエ・ニールです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「やーやーやーやー……よく来てくれた。いやもう本当に大遅刻もいいところだが、まずは歓迎するよ。哀れな少女一人の為に、よく来てくれた、ありがとう」
 軽薄そうに拍手して、やってきた猟兵に声を掛ける男が、屋上にいた。
 屋上にはためく、白いシーツの中でも、その男の不気味な白さは際立っていた。
 その男こそが、かつて少女だったもの。
 人ならざる、邪神の使い。
「改めて…私の名はアルファ・ニール。ついさっきまで優子ちゃんと呼ばれていた者だ…で、早速だが提案がある」
 シルクハットを胸の前に持ってきて、慇懃無礼な様子を隠さず頭を下げた男…アルファが語り掛ける。
「なぁ猟兵、私はこの少女を救ってあげたい。彼女の願いを救いたい、彼女にこれから末永く救われてほしい…ただ、ただそれだけなんだ。見逃しては貰えないだろうか?安心してほしい、こんな形でこの世に現れてしまった以上、早々人は殺さないさ」
 鉄柵に寄りかかり、汚物を見るような視線を、病院から見下ろせる村へと…少女を殺しかけた村へと向ける。
「……あれ以外は」
 アルファは大きく、大きく両手を広げた。何かを呼び込むように、叫ぶように。
「あれを殺すことで、私と彼女は完全に一つになる、彼女はもう死を恐れなくて良くなるのだ。なぁ猟兵、あの所業を知りながら、私を止めれるか?止めるとほざくなら私は全力で抗おう…私こそが、彼女の声を聞き届けてあげられた、救いなのだから。なぁ猟兵」
 屋上に、次々と魔方陣が現れる。
「……そこを退いて貰えるかな?」
 独善が、まだそこにある少女の心を蝕み始めた。
ユナ・アンダーソン
連係アドリブ歓迎

当然、止めるわよ
救い?とどめの間違いでしょ
その子に残された全てを奪っていこうとする邪神風情が
そういう台詞の出る神経が最悪だっていうのよ!
優子ちゃん、自分を見捨てちゃダメ
救ってみせるから

戦闘
被弾した味方をUCで回復しながら武器で攻撃
可能ならUCを使って優子ちゃんから邪神を略奪し引き剥がそうとします

敵にUCをコピーされたら

感じるでしょう
優子ちゃん、邪神
私の力を、その能力を
邪神、その子を救うというのなら
今その力を使ってその子を救って見せなさい
出来ないのなら消え失せろ!
私がその子を救うから!

戦闘後
UCを使って優子ちゃんの怪我やら病気やらを限界まで引き受けます
猟兵だから死なないしね



「当然、止めるわよ」
 妖しく輝く魔法陣が無数に表れる屋上で、ユナ・アンダーソン(星骸のスティグマテイカ―・f02647)が毅然と言い放つ。
「……当然?それは、猟兵としての義務と言う事かな?ああやはり貴様らは救いなのでは──!」
「いいえ、だって貴方最悪なんですもの」
 ピシリ、大仰な仕草をしていたアルファが固まった。
「…………何?」
「救いって言っているけど、貴方のそれはとどめの間違いでしょ?その子に残された全てを奪っていこうとする邪神風情が、そういう台詞の出る神経が最悪だっていうのよ!」
 ユナの身体から、聖者である彼女の力…星の光が溢れ…アルファへと降り注ぐ。

「……殺し尽くすしか能のない猟兵風情が、知ったような口を聞いてくれるなぁ!!」
 厳かなそれを塗り替えるように、クローン聖者であるアルファの身体からユナの光を反転させたかのような澱んだ光が漏れ出していく。
 光を力に変え、鋭利な爪でユナを斬り割こうとするアルファがユナの大鎌とぶつかり合う。
 拮抗していたはずの両者であったが、光を放ち続けるユナと、それを取り込み力に変えるアルファ、優勢は徐々にアルファへと傾いていく。
「君の力は光るだけかな?滑稽だなぁ、むかつくなぁ!そんなお前たちが、私達より上の存在な、ど…!?」
 だが、膝をついたのはアルファだった。
「貴、様…この力は…」
 光を放ち続け、消耗に震えながらもユナは折れずに向き合い、語り掛ける。
「感じるでしょう、優子ちゃん、邪神。私の力を、その能力を」
 ユナの光は、癒しの光。他者から傷を奪い、癒し、自らを傷付ける自己犠牲の光。
 故にその光は、アルファの内に眠る少女へ微かに届く。

「邪神、その子を救うというのなら、今その力を使ってその子を救って見せなさい。出来ないのなら消え失せろ!私がその子を救うから!」

「邪神、邪神と…煩いんだよ猟兵がぁぁ!!」
【自らを犠牲に命を救える自己犠牲の精神】に更なる嫉妬と憎悪を抱き、揺らぎかけた自分を強化したアルファが激高し、奪ったエネルギーを全て開放し、ユナを屋上から吹き飛ばす。
 それでも…もはや燃える事すら無い少女の意識に、微かな火が灯った。

成功 🔵​🔵​🔴​

波狼・拓哉
はっはっはっ、その程度で救いを騙るとは片腹痛すぎてごはんも茶碗一杯くらいしかたべれませんよ

まあ、あれが汚物というのは否定の仕様がありませんがね…いやむしろ汚物に失礼ですかね
だからと言って殺してしまっていいんですかね?…その汚物以下でも一応殺人はしてないんです…つまり殺っちゃうとそれ以下と認めることになりますよ?
それは確かに死にはしないでしょうが…本当にただそれだけです
…君が思ってるほど世界は残酷ではないのですよ

んじゃ、衝撃波込めた弾で撃ちつつ…化け煌めきなミミック!
中の娘に気を付けて切り刻んでやりましょうか!

…本当に救済を語るのなら、口にした願い以外も考慮しろよくそ野郎

(アドリブ絡み歓迎)



「ちぃっ…優子ちゃん、このままでは君の願いはかなえられないんだ、もう少し待っていてくれないかな?」
 救済者は屋上に開かれた魔方陣を通じ、自身と同じクローン聖者から無理やりに加護を引き出し、火が灯ってしまった内なる少女に語り掛け、眠らせていく。
 そっと優しく息を吹きかけ、火を消そうとし…直後、自身を狙っていた銃弾を弾き落とす。
「おっとっとそれぐらいは気づくか、はっはっはっ」
 銃弾が撃ち込まれた方を見れば、そこにいたのは声は笑えど目は笑っていない波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)の姿。
「…おかしいかね?少女の願いを叶えようとするこの姿を滑稽と笑うか、猟兵」
「いやいやはっはっはっ、おかしいのはそこじゃなくてですね…その程度で救いを騙るとは片腹痛すぎて、ごはんも茶碗一杯くらいしかたべれませんよ」
「………ほう?続けたまえ」
 銃を収めた拓哉が、優子ちゃんのカルテを取り出し語り掛ける。
「まあ、あれが汚物というのは否定の仕様がありませんがね…いやむしろ汚物に失礼ですかね」
「それに関しては同意できるな、改めよう…で?それだけで笑ったと?」
「話はここから。だからと言って殺してしまっていいんですかね?…その汚物以下でも一応殺人はしてないんです…つまり殺っちゃうとそれ以下と認めることになりますよ?」
「だとしても、だ…彼女は救われたがっている、解放を願っている、命ある事を願っている!私がそれを救おうとするのしているのだよ!!……君はまだ話が分かるようだ。どうだろう。幼気な少女の明日のため、ここを通してはくれないかね?」
 調子を取り戻したのか、紳士然とした姿に似合う、舞台役者のような大仰な仕草で拓哉へと、懇願するような言葉を並べる。
「それは確かに死にはしないでしょうが…本当にただそれだけです…君が思ってるほど世界は残酷ではないのですよ」
 瞬間、加護によって強化されたアルファは、拓哉へと襲い掛かった。
 それと同時に、銃を引き抜いた拓哉の銃口から、衝撃波が込められた弾丸が撃ち出される。
 強烈な衝撃、だが救済者には通じず…それは囮。
「化け煌めきな、ミミック!」
 謎の生物、ミミックの刃が、アルファを無力化せんと気遣い交じりの刃を飛ばした。
 爪と刃が、ぶつかり合い、火花を散らし、拓哉とアルファの肌を切り刻む。
「誰に語り掛けている、猟兵!!」
「さて誰でしょうね……本当に救済を語るのなら、口にした願い以外も考慮しろよくそ野郎」

 小さく呟かれた言葉に、僅かに目を見開いた救済者は…その言葉を振り切るかのように魔方陣の光と共に姿を眩ませた。

成功 🔵​🔵​🔴​

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

なーるほど、アンタは理解者
……気取りか。
アンタのもたらす救いなんてなぁ、
優子ちゃんが本当に望んでいたものじゃないだろうによ。
完全に一つになるって事は、
お前が優子ちゃんを「上書き」しちまう可能性も残ってるだろうに。
だから。アルファ。テメェを止める。
優子ちゃんには、「人間として」これからも歩んでもらいたいからね……!

そう『コミュ力』で煽りつつ、アルファの中の優子ちゃんへも
テレパスを使い『鼓舞』する。
そして襲い掛かってくる被害者たちの「埋め込まれた力」を探って不活性化し、無力化するよ。
そうすりゃアルファ、アンタの手品も種切れだ。
おとなしく優子ちゃんから祓われちまえ!



 おぼつかない足取りで屋上の淵に立つ救済者。
「馬鹿な、ありえない…私こそが彼女の救いなのだ、私が…」
 屋上から、見下ろした村に手を伸ばす。
「なーるほど、なーるほど、アンタは理解者……気取りか」
 そこに声を掛けたのは、数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)だ。
「また来たか、猟兵…何度でも言おう、そこを退け。私が、救うのだ、彼女の、願いを」
 血走った眼でアルファが多喜を睨む。
「アンタのもたらす救いなんてなぁ、優子ちゃんが本当に望んでいたものじゃないだろうによ」
 その形相にも、多喜は怯まない。
「完全に一つになるって事は、お前が優子ちゃんを「上書き」しちまう可能性も残ってるだろうに……その辺、わかってるんだろう?」
 力強くアルファを睨み返す多喜の視線に、アルファはたじろぎ…。
「ならば…なぜ今着た猟兵!なぜ、今更!!」
 憎悪を吠え立てる。
「もっと、もっと早く来ていれば!この子はこうはならなかっただろうさ!だがこうなった!所詮貴様らは掃除屋だ。だから!私が彼女を救うのだ!!」
 猟兵に対する憧憬を、嫉妬を込めたクローン聖者の叫び。
 それを真正面から受けながらそれでも多喜は睨み返す。
「ああ…確かにあたし達もな、助けてやれなかったよ。でも、今はまだ間に合う」
「…お前たちに、彼女の救いがあるなどと…私は到底思えんさ。だから、死んでくれ、猟兵1!」
 魔方陣から、奇怪な姿をした子供の怪物が次々と現れる。
 生前のアルファが仲介し、怪物の力を受け付けられ、死してなお縛られる子供達。
 だが…魔方陣から現れる度、彼らはただの少年少女の姿に戻り、消えていく。
「……なんだと?」
 会話の中で多喜から放たれていた思念破が、漸く屋上全体に行き届いた。

 ──人を救えと造られた。
 ―――人を救いたいと願っていた。それでも、待っていたのは役立たずの烙印。猟兵になれず聖者にもなれず、ただ造られては失敗作の烙印を押され捨てられるクローン、その最初の一体。
 猟兵。
 その力に嫉妬した、その存在を憎悪した、その可能性に憧れた。
 だから私は救うのだ、より多く、見捨てられた者達を!証明するのだ、私達はその上を行くと! 

「……なるほど、それがあんたらの過去か」
「…貴様…貴様貴様貴様ぁ!!見たのか、暴いたのか、私の過去を!」

 救済者の原点、猟兵へのあこがれ。
 その思いを埋め込み暴走させた少年少女達が、多喜の思念破によって解き放たれていく。人の肉体を超越させられても、心が救われなかった子供たちに、それはまさしく救いだった。
 人の本質を捕らえ、その記憶を探査し、その心へと干渉する…それを少し応用してやるだけで、優しく包み込んでやるだけで。
 温もりすら与えられなかった子供達は、本当に欲しかったものを感じ取っていく。
 その命を救うことはできなくても、皆、安らかな顔で消えていった。

「…あんた、可哀想なやつだね」
 その生い立ちに同情する、その誕生に怒りを覚える。
「でも、だからって許しはしない。あんたのそれは救いじゃない。だから。アルファ。テメェを止める。優子ちゃんには、「人間として」これからも歩んでもらいたいからね……!」
 嵐のような思念破がアルファに降り注ぎ、その魂をかき乱す。
 苦悶の表情を浮かべるアルファの中で、少女が微睡から解放されようとしていた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴォルフ・バイリンフェルト
「悪いが仕事なんでな。救いだとか願いだとか知ったこっちゃないねぇ。」
悪役気取りのヴォルフは救済者を揺さぶるように【挑発】します。
「しかしまぁ、情けない救い主だことで。」
「ガキどもをけしかけたり、聖者だかなんだかの力を借りたり、全部"他人"頼りじゃねぇか。」
「救い主気取るんなら、身一つで戦うくらいの気概を見せてみろや。」
挑発に乗らないなら、優子の心を引き離す材料ができて良し。
挑発に乗ってくるなら、他者に頼る能力を自ら封じてくれる可能性ができてよし。
能力をコピーされても、他の能力の性質上、敵は自分だけで戦う経験は少ないかなと。
戦いは優子の身体でもある救済者を無駄に傷つけないように素手でいきます。



「悪いが仕事なんでな。救いだとか願いだとか知ったこっちゃないねぇ」
 開口一番、ヴォルフ・バイリンフェルト(人間の冒険者商人・f29896)が救済者アルファ・ニールへとぶっちゃけた。
「…なんだと、貴様」
 自身の中で目覚めようとする少女を必死になだめすかしていたアルファが、その言葉に勢いよく顔を上げ、ヴォルフを見た。
 どこかみじめにすら見えるその形相を嘲笑いながら、ヴォルフは呆れたかのようにため息をつく。道に入ったその動きは、まるで悪役の様で。
「しかしまぁ、情けない救い主だことで…」
 さて、ここでこの救済者と言う男の性格を語ろう。
「ガキどもをけしかけたり、聖者だかなんだかの力を借りたり、全部"他人"頼りじゃねぇか」
「…黙れ…」
 救済者、彼はその強さに羨望を抱き、猟兵に嫉妬を抱いている。そのうえ、世界に選ばれた猟兵という存在そのものに憧れを抱き、ねじれ曲がって憎悪に昇華されている。
「救い主気取るんなら、身一つで戦うくらいの気概を見せてみろや……ああそれともなにか?」
「その中のガキを心配してるってか?どうせ長く生きられないんだ、だったらもう楽に」

「だ、ま、れぇぇぇぇぇ!!!」
 アルファが飛び出す。
 自分が救おうとした少女への無遠慮で残酷な言葉が、猟兵から飛び出してきた。
 それだけでアルファが目の前の男に殺意を抱くのには十分であり。
 よくも彼女にひどいことを、とあふれ出す憎悪、なんでこんな男が猟兵なのかと、嫉妬。
 それらすべてを拳に込め、爆発的に上昇した身体能力で拳を振るう。
「あら…よっと!」
 その動きこそ、このベテラン猟兵の狙いであるとも知らずに。
 振り抜かれたアルファの拳を紙一重でかわし、掴み、投げ飛ばし、捻り上げる。
「ぎ…ぎゃ、あ!?」
「ほーう?ちょっとは根性があったか?」
 瞬時にアルファを無力化し体重をかけるヴォルフ。
 ユーベルコードはアルファもコピーした、そしてそれをさらに強化した…それでも、肉体を使った戦闘経験の差においては、怒り狂ったアルファとそれを狙ったヴォルフとではヴォルフに軍配が上がる。
 だが、自分が技巧で上回れたことに憎悪し、さらに力を爆増させたアルファ波力任せに腕を振り解き、今度こそヴォルフの顔面に一発拳を入れた。
「ふー…ふー…!!!」
「おっと、目が血走ってるぜ?……いててて、ちと煽りすぎたかね」
 頬を腫らしたヴォルフが物影に下がっていく。
 だが、それを追える気力が、アルファにはもうなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ベアトリス・アールエル
引き続き
霧晴(f27987)と共闘
アドリブ歓迎
POW

UC「D・インフェルノ」で召喚された聖者達を
野生の勘でタイミングや間合いを見計らって
先制攻撃、スナイパー、乱れ撃ちで
正確にかつ素早く複数銃撃 

躊躇う事なく腕や足を撃ち
ダメージや轟音で祈りを阻止してから敵を攻撃

キリがピンチの時は援護射撃したり
かばって時間稼ぎ

銃撃を抜けられたら怪力の肉弾戦で咄嗟の一撃

「ふん、全部終わってから優子のしたいようにして
やるだけさ。あんたの出番じゃない。
それに本当は……優子をダシにして、あんたが村人達を
殺したいだけなんだろ?」


彼岸花・霧晴
※引き続きベアトと共闘

あんたの考えには同意ですが、殺してはいおしまいは甘いです。
何より、あんたはエサが欲しいだけですよね?

舐めたことほざくんじゃねぇ

気に食わんのやよ、あんたみたいな、他人の血で、てめぇの道作る奴が!

ベアトと互いに援護しつつ、隙があればドスによる刺突や斬りかかりで攻め立てるで。
焦って攻めるなら指定UC、カウンターでえらいの叩き込んだるわ!

地獄に送り返したるわ、自称救世主さんよぉ!!



「はは、あは、ははは…なんだこれは、なんなんだこれは」
 傷付いた体を引きずりながら、兄弟である人造聖者たちに自身を癒させながら屋上から逃亡を試みている救済者アルファ。
 攻め手、あの村だけでも、滅ぼす。そんな思いを、猟兵は許しはしない。
「こいつで、イッちまいな!」
 上空から、無数の銃弾が降り注ぐ。
 大口径のハンドガンから撃ち出される弾丸の雨。
 一発一発が大威力と引き換えに大反動を齎すはずのそれが、精密な狙撃となって上空から聖者たちを撃ち抜いていく。
 操り人形である彼ら彼女らでは、猟兵の──ベアトリス・アールエル(ツーヘッド・ドラゴン・f18089)の、膂力と直感に支えられた技に抗うことはできない。
 一発一発が的確に人造聖者の手足を貫き、あるいは吹き飛ばす。
 それでも、アルファの苦戦に反応して支援するよう洗脳された人造聖者達は動けなくなったものを盾に、空中を舞うベアトリスへと魔方陣を向ける。
「遅いです」
 ベアトリスの背から飛び降りた彼岸花・霧晴(白氷の拳聖・f27987)が、魔方陣を向けるためにこちらに視線を向けていた聖者の顔面を蹴り抜いた。
 二撃、三撃、どこか単調な思考しかない人造聖者では、ゴッドハンドの技の冴えを迎え撃つことなどできることもなく。
 空中を舞うベアトリスが、躊躇いなく銃を撃ち続ける。
 轟音が鳴り響き、味方と言う盾を使おうとした者も例外なく、手足に穴をあけてしまい、地上で舞う霧晴が容赦なく、その顔面や腹部を蹴り、殴り抜いていく。
 嵐が吹き荒れるような二人のコンビネーションの前に、洗脳によって兄弟と言う在り方を失っているクローンたちが叶うわけもなく。
 アルファがどうにか立ち上がれるようになった頃には、彼の兄弟は全滅していた。
「あ…ああ…あああ!?何故だ、どうして邪魔をする、猟兵!私は彼女の願いを叶えたい、それだけだ、それだけの為にここにいるのだ!あの屑どもを、生かしておいていいはずがないだろう!!」
 絶望と怒りの声を上げるアルファ、兄弟を地に伏せられた怒りか、目的を妨げられた怒りか。
 だが、それ以上に怒っているのが、霧晴だ。
「あんたの考えには同意ですが、殺してはいおしまいは甘いです。何より、あんたはエサが欲しいだけですよね?」
「………エサ?私がか?」
 何を言われてるかわからないといった顔でアルファが答えれば。
「舐めたことほざくんじゃねぇ」
 霧晴はついにその冷たげな顔を崩して叫んだ。
「気に食わんのやよ、あんたみたいな、他人の血で、てめぇの道作る奴が!」
 竜神が吼える。目を覚まさせるかのように。
「てめぇはてめぇのやりたいことの理由に!そのガキを使ってるだけだろうが!」

 アルファが、呆然と立ち尽くす。
「…ふん、なんだ、自覚してなかったのかい?なら改めて言ってあげるよ」
 見かねたように、宙から降りてきたベアトリスが言い聞かせるように口を挟む。
「全部事が終わったら、優子の好きなようにさせてやる。それだけさ、だからもうあんたの出番じゃない。それに本当は……優子をダシにして、あんたが村人達を
殺したいだけなんだろ?優子の願いだって言い張って、その子の身体に入る言い訳を作ってさ」

 少しの沈黙、アルファが口を開く。
「そうだな、その通りだ」
それは、どこかすっきりとしたような、さわやかさすら感じさせる声色で。
「感謝しよう、猟兵。ああそうだ、私は…あいつらをぶち殺したかった。だってそうだろう?私はこう見えて聖者だ、そしてUDCだ。人を蔑ろにするやつを、貶めたくてしょうがなくてなぁ」
 アルファが、その手の魔方陣に姉弟達の加護を束ねる。創り出したのは、黒い光の剣。
「私は奴らを殺す。もはや取り繕わん…お前たちの様に救えないからな。さぁ死にたくなければ、退け、猟兵!!」
 アルファはすでに満身創痍、それでも、その気迫はこれまでで一番のもの。
「上等だ。地獄に送り返したるわ、自称救世主さんよぉ!!」
 霧晴が吼える。
 火蓋が斬られたように、アルファが、ベアトリスが、霧晴が一斉に踏み込んだ。
 ここ一番の切れを見せ、最も早く懐に飛びこんだアルファが霧晴を狙い…最初から霧晴を庇う前提で動いていたベアトリスの鋭い爪が、それを防ぐ。
 交差する爪と剣を縫うように、相方に守りを委ね攻撃に専心していた竜神の拳が、アルファへと叩き込まれる。
 その一瞬の攻防が、アルファの最後だった。
 まともに喰らえば内蔵すら消し飛ぶ、霧晴の膂力と技術の粋を集めた拳。
 それが、アルファを消し飛ばし、取り込まれていた少女を開放した。

 …目につくようにしてやったんだ。せいぜい守って見せろ。
 拳を叩き付けた瞬間、猟兵達が聞いたのは、救済者を名乗っていたUDCの意地か、負け惜しみか。
 ついに救済者はこの世を去り、塗りつぶされていた少女に、再び命の火が灯った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『人間の屑に制裁を』

POW   :    殺さない範囲で、ボコボコに殴って、心を折る

SPD   :    証拠を集めて警察に逮捕させるなど、社会的な制裁を受けさせる

WIZ   :    事件の被害者と同じ苦痛を味合わせる事で、被害者の痛みを理解させ、再犯を防ぐ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 幸いにも、あるいは不幸にもUDC-HUMANとなっていた為か、救助された優子ちゃんの身体は、最低限生きられる程度には回復させられていた。
「あの…なんかすごすぎてわけわからないですけど…色々と、ご迷惑をお掛けしてしまったみたいで、ほんと、すいませんでした!」
 眠っていた間も記憶があったのか、集ってくれた猟兵達に、土下座とばかりに勢いよく頭を下げ地面に頭を叩き付ける少女。
 だが、話はこれで終わりではない。
「……ほんと、すみません。恥を承知で、お願いです」
 頭を上げた少女が、猟兵達を見上げる。
「…あたし、親友がいたんです。美子ちゃんって、ポニーテールが良く似合う子。裏切られたんですけど、ボッコボコにされたんですけど。あたしをボコボコにしたのは、その子の取り巻きとか、親とかだったし…」
 それに、あの時の親友は泣いていた。
「だから、彼女の真意を知りたいんです。じゃなきゃ、吹っ切れない…散々面倒かけてるけど!もう少しだけ、あたしを助けてください!連れてってください、あの村へ!」

 場所は変わって、村に唯一ある学校の、小さな体育館。
「なんて…なんて恥晒しなんだ、お前は!!」
 そこでは、女の子が一人、、暴行を受けていた。殴る蹴る突くと襲い掛かるのは、彼女と同年代の子供達。馬頭を浴びせているのは、彼らの両親や、まったく関係ない村人。
 一人嬲られるその少女は、ポニーテールの、村長の孫娘、美子。
 親に命じられて優子を裏切り、しかし友達だったから、見捨てられず彼女を病院へとかつぎ込んだ。
 その代償が、これだった。
 村で一番偉い男の命令を無視して、意志に逆らった。
 だから笑いものにされても許される、殴ってしまっても許される。
 村の大人の相違に逆らった、だから彼女も極潰しの、村の正義の、制裁を加えていいもの。今まで優子に向けられていた暴力を彼女は受けていた。
「…ごめん、なさい…ごめ、ん、なさ…い…!」
 心身ともに潰されながら美子はひたすら謝罪を口にする。
 それは誰に対してのものなのか。
 その真意を確かめられるのは…優子と美子を再開させてやれるのは、理不尽を理不尽で叩きつぶせるのは、猟兵達を置いて他にいない。
ヴォルフ・バイリンフェルト
あの時受けた一撃は、間違いなく彼自身の拳だった。その借りを返すために動きます。
最初はユーモアのある方法を考えてたが、想像以上の光景に流石のおじさんもプッツン。
虐待現場に堂々と現れ、気さくに声を掛ける。
何をしてるんだ? と。
ごまかすと思うので、気迫を込めて何度でも問います。
「もう一度聞くぜ。お前ら、なにを、している?」
そして、この事をいいふらしちゃおっかなーと【挑発】します。
手を出してきたら大人げなくユーベルコードまで使ってとっちめます。
美子と優子の事は他の猟兵に任せますが、可能なら、煽りで先が短いなんて言った事を優子に謝れたらいいなと。
退場する際のセリフは
「これでいいか? 救い主サマよ。」
で。



(あの時受けた一撃は、間違いなく彼…あの男の、救済者自身の拳だった)
 殺意の入った一撃を顔に受け、頬を腫れ上がらせた男…ヴォルフ・バイリンフェルト(人間の冒険者商人・f29896)。
 思うところがあったのか、負傷を癒すことなく人気のない村を一人歩きながら、もう消滅した救済者の事を思い出す。
 奴の所業は許しがたいが、その思いもその怒りも本物だった。
 なら、借りを返さなければならない。そのためにヴォルフは、偵察を兼ね優子よりも、誰よりも早く体育館へと向かっていた。
「さてはて、とは言ったものの…こういうのはあまり慣れんのだがね」
 救助対象は子供だし、さてどうやって場を動かしてやろうかと方法を考え、たどり着いた体育館をちらりと覗いてみて…全部吹っ飛んだ。
「…あ~、こりゃ駄目だわ」
 殴る、蹴る。定規や鉛筆で刺す、突く。
 無邪気で片づけられない子供たちの暴行を、大人たちが笑顔で煽り、加害者を誉め、被害者を罵倒する。
 その光景は、このおじさんを怒らせるには十分すぎるものだった。
「…なるほど、こりゃあ…こりゃあ皆殺しにしてやるとか言われるはずだわ」
 へらへらと笑うおじさん冒険者の目つきが、ベテランの経験者の目つきへと変わる。
(…まずは数を減らすかね)

するりと美子を囲む輪の一部に紛れ適当な大人に肩を組んで話しかける。
「よぉあんた!ここでなにしてんだ?」
「…ん?おいあんた、ここはよそ者が来る場所じゃないぞ、とっとと…」

「もう一度聞くぜ。お前ら、なにを、している?」
 気迫の込められヴォルフの言葉に、肩を組まれた大人が黙り込み…
「まぁいいや、ちょっとそこで話そうか…大人の話だ」
 減らりと笑ったヴォルフに連れられ、数人の大人が離れた。

「……で、結局実力行使かよ…」
 体育館の裏で、気絶している大人たちと、呆れたように溜息をつくヴォルフ。
 ヴォルフのやったことは単純だ。
 あんまり黙っているのなら、先ほどまでの行為を彼ら大人の仕事先やら国家権力やらに言いふらしちゃおうかなと、暗にとっとと白状しろという最後通告。
 それに激高し、力で黙らせようと村人が襲い掛かってきたのだが…ヴォルフは猟兵で、戦闘経験豊富で、彼らは素人だった。結果が、この惨状だ。
「さて、まずは様子見もできたが…速いとこ助けてやらんとね」
 証拠を取った、あとは他の猟兵に惨状を伝えて、託す。
 数名の大人をその辺の縄で縛って引きずり、警察辺りに放り込もうと歩いていくと、病院から村へ戻ってきた優子が現れる。
「あ…さっきの…」
 その視線には、申し訳なさと少しの怯え。
「……悪かったな、先が短いなんて言って」
 彼女の頭を軽く撫で、その横を通り過ぎていくヴォルフ。
「…それでも…助けてくれて、ありがとう!」
 優子の感謝の声に振り向かず、ヴォルフは空を見上げる。

「ひとまずは…これでいいか? 救い主サマよ」

成功 🔵​🔵​🔴​

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

優子ちゃん、安心しな。
美子ちゃんも決して悪い様にはしない。
ただ……そのためには、ちょっと村全体が大変な事になるかもしれない。
それだけは、勘弁しとくれよ。

まずは警察……しかも派出所じゃない、県警本部へ連絡を取り付ける。
UDC組織の名前もちらつかせようじゃないのさ。
そして村一帯に緊急配備を敷かせ、
数人をアタシに同行してもらいながら体育館へ入っていくよ。
堂々とカメラを構えて『撮影』しながらね。

最初こそ『コミュ力』で友好的に話しかけるけれどね、
「一体全体、何をやってたんですかい?」
と問いかけ始めたら自白をするようどんどんと『言いくるめ』る。
こりゃあ暴行と教唆の現行犯だねぇ。


波狼・拓哉
…パンドラの箱よりはマシでしたね

はい、こんばんわ?こんにちは?…まあどっちでも良いですが
そういう感情持てるのも今日が最後になるでしょう

ふらっと人々の前に出て注意を釣り上げ…村外の人ってだけで駄目なのね?まあ、どうでもいいけど

その隙に化け惑わしな、ミミック
…悪意、嘲笑ないとは言わせません
自分でも相手でもその感情があれば…まあ、この村中では無理じゃないかな
総じて世に不満は尽きまじきってね
あ、後は適当に村中刺し回ってきて

…まあ、生きてる限り続きますが
遺伝はしないんじゃない?知らないけど

さて、悪意ある有象無象は動けません
お話あるなら行ってらっしゃい、優子ちゃん
おにーさんは適当に周りを見回っておきますよ


ユナ・アンダーソン
ふぅん?分かった、連れて行ってあげる
でも、最低限のボロボロじゃ格好つかないでしょ
UCで治してあげるわ

大方、美子ちゃんが優子ちゃんを病院に入れたんでしょ
で、大人に逆らったからこうなったと
美子ちゃん、全てを話した上で優子ちゃんに謝りなさいな
そしたら、何とかしてあげる
良心こそが人を救うわ
自分を救ってあげなさい
謝ったらUCで傷を治します
その後で二人に村を出て遠い所に逃げるよう提案し説得
村に戻ってもいいことないわ
あーいう所は一度レッテルを貼られたらそれを剥がすことは不可能よ
人間二人どうにかするくらいなら出来るでしょ、多分
助け合って生きていきなさい

制裁やら何やらは他の人に任せるわ
面倒くさいしどうでもいい



 アルファとの戦闘でぼろぼろになった病院屋上で、三人の猟兵が頭を下げる優子を見下ろしていた。
 ユナ・アンダーソン(星骸のスティグマテイカ―・f02647)が真っ先に前に出る。
「…わかった、良いわ。連れて行ってあげる」
 ユナが、傷だらけの少女の身体を聖なる光で照らす。
 それは傷を奪う、他者のための光。
「でも、最低限のボロボロじゃ格好つかないでしょ」
 治してあげると、ユナが優しく微笑む。
「いや、でも…これ、貴方が!!」
 アルファに取り込まれていたころの記憶があったのか、その力の代償を知っている優子が止めようとする、だが、ユナはそれを聞き届けずに治しきってしまう。
「な、なんで、ここまで…」
 ユナの身体が悲鳴を上げる、それでも彼女は微笑みを絶やさない。
「それが、私達だから…さ、これでよし!」
 人並みに慣れた少女は、ぼろぼろと涙を流した。

「これでもう歩けるわね。じゃ、私はこの子を送っていくけど…二人はどうするの?」
 少女の頭を撫でながら、その行いを見守っていた二人の猟兵に向けユナが声を掛ける。
「任せても良いのなら、自分は少し、下準備でもしてきましょうか…それじゃお先に」
 そういうと、波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)がまず立ち去る。

「さて、美子ちゃんに会いたいんだってな…よし、わかった」
 次いで、数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)が優子の元へとしゃがみ込む。
「安心しな。あたしら猟兵ってのは物騒だが…美子ちゃんも決して悪い様にはしない。それはさっきのお兄ちゃんも一緒だ。ただ……そのためには、ちょっと村全体が大変な事になるかもしれない。それだけは、勘弁しとくれよ」
 村全体、その言葉に顔をこわばらせて、それでも優子はしっかりと頷いた。
 いい子だ、と今度は多来が彼女の頭を撫で、優子が恥ずかしそうに身悶えする。
 自分の時は優子ちゃんそんな反応しなかったのになぁ、と此方に視線を向けてくるユナを難なくスルーし、彼女も病院から立ち去った。
 ユナが、優子ちゃんへと手を差し出す。
「…それじゃ、いこっか。そのお友達の所に」
「……うんっ!」

「…パンドラの箱よりはましでしたね。反吐が出るようなものに変わりはなのでしょうが」
 体育館へ到着した拓哉が、その身をするりと紛れ込ませる。
 するり、ふらっと、自然な動作で人々の前へ出て流れるように虐められる美子の元へ。
 そのまま美子の手を掴み、抱き上げる。
 そこでようやく村人たちが気が付き、突如現れたような拓哉相手に声を荒げる。
「はい、こんばんわ?こんにちは?…まあどっちでも良いですが」
 だが、拓哉は動じない。次第に声は熱を帯び、部外者、よそ者、変質者か、泥棒か、聞くに堪えない罵声が飛ぶ。そんな村人を拓哉は感情の無い瞳で見渡した・

「賑やかですね…結構ですよ。なにせ、そういう感情持てるのも今日が最後になるでしょう……化け惑わしな、ミミック」

 まず、美子に直接的な暴力をふるっていた子供達が、気絶した。
 次いで、子供たちに何をした!といきり立った大人たちが、悲鳴を上げ全身を掻きむしり、転げまわる。
 一人また一人、倒れ伏して息も絶え絶えに苦しむ大人たち。
 下手人はこいつかと、拓哉の方に手を伸ばして、助けをこう。
 お前はいったい何者だ、いったい私たちが何をした。
「…悪意、嘲笑がないとは言わせません」
 感情も良く用もない声で、拓哉が語る。
 拓哉がミミックに命じた厳格は、悪意や嘲笑に反応し、その精神を苦しめる幻覚を見せる攻撃。
 次から次に様々な虫に姿を変えたミミックが音もなく彼らに幻覚を受け付け、地獄を見せる。
 無論、その感情が無ければそもそも幻覚を見たりはしないのだが…。
「自分でも相手でもその感情があれば…まあ、この村中では無理じゃないかな。総じて世に不満は尽きまじきってね…あぁ、大丈夫。遺伝はしませんからご安心を。貴方だけが一生苦しむだけですから」
 大人たちの顔が、絶望に染まった。

 すると、突如体育館の扉が勢いよく開かれ、中から武装した警官が突入してきた。
「警察だ!全員そこを動く…な…?」
 彼らは、外傷もなく倒れ伏す村人たちの異様さに面食らい、一人無事のままだが…要救助者の少女、美子を抱える拓哉も拘束しようと迫ってくる。
「そこの君!その子を地面におろして、ゆっくり両手を頭の後ろに」
しかし。
「あぁ、その人は関係者です。はい、組織のです……また、地味に派手なことやったねぇあんた」
 警官たちの中から現れた多喜が、彼らを制止した。
「……彼らは、多喜さんが?」
 拓哉が問いかければ、多喜はそうだと肯定する。

 あの後、一度村を離れた多喜はバイクを走らせ全速力で県警本部へと向かい、国家権力を引き連れて戻ってきたのだ。
 すでに一度警察に突き出されていた村人たちからの自白、更には猟兵に協力するUDC組織からの要請…警察が電撃的に動くのには、十分すぎる理由だった。
 その後、警官隊を引き連れ村へと取って返してきた多喜は、まず体育館へ向かっていなかった村人に、カメラ片手に観光客のふりをして接近。
 友好的で話し上手な多喜に、小達上げられ気をよくした村人はべらべらと聞いてもいないことを次々語りだし…優子を傷付けたことを、さも武勇伝のように語り、美子が今も暴力を受けていることを、さも当然のように教え、もしよければ見物して言っては?と進めてきた。
 結果、その村人は即座に御用となり、村はずれに止められたパトカーに連れていかれた。
 これを受け、即座に警官隊は周辺一帯に厳重な緊急配備を敷き、多喜と腕っぷしの警官達が体育館へ突入してきたわけなのだが…。
「手間が省けたというか…体育館の外の村人まで怖い怖い言い始めたから、何事かと警官隊を落ち着かせるのに苦労したよ…さて!こりゃあ暴行と教唆の現行犯だねぇ!警官隊の皆さん、全員お縄にしてやって!」
 言われずとも!と警官隊が次々震える村人を連行していく。
 そんな中、ユナに連れられやってきた優子が、美子へ向けて駆け出した。
 拓哉が、そっと美子を降ろしてやる。
「…もう、悪いやつらは動けません。お話あるなら、行ってらっしゃい」
 呆然と拓哉を見上げる美子に、拓哉が背中を押してやった。

「美子ちゃん…美子ちゃん、美子ちゃん!!」
「優子ちゃん…ごめんなさい、怖くて、助けられなくて…ごめんなさい…!友達でいられなくて…ごめんなさい…!」
 そんな二人を、ユナが癒す。
「大丈夫。二人は十分友達よ…だから、二人とも自分を許してあげなさい。それが難しいなら…二人でしっかり話して、気が済むまで謝りなさいな。それで、一件落着よ」
 わんわん泣き出した二人が、お互いを抱きしめながらそれぞれの思いを吐き出す。
 罪悪感も、辛かったことも、恨み節も、友情も。
 きっと、この子たちは一生の親友になれるだろう。
 そんな確信を抱きながら、猟兵達は二人を見守るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ベアトリス・アールエル
引き続き霧晴(f27987)と行動

遠くから気配を消したまま
UC「ハンズ・オブ・グロリアス」の見えない手で
美子の両親や村人を怪力で無理やり動かし
同士討ちさせ互いにしばらく暴行させる
死なない程度の骨折や流血で衰弱した後に

翼と尻尾を出した人派ドラゴニアンの姿でゆっくりと現れ
威厳と恐怖を感じさせる説得力のある言動と鋭い眼光で

「……今後、優子と美子に手を出した奴らは、あたし達が
全員今日と同じ目に合わせてやる。何年経とうともだ。
親類縁者や女子供にも容赦しない。
それだけの事をお前達はしてきたんだから、当然の事だよねえ?
いつでもお前達の事を見ている。その事を忘れるな」

優子と美子を再会させる
後はあんた達次第だよ


彼岸花・霧晴
※ベアトと共闘(f18089)

さて、仕置きの時間ですね。
ベアト、ちょっと協力お願いするです。

もう殆ど爺さんになってるとはいえ、今だUDCには私が絶世期だった頃支配してたヤクザ組織、【西日本氷華白龍会】の連中がいるです。
小さな農村なら解散したなんて知らねぇと思うですし、残ったメンバーを可能な限りかき集めてカチコミです。

優子と美子は、ウチら百龍会が病院にいるときに買ったんやで?みたいなデマ言いつつ…
おう、ウチの者こないしてくれて……どう落とし前付けるんや。あぁ?【恫喝】【威厳】【恐怖を与える】
そっから、ここらにウチらの事務所建設するから……またアホなことしたらわかっとるやろな?

……デマやけどな



「…発破の一つもかけてやろうと思ったが、必要なかったみたいだねぇ。後は、あの子達次第か」
「ですね…ではベアト、仕置きの時間です。少し協力してください」


「ひぃ、ひぃ…なんなんだ、なんなんだあいつらは!?」
 薄暗い夜の森の中、泥にまみれながら必死に走る数人の男たち。
 この男こそが、この村で少女達を傷付けていた元凶、美子の祖父であった村長と、その僅かな取り巻き打。
 常に人を見下し見下ろしてきたからか、猟兵の動きにいち早く勘づいた彼は村に伝わる抜け道を駆使し、どうにか警察の手を逃れていた。
「ふ、ふふふ…お前ら安心せい。化け物どもめ、わしは県のお偉方とも繋がっとるんじゃ。あいつらなどすぐに…」
「すぐに、なんだって?」
 後ろから、声が聞こえた。
 慌てて村長が振り返る、誰もいない…そう思った時、見えない何かが村長の後頭部を掴み、地面に叩き付けた。
「無様だねぇ。良くもまぁこんな奴の血筋から、あんな子が育ったもんだ…」
 見えない何かは、村長を立ち上がらせようとした取り巻きの手を掴み、投げ飛ばし、あるいは鈍器か何かの様に取り巻きどうしをぶつけてしまう。
 やがて、取り巻き達も村長も、息も絶え絶えとばかりに衰弱した所に…空から、龍が現れた。
 人の身体をしても、その頭には角が、その背には翼が。
 ベアトリス・アールエル(ツーヘッド・ドラゴン・f18089)が、怒りを帯びた視線を向けながら、ゆっくりと舞い降りる。
「痛いかい?あの子達が味わった痛みに比べりゃまだまだだね、大の大人が見っとも無い…」
 その怒りはまさしく龍、取り巻き達は恐怖し、されど他人全てを見下していた村長は。
「だ…黙れ!この化け物め1!わしがだれかわかっているのか、儂にはお前たちよりも何倍もえらい友人だってなぁ!!」
「おうくそ爺、そりゃあ儂らより偉いんか…姐さん、お手間を掛けさせて申し訳ねぇ。お待たせしやした」

 ベアトリスに声を掛け、ぞろぞろと現れたのはスーツに身を包んだ老人達。
「ええい、今度は何だお前たちは!!わしを誰だ…と…おい待て、貴様ら、いや、あんた方は…」
 その胸元には、一様に輝くとある組織の代紋が刻まれたバッジ。
 ヤクザじみた横暴を振るっていた村長は、そのバッジが示す存在をよく知っていた。
「西日本、氷華白龍会…!?なななななんでこんなところに!!」
「おうおう、よっく分かってるやんけ…頭、どうぞ」
 周囲を取り囲んでいた老人たちが、後ろからやってきた一人の女性へと道を開け、膝に手を突き、頭を下げる。
 その瞬間、村長は理解し、全身を青ざめさせた。
 あのバッジを付けた老人達が頭と呼び、頭を下げる、そんな女性はこの世にただ一人。
 極道社会の伝説たる彼岸花・霧晴(白氷の拳聖・f27987)その人ただ一人。
 目の前にいる女性がだれかを理解できてしまったからこそ、自分が持てるコネも何もかも通用しない相手だとようやく理解できたからこそ村長は震えあがり。
「なぁ、村長はん?」
「優子と美子は、ウチら百龍会が病院にいるときに買ったんやで?」
 絶望を、叩き付けられた。
 無論、そんな話はない。今のこの場にいる老人達も、霧晴から事情を聴いて駆けつけた【元】白龍会の構成員や幹部である。
 だがそんなこと、村長が知る由もなく…必死で目の前の霧晴に縋りつき、鳴き喚く。
「そそそ、それは大変ありがたいことで!!ええ!ええ!!!かわいいでしょう!!村の自慢ですよ!!ええ、ハイ!喜んで差し上げます是非ともかわいがって!!」
「村長はん」
 霧晴が、人を殺せるんじゃないかと言うほどに冷え切った声で村長の命乞いを切って捨てた。
「ウチの者こないしてくれて……どう落とし前付けるんや。あぁ?」
 村長は何も答えられない、答える事すら許されない。霧晴の懐から、ドがちらりと覗く。
「あぁそれから…そっから、ここらにウチらの事務所建設するから……またアホなことしたら」
 そこで割って入ったベアトリスが、村長の首根っこを片手で掴み上げ引きはがし、怪力を振るいその辺の木へ叩き付けた。
「……もう、話の途中だったんですが」
「悪い、あんまりにも見苦しくてさ……そういうわけだ。今後、優子と美子に手を出した奴らは、あたし達が全員今日と同じ目に合わせてやる。何年経とうともだ」
 取り巻き達も、漸く状況を飲み込んだか、必死に頭を地にこすりつけ始める。
 だが、龍はそんなもの歯牙にもかけない。
「親類縁者や女子供にも容赦しない。それだけの事をお前達はしてきたんだから、当然の事だよねえ?…いつでもお前達の事を見ている」
 見えない手が、村長が倒れ込んでいる木をへし折った。
「そのことを、忘れるな」


 結局、村長はこれまでの所業が警察にばれ、刑務所へ叩き込まれた。
 裁判の間も、終始何かに怯え、刑務所で匿ってくれと叫んでいたらしい。
 あの一軒の後、村から多くの村人が逮捕されたこともあり、まだまともだった若者が村を抜けいよいよ地図上から消滅を迎えそうになっているとか。
 そして、優子と美子。
 彼女達はUDC組織の支援もあり、無事に都会で学校生活を送っている。
 優子は、救済者の最後の意地か、猟兵達の思いが伝わったか。
 病弱だった体も快方に向かい、今は元気にリハビリ生活を送っている…この分で行けば、彼女は常人よりもさらに健康な人生を送れるだろうとは、彼女の担当医師の話だ。
 一緒に都会に付いてきた親友が自分に向けている視線が、最近妙な熱を帯びているというか、グラビティな雰囲気を帯びている事は若干悩みの種であるが。
 彼女は今日も生きていく、過去から卒業し、自分の未来を生きていく。
 命の蝋燭が消えかけていた少女は、猟兵の思いを忘れずに、自分を案じてくれた人たちを日々忘れずに、一番最初に自分の手を取った白い誰かの事を、たまに思い出す。
 そんな平和な日々が、これからの彼女を待っているのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月19日


挿絵イラスト