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青ざめたコスモクロア

#UDCアース #UDC-HUMAN

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 少女の瞳は特別だった。彼女の世界に色は無い。だが、その瞳は真実を曝け出す。心の言の葉を映し取る力。それはきっと、一族に大きな富を齎すものだった。その筈だった。

『さあ大事な会合だ。星玖様をお呼びしろ』
『従兄弟が見合いをするそうだ。星玖様をお呼びしろ』
『裏切り者がいた。星玖様をお呼びしろ』

 羨望、恐怖、情欲、欺瞞...視えた心は度し難く、ただ彼女は静かに真実を告げた。淡々と、だが震えを抑えながら。暴いた言葉に頷いて、少女の父は微笑むのだ。よくやったと。流石は娘だと、嗤う。

 少女の心は孤独だった。だから、付け込まれたのだ。

●ブリーフィング
「諸君、厄介な事件が起きている。UDC-HUMANの討伐兼救出任務だ」
 グリモアベースに集った猟兵達に向けて、氷川(生物学者・f20923)は今回の依頼について説明する。UDC-HUMANとは、何らかの要因で心を壊され、オブリビオンと化してしまった人間の事だ。哀しくも、彼らもまたオブリビオンである。絶対に滅ぼさなければならない存在だ。だからこそ、猟兵達は『救出』という言葉に疑問を覚えた。
「UDCは過去の怪物。その性質上、いずれも死人であり、漏れ無く執着に囚われている。一方、UDC-HUMANは生きていた人間の変異体だ。おそらく、その壊れた精神を依り代に顕現している...所謂、寄生体に近いオブリビオンだ。故に変異直後、かつ宿主がまだ死んでいなければ、UDCの消失と同時に犠牲者は解放される筈なのだよ」
 だからそう、優しく狩りたまえ。中の誰かに呼びかけて、上手く『本体』を叩くのだ。最悪倒せれば問題無いが、それでも配慮は必要だろう。

「だが、事はそう簡単にいかなくてな。これは人為的に生み出された悪意なのだよ」
 背後のスクリーンに映像が映し出される。今回の作戦場所の映像だ。立派な日本の御屋敷。由緒正しい、古い家のものだろう。だが...その静謐とした木造の空間に、不釣り合いな『青』が跋扈していた。ローブを纏った青い集団が一心不乱に祈っている。その妄執の向けられた先に、きっと彼女がいるのだろう。今まさに世界に産み落とされた邪神が、その眼を開こうとしているのだ。

「『青の教団』の糞共め!奴らの目的は不明だが、人々をUDCに変えているようだ...今回の事件もその一環だろう。胸糞悪い話だ。よって、UDC組織は狂信者共への『制裁』を決定した。UDC-HUMANの救出後、其方の任務にも参加してもらいたい」
 つい先ほど特定された教団のアジト。街中の喧騒に忘れさられた、廃墟の病院が奴らの根城だ。
「オブリビオンと化している信者は、勿論殺すべきだろう。だがアジトにいる者達は一応まだ人間らしくてな。曰く、まだ洗礼を受けていないとか...か弱い少女の心を壊した紛う事なき屑だがな」
 信者の中には、恵まれない境遇の者達が多いらしい。が、だからと言って他者を陥れる道理は無い。故に、思う存分やりたまえ。ただし、死なない程度にだが。
「纏めよう。要は怪物と化した少女を救い、屑共を『更生』してくれ。難しい任務だが、貴殿らならば出来ると信じているぞ。それでは、健闘を祈る」

 優しい笛の音が木霊して、黒き刀は血に染まる。物言わぬ骸の海をただ、少女は漠然と眺めていた。貴女の恨みを晴らしてあげるわ。甘い言葉に絆されずして、心は既に死んでいたから。だからそう、私は生きていない。この頬を伝う感触も、きっと幻なのだから。


ウルフパック
 ウルフパックと申します。
 UDC-HUMANを倒し、その元凶を懲らしめてください。
 彼女との戦闘では、事情を踏まえた説得や、中にいる筈の本体を攻撃しないような配慮はプレイングボーナスの対象となります。
 後は教団の末端構成員を好きに料理してください。

 それでは皆さんのプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『青の信者』

POW   :    「祈りを……」
自身が装備する【儀礼ナイフ】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
SPD   :    「祝福を……」
【まるで啓示が降りてきたかの様に】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    献身
【儀礼ナイフを突き刺した後、青の従者】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 件の屋敷へ赴いた。映像で見たとおり、中では狂信者達が占拠しているのだろう。正面から暴れようか、ならその隙に影から獲物を狩ろう。猟兵達が話し合う。
 君ならばどうする?
波狼・拓哉
こんばんは?こんにちは?…まあどっちでも変わりはないので取り敢えずさようならで

相対と共にミミックを投擲
さあ、化け焦がしな…!予測?掲示?…その程度で避けれるとでも?
まあ、病院も巻き込むでしょうけどこんな所残しておいても仕方ないので丁度いいでしょう
…全焼だけしないように見張っときますか
あ、味方は気を付けてね、ミミックさん無差別なので

自分は衝撃波込めた弾でミミックの炎から逃れようとしてるものを撃ち戻してやりましょうか

さて、ゴミ掃除は一旦止めて…ただの被害者を救いに行きますか
…堕ち切ってないのならなんとかなるでしょう多分
(アドリブ絡み歓迎)



 炎とは導だ。相棒だ。健啖家だ。そして焦げつく災厄だ。

●誰かを救う為に
 さあ、化け焦がしなミミック。全てを焼き尽くせ。波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)は、黒い多面体を建物へ投げ入れた。すると、周囲一帯の空間が揺らぎ始める。そして、中央から熱波の嵐が吹き荒れた。
「りょ、猟兵!?馬鹿な...啓示は!?」
「こんばんは?こんにちは?ああ、うん...さようなら」
 どっちでも変わらない。どうせ彼らは此処で死ぬのだ。啓示とやらがあったとしても、炎と化した『ミミック』からは逃げられないだろう。
「ぐぁあぁ...!熱い...!あぁ...」
 衝撃波を込めた弾丸を放ち、逃げてきた狂信者を炎へ押し込める。良い具合に焼けたようで『ミミック』も楽しそうだ。
「あ、こら待て。食って良いのは此処だけだぞ...全焼もなしだ」
 危うく、近くの別の建物に火の手が向かおうとして慌てて止める...辛うじて言う事を聞いてくれた様だが、不満げな感情が伝わってきた。落ち着きな、此処に仲間はいないんだ。暴れ放題だぞ?
「ーーグォオオオオ!!!」
 だが、事は簡単にはいかない。炎の中を突っ切って、何かが拓哉の元へ向かってくるではないか。身体は焼け焦げ黒々としているが、その人間ではない人型の何かに、彼は見覚えがあった。
「『青の従者』か...!」
 件の教団が作り出した人造生命。兵器であり砦を守る要だ。アジトで待機していた個体だろうか。今回は一撃では葬れなかったか。ならば、死ぬまで弾丸を叩き込むまで。拓哉は覚悟を決め、迫り来る脅威に立ち向かうべく、バレッフとノットを構えた。
 彼には為すべき事がある。救わねばならない誰かがいる。堕ちていなければ、まだ間に合うはずだから。彼は全て焦がすのだ。

 続々と猟兵達が作戦場所へと集まってくる。ターゲットは見当たらない。きっと、屋敷の奥にいるのだろう。『青の教団』に占拠された彼女の住まいを、夜の静けさが支配する。青々とした月の光に見守られ、信者達は祈るのだ。真摯に、世界が聖なる青に包まれるようにと...
 だが、彼らの祈りは届かなかったようだ。
「襲撃だ!」
 信者の誰かが叫んだ。
「やはり来たか。啓示通りだな。恐れるな、我らは此処で新たな同胞を守るのだ」
 だが、伝令を告げた信者の顔には焦りが見えた。予想外のことが起きたと。
「此処じゃない!『教会』だ!」
 これを聞いて驚いたのは、まだオブリビオン化していない者達だった。なまじっか理性が存在していた彼ら。『教会』に友人や家族が留まっていることを知っていては、統率が乱れるのは必然だった。一体誰が彼らの拠点に攻め入ったのか。そう、貴方だ。










 彼らの言う『教会』とは古い廃墟...恐らく病院だったのだろう。それを改築したものだ。個室は彼らの住居であり、地下には『蒼の王』の祭壇が安置されている。
「ハァ...ハァ...!」
 女が走っている。腕には子供を抱えているようだ。何から逃げているのか?炎だ。まるで生き物の様にうねりながら、火の手は全てを呑み込んでいく。
「此処なら...良い?絶対出てきてはダメよ。何も聞こえなくなるまで、絶対...」
「おかあ...さん...」
 火災探知機、その下の消火栓の為の小さなスペース。幸か不幸か、発育の良くなかった息子を隠すには丁度良い大きさだった。固く閉ざし、扉にナイフでサインを残す。きっと助けに来た仲間達が、見つけ出してくれるはずだ。
「ごめんね...」
 そして、女は儀礼用のナイフを逆手に持つと...

 自らの首を貫いた。献身は変質し、その肉を膨れ上がらせる。歪で醜い爛れた巨体、それが教団の『取って置き』だった。
「ーーグォオオオオ!!!」
 守るべき者がある。迎え撃たなければならない災厄がある。彼らは『制裁』されなければならなかった。だが、それは死をもってなすべきことではなかったのだ。

 願わくば、新たなオブリビオンが生まれないことを私は祈っている。

成功 🔵​🔵​🔴​

ロバート・ブレイズ
同族嫌悪――俺が告げるべき言の葉は『その』一に過ぎぬ
自身に『寄生体』を埋め込み、巨躯たる怪物に変貌する
青の従者たる貴様等ならば似て非なると解く事だが
兎角――奴等が啓示を受けるならば、決して躱せない攻撃を叩き込めば好い。大きいは強い――その手を握り締めて叩き付け、絶命するまで殴り続ける
その際、情報収集で周囲を改め、袋小路になるよう『寄生体』が肉を動かす
悪魔の奴隷が『従う』と思うのならば大間違いだ

――祝福せよ
「何も理性を飛ばし、自らを殺す必要はない。勿体ない術を掴んだものだ――否定とは数多を巻き込まねば無碍と知れ。クカカッ――!」



 彼らにとって、否定とは己の矮小さを嘆く過程である。


 古来より、人々は地響きを神の言葉と捉えられた。邪智暴虐に呆れた主の叱責とも、或いは悲しみに暮れる女神の嗚咽とも。
 ーーグシャリ
 故に、これは決して神の啓示ではない。我々に向けられる筈の善なる意志など微塵も感じない。いや、理解するなど烏滸がましい!
「...ヒッ!?」
 ゆっくりと持ち上げられる大きな支柱...否、これは拳だ。黒い触手を巻きつけた怪物の腕。その下に間るのはハラカラだったナニか達。砕かれた瓦の雨が、挽き潰された肉片へと降り注ぐ。飛び散った血溜りの上を、人間の眼球が転がってきた。
「ーーッ!」
 襖を閉じ、手で口を塞いだ。が、指の間からは、僅かに息が漏れ出てくる。ヒュー、ヒュー、と。これが理性の捻れる音か...震えが、止まらない...
『こ、こいつを通すな!従者を呼べ!』
『アア...神よ...!』
 暗闇から声が聞こえる。味方を鼓舞する声、援軍を呼ぶ声。奮起の音だ。
 そして、その全てが一瞬にして途切れた。悲鳴もない。あるのは地響きと、纏わり付くような水の音。
 そして、荒々しい息遣いだけだった。

 幾許かの静寂が続き、男はとうとう外へ出る。
 恐る恐る戸を開くと、押し入れの中へ咽せ返る様な血の臭いが充満した。天井に開いた大きな穴から月が臨む。青々とした美しい月光が、骸の海を照らしていた。
「皆んな...死んでしまった...」
 自然と涙が流れた。それは道半ばで倒れた同胞達への手向けか、それとも独り逃げ出した呵責からか。
「聖なる青よ、見守りたまえ。死した彼らを祝福したまえ...」
 ナイフを握り、腕を組む。満月を見上げ、男は祈りを捧げた。我らは蒼の信徒。この身は朽ちれど、魂は死なず。あわよくば、別の戦場で再び出会える事を。



 目が合った。



 見つめられた。



 見つかった。



 否、アレは分かっていたのだ。己がいるのを。殺さなかったのは、面倒だったからだ。纏めて潰すには、離れた場所にいたから。ただ、それだけだったのだ。
「ハ...ハハ...」
 自分は今、何に祈った?あの『月』にか?自分はアレを『美しい』と思ったのか?...あの『バケモノ』の青白い瞳を!
「ハハハハハハ!!」
 何と滑稽だろうか!全ては偽物だったのだ!今まで自分が見てきた物も!この血も、肉も、魂さえも、全て偽物だったのか!何もかもが、あやふやで、確かなものなどありはしない!
 男は狂い、嗤う。もう終わりにしよう!苦しいのは懲り懲りだったのだ!ナイフを逆手に持ち、さあいざ喉元を貫かん。
 しかし、その手は動かなかった。
『何も理性を飛ばし、自らを殺す必要はない。勿体ない術を掴んだものだ...否定とは数多を巻き込まねば無碍と知れ』
 クカカッ――!と、冒涜王(f00135)が嗤い、見下す。
 脳髄に言の葉が突き刺さる。怪物の告げた『否定』は、男の精神を安々と呑み込んだ。

 ああ、気づいた真実さえ独り善がりであり、理想は稚拙な癇癪に過ぎなかった。

 この狂気でさえ紛い物であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エリー・マイヤー(サポート)
どうもエリーです。
手が必要そうなので、手を貸しに来ました。
【念動力】で解決できる事なら、お任せください。

とりあえずバリア張りつつ、
【TK-B】で衝撃波ぶち込んだり、
【TK-G】で敵を纏めて掴んで振り回したり、
【TK-J】で周囲の敵を串刺しにしたりもできますよ。
後は物を動かしてバリケード作ったり、
砂を動かして目くらましにしたり、
本棚を動かして敵を潰したり…
まぁ、環境に応じてどうとでもって感じですね。
飛び道具を持たない敵なら、
持ち上げて無力化したりもできますよ。
【アルジャーノンエフェクト】は、瞬間風速が欲しい時にでも。

えっ、殴り合いですか?
そういう野蛮なのはちょっと…



 無知は恐ろしい。知らぬが仏と言うなかれ。

●スマートな仕事
 荒事は好かない。血も出る。服も汚れる。何より野蛮ではないか。故に、
「なっ!?猟兵か...ガァ!?」
 シー、静かに。意識を刈り取った狂信者を素早く天井裏へと隠す。危うく気付かれる所だった。
(さようなら)
 指揮官らしき男の首を捻り、絶命たらしめる。勿論、手は使わない。疲れるし、そもそもそんな筋力は無い。
(次へ行きましょうか)
 エリー・マイヤー(被造物・f29376)は再び天井裏を忍び歩く。気づかれない様に獲物を探す。
 荒事は好かない。故に、念動力こそが一番ベストな選択なのだ。

 外の喧騒が響く。他の猟兵達だろう。奴らとの戦いは激しさを増している様だ。此処はUDCアースの日本屋敷。全てが荒れ果てたアポカリプスヘルとは違う『綺麗』な世界だ。空気は澄み、不意な嵐とは無縁の土地。だが、それでも此処で生きる人々のやることは大して変わらない。日々の生活の為に身を削り、必死に今日を生きている。違うのは、世界の闇が表に顔を出しているか否かだ。
「ヒッ!や、やめて...殺さないで...」
 エリーの目の前で蹲る女。天井裏の誰も気づかない様な場所でひっそりと隠れていた彼女は...『人間』か?それとも『オブリビオン』?
「...」
 猟兵という存在を知っているかどうかすら怪しい。エリーは顔色を変えずに熟考する。しかし、その沈黙は女に必要以上の恐怖を与えるのに十分だった。
「誰か助け...ッ!」
 その口を念力で塞ぐ。暴れようとする手足も縛る。首だけを動ける様にする。
「私の質問にだけ答えて。YESなら縦に、NOなら横に首を振りなさい」
 女は激しく首を縦に振った。単刀直入に聞く。実際、これが一番手っ取り早いのだ。
「貴女、死んだ事は?」
 女は首を傾げた。
「...なら、もう洗礼は済ませた?」
 女は首を横に振った。
「そうですか...では、もう用済みですね」
「...ッ!」
 首に強い圧迫感を感じる。待ってくれ!と口を動かそうとして、女の意識は無くなった。ああ、やはり彼女は知らなかったのだ。彼女のいる教団が、洗礼と称して人間をオブリビオンに、つまり殺していることを彼女は知らなかったのだ。

 仕事を終え、エリーは館を後にした。やっとだ...寂しくなった口元に、最愛の人を連れ戻す。
「ふぅ...」
 煙草だ。彼女お手製の特別な代物。空気を汚染する大変有害な物質を肺一杯に溜め込んで、少ない量の煙を吐き出した。あまりに有害故、外へ出すのは憚られたのだ。
 今日殺した相手は、無知故に殺された人間達だった。だから、静かに、意識を奪い、殺した。無駄に苦しめるのもどうかと思うし、ただ面倒だったからかもしれない。そう、彼らは知らない。自分達が如何に恵まれているのかを。知らないのだ。この不浄な空気も、臭いも、味も。自分の様に、新鮮な空気を吸えない者もいるという事を、きっと知らずに生きていくのだ。そして死ぬ。どうしてそれを踏みにじる?どうしてオブリビオンに組した?どうして...
 無知でいられなかった?
「少しアンニュイになってしまいましたね...」
 もう一度煙を吸い、吐き出す。考えていても仕方ない。らしくもない。オブリビオンは殺す。仕事を熟す。それだけだ。
 さて、目を逸らしていた現実に向き直ろうか。

 このお目出度い奴の処遇を考えよう。起こしたとして、また暴れられるのも厄介だ。連れ出してやった手前、放って置くのも気が引ける。
 ああ、まだ仕事終わりの一杯はお預けなのか。

成功 🔵​🔵​🔴​

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

……テメェら。
ヒトであるのを捨てるって事が、
オブリビオンになるってのがどういう事なのか。
解ってこんなバカな真似をしてるんだろうな?
その末路がどうなるのか、分かってるのか!?
……いや、違うか。
もう「なっちまった」奴らもいるのかよ……チクショウが。
せめて被害を減らさねぇと!

真正面からカブに乗ったままぶちかまし、
奴らにアタシの存在を見せつける。
そうだ、生きている存在だ。
そうして『挑発』するように注目を『おびき寄せ』、
電撃の『属性攻撃』で『範囲攻撃』しながら大立ち回りさ。
その中で『戦闘知識』からオブリビオンと化した奴を見分け、
弔いの聖句を唱え上げ。
【黄泉送る檻】で葬るよ!


ダスク・ドーン(サポート)

煮るなり焼くなり。
人数穴埋めから不採用まで幅広くお使いください。
キャラの扱いはアドリブでも何でもお好きにお願いします。
口調は適当なので細かいとこは気にしない。

ただし、
他の猟兵に迷惑をかける行為や公序良俗に反する行動はしません。


『また日が沈むな』
人間のフォースナイト × スカイダンサー
年齢 27歳 男
特徴 面倒見がいい くーる 女性が好き とんでもない甘党
口調 やわらか(自分、相手の名前+ちゃん、ぜ、だぜ、じゃん、じゃねぇの? )


戦闘ならいずれかのフォースブレイドを使用。
シンプルな正面勝負を好む。

冒険や日常は……、
うむ、メンドウだな。
(テンション低くても仕事はきちんとやります)



●生者は生者らしく、死者は死者らしく斯くあるべし
 エンジン音を掻き鳴らし、門を突き破る者がいた。数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)、宇宙バイク乗りだ。
「猟兵か!?」
「神よ!我らを守りたまえ!」
 多喜を取り囲む様に『青の信者』が集まってくる。彼女は激怒していた。『青の信者』は何れも元人間である。自らオブリビオンになる事を選んだ者、又は知らずにオブリビオンとされた者達だ...つまり、下衆と被害者達。
「...テメェら、ヒトであるのを捨てるって事が、オブリビオンになるってのがどういう事なのか。解ってこんなバカな真似をしてるんだろうな?」
 彼らの反応は様々だった。其方こそ何も分かっていないと毅然な態度の者も居れば、オブリビオンという言葉すら理解できていない者もいる様だった。
 多喜は、今までの戦いの経験から、ある程度はアブリビオンという存在の『臭い』を知っていた。故に、周囲を取り囲む信者達の中に、まだ「なっていない」者達がいる事を察した。敵側も、意図的に彼らを配置しているのだろう...良識のある猟兵への人質としてだ。
(...チクショウが。せめて被害は減らさねぇと)
 こんな事をしている奴らだが、それでもまだ死んでいない。ならまだやり直せる筈だ。ならば、倒すべきなのは「なっちまった」奴らだろう。
「オイ、お前!」
「な、なんだ!?」
 不器用にナイフを構えていた男に呼びかける。こいつは『人間』だ。
「オブリビオンになった奴は...最後どうなるのか、分かってるのか!?」
「オブリビオン?そ、それは...苦しみから解放されて...」
「ちげぇよ...お前も薄々分かってたんじゃねぇのか?そんなもんはねえって事をさ」
 男の顔から動揺が見て取れた。他の何人かも同じ反応だ。きっと、信仰心なんてあったもんじゃないのだろう。ただ、何かに縋りたかった哀れな人々なのだ。
「お前達!奴に耳を貸すな!蒼の王の怨敵ぞ!」
 『オブリビオン』が檄を飛ばす。慌てて突貫してきた『人間』達を、跨るカブをドリフトすることで死なない程度に吹き飛ばす。
「どうしたぁ?かかって来い!」 
「おのれ...猟兵め...!」
 そうだ、憎め。お前達に残っているのはそれだけだ。あたしら生者を憎むのは、お前達だと相場が決まっているだろう?
 多喜はそのまま、感ずかれない様に彼らを外へ誘導していった。取り残されたのは、意気消沈した『人間』達だけである。いや、彼らは実際落ち込んでいたわけではない。多喜が見せつけた、所謂『生きている』という感覚に、僅かながらも感銘を受けたのだ。正に、生者の特権であるそれを、失くした筈のそれを、多少は感じ取れたのだ。



 女がオブリビオンを引き連れている。数は、ざっと十体程か。連絡にあった『青の信者』だろうが、最早その姿は人間とは程遠い。自らに儀式剣を突き刺して、肉の怪物『青の従者』と化した彼らは、よっぽどあの原付乗りが憎いのだろう。死に物狂いで追いかけて、彼らの速度が増している。助けなければ...屋根から飛び降り、彼女と並走する。
「手を貸そう」
「ああ、助かる!」
 当たり前だ、レディは助けるものだろう?それにお互い猟兵だと直ぐに分かった。なら助け合うのもまた、当たり前の事だ。
「何が必要だ?」
「少し時間を稼いでくれ!」
「お安い御用だ」
 オーダーは時間稼ぎ。彼女は運が良かった。彼はその手のサポートには心得があった。
 『青の従者』達と女の間に、一人の男が立ち塞がった。だが、従者達は止まらない。男の横を素通りし、そのまま女に襲いかかる。

 一閃、眩い白が足元を照らす。その背後で、従者の豪脚は斬り飛ばされた。
「グォオオオ!!」
「お前達の相手はこっちだ、バケモノ」
 怒れる怪物達が彼に襲いかかる。今度は赤だ。炎の様な煌きを振るい、正面の従者達を纏めて水平に焼き切る。まだ足りない、今度は黒だ。夜の様に暗い刃を、真横の従者へと突き刺した。
「グ、ガァア...!」
 暫くして、周囲のフォースの揺らぎを感じ始めた。辺りの空気を電流が巡る。雷だ。雷が来るぞ。きっと、彼女の取って置きだ。時間稼ぎはこの為だったのだろう。
「二ガァ...サナイ...!」
「逃げられないのは、お前達の方だぜ?」
 背後から詠唱が聞こえる...灰は灰に、塵は塵に、過去は過去へと帰るがいい。差し詰め、これはオブリビオンへ向けた鎮魂歌だ。
 男は、トドメとばかりに氷の様な青い刃を引きながら振るう。怪物達の動きが鈍いものに変わった。

 そして、その絶妙なタイミングで、女はその力を解き放った。
「収束せよ!サイキネティック・プリズン!」
 轟音と共に、地面の下から雷が『落ちてくる』。その何れもが青の従者達を縛り、捕らえた。動く彼らを焦がす檻。急ごしらえの火葬場だ。最早追う事も、逃げる事も出来ない。全てから逃げようとした、彼らへの最後の罰だ。



 塵となり、空へと帰っていく過去の怪物達。それを眺めながら、男が言った。
「そういえば、まだ名乗って無かったな。ダスク・ドーン(人間のフォースナイト・f13904)だ。お嬢さんは?」
「あたしは数宮・多喜だ。助かったよ」
 ダスクの差し出した手を、多喜はしっかりと握り返した。

 こうやって、誰かと出会い、助け合う。仲間と健闘を称え合う。その機会を捨てるなど、何とも悲しいと思わんかね。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『セクスティーリス』

POW   :    目障りだわ
自身が装備する【黒刀】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
SPD   :    吹くだけが能じゃないわ
【尺八】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
WIZ   :    起きなさい魑魅魍魎達
自身の創造物に生命を与える。身長・繁殖力・硬度・寿命・筋力・知性のどれか一種を「人間以上」にできる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は満月・双葉です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 屋敷は崩壊したが、奇妙にもまだ無事な部屋が存在していた。大広間。畳と襖で構築された、只々大きいだけの空間は今、老若男女様々な遺体で埋め尽くされていた。
 その中心で、佇む少女。星玖...いや、セクスティーリスだ。彼女は、一人で静かに尺八を吹いている。

 初めて吹いた笛の音は、美しく、そして儚げだった。
 父が褒めてくれた...目以外で褒められた、初めての事だった。
 だからだろう。折れた其れを見た時に、遂に箍が外れてしまった。
 隙間を無理やり埋められて、私は心を黒く閉ざした。
 それが仕組まれた事だとしても、私に知る由は無かったのだ。
波狼・拓哉
(拍手しながら近づく)
良い音色ですね、儚くて…褒められるのも分かるものです

まあ、心が死ぬというのも状況が悪かったとしか言えませんね
他人の真を見抜いて欲しいなどいい感情持ってる奴がやることではありません
まあ、それに人の感情なんで一瞬で移り変わりますし…変わったタイミングの感情こそその人の持つ感情でしょうよ
…それこそ笛の音を聞いてとかね

んじゃミミック、化け燻しな?
閉ざされた部分だけ削り取ってやりましょう…なに、薄くなれば声も通りやすくなるでしょう

自分は衝撃波込めた弾で適当に魑魅魍魎たちを撃ち貫いてサポートに
戦闘知識、第六感、地形の利用で上手い事立ち回って救い出しましょう

(アドリブ絡み歓迎)


数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

笛の音……か。
アタシにゃ音の良し悪しまで分からねぇけどさ。
その笛の音、悲しいな。
そうさ、心が視えるってのは……
見なくてもいい物まで見てしまうもんな
それがどれだけ辛いかは……アタシも、分かっちまうんだよ。
星玖さん、アタシはアンタと同じさ。
ほんのちょっと、よそ様より「感じ取れちまう」。
でも、だからこそ……寄り添えるんだ。

打ち据えられる尺八を『グラップル』で抑え込みながら、
テレパスの思念を『手をつなぐ』ように同調させる。
過去に「視てきた」であろう醜い思念達を前に、
義憤をもって相対しつつも『優しさ』を込めた言葉で
星玖さんを『鼓舞』するよ。

大丈夫。アンタは、一人じゃないよ。



 彼女が覚えていたのは、人間の悍しさと、青ざめた自分の顔だけだった。

●血塗られた情景
 尺八の音だ。美しい、そしてしっとりとした音色は、古い木の壁へと染み入り木霊する。ああ、だがきっと...この曲には何かが足りていない。春の海を思わすこの笛には、必ず誰かが側に居なければならないのだ。故に、
「儚くて、良い音色ですね」
 そう、儚い。そう言い表したのは波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)だ。彼女のいる大広間に侵入した猟兵の内の一人。笛の音が止まる。
「ああ、そうだな」
 まあ自分には音の良し悪しまでは分からないが、と付け加えて。賛同するのは、数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)だ。
「でも...その笛の音、悲しいな」
 多喜はセクスティーリスに話しかける。
「...知った様な口を利かないで貰いたいわ」
 その言葉は、彼女の琴線に触れたのだろう。彼女にとって、『全てを終えた自分』の笛が、悲しげと言われるのは気に触るのだ。
「分かるさ。心が視えるってのは...見なくてもいい物まで見てしまうもんな。それがどれだけ辛いかは...アタシも、分かっちまうんだよ」
 アタシもアンタと同じさ。よそ様のあれ其れを、否応なしにも感じ取れちまう。
「でも、だからこそ...寄り添えるんだ」
 そう言い、多喜は彼女に手を差し出す。この手を取ってくれと。
 そして、多喜は大きく後ろへと飛んだ。彼女に居た畳には、黒い漆黒の刀身が突き刺さっていたのだ。
「説得は失敗ですね」
 拓哉は二丁拳銃をオブリビオンへと向ける。交渉は決裂だ。今こそ、左腕の多面体生命体を開放する時だろう。

 自分を見つめる彼らを見て、セクスティーリスは思う。何故、彼女はまだ武器を構えないのか。何故、人間の血で赤く染まった自分を斬らないのかと。だから、彼女は彼らをよく見ることにした。

 男に見えたのは『黒』だ。酷く何かに汚染された様な、全てを飲み込まんとする悪食の狂気。だが、その触手の様な冒涜は、心の奥底にある何かに執着し、纏わりついている様だった。光だ。
 盲信的な希望。故に、男は彼女をまだ救えると漠然と信じている。

 女に見えたのは、『暖かさ』だった。訴えかける様な『同情』。その感情の稲妻が、迸る。
 自分は乗り越えたつもりだ。だからアンタもできるはずだ、と。

「...ああ...本当に目障りだわ」
 特に女だ。拒絶の意図は分かったはずだ。何故諦めない!死んだはずの心に再び何かが灯る。怒りだ。
「うんざりなのよ、貴方の様な人は!」
 セクスティーリスは、召喚した幾本もの黒刀を、多喜に向けて放つ。憎悪が塗り固まれた弾丸だ。
「させるか!化け燻しなミミック。何もかもを抉りとれ!」
 彼女を守る様に躍り出たのは、拓哉のミミック。文字通り何にでも化ける怪物だ。その姿を煙へと変え、放たれた黒刀を削り食らった。触れた全てを摩耗させる粉塵は、大きく、そして捉え所がない。本質を見るセクスティーリスの目は、大きな獣が刀身を喰らう様を捉えただろう。
 そして、全ての刀身がなくなると同時に、

 手に稲妻を携えた多喜が、突貫した。

「...!?」
 意思を持った煙が道を譲り、飛び出してきた彼女に対し、セクスティーリスは手元の尺八を叩きつける。無造作に扱われる、だがきっと大事な過去を造作もなく。故に、多喜はあれが彼女の『本体』なのだろうと予想していた。
「大丈夫。アンタは、一人じゃないよ...そこにいるんだろ?」
 多喜は、打ち据えられた尺八を受け止め、握りしめる...骨の折れる音がしたが、この手を離すわけにはいかないのだ。
「...何だこれは!?やめろ!!」
 セクスティーリスが苦しみだす。多喜が彼女に打つけ今なお流し込んでいるのは、過去を拐う波だ。見失った自己を見つけ、そして見つめ直す為のもの。まだUDC-HUMANに成り立てのセクスティーリスとって、これは本体を目覚めさせる技となる。
「やめろと...言っている!!」
 再び展開される二振りの黒刀を、多喜に無手で振り下ろす。

 ガキンッと金属同士が打ち合い、砕ける音。攻撃を見切った拓哉が、その二丁拳銃を以って刀身を撃ち抜いたのだ。
 彼女にはその光景が、あの割られた尺八の姿と重なった。

「...やめろ...やめて!」
 多喜の流し込む思念波が勢いを増す。もう少しで、彼女が目覚める。だが、何かが足りない。そう、何か楽しげな記憶。その切っ掛けでもいい。
「アンタにだって、嬉しかった事はあっただろう!?その尺八だって、アンタの父親が褒めてくれたから頑張ってたんだろう!?」
 セクスティーリスは思い出す。だが、彼女は知っているつもりだ。その時の父の心はただ、嗤っていた。嘲笑っていたのだ。
「他人の真を見抜いて欲しいなど、いい感情持ってる奴がやることではありません」
 再び生成された黒刀を撃ちながら、拓哉は言う。彼女の父親は外道だ。だが、それでもきっと、人間の心が故に。
「それでも、人の感情なんで一瞬で移り変わりますし...変わったタイミングの感情こそ、その人の持つ感情でしょうよ」
 あの一瞬で。
「...それこそ笛の音を聞いてとかね」
 自分の目が捉える前、ほんの少しの間、父が心の底から称賛していてくれたかもしれない。そんな盲信的な希望。

「嫌だ...そんなのって...」
 彼女が見つめるのは、傍で横たわった父の遺体だ。もし、本当にそうだったならば...

『なんて哀れな最後だろうか』

 彼女の心は起きた。だが、戦いはまだ続くのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロバート・ブレイズ
「随分と――嗚呼。私を酷く打ち付けた『正気』に違いない。屑も被害者も確かに『人間的』で如何に地獄を起こしても『根底』は覆り難い――目覚めよ暗黒。我々はおぞましい既知だ。滅びさらねば成らぬ」
魑魅魍魎を起こしても『貴様』は哀れにも正気だろう――そう思わせた時点で神(それ)は這いウネル――速やかに去ね。創造された程度の人間以上が
魑魅魍魎を暗黒神で振り払いながら対象に近付き『正気固定機』を押し付ける。元の『次元』に戻るのだ
「我々は忌むべき隣人だ。相応に生きるのが――呵呵。成程。莫迦らしい台詞は不要か。容赦を知らず手繰れば好い」
糸で捕縛し動きを止める

お話の時間だ



 理解できなかった。理解できるはずもない。

●ひび割れた翡翠色
 彼女の瞳は真実を見る。心中で呟いた言葉、隠された本心を顕にする。だからだろう。『彼』を見た時、セクスティーリスは見た。否、見てしまったのだ。

 それは名状し難い何か。敢えて言うならば色。宇宙の色だ。その一つ一つが蠢き、そして混ざり合う様は、見ているだけで精神を擦り減らす。そしてその全てが、こちらを観察しているのだ。
『...!...うおぇ!』
 故に吐いた。セクスティーリスはオブリビオンだ。だが、まだ成り立てであり、彼女の何処かには救うべき少女が確かにいる。辛うじて人間性が存在しているのだ。だから、彼女はロバート・ブレイズ(冒涜翁・f00135)という存在を、そこらの有象無象の人間達と同じ様に『否定』した。
「随分とーー嗚呼。私を酷く打ち付けた『正気』に違いない。屑も被害者も確かに『人間的』で如何に地獄を起こしても『根底』は覆り難い」
 蹲った女を見下ろす。内の少女へと語りかけ、クカカッと嗤った。その言葉の意図が優しさか、厳しさか、嘲笑なのか...我々にとっては埒外な話だ。ただ汲み取れるのは、彼女も、そして彼女の父も『正気』であった。『人間的』であった。彼女が幾ら死体を並べようとも、狂った怪物には至らないのだ。今は、だが。

 ーー目覚めよ暗黒。我々はおぞましい既知だ。滅びさらねば成らぬ。

 『彼』は本を開き、そして閉じる。言わば少女は彼の著書の牧師であり、オブリビオンはあの魚顔の女なのだ。日常を、悪意が飲み込む。その末路は悲惨なものだ...侵略した誰かは、される側の気分を知るべきだろう。
「全く、目障りだわ」『...イヤ...来ないで!』
 少女の声が、重なって聞こえる。そして彼女を覆う空間、闇から何かが蠢き、這い出てくる。見るものを悍しい狂気へと誘う、正気を貪る、『彼』が呼んだ怪物だ。
「何の望みも持たないなんて...」『アア...アア...!?』
 オブリビオンが呟く。何の知性も無く、ただ邪悪であるが故の彼らを哀れに思った。そして、蠢く彼らを群ごと刀で切り裂いた。だが、その数が減ることはない。内で泣きじゃくる彼女にとって、迫りくる狂気は恐怖でしかない。故に、『正気』の彼女を貪るべく、怪物達は現れ続ける。そして、いつか隙が出来るのは必然だった。そのいつかが来た。

 正気固定機、自らの正気を固定する小型の機械を、『彼』は少女の額へと押し付けた。
「ガァアアアア!?」『ああ...!助けて...』
 セクスティーリスが再び蹲る。その瞳の左半分に、翡翠本来の色が現れる。そしてもう片方に、罅が、亀裂が入った。
「我々は忌むべき隣人だ。相応に生きるのが――」
 だが、その嗚咽は不意に止む。獣の様な咆哮...否、悲鳴を上げ、オブリビオンが手にした尺八を『彼』へと打ち据えたのだ。
「呵呵。成程。莫迦らしい台詞は不要か。容赦を知らず手繰れば好い」
 闘いは続く。だが、着実に終わりへと近づいている。

 最後に叫んだのは彼女か、或いは邪神か。それが分かるのは『彼』だけだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ダスク・ドーン
いろいろおまかせ

乗りかかった舟だ、もうちょい付き合うか。

笛ねぇ。
笛が好きってことなのか。
それとも本当は自分を見てもらいたいのに道具に頼るしかなかったんかね?
平和に説得出来ればそれに越したことはないが、
お茶もなしにのんびりおしゃべりってわけにゃいかんだろ。
ちょいと強引にいっとくか。

フォースセイバー二刀の構え。
まずは【運命の一撃!】で仕掛ける。
当たっても怪我はないが心は痛むぞ、歯食いしばれ!
星玖本人の意思がどこかに残ってるなら未来が見えるだろう。
「悪いが俺は『笛』には興味ない。連れて帰りたいのは『本人』だけだぜ?」

本人が見つかればそれ以外の部分に用はない。
そっちにはきっちり追撃をいれてやる。



●この刃は未来を切り拓くために
 猟兵達との戦いで傷つき、セクスティーリスは膝をついた。討伐は間も無くだろう。だが、此処からが肝心だ。トドメを刺せば、問題なく邪神と成っていた少女は復活するだろう...『本体』へのダメージが少なければの話だが。
「...分かるわ、貴方達の狙いが...まだ少女を救おうとしているのね?」
 そう呟いて、セクスティーリスはその口元を歪ませた。彼女は、その瞳で猟兵達の心を読み取った。焦りと、そして不安。彼らは未だ迷っていたのだ。斬れば少女は血を流し、撃てば少女に銃創が穿たれた。その様は、彼らの信じる未来を疑わせるのには十分だった。
「...貴方達は『少女』が何処にいるか分からない...そうよね?」
 この瞳だろうか、刀か、或いは笛か?彼らは何れを『本体』だと思って戦っていたのだろうか。猟兵達の考えはバラバラだった。
「...交渉しましょう。このままトドメを刺せば、あの子は無事では済まないわ」
 右目を押さえながら、セクスティーリスはフラフラと立ち上がった。文字通り動揺が見て取れる。もう少し...もう少し押せば良い。
「いつか必ず恨みを晴らさせてあげるわ...だから、今は手を引きなさい」

「そいつは無理な相談だな」

 猟兵達の間を縫って、男が一人前へ出る。乗り掛かった船だからな、そう呟きながら彼女の前へと歩み出た。
「...」
 そして、セクスティーリスは確信した。彼は、ダスク・ドーン(人間のフォースナイト・f13904)は正解を見抜いたのだと。
「お前は笛が好きだったんだな」
 それは事実だ。少女は笛が好きだった。
「それとも...本当は自分を見てもらいたいのに、道具に頼るしかなかったんかね?」
 そして、それも事実だった。少女にとって、たった一瞬でも誰かに認めてもらうにはこれしかなかったのだ。
「...知った口を聞かないで」
 そして、ダスクは彼女の握る尺八を指差した。この戦いで酷使されてなお、新品のような光沢を放つソレは、超常の代物なのだろう。
「本当はもうないんだろ、それ」
「...」
 人間がUDC-HUMANとなる程の辛い出来事。それは盲目の彼女にとって唯一の、心の拠り所であり、誰かとの架け橋であり、そして鮮やかな彩りを与えてくれた『宝物』の喪失だったのだ。

 そして彼女は、過去に縋ったのだ。

「図星だな。そう顔に書いてあるぜ」
 無い筈のものがある。骸の海から汲み取った遺物...それこそがオブリビオンの核だったのだ。
「...まだ、此処で果てるわけには行かないの」
 セクスティーリスは、静かに最後の力を振り絞る。すると、畳に突き刺さっていた幾本もの黒刀が宙に浮き、その刃先をダスクへと向けた。
「...全ての恨みを、晴らさないと...許してはいけないの」
 黒刀がダスクへ向けて放たれる。一刀目は体を外すことで躱す。そして二投目。左手の黒いフォースブレードで真っ二つに叩き切る。そして、右手の青い刃を彼女に向けた。
「此処からは強引に行かせて貰うぜ」
 ラストバトルの火蓋は切られた。

 セクスティーリスの黒刀がダスクの周囲を取り囲む。躱され、折られるのならば、同時に斬りかかるのだ。二十近い数の刀の斬撃が、彼を襲う。
 だが、刃は彼には届かなかった。ダスクの剣から黒いフォースが放たれたのだ。その黒き波動は盾となり、彼女の黒刀を堰き止めた。
「...滅茶苦茶ね」
「お互い様だぜ」
 身体を回転させ、盾へと突き刺さった刀を打ち下ろす。そのまま回転の遠心力を乗せ、ダスクはセクスティーリスへと斬りかかる。
「その動きは...見えてたわ」
 ナイトブレイドの袈裟斬りを何かが阻む。それは、畳から突き出した大量の黒刀だった。猟兵達へと放たれた黒刀はその床下へと潜み、ひっそりと移動していたのだ。いつでも、彼女を守れるように。
 だが、セクスティーリスは目を見開く。それでもなお、彼の心に敗北の文字は無かったからだ。寧ろ、勝ちを確信していたのだ。
「...!?」
「当たっても怪我はないが、心は痛むぞ...歯食いしばれ!」
 行動は読めたとしても、その知識を彼女は読み解けない。その青きマインドブレイドが、彼女の肉体を傷つけることはない。切り裂くのは、その破滅の未来...『運命』だったことを、彼女は知らなかったのだ。

 青い輝きが水平に広がる。そして少女は崩れ落ちたのだった。

「...本当に、滅茶苦茶よ」
 パリンッと、ガラスの割れるような音が響く。ダスクと彼女を隔てていた刀の壁は砕け散り、塵となって消えていった。少女は、抱きしめる様に尺八を握りしめる。ダスクは少女の前へ屈むと、その手を差し出した。
「悪いが俺は『笛』には興味ない。連れて帰りたいのは『本人』だけだぜ?」
 破滅の未来は拭い去った。それはつまり、その笛と共にある未来は来ないということだ。ピキッと美しい竹節に亀裂が入る。そして、少女の宝物は彼女の腕の中で砕け散った。
「ああ...ああ...」
 家族は皆、死んでしまった。大好きは笛は消え、残されたのは片方だけになった呪いの瞳。唯一完全だった物も失くした。これで本当に一人ぼっちだ...だが、
「...これで良かったのかも...しれないわね」
 少ない時間だったが、この奇妙な戦士達のお陰で、大きな気づきを得れたのだから。自分は、思っている以上に孤独ではなかった。誰かが言った、感情は一瞬だと。見えたときには、すでに見えないこともあるだろうと。そうとも、自分は万能ではなかった。この男の一撃が読めなかった様に。
 この翡翠の瞳をもって尚、この先の未来は見通せないのだ。ならば、案外この先もなんとかなるかもしれない。そんな未来があるかもしれない。

「あー...お嬢ちゃん、目が見えないんだったな。忘れてたぜ」
 ダスクは差し出した手を引っ込めると、恥ずかしそうに頬を掻いた。
「...あら、握手をお求めになられてたわね...すっかり忘れていたわ」
 すると、星玖は声の聞こえる方へと手を出した。本当に見えていないのだろうか。彼女の掌は、ダスクの頬を触り、そして指へと触れた。
「本当は見えてるんじゃねえのか?」
「...見えてませんわ...見えるのは貴方の心だけ」
 そう、吹っ切れた様に言うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『人間の屑に制裁を』

POW   :    殺さない範囲で、ボコボコに殴って、心を折る

SPD   :    証拠を集めて警察に逮捕させるなど、社会的な制裁を受けさせる

WIZ   :    事件の被害者と同じ苦痛を味合わせる事で、被害者の痛みを理解させ、再犯を防ぐ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 教団のアジトを襲った業火は、既に鎮火されている。残されたものを探す様に、信者達が彷徨いている。
 彼らを更に懲らしめるのも良いだろうが、そこにはいない大元の教団員を探し出すのも良いだろう。屋敷で地獄を見た、まだ『人間』である彼らを懲らしめるべきか。
 君達の采配次第である。
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

星玖さん……よかった。
ひとまずは大丈夫だろ。
後のフォローは対テレパスの扱いに長けたUDC組織の職員さんに
引き継いでもらうよ。
……なんでかって?
今のアタシの心中を見ればわかるだろ。
この怒り、叩きつけるべき場所へぶち込まないとねぇ!

現場に残る信者たちに、場違いなくらい朗らかに
「いよぅ精が出るねぇ、『人殺しさんたち』?」
と真正面から【道説く陽光】を込めて心をへし折りに行くよ。
そうして呆けている奴らを適当に『グラップル』で抑えつけ、
尋問……いやいや『情報収集』をする。
お前ら「青の教団」のすぐ上の奴、そしてその上の奴くらいの構成まで。
惨劇の青写真を描いた奴くらいは割れるだろ。



 悔いは人間の特権である。

●リスタート
 ボロボロになった男を見下ろすのは、冷たい目だった。ライダースーツに身を包んだ彼女を言い表すならば、怒りの化身が相応しい。溢れ出た怒気が稲妻となって大気を揺るがす。
「...吐きな。お前の知っている事を全部」
 彼女は、数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は、横たわる男の胸ぐらを再び掴み上げた。息が詰まり、呻き声が漏れる。
「ガァアアア!?!?」
 彼を襲う痛みは肉体の痛みだけではなかった。多喜の拳に閃光が走るたびに、身体全身に痺れるような、そして締め付けられるような痛みがを走るのだ。
「なあ、教えてくれよ。どうして罪のない人間を殺せる?どうして簡単にそんなことが出来ちまうんだよ」
「ア”ア”ア”ア”!!!」
 彼女が言葉を発するたびに、男の痛みは増した。ああ...まさに、これは己の咎を縛り上げる十字架なのだろう。背負う罪は男の後悔だ。
「分かるか?これが『罪悪感』だ!お前が今まで目を逸らしてきたことだ!」
 多喜が勢いよく手を離し、男は地面へと倒れ伏した。垣間見たのは、尋問されたであろう教団の仲間達。雷に打たれた様に黒焦げになっていた。
「ハァ...ハァ...俺も、同じ様に殺すんだろ?」
「さあ、どうだかな」
 彼女の稲光に当てられ何を思ったのか。
「...なら、良かった」
 多喜の瞳を見つめながら、
「...もう、誰も傷つけなくて済む」
 男は惨めに笑う。男は満足していた。
「そうか」
 震える身体を押さえつけ、身体を抱える様に蹲る。鼻を啜る音に嗚咽が重なった。
「死ぬなら、情報を吐いてからにしろ『人殺し』」
「ああ...ああ...」

 男はポツポツと語る。彼の人生は酷い物ものだった。よくある悲劇の大衆、その一部。それが彼だった。
 ある時、自殺系サイトで知り合った何人かの友人と、彼は会うことになった。今となって考えてみれば、それは教団にとって体の良い調達先だったのだろう。あれよあれよと勧誘に乗り、何人かと一緒に入信してしまったのだ。
 そう、『青の教団』だ。そして、その教祖が...
「『蒼の王』...」
「立派な、優しそうな人に見えた...」
 『誰も虐げられない世界』を作る。それが彼の目指す理念なのだという。
「でも、どう考えたって可笑しかったんだ...分かってたはずなんだ...」
 よく考えれば、その手段は大いに矛盾を孕む物だった。幸福そうな人間を、絶望へと叩き落とす。罪のない人間に、残酷な仕打ちの後に殺す。彼らの言う『聖なる青』とは、常に他者の血涙を伴う物だった。

 そうやって、人間を人間じゃない何かへと変える。それを俺たちは有り難がった。まともじゃなかったんだ。

「『蒼の王』ってのは何処にいるんだ?」
「...分からない。でも司祭達が話してるのを聞いたんだ。近々、隣り街で『聖戦』とやらを起こすらしい。きっと、あの人も来るはずだ」
「司祭の居場所は?」
 男の視線が物言わぬ骸へと向く。これ以上、彼から聞ける事はない。
「そうか...なら、もう終わりだ」
 男は、静かに目を閉じた。











 だが、彼の身に死の鉄槌は下されなかった。

「...?」
 ゆっくりと目を開ける。多喜は、彼に背を向け立ち去るところだった。
「ま、待ってくれ!」
「...ああ?まだ何かあるのか?」
 彼女が振り返ると、男は困惑した様に尋ねた。
「...殺さないのか?」
「どうして?」
「だって...!」
 自分は酷い罪を犯した。事切れた彼らの様に、自分もまた処断されるべきなのだ。
 多喜は振り返りながら言う。
「なあ、コイツらは何って言って死んだと思う?」
「え...」

 悪魔め!我らが神が!同胞が!汝を滅ぼすだろう!...だってさ。本当に『救えない奴ら』だったよ。

「でも、お前は...ちゃんと『後悔』出来た...出来ちまったんだ」
 だから、後は勝手にしろ。そう言い放たれる...顔を上げた頃には、彼女の姿は何処にも存在しなかった。

 戦いは...まだ続くのだろうか。終わるのだろうか。ああ、誰か。教えてくれ。私はいつまで、戦はなければならない?
 きっとそれは、己が決める定めなのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロバート・ブレイズ
アドリブその他歓迎

「何――も殺す必要は無い。何――も朽ちる必要は無い。何――も堕ちる必要は無い。何――も吐き散らす必要は無い――重要なのは纏めて『我が国』の民として受け入れる程度だ。取り込むとは即ち元に戻す事も可能で在り、悔いて尚『生きたい』ならば改めて魅せよ――クカカッ――王の前で何を垂らすか見物だな。最も、数多は既知の類。制裁よりも長い・永い暮らしに怯えるが好い――青色なのは何か、鏡面を覗き込むべきだ。好きに貴様を象り給え。最早『信仰』は俺の物だ……人間を諦めるな。其処には神など証明されない。結局の面は『人型』――盤面は全くの執着だろうよ。留まるが良い。幾等でも時は創って邪るとも」



 その魂に終わりはない。苦悶の旅は始まったばかりだ。

●夜明け
 深い森の中だ。女が一人空げに歩いている。辺りは暗い霧に阻まれ一寸先も見渡せない。ここが森だと分かるのは、木々が騒めいているのと、植物特有の臭いがあったからだ。
「...案外、静かなものね」
 女は此処が死した魂の罪を清算する世界なのだと考えていた。永遠に彷徨う地獄。誰かの生を冒涜した罪。誰かの幸せを奪った罪。そして、幼い息子を置いて逝った罪。まさに子不幸者の末路としては相応しいではないか。
「...霧が晴れてきたわ」
 辿り着いたのは森の中の小さな広間だ。石が環状に並べられており、まるで青の教団の儀式場の様であった。

 その中心に彼はいた。

 皺一つない紳士服を纏い、中央の祭壇に腰掛けている。森の中であるにも関わらず、その姿は異様に様になっていた。
「貴方は...神様ですか?」
「ーー我は貴様の知る既知ではない」
 冒涜王と、彼は名乗る。この世界を作りし王であり、そして死した魂を夢の世界へと招いたのは彼なのだという。
「何故、そんなことを...」
「ーー重要なのは『我が国』の民として受け入れる程度だ」
 お前の考えなど知った事ではない、お前は此処で生き地獄を味わうのだと。

「ーー何も殺す必要は無い」
 生きるためとはいえ、滑稽なことはもうやめろ。
「ーー何も朽ちる必要は無い」
 自分を殺し、燻るのは終わりだ。
「ーー何も堕ちる必要は無い」
 その心を蒼ざめる必要はない。
「ーー何も吐き散らす必要は無い」
 もう、己の罪をを嘆く必要はない。

「ーー制裁よりも長い・永い暮らしに怯えるが好い」
 クカカッと王は嗤う。これからお前が何を魅せるか見物だと嘲笑う。
 女の目には、気まぐれな神が手を差し伸ばしてくれた様に写るのだった。

 ようこそ『ドリームランド』へ。否定されし者よ、好きに自分を象り給え。
 時間はもう、幾らでもあるのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​


●誰かのために、誰かのために。命を燃やして
「ありがとうございます、先生!お陰様で、職場に復帰出来そうです」
 スーツの男性が頭を下げる。その相手は見目麗しい女性だった。セミロングの黒髪の美しい、先生と呼ばれた彼女は困った様に微笑み返した。
「また何かあれば、いつでもお電話を下さいね。良いですか...くれぐれも無茶はしないでくださいね?」
「だ、大丈夫ですよ!それに、また先生が助けてくれるでしょ?」
「...そういう所ですよ?」
 女は手を振って男を見送る。今日の患者は彼で最後だ。着慣れた白衣を脱ぎ、ハンガーラックへと掛けた。

 眼帯で覆われた右目を撫でる。未だに疼く。贖罪の痛みだ。この傷を携えながら、私は彼らの様に誰かを救うのだ。

 もう笛の音は聞こえない。

●燃え尽きた、何もかも。だが、生きねばならない
 いつも夢を見る。優しげな女性の夢だ。逞しく小さな畑を耕して、懸命に生きる女性の夢だ。
 それが母であることを、私は幼気に理解していた。
 見たこともない親の顔。そんな母は私を見つめると、いつも悲し気な表情を浮かべた後に、満開の笑みを浮かべるのだ。
 坊や、お腹を空かせていないかい。そう言い母は、また焼いたジャガイモを食わせてくれた。
 坊や、辛い事はないかい。そう言い母は、真摯に私の悩みを聞いてくれた。
 そしていつも、夢は突然覚めるのだ。懐かしい匂いを脳裏に残しながら。

「行けねえ...遅れちまう」
 畜生...まだ立ち止まれないんだ。まだ、生きなきゃだめなんだ。どうしようもなく、恋しくても。
 その度に、夢を見る。そして現実を思い知るのだ。
 ああ...戦いは終わらない。全ての邪神が滅ぶまで、我が怒りが収まらぬ。

 顔の火傷が涙で沁みった。

最終結果:成功

完成日:2020年11月13日
宿敵 『セクスティーリス』 を撃破!


挿絵イラスト