かの者ら、恐れを知らぬなれば
●悪徳の都
淀んだ空気が渦巻くような都市の残骸が折り重なった大地。壊れ果てた無数の重機が所狭しと積み上げられ、巨獣の骨が洞窟のように木の虚のような闇を生み出す巨大なる都市があった。
その名を『ヴォーテックス・シティ』。悪と狂気の『ヴォーテックス一族』が支配する『超・超・巨大都市』である。
そもそも『ヴォーテックス一族』は、アポカリプスヘルにおいて、レイダーを束ねる王たるレイダーキングのさらなる上位なる存在。『キング・オブ・キングス』とでも称されるかのような、巨悪の一族。
例外なく彼等はオブリビオンであり、その『髑髏と渦巻』の紋章が示す旗は、間違いなく『ヴォーテックス・シティ』の縄張りであることを示す。
そこでは奴隷たちの命は米粒一つよりも軽い。
彼等の生命に意味はない。あるとするならば、オブリビオンたちの快楽や狂気を満たすためだけの意味しかない。
日夜世界各地のレイダーキングたちから大量の物資や奴隷が上納され、レイダー達は夜も電飾や篝火によって昼のように明るいこの街で暴虐と快楽に耽るのだ。
そしてまた略奪が始まる。
また一つの奴隷たちの集団が『ヴォーテックス一族』に上納される。まるで物であるかのように扱われる彼等が向かう先にあるのは、この『ヴォーテックス・シティ』においてあらゆる意味で最悪を示す場所。とある研究施設。
そこに存在する『業病のジュピター』は、あらゆる病を根絶するために、そして、その研究成果を元に生み出された恐れを知らぬ兵士―――否、兵子を使って、人の尊厳の一滴までも無駄にすること無く、上納された奴隷たちを切り刻み改造する。
「何もかも無駄にはしない。皮膚の一片、内臓の一欠片、血の一滴まで、有効に利用しよう。ああ、感情もだ。感情は脳内で物質を作り出す。搾り取ろう。恐怖を和らげるもの、快楽を生み出すもの、あらゆるものを搾り取ろう。それが―――病の根絶へとつながるのだから」
『業病のジュピター』は機械人形としての体を震わせながら、また一人奴隷をミキサーに掛ける。
悲鳴が響く。痛みに喘ぐ声も。何もかもが彼にとっては無駄にならない。
無意味に傷つけているわけではない。痛みに寄って刺激された脳が生み出す脳内物質を抽出しているのだ。
快楽も恐怖も何もかも、生理現象だ。ならば、それを抑制するのも向上させるのも造作ないこと。生み出し、引き出し、搾り取る。
「任せ給え。君たちは人類の礎になるだろう。いつか病の全てを私が克服してみせる。生命を積み上げた数だけ、人は不死に近づくのだ。多ければ多いほどいい。塔は高ければ高いほどいい。積み上げよう、どれだけの屍を積み上げたとしても、病を根絶し、人を不死の存在へ―――!!」
『ヴォーテックス・シティ』に狂乱の機械人形の笑い声が響き渡る。
それは狂気だけが満ちる研究所。連れてこられた奴隷たちは、効率よく脳が生み出す物質を捻出するために、正気と狂気の境目を何度も往復させられる。
人道に反する行いが、研究所では日夜当たり前のように行われている。凄惨なる日常は変わらない。もはや希望はどこにもない。
奴隷たちの前には、薄暗く横たわる絶望だけがあった。
もはや、彼等には自分たちの生命を自由にする権利すらない。自死することもできず、けれど生きるという意味から最も遠い存在へと成り果ててしまったのだから―――。
●セーブ・ザ・スレイブ
「お集まりいただきありがとうございます。今回の事件はアポカリブスヘル、荒廃した文明と荒野を生きる人々が住まう世界です」
ナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)がグリモアベースに集まってきた猟兵たちに頭を下げて出迎えた。
彼女の瞳が爛々と輝く。その眼差しは明確な感情を浮かび上がらせていた。
「今回、皆さんにお願いしたいことは―――ヴォーテックス・シティにおいて奴隷として捕まっている人々の解放です。ヴォーテックス・シティは、ヴォーテックス一族が支配する超・超・巨大都市です」
レイダーキングと呼ばれるレイダーたちの長……その上位存在が支配する都市において、人命はまさに米粒一つよりも軽い。
そんな都市にあって奴隷たちがどのように扱われるのかは推して測るべしであろう。
ナイアルテの瞳が輝くのは、生命を弄ぶオブリビオンが存在しているからだ。
「私が予知したのは、都市の中にある研究所で非人道的な実験や、人体に含まれるあらゆる物質を効率的に絞り出すための拷問に苛まれようとしている奴隷の方々です。まずは、その研究所の近くに転移いたします。その後で、奴隷として潜入したり、逃走経路を把握し、奴隷たちをのがしたり……もしくは」
輝く瞳のままにナイアルテが言う。
腕力で解決するか―――と拳を握りしめるのだ。
「また奴隷の皆さんを開放した皆さんにレイダーでありオブリビオンである量産兵子『ジャックス』たちが戦車やバギーなどの車両に乗って襲いかかってきます。みなさんは都市の中を手に入れた車両と共に駆け抜け、これを打倒して下さい。車両の調達は簡単です。この都市には鍵のかかっていない車両がそこら中に在るのです」
それを利用し、都市内のカーチェイスを行いながら、レイダーを打倒しなければならない。
また、その後に現れるオブリビオンはレイダーキングに匹敵する強力な存在である。
それが―――。
「『業病のジュピター』と呼ばれる機械人形です。奴隷の皆さんを痛めつけ、己の存在意義のみを果たすべく非人道的な行いをしています。さらにこのオブリビオンは巨大なモンスターマシンに乗り込んで襲いかかってきます。周辺への被害は甚大なものとなるでしょう……」
都市にはまだ囚われの奴隷たちもいる。
なんとか、『業病のジュピター』が駆るモンスターマシンを打倒し、さらに建物の崩壊から奴隷たちを救出しなければならないのだという。
やることも多ければ、敵の強さも、車両を使って追いかけてくる執拗さも段違いである。
「どうか、お願いいたします」
ぶるぶると肩を震わせながらナイアルテは頭を下げる。
予知ができても己が戦いに赴くことはできない。転移を維持し続けるために戦えないことへの歯がゆさを噛み殺しながら、生命を弄ぶ行為に怒っているのだ。
それは集まった猟兵達も同じ気持ちであろう。
奴隷とされた人々を救い、アポカリプスヘルの荒廃した大地を疾走する。その戦いの厳しさを予感しながら、猟兵達は次々と転移していくのであった―――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はアポカリブスヘルでの事件です。悪徳と狂気の都市『ヴォーテックス・シティ』において、奴隷たちが晒されようとしている非人道的な実験、拷問を阻み、彼等を救い出すシナリオになります。
●第一章
冒険です。
奴隷たちが集められている『業病のジュピター』の持つ研究所へと転移します。
皆さんは、奴隷として潜入するのか。それとも逃走経路を探し、秘密裏に奴隷を逃がすのか。さらには腕力で真っ向からレイダーたちを成敗するのかを選べます。
いずれかの手段を用い、奴隷たちを研究所から助け出しましょう。
奴隷たちは皆、研究所にて拷問や実験、はたまた解剖やあらゆる苦痛を伴う運命にあります。これらの苦難を救えるのは皆さんしかいません。
●第二章
集団戦です。
研究所から奴隷たちを逃がす皆さんたちを追って、クルマ(戦車やバギーなど)に乗り込んだ量産兵子『ジャックス』たちが迫ります。
みなさんもまた、そこら中に在るクルマを利用して、これと激しいカーチェイスを繰り広げながら、彼等を打倒しなければなりません。
敵の機動力は圧倒的なものです。これに対抗し、彼等の追撃を迎え撃ちましょう。
●第三章
ボス戦です。
レイダー・キングに匹敵する強敵『業病のジュピター』が、恐るべきモンスターマシン……巨大でありながら機敏、そして重装甲にして大火力を持つ巨大な戦車に乗って皆さんに襲いかかってきます。
その追撃は、都市内の建物などお構いなしのものであり、建物の崩壊に巻き込まれる奴隷たちが存在しています。
彼等も救いださなければなりません。
それでは荒廃した世界を生き抜く人々を助けるため、アポカリブスヘルにてオブリビオンを打倒しましょう。
皆様の物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 冒険
『セーブ・ザ・スレイブ』
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POW : レイダーを腕力で成敗する
SPD : 逃走経路を探し、秘密裏に奴隷を逃がす
WIZ : 自身もあえて奴隷となり、現地に潜入する
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
悪徳と狂気が渦を巻き、その都市『ヴォーテックス・シティ』はレイダーたちの欲望を反映するかのように夜であっても煌々と照らされ続ける灯りで満たされていた。
文明が荒廃したアポカリプスヘルにおいて、これは異常なる光景であった。
荒野に住まう人々は節制し、明日の生命を繋ぐために少ない食料や物資を分け合いながら生きている。
だというのに『ヴォーテックス・シティ』は違う。
生きるために消費するのではなく、消費するために生きる者たちで溢れ返っていた。
それは最早消費ではなく浪費であった。
そんな『ヴォーテックス・シティ』に悲鳴がつんざく。ある研究所を模したであろう建物から、奴隷たちの悲鳴が響く。
痛み、苦しみ、そして、これより己達に降りかかるであろう困難を前に泣く声。
其処に集められていたのは、老いも若きも関係ない、とりとめのない人間たちばかりであった。幼い子供らもいれば、年老いた老婆もいる。
彼等は『業病のジュピター』の研究材料にして、快楽や恐怖を増進させたり和らげたりする物質を搾り出されるために集められたのだ。
狂気の機械人形『業病のジュピター』の笑い声と悲鳴が交錯する。
当然のように研究所の周りにはレイダーたちが屯している。これらを如何にして突破し、または欺くのか。
猟兵達の手腕に奴隷となった人間たちの運命がかかっている―――。
アレクサンドル・バジル
ヴォーテックス・シティか。
此処の物資や電力があれば救える奴も多そうだな。
まあ、小さい事からコツコツとってな。
研究所には真正面から。レイダーの見張りや警備を『ゴッドハンド』級の体術と『万象斬断』の技を以て蹴散らしながら、奴隷の収容されている場所を探します。
鉄格子やセキュリティはやはり『万象斬断』でズバーっと。
ある程度の数を見つけたら奴隷を連れ先導して脱出。
新手がいるとしても来た道を戻るのが効率的でしょう。
(ほかの猟兵もいるので全てとは考えていません。無理のない範囲。派手に動くのは他の猟兵が動きやすいようにとの陽動の意味もあります)
はーい、俺は正義の味方だぜ。お前さん達を助けに来た。
悪徳と狂気だけが支配する超・超・巨大都市『ヴォーテックス・シティ』。
そこは夜だというのに煌々と焚かれた灯りが闇を照らし、目もくらむほどの明るさで持って、オブリビオンの悪辣さを浮き彫りにしたかのような都市であった。
『髑髏と竜巻』の旗が翻れば、その下には幾千、幾万もの奴隷たちの苦痛に喘ぐ声が聞こえる。それはあまりにも多く、荒廃したアポカリプスヘルにおいて、ありとあらゆる土地から人間が狩られ、奴隷へと落とされたことを示していた。
そんな巨大都市の一区画にオブリビオン『業病のジュピター』が構える研究所の前にさっそうと現れたのは褐色の肌を灯りのもとに晒すアレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)であった。
彼の態度は大胆不敵にして、自信に満ちあふれていた。
「ヴォーテックス・シティか。此処の物資や電力があれば救える奴も多そうだな……」
確かに、この超・超・巨大都市と言って差し支えのないほどにありとあらゆる文明の残滓が集められ、人々を奴隷へと落とす都市の電力を賄うものがあれば、他のベースで暮らす人々にとっては、どれだけの日々を安寧と過ごすことができるだろうか。
故に、アレクサンドルは笑うのだ。
不敵に笑い、研究所の周りに屯するレイダーたちを挑発する。
「まあ、小さい事からコツコツとってな―――!」
アレクサンドルが矢の様に一直線に研究所へと突っ込む。
「ヒャッハー! こいつバカだぜ! 真正面から来やがった!」
いかついスパイクやモヒカン、タトゥーと言ったいかにもなレイダーたちがアレクサンドルに殺到する。
正面からこの数とやりあおうなどとは、正気の沙汰ではない。
大方奴隷に落とされたことによって正気を喪った人間であろうと高を括ったのだ。飛びかかるレイダーたちの体は、次の瞬間、逆に宙に舞う。
アレクサンドルの拳が閃くだけで、その拳圧がレイダーたちの体を吹き飛ばすのだ。
それは神にしてゴッドハンドたるアレクサンドルの拳が見せる業。
どれだけの得物をふるおうとも、その鍛え上げられた肉体には意味がない。鉄パイプや釘バット、凶悪な得物を振るうレイダーたちの攻撃を物ともせずにアレクサンドルは進む。
研究所の扉がぶち破られ、アレクサンドルの姿がゆっくりと進む。
「悪趣味なものばっかりだぜ…これは」
其処に広がっていたのは、拷問器具や何かを抽出している器具たち。セキュリティの警報音が響く中、アレクサンドルは次々とユーベルコード、万象斬断(ナンデモキレル)によって、魔力纏う手刀を放つ。
鉄格子は切り裂かれ、その中にいた奴隷たちが怯えるように身を寄せ合う。
誰も彼もが幼い子どもたちばかりだ。
「はーい、俺は正義の味方だぜ。お前さん達を助けに来た」
その言葉、正義の意味も分からぬ幼子たちは、けれど確かに見ただろう。
あらゆる障害も何もかも無意味であると、その手刀でもって何でも斬って進むアレクサンドルの姿を。
子供らは皆、一様に切り裂かれた鉄格子から駆け出す。アレクサンドルの背中を追って、走り出す。
未だ自由の身になっているとは言い難いけれど、それでもアレクサンドルの背中を見失わない限りは、生命を諦めないで済む。
「―――他の猟兵達も来ているだろう……今はこいつらだけでも連れて戻るか」
どやどやと研究所の奥からオブリビオンの気配がする。
ここで無理に奴隷たちを探すよりも、今救えた奴隷の子供らを無事に連れ出すことが先決だ。
アレクサンドルは引き際を誤ること無く、子供らを抱えて一気に外へと飛び出す。
レイダーたちが正面突破を図ったアレクサンドルを追って、向かい風のようになだれ込んでくるが関係ない。
「向かい風だろうが、関係ない! 男なら足踏ん張って進むもんだろう!」
レイダー達を吹き飛ばし、もと来た道を、正面から悠然と突破するアレクサンドル。その背中を追って子供らは外へ飛び出す。
もうこんなことはないだろうと思っていた。
自由になることも、自分で決めることも。
けれど、アレクサンドルの圧倒的な立ち振舞は、子供らに正義という名の意味を改めて知らしめる。
正義という言葉の意味を知らぬ者たちが、今、アレクサンドルを通して正義と自由のために戦うということがなんであるのかを、知ったのだ―――!
成功
🔵🔵🔴
ルイス・グリッド
アドリブ・共闘歓迎
節操無しのオブリビオンめ、幼い子供や老人まで集めているのか
ひとまず逃走経路を確保しよう、助けるのはその後だ
静かに、俺は君たちを助けに来たんだ。落ち着いてついてきてくれ
出来るならレイダーの1人を気絶させて服を【略奪】し【変装】、出来なければ黒い衣装を着る物陰に潜みながら【視力】【暗視】で逃走経路に使用できそうな場所を探す
鍵がかかっている場所なら【鍵開け】、埋まっている場所なら【地形破壊】で音が出ないように注意を払い経路を確保する
その後は奴隷がいる場所を見つけ、閉じ込められていたら【鍵開け】逃走経路まで誘導する
超・超・巨大都市と謳われる『ヴォーテックス・シティ』は、その威容を荒野の中にあって煌々と焚かれる篝火のように荒廃した世界に誇っていた。
あらゆる物資が、人が、レイダーたちによってかき集められ、レイダーキングの上位存在である『キング・オブ・キングス』と呼ぶべきオブリビオン一族『ヴォーテックス一族』へと上納されている。
文明の残滓であろう重機や建物が折り重なって出来上がった不格好ながらも退廃的な都市の外観は、たったそれだけで奴隷として集められた人間たちに諦めを覚えさせるには十分であった。
「節操無しのオブリビオンめ……幼い子供や老人まで集めているのか」
ヴォーテックス・シティの一区画に在る『業病のジュピター』が構える研究所へと連れ込まれていく奴隷たちの姿を見て、ルイス・グリッド(彷徨う海賊・f26203)は憤った。
奴隷たちの一団の中には若い者や頑強なものばかりではなかった。弱い者―――つまるところ、幼い子供や老人たちまで含まれているのだ。
それはあまりにも節操なしと言わざるを得ないものであった。だが、ルイスは目的を見失わなかった。
怒りに任せてしまったとしても、レイダーたちに猟兵であるルイスが遅れを取ることはないだろう。
けれど、奴隷の彼等は違う。一つ手順を誤った瞬間に、儚くも消え去ってしまう生命。それを失うわけにはいかない。
「ひとまず逃走経路を確保しよう……助けるのはその後だ」
ルイスは即座に行動を起こす。
レイダーの一人を背後から強襲し、音もなく気絶させ衣服を奪う。トゲトゲのスパイクや何の革で出来ているかわからないようなジャケットを羽織り、レイダーに扮する。
左眼を覆う眼帯はそのままでもいいだろう。むしろ、その方が感じが出ているといってもよかった。
そのまま物陰に潜み、研究所の全体を見回す。
煌々と灯りが輝く都市の中にあれば、落とす影もまた昏きものとなる。その暗闇の死角を探し、奴隷たちを連れて逃げることのできる経路を探るのだ。
裏口は厳重にレイダーたちに管理されているが、それはレイダーに敵う者がいなければ、の話だ。
「裏口には一人……二人……三人か。なら―――」
闇夜に紛れてルイスの身体が飛び出す。一気に、けれど静かに。確実にレイダーを気絶させなければならない。
まずは一人の足を払い、ほか二人の注意を引く。次の瞬間、二人の背後に周り、その意識を刈り取る手刀でもって気絶させる。
足を一人が起き上がる瞬間また回り込んで背後からの強襲で意識を奪う。それは一瞬の出来事であった。生命の埒外にある猟兵にとって、一般人に毛が生えた程度のレイダーなど障害にもなりようはずもない。
裏口の鍵を即座に開け経路を確保し、奴隷たちが囚われている場所まで駆け出す。
鉄格子の嵌められた収容所を見つけるとルイスは胸をなでおろす。まだ無事な人々がいた事に安堵しながら、なるべく安心させるように言う。
「静かに、俺は君たちを助けに来たんだ。落ち着いてついてきてくれ……」
その言葉に無言のまま何度も頷く人々。
それを見てルイスはうなずきを返し、鉄格子の鍵を解錠する。すでに逃走経路は確認済みだ。
人々を鉄格子の中から開放し、彼らを先導して裏口から逃走する。レイダーたちはすでに気絶させてあるし、それに―――。
思いほか盛大な音が研究所の正面から響く。
それは他の猟兵達も動いたという証だろう。正面から突破する猟兵がいたのであれば、ルイスの計画もやりやすい。
「始まったか……さあ、今の隙に。安心していい。他の奴隷たちも皆、俺が……俺達が助け出すから」
あちらを陽動にしても、彼等が後手に回ることはないだろう。そう確信して、ルイスは人々を誘導し、裏口から無事に脱出するのだった―――。
成功
🔵🔵🔴
守上・火鈴
◎アドリブ歓迎
たのもーーーーー!!!!!わたしです!!!!!
悪党の皆さんを成敗しに来ました!!!!!
全員ぶっ飛ばしますのでお覚悟を!!!!!
悪党の皆さんを探して!見つけ次第『疾風拳打・空撃チ』で片っ端からボコボコにします!!
運よく奴隷の皆さんを見つけたら邪魔なアレコレは『怪力』で引っぺがして助け出しますね!!
明るい方へどうぞ!!わたしは悪党さんが邪魔しに来ないように見張っておきます!!
奴隷の皆さんが脱出したらわたしは残りの悪党さんを成敗しに行きます!!
たくさんボコっておいた方が楽になりますからね!!
「たのも―――!!!!! わたしです!!!!!」
それは悪徳と狂気の超・超・巨大都市に負けず劣らずの盛大なる声量でもって響き渡った言葉であった。
一瞬地鳴りかと思うほどの強烈なる声は、すでに先行した猟兵がぶち破った『業病のジュピター』の研究所の前から発せられていた。
本来であれば、そう正直に道場破りのように声を掛ける必要など何処にもないのだが、守上・火鈴(鉄拳・f15606)はその幼き姿に似合わぬ闘気を纏い、その小さな体から如何なる原理にて、大地を震わせるほどの声量を発揮しているのだ。
既に猟兵達は行動を始めている。
そんな中に火鈴のように正面切って声を掛ける行為は、悪徳と狂気の都市に住まうレイダーたちにとっては、油断大敵以上に、嘲る者が大半であった。
「ひゃっはー! バカ正直に正面からくるやつがあるかよー!」
火鈴の背後から襲うレイダーが振りかぶった鉄パイプが彼女の後頭部を打たんと振り下ろされた瞬間、彼女の裏拳が凄まじい速度で放たれる。
それは空中を殴ることに寄って衝撃波を放つユーベルコード、疾風拳打・空撃チ(シップウケンダ・カラウチ)!
汚い悲鳴を上げて、レイダーが盛大に吹っ飛び、大地に落ちる。
「悪党の皆さんを成敗しに来ました!!!!! 全員ぶっ飛ばしますので御覚悟を!!!!!」
にっこり笑って、火鈴は研究所のふきとばされた扉から、自身を狙うレイダーたちに勧告する。
いや、ただの宣言だった。
彼女の言葉に偽りはない。正しくレイダーたちを、悪党を成敗しにきたのだ。
「む!! そこですね!!」
駆け出し、研究所の中にいるレイダーたちを片っ端から徒手空拳が放つ衝撃波によって吹き飛ばし続ける。
どれだけ不意打ちを討たれようとも彼女には意味がない。
彼女の体にレイダーたちの放つ鉄パイプや銃器の弾丸が当たったとしても、鈍い音を立てるのだ。
それは彼女の体のあちこちに仕込まれた『鍛錬のための』鉄板……つまりはリストバンドのようにつけた重しが、尽くを防ぎ意味を為さないのだ。
「真っ向勝負をしないとは、やはり悪党ですね!! ぶっとばします!!」
彼女が拳を振るう度に衝撃波が研究所内部で吹き荒れ、あらゆるものを破壊しつくす。レイダーたちも這々の体で逃げ出すしかない。
「む!! これはこれは!!」
彼女の瞳に映ったのは、研究所内部にて、これより拷問に掛けられようとしていた奴隷の人々だった。
鉄格子の中に無造作に物でも放り投げるように人々は押し込まれていたのを彼女は、その小さな体に秘めたる圧倒的な怪力でもってひしゃげ、広げ彼等を解放するのだ。
「明るい方へどうぞ!! わたしは悪党さんが邪魔しに来ないように見張っておきますから!!」
だから、今のうちにと奴隷たちを次々と開放していく。
走れないものは走れるものに背負われ、小さな子供は大人に手を引かれて次々と研究所の外に逃げ出していく。
その間もレイダーたちが逃げ出す奴隷の人々を追いすがるが―――。
「成敗します!!」
何処からともなく凄まじい勢いで飛び込んでくる火鈴の鉄拳の前に制裁され、その体を大地に沈み込ませる他なかった。
むん! と気合を入れ直して火鈴が構える。まだまだ開放され逃げる奴隷たちは多くいる。
それに比例するようにレイダーたちも、どこから湧いて出るのだというほど、火鈴に殺到する。
団子のように襲い掛かるレイダー達を諸共せずに火鈴の拳が放つ衝撃波が問答無用に彼等を吹き飛ばしていく。
「さあ、成敗はまだまだ続きますよ!!!!! なにせ、ここは悪党の都市と聞いていますから!!!!! たくさんボコっておいた方が後で楽になりますからね!!」
悪徳の都市に、巫女装束の少女の鉄拳が悪党共をぶちのめす音が、延々と響き渡るのだった―――!!!!!
成功
🔵🔵🔴
戒道・蔵乃祐
ヴォーテックスシティ…
オブリビオンストームに引き裂かれ、レイダーに転化した新人類達が、 これほどの巨大都市を再建してしまうとは…
恰かも、国産みの創世神話を目の当たりにしているようです
しかし、弱肉強食の摂理が、旧人類を食物連鎖の下位に宿命付けた狂気の世界に
それでも尚、生きようと願い。生きたいと叫び続ける人間が希望を望んでいるのなら
僕にその力が備わっているのなら
手を差し伸べ、助けたいと思ってしまうから
次世代の流れがレイダーの統べる世界に移り変わろうとしているのだとしても
叛逆の意思は。この心この拳に!
◆
即影を発動
闇に紛れる+追跡+聞き耳でジャックスの情報収集を行いつつ
警邏を影の腕で絞め殺して進みます
絢爛たる灯りに照らされた超・超・巨大都市の名を『ヴォーテックス・シティ』。
その面積たるやかつてのニューヨークの2倍はあろうかという巨大な都市であり、そこに渦巻くのは悪徳と欲望……そして狂気である。
アポカリプスヘルにおいて、夜も昼もないというように電力を消費し、資材を燃やし続けるのは正気の沙汰ではない。
人々は常に物資の不足に悩まされてきた。
それは常に黒い竜巻……オブリビオンストームに追い立てられ、安全に住む場所を確保できないからだでもあり、文明の残滓たる廃墟から持ち帰るブリンガーたちの安全もまた確率されていないからだ。
「ヴォーテックス・シティ……」
そんな荒廃した世界に似つかわしいほどに物資に溢れるオブリビオン……レイダーの都市を睥睨するのは、戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)であった。
偉丈夫たる巨躯を持ち、その姿は荒廃した世界にあっても尚、存在感を放っていた。
「オブリビオンストームに引き裂かれ、レイダーに転化した新人類達が、これほどの巨大都市を再建してしまうとは……」
それは恰も国産みの創世神話を目の当たりにしているかのような感覚を覚える。
新たなる世界の構築。
弱肉強食の世界において、強きものが君臨するのが常なれば、この有様もまた受け入れよというものであるのかもしれない。
それが世界の示した結果であるのかもしれない。
「しかし、弱肉強食の摂理が、旧人類を食物連鎖の下位に宿命付けた狂気の世界に……」
玉数珠が音を立てる。
目の前にはすでに破壊され、先行した猟兵たちが駆け込んだオブリビオン『業病のジュピター』の研究所がある。
すでに混乱の中にある研究所に歩みをすすめる。此処にはすでに大勢の囚われた奴隷の人々が存在している。
「それでも尚、生きようと願い。生きたいと叫び続ける人間が希望を望んでいるのなら……僕にその力が備わっているのなら」
猟兵は世界の求めに応じた選ばれた戦士であり、生命の埒外に在るものである。その力、その意志は、この荒廃した世界において弱者たる人々の心に寄り添うものである。
「―――手を差し伸べ、助けたいと思ってしまうから」
研究所の中に駆け出す。
その瞳が映し出すのは、救いを求める手であり、瞳。
鉄格子の中に囚えられた大勢の人々。これから行われる惨劇、拷問、ありとあらゆる苦痛を与える拷問器具を前に怯える人々を見た。
闇に紛れ、蔵乃祐は駆け抜ける。
ユーベルコードの輝きは、影なる輝き。即影(シャドウ)。それは自身の腕を影法師へと変異させ、即座に警邏として存在していたレイダーたちを絞め殺す。
鈍い音が響き渡り、びくりと奴隷たちの身体を竦ませる。
「さあ、もう安心です。あなた達を助けに参りました―――フンッ!」
その膂力で持って鉄格子を破壊し、次々と奴隷たちを開放していく。
蔵乃祐には最早迷いなどない。
そこにあったのは、例え次世代の流れがレイダー統べる世界に移り変わろうとしているのだとしても、決して変わらぬ決意であった。
どこまで言っても、彼の道は中道。どちらかに傾くことはしない。
けれど、救いを求める声が、手があるのだとすれば、それに手を伸ばさぬ道理もない。
「―――叛逆の意志は」
そう、これが世界の示した次代への流れなのだとしても。
「この心、この拳に!」
波に抗うが如く、蔵乃祐は拳を振るい続けるだろう。それが己の信じた道なれば。どこまで邁進していく。
愚かだと笑う者もあるだろう。
時勢を読めぬと。
けれど、拳の前には意味のない嘲りである。それら全てを打ち砕いて、彼は進んでいくのだから―――。
大成功
🔵🔵🔵
久瀬・了介
WIZで行動。
あえて捕まり、奴隷として研究所に潜入する。
【激痛耐性】で暴行を無抵抗に受け、ズタボロになっておく。既に死んだ体、損傷は問題にならない。無力化したと思われれば警戒もされないだろう。
上手く他の奴隷達と同じ所にとじ込められたら、「貴方達を救出する為の部隊が動いている。安心して欲しい。」と伝える。
外の仲間が動いて騒ぎが起きたら、それに乗じて脱走を図る。
武器は持ち込めないだろうが問題ない。ヴォルテックエンジンに【呪詛】を込め高圧電流に変換。体内に流し肉体の能力を【リミッター解除】。【限界突破】した【怪力】で拘束を引き千切る。
檻を破り見張りを倒し、捕まっていた人々を外へと誘導しよう。
奴隷たちの顔は皆、一様に酷いものであった。
絶望を味わった上に、さらに絶望を塗り重ねられたような、そんな顔。その顔を己は知っているような気がした。
いや、気がしただけだ。
彼等の絶望は、彼等の絶望以外の何ものでもない。自分の―――久瀬・了介(デッドマンの悪霊・f29396)のものではない。
彼は敢えて捕まり、奴隷として研究所に連行され……否、潜入していた。
悪徳と狂気の都市『ヴォーテックス・シティ』に紛れ込むのは簡単だった。この超・超・巨大都市の周辺にはレイダーたちが跋扈している。
そんなところにふらりと一人で現れれば当然のように人狩りに合うのは、あまりにも日常茶飯事な出来事であった。
殴られ、蹴られ、了介は無抵抗故にすぐにズタボロにされて『ヴォーテックス・シティ』へと他の奴隷たちと共に運び込まれたのだ。
「……―――肉体の損傷は、ないな」
あれだけ暴行を受けたというのに了介の身体には傷らしい傷はない。
既に彼は死んだ身体……デッドマンである。
その体にどれだけの傷を与えようとも、自然と治ってしまうのだ。それはある意味で不死と同義であったことだろう。
レイダーたちも一度無力化したと思った了介がデッドマンであり、すでに十全の状態であることを警戒することもなかった。
鉄格子に阻まれたコンテナのような容れ物に他の奴隷たちと共にモノのように押し込められ、研究所へと入っていく。
「……頃合いだな」
了介にとって、他の奴隷たちと共に同じ場所にひとまとめにされたのは僥倖であった。
これならばすでに動いているであろう他の猟兵達の騒ぎに乗じて、奴隷たちを逃がすことができる。
周囲には幼い子供もいれば、老いた者もいる。
皆一様に絶望し、憔悴しきっている。けれど、幼子が泣き始めれば、それは一気に伝播する。
諦めたはずの感情が湧き上がってくるのだろう。
「……貴方達を救出するための部隊が動いている。安心してほしい」
その言葉は彼等の希望に成りえただろうか。
外ではすでに猟兵たちが研究所に真っ向から突入し、レイダーたちを葬りさっている。この混乱の最中であれば、上納されたばかりの自分たちの居るコンテナは警戒されていない。
頃合いであると、了介はその体内に埋め込まれた『魂の衝動』とも言うべき膨大な電流を変換するヴォルテックエンジンを始動する。
鉄格子を掴む。
ひやりとした鉄の感触も感じない。通常の人間であれば、曲げることも出来ない鉄格子を、その腕がこじあける。
腕のあちこちから骨がきしみ、筋繊維がちぎれる音がする。けれど、痛みはない。それどころか、どれだけの損壊を受けたとしても、己の『魂の衝動』が傷を癒やしていく。
「……さあ、行こう。言っただろう、安心していいと」
こじ開けられた鉄格子から次々と奴隷たちを開放し、外へと誘導していく。
すでに先行した猟兵たちが開けた研究所の扉の大穴から奴隷の人々が駆け出していく。自由とはまだいいがたいけれど、それでも囚われていたことからの脱却はなった。
次々とレイダーたちが現れ、逃げ出す奴隷たちを捕まえようとするが、その尽くを了介は人体の限界を超えた力でもって迎え撃つ。
「此処から先は行かせない。俺は言ったんだ。安心してほしい、と。なら、それを嘘にするわけにはいかない」
放たれるは癒えぬ傷跡刻む拳。
それは一撃でレイダーを倒せないまでも、次々と発生する不運なる出来事……天井が崩落したり、他の猟兵たちが起こした破壊活動によって、レイダーたちは致命的な痛手を追っていく。
それはまさに、連鎖する呪いのようなものであった。
ユーベルコードの輝きが了介の瞳に輝く。
「―――安心していい」
自由へと駆け出していく奴隷の人々の背中を撃たせはしない。復讐だけが己の身体を動かす原動力である。
けれど、今は少しだけ違う。
約束を違えないために。人々を奴隷から解放する。それが、今ここにデッドマンとして己が存在している理由なのだから―――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
ふーん、ヴォーテックス一族…ね
こんな世界でこれだけの都市を管理してるのは、素直に凄いけど…
ま、今回は都市見学としよっか
面白い技術も見れそうだしね
●
さてと、もう既に暴れてるのもいそうだしこっちは趣味も兼ねてチョチョイと情報を失敬しようかな
『天候操作』で研究所周囲の天気を限定的に嵐に変更
喧騒に紛れて『忍び足』でこっそり侵入
研究所内の端末を探して『ハッキング』開始
収容者リストと所内の地図を私の端末内にダウンロード、ついでに偽情報を流して混乱させとこっか
リストと地図を参照して逃走経路を考えよ
ま、私一人でやる訳じゃないし逃しやすい対象を選ぼうかな
あとはこっそり奴隷たちを逃せば良いだけ
アドリブ等歓迎
荒廃した世界―――アポカリプスヘル。
そこは黒き竜巻、オブリビオンストームによって人類は文明らしい文明を根こそぎ滅ぼされた世界である。
けれど、そんな世界においても懸命に生きる人々はいる。拠点を構え、廃墟から文明の残滓を漁る、その日暮らしではあるが、懸命に生きているのだ。
レイダーたちは、そんな懸命さを嘲笑うかのように人々から物資を略奪し、時には人そのものを狩り、奴隷へと落とすのだ。
そのレイダー達の王、レイダーキングのさらに上位存在『ヴォーテックス一族』。彼等が作り上げた超・超・巨大都市『ヴォーテックス・シティ』は、まさに夜を知らぬ都市である。
電力はもちろんのこと、あらゆる物資をもやし篝火として夜を煌々と照らす。
「ふーん、ヴォーテックス一族……ね。こんな世界でこれだけの都市を管理しているのは、素直に凄いけど……」
あたりは今、不可思議な現象が起こっていた。
その巨大都市の一区画―――オブリビオン『業病のジュピター』が構える研究所の周辺だけが雨風吹き荒ぶ嵐になっているのだ。
そんな喧騒に紛れて、裏口から月夜・玲(頂の探究者・f01605)は侵入を果たす。
すでに裏口の警備、施錠は解かれている。先行した猟兵がやったのだろう。
玲は楽ができていい、位に思っていた。なにせ、彼女にとって今回は都市見学なのだ。彼女自身がメカニックであるということもあるが、そもそも各世界の技術やサブカルチャーに造詣が深い。
もはやそのために猟兵をやっていると言っても過言ではない。
「面白い技術もみれそうだしね―――っと、もう既に暴れてるのもいるみたいだね」
玲が研究所の裏口から内部へと潜入していると、研究所の正面の方角から衝撃波やレイダーたちがなだれ込んでいくのがわかる。
それだけの騒ぎになっているのだ。自分の天候操作による嵐は、必要なかったかもな、と思いつつもケース・バイ・ケースも大切だと手近にあった端末を手に取る。
塑造な端末だ。
これもまたアポカリプスヘルの崩壊した文明の残滓なのだろう。そこにオブリビオンである『業病のジュピター』の手が加わっているのが手に取るように分かる。
伊達にメカニックではないのだ。
「さて、ここから情報をいただこう」
彼女のメカニックとしての技量、知識があれば、異世界の技術も理解できないものではない。端末から研究所内のデータを自身の端末へと吸い上げていく。
収容者のリストは宛が外れた。
そもそも収容者という扱いですらない。それがわかっただけでも収穫であった。『業病のジュピター』は奴隷たちを人命として見ていない。消耗品の材料にしかすぎないのだ。
「うえー……趣味悪いデータばっかり。所内のデータはこっち……と、ついでに偽情報流して混乱させとこっか」
玲の端末から研究所内の端末に偽情報を流し込む。
これならいきなり機械人形である『業病のジュピター』が出張ってくることはないであろうし、レイダー以外のオブリビオンも即座には対応できないだろう。
「所内の地図はこれ、と……うん、奴隷たちの逃走経路はこれでいいね」
後は奴隷たちを解放するだけだ。
けれど、自分ひとりで何も全ての奴隷を解放するわけではない。猟兵達も次々と研究所に、自分たちのやり方で奴隷達を解放しはじめている頃合いだろう。
「メカニックにはメカニックなりのやり方があるってね」
端末から情報を流し込み、それが電力やオンラインで稼働しているのならば玲の独壇場だ。
次々と電気で作動している奴隷たちを閉じ込めているコンテナや鉄格子のロックが解除される。
それは力任せに破る以上に静音性が高く、中に居た奴隷たちも研究所を取り囲む異常事態に感づいているのだろう。
すぐに彼等は解錠されたコンテナや鉄格子から逃げ出していく。
その様子を監視カメラをハッキングした玲がつぶさに確認する。
隔壁を落とし、次々と奴隷たちを安全な逃走経路へと誘導していく。隔壁を落とせば、警邏のレイダーたちとの接触もなく、安全に彼等を研究所の外に導くことができる。
言ってしまえば、UDCアースで今流行りのソーシャルゲームみたいなものだ。
サブカルチャーに慣れ親しんだ玲には造作もない。
「正面からぶち破るのも悪くないけど、こうやってこっそり奴隷たちを逃せばいいだけ」
楽勝だね、と玲は次々と端末を操作する。
楽しげに、けれど素早く動く指先は、まるで指揮棒を流麗に振るうようでもあった―――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
またしても悪徳の都ヴォーテックス・シティねぇ。相変わらず負気が鼻につくわ。
今はこっそりと奴隷を連れ出してるだけだけど、いつかはこの都市の攻略戦が起こるのかしら?
アヤメ、脚になる手頃な車を探しておいて。運転は出来る人に任せましょう。
あたしは、「式神遣い」で黒鴉の式を喚び出して、周囲を「偵察」。できるだけ安全でスムーズにこの街を脱出出来るルートを探る。
研究所内で動きが起きたなら(中にも当然、黒鴉の式を一羽送っておく)、裏口の鍵を薙刀で破壊。
中に呼びかけて、出口へと仲間を誘導するわ。
慌てず急いで! 早くここを離れましょう。誰か、車の運転出来る?
救出した人たちは、なるべく安静にして運びたいけど大丈夫?
文明が荒廃した世界―――アポカリプスヘルにおいて、その都市は異様であった。
黒き竜巻オブリビオンストームによって文明は破壊され、あらゆるものが飲み込まれてしまえばオブリビオンへと姿を変える可能性がある過酷なる世界において、枯渇したであろう物資や電力、あらゆるものが、その都市……『ヴォーテックス・シティ』には溢れていた。
物資だけではない。人間もまた彼等にとってはモノでしかなかった。
奴隷たちの生命は米粒一つよりも軽い。
そこに人権や生命を尊ぶ考えはどこにもなかった。あるのは暴力と欲望、そして狂気だけだった。
「またしても悪徳の都ヴォーテックス・シティねぇ。相変わらず負気が鼻につくわ」
村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)にとって、この都市は一度目ではなかった。
けれど、超・超・巨大都市と謳われる『ヴォーテックス・シティ』は一度の来訪でその全容をうかがい知ることはできない。
今回彼女が囚われた奴隷たちを解放するために訪れた場所も以前とは全く様相がちがっていた。
研究所然としてはいるものの、そこは本来あるであろう清潔さなどからは程遠いものであった。奴隷たちはモノ同然に鉄格子やコンテナに詰め込まれて運び込まれている。
これまでの戦いもそうであったように、この超・超・巨大都市から奴隷たちを解放するのは、僅かな抵抗にすぎないのかもしれない。いつの日にか来るのかもしれない、この都市への攻略戦への期待を胸に抱きながらゆかりは共に立つ式神のアヤメに指示を出す。
「アヤメ、足になる手頃クルマを探しておいて。運転はできる人に任せましょう」
「研究所への偵察はどうします?」
そちらは大丈夫だと、ゆかりはユーベルコード、黒鴉召喚(コクアショウカン)によって飛び出した鳥形の式神がすでに研究所内に入り込んでいる。
人間であればどうあってもレイダーとの接触してしまう可能性があるが、黒鴉であれば、この悪徳の都市にあっても見咎められることもないだろう。
「黒鴉に周辺を探らせて、この街を安全にスムーズに脱出できるルートを探ってるわ」
「―――わかりました。大人数を乗せられそうなものをピックアップしておきますね」
互いに段取りを決め、別れる。
すでに研究所の内部では騒動が起こっているようだった。かと思えば他の猟兵たちが陽動のように正面から突破していたり、偽の情報を掴まされて混乱に陥っているレイダーたちの姿もある。
これは早々に好機が訪れたとゆかりは駆け出す。
すでに研究所内に放った黒鴉の式神によって奴隷たちが囚えられている区画の目星はついている。
他の猟兵たちもまた同じ様に奴隷たちを開放している以上、ゆかりは取りこぼしのないようにと式神と共有した視界を活用して、研究所内に奴隷たちが取り残されていないかを探るのだ。
「裏口が既に開放されていたのが時間短縮になったわね……っと、いた!」
そこには未だ鉄格子の中に囚われている奴隷たちの姿があった。彼等は一様に弱りきっていた。既に幾度かの拷問を受けた後なのだろう。その痛々しい姿を前にしても急がなければならないと、鉄格子を薙刀で切り払う。
「慌てず急いで! 早くここから離れましょう。だれか、クルマの運転できる?」
彼等の中に運転ができるものがいれば、彼等に任せればいい。
一人が手を上げてくれたおかげで、なんとかなりそうだ。研究所の裏口から奴隷たちを連れて出ると、其処に止まる大型のトラック。
なるべく安静にして運び出したいところではあったが、贅沢も言っていられないだろう。
「安全なルートは、この黒鴉を目印に追って頂戴。そうすれば、都市の外に出られるはずだから」
ゆかりはそう手短に伝える。
これだけの猟兵が集まり、研究所を強襲して奴隷を解放しているのだ。偽情報で錯綜しているとはいえ、そろそろ本命のオブリビオンたちが出張ってきてもおかしくない。
「さあ、これからが本番よ―――!」
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『量産兵子『ジャックス』』
|
POW : スラッシュ
【刀】が命中した対象を切断する。
SPD : デスパレート
敵を【捨て身の一撃】で攻撃する。その強さは、自分や仲間が取得した🔴の総数に比例する。
WIZ : ブースター
【危険な薬物の入った注射器】が命中した対象を治療し、肉体改造によって一時的に戦闘力を増強する。
イラスト:朱夏和
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
研究所の最奥から次々と現れる人影が在った。
彼等はオブリビオン『量産兵子『ジャックス』。フラスコチャイルドが元となったオブリビオンであり、この研究所の成果物でもあった。
奴隷の人々をすりつぶして得た脳内物質や成分、それらを効率よくミックスした存在。
すべて『業病のジュピター』の所業であった。
すでに研究所からは、その材料であろう奴隷たちは一人残らず猟兵達によって開放されて逃されている。
自分たちの体を維持するため、また己達を増やすために彼等は行動を開始する。
偽の情報を流されていたが故に、今まで起動するのに時間がかかったのだ。研究所の地下から次々と発進する強靭なバギーに乗り込んだ量産兵子『ジャックス』たちが、奴隷を逃がす猟兵達を追って、悪徳の都市を駆け抜ける。
周囲にはクルマの残骸や、もしくは重機、改造されてほったらかしにされたクルマ、ありとあらゆるものが無造作に鍵もかけられずに乗り捨てられている。
猟兵達を追う強靭なバギーからの猛追を躱し、オブリビオン、量産兵子『ジャックス』を迎え撃たなければならない―――!
戒道・蔵乃祐
人間狩りの輸送で使われた重装甲バスに乗り込み、ジャックスのバギーと解放された人々を分断するように車体を突っ込ませてかばう
可能な限り、逃げ遅れたり衰弱や怪我で動けない方々を限界まで乗り込ませて発車
◆
橋弁慶を発動
架空世界から幻霊を召喚し、チームワークで無辜の民草を守護
武蔵坊は車体の上で仁王立ち
七つ道具の金棒を構え、怪力+重量攻撃で追い縋ってくるバギー、バスに押し入ろうとするジャックスを痛打で撥ね飛ばして迎撃する
牛若丸はジャンプ+空中戦でバスから出陣
次々とバギーを強襲する八艘飛びでジャックスに切り込み。天狗の早業で残像+クイックドロウの閃撃を放つ
我等目的は違えど心はひとつに
天網恢恢疎にして漏らさず!
天道は厳正にして、厳罰を持ってして悪意に必ず報いあるものであるのだとすれば、悪徳と狂気の都市『ヴォーテックス・シティ』に住まうレイダーやオブリビオンたちは、必ずやその所業の報いを受けるであろう。
量産兵子『ジャックス』たちは、各々が駆るバギーを持って都市を疾駆し、開放された奴隷たちを追い立てる。
そこに彼等の感情は何一つない。
彼等は量産兵子。
個にして全。
あらゆる生命が無意味であるなら、己達の生命すらも無意味である。しかし、彼らは恐れを知らない戦闘者。戦うことでしか己の意義を見いだせない。
そこに善意も悪意もない。あるのは、存在意義だけだ。
「薬剤投与―――開始」
首元に突き立てられる注射器から体に注入される薬剤が彼等の反応速度と肉体の限界を引き上げていく。
使ってしまえば最後。己達の体にどれだけの負荷がかかるやもしれぬそれを躊躇なく使って、悪意の尖兵として都市を疾駆する。
「ぬぅ……! そうはさせません!」
戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)は、ジャックスが追い立てる奴隷の人々との間に人間狩りの輸送で使われたであろう重装甲バスに乗り込み、その車体を割り込ませる。
搭乗口が開き、蔵乃祐の声が響く。
「今のうちに乗り込んで下さい。時間稼ぎは僕たちが!」
人々は一斉に装甲バスに乗り込んで行く。けれど、まだ時間を稼ぐ必要がある。逃げ惑う人々は多い。研究所から開放した奴隷の人々以外にも、あちこちの建物に奴隷たちが存在している。
そんな彼等も誰一人として見捨てることはできない。
開放されたい、自由になりたいと願う心在るものを蔵乃祐は見捨てない。その手を全て掴むと決めている。
「我等宿願の子細有るにより―――時は僕らが稼ぎましょう!」
彼のユーベルコードが輝く。
重装甲バスの車上に仁王立ちするは千本刀狩の武蔵坊。重装甲バスに追いすがろうとするバギーやジャックスの姿があれば、それらを手にした七つ道具の金棒にて打ち払い、吹き飛ばす。
その膂力、まさに橋弁慶(ハシベンケイ)そのもの。
「―――敵戦力。怪力。ならば、速度で持って圧倒」
ジャックスたちが次々と薬剤を投与し、肉体改造に寄って圧倒的な速度を得て重装甲バスに迫る。
だが、それを嘲笑うが如く空中より飛来する影があった。
軽やかに舞い飛ぶ姿は天狗か、もしくは天魔か。ひらりと落ちる花弁のように疾走するバギーの車上に舞い降り、その刀が閃く剣戟が次々とジャックスたちののど元をかき切るは、千人辻斬りの牛若丸。
その凄まじき剣閃と圧倒的膂力に寄って放たれる金棒の一撃は、次々とジャックスたちを、バギーを打ちのめしていく。
八艘飛びのように牛若丸が飛び交い、バギーの運転を任されているジャックスたちを切り刻み制御不能となったバギーが建物に突っ込み爆炎を上げる。
武蔵坊の金棒はどれだけの速度を持って彼を翻弄しようとも無意味である。あらゆる攻撃を受け流す水流の如き変幻自在なる防御の型から一転して放たれる剛力の金棒は、ジャックスたちの体を吹き飛ばし、絶命させる。
「我ら目的は違えど心は一つに」
蔵乃祐のユーベルコードによって召喚された武蔵坊と牛若丸が絢爛舞踏の如き活躍を見せる。
それはいつしか、隠れ潜んでいた奴隷たちに希望の光となって苦難から開放されるための力と成っていく。
重装甲バスが満員になるほど奴隷の人々を乗り込ませ、蔵乃祐はユーベルコードを解除し、運転席に乗り込む。
「天網恢恢疎にして漏らさず! その報いを骸の海にて受けるがよいでしょう!」
爆炎を上げるバギーの車体を後に重装甲バスが悪徳の都市を駆け抜ける。
蔵乃祐は中道を行き、寛容を是とする者である。
あらゆる救いを求める者がいるのであれば、何があろうと彼等を救う。己の道行きがどれほどの困難であろうとも、その道を征く限り、正道にして天道。
今まさに悪事を働くオブリビオンたちに厳正なる報いを与え、隷属させられた人々を救うために重装甲バスを疾駆させるのであった―――!
大成功
🔵🔵🔵
久瀬・了介
大型トラック等、大人数を積める車輌を探し人々を乗せる。振り落とされないように、体力のある者は子供や傷病者を庇ってやってくれ。
多少の車体の不具合は【メカニック】で誤魔化す。脱出するまで持てばいい。今は時間との勝負だ。
真っ直ぐに街の出口まで走らせる。
追ってくる敵の車輌のエンジンを爆破スイッチで遠隔爆破。ブービートラップに似た祟りの力。【連鎖する呪い】が更に道路の陥没や建物の倒壊等の祟りを重ね追撃。
前方に回り込まれたらタイミングと角度を計り、地雷の様に地面を爆破。【体勢を崩す】要領で車体を横転させ走り抜ける。
追いかけてくる限り、祟りが奴らを襲い続ける。運転から気を逸らさず確実に人々を運び出そう。
研究所から開放され、逃げ出す奴隷の人々。
けれど、それらを逃すまいと研究所の地下から飛び出すオブリビオン、量産兵子『ジャックス』たちが駆るバギーが砂塵を巻き上げて悪徳の都市『ヴォーテックス・シティ』を疾走する。
彼等の目的は研究所から脱走した奴隷たち。
けれど、そこに奴隷の生命を慮るようなことはなかった。鎖を飛ばし、絡みつけば引きずり倒して引き回す。
逃げればこうなるのだというのを見せつけるような行為。
「示威行為。研究所から脱走は、即ち死。されど、死にゆく時間を短くするだけの行為。無意味」
ジャックスたちは淡々と脱走した奴隷たちを捕らえようと改造バギーを走らせる。
そんな中、久瀬・了介(デッドマンの悪霊・f29396)は研究所から連れ出した奴隷の人々を伴ってボロボロの大型トラックを見繕い、彼等を積荷台へと乗せ悪徳の都市を走り抜ける。
「体力のある者は、子供や傷病者をかばってやってくれ……多少、揺れる」
メカニックとしての目を持ってしても、あまり状態の良いとは言えない大型トラック。自分の知識と運転技術で補っているものの、改造されたバギーで迫るジャックスたちから何事もなく逃げ切ることは不可能に思えた。
「いや、脱出するまで持てばいい。今は時間との勝負だ」
この超・超・巨大都市『ヴォーテックス・シティ』において、遅れを取るということは、即ち生命の危機につながる。
ここは荒野ではない。
オブリビオン一族の本拠地の真っ只中なのだ。
これが拠点程度のものであれば、多少の問題があっても開放するだけでよかったのだ。荒野に散った人々を再び狩り出すのは、あまりにも徒労に終わるであろうから。
「だが、この都市が生半可な大きさではないことが祟ったな」
そう、もしもどこか都市の途中で大型トラックが停まってしまえば、あたりに存在するレイダー達によってたちまちに蹂躙されてしまうだろう。
その不安材料を裏付けるように大型トラックの背後にぴったりと張り付くように追跡するジャックス達が駆る改造バギーたち。
「―――チッ、もう少し時間を稼ぎたかったが……致し方あるまい」
手にしているのは爆破スイッチ。
怨念によって無機物を突如として爆破するスイッチを押す。瞬間、大型トラックに迫った改造バギーのエンジン部が爆散し、バギーの車体が大きく跳ねる。
「な―――!?」
驚愕に見開くジャックスたちの顔をサイドミラーで確認し、次々と彼等の改造バギーのエンジン部を爆破していく。
けれど、爆破した程度で止まる量産兵子ではない。
ジャックスたちは次々と自分たちの首元に薬剤の入った注射器を押し込み、肉体の限界を越えた薬剤投与に寄って己達の肉体を改造する。
バギーを喪ったとしても、彼等は己の体の限界を超える力を発揮し疾走する大型トラックに取り付こうとする。
「それが甘いと言っている―――祟りの力、思い汁がいい」
了介の言葉が風にのってジャックスたちに届いたような気がした。
彼等の瞳が見開かれる。
それはまるで、連鎖する呪いのようなものであった。
駆け出そうとした瞬間、背後で改造バギーが爆散し、破片が、爆風がジャックスたちを襲う。
爆風に巻き込まれないでも、爆炎を突っ切って了介たちを猛追する改造バギーたちに跳ね飛ばされ、自滅していくのだ。
これこそが、了介の持つ爆破スイッチの持つ祟りの力だ。
「数は減らした。後は……」
後から追いすがる改造バギーが大型トラックの前に回り込む。
かなりガタが来ていた大型トラックがいつのまにか速度を落としてしまっていたのだ。回り込まれ、頭を抑えられてはさらに追いすがる改造バギーたちによって車体を痛めつけられてしまう。
「祟りがあれだけと思うな……意志があろうがなかろうが、お前たちのやったことは、人の恨みを買って然るべきものだ」
了介が爆破スイッチのボタンを押す。
前方を走っていた改造バギーの底面を地面の爆破に寄って横転させる。その脇を大型トラックが駆け抜ける。
だが、まだ背後に迫る改造バギーが数台いる。けれど、もう心配はしていなかった。彼等には自分たちを追いかけ続ける限り、襲う『不慮の事故』に見舞われ続けていた。
エンジントラブル、パンク、横転した改造バギーの残骸など、様々な要因でもって、自分たちを追う道を邪魔し続ける。
「存分に味わうがいいさ」
もう了介は背後を確認することもなかった。
今はただまっすぐに。この悪徳の都市から人々を解放するために運転に集中し、乾いた大地を疾走するのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
アレクサンドル・バジル
助けた奴隷達を『無限収納』から取り出した『魔導装甲車』に乗るよう促します。
さあ、乗った、乗った。行先は自由な世界だ。
乗り込むまでは「炎の槍の乱撃」(属性攻撃:炎×貫通攻撃×範囲攻撃)で量産兵子と周囲の車類を破壊しながら待機。
全員乗ったら特大の雷撃で吹き飛ばして搭乗、逃げます。
邪魔な障害物を吹き飛ばし、踏み潰しながら走行。
追ってくる車はたまに顔を出して、エンジン部分に炎の槍を投げて爆発。
ある程度、研究所を離れ、邪魔が入らない場所まで移動したら降りて『戦闘モードⅠ』を発動。後腐れのないように追手を殲滅します。
さあて、奴隷たちはどうするかね?
ほっぽり出すのも後味が悪いし知り合いのベースと交渉するか。
小さな魔法陣が虚空から魔法の力によって進化した装甲車―――魔導装甲車が突如として現れる。
その光景を目の当たりにした奴隷であった人々の瞳は、まるで奇跡を目の当たりにしたかのように驚愕の面持で一瞬我を忘れていた。
「さあ、乗った、乗った。行き先は自由な世界だ」
己の行った魔法……ユーベルコード『無限収納』より魔導装甲車を取り出したアレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)は、快活に笑いながら開放した奴隷の人々を促す。
すでに開放されたようなものではあったが、此処は未だ超・超・巨大都市『ヴォーテックス・シティ』のど真ん中である。
尋常ならざる敷地面積を持つ、この都市において、開放された人々は多数ではなく圧倒的少数だ。
この都市にはレイダーばかりが巣食っている。このまま放置していては、元の木阿弥だからだ。
アレクサンドルに促されて人々が魔導装甲車に乗り込んでいく。
彼等は囚われて居たがゆえに、乗車にはまごついてしまう。それは無理なからぬことであった。
「おっと、おでましだな。乗り込むまでは時間稼いでやるからな」
アレクサンドルの周囲に浮かぶは炎の槍たち。
魔法に寄ってみ生み出された炎の槍が空を舞い、奴隷達を追ってきたオブリビオン、量産兵子『ジャックス』たちを迎え撃つ。
周囲の車両……つまりは、オブリビオンたちが扱うであろう改造バギーを巻き込みつつ、次々とアレクサンドルはジャックスたちを魔導装甲車に寄せ付けぬようにと撃破していく。
「猟兵。弱きものをかばうのであれば、そこが隙だ」
手にした刀を振りかぶり、アレクサンドルに斬りかかるが、その斬撃に当たるほどアレクサンドルは鈍くはない。華麗にステップを踏み、交わすと炎の乱撃がジャックスたちを襲う。
ちら、と魔導装甲車を見やれば、アレクサンドルが助けた奴隷の人々は皆、乗り込み終えたようであった。
「さて、んじゃぁ―――なっ!」
掲げた手より放たれるは特大の雷撃。
周囲が明滅するほどの圧倒的な電撃に寄って、ジャックス達の視界を塗りつぶした後、アレクサンドルは魔導装甲車に乗り込み、改造バギーの残骸を跳ね飛ばしながら魔導装甲車を飛ばす。
大地を疾走する魔導装甲車を猛追する改造バギーたち。
あれだけ破壊したというのに一体どれだけの物資がこの悪徳の都市に溜め込まれているのだろうか。
それを想像するだけで、この都市を支配している『ヴォーテックス一族』の力が知れよう。
「ったく、しつこいやつらだ!」
追いすがろうとするバギーたちに窓から顔を出し、炎の魔法で持ってバギーのエンジン部を爆散させる。
魔導装甲車は爆炎を背に都市を駆け抜けていく。研究所からはら大分離れただろうか。それを確認したアレクサンドルは魔導装甲車から飛び出し、大地に着地する。
「後腐れがないように、ここでお前らは殲滅してやるよ。魔力開放――」
アレクサンドルが戦闘モード Ⅰ(ディアボルス・ウーヌム)へと移行する。黄金の魔力が体を纏い、飛翔する。
それこそが彼の持つユーベルコードである。
纏う黄金の魔力が、アレクサンドルの戦闘力を増強し、圧倒的な力を持って追いすがろうとする改造バギーごとジャックス達を打ちのめす。
その戦いぶりはまるで鬼神の如く。
荒ぶる神のような力を示し、改造バギーによって差し向けられた追手であるジャックス達を尽く骸の海へと還すのだ。
「さあて、奴隷たちはどうするかね? ほっぽりだすのも後味悪いし……」
爆炎を背に魔導装甲車へと戻っていく道すがら考える。
例え『ヴォーテックス・シティ』より脱出しても後の事を考えていないのでは意味がない。荒野で人々は簡単に生き抜くことはできない。
「知り合いのベースと交渉するか……まあ、取り敢えずは、次、だな!」
それは己の背後に迫る超弩級のモンスターマシンの存在。研究所を構えたオブリビオン、『業病のジュピター』を倒してからであろう。
その圧倒的な力の気配を感じ、アレクサンドルは今はただ、奴隷であった人々を無事に都市の外へ運び出すことだけを考えるのであった―――。
大成功
🔵🔵🔵
ルイス・グリッド
アドリブ歓迎
来た、あれが追手か
生まれてきたところ申し訳ないが、クラッシュして貰おうか
運転できる奴隷に運転させて逃した後、【クライミング】で狭い道の高所で待機してバギーが来るのを待つ
先頭車両が来たら【ジャンプ】で飛び移り、【船上戦】で培われたバランス感覚でバギーの窓ガラスを【怪力】で破壊
そのまま運転手と助手席の敵にUCで【気絶攻撃】して気絶させ、【操縦】【運転】でサイドブレーキをかけて後続車をクラッシュ
俺はその前に【覚悟】【気合い】で脱出し、自分も逃走する
開放された奴隷たちを追うは量産兵子『ジャックス』。
彼らはフラスコチャイルドであり、彼らの存在意義は生み出したオブリビオン『業病のジュピター』によって定義される。
即ち、戦闘者としての生命を全うすること。それだけが彼らの存在意義である。
戦い、死する運命こそが彼らの望むもの。それ以外を持ち得て生まれてきた生命ではないのだ。
そんな彼らに対して、哀れみの感情を抱くのは、何ら不思議ではないことであった。
「来た、あれが追手か……生まれていた所申し訳ないが、クラッシュしてもらおうか。運転を頼めるか」
ルイス・グリッド(彷徨う海賊・f26203)は開放した奴隷たちを乗せた車両の運転を運転のできる奴隷に変わってもらうと、窓から身を乗り出す。
悪徳の都市『ヴォーテックス・シティ』を疾走する車両から後方に同じ様に土煙を上げて、ルイスたちが乗る車両を追跡しているのは、オブリビオン、量産兵子『ジャックス』たちの駆る改造バギーである。
都市のあちこちに放置されていた車両と改造されたバギーとでは、追いつかれるのは時間の問題だった。
「あ、ああ、できるが……あんたは?」
奴隷であった男性が運転を代わりながら尋ねる。彼の疑問ももっともなものであったことだろう。
だが、ルイスは構うことなく走行する車両から高い建物へと飛び移る。
まるで三角飛びの要領で建物の壁面を蹴ると、すかさず改造バギーの先頭車両へと飛び移る。
ボンネットをへこませ、ルイスの身体が、奴隷たちの乗った車両を追跡する改造バギーに落ちる。
「悪いが―――」
此処から先は行かせない。
握り締めた拳が改造バギーのフロントガラスを怪力で破壊する。
飛び散る破片。けれど、量産兵子であるジャックスたちもどうじてはいない。猟兵であれば、これくらいはやるであろうと冷静に判断していたのだ。
「脅威。このまま振り落とす」
改造バギーが蛇行運転を開始し、ルイスの身体を振り落とそうとするも彼はボンネットから振り落とされない。
それはこの車上よりも荒れ狂う海を征く船上において培われた素晴らしい体幹によるバランス感覚で振り落とされることなくボンネットの上に立ち上がり、助手席に座るジャックスが刀でルイスを突こうとした瞬間、カウンターのように放たれた一撃必殺の拳がジャックスの一人を気絶させる。
「彼らを追いかけ回すのは、ここでやめてもらおう」
フロントガラスから手を伸ばしたのはサイドブレーキ。
凄まじい音を立ててつんのめるように改造バギーが跳ね、横転する。後続車が、それを避けることなどできようはずもなく、次々と横転した先頭車両に突っ込んで爆炎を上げていく。
ルイスもタダではすまない程の盛大なる横転であったが、彼の身のこなしは言うまでもない。
横転した瞬間、車体を蹴って転がるようにして巻き込まれることを回避せしめた。
「ふぅ……これで彼らは追うことはできまい……後は」
そう、この後に控えるオブリビオン『業病のジュピター』もまた、自分たちを追ってくるだろう。
今は奴隷であった人々が無事に都市の外に逃げおおせることだけを考えるしかない。
足となる車両を喪ってしまったが、幸いにして此処は悪徳の都市。
そこら中に車両は鍵もかけずに放置されている。すぐさまクルマを手に入れ、逃走するのは難しいことではないだろう。
「少しでも彼らの助けになったか……ならいいか」
記憶なくとも、自身の性分はよくわかっている。
困っている人を見過ごせない。助けることによって己がどれだけの窮地に陥ったとしても関係ない。
託されたメガリスが在る限り、そうあるべきとまるで誰かが己の背中を押すのだから―――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
トラックは運転出来る人がいるからいいとして、アヤメもそっちをお願いね。あとで飛鉢法で合流するから。
それじゃあ、黒鴉であらかじめ得た移動ルートの確実に通らざるを得ない地点を「地形の利用」で割り出して、待ち受けましょうか。
「全力魔法」酸の「属性攻撃」「結界術」「範囲攻撃」で紅水陣を展開。
自身は「環境耐性」で自滅を防ぐ。
紅に染まれ、レイダーたち。この絶陣の中では、ご自慢のバギーも使えない。エンジンが給気する度に酸を吸い込み溶けていく。
降りてきたジャックスたちを、薙刀で「なぎ払い」、「串刺し」にし、「衝撃波」を撒き散らして刈り取っていくわ。
足止めは充分かしらね。飛鉢法で空飛ぶ鉢に乗って退散しましょ。
「アヤメもそっちをお願いね。後で合流するから」
そう言って、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)は式神であるアヤメに奴隷たちを乗せた車両の護衛を頼んだ。
すでにゆかりの中では、戦略が組み上げられていた。
「ご武運を―――」
そう言って土煙を上げて離れていく奴隷を乗せた車両とアヤメたち。それを見送って、ゆかりは悪徳の都市に立つ。
研究所を猟兵たちが襲撃し、次々と捕らえられていた奴隷たちを解放した。ニセの情報を流した猟兵がいたおかげで、オブリビオンである量産兵子『ジャックス』たちの初動を大きく遅らせたことは、かなり大きかった。
故にゆかりは此処で確実に奴隷たちを都市の外へと逃げ出せるようにと殿を務めたのだ。
すでに黒鴉の式神によって共有した視界から得た情報を元に、ジャックスたちが奴隷たちを追跡するために使用するであろう移動のルートを割り出す。
おそらく此処であろうという道にゆかりは薙刀を持ち、待ち構える。
「これより先は行かせないわ―――古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。魂魄までも溶かし尽くす赤き世界よ、我が呼びかけに応え、世界を真紅に塗り替えよ。疾っ!」
真っ赤な血のような、全てを蝕む強酸性の雨が周囲に降りしきる。
紅水陣(コウスイジン)。それは彼女のユーベルコードが生み出すあらゆるものを腐食させる赤い靄。
戦場を包み込んだ赤い靄は、触れるだけで全てを蝕んでいく。ゆかり以外であれば、たちまちに爛れるように侵食され、オブリビオンであれば霧散し消えていくほか無い。
「紅に染まれ、レイターたち。この絶陣の中では、ご自慢のバギーも使えないでしょう!」
真っ赤な靄の中を無理やり突っ込もうとしたのだろう、ゆかりは陣の中で響き渡る改造バギーが次々とエンジンを止め、立ち往生する音を聞いた。
駆け出す。
敵は今混乱の中にあるだろう。量産兵子『ジャックス』はフラスコチャイルド故に、環境への耐性を持っている。
どんな劣悪なる環境下においても活動できるフラスコチャイルドであるが、逆に清浄なる空気の前では生命維持装置を使わなければ生きることもできない。
「―――投薬開始」
ジャックスたちは次々と注射器を持ち、この混乱に乗じてやってくるであろう猟兵―――ゆかりの奇襲に備えようとしたが、待ち受けていたということはすでに奇襲のタイミングすら完璧であるということだ。
「遅い!」
ゆかりの身体が赤い靄から現れると、一瞬でジャックスたちを薙刀で薙ぎ払い、突き出した刀身が放つ衝撃波が彼らの身体をしたたかに打つ。
どれだけ投薬に寄って肉体を改造しようとも、一瞬で薬剤の効能がでるわけもない。強化されるのならば、強化され切る前に打ち倒す。
それにゆかりはジャックスたちを此処で全て打ち倒そうと考えていなかった。
彼女の目的は足止めだ。
それができるだけの力を有しているからこそ、殿を務めたのだ。本来であれば、殿は命を捨てる者である。
けれど、彼女には帰りを待つものがいるのだ。簡単に生命をくれてやる道理など、どこにもない。
「足止めは十分かしらね」
ジャックスたちを打倒したはいいが、すぐさま後続の改造バギーたちがエンジン音を響かせて迫りくる。
「あとは、この陣の前に立ち往生するといいわ。さ、さっさと退散しましょ」
飛鉢法にて、鉄鉢に乗るとゆかりは颯爽と赤い靄の霞む陣より撤退する。早くアヤメと合流したい。
恋しく思いながら、彼女は空を舞い、夜でも昼間のように明るい悪徳の都市の綺羅びやかな光を浴びて、飛翔するのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
守上・火鈴
◎アドリブ歓迎
む!バギーがたくさん走っていきますね!!皆さんを追わせはしませんよ!!
【怪力】【必殺拳打・兜割リ】で跳躍!バギーに飛び掛かりましょう!お邪魔します!!
わたしは運転とかできませんからね!バギーをどんどん飛び移りながらボコっていきますよ!
たとえ振り落とされてもなんのその!何度でも飛びついて叩き潰します!
拳の放つ衝撃波が次々とレイダーたちを打ちのめす。
どれほどそうしていただろうか。他の猟兵達の活躍もあって、次々と奴隷たちは研究所から開放されて逃げていく。
殆どの者たちは猟兵が調達した車両に乗って逃げていく。けれど、問題はそこからだった。次々と研究所の地下から現れる改造バギーたち。
それを運転し、車両にて逃げる奴隷たちを追うのはオブリビオン、量産兵子『ジャックス』たちであった。
「む! バギーがたくさん走っていきますね!! 皆さんを追わせはしませんよ!!」
守上・火鈴(鉄拳・f15606)は研究所に屯していたレイダーたちを、その鉄拳に寄って制裁し続けていた。
その横をかすめるようにして次々と改造バギーが飛び出していく。
さすがの彼女も猛スピードで走る改造バギーと同じ速度で走り続けることはできない。けれど、彼らと同じ様に車両を用意しようにも、彼女は運転ができないのだ。
「むむ!! ですが、油断大敵。見敵必殺。やってやれないことなどないのです!!」
その強靭なる脚力が大地を蹴る音が、轟音の如く悪徳の都市に響き渡る。
それは火鈴の足に宿る尋常ならざる力によって弾丸の如き勢いで奴隷の人々を追う改造バギーへと迫る。
「お邪魔します!!」
それはまさしく青天の霹靂の如く。彼女は強靭なる脚力で持って、跳躍しただけではなく、ユーベルコード、必殺拳打・兜割リ(ヒッサツケンダ・カブトワリ)によって、即座に改造バギーを運転する量産兵子『ジャックス』の頭上から放たれる右ストレートに寄って、一撃の下にオブリビオンを霧散させる。
「な―――!?」
助手席に座っていたジャックスは目を剥く。それはあまりにも突然なる出来事だった。
火鈴が大地を蹴った音までは感知できていたのだろう。
けれど現実はどうだ。次の瞬間には拳の一撃に寄ってオブリビオンであるジャックスは一撃の下に葬り去られて―――。
「ひっさあああぁぁぁぁつ!!!」
次の瞬間、そのジャックスは頭を吹き飛ばされていた。
あまりにも規格外なる膂力。
その拳の一撃は何者も防ぐことができない。改造バギーは無人となり、ハンドルを握る者がいなければ、舗装されていない大地を疾走する車輪は蛇行を始める。
火鈴はすかさず、別の改造バギーの車両へと飛び乗る。
背後で蛇行した改造バギーが建物に突っ込み爆炎を上げる。
「お邪魔します!! 覚悟してもらいますよ!!」
その頃には再び火鈴の拳がジャックス達を打ちのめす。言う成れば八艘飛びの如く。軽やかに次々と改造バギーの車上へと舞い降りては、必殺の拳に寄ってジャックスたちを打ちのめしていく。
慌ててハンドルを切って火鈴を振り落とそうとしても、最早遅きに失していた。この程度で彼女が振り落とされることはない。
「振り落とそうとしても無駄ですよ!! 何度でも取り付いて、飛びついて―――」
振るわれる鉄拳の一撃は過たず。
彼女の拳は悪事を働く者にのみ振るわれる。作られた生命。フラスコチャイルドのオブリビオンであったとしても、その目的が悪しきものであるのならば、それは彼女が拳を振るうに値することである。
「悪いことができないように叩き潰します!!」
次々と改造バギーが横転し、爆炎を上げ続ける。そんな最中に火鈴の鉄拳が悪を穿つ音だけが、延々と響き渡り続けるのであった―――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
お次はカーチェイス
研究所の輸送用トラックで良いのが無いかな?
出来れば宇宙のデステニーを染めそうなくらいのごっついやつ
●
皆をトラックに誘導して詰められるだけ詰めて荷台に乗って貰って出発進行
とはいえ、追っ手がある以上ちょいっと本気出さないとダメかな
まずは【神器複製】を起動
4振りの模造神器全てを複製しめて356本
『念動力』でトラックの周囲に随伴させながら脱出しよう
ジャックスが追いついて来たら複製剣を後方に道に突き刺し、簡易バリケードにしてバギーの足止め
出来れば数本遊撃としてタイヤを狙うように稼働させとこ
前に回られたら、複製剣を組合せ、『オーラ防御』のオーラで舗装して道を作って上に回避
●アドリブ等歓迎
悪徳の都市『ヴォーテックス・シティ』にはありとあらゆる物資が集まる。
それは文明の残滓である廃墟からブリンガーたちが決死の思いで取り戻してきた物資をレイダーたちが強奪した結果である。
レイダーにとってあらゆるものが『キング・オブ・キングス』と呼ぶに相応しいオブリビオン一族である『ヴォーテックス一族』へと上納すべきもの。
故にこの悪徳の都市にはありとあらゆるものが集積し、まるで文明の夢の痕のように積み上げられていく。
それは物資だけではなく、人もまた同様であった。
ヴォーテックス・シティの一区画、『業病のジュピター』が研究所を構える区画において、巨大なる赤い牽引自動車……トレーラーを前に月夜・玲(頂の探究者・f01605)は、まさかこんなものまであるなんて、と思わず呟いた。
「輸送用のトラックで良いの無いかな? なんて安易に思ったけど、あるんだ……ていうか、こう……アレがアレして、アレになって、あー……って感じに変形しそう」
サブカルチャーマニアである彼女にとって、目の前の赤いトレーラーは開放された奴隷の人々を運んで悪徳の都市を脱出するには好都合なものであったのだが、あまりにも彼女の知るサブカル文化に馴染んだものであったのが意外だったのだ。
「流石に変形はしなさそうだけど、あちこち改造さてる……レイダーってみんなこんなセンスなの? ……いいや。さ、みんな乗って乗って」
開放された奴隷たちは皆、トレーラーの荷台に乗り込んでいく。
乗れるだけ乗ってもらおうとあちこちから奴隷たちが集まってくる。すでに猟兵達の多くも行動しているようで、研究所の地下から溢れるように改造バギーに乗り込んだ量産兵子『ジャックス』たちが逃げ出した奴隷たちを追い、疾走する。
「出発進行……とはいえ、追手がある以上、ちょいっと本気出さないとダメかな」
巨大なトレーラーである以上、装甲は分厚い。
荷台に乗っている奴隷たちも頭さえ出さなければ、銃撃されたとしても平気であろう。けれど、巨大であるがゆえにハンドリングは難しく、直線ならいざしらず、カーブが多発すれば横転は免れないだろう。
「さあ、私の研究成果のお披露目だよ!」
彼女特製のガジェット。模造神器である四振りの剣が神器複製(コード・デュプリケート)され、膨大な数の刀身が宙に浮かび、トレーラーの周囲に展開される。
全て念動力に寄ってコントロールされた、模造神器の複製刀がトレーラーに随伴する。
トレーラーのエンジン音が凄まじい音を立て、悪徳の都市を疾走する。土煙を上げ、その威容を知らしめるように凄まじい地響きを引き起こしながら開放された奴隷の人々を乗せて自由へと押し進むのだ。
「やっぱり目立つよねー……ちょっと欲張りすぎたかもしれない。というより、あれだね。みんな好きかな。男の子はこういうのさ!」
大勢の奴隷の人々を乗せたトレーラーはそれだけで目立つ。
しかもそれが、猟兵の運転するトレーラーであるのならば、オブリビオンである量産兵子『ジャックス』の目に止まらぬわけもない。
次々と跳ねるようにして改造バギーがトレーラーに追いすがる。すぐに並走されてしまう。
「停車させる。吶喊」
その改造バギーごと、トレーラーに体当たりをぶちかまそうとするジャックスたち。トレーラーの車輪や巨体に巻き込まれれば、己たちとて無事にはすまないだろうに、それでも巨大なトレーラーに怯むこと無く体当たりを敢行しようとするのだ。
「自爆攻撃か。させないよ!」
随伴する模造神器が突撃しようとする改造バギーたちを阻むように後方にバリゲードの如く柵を組むように大地に突き刺さる。
そこに突っ込んでくる改造バギーたちは次々と模造神器の刀身に触れ膾切りにされてしまう。
爆炎が後方で上がるのをサイドミラーで確認しながら玲は次々と模造神器を飛ばす。
何もバリゲードだけが使いみちではない。念動力でコントロールされる以上、彼女のメカニックたる手腕を持ってすれば、精密な動作など言うまでもない。
タイヤを破壊され、改造バギーが悪徳の都市に転がり果てる。
「よし、後は一直線―――って、回り込むかぁ……でもさ!」
巨大トレーラーの前面に改造バギーが回り込んでくる。これだけ数が多いと、迂回して回り込む知恵も働くのだろう。
けれど、晶は慌てない。
前面に複製神器を展開し、オーラの力で覆う。それは言ってしまえば、バンクであり、発射台であった。
傾斜のついた複製神器による舗装。そこを巨大トレーラー駆け抜け、その巨大なる車体を宙に浮かばせる。
改造バギーの頭上を飛び、華麗に改造バギーの進路妨害を回避した玲は軽快に笑いながら、爆走の逃避行を続けるのであった―――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『業病のジュピター』
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POW : 病勢のニーズヘッグ
【両手の砲身から放たれる医療用レーザー】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD : 病臥のラタトスク
【自動追尾麻酔ミサイル】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全対象を眠らせる。また、睡眠中の対象は負傷が回復する。
WIZ : 病理のフレースヴェルグ
自身の身体部位ひとつを【対象の病魔根絶に適した形】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
イラスト:ekm
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠トール・ペルクナス」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
悪徳の都市『ヴォーテックス・シティ』の一区画にある研究所が地響きを立てて崩れ去る。
それは研究所の崩壊であったが、同時に地下に存在したモンスターマシンの到来を告げる轟音でもあった。
「研究材料が逃走? 猟兵が? 私の研究を邪魔する? ―――それは許されざること! 私の研究は至高にして崇高なるもの! 不死は全人類の憧れ! あらゆる病を克服し、死すら乗り越えることこそが、人類の正しき進化! だというのに猟兵はそれを邪魔する―――」
ならば、それは己の障害である。
障害は乗り越えるものではない。障害はすりつぶすものである!
研究所が瓦解していく最中、その地鳴りよりもさらなる轟音を立てるエンジン音が響き渡る。
研究所よりも巨大な、まるでブルドーザーを人型にしたかのようなモンスターマシンが瓦礫と化した研究所痕から飛び出す。
あらゆるものを押しつぶし、すりつぶし、吹き飛ばして『業病のジュピター』が駆るモンスターマシン『イモータルモンスター』が悪徳の都市に、その悪意を振りまくように轟音を響かせる。
「障害は取り除く。やはり猟兵は病巣……! 取り除く、切除する。人類に猟兵は不要―――!」
その悪意が膨れ上がったように『イモータルモンスター』があらゆるものを押しつぶしながら、猟兵達に迫るのであった―――!
ルイス・グリッド
アドリブ・共闘歓迎
病巣か、まあ、お前達を蝕むというなら正しい
病巣だというならしっかり狙え。切除すら出来ないとは飛んだヤブ医者だな
いらない、そうだな、この先は生者達の物。お前こそ人類に不要
相手を【挑発】して狙いをこちらに向けさせる
避けている最中に崩壊に巻き込まれそうな奴隷を【視力】【暗視】で探して見つけ出せば【地形破壊】を使ってでも救助して逃す
周りに奴隷がいないのを確認してから攻撃開始
【足場習熟】【ジャンプ】を使いマシンを【クライミング】し【怪力】【力溜め】【重量攻撃】【限界突破】【鎧無視攻撃】を使いながらUCで攻撃する
悪徳の都市に巨大なるモンスターマシン『イモータルモンスター』の巨躯が大地を激震する。
建物も、人も、何もかも押しつぶして進むブルドーザーの如き姿は、対峙する者たちに畏怖を抱かせたことだろう。圧倒的な存在、あらゆる抵抗も、抗議も、何もかも押しつぶす圧倒的な力。
「病巣は疾く取り除かねばならない―――! 私の、人類救済はまだ始まったばかりなのだ! 人々に希望などというか細い光を見せるから、それにすがりつきたくなる。ありもしない未来を夢見てしまう。そんなものとうの昔になくなっているというのに」
オブリビオン『業病のジュピター』の声が巨大なる重機の如きモンスターマシンから響き渡る。
ブルドーザーの形をしているが、その両脇に備えられたレーザー砲から放たれる破壊光線は、あらゆるものを破壊する。
煌めく緑の光線が悪徳の都市『ヴォーテックス・シティ』をまばゆく照らす。
「病巣か―――まあ、お前たちを蝕むというなら正しい」
ルイス・グリッド(彷徨う海賊・f26203)は、対峙すればだれしもが恐怖に足を竦ませる巨大なるモンスターマシンの前にたっても尚、心に恐怖が訪れることはなかった。
彼はデッドマンである。
死を超越した存在。ある意味で『業病のジュピター』が求める何者かであったことだろう。それ故に、かのオブリビオンが語る言葉の意味が無意味であることを彼は知っていた。
「猟兵! 私の崇高なる使命を邪魔する障害……!」
緑の破壊光線が建物を巻き込んでルイスへと放たれる。それをルイスはしっかりと見ていた。
彼の言葉は全て挑発だった。
この建物のあちこちに奴隷たちが居ることは、すでに気配でわかっている。
建物は奴隷たちを捕らえている檻のようなものだ。ならば、己の力ではすぐさま破壊して助け出すことはできない。
「病巣だというなら、しっかり狙え。切除すら出来ないとは飛んだヤブ医者だな」
ルイスの挑発が飛ぶ。
すぐさま破壊された建物の中に駆け込み、奴隷の人々を抱えて飛び退る。瓦礫が飛び散る視界の中でモンスターマシンが咆哮するようにエンジン音を響かせ、ルイスに迫る。
「顔が真っ赤だぞ、ヤブ医者め。鏡を見てみろ」
鼻で笑う。抱えた奴隷を逃し、再び攻撃の標的を己に絞らせる。
どれだけの攻撃を受けても、例え己の身体がバラバラにされてもデッドマンであるルイスには意味がない。
時間が立てば傷はふさがり、喪った部分は再生してくる。
それが如何なる理由で持って、己の身体をデッドマン足らしめているのか。記憶のないルイスにとってはわからぬことであった。
けれど、たった一つわかっていることがある。
「私を、ヤブ医者と謗るか、猟兵―――!!」
ルイスの言葉に『業病のジュピター』が吠えたける。それは己を侮辱されたこと、そして、己の攻撃すらも奴隷の解放に利用されたことによる怒りだった。
「そうだ! 猟兵は病! 人々の心に希望という病を齎す! お前たちはいらない!!」
緑の光線がルイスを狙う。
だが、すでに狙いをつけた先にルイスの姿はなかった。
「いらない……そうだな。このさきは生者達のもの―――」
ルイスは巨大なる重機たるモンスターマシンの装甲へと飛び乗り、苦もなく上り詰めていく。
そう、これから先、どれだけの時間が流れるかからない。
開放された奴隷たちにとって、これからの時間こそが生きる戦いである。病に侵されようとも、どれだけの艱難辛苦が訪れようとも彼らは生きることを諦めないだろう。
すでに生命の埒外にある己とは違う。
だからこそ、力持つものが守らなければならない。たった一つの目的だけが、ルイスの身体を突き動かす。
握り締めた拳に力が宿る。
「彼らは自分たちの力で生きていける。不死など必要ない。生きるために必要なものは、まだまだたくさんある―――!」
放たれた一撃必殺たる拳の一撃が、モンスターマシン『イモータルモンスター』の側面に備え付けられたレーザー砲を打ち砕く。
「お前こそ人類に不要―――」
凄まじい拳の一撃に脱落する砲と共にルイスは拳を突き上げた―――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
こいつも、周りの被害なんて考えてないわね。早くアヤメたちと合流したいけど、こんなものは放っておけない。
飛鉢法で飛び回りレーザーやミサイルの攻撃を回避して、「全力魔法」雷の「属性攻撃」の九天応元雷声普化天尊玉秘宝経。機械なら、電撃はよく効くでしょう。
迎撃は「破魔」「高速詠唱」の不動明王火界咒の爆炎を煙幕代わりに。
敵の攻撃がそれに巻き込まれてる間に、小回りの利く動きで脚を狙って玉秘宝経で雷撃を落とす。
必要なのは確実に動きを止められる破壊力。一撃で足りなければ、二撃三撃と。
飛行する可能性もあるから、それは意識の片隅に留めておいて、実際に飛んだら、脚よりも推進器を優先して雷撃で潰すわ。
これで終わりね。
猟兵の拳の一撃が巨大な重機の如きモンスターマシン『イモータルモンスター』の両脇に備えられたレーザー砲を片方、砕き脱落させる。
蓄えられたエネルギーが逆流し、凄まじい爆発を起こして尚、オブリビオン『業病のジュピター』は止まらなかった。
あたりの建物を壊しながら、あらゆる障害となるものを踏み潰しながら進む。
それは理性ある者の行動とはとても思えなかった。
「こいつも、周りの被害なんて考えてないわね」
村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)は、空飛ぶ鉄鉢の上から、そのモンスターマシンの威容を見下ろしていた。
一刻も早く開放した奴隷たちと都市の外へと向かっている式神のアヤメと合流したかったのだが、周囲への被害も考えずに押し進むだけの『業病のジュピター』の駆るモンスターマシンを放ってはおけない。
「私の、私の崇高なる! 至高なる使命を理解せぬ病巣共が! 私の邪魔ばかりをする。貴様らは研究材料すら生ぬるい! 切り刻み、あらゆる力を絞り出し、永遠に苦しませて、簡単には死なせない!」
緑の光線が悪徳の都市に煌めく。
爆発が起こり、モンスターマシンの眼前に姿を現したゆかりの乗る鉄鉢めがけて光線を放つのだ。
それらを華麗に躱しながら、ゆかりは不動明王火界咒によって生まれた爆炎で『業病のジュピター』の視界を潰し、ブルドーザーの如きキャタピラが備えられた足まわりへと回り込む。
「機械なら電撃はよく効くでしょう―――九天応元雷声普化天尊! 疾っ!」
放たれるは、九天応元雷声普化天尊玉秘宝経(キュウテンオウゲンライセイフカテンソンギョクヒホウキョウ)によって放たれる周囲の視界を阻害するほどの激烈なる落雷。
その一撃は巨大なる威容を誇るモンスターマシンを穿つように落とされ、電気系統で制御されているであろう車体の動きを止める。
さらに足まわりのキャタピラへと次々と雷撃を放ち、完全に足を止めようとするのだ。
「なんという膨大なる電力! だが!」
放たれるレーザー光線が鉄鉢をかすめる。
電気系統へのダメージへの防御はある程度なされているのだろう。一撃では止まらぬモンスターマシン。
『業病のジュピター』の放つ緑の光線は、片方が猟兵の攻撃に寄って損失していても、それでも尚ゆかりを追い詰めるには十分すぎるほどの火力で持って空を飛ぶゆかりを追い詰めていく。
だが、足まわりを攻撃するために低空飛行を続けるゆかりを捉えることは難しい。
だが、それはゆかりの方も同じであった。雷撃を放っても一撃では完全に足を止めるには至らない。
電撃に対する対処もなされていることは予想できたが、ここまで頑強であるとは想像しなかった。
「それがなんだっていうの―――!」
ならば、確実に動きを止められる破壊力。一撃で足りなければ、二撃、三撃と連発すればいいのだ。
次々と放たれるユーベルコードの雷撃。
悪徳の都市に焚かれた灯りを塗りつぶさんばかりの激烈なる落雷が、煌々と光る都心の上空を紫の光で染め上げる。
「そのマシン、なんでもアリって感じがするけれど、アリそうな可能性は全部潰してあげる!」
ゆかりはありったけの力を使い、雷撃を放ち続ける。
その雷撃はいつしか、雷撃に対する耐性すらもモンスターマシンから削り取り、その巨大なる巨躯から黒煙を上げさせるまでに至るのだ。
でたらめなる雷撃の猛攻の前に『業病のジュピター』は叫ぶ。
「なんたることだ! 私の偉業を理解せぬやからに―――!」
けれど、その言葉は落雷の音によってかき消される。
ゆかりの放ったユーベルコードの雷撃が、再びモンスターマシンを天上より撃つ。
まるでこれまで虐げられた人々の苦痛を代弁するかのように、激烈なる雷撃が幾度も打ち込まれるのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
久瀬・了介
この体になって分かる。生命はシステムだ。不死への改良、不可能とは言わない。
病や障害に苦しむ人の前で倫理や尊厳等、口にする気もない。
だが、貴様が作ろうとしているのは永遠の魂の牢獄だ。
過去に縛られた貴様らに、人間の未来に関わる資格はない。
【呪縛】を放ちジュピターを拘束する。
モンスターマシンが暴れ続けるなら、傷を癒す為に巻いていた呪詛包帯をほどき、伸ばし絡めて【ロープワーク】で動きを止める。千切られない様、渾身の【呪詛】を込め強化。民間人に被害を出す訳にはいかない。
不死の筈の肉体の寿命が削られていく。構わない。更に【2回攻撃】で追撃。【武器改造】で炸裂弾を込めたハンドキャノンでジュピターを狙い撃つ。
片方のレーザー砲が脱落した『業病のジュピター』が駆るモンスターマシン『イモータルモンスター』の巨躯が雷撃に寄って黒煙を上げる。
それは駆動系や、それらを制御している電気系統へのダメージを示していた。
足を止める事に成功したが、それでもまだオブリビオン『業病のジュピター』は健在である。
「私の邪魔ばかりをする障害物―――病巣共め! 崇高なる使命の前に、貴様ら猟兵ごときが立ちふさがっていい理由などないのだ!」
一度は足を止めたブルドーザーの如き重機の巨体が蠢くように震える。
それは『業病のジュピター』が持つユーベルコードによって、病巣を取り除かんと止められた足まわり……キャタピラをスパイクの付いたオフロードのタイヤへと変貌させる。
「足を止められるのであれば、全て砕いて進めばいいのだ! 踏み潰し、すりつぶしてくれる!」
雷撃によって停止していた巨体がエンジンの唸り声を上げて、再び開放された奴隷たち、そして猟兵達を追い立てようと進もうとして―――動きを止めた。
「―――何ッ!?」
そして、『業病のジュピター』は見ただろう。
このあらゆる障害物を踏み潰し、砕いて進むモンスターマシンの圧倒的な馬力に対抗する凄まじき力の権化を。
「この体になって分かる。生命はシステムだ。不死への改良、不可能とは言わない」
モンスターマシンのあちこちに強靭なる呪詛包帯が伸び、拘束し続けている。
その真っ黒な包帯の先にあるのは、久瀬・了介(デッドマンの悪霊・f29396)の姿であった。
その力はあまりにも人間離れしていた。
「病や障害に苦しむ人の前で倫理や尊厳等、口にする気もない」
了介にとって、それは当たり前のことであった。
己の身体が不死の体現者であるデッドマンであるがゆえの傲慢と取られてもおかしくはない。けれど、皆が全て己と同じに成ればいいとは思っていない。
思うわけもない。
この身を突き動かすのは憤怒だ。こんなどす黒い感情を抱き続けねば生きて行けぬ身体のどこに生命の意味があるのだと、了介は漲る力が溢れるヴォルテックエンジンが産み続ける魂の衝動とも言うべき膨大な電力が彼の圧倒的な膂力で持って、モンスターマシンを、この場に留め続ける。
「き、貴様……何故、このモンスターマシンを止められる!? 何万馬力あると思っているのだ!?」
『業病のジュピター』が驚愕に震える。
それはありえない光景であった。たった一人の猟兵の持つ力によって止められるわけがない。そんな計算などしたことがない。
「黙れ。貴様が作ろうとしているのは永遠の魂の牢獄だ。過去に縛られた貴様らに―――オブリビオンに人間の未来に関わる資格はない」
その言葉とともに放たれる呪いの言霊。
呪詛が一斉に呪詛包帯をつたい、モンスターマシンの巨体へと伝播する。
それこそが呪縛(ジュバク)。ユーベルコードを封じるユーベルコードである。
変形したスパイクの付いたタイヤが次々と破損したキャタピラへと姿をもとに戻してしまう。
これで再び移動できなくなったモンスターマシンの中で『業病のジュピター』が喚くようにして叫ぶ。
「ふざけるな! 私の崇高なる使命は、人を! 人類を! さらなる高みへと誘うものなのだ! 誰しもが死の苦しみ、恐れから逃れられない! 病さえ根絶すれば、希望という病さえ―――!」
ぎりぎりと己のユーベルコードによって、デッドマンである了介の中にある不死の肉体のどこかにあるであろう、『何か』が削られていくのを感じた。
それはきっと致命的な『何か』であったことだろう。
なんであるのかわからない。けれど、大切ななにかであろうことはわかっていた。
「―――だからなんだ。構わない」
その赤い瞳がユーベルコードに輝く。構えた大型拳銃の銃口が、モンスターマシンの操縦席に座す『業病のジュピター』を狙う。
呪帯弾が一発の轟音に聞こえるほどの速射によって放たれる。
一射目の弾丸が操縦席の装甲を穿つ。
二射目の弾丸が『業病のジュピター』の機会人形の身体を穿つ。
「―――ゴアッ!?」
機械であるがゆえに痛みはないであろう。
だが、了介のはなった弾丸は呪詛の込められし対オブリビオン用の弾丸である。
その弾丸に込められているのは火薬ではない。
オブリビオンを呪い殺す圧倒的なる呪詛である。
「お前は邪魔だ。人の道行きにとって障害物にすぎない。だから、それを取り除く俺たちがいる。消えろ、骸の海へ―――」
モンスターマシンの操縦席の中に、『業病のジュピター』の絶叫が木霊した―――。
大成功
🔵🔵🔵
アレクサンドル・バジル
会話が通じなそうな奴が出てきたな。
まあ、狂科学者かつオブリビオンなんだから仕方ねーか。
奴隷ごと『魔導装甲車』を『無限収納』に。
「俺が開けるまで外に出るなよ? 迷子になるぞ」
『戦闘モードⅠ』で空を舞い、牽制で鉄を溶かし装甲を穿つ火炎魔弾の乱舞(属性攻撃:炎×貫通攻撃×範囲攻撃)を『イモータルモンスター』に。
牽制に紛れて接近。操縦席の装甲を力任せに剥がします。
初めましてこんにちは。で、さよならだ。
ありったけの魔力を籠めた拳を『業病のジュピター』の顔面へ。
※周囲への被害も視野に入れておきます。倒壊などに巻き添えになりそうな一般人がいた場合は戦闘の片手間に『念動力』でそれを止めて助けます。
「許されない! 私の理念、私の理想、私の使命! それを理解せぬ俗物どものが―――!」
呪詛に塗れた体を震わせるようにしてオブリビオン『業病のジュピター』は吠えたける。
機械人形であるがゆえに、呪詛に塗れてもまだ動けるようであったが、その力は弱まってきている。
雷撃と呪詛によって未だ動けないまでも、それでもまだ開放された奴隷の人々―――『業病のジュピター』が言う所の研究材料を求めて、モンスターマシン『イモータルモンスター』を走らせようとするのだ。
脱落したレーザー砲は、もう片方しかないが、それでも緑の破壊光線が周囲に撒き散らされる。
それはまさに癇癪を起こした子供のようであった。
「会話の通じ無さそうな奴が出てきたな。まあ、狂科学者かつオブリビオンなんだから仕方ねーか」
アレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)は黒髪がさらりと風に揺れる後頭部をかきながら魔導装甲車から降りた。
彼の瞳が見据えるのは、巨大なる重機を組み合わせて生み出されたモンスターマシン。彼ら猟兵が開放した奴隷たちを取り戻さんと猛追するオブリビオンの乗機である。
あれを倒さないことには、いつまでたっても開放した奴隷の人々を追いかけ回すだろう。それはアレクサンドルにとっては、面倒極まりないことであった。
「俺が開けるまで外に出るなよ? 迷子になるぞ」
そう言ってアレクサンドルは魔導装甲車に乗る奴隷の人々に呼びかけた。別段何か含めて言うつもりはなかったのだが、彼の態度、言葉、そのふるまいは確かに彼らをして神としての権能を確信させるには十分であったようだった。
言葉少なくうなずきを返す彼らを乗せた魔導装甲車を魔法陣を虚空に生み出し、魔導装甲車を無限収納スペースに吸い込ませる。
これで外界からの接触はできないだろう。
それにこれより行われる戦いの余波を気にしなくていいというところがアレクサンドルにとっては重要であった。
「魔力解放―――」
開放された黄金の魔力を纏い、戦闘モード Ⅰ(ディアボルス・ウーヌム)へと移行するアレクサンドルの身体が空へと舞い上がる。
自身の魔力に比例した戦闘力の増強。
けれど、それは神たる彼の身をもってすれば、尋常ならざる魔力に寄って強化され続けるということだ。
単純ながらも地力で勝る神たる彼であるからこそ行える凄まじき力。
「猟兵! 猟兵! 私の使命を邪魔する病巣! 全て切除してくれる! 排除してくれる!」
レーザー光線が空を飛ぶアレクサンドルを狙って乱射される。
それはともすれば、緑のレーザーが夜空を彩るショーのようにも思えただろう。事実、巨大都市である『ヴォーテックス・シティ』において、それはある意味で余興のようなものであったのだろう。
どこかで歓声が上がる。
牽制のように放たれた火炎魔弾が、モンスターマシンの装甲を飴細工のように溶かしていく。
牽制とは思えない高威力の攻撃に、モンスターマシンがじりじりと後退する。
だが、その魔弾は全てに置いて計算されたものであった。周囲への被害、それを最小限に抑え、人的被害を考慮したものであったのだ。
そこにオブリビオン『業病のジュピター』とアレクサンドルの決定的な力量差が見て取れた。
後退し、態勢を立て直そうとする『業病のジュピター』。
だが、そんな隙を与えるほどアレクサンドルは慈悲があるわけではない。
高速で飛翔し、弾丸の如き速度で操縦席の分厚く覆われた装甲板を力任せに引き剥がす。
「始めましてこんにちは―――」
アレクサンドルは気さくな青年のように快活に笑う。
それはまるで道端で出会ったかのような気さくさであった。だが、此処は戦場であり、悪徳の都市である。
そんなわけはない。ありったけの魔力が拳に集まる。黄金の魔力は、その拳をまばゆく輝く太陽の如き明るさで輝かせた。
何かか細い悲鳴のようなものが聞こえた気がした。
その凄まじき魔力に当てられたのだろう。即座に装甲板が組み上がり、拳の一撃を防がんとする。
だが、もう遅い。
「―――で、さよならだ」
ありったけの魔力の込められた太陽の如き拳の一撃が、覆われた装甲板ごと、『業病のジュピター』の顔面を打ち砕く。
ペストマスクを模したような仮面が砕け、機械人形たる顔面が露出する。
己のはなった拳の反動でモンスターマシンの外へと排出されたアレクサンドルには見えることはなかったが、元々興味などあるはずもない。
彼の言葉通り、アレクサンドルと『業病のジュピター』は二度と交錯することのない運命、物別れとなるのだった―――!
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
戒道さん(f09466)と
?
ん??
え?そんだけ
え?不死って…え?
なーんだ、もー…もっと面白い先があるかと思ったのにー
つまんないや
あ、めんごめんご
人の研究馬鹿にしちゃダメだね
ちなみに私のテーマは何時か邪神を制御する事
さあ、どっちのテーマが勝つかな?
●
《RE》IncarnationとKey of Chaosを抜刀
敵のミサイルは『オーラ防御』でシールドを発生させて防いだり、両剣で切り払って『武器受け』して対処
【Code:F.F】起動
建物の崩壊に巻き込まれる奴隷を高速移動で確保して退避
後はただ単純にエネルギー球を零距離から撃ち込む
攻撃タイミングは合わせられるなら合わせよう
狙うはマシンの中核、そこを潰す
戒道・蔵乃祐
月夜さん(f01605)と共闘
◆
鳥之石楠船神を発動
ジャンプ+クライミングでバスから天の鳥船に飛び移る
上空から天羽々矢と氷柱の雨を降らせて誘導
速射で動きが鈍った瞬間
イモータルモンスターに錨の重量攻撃を怪力+投擲で撃ち込み、その場で釘付けにして住居への巻き添えを防ぐ
マシンと鳥船に繋がれた鎖を早業+念動力の軽功で駆け抜け
裂傷・刺傷耐性を変異して得たジュピターの双腕を見切り+残像で掻い潜り
十束剣でフェイント+切り込み
◆
是非に及ばず
医療は血に塗られた業の歴史
人間であろうとレイダーであろうと何も変わらない。ただそこに、理想と信念が内在するか否かだけ
猟兵の倫理と道徳性が勝るか、貴方の野望が成就するか
いざ!!
「グハッ―――! 許せぬ許せぬ! 不死たる研究の邪魔をするだけでなく、私の身体も傷つけるとは許せぬ!」
猟兵の一人が放った拳の一撃が、ペストマスクを模した顔面を打ち砕き、その内部の機械人形たる姿を顕にする。
「やはり猟兵は病巣……! あろうはずもない希望に人々を縋らせる。希望というものがどれだけ悪辣なものであるか知らぬはずもないであろうに」
ぶるぶると震える体が『業病のジュピター』の乗るモンスターマシンの巨躯に伝播していく。
一度は、その車体を止められてしまったが、忌々しい電撃や呪詛はすでに効果を喪っている。
まだ研究材料たる奴隷の人々は都市の外へと出てはいまい。ならば、それを取り戻す。
「私は、私の研究を完遂し、不死を体現する。あらゆる病を克服し、あらゆる障害を取り除いて、完璧なる生命を作り出すのだ!」
キャタピラであったモンスターマシンの車体がスパイクの付いたホイールに変形し、舗装もされていない悪路にある障害の全てを踏み潰して疾走する。
それは猟兵たちが開放した奴隷の人々を乗せた大型バスとトレーラーをねめつけるように、執拗なる追跡を開始するのだった。
大型バスとトレーラーが並走して悪徳の都市『ヴォーテックス・シティ』を駆け抜ける。運転席に座る猟兵の姿を互いが認識し、即座に背後に迫っていたブルドーザーの如き重機を改造されたモンスターマシン『イモータルモンスター』へと向ける。
「是非に及ばず―――天津国より顕現せよ葦原中国平定。乃ち天孫降臨神話の儀!」
戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)は、即座にユーベルコード、鳥之石楠船神(トリノイワクスフネノカミ)によって召喚されし、天の鳥船へと大型バスの運転を開放された奴隷の人々の一人に任せて、飛び乗る。
巨漢たる彼が見せる軽業の如き姿は人々にとって驚愕そのものであったことだろう。
建御雷の眷属神器にて武装された高天原の幽霊たちが天の鳥船の戦場にて、召喚の主である蔵乃祐を待ち、整然と並んでいた。
「医療は血に塗られた業の歴史。人間であろうとレイダーであろうと何も変わらない。ただそこに、理想と信念が内在するか否かだけ」
彼の号令と共に鳥船より放たれるは弓矢と氷柱の雨。
それは圧倒的な攻撃量でもってモンスターマシンを釘付けにする。あれだけの巨体であれば、雨のように降り注ぐ攻撃を躱すこともできないだろう。
さらに鳥船より放たれるは鎖に繋がれた錨の一撃。
打ち込まれた錨は鳥船とつながり、モンスターマシンの動きを止める。
「徒に他の建物に被害は出させは―――何ッ!?」
打ち込まれた錨はたしかに鎖に寄ってモンスターマシンの動きを止めた。
だが、足を止めた瞬間、モンスターマシンの背面から飛び出す自動追尾のミサイルたちが、まるで蔵乃祐の目論見を看破するように周囲の建物へと襲い掛かる。
爆発が起こり、悲鳴と瓦礫が吹き荒ぶ。
「アハハハハ! これでも私を此処に足止めするか、猟兵! 傷ついた研究材料もまた有効活用できるものだ。私の不死の、崇高なる研究の礎になれるのだから―――!」
『業病のジュピター』の哄笑が響き渡る。
それは猟兵を前にして、彼らの理念を打ち破ったという『業病のジュピター』の昏い感情の爆発であった。
「? ん?? え? そんだけ? え? 不死って……え?」
それはあまりにも場違いな声色であった。
あっけにとられたような、それでいて対峙するものの神経を逆なでするような声。心底、がっかりしたような声で月夜・玲(頂の探究者・f01605)は、ミサイル攻撃に寄る建物の崩壊と爆発に巻き込まれた奴隷の人々を抱え、あるいは模造神器の柄にぶらさげながら、『業病のジュピター』の駆るモンスターマシンの眼前の建物に立っていた。
彼女の体は今、Code:F.F(コード・ダブルエフ)の発動に伴い、模造神器の力全てを身にまとっていた。
その圧倒的な速度でもって、爆発や崩落に巻き込まれようとしてたすべての人々を救出せしめたのだ。
「―――ハ……? なんだ、と……? あれだけの、崩落から、全ての、研究材料を……救ったというのか……?」
呆然とした『業病のジュピター』の声が響く。
ありえない。どれだけの広範囲をミサイルで攻撃したというのだ。だというのに、彼のセンサーにはどこにも死せる研究材料の反応がない。
全て玲が救い出したのだ。あの一瞬で!
「なーんだ、もー……もっと面白い先があるかと思ったのにー」
玲が呆れたように頬をかく。
本音を言えば、不死の先。その研究の向かいゆく先であるとか、深淵を見ることができると期待していたのだ。
けれど、彼女にとって不死の研究はあまりにも。―――。
「―――つまんないや」
その赤い瞳が落胆に染まる。それに対して、『業病のジュピター』の発狂したような声にならぬ声が響き渡り、自動追尾のミサイルが玲めがけて一斉に放たれる。
不可避たるミサイルの乱舞。
だが、玲にとってそれは停まって見えるようなものであったし、言ってしまえばテトリスのようなものであった。
どこにどう動き、どうはじき返せば全てのミサイルが都市に被害を与えずに済むか。すでに彼女の頭の中では計算が終わっていた。
「あ、めんごめんご。人の研究馬鹿にしちゃダメだね。ちなみに―――って、聞いてないか」
オーラの力が掌に集約され、ミサイルの一つを弾き返す。
軽く押しやるように押し返せば、迫るミサイルの群れが一つの押し出した弾頭にぶつかって爆散し、連鎖反応のように上空で次々とミサイルを落とす。
「ちなみに私のテーマはいつか邪神を制御すること。さあ、どっちのテーマが勝つかな?」
爆散するミサイルの爆風が悪徳の都市の空を染め上げる。
「猟兵の理念と道徳性が勝るか、貴方の野望が成就するか―――いざ!!」
その爆風が染める空を蔵乃祐がモンスターマシンと繋がれた鎖を滑走するように駆け下りていく。
その巨漢たる体躯であっても、念動力と鍛えられた軽功によってタイトロープの如き鎖を駆け下りるのは簡単なことであった。
「ほざけ―――! 我が至高の理念も理解できぬ凡愚どもの言葉に私が弄されるものか!」
猟兵を病巣とみなすのならば、そのモンスターマシンの脱落した腕の如き片方のレーザー砲が変異し、駆け下りてくる蔵乃祐を狙って伸ばされる。
襲い来る双腕が蔵乃祐を捕らえようとするも、凄まじい速度で駆け下りる彼を捉えることはない。
放たれる剣の一撃がモンスターマシンの操縦席の装甲を切り裂く。
「貴方の野望は潰える。それが人道に反する行い成れば。天網恢恢疎にして漏らさず。貴方にとって天道の網目はさぞ粗く、己を捕らえられぬものに見えたでしょうが―――!」
そこに瞬間移動してきたかのような圧倒的な速度で現れるは、模造神器の力をまとった玲の姿だった。
「マシーンの中核っていえば、君しかいないよね。悪いけど、今だよね!」
その手にするは再誕の詩を奏でる一振り。そして、さらなる混沌を齎す鍵にして一振り。
玲の手に持った模造神器が青白い光を放つ。
「零距離―――!」
「―――獲った!」
凄まじき拳の一撃が『業病のジュピター』の体を穿ち、その体をモンスターマシンの操縦席へと磔にする。
それはまさしく天網に絡め取られたかの如き姿。これより放たれる攻撃より逃げる術はなく、磔刑の一撃を甘んじて受け入れるしかない。
そして、放たれるは青白き光弾。
巨大なるモンスターマシンの中核たるオブリビオン『業病のジュピター』の体を吹き飛ばす程の威力のエネルギー球が、貫き過去の化身を霧散させる。
一拍遅れ、次々とモンスターマシンの巨躯に誘爆していく。
崩落し、潰えていく野望の権化。
それは悪徳の都市の豪華絢爛たる眩い輝きをもかき消す盛大なる光となって、狂気を焼き尽くさんばかりにいつまでも燃え盛るのであった―――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵