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【旅団】恋華荘恒例?温泉でお月見!

#キマイラフューチャー #【Q】 #旅団 #恋華荘

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 これは旅団シナリオです。
 旅団『恋華荘』の団員だけが採用される、EXPとWPが貰えないショートシナリオです。

●ここではないどこかの温泉郷
「あ、そういえばもうすぐ中秋の名月でしたっけ……」
 などと不用意に彩波・いちご(ないしょの土地神様・f00301)が呟いてしまったのが、今回も騒動の発端だった。

 ここはどこかの世界にある龍神温泉郷に建つ温泉女子寮の恋華荘。
 管理人のいちごは、一仕事を終えた後共用ロビーで一休みしている所だった。

「なるほど、そろそろお月見の季節ですわね」
「……といいつつ、りんごはお酒飲む理由がほしいだけなのよ……」
 いちごの呟きを拾って話しかけてきたのは、共に寮の仲間の黒岩・りんご(禁断の果実・f00537)と湯上・アリカ(こいのか荘のアリカさん・f00440)だ。なんかこのやり取り前にも見たぞ。
「夜の露天風呂から見上げる星空も月も綺麗ですものね」
「今度の中秋の名月の日も、予報によればとてもいい月夜になるようですし」
 やはり通りがかった茅乃・燈(“キムンカムイ”は愉快な仲間で力持ち・f19464)と鷹司・かれん(メイド探偵が見ています・f22762)も会話に混ざってきた。
「ですわよね。やはりお月見はやらなくてはいけません」
「りんごさんは本当に飲む理由が欲しいだけなのでは……と言っても、月見で一杯の誘惑はわかります」
 かれんは苦笑しつつ小首を傾げるが、かれんもすでに成人している身。月見で飲むお酒の誘惑にはなかなか勝てない様子。
「ちょうどいいんじゃないかしら。最近来た寮生の歓迎会的な事もやってないし」
「BBは新しい人の歓迎会は必要だと言います」
 やはり通りかかった葛葉・アリス(境界を操る幼き女神・f23419)とベアトリス・バスカヴィル(デジタルデビルBB・f23871)は、月見に合わせての新入寮者歓迎会を提案してきた。
「歓迎会ですか……そうですねぇ。確かに、春先は花見に合わせてやりましたし、今度は月見に合わせてというのはいいかもしれません」
 そのアイデアは、管理人のいちごもなるほどと納得する。
 いちごとしても、最近立て続けに入寮の受け入れがあった事で、新人たちと以前からいる寮生たちとの顔合わせとかはしてみたいとは思うのだ。特にいちごは、寮で暮らす全員が家族同然という考え方の持ち主なので。
「……あ、でも、前みたいに露天風呂で歓迎会は、その、ちょっと……」
 女子寮にいる唯一の男子であるいちごは、そう常識的なことは口にするのだが……そこは恋華荘クオリティ。
「あら、旦那さま。わたくしなら構いませんよ?」
 そこに通りすがったのは、いちごを旦那様と呼ぶアテナ・パラステール(亡国の姫騎士・f24915)だ。いつものように、いちごをからかうようにそんなことを言う。
「私がかまうんですよっ」
「なーに? また、いちごを困らせてるの?」
 助け舟を出したのは、やはり通りすがりのメリッサ・ウェルズ(翡翠の吸血姫・f14800)だった。もっとも、次の台詞からして、助け船になっているかは実に怪しい。
「……まぁ、いちごが何を言っても、月見もまた温泉でやるんだろうけどさ?」
 メリッサはもう完全に見切っている様子。それでもいちごは抵抗を試みるが……。
「い、いえ、今回こそは近くの丘にピクニッ……」
「もちろん!恋華荘での宴会は温泉でやるに決まっているのよ!」
 否定しようとするいちごの声に被せるように、アリカがきっぱりと断言してしまうのだった。
「あ、いえ、アリカさん、それは……」
「せやろなぁ。ウチもそう思ってたで? 今更温泉での宴会を拒みそうなんは恋華荘には、そうそうおらんやろし。ウチも、一緒で問題ないで?」
 アリカの言葉に答えるのは、やはり通りすがりであるメラン・ネメシス(ダークネス・トレーダー・f27087)だった。今回が歓迎会になるのなら、その歓迎される側の1人になる立場だ。
「……まぁ、普段から同じ場所使ってるんだし、今更って気はするしねぇ?」
「私も、特に気にはならないでありますよ。いちご殿なら、一緒しても、意図的に不埒な行いはしないでありましょうし……」
 同じく歓迎される側になるジル・クリスティ(宇宙駆ける白銀の閃光・f26740)と南雲・深波(鮫機動部隊司令官🦈・f26628)までそんなことを言う。
「メランさんもジルさんも深波さんも、そんな簡単に賛同しないでくださいっ!?
 ……というか、何で混浴平気な人ばかりなんですか……」
 頭を抱えて、自分の味方はいないのかとあたりを見回すいちご。
 ふと目に入ったのは、たまたま姉妹仲良く通りすがった玉依・蒼(魔法戦士ジュエル・サファイア・f26990)と玉依・紅(魔法戦士ジュエル・ルビー・f26914)の2人だった。
「ほら、蒼さんや紅さんは、私含めて混浴で宴会とか嫌ですよね?」
「えっ……先輩と混浴で……?」
「あ、えっと、それは……」
 赤面して顔を見合わせる蒼と紅。これが自然な反応だろう……と思ったのだが。
「2人とも照れて恥ずかしくはあっても、嫌ではないのれす。スーちゃんは賢いので、ちゃんとわかってますれす」
「「!?」」
 横から口を出したショコラ・スー(スーちゃんは悪いスライムじゃないのれす・f28995)の言葉が、まるで図星だったように、蒼も紅も顔を赤くしてビックリしていた。
「スーさん!? いつ出てきてたんですか!?」
「スーちゃんはこういう話ならいつでも出てくるのれす」
 いちごに召喚されなくても勝手に顕現してしまう召喚スライムのスーである。
「ま、お風呂は広いんだし、離れた場所で一緒するくらいはいいんじゃない?」
「一緒したからって何かしてくるわけでもないのでしょ?」
「何かする度胸があるにゃら、それはそれで構わないにゃりよ?」
 そしてさらに九尾・桐子(蒼炎の巫女・f28109)や碧月・美兎(チョコミントの魔女・f28609)や山根・桜桃(ヤマネコ・f28269)も通りすがりにそんなことを言う。
「ま、気にしない子が多いんだし、諦めたら、いちごちゃん?」
「和ねえさんまで……」
 そして昔から世話になっている八百山・和(恋華荘のおふくろさん・f29479)にまでそういわれてがっくりくるいちごであった。

「というわけで、いちご。準備よろしくなのよ!」
 そしてアリカの宣言で開催が決まってしまい、今回もやはり準備は管理人のいちごに押し付けられる。
 さらに……。
「もちろん今回もやりますわよね、王様ゲーム」
「当然ね」
「そちらの準備もお願いですわ、旦那様♪」
 りんごとアリスとアテナにトドメとばかりにゲームの準備まで押し付けられてしまうのだった。


雅瑠璃
 こんにちは。またはこんばんは。
 雅です。

 というわけで今回は温泉で月見という恋華荘の旅団シナリオになります。
 なので当然ですが、参加可能なのは恋華荘の団員だけです。ご了承ください。

 現実では今年の中秋の名月は10月1日ですが、恋華荘のある世界では今度の四連休にあるようです。
 日付的には21日を想定しています。
 執筆もその連休で行いますので、プレイングの提出は、18日8:31~19日8:30までの間にお願いします。この間に提出していただけると、締め切りが連休最後の火曜の朝になりますので。
 それまでは旅団で相談等してもらえればいいと思います。

 そして、前回の花見同様に、今回も余興のゲームを付け加えることにしました。
 はい、前回と同じく王様ゲームです。

 今回は王様ゲームにも参加必須という事で、【命令】と【リアクション記号】を、下記のフォーマットに従って提出してください。その命令をランダムで組み合わせて、フルアドリブなリプレイにします(笑)
 あ、公序良俗に反する命令はダメですよ?

 ※王様ゲーム※
 【命令】「●番が○番に◆◆する」という形で固定です。
 番号は、①~⑩で適当に入れてください。誰がどの番号になるのかはこちらで決めます。人数が11人以上の場合には、王様ゲームのグループが複数ある扱いになりますので、気にしなくて大丈夫です。
 【リアクション記号】ノリノリでやるなら「▲」、恥ずかし気にやるなら「▽」
 どんな命令がくるかはわかりませんが、イメージでどちら?というくらいです。

 もちろんフォーマットを見ればわかるとおり、あくまでもおまけです。
 プレイングの本筋は、旅団の仲間との交流に当ててくださいませ。
 当然、OPにわらわらと雅のMSキャラ(全員恋華荘に所属)が出てきていますが、それぞれにかかわるようなプレイングを書いてくれれば、いろいろ適当に絡ませますです。

 他に質問等あれば、旅団でお聞きください。
 それでは楽しんでいきましょう♪
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第1章 冒険 『ライブ!ライブ!ライブ!』

POW   :    肉体美、パワフルさを駆使したパフォーマンス!

SPD   :    器用さ、テクニカルさを駆使したパフォーマンス!

WIZ   :    知的さ、インテリジェンスを駆使したパフォーマンス!

👑1
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

月読・美琴
「10番が9番に抱きつく」▽

「そんな、いちごお兄様も一緒のお月見なんて……」(赤面

神様から、いちごお兄様に宿る邪神を封じるよう言われ、恋華荘にきてしばらくたちます。
そんな私の頼れる相手が、神社同士の付き合いで昔から知り合いの桐子さん。

「桐子さん、普段はあまりゆっくりお話できませんから、今日はゆっくりお話しましょうね」

普段は桐子さんと一緒に、いちごお兄様が邪神化しないか警戒する日々ですが、今日くらいは、温泉でのんびりしましょう。

「昔、一緒に修行してたときも、よくこうして山奥の温泉に一緒に入りましたよね」

退魔師になるための修行の日々を思い出し……

「って、いちごお兄様、いつからそこにっ!?」(体隠す


玉依・翠
「2番が4番に秘密を打ち明ける」▽

「蒼ちゃん、紅ちゃん、藍ちゃんたち姉妹で一緒にお月見しながら温泉に入りましょう」

けど、まさか憧れのいちご先輩も一緒に温泉だなんて……(胸を気にしつつ

え、こんな時こそ、いちご先輩との仲を縮めるチャンス!?
ちょっと、何言ってるんですかーっ!?

って、あわわ、いちご先輩が来てしまいましたっ……

慌てて湯船に身を隠そうとしたら、うっかり石鹸を踏んでしまい。

「きゃあっ」

蒼ちゃんたちの事故とも重なり、気づけば全員でいちご先輩に胸や下半身を向けている格好で折り重なって倒れていて……

「い、いやぁっ、いちご先輩、見ないでくださいっ!」

隠そうともがいて、逆にますます酷い格好に……


玉依・藍

【命令】「⑨番が①番の髪の匂いを嗅ぐ」

蒼さん、翠さん、紅さんと温泉ね。

お風呂は毎日入っているけれど、
改めて誰かと入るのは、ちょっと新鮮かもしれないわ。

え?なんでいちごさんが?
混浴?そんなの聞いてないんだけど!?

まぁ、翠ちゃんとってもいいチャンスかもしれないから、
とりあえずおとなしくはしているけれど……。

こっちを見ようとしたりしたら、記憶消去するしかないわね。

ま、この格好ではあまり援護はできなけれど、
わたしが手伝わなくても十分魅力的だし問題ないわよね。

って、翠ちゃん、あぶな……!

思わず助けに入ったら、そのまま巻き込まれてしまって、
みんなで酷い格好に……はぁ、わたしこんなにドジだったかしら?


庭月・まりも

【命令】「⑩番が④番に腹筋特訓」全裸で、とか言ってないから!

ここの温泉はいつ入っても最高のお湯加減だね。
管理してくれている人には感謝しないと!

みんなもここの温泉なら入ってくれるかと思ったんだけど、
さすがにお湯は得意じゃない子が多いし、ここにいるときはひとりだなぁ……。

今回はみんなでお風呂だから、いろんな人がいるけど、
あんまり仲良しさんがいないから、まったりしてるしかないんだけどね。

あ、そか、いちごさんもいっしょ、なんだっけ?
さ、さすがに恥ずかしいから、ちょっと移動……って、はわわわっ!?

足を滑らせて、湯船にびったーん、とお腹からダイブして、
あまりの痛さに、きゅう、と目を回してしまうのでした。


月灘・うる

【命令】「④番が⑤番にマウントポジションする」

いろいろある恋華荘だけど、すべてを忘れさせてくれるくらいに、
温泉は間違いなく絶品!癒されるよね!

……って、うん。浮くね。
となりにいるあかねえを見たら、やっぱり浮いてるね!

浮くとは聞いていたけど、実際見るとそれなりに迫力かも。
これなら、いちごさんもKOできるかも?

あ、いちごさん、いいところに!
こっちこっち!楽しいものがみられるよー♪
ほら、浮いてる!どう?どう!?

え?なにその微妙そうな顔。
むぅ、ならこうだ!

と、むぎゅーっと胸を押しつけちゃいます。
さぁ、あかねえも反対側から! 2人でサンドイッチにしちゃえば、
いちごさんといえどもKOできるはずだよね!


菫宮・理緒

【命令】「②番が⑦番の耳を甘噛みする」

今回は、カタメカクレ同盟でのんびり温泉を楽しめたらいいなって思ってるよ。
まずはこそーっと潜って、アリカさんとヴェールさんにステルス接近。
いきなりがばーっと抱きついて、びっくりさせちゃったりしてみたいな。

そのあとは、前回怒られたので、いちごさんとアリカさんに許可を取って、
飲み物も持ち込んで、温泉お茶会できたら嬉しいな♪

いちごさんも巻き込んで、4人でゆっくりのんびり、
お酌とかしつつされつつ、まったり温泉を楽しみたいよー♪


サエ・キルフィバオム
【命令】「②番が⑨番に首筋に口を近づけて息を吹きかける」
【リアクション記号】「▲」
アドリブ歓迎です

「おーおー、やってるねぇ♪」
温泉で羽を伸ばしつつも、一歩引いた位置からいちごさん周りを見てニヤニヤ
もっと面白い状態にならないかと画策します

「ねぇ~、遅れちゃうよぉ?ほらほらアタックアタック♪」
いちごさんに興味はあれどちょっと尻込みしてる娘を探して、せっついてみます
何なら、一計を案じて上手く話せる状況を作り出そうと暗躍もしてみます


アンナ・オルデンドルフ
他人との絡みやアドリブ、歓迎します。

まだまだ裸を見せるのは恥ずかしいのですが、
温泉で歓迎会、よさそうなもので入っちゃいます。

それにしても、いちごさん、みなさんに愛されているんですね。
しかも、みんな積極的で、私の先を行っているような気がして……
私も、もうちょっと積極的になった方がよいのでしょうか?

とばかりに、ちょっと悩みをまぐろさんやメランさんに相談してみます。
どうしたら、積極的になれるのでしょうか?
もっと、素直になってもよいかもしれませんね。

と、王様ゲームの時間です。
私の命令は【③番が⑦番をお姫様だっこ】です。
私の態度は【▽】でお願いします。


ロザリー・ドゥメルグ
他人との絡みやアドリブ大歓迎よ!

温泉はいいものね。
こういう風にみんなでわいわいしながら入るのも悪くないわ。
でも、みんないちごさんの方を向いているのに気がついて
いちごさんがあんなにモテモテだとは……。
ついつい熱い視線を送っちゃうわ。

と、不意にアシュリンさんから声をかけられて。
「そりゃ、いろいろされちゃったんだもの。好きに決まってるわ」
まあ、ああもモテモテだと苦労をするのはわかっているわ。
「でも、私を愛してくれたんだから、よしとするわ」
ちょっとしんみり気分でアシュリンさんといろいろ話しちゃうわね。

王様ゲームは、【②が⑤に恥ずかしくなるぐらいの愛の言葉を語る】で。
リアクションは【▽】かしらね。


ルイザ・シャーロット
他人との絡みアドリブ歓迎します。
温泉でゆっくり、よいですね。

そういう私はいちごさんとお近づきになりたい気もしますが、
ないすばでぃなりんごさんや栞さん、仁美さんを見て
「どうしたらそんなに大きくなるんですか?!!」
って聞いちゃいます。

わ、私だって、いつかはないすばでぃになりたいですし……
その豊かなお胸に触りたい欲望と戦っちゃいます。
もしかして、私って女の子もいけるのでしょうか……?
さ、触っていいなら……触りますが……。
やさしく触れると……柔らかい……。
なるほど、男の人が大きな胸に憧れるのもわかる気がしますね。

さて、王様ゲームの命令は「①と⑪が熱々のキスをする」です。
リアクションは「▲」ですね。


保戸島・まぐろ
【ゲーム】「5番が3番にキスする」▽

他人との絡みツッコミアドリブ大歓迎

ほぼ女の子しかいないから、裸でもぜんぜん平気なんだけど、
いちごの前に行くとどうしても隠してしまうのよね
ほら、こればかりはしょうがないじゃない?

というわけで、他の子とおしゃべりしたりスキンシップをしつつ
湯船に入ってくつろいだり

それにしても大きな子が多いわよね
私? 別にぺったんこでも平気よ?
おっぱいに貴賤なんてないのよ。千差万別、みんな違ってみんないい。

(いちごが目の前に現れたら)
い、い、いちご!?(慌てて間違いなくとらぶるが起きる)


フロウヴェル・ゼフィツェン
※絡みアドリブ大歓迎

温泉に浸かりながらお月見するの。
おっきくて、綺麗なお月様…なんだか、胸の中がざわざわしてくる、そんな気がするの。
…というわけで、いちごにハグするの。
(一応胸のざわつきは実際感じてる模様)
ホントはハグより先もして欲しいけど…それは別の機会に、なの。

いちごが近くにいない時は、近くにいるコとお喋りしたり、相手がOKならハグも仕掛けるの。
んー…桜桃、ハグしていい?なんかこう、猫さんぎゅってしたい気分なの。
そこから喉元擽ったりお腹撫でたり…。仕返し。どんとこいなの。

●王様ゲーム
『7番が1番にハグ』。やっぱりこれは外せないの。ベルだし。



霧沢・仁美
※絡みアドリブ大歓迎です。

おお、こんなに綺麗にお月様が見えるって凄いね…うん、良い眺めだよ。
(月見だんごもぐもぐしつつ)
あ、いちごくん。色々巡りっぱなしでちょっと疲れてないかな?良かったら、あたしの傍で一休みしていく?
(とらぶる発展OKです(?))

…それにしても。
栞さんに流江さんに、燈さん…前から思ってたけど、こう、妙に親近感を感じるなぁ…って。その、みんな胸が大きいってのもあるけど、全体的に…
(メタ的にはメイン絵師様的な意味で)
だから何だってコトはないけど、こう…そのうち、この四人で何かしたいなとか思ったりはするかな。

●王様ゲーム
「3番が9番の頬にキス」…とか。頬ならまだセーフ…かな?



織笠・アシュリン

命令:【④番が⑩番に後ろから抱きつく】

※他人との絡みアドリブその他歓迎

やっぱり温泉はいいね……
いやまぁ、歓迎会って時点でゆっくり浸る空気にならないんだけどさ!

「あ、ロザリー、おーい!」
って浴場に来たロザリーを傍らに誘っちゃう
何気にあんまり絡んだことないし、こういう時に話しときたいよね
そんなこんなで話をするんだけど、いちごへの熱視線が気になる……
「あのさ……もしかしなくても、いちごのこと、好き?」
ド直球突っ込む!
「絶対苦労すると思うけど、大丈夫?いや、人のことは全く言えないんだけどさ!」
彼女の真っ直ぐな反応に眩しそうな顔をしつつ、同じ苦労と喜びを分かち合う者として交流を深める……!


高原・美弥子
いやぁ、何時ものことだけど、やっぱり露天風呂で宴会って衛生的にどうなのかなぁ?
まぁ、そうは言ってもあたしのやることは何時もと変わらないんだけどね!
そう!何時ものように焼き鳥焼くよ!
ワンパターンとか言わないで欲しいなぁ。いいじゃん、美味しいし、酒飲み宴会組のつまみにもなるんだからさ
そしてこれも何時ものように、一番美味しく出来た焼き鳥をいちごにあーんしてあげるんだぁ。えへへ、やっぱりいいなぁ、これ
どうせ色々回って付き合わされて、いちごも疲れてるだろうし、あたしのとこにいる時ぐらいゆっくりして休んでおきなよ(ここぞとばかりに好感度稼ぎに走る)

【命令】⑩番が⑨番に愛してると言う
【リアクション記号】▽


トリーシャ・サンヨハン
月見といえば酒盛りですわね!
露天風呂で飲むストレロはきっと格別ですわぁ!
酒飲み組と好きなお酒を出し合いますわ。私(わたくし)は当然、ストレングスゼロですわ!しかも各種味を揃えてズラッと並べて悦に浸りますわぁ
ストレロこそ最強のお酒ですわぁ!ストレロをストレロで割って、ストレロとショタを肴にストレロを飲むのですわぁ!
異議は認めますが私はこれが至高のお酒なんですわぁ、さぁ酒飲みの皆様も共にストレロを称えましょう!
ストレロ以外は、前はワイン飲んでしましたわ
あ、今更ですがお風呂は全裸で入るものなのですわ。そしてショタとの混浴も大歓迎ですわぁ!

【命令】1番が4番の頭に胸を押し付ける
【リアクション記号】▲


黄泉原・伽夜
にゃぁ、ご主人様たちとお風呂……です
猫なので、普通にスポーンと脱いで全裸になる……です
うにゃぁ、でも、猫だからお風呂苦手……です
でも、ご主人様と一緒なら平気……です
お風呂では宴会無視してご主人様に付いて回る……です
にゃぁん、ストーカーじゃない……です
ただのペットの猫……です
にゃぁー、僕はご主人様の傍にいられれば、それで幸せだからいい……です
だから、巻こうとしない欲しい……です
置いていかれたら、寂しい……です
にゃん、僕は、伽夜は、ご主人様にとって不要……です?(泣きそうになりながら)

【命令】9番が2番の顔か手を舐める……です
【リアクション記号】▲


言葉・栞
◎♥♥♥
こんなに大きな温泉でゆっくりとお月見…スゴイ贅沢ですね
と、友達の皆さんとお月見温泉を楽しみましょう!
色々とお話を聞けると良いな…
えっと…飲み物とかお団子とかもあったほうが良いですよね…
お酒は…お風呂に入るからダメですよね、酔ったら危険ですから
あ、あとは…滑ってこけないように持っていかないと…!
え?足元に石鹸…?きゃぁ!?

・王様ゲーム▽
【命令】
め、命令ですか…あ、そうだ…
3番の方が10番方にヨガのポーズを取らせるのを手伝ってあげるとかどうでしょうか?
その…ホットヨガが健康に良いと聞きまして…


ヴェール・フィエーニクス


初めて見る人も、お久しぶりの人もいっぱいで
みんなにご挨拶しつつ
賑やかながらもまったりムードで、心地よくほわほわ…

でもアリカさんを見かけると、急にどきどきしちゃう!?
でも今はまだみんなをおもてなししてるみたいですし
声をかけるのはそれがひと段落してから…

でもおもてなしの最中にお飲み物を渡されつつ声をかけられて
はわはわわたわたしつつ受け取り、その時に
後で一緒に乾杯したい、とお誘いしちゃいますっ

おっけーしていただいたら、一緒に乾杯!
そうしたら、お飲み物交換を提案されて
さらにどきどきはわはわしちゃう!?

そして交換して飲んでいたら
誰かにそれを突っ込まれちゃうかも!?

⑦番が②番に両手を恋人繋ぎしちゃう



セナ・レッドスピア


こうしてみんなで一緒に過ごすのは久しぶりです…
最近来た人も交え、色々お話ししていければっ!

とらぶるについての話題が出ちゃったら
わたわたしちゃいますけどっ

…流石にいちごさんの周りは人が多いですっ
それでもその輪の中に混ざろうとしたら…
誰かが転んだのに巻き込まれて
いちごさんも含めて、みんなでもみくちゃになっちゃうかも!?

わたわたトラブルが落ち着いたら、改めてのんびり…

理緒さんと一緒に過ごせればいいのですが…
尤も、一緒の時は時間と共にどきどき度が上がり続けちゃいそうですけど…!?
(合わせの打ち合わせはしてませんので、あくまで希望
NGにしていただいても大丈夫です)

⑧番が①番に、肩を組んで一緒にお風呂



始・月夜


こうしてここのみんなと一緒に入浴する機会は初めてだったな…

余り緊張せず、のびのびと過ごしていこう…

賑やかな所もまったりな所もあり、色々見て回り
最初にお邪魔するところを探していたら
深波先輩の姿が…

でも温泉にふさわしい姿だったのを見た途端
一気に緊張と胸の高鳴りが…!?

そこから深波先輩に、先輩がいたグループの所まで引っ張られて
紹介してもらうけど、高まり続ける緊張と胸の高鳴りのせいで
上手くしゃべれず、のぼせたような状態に!?

気が付いたら、深波先輩が目の前に…
どうやら介抱してくれたらしい…

ふがいなさを謝りつつ、落ち着いたら一緒に温泉に戻るよ
…結局胸の高鳴りは収まらなかったけど…

⑨番が③番に、膝枕



山之辺・沙良


ここでは新人ですし、何事も最初が肝心…
しっかり挨拶して、みんなとの関係を向上させていきます!

みんなに挨拶をして回る中
一際たくさん集まってる場所が…

その中心にいるのが、いちごさんですねっ。
でもみんなに言い寄られてるせいで、なかなかうまく挨拶ができません…

そうして様子を伺っていたら
何故か足元にせっけんが!?

驚き、叫びながらいちごさん達の方に転んでしまいます…

そして気が付いたら、誰かに触られてる…
って、いちごさん!?

い、今手を使って起き上がるのはー!?

…と、いちごさんが動く度に、それが裏目に出て
あぶない事案連発に!?

後でこうなった事を謝りつつ、改めて挨拶できればっ

①番が⑩番に、お酌してあげる



戯亡・いるる
※姉共々いちごを前世の想い人と信じるヤンデレ
※髪は纏め、裸は隠す気皆無

いちごどのーっ!(飛びつきハグ、程よい胸が…)
良い月じゃ、宴に良い月じゃよーっ♪
昔の湯治でも、こんな月が出とったのぅ♡

…まだ思い出せておらんかえ?
まあよかろ、再び会うたなら常に愛せる故
白い肌、細い腕…昔のままじゃ♡(すりすり)

姉上、無理を言うでない
代わりに、葡萄ジュースを飲まぬかえ?
そう、妾と…んー♪(目を潤ませ口移し狙い)

む、いちご殿の食事とな若葉殿?
よかろ、今回も情報交換じゃ♪
んー、洗濯事情は既知かのぅ?

【▲10が3に豊胸マッサージ】
マッサージ以外の艶事は後でやるのじゃよ?
妾とて『まだ』堪えておるからな、のぅいちご殿…♡


戯亡・あんな
※妹共々いちごを前世の想い人と信じるヤンデレ
※髪は纏め、裸は隠す気皆無

いるる、奔り過ぎだ。転ぶぞ?

とはいえ湯煙を纏ういちご殿は、今も昔も確かに美しい
故に湯の温もりとそなたの体温、共に味わうは余らの定め…♡
(いるるが抱きつく内に逆から品垂れかかる)

ふ…思い出せぬなら、思い出すまで尽くし抜くのみよ
いちご殿になら、何もかもな…♡(褐色巨乳むにゅり)

以前は月見酒も楽しんでいたか、どれ此度も…む、元服は三年後?
なら今は待とうか…楽しみだな♪(呑みつつ艶な笑顔で見上げ)

世話になる、若葉殿
余は最近の散歩ルートを共有可能だ

【▲9が4に『いちご殿のステキな所』を耳打ち】
内容は問わん、2人の様子を酒の肴にする故な


静宮・あかね
※髪は纏め上げ
※一部には京言葉

月見言うから団子や飲み物を納品しに来たんよ
でもいちごはんやうっちゃんに折角誘われたんやし
ウチも参加…ってお風呂でお月見なん?

胸見られてまうなぁ…や、ココならウチ位は中継ぎやろけど?
…せやからうっちゃん、あんまジロジロ見たらウチ照れてまうんよ

って、あかんあかんあかんてぇー!?
い、いちごはん…そのぉ…(ぷしゅうてれてれ)
※巨乳コンプと慕情で振り回されている

えっ!?サンドって…ちょ、ちょ待ってぇなぁ!?
あぅぅ…か、かんにんなぁ…(と言いつつもぎゅっ)
ああ、メラン様にも笑われて…うっちゃん、イケズやわぁ(浮く胸突き)

【▽8番が5番に肩もみ肩叩き】
おっきいと凝るんよねえ…?


ヴィクトーリヤ・ルビンスカヤ
※分裂

◆クト
※銀髪は纏める

りんごお姉さまー♪(いそいそお世話)
今回はあまぁい日本酒をお持ちしたのよっ

…辛口はカッコ良さそうだけど苦手なの
どうしたら呑めるか、クト悩んでるのよ?(うるっ)
※艶っぽい解法大歓迎

呑めない娘にはお月見団子なのよー♪(もちゅもちゅ)

【▽7番が2番に愛を囁く】
チ、チャペルのお仕事の参考なのよ?

◆トーリ
※黒髪は纏める

もう少し私自身の胸を育てた方が
熾天使への融合時にハクも…?
アレ、微妙にクトベースですし…♪
(湯船で艶っぽく豊乳マッサージ)

今回は爆乳の方に教わったり
女騎士の皆さんと相談しましょう♪
(悪戯や引掻き回しも兼ねる)

【▲2番が7番へハグ&キス】
キスの部位はお任せしますわ♪


彩波・流江
▽(アドリブ絡み等々歓迎です!)

露天風呂での歓迎会というのもあるのですね〜…いちごさんに見られるのは少し恥ずかしいですけれど…(苦笑)

温泉で温まりながら月見酒…良いですね、では早速…って、何で止めるんですか和さん?
…え、私飲んじゃいけないんですか!?
いえ、あの、成人してないのは書類(ステシ)上の話であってですね…(云々かんぬん)

…見た目に説得力が欲しいと思いました(名残惜しそうにジュース飲みつつ)


王様げーむ、ですか…どのような命令をすれば良いのか悩みますね…これは完全に興味本位ですが

【命令】「⑥番が⑩番の妹になる」

と言ってみたらどうなるでしょう?
(なお、性別や年齢は考慮しない模様)


凪・美咲
湯船に浸かってゆったりのんびりと月見を楽しみます
もちろん月見団子をひょいぱくひょいぱくとしながらですが
団子のお供にはほうじ茶
丁度良い茶葉を入手したので…
新しい方達と楽しめれば幸いです

のぼせないうちに上がってしまいましょう
あ、いちごさん
今回も色々大変なようですね…
いえいえ、流石に今回はお酒は飲みませんよ?
せっかくの名月なのに覚えていないのでは勿体ないですからね

しかしとらぶるの種は尽きないようで、どこからともなく現れた石鹸で足を滑らせて…
何かを挟むとか(何を!?)

王様ゲーム
7番が10番の脇腹をくすぐる
リアクション:▽


白銀・ゆのか
あはは…和姐さんも来て、益々子供の時を思い出すわねー…
でも昔と違うのは…こんなに人も増えてホントに賑やかに…(お風呂の縁に上半身乗せて半身浴モードなまま、ぽわぽわふわふわ、感慨深く)

(ふとりんごさん達大人組が飲んでるのも見えて)
…3年すれば、私もいちごも、あんな感じで飲むようになるかしら…?
(将来の、ある意味大人な飲み物のムードを想像して…)
………ぁ、でも迷惑かけそうな飲み方は、め、よね、うん。うん…(お酒の香りだけでうとうとぶくぶく…場酔いでまさかの寝落ちに…




【命令】4番が1番に膝枕……序でに丸くなって猫の真似もお願いしちゃいます?(くすっと8ミリビデオカメラ構えて)
 【リアクション】▽


パニーニャ・エルシード
メイン…「アザレア」
サブ…『パニーニャ』

【命令】
「2番が9番の…ほっぺにキスをする、で。…唇でもいいよ?」
『悪のりしすぎっ!?』桶でアザレアにすまっしゅ!

【リアクション】アザレアが▲、パニーニャが▽


分裂したまま、ふにゃーとお風呂堪能中…ふとルイザ達の話が耳に入って…
「…好きな異性に優しく揉んでもらうと大きくなる…古事記…もとい漫画にもそー描いてある」
『嘘教えないの、あくまで都市伝説でしょアレ…適度な運動事態は必要だけど』
(二人のメートル級のバストがお湯にぷかぷか…)

『何よりこのだるがりドラ娘だって、朝のクンフー欠かしてないし?』
ぽろっとパニーニャに、周囲には見せてない鍛練ばらされてたりも…


ジオレット・プラナス
【命令】8番が9番に擽りする…脇とか足の裏、念入りに…ね?(くすっ

【リアクション】▲


ピクニックも楽しそうだったから…また今度、行けるといいね、いちご。
…そだ、序でに…ちょっと体、洗ってくれない?
いつぞやにへその緒で暴走してたっぷりしてくれたわけだしさ…(そっと耳打ち…はむりと耳嘗めも?)
…なんて、冗談だよ。


「~~♪」
いいお湯で、自然と歌がこぼれて…
何の歌かというと
「遠い国の…まぁ歌詞をかいつまんで言うなら、お風呂が気持ちいいな、てきなニュアンスの歌だよ」
子守唄みたいだから、この歌聞いて眠くなるならそろそろ上がろうって、意味合いもあったり。
…はしゃぎ疲れて寝そうな子がいたら、運んであげなきゃね。


宮村・若葉
近いのに届かない月。こうして見上げると、昔を思い出します
あの頃は、平穏は届かないものだったわ…と考え事をしていたら
愛しい声で意識が戻されて、その先を見ると他の人とわちゃわちゃしてるいちごさん
この人が私をここに連れてきてくれたと改めて意識しつつ
「あんまり動きすぎると、気持ち悪くなってお昼の後に食べたアレとか出ちゃわないかしら…」
と呟いて心配し、いちごさんの克明な飲食履歴をぽつりと話しだします
あら、いるるさん、あんなさん、興味がありますか?
ふふ、では「今回も」いちごさん情報の交換を楽しみましょう

【命令】⑧番が②番に、お腹のマッサージ
【リアクション記号】▲
何か考えてる様な謎の間が所々に入ると理想的



●宴の始まり
 この日の夜空は、雲一つない快晴。中秋の名月も綺麗な銀色の光を湛えて、恋華荘の露天風呂を見下ろしていた。
 恋華荘の露天風呂で行われる宴会も、今回が3回目。
 裸の乙女たちが月明りに照らされた温泉場へと次々とやってくる。
 その中で1人だけ、ため息をつくものがいる。
「はぁ……毎回思うんですけど、いいんですかね、これ……?」
 ため息をついているのはもちろん、黒一点である管理人の彩波・いちご(ないしょの土地神様・f00301)だ。傍から見れば天国ともいうべきこの状況、送りこまれた本人としてはむしろ気苦労の方が多い模様。
「あ、あはは……まぁ、ほとんどの人慣れちゃったみたいだし……」
 そんないちごの傍らで、白銀・ゆのか(恋華荘の若女将・f01487)が、たははと苦笑していた。いちごとは一番付き合いの長い幼馴染ゆえ、そんないちごの心情は手に取るようにわかる。
「とりあえず、今回は飲み物と月見団子くらいで、あまり裏方の仕事もないから、いちごも少しくらいはのんびりしましょ?」
「そうそう。おばちゃんもいちごちゃんのことはいつも働きすぎだとは思ってるしねぇ。こういう時くらい休みなさいな。気苦労が多いのはわかるけどさ?」
 ゆのかの傍らからひょっこりと顔を出した自称おばちゃんは、八百山・和(恋華荘のおふくろさん・f29479)だ。恋華荘の古株従業員で、ぽっちゃりで童顔な中年かと思ったら、実は妖怪だったというビックリな経歴の持ち主で、ゆのかともいちごとも昔から母親のように接していた人である。なので、いちごもこの人には微妙に頭が上がらない。
「のどかねえさんまで……。でも、そうですね。飲み物とお団子を配ったら、私も少し湯船でのんびりさせてもらいます」
 ……といういちごの願いが叶うかどうかは、まぁ、いつものお約束ですしね?
 ともあれそうして、3人で手分けして参加者に飲み物と月見団子を配り終え、いちごが乾杯の号令を発すると、各自それぞれに仲のいい人たち、あるいはこれを機に話してみたいと思った人たちとそれぞれにグループ化して、のんびり湯に浸かりながらの月見が始まったのだった。

●焼き鳥屋と挨拶回り
 それぞれに飲み物を配って、各自で歓談が始まった後、いちごは一休みをしてひとりで湯船に浸かろうとしていた。
 が、ふと通りがかった洗い場の端で、参加者の1人に捕まってしまう。
「いちご、お疲れさま」
「ああ、ジオさん。温泉入らないんですか?」
 いちごを呼び止めたのは、ジオレット・プラナス(月夜の鎮魂歌・f01665)だった。
「……やっぱり、ここでの宴会は大変そう。ピクニックも楽しそうだったから……また今度、行けるといいね、いちご?」
「あはは、そうですね。どちらかっていうと、ちゃんと服着て外でやる方が気が楽です……」
 ジオレットの身体を見ないように視線を逸らしながら苦笑するいちごを見て、ジオレットも同じように苦笑を返すのだった。
「……そだ、ついでに……ちょっと体、洗ってくれない?」
「えっ!?」
 どうやらジオレットは、湯船に浸かる前にまず体を洗おうとしていたらしい。そして苦笑して視線を逸らしているいちごを見て、ちょっとだけ悪戯心が沸いてきた様子。
 慌てて断ろうとするも、そっと体を寄せてきたジオレットに、いつかの暴走のお返しだと耳元でささやかれては、心当たりのありすぎるいちごとしては真っ赤になって硬直するしかなく……。
「……なんて、冗談だよ」
「ジオさん~~……心臓に悪い冗談はやめてくださいよぅ……」
 などといって耳たぶをペロッとなめたりするジオレットに翻弄されっぱなしのいちごなのであった。
「ごめんごめん。……っと、なんだかいい臭いしてきてない?」
「ん……あ、これは、美弥子さんですねっ?」
 ジオレットに言われて匂いの方向を見ると、すぐにその心当たりの主を見つける。そもそも洗い場の隅に焼き台を持ち込んで、じゅうじゅうと焼き鳥を焼きはじめているので、一目瞭然であった。
 もちろん、いちごの推察通り高原・美弥子(ファイアフォックスのファイアブラッド・f10469)である。というか他にいない。
「いやぁ、何時ものことだけど、やっぱり露天風呂で宴会って衛生的にどうなのかなぁ?」
「……飲み物と月見団子だけならそれほど問題はないかとは思うんですけどね……?」
 苦笑しながらそんな美弥子のもとに行くいちご。話の流れ的にジオレットもついてきていた。
「前も焼鳥焼いていたよね……?」
「ワンパターンとか言わないで欲しいなぁ。いいじゃん、美味しいし、酒飲み宴会組のつまみにもなるんだからさ」
 ジオレットの呟きに苦笑しつつ答える美弥子。確かに露天風呂の方を遠目で見ると、黒岩・りんご(禁断の果実・f00537)をはじめとする酒飲み勢は、お団子だけでは物足りなさそうにしているか。
「まぁ、りんごさん達には、ここに取りに来てもらうように伝言しておきますか……匂いが漂っていけば自分から来るでしょうけれど」
 そういって苦笑しているいちごの口元に、一番最初に焼きあげたものが差し出される。今回も美弥子は、一番美味しい部分をいちごに差し出すのだった。
「ほら、いちご。あーん」
「あ、あーん……」
 これもまたいつものことなので、いちごも素直にあーんされて、焼き立ての焼き問いを口に頬張った。
「ん、相変わらず美味しいですね」
「でしょでしょ?」
 なんだかんだでいつものやり取りではあるのだが、嬉しそうにハートマークを乱舞させている美弥子である。
「ああ、いい匂いがすると思いましたら……」
「あ、美咲さんに沙良さん。珍しい組み合わせですね」
 そんないちご達の方に近付いてきたのは、確かに珍しい組み合わせ。新しい人に挨拶にと考えていた凪・美咲(白虹の剣士・f05810)と、新人だから挨拶回りをと考えていた山之辺・沙良(お忍び閻魔さま・f28013)の2人だった。お互い挨拶回り同士という事もあって、なんとなく一緒に行動していた様子。
「挨拶回りの流れで、ですね。ここでは新人ですし、何事も最初が肝心、ですから」
 という沙良は、美咲と合流した後、何やら匂いと賑わいに惹かれてここまでやってきたのだった。
「いちごさんには真っ先に挨拶に来たかったんですけど……言い寄られていたりしたのでお邪魔かなと」
「あ、さっきのあれ? 言い寄っていたというか、ねぇ?」
「あたしはいつものだしねー」
 遠慮していたという沙良の言葉に、ジオレットと美弥子は顔を見合わせて苦笑するのだった。なおいちごはノーコメント。
「え、えっと……美咲さんはお酒のつまみを取りにきたんです?」
「いえいえ、流石に今回はお酒は飲みませんよ? せっかくの名月なのに覚えていないのでは勿体ないですからね」
 そういう美咲が用意しているのはほうじ茶だ。いい茶葉が手に入ったので、ほうじ茶と月見団子を持って、新しい人とお話ししつつのんびり湯に浸かるつもりらしい。
「ああ、確かに、美咲さんお酒を飲んだら……」
「いちごさん、前のことは忘れて、ね!?」
 ついつい、以前、酔っぱらった美咲に迫られ抱きしめられたことを思い出してしまういちごである。そして、たとえその時の記憶は直接なかったとしても、何やらかしたのかは教えられていた美咲は、いちごの様子から察して慌てるのだった。
 そう、この場で、慌ててしまったのだった。
「あ、足元……」
「「「えっ?」」」
 ジオレットの警告は遅すぎた。
 美咲は足元にあった石鹸を踏んでしまい、沙良といちごを巻き込んで盛大に転んでしまう。
「あいたたた……あら、あまり痛くない?」
「もごごごっ!?」
「ひゃっ!? 誰かに触られてる……って、いちごさん!?」
 3人絡まり合って倒れている状況。詳しく言うのなら、美咲がいちごを押し倒して完全に下敷きにし……その豊かな胸でいちごの頭を挟んでいて、さらに巻き込まれた沙良の身体といちごの手足が絡み合い、いちごの手がすっぽりと沙良の胸を掴んでいるような……いつもながら芸術的なとらぶる連鎖であった。
「なにやってるのよいちごー」
「……始まって早々こうなるのね」
 美弥子もジオレットもこれにはさすがに呆れ顔。
 とはいえ、胸に挟まれ窒息しそうないちごにとっては、あまり洒落になっていないようで、なんとか立ち上がろうともがいているが……そのたびに。
「そ、そこで口動かされると、くすぐったいですからっ!?」
「い、今手を使って起き上がるのはー!?」
 美咲と沙良のそんな声が響くのであった。

●妹分と後輩と
「~~♪」
「あら、何の曲です?」
 とらぶる騒ぎも落ち着いた後、ジオレットは湯船に浸かって鼻歌を歌っていた。
 その歌に興味を持ったのは、同じく改めてのんびりと湯に浸かることにした美咲だ。挨拶回りを続けるという沙良と一旦別れ、月見団子をひょいパクしながらのんびりとしている。もちろん、団子のお供はほうじ茶だ。
「遠い国の……まぁ歌詞をかいつまんで言うなら、お風呂が気持ちいいな、的なニュアンスの歌だよ」
「確かにここの温泉は気持ちいいですものね……」
 そんなジオレットの言葉に反応したのは、近くでゆっくりと湯船に浸かっていた月読・美琴(月読神社の退魔巫女・f28134)だ。傍らでのんびりとしている九尾・桐子(蒼炎の巫女・f28109)とともに、気持ちよさそうにしていた。
「ですね。ここの温泉は本当に気持ちいいです」
 美琴と桐子は、生まれ育った神社は別ではあるが、共にいちごの中に潜む邪神を封じる事を使命とする、龍神温泉郷ゆかりの巫女だ。月読神社と九尾神社、そしてゆのかの実家でありいちごも暮らしていた白銀神社は、その同じ目的のために連携しているという関係もあって、2人ともいちごとも昔馴染みである。たまに会う親戚のお兄さんくらいのイメージか。
 いちごの中で邪神が活発化してきたこともあり、2人とも恋華荘に越してきたのだが、その使命はさておき、ここの温泉はやはり気持ちが良くてのんびりしてしまう。
「桐子さん、普段はあまりゆっくりお話できませんから、今日はゆっくりお話しましょうね」
「ですね。……といいますか、美琴姉様は普段働き過ぎだと思うのです」
 生真面目で思いつめるタイプの美琴を心配そうにしている桐子だった。使命に対して真面目なのは桐子も同じなのだが、年下の桐子の方が適度な緊張の抜き方を心得ている様子。
「そ、そういうわけでは……」
「いちご兄様のことが心配なのはわかりますが、今日くらいはのんびりと温泉で身体を休めましょう」
 なんだかんだ言っても桐子は、美琴にとって頼れる妹分なのだ。
 ただし、一点……いや、二点だけこの妹分にも困った部分があったりする。
「……昔、一緒に修行してたときも、よくこうして山奥の温泉に一緒に入りましたよね」
「懐かしいですね……あの頃はよく2人でいって……姉様と2人で……」
 退魔士を目指して修行する日々を思い出し、昔話に花が咲く2人。
 ところで、美琴はまるで気付いていないが、美琴から話を振られた昔の思い出話を思い出して恍惚としている桐子……若干、姉以上の感情がありそうな気配もする。これがすなわち一点目。とはいえ、これは桐子が美琴を姉以上として慕っているというだけなので、美琴にとって桐子が頼れる相手であることにあまり影響はないかもしれない。
 問題はもう一点の方。
 ……だが、そのもう一点については後述しよう。
 桐子が何かに気が付いたような様子を見せたので、美琴も桐子の視線の先を見た。
 桐子が見ていたのは、仲良し四姉妹の上の三つ子が、転んで溺れている姿だった。
「あれは……」
「あっ、大変です。大丈夫ですか……?」
 寮に来て間もない美琴だから、顔を見かけたことがあるだけで、特に顔見知りというわけでもない。ないのだが、かといって溺れている人たちを見過ごすことができるわけもない。美琴は溺れている三つ子を助けようとお湯から立ち上がって近づいていくのだった。
 桐子が、なんとなく呆れたような顔をしている事には気付かずに。
「……ま、別に問題はありませんし」
 桐子もそういうと、美琴の後についていくのだった。

 さて、三つ子がなぜ溺れているのかというと、少しだけ時間を戻して見てみよう。

「蒼ちゃん、紅ちゃん、藍ちゃん。姉妹で一緒にお月見しましょう」
 と、ショートカットの三女、玉依・翠(魔法戦士ジュエル・エメラルド・f26913)が誘うまでもなく、ごく自然な流れとして、仲良しの四姉妹で一緒に湯船に浸かっていた。
「んー。ホント月は綺麗だし、温泉は広くて開放感あるし、最高だねぇ」
 ツインテールの長女、玉依・蒼(魔法戦士ジュエル・サファイア・f26990)は、湯船の中で気持ちよさそうに大きく伸びをしている。
「お風呂は毎日入っているけれど、改めてみんなと一緒に入るのは、ちょっと新鮮かもしれないわ」
 ショートボブで三つ子の真ん中の次女、玉依・藍(魔法戦士ジュエル・アクアマリン・f26912)も、気持ちよさそうに湯に浸かりながら空を眺めていた。
 余談だがこの三つ子、一卵性というわけではないので、顔つきはよく似ているものの瓜二つというわけではない。特に胸の大きさがかなり違う。姉妹の順番がわからないときは胸で判定するといいいだろう。大きさの順に、大きな長女の蒼、そこそこある次女の藍、小さな三女の翠となっているからだ。
「お姉ちゃんたちと一緒のお風呂もいいけど……、……ちゃんもいっしょだったらよかったなぁ」
 三つ子とは少し離れて、年子の妹、四女の玉依・紅(魔法戦士ジュエル・ルビー・f26914)は、今日は不参加の親友のことを少し思い出していた。もっとも、お姉ちゃん大好きな紅なので、姉妹4人で一緒なことに不満があるわけでもない。
 ただそれでも、三つ子が3人できゃいきゃいと仲良くいちゃついているのを見ていると、紅はこうも思うのだ。
「お姉ちゃん達、せっかく寮の他の皆も一緒なんだから、他の人たちにも挨拶とか行かない……? いちご先輩とかもいるんだし……」
 紅自身は、姉妹や親友以外には人見知りしてしまうたちではあるが、それでも他の人たちと交流できる機会に勿体ないかなぁとは思うのだ。
 が、そこでいちご先輩の名前を出したのはまずかったかもしれない。いや、姉妹や親友以外とあまり接していない紅にとっては、学校の先輩という事もあって一番出やすい名前ではあるのだが……。
「え? なんでいちごさん? ……そ、そういえば混浴、だったっけ……」
 聞いてないんだけど、みたいな表情で、次女の藍が一瞬慌てる……が、すぐに思い直した。
「まぁ、翠さんや蒼さんにとってはいいチャンスかもしれない……けど?」
 そういって藍は姉と妹を見る。実のところ、藍自身はそうでもないのだが、姉の蒼と妹の翠はどちらもいちご先輩に憧れを抱いているらしいからだ。
「え、い、いちご先輩と、混浴……」
「こんな時こそ、いちご先輩との仲を縮めるチャンス!? って、ちょっと、何言ってるんですかーっ!?」
 顔を赤くして言葉に詰まった蒼と違い、翠は思わず叫んでしまった。
 なので、当のいちごがそれに気づいてしまう。
「えっと、私がどうかしましたか……?」
「あわわ、いちご先輩が来てしまいましたっ……」
「え、えっと、どうしよう、翠……」
 先程のとらぶるの後、焼き鳥を配ったりお団子や飲み物の補充にと動いていたいちごだったが、翠の叫び声を聞いて近付いてきたのだ。
 あからさまに慌てだす翠と蒼。
 藍は、じろじろと見てくるようなら、魔法で記憶消すしかないかなどと物騒なことを考えつつも様子を見ている。紅も恥ずかしそうに湯に浸かりながらも、成り行きを見ていた。
「お姉ちゃん達にとってはいいこと、だよね……?」
「ま、この格好ではあまり援護はできなけれど、まぁ、蒼さんも翠さんもせっかくだし、いちごさんにアピールすればいいし。わたしが手伝わなくても十分魅力的だし問題ないわよね?」
 と見守っている2人の前で翠が足を滑らせた。
「きゃあっ」
「あ」
「え?」
「って、翠さん、あぶな……!」
 呼ばれたと思ったら目の前で翠が足を滑らせ固まるいちご。そして慌てて助けようとした藍が、蒼をも巻き込んで、そのいちごと翠へと突っ込んでいってしまう。
 結果。
 いちごと三つ子が折り重なるようにもつれ合い絡み合って湯船へと落ちていく。
 大きな水飛沫が上がったあと……三つ子の悲鳴が響くのだった。
「い、いやぁっ、いちご先輩、見ないでくださいっ!」
「いちご先輩、手を動かしたらダメっ……!?」
「……はぁ、わたしこんなにドジだったかしら?」
 現在のいちごの状況はというと、翠に押し倒されたいちごはそのまま翠のお尻の下敷きになり、翠の下の口と口付けしているような格好で湯船に沈められ……見ないでといわれても見るどころではなく溺れそうになっており、そしてそこでもがいている手が、絡まって転んでいる蒼の胸をしっかりと鷲掴みにして、さらに蒼と翠を押し倒したような格好になっている藍のお尻を掴んでいるような状態だった。
 いちごがもがくたびに、蒼の胸とか藍のお尻とか翠の股間がいちごの手や口で刺激されることになり、なんとか離れようとしたら、いちごの視界に見えてはいけない部分がありありと見えるようになってしまったりと、大騒ぎに……。
「お姉ちゃん達、それにいちご先輩も大丈夫……?」
 1人巻き込まれなかった紅は、心配そうに見ているのだった。

 そして、桐子が気付いたのはそんな状況であり、美琴はそんな状態の三つ子といちごの前へと無防備にやってきたという事になる。
「す、すみません……」
 ようやく三つ子と絡みに絡まり合った状態から抜け出してお湯から顔を出したいちごが、目の当たりにしたもの。
 それは、つるんとした美琴の割れ目だった。
「えっ?」
「い、いちごお兄様……いつの間にここにっ!?」
 溺れてもがいているような状態の三つ子を心配してやってきた美琴だったが、その結果、恋慕の情を抱くお兄様に乙女の大事な部分を間近から見られてしまう。あまりの状況に真っ赤になったまま何もできずに固まってしまう美琴だった。
「ああ、やっぱりいちご兄様でしたか。だろうと思いましたですよ」
 そしてこの状況を予測していた桐子は、美琴同様に肌を晒しているのに、特に気にした様子もなく、溜め息をつくのだった。
 ……そう、先ほど言った問題のもう一点がこれ。
 美琴は、いちごお兄様に裸を見られるなんて……と、ごく普通の感性として恥ずかしがるのに対し、桐子はいちごに肌を晒しても特に気にしないのだ。
 いちごに対する好感度はむしろ美琴の方が高いのだけれど……いや、むしろそうだからということなのだろうか。桐子は普通に親戚のお兄さん程度にしか思っていないので平気なのだろう。
「美琴姉様、いつまでいちご兄様にお見せしてるんです? それとも見てくださいのアピールなんです?」
「はっ!? きゃああああああああ!?」
 桐子に言われてようやく硬直も解けて、身体を隠しつつ湯に沈む美琴であった。
「あ、えっと、なんだかすみません……」
「……そんな潜って、逆上せたり溺れたりしなければいいですけどね……?」
 頭の上まで湯船に沈めて、ブクブクと泡を吐いている美琴を、いちごと桐子はなんとなく申し訳なさそうに見ているのだった。

「まぁ、いちご兄様もいろいろ大変みたいですし、少しここで休んでいくといいんじゃないです?」
「す、すみません、桐子さん。……あ、でも、美琴さんや、三つ子の皆さんは……」
 いちごも先程からの度重なるとらぶるというかお約束に疲れて、少し休憩したい気分ではあるので、桐子の申し出はありがたいのだが……さすがにトラブルを引き起こした面々のことは気にする。
 でもそんないちごにため息をついて、姉妹を代表して藍が言うのだった。
「まぁ、湯に浸かって、こっちをまじまじと見たりしないんならいいんじゃない……でしょ、蒼さんも翠さんも?」
「う、うん……」
「い、いちご先輩と一緒出来るのなら……」
「わ、私も、いちごお兄様がいいのでしたら……」
 蒼も翠も美琴も、顔を真っ赤にしながらも了承したので、それでいちごも少しだけここで休ませてもらう事にした。

 そのまま、頬は朱に染まったままながらも、いちごと三つ子と美琴は和やかに少しお喋りをしている。
 ただ、蒼と翠と美琴の様子を見て、同い年でもある紅と桐子は顔を見合わせる。
「お姉ちゃん達と美琴さん、もしかして……?」
「ライバルなのでしょうね。色々な意味で……」
 いちごに思慕の情を抱く後輩と妹分の様子に、更にその妹達は苦笑するのだった。
「相変わらずだね、いちご」
「いちごさん、今回も色々大変なようですね……」
 そしてそんないちご周りの様子を横目で見ながら、歌を中断して苦笑するジオレットと美咲であったとさ。

●猫の集い
「ここの温泉はいつ入っても最高のお湯加減だね。管理してくれているいちごさんたちには感謝しないと!」
 庭月・まりも(乗っ取られ系家猫・f29106)は、ひとりのんびりと湯船に浸かって気持ちよさげにしていた。
 さすがに人間キャットタワーなまりもでも、温泉にまでは猫は連れてこない。
「みんなもここの温泉なら入ってくれるかと思ったんだけど……」
 猫はお風呂が苦手なものも多いし、そもそも飼い猫というわけではないのでここまで連れてくるわけにはいかないからだ。
「んー……寮の人たちも一緒だから、いろんな人がいるけど……」
 とはいえ、自分でもよくわからないうちにこの寮と契約していたまりもには、知り合いといえば何かと面倒を見てくれる管理人のいちごくらいしかいない。
「あんまり仲のいい人もいないしなぁ……いちごさんはいるけど……混浴だし、さすがに恥ずかしいし……」
 遠くにいちごの姿を見かけたので、少し離れようかと立ち上がり、広い湯船の中を歩いて移動を始めるまりもだったが……足を滑らせた。
「はわわわわっ!?」
 ばしゃん。びったーん。
 水面にダイブするかのように転んでしまい、ぷかぷかと背中やお尻を湯に浮かべることになってしまうまりも。
 そんなまりもの白いお尻を、誰かがツンツンとつついた。
「ひゃわ!?」
「おー、無事だったかにゃ?」
「だいじょうぶ、なの?」
 お尻つつかれた感触に慌てて飛び跳ねたまりもを、2人の少女が見下ろしていた。
 お尻をツンツンとつついた方は、ピンクの髪の猫妖怪、山根・桜桃(ヤマネコ・f28269)で、その傍らでまりもを心配そうに見ているのが白い髪のダンピール、フロウヴェル・ゼフィツェン(時溢れ想満ちて・f01233)だ。
 なかなか珍しい組み合わせではあるが、どうやらフロウヴェルが猫をぎゅっとしたい気分だったようなので桜桃を捕まえてかまっていたらしい。今もまりもを見つめつつ、桜桃にぎゅっとハグしていた。
「大丈夫かそこの猫まっしぐら少女。派手な音をたてたので心配したにゃりよ?」
「あ、あはは。大丈夫だよー。心配してくれてありがとうね、猫さん」
 桜桃ともフロウヴェルともほぼ初対面なまりもだったが、桜桃が猫妖怪だからという事もあるのだろう、親近感も手伝ってすぐに打ち解けて微笑みを返す。
 桜桃も無邪気そうに微笑みを返すが……こう見えて本質は夜摩、すなわち閻魔である桜桃は、まりもの様子というか秘密というかに気が付いたようだ。
「おぬし、ずいぶんと猫に好かれやすいようにゃ?」
「あ、わかるんだ?」
 まりもは、かつていちごが可愛がっていた野良猫のマリモの霊に取りつかれ、時々マリモに意識を支配されてしまう事がある。実を言えば恋華荘に契約したのもまりもではなくマリモの仕業なのだが……まりも自身はマリモが勝手に動いている間記憶が途切れても、対して気にはしていないのだ。
「うむ、たった今なんとなく察したにゃん。まぁ、猫まっしぐらで困ったこともあるかもしれにゃいが、猫はあのようにご主人にゴロゴロじゃれていれば幸せにゃので、大いなる心で許してやるがよい」
「……ん? よくわかんないけど、わかったよー。ありがとね、えっと……」
「アタシのことは可愛くゆすらちゃんと呼ぶがよいぞ?」
 まりもとマリモの事情を察しても、そこに必要以上には突っ込むつもりもないらしい桜桃である。まりもも、桜桃に抱きついてゴロゴロと喉を撫でて可愛がっているフロウヴェルも、桜桃が何を言っているのかよくわからなかった。
「ゆすらは時々よくわからないことを言うの」
「まぁ、気にするな。ベルは気にせずゆすらちゃんを撫でまわすが良いぞ。ベルのなでなでは気持ちいいからアタシも好きにゃ」
「ん。じゃあ、遠慮なくなの」
 桜桃に言われ、遠慮なく抱きついて撫でまわすフロウヴェルであった。
 そんな2人の姿を見て、仲良しなのが羨ましそうなまりもである。
「まりもも猫属性のようだからにゃ。なんなら、ゆすらちゃんを撫でる会に参加するか?」
「いいのっ?」
 桜桃の許可が出て嬉しそうなまりもだったが、しかし許可を出した桜桃がころっと手のひらを返したように待ったをかけた。その理由は、撫でるのがダメというわけではなく……。
「うむ。猫まっしぐらなので問題はない……のだが、その前にご主人がくるから、また後でかにゃ?」
「ご主人……?」
「あ、いちごなの」
 そう。フロウヴェルが気付いたように、先程まりもが立てた水音に反応していちごがやってきたからだ。ちなみに桜桃はもっと早くから気付いていたようだ。さきほど「あのように」といちごの方を指さしていたのだが、まりももフロウヴェルもスルーしていたのだ。
「えっ、いちごさんっ!?」
「さっき大きな水音がしましたけど、なにかありましたか……?」
 いちごはそうまりもに尋ねるのだが、肝心のまりもは恥ずかしそうに桜桃とフロウヴェルの影に隠れようとしている。だが、まりもが隠れるよりも、フロウヴェルの反応の方が速かった。
「ん、いちごが来たなら、ハグするの」
 本命が来たのでさっと桜桃から離れ、いちごに抱きつこうとするフロウヴェル。おかげで隠れ場所のなくなったまりもは、代わりに桜桃にしがみつくことになった。
「なんにゃ、猫のようにご主人に抱きつけばいいものを」
「い、いや、そういうわけにもですね……?」
 世話してくれるいちごのことを嫌ってはいないので、決して嫌ではないのだが、当然恥ずかしさが勝るわけで、まりもは桜桃を盾にしてじっと、いちごとフロウヴェルの方を見ていた。
 そのフロウヴェルだが、ささっといちごに抱きつくかといえば、その直前で少し止まっている。
「……ん、先客がいたの」
「あ、あはは……」
「にゃぁ。ご主人様急に止まるから、くっついてしまった……です」
 いちごの背中にぴったりくっつくように、黄泉原・伽夜(寂しがり屋の悪霊猫又・f28852)がいたのである。
 伽夜……カヤもまた、マリモのようにいちごがかつて可愛がっていた野良猫だ。
 そしてマリモとは違い、妖怪となって転生して直接ここにやってきたのである。
 伽夜は猫なので風呂は苦手なのだが、ご主人様と呼ぶいちごが一緒なら平気ということで、いちごが四姉妹や美琴たちから離れた後でいちごを見つけ、ずっと背後をついてきていたのだ。
「ふむふむ、猫トレインにゃのだな、ご主人。そしてストーカー猫にゃ?」
「にゃぁん、ストーカーじゃない……です。ただのペットの猫……です」
「……マリモもペットになりたい……よ?」
 そしてペットと名乗る伽夜に対抗するように、まりも……ではなくまりもに憑いたマリモも突然参戦するのだった。なおこの間はまりもの意識も記憶もない。
「な、何言ってるんですか、伽夜さんもまりもさんも!?」
 ちなみにいちごは、伽夜のことはわかっているけれど、マリモがまりもに憑いていることはまだ知らなかったりする。今のところどうやら夜摩の力で事情を察した桜桃くらいしかそのあたりは理解していなさそうだ。
「今度こそ、飼ってほしいのに……」
「にゃん、僕は、伽夜は、ご主人様にとって不要……です?」
 寂しそうなマリモと、泣きそうな伽夜に挟まれ、いちごもおろおろするばかり。助けを求めるように桜桃やフロウヴェルの方を見るいちごである。
「えい」
 むぎゅっ。
 なので、いちごが困ってることを察したフロウヴェルが、猫たちの空気を読まずにいちごに抱きついた。
「ん……いちご、みんなに慕われてるの。だから、こうやって受け止めてくれればいいの」
「ベルさん……」
「ベルも、今日はぎゅってしたい気分なの」
 実をいうと今日が満月という事もあり、ダンピールのフロウヴェルは胸の中がざわざわするような感覚に苛まされていたのだ。なので安心するために猫にぎゅっとしていたりしたのだが、そこはやはりいちごに抱きつくのが一番なのだろう。
「ホントはハグより先のこともして欲しいけど……それは別の機会に、なの」
「ちょっとベルさん!?」
 フロウヴェルの大胆発言に真っ赤になるいちごである。
「にゃぁ……抱きつけなくても、僕はご主人様の傍にいられれば、それで幸せだからいい……です」
「伽夜さん……」
「だから、撒こうとしないで欲しい……です。置いていかれたら、寂しい……です」
 フロウヴェルが抱きついたことでいき場を失った伽夜とマリモだったが、伽夜はそう言って一歩引きつつも、上目遣いにいちごに訴えかける。言葉にはしないが、マリモも同様の気持ちだろう。
「伽夜さんもまりもさんも、大丈夫です。私は置いていったりはしませんから。……だから、飼うとかそういう事は言わないでくださいね……?」
 なのでいちごも安心させるように、手を伸ばして2人の頭を撫でた。
 とはいえ、さすがに今は人の姿をしている伽夜とか、そもそも猫のマリモが憑いているとは知らないので何でそんなことを言いだしたのかさっぱりなまりもが、ペットとして飼ってほしいとかいうのは、勘弁願いたいいちごである。
 それでもいちごに頭を撫でられて、納得した様子の伽夜とマリモである。ついでにいまだ抱きついたままのフロウヴェルも、そのあといちごに撫でられて嬉しそうにしていた。
「とはいえ、今は他の人たちもいるので、また一回りしてきますから、皆さんは皆さんで仲良く過ごしていてくださいね?」
「うむ。猫の群れについてはゆすらちゃんに任せるが良いぞ」
 代表して答える桜桃と、名残惜しそうな3人に見送られ、いちごはまた別の所へと向かう。
 どうやら今回はとらぶる抜きで何とか切り抜けたいちごだった。
 なお、いちごが離れた後すぐ、まりもはマリモから解放され、今何があったのかわからずに首を傾げていたが……すぐにどうでもよくなって、仲良くなった猫仲間と一緒に温泉を楽しんでいた。

●ストーカーズミーティング
「近いのに届かない月。こうして見上げると、昔を思い出します……」
 空を見上げながら、宮村・若葉(愛に飢えた脳筋お嬢さん・f27457)は静かに呟いていた。
 いつもなら、いちごの背後をずっとコッソリつけているような若葉だが、今日の所は中秋の名月を前に何やら思う事でもあったのだろう。ストーカーのポジションを猫の伽夜に譲っていたわけである。
「あの頃は、平穏は届かないものだったわ……」
 何を思い出しているのかは若葉本人にしかわからない。
 だけれども、その思索の時間は、近くで聞こえてきた賑やかな声……の中に含まれる愛しき人の声で中断された。
 そう、もちろんいちごの声だ。

「いちごどのーっ!」
「うわっ!?」
 猫たちと別れてまたうろついていたいちごに、今度は戯亡・いるる(白の竜角姫・f28089)が飛びついていた。そのまま抱きついた勢いに圧されて、湯船の中に尻餅をついてしまういちご。
「いるる、奔り過ぎだ。転ぶぞ? ……って、既に転んだ後だったな」
 そしてそんな2人を眺めてあきれ顔になっているのは、いるるの姉の戯亡・あんな(黒の竜牙姫・f28090)だ。
 この姉妹、恋華荘には最近来たばかりなのだが、なんと来た時点でいちごへの好感度がMAXだったりする。何故かというと……。
「良い月じゃ。宴に良い月じゃよーっ♪ 昔の湯治でもこんな月が出とったのぅ♥」
 と、押し倒されて転ばされたいちごの戸惑いを全く意に介せずに抱きついたいるるが、すりすりと体を寄せれば。
「湯煙を纏ういちご殿は、今も昔も確かに美しい。故に湯の温もりとそなたの体温、共に味わうは余らの定め……♥」
 さらに近付いてきたあんなは、いちごを助けるでもなく、いるるを引き剥がすこともせず、背中側から抱きついてその温もりを味わう始末。
「あ、あのですね、2人とも……」
 いちごの戸惑いは絶好調なのであった。
 なぜなら、2人が昔話のように語っていることに、いちごは一切なにも心当たりがないからだ。
 ゆのかのように共に過ごしていた幼馴染というわけではない。
 美琴や桐子のように時々顔を合わせている昔馴染みというわけでもない。
 かといって玉依姉妹のように学校で縁があるわけでもない。
 こればっかりは、完全無欠に、いちごにはまったく記憶にない事なのである。
 なぜなら……。
「……まだ思い出せておらんかえ?」
「だから、前世とか言われても困りますってばっ!?」
 そう、いるるとあんなの姉妹がいちごを慕うのは、ひとえに姉妹の持つ前世の記憶ゆえ……という話なのだ。
 なお、真偽は本人たち以外には不明。もちろんいちごにそんな記憶はない。
 いちごの前世とか言うと、体の中に封じられている邪神がらみで色々面倒ごともありそうな気がするが、本当にこの姉妹に愛されている縁があるのかどうかは、現状全くわからないのだった。
「ふ……思い出せぬなら、思い出すまで尽くし抜くのみよ。いちご殿になら、何もかもな……♥」
 姉のあんなはそう言って妖艶に笑うと、豊かな身体を惜しげもなくいちごにくっつけてくる。
「うむうむ。再び会うたなら常に愛せる故な。白い肌、細い腕……昔のままじゃ♥」
 妹のいるるも、そう言って無邪気な色気を振りまきつつ、いちごの正面からすりついてくるのだった。
「だから、2人ともいい加減離れてくださいってばー!?」
「よいではないか。ささ、月見酒でも」
「未成年ですのでっ」
「……む、元服は3年後? なら今は待とうか……飲める時が楽しみだな♪」
「姉上、無理を言うでない。代わりにジュースでも飲まぬかえ? 妾と口移しで♪」
「なんでですかっ!?」
 前後にぴったりとくっついたサンドイッチのままグイグイとくる姉妹に、何とかして逃れようと四苦八苦しているいちごだったが、不意にさらにもう1人ぴとっと横に人がくっついた。
「えっ?」
「いつもいちごさんは誰かと一緒で……こんなにぎゅっとされると、気持ち悪くなって、さっき食べた焼き鳥とか出ちゃわないかしら……?」
 愛しき人……いちごの困り声を聞いて、若葉がすすっと近付いてきたのだ。
 普段は背後からじっと見ているだけでも満足な……今回もしっかり焼き鳥のくだりからちゃんと見ていたらしい……若葉だが、たまには少しくらいいいかしら?と、いるるとあんなにサンドイッチされているいちごの傍らに近付いて、ぴとっと寄りかかるように肩を寄せてきたのだ。
「若葉さん……あの……」
 助けてほしそうな視線を向けるいちごだったが、若葉は隣で肩を寄せてご満悦の様子で、結局3人に囲まれてしばらくいちごはそのままになるのだった。

 そんないちごを中心とした塊を少し離れたところで見てる人がいた。
「やれやれ、相変わらずだねぇ……」
「いちごさんがあんなにモテモテだとは……」
 いつもの光景だと苦笑しているメリッサ・ウェルズ(翡翠の吸血姫・f14800)の隣で今更なことを言っているのは、ロザリー・ドゥメルグ(無鉄砲なおてんば姫・f26431)だ。もちろんロザリーだって知らないわけではなかったのだが、こうして改めて見ていると色々考えてしまい、ついつい熱い視線を送ってしまう。
「あ、ロザリー、おーい!」
「ほら、呼んでるよ?」
「……えっ、あ、あら、アシュリンさん」
 そんなロザリーを見かけて、織笠・アシュリン(魔女系ネットラジオパーソナリティ・f14609)が声をかけてきた。普段あまり絡みはないが、せっかくの機会だし交流してみようという事だろう。メリッサに言われて呼ばれていることにようやく気付いたロザリーである。
 やっぱり温泉はいいよね、こんな風にみんなで浸かるのもいいわ、なんて普通に挨拶じみた話から始めるが、それでもやっぱりいちごの方に向けているロザリーの視線は、アシュリンにもメリッサにもバレバレで。
 なのでアシュリンは直球ストレートをぶち込んでみることにした。
「あのさ……もしかしなくても、いちごのこと、好き?」
「えっ」
 ストライクど真中をつかれて一瞬面食らうロザリーだったが、すぐに観念したように、あっさりと認める。
「そりゃ、いろいろされちゃったんだもの。好きに決まってるわ」
「やっぱり……だと思った」
「いろいろについてはあえて突っ込まないよ?」
 そう言って苦笑するメリッサだが、それでも別方面には突っ込みたくなる。
「絶対苦労すると思うけど、大丈夫?」
「……キミが言うかな?」
「そ、そりゃ、人のことは全く言えないんだけどさ!」
 メリッサに言われるまでもなくなんだかんだで自覚しているアシュリンである。
 なのでロザリーも、同類を見るような目でアシュリンに答えるのだった。
「……まあ、ああもモテモテだと苦労をするのはわかっているわ。でも、私を愛してくれたんだから、よしとするわ」
「そ、そうなんだ……まぁ、そうよね。同じ苦労を分かち合おっか……」
 ロザリーの真っ直ぐな反応を眩しそうに見ながらも、互いに慰め合うように話し始める2人だった。
 なお、そんな2人を見て、メリッサはやれやれと肩をすくめていた。

 そんな3人に声がかかった。
「おぬしらも、こちらに来ぬか?」
「いちご殿を好いておる仲間なのじゃろ? 一緒に情報交換といこうぞ」
 いるるとあんなの声だ。
 見ると、アシュリンとロザリー(と一応メリッサと)で話し込んでいた間に、いつの間にか姉妹から逃れたいちごは別の所に行ってしまったらしい。
 その代わり、戯亡姉妹と若葉は、いちごのストーカー同士での情報交換会を始めている様子。そこで、先程熱視線を向けてきたロザリーも同類項とみなして呼び寄せているわけなのだった。ついでにアシュリンとメリッサも。
「ボクも?」
「え、いや、あたしたちは……」
「いちごさんの情報交換会、一緒にしましょう? 私からは、克明な飲食履歴とかお話しできますよ」
 戯亡姉妹だけでなく、若葉もそう言って3人に声をかける。
 いかにも興味あるでしょう?と笑顔で。
 そりゃ当然、ロザリーだってアシュリンだって興味ないわけではないので。
「ほほう、いちご殿の飲食履歴とな? ならば妾は洗濯事情とかどうじゃ?」
「余は最近の散歩ルートを共有可能だぞ」
「いるるさん、あんなさん、いろいろ興味深い話ですね。ふふ」
 そして3人の話題に好奇心をそそられたアシュリンとロザリーは、慌てて3人のもとへと近づいていくのだった。
「ま、まって。あたしも聞きたい」
「興味あります」
「ボクはあまり……って、え、ボクもなのっ!?」
 そんな2人を向かえ入れ、5人となったいちごストーカーの集いは、この後しばらくいちごの個人情報のやり取りを楽しむのだった。巻き込まれたメリッサも含めて。

●商人たちの大安売り
「おーおー、やってるねぇ♪」
 いちごと戯亡姉妹とのあれこれを少し離れたところで見ながら、サエ・キルフィバオム(突撃!社会の裏事情特派員・f01091)は、実に楽しそうにしていた。
 サエは、若葉や戯亡姉妹のようにいちごをストーカーしているわけではない。
 単に娯楽として、いちごの周りの出来事を見て楽しんでいるだけだ。
 なので、戯亡姉妹の前にも、ちゃんと焼き鳥や関連の事とか玉依姉妹や美琴とのあれこれとかもしっかりと見ていた。
「さーて、次はどこでどんなことが起こるかなーっと」
 楽しそうに見ているが、他のメンバーはそれぞれの仲良しのところで固まり始めているので、もうこんな楽しい事にはならないかもしれない。王様ゲームが始まるまではもう面白いことないかな……などと考えて、サエは思いつく。
 だったら、まだいちごの周りに行くのを躊躇っているような子をせっつけば、面白い事になるかもしれないと。
 にやりと微笑みを浮かべたサエは、そんないい相手がいないかちょっと探してみることにした。

 そんなサエの目に入ったのは、どこにお邪魔しようか迷ってうろうろしている少女……始・月夜(月式疑造神器行使型人造桜精・f22688)だった。
「こうしてここのみんなと一緒に入浴する機会は初めてだったな……」
 月夜も割と最近の入寮者なので、まだあまり知り合いもおらず、これを機に挨拶でもと色々見て回っていたところなのだが……そこで視界に誰かの姿を捕らえて、顔を赤くしてしまっていた。
 そんな状況を見かけたサエは、月夜の視線の先のグループにいちごがいることに気が付いて、ははぁんと邪推し、声をかけてみることにした。
「どうしたのかなー? 誰かに興味ありありな感じ?」
「ひゃっ……あ、いえ、その……」
 急に声をかけられた月夜は、先程からドキドキしている心臓が口から飛び出すのではってくらい驚いていた。
「ほらほら、いちごさんは人気なんだから、出遅れたら大変だよ~?」
「あ、いえ、いちごさんではなく……」
「あれ?」
 月夜を急かしていちごの所に届けようとしたサエだったが、月夜の意外な返答に驚いてしまう。
 そこで改めて月夜の視線を追ってみると……そこには、月夜の帝都學府時代の先輩でもある南雲・深波(鮫機動部隊司令官🦈・f26628)がいたのだった。

 少し時間を巻き戻してみよう。
 深波は、仲の良い月灘・うる(salvage of a treasure・f26690)らと一緒に温泉を楽しんでいた。
「いろいろある恋華荘だけど、すべてを忘れさせてくれるくらいに、温泉は間違いなく絶品! 癒されるよね!」
「本当であります、ここの温泉は本当に絶品でありますなぁ……」
 のんびりと湯船に浸かって身体を弛緩させているうると深波。
 そんな2人と一緒にいるのは、うるの商人仲間である静宮・あかね(海慈屋の若き六代目・f26442)とメラン・ネメシス(ダークネス・トレーダー・f27087)だ。
「うちは月見言うから団子や飲み物を納品しに来ただけなんになぁ。まさかお風呂で月見やるとは思わんかったわ。」
「ま、郷に入っては郷に従えやね。うるも深波も気持ちよさそやし、野暮なことは言いっこなしやで?」
 あまり気乗りしない様子のあかねに、メランが揶揄うように話しかけている。
「胸見られてまうなぁ……や、ココならウチ位は中継ぎやろけど?」
「ええやん、みんな裸一貫やし、それにあかねは十分大きい方やろ? な、うるもそう思うやろ?」
「そうそう。巨乳は浮くっていうけど、あかねえを見たら、やっぱり浮いてるね!」
「……せやからうっちゃん、あんまジロジロ見たらウチ照れてまうんよ……」
「同性の仲良しとはいえ、あまり見られたくないのを見るのは失礼だと思うでありますよ?」
 実のところ、4人ともなかなかの胸部の持ち主ではあるが、深波とメランは平均よりも大きい程度なのに対し、うるとあかねは結構な巨乳であった。ただ、うると違い、あかねはその巨乳にコンプレックスを持っているので恥ずかしそうにしているわけだ。
「それにしても大きな子が多いわよね……」
 そしてこの場にいた5人目の保戸島・まぐろ(無敵艦隊・f03298)は、そんな4人と自分を見比べていた。まぐろは商人ではないが、あかねと別の旅団で一緒している仲という事もあって、このメンバーに溶け込んでいる。が……胸部装甲に関してはあからさまに仲間外れなのであった。
「まぁ、こん中にいると、アンタの薄いのは目立つわなぁ……」
「私? 別にぺったんこでも平気よ? おっぱいに貴賤なんてないのよ。千差万別、みんな違ってみんないい」
 とはいえ、メランの苦笑するような言葉には、強がりでもなく本心からこう反応するまぐろである。
 そのため、大きいあかねがコンプレックスで恥ずかしがり、小さなまぐろは平然としているという図がここにあった。
 とまぁ、女子達だけなら実に和やかな所ではあるが、ここにいちごがやってくるとどうなるか。
「あ、いちごさん、いいところに!」
「はい?」
 ちょうど通りがかったいちごにむかって、うるが大きな声をあげた。
 お湯から身を乗り出さすくらいに思いっきり手を上げてブンブンと振るものだから、揺れる何かが視界に入ってしまい、いちごはさっと視線を逸らす。
「なんで目を逸らしてるのー? それより、こっちこっち! 楽しいものがみられるよー♪」
「うる殿、無理強いをしてはいけませぬよ?」
 目を逸らした理由もわかっていそうなものだが、うるは構わずにいちごを呼びつける。深波は一応注意するのだが、無理に止めることもなく、いいからいいからといううるが何度もいちごに声をかけていた。そしてそうまで言われては、いちごも行かざるを得ないので、仕方ないですねとこちらに向かってくるのだった。
 で、いちごが向かってくるとなると、当たり前だが、深波のように平然としている者ばかりではない。
「い、い、いちご!?」
「い、いちごはん……そのぉ……」
 特に反応が大きいのは、まぐろとあかねだ。ある意味いちごガチ勢でもある2人は、相応に羞恥心も持ち合わせている。
「平然としとるのは、ある意味いちごはんにそういう関心ないうちらだけ、ってなぁ?」
「まぁ、お2人の気持ちはわかるでありまするが……」
 メランと深波はそう言って苦笑するのであった。
 そしてそんな状況でうるは、近付いてきたいちごの手を取って強引に引きずりこむ。
「ほらほら、見て見て、ほら、あかねえの浮いてる! どう? どう!?」
「い、いや、どうとか言われましても……」
「う、うっちゃん、って、あかんあかんあかんてぇー!?」
 どうやら麗、いちごに、湯船に浮かぶあかねの巨乳を見せたいらしいのだが、当たり前だが見せられても反応に困るいちごであった。
「え? なにその微妙そうな顔。むぅ、ならこうだ!」
「ええっ!?」
「ちょ、ちょっとこっち巻き込まないでっ!?」
 そして反応が微妙ないちごに業を煮やしたか、うるはさらにいちごの手を引っ張って、お湯の中へと引きずり込む。
 ……不幸にもそれで足を滑らせたいちごに巻き込まれたのは、いちごが来たことで恥ずかしさのあまりお湯に潜って身体を隠しつつも、離れがたくて困っていたまぐろであった。
 まぐろを押し倒すようにして大きな水音を立てるいちご。その手の行く末は見なかったことにしよう。撫でまわした部分がなだらかすぎて胸か背中かわからなかったなどとは言ってはいけない。……ちなみにどっちだったのかは、まぐろの羞恥がさらに強まったとだけ言っておきます。
 そして目を回しているいちごに対し、うるは更に思いもよらない行動に出た。というかまぐろを巻き込んだのはただの偶然で、やりたかったのはこれが本命なのだろう。
 むぎゅーっと正面からいちごに抱きつくようにして豊かな胸を押し付けつつ、あかねに向かって声をかける。
「さぁ、あかねえも反対側から! 2人でサンドイッチにしちゃえば、いちごさんといえどもKOできるはずだよね!」
「えっ!? サンドって……ちょ、ちょ待ってぇなぁ!?」
 それでもあかねは、うるに無理矢理引っ張られる格好になって、いちごに背後から胸を押し付けることになった。結果として巨乳2人の胸に頭を挟まれてしまういちごである。
「もがっ、もががががっっ!?」
「あぅぅ……か、かんにんなぁ……いちごはん……ああ、メラン様にも笑われて……うっちゃん、イケズやわぁ……」
 この状況を見て指をさして笑っているメランを軽くにらむような目を向けつつ、うるに文句を言うあかねではあるが、それでもいちごにしがみついているこの状況、離れがたいのであった。
「ほんとに何やっているでありますかねぇ……?」
 湯の中に沈んでいたまぐろを引き起こしながら、深波はため息をつくのだった。

 ……などという賑やかな状況を、離れたところで見ていたサエと月夜である。
 サエとしても、月夜と話しているわずかな間にこんな状況になって、さすがいちごさんと感心しきりなのだった。
「いや、ホントにいちごさんはすごいねー。……でも、月夜さんはいちごさん目当てじゃないんだっけ? じゃあ、その視線の先は……深波さん?」
「い、いえっ、あの、そのっ」
 深波の姿……当たり前だが裸……に見惚れていたっぽい月夜は、真っ赤になった顔を隠そうともせず、言い当てられて心臓がバクバクしている状態で言葉に詰まっていた。
 これはこれで面白そうと、サエは月夜の後押しをすることにした。
「ねぇ、その深波さん、月夜さんに気が付いたみたいだよ?」
「えっ?!」
 事実である。先ほどふと視線の合った深波は、月夜殿そんなところで何してるでありますかと手招きをしていた。深波的には、この騒ぎなので信頼できる後輩の手を借りたいというところかもしれない。
「ほら、行った行った」
「えっ、えっ、えっ」
 そしてサエは月夜の背中をポンと叩いて送り出す。
 ふらふらよろよろと押された勢いのまま深波の方に歩いていってしまう月夜。
 深波に迎え入れられ、深波から周りのうるやメラン達に紹介された月夜だったが、深波の傍で緊張しすぎたのか顔を真っ赤にしてのぼせ上ってしまうのだった。
「月夜殿ー!?」
 未だおっぱいサンドされているいちごよりも早いダウンだったという……。

 いいことしたなーなんて感じに月夜の様子を見て笑っていたサエは、更にその集団の方をチラ見しているまた別の人に気が付いた。
「お、今度こそいちごさん目当てかな? どうしたのー?」
「あ、いえ、皆さん積極的だなと思いまして……」
 声をかけられたのは、女子同士であってもまだ肌を晒すのを恥ずかしそうにしているアンナ・オルデンドルフ(真っ直ぐな瞳・f17536)だった。
「それにしても、いちごさん、みなさんに愛されているんですね……。しかも、みんな積極的で、私の先を行っているような気がして……」
 アンナの視線の先に映っているのは、主にいちごをサンドしているうるやあかねだ。あとは逆上せて深波に介抱されている月夜の姿も。一応月夜も積極的に言った結果の姿なので……だろう。
 そんな彼女たちを眩しそうに、遠目で見ながら、アンナはぽつりと呟く。
「私も、もうちょっと積極的になった方がよいのでしょうか?」
 そしてもちろん、そんな呟きを聞き逃す小悪魔サエではなかった。
 アンナの思惑としては、自分同様積極的に行くのが恥ずかしそうなまぐろとか、傍観者的に周りを見ているメランとかに相談してみたいという所なのだろうが、残念ながら今ここにいたのは小悪魔サエである。
 サエはもちろん、面白そうな方に動く。
「ねぇ~、遅れちゃうよぉ? ほらほらアタックアタック♪」
「え、い、いえ、でも……」
「なんなら、あたしがうまく話せそうな状況でも作ってみる?」
 にやりと笑うサエ。傍から見ているとこの笑顔には嫌な予感しかしないのだが、藁にも縋る思いのアンナは、その手を借りてしまうのだった。
 ……かくして、サエに連れられてアンナもうる達の所に合流することになる。

 その結果は言うまでもなく、アンナは、何故か再びまぐろをも巻き込んで、いちごと盛大に物理的に絡み合うことができたのだった……。
 メランとサエがそれを見て実に楽しそうにしていたとか。

●カタメカクレ同盟プラスアルファ
「……流石にいちごさんの周りは人が多いです」
 セナ・レッドスピア(blood to blood・f03195)は、とらぶる連鎖しているいちごの方を見ながら、小さくため息をついていた。
 セナの赤い瞳には、うるとあかねのおっぱいサンドから逃げ出したいちごが、湯の中でしゃがんでいるまぐろに躓いて、近付いてきたアンナに向かって飛び込んでいる姿が映っている。さらにはその後、いちごの手がまぐろやアンナの身体を弄るように絡み合っているところまで。
「そ、そして相変わらずとらぶるしているようですっ」
 トラブルを目の当たりにして、赤面してあたふたしてしまうセナである。自分も何度も何度も通った道なので、それを思い出しているのだろう。
 でも、セナだっていちごガチ勢に近い立場だ。
 なので意を決して、セナもそこに混ざろうと歩を進めていくのだった。
 ……オチは見えた気がする。

「あっ」
「えっ!?」
 セナが近づいていったのと、いちごがアンナやまぐろの謝罪して離れたのはタイミングが一緒だった。
 なので当然のようにいちごとセナは正面衝突する。
 いちごの手がセナの手のひらサイズの柔らかいものを掴みながら押し倒していくような、いつもの光景がそこにあったのだった。
 ……なお、この後、セナはもちろんさらにアンナやまぐろ……だけでなくうるやあかねまで巻き込んでもうひと騒動あったのは言うまでもない。

「す、すみませんでした……」
「い、いえいえ、大丈夫ですのでっ」
 とらぶる騒ぎが落ち着いて、そのメンバーとひとしきり話した後、いちごはセナと共に移動していた。
 少しのんびりしたいというセナが、仲良しの菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)を探しているというので、一緒に探すという名目でいちごもうるたちと別れてきたわけである。
 ちなみに、いちごガチ勢であると同時に、理緒に対しても同様の感情を抱いているっぽいセナなのであった。いちごはそこまではわかっていないが。
「理緒さんですか……?」
「いちごさんは見かけてませんか……?」
 とらぶるし通しとはいえ、参加者のだいたいの居場所は頭に入れているいちごだが、そう言えば理緒の姿は覚えがない。
 なぜなら、現在理緒はステルス中だからだ。
(「いたいた。……こそーっと接近しようっと」)
 そんな理緒の視線の先には、仲良しのカタメカクレ同盟の2人がいた。

 ヴェール・フィエーニクス(「涙を拭う手」のアサシン・f00951)は、皆への挨拶を済ませた後、1人でのんびりと温泉に浸かってほわほわしていた。
 このまましばらくのんびりまったりと……というわけには、幸か不幸か、ならない。
 その視界に1人の人物を見かけたからだ。
 それは、いちご同様に他の参加者に飲み物を配ったりとおもてなしのために動き回っている湯上・アリカ(こいのか荘のアリカさん・f00440)の姿。
 アリカに強い憧れを持つヴェールは、その姿が視界に入ると同時に真っ赤になってしまう。
 とはいえ、まだ他の参加者のもてなし中なので声をかけるのは躊躇われるのだが……そんなとき、ふいにアリカがヴェールの方を見て、にこっと笑顔を見せた。それだけでヴェールの心臓はバクバク言っている。
「ヴェールも飲み物飲むといいのよ?」
「……は、はわっ、はわわわ……」
 笑顔のまま近付いて、ヴェールに飲み物を渡し、そしてアリカはそのままヴェールの傍に腰掛けて自らも湯船に浸かった。
「え、あ、あの……」
「だいたい一回りしてきたから、少し休憩なのよ。一緒してもいいかしら?」
 そういうアリカの言葉に、真っ赤になって言葉に詰まりながらも、ヴェールはこくこくこくこくと頷いて了承の意を示すのだった。
 そしてなんとか、一緒に乾杯したいですと言葉にできたヴェールに、笑顔でもちろんと頷いたアリカは、2人でそのまま乾杯をすることにした。
「「「かんぱーい!」」」
 チンッと3つのコップが当たる音がする。
 ……3つ?
 そう、3つだ。
 アリカとヴェールの乾杯に、当たり前のように混ざって一緒にグラスを合わせた理緒が、唐突にそこにいたのだった。
「あ、理緒、いつの間に来たのかしら?」
「驚かそうと思ってステルスで! いきなりがバーッて抱きつこうかなって思ったんだけど、乾杯するところだったし!」
「び、びっくり、したですっ……」
 突然現れた理緒に、苦笑っぽく笑っているアリカと、真っ赤になってドキドキしているヴェールであった。もっともヴェールの場合は、アリカと2人きりの乾杯では心臓持たなかったかもしれないので、ちょうどいい乱入者だったのかもしれない。
「ああ、ヴェールさん可愛いなぁ」
「ひゃわっ?!」
 そしてそんな風に赤くなってどきどきはわはわしているヴェールを、やっぱり理緒は放っておかず、結局抱きついてしまうのだった。
「理緒、飲み物持ってるんだから、自重するのだわ?」
「あはは。ごめんなさーい。」
 抱きつかれたヴェールが、コップをこぼしそうになっていたので、アリカがそれを回収していた。そしてアリカは、特に何かを意識するまでもなく、ヴェールから受け取った方のコップに口をつける。
「あっ……」
「……え。ああ、こっちヴェールのだったのだわ。間違えちゃったのよ」
「い、いいえ……その……」
 自分が口をつけたものをアリカが飲んだ、いわゆる間接キスに、ヴェールは意識してますます真っ赤になるのだった。
 そしてさらに、アリカから、飲んじゃった代わりにと自分のを差し出されて、ますます真っ赤になるヴェールである。
「間接キスいいなー?」
「はわわっ!?」
 理緒のツッコミに、限界が来てのぼせ上ってしまいそうなヴェールであった。

「やー、それにしても温泉で飲むジュースは美味しいねー。この前いちごさんに怒られちゃったから、こうやって飲めるの嬉しいよー」
 間接キス騒動もひと段落した後、理緒はそう言って2人に笑いかけていた。
 落ち着いたヴェールも、冷たいジュースでのどを潤しつつ、コクコク頷いている。
 そこに、さらに別の声がかかった。
「前はコッソリ黙ってやってたから注意したんですよ。こうやって許可取ってやる分には怒りませんから」
 声をかけたのは、セナを連れてここまで通りかかったいちごだ。
「あ、いちごも来たのね!」
「え、えっと、お邪魔しますっ」
「あ、セナさんもー。おいでおいで―」
 そしてセナも加え、5人でしばらくのんびりと会話とジュースを楽しむのだった。
 いちごとしても、アリカがいるおかげか、とらぶるの怒らない環境はとてもありがたい。……とはいえ、直接的なとらぶるはなくとも、アリカと一緒のヴェールと、いちごと理緒に挟まれたセナが、色々と真っ赤になってのぼせそうになったのは言うまでもない。

●酒飲みたちとえとせとら
「「「かんぱーい!」」」
 露天風呂の一角では、月見を肴に、りんごを中心とした大人たちの酒飲みが続いていた。
「りんごお姉さまー♪ 今回はあまぁい日本酒をお持ちしたのよっ」
「あら、いいですわね」
 りんごのすぐ隣では、ヴィクトーリヤ・ルビンスカヤ(スターナイトクルセイダー・f18623)のメイン人格であるクトが嬉しそうにりんごのお世話をしている。艶のある銀髪をアップにまとめているクトは、憧れのお姉さまに甘口の日本酒をお酌して、とても幸せそうにしていた。
「露天風呂で飲むストレロは格別ですわぁ!」
 その近くでは、トリーシャ・サンヨハン(まるでだめなおねえちゃん・f29191)が、ストレロこと缶チューハイのストレングスゼロをがぶ飲みしていた。
「缶チューハイですか。それは美味しいのかしら?」
「ストレロこそ最強のお酒ですわぁ!」
「でも、きつそうなお酒なのね。……辛口はカッコ良さそうだけど苦手なの」
 アルコール度数はそれほどでもないにせよ、決して甘口とは言えないストレロを見て、クトは複雑な表情で見ていた。
「苦手だけれども飲んでみたいという事かしら?」
「うん、うん、そうなのよ……」
 そんなクトの様子から状況を察した名探偵、りんごの酒飲み仲間でもある鷹司・かれん(メイド探偵が見ています・f22762)は、苦笑しながら言い当てる。
 実際、クトは、お姉さまであるりんごが日本酒好きなので、できれば自分も一緒に飲みたいのだが、りんごの好みの辛口をどうすれば飲めるのか悩んでいるのだ。
「あら、そんなに無理して飲むことはありませんけれど……どうしても飲みたいのなら、こうすればいかがです?」
 そんなクトの様子を見てくすくすと笑っていたりんごは、トリーシャからストレロの缶を1本拝借して自らの口に含むと、クトを抱き寄せて口移しで飲ませてあげるのだった。
「ストレロはそこまで辛口ではないですけど、これなら甘ぁく飲めるでしょう?」
「は、はい……♥」
 目までハートマークを浮かべているクトだ、はたして酒の味が分かったのかどうか……?
「りんごさん、ストレロを唾液で割ったのですわね?」
「邪道だったかしら?」
 トリーシャの問いにくすくすと笑うりんご。
 だが、トリーシャの反応は、そのさらに斜め上だった。
「どうせ割るならストレロですわ。それに口移しなら妹ではなくショタですわ。ストレロをストレロで割って、ストレロとショタを肴にストレロを飲むのですわぁ!」
「そ、そう……」
 りんごとクトの様子を微笑ましそうに見ていたかれんだったが、そこで出てきたトリーシャのあまりの妄言というか勢いに若干引いていた。というかショタを肴にってなんだ?
「ショタ、ねぇ……恋華荘でショタっていうと、やっぱり……?」
「……だよねぇ?」
「他に該当はいませんし……」
 そして、近くでトリーシャの声を聴いていたパニーニャ・エルシード(現世と隠世の栞花・f15849)と、その別人格であるアザレア、そしてクトの別人格であるトーリの3人は、互いに顔を見合わせて、いちごの顔を思い浮かべているのだった。
 ちなみにアザレアもトーリも、それぞれユーベルコードで分身して出てきているのだが、最早彼女たちが分身しているのはある意味日常茶飯事である。額の宝石の色くらいしか変化のないアザレアとパニーニャと違い、髪の色が銀から黒に、瞳の色も青から金に変わるクトとトーリは、一見すると同一人物には見えないのだが、黒髪をアップにしているトーリの姿は、クトと同じ髪型になっており、確かに色以外は同一人物だと思わせている。
 もっとも、多少違いはあっても、この分裂した2組4名については、既に周囲の者も含めて、別々であることが当たり前になってきているのだった。

「あはは……今この状態でいちごが来たら、大変なことになりそうね」
 さて一方では、パニーニャたちと同じことを思ったであろうゆのかも、そう苦笑していたりする。
「まぁ、来たとしても、いちごちゃんにもゆのかちゃんにもお酒はまだ早いからねぇ」
 りんごやトリーシャたち同様にお酒を飲んでいた和が、そう言ってゆのかに注意した。自称おばちゃんなだけに和自身はもちろん飲んでいるわけだが。
「あはは……でも、3年すれば、私もいちごも、あんな感じで飲むようになるかしら……?」
「りんごちゃんはともかく、トリーシャちゃんみたいな飲み方はどうかと思うけどねぇ?」
 そういって酒飲みたちに憧れるような、将来の大人な自分たちの姿を想像するようなゆのかだったが、その時、件のトリーシャの声が聞こえてくるのだった。
「異議は認めますが私はこれが至高のお酒なんですわぁ、さぁ酒飲みの皆様も共にストレロを称えましょう!」
 苦笑するりんごや引いているかれんの前でストレロを連呼している酔っ払いトリーシャ。
 その声を聴いて、ゆのかは和と顔を見合わせて苦笑するのだった。
「……ぁ、でも迷惑かけそうな飲み方は、め、よね、うん。うん……」
「そうよぉ……まだまだお子様にはお酒は早いからねぇ?」
 そんな和は、自分自身はりんご同様に日本酒を飲みながら、相伴にあずかろうと近付いてきた彩波・流江(不縛神フルエリュト・f25223)の手をサッとつかむのだった。
「えっ、えっ、何で止めるんですか和さん?」
 温泉で暖まりながらの月見酒いいですねぇ……とりんごたちの日本酒に手を伸ばそうとしていた流江だったが、それはダメだと和が止める。
「だから、子供にはまだお酒は早いってねぇ?」
「……え、私飲んじゃいけないんですか!? いえ、あの、成人してないのは書類上の話であってですね……」
 神である流江は、書類上、というかステータス上は確かに14歳なのだが、実際ははるかに長い時を生きているらしい。らしいのだが……。
「ま、お互い実際どれくらい生きているかはともかく、ステータスは子供だから、しかたないわね」
 そういって流江を諭すのは、こちらも神である葛葉・アリス(境界を操る幼き女神・f23419)だ。神として遥か昔から存在はしているが、今のこの肉体は見た目通りの幼女だという事で、アリスも酒は諦めてジュースを飲んでいた。
「……うぅ、見た目に説得力が欲しいと思いました……」
「私に比べれば説得力ある身体だとは思うけどね?」
 幼女であるアリスに比べれば、14歳にはとても思えない胸の持ち主の流江ではあるが、どちらにしても恋華荘のおふくろさんである和の前での未成年飲酒は厳禁なのである。

「あはは……じゃあ、流江さん。こっちでぼくたちと一緒にお喋りでもしませんか?」
「ええ、飲んでいる人もいるみたいですけど、やっぱりお酒は……お風呂に入るからやめておいた方が……酔ったら危険ですから、ね?」
 名残惜しそうにちびちびとアリスに渡されたジュースを飲んでいた流江だったが、そこにお友達がやってきた。
 声をかけたのは、茅乃・燈(“キムンカムイ”は愉快な仲間で力持ち・f19464)と言葉・栞(開巻有益・f14552)の2人だ。ちなみに栞は成人済みだが、お酒は飲まない様子。
 さらにその2人の向こうには、霧沢・仁美(普通でありたい女子高生・f02862)も手を振っている。
「……それにしても」
「ん?」
 手を振っていた仁美だが、流江が自分たちの方に移動してきたのを見て、なんだか感慨深そうに呟いた。
「ああ、うん。栞さんに流江さんに燈さん……前から思ってたけど、こう、妙に親近感を感じるなぁ…って」
「皆さん胸が大きいから……? どうしたらそんなに大きくなるんですか?」
 そんな4人の共通点を見出したように、近くにいたルイザ・シャーロット(冷静な弓箭衛士・f27402)が口をはさむ。
「い、いや、その、みんな胸が大きいってのもあるけど、そうじゃなくて全体的に……」
「それに大きいと言っても、仁美さん達と違ってぼくはそこまでは……」
 突然横から飛んできたお子様の指摘に、真っ赤になって手を振る仁美と、小首を傾げる燈。燈はこんなことを言うが、そして実際に4人の中では燈は一番小さいのだが、燈も十分すぎるほど大きいです。
「む、胸ですか……まだ大きくなっているんですよね……」
「私も……胸で大人判定してくれればいいのに……」
「む、胸の話はやめよう、ね?」
 自分の胸を見て赤面しつつ俯く栞と流江に、やはり真っ赤になったまま話を強引に逸らそうとする仁美であった。
「あ、あたしが言いたいのはさ、こう、なんとなく親近感持てるお友達ができたんだから、……まぁ、だから何だってコトはないけど、こう……この4人で何かしたいなとか思ったりはするかなって話で……」
「そ、そうですね。せっかくお友達の皆さんと一緒に、こんなに大きな温泉でゆっくりとお月見なんて、スゴイ贅沢ですし、いっぱい楽しみましょう」
 しどろもどろながらも話の軌道修正をする仁美に合わせて、栞もまだ少々赤面しつつこくこくと頷いている。
「そうですね、お友達と一緒に露天風呂でのお月見とか歓迎会とか……こういうのもあるのですね~……いちごさんも一緒なのは少し恥ずかしいですけれど……」
 流江も、友達と一緒というのはなかなかない機会なので、改めて言葉にするととても嬉しそうだ。ただ、そこでつい付け加えたのは余計な一言だったかもしれない。
「あ、そうでした。いちごさんも参加してるんでしたね……ぼくとかはもう慣れちゃいましたけど」
「な、慣れるものなんですか……?」
 4人の中では恋華荘歴も一番長い燈は、今更いちごと一緒のことを意識はしていないようだが、流江や栞はまだそういうわけにもいかない。むしろ、恋華荘に住んでいるわけではないゲストの仁美の方が慣れてしまっているようで……。
「あ、いちごくん、色々巡りっぱなしでちょっと疲れてないかな? 良かったら、あたしたちの傍で一休みしていく?」
 仁美は、そういってたまたま噂をすれば影のように通りがかったいちごに声をかけるのだった。
「あ、はい……それでは」
「「いちごさんっ!?」」
 仁美に声をかけられたいちごが、ちょうど栞と流江の背後から近付いてくるものだから、2人は驚いて振り向き、反応してしまう。
 具体的に何が起こったかというと、流江は身体を隠すようにお湯に身を沈め、驚きのあまり思わず立ち上がってしまった栞は、赤面して身体を隠そうと慌てた結果、そんな流江に躓いてしまい……。
「きゃぁ!?」
「ええっ!?」
「ちょっと……!?」
 そして栞はいちごを巻き込んで転び、いちごはさらに流江や仁美を巻き込んで大きな水音を立てて湯船にダイブしてしまうのだった。
「えっと……みんな、大丈夫?」
 唯一巻き込まれなかった燈が覗き込むと、4人はもつれて絡み合い、いちごの顔は仁美の胸の谷間に挟まって、そして両手はきっちりと栞と流江の乳房を掴んでいたそうな……。

「やっぱりいちごさんにお近づきになるには、ないすばでぃにならないといけないんでしょうか……?」
 いちごと仁美たちのとらぶる現場を眺めつつ、ルイザはそんなことを口走っていた。まだ10歳のませた女の子でしかないルイザは、いちごからは子供扱いなのだが、本人的には背伸びしたい年ごろなのである。
「わ、私だって、いつかはないすばでぃになりたいですし……」
 という女の子のある意味切実な呟きを耳にしたアザレアが、ルイザに近付いてきてアドバイスをする。メートル級の胸を湯船にぷかぷかと浮かべながら。
「……好きな異性に優しく揉んでもらうと大きくなる……古事記……もとい漫画にもそー描いてある」
「や、やっぱりそうなんですか……?」
 そこにさらにトーリも引っ掻き回すかのように乗ってきた。
「そうですね。いちごさんも大きな胸がお好きなようですし、もう少し私自身の胸も育てた方が……」
 言いながら自らの乳房をこねるようにマッサージするトーリである。
「自分でやるよりは、人にやってもらった方がいい気もしますけれど?」
 そう言って苦笑するのは、トーリの騎士仲間でもあるアテナ・パラステール(亡国の姫騎士・f24915)だ。アテナもまた爆乳とまではいかないにしろ、かなりの胸の持ち主である。
「なんならわたくしがマッサージします?」
「い、いえ、それは遠慮しておきますわ」
 自らもいちごを旦那様と呼びつつ、実の妹をいちごに差し出したとの噂もあるアテナだ。まさかそっちの気もあるのかと一瞬背筋が寒くなるトーリであった。
「あら、残念」
「……とはいえ、もう少し育った方が、熾天使への融合時にハクも……アレ、微妙にクトがベースですし……」
 人格の変化で髪色が変わるトーリとクトだ。主人格であるクトの方がプロポーションが良いという事もあるのかもしれない……?
 それはともかく、アザレアが民明書房の本とかに書いていそうな蘊蓄を大真面目に言い、それを受けたトーリが胸をマッサージしている姿を見てしまったルイザは、そのまま信じてしまいそうである。純真なのだ。
 ……もちろんその前に、真面目な方の人格であるパニーニャが、脳天チョップしつつツッコミを入れる。
「嘘教えないの。あくまで都市伝説でしょアレ……適度な運動自体は必要だけど」
 ちなみに言うまでもないが、アザレアと同じ身体であるパニーニャだ。こちらもバストはぷかぷかと浮かんでいた。
「何よりこのだるがりドラ娘だって、朝のクンフー欠かしてないし?」
「あ、ちょっとパニーニャ、何口走ってるのよ……」
 だるがりドラ娘ことアザレアは、周囲には見られていないと思っていた鍛錬をばらされて慌てていたりする。さすがに周囲には見られていなくても、身体を同じくする別人格には隠しきれない。
「うーん……触ってもらったり鍛えたり、ですか。すぐにでもないすばでぃになりたいのに……」
「ま、焦らない焦らない」
「……うう、見ているとその豊かなお胸に触りたい欲望と戦っちゃいます」
「え、ちょっ!?」
「いちごさん以外はダメですわよ?」
 ルイザの悩みに苦笑していたパニーニャとアザレアととトーリだったが、さすがにその発言には驚愕し、ちょっとだけ距離を取ってしまう。もっとも口走ったルイザ自身も、自分は女の子も行けるのかと悩んでいるようだが。
「わたくしでよければ多少は?」
 というアテナが、ルイザの手を取って自らの胸に押し付けてみると、ルイザはなんとなく納得して、やっぱりうなだれるのだった。
「柔らかい……なるほど、男の人が大きな胸に憧れるのもわかる気がしますね」
「ま、まだまだこれから成長するのですし、長い目で見る事ですね」
 そういってアテナは苦笑する。もちろん、それまで旦那様が待ってくれるかはわかりませんけど、などとは口にはしなかったが……。

●王様ゲーム第1組
「さて、そろそろいい頃合いかしらね?」
 などなど、賑やかにというか騒がしくしていた中で、アリスが急にそんなことを言い出し、マイクを取り出して露天風呂にそれぞれ散って話をしていた寮生たち全員に聞こえるように、余興の開始を告げるのだった。
「それじゃ、そろそろお待ちかねの余興の王様ゲーム、1回目を始めるわよ」
 アリスは、近くにいたりんごにもマイクを渡して一緒に司会をするように促し、更に配下でもある電脳悪魔ベアトリス・バスカヴィル(デジタルデビルBB・f23871)を召喚して声をかけた。
「ベアト。例のモノを用意して」
「了解なのれすー」
 例のモノとはもちろん、王様ゲーム用の籤だ。
 そして手際よく準備をしていくアリスに、視界の片割れを任されたりんごが声をかける。
「参加メンバーは、さすがに全員一度には無理でしょう。前のように別けるとして、どうします?」
「そうね。いちごの辿った軌跡に合わせて選びましょ。いちごはどうせ全部に参加させるし」
「なんでですかっ!?」
 いちごの文句が上がるが、アリスもりんごもまるっと無視である。
「それでは、スーさん、まずはあそこら辺の人たちに声をかけてきてくださいな」
「了解なのれす」
 りんごは、本来はいちごの眷属であるショコラ・スー(スーちゃんは悪いスライムじゃないのれす・f28995)を何故か呼び出してしまった。お湯がボコりと盛り上がったかと思うと瞬く間に黒いクラゲのような姿になり、一瞬光ったと思ったら人懐っこい笑みを浮かべた美人、人型になったスーが現れて、りんごの言うとおりの人たちに声をかけていく。
 指名されたのは、いちごがまず最初の方に接触していた、ジオレット、美弥子、美咲、沙良、美琴、桐子、蒼、藍、翠、紅に加え、無理やり連れてこられていちごを含めて11名。
 え?私も?という表情を浮かべている者もいるがお構いなくその面々を集めた幼女神と闇医者は、横暴にも開催を宣言してしまうのだった。
 かくして、ベアトリスが持つ王様と①~⑩までの数字の書かれた籤を、アリスの指示のもと11人は毎回毎回引いていくことになる。

「王様だーれだ」
「あ、あたしだ」
 最初の王様になったのは美弥子だった。マイクを向けられた美弥子は、少しだけ思案したのち、最初からぶっこんできた。
「10番が9番に愛してると言うってのでどうかな?」
「ぶっ!?」
「ええっ!?」
 美弥子の命令に声をあげたのは、9番のいちごと10番の翠だった。
 本当にいちごに思慕の情を持つ翠にとってはあまりにも洒落にならない命令であったからだ。
 どうしようと困った翠は、助けを求めて近くにいた姉妹の顔を見る。
 妹を助けたいが、ある意味恋敵でもあるため困ったような顔をする蒼。
 いい機会だから言ってしまえと書いてあるような顔で見ている藍。
 蒼と翠の顔を見比べて困っている紅。
 ……残念ながら姉妹の誰も助けにはなりそうにない。
 困った顔をして視界のアリスを見ると、さっさとやりなさいと顔に書いてある。
 進退窮まった翠は、顔を真っ赤にしてしずしずといちごに近づいていくのだった。
「あ、あの、いちご先輩……」
「は、はい……」
「私、先輩の事、その……愛して、ます……」
 それだけ何とか呟いて、そして顔を真っ赤にして逃げてしまう翠。どう見ても演技には見えないのだった。
 そして取り残されたいちごは、赤面しつつ困っていたという……。

「王様だーれだ」
「あ、えっと、私です……」
 まだ顔を真っ赤にしたままの翠が、次の王様だった。
「命令はどうする? また誰かに告白させる?」
「こ、告白っ……!?」
 司会からのツッコミに、ますます顔を赤くする翠。
 それに思考を引きずられ訳でもないのだろうが、何とかひねり出した命令は、ある意味告白だった。
「えっと、それじゃ2番が4番に秘密を打ち明ける、で」
「私!?」
 翠の命令に反応したのは、姉の藍だった。どうやら秘密を暴露する側の様子。
「秘密といっても、他の人に聞かせるわけでもないし、そんなに深刻な事言わないでもいいですよ……?」
 そして打ち明けられる側の④番は沙良のようだ。さすがに閻魔だからか、秘密はちゃんと守るのだろう。閻魔帳に記したりもしない、はず。
 藍を見て困り顔になった王様の翠だったが、藍はそんな翠を安心させるように微笑むと、沙良の元に行って耳打ちをする。
 ……どうやら魔法戦士の正体を話したようだが、それはもちろん沙良以外には聞こえないのだった。

「王様だーれだ」
「あ、私だね」
 次の王様はジオレットのようだ。
 ジオレットは少しだけ考えた後、悪戯を思いついたようにクスッと笑って命令を下した。
「8番が9番にくすぐりをする。……脇とか足の裏、念入りに、ね?」
 それで立ち上がったのは、美咲といちごの2人だ。美咲がいい笑顔でいちごの方を見ている。
「命令だから仕方ありませんよね?」
「お、お手柔らかに……」
 少しだけ恥ずかしそうに頬を朱に染めながらも、両手をワキワキとさせてじりじりといちごに迫る美咲。あるいは最初のとらぶるのお返しとか思っているのだろうか。
「あはははははは……っ、くすぐったっ……やめっ、勘弁して、くださいっ……」
「まだまだ、王様の命令ですからねー」
 美咲は思う存分いちごの脇や足の裏をくすぐるのだった。
 ……まぁ、やりすぎた結果、苦しそうに転んだいちごに押し倒されて逆にむにゅっと触られたのだが、お約束というか自業自得というか……ある意味平常運転だったろうか。

「王様だーれだ」
「私ですね」
 次の王様は藍だった。
 藍は、あまり悩まずにパパッと命令を告げる。
「9番が1番の髪の匂いを嗅ぐ、で」
「ぶっ!?」
「ちょっ!?」
 呼ばれた9番はいちごで、1番は美弥子のようだ。
 ある意味、先程の美弥子の命令で困り果てた翠の敵討ちになったかもしれない。
 いちごも、髪の匂いを嗅ぐくらいならまだおtなし烏賊と、美弥子に近づいていくのだが……。
「い、いちご、まって、やめて……今あたし焼き鳥の匂い染みついてるから、待ってやめて……!?」
「そう言われても、命令ですし……」
 普段の状態なら美弥子も多少恥ずかしい程度で済んだかもしれないが……さすがに今はちょっと勘弁願いたい様子。
 しかしいちごは申し訳なさそうな顔をしつつも、美弥子のポニーテールを手に取ってクンクンと鼻を鳴らすのだった。
 もちろん焼き鳥の匂いしかしなかった。
「ちゃんと髪洗っておけばよかったあああああ……」
 後の祭りなのである。

「王様だーれだ」
「私みたいですね。えっと、それでは1番が10番に、お酌してあげる、ということで」
 次の王様になったのは沙良だった。
 沙良はさっそくと大人しい命令を言うのだが……番号がなかなかにピンポイントだったのである。
 なぜかというと、先程いちごに告白させてしまった美弥子が、命令で告白する羽目になった翠に、お酌をするという事になったのだから。
 ……ある意味閻魔様の裁きだったのかもしれない。
「え、えっと、さっきは……ごめんね?」
「い、いえ……」
 美弥子もまたいちごガチ勢であるがゆえに、王様ゲームの命令で無理に言わせてしまったのは申し訳なく思うのだ。まさかそういうピンポイントな当たり方をするとは思っていなかったからして。
 とはいえ申し訳なさそうにジュースを注いでくる美弥子を見ては、翠も何か言う気にはなれず……もともと何も言う気はなかったのだろうけれども。
 なのでそのあとは無言のまま何回かお酌することになったのだった。

「王様だーれだ」
「あ、私ですね」
 次の王様は美咲だった。
 さてどうしようかと考えた美咲は、先程自分がやったことをそのまま命令にすることにした。
 つまり。
「7番が10番の脇腹をくすぐるで」
「は、はい。えっと10番の方は……?」
 呼ばれて立ち上がった7番は美琴だった。そして10番はというと……翠だ。
「翠さん、ごめんなさいっ」
「い、いえ、いいんです……んっ、あっ……くすぐっ……やぁぁ……」
 先程一緒に話をして少し仲良くなった直後にこの仕打ち。
 美琴は申し訳なさそうに目を閉じたまま、手探りで翠の身体をくすぐっていく……ので、くすぐる場所がわき腹から少しずれ始め、それに伴い翠の声もだんだんと艶めかしくなっていって……司会のりんごからストップをかけられてしまうのだった。
 ストップが駆けられた後、美琴は、土下座する勢いで息も絶え絶えの翠に謝るのだった。

「王様だーれだ」
「は、はい。私ですね」
 次の王様はその美琴だった。
 美琴はどうしようかと首を傾げ、近くにいた桐子に視線を向ける。
「いや、そんな目で見られても……美琴姉様、私も当たる可能性あるんですから、相談はできませんですよ?」
「そ、そうですね。えっと、それでは……10番が9番に抱きつくということで」
 困った美琴が何とかひねり出した命令は、そんな可愛らしいものだった。
 ……当てられた番号が、翠といちごの組み合わせでなければ。
「えっと……」
「い、いちご先輩っ……!?」
 王様ゲーム始まってすぐに告白させられて気まずい翠が、更にそのいちごに抱きつくという……。
 立ち上がった2人を見て、特に翠に様子を見て、美琴は本当に申し訳なさそうにぺこぺこと頭を下げるのだが、だからといって命令を取り下げられるわけでもなく。
 早くやりなさいという司会の視線に負けた翠は、顔を真っ赤にしたまま正面からいちごに近付き、おずおずとその背に手をまわすのだった。
 玉依姉妹の中で一番胸のない翠ではあるが、さすがに零距離で密着されれば、いちごにだって薄い膨らみを感じられてしまう。そして胸が薄い分余計にドキドキしている心臓の鼓動も伝わってしまう。
 司会がもういいというまでの短い時間が、とても長く感じられてしまう翠であったそうな。

「という所で、最初の組み合わせはこんな所ね。では、次のメンバー探しに行きましょうか」
 王様ゲームはまだまだ続く。
 アリスは次のグループの所へとベアトリスとスーを向かわせるのだった。

●王様ゲーム第2組
「それでは次はあなたたちなのれす」
「人数も丁度いいと、BBは司会に報告します」
 スーとベアトリスが集めた次のメンバーは、いちごがその次に接触した面々だ。
 すなわち、まりも、桜桃、フロウヴェル、伽夜、いるる、あんな、若葉、メリッサ、ロザリー、アシュリン。そしてそれに加えて。
「あ、もちろんいちごさんは継続参加ですよ?」
「なんでですかー?!」
 当然のようにいちごも巻き込んだ11人。
 もちろんいちごが続けて参加することに対しての異論は、いちご以外からは一切出なかったという。

「王様だーれだ」
「ふむ。最初は余だな」
 2組目の最初の王様を引き当てたのはあんなだった。
 あんなは、ちらりといちごの顔を見ると、いいことを思いついたかのようにニヤッと笑みを浮かべ、そして命令を言うのだった。
「9番が4番に『いちご殿のステキな所』を耳打ちするというのでどうだ?」
「ぶーーーーーーっ!?」
 命令を聞いて盛大に噴き出すいちごである。なお、いちごはどちらの番号にも該当していない。
 では誰なのか。
 ある意味、このお題に最もふさわしい者が呼ばれていた。
「ふふふ……どれだけ語ればいいですか? どこまででも、いつまででも語れます」
 9番は若葉なのであった。
 いちごガチ勢かつストーカーである若葉だ。いちごのいいところなど、それこそ三日三晩だって語れるのだろう。
 そんな彼女の話を聞く羽目になった哀れな犠牲者は……。
「ん。いっぱい聞かせてほしいの」
 フロウヴェルだった。
 こちらもいちごガチ勢。いちごの事ならいくらでも聞きたいので……被害者でもなんでもなかった。むしろ嬉々として若葉の話を聞き始めた。
 かくしてあんながそんな2人の様子を酒の肴にしつつ一杯飲んでいる間も、2人の話は延々と続くのだった。
「むむむ。さすがご主人のストーカーズなのだな。しかし司会よ、終わるまで待っていたらいつまでもゲームが進行しないゆえ、そろそろ止めるべきではにゃいか?」
「……そうね。いい加減帰って来なさい、2人とも」
 というわけであまりにもゲームが進行しないから、桜桃に指摘された司会によって止められたそうな……。

「王様だーれだ」
「うむ。次は妾じゃな!」
 次の王様はあんなの妹のいるるだった。
 イルルは特に深い考えもなく、あっけらかんと命令を発する。
「10番が3番に豊胸マッサージするのじゃ!」
「ぶっ!?」
 またしてもいちごは噴き出している。そのいちごが籤を掲げると、そこにはしっかりと10と書かれていた。
「おお、いちご殿か。いちご殿、マッサージ以外の艶事は後でやるのじゃよ? 妾とて『まだ』堪えておるからな。のぅ……♥」
「何を言ってるんですかっ!?」
 いるるの物言いに、真っ赤になってツッコミを入れるいちご。
 そして3番の籤を引いたのが誰かと視線を向けると……そこには真っ赤になっているまりもがいた。
「あ、あのね、いちごさん、えっとね……」
「そ、その、なんていうかすみません……失礼します」
「は、はい、どうぞ……」
 命令だから仕方ないし、いちごさんのことは別に嫌じゃないし、と自分に言い聞かせたまりもは、真っ赤になって目をぎゅっとつぶっていちごに胸を差し出した。
 マリモが憑いている状態なら問題はなかったのだろうが、今はまりも本人の意識のまま。
 ただでさえ混浴は恥ずかしいのに、胸のマッサージだなんて。
 それでも健気に命令を遂行しようとするまりもを見て、いちごも手早く済ませようと胸に手を伸ばした。
 ふにゅんとそれなりにボリュームのある胸をいちごの手が包む。そしてふにふにとマッサージとして揉まれていく。
 程なくして司会にそこまでと止められるのだが、止められた後もまりもは顔を真っ赤にして恥ずかしがっていたのだった。

「王様だーれだ」
「ん、ベルなの」
 次の王様は、王様になっても特にテンションの変わらないフロウヴェルだった。
「それじゃ、7番が1番にハグするの。やっぱりこれは外せないの。ベルだし」
 いかにもスキンシップ大好きなフロウヴェルらしい。実に納得の命令である。
 とはいえ、組み合わせによっては(というかいちごが絡めば)ある意味大惨事にもなりかねない命令ではある。
 が、今回指名されたのはロザリーとアシュリンの2人だった。
「あ、あたしか……えっと1番引いたのはロザリー?」
「そうね。それじゃ、えっと、よろしくね……?」
 先ほどまでいろんな意味で同類として友好を深め合った直後のこの命令なので、いろいろと気まずかったりする。
 お互いに顔を赤くしたまま、正面から向き合い抱き合う2人。
 ぎゅっと腕に力を入れれば、互いの胸が擦れ合い、変な気持ちになってしまう。
 しばし気まずい抱擁タイムが続くのであった。
「司会ー。いいが限泊めてあげたら?」
「これは止め時が難しいと思いますわよ?」
 いつ止めればいいか、メリッサとりんごはぼそぼそと打ち合わせていたとか何とか……。

「王様だーれだ」
「にゃぁ。僕です」
 次の王様は伽夜だった。
 伽夜は目を閉じて少しだけ首を傾げると、命令を口にする。
「命令は、9番が2番の顔か手を舐める……です。顔でも手でも、どっちでもいい……です」
 いかにも猫らしい命令かもしれない。
 ただ、今回の組み合わせは、猫のような可愛さとは無縁になった。
 何故なら、9番が若葉で2番がいるるだったからだ。
「……手を」
 いるるを見て少し考え込むような若葉。
 いるるは不思議そうにしているが、ほどなくして若葉は、焦点のあっていないような虚ろな瞳でいるるの手をじっと見て、笑顔を浮かべるのだった。
「ああ、この手……先ほど愛しい人に触れた手」
「う、うむ。いちご殿と触れあってはいたのじゃ……?」
 先程いちごのストーカー話で盛り上がった2人だったが、さすがに若葉のこの様子には少し引いてしまういるるである。
 しかし若葉は、そんないるるの様子にはかまわずにその手とると、愛おしそうに舐め始めた。
「あの人の残り香を感じます……」
 ……その様子は、先程いるるがいちごに触れた部分をすべて舐めとるかのような執拗なペロペロだったと言っておこう。
「ああ、あの人の味がする、美味しい……」
 そしてその光景を見たあの人こといちごの背筋がとにかく寒くなったとか。

「王様だーれだ」
「あ、今度は私ですね」
 いるるの手を舐めて満足した若葉が次の王様だった。
「……」
 再び何かを考えこむような若葉。
 自分の命令でいちごに誰かが触れるのは避けたい……とでも考えているのか、番号をぶつぶつ呟いては考え直している様子。
「8番が2番に、お腹のマッサージです」
 そしてようやく決めた番号で、命令を下す。
「にゃぁ。8番は僕です」
 呼ばれた伽夜は、相手を探して辺りをきょろきょろと。
「また妾か!?」
 ちなみに2番はいるるだった。いるるの受難はまだ続く。
 伽夜がいるるのお腹をふにふにと撫でまわし揉みはじめる。
「く、くすぐったいのじゃ……!?」
「にゃぁ。どこまでやればいい……です?」
 しばらく猫の手で撫でられるくすぐったさに悶絶するいるるであったとさ。

「王様だーれだ」
「あ、私かな?」
 次の王様はまりもだった。
 先程いちごに胸のマッサージをされてから、赤面したまま湯に沈んでくじだけ引いていたまりもだが、王様になってしまっては仕方ない。
「えっと……10番が4番に腹筋特訓で!」
 呼ばれたのは、いちごとフロウヴェルだった。
 腹筋という事で湯から上がり、そのまま横になるフロウヴェル。
 もちろん裸のまま。
「や、ちょっと! 全裸で、とか言ってないから!」
 慌てるまりもだが、それはそうだろう。
 腹筋とくんのために足を抑えるいちごからは、フロウヴェルの身体が真正面から丸見えなのだから。
「そ、そうですよ。せめて腰にはタオルをかけるとか……」
「ん、いちごだからいいの。もっと見てもいいの」
 いちごは目線を逸らしているが、フロウヴェルは全く気にしていない。
 結局、いちごが足を押さえて視線を逸らしているところで、フロウヴェルが腹筋を開始する。
「んっ……んっ……」
 目を逸らしたことでフロウヴェルの身体が見えなくはなったのだが、いちいち掛け声が艶めかしいので、いちごだけでなく王様のまりもも赤面してしまったのだった。

「王様だーれだ」
「今度はあたしだね。じゃあ、4番が10番に後ろから抱きつくで!」
 次の王様はアシュリンだ。
 特に悩むこともなく即座に命令を発した。
 その結果、狙ったわけではなかったのだろうが、今腹筋特訓を終えたばかりの2人が続けてまた選ばれてしまったのだった。
「あ、あれ、またいちごとベル?」
「いい命令なの。アシュリン、グッジョブなの」
 ぐっとアシュリンに向けてサムズアップしたフロウヴェルは、そのまま、腹筋で火照った身体で、いちごの背後からぎゅっと抱きついた。
 腹筋のせいでまだ息が上がっているのか、いちごのその豊満な胸を押し付けながら、はぁはぁと艶めかしい息を漏らしている。
「あ、あああの、ベルさん……?!」
「ん、落ち着くまでもう少しこうしているの……はぁ……んっ……」
 いちごは背中に押し当てられている柔らかい感触と、耳元に聞こえる熱い吐息で、真っ赤になったまま硬直してしまうのだった。
 そしてもちろんその光景を見ていたアシュリンも、やっぱり真っ赤になっていたりする……。

「王様だーれだ」
「はい。あたしだねそれじゃ、2番が5番に恥ずかしくなるぐらいの愛の言葉を語る、で」
 次の王様はロザリーだった。
 そして出された命令に、指名された2人が顔を見合わせる。
 なせなら……。
「妾か!?」
「ふむ、余にか」
 指名されたのがいるるとあんなの姉妹だったからだ。
 いるるの受難はまだ終わっていなかったらしい。
「むむむ。姉上のことはもちろん好きじゃが、愛の言葉となるとどうすればよいかのぅ……」
「余も、妹からの親愛の情は常々感じておるしな。今更という気もするが……たまには言葉で聞いてみたい欲にも駆られよう」
 言われる側のあんなはまだ余裕だが、言う側のいるるは実の姉に対してどうすればいいのか首をひねっている。
「これがいちご殿へと語る愛の言葉なら余裕なのじゃながな……」
「うむ。それなら余もすらすらといつまでも語れようぞ」
「趣旨が違ってしまいますからっ!?」
 姉妹の共通見解には外野のいちごからツッコミも入る。
 だが、それがある意味ヒントになったようだ。
 いるるは何か思いついた顔をして、あんなと、その背後にいる外野のいちごに向けて語りだすのだった。
「姉上、妾は姉上が大好きじゃ。妾の前世より紡がれし生涯の伴侶を共に分け合おうと思う程に、姉上のことを愛しておるぞ!」
「ぶっ!?」
 ある意味強烈な愛の言葉に、外野の方から吹き出す声が聞こえたが、いるるもあんなもそれはスルーする。
「さぁ、姉上、ともにいちご殿と添い遂げようぞ。妾達の愛は永遠なのじゃ!」
「ふふ。望むところよ」
「望まないで!?」
 姉妹愛を確かめ合った2人とは対照的に、流れ弾を喰らったいちごはがっくりと肩を落としていたとかいないとか……。

「えーっと……いちごさんもあんな状態ですし、次の組に行きましょうか?」
「ええ、そうね。そうしましょう」
 司会のアリスとりんごも、なんとなく言葉を失って、次の組へと移るのだった。

●王様ゲーム第3組
「さてさて、次のメンバーは……」
「りんご、こっちにする?」
「ウチらの周りの面子とか、面白いんちゃうかな?」
 次のメンバーを探していたりんごとアリスに、アリカとメランが声をかける。
 当然のようにアリカもメランも今度は司会側に加わって、そして2人の周りにいた面々が第3組として指名されたのだった。
 すなわち、サエ、月夜、深波、うる、あかね、まぐろ、アンナ、セナ、理緒、ヴェール。そしてやっぱり連れてこられたいちごを含めた11名。これが第3組のメンバーであった。
 もちろん、いちごが巻き込まれたことに、本人以外の否はない。

「王様だーれだ」
「あ、私みたいですね」
 第3組の最初の王様になったのはアンナだった。
「では、私の命令は、3番が7番をお姫様だっこです」
「は、はいっ」
 呼ばれた3番はセナだった。お姫様抱っこをする側と合って、まだそこまで顔は赤くない。される側だったら……そしてされる相手次第では、真っ赤になって硬直してしまうだろうが。
「えへへ。それじゃよろしくねー」
 7番に当たったのがうるだったので、セナとしてもそこまで緊張する相手ではなく、ホッと一息という所か。
「えっと、それでは失礼しますっ」
「よろしくー」
 豊満だが意外と小柄なうるを、実はそれよりも背の低い細身のセナが、うんしょと力を込めて抱き上げる。
 体格的には結構無理がありそうだが、そのあたりはさすが猟兵。特にふらつくことなくしっかりとした足取りだった。
「あかねえ、みなみん、見てるー? いいでしょー♪」
「あ、あのっ。あまり動かないでくださいっ!?」
 ……もっとも、うるがこの状態ではしゃいでいるので、セナがいつまでもつかはちょっとわからない。
「うる殿、あまり動かれてはセナ殿がーっ!?」
「えー、いいじゃない、みなみーん」
「いいかどうかを決めるのは私ではなくセナ殿でーっ」
 うるを止めようとした深波もこの始末。
 程なくしてバランスを崩したセナは、うるごといっしょに湯船にダイブすることになったのだった。

「王様だーれだ」
「ウチですね」
 次の王様はあかねだった。親しい友人たちだけで話していた先ほどとは違い、みんなの前なので標準語だ。
「では、8番が5番に肩もみ肩叩きでいきましょう。……大きいとこりますからね」
 最後にぼそっと付け加えた言葉は、恐らくほとんどの者には聞こえなかっただろう。割と切実である。
 だが、そんなあかねの切実な思いとは裏腹に、ここで選ばれた5番はいちごなのだった。
「な、なんかすみません……」
 そのいちごはあかねの付け加えた言葉が聞こえていた様子で、何か申し訳なさそうにしていた。
 そして8番はというと。
「よ、よーし。それじゃ、いちご、思いっきり行くわよ!」
 恥ずかしそうに顔を赤くしつつも、せっかくのいちごと触れ合えるチャンスだという事で気合を入れたまぐろである。
「お、お手柔らかに……」
 苦笑しながら背中を向けるいちご。
 むしろ肩を揉むまぐろの方が緊張している感じではあったが、そのあとは割と平穏に肩もみを続けたのだった。
「ああ、気持ちいいですよ、まぐろさん」
「そう? そうよね。よーし、まーかせて!」

「王様だーれだ」
「あ、私ですね」
 次の王様はセナだ。
 セナは、先程のお姫様抱っこで最終的に耐えきれずにお風呂にダイブしてしまったとでも思い出したのか、お風呂に関する命令をすることにした。
「えっと、8番が1番に、肩を組んで一緒にお風呂という事でお願いできればっ」
「セナ―、王様なんだからお願いじゃなくて命令でいいのよ?」
 司会のアリスからツッコミが入るが、それはともかく、呼ばれたのは再びまぐろだった。
「また私か。えっと、1番は……アンナ?」
「はい。よろしくお願いしますね」
「ちょうどいいわ。さっきはあまり話せなかったしね!」
 相手がいちごではなく女同士なら、まぐろに怖いものはない。
 あっさりと距離を詰めて、アンナの肩を抱き、そのまま並んで一緒に湯船に浸かるのだった。
「えっと、100まで数えればいいのかしら?」
「多分それくらいでいいのでは……?」
 これくらいなら楽勝とばかりに、まぐろはそのまま鼻歌交じりに数を数えていくのだった。

「王様だーれだ」
「ふふーん。ここであたしの出番ってわけね」
 次の王様はサエだった。
 さてどんなことをさせようかと、サエはにやにや笑みを浮かべながら命令を思案する。
 もちろん、いちごさんに当たらないかなーとか考えているわけだが。
「よーし、決めたっ。2番が9番に首筋に口を近づけて息を吹きかける!」
 誰が当たったのかなとワクワクしながら周りを見れば……立ち上がった2人の中にいちごはいなかった。サエ的にはちょっと残念な所。
「えっとそれでは失礼して……」
「え、わたしかっ。じゃあ、えっと、それじゃどうぞー♪」
 呼ばれたのは、2番のあかねと9番の理緒だった。
 あかねも、相手がいちごではないという事で比較的平静ではあったが、それ以上に理緒はノリノリだった。
 とても楽しそうに自らあかねに近付いて、そして耳を差し出す。
 あかねはむしろ積極的な理緒に驚きつつも、理緒の耳元に口を近づけると、ふぅっと息を吹きかけた。
「ふぅっ……」
「ひゃあっ♪」
 耳元にゾクゾクっとする感触に、理緒は楽しそうに身体を震わせて、くねくねと体を震わせる。
「はうん……♪」
「理緒、感じ過ぎなの」
 そのまま実に楽しそうに頬を朱に染めながら悶えている理緒を見て、司会のアリカがジト目で呟くのだった。

「王様だーれだ」
「はいはーい。やっと王様だよー」
 次の王様は理緒のようだ。
 理緒はどうしようかなーと首をひねり、そしてにこっと笑顔で命令を放つ。
「2番が7番の耳を甘噛みする、でどうかなー♪」
「あら、またウチですか」
 そして再び呼ばれたのはあかねだった。
「さっきは息を吹きかけて、今度は耳を甘噛み……相手は変わるのかしら?」
「え、えっと、あかねえがうーちゃんの耳を……?」
 そして今度あかねの攻撃対象になるのはうるだった。
 相手が気安いうるという事で、あかねは笑顔で近づいていく。
「なんや、うっちゃんやん。ほなやっぷり、かみかみさせてもらいましょ?」
「あかねえ、なんか楽しそうじゃない……?」
 あむっ。
「ひゃああっ!?」
 はむはむ。
「あかねえ、ちょっと噛み過ぎーっ!?」
「ふふ、うっちゃんの反応がなんや楽しゅうてなぁ……♪」
 相手が妹分だったので、遠慮なく耳を噛み噛みするあかねだったとか。

「王様だーれだ」
「わ、私、ですっ」
 次の王様はヴェールだ。
 恥ずかしがり屋なヴェールは、心臓をドキドキさせて頬を赤く染めたまま、命令を下した。
「め、命令は、7番が2番に両手を恋人繋ぎしちゃう、ですっ」
 命令自体は、比較的可愛いものだったのだが、何の因果かこれを受けることになった2人は、連続してこの2人。
「あらら、ウチは3連続……」
「ま、またあかねえとうーちゃん!?」
 あかねだけでも3連続。そしてあかねとうるの組み合わせは2連続になってしまったのだった。
 とはいえ普段から姉妹同然に仲のいい2人だ。手を繋ぐくらいなら問題ない。
 特にうるはノリノリであかねの手を取って、正面からぎゅっと恋人つなぎをするのだった。
 そしてそのままキャッキャとはしゃぎだす2人。
「あかねえ、なんかこの体勢、さっきのこと思い出すねっ」
「ああ、せやねぇ。さっきは間にいちごはん挟んで、こんな感じやったなぁ……」
 なんではしゃいでいるかというと、2人のこの台詞が全てだ。
 ちょうどいちごに対しておっぱいサンドをしたときの体勢がほぼこれだった。
 違いは間にいちごがいるかいないか。
「どうせなら、またいちごさん挟む?」
「うっちゃんはそれでええかもしれへんけど、ウチはさすがに恥ずかしいわぁ……」
「えー、いいじゃない。ね、いちごさん?」
「そこで私に振らないでくださいっ!?」
 はしゃぐうるに、思い出して頬を染めるあかね。そして巻き込まれたいちごのツッコミと、なんだかんだでカオスになってしまうのだった。

「王様だーれだ」
「はーい。うーちゃん王様!」
 次の王様はうるだ。
 うるは早速、実に楽しそうな笑顔で宣言した。
「4番が5番にマウントポジションする!」
「なっ!?」
「ほほー♪」
 うるの命令を聞いた該当者2名は、実に対照的な反応を見せた。
 マウントされる側の5番がいちご。する側の4番はサエである。
「ねーねー、王様。マウントするだけでいいのかなー?」
「マウントとった後は、好きにしていいんじゃないかな!」
「ちょっとぉ!?」
 王様とノリノリで話し合うサエにツッコミを入れるいちごではあるが、司会の幼女神から王様の命令は絶対よとの声が飛んできたので、それ以上は何も言えなくなってしまった。
「それじゃー、えいっと!」
「ひゃぁっ!?」
 どすん。がしっ。
 洗い場の方に連れていかれたいちごは、あっという間にサエによって転ばされて仰向けになり、そしてサエはそのままいちごのお腹の上に腰掛けるのだった。
 ……なお2人とももちろん裸のままである。
「ちょっと、サエさん、せめて隠して……!?」
「んふふー。気になるー? 気になっちゃうー?」
「当り前ですよっ」
 もちろん気にして赤面して視線を逸らしているのはいちごだけで、サエの方は気にせず遠慮なく裸のまま、いちごの上に跨って手をワキワキさせるのだった。
「さーって、どうしようっかなー?」
「な、何をする気ですか……?」
 いちごの上に騎乗して、完全なマウントポジションを取ったサエは、そのままいちごへのくすぐり攻撃を開始する。
「あ、あははははは……やめ、や、やめてえええええ!?」
 目の前でたゆんたゆん揺れる胸を見ないように視線を逸らしているいちごでは、その攻撃を避けることはできず、そのまましばらくくすぐられ続けて息も絶え絶えになってしまうのだった……。

「王様だーれだ」
「私です」
 次の王様は月夜のようだ。
 少しだけ首をひねって思案したのち、月夜は命令を口にする。
「それでは、9番が3番に膝枕で」
「お、わたしかっ」
「え、えっ、理緒さんっ!?」
 月夜の指定で呼ばれた9番は理緒だった。
 そして理緒が名乗り出たことで真っ赤になって淡淡しているのは、3番のセナ。
「おー、セナさんか。それじゃ、膝枕してあげるから、おいでおいで―♪」
 湯船の縁に腰掛けて、両手を広げておいでおいでする理緒。
 だが、理緒に対してちょっとだけ特別な感情も持っているセナは平静ではいられない。真っ赤になってお目目ぐるぐるさせながら、ふらふらと湯船を横切ってゆっくりと理緒の元へと歩いていった。
「そ、それでは、失礼しますっ……」
「えへへ。こーんな固い膝枕でよかったら、いつでもいいよー?」
「い、いえ、とても柔らかくて……その……」
 理緒の太ももに頭を乗せたまま、耳まで真っ赤になって言葉に詰まるセナである。
 理緒はそんなセナを、楽しそうに頭を撫でて可愛がるのだった。
「ここがお風呂じゃなかったら、耳かきとかしてあげたのに、ねー」
「そ、それは、その……」
 恥ずかしさのあまりオーバーヒートしてしまうセナだったとさ。

「王様だーれだ」
「あ、今度は私ね!」
 次の王様はまぐろだった。キャラ的にも王様扱いが実によく似合う堂々とした態度である。
「それじゃ、ここまでなかったし、そろそろこういうのもあっていいんじゃない? ってことで、5番が3番にキスする!」
 まぐろの命令は、ついにというかとうとうというか、キス命令だった。
 そして、手を上げた2人を見て、まぐろも少しだけ早まったかと思ってしまった。
 何故なら手を上げたのは、5番のいちごと3番のセナだったからだ。
 自分の命令でいちごが他の人とキスをする。ちょっと複雑な乙女心なのである。
 それはともかく、先程のマウントポジションでぐったりとしていたいちごと、つい先ほどまで膝枕で真っ赤になっていたセナの組み合わせ。
 2人とも顔を見合わせて真っ赤になっていた。
 理緒への思慕はあるにせよ、セナだっていちごガチ勢寄りなのだ。いちごとのキスはとてもとても意識してしまう。
「あ、あの……キスといっても場所は……?」
「当然唇でしょ?」
 恐る恐る質問したいちごに、答えたのは司会のアリス。
 そうよね、と王様のまぐろにも念を押す司会のアリス。実にいい笑顔であった。
「うぅ……えっと、それではセナさん、すみませんけども……」
「は、はいっ!」
 退路を断たれた2人は、周りや司会に囃し立てられるまま近付いていく。
 命令では5番が、なので、いちごの方からセナの肩に手を乗せ、少しずつ顔を近づけていって。
「セナさん、目を閉じて貰えますか……?」
「は、はい……」
 そして目を閉じたセナの唇に、いちごは自らの唇を重ねたのだった。
「んっ……」
「んんっ……」
 目を閉じても唇の感触はわかる。
 耳まで真っ赤にしたセナは、そのあと唇が離れても尚、ぽーっとしていたそうな。

「それじゃ、このグループのゲームはおしまいなの!」
「ラストはとてもええ爆弾やったねぇ。これで導火線に火もついたことやし、次の組も期待しよか?」
 司会のアリカとメランが〆て、このグループはお終い。
 アリスとりんごは、ベアトリスとスーに命じて、残ったメンバーをかき集めに行くのだった。
 
●王様ゲーム最終組
「さて、最後に残ったメンバーは、と」
「あちらの方々ですね。さて、最後はどうなるかしら?」
 りんごが示した一団は、ベアトリスとスーが集めた最後の面々。
「さすがにここは若い子たちに任せて、おばちゃんもこっちに入らせてもらうわね」
「人数も多そうですし、私も一抜けで」
「わたくしも」
 その中から和は司会の側に抜けてきて、かれんとアテナも丁重に辞退したので、王様ゲーム最終組は、クト、トーリ、トリーシャ、パニーニャ、アザレア、ゆのか、流江、燈、栞、仁美、ルイザ、そしてもちろん最後まで強制的に参加させられるいちごで12名。
「じゃ、最終組始めましょうか?」

「王様だーれだ」
「あ、私ですね」
 最終組最初の王様はルイザだった。
 そしてルイザは、先程の組の最後の爆弾を、再びそのままぶつけてしまう。
「命令は、1番と10番が熱々のキスをする、です」
 その命令が出た瞬間、皆の視線が一斉にいちごの方を向いた。
 だが、そのいちごは首をブンブンと横に振っている。
 ホッとしたようながっかりしたようなそんな空気の中で、手を上げたのはクトとパニーニャだった。
 諦めたような表情のパニーニャと違い、クトはとても慌てた顔で司会のりんごの方を見ていた。
「え、えっと……クト?」
「違いの。これは命令だからなの。りんごお姉さま、浮気じゃないのよ」
「いやまぁ、王様ゲームの命令だから、そこまで深刻にならなくても……」
 必死に訴えかけるクトの様子に毒気を抜かれたのか、本来ならとても恥ずかしがるであろうパニーニャも、やれやれと肩をすくめて、クトの方に向かっていく。
「りんごは気にしないだろうし、命令なんだから、ささと済ませちゃいましょ?」
「……なのね」
 そしてパニーニャとクトは唇を合わせた。
 熱々のという命令なので、そのまましばらく抱き合うようにして、キスをし続けたのだった。

「王様だーれだ」
「あ、今度は私ね」
 次の王様はアザレアだった。
 変な事言うなよと睨みつけてくる自分の半身に、ニヤッと笑みを返したアザレアは、ノリノリでさらにぶっこんでくるのだった。
「2番が9番…………にキスをする、で」
「悪のりしすぎっ!?」
 口に出した途端、半身であるパニーニャから桶が投げつけられ、アザレアの頭にスマッシュヒットした。
「キスばっかり続けてどうするのっ」
「えー、だから、ほっぺにキスをする、って言ったのに……小声で」
 どうやらアザレアの台詞の間の部分は、誰にも聞こえないくらいの小声で、ほっぺと付け加えていたらしい。もちろん狙って誤解させたのだろうが。
「……あ、なんなら唇でもいいよ?」
「だから悪ノリやめっ!?」
 パニーニャに怒られながらも、にやにやとそう付け加えるアザレア。
 ちなみに選ばれた番号はパニーニャではない。
 アザレアとパニーニャのやり取りに囚われて今回は注目されていなかったが、実はいちごがその番号を引き当てていたのだった。
「あ、あはは……。えっと、ほっぺと唇と、どちらにします……?」
 苦笑しながら、2番のいちごは9番の流江に尋ねた。
「さ、さすがに唇はちょっと……ほっぺでお願いします」
 その問いに流江は顔を赤くしながら答える。いちごの中に眠る邪神の絡みでいろいろ思うことはあるにせよ、さすがに唇を許すような感情はまだないし。
 仮にあったとしてもそこまで嫌ではないだろうなという気はしつつ、でもやはり今この場でそれは遠慮したい流江であった。
「では……ちゅっ」
 なのでそれを受けたいちごは、ちゅっと軽く流江の頬に口付けし、なんとなく両者照れて顔を見合わせつつも、命令を終えたのだった。

「王様だーれだ」
「あ、あたしが王様だ」
 次の王様は仁美だった。
 ここまでキス3連続。そろそろこの流れは断った方がいいのではないか……と思いつつも、流れのままでやるべきでは、などとも考えてしまう仁美。
 なので、結局仁美の命令はこうなった。
「えっと、3番が9番の頬にキス……とか。頬ならまだセーフ……だよね?」
 何がセーフなのかは謎かもしれないが、ともあれ仁美は流れに乗ることにしたようだ。この流れというか空気の中で全く別の命令を口にすることに勇気が必要だった、のかもしれない。
「え、また私ですか?」
「あはは。じゃあ、いちごとは逆のほっぺにキスすればいいかしら?」
 そして頬キスされる側はまたしても流江であった。
 3番を引いたゆのかは、苦笑しつつも流江の方へ近づいて、先程いちごがキスをしたのとは逆側の頬にちゅっと。
「んっ……」
「な、なんというか、連続でキスされるとすごく照れ臭いですねっ」
 キスした側のゆのかもされた側の流江も、そう言って顔を見合わせるのだった。
 が、そこに、司会からのツッコミがくる。
「ねぇ、ゆのか。いちごがキスしたところにキスして、いちごと間接キスとかはしなくてよかったの?」
 何を言っているのでしょうかこの幼女神は。
「なっ!? なにいってるのーっ!?」
 言われたことを想像してしまったのか、一瞬で顔を赤くするゆのかだったとさ。

「王様だーれだ」
「この流れで、今度は私ですか」
 次の王様は左右に連続でキスされたばかりの流江だった。
「むむ……さすがにこれ以上キスを続けてもどうかとは思いますが、かといってどのような命令をすれば良いのか悩みますね……」
「あまり難しく考えなくていいんですよ?」
 長考に入ってしまったので、司会のりんごからそうやんわりと告げられる。
 確かにあまり悩んでも仕方ないと思い直し、流江はそれを口走るのだった。
「そうですね。これは完全に興味本位ですが、6番が10番の妹になる、と言ってみたらどうなるでしょう?」
 年齢も性別も考慮せず、そんなことを言う流江。
 確かに組み合わせによってはとても面白いものになるだろう。
 そして、今回は実にピンポイントで面白い事になったのだった。
 なぜなら、6番を引いたのがアザレアで、10番を引いたのがパニーニャだったからだ。
「えー。これが姉なの……?」
「アタシだって、こんな手のかかる妹はいらないわよっ」
 多重人格者であるパニーニャとアザレア。元々は別の人間だったのが融合してひとつの身体になったという生まれのこの2人だ。
 2人はそのまま姉?と妹?の言い争いを続けているが、はたして本当のところ、どちらが姉に当たるのだろうか。彼女たちを良く知る者全員がそう思って2人の言い争いを見つめていた。
「どっちにしても王様の命令なんだし、ほら、アタシのことお姉ちゃんといってみなさいよ?」
「言うわけないでしょ、そんな面倒なこと……」
「王様の命令は絶対よ」
「……バカ姉」
「何か言った、だるがりドラ娘」
「なに?」
「何よ」
 バチバチバチバチ……と火花が散りそうな姉妹喧嘩。
「まさかこんなことになるとは……」
 命令した王様の流江も驚く事態であった。
 ……けれども、なんとなくその言い争いを見ていると、真面目なパニーニャとマイペースなアザレアなので、やはりパニーニャの方が姉っぽい、のではなかろうか。たぶん。

「王様だーれだ」
 気を取り直して次の回。
 王様になったのは、ゆのかだった。
「今度の王様は私ね。……ふぅ。キスが途切れてよかったのよ……」
 流江のおかげで流れが途切れたので、ホッと一安心のゆのかである。
「それじゃ、4番が1番に膝枕……ついでに丸くなって猫の真似もお願いしちゃいます?」
 くすくすと笑いながら、そんなことを言うゆのか。さらについでに、司会側にいるアリカに頼んで、その状況を記録してもらうように頼んでいたりする。
「えっと、それじゃ、1番はクトさんかな? あたしの膝でよかったら」
 4番を引いていた仁美が、湯船の縁に腰掛けて、太ももを指し示す。
「りんごお姉さま、これも浮気じゃないのよ?」
「はいはい。いいから行ってらっしゃいな」
 そしてクトは、またもりんごに断りを入れてから、瞳の膝枕に頭を乗せるのだった。
「えっと、それから猫の真似だっけ?」
「にゃ、にゃぁ~~なの」
 太腿の上のクトの頭を撫でながらの仁美の催促に答え、クトは懸命に猫の鳴きまねをするのだった。
「なのはいらないんじゃないかな?」
「にゃ! にゃぁ~~~」
 それはそれは、別の意味でたいそう可愛かったそうな。

「王様だーれだ」
「あ、私ですね」
 次の王様は栞だった。
「め、命令ですか……」
 キスの流れが途切れたおかげで安心して普通の命令を出せるのだが、それでもいまいち思い浮かばずに首をひねる栞である。
「あ、そうだ……3番の方が10番の方にヨガのポーズを取らせるのを手伝ってあげるとかどうでしょうか?」
「ヨガ?」
「ええ。その……ホットヨガが健康に良いと聞きまして……」
 そういって笑顔を見せる栞。わりと穏やかで健康的な命令だった。
 ……が、指名した番号はよくなかったかもしれない。
 3番は、怪力で有名のゆのかだったのだから。
「えっ、ゆのか……? そ、その、あまり力入れないで……ね?」
「う、うん。もちろんよ」
 10番のパニーニャは、ゆのかの怪力で身体を押されたり、無理矢理ポーズを取らされたりするのではないかと戦々恐々だ。
 そんな寮生の恐れを感じて、とほほ……な表情になるゆのかだった。
「えっと、そrじゃ、痛かったらちゃんと言ってね?」
「ええ、それはもちろんよ……って、いたたた……!?」
「あ、ご、ごめんね!?」
 さっそくヨガの基本の安楽座のポーズ……胡坐をかいたような格好で座ったパニーニャに、ストレッチするように後ろから、あるいは横に押していくゆのかだったが、案の定というか力が入りすぎてパニーニャの身体の限界を超えるほどに押してしまうのだった……。
 力加減が落ち着くまでしばらくパニーニャの悲鳴が聞こえたとか何とか……。

「王様だーれだ」
「はーい。私ですわ!」
 手を上げたのは、相変わらずストレロの缶を手にしている酔っ払い、トリーシャだった。
「それでは命令ですわ。1番が4番の頭に胸を押し付けるのですわ。私もショタの頭に胸を押し付けて抱きしめたいですわぁ!」
 ダメだこの人。早くなんとかしないと。
 ともあれ欲望駄々洩れではあるが、命令としては一応成立している。
 で、1番はクトで、4番は仁美なのだった。
「えっと、それじゃ仁美ちゃん、失礼するのね」
 クトは仁美の頭を抱くようにしてその胸を押し付ける。
 それなりに豊かなクトの胸の谷間に仁美の頭が挟まれるような格好に。
 ちょうど、今日もとらぶるで仁美がいちごに対してやったように。
「仁美さんがやる方なのは珍しいですね。さっきはいちごさんにやったばかりなのに……」
「た、確かにこれは息苦しいね……でも、いちごくんが良く言うように、呼吸できないっていう程ではない、かな……?」
 苦笑する燈の言葉を聞いて仁美もいちごを挟んだことを思い出したのだろう。もごもごとクトの胸の谷間からそんなことを口走っている。
 が、それは仁美の認識が甘い。
「あ、あのね、仁美ちゃん。クトはそこまで大きくないから、仁美ちゃんくらい大きかったら、もっとおっぱいが密着して全部塞いじゃって、息できなくなったりするかもなのよ……?」
 遠くでコクコクといちごが頷いていたりする。
 多分、ここでの籤が流江か栞かだったなら、仁美もその状況を体験できたのだろうが、幸か不幸かクトはそこまで大きくなかったのである。
 それでも息苦しい事には違いはないのだが。
「私もショタを挟んで窒息させたいですわぁ……」
 そして王様はさらに妄言を吐きつついちごをターゲットロックオンしたかのように見ているが……見なかったことにしておきましょう。

「王様だーれだ」
「あ、次はクトなのよ」
 仁美を胸から解放したばかりのクトが次の王様だった。
「えっと、それじゃ、7番が2番に愛を囁く、っていうのでどうかしら?」
 告白の命令で回りがざわっとしたのを見て、慌てたようにクトは付け加える。
「チ、チャペルのお仕事の参考なのよ……?」
 どう聞いても言い訳です。ありがとうございます。
 それはともかく、指定された番号の籤を引いていたのは、7番が栞で、2番がいちごだった。
「えっと……」
「い、いちごさんに、愛を……」
 真っ赤になってしまう栞。
 無理もない。栞もつい最近いちごへの気持ちを自覚し、そして告白じみたことをしていた、いわばガチ勢なのだから。
「あ、えっと……その……」
「栞さん……」
 夏休みに2人でデートした時のことを思い出し、互いに顔を見合わせて真っ赤になるいちごと栞。
 さすがに周りの者もこの雰囲気に当てられて、シンと静まり返っていく。
 ……司会のアリスとかりんごとかはニヨニヨと楽しんでいるが。
 そしてしばらくして、ようやく硬直の解けた栞が、すーはーと深呼吸してからいちごの前に立った。
「あ、あの、いちごさん」
「は、はいっ」
「えっと、前にも言ったことですけど……好きです……っ、いちごさん」
 胸の前で手を合わせて、祈るような上目づかいで、栞は顔を真っ赤にしながらもいちごにはっきりと言葉を告げた。
「私が、一番にはなれないかもしれませんけど……でも、大好きです」
「栞さん……ありがとうございます」
 告白の返事は、前にもしたけれど、その時もひとりには選べなくても受け入れたのだけども。
 それでも改めての告白に、栞といちごも真っ赤になるのだった。
 そして真面目な告白を見て、他のいちごガチ勢の面々は、色々と複雑な顔をして見つめているのだった。

「……さて、ちょっと変な空気になってきたし、そろそろ、余興自体も終わりの時間かしらね?」
「王様ゲームのラスト、いきますわよー」
 アリスとりんごがゲームの終わりを示唆する。さすがにゲームの中でマジ告白が出たことで空気も変わったこともあるし、なによりも温泉に浸かりながらの宴会も時間が経ってきたので、これ以上はなびかせると全員が逆上せてしまいかねないので。
「最後の王様だーれだ?」
「……私、ですね」
 最後の王様はトーリだった。
 今回も、全ゲームに参加しながら一度も王様になれなかったいちごである。
「では王様。最後の命令どうぞ?」
「2番が7番へ、ハグ&キスでいきましょう♪」
 そしてラストだからと、トーリは再びキス命令を復活させたのだった。それもハグ付きで。
 最後に空気を戻すという意味ではよかったのかもしれない。
 ……ただし、籤を引いた人が、さっきと一緒だったのは、さすがにクトも予想外だったろうが。
「「えっ」」
 そう、再びいちごと栞である。
 しかも今度はいちごが栞にする側だ。
「えっと……」
「い、いちごさん……」
 先程の告白の後でのこの流れ、いろんな意味で気まずい。
 しかもいちごからのアクションは、まるで告白への返事のようではないか。
「ほらほら、ラストなんだからしっかり決めなさいよ、いちご」
「ちょうど告白の返事ですわね。がんばってくださいまし、いちごさん」
 司会の2人はそう言って煽ってくる。
 再び真っ赤になって顔を見合わせて固まるいちごと栞。まるで往年のラブコメマンガのよう。
「ん。栞さん、……いいですね?」
「は、はい。お願いします……」
 やがてこのままでは埒が明かないと覚悟を決めたいちごが、栞に近づいていって、その肩に手をかけた。
 そしてそのまま、いちごは優しく栞をぎゅっと抱きしめる。
 栞の豊満な胸がいちごに押し付けられて、それでもその弾力に負けないようにいちごは栞を抱く腕に力を込めた。
「栞さん、目を閉じて……」
「はい……」
 そして、いちごはそのまま栞の唇に顔を寄せ、熱い口付けをかわすのだった。

 2人の口付けが終わった後、周りからは大きな歓声が上がり、いろんな意味で大騒ぎになった。
 もう王様ゲームは終わったのだからと、ヤンデレストーカー姉妹や酔っ払いのショタ狂いをはじめとした数名が今度は自分にキスをと求めていちごに殺到したり、それでいちごがもみくちゃにされたり……。そしてそれを見て苦笑いするいちごガチ勢がいたり、キスされた余韻に浸る2人がいたり……。
 いつもの恋華荘なのであった。

●宴の終わり
 王様ゲームを終えた後は、再びそれぞれに散っては和やか会話と、一部のとらぶるを楽しんでいく。
 そんないつもの賑やかな面々を、満天の星空に輝く中秋の名月が照らしているのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月31日


挿絵イラスト