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歪む極夜に立つ『鬼火』

#グリードオーシャン #七大海嘯 #紅卿の足跡

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#紅卿の足跡


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 その島にはほとんど陽の光がやってこない。
 いったいどういった気象の悪戯か。
 それとも、もともと暗闇に覆われた世界から落ちてきたせいなのか。
 紐解く術は最早無いのだが、それでも、その島には日光が薄いなりに営みがあった。
 煌めくオーロラのヴェールに覆われたその島は、いつしか『暗い虹の島』と呼ばれるようになった。
 この気象現象のおかげか、この島は長らく誰かの手に渡ることはなかったというが、ある日、海賊旗を掲げる船がやってくる。
「我ら、は……『鬼火』の配下、である……軍門に下れ」
 ずさりと、足を踏み入れたウォーマシンのような面影を残すコンキスタドールがその威を示せば、島の代表を務めるという杖をつくミレナリィドールが立ち会う。
「わかりました。抵抗はしません。どうか島民の方の命ばかりはお助けください」
「……つまらぬ、な。せめて、貴様程度でも歯向かってくれば、我が力となろう、に……」
「買い被りですね。結果の見えた戦いなど、それこそつまらぬものですよ」
「腑抜け、め……破壊する価値も無い……」
 静かなる機械同士、それでも思うことはあるのだろう。圧倒的な力量差を前にしながらも、島の長はコンキスタドールに従う素振りを見せながらも、その緑の瞳の奥に叛旗を伺う光を残していた。
 島民を守るために残している力。ただ闇雲に立ち向かえば、瞬く間に砕けて散るであろう。
 まして相手はコンキスタドール。そのボディは、いくつものメガリスを取り込んでバージョンアップしている。
 ただの一合。
 それを仮に交わしたとして、首を取る事はおろか、八つ裂きにされ戦闘不能になる可能性の方がはるかに高い。
 せめて一矢。
 或はその機が訪れるのならば、せめて一太刀、それを島民の為に用いたい。たとえこの身が瞬きの内に裂かれようとも。
 願わば一度。
 奇跡というものが仮にこの辺境の島にやってくるのならば……。
 小柄の少女の姿のまま年老いた人形は、極めて低い可能性に勝機を見出すしかない。
 無抵抗を装い、従順を決め込んで圧政に耐え、生き永らえる道を選び……。
 奇跡の瞬間が訪れるまでの、その時間を静かに待つ。
 力を求め戦い続ける機械が、それゆえに力弱きの一瞬の煌めきを見逃す、その瞬間を。

「グリードオーシャンには、数々の海賊が存在しますが、最近になって話題に上がるのは、いずれも強力な配下を従えるという『七大海嘯』と呼ばれる七つの海賊団ですね」
 グリモアベースはその一角にて、片角の猟兵、刹羅沢サクラは、資料を片手に目を細める。
 『七大海嘯』に列を並べる海賊団は、まるで競い合うように勢力を広げ、グリードオーシャンにある数々の島にその特徴的な海賊旗を立てているという。
 今回の舞台となる『暗い虹の島』もまた、その七つの海賊団の一つ『鬼火』の侵略に遭ったという。
「その島の周囲は昼でもほぼ陽が差すことが無く、いわゆる極夜という現象が起きているようですが、それでも彼らの海賊団は優秀で、暗がりに乗じて島に近づこうにも、気づかれるでしょう」
 大艦隊との戦闘は避けられないようである。
 しかしながら、艦隊を編成するのは、常人の三倍近い巨人のゴーレム騎士団である。
 島を守るようにして巡回する彼らと事を構えるのなら、海上戦を余儀なくされることだろう。
「巨人の体格をもってすれば、船越しに大剣を振り下ろしてくるなど造作もない筈。
 加えて、こちらの鉄甲船は戦船とは違います。我々猟兵の方で船を守る術か、相手の船に乗り込む算段を考える必要がありそうです」
 そうして艦隊を駆逐して島に上陸すれば、その艦隊を率いて島を統治している首領との戦いになる。
 サクラの表情は険しい。
「この首領、さすがに『七大海嘯』として名の知れる一派に与するだけあり、かなりの使い手です。我々が力を合わせたとしても、その勝機は高いとは言い難い……」
 勝てないとは言わぬものの、猟兵だけの力では無敵に近い首領を切り崩すのは至難であるという。
「あるいは、彼の者をより近くから観察し、叛旗を伺っている者が居るのならば……その弱点を見出す糸口となり得るやもしれませぬが……」
 予知の中に見た島の代表である年老いた少女のミレナリィドールの話を出すが、彼女はあくまでもただの長生きな人形。選ばれた存在である猟兵とは異なり、直接戦闘でコンキスタドールを打ち負かすほどの力量は無い。
 ただ、長年の知恵や観察眼、一瞬のスキ程度ならば、手を貸してくれるかもしれない。
「彼の者は、穏やかな島に、力による支配を強いています。戯れに島民を手向かわせては、無残に殺しているとも聞きます。
 何が彼の者をそうさせるのか、細かい事情は図りかねますが……長く傍観できるものではありません。皆さん、どうか力を貸してください」
 ぺこりと一礼すると、サクラは居並ぶ猟兵を見回し、現地への案内を開始するのであった。


みろりじ
 どうもこんばんは。流浪の文書書き、みろりじと申します。
 グリードオーシャンは『七大海嘯』との事を構えるシナリオです。
 今回は集団戦→ボス戦→冒険というフレームを使わせていただいております。
 だいたいのことはサクラちゃんが説明してますが、第一章の集団戦は、海上での戦闘となります。
 鉄甲船は戦闘用ではないので、うまく艦隊と渡り合うためにはちょっとした工夫が必要なようです。
 第二章はボス戦。島民が一人しか出てきていないような気もしますが、ちゃんと他の島民もいますよ。
 ボスは極めて強力で、猟兵だけで倒すのはなかなか大変そうです。
 島民を守るため、島民すら犠牲にして機を伺う執念深い島民もいるようですね。
 彼らの協力を得ることができれば、攻略に有利になるかもしれません。
 三章は冒険です。島の中央に突き刺さる海賊旗。実はメガリスです。これを撤去しないと話が終わりません。
 細かなことはまたその時がきたら断章にて描写する予定です。いずれわかる……いずれな。
 それでは、皆様と一緒に楽しいリプレイを作っていきましょう!
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第1章 集団戦 『神聖巨人騎士団『ホーリーハイランド』』

POW   :    誇りの一撃
単純で重い【巨大なクレイモア】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    戦神への信仰心
全身を【魔法に強力な耐性を持つオーラ】で覆い、共に戦う仲間全員が敵から受けた【負傷】の合計に比例し、自身の攻撃回数を増加する。
WIZ   :    戦神の加護
【徐々に回復する体力の守護】【衝撃に強く仰け反り辛くなる体幹】【死ぬ程のダメージを受けても短時間動ける体】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

徳川・家光
『将軍なんだから、戦わなきゃね』
『この家光、悪は決して許せぬ!』
『一か八か……嫌いな言葉じゃありません!』
 サムライエンパイアの将軍ですが、普通の猟兵として描写していただけるとありがたいです。ユーベルコードは指定した物をどれでも使いますが、全般的な特徴として「悪事を許せない」直情的な傾向と、「負傷を厭わない」捨て身の戦法を得意とします。
よく使う武器は「大天狗正宗」「千子村正権現」「鎚曇斬剣」です。
普段の一人称は「僕」、真剣な時は「余」です。
あとはおまかせ。よろしくです!



 目当ての海域に鉄甲船が近づくと、周囲が徐々に暗くなるのを感じた。
 雲が出てきたわけではない。
 見渡す限りの水平線の、その向こうに陽が沈んだのだ。
 しかし時刻を確認すると、まだ昼過ぎであった。
 極夜という気象現象だというのだが、ここはもしや極圏なのだろうか。
 否、それがたとえそうでなくとも、島がそうさせてしまうのが、このグリードオーシャンという世界なのである。
 陽の光が届かなくなると、暗くなる空には星が瞬き始め、風に吹かれるヴェールのようなオーロラが見え始める。
 異常気象のオンパレードだが、それを引き起こしているであろう島もようやく見えてくる。
 薄暗い中ではその輪郭をとらえるのが厳しいが、島の明かりを見ればそこに文明の片鱗を見ることが僅かにできた。
 鉄甲船の舳先に陣取る徳川・家光(江戸幕府将軍・f04430)は、ほっと胸を撫で下ろす。
 火の手でなく明かりにとどまっていると言う事は、まだ島民の多くに危害は及んでいないかもしれない。
 だが、その安堵も長くは続かない。
「待てい、風来坊」
 潮風をかき消すかのような重苦しい声が、巨大な影と共に鉄甲船の進行を阻んだ。
 薄闇の向こうから染み出すように姿を現すのは、鉄甲船よりも数段巨大な海賊船の艦隊であった。
 薄闇を照らすようにして、一斉に灯りを上げると、オレンジが極夜の海を染め上げていった。
 火のように浮かび上がる、『鬼火』の海賊旗。
「これより先は、『七大海嘯』の縄張りである!
 進むというのならば、覚悟を決めよ」
 次々と海賊船から姿を現すのは、ぼろぼろの甲冑に身を纏った巨人たち。
 どこかくぐもったような響きはなんとも平坦であり、彼等自身が作られたものであることを想像させた。
 それらは手に手に大剣を握り、既に臨戦態勢。
 言葉を交わすこともなく統制を感じさせる動きには圧倒されるものもあったが、家光は着物の内に忍ばせた鏡を上から握り、遥か故郷の嫁どもを思うことにより己を奮い立たせる。
「大丈夫、将軍なんだから、戦わなきゃね」
 誰に叱咤されるでもない。その重責を背に持つ覚悟、平和を思わんがための心が後退を許さない。
 引くつもりなどもとより無い。
 それを示すかの如く、「大天狗正宗」を静かに抜き放ち構える。
「それが答えか!」
「この家光、悪は決して許さぬ!」
 激昂する甲冑の海賊団ことホーリーハイランドに応答するのも言い終わらぬうちに、家光は鉄甲船の舳先を蹴る。
 船と船との距離、高低差、そんなものなど羅刹の身体能力には然したる障害ではない。
 薄闇を切り裂くかの如く飛び上がった家光は、そのまま見上げるホーリーハイランドの一体めがけて刀を振り下ろす。
「ぬんんっ!」
 綺麗に決まるかに見えた唐竹割だったが、彼らの手にする大剣は伊達ではない。
 振り上げる刃に阻まれた大天狗正宗が凄まじい火花を上げて止められる。
「我らには戦神の加護がある。お前の如き痩せた剣などでは、砕けぬわ」
「ならば!」
 弾かれたと見るや、家光はすぐさま身を翻して着地し、今度は空いた手に別の剣、「鎚曇斬剣」を取る。
 古代に作られたらしきそれは、太刀や刀とはやや異なる作りだが、それだけにその重さによる一撃は甲冑を貫くはず。
 両の手に剣を握れば、その手数も増える。
 鈍重な相手に手数で勝れば、いつかは致命打に届く。
「うおおおっ!」
 保身無き続けざまの連撃がホーリーハイランドの甲冑を叩き割る。
 だが、敵は一体ではない。
 一体を倒して周囲を見回す一瞬のスキを突かれ、家光は背後からの大剣の横薙ぎを避け損ねた。
 咄嗟に剣で受けたものの、体格差はゆうに3倍。質量差は歴然としているだろう。
「しまった!」
 クレイモアのスウィング。力自慢ならフルプレートの騎士数人をも一度に弾き飛ばすというそれは、一般男性程度の体格の家光を海賊船の外にまで弾き飛ばす程度は容易かった。
「ふん、落ちたか……む!?」
 船べりへと近づくホーリーハイランドは、ふと聞きなれない音に思わず身構える。
 空気を裂く回転音。
「神話の獣よ、削ぎ剥がせ」
 海中に落ちたはずの者の声が聞こえる。
 波飛沫が海賊船を打ち、飛び上がる無数の影は飛沫ではなかった。
 【神州因幡白兎殺】。それにより呼び出されたのは、回転する皮剥ぎ刃を取り付けられた鮫の群れであった。
 スクリューのように空を裂いて空を飛ぶに至った鮫たちの上に立つ家光と、ホーリーハイランドたちとの視線が交錯する。
「どうした。余の顔、見忘れたか?」
 それは代が違わないか。
 それはともかくとして、上方を取った家光が鮫と共に降り注ぐ。
 渾身の刀と、そして鮫。怒涛の波に乗った攻撃の前に、ホーリーハイランドたちはその数を減らしていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ユリウス・リウィウス
ふむ、なんとも懐かしい雰囲気の漂う島だな。
そして『七大海嘯』か。オブリビオン・フォーミュラ直属なのだろうか。考え込んでいる場合ではないな。まずは海賊船団を潰そう。

血統覚醒でヴァンパイアへと姿を変え、敵船に乗り込む。敵が巨人ばかりならば、脚を切り裂いて動きを封じてやろう。
生憎と、我が双剣、飾りではないぞ? 「生命力吸収」と「精神攻撃」の双剣撃を振るって、「なぎ払い」「傷口をえぐる」。
痛みを堪えきれずしゃがみ込んだ巨人には、その脳天に剣の一撃をくれてやろう。

これは島の平穏を乱した罰と知れ。お前達の頭目もすぐに後を追わせてやるよ。

巨人のオブリビオンは始末がすんだかな? それでは島へ乗り込もう。


ニレッド・アロウン
はーはっは!
つまりはいつも通りヒャッハーです!

背の翼を勢い良く羽搏かせ、鉄鋼船より飛翔。空に飛べば空中戦へ早変わりですよ!
そのまま敵まで直行……するわけないじゃないですかーヤダー。

敵の攻撃が届きにくい船の真上の数十メートルでホバリングしながら術式詠唱。
唱えるは数多の属性の操作。魔力を身体に付与し調整を容易くするように。
そして翼に属性を収縮させ、風の魔力と共に敵に向かって発射!
鎧は炎と氷により脆弱化させ、風や土による羽根で欠けさせる。その隙間を縫うように聖の羽根での浄化や闇の羽根での浸食で倒していきますよ!

お?まだ動くです?それなら空中より鋏を突き立てるように急降下!ブッ刺してしっかりトドメを!



 先陣を切ったサムライに引っ掻き回されるような形で、海賊船の艦隊との戦いの幕は上がり、真っ先に灯りを消した鉄甲船は、炯々とたいまつを掲げる海賊船ひしめく中では影となって見えづらくなる。
 防衛機能のない鉄甲船ながら、その小ささと機転、相手が巨人戦士を乗せるほどの巨大船団であるのを逆手に取った策であった。
 しかし、これもいつまでももつわけではない。
「ふむ、この暗闇とよどんだ空気……なんとも懐かしい雰囲気の漂う島だな」
 鉄甲船から身を乗り出すユリウス・リウィウス(剣の墓標・f00045)は、戦況を見る傍らで視界の向こうに見える『暗い虹の島』に懐かしいものを感じる。
 甲冑を着込む騎士たるユリウスの故郷は、やはり暗雲により陽光と青空を奪われたダークセイヴァーであった。
 ともすれば、陽の光の届かぬこの空のもとにあるあの島は、由来を同じくするものなのか。
 そしてこのようなおどろおどろしい島にまで手を出そうという『七大海嘯』という連中も気がかりだ。
 やはり、この世界のオブリビオンフォーミュラの直属なのであろうか……。
「むう、ここだ。ここにいるぞぉ!」
「チッ、もう見つかったか。やはり海賊船団を潰すしかないか」
 騒ぎに紛れて島に近づこうと思ったが、そうは問屋が卸さない。
 憶測を飛ばしている場合ではなかった。見つかったからには、巨人戦士たちを蹴散らさなくてはならない。
 とはいえ、なかなか悪いタイミングで見つかってしまった。これでは八方塞がりだ。
 周囲に注意を配り、両腰に下げた双剣の柄に手をかけたところで、ユリウスは鉄甲船をだんっ! と蹴りつける音を聞く。
「はーっはっは! もう大人しくしている必要はないわけですね! つまりは、いつも通りヒャッハーです!」
 甲板を蹴り、マストを蹴り、鉄甲船の上空へと飛び上がると、高らかに笑い声をあげてその背の白い翼を勢いよく展開する。
 薄闇の中ですら目立つ白い翼が、仄かに光を帯びたかのような羽毛を散らせば、誰もがそれに注目せずにはいられない。
 なるほど、鉄甲船に集中しかけた注意を、逸らすために敢えて派手な演出で飛び上がったというわけである。
 実際にそれを計算に入れて行動したのなら大胆な策士であるだろうが、ニレッド・アロウン(水晶鋏の似非天使・f09465)には、そんなことなど顔を覆う目隠し同様に見ていない。
 そんな目隠しをしていてちゃんと見えているのかという疑問には、諸説あるのかもしれないが、まぁ、そんなことは猟兵には小さな問題である。
 ともかく、ニレッドがやたら目立つ登場の仕方をしたため、海賊船の面々はそちらを見ざるを得なかった。
「ほう、自分自身を囮にするとは、考えたな。この隙に、乗り込ませてもらおう」
 どこか行き違いのある感心をしつつ、ユリウスはせっかくのチャンスを利用するべく、その目を真紅に輝かせる。
 【血統覚醒】によってダンピールの中に眠るヴァンパイアの血脈を呼び起こせば、その身体能力は爆発的に向上する。
 周囲が冷え込んで感じるほどに血液が煮立つのを感じる。同時に猛烈な飢えがユリウスを苛むが、闘争心でそれを掻き消す。
 向上した身体能力で海賊船へと飛び乗ると、双剣を閃かせる。
 海賊船の縮尺が狂うような体格を誇る巨人戦士のホーリーハイランドに対して、肉弾戦は分が悪かろうか?
 いいや、それにしたって戦い様だ。
 視界に映らぬよう、低く踏み込んで背後から向う脛を斬りつけてやれば、その巨体は易々と膝をついた。
 そのまますれ違い様に届くようになった首を斬り飛ばせば、あっという間に一体が甲板に倒れ伏した。
「よそ見している場合か?」
「ぬう、いつの間に!?」
 一体がやられたのを契機に、海賊船のあちこちからホーリーハイランドたちが姿を現すが、ユリウスは臆することなく双剣を構える。
 数の差、体格差は絶望的だが、甲冑を身にまとう身としては、全身甲冑のホーリーハイランドの体格ゆえの弱みも見えてくる。
 あちこちに綻びのあるボロボロの騎士団。その体格を支えるのは強靭な骨格なのだろうが、人に準拠するものなら、その巨体の重量がかかる足腰への負担は多大なるものだろう。
 加えてこちらの的は小さく、大剣でとらえるには密集しすぎている。
「おのれ、ちょこまかと……」
「生憎と、我が双剣は飾りではないぞ?」
 手入れを怠らない二振りの剣と、命じられるまま戦いに出続けてボロボロに披露している鎧とでは、明らかにものが違った。
 巨人の膝当てごと関節を砕けば、そこに痛覚があろうがなかろうが関係なく、膝を折らずにはいられない。
 すかさず前屈みの脳天に剣をたたきつければ、その頭蓋を叩き割る。
 斬りつけた相手の血肉や魂を啜るとされる二振りの呪われた剣は、奪った生命力をユリウスの活力とするため、疲れた先から活力を吹き込む。
 地獄のような戦場を生き抜いたユリウスの編み出した戦法であった。
「ぬうう! 距離を取れ!」
 猛然と戦い続けるユリウスの気迫に気圧されるホーリーハイランドであったが、後ずさるその一体の頭上が唐突に火柱を上げる。
 何事かと周囲を見回す巨人戦士たちは、そういえば頭上に飛び上がった猟兵のことを思い出す。
「炎だけでは、ないですよ!」
 船上の空に張り付いたかのように翼を広げて浮遊するニレッドの、その半分覆われた顔の口元がつり上がる。
 飛び上がって突撃を仕掛けるかと思いきや、ニレッドの周囲に展開したその魔力、術式はニレッド自身に吸い込まれていき、彼女の得意とする性質、即ち何かしらに付与するという形で成っていく。
 多数の属性が、色味を帯びた光となって自身に流れ込み、白い翼を染め上げていく。
 薄闇の空に広がる白い翼が、ステンドグラスのモザイクの如く無数の色を含んで、その羽がやがて指向性をもって降り注ぐ。
 火の手が上がるのは、その一端に過ぎず、次の瞬間には甲冑に霜が立つほどの冷気を発生させ、温度変化で鎧をひび割れさせつつ、刃のように鋭い風や礫が脆くなった甲冑を砕いていく。
「これやると翼の色が酷いことになるので嫌なんですが……仕方ないですね。くたばれ」
 仕上げとばかり、浄化の光を含んだ羽が、呪われた巨人戦士たちを土くれに還していく。
 【彩翼矢砲】によって魔術の性質を帯びた羽が光の雨となって降り注げば、密集したホーリーハイランドたちはひとたまりもなく打ち砕かれていった。
 だが、中には戦神の加護の残っている鎧もあったようで、ニレッドのユーベルコードに耐える個体もあったようだ。
「お? まだ動くです? 仕方ないですね」
 粉塵が巻き上がる中で、ニレッドはその手に透き通る大鋏を取る。
 片刃だけでも片手半剣ほどもある大ぶりなそれを両手に、一気に急降下する。
「ぐう! だ、だが、我々には、戦神の加護が……」
 甲板に叩きつけられるようにして、鋏の両刃を交差させるようにして突き立てるニレッドを見上げ、ホーリーハイランドは尚も立ち上がろうとその手を伸ばすが、
「そうですか。でも、ちゃんとブッ刺さるってことはですよ」
 ぎちぎちと締め上げるようにしてグリップを閉じると、加護を得ているはずの甲冑がやがては捩じ切れた。
「ちょん切れるってことですよね」
 刃の閉じた鋏を振り上げるようにして肩に担ぐと、ちょうど巨人戦士たち相手に大立ち回りを演じていたユリウスと背を合わせる形となった。
「これは島の平穏を乱した罰と知れ。お前達の頭目もすぐに後を追わせてやるよ」
「とはいえ……ちょっと派手にやり過ぎましたね」
 がくん、と海賊船が揺らぐのを感じ、二人とも別の海賊船に移ることにした。
 艦隊相手なのだから、ちょっと派手なくらいでいいとは思うのだが、テンションが上がり過ぎたかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティエル・ティエリエル
WIZで判定

ミフェット(f09867)と一緒に悪い海賊をやっつけるぞー☆えいえいおー☆

鉄甲船を守るためミフェットのお歌を聞きながら先手必勝とばかりに背中の翅を羽ばたいて飛び立つよ!
相手の船に乗り込んで空中からのヒット&アウェイで攻撃だ!
船のへりの方まで「おびき寄せ」てバランスを崩させて海に落としちゃうぞ♪

ミフェットのお歌でテンションが上がって来たら、勝つのはボク達だーと【お姫様ビーム】をどかーんと発射!
船体に穴を空けて近づかれる前にゴーレムが乗った船ごと沈めちゃうぞ☆

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です


ミフェット・マザーグース
悪い海賊をやっつけよう!
そう決めたけど、ミフェット一人じゃ不安だから
ティエルにお願いして一緒に島に向かうよ

鉄甲船だってひとたまりもない大きな剣は怖いけど、ゴーレムが振り下ろす前に攻撃しちゃえば、おっきい分だけ衝撃で狙いが狂うはず!
もちろん他の猟兵さんとの連携もOK!

UC【一人ぼっちの影あそびの歌】
「楽器演奏・歌唱」でティエルや猟兵たち「鼓舞」しながら、歌声に乗せたUCでゴーレムたちを守る戦神の加護を打ち消すよ

♪剣うちならし ときの声あげ
いくさをささげるのは たたかいの神さま
波しぶきの中 ぶつかる船
巨大な鉄の支配者たちと わずかな数の解放者
たたかいの神にささげられる 価値ある勝利はどちらの勝利?


アクア・ミストレスト
七大海嘯に手を出すなど正気の沙汰では無いな
まぁ、だが…異世界の者に任せっぱなしというのもミストレストの名折れだ
気勢は此方にあり、であるならば微力であるが乗らせてもらおうか


船がダメなら船上でなければ良い、アハ・イシュケに乗って空へ【空中戦】
空からウォーターバレットによる攻撃…ちっ初心者用ではキツイか…?

だが、上に乗ってる者はともかく…下の足場はどうかな?
彼らの船目掛けて攻撃対象を切り替え、船を沈める作戦といこう
悪いね、騎士様。生憎と正々堂々というのは性に合わなかったらしくてね

常人よりでかいなら常人より重い、そのまま深い海の底で眠れ



 極夜の薄闇の中で、たいまつを掲げる海賊船たちが次々と沈んでいく。
 猟兵たちの活躍は目覚ましく、個々の威力はすさまじい。
 精鋭ぞろいの『鬼火』の海賊艦隊と言えど、機転とその戦闘力はさすがといったところだろう。
 しかしながら、彼らが乗りつけてきたのは、あくまでも装甲を張り付けただけのちょっと丈夫な鉄甲船一隻に過ぎない。
 それ単体の戦闘能力は決して高くなく、海賊船に比べればその船体の大きさからまず違う。
 そしてほとんど艦隊に囲まれる形になっていた状態ならばいざ知らず、先の戦いで猟兵たちが次々と海賊船を沈めにかかっていくにつれ、鉄甲船は孤立して、かえってその存在を浮き彫りにしてしまう。
 今という状況でこそ、鉄甲船は目立つ存在になってしまった。
「む、今こそ好機ぞ! あ奴らの船を沈めてしまえば、こちらの勝ちだ! 船を狙え!」
 孤立する鉄甲船の存在に気付いたホーリーハイランドたちが、一斉にその舳先を向ける頃、当の鉄甲船では三人の猟兵が姿を現していた。
「ティエル、ティエル、見つかっちゃったみたいだよ」
「んー……! よし、やっと出番だね!」
 ミフェット・マザーグース(沼の歌声・f09867)とティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)は、船を守るべく鉄甲船に残っていたのだが、相手の船が大きなためか思いのほかこちらの船が見つからなかったため、ちょっぴり別の方向に船をこぎ始めていたのだった。
 ミフェットの頭の上でぐいーっと背筋を伸ばしてガラスのような翅を羽ばたかせると、ティエルは勝気な笑みを浮かべて愛用のレイピアを抜き放つ。
「七大海嘯……あれに手を出すなど、正気の沙汰ではないな」
 アクア・ミストレスト(無精者の貸本屋店長・f29302)は二人とは違い、少しばかり億劫そうな面持ちだが、それでは近くでやる気を見せている子供たちに示しがつくまいとメガネをくいっと持ち上げて気持ちを切り替える。
「まぁ、だが……異世界の者に任せっぱなしというのもミストレストの名折れだ。
 気勢は此方にあり、であるならば微力であるが乗らせてもらおうか」
「おおっ、おねーさんも一緒に頑張ろう!」
「よーし、みんなで一緒に悪い奴らをやっつけるぞー☆ えいえいおー!」
 一応、敵の船が迫ってきているのだが、がしっとミフェットとティエルにくっつかれて、年長のアクアはどうするべきか考えてしまう。
「それ、ボクもやらなきゃだめ? これでもそこそこいい歳……いや、まぁ、うん」
 力いっぱい拳を振り上げて意気軒高を共有すべきか迷うところではあったが、結局勢いに負けて小さくぐっと拳を上げたところで、いよいよ無視できないところまで海賊船が迫ってきていた。
「さあ、仕事の時間だ。君たちも怪我をしないように、海賊を叩きのめすぞ」
「おー!」
 具体的な作戦など立てる暇もなかったが、前もって気合を入れた手前、なんだかいけそうな気になってくるから不思議なものだ。
 ぶっきらぼうながら、一応、子供に気を使って弱気をさらせないというアクアなりの矜持も少しはあったのかもしれない。
「ふん、この程度の船など!」
 先陣を切るホーリーハイランドが船上から大剣を振り上げるのが見えた。
 まずいな。先手を取られた。
 ここから魔法を撃って間に合うだろうか。
 咄嗟に身構えるアクアであったが、今にも鉄甲船に近づいて大剣を振り下ろさんとしていた巨人騎士は、次の瞬間にはあっさりとそれはもうぽろっという効果音でも付きそうなくらいに船から落下する。
「な、なんだ、うおお!?」
「そんな不安定なところで、重そうな剣を振り上げるから落っこちちゃうんだよ」
 よくよく見てみれば、海賊船に向かってミフェットがその黒い髪、に擬態したブラックタールの触手を伸ばしていた。
 薄闇の中でブラックタールの体は視認しづらい。
 そして、巨人の動きをちゃっかり見切っていたミフェットは、見た目にそぐわぬ怪力はほんのちょっぴりに、文字通り巨人の足元をすくって船から引き落としたのだった。
「なるほどな。賢い」
「ミフェット、すごい! ボクもやるぞー!」
 思わず感心するアクアと、触発されたように羽ばたいて単身で突撃を始めるティエル。
 止める間もなかったとちょっと心配になるアクアだが、直後にその心配は無用だったと知る。
 子供ながら猟兵として、数限りない戦場を駆けまわってきたティエルは、単身でも十分に戦える。
 特にフェアリーの小さな体格と、その圧倒的なすばしっこさは、数十倍の体格差をものともしない。
 その翅から零れ落ちる輝く粒子のような鱗粉さえなければ、その軌跡すら追えないほどのスピードで海賊船へと乗り込むと、ティエルは持ち前の素早さで巨人騎士たちを翻弄する。
「く、おのれ! そこだ! ええい、小さすぎて当たらん!」
「こっちこっち、ほらほらー☆」
 かつん、かつん、と甲冑を時折穿つレイピアを鬱陶しそうにしながら、ホーリーハイランドたちは、あっちへふらふら、こっちへふらふら。
「ぬぐ……だが、無駄なこと! 我らには、戦神の加護がある。そのような小さな得物で我らを傷つけることなど」
 既にあちこちガタがきてそうな甲冑姿だが、そこには一定の誇りがあるのだろう。
 簡単に翻弄されながらも、巨人騎士たちは凝りもせず周囲を飛び回るティエルをとらえようとする。
 強気に出れるのは、ティエルの攻撃が通用しないと高をくくっているからだ。
「うんうん、凄い丈夫だね!」
「ふっふっふ、そろそろ、つかまる気になったか?」
「ううん。つかまってるのは、そっちだよ♪」
 いたずら小僧の笑みで、体当たりを仕掛けるようにして巨人の頭にキックをお見舞いしてやると、いつの間にか船の舳先にまでおびき寄せられていたホーリーハイランドはようやくティエルの意図に思い至り、緩慢な動きで空を掴もうとするが、それはやはり無駄に終わり、先ほどと同じように海中に落ちていく。
「ふむ、凄いものだな……。ボクもそろそろ……おいで」
 ティエルの無軌道なようで洗練された誘導に見とれそうになりつつ、自分の仕事を思い出したアクアは、負けていられないとばかり、海中から友人を呼び寄せる。
 海面から嘶きと共に飛び出したそれに飛び乗り、尾びれと飛沫を引きながらアクアは空を飛ぶ。
 透き通るその表皮は鬣の如く波打ち、息を震わせ鼻を鳴らす様は馬と変わりない。
 セイレーンたるアクアの友人アハ・イシュケは、その身を水で構成する水中のみならず空をも駆ける馬である。
「さて、戦場の定石として、まずは上方を制したものが優位に立つ」
 馬上から触媒にもなるルーンソードを手に、指さすかのようにその切っ先を向け、アクアはユーベルコードを発動させる。
 【ウォーターバレット】は初等魔法。その名の通り、指を向けた方向に水の弾丸を撃ちだすものである。
 ただの水弾と侮るなかれ。この世に水ほど圧力と質量に素直なものもあまりない。
 とはいえ、有利な位置、遠隔からの一方的な攻撃法という、極めて無難で効果的な戦術を考案したとはいえ、ただの水弾をぶつけるだけでは、あまり効果的ではないようである。
 ホーリーハイランドには戦神の加護がある。
 まして手にするのは幅の広い大剣。それを盾のように構えられては、水弾も思ったほどの効果を上げない。
「ちっ初心者用ではキツイか……?」
 もうちょっと威力のあるものの方が良かったかな。と思わなくもないが、その狙いは別にある。
 それを悟られないため、敢えていくつかは直接ホーリーハイランドを狙い、本命と思わせているに過ぎない。
 水ほど圧力と質量に素直なものも、あまりない。
 圧力を上げた水は、石よりも強固に、鉄よりも鋭くなる。
 初心者用の魔法も使いようなのである。
 ばきん、と木でできた海賊船の甲板が砕けた。
 ウォーターバレットがついに船を破壊し始めたのである。
「確かにお前たちは頑丈なんだろう。だが、上に乗ってる者はともかく……下の足場はどうかな?」
「しまった、船を守れ!」
 アクアの意図に気づいた幾人かの巨人騎士が盾になるように密集するが、その時、ふと周囲から歌声が響く。
「♪剣うちならし ときの声あげ
 いくさをささげるのは たたかいの神さま
 波しぶきの中 ぶつかる船
 巨大な鉄の支配者たちと わずかな数の解放者
 たたかいの神にささげられる 価値ある勝利はどちらの勝利?」
 鉄甲船の上に立って、戦場に歌声を響かせるのはミフェット。
 【一人ぼっちの影あそびの歌】は、戦いの神にその是非を問うかのようなものであった。
 争いに善悪はなく、戦いの神が選ぶとするならば、より苛烈な戦場だろうか。
 であるならば、巨悪に立ち向かう者にこそ、より熱いものを感じはすまいか。
 そいつらに加護を与える価値はあるのか?
 船上のあらゆる者に捧げられた歌声は、巨人騎士たちの加護を打ち消すものであった。
 その証拠に、
「ぐおっ!? ば、ばかな! さっきまで、防げていた筈だ!」
 アクアのウォーターバレットから船を守ろうとしていた騎士たちが、水弾に穿たれてその甲冑を罅割れさせる。
 そして、守りの薄くなった海賊船もまた、続けざまの水弾の打ち込みによって、甲板は穴だらけになりつつあった。
 それはやがて、船体の船底にも到達し始める。
 撃ち込み続けているのは、当然ながら水。浸水といえば、既に浸水している。
 船が水に浮いているのは、浮く素材もそうだが、張力も働いている。
 流し台に浮いた茶碗に水を注げば沈むように、船に水を注ぎ続ければいずれ沈む。
「く、くそ、こんな初等魔法如きに……!」
「悪いね、騎士様。生憎と正々堂々というのは性に合わなかったらしくてね」
 徐々に沈み始める船だが、さすがに長いこと航海している海賊船だけあって、この手の水難には強いのか、なかなか辛抱強い。
 しかしながら、船を沈めるにはもっと手っ取り早い手がある。
「ふむ……もう少し威力のあるものを用意すべきだったかな。しかし、これからも戦わなきゃいけないしな……。船底をぶち抜きでもすれば、一発なんだが」
「わかった! ぶち抜けばいいんだね!」
 馬上で顎をさするアクアの傍らで、ティエルが元気よく宙返りをうつと、掲げたレイピアの切っ先を緩やかに沈む海賊船へと向ける。
 ミフェットの歌声にすっかりテンションの上がったティエルは、今こそ使い時とばかり、ユーベルコードを発動させる。
 妖精の悪戯か、でたらめな魔法なのか。テンションの上昇したティエルは、レイピアの切っ先から謎の光線、【お姫様ビーム】を放つことができる。
「うーー☆、どっかーん!」
 収束した光なのか、荷電粒子なのか、それはまぁ置いておいて、気合と共に発射された謎のビームは、沈みかけの海賊船を貫き、海中を照らすほどの軌跡を残して、今度こそ海賊船に致命的な一撃を加える。
 穴の開いた海賊船はぼこぼこと不吉な水流を上げて沈んでいく。
 全身を甲冑で固めたホーリーハイランドたちは、ただただ海賊船と命運を共にするしかない。
「そのまま深い海の底で眠れ」
 沈みゆく海賊船を見下ろすアクア。
 周囲を見渡せば、どうやら今の船が最後であったらしい。
 気が付けば、あれだけいた海賊船が鳴りを潜めて、極光のちらつく『暗い虹の島』には再び薄闇が戻りつつあった。
 さて、残すは島にいるであろう、親玉だけであろうが……。
 はたして島民は無事であろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『大海賊デストロイ』

POW   :    ジェノサイドトリガー
【完全殺戮モード】に変形し、自身の【オーバーヒート】を代償に、自身の【あらゆる戦闘能力】を強化する。
SPD   :    デストロイアナライザー
【自身の武装】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、自身の武装から何度でも発動できる。
WIZ   :    スカーレットバタリオン
召喚したレベル×1体の【戦闘用ウォーマシン】に【この戦場に最適な武装】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ユーノ・ディエールです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「……どうやら、風向きが、変わった、らしい」
 『暗い虹の島』の岬にある、海を見渡せる庭。
 石造りの浅い塀には緑の蔦が這い、その庭には今や二人しかいない。
 血にまみれた武器をいくつも手にする大海賊デストロイと、
 年老いた少女、この島の代表を務めるミレナリィドールである。
 海風にしおれた雑草がまばらに生える庭先には、真新しい島民の亡骸が二つほど転がっていた。
「ようやく、だ。お前の、宝石でできた血肉……飾りではあるま、い。人形」
 怪しげに輝きをたたえるモノアイが、静かに佇む少女の顔を覗き込む。
 人を射殺せる視線があるとすれば、それなのだろう。
「ええ、風向きは変わった……もう、絶望を見なくても済むかもしれません」
 緑のミレナリィドールは、ゆっくりと立ち上がる。
 長く長く人々の生き死にを見守ってきた少女は、もはや全盛の力を持たない。
 それどころか、長時間立っていることすら難しくなってきたという。
 多くの命を迎え入れ、多くの旅立ちを見送ってきた。その死生観は、老いを超えた独特のものを持っているのかもしれない。
 しかしながら、目の前で大切な命が果てていくのは、許せなかった。
「その目が、見たかった。人形。全力で立ち向かって来ねば、俺の一部となるには相応しくない」
 嬉々として武器を構える大海賊は、少女のことを知らぬではなかった。
 はるか昔に流れた島に一人だけいる、人に非ざる人形が、人間を導き、知恵を授けているという話を、どこからから聞いていた。
 それはきっと、素敵なメガリスに違いない。
 噂を聞き、薄闇に覆われた島を探しに出た海賊は数多くいたようだが……その行先は杳として知れぬ。
 もしや、もしや。
 デストロイもまた、この島を探し、住まう者の影、いやこのミレナリィドールの正体を夢に見て、いつか他のメガリスと同様に取り込んでやろうと目論んでいた。
 たとえ腑抜けていようとも、島民を目の前ですり潰してやれば目が醒めるか。
 その技を、血肉を食らうならば、どうせなら全力がいい。そうでなくては意味がない。
 デストロイはそうして、力を付けてきた。自身を改造し、バージョンアップを重ねてきた。
 そうやっていつかは、あの宇宙に返り咲くのだという野望があった。
 その為には、目の前の美しき老婆が必要だった。
「買い被りと、申し上げたはず。私は道に過ぎない」
「ならば、説いてみよ。さもなくば、時間を稼いだこ奴らが、哀れではないか。人形よ」
 蹴転がす島民の亡骸を見て、緑の瞳に血の気が奔る。
 いいや、まだ早い。
 この身は道。
 礎となるには、まだ一拍、時を稼がねばならない。
 もうすぐ、この怪物を倒せる者たちがやってきてくれる。
 その為に、もっともっと、侮ってもらわねば……。
 ぐしゃり、と嫌な音が聞こえた。
 つぶれた頭蓋。
 もはや、我慢の限界だった。
「いいだろう、海賊。この老骨の乾いた血が、そこまで輝いて見えるのなら──」
 ついた杖の継ぎ目から、わずかに白刃が覗く。
 勝機は万に一つもない。
 砕けるのは自分の方であろう。
 何のために、目の前の亡骸を見過ごしたのか。莫迦なことはやめろ。
 いいや、私の愛したものを傷つけたものを、許してなるものか。
「ヴィルジア・イグゼクスイレヴン……主よ、今こそ我が命を閃光とすべき時と知りました」
 古式に則り名乗りを上げたからには、もう止まることはできない。
 激情と共に、ミレナリィドールが命を賭して決死の突撃を敢行する。
「カカカカカ……!」
 その様を、嬉しそうに機械の海賊は全武装をもって迎える。

 或は、この場に助太刀に駆けつけるのならば、その無謀を止めるか。
 或は、この場に諫める手が及ぶのならば、怒りに身を任せる少女から勝機を得ることも可能であろうか。
 或は……。
 いずれにせよ、待っているのは、確実なる死。それほどまでに、歴然とした戦力差があることに、少女は燃えるような怒りで忘れようとしているようですらあった。
ユリウス・リウィウス
コンキスタドールがミレナリィドールに手を出す前に、血統覚醒からのヴァンパイアミストでコンキスタドールを取り巻こう。
俺は「呪詛」を帯びた有毒の霧。機械部品とて、回路が濡れてしまえば、満足な機能は発揮出来まい。ましてやそこに呪詛を流し込まれればな。

コンキスタドールへの牽制が終われば、ミレナリィドールの側に実体化して、あのコンキスタドールの弱点なり尋ねるとしよう。
心配するな。あれは俺たちが討滅する。

ヴァンパイアの反射速度で、放たれる銃弾を切り落とす。二振りの黒剣をそう易々と抜けると思うな。

最後に、「恐怖を与える」「傷口をえぐる」虚空斬で反撃をしておこう。彼女からの助言があればそれに従って一撃を。


ニレッド・アロウン
はっはー!!
なんかうぜー奴がいますね!鬱陶しいのでどけですよー!

というわけで先程の戦場から翼をめっちゃ動かしてすごい勢いでなんかでけーロボを蹴飛ばします!
え?効いてない?知ってます。

ところでてめーが作ったこのロボ、めっちゃ飛べるようになってますね?武装増し増しですね?
はっは、邪魔。

空中でホバリングしたまま水晶鋏に記された刻印をなぞる事で詠唱短縮。どろりと鋏を溶かし巨大な液体にしそれを多数の水晶槍に変換。
空中という広範囲な半径の中、主に飛んでいるウォーマシンを狙い槍を操作し撃墜。

私は?障壁展開しながらあのデカブツを煽って囮にでもなります。
へいへい雑魚も出さないとやってられないとかビビってるぅ―!



「カカカカカ……」
 薄闇の丘の上で、歪んだ輝きを放つモノアイが斜めに揺らめく。
 必要に応じて、その手であらゆる生命を狩り、奪ってきた。
 命がかかった時の生物の輝きは、乾ききった機械の心をも躍らせた。
 電子部品に過ぎぬ学習装置が、相手の死に物狂いの攻撃を学び取る瞬間にこそ、それは歓喜を呼び起こした。
 生命の輝きを転写したこの学習装置こそ、我が宝だ。
 だからこそ、二つはいらぬ。それをよこせ。
 宝物を、力を奪うとき、大海賊デストロイはその機械の貌を傾げて笑う。
「笑うな……命を……!」
 海賊が笑い、見惚れるほどに、対面するミレナリィドールの少女は怒りの形相を浮かべていた。
 眼が血走るというのを、血の通わない人形がその機能もないのに浮かべようとするならば、見識という機能へと過剰供給される魔力が濁った紫電を迸らせる有様であった。
 少女が浮かべるにはあまりにも凄絶であり、人形がするにはあまりにも生々しかった。
 だからこそ目を引いたのだろう。
 それ故に、デストロイは、いつの間にか薄闇に漂う霧が濃くなっていることに気づくのが遅れた。
 静かに、しかし迅速に、戦場に立ち込めていた。
 デストロイのアイセンサーをはじめとする、各種探知機能に異常が生じ始めれば、さすがに気づく。
 この霧は、何かおかしい。
 そして、これは目の前のミレナリィドールの仕業ではないと。
「むうう……!? 何者か知らぬが、邪魔をする、な!」
 ただの霧で参ってしまうほどおんぼろな探知機能では、この世界の海原を駆け抜けることなど到底できない。
 だがこの霧は違う。
 ユーベルコード【ヴァンパイアミスト】で霧に変じていたユリウス・リウィウスは、ただの水蒸気などではない。
 機械の電子機器にすら影響を及ぼす毒。そして呪詛を、密かに霧に仕込んでいたのだ。
 ダンピールであるユリウスは、ヴァンパイアの血統に目覚めることにより、その力の片鱗を発揮することができる。
 霧に身を変じたのは、戦場への介入を迅速に且つ、奇襲をやりやすくするためだった。
 一触即発の二人の合間に入り込むには、先に隙を見せるのを待つほかなく、じわりじわりと真綿で首を絞めるかのような霧の毒の浸食は、果たしてその効力を上げた。
 その身にまとわりつく霧を振り払うかの如く光子ブレードを振るい、ブラスターを乱射するデストロイであったが、それらはいずれも明後日の方向に向くもので、もはや対峙するミレナリィドールを見るものではなかった。
 そして霧にとらわれる大海賊の奇行は、ミレナリィドールの少女にとっては隙である他なかった。
 草を食む足元が強く沈むかのように腰を前へと歩ませる。
「……勝機!」
「待て」
 腰だめに構えた仕込み杖を抜き放たんと身を沈ませる少女の前に、霧から甲冑姿に立ち返ったユリウスが立ちはだかる。
 もはや敵しか見えていないミレナリィドールの少女にとっては、それは障害物に過ぎず、敵意の真ん前に身をさらしたユリウスが彼女の動きを止めるには、黒剣で抜きかけの刃を押し込める他になかった。
「邪魔をされまするな。貴方を斬りたくはない」
「落ち着け。お前の敵う相手か?」
「手出し無用……!」
「だめだこいつは」
 刃を合わせながらも、その視線は合わない。
 デストロイしか目に映らぬ少女の瞳は、もはや正気ではない。
 駄目だというのは、怒りに我を忘れている少女には何を言っても言葉は通らぬということ。
 さりとて、彼女の剣術がデストロイに届くとは思えない。それよりも前にこの古びたボディは砕け散るのが目に見えている。
「すまんな。少し時間をくれ!」
 ぎぎぎ、と刃同士が鈍い金切り声を上げる中で、ユリウスは空へと声を投げる。
「はっはー!!」
 応えたのは、高らかな笑い声だった。
 直線を描くようなドップラー効果と共に鍔迫り合いの頭上を飛び越えていったのは、青く黒い影。
 ニレッド・アウロンは、その一見すると清楚な姿からはおおよそ及びもつかぬであろう低い声色で笑い、口の端を吊り上げる様は、まるでモヒカ……野蛮であった。
 オラトリオよろしく翼を広げ闇空を滑る様は美しく、風を切り裂く力強い翼は惜しくも先の戦いで使ったユーベルコードの影響を受けてちょっとペンキ塗り失敗しましたみたいな色合いになっているが、それはともかく、凄まじいスピードで戦線に到達したニレッドは、そのまま手を交差して体当たり……ではなく、滑空の勢いを利用したキックを大海賊の輝く頭部にお見舞いする。
「てめーこのやろう!」
 ごぅん、と景気のいい金属音が響くものの、ニレッドのえぐり込むかのようなドロップキックを食らっても、デストロイはたたらを踏むことすらなかった。
「ふん、見つけたぞう……俺の幸せの時間を、奪いよる……痴れ者め!」
 ぶおんっと光子ブレードが光跡を描いてニレッドをとらえようとするが、それをひらりと蹴りつける要領で宙返りをうって回避する。
 続けざまにブラスターで追撃するものの、空中で跳ねるような動きのニレッドを正確にとらえることはできない。
「クッ、照準をやられたか!」
 ユリウスの毒で計器類をいくつかやられているのか、その攻撃は正確さを失っているらしい。
「おやぁ、どこを狙ってやがるんですかぁ? 天下の大海賊様も、錆びついてしまわれましたぁん?」
 プークスクスと口元を手で押さえつつ、ゆらゆらと横移動を交えて含み笑いを見せつけてやる。
 ちょっと色気を出そうとして失敗している感じの言葉が、ウォーマシンであるはずのデストロイの神経を逆なでる。
「おの、おの、おのれぇ! その妙な声色をやめろ!」
 そろそろいい加減にしないと怒られるぞ。
 そんな具合に肩を怒らせるデストロイの背部パーツが展開し、子機を召喚する。
 混乱している計器では捉えきれぬと判断したが故の手数であった。
「はっは、そんなものも用意してやがりましたか。一人じゃ何にもできないんでしゅねー。
 へいへい雑魚も出さないとやってられないとかビビってるぅ―!」
 空中でゆらゆらとホバリングするニレッドは内心で少しばかり焦りを見せていた。
 両足のしびれがなかなか取れない。思い切り蹴りつけて吹っ飛ばす予定だったが、まったく動じなかった。なんという頑健さだろうか。
 どうやって攻略したものか。
 効いてない? 知ってます。じゃあ、通用する術を見出すほかにない。
 そのためだったら、囮にだってなって見せよう。
 ニレッドが必要以上に相手を煽るのは、ユリウスがミレナリィドールの少女から情報を聞き出す時間を稼ぐためであった。
 まあ、その、ちょっと言葉が悪いのは、彼女が見た目よりもはるかに過酷な生い立ちがあったりするのも、ちょっとは関係しているのかもしれないが。
「お退きを。たとえこの身が裂けても、私はあ奴を斬らねばなりません」
 一方、ミレナリィドールを抑え込むユリウスは、その場から一歩も動けないでいた。
 前へ前へ行こうとする少女の怒りを一身に受けながら、ユリウスは涼しい顔をしている。
「そうでもしなけりゃ、お前は、お前自身の無力に耐えられないからだろう」
「! そうだ……だから」
 均衡が崩れる。
 弾かれ、尻もちをついたのは人形の方だった。
 その実力差は厳然たる格差を示していた。
 ユリウスは二本の黒剣の片方、片手しか用いておらず、あまつさえ腕一本で受けていたにもかかわらず体幹のずれ一つなかった。
 背を向けるユリウスに、少女は立ち上がることもできない。
「俺もかつてはそうだった。だが、今は、俺たちがそういう奴らの刃であり、盾だ。
 心配するな。あれは、俺たちが討滅する」
 二本の黒剣を抜き放ち、コンキスタドール……オブリビオンに対抗する猟兵として立つ姿に、斬りかかる術を少女は持たない。
 だから代わりに、ひ弱な老婆に過ぎぬ彼女は、年の功として言葉を贈るのだった。
「今はその言葉を信じましょう……。あれは最初から完璧な企画のもとに作られた。言うなれば、私と同じ性質のもの。
 故に、他者から奪い取った力は、所詮、他者のもの」
 その目に冷めやらぬ怒りを湛えたまま、彼女の見識から見た継ぎ目の綻びを、ユリウスに伝える。
「なるほどな。それだけ聞ければ十分だ」
「ご武運を、使者殿」
 気になる呼ばれ方をされた気もするが、必要なことは聞けた。
 ユリウスは受けた助言をベースに、その狙いを定めて、改めてデストロイに向き直る。
 さて、そのデストロイの周囲には、トンボのような翅を生やしたウォーマシンが飛んでいた。
 そしてその残骸も、周囲に打ち捨てられるかのように転がっていた。
 無残な切り口は、ニレッドの手にする魔法の水晶で作り出された一対の大鋏のような剣によるもの。
「……ふう、チマチマ相手にするのは、そろそろおしまいですかね。そろそろ時が移るようですから」
 ユリウスが近づいてくるのを感じ取り、ニレッドのその大きな目隠しで半分ほど覆われた顔の下半分から覗く口元に野蛮な笑みが浮かぶ。
 宙に放った大鋏が、まるで磁力を帯びたかのようにゆるく回り、指先を這わせればその透き通った表面に魔法の文字が浮かぶ。
 それは、形状を維持する術式でもあり、攻勢へ転じる別の術式も含んでいる。
 ニレッドとて、単に筋力に飽かした戦術ばかりとるわけではない。戦う術は、身に着けるものにも仕込んであるのである。
 前もって刻み付けておくことで詠唱を簡略化し、発動を容易くする。
 鋭い鋏がどろりとその輪郭を崩し、液化したそれらが鋭い切っ先をもって生まれ変わる。
「悪しき者への盾であれ、悪しき者を討つ槍であれ」
 ユーベルコード【戦突水晶】により、鋭い水晶の槍と化した大鋏は、ニレッドの周囲を飛び回るウォーマシンたちを幾何学模様を描きながら巧みに追尾し、逃げ場を奪い貫いていく。
 高速で飛び交う水晶槍の一部がデストロイにも降り注ぐ。
 先ほどまで過剰なほど煽ってきた時とは打って変わり神々しさすら感じさせる姿に目を疑うデストロイは、それらを危ういところでブレードで打ち払う。
「ぬうう!! そんなもので、俺を止められると、思うなよ」
「ならば、ここなら止まるのか?」
 デストロイの背後、再び霧に姿を変えていたユリウスが姿を現し、手にした二刀がデストロイの背部ユニット、ボディと色合いの異なるパーツの継ぎ目を正確に斬りつける。
 呪われた剣の交差する打点が、激しい火花を上げて爆ぜる。
 ウォーマシンのボディに無理やり組み込んだメガリスの一部だったのだろう。それが吹き飛ぶ。
「ぐおおっ!? ば、馬鹿な……!?」
「ふん、どうやら、本当にお前のものではなかったようだな。借り物は所詮借り物だ」
 果たして、少女の観察眼はユリウスたち猟兵の力を以て、その綻びを見出した。
 多くの力を得たが故の、綻びを。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アクア・ミストレスト
二人の間にスライムを召喚し
敵からは攻撃を封じ、此方へ来ることを拒む盾に
彼女は虚を突き足を止めさせる障害物となってもらう


勝てぬ戦いをしてどうする
まぁ、この世界のものとして怒りの気持ちは分からんでもないがね…
ブレイン役というのは常に冷静に、味方を導くものだ。そうだろ?蒸気人形の賢人よ

会話で此方に意識をしてもらい、その怒りの熱を一時的に下げてもらう
怒りは発散させるのではなく蓄え力にする…とは誰の言葉だったか…

後はスライムを味方や自身の盾にしながら
水の弾丸【属性攻撃】で味方の援護を

面倒な前衛は得意な連中に任せればいい
此方のやることは動きやすいような支援だ、そうだろ?


ミフェット・マザーグース
ななだいかいしょー、そんなに強い海賊なんだ
宇宙の海のことしか知らない、ミフェットには分からないけど
それならよけいに、一人で戦っちゃダメだよね

だからティエルと一緒に、先に戦ってるヒトに助太刀しよう!
だれかがギセイになるんじゃなくて、みんなで戦って、海賊を追い返そう!

UC【嵐に挑んだ騎士の歌】
リュートを取り出し「楽器演奏・歌唱」に乗せて、戦場ぜんぶに響く声で、たたかうみんなを「鼓舞」するよ
襲ってくる敵は、触手にした髪の「盾受け・見切り・激痛耐性」でできるだけ耐えて、ティエルには海賊と戦ってるヒトを助けることを優先してもらうね

詩の最後に付け加えて、♪まだ守るべきヒトが その背の向こうにあるから


ティエル・ティエリエル
SPDで判定
ミフェット(f09867)と一緒に戦うよ!

ミレナリィドールのお姉さん、一人で戦ったら危ないよ!
敵がどんなに強くても誰も犠牲になんてさせないぞ!

ドールに攻撃が向かわないように空中からの連続攻撃だ!
翅での飛行だけでなく、【スカイステッパー】で空中を蹴る「フェイント」も混ぜていくよ!
ミフェットの歌が聞こえてきたらパワーアップしてさらに加速だ!
装甲の隙間を狙った「鎧無視攻撃」でガシガシ削っていくよ!

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です



 薄闇の極夜の中で、デストロイのモノアイが爛々と輝いていた。
 火とも陽光とも違う冷たい輝きが、濃霧の中で動揺する様が見て取れた。
 今ならば。
 力及ばず尻をついたミレナリィドールの胸の内に、暗い欲求が首をもたげる。
 猟兵たちの奇襲により、デストロイは思った以上に深手を負うことになった。
 今ならば、その首を取る事もできるのでは。
 それは不可能と、即座に結論が出る。
 しかしながら、その無機質なはずの心には、島民の無念がのしかかる。
 愛しい家族を失った痛み、不甲斐ない己の有様、湧き上がる怒りの種には事欠かない。
 せめて、あれの首を取らぬことには、この心が治まらぬ。
 抑え込まれた憎悪がその身を奮い立たせ、緩みかけた手に再び武器を握る力を呼び起こす。
 大海賊と目が合う。
 その無機質な輝きの奥には、奇しくも少女と同じ色のものが鏡写しのように見て取れた。
「──!」
 お互いの感情が爆発した。
 もう怒りしかない。
 剥いた眼が怒号を交わし、お互いを磁力線で結んだかのように引き寄せる。
「うおおお!!」
 少女らしからぬ咆哮はしかし、二人の間に挟み込まれた何かに阻まれてしまった。
 薄闇の中ですら青空の色合い。鮮やかな水面のような仄かな輝きと、濡れた綿のような抵抗が、二人の踏み込みを柔らかく阻んでいた。
 アクア・ミストレストによるユーベルコード【サモン・スライム】が呼んだ大量のスライムが合体した姿が、それだった。
 瞬間的な攻撃力に乏しい水分を多量に含んだ巨大スライムだが、生産コストの割に芸達者であるためか、愛用している。
 その抑制力、耐久性は凄まじく、怒りにかられたミレナリィドールの踏み込みはもとより、それを迎撃せんと武器を構えたデストロイすらも阻んで見せた。
「ぬうううう!! 邪魔をォ、するなぁ!!」
 怒りに任せて光子ブレードを振るうデストロイに切り刻まれながらも、わずかにぷるぷると体を震わせるばかりの巨大スライム。
「うあああああ!! 離せェェェェ!!」
 体の半分をスライムにめり込ませながら、力任せに杖に仕込んだ刃を引き抜こうとするも、その動きは完全に封じられてしまう。
 恐らくは力任せには使えない武器を、そうまで感情に任せて振るおうというのは、なんという怒りの際限の無さなのだろうか。
 或はお互いを狂わせ合っているかのように、感情を迸らせるその様は、ある意味で似たもの同士であるのかもしれない。
 そこに冷や水をかけるかのように、ぽろん、と甘い音色が戦場に漂う。
 弦楽器を爪弾く暖かな旋律が、冷え切って鋭くささくれてしまった心を溶かしていく。
「そこまでだ。落ち着いてもらおうか」
 意を削がれたその絶妙のタイミングで、アクアは力の抜けたミレナリィドールの肩を引き、スライムから引きはがした。
 そうして、あくまでも冷静に諭すように、声をかける。
「勝てぬ戦いをしてどうする。
 まぁ、この世界のものとして怒りの気持ちは分からんでもないがね……」
 目を細め、遠くを見るようにしてメガネのブリッジを押し上げる。
 見ないようにしていたが、周囲には決して少なくない数の人の死体があった。
 正気を失うほど怒るだけのものがそこにはあった。
「だが、貴女は一人ではない」
「そうだよ! 一人で戦ったら危ないよ!」
 小さな光跡に大きな声、うなだれるミレナリィドールの頭上を越えて飛んでいくのはティエル・ティエリエル。
 それに反応したかのように、デストロイが無茶苦茶にブラスターを乱射してくるが、その大半はスライムの巨体で受け止められ、あるいはティエルはその合間を掻い潜る。
 狙いを逸れたものがアクアたちの方にも飛んでくるが、それらを守るように黒い触手が幕のように立ちはだかって光の弾丸を撃ち消す。
 ミフェット・マザーグースのブラックタールの肉体が、髪に擬態した触手を伸ばして防御に徹し、あとついでに手にしたリュートの音色をも守る。
「ティエル!」
「うん!」
 こっちは平気とばかりに名を呼べば、スピードに乗ったティエルが愛用のレイピアを手に大海賊デストロイに突撃を仕掛ける。
 フェアリーのティエルは体格こそ小さなものの、今までに数々の強敵を打ち破ってきたそれには絶大の信頼を寄せていた。
 錆を帯びたようなくすんだデストロイの装甲に、ほとんど直線の火花が上がる。
 猛然と斬りつけるティエルのレイピアが火柱のような軌跡を描くが……。
「あばば……痺れる!」
 レイピアを握るその手に返ってくる手応えが、装甲の頑健さを思い知らせる。
 凄まじい斬撃と、あまりに強固な装甲との板挟みにあったレイピアの切っ先がくわんくわんと振動の余韻を残していた。
 正面からの斬り合いでは、さすがに通らないというのか。
「ふーんだ。これくらいじゃ、止まらないもんね」
 思い通りに攻撃が通らないことに頬を膨らましてむっとするティエルだが、それしきで諦めたりはしない。
 なおもスピードを上げて目にもとまらぬ連撃を繰り出すも、それは周囲に不協和音をとどろかせるに過ぎない。
 遠目にするミフェットも、そこまでしてティエルの攻撃が通らない有様はなかなか見ることが無かっただけに、目を見開いてしまう。
「ななだいかいしょー……そんなに強い海賊なんだ」
 風を纏うティエルのレイピアは、正しく振るえば涼しげな風鳴りが聞こえる筈だが、それよりも装甲を穿つ衝突音の方が大きい。
 果ての無い宇宙の海しか知らないミフェットには、荒れ狂う海原の流儀はよくわからない。
 だが、最も信頼する親友がてこずるという相手ならば、
「それならよけいに、一人で戦っちゃダメだよね」
 自身を励ますかのように、どんな大きな敵を前にしたって物怖じしないように、強く心を持ち、より一層リュートを爪弾く音色を響かせる。
 そして心の底から歌い上げるのは、【嵐に挑んだ騎士の歌】。
「ふう……まだまだ、頑張っちゃうよー!」
 もはや戦場全域に響き渡る歌声を背に、ティエルは頬を伝う汗をぬぐいもせず、剣の切っ先が赤熱するのも構わず、飛び続ける。
「綺麗な歌声だと思わないか。
 周囲の声を聴くだけの余裕は出てきたか?」
「……はい、げんきを、感じます」
 子供二人の戦いぶりを目の当たりにし、ミフェットの歌声を聞いたミレナリィドールはようやく冷静さを取り戻したようであった。
「ブレイン役というのは常に冷静に、味方を導くものだ。そうだろ? 蒸気人形の賢人よ」
「……見知ったことを、提供せよと言うのですね」
「突っ走って、勝手に死なれるよりかは、賢い選択とボクは思うが?」
「御尤もです」
 あくまでも冷静に語るアクアの言葉をかみしめるかのように、杖の鯉口を閉じ、それを抱きすくめる。
 そしてわずかに瞑目したままそうしていると、やがて少女は口を開く。
「……あれは、もともとはそれ単体で完璧であった筈のものです。そこに力を欲さんとあれやこれと着飾ってしまった。
 力は凄まじくなりましたが、それゆえに完璧でなくなったように、見えます。
 言うなれば、一枚岩を飾るために豪奢な鉢植えを積み上げたようなもの」
 少女の言葉は、どうにも明確性を欠いているようにも思えたが、言わんとする意味はアクアにもわかった気がする。
 デストロイはウォーマシンである。
 元々は何かの規格の下で製作されたロボットであるなら、正規の手続きを踏まず、己のスペックを無視して強力なメガリスを組み込み続ければ、バランスは悪くなっていくという意味なのだろう。
 もともとのキャパシティがどれだけ高かろうと、メガリスの力は凄まじい。
 数多くを取り込めば、いずれどこかにひずみが生じるというわけだ。
「まるで綱引きだな。よしわかった。援護に入るから、指示を出してくれ」
 前線では、ティエルが単身、縦横無尽な動きで頑張っている。
 そこに敢えて出張っていくのは、彼女の動きを阻害してしまいかねない。
 アクアはスライムに指示を飛ばしつつ、自身もルーンソードを触媒に、水弾を牽制に使いデストロイの気を散らす。
 そして攻撃指示をお願いされたミレナリィドールの少女は、戸惑いながらも、取り込んだメガリスとの継ぎ目を狙うよう細やかな狙いをアクアに助言する。
「む、ぐう!? 手数が増えたか……だが、なめるな! 集団戦など、珍しくはない! ちょこまかと飛び回る羽虫め! 貴様の動きも、もう見切ったわ!」
 アクアの援護射撃を受けて、デストロイの動きが鈍る。
 しかし、攻撃の手数が増えたことにより、むしろ対応範囲が広がったのか、複数ある腕がフレキシブルに稼働し、周囲を飛び回るティエルの機動もよく見れば捉えられる。
 筈だった。
 軌道を先読みしたデストロイの一撃だったが、そのタイミングに合わせてティエルは【スカイステッパー】で空を蹴って反転。
 今までの直線的な動き中心で戦っていたのも、そのフェイントからカウンターに転ずる布石だったのだ。
「ふふーんだ。ミフェットの歌が聞こえてるんだ。今のボクは、無敵だぁー!」
 どんな堅固な守りも、攻撃の瞬間は甘くなる。
 デストロイの攻撃の瞬間を見切って潜り込んだのは、よく動く腕の内側、脇腹である。
 空を蹴って加速した鋭い突きが『継ぎ目』を貫いた。
 あれだけ硬かった装甲も、その隙間には驚くほどあっさりと刃が通った。
「ぐおぅ!? う、腕が……配線を、やられたのか……!?」
 本来ならば、そこまで簡単に貫かれるはずはなく、そこまで容易に腕が上がらなくなるなどと言う事も無い筈だった。
 しかし、ボディのあちこちにメガリスを組み込んだデストロイは、既に重量過多であった。
 異常な出力。規格外のパーツ。基準規定を大きく無視したバージョンアップに次ぐバージョンアップは、その関節に多大な負荷をかけていたのであった。
「もういっぽーん!」
 続けざまに継ぎ目を突かれ、ブラスターを握る腕がはじけ飛んだ。
「ぬおお!? や、やめろぉ!」
 たたらを踏むデストロイの足元にスライムが這っていた。
 ずるりと滑る足元に、更にダメ押しとばかり水弾が装甲の隙間を穿つと、安定性を欠いた状態のバランサーは用を成さず、転倒してしまう。
「馬鹿な……俺の、力が、メガリスが……!? こんな程度の、ことで……!?」
 バランス、制御を失い、その巨体のあちこちが破綻をきたし始める。
 体に組み込んだメガリスがその制御から離れて、内側から装甲を突き破って爆発する。
 そこに残ったのは、もはや戦う力など残っていない、金属の塊であった。
 ぽろん、とリュートの音色が演奏を終えると、風の鳴る音と、草を踏む音が近づいてくるのが、傷んだデストロイの計器にも察知できた。
「怒りは発散させるのではなく蓄え力にする……とは、誰の言葉だったか」
 見下ろすのは、ルーンソードの切っ先を向けるアクアと、
 憐れむような目つきのミレナリィドールの少女。
 もはや、手足すら残っていないデストロイの姿には、下がる留飲もなかった。
「……俺を殺すか。さぞ、気分がよかろう……」
「誰かを殺して、気分がいいわけがないでしょう」
 得物に手をかけ、少女はしかし刃を抜くことはしなかった。
 アクアの言葉の通り、湧いた怒りは己を支える力とすべきとしたのか。
 あるいは、とどめを刺す必要が無いと、既に見切っていたのだろうか。
 コンキスタドールのモノアイが、光を失うのを、少女はその場に座り込んで、静かにただ見送った。
 かくして、『暗い虹の島』を襲った『鬼火』の海賊の一団は、ここに一つの決着を見た。
 だが、話はここで終了とはいかないのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 冒険 『極夜庭園』

POW   :    生け垣を壊して抜け道を探す

SPD   :    彫像や噴水を調べて抜け道を探す

WIZ   :    生垣に隠れた抜け道がないか探す

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 海賊たちは、少なくともこの島を襲った一団は、すべて退治することに成功した。
 犠牲は出てしまったものの、海賊が全てを奪い去るよりも前に、猟兵たちの活躍によって、その犠牲は最小限に抑え込まれたといっても過言ではなかろう。
 失われたものは確かにあったが、それでも、海賊を率いていた幹部討伐を知らされた島民たちの顔色は明るかった。
 それはよかった。
 よかったのだが、彼らを率いる代表者たる年老いたミレナリィドールの少女、ヴィルジアの顔は冴えない。
 まだ、何か残っているのか。
 ここまでくれば、もののついでではないが、解決できることならば力になれるかもしれない。
 そう提案する猟兵たちに、ヴィルジアは申し訳なさそうに笑うと、島の中心の庭園を指し示す。
 島の中心を飾るにふさわしい庭園は広く、極夜の薄闇の中でも白く磨かれた石で作られた彫像や噴水が各所に設けられているが、その庭園の中心に立つものが異彩を放っていた。
 燃え立つような『鬼火』の海賊旗。
 ヴィルジアが言うには、その海賊旗もまたメガリスであるという。
 その旗が立つ限り、旗のもとに七大海嘯の海賊がやってくるというのだ。
 更には、海賊旗には防衛機能のようなものがあり、その周囲に容易く近づけぬよう環境を変化させる力を持っている。
 要するに、旗の周囲の庭園は迷宮のように入り組んで、容易には近づけない。
 しかし、旗を燃やしてしまわねば、いずれ海賊の増援がやってくるという。
 海賊との戦いは壮絶ではあったが、残る仕事は、命の危険はなさそうだ。
 ただ、それなりに急ぐ必要がありそうである。
 なるべく早く、海賊旗を燃やしてしまおう。
ユリウス・リウィウス
迷宮庭園か。壊しながら一直線に向かうのは無理なんだろうな。なあ、おい?
それなら、血統覚醒してからのヴァンパイアミストで壁の隙間をすり抜けて、最短コースで庭園の中心へ向かおう。
植木には悪影響が出るかもしれんが、そこは勘弁願いたい。

あれがメガリスか。一見ただの海賊旗だが? ふむ、ろくでもない気配があるな。
実体に戻って、ひとまず抜いてみるか。少なくとも迷宮化は解除されるかもしれん。

さて、さっさと焼却処分せねばな。火炎系のユーベルコード使い、出番だぞ。

無事にメガリスの処分が終わったら、土産話に庭園を散策してみるか。
やはりなじみ深い様式が使われているな。
しかし、世界が変わっても陽光は届かないのか……。


ニレッド・アロウン
ヒャッハー!迷宮の打ち壊しの時間ですよー!
……今回私、ずっと叫んでません?

まーそれはそれとして。
正直私に探索なんて心得は一切ありません。
つまりは正面突破の時間ですよー!

そろそろ筋疲労で震えている翼で空を滑空、あのジャリー・ロジャーまで一直線です!
え、環境が変わって近づけないようにと?まぁでしょうね。

ですので残っている魔力を障壁ごと引っぺがし、元に戻した水晶鋏に付与。
火の魔力で生えてくる草木はばっさばさと燃やして切り倒していきましょうか。
固い障害物とかのは水と風の魔力をこう、うまく応用し盛大にブッ壊していきましょうか。

魔力が空になったら?あとは限界超えて気力ふり絞って鋏で突き崩していきましょー。


アクア・ミストレスト
ふむ、では最後の一仕事といこうか
また、奴らの配下が来て再度倒すとなると労力の無駄だしな


アハ・イシュケに騎乗し旗まで駆けさせてもらうとしよう
こいつは空も飛べる、少々の荒い地形だろうが問題はない

迷路のように入り組んでるなら
スライム達に先行させ道を確認だ来た道の目印にも丁度いいだろう


鬼火の海賊旗…正にその海賊団の名の通りだな
七大海嘯…奴らの滅びも……遠くない未来かもな


ティエル・ティエリエル
WIZで判定
ミフェット(f09867)と海賊旗を燃やしにいくね!

一緒にどんどん迷宮を進んでいっちゃうぞ☆
分かれ道はうーんと迷ってからこっちだと「第六感」でさくっと決めちゃうぞ!

途中、ミフェットがいろいろ調べて見つけたスキマを通っていこうとするけど……むむむー、ボクでも通り抜けれないぞ!?
でも、ボクの壺だけならなんとかスキマに入りそう!
ミフェットならするりと通り抜けられそうだっていうからボクは【フェアリーランド】で壺の中に入って一緒に運んでもらうね♪

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です


ミフェット・マザーグース
ティエル(f01244)と一緒に迷路に突入!
いっしょしてくれる猟兵さんがいたらもちろんお手伝いお願いするね

WIZで判定
ミフェットは壊して通るのはニガテだから、生け垣のスキマを、人工物に作られたカゲをよーく見て、通り抜けられる場所を探すよ!
「情報収集・罠使い・視力・見切り・怪力・トンネル掘り」使えるものはぜんぶ使って、旗を目指してドンドン進もう!

UC【粘液の肉体】
見つけたスキマが小さかったら、ブラックタールのカラダを使って、細くなって通り抜けるよ
服は破れないように小さく折りたたんで、スキマを通ったら着直して
恥ずかしいからあんまり見ないでね?

海賊旗にたどりついたら「怪力」で引っこ抜いちゃうね!



 幾重にも蔦や生け垣が覆い尽くす庭園は、近づいてみると異様に広く感じた。
 なるほど、島民が憩いの場にするだけあって、それなりの規模があるらしい。
 全体で見れば四角く、中央に丸い花時計のような花壇を囲うスペースがあり、四隅にはそれぞれ、白い石で象られた猫のような像、噴水、小さなため池、木造のテラスという具合にそれぞれにモニュメントが用意されているようだ。
 そして庭園の周囲にはオリーブのような生け垣がみっしりと植えられている。
 無理をすれば、ひょっとしたら通り抜けられるのではないかと手を差し伸べてみるも、ざわざわと木の節から棘のような枝が生えてきて、無理矢理生け垣を突破しようと試みればたちまち絡めとられてしまいそうだ。
 『鬼火』の海賊旗の力によって、この庭園の植物はまるで別の生物のように侵入者を阻んでくる。
 ただ、なぜか順路は示してくれるようで、元の生け垣の切れ目と同じ四隅の入り口からは簡単に入れそうである。
 防衛機能で環境をある程度変化させているとはいえ、理不尽ではないと言う事なのだろうか。
「ふむ……これはおそらく、時間稼ぎだろうな」
 恐らくは、今いる猟兵の中ではもっともこの手の知識に造詣があるであろうアクア・ミストレストが、うごめく生け垣を目の当たりにしてメガネのブリッジに手をかける。
 特定の地形を利用し変化させて迷宮化する。庭園の中心に立つ旗への侵入を阻むためだろうが、それならば最初からもっと強固な守りにすればいい。
 わざわざ迷宮などと回りくどい真似をする必要などない。
 だが、そこがポイントだ。
「頑丈なモノでもいつかは破壊される。もしかしたら呆気なく壊せてしまうかもしれないが、労せず目的地に近づけるかもしれない糸口がそこに転がっていればどうだろう。
 これはそういう罠だ」
 作った者の根性が問われるものだが、素直に解こうとすればするほど庭園の中をぐるぐると彷徨うことになるかもしれない。
 とはいえ、こういう迷路という、わかりやすい謎を用意されると、解き明かしたくもなるのが、人情というものだ。
 ただし、それは性格にもよる。
「迷宮庭園か。壊しながら一直線に向かうのは……」
 ユリウス・リウィウスは、無精ひげの顎をざりざり撫でながら生け垣を前に黒剣を抜くが、そこでふと全く別の方向からの視線に気が付く。
「生け垣……壊しちゃうの?」
「島民の人たちが作った生垣だよ?」
 ミフェット・マザーグースとティエル・ティエリエルの、え、そんなことしちゃうの?
 というような、純真な色合いの視線。抗議するというわけではない。その手もやむなしだが、いきなりそれやるぅ? というような、どこか逆の期待を思わせる視線であった。
「うぐ……なあ、おい? そんな目で見てくれるなよ」
 幾多の死線を潜り抜けてきたユリウスといえど、純真な視線の前には思わず呻いてしまう。視線なだけに。
 仕方なく剣を納めると、一同にホッとした空気が流れる。
 それもつかの間のこと。
 みんなして生け垣迷路をさあどうしようとしているところ、黙りこくっていたニレッド・アウロンは、大きな目隠しの下から覗く口元から、ふうとため息をこぼす。
「まーでもですね。正直、私に探索なんて心得は一切ありません」
 やれやれと肩をすくめて見せる姿は、思考することを放棄したようですらあった。
 早くも脱落か。まあそれも仕方ない。と誰もが思う中、ニレッドは尚も続ける。
「つまりは──」
 ばさりとちょっとカラフルになった翼を広げて地を蹴り、飛び上がる。
 まさか!? と一同に共通の予想が展開され、果たしてそれは正解する。
 飛び上がって宙返りをうつと、滑空する形態に移り、ニレッドは三度雄叫びを上げる。
「ヒャッハァー! 正面突破の時間ですよー!」
 両の手に分割した水晶の大鋏を握りしめ、最短距離を目指しニレッドは加速する。
 まさか、巨大迷路の禁忌を早々に侵すとは!
 誰もが若干の呆れ顔をする中、やはりそうそう甘くはないようで、庭園内の植物がバキバキと急成長して枝葉を伸ばしてニレッドを全力で阻む。
 棘の立つ枝葉に押し返されて、それらはニレッドの手足に突き刺さる。
「いーだだだだ! ま、ま、負けねぇですわよー! こちとら、鋏あるんですからねー、鋏!」
 実を言えば、戦い詰めでもうそろそろ疲労困憊。されど、ここで折れては猟兵の名折れ。
 筋疲労で翼もぷるぷるしてきているし、攻撃に回せるだけの魔力リソースもほとんど残っていない。
 いや、無いならかき集めればいい。
 自身を守るべき魔力障壁。それを攻撃用に転用すればいい。どうせいつもは、行使する魔法の余剰魔力で張っているものだ。
 【トリニティ・エンハンス】によって火の魔力を付与された鋏を振るい、ニレッドは伸び来る植物を次々と薙ぎ払っていく。
 薄闇の空の中で、それはいっそう輝いてランドマークのようですらあった。
「おい、あれはいいのか?」
 さすがにごり押しは身も蓋もないんじゃないのか。と、ニレッドの奮闘を指さすユリウスだったが、
「かっこいい~!」
 わ~っ! っと目を輝かせる子供二人の姿に、ユリウスは納得のいかないような顔をするも、確かに無粋であるなとは、ニレッドの姿を見て思うのであった。
 とはいえ、とはいえ、それはそれ。
 子供はわからんなー。とぼりぼり頭を掻きつつ、ユリウスはユリウスで、自分の持ち味で庭園攻略に乗り出す。
「力押しは奴に任せておくとして……確か、旗はこっちの方向だな」
 鋭くとがった枝を向けてくる生け垣にどうどうと手をかざし、ユリウスはユーベルコードを発動させる。
 【ヴァンパイア・ミスト】によって、その身は着ている服ごと霧へと変じる。
 吸血鬼の血脈を持つダンピールだからこそ、その能力の一端を発揮する。
 霧と化したユリウスは、毛羽立つ生け垣も何のそのといった様子ですり抜けていく。
「あー、ずるーい!」
「大人はずるいんだよ。先に行ってるぞ」
 子供たちの抗議は今度こそ届かず、ユリウスは迷宮なんて知ったこっちゃないとばかり、ゆっくりとした足取りで……尤も、霧になっているので足は無いのだが、庭園の中心を目指す。
 ちなみに、ヴァンパイア・ミストは猛毒の霧なので、植物には多少悪影響を与えてしまうかもしれない。
 まぁ、少しくらいなら平気だろう。あとで謝っておくべきか?
 人知れず思い悩むユリウスであった。
 さて、残された3人はというと、真面目に迷路探索に挑んでいた。
 別に3人一緒に固まって移動する必要もないのだが、何となく選ぶ道が重なって一緒に行動しているのである。
「アクアは、迷路得意?」
 なんとなく手持無沙汰になって、周囲を囲む生け垣を観察しながらミフェットが質問をぶつける。
 親友のティエルと二人なら話題に事欠かないし、そもそもお互いのことは結構知っているので話さなくたっていい。
 しかし二人の少し先を行くアクアは、この依頼でなんとなく一緒に行動しているというだけで、あんまり知っている人ではない。
 乗り込んでいる波打つ水のお馬さん、アハ・イシュケとはどうやって知り合ったのか。さらに先を先行する【サモン・スライム】で呼び出したスライムはどういう奴なのか。
 知りたいことはいっぱいある。
「ふむ、迷路か……子供のころは、そういう絵本も読んだかな。直接書き込んでしまって、読み返した時に後悔したよ」
「絵本!? 本好きなの?」
「何を隠そう、うちは貸本屋だよ……まぁ、あんまり流行ってはいなんだが、品ぞろえは保証する」
 本好き同士で話題に花が咲くが、約一名はちょっぴり置いてけぼりでうつらうつらと船をこぎ始めていた。
「おっと、お友達がふらふらしているな。大丈夫か?」
「わっ、ティエル。もうおねむなの? いっぱい戦ったもんね……もうちょっとだけ、がんばろ!」
「んー……はっ! 海賊旗燃やしにいくよー!」
 大海賊との激しい戦いを終えて、ちょっと気が抜けたのか、人一倍運動量の多かったティエルは半分眠りながら飛んでいた。
 ミフェットにつっつかれてようやく自分を取り戻し、しゅばっとレイピアを掲げて気合を示すが、今はそれは必要でないぞ。
 そうして、ほんわかした様子で迷宮を攻略していくと、分かれ道に突き当たる。
 アクアの先行させていたスライムは、既にその先の探索をある程度行っていたようで、片方が行き止まりであったことを示すように、もう片方の進路をすすめてくる。
「こっちのようだな……ん、どうした?」
 スライムの示した道をアハ・イシュケと共に行こうとするアクアが、分かれ道で立ち止まったままのミフェットとティエルに気が付いて振り向く。
「こっち、たぶん、こっち!」
「ティエル、何かわかるの?」
「ううん、そんな気がするだけ☆」
 第六感おもむくままに、スライムの示した道とは逆方向を行こうと提案するティエルに、ミフェットは逡巡する。
 アクアはというと、興味ありげに少し考えて、改めてメガネをくいっとさせる。
「ここで別行動といかないか。おそらくだが、この手の罠は、順路通りに行く方が時間がかかるようにできている。だからアハ・イシュケを呼んだんだが……。
 つまり、ティエルの勘もまた、きっと外れじゃない」
 面倒くさがりという割に、真面目な選択肢を選んでしまうのは、アクアがその知識故に解き明かしたくなったからからだろう。
 本の中身をすべて浚いたくなるのと似ている。
「じゃあ、競争だね」
「ボクが、子供に後れを取るとでも?」
 お互いにニヤリと笑い、それぞれに別々の道をとることにした。
 とはいいつつ、ミフェットとティエルが戻ってくる場合でも苦労しないよう、アクアは目印にスライムを置いていくのだった。
 そうして、ミフェットとティエルがたどり着いたのは、庭園の四隅の一角のようだった。
 石を削ったレンガ積みで壁と柱が立っており、それらにはシダのような植物が這い、中心には猫のような白い彫像が台座の上に座り込んでいた。
 見るからに行き止まりで、ほかに道など繋がっていないようだが、ティエルが直感で選んだからには、何かしらあるのかもしれない。
 とりあえず二人して猫の彫像に挨拶をしてから、その周囲をあれこれと調べて回る。
「んーむむむ……この猫さん、すごくむっつりしてる」
「ティエル、ティエル! こっち!」
 猫の彫像とにらめっこしているティエルをよそに、彫像だけでなくその台座の影や生け垣の隙間など、髪の毛に擬態した触手も伸ばしてあれこれ探っていたミフェットが、目立たない陰になる部分を指し示す。
 見れば、猫ならやっと通れそうな石畳を削ったような窪みがずっと奥まで伸びているようだった。
 水路でも引こうとしたのか、ずいぶん古いようだ。
 フェアリーのティエルなら通れるだろうか。さっそく試してみようとするが、生け垣から伸びる棘が邪魔して、思ったよりも狭くなってしまう。
「むむむー! ボクでも通れないぞ……いや、まてよ」
 思わずレイピアを抜くティエルをとりあえず引き留める。
「もっと小さくなれば……」
「そっか! ボクの壺なら通れるかも。ボクが壺に入って、ミフェットが……」
 名案を思い付いたらしいティエルは、途中まで言いかけて珍しく言いよどむ。
「……別の道、さがそっか♪」
「? なんで?」
 人が大好きだから、ブラックタールながら人の形をとっているミフェットのことを思い出したティエルは、咄嗟に顔を逸らす。
 それに思い至るまでちょっと時間のかかったミフェットは、少し遅れてぽんと手を叩く。
「ミフェットは大丈夫だよ。でも、先に壺の中で待っててね」
 いっつも先に突っ走って、その背なかを見るばかりだと思っていたけれど。
 お互いを見ていないわけではない。
 にへっと緩みそうになる口元を親友に見られたくなくて、ティエルに【フェアリーランド】の中に入ることをすすめる。
 そうして、ちょっと迷った末に自身の妖精の壺に姿を消すティエルを見送ると、ミフェットはお気に入りの服を脱いで丁寧にたたむと、彼女の本性である【粘液の肉体】へと変じ、その輪郭を液状化させる。
 液化したその体をくねらせて、ティエルの壺と服をとぷんと取り込んで、作りかけの水路のような道を行く。
「ぬがぁっ! でぇえい!」
 一方、空中では、ニレッドが植物相手に奮闘していた。
 おおよそ淑女らしからぬ掛け声なのは、もはやユーベルコードもうまく機能しないほどの疲労困憊であるからであろう。
 まったくの徒労に見えたニレッドの行動だが、薄暗い中で一人輝いて空中戦を演じる様は、位置を把握する上で、他の猟兵たちにとってはとても役立っていた。
 当人のあずかり知らぬところでの活躍は、当然まったく意図しないものではあった。
 魔力も体力もいっぱいいっぱいの状況で頼りになるのは、気力である。
 気勢を振り絞るかの如く大鋏を振り回し、伸び来る植物を切り払っていると、唐突に目の前が晴れた。
 ついに植物の壁を突き破り、ニレッドは庭園の中央に空中から辿り着いたのだ。
 しかしもう飛ぶのも億劫になっていたため、その体はぼとっと車田落ちよろしく庭園の中央広場に落っこちてしまう。
「おい、頭から落ちたが、大丈夫か?」
 既に辿り着いていたユリウスが声をかけると、ニレッドはむくりと状態を起こす。
「大丈夫です。眼帯がクッションになっているので」
 ほんとかよ。というくらいにはボロボロであるが、おそらく頸椎の衝撃は目隠しではどうにもならない筈である。
 当の本人はケロッとしているものの、クッションになったという目隠しは、激しい戦いでほどけかけていた。
「あぶなーい!」
 そこへ駆けつけたティエルが、ひしっとくっつくようにしてほどけた目隠しを支える。
「あわわわわ、ありがとうごぜぇます。これが無いと、私……恥ずかしくて」
 支えられてようやく気づいたらしく、慌てて眼帯のひもを結び直し、事なきを得る。
 そうして集まった猟兵たちの中心には、『鬼火』の禍々しい海賊旗が立っていた。
「ふむ、ろくでもない気配があるな。早々に抜いてしまおう。む?」
 一番乗りと思しきユリウスが手をかけるが、一向に抜けない。
「すまんが、手を貸せ」
 一番手近なミフェットを呼び寄せて、一緒に抜くことにする。
 起き抜けのニレッドに、フェアリーのティエルは、失礼な話、あんまり力の足しにならないように見えたらしい。
 ミフェットはこう見えて怪力である。
 などと考える間もなく、ミフェットが手を貸すと、あっという間に旗は抜けてしまった。
 苦笑するミフェットの様子からすると、どうやら花を持たせてくれたらしい。
 そういうことをするあたり、ユリウスはやはり年長者なのだろう。
「さて、抜いてしまったらもうこいつに用はないな。誰か、火の魔法は?」
 見渡すユリウスに、一同は首を横に振る。
 さっきまで元気に火を放っていたニレッドも、今は電池切れである。
 そこへ、
「ふー……やっぱりボクが最後か。まったく、真面目になんてやるもんじゃないな……なんだ、もう抜いてしまったのかい?」
 迷路をまともな方法で解いたアクアが、水の馬アハ・イシュケに乗ったままゆっくりとやってきた。
 結局はアクアの言葉通り、普通に解き明かした方が時間がかかったようだが、当人の顔は満足げであった。
 なんだかんだで迷路を堪能したようである。
 そして、重役出勤の彼女を猟兵の面々が見つめる。
 その視線は、次には海賊旗の方へ向かう。それでアクアも察する。
「なんだ、セイレーンであるボクに火を使えっていうのか。本屋は火気厳禁だっていうのにまったくもう」
 などとお小言を垂れつつも、魔法全般は一通り収めているらしいアクアは、簡単な術式を組み上げると、『鬼火』の海賊旗の端っこにポッと火を灯す。
 灯された炎はあっという間に旗を覆い、ものの十数秒でおそろしいマークの刻まれたそれを消し炭と化してしまった。
 それに連なって持ち手も崩れていくと、騒がしく成長変形した庭園も元の姿に戻っていった。
 薄闇と静けさが周囲に戻ると、見上げた先には緩やかにゆらめくオーロラが見えた。
「あー……疲れたぁ……」
 すべてが終わった。と同時に、ニレッドは服が汚れるのも構わず、庭園に全身を投げ出し、豪快に寝っ転がる。
「そうだね。もう暗いから、眠たいよね!」
「ティエル、船が着くまで少し寝る?」
 ひらひらと空中でぐいーっと全身で伸びをするティエルを、唐突に寝こけておっこちやしないかとミフェットが構えつつ追いかける。
「鬼火の海賊旗、まさにその名の通りになったな。七大海嘯、奴らの滅びも……そう遠くないのかもな……」
 燃え落ちて炭になった海賊旗のメガリスの名残を見下ろし、アクアは何か思うところがあるのか嘆息を交え、空の極光に目をやる。
 書籍の中ではこの光景はなかなか見ることがない。
 たまにはこういうのもいいか。
「やはりなじみ深い様式が使われているな。
 しかし、世界が変わっても陽光は届かないのか……」
 ユリウスは、土産話にでもと庭園を散策しながら、懐かしむように目を細めていた。
 ダークセイヴァーとは違う空。しかし、同じような景色に見えてならないのは、馴染みがあるのが、この暗さというのもあるのだろう。
 どうやら少しばかりほろ苦い思い出になりそうだ。
 そうして猟兵たちは、鉄甲船に戻るまでのわずかな時間を、思い思いに過ごすのだった。
 やがて、猟兵たちが島を去る頃、鉄甲船を見送る村の代表たるミレナリィドールは、杖をついて手を振るのであった。
 遠く懐かしい、自分の作成者が託した言葉。
 或は、深い絶望の淵に追いやられる時が来たら、世闇を裂くように希望の使者が現れるという。
 その言葉を与えた人形師へ……。
 ……いや、勇気を賭して戦った猟兵たちへと、思いを馳せながら。
 年老いた少女は、また『暗い虹の島』と共に歩み始める。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年09月21日


挿絵イラスト