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死人戦線(作者 黒塚婁
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●チームD
「おい、誰かさっさといって死んでこい」
 ボスのあんまりといえばあんまりな一言に、思わず笑う。
「そんなんで目眩ましになる? ていうかボスちゃんと拾いに来てくれる?」
 一番若いブルーノが鼻白んで問う。
 もし特攻させられるとしたら、彼になるだろうから。
「戻って来られたらな」
「そんなの当てになんない! 俺やだかんね!」
 ぎゃーっとブルーノは嫌がった。こう、皆の命が掛かっているのに、妙に言葉が軽い男である。
「あたしが行くよ」
「本気か、ドリス」
 見かねて手を上げたドリスに、思わず問うていた。彼女は額に走った痛々しい縫い目に手を置いて、溜息を零す。
「そりゃ、離脱までの殿をぼっちゃんに任せるのは不安だけどさ――トチっても台無しじゃないか。あたしたちは何度死んでもやり直せるけど、死に甲斐のない戦いは嫌だよ」
 朗らかに笑って見せる。確かに、幾度も蘇るにしたって、希望の或る死に方がいい。
 大切なものを守るために、こんな躰になって生きているのだから。
 ボスの声が端末から響く。そろそろ動き出さねばならぬらしい。手入れの済んだ戦車に乗り込みながら、とても真摯な声音で告げる。
「――援護する」
 愛銃を片手で抱えたドリスは惘れたように俺を睨んでから、不敵に笑った。
「当然さね、サイモン」

●救援の手を
 廃病院が見える。
 否――薄汚く半壊しているが、器用に修復されて、電気の走るフェンスなどで覆われている。この病院は無数のオブリビオンによって包囲されていた。
「貴様らからすれば、朽ちた病院に見えるだろうが、これは立派な拠点(ベース)だ。中には少なくない人間が暮らしているのである」
 ヴィリ・グロリオサ(残影・f24472)は解りやすいように映像化して、拠点の窮地を見せた。あまり口数の多い男ではないため、説明は簡潔にしたいらしい。
「この拠点にはデッドマン四人の防衛チームがいる。生者の戦士もいるが――基本、彼らが中心となってこの拠点を守ってきたのだ」
 死を恐れぬ戦士であれば、数が少なかろうが、身を犠牲にして拠点を守れる。
 実際、そうして幾度か難を逃れ、この拠点を維持してきたのだ。
 だが、今回の襲撃はそれでは済まぬ。包囲が厳しい事もあるが、それ以上に、一体の強力なオブリビオンが病院の天井より侵入し、奇襲を仕掛けて来るのだ。
 それと知らず、正面からの防衛に力をいれれば、脱出を計ろうとする弱者を守りきれず、拠点は崩壊することとなるだろう――。
「幸いなのは、予知が繋がった事であろうな……これより、貴様らを直接、襲撃地点に送り込む。奇襲を阻止し、防衛チームに合流し、残るオブリビオンを片付けろ」
 説明は以上である――とヴィリは口を閉ざした。
 それから、やや考えるようにして、言葉を付け足す。
「これも人類の存続をかけた戦いのひとつである――そう胸に刻み、向かうのだ」





第3章 ボス戦 『『大炎嬢』バーニング・ナンシー』

POW ●心頭焼却
レベル×1tまでの対象の【首・腕・足を狙い、燃える右手で何れか 】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
SPD ●斬捨御炎
【業火を纏った剣による灼熱の斬撃 】が命中した対象を切断する。
WIZ ●木端炎陣
【全方位に放った灼熱の炎 】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【が広範囲で炎上し続け】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はピオネルスカヤ・リャザノフです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●燃える女
 ――何もかもが憎い。
 煩わしい。
 この身を焦がす炎が、熱くて、苦しくて、でも死ねないのだ。
 奪え、という声が頭に響いて煩い。
 それがいつか、誰かに指示されたのか、嗾されたのか、自分の妄想だったのかすら、もう記憶にない。
 奪って奪い尽くせば、いずれこの熱を鎮められる――儚い願い。
 いずれ、略奪の果てに、願いが叶う。
 胸が昂ぶると血が更に熱を増して、身体を苛む――苦しい、苦しい。
 だから力を振るう。何処までも戦い奪い尽くしてやろう。
 この世に『終わりが無い』ことなど、ないのだから。

●枯れ地の決闘
 猟兵達は圧倒的な破壊を以て、ロスト・レイダーズの壁を突破する。防衛班は無事に撤退し、残るは指揮官だけだ。
 略奪を指揮するものは、枯れ果てた荒れ地の中央に、ただ立っていた。
 ある一定の範囲から、土は乾ききり、ひび割れている。だが、そのオブリビオンの姿を見れば、原因は明らかであった。
「ハッ、あの略奪ジャンキーどもじゃ相手にならないか」
 笑い、迎え撃つ女は、顔の半分が燃えていた。
 身体の所々から噴き出す炎は周囲の熱をあげ、空気は揺らめいている。オブリビオン――『大炎嬢』バーニング・ナンシーは、絶えず熱を放ち続けていた。
 然し不敵な笑みを浮かべていた女は、急にぐうと呻くと、燃える手で己の顔を覆う。
「ああ、熱い……熱い――なあ、お前達、この血の熱を下げる方法をしらないか――」
 本当に苦しそうに、女は尋ねてくるが――。
 答えを口にしようが、すまいが同じ。
 苦痛によるものか、その身から放たれる炎が弱く収まれば、元の強気な女へと豹変する。
「できないなら死ね!」
 なれば、こちらの答えも同じだ。

 ――生か死か。シンプルな問答を。

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【プレイング受付期間】
9月28日(月)8:31~10月1日(木)中
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囁石灯・銀刃郎
あー、デッドマンの同類?まなんでも良いけど……
そんなに熱を下げたいなら、殺してやるわよ!

片手で持った散弾銃で範囲攻撃。
相手の動きを観察(情報収集)、戦闘知識から動きを見切り、掴み攻撃や斬りかかりを回避。もう片方の手に持った拳銃と散弾銃を合せて零距離射撃。

……!
炎の剣が避けきれない。と判断し、即座に銃を手放し、早業。
……しぃいいいい!
『刳風抜刀』蒼気を纏わせたカタナでオーラ防御。
カタナで剣を受け止め、カタナから覇気の斬撃を吹き飛ばし、剣を弾く。
カタナは……後で鍛ち直しかな、これは……

返すカタナで、大炎嬢を袈裟切りにし続けて二撃、三撃と可能な限り、斬り返す。死ぬまで。


鹿忍・由紀
随分暑苦しそうだけどそれってやっぱり暑いのかな
生きてる限り辛いんなら、終わりにするのも手だと思わない?
肯定されるとは微塵も思ってない調子で話す
答えを口にしようがすまいがこちらも同じで
終わりにする事には変わりない

近付くと暑そうだなぁなんて
面倒そうに目を細めて眺める
相手の様子を観察しつつ間合いを計算して
出来るだけ早く的確に、切り裂いて離れる
攻撃を受けても何事もないよう耐えて
…あっつ、自分が燃えるなんて俺には耐えられないね
無表情のまま悪態をつく

暑いのから解放されたいんならさっさと大人しくやられてくれれば良いのに
暴れなければ苦しいのだって一瞬だよ、きっと

それでも生きたい気持ちは分からないでもないけれど


●熱源が求むるは
 『大炎嬢』バーニング・ナンシーを見やる囁石灯・銀刃郎の瞳は冷たい。当然だろう、オブリビオンへの憐憫など、彼女にはない。
 ましてや、彼女はこの襲撃の首謀者であり、殺気に満ちている。武器を捨てて手を取り合うなんて展開にはなり得ない。
「あー、デッドマンの同類? ま、なんでも良いけど……そんなに熱を下げたいなら、殺してやるわよ!」
 威勢良く挑発しつつ、無防備に斬りかかるほど、銀刃郎も直情径行ではない。
 一歩近づくだけで膚に伝わる熱気に、銀刃郎はじっと相手を見つめて距離を測る。無論、際立った苦痛を感じるわけではない。だが『特殊な肉体を持つ』己に、そんな感覚を与えてくるのだ。油断はすまい。
「熱い――ああ、この熱を……」
 向けられた殺気に反応して、ナンシーの纏う炎が、一層強く揺らめいた。
 へえ、と青き双眸を細めたのは、鹿忍・由紀であった。
「随分暑苦しそうだけどそれってやっぱり暑いのかな」
 さらりと話しかけながら、真っ直ぐと進み――ある程度の距離で、歩みは止めて、相手を観察する。白い貌は、相手に興味をもっていない。
「生きてる限り辛いんなら、終わりにするのも手だと思わない?」
 投げやりな問いに、いらえは求めぬ。
 応であれ、否であれ、なすべきことは変わらない――終わりを。ただ刻みつける。
「近づくと暑そうだな」
 誰に聴かせるためでもなく、由紀は呟く。面倒くさそうに細めた瞳を、銀刃郎は振り返らなかったが、言葉だけで同意した。
「そうね」
 言うなり、くるりと肩越しに回した銃身が、敵を捉える。すかさず、銀刃郎は撃った。
 撃ちながら、銀刃郎は横に跳んだ――相手の様子を窺うためだ。驚くべきことに、ナンシーは特別回避しようとも、銃弾を払いのけようともしなかった。連続する破裂音と同じ数だけ、女の体は穿たれた。
 散弾によって飛び散る赤は、彼女の前で艶やかに花咲く。
 途端、水蒸気が散ったような熱が迸り、赤靄となり、炎になる。
 熱の尾が揺らめく。仰け反っていた女の狂った瞳が、銀刃郎を見た。刹那、十分な間合いを、ナンシーは一足で詰めると、絡めた黒鉄の剣がしなやかに胴を払ってきた。
 銀刃郎は飛び退く。剣の間合いは、測定済みだ。
 刀身は彼女に触れず、銀刃郎は地に転がりながらナンシーの脇へと立て続けに銃撃しようとするや、違和感を両腕に覚えた。
 炎が、刀身を伸ばしている。直接斬られるのに比べれば、さしたる傷ではない――だが、変幻自在な炎の斬撃は、躱しきれぬ。
「……!」
「ははははは!」
 ナンシーは狂ったような笑いをあげて、業火を纏った剣による灼熱の斬撃を振り下ろす。
 判断するや、銀刃郎は両手の銃を手放し、カタナを抜いた。
 蒼気を纏わせたカタナが、呼応し、青く輝いた。高い音、鈍い感触、銀刃郎の腕すら痺れるような怪力。じりりと痛む、火傷。
「……しぃいいいい!」
 口から溢れるは裂帛の気合い。銀刃郎は膝立ちから全身を跳ねるように振り抜いて、一閃で打ち返す。無数の飛ぶ斬撃がナンシーを斬り裂きながら、吹き飛ばす。
 かなり乱暴な反撃をした――戦闘継続は出来そうだが、少し歪んだカタナへ視線を落とし、彼女は溜息を吐く。
「カタナは……後で鍛ち直しかな、これは……」
 だが、彼女の殺気は未だ尽きぬ。
 ナンシーは数メートルの距離を引き離され、俯きながら「クククッ」と肩を震わせていた。斬撃による創から新たな炎を吹き上げて、内と外、苛む熱に狂気の笑みを湛える。
 死角から、鋭い斬撃が走った。風を斬る音が先に走り、ぱくりと開く創が後から追いつく。静かに身を沈めた姿勢からダガーを見舞った由紀は、吹き上げる炎に視線を動かす。
 本当に、血が燃えているのだ。
「……あっつ、自分が燃えるなんて俺には耐えられないね」
 無表情の儘、悪態で注意を引く。
 ナンシーが剣の応報と共に振り返った時には、彼は既に距離を取っている。先程見極めた、炎も及ばぬ距離まで一足で駆ると、反動を重ねて前に跳ぶ。
 相手の剣が完全に振り下ろされた虚を突くように、距離を詰める。
 その度、鞴で高められたような熱気が膚を舐める。最早、近づくだけで焦げるようだ。
「暑いのから解放されたいんならさっさと大人しくやられてくれれば良いのに」
 続ける悪態は、忌々しそうに。されど、由紀の声音はさらりと風のように通り抜ける。
「絶ち切れ」
 接触の瞬間、更に加速する。頸を狙って、彼は身体を捻る。正面からねじ込むように差し込めば、腕に炎が絡んだ。
 乱暴な反撃を、腹に感じる。由紀の思考よりも早く、身体が動く。相手と距離をとるためにもう一刃、肩へと垂直に下ろして腕を這いながら、後ろへと退く。
 熱が、いつまでも付いてくる――不快に視線を落とせば、上着に炎が移っている。無造作に叩いて消しながら、由紀は再度、敵を見る。何の感情も持たぬような虚ろな瞳で。
「暴れなければ苦しいのだって一瞬だよ、きっと」
「ふははははっ」
 女は笑う。笑っている。きっと、血がそうさせるのだ。狂気の表情と、躍動する身体と、燃える血。生きた儘、火をつけられたものが、転がって火を消そうとするように。戦わざるを得ないのだ。
 それが、何よりも。渇望の証に見えて、そっと息を吐く。
 ――楽になれ、なんて。どの口が言うのかなとは思うけど。裡で皮肉をひとつ吐き出し。身を僅かに屈めた由紀が仕掛けるより先に、銀刃郎が青い刀身を掲げて斬り込んでいた。
 殺しに慣れた身体は、すかさずナンシーの隙を見出す。全身に魔力を回して速度を上げながら、由紀も続く。
 生きても炎。傷付いても炎。死んでもいずれ、骸の海より、この苦痛と共に蘇る――。
(「それでも生きたい気持ちは分からないでもないけれど」)
 幽かと消した気配から、刃を振るう。由紀の鋭利な刃運びに、躊躇いは一切なかった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵