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祈りが憎悪になった理由

#ダークセイヴァー #人類砦 #闇の救済者

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●奇跡を"魔女の仕業"と断じられた時代
 ――かつて動乱の時代、奇跡を呼び起こした娘がいた。
 動乱を終わらせ、人々に救いを齎した聖女として人々から崇められていた娘。
 しかしそれが終わって間もなくして、娘は処刑台に上がることとなる。
 長きに渡る戦争の爪痕……神に仕える者たちですら最早疑念と狂信に支配されてしまっていた故に、人の身では起こせぬ程の奇跡を引き起こした娘は"魔女"としてその命を散らす運命を背負わされてしまったのだ。
 「聖女様」と親しげに声をかけていた者たちですらその疑念に飲み込まれ。
 娘を尚も慕い続け庇おうとした者たちは皆殺され。
 魔女を殺せと罵声が飛ぶ中で命を散らすその瞬間は、絶望と狂気に陥るには十分すぎた。

 ――ああ、ああ。
 最早何という"喜劇"だろう?

 ならば、私はなってやろうじゃないか。

 世界を呪う、本物の……!!

●そして最後の"奇跡"は成された
「……そうして彼女は魔女になった。
 骸の海より帰還したオブリビオンという魔女に――そして今、ダークセイヴァーのとある人類砦を襲おうとしています」

 淡々と語るグリモア猟兵、終夜・日明(終わりの夜明けの先導者・f28722)。
 狙われている人類砦はかつて吸血鬼の支配から辛くも逃げ延びた人々によって作られたばかりの集落だそうで、大人手が非常に少ないという。
 予知したのは食糧が底を尽きかけており、確保に向かおうとした大人たちがオブリビオンに襲撃され、そのまま流れるように……という酷く惨たらしい光景のようだ。

「ここはまだできて間もなく、設備もロクに整っていません。この状態で襲撃を受ければ間違いなく壊滅します。
 かの聖女の境遇には同情しますが、最早狂気に呑まれ果て人々を無差別に襲う魔女となった以上、討伐するより他にないでしょう」

 魔女には異端の神の祝福を受けた異形共が彼女の配下としてついて回っており、尖兵としてそいつらがけしかけられているという。
 魔女として処刑されたかつての聖女に神の祝福を受けた異形が侍るというのは何とも皮肉なものだ。
 人類砦を襲うオブリビオンの全滅、これが今回の猟兵たちの任務となる。

「僕が迎えないのが心苦しいですが……状況は一刻を争います。一匹たりとて集落に近づけてはなりません、近づけたら最後、人々は成す術もなく皆殺されてしまうでしょう。
 どうか彼らの"日常"を護るべく、奴らを討伐してください。お願いします」

 戦いに赴く猟兵たちに、日明は深々と頭を下げた。


御巫咲絢
 こんにちはこんばんはあるいはおはようございます、初めましての方は初めまして新米MSの御巫咲絢(みかなぎさーや)です。
 当シナリオをご閲覧頂きありがとうございます!初めて御巫のシナリオに参加される方はお手数ですがMSページをご覧頂いた上で下記にお目通しをよろしくお願いします。

 今回はダークセイヴァーでシナリオを一本お届けします。
 まだできて間もない小さな人類砦を護るべく猟兵の皆様の力をお貸しくださいませ。
 以下各章概要になります。

●概要
 第一章『集団戦』
 『神の祝福を受けしモノ共』との戦闘です。
 異端の神に祝福された異形の群れが襲いかかってきますのでぶっ飛ばしてください。

 第二章『ボス戦』
 『堕ちた聖女』との戦闘です。
 魔女と断じられ処刑され、世界を呪う為に蘇ったかつての聖女を骸の海に還してください。

 第三章『日常』
 人類砦の方々が今度こそ食糧補給の為の狩りに出ます。
 よかったら手伝ってあげてください。狩りが終わったらみんなでお食事タイムが待っています。

●プレイング受付について
 9/19(土)8:31から開始致します。
 それ以前に送られたプレイングは全て不採用とさせて頂きますのであしからずご了承くださいませ。
 お気持ちが変わらなければ開始日以降にご再送ください。採用させて頂きます。

 それでは、皆様の素敵なプレイングをお待ち致しております!
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第1章 集団戦 『神の祝福を受けしモノ共』

POW   :    肉侵転移
【祈り念じると、分裂して増殖した自身】と共に、同じ世界にいる任意の味方の元に出現(テレポート)する。
SPD   :    喰らい受け継ぐ信仰
戦闘中に食べた【仲間の死骸】の量と質に応じて【肉体と信仰心が強化再生】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    哀れなる者を神に捧げよ
【殺意の凝視】【触手の群れ】【神に捧げる讃美歌】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 できて間もない人類砦。全員一同に避難できる程度の大きさのものもなく、各々が家に閉じこもり震えている。
 ある家の女性は、幼い子供を護るように抱き抱えながら恐る恐る窓の外を見る。
 この世のモノとは思えぬ、それこそ吸血鬼以上に狂った異形とも見える謎の影がこちらにぞろぞろと動くその光景……
 それを見て、思わず叫びそうになるのを唇を食い縛って耐えた。

「おかあさん……これからどうなるの……?」

 母親の震えを感じ取った幼い子どもが不安そうに見上げてくる。

「大丈夫よ、何があってもお母さんが護ってあげるからね」

 実際にはそんな力などあるワケがないが、子供を心配させまいと強気に振る舞う。
 しかし、破滅の足音は着実に近づいていた。
 今ここで止めなければ確実にこの人類砦は滅びるだろう……猟兵たちが人類砦を護るべく馳せ参じたのは、まさにそんな瀬戸際であった。

 最早一刻の猶予もない――罪なき人々を護る為、その力をいざ振るえ!
鳳凰院・ひりょ
アドリブ・連携大歓迎
WIZ
悲劇を引き起こす前になんとかしないとけないですね。
…俺も幼い頃に住んでいた所では、呪われた子として周りから見られていた。
それは猟兵になる前の話だ。
得体のしれぬ力で人の傷を癒す、悪魔憑きだ…と。
だから、彼女の境遇も思う事がないわけじゃないけど、だからと言って…ね。

周囲の無機物を媒介に固有結界・黄昏の間を発動

地の疑似精霊→【殺意の凝視】の視線・【触手の群れ】の触手の直撃を回避する岩の壁を生成

風の疑似精霊→ひりょの周囲に風の防護膜を形成、敵の【神に捧げる讃美歌】の歌声を自分の耳まで届かせないように風の膜で防音対策

陽の疑似精霊→破魔の力を付与した浄化の炎で敵を焼き尽くす


レイ・アイオライト
これはまた、異形の軍勢ね。
食料の枯渇した人類砦、戦う力もない人々、そんな状況でオブリビオンに襲われたらひとたまりもないわ。
本来なら奇襲側なんだけど、今回は前衛で頑張りましょうか。

人類砦内への侵攻を食い止めるために、周辺にある木々や岩の合間を伝うように『雷竜真銀鋼糸』を張り巡らせて雷撃の結界を構築しておきましょう。(罠使い・早業)

UC発動、『魔刀・篠突ク雨』の力を活性化させて接近、『見切り・情報収集』で敵の攻撃を回避、『暗殺・蹂躙・戦闘知識』で流れるように異形の触手諸共斬り裂いて駆け抜けるわ。

祝福なんて聞いて呆れるわよ。悪魔にでも魂売ってるんじゃないの?
(アドリブ等歓迎です)



●防衛戦線を形成せよ
「……これはまた、異形の軍勢ね」
「普通の人が見たら発狂してしまいそうですね……」

 レイ・アイオライト(潜影の暗殺者・f12771)と鳳凰院・ひりょ(人間の聖者・f27864)の眼前に広がるは、人――否、人の形をした抜け殻から飛び出している異形の大軍。
 異端の神の祝福を受けたモノの群れ……ひりょの言う通り、実際の人間がまともに目にしてしまったらその次点で精神の均衡が崩れかねない程のグロテスクさだ。
 対して、そのような異形が大量に迫りつつある人類砦は非常に弱々しい有様。
 各々の暮らす小さな小屋を建てるので精一杯と言わんばかりの設備、柵も周りの木々の合間に申し訳程度に綱で結びあげた木の棒を組み立てただけの間に合わせ同然……大人手が少ないというのが如何に影響しているかがよくわかる。

「食料の枯渇した人類砦、戦う力もない人々……そんな状況でオブリビオンに襲われたらひとたまりもないわ」
「悲劇を引き起こす前に何とかしないといけないですね」
「そうね……本来なら奇襲側なんだけど、今回は前衛で頑張りましょうか」

 戦況的にも奇襲を仕掛ける意味合いは薄く、逆にそこを突かれて攻め入られるということになっては本末転倒である。
 二人は一定の防衛ラインを定め、そこを基準に遊撃と迎撃で担当を分けることにした。
 もちろん先陣・遊撃はレイ、迎撃・援護はひりょの担当である。
 同じ飛空戦艦の所属もあり互いの戦闘パターンもある程度は把握している為確認を取らずとも自然にそうなることが決まってもいたのだが。
 さらに万一ラインを突破された場合にも備え、レイは『雷竜真銀鋼糸』を人類砦の周囲の木々や岩の合間を縫うように張り巡らせる。まるで網のように張り巡らされたそれに電撃を流し込み結界を生成。
 これでこちらの準備は整った。
 各々規定の位置につき、異形共を迎え撃つ――もちろん、先手を取って仕掛けるのは猟兵側である。

「じゃあひりょ、援護よろしくね」
「ええ、レイさん、お気をつけて」

 レイは鞘から刀を抜く。
 姿を現す『魔刀・篠突ク雨』、その身を照らさんとする月の光すらも飲み込む程の濃い影を刀身に纏うそれを構え、次いでユーベルコードを起動する。

「"雷影活性"」

【励起・雷火閃影(シャドウ・ヴォルト)】。
 レイの操る影、闇、雷の力を保有するあらゆる装備を強化するユーベルコードにより、『篠突ク雨』の刀身を鎧う影が肥大化する。
 最早大剣とすら見紛う程の肥大化した影を纏ったそれを握りしめ、レイは迷いなく異形の大軍へと勢いよく斬り込んだ。
 暗殺者として鍛え上げた剣術により見舞われるその最初の一閃は先制攻撃と呼ぶに相応しい、見切りすらさせぬ一撃……瞬く間に人の形をした殻と異形本体が分離し、血飛沫が上がる。
 死に際の一撃として触手を伸ばす異形であるが、生命力が消耗し鈍りきったその一手はレイにはまるで止まっているようにすら思える程遅く、それが地面を捉える頃にはまた次の異形が禍々しき影の刀剣によってその首を跳ね飛ばされていた。
 噴き上がる鮮血、より濃くなる影――刀身にこびりついた血の水分を吸い取り、『篠突ク雨』はより切れ味を増し、舞い流れるかのように次々と異形はレイの放つ一閃一閃によって骸と化して横たわっていく。
 地面にその血を水たまりのように溢れさせて死するそれらを目視した異形は触手を伸ばす――レイではなく、その屍に。
 そしてその死体を手にすると、自らの口に勢いよく放り込んだ。
 噛み締めては飲み込む音が響く度に、異形の体が著しく変化し肥大する。
 まるで融合するかのように大凡異形2匹合わせたであろう大きさへと変じた異形は、より俊敏に動く触手を以て眼前の敵を陵辱せんとレイへ突撃してきた。

「……祝福なんて聞いて呆れるわよ。悪魔にでも魂売ってるんじゃないの?」

 しかし、心底呆れ果てたように溜息をついたレイの一閃によりあっさりと細切りに。
 刹那、黒い影刀が異形の殻を突き刺し、そこを起点として真っ二つに斬り伏せる。
 そうしてまた死体ができあがれば、異形はそれを取り込み強化しようと群がっていく。
 流石にレイ一人ではそれを防ぎ切ることまでをやりきるにはあまりにも数が多すぎる。
 精々共食いが行われぬよう共食いに向かう異形共を切り伏せるだけで精一杯だというその時、後方から放たれた炎が死体共々異形共を跡形もなく焼き尽くした。
 ひりょのユーベルコード、【固有結界・黄昏の間】により無機物を媒介に具現した火属性の疑似精霊の一撃によるものだ。
 本人は相手の攻撃を護る為に地と風の疑似精霊により岩の障壁と風の防音膜を生成しており肉眼で状況把握はできていないが、疑似精霊たちは各々の意思で彼の命に従い敵を正確に攻撃しレイを援護する。
 自身の五感で確認をせずとも精霊たちを従え完璧な援護ができるのはビーストマスターである故か。

「(……俺も。幼い頃に住んでいたところでは、呪われた子として周りから見られていた)」

 後方からの迎撃及び援護を続けながら、ひりょは此度の元凶であるオブリビオンへと想いを馳せる。
 かつて、猟兵になる以前の彼は聖者としての力を持つ故に忌み嫌われていた。

 "あいつは人間じゃない!得体の知れぬ力で人の傷を癒す、悪魔憑きだ!”
 "悪魔め、さっさとここから出ていけ!"
 
 ――そう、心無い言葉と共に石を投げられたことは何度あっただろう?
 かつての聖女と同じ時代に生きていれば、間違いなく自身も魔として処刑台に上がっていてもおかしくはなかったかもしれない。
 故に、骸の海より世界を呪う為に蘇った堕ちた聖女のことはどうしても他人事とは思えなかった。

「(――だからと言って……ね)」

 それはそれ、これはこれだ。
 例えどのような事情があったにせよ、骸の海より還り人の敵となった以上は容赦はできない。
 それがこのような力がなく、罪もない無関係の人間を巻き込むのであれば尚更だ。
 ひりょのその意思に応じたのか、疑似精霊たちはその力をより発揮してレイと共に異形の群れを圧倒していく。
 形成された防衛ラインが破られる気配は一切ない。
 人類砦が最悪の事態を迎えることは、ひとまずなくなったと見ても良いだろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

神樹・鐵火
アドリブ歓迎


見る限り、冒涜的な神に祝福された様だな
直視すると正気を持っていかれる類のな

【第六感・見切り】を駆使して攻撃を回避
その大口の中の舌、利用させてもらおうか
攻撃に合わせて顎を掴む(【武器受け】)
多少の怪我は【劇痛耐性】で耐える
【怪力・部位破壊】で顎を一気にこじ開け関節を破壊し
むき出しになった舌を掴み、UC【蛮神乱舞】だ
仲間を呼んでも無駄だ、掴んだこいつを鈍器として叩き付け殴り飛ばす

何度も殴りつけて駄目になってきたら『聖拳』を【魔力溜め】で敵の体内に暴走寸前の魔力を注入
【力溜め・投擲】で群れに向けて捨て、爆発四散させる(【衝撃波】)



●聖拳制裁
 防衛ラインの形成に成功した猟兵一同。だが、異形の群れはまだ終わりではない。
 オブリビオンとしての本能に従い人類砦に攻め入らんとする、人の殻から飛び出た複眼の異形共はまだ数え切れない程存在している。
 これらを全て仕留めなければ確実に未来はないの。

「見る限り、冒涜的な神に祝福されたようだな……直視すると正気を持っていかれる系の――な」

 神である神樹・鐵火(魔法(物理)・f29049)にはその異形が身に纏う神護の力のルーツがひと目でわかった。
 ダークセイヴァーには元より"異端の神々"と呼ばれる、オブリビオンとして現世に受肉した理性なきオブリビオンが存在する。
 "狂えるオブリビオン"と称されし神々の加護を受けたならば、当然眷属たる異形にも理性など存在しないだろう。
 ただ本能のままに生命を蹂躙するだけのただの化け物共だ。
 ならば一切慈悲をくれてやる必要もないと、鐵火は迷いなく異形の大軍に接敵。
 遅いくる触手を全てその鋭き第六感にて見切り、最低限の動きで回避した後、一匹の懐に飛び込んでその異形の顎を怪力で掴み――

「その大口の中の舌、利用させてもらおうか」

 触手が鋭き刃となって身体をかすめていくのも気にも留めず、その怪力で一気に顎をこじ開けた。
 響き渡る冒涜的な破壊音。関節が崩れ、地に伏した異形の口から垂れる舌――鐵火が次に掴んだのはそれだ。
 その過程がさも無防備に見えたのか、異形の群れがぞろぞろと鐵火に集まっていく……それが致命的な過ちだと気づかずに。

「戯れだ、受け取れ」

 直後にできあがったのは、鐵火がユーベルコード【蛮神乱舞】の効力を持って異形をさながらモーニングスターの如く振り回してできあがる異形のドミノ倒しの光景だった。
 怪力に回転で付与される遠心力が重なり、異形に異形がぶつかる度冒涜的な破壊音が戦場に響き渡る。
 次々異形の仲間が訪れようと、舌を柄として振り回される鐵火の異形の鉄球が破壊し続ける。
 しかして異形、化け物の類とはいえ生物を武器としている以上、肉の潰れる音が絶え間なく響き続けているとやがてはその鉄球と化した異形そのものが武器として機能しなくなり始めるのもそう遠くないワケで。

「(……そろそろか)」

 鐵火は自らの拳に魔力を収束させ、だらしなく開きっ放しな異形の口に思い切り突っ込み『聖拳』の術式を用いて注ぎ込んだ。
 暴発寸前の魔力を注ぎ込まれた異形――否、最早異形"だったモノ"がびくびくと痙攣する。
 それを先程のように遠心力で勢いをつけて、その持ち前の怪力にて思い切り異形の群れ目掛けて投擲。
 刹那、派手な爆発音と共に炎と煙が上がる。
 鐵火の位置から遥か向こう側、まだも現れる異形の軍勢共がその身を焼かれ、砕かれ、骨すら残らず灰と化していく……
 それは異形の軍勢の勢力を著しく削ぐには十分な打撃であったが、まだ全滅に至る程の数は惜しくも削れていない。
 もう一働きせねばと、再び鐵火は残る異形の群れへと接敵していった……

成功 🔵​🔵​🔴​

鏡島・嵐
こういうのは、やっぱり守ってやりてえよな。
勿論、戦うわけだからすげえ怖ぇけど……正直、失敗して守れるはずのモンを守れなかった時の方が、ずっと怖ぇ。
もしそうなったら、きっと後悔するからさ。
いつものように震えを堪えて、助けに行こう。
さあ――悪い夢は笑い飛ばせ、笛吹き男(ラッテンフェンガー)!

他の味方を《笛吹き男の凱歌》や〈鼓舞〉で盛り立てたり、〈援護射撃〉を飛ばして直接支援したりを中心に。
敵が反撃してくるようなら、〈フェイント〉も混ぜた〈目潰し〉や〈マヒ攻撃〉で決定的な瞬間に妨害を入れて、まともに喰らわねえようにする。それでも防ぎきれねえなら〈オーラ防御〉や〈呪詛耐性〉で耐える。


リーヴァルディ・カーライル
…そうね。確かに聖女の境遇には同情するわ

…だけど、どんな過去があり、どんな理由があるにせよ、
今を生きる人々を害するならば私の敵よ

過去の戦闘知識から敵の行動を予測して見切り、
敵の殺気や歌は狂気耐性と気合いで受け流しUCを発動
"黒炎鎧、御使い、魔光、破魔"の呪詛を付与する

…来たれ、神狩りの焔。異端なる者に、浄化の矢を…

"吸血鬼狩りの銃"に●破魔の●力を溜め武器改造
●空中戦機動の早業で敵の神気を●追跡する黒炎の●誘導弾を乱れ撃ち、
対神属性攻撃の黒炎の●オーラで防御を貫き浄化していく

…お前達と闘うのはこれが初めてじゃないもの

…肉片一つ残す気は無い。神の祝福とやらごと消えなさい、この世界から…



●全てを笑い飛ばす笛の音と、全てを焼き尽くす浄炎の魔弾
 時はほんの少しばかり遡り、グリモアベースからダークセイヴァーへと移動する前。
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、グリモア猟兵の見解を聞いて同意するように口を開いていた。

「……そうね。確かに聖女の境遇には同情するわ」

 人々を救おうと神に祈りを捧げ続けた敬虔な娘が、魔女として神の名を建前に理不尽に処刑される。
 それまでに奇跡を以て成し遂げた偉業も全て魔女の呪いとして歴史の彼方に屠られ、その詳細を知る者はいない……
 人の心に秘められた悪性というものは計り知れない程に業が深いことを思い知らされる。

「……だけど。どんな過去があり、どんな理由があるにせよ、今を生きる人を害するならば私の敵よ」

 時は戻って現在、確固たる意思と敵への殺意を以て異形の軍勢と相対。
 理性なき異形共であるが、理性がないからこそ殺気にはそれこそ異常な程に鋭く、彼女へとわらわら集まってくる。
 もちろん、それに怖じける程度でこの場に参じてなどいない。
 持てる戦闘知識を総動員し、敵の行動を予測した上でリーヴァルディは迷いなく軍勢の中央へと向かう――!

 ……そして、一方、その後方。
 鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は自身らの背後に位置する小さな小さな人類砦を見て、今も震える人々へと想いを馳せる。
 きっと今も彼らは震えているのだろう。どうしようもない生命の危機に晒された恐怖に……

「(こういうのは、やっぱり守ってやりてえよな)」

 嵐は戦いが苦手だ。
 猟兵として今まで数え切れない程の戦場に赴いた。
 それはもうたくさん戦った、様々な生命と生命のやり取りを目の当たりにし続けた――だが、どれほど良い結果を残そうと残すまいと、骨の髄まで染み付いた戦いや生命のやり取りといった行為に対する恐怖は一切取り除かれることはない。
 もちろん、それは現在も同様だ。
 これから自分は戦う、そう考えると死ぬ程怖い――けれど、それよりも。

「(正直、失敗して守れるハズのモンを守れなかった時の方が、ずっと怖ぇ……!)」

 恐怖に怯えて自らに嘘をつくことの方が大嫌いだった。
 怯え続けて大事なところでしくじったらどうなるか?
 愚問だ、待っているのは悲劇である。そして自分は守れなかった悔しさに涙するのだろう。
 恐怖に負けてやるべきことをできない方が間違いなく後悔すると確信しているからこそ、嵐は自らの震えを無理やり抑えつける。
 そして人々を助ける為にオブリビオンに立ち向かうのだ。
 軽く深呼吸した後、召喚術式を展開する。

「さあ――悪い夢は笑い飛ばせ、笛吹き男(ラッテンフェンガー)!」

 召喚陣から現れるは笛を持った色とりどりの布でできた衣装の男――ハーメルンの笛吹き男そのものだ。
 ユーベルコード【笛吹き男の凱歌(ラッテンフェンガー・パラード)】……笛吹き男がその笛に口をつけた刹那、心地よい愉快な音色が戦場を包むかのように鳴り響く!

「――!この音……」

 その音色は前方で戦うリーヴァルディの耳にもしかと届いていた。
 明るく愉快で、悲惨さを微塵も感じさせないその笛の音は仲間に力を与える祝福の音は、異形たちの呪われた歌を打ち消す。
 無論歌が止められた程度で異形が止まることはなく、聞かせられぬなら見せれば良いとリーヴァルディをその殺意の視線にて凝視しようとして――突然勢いよく飛んできた小石に目を瞑る。
 嵐のスリングショットによる援護射撃だ。
 視線と同時に伸ばした触手も明後日の方向へと伸び、見切りに集中する必要もなく軽々と回避したリーヴァルディ。

「今だ!」
「ええ――ありがとう」

 絶妙なタイミングで行われた援護に感謝を告げ、リーヴァルディは『吸血鬼狩りの銃』を構えてユーベルコードを起動する。

「"術式換装"……来たれ、神狩りの焔。異端なる者に、浄化の矢を――……!」

 付与される4つの呪詛。
 『破魔の呪詛』が銃の効力を作り変える程の強力な力を与え、『御使いの呪詛』で防御を貫通させるオーラを被せ、『魔光の呪詛』にてどこまでも敵を狙い追い詰め逃さぬ追尾性を宿し、『黒炎鎧の呪詛』を以て異端の神の祝福を焼き尽くす神殺しの黒き炎を纏わせる。
 
「……お前たちと闘うのはこれが初めてじゃないの」

 その強大な力を纏った一撃を振るわせまいと伸びる触手も視線も見飽きる程見てきたもの、既に見切り終えている。
 嵐のユーベルコードによる強化も加わったことでリーヴァルディには奴らの動きがそれこそ止まっているように見え、最低限の動きで回避をこなして空中へ。

「……肉片一つ残す気はない。神の祝福とやらごと消えなさい。この世界から……!」

 目にも留まらぬ早業で放たれる浄化の黒炎弾……異形共を貫き、黒き炎の柱が一斉に噴き上がった。
 噴き上がる炎の中で焼かれた肉と骨は文字通り跡形もなくなり、炎が収まった後には灰すらも残らない。
 数え切れぬ程の異形の軍勢は、猟兵たちの活躍によって残りあと僅かとなった。

「…………」

 残された異形たちの向こうから、それを見つめる視線が、一つ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

乱獅子・梓
【綾(f02235)と】
人というのは、自分たちと違うものを
排除しようとする傾向があるよな…
この世界に限ったことじゃない
例えばUCDアースのごくごく平穏な
学校とかでさえ起こるもんだ
っと、物思いに耽っている場合じゃないな

うわ、ただでさえグロテスクな見た目な上に
周りの死骸を食べるのかこいつら…
なんという地獄絵図
神の祝福なんて言うが、もはやただのゾンビだな

UC発動し、炎属性のドラゴンたちを召喚
広範囲のブレス攻撃で次々と敵を焼き払っていく
また、綾が斬り倒した敵の死骸にも
超高温のブレスを追撃で浴びせて
灰だけの状態にしていく
他の奴らの餌にされると面倒だからな
…文字通り死体蹴りしているようで若干気が引けるが


灰神楽・綾
【梓(f25851)と】
俺たち猟兵だって、しばらくしたら
その聖女様と同じような扱いを
受けてしまうかもしれないよね
まぁ、「だから帰ります」なんて理由にはならないけど

両手にDuoを構え、UC発動
敵の群れに飛び込む
寄生しているその気持ち悪い異形が
本体なのかなやっぱり?
ジャンプして上空から異形の目玉や触手などを
次々とDuoで斬り刻み薙ぎ払っていく(2回攻撃・範囲攻撃
大口を開けたらすかさずその喉元狙って
ナイフを投げつけてやろう

あ、せっかく斬り刻んだの食べられちゃった
もう死んでいるのに、生き汚いなぁ
人類砦が狙われているから
あまり時間をかけるわけにもいかない
というわけで、残骸の後処理は任せたよ梓



●猟兵として為すべきは
 残り僅かとなった異形共であるが、それでも普通の人間から見てみれば異常な数だ。
 猟兵であるからこそあと僅かと言い切れる程の膨大な物量で尚も押し寄せてくる異形共、乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)はそれらを前にしながらも一人考え事をしていた。

「人というのは、自分たちと違うものを排除しようとする傾向があるよな……この世界に限ったことじゃない」

 異端、もとい"自身と違うもの"を恐れるは人間の性といったところか。
 例えばUDCアースにある、UDCの影響もない極々平穏な学校だったとしても些細なことで"自分たちと違う"と感じてしまえば簡単に排除が始まってしまう――UDCアースにおいてはいじめ問題として取り上げられているモノの発端ともいえるだろう――。
 此度の元凶であるかの聖女も、そうして世界から拒絶されてしまったのだから。

「そうだね……俺たち猟兵だって、その聖女様と同じような扱いを受けてしまうかもしれないよね」

 灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は梓のその言葉に同意して頷いた。
 彼ら猟兵は世界より加護を受けている。
 どのような世界の出身であろうと言葉が通じ、どのような外見だろうが種族であろうが、その世界に住む者たちに決して違和感を与えない。
 ――だが、もしその加護を以てしても彼らの持つ超常の能力を恐れられはしないと誰が言い切れるだろうか?
 猟兵は元より"生命の埒外にあるもの"が選ばれる。
 それが元より超常的な現象を引き起こすような力の持ち主であったにしろ、人より才能が軒並み外れて優れているにしろ、"自分たちと違うものを排除しようとする"という人間の性に十二分に当てはまるのだから。

「……まあ、「だから帰ります」なんて理由にはならないけど」

 例えそのようなことに陥るとしても、何の関係もないごく普通の人々を犠牲にしていいワケがない。
 手を伸ばせば届くところにあるのなら伸ばして掴んで、救い上げる。
 どのような境遇によりオブリビオンになったにせよ、それで人々を苦しめる脅威となっている以上は倒さなければならない。
 ……と、そんな話をしていたら気づけば異形との距離は大分縮まっていた。

「――っと、物思いに耽っている場合じゃないな」
「そうだね。行こうか」

 改めて戦闘態勢を取る二人、先陣を切るのは綾だ。
 愛用の大鎌『Duo』を両手に構え、ユーベルコードを起動して早速敵の群れに飛び込む。

「……寄生しているその気持ち悪い異形が本体なのかな、やっぱり?」

 敵の群れを観察、狙いを定めて飛び上がる。
 【キリング・ヘカトンケイル】の効果により綾の身体に宿る紅い蝶の跡が輝くことで、今の彼は常人の目には捉えられぬ動きを以て武器を振るうことができるようになっている。
 上空から薙ぎ払うように放った一撃はたったの一振りでありながら、複数人が同時に攻撃したかのような乱撃と化して範囲内にいた異形全てを切り刻んだ。
 辛くもその場を逃れた異形が怒りかそれとも悲鳴か、人の耳には聞き取れぬ何かを叫びながら触手を飛ばせばすかさず喉元にナイフを投げつけてやり、そこに追い打ちをかけるように人の殻から引き剥がすように斬り伏せる。
 そしてその上で切り刻み、徹底的に。確実に潰して行こうと試みた――が、途中で異形の動きが変わった。
 綾を気にも留めず彼が切り刻んだ同胞だったものへとぞろぞろ集まっては、その遺骸を一つ残さず喰らい始めたのである。

「うわ、ただでさえグロテスクな見た目な上に周りの死骸を食べるのかこいつら……!何という地獄絵図……」

 梓が嫌なものを見たような顔を浮かべる。同じく綾も辟易した表情だ。
 確かに、肉片一つ残さず飲み込む度に人の形をした殻が原型を留めなくなる程に肥大化していく、しかもそれが何匹もとなればグロテスクと呼ぶより他にない。

「せっかく斬り刻んだの食べられちゃった。もう死んでるのに生き汚いなあ……」
「神の祝福なんて言うが、最早ただのゾンビだな……」
「人類砦が狙われているから、あまり時間をかけるワケにもいかないし……残骸の後処理は任せるよ?梓」
「了解……文字通り死体蹴りしているようで若干気が引けるが、他の奴らの餌にされると面倒だからな」

 綾は引き続き先陣を切って敵を斬り刻んでいく。
 その後方で梓はユーベルコード【竜飛鳳舞(レイジングドラゴニアン)】を起動し、炎属性のドラゴンを召喚した。
 数にして大凡90体程の炎竜が梓の命に従い一斉に灼熱のブレスを放ち、綾が斬り刻んだ異形の死骸を含めて焼き払っていく。
 骨も肉も残らぬ灰と化せば、共食いを行って強化されることもないだろう。
 理性なき異形共はただ本能に従い戦うのみ、防ぐこともしなければ術者と叩くという発想に出ることもなく、そもそも索敵などという能力を持ち合わせていない。
 故に元より自らの気配を極限まで隠す能力に長けている梓を見つけることは不可能に等しく、召喚された竜の群れの舞えに成す術なく焼き尽くされて。
 辛くもそれを逃れたところで綾の斬撃の前に肉片と化し、その上で念入りに灰にされて終わる。
 長年の付き合いと歴戦の経験が生み出した連携に、理性という名の思考能力を持たぬ異形が太刀打ちすることは不可能と言っても過言ではないだろう。
 時間をかけるワケにはいかないといった綾の宣言通り、異形の群れがさらに著しく勢力を減らすまでそう時間はかからなかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

サンディ・ノックス
「ヒトはそういうものだよ」

彼女の境遇を聞いてからずっと俺の中で声がする
ある時はヒトを嘲笑うように
ある時は寂しげに

声の主の心当たりは一つだけ
俺の持つ呪われた武器
俺はそれの意思に翻弄されながらそれの力を使い戦う猟兵

俺自身はどうだろう
彼女が死の間際に感じたことは当然だと思う
だからこそ止めたい
彼女が本当の意味で魔女になる前に


よって先兵に興味はない
肉体を変質させ、指定UCを発動
両鎌槍で目を潰し
触手を斬り落とし
口にこれでもかと入れてやる

力が削られても物量で攻めるし
UCが封じられたら朔で捕らえて振り回し同士討ちさせていく

俺が邪魔かな?
止めてご覧よ
【激痛耐性】で耐えながら戦い続け、敵の注意を俺に常に向けさせる



●その高潔さまで堕としてしまわぬよう
 この人類砦防衛戦に赴いてから。
 ……否、グリモア猟兵よりかの聖女の境遇を聞かされてからというもの、サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)の頭の中でずっと声が響いていた。

 ――ヒトはそういうものだよ。

 ある時はヒトを嘲笑うように、またある時はどこか寂しげに。
 人間とは、ヒトとは、そんなどうしようもない性を持つ生き物だと、何度も何度もサンディに言って聞かせるような声がずっと聞こえていた。
 誰が語りかけているのだろう――その心当たりは一つだけある。
 自らが戦いに用いる武器そのものだ。
 その呪われた武器に宿る意思に翻弄されながら、その力を引き出して戦う猟兵であるサンディだからこそ聞こえる声……

「(……俺自身は、どうだろう)」

 声を聞く度に、サンディは自身の気持ちを俯瞰する。

「(……彼女が死の間際に感じたことは当然だと思う)」

 信じていた人々に裏切られ、信じ続けてくれた人々は殺され、世界に否定されながら死に至ったかつての聖女。
 今まで成し遂げた功績も全て闇に葬られた上、傲慢な人間の都合の良いように魔女として仕立て上げられた女性……絶望と狂気に振り切れたその思考では"喜劇"とすら思えても仕方ないこと。
 そして、世界を呪う程の憎悪に塗れるのも当然のハズ。彼女は全てを喪ってしまった……奪われてしまったのだから。

「(だからこそ、止めたい。彼女が本当の意味で魔女になる前に)」

 故にこそ、これ以上堕ちてしまう前に止めたいとサンディは強く願う。
 聖女と呼ばれた程に敬虔で献身的で人々を救いたいと願い続けた高潔な意思を持っていたその心が、これ以上穢れないよう。
 ――故に急がねばならない、よって尖兵に興味はない。サンディは迷わずユーベルコードを起動した。
 【伴星・強欲の両鎌槍(バンセイ・グラトニー)】によって自らの肉体を強欲と暴食の悪意を基として変換し、出来上がるは漆黒の十文字槍。
 その数にして大凡860本もの圧倒的な物量を、異形の群れへと勢いよく叩きつけてやる。
 目は両鎌槍で抉るように潰し、触手は叩き割るように斬り落とし、口には関節が剥がれるぐらいこれでもかと詰め込んで。
 半ば無惨にも思える程の徹底した物量攻撃を叩き込んでいくサンディだが、同時に無防備を晒してもいた。
 殺意を込めた視線とサンディの視線が交差し、異形は人の耳では聞き取れぬ言語で神を賛美する歌を紡ぎながらその触手を伸ばしてくる。
 触手は切り落としたものの、それ以外のモノが力を奪っていこうと干渉……酷くめまいがするような感覚に襲われながらも、サンディの攻撃は止まることを知らなかった。
 ついに触手が脚を掠め、ユーベルコードの起動を無理やりに阻止されても決して攻撃の手を緩めず『朔』のフックを引っ掛けて振り回して同士討ちさせてやる。

「――俺が邪魔かな?止めてご覧よ」

 どれだけ身体を敵の凶刃が掠めようと、どれだけ狂いそうになる程の歌が響いても、サンディは迷わず異形共を殲滅せんと戦い続ける。
 そうして常に敵を引きつけ続けたことが功を奏し、異形共はそれ以上前に進もうとはしない。
 残りの数からして、人類砦は確実に安全圏に入ったと見て良いだろう。
 戦い続けるサンディの目は相手を狙い定めながらも、異形共の奥に君臨する一人の人物を見据えていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘NG
グロNG
WIZ

聖女を理不尽に処刑した連中と
此処の人間達が無関係でも
憎悪は理屈で抑えきれるものじゃない。
私も聖女と似た境遇。人類への憎悪に共感できるからこそ
彼女の心を救済する為に、止めに行くわ

守護霊の憑依【ドーピング】で戦闘力を高め
『リザレクト・オブリビオン』で死霊騎士と蛇竜を召喚。
彼らは私と同じ強さ。技能も使える。
私は戦えなくなるのが欠点だけど
蛇竜に【騎乗】し【空中戦】をしてもらう事で
無防備な所を狙われるのは防げるわ

【気合い・呪詛耐性・狂気耐性】で敵の殺意や讃美歌に惑わされず
触手責めは【第六感・見切り】で回避。
蛇竜の火炎放射と騎士の炎の斬撃【属性攻撃】で
神の祝福を受けしモノ共を蹴散らす



●憎悪の行き着く果てを知る者
 ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)は"オブリビオンの救済"を掲げる猟兵である。
 彼女の行いにより救われる人がいるならば、それは彼女の掲げる目的を果たした時の副産物と言う表現が相応しいかもしれない。
 ダンピールであることを理由に人々から忌み嫌われ、その存在を否定され続けていた彼女は同じく世界から否定された存在であるオブリビオンをどうしても放っておくことができなかった。
 オブリビオンは既に過去にされた存在が骸の海より蘇りし者たち――そして同時に、自らと同じように理不尽に否定され続けた悲しい者たちでもある。
 世界の敵である以上避けられないことだとしても、彼らがただ猟兵たちに倒され続けて終わるだけにはしたくなかった。
 故に自らの死霊術を使い、自身の使役する死霊として保護しその心を救済する為にドゥルールは猟兵として各世界を巡っている。
 ――オブリビオンを救済する為に。

「(……聖女を理不尽に処刑した連中と此処の人間達が無関係でも、憎悪は理屈で抑えきれるものじゃない)」

 理屈で抑えきれているならば、そもそも世界を呪う魔女として現世に蘇ることはないだろう。
 世界に否定され、大事なモノを全て奪われたかの聖女の心は如何許であったろうか――ドゥルールには彼女の憎悪の理由が痛い程共感できた。
 それは互いに似た境遇で、理屈で抑えることができない程の憎悪を同じく抱いている故に。
 だが、だからこそ彼女を止めねばならぬと強く想うのだ。

「(止めなければ、彼女の心は救えない)」

 憎悪の行き着く果てを、人より永い時を生きるドゥルールは知っていた。
 自らが人間に対して抱いた憎悪も遂げようとしたところで何の意味にならないことも。
 理屈で決して抑えきれないモノを無理に抑えろとは言うつもりはないし言える立場でもない。
 だが、似た境遇であるからこそ憎悪の果てへ行かせるワケにはいかないと強く確信していた。

 "――ルル"

 可愛い守護霊たちが何をすれば良いのかと、尋ねるように呼びかけてくる。

「行きましょう、彼女を救う為に」

 ドゥルールは自らに寄り添う彼らをその身に受け入れ、自らの力を高めた上でユーベルコードを起動する。
 【リザレクト・オブリビオン】により呼び出される死霊の騎士と蛇竜は彼女と同じ能力を共有する強力な僕――否、仲間。
 蛇竜は何も言わずにそっと自らの背をドゥルールに差し出した。
 それは彼女が少しでも傷を受ければ自分たちは戦うことができなくなるのを知っているからだけではない。
 時には友として、時には我が子のように、時には愛する人のように想い寄り添ってくれるからこそだ。
 短く感謝を告げてドゥルールは蛇竜の背に乗り、騎士と共に空中と地上に分かれて異形の軍勢を制圧せんと進撃する。
 残り僅かとなった異形共であるが、理性なき奴らは最期の一匹が朽ち果てることになろうと目の前の"敵"を排除しようと動き出した。
 人の耳には決して聞き取れぬ狂気の賛美歌が響き、殺意の視線が飛ぶ。
 だが、永きに渡る時を生き人間の奥底にある様々な狂気や悪意に触れ続けたドゥルールからすれば異端の神の眷属如きが放つ狂気や殺意など可愛らしいもので。
 全く怯む事なく蛇竜に指示を出し、飛んでくる触手という触手を回避し続ける。
 守護霊を憑依させ自らの能力を向上させている今の彼女には、異形共の攻撃は全て止まっているようにすら見えた。
 ドゥルールが蛇竜と共に異形の攻撃を引きつけている間に、騎士はその剣に炎を纏わせて異形共に突貫する。
 いくら触手が飛ぼうが、殺気と狂気の目と歌を向けられようが死霊である彼らはびくともせず、骨すら焼き尽くす程の炎を纏った斬撃は、その傷跡から延焼を引き起こさせ跡形もなく消し去った。
 そして蛇竜もまたドゥルールの指示に従い、敵の攻撃を引きつけながらもその吐息を火炎と変えて放射。
 残った異形共が全て灰になるまで、そう時間はかからなかった。

「……」

 その光景をただ見ている者がいたことにドゥルールは気がついていた。
 痛い程の憎悪と殺意を滲ませて猟兵たちを睨みつける一人の娘。ああ、恐らくその娘こそが……

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『堕ちた聖女』

POW   :    慟哭の血涙
【天より無数に降り注ぐ炎の槍】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    怨嗟の絶叫
自身に【禍々しい怨念を帯びた鮮血で作られた翼】をまとい、高速移動と【呪力を帯び、任意の形状に変形する血液の刃】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    憎悪の鐫録
【生者への嫉妬と怨嗟に突き動かされる状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠イサナ・ノーマンズランドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


【MSより】
第一章ご参加ありがとうございました!
第二章のプレイングは9/28(月)8:31より受付開始、執筆は9/30(水)より開始致します。
断章は明日中には投下予定です。
途中からの参加も歓迎ですので引き続き皆様の素敵なプレイングをお待ち致しております!
●嘆きと怒りの聖女
 異形共であった灰が、風に攫われていく。それに血に濡れた髪を靡かせながらその娘は猟兵たちを鋭く睨みつけていた。
 傷ついた素足で地に立ち、体中のあらゆる傷は塞がれることなく今も尚彼女の衣服をじわりじわりと赤く染め上げる。
 流れる血は魔女になったことを示すかのように翼として背中に形を成しながら滴り落ちては彼女の辿った足跡に小さな水たまりを造っていた。
 恐らく、魔女として処刑された当時と一切変わらぬ痛ましくボロボロな姿……されど瞳は憎悪と殺意の漆黒の炎で燃え滾る。

「ああ、ああ……何故。何故彼らは殺されねばならなかった」

 口から紡がれるは生前の記憶。
 最後まで彼女を聖女と信じ、疑心と狂気に塗れた信者共にその首を刎ねられた者らへの想い。

「私が魔女と断じられ処刑されるだけなら構わなかった……それが真の意味で動乱を終わらせ、これ以上の嘆きが消えるならば黙ってこの身を捧げるのも構わなかった!
 だけど、だけど何故彼らが、あの子たちが、殺されなければならなかったのだ!何の罪もない人々が何故意味もなく殺されなければならなかったのだ!!」

 聖女様と、最後まで慕ってくれた者たちは皆、一様に魔女の眷属として処刑された。
 老若男女問わず、子供ですらも容赦なく、無惨に晒し首となってしまった――聖女の怒りと憎悪を燃え上がらせるには十二分すぎる理由。

 彼女はきっと、"今も尚聖女であった"のだ。

「ああ、ああ!許せない、許さない!!
 罪無き人々を殺めその光を奪っておきながら裁かれず生き延びるなど……!!!
 奴らの血を全て根絶やしにしなければ私は眠ることなどできはしない!!邪魔をするな猟兵共!!
 貴様らも奴らに加担するというのならば私と同じ痛みを味わわせてくれる!!!!」

 だが、その募った憎悪はまさしく彼女を一種の"狂えるオブリビオン"たらしめてしまったのだろう。
 その血脈が今も生きているかわからず、その血筋の者であるかも判別がつかず。
 故に人類砦を狙って攻め入ってきたとなれば、最早その歩みを力ずくで止めねばなるまい。

 同情するなとは決して言えない、だが容赦はしてはならない。
 この悲しき聖女を、止めなければならないのだから。
神樹・鐵火
神への信仰心が奇跡を生むとは言うが...
生憎、私は願いから奇跡を起こす類ではないのでね
私は血生臭い戦神さ、祈りも呪詛も聞き入れんぞ
理由がどうであれ私がやる事はお前を屠る、それだけだ

炎の矢は【見切り】で回避
避け切れないものは【激痛耐性・オーラ防御】で防ぐ
...ふむ、反撃に利用できるかもしれんな
適当な炎の矢を【武器受け】し【魔力溜め】で火力を増加
『聖拳』のエンチャントで眩い青白い炎に変える
聖なる炎の剣として使わせてもらおう

追加の炎の矢が来たら剣で振り払いつつ、隙を見計らって
【ランスチャージ・ダッシュ】で一気に間合いを詰め突撃
ゼロ距離となったらすかさず【闘心破拳】を打ち込む



●憎悪の紅炎、戦神の聖炎
 神樹・鐵火(魔法(物理)・f29049)は聖女の怒りをただ黙って聞いていた。

「神への信仰心が奇跡を生むとは言うが……生憎、私は願いから奇跡を起こす類ではないのでね」
「元より奇跡などこれ以上期待はしていない。私がこの世に再び受肉した、奇跡は最後のその一つのみで十分よ」
「そうか。――まあ、理由がどうであれ私がやることはお前を屠る。それだけだ」

 自身は神であるが、信者の祈りや願いを聞き届け奇跡を齎す恩恵の神ではなく血生臭い戦神。
 故に元より聞くことはしても、聞き入れはしないしできない――元より聖女自身もそのつもりであろうが――。

「私が信ずる神とは違えど、貴女も神であらせられる。本来ならば私が手を上げることなど無礼千万は承知――だが、私のこの願いは、憎悪の炎は、例え神であっても簡単に消せるものではない……邪魔をするのであれば例え神であろうと許しはしない!!」

 聖女の怒りに答えるように、漆黒の夜空から紅く燃え上がる炎の槍が大雨の如く降り注ぐ。
 まるで局地的な豪雨に見舞われたかのような熱量と物量を以て押し寄せてくる炎槍のスコール、鐵火はその一つ一つの挙動を見切り安全地帯を見出して回避。
 とはいえ無傷とまではいかず鐵火の身体を炎が掠め、時にはその身を貫こうとする。
 後者は身に纏ったオーラの鎧がそれを押し留め火傷をする程度に留めたが、その熱さはまさしく今聖女が吼え猛る怒り、聖女が堕とされた先の地獄を如実に再現しているかのようだった。
 防御していなければ、間違いなく突き刺さったところから骨ごと溶かされて焼け落ちていたことだろう。
 だがその威力を見て鐵火はふむ、と思い至る。

「(……反撃に利用できるかもしれんな)」

 思いつくや否や、早速腕に纏った『戦女神の籠手』で降り注ぐ炎の槍から一つを受け止めた。
 戦神の装備たるこの籠手は例え憎悪の炎であれどそう簡単に焼き尽くすことはできはしない、それを利用して受け止めた後、敢えてその槍の炎に干渉し『聖拳』のエンチャントを以て魔力を注ぎ込み炎の"質"そのものを変えていく。
 憎悪と憤怒に燃え上がる真紅の炎が、神性を含んだ青白き炎へと変わっていくと同時に、受け止めた直後とは比べ物にならない程に火力が増大し、最早槍は跡形もなく燃え尽き――代わりというかのように、蒼白の炎が剣の形を成した。

「私の炎を武器としたか……だが、それだけで何を変えられる!」

 聖女の放つ自らをも諸共に巻き込む炎の槍雨は今も尚降り注ぐが、鐵火が生み出した聖なる蒼炎の剣の一薙ぎの前に等しく焼き払われる。
 結界を張るかのように勢いを削ぎ続け、次々と憎悪の炎を飲み込む蒼炎はやがて鐵火から聖女へと駆け抜ける道を作り出す。
 く、と聖女は歯噛みをする暇もなかった。
 何故なら――その道ができたと同時に、聖女の懐に既に戦神が潜り込んでいたからだ。

「しまっ――」
「ガラ空きだ」

 ユーベルコード【闘心破拳】による一撃が、聖女の腹を打ち据える。
 その手に宿らせた『聖拳』の魔力が加護を打ち払い、あらゆる防御をすり抜けた強烈な一撃によって聖女の身体は一瞬にして遠くまで吹き飛ばされた――。

成功 🔵​🔵​🔴​

サンディ・ノックス
先日強い心を持つヒトが存在していると知った
ただ世界には弱い者、酷い者も溢れている
それを考えず、今彼女を悪と断ずる者が居ればそれが「悪」だ

彼女を最後まで信じて慕ったヒト達も殺された
聞いただけの俺も怒りが湧き上がるよ
でも罰を下すべきはそいつらだけ
血族はクズが生き延びた証だから許せないって気持ちはわかるけど

…この戦いに俺の考えは不要
憎まれても力づくで彼女を止める

UC招集・赤夜発動
不可視の俺を彼女の背後に飛ばし羽交い絞め、動けない彼女を何度も斬り消耗させる


不可視の俺にはあの武器の意思が宿っている
彼女に何か囁いているみたい
「似た身の上だから気持ちはわかるよ。猟兵でなければキミの願いを叶えてあげたかった」



●心を、殺してでも
 最初の一撃により派手に吹き飛ばされ、地に転がる聖女。

「……ぐ、く……っ!この程度で、私を止められると思うな猟兵共……!」

 元より生前からの傷も癒えていないその身体は、攻撃を見舞われるだけで派手に血を周囲にぶちまける。
 しかし、そのボロボロな様相とは反対にその足取りはしっかりとしたものだ。
 怨敵の血を根絶やしにせんと、再び立ち上がり人類砦へと向かおうとする彼女の前に立ちふさがったのはサンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)だった。
 まっすぐに、決して眼を逸らさず血塗れの聖女を見つめて剣を構える……その顔は敢えて自らの意思を殺そうとしているように見えて聖女は口を開く。

「……そこをどきなさい。邪魔をしないのであれば殺めるつもりはない」

 その言葉にサンディはYESとも、NOとも言わなかった。
 だが、その言葉からやはりこの聖女はオブリビオンではあるが「悪」ではないと確信するに至る。
 この聖女は、強い心をもつ"ヒト"なのだと。
 サンディは先日、強い心をもつヒトが存在していることを知った。
 ……ただ、世界には弱い者と醜い者も嫌という程溢れている。
 それらを考えず、今この聖女を悪と断ずる者が居るならば、それこそがまさしく「悪」そのものだ。
 それこそ自らよりも悪辣、いや悪辣なんて言葉すらふさわしくない程の邪悪だろう。
 世界の為ならば黙って生贄のように処刑されることも厭わなかった献身と、信じてくれた者を護れなかった怒り、殺した者への義憤に燃える彼女を悪と、どうして言えようか。

「最後まで信じて慕ったヒト達も殺された……聞いただけの俺も怒りが湧き上がるよ」
「同情はいらぬ、とは言いません――だが、ならば何故止める」
「でも、罰を下すべきはそいつらだけ」
「……っ!!」

 この場における悪は誰か?答えは聖女を貶めた狂信者共に他ならない。
 神の聖名の下に魔女に鉄槌を――などという大義名分を掲げ、不必要に人々を殺しておいてのうのうと生き延びている自分勝手で傲慢極まりない連中だ。
 だが残念ながらそいつらの"血筋そのもの"には、罪はない。
 その血脈の者がいるということはそいつらが生きたという証である故に怒りが湧き上がる気持ちは理解できるし、その気持ちまで止めろとは決して言わないし言えないが……

「――今更綺麗事を並べ立てたところで。元より言葉を交わすことに意味はない……なら、力ずくで押し通るのみよ。
 私の邪魔をするのなら例え誰であろうと容赦はしない!!我が憎悪、その身に受けて思い知るがいい……ッ!!」
「確かに、言葉は最早不要だろう」

 ――そして、この戦いに俺の意思は不要。

 サンディは自らの心を完全に殺し、聖女に憎まれる、立ちふさがる猟兵として相対する。
 そしてユーベルコードを起動。
 【招集・赤夜】……魔力で不可視の肉体を持つもうひとりの自分を構築し彼女の背後に忍ばせ羽交い締めにする。

「く、小癪な真似をしてくれる……!」

 オブリビオンとして還ったが、その華奢な肉体は元よりあまり膂力を持たぬのか、聖女は圧倒的な力で拘束するもうひとりのサンディを振りほどくことができない。
 身動きの取れぬ状態になった聖女に、サンディは迷わずその黒き暗夜の剣による一撃を刻んだ。
 声にならぬ悲鳴と共に血が吹き出し、刀身だけでなくサンディ自身も紅に染まる。
 血の匂いが充満する、生暖かい血の感触が顔に、衣服に、手にこびりつく。
 だがそれでも、自らの意思をこの戦いに置いて切り捨てたサンディは容赦なく何度も聖女を斬った。
 骸の海から還ったオブリビオンはこの程度では簡単に死にはしない。だが消耗させることならできる。
 彼女を魔女にはさせるまいと、心を殺し続けてはその剣の刀身を彼女の血で紅く染め上げた……


 ――もうひとりのサンディには、サンディの持つ呪われた武器の意思が宿っている。
 "ヒトはそういうものだよ"と、嘲笑うようにかつ寂しげに彼に語りかけていたあの意思は、切り刻まれる聖女を拘束し続けながらこう囁いた。

「……似た身の上だから気持ちはわかるよ。猟兵でなければ、キミの願いを叶えてあげたかった」

 聖女にしか聞こえなかったその言葉は、心の底から彼女を憂い憐れみ、想う感情が積もりに積もった声。
 オブリビオンに堕ちてからというもの久しく聞かなかった優しさの込められた言葉に、聖女の瞳が揺れる。
 憎悪とは全く別の感情が溢れそうなのを堪えて、彼女はその身を切り裂かれ続けた。
 「諦めるものか」と、歯を食い縛って。
 不可視であるが故に、サンディにはもうひとりのサンディの表情がどんなものかまではわからない。
 だがきっと、彼女の気持ちがわかるのだろうから。
 このようなことをしなければならないことへの申し訳無さと彼女の境遇への共感とが混ざった、複雑なものだったのだろうなと、後に振り返って思うのだろう――

成功 🔵​🔵​🔴​

鏡島・嵐
――そうだな。アンタの怒りは尤もだ。
守りてえモンを守れなかった。それはきっと、魔女呼ばわりされるよりずっと辛えんだと思う。
だからせめて、その怒りをおれらにぶつけてこい。
正直怖ぇけど、その想いは受け止めてみせる。
アンタが魔女として人を殺すんなら、おれはどこにでもいるただの人間として、それを止める。

引き続き仲間に〈援護射撃〉を飛ばしたり、元聖女の攻撃を〈フェイント〉を混ぜた〈マヒ攻撃〉や〈目潰し〉で妨害したりして、有利に戦えるよう下地を作る。
向こうの攻撃は〈第六感〉で〈見切り〉、それでも防ぎきれねえ分は〈オーラ防御〉を纏って耐える。
味方や自分のダメージが蓄積してきたらユーベルコードで治癒する。


レイ・アイオライト
本当に、人の暴走ってのは反吐が出るわね。
アンタの気持ち、分からないわけじゃないのよ。あたしも妙な力を持ったせいで崇められた末に忌避される、そんな存在だったからね。
……けれども、ここの人たちがやったことじゃないわ。個のせいで全を憎む、なんて道理、許されて言いはずがないのよ。

UC発動、聖女が血を操るなら、あたしも同等の力で対抗しましょう。
篠突ク雨の力を僅かに解放、周囲に刃を翻して『早業・範囲攻撃・暗殺・蹂躙』、こちらも同様に血の刃の包囲網を作り上げる。敵の血液の刃は『雷竜真銀鋼糸』を周囲に纏って高電圧の雷撃で焼き尽くしてみるわ。(罠使い)

……悪いわね。恨んでくれて構わないから。
(アドリブ等歓迎)



●ただの人間として/かつて似た身であった者として
 鮮血の血溜まりの中に聖女は崩折れていた。
 先程までの猟兵たちの攻撃は確実に彼女の力を削いではいる――だが、その憎悪の炎はまだ消えるところを知らない。

「ああ、ああ……!許せない、許さない……!私にはもうこれしか残されていないというのに、それすらも摘み取ろうというのか……己が命惜しさに身勝手な大義名分で罪なき人々を殺した者に"報い"を与えなければ……そうでなければ、私を信じてくれた者たちに報いることができないのに……ッ!!!」

 自らの最期の悲願すら止めようとする猟兵たちへの怒りに吼える。
 身体から滴り落ちる血が、地面に広がる血溜まりが、彼女の背に集まって大きな翼を象っていく。
 怒りに燃えるその瞳は、新たに立ちふさがる猟兵を鋭く睨みつけた。

「……っ」

 鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)の背筋に寒気が走る。
 強烈な憎悪に、そして今から行われる戦いへの恐怖に思わず息を呑みながらも決して引くまいと、決してその視線から目を逸らさずに口を開いた。

「――そうだな。アンタの怒りは、尤もだ。守りてえもんを守れなかった……それはきっと、魔女呼ばわりされるよりずっと辛えんだと思う」

 守ることができなかった時の方が怖いと、嵐はいつも自分に言い聞かせて戦ってきた。
 戦いが怖いことよりも、戦いが怖くて逃げて守れたハズのものを守れなかったことの方が怖い。
 立ち向かうべきことから逃げることで後悔したくない一心で戦ってきたからこそ、聖女の怒りを否定することはできなかった。
 彼女は守れなかった自分自身にも憤っているのだと感じた故に。
 だが、それでも止めなければならないならば――

「……だからせめて、その怒りをおれらにぶつけてこい」

 恐怖を拭い去ろうとして拭いきれないことを隠すことなく、真っ直ぐに聖女を見つめて嵐は言葉を強くする。

「正直怖ぇけど、その想いは受け止めてみせる。アンタが魔女として人を殺すんなら、おれはどこにでもいるただの人間として、それを止める……!」
「……いいでしょう。そこまで言うのなら受け止めてみせるがいい、ただの一人で受け止めきれる程この怒りは小さくなどないぞ!」

 聖女が吼えると同時に、恐るべき速度で鮮血の刃が飛んだ。
 とてつもない速度で飛んでくるそれを避ける為の道筋を、第六感が告げる通りに踏んでいき回避。
 恐るべき速さで襲いかかる血刃、かわせばかわす程辺りに血溜まりが出来上がる。
 挙動を見切り回避する中、時々はすれすれになって飛んでいくそれを目の当たりにする度に嵐の心臓が恐怖で跳ね上がる。
 受け止めてみせると言ったが、戦う以上根本は生命の奪い合いに他ならない。飛びかかる鮮血の刃は聖女の生命そのものでもあり、それがより恐怖を加速させていた。

「(っ、やっぱり怖ェ!どうしようもねぐらい怖ェ……っ、でもここで踏みとどまれねえ方がもっと怖ェんだッ!!)」

 その怒りを受け止めると決めたのだから――!
 嵐は刃に顔や袖を掠めながらも、弾をいくつかひっつかんでスリングショットで牽制射撃する。
 理性が飛んだのかはわからないが、聖女は嵐が射撃を行う度にそれに目を奪われて相殺することに躍起になっていた。
 それを利用し、聖女の攻撃が当たりにくい用に嵐は普通の弾とは別にペイント弾等も一緒にスリングショットで放つ。
 聖女が血液の刃でそれを相殺すれば顔に飛び散り視界を塞ぎ、腕で弾けばそこを起点として身体に痺れを齎した。
 身体に痺れが周り、聖女は立つことすらままならぬかのように地に崩折れる。

「が、ぐ……っあ゛ぁあああああああああッ!!!」

 だがその背に顕現した翼は痺れた様子を見せず鮮血を撒き散らす。
 その翼で飛翔し、聖女は劈くような叫びと共に真正面からタックルをしかけてきた。

「しまっ……!?」

 とっさにオーラで防護膜を張るも、麻痺しているとは思えぬ程の速度で飛びかかってきた勢いは相当なもの……嵐は軽く数十メートル程先まで吹き飛ばされてしまう。
 身体を勢いよく叩きつけ、激しく咳き込みながらもすぐに立て直そうとユーベルコードを起動し人魚を召喚する。
 【大海の姫の恋歌(シレネッタ・アリア)】――その美しくも悲しげな旋律がもう一度立ち上がる力を与え、嵐はすぐに立ち上がった。
 そしてオーラの結界を身に纏いながら再びスリングショットにひっかける弾をその手に忍ばせながら様子を伺う。
 聖女は尚も叫びを上げ、鮮血の刃を大量に生成し嵐へ向かわせるが――それらは全て何かに触れた途端蒸発するかのように焼け落ちた。

「な、に……!」

 ペイント弾で視界を奪われている状態では正しく目にできてはいないが、何らかの網のようなものに受け止められ、そのまま蒸発した……という状態だろうと理解。
 恐らく先程嵐をタックルで突き飛ばした直後に展開されたものだろうか?

「……悪いわね。これもアンタを止める為よ」

 そう言って姿を現したのはレイ・アイオライト(潜影の暗殺者・f12771)。
 嵐が聖女を牽制している間に、その鮮血の刃を相殺させるべく影に隠れながら『雷竜真銀鋼糸』を展開していたのだ。
 そして聖女が捨て身の特攻で嵐を吹き飛ばしたところで彼と聖女を隔てるように最後の鋼糸の網を広げ血の刃を防いだのである。
 影に潜まれていてはいくら速く動こうとも理性が薄れた状態で捉えられることはできない。
 密かに繰り広げられていた連携プレイにより猟兵側はユーベルコードによる治療も換算されほぼほぼ無傷の状態。
 一方聖女は先程からのダメージと先ほどの麻痺が未だ抜けていない状態……状況は大分猟兵側に利が傾いていた。

「……く、またも猟兵……どこまでも邪魔を!」
「本当に、人の暴走ってのは反吐が出るわよね……アンタの気持ち、わからないワケじゃないのよ。あたしも妙な力を持ったせいで崇められた末に忌避される、そんな存在だったからね」

 聖女の境遇は、レイにも共感できるものだ。
 かつてサムライエンパイアのある国の姫にして『影の傷跡』を宿す『影憑き』として、崇められると同時に忌避されていたが故に城から外に出ることを許されぬ籠の中の鳥であったレイは、自身の持つ力を生み出す為に自らの血族が無辜の人々を贄としていたことを知って家族全員をその手にかけ……紆余曲折の末、現在に至る。
 レイの来歴は、ある意味で聖女がもしかしたら辿っていたかもしれないもので。
 同時に聖女の境遇は、もしかしたらレイが辿っていたかもしれないものだった。
 故に理解できるし、自分に重ねれば心がずきんと痛む――だが、暗殺者であり猟兵であるレイはその感情を押し殺し、『魔刀・篠突ク雨』の切っ先を聖女へと向ける。

「……けれどもそれは、ここの人たちがやったことじゃないわ。個のせいで全を憎む――なんて道理、許されて良いハズがないのよ」
「……っ!!」

 聖女は唇を噛み締め、黙って再び血液の刃をいくつも生成。
 肉眼ではそう簡単に捉えることのできぬ速度と、決して人では簡単に数え切れぬ物量で押し切らんとばかりに押し寄せるそれは最早血液の津波とも見紛う程だ。

「……"魔刀、真名解放"」

 それに対抗すべく、レイもまたユーベルコードを起動する。
 【血刀蓮華・篠突ク雨】……その刀身に帯びた水が鮮血へと姿を変え、レイが刃を翻すと同時にほぼ同等の物量を持つ血の刃が展開。
 その刃の一つ一つがまさに篠突く雨の如く降り注ぎ、聖女の血刃を押し返さんとする。
 相殺し切れぬ分は『雷竜真銀鋼糸』で展開した電磁網の結界で焼き尽くし、血刃の津波の勢いは次第に弱り『篠突ク雨』の放つ血の刃がその包囲網に穴を開けた――と同時に、その穴から聖女が飛び出した。
 再びその翼でブーストし、勢いよく加速したのである。
 恐らく最初から血の波はフェイントで、防ぎ切るか突破口を作ったと思わせたところでカウンターを仕掛けようとしたのかもしれない。
 ペイント弾による視界の阻害もぶつけている間に何とか拭いきったのか、真っ直ぐにかつ正確にレイめがけて、その手に血で作り上げたナイフを突き立てようと……

「あ゛ぁああッ!!」

 したが、未遂に終わる。レイの後方から嵐が放った一撃が再び聖女の目を潰したのだ。

「言ったろ、アンタを止めるって……!」

 捨て身の特攻とも言える勢いで飛び込めば、逆に自らに対して飛び込んでくるものへの術は何もない。
 聖女はそのまま痛みに顔を歪ませ、顔を抑えてその場で呻き叫ぶ。
 その様子は、まさに無防備以外の何者でもない。

「……恨んでくれて、構わないから」

 そしてレイの放った一閃により、聖女は再びその身体を切り裂かれることとなった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アリステル・ブルー
途中参加なので却下◎
アドリブ等◎おまかせ
必要ならサポートに回るよ

事情を考えれば君が怒り憎悪するのも仕方ない…
だけどね、君と君を慕った人たちを殺した者はもうとっくの昔に死んでる
それに…ここにいる人たちはおそらく無関係な人だ

説得出来ればいいけど…まぁ無理だろうな
ユール、お手伝いをお願い
高速で詠唱を重ねて僕の魔力全部のせて指定UCに彼女を指定して追跡攻撃、一瞬でいい…足止めを狙う
理性を失っているようだしそこを突けないかな? 多少の怪我は覚悟の上で耐える
出来そうなら黒の細剣を抜いて、一気に距離を詰めて一撃を入れるよ

僕にはこんな事しか出来ないけど、君が憎しみを忘れて安らかに眠りにつける事を…祈るよ


鳳凰院・ひりょ
WIZ
連携・アドリブ歓迎

そうか、自分を慕ってくれた人々が殺められた事、その事がなにより許せなくて、恐らくそんな人々を救えなかった自分も許せなかった…のかもしれないな

なら、なおさら止めないと
彼女を慕ってくれていた人々の想いを穢させない為にも

序盤は小石媒体に固有結界・黄昏の間を展開、風の疑似精霊の力で自分の周囲に風の層を作り出す
風の層によって相手の攻撃の軌道をずらしつつ【見切り】で直撃を回避
火の疑似精霊の火球で攻撃

自分のダメージ蓄積して来たら『黄昏の翼』発動
地の疑似精霊の力で退魔刀をダイヤモンドコーティング
水の疑似精霊の力で敵足元を凍結し身動き封じた後接近、破魔・除霊の力を込めた『邪念を断つ』



●邪念を断つ二つの剣閃
 是迄に猟兵たちから何度も攻撃を受け続けた聖女であるが、報復を遂げるという執念は今もなお彼女を骸の海へは還そうとしない。
 自らの悲願を邪魔され続ける怒りと元より抱いていた自らと信者たちを殺めたことへの怒りは最早混ざり合い、残っていた正気は段々と薄れつつあった。

「うう、うう……許さない……許セナイ……猟兵共も、あの難き教徒共も……その血筋も……全て、全て根絶やしに……!!」

 びき、びき――血管が浮き上がる音がする。
 募りに募った怒りと憎悪が聖女を文字通りの化け物へと変えるユーベルコードとして発動されつつあった。
 アリステル・ブルー(果てなき青を望む・f27826)は、届かないだろうと想いながらもまだ理性が残っている彼女へと声をかける。

「君が怒り憎悪するのも仕方ない……だけど、君と君を慕った人たちを殺した者はもうとっくの昔に死んでるしここにいる人たちは恐らく無関係な人だ。君も本当はそれをわかっているんじゃないのかな……?」

 アリステルがそう思った根拠は、これまでの猟兵たちとの対話からだ。
 そう、聖女が生きていたのは遥か昔、動乱の世であった頃。それが終わってから随分途方もない時間が経過した今、張本人共は全員等しく死んでいるハズ……魔女などと人を罵倒できるということは自らは何の血も混ざっていないだろう。
 ならば普通の人間として天寿を全うするか他の原因かでもうこの世を去っていることは間違いない。
 その血脈まで許せぬと復讐を決意するのは動機を考えれば確かにあり得る話であるが、問題はその血を引く者をどうやって見分けをつけるのか、ということだ。
 聖女にはきっとそこまで見分けをつける方法を持っていない。
 そして、今まで猟兵たちによってその点とここにいる人々が無関係であることを指摘された時に彼女は何も答えを返さなかった――いや、返せなかったのだとアリステルは見ている。

「黙れ……黙れッ!だからと言ってこの怒りと憎しみを止めろと!?最早堕ちた私を綺麗事で止められると思うな猟兵!
 私は悲願を果たす!何が何でも……でなければ報いることができない!!私の邪魔をするんじゃないッ!!!」

 答えになっていない答えが戻ってきたことにより推測が確信に変わる。
 わかっていても敢えて目を逸らし、怒りに身を焦がさなければきっと彼女はもう立っていられないのだろう。
 説得は案の定失敗に終わったのだ。
 言葉が通じぬならあとは戦うしかない……理性を捨てただの悪魔と貸していく聖女を見て、鳳凰院・ひりょ(人間の聖者・f27864)は呟く。

「……自分を慕ってくれた人々が殺められた、そのことが何よりも許せなくて……同時に恐らく、そんな人々を救えなかった自分も許せなかった……のかも、しれないな」

 自身が処されることよりも自身を信じた者たちの死を嘆いた聖女だからこそ、きっと自身を信じてくれた者に何も答えてやれなかったという自責の念もあるのだろうとひりょは考えた。
 きっと他者への怒りと同時に、自らへの怒りをぶつけているのかもしれない――。

「――なら、尚更止めないと。彼女を慕ってくれていた人々の想いを穢させない為にも」

 決意がさらに固くなる。
 今までのダメージが蓄積し、思考するのにも体力を消費しつつあるであろう聖女が怒りを謳えば謳う程、段々と理性を失っていっているのは彼の目から見ても明らかだった。
 本当の意味で堕ちてしまえば、彼女を慕い死んでいった者たちも浮かばれない。だからこそ、恨まれようと憎まれようと止めなければならない。

「うう……っ、ああ、あああああああああAAAAAaaaアア!!」

 その身体に血管を浮き上がらせ、獣のような四つん這いの状態から飛び上がり聖女はアリステルとひりょに襲いかかる。
 即座にひりょはその場にあった小石を媒介とし【固有結界・黄昏の間】を展開。
 顕現した風の疑似精霊が風の層を作り上げ、軌道をずらして被弾を免れる。
 次に火の疑似精霊によって火球を生み出し攻撃するが聖女はそれを手で弾き飛ばし、そのままひりょへと一直線に向かった。
 ひりょの周囲には風の疑似精霊が生み出した風が絶え間なく吹いている。それにより髪や衣服が忙しなく靡いているのを"動いている"と認識したようだ。
 先程火球を飛ばした腕で切り裂かんと再び飛びかかり、ひりょもまた同じように風の層でそのまま軌道をずらそうとする。
 理性が吹き飛んだことによりその身体能力も著しく向上したのか、風の層を切り裂くように振り下ろされた腕をかすめた。
 そのまま聖女は畳み掛けるようにひりょへと次々攻撃を繰り出していく。
 理性が取り払われた故の不規則な攻撃は、風の層を利用した軌道修正や見切りを以てしても全てを完璧に凌ぐことは叶わず、ひりょのダメージは蓄積しつつあった。

「(軌道が読み辛くなってきてるな……次の手に出なければ、だけど……!)」

 手を止めればきっと狙われなくなるのであろうが、容赦ない攻撃の連続に少しでも手を止めれば致命傷は免れない。
 何とかして隙を作り出せればと機会を伺うが、このままではこちらが消耗する一方だ。
 "この二人にだけ絞って"状況を見れば、ひりょが万事休すといったように見えるが――ここにいる猟兵は彼だけではない。

「ユール!」

 ひりょが聖女の攻撃を受けている一方で、アリステルが高速で詠唱し練り上げたユーベルコードの術式を展開したのだ。
 自身の大事な友である使い魔『ユール』と、ユールに似た青い鳥、その数にして82匹もの【青き鳥の群れ(ディープブルー)】が聖女目掛けて一目散に飛んでくる。
 ひりょの防御よりも素早く動くそれらに聖女の視線は釘付けにされ、彼らを蹂躙せんと飛び上がった。
 蒼き焔と風を纏った鳥の群れと、憎悪と怒りと生者への怨念を纏った鮮血の翼がぶつかり合い、青い鳥が皆一様に吹き飛ばされたと思ったその刹那、鳥の群れの中からアリステルが飛び出し黒の細剣を聖女の身に深く突き刺す!

「……か、はっ……!」
「っ……ぐ、ぅ」

 細剣で貫くと同時に、異常なまでに力を増した聖女の腕がアリステルの左肩に突き刺さり互いに苦痛に顔を歪ませる。
 だがこの程度で怯むワケにはいかないと、アリステルは細剣を深く突き刺して聖女をその場から離すまいと踏みとどまった。

「おの、れ……猟兵……ッ!」
「僕には、こんなことしかできないけど……っ、君が憎しみを忘れて安らかに眠りにつける事を……祈るよ……」
「今更、忘れる、ことなど……!」
「――ひりょさん!今だよ!」

 自らの目先にして聖女の背後にいるひりょへとアリステルが叫ぶ。
 聖女の攻撃から逃れた彼は次なるユーベルコードを発動させていた。
 翼を象る黒白のオーラを身に纏い、地の疑似精霊の力によりダイヤモンドの如き硬度と化した退魔刀を構えたひりょは高く飛び上がり、一気に降下。
 同時にアリステルは細剣を引き抜き、無理やり左肩から聖女の腕を引き剥がして距離を取る。
 聖女はこちらへと急降下してくるひりょへと振り向き、反撃に出ようとするが身体が動かない。
 ここで自らの足元がやけに冷たいことに気づく。ひりょの【固有結界・黄昏の間】により顕現された水の疑似精霊が聖女から滴る血を起源として足元を凍結させ拘束したのだ。

「貴女を苦しめる、その怒りと憎悪という名の邪念――俺たちが断つ!!」

 破魔と除霊の力が篭った退魔刀のダイヤモンドの剣閃が聖女を切り裂く。
 その一撃に込められたエネルギーは、聖女の身体には然程の傷を与えなかった。
 だが、彼女の混ざりつつあった怒りを確かに分断したのだろう。剣閃をその身に受けた聖女は、拘束が溶けた後その場に伏して震えた声で呟く。

「……それでも。それでも私には、これしかないの……!!」

 それは切実な、聖女である以前に一人の人間であった娘の心の叫びだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

乱獅子・梓
【綾(f02235)と】
理不尽に殺されてしまった自分自身よりも
周りの人間たちのことを想うが余り
オブリビオンに堕ちてしまったのか…
その心は、間違いなく聖女だったのだろう
だが、罪無き人々を殺された憎悪が
同じく罪無き人々に向けられているのは皮肉なもんだ

綾、時間稼ぎは任せたぞ
綾が敵の注意を引いている間に
使い魔の颯の背に仔竜の零を乗せ
闇に紛れ気配を消しながら敵へと向かわせる
そして死角から零のブレス攻撃を浴びせUC発動
氷の鎖で縛り上げ、敵の動きとUCを封じる
これで少しは頭が冷えたか?
トドメは綾に任せる

…聖女の憎しみは
この世界の氷山の一角でしかないんだろうな
いつか、絶望と憎悪にまみれたこの世界ごと変えてやる


灰神楽・綾
【梓(f25851)と】
もし襲われそうになっているのが
彼女を死に追いやった張本人たちだとしても
それが因果応報だとしても
やっぱり止めに入るだろうね
心優しかった彼女を、本物の人殺しの魔女に
してしまうわけにはいかないから

はーい、任せてよ
UC発動し、飛翔能力で一気に接敵
これ見よがしに高速で飛び回り
念動力で無数のナイフを飛ばし
ひたすら敵の気を引く陽動作戦
敵の攻撃は武器受けや激痛耐性で耐える
きっと、君や、君を慕ってくれた人たちの方が
もっと痛い思いをしてきたのだろう
恨み辛みは今のうちに
存分に俺にぶつけてくれればいい

梓のUCで動きを封じたら、Emperorでトドメを
なるべく苦しまないよう
この一撃に全てを込めて



●いつか、誰も苦しまなくて済む世界へ
 娘は、涙をぼろぼろとこぼしてその場に崩折れたままだ。

「私には……私にはもうこれしかないの……」

 もしかしたらその信者たちは、彼女の唯一の心の拠り所だったのかもしれない。
 死しても尚オブリビオンとなってまで彼らを殺したものへの謂わば復讐を遂げんとする程の憎悪が、彼らを守れなかったことへの自責の念はそれ故に生まれたのだろうか。
 事実、娘は自分が理不尽に殺されたこと自体は何ひとつ嘆いてはいない。
 ただ、その受けた痛みは彼らが受けた痛みと同じモノであるが故に邪魔をするなら味わわせる、といったことなのだろうか。
 であれば、その心は間違いなく聖女そのものだと、乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は強く思わされた。

「……だが、罪無き人々を殺された憎悪が同じく罪無き人々に向けられているのは、皮肉なもんだな」

 それはオブリビオンとして蘇ってしまったことによりその心が歪まされてしまったからなのか、それとも長きに渡り憎悪を燻ぶらせ続けていたことにより境界線がわからなくなりつつあるのか、それとも。
 娘には正確にその怨敵の血脈を見分ける力もないだろう。そして彼女に侍っていたのは異端の神の祝福を受けた異形共。
 正気が例え今まで残っていようと、狂うところまで狂ってしまっていることは明らかだった。
 ただ、猟兵たちのこれまでの攻撃によりその狂気を浄化されたことによりこうなっているだけで。
 震えながらただ一つの悲願に縋るその姿は哀れに感じる。

「――もし、襲われそうになっているのが彼女を死に追いやった張本人たちだとしても。それが因果応報だとしても……やっぱり、止めに入るだろうね」

 灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)はその姿を見て、尚のこと止めなければならないと強く思わされた。
 梓も同意を示すように頷く。二人の想いは全く同じだった。

 ――心優しかった彼女を、本物の人殺しの魔女にしてしまうワケにはいかない。

 彼女を慕っていた者たちの為にも、彼女自身の為にも猟兵として、オブリビオンとなった娘を骸の海に還し安らかに眠らせてやらなければ。
 その二人の意思に反応し、敵意と受け取った娘は自然と先程のように身体から血管を浮き上がらせ、超常的な身体能力を再び得て立ち上がる。
 表情は正気と言うには程遠く、オブリビオンとしての本能に突き動かされているかのように理性を失くした顔で生者への嫉妬と怨嗟を甲高く叫ぶ。

「綾、時間稼ぎは任せたぞ」
「はーい、任せてよ」

 必要最低限の言葉だけ交わし、綾はユーベルコード【オクスブラッド・エンペラー】を発動。
 紅い蝶の群れがどこからともなくやってきて彼を包み込むように舞い、その中央から大きな蝙蝠の如き黒い羽根が広がる。
 ヴァンパイアの姿となって愛用のハルバード『Emperor』を構えて飛翔。
 一気に接敵すれば正気を失くした娘はそのまま真正面からその一撃を叩き込んでやろうと腕を伸ばすが、綾は敢えてそれを武器ではなく空いている拳で受け止めた。
 華奢でボロボロな腕とは思えぬ膂力に受け止めただけで骨が軽く軋む音を耳にしながらも威力を削いで受け流し、次は高速で飛び回って撹乱させながら、念動力を用いてナイフをこれでもかと投げつける。
 娘の視線は飛び回る綾に、そして飛びかかってくるナイフにと忙しなく動きながらも半ばやけくそに見えるような動きで腕を振るってはナイフを叩き落とし、次いで手で受け止め投げ返した。
 尋常でない膂力を持ってぶん投げたそれはまるで光のような速さで紅い蝶の群れを切り裂き、武器で受け損なった分は綾の腕や脚を掠め、あるいは突き刺さる。
 だが元より激痛に対して人並み外れた耐性を持つ綾はその程度では止まらない。
 動くのであれば下手に引き抜くぐらいなら突き刺したままで出血を最低限に抑えながら引き続き娘を牽制する。

「――きっと、君や君を慕ってくれた人たちの方がもっと痛い想いをしてきたのだろう?恨みつらみは今のうちに存分に俺にぶつけてくればいい」

 そう優しく労るように語りかけながら、娘の猛攻を一人で凌ぐ綾。
 一瞬だけ娘の顔が正気に戻る。
 その顔は何で、どうしてと問いかけながらもその優しい言葉に思わず泣きそうになったような表情で。
 きっとそんな顔をしたのは、ここまで彼女の前に立ちふさがった猟兵たちが彼女の怒りを受け止めようとしていたからだろう。

 鐵火は血生臭い戦神であるからと言って、娘の絶対的な敵として彼女の憎悪に相対した。
 サンディは心を殺してでも彼女を止めようとし、もうひとりの彼が似た境遇の娘を心から憐れんだ。
 嵐は彼女の怒りを肯定しながらも、だからこそただの人間としてその怒りを受け止めると真正面から立ち向かった。
 レイは彼女に共感を覚えながらも、止めるからこそ彼女の恨みをその身に受けることを厭わない選択をした。
 アリステルは自らの身を貫かれながらも、踏みとどまってその恨みが昇華され安らかに眠れることを祈った。
 ひりょは彼女を信じた者たちの為にも、娘を縛り付けるその呪縛を断ち切ろうとした。

 そして――梓と綾も、自分たちにできるやり方で彼女の怒りを真正面から受け止めようとしているのだから。

「あ、あ……あぁぁあああああああああああああああぁああああああああ!!!」

 聖女の口からどうにもならないかのような叫びが飛び出す。
 それはその優しさを受けた故の感情を殺す為なのか、それともオブリビオンとしての本能に突き動かされたからなのかはわからない。
 だが、先程までの理性が飛んだ顔とは程遠く今にも泣きそうな顔だったのは確かだった。
 言葉にできない感情と想いと共に放たれる一撃が、綾の身を捉えようとしたその時、娘の死角から鴉に乗った小さな仔竜――梓が連れている氷竜の『零』が飛び出した。
 口から吐き出される凍てつく冷気をまともに浴びた娘の身体は氷付き、綾まであと僅かという距離でその手は止まり攻撃は未遂に終わる。

「"氷の鎖に囚われろ"!」

 そして同じく闇から姿を現した梓がユーベルコード【絶対零度(アブソリュート・ゼロ)】を起動。
 零が吐いた冷気のブレスが命中した箇所を起点とし、娘の身体を氷の鎖が縛り上げる。
 何とか鎖を引きちぎろうとする娘だが、この氷の鎖には拘束した対象のユーベルコードを封じる魔力が含まれており先程までの超常的な怪力の恩恵は完全に消え去っておりびくともしない。

「……よくやった。颯、零」

 自分の下に戻ってきた零と零を乗せていた使い魔の鴉『颯』を労ってから、梓は娘へと向き直る。

「これで、少しは頭が冷えたか?」
「っ……離せ、離して……!!」
「……トドメは任せる」
「OK、任されたよ」

 娘の訴えを敢えて無視し、綾が『Emperor』の刃を勢いよく娘に突き立てた。
 なるべく苦しまないよう、持てる力の全てを込め――痛みがほんの一瞬だけで済むようにと祈りを込めて。
 氷の鎖が砕け散り、刃が引き抜かれると同時に鮮血の翼がばしゃあと血溜まりに戻り娘はその場に倒れ伏した。
 恐らくもう立ち上がれはしないだろう、娘の体温は血と共に地面に流れていっている。
 身体が灰となるのもそう遠くはないハズ……その生命の灯火が消えていく過程を、梓は決して目を逸らすことなく見届けた。

「(聖女の憎しみは、この世界の氷山の一角でしかないんだろうな)」

 あらゆる負の感情が渦巻く、光なき絶望の闇に囚われた世界。
 この娘が抱く憎悪はそのほんの一部で、彼女と同じ――いや、彼女以上に嘆きと憎しみに囚われた人々はたくさんいるのだろう。

「――いつか、絶望と憎悪に塗れたこの世界ごと変えてやる」

 もうこの娘のような悲しい人が生まれないよう。
 オブリビオンに脅かされることなく、人々が安心して過ごせるような世界への変革を。
 世界が変わるその時までその意思を決して絶やし続けはしないと、梓は強く決意したのだった――

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘×
過度なグロ×
POW

自身ではなく信者の死を嘆いていたのね……
貴女は正真正銘の聖女様よ。
その憎悪、私が受け止めてあげる。
それで少しでも貴女の心が癒えるなら

真の姿で背中に黒炎の翼を生やし
彼女の炎の槍に【火炎耐性・激痛耐性・気合い】で耐え続ける。
力尽きても『永劫火生』で強化復活

私は死なないわ。
死んだら貴女を救えないもの

守護霊の憑依【ドーピング】で更に強化。
【念動力】で彼女を引き寄せて【怪力】で抱きしめ
【誘惑・催眠術・祈り】を籠めて【歌唱】
私を愛してくれた唯一の人間、亡き母の子守唄を

人類への憎悪を糧に、同じ境遇の者達を救う。
そんな復讐には興味ないかしら?

髪を撫でて【慰め】ながら
【生命力吸収】のキス



●聖女だった娘に捧ぐ唄
 ――聖女だった娘は倒れた。
 そう認識した猟兵たちはある者は人類砦の様子を見に、またある者は一旦グリモアベースに帰投してグリモア猟兵へ事の次第を報告しに行く。

 そんな中、たった一人月の下で地に伏すかつての聖女に歩み寄る猟兵がいた。

「……自身ではなく信者の死を嘆く、貴女は正真正銘の聖女様よ」

 ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)は慈しむように、そして彼女の境遇に心を傷ませながら声をかける。

「けど貴女の憎悪は、まだ燃え尽きてはいないのでしょう?」

 その言葉に、体温の薄れつつあった娘の身体がぴくりと反応する。

「にくい……ニクイ……ああ、アア、ニクイ……ユルセナイ、許さない……カレラを殺しタヤツらを、許すことなどできヨウか……!!」

 その声はノイズに塗れたかのようにボロボロだった。
 この娘がオブリビオンになるに至った根源が憎悪なれば、それは彼女を今も尚骸の海へと返すまいと無理やりにでも縛り付けようとしているのだろう。
 先程までの攻撃と説得により、娘自身の意識はとっくに疲れ果てているというのに尚も動かそうと駆り立てるのか。
 口から紡ぐ言葉とは反対に、その表情は今にも泣きそうな少女のそれそのものだというのに。
 だが、それぐらいの憎悪であってもおかしくはないだけの想いをこの娘はしてきたのだ。
 ならば、その憎悪を完全に受け止めきらなくては意味がない。
 この可哀想な娘を救うべく、ドゥルールは手を広げて黙って受け止める姿勢を見せながら背に黒炎の翼を広げる。

「その燻り続ける憎悪、私が受け止めてあげる。それで少しでも貴女の心が癒えるなら」
「アア……ああ、あああああああァァァァあああああああ!!!」

 今も尚縛り続ける憎悪――娘に宿るオブリビオンとしての根源にして本能は、最後に再び炎槍のスコールを呼び寄せた。
 その場にいる者全てを無差別に襲うその雨を、ドゥルールは何の防御も張ることなく文字通り"受け止める"。
 炎で炙られた刃が、骨すらも溶かさんとする炎が彼女を襲い、貫いていく――それを、元より持ち得る熱へと痛みへの耐性と何よりも決して倒れないという強い意志の下に耐え、絶対に膝を折るまいと。
 聖女であった娘へと向かい来るモノは密かに念動力で軌道を捻じ曲げ、全てが自分に当たるように仕組む。
 何故ならこれは彼女の憎悪を受け止める為にしているのだから、その憎悪に娘が焼かれてしまっては意味がない。
 しかし、いくら強靭な生命力を持つダンピールであり猟兵だからといってこのまま無事で済むワケもなく、段々と身体が焼け落ち始めていた。

「……何故。こノマま死ヌつもりか?それでこノ憎しミを受け止められルトでも――!」
「私は死なないわ――死んだら、貴女を救えないもの」

 その言葉と共に身体が刹那に灰と崩れ去る。
 宣言とは正反対な結果に終わったと思いきや、灰となって崩れ去る直前までいた場所に1ミリのズレもなくドゥルールが立っていた。
 ユーベルコード【永劫火生(エターナル・ブレイズ)】――自身が瀕死に陥る度に敢えて今の肉体を灰と還し、強化を施した状態で肉体を再構築するまさに不死鳥の再現たる力で、ドゥルールは何度も炎槍の豪雨を受け止める。
 端から見れば人類砦を襲おうとした化け物を統べていた娘にここまでする図は、この世界の人間が見れば狂っていると言うであろう光景。
 それは娘の疲れ果てていた理性を呼び戻す程だった。ノイズがかき消えた、か細く弱々しい声で口を開く。

「何故、何故……なんで……っ!?」
「言ったでしょう。貴女を救う為よ。自身ではなく信者の死を嘆く、正真正銘の聖女である貴女を」

 炎をその身に受けながらも、娘に対してドゥルールは慈しむ笑みを浮かべて守護霊をその身に宿して自身をさらに強化する。
 娘自身の思考が引き戻されたことにより炎槍の雨は止んでいた。力尽きて動けぬ彼女を、ドゥルールは念動力を使ってこちらへと引き寄せ、そっと抱きしめた。
 持ち得る膂力が、娘の骨を砕く音を響かせる……だがそれは彼女を一度この肉体という軛から解き放つ為に必要なこと。
 ボロボロに傷つき、体温すら失いつつある娘を抱きしめながらドゥルールは唄を口ずさむ。
 それは自身を唯一愛してくれた人間である、亡き母から受け継いだ子守唄。
 その歌声は透き通るように綺麗で、柔らかな羽のような優しさで。
 抱きしめられる体温と共にかつての平和だった頃の記憶を思い出したのか、娘はボロボロと涙を流して泣いていた。
 今度こそ死へ至る道を歩みながら、かつて護れなかった者たちへの後悔と謝罪を告げながら泣き続ける娘の頭を、ドゥルールは優しく撫でてやる。

「――人類への憎悪を糧に、同じ境遇の者達を救う。そんな復讐に興味はないかしら?」

 そう囁きながらキスを落とす。生命の灯火をそっと吹き消す為、力を吸い取るように――だけど優しく、甘い口づけ。
 娘はこれまでの負傷と泣き疲れたからか、それに答えを返す前にその口づけで今度こそ眠りについていた。
 ぼろぼろに傷ついた身体が、足先からゆっくりと灰になっていく。

「……疲れているところに答えを急かすのは無粋だったわね。また次に会った時、その答えを聞かせて頂戴?」

 娘の頭を最後にもう一度優しく撫でて、ドゥルールは彼女が骸の海に還るのを見送った。
 髪も、衣服も、何もかもが灰となって風に攫われて月夜に舞っていく。

『――』

 その場を立ち去る時に、見送ってくれたドゥルールへ――そしてこの場にはもういない猟兵たちへ。
 感謝を告げるような誰かの声が、聞こえたかも、しれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『猟兵の「猟」は狩猟の「猟」』

POW   :    獲物を仕留める

SPD   :    獲物を追跡する

WIZ   :    獲物を見つける

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


【MSより】
第二章ご参加ありがとうございました!!
第三章プレイング受付は10/5(月)8:31より開始予定です。
それまでに断章を投下致しますのでしばらくお待ちくださいませ。
●一難去って
「ああ、皆様……!この度は救って頂きまして、何とお礼すれば良いか……!」

 無事オブリビオンを退けることにした猟兵たちは現在、人類砦の人々から何度も深く頭を下げられていた。
 吸血鬼から辛くも逃げ延び、頼れるのは同じく逃げた者たちだけという過酷な環境であった人々だからか、猟兵たちが助けにきてくれたという事実はとても心に沁み入ったようである。

「何かしらのおもてなしをさせて頂きたいところなのですが、生憎今ここは食糧が困窮しておりまして……狩りに向かわねばなりませんのでお時間を頂くことになります。
 それとつかぬことをお伺いするのですが……先程何回か女性の悲鳴が聞こえたような気が致しまして。もしかして化け物から逃げていた人が別におられたのでしょうか?」

 ――それは猟兵たちが戦ったあの聖女であった娘の叫びのことだろう。
 どうやら異形の軍勢から逃げている者がいたのではないか、と人々は見ているらしい。
 人類砦の現状を考えると自分たちのことで手一杯であるハズなのに、見ず知らずの人間の安否を気にかける言動は猟兵たちによっては好ましく思ったかもしれないし、それよりも自分たちの心配をしろと呆れたかもしれない。
 ただ、その叫んでいた娘が実は元凶のオブリビオンであった……と告げる気にはなれず、とりあえずその女性は無事救出して家に送り届けたと誤魔化しておくことにした。
 それならよかった、と砦の代表が安堵している一方、「じゃあ狩りにいってくるねー」と何人かの若者が少々頼りない弓なり槍なりを持って森に向かう様子が見える。
 いや撤回しよう、少々どころかかなり頼りない。それこそ間に合わせで作ったという程の出来栄えであり、仕留められなかった時がとても恐ろしい。

「上手くいけばそう時間もかからず食糧を調達できるかと思います。お急ぎでなければ何もせずにお返しするのも申し訳ありません故、お待ち頂ければと……」

 いや、あの武器では絶対時間がかかる――猟兵たちは確信があった。
 ただでさえ若手の少ない人類砦の若手を減らすワケにはいかない。
 どうやら、もう一働きしなければならないようだ。
鳳凰院・ひりょ
SPD
連携・アドリブ歓迎

【ライオンライド】使用し砦の人達と共に狩りに
ライオンの背に他の人達も乗せ機動力を確保
自分は【騎乗】に専念出来そうなら専念
ちょっと不安がありそうなら光陣の呪札で獲物の追い込みを手伝う
もし他猟兵と合同で動けそうなら、自分がライオンの背に乗りつつ獲物を追い込む役を買って出る

うちの子(ライオン)は凄く良い子だけど、動物たちにとっては背丈の大きい恐ろしい動物が追っかけてくる感じで慌てて逃げるだろうし

砦の人達が狩りで負傷されるような事があれば【生まれながらの光】使用し手当
俺達を歓迎する為とはいえ怪我をさせたくないしね
歓迎をしてくれての事だから全部俺達で…というのも気が引けるし(汗


サンディ・ノックス
優しいヒトたちなんだろうな
優しいだけじゃこの世界で生きるのは難しい…いや
彼らも見せないだけで辛い経験はたくさんしているかもしれないね

お礼の気持ちで充分嬉しいよ
と笑ってみせるけど、彼らの感謝の気持ちを無下にするつもりもない

俺もついていくよと若者たちに同行する
彼らの狩りの技術を見るために
武器を少し工面すれば済む話か、技術も何か教えたほうがいいのか確認したい
武器の調達はできないけれど技術なら少し教えられるから

地面や草の乱れ、木々の枝葉の破損から獣の形跡を探し
発見したら追い立て役と仕留め役、二手に分かれる
一撃で倒すのは余程の運が必要、脚の腱を断ち、次いで急所を穿つ
仕留めたと油断するのは禁物、あたりかな



●合同狩り作戦、決行
「(……優しいヒトたちなんだろうな)」

 人類砦の人々と会話したサンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)は、心が暖かくなるのをひしひしと感じていた。
 優しいだけではこのダークセイヴァーで生きることは非常に難しい――いや、恐らく見せないだけで辛い経験をたくさんしてきたであろうことは確かだとも思う。
 彼らは吸血鬼の支配から命からがら逃げ出してこうして人類砦を作ったのだから。
 だが、そんな過酷な経験を経ていながらもこうして手と手を取り合い、他者を気遣うことのできる優しさはとても好ましくかつ尊いモノ。

「お礼の気持ちで十分嬉しいよ」

 と、彼らの厚意を笑顔で返すがその感謝の気持ちを無下にするつもりもなく。サンディは狩りに出る若者たちに声をかけた。

「俺もついていくよ」
「えっ!?そんな、ただでさえたくさん戦って頂いたのに……!」
「狩りにはそれなりに心得があるからね。俺の知識で役に立てるかもしれないし、技術なら少しは教えられるから」
「うーん……確かに狩りはここができてからやり始めたようなものだけど……お言葉に甘えちゃってもいいんですか?」
「もちろん」

 にこやかに微笑むサンディ。
 この優しいヒトたちがこれから先も生きていけるよう、自分で与えられるものは与えてやりたいと思った。
 武器の調達こそできないが、武器を工面することの有無の判断基準や、基礎的なものから多少の応用が効く狩りの技術等を教えることはきっとこれから先彼らの役に立つだろう。

「あの、すみません。俺もついていってもいいですか?」

 サンディにつづくように、鳳凰院・ひりょ(人間の聖者・f27864)も同行を申し出た。

「治療の心得がありますし、獲物を追い込む役はよかったら俺にやらせてもらえませんか?」
「ええっ、そんな、歓迎する方に手伝ってもらうなんて申し訳ないですよ……!」
「だからこそ無事狩りを終わらせられるようお手伝いをさせてください。俺たちを歓迎してくれてのことですから」
「そうだね。歓迎してくれるからこそ、怪我や事故とかいったものには遭って欲しくないからね」

 サンディもひりょに同意するように口を開く。
 うーん、と若者たちは悩んだが確かに猟兵たちの持つ知識は自分たちにとって役に立つのは間違いないし、ただでさえ若手が少ない集落とほぼ変わらぬ規模の人類砦。
 自分たちがもし帰ることができなくなったらどうなるかは彼ら自身が一番理解していた。

「……じゃあ、是非。よろしくお願いします!」

 こうして、猟兵たちと若者による合同の狩りが始まったのであった。


「うわあ……!?」

 若者の一人が目の前に現れた動物に声を上げる。
 ひりょがユーベルコード【ライオンライド】でライオンを呼んだのだ。
 恐らくダークセイヴァーではライオンの姿はあまり見ないのだろう、見たことのない動物に思わず驚きが隠せない。

「俺がこの子と一緒に獲物を追い込みますね。うちの子は凄く良い子だけど、動物たちにとっては背丈の大きい恐ろしい動物が追っかけてくる感じで慌てて逃げるでしょうし……」

 ひりょにその身を擦り寄せるライオンの姿は確かに穏やかで愛らしさ抜群だ。
 しかしライオンは百獣の王と呼ばれる肉食動物、そしてさらに言うと夜行性動物で夜目が効くのでダークセイヴァーのような永遠に夜の世界でこれ程最適なパートナーはいないだろう。
 一方話を聞きながら、サンディは獣がいた形跡を探していた。
 地面や周りの草の乱れ、木々の枝葉の破損具合からこの近辺に動物がいたことは間違いなく、さらに手がかりがないか辺りをくまなく見渡していく、すると……

「……あった」

 地面には綺麗に残った狼の足跡。
 サンディはすぐに皆に呼びかけ、全員で気配を殺しながら足跡を辿って狼の捜索を開始。
 足跡を辿る度に聞こえてくる水が流れる音……しばらくして小さな川が見えてきて、そこで狼は水を飲んでいた。
 幸い川の向こう側にはおらず、上手く追い込めば容易に仕留めることができるだろう。
 全員草むらや木陰に身を隠し、いざ作戦開始。
 まずはひりょがライオンに乗って狼を牽制する。先程まで飼い主に懐く様子を見せていたライオンは百獣の王としての本性を全面に出し、吼えて威嚇。
 狼とライオン――その力の差は圧倒的だ。そう本能で理解を示すのが動物である。狼は即座にその場から逃げ出した。
 ひりょは狼を追いかけながら『光陣の呪符』を取り出し、牽制射撃を行う。光の束が狼が逃げようとする範囲を抑制することでその足取りを不安定にさせる。

「今だ!」

 サンディの指示で若者がその頼りない弓を精一杯引き絞り矢を放つ。
 腹部に命中してぎゃうん、と狼の吼える声が響き渡り一度地面にその身を転ばせる。
 まだ狼は走る元気があるようで、再び立ち上がり走り出そうとしていた。

「うっ、仕留められなかった……!?」
「大丈夫、焦らないで。一撃で仕留めるのは俺でも難しいんだ、運に恵まれていないとね。こういうのは……」

 ひりょが『光陣の呪符』で再び狼の逃げ道を塞いでいる間にサンディが狼に向けて突撃。
 手本を見せるかのように鮮やかな手さばきで狼の脚を斬りつける。片脚の腱を千切られ狼は大きくバランスを崩す。
 だが脚一本ではまだ動いてしまう為、即座にサンディはもう一本脚の腱を断ち完全に動きが鈍ったところで急所目掛けて思い切り剣を突き立てた。
 ぎゃうんと再び吼えた後、狼は沈黙。その華麗な手捌きに若者は感動したような表情を浮かべた。

「凄い……あっという間に狼を仕留めましたね!」
「仕留めたと油断するのは禁物だよ――ほら」

 サンディが少しでも手を近づけば、狼は僅かに残っている力を振り絞って噛みつこうとしてくる。
 ひ、と若者たちが声を上げるが、サンディの腕にその獰猛な牙が届く前に狼は完全に力尽きて動かなくなった。

「こういうこともあるからね」
「な、なる程……勉強になります!」
「僕たち、本当に何もわからないままで狩りをやっていたのがよくわかりました……ありがとうございます!」

 聞けば今までは確実に仕留められるであろう鳥等を主に狙って狩りを行っていたらしい。
 狼等の獰猛な肉食動物を相手にしたことはなかったようだが、ロクに知識もない状態で大きな獲物に手を出さなかったのは賢い選択であることは間違いないだろう。

「とりあえず、真っ先に覚えておくことは"一撃で倒すのは余程の運が必要"、"脚の腱を断ち、次いで急所を断つ"、"仕留めたと油断するのは禁物"……あたりかな。
 それさえ覚えていれば、武器のメンテナンスをしっかりしておけば失敗することは格段に減るハズだ」
「わかりました、ありがとうございます!武器のメンテナンス……というのは具体的にはどうすればいいんでしょうか?」
「ううん……弓はまず弦の張り直しからだろうね。あと剣はしっかり刃を研いでおいた方がいいと思う」
「ええっと……それってどうやったらいいんでしょうか?」
「剣の刃の手入れなら――」

 サンディによる狩り講義の一方、ひりょは沈黙した狼の両脚を別の若者と一緒に縄でしっかりと縛りつけ持ち歩けるようにしていた。
 ライオンが物欲しそうにそれを見てはくるる、と唸るのでひりょは苦笑しながらライオンを宥めた。

「これは砦の人たちのだから、食べたらダメだからね」

 わかってるよそれぐらいー、と言いたげにライオンは眉間に皺を寄せる。
 先程の獰猛な肉食獣の姿とは程遠い愛らしさに若者は顔を綻ばせた。

「もしたくさん獲物が取れたら、ライオンさんにもごちそうを作らないとですね。せっかく手伝って頂きましたし」
「何から何まで……ありがとうございます。すみません」
「いえ、皆さんには我々の方がたくさん助けられてますから!これぐらいのことはさせてください」

 そう笑顔で語る若者に、ひりょのライオンがしっぽを振ってすり寄ってくる。どうやらおいしいご飯をくれるということで懐いたようだ。
 これはたくさん獲物を狩る必要がありそうだが、若者たちの姿を見てこの人類砦はきっとこの先も大丈夫だろうとも思えた。
 ひりょは暖かな気持ちになりながら、ライオンに擦り寄られる若者を微笑ましく見守っていた。

 狼肉、一匹分ゲットです。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アリステル・ブルー
アドリブその他◎
(好きに動かして大丈夫です)

ここの人はみんな優しくて良い人たちだよね。みんなが平穏に幸せに暮らせたらいいなあ…

猟兵の猟は猟師の猟なのでは?
飛び道具持っておけば良かったな
めちゃくちゃ不安にしかならないから同行するよ

皆から離れない程度に先行して闇に紛れて目立たないように、偵察の要領で獲物を探して痕跡を見つけたら追跡
こういうやり方正しいか分かんないけど、教えたら今後役立つかな?食べられる植物の知識とかね

狩りは彼らのやり方を見守るよ
危なそうなら手助けとかアドバイスはするけど

僕がいつでも助けられるわけじゃないから、知識や技術だけでも伝えられたら良いな
この場所で生きていくためにも


鏡島・嵐
うーん、食糧事情ってのは切実だよな。
きっと食い盛りの子供もいるだろうし、あんま効率が良くねえってんなら、もうちょっと手伝った方が善いか。
戦うんじゃねえから、気分的にはずっと楽だ。

《二十五番目の錫の兵隊》共々、狩りを行う。
〈野生の勘〉を活かして食うのに適した動物が居そうな場所を割り出して、〈スナイパー〉で狙撃して仕留めていく。
おれはスリングショットなので、小さめの獲物。《錫の兵隊》にはもうちょっと大きめの奴を狙わせるかな。
血抜きやら下処理は、一応多少経験があるので手早く済ませる。

もし狩りの途中で食えそうな植物が見つかったんなら、そっちも可能な限り持ち帰るようにする。



●森の何とやらと言われるだけありまして
「(飛び道具持っておけば良かったな……)」

 離れた場所で見守りながら、アリステル・ブルー(果てなき青を望む・f27826)は気配を殺して獲物を探していた。
 砦の若者らが不安で同行した猟兵たちは先の二人以外にもいるのであった――なるべく手を出すまいとする者もいればできる限りの手伝いをしようとする者と様々であるが――。
 現在若者たちは先の猟兵らの教えを乞いながらまた一匹二匹と狼を狩り、教えられた通りの手順で無事怪我人が出ることなく食糧を確保できている。
 あの様子なら大丈夫そうだと感じて胸を撫で下ろし獲物の後を探るアリステルであったが……

「……うわ」

 狼とはまた別の大きな獲物を見つけ、急ぎ皆に報告に戻るのだった。


「それっ」

 鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)の放ったスリングショットが綺麗に鳥に命中し、地に落ちた。
 既に急所に当たっていたようでぴくりとも動かない鳥をすぐに捕まえて確保し、血抜きと下処理を済ませる。
 反対側では嵐がユーベルコード【二十五番目の錫の兵隊(フェモテューヴェ)】で呼び出した錫の兵隊が先程狩っていた狼よりも大きめのを仕留めていた。
 猟兵たちが手伝うことにより、狩りの効率はかなり良くなっている。具体的に言うと、この調子で集めていけば食べ盛りの子供も困ることはないであろう量は確実に手に入るであろう程度。
 捕まえる度にその場で血抜きと下処理を行い、帰ってきてすぐに調理にとりかかれるようにだけしておけば砦の人々も自分たちもすぐに食事にありつけるというものである。

「狩りにも慣れていらっしゃるんですね……凄いです!」
「心得はあるけど慣れてはねえよ?戦うんじゃねえから気分的にはずっと楽だけどさ……でも、だからこそちゃんとみんなが食べられるように処理しねえと」

 食糧確保の為の狩りとはいえ、生命のやり取りであることには変わらない。
 「いただきます」というのは「生命を頂く」ということ。
 自分たちの糧になってくれた動物たちへの感謝を忘れぬ戒めとして、食事の前に手を合わせて「いただきます」と言う――というのがUDCアースの日本における食文化の一つ。
 自分の故郷ではそういう文化があるのだと嵐は語る。というのもダークセイヴァーにそういった文化があるかが不明瞭である故だが、砦の若者たちは非常に興味深い表情でそれを聞いていた。

「なる程、確かにそうですね。こんな苦しい世界の中で彼らも生きてますものね……」
「砦に戻って食事を食べる時、自分たちもそうしてみます!」
「うん、いいんじゃねえかな。そういうのって大事だと思うし」

 吸血鬼に支配され、人々が苦しめられている世界だからこそ糧になってくれる動物たちに感謝を忘れてはいけない……
 砦の若者たちには「いただきます」と言う言葉がとても重要に思えたようだ。このような苦しい状況だからこそ、そう思える人々を嵐はとても好ましく感じた。

「ごめん、みんな!ちょっときて!」

 とそこへ、先程獲物を追跡しにいったアリステルがやや駆け足で戻ってくる。

「おーお帰り。獲物見つかったか?」
「うん、見つかったんだけど……その、かなり大きくて……」
「大きい?一体何見つけたんだよ」
「熊」
「くま」
「熊」

 流石にぽかんと口を開ける嵐と、頷きながら復唱に返すアリステル。
 若者たちも「え、熊……?」「そ、それって流石に狩れるの……?」と不安な表情だ。
 まあ、狩人としてはまだ素人であった彼らがいきなり熊というのは難しい話なので不安がるのも尤もである。

「……こいつを呼んでおいてよかったなあ……」

 錫の兵隊を見ながら、嵐はそう呟いた。


 さて、アリステルの案内に従って件の場所にたどり着いた嵐と若者たち。
 草むらに隠れながら指さされた方を見ると……確かに熊がいた。成体の熊である。
 ダークセイヴァー産の熊だからか、はたまたたまたま以上成長した種なのか……ともかく嵐の知るヒグマやツキノワグマより一回りぐらい大きかった。

「……ダークセイヴァーってあんなにでかい熊がいんの?」
「僕ダークセイヴァー出身だけどあそこまで大きいの見るの始めてだよ……??」

 地元住民のアリステルをしてそう言わしめるこの熊よ。最早オブリビオンではないのかとすら思ってしまうが一応ただの熊です。
 しかしどう仕留めてくれようか、若者が震えた声で二人に指示を乞う。

「ど、どうしましょう……?」
「あー……と。そうだな……」

 驚異的なでかさであるが仕留められれば間違いなくしばらくの食糧事情は安泰間違いなし。
 熊がここから動かぬうちに綿密に作戦会議を行い、各自の役割を分担……いざ、熊狩りという一大決戦。
 先手は嵐、スリングショットでひっつかんだそこらの小石をぶつけてやる。 
 べちん、と当たった小石に熊が振り向く……身体のサイズに見合ったそれなりの顔でお出迎えしてくれました。
 嵐の背筋を寒気という寒気が所狭しと駆け巡るが、恐怖をぐっと堪えて次は催涙弾をスリングショットで放ち――命中!
 彼の鍛え上げたスナイパーとしての腕は見事に熊を催涙弾で悶えのたうち回らせることに成功。

「よし、今だ!」

 アリステルの合図で若者たちが一斉に脚目掛けて矢を放つ。
 下手な鉄砲数撃ちゃ何とやらというが、それらは熊のあちこちに突き刺さり確実に熊を弱らせる。
 うち一本は脚に命中、腱に当たったのか動きが鈍り始めたところで嵐の錫の兵隊が飛び込んだ。
 熊に目掛けて電撃を発射すればスタンガンを撃たれたかのように熊は沈黙。その間に残りの若者とアリステルでそれぞれ腕と脚の腱を斬り、それから急所と頸動脈も斬りつける。
 流石に急所と動脈両方やられて死なない動物などおらず、しばらくして熊の息の根は完全に止まった。
 予め動脈を斬ったのもありそのまま血抜きもスムーズに終わらせられる段階である。

「や、やった……!熊を倒した……!!」
「み、みなさんのおかげです!!ありがとうございます!!」

 熊を倒した感動と、しばらくの食糧の大きな糧となるだろう安堵に若者たちはぺこぺこと頭を下げる。

「無事仕留められてよかった……これならしばらく困らないね」
「そうだな!でも肉ばっかりじゃ栄養偏っちまうよなあ……お」

 ふと嵐の視界に近くに生えていた草が入る。
 ぶち、と引っこ抜くと根の部分から芋のようなものがひっついていた。UDCアースの日本で言う所謂さつまいものような感じのものだ。

「これ食えそうじゃね?」
「あ、いいところにあったね!それよくダークセイヴァーで食べられてる奴だよ。もしかしたら他にもあるかも」

 アリステルも辺りを見回し、食用にできそうな植物を片っ端から引っこ抜き始める。
 ついでに若者たちを呼んで、どれが食用として使えるのかもいい機会だからと教えることにした。
 自分たちがいつでも助けにいけるワケではない為、こうした知識や経験を積ませることは若者たちにとって間違いなく将来の糧になるに違いない。
 この場所で彼らが生きていけるように今できる最大限のことはしてやりたいと、アリステルも嵐も切に思ったのであった。

 ――熊肉(とその他諸々)、ゲットだぜ!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

乱獅子・梓
【綾(f02235)と】
俺たちが代わりに戦って
食糧調達してやれば話は早いが…
それじゃあ次に繋がらないんだよな
毎回猟兵が手伝いに行くわけにはいかないし
あくまで戦ってトドメをさすのは
砦の若者たちに任せたいところだ

綾とともに茂みに隠れて
しばらくは狩りの様子を見守る
軽い怪我は敢えて目を瞑る
この先全く怪我せず過ごせるなんてこと無いだろうからな
もし死角からの奇襲などの危険が迫れば
UC発動し、近くの石ころをドラゴンに変え敵の動きを妨害
倒すのが目的ではないので
妨害完了したらすぐにUC解除

ああ、根本から鍛えてやるわけだな
戦い慣れしている綾なら
教えるのは問題ないと思うが…
…なんか妙にテンション高いのが不安だな


灰神楽・綾
【梓(f25851)と】
お腹が空いてる人がいたら
「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えよ」
ということわざもあるしね
「自分たちが仕留めた」という
自信を付けさせることも大事だと思うし

まずは森の茂みに隠れつつ
若者たちに見つからないようについていく
これから起こることはただの自然現象だ、いいね?
UC発動し、紅い蝶を周囲に放つ
見た目はただの無害な蝶だけど
彼らが戦う獲物に触れることで
生命力を少しずつ少しずつ削っていく
こっそり弱らせていけば
若者たちも自力で仕留めやすくなるだろう

砦に戻ったら、若い人たちを集めて
今後のために戦術の指導をしたり
模擬戦したりするのも良いかもね
楽しげにナイフをクルクル回しつつ



●可愛い子には狩りをさせよ
 さて、先程から猟兵たちが狩りの手伝いをしているワケであるがそれは砦の若者たちが慣れていないのもあってこそ。

「お腹が空いている人がいたら「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えよ」ということわざもあるしね」
「あくまで戦ってトドメを刺すのは砦の若者たちに任せたいところだな」
「自分たちが仕留めた――という自信をつけさせることも大事だと思うしね」
「だな。次に繋がらなきゃ意味がない」

 というワケで、乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)と灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)はずっと森の茂みから気取られぬ程度に若者たちについていき様子を見守っていた。
 他の猟兵たちの手解きもあり、若者たちは大分狩りに慣れてきたようだ――が、なんとまた一回り大きな熊を発見している。
 流石にあの規模の熊はこちらも手を加えなければ難しいだろう……何か意を決したようで綾が口を開いた。

「梓」
「何だ?」
「これから起こることは"ただの自然現象"だ、いいね?」
「お前何を――」

 紅い蝶が梓の視界に入りなる程な、と納得する。
 ユーベルコード【バタフライ・ブロッサム】……綾の装備している武器を一見無害な紅い蝶の群れに変じさせ触れさせることで相手の体力を奪うそれを、綾は不自然になりすぎない程度の規模で熊へと放った。
 夜に覆われた森の中を舞う紅い蝶の群れはさながら幻想的で、茂みから熊の隙を伺う若者たちの視線をも釘付けにしその間に一匹が熊の鼻にぴと、と止まる。
 すると先程まで元気よくのそのそと移動していた熊の動きが鈍り始めた。
 しかしその蝶のせいによるものだと若者たちが気づくワケがなく、むしろ弱っているのをチャンスと受け取ったのか教えてもらった通りに熊を狩ろうと動き始める。
 まずは矢を放ち牽制し、その次に脚の腱を断つ。まだまだ素人さが目立つ動きだが、弱っている熊はそれに対抗する余力すらなくせいぜい若者の腕を掠める程度の反撃しかできない。
 自分が弱らされていることがわからぬまま、急所と頸動脈を念入りに切り裂かれて生命を終える。
 若者がおそるおそるつついてみるとぴくりとも動かず、自分たちで仕留めたという実感から思わず飛び跳ねたり喜んで抱き合ったり……梓と綾の目から見ても大きな自信に繋がったであろうことは確かだった。

「うんうん、いい感じに自信に繋がってるね」
「"ただの自然現象"しか起きてないからな」

 誰も紅い蝶が弱らせているなどとは思うまい。
 そのまま綾は引き続きユーベルコードで獲物を密かに弱らせていく――が、他の猟兵たちの教え方が上手かったのだろう、然程そこまで弱らせる必要はないと判断した時には手を出さずに見守る。
 もしそれで怪我をしたとしても二人は見守るだけだった。
 必ずしも怪我をせずに済むということはない故に……だがそれも他の猟兵らに教えてもらった応急処置法の練習と割り切って若者たちは狩りに励んでいる。
 全ては砦のみんなに楽をさせてやる為なのだろう、弱音一つ吐くことなく若者たちは一つ一つ実践を重ねている。
 とはいえ、ここでもし奇襲があった場合は流石に自分たちが手を出さねばなるまい。
 若者たちの死角から巨大な蝙蝠が姿を表そうとしているのが目に入ると同時に梓がユーベルコード【万物竜転(サムシングドラゴン)】を発動し、すぐ近くの石ころを竜へと変えて威嚇する。
 竜は万物の頂点に立つとも言われる強大な生物。弱肉強食が本能で根付いている動物は竜がいる、ただそれだけで恐れる。
 蝙蝠も例外ではなく、石が姿を変えた竜が睨みつけるだけで恐れ慄くように逃げていった。

「よし」

 それを確認してすぐに梓はユーベルコードを解除し、元の石ころに戻す。
 その間に若者たちはもう十二分な程の量を確保したようでそろそろ砦に戻るようだ。
 砦に戻っていく若者たちを後ろからのんびりと置いながら綾が口を開く。

「……砦に戻ったら、若い人たちを集めて今後の為に戦術の指導をしたり、模擬戦したりするのも良いかもね」
「ああ、根本から鍛えてやるワケだな?いいんじゃないか」
「俺たちがいつでも助けに行けるんじゃないし、せっかくこういった時間ができたんなら有効活用しないとね」
「そうだな。戦い慣れしてる綾なら教えるのは問題ないと思うが……」

 梓は横目で綾を見る。
 ふふふ、と笑って楽しそうに先程からナイフをくるくる回したりジャグリングしたりとご機嫌な様子が見て取れた。
 端的に言ってしまえば、テンションが先程からすこぶる高い。

「が、何?」
「……妙にテンション高いのが不安だな」
「えー?そんなことないと思うけど」
「いやどう見てもテンション高いんだが?」
「ははは、気の所為じゃない?」

 恐らく綾の戦闘狂の血が騒いでいるのか、はたまた。
 普通の人間である砦の人々に対してスパルタじみたようなことはしないだろうとは思うのだが、どうしてもそのテンションの高さに不安を覚えずにはいられない梓であった……

●エピローグ
 して、大量の収穫を得ることに成功した猟兵たちと砦の若者一同。
 巨大な熊二匹、狼や鳥等が十数匹、食用可能な植物各種諸々……それはもう大収穫と言って指し支えない量を持ち帰ることに成功した。
 人類砦の規模を考えるとと当分は困らないであろう量である。

 その大量の獲物を前にした砦の人々の反応は、ある者は夢でも見ているのかというぐらい目を輝かせ、またある者はこうして食事にありつけることの嬉しさに涙した。
 皆が皆一様に、猟兵たちに本当にありがとうと感謝し続ける。
 あなたたちのおかげでこうして生きていられるのだと、この恩は決して忘れないと。
 猟兵らが教えてくれたこと、砦を救ってくれたことは永遠に語り継いでいく……などと、そこまで言われると大袈裟な気もして猟兵たちによってはむず痒くなりそうになった者もいるかもしれない。

 ただ一つ確実に言えるのは、こうして皆で狩りをして手に入れたもので食べる食事は最高に美味かったということだ。
 皆で手を合わせいただきますと言って口にする食事。
 猟兵たちにとっては連戦の後からの狩りという過程を経て故か、砦の規模が小さい故に調味料もそこまで数があるワケではなく味の薄いものであったが、それ故の優しさと砦の人々の真心が詰まった味だと感じた。
 
 食事が終われば、残された時間を使って若者たちを鍛え上げたり、食用可能な植物の知識を他の者にも共有したり、子供に今まで旅してきた場所の話を語ってやったり――
 これが最初で最後の出会いになるかもしれないからこそ、猟兵たちは砦の人々に様々なものを残せるよう最大限尽くした。
 力がなく、オブリビオンに対して震えて待つしかできなくとも、その最中に悲鳴が聞こえればその安否を気遣うことのできる優しい心を持つ人々にこの先も生き残って欲しいから。
 そういった人たちが少しでも多く生きていけるように……

 きっと、こうした人々が後にダークセイヴァーを大きく変えていくと。
 かの聖女であった娘のような者が二度と産まれぬ世界を、彼らならきっと作っていけるだろうと、確信していたから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月10日


挿絵イラスト