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恋の成就は絶望と共に

#UDCアース

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#UDCアース


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 陽の光が完全に落ちた頃――薄暗いる教室の中で、生徒たちは集まる。
 大多数の女生徒と、ごく一部の少年。
 一見ばらばらに見えるその集団の共通点は一つ――手に一冊の赤い本を持っているということ。
 勉強に使うには酷く分厚い、アンティークなテイストの本。
 それは恋を叶えてくれる、魔法の本。
 少なくとも……彼女らは、そう信じていた。

「どう、して……」
「嫌、嫌ァ!」
 小さな光だけが灯された薄暗い教室の中で、生徒たちの悲鳴が響き渡る。
 しかしそれも一分にも満たない僅かな時間……幾ばくかの時が流れれば、そこにあるのは物言わぬ肉の塊。

 締め切られたはずの部屋に一陣の風が吹けば、全ては闇の中。
 何かが蠢く音だけが、辺りに響く。


「皆、事件だよ」
 その白髪をたなびかせながら、中御門・千歳(死際の悪魔召喚師・f12285)はそう猟兵たちに語り掛ける。
 千歳によれば事件が起こるのはUDCアースに存在するとある学園。
 そこで邪教の教団が邪神を召喚しようとしているらしいのだ。

「どうやら敵とある魔導書を学園内で流行らせているらしいのさ――恋が叶う、魔法の本……なんて言ってね」
 恋が叶う、魔法の本――その正体は読んだ者の魂を喰らうという、魔導書だというのだ。
 邪教の教団はその魔導書を通じて学園の生徒たちの魂を集め、それを魔力に変えることで邪神召喚の儀式を行なおうしている……というのが予知の内容だ。
 その魔導書が出回る段階で既に数名の犠牲者が出ており、ここ数日で数名の生徒が意識不明となり救急搬送されたという事件も発生しているらしい。

「まずは生徒たちから魔導書を回収しておくれよ。その魔導書は写本みたいでね、けっこうな数が既に持ち込まれているみたいなんだよ」
 特別な時間に学園内で読むことで恋が成就するという魔法の本――その噂は出鱈目。
 だが、それを信じて持つ生徒たちからその魔導書を回収することは一筋縄ではいかないだろう。
 そもそも話を聞き出すことが難しい――何故なら色恋沙汰の話は、とてもナイーブな内容なのだから。
 もしも正面から回収するのであれば、生徒たちに心を開いて貰う必要があるのだ。
 場合によっては生徒たちが隠しそうな場所を探し当て、秘密裏に回収するというのも一つの手なのかもしれない。

「その魔導書を回収し終えたなら、一ヵ所に纏めて燃やしちまうとしようか。当然魔導書だって素直には燃やされちゃくれないだろうさ……戦闘になるだろうねぇ」
 魂を喰らうという魔導書……写本故に原典程の力を持たないものの、相対する猟兵たちに対し精神攻撃を行なうだけの力は持っているだろう。
 絶望の記憶を呼び起こされたり、魂を揺さぶられ混乱させられたり……それこそ、幻覚すら見せられるかもしれない。
 いずれにせよ相対する為には心を強く持つこと、それが重要なのだ。

「魂喰らいの魔導書を処分出来たなら一件落着……ってなれば良いんだけどね、既に蓄えられた魔力で不完全でも復活しちまうみたいだよ、邪神がさ」
 邪教の教団による召喚陣は既に完成しており、破壊も困難だと言うのだ。
 故に既に蓄えられている魔力で行なわれる召喚自体ついては、完全には阻止する術は無いだろう。
 しかし邪神とは言えあくまで不完全な状態で召喚されたもの――本来であれば立ち向かうことすら困難な強大な邪神であれ、見事魔導書を処分出来ているのならば正面から打ち倒すこととて可能なのだ。

「まずは上手いこと本を回収しておくれよ……それじゃあ、宜しく頼むねぇ」
 独特の笑い声をあげながら、グリモア猟兵は皆を送り出す。
 事件の無事の解決を祈りながら。


きみはる
●ご挨拶
 お世話になります、きみはるです。
 今回は学園を舞台に事件解決に挑んで頂きます。

●依頼について
 一章:冒険です。
 学生(中学生くらいをイメージ)たちから、魔導書を回収して下さい。本来であれば目立つ本ではありますが、恋の成就という(偽の)噂から、本人たちは匠に隠し持っています。
 依頼当日の夜に集まって読むことが予定されていることから、本自体は必ず学園内にあるものとします。
 上手く生徒たちから信頼を得て、本を回収して下さい。
 もしくは、上手く情報を収集し、本を盗み出して下さい。

 二章:集団戦です。
 敵は魂喰らいの魔導書。猟兵たちに絶望の記憶を見せたり、混乱させたり、幻覚を見せたりしますので、気を強く持ち立ち向かって下さい。
 本は燃やし始めていますので、幻覚に打ち勝ちさえすれば敵は自然消滅致します。
 その為どう絶望し、どう正気を取り戻すのか、その心の葛藤を主眼に取り組んで頂ければと考えております。

 三章:ボス戦です。
 これまでのうっ憤を晴らすように、正面から邪神に挑んで下さい。
 不完全とは言え強力な邪神、傷つきながらも立ち向かう姿が上手く描けたらと思います。

●プレイングについて
 9月3日(木)8時31分~5日(土)昼を一章のプレイング募集期間とさせて頂きます。
 二章以降は同様にMSページにて告知させて頂きます。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『UDC召喚阻止』

POW   :    UDCの発生原因となりそうなものを取り除く

SPD   :    校内をくまなく調べ、怪しげな物品や痕跡がないか探す

WIZ   :    生徒達に聞き込みを行い、UDCの出現条件を推理する

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

琴平・琴子
恋の事なんて分かりませんけど
彼女たちにとってはそれ程叶えたい事なんですよね

私も恋をしているとフリをして
その魔導書がどこにあるのか聞けたら…
数人でお喋りしてるお姉様方のお話に聞き耳

ねえお姉様方、そのお話お伺いしても?
聞き耳立ててお行儀悪い事してごめんなさい
私も叶えたい恋があるんです
年上の先輩で、小さな私なんか見向きもされないでしょうから
どうしてもその魔導書が欲しくて…
いっぱいあるって聞いたのですが私全然見つける事ができなくて…
何処かにあるって、聞いた事ないですか?

本を貰えればいいですが
貰えなければお姉様方からその在り処
どこにあったかを聞いて探します




「ねえお姉様方、そのお話お伺いしても?」
 恋を成就させるという魔法の本――噂の魔導書の話をしているらしき少女たちを見つけ、琴平・琴子(まえむきのあし・f27172)はそう声をかける。
 琴子が身を包んでいるのは、UDC組織に手配してもらった学園の小等部の衣装。
 その恰好から見慣れぬ彼女が部外者では無いと理解した少女たちは、警戒をすること無く琴子へと言葉を返す。

「貴方は……小等部の子?」
「はい、聞き耳立てるなんてお行儀悪い事してごめんなさい……私も叶えたい恋があるんです」
 琴子が演じるのは、恋に恋するちょっとおませな小学生。
 しかしその実態は……清く正しく凛々しく、むしろ真面目一辺倒とも言って良いほどの清純派だ。

(恋の事なんて分かりませんけど……彼女たちにとってはそれ程叶えたい事なんですよね)
 琴子にとって、正直恋愛感情などピンと来るものでは無い。
 家族以外の存在に対し警戒心を持つ彼女にとって、無条件に他人に好意を向けるという心の機微が、いまいち理解が出来ない。
 だが明らかに怪しい噂に乗ってしまうほどに、学園の少女たちにとっては重要なことなのだろうと……理解出来ないながらに、そう思うのだ。
 
「いっぱいあるって聞いたのですが私全然見つける事ができなくて……何処かにあるって、聞いた事ないですか?」
「私たちは持っていないけど、不思議と学園の中に隠されていると聞くわ。図書館が特に何冊も見つかったとかじゃなかったかしら?」
 嘘か本当かは判断がつかないが、どうやら少女たち自身は魔導書を持っていない様子。
 だが同時に、その魔導書が手に入れることが出来たという噂が多数聞かれたという場所の情報は得ることが出来た彼女は感謝の言葉を述べ、その場を後にする。
 頑張ってね、と優しい微笑みを浮かべる少女たちに罪悪感を感じながらも向かうのは、もちろん少女たちから聞いた場所――学園内に存在する大きな図書館だ。

(頑張らなきゃ……)
 予知された事件のタイミングまで、未だ時間はある……だが何冊持ち込まれているかも分からない魔導書たちを全て見つける為には、時間などいくらあっても足りないのだ。

 学校という彼女にとって苦い記憶も残るその戦場で、少女は歩く。
 己の心の支えである、防犯ブザーを握りしめながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ハルア・ガーラント
【WIZ】
校長先生に事情をお話して音楽教科の臨時職員に
う、ちょっと緊張します

授業の一環として有名なミュージカル映画のDVDを放映
恋を禁じられていた教会の聖女が、教会をこっそり抜け出した際に神の存在を信じない青年と出逢い、恋に落ち結ばれるお話です
今恋をしている子達には素敵なものに映るはず

DVD終了後に映画のテーマソングをUC発動しながら[優しさを込めて歌唱]
信頼の感情を与えます

聖女と呼ばれつつも彼女は自らの力で努力し、最後に少しだけ神様に祈って恋を成就させました
それは時として辛いものですが必ずあなた達の糧になります
――最初から縋るものを持っている人、休み時間中に「それ」を私に持ってきて下さいね




「う、ちょっと緊張します」
 教師らしいスーツに身を包み、変装の為の伊達眼鏡をつけながら……ハルア・ガーラント(宵啼鳥・f23517)はそう小さく言葉を零す。
 彼女はUDC組織のバックアップを受けながら、音楽教科の臨時職員として潜入を実施していた。
 ダークセイヴァー出身の彼女にとって、学校というものには正直馴染みは無い。
 その為教師という立場が何なのかいまいち理解しないまま潜入をしてしまったのだが、それが人を教え導く立場なのだと改めて聞き、そこまで自分に対し自信の無い彼女は今になって急に緊張し始めてしまったのだ。

「き、今日は初日なので、オリエンテーションを兼ねてミュージカル映画のDVDでも見ましょうか!」
 そんなハルアがUDC組織に協力を仰ぎ手配してもらったのは、有名なミュージカル映画のDVD――その内容は恋を禁じられていた教会の聖女が、教会をこっそり抜け出した際に神の存在を信じない青年と出逢い、恋に落ち結ばれるお話だ。
 今恋に落ちている少女たちの心に出来るだけ響くものを……そうリクエストした結果得られたDVDを一緒に見ていたハルアの表情は、少女たちと同じく薄く赤らみ、真剣に見つめていたという。

(あっ、そうだ!)
 思わず映画に見入ってしまっていたハルアは、クライマックスと共に流れるテーマソングを耳にし、我を取り戻す。
 ハルアが用意した作戦は、ここからが正念場なのだ。
「♪~~」
 優しく口ずさむのは、今まさに流れている映画のテーマソング。
 そしてその旋律に沿えるのは、彼女のUC――ディアネスソングの力。
 対象の敵意や疑念を取り去り協力的な感情を植え付けるそのUCは、ハルアの美声と共に生徒たちの心へと静かに染み込んでいくのだ。

「聖女と呼ばれつつも彼女は自らの力で努力し、最後に少しだけ神様に祈って恋を成就させました。それは時として辛いものですが必ずあなた達の糧になります」
 映画も終わり、心を奪われるような旋律も立ち消え――余韻に浸るようにぼんやりとハルアを見つめる生徒たちと視線を絡め、彼女は静かに……だが力強く言葉をかける。

「最初から縋るものを持っている人、休み時間中に“それ”を私に持ってきて下さいね」
 どれだけの子供たちに……自分の言葉が届いているだろうか。
 そんな不安を感じながらも、届いて欲しいとメッセージを放つのだ。
 はっとした表情を浮かべる少女たちと、しっかりと視線を合わせながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

葛籠雄・九雀
SPD

恋はさておき、魔導書が欲しい。
…が、焼かねばならんのであるよなあ。はあ…。
仕方あるまい、一時でも見られれば良しとしようぞ。

ふむ。
UDC組織にも頼んで、まずは犠牲者たちの行動の中に共通点がなかったか調べるであるか。同時に、スマートフォンにて誰が所持しているかなどの噂などがないか【情報収集】…しかし苦手であるな、この機械は…。
後は、それらの情報から、写本を入手したと思しき生徒を特定、そ奴らの電話番号やアドレスを組織より入手し、不安にさせるよう「本を盗んだぞ」とでも伝える。それで本を確認してくれると助かるのであるがな。
生徒が本を取り出したら、適当に気絶でもさせて回収するである。

アドリブ連携歓迎




「恋はさておき、魔導書が欲しい……が、焼かねばならんのであるよなあ。はあ……」
 物憂げな溜息を零しながら、葛籠雄・九雀(支離滅裂な仮面・f17337)は歩く。
 好奇心が強く収取癖のある九雀にとって、魂を喰らう魔導書など垂涎ものの一品だ。
 しかし当然それが許されないこともまた理解をしているが故に、葛藤を経て諦めの境地へと達し、しかして酷く未練がましく言葉を零すのだ。
「仕方あるまい、一時でも見られれば良しとしようぞ」
 せめて一目見ることで己が心を慰めんと考え、歩を進めていた。

「ふむ……まずは犠牲者たちの行動の中に共通点がなかったか調べるであるか」
 九雀が取り出したのは、UDCアースとしては一般的なスマートフォン。
 そして連絡を取るのは、猟兵と協力関係にある組織――UDC組織だ。
 どのような姿を取っていても違和感を与えないという猟兵の能力故に、ヒーローマスクである九雀であっても直接の情報収集自体は不可能では無い。
 しかし彼は自身が異端者であり、己が言動が世間一般では“壊れている”と評されることを良く理解しているが故に、その手段を排除しているのだ。

「しかし苦手であるな、この機械は……」
 慣れぬ手つきでスマートフォンを操作する九雀。
 暗器の類であれば取り扱いは得意だが、こうしたハイテク機器はどうにもなれない。
 しかし四苦八苦しながらも何とかUDC組織へと連絡を取り、目当ての情報――既に発生した被害者である、今も尚意識不明の重体となっている生徒たちの情報を得ることに成功するのであった。

「さて、参ろうぞ」
 現在出ている被害者とは、それ即ち魔導書が学園中に広まる過程で魔導書を手に入れた生徒たち。
 それは即ち、その上流には黒幕である邪教の教団に近しい者が存在し、その下流には被害者の生徒たち経由で魔導書を手に入れた者たちの存在するはず。
 故に九雀は被害者となった生徒の交友関係についても情報を手に入れ、半ば非合法な方法でその連絡先さえ手に入れたのだ。

「生徒など、適当に気絶でもさせるのである」
 童など、不安にさせるよう軽く揺さぶれば直ぐにボロを出す。
 あとは脅すなり気絶させるなどして、魔導書を回収すれば良いのだ。

 名案だとばかりに喉を鳴らし、知恵深き仮面は学園へと侵入する。
 ふらりふらりと、壊れたような足取りで。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『写本・魂喰らいの魔導書』

POW   :    其方の魂を喰らってやろう
【複製された古代の魔術師】の霊を召喚する。これは【触れた者の絶望の記憶を呼び起こす影】や【見た者の精神を揺さぶる揺らめく光】で攻撃する能力を持つ。
SPD   :    その喉で鳴いてみせよ
【思わず絶叫をせずにはいられないような幻覚】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    魂の味、これぞ愉悦
自身の肉体を【触れる者の魂を吸い脱力させる黒い粘液】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 薄暗い校舎の裏手、学園の外からは見ることが出来ないその敷地で、山のように積み上げられた赤い本――魔導書が存在した。
 それは猟兵たちがUDC組織と共に協力し、学園中から回収した魔導書の山。
 恐らくは十分に回収出来たと判断されたが故に、生徒たちを強制的に帰宅させた上で一ヵ所に纏められていたのだ。

「いきますよ……」
 猟兵たちに見守られながらも、UDC組織の面々がその魔導書へと何かしらの液体をかけ、そして火を放った。
 煌々と燃え上がる炎、しかし燃やされる本もまた……力持つ魔導書であることは確かなのだろう――その炎の強さに対し、明らかに燃え上がるスピードは遅々としたものであった。

「良くも我に、このような行ないを……」
 燃え上がる炎の中から声が聞こえたかと思えば、炎から逃れるように魔導書から滲み出た黒い“何か”が、人を形どるでは無いか。
 これぞ予知に聞いていた魂を喰らうという魔導書の中身なのだろう。

「炎とは相性が悪い……ならば其方たちの魂を喰らい糧とし、傷を癒させてもらおう」
 撤退するUDC組織の職員たちを尻目に、猟兵たちは魂喰らいの魔導書へと相対する。
 彼らが燃え尽きるまで、この場に留め置かねばならないのだと、そう確固たる意志をその瞳に滾らせながら。

 魂を喰われぬよう、その心を強く持ちながら。
琴平・琴子
――影
帰りの通学路の夕陽に照らされていない
何かがいた暗いところに似てる
怖くて、目を逸らして歩いた道

誰かが手招きして
行ってはいけないのは分かってて
そちらは駄目だと嫌だと震えて叫べなくて
引き摺り込まれそうになって

――でも、
私がいるのはそこじゃない
私が今此処にいるのは
あの日助けられたから
そんな所に居る筈がない

大人しく燃えれば宜しいのに
女性の過去に触れてタダで済むとでも?
足元から巻きつく黒い茨で体を締め上げ、嫌悪によって伸びる棘はさぞ痛いでしょうね

焔の中で燃ゆる本は願いを籠められたものだったのかもしれない
けれど邪悪に転じた今では嫌悪でしかない

――お前にあげる魂なんてこれっぽっちもありませんよ



「これ、は……」
 琴平・琴子(まえむきのあし・f27172)の瞳に射し込むのは、鮮やかな夕焼け。
 目も眩むような日差しに目を細めれば、ふとその視界に色が抜け落ちたような真っ暗な空間が目に入る。
 それは照り付けるような夕陽が遮られた小道。
 何か不気味なものが隠れするでいるような恐怖を感じ――かつて目を剃らして歩いた道。

「駄目……」
 駄目だと分かっているはずなのに、彼女の足はその意思に反し止まってはくれない。
 ふと急に表れる影の中から手招きする存在。
 彼女自身も駄目だと分かっていて、でも嫌だと叫ぶことも出来ず。
 唯唯震えていることしか出来ない彼女を、その手は闇へと引き釣りこもうとするのだ。

「これは……記憶」
 それは彼女にとって、恐怖の記憶。
 これこそが、グリモアベースで聞いた精神攻撃なのだろうと……恐怖に震える琴子自身を別人のように、他人事のように見つめる自分の存在に気付く。
 身体の自由は効かない。
 何故ならこれは、あくまで記憶を思い出しているに過ぎないのだから。

「でも、私がいるのはそこじゃない」
 抗いようの無い光景。
 だが、いやだからこそ――琴子は恐怖に身がすくみながらも、冷静さを失わず立っていられるのだ。
 何故なら……
「私が今此処にいるのは、あの日助けられたから……そんな所に居る筈がない」
 何故なら彼女は知っているから、あの日助けてくれた王子様の存在を。

「大人しく燃えれば宜しいのに……女性の過去に触れてタダで済むとでも?」
 焦点を結び直した瞳が捉えるは、こちらを見下すような視線を投げる黒塗りの美丈夫。
 影のように揺らめく魔術師を、足元から表れた棘が絡めとる。
 それは琴子の嫌悪と共に放たれる乙女の怒り――不躾に心をかき乱す者へと与えられる天誅。
 彼女の怒りを代弁するかのように、棘は深く締め付け、その身に刃を突き立てるのだ。

「お前にあげる魂なんてこれっぽっちもありませんよ」
 そう燃え上がる本を見下ろす少女の瞳は、酷く冷たいものであったという。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニーグラート・ジズ(サポート)
長寿のドラゴニアンの少女です。
食べれると判断したものは何でも食いつく性格で、物体でもオブリビオンでも腹が減っていれば食べます。
それ以外は能天気で優しく、甘えん坊な面もあります。

戦闘方法は両手の武器(右腕呑食口,左腕過食顎)を用い拳闘士のように殴ったり引っ掻いて抉ったりする近接スタイルです。敵の攻撃や策略は避けたり防いだりせず、それさえも食べようとします。
仲間の猟兵や非戦闘員からの提案を聞くくらいには理性はあります。




「お父さん……お母さん……あぁ、私は、わたし、は……」
 ニーグラート・ジズ(黒龍とハイエルフの娘・f23326)は己が胸中が嵐のように掻き乱されるのを感じていた。
 彼女が見ていたのは過去の記憶。
 彼女にとって猟兵となる切っ掛けの一つにもなった記憶。
 そして何より……全てを失った悲しみの記憶。

「……」
 記憶の中の彼女は、言葉を発しない。
 無意識の涙が頬を伝うも、周囲に響く咀嚼音は止まらない。
 一度喰らい付いたのならば、全てを喰らわねばならないのだと父に教えられたから。
 そして何より、己が理性さえ喰らう抑えきれない飢餓感が、喰らい尽くせと命令するのだ。
 それが――例え喰らっている獲物が、敬愛すべき両親であっても。

「あぁああぁああああ!」
 其の者の右手は――全てを飲み込む右手。
 その爪は彼女の牙であり、手のひらは胃壁でもある。
 荒れ狂うように振るえば、周囲のコンクリートを、地面を、そしてこちらを包み込まんと漂う影を喰らい吸い込む。
 其の者の左手は――全てを喰いちぎる左手。
 その指は望むものを掴み、容易に喰いちぎる。
 己が心をかき乱す闇を振り払えば、その中から現れるは愕然とした面持ちで見つめる黒塗りの魔術。
 肉薄する勢いのまま掴めばその四肢は容易に崩れ、抉り取った影をニーグラートは咀嚼する。

「全然足りない……あーーーーーーーんっ!」
 いくら影を喰らおうとも、彼女の飢餓感は満たされることは無い。
 荒れ狂う少女が鎮まったのは……後に周囲の建物をたらふく喰らってからだという。

成功 🔵​🔵​🔴​

六条寺・瑠璃緒(サポート)
脇役にも満たない三下に用はないんだ
僕はスタアだからね

派手に立ち回るのは好きじゃない、疲れるだろう?
三下相手に僕が向き合う道理がないからね

基本的にはSerenadeでオーラ防御を展開し、適宜カウンターを返すスタイル

数ばかりの雑兵相手には精神攻撃を交えて【君に依る葬送】
視線を遣るのさえ惜しいくらいだ
もしも敵同士精神や情報を共有して居るならば尚良いね

錯乱する敵たちを介錯する様に、Requiemによる吸血と生命力吸収で刈り取ろう

君達を憐れに思うよ
ついて行く相手さえ間違えなければ、こんな終わり方をする必要もなかっただろうに
せめて次は幸せに生まれて来ると良い




「脇役にも満たない三下に用はないんだ……僕はスタアだからね」
 物憂げな表情を浮かべ、その美少年はゆっくりと言葉を零す。
 その言葉の通り、彼は国民的スタアであった。
 表舞台へと姿を現す度に脚光を、圧倒的爪痕を残す異端児。
 次代を越えその存在を刻む帝都を漂う語り草。
 神とさえ称えられる――否、真の神である六条寺・瑠璃緒(常夜に沈む・f22979)は眼前に繰り広げられる光景に、詰まら無さそうに息を吐く。

「派手に立ち回るのは好きじゃない、疲れるだろう? 三下相手に僕が向き合う道理がないからね」
 そんな彼の一人語りをかき消すように、周囲では阿鼻叫喚の声があがる。
 それは魂喰らいの魔導書――影塗りの魔術師により幻覚を見せつけられたUDC職員たちによるものだ。
 猟兵であれば精々絶叫をしてしまうかどうか、という精神攻撃。
 しかしそれは一般人よりは精強であろうとも決して猟兵という壁を越えられない彼らにとっては、容易に心を壊すほどに強力なものなのだ。

 全く……何と品の無い人々だと溜息を吐くも、彼は決して見捨てない。
 三下役者にかける時間は無くとも、その三下にかき回される観客にかける慈悲は持ち合わせているのだから。

「君達を憐れに思うよ……こんな舞台を見させられてさ」
 瑠璃緒が放つ結界に包まれれば、呼吸すら出来ず喉を掻きむしっていたUDC職員たちは段々と落ち着きを取り戻す。
 それは彼が放った同志諸君に捧ぐ愛(リーベストラウム)――味方に対し精神攻撃への耐性を与える強固な結界なのだ。

「次はまともな舞台を見せてあげるよ」
 身体を蝕む代償によりつるりと垂れる紅血を拭い紅と変え、六条寺・瑠璃緒は前へと進む。
 この下らない舞台に幕を下ろす為に……この後待ち受けるであろう痛烈な批判(ブーイング)を、絶賛(スタンディングオベーション)へと変える為に。

成功 🔵​🔵​🔴​

ジニア・ドグダラ
葛籠雄・九雀(f17337)さんと

セレニア……?どうして、此処に?
貴女は、確かに「迎えた」はず。
いえ、これも幻覚でしょう。それでもまた会えて……!?

待って!まだ、言ってない事が!
消えないで!話したい事もたくさん!
セレニア――『いい加減、鬱陶しい!』

『あれは過去。既に死した者』
『そして亡骸を共に弔った存在だろうが!』
『之如きの幻覚で己が記憶を疑うか』
『気を戻せ!共に戦う者を忘れるな!』

正気に戻ったならば、戦闘に徹す葛籠雄さんへの支援のため【高速詠唱】にて即座に死霊の弾丸を作成、拳銃にて敵に発射。
命中後は更に詠唱を継続、数多の死霊を呼び出し敵自身や召喚した霊を【呪詛】に蝕ませ行動を縛り付けます。


葛籠雄・九雀
ジニアちゃん(f01191)と

さて、燃えて灰になるまでか。
ジニアちゃんと連携し、盾役に専念するであるよ。
エピフィルム+【おびき寄せ、挑発、かばう】にて引きつけ、【逃げ足、ダッシュ、ジャンプ】にて回避。何せこちらは魂二つ、よい餌だと思わぬか?
まあ、仮面のオレに魂があるかは知らぬがな!

しかし、出てくるのが『オレ』か。
オレが、笑う赤毛の男を縊っておるな。知らぬ男である。
第一、これ程鮮明に顔がわかるなど――これは『誰』の記憶で、絶望なのであろうなあ。
よもやこの体のものか。
そうだとしたら、オレは。

オレはやはり、お前を生かしてやらねばならん。
今度こそ、今生こそ。

だから生憎オレは、絶望などせぬよ。きっとな。




「さて、燃えて灰になるまでか……」
 暗闇の中で煌々と燃え上がる書物を見つめ、葛籠雄・九雀(支離滅裂な仮面・f17337)はそう言葉を零す。
 はてさて、それまでの時間は如何程か。
 それは定かでは無いものの、しかしその時間を稼がねばならないと、九雀はそう覚悟を決める。
 何故ならばその背後には苦しそうに譫言を零す、ジニア・ドグダラ(白光の眠りを守る者・f01191)の姿があるのだから。

「セレニア? どうして……」
 絶望の記憶に囚われた彼女――その彼女を魂を喰らわんと、炎から逃れんと黒き触手が宙を舞う。
 その触手に彼女を捉えさせまいと、九雀は時に駆け、時に跳び、時に己に注意を引きながら、時を稼ぐのだ。

「こういうことは、さして得意でもないのであるが」
 他者を庇う戦い方は得意でも無いのだが、しかし仲間を見捨てるほどに薄情でも無い。
 脳裏を駆け巡る映像を見せつけられながらも、しかしその視線はしっかりと迫り来る触手を見つめる――こうして意識をはっきりとしていられるのは、やはりここに魂が二つあるが故なのか。

「しかし、出てくるのが“オレ”か」
 九雀が見ているのは、彼自身が赤毛の男を絞め殺している様子。
 今まさに命を奪われようとしながらも笑う男の顔を見ても尚、彼はそれが誰なのか理解することが出来ない。
「……よもや、よもやこの体のものか。そうだとしたら、オレは」
 であるならば考えられることは一つ。
 この幻覚は、九雀が借りているこの身体のものなのだろう。
 すとんと、何かが腑に落ちたような気がする。
 だから、彼が背負うジニアと違い、己は意識を失わずに済んでいるのだろう。
 それは決して、己が人ならざる者であるが故では無いのだ。

「オレはやはり、お前を生かしてやらねばならん……今度こそ、今生こそ」
 果たしてその言葉は、誰に向けたものか。
 仮面は決して表情も変えず、しかしその言葉は決意に満ちていた。


「セレニア?……どうして、此処に? 貴女は、確かに“迎えた”はず」
 ゆらゆらと、ふわふわと。
 朧げな意識に身体を揺らすジニアが見つめるのは、オブリビオンと化したはずの親友――セレニア・ミグダニア。
 しかし彼女は確かに、死んだはずなのだ。
 故にこれは間違いなく敵に見せられているだけの幻覚。
 しかし、それでも……それでも失ったはずの親友を見られるこの一時は、ジニアにとってあまりにも甘美なもの。

「幻覚でも、それ、でも……また会えて!?……」
 幻覚だってかまわない、失ったあの子を取り戻せるなら。
 しかし幻覚は……彼女に絶望を与える為に見せられているもの。
 幸せな一時を味合わさせてなどくれず、突きつけられるのは二度と失いたくない彼女を再び失う光景。

「待って! まだ、言ってない事が! 消えないで! 話したい事もたくさん! セレニア――」
(いい加減、鬱陶しい!)
 しかしそんな取り乱すジニアを叱責する声は、己が胸中から響き渡る。
 それは彼女自身を叱るような厳しさで、しかし確かに思いやる優しさをもってかけられる言葉。

(あれは過去。既に死した者)
(そして亡骸を共に弔った存在だろうが!)
(之如きの幻覚で己が記憶を疑うか)
(気を戻せ! 共に戦う者を忘れるな!)

 それは、ヒャッカと名乗る己が第二人格。
 冷酷ながらも優しさを持つ、もう一人の自分。
 暗闇の中で溺れる彼女を引き上げるように、誰かが優しく、だが力強く手を握ってくれるような――そんな感触を、ジニアは感じたような気がした。


「葛籠雄……さん?」
 ゆっくりと焦点を結びなおすジニアの瞳が取られたのは、誰かの背中。
 彼女を守るように庇い、襲い来る触手から逃げ惑うその姿を捉え、彼女の意識は急激に覚醒していく。

「葛籠雄さん!」
 咄嗟に放った死霊の弾丸が、迫り来る黒き触手を貫いていく。
 その彼女の意識の覚醒を悟った九雀は、そっとジニアを下すと優しく手を取り立ち上がらせるのだ。

「すみません、私……」
「問題無い。生憎オレは、絶望などせぬ……きっとな」
 申し訳なさげに謝ろうとする彼女の言葉を、九雀は遮るように手を差し出す。
 そう言いながら彼女を鼓舞する仮面には、いつも通りの白線が――笑みが刻まれていた。

 少女に優しく微笑みかけるように。
 何でも無いとばかりに、鼓舞するように。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ハルア・ガーラント
わたしは以前同族殺しと呼ばれていたオブリビオンを骸の海へ送りました

【WIZ】
彼は話せば解ってくれると思い込んでいた
でも彼が選んだのは最期まで己の信念を貫き通す逝き方

あの時
違う接し方をしていれば
違う状況を作っていれば
違う結果になったんじゃないか

わたし本当は誰も救えないんじゃないか

生まれるのは後悔と白い軍服を血塗れにした彼の幻覚

――それでも「彼を覚えてい続ける」という誓いを忘れてはいない
誇り高かった彼の生き様と姿はわたしの中に在る
そう自らを[鼓舞]

敵の攻撃は[視力と第六感]で動きを予想・補足し回避か[オーラ防御]
UCを発動し[浄化の祈り]を込めた[誘導弾で放つ銀曜銃]の攻撃を当て追加攻撃し続けます




(彼は話せば解ってくれると思い込んでいた……でも彼が選んだのは最期まで己の信念を貫き通す逝き方)
 独り言のように、譫言のように……ハルア・ガーラント(宵啼鳥・f23517)は小さく心の中で呟く。
 彼女が思い出すのは、以前骸の海へと還したオブリビオン――同族殺しの存在。
 彼に相対した時、ハルアは話せば解ってくれると、そう思い込んでいた。
 しかしその結果は……先ほどの彼女の言葉の通りだ。

(あの時……もし……)
 もし、という選択肢があるのならばと考え出せば、その問いに終わりは無い。
 もし――接し方が違っていれば。
 もし――違う違う状況が作れていれば。
 もし――
 もし――
 もし――

 数多のもしの果ての何処かに、違う結果が待っていたのではないのかと。
 そう思わずにはいられないのだ。
 そうでないなら、それは己の無力の証明のようで。
 本当は誰も救えないんじゃないかと……そうとすら、考えてしまうのだから。 

 数多の苦悶の果てに脳裏に浮かぶのは白い軍服を血濡れにした彼の存在。
 胸中から湧き出るのは終わりの無い後悔の念。

(それでも……)
 それでも、“彼を覚えている”という誓いを忘れてはいない。
 誇り高かった彼の生き様と姿は、確かに己の中にあるのだと――そう想うのだ。
 だからこそ……

「だから、私は此処で死ぬわけにはいかない」
 此処で己が死んでしまえば、誰が彼を覚えているというのか。
 世界から忘れ去られてしまえば、それこそが真の死なのだと。
 そう強く己を鼓舞し、震える膝を叩きハルアは己が二本の足で立つのだ。

 優しい彼女はもう迷わないと胸を張る。
 先程まで虚ろに幻を捉えていた瞳は力強く前を見据え。
 祈りと共に銀曜銃を握り、己が翼を淡く光らせながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『アフスズルト』

POW   :    強撃
【邪神の速度と剛力から繰り出される猛連撃】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    殲滅
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【蒼焔によって鍛え上げられた邪神武器】で包囲攻撃する。
WIZ   :    創傷
攻撃が命中した対象に【この戦いに勝利しても消えない邪神の疵跡】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【魂をも灼き尽くす必滅の蒼焔】による追加攻撃を与え続ける。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ムルヘルベル・アーキロギアです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「やった、か?……」
 その言葉は誰のものだっただろうか。
 燃え上がった本は灰と消え、柔らかな残り火が風に揺らめく。
 しかし猟兵たちは理解していた――事件は未だ、解決していないのだと。

 揺れと共に、突如光り出す地面。
 刻まれた巨大な五芒星こそが、予知に聞く召喚の儀式なのだろう。
 頭が回りそう理解出来た頃には、地震は直ぐに収まっていた。
 しかし気を抜くことは出来ない。
 何故ならば猟兵たちは感じていたのだ――圧倒的なプレッシャーを。

 揺らめく蒼き焔と、見上げるほどの巨躯。
 その禍々しい異形こそが、件の邪神だ。

 鼓膜を引き裂くような、身を竦ませるような雄叫びが響く。
 今……事件は最後の山場を迎えようとしていた。
ハルア・ガーラント
うぅ……怖い!

【WIZ】
邪神の雄叫びに竦み上がってしまいそう
けれど恋の成就を願いながらも魔導書を渡してくれた生徒さん達を思い浮かべ、自らを[鼓舞]
今度はわたしが応える番

邪神の動きを持ち前の[第六感と視力]で攻撃タイミングと軌道を予測、回避に努めます
UC発動し、回避が難しい攻撃は[オーラ防御]と警備兵さんの自動発動するオーラの盾を活用
[銀曜銃から誘導弾を聖属性の攻撃]で放ち、胴体の口や足元を狙っていきますね

[空中浮遊を活用した逃げ足]で大振りな攻撃を回避後、[咎人の鎖]で邪神の身体の一部を[捕縛、念動力]で地に縫い止めましょう
警備兵さんとタイミングを合わせ[魔力溜め]した一撃をお見舞いします




 魔導書を燃やし尽くした残り火が、一陣の風により消え去る。
 召喚陣の光も収まった今、辺りは暗闇に包まれるはずだった。
 しかし、猟兵たちの視界は煌々と燃え上がる炎により照らされていた。
 それは魔法陣と同じ何か不思議な力を感じさせる青白い光。
 だがそれは神秘性よりも恐怖を感じさせる――何故ならばその光は、邪神の牙に包まれた禍々しい顎を照らし出すのだから。

「うぅ……怖い!」
 眼前に広がる光景が、鼓膜を震わせる邪神の咆哮が身を竦ませる。
 思わず反射的に逃げ出したくなる……とっさにハルアが羽を羽ばたかせようとしたその瞬間――彼女の脳裏には、思い浮かぶ光景があった。
 それは純真無垢な学園の生徒たち……恋に恋する、女学生たちの姿だ。

 一途の望みをかけ、魔導書を手にした少女たち。
 しかしハルアの説得を受け、魔導書を手渡してくれた少女たち。
 実力で頑張るのだと、そう笑ってくれた少女たち。
 そんな彼女たちの顔を思い出したのならば、もうハルアには逃げ出すという選択肢は残っていなかった。
「今度は……わたしが応える番」
 そう呟くハルアの瞳には先ほどまでの怯えの色は無く――決意を決めた、戦士の色が宿っていた。

「……っ」
 再び空気を震わせる咆哮――ハルアは邪神の燃え上がる顎の炎が一際輝いたのを見て取り、咄嗟に後方へと飛び退く。
 次の瞬間――先ほどまでハルアのいたその大地に青白い火柱が立ち上る。
 それは空気どころか地面すらも溶かし、抉るほどの爆炎。
 そしてその場に大地しかなかろうとも、風が吹こうとも燃え続けるその必滅の蒼焔は、一度燃えたが最後……決して消えぬ呪われた炎だ。

「一緒に戦ってください!」
 あの炎は決して触れてはならない。
 本能的な恐怖と共にそう感じたハルアは……戦いを長引かせぬ為に彼女が選んだ次なる一手は――アンサング・デュナミス。
 ハルアの祈りと共に召喚されるは大型の黒翼を持つ、実体化した天獄の警備兵だ。

「お願いしますっ!」
 一つ、二つと放たれるの必滅の焔弾を弾くように、天獄の警備兵は聖なる盾を掲げる。
 その不可視の盾は炎を弾き、接敵する為の道を作り出す。
 両側へと往なしたことにより生まれた炎の道の間をハルアは滑空する。
 大振りの巨腕を潜り抜け彼女が放つはハルアの愛用の鎖――咎人の鎖。
 捕縛するように、大地に縫い付けるように纏わりつく聖なる鎖は、邪悪なる神の動きを封じるのだ。

「行きますっ!」
 ハルアの銀曜銃と共に、天獄の警備兵は銃剣を構える。
 二人がその引き金を引き絞ったその時――辺りを光が覆った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジニア・ドグダラ
葛籠雄さん(ID:f17337)と

……相手は、歪であれど邪神。
ならば、対応も対策も可能と判断、対処します。

亡縛之鎖を解き、霊縛之棺の【封印を解く】事で死霊を溢れさせ、敵の攻撃に対しての盾とします。
その間、溢れた死霊を可能な範囲で最大量を【高速詠唱】にて一発の死霊の弾丸として圧縮、精製。

場に出た死霊が減りまばらになった場合、目視や聴覚では対処できない量の武器が飛ぶ事は想定されます。
しかし、このような死地は、既に体験しています。武器の合間を身体を捻じり、見えぬ角度からは虫の知らせともいえる【第六感】が示す通り回避。
また、隙間を縫うように、拳銃から弾丸を射出。強烈な【呪詛】による呪壊を叩き込みます。


葛籠雄・九雀
ジニアちゃん(f01191)と

成程、こやつを倒せば終わりということであるな。
魔導書が燃えた今、邪神なぞには然程興味がなくてなあ。
早々に終わらせて帰るとしようぞ!

しかし厄介な図体に攻撃である…少々大人しくしてもらいたいであるな。
ペルシカム+【投擲、毒使い、2回攻撃】にて動きを封ずるとするであるか。
飛んでくる邪神武器は【見切り、逃げ足、ダッシュ、ジャンプ】にて回避、あるいはフック付きワイヤーにて【武器落とし】し、【カウンター】でペルシカムを放つであるよ。
万一武器が当たった場合は【継戦能力、激痛耐性】にて耐える。
すまぬが、ジニアちゃんには、自前で避けて欲しいである。

さて、オレの毒は効くであるかな。




 瞬く光と共に、邪神の歪な血肉が吹き飛ばされる。
 受けた衝撃を弾き返すかのように、恐れ多くとも神に逆らう愚か者たちに怒りを示すかのように、邪神は咆哮と共にその顎から溢れだす青白き焔を一際強く燃え上がらせる。
 それは歴戦の勇者であっても本能的な恐怖を感じる光景――しかしそれに相対する一人の男……否、一枚の仮面である葛籠雄・九雀(支離滅裂な仮面・f17337)は、何でも無いかのように溜息を零していた。

「成程、こやつを倒せば終わりということであるな……だが魔導書が燃えた今、邪神なぞには然程興味がなくてなあ」
 それは壊れているが故に邪神のプレッシャーに対する恐怖に気圧されること無く、壊れているが故に己が興味の矛先である魔導書が無ければやる気を出すことも無い。
 色黒の指で橙の髪を弄る様子からは、恐怖を感じるどころか一欠けらの興味すらも感じ取ることが出来ないほどだ。

「葛籠雄さん……相手は、歪であれど邪神。ならば、対応も対策も可能と判断、対処します」
 対し、隣に立つジニア・ドグダラ(白光の眠りを守る者・f01191)はその華奢な体格に似合わぬ武骨な棺桶を担いだまま瞳を細める。
(セレニア……)
 彼女が思い出していたのは魔導書との闘いの中で幻視した今は亡き親友の姿。
 もう彼女のような被害者をこれ以上生み出すわけにはいかないと、その瞳には探索者としての矜持が……眼前の巨悪に対し立ち向かう覚悟の光が宿っていたのだ。

「はぁ……」
 共に立つ友の覚悟を感じ取り、九雀はため息を一つ。
 どうやらこの仕事から逃げ出す雰囲気でも無さそうだ……であれば既に興味を失った雑務など、手早く済ませ切り上げるに限るだろう。
「であれば、早々に終わらせて帰るとしようぞ!」
 言葉と共にその身体を折り曲げれば弾けるように駆けだす九雀――その手に握られ、指の間から覗くのは彼が得意とする暗器――投げ針だ。

 爆音と共に吐き出される牙の一つ一つが蒼炎の尾を引き飛来する。
 幾何学模様を描き飛翔するその刃の数は数え切れぬほどのもの。
 絨毯爆撃のように地面を穿つ炎の雨を、戦場を駆ける九雀は潜り抜ける。
 時に駆け、時にしゃがみ、時に大地に突き刺さり吹き上がる爆炎を飛び越え、体勢を整えられぬ空中で狙われるのであれば、フック付きワイヤーを巧みに操り宙を舞う。

「さて、オレの毒は効くであるかな」
 それは常人には真似出来ぬ曲芸の域。
 ワイヤーを手繰り寄せる勢いそのままに接敵した九雀は、手中の毒針を突き刺す。
 本来であれば邪神の強靭な肌は通常であれば針などという軽い武器を突き刺すのは困難――しかし九雀は的確に邪神の傷口を狙うことで確実に毒を邪神の体内へと流し込むのだ。

「今です……」
 毒により苦しみ悶える邪神の隙を突き、ジニアは背後に背負う霊縛之棺の封印を解放する。
 そこから溢れ出るは、彼女が今まで封印してきた死霊の数々。
 その半透明の身体で自由自在に宙を舞い、死霊たちは生に対する怨嗟の声を……そして解放された歓喜の声をあげる。
 しかし彼らは決して自由を与えられたのではない。
 死霊術師であるジニアの手と成り足と成るよう、酷使されるべく解放されたのだ。

「すまぬが、ジニアちゃんには、自前で避けて欲しいである!」
 九雀の警告の声の通り、邪神は再び蒼焔を纏った邪神武器を放出する。
 その身体は毒による影響か動きは鈍り、その慟哭は先ほどよりも勢いに欠ける。
 しかし夜空を縦横無尽に舞う邪悪な牙は、未だ必殺の勢いを以て飛来するのだ。

「その攻撃は、先ほど見ました……」
 しかしジニアは、その絨毯爆撃を秘術・既視経験で以て回避する。
 九雀のように飛び跳ねる身体能力はジニアには持っていない。
 しかし探索者として磨かれた経験から発揮される超感覚が……初見では避け切れぬ猛攻も、その幾何学的な軌道を見切ることで必要最小限の動きでもって避けるのだ。

「このような死地は、既に体験しています」
 一歩間違えればそれは死に直結する戦場。
 正しく死地とも呼べるその惨状を、しかしジニアは冷静に切り抜ける。
 全力で回避をすることにより稼いだ時間は全て攻撃へ繋げる為の一手――溢れかえるほど大量の死霊は高速で圧縮し弾倉中の弾丸へと封られることで死霊弾と化す。
 そうして武骨な呪詛塗れの死霊拳銃をその華奢な両手で構える彼女は、零距離で以て最大まで濃縮された呪詛を叩き込むのだ。

 辺りに――身の毛もよだつような怨嗟の悲鳴が響き渡る。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

琴平・琴子
その醜い姿は恋を叶える姿には見えず
もう夜は遅いというのに
耳障りな騒がしい咆哮
兵隊たちを喚び起こし
ブリキは私の前へ
木製は敵の前へ銃を構えさせる

お静かに
子供たちが起きてしまうでしょう?

遠くから離れていれば
その攻撃だって届かない
蒼い焔に燃やされる事もない
距離を取れば守りは必要しなくて
八十一の兵隊が足を切り崩し、体勢を崩して
身体が落ちれば切り込みその体に弾丸は何度も撃ち込まれるでしょうね

どなたの仕業かは知りませんけども
幼い心は弱く何かと縋るもの
それを悪用するだなんて下劣極まりないですね




 闇夜で繰り広げられる続く激闘。
 地面を抉り、蒼白い炎を燃え上がらせ、邪神は己が怒りを示すかのように雄叫びをあげる。
 猟兵たちとの戦いにより刻み込まれた数多の傷。
 その一つ一つから血潮のように溢れ出す必滅の蒼焔は、決して消えることなく燃え続ける。
 それはまるで呪いのように禍々しい気を放つ。
 少なくとも、恋を叶える魔法の灯火……というわけでは無いことは確かだろう。

「もう夜は遅いというのに」
 琴平・琴子(まえむきのあし・f27172)は忌々しげに言葉を吐き捨てる。
 彼女に魔導書に手を出したお姉様方の気持ちは分からないけれど、きっと彼女たちなりに必死だったのだろう。
 そう思うからこそ、彼女たちが騙され呼び出されようとしていたのがこの醜悪な化け物という事実を、許すわけにはいかないのだ。

「お静かに……子供たちが起きてしまうでしょう?」
 ご近所迷惑……とでも言いたげに、諌める琴子の足元に並ぶは勇猛なる玩具の兵隊。
 兵隊の行進(ソルジャーズマーチ)によって呼び出された玩具の兵隊は隊列を整え、木製の兵隊を前衛に、ブリキの兵隊を後衛に陣を構えるのだ。
 恐れを知らない機械仕掛けの戦士たちは静かに銃剣を構え、指揮官たる琴子の合図を待っていた。

「一斉射撃準備良し! 放て!」
 琴子の合図と共に最大火力で以て銃撃が叩き込まれる。
 玩具であるが故にマズルフラッシュは瞬かないが、UCにより放たれるその威力は実弾以上だ。
 八十一の兵隊に寄って生み出される弾幕は、巨躯を誇る邪神の身体にすらたたらを踏ませる。

 苦し紛れに放たれる一撃すらも、遠くから戦況を見守る琴子へは届かない。
 否――本来であれば彼我の距離など邪神にとって障害とは成り得ず、勢いが多少削がれようとも蒼焔の炎弾は触れたのであれば決して消えること無く少女の身体など一瞬にして灰へと変えるだろう。
 しかし指揮官を守るべく身を挺す勇猛な兵士たちが己が身体を犠牲に攻撃を防ぎ――恐れを知らぬが故に燃え尽きながらも敵へと肉薄しその銃剣を突き立てるのだ。

 個の死を厭わない集団の力により恐るべき邪神は一本、また一本と四肢を捥がれ、必滅の炎は邪神自身を燃やし尽くす。

「どなたの仕業かは知りませんけども……幼い心は弱く何かと縋るもの。それを悪用するだなんて下劣極まりないですね」

 燃え尽きていく異形の神を見下ろし、少女はそう言葉を零した。
 乙女の怒りは……神をも殺すとでも言いたげに。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年09月22日


挿絵イラスト