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竜が封ずる子取り箱

#UDCアース #【Q】 #竜神

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「竜脈封印の情報を入手しました。リムは猟兵に調査を要請します」
 グリモアベースに招かれた猟兵たちの前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で話を切り出した。
「カクリヨファンタズムの発見により、かつてUDCアースの邪神と戦った竜神達から有益な情報が得られました。それによると彼らは竜脈、あるいはレイラインと呼ばれる『大地に流れるエネルギー』を利用して、世界各地に邪神を封じたとのことです」
 これら総じて「竜脈封印」と呼ばれる封印が、長きに渡って邪神の脅威を抑えてきたことは間違いない。ところが、竜神達の話を元にUDCアースの調査を進めてみると、彼らが記憶している場所の殆どに封印が存在しない事が判明したのだ。
「これは既に封印が解かれてしまったのか、あるいは超自然的な何者かによって封印が移動させられた可能性が考えられます。いずれにせよ由々しき事態です」
 封印されていた邪神達が人知れず復活しつつあるとすれば、こちらも悠長に構えているわけにはいかない。リミティアはUDC組織と共にさらなる入念な調査を行った結果、まだ健在である「竜脈封印」の手がかりを見つけたという。

「島根県は隠岐諸島にある小さな島に、失われた竜神信仰の痕跡を残す村があります」
 豊かな自然に恵まれ、外界との交流の少ないこの田舎村には、古い言い伝えがある。それはひと昔前、インターネット上でにわかに流行した『コトリバコ』という怪談に類似したものだ。
「コトリバコとは『子取り箱』とも言い、女性と子供を呪い殺し、子孫を絶やすという呪物の一種です。怪談という性質上内容にはブレがあるのですが、箱の中に呪いの源となる『何か』が封じられている、という点はほぼ共通です」
 その村に伝わっている話でも『呪いの箱』の性質はほぼ同じである。しかしこの地の『箱』は子や女に降り掛かる災いを封じ込め、子孫繁栄を願うものとして伝わっている。
「現在ではこの言い伝えも廃れていますが、村のご老人などにはまだ話をご存知の方もいるでしょう。また、村のある島のあちこちには、島民も由来を忘れてしまった古い建物や石碑などの人工物の痕跡が残っています」
 自然の中に埋もれて風化しかかっているそれらの人工物には"竜"の姿を描いたものもあるという。これらの物的根拠や伝承から、リミティアはこの島のどこかに「竜脈封印」が隠されていると考えていた。

「UDC組織の調査で判明したのはここまでです。そこで皆様には実際に現地に赴いて『竜脈封印』の伝承について調査し、その所在を突き止めてほしいのです」
 村の住民から話を聞いたり文献を探すなり、あるいは自らの足で島中を歩いて痕跡を調べるなり、様々な調査の方法が考えられるだろう。風化してしまった伝承や遺跡を調べるのは簡単なことでは無いだろうが、どんなに細い道でも地道に調べる他あるまい。
「そして『竜脈封印』を発見できれば……その封印を解き、封じられていた邪神を皆様の手で討ってもらいたいのです」
 先述したように竜神達が施した邪神の封印は世界各地で行方が分からなくなっている。猟兵が新たな封印を発見できたとしても、それが今後無事であるという保証は無いのだ。
 ならば、封印に異変が起こる前に、先んじて眠れる邪神を撃破してしまおうというのが、今回の依頼である。

「封じられている邪神はとてつもなく強大ですが、目覚めたばかりでは本来の力を発揮できません。敢えて封印を解くのは危険ではありますが、最大の好機でもあるのです」
 いずれ来たる「大いなる戦い」を有利に導くために、一柱でも多くの邪神を撃破するのは重要である。いにしえの竜神達が遺した封印に、ここで猟兵の手で決着を付けるのだ。
 説明を終えたリミティアは手のひらにグリモアを浮かべて、UDCアースへの道を開く。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 今回の依頼はUDCアースにて、竜神達が施した『竜脈封印』の伝承を調査し、封じられた邪神を撃破するのが目的となります。

 第一章では隠岐諸島にある小さな島と村で、竜脈封印の伝承を調査します。
 海と豊かな自然に囲まれて、数百人ほどの住民がのどかに暮らしています。人々の生活に特段変わったところはなく、ギリギリ電波は届く感じの田舎村です。
 どういった伝承や痕跡がこの地に残っているかはオープニングを御覧ください。その詳細について調査し、竜脈封印の所在を突き止めるのがこの章の目的です。

 見事封印を発見できれば、二章以降は封じられたUDC達との戦いになります。
 本来は強大な力を持つ邪神も、長い眠りから覚めた直後では全力を発揮できません。今の猟兵達であれば十分に勝機はあるでしょう。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『竜脈封印の伝承』

POW   :    巨石を動かしたり、沼の底に潜るなどして、竜神信仰の痕跡を探索する

SPD   :    探索範囲内全域をくまなく歩いてまわるなど、足を使って竜神信仰の痕跡を探し出す

WIZ   :    村に伝わる昔話や童歌の調査、村の古老との会話などから、竜神信仰の痕跡を探ります

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

鏡島・嵐
不思議なモンがあるっていう点では、UDCアースも案外他の世界と変わんねえんだな。
それにしても「竜脈」か。少なくとも、猟兵じゃなかったらそんなの一生縁は無かっただろうな。
確かに、邪神が力を蓄えるにはうってつけだろうけどさ。

こういう不思議なモンってのは、言い伝えがありそうだし、そこから当たってみるか。おれのユーベルコードだって伝説伝承が源流だし、おとぎ話ってのは莫迦に出来ねえよな。
というわけで〈コミュ力〉を活かして、地元の爺ちゃん婆ちゃんに古い言い伝えとか無えか訊いてみる。男手とか話し相手とかが必要なら、そういうのに付き合うがてら話を聞くんでもいいな。
勿論有力な情報は、ちゃんと仲間と共有する。



「不思議なモンがあるっていう点では、UDCアースも案外他の世界と変わんねえんだな」
 いにしえの竜神達が邪神を封じるために施したという『竜脈封印』。己の出身世界に知られざる神秘がまだ数多くある事に、鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は感嘆する。
「それにしても『竜脈』か。少なくとも、猟兵じゃなかったらそんなの一生縁は無かっただろうな。確かに、邪神が力を蓄えるにはうってつけだろうけどさ」
 この手の知識は占星術師である祖母から聞き知っている。封印の中で力を取り戻した邪神が、再び完全な状態で現世に戻ってくる――それだけは避けなければならない事態だ。

「こういう不思議なモンってのは、言い伝えがありそうだし、そこから当たってみるか」
 封印の在り処を求めて隠岐諸島の小島を訪れた嵐は、まずは島に暮らしている住民から話を聞いてみることにする。主なターゲットとするのは島の歴史や古い逸話などを覚えていそうな地元の爺さん婆さん達だ。
(おれのユーベルコードだって伝説伝承が源流だし、おとぎ話ってのは莫迦に出来ねえよな)
 ほとんどの人間が忘れてしまい、眉に唾をつけるような曖昧な話の中に、重要な情報や先人の知恵が紛れ込んでいるのは良くあることだ。今だ残暑の日差しが照りつける9月の空の下、彼は汗を拭いながらそうした言い伝えの収集につとめる。

「そこの爺ちゃん、ちょっと良いかな? 聞きたいことがあるんだけど」
「おんや珍しい。こげな所に外から若い人が訪ねてくるなんて」
 畑で野良仕事をしていたその老人は、島外の者である嵐を見ると目を丸くして、それから歓迎の笑みを見せた。この島は外界との交流は少ないと聞いていたが、どうやら余所者に排他的ということは無さそうだ。
「この島の古い言い伝えとか知らないかな。ちょっとワケあってそういうの調べててさ」
「ほーん、学生さんかね? 話をするのは構わんが、一仕事終えてからでもええかね」
「ああ、だったらおれも手伝うよ」
 持ち前のコミュ力を活かして島民との距離を縮めながら、嵐は老人と一緒になって草むしりや種まきに精を出す。今はちょうど農作業の繁忙期であり、若い男手の助けは向こうにとって願ってもない事だった。

「いやあ、すっかり助けてもらっちまったなあ」
「すまんなぁ、うちのじいさまが……」
「いやいや、気にしないで」
 一仕事を終えたあと、嵐は老人といっしょに縁側に並んで、連れ合いと思しい老婆から冷たい麦茶をいただき、すっかり打ち解けた様子で話をしていた。改めてこの地に残る言い伝えについて尋ねてみると、事前に聞いた情報の裏付けと共に興味深い話を聞けた。

「わしがまだ小さかった頃に、おっかさんから聞いた話でなあ。昔は村の女に子供がでけきたら『箱』を作って川に流したんだと。寄せ木を組み合わせて作った箱でな、産まれてくる子どもが流れちまわねえように、母親になる女が無事なようにって、そん中に厄を詰め込んで流すんさ。そしたら、川にお住まいの竜神様が、厄を食ってくれるんだと」

「竜神……か……」
「こんな辺鄙な島じゃ、昔はお産も命懸けだったかんねえ。つっても今じゃあ誰もそげなことしてる者はおりゃせんが」
 老人が語ったその話は、確かに廃れてしまった竜神信仰の痕跡を匂わせるものだった。
 古来より竜神は水神とも同一視され、川の流れを竜に見立てられることもあった。とすればこの言い伝えも『竜脈封印』の在り処を示す手がかりとなるかもしれない。

「爺ちゃん、その『箱』を流してたっていう川がどこにあるかは分かる?」
「ああ、そんならあっちの方だが……行ってみるんか?」
「ちょっと探しものをしててさ。ありがとう!」
 嵐は空になった麦茶のコップを置くと、老人に礼を言って立ち上がる。教えてもらった川のある方角に向かいながら、ポケットからスマートフォンを取り出してメールを送信。
 手に入れた有力な情報を仲間と共有しながら、言い伝えの真実に迫っていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
竜脈封印か僕の出会ったものと関係あるんだろうか

予め地図やネットで島の地形を把握
UDC組織の調査結果を読み
竜脈の流れを把握しておくよ

島内を歩き回って痕跡を探そう
島の人には悪いけど出会ったら
使い魔の催眠術で夏の間遠くから来てる
島民の親戚の子という事にしよう

とりあえず島で一番高い所に登ってみようか
依頼でなければ海や森や空の景色を楽しみたいんだけどね
使っていい場所があるならキャンプもいいなぁ

島を一望できる所で調べておいた事と
現地で感じた物を照らし合わせて調べる場所を決めよう

この身に残る封印と邪神の反応が手掛りになればいいんだけど

遺構や石碑に残る竜の意匠を見つけたら
記録して他の人に共有できるようにしよう



「竜脈封印か。僕の出会ったものと関係あるんだろうか」
 いにしえの伝承と隠された封印を求めて、隠岐諸島の小島にやって来た佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)。その脳裏に思い浮かべるのは忘れもしないあの日のこと――登山中に封印された邪神の石像を見つけたのをきっかけにして、"彼"の人生は一変したのだ。
 邪神の依代に選ばれた晶は、それ以来少女の身体で心身ともに邪神と融合した状態にある。元に戻る手がかりを探すためにも、関連性のありそうなものは是非調べておきたい。

「最近のネットって本当に便利だよね」
 晶は島内の地図とスマートフォンを片手に持ち、封印の痕跡を探して島内を歩き回る。
 画面に表示された衛星写真の拡大図には、島の地形がくっきりと映し出されており、それとUDC組織による調査結果を頼りにして、彼女は島内を通る竜脈の流れを把握していた。
「とりあえず島で一番高い所に登ってみようか」
 地図を読み解いたところ、島の真ん中あたりに小高い山がそびえているようだ。まずはそこから島内を一望しようと歩みを進めていくと、ここの住民と思しき人間に出くわす。

「おや、あんたは……」
 島外の人かい? と尋ねようとするその人に、晶は素早く邪神の使い魔をけしかけた。
 小さな妖精のような姿をしたそれが耳元で呪文を唱えると、住民の目がうつろになる。
「……フミ婆さんとこの孫でねえか。そういや帰ってきとったんじゃな」
 催眠にかかった彼は、晶のことを夏の間遠くから来ている島民の親戚の子だと認識したようだ。すこし悪い気もしたが、調査をスムーズに進めるためにはこれが手っ取り早い。
「しばらくの間お世話になります」
「ええよええよ、ゆっくりしてってなあ」
 朗らかな笑顔で挨拶を交わして島民とすれ違うと、そのまま山道を登って山頂へ。標高はさほど高くないが、島の中心にあるそこからは島内の様子を360度見回すことができた。

「依頼でなければ海や森や空の景色を楽しみたいんだけどね」
 真っ青な海と大空、そして豊かな自然に恵まれた島の風景を眺めながら独りごちる晶。
 使っていい場所があるならキャンプもいいなぁ――と、山好きとしてこの自然を満喫できないことに勿体なさを覚えつつも、今は封印の在り処を探ることを最優先とする。
「この身に残る封印と邪神の反応が手掛りになればいいんだけど」
 晶と融合した邪神の封印はまだ完全には解けていない。この島の何処かに邪神が封じられているとすれば、磁石が引かれ合うように何かを感じ取れるかもしれない、という彼女の考えはどうやら的を得ていたようで、島のあちらこちらから微弱ながら気配を感じる。
「怪しいのはあそこかな……」
 島を一望できるところで確かめた調査内容と、自分の中にある封印の反応を照らし合わせて、晶は調べる場所を絞り込んだ。地図にも記されていた、この島の各地に点在する古い人工物の痕跡――そのうちの1つと封印の反応が重なり合ったのだ。

「……これは」
 山を下って実際の場所に向かってみると、そこには森の木々の中に紛れるようにして、1本の木彫りの柱が突き立っていた。かなりボロボロで風化が進んでいるが、近付いてみれば確かに竜脈の力を感じる――そして何よりも柱に刻まれた意匠が晶の目を引いた。
「掠れて消えかかっているけど、これは竜だよね」
 ここに封印の本体はないようだが、間違いなくこの"竜の柱"は竜脈封印に関連するものと見ていいだろう。晶はスマートフォンのカメラで柱を撮影すると、その記録を他の猟兵にもメールで共有する。

「もしかしたら島のあちこちにこういった遺構があるのかな」
 それらを1つ1つ確かめていけば、邪神が封じられている場所も見つかるかもしれない。
 重要な手がかりと指針を得た晶は、体内の封印が導いてくれるままに島内を探索するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒川・闇慈
「コトリバコですか……強力な呪物を用いてそれ以外の呪いを跳ねのける、という発想なのでしょうかねえ。実に興味深い。クックック」

【行動】
wizで行動です。
小規模な村とはいえ、何がしかの文献くらいは残っているでしょう。ご老人方の家を訪ねて、古い蔵などあれば中を調べさせていただきましょう。
直接コトリバコに言及していなくとも、宗教的、儀式的、あるいは説話のような内容が見つかるかもしれません。
そういった内容を複数集め突き合わせていけば、怪しい場所の候補くらいは見つかるでしょう。

「毒を制するための毒は慎重に取り扱いませんと……ねえ?クックック」

【アドリブ歓迎】



「コトリバコですか……強力な呪物を用いてそれ以外の呪いを跳ねのける、という発想なのでしょうかねえ。実に興味深い。クックック」
 いにしえの『竜脈封印』にまつわると考えられる忌まわしき『子取り箱』の伝承。それは黒川・闇慈(魔術の探求者・f00672)の知的好奇心を刺激してやまないものだった。
 あらゆる魔術を研究し、行使し、収集することこそが彼の目的。そこに崇高な使命や野望があるわけでは無いが、それゆえに純粋で飽くなき探究心は、こうした調査依頼において大きなアドバンテージとなる。

「失礼、ご老人。少しお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「うん? なんじゃいお前さん、暑そうな格好しとるのお」
 努めて丁寧に闇慈が話しかけると、その村の老人は黒ずくめな彼の装束を怪訝そうに見たものの、特に警戒したふうもなく応じてくれる。外界から隔てられた小島とはいえ、島民に排他的な様子がなかったのは調査において幸いだった。
「こちらのお宅の裏に古い蔵がありますが、宜しければ中を少し調べさせていただけないでしょうか。私、そういったものを専門に調査している者でして……」
「ほお学者さんかい? んだけど、あん中はもうずっと放ったらかしで埃だらけじゃよ」
 少々の交渉のすえ、相手の回答は「調べるついでに掃除もしてくれるのなら」ということだった。その程度のことはお安いご用と請け負い、闇慈は老人から蔵の鍵を預かる。

「小規模な村とはいえ、何がしかの文献くらいは残っているでしょう」
 ギギギ、と軋むような音を立てて開け放たれた蔵の中は、埃と蜘蛛の巣だらけだった。
 適当に埃を払いながら中のものを調べていくと、古い農具や錆びついた鋳物、骨董屋に並んでいそうな壺などに紛れて、相当昔に書かれたと思しき書物が見つかった。
(直接コトリバコに言及していなくとも、宗教的、儀式的、あるいは説話のような内容が見つかるかもしれません)
 長い間放置されてきたせいか、書物の痛みは激しくページも虫食いだらけになっていたが、それでも闇慈は根気よく読める部分を探し、文脈や自らの知識を照らし合わせて空白を補完し、そこに記されていた内容を読み解いてゆく。

「……どうやら、これはアタリのようですね」
 闇慈が手にした書物には、まさに彼が求めていた『箱』にまつわる話が記されていた。
 曰く『箱』とは、母となる女や産まれてくる子に降りかかる災いを未然に閉じ込めておくことで、子孫繁栄を願う呪物だという。しかしそうした「厄」を封じる行為には危険が伴い、もしも『箱』から厄が溢れ出してくれば、島全体に大惨事を引き起こしかねない。
 そのため『箱』の製作はある種の儀式として、島の各地にある祭殿で行われる決まりになっていた。その所在までは記されていなかったが、祭殿はいずれも川や海の近くに建てられていたらしい。

「川や海ですか……」
 他の猟兵から伝えられた情報の中にあった、作られた『箱』は川に流すというしきたりを闇慈は思い出す。やはりこの島のコトリバコ伝承は竜神信仰――あるいはそれを源流とした水神崇拝と密接な繋がりがあるように感じられる。
「他も調べてみましょう」
 闇慈は蔵に残されていた数冊の書物を読み耽り、その内容を集めて突き合わせていく。
 これだけの情報と彼の読解力があれば、怪しい場所の候補のひとつは見つかるだろう。

「毒を制するための毒は慎重に取り扱いませんと……ねえ? クックック」
 埃っぽい蔵の中で怪しい笑みを浮かべながら、ひたすら読書に没頭する黒ずくめの男の姿は、傍目には控えめに言っても不気味だったが。そんなことを気にする闇慈ではない。
 ともすれば命取りにもなる危険な呪物は、なるべく人から遠ざけたかったはず――そうした観点から彼が目をつけたのは、村から離れたところを流れている一本の川だった。
「この川の流域に遺跡などが残っていないか、調べてみることにしましょう」
 そう当たりをつけた闇慈はコートの内側に書物をしまうと、ぱっぱと埃を払って立ち上がる。忌まわしき呪物、そして竜脈封印――その真実は果たして自分の知識欲を潤してくれるだろうかと、期待に口元を歪めながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
隠岐諸島へと昆虫採集にやってきた。何やら神事が。

「この先は神聖な場所。部外者の方は…」
「――私?」
他に誰がいるのだという目で見られる。
「お茶が出なくても文句いわないから」
「そういう理由では」
「仲間外れとかあなたスネ夫?」
不毛でおバカなやり取りは続く。

「待ちなさい」
「待たぬ」
クライフターンですり抜けて走り出す。
「止まりなさい。この罰当たり者!」
カビパンは一直線に社に向かって走る。

社の奥には変な箱が納められている。虫入れに丁度よいと思ったが、開かない。
バシッ!バシッ!と自慢のハリセンで箱をしばく。
リズミカルにしばいてノッてきたカビパン歌い出す。
「~♪~♪」

箱が光り輝くが、気づかないのであった。



「おりゃー!」
 カナカナカナとひぐらしが鳴く夕暮れの森の中、虫取り網を振り回すカビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)。他の猟兵達が『竜脈封印』の調査を行っている中、彼女はそんなことはどこ吹く風と隠岐諸島へと昆虫採集にやってきていた。
「よし、カブトムシゲット!」
 暦の上では夏休みも過ぎたというのに、小学生の如く残夏を満喫する軍服姿の女教皇。
 さらなるレアな昆虫を求めて、森の奥へとずんずん足を進めていくと――なにやら人が集まっているところに出くわした。

「うん、誰です? 見ない顔ですが……島の外から?」
 おそらくは何かの神事の最中だったのだろう。神道の祭服を着た数名の男女は、カビパンの姿を見ると驚いたような反応を見せて、それからやんわりとした口調で話しかける。
「この先は神聖な場所。すみませんが部外者の方は……」
「――私?」
 とぼけた調子でカビパンが返すと、他に誰がいるのだという目で見られる。島民の態度はけして敵対的ではないが、それでも今は関わって欲しくないという感情が滲んでいる。
 だがカビパンはそういった相手の気持ちや場の雰囲気を読めないというか、読まない。

「お茶が出なくても文句いわないから」
「そういう理由では」
「仲間外れとかあなたスネ夫?」
 不毛でおバカなやり取りをしばらく続けたのち、埒が明かないと判断したカビパンはこの先に何があるのか勝手に確かめることにした。もちろん島民からは制止されるが、そんなことはお構いなしである。
「お待ちなさい」
「待たぬ」
 鮮やかなクライフターンで島民のブロックをすり抜けて走りだす。
 開けた視界の向こうに古ぼけた小さな社が建っているのが見えた。

「止まりなさい。この罰当たり者!」
 いよいよ怒りだした島民の制止もきかずに、カビパンは一直線に社に向かって走る。
 近付いて見ればそれは今にも崩れ落ちそうなほどにボロボロで、殆ど廃墟に等しい。
 奥に飛び込んでみれば、その中には奇妙な箱が納められていた。片手で持てるほどの大きさの寄せ木細工の箱で、中からは何やら不気味な気配がしないでもない。
「これは虫入れに丁度よさそうね」
 そう思ってカビパンは箱を開けようとしたものの、寄せ木ががっちりと組み合わさっていて開かない。むむ、と顔をしかめた彼女は自慢の「女神のハリセン」を取り出し、バシッ! バシッ! と箱をしばく。

「何をしているのですか! およしなさい、それは危険な……!」
 追いついてきた島民達は真っ青になりながらカビパンの暴挙を止めようとするが、一度ノリにノッてきた彼女は止まらない。リズミカルに箱をバシバシしばきながら、でたらめな音程で歌いだす。
「~♪~♪」
「なっ……なに、この歌……」
「頭が割れる……吐きそう……」
 聞く者の精神にダメージを与えるほどの、絶望的にひどい音痴ぶりに耐えきれず、ばたばたと昏倒する島民達。べつに彼らは何も悪いことはしていないのだが、運が悪かった。
 そんな【カビパンリサイタル】に反応してか、納められていた箱がピカピカと光り輝くが――当のカビパンは歌に夢中でさっぱり気がついていない。

「わたし↑は↓~癒し系↑↑↑ ~~♪」
 森の社に響き渡るカビパンの歌、対する怪しき『箱』の反応は吉兆か、凶兆か。
 それはまだカビパン自身も含めて、この島にいる誰にも分からないことだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
子取り箱…呪いそのものとも言うべき、悍ましくて恐ろしい…そして、悲しい呪物…。
封印抜きにしても、こんな呪物は放っておけない…。

島に着いたら、まずは島の地図と石碑等の位置だけは村で把握しておこうかな…。
確認したら、霊魔のレンズと探知術式【呪詛、情報収集、高速詠唱】で封印に使われた大地の竜脈の流れや子取り箱の強い呪力を探知・辿って、所在を突き止めるよ…。

その途中で子取り箱の力を少しでも削いだり、子取り箱の呪力に引き寄せられた不浄のモノを【ソウルリベリオン】で喰らい、浄化しながら向かうよ…。

強い呪いは同じ呪いや不浄を引きつけやすいからね…。
封印が解かれるなら、そういった影響が出てもおかしくない…。



「子取り箱……呪いそのものとも言うべき、悍ましくて恐ろしい……そして、悲しい呪物……」
 呪われし魔剣や妖刀の類を祀り、鎮める役目を担う家系に生まれた雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)は、かの地に伝わる『箱』の伝承を聞いたとき、哀しげに目を細めた。
 それは母となれる女性や子どもを狙い、子孫を絶やすという忌まわしき箱。今はほとんど廃れてしまった伝承とはいえ、そんなものがまだ島に残されているのだとしたら――。
「封印抜きにしても、こんな呪物は放っておけない……」
 己も呪術使いゆえに呪いの危険性を熟知する少女は、島に着くと早速調査に乗り出す。
 まずは島内の地図や遺跡等の位置を把握するために、この島で唯一人が住んでいるという村に向かった。

「遺跡や石碑は島のあちこちにあるんだね……」
 地図を眺めたり島民から話を聞いたりして情報を集めた結果、竜神信仰の痕跡と思しきものは島内の全域に散らばっていることが分かった。島民が把握していないものも含めれば、その数はさらに増えるだろう。その由来については島民達もすでに忘れて久しい。
「虱潰しに全部調べるのは、手が足りないから……」
 遺跡の確認後、璃奈は「霊魔のレンズ」を装着して呪力による探知術式を起動すると、島に漂う霊的な力を探る。封印に使われた竜脈の力の流れや『子取り箱』の強い呪力――いくら人工物が風化してしまっても、それらは決して消え去ることはない。

「この辺り、かな……」
 見えざる力の流れを辿って璃奈が向かった先には、ボロボロに古ぼけた社があった。
 中から感じられるのは強い呪いの気配。警戒しながら扉を開けると、そこには寄せ木細工で作られた小さな箱が納められていた。
「これが子取り箱……」
 霊的存在を可視化する「霊魔のレンズ」越しに視れば、ひと目でそれが忌まわしいモノだと分かる。しかし同時に、この中に封じられているのは邪神ではないことも分かる。
 おそらくは昔の島民が作ったという『箱』のひとつだろう。女子供を脅かす"厄"を封じることで子孫繁栄を願う――その結果生まれる子絶やしの呪いの集合体がこの『箱』だ。

「だけどこんなに強い呪い……自然に生じる"厄"とは考えにくい……」
 呪力の扱いに長けた璃奈でも触れるのを躊躇うほどに、その『箱』に封じられた呪いは強かった。さらに感覚を研ぎ澄ませれば、この社は竜脈の流れの上にあることが分かる。
 『箱』の中に封じられた呪いを、竜脈の力でさらに封じているのだ。言うなればこれも小規模な『竜脈封印』――邪神の封印に関連する何らかの措置であると見るのが自然だ。
「けれど長い時間が過ぎて、それも綻びはじめてるみたいだね……」
 ボロボロの社を見ても分かるとおり、ここの封印はもう十全に機能していない。璃奈がここまで呪力を辿れたということは、言い換えれば呪いが漏れ出しているということだ。

「強い呪いは同じ呪いや不浄を引きつけやすいからね……」
 璃奈はそう静かに呟きながら、呪詛喰らいの魔剣【ソウル・リベリオン】を召喚する。
 社の周りを瘴気のように漂っている、曖昧模糊とした邪なモノの気配。彼女はそれを見逃さずに斬り祓った。
『ギエェェェェェェェッ』
 獣のような悲鳴と共に消える邪気。もしもこのまま放置されていれば、伝承にある『子取り箱』の再現とばかりに、ここに集まった呪いは人々に災いをもたらしていただろう。

「封印が解かれるなら、そういった影響が出てもおかしくない……」
 璃奈はソウル・リベリオンで『箱』の呪いに引きつけられた不浄を清め、さらに『箱』から漏れている呪いも喰らう。これが邪神にまつわるモノなら、これ以上放置しておくのは余りにも危険過ぎるし、本体である『子取り箱』の力を少しでも削げるかもしれない。
「あまり猶予は無さそうだね……」
 この島に存在する竜脈封印は、思っていたよりも危険な状態にあるのかもしれない。警戒を強めた璃奈は表情を引き締めると、ここと同様の痕跡が他にもないか、再び探知術式を起動させるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

竜脈封印に…箱か…
竜神の痕跡を探り、そして邪神を討とう…

[礼儀作法]を使い島民達から言い伝えや信仰に関する[情報を収集]しよう
情報を元に島中にある石碑や社の人工物、巨石や巨木等の自然物を
探るとしよう

島の人々には申し訳ないけど…ちょっと動かすよ…ごめんね…

動かしても大丈夫そうな物があれば【巨人力】を使い
[怪力]を発揮して[目立たぬ]ように少し動かして
竜脈封印を探ろう…


家綿・衣更着
アドリブ歓迎

「竜脈って世界のエネルギー?興味深いっす」
事前にスマホで【情報収集】し伝承や写真を確認。紙の地図とペンも用意。

「遺跡とかロマンっす!」
観光客を装って島民に【コミュ力】で伝承や痕跡の場所を聞き、現場に赴いて竜や箱にまつわるもの中心に【世界知識】で調査。

「レイラインが直線で繋がるものなら、情報纏めれば先が分かるかも?っす」
他依頼の竜脈も参考に、島の痕跡を地図に記し直線を引く。
地下に繋がりそうな祠、洞窟、岩も地図で確認。

「調査の極意は、推測を基にごり押しっす!」
ユベコで一反木綿になり空から調査し、地面に触れてエネルギーを【第六感】で探りつつ、竜脈と封印を足で探す。

「待ってろ邪神!っす」



「竜脈って世界のエネルギー? 興味深いっす」
 未知のパワーといにしえの不可思議に興味津々といった様子で、目を輝かせるのは家綿・衣更着(綿狸忍者・f28451)。島に渡る前からスマートフォンでネットから情報を集め、伝承の概要や島内の写真も確認しておくなど、既に準備万端といった様子である。
「竜脈封印に……箱か……竜神の痕跡を探り、そして邪神を討とう……」
 彼と同じタイミングで島にやって来た仇死原・アンナ(炎獄の執行人・f09978)は、今回の依頼内容を端的に纏める。人々の記憶から竜神信仰や封印の知識が失われても、その痕跡は必ずどこかにあるはずだ。

「少し……いいかな……」
「ちょっとお話聞かせてほしいっす!」
 島外から旅行に来た観光客を装って、アンナと衣更着は島民と接触する。なにか見どころとなるものはないか、面白い話はないかというアプローチから、島の伝承や竜神信仰の痕跡に関する情報を集めるのが目的だ。
「こんな辺鄙な島まで観光なんて、物好きな若い人もいたものだねぇ」
 めったに来ない観光客にそんな呟きを零しながら、島民は快い態度で話をしてくれた。
 信仰の名残と思しい"由来のわからない建造物や石碑"は島のあちこちに点在するが、その殆どは風化してしまっている。なにぶん小さい村であるため保全を行えるような人手もコストも足りず、朽ち果てるままに任せているのが現状だそうだ。

「それでもまだ幾つかは、ちゃんと形の残ってるものがあるよ」
 その島民は村からアクセスしやすい距離で、まだ比較的原型を留めている遺構の場所を教えてくれた。川辺に建てられた柱や森の中にある社、古い文字が記された石碑などだ。
「遺跡とかロマンっす!」
「そんな大したもんじゃないけどねぇ。見たらがっかりするかもしれんよ」
「それは……実際に見て、確かめる……教えてくれて、ありがとう……」
 アンナは丁寧な物腰で島民に礼を言うと、ウキウキしている衣更着と共に現場に赴く。
 竜や箱にまつわるものについてある程度の場所が絞り込めたなら、あとは現地での調査を積み重ねるのみだ。

「言い伝えによると……厄を封じた箱は、この川に流していたらしいけど……」
 アンナと衣更着が最初に向かった先にあったのは、川辺に建てられた大きな柱だった。
 風雨に晒されてかなり傷んでいるものの、その表面には竜の模様が彫り込まれているのが分かる。昔は色も着けられていて、今よりずっと立派な柱だったかもしれない。
「どうかな……なにか感じる……?」
「確かに、足元に力の流れを感じるっす」
 ぼんやりとアンナが問いかけると、地面に手を触れさせながら衣更着がこくりと頷く。
 妖怪である彼の第六感、そして過去の依頼での経験は、この柱が立てられているまさにその真下に、竜脈の力が流れているのを感じ取っていた。

「レイラインが直線で繋がるものなら、情報纏めれば先が分かるかも? っす」
 衣更着は用意していた紙の地図とペンを取り出すと、今いる痕跡の位置に印を付ける。
 それから2人は島の各地にある他の痕跡も順番に調べていき、そのつど衣更着は印を書き足し、それぞれの点を直線で結んでみる。この線を竜脈の流れとすれば、それが多く交わっている場所に何かがあるのではないか? というのが彼の考えだった。
「調査の極意は、推測を基にごり押しっす!」
 竜脈の線がある程度引けたところで、彼は【トリプルどろんチェンジ】で一反木綿に変身。ひらひらと空に舞い上がって高所から気になるものはないかと目を皿にして見回す。

「あそこに何か見えるっす!」
「あれは……社か……」
 衣更着が空からビシッと指差した先にアンナが向かうと、そこには一軒の古びた社があった。呪われし処刑人の一族である彼女は、その中から微かに漏れ出してくる忌まわしい気配を感じ取った。
「これは……何かを封じている……?」
「ってことは、当たりっすか?」
 警戒を露わにするアンナを見て、衣更着も空から降りてくる。彼の作った地図によればこの社のある位置が竜脈の線が交わる点のひとつであり、封印の候補地のひとつだった。
 アンナは巨大剣「錆色の乙女」の柄を握りしめてしばらく社を見ていたが、やがてゆっくりと首を横に振った。

「この中に邪神はいない……と思う……」
 おそらくこの社に納められているのは邪神ではなく『箱』のほうだろう。川に流すのではなく人里離れた場所に"厄"を封じた――子孫繁栄のために人々が作ったモノのひとつ。
「けど……箱がここにあるのと、邪神の封印は無関係でもないはず……」
「なら、もう少し辺りを調べてみるっすか」
 アンナと衣更着は手分けして社の周辺を歩いて、何か怪しいものはないかと調べ回る。
 すると社の裏手側に注連縄を張られた大岩が、ずしんと鎮座しているのが見つかった。

「この向こうに何かありそうっすね」
 ここまで印をつけてきた地図を確認して衣更着が言う。大岩は社の裏手にある絶壁に立てかけられるように据えられており、いかにも何かを隠すか塞いでいるようにも見える。
 しかしそれを確認しようにも大岩をどけないことには調べようがない。どうしたものかと彼が腕組みしていると、それを見たアンナがおもむろに岩に手をかけた。
「島の人々には申し訳ないけど……ちょっと動かすよ……ごめんね……」
 神話の巨人兵がごと大怪力を発揮する【巨人力】。大男が何人かかってもビクともしないような大岩が、たった1人の女性の手によって、ゴゴゴゴと音を立てて動かされていく。

「よっこいしょっと……」
 動かしたのが目立たない程度に少しだけ大岩を横にのけると、その向こうにあったのは大きな空洞――地下へと繋がる洞窟だった。冷たい空気とともに流れ出してくるのは、意識しなくともはっきりと感じられるほどに強い竜脈の力と呪いの気配。
「竜脈封印はこの先か……」
「待ってろ邪神! っす」
 いにしえの封印の大本に一歩近付いた手応えを感じ、2人は洞窟の中に足を踏み入れた。
 果たしてこの先に待ち受けるのは何か。警戒を怠らず、臆することもなく、前へ進む。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

小泉・飛鳥
・WIZ

竜脈……風水、というものだね
東洋の思想や魔術にはそう通じているわけじゃないし、竜神への伝手がないのも少し痛い
仕様がない、地道に頭を働かせよう
丹念な取材は、文筆家に必要なものだろうから

民俗学部の大学生、という態で村を訪れてみようか
役場には村史や村の伝承をまとめた資料なんかがある筈。そういうものを見せてもらおう

竜脈という言葉から思い浮かぶのはやっぱり地下だろうか
竜神、蛇神。そういう存在は「柱」に見立てられるものだけれど
たとえば、地下にそういう神体があった、という伝説なんかはないだろうか

もしも目星がついたならば、この話題に詳しい人物を紹介してもらえないか頼んでみよう



「竜脈……風水、というものだね。東洋の思想や魔術にはそう通じているわけじゃないし、竜神への伝手がないのも少し痛い」
 西洋妖怪である小泉・飛鳥(言祝ぎの詞・f29044)の知の守備範囲は、やはり西洋のそれに偏っていた。どうせならそちらも学んでおくべきだったかと思うも、嘆いたところで事態は好転せず。仕様がないので地道に頭を働かせようとすぐに思考を切り替える。
「丹念な取材は、文筆家に必要なものだろうから」
 いにしえの信仰の痕跡が残る島に、奇怪な『子取り箱』の言い伝え。怪談奇譚の蒐集癖が高じて文筆家を志した彼にとって、今回の依頼は創作の刺激を得る機会でもあった。

「ちょっとお伺いしたいんだけど」
「はい、どういったご用件でしょう」
 飛鳥が最初に足を運んだのは村の公共事業を司る役場だった。集落の規模からしてそれほど立派なものではないが、それでも村で最も多くの情報を納めているのはここだろう。
(役場には村史や村の伝承をまとめた資料なんかがある筈。そういうものを見せてもらおう)
 民俗学部の大学生という態を装って、研究のために各地のそういった資料を調べていると話すと、意外にあっさりと閲覧の許可はおりた。係の者に案内された資料館には、果たして彼が求めていた昔の文献や書物が、綺麗に整頓して保管されていた。

「お探しのものはこちらで合っているでしょうか?」
「うん、ありがとう」
 資料を運んできてくれた係員に礼を言って、飛鳥はさっそく資料の読解に取り掛かる。
 小さな島と村とはいえ、その歴史や伝承の全てとなればそれなりの量がある。特に不要な部分は読み飛ばし、今必要としている情報に関連のありそうなものに焦点を絞る。
(竜脈という言葉から思い浮かぶのはやっぱり地下だろうか)
 竜神、蛇神。そういう存在は「柱」に見立てられるものだ。事実、島の各地には竜の模様が彫り込まれた柱があちこちに建てられていると、他の猟兵の調査から判明している。
(なら、たとえば地下にそういう神体があった、という伝説なんかはないだろうか)
 史書や伝承の中に残された竜神信仰の痕跡。残り香のように微かなそれを一文字一文字丁寧に読み解いてゆくと、その中のひとつに記されていた、とある民話が目に留まった。

 ――それは、島の中心にある山の下に、一匹の竜が眠っているという話だった。
 かつて、1人の村娘が誤って竜の寝床に迷い込み、怒れる竜に呪いをかけられた。
 それは子を産めなくなる呪いであり、祝言の決まっていた村娘はおおいに嘆いた。
 村娘の呪いを解くために、村人達は『箱』を作る儀式を行い、竜の怒りを鎮めた。
 そして二度とこのような事が起こらぬよう、寝床の入り口には印を建てたという。

「呪いをもたらす竜か。どうも竜神と邪神が混同されているような感じがするね」
 長い年月を経たことで、元々この地で崇拝されていた竜神と竜脈に封じられた邪神は同一視され、禍福をもたらす一柱の神として人々に畏れられる存在になったのではないか。
 そんな推測を立てながら、飛鳥はこの伝承についてより詳しく調べてみることにする。

「頼みがあるんだけど、この話題に詳しい人物を紹介してもらえないかな?」
「ああ、このお話は……懐かしいですね。お爺ちゃんがよく聞かせてくれました」
 資料館に案内してくれた係員に尋ねてみると、返ってきたのは意外な答えだった。この民話の書かれた本を役場に寄贈したのはこの係員の祖父で、数年前に亡くなったという。
「お爺ちゃん、私が小さいころから"竜神様の寝床には近付くな"って口を酸っぱくして言ってて。でも、この村の歴史を調べてみると、心配する理由も少しは分かるんです」
 彼女の話によれば、この村では昔から出生率が激減する時期が繰り返しあったという。
 原因は不明だが、子孫が絶えてしまうのではないかという不安が、昔の人々の間には常にあったようだ。

「この"竜神の寝床"伝説もそうした史実と不安が作り上げたものだと考えているんです」
「なるほどね」
 現代の人間の価値観に照らせば、竜神も呪いも昔の人間の不安が生み出した空想ということになるのだろう。だが妖怪にして猟兵である飛鳥にとってのそれは虚構ではない。
 かつて村を襲った謎の出生率の低下と"竜神"もしくは邪神。これらには何らかの繋がりがあるのではないかと考えるのはごく自然なことだった。
(竜神の寝床、確かめてみる必要がありそうだね)
 この民話が真実を伝えているのなら、山の下かその周辺に何かが残っているはずだ。飛鳥は係員に礼を言うと役場を後にし、急ぎ足で島の中心部にある山のほうへと向かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
コトリバコって…確か怪談でも相当性質の悪いヤツじゃなかったかしら…。
強すぎる呪い故に制御できず、相手も作り手も殺してしまう呪いの箱…。
この村だと言い伝えが少し違うみたいだけど、作った事自体ロクでもないわね…。

…雪花を置いて来て正解だったわ。子供(?)の雪花だと呪いの影響を強く受けかねないし…。

とりあえず、自身や他の猟兵にも念の為、【念動力】の防護膜を張って呪いの影響を遮断しつつ、昼間は村の役場や民家、夜はバーや居酒屋等にお邪魔して、(場合によっては【魔眼】、魔術による【催眠術】等を使いつつ)伝承の詳細や噂話(立ち入り禁止の場所や不吉な噂、怪談話の土地等)の情報を集め、所在を突き止めに向かうわ



「コトリバコって……確か怪談でも相当性質の悪いヤツじゃなかったかしら……」
 フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)が以前聞いたことのあるコトリバコの怪談は、作り話だとしても酷く気味の悪く、そしておぞましい話だった。
 その箱に触れるのはもちろん、周囲にいるだけや見るだけでも、相手を死に至らしめるという呪いの箱。悪質なのはそれを操ることは誰にも――箱を創り出した本人にすらできず、妊娠が可能な女性と子供であれば無差別に呪い殺すという危険性にある。

「強すぎる呪い故に制御できず、相手も作り手も殺してしまう呪いの箱……。この村だと言い伝えが少し違うみたいだけど、作った事自体ロクでもないわね……」
 邪神の封印とともにそんな『箱』がまだこの地に現存しているのかと思うと、フレミアも女性として薄気味悪いものを感じざるを得ない。万が一の事があっても呪いの影響を遮断できるよう、島に渡ってからの彼女は常に自らの周囲に念動力の防護膜を張っていた。
 同じように調査を行っている他の猟兵にも、念の為に同様の対策を施してある。当初は警戒しすぎのようにも思われたそれは、猟兵達の調査により『箱』の実在が確認されるにつれて、杞憂では無かったことが明らかになった。

「……雪花を置いて来て正解だったわ。子供の雪花だと呪いの影響を強く受けかねないし……」
 普段は同行している雪女見習いの眷属は、今回は留守番。連れて来なくてよかったと心底安堵しながらフレミアは村の民家や役場を巡り、島の伝承について詳しく調査を行う。
「ちょっといいかしら? 聞きたいことがあるのよ」
「は、はい! なんでもお聞きください!」
 持ち前の器量に加えて、時には魔術による催眠術や【魅了の魔眼・快】も使いつつ尋ねれば、彼女の前で口を開かない人間などいない。惚けたような顔をする島民達が語る雑多な話題の中から、有力そうな情報を拾い集めていく。

「この島に入っていけない場所とか、不吉な噂や怪談話のある土地なんて無いかしら?」
「ああ……そういや死んだうちの爺さんが言ってました。女子供は山に近付くなって」
 島民の中では比較的若いその男が指差したのは、島の中心にそびえる小高い山だった。
 あの山には女子供が嫌いな神様が住んでいて、勝手に入ると祟りにあうと、彼の祖父は生前何度も言い聞かせていたそうだ。
「まあ、山奥に入ったらガキには危ないからっていう脅し文句だと思いますけどね」
 男自身はその話を眉唾ものだと思っているらしく、"山の神様"とやらについても信じてはいない。痕跡こそ残れども、この島の住民から竜神信仰はすっかり廃れているようだ。

「まあ一応、お姉さんも気にするなら山にはあんまり近寄らないほうがいいですよ」
「ええ、ありがとう」
 礼を言って男と別れたフレミアは、そろそろ日が陰ってきたのに気付く。調査を進めるうちにだいぶ時間が過ぎていたようだ――しかし吸血姫の彼女にとっては夜こそが本番。
 日が沈めばまた別の場所に人が集まってくるのだからと、今度は村の居酒屋にお邪魔して情報収集を続行する。

「一杯おごらせてくれる?」
「おや、これはどうも」
 カウンター席で並んだ客に酒をふるまいつつ、フレミアは昼間と同じように質問する。
 ほどよく酔いの回った人間には、わざわざ魔眼や催眠を使う必要もなかった。祖父や祖母などから伝え聞いたという話を、やや呂律の怪しい口調でぺらぺらと喋ってくれる。
「『箱』の話なら俺も聞いたことがあるよ。村の女が妊娠したときに『箱』を作って、お社に納めるなり川に流すなりすれば無事に子供が生まれる。だが間違って『箱』が村に戻って来ちまったら、災いが起こる……だっけな」
 彼自身は実際に『箱』を見たことはなく、新たに『箱』が作られたという話も聞かない。それでも老人達から酷く恐ろしげな顔で語られた『箱』の話はよく覚えているという。

「『箱』を川に流すのは、川に宿っている竜神様のお力が、呪いを清めてくれるからなんだと。なんでもこの島の川が湧き出すところに竜神様の寝床があるとか。けど竜神様は眠りを邪魔されるのが大嫌いで、寝床に入ったら逆に呪われるなんて話も聞いたなあ」
 "この島の川が湧き出すところ"。酔客が語ったそのフレーズは、フレミアの印象に強く残った。もしかすればその"竜神の寝床"とやらが、探している封印の所在かもしれない。
「こんな古臭い話ばっかで、若い娘さんには面白くなかったか?」
「いえ、ありがとう。とてもためになったわ」
 フレミアはにこりと微笑みながら席を立ち、相手の分も含めた勘定を置いて店を出る。
 封印の在り処を突き止めるのに十分な情報は集まった。とっぷりと更けた夜の島を、吸血姫は颯爽と駆けていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シェーラ・ミレディ
【WIZ】
此方の感知しない範囲で封印を破られては、被害は甚大だ。
早急に情報を集めねばな。

村の住人達から話を聞こうか。
件の呪物が子孫繁栄にご利益があるというのなら、ご婦人の方が何か知っている可能性が高いかもしれない。
そうだな、民俗学に興味のある学生だとでも言って、礼を尽くして話を伺おう。敬語だって使えないわけではないからな。
竜や箱に関連する話題が出れば、
「竜といいますと、確かこの島には竜の描かれた石碑があるとか」
「箱ですか? 僕が知っているものとは正反対の性質を持っているようですが……詳しくお話しいただいてもよろしいですか?」
などと言って、情報を聞き出すぞ。

※アドリブ&絡み歓迎



「此方の感知しない範囲で封印を破られては、被害は甚大だ。早急に情報を集めねばな」
 いにしえの『竜脈封印』の調査のために隠岐諸島にある小島を訪れたシェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)は、まずは島民達から情報を集めるために行動を開始する。
 海と自然に囲まれた村の暮らしぶりは長閑なもので、人々は穏やかな笑顔を浮かべている。だがひとたび封印に異常が起きれば、彼らの平穏もまた壊れてしまうかもしれない――少年が抱く危機感は、島に住む数百人の、或いはそれ以上の命運の重さと同義だった。

「はじめまして、良い天気ですね」
「あら、こんにちは。若い人がこんなとこに珍しいわねえ」
 島の伝承を調べるためにシェーラが話しかけたのは、村に住むやや年配の女性だった。
 件の呪物が子孫繁栄にご利益があるというのなら、ご婦人の方が何か知っている可能性が高いかもしれない。そう考えての選択である。
「僕は島前にある高校の学生ですが、民俗学に興味があって、この島に変わった言い伝えがあると聞いて調べに来たんです。もし宜しければ、話を聞かせていただけませんか?」
「それでわざわざこんな所まで? 勉強熱心ねえ……私の知っていることで良ければ、お話するわ。お茶を持ってくるから少し待っててね」
 平時は尊大な態度を取るシェーラでも、べつに敬語だって使えないわけではない。礼を尽くして話を伺えないかと頼みこめば、女性のほうも良い印象を持ったらしく、気さくな笑顔と冷たい麦茶で話に応じてくれた。

「そうねえ、これは私がまだ小さい頃、お婆ちゃんに聞いた話なんだけどね。この島には昔から竜の神さまが住んでいて、私たちを見守ってくださっているんだとか」
「竜といいますと、確かこの島には竜の描かれた石碑があるとか」
 女性が話しだしたのは彼女の先祖――祖母はさらにその母や祖母から代々語り継いできたという古い言い伝えだった。竜という単語にシェーラが見せると、女性は「そうそう」と頷きながら話を続ける。
「石碑の他にも柱とか、お社とか、いろいろあるわよ。誰がいつごろ作ったのかは分からないんだけどね……竜はきちんと敬っていれば私たちを守ってくださるけど、蔑ろにされると怒って、子供を奪っていくんですって」
 村のお年寄りの中には今だに、子供が事故にあったり、母親が流産したりすると「竜神様の祟り」だと恐れる者がいるらしい。彼女も祖母が存命だった頃は「強い子供を産みたけりゃあ、竜神様へのお祈りだけは欠かしちゃなんねえ」と何度も言われたそうだ。

「まあ、今だにそんな事を信じてるのはほんの少しだけどね。お婆ちゃんったら心配性でね、私が妊娠したって報告したときも、安産祈願にってヘンな箱を作り始めてさあ……」
「箱ですか? 僕が知っているものとは正反対の性質を持っているようですが……詳しくお話しいただいてもよろしいですか?」
 ネット上の作り話とされる『コトリバコ』の伝承と、この島の『箱』の伝承には似ているようでいて決定的な差異がある。その点にシェーラが踏み込んで尋ねると、女性は少々顔をしかめながら話を続けた。
「あー、私もネットで見たわ。コトリバコって言うんでしょ、薄気味悪いやつ……でも確かに似てるのよね。お婆ちゃんから聞いた箱の話と」
 女性は『箱』の実物を見たことはないという。正確には「触れたらお前が祟りにあう」と、祖母に見ることを許されなかったらしい。『箱』は正しい手順に則って作り、竜神に奉納することで安産祈願のまじないとなるが、もしも手順を破ったり、子供や女性――とりわけ妊婦が『箱』を見てしまうと必ず災いが起きるという。

「この箱にはお前の"厄"を閉じ込めてあるんだって、お婆ちゃん言ってたわ。もし箱に触れたら厄が戻ってきてしまうんだって」
 だから作った箱はなるべく人目につかないところに置いたり、川に流したりしていたらしいと女性は語る。とくに強い厄を封じた『箱』ほど、川の上流に行って流すのが習わしだったとか。
「この島の水源に住んでいる竜神様が、川を通じて厄を清めてくださるんですって」
「水源に竜神が……それは、どこにあるのですか?」
「正確な場所は分かってないのよ。この島の川はさかのぼると山に繋がっていて、そこで地下水脈と合流しているらしいの」
 島に真水をもたらす地下水源は、島民の生活を支える重大な要素だ。しかし区や県が調査のための役員を派遣しても、水源の正確な位置はどうしても特定できなかったという。

「不思議な話よねえ。案外ほんとに水源には神さまが住んでていて、寝床を荒らされないよう隠しているのかも、なんて。私が知っている話はこのくらいよ」
「なるほど。とても興味深いお話でした」
 女性に礼を言ってから、シェーラはその場を辞する。長話にはなったが成果はあった。
 今だ人目に触れられていない、竜が住まうという地下水源。そこに竜脈封印があるのではないかという疑念を深め、彼はさらなる調査を進めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

コトリバコか…フン、何ともまぁ懐かしい怪談話だな
とは言え、この地に伝わっているのは別物と言う話だが

ルポライターを装い島民達とコンタクトを取り、封印された場所を探る
口伝や彼らが見たという遺跡を辿れば、目的地への大まかな場所は分かるはずだ
情報を集めたらデゼス・ポアを装備して探索
こいつの持つ呪詛の力は封印された邪神の残り香に共感するだろう
その残り香を手繰り寄せつつ近くまで来たら
朽ちた社や祠のような人工物にUCを発動する

口を開けずとも、手がかかりを知る術はあるさ
さぁ、それでは聞くとしようか

滲み出る血文字から情報を収取したら目的地を目指す

さて、都市伝説とご対面だ
鬼が出るか蛇が出るか…だな



「コトリバコか……フン、何ともまぁ懐かしい怪談話だな」
 UDCアース出身のキリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)は、一時期ネットで流行したその話にも聞き覚えがあった。作り話としては手の込んだ、薄気味悪くも人の興味を引きつけるような内容で、ネット発祥の怪談の中では特に知名度の高いものだ。
「とは言え、この地に伝わっているのは別物と言う話だが」
 あくまでネット上の創作とされている『コトリバコ』と、この島に伝わる話にどういった関連性があるのかは気になるが――今はそれ以上に『竜脈封印』の所在を突き止めることが先決だった。

「失礼、私はこういう者なのですが……次に書く記事で、この島の遺跡や伝承について取り上げたいと思っていまして」
 ルポライターを装って島民とのコンタクトを取ったキリカは、取材という体裁で情報を集め、邪神が封印された場所を探る。めったに人の来ることのないこの島ではこういった話も珍しいらしく、人々は驚きながらも快く協力してくれた。
(口伝や彼らが見たという遺跡を辿れば、目的地への大まかな場所は分かるはずだ)
 彼らが自分の祖父や祖母から伝え聞いたという竜神や『箱』の話。島の各地に点在する朽ちかけた遺構の所在。その一つ一つをメモに取り、地図に印を付けて、封印との関連性が高いと思われる候補地を絞り込んでいく。さながらその手際は警察か探偵のように。

「ご協力、ありがとうございました」
「ええよええよ。記事になったら是非教えてくれなあ」
 好意的な島民達に見送られて、情報収集を終えたキリカは村を後にする。人気のない場所まで移動したところで、"記者"から"猟兵"の顔になった彼女が呼び出すのは、オペラマスクを被った呪いの人形――「デゼス・ポア」。
(こいつの持つ呪詛の力は、封印された邪神の残り香に共感するだろう)
 鉱山の毒ガスに反応するカナリアと、理屈は異なるが役目は似たようなものだ。人形はヒヒヒと不気味な笑い声を上げながら、村から遠ざかる方向へとぐりんと顔を向ける。
 そちらに何かがあると言うことだろう。デゼス・ポアの感覚を頼りに邪神の残り香を手繰り寄せ、警戒を怠らぬままにキリカが向かった先には、ボロボロの小さな祠があった。

「この祠から何かを感じるのか」
 人形に問いかけても返ってくるのは笑い声ばかりだが、おそらく間違いはないだろう。
 中には何かが納められているようだが、それを見るのは得策ではないと判断。代わりにキリカは【血の呪い】を発動し、その口元に薄く微笑を浮かべる。
「口を開けずとも、手がかかりを知る術はあるさ。さぁ、それでは聞くとしようか」
「キャハハハハハハハハハ」
 哄笑するデゼス・ポアが作り出した魔法陣から召喚されるのは、至るところに「Yes」「No」といった血の文字が浮かび上がった禍々しい髑髏。この「過去を探るウィジャボード」の暗く深い眼孔に睨め付けられた対象は、生物・非生物を問わず、術者の質問に答えなければならない呪いに掛かる。

「答えてもらおう。お前は何のために作られた?」
『呪イ 封ジル 為二』
 キリカが問いを発すると、祠からじわりと滲みだした血が、文字となって回答を表す。
 髑髏が示すその「答え」は、骸の海という膨大な過去のデータベースにアクセスして知覚したもの。呪いに抵抗する特殊なケースでもない限り、虚偽や沈黙はありえない。
「その呪いとは、どのようなものだ?」
『子ヲ 絶ヤス 呪イ 邪神 放ッタ 呪イ』
 "邪神"。その二文字が血で描かれるのを見て、キリカの表情が険しくなった。
 竜脈の力によって封印された邪神は、今だ封じられたままではないのか?

『呪イ 漏レテ 来テイル ズット 昔カラ 常二』
 祠の血文字が語るに曰く、いにしえの竜神の力をもってしても、強大な邪神の封印は完全ではなかった。封印より漏れ出した邪神の呪いは、この島を密やかに蝕んでいたのだ。
 この祠は、漏れた"呪い"を再び封じるために作られた物のひとつ。呪いによって子孫を絶やされぬよう、竜神の知恵を借りて先人たちが編み出したもの。
『ダケド モウ 誰モ 覚エテナイ 厄除ケ 厄祓イ 忘レラレタ』
 竜神信仰はとうに廃れ、この祠を始めとする遺跡も朽ち果てるがまま。このままでは封印が解けずとも、いずれ島民達は邪神の呪いによって全滅するだろう。それが数年後か、あるいは数十年後のことかはまだ、分からないが。

『呪イノ 元凶 邪神 消エナイ 限リ 呪イモ 消エナイ』
「では、その邪神はどこにいる?」
『山ノ 下 川ノ 源』
 必要な情報を祠から収取したキリカは、ウィジャボードを解除するとすぐに歩きだす。
 山の下、川の源。そこに封じられし邪神が眠っており、そして猶予はもはや少ない。
「さて、都市伝説とご対面だ。鬼が出るか蛇が出るか……だな」
 一直線に目的地を目指しながら、キリカの顔には緊張と、冷たい笑みが浮かんでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・フォーサイス
伝承として残る邪神か。面白そうだね。調べてみよう。

『箱』の伝承について、詳しい人に話を訊くよ。

「ぼくたち、各地の伝承を調べてるんだけど、ここは『箱』に災いを封じるって伝承があるらしいね。教えてほしいな。」

「災いっていうのはどんなものなんだろう?」

「竜の姿が書かれたものがあるけど、この伝承と関係あるのかな?」

「結局、その箱はどこにあるんだろう。」



「伝承として残る邪神か。面白そうだね。調べてみよう」
 様々な世界の"物語"を食べるのが好きなアリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)にとって、今回の依頼は食指の動くものだったらしい。いにしえの竜神信仰、怪奇の『箱』、封じられし邪神――この島には彼女が食べる"情報"が沢山ある。
「ぼくたち、各地の伝承を調べてるんだけど、ここは『箱』に災いを封じるって伝承があるらしいね。教えてほしいな」
 島にやってくるなり嬉々としてそう尋ねるアリスは、最初島民から変わった女の子だと思われたようだ。しかし外界との交流の少ない村のこと、彼女の好奇心は好意的に受け止められ、特に子供好きな老人たちからいろいろな話を聞くことができた。

「お嬢ちゃんみたいな子が『箱』に触れちゃあいけないよ。見るのも、近付くのも」
「どうして?」
「『箱』に閉じ込められた災いは、いつだって外に出たがってるんだよ」
 無邪気な好奇心を見せるアリスに、村の老人達は神妙な表情をして語る。『箱』とは新たな命が無事に産まれてくるように祈るもの。だが出産の災いとなる"厄"を封じた『箱』に、誰かが接触するのは厳禁なのだという。災いが出てきてしまうかもしれないから。
「災いっていうのはどんなものなんだろう?」
「ほとんどの子は事故や病気にあって死んでしまう。もし死ななかったとしても、その子は一生、子供を作れない身体になってしまうんだよ」
 『箱』の災いにあう者は、決まって妊娠できる女性や子供だけだという。成人した男性や老人は対象にならないそれは、まさしく子孫を絶やすことのみに特化した"呪い"だ。

「竜の姿が書かれたものがあるけど、この伝承と関係あるのかな?」
 アリスは次に、この島に残っている遺跡についても尋ねてみる。社や祠、石碑に柱といった朽ちかけた人工物には、竜をモチーフにした図案や模様が多く使われているようだ。
「竜はこの島の守り神さ。正しくお祀りすれば『箱』の災いからも守ってくださる」
「けれど、もし竜の機嫌を損ねたら、逆に村に祟りをもたらすんだよ」
 老人達の語りに登場する"竜神"とは、おそらく邪神と混同されたものだろうとアリスは判断する。島に暮らす人々を守護しながら、時には祟りや災いをもたらす存在。それがこの地でかつて信仰されていた"竜神"の伝承らしい。
「呪いと祝福は裏表なのさ。今の世の中はなんだって便利になっているけど、そのせいで謙虚さを忘れた人間に竜神様がお怒りにならないか、儂は心配でねえ……」
 今となっては竜神信仰を覚えているのもごく一部の島民だけで、その多くも竜神の実在など真に受けてはいない。医療の発達に伴って安産祈願だった『箱』の製法や伝承も廃れ、大半の島民にはただのおとぎ話か迷信のようにしか思われていないようだ。

「結局、その箱はどこにあるんだろう」
「そんなに箱が気になるのかい? 困ったねえ……」
 アリスが再三に渡ってしつこくねだると、老人達はやがて根負けして、かつて作られた『箱』の在り処を教えてくれた。絶対に直接見たり触れたりはしないようにと警告して。
「箱には封じこめた"厄"の強さに応じて格付けがしてあってね。呪いの弱いものは川に流して清める。強いものは祠や社に封じる。そして一番呪いの強いものは、竜神様のねぐらの近くまで持っていってお祓いしてもらうのさ」
「竜神のねぐら?」
「人は決して足を踏み入れちゃいけないところさ。儂らも場所までは知らない。ただ、山の下には土と水が交わる場所があって、そこに竜神様が眠っているって話さ」
 なんとも判然としない話ではあったが、そこまで聞けばおおよその予測はつけられた。
 恐らくはその竜神のねぐらとやらに、この地の伝承の大本となる『竜脈封印』があるのだろう。

「ありがとね、お爺ちゃん、お婆ちゃん」
「ええよええよ。気をつけてなあ」
 ニコニコ笑顔でお礼を言ったアリスは、村を後にすると島の真ん中にある山に向かう。
 老人達からはオヤツがわりに沢山の"物語"を聞かせてもらい、情報妖精は機嫌がいい。
 この分ならメインディッシュの方も期待できそうだと、彼女は心を躍らせるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
カクリヨFの発見で齎された新たな真実
この案件の解決が更なる発見に繋がる一助となれば良いですね

趣味の御伽噺の収集経験を役立てそうです
念の為、UDC組織に偽装書類と贈答物の用意依頼
所持知識はデータで補正
『伝承調査に訪れた民俗学研究員』の肩書で入島

先ずは村役場でフィールドワークの許可を
故郷の島への愛着強い職員の方がいれば伝承に詳しいご老人との橋渡しも期待出来ます

(暑中見舞い和菓子詰め合わせを差し出しつつ)

島を見て回った際、"竜"のモチーフが点在していました
島に伝わる『箱』と『竜』…詳しいお話を聞かせて頂けますか

後は障害物を取り除きつつ伝承の地に踏み入るのみ
…なるべく現地を荒らさないでおきたいものです



「カクリヨファンタズムの発見で齎された新たな真実。この案件の解決が更なる発見に繋がる一助となれば良いですね」
 UDCアース内の調査だけでは見つけられなかった邪神の痕跡――『竜脈封印』の発見に、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は喜ばしいものを感じていた。
 幽世に隠棲していた竜神達の協力がなければ今回の発見はなかった。現代の地球から失われたものたちが集うかの世界との連携は、邪神との戦いにより一層の進展をもたらすやもしれない。そのためにも、今回の依頼を無事に解決することが重要となるだろう。

「失礼します。私は××大学の研究室に所属するゼロナインと申しますが……」
 島にある村の役場に顔を出したトリテレイアは、自らを『伝承調査に訪れた民俗学研究員』と名乗る。もし追求されても大丈夫なように念の為、肩書に必要な書類はUDC組織に依頼して偽造済みであり、相応の知識(データ)もインプットして補正をかけてある。
「この村の伝承を調査するために、島内のフィールドワークの許可を頂きたいのですが」
「まあ、そうですか。でしたらすぐに確認を取ってきますので、少々お待ち下さい」
 外界とも交流の少ない小さな村では、役場が処理するような案件も少ないのだろう。思っていた以上にあっさりと許可は下り、担当の係員からは島内の見取り図が手渡された。

「こちらに遺跡の場所が記してあります。全てではありませんが、参考になれば」
「これは助かります。わざわざ用意してくださったのですか?」
「外の人に島のことを知ってもらえるのは嬉しいことですから」
 職員の女性の微笑みを見て、トリテレイアは彼女が故郷の島への愛着強い人物であると感じた。この様子なら島に伝わる逸話の調査についても、色々と便宜を期待できそうだ。
「でしたらご厚意に甘えるようで恐縮ですが、この島の伝承に詳しいご老人の方などいらっしゃいましたら、紹介していただけないでしょうか」
「そうですね……それなら私の祖母が古い話をよく覚えていたはずです」
 聞けばその祖母はまだ孫娘が小さい頃から、この島に伝わる『箱』や『竜』の話をよく聞かせてくれたという。住所の書かれたメモを手渡され、トリテレイアは「感謝します」と深く頭を下げた。

「突然お邪魔して申し訳ありません。役場の方に紹介を受けて参りました」
「まあまあ。わざわざ遠いところから、ご苦労だったことでしょうに」
 教えられた住所に住んでいたのは、老いてなお矍鑠とした振る舞いを見せる老婆だった。孫娘である職員の名前を出すと、彼女はにっこりと破顔してトリテレイアを迎える。
「こちら、つまらないものですが」
「あらあらご丁寧に。大したおもてなしもできませんが、上がって頂戴な」
 書類と一緒にUDC組織に用意して貰った、暑中見舞いの和菓子詰め合わせを差し出すと、老婆は快くそれを受け取ってトリテレイアを家に招いた。古きものの情緒を感じさせる日本家屋の中、冷たい麦茶の入ったコップを手に、2人はこの島の伝承について語り合う。

「こちらにうかがう前に島を見て回った際、"竜"のモチーフが点在していました」
 許可を得て島内を巡るなかでトリテレイアが発見した遺構には、風化が進みすぎて確認できなかったものを除けば、いずれも竜あるいは蛇のような意匠や模様が施されていた。
「島に伝わる『箱』と『竜』……詳しいお話を聞かせて頂けますか」
「ええ、構いません。この話を知っている者は、この島でもごく僅かですから」
 記憶が風化し、伝承が完全に失われてしまう前に、誰かに伝えることができれば幸いだと、その老婆はどこか寂しげに微笑み――そして神妙な顔をしてゆっくりと語りだした。

「これは私の祖母が、そのまた祖母から聞いたという話です」
 昔々、とある村人が入ってはならないとされていた"竜の寝床"に迷い込んでしまった。
 眠りを妨げられた竜は怒り、村全体に呪いをかけた。それからというもの村には病が流行りだしたが、奇妙なことにそれで亡くなるのは女子供ばかりだったという。
「このままでは子孫が絶えてしまうと、恐れおののいた村人は懸命に竜に許しを請いました。その懇願に心を動かされた竜は、呪いを解くための方法を伝えました」
 それは寄せ木細工の『箱』の中に呪いを封じ、竜の元へ呪いを還す儀式の作法だった。
 子絶やしの呪いを封じた『箱』が幾つも作られ、あるものは川に流され、あるものは社に納められた。そうして村は滅びを免れることができたという。

「以来、村では子供の健康や安産を祈願するために『箱』を作り続けてきました。一度放たれた竜の呪いは、竜自身が許そうとも決して消えることは無かったからです」
 長い年月を経るうちに伝承は風化し、『箱』も単なる安産祈願のまじないとなったが、呪いの危険性だけは認識されていた。老婆自身、この物語の全てが真実だとは思っていないが、先祖代々語り継がれてきたことには何かしらの意味があると考えているようだ。
「この島の中心にある山のふもとに、竜の寝床へと続く入り口があると言います。私は恐ろしくて近寄るのも足がすくみますが……何かが残されているかもしれません」
「貴重なお話と情報を、ありがとうございます」
 話し終えてお茶をすする老婆に深く頭を下げて、トリテレイアは感謝を述べた。
 間違いなくこの情報は『竜脈封印』の在り処に近付く貴重な手掛かりだろう。

「後は障害物を取り除きつつ伝承の地に踏み入るのみ」
 老婆の家を去ったトリテレイアは、語られた情報に従って村を離れ、山の麓を目指す。
 その道中には深い森が広がっているが、彼にとってはさしたる障害になりはしない。
「……なるべく現地を荒らさないでおきたいものです」
 せっかくの豊かな自然を損なわぬよう、枝や草花を踏みにじらぬよう気を遣いながら。
 機械仕掛けの騎士はいにしえの伝承の真実へと、一歩一歩足を進めていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

斬断・彩萌
こーいうのって言ってしまえば民間伝承でしょ。都市伝説、ともいうか。
となると、やっぱり人に直接聞いてみるのがイイんじゃないかしらね。

てワケで、老人や昔からこの場所に居付いてそうな農家あたりを狙って話しかけてみるわね。これでも【コミュ力】はある方だと思うし、気さくに話しかけていくわよ!
聞きたいことは「コトリバコの伝承」「パワースポット(竜脈)とか知ってる?」って感じかな。

コトリバコに関しては、中に封じられた災いっていうのが本当に『子取り箱』なのかどうか知りたいところ。あとは適宜情報を詮索。
竜脈は大まかな場所が聞けたならなら万々歳、存在があるかどうかだけでも儲けものね。

※アドリブ歓迎



「こーいうのって言ってしまえば民間伝承でしょ。都市伝説、ともいうか」
 島に伝わる竜神信仰や『箱』の伝承について聞いた斬断・彩萌(殺界パラディーゾ・f03307)は、それが文献として残されてきたものではなく、人から人へと口づてに伝えられてきたものだろうと理解していた。言うなればそれは"記録"ではなく"記憶"の伝承だ。
「となると、やっぱり人に直接聞いてみるのがイイんじゃないかしらね」
 誰かと話すのは嫌いではないし、これでもコミュ力はある方だという自身もある。
 今どきの女子らしいコーデでばっちりキメて、少女は鼻歌交じりに村に向かった。

「ねー、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「おんや、どうしたね。都会の娘さんがこんな田舎に来るなんて」
 老人や昔からこの場所に居付いてそうな農家あたりを狙って話しかけてみると、相手から返ってくる反応にはだいたい決まって驚きが混じっていた。閉鎖的とまでは言わずとも、外界と隔てられたこの島に、彩萌のような娘が訪れるのは珍しいことなのだろう。
「私、地方の怪談とかオカルトとかに興味があって色々調べてるんだけど。この島に伝わってるコトリバコの伝承について、知らない?」
「ことりばこ……あぁ『箱』の事かね。あんなの聞いても面白くねぇと思うけんどなあ」
「聞かせて聞かせて。大丈夫、誰にも話したりしないから、ね?」
 気さくな態度と明るい笑顔でぐいぐい話しかけていくと、相手もつい絆されてしまうのか、最初はやや渋っていた老人も、やがてぽつりぽつりと言い伝えについて語りだした。

「昔はあんたみたいな若い娘さんが『箱』に関わるのは絶対にいけねえ事だって、儂の親父やお袋なら絶対止めてただよ。それくれえ『箱』ってのは危険なもんなんだ」
 その農家の老人が語るに曰く、子孫繁栄のために作られた『箱』は決して人目の触れないように仕舞っておくか、川に流して清めるものだったらしい。彼がまだ幼い頃は、その伝統も細々と行われていたらしいが、『箱』の実物は絶対に見せて貰えなかったそうだ。
「この島には慈悲深いが怒りっぽい竜の神さまがおってな。昔は子供が事故にあったりお産が流れたりすると、竜神様の祟りだって言ったもんでよ。だから竜神様の出した厄は『箱』に詰めて、竜神様のもとにお返しすんのさあ」
「へー、なるほどね」
 彩萌は老人の話を頭の中で整理しながら、この島に伝わる『箱』の伝承と、ネット上に流布する『コトリバコ』の怪談に、やはり幾つか差異があるのをはっきりと感じていた。
 一般に語られる『子取り箱』の中に封じられた災いとは、獣の血だとか水子の亡骸だとかによる「人の手により作られた呪い」だ。しかしこの島の『箱』に入っているのは「竜神様の祟り」――超自然的な存在による災いを祓うために作られたものだという。

(これって絶対、この島に封じられている邪神と無関係じゃないわよね)
 彩萌は疑念を深めつつ、今はひとまず老人との話に集中する。ここで彼女が聞いておきたいのは『コトリバコ』の伝承に加えてもう一つ、竜脈封印の所在に関する情報である。
「お爺ちゃんはこの島の竜脈……パワースポットとか知ってる? そこに行ったら運気がアップするとか、逆に入っちゃいけない神聖な場所とか」
「んー、そうだなあ……この島で神聖な場所って言ったら、やっぱ川でねえか?」
 四方を海に囲まれた小さな島では、水源はまさに島民の生命線である。もしも川を汚したりゴミを投げ入れようものなら「バチが当たるよ!」とこっぴどく叱られるらしい。
「そういや、この島の川の源には竜神様が住んでいる、なんて話も聞いたっけなあ」
「じゃあ、川をさかのぼっていけば竜に会えたりする?」
「ははは、かもしんねえなあ。本当に竜なんていればの話だけんどなあ」
 彩萌の質問に老人はからからと笑う。どうやらこの老人自身、子供の頃に聞いた昔話という程度にしか、竜神信仰や『箱』について認識していないらしい。それは彼に限らず、現在の島民のほとんどに共通する感覚なのだろう。

「ほんとに行くつもりなら、気いつけてな。ここの森は結構深いで、迷わんようにな」
「ええ、気を付けるわ。ありがとねお爺ちゃん」
 にっこり笑顔で手を振って、彩萌は老人と別れる。直に核心に迫る情報というほどでは無かったが、『箱』に関する推測は立てられたし、これから向かうべき場所も決まった。
(大まかな場所が聞けたならなら万々歳、存在があるかどうかだけでも儲けものね)
 この島の川の水源に竜――竜脈があるとすれば、地道に遡ってでも見つけ出すまでだ。
 調査を行っている他の猟兵とも連絡を取り合って、彼女は島に眠る真実に迫っていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『千里眼獣プレビジオニス』

POW   :    未来すら視る単眼
【未来の一場面を視ることで】対象の攻撃を予想し、回避する。
SPD   :    千里を見通す獣
【視力強化・視野拡大・透視・目眩まし耐性】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【見失うことなく追尾し、鋭い爪】で攻撃する。
WIZ   :    幻の千里眼
【すべてを見通す超視力に集中する】時間に応じて、攻撃や推理を含めた「次の行動」の成功率を上昇させる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 住民との交流やフィールドワークを通じて、島の伝承についての調査を行う猟兵達。
 それぞれの調査結果を照らし合わせ、空いている要素を補完することで、この地に残された竜神信仰と『箱』の伝説の真実が見えてきた。

 この地には太古の昔から、大地を流れる竜脈の力によって邪神が封じられてきた。
 しかしその封印は完全なものではなく、何らかの要因によって邪神の力が「呪い」となって漏れ出して災いを為すことがあった。人々はこの漏れた呪いを『箱』に封じ直すことで、災いが降り掛かるのを避けてきたのだ。

 邪神の呪いを封じた厄除けの『箱』は、扱いによっては女子供を殺し子孫を絶やす危険な呪物にもなる。故に人目に触れぬよう遠ざけられ、正確な伝承も避けられたのだろう。
 その結果として『箱』の正しい由来はいつしか忘れ去られ、そして竜神への信仰も歪んでいった。竜脈に封じられた邪神は、祟り神としての竜神の一側面として混同され、誤った認識が広まっていき――やがて、それさえも廃れていったのだ。

 だが、猟兵達は知っている。邪神も竜神も決して架空の存在ではないことを。
 『箱』に封じられた呪いの元凶は、今も封印の解ける時を待っているのだと。

 伝承の真実を調べるのと同時に、猟兵達は竜脈封印の所在も突き止めていた。
 島の中心部にある山の麓に、地下へと続く洞窟がある。その奥にはこの島に流れる川の水源となる地下水脈があり、"竜の寝床"として島民には語り伝えられていた。
 そこに封印があると踏んだ猟兵達は、さっそく地下へと続く道を進む――。

「―――ギギギッ」

 果たして、暗い洞窟の中で猟兵達を待っていたのは、異形なる単眼の獣の群れだった。
 千里眼獣プレビジオニス。その一つ目にて未来すら見通すという霊獣で、警戒心が強く山奥に隠れ住むとされる。だが、ここにいる獣の数はそれにしても異常なほど多過ぎる。
 恐らくは、封印から漏れ出している邪神の力――魔力や呪力といったものを啜って増殖していたのだろう。人里からそう離れていない場所に、これだけのUDC怪物の巣窟が人知れず存在したのは、驚くべき事である。

「ギュイッ!」

 千里眼獣の群れは、ナワバリに踏み込んできた猟兵達を単眼でギョロリと睨みつける。
 どうやらタダで帰してくれるような雰囲気ではない。また猟兵達にしても、ここに竜脈封印がある可能性がほぼ確証に変わった以上、引き返すという選択肢はなかった。

 地の底へと続く洞窟で、猟兵と妖獣の戦いが始まる。
 『箱』の呪いと竜脈封印。討つべき元凶は、この先にいる。
黒川・闇慈
「どうやらこの場所は大当たりのようですねえ。クックック」

【行動】
wizで対抗です。
相手にこちらを観察させる時間を与えると危険ですので、速攻して片付けましょう。
属性攻撃、全力魔法、範囲攻撃、高速詠唱の技能を用いてUCを使用します。
先手を取って雷の矢で相手を包囲し、戦闘力の要となっているであろう眼を狙って攻撃しましょう。
大量の雷の矢を飛翔させて私の姿を覆い隠し、相手にこちらを視認させない効果も期待できるかもしれません。
反撃を受けた場合はホワイトカーテンの防御魔術を使用し、オーラ防御、激痛耐性の技能で防御です。

「我々の通る道を開けていただきますよ。クックック」

【アドリブ歓迎】



「どうやらこの場所は大当たりのようですねえ。クックック」
 行く手に立ち塞がる大量のUDC怪物――千里眼獣プレビジオニスの群れを見て、闇慈は愉しげにほくそ笑んだ。これだけの数のオブリビオンが異常発生しているのなら、この先に『竜脈封印』に封じられた邪神が居るのは間違いないと言っていい。
「ギギギギ……」
 魔獣達からすれば猟兵はナワバリを脅かす外敵であり、同時に久しくやってきた獲物である。頭部の単眼をギョロリと見開いて【幻の千里眼】で動向を見定めようとしている。

「天より至れ雷轟の嚆矢。一切全てを襲い撃て、ケラウノス・ブリッツ」
 しかしプレビジオニスの千里眼が十分な観察を済ませるよりも早く、闇慈はユーベルコードの呪文を唱えた。自作の「18式増幅杖・メイガスアンプリファイア」の杖先から何百本という稲妻の矢が放たれ、雷光の軌跡が複雑な幾何学模様を描きながら敵を包囲する。
「相手にこちらを観察させる時間を与えると危険ですので、速攻して片付けましょう」
 洞窟の暗闇に慣れきったプレビジオニス達の目を灼く【雷獄襲軍】の輝き。あまりの眩しさに敵が目を瞑ろうとした間際、無数の雷矢はまさにその単眼を狙って射掛けられた。

「ギギィッ?!」
 稲妻に目を射抜かれたプレビジオニスは甲高い悲鳴と共に全身を痙攣させ、ぶすぶすと焦げ臭い煙を上げて動かなくなる。仲間の死を目の当たりにした獣達はそれで完全に猟兵を"敵"と認識し、殺気の籠もった眼差しで睨みつけようとするが――。
「ご自慢の目で、この魔の雷霆を見通すことはできますか?」
 クククと笑う闇慈の声こそ聞こえはすれど、どこに居るのかを捉えるのは難しい。戦場を埋め尽くさんばかりに飛翔する大量の雷の矢が、術者の姿を覆い隠す雷光のヴェールとなって、千里眼獣にこちらを視認させない目くらましとしての役割を果たしていた。

「ギィィィルゥッ」
 それでも彼らとて"千里眼獣"の名は誇張にあらず。雷光の渦の中から微かにちらつく黒い影――黒衣纏う闇慈の凡その位置を見出すと、牙を剥き出しにして飛び掛かってくる。
 だが、これだけ目くらましで時間を稼ぐことができれば、攻撃のみならず防御魔術を展開する暇は十分にあった。プレビジオニスの反撃は闇慈が取り出した白いカード「ホワイトカーテン」から展開されるオーラの魔術結界によって、あえなく阻まれることになる。

「我々の通る道を開けていただきますよ。クックック」
 結界を引っ掻くのみに終わった反撃への応報は、至近距離からの雷の矢の斉射だった。
 落雷のような轟音と閃光が洞窟を満たし、黒焦げになった獣の亡骸が吹き飛んでいく。
 圧倒的な魔術の力を見せつけながら、闇慈は悠々と洞窟の奥へと進んでいくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・フォーサイス
ビンゴ、かな。

見られてる......ね。そのちから、真似させてもらうよ。

こちらも超視力をユーベルコピーで習得。使用してそこで得た情報を情報解析、的確な回避、攻撃行動に繋げるよ。

見えちゃうからこそ、フェイントには弱いみたいだね。まあ、普通の人なら気づかないレベルだけど、その超視力ゆえに反応してしまう。チェックメイトだよ。

最後は全力魔法でとどめだ。



「ビンゴ、かな」
 島の山腹にある洞窟に足を踏み入れたアリスは、闇の奥から幾つもの視線が自分に向けられているのに気付いた。耳を澄ませばかすかに聞こえるのは獣の鳴き声と息遣い――それも数匹どころではない、何十何百と大繁殖したオブリビオンの群れが待ち受けている。
「見られてる……ね。そのちから、真似させてもらうよ」
 千里眼獣の異名のとおり、すべてを見通すとされるプレビジオニスの超視力。彼女はその能力を情報として解析、理解して一時的に自分のものとする。情報を司る妖精にかかれば、この程度の【能力解析】は造作も無いことだ。

「なるほど。キミたちの目にはこんな風に世界が見えているんだね」
 超視力を得たアリスの瞳は暗い洞窟内を真昼のようにはっきりと見通し、その陰に潜む敵と目が合う。その途端、プレビジオニスの群れは【幻の千里眼】による観察を止めて、獣らしい俊敏な動きで襲い掛かってきた。
「ギギギッ!!」
 力はけして強くはないが、その鋭い爪牙と数の暴力は猟兵にとっても十分脅威となる。
 しかしアリスは借用した【幻の千里眼】によって得た情報から敵の動きを分析し、ひらりと無駄のない動作で攻撃を回避する。

「うん。なかなか便利だね、このちから」
 情報の解析・操作に長けた情報妖精と、観察の精度を高める千里眼獣の能力は、思いのほか相性が良かったようだ。まさに未来が視えているかのような動きでひらりひらりと爪牙を躱しながら、アリスはウィザードロッド型情報端末を手元で小さく揺らす。
「ギッ?!」
 その動きを見たプレビジオニスはギョロリと目を見開いて回避運動を取る。すべてを見通すユーベルコードはもともと彼らのもの、どんな些細な挙動からでも絶対に攻撃の気配を見逃しはしない――だが、時にはその超視力が仇となる場合もある。

「見えちゃうからこそ、フェイントには弱いみたいだね」
 アリスは手元や視線の僅かな動きで敵の反応を誘うと、その直後に生じた隙を突いてロッドから魔法を放つ。まんまとフェイントに引っかかったプレビジオニスの小柄な体躯を、光り輝く魔力のカタマリが吹き飛ばした。
「まあ、普通の人なら気づかないレベルだけど、その超視力ゆえに反応してしまう」
 同じ力を手に入れたからこそ理解できる、敵の能力の弱点。視えすぎる眼を持つがゆえに翻弄される千里眼獣の群れを、アリスは盤上のチェスの駒を摘み取っていくように、的確な回避と攻撃で追い詰めていく。

「チェックメイトだよ」
 洞窟の隅まで敵を追いやれば、最後は全力魔法でとどめ。端末によって組み上げられた魔法陣から目も眩むような光の奔流が放たれ、プレビジオニスの群れを呑み込んでいく。
「ギギィ――――ッ!!」
 木霊する断末魔の悲鳴はやがて小さくなり、アリスの視界には先に続く道だけが残る。
 障害を排除した情報妖精はくるりとロッドを回して微笑むと、邪神の封印を目指して移動を再開するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

フン…人里近くでこうも繁殖してるとはな
邪神ついでに此処も奇麗にしていくか

デゼス・ポアを飛ばし、シガールQ1210で弾幕を張り敵を撃ち倒していく
至近距離まで来た敵はナガクニで対応
攻撃の瞬間を見切りカウンターで倒していく

やれやれ、オードブルだけで腹が膨れそうだな
漏れた奴は任せたぞ、デゼス・ポア

UCを発動
壁を背にしたら腕をガトリングガンや機関銃と言った大型の銃に変えて周囲に制圧射撃を行う
見失う事なくこちらに向かってくるのなら動かずに迎え撃てばいいだけだ
弾切れには期待しない方が良いぞ
弾幕を抜けた敵はデゼス・ポアの刃で応戦しよう

千里を見通す目か…
その目で存分に視ると良い、お前達の末路をな



「フン……人里近くでこうも繁殖してるとはな」
 洞窟の中にひしめくプレビジオニスの大群を見て、キリカは不愉快そうに目を細める。
 封印から漏れた邪神の力が糧となって、これほど大規模なUDC怪物の巣を作り上げたのだろう。今はまだ地下から出てくる気配はなくとも、放置しておくのはあまりに危険だ。
「邪神ついでに此処も奇麗にしていくか」
 愛用する強化型魔導機関拳銃"シガールQ1210"のトリガーを引くと、ダダダダッと連なる銃声が壁や天井に反響する。それに呼応してデゼス・ポアも「キャハハハハハ」と少女のような笑い声を上げ、立ちはだかる千里眼獣の群れに襲い掛かった。

「ギャウッ?!」
 秘術により強化された銃弾が獣を撃ち抜き、人形の躯から飛び出す錆びついた刃が切り刻む。銃声に混じって聞こえる甲高い悲鳴は、倒れたプレビジオニスの数を示している。
 それでも【千里を見通す獣】の単眼は、ナワバリの侵入者であるキリカを凝視していた。ユーベルコードにより強化された視力は絶対に獲物を見逃すことはなく、仲間を何匹撃ち倒されようとも、数にものを言わせて強引に弾幕を突破してくる。
「しつこい獣だな」
 数えるのも億劫になるほどの群れを前にして、キリカは小さな嘆息をひとつ。片手でシガールQ1210による弾幕を張ったまま、空いた手で黒革拵えの短刀「ナガクニ」を抜く。
 いくら目が良くともしょせんは獣、攻撃の瞬間を見切ってカウンターを仕掛けるのは彼女にとってそう難しいことではなく――暗闇の中で閃いた刃が、千里眼獣の血に濡れる。

「ギギギギギギ……ッ」
 正面には銃と刃を自在に使いこなす戦場傭兵。遊撃手には錆刃を放つ呪いの人形。たった1人と1体とはいえ、いかに相手が強大なのかはプレビジオニス達の頭でも理解できた。
 しかし彼らもここで退けば棲家を失うことになる。猫を噛む窮鼠の勢いで鋭い爪を振りかざし、なおも押し寄せてくる獣の群れに対し、キリカはゆっくりと壁際まで後退する。
「やれやれ、オードブルだけで腹が膨れそうだな。漏れた奴は任せたぞ、デゼス・ポア」
 壁を背にしたのは追い詰められたからではなく、包囲を防止したうえで敵群を射界に収めるため。拳銃をホルスターに収めてすっと腕を伸ばすと、しなやかな指先から肘に至るまでが、生身の肉体から鋼鉄のガトリングガンに姿を変えた。

「何が出てくるかわかるまで、迂闊に近づかないほうがいいぞ? ……まぁ、もう手遅れだけどな」
 自らの身体部位を多様な武器や銃器に変異させる、ユーベルコード【ラ・ルージュ】。
 にやりとキリカが笑みを浮かべた直後、これまでの比ではない轟音が洞窟に響き渡る。
「ギギャァッ?!」
 一心不乱に標的に向かっていたプレビジオニスの群れは一瞬にして蜂の巣となり、断末魔と血飛沫が戦場に散る。見失う事なくこちらに向かってくるのなら、動かずに迎え撃てばいいだけだ――単純にして明快なキリカの迎撃戦法が千里眼獣に牙を剥く。

「弾切れには期待しない方が良いぞ」
 変異した凶器には常に未知の経路から弾薬が供給され続け、敵群に降り注ぐ弾幕に止む気配はない。幸運にも銃弾の嵐を抜けてきた獣も、爪を振るう前にデゼス・ポアの刃によって切り捨てられる。
「千里を見通す目か……その目で存分に視ると良い、お前達の末路をな」
「ギ、ギギィ……!」
 恐怖に見開かれたプレビジオニスの単眼には、猛威をふるう戦場傭兵と呪いの人形、そして数秒先の自分達の散りゆく姿がはっきりと焼き付いていた。いかに"視る"ことに長けていようと、非力な獣達にその未来を覆す術はなく――ただ、駆逐されゆくのみだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

フレミア・レイブラッド
山奥に隠れ住むだけで特に悪さもしなければ見逃してあげても良いのだけどね…。
でも、こちらに牙を剥くなら話は別よ。降りかかる火の粉は払わせて貰うわ。
…これ以上呪いを溜め込んで村に害を及ぼす様なのになっても困るしね。

炎の魔力弾【属性攻撃、高速・多重詠唱、誘導弾】を多数放ちつつ、【サイコキネシス】を展開。更に【念動力】で範囲内の敵を逃がさない様に念の結界を張るわ。
派手な炎の魔力弾を囮に、不可視の念で敵を捕縛し、そのまま魔力弾や魔槍による急所への一突きで仕留めるわ。

未来視とて万能じゃないわ。未来の一場面が見えるみたいだけど、攻撃自体が不可視なら、何をされたかも理解できないでしょう?



「山奥に隠れ住むだけで特に悪さもしなければ見逃してあげても良いのだけどね……」
 これまでは人目に付くことなく、洞窟内で『竜脈封印』から漏れだす邪神の力を糧にして繁殖していたプレビジオニスの群れを前にして、フレミアは「でも」と言葉を続ける。
「こちらに牙を剥くなら話は別よ。降りかかる火の粉は払わせて貰うわ」
 すでに相手はナワバリを荒らされたものとして臨戦態勢を取っている。ならば彼女も情けをかける理由はない。その手に構えた真紅の魔槍「ドラグ・グングニル」の穂先には魔力の炎が煌々と灯り、闇に潜む千里眼獣の群れを照らし出した。

「行くわよ」
 フレミアが詠唱を紡ぎながら槍を振るうと、穂先から幾つもの炎の魔力弾が放たれる。
 その火力に加えて誘導弾としての性質も有した、彼女が得意とする攻撃魔術。しかしプレビジオニスの群れは【未来すら視る単眼】によって、その攻撃をすでに予知していた。
「ギギギッ!!」
 降り注ぐ炎の雨の中をすり抜けるように、機敏な動きで身を躱すプレビジオニス。暗闇の中で妖しく揺らめく単眼の輝きは、自身に迫る危機的な未来の一場面を見通している。
 まさに千里眼獣の異名に恥じぬ異能――だが、攻撃を回避されたフレミアは動じることなく、さらに詠唱を重ねて魔力弾の追撃を仕掛けた。

「ギギギギギ……!」
 荒れ狂う炎の弾幕によって、うだるような熱気が戦場に満ちていく。しかしどんなに規模を苛烈にしても、未来視を発動したプレビジオニスはどんな攻撃もお見通し――少なくとも当の獣達にはそうした驕りがあったことだろう。
「未来視とて万能じゃないわ」
「ギ――ッ!?」
 軽快に魔力弾を躱していた獣達が、ふいに四肢を何かに掴まれたように動きを止める。
 暗い洞窟の中ではひときわ目を引く、派手な炎は囮。フレミアは魔力弾を放つと同時に【サイコキネシス】を展開し、周囲の敵を逃さないよう念動力の結界を張っていたのだ。

「未来の一場面が見えるみたいだけど、攻撃自体が不可視なら、何をされたかも理解できないでしょう?」
 完全に未来視の盲点を突かれたプレビジオニス達は、フレミアの放つ不可視の念に捕縛され、いつの間にか袋のネズミとなっていた。一度動きを封じてしまえば後はこちらのもの――どんな未来を予知されようが、回避できない状態では何の意味もない。
「ギギィィィィィィッ!!!?」
 再び放たれた魔力弾は今度こそ標的を射抜き、炎に包まれた獣達の悲鳴が戦場に響く。
 フレミアは念の束縛の中でもがく彼らの元に、魔槍を携えてゆっくりと近付いていく。

「……これ以上呪いを溜め込んで村に害を及ぼす様なのになっても困るしね」
 今はまだ地下に潜んでいても、このまま増え続けた獣はやがて地上へと溢れるだろう。
 元は警戒心が強く臆病な獣でも、邪神の影響を受け続ければどんな悪意ある存在になるか分からない――将来の禍根を断ち切るために、フレミアは容赦なく魔槍を突き放つ。
「ギャ……ッ!!」
 急所を一突きにして仕留めるのは、長く苦しませないためのせめてもの慈悲だろうか。
 周辺にいた千里眼獣を一掃した吸血姫は、槍に付いた血を拭って、先に進むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
ん…悪いけど、先を急いでるからね…。
仕掛けて来るなら容赦しないよ…。

【unlimitedΩ】を展開…。
更に黒桜の呪力解放【呪詛、衝撃波、なぎ払い、早業】により、広域に呪力放出して、魔剣の全方位一斉斉射と同時に超広域攻撃…。

場所も悪かったね…。
この洞窟という閉所を利用し、敵が未来視や千里眼で見通しても、対応できず、逃げ場のないくらいの広域攻撃で一気に敵の群れを殲滅…。
更に呪術により呪殺弾【呪詛、呪殺弾、高速詠唱】や呪力の縛鎖等を展開し、地形を利用して一気に追い詰めて行くよ…。

これだけ凶悪な呪力や魔力を糧にしてたら、いつどれだけ凶悪な怪物になるとも判らないからね…。
悪いけど、倒させて貰うよ…。



「ん……悪いけど、先を急いでるからね……」
 眼前に立ち塞がるプレビジオニスの群れと対峙し、璃奈は呪槍・黒桜を静かに構える。
 その穂先から揺らめく呪力は、黒い桜の花びらのよう。獣達を見つめる彼女の瞳はけして敵意に満ちているわけでは無かったが、その構えには一分の隙も見当たらない。
「仕掛けて来るなら容赦しないよ……」
 その警告は果たして届いたのかどうか。敵は【幻の千里眼】で璃奈を凝視したまま、じわり、じわりと距離を詰めてくる。剥き出しにされた牙の隙間から漏れる「ギギギッ」という唸り声には、ナワバリの侵入者に対する明白な敵意が宿っていた。

「全ての呪われし剣達……わたしに、力を……立ち塞がる全ての敵に終焉を齎せ……! 『unlimited curse blades 』……!!」
 璃奈は敵に飛び掛かられる前にユーベルコードを詠唱し、"終焉"の呪力を宿した無数の妖刀・魔剣を周囲に展開する。それらを押し寄せる獣の群れに向かって一斉斉射するのと同時に、呪槍に秘められた呪力を解放――黒い桜の花吹雪が戦場に吹き荒れる。
「ギギィ―――ッ?!!?」
 魔剣と呪力による全方位への超広域攻撃。視界を真っ黒に染め上げんばかりの猛威に、プレビジオニス達は避ける間もなく呑み込まれ、断末魔の絶叫を遺して消滅していく。幸運にもその範囲外にいた獣も、その惨状を眼にすれば、思わず立ち止まらざるをえない。

「場所も悪かったね……」
 いかに敵が未来視や千里眼でこちらの攻撃を見通そうと、洞窟という閉所では回避のためのスペースは限られる。璃奈はその環境を利用して、相手が対応できず、逃げ場が無いくらいの広域攻撃を連発して、一気にプレビジオニスの群れを殲滅していく。
「ギギャウッ?!」
「ギギーーーッ!!」
 巫女の手で極限まで呪力を強化された終焉の魔剣は、受けたもの全てに終わりをもたらす。見開かれたプレビジオニスの単眼に映るのは、黒い呪力に閉ざされた己の末路のみ。
 そこに追い打ちをかけるように、呪術による呪殺弾や呪力の縛鎖等が彼らを襲う。絶え間なく続く猛攻から必死に逃げ惑ううち、獣達はいつしか洞窟の隅へ追いやられていた。

「これだけ凶悪な呪力や魔力を糧にしてたら、いつどれだけ凶悪な怪物になるとも判らないからね……」
 プレビジオニスと戦いながら、璃奈は調査中に探知していた呪いの気配を、より強く感じていた。おそらく邪神の封印場所に近付いているのだろう――こんな悍ましい呪いに常に晒されていては、一般人はもちろんUDCにもどんな悪影響があるか知れたものではない。
「悪いけど、倒させて貰うよ……」
 この島に暮らす人々の安寧と生命を守るために、魔剣の巫女の決意に揺らぎはない。
 ぐっと力を込めて呪槍を横薙ぎに払うと、美しくも妖しき呪力の花びらが戦場を舞う。
 洞窟の袋小路まで追い詰められたプレビジオニス達は、呪力の縛鎖によって身動きすることさえできぬまま――その桜吹雪と魔剣の豪雨によって一匹残らず滅ぼされていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
縄張りへの侵入、申し訳ございません
ですが島の住人の為、排除させていただきます

情報では未来を観測できるとのことですが…

観測による回避でズレが生じてもUCによる未来予測演算で行動に大体の当たりは付きます
全身の格納銃器展開
ワイヤーアンカーを射出し盾と剣の柄尻に装着
●怪力と●ロープワークで鉄球と鞭のように●なぎ払い
回避のその先に『置く』よう銃弾を●乱れ撃ち●スナイパー射撃

範囲の広い面と線、そして数多の点…
未来が視えても身体能力に限界ある以上、躱し切るのは不可能です

…かの白騎士ディアブロが脅威だったのは個々の猟兵を圧倒する基礎性能を備えていた故なのでしょう
私も留意しておかなくては…

掃討を続けましょう



「縄張りへの侵入、申し訳ございません。ですが島の住人の為、排除させていただきます」
 行く手を阻むプレビジオニスの群れに対して、トリテレイアは謝罪と共に剣と盾を構える。この洞窟の先に『竜脈封印』に封じられし邪神がいるとすれば、立ち止まっている時間は無い。断固として押し通る意志を示す騎士に、敵は「ギギギッ」と唸り声を上げた。
「情報では未来を観測できるとのことですが……」
 千里眼獣の名のとおり、機械騎士を凝視するプレビジオニス達の単眼は、相手が行うであろう未来の一場面を見通すことができる。生半可な攻撃では恐らく当たらないだろうが――未来を予想する力とは、けっして彼らのみに与えられた特権ではない。

「コード入力【ディアブロ】、戦域全体の未来予測演算を開始」
 【白騎士の背、未だ届かず】。蓄積した戦闘経験と電脳の演算力によって未来を読むトリテレイアは、その予測結果に基づいて全身に格納した銃器を展開。さらに機体から射出したワイヤーアンカーの先端部を、盾と剣の柄尻に接続する。
「観測による回避でズレが生じても、ユーベルコードによる未来予測演算で行動に大体の当たりは付きます」
 共に未来を見通す者達の戦い、その視線の先に勝利を視るのは果たしてどちらなのか。
 トリテレイアがワイヤーで繋いだ剣と盾をぶおんっと勢いよく振り回すと、プレビジオニスの群れは弾かれたように四方に散った。

「ギギギギッ」
 ウォーマシンの怪力によって鉄球と鞭のごとく振るわれる高質量の武具。直撃すれば間違いなく必殺の威力を誇るが、しかしプレビジオニス達の眼にはその軌道が視えている。
 大振りな一撃を飛び越えるように、あるいはくぐり抜けるように、俊敏な動きで身を躱す獣の群れ――しかし彼らがそうしたように、トリテレイアにもその動きが視えていた。
「予測結果を更新――許容可能な誤差の範囲内です」
 その時、展開された銃器から鳴り響く無数の発砲音。俊敏な標的を『狙う』必要はない、回避する先に銃弾を『置いて』おけば、あとは敵のほうから飛び込んできてくれる。

「ギ―――ッ?!」
 トリテレイアの予測はピタリと的中し、銃弾に撃ち抜かれたプレビジオニスの悲鳴が戦場に木霊する。未来を読みあう戦いを制したのは、機械騎士の戦術と武装の選択だった。
「範囲の広い面と線、そして数多の点…未来が視えても身体能力に限界ある以上、躱し切るのは不可能です」
 たとえ未来の選択肢は無限にあっても、実際に取れる手は限られている。相手の対応可能な範囲を読んだうえで"詰み"へと追い込む、それは例えるならチェスの対局のようで。
 白きナイトは剣盾と銃撃を縦横無尽に操り、黒き獣の群れを殲滅していく。読み合いで完全に上をいかれたプレビジオニス達は、もはやこの盤面を覆す力は持っていない。

「……かの白騎士ディアブロが脅威だったのは、個々の猟兵を圧倒する基礎性能を備えていた故なのでしょう。私も留意しておかなくては……」
 自らの未来予測機能の大本とも言える、銀河帝国二大巨頭の一角を振り返って、トリテレイアはさらなる精進を誓う。たとえ未来を識ることができても、その未来を掴み取ることができるのは本人の力次第なのだと、皮肉にも蹴散らされる獣達の姿が教えてくれた。
 己もまた、かの白騎士に比べれば今だ未熟。なれど、少しでもこの世界の未来を明るくするために――機械騎士は千里眼獣の掃討を続けながら、封印の元に迫っていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
未来を見通す、それはあまりにも強力過ぎる能力。
だが――千里眼でも【理解不能な異分子】を持つ彼女のやらかす事は読めない。

「考えるよりも先に筆が走る、湧き出る泉のようにメロディとフレーズが次々と押し寄せてくる。私の天職はもしかしたら作詞・作曲家なのかもしれない!」
一人で勝手に盛り上がり、テンションが大変な事になってるこの女。獣の群れ達は、困惑し完全に不審者を見る目つきで恐れ戦く。スイッチが入ってしまったカビパンには、そんな客の視線も全く気にならない。

「シンガーソングライターカビパンがたった今、適当に作った新曲を披露します!」

突然開催される迷惑ゲリラライブ。洞窟故に音が反響し、恐ろしい威力となった。



「ギギギギギギ……ッ」
 ナワバリに侵入した猟兵達の攻撃を受け、プレビジオニスの群れは窮地に陥っていた。
 邪神の封印の膝下でぬくぬくと糧を得てきた彼らと歴戦の猟兵とでは、力の差は歴然。
 しかし彼らには【幻の千里眼】がある。未来すら見通すそれはあまりにも強力過ぎる能力であり、活用すればこの実力差をひっくり返すことも決して不可能ではないだろう。

「考えるよりも先に筆が走る、湧き出る泉のようにメロディとフレーズが次々と押し寄せてくる。私の天職はもしかしたら作詞・作曲家なのかもしれない!」

 だが――たとえ千里眼でも【理解不能な異分子】を持つ彼女のやらかす事は読めない。
 薄暗い洞窟の中、一人で勝手に盛り上がり、テンションが大変な事になってるこの女――カビパン・カビパン。周りの様子も見えていない様子で突然脳内に浮かんだメロディを書き留め始めた彼女のことを、獣の群れは困惑し完全に不審者を見る目つきで恐れ戦く。
「ギ、ギギ……?!」
 ワケの分からない行動をする相手に本能的にビビるのは、人間も動物も同じである。
 決してカビパンから視線を外さないようにしながら、ジリジリと後ずさる獣の群れ。
 だがいくら千里眼で凝視したところで、トーンの外れた鼻歌交じりに何かを書きなぐる彼女の意図を見通すことはできない。できるワケがなかった。

「これは傑作の予感だわ!」
 スイッチが入ってしまったカビパンには、そんな客の視線も全く気にならない。やけに自信満々な様子で、バシバシとハリセンでリズムを取りながら作詞作曲に没頭している。
 しかし彼女、控えめに言っても音楽的な才能に恵まれているとは言い難い。いや、もしも本当に優れた作曲家としての才能が眠っていたとしても――それを歌うのが本人である限り、どんな名曲もたちまち聴衆を死へといざなうレクイエムに変わる。

「シンガーソングライターカビパンがたった今、適当に作った新曲を披露します!」

 戦々恐々とする獣達の前で、突然開催されるゲリラライブ。初お披露目となるカビパン入魂の一曲は、彼女の絶望的にあまりにも酷い音痴によって歌という名の暴力と化した。
「♪↑~~~♪↓↓~~♪↑~」
 ミミズがのたくるようなリズムとメロディに合わせて、個々の音程が絶妙に外れて不快指数をMAXに高めてくる。さらに今回の【カビパンリサイタル】の会場は洞窟の中ということもあり、音が周囲に反響して恐ろしい威力となった。

「ギギィィィィィィィィィッ!!?!!」
 生まれてこの方こんな酷い歌は聞いたことがないと、悲鳴を上げて卒倒するプレビジオニス達。音という逃げ場のない攻撃には、すべてを見通す千里眼もやはり無力であった。
「ご清聴、ありがとうございました!」
 スッキリした笑顔で一曲歌い終えたカビパンに拍手が送られることはない。それでも彼女は満足そうに、マイク代わりの聖杖とハリセンを手に、次の客を探しにいくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

小泉・飛鳥
……さて、実戦で魔術を繰るのは久々だ
上手く通じるといいのだけどね

さて。
僕はイースターバニーだ。まともに組み合うには向いていない。
正面からぶつからずに、のらりくらりとさばきながら敵の動きを観察して【情報収集】
ワンダーエッグで翻弄したり、護符を活かして化かしてみたり……
(罠使い、化術)

……ふむ。通じないか。あの単眼で未来を予測して動く、というものかな
では……こういうのはどうだい

いつの間にか手の中に現れていた本
開けば

……さぁ、ここはヘクセ(魔女)の森
草木の一本すらが君たちを惑わす敵だ
君たちは未来をも探査するようだが、ここではどうだい?

出口を演算されても構わない
あとは待ち構えて、各個撃破していこうか



「……さて、実戦で魔術を繰るのは久々だ。上手く通じるといいのだけどね」
 封印へと続く洞窟で敵の群れと対峙した飛鳥は、緊張を隠すように微笑みを浮かべる。
 戦場に立つのは久しかれど、まだ己の腕は錆びついていないと信じる。何より弱音を吐いたところで許してくれる相手でもあるまい――ナワバリを荒らされた獣は怒り心頭だ。
「ギギギッ!!」
 プレビジオニスの群れは【幻の千里眼】をカッと見開いて、鋭い爪を振りかざしながら襲い掛かってくる。獣らしい機敏な動きと数の暴力に呑まれぬように、兎妖怪は華やかな「千変万化」の装束を翻し、軽やかなステップで後ろに跳んだ。

「さて。僕はイースターバニーだ。まともに組み合うには向いていない」
 正面からぶつからずに、のらりくらりと敵の攻撃をさばきながら、装束より取り出すのは数枚の呪符。まずは小手調べとばかりに得意の化術で敵を化かそうとしてみるが――。
「ギギッ!」
 プレビジオニスの眼はその幻惑を瞬時に見抜き、飛鳥だけに狙いを定めて追ってくる。
 ならばと今度は復活祭の兎の象徴である「ワンダーエッグ」をコロンと転がす。幸運と少しの悪戯を運ぶこの卵の力で、あわよくば敵の足元をすくえないかと期待するが――。

「……ふむ。通じないか。あの単眼で未来を予測して動く、というものかな」
 コロコロ転がるワンダーエッグに翻弄されることなく、まるで飛鳥の行動がすべて分かっているかのように、プレビジオニスは彼の仕掛けた罠をくぐり抜けて押し寄せてくる。
 だが、これで飛鳥も十分に敵の動きを観察できた。情報収集を終えた彼の手の中には、いつの間にか一冊の本が――文豪としての彼の情念が籠められた絵本が現れていた。
「では……こういうのはどうだい」
 表紙を開けば、中からあふれ出すのは植物の蔓と草木の芽。それらは今まさに彼を引っ掻こうとしていた獣の群れを押しのけ、洞窟中を埋め尽くし、戦場を昏き森へと変える。

「……さぁ、ここはヘクセ(魔女)の森。草木の一本すらが君たちを惑わす敵だ」
 【覆刻・魔女の棲む森】。かつて人々が畏れた古き森の入り口から、飛鳥はプレビジオニスの群れに呼びかける。鬱蒼と生い茂る草木によって形作られたこの迷路の中では、通常の五感のみならず異能による探査でさえ、正常な機能を狂わされる。
「君たちは未来をも探査するようだが、ここではどうだい?」
「ギ、ギギギッ……?!」
 突如出現した森の中で、敵は明らかに戸惑っている様子だった。すべてを見通す眼を持つ彼らは、これまで"道に迷う"という経験など一度もなかったに違いない――千里眼の力を妨げられたプレビジオニスは、進むべき道を見失ったことに不安と恐怖を覚えていた。

「ギギッ、ギッ、ギィッ?」
 魔女の呪いに満ちた森に囚われたプレビジオニスの群れは、恐怖に駆られるまま散り散りとなって出口を探し始める。満足に機能しないとはいえ千里眼が失われたわけではない、迷い続ければいずれ出口は見つかるだろう――だが、それでも飛鳥は構わなかった。
「おめでとう、そしてさようなら」
 迷いの森で群れを分断できれば、あとは待ち構えて各個撃破していけば良いのだから。
 やっとの思いで出口に辿り着いたプレビジオニスは、その瞬間に放たれた白炎の光線に灼かれ、悲鳴を上げる間もなく消滅した。

「少しばかり迂闊じゃないかい。ここは恐るべき、魔女の森……」
 "助かった"と安心した時こそが一番危ないのだと、もういない相手に笑いかける飛鳥。
 再生されし森の迷路が再び本の中に帰るのは、囚われた者がすべていなくなったとき。
 その時までイースターのうさぎは森の入り口で、哀れな犠牲者を待ち続けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

家綿・衣更着
アドリブ歓迎

「封印って滅ぼしてないっすよね?邪神はいつオブリビオンに…それともオブリビオンを封印?(現実逃避)」

「ええい、こいつら隠れ化かすおいらと相性悪すぎっす!」
妖怪煙煙幕からの迷彩も、化術の幻影も通じない。
【第六感】と【暗視】で奇襲に注意しつつ、【挑発】で引き付け【ダッシュ】【地形の利用】【ジャンプ】で逃げ回りながら忍者手裏剣【乱れ撃ち】で倒すのも限界!

「仕方ない、流儀じゃないけど押し通る!見えても対応させねば同じ!」
ユベコ発動!
爪の攻撃をストール右側を盾モードでいなし【カウンター】!
【結界術】で動きを止めストール左側を布槍モードで【串刺し】や【なぎ払い】で倒すっす!

強敵だったっす…



「封印って滅ぼしてないっすよね? 邪神はいつオブリビオンに……それともオブリビオンを封印?」
 いにしえの竜神と邪神の戦いと、いかにして邪神はオブリビオンとなったのか、悶々と考察するのは衣更着。確かにそれはUDCアースという世界の根幹にも、これからの戦いにも関わってくるであろう重要事項だが、今この時においては現実逃避に近いものだった。
「ギギギギ……ッ!」
 大きな単眼をギラつかせ、洞窟の奥から襲い掛かってくる【千里を見通す獣】の群れ。
 視力の強化や視野の拡大、透視に目くらましへの耐性など、極めて優れた視力を持つ彼らは一度捉えた標的を決して見失わずにどこまでも追いかけてくる。

「ええい、こいつら隠れ化かすおいらと相性悪すぎっす!」
 ドロンと妖怪煙で煙幕や迷彩を張ってみても、化術で幻影を作ってみても、プレビジオニスの千里眼を誤魔化すことはできない。得意の戦法がことごとく通じない衣更着は洞窟の中を走って跳んで逃げ回りながら、追ってくる敵に必死な顔で忍者手裏剣を乱れ撃つ。
「ちくしょー、来るなら来いっすよ!」
 妖怪である彼の視力も千里眼とまでは言わずとも、洞窟の暗闇を見通すには十分。奇襲を受けないよう第六感を研ぎ澄ませ、半ばやけっぱちで挑発しながらの引き撃ちで敵を倒していくが――そのうちに限界が来るのは目に見えていた。

「仕方ない、流儀じゃないけど押し通る! 見えても対応させねば同じ!」
 洞窟の行き止まりまで追い詰められた衣更着は、なおも押し寄せてくる獣の群れを見て、いよいよ覚悟を決めたように「打綿狸の綿ストール」を構える。自らの身体の一部であり、武器にも盾にも、第三第四の手としても使えるこの装備が、彼の奥の手だ。
「打綿狸の本領発揮、誰にもこの綿は捉えられないっす!」
 【綿ストール・本気モード】を発動し、ぐっと身構える狸妖怪へと、千里眼獣の群れは容赦なく飛び掛かる。小さくともナイフのように鋭いその爪は、ただの綿など容易く引き裂くはずだった――しかしユーベルコードと妖力によって硬化したストールの右半分は、堅固な盾となって爪を受け止めた。

「今っす!」
 敵の攻撃をいなした直後、衣更着は両手で印を結んで結界術のカウンターを仕掛けた。
 妖力によって形作られた見えない壁が、獣の周りを檻のように囲む。閉じ込められたと彼らが気付いた時にはもう遅く、攻撃用に残されていたストールの左半分が襲い掛かる。
「ギギイィィィィッ!!?!」
 鋭い布槍モードに変化したストールに貫かれ、断末魔の悲鳴を上げるプレビジオニス。
 いくら攻撃が見えていようが動きを止められては避けようもない。窮地に立たされた衣更着の起死回生の一撃は、見事にその場にいた敵集団を一網打尽になぎ倒した。

「強敵だったっす……」
 獣の返り血で塗れたストールを拭いて、はぁと大きく息を吐く衣更着。純粋な実力はそれほど強いオブリビオンでは無かったはずだが、相性が悪いとこうも厄介になるものか。
 どうか、この先に封じられている邪神はこんな面倒な能力を持っていませんように――そんなことを祈りながら、彼は慎重に洞窟の奥へと進んでいくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

佐伯・晶
島にある史跡の配置や
残っている術式の記録を集められたし
封印の中心を調べて
この前、竜神に聞いた知識と照らし合わせてみたいな

という事で遺構を手繰って来てみれば
物騒なのが湧いてるね
人里近くにこれだけ居たら危ないから
念入りに倒しておこう

洞窟の中だからワイヤーガンで戦おう
ワイヤーを射出して拘束したり切断したりするよ

接近してくるなら神気で攻撃ごと時間を停めて防御
これは僕なりのオーラ防御だよ

邪神の魔力に惹かれるなら
こっちに集めて邪神の涙で一網打尽を狙おう

格闘戦しかできない上にこの閉所だから
そう簡単には防げないんじゃないかな

自分は冷気耐性で耐えつつ倒していこう
凍っても問題なく動けるだけで
寒いのは寒いんだけどね



(島にある史跡の配置や、残っている術式の記録を集められたし。封印の中心を調べて、この前、竜神に聞いた知識と照らし合わせてみたいな)
 邪神との融合を解くための手掛かりを求めて、島内のあちこちを調べ回った晶は、そういった訳で遺構を辿ってきた結果、封印へと続く洞窟内でUDC怪物の群れに遭遇していた。
「物騒なのが湧いてるね。人里近くにこれだけ居たら危ないから念入りに倒しておこう」
 今はまだ地下に留まっていても、増殖を続ければいつか地上にも這い出すだろう。将来の禍根を断たんとワイヤーガンを構える彼女に、【千里を見通す獣】の群れが眼を剥く。

「ギギギギッ!!」
 大きな単眼をぎょろつかせ、鋭い爪で襲ってくるプレビジオニスに対し、晶は拘束用と切断用の2種類のワイヤーを射出して迎え撃つ。動けるスペースの限られた洞窟の中では、銃弾による"点"の攻撃よりもワイヤーによる"線"の攻撃のほうが回避し辛いだろう。
「それでも、結構避けられるね」
 ユーベルコードにより強化された敵の視力と獣ならではの運動能力は、攻撃だけでなく回避にも活かされていた。ワイヤーの銃撃に引っかからなかった一部のプレビジオニスが近付いてきた、その時――晶は咄嗟に神気のオーラを解き放った。

「ギ、ギッ?!」
 晶と融合した邪神のオーラは、静謐を司るその権能を以て、攻撃ごと敵の時間を停める。彼女を爪で引き裂こうとした獣達は、その体勢のまま氷像のように動かなくなった。
 しかし邪神の力の解放は、辺りにいた残りの群れの注意をより引きつける結果となる。
 彼らはもともと、ここに封じられていた邪神の魔力を糧にしていたのだ、同種の力を持つものをエサとみなして殺到するのは、考えれば当然の事とも言えた。
「これはこれで悪くないかな」
 敵のほうから勝手に来てくれるなら好都合だと、晶はあえて神気を振りまいて獣達を惹き寄せる。そして十分に集まってきたところで更にもう一段階、邪神の力を解放――万物を凍てつかせる【邪神の涙】を放出する。

「人間にはできない無茶だよなぁ」
 それは、自らの身体さえも徐々に凍らせる諸刃の刃。突如として戦場に吹き荒れる極低温の猛吹雪は、まんまとおびき寄せられてきたプレビジオニスの群れを一網打尽にする。
(格闘戦しかできない上にこの閉所だから、そう簡単には防げないんじゃないかな)
 そんな晶の考えどおり、いかに千里を見通す獣であっても、洞窟内を埋め尽くさんばかりの広範囲攻撃には打つ手が無かった。驚愕、恐怖、あるいは畏怖――様々な感情をその単眼に宿したまま、彼らは物言わぬ氷像となって息絶えてゆく。

「島の人達のためにも、一匹残らず退治させてもらうよ」
 局所的な極低温が乱気流を生み、冷たい暴風が吹き荒れる中で、晶は残った敵を倒していく。寒気で思うように身動きできない獣達に対して、冷気への耐性を持つ彼女は自由に動ける。この環境下で遅れを取る理由は皆無だった。
(凍っても問題なく動けるだけで、寒いのは寒いんだけどね)
 自分自身が一刻も早くこの凍気から開放されるためにも、敵の駆逐に専念する――絶対零度の範囲内から全てのプレビジオニスが消えるまで、さほどの時間はかからなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

鏡島・嵐
昔の人はよくこんなおっかねえのを封印するのを思いついたもんだ。
怪物の巣窟ってだけで正直怖ぇけど、こっからが本番だし、逃げるわけにはいかねーよな。

未来を見通すってのは厄介だけど、こっちは連携で対抗だ。……出番だ、フェモテューヴェ!
《二十五番目の錫の兵隊》を喚び出し、相手に未来を見通す暇を与えねえように矢継ぎ早に制圧射撃を仕掛けさせる。
おれも〈援護射撃〉で死角を補ったり、〈目潰し〉を狙って〈スナイパー〉ばりの射撃を撃ちかけて、連携プレーで数を減らすようにする。
もし近くに他の仲間が居るんなら、そちらにも適宜〈援護射撃〉を飛ばして支援する。
向こうの攻撃はこっちも〈第六感〉で先読みして〈見切る〉。


仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

…邪魔をするなよ獣共
お前達には用はない…!
さっさと蹴散らし奥に進もう…!

敵の攻撃には[見切りと視力]で回避しよう
回避出来なければ[呪詛耐性と激痛耐性]で耐えよう

超視力の集中を削ぐ為に【失楽園】により
悪魔共を召喚し敵群を襲わせ[捕食、体勢を崩し]妨害しよう

その隙に妖刀を抜き[なぎ払いと切り込み]で敵を斬り捨ててゆき
鎖の鞭を振り回し[ロープワーク]で敵の単眼に目掛けて投げつけて
[部位破壊]で眼を潰してゆこう…!



「昔の人はよくこんなおっかねえのを封印するのを思いついたもんだ」
 恐るべき邪神とその呪いを封じ込めてきた先人の知恵と技に、心からの感嘆を抱く嵐。
 彼らが遺した事績が細々とながらも現代に伝えられていたお陰で、自分達は今、封印の元凶に迫ることができている。その道中にはまだ、厄介な邪魔者が潜んでいるようだが。
「怪物の巣窟ってだけで正直怖ぇけど、こっからが本番だし、逃げるわけにはいかねーよな」
 暗がりから無数の視線を感じて、怖気付きそうになる心を奮い立たせ。洞窟内に散らばっている小石を拾い上げ、お手製のスリングショットに番える。その隣では同じく臨戦態勢を取ったアンナが、暗がりの奥にいる敵に向かって冷たく鋭い視線を返す。
「……邪魔をするなよ獣共。お前達には用はない……!」
 言葉に籠められた強い気迫。だがそれだけて引き下がるようなら、敵もとうにこの場から逃げ去っているだろう。ナワバリを荒らす者に対して、千里眼の獣は強い敵意を放つ。

「ギュイッ!!」
 闇の奥から鋭い鳴き声が聞こえてきたかと思うと、すべてを見通す【幻の千里眼】を輝かせたプレビジオニスの群れが一斉に襲い掛かってくる。嵐はすかさずスリングで眼を狙い撃って彼らの接近を牽制し、アンナは敵の動きをよく見極めながらさっと身を躱した。
「さっさと蹴散らし奥に進もう……!」
「ああ……!」
 ここで徒に時間を浪費するつもりはない。しかしプレビジオニスの千里眼は先を急ぐ猟兵達の動きや思考から未来までをも見透かし、的確に迎撃をくぐり抜けて近付いてくる。
 咄嗟に盾となったアンナを、ナイフのような爪が切り裂く。呪詛や痛みに慣れた彼女には大したダメージではないが、その能力が猟兵にとっても脅威であることは確かだった。

「未来を見通すってのは厄介だけど、こっちは連携で対抗だ」
「敵の超視力の集中を削ぐ……その為には……」
 嵐とアンナは目配せを交わすとこくりと頷き、2人同時にユーベルコードを発動する。 
 【二十五番目の錫の兵隊】と【失楽園】。敵の千里眼を打ち破るために彼らが導きだした対抗策は、ともに仲間を召喚することだった。
「……出番だ、フェモテューヴェ!」
「吼え狂う混沌よ……邪魔する者に襲い掛かれ……!」
 嵐の傍らには銃剣で武装した片脚が義足の兵士が現れ、切り裂かれたアンナの傷口からは、地獄の炎に包まれた翼を生やした悪魔の群れが飛び出す。彼らは召喚主達の意思に応えて、プレビジオニスの群れへと一斉に襲い掛かった。

「ギギッ?!」
 突如現れた新たな敵に、プレビジオニス達は驚いたように目を見開く。名もなき悪魔の群れはそんな彼らのもとに秋の枯れ葉のごとく空から襲撃し、錫の兵隊フェモテューヴェは電撃をまとった銃弾で矢継ぎ早の制圧射撃を仕掛ける。
「ギギャウ!」
「ギギ……ッ!」
 彼らの役目は敵に未来を見通す暇を与えないように妨害すること。体勢を崩された霊獣の群れは超視力に集中する暇もなく、押し寄せる悪魔と弾幕に対応せざるを得なくなる。
 そうして敵群の足並みが乱れればしめたもの。その隙にアンナは妖刀「アサエモン・サーベル」を抜き放ち、疾風のごとき速さで敵陣へと切り込んだ。

「立ち塞がるなら容赦はしない……」
 伝説にある首切り処刑人の名を冠した刃が閃くと、スパッと鮮やかな太刀筋で獣の首が地に落ちる。群れなす悪魔共とともに敵をなぎ払うアンナの勇姿は、恐ろしくも美しい。
 その後方からはスリングショットを構えた嵐が援護射撃を放つ。小石の弾丸と言えどもその照準は正確で、プレビジオニスの強みであり急所でもある単眼を狙ったスナイパーばりの精密射撃は、敵の戦力を確実に削いでいく。
「怖えけど、立ち止まるわけにはいかねーんだ……!」
 恐怖に懸命に抗いながら撃ちかける礫は、兵隊の銃撃と合わさって前線の仲間達の死角をカバーする支援となり、それに呼応してアンナと悪魔の群れは敵陣のさらに奥へと切り込み、浮足立つプレビジオニスの群れを捕食し、斬り捨てていく。

「その眼を潰してゆこう……!」
 返り血に染まった妖刀を片手で操りながら、空いた手でアンナが振り回すのは鎖の鞭。
 その先端に取り付けられた棘付きの鉄球がゴシャアと音を立てて標的の顔面に叩きつけられ、単眼を潰されたプレビジオニスの悲鳴が洞窟に木霊する。
「ギギィーーーッ!!!」
 それでもまだプレビジオニス達は反撃の機会をうかがい続けていたが、臆病ゆえの慎重さを持つ嵐は敵の攻撃の気配を見逃さずに、機先を制した射撃でその動きを封じ込める。
 アンナが切り込み嵐が援護する。召喚した兵隊や悪魔とも協力した彼らの連携プレーに付け入る隙は、千里眼をもってしても見透かせない。

「こいつで……」
「最後だ……!」
 嵐の射撃が獣の眼を射抜き、アンナの一太刀がその首を刎ねる。一帯にいた全てのプレビジオニスは駆逐され、静寂を取り戻した洞窟から兵隊と悪魔は元いた所に還っていく。
 かくして切り開かれた道の向こうからは、息が詰まるような邪気が漂ってくる。封印の在り処に近付きつつあるのを感じた2人の猟兵は、気を緩めることなく先へ進むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

斬断・彩萌
数が多いわね
こういう時はひとまとめにやってしまうのが私のやり方
という事で【翠炎】の弾丸を発砲、ネット状の糸が敵を纏めて動けなくするでしょう
動けば動く程絡まる網に、応戦できるかしら?

火を放って一気に燃やしつつ、炎から抜け出してきた敵がいたら各個撃破
炎で焼け爛れた皮膚の傷口を抉るようにOracleで攻撃
遠くへ逃げるやつがいたら銃に持ち換えて狙撃

私達もね、何もタダで帰ろうなんて思ってないの
しっかりあなた達も、コトリバコも退治する
猟兵に眼をつけられたことを恨むのね
…あなた達の場合、目が少ないから、この慣用句を使うとなんかヘンね



「数が多いわね。こういう時はひとまとめにやってしまうのが私のやり方よ」
 狭い洞窟を埋め尽くさんばかりに立ち塞がるプレビジオニスの大群と対峙しながら、彩萌は両手に構えた二丁拳銃に超能力の弾丸を込める。相手は未来さえも見通すと言うが、それならそれで、避けようのない状態に追い込めばいいだけのことだ。
「ギギギギ……ッ」
 単眼の獣は威嚇するように喉を鳴らしながら、俊敏な身のこなしで距離を詰めてくる。
 爪が届く間合いに入られる前に、彩萌は二丁拳銃を発砲――放たれた【翠炎】の弾丸は銃口から飛び出すと同時に不可視の糸をネット状に広げ、文字通り敵を一網打尽にした。

「ギュイッ?!」
 まるで蜘蛛の巣に引っかかった虫のように、不可視の糸に捕らえられた獣達はじたばたともがく。だが、彩萌の超能力により編み上げられた糸の強度は、すなわち彼女の精神力に比例する。鋼よりも強靭なその意志は、たかが獣如きの爪に断ち切れるものではない。
「動けば動く程絡まる網に、応戦できるかしら?」
 雁字搦めに縛り上げられていくプレビジオニス達を彩萌がじっと見つめると、今度は糸から透き通る翠緑の炎が燃え上がる。ゆらゆらと妖しく揺らめく自然ならざるその火は、洞窟の中を翠緑に照らしながら獣を焼き焦がしていく。

「灰も残さないわ」
 彩萌の意志を体現するように、敵陣に燃え広がる翠緑の炎。網に絡め取られた獣達はたちまち灰塵に帰し、幸運にも捕縛から逃れた者達も炎に焼かれないよう必死に遠ざかる。
「ギ、ギギィッ」
 【未来すら視る単眼】を持つ彼らには炎の動きも視えているとはいえ、こうも狭い空間に火を放たれては回避の手立ても限られる。どうにかこの炎獄から抜け出そうと散り散りになってしまえば、それは彩萌にとっては狙いやすい的でしかなかった。

「私達もね、何もタダで帰ろうなんて思ってないの」
 "Executioner(処刑人)"と"Traitor(叛逆者)"の名を冠する二丁拳銃が咆哮し、逃げ惑う標的の四肢を撃ち抜く。動けなくなった獣がそのまま炎に巻かれればそれで良し、なおも近付いて来ようとするなら、得物を"Oracle(神託)"に持ち替えて応戦する。
「しっかりあなた達も、コトリバコも退治する」
 手元で実体化した精神力の剣は、彼女の意志の高まりに応じて刃を伸ばし、焼け爛れた皮膚の傷口を抉る。筆舌に尽くしがたい激痛に獣は「ギャィッ?!」と悲鳴を上げると、そのまま地面に倒れ伏して動かなくなった。

「猟兵に眼をつけられたことを恨むのね……あなた達の場合、目が少ないから、この慣用句を使うとなんかヘンね」
 そんなふうに嘯きながらも、剣と銃を巧みに使いこなす彩萌の戦いぶりは無駄がない。
 翠緑の炎が燃え広がるなかで、敵に一矢報いさせもしないその様は華麗ですらあった。
 やがて周囲から邪魔な獣は一匹残らずいなくなり――武器を収めた彼女は次なるターゲットを仕留めるために、洞窟のさらに奥へと進んでいくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

シェーラ・ミレディ
先程のご婦人の生活を守る為にも、害獣は駆除しなければならんな。

すべてを見通すというのなら、見えていても対処しきれない物量で押し切るまでだ。
加えて、そもそも視認性の悪いものならばなお良いだろう?

『艶言浮詞』で風の精霊達を呼び出すぞ。
幸い洞窟の中ならば、核となる石ころにも事欠くまい。範囲内にあるだけの無機物を精霊に変換、足元の掃除をすると同時に敵を襲わせよう。
強風で動きを止め、砂埃を巻き上げ目を閉じさせ、真空の刃で切り刻む。
……うん、数が多いと指示を出すのも一苦労だが。風の精霊を伝令に使えば良いのだし、どうにかなるだろう。

一芸に特化したのが、お前達の敗因だ!

※アドリブ、改変、絡み歓迎



「先程のご婦人の生活を守る為にも、害獣は駆除しなければならんな」
 島の伝承について調べる折、親切にしてくれた島民の顔を思い浮かべながら、シェーラは立ちはだかる獣の群れを睨みつける。千里眼獣プレビジオニス――封印から漏れだした邪神の力により増殖したこいつらが、地上にまであふれ出してくれば厄介な事になる。
「ギギギッ!」
 獣達は【幻の千里眼】に意識を集中させながら、鋭い爪で侵入者を引き裂く隙をうかがっている。個々の力は弱いとはいえ未来すら見通す超視力、油断すれば痛い目に会おう。

「すべてを見通すというのなら、見えていても対処しきれない物量で押し切るまでだ」
 千里眼を持つ獣達に対して、シェーラの解決策はしごく明快かつ効果的な戦法だった。
 その唇が紡ぐのは【彩色銃技・口寄せ・艶言浮詞】。洞窟のあちこちに散らばる石ころなどの無機物を依り代として、彼を慕う精霊達を憑依・使役するユーベルコード。
「加えて、そもそも視認性の悪いものならばなお良いだろう?」
 呼び出すのは淡く透き通った風の精霊達。クスクスと笑いながら無邪気に戯れる彼女らは、手を貸してくれと乞うシェーラの願いに応じて、吹きすさぶ風を戦場に解き放った。

「ギギ……ッ?!」
 洞窟の中を吹き荒れる風はプレビジオニスの動きを止め、巻き上がる砂埃が目を潰す。
 突き刺すような痛みに思わず彼らが瞼を閉じれば、真空の刃がその身を切り裂いた。
 空気という透明なものを武器とした攻撃は、どうやら千里眼を以てしても捉え辛いものらしい。効果のほどを確認したシェーラは、さらなる風の精霊を次々に呼び寄せる。
(幸い洞窟の中ならば、核となる石ころにも事欠くまい)
 ユーベルコードの範囲内にあるだけの無機物を精霊に変換、足元の掃除をすると同時に敵を襲わせる。その数はゆうに百を超え、大増殖した千里眼獣さえも上回る大群となって、洞窟の中を所狭しと飛びまわり、無邪気に容赦なく敵を吹き飛ばしていった。

「……うん、数が多いと指示を出すのも一苦労だが」
 近くにいる風の精霊を伝令に使えば、若干伝達に遅れや齟齬はあってもどうにかなる。
 シェーラは指揮官として精霊の統率に徹し、その圧倒的な物量で敵を追い詰めていく。
 プレビジオニスもどうにか突破口を探ろうとはしているのだが、絶えず強風が吹きすさび、砂塵と真空の刃が飛び交うような状況では集中することもままならない。
「ギギギギィ……ッ!!」
 千里眼さえ封じてしまえば、UDC怪物とはいえどプレビジオニスにさしたる強みはない。
 せいぜい鋭い爪で引っ掻く程度――だがそれさえも、近付かれる前に風で押し返してしまえば何の問題もない。

「一芸に特化したのが、お前達の敗因だ!」
 シェーラの檄が飛ぶなか、艶言浮詞に呼び寄せられた精霊達はより一層激しく暴れまわり、邪魔な獣を吹き飛ばしていく。暴風圏に巻き込まれた敵群が一掃されるまで、それからさほどの時間はかからなかった。
「ギュイィィィィィィィッ!!!!?」
 最後のプレビジオニスの断末魔の悲鳴が木霊したのちに、洞窟には静寂が戻ってくる。
 ご苦労、とシェーラは精霊達を労い帰還させると、きれいに掃除された道をさらに奥へ――『竜脈封印』の在り処へと足を運ぶのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『『都市伝説』コトリバコ』

POW   :    カゴメ、カゴメ
全身を【囲む様に子供の霊を召喚、内部を安全領域】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    そして皆いなくなった
【コトリバコから敵対者を追尾する無数の小鳥】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    【常時発動型UC】子取りの箱
【自身から半径レベル三乗mの一般の女性、子】【供を対象に寿命を奪い衰弱させる状態異常を】【付与。また、奪った寿命でレベルを上げる事】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアララギ・イチイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 封印の周辺で増殖していた千里眼獣を掃討した猟兵達は、洞窟のさらに奥へと向かう。
 地下深くへと進むにつれて、辺りの岩肌は湿り気を帯びるようになり、足元は濡れて滑りやすくなる。水脈が近くを通っている証だろう。伝承に曰く「土と水が交わる所に、竜神の寝床あり」――長い探索行の末、ついに猟兵達は伝説の真相と対峙することになる。

 彼らが辿り着いたのは、地の底にぽっかりと開いた巨大な空洞だった。その中心には大きな泉があり、そこからこんこんと湧き出す清水が、大地に浸みてどこかへ流れていく。
 恐らくはこの泉こそが、島を流れる河川全ての水源となっているのだろう。だが――猟兵達の気にかかったのは、その泉のほとりに安置された、巨大な石の棺だった。

『ウゥゥぅぅぅぅぅぅぅぅぅ―――――』

 まるで何万年も前からそこに置かれていたように、その棺はすでに風化して、ただの岩のようにしか見えなかった。だが微かに確認できる人工物としての痕跡と、何より中から漏れ出てくる不気味な呻き声が、それが間違いなく『竜脈封印』なのだと教えてくれる。
 いにしえの竜神が竜脈の力を用いて施した「邪神の封印」。同時に、島をたびたび襲った子絶やしの呪いの元凶でもあるソレは、地の底で封印が解ける時を待ち続けていた。

 ――だが、星辰正しき刻は今だ来たらず。封印は綻びこそすれど機能を保っていた。
 猟兵達は慎重に石棺へと手を伸ばし、閉じられた蓋をゆっくりと開く。封印から目覚めた直後の、不完全な状態の邪神を撃破する――そのために彼らはここまで来たのだ。

『ウゥゥぅぅぅああァァァァァァァァ――――!!!』

 開かれた棺の中に収められていたのは、小さな赤い箱がひとつと、凄まじい量の呪詛。
 歓喜に満ちたおぞましい叫びが木霊したかと思うと、封を解かれたことで外にあふれ出した呪いはひとところに凝り、赤い着物を纏った少女の姿を取った。

『――こを、子を、取る、とる。小鳥、子取り、コトリ、コトリ――』

 壊れた人形のようにぶつぶつと何事かを呟く少女は、赤い箱を棺の中から取り出す。
 あの『箱』こそが封じられし邪神の本体であり、少女はソレが活動するための現身の一種なのだろう。その姿が現代に伝わる都市伝説『コトリバコ』に酷似しているのは、いかにしてか封印の中で情報を得たのか、あるいはソレこそがコトリバコ伝承の起源なのか。
 いずれにせよそれが、伝承に違わぬ恐るべき呪いの主であることは間違いが無かった。

「コトリ、コトリ、コトリ、コトリ――」

 邪神の箱とその現身からあふれ出す邪気は地下空洞を満たしてなおも広がっていく。
 じきにその呪いは地上へと達し、島を覆い尽くして、この地に住まう女性と子供を殺すだろう。そうなる前に『コトリバコ』を破壊するのが、実質的な本作戦のリミットだ。
 絶大な力を誇る邪神も、深き眠りより目覚めた直後では本来の力を発揮できない。邪神がまだ不完全であり、猟兵が万全の状態で仕掛けられる今を置いて、討伐の好機はない。

 いにしえより続いた封印に終止符を打ち、島民の未来に安寧と平和をもたらすために。
 開封された『竜脈封印』の中の邪神『コトリバコ』と、猟兵達は地の底で決戦に臨む。
黒川・闇慈
「随分な呪詛の量ですねえ。これを抑えていたのですから、竜神の封印とは大したものです。クックック」

【行動】
wizで対抗です。
相手の呪詛は猟兵には効果が薄いようですが、効果範囲が広いようです。うかうかしていると島民を巻き込みかねませんねえ。
ここは呪詛の被害を抑えるべく行動しましょう。
高速詠唱、全力魔法の技能を用いてUCを使用。コトリバコを水晶宮に隔離し、時間干渉によってコトリバコの時間を遅らせましょう。
これで呪詛の拡散スピードと、寿命の吸収速度を鈍らせることができるでしょう。

「石の棺の中は味気なかったでしょう?私の水晶宮の美を心ゆくまでご堪能下さい。クックック」


【アドリブ歓迎】


キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

フン…邪神のお目覚めか、もう少しゆっくり寝ていても構わなかったんだがな

デゼス・ポアの斬撃とシルコン・シジョンによる銃撃で敵を攻撃
常に敵を視界に捕らえて動き、敵UCの発動を見切る

小鳥と子取りか
全く、笑えん言葉遊びだな

敵UCが発動したらまずは全力ダッシュで動き回り、小鳥の群れとボスが自分の視界に全て写る様におびき寄せる
こちらを愚直に狙ってくるなら、そこを逆手に取るまでだ
自分のUCが万全の威力を出すポジションまで移動したら振り向くと同時にUCを発動
デゼス・ポアの斬撃で視界に映る全てを切り裂く

お前を再封印する…なんて生温い事は言わないさ
ここから跡形もなく消し去り、骸の海へと沈めてやろう



「フン……邪神のお目覚めか、もう少しゆっくり寝ていても構わなかったんだがな」
 復活の邪神『コトリバコ』を前にして、目つきを鋭くしながら小銃を構えるキリカ。
 外見はただの小箱と童女でも、その"存在"が発する呪詛と邪気はすさまじい。これでまだ目覚めたばかりだと言うのだから、本来の力は如何ほどのものなのか計り知れない。
「随分な呪詛の量ですねえ。これを抑えていたのですから、竜神の封印とは大したものです。クックック」
 太古の時代よりこの存在を封じ続けてきた『竜脈封印』の強大さに感嘆するのは闇慈。
 しかしもはやその封印は解除された。今この時、ここで、猟兵達の手で、古きより続いたこの島の伝承に終止符を打つのだ。

「先手はもらうぞ」
 まず最初に仕掛けたのはキリカ。神聖式自動小銃"シルコン・シジョン"のトリガーを引き、聖別された弾丸による銃撃を浴びせると共に、デゼス・ポアが笑いながら邪神に飛び掛かり、躯体から飛び出した刃で斬撃を仕掛ける。
『こと、り、コトリ、こ、とり、小鳥――』
 攻撃に反応した『コトリバコ』は、譫言めいた呟きを童女の口から漏らしながら、自らもユーベルコードを発動。その本体たる紅い小箱より放たれるのは、邪気によって形作られた無数の小鳥。不気味な鳴き声を上げながら、周囲を漆黒の羽で満たしていく。

「小鳥と子取りか。全く、笑えん言葉遊びだな」
 キリカがそう吐き捨てた直後、小鳥の群れはざあっと羽ばたきの音を立てて、彼女の元へと殺到する。主である『コトリバコ』に傷をつけた者をどこまでも追いかけ、追い詰め、肉も骨も血も肉体から魂の一片に至るまで啄み尽くす――【そして皆いなくなった】。
 常に敵を視界に入れて、ユーベルコードの発動を見逃さないよう警戒していたキリカは、小鳥が動いたのとほぼ同時に反転し、地下空洞の中を全速力で駆ける。
『き、キキ、き、き、キ――』
 逃すまいと追いたてる小鳥の群れと、敵意に満ちた眼差しを向ける『コトリバコ』。
 執念深い呪詛の塊であるかの者達が、一度狙い定めたものを諦めることは絶対に無いだろう――だが、それはキリカの計算通りでもあった。

(こちらを愚直に狙ってくるなら、そこを逆手に取るまでだ)
 背後から雲霞のように迫る大群の気配を感じながら、着用する「アンファントリア・ブーツ」の力で強化された脚力で走るキリカ。敵は初撃を仕掛けた彼女を完全にロックオンしたようで、どれだけ動き回っても小鳥を振り切ることはできなかったが――言い換えればこの時、『コトリバコ』と小鳥達の注目は全てキリカ1人に向かっていた。
「まだ寝ぼけているのでしょうか。判断が鈍いですねえ」
 その隙に魔力を練り、高速で呪文を紡ぎ、術式を紡ぎ上げるのは魔術の探求者・闇慈。
 邪神の敵意が他の猟兵に集中している今、彼はフリーな状態で魔力を増幅させ、最大効力でユーベルコードを放つ準備を整えることができた。

「相手の呪詛は猟兵には効果が薄いようですが、効果範囲が広いようです。うかうかしていると島民を巻き込みかねませんねえ」
 ここは呪詛の被害を抑えるべく行動しましょう、と言って闇慈は己が術式を起動する。
 【開帳・永劫否定水晶宮】――石と水と闇が支配する領域だった地下空洞に、氷のように透き通った水晶が次々と乱立し、結合し、豪奢な宮殿にも似た迷路を作り上げていく。

「我は久遠を拒む者。我は永遠を断じる者。我は永劫を唾棄する者。無限は儚く、悠久は今朽ち果てる。汝、乱界時流の宮にて安息を得るがいい」

 『コトリバコ』を囲むように完成した水晶宮は、ただ対象を外界から隔離するだけではない。水晶に籠められた強力な時空間干渉能力を以て、閉じ込めた敵の時間を遅らせる。
『う、ギ、ギ、ぎ――?』
 【子取りの箱】より放たれ続けていた呪いの勢いが弱まり、小鳥達の飛行スピードも鈍化する。まるでスロー再生した映画のように、邪神とその眷属達の動きだけが停滞する。
「これで呪詛の拡散スピードと、寿命の吸収速度を鈍らせることができるでしょう」
 周囲の子供や女性達から寿命を吸い上げながら、範囲を拡大していく子取り箱の呪い。
 それが島民のいる地上に到達するまでが猟兵達の事実上のタイムリミットだった訳だが――闇慈の時間干渉により、その刻限はこれで大幅に伸びたわけだ。

「動きが鈍っているな。チャンスだ」
 そして、これまで敵をおびき寄せることに注力していたキリカも、相手が水晶宮に囚われたのを見て反撃に転じる。キラキラと輝く水晶の壁はまるで鏡のように、邪神『コトリバコ』や羽ばたく小鳥の群れを映し出していた。
「悍ましき哄笑で伝えろ、デゼス・ポア。私の瞳と貴様の刃に捕えられた者共に、安寧が訪れる事は永遠に無いと」
 振り向きながらそう告げると、呪いの人形は不気味に笑いながら刃を鈍く煌めかせる。
 その直後――水晶の鏡越しにいる者も含めて、キリカが視認した全てのターゲットの元に、多数の刃が空間を切り裂いて飛び出した。

『ぎィっ―――!!!!』
 物理的な距離を超越する【ラム・クレアボヤンス】の刃が突き刺さり、悲鳴を漏らす『コトリバコ』。かの者が呼びだした小鳥の群れも、遅延する時間の中では攻撃を回避することもできず、次々とその翼を切り裂かれ、地に堕ちてゆく。
「お前を再封印する……なんて生温い事は言わないさ。ここから跡形もなく消し去り、骸の海へと沈めてやろう」
 全てを見透かすような眼差しを向けてそう告げるキリカに合わせて、デゼス・ポアの哄笑が水晶宮に響く。空間を飛び越えて現れる刃から逃れようと身を翻す『コトリバコ』だが、かの者がもがけばもがくほど、時空は粘つく液体のように行動を阻害する。

「石の棺の中は味気なかったでしょう?私の水晶宮の美を心ゆくまでご堪能下さい。クックック」
 水晶宮の主たる闇慈は怪しげな笑みを浮かべながら、自らの全力を以て敵を歓待する。
 彼が18式増幅杖「メイガスアンプリファイア」を介して増幅した魔力を送り込めば、水晶はより輝きを増し、時の乱れの中に『コトリバコ』を封じ込める。
『が、ぁ、ぎ、ぎ、ギギ―――!!!』
 竜脈による封印とは異なれども、壮麗にして堅固なる時の牢獄。自らを戒める新たな封印に邪神は怒りの声を発しながら、千里眼の刃にその身を切り刻まれていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
やったぁ、コトリバコ最高!
これが運命の出会いというものね、私は貴女の事を誤解していたわ。

始めは陰湿で辛気臭い小娘と思っていたんだけど、中々いいデスボイス&シャウトするじゃない。
歓喜に満ちた魂も痺れる呪詛に、1秒間に10回コトリ発言。
思わず私がコンビ組みましょう!って誘ったら、歓喜の雄叫びをあげてOKしてくれちゃった「ウゥぅあァァ―!!」とか言って。
もう最高のパートナーを見つけて嬉しくて仕方なくて、軍配を扇いで埃とか払ってあげて、ハリセンでバシバシツッコミしてあげたわ!

…意図せずして邪神は信じられないダメージを受けた。奇跡を霧散霧消するハリセンは効果抜群で、呪いも降るギャグ世界には敵わなかった。



『ううゥ、ああァ、あああああァァァァァァァァ――――ッ!!!!!』
 長き封印より目覚めた余韻に浸る間もなく、猟兵からの攻撃を受けた『コトリバコ』。
 復活の時を邪魔された邪神の怒りは激しく、童女の顔を歪めて獣めいた咆哮を上げる。
 だがそれで怖気付くどころか、むしろテンションアップして歓声を上げる猟兵が1人。
「やったぁ、コトリバコ最高! これが運命の出会いというものね、私は貴女の事を誤解していたわ」
 相手に抱きつかんばかりのハイテンションでそうまくし立てる女、その名はカビパン。
 ソレがこの島を、ひいては世界を滅ぼしかねない邪神だとしても、彼女のノリはまったく変わることがない。

「始めは陰湿で辛気臭い小娘と思っていたんだけど、中々いいデスボイス&シャウトするじゃない」
 カビパンが『コトリバコ』を評価したのは、いわゆるデスメタル的な側面からだった。
 歓喜に満ちた魂も痺れる呪詛に、1秒間に10回コトリ発言。実際の所、それはマジのガチで命を奪いかねない呪詛なのだが、それを浴びせられても彼女の態度は変わらない。
「私とコンビ組みましょう!」
「ウゥぅあァァ―!!」
 感動のあまり思わず口から出た誘いの言葉に、返ってきたのは怒りの叫び。だがカビパンの脳内でそれは歓喜の雄叫びとして解釈されたようで、OKの返事と受け取った彼女はとびっきりの笑顔を見せた。

「こんなところで最高のパートナーを見つけられるなんてね!」
 嬉しくて仕方ないと言った様子で、カビパンは手にした「笑門来福招福軍配」をぱたぱた扇ぎ、邪神の本体についた埃などを払ってあげる。無論『コトリバコ』からすれば、そんな馴れ馴れしい態度は何かの策略か、馬鹿にされているようにしか思えないだろう。
『こ、とリ、コトリ、こトり、コとりこトりコトリ――――!!』
 悪意に満ちた呟きと共に【子取りの箱】から溢れる呪いが一層強まる。女性や子供をターゲットとして寿命を奪い取るその呪いは、目の前にいるカビパンのことも呪い殺す筈だった――の、だが。

「いやねーもう、ステージに上がる前からテンション上がっちゃって!」
 それを『コトリバコ』渾身のボケと受け取ったカビパンは、愛用の「女神のハリセン」を振りかぶり、バシバシバシーンッ!! と会心のツッコミをフルスイングで叩き込む。
 ――その瞬間。まるでダンプカーにでも追突されたように、邪神の身体が吹っ飛んだ。
『……!!!?!?!!』
 カビパン本人は意図していなかったようだが、彼女のはハリセンにはあらゆる奇跡を雲散霧消させる女神の力が宿っている。神秘そのものとも言える邪神に対してそれは効果抜群で、信じられないダメージを受けた『コトリバコ』は呆然と地面に叩き伏せられる。

「うん、リアクションもナイスだわ! 貴女と一緒なら天下も目じゃないわね!」
 当のカビパンは相方をふっ飛ばしてもまだ自覚がないようで、笑顔で遠慮容赦なくハリセンで邪神をしばき回す。【ハリセンで叩かずにはいられない女】がツッコミを入れるたびに、地下空洞に満ちていた邪気はかき消されて、空気がギャグに塗り替えられていく。
 どこまでもマイペースな彼女が作りあげるギャグの世界では、子取り箱の呪いも敵わない。どうしてこの女に呪いが効かないのか、邪神『コトリバコ』はさっぱり分からないまま、ひたすらハリセンでしばき倒されるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・フォーサイス
話を聞いたおじいさんに忠告されたように、直接見たり触れたりはしないに戦おう。もし、伝承の影響を受けているのであれば、そういう対処法も有効なはず。

エレクトロレギオンを召喚。竜神のお守りを持たせた戦闘兵器を遠隔操作し、戦闘兵器のカメラの映像を見ながら戦わせるよ。

数の連携を活かして、囮を使ったり、潜伏させたり、多彩な連携で翻弄しつつ、兵器をかいして、火属性魔法をあびせていくよ。



「これが、この島の『箱』の伝承の発端なんだね」
 猟兵との戦いを繰り広げる邪神『コトリバコ』の様子を、アリスは直接見たり触れたりしないよう、距離を取って確認していた。村のおじいさんから忠告された話が確かなら、接触を極力減らすことで【子取りの箱】の呪いを和らげることもできるはずだ。
(もし、伝承の影響を受けているのであれば、そういう対処法も有効なはず)
 "物語"を糧にするものは、物語の力を取り込める一方で、物語にあり方を左右される。
 情報妖精ならばこそ熟知する、その対処法はどうやらこの邪神にも有効なようだった。

「さあ、行くよ」
 直接敵を視ようとしないアリスに代わって、邪神に挑むのは【エレクトロレギオン】。
 呪いに対抗するための竜神のお守りと、遠隔操作用のカメラを搭載した小型の戦闘用機械兵器の群れは、軍隊のような統率された動きで攻撃を開始する。
『こと、り、こ、とり、り、り―――』
 邪神『コトリバコ』は煩わしそうに眉をひそめると、呪詛のオーラを放って迎撃する。
 耐久度の低い戦闘兵器は、そのひと薙ぎであっさりと機能を停止するものの。今度は反撃を受けたのとは逆サイドから、回り込んだ別のレギオンが背後より奇襲を仕掛けた。

「こっちは400体以上もいるからね。数の連携を活かしていこう」
 アリスは戦闘兵器のカメラに映る映像から『コトリバコ』の動向を確認し、全ての兵器を己の手足のように自在に指揮する。電脳ゴーグルを被った彼女の目には、この地下空洞の戦場がひとつのゲーム盤のように映っていた。
「隠れるところがいっぱいあるのも良いね」
 岩場の陰や泉の中。敵の目につかないところに機体を潜伏させ、ある時は囮を使っての奇襲を、またある時は多方向からの同時攻撃を――多彩な連携攻撃で相手を休ませない。

『ギイィィィィィィうゥぅぅぅ……!』
 なまじ強大な力を持つがゆえに、邪神は戦術巧者というわけでは無かった。情報妖精による巧みな連携戦術に翻弄される『コトリバコ』の口から、苛立ったような声が漏れる。
 戦闘中における"怒り"や"焦り"は、余計に視野を狭め冷静な判断力を損なう要因ともなる。その機を逃さずアリスはエレクトロレギオンに命令を送り、更に攻勢を強めさせる。

「キミの伝承は、ここでクライマックスだよ」
 展開された数百もの兵器を介して放たれるは、竜のブレスを思わせる炎の魔法。
 地下空洞を照らす灼熱の嵐が『コトリバコ』とその写し身を灼き焦がしていく。
『ガああァァァァあぁぁぁぁぁ―――ッ!!!』
 長きに渡り語り継がれてきた『箱』の伝承に、ピリオドが打たれる時は近い。その時、この物語はどんな味わいを見せてくれるのか――アリスは楽しげな笑みを浮かべていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

家綿・衣更着
アドリブ歓迎

配下の繁殖具合も、配下に囲まれて封印され続けてたのも不自然っす。竜脈の力を吸ってたのでは?

「兎も角、今は住民を守るっす!」
妖怪煙で煙幕を張り【迷彩】しつつユベコ発動、自身や仲間を模した【化術】の【残像】で敵の小鳥を集めて動きを【見切り】つつストールで【なぎ払い】。

「本体は箱!成敗するっす!」
敵に放った忍者手裏剣を【化術】で爆発させ【おどろかす】ことで隙を作って【ダッシュ】で近づき、手裏剣攻撃と見せかけストールで【だまし討ち】して本体の箱ごと【串刺し】。
さらに箱を【結界術】に閉じ込めつつストールで追撃。

「得意戦法使えればこんなもんす…相性は怖いっすね」
謎はいずれ解き明かしてやるっす!



『ぐうぅぅぅウゥゥぅぅぅああァァァァァァ………』
 猟兵達からの激しい攻撃を受け、よろよろとふらつきながら呻く邪神『コトリバコ』。
 やはり封印から目覚めた直後は本調子ではないという情報は確かだったようだ――だがその一方で、かの『箱』から発せられる邪悪な力の波動は、今だ衰えを感じられない。
「配下の繁殖具合も、配下に囲まれて封印され続けてたのも不自然っす。竜脈の力を吸ってたのでは?」
 邪神も長い年月をただ封じられてきたのではなく、雌伏の時を過ごしながら力を蓄えていたのではないか。衣更着は現状をそのように推察する――もし、これが正しければ尚のこと、ここで『コトリバコ』を撃破しなければ、古代以上の脅威が復活することになる。

「兎も角、今は住民を守るっす!」
 敵の視線がこちらを向いた瞬間、衣更着はドロンと妖怪煙で煙幕を張り、姿を隠しながら【綿ストール・本気モード】を再び発動。武器化させたストールを手にして身構える。
 対する邪神もまた【そして皆いなくなった】を発動。本体である箱から無数の小鳥の群れを放ち、煙幕の中へ無差別攻撃を仕掛ける。見た目は小鳥とはいえソレも邪神の眷属にして力の具現、力強い羽ばたきは妖怪煙を吹き飛ばし、鋭い嘴が獲物を啄もうと輝く。

『コトリ、コトリ、コトリ、コトリ―――??』
 だが。かき消えた煙の中から現れたのは『コトリバコ』の予想だにしない光景だった。
 首にストールを巻いた狸妖怪が、ひい、ふう、みい。その仲間の猟兵が、よ、いつ、む。その他すべて合わせて、なな、や、ここの、たり――十人以上のヒトがそこにはいた。
 これらは全て衣更着の化術が作りあげたもの。自身や仲間を模した残像でターゲットを分散させつつ、敵の小鳥の動きを誘導しようという狙いだ。
『こっちっすよ!』
『どこ見てるっすか?』
『こっちこっち!』
 口々に騒ぎたてるニセ衣更着やニセ猟兵の後を追って、矢のように襲い掛かる小鳥達。
 一見バラバラに見える残像達の動きは、しかしその実計算されたもので――小鳥の群れが一箇所に集められた瞬間、残像に紛れこんでいた本物の衣更着がストールを一閃する。

『ピイィィィィィィィッ!!!!?』
 妖力により硬化した綿の刃になぎ払われ、小鳥の群れは甲高い悲鳴を上げて消滅する。
 間髪入れずに衣更着は忍装束から忍者手裏剣を取り出すと、邪神目掛けて投げつけた。
「本体は箱! 成敗するっす!」
『うウぅぅゥゥゥゥ―――ッ』
 現身たる童女は咄嗟に手に持っていた『箱』をかばうように抱え込むが――放たれた手裏剣は標的に突き刺さる前に、パンッ! とかんしゃく玉のような音を立てて爆発する。
 爆発と破裂音に驚いた『コトリバコ』が、僅かにでも隙を晒せばしめたもの。衣更着はその間隙を突いて風のように戦場を駆け、一気に邪神との距離を詰める。

「あんたの配下の千里眼なら、これくらい簡単に見破ったっすよ」
 駆け寄りながら衣更着がちらつかせるのは忍者手裏剣。今度こそ投擲が来るかと『コトリバコ』が身構えた直後、蛇のようにうねるストールの先端が槍となって不意を突いた。
『ギィィ―――ッ!!!』
 限界まで固く鋭く強化されたその矛先は、現身の手の甲を貫いて本体の『箱』にまで突き刺さる。童女の口から苦悶の声が漏れ、穴の空いた箱からはどす黒い血があふれ出す。

「得意戦法使えればこんなもんす……相性は怖いっすね」
 あれだけ苦戦させられたプレビジオニスとの戦いに比べれば、呆気なさすら感じつつ。
 衣更着は『箱』を逃さないように結界術で囲いながら、ストールを錐のように回転させて追撃を仕掛ける。ガリガリと『箱』が削れていくにつれ、邪神の悲鳴も大きくなった。
「謎はいずれ解き明かしてやるっす!」
 彼の飽くなき探究心と好奇心は、コトリバコの呪い程度では止まらない。いつの日か邪神の真実に迫ることを誓いながら、綿狸忍者は人々を脅かす邪神を攻めたてるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

小泉・飛鳥
―――……これが邪神の眷属かい?
なるほど。僕らと君たちの存在は、ある意味とても近しいんだろう
だが僕たちはオブリビオンではない
膝をついてやるつもりはないよ

しかし、これは厄介だ
小さくて的が絞り難い小鳥の群れ
それが明確な殺意を持って飛んでくる
【生命力吸収】で粘って【破魔】の符で反撃していくが、このままでは少々辛い

……では、ひとつ手札を切ってみようか
妖怪は人間の影のようなもの。世界の影だ
これはそんな「世界」を映す卵
割れたる中から現れるは……

翼を開く大鷲、雷を纏う翼
……なるほど。北米のサンダーバード

数が多くとも、どれほど速くとも
雷からは逃れ得ない
稲光で敵本体ごと撃ち滅ぼそう



『ことり、ことり、ことり、ことりりりりりりりりり――』
 本体たる箱を傷つけられた童女の口から、壊れたオルゴールのような呟きが漏れだす。
 同時に箱に穿たれた穴からはドロドロとどす黒い血のような液体が流れ出し――それは地面に落ちると共にピイピイと甲高い鳴き声を上げて、無数の小鳥の群れへと変化した。
「―――……これが邪神の眷属かい?」
 邪神のユーベルコードにて顕現したソレを見て、なるほど、と静かに呟いたのは飛鳥。
 黒煙のように群れなす鳥達の敵意は、まっすぐに彼に向けられている。常人であれば身が竦むようなプレッシャーの中、しかし彼は穏やかな表情で。

「僕らと君たちの存在は、ある意味とても近しいんだろう。だが僕たちはオブリビオンではない。膝をついてやるつもりはないよ」
 妖怪と邪神。共に伝承の中の存在とされ、地球の表舞台からは姿を消していったもの。
 それでも飛鳥はまだ『未来』を紡ぐことができる。忘れ去られた『過去』の遺物に、負けるつもりなどさらさらない。
『こと、り、こと、こと、りりりり―――!!』
 意味をなさぬ『コトリバコ』の譫言に、敵意が強まったような気がした。その直後、眷属たる小鳥の群れは一斉に羽ばたき、呪詛と邪気のカタマリとなって襲いかかってくる。

「しかし、これは厄介だ」
 啖呵を切ったものの、同時に飛鳥は敵が強大であることもまた認めざるを得なかった。
 小さくて的が絞り難い小鳥の群れ。それが明確な殺意を持って飛んでくる。一羽一羽の力はそれほどでは無いとはいえ、その嘴や鉤爪のように鋭く、標的の血肉を抉りとる。
「このままでは少々辛いか」
 飛鳥も負けじと「千変万化」から破魔の符を取り出して反撃し、撃墜した小鳥から生命力を吸収することで奪われた血肉を補う。しかしどれだけ粘ってもこのままでは、いずれ無数の物量の前に押し切られるのは明らかであった。

「……では、ひとつ手札を切ってみようか」
 敵の猛攻に耐えながら、飛鳥が取り出したのは「ワンダーエッグ」とは別の、1つの卵だった。派手な色でもなく、特別大きくも小さくもない、けれど不思議な力を感じる卵。
「妖怪は人間の影のようなもの。世界の影だ。これはそんな『世界』を映す卵」
 その【世界の卵】から何が生まれるのかは、飛鳥自身にさえ分からない。妖怪と邪神の視線がその卵に注がれる中、ピシリ、ピシリ、と音を立てて殻に罅が入っていき――。

『――――――!!!!』

 ――その時、戦場に木霊した産声は落雷の響きに似て。殻を破り現れたのは大鷲、開かれた翼には雷を纏い。東西の怪奇伝承に通じる飛鳥には、それが何者かすぐに分かった。
「……なるほど。北米のサンダーバード」
 かの地の先住民達に崇拝された神鳥。雷を自在に支配する偉大なる精霊の一柱である。
 誕生したサンダーバードはふるふると頭を振って卵の殻を落とすと、火のように燃え滾った両目で邪神を睨めつける。その威容と比べれば、眷属共などただの小鳥同然だった。

「数が多くとも、どれほど速くとも。雷からは逃れ得ない」
 飛鳥が見守る前で、生まれたばかりのサンダーバードは大きく翼を羽ばたかせ、戦場に舞い上がる。その姿はまさに空を翔ける稲妻そのもので、一声鳴けば落雷が降り注ぐ。
 闇に包まれていた地下空洞を稲光がまばゆく照らし、小鳥の群れがバタバタと討ち滅ぼされていく。その標的となったのは敵の本体である『コトリバコ』も例外ではなかった。
『ぎ、ぎい、イィィィィィ―――!!!!』
 古来より神の怒りの具現とされてきた雷霆が、いにしえの邪神を容赦なく打ちのめす。
 現身より漏れた苦しげな悲鳴は、轟き渡る神鳥の鳴き声と雷鳴にかき消されていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
このUDCが元で都市伝説が生まれたのかな
特に恨みや怒りがある訳でもないけれど
放っておくわけにもいかないしね

後でゆっくり石の棺を調べさせるためにも
蘇ったばかりで申し訳ないけれど
骸の海に還って貰おうか

皆が戦っている間にUDC製の結界生成装置を周囲に配置
呪いが島に溢れ出さない様に隔離するよ

この身に宿っているこいつも
神様らしく呪いを浄化してくれればいいんだけど
こっちも邪神なんだよなぁ

安全確保が終わったら戦線に参加
飛んでくる小鳥をガトリングガンの範囲攻撃で堕としつつ
抜けてきたのは神気で時間を停めて防御するよ

ガトリングガンの弾はUDC組織謹製の
浄化の紋様が刻まれた特殊弾を複製して使用
現身ごと箱を削りとろう



「このUDCが元で都市伝説が生まれたのかな。特に恨みや怒りがある訳でもないけれど、放っておくわけにもいかないしね」
 猟兵と戦う邪神『コトリバコ』の様子を、晶は前線からやや離れた所で観察していた。
 戦況は猟兵側が押しているようだが、こうしている間にも邪神の箱からは生命を絶やさんとする呪いが溢れ続けている。遠からずそれが地上まで広がり、やがて島を覆い尽くすであろうことを考えれば、今だ予断は許されない状況と言えるだろう。

「皆が戦っている間に、僕は安全確保に回ろう」
 晶は敵の注意を引かないよう気をつけながら、戦場となった地下空洞の周囲に見慣れぬ機器を召喚・設置していく。これはUDC組織が設計した結界生成装置で、邪神『コトリバコ』本体を再封印するほどの力はなくとも、その呪いの流出を抑える程度の機能はあった。
「助けてくれる人がいるって本当にありがたいね」
 思えばこの島の『竜脈封印』の手掛かりを発見できたのも、UDC組織の協力のお陰だった。改めて感謝の気持ちを抱きながら、彼女は【複製創造支援端末】を起動。各所に配置された装置からドーム状の結界が戦場に張られ、地上へ溢れ出さんとする呪いを隔離する。

「この身に宿っているこいつも、神様らしく呪いを浄化してくれればいいんだけど。こっちも邪神なんだよなぁ」
 こういった類ではあまり頼りにできない自分の邪神にやれやれとぼやきつつ。結界による安全確保を終えた晶はすぐさま取って返し、自らも『コトリバコ』との戦線に加わる。
 相手も結界の発生には気付いているようだ。また閉じ込められるような感覚に不快感を示した『コトリバコ』は、その仕掛け人である邪神憑きに眷属である小鳥を差し向ける。
『ことり、コトり、小鳥、コトリ、こトり……』
 童女の不気味な囁きに導かれるように、標的へとまっすぐに飛んでいく無数の小鳥。
 晶は装備していた携行型ガトリングガンを構え、銃弾の嵐にてこれを迎え撃つ。

「後でゆっくり石の棺を調べさせるためにも、蘇ったばかりで申し訳ないけれど、骸の海に還って貰おうか」
 晶からすれば『コトリバコ』を封じていた竜脈封印の遺構は、自分が元の身体に戻るための基調な手掛かり。島民のためというのも勿論あるが、ここで退くわけにはいかない。
 唸るガトリングガンの砲身から発射される弾は、浄化の紋様が刻まれたUDC組織謹製の特殊弾。邪神やその眷属に対しては通常弾以上の威力を発揮し、小鳥の群れを撃ち落とす。
 もし、弾幕を抜けてきた鳥がいたとしても、今度は神気のオーラに阻まれる。『コトリバコ』の権能が子孫を絶やすことなら、彼女と融合した邪神の権能は静謐と停滞。時間さえも停める神威を前にしては、ただの眷属では彼女に触れることさえできない。

「結界装置もいつまで保つか分からないからね。早急に終わらせるよ」
 小鳥の群れを蹴散らした晶は、自らの邪神が有するもう1つの力である物質創造力を利用して、射ったぶんの特殊弾をすぐさま補充する。尽きることのない浄化の弾幕は、今度は『コトリバコ』に襲いかかり――童女姿の現身ごと、本体である箱を削りとる。
『ぎいいいぃぃぃああぁぁぁぁ………ッ!!!?!』
 異なる邪神の力で複製された人類の叡智の力。それは旧き邪神にも有効打を与える。
 傷ついていく『箱』から、禍々しい存在感が少しずつ弱まっていくのを晶は感じた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シェーラ・ミレディ
いよいよ邪神との対峙、だが。
常時発動型の呪いとは、邪神というだけあって厄介なものを使う……!
ご婦人方に被害を出すわけにはいかない。呪いが広まる前に、手早く片を付けようじゃないか。

子供という属性を利用して、僕に呪詛を誘き寄せよう。
何、未成年なら子供だろう?
多少でも呪いが反応すれば、それを切っ掛けに此方に引きずり込めばいい。
後は『落花流水』で呼び出した精霊に、状態異常が身を蝕むのを妨害してもらいながら反撃だ。4丁の精霊銃から神罰の弾丸を放ち、赤い箱を穿とう。
……と言っても、このUC自体も寿命を削るのだが。必要経費と割り切るしかないか……。
全く、この対価は高くつくぞ!

※改変、アドリブ、絡み歓迎


鏡島・嵐
小っちぇえ島の地下に、こんなトコがあるなんてな。
単なる冒険ならいろいろ探索したかったけど、今はそういうわけにもいかねぇ。
邪神なんて正直怖くて堪んねえけど、倒さなきゃなんねえしな……!

伝承通りに女や子供の精気を奪うってわけか。
おれぐらいの齢の奴は対象になるんかわかんねーけど、用心するに越したことはねえか。もし精気を吸われそうな感覚があるなら〈呪詛耐性〉〈オーラ防御〉で耐える。
仲間で影響を受けている奴が居るなら、ユーベルコードで失った生命力を補ってやる。踏ん張れ、もうちょっとだ。
あとは味方に〈援護射撃〉を撃って支援しながら、自分も隙を見て〈スナイパー〉ばりの精度の一撃を撃ち込む。


仇死原・アンナ
アドリブ共闘歓迎

あの少女の持つ箱そのものが邪神か…
行こう…邪神を討つ為に…!

[呪詛耐性とオーラ防御]を纏い霊剣を抜いて相手をしよう

【絶望の福音】の[見切り]により
無数の小鳥共を回避しつつ武器で[なぎ払い]、撃退しよう

[破魔]の力を纏った霊剣を振るい
場に漂う呪詛や邪悪な霊を切り捨てながら敵の元へと近づこう

ある程度近づけたら鎖の鞭を[ロープワーク]で振り回し
少女の手を強かに打ち据え[武器落とし]で手に持つ箱を落とさせ
敵の[体勢を崩そう]

その隙に箱目掛けて霊剣を[投擲]し、箱を串刺しにしよう
[浄化と除霊]の力で邪神を滅してやろう…!

再び眠れ…闇に帰れ…そして…もう二度と目覚めるな…!



「小っちぇえ島の地下に、こんなトコがあるなんてな。単なる冒険ならいろいろ探索したかったけど、今はそういうわけにもいかねぇ」
 "竜神の寝床"という伝承が生まれるのも納得のいく神秘的な地下空洞を見渡して、嵐はぽつりとそう呟く。残念ながらこの地で彼らを待っていたのは冒険心をくすぐられる宝箱などではなく、忌まわしい邪神を封じた危険な『コトリバコ』だった。
「邪神なんて正直怖くて堪んねえけど、倒さなきゃなんねえしな……!」
 邪気に負けぬよう心を奮い立たせながら拳を握る嵐の隣で、黒衣の女がこくりと頷く。
 彼女――アンナは執行人の道具のひとつである霊剣「芙蘭舞珠」を抜くと、呪詛に耐えるオーラの護りをその身に纏い、一歩踏み出す。
「あの少女の持つ箱そのものが邪神か……行こう……邪神を討つ為に……!」
 静かなる決意を秘めたその言葉に、共闘する仲間も呼応する。猟兵達の闘志が高まっていくのを感じたか、対峙する『コトリバコ』の現身は怯えたように小さく肩を震わせた。

『小鳥、コトリ、子取り、ことり、こトりことリこトリことリコトり――!!』

 狂ったような絶叫と共に本体の『箱』から発せられるのは、無数の小鳥と膨大な呪詛。
 女子供の寿命を奪い、子孫を絶やす【子取りの箱】の呪い。それを見て顔をしかめたのは、精霊銃を構えた少年――シェーラだった。
「いよいよ邪神との対峙、だが。常時発動型の呪いとは、邪神というだけあって厄介なものを使う……!」
 こうしている今も呪いは広がり続け、範囲内の者から寿命を奪うことで力を増している。味方の尽力によってその規模は抑え込まれているが、それもいつまで保つかは不明だ。
 仲間の猟兵達も、強まる呪詛と本体を守るように飛び回る小鳥の群れを警戒して、迂闊には『コトリバコ』には迫れずにいた。

「伝承通りに女や子供の精気を奪うってわけか。おれぐらいの齢の奴は対象になるんかわかんねーけど、用心するに越したことはねえか」
「何、未成年なら子供だろう?」
 警戒心の強い嵐が身構える一方――シェーラはこともなげにそう言い放つと、嵐やアンナのようにオーラで身を護るでもなく、無防備な状態で『コトリバコ』に近付いていく。
 伝承で何度も語られてきたように『箱』が呪い殺すのは女性と子供。シェーラの年齢は十分にその対象内だったらしく、呪詛が反応するのが直感的に分かる――その瞬間、彼は自らの意思でソレを引きずり込んだ。

「ぐっ……さあ、僕が死ぬのが先かお前が壊れるのが先か。一曲お相手願おうか!」
 誘き寄せた呪詛が心身を蝕んでいくのを感じながら、【彩色銃技・落花流水】を発動。シェーラの傍に見目麗しい精霊が現れ、子殺しの呪いがそれ以上侵蝕するのを妨害する。
「ご婦人方に被害を出すわけにはいかない。呪いが広まる前に、手早く片を付けようじゃないか」
 さらに舞踏会に立つような着飾った姿へと変身した彼は、4丁の精霊銃を操りながら味方に檄を飛ばす。邪神の呪いを一手に引き受けている今こそが、攻勢をかける好機だと。

「その覚悟……無駄にはしない……」
 子取り箱の呪いが薄らいだ間隙を縫い、霊剣を手にアンナが駆ける。対する『コトリバコ』は眷属である小鳥達に迎撃を命じるが――【絶望の福音】を発動した彼女には、飛来する敵の未来の動きがはっきりと視えていた。
「お前達に用はない……!」
 炎のように波打つ「芙蘭舞珠」の刃が、無数の小鳥をなぎ払い、切り捨てる。黒羽で覆われた視界が開け、紅い着物を纏った童女の姿が現れる。その手に抱えられた紅い箱――『コトリバコ』の本体のみを見据えて、炎獄の執行人は進撃する。

『う、ぅあ、ぅ………っ』
 アンナが近付いてくるのを見て『コトリバコ』は慌てたような素振りをして距離を取るように後ずさる。そうはさせじとスリングショットを引き絞り、石礫の弾丸を放つは嵐。
「逃がすかよ……!」
「一気に攻めるぞ!」
 現身の手元や足元を狙った的確な射撃が、邪神の動きに隙を作る。その機を突いてシェーラが追撃の銃撃を仕掛ければ、鳴り響く4発の銃声と共に邪神の現身から鮮血が散る。
 彼の精霊銃に込められたのは神罰の弾丸。悪しき神に対して効果は覿面であり、彼独自の戦闘技法・彩色銃技の術理を複合して用いれば、その威力はさらに何倍にも向上する。

「……と言っても、このユーベルコード自体も寿命を削るのだが。必要経費と割り切るしかないか……」
 その身に引き寄せた呪いに祟り殺されないためにも【落花流水】を維持し続けるシェーラの消耗は大きい。傍らの精霊に支えられながら銃を構える彼の負担を少しでも和らげるために、嵐が【大海の姫の恋歌】を発動する。
「踏ん張れ、もうちょっとだ」
 地底の水源を起点として召喚された人魚が、透き通った声で歌を奏でる。その調べは哀しく、その詞は切なく――戦いの中でも思わず聞き惚れてしまうような美しい歌が、痛みを遥かに運び去り、失われた生命力を補完する。

「治療用のユーベルコードか。助かった」
「お互い様だろ。呪いを引き受けて貰ってるしな」
 活力を取り戻したシェーラは感謝を口にしながらトリガーを引き、それに合わせて嵐もスリングに弾丸を番える。彼ら射撃手達の支援を受けて、最前線ではアンナが『コトリバコ』の現身に斬り掛かっていた。
「その現身の姿はこちらを惑わせるつもりか……? 悪いが容赦などしない……!」
 呪いの大半はシェーラに向かっているとはいえ、ここまで近づけばアンナも【子取りの箱】の影響を受けざるをえない。しかし彼女の手にする「芙蘭舞珠」は破魔の力を纏い、場に漂う呪詛や邪悪な気配さえも斬り捨てる退魔の霊剣であった。

『く、う、あぁ、ぁ、く、っ』
 霊剣と執行人から発される圧に押され、恨みがましい表情で後ずさる『コトリバコ』。
 敵が動揺しているのを見て取ったアンナはさらに一歩踏み込むと、空いている方の手で棘鉄球付きの「鎖の鞭」を抜き放ち、勢いよく振り回す。
「そこだ……!」
 遠心力の乗った鉄球は童女の手を強かに打ち据え、持っていた『箱』がこぼれ落ちる。
 敵の現身と本体が離れた決定的な一瞬。その好機をアンナと猟兵達は見逃さなかった。

『あ、ぁあぁぁぁ、っ!!』
 慌てた現身が邪神の本体を拾い上げるよりも早く、アンナが「芙蘭舞珠」を投擲する。
 波打つ霊剣の刃は過たず『コトリバコ』に突き刺さり、浄化と除霊の力が邪神を灼く。
『ぎいいいぃぃぃぃイイイぃいぃぃぃぃッ!!!!?!』
 地下空洞に木霊した絶叫は、現身の口からではなく『箱』本体の中から聞こえてきた。
 アンナはすかさず箱の元に駆け寄ると、燃え立つような意志を込めて、霊剣の刃を突き入れた。

「再び眠れ……闇に帰れ……そして……もう二度と目覚めるな……!」
 串刺しになった箱から、ドス黒い液体が血のようにあふれ出す。その様子はまるで『コトリバコ』がもがき苦しんでいるようにも見えるが、ここで手を緩める猟兵達ではない。
 アンナが『箱』を固定した直後、その呪いにさんざ苦しめられてきたシェーラが、意趣返しとばかりに4丁の精霊銃から銃撃を叩き込む。
「全く、この対価は高くつくぞ!」
 神罰の弾丸が彩色の軌跡を描いて赤い箱を穿ち、出血量と悲鳴がますます大きくなる。
 これ以上の攻撃を受ける前に、現身の童女が本体を取り戻そうと駆け寄るが――その寸前、狙いすましたスリングショットの弾丸が放たれる。
「これ以上、誰の命も奪わせねえ……!」
 感覚を研ぎ澄ませた嵐の一撃は、アンナとシェーラが穿った『箱』の穴へと的中した。
 それは邪神からすれば心臓の傷を抉られるようなもの。木霊する絶叫は慟哭の域へと達し、邪悪な存在感が弱まっていく。

『う、ァ、ギ、があァァァあアぁ―――ッ!!!!』
 太古の時代より封じられながら、忌まわしき呪いをこの地に広めた『コトリバコ』。
 永遠不滅化に思われた、かの邪神の命運が尽きる時は、刻一刻と迫りつつあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
ある意味、対峙するにうってつけの我が身ですが…
(攻撃を安全圏に弾かれ)
霊的要素との相性が悪いのは如何ともし難いですね
しかし、子供達は一体何を口ずさんで…
(凍結●世界知識を解凍)

『かごめ かごめ』…この国の遊びですか
…?
何故、何時までも『鬼』が変わらず中央に…

『後ろの正面だーれ』の正解をあの邪神は答える気が無い!

霊の身体的特徴を情報収集
UCで邪神現身の音声再現し回答

(性別、着物や髪形の特徴)の子

(声戻し)
遊びに儀式に御伽噺のお約束
それらは手順…ルールが肝要です
(フィールドワークの経験が役立ちました)

貴女の声は全員が聞いています
交代ですよ

中断された遊びの輪に入り剣を一閃

子供達を解放していただきます



『あぁぁ、ぁ、ぅぁああぁ、ぁぅ、あ―――』
 猟兵達の連携により現身から引き離され、本体に甚大な損害を負った『コトリバコ』。
 割れた箱の中からはドロドロとした呪いと血液のようなものが止めどなくあふれ出し――その血溜まりの中から、ゆらり、と半透明の霊体が召喚される。
『カゴメ、カゴメ』
『カゴノ、ナカノ、トリハ』
 いずれも年端のいかない子供の姿をした霊達は、壊れた『箱』の周りをぐるりと囲みながらたどたどしい調子で歌いだす。【カゴメ、カゴメ】――籠の中の『コトリバコ』は、子供達に囲まれたまま、呪いを吐き出し続けている。。

「ある意味、対峙するにうってつけの我が身ですが……」
 非生物のウォーマシン、それも男性型のトリテレイアは【子取りの箱】の呪いを意に介することなく、邪神の本体に攻撃を仕掛ける。しかし『箱』に近づこうとした彼の歩みは見えない壁によって阻まれ、格納銃器による射撃攻撃も弾かれてしまう。
「霊的要素との相性が悪いのは如何ともし難いですね」
 どうやらあの子供達の霊が囲んだ内側がある種の結界――安全領域となって、外部からの攻撃を遮断しているようだ。効果中は『コトリバコ』自身も中で動けないようだが、かの邪神にはただ存在しているだけで汚染範囲を広げていく、常時発動型の呪いがある。

「しかし、子供達は一体何を口ずさんで……」
 このユーベルコードを攻略するための糸口を求めて、トリテレイアはメモリー内に凍結されていた知識を解凍する。UDCアース世界内の民俗学や伝承知識に当たりを絞って検索すると、該当する情報がすぐにヒットした。
「『かごめ かごめ』……この国の遊びですか」
 それは日本に古くから伝わる遊戯にしてわらべ唄のひとつ。現在は広く全国に伝わっているものの、不可解で隠喩的な歌詞や遊戯の内容から、様々な昏い解釈が為されている。

 かごめかごめ 籠の中の鳥は
 いついつ出やる 夜明けの晩に
 鶴と亀が滑った 後ろの正面だーれ?

 鬼となる者を輪になって囲み、歌いながら回る。鬼は歌が終わった時に自分の真後ろにいる者を当てる。今回の件では『コトリバコ』が鬼で召喚された霊が参加者なのだろう。
 だが、そこまで情報を閲覧したところで、トリテレイアは目の前で行われている「かごめかごめ」に違和感を覚えた。
「……? 何故、何時までも『鬼』が変わらず中央に……」
 カゴメカゴメと歌い続ける子供達。しかし輪の中にいる邪神は沈黙したまま動かない。
 歌の最後を締めくくる「後ろの正面だーれ」の正解を、あの邪神は答える気が無い。だからいつまで経っても遊戯に変化はなく、かごめの歌はまた最初から繰り返される。

『カゴメ、カゴメ、カゴノ、ナカノ、トリハ――』
 終わりのない遊戯を延々と続ける子供たち。その表情は昏く虚ろで、楽しんでいるように見える者は1人もいない。『子取り箱』の伝承から推察すれば、この霊は邪神の呪いによって死んだ――あるいは"生まれてくることのできなかった"者たちなのかもしれない。
 トリテレイアの頭部のカメラアイが、静かに輝く。『コトリバコ』を囲む子供たちの容姿、服装、髪型といった身体的特徴を1人1人確認し、メモリーにインプットしていく。
 そうしている間に【カゴメ、カゴメ】の歌はふたたび最後の一節までたどりつき――。

『ウシロノ、ショウメン、ダアレ?』
 邪神からの答えはない。だが今回は『箱』に代わってトリテレイアがその答えを言う。
 現身や箱から発せられた音声をサンプリングし、周波数を電子的に解析。違和感を与えず説得力を持たせる【覆面の機械騎士】の技法の応用により、その声を完全に再現して。
「赤い着物でおかっぱ頭の、背の低い女の子」
 ――その瞬間。回り続けていた子供たちの動きが、ピタリと凍りついたように止まる。
 子取りの箱の"後ろの正面"には、彼がまさに言い当てたとおりの子が、驚いたような顔をして立っていた。

「遊びに儀式に御伽噺のお約束。それらは手順……ルールが肝要です」
 音声を元に戻して、トリテレイアは邪神を睨み付ける。『コトリバコ』の本体に表情はないが、呪いとして溢れる気配からは戸惑い、焦り、危機感といった意思が感じられた。
「貴女の声は全員が聞いています。交代ですよ」
 剣を抜き、中断された遊びの輪に入る。今度はもう安全圏の結界に阻まれる事はない。
 無防備な状態で地べたに置かれた『箱』に、静かなる怒りを込めて剣を振り上げ――。

「子供達を解放していただきます」

 一閃。騎士の刃を受けた『コトリバコ』の本体から、血飛沫のような呪いが噴き出す。
『ギイイイィィィィィアァァァァァァァァ――――ッ!!!!』
 沈黙を破って箱から飛び出したのは、耳をつんざくような凄まじい絶叫。戦場に木霊するそれが解放の合図だったように、無限遊戯を強いられていた子供たちは消えていった。
 ありがとう、と。ささやくような感謝の言葉と笑顔を、機械仕掛けの騎士に遺して。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
【念動力】の防護膜で少しでもコトリバコの呪いを軽減しつつ、UCを発動し、真の姿を解放。

流石に…長い間封印されてきた呪いね…。わたしも影響からは逃れられない、か…。
でも、負けるわけにはいかないのよ!
我が剣と神焔は神魔を滅ぼす神の焔…貴女のその呪い、全て焼き尽くしてあげるわ!

レーヴァテインの神焔と無数の魔力弾【高速・多重詠唱、誘導弾、全力魔法】で敵のUCを撃ち落とし、焼き払いつつ、本体へ神焔を放って攻撃。
敵が神焔の対処を行ってる隙に一気に高速で接近し、全魔力を注ぎ込んだ【限界突破、魔力溜め】神焔剣レーヴァテインを叩き込むわ!

長期戦は不利ね…長引くと保たない。全力で一気に焼き尽くす!



「流石に……長い間封印されてきた呪いね……。わたしも影響からは逃れられない、か……」
 "竜神の寝床"と呼ばれた地下空洞の中を、嵐のように荒れ狂う『コトリバコ』の呪い。
 子供と女性を標的として寿命を奪うおぞましき呪いに、フレミアは表情を険しくする。
 今は念動力の防護膜によって影響を軽減できているが、それもいつまで保つかは分からない。寿命を奪い続けることで強化される邪神に、いつかは力負けする時が来るだろう。
「でも、負けるわけにはいかないのよ!」
 島に暮らす無辜の人々の命と、吸血姫の誇りにかけて。ぐっと拳を握りしめた彼女の身体からは紅蓮の炎がほとばしり、【子取りの箱】からあふれ出す呪いを焼き祓ってゆく。

「我が血に眠る力……今こそ目覚めよ! 我が眼前の全てに滅びの焔を与えよう!」

 炎の中でフレミアが高らかに唱えたのは【神滅の焔剣】の発動。まだ幼さを残していた容姿は十代の後半程度まで成長し、背中には4対の真紅の翼を生やし。そして握られていた拳の中には、燃え盛る灼熱の焔そのものを刀身とした、一振りの神剣が顕現していた。
 一歩踏み出せば、その周囲を焔が舞い、その分だけ闇と呪詛が退散する。その圧倒的な熱量に『コトリバコ』の現身がたじろげば、焔纏う吸血姫はその本体に刃を突きつける。
「我が剣と神焔は神魔を滅ぼす神の焔……貴女のその呪い、全て焼き尽くしてあげるわ!」
 掲げし刃の名は神焔剣レーヴァテイン。その切っ先からほとばしる神焔が、使い手の魔力と合わさって無数の炎弾となり、嵐のごとく標的に襲い掛かる。対する『コトリバコ』も負けじとばかりに呪いを吐き出し、眷属である無数の小鳥を解き放った。

『ことり、コトリ、小鳥、子取り、ことりりりりリリリリ―――!!!』

 呪いの風を翼に受けて羽ばたく無数の小鳥と、神焔を帯びた無数の魔力弾が激突する。
 爆音と絶叫が木霊し、火の粉と呪い羽が戦場に散る。互いのユーベルコードが激しく鎬を削るなか、フレミアは邪神『コトリバコ』の本体のみを睨み付けていた。
「長期戦は不利ね……長引くと保たない。全力で一気に焼き尽くす!」
 自分が呪いに倒れるのが先か、相手が神焔に焼かれるのが先か。短気決着を決意した彼女は覚醒した真祖の魔力を惜しみなく使って、敵の眷属を撃ち落とし、焼き払い、さらに敵本体へも神焔を放ってプレッシャーをかける。

『コト、り、こトリ、りりり、ッ』
 神魔を滅する焔の勢いに圧され、焦りを含んだ声を漏らす『コトリバコ』。じりじりと後退を強いられながら、焔に焼かれぬよう新たな小鳥達を放って凌ぐ――邪神が神焔の対処に手一杯となっているのを見て、フレミアの瞳が燃えるような真紅に輝いた。
「――今っ!」
 4対の翼を羽ばたかせ、力一杯に地面を蹴る。音速さえも超える超高速に達した彼女は一気に邪神に肉迫し、握りしめたレーヴァテインは真祖の魔力を受けて煌々と燃え盛る。

『――――!!!』
 回避も防御も間に合わない。瞬きをする一瞬の内に、彼女は邪神の目前に迫っていた。
 叩き込まれるのは、フレミアの全魔力を注ぎ込んだ神焔剣の一撃――その刃は過たず『コトリバコ』の本体に突き刺さり、限界を超えた熱量の神焔で内部から焼き尽くす。
「性質の悪い呪いもここまでよ。滅びなさい!」
『ギいいぃィィィィアァァァァァあッ!!!?!!』
 本体から発せられる絶叫が地下空洞に木霊し、共に焔に包まれた現身がのたうち回る。
 いにしえの邪神でさえ、極限まで圧縮された神殺しの焔の前には抗えず。吸血姫の魔力を薪として燃える神焔の中で、忌まわしき子取りの呪いが燃え尽きていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

斬断・彩萌
なにがコトリよ、馬鹿言ってんじゃないわよ
悪しき宿命は此処で断つ。それが私――斬り断ちの名に於ける役目

【歪渦】を使って自己強化、そのまま二挺拳銃とOracleで遠近両用の戦闘に対応
無限に沸き上がる意志で無数の小鳥たちを銃撃
近づかれたら長剣程度に伸ばした刀身でたたっ切る!

闇に紛れながらも、本体に攻撃するチャンスがあれば積極的に斬り込んでいく
命中を重視した攻撃で絶対的なダメージを与えていく
鈍いのろい! まるでアンタの呪いみたい!!
そんなんじゃ私には追い付けないわよ!

タイムリミットが近くなったら全力で捨て身の攻撃
なりふり構わず攻勢に入る
私たちは……こんなところで負けてられないのよっ!!

アドリブ歓迎



「こと、り、ことり、コトリ……」
 燃え盛る焔の中から、譫言しみた呪詛と共に着物の燃えた童女と焦げた箱が姿を現す。
 激戦の中で甚大なダメージを受けた『コトリバコ』の命運は、今や尽きかけていた。だが、それでも邪神としての本能なのか【子取りの箱】から呪いが止まる様子はない。
「なにがコトリよ、馬鹿言ってんじゃないわよ」
 忌まわしき"子取り"の呪いの元凶たるその邪神を、彩萌は刺し貫くような眼光で睨む。
 古来よりたびたび島の伝承に現れ、人々に災いをもたらしてきたその呪い。新たな命を生むはずの命が、未来あふれる若い命が、これ以上脅かされる事などあってはならない。

「悪しき宿命は此処で断つ。それが私――斬り断ちの名に於ける役目」
 斬断家の若き当主としての使命を背負い、処刑と叛逆の二丁拳銃を構える彩萌。その身体からは空間すらも歪ませる強大なサイキックエナジーが溢れ、周囲で渦を巻いている。
 【歪渦】を纏う少女の気迫に圧されたか、『コトリバコ』の現身は後ずさり。その手に持った箱からは無数の小鳥が飛び出し、本体を守るために黒い大渦となって戦場を舞う。
「眷属風情が、邪魔をするんじゃないわよ!」
 飛び掛かってくる小鳥の群れを彩萌がキッと睨みつければ、サイキックエナジーの嵐はさらに勢いを増し。それに後押しされるかのように、放たれた銃弾が標的を吹き飛ばす。

「ゆがめ、ひずめ、うずまけ―――ッ!!」
 時空間を軋ませ荒ぶるサイキックと共に、自らの精神力を武器に込めて彩萌は戦う。
 離れている小鳥は二丁拳銃で。近付いてきた小鳥は長剣サイズに伸ばした"Oracle"で。
 討つべき敵を前に、無限に湧き上がる意志が弾と刃となり、敵を撃ち抜き、叩き斬る。
『うウゥウゥぅぅぅ……ッ!!』
 恨みがましい声を上げ、『コトリバコ』はすぐにまた新たな眷属を召喚するが。その補給時の隙を見逃さなかった彩萌はチャンスとばかりに斬り込み、意志の刃を振り下ろす。

「そこっ!」
『ぎァ、ッ?!』
 当てることを重視した一閃が、深くはないが確実なダメージを邪神の本体に刻み込む。
 反撃のために敵が構えた時にはもう、彩萌は闇に紛れて相手の前から姿を消していた。
「鈍いのろい! まるでアンタの呪いみたい!! そんなんじゃ私には追い付けないわよ!」
 サイキックエナジーによる時空間の歪曲が、物理的な制約を超えて術者を加速させる。
 その速さと戦場の暗さを活かした華麗なヒットアンドアウェイで彼女は敵を翻弄する。
 一見、圧倒しているようでもあるが――しかし【子取りの箱】の呪いが地上へと到達する時も刻一刻と迫っていた。

「タイムリミットが近い……こうなったら!」
 刻限を察した彩萌はそれまでの戦法を捨て、なりふり構わない捨て身の攻勢に転じる。
 それまで以上の重さと鋭さを以て、邪神に振り下ろされる刃――だが同時に箱から飛び出す小鳥の嘴や鉤爪が、彼女の身体を引き裂いていく。
『ことり、こ、とり、とり、とり、とり……!』
 『コトリバコ』もここで倒れるまいと必死だ。復活直後の今さえ凌ぐ事ができれば、本来の力を取り戻した邪神は猟兵を含めたこの島の生命を一瞬で蹂躙できる筈なのだから。
 彩萌にもそれが分かっている。だからこそ今、こいつと決着を付けなければならない。

「私たちは……こんなところで負けてられないのよっ!!」

 セーラー服を血に染めた少女の、裂帛の気迫を込めた一撃が、邪神本体に突き刺さる。
 窮地においてなお激しく燃え上がった意志の力は、空をも斬り、天をも断つ刃となって敵を貫いた。
『ギいいぃィィガああアアぁァァぁァ――――ッ!!!!!?』
 壊れたラジオのような音を立てて、絶叫する『コトリバコ』の本体とその現身。
 伝承にて語られしいにしえの邪神に、いよいよ最期の時が訪れようとしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
流石に、厳しいね…呪いに慣れたわたしでも影響は防ぎ切れない…!(【呪詛、呪詛耐性】)

呪符による防御術式【呪詛、破魔、オーラ防御、呪詛耐性、高速詠唱】で敵の子取りの箱の呪いを弱めつつ、【ソウル・リベリオン】を召喚。
更に【九尾化・魔剣の巫女媛】の封印を解放し、ソウル・リベリオンを強化…!

子取り箱の呪いや取り込んだ霊達の怨念等をリベリオンで喰らい、自身の力へ変えつつ、敵の呪いを浄化…。
無限の魔剣で敵の小鳥や攻撃を迎撃し、本体を縫い止めつつ、【ソウル・リベリオン】の一撃で箱と少女(邪神)の呪いを砕き、浄化するよ…!

後は呪いに汚染されたこの地と竜脈も【ソウル・リベリオン】で浄化し、完全に終わらせるよ…。



『ううウゥぅぅぅぅぅアアぁぁぁぁ……コトリ、コトリ、コトリことりとりリリリ……』
 ボロボロに破損した『コトリバコ』の本体から、汚泥のように溢れ出す大量の呪詛。
 子孫を絶やす【子取りの箱】の呪いは今や地底を満たし、地上に溢れようとしている。
 タイムリミットは後僅か――だが同時に猟兵達の攻撃も、邪神をあと一歩のところまで追い詰めている。これは死期の迫った邪神の最後の悪あがきだ。

「流石に、厳しいね……呪いに慣れたわたしでも影響は防ぎ切れない……!」
 そう呟きながら、呪符による防御術式で敵の呪いを弱めるのは璃奈。魔剣の巫女である彼女でさえ無事とはいかない程、邪神の力は凄まじい――それでも退く訳にはいかない。
 島を脅かす呪いに終焉をもたらさんがため、召喚するのは【ソウル・リベリオン】。呪詛を喰らう魔剣を手に、さらに彼女は巫女として秘められし力の封印をここで解放する。
「我らに仇成す全ての敵に悉く滅びと終焉を……封印解放……!」
 【九尾化・魔剣の巫女媛】に変身した璃奈の身体からは莫大な呪力が迸り、ソウル・リベリオンの力を強化。戦場を満たしていた邪神の呪詛が、その刀身に吸い込まれていく。

『ことり、コトリ、りり……?!』
 自らの呪いが剣に喰らわれていくのを見た『コトリバコ』の現身は驚きの声を上げる。
 焦ったように呪いの放出を強めても、その全てはソウル・リベリオンに取り込まれ、かの魔剣の使い手である璃奈の力へと変換される。
「呪詛喰らいの魔剣よ……悪しき呪いを喰らい尽くせ……!」
 喰らうことによる浄化と、自らの強化。2つを同時に行うことで彼我の力関係は覆る。
 今、ソウル・リベリオンには島の各地で浄化してきた数々の不浄や、呪いの犠牲となった霊達の怨念までもが取り込まれている。皮肉にも『コトリバコ』がこの地を脅かしてきた物事の全てが、璃奈の手で邪神を討つための力になっているのだ。

『う、ううぅぅぅぅぅぅぅぅ……ッ!!!!』
 魔剣の巫女媛の力が高まっていくのを前にして、怯えたように小鳥の眷属を放つ邪神。
 だが、その攻撃は璃奈の元に届くよりも前に、顕現した無限の魔剣により迎撃された。
「さあ、これで最後だよ……」
 璃奈がすうと手を動かせば、魔剣達は矢のように放たれ、邪神の本体を串刺しにする。
 現身である童女の身体ごと、地底の岩壁に縫い止められた『コトリバコ』は必死の形相で藻掻くが――そこに間髪入れず、呪詛喰らいの魔剣を構えた巫女媛が迫る。

「悍ましくて恐ろしい……そして、悲しい呪いに、終焉を……!」

 極限まで強化されたソウル・リベリオンの一閃が、邪神の箱の呪いを砕き、浄化する。
 胴体の泣き別れた童女の手の中には、真っ二つに両断された『コトリバコ』があった。
『ぎ――――いいいぃぃィィぃぃぃぃィィッ!!!!!!!!!』
 直後、この世のものとは思えないような断末魔の絶叫を上げ――箱は完全に砕け散る。
 現身の姿も幻だったかのように虚空へと消え去り。それが竜脈に封じられしいにしえの邪神『コトリバコ』の最期であった。

「勝てたね……後は……」
 邪神の存在感が消えたのを感じ取った璃奈は、ほっと小さく息を吐いてから、地下空洞の中心から湧き出す泉のほうへ向かう。そして水辺にソウル・リベリオンを突き立てて、呪いに汚染されたこの地と竜脈を浄化していく。
「これで、完全に終わらせるよ……」
 子孫を絶やす忌まわしき呪いが、この島の人々の生命を脅かすことはもう二度とない。
 邪神封印という役目から開放された竜脈は、純粋にこの地を流れる大地のエネルギーとして、島に恵みをもたらしてくれるだろう。


 ――かくして、いにしえの伝説に終止符は打たれ、竜が封ずる子取り箱は破壊された。
 この世界に数多眠っている邪神の脅威、その1つの復活を猟兵は未然に阻止したのだ。
 いずれこの地に語られていた伝承も、完全に忘れ去られていくだろう。それは決して悲しいことではなく――過去からの警鐘が、その意義を終えたということなのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年09月19日


挿絵イラスト