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悪魔の戦争機械

#グリードオーシャン

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#グリードオーシャン


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●弾撃つ響きは雷鳴の如く
 島から離れた波間に浮かんでいる船舶の数々は、島民たちが今まで見たこともない代物であった。
 櫂を漕がずともひとりでに進む、奇妙な機械音でその都度自分たちに情報を知らせれてくれる。
 だがそれを操る島民たちに、理解するには文明レベルが違いすぎる。
 しかしやらねばならぬのだ。
 遙か先に、うっすらと島影が見える。
 自分たちが住んでいた島。
 あそこへと、我々は船を操って帰らなければならないのだ。
 洋上に見える、鉄の悪魔たちの攻撃をかいくぐって。
 晴天に、開始合図の花火が打ち上げられる。
 それは島民たちにとって死の宣告。
 真っ直ぐ進むこともおぼつかない彼らに、機械兵が襲いかかるのであった。
 殺戮の宴。
 蒼き兵たちが島民たちをなぶり殺す様を、島に近い洋上からただ一機、朱き機械兵士が表情を変えず見つめていた。
「まさか……彼らはこの期に及んでまだ覚悟が足りませんの?」
 これでは訓練にならない。
 我が配下は、来たるべき日にむけて錬磨をしなければならない。
 たとえそれが、違う世界へと降り立ったとしても。
 いずれ招集がかかるその時までに、万全の状態を為してなければならないのだ。
 振り返り、朱き物は居並ぶ物に下知した。
「ここの島民がいなくなったら、別の島を探しますわよ皆さん」
 その目は遠くを見据えていた。
 戦いの先に、あるべきものを。

●グリモアベースにて
「グリードオーシャンにある一つの島、それがウォーマシンの群れに占拠される事態が起こりました」
 ここはグリモアベース。
 ライラ・カフラマーンは居並ぶ猟兵たちに深々と頭を下げていた。
 その背後に生じている霧には、さきほどの光景が幻となって現れている。
 頭を上げると幻は雲散霧消していき、周りの霧と溶け込んでいった。
「宇宙航行のトラブルでしょうか。スペースシップワールドの戦闘機兵がこの世界へと来訪したのです。彼らは皆戦うことをプログラムされており、それ以外のことを知りません。純朴に過ごしてきた島民たちとは、全く相容れない存在なのです」
 戦闘騎兵たちは、島に馴染もうとはせず島民たちにルールを課した。
 戦うこと、ただそれだけである。
「いままで武器を握ったことすらない島の人々にとって、これは非常に理不尽なこととなりました。しかし武装した機兵たちに逆らうことも出来ず、彼らは武装船に乗り込むことを強要されたのです」
 海上と宇宙では勝手は違うのだが、機兵たちは訓練、対船への戦闘行為を行いたい。
 しかし素人に高価な物を渡しても、結果は明らか。
 先ほどの光景のように、一方的な展開になるだけである。
 ライラは言う。
 あの場所へと急行し、島民たちを救って欲しいのだと。
 そしてウォーマシンの兵団を殲滅し、島の平和を取り戻して欲しいのだと。
 ライラが杖の先で地面を軽く叩くと、霧が変化し姿を形どる。
 それは洋上に浮かぶ船舶の群れ。
 不安そうに辺りを見回す島民たちの悲痛な表情であった。
「機械の扱いに長けた人なら、払い下げられた船舶を利用することも可能です。それを操って島民たちを戦闘エリア外へと逃がす。または機械兵と相対し、危機を減らすのもいいでしょう。いずれにせよ機械兵がこの世界に居座る限り、戦乱の兆しは無くならないでしょう。皆様におきましては、この苦難を解決してくださるよう協力お願いします」
 そう言ってライラは、猟兵達に深々と頭を下げたのであった。


妄想筆
 こんにちは、妄想筆です。
 今回は機械の群れ、ウォーマシンとの戦いになります。
 一章は船を操って彼らの攻撃を回避するパートになります。
 洋上に浮かぶ船には、無理矢理乗せられた島民たちがいます。
 彼らを戦闘エリア外へと逃がすよう、船を操ってください。
 船には主砲、副砲、レーダーが搭載されており、音声ガイドに従えば基本の動きは出来ます。
 船を使わずに島民たちを逃がす方法を思いついたのなら、それでもOKです。
 二章は接近してきたウォーマシンたちとの戦闘になります。
 波間に揺れる船上での戦いになりますが、足場はあまり気にしなくて結構です。
 三章は彼らを率いてきたコンキスタドールとの戦いになります。
 島近くの海岸沿いでの戦闘を想定しています。

 参加お待ちしております。
 よろしくお願いします。
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第1章 冒険 『駆け抜けろ!海上レース!』

POW   :    全速前進突っ走るッ!

SPD   :    操縦テクニックで駆け抜けるッ!

WIZ   :    海流や風を見極め走り抜けるッ!

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 グリモアベースから一転、猟兵達は洋上へと投げ出された。
 海上へと叩きつけられる前に、適当な船上へと着地に成功する。
 見渡せば、不安そうな視線をこちらに向ける島民たち。
 むこうを見れば、海上に漂うカモメのごとく機械兵の姿が見える。
 囮になって兵を惹きつけるか。
 それとも船を駆り、ここから離脱を試みるか。
 果たして己に船頭の才能はあるのだろうか、それは海と太陽だけが知っていそうだ。
 ともあれ、人々を助けるために行動に移すべきであろう。
 猟兵達は、それぞれ自分が最善であると考える選択を取り始めたのだった。
テリブル・カトラリー
プログラムされた自身の在り方から、脱却できていない。
かく言う私も、戦場を選べる自由はあれど、己の存在理由を完全には否定できていない。……同じ穴の狢、という奴だな。

バイク型浮遊砲台を操縦。空中浮遊で海上のウォーマシン達へ向かい、おびき寄せ。注意を引く。
…銀河帝国兵か?まさか解放軍製やそれ以外でもないだろう。
私か?私は猟兵。お前達の、敵だ。

『O.B.C』発動。粒子シールドを展開し、盾受け。
敵機の攻撃を防ぎ、高速飛翔へ移る。

訓練がしたいのだろう。つきあってやる。
残像、高速飛翔で攻撃を避けつつ、ホーミングレーザーで制圧射撃。
属性攻撃で妨害を行う。



 相手の殲滅。それが今回の任務。
 ウォーマシンは島民たちを相手取り、自分たちはウォーマシンを相手取る。
 何てことは無い。ただ立場が違うだけである。
 それが時と場合にそぐわなかったことというだけだ。
「……同じ穴の狢、という奴だな」
 テリブル・カトラリーは誰に聞かせる訳でもなく、ひとり呟いた
 起動する時と場所が違えば、彼らのように自分も民草に武器を向けていたのだろうか。
 考えていても答えが出ない思いを振り払い、現状を見つめ直す。
 勝者が生き、敗者が死ぬ。
 それが戦場におけるシンプルな答え。
 その解にへと到達するため、テリブルは己の闘争を研ぎ澄ますのであった。

 ウォーマシンの兵たちが、海上を疾走する一台の兵器を認識した。
 それはテリブルが駆るバイク型浮遊砲台「ロートレック」であった。
 その周りを護衛するかのように漂う携行浮遊砲台「アルタミラ」と併走しながら、彼女は単騎で敵陣へと突っ込んでいく。
 払い下げの船舶などよりはこちらの方が扱い馴れているし、こうやって島民たちの船から離れ近づけば、囮の役は十二分に果たせる。
 そしてなによりも、ヤワな攻撃ごときでは自分は沈まないことは、テリブル自身が一番良く知っていたからだ。
 ジェットスキーのようにスイスイとやってくる彼女に対し、ウォーマシンはミサイルランチャーを担ぎ上げ、迎撃態勢を取り始める。
 センサーが浮遊砲台と猟兵を識別し、偏位射撃が計算されていく。
 だがしかし、進行方向に発射されることは無かった。
「識別――銀河帝国、友軍ノ可能性有リ、所属、識別信号応答サレタシ」
 無機質な機械音。
 それが、テリブルの耳にしっかりと届いた。
「……私か? 私は猟兵。お前達の、敵だ」
 敵に相対して引金を引かない者は、容易に間合いを詰める愚を犯す結果を晒す。
 砲台を自動砲撃モードに切り替えて、テリブルは跳躍した。
 オーバード・ブースト・コート。
 粒子シールドを展開させ、一気に間合いをつめ、彼女は敵陣のまっただ中へと到達
するのを成功させる。
 過剰に放出された粒子が、ホーミングレーザーとなって周囲のウォーマシンたちに
降り注いだ。
「攻撃ヲ確認。敵対行為。帝国兵偽装ト判断。反撃ニ映ル」
「ようやくだな」
 眼下の兵士たちが一斉に肩を上げてこちらを狙う。
 飛んでくるミサイル弾幕。
 テリブルの周囲をガードするシールドが、身体に当たるのを阻む。
 衝撃がシールド越しに伝わってくる。
 硝煙と爆発で出来た即席の雲。
 それを煙幕にテリブルは上空を旋回し、彼らの狙いを定めようとはさせない。
「訓練がしたいのだろう。つきあってやる」
 薄雲から放たれるレーザーの雨。
 それは仕留めるほどでは無い威力ではなかったが、確実に機械兵の装甲を削っていった。
 放たれたレーザーの中心へと、ミサイルを再度放とうとする兵たち。
 だがそれはテリブルの思惑通りの展開。
 狙いから外れ、フリーとなっていた浮遊砲台が、ウォーマシンの背後より一斉に射撃を試みる。
 雷を帯びた弾幕が、レーザーに重なるように降り注ぐ。
 それは装甲が剥げた箇所より侵食し、彼らの電気系統を乱すのに十分であった。
 視界がぶれ、テリブルの姿が重なって歪む。
 その隙に、彼女は雲を突き抜けて上空へと回避した。
 遠くを見れば、いまだ船舶はこの海域に留まっていた。
 島民たちが離れるにはまだ時間がかかりそうであった。
「どうやら、まだつき合わねばならぬようだな」
 そう言い放ち、テリブルは急速で滑翔し、ウォーマシンの群れに自分の姿を印象づけるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

瞳ヶ丘・だたら
【連携アドリブ負傷歓迎】

こんなことなら戦車に水上移動機能を付けておけばよかった。この事態を解決したら検討しておこう。その為にも今回は勝利を収めねば。
船舶の[操縦]は初めてだが、距離感の掴み方に周辺警戒の手法など、戦車のそれが応用できないということはないだろう。音声ガイドに従いつつレーダーの管理と操縦を行う。主砲の操作と発射のタイミングもあたしが指示をするぞ。[砲撃]には少々だが心得がある。
また、UCを発動させた自前の戦車も甲板に駆り出そう。素人に我が愛機を任せるのは少々不安だが、指示さえ的確であれば、船の積載兵器よりも大きな戦果を上げられるはず。
[メカニック]で鍛えたマルチタスクの見せ所だ。


花澤・まゆ
さあ、困った
あたし、自転車の運転しかできない
でも、この人たちをなんとかして救わなくちゃ

【コミュ力】で島民の中に船を動かせる人がいないか問うよ
いればその人を中心に、いなければあたしが【運転】でなんとか!
とりあえず船を戦場からある程度離して
あとは船に結界を張って幾分かの防御を(【結界術】)

船を島民に託したら、あたしは【空中戦】で空へ
人のいない船などに飛び移りながら
囮として兵をひきつけていくよ
さあさあ、獲物はこっちだ、かかってきなさい!

島民さんたち、無事に逃げてね

アドリブ、絡み、歓迎です



「やれやれ海上戦か。キミ、船舶の操縦は出来るか?」
「あはは……あたし、自転車の運転しかできないな」
 花澤・まゆが苦笑する。
 それから視線を戻し、瞳ヶ丘・だたらは船に設置されたコンソールパネルを見やった。
「なら、やるしかないな」
 そっと右手を触れれば、音声の案内が流れる。
 ――マスター、指令を――
「決まっている。敵陣の把握とこの船の操舵だ」
 次々と光るパネルにタッチをしながら、瞳ヶ丘は状況を把握する。
 勝手は違うが、動かせないことはない。
 自分が戦車を操縦出来たことは、今の時分において僥倖だったといえよう。
「だが……こんなことなら戦車に水上移動機能を付けておけばよかった」
 いかんせん陸と海では通用しない戦法もあるだろう。
 次がいつになるかはわからないが、まずは今を全力で乗り切る。
 テキパキとこなす瞳ヶ丘に従って、船首が動き波間を進み初めて行く。
 パネルに表示される情報を読み取りながら、瞳ヶ丘は顔を動かさずに花澤へと声をかけた。
「キミ、船は敵へと向かう。出来れば島民たちの避難をお願い出来ないか」
「はっ、そうだった! わかったよ!」

 花澤もこうやってただ突っ立っているためにやってきた訳では無い。
 人々を救うためにこの地へとやってきたのだ。
 思いは空回りしているかもしれないが、その気持ちは誰にも負けない。
 甲板へと飛び出して、大きな声で周りに呼びかける。
「あ、あの! 誰かーーっ! 船の操縦出来る人はいませんかーーーっ!」
 少女の声が大海に響く。
 しかし答える者の声は聞こえない。
 わかっていたことだが、やはり動かせる人はいないようだった。
「う~ん……だったら、やっぱり私がやるしかないよね!」
 花澤は意を決し、甲板を蹴って飛び出した。
 背中の羽がぴこぴこと動き、波間に揺れる別の船へと着地に成功した。
 空を飛んでやってきた花の天使に、島民は訝しげな顔をむける。
「あの、私たち助けに来ました! 大丈夫です!」
 船に乗っている人達を安心させるため、彼女は満面の笑みを作って落ち着かせようとした。
 そしてそのまま、船長室へと駆けだしていく。
 コンソールパネルを前に両手をふんばってにらめっこする。
 先ほどの船との違いはなさそうだ。
 だったら自分でも行けるかもしれない。
「たしか瞳ヶ丘さんは、こうやっていたよね……」
 今し方見た光景を見よう見まねでやってみると、パネルが反応してくれた。
 ――マスター、指令を――
「やった!」
 瞳ヶ丘の早さは出せないが、それでも案内にしたがって花澤は船を動かすのに成功する。
 島民を護るために、まずはここから離れるべきであろう。
 レーダー上に映る瞳ヶ丘にむかって、声をかけた。
「この人達を連れて行ったら、すぐいくからね!」
 そのために、彼女の船は殿を務めていてくれるのだから。

 波とは別の揺れが船を襲った。
 パネルに表示される損傷はまだ軽微だ。
 だがしかしこちらは一艘、あいては大勢ときている。
 主砲と副砲で散らしても、その数には限界がある。
「やれやれだな」
 うんざりした声で、瞳ヶ丘はレーダーを確認する。
 島民たちを乗せた船舶の群れは、戦闘エリア外を脱出するのに成功していた。
 この船を抜けなければ、彼らが被害を受けることもないだろう。
 つまり目的はほぼ達成している。
 たとえ沈められても、ここから追いつくことは難しいだろう。
「もっとも、やられるつもりもないがな」
 甲板にキュラキュラと戦車がその姿を現した。
 主砲副砲を撃ち続けて弾薬が少なくなってきてはいるが、継戦能力を失念する彼女ではないのだ。
 今までの砲撃戦で距離感はだいぶ掴めた。
 愛機であれば間違いなく命中させられるだろう。
 だがひとつ問題があった。
 船の操縦をしていては戦車を動かすのに支障が出るということである。
 さてどうしたものかと考えあぐねる瞳ヶ丘の耳に、聞き慣れた声が追いついてくる。
「おまたせ!」
 飛翔し、甲板にやってきたのは花澤。
 飛び移って船を動かし、島民たちを避難させたあとで瞳ヶ丘に合流すべくやってきたのだ。
「大丈夫か」
 声をかける瞳ヶ丘に、花澤は笑顔で応えた。
「うん、結界も張ったしあの人達が襲われることはないと思うよ」
 彼女が心配して声をかけたのは、息せき切って駆けつけ肩で呼吸をしている花澤に対してなのだが、どうやら避難のことと思われたようだった。
 ようやく声を整えて、花澤はすっくと立ち上がる。
「じゃあ、私が囮になるからね。その隙に主砲で狙ってくれるかな!」
 すぐに息を立て直した彼女は、答えも聞かずに甲板を走って飛び出した。
 再び海上に天使が舞う。
 島民の行く末ではなく、敵のいる方向にむかってと。
 それは、瞳ヶ丘の眼にもしっかりと映る。
 それを焼き付けて、戦車へと乗り込んだ。
「ああ、やってやるとも。あたしの主砲でな」
 見慣れた配置に使いこなした機器の数々。
 やはり戦車は良いものだ。
 機器ごしに、花澤が敵陣を舞うのが確認できた。
 彼女を死なせはしない。
 そして、焦ってはならない。
 木の葉のごとく舞い囮を努めてくれる彼女に対し、誤射をするなどあってはならない。
 タイミングを見計らい、瞳ヶ丘は引金を引いた。
 それは必殺の一撃。
 花澤に群がる羽蟲の群れ共が、雲散霧消するのが見て取れる。
 船に戦車を乗せた即席の浮き砲台。
 その火力が、ウォーマシンに牙を剥く。
 その援護を受けながら、花澤も戦う。
 二人の少女の奮戦を受けて、島民たちの船は海域を抜けるのに成功するのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
(着地してすぐ島民へ)
ご安心ください
皆様を護り、このような理不尽を強いた者を討つ為に騎士として参上いたしました
船にしっかりと掴まっていてください

ワイヤーアンカーを射出し操作卓へ●ハッキング●情報収集

…やはり故郷のシステム

UCで武装も含めた船の操作権を完全掌握
第二の身体として●操縦し戦闘区域からの離脱を開始
自前のセンサーとレーダー合わせた●情報収集で敵の位置や攻撃●見切り
操作する船の主砲の●スナイパー砲撃で排除しつつ副砲の●乱れ撃ち●武器落としで防御

有線ハッキングで船を操り同時並行で自身も●武器受け●盾受けで島民を●かばい

今は住人の生命が最優先
『過去』に堕ちた同胞に引導を渡すのはその後です



 日輪の光を反射させながら、白き機体が戦場へと降り立った。
 空から振って湧いた白騎士は、船に動揺を与えまいと速度を抑え、ゆっくりと着地する。
「ひぃっ! また新手だ!」
「鉄の悪魔だ!」
 怯える島民たち。
 そんな彼らにむかって白騎士、トリテレイア・ゼロナインは堂々と語った。
「ご安心ください。皆様を護り、このような理不尽を強いた者を討つ為に騎士として参上いたしました」
 落ち着かせようと静かな口調で話しかけてみたが、彼らの警戒心は解けていない。
 当然であろう。
 いきなりやってきて信じろというのが無理な話だ。
 だからトリテレイアは、行動で信義をしめそうとする。
「皆様を奴等から引き離す為にこれより船の移送を開始します。船にしっかりと掴まっていてください」
 そう言い放ち、突き出した腕から射出されるのはワイヤーアンカー。
 先端にハッキングするためのジャックが取り付けられた優れものだ。
 コンソールパネルに接続し、溢れる情報をその身に吸収する。
「……やはり故郷のシステム」
 この船は、銀河帝国の叡智で構成された武装船に違いなかった。
 網や銛で漁業を営む島民たちに、艦隊兵器である砲戦の仕組みなど理解できるはずが無い。
 如何な理由でこの世界へと渡ってきたのかは定かではないが、今は島民たちを戦火から護るのが先決といえよう。
 そのために、自分がここへとやってきた。
「マルチセンサー・フルアクティブモード、起動!」
 先ほどまで流れ込んできた情報を受け止め、掌握し、押し返す。
 トリテレイアの身に、船と一体化した感覚が覆った。
 馴染む。もはや手を動かす必要も無い。
 思考するだけで船首は機械兵たちとは反対方向を向き、その速度を加速させていく。
 戦場から離脱する動きを眺め、島民は恐る恐る声をかけた。
「あんた……助けてくれるのか」
 頷くトリテレイア。
 その思考に、近づいてくる敵が割り込んでくる。
 ジャミングした船のレーダーも敵影を感知している。
 やはりここからただで逃がしてくれるつもりはないようだ。
「皆様、先ほども言いましたが船にしっかりと掴まっていてください」
 船尾の方へと主砲と副砲が動く。
 射程は遠い。
 だが敵の狙いをブレさせるには十分だ。
 こちらの船に照準を合わせられる前に、トリテレイアは挨拶代わりに砲撃を敵影の群れに発射した。
 海面と平行に進む弾幕の残響は、海神が吠える蛮声の如し。
 耳を押さえしゃがみ込む島民たちに、その成り行きは見えない。
 しかしトリテレイアには見えた。
 砲撃の先から、撃ち漏らした敵の反撃、報復の射撃の数々を。
 船に回避行動を取らせ、自分は海面へとおどり出た。
 敵と船の射線に入るように立ち塞がり、大盾を構える。
 轟音。爆音。激しい揺れ。
 だがトリテレイアはかまわず、船を庇うようにと前へと進む。
 誘爆に船と島民が巻き込まれぬようにと。
 砲撃が止みのを確認し、大盾を下げて槍を突き出すトリテレイア。
 その背後から伸びたワイヤージャックは、騒動に構わず船を退避させるようにコンソールに促していた。
「今は住人の生命が最優先。『過去』に堕ちた同胞に引導を渡すのはその後です」
 砲煙が晴れて姿を見せるは、堂々とした白騎士。
 島民たちが安全な場所へと逃れるまで、トリテレイアは相手の攻撃を受けきるつもりであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エウトティア・ナトゥア
アドリブ・連携歓迎

戦えぬ者達を嬲るとは卑しい真似をする。
まずは島民達をの安全を確保せぬといかぬな。
秘伝の篠笛を吹き鳴らしビーストマスターの力でシャチやイルカ等の大型水棲生物を呼び出し島民達を乗せて避難させるのじゃ。
ほれ、わしがこの船に残って囮をつとめるからお主らはこれに乗ってはよう逃げるがよい。

機械の事はよく分からぬが音声の通りに操縦できそうじゃな。
わざと目立つ動きをして敵の注意を引くとするかの。
攻撃を引き付けてわしの操船(野生の勘で適当に)と風の障壁で耐えるのじゃ。
うははーこれはなかなか楽しいのう。じゃが、流石に全てはかわせぬか。
ギリギリまで引き付けたらわしもイルカに乗ってお暇するかの。


花盛・乙女
羅刹女、花盛乙女。いざ尋常に。

戦の真似事がお望みのようだな。
案ずる事はない。私がこの場にある限り、一切の傷も島民には付けさせん。

スペースシップワールドの船ならあれが出来るだろう。
音声認識による自動操縦だ。
私は科学にめっぽう強い。すまほででんわとめえるする事ができる。えすえぬ何某は修行中だ。
嘘じゃない。旅団のみんなもそうだそうだと言っていた。
…しかし、運良く他の操船できる猟兵が同乗することに賭けよう。

船の移動を任せれば、からくり共に向かい舳先に立ち『鬼櫓』。
今よりこの足は不動の拠点と成る。覚悟を決めてきやれ、からくり。

自動で動かず他の猟兵もいなければ。
…「怪力」任せに船を戦線から離脱させよう。



 岩石が叩きつけられたような衝撃と共に空から鬼女が振ってきた。
「羅刹女、花盛乙女。いざ尋常に!」
 花盛・乙女が敵軍をまえに、潔く名乗りを上げた。
 続けて舞い降りたのはエウトティア・ナトゥア。
 その手にはすでに篠笛が握られていた。
「まずは島民達をの安全を確保せぬといかぬな」
 笛の音色が響けば、海面から顔を出すのは水棲の生物達。
 シャチやイルカなどが争いもせずに、船の周りに浮かんでいた。
「皆の衆、ここは私たちが引き受けた。早々に立ち去るがよろしかろう」
「ほれ、わしがこの船に残って囮をつとめるからお主らはこれに乗ってはよう逃げるがよい」
 これぞ天の助け。蜘蛛の糸ならぬ海の幸。
「あ、ありがてえ!」
 我先にへとイルカたちへとまたがると、嫌がる素振りをみせずに悠々と動物たちは動き始めた。
 相手に魚群探知の道具があるかはわからないが、こうやって大きい船より散らばって逃げる方が足取りを掴みにくいに違いない。
 それに的は小さい方が、敵だって狙いにくいはずなのだ。
 辺りの船から人々が、藁をも掴むように水棲生物にしがみつき、この場から去って行く。
 避難は彼らに任せればいいだろう。
 あとは、迫る敵を迎え撃つ。
 そのためにエウトティアと花盛の二人は、残った船舶を動かそうと試みるのだ。
「時に花盛殿。おぬしはこういうのは得意なのじゃろうか?」
「うむ、勿論だ。私は科学にめっぽう強い」
 任せておけというように、彼女は自分の胸をどんと叩いた。
 その顔は、たっぷりと自信が表れていたのだった。
「すまほででんわとめえるする事ができる。えすえぬ何某は修行中だがな。なあに刀を振るうように、この船も自在に操れることが出来るだろうよ」
「おうおう、それは頼もしいのう。残念じゃがわしは機械の事はよく分からぬでな」
 足手まといなってはいかぬと、エウトティアは花盛とは別の船へと移動した。
 たしかグリモア猟兵の説明によれば、音声による案内があるそうだ。
 それに従えば、花盛のようにいかずとも自分も動かせるかもしれない。
 一方の花盛も、コンソールパネルを扱うために船長室へと移動する。
 二人の猟兵の護衛作戦が始まろうとしていた。

 ――マスター、指令を――
 パネルから聞こえる音声に対して、花盛は腕組みをして叫ぶ。
「突、撃! 正眼の構えからの中段突きだ!」
 ――正眼の構えがデータ上にありません。突撃の指令のみを実行します――
 冷ややかに水をさして、船は移動を開始する。
 命令通りに敵がいる方向へと。
 多少の齟齬はあったが、とりあえず動かすことに成功したようであった。
 甲板へと出てみれば、先ほどよりは敵影に近づいているように見えた。
 そして花盛の船と併走するように、エウトティアが操る船も敵へと近づこうとしていた。
 右へ、左へと、フラフラと蛇行しながら。
「む? あのようにふらついて……ナトゥア殿は大丈夫なのか?」
 その大海に翻弄される笹舟のような動きを、彼女が心配したのも無理はない。
 船の動きはそれほどに、頼りなく見えたからだ。
 弱さを見せる船に対し、敵のミサイル群が襲いかかる。
「ナトゥア殿!」
 眼前で爆炎が起こった。
 思わず悲鳴をあげる花盛。
 その口は、次に安堵のため息を吐いた。
「おお……」
 エウトティアが操る船は無傷であった。
 あいも変わらずフラフラと、敵を挑発するように波間に漂っていた。
 船内でパネルを弄るエウトティアは、楽しげに笑っていた。
「うははーこれはなかなか楽しいのう」
 パネルとタッチすれば、船は自在に動く。
 最初は困惑していたエウトティアであったが、すぐに馴れていた。
 野生動物の騎乗にくらべれば、扱うのは容易かった。
 むしろ言うことを聞いてくれるだけ、大人しい気性といえよう。
 爆撃は、風の精霊が生み出した障壁で耐えた。
 自分から攻撃するつもりは毛頭無い。
 蛇行する航行は、敵を食らいつかせるための囮。
 島民達を逃がすための時間稼ぎだったのだ。
 放たれてくる砲撃をかわし、防ぐ船に感嘆の声をあげる花盛。
 だが驚いてばかりではいられない。
 突撃を命じた自分の船も速度を増し、敵陣へと突っ込もうとしていたからだ。
「良し!」

 舳先へと移動し、花盛が構える。
 足が地に吸いつき、不動の物となる。
 それは船首に備え付けられた、女神像のようにもみえた。
 彼女を目がけて弾頭が襲いかかってくる。
「小賢しい!」
 花盛はそれを唐竹割りで真っ向から斬り伏せた。
 ミサイルが二つに分かれ、爆炎を放って船の周囲を朱く染め上げる。
「からくりよ、不可侵の花盛の剣技、ご覧奉ろう。覚悟を決めてきやれ」
 啖呵を切る彼女へ、その鼻っ柱をへし折ろうと次々と徹甲弾が降り注ぐ。
 業火の雨。
 それを全て受けきり、悠然と立って彼女は不敵に笑う。
「どうした? 私はいまだ変わらずここに居るぞ! 所詮悪党の攻撃なぞ児戯に等しい!」
「……敵装甲、総火力デ破壊スルハ困難ト判断」
「足場ヲ沈メ海中ヘト没スルガ良策ト認識」
 敵機械兵が担ぎ上げるミサイルポッドの形状が変化する。
 それは花盛を狙わずに、水中で更に沈みこみながら、船底へと向かっていった。
 振動が彼女の足下に伝わり、甲板が傾く。
 魚雷。
 そう理解したときには遅く、船はすでに半分が水面に持って行かれようとしていた。
「くっ、卑怯な!」
 不動と化した花盛の身体は、あらゆる攻撃を耐えうる自信があった。
 敵はそれを迂回して、船を破壊する行動を取ったのだ。
 怒りのあまり、船のヘリを掴む花盛。
 みしりと音をたてて、船の一部が浮かびあがった。
 海面に浮かびながら、片手で破損した船を持ち上げる。
 憤怒のやり場を敵群にむけて、勢いよく放った。
 質量の塊は何機かの敵を巻き込んで、いくらかの溜飲を下げたようだった。
 立ち泳ぎする彼女の脚に、ぬるりと何かの感触が触れた。
 それはイルカであった。
 横をむけば、同じようにイルカにまたがったエウトティアの姿。
「残念、互いに流石に全てかわすのは無理じゃったのう」
 見れば同じように、沈みゆくエウトティアの船。
 だが、彼女たちの作戦が失敗に終わった訳では無い。
 海鳥が二人の上で鳴く。
 それを聞いてエウトティアは微笑んだ。
「どうやら島民たちは無事に避難できたようじゃぞ。さて花盛殿、ここから反撃といこうかのう」
 そう。
 島民たちが戦火に巻き込まれることは防げた。
 あとはいかに派手に暴れようとも、彼らが巻き込まれることはない。
 いわばこれからが本番、反撃の時なのであろう。
「ああ、反撃といこう」
 エウトティアの笑みに、花盛も笑顔で返すのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

エメラ・アーヴェスピア
…酷い事をするものね…
それに訓練の相手を一般人に設定するなんて、訓練の意味を分かっているのかしら?
そんな事も考えつかない相手なら、色々と仕掛けられそうね

痛っ…もう少しマシに転送を…!ああもう、言っている場合じゃ無いわね!
【操縦】は任せなさい、機械にも強いし(【メカニック】)この感じなら【ハッキング】もできるでしょう
多少マシになるように弄りつつ動かさせてもらうわ
後は相手の足止めに『我が砲火は未来の為に』、対艦砲で相手の船を狙って【砲撃】
それと相手の船にハッキングもいいわね
兎に角妨害、並行作業はお手の物よ
…この世界の影響で高い化学力の船がいつまで動くか判らないわ、手早く行くわよ

※アドリブ・絡み歓迎


ハヤト・ノーフィアライツ
SPD分野で。
アドリブ連携は歓迎。

おう、やってんなぁ。んじゃま後詰と行きますか。
宇宙バイクに【騎乗】し、低空での【空中戦】を開始。
自身の【戦闘知識】を駆使して追いすがる連中のルートを予測。
その進路を妨害するように【ブラストユニット】から煙幕弾に弾頭を変えたミサイルの雨を降らせる。

その上でおおまかにアタリをつけつつ、煙幕の中へ牽制とフェイントを兼ねて熱線銃を撃ち込む。

以降、指定UCと【早業、ジャンプ、空中浮遊、空中戦】も駆使して動き回り、敵陣営の撹乱に務める。

他の味方が同じタイミングで交戦している場合はそちらへも【援護射撃】を行う。

ま、アレだ、せいぜい派手にやって目を引くとするかね。



 投げ出されるように転送されたために、うまくバランスをとることが出来ずエメラ・アーヴェスピアは船の甲板に、したたかに尻餅を打ちつけてしまう。
「痛っ…もう少しマシに転送を…! ああもう、言っている場合じゃ無いわね!」
 悪態をつきながらもすぐに起き上がり、エメラは辺りを見回した。
 他の猟兵はすでに行動を起こしており、避難を優先させる者、敵の前に立ち塞がってそれを援護する者と様々だ。
「おう、やってんなぁ」
 飄々とした声にふりむけば、ハヤト・ノーフィアライツが敵陣を見据えていた。
「酷い事をするものね……」
 視線を戻してエメラは呟く。
 自分たち猟兵だから応戦出来てはいるものの、武器を扱ったことのない一般人にどうしようというのだろうか。
 敵の思考がよくわからない。
「訓練の相手を一般人に設定するなんて、訓練の意味を分かっているのかしら?」
「さぁねえ。機械の考えることはよくわからんよな」
 その軽口に、エメラはじろり、とハヤトを見つめた。
「それ、私にとって聞き捨てならない言葉なんだけど」
「そいつはすまねえなエメラ。なぁに、俺にとってもブーメランさ」
 エメラとハヤトは、訳あってサイボーグ手術を受けている。
 半分機械のような物だが、無論二人に非戦闘員をいたぶる趣味は無い。
 やれやれといった感じで、エメラはコンソールパネルを操作した。
 しばらく手を動かして頷く。これならやれそうだ。
「船の操縦は任せなさい。あなたも射撃は出来るでしょう」
「そいつはありがたいが船は嫌いでね。俺はコイツを使わせてもらうぜ」
 ハヤトは嫌々と被りをふってバイクへとまたがった。
 宇宙バイク・グランドファルコン。
 どこの誰が触ったかわからない場末の船より、よっぽどコイツのほうが信用できる。
 アクセルを吹かすと、まるでそこに足場があるかのようにバイクは空中を疾走した。
「んじゃま後詰と行きますか」
 返事を待たずに、ハヤトは敵陣へと向かっていく。
 エメラも別段気にした様子は無い。
 彼が敵を引きつけてくれるなら、それはそれでありがたい。
 彼女も浮遊型魔導蒸気砲を召喚し、船の周囲へと展開させた。
 備えは万全。
「……この世界の影響で高い科学力の船がいつまで動くか判らないわ、手早く行くわよ」
 パネルに手を触れ、敵影を確認する。
 二人の猟兵の迎撃が、今始まろうとしていた。

 雲霞の如くやってくる機械兵の群れ。
 あれが島民たちに追いつけば、グリモアベースで見せられた光景が再び繰り返されるのは難くない。
 そんな物を見せられたくないハヤトは、彼らにミサイルを撃ちこんだ。
 狙いは機械兵の進行方向。
 海面にぶち当たった弾頭は、破裂して激しい煙を四散させていく。
 まずは彼らの行動を阻害する。
「お次はコイツさ」
 ブラスターを取り出して、煙幕へと銃口をむける。
 ファルコン・アイにとってはこんな物、焼き肉屋の相席テーブルよりも遙かに視界が良好だ。
 熱戦が煙へと吸い込まれ、ポツポツと火花が起こる。
 もう少し近ければ火力は十分だったろうが、牽制としてはこれで十分だ。
 煙幕が晴れ、敵が姿を見せる。
 あちらもやる気のようだ。
 こちらへとむけられる殺気の数々。
 それを全身に感じ、ハヤトはアクセルを吹かした。
 右へ左へ、などと生っちょろいことはやらず、上下機動を駆使して文字通り、縦横無尽に回避する。
 クルクルと上空で回避しながら、バラバラと弾頭が海面へと落ちていく。
 それは煙を吹き出して、煙霞を生み出した。
 そしてその中へとハヤトは消えて行き、敵に狙いを定めさせない。
 背後に殺気を感じ、ハヤトはバイクを跳ね上げた。
 それはまるで虚空に壁があるように、出鱈目に軌道を変えて疾走していく。
 そのジグザグを縫うように、敵が放ったミサイルが突き抜けていった。
 そして、更なる殺気。
 今度は先ほどより強大な物。
 大きく旋回させ、ハヤトはその殺意を躱そうとした。
 鬼気が通り過ぎていき、彼を狙っていた機械兵が爆散していった。
 ヒュウと口笛を吹き、ハヤトは後方を振り返った。
「おいおいエメラ。まさか俺を狙ってたんじゃないだろうな」
 強大な殺気の正体。
 それは蒸気砲における一斉射撃であったのだ。

 パネルから数機、敵表示が消失する。
「やったわね」
 戦果に浮かれず、エメラは素早く船舶と砲塔群に与える、次なる行動を指し示す。
 船を操りながら敵を狙い撃つなど、彼女にとっては造作もない。
 ハヤトを標的にしたのではなく、彼がこんなものではやられないと知っているからだ。
 彼が射線を遮ってくれたおかげで、撃墜数が稼げた。
 そして彼が作ってくれた煙幕。
 この船に設置されていたレーダーは、その中に埋没する敵の位置をあぶり出してくれている。
「外す方が無理ってものね」
 これと同型の船があったのならハッキングも試みられたのだが、生憎とレーダーに感知されるのは人型機械ばかり。
 さすがにそれに対してハックするのは危険が伴いそうだった。
 だからこうやって距離を取り、エメラは砲撃戦を挑むのだった。
 近づかれる危険などなければ、群がる敵など狙い放題の的でしか無い。
 レーダーに熱源が感知された。
 船を狙って、ミサイルの集団が襲いかかってきたのだ。
 エメラにとってそれは、敵の突撃となんら変わらないものだ。
「大型、小型、重砲、狙撃砲、機関砲…さて、どんな砲で撃ち抜こうかしら?」
 薄ら笑いを浮かべて、彼女は静まり控える蒸気砲たちに下知をくだす。
 歓呼の声をあげて彼らは答えた。
 迎撃射撃。
 船へと到達するまえに、ミサイルの反応は消失していった。
 愚かにもこちらを狙おうとした無法者に対し、エメラは全砲塔の首を、ソイツに向けるよう促した。
 船長室より出でて、敵本体を確認する。
 奴だ。奴に間違いない。自分を狙った報いを受けてもらおうか。
 合図をするべく片手を上げる。
 諸君、私は砲撃が好きだ。
 指をパチンと鳴らす前に、敵が火花を上げて海の藻屑となった。
 遙か前方でハヤトが手をあげてこちらに知らせている。
 良い仕事しただろ? そんな顔だ。
 だがせっかくの獲物を取られたエメラの顔は、酷くしかめっ面をしていた。
 互いに離れてて良かった。せっかくの愛嬌が台無しである。
「まあ、良いわ」
 コホンと咳をして、エメラはいつも通りの顔を済ます。
 敵の数はまだまだ見える。
 それは獲物はまだ十二分に居るということだからだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ミレア・ソリティス
緊急性の任務を受諾しました。ミレア・ソリティス、出撃します

とはいえ、私は本質的には戦闘兵器ですので、こちらの方が向いていると判断し、
船団とは合流せず、【コード・テンペスト】を使用、空戦用サブユニットと合体し戦闘機形態へと変形し敵軍の妨害に加わります

戦場の敵兵器群に認識阻害のジャミングを実行、可能であればハッキングによる妨害と、情報収集での敵解析も並行して行います。
同時に、周囲へ独立射撃端末(いわゆるビットですね)を展開しつつ、端末からの閃光弾の目潰し、榴弾の爆風による吹き飛ばしも使用

敵の攻撃へはオーラ防御並びに残像、敵情報収集後の見切りで回避を試み、
挑発も使用しての囮及び時間稼ぎに徹します



 グリモア猟兵の求めに応じ、ゲートをくぐれば其所は青。
 真っ青な空と深い青に彩られたグリードオーシャンの世界。
 感覚が戻り、自由落下の状態にあることを認識し、ミレア・ソリティスは空を仰いだ。
「ミレア・ソリティス、出撃します」
 いずこより現れた飛行ユニットが、ミレアの両肩に装着される。
 落下速度は弱まって、そのまま上昇して彼女は飛行形態を落ち着かせた。
 所詮彼女は戦闘兵器。
 非戦闘員を護衛する任務には不向きである。
 だからそのまま敵陣へと向かい、妨害をおこなうことに決めた。
 味方が護衛する船団を抜ければ、そこに見えるは交戦地帯。
 そしてその先には、更に多くの敵影が確認された。
 ミレアの機体から、ビットが展開される。
 それは周囲に散らばり広がって、戦闘域における情報収集を開始するのだった。
「敵タイプ、人型機体。型式から判断するに銀河帝国製と類推される。肩に熱源反応有り、注意が必要」
 妨害を行なうにおいて、大切なのは相手の正しい認識だ。
 そして、己を捕らえられない行動にある。
「レーダー阻害粒子散布、同時にフレアー照射開始します」
 ミレアは己の行動域に配置したビットから、妨害のためのジャミングとフレアーを一斉に照射させた。
 海域が光で真っ白に染まる。
 エリアを重視したために、威力事態は弱い。
 だが混乱とイニシアチブを得るには、十分な威力であった。
 ロングレンジのブラスターライフルを構え、周囲を警戒する敵の一機に対して、狙撃を試みる。
 稲妻が空から海面へと落ち、敵を吹き飛ばした。
 そして敵に気づかれてしまうことになる。
 敵軍が担いでみせるは、多弾頭のミサイルランチャー。
 ミレアは飛行ユニットの限界まで加速し、回避行動を取った。
 空に踊る鋼の乙女を掴もうと、眼下から鉄の多指が煙を上げながらやってくる。
 速度を上げて引き離すが、逃げた先からもミサイルの群れは次々と海面から吹き出し、彼女をつけ狙う。
 ミレアのユニットから、またビットが射出された。
 彼女を偽装したホログラム。
 熱源と質量を擬態させた偽データに、相手は易々と食らいついた。
 爆発。閃光。
 巨大なフレアーが起こり、空に恒星を発生させてミレアの姿をかき消した。
 視界が収まれば、彼女の姿は何処にも見えず。
 敵騎兵の頭部が輝き、センサーを強化させる。
 そして見上げれば、空を悠然と飛行する、傷一つついていないミレアの姿があったのだ。
「敵の高性能センサー内蔵を確認。ジャミングを強化する必要が有りますね」
 相手の間合いに入る気は無い。
 センサーの有効距離はどれほどなのか。
 戦闘域にばらまいた先ほどのビットも合わせて、彼女は冷静に状況を判断する。
 単騎で攻めるほど愚か者でも無い。
 相手を知らぬほど無謀でも無い。
 じっくりと情報を集め、時間を稼ぐ。
 敵の手の内を全て晒し、その能力を見極めようと、ミレアは己を誇示するかのように、空を旋回するのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『ウォーマシン・タイプマリン』

POW   :    襲撃は速やかに
【急速接近からの超高温ヒートカトラス 】による素早い一撃を放つ。また、【水中から船・陸上へ強襲出来る推進機構起動】等で身軽になれば、更に加速する。
SPD   :    障害は燃やし沈めて
【機敏な動きで右腕に担いだマルチランチャー】を向けた対象に、【通常炸裂弾頭か高速誘導魚雷】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    命と宝は根こそぎに
自身の【頭部(メガリス探知用センサーユニット)】が輝く間、【敵位置を常に補足し】放つ【銛型高速徹甲弾】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 この島で行なうはずであった訓練。
 その中に侵入した異分子、猟兵の存在を機械兵は感知した。
 そしてそのことが隊長機へと伝わるのに、さほど時間はかからなかった。
「イレギュラーというものは実戦でも起こりうる物。皆さん、答えはシンプルなものでしてよ」
 紅一点、唯一の紅い機体。
 その彼女が優雅に笑みを浮かべた。
「むしろ喜ぶべきです。ずっと訓練をおこなってきた我々に、実戦という果実を与えてくれたのですから」
 帝国式暗号を交えて、通信を前線へと飛ばす。
「部隊に命じます。訓練を阻害した異分子を『敵』と認め迎撃殲滅致しなさい。これは訓練ではありません。繰り返します、これは訓練ではありません。速やかに敵を殲滅し、我々の勇姿を焼きつけてお上げなさい」
 彼女の目は、仲間が戦っているであろう海の先へとむけられていた。
 まだ見ぬ敵。
 その脅威が如何なるものか。彼女は非常に愉しみであったのだ。
 訓練では無い。これは実戦。
 通信を受けその言葉を反芻し、機械兵は咆哮を上げた。
「オオオオオ!」
 オイルが滾る。
 モーターがいつもより過負荷を起こし高速で回る。
 近接用のカトラスを備えてみれば、それはすでに熱を帯びていた。
 敵と戦える喜び。
 ウォーマシン。戦争兵器として造られた彼らにとって、それは自らを肯定すること。
 自分自身の存在意義を確立させるための、生存本能に等しかった。
 それは、生物が生命を保持するために、食を必要とすることと同じ。
 他の命を頂き、生物は生きる。
 ウォーマシンも他の命を頂き、生きるのだ。
 時には力及ばず、屠られることもあろう。
 だがそれは弱肉強食の自然の理に過ぎない。
 ウォーマシン。
 それは、戦争を人生とする機械兵である。
「帝国ノ為ニ! 銀河ノ為ニ!」
「スターゲイザー皇帝陛下ノ為ニ! 我ラニ勝利ヲ!」
 その本能に植えつけられた忠誠心。
 大人二人が肩車をしたぐらいの巨体の群れが統率を持って動き始める。
 士気高揚するウォーマシンの群れが、猟兵たちに襲いかかるのであった。

 ※場面は島へと近づく海上。一章で討たれた敵の残骸や船の破片が足場代わりになります。
テリブル・カトラリー
O.B.Cを解除、失速しつつ敵ウォーマシンへ機械刀とカトラスを叩きつけ合う。
私達の知る銀河帝国はもう無いと、言った所で意味は無いのだろう。

鍔迫り合いを解いて早業、携行浮遊砲台を足場に、スラスタで姿勢制御。
二回攻撃、即座に機械刀を相手に再度叩きつけ、属性攻撃。
どうせ、目の前の戦いをやめる理由にはならん。

斬り捨てた敵と共に海へ落ちながら『戦争機械・渡守』発動
水中戦装備に切り替わり、情報収集
位置情報・戦闘機動を見切り、制圧射撃
銛を撃ち、ブースターで躯体を吹き飛ばし、槍で貫く。
プログラムをねじ伏せるような、自我でもない限りな。



 先駆けを散らして、ようやく本隊のお出ましといった感じか。
 相手の武装に合わせて、テリブル・カトラリーも武器を取り出した。
 それは日本刀にも似た白兵用の武器であった。
 戦いの熱気を指し示すかのように、機械刀も真っ赤に灼熱し始めていく。
「私達の知る銀河帝国はもう無いと、言った所で意味は無いのだろう」
 マスク越しから出る機械音声は冷ややかだ。
 感情が無くただ淡々と、かつての仲間に向けられている。
 上空を飛んでいたテリブルの周囲に張った粒子シールドが薄れていく。
 海上の敵を見据え、彼女は身体を傾けた。
 それは突撃。
 落下の速度を利用して、眼下にいるウォーマシンへと、斬り結びに行くのであった。

 接近を確認したウォーマシンも、カトラスを構えて迎撃の態勢を取る。
 自由落下で勢いをつけるテリブルが、その胸元へと飛び込んだ。
 飛来する質量の塊を防ぐことは難しく、ウォーマシンの肩口にブレイドが深々と斬り込まれた。
 鉄と配線が焼き切れる嫌な臭いが立ちこめるが、鍔を競り合う二人は一向に動じない。
 互いに視線を交わし、刀剣に力をこめるのだ。
「オオオオ! コレシキノ事ォ!」
 足蹴りを繰り出し、膠着を解除しようとする敵の攻撃。
 それを大きく後ろに飛び退いて、テリブルは躱す。
 競り合いが解けた。
 が、いつのまにか後方へと静止していた浮遊砲台。
「どうせ、目の前の戦いをやめる理由にはならん」
 それを足がかりに再度テリブルは跳ぶ。
 むかってきたテリブルに敵が剣を振り下ろす。
 それを刀で受け止め彼女は勢いを受けて旋回させられる。
 ギュィンッ。
 その回旋を推進へと無理矢理に、独楽が起き上がりて伸びる刀の先が、マシンの胴を幾重にも薙いだ。
「私も、貴様もな」
 モーターが火花を散らし、エンジンに火がつく。
 爆発に巻き込まれる前に、テリブルの姿は水中へと没した。
 アーマーに包まれたテリブルの身体が、どんどんと沈んでいく。
 太陽の光を反射する水面は、すでに手の届かない距離だ。
 しかしテリブルに焦る様子は無い。
 その身に纏う甲冑が、水中に適応する鎧へと可変していく。
 背中と両肩より現れるスクリュー。そして二叉槍と銛撃銃。
 先ほど上空を飛行していたように、水中を自在に泳ぐのだ。
 コォーーーン……コォーーーン……。
 ソナーを発し、海上の敵影を探る。
 水深く没したテリブルの姿を、敵は把握出来ていないようだった。
 探らせはしない。
 頭上を見上げ、彼女は銃の引金を的確に連射した。
 水柱が次々と上がれば、ウォーマシンたちに突き刺さる巨大銛。
 狙撃。何処から。
 水中から。
 敵機械兵のレーダーが、一斉に海底へと向けられる。
 察知したのは、勢いよく浮上してくる質量の気配であった。
 大きな、大きな水柱が噴きあがる。
 勢いをつけて飛び上がったテリブルの手中にある槍に深々と突き刺さるはウォーマシン。
 背中から串刺しにされ、そのままに持ち上げられてもがき苦しんでいた。
「オ、ア、オオオオ……!」
 胸から飛び出る切っ先を掴むが、自重が邪魔をして引き抜くことが出来ない。
「プログラムをねじ伏せるような、自我でもない限りな……もう、休め」
 腕を伸ばして頭を掴む。
 プレス機が景気よく鉄板を曲げるような炸裂音。
 頭を失ったそれを、テリブルは他のウォーマシンへと放り投げる。
 バラバラに散らばった残骸が、完全に没する前に爆発し、水柱をあげた。
 飛沫がそこに残る兵たちに降りそそぐ。
 それは、死を悼む涙雨のかわりだったろうか。
「これが実戦だ。戦争だ。それ以上でもそれ以下でも無い」
 相も変わらず冷めたように聞こえる機械音声。
 テリブルは両手に武器を携えて、敵勢を見据えるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

エウトティア・ナトゥア
アドリブ・連携歓迎

うむ、皆首尾よく事が運んだようじゃな。
この調子で島へ乗り込めるとよいのう。

まずは足場をもう少し増やすとするかの。
先程と同様に海の動物たちを呼んで足場になって貰うのじゃ。
さて、このまま進みたい所じゃがわしの【野生の勘】がこのままでは危険だとささやくのう。
どうもこの距離でも捕捉されておるようじゃ。
足場の悪い海上で徹甲弾をかわすのは困難じゃろうな。
ここは精霊の力を借りて【不壊属性】の【流氷】を現出させて遮蔽物にしながら進むのじゃ。
遮蔽の陰から【追跡】する雷の矢を射掛けて(技能:属性攻撃)マルチランチャーの炸薬の誘爆を狙ってみるか。
至近距離からの爆発に巻き込まれれば無事では済むまい。


花澤・まゆ
…あまり海に似つかわしくない方々だけど
そういう島だもんね
遠慮はいらない、と納得したよ

【小夜啼鳥】を抜刀、UC発動
さあ、桜のショウタイムと参りましょうか!

【空中戦】を織り交ぜながら
足場から足場へ飛び移り敵の攻撃を回避していくよ
【第六感】フル回転で回避
駄目なら【武器受け】で魚雷を刀で撃ち落とす!
それだけのスピードを帯びて戦場をかき回すつもり

隙あれば衝撃波で敵の破壊を狙うけど
一番の目的は囮と撹乱
こんな綺麗な海に無粋なお客さまは不要
さあ、さっさとお帰りくださいな!

アドリブ、絡み歓迎です



 この海域に島民の姿はもう見えない。
 避難はひとまず無事に完了できたようだ。
「うむ、皆首尾よく事が運んだようじゃな。この調子で島へ乗り込めるとよいのう」
 エウトティア・ナトゥアが後方を振り返り、安堵の息をつく。
 前方を見つめる花澤・まゆは、それに反して険しかった。
 視線の先にはウォーマシンの群れ。
 彼らを倒さなければ先に行けそうにはない。
 自然溢れる島の遠景と、無骨な機械兵のミスマッチ。
 この平和な島に、武装した集団は必要無いだろう。
「さて花澤殿、猟兵の力、見せ所じゃぞ」
 イルカにまたがりてエウトティアが笛を吹けば。
 あちらこちらからイルカを初めとする水棲生物が顔を出す。
 可憐な少女たちの華やかな戦いを見物するかのように。
 その一頭へと佇んで、花澤は愛刀を抜いた。
「うん、遠慮はいらないね」
 潮騒に、波立ち起こる鼓笛の音。
 その中に、小鳥が囀るような、刀が鳴る音が加わった。
 ざぶりざぶりと、二人を案内するかのように回遊する魚たち。
 竜宮のきざはしを、無粋な機械音が掻き乱す。
「敵二体確認。コレヨリ排除スル」
「お断りじゃな」
「同感だね」
 エウトティアと花澤が身体を傾ければ、下のイルカは彼女をサポートするかのように、意に沿って動く。
 二人が別々の方向へと分かれて進むんだ。
 その割れた空間に、ランチャーが通り過ぎる。
 戦いの火蓋。
 轟音を背に、猟兵はウォーマシンの群れに戦いを挑むのであった。

「さあ、桜のショウタイムと参りましょうか!」
 潮に桜の香りが舞い落ちた。
 花澤を狙っていた敵のスコープから、彼女の姿が消失する。
 疾風迅雷の如く、自らを加速させる体捌き。
 敵はそれに追いつけないのだ。
 遅れた位置にミサイルが炸裂し、それを嘲笑うかのように花ごろもの袖がひらひらと揺れる。
 それから伸びる腕が振るわれた。
 剣戟は衝撃波を生み、衝撃波は水柱を生み、遅れて跳んできたミサイルランチャーの行動を阻害した。
 弾頭が衝突し、誘爆する。
 それが水柱を左右にわけ、小波を発生させ押し分ける。
 とん。
 ととん。
 寄せては返す白波の上を、乙女が跳ねる。
 高波から次々とアァチを造りて跳びはねるは、これまたイルカやシャチの波。
 通り過ぎていく疾風のように、それらを介して花澤が跳んで敵へと近づいていく。
 ウォーマシンの肩口にある多弾頭は、いまだ装填が終わってはいない。
 動きに見惚れたから?
 否。
 動きが速すぎるのだ。
 回頭し照準を合わせるその前に、小夜啼鳥の切っ先の影が、マシンの影と重なった。
 くるりと回転するように振り下ろせば、真っ二つに別れるは敵兵の身体。
 残骸を蹴って軌道を転換し、勢いを増しながら彼女は空中へと跳ねる。
「オノレ!」
 花澤へとむけられるミサイルの群れ。
 虚空へと高く飛んだ花澤へと四方八方よりやってくる。
 逃げ場無し、万事休すと思われた。
 しかし彼女は躊躇わず刀を振るう。
 生み出されるは衝撃波の刃。
 それがミサイルを寸断し、誘爆を起こし、次々と放ったランチャーが破壊されていく。
 待ち受けていたかのように、海面に魚影が浮かび上がる。
 イルカの背にふわりと着地し、彼女はようやくひと息ついた。

 彼女の活躍ぶりに、さしものエウトティアも舌を巻く。
「おお、中々にやるものじゃな!」
 喜び勇む彼女であったが、自分を狙う殺気に気づく。
 見ればこちらにも照準をむけるウォーマシンの群れ。
「ふむ、イルカの上ではアレを躱すは難しそうじゃな」
 エウトティアに、イルカたちを盾にするという選択肢は無い。
 あくまで協力。
 彼らを犠牲にするつもりはなかった。
 しかし、このような開けた場所では、奴等の火勢をさけられる術も無し。
 ならば。
「ここは精霊のお力を借りるとするかのう」
 取り出したるはノアの長杖。それを掲げて天に祈る。
 さけられる術がなければ造るまで。
 祝詞と共にエウトティアが杖を握れば、そこを中心として渦が巻く。
 渦は速度を増し、範囲を拡げて広がりつつ有った。
 それへと巻き込まれるまえに、敵はエウトティア目がけて徹甲弾を放った。
 彼女の背丈ほどもあるような巨大な銛型徹甲弾。
 それが弧をえがきて猟兵へと迫る。
 エウトティアは集中し、眼を瞑ったままだ。
 儚き少女は、串刺しになって大海に散ってしまうのであろうか。
 否。
 眼が開かれて、勢いよく海面に杖が叩きつけられた。
 渦が蟻地獄のように盛りさがり、白波が上がりて盛り上がる。
 鉄の殺意を水ごときで防げるのか?
 応。
 防げるのだ。
 白波はいつのまにか凍り固まり流氷となった。
 幾重にも円状に、波状の氷柱が絶対防壁となって敵の攻撃を防いだ。
 深く突き刺さった徹甲弾に凍気が奔り、暴威が破裂するまえにその巨体へと閉じ込めた。
 大きく肩で息をするエウトティア。
 当然だ。
 広範囲にわたる精霊の行使は、術士に類いな負担をかける。
 氷柱越しに、敵たちが新たに装填するのが見てとれた。
 そうはさせじ。
 仲間の危機を察知した花澤が援護にまわる。
「させないよ」
 気合い一閃。
 狙っていた彼らに向かって衝撃波をお見舞いする。
 その余波を受けて、氷柱がグラリとふらついた。
 それを見て、勝機の天啓が閃いた。
「おお、花澤殿! その剣撃を氷柱に叩きつけられるか!? 奴等にぶちかまそうぞ!」
「合点!」
 空を跳ねて花澤はエウトティアの近くへ。
 波状に生成された氷柱へ、渾身の一撃を放ったのであった。
 精霊によって生み出されたこの氷は、ちょっとやそっとでは破壊は出来ない。
 だから花澤の衝撃波を受けた氷柱は、そのまま横へと滑るように動き出す。
 それは大海に自らの大きさを誇示する流氷。
 巨大な塊が、ウォーマシンを巻き込みながら前進していった。
「すとらーいくっ!」
 花澤の景気良い声。
「それではターキーといこうかのう!」
 杖の構えを変じさせ、エウトティアはまた何事かを呟いた。
 杖の先から雷が生じ、流氷へとむけて発射される。
 それと同時に、氷柱を固定する精霊に、もういいじゃろと労いの声をかけたのだ。
 氷柱が破裂し、氷の雨が辺りに降り注ぐ。
 それは雷を帯び、ウォーマシンの機体に多大なる被害をもたらした。
 破砕した氷のかけらから、銛型徹甲弾が散らばっていく。
 そして電気ショートによる乱れによって、更に誘爆が引き起こされた。
 爆発。震動。高波。
 精霊を操っていたエウトティアもあわや波に攫われようかとする有様。
 空を跳んで花澤が急を救う。
 二人の猟兵は、敵軍に多大な被害を負わせたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エメラ・アーヴェスピア
さて、ここからが本番ね
早く安心させてあげたいし、手早く行くわよ

…あのウォーマシンね
同型機は相手した事があるし問題は無いわね…と言っても地味に相性は悪かったから、取れる手段は少なかったけれど
「ドレスベース」を対象に『我が紡ぐは戦装束』
水中用の高速推進装置や装甲、酸素ボンベや魚雷等の兵器を装着
…この水中装備も最早慣れた物ね
機動力を生かして相手の攻撃を回避しつつ遠距離より誘導魚雷を発射して一撃離脱を狙いましょう
猟兵が戦えるのは水上だけじゃないわよ?

※アドリブ・絡み歓迎


瞳ヶ丘・だたら
【連携アドリブ負傷等歓迎】

海上。戦車乗りに取ってはよい戦場とは言い難いが、仕方ない。最善を尽くすまでだ。
UCによって咄嗟の作成を行った新発明・蒸気式飛翔ユニットを急ぎ戦車に取り付ければ、早速実地試験飛行と行こう。海戦であればこそ空を征く。技術屋らしく、実にあたし好みの発想だ。

基本的な行動は、制空権を握っての〈主砲〉による[砲撃]の乱れ撃ち。[武器改造]によって雷の[属性攻撃]を纏わせたそれは、ウォーマシンたちによく通ることだろう。攻撃は最大の防御、と言ったところか。
それでもなお飛んでくる炸裂弾頭は、可能な限り[操縦]技術で避けつつ、命中を避けられないものは〈超重装甲〉によって凌ごうか。



「さて、ここからが本番ね」
 眼前に居並ぶ敵影の数々。
 島の人々の避難は終わったが、依頼はまだまだ終わってはいない。
 その姿にエメラ・アーヴェスピアは見覚えがあった。
 以前、同型機と戦った覚えがある。
 だから不覚は取らないと思うが、それでもあの数に油断は出来なさそうだ。
「敵は海で行動するのに適しているようだな。そうすれば我々が不利か」
 瞳ヶ丘・だたらは戦車から顔を覗かせ、エメラと同じように敵を見据えていた。
 彼女達は一つの船で同道してきた。
 敵に狙われてしまえば、避けようもなく沈没してしまうであろう。
 しかし彼女達に不安の色は無い。
「早く安心させてあげたいし、手早く行くわよ」
「ああ、最善を尽くそうか」
 彼らの盤上に乗る理由などない。
 所変われば自らのスタイルで戦うのが猟兵だ。
 ざぶんと海の中へと飛び込んだエメラ。
 その可憐なドレスが海水に濡れる事は無い。
 背負っていたバックパックが姿を変え、姿を覆った。
 スクリュー、推進ジェット、そして魚雷。
 小型の潜水艇へと変貌を遂げ、その操縦桿を握ってエメラは笑う。
「……この水中装備も最早慣れた物ね」
 最初からフルスロットルだ。
 護衛対象を気にせずに、思う存分ぶっ放せる。
 その状況に、エメラは楽しみを押さえられなかったのである。
 一方の瞳ヶ丘も準備を終える。
「これで良し」
 戦車にガジェットを取り付け颯爽と乗り込んだ。
 こんなこともあろうかと密かに開発を続けていた、新発明たたら式戦況打開装置・蒸気式飛翔ユニット試作型type IKUSA。
 略してIKUSAの真価を発揮する時が来たのである。
「では早速実地試験飛行と行こう」
 キャタピラの回転数が上がる度に、取り付けられたガジェットの反物質作用が大きくなる。
 陸上を走るが如く、戦車は空を目がけて動き出した。
 敵が海上を陣取るならば、無理矢理挟撃するまでだ。
 空と海。
 二方向からの攻撃が、敵陣を襲うのであった。

 上空からだと敵の動きが良く見える。
 しかしそれは、敵からもよく見えるということである。
 空へと離れた瞳ヶ丘へ、次々とミサイルが放たれた。
 爆発と衝撃が戦車を襲う。
 幾重に打込まれる中、瞳ヶ丘はレーダーから目を離さない。
 握る操縦桿にも動揺が見られない。
 彼女は、自分のタンクがこれしきのことでは破壊されないと信じているからだ。
 一向に介さず、冷静に海上に蠢く敵に向かって狙いを合わせる。
「……捕らえた」
 眼下の敵にむかって砲塔が火を吹いた。
 それは通常の戦車とは違い、連続砲撃を可能にする。
 雷鳴の響きが、彼らを襲う。
 電を帯びる特殊弾は、たとえ逸れても海上を伝わり、足下から伸びた電気がウォーマシンの行動を阻害する。
 動きの鈍くなったマシンが、瞳ヶ丘の砲撃に倒れていく。
 戦車へと放たれてくるミサイルが少なくなる。
 煙が晴れれば、最初に目にしたときとは違う、乱れた敵戦列。
 両者一斉の装填。
 しかし瞳ヶ丘の方が早い。
 こちらを狙うミサイルランチャーの砲塔。
 その黒孔目がけ構える者ごと、彼女の正確なる砲撃がウォーマシンの群れ勢を吹き飛ばした。
「攻撃は最大の防御、と言ったところか」
 ここで初めて瞳ヶ丘は機器を見た。
 損傷は軽微、飛行にも射撃にも支障なし。
 別の敵影にむかって砲塔が動き狙いを定める。
 快晴に光る海上に、嵐のごとき雷撃が降り注ぐのだ。
 一対複数。
 だがその複数は、徐々に数を減らしつつあった。

 海中越しに振動が伝わってくる。
 海上で敵影が爆発するのがわかる。
「負けていられないわね」
 エメラもスロットルを加速し、戦果を上げようと奮起する。
 没する影が見えた。撃破されたのではない。
 瞳ヶ丘の砲撃から逃れるために、水中へと潜ってきたウォーマシンたちだ。
「残念。私がいるのよね」
 海中での体勢が整う前に、そうはさせじと魚雷を発射する。
 振り向いた相手がどのような感情を抱いたのか。
 すでに残骸となった敵影から、それを読み取ることは出来ない。
 仲間がやられたことで、こちらに敵意を向けてきたマシンがいるのは理解出来た。
「猟兵が戦えるのは水上だけじゃないわよ?」
 頭上で轟く砲撃音をBGMに、エメラの舞踏が開始された。
 海中でもはっきりとわかる、灼熱色に光るヒートカトラス。
 あれに斬られればさしもの潜水艇でもただではすまなさそうだ。
 斬られれば、の話であるが。
「ほらほらどうしたの? 来ないならこちらからいくわよ」
 猛牛よろしく真っ赤に燃ゆる敵たちの網を、するりするりとエメラは抜ける。
 多人数の戦場は、味方の誤射による危険がついてまわる。
 このように肉薄すれば尚更だ。
 だがエメラは独り。
 周りに遠慮無くぶっ放せる。敵は見ての通り、よりどりみどりだ。
 魚雷が敵の網に食らいつき穴を開ける。
 そこを通ってエメラは距離をとる。
 だが敵もさるもの。彼女を逃さしと追いすがるマシンがいた。
 DNA螺旋のように絡みあう、水中レースが繰り広げられる。
「良い度胸ね、気に入ったわ!」
 熱烈なアピールを続ける彼氏に、エメラは喜んで応えた。
 魚雷による投げキッス。
 彼が持つ灼熱のブーケに劣らない、爆熱のハグ。
 感極まったのであろう。彼は海の底へと沈んでいった。
 他の機兵のお相手をすべく、エメラは和やかに笑いながらその手を奮うのだった。

 あらかたの敵は討たれた。
 船のレーダーにも敵影は確認されず。
 エメラと瞳ヶ丘は船へと戻り、島を目指す。
 あそこに、コンキスタドールの親玉がいるのだ。
 それまでしばしの休憩。
「ねえ。そのIKUSAって、私の猟犬や騎乗鎧にも装着できるのかしら?」
「……さあ、試したことはないな。まだ試作段階だからな」
 戦車を整備する手を止めて、背中越しに瞳ヶ丘がこたえる。
 後ろから、ウキウキとしたエメラの声が聞こえてくる。
「じゃあ道中に試してみましょうよ、空を飛べるって素敵なことじゃない?」
「そういうものなのか?」
「ええ、そういうものよ。その代わり、私の箒に跨らせてあげるわ」
 兵装は違えども、ガジェットを操る二人の猟兵。
 少しばかりの船旅を楽しみながら、少女は話に花を咲かせるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ハヤト・ノーフィアライツ
アドリブ連携歓迎っと。

おうおう、ゾロゾロとまぁ。馬鹿の一つ覚えみたいに同じ文句を繰り返してんな。

…まさかこんな場所まで流れ着いてるとはな。やれやれだぜ。

指定UCを使用。
【騎乗】しているマシンの速度と走破性、戦闘力を強化。
【戦闘知識】で相手の動きの予測を立てつつ、【水中戦、深海適応】と【空中戦、空中浮遊】を駆使し、
海底、水中と空中を行き来しながら連中を引っ掻き回そう。

別に水中でやれるのはお前らだけじゃないんだぜ。
近距離には【怪力、グラップル、ランスチャージ、鎧無視攻撃】、遠距離には【誘導弾、一斉発射、範囲攻撃】で攻撃しつつ立ち回る。

敵の攻撃は【戦闘知識】で予測し【早業】で回避を。



 猟兵達がそれぞれ戦う中、ハヤト・ノーフィアライツも戦場を駆ける。
 銀河帝国。聞いた名だ。
 仲間たちと力を合わせて立ち向かった相手だが、中々どうしてしつこいらしい。
「……まさかこんな場所まで流れ着いてるとはな。やれやれだぜ」
 ハットを被り直して、ハヤトはうんざりした声を上げた。
 海上に居並ぶウォーマシンはいずれも武装して気鋭をあげて向かってくるのだ。
「帝国の為ニ!」
 忠誠を掲げながらむかってくる帝国兵は、過去何回も見てきた光景だ。
「おうおう、ゾロゾロとまぁ。馬鹿の一つ覚えみたいに同じ文句を繰り返してんな」
 アクセルを吹かせて、ハヤトは駆ける。
 その彼を撃とうと、ミサイルの雨が襲いかかる。
 だが雨が滴るのがいい男。
 笑ってハヤトはその中をすすんで突っ切っていった。
「行くぜ、相棒!お前さんの本気を、奴らに見せてやろうぜ!」
 バイクが限界まで加速していく。
 それに振り落とされぬように、ハヤトは身を深くかがめていった。
 当たる直前、勢いよくバイクは海中ヘ。
 海面が盾となり、次々と水柱が上がっていった。
 その一つに紛れるように、再びバイクが跳ね上がって姿を現した。
「まず一機!」
 いつの間に装着したのか。
 前面へと付けられたインパルス・ブレードが猛牛の如くウォーマシンを貫いた。
 旋回し振り落とすと、火花があがって爆発が起こる。
 既にハヤトの身体は上空だ。
 爆風とバイクの推進力を生かして、宙に舞い上がったのだ。
 ハンドルを捻れば、両側面より銃身が顔を出し、居並ぶ敵にむかって一斉に火を吹いた。
 着地する間に、また数発の火花が散って爆発を起こす。
「オノレェ!」
 バイクに向かってランチャーが向けられた。
 怒りを放とうとするが、その背にハヤトの姿は無い。
「ナニィ!?」
 ウォーマシンが吃驚の声を荒げた。
 彼は何処へと?
 一瞬の判断の遅れ。
 だがそれは戦場において致命的な隙を生み出す。
 マシンの背より、ハヤトが海面から勢いよく飛び出した。
 一斉射撃の後、バイクより離れてダイブ。
 海底へと隠れ、敵の虚をついたのだ。
「別に水中でやれるのはお前らだけじゃないんだぜ」
 敵の砲身から異音が聞こえる。
 素早く相手の腕を掴み、捻って関節を極めて身体を逸らす。
 肩口から射出された弾頭の数々は、ハヤトでは無く味方に飛んで誘爆を起こした。
「あばよ」
 同士討ちは心苦しいに違いない。
 サイボーグ強化されたハヤトの腕が、顔を掴み360度回転させた。
 配線が首筋より露出し、眼孔の光を失ってマシンは倒れゆく。
 その骸を蹴って大きく跳躍すれば、彼の腰は定位置、ふたたび相棒グランドファルコンのもとへと落ち着いた。
 再びハンドルを捻れば、今度はロケットランチャーが敵陣へとかっ飛んでいった。
 赤い半円が海面に巻き起こる。
 それを隠れ蓑に、ハヤトはまた海中ヘとバイクを沈ませた。
 深く、より深くと。
 背後より没する音が聞こえた。
 振り返れば、彼を狙う魚雷の数々。
 簡単には振り払えなさそうであった。
 ある程度蹴散らして、敵をやり過ごすつもりであったが仕方が無い。
 海中を進んでくる敵の牙を見事なハンドル捌きで躱しながら、敵と相まみえるべく、ハヤトは海面へと浮上するのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
水中用装備頼みに海中へ
広域通信により敵ウォーマシン部隊に語り掛け

私達のルーツを鑑みれば、そちらの行動原理が正常で私が間違っているのでしょうね
ですが、その『正しさ』は私の奉ずる『正しさ』ではありません

人々の安寧護る騎士として、其方の庭でお相手しましょう

ソナーモードのセンサーでの●情報収集で上下左右全包囲の敵位置を把握
高速誘導魚雷(●誘導弾)で牽制
UC●ランスチャージ水中機動で突撃
僚機の行動を移動の余波で制限しつつカトラスを越えるランスで●串刺し

そろそろですね

先に使った船に●ハッキングによって時限式に指示した主砲の砲撃
敵を誘導しつつタイミングを●見切り急速潜航
砲撃に巻き込みつつ躱し、混乱に乗じ殲滅



 敵陣へと姿を現すトリテレイア・ゼロナイン。
 その白銀の装甲を見た敵勢の足が止まる。
 そして筒を捧げて敬礼をとった。
 訝しがるトリテレイアに敵隊列が声をかける。
「銀河帝国要人警護機体ト確認! 付近ニ非発砲対象ノ存在可能性有リ! エリートガード、目的ヲドウゾ!」
 その機械音に憎しみはない。
 彼らに自分を攻撃する意図はなかった。
 話しかけた事でトリテレイアも武器を下ろす。
 広域通信をつかってウォーマシンへと語りかけるのだった。
「命令、ではありません。ここから退いて貰うことは出来ませんか?」
「デキマセン! 我々ハ訓練中デアリマス!」
「任務放棄ノ権限ハ、我々ニ与エラレテオリマセン!」
 ある意味、予想通りの答え。
 彼らはそういう存在なのだ。
 戦うべきために生まれ、相手を殺すために造られた。
 わかっていたことではあるが、刃を交えるしかないのであろうか。
 そして今の自分はもう、帝国所属では既に無い。
「私達のルーツを鑑みれば、そちらの行動原理が正常で私が間違っているのでしょうね」
 改めて槍を構えるトリテレイア。
 その声に、戦に昂揚する彼らのような感情はこもっていない。
 かつての仲間に武器を差し向ける慚愧の念だ。
「ですが……その『正しさ』は私の奉ずる『正しさ』ではありません。人々の安寧護る騎士として、其方の庭でお相手しましょう」
 槍先を向け、見渡す全敵に届くように通信範囲をひろげてトリテレイアは語った。
「目的は、あなた方と戦う事。実戦のお相手をして差し上げましょう」
「光栄デアリマス!」
 捧げた筒から放たれる空砲。それは戦いを知らせる合図。
 トリテレイアも相手から離れた位置に魚雷を爆発させ、海水を巻き上げた。
 それは涙雨。
 これから散っていく者たちに対しての、せめてもの手向けであった。

 示し合わせたかのように、両者は舞台を移して海中ヘと。
 凄まじい水流を起こして、トリテレイアが突進する。
 カトラスを構え迎えうつウォーマシン。
 その剣が届く前に、騎士の槍が相手を刺し貫いた。
 上下左右、海中のあらゆる方向から、灼熱の刃が斬りかかる。
 右。右。右下。左上。左背面。右胴。右脚。
 そして頭上。
 それらをいなし、防ぎ、体を逸らせた敵機の身体を抉る。
 トリテレイアの豪腕が奮う度、機械兵の骸が増えていく。
 捌きながら海面へと上昇していく彼を、敵の群れは追いかけていく。
 海上へと躍り出たトリテレイア。
 槍を前面に構えて彼らに賛辞を送る。
「剣技見事、しかしこれは実戦。穿つは武器だけではないのです」
 トリテレイアを追って浮上するマシンたち。
 その死角から、砲撃が撃ちこまれた。
 主砲から白煙をのぞかせる船舶。
 それは、トリテレイアが護衛のためにハッキングしていた武装船であった。
 彼は奇襲のために、船を潜伏させていたのであった。
 あえて姿を晒し注目を浴びたのも、それを悟られぬため。
 彼らが見せた行動は意外であったが、作戦は成功した。
「これも騎士道に照らし合わせれば、恥ずべき行為なのでしょうか」
 自嘲しながら爆風から現れるトリテレイア。
 船は自動航行によって砲撃を続けてくれている。
 あらかじめ仕込んでいたプログラムのタイミングを反芻しながら、彼の機体が直角に曲がった。
 その巨体の影から突っ込んでくる砲撃。
 それをまともに受けて敵機数組が吹き飛んだ。
 中破したそれをのがさじと、トリテレイアの槍が介錯を務める。
 やがて砲撃が止んだ。
 静寂が辺りを包む。
 海上に残っているはトリテレイアのみ。
 彼は黙ってその槍を胸の上で構え、捧げるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

花盛・乙女
矛のやり場ないからくりの戦士か。
か弱き民に手を上げたのは感心せんが、そうでないのなら斬り合うのみ。
羅刹女、花盛乙女。いざ尋常に。

足場が不安定というのはなんとも心許ないところだな。
「ジャンプ」「怪力」を駆使して、剣を振るえるようにしよう。
構えるは二刀。【黒椿】と【乙女】。
燃える槍を「武器受け」で捌き、斬る。

戦場で果てる為生まれ、戦に出ること適わず。
修練に身を注ぎ衷心を捧げるべき銀河皇帝も既に無く。
貴様らの無念を思えば私もやるかたない。

だからこそ斬る。圧倒的に、攻撃的に。
戦場で誉れある死を迎えられなかった貴様らの極上の敵となろう。
遠慮するな。鬼退治など、男が最もやる気がでる仕事だろうからな!



「からくりといえども戦士。不足無し」
 相手が剣を構えたのを見て、花盛・乙女も得物を抜く。
 かたや一刀こちらは二刀。
 黒椿と乙女の二振りを手に、花盛は名乗りを上げる。
「羅刹女、花盛乙女。いざ尋常に」
 船の甲板から跳躍し、手頃な敵へと上段にて振り下ろす。
 相手はカトラスで受け止めようとした。
 だが恐るべきは羅刹の膂力。
 受け止めたマシンの両腕がひしゃげ、カトラスごと真下に叩き潰して切り裂いた。
 自傷する形で灼熱の剣が胴にひっかかり悶えるウォーマシン。
 それを抜こうとしても、己の腕は役に立たず狼狽えるのみ。
 花盛はそんな敵にトドメを刺し、新たなる標的に向かって跳躍した。
 八艘飛びもかくやと言わんばかりの跳躍は、斬撃に威を増して相手へと襲いかかる。
 海中に沈む前に、今し方攻撃した相手の体を蹴って、羅刹女は海に舞う。
「これは戦。敵はここにいる。遠慮無くかかってくるがいい」
 そう、これは戦。訓練にあらず。
 敵を斬り伏せていく彼女であったが、彼らの気持ちとはわかり合えるような気がしていた。
 戦働きを為すために武を磨けども、それを発揮させる場所は無し。
 忠を声高に叫んでしめしてみても、刀を捧げる君は無し。
 だがそれでも、本分は曲げられない。
 それが生き様というものだ。
「か弱き民に手を上げたのは感心せん。が、貴様らの無念を思えば私もやるかたない」
 仲間のように、良く回る舌のすべなど自分には持ち合わせてはいない。
 だからこそ、斬る。
 だからこそ、戦う。
「皇帝陛下ノ為ニ!」
 忠義見事。
 猛る灼熱の刃は、相手の心を代弁しているかのようであった。
 それを受け止め、いなし、花盛は全霊を込めてウォーマシンを叩き伏せた。
「どうした貴様等、遠慮するな。敵はここにいるぞ!」
 自分に出来ることは、敵として立ち塞がること。
 戦場における名誉ある死を、相手に賜るこそ。
 それが手向けだと信じ、花盛は刀を振るう。
「帝国ノ為ニ!」
 迫り来る三体の刃。
 左右、上方からより迫り来る。
 対する花盛の刃は二つ。
 ならばどう出るか。
「応!」
 背を向けることなど武人にむける礼ならず。
 花盛は臆さず進んだ。
 前へ。前へと。
 素早く上方へと跳んで、まず一機を突き仕留める。
 刀を引くと同時に相手へとの迫り、駆け登る。
 骸を蹴り下ろし跳躍すれば、眼下に振り払われる二つの横薙ぎ。
 両腕を振り上げながら、彼女は落下する。
 攻めを躱されたウォーマシンの頭上に、刀を振り下ろすために。
「せいやーーーっ!」
 両者同時に、唐竹割りで真っ二つに引き裂いて、その亡骸を足場に花盛は息巻いた。
 ウォーマシン勢に退く気は見えない。
 彼女を目がけて武器を構えて襲いかかってくる。
 その光景に花盛は不敵に笑い、相手をするために立ち向かう。
「それでこそ、誉れ!」
 次々と相手を切り伏せていく。
 しかしその刃に恨みは無し。
 ただただ、武士の情けがあった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『魔神機型メガリス『アマルテア』』

POW   :    メタルブロブアウト
肉体の一部もしくは全部を【攻撃を拡散させて受け流す鉛色の液状金属体】に変異させ、攻撃を拡散させて受け流す鉛色の液状金属体の持つ特性と、狭い隙間に入り込む能力を得る。
SPD   :    アポロトス・コード
【過去に時間跳躍し戦闘を仕切り直すことで 】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    ヴァリアブル・アームズ
【状況に応じて最適な形状に可変する内蔵火器】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【戦術行動パターンと戦闘「技能」】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は七那原・エクルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 Worm Advance Soldier Project.
 WASP(ワスプ)と呼ばれるこの計画は、銀河帝国が敵地後方への攪乱のために立案したものである。
 その内容は、機械炉を積んだ船を敵地へと転送させる。
 機械炉は周囲の環境を把握し、それに適した兵士たちを増殖させる。
 一定の数まで膨れ上がれば、帝国からの指令信号によって周囲の攻撃が可能になる。
 船は基地局の役目を果たし、任務を果たすまで兵士たちを増殖・進化させていく。
 この計画の優れている処は、船団を送らなくても良い点であった。
 一基の船を偽装さえ出来れば、時限制のトラップとして役目を果たし、戦況を優位に傾けさせることが出来るのである。
 『アマルテア』船もそのために準備されていたが、計画に変更が生じた。
 先の戦役、銀河帝国攻略戦において、ミディア・スターゲイザーを追撃する軍勢に編成されたのである。
 だが結果は、ミディアのワープドライブに巻き込まれ、次元の彼方へと飛ばされてしまう。
 船が漂着した先は、青々とした空と海。
 地図上に記録されてない全くの異世界、グリードオーシャンにへと飛ばされてしまったのであった。
 信号を送れども、応答しない母国。
 この地に適応したアマルテアが出来ることは、いずれ来たるべき日のために、訓練を続けることだけであった。
 いつか命令がくるその時の日まで。
 だが彼女は知らない。
 銀河帝国は敗れてしまったことを。
 適応する過程でメガリスを取り込んでしまい、自分が変異してしまったことを。

 青い海。白い砂浜。
 人間の感覚では「綺麗」と呼ぶのであろうが、アマルテアは何の感慨も見いだせない。
 海上に展開した部隊は、殲滅されてしまったようだ。
 だが、それは嘆くに当たらない。
 WASPの特筆すべき点は、船と『女王蜂』がいればまた部隊を造り上げられる点である。
 彼女は実のところ、この難局が嬉しかった。
 『敵』の存在を。
 困難を解決し、再び部隊を編成するという『使命』を与えられたことに。
 海岸へと降り立ち、やってくる猟兵達をアマルテアは笑顔で迎えた。
「ようこそ皆様。存分にお力を振るわれたことと存じます」
 ですが、と彼女は宙に浮かびあがり、一礼した。
「わたくしはあなた方に敗れるつもりはありません。全力で刃向かわせていただきます。皆様、実戦につきあっていただき感謝致します」
 相手は複数。自分は一機。
 おそらくただではすまないであろう。
 だが強敵の器量をインプットし、それを機械炉へとデコードすれば、遙かに強力な機械兵たちが生み上がるに違いない。
 そして銀河帝国は、更なる躍進を遂げるのだ。
 『女王蜂』アマルテアは『敵』を撃ち破りて『使命』を果たす。
「さあ、いきますわよ。皆様!」
 美しい戦いを彩る彼らに、紅き機体が強襲する。

 コンキスタドール、魔神機型メガリス『アマルテア』が猟兵達に襲いかかってきた。

※場面は海岸沿い、砂浜にての戦いです
※参加者全員まとめての描写になります
※ボス撃破後、軽いエピローグを挿入します
※完全アドリブでよければ◎を 描写が必要なければ×を
※(×の方は依頼後すぐに帰還した扱いになります)
※○~~~~~と記載あれば適宜アドリブを入れて描写致します
※間が空いて大変申し訳ありませんが、プレイングは9月18日(金)8:30~より送信してくださるようお願いします
エウトティア・ナトゥア
◎ アドリブ・連携歓迎
なるほど、銀河帝国の尖兵じゃったか。
亡き国に尽くす姿は人形とはいえ哀れじゃのう。
じゃが、役目でも非道をはたらいてもよいという道理はないな。
もはや彼奴は不幸を振りまく事しかできまい、これも何かの縁じゃわしらの手で終わらせてやろう。

さて、敵は学習を続けて対応してくるのじゃな。
となれば、パターンを掴ませるのは上手くないのう。
ここは数多の精霊に任せて、完全自立行動で攻め立ててみるか。
約400柱の精霊達が各々の判断で動くのじゃ、他の猟兵へ対処しながらの生半な解析ではパターン化できまい。
マニトゥ、お主も皆を手伝うのじゃ、わしも弓を射掛けて負荷をかけるかの。


ミレア・ソリティス
生憎ですが、貴方達の歩みはここで終わりです。

指定UCで「簡易生産型ミレア」部隊を展開し《集団戦術》で指揮
味方の攻撃に合わせブラスターによる《一斉発射》《制圧射撃》での《援護射撃》を行い、また簡易型にかばわせ代わりに被弾することで敵UC命中による味方への能力解析を妨害します

敵が私自身を標的にするならば、
構わず私自身を囮として味方が決定打を与えるチャンスを作ります

似てはいますが、「軍隊/群体」たる私と「女王蜂」たる貴女では違います
女王蜂たる貴女を失えば群れは終わる
しかし自己複製・データ共有があるが故に、この「私」の終わりは「ミレア」の終わりではない

ただ、それだけの違いです
※アドリブ歓迎です◎


テリブル・カトラリー
◎指揮官機。奴を潰せば一先ず落着か。

機関銃での制圧射撃を行い、出方を窺う。
敵機が液状金属と化し、弾丸を受け流したのを確認後、携行浮遊砲台で砲撃。敵対象の眼前を吹き飛ばし時間稼ぎ。

武装切替、液体には液体を、流動黒剣を義手黒剣の地獄の炎と繋ぎ、属性攻撃。灼熱の黒剣を振るい液体金属の身体を熱す。

破壊工作。砲撃時、武装切替と同時に発動した『雷々爆弾』。
砲撃痕に召喚していたそれを怪力で蹴飛ばし起爆、範囲攻撃。

電撃を液体金属体に流し、ユーベルコードを封じ液体化を解除。
武器改造、流動黒剣を広げて、敵を液体で包み、拘束と生命力吸収。

ラストデザートを引き抜いて、クイックドロウ。


花澤・まゆ
◎ エピローグはお任せ、アドリブ歓迎

…正直ね
帰る場所も失って帝国が滅亡したことも知らないで
戦う彼らは可哀想だなって思っていたんだ
でも、貴女は違う
貴女は戦うことだけを望んでいる
それならこちらも本気で立ち向かわなくっちゃ

【小夜啼鳥】抜刀、UC起動
さあさあ、桜のショウタイム!

他の方との連携を重視、撹乱を主に担当するよ
命を削るスピードで周囲を飛び回って(【空中戦】使用)
時折距離を取って衝撃波を
術を使う人には術を行使する時間がとれるように
あたしが時間稼ぎをしてみせる

一人だからって手加減はしない
全力で立ち向かわなくっちゃいけない相手だから
この砂浜に、貴女の色は不似合いだよ
この一刀で、傷をつけてあげる!


ハヤト・ノーフィアライツ

アドリブ連携歓迎っと。
真の姿を解放。もとい変身。

指定UCも使いつつ戦闘開始だ。
時間跳躍を恐れない【勇気】と、【戦闘知識】を駆使して立ち回る。
UCと鍛えられた【戦闘知識】によって、常に今の十手二十手先まで予測を立てながら、
【早業、空中戦】で攻撃をかわしつつ【カウンター、2回攻撃、鎧無視攻撃、怪力、グラップル】等を駆使して攻撃を加える。

先読みは戦闘の基礎だ。次の手、その次の手、もっと先の手まで考えてあるのは当然だろう?
一手止められて手詰まりになるようなアタマはしてないし、一手止められた時の対策もしてあるさ。

場合によっちゃあ止められる前提の手を打つ事だってある。
駆け引きってのはそういうモンだろ?


瞳ヶ丘・だたら
○◎
挨拶がわりに戦車で突撃しながら[砲撃]を何発かくれてやろう。……が、どれも避けられる。
どうも何らかの能力で此方の攻撃を予期されているようだな。ならば打つ手は一つ。
避けきれぬほどの範囲波状攻撃での[蹂躙]だ。

「悪いが罷り通るぞ。こちらも自信作でな」

UCを発動し、〈戦車〉を蒸機巨人の姿へ変えて攻撃を仕掛けよう。一撃一撃が大きく重く、知っていても回避は容易でなく。身動ぎ、殴り、踏み付けるたびに各所から噴出する蒸気熱もまたそれ自体が攻撃。
何度繰り返して避け切れるか。そちらとこちらでどちらが上か。要するに純粋な性能比べ。銀河帝国の超技術にあたしの[メカニック]がどこまで通じるか、試してみるとしよう。


エメラ・アーヴェスピア
後の事を考える…未だ勝てると思っているのかしらね
その目論見、一切を叩き潰すとしましょう

再び「ドレスベース」を対象に『我が紡ぐは戦装束』
氷冷型魔導蒸気機関砲を装備
今回はホバー移動機能を使って水上を移動しつつ機関砲を撃ち込んで相手を凍らせ、液状金属体の利点を崩すとしましょう
海を凍らせて簡易的な足場を造り出し、同僚さん達の援護をするのもアリね
それと…念の為ジャミング装置も装備、データの送信も邪魔しましょうか
訓練が主目的だったのだから、そういう情報を集めていたのでしょう?
さぁ、そろそろ終わりにしましょう?

※アドリブ・絡み歓迎



トリテレイア・ゼロナイン


最終目的は世界跳躍可能なメガリス発見による原隊復帰でしょうか?
帝国が滅んでも、作戦行動を止めるつもりは無いのでしょう

帝国への忠か、御伽の騎士への憧憬か
私達は己に残され刻まれた『それ』に従い駆けるのみ
…勝負!

液状金属…斬撃や銃弾は不利ですね
攻撃を●盾受け、敵の運動性、機動性をセンサーでの●情報収集で調査
●見切った敵の攻撃に合わせて●怪力●シールドバッシュ
受け流しても面での殴打、完全に防げはしません

生体への使用は躊躇われど、同族ならば遠慮は無用!

吹き飛ばした相手へUC●乱れ撃ち●スナイパー射撃
超高温で水分蒸発させ柔軟性含め機能低下
接近し剣を一閃

島民を脅かした罪、敗北で償う時です

…その奮戦に敬意を


花盛・乙女

機械兵の将か。礼儀を尽くし戦う相手ならば私も礼を尽くそう。
羅刹女、花盛乙女。いざ尋常に。

礼を一つ挟み【黒椿】と【乙女】を構える。
銀河帝国の将器を持つ者と刃を交えるのは久方ぶりだ。
そうさな、白騎士以来になるか。
貴様にも同等の業前を期待させてもらうぞ!

液体を斬るというのは私とは今ひとつ相性が悪いかもしれないな。
斬れど抜け、さながら柳の枝を切るような感覚だ。
なれば受け流されぬ速度を当てれば良い。
瞬きを越える刹那の一閃。我が『雨燕』、捌いてみろ!

全く面白い。エンパイアの里にあっては貴様のような敵とは立ち会えまい。
猟兵の身たればこそ強者と戦える。
不謹慎だが、楽しい。貴様もそう思わないか、アマルテア。



 空を駆けるアマルテア。
 その影にむかって砲撃が放たれる。
 それは瞳ヶ丘・だたらが操る戦車からの砲撃。
 素早く砂浜へと上陸した彼女は、敵影へと突撃しながら、重い砲身から煙をはなった。
 海上にて多くのウォーマシンを破った渾身の射撃。
 だが。
「躱されたか……」
 忌々しく口を歪める瞳ヶ丘。
 威力、速度、いずれも申し分無し。
 しかし放たれた砲弾は、ことごとく避けられてしまった。
「さすがは敵の将といったところか」
 無論、楽勝に事が運ぶとは瞳ヶ丘は思ってはいない。
 それは他の猟兵も同じこと。
 戦車を足がかりに、二人の猟兵が飛んだ。
 アマルテアは見た。
 刃を構えむかってくる、二人の女剣士を。
 花澤・まゆと花盛・乙女は互いに得物を抜いて、敵首魁へと向かっていったのだった。
「アマルテアとやら! 我が名は花盛乙女、羅刹の生まれなり!」
 まず礼を取り、続いて二刀を取り出す花盛・乙女。
 彼女もまた、笑っていた。
 アマルテアと同じように、だ。
 実の所、銀河帝国の将と戦うのはこれが初めてでは無い。
 あれはたしか……そう、白騎士、ディアブロと名乗っていたか。
 まだ経験若く初陣であった彼女は、あの時不覚を取ってしまっていた。
 だが今は違う。
 あの時より更に研鑽を積み、剣の道にうちこんできた。
 それに、心強い仲間もここにいる。
 弱き過去の自分に、アマルテアが重なった。
「いざ尋常に!」
 その姿へと、花盛は己の技量を披露する。
 一方の花澤は、その愛らしい顔立ちを険しく変えていた。
「……正直ね、帰る場所も失って帝国が滅亡したことも知らないで、戦う彼らは可哀想だなって思っていたんだ」
 誰に聞かせるのでもなく、彼女は呟く。
 誰にだって故郷はある。もちろん、自分にも。
 それが何処かはわからなくても、帰るすべを知らなくても、帰れるものなら帰りたい。
 誰だって、そう思うはずなのだ。
 望郷。
 それは、人らしい心。
 でも、と花澤は口をつぐんだ。
 目を見据える先は、アマルテア。
 彼女の顔立ちからは、それを窺うことは出来ない。
 もちろん、本心はどうなのかは分かるはずがない。
 しかし、指揮官である彼女がやるべきことは、訓練ではなく、帰る手段を探すことではなかったのであろうか?
「ここで貴女を逃せば、また島民たちが犠牲になる。それは許してはおけない。貴女は戦うことだけを望んでいる、だから……」
 全力で押しとどめる。
 こうなった以上、交渉の余地はなさそうだ。
 刀を握る手に力をこめて、花澤もまた剣戟を奮った。
 達人二人の斬撃。
 いかな強敵も避けるのは不可能に見えた。
 襲い来る裂帛の軌跡。
 それアマルテアは、涼やかな顔で見つめていた。
「遅いですわ」
 蠅を振り払うようにように腕を振るうと、その軌跡に吸い込まれるように花澤の弧撃が重なった。
 方向を狂わせられ、受け流されてしまう。
 軽やかな動き。
 一切の無駄、焦りが無い。
 まるで攻撃があらかじめ分かっていたかのように。
 だが迫り来る脅威はこれだけではない。
 花盛の二刀連撃。
 体を捌いて揺らいだアマルテアは、これをどうやって回避する?
「なっ!?」
 驚愕する花盛の声。
 彼女が見たのは、両断されたコンキスタドールの姿。
 否。
 斬撃によって別たれたのではない。
 アマルテアは自ら、分離したのであった。
 その証拠に見よ。
 寸断された箇所にキラキラと光る、液状になった金属の光沢を。
 胴部と腰から液体金属が鞭のように伸びしなり、空振りに終わった大小の刀に絡みついた。
 それを支点に、半身二つは振り子のように回転し、花盛の頭部と背中へと体当たりで応戦したのであった。
 一閃。そして反撃。
 両名は地へと落とされ、空に浮かぶは合わさり元通りとなった、アマルテアの姿。
「このわたくしに白兵を挑むなどとは、とんだ猪武者でいらっしゃいますわね」
 両腕を、眼前にむかって突き出した。
 その手はたちまち、銃器へと変貌する。
 今しがた攻撃してきた愚か者に対しての返礼だ。
「お受け取りなさい!」
 近接しかすべが無い者にとって、この拡散レーザーは脅威。
 腕回りが光り砂浜へと放たれようとした時、舌打ちして中断しアマルテアは旋回した。

 空を泳ぐ敵影の間を縫って通り過ぎる、銃弾の雨。
 テリブル・カトラリーが担ぐ機関銃の、援護射撃であった。
 表情ひとつかえず、強力無比な銃撃を浴びせ続ける。
 その執拗な攻撃に、さしもの奴も、避けることはかなわず追い込まれていく。
 アマルテアの形状が変化する。
 落下傘のように変化し、液化した体表で弾丸を受け止めて、威力を受け流す。
「液状金属体……配下共とは造りが違うようだな」
 先ほど仲間の攻撃を躱したこと、そして銃弾を受けてなお浮遊するあの機体。
 テリブルは冷静に状況を判断する。
 銀河帝国で配備されているという噂のあった機体。
 装甲で受け止めるのではなく、液状にて攻撃を無効化する。
 実際にこの目で見るのは初めてであったが、なかなかに手強そうだ。
「だが、奴を潰せば一先ず落着か」
 視線を上空から海岸線へと戻す。
 花澤と花盛の両名は既に体勢を立て直せている。
 追い打ちの危険性は無くなったようだ。
「仕切り直しだな」
 機関銃を片手で動かしながら、テリブルは無線を飛ばす。
 こちらの銃撃へと注意を惹きつけ、死角に移動させていた浮遊砲台へと通信を。
 銃撃とは別の爆風が、空飛ぶ落下傘を紅く彩った。
「小賢しい真似をしますわね」
 煙がはれれば、人型に戻ったアマルテアの姿。
 その紅い機体に、さしたる損傷は見受けられなかった。
「生憎ですが、貴方達の歩みはここで終わりです」
 彼女と同じように、空へ浮遊するミレア・ソリティス。
 その周囲。
 いや、空全体を同じ姿をした軍勢がいつの間にか展開していたのであった。
「あら、面白い。貴女も部隊を従わせる『女王蜂』でして?」
 質問に、ミレアはブラスターライフルを構えて答えとした。
 その動きに合わせて、周囲のミレアも同じ動きをなぞる。
「いいえ。似てはいますが、『軍隊/群体』たる私と『女王蜂』たる貴女では違います。私はミレア、それだけです。私が……いえ、私“達”がお相手します」
 全方位、360度からの一斉射撃。
 アマルテアが初めて防御態勢を取る。
 熱線が機体を染め上げていった。
 赤円がどんどんと膨らんでいく。
 ブラスター銃による熱量のせいか?
 否。
 アマルテアの腰回りから多数の突起物が出現し、そこからエネルギーを放出していた。
 それが、サークルを生み出し、全方位攻撃を防ぐ、ミサイルプロテクションを形成していたのである。
 球体のなかで、悪魔が微笑む。
「数は大勢……しかし、気をつけるべきは一射のみですわね」
 サークルに叩きつけてくる衝撃から、アマルテアはミレアたちの射撃精度の違いを判断した。
 そしてそれに対抗するために、反撃の行動に出る。
「熱量増大を感知」
 ミレアが、増大するエネルギーに瞬時に反応する。
 こちらが放つブラスターよりも大きな熱量。
 それはつまり、こちらの攻撃が無効化されていることを意味する。
 そしてそれを発する赤円は、更に膨らみつつあった。
「危険、と判断します」
 軍勢の多数を自分の前へと移動させ、ファランクスを形成する。
 その判断は正しかった。
 アマルテアが全方位へと、熱エネルギーを解き放ったのだったから。
 炎上しながら、軍勢が落下していく。
 だがミレアは同胞へと目をくれない。
 群体である自分は、多数が落ちようとも支障は無い。
 任務は、敵を討つことにある。
 ミレアの照準は、すぐに迫るアマルテアにへと向けられていた。
「女王蜂たる貴女を失えば群れは終わる。任務を、遂行します」
「貴女にそれが出来まして?」
 錐揉み旋回でブラスターを回避し、敵が肉薄してくる。
 それから距離を離そうとミレアは加速し、頷いた。
「はい。私“達”がお相手します」
 アマルテアとミレアに陰がさす。
 背を振り返れば、拳を振り上げこちらを狙う鉄の巨人。
 その巨躯の中で、機械を操る瞳ヶ丘が叫ぶ。
「まだまだ、あたしたちはこれからだぞ!」
 砲撃は避けられた。ならば別の手で攻めるまで。
 敵の素早さに対抗する、圧倒的な力。
 範囲。質量。そして自慢の戦車。
 戦車を変形させ、蒸機巨人とかえさせた瞳ヶ丘のとっておき。
 ダタラギガースの力を魅せる日がきたのであった。
 質量の塊が、空を震わせてアマルテアの寸前をよぎる。
 振るう。振るう。振り回す。
 それは海岸にあらわれた巨大な扇風機。
 強風の余波が海岸沿いの林を揺らし、その強烈さを窺わせていた。
「悪いが罷り通るぞ。こちらも自信作でな! やれ、ダタラギガース!」
 当たれよ幸いとばかり、両腕をブンブンと唸りをあげて、巨人がアマルテアに猛攻を加え続ける。
 自分よりあきらかに図体のデカい攻撃は、流石に受け流すのは難しいらしい。
 回避に専念するその格好、強風にあおられる凧のようであった。
 おかしい。
 このような巨躯が、砂浜を自在に駆けるなどと。
 砂地に足をとられて、沈んでもいいはずなのに。
 と、アマルテアは海岸を見やった。
 そして気づく。
 あたりが氷一面に包まれていることに。

「どうやらアシストできたみたいね」
 エメラ・アーヴェスピアが仲間の攻めを見て安堵の息をつく。
 身につけているのは、瞳ヶ丘と同じ蒸気兵器。
 あのような大型に変形出来る機能はないが、自分のドレスベースはそれにひけを取らない多彩な機能がある。
 浮遊する金色のガトリングガンとは別に、新たなる魔導蒸気機関砲が彼女の周りを旋回していた。
 その砲身からは、冷気の煙が立ちのぼっていた。
 辺り一帯を氷結し、足場を確保する。
 空から撃たれる危険性を下げるために、海を凍らしてエリアを確保するつもりであったが、即席にしてはうまくいったようだった。
「液状金属……斬撃や銃弾は不利ですね」
 トリテレイア・ゼロナインが巨人と敵の動きを眼で追う。
 生半可な攻撃は軽く受け流されてしまう。
 ああやって質量、受け流せないほどの衝撃で攻めるのが有効なのであろうか。
「液状化も厄介なんだがよ、どうも引っかかるんだよなあ……」
 ハヤト・ノーフィアライツが疑念が篭もったため息をついた。
 彼には引っかかる物があったのだ。
 俊敏過ぎる。
 マシンによる強化された処理能力。
 それを鑑みても、敵の動きは素早い。
 まるであらかじめ、来るのが分かっていたかのように、だ。
「しかし、わしたちがいて幸運であったのう」
 皆が険しい中、エウトティア・ナトゥアが明るい声で話しかけた。
 どうして、と一同が振り向いた。
 彼女が続ける。
「ましんというのは、あれじゃ、他人様より物覚えが良いのじゃろう? 学習を続けて それに対応してくるとみた」
「そういう面はありますね」
 同意するトリテレイア。
 情報処理能力が機械の強みだ。
 それ故に一糸乱れぬ統制の軍隊が完成する。
「一人では行動の幅もたかがしれておる。じゃがこうやって大勢でかかれば、パターンを掴ませる前に倒せるじゃろうな」
「お気楽だねえ」
 ハヤトの軽口。
 それにもエウトティアは笑顔でこたえた。
「ああ、気楽じゃ。ここにおる連中は只の人間ではない。厄介ごとに首を突っ込みたがる猟兵よ。こういう手合いはひとつふたつではなかったろう?」
 それに、と視線をアマルテアへとむけて続ける。
「亡き国に尽くす姿は人形とはいえ哀れじゃのう。じゃが、役目でも非道をはたらいてもよいという道理はないな。もはや彼奴は不幸を振りまく事しかできまい、これも何かの縁じゃわしらの手で終わらせてやろう」
 そう言い終えると、エウトティアは杖を握りしめて皆へと頷いた。
 一同も頷きを返す。
「ええ、そうね。あの未だ勝てると思っているような面は気に入らないわ。私たちでその目論見、一切を叩き潰すとしましょう」
「お前さんは、たんにぶっ放したいだけじゃねえの?」
 エメラの言葉へ、横から茶々を入れるハヤト。
 それを横目で見返して、エメラは毒づいた。
「あなた達もこうやって突っ立ってどういうつもりかしら? まさかジェントル二人が淑女たちが戦っている背中をずっと見つめているつもり? 壁の花じゃなくて、今すぐ海の藻屑に変えてあげてもいいのよ」
 ガキン、ガキン、とドレスベースの砲身が音を立てる。
 ハヤトが被りを振った。
 マジギレされる前に、とっとと行くとしよう。
 それはトリテレイアも同じであった。
 騎士である己にとって、紳士でない振る舞いはあってはならない。
 ハヤトとトリテレイアが敵へとむかう。
 その背を見つめ、その場に残ったエメラはエウトティアへ言葉をかける。
「あなたは?」
「わしはみなと違って大層な鎧は着てないのでな。ここでみな様をサポートするとしよう」
 両腕で杖を地に刺し、眼を伏せて集中する。
 精霊の力を借りて、彼女はウォーマシンの軍勢を相手取った。
 おそらく今回もそうなのだろう。
「じゃあ、私もサポートを行なうとしましょうか」
 敵にむかって引金をひくのはいつでも出来る。
 だが勝利を盤石にするために、布石をうつのは当然。
 常に冷静なレディなら尚更だ。
 ハヤトが揶揄するようなハッピートリガーの輩などでは決して無い。
 蒸気ドローンの群れを周囲へと飛ばす。
 通信を阻害させる電波を発しながら。
 俊敏すぎるという危惧。
 それがこれで少しでも晴れるといいのだが。
「ま、最後に笑うのはわたしたちよね」
 準備は万端。
 戦線へと加わるため、エメラはドレスベースを加速させるのだった。

 瞳ヶ丘の猛攻。それを援護するミレアの射撃。
 そして巨人の背を駆け上がり、猟兵達が更に加勢する。
 再び相まみえた、花盛の斬撃。
 重機と銃弾の雨を受けながら、アマルテアはこれを液化して身をよじるように受け流す。
 いや、躱すしか出来なくなってきたという処か。
「全く面白い。エンパイアの里にあっては貴様のような敵とは立ち会えまい」
 自らの攻めをいなされたことを恥じることも無く、花盛は笑う。
 剣を振るうに足る強敵。その邂逅。
 武人としてなんと心地よいことか。
「不謹慎だが、楽しい。貴様もそう思わないか、アマルテア!」
 二刀が弧を描く。
 いなせずに液体が飛び散り、砂浜へ滴を零す。
 致命傷、いまだ与えられず。
 しかし、追い詰めていることは事実。
 その証拠に見よ。
 敵の朱い機体に、傷がつきはじめているではないか。
「ええ、貴女を倒してからそう思うことにしますわ」
 空中へと飛んだ花盛が、足場を失って落下しく。
 その無様な姿へ、アマルテアは銃口をむけた。
 だがその視界を、白い壁が遮った。
「させるか!」
 蒸気巨人からスチームを吹き出し、即席の煙幕を瞳ヶ丘を張る。
 ダメージは無い。
 だが時間を作ることは可能。
 もう片方の腕でも蒸気を噴き出し、花盛の体勢を変える。
 空中にての転換。
 見えるは目を眩ましているアマルテア。
 だが遠い。必殺の間合いにはいまだ届かず。
 花盛の体を、誰かが支えた。
「真打ち登場!」
 ハヤトが、颯爽と跳んで花盛を受け止めたのだ。
「嬢ちゃん! 俺が思うに、奴はなんらかの力で行動を先読みしている! だがそんな力、そうそう使い続けられる訳はないよな!」
「じょ、嬢ちゃんだと!?」
 殿方に抱きかかえられたことにどぎまぎして花盛は狼狽した。
 そのおかげで体勢が乱れず、地面へとゆっくり降り立つことが出来た。
 大人しくなった彼女に、ハヤトは背で語りかける。
「だから俺たちで休み無く攻撃を続けようぜ。なあに、そうすりゃ依頼成功だ。疲れたろ? そこでしばらく休んでな」
 言い捨て、ハヤトは胸の前で両腕を交差する。
 ぎりぎりと震える拳が、彼の胸中を語っていた。
 それは勇気の心。
 そしてそれは、決して胸の中に秘めていいものではない。
 勇気とは、足に籠めて困難に耐える礎とすること!
 勇気とは、腕に籠めて困難に打ち勝つ力とすること!
 勇気とは! 背に持つ何かのために悪に立ち向かおうとする正義の心!
 それを解き放とうと、ハヤトは左拳を足下に叩きつけた。
「変!」
 凍らされた砂地が欠片となって飛び散り、キラキラと陽を反射する。
 打ち込んだ反動を利用して、そのまま立ち上がって右拳を突き上げ、ハヤトは叫ぶ。
「身!」
 舞い上がった砂が地面に落ちるより速く、ハヤトは全身を機械の躯へと変身を遂げたのだった。
 潮騒に、首に巻いた赤いスカーフがたなびいた。
 風に舞い上がった中折れ帽のすべりを指で引っかけて回し、それはクルクルと回って花盛の前へと落ちた。
「俺が、奴の相手をしてくるからよ」
 ハヤトはそう言って、文字通り飛び上がった。

 アマルテアの両肩にある翼。その片方が損傷し火花を散らしていた。
 用を果たすのが難しくなったのか、飛行することは叶わず、戦場を氷の砂場へと移し、アマルテアは猟兵達と戦っていた。
 最初の余裕は失いつつも、いまだ笑みは消えていない。
 ハヤトの予想はあたっていた。
 ワープによってこの地へと飛ばされてしまった不幸。
 だがそれは、アマルテアに変化をもたらした。
 周囲の環境に適応し、身体を造り替えるのがWASPの要。
 次元移動のさなか、彼女は一つの進化を遂げた。
 ミディアほどの広範囲ではないが、ワープする力を身につけたのだ。
 それは自らを、過去の世界へとワープ出来る能力。
 短時間の時間跳躍能力を、彼女は身につけたのであった。
 液状化と時間跳躍。
 この二つの能力を組み合わせ、あらゆる攻撃に対応出来るようになったアマルテアは、まさにWASPの核として相応しい存在といえよう。
 あとは機械炉で、兵士達を増殖すればいいだけだ。
 目の前の、敵を打ち倒すことによって。
 その達成感を掴むために、アマルテアは戦う。
 悲しいかな。
 彼女には、欠けていた資質があった。
 それは経験。
 実戦経験のない彼女は、いまだこれだけ多くの力を行使することがなかったのである。
 戦い続けることの愚考、補給輜重の軽視。
 退くという命令が、彼女には与えられてはいなかった。
 時間が戻されながらも戦い続ける猟兵達は、気づく由も無し。
 そして、初の実戦に沸き立つアマルテアも気づくはずも無く。
 だが連戦の疲労は、確実に魔神機型アマルテアの機体を、蝕み始めていたのであった。

「くそっ!」
 無念の形相で瞳ヶ丘がパネルを叩く。
 画面には燃料が空となったことを示す、赤いランプが点滅していた。
 散々暴れまわったダタラギガースであったが、一足先に脱落しようとしていた。
 仲間達の足を引っ張ってしまう。
 その情けなさに、瞳ヶ丘は歯がゆさを感じていた。
 これで終わりなのか。
 そう落胆する瞳ヶ丘。
 その近くに、金色の機体が近づいた。
「選手交代、ね」
 エメラの声。
「ああ、そのようだ。どうやら私は失格のようだな」
「失格? なにを言ってるのかしら」
 馬鹿なことをと、鼻で笑うエメラ。
「あなたはしっかりやってくれたわ。その証拠に、アイツにヒビが入り始めているじゃない」
 だから気にしないで、とエメラ言い残して敵の元へと。
 残された瞳ヶ丘は、独り呟いた。
「……そうは言ってもな」
 なにか状況を打開は出来まいか。
 それを瞳ヶ丘は考えはじめていた。

「あなた方に、帝国の面影があります」
 何者ですかと、アマルテアは対峙するテリブルとトリテレイアに語りかける。
 テリブルは何も語らない。
 片手に黒剣を持ち、もう片方の手を燃えたぎらせ佇んでいる。
 兵士は多くを語らない。
 いくら多弁であろうとも、それは戦功に関わりのないこと。
 無骨なマスクで覆われた口元は、無言を貫いていた。
 しかしもう片方は、何やら言いたいことがあるらしい。
 一歩下がるかたちを取り、トリテレイアが前へと出る。
「帝国、それは私にはとうの昔に過ぎたものです」
 ですが、と彼は続ける。
「過去という物に刻みつけられた痕は、いかに糊塗しようとも隠せないもの。帝国への忠か、御伽の騎士への憧憬か。それは他者が見れば一笑にふすものなのかもしれません」
 剣を抜き、盾に打ち鳴らして敬意を表す。
 記憶。居場所。
 それぞれ失ったものは違う。だがすがる物は同じく、己の信念。
 アマルテアたちの行状を許すことは無い。
 それでも。
 トリテレイアは彼女の忠節を軽んじることは出来なかったのだ。
 だからこうやって、愚かにも闘う前に礼儀を取った。
 これはケジメ。
 かつての仲間を屠るという行為の、欺瞞であり贖罪。
「私達は己に残され刻まれた『それ』に従い駆けるのみ、我が名はトリテレイア・ゼロナイン……勝負!」
「気丈な方は嫌いではありませんわ。その名、覚えて墓標に刻んで差し上げましょう!」
 名乗りを終えて、トリテレイアが踏み込んだ。
 それに合わせてテリブルも動く。
 二人に目がけてアマルテアの銃身が火を吹いた。
 テリブルを庇うように、トリテレイアが体を捌く。
 大盾と己の巨体は、仲間をカバーする壁となる。
 その壁が、気迫とともに押し通る。
 白き巨塔。
 その死角を利用し、テリブルが飛び出した。
 黒剣を振りかぶって放り投げる。
 躱すアマルテア。
 その躱した先に、テリブルの拳が襲う。
 液状化。
 身をよじって躱すのでは無く、ミルククラウンのように輪となって弾けて空間をつくって避ける。
 テリブルが拳を捻ると、義手が変化して棘刃を生んだ。
 横薙の裏拳。
 その暴風にあわせてさらにリングが歪曲する。
 豪腕が、勢い虚しく空をきった。
 否。
 その掌に、いつの間にか握られていた物があった。
 それは黒剣の端。
 細く長く伸ばされ、鞭のようにしなった黒剣の片方を、テリブルは掴んでいた。
 彼女は剣を投げ捨てたのではない。
 飛ばしたのだ。
 掴んだ先端から先の向こうへ、炎のアーチが立ちのぼる。
 即席のワイヤートラップ。
 輪の中に紐を通され、アマルテアはUの字へと変化させ逃れようとする。
 そうはさせじ。
 大館を構えたトリテレイアが突進し、トラップへとねじ込んだ。
 炎が液状化したアマルテアの身体を焼く。
 周囲に異様な臭いがたちこめた。
 顔をしかめる嫌な臭い。
 アマルテアが悲鳴を上げた。
 この戦ではじめての、メガリスの悲鳴。
「生体への使用は躊躇われど、同族ならば遠慮は無用!」
 その敵へと、剣をライフルへと変えて、トリテレイア追い打ちを放つのだ。
 いままでの戦いから、生半可な攻撃では効果が薄い。
 そう感じた二人は、熱による攻めへと切り替えたのだ。
 ライフルが次々と火花を吹き、液状化した金属体を赤く染め上げる。
 打撃物理はいなされる。
 だが、燃焼はどうであろうか。
「あああああーーーーっ!」
 効果のほどを知らせるアマルテアの叫び。
 液状化した身体が、人型へと戻っていく。
 それは、敵が臨んだ形状ではないのであろう。
 そのもがく敵影に、テリブルは再び黒剣を投擲した。
 伸びる焰の鞭。
 それが絡みつき、アマルテアを引き摺りだす。
 そのまま引き摺るままにたぐり寄せ、テリブルは強烈な蹴りをお見舞いした。
 液状化へと変化できぬまま、くの字に折れてアマルテアは吹き飛ばされる。
 浮遊砲台が狙いをすます、絶好のエリアへと。
 テリブルがスイッチを起動させる。
 雷鳴がアマルテアを襲った。
 硬直。悲鳴。
 それにむけて、黒剣をテリブルは投擲した。
 クルクルと回って鞭は網となり、アマルテアへと絡みつく。
 炎の網。
 彼女はもがくが、それをほどくことはない。
 液状化して逃れることは、もはや出来ないでいたのであった。
 そこへとせまる、白き機体。
 再び持ち替えたトリテレイアが持つのは、長剣。
 今のアマルテアに防ぎようのない狙いすませた斬撃が、彼女を襲った。
「まだ……終わってはいませんわ!」
 苦悶の声をあげながらも、垂直へと羽ばたくアマルテア。
 炎上した機体を打ち消そうとしたのだ。
 だがすでに、その身体は翼と片腕を破壊され、制御し辛い状態であった。
 そんな創痍の身で、猟兵から逃れられる訳がない。
 二重螺旋を描くように、ハヤトもまた彼女へと飛んで追いついた。
「どうだい、俺の仲間達は? アンタ頭が良いようだが、次の手、その次の手、もっと先の手まで考えてあるのさ!」
「世迷い言を!」
 お互い上昇しながら、互いに拳を打ち鳴らす。
 変身し、威力と速度が増加したハヤトの拳打。
 身体が万全なら、それにアマルテアも対応出来たであろう。
 だが彼女の顔や腹部に、ことごとく彼の打撃が突き刺さる。
 疲労したアマルテアに、液状化と時間跳躍の余裕は作れないでいたのである。
「遅え!」
 アマルテアの一打ちに、ハヤトは逆にカウンターを合わせた。
 そのまま首根っこを掴み、力を入れる。
 万力のように締め付けるその剛腕を、アマルテアは細腕で掴み返し、ぎりぎりと引き離した。
 首をおられてなるものか。
 必死の抵抗。鬼の形相。
 それを、ハヤトの双眸が見つめ返した。
「場合によっちゃあ止められる前提の手を打つ事だってある。駆け引きってのはそういうモンだろ?」
「なんですって?」
 がしりと、両肩をアマルテアは掴まれ振りかえる。
 そこにいたのは、五体にしがみつくミレアの軍勢。
 巣に群がる蜂の如く、わらわらとよってアマルテアへと寄ってくる。
「いったい何ですの!?」
「教えてやるぜ!」
 眼をそらしたアマルテア。
 その残った腕を、ハヤトの両腕が掴み、無造作に引きちぎった。
 その反動で、ハヤトはアマルテアとミレア達から離れていく。
「アンタは、ここでおしまいってことさ!」
 捨て台詞を残して消えていく。
 視界が開けたアマルテアが見た者は、こちらに向けて照準を合わせるエメラの姿。
 その砲身は、自由落下しはじめるアマルテアに合わせて、ゆっくりとその先を下ろしはじめているではないか。
「離しなさい!」
 拘束をほどこうと身体を揺するがミレア達を引き離すことは出来ない。
「貴女も、撃たれるのですよ!?」
「はい、理解しています」
 当然と言わんばかりに、ミレアは首を縦に振った。
「依頼完遂のためならば、それは必要な損害でしょう。女王蜂たる貴女を失えば群れは終わる。しかし自己複製・データ共有があるが故に、この『私』』の終わりは『ミレア』の終わりではない。ただ、それだけの違いです」
 感情のこもらないミレアの言葉。
 それがアマルテアに、覚悟の深さを理解させた。

 雲霞のごとく敵に群がるあの姿。
 巨大になった的を、外せという方が難しい。
 エメラは展開させた魔導蒸気機関砲をアマルテアへと狙いをつけながら、ドローンの様子を確かめた。
 指揮官機と聞いてジャミングを辺りに飛ばした。
 援軍を恐れてのことであったが、幸いにその様子は見えない。
 仲間は死力を尽くしている。
 そこを伏兵に狙われては溜まった物ではないからだ。
 危険が無いことを確認し、エメラは傍の仲間にむかって尋ねた。
「本当にやるの?」
 尋ねられて瞳ヶ丘は頷いた。
 やってくれと言わんばかりに。
 そして横にいた花澤とエウトティアに対しても、瞳ヶ丘は頼んだ。
「どこまで通じるか? 奴に負けてないことの証明だ。これは私の性能比べ、根性をみせることでもある。頼む」
 頭を下げられ三人は、三者三葉の態度で返す。
 再び前をむいて、エメラは微笑んだ。
「じゃ、そろそろ終わりにしましょう?」
 エメラ御自慢の氷冷型魔導蒸気機関砲。
 それが火を吹くまであとわずか。
 それに合わせて、エウトティアが杖をつく。
 今まで彼女は、何もしていなかった訳では無い。
 この広大な海岸線。
 そこに居る精霊達に働きかけていた。
 今回は全力で行く。
 そのため、制御するに時間がかかった。
 見よ。
 海面を。砂浜を。
 ゆらゆらと揺れる人影。
 それはエウトティアの呼びかけに応じて姿を現した精霊達。
 その数、およそ400柱。
 さすがにそれらに訴えかけるのには骨が折れた。
 しかし、その価値はある。
 エメラの一撃に合わせて、エウトティアは精霊たちに檄を飛ばした。
「それでは皆の衆、頼んだのじゃ!」
 精霊達が一斉に空へと登っていく。
 白波がたち、海の精霊が潮騒を起こして天へと。
 陽に照らされる氷の浜から、氷と砂の精霊が、氷面を突き破って天へと。
 木々が潮風に揺らされ、木と地の精霊が天へと。
 風と火の精霊が、何処より現れて、同胞達と手を取り合って天へと昇っていた。
 空で精霊達が魅せるは、島に棲まう精霊達の輪舞曲。
 その中心を割ってエメラの砲撃が天を穿った。
 その一筋の青き光明は、ミレアとアマルテアにも迫って来るのがはっきりと見えた。
 ミレアが拘束を緩める気配は無い。
 彼女は最初から避けるつもりはないのだ。
 自らを囮に、敵に一撃を与える。
「あなたは、終わりです」
「くっ……」
 酷寒の衝撃が二人を覆った。

 現れた氷塊は、渦を巻く精霊達によって空へと繋ぎ止められていた。
 まるで天空に浮かぶ、小さい島のようであった。
 それを見上げて、花澤は刀を構える。
 強敵であった。自分一人であったならば、適う相手ではなかったろう。
 みんなが死力を尽くしてきたからこそ、こうやって追い詰めることが出来たのだ。
「だからあたしも、全力でいかないとね!」
 両腕で刀を天に向かって突き上げる。
 号と風がおこって砂浜の砂を巻き上げた。
 彼女が狙うは天ではない。
 地に鎮座する、瞳ヶ丘の巨人。
 それにむかって刀をふりあげる。
「さあさあ、桜のショウタイム! この一刀で、決めてあげる!」
 か弱き身体から発せられる、強烈な衝撃波。
 それは確かに、ゆっくりとあの巨体を持ち上げた。
 昇っていく精霊達がそれを押し上げ、天へ天へと運んでいく。
 氷漬けとなったアマルテアは見た。
 巨人が、精霊達に導かれ空へ登っていくのを。
 もはや首を動かすことも自由にならない。
 自分たちを追い越し、頭上へとあがっていくその塊。
 それがどうなるか、アマルテアの頭脳は冷静に、この状況を判断する。
 しかしその現状を打開する行動。
 それを活動する力を、アマルテアは生み出すことが出来なかった。
 そして、彼女の予想通り、衝撃が上からやってきた。
 氷塊へ覆い被さるダタラギガース。
 その背中へ、精霊達が降り立っていく。
 一柱ずつ舞い降りる度に、その落下は加速していった。
 氷塊を押しつぶさんとするフライングボディプレス。
 その勇姿にむけて、瞳ヶ丘はガッツポーズで叫んだ。
「蹂躙だ! あたしの技術の勝利だ! どうだ見たか!」
「技術……?」
 私の方が、どちらかというと技術の粋じゃないかしら。
 そう思うエメラであったが、口に出さない優しさがあった。
 多くの猟兵達が見守る結末。
 それ目がけて巨人が降臨する。
 激しい轟音と地響き。
 島全体を、鳴動が襲った。

 アマルテアが意識を回復しても、ぼやけた画像が見えるだけであった。
 自分の身体はどうなっているのか。
 それを確認するにも頭を動かせない。
 そもそも、半身は存在しているのであろうか。
 誰かが近づいていくる。
 そのシルエットに、アマルテアは見覚えがあった。
 たしか、花盛とかいった。
 その人物は近づき、アマルテアに影を落とした。
「ここまで辿り着くのに難儀した」
 刀を振りかぶって声をかける。
 その眼に、憎しみはなかった。
「やはり私はまだ未熟、お主の将器には届かない。この刃は仲間のおかげでもある」
「私は、あなた方に負けましてよ?」
 いいや、と花盛は首を横にふった。
「土をついたが、お主の強さは私の心の内に残る。アマルテア。お主はまさしく戦士であった」
 それを聞いて、アマルテアは笑う。
 自分はここで破壊されるのだ。
 全てを失う。
 だがそれに、恐怖という感情はわき上がってこない。
 やりきった、という清々しさが占めていた。
「慰めは結構でしてよ。兵士の末路は所詮、こんなものですわ」
「そのようだな。せめて介錯、刀に君を刻もう」
 無言で刀を振り上げ、そして下ろす。
 容赦は無し。全力。
 残心を残し、呼吸を置いて刀を納めた。
 その顔に、勝利の嬉しさはない。
「まだまだ未熟、か」
 来年こそは必ず。
 一人決意を露わに、花盛は強敵の亡骸に手を合わせていた。

●それから~

 島の一角。
 そこに、不時着した宇宙船があった。
 うっそうとした木々に囲まれて簡易的な迷彩を施された船は、機能を失わずにその身を横たえていた。
 内部の船倉には、機械炉と呼ばれる建造装置が活動を続け、女王の帰りを待っていた。
 船の奥にある船長室からは、広域にむけて救難信号が発せられていた。
 ――応答セヨ
 ――応答セヨ
 だが、その信号を受け取るべき対象は既に無い。
 帝国は滅んでしまったのだから。
「彼らは、原隊復帰を目指していたのでしょうか」
 主を失った船を調査しながら、トリテレイアは考える。
 同道するテリブルは、じっとコンソールパネルを見つめていた。
 いかに強靱な軍であろうとも、命令がなければ進むことは出来ない。
 兵士というものは、そういう存在である。
 彼らが訓練を続けていたのは、存在が薄れることを恐れていたせいか。
「復帰など出来ないさ。ここは、何もかも違うからな」
 自分に言い聞かせるように、テリブルは呟いた。
 元々ここは、戦場でもなんでもないのだ。
 コンキスタドールが倒され、島に平和が戻った。
 島民たちは元の生活を取り戻しつつある。
 狩猟や漁業などの原始的な生活。
 そこに、殺人や破壊を主とする存在は、必要無いのだ。
 ――応答セヨ
 ――応答セヨ
 無機質なルームに、信号を送る音が無慈悲に響く。
 このまま船が存続する限り、ずっと信号は送られ続けられるのだろう。
「……そのまま、眠っていれば良かったのだ」
 テリブルがラストデザートを引き抜いた。
 発砲音と共に、パネルが破壊され信号が止まる。
「ここを爆破する」
 テリブルの言葉に、トリテレイアは異論はない。
 不必要なテクノロジーなど、この島には要らないだろう。
 アマルテアたちは、ここに来るべきではなかったのだ。
 彼女達は、兵士として生きた。
 では自分は。
 破壊工作をテリブルが進める中、そっとトリテレイアは船を離れた。
 騎士である自分は、人のために力を奮うことができた。
 彼女達に志があれば、人のために戦う兵士と成れたのであろうか。
「考えても仕方ありませんね」
 振り返れば、懐かしき銀河帝国の宇宙船。
「……その奮戦に敬意を」
 その勇姿に剣を捧げ、トリテレイアは黙祷を捧げるのであった。

 コンキスタドールと共に吹き飛んだはずのミレア。
 彼女は今、悠々と空を飛んでいた。
 自己修復と複製。
 それは誇張でもなく、実際に破壊されたあとで別の機体が『ミレア』となった。
 しかし、戦闘の記憶は確かにメモリー内に保存されている。
 彼女はまさしく、ミレアなどだ。
 島の哨戒を終えて、彼女はひと息つく。
 発見した宇宙船は一艘のみだ。
 船を破壊すれば、増殖の危険は完全に零となるだろう。
 島に禍根が残ることも無い。
 そしてその船へと、猟兵がむかって行ったのが先刻。
 依頼は解決したと考えて間違いなかった。
 破壊から戻った時、随分と心配された。
 自分にはそれがわからない。
 自分が破壊されても代わりはいる。
 ただ、それだけのはずなのに。
 しかし、とミレアは思った。
 他の猟兵に気遣いの声をかけられた時、それは当惑の気持ちを得たが、不快にはならなかった。
 その時の情景を反芻しながら、ミレアは移動を開始した。
「任務を完了しました。ミレア・ソリティス、帰還します」
 その顔は、わずかばかりに微笑んでいたのであった。

 散々と照りつける太陽。
 押し寄せる波。白い砂浜。
 そして、機械のメンテナンスに勤しむ瞳ヶ丘の姿。
 海水浴にはもってこいの陽気なのであろうが、彼女にとっては関係ない。
 自分のかわり戦車に無理をさせてしまった。
 砂が入るのも気にはなる。
 丁寧にグリスを塗らなければ、肝心要なときに悲惨な状況に陥るであろう。
「しかしこれで、継戦能力を見直すことが出来た。ダタラギガース、次はもっと活躍させてやるからな」
 いそいそとレンチを動かし、額に垂れてきた汗を拭う。
 そこへすっと、ジュースで満たされたコップが渡された。
「少し休んだら? 敵を倒したあとで倒れるなんて、猟兵としてカッコ悪いわよ」
 瞳ヶ丘の前へとコップを置いて、エメラも自分の分を口に入れる。
 それに促されるように、瞳ヶ丘も作業を止めてコップに手を伸ばした。
「……ありがとう」
 一口含むと、甘みと酸味が口に広がる。
 トロピカルドリンクであろうか。
 氷の欠片が舌先にあたり、カランと音を立ててコップを叩いた。
 じんわりと、喉から肩にかけて冷たさが広がっていく。
 没頭していた余り、陽にあたり過ぎていたことを自分は気がつかなかったらしい。
「グリモア猟兵が来るまでまだ時間はたっぷりあるんだし、作業は後回しにしても良いと思うけど」
 それに見なさい、とエメラが海の方を指さした。
 すると海上の先に、ジェットバイクで疾走するハヤトの姿があった。
「もうすでに、おちゃらけた人がいるわよ。あなたもアイツくらいに肩の力を抜いたらどうかしら」
「性分だからな」
 ジュースを飲み干して、瞳ヶ丘は作業に取りかかる。
 それを邪魔しないように見つめながら、エメラは話しかける。
「そのダタラギガースっていうの、砲撃とかは出来るのかしら」
 興味津々な声。
 それを背中越しに瞳ヶ丘は返す。
「いや残念ながら、その機能はないな」
「だったらつけてはどうかしら。白兵と射撃、あっては損はないと思うわよ」
 手を休めずに、ふむと瞳ヶ丘は頷いた。
 なるほど、一昼夜には出来ずとも、そういう改良はアリかも知れない。
「考えておく」
「ええ、考えておいて。なんなら試射につき合ってもいいわよ」
 エメラの楽しげな声が背中にかかる。
 瞳ヶ丘の技術の一端がわかれば、自分の蒸気兵器に役立つかもしれない。
 それを思うと、顔が笑わずにはいられない。
 更に、更に強化された蒸気機関砲。
 その引金をひけるその時を、エメラは陽の熱気に当てられながら、うっとりと埋め見るのであった。

「いやっほぅー!」
 風を感じながら、海上をバイクが疾走する。
 全身に波風を受けて、ハヤトはこの余暇を楽しんでいた。
 ただ帰るだけではつまらない。
 こういう役得があってしかるべきであろう。
 猟兵は、公務員なんかではないのだから。
「仕事ばかりの世の中じゃ、息が詰まるからな!」
 反動をつけてバイクを起こす。
 波の坂を上がって空中へと飛び上がり、見事一回転を決めて着地する。
 青い海は果てしない。
 グリードオーシャンには何度か来たことがあるが、この島の付近には海しか見えない。
 凪いだ海のなかでぽつんと佇む島の姿は、先ほどまで戦いがあったとは思えない静けさだ。
 舟で漁をしている島民達と目が合い、手を振られる。
 その顔ぶれはみな、生活を取り戻したことを喜んでいる。
 一人が魚を高々と掲げ上げた。
 見事な大物。あとで振る舞ってやるとでもいうのであろうか。
 それに手を振り替えし、ハヤトはバイクの向きを変えた。
 島に戻って一杯やるもの良し。このまま気ままに飛ばすのも良し。
「さぁて、次の目的地はどこにするかねぇ」
 アクセルを吹かせて、ハヤトはバイクを疾走させるのであった。

 白い砂浜。
 その陰になった場所でエウトティアは身体を休めていた。
 何しろ力を行使しすぎた。
 いささか疲れて何をするにも気力がでない。
「島全体の精霊に働きかけるは、さすがにやりすぎじゃったかのう」
 少し頑張りすぎたか。
 思えば島を巡ってよく使役したもの。気がきれて倒れなかっただけ、自分は成長しているかもしれない。
 海を眺めていると、ざばんと白波が起こった。
 イルカのジャンプ。
 面影がある。
 自分が島に来るときに跨った、可愛い奴だ。
 弱々しく手を振ってそれに応えると、ちろちろと手の甲を舐めるものがいる。
「どうしたマニトゥ、ご機嫌斜めじゃのう」
 そこにいたのはやはり巨狼マニトゥ。
 気のせいか、不機嫌オーラを醸し出している。
「しかたあるまいて、今回は海上。まさかずっとお主に犬かきさせるわけにもあるまいにのう?」
 普段であれば一緒に野をかけるのであるが、あいにく今回は海。
 相棒の力を借りる機会には恵まれなかったのである。
 まあ、精霊行使に集中して、マニトゥに呼びかける前に戦闘が終わってしまったせいもあるが。
 島民にもらった燻製の切り身をマニトゥへと差し出した。
 これで機嫌を直してはくれまいか。
 仕方なし、と無言でマニトゥはいそいそとそれを食べ始めた。
 潮風が頬を撫でて疲労を和らげてくれる。
 エウトティアは心地よさを感じながら、そっと目を閉じた。
「やれやれ、これはきっと筋肉痛じゃな」

「う~ん、おいしい!」
 卓に並べられたフルーツの数々。
 島民達が感謝の印にと、差し出してくれたものだ。
 これを断るのは失礼にあたる。
 食べるのは仕方ない。そう仕方ないことである。
 花澤はそう自分を納得させて、甘味の色々に舌鼓をうった。
 島民達はみな笑顔だ。
 猟兵達を歓迎する宴の準備。
 それを夜にでも行なうそうだ。
 その時は、ここにある品よりもっと美味しい物が出てくるのであろうか。
 それを思うと、今からでも花澤の心は高鳴った。
「あんまり食べてないですね花盛さん」
 横をみれば、同じく卓に座っている花盛の手は、ちっとも動いてはいない。
 その顔は曇っている。
 何か心残りがあるだろうか。
 敵は全て、片付けたというのに。
「……ああ、すまないな。少し考え事をしていたのでな」
 そっと手を伸ばし、果物を囓る。
 その横顔には、もの寂しさが感じられていた。
「何か、悩みでもあるんですか?」
「悩みというか、自戒だな」
 じっと、手を見つめる花盛。
 昨年、銀河帝国の将と戦った時、未熟な自分は不覚をとった。
 そして今、相手からは有効を奪ったとは思えない、不出来な結果。
 自分の不甲斐なさに、自己嫌悪に陥っていたところなのだ。
「まだまだ未熟だな、と。そう思っていたのだ」
「未熟? 花盛さんが?」
 花澤が驚いた声をあげる。
 あの時、敵に一緒になって戦った彼女の剣戟。
 それは同じ剣士である自分からみても、見事な太刀筋だったと思わざるをえない。
 それがどうして、卑下するのであろうか。
 花澤には不思議でならなかった。
「未熟なら、私たちきっと負けていますよ? 勝ったってことは、そうでなかったってことですよ」
 皿に並べられたフルーツ盛りから何点かを摘まみ、それを花盛のまえに差し出す。
 気にするな、ということであろう。
「戦うばかりの毎日なんて、楽しくなんかないですよ。今は楽しみましょう。私たちが取り戻した、島の平和を感じるために!」
 笑顔で笑う花澤。
 それに促されて、花盛は手を伸ばした。
 嚥下した喉元に、酸味と苦味がひろがる。
 それをかみ締めて、花盛はふと笑った。
「……まだまだ、未熟だな」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年09月21日


挿絵イラスト