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迷宮災厄戦⑱-15〜蒼氷にして叢氷、そして

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #オブリビオン・フォーミュラ #オウガ・オリジン

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●そして、時は凍結する。
 書架の王『ブックドミネーター』。それは猟書家たちの主にして王。
 この『絶対零度の凍結世界の国』において、オウガ・オリジンは無限の想像力によって完全なる変身を遂げる。
「……やはり、見ているな。『六番目の猟兵』……」
 その赤い瞳は冷ややかに虚空を見つめる。
 すでに書架の王『ブックドミネーター』は討たれている。だが、オウガ・オリジンの現実改変ユーベルコードは、そんな事実すらも関係なく、その姿を完全なる物として変身する。それこそが、オウガ・オリジンの力の凄まじさを物語っていることだろう。

 次々と『ブックドミネーター』の周囲にオブリビオンが生み出されていく。相対する猟兵に有効なオブリビオン。
 それは過去の宿敵であったり、難敵であったり……様々な者が蒼氷より生み出される。
 さらに時間凍結による己の傷を癒やし、氷結晶が全身を多い、その所有する知識の量によって強化される戦闘力は、凄まじいの一言に尽きる。

「どれだけ予知を重ねようと無駄だ。わたしに―――否。私には成さねばならぬことが有る。他に、生命を掛ける場所があるがゆえに」
 オウガ・オリジンであったころの思考は最早どこにもない。
 あるのは完全なる書架の王『ブックドミネーター』としての意識のみ。振るう力も、得た知識も全てが書架の王そのもの。

 赤き瞳が見据える。
 己を見ているグリモア猟兵の瞳を。
「ならば、来るがいい―――六番目の猟兵たちよ」

●迷宮災厄戦
 グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。オウガ・オリジンの現実改変ユーベルコードの凄まじさは皆さんもすでによくご存知のことかと思われますが……」
 ナイアルテはそう説明する。
 オウガ・オリジンの持つ現実改変ユーベルコード。それこそが、迷宮災厄戦が始まった原因の一つであり、オウガ・オリジンの力の凄まじさを物語るに必要不可欠なる力でもある。
 その現実改変ユーベルコードによって、オウガ・オリジンは猟書家の主である書架の王『ブックドミネーター』へと完全なる変身を遂げたのだ。

「はい……ですので、今回みなさんが戦って頂くオウガ・オリジンはオウガ・オリジンであると同時に書架の王『ブックドミネーター』でもあるのです。扱うユーベルコードも能力も、全て『ブックドミネーター』と同一。思考も何もかも、です」
 その言葉で現実改変ユーベルコードがどれだけ強大なものであるのかを再認識させられる。
 だが、その凄まじき力を持つ書架の王『ブックドミネーター』とて、猟兵たちは打倒してきているのである。

「すでに本物の『ブックドミネーター』と相対した方々もいらっしゃるかと思われますが、その力は本物です。時間凍結氷結晶で全身を覆っての戦闘力増強と飛翔能力……さらに猟兵の皆さんに有効なオブリビオンを召喚する力」
 そして、何よりも厄介であるのが時間凍結による自身の回復手段であろう。
 その力のどれもが猟書家の主たる力として遜色ないものである。書架の王と名乗るのは伊達ではない。
 ナイアルテは再び頭を下げる。
「底知れぬ力持っていたブックドミネーターですが、オウガ・オリジンは、それすらも完全に再現しています。再び強敵との戦いを強いることになってしまうこと、とても心苦しく思っています」
 だが、それでもオウガ・オリジンを討たねば、このアリスラビリンスは終末―――カタストロフを迎えてしまう。
 それだけはなんとしても阻止しなければならない。

「危険は承知しています。それでも、どうか……お願いいたします」
 あの赤い瞳の煌きを前に身がすくむ。
 予知で見た瞳の前に再び猟兵が立ち上がらなければならない事態、それ自体がナイアルテにとっては猟兵たちを危険に送り出す行為だとしても、それを行わなけれならない。
 だが、それでも呼びかけに応じてくれた猟兵達ならばやり遂げてくれる。
 そう信じて、ナイアルテは猟兵たちを送り出すのだった―――。


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『迷宮災厄戦』の戦争シナリオとなります。

 絶対零度の凍結世界の国にて、書架の王『ブックドミネーター』へと現実改変ユーベルコードによって完全変身したオウガ・オリジンを打倒しましょう。

 ※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。

 プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する。

 それでは、迷宮災厄戦を戦い抜く皆さんのキャラクターの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 ボス戦 『『オウガ・オリジン』ブックドミネーター』

POW   :    「……あれは使わない。素手でお相手しよう」
全身を【時間凍結氷結晶】で覆い、自身の【所有する知識】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    蒼氷復活
いま戦っている対象に有効な【オブリビオン】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    時間凍結
【自分以外には聞き取れない「零時間詠唱」】を聞いて共感した対象全てを治療する。

イラスト:108

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

黒髪・名捨

ヤレヤレ…どーやら、この戦争も時間が残りすくねーみたいだしな。
さっさとかかってきなッ!!

●対先制
はぁ、本来素手はオレの間合いなんだがな。
来るなら相手する。
『オーラ防御』と『覇気』を込めた覇気を纏わせた両腕で『武器受け』して攻撃を受け止める…と同時に『カウンター』で『頭突き』をお見舞いしてやる。

いてててて…『激痛耐性』と『気合い』でがまんがまん。
言ったろ?そこはオレの間合いってなッ!!。

●戦闘
飛ぶのか?ならオレも『空中浮遊』で浮かび上がって『空中戦』だ。
スピードじゃかなわないが『第六感』でタイミングを合わせて『カウンター』に陸断を叩き込む。

どーよ。



 その国は絶対零度の凍結世界。
 オウガ・オリジンが現実改変ユーベルコードによって、完全なる変身を遂げたのは書架の王『ブックドミネーター』であった。
 すでに本物の『ブックドミネーター』は猟兵達の活躍によって打ち倒されている。その脅威、強大さは言うまでもないであろう。
 その絶対零度の凍結世界において『ブックドミネーター』は、赤い瞳を輝かせる。
 その瞳が映すのは猟兵。
 黒く長い髪、同じく赤い瞳の猟兵―――黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)であった。
「来たか、猟兵。六番目の猟兵……だが、私はあれを使わない。素手でお相手するとしよう」
 
『ブックドミネーター』の全身が時間凍結氷結晶に包まれる。
 それは彼の持つ知識の量に応じて戦闘力が増大し、飛翔能力まで得る凄まじきユーベルコード。
 その力の凄まじさ故に、『ブックドミネーター』は常に猟兵に先手を取る。圧倒的スピード。肉薄する赤い瞳が、互いの瞳に映る距離にあって、名捨は嘆息するように叫ぶ。
「ヤレヤレ……どーやら、この戦争も時間が残りすくねーみたいだしな。さっさとかかってきなッ!!」
 本来であれば名捨の間合いは素手の範囲である。
 徒手空拳の届く範囲が間合いであるのならば、『ブックドミネーター』が接近戦を選んだのは僥倖であったはず。
 しかし、その知識の量は書架の王を名乗るだけあって、凄まじいものであった。圧倒的な拳と蹴りのスピードと破壊力。

 次々とオーラと覇気が拳の、蹴りの威力を減じようと力を発揮するのだが、即座に打ち破られる。
 両腕でガートが間に合わない。腕がきしむ。
「ぐっ―――!」
「私は書架の王、猟書家の主……私の生命を賭けるのは此処ではないが……この拳が貴様を砕けないとでも思ったか!」
 拳のスピードは凄まじく、連打の勢いは怒涛の滝のごとく。それでいて、蹴撃は時折剃刀の如き鋭さで持って名捨の覇気とオーラの防御を切り裂く。

 その蔵書の中に含まれるのはきっと、名だたる兵法家のものもあるのだろう。当然、格闘に関する者も。
 だからこそ、名捨は目を見開く。
 その瞳は圧倒的な武力を前にしても些かも陰りを見せない。
 放たれた拳。その拳を真っ向から捉える。覇気とオーラの力もない。その間隙を縫う用にして、カウンターの頭突きが炸裂する。
「いてててて……ッ、がまんがまん。言ったろ?」
 名捨の額が割れる。
 血が吹き出すが、それは書架の王である『ブックドミネーター』もまた同様である。噴き出す赤き鮮血が、その一撃の凄まじさを物語っている。
 カウンターで放たれるのが拳や蹴りだけではないことを名捨はその身を持って、『ブックドミネーター』へと知らしめたのだ!

「そこはオレの間合いってなッ!」
「……確かに、ここはお前の間合いだ、だが―――!」
 飛翔する『ブックドミネーター』。その姿はすぐに空の彼方へと消えるが、その背を追うのは名捨もまた同じである。
 空中浮遊の力によって、名捨と『ブックドミネーター』のドッグファイトの如き空中戦が始まる。
 互いに互いの間合いはすでにあの拳のやり取りで知れたもの。
 故に、先にこの間合に順応し、相手の拳を放つタイミング、スピードを完全把握したのは―――。

「んじゃな。―あばよッ!」
 名捨の陸断(リクダチ)が炸裂する。
 それは蹴撃の極地。その一撃はあらゆるものを、大地であったとしても引き裂くほどの一撃。
 カウンター気味に互いの蹴撃が交錯し、一瞬の攻防を制した名捨の蹴りが『ブックドミネーター』の体を捉え、大地へと失墜させる。
 激しい轟音が響き渡り、絶対零度の凍結世界が抉れ『ブックドミネーター』が倒れ伏す。

 それを空より見下ろし名捨は荒い呼気を整えながら、己の拳、蹴りの凄まじさを誇るように言うのだ。
「どーよ」
 間違いなく、その徒手空拳が圧倒的蔵書量を上回った瞬間であった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セレシェイラ・フロレセール
思考までもが書架の王と化しているのか
ならば何度でも『六番目の猟兵』たる我々が相手をしよう

はて、どんなオブリビオンが出てくることやら
思えばたくさんのオブリビオンと対峙したものだね
最近はめっきりやらなくなったけどわたしの原点たる防御方法で先制の対処をしよう
魔力を込めた桜の硝子ペンで桜の魔法陣を描く
そこへ炎、水、土、氷、雷、光、闇、毒すべての属性魔法を詠唱し乗せよう
八つの防御魔法を重ね、自身を守る壁を綴る
わたしの桜、鮮やかな八色に輝け
相手の攻撃が途切れるまで根比べだ
絶えず詠唱を重ねて乗り切る

次は此方の番だね
全力で構築した魔法を綴ろう
これはキミに送る葬送の戯曲
そう、何度でもわたしたちはキミに挑むよ



 叩きつけられた書架の王『ブックドミネーター』が大地より立ち上がる。
 猟兵の一撃は凄まじく、まさしく必殺の一撃であった。けれど、仮にも猟書家の主である『ブックドミネーター』は立ち上がってくる。
 その全身を覆っていた時間凍結氷結晶がひび割れ、剥離していく。がらがらと音を立てる蒼氷が砕け散り、その手に集まる。
 それこそが『ブックドミネーター』の蒼氷復活。過去の化身たるオブリビオンを復活させる凄まじき力。
「猟兵……その力は、個として全てに勝るものではない。猟兵の真価は単体の力の強さではない別の所にある。ならば」
 その手に集まった蒼氷がこぶし大に変化する。さらにこぶし大であった蒼氷が徐々に大きさを増していく……それは人の大きさを越え、巨人の大きさをも越えた。
「個の力で全てを押し潰せ、帝竜ヴァルギリオス」
 咆哮が響き渡る。それは群竜大陸ににて、帝竜戦役を引き起こしたオブリビオン・フォーミュラ。その力の再現が、今まさにブックドミネーターによって引き起こされる。それは仮初の力であったかもしれない。けれど、その攻撃力は個にして最大。

 これまで猟兵たちが出会った中で最高の攻撃力を誇った存在であろう。
 炎と水と雷の尾から放たれる閃光がほとばしり、土と氷と毒の鱗が悍ましい音を響き渡らせる。
 広げた光と闇の翼が羽ばたき、超強化された力の奔流が猟兵を襲う。

「思考までもが書架の王と化しているのか。ならば何度でも『六番目の猟兵』たる我々が相手をしよう」
 セレシェイラ・フロレセール(桜綴・f25838)は帝竜ヴァルギリスの威容を目の前にしても怯むことはなかった。
 思い返せば、セレシェイラもそうであるが、猟兵たちは数多くのオブリビオン……過去の化身と対峙してきた。
 その経験は、彼等の力を強めることもなったし、数多の敵を乗り越えてきたという証でもある。それ故に帝竜ヴァルギリスと言えど、セレシェイラは怯む理由にはならなかった。

 光と闇の翼が放つ力の奔流と炎と水と雷の尾が迸らせる光はセレシェイラの周囲を崩壊へと導く。絶対零度の凍結世界が砕けていく。
 そんな中、セレシェイラのが桜の硝子ペンが桜の魔法陣を描く。猟書家であるブックドミネーターの力は凄まじい。
 けれど、セレシェイラは綴る。綴った桜の魔法陣に炎、水、土、氷、雷、闇、毒……あらゆる全ての属性魔法を詠唱し、上乗せする。
「帝竜ヴァルギリスはたしかに手強い敵さ。けれどね―――もうわたし達は知っているんだよ。ヴァルギリスがどんな苛烈な攻撃を仕掛けてくるか。様々な属性で自身を強化して攻撃してくることだってね」
 八つの防御魔法陣が展開される。
 光の奔流が三つの魔法陣を打ち砕いた。引き裂かれ、崩れ落ちていく桜の魔法陣。綴る桜の硝子ペンの先が震えるほどの強力な一撃。

「わたしの桜、鮮やかな八色に輝け」
 綴る。綴る。セレシェイラの魔法は綴られ続ける。どれだけの超強化であろうとも、ヴァルギリスには、それだけのデメリットが存在する。
 そう、呪縛、流血、毒……そのいずれかの超強化のデメリットが、必ず帝竜ヴァルギリスを蝕む。
 ならばこれは、根比べだ。ヴァルギリスの力が途切れるのが先か、セレシェイラの紡いだ八つの防御魔法陣が砕けるのが先か。

 限界はいつだってそこにある。
 けれど、いつだって限界の先まで足を踏み入れてきたからこそ、今見える光景がある。どれほど強大な力を持っていようとも、たゆまぬ歩みが紡ぐ力が連綿と重ねられて、セレシェイラは此処まで来たのだ。
 五つ目の魔法陣が砕ける。硝子が割れるようにひび割れ、砕けて散った。
「これがわたしの原点。誰かを護る。護る。護るための防御方法……!」
 それはセレシェイラが持つ原点。
 護るための力。それが今まさに立ち返ることによってセレシェイラ自身を護る。
 七つ目の魔法陣が砕けた瞬間―――。

 ヴァルギリスの身体が蒼氷となって砕けて消える。
 それは、絶対とも思われた『ブックドミネーター』のユーベルコードが途切れた主観だった。
「根比べはわたしの勝ちのようだ。次は此方の番だね」
 セレシェイラのユーベルコードが発動する。
 桜の魔法陣から千に近い多重魔法陣が展開される。そこから放たれるは千にも及ぶ魔法光線。もはや、魔法光線と呼ぶにはあまりにも凄まじき光景。
 桜色が絶対氷結の世界を染め上げていく。
「桜の魔法を綴る―――これはキミに送る葬送の戯曲」
 桜の硝子ペンが宙に舞うように紡がれる。掲げた手が、セレシェイラの桜色の瞳が、ブックドミネーターを捉えた瞬間、魔法光線の雨が全天を覆い、放たれる。

 幾条もの光線が束ねられ、ブックドミネーターを穿つ。
 これこそが、強大なる敵を、オブリビオン・フォーミュラでさえも打倒してきたセレシェイラたち、猟兵の軌跡。
「そう、何度でもわたしたちはキミに挑むよ」
 それがどんなに困難で険しい道なのだとしても、セレシェイラは前を向いて歩むことだろう。
 猟兵とは個としての力を誇示するものではない。
 たゆまぬままに道を歩み続ける者であるのだから―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

姫川・芙美子
正義の味方とは正義そのものにあらず。力無き人々の正義に力を貸す者。
迷いは捨てて戦いに集中します。
「黒いセーラー服」を護符に変え【結界術】【拠点防御】で障壁を展開。
更に「鬼髪」「霊毛襟巻」を伸ばして全身を覆い【武器受け】、三重の防御壁とします。強敵には容易く突破されてきました。時間稼ぎ程度に考えましょう。
稼いだ時間で敵の動きを見極め、攻撃される瞬間に「鬼足」の強靭な脚力で【ジャンプ】し距離を取り回避。

防御壁と自身に気を引き付け、敵の足元に私の影…「影僕」を残しておきます。
足元から【鬼包み】発動。回復を封じ動きを止めさせます。
【ダッシュ】し再度距離を詰め「鬼手」の【怪力】の鉤爪で切り裂きます。



 桜色の魔法光線が全天を覆う雨の如きユーベルコードを綴る。
 その軌跡は書架の王『ブックドミネーター』の身体を撃ち、穿ち、灼く。けれど、猟書家の主たる『ブックドミネーター』の口がだれにも聞き取れぬ零時間詠唱を紡ぎ、その猟兵に刻み込まれた傷跡を癒やす。
「時間を操るとは、何も徒に時を停止させるだけではない―――本来時間凍結とはこう使う!」
 消耗していることは明らかである。
 けれど、先行した猟兵たちの攻撃の傷跡は完全に塞がれてしまっている。
 それは驚愕に値する現実であった。あれだけのユーベルコードの一撃、雨の如き砲撃を受けてもなお、書架の王『ブックドミネーター』は立ち上がってくる。

 それは猟書家の主という事実を差し置いても十分すぎるほどの脅威を猟兵たちに様々と見せつけた。
 けれど、猟兵たちは、姫川・芙美子(鬼子・f28908)は怯むことはない。恐れおののくこともない。
「正義の味方とは正義そのものにあらず。力無き人々の正義に力を貸す者」
 芙美子の中に生じた迷い。
 それは道の半ばで必ず生じるものであろう。迷わない者などいない。迷って道を違えない者が正しいのではない。
 違えた道であっても、そこから元の正道へと戻ることができる者こそが、正しく力を振るう者であるのだから。

 故に、芙美子は迷うことなく絶対零度の凍結世界を駆け抜ける。
 黒いセーラー服が護符へと変じ、彼女の周囲を結界術によって拠点の如き防御招聘を展開する。
「何度私の前に来ようが無駄だ、猟兵。私は私の生命を賭けるべき戦いを見定めている。故に、容易く私を抜けると思うな」
 放たれる蒼氷によって強化された拳が芙美子の防御障壁を砕く。それはガラスが砕けるが如き一撃であった。
 だが、防御障壁だけで終わるものではない。彼女の鬼髪が全身を覆い、さらに霊毛襟巻が包み込む。三重の防御。
 芙美子にはわかっていた。これではブックドミネーターの拳の一撃を防ぎ切れることはないと。

「強敵には容易く突破されてきました……これは時間稼ぎ程度のもの!」
 鬼の封印された強靭な両足が凍結世界の大地を蹴り上げ、芙美子の身体を空高く舞い上げる。もしも、判断が一瞬でも遅ければ、ブックドミネーターの拳が彼女の胴を貫いていただろう。
 ギリギリの攻防。いや、芙美子が圧されている。圧倒されていると言ってもいい。オウガ・オリジンが変じた『ブックドミネーター』と言えど、書架の王を名乗るだけはある。圧倒的な攻撃力。
 だが、そこが落とし穴である。
「強敵故に、最も陥りやすい―――そこです!」
 そう、今まで芙美子が立ち、今まさに蹴った大地。そこにブックドミネーターは拳を叩き込んだ。

 次の瞬間、本来ならばあるはずのない芙美子の影がいつまでも残り続ける大地がぐるりと『ブックドミネーター』の身体を包み込む。
「貴方も一緒に封じます」
 それは影僕。あらゆる秩序を無効化する妖怪『混沌』が封印された影が『ブックドミネーター』の体にまとわりつき捕縛する。
 それは『ブックドミネーター』の持つユーベルコード『時間凍結』の力を封じる。この回復手段がなくなるだけでも後続の猟兵たちの戦いが楽になるだろう。そう長くは持たすことはできないが、それでも。

「未だ迷ってばかりいる私ですが、それでも―――!」
 鬼包み(オクルミ)によって、動きとユーベルコードを封じられた『ブックドミネーター』へと芙美子は駆ける。
 その鬼の封じられた手が鉤爪の如き鋭さを閃かせ、ブックドミネーターの体を引き裂く。
 その一撃は確かに刻み込まれ、再び時間凍結によって回復させる暇を与えない。
 自分は正義の見方である。
 そうあるべき、という強迫観念に負われている。けれど、幾度の戦場を、戦いを経て彼女の中の『そうあるべき』は常に迷いにさらされている。
 それが成長というものであるのならば、正しく、芙美子は成長しているのだろう。

 鉤爪の一撃が、その成長の証であるように深々と『ブックドミネーター』に刻み込まれたのであった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャム・ジアム
お兄さん/f26725と
共にアドリブ歓迎

彼の姿を借りた、いいえ『成った』のね
んー?覚えがある声ね。あら、ジアムはいつもジアムよ?いいわ、途轍もない相手よ。やりましょう

楽しそうな獣。凄いけれど……これはどう?
彼が気を引く間に『謎のレモン』の蔦に護り現で【オーラ防御】を施し
一帯に張り巡らせる
目黒さんに煌めく溶液を託し、蔦に纏わせて。
合図で引き上げ【捕縛、毒使いも重ねて力を奪うわ】
彼の戦術には無いでしょ

癒しの力……聞いた通りね。本当に厄介、でもやれる事を尽くすの。そう、ジアムの全部。
『万象の牙』を放ち
獣が討たれたら毒蔦を即座に王へと収束
念動力で針を深く深く打ち込み【破魔と浄化】の力を
貴女に、届かせる


本・三六
そこの彼女/f26053と

オウガ・オリジン……はじまりのアリス
どんな姿でも君は君なんだろう
思い切りやり合おう、全力で。

なにか違う気がするけれど君、いつかの彼女じゃないか。奇遇だね。じゃ、頼むよ?

それがボク用の相手かい?確かに手強そうだ。
『道敷』を一齧りして【ドーピング】、
召喚と同時に相棒たちも呼んで、まず数の優位を作り、手の内を見せて貰おう
遠距離には『黒賽子』近接には『鉄芥』の【怪力と咄嗟の一撃】で対処
重い一撃だ。だが、最強の彼の方がっ!力強かったね

って、あれは!ああ、獣は回復しないのか。妙に彼女らしいな。
それならやる事はひとつ。
そこの君!
貰ったチャンスを活かし、懐に飛びこみ【力溜めの一撃】を



 猟書家の主、書架の王『ブックドミネーター』。
 それはすでに討ち果たされた者であるが、オウガ・オリジンの持つ現実改変ユーベルコードによってオウガ・オリジン自身が変身した姿である。
 本物ではないけれど、偽物が本物になることのできない道理などない。それほどまでに凄まじき力が現実改変ユーベルコードである。
 思考も、能力も、経験も。
 何もかもが『ブックドミネーター』と同一である。
 猟兵の一撃によって刻まれた鉤爪の傷跡か溢れる時間凍結氷結晶。その蒼氷が『ブックドミネーター』の手のひらの上に集まっていく。

「時間凍結を封じたか、猟兵。小賢しい真似を―――いや、その一手、見事である。ここで畳み掛けに来るか」
『ブックドミネーター』の赤き瞳が捉えるのは一組の猟兵だった。
 数多の猟兵がいる以上、その姿は千差万別。あらゆる世界が存在するのと同じように、組み合わせもまた無限であろう。
 その一組―――ジャム・ジアム(はりの子・f26053)と本・三六(ぐーたらオーナー・f26725)は、どこかの世界ですれ違った線と線が結んだ一つの点であった。

「オウガ・オリジン……はじまりのアリス。どんな姿でも君は君なんだろう。思い切りやり合おう、全力で……―――ん?」
「彼の姿を借りた、いいえ『成った』のね……―――んー? 覚えがある声ね」
 オウガ・オリジンとの戦い―――否、変じた『ブックドミネーター』との戦いに駆けつけた猟兵同士の視線が交錯する。
 それは些細な接点であったのかも知れない。いつかのどこかの接点。たった一度だけの共闘であったのかもしれないけれど、それはこの戦いの前に意味のある共闘であったのかもしれない。
「何か違う気がするけれど君、いつかの彼女じゃないか。奇遇だね」
 三六にとって、覚えのある声ではあったものの、あのときとは違う出で立ちのジアムを見て僅かに首をかしげる。合っていただろうか、と確認するような言葉。奇遇、と言葉を放ったのは、本当に偶然であったからだろう。

「あら、ジアムはいつもジアムよ」
 ジアムにとって自身の姿は変われど、その本質は変わらない。いつだって自分は自分であるという確固たるものがあるがゆえの言葉。そこに彼女の変わらぬ意志が介在し、互いの視線だけが交錯する。
 手はずも何もない。段取りもない。けれど、あのときの共闘は、互いの呼吸を覚えるには十分なものであった。
 書架の王『ブックドミネーター』の蒼氷がこぶし大から、姿を変ずる。
「数で圧する。血の獣は飢えている。飢えた獣はあらゆるものを貪り尽くす」
 放たれた蒼氷の数々が血で出来た群狼となって解き放たれる。それは蒼氷によって復活したオブリビオン。生み出されたオブリビオンは氷結世界の大地を疾走する。

「それがボク用の相手かい? 確かに手強そうだ……じゃ、頼むよ?」
 三六が手にした魔法の果実にかじりつく。力と癒やしを齎す果実は、その身の中を駆け巡っていく。
 バトルキャラクターズたちがわらわらと三六のユーベルコードによって呼び出される。群狼である血の狼たちは、群狼であるがゆえに数は圧倒的だ。その数の優位の均衡を保つのが先決だと判断したのだ。
「いいわ。途轍もない相手よ。やりましょう―――楽しそうな獣。凄いけれど……これはどう?」
 バトルキャラクターたちと血の群狼たちがぶつかり合う。互いに互いを食い合うような戦い。
 それを尻目にジアムの手にするはレモン型の謎の豆。御伽噺の如き魔法の豆の木がまるで投網の如く護り現の力を受けて強靭なる蔦となって張り巡らせる。

「お願い、目黒さん!」
 煌めく溶液を託し、鳥型ロボが飛ぶ。謎のレモンの蔦に這う溶液が猛毒と変質して血の群狼たちを捕縛し引き上げる。
「やるね―――これはボクも負けてはいられないな!」
 機械の鈍器が振るわれ、血の群狼の体を強かに打ち付ける。次々と霧散し消えていくオブリビオンたる血の群狼たち。放たれる鈍色のダイスから放たれる光線が穿ち貫き、蒼氷によって生み出された群狼たちを討ち果たす。
「これで―――あっ!」

 ジアムが叫ぶ先にあったのは、『ブックドミネーター』が先行した猟兵から受けたユーベルコードによって封じられた力を解放した瞬間だった。
「賽の目は振り出しだ。私の時間凍結の力は―――」
 させぬとばかりに飛び出す三六のゲームキャラクター。その額に刻印された数字はそのまま三六の技量そのもの。
 その拳の一撃が時間凍結によって回復しようとする『ブックドミネーター』を阻害する。
 だが『ブックドミネーター』とて猟書家の主である。その振るわれる拳は凄まじく、ゲームキャラクターの胴を吹き飛ばすほどの威力。
「重い一撃だ。だが、最強の彼の方がっ! 力強かったね!」
 振るわれる鈍器の一撃。
 みしりと『ブックドミネーター』の腕がきしむ。

「時間は稼げたかい、そこの君!」
 三六が叫ぶ。血の群狼たちの傷は時間凍結では癒えることはない。それは、零時間詠唱による詠唱故に、『ブックドミネーター』以外はだれも聞こえることがないからだ。
 そして、その回復の力の凄まじさは言うまでもない。故に三六が取れる行動はまさに、時間稼ぎだけだった。
「癒やしの力……聞いたとおりね。本当に厄介……でも、やれることを尽くすの。そ、ジアムの全部!」
 ジアムの言葉と共に空へと浮かぶは万象の牙(スピリトゥアーレ)。万象の精霊の力を受けて燦然と輝く無数の針たちが空へと舞い上がり、一斉に放たれる。

 溶液の染み込んだ蔦が『ブックドミネーター』の体を締め付ける。
「貴女に、届かせる」
 放たれた万象の牙が念動力と共に破魔と浄化の力を深々とブックドミネーターへと打ち込む。
 だが、それでは足りない。ジアムだけでは、きっとその針の一撃は届かなかっただろう。ジアムもそれは理解していた。

 けれど、ジアムは今一人ではない。
 一人の時は一人の戦いを。二人の時は二人の戦いを。
 それをすでにジアムは知っていたし、三六は理解していた。放たれた針の一撃は真芯を捉えていない。ならば―――。
「もらったチャンスは活かさないとね―――!」
 懐へと飛び込む三六。手にするは鉄塊の如き鈍器、鉄芥。振るった一撃がジアムの放った万象の牙へと放たれ、その切っ先を『ブックドミネーター』の真芯へと打ち込む。
 渾身の力を籠めた一撃は、『ブックドミネーター』の皮を突き破り、オウガ・オリジンの核へと届かせる。

 そこまで届けば、きっと如何なる時間凍結であっても癒やし切ることはできないだろう。
 先行した猟兵が紡ぎ、ジアムと三六が楔を打ち込む。そして、後に続く猟兵たちが鎹となって、必ずや『ブックドミネーター』へと変じたオウガ・オリジンを打ち倒すだろう。
 それを確信して、ジアムと三六は『ブックドミネーター』の咆哮の前から離脱していくのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【梓(f25851)と】
へぇ、あの王様ウサギってもう死んだ筈だけど
こんな形で戦える機会が来るなんてね

Duoを構え、敵と真正面からガチンコ勝負
二枚の刃による2回攻撃を繰り出す
確かに斬っている手応えはあるのに
瞬時に傷が塞がっていく気がする
なるほど、これが時間凍結による回復か
それでも構わず攻撃し続け
敵の攻撃は武器受けや激痛耐性で耐える
真の目的はただの時間稼ぎなのだから

さぁ、準備運動は終わりだよ
梓のUCによって敵の動きを封じたら俺もUC発動
速攻で仕留める為にこの瞬間を待っていたんだ
鎖から抜け出す時間も与えないよ
武器をEmperorに持ち替え大きく振り
力溜めた一撃を叩きつけて吹き飛ばす


乱獅子・梓
【綾(f02235)と】
自身の敵である猟書家達の姿にも成り代われるなんざ
オウガ・オリジンの力は何でもありだな…

焔!綾の援護をしろ!
焔を成竜に変身させ接敵
視界を全て覆うほどの広範囲のブレス攻撃を浴びせる
死なない限り即座に回復するんだろうが想定内
本当の狙いは、綾と焔が敵の注意を引いている隙に
使い魔の颯に仔竜の零を乗せ
目立たないように高速で接敵させる事

…今だ、零!
敵の死角から零がブレス攻撃を浴びせUC発動
氷の鎖で縛り上げ、動きと回復手段を封じる
悪いが、氷を使えるのはお前だけじゃないんだな
さぁ、お膳立てはしてやったぞ綾!

最後は敵が体制を立て直す前に
寝こけた綾を回収して
焔の背に乗り早々に撤収



 穿たれた牙の一撃は、その真芯を捉えた。
 猟兵達の戦いは、続く。長く続く戦いであっても終わりがあるのであれば、その時まで止まることはない。
 一人の力で敵わぬほどに過去の化身たるオブリビオンは強大である。それでも果敢に戦う姿はまさに戦士そのものであったことだろう。
「―――ユーベルコードを封じ、互いの動きを即座にカバーする……確かに個としての力は私たちに及ばないであろう。だが、それでも、幾千、幾万ものオブリビオンが屠られ続けてきた事実は変わらない」
 時間凍結。
 それはオウガ・オリジンが変じた書架の王『ブックドミネーター』の持つ力であった。現実改変ユーベルコードによって得た『ブックドミネーター』の力はもちろんのこと、その意識、知識、あらゆるものが本物そのものである。
 故に、時間凍結によってその傷を癒やす力すらも再現せしめたのだ。

「へぇ、あの王様ウサギってもう死んだ筈だけど、こんな形で戦える機会が来るなんてね」
 灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は赤と黒の一対の大鎌を両手に構え、氷結世界の大地を疾走する。
 すでに時間凍結によって外傷の回復を終えた『ブックドミネーター』へと斬撃を繰り出す。
 だが、その手応えはあまりにもない。確かに切り裂いている。けれど、『ブックドミネーター』は斬られたその場から即座に回復していっているのだ。

「自身の敵である猟書家達の姿にも成り代われるなんざ、オウガ・オリジンの力はなんでもありだな……」
 乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)の言葉はまさにそのとおりであった。現実改変ユーベルコード。その力の凄まじさは、現実を改変するほどの力を持っているがゆえに、猟書家たちに狙われたのだろう。
 その力は未だ十全と言えないはずであるのに、この凄まじさである。
 成竜となった焔と共に梓が『ブックドミネーター』へと迫る。斬撃を繰り出している綾の上空から、綾が後退した瞬間に広範囲のブレスを浴びせかける。
 時間凍結によって即座に回復されてしまうことは織り込み済みである。回復手段に加え、『ブックドミネーター』の拳の一撃は凄まじい。

 それは先行した猟兵達の戦いを見ても明らかだ。綾が一撃でももらってしまえば、それだけで作戦は瓦解してしまう。
 ゆえに綾が立ち回る時間を稼ぐために敢えて広範囲のブレスで『ブックドミネーター』を足止めするのだ。
「死なない限り即座に回復するんだろうが、想定内だよ!」
 炎のブレスの反対側から羽ばたき凄まじきい勢いで高速飛翔する闇鳥『颯』がその背に負うは氷竜『零』。
 ブレスは『ブックドミネーター』を足止めする目的もあったが、目立たないように『零』を接敵させる目的もあったのだ。
「―――大仰な炎で私の目を眩ませてからの、背後からの強襲……視えているぞ、猟兵!」

『ブックドミネーター』の赤い瞳が輝く。
 その瞳は梓と綾の作戦を見抜いていた。前面を覆う炎。そして、背後からの強襲。それに対応できずに何が書架の王か。
「―――だよね。わかりきっていることだよ、けどね」
 炎の中から綾が突っ込む。背面に気を取られた『ブックドミネーター』の背後を斬りつける一対の大鎌。
 その一撃はまさに正しく、時間稼ぎ。
「……今だ、零!」
 それは絶対零度(アブソリュートゼロ)。成竜となった零から放たれる絶対零度のブレス。ブックドミネーターの体を捕縛し、そのユーベルコードを封じるユーベルコード。
 氷の鎖が『ブックドミネーター』の体を拘束し、動きを封じる。

「悪いが、氷を使えるのはお前だけじゃないんだな。さぁ、お膳立てはしてやったぞ綾!」
 その言葉を受けて、綾の瞳が輝く。
「さぁ、準備運動は終わりだよ―――楽しい殺し合いの時間も、もうすぐおしまい」
 綾の体の中でヴァンパイアの血が加速する。
 それこそが、エフェメラル・タイラント。あらゆる能力が6倍へと昇華される。即座にユーベルコードで回復されるのならば、ユーベルコードを封じればいい。
 封じることのできる時間は限られているであろうが、速攻で片付けるだけの時間を得られればいい。
 それだけの能力を今、綾は有している。大鎌を投げ捨て、手にするはハルバード。重さを増した一撃は、凄まじき勢いで持って書架の王へと振るわれる。

「鎖から抜け出す時間も与えないよ」
 轟音の如き一撃が『ブックドミネーター』を吹き飛ばす。咄嗟にガードされてしまっているが、それでもあの一撃を受けて吹き飛ばされてしまえば、態勢を整えるのは難しいだろう。
 さらに梓のユーベルコードによってユーベルコードを封じられているのだ。そう簡単に他の猟兵達の追撃を振り切れるはずがない。

「―――……此処まで、か。梓。後は―――」
 頼んだ、と最後までは言えなかった。昏睡状態へと陥った綾の身体が大地に伏す前に梓が焔の背に乗って抱えて飛び退る。
「書架の王……やはりとんでもないな……まったく。こっちの気も知らないで、良く寝てる」
 書架の王『ブックドミネーター』へと打撃を与え、梓と綾は戦線を離脱する。ここまで消耗させられれば、この後の続く戦いも猟兵に優勢に働くことだろう。
 長かった迷宮災厄戦も終結が近い。
 それを思えば、今は眠る綾の顔も梓の腕の中で心做しか安らかなる物に視えたかも知れない―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
さて……これが最後の一手となるか否か…
…ま、念のため倒させてもらうよ…

…まずは術式装填銃【アヌエヌエ】を牽制気味に撃ち込んで様子見だね…
…書架の王の攻撃はオーラ防御による障壁で防ぐとしようか……
……なるほど、確かにすぐに回復されるな…となれば…
…遅発連動術式【クロノス】により爆破術式を刻んだ印のついた銃弾を書架の王の喉元に向けて連射…
…喉に当たれば詠唱を阻害出来る…そして、それに対応されても『至近距離での連続爆発』により聴覚を麻痺させて自身の詠唱を聴き取れないようにする…
…この機会を逃しはしない…重奏強化術式【エコー】で強化した【尽きる事なき暴食の大火】を発動…存在ごと大火の燃料にするよ…



 現実改変ユーベルコードの力は凄まじい。
 今はもう亡き書架の王『ブックドミネーター』の姿形、能力、思考までもが再現され、姿を変じることができる。
 今のオウガ・オリジンは、オウガ・オリジンでありながら書架の王『ブックドミネーター』でもあるのだ。
 故に、凄まじき力『時間凍結』によって、猟兵たちから与えられた傷は即座に癒える。そのはずだった。
 しかし、猟兵たちはすでに『ブックドミネーター』を討ち果たしている。どれだけ強大なる力であったとしても、それを乗り越えられない道理など猟兵にはどこにもない。
 あるのは己たちが連綿と紡いできた戦果と経験の結果だけだ。
「時間凍結に狙いを絞ってきているな……私のユーベルコードが既に割れているのが口惜しいところであるが」
 猟兵達によって即座に封じされてきた時間凍結のユーベルコードを縛る力を振りほどき、その刻まれた傷を癒そうと『ブックドミネーター』にしか聞こえぬはずの零時間詠唱が止まる。

「―――詠唱をさせぬための連撃……!」
 次々と打ち込まれてくる術式の籠められた弾丸。それは牽制であることがわかる連射速度であったが、詠唱の暇を与えないとする意図が見て取られた。
 その弾丸の全てはメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)の持つ術式装填銃『アヌエヌエ』から放たれていた。
 矢継ぎ早に放たれる弾丸。回転式であるがゆえの連射速度は、次々と『ブックドミネーター』を狙い、時間凍結をさせない。

「さて……これが最後の一手となるか否か……ま、念のために倒させてもらうよ」
 メンカルは次々と術式の籠められた弾丸を放つ。
 当たらなくてもいい。ただ牽制に成ればいいのだ。相手は『ブックドミネーター』。必ずユーベルコードで先行した猟兵達のから受けた傷を癒そうとする。
 それほどまにここまで紡がれてきた攻撃の数々で消耗しているのだ。ならば、、そこに付け入る。
 術式が抜けた薬莢を氷結世界の地面に落としながら、即座に装填し放ち続ける。
「術式銃―――なるほど、限られた数であるが連射の速度は上がる。術式を展開する手間を省いたというわけか」
 肉薄する『ブックドミネーター』。すでに牽制の射撃は終えている。故に、そのリロードの瞬間を狙って『ブックドミネーター』は己の回復よりも先に、猟兵であるメンカルの排除を優先したのだ。

 放たれる拳。
 その一撃の重さもしっている。オーラ防御で防ぎきれぬものであることも。ガラスを割るようにして『ブックドミネーター』の拳がメンカルに迫る。
 だが、リロードを終えて放たれた弾丸が『ブックドミネーター』の拳の軌道を反らす。
「―――躱さぬのではなく軌道を反らすか。だが、いつまでそれができるか!」
 即座に拳に打ち込まれた銃創が癒やされている。
 それが時間凍結のユーベルコードの凄まじさである。気を抜いた瞬間に、完全回復した拳がメンカルを捉えれば、猟兵であるメンカルと言えどひとたまりもない。

「……なるほど、たしかにすぐに回復されるな……となれば」
 リボルバーの銃口が今までの牽制の射撃から明らかに変る。それはこれまで牽制の射撃をしていたリズムを狂わすものであった。
 放たれた弾丸が『ブックドミネーター』の喉を穿つ。さらに遅発連動術式クロノスによって組み込まれた爆破術式が喉で爆ぜる。
 それは『ブックドミネーター』の零時間詠唱の要である喉を潰す。
「詠唱する以上、喉に当たるのは致命的……例え回復されたとしても、阻害はできる……」
 さらに続けて打ち込まれる同じ弾丸。
 術式の刻まれた弾丸は、空中で遅れて弾け続ける。連鎖し、爆導索のごとく『ブックドミネーター』の周囲を爆散し続ける弾丸の術式は、それだけで己の声すらも届かく轟音響く世界に様変わりする。

 それこそがメンカルの狙いである。
 時間凍結によって回復されるのであれば、その発動を徹底的に邪魔をする。そうしれば、メンカルの持つユーベルコードの詠唱の時間をも稼ぐことができるのだ。
「……この機会を逃しはしない……重奏強化術式『エコー』展開」
 彼女の周囲に転換される重奏強化の術式の数々。多重に発動され、その力の全てが重複していく。連鎖し、次々と加速していく力。
「貪欲なる炎よ、灯れ、喰らえ。汝は焦熱、汝は劫火。魔女が望むは灼熱をも焼く終なる焔」
 それは、尽きる事なき暴食の大火(グラトニー・フレイム)であった。あらゆるもの、如何なるものをも燃料にして燃え続ける白色の炎。

 重奏の強化術式によって編み上げられた力が、その白色の炎を極大なるものへと変貌させる。
「さあ、その存在毎、大火の燃料となるといい……」
 放たれた白色の炎は、氷結世界の全てを飲み込まんとするように放たれ、絶対零度の世界にあってなお、燃え盛る篝火として燃え続けるのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

卜二一・クロノ
時間操作の技がオウガ・オリジンに伝播するとは厄介な。
まあいい。我はただ、為すべきことを為すのみだ。

【騙し討ち】、軽機関銃を持っているので勘違いするかも知れぬが、主武器は糸と髪だ【罠使い】。
奴は我を害するために、奴は必ず我に近づくことになる
その一撃は【激痛耐性】【オーラ防御】【武器受け】で耐え凌ぐしかあるまい
我が糸あるいは髪より繰り出される【カウンター】および【捨て身の一撃】にユーベルコード【神罰・時間操作の代償】を載せる
ただの一撃、それだけで【神罰】は執行される

これまで当然のように使えていた、頼りとする時間操作が容易に使えなくなる中、どれほどの事ができるのか、見定めさせてもらおうぞ



 極大なる白色炎がオウガ・オリジンの変じた書架の王『ブックドミネーター』を灼く。その一撃は凄まじく、あらゆるものを燃料として燃え続ける。
 それは絶対零度の氷結世界であったとしても代わりはない。だが、さりとて猟書家の主であり、書架の王である『ブックドミネーター』がここで終わるわけがない。
 時間凍結氷結晶が白色の炎を吹き飛ばし、その中から現れるは満身創痍たる『ブックドミネーター』の姿。
「ハァ―――ッ! ハァッ! ぐ……猟兵、め……私の時間凍結にもう対応してきてるとは―――」
 その赤き瞳が何かを察知して、その場から飛び退る。氷結世界の地面に穿たれる弾丸の痕。

 銃撃を放った者へと赤い瞳が向けられる。
 互いの瞳が交錯し、その先にあった卜二一・クロノ(時の守り手・f27842)の瞳は冷ややかなものであった。
「時の流れとは徒に乱してはならない。我に予定外の編み直しを強いたこと―――その罪は、厳罰をもって処す」
 手にした機関銃の銃口が『ブックドミネーター』を狙う。放たれた弾丸が次々と大地を穿つ。
『ブックドミネーター』にとって、この程度の攻撃を躱すことは容易い。その証拠にこれまで追い詰められてきた猟兵たちの攻撃を癒やす時間を得たように不敵に笑って―――その笑みが凍りつく。

「―――何?」
 ユーベルコードが使えない。時間凍結。それは零時間詠唱によって生み出される絶大なる力。『ブックドミネーター』以外に知覚されることのない声によって己の身体を即座に回復せしめる力。
 けれど、その力は幾度も何重にも渡って猟兵たちが封をしてきた。その積み重ねが今、結晶となって成されていた。
「ならば―――!」
 その全身を時間凍結氷結晶が覆い尽くす。蒼氷の如きそれが『ブックドミネーター』の力を増す。
 目の前の猟兵、トニーへと肉薄し、その肉体を穿ち屠れば、このユーベルコードを縛る力も打ち破るだけの時間が得られる。

「我を害そうとしたな。それはわかっていた」
 放たれた『ブックドミネーター』の拳の一撃。オーラが砕ける音がする。その拳が放たれれば、トニーの身体も多少の傷で済むはずはない。
 故に、彼女の本来の武器である混沌から紡がれた時の糸と長い髪が網目状に編み込まれ、その拳を受け止める。
 ぎしりと身体のあちこちが軋む。それだけの一撃であった。
「貴様―――そうか、貴様もまた!」
『ブックドミネーター』の驚愕に見開かれた瞳がトニーの瞳と交錯する。何故もっと早く気が付かなかったのか。
 それが『ブックドミネーター』の誤算であった。

「この試練に耐えられたら―――否、我の神罰・時間操作の代償(パニッシュメント)を受けよ。これは試練ではない。我の見定める行く末である」
 それは、トニーの髪が放たれ『ブックドミネーター』の身体を撃つ一矢にして一糸の一撃。
 たった一糸。それだけでよかった。トニーの放つユーベルコードの一撃は、それだけで『神罰』は執行される。

「まさか―――! これが―――!」
 時間凍結が使えない。数多の猟兵たちが封じてきたユーベルコード。その全てが上乗せされるようにトニーのユーベルコードが蓋をする。
 時間凍結。
 それが『ブックドミネーター』が猟書家の主であり、書架の王たる所以。その絶対たる力の源泉を今、トニーが封じたのだ。

「頼りとする時間操作が容易に使えなくなる中、どれほどの事ができるのか……見定めさせてもらおうぞ」
 そして、『神罰』とは、罪に対する罰である。
 神の裁定は此処に下った。

 これまで時間操作によって回復して傷が一斉に『ブックドミネーター』を襲う。全身から吹き出る血飛沫。
 背中から溢れる鉤爪の一撃。光線によって穿たれた傷跡、蹴撃の一撃が内蔵を揺らす傷み。斬撃の嵐に炎と氷が肌を痛めつける。
 針の如き一撃と巨大なる圧砕。穿たれた銃創と極大なる炎の焼け付く匂い。
 その全てが一気に『ブックドミネーター』を襲う。そのさまをトニーは高きところから見下ろす。
 俯瞰し、見下ろすのが神たる者であり、時空の守護神の一柱たる者の役目である。
 神は手を差し伸べない。手繰るは運命と時の糸のみ―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジェイムス・ドール
あはははぁ、アリス!あそびましょう!
…あ、今はブックさんか、ええと、間違えた!戦いましょう?

あらかじめ持っておいた殺戮丸鋸刃と手斧黒剣で斬りかかり、
カウンターの攻撃を受ける。
あははぁ、当たらない。楽しいねぇ!!
継戦能力、攻撃を叩き込まれながらも、激痛耐性、痛みを楽しみながら
無理くり怪力で腕を掴む。つーかまーえたッ!
『現回炎刃』自分の体の内側から、丸鋸を出しておどろかす。属性攻撃。

隠しておくの大変だった!次は私の番だねアリス!!
燃える丸鋸を、念動力回転。氷を溶かして削って、身を裂いて、傷口をえぐる。
いつまで、私は手をつないでいられるかなぁ・・・頑張ってみよう!



「時間凍結が使えない、だと―――」
 それはあまりにも大きな誤算であった。
 度重なる猟兵達による時間凍結ユーベルコードの封じ込め。それは決定的なものとなって、度重なる攻撃を無効化してきたツケが廻る。
 因果はどんなものにも存在する。因果律をどれだけ捻じ曲げようとも、必ず果てに訪れるは破滅しかない。
 故に、刻まれた猟兵達による攻撃の数々は、猟書家の主にして書架の王『ブックドミネーター』を確実に追い込みはじめていた。

「あはははぁ、アリス! あそびましょう!」
 ジェイムス・ドール(愉快な仲間の殺人鬼・f20949)の楽しげな声が絶対零度の氷結世界の国に響き渡る。
 氷結した大地を駆け抜け、一直線に書架の王『ブックドミネーター』へと迫るジェイムス。彼女にとって、目の前の『ブックドミネーター』はアリス……つまるところ、はじまりのアリスにしてはじまりのオウガたるオウガ・オリジンにしか視えていなかった。
 それ故に、殺戮丸鋸刃と手斧黒剣の両刀でもって切りかかった時まで、ジェイムスは目の前の『ブックドミネーター』はオウガ・オリジンとしてしか視えていなかった。

 それはある意味で本質を見抜く瞳であったのかもしれない。
 現実改変ユーベルコードによって姿が変じたとは言え目の前の『ブックドミネーター』はたしかにオウガ・オリジンでもあるのだから。
「戦闘狂風情が、書架の王たる私と遊ぶだと―――!」
 全身を時間凍結氷結晶によって覆い、凄まじき勢いの拳がジェイムスの胴を穿つ。
 血反吐を吐き散らしながら、ジェイムスは傷みをものともせずに笑う。
「……あ、今はブックさんか、ええと間違えました! 戦いましょう?」
 にこりと微笑む。
 その微笑みは、戦いの最中には不似合いなものであった。不気味さと底知れなさを感じさせる微笑み。血反吐を撒き散らしながら、それでも迫るジェイムスの姿は、常人であれば正気を疑うものであっただろう。

 だが、書架の王『ブックドミネーター』は猟兵とは、こういう者を言うのであると知っていた。生命の埒外にあるもの。それが猟兵である。
「生粋の戦闘者か! 恐れを知らぬ者であるがゆえに!」
 放たれる『ブックドミネーター』の拳と蹴り。その一撃一撃がジェイムスの体に致命傷を与えていく。
 それでも笑う。微笑む。笑う。微笑む。笑う。
「あははぁ、当たらない。けど、当たっちゃう! 楽しいねぇ!!」
 どれだけ拳を叩き込んでも、どれだけ蹴撃が骨を砕いても、それでもジェイムスは進む。その姿はどちらが化け物であるかわからない。
「つーかまーえたッ!!」
 抱きつくように『ブックドミネーター』へとしがみつくジェイムス。
 その微笑みは最早血に塗れ凄絶なる以外の言葉で表現するには足りない有様であった。

「痛い痛い痛いなぁあああハハハハハ!!!」
 これまで与えられた傷が瞬時に再生する。それはユーベルコード、現回炎刃(ゲンカイエンジン)の力。体から生えるようにして出現した燃えるままに高速回転した丸鋸が『ブックドミネーター』の体を抉り、刻み込む。無数の丸鋸と炎が、その傷を焼き、癒えぬ傷を『ブックドミネーター』へと刻んでいく。
「隠しておくの大変だった! 次は私の番だねアリス!」
 楽しそうに笑う。
 凄絶なる炎と刃の抱擁が、全身を覆っていた時間凍結氷結晶を溶かし、刻み、砕いていく。

 だが、このユーベルコードは諸刃の剣。
 完全に密着しているがゆえに、ジェイムスの体もまた『ブックドミネーター』の拳によって穿たれ続ける。
 その傷みは筆舌に尽くし難いものであろう。だが、その苦痛すらも楽しいと笑うのがジェイムスという猟兵である。
「楽しいねぇ! いつまで、私は手をつないでいられるかなぁ……あはははぁ! 頑張ってみよう!」
 ぞわりと、はじめて『ブックドミネーター』の全身から脂汗が吹き出る。
 この猟兵はきっと己の生命が尽きるまで、否―――尽きても尚、己を離そうとしないだろう。

 その炎が、刃が、決して『ブックドミネーター』を離さない。
 もはや、それは恐怖以外の何者でもなかった。もがき、のたうち、ジェイムスの抱擁から逃れようとする『ブックドミネーター』。
 逃れようと思って逃れるものではない。けれど、ジェイムスの腕が燃え落ちた瞬間、『ブックドミネーター』は這々の体でジェイムスより逃れ、逃走する。
「あははぁ……あーん、逃げられちゃったねぇ……でも、だいじょうぶ。たくさん遊んだものねぇ! 楽しかったねぇ! ねぇ! 楽しかったねぇ!!」
 その声はいつまでも逃走する『ブックドミネーター』の背中を置い続けるのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
そろそろ決着が近いのかな
オリジンが強大とはいえ無尽蔵の力って事はないからね

素手で戦うなら接近する必要があるはず
体の周囲を神気で覆い
攻撃を停滞もしくは遅延させ防御か回避するよ

それと使い魔の催眠術で思考を停止させよう
僅かでも停まれば狙いが甘くなるし
知識を使えなくなる間は戦闘力も下がると思うよ

初撃を凌いだら邪神の領域を使用
強化した神気で頭脳と身体を停めて石化した拳で殴ろう
石化した部分は封印の戒めのように強固になってるからね

そして全てを停める事で凍結させて攻撃
完全に石化するかもしれないけど全力を出そう

封印を抜けて分霊出すのは割りと大変ですの
一蓮托生だから助けますけど

…いたずらされても文句言えないですの



 その体は最早、猟書家の主、書架の王としての威厳とは程遠いものとなりつつあった。
 刻まれた傷の数々は、すでに数百を超えるものであった。時間凍結による完全回復。その力を封じられ、さらに駄目押しの封をされたが故に、これまでの傷も、これから負うであろう傷も癒えることはない。
 引きずる足は燃え盛り、腕はだらりと落ちている。それは猟兵の執念であったことだろう。敵を必ず穿つ。討ち果たす。
 それが世界に選ばれた戦士である猟兵の務めであり、役目。であるのであれば、この結果はある意味当然であったことだろう。
「―――まさか、ここまで私が追い詰められるとは……―――っ!」
 書架の王『ブックドミネーター』の全身が時間凍結氷結晶によって再度覆われる。それは新たなる敵―――猟兵の存在を感知し、即座に攻撃行動に移ったためだった。

 初撃で殺す。

 それが『ブックドミネーター』がたどり着いた猟兵に対する戦略であった。
 どれだけ初手を此方が取ろうとも、猟兵は必ず対処してくる。対応しない猟兵など存在しないかのように。ならば、その対応すらできぬ超スピードで―――。
「―――?」
 それは最初違和感しか感じさせなかった。
 遅い、と感じたのだ。身体が動くスピードが遅い。どれだけの傷を負っていたとしても、この遅さは異常である。そう思った瞬間、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)の声が聞こえる。
「そろそろ決着が近いのかな。オリジンが強大とはいえ、無尽蔵の力ってことはないからね……素手に頼るっていうのは、わかっていたよ。だから―――」
 そう、初手で己を倒そうとするのであれば、素手で攻撃するしかない。
 ならば、その間合いは必ず自身へと接近するほか無い。それ故に、晶は張り巡らせていたのだ。己の体に融合した半身、邪神の権能である停止と固定の力溢れる神気を。

「これは、固定、停止の力か!」
 ぐらり、と視界が歪むのを『ブックドミネーター』は感じた。それは晶のは成った使い魔の催眠術であった。
 完全に意識を催眠へと落とすことは敵わなかったが、視界を歪めることはできる。それに加えて固定と停止の権能溢れる神気の領域に合って、その拳は晶が躱すには容易いものであった。
「催眠、完全じゃないけど、効くでしょう……知識の量で戦闘力が増すっていうんなら、その知識を使えなくさせる程度には、催眠も効くってわかったし!」
 初手を封じ、拳を躱す。
 次の瞬間、晶のユーベルコードが輝く。

 邪神の領域(スタグナント・フィールド)。
 それこそが、晶のユーベルコードであり、内包する邪神の権能。
「僕が速くなったんじゃない。君が止まってただけだよ」
 周囲に溢れる神気が二人を包み込む。晶の身体が徐々に石化を始める。それは代償であったが、その代償が凄まじければ、凄まじいほどに力を増すのが猟兵の持つユーベルコードである。

 比較にならないほどの戦闘力を有した晶が放つ拳の連打は、まさに神速そのもの。石化した拳は硬く、その一撃一撃が大地を穿つ拳。
「思った以上に―――石化の速度が、はや、い―――けど!」
 けれど、ここで全力を出さない理由がない。
 今、ここで倒しきれなくても、晶は鎹になることはできる。次へとつなぎ必ず後に続く猟兵が『ブックドミネーター』をオウガ・オリジンを打倒してくれる。
 その確信があるからこそ、ここで完全なる席かも厭わない。全力を出し切った拳の連打は、『ブックドミネーター』の身体を完全に吹き飛ばし、その体に大打撃を与える。

 そして、連打を終えた晶の体は完全に石化し、拳を突き出したまま石像と化す。
 そんな体から抜け出るようにして、邪神の分霊が現れ、その体を邪神の領域へと引きずり込む。
「封印を抜けて分霊を出すのは割と大変ですええの。一蓮托生だから助けますけど……」
 邪神の分霊が嘆息する。
 まったく、と石像と化した晶の頬を指で突く。悪戯げに笑うのは、まさに邪神そのものであるからだろう。

「―――……いたずらされても文句言えないですの」

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
為すべきことを前にして、不本意な戦いかと思われますが
アリスラビリンス、A&W……二つの世界の為、騎士として阻ませていただきます

飛翔に対し肩部格納銃器を展開
●なぎ払い掃射で接近コース限定
センサーでの●情報収集で速度計測し頭部銃器の●スナイパー偏差射撃で格闘時の可動の為に結晶薄い関節部狙撃
手傷を負わせ●怪力での●盾受けで受け流し防御

やはり王と呼ばれることはあります…ですが!

UC発動、ただし駆動速度はそのまま待機

迫る書架の王の攻撃を反応速度任せに●見切り、駆動速度を急速変更する●だまし討ちで回避と同時、シールドバッシュで地に叩きつけ
関節部目掛け剣を振り下ろし

災い呼ぶその英知、打ち砕かせていただきます



 叩きつけられた拳の傷みが消えない。
 それは書架の王『ブックドミネーター』にしてみれば、あらゆる意味で想定外の事態であったことだろう。
 吹き飛ばされ、身体が絶対零度と氷結世界の国の大地を転がる。立ち上がらなければならない。
「猟兵が―――、来るッ!」
 面を上げた『ブックドミネーター』の瞳に映るのは、機械騎士たるトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)のアイセンサーのゆらめきであった。
 その瞳が見据えるのは満身創痍たる『ブックドミネーター』の姿。けれど、トリテレイアの足は止まらない。躊躇うことをしない。
「為すべきことを前にして、不本意な戦いかと思われますが、アリスラビリンス、アックス&ウィザーズ……二つの世界のため、騎士として阻ませていただきます」

 立ち上がった『ブックドミネーター』が大地を蹴る。
 即座に全身を覆うは、時間凍結氷結晶。その全てが猟書家の主、書架の王としての力の顕現である。
 侵略蔵書を持っていないのではない。持つ必要がないのだ。それは書架の王であるが故に、全ての侵略蔵書は書架の中にある。その知識の量は凄まじく、時間凍結氷結晶によって覆われた全身全てが力の源泉。
 その全てが圧倒的な力と速度を生み出す。飛翔する『ブックドミネーター』を狙うトリテレイアの格納銃器の牽制射撃が火花をちらして弾かれる。
「―――このような豆鉄砲で張り合おうなど!」
 飛翔する速度は落ちないが、それでもトリテレイアの狙い通りコースは限定させられる。センサーで捉えた情報を元に頭部銃器が偏差射撃を行い、肉薄する『ブックドミネーター』の体を覆う時間凍結氷結晶の薄い部分を狙う。

「関節部分であれば、その稼動を制限しないように氷結晶は厚くは盛れますまい!」
 関節部の氷結晶が砕ける。
 だが、『ブックドミネーター』は構わず拳を振るう。大盾で防ぐも、その大盾は貫通され、突き刺さったまま薙ぎ払われれば、大盾の防御と剣をトリテレイアは引き剥がされてしまう。
「受け流したつもりでしたが―――やはり王と呼ばれることはあります……ですが!」
 これより先は、戦機の時間(ウォーマシン・タイム)である。
 トリテレイアの電子頭脳が白煙を上げる。全身の駆動体系が悲鳴を上げる。トルクが増す、パワーが増す。ありとあらゆる関節部分が熱を帯び、暴走仕掛けるほどの白煙が全身より噴き出す。

「機械騎士―――貴様、自壊も厭わぬか!」
『ブックドミネーター』の驚愕の声もどこか遠い。一瞬でトップスピードを越えた速度をはじき出し、トリテレイアの機械の身体が戦場を駆け抜ける。
 放たれる拳を最小の動きで躱し、肉薄し続ける。互いの徒手。大盾は薙ぎ払われてしまっているが、拳がまだ残っている。
 機械の拳と生身の拳がぶつかりあい、互いの骨とフレームが歪む音が響き渡る。
「災い呼ぶその英知を打ち砕く代償が我が体一つであれば―――!」
 それは安い代償である。
 そう、トリテレイアは自己保存の法則と電脳が弾き出すレッドメッセージを無視し続ける。

「誰かのために戦うのが騎士であればこそ―――!」
 トリテレイアの脚部スラスターが火を吹き上げて、大地に突き刺さった剣と大盾を乱雑に掴む。
 大盾は持ち手を持つどころか、盾の縁を己のマニュピレーターが突き刺さるほどの握力で握り締め、そのまま叩きつける。
 時間凍結氷結晶が砕け、さらに大盾が頭上より振り下ろされ、『ブックドミネーター』の体を大地へと叩きつける。
「が、ハッ―――!?」
 倒れ伏した『ブックドミネーター』の腕の関節部分、頭部銃器によって穿たれた氷結晶の剥がれた部分へと放たれる剣の一撃を振り下ろす。

 その一撃の行方を見ぬまま、トリテレイアは飛び退る。
 電脳がオーバーヒート寸前で、機体保全のために後退させたのだ。そこまでしなければ討ち果たせない強敵。
 それが書架の王『ブックドミネーター』。だが、トリテレイアはわかっていた。
 己が倒しきれなくても、必ず続く猟兵が最後の一撃を加えてくれる。
 そのための楔、そのための鎹。
 戦場にあって騎士に敗走は許されないだろう。けれど、後に残すことはできる。それはトリテレイアはもう知っているのだから―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
ドミネーター。本人でなくとも凄まじい気迫だ。
流石は『書架の王』でごさるな……できればもう一度
本人にお目にかかりたかったが、叶わぬか。
■闘
此方も翼を羽ばたかせ、【空中戦】を挑む。
だが、先ずは時間稼ぎをせねばな……

【野生の勘】を最大限に巡らせ結晶の冷気を感知し、
冷気のない場所へ【ダッシュ】で逃れるぞ。
万一追いつかれたら振るってくる腕を【見切り】つつ
【残像】を見せつけ前方から横切るように躱す。

頃合いが着たら恥も見聞も棄てて【鬼獣】形態に突入。
【怪力】を活かした獣の猛攻で、結晶ごと引き千切る!
なお発動の際は他の『速く動く物』が目に入らないよう、
ドミネーターを目視しよう。

※不採用可・uc発動後は咆哮のみ



 腕の関節部分に突き立てられた剣を抜き払い、大地へと放り投げる書架の王『ブックドミネーター』。
 その息は荒く、その体に刻まれた傷は、どれもが深いものであった。本来であれば時間凍結による完全回復によってあらゆる攻撃はなかったことのようにされてしまう。
 けれど、猟兵たちが連綿と紡いだ攻撃、ユーベルコードは、時間凍結のユーベルコードすら完全に封じた。
 それはたった一人の猟兵のユーベルコードではなし得ることはできなかったことであろう。数多の猟兵たちが死力を尽くした結果である。
 故に、此処に時間凍結は無効化を果たしたのだ。

「ふぅ―――! ぐっ……猟兵……私の時間凍結すら打ち破る、など……あってはならない。あってはならない。私は、わたしは、書架の王……!」
 全身を覆う時間凍結氷結晶。しかし、その氷結晶ですら万全ではない。剣の一撃によって穿たれた関節部分、片腕が上がらなくなっている。
「ドミネーター。本人ではなくとも凄まじい気迫。流石は『書架の王』でござるな……」
 できれば、もう一度本人にお目にかかりたかったが、叶わないことであると愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)は潔く諦め、翼をはためかせる。

「貴様で最後だ、猟兵! 私はまだ、成さねばならぬことがある。此処が生命の賭けるところではないのだ!」
 飛翔する凄まじき速度。
 それは翼ある者である清綱をして目で追うことは敵わぬ速度。視覚に頼っていては、即座に叩き落されるであろう。
 故に清綱は己の感覚に頼ることにしたのだ。翼を羽撃かせ、野生の勘とも言うべき勘の冴えどころによって、翼が近くする氷結晶の冷気を感知し、その隙間へと体を滑り込ませ、圧倒的速度でもって繰り出される『ブックドミネーター』の拳や蹴りを躱し続ける。

 翼がかすめ、態勢を崩すも、残像を残して間一髪で回避する。
「―――ッ、ここまで弱体化されてもなお、この威力!」
 ぐらりと身体が揺らぐ。
 それはかすめただけの拳であっても、清綱の体にダメージを与えるほどの強烈なる一撃であった。
 勝てない。このままでは、勝てるわけもない。あちらは形振りを構っていない。オウガ・オリジンと言えど、すでに現実改変ユーベルコードによって意識や知識は書架の王『ブックドミネーター』そのものである。
 彼には為すべきことがあり、それを為すことなく倒された。
 だが、今、オウガ・オリジンが変じた『ブックドミネーター』は、倒される前と変わらぬ意志を持っている。

「ならば―――、此方も恥も見聞も、などと言えるわけもなし!」
 清綱のユーベルコードが輝く。
 それは禍々しくも純然たる獣の殺意。
 獣は人とは違う。理性と本能に分かたれることもなく、己の生存本能に従って常に行動する。
 清綱にとって、それは恥であったのかもしれない。
 だが、恥というものを持ったままでは勝てぬ敵がいる。それが、今目の前にしているオウガ・オリジンであり『ブックドミネーター』である。
 ユーベルコード、鬼獣(キジュウ)。それは清綱の鬼獣形態へと変化するユーベルコードである。

 人の体のまま獣と成ること。
 それがどれほどの負荷を与えるかはわからない。けれど、すでにその力は発現した。もう止められない。
「グルルル―――ガァァァァァ!!!」
 その咆哮は絶対零度の氷結世界において、あらゆるものに轟く凄まじきものであった。ビリビリと震える肌と氷結の大地。
 一瞬で間合いを詰め、その手が握り締めたのは『ブックドミネーター』の拳。放たれた拳を正面から受け止め、手のひらの骨が砕けた音を聞く。

 けれど、その音を聞いて動きを止める獣はいない。
 己の生存本能が全力で警告を告げる。目の前の敵を倒さずして、己の生存はないと。
 故に受け止めた拳を握り砕き、その腕を氷結晶毎引きちぎる。それは先行した猟兵が刻んだ一撃の痕。噴出する返り血を浴びながら、清綱は圧倒的な力でねじ伏せる。

 その瞳が捉えているのは『ブックドミネーター』のみ。
 速く動くものを狙い続ける鬼獣は、その視界に己が倒さねばならぬ者を見定め続け、圧倒的な膂力で持ってそれを為す。
 氷結晶が砕け散り、『ブックドミネーター』の絶命の瞬間、清綱は己の体の全身が傷だらけであり、骨という骨が軋む音を聞いて我に還った。

「―――……」
 言葉は発する余裕もない。
 眼前の大地に砕けて散った氷結晶。霧散し消えていく『ブックドミネーター』。
 書架の王は、此処に討ち果たすことと相成った。きっと一人では倒すことも叶わなかった存在。
 けれど、猟兵達の力が、強大なる敵を此処に下すのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月27日


挿絵イラスト