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迷宮災厄戦⑱-21〜おともだちカニバリズム~

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #オブリビオン・フォーミュラ #オウガ・オリジン

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●おともだち、おいしいね
 ばき、ぼき、ぼり、ばり、ごくん――骨を噛み砕き飲み込む音が響く。
 くちゃ、くちゃ、ぐちゃ、ぐちゃ、ごくん――肉を噛み飲み込む音も同様に。
 けぷ、と息を吐いた後、少女は自分と同じ金色の髪を大事そうにおもちゃ箱に仕舞う。

「次の"おともだち"は……」

 ナイフを再び手にし、死体の山から少女だったものを引っ張り出す。

「このリボンは"おともだち"のだわ。でも他は"おともだち"じゃないわね」

 自らの頭につけているのと同じ紫色のリボンをするりと取って、おもちゃ箱に仕舞う。
 よく見ると、"おともだちのみんな"と子供特有の字で書かれたラベルが貼られている……。
 少女はこうして、"おともだち"を増やしていた。

 自分に似ている人はみんな"おともだち"。
 だってわたしのことをわかってくれるもの。

 そうじゃない人は"おともだち"じゃ"ない"。
 わたしに似ていない人が"おともだち"になんてなれるワケがないじゃない。
 だってわたしはこの世界で一番偉いんだもの。

 わたしと似ていなきゃ、わたしの"おともだち"にはふさわしくないの。

 わたしに似ている部分がないなんてあり得ない。

 わたしに似てなきゃいけないの。

 わたしに似て、わたしに似ろ、わたしに、わたしにわたしにワタシニ――。

 リボンを取った少女の死体をナイフでばらばらにする。
 目をくり抜いてぱくり、ごくん。
 指を切ってぱくり、ごくん。

「あら、この薬指はわたしに似ているわ。"おともだち"ね!」

 少女はまた嬉しそうに、おもちゃ箱に"おともだち"を仕舞った。

●理不尽に殺され喰われた報いを
「……って感じで、オウガ・オリジンは今悪夢の中で"おともだち"とやらを必死こいて増やしてるそうだぜ。全く、胸糞悪い」

 地籠・凌牙(黒き竜の報讐者・f26317)は不機嫌そうに吐き捨てる。
 概要を聞いた猟兵たちも皆それぞれ何とも言えない胸糞悪い感情やら何やら、複雑な胸中が渦巻いている様子を見せた。
 平坦な闇が続く世界、その中央に高々と築き上げられた少年少女の屍の山の上にオウガ・オリジンは君臨している。
 その中で"おともだち"を求めては分解とカニバリズムを繰り返しているそうだ。

「サー・ジャバウォック、レディ・ハンプティ、そして書架の王……3人猟書家を撃破してオウガ・オリジンの力が戻った結果がコレだ。
 無意識下の悪夢すら呼び出す現実改変ユーベルコード……相当危険な代物だ、これ以上野放しにしたら確実にまずい」

 これ以上オウガ・オリジンの力が戻れば、恐らく現実改変ユーベルコードが本人の手にすら余るようなモノを引きずり出すかもしれない……凌牙の頭にはそんな一抹の不安が過ぎっていた。
 『迷宮災厄戦』も佳境に差し掛かったところ、これ以上無意識下の悪夢が出る前に何が何でも止めなければならない。

「真ん中に築かれた屍の山以外はどこを見ても闇、闇、闇……小細工っぽいもんはねえが、オウガ・オリジンは完全に正気を失ってやがる。
 自分に似ている部分だけ大事にして、あとは全部腹の中――そうしてたくさんの子供たちが殺されている図を考えるだけでこっちも腸が煮えくり返る思いだぜ。
 予知すんじゃなくて俺が直に行ってブチのめしたかったよ、全く……」

 オウガ・オリジンは自分に似ているか否かで"おともだち"かそうでないかを判断し、似ていないものへは容赦なく攻撃を行うという。
 故に彼女に近しい姿に変装するか、共通点を見出すかすれば迷いが生じるとのことだ。

「まあ、そこまでして自分に似た奴を求めんのには色々きっかけがあるんだろうよ……例えそれがあったところで奴がやったことは到底取り返しつかねえけどな。
 たくさんのアリスを殺し、喰らい、苦しめてきた"報い"は、何が何でも受けさせなきゃなんねえ。
 俺が行けなくてすまねえが、お前らなら大丈夫だって信じてる――このクソッタレな悪夢をぶっ飛ばしてきてくれ。頼んだぜ!」

 転移陣が開き、平坦なる闇の世界に猟兵を誘う光の輪と化す――。


御巫咲絢
 時々カルナヴァルとカニバリズムがわかっていても頭の中でごっちゃになります。
 こんにちはこんばんはあるいはおはようございます、初めましての方は初めまして新米MSの御巫咲絢(みかなぎさーや)です。
 当シナリオをご閲覧頂きありがとうございます!御巫のシナリオに初めてプレイングを投げられる方はお手数ですがMSページをご覧頂いた上で下記にお目通し頂きますようお願いいたします。

 戦争も佳境ですが皆さんいかがお過ごしでしょうか。
 御巫は部屋の窓にすだれをかけたら部屋が気持ち涼しくなりやすくなりました。ひゃっほう。
 というワケで(どういうワケだ)戦争勝利を目指して戦争シナリオ9本目をお送り致します。
 平坦なる闇の世界で屍の山に腰掛けているオウガ・オリジンの"おともだち"と見せかけて油断を突いてぶっ飛ばしちゃってください。
 このシナリオには以下のプレイングボーナスが存在しています。

●プレイングボーナス
 オウガ・オリジンに似た姿で戦う。

●プレイング受付について
 OP承認直後から受付を開始致しますが、参加人数が6人に達した時点でプレイング受付を締め切らせて頂きます。
 参加人数が6人以上になりました場合、プレイングを見て「リプレイ内容がすぐに思いついた方から」採用させて頂きます。
 不採用になる可能性もございますので予めご了承の上プレイングを投げて頂きますようお願い致します。

 それでは、皆様のプレイングをお待ち致しております!
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第1章 ボス戦 『『オウガ・オリジン』と友達探し』

POW   :    友達ならいつでもいっしょ
戦闘中に食べた【相手の肉体】の量と質に応じて【全身が相手に似た姿に変わり】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    あなたもお友達になって
自身が装備する【解体ナイフ】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    誰とだってお友達になれるわ
自身の装備武器に【切り裂いたものを美味しく食べる魔法】を搭載し、破壊力を増加する。

イラスト:飴茶屋

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

尾守・夜野
「ヒトなぞ鼻が一つに目玉が二つ手足があって…ほぼ皆同じ
薄皮剥げば皆等しく
なのに違いを求めるとは余程自分は特別だと主張したいのかしら?」
同じ箇所を求めるとは他者と異なると言ってるような物
実際はどうあれ思わせ
思考が止まれば反論があればそこが彼女の弱点でしょう
抉って晒してあげる
彼女顔ないけど関係ない
「あら?…怪我してるじゃない皆と同じ赤い血」
動揺してる間に気付かれないよう黒纏でスキットルの中身を相手に擦り付け
傷がある、自分の血と誤認させ
「結局ここにある皆とお友達だったのに…気づかずぜーんぶ壊したのね!ねぇ友達なんて嘘っぱちの殺人者」
軽く手首を切り同じですよーアピールしつつUC使い挑発を重ね切り裂くわ



●同一性崩壊
「ああ、この目はわたしの"おともだち"だわ」

 オウガ・オリジンは死体の山で今も"おともだち"を次々とおもちゃ箱に仕舞っている。
 目、腕、指、足、鼻、歯、衣服、リボン――何から何までが詰め込まれた箱が重くなる度に、嬉しそうに微笑む歪んだ少女。
 今切り刻んだ死体から、目だけでなく腕も見つけてますます嬉しそうな声を上げた。
 ――ああ、これもわたしの"おともだち"!
 嬉しそうにそれを持ち上げようとしたが、目の前にやってきた黒いドレスの少女に取り上げられる。
 取り上げた本人である尾守・夜野(墓守・f05352)――の女性人格――はその腕を弔うようにそっと闇へと投げ、オウガ・オリジンと対峙する。

「……何をするの。わたしの"おともだち"を」
「"おともだち"ねえ。ヒトなぞ鼻が一つに目玉が二つ、手足があって――ほぼ皆同じ。
 薄皮剥けば皆等しく、なのに違いを求めるとはよほど自分は特別だと主張したいのかしら?」
「わたしはこの世界で一番偉いのよ?わたしに似ている人じゃなきゃわたしのことなんてわかってくれないわ」
「まあ。同じ箇所を求めるとは他者と異なると言ってるような物なのにね」

 くすくすと夜野は嗤う。
 オウガ・オリジンを上から見下げ、嘲笑う彼――今は女性人格故に彼女と呼ぶべきかもしれないが――に対し、オウガ・オリジンは何も答えを返せない。
 怒りがふつふつと煮えたぎるのに反論の言葉が何も出なかったのだ。
 思考の回転が完全に止まり、ただ怒りをぶつけてやりたいという感情しか出てこないその姿は、夜野から見れば完全に図星を突かれたような姿にしか映らないだろう。
 ――それが傷なら、抉って晒してあげる。

「あら?」

 夜野はふと何かに気づいたような顔をしながらオウガ・オリジンの腕を半ば強引に掴むと同時に、『黒纏』に忍ばせていたスキットルの中身を気づかれぬようにこすり付ける。
 多少強引に行おうが、今の正気でない状態ならば気づかれはしないだろう。

「……怪我してるじゃない。皆と同じ赤い血」
「……!?」

 掴まれた腕、その漆黒の肌に真っ赤な血がべちゃりとついている。
 オウガ・オリジンはどこで傷がついたのだろうと首を傾げるよりも前に、今までの"おともだち"を覗き込んだ。
 目、腕、指、脚――確かに真っ赤だ。流れきっていない真っ赤な血が今もじんわり、どくどくと溢れている。

「そ、それはそうよ、だってわたしの"おともだち"だもの――」

 夜野は黙ってぴ、と下を指差した。……少女が築き上げてきた屍の山を。

「ねえ、よくご覧なさい?」

 その屍の山を築き上げた一つひとつに染まった血の色を、言葉の誘導を以てしっかりとその目に焼き付けさせる。
 衣服を汚し、あらゆる箇所から溢れ出ていた真っ赤な血の痕跡を。

 ――それらは全て、"おともだち"がじわりじわりと流すモノと全く同じ色をしていた。

 オウガ・オリジンは言葉を失う。
 似ていないから殺したのに全部同じモノを持っているだなんて。
 信じられない。これは嘘だ、嘘に違いない――ナイフを握っている手がかたかたと震える。
 これは全て夜野による誘導の結果の誤認であるのだが、そんなことに気づくワケもない。
 正気を失っている状態で巧妙に仕組まれた罠に気づくことができたならそれは狂気に陥っているとは言えないのだ。
 そして、そこにとどめと言わんばかりに夜野がにこりと笑って囁くように口を開く。

「結局、ここにある皆とお友達だったのに……貴女、気づかずぜーんぶ壊したのね!まあ、なんて酷いのかしら。

 ねえ――友達なんて嘘っぱちの殺人者!!」

 自らの手首を目の前で思い切り切り裂き、わざと目の前でその真っ赤な血を見せつける。
 自らもまたお前と同じだという事実を突きつけ、焚き付けられたオウガ・オリジンは完全に怒りに呑まれたように声にならぬ悲鳴を上げて夜野へとナイフを向けた。
 そのナイフを白い肌に食い込ませようとして――全く力が入らない。
 何度も何度も振るい上げてもナイフの刃がゴムでできたかのようだ。力が抜けすぎて握っている手すらぷるぷると震えている。

「まあ、先程までできていたこと忘れちゃったのかしら?」

 夜野は微笑みを湛えたままそのナイフを奪い取る。
 オウガ・オリジンは先程まで発していた人の言葉すら忘れたかのように唸り、殺意を込めた瞳を夜野に向けているが力がなく、簡単にねじ伏せてしまえる状態だ。
 もちろんそれも作戦の内である。
 先程までの言葉をかけるまでの間にユーベルコード【怨鎖反応(ヘイト・コネクション)】による呪詛を爆破力を極限まで弱め、気づかれぬようにした上で仕込むことで自らを憎むことで周りが見えなくなるようにしたのだから。
 手首を切り裂いて流れる自らの血は気にも留めず、夜野は奪い取ったナイフを振りかざす。

「じゃあ、私がもう一度教えてあげるわね?」

 力を奪われ、思考も怒りで覆い尽くされたオウガ・オリジンはロクな抵抗もできるワケがなく。
 目の前にいる"おともだち"と同じモノをもった猟兵に、意趣返しの如くナイフでその身を切り裂かれるのであった――

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーノ・エスメラルダ
少しなら、食べられてしまっても大丈夫でしょう…猟兵は、丈夫ですし、『聖痕』でも治療できますから
【覚悟】と【激痛耐性】で耐えて、それを代償としてUCを発動させます
この悲しい行為がここで終わりになりますように…

●対策
髪型と服装を合わせたら似せられるでしょうか
手袋で腕の色も似せられたらもっと似るかもしれません

●心情
こんな友達の在り方しか知らないというのは、悲しいことです…お話したり、楽しみを分け合ったり、本当のお友達は作れず、独りです
オブリビオンでなければ時間をかけて関係を築けたのですが…倒さなければならないですよね
なるべく苦しまない方法を取れたら良いのですが…



●悲しき少女、されど最早赦しを得られる立場にあらず
「(これなら――似ています、よね?)」

 戦場に向かう前に、ユーノ・エスメラルダ(深窓のお日様・f10751)は自身の今の装いを鏡で確認する。
 髪を下ろし、リボンを同じように頭の上に。可愛らしい青と白を貴重としたエプロンドレスを纏い、フリルの下から覗かせるは白タイツに包まれた華奢な脚と紫色の靴。
 黒い袖の長い手袋に手を通し、可能な限りオウガ・オリジンに外見を似せようと試みたのだ。
 唯一違うところがあるとすれば、妖狐特有の耳と尻尾ぐらいだろうか。
 "おともだち"であると誤認させることがこの戦場を乗り切る為の鍵。ユーノのような容姿の少女であれば、服装を多少変えるだけで相手に思い込ませることは容易に違いない。
 準備を整え、転移陣をくぐって光の輪から平坦な闇へと降り立つ。
 屍の山はすぐ目の前にあり、ゆっくり登っていけばばき、ばき、と骨を噛み砕く音が響く。
 オウガ・オリジンが"おともだち"でないものを食している音だ。
 似ていないものは腹に収め、そうでないものは箱に仕舞い大事にする、それが彼女にとっての友達の定義である。
 ユーノはそれに酷く心を痛めずにはいられなかった。

「(こんな友達の在り方しか知らないというのは、悲しいことです……)」

 たくさん話をして、たくさんの"楽しい"を分け合って……そうして本当の友達というものは増えるものだ。
 だがオウガ・オリジンは違った。最早友達というものの概念すら彼女にとってはすっかり歪みきってしまい、手遅れなところにまできているのだろう。
 本当の友達を作ることはできず独りきり――ああ、オブリビオンでなければ時間をかけてゆっくりと関係を築けていくことができたろうに。
 倒す以外にしか救いが残されていないというのも、何とも複雑なものである。

「(なるべく苦しまない方法を取れたら良いのですが……)」

 意を決してユーノは屍山を登り、オウガ・オリジンに声をかける。

「――こんにちは」
「?……まあ!あなた、わたしの"おともだち"になりにきてくれたの?」

 その見えぬ漆黒の容貌を輝かせてオウガ・オリジンはユーノの手を握る。

「わたしそっくり!"おともだち"として完璧だわ!――でも」

 ナイフをその握った腕に突き立てる。
 じんわりと痛みが広がり、肌の色を似せるべく身につけた手袋が紅く染まっていく。

「手袋をつけているこの手は"おともだち"じゃないわね。それとその耳と尻尾――ああ、髪の色も少しだけ違うわ。残念ね」

 けたけたと笑って次々と解体用のナイフを生み出して投げつける。
 だがユーノは一切抵抗せずそれを受けることにした。
 少しなら食べられてしまっても問題はないだろう――猟兵は普通の人間と比べて段違いに丈夫にできており、何よりユーノ自身が自らで治療する術を保有している。
 痛い、とてつもなく痛い。体中から血が流れる度に力が少しずつ抜けていく。
 だがそれでもユーノは一歩も退かぬ覚悟を秘め、同時に目の前の少女への哀れみも混ざった視線を向ける。

「……こんなことをしても、悲しいだけですよ」
「??何を言っているの?そのお口も"おともだち"じゃないようね――」

 突如、オウガ・オリジンの目の前にモニターが出現する。
 ユーノのユーベルコード【メンタリティ・リペント】によるものだ。
 モニターから何人もの少年少女たちが姿を現し、オウガ・オリジンを取り囲む。

「こ、これは……!?」
『ねえ』
「!?」
『わたしたち、あなたと仲良くしたいの。だからこんなこともうやめよう?』

 そう悲しげに語りかける電子の少年少女は皆、オウガ・オリジンに似通った見た目をしていた。
 プラチナブロンドの髪に水色と白を基調とした服、そして紫のリボンをあしらった子供たちが、もっと仲良くしたかったと悲しそうな顔をする。

『もっとお話しようよ』
「や、やめ……」
『もっとたくさん、一緒に遊ぼう?そしたらわたしたちみんな同じだって、わかるよ』
「やめ、やめて……ちがう、あなたたちは違う、違う、違う違う違う違う――!!」

 耳を塞いでその場に蹲る。
 子供たちはそれを見て心配そうに声をかけるが、それも届かない。
 独りよがりで歪んだ"おともだち"の作り方を知らなかった少女には彼らの言っていることが全くわからなかった。
 何で、どうしてそんな目を向けるの?わたしはこの世界で一番偉いのに、何でかわいそうだって言うの?

「何で、何で、何で……っ」

 複製されたナイフはすぅ、と消え、その場にオウガ・オリジンは蹲る。
 それに電子の子供たちは寄り添おうとするが、嫌、こないでと叫んで屍の山を逃げるように降りていく――"おともだち"を置いて。
 ユーノはそのおもちゃ箱に目を向け、そっと祈りを捧げる。
 術式が展開され、その"おともだち"たちを浄化の光が包み込み、そっと天へと連れて行く……
 死んでしまった子供たちの魂が少しでも安らかであれるように、そしてこんな悲しい行為がここで終わりますようにと、ユーノは光が消えるまで祈りを捧げ続けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ネーヴェ・ノアイユ
猟書家様という強敵を乗り越えて……。その先に現れたのがこれでは……。

オリジン様そっくりの金髪のウィッグにお揃いの服。闇色の手袋にてオリジン様の姿になるべく近づけた仮装をし(頭のリボンは私の物のまま)対策をしてみましょう。
頭のリボンを狙われた際には氷壁の盾受けにて必ず死守を……。その際に私の身体へのダメージは致命傷以外であれば受ける覚悟で戦います。
オリジン様のお姿が変わられ……。攻撃を凌ぐのが困難だと判断しましたら私もリボンに魔力溜めした魔力全てを使ったUCにて火力特化の一撃を。

別の悪夢にてオリジン様へと与えた一撃……。この一撃をあなた様にも振るわせていただきます……!



●力を取り戻した"成れの果て"
 ネーヴェ・ノアイユ(冷たい魔法使い・f28873)は丁度、狂った少女が逃げていく様を目の当たりにしながら戦場へと降り立った。
 電子でできた子供たちは心配そうに、悲しげに見ながら術者の帰還と共に姿を消していく。
 ちがう、ちがう、わたしは偉い、わたしは特別――そううわ言のように言いながら闇の中に蹲る元凶を見て何とも言えぬ胸中であった。

「(猟書家様という強敵を乗り越えて……その先に現れたのがこれでは……)」

 3人の猟書家を撃破し、力を取り戻したオウガ・オリジンはさらに凶悪な力を備えて襲いかかってくるものとばかり思っていたのに、現実はこうだった。
 最早力を取り戻した姿が"はじまりのアリス"であった少女の"成れの果て"と呼ぶに相応しい、哀れな姿。
 しかし、それで赦すことができる程の軽いモノを重ねているワケではない。
 ネーヴェは頭につけた大きなリボンを除き全てオウガ・オリジンに似せた装いをし接触を試みる。

「違う……違……――あら?」

 そのネーヴェの姿を目にしたオウガ・オリジンは再びその顔を輝かせてこちらへと駆け寄ってくる。

「まあ、わたしの"おともだち"になりにきてくれたの?嬉しい!」

 ナイフを再び握り、先程ユーノにしたように腕に突き立てながら無邪気に笑う。
 痛みに思わず顔を歪めるネーヴェ。
 だがこれぐらいなら問題ない、むしろ致命傷でなければ受けた方がより相手の不意を突きやすいと判断し我慢することにした。
 その時、頭の大きなリボンもオウガ・オリジンの目に映ったようでぷく、と頬を膨らませたかのように手を伸ばす。

「それは……ダメです!」

 リボンを奪おうとするその手を氷の壁が阻む。
 このリボンはネーヴェの大事なものにして戦う為に必要な魔力貯蔵タンクの役割を果たしている。
 故に取られるワケにはいかない――だが、それを利用することで戦いに利になるように持ち込むという意図もあった。

「何?そのリボンはわたしと違うわ!"おともだち"じゃないの!?」
「……ええ、私は貴女様のお友達ではありません。私は止めにきたのですから……」
「そう。そう、そうなのね……じゃあ"おともだち"の部分だけもらっていくわね!!」

 オウガ・オリジンは再びナイフをネーヴェに向けて突き立てる。
 左肩が紅く染まり、ネーヴェは痛みに顔を歪めながらも決して怯みはせず抵抗を続ける。
 そのまま腕の肉を食い千切らんばかりの勢いで噛み付くオウガ・オリジン。
 肉が僅かに抉れたのか、姿がネーヴェとほぼ同じ姿へと変わり、その上でナイフを再び突き立ててきた。
 同じ箇所を二重に攻撃され、流石に苦悶の声が口から漏れる。
 恐らくこのまま同じ箇所を攻撃し続けることで片腕を奪うつもりなのだろう。

「(これ以上は凌げませんか……ならば……!)」

 大きなリボンが青白く輝き始める。
 溜めていた魔力を解き放ち術式への転換を始めたのだ。
 そのリボンに溜め込んだ魔力の量を察せる程の強い輝きにオウガ・オリジンは思わずナイフを手放して後ずさる。

「何、この光は……ううっ、目が……!」

 その眩い光は彼女にとって毒にも等しいものだった。
 終わりなき闇を終わらせるかのように照らす青白い魔力の輝きは、やがて大きな氷の拳となって形を成す。
 目が眩んだオウガ・オリジンはその大きさを今の間は肉眼で見ることができないでいる状態であり、当てるのも容易い。

「……この一撃、貴女様にも振るわせて頂きます……!」

 鮮血の悪夢でも用いたユーベルコード【ice of destruction】。
 その巨大な氷拳の鉄槌が容赦なく目が眩んでいるオウガ・オリジンへと飛び、地面の砕ける音が響く。
 終わり無い闇の空間に白でヒビが描かれ、拳を離した後には身体のあちこちをひしゃげさせた姿。

「うう……酷い、どうして、こんなことするの……わたしは"おともだち"を作りたいだけなのに……!」

 掠れたノイズの混じった声で涙ながらに訴えてくる。
 だがそれで心を乱されるネーヴェではなかった、それ程までのことを彼女はこれまでこの少女にされてきている。
 この元凶を止める為ならば、自らの心を殺すことも辞さない――覚悟はとうに固まっていた。

「……申し訳ありませんが、貴女様はその理由でやっても良いこと……その境界線を、とうに越えておられます。
 ……一人のアリスとして……貴女様のこれまでの所業……それに鉄槌を、振り下ろすのが役目です。

 ――猟兵として!」

 ひ、と息を飲む歪んだ漆黒の肌の少女の眼前に再び巨大な氷拳が迫りくる。
 先程からのダメージが蓄積した状態で回避など到底間に合わず、少女の身体は宙に舞った。

成功 🔵​🔵​🔴​

空葉・千種
アドリブ歓迎

いろいろな考えや想いがあるんだろうけど…
貴方はこの世界の…私の友達の敵だから
だから哀れには思っても容赦はしない
私は貴方の死でこの戦争を終わらせないといけないんだ

はじめは特に変装せず初撃は受け止める
…でも私だって受けっぱなしじゃない
【指定UC】を発動して相手の身体情報を奪い、遺伝子単位で相手の姿に

さあ、今度は私達が貴方から奪う番
オウガ・オリジンが動揺したタイミングで解体ナイフを奪い取り、相手と同じように解体していく

貴方の姿を模そうとも…私には貴方のことはわからないよ
だって、私の友達は私に似てないし、対等な関係だもの
…貴方ははじまりのアリスとして、そういう相手に出会えなかったのかもね…


アリステル・ブルー
【月影】1/2
人称(僕、ヒュー、〜かな、だね、なのかな? 砕けた口調です)

●WIZ/色々お任せ

はたして170ある男がオリジンコスプレして許されるだろうか?知り合いに会いませんように!
(どこからか取り出したウィッグ・エプロンドレス、リボン付装着足元は流石にズボンらしい)
相手正気じゃないと思うからいける!!!

友達に同じを求める気持ちは理解しかねるよ、君には過去何があったんだろうね…

基本的にヒューを庇いながら戦うよ。挑発して僕を狙わせる。
第六感、オーラを張り見切りやダッシュで回避に努めよう、無理なものは細剣で武器受けで。
旅の記録の知識を元に高速多重詠唱を指定UCにのせて全力の魔法をぶつけるよ


ヒュー・アズライト
【月影】2/2
人称(俺、アリステル、〜ですね、〜でしょうか? 丁寧やや砕けた口調/適当でokです〜)

●WIZ

アリステルのかっこ、他の人にも見せたいね
俺はそうですね、身長そんなにないですし、中性的な見た目利用してオリジンコスプレしましょう。
なかなか良い線行くと思うんですよ、アリステルにくらべたらね!

俺にはあまり友達がいませんが…少なくとも同じ出なくても十分友となり得ますよ。孤独な人ですね…オリジン

攻撃の防御部分はアリステルに庇ってもらいましょう、念のためにオーラを張ってね!
赤い鳥の使い魔を呼び援護射撃を指示
俺は指定UCに全力魔法をのせて発動しますよ。
俺に応えてくれる精霊、たのみましたよ!



●予知したグリモア猟兵はそっと見ない振りをした。だが報告書には記述する。
「うう……うう……!なんで、どうしてみんなわたしの邪魔をするの……!?」

 ふらふらとよろめきながらオウガ・オリジンは涙まじりの声で嘆く。
 今までのダメージが蓄積して動こうとしてもロクな動きにはならない。
 脚は片方別方向に曲がり、片腕は動かない。
 ボロボロの状態で再び座していた屍の山へ戻ろうと身体を引きずろうとして――二人の人影に阻まれる。

「何!?また、またな――」

 と、苛立つように叫ぼうとしてぽかん、と口――どこにあるかは全く見えないが――を開ける。
 目の前に立っている猟兵二人。
 片や可愛らしいエプロンドレスに身を包み、オウガ・オリジンに似た髪型のウィッグを身につけて完璧なコスプレをしたヒュー・アズライト(放浪家出人・f28848)。
 そして……

「(果たして170ある男がオリジンコスプレしても許されるだろうか……?)」

 と、自らの装いを本当にやって良いものかと疑問を抱きながらも四の五のは言えぬと同じウィッグとエプロンドレス、リボンを身に着けたアリステル・ブルー(人狼のクレリック・f27826)であった。
 尚流石に脚は白タイツは憚られたようでズボンである。

「いや~~アリステルのかっこ、他の人にも見せたいね」
「やめてそれはやめてお願いだから。知り合いがきたら僕立ち直れないから」
「え、でもこれ予知したグリモア猟兵」
「あーあーあーあー聞こえないなーあー!!!!」

 グリモア猟兵はきっと見なかった振りをしてくれるので安心して欲しい。
 とにかく、オウガ・オリジンに似せれば良いということで二人意を決して――いや、ヒューは半ばノリノリで女装したのである。
 割といい線いけると思う!と言った通り、ヒューは元来の顔立ちと背丈も相まって違和感があまりないのだがアリステルは……別に違和感が酷いというワケではないが、少し無理がある、といったところだ。
 相手が正気じゃないからいける、と思ったらしいが果たして……

「あ……あなたたちも"おともだち"になりにきてくれたの……?」

 いけました。
 正気じゃない上にダメージが蓄積して余計に思考が鈍っているらしい。
 アリステルは半ば半信半疑であったが少しほっとしたように息を漏らした――だがグリモア猟兵にこの内容は報告書にされてしまうのである――。

「……でもあなた、その足にしっぽ、同じじゃないわ」

 前言撤回、バレました。
 まあ人狼の尻尾は隠しようがない、というかそこを突いて攻撃に出ようと思っていたので想定内である。

「それにそっちのあなたも……その目がわたしと違う!」

 ヒューの方も僅かな違和感に目をつけたようで、先程の希望を持ったかのような表情が一瞬にして怒りに染まる。

「許さない、許さない、許さない!わたしと似た姿をしながら"おともだち"にもなってくれないなんて許さない!何でわたしと同じじゃないのよ!!なんで!!どうして!!!わたしと同じになってくれないの!!!!!」

 ナイフを握りしめ、殺意の籠った目を向けるオウガ・オリジン。
 アリステルもヒューも、その殺意に対して怖気づくことはない。それどころか哀れに見えてすらいた。

「俺にはあまり友達がいませんが……少なくとも、同じでなくとも十分友となり得ますよ?」
「嘘よ、嘘!!!じゃあなんで誰もわたしの"おともだち"になってくれないの!
 なれ!!わたしの"おともだち"になれ!!!世界で一番偉いわたしの"おともだち"にならないなんてありえない!!!同じにならないなんて!!!」

 激昂し、怒り狂った顔を向けるオウガ・オリジンは術式を纏い、鋭くなったナイフの刃を突きつける。
 最早ただの脅迫と何ら変わりない怒号を浴びせかけるその姿は、最早苛立ちや怒りを通り越して哀れみの感情しか抱けない。
 アリステルもヒューも、可哀想な子供を見るような目を彼女へと向けていた。

「孤独な人ですね……オリジン」
「何が君をそうさせたんだろうね……悪いけど、友達に同じを求める気持ちは理解しかねるよ」
「うるさい!うるさいうるさいうるさい!!"おともだち"になれと言っているんだから従えばいいんだッ!!」

 酷くボロボロの身体とは思えない動きでオウガ・オリジンは二人に飛びかかる。
 振るわれたナイフをアリステルが短剣で受け止め、その間にヒューがオーラによる防御術式を展開。
 その膜のような結界はアリステルの構える短剣にも纏わり、ナイフと短剣の間に僅かな隙間が生まれる――そこをアリステルが突き飛ばすように短剣を押し返すことで距離を取る。

「どうしたんだい?そんな程度じゃ僕に傷一つもつけられないぞ」
「っ~~~!!生意気な!!」

 オウガ・オリジンは狂ったようにナイフの突きを何度も何度もアリステルへと繰り出す。
 挑発と同時に密かに多重詠唱で忍ばせた自らのオーラ防御術式も混ぜて応戦するアリステル。
 その優れた第六感を研ぎ澄ませ、相手の突きがどのタイミングで繰り出されるかを見極めて回避する度に相手の苛立ちを誘い、ヒューに攻撃が飛ぶことはない。
 アリステルがオウガ・オリジンを引きつけている間にヒューは自身の使い魔である赤い鳥『ノクス』を呼び出した。
 言葉をかわさずとも意思の疎通ができる賢い鳥は、ヒューの命を聞きつけ魔術による援護射撃を放つ。
 アリステルがかわすも武器で受けるも難しいタイミングを狙って援護射撃を放つことでこちらの防御陣形をさらに強固なものへ。

「ちくしょう、ちくしょうちくしょうちくしょう!!わたしは世界で一番偉いのよ!!!何で誰もわたしの"お願い"を聞いてくれないのよ!!!」
「――そんな考えでいる限り、友達なんて一生できないよ」

 いつの間にか周囲はノクスによる援護射撃が小さな障壁を展開し、オウガ・オリジンの逃げ道を塞いでいた。
 アリステルはそっと自らの使い魔である『ユール』を呼び出し、ユーベルコードを発動する。
 多重詠唱で紡ぎ上げたのは防御術式だけではなく、ユーベルコードによる魔術攻撃もであった。
 今までの旅の記録で得た知識から多重詠唱と高速詠唱を噛み合わせたことによるアリステルの強大な魔術攻撃に、ヒューも自らのユーベルコードを絡めてさらに威力を高める。

『"君の蒼穹を舞う翼は風を切り、蒼き軌跡を残し炎を纏い敵を焼き尽くせ"!』
『"精霊召喚儀式――起動。友誼を結んだ者、境界を越えその力を現出せよ"!』

 同時に響き渡る最後の詠唱。
 ユールが風と蒼炎を纏い突貫、さらにそこにヒューが指差し、召喚された風の精霊が追い風を吹かせるかのように暴風を発生させる。
 炎を風で煽れば、尚より燃える――元より風の属性が絡まっているなら尚更だ。

「いやっ、熱い!やめて!熱い!痛い!痛いいたいいたいいたいあああああああああああああああああああああああああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」

 息のあった連携が生み出した炎の檻から逃げることができず、オウガ・オリジンは慟哭した。

●因果応報
 炎が鎮火し、二人の猟兵が帰投した後。
 空葉・千種(新聞購読10社達成の改造人間・f16500)は、もう既にボロボロになった少女を淡々とした表情で見下ろしていた。
 オウガ・オリジンはまだ生きていた。
 息も絶え絶えで、服も何もかもがかろうじて原型を留めているに過ぎない程度の有様であったが、まだその命は尽きていない。
 流石はオブリビオン・フォーミュラといったところであろうか。千種の姿を確認すると、息は絶え絶えながらも絶えてない殺意を向ける。

「何よ……あなたもわたしを邪魔しにきたの……どこまでも鬱陶しい猟兵如きが……!!」

 瀕死になったことから逆に正気が若干戻りつつあるのか、予知に見た内容よりは今までに見たそれの方に近い言動が帰ってくる。
 とはいえ、今までの悪夢での少女の姿を見た今では以前までに抱いていた感情とはまた微妙に違うものがある。
 哀れみを向けずには、いられない。だが。

「色々な考えや想いがあるんだろうけど……貴方はこの世界の――私の友達の敵だから」

 だから哀れに思えど容赦は決してしない。
 その尽きる寸前の命を刈り取る為に千種は一歩一歩足を踏みしめ、オウガ・オリジンへと近寄っていく。
 この世界を護る為――自分の大事なモノを護る為。

「私は、貴方の死でこの戦争を終わらせないといけないんだ」
「生意気なことを……ッ!!」

 最後の力を振り絞るかのようにオウガ・オリジンがナイフを握り、千種の急所めがけて突き立てようと――して、大きく狙いが外れる。
 急な激しい動きに負傷しきった身体がついていかず、脇腹を僅かにかすめるだけにとどまった。
 千種はその隙を狙ってユーベルコードを発動し、オウガ・オリジンの頭を鷲掴む。

「痛い!!離せ!!!離せ!!!!」
「…………あなたの命、私のものにさせてもらうね」

 生命侵食器官となった指がオウガ・オリジンの脳へと迫り、情報を全てインプットする。
 指先から千種の肌が漆黒に染まり、黒い髪がプラチナブロンドの輝きを纏い始める。
 服装も、体格も、何から何まで――オウガ・オリジンの生き写しのような姿へと変じたのだ。

「……な、何……」

 その見事なまでの変装にオウガ・オリジンは思わず戸惑った。
 ――完璧なまでにわたしと同じだ。
 今までたくさんの人を"おともだち"にしようとしたけど、みんなわたしと違っていた。
 だから"おともだち"になれる部分だけ切り取っていた、なのに。

「わたしと、同じ……?」
「姿はね。私には貴方のことはわからないよ」
「嘘、嘘よ。だってわたしと全く同じだもの。わかるに決まって――あっ」

 オウガ・オリジンの手にあったナイフが千種の手へと渡る。

「……さあ、今度は私――いえ、私"たち"が、貴方から奪う番」

 動揺し続ける少女の姿をしたオウガを押し倒すように地面に押し付ける。
 ひ、と息を飲む声が聞こえる。
 辺り一面が平坦な闇なのに、千種が振り上げたナイフの刀身は銀色に煌めいて――

 ――そして、事は終わった。

 ナイフを投げ捨て、千種は元の姿に戻り踵を返す。
 オウガ・オリジン――"だったもの"は、屍の山に積み上がることすら許されず、ただその闇の中に真っ赤な血溜まりを残した。
 今までの"おともだち"と同じように、おもちゃ箱に収まるサイズになったそれに千種が振り向くことは決してなく。
 ただ、その姿を憐れむかのように言葉だけを残してグリモアベースに帰投する。

「……貴方の姿を模そうとも……私には、貴方のことは決してわからないよ。だって、私の友達は私に似ていないし対等な関係だもの。

 ――貴方は、"はじまりのアリス"として……そういう相手に、出会えなかったのかもね……」

 "はじまりのアリス"にして"はじまりのオウガ"。
 きっと、出会いにも恵まれぬからこそなってしまったのかもしれない。
 そう推測することはできれど、真相は誰にもわからないだろう。少なくとも、今は、まだ――

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月30日


挿絵イラスト