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迷宮災厄戦⑱-18〜迷宮輪舞に誓いの花束

作者：黒代朝希

　――想像力の国、そこには寂れず荒廃していない白亜の教会があった。
「ちい、全く生意気な……私も許可もなく婚姻の儀式を上げるなど、全員ギロチン台送りにしてやるとこだぞ……」
　全くの妬みなく――七つの大罪の内、嫉妬ではなく純粋な傲慢での発言だ――そう呟いたオウガ・オリジン。
「だが、まぁそれならそうと愚か者どもへ踏みにじりの仕方があるというもの」
　と、漆黒の喪服を着た異形へと変貌するオウガ・オリジン。
「この場所に来た新婚など、互いが解体されるところを見せつけながら貪り食っていやるさ……クククク……ハーハッハッハ！！」

「祈りの花束は、邪悪を穿つ世界の祝福となれ――なんてね。今回アンタ達には『最高の結婚式』を行ってもらうわ」
　話はこうだ。結婚式場の想像力の国にいる蹂躙者に変化したオウガ・オリジンを倒すべく、猟兵達は愛し合うもの同士がいるなら新婚夫婦として先んじてになったり、ウェディングドレスを着て花嫁姿になって『最高の結婚式の姿』となることでオウガ・オリジンと比類する強化を行うという任務だ。

「要は、素敵な服を着て初々しさやラブラブっぷりを見せつけてオウガ・オリジンを討伐する任務よ……え、わ、私？べ、別に私はアイツの事なんか只の料理人としか見ていなくて……と、とにかく、ウェディングドレスやスーツを着て疑似的な結婚式を挙げてオウガ・オリジンを討伐する任務よ！！いいわね？」
　と、顔を赤くして転移の術式を起動するシャルロット。
　今回の任務は要はウェディングドレスを着たり、相思相愛の相手同士と疑似的な結婚式を挙げることでオウガ・オリジンにダメージを与えて討伐する任務だ。

　みんな！最高のバカップルぶりや初々しさのある乙女の夢を見せつけてやろうぜ！！

第1章 ボス戦 『『オウガ・オリジン』とイマジンモンスター』

POW   :    イマジンモンスター・ギガンティック 【現実改変ユーベルコード】を使用する事で、【全身からオウガ達の頭部】を生やした、自身の身長の3倍の【イマジンモンスター】に変身する。 SPD   :    イマジンモンスター・スピード 【現実改変ユーベルコードを使用する】事で【イマジンモンスター】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。 WIZ   :    イマジンモンスター・ディフェンス 対象の攻撃を軽減する【イマジンモンスター】に変身しつつ、【身体から溢れ出すトランプ】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。 イラスト：飴茶屋 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「け、結婚式！？いきなり言われても心の準備が……」
「最高の結婚式！？きゅ、急に言われても〜…」
　そうですよね、どんなラブラブカップルでもいきなり結婚式を上げろと言われたら困惑はしますわね。
　クトゥルティア・ドラグノフ（無垢なる月光・f14438）とルク・フッシー（ドラゴニアンのゴッドペインター・f14346）のカップルもその例に漏れない。ちなみにおねショタだ。

　だが、今回のラブラブっぷりを見せつける時空間のような雰囲気というか空気が2人をウェディングロードへと誘う。
「……ええい、どうせ三年後やるんだから、今やっても同じだぁ！」
　UDCアースの日本の法律曰く男性の結婚可能な最低年齢は18歳とのことだが、アルダワ魔法学園出身でしかもドラゴニアンのルクにも適用されるのかは怪しいが、UDCアースが現在確認されている世界の中で技術力、法整備、オオブリビオンに対する組織体制などからヒーローズアース、サクラミラージュと並んで在住に適している世界なのは確かだ。
「ね、ルク君はどうする？主に場所とか形式が色々あるけれど」
「うーん、ボクはやっぱり真っ白な式場で、ボクはタキシードでビシッとキメて、素敵なドレスに身を包んだクーさんの隣を歩きたいです〜！」
　うんうん、初々しい。これは後方支援しているシャルロットも思わずニッコリ。

「ウェディングドレスのデザインは全部ルク君に任せるよ。ルク君のセンスが凄いのは、一緒にいるからこそ知ってるからね」
「分かりました！クーさんのドレスは、ボクが責任を持ってデザインさせていただきます！」
　ゴッドペインターとしての絵画描写式ユーベルコードだけでなく、絵師として優れたセンスを有するルクはすぐさまウェディングドレスのデザインに取り掛かった。
「えーと、クーさんの美しさと頼もしさとかっこよさと可愛さと月のような輝きを表現するには…」
　一生懸命クトゥルティアに相応しいウェディングドレスを想像し、創造していくルク。そんな愛しい緑竜を慈しみの眼差しで見つめるは月華の眼差し。
「色はやっぱり純白、それとなく満月をあしらって…」
　やがて現出するは『月下美人』ならぬ『月華美人』というべき純白に銀の意匠が特徴的なウェディングドレス。
「わぁ……これを私が？ありがとうルク君！ルク君もバッシリ決まっててカッコいいよ！」
　ルクも純白のタキシードを着こんでクトゥルティアの隣へと並ぶ。
　背の低いルクと長身のモデル体型であるクトゥルティアは並ぶと慎重さが目立つが、そんなことは最早二の次だろう。

　――月華と緑竜の誓いは、今ここに未来の先取りとして顕現する。
　二人は教会のバージンロードを歩む。世界に証を刻むがために。
「私、ルク君と出会えて良かった。一緒にバージンロードを歩けて良かった！」
「クーさんに告白された時…勇気を出して受け入れてよかったです」
　――今こそ、誓いを永遠に刻むべく口づけを。
「今まで…そしてこれからも、クーさんに笑顔でいてほしいです！」
「私も……これからの人生も、ルク君と一緒に過ごしたい。苦しみも楽しみも、全部一緒に！だから、誓いのキスをしよ、ルク君！」
　――あの日交わした約束を、果たし続けるために。

「……オイ。私は？」
　傍観者としてその一部始終を見届ける羽目になったオリジン。
　悪いなオリジン、プレイングに君の事書いてないんだもん。諦めてくれ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「クリミネルとオラ達らしいけっこんしきをするんだぞ。って、オウガ・オリジンが邪魔しにくるのかぁ……」
「オブリビオン・フォーミュラとは言え無粋やなぁ……」
　ジン・ロシュモフ（心優しき花畑の巨人・f18884）とクリミネル・ルプス（人狼のバーバリアン・f02572）。
　二人は純白のタキシードとウェディングドレスを着ながら憂いに満ちた表情をしている。
　仮想とはいえ、結婚式にオウガ・オリジンが襲撃してくるのは心苦しいだろう。
　
「なら、これは「最強の血痕式」だな…」
　おい、何だそのパワーワードは。
「丁度愉快な仲間達が準備を進めていってくれてるしなぁ……」
　おい、愉快な仲間達？何式場をプロレスのリングに変容させているんだい？
　ちょっとちょっと、パイプ椅子とか持ち出さないで、お願いだから。
　これ結婚式だから……戦いながらやれって言ったのはこちらだけどさぁ……こんな展開になるとは思ってなかったよ……
「『結婚式』じゃなくて『血痕式』やなぁ……」
　だからそんなパワーワードは想定していないんだ……
「オリジンを血の海に沈めてやるぜ！」
　……えーと、オリジン？
　骨は拾ってやるから。

「はっはっは！！ようやく結婚式場に到着できたぞぉ！！」
　扉を破砕して式場に飛び込んできたオウガ・オリジン。
　――それは、究極の肘内エルボーだった。
　漆黒の無貌を強烈な打撃が歪ませ、粉砕していく。扉が破砕されて吹き抜けになった出入り口に出戻りするかのように吹き飛ばされていくオリジン。やがて壁に叩きつけられて床に這い蹲った。
　そこに追い打ちとしてジンの巨体によるエルボー・ドロップがオリジンの喉元に直撃する。
「バクルフ！！……き、貴様ら……結婚式を挙げるんじゃなかったのか……？」
「結婚式は人生の門出とも云うやろ？ソレを邪魔するなんてなぁ……」
「いや、これどうみても結婚式じゃなくてプロレス……後、一応聞くがそのバトルアックスはアレか？私の身体をケーキ入刀の代わりにオブリビオン・フォーミュラ入刀とするつもりか？」
　返答の代わりに返って来たのは脳天を文字通りカチ割るバトルアックスの一撃。
　もんどりうってオウガ出なかったら死んでいた一撃を悶える暇もなく最早セメントの領域で追撃を放つジンとクリミネル。

「骨折れる骨折れる！！」
　バキョ、と人体では確実に出してはいけない破砕音を体の内側から響かせながら二人にスープレックスをかけれているオウガ・オリジン。
　とどめはオウガの関節を極めながらの――
「愛と正義と幸せのツープラトン、合体パイルドライバーだぁぁ！！」
　いつの間にか愉快な仲間たちが実況していますね。
　ともかくベルが鳴り響くとともに床に存在するは頭部が無惨なスイカになったオウガ・オリジン。
　白いドレスとタキシードがオウガ・オリジンの返り血で染まっても凄く良い笑顔………

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「さいきょうのけっこんしき、か。ハ、愛し合った男女の人生の門出なんて、どれもこれも最強に決まってんだろ？」
「ええ、鷹介さん。素敵な結婚式を上げましょう……」
　最後はサイキッカーサイボーグカップル、伊高・鷹介（ディフェクティブ・f23926）とドロレス・コスタクルタ（ルビーレッド・f12180）の二人だ。
「さて、俺の衣装は白タキシードでビシッと。な」
　文字通り皴の無い白タキシードを着込んだ鷹介。向かい合うはクラシックで大人っぽい雰囲気の純白ウェディングドレスを着たドロレス。
　それを彩るのはロングベールと色とりどりの花を集めたブーケ。
「いつか最愛の人の隣に立つ……それが形になるなんて……」
「ドロレス、ウェディングドレス、すげぇ似合ってるぜ……」
　二人の間で漂うプラトニックな空気。
　最愛の女性の晴れ姿を見て満足げな表情を浮かべる鷹介。
　憧れた姿になり、幸福そうに頬を染めながら感極まってきて泣きそうなドロレス。
　これぞ結婚式と言わんばかりの初々しさが2人の間で交わされる。
「鷹介さん。わたくし、幸せです」
「ドロレス……」
　二人は、幸せなキスをして――

「ハァー、ハァー……死ぬ……」
　そこに先程の『血痕式』によってボロボロになったオウガ・オリジンが。
　……叩き込まれるはドロレスの狙いを定めずWWA-999から発射されるユーベルコード『Agony Bullet（アゴニー・バレット）』。ちなみに能力は「命中した銃弾が膨張炸裂して内部を破壊したのち、その銃弾を形成していたナノマシンが瞬時に大きなトレブルフック状に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる」という内部破壊系統のの魔弾型ユーベルコードであり、モロに喰らったオウガ・オリジンは内臓を食い破るトレブルフックによって悶絶している。
「……この瞬間を邪魔するとは許せないです！」
　ちなみにドロレスにとってオウガ・オリジンとは何かごちゃごちゃした存在のようだが、鷹介さんしか見えていないので基本的に無視する程度の存在でしかない。
　故に二人きりの結婚式を邪魔されたことで怒り心頭だ。
「やろうぜドロレス。邪魔するオリジンは２人でお仕置きだ」
「ええ、任せてください鷹介さん！！」
　オブリビオン・フォーミュラ入刀、第二弾開始であった。
　超出力の念動力によってオウガ・オリジンを空間ごと圧し潰し、ドロレスの放った弾丸も捻じ曲げた空間によって物理法則を無視した軌道を描かせて魔弾を更に叩き込んでいく。
「ぐわばぁ！！お、おのれぇ……」
「最期に教えてやる。これを「阿吽の呼吸」で行える程に俺とドロレスは結ばれてんだ」
「事前の打合せも現場でのアイコンタクト等もなしに鷹介さんが即興コンボでフォローしてくれると信じていますの」
「ば、バカップルめぇ……」
　そんなのろけを聞きながら、本格的に滅びを迎える域に達した回数目の死を迎えてオウガ・オリジンは骸の海へと還っていった。

「さて、無粋な奴は退場してもらった。後は……」
「鷹介さん……来てください……」
　と、鷹介がドロレスのベールを持ち上げ――

　ここに、聖なる婚姻の未来は形となった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2020年08月27日