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迷宮災厄戦⑱-3〜シャル・ウィ・ダンスとは聞いてない

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●踊らない奴を殺す国
 踵を鳴らす音が響く。小刻み良い音、ステップは跳ねるように繋ぐ手から先は全て己の体のように。
 四本の足と一つの胴、二つの手は繋がり合って一つに。けれど、頭は二つ。
 心は二つだけれど、踊る演目は一つ。
「アハハハ! 踊れ、踊れ!足が擦り切れても、膝が砕けても、踊れ、踊れ。くるくる狂うまで踊れ!」
 オウガ・オリジンが踊る。目の前には無敵のダンスパートナーがユーベルコードによって生み出され、オウガ・オリジンの優美でありながら可憐なる踊りのパートナーを務めている。
 そのステップは、スウィングは、あらゆる意味で完璧だった。
 誰も彼もが彼女の踊りに評価する子はできない。それは彼女の踊りが完璧なものであったのもあるが、違う。
 この不思議の国に召喚された愉快な仲間たちは、その全てが必死の形相で踊り続けていた。

 ―――ここは『踊らない奴を殺す国』。
 何らかのダンスをし続けないと死ぬ、特殊なガスが満たされている。踊り続けなければ死んでしまうというのは比喩ではなかった。
 踊って、踊って、踊り狂って死ぬか、もしくはステップの足を止めた瞬間ガスによって死ぬか、そのどちらかしか、召喚された愉快な仲間たちには残されていなかった。

「ああ、ダンスパーティーは終わらない。終わらないダンスパーティは終わらない。終わらないったら終わらない。いつまでも踊ろう。踊り続けよう。ずっとずっと続けばいい楽しい時間を永遠に!」

●迷宮災厄戦
 グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。みなさんは、ダンスはお得意でしょうか?」
 ダンス、と聞いて猟兵たちは如何なるものを思い描いただろうか。
 バレエ、モダンダンス、ブレイクダンス……名称は様々であろうし、その全体を大まかにカテゴライズすることは可能であっても、全てを網羅することは難しいだろう。
 人間の原始的な発明。それがダンスである。感情を、意志を、願いを伝える肉体の言語。それこそがダンスである。

「はい、今回予知されたオウガ・オリジンが存在する不思議の国は……『踊らない奴を殺す国』なのです」
 いきなり物騒な単語が飛び出したことに猟兵たちは驚いたであろうし、これまで幾つもの不可思議な国を見てきた彼等にとって、あまりにも直線的な不思議の国であったことだろう。
『踊らない奴を殺す』。
 それは、この国にある唯一にして絶対の法。

「オウガ・オリジンは現実改変ユーベルコードによって、踊り続けないと死ぬ、特殊なガスで満たされた国を作り上げたのです。さらに最悪な事態なのですが……多くの愉快な仲間たちが召喚され、踊らされ続けているのです」
 それが緊急を要する事態の大きな要因。
 オウガ・オリジンはいつまででも踊り続けることができるであろうが、愉快な仲間たちは違う。体力に自信のないものもいるであろうし、そもそもそう長く踊り続けることなんて不可能である。

「オウガ・オリジンを倒せば、このガスもなくなるのです。愉快な仲間たちを助けるために、なんとしてでもオウガ・オリジンを打倒していただきたいのです」
 つまり、踊り続けながら、オウガ・オリジンに攻撃しなければならない。単純だが、かなり難しいだろう。
 倒さなければ、充満した踊らない者を殺すガスで死に至らしめられる。時間をかければかけるほど猟兵にとっては不利な条件になってしまう。
「それでも、愉快な仲間たちのみなさんを救わなければなりません。踊りは楽しいものですが、強要されるべきものではありません。もっと……楽しく、心を通わせ合うものだと思うからです」
 お願いします、とナイアルテは頭を下げる。
 踊るのは楽しいことだが、死を強いられるダンスを続ける愉快な仲間たちを思えば、そう思ってもいられない。

 次々と転移していく猟兵たちを見送り、ナイアルテのダンクシューズが踵を鳴らす。
「シャル・ウィ・ダンス? なんて、聞かれてしまいたいものです―――」


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『迷宮災厄戦』の戦争シナリオとなります。

 踊らないやつを殺す国にて、踊りながらオウガ・オリジンを攻撃し、打倒しましょう。召喚された愉快な仲間たちを救うために!

 ※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。

 プレイングボーナス……踊りながら戦う。

 それでは、迷宮災厄戦を戦い抜く皆さんのキャラクターの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 ボス戦 『『オウガ・オリジン』と死のダンス』

POW   :    イマジナリー・ダンスパートナー
無敵の【ダンスパートナー】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
SPD   :    無様なる転倒を晒せ
【かかとを打ち鳴らすことで】、自身や対象の摩擦抵抗を極限まで減らす。
WIZ   :    罰は天より降る
攻撃が命中した対象に【踊ることの出来ない超重量の『鉛の靴』】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【空から降り注ぐギロチンの刃】による追加攻撃を与え続ける。

イラスト:飴茶屋

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ハロ・シエラ
【ダンス】であれば私も少しは出来ますが、オリジンのレベルには至りませんね。
ですがこれは戦い、ダンスが全てではありません。

まずは踊りながら接近。
カポエラの様な格闘技の要素を含む動きが妥当でしょう。
【グラップル】による攻撃も出来そうです。
接敵したら相手の動きを【見切り】攻撃を回避しながら戦わなければ行けません。
食らってしまったら鉛の靴とギロチンですから。
ユーベルコードを発動し、鎌を使ってポールダンスの動きをしながら戦います。
時には鎌の刃で【鎧無視攻撃】も狙えるでしょう。
もし鉛の靴を履かされてしまったら、上半身だけでファンシードリルでもやりましょう。
ダンスと認められれば、斬る事くらいは出来そうです。



 踊るということはある意味で感情の発露であり、誰かに何かを伝えようとする表現方法の一種であったのかもしれない。
 それは言葉を介さないコミュニケーションとして、最も原始的なものであり、事、伝えるという意味においてはあらゆる種族、存在を超越する手段である。
 例えば他人に。例えば高次なる存在に。
「踊って、踊って、踊らないやつは即座に殺す。踊らぬ者は価値など無い」
 オウガ・オリジンは『踊らない奴を殺す国』において、踊らぬものを殺すガスを充満させながら踊る。
 自身は現実改変ユーベルコードによって得たダンスパートナーと優雅に、華美に踊り続ける。ステップを踏む姿はあまりにも美しかったけれど、その美しさを誰かに強要することは、ダンスというコミュニケーションにおいてはまったくの逆行であった。

「ダンスであれば私も少しは出来ますが、オリジンのレベルには至りませんね」
 ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)はユーベルコード、ドラゴノートによって手にした蛇の血と毒によって鍛えられたサーペントベインを大鎌の形に変形させ、呪いの力を利用して身を守る軽鎧から生えた翼をはためかえ戦ながら、大鎌の柄をまるでポールダンスのポールに見立てたかのように踊る。
 その柔軟性と筋力を誇るように柄の周りでスピンをしたり、倒立をしたりと、その姿は『踊らない奴を殺す国』において、華やかでありながら、どこか人を惹きつける所作を発揮していた。
「ですが、これは戦い。ダンスが全てではありません」
 本来ポールダンスは垂直に立てられたポールを主軸に、その場から動くことはない。けれど、ハロが今手にしているのが大鎌の柄である以上、移動すらも踊りの一部と化して、イマジナリーダンスパートナーと踊るオウガ・オリジンに近づいていく。

「その細っこい棒きれがパートナーとは。だが、この国においてわたし以上に目立つものは許されない!」
 オウガ・オリジンの咆哮の如き声が響き渡る。
 それは悪辣なる自己中心的性格故に、踊りを強要しても、一番に目立つのは自分でなければならないという気持ちが強いのだ。
 故に、華美でありどこか目を引く踊りをするハロはオウガ・オリジンにとって目障りな存在そのものであった。
「メチャクチャなことを言っている自覚はありますか?」
 ハロの大鎌の柄を使ったポールダンス、スピンから放たれる遠心力を加えられた拳や蹴りがオウガ・オリジンに飛ぶ。
 それを華麗に躱しながら、踊り続けるオウガ・オリジンの足が放たれると、鉛の口がハロへと迫る。

「これでも喰らえ! 踊らぬ者は罪あるもの! 罰を与えるための靴! 踊れぬようになって、ガスの餌食になるがいい!」
 その超重量の靴を当たってしまえば、踊れなくなるほどの足枷を強いられるのと同じである。
「それはすでに見え透いた手です! 封印を解きます……この剣は、痛いですよ!」
 柄を使って靴の一撃を躱すと、ハロはそのままサーペントベインの封印を時、形状を大鎌から剣へと変える。

 円舞のようにくるりと体を翻しながら、その剣の一撃がオウガ・オリジンの体へと振るわれ、その背を切り裂く。
「ダンス―――剣術にも徒手空拳にも型というものがあります。それらは演舞と呼ばれるくらいですから……これもまた実践的な舞、ダンスだと言えましょう!」
 ハロの踊りが続き、その剣の舞によってオウガ・オリジンは次々と裂傷を刻まれていく。
 続け様に放たれた鉛の靴も、その動きの中では躱される一方である。

 時折、愉快な仲間たちの間を縫うようにして大鎌に変じたサーペントの柄を使って、華麗に空へと舞い上がり、ハロは踊り続ける。
「踊りと戦いは似た動きもありますが、だからといって愉快な仲間たちに強要していいものではないでしょう!」
 宙に舞ったハロの身体が大鎌の遠心力と共に回転し、空に浮かべるは黒髪の満月。振るわれた大鎌の一撃は正しく円舞の如き一撃となって、オウガ・オリジンの身体へと叩きつけられる。

 華麗に着地し、ハロは再び踊る。
 まだ致命傷ではない。けれど、ハロの刻んだ斬撃はオウガ・オリジンへと刻まれて消耗させる。
 再び大鎌の柄を使ってハロは踊る。楽しい、と少しでも感情が湧き上がれば、それは即ち踊りであるのだから―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャルロッテ・ヴェイロン
ほほう、要は【ダンス】しながら戦え、ってことですね(【選択UC】で解析&強化(状態異常力重点))。

ところで、曲のリクエストいいですか?だったらお願いしますね、「00年代ユーロビート」(ぇ)!
――あぁ、面子が足りないんでしたら【バトルキャラクターズ】でRPGの踊り子キャラを召喚しますね(で、そっちに戦闘を任せたり)。

――ところで、そのダンスパートナーって、どうせ架空のでしょう?
もしかして、一緒に踊ってくれる人どころか、友達いないんですかー?(と、相手のUCを弱めにでたり)
(そしてとどめに【捨て身の一撃】による【騙し討ち】)

※アドリブ・連携歓迎



 猟兵の斬撃を受けても尚、オウガ・オリジンの舞うダンスのキレに些かの衰えも見えなかった。噴き出した血は血化粧の如く、真っ赤なドレスとなって、その身を彩る。
 血まみれで踊る者を見て、美しいと思うものはいないだろう。けれど、その様相にあって尚、オウガ・オリジンのダンスはさらなる魅力を持って、周囲を魅了し続ける。
「猟兵共が来たとしても、わたしのダンスは終わらない。終わらないったら、終わらない。ダンスパーティーはまだまだはじまったばかりなのだから!」
 イマジナリーダンスパートナーとの踊りはいよいよ持って激しいステップを踏む。激しいリズムは、『踊らない奴を殺す国』に響く音楽に影響するかのように、騒々しいリズムを刻んでいく。

「ほほう、要はダンスをしながら戦えってことですね―――目標確認、データ解析――あの敵にはこのプログラムが有効ですね!」
 シャルロッテ・ヴェイロン(お嬢様ゲーマーAliceCV・f22917)は、『踊らない奴を殺す国』に舞い降りてすぐ多次元世界にまたがる電子・霊的ネットワークにアクセスし、目の前で踊るオウガ・オリジンの力を解析する。
 その解析結果、つまるところ、オウガ・オリジンのダンス、そしてイマジナリーダンスパートナーの力量を基に自動生成されたデータをPROGRISE:INSTALL(プログライズ・インストール)する。

 データによってお強化されたシャルロッテのダンステクニックは、今やオウガ・オリジンと引けを取らぬ力量である。
「ところで、曲のリクエストいいですか? だったら、お願いしますね!」
 不思議の国『踊らない奴を殺す国』においてダンスミュージックは重要なファクターであろう。
 何の音楽もなしに踊ることはなく、音楽無くばダンスはなく、ダンスなくば音楽はない。それほどまでにダンスとミュージックは切って切り離せるものではないのだ。
「リクエストは! 00年代ユーロビート!」
 シャルロッテの言葉と共に奏でられるは、超速アップテンポなミックスナンバー!
 若者の感性刺激するキャッチーなメロディとフレーズをミックスしたシャルロッテお気に入りのナンバーが彼女の心を、テンションを天井知らずに跳ね上げさせていく。

 身体が自然とリズムを刻む。
 この国に召喚され、強制的に踊らされていた愉快な仲間たちも、次々にミックスビートが刻むテンポに導かれるようにして身体を揺らす。
 音が身体に浸透するような、重厚なビートが自然と無理矢理踊るようなダンスを音に導かれるままに踊るような踊りへと変化していく。
「―――ああ、もっと面子がほしいですね! もっともっと盛り上がっていきましょう。パーティーはこれからですよ!」
 オウガ・オリジンは見ただろう。
 次々と召喚されるRPGのゲームキャラクターたちが踊り子として、『踊らない奴を殺す国』にダンサーとして愉快な仲間たちとリズムに載って踊るのを。

 それは本当に楽しげな音と肉体のミックスだった。
 ユーロビートが若者の心を引きつけるのは、その鼓動と同じリズムを刻むからだ。アップテンポなビートは、それだけで若い心を引き立たせる。
「―――ところで、そのダンスパートナーってどうせ架空のでしょう? もしかして、一緒に踊ってくれる人どころか、友達いないんですかー?」
 煽るようなシャルロッテの言葉に、オウガ・オリジンの顔のない顔が歪むような気配がした。
 それは、顔を真赤にした、と言ってもいいほどの反応であったが、それを確認する術はない。
 なにせ、顔がないのだから。

「わたしの踊りにパートナーなど必要ない、これはわたしの身体の一部! パートナーに心など要るものか!」
 だが、それはただの虚勢だ。
 どれだけの存在であっても孤独には耐えられない。だからこそ、現実改変ユーベルコードによってイマジナリーダンスパートナーを生み出したのだから。
 それはよくわかるからこそ、シャルロッテは、その存在を揺らがせるための一手としてオウガ・オリジンを煽る。
 踊るのならば、一人でだって可能だ。バレエでもいい、ブレイクダンスでもいい。けれど、パートナーを必要とする踊りをする以上、一人で踊ることはできはしない。

「もっと素直になってしまったほうがいいと思うんですけどねー?」
 可哀想に。
 それは憐憫。どんな攻撃よりも、何よりも、オウガ・オリジンと踊るダンスパートナーの存在に疑念を抱かせる、その言葉が深くオウガ・オリジンの胸に突き刺さるのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィロメーラ・アステール
「新しい踊り手の登場だー!」
ほーら、どいたどいた!
一緒に踊るとケガするぜ!

などと『星装《えあろ》』の風を纏いながら【空中浮遊】していって、敵に【ダンス】勝負を仕掛けるぞ!
風に乗ってくるくる回ったり、空気をクッションにして跳ねたりして邪魔してやろうかな!

【空中戦】なら摩擦を減らされても影響は少ない!
むしろ【カウンター】で【蒼天まわしむ千変の星冠】を使っちゃえ!
風に冷気【属性攻撃】を加えて、敵の足を凍らせて摩擦を減らせば、ステップは踏めないし、打ち鳴らすのも難しい!

更に風の【衝撃波】で【吹き飛ばし】たりしたら、ふんばるのも大変になるんじゃないかな?
そこへ【全力魔法】パワーを叩き込んでやるぞ!



「新しい踊り手の登場だー!」
 ごきげんなナンバーと共に『踊らない奴を殺す国』に舞い降りたのは、一人のフェアリーであり、猟兵であり、幸運の流れ星こと―――フィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)であった。
 彼女の小さな体は『踊らない奴を殺す国』にあって、愉快な仲間たちの踊りを邪魔すること無く間隙を縫うようにしてすいすいと舞い飛ぶ。
「ほーら、どいたどいた! 一緒に踊るとケガするぜ!」
 なんて言いながら、風の層の如き魔力圏を身にまとったフィロメーラが笑う。空舞うフェアリーであるフィロメーラにとって、空こそが彼女のダンスホールである。

「小賢しいハエが! その程度でわたしと張り合おうなどと―――!」
 オウガ・オリジンが苛立たしげに踵を踏みならそうとする。
 けれど、それを使わせてしまっては、他の愉快な仲間たちもまた踊れなくなってしまう。そうなってしまえば、この『踊らない奴を殺す国』において、充満したガスが愉快な仲間たちを殺してしまう。
 それだけはなんとしても避けなければならない。
「踊れー! 青い星の嵐の中で!」
 水と冷気を自在に操り、フィロメーラの纏う風に冷気を加え、オウガ・オリジンの踵を踏みならそうとした地面を凍らせ、叩きつけられる音を響かせない。
 つるりとオウガ・オリジンが転倒しようとするが、イマジナリーダンスパートナーが、その体を支える。

 惜しい! とフィロメーラが笑いながら空を舞う。
 そのまま踊れなくなって、ガスの影響を受けてしまえば一石二鳥であったのだが、そこまでオウガ・オリジンも甘くはない。
「ちぃ―――! 小賢しい!」
 そんな無理な態勢からでも見事な体幹でもって復帰し踊り続けるオウガ・オリジン。その周りを鬱陶しく飛び回り、舞い続けるフィロメーラ。
「あはは、よくたえたね! じゃあ、これはどうかな!」
 さらに衝撃波がオウガ・オリジンを襲う。ステップをふもうとしても、地面は氷漬けにされてつるりと滑ってしまう。

 けれど、オウガ・オリジンもオブリビオン・フォーミュラたる所以を見せ続けるように、氷漬けになった地面をスケートリンクのごとく滑走しながら舞う。
 その姿はフィギュアスケーターそのもの。表情のオウガ・オリジンが不敵に笑う気がした。
 だが、次の瞬間、オウガ・オリジンの顔が驚愕に歪んだような気がした。
「踊りにばっかりかまけてないで―――! 私の全力魔法のパワーを思いしっちゃえ!」
 オウガ・オリジンがつるりと滑る地面に悪戦苦闘している間にフィロメーラはすでに全力魔法の準備を終えていた。

 極大の魔法の力。
 風と冷気の混じり合って魔法が砲撃のようにオウガ・オリジンとイマジナリーダンスパートナーを穿つ。
 それは地面を凍りつかせた氷すらも砕く勢いで放たれ、オウガ・オリジンを消耗させる。
「もっともっと、楽しく踊ろうよ! 踊るのやめたら死ぬだなんて、緊張感でちっとも楽しくないんだから!」
 そう言ってフィロメーラは笑う。
 空こそが彼女の舞台、彼女の独壇場。どんな姿であっても、どんな種族であっても踊りとは常に楽しいものであるべきだ。

 踊らない奴を殺すガスなんて、そんな無粋なものは自分の風で吹き飛ばす。
 そんな気概と共にフィロメーラはオウガ・オリジンのダンスに一陣の風となって、邪魔をし続けるのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

播州・クロリア
(救いを求めるように天を仰ぎ手を伸ばした後{晩秋の旋律}で『ダンス』を始める)
このリズムは寂寥感、喪失感、退廃的な死を表現したリズムです
(ダンスに乗せた『催眠術』による認識阻害で生み出した『残像』を囮に攻撃を回避し敵のダンスパートナーの腕をつかんだ後『怪力』でオウガに投げ飛ばす)
今の貴女に相応しいと思いこの旋律を捧げました
(UC【蠱の腕】で{錆色の腕}を刃の鞭の変化させ、枯死の『呪詛』を刃に纏わせた後『念動力』で鞭を操作しながら四方八方から切り刻む)
命を弄ぶ貴女には公開と懺悔の念を覚えるまで追い詰めたかったですが今は一刻の猶予もありません
早々に骸の海へ還っていただきます



 その旋律が奏でるは、晩秋の紅葉がちりゆくさまを表すかのような寂寥感、喪失感。想起されるは退廃的な死。それを表現したリズムが『踊らない奴を殺す国』に響き渡る。
 これまで響き渡っていたダンスホールを席巻するような圧倒的な超速ビートは鳴りを潜める。それがどれだけの状況であるのかを、播州・クロリア(リアを充足せし者・f23522)は己の心から溢れるリズムを持って知っていた。
 救いを求めるように天を仰ぎ、手をのばす。
 その先にあるものを求めてはいるが、それがその手の内に収まることはあるのだろうか。
 そんな問いかけを醸し出すような、クロリアの舞のはじまりは、同じように『踊らない奴を殺す国』における愉快な仲間たちはおろか、オウガ・オリジンをも緊張の中へと引きずり込む。

 言葉はない。
 けれど、その舞が、ダンスが溢れさせる感情は、すべて寂寥感の中に飲み込まれて、いいようのない喪失感を感じさせる。
 自分が何を失って、何を得たのか、それさえもわからなくなるほどの感覚。それはクロリアが刻むリズムによって『踊らない奴を殺す国』は、物悲しい雰囲気に包まれていた。
 それは催眠術と言っていいものであったことだろう。クロリアが生み出すリズムとダンスに乗せた認識阻害は、オウガ・オリジンの攻撃を尽く残像に向けさせる。
 踊るリズムによってクロリアはオウガ・オリジンのイマジナリーダンスパートナーの腕を掴む。互いに二人で一つのような身体とともに踊っていたオウガ・オリジンは投げ飛ばされた瞬間に、リズムが刻む催眠術から開放される。

「―――!? なん、だ……? わたしは今まで踊っていた、はず?」
 だが、それでも踊りを止めないところは見事であると言ってもいいだろう。
 オウガ・オリジンの踊りは止まらない。体制を崩したとしても、それでもダンスは続く。イマジナリーダンスパートナーは、若干のゆらぎを見せていはいるが、無敵の力は未だに健在。
「今の貴女にふさわしいと思い、この旋律を捧げました」
 クロリアの意思に従い千変万化する鋼より硬い錆色の腕が刃の鞭となって、オウガ・オリジンへと襲い掛かる。

 それは枯死の呪詛を纏わせた刃。
 その一撃一撃はダンスと共に念動力で操作される四方八方から襲い来る凄まじき斬撃。
 彼女のユーベルコード、蠱の腕(コノウデ)。
「生命を弄ぶ貴女には後悔と懺悔の念を覚えるまで追い詰めたかったですが、今は一刻の猶予もありません」
 晩秋の旋律は続く。
 曲調は終息していく。けれど、斬撃は終わらない。クロリアのダンスとともに、その思いと共に刻まれていく。

「早々に骸の海へ還っていただきます」
 最期の一振りが振るわれ、旋律が終局へと向かう。
 クロリアにとってダンスとは色とリズムを置換したもの。旋律はダンスから生み出される。
 どちらも欠けてはならないものであり、彼女の能力の一端でもある。
 故に、その斬撃はオウガ・オリジンの心を寂寥感と喪失感でもって穿ち続ける。斬撃が終わっても、その喪失感は残り続けるだろう。

 命を弄んだこと、その罪が常に骸の海へと消えるまで続く。
 それがクロリアがオウガ・オリジンに課した罰なのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

紫・藍
あやや、なんということでっしょう!
踊りながら戦わないといけないなんて!
それはつまり……割といつもの藍ちゃんくんなのではー?

摩擦減らしには浮遊で対策もよいのでっすが、そもそもでっすねー
摩擦がなければ踊れないなどと、ダンスをなめてらっしゃるのではー?
アイスダンス――陸上スケートでパフォーマンスと洒落込んじゃうのでっす!
おじょーさん自身も滑って攻撃をしてくるかも知れませんが、こかされても、ダンスは終わらないのでっすよー?
摩擦力の代わりに空中浮遊な靴の推力を活かしての擬似ブレイクダンスに移行&キックなのでっす!
止めに藍ちゃんくん黙るのでっしてー
滑って突っ込んでくるおじょーさんを吸い込んじゃうのでっす!



 その旨を穿つは寂寥感と喪失感。
 刻まれた傷の痛みはあれど、その傷よりも遥かに痛むは、その精神に刺さった棘の如き感覚。無敵であったはずのイマジナリーダンスパートナーは揺らいでいる。
 けれど、それでもオウガ・オリジンは踊ることをやめない。やめるつもりもない。
 現実改変ユーベルコードによって生み出された『踊らない奴を殺す国』に充満するガスは、風の魔法によって薄まってはいるものの、まだその効力を残している。
 愉快な仲間たちは踊り狂い続け、その惨禍の中心にてオウガ・オリジンは笑う。
「踊ることは愉快だ。もっともっと、踊れ、踊れ! ステップを刻んで、踊れ、踊れ、ビートは生命の鼓動、脈動であるのならば!」
 笑う、笑う、あらゆる生命は己のためにあるものである。
 己を楽しませない生命に価値はない。そういうかのような、悪辣たる自己中心的性格は一向に収まる気配はない。

 世界に中心こそが、自分である。
 そういうかのようなオウガ・オリジンを前に紫・藍(覇戒へと至れ、愚か姫・f01052)は、軽やかなステップで登場する。
「あやや、なんということでっしょう! 踊りながら戦わないといけないなんて! それはつまり……」
 オウガ・オリジンの踵が鳴り響く。
 それは極限まで地面の摩擦抵抗を少なくさせるユーベルコード。つるりと滑ってしまえば、ステップを踏むことは不可能。
 だが、藍は不敵に笑う。無敵に笑う。
「……割といつもの藍ちゃんくんなのではー?」

 その言葉は、あまりにも明るくて、あっけらかんとしていて、それでいて踊り続けなければならない愉快な仲間たちにとって希望となりえるものであったことだろう。
「そもそもでっすねー? 摩擦が無ければ踊れないなどと、ダンスをなめてらっしゃるのではー?」
 どれだけ摩擦を減らされようとも、ステップを刻む大地が滑ろうとも、藍にとっては無意味であった。
 地面が滑るのであれば、陸上スケートでパフォーマンスと洒落込む。
 転んでもただでは起きない。
 言ってしまえば、これは―――。

「アイスダンス! スケートそのもの! どれだけこかされても、ダンスは終わらないのでっすよー?」
 オウガ・オリジンとイマジナリーダンスパートナーが滑走する。
 それは藍と同じく摩擦抵抗に対する解答であったのだろう。けれど、二人で一つに動く無敵のダンスパートナーと、藍とでは、軽やかさが違う。
 例え、力で敵わなくても、転がされてしまったとしても、藍は諦めない。

 滑って倒れ込んでしまえば、即座に靴の推力を生かしての疑似ブレイクダンス!
 くるりと背中で地面を滑らせ、遠心力の載った蹴りがオウガ・オリジンを襲う。
 回転しながら放たれる蹴りの数々は、変幻自在であり、あらゆる角度から蹴り込まれるのだ。それをかわそうとすれば、オウガ・オリジンたちと言えど、足場が悪いのが幸いして、攻撃に翻弄されてしまう。

「………………………………………………………………………………」
 あれほど騒がしかった藍が押し黙る。
 それはつまるところ、藍のユーベルコードであり、藍ちゃんくんが黙るだなんて世界の終焉なのでは!?(ワールドエンド・サアイレンス)。
 それこそ異常事態である。
 藍が黙ることによって世界に生じた虚。それが沈黙の特異点から生じる疑似ブラックホールを生み出す。

 それはあまりにもでたらめな光景であった。
 現実改変ユーベルコードをもつオウガ・オリジンとて想像しなかった光景であろう。吸い込まれようとするオウガ・オリジン。
 けれど、無敵たるダンスパートナーによって救われる。後もう少し! そんな惜しい気持ちを抱えながら、藍は踊る。歌う。
 だって、いつだって楽しいのが正義である。

 だから藍はブラックホールにかまけるオウガ・オリジンをほっといて、即席即興コンサートでノリノリなナンバーを流しては、愉快な仲間たちの心を癒やす。
「さー! 藍ちゃんくんでっすよー! ぴすぴすなのでっす!」
 びかびかとダンスホールと化した『踊らない奴を殺す国』は、今だけノリノリのハコに変わるのだった―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
取りあえず踊ってさえいれば良い訳だ
ルールも無ければ下手でもいいならやりようはあるか

付け焼刃で簡単なステップとターンだけ覚えていこう
相方は不本意ながら邪神に頼もう

千年早いと言っても良いのですけれど
なかなか楽しそうですの

摩擦を減らして邪魔するようですけれど
要所要所で足を地面に固定すれば滑らずに踊れますの

仕方ない事ですけれど
まだまだ権能の扱いが甘いですの
丁度良いので少し練習してみるといいですの

体の一部の固定と解除を繰り返すのは厳しいな
気まぐれでも教えてくれるなら学んでおこう

敵の攻撃は神気で防ぎつつ
相手の手足を固定したり麻痺させたりして転倒を狙おう
踊れなくなったらダメージを受けるのはそちらも同じだよね



 疑似とは言え、発生したブラックホールはオウガ・オリジンを飲み込まんとする勢いであった。
 むしろ、それに抗えたオウガ・オリジンの力の凄まじさが尋常ならざるものであったと言えるであろう。
 ブラックホールから抜け出すことに力を使っていたせいか、オウガ・オリジンのダンスにキレはない。それだけ消耗が凄まじかったのだろう。だが、オウガ・オリジンの現実改変ユーベルコードによって生み出された『踊らない奴を殺す国』に充満したガスは未だ晴れない。
 一刻も早く、召喚された愉快な仲間たちを解放しなければ、いつ踊ることを続けられなくなってガスによって死に至らしめられるかわからない。

「取り敢えず踊ってさえいれば良い訳だ。ルールも無ければ、下手でも良いならやりようはあるか」
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は付け焼き刃であるが簡単なステップとターンを覚えて、この場に挑んでいる。こういう下準備はしっかりとしなければ、どこで足をすくわれるかわかったものではないのが、オウガ・オリジンの恐ろしいところだ。
「不本意だけど―――」
「千年早いと言っても良いのですけれど」
 ユーベルコード、邪神の恩返し(ガッデス・リペイメント)によって自身と融合した邪神の分霊の手を取った晶の言葉に分霊がジトっとした視線を向ける。

 ダンスパートナーが必要であったとは言え、晶に取ってはかなり渋々といった体面があった。
 けれど、分霊は気にした様子もなく笑う。
「中々楽しそうですの。だから、そういう釣れない態度もまあ、良しとしましょう」
 晶の手を引いて、ダンスホールたる『踊らない奴を殺す国』へと舞い降りる二人。
 すでに地面はオウガ・オリジンのもつ現実改変ユーベルコードによって、摩擦抵抗を極限まで減らされている。
「あら、摩擦を減らしているようですけれど―――」
 分霊の持つ神気が接地面を固定する。
 それこそが邪神の分霊たる彼女がもつ権能である。足場を要所要所で固定すれば、滑る必要もない。

 邪神の分霊の神気は完璧な固定を見せたが、晶の神気は未だ拙いものであると言えたのかも知れない。分霊のどや顔が癪に触る。
「仕方ないことですけれど、まだまだ権能の扱いが甘いですの。丁度良いので少し練習してみるといいですの」
 オウガ・オリジンのイマジナリー・ダンスパートナーとのペアが間近に迫る。
 その攻撃の一々が、晶の集中を乱す。
 権能を使おうとしても、蹴撃やイマジナリーダンスパートナーの一撃が繰り出されるのだ。その度に防御に神気のコントロールを割かれてしまう。
「ぐっ―――身体の一部の固定と解除をクリ貸すのは、厳しいっ、な!」
 気まぐれであると言っても良いのだろうが、それでも邪神の分霊から学ぶことは多い。

「その調子ですの。まあ、まだまだ千年早いって感じですが、及第点でしょう」
 そんな言葉を聞きながら、晶は神気の制御を続ける。
 互いのパートナーの違いはあれど、競うように二組のペアが踊る。踊る。踊り、互いの踊りを阻害する。
 晶の神気は徐々に上達している。

 要はタイミングだ。
 神気の解除。オンとオフのスイッチを入れるタイミングを図るのではなく、己が神気の制御権を持っているのだから、0と1だ。出力の量は関係ない。
 イメージ。
 足を踏み出すのが1。飛び跳ねるのが0。
 ならば、敵の攻撃が自身に触れる瞬間が―――。
「今、っ!」
 晶の神気がオウガ・オリジンの蹴撃を止める。停止。

 その神気に当てられ、オウガ・オリジンが転倒する。けれど、既のところで無敵のイマジナリーダンスパートナーがフォローする。
 あちらも負けてはいないということだろう。
「いまのは惜しかったですわね。さあ、次に参りましょう。次のステップは―――」
 邪神の分霊が楽しくなってきたのか笑う。
 笑顔だけ見ていれば、少女と変わりない。けれど、れっきとした邪神なのだ。けれど、今はダンスの最中だ。

 絶対に理解できない存在では有るけれど、理解できないということだけは理解できている。その一点の理解がいつの日にか、晶に何かを齎す日が来るかも知れない。
 そんなことを思いながら、晶は踊る。ステップを刻む。0と1のリズムは、永遠のように―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
一刻も早くこの悪趣味な催しを終わらせなければなりませんね

●礼儀作法の●世界知識から社交ダンスの動きを解凍
自己●ハッキングで動作に反映

あとはパートナーですが…
(体格の大きな愉快な仲間の方に小声で声を掛け)
オリジン打倒の為、ご協力願えますか?
騎士としてお守りすることを約束いたします

…私と踊っていただけますか?

パートナーを安心させる為、頭は動かさずセンサーでの●情報収集でオリジン・ペアの動向把握
背にかばうようパートナーの動きを●見切ってリード

最接近した際に肩部格納銃器を展開し旋回、●スナイパー射撃
相手のパートナーにオリジンをかばわせた隙にUC起動

迂回するよう●操縦し複数本でオリジンの脚を切り刻み



『踊らない奴を殺す国』。それはオウガ・オリジンの現実改変ユーベルコードによって生み出された歪なる不思議の国である。
 充満したガスは、踊らなくなった者を容赦なく殺す。それがこの国における絶対にして唯一の法。
 ならば、それは。
「一刻も早く、この悪趣味な催しを終わらせなければなりませんね」
 そう、悪趣味の一言に尽きる。
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は己のデータベースより、社交ダンスのモーションデータを解凍し、インストールする。すでに自身の機械の体は戦う動きにも似た足運びと優雅な所作を獲得している。

 オウガ・オリジンが無敵のイマジナリーダンスパートナーを得ているというのであれば、トリテレイアまたパートナーが必要である。
「後はパートナーですが……」
 そう、トリテレイアはウォーマシンである。彼の体躯に見合うだけのパートナーを探すのには苦労するだろう。
 此処が本来の意味での社交ダンスの場であったのなら、だ。
 けれど、此処は不思議の国。召喚された愉快な仲間たちの中には長身たる者だっているだろう。トリテレイアは騎士のごとき所作でもって、長身の令嬢の如き姿をした案山子の愉快な仲間たちに小声で声を掛ける。
「オリジン打倒のため、ご協力願えますか? 騎士としてお守りすることを約束いたします……私と踊っていただけますか?」

 トリテレイアの所作と声色は優しいものであった。
 もしも、こんな場所でなくても彼の所作は他人を安心させ、安堵させるものがあったことだろう。それは彼が要人警護用のウォーマシンであるせいもあったのかもしれない。
 護衛対象に安心感を抱かせるのは当然であった。
 だからこそ、トリテレイアは手を取った案山子の愉快な仲間たちを安心させるようにダンスホールへと導く。
「では―――シャル・ウィ・ダンス」
 手を引く。
 ステップはゆっくりと、けれど、一歩を踏み出す。何もかもがリード次第。トリテレイアの解凍したデータは、即座に己の可動領域から導き出される動きを持って、パートナーをリードしていく。
 視線―――アイセンサーは動かさず、他のセンサーでオウガ・オリジンのペアを捉える。

 すでに動きは見切っている。
 パートナーをリードしつつ、接近。タイミングも位置も距離も、何もかもが計算尽くしだった。
「―――失礼」
 最接近したオウガ・オリジンとトリテレイア。その肩部格納銃器が一斉に展開され銃弾がばらまかれる。
 ダンスミュージックをかき消すような盛大な斉射はしかし、オウガ・オリジンを護るイマジナリーダンスパートナーによって防がれる。
 無敵のダンスパートナーによって射撃の全ては防がれた。
 けれど、トリテレイアの狙いはそこではない。
「騎士と言うより、これはどちらかというと…」
 放たれるは、収納式ワイヤーアンカー・駆動出力最大(ワイヤーアンカー・ヒートエッジモード)。
 射出されたワイヤーアンカーが周囲をぐるりと取り囲む。

 射撃の牽制によって動きを止めたオウガ・オリジンとダンスパートナーを一気に巻き付くワイヤーが熱伝導と高速振動によって、その身を刻む。
 絶対無敵であったダンスパートナーは無事であっても、オウガ・オリジンの肉体はそうではない。
「ぐっ、―――! わたしごと……いや、わたしを最初から狙っていたか!」
 ばつん! とすさまじい音がして、オウガ・オリジンの片足が切断される。絶叫が響き渡る。
 その一撃でもって、本来であればダンスは終幕を告げるはずであった。けれど、残ったもう一つの足がステップを踏む。
 無敵のイマジナリーダンスパートナーがオウガ・オリジンを支え、踊り続ける。

 それは奇しくも案山子の愉快な仲間たちと踊るトリテレイアと同じ姿であった。
 一本足の案山子と、片足を切断されたオウガ・オリジン。
 鮮血舞うダンスホールに、互いのダンスが続く。その執念、その一点に置いてのみ、トリテレイアは驚愕した。
 だが、トリテレイアの役目はまだ終わっていない。
 オウガ・オリジンが消えるその時まで、騎士として護り通す責務を負ったパートナーがまだ機械の腕の中にいる。
 優雅にして華美、そして悪趣味な催しは終局へと近づいている。故にトリテレイアは最後まで、案山子の彼女を護るために踊り続けるのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
踊りで人を苦しめるとは何と怪しからんことか。
CF出身としては、この行いは見過ごせん。

■踊
古郷仕込みのシャッフル【ダンス】で勝負に挑む。
主にランニングマンをはじめとする足技を主軸としたダンスを
披露しつつ、オリジンへ接近を図る。
要所ではアクロバットな【ジャンプ】も決めて格好よく。

■闘
戦闘中は常時オリジンとパートナーが仕掛ける瞬間を【見切り】
つつ、仕掛けられたら【残像】が残る高速ターンですらりと躱し
更に接近を図る。

オリジンの懐に辿り着いたら、少々ステップの種類を変えるぞ。
至近距離でブレイクダンスを思わせる踊りで【フェイント】を
かけつつ、一瞬でも隙が見えたら【真爪】を仕掛ける。

※アドリブ歓迎・不採用可



 踊りとは即ち楽しいという感情の発露である。
 悲しいと思って踊る者もあるであろうが、どちらにしても、その感情の発露がなければ、その踊りは見るものの心を揺さぶることはないだろう。
 ポジティブにせよ、ネガティブにせよ、いっつだって人の心を突き動かすのは、感情のゆらぎである。

 その点において言えば、オウガ・オリジンの踊りは鬼気迫るものであった。猟兵達の攻撃にさらされても尚、その踊りは終わらない。
 片足になってもなお、無敵のイマジナリーダンスパートナーと共に狂ったように踊り続けるのだ。
「まだ、まだ、踊ろう! わたしのダンスは終わってはいないぞ。例え足を裂かれようとも、腕を引きちぎられようとも!」
 それはもはや狂気であった。踊らなければ生命の値打ちがないというような、そんなダンス。それは猟兵たちの気勢を削ぐかもしれなかったが、そこで怯む者は、猟兵の中にはいなかった。

「踊りで人を苦しめるとは何と怪しからんことか。キマイラフューチャー出身としては、この行いは見過ごせん!」
 愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)にとって、彼の出自であるキマイラフューチャーを思えば、本来楽しいとい感情の発露以外見受けられることのないダンスホールで、死と隣合わせの悲壮感などあるはずもなかった。
 一瞬でダンスホールに駆け出す。軽やかなステップ。リズムに載った足さばき、フットワークは、故郷たるキマイラフューチャー仕込みである。
「見よ、この軽やかな足さばき! オウガ・オリジン!」
 足と足が交互に交錯するような目まぐるしいフットワーク。足技を主軸としたダンスを披露する清綱の姿にオウガ・オリジンもまた応えるようにダンスパートナーと共にダンスを披露する。

 片足であるが故に、オウガ・オリジンはダンスパートナーに依存した動きではあったが、清綱も舌を巻くほどの踊りの上手さであったことは認めざるを得ない事実であった。
 アクロバットなジャンプを披露し、互いの距離が近づく。
 お互いが猟兵とオブリビオンでなければ、マイメン、マイシスといった具合に打ち解けることもできたであろう。
 だが、それはどうしたって叶わないことだ。

 互いの視線が交錯する。
 そんな最中、清綱の刻むステップが変わる。その清綱の眼前をオウガ・オリジンの蹴撃が襲う。鼻の頭を掠める足。
 残像を残すほどの高速ターンで躱しながら、互いの蹴撃が交錯する。
 清綱が足技を主体にしたブレイクダンスに切り替えたのは、それが最も攻撃への足がかりとして有効であったからだ。
「猟兵の中にも中々やる者がいるではないか……だが!」
 振るわれるは踵落とし。
 ダンスパートナーの体を支えに、清綱の脳天を狙うハイヒールの踵。
「大技で決めにきたか、オウガ・オリジン―――!」
 瞬間、フェイントを籠めたブレイクダンス、その足が目まぐるしく回転し、オウガ・オリジンの目測を狂わせる。

「……もらったり」
 逆さになって足技を繰り出していた清綱の手が刀の柄に重ねられる。
 一瞬の攻防。
 オウガ・オリジンの死角から放たれたのは、急所を的確に狙った一太刀による超高速の斬撃―――即ち、真爪(シンソウ)。
 その一撃はオウガ・オリジンとダンスパートナーの胴を薙ぐ。けれど、無敵のダンスパートナーの背は硬く、オウガ・オリジンの胴を薙ぎ払うには至らなかった。
 それでも、一撃の深さは伺いしれよう。

 その一撃と持って、清綱とオウガ・オリジンのダンスバトルは決着と相成る。本来、ダンスとはかくあるべき。
 そんな思いが紡いだ一撃は、オウガ・オリジンの悪辣たるダンスパーティーに亀裂を入れるのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒髪・名捨

『ダンス』ねぇ…
(『化術』で人型に変身した寧々と『手をつなぐ』)それではお嬢さん。私と踊っていただけますか?



しかし、踊りは経験がねーんだよな。
え?社交ダンスは淑女の嗜み…寧々にリードされるのか。
なんか屈辱。後日ちゃんと習おう。
寧々曰くラテン系の社交ダンスを踊りつつ、ケリや長い髪の毛で『なぎ払い』相手のステップの邪魔をしつつ『体勢を崩す』
ごめん御邪魔せ。
さて、攻撃は寧々を『かばう』と『オーラ防御』で耐える『激痛耐性』で痛みを顔に出さないよう注意しないとな。
大丈夫か寧々? 
あ、怒ってる?大丈夫だから…いや夫の痛みは妻の痛みって。それオレ納得してないからな。
あ、『神罰』の雷が落ちた…。



 パートナーと一言で言っても様々な形があるだろう。
 人の数だけ意味があり、形がある。それがパートナーという言葉である。ならば、ただの言葉であるというのなら、人がその言葉から感じる力は一体なんであろうか。
「『ダンス』ねぇ……」
 黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)にとって、それはなんと形容していいかわからないものであったのかもしれない。
 頭に乗っかっていた喋る蛙、『寧々』がどろんと頭の上から飛び降りて化術によって人型へと変身する。
 此度の戦いは踊りながら戦わなければならない。

 それはオウガ・オリジンが現実改変ユーベルコードによって生み出した不思議の国、『踊らない奴を殺す国』の唯一にして絶対たる法であるが故に。
 そんな国にあって名捨は寧々の前にして、少しかしこまった物言いをする。
「それではお嬢さん。私と踊っていただけますか?」
 手を取る。
 動作はたったそれだけのものであったかもしれないけれど、それはただ手を取っただけでは終わらない。手をつなぐからこそ、感じられる力だってある。

「しかし、踊りは経験がねーんだよな」
「社交ダンスは淑女の嗜みじゃからのう。此度はリードするが……」
 そんなふうなやり取りをしつつ、ダンスホールたる『踊らない奴を殺す国』に躍り出る二人。
 人型に変身した寧々にリードされつつ、名捨が舞う。
 なんとなく屈辱を感じる。女性にリードされるということが、だろうか? それとも寧々にリードされるのが、だろうか。
 どちらにしても、その感情を正しく理解し、口から言葉にする術を名捨は未だ持ち合わせていなかった。

 オウガ・オリジンは猟兵達の攻撃を受けて、最初の頃のようなキレのあるダンスは行えなかったようだった。
 けれど、無敵のイマジナリーダンスパートナーに支えられて、それでも踊り続ける。名捨のペアを見れば、そこには未だ闘志が揺らめくような顔のない顔。
 互いに何かを語ることはなかった。
 ただ、一心不乱に多る。ラテン系の情熱あふれるダンス。ペアである寧々の蹴りや名捨の長い髪の毛で薙ぎ払い、相手のステップを邪魔する。
 オウガ・オリジンとイマジナリーダンスパートナーの動きも見事であった。蹴りを躱し、長い髪にステップを邪魔されながらも、同じように攻撃を繰り返す。

 その全てを名捨がかばう。
 常に笑顔であったのは、こういう社交ダンスの場合笑顔でいることが大切であるとどこかで聞きかじったからか。もしくは、寧々の前では、そんな顔をしているわけにはいかないと意地を張ったからか。
 どちらにせよ、寧々にとっては―――。
「大丈夫か、寧々?」
 そう問いかけた名捨の瞳に映ったのは、明らかに怒っている様子の寧々の顔。
 あ。と思った時にはもう遅かったのかも知れない。
「大丈夫だから……」
「夫の傷みは妻の傷みじゃしの。そういうものじゃ」
 大丈夫、とたしなめても効果がない。いや、それ以前に夫、妻というものに関しては、名捨自身未だ納得していないことであった。

 身持ちが硬いというよりも、こういうのは勢いが大切であるぞ、夫殿、と寧々が笑ったような気がした瞬間、ユーベルコードが発現する。
 稲妻(プラヅマ)。それは化術で真の姿に変じた寧々が放つ神罰の雷。
「あ、『神罰』の雷が落ちた……」
 凄まじき一撃は、オウガ・オリジンと無敵であるはずのイマジナリーダンスパートナーを穿つ。
 しかし、それでも踊り続けるオウガ・オリジンであったが、徐々に動きが鈍り……ついには動かなくなってしまう。

 霧散し、消えていくオウガ・オリジン。
 断末魔もなかったのは、ダンスを心から楽しんでいたからだろうか。今となってか真偽の程はわからない。
 けれど、たしかにあのダンスは楽しまないものにはできないものであったことだろう。もしかしたのなら、あのときだけはオウガ・オリジンもまた……。
「や、それなら攻撃してこんじゃろ」
 そういう寧々の言葉に納得する。悪辣なる自己中心的性格であるからこそ、ダンスホールの視線は己のもの。そして、踊らぬものは殺す、という国を作り出したのもうなずける。

 イマジナリーパートナーを生み出さずとも、オウガ・オリジンは言うべきだったのだ。本当にダンスを楽しみたいのであれば。
 そう。
「私と踊っていただけますか?」
 シャル・ウィ・ダンス? と―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月25日


挿絵イラスト