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迷宮災厄戦⑱-21〜ターキーレッドの親睦会

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #オブリビオン・フォーミュラ #オウガ・オリジン

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●ジャムタルト味のお友達
 最初はアデリナ。あやとりが得意なはにかみ屋。
 お次はブランドン。ボールを投げてわたしに頂戴。
 彼女はコレット。ママの真似して針仕事。
 あの子のこの子も、わたしと一緒。
 かわいくて、かっこよくて、わたしと一緒で素敵な手!

 頭に揺れる宇宙色のリボンを結んでくれたディアナの腕にナイフを突き立てる。
 嗚呼骨ごと切るには力がいるわ。
 ねえエルベルト。あなた足をもう10分割して食べたら力持ちになれるかしら?
「うふふ。うふふ。こうすれば誰とだってお友達になれるわ」
 わたしと一緒じゃない部分、柔らかいお腹のお肉は食べちゃいましょう。
 それが友達の証ってものよ!
 腕についていた筋が切れ、切り離された手を『アリス』は抱き寄せ頬ずりをする。
「わたしとそっくりの素敵な手のわたしのお友達、友達ならいつでもいっしょよ!」
 わたしとあなたたちの友情に乾杯!
 一緒じゃない部分は適当に切り刻み血を絞り出し飲み干すのが礼儀!
「あのね、わたしと一緒じゃない部分──柔らかい肉と熱い血はね、この世界で最も尊いわたしが腹を満たすためのご馳走だから食べていいのよ」
 ぐちゃぐちゃ、べちゃべちゃ、ごくん。生温い生肉を飲み込んだ時だった。
 あれ?と首をかしげる。さっきから胃がなんだかむかむかする。
 アリスの私は昔なんだか狭い場所に閉じ込められて。その次は六番目の猟兵が忌々しいことにわたしを襲ってきた。
「うーん。さっきまで変な夢でも見ていたのかしら。わたしにそっくりなお友達がいっぱいいて今とっても幸せなのに変な気分。ねえお友達?」
 可哀想なアリス、と『手』が頭を撫でてくれた。

 そうね、今の私は誰とだってお友達になれるわ。
 怖いことなんて何にもないのよ!

●グリモアベース
「厄介なことが起きているの」
 オウガ・オリジンの討伐の依頼であると前置きしたジェット・ホークスアイ(変色する血で綴る宝石人形・f19703)は自分が予知した光景を再現する。
 どこまでも広がり平坦に続く闇色の国。
 そこに小さな山が出来ている。間からあふれ出るのは真っ赤な血。
 トライフルのように折り重なりあい、積み重なった少年少女のバラバラにされた死体。
 その上に座り込むのは金の髪を揺らし水色のエプロンドレスを纏った少女──オウガ・オリジン。
 切り取られた『手』を丁寧に並べ、それ以外の胴や体をナイフで切り刻む。
「今から皆を転送するのはオウガ・オリジンの中に眠っていた無意識の悪夢が現実改変ユーベルコードで具現化した世界」
 猟兵達との戦闘の中疲弊したオウガ・オリジンから解き放たれ、現実改変ユーベルコードと結びつき生まれた真っ黒な悪夢そのもの世界。
「自らの悪夢に飲み込まれ正気を失うとはね。そう、彼女は今まで対峙した偉そうなアリスはではないみたい」
 ジェットはため息をつき、オウガ・オリジンが死体の山の上に座り死体を切り刻みその肉を無邪気に齧っていたと予知した光景の続きを伝える。
「彼女が食べているのは自分に似た部位『以外』なの」
 何かの儀式のように振る舞っているオウガ・オリジンが正気を失っているのは確かだ。
「そうね……恐らく、猟兵の皆を『新しくやってきた友達候補』として最初は歓迎すると思うわ。問題は、その先」
 オウガ・オリジンにとっての『友達』──それは自分に似ている存在か否か。
 猟兵とオウガ・オリジンに似ている部分が少しでもあれば彼女は攻撃の手を止め親し気に接するだろう。自分に似ていない部位だと彼女が思えば猟兵は蠢く肉。喉と腹を満たすための食事だと襲い掛かる。
「今映し出しているオウガ・オリジンの画像データを元にそっくりに変身したり演技やお話で懐柔するのもいい」
 自分の考えを猟兵に伝えながらジェットはあ、と何かを思い出す。
「何故かはよくわからないのだけど、ジェットが予知したオウガ・オリジンは『手と手先を使った事』に夢中になっていたわ」
 おままごとに針仕事。あやとりをしていた誰かの手を美しい『自分の部位』だと特に気に入ってたようだ。

「どんなに正気を失っていたとしても、オウガ・オリジンは強力な存在。凶器に、狂気に、飲み込まれないでね」
 転送ゲートが開かれる。

●焦げたローストビーフ色のような国
 闇一色の世界に光の輪が生まれる。
 わたしはアリス。
 なんでも知ってる偉大なるはじまりのアリスにしてはじまりのオウガ。
 だから分かるの。あれはサイン!
 私と『一緒』のお友達か腹を満たす『生きている肉』のどちらかが来るのよ!
 ナイフを研いでお迎えの準備をするわ!


硅孔雀
 迷宮災厄戦です。
 硅孔雀です。
 お友達とミンスパイを食べたくなるお話。

●構成
 ボス戦:『オウガ・オリジン』と友達探し×1体。
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「迷宮災厄戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
 対応する戦場は⑱-21『オウガ・オリジン』と友達探しです。

●プレイングボーナス
 オウガ・オリジンに似た姿で戦う。

 今回の戦闘ではボスの先制攻撃はありません。一見すると純粋無垢な少女のようなオウガ・オリジンが皆様をお迎えするでしょう。
 ただし心の中はいつも以上に過激でお腹も空き気味。目の前の存在が自分に似た部位以外だと判断すれば即攻撃に移ります。

 「似た姿で戦う」の解釈に絶対的な正解はありません。
 皆様の自由な発想、行動でこれは!と思ったものにはばんばんボーナスが乗ります。
 当方のシナリオ限定になりますが、オウガ・オリジンは特に綺麗な手と手の仕草に固執しています。

●戦場情報
 どこまでも平坦な地が続く闇の世界(視界確保は十分可能です)
 バラバラに刻まれた少年少女の死体の山以外に目立った建物の無い荒野のイメージです。

●特記事項
 ・死体、流血、カニバリズム、狂気に満ちた言動、罵りが多量に含まれるリプレイ執筆を心がけます。苦手な方は十分ご注意ください。
 ・難易度はやや難。プレイングの判定もそれに準じて行います。
 ・進行の都合上、少人数での運営となる可能性が高いです。
 ・特定の方と行動したい、アドリブしてもいいよ等についての表記は、文字数節約用としてMSページに記載されています。確認して頂けますと幸いです。

 それでは皆様のプレイングお待ちしています!
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第1章 ボス戦 『『オウガ・オリジン』と友達探し』

POW   :    友達ならいつでもいっしょ
戦闘中に食べた【相手の肉体】の量と質に応じて【全身が相手に似た姿に変わり】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    あなたもお友達になって
自身が装備する【解体ナイフ】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    誰とだってお友達になれるわ
自身の装備武器に【切り裂いたものを美味しく食べる魔法】を搭載し、破壊力を増加する。

イラスト:飴茶屋

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

鈴木・志乃
予知で手に入れた情報を元に彼女に『成る』よ。
UC発動。ここでやらなきゃ役者じゃないね。アリスと同じ姿になって(変装)、声音も変えて(歌唱)、言葉や仕草もおんなじになるの(演技)
どしても難しい所は高速詠唱で補正するよ。

ああ、でも、まだ違う。
ねえジェットさん、私が行ってる間は他の猟兵さんと鉢合わせないようにしてもらってもいいかな?
うん、他人を傷つけない自信がないの。とっても危ないことをするから。

催眠術で自分の認識を限りなくオリジンに近づけるよ。
うふふ、私と一緒で素敵な手!
そうじゃない部分は私のご馳走! ちゃんと切り刻んで、血を飲み干してあげるから安心してね?

敵に隙が出来たら全力魔法なぎ払い攻撃



 どこまでも続く「平坦な闇」のような国に光の輪が浮かぶ。
 そして、同じ闇の色をした地に鈴木・志乃(ブラック・f12101)が降り立つ。
 黒い髪はブロンドに、纏う衣装は水色のエプロンドレス。
 転送される前に確認した情報を元に、ユーベルコード:上演(ジョウエン)の力を用いてオウガ・オリジンと瓜二つの姿となり、歩みだす。
(「ここでやらなきゃ役者じゃないね」)
 オウガ・オリジン、アリス、少女。
 軽やかな足取りを完璧に演技で再現しながら思い出すのは転送される前のやり取り。

 ──私が行ってる間は他の猟兵さんと鉢合わせないようにしてもらってもいいかな?

 ──うん、他人を傷つけない自信がないの。とっても危ないことをするから。

 極限まで演技の精度を上げる方法に役の人格を自分の中に憑依するというメソッド演技法が存在する。
 物語の中に自分を落とし込み登場人物そのものとして笑い、怒り、悲しむ。
 今この世界に立った一人いる主演はお友達と戯れながら握った刃でお友達を肉にするオリジン。
 彼女になる。お友達は素敵なわたしと一緒。たくさん遊んでお腹が減ったら食べるものは真っ赤な、新鮮な……。
 負の感情に飲み込まれ、元の鈴木・志乃の人格に傷がつくかもしれない。
 だけど、自分は役者なのだ。自分の認識を限りなくオリジンに近づけよう。

「私ははじまりのアリス。早く私に合わなくちゃ。早くお友達と遊びたいんですもの!」

 オウガ・オリジンは小山の上からやってくるお友達を目にすると、一目散に死体を踏みつけながら降りてきた。
『こんにちはわたし! ようこそわたしの国へ!』
 オリジンがエプロンドレスの裾をつまんで挨拶をすれば、もう一人の『アリス』も優雅にお辞儀をする。
「お招きいただきありがとうわたし。お友達に会えて嬉しいわ」
 鈴木の声はオリジンと瓜二つ。
 二人のアリスの違いは闇色の相貌とオレンジの瞳──仄暗い光灯るそれ位。
『早速遊びましょうわたし! 餌のお山登り競争ががいいかしら、それともナイフでお肉を抉る遊びがいいのかな?』
 オリジンの手には解体ナイフが握られている。その手をアリスが両手で包む。
「──うふふ、私と一緒で素敵な手!」
 ゆっくりと指を、手のひらを、包み込んで撫でまわし。
 オリジンの手からナイフが離れアリスが握りなおしていることにオリジンは気が付かない。
 だって、アリスがわたしを褒めてくれているんだもの!
『えへへ。やっぱりわたしは優しくて可愛いのね。くすぐった──い!?』
 はにかんでいるのであろうオリジンの顔に、ぐさりとナイフが差し込まれる。
 ニコニコと笑うアリスは引き抜いたナイフをもう一度ぐさり!
「ええ、私はとても可愛いし、素敵な手を持ってるの。そうじゃない部分は私のご馳走!」
 素敵な手があるのだからそれでいいじゃない。顔も首も胴体もとっても美味しそうよ、私?
 オリジンのユーベルコードを完全に乗っ取ったかのように、何十ものナイフが浮かびオリジンに刺さっていく。
 完全に隙をつかれたオリジンは右に左に上に下に、魔法を込めた斬撃はオリジンを宙に浮かび縫い合わせるほどに苛烈。

「大丈夫。ちゃんと切り刻んで、血を飲み干してあげるから安心してね?」
 死体の小山から絶えず流れる赤い血の上から、オリジンの黒い血が降り注ぐ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

本・三六
◎ 負傷○欠損×

ボクだけだと厳しいね。
『バトルキャラクターズ』召喚
やあ相棒たち、いつも有難う。そう、華奢で強い素晴らしい少女。君を待ってた。
友達になってくれるかい?皆も力を貸してくれ、彼女に合体を

ゲームデバイスでイメージを伝え、
魔法少女キャラにアリスそっくりに【変装】してもらう
額の数字も前髪で隠れるかな
ボクも水色のシャツに白スーツを用意した。ボクは彼女のお供。心意気で頑張ろう。

アリス、ほら、ボクらも力持ちなんだ。
【怪力】で持ち上げてもらって、ボクは『鉄芥』と『黒賽子』でジャグリングを披露だ
ごめんよ、アリス、ボクは人殺しはできない。
殺意が止められないなら【早業で先制攻撃】全力で止めに走る
残念だ。



 オウガ・オリジンとの対峙。ボクだけだと厳しいね、と本・三六(ぐーたらオーナー・f26725)だが独り言ちる。
「さあ出ておいで、相棒」
 ユーベルコード:バトルキャラクターズが発動した。
 次々に地に足をつけるのは召還されたゲームキャラクター達だ。
「やあ相棒たち、いつも有難う」
 千差万別の個性を持った彼らの中を本は歩き一人の少女型キャラクターの前に立つ。
「そう、華奢で強い素晴らしい少女。君を待ってた」
 彼女が小首をかしげる。
「友達になってくれるかい?」
 ──はい、わかりました。ワタシの魔法が役に立ちますか?
 ──勿論だとも。今日はボクがお供役。皆も力を貸してくれ、彼女に合体を。

「エプロンは真っ白のフリルを寄せて。空の水色のドレスに……リボンを整えるのを忘れずに」
 手にした【ゲームデバイス】でより正確なオウガ・オリジンのデータを与えれば。
「はじめまして。わたしはアリス。あなたはお供の本・三六。ふふ、私たちお洋服がそっくり!」
 ああそうだ、と水色のシャツに白スーツを合わせた本がデータのアリスの髪をなでる。データのアリスと従者は死体の折り重なる山へと歩き始めた。

『わたしとわたし、じゃなくて男の子?』
 死体の山のてっぺんからオウガ・オリジンが二人を見下ろす。
 本が彼女──アリスの従者だと告げるとオウガ・オリジンは興味深そうに闇で覆われた顔を向けた。
『何して遊ぶ? お友達じゃない頭をボールにクリケットがいいかしら』
 死体の山に手を突っ込むオウガ・オリジン。
 千切れかけた死体を片手で持ち上げもう片方の手でジャムの瓶を開けるように首を捻り胴体と離す。肉を千切り、骨をも簡単に砕くオウガ・オリジンの力。
「アリス。ほら、ボクらも力持ちなんだ」
 ボール遊びもいいけど面白いものを見せてあげよう。ねえ、アリス?
「アリスも手伝ウわ」
 データのアリスに担ぎ上げられた本の手には【鉄芥】と【黒賽子】が握られる。
 バランスを取りながら重そうな物体を軽く空中で弄ぶジャグリングの始まり。
『まあすごい! 男の子って力持ち! それじゃあこれを避けてみて!』
 ヒュンと風が体の脇を掠め──同時に肩に走る衝撃。
 ざくり、と嫌な音が本の耳に入った瞬間に本は理解する。
(「ナイフか」)
『あはは! わたしの先制点! 男の子って丈夫!』
 オウガ・オリジンの正気は狂気。ジャグリングを見せる本は彼女にとって動く的。
『男の子が動かなくなったらわたしがわたしを殺してもいいのよ?
 あはは、面白い遊びがいっぱいできるわね!』
 オウガ・オリジンは楽しそうに己の首筋にナイフを突き立て。つうと黒い筋が走る。
 ──本能が血を、無邪気な殺戮を、死を求めているのか。
「……わたし」「ごめんよ、アリス、ボクは人殺しはできない」
 データのアリスの従者が息をぴったりと合わせ死体の山を駆け上がる。
 データのアリスがオウガ・オリジンの首を掴み上げるのと空に無数のナイフが浮かび上がるのは同時。
 先行するのはオウガ・オリジンのうめき声だ。
『が、……どう、して……あなたも、お友達』
「……その心は、どこまでも狂気の中、か」
 琥珀色の瞳が揺れる。
 心の底から湧き上がる感情と共に、鈍器と鈍色のダイスをオウガ・オリジンへと打ち込む。

「残念だよ」
 オウガ・オリジンの肢体から力が抜ける。
 ナイフが重力に従い落下し、銀色の鋭利な雨が降る。
 ずきり、ずきりとナイフが刺さった箇所から痛みが走っても。
 死体の山の上で本は立ちすくんでいた。

成功 🔵​🔵​🔴​

木常野・都月


男の俺が、女の子のオウガ・オリジンに共通点?無理だ。
ここは術師らしく幻覚で誤魔化すか。

チィと、水の精霊様を使って、俺をアリスそっくりに見せる様にしたい。

水の精霊様には、薄い水幕を。
簡易的な水鏡、水のスクリーンにしたい。
アリスがそこにいたら、自分が水鏡に映っているかのように見えればOKだ。
この水幕を俺の周囲に被せておく。

後は月の精霊チィに、月明かり、光の屈折を利用した[催眠術]で、俺がアリスに見えるようにしたい。
簡易的な双子のアリスだ。
油断してくれればいいが。

隙をついてUC【狐火】でアリスを燃やしたい。

きっと俺の方も一緒に燃えてるように見えるはず。
水鏡だからな。
触れられないように注意したい。



 男の俺が、女の子のオウガ・オリジンにどんな共通点が?
 広がる闇。朝晩の区別すら黒で塗り固められた世界を黒い瞳で見渡すのは木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)。どうしたものかと思案し、無理だと結論に達した時であった。
「チィ」
「!」
 闇が音を吸い込むかのように静寂に満ちていた世界で鳴くのは精霊の子「チィ」であった。もぞもぞと木常野の纏う【狐の羽衣】からちょこんと顔を出し、首を傾げながら木常野の顔を見つめる。
(「月の精霊の子には、この世界はどう映っているのか……!」)
 万物に宿る精霊。彼ら彼女達が居る所の声を聴き力を貸してもらうのが猟兵──精霊術士である自分の本分ではないか。
「そうか。チィが元気なら、力を借りれば……平気か?」
 柔らかなチィの顎下をそっと撫でると主人の手のぬくもりに精霊の子は頬を寄せて喜ぶ。
「さて。ここは術師らしく──」

 オウガ・オリジンは怒っていた。
 自分と瓜二つ、唯一無二お友達がわたしの国にやってきてくれたから、思い遊びに誘ったら「いじわる」をされた。
 胃の奥から湧き上がる怒りが全身の血液に溶け込んだかのようにせり上がってきた。お腹がムカムカするならソフィヤの柔らかい内臓を食べれば治るかもしれない。
 どこよ。ぐちゃぐちゃ。ここは腿のお肉。どろどろ。違う、太ももはもう食べたから骨だらけ!
『見つからない、見つからない、見つからない……!』
 怒りがオウガ・オリジンの脈打つ心臓を爆発させる。
 有り余る力を込めて地団太を踏みつけると足元の濁った真っ赤な水しぶきが舞う。
『ああもう! これはきっとわたしが真っ赤になったじゃない! 誰かの目玉で鏡を……あれ?』
 いつもは小山から流れ出た赤黒い水鏡をしゃがみこんで己の姿を確認していた。
 しかし、今の彼女は立ったまま──もう一人のアリスが向かい合っていた。
「こんばんは、アリス。ずいぶん赤いね。ほら、私も真っ赤」
 口に手を当て『鏡のアリス』がくつくつと笑う。オウガ・オリジンは彼女の様子に足踏みを始める。心の底から湧き上がる歓喜を舞の形にしたように踊る。
『やった、やったわ! わたしの友達のわたしが来てくれた! ひどいのよ、悪い夢を見てるみたい──』
 止まらないオウガ・オリジンの愚痴。痛いことをされた。肉が食べたい。お友達が欲しい、まずは大好きな、
「手が欲しいならまずナプキンで自分の手の汚れを拭くのが淑女のマナーかな」 
 は!と思わず飛び上がったオウガ・オリジンは慌てて鏡の中のアリスに背を向けて走り出す。死体の中から襤褸布を探すつもりなのだろうか。

「……完全に油断している、か」
 闇一色の世界に月明かりがともっていることにすら気が付いていない。鏡のアリスは水鏡に触れ、口を開く。
「水幕を作ってくれてありがとうございます。水の精霊様。そして、」
 ──燃えてしまえ。
 水たまりの上を木常野のユーベルコード:狐火(キツネビ)の炎が走る。オウガ・オリジンの走る速度より、圧倒的に早く、圧倒的に大きく。
『な、なんだこれは……あ、あああ、あつい!』
「私も熱い、嗚呼、嗚呼、悪夢の様だ」
 燃え盛る鏡のアリス──月の精霊チィが照らす光が屈折し、オウガ・オリジンの姿に見える力を貸してもらった木常野の声色は敵を撃つ猟兵の冷静なそれ。
 鏡に「自分かつ友達のわたし」が映り込んでいると錯覚ままのオウガ・オリジンが助けを求めて水幕に触れようとする。
「悪いがそれはさせない」
 
 集合する炎は闇を照らす。焦がす。
 骨まで灰に、その灰も残さないといわんばかりに。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ライラック・エアルオウルズ
見目の点では、悲しき哉
友達には成れないけれど
まあ、僕も友達は選ぶからね

外套に宇宙めくリボン飾り
――同色の手袋を身に付けて
姿は隠すよう、《闇に紛れる》
保険と用意する他の“御揃い”は
素敵な友達がいると云う事かな

そう、代わりと訪ねるのは喚ぶ友
アリス姿の彼女は友達に相応しく
想像であるが故、晩餐となるまい
『ねえ、わたしと遊びましょう』
綺麗な指先で、華麗なカーテシー
引き付け、具現化する大鎌で首狙い

僕に気付けば、手を見せて
御喋りで《時間稼ぎ》といこう

君の手を良く見て御覧よ
本当に友達と“御揃い”かい?

喰われど《激痛耐性》で耐え
隙出来れば、背から攻撃を
矢張り、君とは友達になれない
奪うのは友達にする事じゃないもの



(「見目の点では、悲しき哉──友達には成れないだろうね」)
 ライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)は平坦な闇、暗い土を踏みしめる。文豪は好奇心に身を任せ旅を続ける。
 今回の旅先であるアリスが好奇心から生み出したのは兎が飛び込んだ穴ではなく切り刻まれた少年少女の死体の山だ。
 自分の周りには『奇妙な友人』が多かった。
 ──ライラック、お友達に彼女はいかが?
 僅かに吹き込む風が運ぶ鉄錆と腐敗臭が問う。
「いいや。まあ、僕も友達は選ぶからね」
 風にはためく外套に飾られているのは星空を抱く宇宙のリボン。同色の手袋を嵌めなおし闇夜の中に消えていく。
 
 オウガ・オリジンが遠くの小山のてっぺんでまっていた。
『暇ね……ま、お腹空いたし』
 山を下り新鮮な『お友達』のはらわたを引きずり出そうとしたその時。
「ねえ、わたしと遊びましょう」
 鈴を転がしたような、砂糖菓子のような甘い声──オウガ・オリジンは己にとそっくりだ!と振り返る。目の間には金の髪を揺らすアリス。
 両手の先の綺麗な手はぴんと伸ばしてスカートのすそを掴み広げ、片方の膝を軽く曲げたカーテシー。
 磨かれた貝のようにぴかぴか光る爪、白磁の人形を思わせる薄い皮膚、親指から小指、掌から手の甲に至るまで。
『……完璧じゃない! こんにちは完璧なわたし、わたしはあなたよ!』
 オウガ・オリジンは『完璧なアリスの私』の手をとりうっとりと──真相はその顔の闇が晴れるまで分からないが自分の顔に当てた。その拍子にぽろりとエプロンドレスから落ちたものがあった──ぽちゃんと浮かぶ真っ赤な手首。
『あ、そのお揃いの友達はもういいわ』
『ほら人差し指の付け根に小さなほくろがあるじゃない。素敵なお友達だと思ったんだけど、あなたみたいなアリスの前だとダメね、真っ赤な偽物真っ赤になあれ!』
 オウガ・オリジンは手首を踏みつぶして肉塊へと変える。
 げらげら。ばしゃばしゃ。
 物陰に身を潜めていたライラックの耳にも音は聞こえていた。思わず苦笑する。
(「用意した“御揃い”に随分と乱暴な。素敵なお友達がいても君は──」)
 ふうと息を吐き、完璧なアリスへと指示を送る。
 ユーベルコード:『夢と盤』(キングズ・ドリーム)で喚んだのは相手の想像を具現化する『想像上のお友達』。
 オウガ・オリジンの真の友達が現れてほしい願望を叶えたのは当然であったのだ。
 だから完全なアリスは、音もなく具現化の力を用い、真の友の合図で大鎌をふるえたのだ。オウガ・オリジンの絶叫と共にぼたりと彼女自身の肉が落ちる。
『ギ、ギャ、ア! 誰、誰かがいるの!? 完璧なわたしがわたしを攻撃するわけが……!』
 膨れ上がる殺意があっという間に空間を塗りつぶし。
 ──そこにいるのね。お前は誰だ、お前はわたしか?
「残念ながら僕は君ではないね、しかし、ここは君とお揃いだ」
 接近されれば肉を食いちぎられる覚悟はとうに決めてある。ライラックは『自分の手』を伸ばし、ひらひらと振る。
 宇宙を纏ったその手に気を取られるくらい位は予想していた。牙が肉に触れるまでの時間稼ぎと口を開く。
「ペンを執る手も作品のひとつかもしれないね。どうだい?」
『ああ、ああ、わたしの手! きれいなわたしはそこにいるのね!』
 わたしの友達のあなたのわたしの手をよこせ。
 ライラックの腕にオウガ・オリジンの手がまとわりつく。
 爪が立てられ、外套が裂け──喰われ走る痛みを感じさせない明るい声色でライラックは歌い上げる。
「君の手をよく見て御覧よ。……本当に友達と“御揃い”かい?」
『え? わたしの手、わたしの手? ……なにこれとっても汚いわ!
 ねえそこのわたし! 友達ならわたしにその手を頂戴な!』
 口元にライラックの肉と血が混ざった泡を残しオウガ・オリジンが喚く。
 隙だらけのオウガ・オリジンの背はがら空きだったから。

「矢張り、君とは友達になれない──奪うのは友達にする事じゃないもの」
 友である『アリスの彼女』を引き寄せ、そっとライラックはその頭を撫でた。
 次の瞬間──想像の彼女の前に創造のオウガの首は撥ねられた。

成功 🔵​🔵​🔴​

スキアファール・イリャルギ
◎〇
傍らのひかりが心配そうに瞬いた
大丈夫だよ、きみは隠れてて

化術で声や姿を真似る
どこまで誤魔化せるかな
何を語って遊ぼうか
(私は子供の遊びをよく知らないんだ
子供の時にあんまり出来なかったから)

『似てない』判定されてもいい
私は得体の知れないモノで呪詛塗れ
多分美味しくなく苦しむだけ

私たちは『アリス』
心が壊れ御伽の国に呼ばれた狂人
でも決定的に違うのは
私はオウガに成り損ねたこと
私は"怪奇"であること

UC発動、裂いて喰らい返す

あぁ、私もそんな風に狂えていたなら
誰も私を生かそうと思わず殺してくれただろうか

……いや、殺されない儘で
私は父さんや母さんを、先生を……殺してしまっただろう

だったら今の狂い方で、いいか



 戦場と化したアリスラビリンス。狂った御伽話の国でかつて自分は出口の扉を開けた──とは明確に覚えていない。傍らのきみはとても心配そうに瞬く。
「大丈夫だよ、きみは隠れてて」
 ひかり。

 平坦な闇の続く世界。
 オウガ・オリジンの食べそこないの肉塊から血があふれた水たまりがあった。
 化術で姿を真似たとはいえどこまで誤魔化せるのだろうか。口に出した声はオウガ・オリジンそっくりなのだろうか。 
「……はあ」
 芝居がかった大げさな仕草で己の姿を覗き込む。見た目はこの際いいのだ。
 問題はオウガ・オリジンは『遊び相手』を求めているのだ。
(「私は子供の遊びをよく知らないんだ。子供の時にあんまり出来なかったから」)
 狂いはすれど少女と何を語って遊ぼうか。元は黒い髪に手を当て頭を揺する。
 ──わたし(アリス)に似ていなければ食べちゃうんだから!『  』、あなた全然似てないわ!
 想像上の彼女がすでに喋っている、非難する。
「いいんだ。似ていなくて」
 だって。ここに転がっている肉はオウガ・オリジンには美味な果実の味がしたのだろうけど。
 自分の腕も足も耳も目も粘膜も内臓も──手も全部。
「私は得体の知れないモノで呪詛塗れ多分美味しくなく苦しむだけ」
 闇夜の中に影が重なり伸びていく。影人間が血と肉の山へと歩んでいく。
 
 スキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)は鼻歌交じりにステップを踏み『アリス』へと会いに行くことにした。

『あらまあ、ずいぶんと背の大きいわたしなのね、こんにちは!』
 少年少女の死体の小山の麓。
 オウガ・オリジン、少女の姿形をしたそれがスキアファールを見上げる。
「やあわたし。あなたとわたし。友達として遊びに来たのです」
 そっと『手』を差し出すとアリスが両手でそれを掴みぶんぶんとふる。
『ずいぶん色白で細いわたしでもあるのね、面白い!』
 友達が目の前にいるだけでも面白おかしく楽しめるのですね、とスキアファールはある意味感心していた。
『それじゃあ縄跳びしましょうよ』
「なわとび?」
『ええ!? 知らないの?』
 ずず。彼女の輪郭が震える──オブリビオン、オウガたるその真の姿を見せ始めるとでもいうのか。顔には出さずスキアフィールは神経を集中させ彼女の動向を探る。
『ま、そんなわたしがいてもいいかもね。あのね、ほら見て? こうやっ、て!』
 近くにあった死体の腹をナイフで刺しぐるぐると回転させ内臓を引き出した。
『これが縄ね。これを綺麗なわたしの両手で端と端を持って……あっちの頭から髪の毛を抜いて本物の縄にした方がいいのかしら……』
 ねえねえわたしどっちがいい?答えてよ。遊びましょうよ。
 同じアリスなんだから!

(「そう。私たちは『アリス』。心が壊れ御伽の国に呼ばれた狂人」)

『どうして黙ってるの? お腹刺していい?とびっきり痛くて目玉が飛び出るかも』

 でも。
 決定的に違うのは。

「……私はオウガに成り損ねた。そして、私は"■■"である」
「……ァ゛、a縺嗚ァあ゛ゝAア縺ぁ噫――」
 見下ろした先の彼女に聞こえない小さなスキアファールの声。"怪物"アリスと"■■"アリスの心は所詮交わらず。

『あらあなたおいしそう。ほら、食べちゃったよ、痛いでしょ、何か言って……あれ?』
 オウガ・オリジンが腹に突き立てたはずのナイフが地面に落ちそうになる。
 人間の体にしてはぐにゃぐにゃしてる。それに色もなんだかおかしい、おかしい! そして、痛い!
『あ、が、ぎゃ、た、たべないで!』
 ユーベルコヲド:虚たる薜茘多(カラレス・オウガ)がスキアファールの体を作り変える。本当の自分へと還す?有り得た過去で上書きされる?
 無数の目と口を持つ不定形の影が切れないのであればとオウガ・オリジンが解体ナイフを無数に浮かべ、影を縫い留めんと動いてはあちこちを食いちぎられる。
 どの口がアリスを食んでどの目がナイフに潰されたのかはわからない。
 ただ、兎に角。
 目の前のアリスは狂ったように私を刺すのです。

 ──あぁ、私もそんな風に狂えていたなら誰も私を生かそうと思わず殺してくれただろうか。
 いつかの記憶、自分が扉を開ける、閉じ込められた。いつのはなし?
 ……いや、いや、殺されない儘で私は父さんや母さんを、先生を……殺してしまっただろう。

「だったら今の狂い方で、いいか」
 そうと決まれば私は早速オウガの影になることにしました。食べ過ぎてアリスの体はもうないのですが。
 辺り一面真っ暗で静かです。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

安寧・肆号

まあ、まあ。
お友だちが欲しいなんて可愛らしいこと!
見た目は変えられないけれど、シルエットならどうかしら。
死体の山を炎属性攻撃で燃やして、暗闇に影を作るの。
リボンは真ん中に。手袋は外すわね。

演技は得意よ。舞台に上がれば、あたしはアナタ。
アナタはわたし。わたしはアリス。
死体の山に隠れて、影だけ出してご挨拶。
こんにちは、アリス(わたし)!

影絵遊びはどう?
指で色々なものを作るの!
可愛い猫に、白鳥!

疑いを持たれたら、戦闘ね。
友だちを疑うなんて、ひどいのね!
防御は銀時計の武器受け。
攻撃は早業で、あたしと似てない部分を鋏で部位破壊するわ。

あたしはこんなに可愛いお人形なのに。
食べようだなんて失礼しちゃうわ!



 安寧・肆号(4番目の人形・f18025)の原材料はお砂糖とスパイスと素敵な魂。
 だから召喚された安寧の姿はいつも通りであった。オウガ・オリジン如きの前で『自律人形・アンネ』がその姿を変えるなんてのはもってのほか。
(「影さえあればあたしの作戦は上手くいくはず」)
 辺り一面が真っ暗闇な世界に影を作る方法はもう思いついている。あとは現場まで行き『作れ』ばいいだけなのだ。
 安寧は立ち止まる。
 まずリボンを真ん中に着けなおし、次は手袋を外す。
「そうね。見た目は変えられないけど、シルエットはこうして……うん。大丈夫」
 それにしてもと少女の笑みがこぼれる。
「まあ、まあ──お友だちが欲しいなんて可愛らしいこと!」

 なんでもないその日はなんでもないお友達の少年少女の死体の山がありました。
 オウガ・オリジンは嫌な臭いがするなと思いました。友達の臭いとは違う。焦げたミートパイのそれに近いのです。
 オウガ・オリジンは気が付きます。熱風と真っ赤なあか。めらめらめらと大きく大きく育っていくのは!
『なんで! なんで山が燃えてるの!』
 死体の山が燃え上っています。天まで届きそうな火柱は闇一色の暗闇の世界に影を作ります。
「完成したわ、赤と黒。火と影の舞台」
 手のひらサイズに戻したガジェット【Gadget*Chronosphere】をぽんと叩き安寧・肆号は微笑みます。
「舞台に上がれば、あたしはアナタ」
 自ら作った舞台の上へと、優雅に安寧は足を向けます。
「アナタはわたし。わたしはアリス」

「こんにちわ、アリス(わたし)!」
 死体の山からにょきりと影が伸びました。

「にゃんにゃん。影の猫のアリスだよ。どうしたのあたし? なかないでアリス!」
 両手を重ねて作られた影の猫が悲しそうな声で、茫然と火の手の上がる死体の山の前で立ち尽くすオウガ・オリジンに語り掛ける。
「大丈夫だよアリス。影絵遊びをしていたらすぐに気分が良くなるわ!」
『……ぇ?』
「ぱたぱた。こんばんわアリス、白鳥もやってきたよ。ほうら一緒に遊ぼうよ」
 ぱっと安寧が手の動きを変えると闇夜の中に白鳥が嘴を開く。優雅に指先の羽根を震わせ口をぱくぱくさせる『アリスの手』にオウガ・オリジンが顔を上げ──嬉しそうに燃える山へと声をかける。
『素敵だわ! このわたしの素敵な手がいっぱいの動物に!』
「そうよアリス。一緒に影絵で遊びましょう。指で色々なものを作れるのよ。ほら、可愛い猫に、白鳥!」

 なんでもなくなったその日は燃える死体の山と綺麗な影絵のアリスがありました。
 オウガ・オリジンは影絵のアリスに手の動かし方を習い、笑い、心の底から楽しんでいました。しかし、なにかが変なのです。
 影絵のアリス(わたし)はどうして来てくれたのでしょう?
「あら、どうしたの?」
 めらめらと燃える山は一体どうして生まれたのでしょう?
「さあ。それより次は蝶々にしましょうよ」
 ねえ、影絵のわたし。姿を見せて?
「仕方ないわね。どうかしら?」
 まあ、リボンもお揃いの場所!頭からつま先までわたしじゃない!
「だから言ったのに。さあ遊びましょう。舞台はここに。あたしはここよ」
 ……ねえ。影絵のアリス。どうして今まで来てくれなかったの。もしかして。ねえ、ねえ、ねえ!
 愚かなオウガ・オリジン。髪を振り乱し影絵のアリスへ刃を向けます。
「友だちを疑うなんて、ひどいのね!」
 あーあ。舞台はおしまいです。

「わたしはここよ。オウガ・オリジン!」
 ユーベルコードの力で安寧は宙を蹴り影絵のアリスから『自律人形・アンネ』へと戻っていく。
 この世界に今安寧はひとりぼっち。
 迎えに来るオウガ・オリジンの投げたナイフの群れを銀時計【Silver*Watch】を盾に躱しながら鋏を構える。
『お前なんか食ってやる! 燃やした分だけ食ってやる!』
「まあ。あたしはこんなに可愛いお人形なのに。食べようだなんて失礼しちゃうわ!」
 次に安寧が取り出すのは小さな小さな可愛らしい鋏。【Pretty*Scissors】は見る見るうちに大きくなり、
「あたしは大声でわめいたりしないわよ。似てない部分はこうしちゃいましょう!」

 ジャギン!

 まずオウガ・オリジンの喉が切られます。

「──じゃあ次は、あたしと似てないリボンのついた頭を切ってあげるわね」

大成功 🔵​🔵​🔵​

花盛・乙女

…哀れな。

性別以外似るところない私はこの戦場では沈黙を貫く。
音は雄弁に異を語る。それに物狂いに問答は不要。好きに唄え。
ただ、その言葉一つとして耳から零さない。
羅刹ゆえの細い私の手と指がよく見えるよう手甲は外す。
着物の袖もたくし上げておこう。念の為、予知に聞いた手に似せるよう化粧も施しておく。
彼女が近寄ってくれば、指を絡めて「手をつなぐ」
親愛の情を彼女は唄うだろうか。相違の怨嗟を吐くだろうか。

どちらでも良い。私は彼女を敵として見ていない。
友を欲する事は、孤独から見る光だ。
生まれ方が、出会い方が違えば、狂わなければ…よそう。

哀れな少女に手向けるは鬼の「怪力」。
抱擁にて少女の悲哀への葬送とする。



 オウガ・オリジンが悪夢から覚めない限り何度も何度も少年少女の死体の小山は作られはじまりのアリスは肉を貪る。
 光の輪が現れて、猟兵が召喚された。
 羅刹ゆえの細い手が良く見えるように身に着けている手甲を外し。
(「……哀れな」)
 花盛・乙女(羅刹女・f00399)はじいと赤い瞳で宇宙の色に染められた両手を見つめる。予知で得られた情報通りにオウガ・オリジンの持つ両手とそっくりに化粧は施されているようだ。
(「……哀れだ」)
 エプロンドレスを着ているというオウガ・オリジンに合わせ、たくし上げた着物の袖をもう一度確認する。
 誇り高く、常に前を向き凛とした花を咲かせながら歩き道を拓いてきた花盛はただただ思う。
 オウガ・オリジン。実に哀れな存在。
 同じ女であるだけで手と見た目がほんの少し似ているだけの姿であろうと──彼女が自分を似ていないと思わないとは分かっているが構わない。
 暗闇の中歩き続ける。

『おかしいのよヨランダ。わたし、やっぱり変な夢をみているかなって。お友達が来ては違って、来ては……』
 何か嫌なことをされた気がすると切り取った手首に語り掛けるオウガ・オリジン。やがてその手にも飽きて次の死体を探そうと山を下りる。
 真っ暗闇の世界。オウガ・オリジンと花盛が対峙したのはその時であった。
『まあ……貴方は、友達? それともごはん?』
 ぺこりとお辞儀を『お姉さん』にするが、お姉さんは口を開こうとせずオウガ・オリジンは混乱する。
『あの……餌なのに二本足だけど、友達じゃないから餌で。あの、あの……あ!』
 花盛の手にオウガ・オリジンは目を向けた。自分の手と同じで……やっぱりわたし?と首を傾げ。
『口下手なわたしなのね、よろしくわたし! わたしはアリス。はじまりのアリスのオウガ・オリジン!』
 あれ?とオウガ・オリジンは花盛の手が動いたことに気が付く。五本の指がそっと自分の手を撫でて、指を絡めてわたしとあなたの手が繋がれる。
『まあ、まあ! やっぱりわたしと仲良くしたいのね!』

 ──音は雄弁に異を語る。それに物狂いに問答は不要。
 花盛は沈黙し続ける。言葉を交わす必要など、最初から、ない。
 しかし。それは目の前でしゃべり続けている彼女を『無視』することとは全く異なる。花盛がオウガ・オリジンの前に立ち、そこで己に課した誓約。
 それはただ、その言葉一つとして耳から零さない。

『……でね。やっぱりわたしの手は素敵なの。こうやって、誰かに頭を撫でてもらえて、首も絞められて、ナイフも握れて』
『あなたもナイフを使える? 柔らかい肉は切れる? 何も答えないのってお友達じゃないわね!』
『うーん……お口は開くのかしら。お肉は美味しいのよ。アリス、アリス、嗚呼もっと友達の、アリスの肉を!』
 体のあちこちを触られ、声が耳に入る。
 親愛の情と狂気、相違への怨嗟がぐるぐると吐き捨てられる。
 花盛はオウガ・オリジンから何か特定の情報聞き出すために沈黙はしていない。
 敵を倒すために必要なことは何もない。
 否、最初から、彼女を敵としてみていない。

 ──友を欲する事は、孤独から見る光だ。
 顔が真っ暗闇の少女、オウガ・オリジン。彼女が求めていたのは友達だったのか、それとも正気か。
『どうしてなにも喋らないの!? わたしはあなたよ、このはじまりのアリスにしてはじまりのオウガの前だぞ無礼者が!』
『嫌、いや、いや! みんな嫌い! みんな美味しい! わたしの喉と腹を潤せ!』
『ここにいて! みんな消えろ! お友達はどこよ! わたしは誰なの!』
 ──生まれ方が、出会い方が違えば、狂わなければ。
 目の前の叫ぶ少女ははじまりのアリスにもはじまりのオウガにもならなかったのだろうか。猟兵花盛・乙女が屠るべきオブリビオンではなく友になれたのだろうか。
(「……よそう」)
 すべては過去。終わってしまった事。オウガ・オリジンは決して過去の海からは這い上がってこないはずの存在だ。
 彼女の体に右手と、左手を。ゆっくりと回された腕に宿すのは鬼の怪力。
 オウガ・オリジンの体温は炎を抱くように熱く、氷を抱くように冷たく、刃の様に痛い。
 花盛がオウガ・オリジンを抱擁する。最期まで叫び続ける少女への悲哀への葬送。
『……わたし。あなたのわたし。こんどのゆめは、ひとりじゃないよ、ね……』
 オウガ・オリジンの残したさいごのことば。

「……終わった、か」
 平坦な闇の世界。
 戦場で最初に花盛が発した言葉はもう誰の耳にも聞こえていない。
 腕の中で黒い泥へと変わりながら骸の海へオウガ・オリジンは還っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月28日


挿絵イラスト